京子「チョコミントうめぇ!」(239)
娯楽部部室――
結衣「ん、もう五時か。みんな帰ろう・・・って、京子は?」
ちなつ「少し前に生徒会室に向かったみたいですよ」
京子「ただいまー!」
あかり「あっ、戻ってきた」
結衣「何しに行ってきたんだ?」
京子「ちょっと喉渇いたから何か無いかなーって思って・・・」
結衣「お前は自由だな」
京子「えへへ~」
結衣「褒めてないからな」
京子「よーし、明日の朝も部室でだらだらするために今日は早く帰ろう!
結衣「家でゆっくりしてればいいだろ・・・」
京子「もちろん結衣も一緒に。というわけで明日の朝迎えに行くから早めに準備しておいてね!」
結衣「なっ、私もか?まあいいけどな」
ちなつ「結衣先輩が居るのなら私も・・・」
京子「おお、ちなつちゃん!是非来てくれ!」
ちなつ「ああー、やっぱり遠慮しておきます」
あかり「あはは・・・それじゃ、そろそろ帰ろっか?」
結衣「そうだな」
翌朝・結衣の自宅――
結衣「おかしいな、そろそろ京子が来てもいい時間なんだが」
結衣「今日の朝は部室でだらだらするって張り切ってたくせに」
結衣「まぁそこで張り切る意味が分からんが・・・」
結衣「とにかく、そろそろ来ないと部室に立ち寄る暇すらないぞ」
結衣「遅い・・・」
結衣「まさか、あいつ寝過ごしたのか?仕方ない。迎えに行くかな」
歳納家宅近辺――
京子「むぅ~・・・?」キョロキョロ
結衣「あれ、あいつあんなところで何してんだ」
結衣「おい京子?迎えに来たぞ!」
京子「お?おおー・・・待ってたよ!」
結衣「待ってたじゃねーだろ」
京子「いやー、ごめんごめん。じゃあ行こうか!」トテトテ
結衣「お前どこに行く気だ」
結衣「学校はこっちだろ!」
京子「そ、そっか。そうだったね」
結衣「まったく。部室に寄るどころか遅刻寸前なんだからボケるなよ」
京子「部室?」
結衣「お前・・・昨日無駄に張り切ってたのに忘れてたのかよ・・・」
京子「い、いやー。そういう日もあるよね!」
結衣「ねーよ」
結衣「まぁそれはいい。ところでお前何してたんだ?」
京子「ん?何って?」
結衣「さっき何かキョロキョロしてただろ。探し物か?」
京子「探し物・・・そうだね、うん」
結衣「何探してたんだ?」
京子「見つけにくいものですよ」
結衣「机の中もカバンの中も探したけど見つからないのか」
京子「そんな事より私と踊りませんか?」
結衣「踊らねえよ」
結衣「でもそうだな、夢の中へは行ってみたいかもしれないけどな」
京子「夢の中・・・そうか、これは夢だ!」
結衣「お前どうしたんだよ。そんなに大事なものを無くしたのか?」
京子「うーん。私と仲がとても良さそうだから言ってもいいかな」
結衣「は?」
京子「キミは、誰?」
結衣「・・・・・・は?」
結衣「お、お前何言って・・・」
京子「たぶん、私の親友だろうから申し訳ないんだけど・・・キミが誰だか分からないんだよね」
結衣「・・・っ!」
京子「そして同時に、私の親友だろうから告白するけど・・・私、記憶喪失になったみたいなんだ」
結衣「・・・『探し物』って、そういう事なのか?」
京子「うん。参ったよ、朝起きたらわけの分からないところに居てさ。まぁたぶん自分の部屋だったんだけど」
結衣「何か憶えてる事は?」
京子「うーん。分からないことならいっぱいあるけど」
結衣「それでも『夢の中へ』の歌詞は分かるんだな」
結衣「・・・まあ、信じてやるか」
京子「信じてくれるの?」
結衣「いや、まだ半信半疑だがな。お前の事だから悪い冗談かもしれない」
京子「そう・・・」
結衣「でも、お前がいつもとおかしいって事も分かる」
京子「なるほどねー。やっぱりキミには話して正解だったかも」
結衣「本当だとしたらいつまでも隠し通せないだろ?私だけじゃなくて、みんなに」
京子「それもそうかもしれないけどさ」
結衣「というか、家の人はお前の記憶喪失の事・・・」
京子「知らないよ?」
結衣「よくバレなかったな」
京子「いやー。意外と何とかなるものだよ?ただ、自分はビックリしたけどね」
結衣「びっくりって?」
京子「ここがどこか、それどころか自分の名前すらも分からなかったんだよ?」
結衣「なるほどな」
京子「いきなり女の人に『京子』って呼ばれてさ。たぶん母親だね。部屋には歳納京子さんの所持品がいっぱいあるし。
それで混乱しちゃって、とりあえず自分の事とかいろいろ思い出そうとしたけど思い出せなかった。
いろいろ考えた結果、自分が歳納京子でここが自分の家・・・そして私が記憶喪失だって思い至ったの」
結衣「そう、か」
京子「私に何があったんだろうね?」
結衣「さあな」
結衣「ああ、名乗り忘れてたな。私は結衣だ。船見結衣。
『船(ふね)』に『見る』、それと『結ぶ』に『衣(ころも)』で・・・
って、この説明は記憶無い人に通るのか?」
京子「おお・・・結衣さん!?」
結衣「さ、さん・・・だと・・・」
京子「あれ?何か間違った?」
結衣「いや間違っちゃいないんだがな。親友がさん付けで呼んでると思うか?」
京子「あー。でも私記憶喪失だし・・・あっ、ところで『歳納』って『としのう』で合ってるよね?」
結衣「ん、合ってるよ」
京子「間違ってたらさっきツッコミ入ってたかな。珍しい苗字だね~私」
結衣「どうして珍しいって分かるんだよ・・・」
京子「あれ・・・何となく?」
通学路――
京子「しかし助かったよー。学校がどこかすら分からなくて・・・ありがとう結衣さん!」
結衣「だからさん付けやめろって」
京子「えー」
結衣「まあ仕方ないか・・・で、そろそろ学校に着くわけだが」
京子「おお!」
結衣「どうするんだ?記憶喪失の事とか・・・」
京子「んー。何とか騙し騙しで乗り切るよ」
結衣「大丈夫なのか?」
京子「だいじょぶだって!家族にだってばれなかったし・・・それに、みんなを心配させたくないしさ」
結衣「京子・・・」
結衣「分かった、京子がそうしたいなら協力する。ただし」
京子「なに?」
結衣「この事実を知ってもらいたい人物が少なくとも二人居る」
京子「えっ、誰」
結衣「うーん、名前言っても分からないんだよな?同じ部活の仲間だよ」
京子「部活!そういえば、さっきも部室って言ってたよね。
朝から部室に寄っていくなんて熱心なんだね!私ってば青春少女だったんだ!」
結衣「い、いや・・・それがだな・・・」
京子「結衣さんどしたの?」
結衣「いいか、私たちが所属しているのは娯楽部という部で・・・」
京子「ふむふむ」
結衣「基本的にだらだらしてるだけなんだ」
京子「えっ」
結衣「記憶喪失のお前がどう思ったか分からんが・・・」
京子「・・・あっはっは、それはそれで楽しそうじゃん!
