岡部「親知らずを抜くことになった」(233)
ダル「まじですか」
岡部「マジだ」
まゆしぃ「頑張ってねオカリン・・・」
ダル「生きて帰ってこいよ・・・」
岡部「たかが歯を抜くだけだろう・・・大袈裟だな」
紅莉栖「なんで親知らず抜くことになったのよ」
岡部「虫歯が原因で」キリッ
ダル「寝る前にドクペ飲むからだお」
岡部「なってしまったものはしかたないだろ」
岡部「で、親字知らずは治療できないからな。抜くしかあるまい」
病院
歯医者「じゃあ岡部さん。治療始めましょうか」
岡部「はい」
歯医者「じゃあ麻酔しますね。ちょっと痛みますから我慢してくださいね」
岡部「はい」
歯医者は麻酔薬が入った注射針をもって岡部の口の中に入れると親知らずが埋まっている場所に針を刺した
岡部「ぐ、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
岡部(痛かった・・・でもそろそろ麻酔が効き始めているのか口がピリピリしてきたな)
医者「じゃあ歯抜きますね」
岡部「はい」
医者はメスを取り顔色一つ変えずにそれを俺の口の中に挿入する。
一分もしないうちにメスを抜きペンチのようなものに持ち替えた。どうやら切開はもう終了したみたいだ
看護婦が口の中の水分を吸引する機械で血を吸引しているせいか血の味はあまりしない
そして今度はペンチを俺の口のなかに挿入した。そして
ミシミシッゴリッゴリッ
自分の右上あごにものすごい力が加わる。自分には歯を抜かれているという実感はない。麻酔が効いているため痛みがほとんどないからだ
全く痛くないというわけではない。麻酔は効いていてもやはり少し痛い
しかし麻痺はしていてもペンチで歯を抜こうとしている医者のすごい力はあごを通して伝わってくる
親知らずに対して右、左、上、下、とあらゆる方向力が働いているのがわかる。歯の根っこぐりぐりされているような気持ち悪い感覚
そうしている間に舌と下あごの間にどんどん液体が溜まっていく。血だ。その液体も看護婦が吸引器で吸引してくれるため口から溢れることはない。血の味もしない
恐怖のせいで目を瞑っているため医者の表情は見えない。いったいどんな表情をしているのだろう。なかなか抜けない歯にイラついたりしているのだろうか
などと思ってる上あごに掛かる力が無くなった。なぜかはわかる。
ポロッと何かが取れた感覚は俺にもしっかりと伝わっていた。
どうやら抜けたようだ。聞いていた通りあっと言う間だった
抜くのと同時に看護婦が吸引をやめたため口には血の味が広がっている
歯医者「取れましたよ。とりあえず口を洗ってください」
あらかじめ用意されていた水を口に含む。吐いた水は血で真っ赤だった
岡部(しかしちょろいな・・・かなり大変と聞いていたのだが・・・)
口を漱ぐのやめるとすぐに血の味が広がるので俺は何度も口を洗った
岡部(ふむ。これだけ簡単なら・・・)
歯医者「とりあえず、今回はこれで終わりd」
岡部「あ、もう残りの3本も全部抜いちゃってください」
歯医者「え」
岡部「あと3回も抜きにくるのも面倒なんで」
一応抜歯も手術に分類される。今回の手術では上2本、下2本の計4本を抜く予定だった。
しかし、4回も医者の所に行って手術して・・・というのはあまりにも面倒だ
歯医者「ま、まぁ一気に4本抜かれる方もおられますが・・・」
岡部「じゃあお願いします」
あと3回もわざわざ行くなんて時間ももったいない。まだ夏休みは始まったばかりなのだ。抜歯に遊び時間を取られるのもつらい
だったら話は簡単。まとめて抜けばいい。だってこんなにも楽なんだから
流石はIQ170の灰色の脳細胞を持つ狂気のマッドサイエンティスト!
こんな発想を思いつく自分が恐ろしい!
医者「じゃあ抜きますね」
岡部「お願いします」
リクライニングシートが再びダウンしていく。
一番下までダウンすると再び医者と看護婦が配置につく。
そしてさっきと同じように歯を抜き始めた。
ミシミシッゴリッゴリッ!!
ミシミシッゴリッゴリッ!!
ミシミシッゴリッゴリッ!!
