フレンダ「し、死にたくない……」QB「それが君の願いだね?」(1000)

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もう一回頑張る

 フレンダは逃げ疲れていた。

 壁に背を持たれて座り込み、息を荒く吐き出しているだけ。もう何もできなかった。

 足はもう動かない。逃げて逃げて、逃げ続けて、もう心臓も足も、壊れそうなくらい疲労している。

 どこかで爆音が響く。あのレベル5の、絶対的な力が脳裏を過ぎる。
 そして、その力は、今は自分を殺すために向けられているのだとわかって、さらに体が震える。

 怖い。怖ろしい。殺される。

フレンダ「嫌だ……嫌だ……死にたくない……」

 絞り出すように、誰へとなんて意識せずに懇願する。また、爆音が響いた。

フレンダ「誰か……助けて……」

 助けになんて、誰も来るはずがない。わかってる。でも、言わずにはいられない。爆音が響いた。

フレンダ「助けて……助けて……」

 ただただ、壊れたレコードのように、同じ言葉を繰り返す。意味なんてないのはわかってた。

「呼んだかい?」

 すると、その場に似合わない、明るい声が横から答えた。

フレンダ「ひっ……」

 驚いたフレンダは横に転がるようにして、後ずさる。だが、すぐにそれは、フレンダの恐れてるモノではないとわかった。

「酷いなあ、これでも愛らしい姿をしていると自負しているんだけど」

 それは白かった。真っ赤な目をした、ウサギのような、猫のような、少なくとも、フレンダの見たことのない生物であることは確かだった。

フレンダ「誰……?」

 恐る恐る、聞いてみる。人語を話してるせいか、思わず、何、ではなく、誰と聞いてしまった。

QB「僕はキュゥべえ! 君のような素質のある女の子を探していたんだ」

 果たして、それは正解だったらしい。それは、キュゥべえは確かに日本語で返答してきた。

フレンダ「素質……?」

QB「そう、素質。魔法少女の素質さ。僕は君たちと契約して魔法少女になってもらいたくて、ずっと素質のある女の子を探してるんだ」

QB「もちろん、ただで、とは言わないよ? 魔法少女になってくれたら、なんでも願いを一つ、叶えることができるのさ」

フレンダ「何でも……?」

 思わず、フレンダは復唱した。その言葉は、酷く魅力的だった。

QB「そう、なんでもさ。大抵のことは可能だよ」

「フゥゥゥゥレェェェンンンダァァァァ? どぉーこに隠れちゃったのかにゃー?」

フレンダ「ひぃっ!」

 その時、地獄の底から響くような、悪意と殺意と恐怖を練り固めたような声が響いた。

フレンダ「し、死にたくない……」

 反射的に、声が出る。

QB「それが君の願いだね?」

 それに、キュゥべえが答えた。

フレンダ「死にたくない……死にたくない! 魔法少女でもなんでもいい、私は死にたくないっ!」

 欲望を、感情を、願望を、フレンダは無表情のキュゥべえに向けて一気に吐き出す。

 突拍子もない話なのに、信じたかった。もう藁にも縋る気持ちだった。

QB「よし、契約成立だ」

 その気持ちにキュゥべえは快活に答えた。

 キュゥべえの耳の辺りから伸びる触手のような器官が、フレンダの胸元へ伸びる。

 すると、フレンダの胸元から光が溢れ、そこに球体が形成されようと――

フレンダ「えっ?」

 その瞬間、真っ白の閃光がフレンダの視界を焼き尽くした。

フレンダ「きゅ、キュゥべえ!?」

 キュゥべえと名乗る最後の希望がその激しすぎる光に飲み込まれたという事実を遅れて認識し、遅れて慌てる。

 だが、どこを見渡しても、キュゥべえの姿はない。

 当然だ。あの光、粒子でも波形でもない曖昧な電子の奔流に飲み込まれて生きてるわけがない。跡形が残ってるわけがない。

 見れば、フレンダが背中を預けていた壁、ビルに大きな穴が空いていた。つまり、ビルごと貫通した光が、キュゥべえを焼き尽くしたということになる。

 こんなことができるのは、当然、一人しかいない。

「見ぃーつけた」

 その一人が、白い光を纏った悪魔が、穴から顔を出した。

「ったく、手間かけさせやがって。さっさと殺されてろっての」

フレンダ「え……あ……」

 もう逃げられない。腰が抜けて、立ち上がることすらできない。必死に、手だけで這って逃げようとするが、一歩で追いつかれた。

「でも、この私からここまで逃げたってことは評価してやろうかしらね。よし、提案。その小憎たらしい顔と、フレンダご自慢の脚線美の、どっちを吹き飛ばしてほしいか、選ばせてあげる」

 悪魔がにこりと笑う。フレンダはそれだけで限界だった。

「あーん? なんだなんだ、フレンダったら濡れ濡れじゃない。それじゃ決定ね。
 そのビッチな下半身に『原子崩し』をプレゼントだ」

 悪魔が手をかざす。意思一つで軍隊に匹敵する力を持った手をかざす。

フレンダ「ゆ、許して……」

「は……? アハハハハハハハハ!」

フレンダ「む、麦野……?」

 突然笑い出した、仲間に、フレンダは少し安堵を覚えた。なんだかんだで、仲間なのだ。きっと、精一杯謝れば以前みたいに……

麦野「絶対に、許さない」

 そんな淡い希望は一瞬で打ち砕かれた。

 フレンダの記憶は、そこまでだった。

――
フレンダ「……あれ?」

 フレンダが目を覚ますと、そこは天井があった。つまり、屋内だった。

フレンダ「ここは……」

 辺りを見渡す。現状確認をすると、自分はベッドに寝かされていたようだった。

 真っ白なシーツに真っ白なベッド。そして、真っ白なカーテン。病院のようだった。

フレンダ「あれ……私ってば、どうしたんだっけ……」

 記憶を掘り返す。フレンダは、垣根帝督に追い詰められて保身のために、仲間の、『アイテム』の情報を売った。

 その場は逃がしてもらったのはよかったが、それが『アイテム』のリーダー、麦野にバレて、粛正を受けるところを逃げて。

 そして、殺されたはずだった。

 しかし、フレンダは、生きてる実感があった。

フレンダ「まさかここが天国ってわけ……?」

「いや、ここは僕の戦場であり、休息所だよ?」

 ふと、呟くと、どこからともなく、答えが返ってきた。

「おはよう、気がついたようだね?」

 それは、医者だった。初老の男性で、白衣を着てるのだから、やはり医者だろう。

フレンダ「ゲコ太……」

 思わず口走ってしまうくらいの、強烈な印象は、それだった。カエルのような顔をした医者だった。

「ん?」

フレンダ「な、なんでもないわけよ」

 しかも聞こえていたらしい。失礼そうなので、フレンダは慌てて取り繕った。

「そうかい? しかし、驚いたよ? 君は腰から下がまるまる無くなっていたというのに、肉体的に生きてたんだ。しかも徐々に再生していってね?
 君は『肉体再生』の能力者か何かかい?」

フレンダ「えっ……」

 そんなはずはない。フレンダは、正真正銘の、正常の人間のはずだった。

「お陰で処置は簡単だったよ? ほとんど手を加える必要もなかったね?」

「それでも、体は回復しても、精神的なダメージが深刻なようでね……この一ヶ月、眠り続けていたんだよ?
 まあ、あれでも生きてたってことは、下半身を生きたまま焼かれたということになるから当然だろうけどね?」

フレンダ「ひぅ……」

 記憶が呼び覚まされる。あの電子に焼かれる悪夢のような記憶が。

「ああ、すまないね、辛いことを思い出させてしまったね?
 でも大丈夫、目を覚ましたのなら、もう検査だけで、退院できると思うよ?」

フレンダ「生きてる……んだよね」

 右手を見つめて、握って、開いて、握って。

 結局、検査が終わった後、フレンダは退院した。今はとりあえず昼食を取ろうと、ファーストフード店に来ていたところだ。

 学園都市はどうも慌ただしい。店内の会話に耳を傾ければ、何やら第三次世界大戦が終わったとかなんとか、そんな話を誰もがしていた。

 どうやら眠っていた一ヶ月の間に色んなことがあったらしい。情報を入手する手段を持たないフレンダには、まるで異郷の地へと放り出されたような感覚だった。

 護身のために一応武器は調達したが、暗部の方には連絡する気はない。生きてると麦野に知られれば、また粛正されようとするのは目に見えている。

フレンダ「はぁ……結局、これからどうすればいいってわけよ」

QB「魔法少女として戦うしかないんじゃないかな」

 溜息を吐きながらフライドポテトを食べていると、不意に声を掛けられた。

QB「やぁフレンダ、目が覚めたんだね」

フレンダ「きゅ、キュゥべえ! 生きてたんだ!」

 見ると、テーブルの上に、フレンダに取引を持ちかけた、あの白い生物キュゥべえがいるではないか。
 フレンダにとって、これは僥倖だった。仲間も、知り合いからも断絶されたフレンダの、唯一の顔見知りとも言える相手だったからだ。

QB「く、苦しいよフレンダ」

フレンダ「あ、ごめん」

 感激のあまり、思わずキュゥべえを抱きしめていたフレンダだったが、言われて解放する。

QB「ふぅ、わけがわからないよ」

 解放されたキュゥべえは毛繕いをするように前足で自分の顔を撫でる。

フレンダ「それで……結局、魔法少女ってどういうわけなのよ?」

QB「あの時は切羽詰まっていたみたいだからね、説明は省略したけども……君は生き残りたいと願って、その願いは叶った。その代償として君は魔法少女として魔女と戦う義務が課せられたんだ」

フレンダ「ちょ、ちょっと待って。願いってなんだったわけよ、魔女ってなによ」

QB「君は生き残りたいと願ったのだろう? だから本来は死ぬはずのあの怪我でも、生き残ることができたんだ。つまり、願いが叶ったってことだね」

QB「魔女は、人に呪いと災いをもたらす存在さ。そして、魔法少女が退治するべき敵でもある」

フレンダ「そんなファンタジックな……」

 信じられない、そんなような口調で呟いて、フレンダはストローを咥える。

フレンダ「いや、私が今ここで生きてること自体がファンタジックか……」

 しかし、すぐに思い直す。そう、思い返せば、あの状況から生き残れるわけがないのだ。

フレンダ「魔法、か……この科学の街でそんなものがあるなんてね」

QB「わかってもらえたなら助かるよ」

 キュゥべえは毛繕いが終わったらしい。ポテトを勝手に食べ始めていた。

フレンダ「それで、結局魔女と戦うってどうすればいいわけ?」

 ファーストフード店で食事を終えた一人と一匹は、秋空の街を歩く。

QB「基本的に、ソウルジェムを使って探すって方針かな?」

フレンダ「ソウルジェム?」

QB「ほら、君の左手についてる指輪があるだろう?」

フレンダ「いつの間に……」

 言われて気がついたが、よく見れば左手の中指にいつの間にか身に覚えのない指輪が嵌められていた。

QB「そこからソウルジェムを出すんだ。感覚としてわかってるはずだよ」

フレンダ「むむむ……こうかな?」

 フレンダが軽く念じると、左手の中に何かが生まれた。

 それは、卵のような形をした宝石らしきもの中心に埋め込まれ、その周囲を骨組みで囲われ、下を台座で支えられ、頂きにアクセントを添えられた外見をしていた。
 宝石のように見える部分は仄かに黄色の光を放っている。

QB「それがソウルジェムさ」

フレンダ「へぇ……綺麗ね」

QB「大事にしておくれよ? それは君たちの分身と言っても過言じゃないくらい大切なものだからね」

QB「さあ次はそれの光に注目するんだ」

QB「ほら、歩く度に光が強くなっているのがわかるだろう? ちょうどこの先に魔女がいるみたいだ。
  魔女のような、魔力の強い存在がいると、それに反応してソウルジェムが光るのさ」

QB「基本的に、それを目印にして魔女を捜し出し、退治するっていうのが方針かな?」

フレンダ「……なんか、意外と地味」

QB「現実というのは往々にしてそんなものだよ、フレンダ」

フレンダ「魔法なんて言ってる時点で現実も糞もないと思うんだけどなあ」

QB「魔法も、魔術も、現実には確固として存在するものだよ」

フレンダ「まあ、だから結局私も生きてるってわけなんだけどね」

 ふと、フレンダが立ち止まる。

QB「どうしたんだい?」

フレンダ「私ってば、本当は死んでたわけよね?」

QB「そうだね。あそこで僕と契約しなければ君は間違いなく、肉体的な死を迎えていただろうね」

フレンダ「つまり、これは私の第二の人生というわけね」

QB「うーん、ずっと生きてるから第一も第二もないと思うのだけど、君たちがそう思うならそうなんだろうね。君たち人間の考えることはよくわからないや」

フレンダ「……よし、決めた!」

フレンダ「人に災いと呪いをもたらす魔女? そんなブッソーなもんはこのフレンダちゃんがぶっ倒してやるってわけよ!」

フレンダ「暗部で働いてたのも今は昔! 心を入れ替えて、正義の魔法少女として頑張っちゃうわけよ!」

フレンダ「誰もが小さい頃から憧れる魔法少女……それが私ならやらない理由はないっしょ!」

 おー、とフレンダはソウルジェムを握った右手を強く天に突き出す。

QB「……一応補足しておくけど、僕は普通の人には見えないから、今のフレンダはとても奇妙な人として注目されてるんじゃないかな?」

フレンダ「えっ」

――
フレンダ「ここが魔女の根城ってわけね……」

 スキルアウトが闊歩していそうな、裏路地を進むこと十数分、フレンダは一際ソウルジェムが反応する場所に辿り着いた。

 そこは人気のない倉庫だった。窓は割れて荒れ放題、壁には恐らくスキルアウトがしたであろう落書きで満載。

 明らかに使われていない、廃倉庫のようであった。

フレンダ「さて、突入と」

QB「その前に変身しておいた方がいいんじゃないかな?」

フレンダ「へ、変身?」

QB「魔法少女としての戦闘モードに切り替えることだよ。そのまま戦うのは些か面倒だからね」

フレンダ「変身まであるなんて……いよいよ魔法少女ってわけね……!」

 フレンダがソウルジェムを握って、変身後の自分をイメージする。誰に教えられたわけでもないが、変身の方法はなぜか理解していた。

フレンダ「おおっ! 本当に変身できた!」

 変身した自分の全身を確認して、興奮するフレンダ。

フレンダ「すごいすごい! 本当に魔法少女ってわけよ!」

QB「喜ぶのはいいけど、まずは魔女退治が先決じゃないかな?」

フレンダ「わかってるってわけよ。それじゃ、とつにゅー!」

 倉庫へ入ると、そこは異世界のような空間が広がっていた。

 倉庫に入ったはずなのに、そこは倉庫ではまるでなく、奥に扉の鎮座する、子供の部屋のよう。

 そして中空を舞う人形、人形。そして人形。しかもそれらはだまし絵のような形をして、現実では絶対にあり得ない形をしていた。

 フレンダが入ったことに人形たちは気付く。動かないはずの顔が動き、全員が全員、笑ったような顔になる。

フレンダ「うぇっ……なんだこれ」

 あまりの壮絶な非現実感に、フレンダは苦い顔をした。

QB「これは使い魔だね。魔女の手下さ。本体の魔女はこの奥にいるんじゃないかな」

フレンダ「そういう意味じゃないんだけどね……よっしゃ、じゃあいっそやりますか!」

QB「じゃあまずは魔法少女としての武器を――」

 キュゥべえの言葉を最後まで聞かずに、フレンダは使い魔の群れへと突っ込む。

QB「ああ、もう」

 説明を聞かずに飛び出したフレンダに、キュゥべえは溜息を吐いた。

 当然だ。さすがに魔法少女として身体能力は強化されていても、それだけでは魔法少女になったばかりの少女が使い魔には勝てるわけがなかったのだ。

 だが、キュゥべえの予想は外れる。

フレンダ「ひゃっほう!」

 銃声が何発も響き、人形たちの体が砕かれていく。

 フレンダの両手には拳銃が握られていた。そこから吐き出される銃弾は寸分違わず、全て人形に命中している。

 とても人間業ではなかった。

フレンダ「体軽っ! これが魔法少女パワーってわけ!? すごい!」

 銃の反動など、存在しないように玩具の人形を撃ち抜くその銃こそ、玩具のように見えるほど。

 弾倉が空になると、フレンダはマガジンを捨て、服の中からさらにマガジンを取り出し、弾を補充する。

 さらに撃ち抜かれること数体、小さな人形では歯が立たないことを使い魔たちが理解したのか、十数体の人形が一つに集まる。

 するとそれらはまるで粘土のように混ざり合い、一つの巨大な人形へと変貌する。

 しかしフレンダは焦ることはない。銃を躊躇いもなく捨て、服の中から、手品のように新たな武器を取り出す。小型ミサイルだ。

 発射されたそれは巨大な人形という巨大な的に見事、命中し、爆発。

 二分も掛からない内に、夥しい量の人形たちは全て撃墜され、跡形もなく消え去っていた。

QB「僕の話をもう少しゆっくり聞いてくれると嬉しいんだけどな」

フレンダ「結局、使い慣れた武器が一番ってわけよ」

フレンダ「さてと、次行くわけよ」

 その後もフレンダの快進撃は続いた。

 扉を開けると同じような子供部屋がその奥に続いており、さらに人形が同じように存在する。

 しかしフレンダの相手にはならなかった。

 その人形たち、つまりは使い魔たちは全て近代兵器の前にひれ伏し、誰もフレンダを止めることはできなかった。

 かと、思われた。

フレンダ「はぁはぁ……どこまで続いてるわけよこれ……」

 もうどれだけ進んだだろうか。どんなに進んでも、一向に目的の魔女にはたどり着けない。

 フレンダの装備はもちろん有限で、もう拳銃のマガジン一つしか残っていなかった。

フレンダ「やばっ……弾切れ……」

 そして、それも尽きる。

 人形が、三日月のように裂けた口を大きく開けて、武器の尽きたフレンダを食らわんと肉薄する。

 それに反応してフレンダは靴の踵からナイフを出す。そのまま踵落としを食らわせ、人形は沈黙。塵になる。

QB「フレンダ!」

 その時、キュゥべえが叫んだ。

 見上げるとそこには、天井に蜘蛛の巣を張り、その中央に座した巨大な蜘蛛の怪物のようなモノがいた。

QB「あれが魔女だ!」

フレンダ「くっ……!」

 キュゥべえが二言目を叫ぶと同時に、その蜘蛛は極太の糸を吐き出す。間一髪、フレンダはそれを避ける。

フレンダ「なるほどね、獲物が弱るのを待ってたってわけ……!」

 二撃目、三撃目と続いて、極太の糸が吐き出される。フレンダは必死に避ける。

 だが、すぐにフレンダは気がついた。避けて避けて、避ける先には子供部屋の角があることに。

 つまり、誘導されていたのだ。

 そしてそれに気がついて、気がついたからこそ、動揺し、反応が遅れる。

 今度の糸は、避けられなかった。

フレンダ「あうっ!」

 その糸はやはりというか、粘着性を持っているらしく、思わず左腕で防いだはいいが、そのまま一本釣りのように引っ張られる。

フレンダ(結局、私はこうなる運命ってわけ……!?)

 その時、フレンダの脳裏にキュゥべえの言葉が過ぎる。

フレンダ「そうだ、武器、武器!」

 思い出して、イメージ。右手に何かが生まれた感触があった。

 見ると、それはナイフだ。しかもただのナイフではなく、サバイバルナイフだ。

フレンダ「なるほど、生き残るだけにサバイバルナイフねー、ってこれでどうやって戦えっていうわけよー!」

 そんなことをしてる間にも、さらに引っ張られる。物理的に考えれば、フレンダの体重からすればもう体が浮き始めているほどの力だったが、魔法パワーか、フレンダはまだ踏ん張ることができた。

フレンダ「こなくそっ!」

 とりあえず、この糸を切らなければ状況は変わらない。

 手にしたサバイバルナイフを思い切り糸に振り下ろすと、ブチブチという、まるで血管を人間の筋をまとめて切り裂くような、気持ち悪い手応えがあった。

 糸は綺麗に切れたらしく、フレンダは自由を取り戻す。

フレンダ「切れ味はいいみたいだけど……こんなのじゃ攻撃できないってわけうわっと」

 再び、糸による攻撃。今度は避ける。

フレンダ「……いや、もしかして」

 ふと、フレンダは思いついたように、意識を集中させる。そしてイメージする。
 思い描くのは、大量の、ナイフ。
 手応えは、確かにあった。

 見れば両手にナイフが四本ずつ、計八本、指の間に出現していた。

フレンダ「なるほど、こういう使い方ってわけね!」

 合点がいったように、フレンダはそれを投げる。

 勢いは、人間のものではなかった。魔法によって強化された筋肉が、強力な投擲を可能にしていた。

 ナイフは全て蜘蛛の魔女に命中した。蜘蛛の魔女がつんざくような悲鳴をあげる。

フレンダ「まだまだ、終わらないってわけよ!」

 フレンダは構わず、ナイフをさらに手中に出現させると投げる。そしてさらに投げる。
 目にも止まらぬスピードで大量のナイフを投げ続け、まるで機関銃のような威力を発揮した。

 ほどなくして、魔女の体は崩壊する。異世界のような空間だった倉庫が、元の廃倉庫の景色へと戻る。

 黒い何かが地面に落ち、コーンという、小気味の良い音を立てた。

フレンダ「た、倒した……?」

QB「危なかったね、冷や冷やしたよ」

フレンダ「ま、天才美少女魔法戦士フレンダちゃんにかかればこんなもんよ」

QB「魔法戦士じゃなくて魔法少女だけどね」

――
 シャクシャクと、気味の良い音がする。林檎を囓る音だ。

QB「まさか君が来てくれるとはね。学園都市と言うだけで、ほとんどの魔法少女は近寄ろうとしないのに」

 少女が、キュゥべえの隣で林檎を囓っていた。もう片手には、袋に一杯の林檎が詰め込まれている。

「当然じゃん? グリーフシードがたんまり手に入るって聞いて、来ないわけないっしょ」

 その少女は芯だけ残すと、その芯をポイと投げ捨て、袋から新たに林檎を取り出す。

「ま、それに学園都市にはちょっと野暮用があるしね……」

 言いながら、少女は手元にある林檎へと視線を落とした。

QB「野暮用?」

「アンタには関係ないことさ。

 ――食うかい?」

 そう言って、少女はキュゥべえに林檎を差し出す。

QB「一つだけいただくよ、佐倉杏子」

――
フレンダ「これで、とどめ!」

 フレンダがナイフを投げる。するとそれは足の付いた蛇のようなモノ、魔女に直撃。

 魔女はほどなくして姿を維持できなくなり、崩壊した。

フレンダ「ふぅ……」

 結界も崩壊し、通常の風景、病院に戻ってフレンダは安堵の息を吐く。

QB「大分手慣れてきたね。あのクラスの魔女も簡単に倒せるなんて、凄い成長スピードだよ」

 どこからともなく現れたキュゥべえがフレンダの肩に乗る。

フレンダ「何をっ! 私は最初から強いってわけよ」

QB「最初は危なっかしくて見てられなかったけどね」

フレンダ「結局、最初は慣れてなかっただけってわけよ」

QB「だからそう言ってるじゃないか」

フレンダ「むぅ……」

 言い返せなくなって、フレンダは視線を落とす。

 すると、ソウルジェムが反応を示していることに気がついた。

QB「どうやら、また魔女が出現したようだね」

QB「これは、割と遠いね」

 すたっと地面に降りて、ソウルジェムの点滅を見上げて、キュゥべえが言う。

フレンダ「でも、魔女がいるなら行くしかないってわけよ。それが私の使命っ!」

QB「いや多分、そっちの方面は大じょ……ああ、行っちゃった」

 すぐさま魔法少女に変身したフレンダは、強化された身体能力でキュゥべえの言葉を聞かずに飛び出していく。

 キュゥべえは軽く溜息を吐くと、ゆっくりと、そのフレンダの後を追っていった。



「あれは……フレンダなのか……?」

 それを、物陰から見ている人間がいたことには、二人とも、気がつかなかった。

杏子「鬱陶しい!」

 佐倉杏子が槍を大きく振るう。すると蛾のように杏子の周りに集まっていた蝶の姿をした使い魔が蜘蛛の子を散らすように、散開した。

 魔女は目前。繭に籠もった姿をした魔女で、どうやらあれが本体らしい。

 近づくと先ほどの蝶の使い魔が大量に押し寄せて、近づけない。

 杏子の武器は槍であるため、戦いづらいことこの上ない。

 恐らく、魔女側も、それを見抜いてこその作戦なのだろう。

杏子「だけど、甘いんだよな」

 にやりと杏子は笑う。

 槍を握る手に力を籠める。

 イメージする、槍の変形する姿を。多節棍としての槍を。

 そして、それを振るおうと、その時になって、

フレンダ「せいやっ!」

 数えるのも億劫なほどの大量のナイフが繭の魔女に降り注いだ。

SS速報行けば?
あっちならのんびりやれるぞ

てすと

書けた。続き貼る

>>36,38
すまん、SS速報は好きじゃないんだ

ログ残ってるから途中から書いたら?

