ほむら「球磨川禊、あなた一体……」(1000)

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

いつも通りの挨拶。
ちらりとまどかを見る。
目が合ったまどかは、恥ずかしそうに目をそらす。
美樹さやかがまどかに耳打ちする。
“いつも通り”のはずだった。
けれど……。

和子「それじゃあもう一人、自己紹介行ってみよう!」


『うわあ、緊張しちゃうなあ。球磨川禊でーす。よろしくお願いしまーっす』

球磨川『僕ってすごく人見知りするタイプでしょ?だから、転校して友達ができるかどうかすごく不安なんですよー。
     今日の挨拶も、ついさっきものすごーく考えて来ました。だってほら、転校生の印象ってこの挨拶で決まっちゃうじゃないですか?
     初日から変な奴だとか思われちゃうときっと友達なんてできないと思うから、無難な挨拶にしとかないといけないなーと思って。
     好きな漫画は週刊少年ジャンプでーす!でも僕思うんですけど、ジャンプのモットー“友情・努力・勝利”ってあるじゃないですか?
     あれってホントは“血統・才能・勝利”だと思うんです。だって……』

和子「あ、あの、球磨川くん?張り切っちゃうのも良いけど、HRの時間が……」

球磨川『あは!ごめんなさい。ついつい緊張しすぎちゃって』

そして休み時間。
まどか達は“いつも通り”、3人で集まって話をする。

仁美「なんだか面白い方みたいですわね」

さやか「球磨川禊くん、だっけ?なんかすごい強烈なのが来ちゃったねー。あれじゃ暁美さんって子が可哀想じゃない?
    せっかくの美人があれじゃ印象薄くなっちゃうよ。ていうかあの子ちょっと暗いっぽいし……」

まどか「さ、さやかちゃん駄目だよそんなこと言っちゃ。聞こえちゃってたら……」

聞こえてるわよ、美樹さやか。

けど今はそんなことはどうでも良い。
まどかを魔法少女にさせないためにやらなければならないことがある。
そのためにはまず、この喧騒を抜け出さないと。

ほむら「……ごめんなさい。緊張しすぎちゃったみたいで体調が……。保健室に行かせてもらえるかしら」

 「えっ、大丈夫?」
 「だったら私が連れて行ってあげるよ!」

ほむら「いいえ、係りの人にお願いするわ。……鹿目さん」

まどか「えっ?」

ほむら「あなた、保健係よね?連れて行ってくれる?保健室」

ほむら「……あなたは、鹿目まどかのままで良い。今まで通り、これからも」

困惑するまどかを尻目に、私はその場を立ち去る。
忠告はした。
これでまどかは、もしアイツと出会っても早計に契約してしまうことはないはず。
あとは、アイツがまどかと接触するのを防ぐ努力を……。

球磨川『あれー?こんなとこで何してるの、ほむらちゃん?』

ほむら「……あなたは」

ほむら「球磨川くん……だったかしら」

球磨川『わあ、僕の名前覚えててくれたんだ。嬉しいなあ』

ほむら「何か用?」

球磨川『あーそうそう。保健室の場所知らない?
     実は僕、心臓が悪くてさ。休み時間は保健室で薬飲まないと死んじゃうんだよ。
     ……なーんてね!引っ掛かったあ?あははっ!冗談だよじょーだん。
     いまどき病弱キャラなんて流行んないもんねー』

ほむら「……用がないのなら行っても良いかしら」

球磨川『あ、もしかして信じちゃった?ごめんね!でも、用がないと話しかけちゃ駄目ってことはないでしょ?
     普通、友達を見かけたら話しかけるものだし!』

ほむら「出会った初日から友達だなんて。そう言ってもらえて嬉しいわ、ありがとう。
    でもごめんなさい。私、急ぐ用事があるの」

球磨川『あれ?そうなんだ。ごめんね引き止めちゃって』

ほむら「気にしないで。それじゃ」

今はこんな変わった人間の相手をしている場合じゃない。
早くアイツを、インキュベーターを見付けなければ。
球磨川禊に背を向け、歩き出そうとしたその時。

球磨川『あ。そうそうほむらちゃん。きみ、鹿目さんと知り合いなの?』

急にまどかの話題が出たことで、つい足を止めてしまう。

ほむら「……どうしてそう思うのかしら」

球磨川『えー?さっきの会話聞いてたら誰だってそう思うよ』

ほむら「……!」

球磨川『でもあれじゃあ、ただのサイコな電波さんだよね。
     鹿目さん絶対引いてたよ。当たり前だよね。
     初対面の人間にいきなりあんなこと言われても気持ち悪いだけだもん。
     あんなの、何か激しく勘違いしちゃってる痛い子か、頭のおかしな可哀想な子のどっちかにしか思えないし?』

ほむら「……盗み聞きなんて、趣味が悪いのね」

球磨川『盗み聞きだなんて、人聞きが悪いなあ。たまたま聞いちゃっただけだよ、ほむらちゃん』

ほむら「……気安く名前で呼ばないでもらえるかしら」

球磨川『おいおい、鹿目さんには“ほむらで良いわ”なんて言っといて酷いなあ。
     相手によって態度を変える人間は嫌われるぜ?』

……最初から聞いていたのね。

ほむら「……もう良いわね。さよなら」

球磨川『うん、ばいばい。また後でね。ほむらちゃん』




さやか「……あははは!何それ!文武両道で才色兼備の転校生暁美ほむらは、実はサイコな電波さん!
    球磨川って奴に負けてないね!あはははは!どういう転校生二人組みよ!」

まどか「ひ、ひどいよぉ……私真剣に悩んでるのに……」

仁美「もう、さやかさん笑いすぎですわよ。……あ、ごめんなさい、そろそろ失礼しますわ」

さやか「あー、またお稽古?大変だねー」

まどか「それじゃ私たちも帰ろう、さやかちゃん」

さやか「そうだね。……あ、まどか。帰りにCD屋寄っても良い?」

まどか「うん、良いよ。また上條くんの?」

さやか「えへへ……まあね」




まどか「あ、あなたが私を呼んだの……?」

突然頭の中に聞こえてきた声を頼りに行き着いた先に居たのは、見たことのない生き物。
そしてこの子は、とても酷い怪我をしている。
いったい誰がこんな酷いこと……。

ほむら「そいつから離れて」

まどか「えっ……」

ほむらちゃん……!?

まどか「だ、だってこの子、酷い怪我してる……」

ほむら「…………」

……も、もしかして……!?

まどか「だ、駄目だよ!酷いことしないで!」

ほむら「鹿目まどか、そいつをこっちに渡しなさい。
    あなたには怪我をさせたくないけれど、渡さないと言うのなら……」

ほむらちゃんがこっちに向かって一歩踏み出した、その時。

球磨川『鹿目さんの言う通りだよ!やめるんだほむらちゃん!』

ほむら「っ……!?球磨川禊……!」

まどか「く、球磨川くん……?」

いつの間に……一体どこから……?

球磨川『ほむらちゃん!どうしてこんなことをするんだ!動物虐待だなんて!』

ほむら「あなたには関係ない。邪魔しないで」

球磨川『関係なくなんかないよ!僕ときみは友達だろ!?』

ほむら「あなたと友達になった覚えは無いわ」

球磨川『…………』

球磨川くんが、突然私の方に向き直り、私は思わず身を固める。

まどか「な、なに……?」

球磨川『鹿目さん、その子を僕に渡して』

まどか「え、っと……う、うん……」

一瞬躊躇したけれど、さっきの球磨川くんの様子から考えて、少なくともこの子に酷いことをしそうにはない。

球磨川『お礼を言うよ、ありがとう』

球磨川くんはほむらちゃんに向き直る。     

球磨川『……ねえ、ほむらちゃん』

ほむら「…………」

球磨川『きみの狙いはこの子なんでしょ?理由はわからないけど』

ほむら「えぇ、そうよ。だからそいつを渡しなさい」

球磨川『僕はね。どうしてもほむらちゃんが動物虐待なんて悪いことをするなんて思えないんだ』

ほむら「…………」

球磨川『きっとどうしても仕方の無い理由があるんだよね。僕は信じてる。だから』

そこで球磨川くんは言葉を切り……そして。
白い子の頭を掴んで……!?

まどか「っ!?や、やめて!!」

思い切り、床に叩き付けた。

球磨川『どう?これで僕の話も聞いてくれるよね!』

ほむら「……!?あなた……」

まどか「いや……いやぁ……」

球磨川『あはは。ごめんね、鹿目さん。びっくりさせちゃった?』

まどか「やっ……こ、来ないで!」

球磨川『やーだ、そんなに怖がらないでよ。コレは仕方ないことなんだ。
     だって、うっかり手が滑っちゃったんだから。これは不幸な事故だ。僕は悪くない』

まどか「ひっ……!」

次の瞬間、球磨川くんとほむらちゃんを、白い噴煙が包んだ。

さやか「まどか!こっち!」

まどか「さやかちゃん……!」

うん!不慮の事故だなっ!

球磨川『げほっ!げほっ!ごほっ!』

球磨川は思い切り粉を吸い込み咳き込んでいた。

球磨川『げほっ……。酷いなあ、人に向けて消火器を噴出するなんて。
     これは週刊少年ジャンプだったら規制されかねないいじめの描写だよ』

ようやく咳が収まり、視界も晴れ、ここで球磨川は気付く。
周囲の光景が先程とまるで変化していることに。

球磨川『……おかしいなあ。知らない間に異世界に飛んじゃった?夜明けの炎刃王の二の舞だけはごめんだよ』

>>37
両津勘吉さんディスってんの?
…うまくからめないなっ!

さやか「な、なんなのよアイツら!転校生が2人して生徒を襲うとか!元から知り合いだったのかよ!?」

まどか「さ、さやかちゃん……なんだかおかしいよ……!」

さやか「あーおかしいよ!何!?あいつらどこからか送られた刺客か何か!?この学校を乗っ取りに来たとか!?」

まどか「そ、そうじゃないよ!見て!周り!」

さやか「え……?」

まどか「さやかちゃん……怖いよ……何なの、どうなってるの……!?

さやか「ゆ、夢だよね……?あたしたち、変な夢でも見てるんだよね……!?」

おかしな空間。
周りを取り囲む妙な生き物。
そして、その生き物が私とさやかちゃんに飛び掛ってきた、その時。

 ドゥン!ドゥン!ドゥン!

大きな銃声のような音と共に、生き物たちは姿を消した。
そして、暗闇の中から声が聞こえる。

マミ「間一髪、ってところね」

そこには、西欧風の衣装を身にまとった女の人が立っていた。

マミ「怖かったわね。でも、もう大丈夫よ」

さやか「あ、あなたは……?」

マミ「自己紹介の前に……。ちょっと一仕事、片付けちゃっても良いかしら!」




マミ「私は巴マミ。あなたたちと同じ、見滝原の三年生よ」

まどか「あ、あの……」

マミ「ごめんね。訊きたいことは山ほどあると思うんだけど、ちょっと先に質問させてもらっても良い?」

さやか「あ、は、はい。何でしょう……」

マミ「あなたたち、白いぬいぐるみみたいな生き物を見なかった?
   キュゥべえって言うんだけど……。私の大切な友達なの」

さやか「白いぬいぐるみ……まどか、知ってる?」

まどか「えっ、あの、えっと……」

そっか、さやかちゃんは見てないんだ……。

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

いつも通りの挨拶。
ちらりとまどかを見る。
目が合ったまどかは、恥ずかしそうに目をそらす。
美樹さやかがまどかに耳打ちする。
“いつも通り”のはずだった。
けれど……。

和子「それじゃあもう一人、自己紹介行ってみよう!」


「いやどうも、おれは詠矢…詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)ってもんだよろしくなー」

どうしよう、大切な友達って……死んじゃったなんて言ったら……。
でも、やっぱり言わなきゃ駄目だよね。
ほむらちゃんのことも、球磨川くんのことも全部……。

まどか「あ、あの、実はそのキュゥべえっていう子さっき……」

QB「やあ、マミ。お疲れ。今回も見事だったね」

マミ「キュゥべえ!」

えっ……!?

詠矢(しらけやがった…。論証が弱かったか?。ってーと、別の切り口が必要だな…)

和子「あ、あの、詠矢くん?独り言を言うのも良いけど、HRの時間が……」

詠矢「いやー、ゴメン。悪気はなかったんだけどねえ。『論証』に入るとつい熱くなっちまって」

球磨川「これはこれは、中二病を患った巴マミさん。こんにちは」

マミ「」グシャッ

ほむら「一言でマミさんの心を砕いた!」


そして休み時間。
まどか達は“いつも通り”、3人で集まって話をする。

仁美「なんだか面白い方みたいですわね」

さやか「詠矢空希くん、だっけ?なんかすごい強烈なのが来ちゃったねー。あれじゃ暁美さんって子が可哀想じゃない?
    せっかくの美人があれじゃ印象薄くなっちゃうよ。ていうかあの子ちょっと暗いっぽいし……」

まどか「さ、さやかちゃん駄目だよそんなこと言っちゃ。聞こえちゃってたら……」

聞こえてるわよ、美樹さやか。

>>54
目障りだから消えろゴミ虫

>>55
とりあえず、今の段階では『やだね』だ

さやか「わあ!本当にぬいぐるみが喋ってる!」

マミ「もうキュゥべえ、探したのよ?あんまり心配させないで」

QB「次からは気を付けるよ」

うそ……さっき確かに……。
でも間違いなくこの子だ。
どうして……?

まどか「ね、ねえ……。あなた、さっき……」

球磨川『確かに死んじゃったと思ったんだけどなあ』


けど今はそんなことはどうでも良い。
まどかを魔法少女にさせないためにやらなければならないことがある。
そのためにはまず、この喧騒を抜け出さないと。

ほむら「……ごめんなさい。緊張しすぎちゃったみたいで体調が……。保健室に行かせてもらえるかしら」

 「えっ、大丈夫?」
 「だったら私が連れて行ってあげるよ!」

ほむら「いいえ、係りの人にお願いするわ。……鹿目さん」

まどか「えっ?」

ほむら「あなた、保健係よね?連れて行ってくれる?保健室」

ほむら「……あなたは、鹿目まどかのままで良い。今まで通り、これからも」

困惑するまどかを尻目に、私はその場を立ち去る。
忠告はした。
これでまどかは、もしアイツと出会っても早計に契約してしまうことはないはず。
あとは、アイツがまどかと接触するのを防ぐ努力を……。

詠矢「いやいや、そこにいらっしゃるのは時間遡行の能力者、ほむほむこと暁美ほむらさんではないでしょうか?」」

ほむら「……あなたは」

背後から聞こえた、ぞくりとするその声。

さやか「く、球磨川!あんたいつの間に……!」

さやかちゃんが明らかな敵意を向ける。
でも球磨川くんはそんなことを意に介さず、まっすぐにキュゥべえに向かって……。

球磨川『良かった!生きてたんだね、キュゥべえちゃん!僕は君が死んじゃったんじゃないかって心配で心配で仕方なかったんだよ!』

え……?

マミ「あら。キュゥべえ、知り合いなの?」

球磨川『あ。もしかしてキュゥべえちゃんのお友達ですか?初めまして!球磨川禊って言います』

ほむら「詠矢くん……だったかしら」

詠矢「いやいや、おれも運がいい。学校に来ていきなり覚えてもらえるとはねえ…」

ほむら「何か用?」

詠矢「あーそうそう。保健室の場所知らない?昔から理屈っぽい性格でねえ。友達いねえんだこれがまた…」

ほむら「……用がないのなら行っても良いかしら」

詠矢「あ、もしかして信じちゃった?ごめんな!でも、用がないと話しかけちゃ駄目ってことはないだろ?」

球磨川「『突然ですがおっぱい大きいですね!パンツ見せてください!』」

そらきwwwww
こんなとこにも出張してんのかよwwww

>>67
マミ「なにいってるんですか!恥ずかしいですよ!(はぁ?なにいってんだティロフィナるぞおい)」

マミ「え、えぇ、初めまして。私は巴マミ。それより、聞かせてもらえる?
   “死んじゃったと思った”ってどういうこと?」

マミさんが訊ねると、球磨川くんは顔を伏せた。

球磨川『それが、さっきキュゥべえちゃんと遊んでて。うっかり僕がキュゥべえちゃんを落としちゃったんです。
     そしたら頭を強く打ったみたいで。動かなくなって、僕怖くて逃げ出しちゃったんです』

マミ「えっ!そうなの!?大丈夫?キュゥべえ!」

な、何を言ってるの……?
球磨川くん、そんな嘘ついてもキュゥべえがすぐ……。

QB「……僕は平気だよ、マミ。知っての通り、普通の生き物じゃないからね。
それに僕には大きな使命があるんだ。そう簡単に死ぬわけにはいかないよ」

……あれ?

>>68
・いや、よくないっしょ。刑法的に                                 ・とりあえず、今の段階では『やだね』だ
・俺が関係してようがいまいが、それが犯罪であることは事実               ・…まあ、そんな感じかな
・あ、いやいや、ゴメンゴメン。怒らせたのは謝るからさ…                 ・(お、効果アリ…かな?)  
・どおうわっ!!ヤバイヤバイ、ヤバイってマジで!                     ・…俺の容疑は?
・具体的な症状としては、大量の冷や汗、動悸、振戦、譫妄!!             ・ どっせい!!上段正拳!!
・俺はあの人には指一本触れてない。因果関係が成立するか?              ・いやー、権力側の人間っていつもそう言うんだよねえ
・いやー、ゴメン。悪気はなかったんだけどねえ。『論証』に入るとつい熱くなっちまって ・ただの理屈っぽい高校生ですよ
・(あ、気付かれたか…。ま、しょうがない)いやあ、単なる好奇心だけどね        ・……つまんねえ人生だったなー……
・そして、おれはこの力をこう名付けた。絶対反論(マ ジ レ ス)と!!!!      ・うわこれどうしょうもなくね?…


                 ≫\ミ三ミノノ/-、
               /〃〃〃〃〃ヾ≦ミ三ミ、
        ィ-、    彡∥∥〃〃从从从ヾヾミミミ
        / /  ィ-、∥∥∥从从从从从从从》》》
       / / / /从从∥ヘ从从从从从从从从ミ          いやどうも、おれは詠矢…詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)ってもんだよろしくなー

      /  / /  /从: : : :|≡r-ヾヽ、从从从从从ミト
   _/⌒ヽノ   / ヾ : : : |l | `・ゝ ノr──-、从≪   r‐、   ,‐、    
  /ー、\| /ヘ  /   ヾ从|!|  `─‐/ l, `・ゝ }从ト    | |  / /
  \ \八 〉'   /ノソト    ゝ・_.〉─-'从ト、_ノ  | |  / /
         |      八   ,-‐-ニュ、   /ヾミ彡     | |__/ /-‐、
       /  / ̄// |: \   `ー‐'  /(_      |  /〉〈ノハ
         / ∥ハ |   ' ,,__   _ノ/        |/ /  | |

ほむら「出会った初日から友達だなんて。そう言ってもらえて嬉しいわ、ありがとう。
    でもごめんなさい。私、急ぐ用事があるの」

詠矢「あ、おいおい、どこ行くんだ!(って…会えたはいいがどうするかね…あ、そうだ!)…ちょいと暁美さん」

ほむら「話かけないで。それじゃ」

今はこんな変わった人間の相手をしている場合じゃない。
早くアイツを、インキュベーターを見付けなければ。
詠矢空希に背を向け、歩き出そうとしたその時。

詠矢「きみ、鹿目さんと知り合いだろ?」

急にまどかの話題が出たことで、つい足を止めてしまう。

ほむら「……どうしてそう思うのかしら」

詠矢(お、効果アリ…かな?)