―――手術はわずか40分で終了した
手術が終了して待合室に戻るとそこにはまゆりがいた
まゆり「あ!オカリントゥットゥルー♪」
岡部「ああ、あふりは。あはあはいへうへあおあ」(ああ、まゆりか。わざわざ来てくれたのか)
まゆり「オカリンったら何しゃべってるかわからないよー?おかしいね、えっへへー」
俺がしゃべれないのは傷口にガーゼを挟んで噛んでいるからだ。
切開した部分は針で塗ってはあるもののやはり血はまだひどい。まあすぐに止まるだろう。
まゆり「で、手術はどうだった?」
・・・こいつは俺がしゃべれないとわかっていても話しかけるのか
仕方なく俺はケータイを取り出しメールで返事を返すことにした
岡部『思っていたより楽で拍子抜けした。先生の治療が上手かったのかもしれん』
まゆり「へー。いいお医者さんでよかったねー。今はどう?痛い?」
岡部『痛くはないな。麻酔のしびれが少しあるぐらいだ』
まゆり「そうなんだー。で、縫いた歯はどうしたの?」
しかし、メールで会話というのは面倒だな。会話ならばすぐに伝わることをいちいち文章に起こさなければならないとは・・・
閃光の指圧師は普段こんな面倒なことをやっていたのかと今更ながら思う
岡部『抜いた歯は袋に入れてもらって貰ってきたぞ』
まゆり「わー!すごーい!」
これだと言うようにまゆりに先ほどまで歯だったものを誇らしげに見せる。
本当は置いてきてもよかったのだがどうしますか?と聞かれたら持ち帰りたくなるものなのだ
医者の話によれば、何分割かして取り出すこともあるらしいが俺のは4本ともきれいに抜けたため形もそのままなのだ
歯が折れずに分割せずに一回で取れたことも楽に抜けたことの一因でもあるらしい
ともあれ綺麗な状態で持ち帰れたことにちょっとした嬉しさがこみあげる
ラボに帰ったら綺麗に洗って血を落としてやらねばなどと考えているうちに再び医者に呼び出された
処置室に入るとガーゼを吐き、椅子に横になるよう指示された
医者「うん。血は止まってますね」
そういいながら消毒液の沁みたガーゼを患部にあてる。
医者「いいですよ。今日はこれで終わりです」
岡部「ありがとうございます」
リクライニングシートが起き上がる。看護婦によってすでにコップには水が用意されていた
例によって口を漱ぐ。・・・吐いた水は赤い
医者「これから漱ぐときはあまり勢いよくしないでください」
岡部「というと?」
医者「傷口で固まった血の塊が勢い余って取れることがあるからです」
医者「血の塊はかさぶたのようなものなので取れるとやはり治りが悪くなるんですよ」
岡部「分かりました。気を付けます。」
医者「あとこれを渡しておきます。抜歯後の生活の注意が乗ってますから」
岡部「わかりました。感謝します、ドクター」
ラボ
ダル「お!おかえりオカリン!歯はどうなったん?」
岡部「簡単に終わったぞ。あんなにおどしやがって貴様は!」
紅莉栖「ねえねえ岡部。その抜いた歯ってのは持って帰ってきたの?」
岡部「勿論だ。たとえ親知らずといえど18年俺と過ごした仲だ。見捨てるわけにもいかん」
紅莉栖「わー!見せて見せて!」
ダル「僕も見たいお!」
岡部「まったく・・・ほれ」
俺はポケットから歯の入った袋を取り出した。
そういえば血で汚れているから洗ってあげねばと思っていたのだ。見せ終わったら洗いに行こう
紅莉栖「にしてもデカいのが取れたのねー」
・・・ん
・・・ダルの
・・・ダルの様子が
・・・おかしい
ダル「オカリン・・・もしかして4本抜いたん・・・?」
オカリン「ん?ああ。お前が言っていたのを想像してたらあまりの楽さに拍子抜けしてな!」
オカリン「まとめて4本全部抜いてきたのだッ!」
白衣をなびかせ得意のポーズを決める
岡部「本来のスケジュールでは親知らずの治療に夏休みの大半の時間を割かねばならなかった・・・」
当初、親知らずの治療は一本抜いた後、その傷が完治してから別の歯を抜く予定だった
傷がふさがるのに1週間。つまり4本で合計4週間の治療時間が必要となってしまう。
岡部「しかぁし!4本まとめて抜いことで口の傷がふさがったあとのことをもう気にしなくてもよい!」
岡部「夏休みを!時間を有意義に過ごせるのだ!」