杏子「……は?」

 魔女は悲鳴をあげる暇すらなく、崩壊する。結界も次いで崩壊する。

フレンダ「いやー、私ってばやっぱり才能あるじゃないかな。大丈夫?」

 呑気な声と共に、闖入者が姿を現した。フレンダだ。

杏子「何しやがんだおい」

 剣呑な空気を漂わせて、睨み、杏子は言う。

フレンダ「えっ……なんかちょうどいい位置にいたからやっちゃおうかなっと」

 怒られたのが意外な風にフレンダは答えた。

杏子「そういうことじゃねえよ。あたしが戦ってるのが見えなかったのか?」

 カシャリと、杏子は槍を持ち上げて、穂先をフレンダへと突き付ける。

フレンダ「そ、そんなに怒らなくてもっ……どうせ魔女を倒すならお互い倒せる時に倒した方がいいってわけよ。
      それで助かる人は変わらないんだからさ」

 慌てて、フレンダは弁解する。

>>41
一応貼り始めちゃったし、最後まで貼るよ
外部サイトだと対応してない専ブラだと見づらいだろうし

杏子「何を寝ぼけたことを言ってやがる。
   ……いや、なるほど。あんた新人か」

 杏子の声が若干、穏やかになるのをフレンダは感じた。

フレンダ「新人は新人でも、期待の天才新人ってわけよ」

 空気が落ち着いたところで、ふふんと自慢げにない胸を反らすフレンダ。

杏子「何か勘違いしてるようだけどな……」

 呆れた風に言いながら、杏子は槍を下ろす。

杏子「魔法少女ってのは慈善事業じゃあないんだ。生きるために必要なグリーフシードを集めるために戦ってるに過ぎないんだよ。
   そこで、実力もないくせに変なお節介なんて焼いてると後悔するのはあんただよ」

フレンダ「何をぅ……」

杏子「人助けのために魔女を倒す? 努力目標としては結構結構。だけどな、そんな甘ったれた気持ちで、子供の夢物語みたいなことやってたら――
   いつか死ぬぞ?」

杏子「食物連鎖って知ってるか? 学校で、小学生でも習う簡単な自然の摂理さ。
   弱い人間を魔女が、使い魔が食う。成長した使い魔や、魔女を食べて、あたしたちがいる。ただそれだけのことさ」

フレンダ「まさか……アンタ、グリーフシードのためだけに戦って、グリーフシードのためにならないことはするなって言いたいわけ?
      例えば、使い魔に人が襲われても、見殺しにするとか、そういうわけ?」

杏子「理解が早いじゃないか。当然っしょ。誰でも得にならないことはしないしない」

フレンダ「……どうやら私とアンタは気が合わないみたいね」

 フレンダの手の中で、金属音がした。ナイフを生み出す音だ。

杏子「お、やるってのかい?」

 それに敏感に反応した杏子が再び穂先を上げる。

 フレンダはそれを鋭く睨むと、即座に行動できるよう、重心を落とした。

杏子「やるってんなら、いいぜ。
   ――その代わし、あたしは強いよ?」

 杏子も両手で槍を握り、臨戦態勢を整える。

フレンダ「上等!」

 答えと共に、フレンダは手の中に生まれたナイフを投げつけた。


QB「ああもう、困ったな……」

 その二人を眺めていたキュゥべえが、独りごちる。

QB「こんなことをしてる場合じゃないってのに……仕方ない、彼女を呼んでこよう」

 フレンダが投げつけたナイフが目視するのが難しいほどの速度で杏子に迫る。

 これに対し杏子は正確に、かつ迅速に、全てのナイフを難なく槍で叩き落とす。

 さらに間を開けずに、矢のような速度でフレンダに接近。槍を思い切り叩き付ける。

 ゴバッという凄まじい音が響いた。

 しかし、手応えはなかった。

杏子「避けたか」

 まるで爆撃があったかのように大穴が空いたコンクリートにフレンダの姿はなかった。

 自分の威力を誇ることもなく、即座に杏子は槍を振るいながら、半回転。

 ナイフが、背後に迫っていたが、全て叩き落とされる。

フレンダ「うへっ……背中に目でもついてんの!?」

 見ればフレンダは壁にナイフを突き刺し、足場にしながら高い位置に立っていた。

杏子「新人がやろうとすることくらいわかってるさ」

 杏子はその場で槍を振るう。同時に、槍はただの槍から多節棍へと変化し、フレンダの位置まで伸びた。

フレンダ「げっ!」

 慌てて飛んで、フレンダは避ける。
 壁は大きく抉れ、コンクリート片が辺りに撒き散らされた。

杏子「新人は、魔法少女になる前の感覚が残ってるんだよな。
    だから、攻撃も、一般人に有効なものばかりやりたがる」

 空中に逃げたフレンダを目で追いながら、杏子は言う。

フレンダ「食らえっ!」

 そんな余裕綽々の杏子にフレンダはナイフを投げつけるが、やはりそれは軽々と弾かれる。

杏子「ダメなんだよ、それじゃ。魔法少女相手に、そんな常識的な戦い方をしちゃダメだ」

 杏子が獲物を狙うような目で、フレンダを睨み付ける。

 フレンダはぎょっとして、さらにナイフを投げつけるが、やはり弾かれる。

杏子「そして、急に超人的な身体能力を手に入れたから、新人はそうやってすぐに空を飛びたがる」

 再び、杏子は両手で槍を握る。

杏子「煙となんとやらは高いところが好きってな。空中は逃げ場がないってのは、バトル漫画の定石っしょ」

 そうして、多節棍となり、伸びた槍がフレンダに叩き付けられた。

 当然、杏子の言う通り、フレンダに避ける術はなかった。

 フレンダもただ受けるだけではない。かろうじて、ナイフを両手に生み出し、それを盾にすることはできた。

 だが、もちろん、空中で踏ん張りが効くはずもない。

 鈍い音が響いて、フレンダはコンクリートの地面に激しく叩き付けられた。

杏子「ま、こんなもんか」

 ふぅ、と軽く息を吐いて、杏子は槍を背負う。

 だがすぐに杏子は軽く首を傾ける。杏子の顔があった場所をナイフが勢いよく通り抜けた。

杏子「おっかしいな、今のが直撃してたら全治半年は堅いはずだったのに」

 見れば、フレンダはまだ健在だった。

 両足でしっかり地面を掴み、両手にナイフを持って直立していた。

杏子「回復系の魔法か、面倒だ」

 杏子はそれを見て笑う。

フレンダ「終わったと勘違いするのは、まだ早いってわけよ!」

 言葉と同時、フレンダは大量のナイフを投げつける。

 数えるのは到底間に合わない。機関銃のようなナイフの連射だった。

杏子「今度は数ってか!」

 だが、杏子が多節棍モードの槍を大きく振るうと、それらは全て叩き落とされる。

 どんなに投げても、結局、杏子に一本も届かないどころか、傷一つ付けられなかった。

 フレンダは、それに一切動揺しなかった。

 それどころか、それを確認するより早く、フレンダは駆け出す。

 杏子の速度には及ばないが、それでもフレンダの速度は常人を遥かに超えていた。

杏子「何っ!」

 杏子が槍を戻すより早く、フレンダは杏子の懐へと潜り込み、ナイフで直接切りつける。

 かろうじて杏子は槍の柄で受け止めた。

フレンダ「ふふん、リーチの差は重々理解してるってわけよ。だから、懐に入っちゃえば、槍よりナイフの方が有利!」

 フレンダはナイフに力を籠め、杏子は槍に力を籠める。ギリギリと、小競り合いとなる。

杏子「回復系の魔法と言っても、あれだけのダメージを受けた直後に、こんな素早い反応はできないはず……!?」

 初めて、杏子の表情が焦りへと変貌する。

 その様子ににやりと、フレンダは笑った。

フレンダ「結局、詰めが甘いってわけよ!」

 受け止められたナイフとは別に、もう片手にナイフを生み出し、フレンダは切りかかる。

杏子「――なんて言うと思ったか?」

フレンダ「えっ」

 ナイフを振り下ろしたはずのフレンダは、手応えがなくなったのを感じた。

 いや、手応えがなくなったのではない。

 手が、肩から先が、丸々なくなっていた。

杏子「こっちだって武器くらいいくらでも作れるっての。そして、こいつは伸縮自在だ」

 杏子の手には、もう一本、槍が握られていた。
 柄が片手で持てるくらいの、最早槍というより、短剣に近いような槍だった。

 それで、腕を切り落とされたと、フレンダは遅れて認識する。

杏子「あんたこそ、甘かったな」

 その事実に動揺するフレンダ。その隙をついて、もう片手も切り飛ばされる。

フレンダ「あぐっ!」

 さらに追撃。杏子はフレンダの文字通りがら空きとなった脇腹を回し蹴りで思い切り蹴飛ばした。

 フレンダは吹き飛ばされ、ノーバウンドで壁に叩き付けられた。

速度落とさなきゃまた規制くらうぞ

>>54
そしたらまたルーター切断する

 その様子を見て、今度こそ杏子は終わった、と判断した。

杏子「安心しな。魔法少女ならゆっくりと治していけばその腕はくっつくさ。回復系のあんたなら尚更ね」

 もう用はないと言わんばかりに、フレンダに背を向けて、立ち去ろうとする。

フレンダ「いいや、結局甘いのはそっちってわけよ」

 だが、後ろからまだ声を投げかけられる。

杏子「はぁ……? いい加減に諦め――」

 呆れたように溜息を吐き、振り向く杏子。

 そして、フレンダの様子を見て、杏子は言葉を失った。

 フレンダは健在だった。切り落とされたはずの両腕は、既にくっついていた。
 そして、その新しい両腕で何かを持っていた。

 それはマラカスのような形をしていた。金属の棒に、先端に楕円形のものがくっついていた。
 もちろん、そんな玩具などではないことは杏子でもすぐにわかった。

 携帯型対戦車用ミサイルだった。

杏子「はぁっ!?」

 杏子は今度こそ、本当に焦った顔をした。

 それでも、もう遅かった。しゅぽっという気の抜けた音と共に、先端のミサイルは発射される。

 避けても爆風が襲いかかり、防いでも爆風が襲いかかる。直撃なんて以ての外。

 打つ手無しだ。

杏子(くそっ……!)

 自分の甘さを嘆き、苦し紛れに結界を張ろうとする。

 結界を張っても、防ぎきれるかどうかはわからない。それでも、そうする他なかった。

 しかし、それは杏子に届くことはなかった。

 銃声が響いて、ミサイルは空中で爆発する。

フレンダ・杏子「なっ……」

 杏子は驚き、フレンダも予期してなかったのか、一緒に驚いた。

「まったく、佐倉さんは……また喧嘩しているの?」

 落ち着いた声が、新たに加わった。

杏子「お前は……」

 こつこつと、靴の硬い音が室内で反射する。

「今はそんなことをしてる場合じゃないでしょうに」

杏子「マミ……」

>>46
殺されて改心したんでさやかのような正義感を
持ってるんだろうけど、原作の利己的なキャラの
ままの方がフレンダらしいんじゃないかと思う。

――
QB「君たちには困ったよ。せっかく戦力を集めたのに仲間同士で戦っちゃ意味がないじゃないか」

 ぶすっとした表情の杏子、同じくそっぽを向いてるフレンダ、そしてあきれ顔で紅茶を飲む金髪でドリルな少女、マミ。
 ついでにキュゥべえ。

 三人と一匹は揃ってファミレスに来ていた。

マミ「こらキュゥべえ。テーブルの上にあがっちゃダメっていつも言ってるでしょ」

 そう言ってマミはテーブルの上のキュゥべえを抱え、膝に抱く。

フレンダ「戦力を集める? どういうわけよ」

QB「そういえばまだフレンダには言ってなかったね。この学園都市は、今、極めて異常な状態にあるんだ」

フレンダ「異常?」

QB「そう、異常さ。例えば、そうだね……この三日間、君たちが倒した魔女の数は何体だい?」

フレンダ「いち、にー、さん、よん、ご-、ろく、なな、はち……八体ね」

杏子「七体」

マミ「私は今日来たばかりだから三体よ」

フレンダ「それがどうしたっていうのよ」

QB「杏子、マミ、君たちならわかると思うけど、この街の魔女はいくらなんでも数が多すぎるんだ」

QB「正直言って、これは自然発生のレベルじゃない。明らかに多すぎる」

フレンダ「確かにこんなに戦い続けてたら体が保たないなー、と思ってたけど、やっぱり多いだ」

マミ「普通、魔女ってのはそうそう毎日見つかるものじゃないわ。それが毎日、しかも一日に数体も出てくるなんて異常すぎる」

フレンダ「どうしてそんなに多いわけよ」

QB「わからない。ただ、僕はこれに人為的な、作為的な意図が絡んでると思ってるよ。だから君たちを呼んだのさ」

フレンダ「でもなんで外部から呼ぶ必要があるの?
     学園都市に侵入するのは結構大変だし、学園都市なら少女はたくさんいるからみんな契約させればいいわけじゃない?」

QB「それがそうもいかないんだ。素質がある子は中々いないし、学園都市の少女と契約しても、戦力にならない場合がほとんどなのさ。フレンダは特別だけども」

フレンダ「どういうこと?」

QB「それが僕にもメカニズムはよくわからないんだよね」

杏子「そんなことよりだ、本当に魔女が人為的に増やされてるとして、一体誰が、何のためになんだ?」

 シャクシャクと注文したシャーベットを潰しながら杏子が割り込む。

QB「まったく見当が付かないよ。僕の契約した少女の中でも、そんなことをする子の心当たりは今のところないんだよね。
  そもそも、目的がわからない。魔女を増やしたって、人間にも、魔法少女にも、百害あって一利無しだろう?
  例え魔女の作り方を考案できた魔法少女がいても、自分で魔女を作ってグリーフシードを集めるより、自然発生する魔女を倒した方が効率的だしね」

フレンダ「……学園都市なら、ありえるわよ」

 ぽつりと、フレンダが言った。

フレンダ「魔法、魔女なんて、普通の人間からしたら未知の存在。
     学園都市の研究者が見つけたら研究しないわけがないってわけよ」

マミ「でもそんなものを研究して何の意味があるの? 魔女は人に災いをもたらす、邪悪と災害が顕現したような存在よ」

 ショートケーキを食べていたマミが言う。

フレンダ「そう、普通に考えて、魔女は害しか生まない。でも、もしそれが敵対する国に発生したら?」

杏子「まさか……学園都市は魔女を兵器として利用しようって言うのか?」

フレンダ「その可能性は大いにあり得るわけよ。だって、証拠は残らない、因果性もわからないなんて、これほどテロにぴったりな兵器はそうそう存在しないわよ」

フレンダ「昔、ロシアの巨大なショッピングセンターで孵化の時間を人工的にコントロールしたベニオオアシグンタイアリっていう人食い蟻を使ったテロ事件もあったわけだしね」

マミ「そんなこと……できるの?」

 チョコレートケーキを食べ終えて、苦々しそうになったマミが言った。

QB「不可能だね。グリーフシードの孵化タイミングはそうそうコントロールできるものではないし、そもそも普通の人間は魔女を認知することすらできない。
  しかもこれだけの量だ。恐らく、使い魔を成長させたものだと考えるのが妥当だろう。そうしたら、さらにコントロールは困難だ」

フレンダ「この学園都市で不可能なんて、あり得ない。魔法、魔女、そんなオカルトも、きっと学園都市が研究すればすぐに解明できちゃう。
     ……昔、そういう実験も聞いたことあるしね」

QB「……まったく、人間の考えることはわけがわからないよ。兵器ならもっと効率の良いものがあると思うけどね」

マミ「ともかく、佐倉さんも、貴方も、喧嘩してる場合じゃないのはわかってもらえたかしら?」

杏子「あたしは別に戦わないってなら、わざわざ戦う気なんかないけどな」

フレンダ「うっ……でも……」

杏子「まあ、その信念を曲げたくないなら強くなればいいさ。そこのマミみたいにな」

マミ「あら、佐倉さんがそんなこと言うなんて珍しいわね」

杏子「うるせー」

マミ「まあまあ、いいじゃない。今はみんな仲良く、ね?」

フレンダ「仲良く、かあ……」

杏子「はぁ……わかってるよ。ただし、仲良くじゃなくて、共同戦線だ」

杏子「自己紹介が遅れたな、あたしは佐倉杏子だ」

マミ「巴マミよ」

フレンダ「私はフレンダ・セイヴェルンよ。よろしくね」

>>58
調子に乗ってるフレンダ可愛いよ

フレンダ「それで、この後どうするの?」

 ファミレスから外を見れば、既に日は傾いていた。

フレンダ「学園都市の夜は早いわよ。完全下校時刻になればバスとかほとんど止まっちゃうから動くなら早くの方がいいわね」

 フレンダが時計を見て、言う。

マミ「そうね……まずは拠点ね。雨風凌げる場所が欲しいわ」

 チーズケーキを食べ終えたマミが提案した。

杏子「それなら適当なホテルがちょうどいいな」

マミ「そうね。ねえセイヴェルンさん、どこかいいホテルを案内してくれないかしら?」

フレンダ「学園都市のホテルは選り取り見取りよ。この時期に観光客なんてほとんどいないから、どこでもすぐに部屋を取れちゃうってわけ」

杏子「そうか、そりゃ都合がいい。適当なところを勝手に使わせてもらうとするか」

マミ「ダメよ、佐倉さん。そんなことしたらお店の人に迷惑がかかるでしょ」

杏子「そんなこと言っても金ねーぞ」

マミ「いいわよそれくらい、私が出しておいてあげるわ。緊急事態だしね」

杏子「ま、タダで泊まれるならあたしはいいけどさ……」

――
 路線バスを乗り継いで十数分、三人と一匹は第三学区に到着した。

杏子「おいおい……大丈夫なのかよここ……めちゃくちゃ高級っぽいぞ……」

フレンダ「第三学区には外部からの客が比較的多いからもし、二人の侵入がバレたとしても誤魔化しやすいってわけよ」

杏子「それにしたってなあ……」

 杏子は乱立する見上げると首が痛くなるほどの高層ビル群を見て、辟易する。

 それらは外装から綺麗な状態が保たれていて、金をぼったくっても文句を言わせないぞと言わんばかりだった。

フレンダ「あ、前に麦野たちと泊まった時にサービスがいいところみっけ」

 その内、一際大きなホテルにフレンダはずかずかと入っていく。入り口にはガードマンが張り立ちっぱなしになっており、警備はいかにも頑丈そうだ。

 それに続いて、マミも入る。

杏子「うへえ……」

 遅れて杏子もついて行く。

杏子「無理矢理侵入しようとしなくてよかったな、こりゃ……」

 チェックインし、バイキングへ。

 バイキングと言っても、さすがは高級ホテルと言うべきか、杏子には全ての料理が輝いてるように見えた。

杏子「おいっ、これ本当にいくらでも食べていいのか!?」

 目を輝かせて杏子が聞く。

フレンダ「ま、まあ、バイキングだし……」

 戦闘時のイメージがついていたので、あまりの豹変ぶりにフレンダは困惑する。

杏子「よっしゃ、たくさん取ってくるからな!」

マミ「食べきれる量だけ取ってくるのよ」

杏子「わかってる!」

 子供のようにはしゃぎながら、料理へと向かう杏子。

杏子「やべえ、これかなり美味いぞマミ、フレンダ!」

 そしてすぐに杏子の大声が聞こえてきた。

フレンダ「……なんか、杏子のイメージが最初とは違うんだけど」

 フレンダは半ば呆然として、呟いた。

マミ「無理してるのよ、あの子も」

 適当に取ったスパゲティを食べながら、マミが言う。

フレンダ「予想外に妹キャラってわけね。私の妹とはまるで違うけど」

マミ「あら、妹がいるの?」

フレンダ「私に似てかっわいい小学生の妹が一人、ね。どうやら私ってば戸籍上は死んでる扱いになっちゃってるから会いには行けないけど」

マミ「妹……いいわね、家族がいるっていうのは」

 遠い目をして、マミが呟く。

フレンダ「マミも妹とかいるの?」

マミ「いないわね……家族もみんな事故で死んじゃったわ」

フレンダ「あぅ……ごめん」

 シュンとして謝るフレンダ。

書いたのここまで
速度上げて続き書く

「すまん。SS速報は好きじゃないんだ」

それが>>1の出した選択であった。
別に本気でSS速報が嫌いなわけではない。だが彼は不安だったのだ。

なぜなら――――

「禁書ssスレがこんなに……!?」

生半可な書き手である>>1にとってSS速報の壁はあまりにも高く、そして厚かった。
目の肥えた読者たちが跋扈する、まるで獄中のような厳しさを耐え切る自信と技量が>>1にはなかったのだ。
あんなところで書いたところでレスはもらえない。そのことを一番理解しているのは>>1自身であった。

「SS速報でやれよ」
「建て直しすんな」

誤謬なき野次が>>1の信念を掻き乱し、欠けたガラスのように鋭利な言葉が>>1の心を抉った。

「……」

返す言葉が見当たらない。否、下手な返答をすれば『叩かれる』ことを理解した上でのスルーだった。
それ故、彼は『好きじゃない』とどうにでも取れるような『逃げ』を意識した返答を出すに留めたのだ。
しかし、その答えはSS速報の内情を知る者たちの失笑をかってしまうほどの悪手であった。
SSスレは改行や投稿制限がVIPとは比べ物にならないほど緩やかで、書き手にとってはVIPよりも遥かに良好な環境であるからだ。

(俺はなんとしてもVIPで書ききる……! そしてss乞食共から賞賛レスをかき集めてまとめに載り、名作を作った神として歴史に名を刻むんだ……!)


――その日の夜中、>>1が立て直したssスレは無情にもdatの欠片となり電子の海へと消え入った。

マミ「いいのよ、昔のことだし、ね。惜しむらくは、その時、願いで自分だけの命を願っちゃったことかな?」

フレンダ「マミも生きたいから魔法少女になったんだ……」

マミ「『も』、ってことは、セイヴェルンさんも?」

フレンダ「まあね。あの時はどうなるか冷や冷やしちゃったわけよ」

マミ「そうだったの。なんだか私たち、気が合いそうね」

フレンダ「なーんか、深いところで似てる気がするってわけよ」

杏子「なあ、二人とも! 店員さんに頼んだらこんなにケーキもらえたぞ!」

フレンダ「ちょ……それ、普通に注文しただけじゃ……」

杏子「えっ……」

>>72
コピペにマジレスはカッコ悪いが

SS速報は落ちないんで安心してなかなか
書かないようになちゃう作者が多いんだよな。
反応も少ないし。

VIPは良くも悪くも反応があるし緊張感もあるから
モチベーションが保てるんじゃないか。

保守は俺達に任しとけ。

>>72
これコピペじゃねーだろ見たことねえぞこんなの







秀逸だな

>>82
新たなコピペ誕生の瞬間だった。

――
浜面「本当だって、見たんだよ!」

 学園都市の個室サロンの一室で浜面は力説する。

浜面「フレンダの幽霊を!」

絹旗「はぁ……ついに超浜面菌が脳にまで達してしまいましたか。幽霊なんて非現実的な……」

浜面「B級映画見てるお前が言うかっ!?」

絹旗「はいはい、どんな格好してたんですか? 三角巾でも超被って、うらめしやーとでも言ってたんですか?」

浜面「いや、なんか変な格好してたんだよな。フレメアみたいなフリフリの格好で……」

絹旗「15点」

浜面「まったく信じてないなお前!」

 ぎゃーぎゃーと喚き会う浜面と絹旗。そんな二人を尻目に、一人ジュースをストローで吸い上げながら上の空な麦野、そしていつも通り眠たげな目をした滝壺。

 アイテムのメンバーが集まっていたところだ。

滝壺「はまづら……」

 くいっくいっと、浜面の袖を引っ張る滝壺。

浜面「おお、滝壺なら信じてくれるよなっ」

 浜面は救世主を見つけたと言わんばかりに感激する。

 しかし、滝壺はそんな浜面をジト目で見つめて、一言。

滝壺「言っていい冗談と、悪い冗談があると思う……」

浜面「あ、あれ……? 滝壺サン、怒ってらっしゃる……?」

 浜面が恐る恐る尋ねると、滝壺はそれに答えず、プイッと顔を背けてしまう。

 「信じてくれよ滝壺ぉ」と懇願する浜面に、当然です、という風に憮然とする絹旗。

 そんな三人を尻目に、麦野は溜息を吐いた。

麦野「フレンダの幽霊ね……会えるものなら会いたいわね……」

>>1「くそおおおおおお!!なんで書いてる俺に安価つかないんだよおおおおおおおおお!!」ガスッガスッ

>>1母「やめなさいトオルちゃん!近所迷惑でしょ!」

>>1「ふざけんなよ>>72!このssは俺が数ヶ月構想練った渾身のssなんだよおおおおおお!!くそがあああああ!!!」

――
 杏子、フレンダ、マミはホテルの一室に泊まっていた。

 一室と言っても、豪勢なもので、キングサイズのベッドで三人は悠々と寝られる環境だ。

 そこで、佐倉杏子は目を覚ました。

 本能的に、結界を張る。

 次の瞬間、部屋の入り口、扉ごと貫通した銃弾が三人を襲った。

マミ「何事!?」

フレンダ「へぁっ!?」

 その衝撃に、残り二人も起きる。

杏子「わからねえ、だけど敵襲なことは確かだ!」

 しばらく掃射が続いた後、ドアがボロボロになり、外にいるものが見えた。

 それは、機械だった。ずんぐりとした人型で、黒い装甲に覆われている。

 右手に当たる部分には大型の機関銃が握られており、あれで攻撃してたことが窺える。

 それを見て、フレンダはぎょっとした。

フレンダ「『駆動鎧』(パワードスーツ)……!?」

 駆動鎧は機関銃を投げ捨てると、杏子の張った結界へと突進する。

 ぐしゃり、と駆動鎧が衝撃でひしゃげるが、構わず、何度もその巨体を叩き付ける。

杏子「ぐっ……やべえ、もたねえぞ!」

 三度目の体当たりで結界はひび割れ、杏子が顔を歪めた。

 その間に、マミとフレンダは変身を済ませる。

 そして、四度目の激突で杏子の張った結界は破れた。

 パリンという、乾いたものが砕かれる音が響き、杏子の結界が消失する。

 そこに間髪入れずにマミがマスケット銃を放ち、フレンダがナイフを投げる。

 しかしそれは当たらない。巨体に見合わない俊敏な動きでそれは易々と回避される。

 さらにその回避の瞬間、その巨体が光に包まれるのを三人は目撃し、驚愕した。

 光に包まれたと思うと、ひしゃげたはずの駆動鎧の体は元の綺麗な形となる。

 だが、三人が驚いたのは修復されたことではない。

マミ「魔力……!?」

杏子「嘘だろ……こいつ魔法少女だ!」

 駆動鎧は蜘蛛のように地面を這う姿になると、一飛びでドアまで後退する。

 飛びながら、捨てた機関銃を拾い上げ、銃口を三人に。

杏子「やべえ!」

 今度は結界を張る暇がなかった。

 機関銃の壮絶な掃射が放たれる。

 三人は床に伏せ、間一髪で避けるが、部屋は滅茶苦茶だった。

 ジリリリリリと、緊急警報が鳴り響く。

 どたどたと、大勢の人間の足音が響いた。

 警備員だろうか、武装した大人が数人やってくる。

 駆動鎧はそちらに目もやらず、機関銃の掃射でなぎ倒す。

杏子「やりたい放題だな、おい!」

 その隙を突き、変身を済ませた杏子が槍を持って飛びかかった。

 駆動鎧はそれに鋭敏に反応し、槍を機関銃で受け止める。

 杏子が着地するより早く、駆動鎧は杏子の胸元へと、空いた手を伸ばした。

 それも杏子の胸元には到達しない。銃声が響く。マミのマスケット銃の銃声だ。

 マミの放った銃弾は正確に駆動鎧の腕を打ち抜き、それによって腕の軌道が逸れ、結果、腕は杏子に当たらない。

 その一連の流れでぎょっとした杏子はすぐさま後退する。

杏子「こいつ……ソウルジェムを正確に狙ってきてやがる!」

 再び、駆動鎧による機関銃の掃射。今度は反応が間に合い、マミがリボンを大量に発生させ、壁を作る。

 リボンの壁に銃弾が突き刺さる凄まじい爆音が室内に響いた。

杏子「ちくしょう、なんだこいつは!」

フレンダ「『駆動鎧』! 人間の身体能力を上げるための機械ってわけよ!」

マミ「つまり、ロボットってわけね!」

 掃射の音が止む。すると再び、腹の底に響くような音がし始める。

 また突進で破ろうとしているのだろう。

フレンダ「まあ、厳密に言えば違うんだろうけど! とりあえず、この部屋じゃ狭すぎてどうしようもないってわけよ!」

 リボンの壁は頑丈らしく、巨体の突貫でもびくともしなかった。

フレンダ「多分、あのタイプは機動性を犠牲にした装甲重視のパワータイプ! この部屋じゃ圧倒される!」

杏子「じゃあどうすんだよ!?」

フレンダ「ぶっちゃけ、逃げるしかないっ!」

 駆動鎧は突破は無理と考えたのか、重低音が止む。

 次はバガンという、砕ける音がした。コンクリートが砕ける音だ。

フレンダ「まさか……!?」

 そして、次にまたその音がする。フレンダたちの真上で。

 駆動鎧が、天井を砕いて降ってきた。

 さらに素手を振り回す。単純なパンチだ。

 だが威力は凄まじい

 標的は、障害と判断されたのか、マミ。

マミ「くっ……!」

 思わず、マスケット銃で受け止めるが、マスケット銃は砕かれ、マミはそのままノーバウンドで吹き飛ばされた。

フレンダ「マミっ!」

杏子「何が機動性を犠牲にしただ! 無茶苦茶素早いぞ!」

フレンダ「中身が魔法少女だから!? そんな反則な!」

 ぐるり、と今度はフレンダの方を駆動鎧が顔を向ける。

フレンダ「げっ!」

 駆動鎧が腕を振り上げる。

マミ「はい、そこまで」

 するとそこで大量のリボンが駆動鎧の拳から溢れだした。

 リボンは駆動鎧に絡みつき、駆動鎧の動きを止める。

フレンダ「マミ……!?」

マミ「さっき殴られた時にリボンの種を植え付けておいたのよ」

 だが、動きを止められたのも一瞬。ブチブチと、ちぎれる音と共に駆動鎧は少しずつ動き出す。

マミ「まだ足りないのね」

 銃声が三発。マミの放った銃弾が駆動鎧に直撃する。

 しかし、もちろん、駆動鎧には大した傷がつかない。

 それでもマミは慌てない。着弾した地点からさらにリボンが生まれ、厳重に駆動鎧を包み込む。

フレンダ「おおっ!」

 それでもまだ駆動鎧は止まらない。ギシ、ギシと、音を立てながら少しずつ動こうとする。

マミ「さて、二人とも下がっててね」

 次に、マミは自分の体よりも大きなフロントフックの銃を作り出す。

杏子「おいちょっ……」

 それを見て、慌てて杏子はフレンダの手を引っ張り、駆動鎧から距離を取った。

マミ「ティロ――」

杏子「伏せろフレンダ!」

マミ「――フィナーレ!」

 巨大な銃から巨大な銃弾が放たれる。それはリボンに雁字搦めにされた駆動鎧をノーバウンドで吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた駆動鎧は壁にぶつかっても止まらず、廊下の壁すらも貫通。結局、駆動鎧は向かい側の部屋まで吹き飛んで、初めて地面に叩き付けられた。