ほむら「……!」

マミ「そう、良かった……でも」

マミさんはホッと息をつき、そしてすぐに毅然とした表情で球磨川くんの方を向く。

マミ「球磨川くん、と言ったわね。あなた、自分が大変なことをしたって分かってる?」

球磨川『はい。ごめんなさい。とても反省してます。ごめんね、キュゥべえちゃん……』

見ると、球磨川くんは目に涙を浮かべていた。
その様子からは、とてもあんな、酷いことをしたとは思えない。

マミ「今回はたまたま運が良かったけれど、本当なら1つの命が消えていたかも知れないの。次は絶対にこんなことのないようにね」

球磨川『……許してくれるんですか?』

第二期放送始まってたんで終わります
おつかれさまでした

詠矢空希「論証開始…これよりお前の世界を否定する」

QB「僕は別に怒ってないからね」

マミ「良かったわね、球磨川くん。あなたも反省しているようだし、キュゥべえに免じて許してあげる」

球磨川『ああマミさん。あなたはなんて優しい人なんだ。僕はずっと待っていたんだ。
     こんな風に僕を叱って、そして許してくれる人をずっと待っていたんだ!』

マミ「ふふっ、大げさね」

球磨川『それでマミさん……良かったら。僕と、友達になってもらえませんか?』

マミ「友達……?え、えぇ、もちろん!嬉しいわ、そんなこと言ってもらえるなんて。私で良ければよろしくね」

球磨川『はい!これからよろしくお願いしますね。マミさん』

嬉しそうな顔でマミさんの手を握る球磨川くん。
その様子を見ながら、さやかちゃんが耳打ちしてきた。

さやか「まどか……なんかこいつ、そんなに悪い奴じゃないとか?
    さっきはあんたが転校生二人に襲われてるように見えたんだけど……もしかして気のせいだった?」

まどか「…………わかんない」

さやか「へ?わかんないって……」

誰視点で話が進んでるのかよく分からない、ほむらなのかまどかなのか・・・

確かに、さっき球磨川くんはキュゥべえに酷いことをしたはず。
でも今は……そんな風には見えないし、キュゥべえも何も言わない。
頭を悩ませていると、さやかちゃんが囁いた。

さやか「……あたしはちょっと……信じられないかな」

まどか「え?」

さやか「あいつの、球磨川の言葉……なんとなく、なんとなくなんだけど。
    なんていうか……中身が無いような感じがするんだよ。上手く言えないんだけどさ」

まどか「さやかちゃん……」

私も、さやかちゃんとはちょっと違うけど、似た感覚かも知れない。
こんなこと失礼だから口には出せないけど……。
球磨川くんってなんとなく……“気持ち悪い”かな、って……。

QB「ところで、ちょっと良いかな。鹿目まどか、美樹さやか」

さやか「はぇっ?」

突然キュゥべえに話しかけられ、2人そろって少しびっくりしてしまった。

さやか「ていうか、なんであたしたちの名前……?」

QB「実は僕、君たちにお願いがあって来たんだ」

マミ「キュゥべえ、もしかしてこの子たち……?」

QB「そうだよ、マミ」

まどか「え、えと……お願いって……?」

QB「二人には僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ!」


>>85
今はまどか
視点が変わる時は口調とかで誰に変わったか分かるようにはしてるつもり
分からんかったらごめん




まどか「お、おじゃまします」

さやか「おじゃましまーす……わぁー、素敵な部屋ですね!」

球磨川『まさか女の子の部屋に呼ばれる日がくるなんて夢みたいだ。嬉しいなあ』

マミ「ふふ、一人暮らしだから遠慮せずにくつろいでてね。今お茶を準備するわ」

魔法少女。
それについて詳しく聞くために今、私たちはマミさんの家へおじゃましている。

さやか「っていうかさ、球磨川。なんであんたまで来てるわけ?」

球磨川『おいおい、まさか僕だけ除け者にする気だったのかよ?慣れてるけどさ』

球磨川くんと一緒に居ることはやっぱり不安だし、正直に言うと、あんまり一緒に居たくない。
マミさんが居るから大丈夫だとは思うけど……。

QB「球磨川禊は確かに“魔法少女”に直接関係するわけじゃない。
   でもここまで巻き込まれた以上、彼も決して無関係じゃないからね」

キュゥべえは、球磨川くんにあんなことされたのに平気なのかな?
どうして何も言わないんだろう。
もしかして、信じられないけど。
全部私の見間違いだった……とか……。

少し待った後、マミさんがお茶を持って来てくれた。

マミ「お待たせ。それじゃ、早速本題に入りましょう」

さやか「魔法少女……について、ですよね」

マミ「えぇ。キュゥべえに選ばれた以上、他人事じゃないものね。……これ見てくれる?」

そう言うと、マミさんは綺麗な宝石のようなものを取り出した。

まどか「綺麗……」

私とさやかちゃん、2人して見とれてしまう。

マミ「これはソウルジェム。キュゥべえとの契約によって生み出される魔法少女の証。魔力の源でもあるの」

さやか「契約って?」

QB「僕は、君たちの願いをなんでも一つ叶えてあげられる」

さやか「なんでも!?金銀財宝とか、不老不死とかも!?」

球磨川『“女子は全員裸エプロンで僕に傅け”とかも!?』

本音が出てるよ球磨川ちゃん

QB「どんなものでも構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。
   でもその代わりに、魔法少女となって魔女と戦う使命を課されるんだ」

まどか「魔女……?」

QB「祈りから生まれたのが魔法少女なら、呪いから生まれたのが魔女。
   魔法少女が希望を振りまく存在なら、魔女は絶望を撒き散らす存在と言える」

球磨川『へー。じゃあ“人生はプラスマイナス0だ”っていうのも、あながち間違いじゃないかも知れないね。
     魔法少女に限っては。ていうかむしろマイナスじゃないの?』

まどか「え?」

球磨川くんの言った意味が分からない。
それはさやかちゃんとマミさんも同じなようで、ポカンと彼を見つめていた。

球磨川『え?だって、魔法少女が成長したら魔女になるんでしょ?』

ID完全一致とか初めてだ・・・びっくりした
営業妨害だよ球磨川ちゃん

マミ「な、何言ってるの、球磨川くん?」

球磨川『違うの?だってそうじゃない?ネーミング的にさ』

球磨川くんと対照的に、マミさんは明らかに動揺している。

マミ「魔法少女が魔女にだなんて……そんなはず、ないじゃない。ね、キュゥべえ?」

QB「マミの言う通りだよ。魔法少女が成長したら魔女になるなんてことはない」

球磨川『ふぅーん。じゃあ魔法少女が魔女になるなんてことは絶対にないんだね』

QB「さっきも言った通りさ。魔法少女はどれだけ成長しようが、魔女になんてならないよ。それよりマミ、話を進めよう」

マミ「え、えぇ。そうね。それで……」

キュゥべえは話を本題に戻そうとする。
しかし。

球磨川『ちょっと待ちなよ、キュゥべえちゃん。まだ僕の質問に答えてないぜ』

球磨川くんはやれやれと言うように首を振る。

球磨川『僕は、“魔法少女は絶対に魔女にならない”のかって訊いたんだけどなあ。
     成長するとかしないとか、そういう話じゃなくてさ』

QB「…………」

球磨川『……ま、そんなことどうでも良いか!ごめんね、話の腰を折っちゃって。どうぞ続けて』

球磨川くんはあっけらかんとそう言ったけど、こんな話題をなかったことになんて出来るはずもない。
キュゥべえの沈黙。
その表情は読み取れないけれど、ここでの沈黙は……ある1つの答えを出したも同然だったから。

マミ「……キュゥべえ。どうなの?答えてちょうだい。魔法少女が魔女になるなんて、そんな……」

QB「……ならないとも言い切れないね」

マミ「えっ……」

QB「マミ、魔法を使うとソウルジェムが濁るのは知ってるね。
   その濁りを浄化しきれなくなった時、ソウルジェムはグリーフシードに変化して魔女を生むんだ。
   あ、グリーフシードっていうのは魔女の卵のことだよ。まどか、さやか」

さやか「え。ちょ、ちょっと待って。ソウルジェムって、魔力の源みたいなもんなんでしょ?」

まどか「そ、そうだよ。ソウルジェムが魔女の卵になるって、魔法少女が魔女になるのとは違うんじゃ……」

QB「ソウルジェムは、魔法少女自身なんだよ」

まどか「……それってどういう……」

QB「僕は、魔法少女の魂を抜き出して、ソウルジェムに変換するんだ。
   人間の体はとても脆いだろう?体がダメージを負うと、そのまま魂まで死んでしまう。
   でも魂を体の外に抜き出すことで、入れ物である体がいくらダメージを負っても、死なないようになるんだ。
   魔法で回復すれば良いからね。ソウルジェムが無事である限り、魔法少女は無敵だよ」

キュゥべえがそこまで話したその時。

マミ「ふざけないで!!」

それまで黙っていたマミさんの怒鳴り声。
その様子は、とても先程までのおしとやかなマミさんと同一人物とは思えない。
その鬼気迫った様子に、私まで思わずたじろいでしまう。

マミ「それじゃあ私、ゾンビにされたようなものじゃない!」

QB「むしろ便利だろう?ぐっと魔女と戦いやすくなってるはずだよ」

マミ「それに、魔法少女が魔女になるだなんて……聞いてないわ!」

QB「訊かれなかったからね」

マミ「騙してたのね……!」

QB「騙す、という行為自体僕には理解できないよ。僕はただ説明を省略しただけさ」

マミ「ッッ!!!」

マミさんはソウルジェムを手に取って……変身した!?
そして銃口をキュゥべえに向け……。

QB「何をする気だい、マミ」

マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら……死ぬしかないじゃない!あなたも!私も!」

さやか「マ、マミさん!やめ……!」

その代わりに……。

球磨川『う……あ……!』

球磨川くんが……キュゥべえをかばった……!?
彼は胸から血を散らしながら、その場に倒れた。

マミ「え、あっ……?」

その瞬間、マミさんはハッと我に返る。

マミ「……く、球磨川くん……?球磨川くんっ!!」

慌てて駆け寄るマミさん。
でもきっと、球磨川くんは……。
私でも分かるくらい、間違いなく致命傷になる怪我を……。

球磨川『あーびっくりした。銃声って近くで聞くと結構大きいんだね』

さやか「く、球磨川!?あんた平気なの……!?」

球磨川『あれ、心配してくれるんだ。さやかちゃんやっさしー』

うそ、見間違い……?
でも確かに……。

QB「妙だね。確かに君の胸は銃弾で貫かれたと思ったんだけど。みんなも見たはずだよ」

さやか「う、うん……。血も出てたように見えた……」

球磨川『でも出てないでしょ。きみたちの見間違いじゃないの?』

球磨川くんの言う通り、服には血も付いていなければどこも破れてさえ居なかった。
見間違い……そう考えるのが一番自然だ。

マミ「ぐすっ……。よ、良かったぁ……」

球磨川『あれ、どうしたの?マミさん』

マミ「だ、だって私……。魔法少女でもなんでもない、普通の男の子を……殺しちゃうところだった……。
   友達を、殺しちゃうところだった……。ごめんなさい……本当にごめんなさい……!」

球磨川『今回はたまたま運が良かったけれど、本当なら1つの命が消えていたかも知れない。
     次は絶対にこんなことのないようにね』

マミ「球磨川くん……」

球磨川『許してあげるよ、マミさん』

マミ「ほ、本当に……」

球磨川『僕は別に怒ってないからね』

マミ「ありがとう……球磨川くん、ありがとう……!」

>>141
くまさんには不死身の肉体と巧みな話術、螺子収納術があるからスキルなくても使えるけどね
本編じゃバリバリ活躍してるし

QB「ところで、ちょっと訊いても良いかな」

球磨川『おいおい、今せっかく良い雰囲気なんだぜ?空気読めよ。……まあ良いや、何?』

QB「君は、どうして僕をかばったりしたんだい?」

球磨川『勘違いするんじゃないぜ。別にきみのためじゃない。
     きみにはもっと訊きたいことがあるんだ。今死んでもらっちゃ困るんだ』

球磨川くんはポーズを決めてそう言った。

QB「だからって自分の命が危険にさらされちゃ意味がないじゃないか。わけがわからないよ」

球磨川『そんなことより』

そう言って球磨川くんは、マミさんに向き直る。

球磨川『マミさん。魔法少女を殺すなんてことはやめなよ』

マミ「え……」

球磨川『魔法少女が魔女になるから殺すなんて“マイナス思考”。それがマミさんの長所(けってん)だ。
     ……要はソウルジェムを浄化し続ければ良いんだよね?キュゥべえちゃん』

QB「理論上はそうだね。ソウルジェムを永遠に綺麗なまま保てれば、魔女化することはないだろう」

球磨川『ほらね』

マミ「そう……そうよね……。ちゃんとグリーフシードを集めて、濁りを浄化し続ければ良いのよね……」

球磨川『そうさ。それにいざとなったら、僕がマミさんを助けてあげるよ』

マミ「球磨川くん……」

球磨川『だからさ、魔法なんていう過負荷(ちから)を。なくしちゃうなんてやめようぜ』

球磨川が出てくるとQBがかすむなw

>>146
宝探しの主人公は完全にクマ&阿久根だったもんな




さやか「あーあ……それにしてもショックだったわよねー」

翌日、私はさやかちゃんと2人で、屋上で魔法少女について話していた。

まどか「そうだね……。まさか魔法少女の正体があんな……」

さやか「……まどかはさ、魂と体が別になっちゃっても、いつか魔女になるかも知れないって思っても、
    それでも魔法少女になりたいと思う?そうまでして叶えたい願い事ってある?」

まどか「私は……ん……」

さやか「……だよねえ……。はぁ~……やっぱ人間やめるってのは勇気いるよ~」

まどか「さやかちゃんは……あるの?」

さやか「え?……」

目だか見たこと無いけど
球磨川くんかっこいいキガスル

球磨川は“否定”とか“負”の感情を絵に描いたような奴だけど

QBは人類なんか稲みたいなもんでそこの重要な部分だけを搾取するみたいなもんだから
そもそも善悪とか無いんだよね 人間とは分かりあえないだけで

>>167
気持ち悪い
弱い
卑怯
大嘘付き
仲間思い
惚れっぽい
スタイリッシュ



これが渾然一体でブレない人

ほんの少しの沈黙。

さやか「……あはは!ないない!
    あたしみたいな何一つ不自由してない幸せバカにそんな願いごとあるわけないって!」

その時。

ほむら「ちょっと良いかしら」

まどか「……ほむら、ちゃん……」

さやか「……何しに来たのよ?」

ほむら「別に。確認しに来ただけよ」

ほむら「別に。確認しに来ただけよ」

さやか「……あんた、目的は何なの?昨日まどかに何しようとしてたわけ?」

ほむら「あなたには関係のないことよ。今となっては何をするつもりもない。もう手遅れだし」

相変わらず睨み続けてるさやかちゃんから、ほむらちゃんはふっと目線を外した。

ほむら「……昨日の話、覚えてる?」

まどか「うん……」

ほむら「そう。なら良いの。私の忠告が無駄にならないよう祈ってるわ」

そう言い残してすぐ、ほむらちゃんは立ち去ろうとする。

マジレスすると言葉で形容できないよな

王土さんと真黒くんはブレてなさげ

……インキュベーターとまどかが接触してしまった以上、もう手遅れ。
私にできることは限られている。
こうしてまどかに再三に渡って忠告を繰り返すことくらいしか……。
確認を終え、背を向けて立ち去ろうとしたその時、

まどか「あ……ま、待って、ほむらちゃん!」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃんは、その……どんな願い事をして魔法少女になったの?」

ほむら「……あなたが知る必要はないわ」

出来る限り感情を抑えてそう言い放ち再び歩き出そうとした時、耳を疑うような言葉が聞こえた。

まどか「た、魂がなくなっちゃっても、魔女になっちゃうかも知れなくても、叶えたい願い事だったの!?」

>>183
雲仙弟もな

安心院さんの、敵に回って好かれろという脅迫は正しい

ほむら「っ……どうしてそれを……!?」

まどか「昨日……キュゥべえに聞いたの」

ほむら「まさか……!」

インキュベーターが、魔法少女の秘密を明かした……!?
そんな……あいつは誰かに訊かれでもしない限りは絶対に自分に不都合なことは話さない。
でも、だれもそんな核心を突くような疑問は持たなかったのが現状だ。
それなのに……。

さやか「正直さ、あたしらもキュゥべえの奴に騙されかけてた……。でも、球磨川の奴が」

ほむら「え……?」

さやか「アイツもあたしたちと一緒にキュゥべえの話聞いてたんだけど、なんか気付いたみたいで。
    それでキュゥべえを問い詰めたら、そりゃもう信じられない話がポロポロポロポロ」

球磨川禊……何を考えているか分からない、大きなイレギュラー。
私の障壁になるとばかり思っていたけど、まさかこんな風に事態を好転させるなんて……。

ほむら「そう。ならもう分かってくれたわね。魔法少女になんて絶対になっては駄目。鹿目まどか。それに美樹さやかも」

さやか「そりゃどうもご親切に。あんたが何考えてるかは分かんないけどさ。その忠告だけは受け取っておくわ」

ほむら「賢明ね」

そう言い残し今度こそ、私はその場から立ち去った。

却本作りは相手を球磨川と同じ思考同じ弱さにするもの。
原作じゃ球磨川は自分で思うほど弱くないって話で破られた。

>>205
少年漫画ばっか読んでる奴くらい弱いけど
少年漫画に入れ込んでる奴くらい強いんだよな

まどか「ほむらちゃん……」

結局、ほむらちゃんは魔法少女になった理由を教えてくれなかった。
そんなに秘密にしなきゃいけないことなのかな……。

さやか「球磨川と言いあいつと言い……分かんないなーホント……」

まどか「少なくともほむらちゃんは……悪い子じゃないと思うの」

さやか「ふーん……球磨川は?」

まどか「……わかんない」

さやか「やっぱそうだよねー……」

二人とも黙る。
その時ぽつんと、さやかちゃんが呟いた。

さやか「……マミさん、大丈夫かな」

皆球磨川さんのどこに惹かれたの?

マミさんが心配だったのは、私だけじゃない。
さやかちゃんも同じだったみたい。
それはそうだ。
魔法少女のあんな秘密を知って、今まで通りで居られるかって言われたら……私ならたぶん無理。

さやか「ねえまどか、今日の帰り、マミさんちに寄ってかない?」

まどか「え?で、でも、どうするの?」

さやか「ほら、きっとマミさん、昨日のことでやっぱり凹んでると思うんだ。
    だからさ、少しでも元気付けられればなって」

まどか「……うん、そうだね」

私たちにできることなんて、きっとほとんどないけど……行ってみよう。




マミ「……あら、美樹さん、鹿目さん。二人ともどうしたの?」

まどか「えへへ……こ、こんにちは。すみません、突然……」

さやか「いやー、特にどうしたと言うわけでもないんですが……」

マミ「……?まぁ良いわ。とにかくあがって?」

さやか「あ、はい。おじゃまします」

まどか「おじゃましまーす……」

>>214
初登場から素晴らしいキャラだったけど

書記戦直前の『関係ないなんて冷たいこと言うなよ、友達だろ』
と書記戦後の『約束を守っても破ってもいい自由』
で完全に惚れた

マミさんは昨日と同じように、お茶とケーキを用意してくれた。

まどか「わー、今日のケーキも可愛いー!」

さやか「んー!やっぱめちゃうまっすよー!」

まどか「さ、さやかちゃん、もう食べてる……」

さやか「え?何?……あ、あぁあぁー、か、可愛いね!うん!確かに可愛い!」

そんな私たちの様子を見て、マミさんは笑った。

マミ「ふふっ、美味しそうに食べてもらえてうれしいわ」

良かった、元気そうだ。
さやかちゃんと目配せして笑い合う。
すると。

マミ「……2人とも、ありがとう」

いつもの
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYo5X4BAw.jpg

まどか「え?」

マミ「昨日のこと……そのことで来てくれたんでしょう?私が落ち込んでるんじゃないかって」

さやか「あ、えっと。それは……よ、余計なお世話でした……?」

そう恐る恐るさやかちゃんが言うと、マミさんは優しく微笑んで、

マミ「ううん、とんでもない。とっても嬉しいわ」

まどか「あの、私たち……何かマミさんの力になれればなって……」

マミ「ありがとう。昨日は恥ずかしいところを見せちゃったわね……でも、もう大丈夫よ。
   だって、球磨川くんがすごく励ましてくれたんだもの」

球磨川は良い事言い出してからが本番

まどか「え?球磨川くんが……?」

さやか「そ、そう、ですか……」

マミ「えぇ。彼、本当はもう私に魔女退治なんて危険なことはして欲しくないみたい。だけど、そうは行かないものね。
   この世界には、まだまだ倒すべき魔女がたくさん居るわ。私は魔法少女としての使命を果たさなきゃ」

……ともかく、球磨川くんのおかげでマミさんは立ち直ったんだ。
そこは喜ばなきゃ。
でも……ずっと気になってたことがある。

まどか「その、マミさんは……魔女と戦うのは怖くないんですか……?」

その質問に、マミさんは表情に僅かに影を落とす。

マミ「そうね……怖くないと言えば、嘘になるわ」

第一回人気投票の様子
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYpZX4BAw.jpg

でも球磨川くんはこっちの世界だとさほど『負完全』ではないんだよな

土下座して降伏する中学生を見逃したり
『また勝てなかった』といいながら実質では勝ち以上の結果をもぎ取り
女の子には惚れられ
過負荷の『仲間』がおり
禊ちゃんなんて読んでくれる可愛い眼鏡っ子がそばにいて
とりあえず話すだけは話してくれる


こっちの世界じゃ上記すら得ることができない
よりマイナスな『負け犬』群がワンサカと居るというのに
大体てめーに硫酸ぶっかける中学生のガキが土下座したところで
蹴り飛ばさないで許すとか舐めてんのか?球磨川君よォ!

