遊星「アキ、お前のDホイールが出来たぞ」 (89)
アキ(今日はDホイールのライセンス習得試験の当日。遊星達がDホイールをプレゼントしてくれると聞いて来たんだけど……)
遊星「これがそのDホイール……その名も紅蓮弐式だ」
クロウ「ジャンクパーツを使って俺と遊星で組み立てたんだぜ!」
ジャック「カウルは俺が塗った!」
アキ(どうしよう……ロボットにしか見えない)
アキ「えっと、これってDホイールなのよね?」
クロウ「当たり前だろ? 世界でただ一つのお前だけのDホイールだぜ!」
ジャック「そうだ、紛うことなきDホイールだ。そしてカウルは俺が塗った!」
遊星「まあ少しだけ一般のDホイールと違う部分もあるがな……アキ、説明するからこっちに来てくれ」
アキ「(少し?)え、ええ」
遊星「この両足についているのがランドスピナーというこのDホイールのタイヤだ。
接地圧可変タイヤだから不整地であっても安定した路面追従性、走破性を発揮する事ができる」
アキ(Dホイールに両足……?)
遊星「だがそれよりもこのDホイールの最大の特徴は右腕に内蔵されたマイクロ波誘導加熱ハイブリッドシステム……通称輻射波動だ」
アキ「待って、遊星。そもそも何でDホイールに足とか腕が付いてるの?」
遊星「何でと言われても……そういう風に作ったからとしか言えないな」
クロウ「何か問題でもあるのか?」
ジャック「まさか不服と言うのではないだろうな? カウルは俺が塗ったと言うのに」
アキ「そ、そんな事ないけど……」
アキ(出来れば練習で使ってたみたいな普通のDホイールが良かった)
アキ(けれどせっかく遊星達が私の為に作ってくれたんですものね。文句を言っては駄目だわ)
アキ「話の腰を折ってごめんなさい。遊星、説明を続けて」
遊星「分かった。それでこの輻射波動だが対象を掴む事で、この掌の部分から高周波を短いサイクルで出し、対象物に直接それを叩き込む事ができるんだ」
アキ「えっと、つまり?」
遊星「それによって発生する膨大な熱量爆発と膨張により……対象は破壊される」
アキ「破壊って……Dホイールに何でそんな物騒なものが積まれてるのよ!?」
遊星「……アキ、Dホイラーの先輩として忠告しておく」
遊星「ライディング・デュエルの世界をあまり甘くみない方がいい」
遊星「昔、ある人がこん事を言った。
DホイールのDはデビルのD、デストロイのD、デットヒートのD、ダークのD、大好き……ゲフン、とにかく様々な不吉なDを意味していると」
遊星「ライディング・デュエルは食うか食われるか、抜くか抜かれるかの世界……つまりはとても危険なんだ」
遊星「ならその危険を回避する為にも武装は少しでも多い方がいいだろ?」
アキ「で、でも遊星達のDホイールにはそんな武装積んでないじゃない?」
遊星「俺達ならカードとテクニックとヘルメットだけで何とかなる。だがあまり言いたくはないが……お前のDホイールの腕はまだまだ未熟だ」
遊星「またお前にはサイコパワーもあるが、その力は人を傷つけるものではないからな」
クロウ「俺と遊星はお前の為を思って輻射波動を付けたんだぜ」
ジャック「そうだ。俺もその意見に賛同してカウルを塗った」
アキ(まだ納得出来ない事は多々あるけど……とりあえず遊星達が私を大事にしてくれている事は分かった)
アキ(ならその想い、キチンと受け止めないと)
アキ「分かったわ。この装備は私がライディング・デュエルにするのに必要不可欠なのね」
遊星「ああ、これで前を走る邪魔な奴らを破壊しろ」
アキ「え、そんな事していいの?」
クロウ「何が起こるか分からないのがライディング・デュエルだからな。
走ってる奴らもそれぐらい覚悟してるんだ。遠慮なくやっちまえ」
遊星「ちなみに輻射波動は発生する振動波をバリアとして使用する事も出来る。
もし体当たりして来るDホイールがいたらこれで防御しろ」
遊星「そして隙をみて逆に掴み……BONだ」
アキ「ぼ、BONなのね」
遊星「武装は他にも小型のナイフにグレネードランチャー、チャフスモークにスラッシュハーケン等がある。
用途に合わせて使い分けるといい」
アキ「ス、スラッシュ……? と、とにかく武器がたくさんあるのね」
遊星「では次に運転席を見せよう。運転席は内蔵型だ」
クロウ「装甲も固いしこれなら万が一クラッシュしても安全だろ?」
アキ「わーすごいわね」
遊星「これが運転席だ」
アキ「あ、ここはちゃんとバイクみたいになっているのね」
遊星「当たり前だろ、Dホイールはバイクなんだから」
クロウ「何だよ、まさか運転席だけロボットのコックピットみたいになってるとでも思ったのかよ?」
ジャック「俺が塗ったのはDホイールのカウルだ。断じてロボットの装甲ではない」
アキ(これは私がおかしいのかしら……あら?)