 駆動鎧の体は大きく変形し、ぴくりとも動かない。

杏子「や、やったか……?」

 杏子が覗き込むようにして、恐る恐る確認する。

 見ると、駆動鎧は仄かに光に包まれていた。変形した機体が少しずつ修復されていくのが見える。

杏子「おいおい……あれでもダメなのかよ!?」

マミ「とにかく、今の内、逃げるわよ!」

フレンダ「おっけー!」

杏子「ああ!」

 それ以上駆動鎧に追撃せず、破られた部屋の窓から、三人は逃走した。

ダメだ、アニメ見ながらだと集中できないからロリきゅーぶ見てくる

嫁のフレンダの為にも落としてなるものか。

保守してくれた人ありがとう、続き書く

 夜の学園都市は静かだ。基本的に学生で構成されるこの都市で、深夜に出歩く人間は極端に少ない。

 いるとしても、教師か、夜遊びしているスキルアウトくらいだろう。

 夜の路地裏で、三人は息絶え絶えに座り込んでいた。

 既に第三学区は抜け出していた。スキルアウトが屯している辺りなのだろう、壁に大量の落書きが書き散らされている。

杏子「一体なんだってんだあいつは……」

 杏子は息絶え絶えに、どこからともなく取り出した水を一口飲み、マミに渡す。

マミ「私たちが学園都市に侵入したのがバレちゃったのかしら」

 それを受け取ってマミも水分を補給する。続いてフレンダへ。

フレンダ「それなら警備員が派遣されるってわけよ。あんなの、どう見ても表の人間じゃない。私が昔いたのと同じ、学園都市の暗部、裏の人間よ……!」

 フレンダも受け取り、飲んだところで空になる。そして空になったペットボトルを投げようとして、手を止めた。

フレンダ「とにかく、もう表だっては動けないわけよ……」

――
 浜面は今日もパシリだ。

 アイテムの面々でファミレスで屯しているが、浜面だけは席に座れず、ジュースを運ぶ機械となっていた。

服部「は、浜面っ」

 そんな浜面の下に、浜面の悪友である、服部半蔵が飛び込んで来た。

服部「助けてくれ、お前の仲間が俺たちのところで無茶苦茶やってるんだよ!」

浜面「はぁ? 仲間って……」

 そう言われて浜面はアイテムの面々の顔を見る。

浜面「誰がなんだ?」

服部「あの金髪の女だよ! フレメアの姉の!」

浜面「……は?」

 浜面は怪訝な顔をする。当然だ、フレンダは死んだわけだから、そんなことできるはずもない。
 だが次に浜面は自分の見かけたフレンダの幽霊を思い出す。

浜面「もしかして――」

麦野「ちょっとその話、聞かせてちょうだい」

 浜面が思いついたように何か言おうとして、興味を示した麦野の言葉に遮られた。

――
 フレンダ、マミ、杏子の三人は第七学区に来ていた。

 あれから一晩中、三人は駆動鎧が現れては撃退し、現れては撃退し、の繰り返しだった。

 疲労困憊。そして辿り着いた先がスキルアウトのねぐらだ。

 攻め入ってくる敵に備えて罠が張り巡らされてるそこは、何もないよりかは安全だと考え、スキルアウトたちを制圧し、一時的に奪い取ったのだ。

マミ「はあ……こんなことしたくないのだけども」

 震え上がるスキルアウトたちを見て、マミは溜息を吐く。

杏子「いいんじゃねーの。緊急事態だよ緊急事態」

 食料品を勝手に漁って食べる杏子。

フレンダ「ちょっと、私の妹に何かしたわけ!?」

スキルアウト「し、知らねえ……それは服部さんのものだから……」

 たまたまフレメアの写真を見つけたフレンダが、スキルアウトに詰め寄る。

 滅茶苦茶な状況だった。

 そして状況はさらに滅茶苦茶になる。

 ゴバァッという凄まじい音が響き、アジトの入り口が吹き飛ばされた。

スキルアウト「ひぃいっ」

杏子「ちっ……もう嗅ぎつけやがったか!」

 しかし、今までとは毛色が違った。

 見れば、ずっと三人を襲撃し続けている駆動鎧はいない。しかし、数が増えていた。

 全二十五体。モデルはHsPS-15。学園都市の技術を詰め込んだ、オールラウンジタイプだ。

マミ「あのロボットはいないみたいね」

フレンダ「数が尋常じゃないってわけよ!」

杏子「おいおい……」

フレンダ「これ、むしろ今までよりピンチなんじゃ……」

 すぐさま出口を探すが、完全に窓の外にも駆動鎧の姿が見えた。どうやら二十五体よりもさらに多いらしい。

マミ「仕方ないわね……」

 それを見て、マミが一歩踏み出した。

マミ「みんな、下が――」

 だがその後の言葉はその後の言葉は遮られる。
 真っ白い光線が轟音と共に外から入り込み、駆動鎧をまとめて数体吹き飛ばしたからだ。

「なーんか物騒なことになってるわね」

ごめん、やっぱりカイジとユルアニ終わってからまた来るわ・・・

好きにしろ俺は保守するだけだ。

●      んでっ!んでっ!んでっ! (にゃあ) にゃ~んでっ! かまって かまって 欲しいの~
┠~~~┐ イイ子じゃない時のワタシ~ カワイイとかって ありえな~い
┃   ●  ∫  ソレ!ソレ!ソレ!(にゃお)LOVE! もらって もらって ください~
┠~~~┘   非常事態が にっちじょうです~ 好きって言ったらっ ジ・エンドにゃん!
┃           わがまま、そのまま、 ねこまんま~ 上から目っ線のてんこ盛り~
┃           三毛ブチ~ トラシロ~(早くしろ!) ウェルカム 猫招き~
┃             調子にのっちゃだめ~ にゃんたら優しすぎるの、ダ・イ・キ・ラ・イ~(みゃ~ん)
┃             はっぴぃ にゅう にゃあ~ は~じめまして~
┃               キミにっ あげるっ さっいしょの オーバーラーーン!
┃               逃げるから~ 追い掛けて~ まぁるいせか~い~
┃                ラ~~ッキー ニュ~ フェ~イス
┃                 ち~~っかづいてる~ わたしだけ見つけなさい~
┃                  拾いたいなら 拾えば~~~~~~いーじゃん!

フレンダ「えっ……」

 その声を聞いた瞬間、フレンダは全身の筋肉が硬直するのがわかった。

 その声をフレンダは知っている。焼き付いた痛みと共に、記憶に焼き付いてる。

杏子「次から次へと! 今度はなんなんだよ!?」

 杏子が腰を落として臨戦態勢を整える。と、そこで顔を真っ青にして、硬直してるフレンダの姿に気がついた。

杏子「おい……フレンダ……?」

フレンダ「麦……野……」

 掠れた声で、フレンダは呟く。

 こつこつこつ、と靴音が響く。

「これは超ただ事じゃないですね」

 フレンダは次いで、知ってる声を確認した。しかし、そんなことはどうでもよかった。

「おい、フレンダ、いるのか!?」

 知ってる男の声がする。しかし、そんなことはどうでもよかった。

「まあ、こいつらを片付けるのが先でしょ」

 そして、駆動鎧の隊列に空いた穴から、五人の人間がスキルアウトのアジトに足を踏み入れた。

浜面「フレンダ……」

 浜面仕上だ。アイテムのパシリをやっていた男だ。

絹旗「フレンダ……!?」

 絹旗最愛だ。アイテムのメンバーで『窒素装甲』の能力を持つレベル4だ。

滝壺「フレンダ……」

 滝壺理后だ。アイテムのメンバーで『能力追跡』の能力を持つレベル4だ。

麦野「フレンダ……生きてた、の……?」

 麦野沈利だ。アイテムのリーダーで『原子崩し』の能力を持つレベル5で、

 フレンダ・セイヴェルンを残虐に殺した張本人だ。

フレンダ「あ……うわぁぁぁぁあああああ!!」

 その姿を認めた瞬間、フレンダは全身の金縛りが解けた。

 生存本能が逃げろと告げていた。魔法少女が入ったしつこい駆動鎧より、数十体の駆動鎧の隊列より、
 ただただ、あのレベル5が怖ろしかった。

 周囲の状況なんて、全てが吹き飛んだ。

 無作為に、無謀に、無責任に、フレンダは麦野たちのいる方向とは真逆の方向に走り出す。

 当然、その先には駆動鎧がいて、そこに突っ込めば殺されることなど目に見えていても、だ。

杏子「待てよ!」

 取り残されそうになった杏子がフレンダの腕を掴み、引き留める。

フレンダ「はなっ……離して! いや、いやぁぁぁぁあああ!」

 だが、フレンダは半狂乱で暴れ、杏子の腕を振り払う。

 腕力としては杏子の方が上回っていたが、無茶苦茶に暴れるフレンダを抑えきることはできなかった。

 フレンダはまた逃げ出す。向かう先の駆動鎧が臨戦態勢を整えた。

杏子「おいっ……!」

 一度手を振り払われた杏子が後を追おうとする。

 その脇を、青白い光線が駆け抜けた。

 光線は駆動鎧に直撃する。当然、駆動鎧が耐えられるはずもなく、真っ赤に融解。

 人間が乗っていたはずの兵器の上半身が解けて消え去った。

フレンダ「あ……」

 その光景を目にしたフレンダが、足を止める。へたり込む。

 かつて殺された瞬間が、下半身を焼き落とされた瞬間が、脳裏に過ぎった。

杏子「なんだよ……なんなんだよあんたら!」

 闖入者の五人を睨み付ける杏子。

浜面「お前達の助太刀だよ、一応な」

 睨み付けられた内の一人の男は困ったような顔をしながら後頭部を掻いて言った。

 

 レベル5の力は圧倒的だった。
 集まった駆動鎧は麦野が原子崩しを放ち、腕を振るうだけでなぎ払われる。
 機関銃の掃射が行われるも、巨大な原子崩しの壁を作るだけで通用しない。

 あっという間に、駆動鎧の軍勢は壊滅した。

杏子「すげえ……」

 圧倒的な力に、杏子は思わず感嘆の声を漏らす。

マミ「大丈夫?」

 それを気にせず、マミはフレンダに語りかけるが、フレンダは呆然としたまま反応しない。

滝壺「ねぇフレンダ」

 そのフレンダに滝壺が話しかける。ぴくり、とフレンダが反応した。

滝壺「話を聞いてほしい……」

フレンダ「…………ぃ?」

 ぼそり、とフレンダは呟いた。

フレンダ「誰も私を、殺さない……?」

 再び、フレンダは呟く。滝壺は今度は聞き取れた。

滝壺「……うん」

――
「駆動鎧部隊、撃退された模様です」

「あの数をか? 敵はたったの三人だぞ」

「それが……あの学園都市第四位が邪魔をしたようで……」

「第四位? ああ、『原子崩し』か」

「いかがいたしましょう? 第四位が敵に回るとなると、今、私たちが対抗できる戦力と言えばUMAくらいしか……」

「いや、UMAを動かす必要はない。第四位と言えば、ほら、実験中のアレがあっただろう」

「もしかして……あの特殊モデルの駆動鎧ですか?」

「それだよ、それ」

「しかし、あれはまだ問題点が多く……」

「長期駆動ができないことくらい、わかってる。近くまで来るまで運んでから動かせばいい」

「戦力と考えましても……」

「超能力者に匹敵するくらいの性能はある。体調が万全じゃない『原子崩し』ならいけるはずだ」

「了解しました」

「それとだ、人工UMA部隊は今、いくつ動かせる?」

「四……いや、三体でしょうか。一体は今朝からの使用でもうすぐ制御限界を越えるでしょう」

「いや、いい。どうせやつらを片付けられればいいんだ、人工UMA部隊なんぞ、いくらでも補給が効く。全機出せ」

「了解しました……」

「まったく……想定外には想定外が重なるものだな」

――
 再び、ファミレス。奥から、麦野、絹旗、滝壺に対面して、マミ、フレンダ、杏子の順で座っていた。

 浜面は当然、ドリンクバー係だ。

マミ「話は大体わかったわ。つまり貴方たちはアイテムという組織のメンバーで、フレンダとは元仲間だった、ってことね?」

麦野「そっちの話はにわかには信じられないわね。魔法、魔法少女、そして魔女。こんな科学の都市で、そんな荒唐無稽な話は、ね……」

杏子「あんたが殺したって言うフレンダが生きてるのが何よりの証拠だ」

 俯いたままのフレンダが杏子の言葉にビクッと反応する。

絹旗「しかし……魔法、ですか……」

マミ「やっぱり信じられないかしら?」

絹旗「正直言えば、信じがたいですね。魔法と言わないまでも、この学園都市でなら、なんらかの方法があるかもしれませんし」

杏子「少なくともだ、あたしらの調べてる案件に学園都市が関わってる可能性はでかい」

絹旗「それには確かに超同意ですね。話を聞く限り、襲撃のタイミングが超良すぎます」

浜面「でも、なんでもありの学園都市だって言っても、そんな実験あり得るのか?」

滝壺「私は聞いたことあるよ。私と同系統の能力の女の子が、そういう実験されたって」

杏子「ということは、手がかりはそいつか」

滝壺「ううん、その子はなんでも実験に参加してるだけの子だから……それに、その実験をすると、体が壊れちゃうらしいから、そんなに実験できないと思う」

麦野「まあ、確かに、そういう実験を回されるのは大抵『置き去り』だからな」

 麦野の言葉を聞いた瞬間、杏子が机を激しく叩いて立ち上がった。

杏子「『置き去り』!? おいちょっと待て、学園都市ってのはそんなことやってるのか!」

浜面「お、おい、どうしたんだよ急に……」

杏子「どうしたもこうしたもねえ、『置き去り』の実験をしてるやつを教えろ! ぶっ殺して来てやる!」

絹旗「そんなの教えたって、超どうにもなりませんよ」

 激昂する杏子に、絹旗が冷静に答えた。

杏子「そんなのやってみなくちゃわからないだろ!」

絹旗「超わかりますよ。私も、実験をされた『置き去り』ですから」

杏子「……!」

 さらりと言う絹旗に、杏子は言葉を失った。

麦野「諦めろ、それをどうにかするっていうことは、学園都市の暗部を丸々敵に回すってことだ。
    そんなことできるやつなんざ、この学園都市にはトップ以外、一人もいねえ」

杏子「くそっ」

 言われて、乱暴に座り直す杏子。

マミ「落ち着いて佐倉さん、らしくないわ」



QB「その慌てる理由を、僕にも聞かせてほしいものだね」


 そんな声が、ファミレスの窓から聞こえた。

 フレンダ、マミ、杏子、麦野、滝壺がその声に反応する。
 対して、浜面と絹旗は他五人の様子に、きょとんとする。

 そこには、うさぎのような、ねこのような、白くて赤い目をした生物、キュゥべえがいつの間にか鎮座していた。

麦野「お、おい……なんだその生物……」

絹旗「麦野……? 何を言ってるんですか?」

 絹旗が、まるで中空を見て喋っているような麦野に怪訝な目を向ける。

QB「僕はキュゥべ」

滝壺「……可愛い」

 キュゥべえが自己紹介をしようとした瞬間、滝壺がキュゥべえの耳から伸びる器官を掴んで、引っ張り上げた。

QB「ちょ……痛い、痛いよ!」

 そしてそのまま滝壺は悲鳴を上げるキュゥべえを抱きしめる。

QB「ギブ、ギブギブ! 締まってる締まってる!」

 キュゥべえが暴れるが、滝壺はしっかりとホールドし、離さない。

 その様子を見て、絹旗と浜面は唖然として表情をしていた。

マミ「離してあげてくれないかしら? その子はキュゥべえ。私の友だちなの」

 言われて、滝壺は少し不満そうにしながら、キュゥべえを解放する。

フレンダ「まあ、その、魔法少女にしてくれる、私の命の恩人ってわけね。いや、恩猫かな……」

 そこでファミレスに入ってから初めて、フレンダが口を開いた。

杏子「そして、いたいけな少女を騙すペテン師さ」

 気にくわなそうに、続けて杏子が言う。

QB「酷いな、杏子。僕は嘘を言った覚えは一度もないよ」

 キュゥべえはそう言いながらも、まるで気にしてない風で、とてとてと机の上から、マミの膝元へと逃げる。

麦野「へぇ……こいつがね……」

 麦野はマミに撫でられて、丸くなるキュゥべえを見つめる。

滝壺「うさぎ……」

 抱きしめたいのか、うずうずとした様子で滝壺もキュゥべえを見つめる。

浜面「ちょ、ちょっと待て、お前ら一体何の話をしてるんだ?」
絹旗「えっ、これ状況がわからない私が異常なんですか? 浜面と一緒なんて超嫌だ!」

 遅れて、状況を把握してない二人が一気に問い詰める。

杏子「ああそうだった、魔法少女か、素質のある人間にしか見えないんだったな」

マミ「ということは、麦野さんと滝壺さんは魔法少女の素質があるってことね」

 ふむふむ、とマミと杏子は得心したように言う。

浜面「ちゃんとわかるように説明してくれ……」

 それに浜面は困ったような声しか出せなかった。

麦野「いや、なんか白い生物がいるのよ。今は巴が抱いてる」

絹旗「はぁ……?」

 麦野も困ったように説明するが、やはり絹旗と浜面は困惑したままだ。

フレンダ「ねぇ……キュゥべえ、みんなに見えるようにできないの?」

 おずおずと、フレンダが聞く。

QB「できないことはないけど……正直、オススメしないね。
  一度これをやると珍獣扱いされて捕まえようとする人間が出てくるんだ。
  まったく失礼しちゃうよ」

杏子「なんでもいいから、話が進まないからやりやがれ」

QB「うーん……しょうがない」

 キュゥべえはそう言うと、姿を現した。
 もちろん、元から見えている五人には何の変化もないように見えたが、残りの二人の顔が驚きに染まるのは見えた。

浜面・絹旗「ち、超珍獣だあああああああ!」

QB「だから僕は珍獣じゃないってば」

 オーバー気味に驚く二人に、キュゥべえは呆れるように愚痴を吐いた。


QB「それで、君がそんなに焦っているのはどういうわけなんだい、佐倉杏子?」

杏子「……別に面白い話じゃねえぞ」

杏子「あたしが前に魔女を倒した時、その魔女に襲われてた家族がいたんだよ」

杏子「別に人助けをしようとしたわけでもないし、たまたま、魔女を倒したらその家族を助けることになっちまっただけなんだけどな」

杏子「その家族の父親と母親は命は助かっても、昏睡だった。ゆまっていう娘がいたんだけどな、そいつだけは無傷で、中々残酷だったよ」

杏子「ゆまはあたしについて回るようになってな……あたしを助けるために魔法少女になりたいとも言いだしてた」

杏子「あたしはそれを拒否してたんだけどな、ドジっちまって、結構ヤバイことになった」

杏子「それをゆまに見られちまったらしくてな、あいつはキュゥべえの言葉に乗せられて、魔法少女になっちまったんだよ」

杏子「過ぎちまったことを嘆いても仕方ねえ。あたしはゆまを連れて行くことにした」

杏子「だけど、問題はその後だったんだよ。ゆまの願いは、家族を治すこと。それで親は全快した」

杏子「でもその親が問題でな……母親がゆまを虐待してたんだよ」

杏子「なんとかしようと、あたしがお節介を焼くと、もっと面倒なことになった」

杏子「虐待を父親に密告したはいいが、父親も父親で、今度は問題の根源のゆまを学園都市に送りつけると言いだしたんだよ」

杏子「そして母親も了承して、ゆまは学園都市に送られた。でもそのまま二人はまた魔女に襲われて食われちまった」

杏子「結果、ゆまは学園都市で言う『置き去り』になっちまったんだよ」

杏子「あたしのやりにきたことは簡単だ。一つ、ゆまを探し出す。二つ、ゆまの姿を見て、辛そうなら力尽くでも連れ戻す。ただそれだけさ」

マミ「へぇ……やっぱり佐倉さんは優しいのね」

 話を聞いて、マミが杏子を見て、笑った。

杏子「勘違いすんじゃねえよ。あたしはただ、ゆまが妹にダブって見えて、ほっとけなかっただけだ」

マミ「それでも十分、優しいわ」

杏子「ふん……」

 マミに言われて、杏子はそっぽを向く。

フレンダ「妹がいたんだ」

杏子「……死んじまったけどな」

フレンダ「うっ……ごめん」

杏子「過ぎたことだ、気にすんな」

フレンダ「……決めた、私は杏子に協力する」

杏子「はぁ?」

フレンダ「私にも妹がいるんだよね。だから杏子の気持ちはわかるわけ」

杏子「別に見返りは何も出せねーぞ」

フレンダ「そんなものいらないってわけよ。
     私からすれば杏子もなんか妹っぽいしね」

杏子「なんだそりゃ……」

 憮然とする杏子を見て、フレンダはにへへ、と笑う。

麦野「その話は大体わかった」

 そこに、麦野が割って入る。

 麦野の声を聞くとフレンダはビクッと震え、縮こまった。

 そんなフレンダを見て、麦野は表情が暗くなる。

麦野「肝心の、今起きてる魔女大量発生の異変、とでも言うべきか? そいつはどうする?」

麦野「こんなの、調べるのは途方もないわよ。手がかりが襲ってくる敵しかないし」

QB「それについては大丈夫、僕にアテがあるんだ」

浜面「アテ?」

QB「マミと杏子が来るよりもっと早くからとある魔法少女に調べてもらっていてね、最近の駆動鎧の動向から、相手のしっぽを掴んだって連絡が入ったんだ」

杏子「おいおいちょっと待て、あたしらは囮だったってわけか?」

QB「まさか! たまたま調べていたところに、なぜか君たちが襲われるようになったからの僥倖だよ」

杏子「納得できないけど……まあいいか。情報が手に入るんならそれに越したことはない」

マミ「さて、この後はどうしましょうか。今はホテルすら取れないし、夜は辛いわ」

絹旗「それなら、アイテムとして働いてた時に超使ってたアジトはどうでしょう?」

フレンダ「なるほどね……確かにあそこなら私のトラップもしっかり仕掛けてあるから安心して眠れるかも」

浜面「妥当だな」

杏子「じゃあ、そこを一晩借りるわ」

 よし、っと杏子は立ち上がる。

QB「おっと、忘れるところだった」

 と、そこでキュゥべえがマミの膝元から机に上り、とてとてと麦野達がいる方に向かい、笑顔を作って言う。

QB「麦野沈利、滝壺理后。僕と契約して魔法少女に」

杏子「やめい」

 言葉は、杏子が下した拳骨で中断された。

もうゴールしてもいいよね……

五時間だけ、五時間だけ寝させてくれ・・・

保守

>>189
いくらでも寝ろ
保守はするから。

おはよう、保守ありがとう
今から続き書く

――
杏子「おいおい……何が安全だ」

 ファミレスを後にした七人は一番近いという、マンションに向かっていた。

 立地の割には値段が高すぎるということで、入居者のほとんどいないマンションで、昼間でも人気の少ない辺りだ。
 そして、だからこそ、アイテム面々は好き勝手やっていたとのこと。

 だが、そのマンションに着いて、全員が全員、苦々しい顔をした。

 マンションの前に、人影が五人分見えた。二足歩行の人の形をしてたが、それは大きく人からかけ離れていた。

 四体はずんぐりとした人型で、黒い装甲に覆われている。
 右手に当たる部分にはそれぞれ大型の機関銃が握られている。

 深夜、フレンダたちを襲った、魔法少女が入った駆動鎧と同型だった。

 しかも、それは四体。

 さらにもう一体、四体の駆動鎧を背後に控えさせた、今まで見なかったような、真っ白なライダースーツにフルフェイスを被ったような、すっきりとした風貌の駆動鎧もいた。
 こちらも手に銃を持っているが、大きな機関銃ではない。一般人でも片手で持てるような拳銃サイズ。
 しかし外観は従来の拳銃よりかけ離れていて、まるでSF映画に出てくるレーザー銃のような形をしていた。また、それはケーブルが真っ白の駆動鎧に向けて伸び、接続されている。

