あかり「…」
京子ちゃん。
結衣ちゃん。
ちなつちゃん。
あの交通事故で皆が亡くなって…早いものだね、もう2ヶ月がたつよ。
あかり「…」ズズ
あかり「…」カタン
皆で集まってお茶を飲んでた頃は、あんなに狭く感じた部室だけど…
今は、あかり一人には悲しいくらいに広い空間です。
…皆
あかり「…寂しいよ…」
…なんで、死んじゃったの?
ここに来ても、やっぱり虚しいだけみたい。
皆との思い出が沢山詰まった場所。
今では思い出す度に、身が切れそう。
あかり「…」
帰ろう。
もう来るまいと思っているのに、なんでだろうなぁ。
つい足が向いちゃうんだよね。
ガチャ
あかり「…鍵」
生徒会室へ、返しにいかないと。
ガララ…
毎度のことながら、この瞬間は気まずい。
あかり「…失礼します」
千歳「あー、あかりちゃんやぁ」
部屋の奥から、先輩が駆けてきた。
生徒会室には、今は千歳先輩しか居ない。
あかり「あの、これ…」
千歳「部室の鍵な。はい、確かに」
千歳「あかりちゃん、やっぱりマメやなあ。別に、開けて閉めるくらいこっちでするのに」
あかり「…いえ」
先輩はいつも通りだ。私に対しては。
でも、教室なんかではやっぱり元気がないみたい。風の噂に伝え聞いていた。
気を使わせてしまっているのが伝わってくる。
申し訳ないとは思うが、なんでだろう?
ありがとう、ごめんなさいのたった二言でいいのに、言えない。
口が動かない。
そういえば。
あかり「…あ、の…先輩…」
千歳「んー?どしたん?」
あかり「せん…あ、綾乃先輩は…」
…やっぱり来てないんですか?
千歳「…あ」
あかり「あぇ、いや、その…」
急に先輩の表情が暗くなったのを見て、こっちまで慌ててしまった。
ちょっとした確認のつもりだったから、罪悪感を感じちゃう。
千歳「…おらへんよ」
千歳「綾乃ちゃん、もう長い事、学校にも来てへんのよ」
あかり「…え」
それは知らなかった。
赤座さん
杉浦先輩じゃないの?
千歳「…綾乃ちゃんは…」
あかり「…」
話は続くみたい。
突然張り詰めた空気に、思わず背筋がしゃんと締まる。
…綾乃先輩に、もしかして、何か…
千歳「…」
あかり「…」
ちょっとの間、気まずい空白があって、
千歳「…あはー」
あかり「へ…?」
先輩は、ふにゃっと笑った。
>>23
!?
千歳「あはは、いやあ…あかりちゃん、畏まってしもうて…あはは」
あかり「う…」
何だかわからないけど、あかりバカにされてるのかな?
千歳「ははは…あー、いやあ、あかりちゃん。あかりちゃんはやっぱりあかりちゃんやなぁ…」
ふー、と抱えていたお腹を解放して、杉浦先輩は涙をぬぐった。
目を白黒させている私に、言葉を続ける。
千歳「ごめんな、変な心配させてしもうて」
あかり「いえ、そんな…」
千歳「…大丈夫よー。綾乃ちゃん強い娘やから。…きっと一人で立ち直る」
あかり「…」
ズキリと、何かが胸を打った。
千歳「あかりちゃんが心配する事なんてなーんもあらへんよ?」
あかり「…だから―」
千歳「せやから、」
心配なんて…と続けようとした私に被せるように、杉浦先輩は言った。
千歳「…あかりちゃんは、自分の事だけ考えとっていいんよ」
私は、二の句が継げなくなった。
名前グダグダ過ぎワロタ
>>33
ごめんね
焦ったら駄目になっちゃうんだごめんね
千歳「いっぱいいっぱいなんやろ?見ててこっちまで辛いわあ」
あかり「あ…」
千歳「あかりちゃん人一倍優しいし、皆の事、大好きやったし…」
千歳「忘れろなんて無責任な事は言えんけど…な」
千歳「ちょっとくらい頼ってくれてもええねんで?」
あかり「…う…っ!」
涙目になって、飛び込みたい。
けど、ぐっとこらえた。
千歳「あかりちゃん?」
あかり「…ありがとう、ございます…先輩」
感謝の言葉は、意外とあっさり自然と口を衝いて出た。
千歳「いえいえー…でなくて」
引き留められるわけにはいかない。きっと我慢できなくなってしまう。
帰ります。と言い残して、私はさっと踵を返した。
千歳「お、おーい?あかりちゃーん?」
背中にかかる声にも構わず、私は歩いて逃げる様に立ち去った。
…頼ってええんよ、と言われても…
あかり「…あんな泣きそうな笑顔してるのに…」
はい頼ります、とはいけないよね。
…杉浦先輩に、本当に何かあったのかも?
嫌な想像を振り払い、帰り道を急いだ。
あかり「…」
頼る、か。
なんとなく、いがみ合ってる向日葵ちゃんと櫻子ちゃんが浮かんだ。
―――
千歳「…」
あかりちゃんは、逃げるように去って行った。
実際逃げられたと見ていいのだろうか。
…拒絶は辛いなあ。やっぱり。
千歳「…せや」
大丈夫。
千歳「大丈夫や、うん」
大丈夫、大丈夫…
―――
カチャカチャと食器の擦れる音がする。
作ってくれたお母さんや、食べ物には悪いけど、黙々と食事を口に運ぶ。
私が居るとお父さんもお母さんもあんまり喋らないし、
お姉ちゃんに至っては、ちらちらとこっちを見てはたまに泣きそうになってるのを感じる。
事故のあの日以来、笑顔で『大丈夫』を繰り返していたのが上っ面だっていうのを悟られたんだろうな、と思う。
クラスの皆にも先生にも、家族にだってそう。
半分上の空で、慰めや励ましの言葉もそんな感じで受け流していた。
お姉ちゃん達家族の中では、そっとしておこう、ということで意見が一致したのか、その内ほとんど話しかけられなくなった。
…やっぱり、皆気を使ってくれてるのかな。
優しい人たちに囲まれて育ってきた事に、今更ながら実感が持ててきた。
一体2か月も、私は何を塞ぎ込んでいたのかな。
早く立ち直るのが、延いては皆のためになるっていうんなら。
…無くなった3人の供養になるっていうんなら…
あかり「…ごちそうさま」
お箸を置くと同時にそう言うと、皆ぎょっとしたようにこっちを向いて固まった。
なんだろう?と少し考えて、心当たりに行きついた。
…『ごちそうさま』って久しぶりに言ったなあ。そういえば。
恐る恐るといった風に、お姉ちゃんが話しかけてきた。
今日学校はどうだったかみたいな、他愛もない話だった。
返事を返すと、泣かれた。
…
朝起きて、おはよう。
朝ご飯を前に、いただきます。
食べ終わって、ごちそうさま。
いつもは何気なくやっていることが、こんなに大事なことだとは。
離れて初めて理解できる大切さもあるんだとしみじみ感じる。
お姉ちゃんを見送って、
服を着替えて、歯を磨いてお団子をセットした。
ドアを開けて、待っている人がいないことに少しの違和感が私をくるむ。
首を横に振ってそれを振り払う。
玄関の方を向いた。
「いってきます!」
お母さんの「いってらっしゃい」が聞こえてくるのを確かめて、私は駆けだした。
秋風が頬を撫ぜ、木の葉を揺すった。
スカートを靡かせ、一路、学校へ。
教室の前に着いた。
深呼吸して、ドアを開く。
向日葵ちゃんと櫻子ちゃんは先に来ていた。
一歩一歩、足の裏から来る感触を確認するみたいに、踏みしめて歩く。
…大丈夫かな?あかり、ちゃんと普通に笑えてるよね?