岡部「ふっ・・・自分の才能が怖い」
ダル「オカリン・・・」
ダル「馬鹿すぎだろjk・・・」
サーセンwwあっち見ながら書いてるんだw
岡部「え・・・」
ダル「つーか、親知らずの治療は抜いて麻酔が切れた後が一番ヤバいわけだが」
岡部「・・・マジか?」
ダル「マジ」
岡部「・・・どれぐらいヤバい?」
ダル「世界がヤバいくらいにヤバい」
岡部「・・・ソースは?」
ダル「僕」
紅莉栖「橋田も大げさすぎるわ。たかが親知らずでしょ」
ダル「たかが親知らずと甘く見ることなかれ」
ダル「高熱が出たり、頭が痛くなったり、味覚が無くなったり・・・」
ダル「世界がヤバいくらいヤバいお!」
岡部「・・・」ガクブル
紅莉栖「あーあ。ご愁傷様」
岡部「あ、あぁ・・・俺だ。今機関の精神攻撃を受けている。エルプサイコンガリィ」
まゆり「コングルゥだよ~オカリン~」
などと話している間に口の中に血が溜まっていることに気が付いた
岡部「・・・ダル。ティッシを取ってくれんか?」
ダル「ほい」
紅莉栖「このHENTAI!」
岡部「何を考えてる!この天才変態処女!口の中に溜まった血を吐くだけだ」
勢いよく吐きたかったが縫ったばかりの傷が痛むのが怖かったのもあってよだれを垂れ流すようにティッシュに血を吐いた
そしてやはりどれくらいの血か気になりティッシュの中を覗いた
血・・・。唾に混ざった血なんていう生半可なものじゃない。本当に純度の高い血それが口の中から出てきた。
岡部「なんだよ・・・」
岡部「なんなんだよこれッ・・・!!!」
岡部「く、紅莉栖・・・血が・・・血が・・・!」
紅莉栖「ヤダっ!そんなもの見せないでよ!!」
岡部「紅莉栖・・・」
ル「だから言ったろ?抜いた“あと”がヤバいって」
岡部「し、しかし痛みは無いぞ!?」
ダル「それ麻酔が効いてるからに決まってんだろ?」
岡部「なっ・・・」
ダルが冷静に、そして淡々と事実を述べる・・・
ダル「メスで顎切ってそんだけ血が出てるんだから痛くないわけないだろjk」
そろそろ寝ます。明日残ってたら続き書きます
実は明日左の親知らず抜くんだよ。一回右で抜いてるからその恐怖で世界がヤバい・・・
抜歯は12時間後だ・・・抜歯前に終われたらいいんだが・・・
待たせた。再開する
抜歯をして2時間がたった。まだ麻酔は切れていないようで痛みはそんなにひどくない
しかし1時間前よりは確実に痛い。それは麻酔の力がだんだん弱まってることを意味していた
岡部「・・・歯が痛い」
ダル「歯じゃなくて“傷口”がだろ」
まゆり「オカリン大丈夫・・・?」
岡部「まだ大丈夫だが・・・少し痛くなってきた」
紅莉栖「調子に乗って全部抜くからよ馬鹿」
岡部「抜いた後の方がひどいなんて聞いてなかったんだ!」
そういいながら口に溜まった血をティッシュに吐く
口の中が血の味しかしないせいでひどく気持ち悪い
本当に血の味しかしない。生ぐさくて鉄くさく気分が悪い
岡部「助手よ。冷蔵庫からドクペを」
紅莉栖「傷あるのにドクペとか馬鹿なの!?死ぬの!?」
ダル「炭酸なんて飲んだらマジで死ぬぞオカリン!!」
岡部「あ、ああ。そうか。・・・しかし口が気持ち悪いな」
まゆり「仕方ないよ・・・一応手術なんだし」
岡部「散歩がてら昼飯を買ってくる」
このままラボにいてもだんだん麻酔が切れていくのを身に染みて体験していくだけ
ならば出かけた方が気分もまぎれていいのではないかという考えだった
ダル「この暑い中歩くの?歩いたら傷が開くかもよ?僕はあまりお勧めしないお・・・」
岡部「しかしこのまま麻酔が切れるのをただ待っているのも・・・」
紅莉栖「じゃあ私g」
まゆり「それじゃあ私が付き添いでついていくよ!オカリン一人じゃ危ないもんねー」
岡部「ありがとう・・・まゆり」
ダル「おお!流石まゆ氏!幼馴染とかうらやましすぎだろ!爆発しろ!」
岡部「うるさい!では出かけてくるぞ」
紅莉栖「気を付けてね」
岡部「ああ」
靴を履きラボを出る。一応念のために医者から処方された薬をもっていく
薬は3種類。血どめ、抗生物質、痛み止め
しっかりとズボンのポケットに入っていることを確認する
まゆり「えっへへー行っていまーす」