「よぉ、わざわざやってきてくれてゴクロウサン」

 先頭の白い駆動鎧が皮肉たっぷりに言う。男の声。どうやらリーダー格のようだ。

浜面「くそっ……回り込まれてたのか!?」

麦野「でもどういうことだ……仮にもアジトだ、しっかりと情報管理してれば、割れるわけがない」

 能力をすぐにでも発動できるよう、麦野は演算を開始する。

 絹旗が、情報管理と聞いて、ちらりとフレンダの方を見る。

フレンダ「わ、私は違うってわけよ!」

 その視線に焦って、フレンダは必死に弁解する。

「いやいや、そんなにぞろぞろと連れ立ってたら、嫌でも目立つだろ」

 馬鹿にするような口調でライダースーツの男は言う。

絹旗「それを超重々承知で、だからこそ二手に分かれて行動したはずですが」

 手近にあった標識を引っこ抜きながら、絹旗が否定した。

「ああ、そうだったのか。まあ、今のは嘘だ。単純な話、上にはお前達の動向はお見通しなんだとよ」

麦野「チッ……どこまでの上層部がこの件に関わってるんだよ……」

 事態の最悪さを理解して、麦野は舌打ち、そして歯ぎしりする。

 アイテムのアジトを知り、さらに、恐らく学園都市の衛星を使って七人を監視していたとなれば、かなりの権限を持った人間が黒幕ということになる。

 それも、かつてのアイテム以上、それを指示していた電話の女以上の。

「そんなことはどうでもいいんだ。こっちの命令は、単純。
 最悪死体になってもいいから『原子崩し』と『能力追跡』を回収し、残りを消せ、それだけだからな」

杏子「この戦力相手に、できると思ってるのか?」

「まあ、できるだろ。『原子崩し』さえなんとかすればだけどな」

麦野「私も甘く見られたもんね」

「来いよ『原子崩し』。こっちの最大戦力は俺だ。お互い最大戦力同士をぶつけてフェアにいこうじゃねえか」

麦野「ほざいてろ」

 麦野が人差し指をライダースーツの男に向ける。そこからいつも通り、能力を発動すれば貫いて終わり、のはずだ。

 しかしそれよりも早く、銃弾がライダースーツの男に到達する。

 ライダースーツの男はまるで銃弾が見えてるかのように易々と避けた。

マミ「私たちも甘く見られすぎだわ」

 銃弾を放ったのはもちろんマミ。いつの間にか変身を完了させたマミが銃を構えていた。
 見れば、フレンダ、杏子も同じく変身を完了させている。

マミ「銃使い同士、仲良くするっていうのはどうかしら?」

 にこりと笑って、麦野より一歩前に立つマミ。

マミ『後ろのロボットさん、装甲が厚いし、銃が使えないとすぐに接近戦をしてくるから苦手なのよね。
   適材適所ってことでいきましょ』

 同時に、六人の脳内に直接響くようなマミの声が聞こえた。

浜面「これは……!?」

マミ『テレパシーよ。できれば、顔に出さないようにしてほしかったけど』

麦野『魔法少女ってのは『精神感応』(テレパス)までできるのか』

マミ『これはキュゥべえが仲介に立っていてくれるお陰だけどね』

 マミは六人にウィンクを飛ばす。

「はぁ……まあいいか。人工UMA一体に苦戦する雑魚なら五分もかからないだろ。『原子崩し』はそれからでも遅くない」

マミ「残念ね、三分もかからないと思うわ」

「さて、起動、と」

 マミの言葉を無視し、ライダースーツの男は銃の引き金を一度引く。

 すると、モーターの駆動音が鳴り出し、男の被るヘルメットの顔面部に文字が現れた。

 その文字を見た瞬間、浜面は驚愕する。


 ――Equ.Meltdowner。ヘルメットの顔面部に、確かに、はっきりと、青色のLEDライトでそう書かれているのを浜面は確認した。

浜面「巴気をつけろ! そいつ、かなりヤバい!」

 無作為な動作でライダースーツの男はマミに銃口を向け、引き金を引く。

 その銃口の方向を見極めたマミが、発射される前に回避行動を取り、それが正解だと悟った。

 真っ白な、光線が放たれた。

 じゅわっという、水分が蒸発する音と共に、アスファルトが真っ赤に融解する。

 滝壺は、麦野は、絹旗は、フレンダは、浜面は、知っていた。それが何であるか、ヘルメットの文字と、現象から、すぐに予想がついた。

麦野「どういうことだおい……私の能力のパクリじゃねえか!」

フレンダ「マミ……!」

 事態を危険視したフレンダがマミの下へ駆け寄ろうとする。が、それは叶わない。

 ずんぐりとした巨体からは想像もできないほど俊敏な動きで、四体の真っ黒な駆動鎧が立ち塞がったからだ。

フレンダ「くっ……マミ、気をつけて、それはどんなものも貫通する絶対の攻撃ってわけよ!」

 すぐに駆けつけられないと判断したフレンダは、マミに警告する。

 その予想は当たっていたらしく、再び銃口を向けられて、マミが作ったリボンの壁は易々と撃ち抜かれた。

 フレンダの警告が届いたのか、マミは壁が破られる前に回避行動を取り、光線を避ける。間一髪だ。

「まあ、単発じゃ当たらないよな」

 そう言って、ライダースーツの男は何かを投げる。カードだ。

麦野「拡散支援半導体……!」

 続いて、ライダースーツの男はそれを原子崩しの銃で撃ち抜いた。

 カードに光線が当たった瞬間、光線は幾十にも枝分かれし、豪雨のようにマミを遅う。

フレンダ「マ――」

 枝分かれしたと言っても、一発一発が一撃必殺の絶対攻撃だ。最悪の事態を想定したフレンダがマミの名前を叫ぼうとする。

 しかし、言葉は発せられない。マミに気を取られたところを真っ黒な駆動鎧の蹴りが容赦なく襲いかかったからだ。

 轟ッ!! という凄まじい音が響き、フレンダの体は玩具の人形のように空中に投げ捨てられる。

麦野「フレンダッ!!」

 麦野も吹き飛ばされたフレンダに意識を移動させてしまう。

 当然、それを許す敵ではない。

 気がつけば、麦野の眼前に巨大な機関銃を構えた駆動鎧が迫っていた。しかし、機関銃の引き金は引かれない。

 単純な打撃で、鈍器として、駆動鎧は機関銃を麦野に、横殴りに叩き付けた。

 麦野は魔法少女ではなく、人間だ。レベル5と言っても、体は人間だ。
 そんなものを食らえば、一溜まりもなかっただろう。

杏子「あぶねえ!」

 それを間一髪、杏子が押し倒し、事なきを得る。

 フルスイングを空振った駆動鎧だが、体制は一切崩さない。そのまま足を上げて、二人を踏みつけようとする。

 杏子はそれよりも早く麦野を抱えて地面を転がる。駆動鎧から距離を僅かだが取ると、すぐに立ち上がり、麦野を抱えて距離を取る。

杏子「全員しっかりしやがれ! あたしらが安全圏ってわけじゃないんだぞ!」

 杏子が叱咤する。

浜面「でもフレンダが……!」

杏子「フレンダなら大丈夫だ! あんな程度で死ぬわけがない!」

絹旗「浜面、後ろ!」

 三体目。浜面の背後にいつの間にか駆動鎧が機関銃を構えていた。

 銃口が浜面に向けられている。浜面と一緒にいる滝壺にも、だ。今度は機関銃の正当な使い方がされるようだった。

フレンダ「その通りってわけよ!」

 だが、引き金は引かれない。駆動鎧の横っ腹に小型ミサイルが直撃し、駆動鎧は炎に包まれる。
 ミサイルは、フレンダの放ったものだ。

浜面「フレンダ!」

 見ればフレンダはあれだけ激しく吹き飛ばされたというのに、傷一つない、無傷のままだ。

麦野「くそっ……無茶苦茶だ!」

 浜面は自分の実力の無さを理解しつつ、滝壺を守るため。
 麦野と杏子とフレンダは効率よく防壁を張るため。
 絹旗は取り残されないため。

 浜面と滝壺、麦野と杏子、絹旗、そしてフレンダで散開していた六人は一度一箇所に集まる。

杏子「こいつらの内の一体は厄介だぞ……いくらぶっ壊しても魔法で回復してきやがるからな」

 六人が集まったことにより狙い所だと判断されたのか、三体の駆動鎧が機関銃を構え、六人に向ける。

麦野「どういうことだ?」

 そして、一斉掃射。鼓膜が壊れるかのような、爆撃のような音が鳴り響く。

杏子「詳細はわからねえ、でも敵に魔法少女がいるってことは確かだ!」

 それに対応して、杏子とフレンダが結界を張る。二重に張られた結界は銃弾を一切通さない。

浜面「俺たちもだけど、巴は大丈夫なのか!?」

杏子「ああ、マミのことなら心配いらねえよ。悔しいけどな」

フレンダ「で、でも……」

杏子「マミはな、お人好しすぎるんだよ。
   馬鹿正直に正義の味方なんてやっちゃってさ、グリーフシードも落とさない使い魔までご丁寧にお掃除してくれるんだ」

フレンダ「それなら尚更余裕がなくてヤバイんじゃないの!?」

杏子「逆だよ逆。使い魔まで倒す、『余裕』があるんだよ。つまりいつも力をセーブして戦ってるんだ。
   それであたしら現実主義のベテラン魔法少女に襲われても、撃退する強さがある」

 掃射の音が止む。

杏子「認めざるを得ねえよ、マミの才能は。そして、今のマミはこの街に溢れる魔女のお陰でグリーフシードがたんまりある」

 結界越しに見れば、駆動鎧は四体に戻っていた。フレンダがミサイルを直撃させたらしき駆動鎧は仄かに光に包まれ、修復していっている。

杏子「今のマミは、下手な軍隊より強いんじゃないか?」

 そして、突貫。速度は以前戦った時よりもさらに速い。

杏子「ま、他人の心配をするより、今は自分らのやることを片付けるぞ」

 多大な質量の物体が、高速で結界に激突しようとする。
 速度が上がれば上がるほど、威力は爆発的に膨れあがる。二重の結界でも保つかどうか。

 それを理解しているフレンダと杏子が再び散開しようとして、

麦野「そういうわけ、ね!」

 その心配がなくなった。飛び込んで来た駆動鎧を麦野の原子崩しが吹き飛ばしたからだ。

麦野「伏せてろッ」

 続いて、両手から、そして義眼に当たる瞳から原子崩しを発射する。

 それぞれ、残り三体の駆動鎧を正確無比に狙ったものだ。

 原子崩しは電子だ。つまり、攻撃速度は秒速百五十キロメートルだ。

 当然、避けられるはずもない。それで三体は終わる、と麦野は思っていた。

麦野「なっ!?」

 だが、麦野の予想は大きく外れる。

 それぞれ三体の駆動鎧の前に、結界が出現する。

 原子崩しは結界に突き刺さり、弾かれた。

 原子崩しは曖昧な電子のまま発射する、干渉不可の攻撃だ。それはあらゆるものを貫く矛にもなるし、あらゆるものを防ぐ盾にもなる。

 物理的に考えたなら、だ。

 物理的にはあり得ない現象がそこで起きていた。

 その現象がどういうことかを知っている二人が、驚きの表情を顔に貼り付ける。

杏子「なん……だと……?」

フレンダ「こいつら全員が全員、魔法少女!?」

 すると三体は、どこからともなく、手元に何かを生み出す。

 杖だ。細長い棒に、先端に球体状のものがついている。三体が揃いも揃って、それを持っていた。

杏子「あれは……!?」

 その杖を見て、杏子はさらに驚愕する。

 駆動鎧はそれを振りかぶった。

 ドゴン、という低い音がした。

 見えない三発の一撃が、杏子とフレンダが作った結界を叩く。それだけで、結界は砕けて崩壊した。

フレンダ「なんなのあれ!」

杏子「衝撃波だ!」

 衝撃波。音速を超えて空気中を伝播する、振動の波。不可視で高速の攻撃。

麦野「また厄介なものがぞろぞろと……!」

 駆動鎧たちは再び振りかぶる。二重の結界を容易に破るほどの威力だ、それを食らっては一溜まりもない。

麦野「全員しっかりと掴まれ!」

 意味を考えるより早く、五人は麦野に捕まった。そして麦野は両腕から原子崩しを噴射し、ジェット噴射のように五人を乗せて飛ぶ。

 麦野たちがいた箇所に衝撃波がぶつかり合い、大音量のパァンという乾いた音が六人の鼓膜を叩いた。

ふと思ったが魔術だろうが魔法だろうが
打ち消してしまう上条さんがやはり最強か

ただ時間停止+現代武器のほむほむには勝てないか?

絹旗「超どうなってるんですか!? 一体が魔法少女じゃなかったんですか!?」

杏子「そんなのこっちが聞きたいくらいだ!」

 安全圏に移動しても、一息吐く時間すらない。

 駆動鎧たちはすぐに追撃せんと、こちらを向いていた。

滝壺「何……あれ」

 だが、滝壺が指さした方角を見て、五人は三体の駆動鎧のことが意識の外へと消えた。

 それは、麦野が原子崩しで吹き飛ばした駆動鎧だ。それが、どうにも様子がおかしい。

 全身が熱と衝撃で変形しているのに、一向に修復する気配がなかった。

 それどころか、内側から壊すかのように、さらに変形して行っている。

 変化は、次の瞬間に起きた。

 凄まじい突風が吹き荒れて、麦野たちの方向に向かおうとした駆動鎧たちが吹き飛ばされる。

 変形した駆動鎧が、操り人形のように脱力して宙を浮く。そして、その首の後ろに当たる部分から、何かが飛び出した。

 ソウルジェムだ。そのソウルジェムは内側から割れて、すぐに形を失う。そうして、

杏子・フレンダ「なんだ……これ……」

 魔女が出現した。

>>256
時間停止は効かないが現代兵器は効くからほむほむ有利
というか上条さんは駆動鎧が出まくってるこれで役に立たん

>>259
見りゃ分かるだろ
ちょっと改変されてるが、この前古畑スレで出来たばっかりだ

――
マミ「意外だったわ、そんなこともできるのね」

 拡散支援半導体による攻撃で、アスファルトはマグマのように、どろどろに溶けていた。

 しかし、マミはそこにはいない。電子の雨が到達するよりも早く、動き出していたのだ。

「なんだ、速いんだな、アンタ」

マミ「それほどでもないわ」

 ステップを踏むように、円を描くように、マミは距離を取りながら素早い速度でライダースーツの男の背後に回る。

マミ「さて、お返し」

 次にマミの背後に大量のマスケット銃が出現した。

 数十、なんてレベルではない。百は優に超えていた。

 それらはまるで見えない手に引き金を引かれたように、ひとりでに発砲する。

 弾幕。雨と言うのも生ぬるい。弾丸の台風がライダースーツの男を襲う。

「そんな豆鉄砲が通用すると思ってるのか」

 それに対し、ライダースーツの男は両手で原子崩しの銃を構え、発射する。

 極太の、真っ白な光線が発生し、弾幕を吹き飛ばす。

 百を超えた弾丸は一発の弾丸で撃ち伏せられた。

>>260
>>72なんかもあるし(笑)

マミ「応用が利くのね、それ」

 声はさらに別の方向から聞こえた。
 駆動鎧のマインドサポートで感覚を強化されているライダースーツの男だったが、それでも見失うほどの速度だった。

マミ「これはどうかしら?」

 声の方を向けば、マミは巨大な銃を構えていた。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 大砲のような銃声と共に、巨大な弾丸が放たれる。

「無駄だって言ってるだろ?」

 ライダースーツの男は一切慌てない。原子崩しの銃をマミの方向に向けると、銃口から薄い膜のようなものが広がった。

「これは学園都市第四位、『原子崩し』の能力を可能な限り再現し、装備することを目的に作られた駆動鎧だ」

 弾丸は原子崩しの膜に触れると、ジュッという音を立てて、蒸発する。

「干渉不可の最強の矛で、最強の盾だ。そんな下手な攻撃が通ると思ったら大間違いだぞ」

 マミは、それでも余裕を崩さない。

マミ「そうな、こんな攻撃でも、わざわざ防ぐってことは、通ればダメージがあるのね」

 パチン、とマミが指を鳴らす。すると、先ほどの巨大な銃が現れた。

マミ「しかも、わざわざ防いだってことはこのくらいの攻撃になると、貫ける自信がないか、もしくはそれ以外の理由があるか、で吹き飛ばしながら攻撃ができないってことよね?」

 しかし数は一つではない。百を超えていた。いや、もっと多かった。

「んな……!?」

 先ほどの弾幕を作り出したマスケット銃群すら越える、圧倒的な数の、巨大な銃身がマミの背後に出現していた。

マミ「さて、私の下手な鉄砲でも、数を撃てばどうなるのかしらね?」

 そして、引き金が引かれる。

マミ「ティロ・フィナーレ・フルオート!」

 爆撃が、降り注いだ。

>>264訂正
 マミは、それでも余裕を崩さない。

マミ「そうね、こんな攻撃でも、わざわざ防ぐってことは、通ればダメージがあるのね」

 パチン、とマミが指を鳴らす。すると、先ほどの巨大な銃が現れた。

マミ「しかも、わざわざ防いだってことはこのくらいの攻撃になると、貫ける自信がないか、もしくはそれ以外の理由があるか、で吹き飛ばしながら攻撃ができないってことよね?」

 しかし数は一つではない。百を超えていた。いや、もっと多かった。

「んな……!?」

 先ほどの弾幕を作り出したマスケット銃群すら越える、圧倒的な数の、巨大な銃身がマミの背後に出現していた。

マミ「さて、私の下手な鉄砲でも、数を撃てばどうなるのかしらね?」

 そして、引き金が引かれる。

マミ「ティロ・フィナーレ・フルオート!」

 爆撃が、降り注いだ。

「くそが!」

 ライダースーツの男は即座に原子崩しの膜を発生させる。

 もちろん、原子崩しは干渉不可なので、それだけで弾丸は届かなくなる。

 周囲に着弾した際の爆風が膜に守られていない方向からライダースーツの男の体を叩くが、駆動鎧で強化された肉体はその程度では動じない。

 だが、ライダースーツの男は、焦っていた。

 このEqu.Meltdownerは未完成だ。大きな欠陥があった。

 生み出すエネルギーに対して、廃熱が間に合わないのである。

 駆動鎧の内部は通常、使うだけでもすぐに蒸し焼き状態になり、人間の体には耐えられない。

 だからこそ、『発火能力』のレベル3であり、熱に耐性のあるこの男こそがギリギリ使えるのだ。

 しかし、いくら中身の人間が熱に耐性があったからと言って、機械の部品の耐性が上がるわけではない。

 長時間の連続使用は御法度だった。だからこそ、拮抗するであろう攻撃に対しては防御に最適化されたプログラムが優先される。

 結局、マミがティロ・フィナーレの爆撃を叩き付けた時点で、勝敗は決していた。

 マミの爆撃は止むことがなかった。

 ほどなくして、ライダースーツの男の視界に、駆動鎧の内部のディスプレイに、大量の赤い文字が表示される。

 ERROR! ERROR! ERROR! 即座に能力の使用を停止してください。

 そんなことを言われても、ライダースーツの男は防御を停止するわけにはいかない。

 あまりの熱に許容限界を超えた原子崩しの銃はオーバーヒートを起こし、爆発する前に安全装置が働き、強制終了となる。

 原子崩しの膜が消える。絶対的な盾が消える。

「ガァッ!!」

 ライダースーツの男は爆撃に直に晒され、撃ち抜かれ、撃ち抜かれ、撃ち抜かれ。吹き飛ばされた。

 手応えを確認して、マミは爆撃を終了する。

マミ「ふぅ……三分なんてとんでもなかったわね。二分もかからなかったわ」

飯を食ってくる

飯食ってきた
続き書く

――
 それは、巨大な本だった。

 パラパラパラパラと勢いよくページが捲られ、あまりに乱暴にページを捲ったせいで、ページが千切れ飛ぶ。

 千切れ飛んだページが麦野達の下へ飛来する。

 そこには、子供の書いた絵が描かれていた。

 それは一目でわかった。槍を持った杏子の絵だ。

杏子「あたしだと……?」

 次の瞬間、絵の中の杏子が笑う。動く。

 多節棍にした槍を振りかぶり、思い切り振ると、槍の穂先が絵の中から飛び出してくる。

 子供が書いた曖昧な線のままの姿をした槍が、麦野達に襲いかかった。

 麦野、滝壺、フレンダ、杏子は避ける。

 だが、浜面と絹旗は何が起こったのかわからない風で、立ち尽くしていた。

麦野「何してんだ避けろ!」

絹旗「は――」

 槍が直撃し、絹旗がノーバウンドで吹き飛ばされる。

浜面「絹旗ッ!?」

 突然吹き飛ばされた絹旗を見て、浜面は素っ頓狂な声を上げた。

フレンダ「このっ……!」

 フレンダはナイフを生み出し、飛んできた杏子が描かれた紙の一ページに投げつける。

 ビリッという破ける音と共にページは真っ二つになり、空中に溶けるようにして消えた。

杏子「そうか、魔女は最愛と仕上には見えねえ!」

 鳥が羽ばたくような音が響く。見れば、十一のページが中空に浮かんでいた。

 鬼のような形相をした麦野、三日月のような口で笑う杏子、目を丸くして驚いた顔のマミ、泣きそうな顔のフレンダ、
 造形が滅茶苦茶な駆動鎧、卑しい顔をしたランドセルを背負った少女、残虐な顔をしたイルカのぬいぐるみを抱えた少女、
 大きな謎の仮面を被った人型、青を基調としたフリフリのスカートに蓮をかたどったような杖を持った少女、
 うつろな目をしてゴーグルを額にかけた茶髪の少女、そしてネコのような耳をした帽子を被った少女。

麦野「こいつら、もしかして……!?」

 麦野の脳裏に、最悪の予想が過ぎる。

 果たして、それは当たっていた。

 麦野の絵が人差し指を向ける。そして、次の瞬間、その指から光線が放たれた。

 それは紙から外へ、二次元から三次元へと出現し、杏子を貫こうとする。

 正真正銘の、原子崩しの一撃だった。

 だがそれは届かない。麦野という存在がいる限り、電子に直接干渉し、曲げることができるからだ。

麦野「気をつけろ、絵に描かれたやつと同じ能力を使ってくるぞ!」

 そう言って、麦野は原子崩しを発射。自分の絵を貫く。

 どうやら、こちらの攻撃に受動的に反撃することはできないらしい。

 あくまで、攻撃ができるだけのようだ、と麦野は解釈した。

フレンダ「でもなんで魔女がこんなところに!?」

 仮面を被った人型から伸びた羽を避け、ナイフを突き刺してフレンダは言う。

杏子「わからねえ! なんなんだよホントになんなんだよこれはよ!」

 槍を多節棍モードにし、造形が滅茶苦茶な駆動鎧の絵を切り裂く杏子。

 その時、背後から連続した爆音が響いた。残り三体の駆動鎧たちの機関銃だ。

 間一髪、麦野が原子崩しの壁を発生させ、銃弾から全員を守る。

麦野「前門の虎後門の狼、ってか? クソが!」

 イルカのぬいぐるみを抱えた少女から赤子のような手が伸びる。数えるのが億劫なほど、数百だ。

 凄まじい爆風が巻き起こり、麦野、フレンダ、杏子、浜面、滝壺を吹き飛ばす。

浜面「滝壺っ!」

 吹き飛ばされる瞬間、浜面が滝壺を抱きかかえる。

 結果、麦野、杏子、フレンダは散り散りに吹き飛ばされ、浜面と滝壺だけが同じ場所に留まった。

浜面「なんだ、何が起きてるんだ!?」

滝壺「魔女が出てきた」

 淡々と、しかし熱っぽく滝壺は言う。

浜面「魔女って」

滝壺「はまづら、右に逃げて!」

 浜面が聞き返すより早く、滝壺は警告する。
 浜面は滝壺の指示に従い、右へと転がる。すると今まで二人が倒れてた場所で爆発が巻き起こった。

 その爆風に体を打たれ、さらに浜面と滝壺は転がる。

浜面「くそっ……麦野たちは!?」

 見渡すと、状況は最悪だった。麦野も、フレンダも、杏子も。駆動鎧と交戦していた。
 こちらには来れそうにはない。

 つまり、魔女と戦えるのは、浜面と滝壺だけだった。

浜面「ちくしょう……やるしか、ねえ!」

滝壺「やるって……どうやって?」

浜面「滝壺は見えてるんだよな? それならまだやりようはある」

 滝壺を支えながら、立ち上がる浜面。

浜面「まずは絹旗を拾いに行く。絹旗ならあれくらいのダメージはどうってことないはずだ」

滝壺「上から来る!」

 滝壺に言われて浜面は前方にダイブ。遅れて、バチィっという激しい音がした。電撃の音だ。

浜面「ちくしょう、どんな敵なんだよこいつは」

滝壺「本体は本の形をしてる。紙のページを飛ばしてきて、ページに色んな人の絵が描かれてる。その描かれた人の能力で攻撃してくるみたい」

浜面「そんなのありかよ……いや、本? 電撃……いける!」

滝壺「伏せて!」

 滝壺の言葉通り、浜面は伏せる。その上を銃弾が飛び去っていった。

浜面「まずは絹旗の下までどうやって辿り着くか……だな」



QB『そんな危険な賭けより、もっといい方法があるよ』


 浜面が行動に移そうとしたその時、二人の脳内に、言葉が響いた。

 辺りを見渡すと、遥か遠く、浜面たちが目指していたマンションの一室の、ベランダにそれはいた。

 キュゥべえだ。

滝壺『いい方法?』

 テレパシーで滝壺が聞き返す。

QB『簡単さ。滝壺理后、君が魔法少女になって、魔女と戦えばいいんだよ』

浜面「なっ……」

QB『願いはそうだね、そこの浜面仕上を助けたい、とかがいいんじゃないかな。
  実は困ったことに、回復系の魔法を習得する願いじゃないと、魔法を使う度に体がダメージを受けて、まともに戦えないんだ』