二人の横に立った。
櫻子ちゃんが気付いて、こっちを見た。
目を合わすのも久しぶりだったからか、「…あ」と変な声を出して櫻子ちゃんが目をそらした。
…勇気出して、わたし!
あかり「…おはよう!」
俯いて本を読んでいた向日葵ちゃんが、顔を上げた。
二人とも、私の方を向いたまま固まっていた。
やっぱり不自然だったかな、しばらくぶりだし、と不安になりだしたところで、櫻子ちゃんと向日葵ちゃんがほぼ同時に机を揺らしながら立ちあがった。
櫻子「あっ、あかりちゃん!?」
向日葵「赤座さん!?」
…そして、大声で私の名前を叫んだ。
教室中の生徒が、目をパチクリさせて何事かとこっちを見た。
あかり「ちょ、ちょっとぉ…」
慌てて両手で二人を制した。
しかし、二人には通じなかったらしく、勢いもそのままに私に詰め寄ってきた。
櫻子「あかりちゃん…!」
向日葵「赤座さん…!」
あかり「え…っと…」
私は、ひたすらおろおろするしかなかった。
向日葵「…えー…」
櫻子「…あのさ…あのー」
向日葵「…」
櫻子「…」
詰め寄ったはいいが、何を言うか決まってなかったのか、もじっとして急に静かになる二人。
お互い目配せして、何かが通じ合ったのか、向日葵ちゃんだけ一歩前に出てきた。
向日葵「…」
一拍あり、唾を飲みこむ向日葵ちゃん。
向日葵「…もう、大丈夫、ですの?」
そして、言った。
少し考える。
あかり「…大丈夫かは…ちょっと、まだ分からないけど…」
考えはまとまらない。
ただ、思った事を言うことにした。
あかり「…向日葵ちゃんも、櫻子ちゃんも、私と同じ様に苦しかったはずなのに」
あかり「一人だけ勝手に塞ぎ込んで、心配させて…」
あかり「皆で、一緒に悲しんで、乗り越えなきゃいけなかったのに…その…」
あかり「…気、使わせちゃって…ごめんね」
頭を下げた。
向日葵「…」
櫻子「…」
沈黙が耳に痛い。
何か言ってほしい…と、思った矢先、
櫻子「…あっ、あっあっ」
あかり「え?」
櫻子「あ、あがりぢゃああああぁーんっ!!」
ガンッ
あかり「ひぶっ!?」
櫻子「ぶへええええん…!うええええ」
飛び付かれた。
頭が顎に当たって、痛かった。
向日葵「ちょっと櫻子…!」
櫻子「ひいいん…バカ、あかりちゃんのバカあ!どんだけ心配したと思ってるんだよう」
あかり「さ、櫻子ちゃん…」
櫻子「毎日怖かったんだぞ…笑う時も変なお面みたいな笑顔だし、うう、死んだ魚みたいな目で時々ぼけっと遠く眺めてるし…」
そんなに酷かったかな?
櫻子「…あかりちゃんが…っ!あかりちゃんまで、どっか遠くに…自殺とかするんじゃないかってえ…!」
向日葵「ちょ…っと!いい加減離れなさい!こら!櫻子!」
櫻子「あうううう…」
ぐずる櫻子ちゃんを向日葵ちゃんが引き剥がした。
櫻子「うう…離せよう向日葵いい…ばかりちゃんにもっど言わなきゃいけないこどあるんだよう…」
あかり「ば、ばかりって…」
向日葵「赤座さん?」
あかり「…あ、なあに向日葵ちゃん?」
向日葵「櫻子じゃないですけど…」
櫻子「どういう意味だそれええ…うえええ…」
向日葵「…帰ってきてくれて、嬉しいですわ」
あかり「…うん」
向日葵「積もる話もあるでしょうし、とりあえず…」
櫻子「今日!昼ごはん一緒にたべるよね!ねぇ!?あがりちゃんん」
向日葵「…お昼時、また櫻子が落ち着いてから話しましょうか」
あかり「あはは…うん、そうだね」
櫻子ちゃんを机に戻すのに難儀していると、遠巻きに様子を窺っていたクラスの皆が近づいてきた。
生徒A「…あかりちゃん?だよね」
あかり「う、うえ?うん、確かにあかりだけど…」
いくらなんでもそこまで影、薄くなってたかな?
