囚人「よう、新入り」 (42)

囚人「ご機嫌いかが?」

新入り「ぼちぼちだぁね。先輩様はご機嫌麗しゅう」

囚人「おー。麗しいぜ。なんせ昨日までのお向かいさんは気狂いだったかんな」

囚人「気軽にご機嫌伺いできるたぁ、いい気分だ」

新入り「相手の顔も見えやしない牢獄で浮かれるなんて、相当な気狂いさぁね」

囚人「はっ、ちげぇねェ!所詮、明日か明後日かで終わる命さ!狂って楽しんだもん勝ちだ」

新入り「同意せざるをえないねぇ。明日が大先輩なら明後日は我が身さぁ」

囚人「んで、お前さんは何をやってぶち込まれたんだ?」

新入り「大したもんでもないさぁね。ちょっとお偉いさんに意見したらあっという間にここの住人だぁね」

囚人「そいつぁ運の悪いこって」

新入り「そうさぁね。先達は何をしなさったのさぁ?」

囚人「新入りと同じようなもんだ。上司の上司のそのまた上司くらいの御人に楯突いちまってな」

新入り「なるほどさぁね」

囚人「そういや外はどんな情勢だ?何せぶち込まれてからは噂話の一つも聞こえねぇからな」

新入り「さてねぇ。どんな話がご希望さぁね」

囚人「何でもいいさ」

新入り「投げやりさぁね」

新入り「じゃあ、ここ最近王都で持ちきりの話でもしようかねぇ」

囚人「ほう。そいつぁ良い」

新入り「気持ちの良い話ではないけどねぇ」

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新入り「どうやらこの国は本格的に魔王討伐をする様さぁね」