浜面『ふざけるな! 魔法少女になったら、一生、戦い続けることになるんだろ!?』

QB『うーん、でも、このままだと君たちは確実に死んでしまうよ? 普通の人間が魔女に勝てるわけないからね』

滝壺『はまづらのためなら……私は』

浜面「やめてくれ滝壺! せっかく助けたのに、もう自由になったのに、もうやめてくれ……」

滝壺「はまづら……」

QB『やれやれ、君にまでテレパシーを繋いだのは失敗だったかな』

 そこで、浜面は光明を得たのを感じた。

浜面『おいキュゥべえ、お前、テレパシーを仲介することができるんだったよな?
   俺から、絹旗へ、仲介させることはできるか?』

QB『できないことはないね。でもそんなことして何の意味があるんだい? 絹旗最愛も魔女は見えないよ?』

浜面『見えなくても、やりようはいくらでもある。繋いでくれ』

QB『やれやれ、仕方ないね。それが夢物語だと悟って、契約したくなったらいつでも言ってね』

 ぶつり、と何かが繋がった感覚が浜面の脳神経を駆け抜ける。

浜面『これがテレパシーか……』

絹旗『は、浜面!?』

浜面『お、繋がった! 大丈夫か絹旗!?』

絹旗『超問題はありませんね。これは、テレパスですか?』

浜面『キュゥべえに手伝ってもらって、魔法少女のテレパシーを繋いでる。それよりだ、無事ならよかった。すぐに動けるか?』

絹旗『超行けますよ』

浜面『よし、じゃあまずあのぶっ壊れた駆動鎧のところまで行ってくれ。続きはまた連絡する』

浜面「滝壺、その紙のページってのは残り何枚だ?」

滝壺「八枚みたい」

浜面「さっき電撃を撃ってきたのはどのページかわかるか?」

滝壺「うんわかる。前に戦ったことある人に似てる」

浜面「よし、完璧だ。――さて、人間の底力、見せてやろうじゃねえか」

――
麦野「オラァ!」

 俊敏に動く駆動鎧が、麦野に襲いかかる。

 原子崩しの弱点である、能力があまりに強力なために狙いが難しいというのを完璧に把握している動きだった。

 だが、駆動鎧は想定外の反撃を受ける。

 肉弾戦を麦野に挑んだところ、なんと、腕を掴まれて投げ飛ばされたのだった。

麦野「はっ! 私が能力一辺倒だと思ったか!」

 自身の大きな質量と相まって、激しく地面に叩き付けられる駆動鎧。

 そんな駆動鎧に麦野は容赦なく原子崩しを浴びせる。

 上半身が溶け、中の人間が見えるが、それでも瞬時に回復。そこをまた原子崩しで攻撃。回復。

 それを数回繰り返す内に、駆動鎧は動かなくなる。

麦野「その装甲と機動力、火力で混戦は得意みたいだけどな、ちょっと機械に乗ったくらいでレベル5とのタイマン勝負に勝てたら苦労しないんだよ」

――
 フレンダがナイフを投げる。装甲に突き刺さることもなく、それは弾かれる。

 どう考えても、火力不足でしかなかった。

 駆動鎧が杖を振り回す。すると衝撃波が発生し、不可視の攻撃がフレンダに迫る。

フレンダ「うわわわわわ」

 杖が振られようとしているのを確認した時点でフレンダは大きくジャンプする。足元すれすれで衝撃波が通り抜け、フレンダは安堵した。

 だが、それも束の間。すぐに空中では逃げ場がないことを理解した駆動鎧が衝撃波の追撃を行おうとする。

フレンダ「にゃろっ!」

 焦って、ナイフを投げる。しかしそれは見当違いの方向に突き進み、駆動鎧は意に介さない。

フレンダ「ちょ、ちょ、たんまー!」

 涙目になって手をバツの形にするフレンダ。しかし駆動鎧は容赦しない。杖を振り下ろす――

フレンダ「……なんてね」

 ――瞬間に、足元が吹き飛んだ。 

フレンダ「うーん、残念。私相手にこんなに時間をかけちゃったのは失敗よね」

 見れば、駆動鎧の足元にテープのようなものが張り巡らされていた。そして、そのテープ上に、先ほど投げたナイフが落下している。

フレンダ「結局、私の本命はこっちなわけよ。それ、ドアとかを焼き切るツールなんだけど、その上に乗ってれば足を吹っ飛ばすくらいの威力は出るってわけ」

 両足が吹き飛び、駆動鎧は仰向けに倒れる。すぐさま、それを修復しようと、足のあった辺りが光に包まれる、が、フレンダが無造作に投げた爆弾で駆動鎧はさらに大破する。

フレンダ「アンタで一番厄介だったのはその機動力なのよね。だからまずはそいつを削がせてもらったわけ。
     さてと、そっちがいくらでも修復できても、こっちの弾数もたくさんあるわけだし、どっちが尽きるのか根性比べでもしよっか」


 結局、この不公平な根性比べは、フレンダが勝ったわけであった。

――
 駆動鎧が衝撃波を放つ。

 しかし杏子は軌道を完璧に見切り、当たらない。

 駆動鎧が機関銃を発砲する。

 しかし杏子は素早い動きで照準を合わせさせず、当たらない。

 駆動鎧が肉弾戦を挑む。

 しかし杏子は完璧に動きに息を合わせて、当たらない。

杏子「あんたの戦法、ロボットみたいに同じようなものばっかりなんだよ」

 杏子の槍が多節棍になり、駆動鎧は鎖で雁字搦めにされた。

杏子「何度も何度も。そうやって同じ戦い方してれば誰でも攻略できちゃうっての」

 そうして駆動鎧は沈黙した。

杏子「さて、質問に答えてもらおうか。
   あんたらは何なんだ?
   どうして魔法少女がこんなことをする?
   どうして全員が同じ魔法を使う?
   どうして、その杖と、攻撃方法を使う?」

 駆動鎧は答えない。

杏子「まあ、いいさ。中身を引っ張り出して聞いてやるよ」

――
滝壺「はまづら、左、そこ」

浜面「これで三枚目!」

 浜面と滝壺は、紙のページ、本の魔女の使い魔を駆逐していた。

滝壺「また左。そこ」

浜面「よし、四枚目!」

 この使い魔は確かに攻撃の威力は怖ろしいものだったが、こちらの攻撃に対しては無防備で、しかも拳銃の銃弾一発で倒れてしまうほど、脆いものだった。

滝壺「次は真上」

浜面「五枚目!」

 攻撃も単調で、ワンパターンの攻撃を浜面と滝壺のいる位置を狙って放つだけ。

滝壺「右、もっと右。うんそこ」

浜面「六枚目!」

 使い魔の攻略は、容易だった。

滝壺「っ! 魔女の本体が来た! はまづら逃げて!」

浜面「やべえ!」

 だが、それは使い魔だけの話。本体の魔女は銃の照準を合わせようにもすぐに逃げ、とても当てられるものではなかった。

 しかも間違って使い魔を全て倒してしまったところ、再び十一体の使い魔を呼び出してくることも判明している。

 また、使い魔を倒すと、この魔女にページの絵が戻るらしく、使い魔を倒せば倒すほど、魔女が強大な力を使うことになっていた。

浜面「もう六体も倒しちまってるところに来やがったか!」

 魔女のページが開く。マミと、青い服の少女のページだ。

 巨大な銃身が現れる。蓮を象った杖が振るわれる。

 浜面の逃げる先を予測した攻撃が襲いかかった。

滝壺「はまづらっ!」

 それに気がついた滝壺が浜面を抱きしめて、静止する。

 二つの攻撃は浜面の一歩先に降り注ぎ、大爆発を起こした。

 爆風に身を叩かれて、二人の体が宙を舞う。

 背中から地面に叩き付けられて、浜面は肺の中の空気を残らず吐き出した。

浜面「ガッ――た、滝壺!」

 叩き付けられて、すぐに浜面は滝壺の姿を確認する。

 滝壺も同じく地面に叩き付けられ、ジャージは地面に削られて穴が空き、見るからに痛々しい姿だった。

浜面「くそっ……滝壺、滝壺っ!」

 すぐに滝壺の下へと駆け寄る浜面。

滝壺「ん……大丈夫」

 幸い、大事には至ってないらしい。滝壺はすぐに浜面の声に応えた。

浜面「よかった……魔女はどこにいる?」

 言われて、滝壺は周囲を見渡す。

滝壺「さっきのでかなり距離が空いたみた――はまづら左に逃げて!」

 滝壺の言葉に即座に反応し、浜面は滝壺を抱えて左に転がる。

 遅れて、先ほどまでの場所に原子崩しの光線が降り注いだ。

滝壺「使い魔に囲まれてる。三体いる。頭の上!」

浜面「もう追いついたのかくそっ!」

 言われて、浜面は真上に発砲する。銃弾は使い魔に当たった。

保守

絹旗『浜面、ぶっ壊れた駆動鎧のところに超辿り着きましたよ!』

 その時、絹旗の声が脳内に直接響いた。

浜面『よし、来たか! 機関銃はまだ使えそうか!?』

絹旗『なんとかいけますね』

浜面『その駆動鎧、絹旗の能力で装甲剥がせそうか?』

絹旗『それは余裕ですね。麦野のお陰でぐちゃぐちゃですし』

浜面『よし! まずは装甲をぶっ壊して、中の人間を取り出してくれ。そしたら人間が乗る部分を露出させておいてくれ』

絹旗『超わかりました』

浜面『それが終わったら機関銃と持てるだけの弾を持ってそこを脱出してくれ』

絹旗『超了解です』

滝壺「はまづら、右!」

浜面「おう!」

 言われて、浜面は発砲する。八体目。

浜面「滝壺、とっても言いたくないが、頼みがある」

滝壺「頼み?」

 きょとんとした顔で滝壺が聞き返す。

浜面「まず、絹旗と合流してくれ。絹旗は機関銃を持ってる。
   あいつの能力を使えば、使えないこともないはずだから、魔女の位置を教えてやってくれ」

滝壺「でも、それを当てられるとは思えない」

浜面「当てなくてもいいんだ。ただの威嚇射撃でいい。それで魔女を避けさせて、あの壊れた駆動鎧の位置まで誘導してくれ」

滝壺「はまづらはどうするの?」

浜面「俺は細工することがあるから先に駆動鎧のところに行ってる。
   恐らく、魔女は魔法少女の素質のある滝壺を狙うはずだ。俺のところにはページが来るはず。
   最後の一ページにすれば、半々で、見事に分かれるはずだ。逆になったら、ページを倒して、魔女の十一ページを解放して、魔女を無力化してからやり直せばいい」

滝壺「……はまづらは、どうするの?」

 不安そうな顔をして、滝壺が聞く。

浜面「大丈夫だ、俺は何もしない。魔女たちが自滅するだけだ」

滝壺「……わかった」

浜面「それと、もう一つ。何があっても、キュゥべえと契約しないでくれよ」

滝壺「……うん」

浜面「よっし、残り二体はどこだ?」

滝壺「少し遠い。今、こっちに走ってきてるきぬはたとの間にいる。あと、魔女の近くに残り一体と、例の電撃のページ」

浜面「魔女の近くか……厄介だな。絹旗の方にいるってことは、やっぱり一体が向かってるってことか」

滝壺「そうみたい」

浜面「まずはそっちの方に走るか」

 そう言って、浜面と滝壺は、絹旗の方へと走り始める。

 その瞬間、ページが一枚、こちらに向かってくるのを滝壺は確認した。

滝壺「……! ページがまた一ページこっちに来た。電撃のページ」

浜面「本当か! そりゃ好都合だ!」

 次に、滝壺は絹旗に向けて、ページが攻撃しようとしているのを確認する。

滝壺『きぬはた、前に思いっきり飛んで!』

絹旗『え、あ、はい』

 滝壺の言葉に応えて、絹旗が飛ぶ。その背後で圧縮された空気が爆発を起こし、絹旗をさらに前へと吹き飛ばした。

浜面「絹旗っ!」

 そして吹き飛ばされてきた絹旗を、浜面は受け止める。

絹旗「ぎゃっ……ちょ、浜面! どこを超触ってるんですか!」

浜面「『窒素装甲』で殴るな馬鹿!」

 浜面は受け止めた際に、思い切りスカート部分を捲り上げ、薄い布に包まれた小さな桃を鷲掴みにする。

絹旗「超変態! 変態! 変態!」

浜面「今はそれどころじゃないっての! 滝壺、絹旗を追ってたページは!?」

滝壺「もう目の前に迫ってる!」

浜面「相変わらずページは速いな!」

 絹旗を下ろす暇もなく、銃をがむしゃらに前方へ乱射する浜面。それは使い魔に当たり、使い魔は程なくして消滅する。

浜面「よし、完璧だ。滝壺、後は作戦通りに頼む!」

滝壺「わかった」

 絹旗を下ろすと、すぐに浜面は逃げるようにして、駆動鎧へと向かう。
 それと確認して、滝壺は絹旗の腕を引っ張りながら魔女本体の方へと向かう。

 滝壺と絹旗が魔女本体へと向かったと認識した使い魔は、浜面を追跡し始める。

 浜面が走り続けてるとすぐに、機関銃の音が聞こえ始めた。誘導開始だ。

 浜面には見えないが、程なくして、魔女本体は駆動鎧の下へと到着した。

 魔女と一緒に残っていたページは機関銃によって、撃ち散らされた。

 遅れて、浜面も駆動鎧に到着する。

浜面『二人とも、射撃をやめてくれ!』

 テレパシーで伝えると、すぐに射撃は止む。

 その隙に、浜面は駆動鎧のコックピット部へと乗り込んだ。

浜面「はっ……まんまと罠に嵌ったな、くそったれ共」

 浜面には見えないが、遅れて、使い魔のページが到着する。

 浜面の逃げる背後で、ずっと電撃を放ち続けていた、使い魔のページが、駆動鎧という機器の重要部に入り込んだ浜面の下へと到着する。

浜面「知ってるか? 駆動鎧のコックピットってのは、マインドサポートとか、そういう繊細なモンが大量に備え付けてあるんだ。駆動鎧の全体に接続されてるんだよ」

浜面「ついでにな、駆動鎧は電動だ。電池ってのは、危ないんだぜ?」

浜面「リチウムポリマー、リチウムイオン、燃料電池。こういうタイプに使う充電池は爆発物だ」

浜面「つまりだ、本来は保護されてるはずのむき出しになったコックピットに強力な電撃を浴びせたら、駆動鎧ってのはな、大きな爆弾になるんだよ」

浜面「まあ、考えることのできないお前達にわかるはずもないだろうけどな」

 電撃が来るタイミングは完璧に把握していた。
 電撃が来るタイミングで、浜面は離脱する。
 電撃は浜面には当たらず、コックピットに突き刺さる。



浜面「――楽勝だ、魔女ども」


 爆発。

 浜面は体が爆風によって大きく運ばれる感触を味わった。

 その背後で魔女は爆発に包まれ、崩壊する。

 人間が、魔女を倒した瞬間だった。

やべえ行き当たりばったりで書いてたらわけわからんことになった

だからあれほどプロットだけは立てておけと
警告してないけど

>>330
プロットたててたけど、プロットからどんどん外れて魔法少女入り駆動鎧と本の魔女を強く設定しすぎたせいで展開に困った
ちょっと頭冷やすために球形する

保守

まどマギ本編の空気出せって無茶言わんでくれ・・・あんなもん虚淵にしか書けん
続き書く

――

 ビクン、と麦野が焼き尽くした駆動鎧が痙攣した。

――

 もぞり、とフレンダが砕き尽くした駆動鎧が動いた。

――

 ぶるり、と杏子が拘束した駆動鎧が震えた。

――

麦野「まさか……」

フレンダ「まだ生きてるわけ?」

杏子「なんだ……?」


 轟ッ!! と三箇所から嵐のような突風が吹き荒れる。

 駆動鎧たちは操り人形のように脱力して宙に浮くと、首の後ろから、何かが飛び出した。

 ソウルジェムだ。ソウルジェムは内側から割れて、すぐに形を失う。

 魔女が、三体出現した。

――
 ライダースーツの男は、爆撃にもみくちゃにされ、見るも無惨な姿になっていた。

 むしろ生きてることが不思議なほどの損傷だ。

マミ「さて、貴方たちの黒幕のことでも教えてもらいましょうか」

 そんな姿を見ても、マミは一切容赦のない声で詰問する。

「はっ……勝ったつもりでいるのか?」

 馬鹿にしたように、ライダースーツの男が言う。

マミ「この期に及んで、まだ負けたつもりになれないの?」

 それに対して、マミは呆れた声で返答した。

「なれないな。むしろ逆だ。お前がこの距離に近寄った時点で、俺の勝ちなんだよ」

 自信たっぷりに、男は言う。

マミ「へぇ……?」

 マミはまったく信じない。余裕は崩さない。

「このライダースーツみたいなのだって立派な駆動鎧なんだよ。
 この距離からなら全速力で突進するだけで、お前が引き金を引く前に、お前が反応する前に轢き殺せる」

マミ「で、勝利宣言をしたいの? 私が貴方だったら無言で実行してるところだけど?」

 マミは冷たく言い捨てる。

「はっはっは、違う違う」

 男が笑う。どうやらこちらの余裕も本物のようだ、とマミは認識する。

「取引をしようって言うんだよ。どうせ、お前のお仲間はあの人工UMA部隊にやられるだろうよ。
 あれは見た目は人間に見えても、中身はとんでもない怪物だからな」

 恐らく、銃を向けた後からでも、全速力で轢き殺せるというのは本当なのだろう。

「そこでだ、お前、学園都市暗部の『新入生』になるつもりはないか? それだけの実力があれば第一線で戦える。
 学園都市は今は是が非でも戦力が欲しいんだ。お前なら歓迎されるだろうよ」

マミ「貴方にそこまでの権限があるとは思えないけど?」

「俺の上司、つまりお前らの言う黒幕が、とてつもない研究をしている。
 UMAに関する、能力開発を根本からひっくり返すような研究だ! 権限なんてすぐに手に入るさ」

マミ「断る、って言ったら?」

「今すぐにでも、轢き殺すさ」

マミ「まあ怖いわ。それじゃ答えは一つしかないわね」

 そこでマミは言葉を一度切って、溜める。

マミ「――断るわ」

 そして、満面の笑みを作って言い放った。

「そうか、後悔するな――んだこれ!?」

 ライダースーツの男が力をこめようとした瞬間、スーツの銃創から大量のリボンが飛び出した。

 マミは未だに笑顔のまま、何も動じない。

マミ「ごめんなさいね、私、銃が本領じゃないの。本領はこっちなのよ」

 リボンは瞬く間にライダースーツの男を古代エジプトのミイラのように包み込む。

 そんなライダースーツの男を背に、手をひらひらと振りながら、バイバイと言おうとした時に、マミは言葉を失った。

 視界に入ったのは、残りの六人の戦闘。

マミ「どういうこと……なんでこんな場所に魔女があんなに……っ!?」

 三体の魔女が生まれているのを、巴マミは確認した。

>>376訂正

 そこでマミは言葉を一度切って、溜める。

マミ「――断るわ」

 そして、満面の笑みを作って言い放った。

「そうか、後悔するな――んだこれ!?」

 ライダースーツの男が力をこめようとした瞬間、スーツの銃創から大量のリボンが飛び出した。

 マミは未だに笑顔のまま、何も動じない。

マミ「ごめんなさいね、私、銃が本領じゃないの。本領はこっちなのよ」

 リボンは瞬く間にライダースーツの男を古代エジプトのミイラのように包み込む。

マミ「着弾した弾は全てリボンになるわ。勝ったつもり、じゃなくて、最初から勝っていたのよ」

 そんなライダースーツの男を背に、手をひらひらと振りながら、バイバイと言おうとした時に、マミは言葉を失った。

 視界に入ったのは、残りの六人の戦闘。

マミ「どういうこと……なんでこんな場所に魔女があんなに……っ!?」

 三体の魔女が生まれているのを、巴マミは確認した。

保守

――
 携帯電話のようなものが宙に浮いていた。その液晶画面に魔女の姿が映し出され、ドット絵で描かれた手紙が画面から放たれる。

 首が三つあるインコのような怪鳥が羽ばたいていた。三つの首からはバス、テノール、ソプラノの、聞くだけで気分の悪くなる歌声が放たれる。

 大きな深緑の色をした氷の結晶が宙を浮いていた。触れたものを緑に変色した後に腐食し、崩れ落ちさせる緑色の気味の悪い雪が放たれる。

フレンダ「くぁっ……」

 滝壺に狙って放たれたドット絵のメールを、フレンダの背中が盾になって受け止める。

浜面「フレンダ!」

フレンダ「大丈夫ってわけよ、すぐに回復するから」

 魔女の見えない浜面と絹旗、そして直接的な戦闘能力を持たない滝壺。この三人を、フレンダは必死に守っていた。

杏子「くそっ……まずは一匹に集中するぞ!」

麦野「やれるもんなら……やってるわよ!」

 さらに麦野も、疲弊していた。当然だ、麦野は病み上がりだ。こんなに激しい連続的な戦闘に耐えられるはずもなかったのだ。

 その麦野を庇いながら、杏子は戦う。圧倒的劣勢だった。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 その時、砲弾のような一撃が、深緑の氷の結晶の魔女に直撃した。

 一撃で魔女の全身は砕け、魔女は崩壊する。コーンという音を立てて、グリーフシードが地面に落ちる。

マミ「一体何があったの!?」

 マミが慌てて六人に駆け寄る。合流だ。

杏子「説明は後だ、こいつらを片付けるぞ!」

 飛んできたドット絵のメールを、杏子が槍で弾く。

マミ「ええ、そうね……!」

 マミはそう言って、マスケット銃をインコの魔女に向け、放つ。

 するとインコの魔女は悲鳴のような甲高い声を上げた。

全員「ぐぅっ……」

 その声を聞いた七人は耳を押さえ、苦々しい顔をする。

 弾丸は、なぜかその声が響くと共に減速し、地面へと落ちた。

フレンダ「音の壁ってわけ……!?」

マミ「生半可な攻撃じゃ通らなそうね……」

杏子「この中で一番火力があると言えば、マミか沈利だ。どっちか行けるか?」

 ちらり、と杏子は二人を見る。

麦野「誰に口聞いてんだ?」

 当然だ、と言わんばかりに怒気を表す麦野。

滝壺「ダメだよむぎの。むぎののAIM拡散力場、今すごく不安定」

 そんな麦野を、滝壺が制止する。

麦野「くそっ……」

 滝壺に言われては、麦野も反論できなかった。

フレンダ「マミは?」

マミ「さっき、大技使いすぎちゃったから、後一発か二発が限度かも」

フレンダ「十分!」

 三頭インコの魔女がバスの声を響かせる。
 しかし、生まれたのは音ではなかった。衝撃波だ。

フレンダ「ぐっ……」

 それにフレンダが対応し、結界を張る。受けきったはいいが、フレンダもかなり消耗していた。

杏子「おいフレンダ……お前ソウルジェムがヤバイぞ……!」

フレンダ「大丈夫、もう少しいける……マミっ! 私と杏子が結界を張るから、その間に思いっきり、あの鳥類にぶちかましてやって!」

マミ「……了解っ!」

グリフシードいっぱいあるんじゃなかったの?

>>390
戦闘中に使ってる暇がない

 そうして、杏子とフレンダが、全員を包むように結界を張った。

 魔女たちは追撃の手を休めない。携帯電話の魔女はメールの爆撃を、三頭インコの魔女はバスの声による衝撃波を放っていた。

フレンダ「あぐっ……」
杏子「うあっ……」

 携帯電話の魔女の攻撃は数は多いけれど、一発一発の威力がそれほどでもないので問題なかったが、インコの衝撃波は一撃一撃が重く、まさしく響いた。

 だが、その攻撃も長くは続かない。マミが、巨大な銃身を出現させたからだ。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 何度目かわからないほどのティロ・フィナーレ。攻撃に反応して、三頭インコは甲高い声を上げて音の壁を作るが、マミの銃弾の前にそんな壁は意味がなかった。

 マミの一撃が炸裂し、インコの体が崩壊する。コーンと、黒いグリーフシードが地面に落ちた。

浜面「やった!」

 歓喜の声を上げるのも束の間、先ほどの音波攻撃で限界だったのか、今度はフレンダが倒れた。

絹旗「フレンダ……!」

 魔女の見えない浜面、絹旗。AIM拡散力場が安定せず、暴走の危険性がある麦野。倒れたフレンダ。直接的な戦闘能力を持たない滝壺。魔力の限界が近いマミ。疲労困憊の杏子。

 その七人に、最後の魔女は一息すら吐かせなかった。

 ドン、と低重音が響く。携帯電話の魔女の、携帯電話のスピーカーに当たる場所からだ。

杏子「嘘だろっ……!」

 一撃一撃が、軽い魔女だと思っていた。だが、この魔女も、重く響く衝撃波攻撃を行ってきた。

 杏子が反射的に結界を張ったが、一撃、二撃、三撃と攻撃が加えられる度に、杏子の限界が近づいてきた。

杏子「やべえ……!」

 そして、四撃目で、結界が割れる。

 六人に逃げることを促そうとしたが、間に合わない。

 衝撃波の、五撃目が、放たれる。

杏子(どうする……!?)

 全滅必至、かと思われた。

 その衝撃波が放たれた後、音速を超える一撃が放たれた後。

 いつの間にか、認識能力を超えて、黒い影が七人の前に現れた。

「ふん」

 黒い影が結界を作って、一撃を止める。楽々と止める、強度のある結界だった。

杏子「お前は……!」

 黒い影を、黒い魔法少女を見て、杏子が反応する。

 黒の魔法少女は次の瞬間には携帯電話の魔女に接近していた。

 携帯電話の魔女の画面を、一撃で砕く。

 魔女は砕けて、崩れ落ちた。

 グリーフシードが気味の良い音を立てて、地面に落ちる。

QB「やれやれ、間に合ってよかったよ」

 全てが収束して。

 キュゥべえがどこからともなく現れた。

QB「貴重な戦力をこれ以上減らされたら困るからね。助かったよ」

 そうして、キュゥべえは黒い魔法少女に話しかける。



QB「――呉キリカ」

           /\       /\
        //\\     .'::/\ヽ
         //  )::::ヽ-‐--':/   i::`、
       〃 '"´::::::::::::::::::::::::::::`丶i::::::;
        /:::::::/三三三三三ヽ:::::::::::::::::、
     /:::::::::f::::::ハ::::::::ハ::::::::::|:::::::::::::::::ヽ

      .':::::::::八::/ |ト、::::| ∨\l::::::|::::::::::::::
    i::λ:::::| ΤΤ \|ΤΤ l::::::|:::::::::::::::i  まどかを置いて学園都市になんて行くわけないじゃない

     |::ハ:::::| | |    | | |::::|::::::::::::::::l
    l!  |`::|  ‐'    ‐'  |::::::|:::::::::::::::::!
      |:::(___^____|::::::|:::::::::::::::::|

     i、 |::::(⌒)      (⌒):::::|:::::::::::::::::|
     |!∨             |ハ/ヽ::,へ::::::|
    /                    |   \!
.   /   i | ハ   |\__」     |     `ヽ
   /   i  十7 ', |  \|\|   |         i
  "7|  l  ハ/  }/      |   |     ト、|
   .' ∨ トト、 |≡≡ "  ≡≡ |  从     |
  ;   | | N             |   /入  __  |
  i{∧   | リ    「 ̄)   | / | 八| ̄
  |  ヽ ハ `ー┬―┬―┬ヒ'/  /  `
     }/ |/\.| r‐+ ―┴i¬、

     ノ  ′ ` 入 `>、 /   ヽ
          く  |/ ∨     〉

>>258
幻想殺しは触らないと使えないんで
時間停止は効くような気がするが

上条さんでも駆動鎧はダメなのか……

少し休ませてくれないか・・・

ちなみに議論になる前に釘を刺して置くけど、このSSの中でのほむほむの時間停止は因果律を切り離した自分だけの世界を構築して、その世界内で動いてから因果律を結びつける魔法と考えてる
上条さんがいてもいなくても時間停止はできる

>>417
了解 ゆっくり休んでいってね!(笑)

時間停止の件については自分でもよくわからなくなって
迷走しそうなのでやめとく。

レスも保守代わりにとぐらいにしか思っていなかったらので
こんな間が空いたぐらいだし。

保守

保守

保守

保守

燃料投下して保守しといてもらえよ

ところでキリカの能力って何さ

保守

そういえばちょっと前に時間停止対未来予知が一対一で対等にやりあってたSSがあったけど
どういう理屈なんだ?時間停止が本気出したら予知もクソもなくね?