不登校ってわけじゃなかったんだけど…ちょっとショックだよ…
生徒A「あ、いや顔を忘れたってんじゃなくて…」
生徒B「昨日までとは別人っていうか…もう大丈夫なのー?」
生徒C「不気味だったもんねえ、癒し系じゃない笑顔のあかりちゃん」
生徒D「バカ、何言ってんの」
生徒E「あかりちゃん復活なの?」
生徒F「本当に?ふっきれた?」
生徒C「あの嫌な方向の存在感なくなってるもんねー。よかったよかった」
あかり「…みんなぁ…」
知らないうちに、いろんな人に迷惑かけていたんだ。心配かけてたんだ。
気付かなかったとはいえ、申し訳なくて…
そして、嬉しい。
あかり「ありがどみんなああぁ…」
「「「泣いたー!?」」」
結衣ちゃん、京子ちゃん、ちなつちゃん。
あかり、今、幸せです。
だいいちぶかん
―――
ギシッ ギシッ ギシッ
千歳「…」
綾乃ちゃんの家、綾乃ちゃんの部屋へ続く階段。
ギシッ ギシッ
千歳「…」
ほんの数か月前まで気にもならなかった木板の軋みは、今、酷く私の脳みそを痛めつける。
ギッ…
千歳「…」
綾乃ちゃんの部屋の前。
…目的地至近。
千歳「…綾乃ちゃーん?私やー、千歳やでー」
しかし、到着には至らない。
木の板一枚が、それを邪魔する。
私と親友を隔てる、マリアナ海溝よりも深い、越えがたい溝や。
千歳「出てきてよ…」
ああ、ご両親、部屋をカギが閉まる仕様にしたんは、お二方人生最大の失態や。
ご両親は、最近は訪問の度、何も言わずに私を通してくれる。
万策尽きたのだろう。私という「友人」の存在を神頼みか何かの用に思っているのかもしれない。
神頼み。我ながら上手い例えかもしれない。
…岩戸の内に篭った天照大神を引き摺りだす、さながら道化ってとこやろか。
千歳「…今日はな、クラスで文化祭の出し物の―」
親友だからなんだと、最初は根拠のない自信にあふれていた私も、ここに至ってはそんなものとうに全部失っていた。
残念ながら、若干十数歳の私に説得の技能はない。
千歳なのになあ…名前は。
なんちて。いい皮肉やん?
千歳「―結局決まらんかってん。あはは…駄目やなあ、うちのクラスは…」
―やっぱり綾乃ちゃんが居らんと、まとまらへん。
口からそう出かかったのを、寸でで飲み込んだ。
世間話をする。出てきてとお願いする。
…歳納さんのことは忘れてくれと、諭す。
そんなことしか思い浮かばない。
そんな自分が何より歯がゆくて、悔しかった。
千歳「…そういえば今日も、あかりちゃんに会うてな」
ガタン。
部屋の中から、音がした。
千歳「…綾乃ちゃん?」
それきりだったけど。
いつも通り、扉越し、何の成果もなく面談を終えて、私は帰路に着いた。
千歳「…」
俯いて歩く。
…なんでやろな。
うち、親友のはずやのに。
なーんもできひん。なーんも。
千歳「…っひぅ」
あ、ああ。
いかんいかん、零れてまう。
せめて、家に帰るまでは待って頂戴な。
千歳「ふっく、ひいぃん、ううううっぐ…」
ポタリ、ポタリ。
道行く人が、うちの方へ顔を向ける。何事がと凝視する。
やめてえな、嫌やわ、注目されるのは、嫌い。
止まってよ。贅沢は言わん、せめて、千鶴のとこまででええから。
千歳「ううううっ、うあああっ…!」
ポタリ、ポタリ。
ザァ。おお。
雨が降ってきた。
恵みの雨や。これなら、涙も鳴き声も、全部雨に紛れて目だたへん。
千歳「あああああ…ああああん…!」
恵みの雨や。
チトセー&アーカリーン
―――
ザァァァ…
あかり「…雨かぁ」
昨日の夕方から降り続く雨。
しばらく降り続くらしく、朝から憂鬱です。
でも、凹んでばかりじゃいられません。
あかり「…よしっ!お団子セット完了!」
…なぜなら、私には待ってくれる人が居るから!
あかり「ごめーん!皆、お待たせー!」
櫻子「遅いっ!」
向日葵「遅いですわ!」
あかり「だ、だからごめんってぇ!」
…私、赤座あかり!元気印の一年生!
京子「みんなで」
結衣「逝こうよ」
ちなつ「レッツゴー!」
バチャバチャバチャ…
櫻子「もー最悪!なんでこんな雨の中走んなきゃいけないのー!?」
向日葵「全くもって不本意ながらこればっかりは同意ですわ!」
向日葵「赤座さんらしくもない!こういうのは本来櫻子の役回りでしてよ!」
櫻子「おおい!そりゃどういう意味だコルァ!」
あかり「…えへへ…」
櫻子「あかりちゃんも!何笑ってんのさ!一体だぁれのせいで…!」
あかり「えへ、ごめんね…」
バチャバチャ…
あかり「…雨の日でも隣を一緒に走ってくれる人が居るのって、やっぱり幸せだなって」
向日葵「…」
櫻子「…」
あかり「…えっと、あのー」
ギュッ
あかり「さ、櫻子ちゃん!?向日葵ちゃん!?」
向日葵「二人とも、このままじゃ遅刻ですわ。急ぎますわよ!」
櫻子「ガッテン承知!」
あかり「ちょ…待ぁー!」
バチャバチャバチャ…
向日葵進め
櫻子注意
あかりは絶対渡っちゃ駄目よ
これで二人がまた事故に合うわけか……
>>162
天才
実は三人はあかりが始末していた
>>167
綾乃を手に入れる為か
綾乃のガタッはそれを1人知っていて…
あかりの霊圧が…消えた…
あぁ…きっと次は△って何の意味ですか?だ
⑩←十円
このまま終わると
綾乃→自殺END?
千歳→失恋END
あかり→後日談・終
だな
―――
ザァァァ…
パシャ…パシャ…
千歳「…」
千鶴「…」
一つの傘に、二つの体。
身を寄せ合って歩く。
千歳「千鶴、ごめんな…昨日はまた、迷惑かけて…」
千鶴「気にしないで。お互い様だから」
ふ、と優しく微笑む千鶴。
自分には出来た妹だと、つくづく思う。
千歳「ふふ、優しいなあ、千鶴は…」
千鶴「そ、そんなことないよ」
可愛い妹。
親しい者がどんどん減って、あるいは遠ざかって、彼女の自分の中に占めるウェイトがどんどん大きくなっているのを感じる。
皮肉という言葉は、つくづく自分に縁が有るらしい。
千歳「隣に一緒に歩く人がおるっていうんは、やっぱり大事なことやなあ」
千鶴「…姉、さん」
せやから、そんな悲しい顔、せんとってや…
ザァァァ…
―――
キーンコーンカーン…
あかり「ふぅー…終わったぁ」
生徒A「ばいばーい、あかりちゃん!」
生徒C「気を付けてかえれよー」
あかり「あ、うん!ばいばい!また明日!」
向日葵「うふふ…」
櫻子「ちょ、やめてよその不気味な笑い」
向日葵「いい加減ぶちかましますわよ…」
向日葵「…あかりちゃん、すっかり元通りって感じですわね」
櫻子「んー、そだね。一時はどうなる事かと思ったけど。立ち直ったみたいで良かった良かった」
向日葵「うん…」
向日葵「…でも、」
櫻子「…『まだ』って言いたいんでしょー…?」
向日葵「ええ…関係ないと、ただの偶然と信じたかったのですけど」
櫻子「ここまで顔を見ないとなると、もう確定でしょ…」
向日葵「…やっぱり、そう思いますか」
生徒会一生真面目な彼女が、執務を何もなしにここまですっぽかすとは考えられない。
あの凄惨な事故は、私たちの思った以上に深刻な禍根を残していったのだろう。
杉浦先輩。彼女は、今何を?