囚人「するってぇと、周辺国も巻き込んで大規模な戦争が始まるのか」

新入り「いがみ合ってる国が魔王討伐の為に手を組むなんて笑ってしまぁうさぁね」

囚人「おまけに半端な魔物に手こずってる人間が魔族に喧嘩吹っかけるたぁ、飛んだお笑い種だな」

新入り「その通りさぁね。魔族は一騎当千を地で行くものねぇ」

囚人「いんや、千じゃ足りねぇだろうな。桁がよ」

新入り「それもそうさぁね。さぁらに魔族は忠誠心が人間の比じゃないからねぇ」

囚人「いつ寝首をかかれてもおかしくないからな、人間様は」

新入り「そんな有様の人間が魔族の王に愚かだと思わないかぁね?」

囚人「それに気付かない、気付いても気付かない振りをするのが人間様だぜ」

新入り「愚かここに極まれり、さぁね」

新入り「まぁ、そんな人間様に起き首かっきられるなんてザマぁないさぁね」

囚人「はっは、ちげぇねぇ!」

囚人「あれだ。さっさと首切られて人間様辞めちめぇばすっきりするさ」

新入り「切られずに人間様辞める手も無いわけじゃあ無いさぁね」

囚人「ほう?」

新入り「どうやらこの国は本格的に魔王討伐をする様さぁね」

囚人「するってぇと、周辺国も巻き込んで大規模な戦争が始まるのか」

新入り「いがみ合ってる国が魔王討伐の為に手を組むなんて笑ってしまぁうさぁね」

囚人「おまけに半端な魔物に手こずってる人間が魔族に喧嘩吹っかけるたぁ、飛んだお笑い種だな」

新入り「その通りさぁね。魔族は一騎当千を地で行くものねぇ」

囚人「いんや、千じゃ足りねぇだろうな。桁がよ」

俺「ちくわ大明神」

新入り「それもそうさぁね。さぁらに魔族は忠誠心が人間の比じゃないからねぇ」

囚人「いつ寝首をかかれてもおかしくないからな、人間様は」

新入り「なぁに、古い知り合いに久々に会ったらツノが生えてたって話さぁね」

囚人「首の皮繋がったまま人間辞めるたぁ大したもんだ」

囚人「旅してた頃に酒場で会った魔族は人間様よりよっぽど話が合ったしな」

囚人「出来るなら、魔族になるってのも面白いだろうよ」

新入り「そうさぁね」

新入り「しかしねぇ、戦争はいやだねぇ」

囚人「魔物と戦う、盗賊を捕まえる、なんてのとは違うからな」

囚人「一部を除き大多数は愛する家族を守るために死んで行く」

囚人「殺した誰かは誰かの愛する人だ」

新入り「正に悲劇さぁね」

新入り「得をするのはごく一部。残りは疲弊し嘆き悲しむのさぁね」

囚人「意に沿わない者は見方でさえ無きものさ」

囚人「とんだお笑い種だ」

新入り「泣ける喜劇か、笑える悲劇か、だぁね」

囚人「どうせなら腹の底から笑いてぇもんだ」

新入り「見かたを変えれば悲劇も喜劇に変わるって言うさぁね」

囚人「俺みたいなもんには縁遠い講釈だな」

新入り「さぁてね。人間と魔族では見えるものが違うかどうか、試してみるかい?」

囚人「ほう。失敗してもどうせ明日にでも尽きる命だ」

新入り「そうさぁね。出来ないことは言わない主義だけどねぇ」

新入り「まぁ、後戻りも出来ないけどねぇ」

囚人「はっは、面白くなってきた!」

囚人「おい、兵士さんよぉ!」

見張りの兵士「はっ!」

囚人「囚人に対してもお堅い態度だこって」

兵士「しかし…」

囚人「まぁ、仕方ねぇ」

囚人「お前さんに迷惑は掛けたくないからよ。ちょと腹でも下して持ち場を離れた事にでもしといてくれや」

新入り「まぁさ、待ちなさいなぁ。それじゃあ、ちょいと可哀想じゃあないかい?」

囚人「よくある話だろう?」

新入り「どうせなら、眠りの魔法で眠らされたってぇのはどうさぁね?」

新入り「それなら持ち場も離れていないさぁね」

囚人「おう、それのが良いな。どうだ?」

兵士「はっ!承知したであります!」

兵士「これは暇な見張りの兵士の独り言であります。」

兵士「いや、寝入った兵士の寝言ということでも構いません。」

兵士「牢獄の保管庫には一振りの大剣がございます」

兵士「物の出所はどうであれ、剣を持つ者のにとって、あれだけの業物を錆びつかせる訳にはいきません」

兵士「毎日、牢獄の兵士達で磨いております。そのせいか、ここ最近は鍵も満足に掛けておりません故」

囚人「そいつはバレたら大目玉だろうよ」

兵士「牢獄の兵士は口が硬いことで有名でございます。誰が鍵を忘れたか犯人は分からずじまいでしょう」

新入り「それなら安心さぁね」

兵士「それと、自分には愛する家族がおります」

兵士「愛する父の母の妹のため、自分は戦地へ向かうでしょう」

兵士「自分と同じ気持ちの兵士は沢山います。そして自分と同じように戦地へ向かうでしょう」

兵士「戦いに疑問を抱いても、そっと蓋をして。ですから…」

新入り「さぁてね。愚かなんて口走ったのは誰かぁね?」

囚人「そんな事、言っても聞いてもいないだろう?」

新入り「国に仕えるなんてぇのは、よく分からないさぁね」

新入り「けどねぇ、愛するものの為に戦う姿は美しいさぁね」

囚人「あぁ、そうだな。兵士はそうあるべきだろうな」

囚人「そんな兵士達の心を俺は誇りに思う」

兵士「ありがとうございます!」

新入り「さぁてね。夜も深いさぁね」

兵士「はっ!そろそろ眠りも深くなるであります!」

新入り「それじゃねぇ。エピローグとモノローグも終わりさぁね」

囚人「第一章をおっぱじめるか!」ググッ、バキッ!

新入り「そうしようさぁねぇ!」シャラン、パキン

囚人「世話になったな」

兵士「ご武運を!!」

新入り「いやぁ、月明かりが目にしみるさぁね」

囚人「そうだなぁ」

囚人「しかし、何処の何奴かと思ってたが、偏屈で有名な流れの魔女とはなぁ」

魔女「随分なお言葉さぁね。此れでも希代の魔術師なんてぇ謳われてるのさぁね」

囚人「傾国の毒婦って言われた方が納得するぜ?」

魔女「褒め言葉として受け取っておくさぁね」

魔女「まぁ、傾国どころか、国の2、3個傾けるぐらい訳無いさぁね」

囚人「出来ない事は言わないんだったか?…やるなよ?」

魔女「やるなら牢獄に入れられた時点でやってるさぁねぇ」

魔女「さぁてね。そっちこそ何かと思いきや、炎魔の戦神なんて名の王国軍副隊長様だぁね」

戦士「痛い名前だよなぁ。ただの根無し草の戦士がそんな立派になっちまってよ」

魔女「しかも、苦味の効いたハンサムなんてぇね。炎魔が聞いてあきれるさぁね」

戦士「炎魔ってのはこいつの事さ。一緒に死線を切り開いてきたんだ。」

魔女「確かに業物だぁね。この大剣の名ならば納得さぁね」

戦士「ちなみに、顔に攻撃を受けた事も無いから、今のご尊顔だぜ」

魔女「その口が付いてる時点で玉に瑕さぁね」

戦士「はっ!ちげぇねぇ!!」

戦士「さて、人間辞める方法は?」

魔女「術式展開しながら魔族の国で生活したら、そのうち魔族の仲間入りさぁね」

戦士「じゃあ、先ずは北に行くか!」

ま「先を決めるよりも、さっさとこの国を出た方が良いさぁね」

戦士「夜通し歩いても1月かかるからなぁ、馬でもありゃあもう少しはやいがなぁ」

魔女「転移魔法」

戦士「なん…だと…?」

魔女「さっさとってぇ、言っただろうさぁ」

魔女「それとも、戦士とってひと月はさっさとの部類さぁね?」

戦士「さっさとってのは、すぐにだな」

魔女「出来ない事は言わないといったさぁね」

戦士「はっは!ご相伴にあずかろう」

戦士「隣国でも月は明るいかね?」

魔女「風の精霊は隣も晴れてるって言ってるさぁね」

戦士「そいつぁいい。向こうに行ったら一丁月見酒と洒落込もうぜ」

魔女「なかなかに乙さぁね。お付き合いさせて貰おうかぁね」

戦士「美男捕まえて飲めるんだから感謝しろよ」

魔女「それはこっちのセリフさぁね」

魔女「さぁてね、行くとするかぁね」シャラ、シャラリ、シャラン

魔女「さぁ、魔法陣の中に来るさぁね。物騒な物は背中に背負ってぇねぇ」

戦士「相、分かった」シャキン

魔女「それから私の体に触れるさぁね」

戦士「こうか?」ギュッ!

魔女「誰も抱きしめろなんてぇ言ってないさぁね」

戦士「はははっ!」

魔女「まぁ、悪く無いねぇ。それじゃあ行くさぁね」

戦士「おうよ!いざ、月見酒!!」

魔女「それからのんびり魔族になろうさぁね!」

戦士「おうともさっ!」

シャラン、シャラリン、シャララララ~
シュンッ!
ーーーー
ーーー
ーー

終わり

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