私と結衣さんの他にあと二人居るんだよね?楽しみ!」
結衣「ああ。心配かけさせたくないのなら、あの二人には説明しておくべきだ。
京子が部活に来ないなんて・・・」
結衣(いや、でも適当な用事でもでっち上げれば問題ないか?)
京子「来ないなんて?」
結衣「えっ?あ、ああ。つまりそういう事だよ。放課後会うことになるだろうから楽しみにしておけ」
京子「ふーん?分かったよ」
七森中・校内――
京子「やっと着いた~」
結衣「むっ、あれは・・・」
結衣(千歳?まずいな、綾乃も近くに居る可能性が・・・
面倒くさい事になりそうだけど、ここで説明しておくべきか?)
千鶴「・・・・・・」
結衣(いや待てよ。あれは千鶴の方かな)
京子「どうしたのー」
結衣「しっ!」
千鶴「・・・」チラッ
結衣(気付かれたな)
千鶴「・・・」トテトテ
結衣(ああ、そそくさと去っていった。この反応は千鶴か)
京子「今かわいい子と目が合った!」
結衣「目合ったのか、良かったな」
放課後――
結衣「何とかバレずに放課後まで来たな・・・」
京子「うんうん」
結衣「よし、それじゃ部室行くか」
京子「お~!」
結衣「あの二人には昼休みに、大事な話があるから部室に絶対来いって言っておいたし」
京子「さすが結衣さん!それじゃ私トイレ行ってから行くね」
結衣「そうか、じゃあ先に・・・行っちゃまずいか」
京子「大丈夫だよ~。部室の場所は聞いたし」
結衣「確かに、いざとなったら上の階から見えない事もない位置だからな」
京子「だからさ、先に行って説明しておいてよ。私が居てもめんどくさいだけだろうし」
結衣「はっ?まあ・・・そうか。確かに普通に元気なお前が居るとややこしいかもな」
京子「ややこしいなんて酷い・・・」
結衣「先に行くからな!」
京子「えへへ~、またねー」
娯楽部部室――
あかり「結衣ちゃん、大事な話って何?」
結衣「実はだな、その・・・」
ちなつ「どうしたんですか結衣先輩?」
結衣「あー、えーっと・・・京子が記憶喪失になったみたいなんだ」
あかり「ええっ!?」
ちなつ「ま、またまたー。京子先輩の事だから、そういうジョークなんじゃ・・・」
結衣「いや、どうやら本当に・・・」
京子「おーっす!」
ちなつ「あっ、ほら!京子先輩全然元気じゃないですか!」
結衣「まあ、それはそうなんだが。早かったな京子」
京子「結衣さん、この人たちが部活仲間なの?」
あかり「結衣『さん』!?」
結衣「その呼び方やめろって言ったんだけどな」
ちなつ「じゃあ、ほんとに、私たちの事も分からない・・・?」
京子「えへへ~。面目ない・・・」
スーパーカップのチョコミントが食べたい
>>37
再販しないかなあれ
17で我慢してるけどさ
ちなつ「それで、どうして記憶喪失になったんですか?」
京子「うーん。それが、憶えてないんだよね~」
結衣「そりゃそうだろうな」
あかり「家の人とかは何か知らないの?」
結衣「おそらくさっぱりだろう。現状では京子が記憶喪失という事すら知らんだろうからな。
まったく、どうしてこうなったのか・・・」
京子「そんなわけで、私の記憶を取り戻してくれ!」
ちなつ「まあ、放っておくわけにもいかないですよね・・・」
結衣「とりあえず、記憶を取り戻すためにいい案、何か無いか?」
あかり「うーん」
ちなつ「京子先輩に関する思い出の品とか見せればいいんじゃないですか?」
京子「おお!私の思い出!?」
結衣「なるほど。それはいいかもしれないな」
あかり「それじゃ何か探して来ようか?」
結衣「うん。みんなで・・・いや、今の京子を放置しておくのは不安だな。
私はここで京子を見てるから、二人とも何か持ってきてくれ」
ちなつ「はい、結衣先輩!」
娯楽部部室、結衣&京子――
京子「で、結衣さん」
結衣「だからさん付けやめろって。まあ仕方ないか」
京子「ごめんごめん・・・それで、今の二人は誰?」
結衣「ああ、そうか。ピンク髪で大きいツインテの方が一年生の吉川ちなつ」
京子「ふむふむ、年下かー。ちなつちゃんねー」
結衣「赤髪のお団子頭が同じく一年生の赤座あかりだ」
京子「あかりちゃん・・・えーっと、どんな子だっけ?」
結衣「・・・記憶喪失なら仕方ないな」
京子「そういえばちなつちゃんは敬語使ってたけどさ、あかりちゃんってタメ口だよね」
結衣「ん、まあな」
京子「上下関係とか分からないダメな子なの?」
結衣「いやそれは・・・」
京子「たった一年早く生まれただけじゃねえか、とか言っちゃう良識のない子?」
結衣「お前そういうのは分かるんだな。違うんだよ、あの子は幼馴染で小さい頃から一緒だから」
京子「幼馴染・・・思い出の品!」
結衣「まあ、な。それは私もだが」
京子「おお、さっぱり記憶が戻らない」
結衣「そうか」
ちなつ「戻りました!」
結衣「おっ、来たか」
京子「何持ってきたのー?」
ちなつ「これです!」
結衣「これは・・・ミラクるんの単行本か」
京子「あー、これ家にあったけど・・・ん?」チラチラ
ちなつ「じゃあダメですか・・・って、どうかしましたか京子先輩?」