向日葵「…」
櫻子「…」
あかり「ひ、向日葵ちゃん?櫻子ちゃん?聞こえてるー?」
櫻子「うわっ!あかりちゃんいつの間に!?」
あかり「ちょっと前から居たのに…酷い…」
向日葵「あ、あああかりさん…ごめんあそばせー、ちょっと考え事ですわ、おほほ…」
あかり「そ、そうなんだ…」
櫻子「…ま、まあともあれ!さー帰ろう!ちょうど雨も一服してるし」
向日葵「で、ですわねー!」
あかり「あ、そのことなんだけど…ちょっと今日は一緒に帰れないんだ」
あかり「生徒会に用事があって…しばらくかかるかもしれないから、先に」
櫻子「えー、そうなの?」
向日葵「…生徒会室に、ね」
櫻子「まあそういうことなら仕方ないか。あかりちゃんじゃーね!行くぞ向日葵!」
向日葵「え、ええ…さよなら、赤座さん」
あかり「うん、ばいばい、向日葵ちゃん、櫻子ちゃん」
ガララ…
あかり「…」
立ち直った…かどうか、まだ自分でもはっきりしないけど。
少なくとも、私を今の状況に立て直してくれた直接の継起は、
あかり「…池田先輩」
お礼、言わないと。
コンコン
ガララ
あかり「失礼します」
千歳「あー、あかりちゃんやぁ」
部屋の奥から、先輩が駆けてきた。
生徒会室には、今は千歳先輩しか居ない。
…ヒトって、不思議なものだと思う。
同じような光景が、たった数日でこんなに違って見えるなんて。
あかり「あ、あのっ!先輩!」
思わず直立する。
千歳「は、はいい?」
つられたのか、先輩もピシッと立った。
…ともかく。
あかり「―ありがとうございましたぁ!」
身体を思いっきりくの字に折り曲げて、感謝の意を示す。
千歳「はへ…?」
先輩は、あっけにとられていた。
…いけない、これじゃ、あかり只の変な人だよ!?
あかり「い、いや、これはそのそういうのじゃなくて、違うんです!?」
千歳「あ、あかりちゃん落ち着いて!」
あかり「は、はい」
あかり「えと、先日千歳先輩に諭されたというか、慰められたというか…なんですけど」
あかり「…お陰さまで、ほんとに、先輩のお陰で、いろいろ気付く事が出来ました」
あかり「…皆と仲直りも、できたんです」
千歳「あ…」
あかり「で、ですからっ、あの、上手く言えなくてごめんなさい…でも」
千歳「…」
あかり「…本当に、ありがとうございます」
二度目のお辞儀は、深々と。
#zarloha
いい子すぎて泣いた
―――
ぼうっと、お鍋の底から泡がわいてくるような。
じわりと、でも確かな熱を持った衝動だった。
あかり「…あ、あの、じゃ私、これで!」
赤面して踵を返し、この場から去ろうとする赤座さん。
娯楽部一のお人よし。
立ち直り、いや、この切り替えの素早さは、芯が強い?
違う。この子が内に秘めているものは、全く異質の何かじゃないのか?
お人よしのベールの包まれて、外から見えないところに隠し持った何かがある。
綾乃ちゃんが、唯一反応を示した単語。人名は…
雑多な思考が頭の中を駆け巡った。
うねりを持った支流がまとまって、一つの思念と行動に行きつく。
この子しかいない。
あかり「…え?」
素早く伸びた自分の腕は、あかりちゃんのそれを捉えた。
オールあかりちゃん→赤座さんで…
霊「アッ…カリ…ーン」
あかり「ウ、ウワァーミンナイキカエッタンダネー」
「わしがやった」
あかり「 神 降 臨 」
―――
あかり「あ、あの…池田、先輩…?」
何か、怒らせるような事をしてしまったのだろうか?
私の腕をがっちり掴んで離さず、俯いて動かない先輩を見て、不安にかられた。
たまらず問いかけようとすると、先輩が顔を上げた。
息を飲んだ。
普通の池田先輩からは考えられない…
形容しがたいが、例えるなら、力無い子供が大人に助けを縋るような…
千歳「…後生や、一生のお願い」
はっと吸い込まれていた意識が戻る。
千歳「私には、もうどうしようもあらへんの…!どうしようも…!」
先輩は、続ける。
千歳「お願い!もう何だってええ!助けたって!お願いやからっ!うああっ…!」
心の叫び、という表現が最もしっくり来る。
千歳「―綾乃ちゃんを、助けて!」
先輩は、泣いていた。
先輩は、ため込んだものを吐き出すように、語ってくれた。
その内容の全てが全て、想像もしていなかったものだった。
杉浦先輩、最近見ないと思っていたけど。そんな。
曰く、
自分の部屋に鍵をかけ、籠城中。
もうずっと学校には来ていない。当然、生徒会にも。
ドアは、食事の差し入れとトイレに出るときと、その他のわずかな諸用の時以外、開かない。
たまに部屋から出てきた時も、ご両親によると、無暗に喋りかけると癇癪を起こして自傷するので、手が出せない。
池田先輩も呼びかけているけど効果はなし。
理由は恐らくというか間違いなくあの事故、あるいは…京子ちゃんの、死。それだけに、手荒な真似も出来ない。
万事休す。
…そして。
千歳「…赤座さん、赤座さんの話を出した時だけな、部屋の中で、綾乃ちゃんが動く気配がするねん」
千歳「思い出させるような事言うて悪いけど、娯楽部で残った最後の一人やから、綾乃ちゃんにも思うところがあるのかもしれへん…」
千歳「…無駄足踏ませたり、あかりちゃんの古傷開いてしまう可能性も、十二分にある」
千歳「…せやけど、せやけどもう…私には、赤座さんしか分からん…!浮かばへんから…!」
千歳「お願い…!どうか、この通りあから、どうかあって、話をしたげて…!」
土下座しようとする先輩を、慌てて押しとどめた。
先輩を出来るだけ優しく抱きとめて、背中をさすりながら考える。
…私は、やっぱりバカだ。
自分のことで手いっぱい。
自分以外に目を向けて、考えることなんて、結局出来ていなかったじゃないか。
現に、目の前の池田先輩の窮状さえ、全く理解してあげられていなかった。
こんな、こんなにも。
こんな行動に走るほどに…参っていたっていうのに。
あかり「…先輩」
千歳「…ううっ、何や、決めてくれたん…?」
あかり「はい」
こんなんじゃ、娯楽部メンバー失格だよね。
…今度こそ。
慢心したりしないから。見逃したりしないから。
あかり「私、会います」
あかり「会って、説得しますから」
千歳「…っく、ううううっ…!」
抱擁は強く。
先輩は、しばらく私を離してくれなかった。
…
厚く空に張った雲が、夕焼けを殺している。
天気は再びぐずりだしていた。
あかり「…ここが」
千歳「うん。…綾乃ちゃんのお家」
チャイムを押し、反応を待った。
千歳「あかりちゃん、今からでも…」
あかり「えと…『お互い様』です。先輩」
大体何を言うか目安は付いていたので、先手を打っておく。
千歳「…」
ポカンとする先輩。
千歳「うふふ、せやね、せやった」
あかり「…あははー」
…合ってた…かな?