>>491
そのSSってこれ?
まどか「わたしが魔法少女だ」

>>496
ああ、それだそれ!

魔法少女は色々出来るみたいだし頑張ればいけるんだな、うん

>>502
ちなみに今ここで

まどか「わたしが、わたしたちが、魔法少女だ」

でやってる、ちょっと停滞しているのが心配だが先が楽しみなSSのひとつ。

古いかも

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 30分以内
04:00-09:00 50分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 20分以内
19:00-00:00 10分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 20分以内
02:00-04:00 35分以内
04:00-09:00 60分以内
09:00-16:00 35分以内
16:00-19:00 20分以内
19:00-00:00 10分以内

保守

~便所~

フレンダ「はむはむ♪…もしゃもしゃ♪…はむはむ♪…ズズズ……」コトリ

QBの叱責を受け便所で昼飯を楽しむフレンダ

フレンダ(QBのヤツ…わたしのこと舐めてるわね……ギリギリギリ……必ず後悔させてやる!!)ハムハム…モシャモシャ…ズズッ…

超えられない壁…OBとの絶望的な実力格差、頭脳明晰なフレンダは骨身に染みて理解している

フレンダ(修業が必要だ、僕が勝つには開眼するしかない!!!!)カチャリ

フレンダは全身を循る血液が逆流するほどの固い決意の雄叫びをあげた

フレンダ「ウオオォォ…ォォォ…ォォォ…ォォォ…ォ………ォ…!」

保守

保守ありがとう、今から続きを書くよ

――
 ばさり、とキリカが一枚の紙を机の上に投げ捨てるようにして広げた。

 結局、あのマンションのアジトは場所が割れていたために使えなかった。

 そもそも、マミとEqu.Meltdownerの戦闘の余波で、マンションは外観からしても滅茶苦茶になっていたので、物理的にも使用不可だった。

 そこで八人と一匹は適当な個室サロンを取り、そこに集まっていた。

 キリカが取り出したのは学園都市の地図だ。

 その地図のとある地点に真っ赤なバツ印が書き込まれている。

キリカ「この地図に記されてる場所が敵の、というより今回の事件を引き起こした研究の核がある研究所だよ。
   あと、私の確認した限りだと、敵の戦力は今日戦ったので最後みたいだね」

 うずうずしながら、キリカが言う。

杏子「敵の研究?」

マミ「……UMAね」

 杏子が聞き返したところに、キリカではなくマミがぼそりと答えた。

キリカ「へー、あいつらはそう呼んでるんだ」

杏子「ゆま!?」

 その言葉に、キリカは興味がなさげに、杏子が激しく、それぞれ反応する。

滝壺「ゆまじゃなくてUMA。未確認動物ってやつだね」

 杏子を制するように滝壺が訂正する。

杏子「なんだ……」

 言葉に反応して勢いよく立ち上がった杏子であったが、その言葉に安堵してソファーに深く座り込んだ。

キリカ「どうして知ってるんだい?」

 一応、とでも言う風にキリカが聞く。

マミ「そこの人が口走ったのよ。UMAに関する、能力開発を根本から覆す研究だって」

 視線だけで、部屋の奥の床に捨てられるように放置されていたリボンでミイラのようになった人型をマミは示す。

マミ「まあ、それ以外はだんまりなんだけどね」

 続いて、困ったようにマミは言う。
 杏子はあんなに厳重に巻き付けられてたら黙るも何もないと思ったが、口にしなかった。

キリカ「ま、どうでもいいんだけど。キュゥべえが織莉子のために約束を守ってくれるなら、なんでも」

 ちらり、とマミに抱かれたキュゥべえを見るキリカ。

QB「それはもちろん守るさ」

 キュゥべえは軽快な声で言う。

フレンダ「というか、UMA、未確認動物って……」

 フレンダはそんなキュゥべえをジト目で見つめた。
 気がつけば、全員の視線がキュゥべえに集まっている。 

QB「なんだい、その視線は?」

浜面「どう見てもどう考えてもお前だろ」

 不思議そうに、心当たりがまるでないように聞くキュゥべえに思わず浜面は突っ込んだ。

QB「失礼な。僕はそんな捕まるようなヘマを侵さないよ」

 不満そうに意外そうにキュゥべえは反論する。

絹旗「そこの超珍獣が捕まらなくても、そのでっかい耳毛一本から、果ては体毛一つでも、なんでも情報があれば研究できちゃうのが学園都市ですよ」

 絹旗が補足する。

QB「いくらなんでもそれは無理があるよ」

 話を聞かない子供を宥めるようにキュゥべえはさらに反論する。

QB「まあ、仮に僕の体の一部を、果ては死体を人間が手に入れたとしよう。
  でも、そんなものを研究したって、魔女に辿り着くと思えない。君たちは、人間の死体を調べて、相対性理論を説き明かすことができるのかい?」

浜面「できるさ。学園都市には記憶を読み取る能力者だっている。下手したらお前の体の一部を入手するまでもなく、いた場所がわかるだけで研究できちまうかもな」

 常識的なキュゥべえの反論に、非常識的な反論の浜面。

QB「それも無理だと思うけどね。僕は通常の人間には認識できない」

フレンダ「魔法少女の素質のある『読心能力者』だったら?」

 そこにフレンダが割って入る。

QB「学園都市では能力者は学生だけなんだろう? それならたまたま魔法少女の才能のある女の子で、たまたま読心能力者で、たまたま天才科学者で、たまたま僕のいた痕跡を見つけたということになるよ。どんな天文学的な確率だい?」

 あり得ない、と言う風にキュゥべえはフレンダの意見も否定する。

 そこで、手を鳴らす音が二回響いた。マミだ。

マミ「はいはい、そこまで。議論はいいじゃない。敵の本拠地がわかったんだからそこに行けばわかるわ」

 議論で興奮した三人と一匹をマミが宥める。

杏子「そうだな、案ずるより産むが易しってやつさ。明日にでも奇襲をかけりゃいい」

 注文したお菓子盛り合わせのポッキーを食べながら杏子も続ける。

麦野「私らのやることは変わらないわよ。そこに乗り込んで、こんな面倒なことやらかして、私らにちょっかい出した馬鹿をぶち殺す。それだけだ」

 そう言って、麦野が締めた。

キリカ「じゃあ、私は織莉子のところに帰るから」

 場が収まったと思うと、キリカが立ち上がった。

マミ「あら……共闘してくれないの?」

 マミが残念そうに引き留める。

キリカ「私はただ、この魔女大量発生事件の真相を調べるように、っていうキュゥべえが出す条件を飲んだだけだよ」

 一秒でも早く帰りたい風に、キリカは早口に切り上げる。

マミ「全然真相じゃないと思うんだけど」

 マミは引き下がらない。

キリカ「もうどうせ終わるんでしょ? それより私は一刻も早く織莉子のところに生きたいんだ。
    もう一週間も織莉子の顔を見てないなんて織莉子の声を聞いてないなんて織莉子を感じていないなんてああもう気が狂いそうだ!」

 さらにキリカは口を早くして、一気に言い切った。

マミ「そ、そうなの……じゃあ、送っていくわ」

 その様子を見て、マミは初めて少しだけ引き下がった。

キリカ「いいよ、どうせ敵の戦力なんかもう残ってないんだし」

 しかし、キリカはマミの新たな提案も辞退する。

マミ「念には念よ。こんな安易に全戦力投入なんてするとは思えないし……」

 ほっとけない、と言う風に今度は引き下がらないマミ。

キリカ「いいってば。これでも私は腕には自信があるんだ」

 キリカもそれを甘受しない。

マミ「貴方がよくても、私がよくないの」

 マミはやはりそれを許さない。平行線だった。

杏子「あー、マミのお節介が発動してるなあ。もう素直に従った方がいいよ」

 その二人を見て、杏子が呆れたように、でも、ほんの少しだけ微笑まし気に横から言った。

 お菓子の詰め合わせはもう空になっており、どこからか取り出したポテトチップスを食べている。

QB「なんやて?!」

キリカ「はぁ……恩人にでもなろうっていうのかい?」

 困ったようにキリカが言う。周りに助けを求めるように目を向けたが、助け船の到着は絶望的のようだ。

マミ「そんなことにならないのが一番の幸せね」

 ふふん、とマミが言った。

キリカ「それもそうか。
    ……そこまで言うなら、まあ、よろしくお願いするよ」

 キリカはその言葉には同意し、渋々マミの提案を受け入れる。

マミ「貴方とはこの出会い方で良かった、そんな気がするわ」

 嬉しそうに、マミが言った。

キリカ「同感だね。魔法少女なんて、いつ殺し合いが始まるかわからないものだし。私と織莉子は別だけど」

 遠い目をして、キリカが言う。
 その様子にマミは少しだけ引っかかるものを感じたが、敢えて追求しないことにした。

 そうして、話のまとまった二人は個室サロンを出て行こうとする。


滝壺「待って」

 その二人を、唐突に滝壺が呼び止めた。

 全員の視線が滝壺に集まる。

 そして満を持して、滝壺は眠たそうな目をしながら言った。

滝壺「もう、キュゥべえ抱いて、いい?」

QB「え……ちょ……」

 マミについて行こうとしていたキュゥべえが、ビクンと反応した。

 そんなキュゥべえをマミが優しく抱き上げる。

マミ「……優しくしてあげてね?」

 そして、優しく滝壺に引き渡す。

QB「待っ――」

 今度こそ、マミとキリカは個室サロンを後にする。

 キュゥべえが逃げようとする前に、滝壺が抱きしめた。

――
「Equ.Meltdowner、人工UMA部隊、共に、全滅のようです……」

「全滅だと!? あれだけの戦力を投入して、全滅!?」

「その、巴マミという外部からの侵入者が、どうやら超能力者級の力を持っているようで……」

「巴マミ、なるほど、この常盤台にでもいそうなこの女か」

「はい」

「ちょうどいい、その巴マミがグループから離れたようだ
 ――UMAを投入しろ」

ちょっと昼飯食ってくる

いってら

上条さんとまどかなら俺の横で寝てるよ

ほむほむはわかるけどなんで一方さんが…

>>571
俺もそう思った(笑)
行くんだったら美琴だろ。

なんとなく、インも閃いたけど一方さんだった

>>574
なるほど>>568に竜王の殺息が放たれるんですねわかります。

保守

飯食ってきた
続き書く

――
麦野「なあフレンダ、ちょっといいか」

 マミとキリカが出かけた後、ふと、麦野は再会してから初めて、フレンダに話しかけた。

 その瞬間、フレンダはビクッと大きく体を震わせて、杏子の後ろに隠れる。

 ガタガタと、激しく体を震わせていた。

杏子「お、おいフレンダ……」

 フレンダの尋常ではない怯えようを見て、杏子は困惑する。

麦野「……やっぱりダメか」

 そんなフレンダを見て、麦野は顔を曇らせた。

 無理もない。フレンダは一度、麦野に拷問のような殺され方をしているのだから。

 それを知っている浜面と絹旗もその様子を見て無言になり、空気が重くなる。

滝壺「大丈夫だよフレンダ」

 そこで、滝壺がふと言った。

 動かなくなったキュゥべえをソファーに寝かせて、杏子の後ろのフレンダの下へ歩み寄る。

 そして優しく、フレンダの頭を撫でる。

滝壺「むぎのは、昔みたいなむぎのじゃないよ。話を聞いてあげて」

>>584
滝壺、QBをやっぱ抱き潰したか(笑)

死んでも安心出来るのはQBだけだわwww

 滝壺に説得されて、フレンダは麦野と二人きりになった。

 他のメンバーは、近くの遊戯施設に屯している。

 個室サロンをちょっとしたホテル代わりに使う客も多いので、ほとんど備え付けのようになっている遊技場だ。

杏子「あの二人だけにして大丈夫なのか?」

 キューでビリヤード台のボールを弾きながら杏子が聞く。

滝壺「大丈夫だよ」

 端的にキュゥべえを抱いた滝壺が言う。

滝壺「それに、むぎのは多分、みんなに見られたくなかったと思う」

杏子「……そうかい」

 かつん、と小気味の良い音がしてボールが弾かれる。ボールはボールに当たり、そのボールもボールに当たり。
 連鎖的に当たり、いくつものボールが一度に穴に落ちる。

 浜面は、期待していた。これで、麦野とフレンダが和解すれば、アイテムは晴れて仲間割れする前の姿に戻る。
 いや、もっと良いものになる。

 欠けていた、戻らないはずのものが戻ってくる奇跡。

浜面「まったく、奇跡も、魔法も、あるんだな……」

>>588
安心というより溜飲が下がるレベル
レベル的には誠あたり。

――
 マミとキリカは魔法少女の姿で夜の学園都市を爆走していた。

キリカ「グリーフシードがたくさんあるっていうのは本当に便利だね。ただの移動にも魔力が存分に使えるよ」

マミ「でもこれに慣れちゃダメよ。元の街に戻れば、すぐにいつも通りになるんだから」

キリカ「わかってるさ。でも今は今で助かったよ。一刻も早く織莉子に会いたいからね」

マミ「ふふっ……織莉子って人のことが本当に好きなのね」

 微笑ましいと言わんばかりに笑いながらマミが呟いた。

 すると唐突に、キリカが足を止める。

 それに気付いてマミも慌てて足を止めた。

キリカ「好き!? そんなもんじゃない! 私は織莉子を愛している!」

マミ「え、えっ……」

 突然激昂したキリカにマミは困惑した。

キリカ「好きだとか、大好きだとか、愛を単位で表すなんて、愛の本質を知らないのさっ!」

マミ「く、呉さん、落ち着い」

 マミは宥めようとする。しかし、その言葉は最後まで続かなかった。

 ばさり、と翼のはためく音が背後から聞こえたからだ。

>>593
まさか帝蔵庫か?

 その瞬間、マミとキリカは弾かれたように音の方向を振り返る。

 尋常じゃない空気がした。尋常じゃない予感がした。尋常じゃない圧力がした。

 それは小さかった。身長はマミの胸元くらいしかないだろう。

 真っ白で、顔も鼻も口もないのっぺりとした楕円形の顔面部。

 黒い皮膜を使った大量のケーブルがうねるようにして絡み合い、足が二本、手が二本の人型を作っていた。

 ケーブルが多すぎるためか、身長に似合わず、それはずんぐりとした体躯だった。

 特徴的なのはその背中。

 一対の、純白の羽が生えていた。

マミ「何者?」

 即座に右手でマスケット銃を生み出し、現れた何かに銃口を向けるマミ。

 それは、目のない顔でマミを見つめてるようでもあった。

 次の瞬間、マミは肩の力が抜けたのを感じた。

マミ「えっ――」

 否、それは勘違いだ。肩の力が抜けたのではない。


 肩口から。右の腕が。なくなっていた。

マミ「ガァッ!?」

 続いて、突然爆発が巻き起こる。

 反応する間もなく、マミは爆風に叩かれてノーバウンドで宙を舞った。

キリカ「何者さっ!」

 同じく、マミの隣にいたはずのキリカがいつの間にか、現れた何かの背後に回っていた。

 爆発のダメージは皆無の様子。

 キリカの魔法は自分以外の速度を遅くする魔法だ。

 それを発動させていたキリカは悠々と爆風を避け、さらに両手に出現させたかぎ爪の攻撃範囲内に相手を捉えていた。

 キリカは、全てが遅くなった世界でマミの受けた攻撃が見えていた。

 正体は羽だ。あの一対の羽がキリカでも反応するのがやっとなほどの速度でマミの方に伸び、マミの腕を切り落としたのだ。

 だったら答えは簡単。キリカはその羽をもいでやることにしたのだ。

>>149
オールラウンジって初めて聴いたんだけど、そういう単語が実際にあるのか?
ぐぐったら禁書の強さ議論スレが出てきたから専門用語か何かかな

 しかし、その目論みは外れる。

キリカ「あれっ!」

 金属の、硬いものがぶつかり合う音がした。

キリカ「か、ったー!」

 羽は傷一つついていなかった。羽ばたく姿や、ふわりとした見た目に反して、それはかなりの硬度を持っているらしい。

 ぐるりと、パーツのない顔がキリカの方を向く。

キリカ「やばっ……」

 一対の羽がキリカの方に向けられた。
 そして羽が動き出す、その瞬間に。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 マミの強大な一撃が炸裂する。

 防御する暇もなく直撃、に見えたが、羽はもうキリカの方を向いておらず、マミからの攻撃を防ぐために使われていた。

 その隙にキリカは羽の届く位置から逃げ出す。

キリカ「危ないところだったよ! キミは恩人だ!」

マミ「本当に恩人になるような事態になってしまったわね」

 片腕を失いながらも、両足でしっかりと立つマミ。その横に、いつの間にかキリカが到着している。

>>602
ごめん、オールラウンドの誤字だ

>>602
オールレンジを思い出した。

キリカ「あれは敵かな? おっかしいな、もう敵はいないはずなのに」

マミ「だから言ったでしょ。安易に全ての戦力を出してくるわけないって」

 マミの放った砲撃によって生まれた煙幕が晴れていく。

 羽には、傷一つついていなかった。

マミ「これもさっきのライダースーツの人みたいなものかしら?」

 その羽が動く。準備していたためか、今度はマミにもそれが見えた。

 二人の力で二重の結界を張る。しかし、羽はそれを容易に貫通し、二人の下へ届く。

 破られるのがわかっていたかのように二人は即座に反応し、バックステップ。羽を避けた。

 羽は二人がいた地点の地面に突き刺さる。バガンという凄まじい音をさせながら、その地点はまさしく爆発した。

キリカ「ふざけまくってる威力! こんなの手に負えないよっ!?」

マミ「いや、これくらいならなんとかなるわ。
   羽は一対、しかも私の攻撃をわざわざ羽で守ったってことは、やっぱり本体の強度はこっちの攻撃で破れる程度ってことよ」

