岡部「何?クリスティーナがアメリカでハブられてる?」ダル「うん」 (36)

岡部「ふーはははは!!だろうな!」

ダル「だろうなってオカリン…」

岡部「あいつの高飛車な態度、高圧的な佇まい、当然だろう!」

ダル「それでいいん?」

岡部「…いや、良くない」

岡部「…して、クリスティーナは?」

ダル「そりゃアメリカだろjk」

岡部「…なんで知ってるんだ?」

ダル「まゆ氏に聞いたお」

岡部「ぐぬぬ」



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ダル「どしたん?」

岡部「なんで俺に言わんのだ俺に!」

岡部「クリスティーナが馬鹿にされるということはすなわち我がラボがバカにされるということだろうが!」

ダル「本音は?」

岡部「相談して欲しかった」

ダル「離れていてもこの愛情、ムカつく」

岡部「…」

ダル「…実際なんでだと思う?」

岡部「…」

岡部「…それはまぁ、さっき言った通り高飛車な態度が鼻についたとか」

岡部「…高圧的な物言いがすれ違いを生んだとか…」

ダル「でも牧瀬氏ってオカリンよりよっぽど理性的だと思うよ、そんな軽率なことするか?」

岡部「なら何故なのだ」

ダル「いや、知らんがな」

岡部「…」

ダル「…」

ダル「まぁ、理由として上がるのは嫉妬だお」

岡部「嫉妬?」

ダル「ほら、牧瀬氏って超優秀じゃん」

岡部「いや、セルンにハッキングするお前が言えたことじゃないが」

ダル「は?」

岡部「何でもない」

ダル「だからその牧瀬氏の優秀さに嫉妬して…」

岡部「嫉妬か」

岡部「あいつのことだから「嫉妬なんて私にとって取るに足らない事よ」とでもいいそうだが」

ダル「むしろそういう事を言ったからこそハブにされてる可能性もある」

岡部「…なるほど」

岡部「ええい、拉致があかん!まゆりはどこだ!?」

ダル「バイトだお」

岡部「ちょっと出てくる!」

ダル「帰りにゼロコーラよろ」

岡部「デブが!!!」


メイクイーン


ガラッ

フェイリス「いらっしゃいませだにゃん、ご主人様…ってキョーマ?」

フェイリス「一人だなんて割と珍しいにゃん、ダルニャンは?」

岡部「あぁ、多分ラボでエロゲだろう」

岡部「それよりまゆりはどこだ?」

フェイリス「まゆしぃ?ちょっと待ってね」

数分後

フェイリス「…」

岡部「ん?フェイリス、まゆりは?」

フェイリス「…それがキョーマに会いたく無いらしいにゃ」

岡部「えっ」

フェイリス「いやそう言う事じゃないにゃん」

フェイリス「会ったら詮索されるかもって」

岡部「ならば何故ダルに言ったのだ」

フェイリス「何が?」

岡部「何でもない」

フェイリス「いまいち要領を得ないにゃー、キョーマもまゆしぃも」

岡部「…」プルルルル

プルルルル

プルルルル

岡部「…クリスティーナは、出ない、か」

岡部「…まゆりもバイトだから出ないだろう」

岡部「…何なんだ」

岡部「…なんでお前は俺に何も言ってくれないんだ?」

岡部「紅莉栖…」

ガチャッ

ダル「お、オカエリーン」

岡部「…あぁ、ただいま」

ダル「コーラは?」

岡部「ドクペでも飲んでいろ」

ダル「ちぇっ」

岡部「…」

ダル「どうだったん?」

岡部「さぁな」

岡部「だが今考えるとあれだな、俺が首を突っ込むことでもない」

ダル「…」

岡部「確かに俺とクリスティーナは付き合ってはいるが、だからといって一緒に住んでいるわけでもない」

岡部「互いの領域に踏み込むのはナンセンスというものだろう」

ダル「なるほどねー」

ダル「夏を超えてからオカリンは本当に大人になったと思うよ」

岡部「はは、そうか?」

ダル「そうだお」

岡部「ま、諦めがつきやすくなったというか」

岡部「世の中にはどうあがいても覆せない事がある」

岡部「それは日常のこんな些細な場面にさえ現れるということを知ったのだ」

ダル「へー」



岡部「ダル、今日お前ラボで寝るのか?」