>>243
阿久根書記ェ……

>>232
そういえば気がつかなかったが
球磨川の望みどおり『僕が勝ったら女の子は全員裸エプロン』が
現実化しているのか・・・

まどか「マミさん……」

マミ「一緒に戦ってくれる仲間が欲しくなることも、何度もある。……ううん、一緒に戦ってくれなくても。
   せめて、傍で見ていてくれる仲間が居ればな、って……そう思っちゃうんだ」

さやか「その……球磨川は、魔女退治に付いて行ったりはしないんですか?」

マミ「彼はだって、普通の男の子だから。危険だし、私のわがままでそんなこと、させられないもの」

さやか「だ、だったら!」

突然、さやかちゃんが身を乗り出して叫ぶ。

さやか「あたし、マミさんの魔女退治に付いて行っても良いですか!?」

>>247
黒神ファントム(ちゃんとした版)
でボコられた末の幸せな夢だけどな

しかも、そのせいで安心院さんの封印がさらに緩んでる

まどか「さ、さやかちゃん……!?」

マミ「……美樹さん、あなた……」

さやか「もし、迷惑じゃなかったらですけど……」

マミさんの驚いた顔は、すぐに真面目なものへと変わる。

マミ「……駄目よ。魔女退治はとても危険なの。私への同情でそんなことを言ってるのなら、考え直しなさい。
   さっきも言ったでしょ?私のわがままでそんなことさせられないって」

さやか「これはあたしのわがままです!」

マミ「……!」

さやか「それに同情なんかじゃ……そりゃマミさんの力になりたいって気持ちもあるけど……。
    ほら、もし!あたしにも何か願い事が見付かったら!
    仮に、もしそうなった時のために、ちゃんと考えられるように!
    魔法少女になるリスクを全部知っておきたいんです」

恐らく世界で初めて裸エプロン+鉄球というコーディネートをした雲仙姉をここでは評価したい

>>255
19553478615833574789216

マミ「あなた、魔法少女の秘密を知っても、まだ……」

その時、窓際から声が割り込んできた。

QB「へえ。まだ魔法少女になろうという気持ちがあったんだね、さやか」

まどか「キュゥべえ!?」

さやか「あんた、よく平気であたしたちの前に顔を出せるね」

QB「僕は何もやましいことはしていないつもりなんだけどね」

マミ「キュゥべえあなた……まぁ良いわ。何しに来たの?」

QB「魔法少女の正体を知ったことで2人の契約の可能性は消えたと思ったから距離を置いていたけど。
  もうその必要はなくなったみたいだからね。さやか、契約したくなったらいつでも言ってくれ。もちろんまどか、君もだよ」

さやか「生憎だけど、今のところそのつもりはないから」

QB「そうかい、それは残念だ。まぁ気長に待つとするよ」

そう言い残して、キュゥべえは窓から出て行った。

さやか「……お願いです、マミさん。あたしを、魔女退治に付き添わせてください」

マミさんは、はぁ、とため息をつき、

マミ「……わかったわ。危険は覚悟の上ね?」

さやか「マミさん……!あ、ありがとうございます!」

まどか「え、えっと、マミさん!」

マミ「なぁに、鹿目さん」

まどか「も、もし良かったら私も……!」

さやか「まどか……」

マミ「……よく考えての決断なのよね?良いわ。1人でも2人でも守る労力は同じだしね」

まどか「……!ありがとうございます!」

マミ「……お礼を言うのは、こっちの方」

まどか「え?」

そう呟いたマミさんはうっすらと目に涙を浮かべていた。

さやか「マミさん……?」

マミ「……駄目だなあ、私。さっきまで先輩面して、お説教までしてたのに……。
   傍で見ていてくれる人がいるって思った途端、すごく嬉しくなっちゃった。やっぱり私、駄目な子だ」

まどか「だ、駄目なんかじゃないですよ」

さやか「そうですよ!マミさんだって、普通の女の子なんだから……怖くても不安でも当たり前だよ!」

マミ「……ふふっ。ありがとう、二人とも」




それから数日間、私とさやかちゃんはマミさんの魔女退治を見学した。
戦ってるマミさんはすごく綺麗でかっこよくて。
そんなマミさんの姿を見るうちに、私の中に少しずつ、少しずつ。
魔法少女への憧れが芽生え始めていた……。

そんなある日。
私はさやかちゃんに付き添って、上條くんの入院してる病院に行った。

さやか「……お待たせ」

まどか「あれ?上條くんは……会えなかったの?」

さやか「なんか今日は都合悪いんだってさー」

さやか「わざわざ来てやったってのに、失礼しちゃうわよねー」

2人で病院の外に出て……その時気付く。

まどか「……さやかちゃん」

さやか「ん?なに?」

病院の壁。
そこにあった、異様な光を放つもの。

さやか「……これって、まさか……!」

そう、魔女退治の時に見たことある……間違いない。
グリーフシード……!

QB「まずいよ、孵化しかかってる。早く逃げたほうが良い」

まどか「キュゥべえ!いつの間に……」

QB「素質のある人間を簡単に失うわけにはいかないんだ。結界が出来上がる前にこの場を離れよう。
   もっとも、君たちが今すぐに契約してくれると言うのなら話は別だけどね」

まどか「さ、さやかちゃん、早く逃げよう!」

さやか「……駄目だよ……マミさんが言ってたじゃん!病院に魔女が出たらやばいことになるって!
    それにここには……まどか、マミさん呼んできて!あたしはここで見張ってる!」

まどか「えっ……だ、駄目だよ、危ないよ!さやかちゃんも一緒に……」

さやか「今は言い争ってる時間はないの!早く!」

QB「……僕も残ろう」

さやか「キュゥべえ!?」

QB「僕が残れば、最悪の事態を防げるだろう?」

さやか「っ……そうならないことを祈るよ。まどか、お願い、早く!行って来て!」

まどか「う……うん!気を付けてね、さやかちゃん!」




マミ「……ここね」

病院に着くとマミさんはグリーフシードのあった場所に手をかざし、結界の入り口を開く。

――キュゥべえ、様子はどう?

――まだもう少し時間がありそうだ。大きな魔力を使って刺激する方がまずいから、慎重に来た方が良いよ。

――そう、信じるわよ。

――僕は嘘はつかないよ。

――美樹さん、大丈夫?

――はい。コイツと2人っきりってことを除けば。

――やれやれ。嫌われたものだね。

「……それじゃ。行きましょう、鹿目さん」

「はい……!」

あのシーンまであと少しか…

マミさんと2人で魔女の結界を歩く。
その時突然、後ろから声がかかる。

ほむら「巴マミ、今回は退いて。この魔女は私が狩る」

マミ「……あなた、誰?」

まどか「ほむらちゃん……!」

マミ「ほむら……あぁ、あなたが」

ほむら「……私のことを知っているのね」

マミ「えぇ、球磨川くんから聞いたわ」

ほむら「球磨川禊から……?」

マミ「あなた、彼にあまり信用されていないようね。だから悪いけど……」

そう言うが早いか、マミさんは……ほむらちゃんを魔法で拘束した……!?

ほむら「くっ……何を……!」

マミ「ごめんなさい。あなたと球磨川くん、どちらを信用するか……考えるまでもないわね」

ほむら「馬鹿、こんなことしてる場合じゃ……!今回の魔女は、わけが違う!」

マミ「怪我をさせるつもりはもちろんないわ。あまり暴れると保証しかねるけど。行きましょう、鹿目さん」

ほむら「くっ……!」

迂闊だった……。
巴マミとは今回は初めての接触で、そこまでの警戒心は抱かれていないだろうと踏んだのが間違いだった。
巴マミもまどかも、もう行ってしまった。
私の魔力ではこの拘束は解けないだろう……。

その時。
下から聞こえた、聞き覚えのある声。

球磨川『あれ。ほむらちゃんあれだけ大物ぶっといてあっさり捕まっちゃうんだ、はずかしー』

目を向けると、球磨川禊が真下からこちらを見上げている。

ほむら「……!?あなた、また結界内に……!」

球磨川『うーん、なんか僕、こういうトラブルに巻き込まれ易いみたいだね。
     どっちかと言うとTo Loveるの方が好きなんだけどなあ。ちなみに僕はハーレムエンド派だよ』

デブさんマミ迂闊

>>284
おい

ほむら「巴マミに何を吹き込んだの……」

球磨川『ん?いや別に?
     “暁美ほむらちゃんっていう何考えてるのかよく分かんない魔法少女がまどかちゃんを困らせてた”
     っていう様な内容を、実在の人物・事件・団体とは関係のないフィクションをちょっとだけ交えつつ
     大袈裟に大仰に誇大に誇張して脚色しながら曲解され得るように話しただけだよ。
     例えば。もし。仮に。万が一。マミさんが何か壮大な勘違いを起こしたとしても!
     僕は悪くないよね。だって、僕は悪くないんだから』

ほむら「あなた……一体何なの……!」

球磨川『何って。僕はただの過負荷(にんげん)だよ』

そう言って、球磨川禊は立ち去ろうとする。

ほむら「……ふざけないで……!」

球磨川『怒った顔も可愛いね、ほむらちゃん。だけどきみのパンツはもっと可愛いぜ』


           〃イVミハV/ハ マミ==-//////////ハ      ,. ―― 、

             リ,イlヽVトィムマハY、ー'ミ////////////ム.    /
              /,イ/ハミ〈ヽ' .l`マlイヽ`リ|//////////ムミ、`ー  |   ┐
             l/ .ll//ハ、リ-、 ' Ⅵ  lリハマムチ'///,Zム―-、 |  そ
            |! .V,トミム' f,、ヽ l!  〈:   ヽヽ/ __,ィェzzzzi! |.   う
            ヽl| ヽ.ハ,ヾj '  !   ';...    / ,ィ仁三三三ミV   だ
                ヽ、  }        :..:.、 : / //      `´   !
                ` ヽ、 /ヽ、 ;::.:.:.V //              └
                      'ー.、ヽノ .:::;ィ././,i
                      ヽ_/ .〈,.イ/!              ┐
                          //ニミ|  思 エ 本 僕   .rイハ
                           〈l'/トミ|    っ ロ 屋      .|//ハ
                        V/〉, .   て 本 さ  帰   |///ハ
                       ____  ヽ/|   .た を ん  り    .|////ハ
               , <〃   ハ   `| .   ん 買 .に  に   |//////l、
             / =〃=  ,.イ  ヽ   |   .で お 寄       .|//////|ハ、
            /   〃 , .< ヽ  /  l|.   す う  .っ      |//////|'ハ
               ト、__, <      V/  .l|.   け と  て     ..|//////|/l/l
            V//∧      ,ィ'___ .l|.   ど            l//////,l/|/!
             V,//∧  .ィ´/、_//、_,`l|  └           ハV//////,l/!
              ̄ ̄` '´〉/,仆、_   ヽ             ハ.V///////!

                  じト,/イ 〕テト、 \           ,イ//////////,|
                        トイ / /ハ,`ーi'/ヽ、      _,.イ////////////|
                        しイ/// ,ハ`ーl////777777チ/|'/////////////,|
                     `.イ//,イ.  V///////////|'/////////////,|




マミ「お待たせ!」

さやか「マミさん!良かった、間に合ったぁ……」

マミ「魔女の様子は?」

QB「気を付けて、出てくるよ」

キュゥべえの言った通り、グリーフシードから魔女が出てきた。
と同時に、マミさんが飛び出す。

マミ「お出ましのところ悪いけど……。一気に決めさせて、もらうわよ!」

>>289
制服でエロ本買おうとする球磨川さんマジ球磨川

銃での殴打に、連続射撃。
魔女に抵抗させる暇も与えず、一気に攻める。
そしていつもの必勝パターン。
リボンで拘束して……。

さやか「やったぁ!マミさん圧勝!」

マミ「ふふっ……。ティロ・フィナーレ!!」

マミさんの必殺技は体を貫き、決まった!
……はずだった。
次の瞬間、突然、魔女のその口から、巨大な怪物が飛び出し……。
マミさんの目の前に……。

マミ「え」

マミッた!?

詠矢「どっせい!上段正拳!」
詠矢「いやー危なかったねホント」

まどか「マ、マミさん!!」

目の前に迫った魔女の一撃を、マミさんは間一髪で避けた……けれど。

マミ「ぐっ……!」

魔女は、ゴリゴリと音を立てて……マミさんの「一部」を咀嚼する。
その様子を、キュゥべえは冷静に分析している。

QB「まずいな。利き腕を失った。これでマミの戦闘力は半分以下だ。
   痛覚はうまく抑えられているようだけど、魔力はその大半を出血を抑えるのに使わなければならない」

さやか「で、でも!怪我は魔法で治せるんでしょ!?」

QB「あれだけの大怪我を治すのには、それなりに時間も集中力もいるんだ。回復魔法に特化していない限りはね。
   あの魔女がそんな時間を与えてくれるとはとても思えないよ」

キュゥべえの言う通り、魔女はすぐにマミさんに襲い掛かった。
繰り返される攻撃を辛うじてすべてかわしてはいるけど、それもいつまでもつか分からない。
マミさんも何度か反撃しているけど、通じているようには見えなかった。

まどか「な、なんとかならないの?キュゥべえ!」

QB「僕にはどうにもできないね。ただ、君たちは違う」

さやか「っ……!」

QB「助言はルール違反だから僕からは何も言えないけれど、君たちの願い事はほぼ決まっているようなものじゃないのかい?」

さやか「っ……わかった!」

まどか「今すぐ契約……」

……けど、気付く。
あれほどうるさかった騒音が……止んでいる。
魔女の攻撃の音も、マミさんの銃声も。
その静寂に目を向けると……。

 バリバリポキクチャゴキグチャ

さやか「マ……ミ、さん……?」

まどか「いや……いやぁあああああ!!!!」

QB「……まどか、さやか。今度はマミのためじゃない。自分たちの命のために契約を!さあ早く!」

マミさん、結局…

真っ赤な口の魔女がこっちに意識を向けた、その時。

ほむら「その必要はないわ」

まどか「ほむらちゃん……!」

ほむら「こいつを仕留めるのは……私」

そう言い放ち、ほむらちゃんは魔女の方へと飛ぶ。
その直後だった。

球磨川『あちゃー、マミさんとうとう死んじゃったかー』

うそ……球磨川くん……!?

QB「球磨川禊。どうして君がこんなところに居るんだい?」

球磨川『うわあ、これは酷い。これはちょっと週刊少年ジャンプじゃ見せられないなあ』

さやか「お前……!」

球磨川くんに、さやかちゃんが掴みかかる。

さやか「何平然としてんのよ!マミさん死んじゃったんだよ!?」

まどか「酷いよ、球磨川くん!マミさんと仲良しだったんじゃないの!?」

私も同じように食ってかかった。
けれど球磨川くんは何でもないかのように、

球磨川『もちろん。僕とマミさんは仲良しだったし、今でもずっと友達だよ。
     マミさんは死んでも、僕たちの心の中に生きてるんだ!』

球磨川『もちろん。僕とマミさんは仲良しだったし、今でもずっと友達だよ。
     マミさんは死んでも、僕たちの心の中に生きてるんだ!』

このセリフを言う球磨川が目に浮かぶ。

球磨川『ていうか大げさじゃない?人が死んだくらいでさー。僕は死ぬなんて死んでも嫌だけどね』

さやか「ふ……ざけんな!!」

球磨川『怒っちゃだめだよ、血圧上がっちゃうから。乳酸菌とってるー?』

さやか「この……!」

さやかちゃんが球磨川くん向かって拳を振り上げる。
でも、その拳は振り下ろされることはなかった。

さやか「……離せ……!」

不思議な魔法を使って、あっという間に魔女を倒したほむらちゃんが、そこに居た。

乳酸菌て新しいな。そこはカルシウムだろw

ほむら「やめなさい、美樹さやか。この男を殴っても巴マミは返ってこないわ」

さやか「アンタは平気なの!?人が死んじゃっても……。っ!!」

手を振りほどき、ほむらちゃんの顔を見た瞬間。
さやかちゃんは口をつむぐ。

球磨川『……やーだ、ほむらちゃんまで。そんなに怖い顔しちゃってさ。
     怒った顔は可愛いけど、怖い顔はやっぱり怖いよ?』

ほむら「……黙りなさい」

そうして、結界が解けた。

マミさんはシャルロッテが食べちゃったんでしょ?
死体無いのに生き返らせるってできるの?

>>325
食べられたことを「無かった」ことにできる

風景は元に戻り、元通りの人気のない病院の外。
まどかは泣き崩れ、美樹さやかも声を押し殺して泣いている。
……これで良いんだ。
巴マミの死を知ったことで、二人の魔法少女への憧れは崩れ去ったはず。
これで、良かったはず。

まどか「……ぅ……マ、ミさんっ……ひぐっ……」

さやか「マミ……さん……っ……!!」

球磨川『あはは。二人とも、人の名前は面と向かって呼ばないと意味ないぜ?』

その飄々とした声にまた怒りが湧く。
……しかし、球磨川の方に目を向けた瞬間、私の怒声は掻き消えた。

球磨川『と言っても、見て分かると思うけど。今は向かう面がないんだよねー』

無くなったことを無かったことに出来るのか…

球磨川『と言っても、見て分かると思うけど。今は向かう面がないんだよねー』

>>1
こんなセリフを球磨川に言わせるなんて、お前西尾だろ

まどか「ひっ……!?」

さやか「球磨……川……!?ぅぐっ……!」

まどかは目を逸らし美樹さやかの肩に顔をうずめ、美樹さやかはえづく。

QB「……どうするつもりだい?マミの死体を持ち帰ったりなんかして」

巴マミの体には、右腕はもちろん頭も無く、残った部位も酷く損傷して、ギリギリそれが“元人間”であると判断できる程度だった。
そして、その死体を平然とした顔で背負っている少年……明らかに異常な光景だ。

「あなた、どこまで死者を辱めれば気が済むの……!?」

『まさか。僕にはそんな趣味はないって。死体がその場にあった方がやりやすいし確実だから持って来ただけだよ』

やりやすい?
確実?

「……何をするつもりよ……」

球磨川禊は、その飄々とした表情を一切変えずに言い放った。

『マミさんの死を、虚構(なかったこと)にする』

巴マミの死を……?

ほむら「何を言ってるの……?いい加減にして!」

QB「マミの死をなかったことにする?それはつまり、彼女を生き返らせるということかい?
   さすがに無理じゃないかな。回復魔法に長けた魔法少女でさえ、一度失った命を甦らせることは不可能だ。
   まして、魔法も使えない君がそんなことを成し遂げるなんて、到底……」

次の瞬間、インキュベーターを含め、その場に居た全員が目を疑った。
まるで……いや、喩えようもない。
巴マミの体が、たちまち、見る見る、元に戻っていく。
そして数瞬後、本当に、あんな死体など“なかった”かのように、巴マミがそこにあった。

球磨川『あー良かった。成功して』

さやか「マ、マミさん!」

まどかと美樹さやかが巴マミに駆け寄る。

さやか「息、してる……!生きてる!まどか!マミさん、生きてるよ!」

まどか「うん、うん!良かった……良かったぁ……!」

喜ぶ2人と対照的に、インキュベーターは珍しくその声色に、明らかに困惑と驚きの色を浮かべていた。

QB「馬鹿な、信じられない!ただの人間が死んだ命を甦らせるなんて……!
   球磨川禊、君はまさか本当に、魔法を使えるのかい……!?いや、だとしても……」

球磨川『魔法?うーん……惜しい!大ハズレ!1文字しか合ってないよ』

ほむら「球磨川禊。あなた、本当に何者なの……!?」

球磨川『そんなことどうでも良いじゃない。今はマミさんが助かっただけでも喜ぶべき、そうだろ?』

その時、巴マミが動いた。

マミ「……ん……」

まどか「っ!マミさん!」

マミ「……あれ、私……?」

球磨川『目が覚めたみたいだね、マミさん』

マミ「あら……私……えっと……ぁ……あ……あぁあ……!」

突然、巴マミの体がガタガタと震え始めた。

さやか「マ、マミさん!?大丈夫ですか!?」

……当然だろう。

腕を食いちぎられ。
その痛みとショックに耐えながら、必死に戦うが、自分の攻撃はまるで通じない。
いつ死ぬか、殺されるか。
散々に恐怖心を煽られ……そして終には……。
その恐ろしい記憶がすべて残っているのだとすれば……。

マミ「わ、私……魔女に……」

球磨川『全部覚えてるんだね。そうだよ、マミさんは魔女に食べられちゃったんだ』

マミ「……ぅして……どうして……私……い、生きて……?」

球磨川『安心して。僕がぜーんぶ、“なかったこと”にしてあげたからさ』

マミ「球磨川くんが、助けて……私……ぃゃ……怖い……魔女……嫌……!」

まどか「……マミさん……」

やっぱり……。
巴マミは、もう戦えない。
文字通り死ぬほどの恐怖を味わい、心の深の芯にまで刻みつけられた。
もともと精神面がそれほど強かったわけでもない……。
心が折れてしまったとしても、仕方ない。

自分の両肩を抱き震える巴マミを、球磨川禊はそっと抱き寄せる。

球磨川『怖かったね、マミさん。でももう大丈夫。マミさんはもう、魔女と戦う必要なんてないよ』

マミ「ぁ……ぇ……ほんと……に……?」

……そんなことが許されれば、どれだけ良かっただろう。
当然、インキュベーターが残酷な事実を突きつける。

QB「残念だけど、そうはいかないんだ。マミ、君も分かってるはずだよ。
   魔女と戦わなくてもソウルジェムは濁っていくんだ。グリーフシードを集めないと、君はいずれ魔女に……」

まどか「やめてキュゥべえ!お願い!」

さやか「そうだよ!これ以上マミさんを追い詰めないで!」

QB「そんなことを言われても。僕は事実を伝えてるまでだよ。
   それとも君たちは、僕が何も告げずにマミが魔女になった方が良かったって言うのかい?」

マミ「ぃや……助けて……もう嫌……戦いたくない……!」

残酷な真実に一層怯える巴マミ。
……しかし、球磨川禊はそんなこと意も介さないように、易々と言い放った。

球磨川『だから大丈夫だって、マミさん。ソウルジェムの濁りなんて、なかったことにしちゃえば良いんだから』

マミ「なかった……こと……?」

QB「球磨川禊……君は何を……」

球磨川「さっき見たよね?僕の“大嘘憑き(オールフィクション)”。
     現実(すべて)を虚構(なかったこと)する。それが僕の欠点(ちから)だよ」

ほむら「すべてを……なかったことに……あり得ない、そんな力があるわけ……!」

球磨川『あり得るし、あるわけある。さっき見たでしょ?マミさんの死を虚構(なかったこと)にしたのをさ』

QB「……そんな力を隠し持っていたのか、君は」

球磨川『別に隠してたわけじゃないよ。訊かれなかったからね』

さやか「じゃ、じゃあ、マミさんのソウルジェムの濁りもアンタなら……?」

球磨川『だからあ。出来るって言ってるじゃない。しつこい女は男子に嫌われるぜ?
     ……ま、そういうわけだよ、マミさん。もうきみはなにもしなくて良いんだ」

マミ「球磨川くん……」

球磨川『だってきみは、華奢で、ひ弱で、貧弱で、虚弱で、脆弱な女の子なんだから。
     きみのやらなきゃいけないことは、僕が、ぜーんぶ、なかったことにしてあげるよ』

マミ「……うん……うん……。ありがとう、球磨川くん……ありがとう……」

そうして夕日を背に抱き合う二人のシルエットはまるで、ヒーローとヒロインのそれだった。

キリが良いからここらへんで寝させて
保守してくれたら嬉しい

大嘘吐きがラフレシアを消せなかったのってラフレシアで負った怪我を消してたからかね?
ラフレシアが最初から無ければ怪我も無い筈だけど実際には一度無かった事にしてるから
無くした事実を無くす事になるから駄目だった様な気もする

さりげなくもないだろあれw
誰もツッコミいれなかったけどさw

球磨川は良いことを言ってからが本番だぜ

>>371
作中では過負荷に対しては効果が曖昧みたいなこと書かれてたなかったっけ?