ラボの出入り口へ続く階段を下りるとそこには見慣れた顔があった
鈴羽「あ」
岡部「あ」
まゆり「鈴さんだー!トゥットゥルー♪」
鈴羽「おー。椎名まゆり、トゥットゥル~♪」
岡部「またサボっているのかバイト戦士よ」
鈴羽「まぁねー。だって暇なんだm・・・」
言い終わる前に鈴羽が何かに気が付いたかのように俺の顔を見つめ始める
その視線は俺を逃さなかい。まっすぐと俺を見詰めている。流石に俺も少し照れくさくなった
岡部「ど、どうしたのだバイト戦士よ!俺n」
鈴羽「あご・・・腫れてる・・・」
どうやら俺のあごが腫れていることに気づいたらしい
じっと見つめられたから何事かと思えば・・・
鈴羽「何かあった・・・?」
岡部「フッ・・・実は機関に捕縛されて捕縛されてな・・・」
岡部「歯を抜き取られてしまったのだッ!!」
鈴羽「ご、拷問!?」
そういうと鈴羽は真剣な表情で俺にズイと近づいてきた。・・・距離が近い
鈴羽「大丈夫!?ちゃんと消毒した!?歯は何本抜かれた!?」
まゆり「ちがうよ鈴さん~。抜いたのは親知らず、ちゃんとした医療行為だよー」
鈴羽「抜歯が・・・医療行為・・・?」
岡部「ま、まゆり!余計なことを!」
鈴羽「本当に医療行為なの?」
岡部「ああ。ほら見ろ。抜いたのは親知らず4本だ」
鈴羽「へーそんなのが流行ってるんだ」
岡部「別に流行ってなどいない!」
その後、まゆりが鈴羽に親知らずの抜歯の説明をしていた
まゆりも詳しくはしらないだろうが一生懸命に説明していた
幼馴染にあそこまでされてしまうと胸が熱くなる
鈴羽「そうなんだ・・・現代人も結構大変だね」
岡部「結構大変なのだ」
鈴羽「じゃあ治療頑張ってね。応援してるから!」
岡部「ああ。すぐに直してみせよう。よし、そろそろ飯を買いに行くか」
まゆり「うん!」
そう言ってコンビニがある方向へ向きを変え歩き始めたときに違和感に気づいた
歩く振動があごにひびく。歩くだけで痛い。
岡部「うっ・・・!」
まゆり「オカリン?」
鈴羽「岡部倫太郎・・・?」
―――――麻酔が切れかけていた
岡部「ぐぅっ!く・・・」
まゆり「オカリン!」
鈴羽「ちょっと!大丈夫!?」
岡部「麻酔が・・・切れた・・・みたいだ・・・!」
岡部「このままではっ・・・俺はっ・・・歩くことすらっ・・・!」
紅莉栖「はいはい厨二病厨二病」
まゆり「紅莉栖ちゃん!」
紅莉栖「下が騒がしいから見に来たら・・・買い物に行くんじゃなかったの?」
岡部「助手よ!馬鹿にするな!確かに大袈裟かもしれんがマジで痛いのだぞ!」
助手「だからって歩けなくなるかっつーの」
岡部「いや、あるくと振動が来るのは割とマジだぞ!」
助手「はいはいワロスワロス」
岡部「こいつ・・・殴りたい・・・」
鈴羽「もう買い物はやめたほうがいいんじゃない?」
紅莉栖「そうね」
まゆり「オカリン、階段上れる?」
岡部「それくらいは上れるが・・・やはり動くと痛い。まあまだ大丈夫だ」
鈴羽「私が上まで運ぼうか?」
紅莉栖「いや、いいからッ!運ばなくていいからッ!!」
もう片方もみてるぜ
結局俺はラボに戻ってきた。階段は少し辛かったがまだ耐えられた
麻酔がだんだん切れてきている・・・傷口が痛い・・・我慢できない・・・
時計をよく見たら抜歯からもう4時間が経っていた
岡部「もう我慢できん。鎮痛剤を飲む」
ポケットから薬を取り出す。
コップに水を組み薬を飲む準備をしている中、紅莉栖は処方箋を読んでいた
まとめて3錠飲むため水は少し多めに用意する
岡部「これで少し収まればいいが・・・」
紅莉栖「待って!」
岡部「まったく・・・なんだクリスティーナ!俺は今から薬をn」
紅莉栖「この薬、食後に服用することになってるわよ」
>>128
もう片方は別の人ですよ
岡部「な・・・」
口の中は相変わらずの血の味しかしない。当然食欲もない
よくよく考えたら食欲以前に4本全部抜いているため食べ物を噛む場所がない
一応奥歯で噛めることは噛めるがそこは傷口のすぐ隣だ。噛めるはずがない
岡部「食事なんて・・・食べられるわけがないだろう・・・!」
ダル「4本全部抜くからだろjk・・・」
岡部「・・・」
まゆり「オカリン・・・」