京子「これちなつちゃんの自伝作品?」
ちなつ「違います!」
ちなつ「あれ、そういえば今私の名前」
京子「さっき結衣さんから聞いたんだよー」
ちなつ「なーんだ・・・」
あかり「ただいまー!」
結衣「おっ、あかりも戻ってきたか」
ちなつ「あかりちゃんは何持ってきたの?」
あかり「アイス買って来たからみんなで食べよ~」
結衣「おいコラ」
あかり「ええっ!?こ、これはあれだよ・・・」
結衣「そうか、ラムレーズンか!」
あかり「うん。ミラクるん関係にしようかと思ったんだけど、それって京子ちゃんの家にもあるかなーって」
結衣「なかなか鋭いな」
ちなつ「くっ・・・」
あかり「あれ、どうしたのちなつちゃん」
ちなつ「な、何でもないよ」
京子「何でもいいから早くー」
あかり「あっ、ごめんね京子ちゃん。はい、ラムレーズン」
京子「おお・・・食べていいのかー?」
結衣「ああ。お前の記憶を取り戻すためだからな」
京子「じゃあ、いただきま~す」パクッ
ちなつ「どうですか?」
京子「・・・まずっ」ウェッ
あかり・結衣・ちなつ「ええぇっ!?」
京子「えっ・・・?これ、何なの? 罰ゲームでよく食べさせられてたとか・・・
あれ?それとももしかして私っていじめられっこ?」
あかり「ち、違うよぉ」
結衣「参ったな。これは思った以上に深刻かもしれないぞ」
ちなつ「あんなにラムレーズン好きだったのに・・・」
京子「ほんとに?これを私が・・・?」
結衣「うん。お前がラムレーズン好きだから私の家の冷凍庫にもいつも確保してあるくらいだ」
京子「えっ」
京子「それどういうこと」
結衣「ん?」
京子「私の好きな物が結衣さんの家にある・・・もしかして私って結衣さんの家にいつも行ってるの?」
結衣「ああ、よく来てたな」
京子「それじゃ、親御さんにも迷惑かけてるってことか!」
結衣「えっ?いやまぁ、私は一人暮らしだからな」
京子「中学生で一人暮らしっておかしいだろ!」
結衣「そういう疑問はちゃんと持つのか」
ちなつ「そうだ。結衣先輩の家に行ったらどうでしょうか?」
結衣「なるほど、それもありかもな」
あかり「で、でもアイス溶けちゃうし食べてからにしよ?」
結衣「それもそうだな。ほら、京子。そのラムレーズン私が食べてやるから新しいの一つ選べ。」
京子「いいの!?」
結衣「ああ」
あかり「あかりこれにする~」
ちなつ「チョコミントかぁ。残りはチョコとバニラ・・・どっちにしようかな」
京子「あかりちゃんは普通のバニラだろ!」
あかり「ええっ!?」
結衣「おいおい・・・お前はどうしてそういうの憶えてるんだ?」
あかり「そういうのって何!?」
京子「いや、何となくそんな風に思っただけだけど。
というわけで、はいバニラ」
あかり「本当にバニラにしなきゃダメなの?」
京子「代わりに私がチョコミント食べてあげるから!」
ちなつ「・・・私にも選択肢は無いんですね」
京子「おお・・・菓子界の王様チョコレートとハーブ界のゲリラ、ミントの融合・・・
これ誰が考えたんだろうね?常識的な人間なら組み合わせようと思わないよ」
結衣「記憶喪失の人間に常識的とか言われてもな・・・」
ちなつ「ハーブ界のゲリラって何ですか?」
京子「あれ、知らないの?ミントって繁殖力強いから軽い気持ちでその辺に植えると大惨事になるんだよ。
まぁミントだけじゃなくハーブ類は基本的に雑草って言われてるんだけどさー」
結衣「もう記憶喪失の偏りに突っ込むのは飽きたんだが」
京子「まあいいや。それじゃ、いただきまーす」パクッ
あかり「あかりも食べよーっと」
京子「・・・うめぇ」
ちなつ「えっ?」
京子「チョコミントうめぇ!」
結衣「おいおい、マジか」
京子「シェフを呼べ!おいしいです!」
結衣「落ち着けって」
京子「こんなのあるなら最初から言ってよ~」
ちなつ「そうは言っても、記憶喪失の京子先輩なんて初めてですし・・・」
結衣「まさかラムレーズン以外でこんなリアクションを取るとはな」
京子「ますます謎は深まるばかりだね」
結衣「謎の大元が何言ってんだよ」
ちなつ「ごちそうさまです」
あかり「おいしかった~」
結衣「よし、みんな食べ終わったか?」
京子「うんうん」
結衣「それじゃ・・・」
綾乃「歳納京子ー!」
京子「うわっ」
千歳「お邪魔します~」
京子「びっくりしたぁ」
結衣「何だ二人とも、タイミング悪いなぁ」
綾乃「タイミングって何かしら?」
京子「・・・この人誰?」
綾乃「なっ・・・この杉浦綾乃を忘れたっていうの!?そういう冗談は嫌いよ!」
結衣「この人たちは綾乃と千歳っていって、生徒会副会長なんだ」
京子「え、生徒会?偉い人なの? それはそれは・・・初めまして綾乃さん、千歳さん。
って、初めてじゃないか」
綾乃「『さん』!?」
千歳「お~。記憶喪失になったって噂は本当やったんなぁ」
綾乃「き、記憶喪失!?聞いてないわよ!」
結衣「どうして知ってるんだ?現時点で知ってる人は居ないはずだけど」
千歳「いやな~、千鶴がな」
結衣「あの妹さんか」