保守

寝落ち?

ほしゅ

hosyu

球磨川は「君が駄目でも僕はもっと駄目だから一緒に堕ちよう」って考え方だからな
駄目人間にとっちゃ神様だろ

>>377
オールフィクションは時間軸じゃなくて因果律に云々って言われてたから、多分契約だけを無かったことにもできるはず
じゃなきゃマミさん生き返らせた時にマミさんが死んだっていう記憶が消えてるはずだし

ほしゅ

寝るので保守よろしく

>>395
AFは「原因」を消して結果を無かったことにする

契約をなかったことにしたら
契約で回復した身体も今まで倒した魔女も
全て「なかったこと」になるぞ




翌日、今日もまた屋上でさやかちゃんと二人。

さやか「……はぁ~……」

まどか「さやかちゃん?どうしたの?」

さやか「うん……見滝原、これからどうなっちゃうんだろうってね……」

まどか「……マミさん、魔女退治やめちゃったしね」

さやか「やっぱ、仕方ないよね……。あんな目にあったら誰だって戦うの怖くなっちゃうよ……」

まどか「うん……」

さやか「暁美……ほむら、はさ。どうなんだろ」

まどか「どうって……?」

さやか「魔法少女体験ツアーの時にさ、マミさん言ってたじゃん。
    魔法少女は正義の味方ばかりじゃない、グリーフシード目当ての魔法少女もたくさん居る、って。
    あいつは、どうなのかな?」

まどか「ほむらちゃんは……悪い子じゃ、ないと思うんだけど……」

さやか「うん……」

まどか「……わかんない」

さやか「だよねー……。……うん、ごめんまどか、付いてきて」

まどか「え?さ、さやかちゃん?」




ほむら「話って何?」

さやか「えっと、さ。その……魔女退治のことで、ちょっと……」

ほむら「巴マミに関係する話かしら」

さやか「っ!!……単刀直入に訊くよ。あんた、魔女退治についてどう思ってる?」

ほむら「……質問が漠然としすぎて意図が掴めないわ」

さやか「あー、ごめん。だからさ……魔女退治に、使命みたいなのって感じてる?」

ほむら「……巴マミの代わりになれ。そう言いたいの?」

そう言うわけじゃ……と言いかけたが、詰まるところ、あたしの言いたいことはそういうことだった。
ずばりと言い当てられ、言葉に詰まった。
そうこうする内に、暁美ほむらが言葉を重ねる。

ほむら「巴マミのような魔法少女は珍しいわ。普通の魔法少女は、使い魔も魔女も見境無く狩るなんてことはしない。
    それは私も同じ。余裕のない時は魔女だけを狙わないといけないの。それが基本」

さやか「…………」

ほむら「私は嘘は吐きたくないし、できもしない約束もしたくない。私は、巴マミのようにはなれないわ」

さやか「……そっか。わかったよ。悪いね、時間とらせちゃってさ」

ほむら「こちらこそ。時間を無駄にさせてしまったわね。……美樹さやか、それに鹿目まどか」

一呼吸置き、暁美ほむらはあたし達の目を見据えて言った。

ほむら「巴マミのようになる必要がないのは、あなたたちも同じよ。そんなこと、考えなくて良い」

さやか「ごめんね、まどか。変なことに付き合わせちゃってさ」

まどか「ううん、良いの。それより……ダメだったね」

さやか「んー……まぁね。けどさ、あいつの言い方だと、余裕のある時は使い魔も倒してるみたいじゃん?それにあいつ……」

まどか「……?」

さやか「……まどかはさ。やっぱり、魔法少女になるの、怖いよね……」

まどか「…………だって……あんなの……」

さやか「だよねぇ……」

……当たり前だ。
あの凄惨な光景は、忘れようと思って忘れられるものではない。
仮に、球磨川の力で生き返れるのだとしても……。
生き返れるからって、簡単に死ねるわけない。
やっぱり、死ぬのは怖い。

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん……?」

さやか「……あたしにもう少し、勇気があればな……」

放課後。
あたしはまどかと別れ、恭介の居る病院へと向かった。
……けど。

「あ、もしかして上條くんのお見舞い?
 ごめんね、上條くん、予定が繰り上がっちゃって今リハビリ中なの」

さやか「え、そう、ですか……。わかりました、ありがとうございます」

……実は昨日まで、あたしは魔法少女になろうと思ってた。
もちろん、ソウルジェムのことや魔女化のことも含め、よく考えた上で。
恭介の腕を治す……恭介の演奏をまた聞く……。
そのためなら、自分がどうなっても構わない、そう思ってた。
でも、昨日の戦いを見て……。
マミさんの代わりに見滝原を守る、その考えも浮かばなかったわけじゃない。
でも、暁美ほむらに諌められて……。
やっぱりあたしには勇気も、覚悟も、足らなかったみたいだ。

さやか「はぁ……」

球磨川『どーしたのさやかちゃん。ため息なんてついちゃって。幸せが逃げちゃうよ?』

来たか

病院の外に出た瞬間、アイツがそこに居た。
この男は……マミさんの命を甦らせた“命の恩人”。
そのことは感謝してる……けれど。

球磨川『……あれ?おっかしーなー。僕の予想では、
     球磨川禊はマミさんを助けたことでさやかちゃんたちみんなの信用を得ることができた!
     って流れになると思ったんだけど』

さやか「世の中そんなに甘くないよ。なんとなくわかっちゃうんだよね……あんたが嘘つきだってこと」

球磨川『…………』

マミさんを生き返らせたのも、コイツは人助けとか、そういう善意でやったんじゃない。
きっと、何か別のことを考えてた。

さやか「あんたはいつも空っぽの言葉を喋ってる……。ごまかし切れるもんじゃないよ、そういうの」

球磨川『……あははっ。酷いなあ、さやかちゃん。
     僕はずーっと、きみのこと友達だと思ってたのに。初めて見た時からずーっと』

さやか「あーそう。あたしは一度もあんたのこと友達とは思ったことなんてないよ」

球磨川『うわあ、さすがにそれはショックだよ。どうしよう、すごく悲しいぞ。悲しすぎて……
     この病院に居る、きみの大切な誰かに酷い八つ当たりしちゃいそうだ』

さやか「なっ……!?恭介は関係ないでしょ!?」

球磨川『ふぅーん。きみの大切な人の名前、恭介っていうんだ。覚えとこーっと!』

さやかちゃんとは相性最悪だな

前の方でベェさんとクマが似てるだの似てないだのとあったけど
ベェさんは安心院さんで
クマはほむほむだわ

さやか「……!!」

球磨川『訊いてもないのに大切な人の名前を教えてくれるなんて親切だなあ。キュゥべえちゃんとは大違いだよ。
     あ、これってもしかして、僕を友達だと認めてくれたのかな?そうだよね。
     だって信用してないと、そんな大切なこと教えてくれるはずないもんね』

さやか「っ……」

球磨川『ところでどーでも良いことなんだけどさ。恭介くんって、ここの患者さん?それともここで働いてる人?』

あんたには関係ない……そう言いかけたが、なんとかとどまった。

さやか「……患者だよ。入院してる」

球磨川『へー、なんで?不治の病とか?』

さやか「……もう良いでしょ、“どーでも良いこと”なんだから」

球磨川『そうだね、確かにその通りだ。きみの大切な人が入院していようといまいと、病気だろうと怪我だろうと。
     軽症だろうと重症だろうと、治ろうと治るまいと。
     生きようと死のうと、安楽死しようと苦しんで死のうと。
     僕にとってはどうでも良いし何の関係もないし知ったことじゃない』

さやか「っ……」

飛び掛ってしまいそうになるのを、ぎりぎりで抑えた。

球磨川『あれ?何か気に障ること言っちゃった?ごめんね。
     まあ、確かに僕にとってはどうでも良いことだけどさ。
     でも、どうでも良い知識が時には自分の役に立つことだってあるんだぜ?
     だからさ、教えてよ。恭介くんのこと。包み隠さず、洗いざらい、あることないこと』

さやか「…………拒否権は」

球磨川『もちろんあるよ』

屈託のない笑顔で球磨川は続ける。

球磨川『拒否するもしないも、真実を話すも嘘を話すも、その結果何が起きても起きなくても。
     ぜーんぶさやかちゃんの自由でさやかちゃんの勝手でさやかちゃんの責任だ』

さやか「わかった、話すよ、話せば良いんでしょ……!」

球磨川『あは!ありがとう。優しいね、さやかちゃん』

>>445
以外とあんこはコロっとオチそう

>>449
同感




球磨川『へー、すごいね。まるで悲劇の主人公だ』

あたしは球磨川の要求通り、恭介のことを、知っている限り話した。
これで、良かったんだよね……。

さやか「もう、良いでしょ?恭介には関わらないで……」

球磨川『あれ?良いんだ?』

さやか「……え?」

球磨川『関わらなくて良いの?』

コイツ……何を言って……!

さやか「ふざけないで!恭介に何かしたら絶対に許さない!」

球磨川『えー?なーんだ。せっかく彼の腕、治してあげようと思ったのに』

さやか「……は……?」

球磨川『ほら、僕ならできるでしょ? “大嘘憑き”でさ』

……確かにその通りだ……。
コイツの、マミさんを生き返らせたあのとんでもない力なら、恭介の腕を治すことも……!

球磨川『でも残念だなあ。“絶対に許さない”なんて言われたら何もできないや。
     僕は諦めて家に帰って恭介くんの回復を祈ることにするよ』

心底残念だという表情を浮かべながら、球磨川は立ち去ろうとする。

さやか「っ……!ちょ、ちょっとまって……さっきのは……!」

気付けば私は、球磨川に追いすがっていた。

球磨川が混ざると色々台無しだけど

上条さんなんか
原作からして台無しにするからもっと酷い

球磨川『あれ。どうかした?さやかちゃん』

さやか「さっきのは……」

球磨川『?』

さやか「さっきのは、ナシ……」

球磨川『さっきのはナシ?ちょっとよく意味がわからないなあ。
     何か言いたいことがあるなら僕にもわかるようにはっきり言って頂戴』

私は、思い切って声を振り絞る。

さやか「恭介の腕を!治してあげて……!」

球磨川『うんわかった。良いよ』

さやか「え……ほ、本当に……?」

そんなあっさりと……?

球磨川『友達の頼みだからね!人肌脱がない訳には行かないでしょ?』

さやか「ほ、本当に?本当なの?」

球磨川『おいおい、てっきり僕を信用してくれたんだと思ってたんだけどな。まだ疑うわけ?』

さやか「う、疑わない!疑わないから!」

球磨川『あははっ。冗談だよ冗談』

逆に球磨川と一番相性悪いのは誰だろ?まどか?

球磨川『それじゃ、早速恭介くんのとこに行こうか。善は急げって言うでしょ?』

さやか「う、うん……!案内するよ!こっち!」

誘導するように、あたしは先陣切って歩き出す。

良かった……球磨川の力なら、間違いなく恭介の腕を治せる……!
これで、叶うんだ。
あたしの願いも、恭介の夢も……!

球磨川『あ。でもちょっと待って。やっぱりやーめた』

さやか「……え?」

http://i.imgur.com/nrsUL.jpg

>>466
まどかの祈りと大嘘憑は裏表みたいな感じだから
相性は悪そう

>>469
逆にほむらの手の位置に違和感が

一瞬耳を疑った。

球磨川『だってさあ。よく考えてみてよ、さやかちゃん。
     そうやって人の苦労を簡単に取り除いたりして、本当にその人のためになるのかなあ?』

さやか「な、え、えっと……?」

球磨川『僕はね、思うんだよ……。これはきっと神さまが恭介くんに与えた試練なんだって!
     恭介くんはきっとこの苦しみを乗り越えて、さらに立派な人間として成長するんだ』

……何を、言ってるの……。
おかしいでしょ……そんなの……だって、さっき……。

球磨川『だから、僕はついさっきよーく考えて決めたよ』

さっき、言ってたじゃん……恭介の腕、治してくれるって……。
なのに……なのに……なのに。

球磨川『神さまに誓って言う。僕は絶対に、恭介くんの腕を治さない。彼自身のためにもね!』

さやか「……球磨川ァあああぁあぁあああああ!!!」

盛り上がってまいりました

あたしは球磨川に思い切り殴りかかった。
もろに顔面に拳を受けた球磨川は鼻血を流し、地面に尻餅をつく。
周りに人が居なくて良かった。
人が居れば今頃大騒ぎだろう。

さやか「アンタはそうやって……人の気持ちを弄んで……!
    何が楽しいの!?そうやって、人を馬鹿にして……!なんなのよぉ……!」

座り込み、顔を抑えている球磨川の表情は見えない。
しばらくして、のそりと立ち上がり、ゆっくりと顔を上げる。
そこには、さっき流していたはずの鼻血もなく。
呆れ顔があった。

球磨川『はあ……。さやかちゃんさあ……』

さやかちゃん不安定過ぎwww

面白いよ!

>>1ちゃんと完結しろ下さい

『悔しかったら人気投票で一位になってみろよ』

>>489
調子にのんな

球磨川『きみさあ。僕が現れるまで、恭介くんの腕についてどう思ってた?
     これは僕の勝手な想像なんだけど、魔法少女になって彼の腕を治すことをちょっとは考えてたんじゃない?』

さやか「そ、れは……」

球磨川『自分の身を犠牲にしてでも、彼の腕を治してあげたい、ってさ。
     それなのに。リスクなしで恭介くんの腕を治せる方法が見付かった途端、その選択肢は除外して。
     自己犠牲の精神なんてどこかに放り投げちゃって。僕なんかにすがって。
     それで、僕がちゃんと真剣に考えた結果の意思を表明した途端、
     まるで恭介くんの腕が治らないのは僕のせいだとばかりに。
     僕にありったけの怒りをぶつけてさ。そういうのを他力本願っていうんじゃないの?』

球磨川さん思春期の不安定な女の子あんまりイジメないで

さやか「ぁ……ぅ……」

球磨川『自分では何の努力もせず、他人にすべて押し付けて。
     それで押し付け先が思い通りに動いてくれなかったとなると、全責任が自分以外にあるかのように怒る。
     自分勝手で、自分本位で、自己中心的で、我侭で、無責任で、まったく……』

そこでもう一度、深いため息をついて、

球磨川『わけがわからないよ』

そう言い残し、球磨川は去って行った。

QB「」




まどか「……さやかちゃん?さやかちゃん?」

さやか「……へっ?あ、な、何?どうかした?」

まどか「どうしたの?ぼーっとしちゃって……体調悪いの?保健室行く?」

さやか「え、あー、大丈夫、大丈夫!さやかちゃんは今日も元気ですよー!
    そんなに心配してくれるとは!くぅー!さすがはあたしの嫁!」

慌てておどけて見せたが、昨日からずっと、頭から球磨川の言葉が離れない。
自分勝手で、我侭で……。
……あたしって、やっぱり、そうなのかな……。

一日中ぼーっとしていたのか、あっという間に放課後になり。
今日も、足は自然と病院に向かって行った。




恭介「……さやかはさ、僕を虐めてるのかい?」

さやか「え……?」

恭介「なんで今でも、僕に音楽なんか聴かせ続けるんだ?嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「だ、だって、恭介音楽好きだから……」

恭介「もう聴きたくないんだよ!自分で弾けもしない曲なんて……!」

そう叫んだ恭介は、CDプレイヤーに思い切り左手を叩き付けた。

さやか「っ……やめて!!」

恭介「動かないんだ、僕の手はもう……痛みすら感じない。医者から直々に……諦めろって……!」

さやか「恭、介……」

……知らなかった。
恭介がこんなに追い詰められていたなんて。
私は、勝手に思い込んでた。
恭介は、いつかまた演奏できると信じて、諦めずにリハビリを頑張るんだって。
人間は、強い心を持ち続けて諦めずに頑張り続けられるんだって……勝手に思い込んでた……。
しかも、あたしのしてきたことは……恭介のためにと思ってしてきたことは結局……

――自分勝手で、我侭で、自分本位で、自己中心的で、無責任で、

……違う。
あたしは……あたしは……!

恭介「僕の腕は治らない……奇跡か、魔法でもない限り……!」

さやか「あるよ」

私は……恭介のために、他人のために!
人間をやめられるんだ!

さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ!」

屋上に、あたしはキュゥべえと2人で居る。
どこから現れたのか、あたしの思いを聞きつけたのか。
本当に神出鬼没な奴だ。

QB「ようやく契約する気になってくれたんだね、さやか」

さやか「まぁね」

QB「安心すると良い。君の願いは間違いなく遂げられるよ」

そう言ってキュゥべえがあたしの胸のあたりに耳を伸ばし……。

さやか「っく……うぅ……!」

QB「さぁ、受け取ると良い。それが君の運命だ」




さやか「これでトドメだぁあああ!!!!」

箱型の魔女を倒し、結界が解ける。

まどか「……さやかちゃん、その格好……」

さやか「ん?あはは、いやー何?心境の変化……っていうのかな?だーいじょうぶだって!
    あたしは死んだりしないし、魔女になったりもしない!」

その時、コツ、と足音が聞こえた。

ほむら「……美樹さやか……!」

さやか「あー、うん。悪かったね、忠告無駄にしちゃってさ」

ほむら「あなた……」

翌日の夕方、とある塔の展望台。
そこにキュゥべえと、もう1人の少女が。

杏子「ふーん……あれがこの町の新しい魔法少女ねえ」

QB「本当に彼女と事を構える気かい?すべてが君の思い通りになるとは限らないよ」

杏子「何よ?文句あるっての?」

QB「そうじゃない。この町には少し、イレギュラーが多すぎる」

杏子「どういう意味さ?」

QB「1人は魔法少女だ。そしてもう1人は得体が知れない」

杏子「得体が知れない?」

QB「2人とも共通して言えることは、何を考えているのかも、どういう行動を起こすのかも分からないってことだ。
   君もいずれ会うことになるかも知れないから、用心しておいた方が良いよ」

杏子「ふんっ。上等じゃん。退屈すぎてもつまんないしね」




杏子「ちょっとちょーっと、何やってんのさ」

さやか「っ……あんた、誰……!」

杏子「今の使い魔だよ?卵生む前のニワトリ絞めてどうすんの」

さやか「使い魔だって人間を襲うんだ!ほっとけないよ!」

杏子「だから、それで良いんだって。何人か襲わせて、グリーフシード孕んでから狩れっつってんの。理解できてる?」

さやか「くっ……お前……!」

赤さんキター

杏子「弱い人間を魔女が食う。魔女を魔法少女が食う。食物連鎖。ガッコーで習ったよね?
    まさかさあ……人助けのためー、なんてくっだらない理由で魔法少女やってるわけじゃないよねえ?」

さやか「黙れ!“下らない理由”なんかで人間やめるわけないでしょ!!」

杏子「ははっ、“人間やめる”ねぇ。なかなか面白い喩えするじゃない。
    ま、確かに食物連鎖で上に立つって意味じゃあ人間やめたようなものかもね!」

さやか「……!」

こいつ、もしかして……?

>>531
『ナースキャップの着用だけは認めよう』

突然現れた赤い魔法少女。
どうやらグリーフシードが目当てなだけの奴らしい。
いや、今はそれよりも……。

さやか「ねえ、あんた……」

杏子「なによ?」

さやか「ソウルジェムの正体が何なのか、知ってんの?それに、ソウルジェムが濁りきったらどうなるかも……」

杏子「さあ、知らないね。考えたこともない。はんっ、突然話を変えてごまかそうってんじゃ……」

さやか「ソウルジェムは……魔法少女の魂、そのものなの」

杏子「……は?」

さやか「そしてソウルジェムが濁りきったら、あたしたちは魔女になるんだよ」

あたしの話に、訝しげな目を見せる。

杏子「ちょっと待ちなよ。いきなり何言っちゃってんのさ。誰がそんな話信じると思う?」

さやか「信じられないなら、そこに居る白い奴にでも訊いてみれば?」

キュゥべえはあたしたちから少し距離を置いたところに、居た。
赤い魔法少女は、こちらを警戒しつつも訊く。

杏子「……おい、どうなんだ?」

QB「彼女の言う通りだよ、佐倉杏子。ソウルジェムは君たちの魂だし、濁りきると魔女を産む」

杏子「なっ……!?」

杏子「てめえ……ふざけんじゃねえ!」

真実を知り、佐倉杏子という魔法少女はキュゥべえに食って掛かった。

杏子「それじゃあたしたち、ゾンビにされたようなもんじゃねえか!!」

QB「まったく……巴マミと言い、どうして君たち人間は事実を知ると同じ反応をするんだろうね」

杏子「食えない奴だとは思ってたが……騙しやがったな……!!」

QB「本当に同じ反応だね。僕には騙すなんて行為自体理解できないよ。認識の不一致だろう?説明は省いたけどね」

杏子「くっ……!」

これ以上話しても無駄だと感じたのか、佐倉杏子は今度はあたしの方に向く。

杏子「おい、てめえもこいつとグルなのか!?」

さやか「なっ、違うよ!そんなわけないじゃん!」

クマの有無で読者のテンションが大違いだな

球磨川「『君がパンツを見せてくれれば、マクドナルドをたらふくおごってあげてもいいよ』」

>>549
またそうやって
杏子がすがり付きたくなるような嘘をッ!