そうしている間にも痛みはどんどん強くなっていく
食事をしなければ鎮痛剤は飲めない。しかし食事をすることができない。噛むことができない
クソ・・・なんなんだよこの仕打ちは・・・
痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・
岡部「くっ・・・」
紅莉栖「岡部・・・」
助手が心配そうな顔で覗き込む。俺はもう余裕がなくなってきていた
鈴羽「仕方ない。私が食事作ってあげるよ」
岡部「何を言っている・・・俺に今食べられるものなど・・・」
鈴羽「お粥!お粥なら食べられるでしょ?」
お粥「お・・・お粥・・・?」
そうだ。お粥なら噛む必要無い。流し込めばいい
痛みのせいで完全に思考が止まっている。病食の代表、お粥の存在を忘れるなんて
岡部「すまない鈴羽。頼む」
鈴羽「オーキードーキー」
紅莉栖「ち、ちょっと!あんた岡部に自分の手料理食べさせる気!?」
鈴羽「手料理も何もただのお粥じゃん」
紅莉栖「私も作る!お粥ぐらいなら作れるし!」
ダル「牧瀬氏はやめといたほうがいいんじゃね?」
まゆり「まゆしぃも作りたーい!」
鈴羽「もう!私が作るからいいってば!」
ダル「く・・・オカリンマジ爆発しろ!」
俺にはこの茶番に突っ込む余裕はすでになかった。
なんでもいい。たた口に入ればいい。服用の条件を満たせさえすればいい
誰でもいい。早くお粥をつくってくれ・・・
>>141
ミスw
お粥「お・・・お粥・・・?」
↓
岡部「お・・・お粥・・・?」
誰が作ったのかは見てなかったからわからないがとりあえずお粥を食べることができた
口の中の血のせいで血の味しかしなかった。
血ははじめの頃に比べるとだいぶ止まってきてはいるがそれでもまだ吐き出せるぐらいは出てきている
食事が終わったので今度こそ薬を飲む。飲んですぐ効くはずはないのだが気分的なせいもあって少し痛みが楽になる
岡部「みんな、すまなかった。助かったぞ」
そう言いながらソファーに横になる
紅莉栖「岡部寝るの?」
岡部「ああ。疲れがどっと来てな。痛みもひどいし」
まゆり「おやすみオカリン」
岡部「ああ。おやすみ」
少しマシになることを祈りつつ俺はうつぶせになり眼を瞑った
―――どれだけの時間がたったのだろう
睡眠の波が収まりふと目が覚めたのでゆっくりと体を起こす
岡部「んっ・・・」
ダル「お、オカリン起きた?調子はどう?」
ダルはパソコンに向かいながらいつものゲームをやっている
ラボメンガールズはというと・・・鈴羽は帰ったようだ
まゆり「あーオカリン大丈夫?」
岡部「ああ。前よりはな」
痛みは寝る前より少し楽になっていた。時間が経ったせいか薬が効いたせいかはわからないが。
マシになったとはいえまだ激痛が走る。ピークを過ぎただけというのが正しいのかもしれない
ケータイを開け時計を見る。確か昼にお粥を食べたのは13:00頃だったか
今の時刻は19:00。薬を飲んで6時間か・・・もう効果が切れていてもおかしくないな
口の中は相変わらず血の味しかしない。
まゆり「オカリン口のまわり血でべったりだよ・・・」
まゆりが濡れタオルで口のまわりを拭いてくれる。口周りがさっぱりして気持ちがいい
吹き終わったタオルを見ると乾燥した血を拭いたせいで薄茶色に染まっていた
紅莉栖「ち、ちょっと岡部!」
紅莉栖が驚いた顔で何かを指さしている。
指さした方向を見るとそこには、
・・・血で
・・・たっぷりと
・・・赤く染まったソファー
岡部「―――っ!!」
自分の口のまわりについていた血を拭いたタオルを見る
寝る前にもティッシュに血を何回も吐いていた。しかし寝ている間に血を吐けるわけがない
ならどうなるか。垂れ流すしかない
よだれのように垂れ流すしかない
俺が今さっきまで寝ていたソファーには、
俺の顔がうつぶせで置かれていたその場所には、
凄い量の血と涎が染みついていた・・・
まゆり「あー!ソファーが血でべったりだよ・・・」
俺の血で染まったソファー。血がまだ乾燥してないのか染みついた場所はまだ赤い
ダル「ちょ・・・オカリン下に何も轢かなかったん!?」
紅莉栖「もうこのソファーは使えないわね・・・洗濯もできないし」