千歳「今日の朝会ったのに何もされなかったって不思議がっててな~」
結衣「そういや会ったな・・・って、いつも何かしてるのかこいつは」
千歳「それで、もしかしたら記憶喪失ちゃうかなーって」
結衣「いやその発想はおかしいだろ」
綾乃「本当・・・なのかしら?」
京子「いや~、面目ない」
綾乃「・・・っ! ちょっと待ってなさい!」
千歳「あっ、綾乃ちゃ~ん?」
結衣「どこ行ったんだ?」
千歳「う~ん、どこやろな~」
綾乃「はぁ、はぁ・・・待たせたわね!」
千歳「あっ、おかえり~」
京子「何なに~?」
綾乃「これを持って来たわ」
結衣「そ、それはまさか・・・」
綾乃「ラムレーズンよ!」
京子「えっ・・・」ビクッ
綾乃「これでも食べて早く記憶戻しなさい!」
綾乃「ほ、ほら」
京子「わっ、やめろー!」バシッ
綾乃「なっ」
ちなつ「京子先輩、記憶なくした影響でラムレーズン苦手になったみたいなんです」
綾乃「歳納京子に叩かれた・・・歳納京子に・・・嫌われた?」
ちなつ「って、聞いてますか?」
千歳「綾乃ちゃ~ん?」
綾乃「歳納京子に・・・」
千歳「あかん、綾乃ちゃんが壊れてしもた~」
京子「あはは。そんな大げさなー・・・綾乃さーん?」
綾乃「歳納京子に・・・歳納京子・・・」
結衣「ダメだな」
京子「ありゃー。これ、どうしたらいいかな?」
千歳「とりあえず元に戻るまで待たんとな~」
結衣「むぅ。これからみんなで私の家に行こうと思ったんだが」
千歳「あ~、それならウチが綾乃ちゃん見てるから大丈夫や~」
結衣「そうか?悪いな。じゃあ行こうか」
ちなつ「はい!結衣先輩!」
綾乃「歳納京子・・・歳納京子の・・・・・・いや、これはこれで・・・
そうよ、歳納京子!もう一度私を叩きなさい!」
千歳「もう行ってしもたで~」
帰宅中――
結衣「ところで」
ちなつ「何ですか結衣先輩?」
結衣「綾乃と千歳が来ると、ちなつちゃんもあかり共々影薄くなるな」
ちなつ「うっ」
あかり「共々って・・・酷いよ結衣ちゃん・・・」
京子「ん・・・?」
結衣「どうした京子?」
京子「思い出した!!」
ちなつ「えっ?」
京子「思い出したよ!」
結衣「マジでか」
京子「あかりちゃんとちなつちゃんってアニメ8話で一度も出番無かったよね」
あかり「えっ・・・ま、まぁね」
京子「やっぱり!」
ちなつ「思い出したって・・・そのことだけですか?」
京子「うん。何か急にビビビーって閃いた」
結衣「他に思い出した事は?」
京子「ないかな?」
結衣「どうしてそう限定的なんだよ・・・」
ちなつ「でもそれを思い出したのなら8話の内容も憶えてるんじゃ」
京子「いやー、出番はここまでだって二人に言った事しか憶えてないよ」
結衣「そんなどうでもいいところを・・・」
あかり「どうでも良くないよ!?」
ちなつ「どうでもいいかどうかはさておき、さすが京子先輩の記憶喪失だけあってデタラメですね」
京子「まったくだよね」
結衣「いやお前が言うな」
結衣のアパート前――
結衣「ほら、着いたぞー」
京子「でけぇ!まるで文化会館だな!」
結衣「・・・お前本当は記憶あるんじゃないのか?」
京子「ふぇっ?」
ちなつ「まあ、記憶喪失といっても完全に消失したわけじゃないでしょうし・・・」
結衣「なるほど、封印された記憶の片鱗って事か」
京子「封印とか片鱗とか厨二っぽい響きだね」
結衣「いや中二だけどそれがどうした」
結衣の部屋――
京子「いい部屋じゃん。何畳?」
結衣「あー。えーっと、どのくらいだったかな」
京子「まぁそれはいいや。言われてもピンと来ないし・・・
何故なら私は記憶喪失だから!」
結衣「いや、今のお前の方が逆に分かる気がするぞ」
京子「え~分からないよ~。何故なら私は記憶喪失なのだから!」
結衣「なんかどっかの芸人がそんなネタやってた気がするな」
京子「ところでさ」
結衣「どうした」
京子「さっき記憶が完全に消失したわけじゃないって話をしてたよね」
ちなつ「はい、しましたよ。それがどうかしましたか?」
京子「私の記憶は消えてないかもしれないけど、あかりちゃんは完全に消失してるよね」
あかり「してないよ!?ちょっと発言が描かれてないだけでちゃんと居るからね!?」
ちなつ「あっ、よかった。ちゃんと居たんですねあかりちゃん」
あかり「ひどい・・・」
京子「ん~・・・確かにここには来た事ある、かも?」
結衣「おお、何か思い出したか?」
京子「いやー、さっぱりだね」
ちなつ「そうですか・・・」
京子「全然関係ないけど、結衣さんって妹とか居るの?あーウニ食べたくなってきた」
結衣「いやいやお前着実に思い出して来て・・・いや待てよ」
結衣(まりちゃんがウニ好きだって事を京子たちは知らないはず・・・)
結衣「お前どうなってるんだ?・・・何かに憑かれてるとかか?」
京子「えっ、何言ってるの?」
あかり「こ、怖い話はやめようよ結衣ちゃん」
結衣「いや、まあな。そんなはずは無いと分かってるんだが・・・」
結衣(まさか、あの時潜在的にまりちゃんの好みを感じ取っていたとでもいうのか?