先読みってドキドキする。
外したら…考えただけで恥ずかしすぎるよ。
ガチャリ。
解錠されたドアが開き、中からご母堂さんが現れる。
先輩が二言三言私について説明すると、あっさり中に入れてくれた。
/⌒ヽ
(ヽ´ω`) <もうだめぽ・・・
/ _ノ⌒⌒⌒`~、_
ε( ̄⊂人 //⌒ キ ノ #ヽ)
⊂ニニニニニニニニニニニニニニ⊃
続きは明日か明後日にでも
落ちたら、レベル足りてたらスレ立てます
覚えてる人いたらまたヨロシコ
レベル足りなかったら代行するよ
乙
ゆるゆりあまり見たことないけどSS僕も書きたいです
DAIMEIは、京子「ペット飼いたい」でたのみます
誰かたててください
>>287
何時や
いまです
2ちゃんねるじたいはじめてですからよくわからないです
>>291
わかた
>>291たてたぞ
書けよ絶対
明日続きが見れますように
>>296
その東電ってどうやるの?
>>297
わからないのかよ
>>298
わからないんだ
>>297
仕方がないから教えてやる「ggrks」って打ちこめばいいんだよ
>>300
ggrmktkdwkrnのだよ
>>300
マジレスすると名前欄に「tokyo_fusianasankei_news_elec」って入力して書きこめばおk
>>302
fusianasanは知ってるからそれじゃなくて
ggrks
どうだろうか
泣いた
>>308
ありがとう
保守
で、立てちゃった件は?
>>311
絶賛更新中!保守してね!
保守
>>313
あのまま落としとけば良かっただろ…
>>315
だってせっかくの俺の!ninjaレベルが……
保守
保守がてら
他のSSスレでも聞いたが、
綾あかでオススメない?
あかり「クソワロタ」が感動したんだが
クソワロタはスレタイから考えられない感動モノだった。
なんでこんなスレタイにしたのか・・・
>>412おそらく最後をやりたかったんだろうな
スレタイでつまんね、って思ったよ俺は
すごい勢いになってるから行ってみれば…
保守
保守
あれ?どうなってんの?
は?まじなんなの?
保守
こねえな
なんか、ゆるゆりスレはほっとけない
これは面白いしな
俺別のスレで殺されそうなんだけど
i⌒i スッ
| 〈
/⌒ヽ / .フ
( ^ν^)/ |
/. / ノ
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( ^ν^) .|||
/ \. |||| バチーン!!
/ /\ / ̄\ |||| .' , ..
\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \__) < ,:;・,‘
||\ \ . ’ .' , ..
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>>433
いてーじゃねーかks
>>436
ふざけんなよてめー
これから俺の鼻の穴どうなるか知ってて言ってんのか
保守
あかり「ワロエナイ」
あかり「今、笑っています」
良作の予感
>>467何それ書いてんの?
>>468
昨日ちょっとだけ伸びて、今もこっそり使われてる
ワロス→ワロタ→◯◯◯ 次に主流になる笑いの表現レスは?
あ、誰か書いてね
>>470書きたいけど、結局いままでの
SSにあったようなテンプレの展開に
なるからやめる
あかり、影うすいよぉ
↓
うわーん(鬱タイム)
↓
カプさせたいヤツに助けてもらう
↓
解決
↓
助けてくれてありがとう(泣)
好きでっせ(泣)
要約するとこんなSSでいいなら、土日に投下してみるが
期待してる
>>474お前SSなら何でもアリかよ
ゆるゆり好きなのは伝わってくるが…
>>475
それは言うな・・・
節操なし言われてもしょうがないがな
>>476お前のおかげで幾多ものスレが救われているのも事実
あかり「クソワロタ」
結衣「疲れた…」
ちなつ&綾乃「…!!」
向日葵「だよねー!」
京子「皆が私に気合を入れてくる…」
他スレでオススメっぽかったから
読んでみたら、面白かった
でも、同時に何故オレは思いつかなかったんだろーなーって読んだ後いつも思う
先駆者はスゲーよ
あははははは才能の差あははははは
家に上がった。
すぐに目の前に現れた廊下の不自然な薄暗さは、天気のせいだけではないだろう。
勝手知ったる、という風に、先輩はこなれた足取りでその先へと進んでいった。
それを複雑な思いでぼけっと見ていると、
千歳「…こっちやで」
声がかかってようやく気が付き、慌てて駆けた。
いけないいけない!
…
タン、タン、タン
ギシッ、ギシッ、ギシッ…
階段に、二人分の足音が響く。
前には池田先輩。
…一段一段上がるにつれて、足が重くなるような感覚。
>>486…なんか落ち込んできた
o ゜ ○ ゜
o 。 ゜゚ ゚ . o ○o
\丶 r⌒ヽ (⌒⌒) r⌒ヽ/, / /,
ヽ 、、;(⌒ヾ . (((⌒⌒))) /⌒) ), ,
、ヾ (⌒キタキタキタ━━━━━━━ !!/,
((⌒-丶(;;;(⌒ゝ;;⊂二( ^ω^ )二⊃ ,⌒⌒);;;;;)))⌒)
(;;;;(⌒(⌒;;;(⌒ .ヽ ノ / ))⌒));;;;)-⌒))
ゞ (⌒⌒=─ (⌒) | ─=⌒⌒)ノ;;ノ;;;::)
((⌒≡=─. ⌒∨ ─=≡⌒)丿;;丿ノ
千歳「…ここ」
あかり「…は、い」
ある程度、覚悟はしてたけど。
目の前にはドア。
中からは、物音ひとつ聞こえない。
目を瞑って、杉浦先輩の事を思い出した。
明るくて快活、とっても優しくて、話しやすい人。
幸せな将来を感じさせて仕方なかった。なんというか、オーラがあるというか。
頭もいい。独特の立ち振る舞い。そういえば、京子ちゃんにだけやけに突っかかってたなあ。
…そんな、杉浦先輩が。
ドア一枚挟むだけで、なんて遠い。
目を開けた。
千歳「…」
池田先輩が、こっちを見て頷く。
あかり「…」
…えっと、どうしよう。
大口は叩いたものの、いざここに来て何をしていいか分からない。
あの池田先輩ですら、どうにも出来なかった。
親友の池田先輩が。
曰く、私の名前に反応したそうだけど、果たしてそれが偶然でなかったのかどうか。
…無視されるのは、嫌だな。
だめだめ!