アキ「遊星、これディスクの部分……カードをセットする場所が見当たらないんだけど?」
遊星「ああ、最初から付けてない」
アキ「えっ、それじゃあデュエル出来ないじゃない?」
遊星「そうだな」
アキ「そうだなって……デュエル出来なきゃDホイールの意味がないでしょ!?」
遊星「……アキ、Dホイラーの先輩として忠告しておく」
遊星「バイクに乗ったままのデュエルはな、とても危ないんだ」
遊星「そもそもカードゲームは普通バイクに乗ってやるもんじゃない」
アキ「…………」
遊星「この紅蓮はアキ、お前の安全性を第一に考えてる。だから運転を誤る可能性のあるデュエルの機能は排除したんだ」
アキ「安全を考えてくれたのはありがたいけど、デュエルの機能無しでどうやってライディング・デュエルするの?」
クロウ「おい、おい。俺達が何の為に紅蓮にこんなに武装積んだと思ってんだよ?」
遊星「ライディング・デュエルは相手を走行不能にしても勝利となる。
だから相手がカードに気を取られてる内にこっちは輻射波動でBONだ」
アキ「えー」
遊星「それでどうだ、紅蓮は? 気に入ってくれたか?」
アキ「え、えっと……」
アキ(見た目はどう見てもロボット……積んでる機能もどう考えてもDホイールのそれじゃないわ)
アキ(これに乗ってもとても遊星と同じ世界が見れるとは思えない。遊星達には悪いけど今日の試験はレンタルのDホイールを借りて……)
遊星「うぅ……」グラッ
アキ「遊星?」
クロウ「大丈夫か、遊星。ほら、椅子に座れよ」
遊星「すまない、クロウ。ここ数日紅蓮の制作で徹夜続きだったから今になって疲れが来たのかもしれない」
アキ「そ、そんなに無理して作ってくれたの?」
クロウ「さすがにこんなに大きなDホイールを作るのは遊星も初めてだったらしいからな」
ジャック「フッ、おかけでカウルを塗るのにも苦労した」
遊星「だがアキのDホイールを作ろうと思った時……なぜか真っ先にこの形が浮かんだんだ」
遊星「アキが乗るDホイールはこれしかないとな……だから多少無理してでもこいつを作りたかったんだ」
アキ「遊星……」
遊星「アキ、お前ならこのDホイールで絶対にライセンスを取る事が出来る」
クロウ「期待してるぜ、アキ!」
ジャック「俺がカウルを塗ったDホイールで存分に走るがいい!」
アキ「遊星、クロウ、ジャック……」
遊星「これがDホイールの鍵だ。俺達の想いが篭った紅蓮……受け取ってくれ」
アキ「…………」
アキ「分かった……遊星達の想い、確かに受け取ったわ!」
…………
試験会場……
牛尾「おい、俺はDホイールの試験官として来たんだぞ?」
アキ「知ってるわ!」
牛尾「じゃあ何でお前、Dホイールじゃなくてロボットに乗ってんだよ。
ロボットに乗ったままライディング・デュエルとかふざけてんのか?」
アキ「ロボットじゃない! Dホイールだ!」
ジャック「まさか試験官が牛尾とはな」
クロウ「いい奴だったのにな」
遊星「あいつだってDホイラーだ。常に覚悟は出来てるさ……さあ、始まるぞ」
アキ&牛尾「「ライディング・デュエル・アクセラレーション!!」」
牛尾(嫌な予感がする……とりあえず少し距離を取って走るか)
アキ(遊星達には悪いけど普通のデュエルディスクを持って来たわ。これで何とかデュエルは出来るはず)
アキ「えっと、適当なコードに繋げば外部にソリッドビジョンを……」ガサゴソ
ポチ
アキ「え? 何か今当たった……」
ドォン!!
クロウ「開幕スラッシュハーケンか。見ろよ、牛尾がDホイールごと宙を舞ってるぜ!」
遊星「そして空中にいる牛尾をグレネードで狙い撃ち……これで牛尾のDホイールの走行機能は完全に失われたずだ」
ジャック「十六夜の奴、まさかもうあのDホイールを使いこなすとはな」
遊星(この試験……貰ったな)フッ
アキ(どうしよう、やばい、どうしよう!?!?)アタフタ
アキ(続けざまに変なボタン押して牛尾さんを吹き飛ばしてしまった!? ああ、ちょっと面白いけどわざとじゃないの!!)
アキ(って、このままだと牛尾さんが地面に叩き付けられてしまう! 受け止めないと!!)
アキ「間に合って、紅蓮!!」
紅蓮「」ワンバウンドデキャッチ
アキ「よし、受け止めれたわ! 後はゆっくり降ろして……」
ポチ
アキ(あ、また何か押して……)
BON!
…………
遊星「こうしてアキのライセンス取得の試験は終わった。勿論結果は合格だ」
遊星「輻射波動によって牛尾は重傷を負ったが翌週には完治していた。やはりDホイラーはタフでなければならない」
遊星「またアキは今回の一件でSの血が蘇ったらしい。今では素晴らしい顔芸と共に楽しそうにDホイールを破壊している」
遊星「アキと紅蓮弐式……その力はきっとWRGPでも俺達の助けとなるはずである」
おわり
読んでくれた人、ありがとうございました。
遊戯王のSSは少し前に『遊星「新型エンジンが完成しない……」』等も書いたので、もし読む機会があればそちらもよろしくお願いします。では。
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