どういう感覚してるんだこいつは)
ちなつ「どうしたんですか、結衣先輩」
結衣「えっ?ああ、少しこいつの記憶喪失について考え事をな」
結衣(この京子、何かずれているんだよな。ただの記憶喪失では無い気がする・・・)
京子「がんばれ結衣さん!私のために!」
結衣「ちょっと黙ってろ」
あかり「ゆ、結衣ちゃん」
結衣「うーん・・・」
京子「歳納京子は死んだんだよ。いや違うか。歳納京子の魂は、ね」
結衣「な、何言ってる・・・どうして京子が死ななくちゃいけないんだよ・・・」
京子「爆死――」
結衣「爆・・・そ、そんな非常識な事態があるわけ・・・いや待てよ?
まさか、あの時言ってた理科室って!」
京子「そう。あの日私は綾乃の頼みを聞いて西垣先生の元へ向かった。
運悪く・・・いや、私にとっては運が良かったと言うべきか。先生は実験中だった」
結衣「そこで爆発に・・・?そんな、馬鹿な・・・
第一、その話が本当だとしたらお前は誰なんだ!?」
京子「貴女に恋焦がれて自殺した・・・いや、もうそれも関係ないさ。
ほら、結衣。記憶は無いが私は京子だぞ」
結衣「違う!お前は京子なんかじゃ・・・
京子は馬鹿で、無邪気で、いい奴で・・・そして、ラムレーズンが大好きなんだ!!」
京子「・・・チョコミントは受け入れられない、というわけか」
ちなつ「・・・先輩!結衣先輩!」
結衣「ハッ」
あかり「大丈夫?」
結衣「ああ。ちょっと考え事がおかしな方向に行ってしまったが無事だぞ」
京子「私は馬鹿でも無邪気でもいい奴でもねぇ!」
結衣「!?」
結衣「どうしてそれが・・・って、いい奴に関しては別に否定しなくていいだろ」
京子「えへへ。ちょっと、分かった気がする」
ちなつ「何がですか?」
京子「何か私、アンテナついたっぽい」
結衣「はっ?」
京子「どうも変な電波を受信するんだよね。それがさっきは結衣さんの思考だっただけ」
あかり「ま、またまたー。さすが京子ちゃんは記憶喪失でも面白いね」
結衣「・・・いやもしかすると」
ちなつ「えっ?」
結衣「さっきはただの妄想かと思ったけど、西垣先生という線はアリかもな」
ちなつ「なるほど、爆発に巻き込まれて記憶を失ったとか?」
結衣「そんなに単純じゃない気もするんだが、まぁ」
京子「その西何とかって先生が元凶なんだな!?」
結衣「お前が元凶だよ」
あかり「じゃあまた学校に戻るの?」
結衣「うん、そうなるな」
京子「えーめんどくさいよー」
結衣「じゃあ帰れよ」
京子「えへへ~冗談だってー」
通学路――
結衣「はあ・・・何かいつも以上に手が負えない気がする・・・」
京子「えっ、何が?」
結衣「お前だよ!・・・ったく、だんだん記憶がないことに慣れて来たのか?