何もしないうちから弱気になってどうするの!
ぺちっと、あまり音をたてないように、両手で頬をはたいた。
怪訝そうにこっちを見る池田先輩。
改めて、動じる気配もなく鎮座するドアに向き直る。
何をするかなんて。
決まってる。まずは自己紹介だ。
あかり「―杉浦先輩、聞こえますか?」
一拍。
あかり「…あかり。赤座、あかりです」
言い終わるか否かのうちに、部屋の中で何かが動くのを感じた。…そして、
カチャッ。
鍵は、あっさり開いた。
キィ…
軋むような音とともに、扉が開く。
…5cmくらい。
ひゅっ。と、後ろで池田先輩が息を飲んだのが分かった。
成功した?これだけで?
…いや、でも。
あかり「…あ、あの…すぎうら、せんぱい…?」
開くというか、隙間ができたというか。
それきりだ。何のアクションもない。二度目の呼びかけにも、返答はない。
心を決めて、一歩、二歩。前へ。
やっと出来たであろう隙間を広げるべく、そっとドアの取っ手を握った。
冷を感じた。
手首を掴まれたと理解するのに、少しかかった。
あかり「…ひっ!」
身が凍るような冷たさに、思わず身が竦み、情けなくも内股になった。
手。掴まれた。誰に?決まってる。
…杉浦先輩。
反射的に振りほどきそうになったのを、ぐっと押しとどめた。
乾いた口から何を飲み込むでもなく、喉を鳴らす。
そうだ、何を怖がってるんだろう。
冷たいって。個人差だ。何もおかしい事なんて、ない。
私の手を掴んだまま微動だにしない、異様に白い右手から極力目を背けつつ、3度目の呼びかけ。
あかり「杉浦先輩、返事を、」
蝶番が唸った。
綾乃「入って」
声が聞こえるのとほぼ同時だった。
手首に力がかかった。
否応なく、反応する間もなく。
吸われるようにして、私は部屋の中へ引き摺り込まれた。
―――
ぐらり。
赤座さんが姿勢を崩した。
あっ、と思ったその瞬間、私の目に、確かに映った。
やつれていたけど。ぼさぼさだったけど。
綾乃ちゃんの、綺麗な濃紺の、髪の毛。
…ああ。あああ。
私の体に自由が戻ったのは、酷な事に。
パタン、カチャリ。と、ドアが完全に閉められた音が聞こえてからだった。
鞭で叩かれた様な衝撃が私を打った。
よろめいて、足が踊りだした。
自分が一世一代の機会を逃した事を、ようやく悟った。
千歳「…あかりちゃん?」
居なかった。
彼女「ひとり」飲み込んで。
…さっき、確かに開いていた筈の「岩戸」は、すでに口を閉じ、沈黙していた。
千歳「…そんな」
あるいは飛びつけば。
千歳「…そんな、そんな!」
中に入って…
千歳「…待っ、待ってよ!あ、ああ!綾乃ちゃん!もっかい、開けてぇ!!」
顔だって、見れたかもしれないのに。
―――
ドン、ドンドン。
扉を叩く音と、誰かが何かを叫ぶ声。
何か大事なことのように思ったけど、全てが遠かった。
ただ、目の前の情報を処理するのに必死だった。
あかり「…」
「…」
最初は何だか分からなかった。
目が暗さに慣れるにつれ、良く見えるようになって、もっと分からなくなった。
唇は青く。顔に色はなく。
しかし、目だけは猛禽の如く爛々と光り。
さらさらと流れるようで、長くて綺麗だった髪の毛は、鳥の巣のように荒れ、枝毛だらけで。
近くを通るたびに感じたあの甘い香りも漂って来ない。
臭くはない。命の躍動を感じさせない、無臭。
つんのめるように床に倒れ込み、ぺたんと尻もちをついた体勢もそのままに、
私は、私の眼前に立つのが一体誰なのかを全力で考えていた。
答えはすぐ出た。
でも、すぐ消した。記憶と何一つ一致しないし、それを信じたくもなかった。
杉浦「いつぶりかしらね…赤座さん」
…ああ。
声だけは、あの日と一緒なんだ。
受け入れないと、いけないのか。
気だるく、動こうとしない唇を必死で使役し、問う。
あかり「…すぎ、うら…先輩…?」
杉浦「…」
ゆっくりと、相手の首が縦に振れた。
パタパタと、雨戸に水が打ちつけられる音がする。
いつの間にか、外では雨が降り出していたらしい。
綾乃「…」
あかり「…っ」
静寂。
ドアが叩かれる音は、既に止んでいた。
綾乃「…会って、話がしたかったの」
あかり「…は」
沈黙を破ったのは、杉浦先輩。
予想外の言葉に、ちょっと驚く。
綾乃「元気そうね…赤座さん」
くっ。と、杉浦先輩の口角が吊り上がった。
背筋がざわつく。
目は、笑っていなかった。
綾乃「元気そう。ふふ。急に一人ぼっちになって、塞いでないか、心配してたのよ」
言葉に、感情の色は乗っていない。
あかり「…あ、は、いえ。ちょっと、そんな時も…ありました、けど…」
怖い。
でも、言わないと。
杉浦先輩は、このままじゃいけない。
あかり「…そう。確かに、京子ちゃん、結衣ちゃん、ちなつちゃんが居なくなって…もう、どうでもいいやってなった時も、あったんです」
京子ちゃんの名前を出した時、先輩が小さく反応した事に、私は気付かなかった。
あかり「でも、『皆』が助けてくれました」
あかり「…向日葵ちゃんとか、櫻子ちゃんとか。クラスの皆や…お姉ちゃんに、お父さんお母さん」
あかり「…それに、池田先輩」
先輩が、視線を床に落とした。
あかり「勝手に一人になったつもりでいたけど、違ったんです。私は、自分の知らない所でずっと助けられてた」
綾乃「…」
先輩は俯いたままだった。
私からは、表情も見えない。
姿勢を正し、正面に向き直った。
話を続けた。
あかり「先輩、先輩はきっと、ちょっと前までの私と一緒なんです」