ダル「うんにゃ、ちょっとやることがある」

岡部「そうか」

ダル「うん、じゃお先ー」

岡部「うむ、また明日な」




岡部「…さて」

プルルルル

プルルルル

ガチャッ

「…もしもし」

岡部「おお、喋れるようになったじゃないか、シャイニングフィンガー」

「…」

「…」

「…岡部くんから電話なんて…珍しい」

岡部「そうか?」

「…何があったの?」

岡部「…!」

「…声、変」

岡部「…あぁ、そうか」

岡部「いや、特に用事はない」

岡部「お前がうちの大家に迷惑をかけてはいないか心配になっただけだ」

「…?」

岡部「まぁ、気にするな」

岡部「どうだ?仕事の方は?」

「…力仕事は…大変」

岡部「だろうな、あのタコ坊主は人使いが荒いからな」

「…でも、楽しいよ」

岡部「…」

「…岡部くんが…居なかったら…私はあの二人に出会うことができなかった…そんな気がする」

岡部「…何を…」

「…私にとっての…拠り所を…見つけてくれてありがとう…」

岡部「…」

岡部「…なぁ、シャイニングフィンガー」

「…?」

岡部「…拠り所がないということは辛いか?」

「…」

「…辛い」

岡部「…」

「…誰にも頼ることができなくて…でも一人で生きていかないといけなくて…」

「…とても辛かった」

岡部「…そうか」

「だから、感謝してる」

「…岡部くんと、ラボメンの皆に…!」

岡部「…はは」

岡部「…出来れば面と向かって言って欲しかったな」

「…それは…無理…」プツッ

岡部「…切りやがった…」

岡部「…そうか」

岡部「…たった一人は、辛いか」

岡部「…だよな」

岡部(…じゃあ、どうする)

岡部(あいつが、紅莉栖が本当に辛いからと言って)

岡部(…それでも俺に何も言わないのは)

岡部(…何か理由があるんじゃないのか)

岡部(…俺は、自分勝手にそれに踏み込んでいいのか) 

岡部「…リーディングシュタイナーか」

岡部「何も役に立たないな、これ」






「…調子乗ってるわよね、あの子」

「サイエンスに載っただけなのにね」

「知ってる?あいつの父親って学会で追放されたらしいよ」

「あはは、笑える」
 

紅莉栖「…」

紅莉栖(ほんと、低俗ね)

紅莉栖(やっかみで上を目指す人の足を引っ張らないで欲しいわ)

紅莉栖「言いたいことがあるなら言いなさいよ」

「…」

紅莉栖「コソコソ陰で言ってないで言ったらどう?」

紅莉栖「ま、言い換えせるような脳みそがあればの話だけど」

「…調子に乗らないでよ」

「知ってるよ?あんたの父親、タイムマシンの論文で追放されたんでしょ?」

紅莉栖「…!」

「よりにもよってタイムマシン?」

「何かのギャグなの?」

「やっぱり娘のあんたもタイムマシンとかの眉唾物を信じてる口?」

紅莉栖「…」

紅莉栖「信じちゃ、悪い?」

「きゃははは!馬鹿みたい!」

「いくら優秀でも現実と妄想の区別がつけられないなら無意味だね!」

「あなたの知り合いもそんな妄想馬鹿ばっかりなの?」

紅莉栖「…!」

紅莉栖「…妄想じゃ、無いわよ」

紅莉栖「何も知らないくせに、私のことを否定しないで」

紅莉栖「貴方達みたいな低俗な人間に…私たちを馬鹿にする資格なんてない!」

「うわ、何こいつ」

「急に大声だすなっつーの」

紅莉栖「…」

「もう行こうよ」

「そうだね、気味悪いわ」

紅莉栖(…大声出しちゃった)

紅莉栖(…ストレス、溜まってるのかな)

紅莉栖(もともと溜め込みやすい体質だったし)

紅莉栖(…)

紅莉栖(…否定なんてさせるもんか)

紅莉栖(あなたが私を救った世界の話を、否定なんてさせない)

紅莉栖(…絶対に、認めさせる)





岡部「円卓会議だ」

るか子「…え、っと…あの…」

萌郁「…突然」

ダル「うほ、怪しい匂い」

まゆり「…」

フェイリス「んー、久々のラボだにゃん」

岡部(…会いたくないとか言っといて、変なところで律儀なんだよな)