岡部「す、すまない・・・まさかこんなことになるなんて・・・」
まゆり「仕方ないよ・・・オカリン」
岡部「すまん・・・」
また口が痛くなってきたので痛み止めを飲むために食事をする
食事をすることがこんなにも苦痛になるなんて
今まで普通に食べていたことがいかに幸せなことなのかを実感した
薬を三錠飲み、ソファーの下にタオルを引き再び横になる
あれだけ寝たのだからすぐには寝つけないことはわかっていたが立っているのもつらいのだ
しかし、予想に反して俺は何かに取りつかれたかのように爆睡した
今更ながら入院しておけばよかったと眠りに落ちていく意識の中で思った
―――――
―――
苦痛の日々を送り10日が経った。
今では傷口もふさぎかけているのか痛みも少ない
10日間の間は本当に地獄だった。
案の定熱を出して寝込む。大きな傷が4か所もあるのだ免疫力が落ちて当然だ
食べられる食事はしばらくはお粥だけだった。
頼みの綱の鎮痛剤は3日で切れた。痛みが引くまでの間どれだけ苦しんだことか
歯を磨こうと思えるようになったのはいつ頃だっただろう。歯に血がこびりついたなんとも言えない感触
初めて磨いたときは、口から出した歯ブラシは茶色くなっていた
勢い余って傷口を磨いてしまい出血したこともあった
しかし心配していた味覚はなくなることは無かった
親知らず周辺に味覚の神経は通ってなかったのだろう
しかし口の中で感じるのは血の味ばかり
食事もお粥ばかりだったため、実際味覚が生きていたかどうかは怪しいところなのだが
そして今日は抜糸の日である
岡部「口の中を縫った糸を取って・・・ようやく苦痛から解放されるわけだ」
まゆり「でもオカリン頑張ったねー」
岡部「鳳凰院凶真にとってあの程度の痛みなど虫に刺された程度に等しいのだ!フーッハハハ」
ダル「痛みでのたうちまわっていたくせによく言うお・・・」
病院
医者「岡部くん。あれから調子はどうですか?」
岡部「順調ですドクター」
医者「それじゃあ傷口見てみましょうか」
リクライニングシートが下がり医者が口の中を観察する
ミラーのようなものを口に入れ念入りに確認をしている
医者「はい。もう大丈夫ですね。それじゃあ糸抜きましょうか」
岡部「はい。お願いします」
抜糸は思ってたより簡単に終わった。痛みは無かった
待合室に戻るとまゆりとダルと紅莉栖が待っていた
紅莉栖「で、どうだったって?」
岡部「フ、完治だそうだ」キリッ
俺は口を広げ紅莉栖に口内を見せる
以前こうしたときは紅莉栖に口臭と血の匂いがひどいと怒られたこともあったな
まゆり「よかったねーオカリン」
岡部「ああ。本当によかった。早めに終わったからこれから夏休みを満喫できるぞ!フーッハハハ!!」
紅莉栖「まさかそのために4本まとめて抜いたの・・・?」
ダル「「さすがオカリン!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」
―――――
―――
次の日
岡部「今日皆に集まってもらったのは他でもない!」
岡部「Dメールの実験をするためだッ!!」
ラボにはラボメン8人が全員集合している
紅莉栖「で、どういう実験をするの?」
岡部「宝くじを買って過去を変えるのだ!」
紅莉栖「サイテー・・・」
岡部「黙れセレセブ!他に何かいい案が思い浮かぶのか!?」
紅莉栖「そ、それは・・・」
岡部「過去に送るメールの文章を考える任務は閃光の指圧師!お前に任せる!」
萌郁「コクン」
紅莉栖「でも過去を変えるなんて・・・」
岡部「フッ実はお前も実験がしたくてしたくて仕方ないのではないか?」
紅莉栖「そ、それは・・・でも宝くじとか私利私欲のために使うのはよくないと思う」
まゆり「まゆしぃもそう思います」
フェイリス「凶真、ちっちゃいニャ」
岡部「く・・・!」
岡部「貴様らが何を言おうと俺は実験をする!狂気のマッドサイエンティストだからな!!」
岡部「宝くじが嫌というのならまずはその代案を出せ!何かあるか!?」
ラボメン全員が黙り込む。それもそうだ
宝くじのように変わった事が観測しやすい自称はあるだろうか?いやない。あるはずがない
このIQ170の俺が考えた案なのだからな!フーッハハハ!!