杏子「じゃあなんで平然としていられる……いつからこのこと知ってやがった?」

さやか「つい最近だよ」

杏子「そうじゃねえ。全部知ってて魔法少女になったのかって訊いてんだ!」

さやか「……そうだよ。あたしは全部知った上で、魔法少女になった」

杏子「わけわかんねえ……くそ!調子狂うな!」

佐倉杏子は、目を瞑って頭をガシガシと掻いたかと思うと、あたしに向き直った。

杏子「おい、あんた!名前は!?」

球磨川は「僕は悪くない」と「ごめんなさい、もうやらない」を
並列で言えるからなぁ

おい、あんた!
まで続くと
ふざけたこと言ってんじゃ・・・!
に繋げたくなるよな

さやか「……?美樹さやか」

杏子「美樹さやか……今日は退かせてもらうよ!」

そうして、佐倉杏子はあっという間に行ってしまった。

さやか「……なんだったんだ、あいつ……」

まどか「さ、さやかちゃん、大丈夫?」

さやか「あれ、まどか居たんだ」

まどか「ひ、酷いよぉ!ずっと見てたのに!」

さやか「あはは、ごめんごめん」

>>555
やめろあんこっちゃん!!

まどか「それよりあの子……魔法少女、なんだよね……?」

さやか「そうだね……。でも、マミさんとは違う。正義の味方なんかじゃない。
    それに、ほむらとも違う。ほむらよりもっと……。
    佐倉杏子、あいつは自分のためだけに、グリーフシードを手に入れるためだけに戦ってる。
    そのためなら人間を犠牲にしても良いなんて考えを……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「まどか……もしかしたら、あたしはアイツと戦うかもしれない。でも、止めないでね」

まどか「そ、そんな……」

さやか「人間の敵なら、魔女だろうと魔法少女だろうと関係ない。あたしは戦うよ」

次の日、あたしはまた病院に行ったけど、恭介はもう退院してしまっていた。
予定が早まったとかなんとか……。
恭介の奴、連絡くらいしてくれても良いのに。
でも、良かった。
経過は順調みたいだ。

そして今、恭介の家の前にいる。
呼び鈴を鳴らそうとした時、中から綺麗なバイオリンの演奏が聞こえてきた。
……邪魔、しないでおこう。
あたしはそのまま踵を返す。
その時。

杏子「会いもしないで帰るのかい?今日一日追い回してたくせにさ」

さやか「……思ったより元気そうだね。昨日はあんなに取り乱してたくせに」

杏子「ふん、まあね。あたしはさ、まあいっか、って思ってんだ」

さやか「…………」

杏子「あたしは、この力をぜーんぶ自分のために使ってる。だから何もかも自分のせい、自業自得ってわけだ。
    そう思ってれば、大抵のことは背負えるもんさ。だから後悔なんて、あるわけない」

さやか「……まあそうだろうね」

杏子「だけど、あんたは違う。あんたは間違ってる。
    他人のために力を使うってことがどれだけ馬鹿なことか、あんたはわかってない」

さやか「……見解の相違だね。あたしは、人のために力を使うことが間違ってるだなんて思わない。
    あんただって、たまには人のために魔法使ってみたら……」

その瞬間、雰囲気が変わった。

杏子「何も知らねえからそういう馬鹿げたことが言えるんだよ、ひよっこが……!」

さやか「……!」

杏子「……教えてやるよ。他人のために動き続けた人間の末路が、どういうものかを」

それから佐倉杏子は話し始めた。
自分の過去……家族の話。
それは佐倉杏子の魔法の使い方を正当化するのに、十分なものだった。

さやか「なんでそんな話をあたしに……」

杏子「……あんたも好き勝手に生きれば良い。自業自得の人生をさ。
    でないと……絶対に後悔する。あんたは勝手に勘違いしてるが……。
    良いか、そんなわけはないんだ。人間、他人からの見返りなしでいつまでも善人じゃいられないんだよ」

さやか「……なんか変じゃない?あんたは自分勝手に生きてるんでしょ。
    なんであたしの心配なんてしてくれちゃってるわけ?」

杏子「……あんたもあたしと同じ間違いから始まった。
    あたしはそれに気付けたが、あんたはまだ間違い続けてる。見てられないんだよ」

さやか「……あたし、あんたのこと色々と誤解してた。そのことはごめん、謝るよ」

杏子「…………」

さやか「あんたの生き方も、魔法の使い方も、否定しない。あんたはあんたの好きにすれば良い。
    でも、あたしはやっぱり、自分が間違ってるなんて思わない。後悔だって、絶対にしないって決めたんだ」

杏子「っ……バカ野郎……!あたしたちは魔法少女なんだぞ!他に同類なんていないんだぞ!」

佐倉杏子が激昂した、その時。

球磨川『わー、街中で魔法少女(笑)とか大声で叫んでる子がいるぞ。イタいイターい』

どこぞの無為式さんより仕事するよな

>>574
あれは人を死なすだけだ
歩く災いだ
コナンよりヒデェ

さやか「球磨川っ……!」

杏子「なっ……!?」

球磨川『あはは、そんなに警戒しなくても大丈夫だって。良かったね。聞かれたのが僕でさ』

杏子「……あんた、魔法少女のこと知って……?」

球磨川『うん、もちろん』

そして球磨川はふいに視線をずらし……。

球磨川『さやかちゃん、なっちゃったんだね。魔法少女』

さやか「……まあね」

球磨川『僕、きみのこと色々と誤解してた。そのことはごめん、謝るよ。
     まさか、さやかちゃんが自分の何もかもを犠牲にして恭介くんのこと助けるなんてさ』

さやか「…………」

哀川「寧ろ赤いの出てから始まりだろうが」

杏子「おい……てめえ何者だ?まさか噂のイレギュラーってのは……」

球磨川『え?僕?さやかちゃんの元彼でーす!』

杏子「あぁ!?」

球磨川『なーんちゃって!あは!ただの友達だよ。ね、さやかちゃん?』

さやか「…………うん」

球磨川『ああそう言えば、ちょうど良かったよ。今の今まですっかり忘れてたけど、
     さやかちゃんにどうしても言っておかないといけないすごく大切なことがあったんだった』

さやか「……何よ」

ニヤニヤ

球磨川『僕思ったんだよ。さやかちゃんがこんなに自分のこと犠牲にして恭介くんを助けてあげたのに、
     当の本人はなんにも知らないままぬくぬくと幸せな生活を送るなんて。
     そんなの割りに合わないってさ』

さやか「…………」

……嫌な予感がする。
こいつ……また何か……。

球磨川『だから、昨日恭介ちゃんに会って教えてあげたよ。きみの腕を治したのはさやかちゃんだ、ってね』

さやか「っ……!?」

何て友達想いなんだ

球磨川『でもさー。酷いんだよ?恭介くん。僕が言ったことぜーんぜん信じないで、笑ってるんだぜ?
     “またさやかの面白い冗談かい?相変わらずジョークのセンスがないんだね”だってさ』

さやか「っ……」

球磨川『僕はちゃーんと
     “さやかちゃんは謎の生命体と契約を交わして魔法少女になってその力できみの腕を治したんだ”
      って全部ありのまま包み隠さず伝えたのにさ。酷い奴だよねーほんと。感謝の欠片もなかったよ』

……わかってる、大丈夫。
こうなることは、承知の上だったんだから。
大丈夫……

球磨川『あ、そうそう。ついでに……さやかちゃんのことどう思ってるのか訊いてきてあげたよ!』

さやか「え?」

球磨川『好きだったんだよね?恭介くんのこと。あは!なーに、お礼なんていらないよ。僕たち友達だろ?』

球磨川『あー、でも、うん。さやかちゃん。気にしないで』

……やめて。

球磨川『なんかね。彼、さやかちゃんのことは』

やめて……やめて……。

球磨川『お世話になったことは感謝してるけど』

やめて、やめて、やめて……!

球磨川『別に恋愛感情とかは』

さやか「……やめてぇえええ!!」

球磨川『…………他に好きな子が居るんだってさ!』

ワルプルギスの夜フルキャスト生存縛り成功!ただし魔法少女のまま、みたいな!

辛うじて繋がっていた糸が、ぷつりと切れたような、そんな感覚。

球磨川『あれ。さやかちゃん帰っちゃうの?もう遅いから気を付けて帰りなよ。送って行こうか?』

もう球磨川の声は聞こえない。
あたしは、ほとんど無意識に家への道を歩き出した。

杏子「お、おい……」

佐倉杏子が付いて来る。

球磨川「だから言ったじゃないか……自分のために生きろって。他人のために生きたって、なんの意味も、見返りもないんだ」

さやか「……わかっ……てる。わかってるから……」

そう、わかってるつもりだった。

でも、違った。
“伝えない(プラス)”と“伝わらない(マイナス)”。
まるで違った。
全然違った。
全てを隠して、それであたしが報われなくても、あたしはきっと大丈夫だった。
それなのに……。
球磨川の、あいつの言葉が心を蝕む。

杏子「おい……。大丈夫かよ、さや……」

さやか「付いて来ないで。……ごめん。1人にして」

私のその言葉に、佐倉杏子は足を止めた。


杏子「……くそっ!全然だめじゃねえか……何が後悔しないだ……!
    あんな生き方……。後悔するに、決まってるだろ……!」

どっちかというと味噌プルギスの夜なような




仁美「……わたくし、上條さんに告白しようと思ってますの」

さやか「…………」

仁美「横取りなんて真似はしたくありません。明日の放課後、告白しますから……」

さやか「あー、良いよ別に。今日告っちゃって」

仁美「え……?」

さやか「あたし別に、恭介がどうとか思ってないからさ。がんばってね、仁美。応援してるよ」

仁美「は、はい……ありがとう、ございますわ……?」

スレタイの人も仕事しようぜ




まどか「……駄目だよさやかちゃん。あんな戦い方……さやかちゃんのためにならないよ……!」

さやか「……あたしのため……?そんなの意味ないよ。あたしは、もう自分のことなんか考えないって決めたんだ。
    あたしは、他人のためにだけ魔法を使うって決めたんだよ……」

まどか「だ、だからって……」

さやか「うるさい」

まどか「え……」

さやか「何も知らないくせに口出さないでくれる!?あたしはちゃんと覚悟を持って戦ってるんだ!
    遠くから見てるだけのあんたに、あたしの何がわかるのよ!?……分かるわけないわよね。
    あんたは普通の、人間なんだもん。あたしみたいな化け物の気持ちなんて、分かるわけないよね」

まどか「そん……な……さやかちゃん……!」

さやか「付いて来ないで」

それでも双識兄さんなら・・・双識兄さんならなんとかしてくれる・・・!




さやか「はぁっ……!はぁっ……!はぁっ……!」

結界が解ける……が、今倒したのはただの使い魔。
当然グリーフシードなんて持っているはずはない。
それなのに、さやかの消耗は激しく既に限界が近かった。
その時。

ほむら「……言ったはずよ。余裕がない時は魔女だけを狙わなければならないの」

さやか「あんたか……」

ほむら「もうソウルジェムも限界のはずよ。使いなさい」

そう言ってほむらはグリーフシードをさやかに向けて放る。

さやか「…………」

さやかはそのグリーフシードを、ほんの一瞬、コツッとソウルジェムに当て。
ほむらに投げ返してしまった。

ほむら「……どういうつもり」

さやか「悪いね、ありがとう。でも、あたしなんかのためにあんたのグリーフシード、使えないよ」

ほむら「今はそういうことを言っている場合じゃないでしょう。
    あなた、魔女になりたいの?少しは周りの人間のことも考えて……」

さやか「考えてるよ……。あたしは、他の人のことだけを考えてる」

ほむら「……いいえ、あなたは」

さやか「そういうあんたは!他人のこと考えてるって言うの!?」

ほむら「……!」

さやか「人間のことを考えて、使い魔もちゃんと倒してる!?マミさんみたいに!
    そうだよ……なんでマミさんが……!あの時!あんたがもっと早く来ていれば!
    マミさんはあんな目に遭わずに済んだんだ!なんでもっと早く来てくれなかったのよ!?」

ほむら「それは……」

さやか「そうじゃなくても、あんたが転校初日からマミさんと協力していれば!なんで!なんで!」

ほむら「美樹さやか、少し落ち着き……」

最後まで言葉を紡ぐ前に、さやかは踵を返して走り出してしまった。

ほむら「……結局、駄目なのね」

杏子「……やーっと見つけた。あんたさ、もう強情張るのやめなよ」

さやか「悪いね……手間かけさせちゃってさ」

杏子「な、なんだよ。らしくないじゃんかよ」

さやか「うん……。別にもう……どうでも良くなっちゃったからね」

杏子「っ……!?」

さやか「あんたの言ってた通りだった。人間、他人からの見返りなしじゃいつまでも善人でなんていられない。
    誰かの幸せを祈った分、誰かを呪って……一番大切な友達まで傷つけて、
    人の好意まで踏みにじって……もう救いようがない」

杏子「あんた……まさか……!」

さやか「結局あたしは、アイツの言う通り……。自分勝手で、我侭で、自分本位で、自己中心的で、無責任で……」




さやか「あたしって、ほんとバカ」

脳内で仁美を怒江ちゃんに変えたら大変な事になった

クマさんは絶望の中から救い出すのか…イケメンだな




まどか「……あの、話って……?」

杏子「美樹さやか、助けたいと思わない?」

まどか「助けられるの!?」

杏子「助けられなかったら、ほっとくか?」

まどか「っ……」

杏子「……ごめん、変な訊き方しちゃったね。
    あたしはさ、本当に助けられないかどうかわかるまで、諦めたくない。
    あいつは魔女になっちまったけど……もしかしたら、友達の声くらいは届くかもしれない」

>>650
マッチポンプww

まどか「……上手く行くかな……」

杏子「わかんないからやるんだよ。もしかしたらさ、あの魔女をやっつけたら。
    中からグリーフシードの代わりに、さやかのソウルジェムがぽろっと落っこちてくるかも知れないだろ?
    そういうもんじゃん?愛と勇気が勝つストーリーってのはさ」

まどか「…………」

杏子「あたしもさ、よく考えたら初めはそういうのに憧れて魔法少女始めたんだよ。
    長いこと忘れてたけど、さやかはそれを思い出させてくれた。
    ……付き合いきれねえってんなら無理強いはしないよ。あたしも、何があっても守りきるなんて約束はできないし」

まどか「ううん……手伝う。手伝わせて欲しい……!私、鹿目まどか!」

杏子「……ったく、調子狂うよな、ほんと。……佐倉杏子だ。よろしくね」

球磨川『球磨川禊でーす!僕にもうんまい棒ちょうだい!』

まどか「球磨川くん……!?」

杏子「……てめえ、どっから湧いて来やがった」

球磨川『失礼だなあ。人を害虫みたいに。
     それで?何してるのこんなところで。さやかちゃんを助けにでも行くの?』

杏子「……知ってんじゃねえか。まさか邪魔する気じゃねえよな?」

球磨川『うーん……別に邪魔する気はなかったんだけど、そう言われると邪魔したくなってきたなあ。
     どうやって邪魔しよう。うわあ、わくわくしてきたぞ!』

杏子「ふん……止めたきゃ力尽くで止めな」

球磨川『やだよ、力尽くなんて。暴力反対!平和的に話し合いで解決しよう!』

他人事だとおもしろいなあ

杏子「……付き合ってらんねえ。行くぞ、まどか」

まどか「え、う、うん」

球磨川『害虫扱いしてムシした上に蚊帳の外かい?虫だって一生懸命生きてるんだぜ』

まどか「え、っと……」

杏子「気にすんな、ほっとけ」

球磨川を残し、まどかを連れその場をあとにしようとした、その時。

球磨川『……鹿目さんさあ』

まどか「……!」

球磨川『きみの声、本当にさやかちゃんに届くと思ってるの?』

杏子「やめろ球ッパ」
球磨川「す、すいません。つい、調子に乗っちまって。」

まどかを挑発するようなその態度に、あたしは思わず足を止めた。

杏子「だから、わかんねえからやるんだよ」

球磨川『わかってるよ。もうわかってる。さやかちゃんには、鹿目さんの声は届かない』

まどか「ど、どうして……」

球磨川『だってさ、鹿目さん。きみ、さやかちゃんの友達じゃないもん』

まどか「そんなこと……!」

球磨川『ないの?ふぅーん。だったらなんで、キュゥべえちゃんと契約して、さやかちゃんを元の体に戻してあげなかったの?』

まどか「そ、それはその……契約しようとしたら」

球磨川『ほむらちゃんに邪魔された?なぁーんだ。じゃあさやかちゃんが魔女になっちゃったのはほむらちゃんのせいなんだね』

まどか「ち、ちが……」

球磨川『違うんだ?じゃあ何も悪くないほむらちゃんに責任転嫁しようとしてたの?ひっどーい、サイテー』

杏子「てめえ、いい加減にしろ!」

もう見ていられずに、あたしは球磨川に掴みかかった。

球磨川『あ。そうそう。きみもおかしいよね、佐倉さん』

杏子「何がだよ……!」

球磨川『きみ、なんでさやかちゃんを助けようとするの?
     自分勝手に生きてたはずのきみが。なんで人助けなんてするの?』

杏子「あたしは……。……さやかのおかげなんだ。
    あたしだって元々は、世のため人のためを思って戦ってきたんだよ。
    さやかのおかげでそれを思い出せた。だから……今度はあたしがさやかを救うんだ」

球磨川『だからそれがおかしいんだって』

杏子「……何が言いたい」

球磨川『だってさ、佐倉さん。結局自分のためでしょ?それ』

自分に依存してるおっぱいは仲間に入るのかどうか

球磨川『さやかちゃんのためとかなんとか言っちゃってるけどさ。
     ほんとは自分が一人ぼっちになるのが嫌なんじゃないの?』

杏子「……それは」

球磨川『ああ誤解しないでね。僕はきみを責めてるわけじゃないんだ。
     ただ、偽善を善だと偽ってるのが許せないんだよ』

杏子「そんなつもりじゃ、ねえよ」

球磨川『あれ。無意識?だったら余計可哀想だね。勘違いしちゃってる、可哀想な子だ』

杏子「…………」

球磨川『だから、そんな間違いを。僕が正してあげるよ。だから僕は正しい』

杏子「…………そう、かもな」

球磨川『!』

>>674
入るだろ

ああやってコツコツ仲間を増やしてきたんだよ

杏子「たぶん、あんたの言う通りだ。あたしはきっと、自分のためにさやかを救おうとしてる」

まどか「杏子、ちゃん……」

杏子「世のため人のためってのも……結局は親父を救って。
    家族が、自分が幸せになりたかっただけだったんだよな。けどさ……。それで良いんじゃねえの?」

球磨川『…………』

杏子「他人も救って、自分も幸せになる。十分じゃねえか。
    偽善だろうが何だろうが、さやかを助けたいって気持ちは少しも変わりゃしない。
    だからあたしはこれから……自分のために、さやかを救い出す。あたしの都合で、あたしの勝手でね」

まどか「杏子ちゃん……!」

球磨川『……ふぅーん。そ、じゃあ良いや。きみの都合の良いように、好き勝手にしなよ』

杏子「そうさせてもらうよ」

あたしたちは球磨川を残し、さやかの結界を進む。

まどか「…………」

杏子「あんた、揺らいじゃいねえだろうな」

まどか「え……?」

杏子「さっきの球磨川の言葉。気にしてんじゃねえだろうな、つってんだ」

まどか「えっと……それは……」

杏子「はぁ……ったく。安心しなって。あんたは間違いなく、さやかの一番大切な友達だよ。あたしが保証する」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「あいつ、最後まで後悔してたよ。“一番大切な友達を傷つけた”ってね。心当たり、あるんじゃない?」

まどか「あ……」

杏子「だから自信持ちなって。あんたがしっかりしなきゃ成功するもんも成功しないよ?」

まどか「う、うん!ごめんね、杏子ちゃん。ありがとう」




まどか「さやかちゃん!お願い!話を聞いて!元のさやかちゃんに戻って!!」

杏子「さやか!あんた、いい加減……ぐっ!!」

まどか「杏子ちゃん!!」

倒れた杏子に向かって手を伸ばす“さやか”……。
それに気付いたまどかは、杏子の前に出る。
そして。

まどか「ぁ……さやか、ちゃん……おねがい……だから……!」

杏子「っ……!さやかァ!!」

杏子「あんた、信じてるって言ってたじゃないか……!その力は人のために使うもんだって……!」

さやかの腕を切り落とし、床は崩れ、世界は反転する。

頼むよ、神様……。
こんな人生だったんだ……。
せめて一度くらい……幸せな夢を見させて……。

ほむら「杏子……!」

気付けば、暁美ほむらがそこに居た。
気を失ったまどかを抱いている。

杏子「……よお」

ほむら「あなた……」

杏子「悪い……その子を頼む。あたしの馬鹿に付き合わせちまった」

ほむら「っ……!」

杏子「足手まといとは戦わない主義なんだろ?良いんだよ、それが正解さ。
    ただ一つだけ、守りたいものを守り通せば良い。……はは、なんだかな。
    あたしだって、今までずっとそうしてきたはずだったのに」

ほむら「…………」

杏子「行きな。こいつはあたしが引き受ける」

全魔力を解放する。
周囲は淡い炎に包まれ、巨大な槍が次々と出現する。

杏子「……心配すんなよ、さやか。一人ぼっちは、寂しいもんな。良いよ、一緒に居てやるよ……さやか」

球磨川『だからあ、それがおかしいんだって』

球磨川……!?