岡部「…今回集まってもらったのは他でもない」

岡部「今ここには居ないラボメンについてだ」

まゆり「…」

フェイリス「んー?それってクーニャンのこと?」

るか子「…何かあったんですか?」

ダル「…」

萌郁「…」

岡部「それについては、まゆり、お前から話してくれ」

まゆり「…」ギュムッ

岡部「口を紡ぐな!こら!」

まゆり「むむむむむ!!!」

岡部「お、おい!まゆり!」

まゆり「っぷはっ!」

まゆり「ま、まゆしぃは何も知らないよ!」

岡部「嘘をつけ」

まゆり「ほ、ほんとだもん」

岡部「…頼む、まゆり」

岡部「紅莉栖について話してくれ」

岡部「あいつも俺の大事な仲間だ」

まゆり「…」

まゆり「…はぁ」

まゆり「まゆしぃは口が固いことで評判だったのです」

まゆり「…責任とってね?オカリン」

岡部「あぁ」

まゆり「…一週間くらい前、紅莉栖ちゃんから電話が来たのです」

まゆり「…少しお話しようって」

まゆり「…その時の紅莉栖ちゃんの声はすごく悲しそうだったよ」



まゆり「トゥットゥルー、まゆしぃです、久々だね!紅莉栖ちゃん!」

「…まゆり」
 
「変わらないなぁ、まゆりは」

まゆり「?まゆしぃだけじゃないのです、みんな変わってないよ!」

「…そっか」

まゆり「…紅莉栖ちゃん…何かあったの?」

「…はは、ほんと、変なところで鋭いよね、まゆりは」

まゆり「…こんな時間に電話がかかって来たら、誰だって気になるよー」

「…そっか、そっちは夜だもんね」

「参ったなぁ、時差を考えられないくらいなんだ、私」

まゆり「…?」

「…ねぇ、そっちはどうなの?」

まゆり「どう?」

「いや、皆のこと、聞きたくなって」

まゆり「そうだねー、るか子ちゃんはついにまゆしぃのコスを来てくれたのです」

まゆり「そしてそのコスの写真を撮ってたダル君が阿万音さんに怒られたり」

まゆり「その仲裁をしようとして萌郁さんが戸惑って泣いたり」

まゆり「えへへ、変わってないでしょー?」

「…」

「…桐生さん泣くんだ…」

まゆり「それでどうしたの?」

「…うん、ちょっと声が聞きたくなって」

まゆり「…誰ともお話できないの?」

「そんなところかな」

まゆり「…イジメられてるの…?」

「…」

まゆり「…ダメだよ、そんなの」

まゆり「とっても優しい紅莉栖ちゃんがイジメられるなんて…そんなの…」

まゆり「お、オカリンに伝えて…!」

「だ、ダメ!」

「岡部には絶対に言わないで!」

まゆり「で、でも…」

「ダメったらダメ!」

「わ、私、このことを知られたら…岡部に嫌われちゃうかもしれないから…」

まゆり「オカリンはそんな事で人を嫌ったりしないよ!」

「…」

まゆり「…あ…」

「…ううん、まゆりの言う通り」

「…岡部は、人の評価に流されるようなやつじゃない」

「…そんなこと、分かってる」

まゆり「だったら…!」

「ごめん、でもダメなの」

「それでもやっぱり、岡部には知られたくない」

まゆり「…そんな…」

岡部「…」

ダル「…」

フェイリス「…」

萌郁「…」

るか子「…」

まゆり「…だから、このことは誰にも言わないつもりだったの」

まゆり「…でもダル君に聞かれちゃってて…」
 
ダル「僕はまゆ氏に何か言われる前にスタコラサッサした訳さ」

岡部「…そうか」

岡部「…じゃあ」

岡部「仕方ないな」

るか子「…え?」

萌郁「…岡部くん…?」

フェイリス「キョーマ…?」

岡部「…な、なんだ?」

フェイリス「…まさかクーニャンの事を諦めるつもりかにゃん?」

岡部「紅莉栖がそうしてくれと言っているのだろう?」

岡部「だったらそうした方がいいに決まってる」

ダル「…」

フェイリス「そんなのキョーマらしくないにゃ」

岡部「…は?」

フェイリス「キョーマはもっと自分勝手だったはずにゃ」

るか子「そ、そうです」

るか子「岡部さんは…」

萌郁「…やっぱり、変」

岡部「…な、何を言ってるんだ!」

岡部「紅莉栖がそうしてくれと言っているのだろ!それが一番だと言ってるんだろ!?」

岡部「まさか気づいて欲しいとかいうスイーツ脳でもあるまいし!」

岡部「なぁ、ダル!」

ダル「んー」

ダル「オカリンってさ、ほんとに大人になったよね」

ダル「人の気持ちを考えるようになったし」

ダル「自分勝手じゃなくなったし」

岡部「だろ!?」

ダル「でもそれって、僕らの大好きなオカリンじゃないんだよね」

岡部「…はぁ?」

ダル「オカリンは人の領域に平気で踏み込むし、デリカシー無いし、馬鹿だし」

ダル「だけどそんなオカリンが皆大好きだったお」

岡部「だから!言っただろ!?」

岡部「世の中にはどうあがいても覆せない事があると!!」

岡部「それを諦めて何が悪い!?」

岡部「ちゃんと考えて…」

ダル「その覆せない事にあらがって」

ダル「今のオカリンが居るんじゃないの?」

岡部「…!」

ダル「オカリンから聞いた話、今でも妄想だと思ってるよ」

ダル「だけど」

ダル「そんな状況だったら、きっとオカリンはあらがう、そう思うんだ」

岡部「…」

ダル「もし本当にそう思ってるなら、オカリンの三週間に渡る世界線漂流は何の意味もないお」

ダル「オカリンが本当にすべきことは」

ダル「諦めないことだろ、jk」

岡部「…」

まゆり「ねぇ、オカリン」

岡部「…まゆり」

まゆり「…紅莉栖ちゃん、きっとさみしいと思うんだ」

まゆり「…オカリンに、ラボメンに会えなくて寂しいんだよ」

まゆり「…だから」

まゆり「…紅莉栖ちゃんを、ちゃんと見てあげて」

岡部「…!」

岡部「…」

岡部「…」

岡部「ふ」

岡部「ふーはははは!!」

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