今日最初に会った時はマジで心配したんだが」
京子「じゃあ今は心配してないってのかー!」
結衣「心配じゃなきゃこんなことしてねえよ!ただそれ以上にうざいんだって!」
京子「お、おお?」
京子「・・・結衣さん、それ本気で言ってるの?」
結衣「お前・・・えっ、もしかしてマジで自覚無いのか?」
京子「質問文に対し質問文で返すとテスト0点なんだよ」
結衣「おまえな・・・」
ちなつ「ゆ、結衣先輩落ち着いて」
京子「ってさっきあかりちゃんが言ってた!」
あかり「ええっ!?あかり何も言ってないよ!」
結衣「家族や友達を心配させたくないと思っていた京子はどこに消えた・・・」
京子「ここに居るけど」
結衣「まぁ、心配の比率はかなり薄まったがな。代わりにすごい苦労してるぞ」
京子「大丈夫だよ。ほら、若い内の苦労は買ってでもしろって言うから」
結衣「はぁぁ~・・・私はもう駄目かもしれない。あかり、後は任せていいか?」
あかり「え、ええっ?」
ちなつ「結衣先輩、元気出してください!」
結衣「まあ、もう少しだけがんばってみるさ・・・」
京子「がんばれ~」
結衣「やっぱり無理かもしれん」
七森中・校門――
結衣「非常に疲れたわけだが」
京子「私もー・・・」
結衣「お前・・・もう何も言葉が出ねえよ・・・」
ちなつ「と、とりあえず理科室ですよね?」
結衣「ああ、そうだな」
京子「待ってろよー、西が何とかー!」
結衣「そこまで言ったなら『き』まで言ってやれ」
理科室――
あかり「失礼しまーす」
ちなつ「誰も居ませんね」
あかり「準備室の方かな?」
京子「こっちか!おーい、西何とかき先生ー」
結衣「わざと言いづらい呼び方しなくていい」
京子「・・・居ないよ?」
結衣「あれ、そうなのか」
ちなつ「ここに居ないって事は生徒会室でしょうか?」
結衣「そうかもな」
京子「えっ、どうして理科の先生が生徒会室に居るの?顧問?」
結衣「あんな人が顧問になったら生徒会どころか生徒が全滅しそうだな」
あかり「ま、まさか~」
結衣「まあ、あかりはあの先生あまり知らないだろうからな」
京子「顧問じゃないなら何なのさ!」
結衣「生徒会長と仲がいいみたいでな」
あかり「へぇー、そうなんだ。そういえばあかり、会長さんまだ見た事無いなー」
結衣「いや、あるんだが・・・説明がめんどくさいからいいか」
生徒会室――
ガラガラガラ
京子「爆友ー!」
綾乃「と、歳納京子!?どうしてここに・・・」
千歳「また会うたな~」
結衣「おっ、綾乃と千歳か。少しそこの先生に用事があってね」
西垣先生「何だ歳納?今、爆友になりたいと言ったのか?」
京子「受信した電波を言葉にして発しただけです!」
結衣「すみません、西垣先生。今の京子は放っておいてください」
西垣先生「ああ、いつもの歳納も放っておきたいけどな」
結衣「茶化さないでください。今日は少し真面目な話をしに来ました」
西垣先生「ん、何だ?」
結衣「実は・・・」
西垣先生「記憶喪失?そんなの私が知るか」
あかり(教師と思えない発言だ・・・)
結衣「そうですか・・・」
西垣先生「いや、だが待てよ?歳納、昨日ここに来たんだったか?」
京子「分かりません!」
西垣先生「そういや記憶がないんだったか」
綾乃「確かに歳納京子なら昨日来てたわよ。喉渇いたってビーカーに入った液体飲んでたわね。
って、西垣先生には伝えたはずですけど」
結衣「京子・・・」
京子「てへっ☆」
西垣先生「そうか、やはり私の記憶は間違ってなかったな。歳納が飲んだあれは――」
結衣「言わなくても大体分かりました・・・」
西垣先生「ほう、そうか?あれは私特製の栄養ドリンクだったんだが」
結衣「えっ?」
西垣先生「おかしな物は入っていないぞ。頭をすっきり、さっぱりさせる効果があるんだ」
結衣「すっきりさせすぎて記憶までさっぱりみたいですが」
西垣先生「とにかく、あれ自体はそこまで怪しい飲み物ではなかったはずだ」
ちなつ「それじゃ、京子先輩は何故・・・」
西垣先生「ふむ・・・杉浦、池田。お前たち昨日おかしな話をしてたよな」
千歳「おかしな話~?」
綾乃「そんなのしてたかしら?」
千歳「ん~・・・・・・あっ!」
綾乃「な、何?」
千歳「コンビーフ・・・?」
綾乃「ああ。そういえば10年前のコンビーフを見せようと思ってたけどなくなってたとかって・・・
えっ、もしかして!?」
結衣「京子、まさかお前・・・」
京子「記憶にございません!」
千歳「てっきり誰かが片付けたと思ってたわ~」
西垣先生「フフ。しかしその発想は無かったな」
綾乃「西垣先生?」
西垣先生「だが・・・おそらくコンビーフだけではこうはならなかった。
私特製のドリンクと超反応を起こして大変な効果を与えたのだろう。
あかり「そ、そんな非現実的なオチ・・・?」
西垣先生「しかし事実なんだ!歳納、記憶以外に何か変わった事はないか?」
京子「え~っと、別に?」
ちなつ「いや、さっき言ってたじゃないですか!」
結衣「そういえば電波を受信するとか・・・」
京子「あー」
西垣先生「ふむ、なるほど。第六感みたいな超感覚が芽生えたようだな」
結衣「おかげで記憶を失ってもなおめんどくさい奴でしたよ」
西垣先生「実に興味深い!10年前のコンビーフという調合材料は考えてなかったぞ」
綾乃「そりゃそうでしょうね・・・」
結衣「それで、京子の記憶は戻るんですか?」
西垣先生「分からん」
あかり「そんなぁ・・・」
西垣先生「しかし、コンビーフは分からんがあのドリンクの効果がもつのは大体一日強だ。
それが切れれば或いは・・・」
結衣「・・・それに期待するしか無いか」
京子「一日強って長くない?」