キリカ「でもどうやって当てるのさっ、あの羽の攻撃があんなに速いってことは、防御も速いってことだし!」

マミ「なら数で押せばいいだけよ」

 マミがそう言うと、数百のマスケット銃がマミの背後に、宙に浮いた状態で出現する。

マミ「呉さんは、みんなに一応知らせてきてもらえないかしら? ちょっと本気を出すから、この辺りにいたら危険だし、ね?」

 そう言って、マミはキリカにウィンクする。

キリカ「……わかったよ、恩人。全速力で知らせてくる!」

マミ「よろしくっ!」

 キリカが離脱。するとそれを追いかけるように、羽が動こうとする。

マミ「よそ見してていいのかしら?」

 その瞬間、マミの銃撃が放たれた。

 弾幕だ。文字通り弾幕、避けるスペースなど存在しない、銃弾のカーテンだ。

 白い羽を背負った何かは、キリカへの追撃をやめ、すぐに銃弾のカーテンに対して羽のカーテンを構築する。

 最早、爆撃だった。あまりの威力に地形が、景色が、まったく別の姿へと変貌する。

 厚いアスファルトの層が衝撃で砕け飛び、後に雨のように地上へ降り注ぐ。

 それでも、羽は無傷。

 だが、マミはもちろんそれは百も承知のこと。
 空へと飛び出したアスファルトの破片が落下を始めるより速く、すでにマミは敵の背後へと回っていた。

 そして、その背後には既に、数百のマスケット銃が。

 再び、爆撃。

 あまりに速すぎる激しすぎる連続攻撃に、もし浜面が見ていたら、マミは銃弾で挟み撃ちにした、と答えるだろう。

 マミは一対の羽が防御のために両方使われていたのを、確かにこの目で確認していた。

 そして、マミがその気になって肉体を強化すれば、羽は十分に反応できる速度だった。

 つまり、燃費を完全に無視し、持てる限りの魔力で短期決戦の全力で行けば、羽の速度すら、上回ることが可能だった。

 その羽を上回る速度で、マミは爆撃を行ったのだ。

マミ「ちょっとやりすぎちゃったかしら?」

 ばらばらとアスファルト片の雨がやっと降り始める。

 煙が少しずつ晴れていく。

 敵の姿が確認できるレベルに。

マミ「――っ!」

 なる前に、土煙から純白の羽が飛び出してきた。

 マミは当然、それを避ける。

マミ「防御が間に合ってたのね! いいわ、間に合わないほどの回数を繰り返してあげ――」

 そして、敵の様子を確認して、マミは言葉を失った。

 羽の速度が間に合ったのではなかった。

 マミの攻撃が遅かったわけではなかった。

 繰り返せば、速度の差で勝てるものではなかった。

マミ「嘘……」

 三対だった。六枚だった。

 羽が、増えていた。

 そして、パーツのない顔面部に、英語の文字が浮かび上がっているのを、マミは目撃した。

ごめん、眠気飛ばすためにコーヒーばっかり飲んでたら腹痛くなったからトイレ行ってくる

>>621
寝ろ保守はするから。

保守

続き書く

――
 個室サロンの部屋に麦野とフレンダは二人きりで残された。

麦野「フレンダ……」

 麦野がゆっくりとフレンダに歩み寄る。

 ビクッと身を固めるフレンダ。思わず、目を瞑る。

フレンダ「えっ」

 そのフレンダを優しいものが包み込んだ。

 恐る恐る目を開けてみると、フレンダは信じられないものを目にした。

 麦野に、抱きしめられていた。

フレンダ「む、麦野……?」

 じゃれながらふざけてフレンダから麦野に抱きつくことはあっても、麦野から抱きつかれたのは初めてだった。

 フレンダが困惑していると、抱きしめられる力がさらに強くなる。

フレンダ「ちょ……麦野、痛いってば……」

麦野「……め……ンダ」

 ふと、耳元で、麦野が小さく言った。

フレンダ「えっ?」

 思わず、フレンダは聞き返す。

 信じられない言葉を聞いた気がした。

麦野「ごめんな、フレンダ」

 今度ははっきりと聞こえた。

 それでも、フレンダは我が耳を疑った。

 謝っていた。あの麦野が。

麦野「生きてて、よかった」

 信じられないほど優しい声で麦野が言う。

麦野「殺した張本人の私の私が言うのもおかしいだろうけどさ、フレンダが生きてるって最初聞いた時、嬉しかった」

 驚きすぎて、戸惑うしか、フレンダは対応策が思いつかない。それだけに、意外すぎることだった。

麦野「謝って許されることじゃないのはわかってる、でも謝らせてくれ

   ――本当に、ごめんなさい、フレンダ」

フレンダ「ちょ、ちょっとやめてよ麦野らしくないってば……」

 麦野の謝罪にフレンダは困ったような声で答えた。

 それに対して、麦野は無言で、さらに強く、フレンダを抱きしめる。

フレンダ「……そもそもさ、最初に裏切ったのって私じゃん。
     下手したら、私の方が麦野たちを殺すことになってたのかもしれないってわけよ」

 しばらく無言が続いた後、フレンダが再び口を開く。

フレンダ「私には、謝られる権利も、価値もないよ……」

 そう言って、麦野の抱擁をやめさせようとするが、麦野はしっかりと抱きしめたまま、動かない。

フレンダ「私さ、麦野に殺されて、でも魔法少女になって助かって、人生をリセットできたとか思ってたのよ」

 頑なな麦野の様子にフレンダは抱擁をやめさせるのを諦める。

フレンダ「それで、二度目の人生だ、一度目のように自分のためだけに生きるのはやめて、せっかく手に入れた魔法の力でみんなを助けようとか調子のいいことを考えてた。

     でもさ、結局私ってば、何も変わってなかったってわけよ。

     改心したつもりで、麦野たちみたいに強い力を手に入れて、調子に乗ってただけだった。

     麦野たちが浜面の昔いたところのアジトに入ってきた時、私、逃げ出したんだ。

     自分が絶対勝てない相手、麦野が私を殺しに来たと思ったらさ、決めたことが全部どうでもよくなった。

     改心も、人助けも、全部頬って、全部投げ捨てて。とにかく生きたいと思った。

     あの時は、一緒にいたマミも杏子もピンチだったはずなのに、みんな見捨てて、自分だけ逃げようとした。

     ……結局、馬鹿は死んでも治らなかったわけよ」

 それに対して、麦野は無言で、さらに強く、フレンダを抱きしめる。

フレンダ「……そもそもさ、最初に裏切ったのって私じゃん。
     下手したら、私の方が麦野たちを殺すことになってたのかもしれないってわけよ」

 しばらく無言が続いた後、フレンダが再び口を開く。

フレンダ「私には、謝られる権利も、価値もないよ……」

 そう言って、麦野の抱擁をやめさせようとするが、麦野はしっかりと抱きしめたまま、動かない。

フレンダ「私さ、麦野に殺されて、でも魔法少女になって助かって、人生をリセットできたとか思ってたのよ」

 頑なな麦野の様子にフレンダは抱擁をやめさせるのを諦める。

フレンダ「それで、二度目の人生だ、一度目のように自分のためだけに生きるのはやめて、せっかく手に入れた魔法の力でみんなを助けようとか調子のいいことを考えてた。

     でもさ、結局私ってば、何も変わってなかったってわけよ。

     改心したつもりで、麦野たちみたいに強い力を手に入れて、調子に乗ってただけだった。

     麦野たちが浜面の昔いたところのアジトに入ってきた時、私、逃げ出したんだ。

     自分が絶対勝てない相手、麦野が私を殺しに来たと思ったらさ、決めたことが全部どうでもよくなった。

     改心も、人助けも、全部放って、全部投げ捨てて。とにかく生きたいと思った。

     あの時は、一緒にいたマミも杏子もピンチだったはずなのに、みんな見捨てて、自分だけ逃げようとした。

     ……結局、馬鹿は死んでも治らなかったわけよ」

さるよけ

 フレンダの独白を、麦野は静かに聞いていた。

 再び、沈黙が落ちる。

麦野「それなら、これから治していけばいいだけでしょ」

 ややあって、麦野が静かに言う。

麦野「私だって前はクソッタレだったわよ。
   仲間の、あんたたちの命なんかいくらでも補充の利く駒としか考えてなかった。自分のことしか考えてなかった」

 ふと麦野は義手に目を落とす。

麦野「そこにさ、浜面がさ、私をぶっ飛ばして、全部変えてくれたのよ」

フレンダ「あの浜面が麦野を?」

 信じられない、そんな風にフレンダは驚いた。

麦野「あいつはあれでもやるときはやる男よ。あいつの力で、私は変わることができた」

 麦野が義手ではない手で、フレンダの頭を優しく撫でる。

麦野「フレンダは無理しすぎなのよ。自分だけの力で、すぐに自分を変えようとしてる。
   そんなの、できるわけないじゃない」

麦野「せっかくの二度目の命よ。ゆっくり、これから治していけばいいのよ。

   ――人生は、長いんだから、ね?」

杏子「緊急事態だ!」

 その時、ドバンと乱暴に扉が開けられた。

 入り口が思い切り開け放たれて、扉の外に席を外していた五人と一匹、そして帰ったはずのキリカが見える。

 同時に、こっちから見えるということは、あちらからもフレンダを抱きしめている麦野の姿が見えるわけで。

麦野「あ……こ、これは違――」

 真っ赤になってフレンダを離し、あたふたとする麦野。

杏子「そんな場合じゃねえ!」

 そんな麦野の様子に構わず、杏子が続ける。

杏子「マミがヤバイのと戦ってるらしい! すぐに行くぞ!」

>>636訂正

杏子「緊急事態だ!」

 その時、ドバンと乱暴に扉が開けられた。

 入り口が思い切り開け放たれて、扉の外に席を外していた四人と一匹、そして帰ったはずのキリカが見える。

 同時に、こっちから見えるということは、あちらからもフレンダを抱きしめている麦野の姿が見えるわけで。

麦野「あ……こ、これは違――」

 真っ赤になってフレンダを離し、あたふたとする麦野。

杏子「そんな場合じゃねえ!」

 そんな麦野の様子に構わず、杏子が続ける。

杏子「マミがヤバイのと戦ってるらしい! すぐに行くぞ!」

――
浜面「嘘……だろ……」

 そこは、まるで大災害が襲ったかのような景色だった。

 アスファルトは根こそぎ捲りあげられ、下の地面が見えている。

 深夜で誰もいなかったと信じたいほど、ビルは滅茶苦茶に倒れ、ドミノ倒しのように崩壊していた。

 尋常じゃない戦闘があったのが窺える。まるで戦略兵器が被害を撒き散らしたかのようだ。

フレンダ「マミ……?」

 その中心に、マミはいた。

 いや、マミらしきものがあった。

 下半身はなかった。首から上もなかった。

 かろうじて残ってる上半身が、マミの着ていた服を着ている。

 それが、恐らく、その物体がかつてマミだったものだろうと主張していた。



 巴マミが、死んでいた。

いやまだわからんぞソウルジェムがまだあればいける

>>648
敵に回収されて敵フラグびんびんなんですが

杏子「くそっ……何が敵の戦力は残ってないだ!? まだ全然あるじゃねえか!」

 激昂した杏子がキリカの胸ぐらに掴みかかる。

絹旗「超やめましょうよっ。呉のせいじゃありません」

 そんな杏子を絹旗が抑える。

浜面「どうするんだよ……巴を倒す敵がまだ残ってるってことだろ……」

 絶望したように、枯れた声で浜面は呟く。

麦野「確かに、巴マミの力は本物だった。下手すりゃ、私以上だったかもしれないくらいにな」

フレンダ「つまり、レベル5の上位か、それに匹敵する何かがいるってわけ……?」

 震える声で、フレンダは問う。

麦野「……そういうことになるな」

 苦々しく、麦野はそれに答えた。

杏子「でも、そんなのがいるのか?」

麦野「心当たりはある。こんな無茶苦茶な戦闘をできるやつがな」

杏子「誰なんだそれは……?」

 恐る恐る、杏子は聞く。

麦野「……『一方通行』。学園都市第一位のレベル5だ」

 重々しく、麦野がその名を口にした。

 その名前を出した瞬間、杏子とキリカ以外の全員に緊張が走る。

未元物質を魔法に応用した気もする…

QB「それはないと思うよ」

 この場にそぐわない、明るい声がその可能性を否定した。

 キュゥべえだ。どこからともなく、四足歩行でとてとてと歩いて来た。

滝壺「あれ、サロンに寝かせてきたのに……」

麦野「どうしてそれがわかる?」

QB「簡単さ。杏子、フレンダ、君たちならわかるはずだよ。二人とも、意識を集中させて、この場に残った魔力を探ってみればいい」

杏子「……わかった」

フレンダ「えっと……こう、かな?」

 目を瞑り、深呼吸するかのようにして魔力を探る杏子。フレンダもその杏子を見て、見よう見まねで魔力を探る。

QB「マミの巨大な魔力に誤魔化されがちだけど、よく探ってみるんだ」

杏子「……これは!?」

 杏子が目を見開いて驚く。

QB「気付いたようだね。そう、ここにはマミとキリカ以外の魔法少女の魔力が残っている。敵は魔法少女だよ」

フレンダ「確かに……」

杏子「いや、あり得ねえ、そんなわけがねえ! 嘘だッ!」

>>657
魔法少女に未元物質を再現する自動装甲着せたとか?

 突然、半狂乱になって否定する杏子。

フレンダ「きょ、杏子、どうしたってわけよ?」

QB「ふぅ……まったく、どうしてこんなに確たる証拠があるのに嘘だと思うんだい?」

 呆れたような声でキュゥべえは言う。

杏子「間違いだ……こんなの何かのトリックだ! あり得ねえ! だってこれは……これは……」

 探れば探るほど、杏子の中に確たる証拠が突き付けられる。

 杏子の声が徐々に小さくなり、静かになったのを見て、キュゥべえは溜息を吐いた。

 そして、改めて、キュゥべえは言う。


QB「その通りだよ。巴マミを殺したのは

  ――千歳ゆまさ」

超回復(全体)+未元物質orベクトル操作か

――
 七人と一匹は、再び個室サロンに戻ってきた。

 マミの亡骸を連れて。

 マミの亡骸は、悲しいほどに軽かった。下半身も、頭も、右腕も失ったそれは、見るのも憚れるほど無残だった。

 それでも、ライダースーツの男と共にフレンダたちを襲ってきた駆動鎧の中の少女たちのように、かつてのコネを使ってこの遺体を片付けようとは思わなかった。

 どうしようもなく、魔法で鮮度を保ち、個室サロンまで持ってきたのだった。

杏子「ゆまは……ゆまは、こんなことをするやつじゃねえ……」

 個室サロンに戻り、重い空気の中、杏子がまず口を開いた。

杏子「あいつは……優しいやつだ、そして、強いやつだ。
   あたしのために人生投げ捨てて魔法少女になって、魔女にやられた嫌いだったはずの親どもを蘇らせて……
   少なくとも、こんなことは絶対にしないやつだ」

QB「でも、結果として、千歳ゆまの魔力があそこに残っているよ?」

杏子「うるせえわかってる!」

 杏子が怒りに任せて机を叩く。木製の机は杏子の力に耐えきれずに割れた。

 机の上に乗っていたガラス製のグラスが地面に落ちて、パリンという音をたてて割れる。

絹旗「そ、そうだ、あそこに魔力が残ってたってだけで、犯人と決めつけるのは超早計じゃないですか?
   ただ巻き込まれただけの可能性も超ありますし!」

 思いついたように絹旗が言う。

QB「残念ながらそれはないよ。マミとマミを倒すほどの敵との戦いに巻き込まれて生き残るほど、千歳ゆまは強くない。
  なのに、あの場所に来たときと、帰ったときの、両方のパターンの魔力が残っていたのさ」

絹旗「っ……!」

 まるで感情がないようなキュゥべえの言い分に、絹旗は返す言葉を失う。

麦野「おいキュゥべえ。客観的な意見を聞きたい。この面子で、マミを倒したやつに勝てると思うか?」

 努めて冷静に、麦野が問いかける。

QB「うーん、厳しいんじゃないかな? 正直言って、マミは別格の強さだ。
  威力だけなら確かに沈利が上回るかもしれないけど、総合的に見たら、マミが一番強いからね。
  そのマミすら上回る敵を倒すのは、余程の作戦がないと無理だと思うよ」

 答えを聞いて、麦野も押し黙る。

フレンダ「じゃ、じゃあ、学園都市の願いが必要な、他の誰かに魔法少女になってもらうのは……」

杏子「ふざけたこと言ってんじゃねえ!」

 フレンダの提案を、杏子が一喝する。

フレンダ「だ、だって……」

QB「うーん、それはとても魅力的な提案なんだけど、非現実的じゃないかな。学園都市の魔法少女は戦力にならないんだ」

フレンダ「どういうこと……?」

 ふぅ、と一息吐いてから、キュゥべえは答える。

QB「困ったことにね、学園都市の少女が魔法少女になっても、変身したり、魔法を使う度に体に深刻なダメージを負ってしまうんだ。
  むしろ、今戦えてるフレンダが奇跡的だよ」

 なんでもないようなことのように、キュゥべえは語る。

フレンダ「何それ……! 私、聞いてない!」

QB「聞かれなかったからね」

 声を張り上げるフレンダをキュゥべえはさらりと流す。

麦野「どういうことだ」

 静かに、麦野が再び口を開いた。

QB「残念ながら、これは僕たちにもメカニズムがわからないんだ」

麦野「誤魔化してんじゃねえ。どうして、それを知りながら学園都市で魔法少女を作ろうとしてやがる?」

 鋭い声で麦野は追求する。

QB「それは君たちが契約することで、僕にもメリットがあるからさ」

麦野「メリットだと? ……いや、その前に一つ質問に答えろ。今日の夕方、襲ってきた駆動鎧の中身の魔法少女から魔女が生まれたのはどういうことだ?」

QB「やれやれ、質問ばかりだね。どちらも話が繋がってるし、まずは前者から話そうか」

杏子「魔女が、生まれた、だと……?」

麦野「薄々感づいてただろ? 駆動鎧の中からソウルジェムが飛び出して、魔女が出現した。小学生でもわかる答えだ」

QB「正確には生まれたわけじゃないんだけどね。まあ、それは後で説明するとして、まず僕のメリットから答えようか」

QB「君たちはエントロピーというものを知っているかい?」

麦野「当然」

絹旗「超当たり前です」

滝壺「小学校で習った」

フレンダ・杏子・浜面「えっ」

 常識と言うかのように麦野、絹旗、滝壺は言い、それにフレンダ、杏子、浜面が思わず意外そうな声をもらした。

QB「知ってるなら話が早いね。この宇宙のエントロピーは増大し続けてることは知っているだろう? 断熱系でのエントロピーの減少は、自然状態ではあり得ない。
  その最終形にあるのが宇宙の熱的死だ。僕たちはそれを回避するために熱力学の法則に従わないエネルギーを求めていたんだよ」

 キュゥべえが一口で言い切る。

杏子「いや待て待て、わけがわからん。わかるように説明してくれ」

フレンダ「右に同じく」

浜面「同じく」

 そこで、杏子、フレンダ、浜面の三人が慌てて制止した。

QB「簡単に言うとだよ、宇宙はこのままではエネルギーが足りなくなってしまう、だから従来とは違う、新しいエネルギーが必要なんだ」

浜面「いきなり宇宙とか……何を言ってるんだ……」

 思わず、浜面が呟いた。

QB「まあ、話を続けるとだよ。そのエネルギー源が、君たち魔法少女なんだ。君たちの感情によって発生するエネルギーは熱力学の法則を凌駕する画期的でまったく新しいエネルギーだったんだよ!」

 まるで誇らしげにキュゥべえは言う。

QB「そして、そのエネルギーが放出される瞬間が、君たち魔法少女が絶望して、もしくはソウルジェムが穢れきって魔女になる瞬間なんだ。
  希望から絶望への落差がエネルギーを生み出しているってわけだね」

杏子「おいちょっと待て……魔法少女が魔女になるだと!?」

 理解が追いつかない様子だった杏子だが、その一言に反応した。勢いよく立ち上がり、キュゥべえを睨み付ける。

QB「特段おかしなことじゃないだろう? 君たちの世界では成長途中の女性のことを少女と呼ぶ。なら、いずれ魔女になる少女のことは魔法少女と呼ぶべきじゃないか」

杏子「っざけんな!」

 杏子の右手に槍が出現する。続いて狭い室内で器用に振り回し、穂先をキュゥべえに向けた。

QB「やめてくれないかな、僕という個体を殺しても、代わりはいくらでもいるけど、こんな僕でも死んでしまったらエネルギーの無駄なんだ」

 毛繕いをするように、愛らしい動作をしながら、キュゥべえは言った。そのギャップに、全員が絶句する。

QB「僕たちの星で完結できたら最高だったんだけどね、生憎、僕たちは感情というものを持ち合わせていなかったんだ。非常に残念だよ」

 残念と言いながらも、キュゥべえの言葉には感情がこもってない。

フレンダ「ふざけたこと……言わないでよ! 私たちはキュゥべえの餌ってわけ!?」

 フレンダも杏子と同じく立ち上がる。同時に右手にナイフが生み出された。

QB「僕たちの、なんて酷いなあ。僕たちは、宇宙の未来に向けて頑張ってるんだよ。君たちも感謝するべきじゃないかな?
  これから数百年、数千年先になるかわからないけど、君たち地球人も僕たちの仲間入りをするんだろう?」

 困った子供を宥めるように、キュゥべえは言う。

フレンダ「このっ……」

 フレンダのナイフを握る手に力が入る。

滝壺「やめようよ、フレンダ」

 そんなフレンダを、滝壺は言葉で制止する。

フレンダ「でも……っ」

 泣きそうな顔をして滝壺を見つめるフレンダ。しかし、滝壺は冷静に首を振る。

滝壺「キュゥべえをいじめても、何も解決しないよ。私たちは、私たちのできることをしないと」

QB「まったくわけがわからないよ。僕たちは仮にも、君たちを知的生物と認めた上で、願いを一つ叶えるという最大限の譲歩をしているというのに……何が不満なんだい?」

 何を考えてるんだと言わんばかりの口調。杏子の槍を握る手に力が入るが、滝壺が杏子を見つめ、制止する。

麦野「それ以上喋るな」

 静かに、怒気を含めて麦野が言った。

麦野「それ以上喋ると、殺したくなる」

QB「やれやれ……嫌われたものだね。君たちはいつもそ」

 麦野の言葉に反して、キュゥべえは答えた瞬間、青白い光線がキュゥべえの体を焼き尽くした。

 今度は、滝壺が止める暇もなかった。

麦野「喋るなって言っただろ」

>>679
むぎのんよくやった。

共食いの瞬間見せる訳か……

>>679訂正

滝壺「やめようよ、フレンダ」

 そんなフレンダを、滝壺は言葉で制止する。

フレンダ「でも……っ」

 泣きそうな顔をして滝壺を見つめるフレンダ。しかし、滝壺は冷静に首を振る。

滝壺「キュゥべえをいじめても、何も解決しないよ。私たちは、私たちのできることをしないと」

QB「まったくわけがわからないよ。僕たちは仮にも、君たちを知的生物と認めた上で、願いを一つ叶えるという最大限の譲歩をしているというのに……何が不満なんだい?」

 何を考えてるんだと言わんばかりの口調。杏子の槍を握る手に力が入るが、滝壺が杏子を見つめ、制止する。

麦野「それ以上喋るな」

 静かに、怒気を含めて麦野が言った。

麦野「それ以上喋ると、殺したくなる」

QB「やれやれ……嫌われたものだね。君たちはいつもそ」

 麦野の言葉に反して、キュゥべえは答えた瞬間、青白い光線に体を焼き尽された。

 今度は、滝壺が止める暇もなかった。

麦野「喋るなって言っただろ」

 沈黙が落ちる。戻ってきたばかりの時よりも、さらに重い沈黙だ。

キリカ「ふわぁ……話終わった?」

 その沈黙をキリカの声が破った。

浜面「お前……あんな話を聞かされて、平気なのか?」

キリカ「別に。私はそんなことには興味ないからね。私が興味あるのは織莉子のことだけさ」

浜面「そ、そうか……」

キリカ「んーん、むしろ、私にはなんでキミたちがあんな話で落ち込んでるのかわからないよ。
   人間だって有限、魔法少女だって有限。人間が寿命を迎えたら肉塊になって、魔法少女が寿命を迎えたら魔女になる、それだけだろう?」

 大きく伸びをしてキリカは言う。

キリカ「別に今日明日に寿命が来るわけじゃないし、今考えるのは、今日明日に死にそうな現状のことじゃないかな? 私は織莉子のところに生けないなんて死んでも嫌だよ」

フレンダ「それも、そうね……いつか魔女になるって言っても、結局、私が一度死んで生き返ったことは確か。
     二度目の人生、そんな長いものにはならないかもしれないけどさ、最初から、私のやることは変わらないってわけよ」

杏子「そうだな……いつか魔女になるなんて、今心配することじゃない。私も、ゆまの様子を確かめる、この事件の真相を確かめる、そのやることは変わらない」

 ぼふんとソファーに座り直して、杏子は言う。次いで、全員を見渡す。

杏子「あんたらはどうするんだ? 別に魔法少女ってわけでもないし、いっそ他人事でもいいんだぞ」

絹旗「今更超何を言ってやがるんですか」

 憮然として、絹旗は言う。

浜面「ここまで来て、後に引けるわけないだろ」

 意外そうに、浜面は言う。

滝壺「一蓮托生」

 端的に、滝壺は言う。

麦野「それに私らは、フレンダのためにやってやろうと思ったのよ。フレンダが抜けないなら、私らも抜ける理由はない」

 そしてきっぱりと、麦野が言った。

フレンダ「麦野ぉ……」

麦野「はいはいよしよし」

 その言葉にフレンダは感極まった様子を見せ、麦野はそんなフレンダの頭を慈しむように撫でた。

シャワー浴びてくる

>>681
焼き尽くした後に何も残ってないような。

絹旗「今更超何を言ってやがるんですか」

 憮然として、絹旗は言う。  ←

浜面「ここまで来て、後に引けるわけないだろ」

 意外そうに、浜面は言う。  ←

滝壺「一蓮托生」

 端的に、滝壺は言う。  ←

麦野「それに私らは、フレンダのためにやってやろうと思ったのよ。フレンダが抜けないなら、私らも抜ける理由はない」

 そしてきっぱりと、麦野が言った。  ←


なぁ、この地の文って必要なの?
テンポ悪くして読み辛くするだけだろ

地の文なきゃ行動理解出来ないじゃん

>>704
基本的に台詞の前の名前はないものとして地の文を書いてる
あるものとして書こうと思ったらこんがらがりそう
でも台詞の前の名前を削るとそれはそれでとっつきにくくなると個人的に思うから外せない
大体こんな感じの折衷案やってる

文章力はSS、というかこういう文章書くのが大体一年半ぶり以上だから許してくれ


続き書く

>>708
行動っていうか、誰が喋ったか書いてるだけじゃん
「」の前に名前が書いてあるんだから、同じことを2回繰り返して書いてるのと同じだろこれ
地の文自体は否定しない、必要なら

――
「主任、緊急事態です!」

「どうした?」

「例の『原子崩し』のグループがこの研究所に向かっています!」

「馬鹿な、どういうことだ……!?」

「場所が割れたとしか……」

「どうして場所が割れるんだ! どうしてやつらが来る必要がある! 私たちは狩る側だ、やつらが来るなんて、ただの自殺行為だぞ!」

「わ、わかりかねます……」

「壊れたUMAの修理にあとどれくらいかかる?」

「パーツの交換のみで、三十分もあれば……」

「三十分! そんな時間があればやつらはここに辿り着く!」

「で、ですが……」

「人工UMA部隊は!?」

「まだ戦闘可能な肉体年齢に達するまで通常プランで成長促進剤を投入すると四日は……」

「構わん、今すぐ全て投入して無理矢理にでも成長させろ!」

「しかし、そんなことをしては肉体崩壊が……」

「そんななりふり構ってる場合か! 今の状況がどんなものかわかってるのか!?」

「それは……」

「巴マミとの戦闘でUMAは激しく損傷、すぐに動かせる人工UMAもいない……
 この状況で、こちらの場所が割れ、常識的に考えれば自殺行為のはずの襲撃を仕掛けられる。
 どう考えても内通者がいるとしか思えない!」

「内通者……!」

「狩る側が狩られる側になるだと? そんな馬鹿なことがあってたまるか!
 どんな手を使ってもいい、UMA修復までの時間を稼げ!

 やつらに、目にものを見せてやる」

前スレから見てるけど、>>1000までには終わるんだろうな?

――
フレンダ「……ここってわけね」

 携帯の地図ソフトとキリカの持っていた地図を見比べて、確認。

 フレンダと杏子とキリカと麦野と絹旗と滝壺と浜面は、目的の、全ての真相が詰まった研究所にやってきた。

 それは小規模な研究所だった。一戸建ての家が三軒収まる程度の敷地に、白い、小綺麗な建物。

杏子「お出迎えが待ってやがるよ」

 そこの入り口に、不釣り合いな真っ黒の機体が並んでいた。

 駆動鎧。魔法少女が入り、フレンダたちを散々苦しませた技術の塊。

 それが全部で十四体。

浜面「戦力、全然あるじゃねえか……」

キリカ「おっかしーなー。あと四日は補給できないはずなのに」

 枯れた声の浜面に、キリカは悪びれもしない。

麦野「外注か、何かは知らないが、やることは変わらない、だろ!」

 そう言って、麦野は原子崩しを発射する。

 それは駆動鎧の内の一体に直撃し、爆発。さらにそのまま腕を振るって、二、三体目も原子崩しが貫いた。

>>717
終わるつもり

 四体目になって初めて駆動鎧は反応する。

 何重もの結界が発生し、原子崩しの光線を弾き飛ばした。

フレンダ「こいつらも魔法少女なの!?」

杏子「一体どうなってやがる、そんなホイホイ連れてこれるもんじゃねーぞ!」

 その様子に武器を生み出しながら驚く杏子とフレンダ。

キリカ「そんなのどうでもいいよ」

 気がつくと、キリカはもう他のメンバーのところにはいなかった。

 キリカは駆動鎧の張った結界に爪を叩き付ける。一度ではない。一瞬で五度だ。

 動きを遅くする魔法を使って、相対的に速くなったキリカの連続攻撃。一撃一撃が重い威力を持っており、それは結界を軽々と食い破った。

キリカ「みんなこんなのに苦戦してたの?」

 駆動鎧たちが結界が破られて、次の行動に移る前に、キリカは既に駆動鎧の懐に入っていた。

 かぎ爪が駆動鎧の腹部を貫通する。キリカに襲われた駆動鎧は上下真っ二つとなった。

浜面「は、はええ……」

 キリカの動きを見て、浜面が感嘆の声をこぼす。

麦野「いや、あいつが速いだけじゃない、駆動鎧どもの反応が明らかに鈍い。こいつらは雑魚ね、さっさと潰すわよ」

――
「くそっ! もう全滅か! UMAの修復まで、あと何分だ!?」

「パーツの交換は終了しました! 残りはソフトウェアのインストール……かかる時間は三分です!」

「三分……ならいい、私たちが直接出迎えよう」

保守

――
 数分とかからず、駆動鎧の部隊は全滅。研究所前で動くのはフレンダたちのみとなった。

杏子「オラァ!」

 戦闘の余波でひしゃげたドアを杏子が蹴り開ける。

 杏子に続いて、残りの六人も研究所に突入する。

「ようこそ、水穂機構・新病理解析研究所へ」

 そこに、男の声が出迎えた。

 中年の男だった。脂汗を顔中に貼り付け、頭頂部には髪がない。

 その隣には縮こまるようにして震えている若い男がいた。

 二人とも白衣を着ているところから察するに、研究者のようだった。

杏子「誰だテメーらは」

 鋭く睨んで、杏子が槍を突き付ける。

「なあに、今はまだ名乗るほどの者じゃないさ」

 中年の男はニヤニヤと、気色悪い顔を貼り付けたまま答える。

杏子「じゃあどうでもいい、ゆまの居場所を教えるか、死ぬか、好きな方を選ばせてやる」

「UMA? そうか、君たちはあれが目的だったのか!」

保守

フレンダ「とぼけない方がいいってわけよ。この研究所に、ゆまって子がいるのはわかってるってわけよ」

 ナイフを構えたフレンダも一歩前に出る。ハッタリではない、この研究所にはマミの散った場所で感じた魔力が確かに漂っていた。

「そう焦らない。おい、玄関のモニターにUMAの水槽を映せ」

 中年の男が天井の角を向いて、一言。

 すると、フレンダたちの左手から光が射した。その方向を見れば、大きなモニターが壁に貼り付けられている。

「見たまえ、これが私たちの研究だよ」

 そのモニターに、少女が映し出されていた。

杏子「ゆまっ!?」

 少女は一糸まとわぬ姿で水槽に浮いていた。起きる様子はなく、まるで生気を感じさせずに水槽を漂っている。

 耳、鼻、口、と体のありとあらゆる穴にチューブが接続され、また、体中に電極が張り巡らされていた。

「そうUMAだよ。初めて発見したとき、そう自称したんだ。彼女の生態には驚いた。

 男は自分の成果を自慢するかのように言う。

「体中、いくら調べ尽くしても、肉体は人間と変わらないのだが、彼女は既存の能力研究では説明のつかない能力、また、宝石のようなコアを持ち、それが無事である限り、人間なら死ぬような実験も、耐え抜く
 最早この生物は、既存の生物学すらも覆す! まったく新しいUMAなのだよ!」