あかり「ほんの少しでいいんです。少しだけ立ち止まって、周りを見て」
自分の台詞が先輩に届いていると信じて、喋り続けた。
あかり「先輩の事で、心を痛めてる人がすぐ傍にいます。だから…」
綾乃「…」ブツブツ
あかり「…京子ちゃん達ののことも―」
ガシッ
あかり「―え?」
それは、誤りだった。
ドンッ
あかり「っう!」
背中に衝撃。
びっくりするくらいすぐ近くに、杉浦先輩の顔があった。
その遥か後ろには、薄ぼんやりと、天井らしいシルエットが。
ひっくり返され、床に押し付けられていた。
あかり「す、杉浦先輩…!?」
突然の事に意味も分からず、狼狽する。
あかり「あ、あの…!」
綾乃「…赤座さん」
私が発言するのを遮るように、優しく、先輩が私の名前を呼んだ。
あかり「…あ、う…」
ショートパンツから延びる足。
それが、艶っぽく、私の足と足の間に入り込んできた。
綾乃「皆、皆…ね。立ち直ったのね、赤座さんは」
先輩の手のひらが、私の肩から胸へ、そして鎖骨へと、順を追ってなぞるように動く。
力の問題ではない。
…ただ圧倒されて、動けなかった。
あかり「あ、私…」
綾乃「予想してたのと、違ったわ。…あなたは、って思ってたんだけど」
返答は求めていなかったらしい。
だんまりを貫く方がいいのだろうか。
あかり「…っ」
綾乃「赤座さん…」
足は、更に深く。もう、私のスカートを巻き込んで、太股の上端まで入り込んできていた。
先輩が上体を震わせ、心なし、身体を反らした。
足はいよいよ来るところまで来た。
残された一本も使って、先輩の両足が私の下半身をホールドする。
意思を持った蛇のように、腕は、緩やかに上へ登り…
綾乃「貴方も、千歳と同じなのね」
掌は私の首を覆い。
あかり「…ッ!!」
気付いたころには、もう遅く。
親指は、私の気管を捉えていた。
綾乃はガチレズだからな....千歳も拒否ってたのか....
綾乃「皆…あっはは、皆ってえ」
状況の全てが最悪だった。
足をばたつかせようが、逃れられない。
手で手を掴んで引き剥がそうとするが、非力な私では抵抗らしい抵抗にならなかった。
涙が滲み、呼気を得ようと、喉が必死にひくつく。
だらしなく口も開いていた。情けなく、涎の一つでも垂らしていたかもしれない。
死の危険から逃れる。
唯そのためだけに、身体の全てが全力を出していた。
そんな中でも、先輩の言葉は自然と私の脳に染みわたった。
綾乃「…赤座さんだけは別だと思ってたのに。親友だったんでしょ…?歳納京子の…」
綾乃「立ち直るって。簡単に言うわ。忘れるってことでしょ。あなたの親友のこと。吉川さんの船見さんの、歳納…京子のことッ!!」
ミシッと、音がした気がした。
指に、更に力がこもったのを感じた。
綾乃「薄情者っ!なんでぇ!?何でなのよ!何でそんなにあっさり!…周りにほだされて!忘れられるのよお!!」
目が霞み、手足が痺れてきた。
力が全身から抜けて行くようだった。
助けて、と。叶うものなら、叫びたかった。
あかり「―っ、―!」
ポタリ、と頬に、何かが落ちてきた。
奇跡か偶然か、その一瞬だけ、私の意識は確かに覚醒した。
綾乃「―嫌っ!いやぁ!離れたくないのにっ!!何でっ!?忘れないであげてよお!うう、あああーっ!」
…瞳の奥に、ドス黒い炎を燃やしながらも。
先輩は、顔をくしゃくしゃに歪め、泣いていた。
熱い展開だな
しかしそろそろ眠くないか
あんま進まんでごめんなさい寝ます
明日はもうちょっと早く来れると思います
午後になりそうです
な....ん..だ....と....!
また徹夜で保守する作業が始まるお(´・ω・`)
もしあれだったら立て直してくれ
保守しちゃうんだからね
書き溜めてるんだよきっと(´・ω・`)
…ああ。
もう、いっか。
そう思って、全部諦めて委ねようとしたしたその時、先輩の手から力が抜けた。
綾乃「…うっ、うっ…うっ…」
だらんと、肩から力を失った先輩の腕が垂れさがる。
涙が頬に落ちてきて、私のそれと混ざった。
あかり「…」
しばらく経って、すっと先輩は立ち上がった。
私に背を向け、帰って、と涙声で一言残し、座り込んで動かなくなった。
しばらく何も考えられなかった。
さらに間をおいてようやく復帰した私は、ふらふらと立ち上がると、おぼつかない足取りで歩きだした。
解錠してドアを開ける、その作業すら億劫だった。
ここから去りたい。
その一心だった私は、来た時の2倍くらいの時間をかけて階段を下り、廊下を戻り、玄関へ辿りついた。
道中、振り返る事は一度もなかった。
ガチャッ
ぱらぱらと雨模様の天気。
門の向こうには池田先輩がいた。
杉浦先輩のお母さんに、背中をさすって貰っているのが見える。
近づくと、向こうもこっちに気付いたらしい。
先輩が凄い勢いで振り向いた。
期待に満ちた、しかし縋るような目。
…ごめんなさい。私は、逃げ出してしまいました。
私は俯いて目を反らした。
情けなさに、死んでしまいそうだった。
きてたああああああああああああ
―――
私の泣き声を聞き付けた綾乃ちゃんのお母さんに連れられ、玄関から外へ出た。
その後もだいぶ長い事、泣いていた。
お母さんは、ずっとそばに居てくれた。…ああ、私は周りに迷惑をかけてばっかりやなあ。
しばらくして、後ろから誰か近づいてくる音がした。
一人分。
…あかりちゃん!
私の、綾乃ちゃんの、恐らく最後の希望。
どうなったんだろう?