西垣先生「それくらいもってもらわねば私が困る」
ちなつ「まぁ、それなら仕方ないですね。今日のところは帰って様子を見ましょうか」
結衣「そうだな」
京子「やー、みんな!ご苦労であった!」
結衣「ほんとに苦労したよ・・・つーかまだ解決してないがな」
あかり「とりあえず帰ろうよ~」
京子「うんうん」
千歳「ほな、またな~」
帰宅中――
結衣「うーん・・・京子、今日は私の家に泊まってけ」
京子「えっ、何で?」
結衣「まだどうなるか分からないからな。記憶が戻るか悪化するか・・・
だから、事情を知ってる人間が近くに居た方がいいだろう」
京子「んー。それもそうか。分かった!」
結衣「じゃあ家に着いたら京子の家に電話しておかないとな」
ちなつ(うらやましい・・・)
あかり「ちなつちゃん?どうかした?」
ちなつ「な、何でもない」
結衣「それじゃ、私たちはここで」
ちなつ「はい。結衣先輩、京子先輩。また明日・・・って休日でしたっけ」
結衣「ああ、そういえばそうか・・・じゃあ明日の朝10時ごろ私の家に集合な」
ちなつ「了解です。では、また明日」
あかり「京子ちゃんの記憶、戻ってるといいんだけど・・・あっ、またね」
結衣「うむ、またな」
京子「またね~」
京子「結衣さん、ようやく二人きりになれたね・・・」
結衣「爆ぜろ」
結衣宅――
京子「あー、着替えとかどうしようか」
結衣「ん?カバンの中に入ってないか?」
京子「あはは、そんな馬鹿なー。これ通学用の・・・うぉっ、あった!」
結衣「だろ?」
京子「うわぁ・・・泊まる気満々とか引くわぁ・・・」
結衣「それお前のカバンなんだけどな」
結衣「まあ、泊まる気満々ってわけでもないんだが」
京子「そうなの?」
結衣「ああ。気まぐれで泊まりに来ようと思いついた時に
家まで取りに行くのめんどくさいからいつもカバンに入れてるらしい」
京子「ほんとに?思いつきでいきなりとか迷惑な奴だねー」
結衣「まったくだよ。どうにかならないかな」
京子「ならないと思う」
結衣「私もそう思うぞ」
結衣「おっと、夕食何がいい?」
京子「作ってくれるの!?」
結衣「まぁな。買い物に行く気分じゃないから家にあるものだけだけど」
京子「うに!」
結衣「ねーよ」
京子「・・・うに丼?」
結衣「ラムレーズンでいいか?」
京子「すみませんでした」
結衣「おっ、偶然にもチョコミントアイスがあった」
京子「マジでっ」
結衣「でもご飯じゃないからダメだ」
京子「アイスじゃなくてライスにしろってか!」
結衣「そういう事じゃないがそういう事だ。じゃあオムライスな」
京子「へぇ。結衣さんオムライスなんて作れるんだ~」
結衣「まぁ、な」
京子「ふぅ~、食った食ったー」
結衣「早いな」
京子「あー、そうだね。食事中のシーンとか露骨にカットされちゃったもんね」
結衣「また訳の分からん事を」
京子「おいしかった!」
結衣「ラムレーズンの時みたいにまずいって言われたらどうしようかと思ったよ」
22時――
結衣「あれ、もうこんな時間か。そろそろ寝るぞ」
京子「えー、もう?」
結衣「あんまり夜更かししても良くないからな・・・よいしょっと」
京子「えっ」
結衣「ん?」
京子「い・・・一緒の布団なの?」
結衣「あ、ああ・・・嫌か?」
京子「嫌っていうか・・・そういう関係だったの?」
結衣「どういう関係だよ!?お前に弁明するのも馬鹿らしいよ!」
結衣「まあ・・・」
京子「何なに?」
結衣「それだけ、仲のいい友達・・・って事だよ」
結衣(って、滅茶苦茶恥ずかしいんだが・・・)
京子「・・・えへへ」
結衣「な、何だよ?」
京子「結衣さんみたいな友達が居るなんて、私は幸せ者なんだなーって」
結衣「は、恥ずかしい台詞禁止!」
京子「ふふ。それじゃおやすみ~」
結衣「まったく・・・おやすみ」
翌朝――
結衣「ん・・・朝か」
京子「う~ん・・・」
結衣「そうだ、京子は!?」
京子「んー・・・?」
結衣「京子!」
京子「うー・・・何だよぉ・・・」
結衣「京子ってば!」
京子「だから何だよぉ・・・・・・って、何だ!?」
結衣「起きたか?」
京子「えっ、えっ、ここ・・・何?あれ、何で!?」
結衣「京子?」
京子「どうして私ここで寝てたの!?」
結衣「お、お前まさか・・・また記憶喪失に?」
京子「記憶?」
京子「確かに、どうしてここに居るかは分からないけど」
結衣「お前、名前は?」
京子「えっ」
結衣「お前の名前だよ!」
京子「歳納京子?・・・ってそういうことでいいの?」
結衣「ほっ、良かった・・・」
京子「あはは、変な結衣~」
結衣「えっ」
結衣「お前今何て言った!?」
京子「わっ。ごめんよ、変って言って悪かったよ~」
結衣「違う、そっちじゃなくて・・・」
京子「・・・『あはは』?」
結衣「それは笑い声じゃねえか」
京子「『変な』の『な』?」
結衣「そんなどうでもいいところ求めてないって!」
京子「えーっと、あと記憶にある限りでは・・・『結衣』?」
結衣「・・・っ!」
結衣「そうか・・・記憶、戻ったんだな」
京子「いや、チンプンカンプンだよ!まぁ結衣の家に居るのは仕方ないや・・・
ほら、とりあえず学校に行く準備しないとー」
結衣「えっ、今日は休みだぞ」
京子「またまたー。今日は金曜日だし、休みは明日でしょ?」
結衣「もしかしてお前・・・」
京子「ん~?」
結衣「今日は早めに学校に行って、部室でだらだらするんだっけ?」
京子「そうそう、だから早く!」
結衣「バカ・・・今度は昨日の記憶を忘れちまいやがったのか」
京子「???」
結衣「とにかく、今日は土曜で休みだ」
京子「あれ、ついに金曜日なくなったの?」
結衣「ついにって何だよ。無くなってないしな」