杏子「っ……なんでこんなところに……!?」

球磨川『別に?ちょっと通りかかっただけだけど』

しかもよく見るとコイツ、何か背負って……まさか……!?

杏子「さ、さやか!?」

球磨川『え?何言ってんの?さやかちゃんならきみの目の前に居るじゃないか。これはただの抜け殻だよ』

杏子「っ……!さやかを離せ!」

球磨川『いやだ』

杏子「てめえっ……!こんなとこにさやか連れて来て、何が狙いだ!」

球磨川『だから通りすがっただけだって言ったじゃん。人の話はちゃんと聞きなよ』

杏子「くっ……!さやかを離す気がねえなら、とにかくここから離れろ!でないとあんたまで巻き添えくっちまうぞ!」

球磨川『佐倉さんさあ。中ボス相手に自爆技なんて使っちゃってどうするの?
     そういうのってラスボス相手に使うものでしょ普通』

杏子「何わけわかんねえこと言ってんだ……!こいつだって……さやかだって!
    今はあたしの魔力で抑えちゃいるが、いつまでもつかわからねえんだぞ!さっさと……」

球磨川『いやだ。逃げない』

杏子「っ!?今は意味わかんねえ我侭言ってる場合じゃねえんだぞ……!」

そういえば、マミさん生きてるの忘れてた

球磨川『自分勝手だよねー杏子ちゃん。自分は自分の都合で勝手にするとか言っといて、
     僕の勝手は許さないとか、ほんとに自分勝手で都合が良すぎるよね。僕の都合も考えてよ。
     ていうかさ、やっぱり無理だったじゃん。さやかちゃん助けるなんてさ。あははっ!』

杏子「……笑いたきゃ笑え」

球磨川『うん。笑ったよ。……僕は最初から思ってた。どうせきみたちには無理なんだって。
     鹿目さんはさやかちゃんの友達なんかじゃないし、佐倉さんに至ってはただの知り合いだよね。
     きみ、一度でもさやかちゃんに名前で呼ばれたことあるの?
     それなのになんか勝手に命張って自爆技なんか使っちゃおうとしてるし!
     重いんじゃない、そういうの。超迷惑でしょ』

杏子「っ……わかったよ、あんたの言い分はわかった。だからさっさと……」

そこでふと球磨川は視線を外し、魔女化したさやかに向かって、満面の笑みで言った。

球磨川『だからさ。こんな子放っといてもう帰ろうよ、さやかちゃん!』

……目を疑う、なんてのは比喩表現だと思ってた。
だが……本当に自分の目が信じられない。
確かに。
確かにさっきまで。
いや、さっきなんてもんじゃない。
“今まで”。
目の前には、魔女化したさやかが居たんだ。
それなのに、……気が付くと居なくなってた。
違う。
ずっと気は付いていたのに、いきなり居なくなったんだ。
そして……魔女の居た場所には、さやかのソウルジェムが落ちてた。

知らない間に、魔女の結界も解けている。
球磨川がソウルジェムを拾った。

球磨川『お疲れ、佐倉さん。いつまでそんな槍の上に乗ってるの?』

杏子「な……なっ……!?」

あたしは魔法の発動を解除する。
いや、解除せざるを得なかった。
魔力を消費しすぎていたため、がくんと膝が落ちてしまう。
もう、意識を保つのも危ない……。
球磨川は、拾ったソウルジェムをさやかの胸の上にそっと置いた。

さやか「…………っは」

ドクン、とさやかの体が動く。

さやか「あ……えっと……あたし……」

球磨川『おはよう、さやかちゃん。魔女になった気分はどうだった?』

そこで、あたしの記憶は途絶えた。

あたし、一体……?
目が覚めたら、球磨川……?
なんで……いや、今は球磨川の存在より……。

さやか「えっと……。魔女に……なった……?」

球磨川『あれ。覚えてないの?』

……いや、ちょっと待て。
そうだ、あたし確か……駅のホームで、佐倉杏子に会って……それから……。

さやか「…………ぁ」

体中の血流が逆流したような感覚。
思い出した。
あたし……あたし……!

さやか「ぁ……あぁあああああ!」

俺クマの為なら裸エプロンになるわ

体の全てを、心の全てを、呪いで埋め尽くされる感覚。

球磨川『良かった、全部思い出したんだね』

さやか「あたし……!あんな……あんな……ごめんなさい、ごめんなさい……!」

球磨川『ほーらね。僕の言った通りでしょ?
     さやかちゃんは自分勝手で、我侭で、自分本位で、自己中心的で、無責任で』

さやか「っ…………!」

球磨川『自分なら大丈夫だと思った?その他大勢は魔女になっても、
     自分だけは漫画の主人公みたいに、魔女になんてならないと思った?』

さやか「ごめん、なさい……!」

球磨川『甘えよ』

厳しい球磨川の言葉に、身が震える……しかし。

球磨川『が、その甘さ、嫌いじゃあないぜ』

さやか「……え?」

戯言シリーズとまどマギのクロスSSが読みたい

球磨川『僕なら、さやかちゃんの欠点(すべて)を理解してあげられる。
     自分勝手さ(すべて)、我侭(ぜんぶ)。
     自分本位主義(あれ)も、自己中心主義(これ)も、無責任さ(なにもかも)。
     ぜーんぶ理解してあげられる。だって。僕ときみは。過負荷(ともだち)なんだから』

さやか「えっ……と……」

球磨川『もう嫌でしょ?怖いでしょ?魔女になんてなりたくないでしょ?』

さやか「っやだ……!絶対に、やだっ……!」

球磨川『僕と一緒に居れば、もう二度と魔女になんてならない。魔女と戦う必要もない』

さやか「……球磨……川……」

>>738
双識「僕と契約して妹になってよ!」まどか「え?」ですね

球磨川『だからさ、僕と一緒に居ようよ。そして、毎日毎日、マミさんの家でお茶をしよう。
     放課後はマミさんの家によって、たくさんお喋りして。放課後ティータイムを満喫するんだ。
     休日はみんなで出かけるのも良いかもね。ちょっとくらいなら僕だって奢ってあげられるよ。
     なんせ、さやかちゃんは、僕の、友達だからね!』

さやか「…………」

球磨川『今までいっぱい意地悪してごめんね。
     それもこれも全部さやかちゃんの気を惹きたいがためだったんだよ。
     僕はずっとずーっと、さやかちゃんと仲良くなりたかったんだ。
     だから、ね。おいで、さやかちゃん。僕のところに。僕たちのところに』

さやか「…………うん、わかった。ありがとね、球磨川……」

球磨川『水臭いな。僕たち親友だろ?』

俺の過負荷

アイアンメイデン
 童貞

ほむら「……ょぅこ……杏子……!」

杏子「ん……。っ!さやかっ……!」

ようやく気が付いた杏子は、勢いよく上半身を起こした。

杏子「……ほむら」

ほむら「いったい何があったの?様子を見に戻ってきたら、あなたが倒れてて……」

杏子「さ、さやかは!?さやかはどこに行った!?」

ほむら「落ち着いて、杏子。忘れてしまったの?美樹さやかは魔女化して、あなたは……」

杏子「違う!そうじゃねえ!さやかは元に戻ったんだ!元のさやかに戻ったんだ!!」

ほむら「……!?あなた何を……?」

結局、中学生時代に何があったのかも
ほとんど分かっちゃいないんだよな

球磨川が瞳に話した事もどこまで事実なんだか
1から10まで全部嘘かも知れん

杏子「そ、そうだ……アイツはどこいった?球磨川の奴は……!?」

ほむら「球磨川……?」

どうして今アイツの名が……?
……もしかして……!

杏子「あの球磨川って奴が魔女になったさやかに近付いて、そしたら……」

ほむら「魔女が消えて、美樹さやかが戻ってきたのね」

杏子「あ、あぁ……。信じて、くれるのか……?」

ほむら「信じざるを得ないわ……。あの男にはそれができるもの」

杏子「どういうことだ……。アイツ、一体何者なんだ……?」

曲識「此処が見滝原か」

良い予感がしないスレタイ

>>764
中学生は範囲内か否か

ほむら「球磨川禊……アイツの正体は分からない。素性も、目的も。
    ただ1つわかってるのは……アイツの力。“大嘘憑き(オールフィクション)”」

杏子「オール……フィクション……?」

ほむら「すべてをなかったことにするなんていう、馬鹿げた力よ」

杏子「なんだそりゃ……意味わかんねえ」

ほむら「私もその目で見なければ信じなかったでしょうね。球磨川禊はこの力を使って、死んだ巴マミを甦らせた」

杏子「……マミの死を、“なかったこと”にしたってかい」

ほむら「理解が早くて助かるわ。とにかく、あいつには美樹さやかの魔女化を解くこともきっと可能なの。
    美樹さやかの魔女化を“なかったこと”にしたんでしょう」

QB「興味深い話をしているね。僕も混ぜてもらって良いかな」

零崎は脱線だったな
しかしりすかなら……

杏子「……てめえ……」

QB「まさか球磨川禊がさやかの魔女化を解くとはね。まったく、余計なことをしてくれた」

ほむら「……どういうこと」

QB「杏子がさやかを救おうとしてなんらかの形で戦闘不能に陥る。
   それによって、ワルプルギスの夜を倒すにはまどかが魔法少女としての力が不可欠になる。
   そういう予定だったんだけどね」

杏子「あたしを騙しやがったのか……!」

QB「僕は嘘なんかついてないだろ?美樹さやかを元に戻せるなんて一言も言ってないし、前例はないとちゃんと断りもしたはずだよ」

杏子「ふざけんな!」

ほむら「落ち着いて、杏子。こいつはこういう奴よ。何を言っても無駄」

杏子「くっ……」

QB「かばってくれたのかい?暁美ほむら」

ほむら「笑えない冗談はやめて。また蜂の巣になりたいの?」

QB「それはそうと、今は球磨川禊について話すべきじゃないかな。
   正体も目的もはっきりしない分、僕より性質が悪いと思うんだけど」

ほむら「性質の悪さは自覚してたのね」

QB「あれだけ言われればね」

杏子「おい、ちょっと待て。あたしはこいつの正体も目的も知らねえぞ」

ほむら「そうだったわね……教えておくわ」



杏子「……笑えねえな」

ほむら「えぇ。でも理解できたわね」

杏子「こいつが人間を家畜同然にしか考えてないってことくらいはね」

QB「家畜同然とは少し言い過ぎじゃないかな。
   僕たちは君たちを曲がりなりにも知的生命体として認めた上で、意思も尊重してる。
   牛や豚を問答無用で殺して食べる君たちとは違うと思うよ」

ほむら「……まあ良いわ。本題に入りましょう。インキュベーター、あなた球磨川禊について何か知らないの?」

QB「彼の目的は検討もつかないし、行動の予測もさっぱりつかない。
   僕に都合の良いことをしたと思えば都合の悪いことをする。君たちと敵対したかと思えば、味方紛いの行動もとる。
   球磨川禊は極めつけのイレギュラーだ」

杏子「つまり何もわかんねえんだな、インなんとかさんよお」

QB「残念だけどそうなるね」

ほむら「ならあなたに用はないわ。消えなさい」

QB「実は君たちが僕に用がなくても、僕は君に用があるんだよ。暁美ほむら」

ほむら「……何」

QB「球磨川禊とは関係ない話になってしまうけれど、ちょっと確認したいことがあってね。
   君の魔法は時間操作だったね……時間遡行者、暁美ほむら」

杏子「時間遡行……?確かに以前、さやかの結界で時間を止めてたが……あんたそんなことも出来たのか」

QB「君は、君の望む未来を得るために、何度も時間を繰り返して来たんだろう?」

ほむら「…………」

QB「それなら、納得のいく仮説が立てられる。鹿目まどかの、途方もない魔力量について。原因は君にあったんだ」

ほむら「……どういうこと」

QB「ほむら。君が時間を繰り返すごとに、まどかは強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?」

ほむら「……!」

QB「やっぱりね。魔法少女としての素質は、背負いこんだ因果の量で決まる。
   君は鹿目まどかのために時間を繰り返すうちに、いくつもの並行世界の因果の束を、
   1人の鹿目まどかという少女に集約させてしまったんだよ」

杏子「……ってことはつまり……!」

QB「お手柄だよ、暁美ほむら。君はまどかを最強の魔法少女に育ててくれた」

ほむら「っ……」

杏子「……ふざけんな、何がお手柄だ。これ以上何か言うとタダじゃ済まねえぞ」

QB「言われなくても、僕の用はこれで済んだよ。じゃあね、杏子、ほむら」

ほむら「…………」

杏子「おい、ほむら……」

ほむら「……大丈夫よ。少し面食らってしまったけれど、私の目的は変わらない」

杏子「……そっか、なら良いんだけどさ。
    あんた昔は……ってのも変か。時間を繰り返す前は、まどかと仲良かったのか」

ほむら「……えぇ。そうね」

杏子「……どのくらい時間を繰り返したんだ」

ほむら「忘れてしまったわ、そんなこと」

杏子「……そっか」




……いよいよ明日だ。
明日、この見滝原にあいつが……ワルプルギスの夜が来る。
今回は杏子との共闘も実現する。
彼女の実力は折り紙つき。
これならきっと、あのワルプルギスの夜も……。
さっきまで杏子と2人で対策を立てていたが、彼女は既に帰り、今は家に1人。
何度見たか分からない資料を眺めていたその時、呼び鈴がなった。

まどか「……入って良いかな」

まどか「……これが、ワルプルギスの夜……?」

資料の1つを見ながら、まどかが言う。

まどか「杏子ちゃんが言ってた。すごく強い魔女を倒すために二人で戦うんだって……ずっとここで準備してたんだね」

ほむら「…………」

まどか「町中が危ないの……?」

ほむら「……あいつは、結界に隠れて身を守る必要なんかない。一度具現化しただけで何千という人が犠牲になるわ」

まどか「な、なら、絶対にやっつけなきゃ駄目だよね」

ほむら「…………」

まどか「本当に、杏子ちゃんと2人ならやっつけられるの……?」

ほむら「あの子は強いわ。もちろん、私もよ。二人で組めば間違いなく倒せる」

まどか「……そう、なんだ……」

ほむら「……用はそれだけかしら」

まどか「え、えっと……」

ほむら「今日はもう遅いわ。帰った方が良い」

まどか「あ、あの……ほむらちゃん……!」

ほむら「何?」

まどか「……頑張ってね……私、その……ほむらちゃんのこと、信じてるから……!」

ほむら「……ありがとう。それじゃ、おやすみなさい」

まどかが信じてくれる、居てくれる。
それだけで私は頑張れる。
あの子は私の、最後に残った道しるべ。
あの子を救うためだけに、私は……。

その時。

 ピーンポーン

再び、呼び鈴が鳴った。
チェーンを付けたままのドアを開ける。
すると、

球磨川『入って良いかな』

ほむら「…………」

球磨川『とりあえずあがって良い?立ち話もなんだしさ』

ほむら「立ち話で十分よ。何をしに来たの?」

球磨川『教えて欲しかったら中に入れて頂戴』

ほむら「……相変わらず口が減らないのね」

球磨川『良いじゃない、減るもんじゃないし』

そう言って球磨川がチェーンに手をかけた途端……チェーンなんて最初から“なかった”かのように消滅する。

ほむら「っ……」

球磨川『ごめんね。だって外寒かったんだもん。おじゃましまーす』

ほむら「それで何の用?時間が惜しいから手短にお願いするわ」

球磨川『安心してよ。10分もあれば十分だから』

ここで球磨川は一呼吸起き、ほむらを指差す。

球磨川『お前、タイムリープしてね?』

ほむら「…………」

球磨川『あれ。手短すぎた?キュゥべえちゃんに聞いたんだよ。ほむらちゃん、時間操作系の魔法なんだってね。
     すごいなあ憧れるよ羨ましい。時間止めてあんなことやこんなことし放題じゃん』

ほむら「……ふざけに来たのなら帰りなさい」

球磨川『まあまあ、人の話は最後まで落ち着いて聞きなよ。
     それで本題なんだけど、ほむらちゃん、鹿目さんを救うために並行世界を移動してるんだって?』

ほむら「…………」

球磨川『それで、この時間軸の鹿目さんをもし仮に万が一救えたと仮定して、その後どうするの?』

ほむら「……この町を去るわ」

球磨川『あれ、へぇー。そうなんだ』

球磨川『意外だなあ。それはまたどうして?』

ほむら「私は、まどかさえ救えればそれで十分なの。まどかが幸せに暮らせればそれで良い。
    違う時間軸を生きてる私は、まどかと長く接触するべきでない。だから……」

球磨川『え?何言ってんのほむらちゃん』

ほむら「え……?」

球磨川『違う違う。僕が訊いてるのは、“他の時間軸の鹿目さんを救いに行かないのか”ってことだよ』

他の時間軸の……まどか……?

球磨川『おいおいまさか、この時間軸の鹿目さん一人だけを救って満足する気だったのかい?
     それって変だよね。鹿目さんはここに居る一人以外にも、何千何万何億どころじゃない、無限に居るんだよ。
     それなのに、無限分の一の鹿目さんを救っただけで満足しちゃうなんて。そんなの絶対おかしいよ』

ほむら「……それは」

球磨川『あーそう言えばさ。今までの時間軸はどうだったの?』

ほむら「っ……!」

>>793
糞ワロタ

球磨川『何回も何回も繰り返して来たんだよね。ってことは、何人も何人も鹿目さん、死んじゃってるってことだよね。
     いや、そうとも言えないか。魔女になっちゃってるかも知れないんだ。
     魔女に殺された鹿目さん。魔女になっちゃった鹿目さん。魔法少女に殺された鹿目さんも居るのかな。
     もしかして、ほむらちゃんに殺された鹿目さんも居たりして!』

ほむら「っ……!!」

球磨川『あはは、さすがにそれはないか。ごめんね、ちょっと言い過ぎちゃったよ。
     だってほむらちゃんが人殺しなんて、するわけないもんね。さすがに人殺しは引くわー。
     あ、僕が引くって言ってるんじゃないよ、安心して。普通の人は絶対引いちゃうよねってこと。
     もちろん普通の人な鹿目さんも、自分殺しなんかに救われたいなんて絶対に思わないよね。
     だって考えてもみてよ。自分を殺した張本人が何食わぬ顔で自分と接触してるんだぜ?
     吐き気がするよね、気持ち悪い』

ほむら「私は……!」

球磨川『大丈夫だよ、僕は信じてる。僕はほむらちゃんが殺人鬼だなんて思ってないから。
     まどかちゃんだってもちろんそうだよ。ほむらちゃんが自分を殺しただなんて、これっぽっちも思ってない。
     だからこそ、ほむらちゃんのこと信じていられるんだからね。
     うーん……だけどさ。ほむらちゃんが今までたくさんの鹿目さんを見殺しにしてきたのも事実なんだよね』

ほむら「み、見殺しになんて……」

球磨川『してないの?じゃあ鹿目さんが魔女になっちゃった時。
     ほむらちゃんは最後まで諦めずに鹿目さんを元に戻そうと頑張ったんだね!杏子ちゃんみたいに!
     まさか元に戻す努力もせず、早々に諦めて時間を戻したなんてことはないよね?』

ほむら「っ……ぅ……!」

球磨川『まあ長々と喋っちゃったけど、つまり僕が言いたいのは……。
     あーごめん、まとめるのめんどくさいや。ほむらちゃん、悪いけど自分で考えといて。
     それじゃそういうわけで。ばいばい、またね。
     ……あれ、このドア、チェーン付いてないんだ。不便だなあ。
     これじゃあ変な奴から身を守れないじゃないか』

球磨川禊は、行ってしまった。
私はしばらく動けず、呆然と彼が出て行ったあとの玄関を見つめていた。




まどか「ほむらちゃん!やったね!ついにワルプルギスの夜を倒したよ!」

杏子「へへっ!ま、あたしが付いてりゃ当然じゃねえの?」

さやか「なーに言ってんの!このさやかちゃんの最後の斬撃みたでしょ?功労賞はあたしだね!」

杏子「はぁ!?あんたあたしの足引っ張っただけじゃねえか!」

さやか「何よー!なんならここで決着つける!?」

杏子「おー臨むところだ!」

マミ「はいはい二人とも、ケンカしないの。みんなで協力したからこそ倒せたのよ?」

ほむら「そうね、巴マミの言う通りよ。みんなの力があったからこそ、未来を掴めた。まどかを救うことができた……」

まどか「ほむらちゃん……ありがとう!」

ほむら「まどか……」

まどか「それじゃ、次の時間軸の私も救ってきてね!頑張って、ほむらちゃん!」

ほむら「…………え?」

「そうだよ、ほむらちゃん。私はまだまだいっぱい居るんだから」

「ほむらちゃんだったら、他の私たちもみんな救えるよね」

「良いなあ、みんな。私なんてワルプルギスの夜に殺されちゃったのに」

「あなたはまだ良いよ……私なんて普通の魔女にだよ?」

「私は魔女になっちゃって……見捨てられたんだ」

「私は、ほむらちゃんに殺された」

「痛かったなあ……知らないでしょ、ほむらちゃん。ソウルジェム割られるのって、すごく痛いんだよ……」

「さやかちゃんは幸せだね。魔女になってもあんなに必死になってもらえるなんて。
 ほむらちゃんなんかじゃなくて杏子ちゃんだったら私もああしてもらえたのかな」

「どうしてほむらちゃんは私を見捨てたの?助けようとしてくれなかったの?すぐ諦めちゃったの?」

違う……私は……諦めてなんか……。

「諦めてたよね。その時間軸の私を諦めて、別の私に気が向いてた」

「どの時間軸の私も鹿目まどかなのにね。おかしいよね」

「世界をやり直せるほむらちゃんには分からないかもしれないけど……」

「私には1つの世界しかないんだよ。今居る時間軸が私のすべてなんだよ」

「このまどかが死んでも、次のまどかが居る。次のまどかが死んでも、その次が居る」

ごめん……なさい……。

「ほむらちゃんはそんな風に考えて」

ごめんなさい、ごめんなさい……。

「何人もの私を。鹿目まどかを。ううん……マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも」

ごめんなさい……!ごめんなさい……!