勢いよく反転した私の目に、あかりちゃんの顔が映った。
私は、今度こそ絶望した。
―――
帰ってシャワーを浴びて、晩御飯を食べて、すぐベッドに潜った。
…お父さんお母さんお姉ちゃん、ごめんなさい。
あかりはやっぱり、最低の人間でした。
自責で潰れそうだった。
あそこで、一時の感情なんかに流されずに、説得を続けていれば。あるいは…
だめ!
もしたらればに走りそうになる思考を、頭を振って追い払う。
結果的に、ベッドにおでこが擦れて痛かった。
あかり「…」
…痛い、か。
だが実際、もうあんなチャンスは巡ってこないだろう。
もう一度出向いたとして、彼女の期待に添えなかった私をまた入れてくれるとは思えない。
ひとつ分かっている事がある。
会ってみて、台詞を聞いて、感情をぶつけられて、確信した。
杉浦先輩には、立ち直る契機が必要なんだ。
私の場合、それは池田先輩との会話だった。
遅かれ早かれの差はあれど、そういうきっかけさえあれば、悲しみを乗り越えて、また空に向かって背を伸ばすことができるんだ。
ヒトっていうのは、そういう風に出来てるんだ。きっと。
しかし、その小さなきっかけを掴むのは、今の彼女では難しい。
私には土壌があった。
気が進まずとも、上っ面ながらも学校へ行って、人と話す機会もたくさんあった。
杉浦先輩にはそれがない。
部屋に引きこもって鍵をかけ、心を閉ざして、人との関わりとは程遠い。
…そうして、恐らく、亡き京子ちゃんの幻に囚われながら、生きている。
あかり「…せんぱい…っ!」
駄目。ほんとうに、それじゃいけないのに。
このままじゃ、あの人は戻れないところまで行ってしまう。
そうして、多分最後には―
あかり「…っ」
嫌な想像を、もう一度頭を振って追い出す。
考えを、今後の対策の考察に戻す。
あかり「…どうしたら…」
しかし、分からない。
会えないし、会ってどうするかも思いつかない。
あかり「…」
ともかく、もう一度行ってみよう。
駄目かもしれないけど。
…いや、きっと駄目だろう。なんせ…
あかり「…池田先輩」
今なら、あの人の気持ちが分かる。痛いほどに。
ひとまず考えにふけることを止め、私は寝た。
―――
寒い。
透き通って綺麗だったお風呂の水が、すごい勢いで赤に浸食されていく。
命が流れ出てる…ゆう表現。
どうも鼻持ちならんと思ってたけど、成程、こういうことなんか。
しっくりくるなあ。
最初は熱かった両手首も、じわりと温度を下げていって、今では冷たいほどになっている。
…言うて。自分が浸かっるんがお水ゆうせいやろな。
終わりが近いのだろうか。
全身の感覚が混ざり合って、意識も怪しくなってきた。
自分が望んだことだ。仕方ない。
今更怖くなんて、なっちゃいけない。流れる涙は全部ウソ。
…しかし、せめて。
…綾乃、ちゃん。
最期に親友の笑顔を思って逝くくらいは、神様も許してくれるんじゃないかな。
―――
姉さんが、真っ赤な浴槽の中で沈んでいた。
絶叫した。
腰が抜けていたので、電話までたどり着くのに苦労した。
涙と鼻水が止まらなくて、救急の人に、なかなか事情を伝える事が出来なかった。
救急車が来るまでの数分のうちに、私は失神した。
―――
低気圧は日本列島に根を張ったらしい。
今日も天気は落ち着かない。
あかり「…」
雲が嫌いなわけじゃないけど、ずっと続くと流石に気が滅入る。
下を向いて歩く。
櫻子「…ね、ねえあかりちゃん…?」
あかり「…」
向日葵「赤座さん?」
あかり「ひゃひぇっ!?」
普通に話しかけられただけなのに、びくっと身体がのけぞった。
気付かなかった。
櫻子「えー…向日葵には反応すんのかよ…」
あかり「…あ、あはは!ごめんね!ちょっと考え事してて!」
向日葵「…」
櫻子「…」
あかり「…あは、はは…」
向日葵「…また、何かあったんですの?」
あかり「…」
…やっぱり分かっちゃうんだ。
自傷してしまった千歳の手首を舐めたい
ボロボロになった千歳を抱きしめてあげたい
仕方ない。
正直に、ちょっとだけ話そう。
あかり「…杉浦先輩のことで、ちょっと、ね…」
櫻子「…あー」
向日葵「…なるほど」
あかり「?」
櫻子「知っちゃったか」
向日葵「知ってしまいましたのね」
はあ、とため息が二つ。
これは…
あかり「生徒会なのにって思ってたけど…やっぱり知ってて隠してたんだね…あかりに」
向日葵「あ、いや、その…」
櫻子「あう…えと、ごめんね?やっと普通の生活に戻ったばっかりだっていうのに、余計な心配させるわけにもなって…向日葵と」
向日葵「…ええ」
きまり悪そうに目配せする二人。
そういうつもりじゃなかったんだけど…
あかり「あ…ううん!怒ってるわけじゃないよ?」
櫻子「そか!なら良し!」
向日葵「櫻子…」
ついでに、ひとつ確認しておく。
あかり「…二人とも、あれから先輩に会った?」
向日葵「…いいえ。ずっと家にいるって聞いて、会いに行ったんですけど」
櫻子「つい昨日ね。そういう話になってさー。…でも、部屋に入れてくれないどころか物音ひとつしなくて」
向日葵「やっぱり事故のせのか…って。それに、最近千歳先輩も心なし元気がありませんの」
あかり「…」
櫻子「杉浦先輩があんなになっちゃうなんて…」
櫻子「…なんか、私やだよ」
向日葵「…ええ」
二人の表情に影が差す。
…そうか、やっぱり櫻子ちゃんも、向日葵ちゃんも…
あかり「えと、ごめんね。あかり、嫌な事聞いちゃって」
向日葵「ん…構いませんわ」
櫻子「もとはと言えば、言わなかったこっちだもんね。問題は」
あかり「ううん、そんな…」
その後は、会話はいつもの世間話に移って行った。
書き溜めてるんだよきっと(´・ω・`)
書き溜めはないです…忙しかっただけです…
すまぬ…すまぬ…
続きはSS速報に移ってやったらいいのかな
. -‐- 、}/⌒ヾ¨丶
/ ..:::::. .::::::... \ `> .ニl ヽ
ィ'⌒// ヽ{/ | }
{ V′ :/ } } ヽ ':、__j_,x'
ゝ/ ./ { :、 ハ. /\ } ∨、 `ゝ
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/イ{人 { / ___ x=ミ.jィ′ ! ヽ
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{ ハ | 人 、 ノ / /jハ / |
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