京子「じゃあ今日は金曜日だろ!」
結衣「その金曜日は別のお前が代わりに過ごしてくれたんだよ」
京子「えっ・・・結衣、頭でも打った?」
結衣「まぁ、信じてもらえると思っては居なかったが」
結衣「ほら、テレビを見てみろ。これ土曜の番組だろ?」
京子「お、おお・・・先週の録画?」
結衣「・・・ニュースにするか?」ピッ
京子「天気予報に今日の予報がねえ!」
結衣「だからお前の言う今日は昨日なんだって・・・」
京子「そんな馬鹿な事あるわけ無いじゃん!」
結衣「あー・・・うん、お前昨日ずっと寝てたんだよ」
京子「マジでっ」
結衣「うん。かれこれ30時間以上寝てたぞ」
京子「えっ、じゃあまだ夜中の0時過ぎじゃん」
結衣「5時過ぎに帰って夕方6時前に寝たのか!?」
京子「あれ、どうだったかな・・・記憶があやふやだ」
結衣「きっと寝すぎたせいだな。ほら、ラムレーズン食うか?」
京子「おお!食べる!」
結衣「分かったよ。じゃあ持って来てやる」
京子「やっぱりラムレーズンだよね~」
結衣「そうか。じゃあ私はチョコミントを食べるかな」
京子「そういえば変な夢を見た気がするよー。ラムレーズンの天使だか悪魔だかが出てきて・・・」
結衣「割とその二つは対極の存在だと思うんだけどな」
京子「そしてね、お前も蝋人形にしてやろうか!って」
結衣「確実に悪魔じゃねーか。ラムレーズン関係ないし」
京子「言ってなかった」
結衣「言ってなかったのかよ」
京子「何だったかな~、何か言ってた気がするんだけど・・・」
結衣「いいから早く食え」
京子「それもそうだね」パクッ
京子「!!?? ま、まずっ・・・」オェッ
結衣「何ィ!?」
京子「な、何が起こってるんだー?」
結衣「待て待て・・・おい、これ食べてみろ!」
京子「えっ、チョコミント?」パクッ
京子「・・・うめぇ!チョコミントうめぇ!」
結衣「なんて事だ・・・ラムレーズンと記憶喪失は別件だったのか・・・?」
京子「うぅ、ラムレーズンを食べられない体になってしまったー・・・助けて結衣ー」
結衣「といってもなぁ。原因は何だ?夢か?」
京子「分かんない」
結衣「うーむ、ある意味で記憶喪失より厄介だな。馬鹿馬鹿しい分」
京子「馬鹿馬鹿しくない!」
結衣「まあそれで、もしラムレーズンの悪魔だかの夢が原因だとしたらどうしたらいいんだ?」
京子「夢って事は心理的な何かかな?気合でがんばる!」
結衣「じゃあがんばれよ」
京子「分かった!」パクッ
京子「まずっ・・・」オェッ
結衣「うーん・・・」
結衣「あれだ、チョコミントはおいしく頂けるんだからいいんじゃないか?」
京子「おー・・・・・・」
京子「い、いやいや、ラムレーズンと私は切り離せない関係にあるんだ!」
結衣「今ちょっと迷っただろ」
京子「迷ってねーし!このラムラムな京子ちゃん迷わせたら大したものですよ!」
結衣「まあ、うん。そういうどうでもいいような事って割と譲れないものだよな」
京子「そんなわけで、私のラムレーズン愛を取り戻せ!」
結衣「いや愛は今まで通りに感じるんだが」
京子「あー、そっか。じゃあ・・・ラムレーズン舌?」
結衣「何か嫌だが間違ってないかもな」
京子「よし!私のラムレーズン舌を取り戻そう!」
結衣「まぁ付き合ってやるさ」
京子「おお、さすが結衣!」
結衣「うん。私はお前の・・・親友、だからな」
京子「えっ・・・何で急にいい事っぽい台詞言っちゃったの?」
結衣「う、うるさいな。そういや、もうすぐあかりとちなつも来るから手伝ってもらおうか」
京子「おお、そうなのか。じゃあみんなでがんばろう!」
結衣「しかし、事態が事態だけに何をどうすれば解決するのかさっぱり分からん・・・」
結衣(まったく。こいつには振り回されっぱなしだ)
結衣「けど・・・」
結衣(でもこういうのも悪くは無い、か)
結衣「・・・うん。がんばろうか」
京子「ウオオオ!行くぞオオオ!」
結衣「どこにだよ」
結衣(とあかりとちなつ)の友情が京子のラムレーズン舌を救うと信じて・・・!
ご愛読ありがとうございました!
京子のラムレーズン舌を取り戻すため奮闘する一行――
京子「お前が元凶か!?」
???「ククク・・・我はラムレー神・・・」
結衣「ラムレー神だと・・・京子に何をしたんだ!」
ラムレー神との戦いに多大な犠牲を払う事となる京子――
綾乃「きゃあっ!!」
千歳「あ、あかん・・・この人強いわぁ・・・」
京子「綾乃、千歳!?」
千鶴「よくも姉さん達を・・・許さない!」
結衣「待て千鶴、一人で突っ込むのは危険だ!」
駆けつける仲間、激化する戦い――
ちなつ「結衣先輩、危ない!」
結衣「しまった!?」
??「おっと、そうはさせないぞぉ!」キィンッ
???「あら、櫻子もたまには役に立つ事があるんですのね」
櫻子「何だとー?ようやく私たちの出番が来たんだから、活躍しないとな!」
向日葵「ふん、せいぜい私の足を引っ張らない事ですわ」
友達である京子のために覚醒する仲間たち――
あかり「はぁぁ・・・クリムゾンライト!」
ラムレー神「グォッ!?き、貴様・・・魔法の詠唱はしたのか・・・?」
あかり「ちゃんとしたよ?ここからはステルスあかりんの独壇場だよ!」
歳納京子の運命は――?
次回、ラムレーズンウォーズ最終話『希望を胸に』
京子「おのれーラムレー神・・・ZZZ・・・ハッ!何だ夢か・・・」
結衣「おう起きたか京子。二度寝するのはいいが、ちゃんと布団かけろよ」
>>229みたいな展開しか浮かばなかったため打ち切られました
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