「殺してきたんだ」



ほむら「っっ!!!……はあっ……はあっ……はあっ…………夢……ね……」




杏子「……すっげえ風……。ついに来たみたいだね」

ほむら「…………」

杏子「……おい」

ほむら「え……あ、何かしら」

杏子「ちょっとちょっと、緊張してんの?しっかり頼むよ。あんたの魔法がなきゃさすがに厳しいんだからさ」

ほむら「大丈夫よ、ヘマなんてしないわ」

昨晩の球磨川禊の言葉、そして今朝の夢……。
いや、それでも。
ワルプルギスの夜を倒す。
この目的自体は変わらない。
だから……。

ほむら「行きましょう、杏子。絶対に倒すわよ」

杏子「おう!足引っ張んじゃねえぞ!」




まどか「……ほむらちゃんと杏子ちゃん、2人なら勝てるって本当……?」

QB「それを否定したとして、君は僕の言葉を信じるかい?」

まどか「…………」

QB「暁美ほむらは二人でなら勝てると確信しているようだけど、彼女はワルプルギスの夜の本当の強さを知らない。
   今までどれだけ戦ってきたかは知らないけどね」

まどか「え……ほむらちゃん、ワルプルギスの夜と戦ったことがあるの……?」

QB「君は何も聞かされていないのかい?そうだよ。もっとも、僕も実際に見たわけじゃないけど。
   何度も何度も戦ってきて、そのたびに負けているらしい。同じ時間、同じ場所でね」

まどか「……どういう意味……」

QB「本当に何も知らないんだね。良いだろう、教えてあげるよ。暁美ほむらと、その過去を」




まどか「……そんな……」

QB「彼女は余程君に思い入れがあるようだね。一つの固体にそれだけ固執するなんて、僕には理解できないよ。
   けれどそのおかげで、君は今の途方も無い魔力を手に入れた。
   その意味でも、君は彼女に感謝するべきかも知れないね」

まどか「……さっき言ってたよね。ほむらちゃんは、ワルプルギスの夜の本当の強さを知らないって」

QB「何か奥の手を隠しているだとか、そういった勝算があれば話は別かもしれない。
   だけど、いくら杏子と二人がかりとは言え、僕には到底彼女たちだけでワルプルギスの夜に勝てるとは思えない。
   まぁそれでも、これは僕の憶測に過ぎないからね。真実を知りたければ、実際にその目で見てみると良い。
   彼女たちがどこまでワルプルギスの夜と戦えるのかを」

まどか「…………」

QB「そうなればもちろん僕も付きそうよ。そうすれば、最悪の事態は免れることができるかも知れないからね」

まどか「私が……あなたと契約するってこと?」

QB「わかってるじゃないか。君が契約すれば、運命は覆し得る。ワルプルギスの夜を倒すこともきっと可能だろうね」

まどか「……連れて行って。ほむらちゃんと、杏子ちゃんのところへ」

杏子「くそっ……!おい、話が違うじゃねえか!!」

ほむら「私だって、想定外よ……!まさかこれほど……!」

まさか杏子と二人がかりでもほとんどダメージが通らないなんて思わなかった。
因果の糸が集中したまどかが如何に強大な力を持っていたか、今なら分かる……!

杏子「ちっ……!だが今は弱音吐いてる場合じゃねえな……!」

そうだ、ダメージは、少しずつ、少しずつだけど、確かに通ってる。
けど……。

ほむら「っ……はぁっ……はぁっ……!」

杏子「おいほむら!大丈夫か!」

ほむら「え、えぇ……。でも……」

ほとんどダメージを通せてないにも関わらず、もうすでに大量のグリーフシードを消費してしまった。
その時。

ほむら「っ!?」

杏子「しまっ……!!」

一瞬気を抜いたその直後、視界のすべてを、巨大なビルで覆われた。

杏子「……く、そっ……!油断した……!」

ほむら「…………」

2人ともビルの直撃を喰らい、あたしは今……下半身が完全に瓦礫に潰されちまってる。
痛みを遮断してるおかげで意識は保っちゃいるが、挟まれて身動きすら取れない。
少し離れた瓦礫の陰に、ほむらの足が見えた。

杏子「おい、ほむら。大丈夫か?生きてんなら返事しろ」

ほむら「…………」

杏子「おい、聞こえてんだろ?ほむら!おい!返事し……」

……ちょっと待て。
なんでだよ。
なんでだよ?
なんで……足はあそこにあるのに……こっちに……腕が……!?

杏子「くそっ……くそっくそっくそぉおっ……ぅあああ……!」

死んじまった……ほむらが死んじまった……!
その時、じゃり、と物音がして、音の方に目を向けると、

まどか「ほむら……ちゃん……?」

まどか……!?
なんであんたがここに……!?

QB「杏子は生きてるようだね。でもどの道その様子じゃ戦闘は無理そうだ」

杏子「くっ……てめえ……まどかに何させようってんだ……!」

QB「そんなこと、言うまでもないじゃないか」

まどか「……キュゥべえ……ほむらちゃんを生き返らせて」

QB「それが君の願いかい?」

まどか「……ごめんね、ほむらちゃん。でも私……ほむらちゃんが居ない世界なんていやだ。
    今まで私のために頑張ってくれたから……今度は、私がほむらちゃんのために、願いを使うね」

杏子「あんたまさか……全部知って……!?」

QB「良いだろう、鹿目まどか。君の願いはエントロピーを凌駕した」

杏子「まどかっ……!」

辺りは光に包まれて、そして……。

ほむら「……あれ……私……」

確か、目の前にビルが迫って、それから……。

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「え?」

まどか……?
何、その格好……。
嘘でしょ……まさか……。

まどか「……ごめんね」

ほむら「う……そ……!どうして……どうしてあなたは……!」

杏子「あんたのためだよ」

ほむら「……杏子……!」

私の体を挟んだ、まどかの反対側には杏子が立っていた。

杏子「ほむら、あんたさっきまで死んでたんだ」

杏子「それを、まどかの奴が願いを使って生き返らせた」

ほむら「どうして……なんで止めてくれなかったの!?」

杏子「……悪い。あたしだって瀕死だったんだよ。身動きも取れなかった。まどかが魔法で治してくれたんだ」

ほむら「……そんな……」

まどか「ほむらちゃん……ありがとう」

ほむら「え……?」

まどか「私のために、今までずっと頑張って来てくれてたんだよね?」

ほむら「まど、か……知って……?」

まどか「うん。キュゥべえに聞いちゃった。……ごめんね、今までなんにも知らなくて。
    ほむらちゃんが、私のためにあんなに頑張ってくれてたなんて……」

ほむら「……違う」

まどか「えっ……?」

ほむら「……違う……頑張ってなんかない……頑張ってなんかないよ……。
    私は、私は……!たくさんのあなたを見殺しにした……!
    やり直しが利くんだって、今回失敗しても次があるんだって!そうやって何回も!何人も!
    あなたを!杏子を!巴さんを!美樹さんを!諦めた!見捨てた!殺したの!!」

まどか「……そんなことない。そんなことないよ、ほむらちゃん」

ほむら「え……?」

まどか「さっきの“ありがとう”はね……全部の私からの“ありがとう”」

ほむら「全部の……?」

まどか「なんでだろ。でも分かるんだ。かつてあり得た過去、これからあり得る未来。
    全ての私がほむらちゃんの頑張りを知ったら、きっとみんな、ありがとうって言う。
    私なんかのために、ありがとうって。自信持って言える」

ほむら「な、“なんか”じゃないよ……。まどかは、私の、たった一人の大切な……!」

まどか「えへへ。ありがとう、ほむらちゃん」

まどか「この世界の私だとか、別の世界の私だとか、そういうのじゃ、きっとないんだ。
    私は私。一人だけ。鹿目まどかだけなんだよ。だからね、ほむらちゃん。
    私はほむらちゃんに、この世界を一生懸命生きて欲しい。
    たった一つしかない世界を、必死に生きて欲しいの。……ううん。一緒に生きたいの」

ほむら「まど……か……」

私は……まどかとは違う世界を生きてるんだと思ってた。
違う時間軸を生きてる私は人間じゃないなんて思ってた。
でも今……まどかが、それは違うって言ってくれた。
……私は……やり直しなんて考えずに、今この世界を、文字通り必死に生きるべきだった……!

杏子「へへ……ったく、ようやく元気になったみたいじゃん」

ほむら「……ごめんなさい。心配をかけてしまったわね。もう大丈夫よ」

まどか「それじゃ……ほむらちゃん、杏子ちゃん……。行くよ!」

その声と共に、まどかはワルプルギスの夜に向かって飛んで行った。

……待て。
何か忘れているような。
大切な何かを……。

杏子「おい、ほむら。何ボサっと突っ立ってんだ。あたしたちも行くぞ!」

ほむら「え、えぇ……」

私たちも瓦礫の中を飛び出す。
まどかを見ると……あの子の武器の弓矢を構えようとしているところだった。

杏子「でもさ、これで勝ちが見えて来たんじゃない?あいつの魔力量すげえんだろ?
    もしかして、ワルプルギスの夜一撃で倒しちゃったりしてねー」

ほむら「ッ!!」

そうだ、思い出した……!
以前のまどかは、その強大な魔力でワルプルギスの夜を一撃で倒し、そして……!

ほむら「まどか!だめぇえええええええ!!」

弓から、矢が放たれた。

しかし。

 「ッ…………!アハハ、ハ、ハハハハ!アハハハハアハハ、アハハ……ハハハハ!」

ワルプルギスの夜を、倒せてない……!?
それにまどかも、まだ“鹿目まどか”のままだ……。

杏子「ははっ、さすがに一撃とは行かねえか」

ほむら「……いえ、一撃だったわ」

杏子「は?」

ほむら「別の時間軸では、まどかはワルプルギスの夜を一撃で倒した」

杏子「えっ、マジかよ!?だったらおかしいじゃねえか。なんで今回のまどかは一撃で倒せなかったんだ?
    あいつ、あんたが時間繰り返すたびに強くなってるはずだろ?」

――インキュベーター。

――おや、魔女との戦いに集中しなくて良いのかい?

――どういうこと?以前、別の時間軸では、まどかはワルプルギスの夜を一撃で倒した。

――……一撃で?それは信じがたいな。
   いくらまどかの魔力量が多いと言っても、あのワルプルギスの夜を一撃で倒せるとは思えないよ。

――ワルプルギスの夜は間違いなく史上最大級の魔女だ。
   現にまどかは、確かに善戦してはいるけれど、一撃で倒せてなんていないじゃないか。

――それでもこれは事実よ。あの子は、ワルプルギスの夜を一撃で倒した直後、最悪の魔女になった。

――はぁ!?倒した直後に!?しかも最悪の魔女って……魔力量が強いと魔女も強いってわけか……!

――ふむ……。もしかしてこうは考えられないかい?その時間軸でのまどかは、“ワルプルギスの夜を倒したい”と、そう願ったんじゃないかな。

――……!

――並の魔法少女なら分からないけどまどかの魔力資質なら、たとえ相手が最強の魔女であってもその願いは叶うだろう。
   けれどさすがに一撃でワルプルギスの夜を倒すほどの魔力となると桁外れだ。
   そしてその願いに彼女の魔力のすべてを使ってしまったと考えると、早すぎる魔女化にも納得がいく。

――じゃあ、今のまどかは……。

――魔法少女としての強さは、どんな願い事で魔法少女になるかによって大きく変わってくる。
   まどかの願いは“命を甦らせること”。
   今の彼女の能力はどちらかと言うと攻撃よりも守り・回復に特化しているんじゃないのかな。

努力も何もかも引っくるめて台無しにするからなぁ、ヤツは

――……えーい!難しい話ばっかすんじゃねえよ!戦いに集中できねえだろ!
   話の内容は置いといてさ、ほむら。
   あんたさっき話してたばっかじゃねえか!このまどかとか別のまどかとか、そういうのじゃないって。

――杏子……。

――今はとにかく、ワルプルギスの夜を全力で倒すことに集中しようぜ!

――えぇ、そうね。悪かったわ……。早く倒してしまいましょう。



QB「それにしても……一撃か。できればそんな光景も見てみたいものだね」

遠く離れて戦いを見学するキュゥべえ。
しかし……見学者は彼だけではなかった。

球磨川『へーえ、あれがワルプルギスの夜かー。ていうか僕だいぶ空気だったよね。まあ慣れてるけどさ』

QB「君は彼女たちを手伝わないのかい?」

球磨川『冗談言わないでよ。魔女とか超怖いじゃん。
     魔法なんて使えないし魔女と戦ったこともないド素人にどうしろと?』

QB「ふーん。まぁ僕は構わないんだけど。
   ところで球磨川禊。そろそろ君の目的を僕に教えてもらえないかな」

球磨川『目的?え、何それ。知らないよそんなの。もしかして生きる目的とかそういうの?』

QB「訊きかたが悪かったようだね。まず最初に僕を殺した理由から教えてもらって良いかな」

球磨川『キュゥべえちゃんを殺した理由だって?おいおいキュゥべえちゃん』

球磨川は、やれやれと言うように首を振った。
その手には、どこから取り出したのか、いつの間にか巨大な螺子が。

球磨川『生き物が生き物を殺すのに理由が必要かい?』

屈託のない笑顔を浮かべたまま何の躊躇も無く、脈絡も無く。
球磨川はキュゥべえの頭に、螺子をねじ込んだ。
……しかし。
死体を見下ろす球磨川の背後から、すぐに声がかかる。

QB「……やれやれ。代わりはいくらでも居ると言っても、無駄に殺すのはやめてほしいな。もったいないじゃないか」

球磨川『……ふぅーん。やっぱりね。おかしいと思ったんだよ。
     きみを初めて殺した時、僕は“大嘘憑き”は使わなかったのに』

QB「きゅっぷい。そういうわけだよ。僕たちの種族は固体にはこだわ」

球磨川『はいグシャー』

死体を食べ終えたばかりのキュゥべえを、球磨川はまた殺した。

球磨川『ストレス発散には持ってこいだね!別にストレスなんてたまってないけど』

すぐに代わりのキュゥべえが現れる。

QB「だから、無駄に殺すのはやめて欲しいんだって。わけがわからないよ」

球磨川『わかった。もう二度と決して絶対にしないよ』

QB「わかってくれたなら良いんだ」

球磨川『それよりも……良かったね。鹿目さんが魔法少女になってくれてさ』

QB「そうだね。彼女が魔女になってくれれば、この宇宙の寿命はグッと長くなる。
   そうなれば僕のノルマは達成できるよ。それで、もう一度最初の話題に戻るけど。
   君の目的を教えて欲しいんだ。さやかを挑発したり脅迫したりした理由はなんだい?」

球磨川『やだなあ挑発とか脅迫だなんて。
     それじゃあまるで僕が悪者みたいじゃないか!もっと柔らかな表現を遣ってよ』

QB「それなら懐柔と言えば良いかな」

球磨川『ま、懐柔もした覚えはないけど。ただ僕はさやかちゃんと友達になっただけだぜ?』

QB「マミを懐柔したのも友達になりたかっただけかい?」

球磨川『そうだよ』

QB「じゃあまどかや杏子を挑発したのも同じ理由かい?」

球磨川『ああ。それはだってほら!僕あの子たち嫌いだし』

QB「へえ……。意外だな。君にも好き嫌いなんて感情があるんだね」

球磨川『失礼だなあ。こんなに表情豊かなのに。僕にだって好き嫌いくらいあるよ』

球磨川はわざとらしくふくれて見せた。
そして続ける。

球磨川『佐倉さんも、鹿目さんも。彼女たちはプラス側の人間だ。
     気持ち悪いよねー。あいつら、何の見返りも求めずに他人のために動けるんだぜ?』

QB「僕には気持ち悪いという感覚は分からないけど、見返りのない献身が理解できないという点では同意だね」

球磨川『日本には昔から“情けは人のためならず”って言葉もあるくらいなのにさ。
     あいつら日本人じゃないよ、非国民だ!いやむしろ、非人間と言っても過言じゃないよね』

QB「それはちょっと論理の飛躍が過ぎるんじゃないかな」

球磨川『価値観の相違だね。とにかく、僕はあの子たちが嫌いなんだよ。
     だから挑発くらいしたって良いでしょ。殺したわけじゃないんだし』
     ……ていうか、どうなの?あっちの方は』

QB「戦いのことかい?やっぱりまどかが加わったのは大きい。
   さっきまで勝機の欠片すら見えなかったのに、今は互角と言って良い」

球磨川『あれ?その程度なんだ。僕はてっきり、鹿目さんは魔女にもならず、
     それでもワルプルギスの夜を圧倒的な強さで圧倒して平和が戻りましたー(笑)
     なんてご都合主義(バッドエンド)だと思ったんだけどな』

QB「君も含めてみんなワルプルギスの夜を甘く見すぎているようだね。
   さっきも言ったけど、あの魔女は史上最大級の魔女だよ。
   たった一人の魔法少女の力で圧倒できる程度の強さなわけないじゃないか」

球磨川『なぁーんだ!だったら良いんだ。安心したよ』

まどか「強い……!これが、ワルプルギスの夜……!」

杏子「どうだ、まどか!さっきまでのあたしらの辛さが分かったか!?」

ほむら「無駄口を叩く暇があったら集中して……!」

杏子「わーってるよ!くそっ!」

まどかの力を以てしても、今は良いところ五分五分……。
勝負はどちらに転んでもおかしくない……。
こちらの戦力が少しでも欠ければ、途端に勝ちの目は薄くなるだろう。
まどかはおろか、私か杏子のどちらが欠けるわけにもいかないんだ……!

まどか「杏子ちゃん!後ろ!!」

杏子「え?」

まどかの叫び。
反射的に杏子の方を向く。
杏子の後ろに居たのは……武器を構えた使い魔。
そんな……さっきまで使い魔なんて居なかったのに、このタイミングで……!?

杏子「くっ……!」

杏子はとっさにガードするが、槍は破壊されてしまう。
その瞬間、もう一体の使い魔が現れた。
槍の生成が……間に合わない……!

ほむら「杏子ぉ!!」

私は杏子の方に駆け出すが……ふと視界の端に影が見えた。
別の使い魔……!?
時間停止も間に合わない。
あと一度瞬きをする暇もなく、私はこの使い魔に……。
視界の端に遠くでこちらに手を伸ばすまどかが見えた気がした……その時。
 
 ドゥン!ドゥン!ドゥン!

ほむら「……え?」

突如聞こえたその音と共に、使い魔は無数の細かな破片となって散った。
今の音、どこかで……?
……そうだ、それよりも……!

ほむら「杏子……!!」

慌てて杏子の方を見る。

杏子「……はは、マジかよ」

杏子を囲んでいた2体の使い魔は……真っ二つに割れていた。
使い魔を切ったと思しき剣、そしてそれを携える1人の魔法少女……。
そんなまさか……!

さやか「ピンチに現れる王子様かと思った?残念、さやかちゃんでした!」

マミ「ふー……。間一髪ってところね、暁美さん?」

>>877マジレスすると「姑息」と同じで 言葉ってのは時代によって変遷するものだよ

まどか「さ、さやかちゃん!マミさん!」

嘘……なんでこの2人が……!