萌郁「あの・・・」
岡部「なんだ。指圧師よ。文章は書けたか?」
萌郁「・・・」
そこで聞きなれたメールの着信音が鳴った
・・・相手は分かっている。どうせ萌郁だろう。メールを開け文章を読んだ
それを見て俺は、
俺は凍りついた
メールにはこう記されていた
差出人:閃光の指圧師
件名:代案なんだけど・・・
岡部君って確か10日間に親知らずを抜いたんだよね?
だったらそれを思いとどませるようなメールを送れば歯を抜いたか抜いてないかで
過去が変わったのかすぐにわかるんじゃないかな??どうかな??
岡部「・・・」
紅莉栖「あら、いい案じゃない!」
岡部「ちょ、おま・・・」
フェイリス「これで過去が変わったかすぐわかるニャン!」
岡部「ま、待て!なんで俺がまた抜くなんてもう二度t」
まゆり「頑張ってね、オカリン♪」
ルカ子「す、すみません・・・」
鈴羽「ファイトだよっ!岡部倫太郎!!」
岡部「なんだよ・・・」
岡部「なんだよこれっ・・・!!!」
ダル「メールを過去に送る準備は整ったお!」
まゆり「流石ダルくん!速いねー。スーパーハカーだよー」
ダル「ハカーじゃなくてハッカーな!」
紅莉栖「よし!じゃあさっそく送るわよ!桐生さん!」
萌郁「コクリ」
岡部「や、やめっ・・・」
指圧師がその名に恥じない光速のごとくはやさで文章を打っていく。もう止められない・・・
ちゃんと調べてから抜けばよかった
そうすればこんな苦しみは味合わずに済んだかもしれない
過去の俺よ。抜歯について詳しくしっているか?
知らないなら調べるのだ
それぐらいの慎重さが求められているのだということを理解しろ
残念ながら俺は、
慎重じゃなかった
『抜歯は10日後すぐに抜くなSERNの罠』
世界線が・・・
変動する・・・
世界がねじ曲がって再構成を始める
みんなの笑顔が歪んでいる。どういがんでいるのか俺には詳しく観測できないが
ただ、歪んでいた
―――――
―――
新しい世界線で意識がよみがえる。
そこで感じたのは懐かしい痛み。どうやら今日抜いたばかりのようだ
舌で確認せずともわかる。
・・・4本全部抜いている
俺はすかさず電話レンジに向かう
紅莉栖に制止されたが聞く耳は持たない
10日前の俺にメールを送るために。過去を変えるために
『すぐに抜歯を遅らせたら死んでしまうぞ』
もう迷いはない。
あの苦しみを知ったから・・・
もしかしたら今度は歯を4本同時に抜くことなんてできないかもしれない
それどころか抜くことすらもできないかもしれない
でもそこには・・・
素晴らしい未来が待っているかもしれないから
岡部「エル・プサイ・・・」
岡部「コングルゥ!!!」
俺は強くメールの送信ボタンを押した
噛ん
>>217
噛ん→完
のミス
以上で完結です。支援感謝です。ありがとうございました
抜歯に興味を持った方は一度試しにやってみてはどうですか?
そして今から抜歯だ・・・鬱だ・・・
このSSまとめへのコメント
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