マミ「ほらほら、今はびっくり場合じゃないわよ。ちゃんと集中しなきゃ。
   暁美さんや佐倉さんみたいな失態を犯したくはないでしょう?」

ほむら「……私のことを信用しても良いの?」

マミ「もう、今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ?憎まれ口ならあとで存分に聞いてあげるわ!」



杏子「さ、さやか……!あんた……」

さやか「なーによ。せっかくかっこ良く登場したってのに。もうちょっと感動してくれたって良いんじゃないの?」

杏子「……この馬鹿!心配ばっかかけやがって!」

さやか「さっきあたしに助けてもらったばっかの奴に心配とかされたくないわよーだ!」

杏子「へへっ……!悪かったな、手間かけさせちまってさ」

さやか「あたしも色々言わなきゃいけないことあるけど……でも今は!行くよ、杏子!」

杏子「……!おう!さやか!」

QB「へえ。これは意外だなあ」

見事な連携を見せる五人の魔法少女。
その様子を遠巻きに見ていたキュゥべえはぽつりと漏らす。
まさかこの町の魔法少女が集結してワルプルギスの夜と戦うとは、本当に想定外だ。
2人の魔法少女が戦力として加わったことで、戦局は一気に傾いた。
ベテランの巴マミだけでなく、美樹さやかまで戦力として大きく貢献している。

QB「彼女たちはもう戦えなくなったと思っていたんだけどね。
   それを狙って君も2人を懐柔したんじゃないのかい?
   それともこれも君の予定通りかな?球磨川禊」

そう言ってキュゥべえは球磨川の方に目をやる。
すると……。

球磨川『…………』

QB「……へえ。これはますますもって意外だ。君もそんな表情をするんだね」

球磨川『……さっきも言っただろ?僕は表情が豊かなんだって』

いつも飄々とした表情を浮かべていたその顔は今、見る影もなく歪んでいた。

QB「そのようだね。そしてその様子を見ると、これは君とっても誤算だったらしい」

球磨川『…………』

QB「彼女たちは、この調子なら本当にワルプルギスの夜を倒してしまうね。
   僕にとっては、単に死んでしまうよりは生き延びてくれた方が長い目で見ればありがたいから構わないんだけど。
   それも君にとっては誤算かい?」

球磨川『別に』

そう言い球磨川は、顔を手で覆う。
再び現れた表情は、いつもの球磨川のそれだった。

球磨川『あーあ、つまんない。結局いつもの愛と勇気が勝つストーリー(笑)かー。
     ピンチになったら奇跡的に都合良く仲間が助けにきてくれるとか、
     そういうのは週刊少年ジャンプの中だけにしてほしいよね』

がしがしと頭を掻いて、球磨川は踵を返す。

QB「どこへ行くんだい?」

球磨川『家。帰ってゲームでもするよ』

QB「やれやれ……」

やっぱり理解できないという様に、キュゥべえは球磨川からワルプルギスの夜へと視線を戻す。
そして、異変に気付いた。

QB「……あれは」

QB「球磨川禊、残念な知らせがある」

球磨川『何。これ以上残念なお知らせなんて聞きたくないんだけど。きみは僕を虐めてるのかい?
     もしかしてみんなで合体技でも使っちゃった?ホムマドマミアンサヤエントロピー(笑)とか?』

QB「そうじゃない。残念だけど君は家にも帰れないし、ゲームもできないみたいだ。
   というより、生を諦めるべきかも知れないね」

球磨川『?』

QB「ワルプルギスの夜を見てごらん。何か変化に気づかないかい?」

球磨川『…………あー』

QB「気付いたようだね。そう、上下が逆転しようとしている。
   というより、“元に戻ろうとしている”と言った方が視覚的には分かりやすいかな」

球磨川『うん、そうだね。それで?』

QB「あの魔女が“ひっくり返った”時、文明が“ひっくり返る”と言われている。
   つまりこのままだと、あそこで戦っている彼女たちはもちろん、この場にいる僕たちも間違いなく……」

そこまで言ったところで、急に球磨川の表情が輝いた。

球磨川『キュゥべえちゃん、どうしてそんな大事な話をもっと早く教えてくれなかったんだ!
     危うく僕は彼女たちの結末すら知らずに死んじゃうところだったじゃないか!』

 「アハハ……ハ、ハハ……アハ、ハハハ……」

……行ける。
これなら確実に行ける。
こちらのダメージも少なくはないけれど、ワルプルギスの夜も限界が近いはずだ。
ただ、グリーフシードはもう余裕がない。
ここで一気に決める!
……その時、みんな異変に気付く。

さやか「何……?」

マミ「ワルプルギスの夜が……逆さに……?」

逆さになる……というよりは、逆さだったのが元に戻ろうとしている……?
嫌な予感がする。
理由はないんだけど、漠然とした、でも何かとても恐ろしい予感がする。
そして、思い出す。
ほむらちゃんの家で見た資料のうちの1つに書いてあったことを。

“普段逆さ位置にある人形が上部へ来た時、暴風の如き速度で飛行し瞬く間に地表の文明をひっくり返してしまう”

つまり、今まさに……!

次の瞬間、辺りは強い閃光と暴風に包まれた。

ワルプルギス

全ての運命の不幸を無くそうとする。
地上をマホウで埋め尽くし、全人類を戯曲の中へと取り込もうとする動く舞台装置。

この全てが戯曲ならば悲しい事など何もない。悲劇ではあるかもしれないけれど、ただそおいう脚本を演じただけ。

ワルプルギスの夜で芝居は止まって、もう地球は一周だって回転しない。物語は転換しない。
明日も明後日も、ワルプルギスの夜。

……ワルプルギスの夜がその魔力を解放した時、文明が終わる。
私は知っていたはずだった。
知っていたのに……。
それなのに……!
なぜ気付くのが遅れたの……!
私のせいで、私たちの街が、世界が……!
まどかが、杏子が、巴さんが、美樹さんが……!

 「アハハハ……アハハハハ……」

あいつの笑い声が聞こえる……まだ笑ってる……私たちを嘲笑うかのように……!
……いや、待て。
笑い声が聞こえる?
おかしい。
どうして私は……。

ほむら「まだ……生きてる……?」

突風のせいでここ一帯はさらに酷い有り様になっているが、確認し得る限り、幸い町の方まで暴風の影響は出なかったようだ。
けれど、どうして……?
それだけあいつが弱っていたということかしら……。
瓦礫の山の中から、がらりと音がした。

杏子「なんなんだ……!くそっ!みんな生きてるか!?」

さやか「あたしは平気……。ていうか何よあいつ、まだあんな力隠し持ってたわけ……!?」

マミ「私も大丈夫よ。怪我も大したことないみたい。あなたたちも平気ね」

次々とみんな現れる。
良かった……みんな無事みたいだ。
……みんな?

ほむら「あれ……まどか、は……?」

マミ「鹿目さん……?本当、鹿目さんは!?」

杏子「まどか!おいまどか!どこだ、返事しろ!!」

さやか「どこにいんのよ!?まどかー!!」

私も懸命に探す。
……!!
居た……!
少し離れたところにまどかは倒れていた。

ほむら「まどかぁ!!」

私に少し後れて、みんなも大急ぎで駆け寄る。

ほむら「まどか、大丈夫!?まどかぁ!」

まどか「…………げほっ……げほっ……!」

まどかは生きてた。
……が。

まどか「はっ……はっ……はっ……はっ……」

呼吸は著しく乱れ、苦しそう……。
どうしてまどかだけ、こんな……!?
その時、

まどか「はっ……はっ……っ!ぐ……ぅアアアッ!!」

ほむら「まどか!?どうしたの!?まどか!」

マミ「暁美さん!鹿目さんのソウルジェム……!!」

ほむら「っ!?」

言われて初めて気付く。
まどかのソウルジェムの濁りが……限界近くまで……!!

まどか「はっ……はっ……ぁ……アアゥウウウ!ぅぐっ……」

ほむら「だ、誰か!!グリーフシードの予備は!?」

杏子「あ、あるぞ!1個だけ!!」

マミ「私も1つあるわ!」

2つのグリーフシード……。
良かった、どちらもまだ十分に使えそうだ……!
グリーフシードをまどかのソウルジェムに当て……浄化されていく。

さやか「……良かったぁ……。ごめん、あたしグリーフシード持ってなくて……」

ほむら「キャリアを考えれば仕方ないわ。気にすることじゃない。それに2つもあれば十分すぎるくらい」

……の、はずだった。

「嘘……どうして……!?」

2つのグリーフシードに穢れはどんどん溜まっていくのに……まどかのソウルジェムはほとんど浄化されない……!?
確かにさっきよりはマシになったが、それでも……。

球磨川『あれ、鹿目さん大丈夫?なんか今にも死にそうな顔してるけど』

QB「残念だけど、これじゃあまどかは戦えそうにないね」

杏子「てめえら……どういうことだ!説明しろ!」

さやか「なんで二つもグリーフシードあるのに、まどかのソウルジェムほとんど浄化されないのよ!?」

球磨川『もう二人とも。僕たちばっかり頼ってないでちょっとは自分で考えたら?』

その時、巴マミがハッとして呟く。

マミ「……鹿目さんの魔力量が、多すぎるのね……」

QB「その通り、さすがはマミだ」

球磨川『へぇ、そうなんだ。どういうこと?』

QB「ソウルジェムがどうやって濁っていくかは知ってるね?
   絶望、もしくは魔力消費で穢れは溜まる。魔力を10使えば、穢れも10溜まる。
   まどかほどの膨大な魔力量を使い切ったとなると、その穢れの量も……まぁ桁外れだろうね。
   そういうわけで、たった2つのグリーフシードなんかでこの穢れを浄化しきるなんて無理ってわけさ。
   まあ、今すぐ魔女化するのを防いだだけでも君たちにとっては良しとするべきじゃないのかな」

さやか「でもどうして突然、そんな量の魔力消費を……?」

その通りだ。
まどかのソウルジェムは、少し前まではまだ余裕があった。
少なくとも、あの暴風が起きるまでは……。

ほむら「っ……!」

QB「気が付いたようだね、ほむら。君も不思議に思ったはずだ。
   ワルプルギスの夜の魔力が解放されたにも関わらず、なぜ自分たちは生きているのか」

球磨川『凄いよねー鹿目さん。あの魔女、文明を滅ぼしちゃったりするんでしょ?
     そんな魔力を自分の魔力で相殺するなんてさ、異常だよね。化け物レベルだよ。
     その気になったら鹿目さんも文明滅ぼせちゃうんじゃないの?うわーこわーい』

その時。

まどか「……みん……な……大丈、夫……?」

ほむら「まどか!!」

まどか「えへへ……良かっ、た」

まどかは懸命に、笑顔と声を絞り出す。

まどか「ごめん……ね……私……もう、戦わない方が……良いみたい……。
    私……最悪の魔女に……なっちゃうんだよね……」

ほむら「…………!」

QB「最悪にして災厄の魔女になるだろうね。君の魔力資質を考えれば想像に容易い」

ほむら「まどか……ありがとう。私たちを、守ってくれて」

マミ「鹿目さん、今はゆっくり休んでて?」

杏子「あんたはあたしたちを守ったんだ。今度はあたしらがあんたを守る番だよ!」

さやか「まー、後はあたしらに任せなさい」

まどか「みん、な……」

まどかを囲んでいた4人は立ち上がり、未だ高笑いを続けるワルプルギスの夜を見据える。

球磨川『……えーっと、きみたち何言っちゃってんの?鹿目さんが居て、ようやく勝てる程度だったんだぜ?
     鹿目さん抜きでワルちゃんに勝てるわけないじゃん。
     勝機の欠片もないのに、正気の沙汰とは思えないよ』

QB「僕も彼に同意見だね。君たちが万全ならまだしも、疲弊しきっているんだ。
   まどかを欠いた今、ワルプルギスの夜を倒せる可能性は0と言って良い。
   無理に挑もうとすれば、君たちは間違いなく命を落とすだろう」

杏子「ばーか、やってみねえと分かんねえだろ?」

QB「死ぬのが怖くないのかい?」

マミ「死ぬのは……怖いわ。でも……」

さやか「死なないよ。あたしたちは絶対に」

ほむら「全員であいつに勝って、全員で戻ってくる」

球磨川『……ピンチになったら覚醒するとか、愛する者への想いが力を解放するとか。
     そういうのは週刊少年ジャンプの中だけだぜ?
     あー、言っとくけど僕はきみたち死んじゃっても生き返らせるつもりはないよ?』

球磨川のその言葉に、全員で答える。

 「そんなもの、いらない」

QB「行ってしまったね」

球磨川『…………』

QB「……見ていられないな。まるで歯が立ってない。終わりが来るのも時間の問題だろう」

球磨川『……だそうだよ、鹿目さん』

そう言って球磨川は、まどかの方を見る。
まどかは、4人の戦いから目を離さず、一心に見つめ続けている。

まどか「みんな……」

球磨川『残念だったね。きみがやったことは全部無意味になっちゃった。
     覚悟も、努力も、なにもかも。ぜーんぶなかったことになっちゃったんだ。
     彼女たちはもちろん、きみの町も、きみの家族も、そして、きみも。みーんな死ん……』

まどか「みんな、頑張って……!信じてる、から……!」

球磨川『…………』

さやか「やっぱ……強いわ……!」

杏子「へっ……どうしたさやか……もうギブアップか……!?」

さやか「っ……誰が……!」

マミ「良いわね、ライバルって……!お互いを高めあう存在……素敵、じゃない……!」

ほむら「……あなた、漫画の読みすぎじゃない……?」

マミ「あら、漫画って良いものよ……家に帰ったら、あなたにも、貸してあげるわ……」

誰一人として、諦めていない。
どう見ても勝ちの目は0なのに。
勝機の欠片も見えてこないのに。
それでも、魔法少女全員が、自分たちの勝利を信じて、戦い続けていた。
そして、もはや何度目か分からない全員での攻撃を仕掛けようとした、その瞬間。



 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!



無数の巨大な螺子が、ワルプルギスの夜に突き刺さった。

「えっ……!?」

その場に居た誰一人として、何が起こったのか理解できていない。
螺子?
攻撃?
誰が?
その螺子を知っているのは、ただ1人……と、そして1匹だけだった。

QB「球磨川禊……君は何を……!」

珍しく荒げられたキュゥべえの声は、全員の耳に届いた。

さやか「今の……球磨川が……!?」

皆の視線を浴びる中、球磨川はぼそりと言った。

球磨川『ワルプルギスの夜の存在を、なかったことにした』

それを聞いて私たちは、ワルプルギスの夜に視線を……移せなかった。
……存在しないものには、視線は移せない。

マミ「うそ……じゃあ……」

杏子「あたしたち……助かった……のか……?」

球磨川『…………』

まどか「球磨川……くん……?」

恐る恐る呼びかけるが、球磨川禊は黙っている。
その表情は今まで見たことないもの。
まるで、おもちゃを取り上げられた子どもが拗ねているような顔だった。

分からない。
なぜ球磨川禊は、こんなマネを……。
全員が抱いたであろうその疑問を最初に口に出したのは、

マミ「球磨川くん……あなた、どうして私たちを助けてくれたの?」

球磨川『別に。人が人を助ける理由なんて、“気に入らないから”で十分でしょ』

相変わらず不機嫌そうな表情を浮かべている。
それを見て、巴マミは……優しく微笑んだ。

「……ありがとう、球磨川くん」

さやか「あ、あたしからも一応、お礼言っとくわ。2回も助けられちゃったわけだし……」

美樹さやかもそれに便乗するような形で、球磨川に話しかけた。

さやか「あんたさ……相変わらず何考えてるか分かんないけど」

マミ「助けてくれたことは事実だものね」

球磨川『……』

マミ「球磨川くん。あなた、今でも私たちを、お友達だと思ってくれてるかしら……?」

球磨川『……マミさん、さやかちゃん……』

球磨川は顔を上げる。
そして……。

球磨川『残念だよ』

巴マミと、美樹さやかの体を、螺子が貫いた。

球磨川『あーあ、せっかく2人とは友達になれると思ってたのに』

まどか「マミさん!さやかちゃん!!」

2人とも地面に倒れ伏す。

杏子「ってめえ!!」

球磨川『うるさいなあ』

攻撃しようとした杏子だが、同じように一瞬で螺子伏せられる。

ほむら「杏子っ!!……球磨川、禊……!やっぱりそうやって、私たちを裏切るのね……!!」

球磨川『あはは!変なこと言うなあ、ほむらちゃん。
     裏切りって行為は信用されてることが前提で成り立つんだよ。
     きみは最初から僕を信用なんてしてないじゃないか。
     だから、僕は裏切ってなんかない。僕は悪くない』

ほむら「……許さない……!」

時間停止を発動しようとする……しかし。

ほむら「……!そんな……!」

時間切れ……!

球磨川『なに。何もしないの?だったら……もう何もしなくていいよ』

ほむら「くっ……!」

近付いてくる球磨川に苦肉の策で殴りかかるが、その拳はいともたやすく止められる。

球磨川『何もしなくて良いって言ってるのに。ほむらちゃんは頑張り屋さんだね』

ほむら「……!!」

そして、球磨川は、ほむらの腹に螺子をねじ込んだ。

まどか「ほむらちゃん!みんな!酷いよ……!あんまりだよ……!」

動かなくなったほむらを地面に放置し、球磨川はキュゥべえとまどかに近寄る。

まどか「どうしてこんなことするの……!球磨川く」

球磨川『ちょっと黙ってて。やることあるから』

まどかもねじ伏せ、キュゥべえに近付く。

QB「……球磨川禊。僕には本当に君が理解できない」

球磨川『良いんだよ理解不能で。それが僕たち(マイナス)なんだから』

QB「ワルプルギスの夜を消し、そして魔法少女たちに危害を加える。この行動に一貫性が見出せないよ」

球磨川『一貫性も何も、簡単なことだろ?僕は魔法少女も、魔女も、嫌いになったんだ。ついさっきね』

球磨川『せっかくマミさんも、さやかちゃんも。僕たちの仲間になってくれたと思ったのに。
     魔法少女(マイナス)として、無意味で、無関係で、無価値で、無責任な2人が大好きだったのに。
     2人とも立派な魔法少女(プラス)になっちゃったんだ。
     あんな気持ち悪い奴らと同類になっちゃったんだ。
     これも何もかも全部、魔法なんて力(プラス)があるから。魔女なんて存在があるから。
     彼女たちは意味を、関係を、価値を、責任を、取り戻した』

QB「……だから、憎むべき存在を消したということかい」

球磨川『そういうことだよ。だからね』

そういうと球磨川は、キュゥべえの耳を掴んで持ち上げた。

QB「……なるほど。魔法少女を生み出す存在であるこの僕も、君の憎悪の対象ということだね。
  僕も彼女たちと同じように殺す気かい?それなら無駄だとさっき言ったはずだけど」

球磨川『彼女たちと同じように?なに勘違いしちゃってるの?』

キョトンとした表情を浮かべ、球磨川は続けた。

球磨川『きみのことは、きみたちの存在ごとなかったことにさせてもらう』

QB「……それはやめた方が良い。僕たちインキュベーターは有史以前から君たち人類の発展に貢献してきたんだ。
   僕たちの存在をなかったことにすると、今の君たちの存在までなかったことになる」

球磨川『だからあ。なーに勘違いしちゃってるの?はっずかしー。“大嘘憑き”はそういう欠点(ちから)じゃないんだよ』

そういうと球磨川は、キュゥべえを掴んだまま空いている手で傍に落ちていたガラス片を素手で握りつぶした。

ガラス片は砕けるが当然、手はずたずたに裂け血まみれになる。

球磨川『これで、ガラス片の存在をなかったことにしても』

地面に落ちたガラス片は、跡形もなく消え去った。
しかし。

球磨川『僕の手は治らない。こういうことだよ。原因をなかったことにしても、結果はなかったことにならない』

QB「…………」

…………ああそうか。

球磨川『それじゃ。もう良いよね』

なんとなく分かった……これが……。

球磨川『ばいばい、キュゥべえちゃん』

“気持ち悪い”という感覚か。

球磨川『さよなら』




「ニュースをお伝えします。見滝原市に接近したスーパーセルは、一際勢力を増したかと思えば突然消滅しました。
その直後、現場では5人の少女が倒れているのが発見されました。
少女らはいずれも意識不明で病院に運ばれましたが、搬送先の病院で間もなく意識を取り戻しました。
5人とも外傷はなく、現在病院で詳しく検査を受けているとのことです」


杏子「おー!あたしらテレビに出てる!すげー!」

ほむら「いちいち大声を出さなくてもみんな見てるわ。騒がないで」

マミ「それに病院なんだし。静かにしてなきゃ迷惑よ?」

さやか「まったく杏子は子どもなんだからー。テレビに出たくらいで……」

まどか「あ、さやかちゃん今映った」

さやか「え、うそ!どこどこ!?」

私たちは全員、目が覚めたら病院のベッドの上だった。
球磨川に殺されたものとばかり思っていたけど、体に刺さった螺子も、傷も、いつの間にか消えていたらしい。
そして消えていたのは螺子だけでなく……。
ぽつりとまどかが呟く。

まどか「魔法少女のことも、魔女のことも、夢じゃ、ないんだよね?」

ほむら「えぇ。確かに私たちは魔法少女“だった”し、魔女とも戦って“いた”わ」

そう。
私たち全員、ソウルジェムも、魔法の力も、消えてなくなってた。
恐らく全部、球磨川禊が“なかったこと”にしたのだろう。
理由は分からない。

まどか「……なんだか複雑だね。戦わなくても良くなって、嬉しい気持ちももちろんあるんだけど。
    今でも魔女は存在し続けて、たくさんの人が犠牲になってるのかな、って……」

ほむら「……そうね」

それでも私は……正直、嬉しい気持ちの方がずっと大きかった。
やっと、まどかが幸せになる未来を掴めたから。
まどかと一緒に居られる……それだけじゃない。
杏子や美樹さやか、巴マミとも、これからは良好な関係を築けていけるかもしれない。

おいおい・・・「大嘘憑き」は『因果』の過負荷で
『原因』がないから『全てなかったことになる』の能力だろ・・・

だから私は……。

ほむら「私は、自分の運命をすべて受け入れるわ。それが戦いの運命でも、それ以外でも」

まどか「ほむらちゃん……。うん、そうだね。
    昨日も話したけど……たった1つの人生なんだもん。一生懸命、この人生を生きよう!」

ほむら「……えぇ、もちろんよ、まどか」


昨日?

……そんな話、したかしら。




球磨川『良かったね、ほむらちゃん。これからは罪(すべて)を忘れて何もせずに。
     ぬくぬくと、のうのうと、おめおめと、ぐだぐだと、平和な日常パートを歩んで行けるよ。
     頑張り屋さんのほむらちゃんのために、僕も頑張っちゃった。
     こんなサービス、めったにしないんだからね!』


おしまい

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