なんで宝石が無事なら死なないってわかったんだよ

宝石破壊しなきゃわからないだろ

>>731
あ、人工UMAの説明入れるの忘れてた・・・SS終わったら補足する

杏子「テメェ……ゆまに……ゆまに何しやがった!!」

「何って、至って普通の人体実験さ。精神が壊れてしまったのか、起きなくなってしまったがね」

 そこが、杏子の限界だった。

杏子「こっんの糞禿げェェェェェェェ!」

 激昂した杏子が床を蹴る。

 中年の男はそれを予想していたらしい。若い男の首根っこを掴み、杏子の前に差し出した。

「ひぎぃっ」

 若い男に腹部に深々と杏子の槍が刺さる。若い男は白目を剥いて、すぐに意識を失った。

絹旗「清々しいほどの超クズですね……」

 見下すように、絹旗が睨んで言った。

「なんとでも言うがいいさ。ほら、もう三分だ」

杏子「は? 何を言って――」

 その瞬間、奥の壁を突き破って、純白の羽が飛び出してきた。

 間一髪、杏子は反応して、避ける。しかし、避けきれない。

 僅かに擦っただけで杏子は激しくはじき飛ばされ、床を転がった。

 そして、壁に空いた穴から、それは歩いて来た。

 それは小さかった。身長はフレンダの胸元くらいしかないだろう。

 真っ白で、顔も鼻も口もないのっぺりとした楕円形の顔面部。

 黒い皮膜を使った大量のケーブルがうねるようにして絡み合い、足が二本、手が二本の人型を作っていた。

 ケーブルが多すぎるためか、身長に似合わず、それはずんぐりとした体躯だった。

 特徴的なのはその背中。

 一対の、純白の羽が生えていた。

「今は、この子がUMAだ。これは能力者を再現したちょっと特殊な駆動鎧でね、ここには人間が乗るのが必須だった。しかし、そこにUMAのコアを組み込んだんだ」

 UMAの肩を叩きながら、誇らしげに男が言う。

「そうしたら、見事に起動してくれたよ! この技術を応用すれば『多重能力者』も夢じゃない!」

杏子「この禿げ……!」

 はじき飛ばされた杏子だったが、大きな怪我はないらしい。すぐに立ち上がる。

「自我はないようでね、全てプログラムした通りに動いてくれる。しかし、発想力、思考力は人間のものを使うことができる。無人兵器としてもこれは画期的だ!」

浜面「腐ってやがる……」

 浜面が滝壺を守るようにして立ち、銃を構える。

キリカ「学園都市なんてみんなそうじゃないの?」

 キリカが動きを遅くする魔法を発動し、かぎ爪を構える。

麦野「そうね、まあまた学園都市らしく、胸くそ悪い研究者だこと」

 麦野が原子崩しをいつでも発射できるように演算を始める。

絹旗「『木原』の人間ですかね? それにしては超小物ですけど」

 絹旗が殴りたいものをすぐに殴り飛ばせるように拳に窒素を一際纏わせる。

フレンダ「どちらにせよ、あれだね」

 フレンダが片手にナイフを構えたまま、時限式爆弾を取り出す。

滝壺「ブチコロシ確定ってやつだね、きょうこ」

 滝壺が浜面の後ろに隠れながら研究所に流れる異常なAIM拡散力場を読み始める。

杏子「当たり前だ……!」

 そして起き上がった杏子が六人の下へ戻り、槍を構える。

「せいぜい頑張りたまえ」

 UMAが、起動した。

 背中の羽を羽ばたかせ、僅かに宙に浮く。

 ぶわっと、背中から羽が二対追加される。

 羽は計三対、六枚。

 まるで歪な天使のよう。

 そして、のっぺりとした顔面部に、英字が青色LEDライトで示されていた。

 浜面が、それを見て、驚愕する。

浜面「嘘だろ……!?」

 英字は、こう書かれていた。


 ――FIVE_Over.Modelcas_"DARKMATTER"


浜面「気をつけろみんな! あれは、学園都市第二位を、垣根帝督を越える駆動鎧だッ!!」

 UMAが、起動した。

 背中の羽を羽ばたかせ、僅かに宙に浮く。

 ぶわっと、背中から羽が二対追加される。

 羽は計三対、六枚。

 まるで歪な天使のよう。

 そして、のっぺりとした顔面部に、英字が青色LEDライトで示されていた。

 浜面が、それを見て、驚愕する。

浜面「嘘だろ……!?」

 英字は、こう書かれていた。


 ――FIVE_Over.Modelcase_"DARKMATTER"


浜面「気をつけろみんな! あれは、学園都市第二位を、垣根帝督を越える駆動鎧だッ!!」

やはりフレンダなら最終ウエポンで
爆弾を出して欲しいな。(魔法の)

保守

 音が消し飛んだ。

 UMAが軽く羽ばたいたと思うと、爆発が巻き起こる。

 研究所の入り口が、杏子が、フレンダが、キリカが、麦野が、絹旗が、浜面が、滝壺が、吹き飛んだ。

 研究所の入り口に面する方向が、丸ごと更地になっていた。

フレンダ「大丈夫、みんな!?」

 真っ先に起き上がったのは、フレンダだった。爆発をまともに受けても、フレンダには傷一つない。

杏子「なんとか、な……」

キリカ「私たちなら平気だよ」

 魔法少女二人が立ち上がる。

絹旗「私の取り柄は超頑丈なことなので」

麦野「これくらいどうってことないわよ」

 能力者二人が立ち上がる。

浜面「運良く瓦礫がクッションになったみたいだ」

滝壺「はまづらがいたから大丈夫」

 残る二人も立ち上がる。

 そんな七人の上空に、UMAが物理法則を無視するかのような動きで、浮いていた。

フレンダ「もう来たわけっ!?」

 ナイフは通用しないとの判断か、フレンダは懐から小型のミサイルを取り出す。

杏子「待て! あれの中にはゆまのソウルジェムが埋め込まれてるんだぞ!」

 それを放とうとしたフレンダを、杏子が慌てて制止した。

フレンダ「じゃあどうしろって言うわけよ!」

杏子「無力化してソウルジェムを引っ張り出す!」

フレンダ「そんな無茶な!」

 言い争ってる二人へ、翼が目にも止まらぬ速度で伸びる。

フレンダ「くっ……」
杏子「話し合ってる時間もねえってか!」

 そうして、二人が結界を張ろうとして、

麦野「どいてろ!」

 麦野が原子崩しの盾を作る。

 電子と羽が激突し、その組み合わせでは決してあり得ないような、甲高い音が響き渡った。

麦野「こいつの攻撃ににお前らのバリアは多分意味がない!」

 間髪入れず、別の翼が横殴りに襲いかかる。

麦野「さっきので学習しろ!」

 だが、麦野がもう一つ、原子崩しの盾を発生させた。羽はそれで止まる。

杏子「すまねえ!」

 その隙に、杏子が銃弾のように飛び出した。

杏子「うらぁっ!」

 杏子は伸びていた羽に、思い切り槍を叩き付ける。

 ゴッキィィィンという耳をつんざく音がするが、羽には傷一つついていなかった。

ほらあれだよ魔法

 一瞬、攻撃で杏子の動きが止まる。そこを、さらに別の羽が襲いかかった。

フレンダ「何やってんのさ!」

 フレンダが、杏子を突き飛ばして、羽は空を切る。

杏子「無力化だよ! こいつの攻撃手段は羽だ、羽を潰せば無力化できる!」

フレンダ「……なるほど!」

 フレンダも手榴弾を取り出し、羽へと投げつける。

 凄まじい勢いで投げつけられた手榴弾は本来の爆発のタイミングを迎える前に爆発した。

 しかし、やはり羽は無傷。汚れすらついていなかった。

フレンダ「でもこんなのどうやったら壊せるわけー!」

 二枚の羽がフレンダと杏子を襲う。しかし二人は、麦野たちの下へ再び戻り、これを回避する。

 麦野たちへも二枚の羽が襲いかかっており、原子崩しの盾で一瞬、動きが止まっていた。

 フレンダがそれにナイフを投げつけるが、やはり弾かれて、効果はない。

保守

さるよけ

キリカ「さっきから何やってるのさ!」

 再び集結したところで、キリカが叱咤する。

フレンダ「いや、あの羽壊せないかなー、って」

杏子「そうしたら無力化できるだろ?」

 さも大発見のように、二人は言う。

キリカ「それは無理だよ! 私と恩人がやってもダメだった!」

麦野「私も無理だと思う。原子崩しとぶつかっても消滅しないってことは、この世じゃあり得ない硬度を持ってるってことになる。
   まさしく第二位の能力通り、な」

フレンダ「ダメかっ……」

 経験者と、超能力者の言葉にフレンダは落胆する。

 そこへ、今度は四枚の羽が左右、前、上空から襲いかかる。

 麦野の原子崩しの盾は両手から生み出している。つまり、二枚が限界。

麦野「逃げろ!」

 麦野が鋭く指示する。
 キリカと杏子とフレンダは魔法少女の身体能力で、絹旗と麦野は能力で、浜面と滝壺を連れて退避した。

麦野「くそっ……厄介だな……」

絹旗「麦野以外、防御不可に、ソウルジェムの人質ですか……どうすれば……!」

 七人は能力者と、魔法少女とで二組に分散。これでUMAが羽の枚数を分散してくれるのならば、非常にやりやすいだろう。

 だがそれは根本的な解決にはならない。逃げ続けていれば、いつか追いつかれる。

 そもそも、UMAを攻撃しようと、二枚の羽が常に防御用にストックされていて、攻撃が通りそうもなかった。


QB『大分困っているようだね』


 そこで、麦野、絹旗、浜面、滝壺の脳内に、キュゥべえの声が響いた。

浜面『お前、生きてたのか……!』

QB『言っただろう? 代わりはあるって』

 羽が二枚、襲いかかる。運が良いのか、羽は分散されたようだ。

保守

QB『それよりも。君たちが戦っている千歳ゆま、あれをどうにかする方法があるんだ』

麦野『一応言ってみろ』

QB『もう予想はついているようだね。簡単さ、僕と契約して』

麦野『断る』

 キュゥべえの言葉を遮り、麦野は即答する。

QB『やれやれ……一番手っ取り早い方法だと思うんだけどな』

麦野『言いたいことはそれだけか?』

QB『いいのかい、君たちじゃ、恐らくアレに勝つのは無理だと思うよ? 中のソウルジェムごと破壊するという方針をとっても、ね』

絹旗『そんなの、やってみなくちゃ超わかりませんよ』

QB『やるって、具体的に何をやるんだい?』

絹旗『そ、それは……』

QB『少なくとも、あの翼を壊す方法は、君たちの今の持ちうるカードの中には存在しないことは確かだね』

絹旗『っ……』

QB『そもそも、無力化してソウルジェムを取り出す、と杏子は言ったけど、それがどこにあるかなんてわかるのかい?』

vs5overていとくんとか盛り上がりそうなのにあまり盛り上がらんな
文体がかまちーチックなのはさておいても

滝壺『わかるよ』

 横から、滝壺が言った。

浜面『本当か!?』

滝壺『うん。まずあの駆動鎧、多分、能力で作られたものだと思う』

 二枚の羽の攻撃が、唐突に止んだ。運がいいのもここまでらしい。

 フレンダたち、魔法少女の組に力を集中させる判断を取ったようだ。

滝壺『魔法と能力は相容れないものなのかもしれない。明らかに一部分、バランスが崩れてる場所があるよ。

   多分、そこにソウルジェムが埋め込まれてる』

QB『……そうかい。でも、それがわかったとして、どちらにせよ、君たちがあの翼を攻略不可能な事実は変わりないんだよ?』

浜面『……いや、攻略可能だ』

 思いついたように、浜面が言いだした。

浜面『翼が壊せないなら、壊さなきゃいい。あいつが今の戦法を続けるなら、ソウルジェムの場所がわかるなら、打つ手は、ある』

ダメだ、すまん、眠くてもう頭が働かん・・・
盛り上げようと思ったのに戦闘描写が何も思いつかん・・・

少しだけ寝させてくれ

できねーよ

というかさっさと落としてSS速報に誘ってやれよ
まだ書き溜めして丸一日で終わらせたほむら「幻想殺し…?」の方がマシ


いやごめん内容が微妙にこっちの方が納得行くからどっこいぐらいでした

保守本当にありがとう・・・!
仕事の面接があるから10時には出ないといけないけど、それまで書く

――
杏子「運がいい、こっちが二手に分かれたお陰か、羽の数が分散してるぞ!」

 二枚の羽がフレンダたちを襲う。

 その速度は、杏子ならともかく、通常、フレンダ程度では反応するのも難しいほどのはずだった。

 しかし、キリカの魔法は、速度を遅くする魔法。その恩恵を受け、相対的に速くなったフレンダは、なんとか避けることが可能になっていた。

 よって、二枚の羽は杏子たちのいた場所を襲うが、三人は既にそこにはいなかった。

 外れても、爆発が巻き起こる。地面にクレーターができ、爆風が避けたはずの三人の体を叩いた。

キリカ「くっそー、やっぱり滅茶苦茶な威力だっ!」

フレンダ「二枚だって言っても、こんなの避け続けてたら体が保たないってわけよ!」

 爆風に体を運ばれながらも、上手く体勢を立て直した二人が地面へと着地する。

 だが、安堵の息を吐く時間すらUMAは与えない。

 その時には、既に羽がフレンダとキリカに追撃を行っていた。

キリカ「もう来たか……!」

フレンダ「げっ……」

 身体能力に優れたキリカは余裕を残しながらも避けるが、羽の生み出す風圧は、最早爆風だった。

 キリカはその流れに逆らわず、風に乗って、羽からさらに距離を取る。

 一方フレンダはなんとか反応が間に合った程度だった。手に持ったナイフを盾のようにして、羽を受け止める。

 当然、そんなもので防げるはずがない。

 ナイフを砕き、貫通し、フレンダの肉体を羽が貫通した。

杏子「フレンダァ!」

 その羽を、杏子が槍で切り裂こうとする、否、叩き砕こうとする。

 凄まじい金属音が衝撃波として撒き散らされ、槍は自身の力に耐えきれず、折れる。

 それでも、もちろん羽は無傷。杏子の努力が虚しくなるほどに、無意味だった。

 しかしその感情を認識する暇はない。

 キリカを攻撃していたはずの羽が杏子の体を串刺しにせんと肉薄していた。

 轟ッ!! 羽と羽がぶつかり合い、再び音が消し飛ぶ。爆発が起きた。

杏子「がはっ……」

 爆発に吹き飛ばされた杏子が、数度バウンドし、地面に叩き付けられる。

 幸いなことに串刺しにはならなかった。

キリカ「だから無駄だって言ってるって!」

 キリカが間一髪のところで杏子を吹き飛ばしたからだ。

杏子「お前、それ……!」

 見ると、キリカには何かが足りなかった。

 腕だ。左腕の、肘から先が抉れるようにしてなくなっていた。

キリカ「ん? ああ、これ。いいよ、痛覚遮断してるから」

 なんでもないように、キリカは言う。

キリカ「むしろ腕一本だけで儲けものさ。恩人はよくもあんな化物と一人で戦えたものだね」

杏子「そりゃ、そうだが――っ!」

 再び、UMAは攻撃を行っていた。

 今度は、羽ではなかった。ずんぐりとした、あの機体が矢のように杏子とキリカの下へと飛んできたのだった。

 差し出されるのは小さな拳。

杏子「何っ!?」

 杏子の意識が羽ではないと判断したことにより、反射的に、杏子はその拳を受け止める。

 それは明らかに失策だった。

 鈍くて湿った、嫌な音と共に、杏子はノーバウンドで吹き飛ばされる。

キリカ「こいつ!」

 キリカは悲観などしない。

 チャンスとばかりに、間髪入れずにキリカがかぎ爪でUMAに切りかかる。

 ソウルジェムなど、気にせずに。

 しかし、そんな容赦のない攻撃も、羽に軽々と受け止められ、さらに別の羽がキリカのかぎ爪を砕く。

 そして、キリカの脇腹にUMAの蹴りが突き刺さった。

キリカ「あぅっ!」

 一度地面に激しく叩き付けられた後に、バウンドしてキリカは大きく打ち上げられる。

 そこに、羽が迫っていた。キリカの肉体を両断せんと、振り下ろされていた。

 その時、羽に爆発が巻き起こる。

 威力のあまり起こる爆発ではなく、単純な爆弾の、爆発。

 その爆風に運ばれて、キリカが宙に投げ出される軌道が大きく逸れた。

 ギロチンのような勢いの羽が、先ほどまでにキリカが通ろうとしていた軌道を両断する。

 しかし、キリカには当たらない。

キリカ「――はっ!」

 連続的に起きる事態に対応しきれずもみくちゃになったキリカは背中から地面に着地する。肺の中の酸素が残らず吐き出された。

フレンダ「キリカ、大丈夫!?」

 そこに、フレンダが駆け寄った。見れば、フレンダは未だ無傷だ。いや、無傷のはずがない。

 確かに、フレンダは一度羽に貫かれていた。深々と貫かれ、鮮血を撒き散らしていた。

 それでも、フレンダは無傷だ。血の汚れすら、服についていなかった。

 だがキリカにはそんなことはどうでもいい。キリカは重大なことに気がついたのだ。

キリカ「だいじょうばない! あいつ、学習していってるよ!」

フレンダ「学習!?」

キリカ「羽だけの攻撃じゃ効率が悪いって判断されたのか、肉弾戦もやってきた! しかも、羽より速い!」

フレンダ「ってことは、長引けば長引くほど、強くなるってわけ……!?」

 絶望的な表情で、フレンダは言う。

 その二人の会話はそれ以上続けられなかった。

 ばさりと、羽ばたく音がする。

 弾かれるようにそちらを見ると、先ほどまでは二枚をフレンダたちへの攻撃に、二枚を麦野たちへの攻撃に、二枚を自身の防御に回していたUMAが。

 防御を解き、麦野たちへの攻撃を止め。六枚の羽をフレンダたちに向けていた。

キリカ「重点的に、こっちから攻撃するつもりか……!」

 UMAは一際大きく、羽を羽ばたかせる。烈風が舞い起こる。

 逃げ場はない。大規模な広範囲攻撃だった。

 フレンダがキリカを抱きしめるようにして、盾になる。だが、踏ん張りは効かない。

 そのまま二人は風に身を切り裂かれて、吹き飛ばされ。
 さらに烈風が今度は上空から地面へと吹きつけ、二人は地面にめり込むほど激しく叩き付けられる。

 もちろん、勢いを殺す着地など、成功するはずはない。

フレンダ「あぐぅ……!」

 フレンダがクッションになり、盾になり、キリカに大きなダメージはない。

 それでも状況は最悪だった。UMAの羽で中程から両断されたビルが、二人の下へ倒壊してきたのだ。

キリカ「やばっ――」

 ビルが二人を押し潰すより早く。巨大な槍が倒壊してきたビルに突き刺さった。

 ビルは砕け、また吹き飛ばされ、フレンダとキリカへ降り注ぐのは小さな欠片のみとなる。

 杏子だった。杏子が、巨大な槍を形成し、投げやりのように凄まじい速度で射出したのだった。

杏子「大丈夫かっ……!」

 杏子が二人の下へと舞い戻る。

フレンダ「だいじょうばないって! こんなのどうしようもないわけよ!」

 フレンダが焦燥しながら言う。フレンダの体中に刻まれた切り傷はいつの間にか消え去っていた。

浜面『いや、どうにかする方法はある!』

フレンダ「浜面っ!?」

 そこで、三人の脳内に直接浜面の声が届いた。テレパシーだ。

杏子『どうにかする方法だと、今すぐ教えろ!』

 気がつくと、UMAがまた目前へと迫っていた。

 今度は吹き飛ばされない。羽の攻撃でないなら、三人の作った結界で受け止めることが可能だった。

浜面『こいつは『未元物質』の能力を使ってるからって、何も垣根本人、能力者じゃない! 駆動鎧だ!』

 拳と結界が激突する。ゴパッと爆音が鳴り響くが、それは確かに停止した。

浜面『能力が攻略できなくても、能力を使えなくすればいい!
 前に『超電磁砲』のモデルと俺はやり合ったことがある、そのモデルはレールガンを放つ銃身があった!』

 羽が展開される。四枚の羽が、二枚の羽の二倍の威力で三人へと襲いかかった。

浜面『それなら、こいつにも『未元物質』を作り出す部位があるはずだ! そいつを壊せば、こいつは能なしになる!』

 間に合わない、と判断したキリカが、全力で魔法を発動させた。

 大幅に羽の速度が低下する。その隙に、三人は三方へ散り散りとなった。

杏子『でもそんなもん、どこにある!?』

 UMAはまだ敵が散開した状況を効率的に処理することができないらしい。動くまでに、ラグが生まれた。

浜面『滝壺の話だと、全身に能力が供給されてるが、顔面と羽の根本が特に強いらしい。そのどちらかを壊せば、あるいは!』

 幾度攻撃しても回復し、のれんに腕押しのフレンダ。UMAから見て、唐突にスピードを上昇させることのできるキリカ。そして基本的な身体能力が最も高い杏子。

浜面『常識的に考えれば、顔面部が一番重要かもしれない。でも相手は『未元物質』だ、俺は羽が怪しいと思ってる……いけるか!?』

 UMAが選択したのは、杏子だった。

フレンダ『やってみる価値は、あるってわけよ!』

 そうして、杏子へと向き、フレンダから背を向けたUMAの背中に、フレンダはナイフを射出した。

 しかし当然それは羽の壁に弾かれる。

 ナイフは一瞬の内に数十発放たれたが、一本すら届かない。

 ちらりとフレンダの方向をUMAが振り返ると、杏子へと向かいながらも、フレンダを両断しようと羽を振り回す。

フレンダ「わわっ!」

 フレンダは大きくジャンプし、これを躱す。

 その隙に杏子はさらに遠くへと逃げた。燃費など考えない、全力疾走だ。

 それでも、UMA本体がコンスタントに出せる速度と五分五分程度だった。

フレンダ「結局、数で押してもダメってわけ……!」

 全力疾走の杏子に追いつこうとするのは効率が悪いと判断したのか、UMAは烈風攻撃に切り替える。

 大きく羽ばたくと、烈風が舞い起こり、竜巻が生まれた。

キリカ『いや……数はありかもしれないね。恩人がやっていたよ!』

 その烈風は、直接杏子を狙ったものではなかった。フレンダを狙ったものでも、キリカを狙ったものでもなかった。

キリカ『恩人は一人で多段攻撃を行おうとしてたけど、私たちは人数がある! この人数差で多段攻撃を仕掛けよう』

 瓦礫だ。戦闘の余波で倒壊したビル、建物の亡骸が上空へと舞い上げられる。

 UMAが再び羽ばたく。羽を羽ばたくだけでは絶対に起きないような、上空から地面へと叩き付けるような烈風が吹き荒れた。
 その烈風に加速させられ、砲弾となった瓦礫の雨が地面へと降り注ぐ。マミの連続攻撃のような、爆撃が降り注いだ。

キリカ『作戦は、そうだね、私と佐倉杏子があの羽を引きつける、その間によろしく頼むよ』

 瓦礫たちは空気抵抗で発生した熱で真っ赤に染まり、まさしく爆撃のよう。

フレンダ『それでいいわけ!?』

 最早、それは隕石だった。一撃一撃で地面に大きな穴が空き、爆風が撒き散らされる。

杏子『あたしは構わねえ! あいつの速度に追いつけるのは、あたしとキリカだけだからな!』

 三人は、結界を傘のようにして張る。ドガガガッと流星の雨が降り注いだ。

フレンダ『……了解!』

 結界によってなんとか身を守ることができたが、その代償は大きい。杏子は、足を止めて防御する他なかったのだ。

 そんな杏子に、猛スピードでUMAが迫る。

キリカ「私たちのことを忘れてるよっ!」

 そのUMAより速く、いやそのUMAを遅くして、キリカがUMAに追いつく。

 肉体を狙って、かぎ爪を一閃。しかし、それは羽に受け止められる。

 その間に杏子も体制を建て直す。今度は逃げるのではない、直接向かって行く形になった。

 そんな二人を、UMAは六枚の羽を振り回して撃退しようとする。

 キリカが再び、最大限に魔法を発動し、速度を低下させる。魔力の消費など度外視の最大限だ。

 そうして、杏子とキリカは難なく羽を避ける。

杏子「フレンダ、今だ!」

フレンダ「おっけー!」

 その隙を狙って、フレンダがナイフを大量に射出した。速度は音速を優に超えている。

 こちらも、魔力の消費スピードを考えない、最大の攻撃。

フレンダ「行ッッッけェェェェェェ!」

 ――だが、その努力も虚しく。羽はそれを防ぎきる。

 顔面部から、さらに一枚、七枚目の羽が生まれていた。

杏子「こいつ――ここに来てまだ隠し球を……っ!?」

 楽々とナイフを防いだ後、一対を杏子に、一対をキリカに割り当てたUMAは、残りの一対をフレンダへと割り当てる。

フレンダ「えっ――」

 最大の攻撃を放った後か、フレンダの反応が遅れた。
 羽はフレンダの体を透過していた。いや、フレンダの体が、両断されていた。

 フレンダの下半身が、吹き飛んだ。



フレンダ「――今だよ、麦野!」

麦野「よくやった、フレンダ!」


 そうして、全ての羽が攻撃に割り当てられた瞬間。

 青白い光がUMAの背面を焼き尽くした。

 UMAは反応すらできなかった。

 UMAが、戦闘開始から初めて、自分の意思に反して、宙を舞う。

 純白の羽が、『未元物質』の羽が、虚空に溶けるように消える。

 どしゃりと、UMAが受け身も取れずに地面を転がる。

 UMAは、ぴくりとも動かなくなった。

絹旗「フレンダ、超大丈夫ですか!?」

 そこに、浜面、麦野、滝壺、絹旗が合流した。

フレンダ「まあね、なんともないってわけよ」

 フレンダは、力強く直立していた。

 吹き飛んだはずの下半身が、服ごと再生されていた。

杏子「おいおい、どんな魔法だよ……もうそれは回復魔法の域じゃねえぞ」

 そんなフレンダを見て、杏子が呟く。

フレンダ「へっへーん、フレンダちゃんは無敵ってわけよ」

 自慢げに、ない胸を反らすフレンダ。

浜面「やった、のか……?」

 そんな六人を尻目に、浜面は恐る恐る、UMAを覗き込む。

 UMAは静止しているように見えた。それを見て、浜面は安堵の息を吐く。

浜面「ふぅ……なんとかなっ」

 ――たか、とは、続かなかった。


 UMAがふらりと、立ち上がった。

杏子「こいつ、まだ……!?」

 臨戦態勢を整える杏子。

キリカ「いや、様子がおかしい!」

 同時に、キリカが重要なことに気がついた。

 UMAの体が、仄かに光っていた。

フレンダ「嘘……まさか……」

 吹き飛ばされて、ボロボロになった体を光が包む。


 ――傷が、修復されていっていた。


 ばさり。再び、三対、六枚の羽がUMAの背後に形成される。

麦野「こいつもぶっ壊しても再生するのか――っ!!?」

 UMAの顔面部に英字が青色LEDで浮かび上がる。

 Restart、と。

面接行ってくる

あの人でも死者は蘇生できません
そもそもソウルジェムぶっ壊れてるだろ

ただいま。今から書く

運良くソウルジェムが体から100m離れた状態でぐちゃぐちゃになったんなら生きてるかもしれないけど
それ以外の場合は「あ、死んだわこれ」って絶望して魔女になるってブチさんが言ってたよ

まぁわざわざ肉体保存してるしなにかしらあるんだろうけど

――
 遠くで連続した爆発音が聞こえる。凄まじい戦闘のようだ。

 FIVE_Over.Modelcase_"DARKMATTER"に組み込まれたゆまと、フレンダたちの戦闘は研究所からどんどん離れて行っているらしい。

 研究所の入り口を守っていた駆動鎧たちは粉々になっていた。

 キュゥべえがその駆動鎧のコックピットを、耳から伸びた器官で開ける。

QB「なるほど、事件の真相はこういうことだったんだね」

 そこに、千歳ゆまが乗っていた。

 別の駆動鎧のコックピットを開けても、そこにも千歳ゆまが乗っていた。

 そこは、千歳ゆまだらけだった。

QB「千歳ゆまの体細胞クローン、だね。しかしすごいなあ、クローンと言ってもそのままの姿になるとは限らないのに、瓜二つだ」

 しかし、ほとんどは、人の形をしていなかった。指が六本あったり、あり得ないところから爪が生えていたり、どこかしらの肉体が崩壊して、絶命していた。

QB「ここまでそっくりだと、やろうとすれば千歳ゆまに成り代わることすら可能なんだろうね。それで、千歳ゆまの因果の糸を、このクローンたちも引き継ぐことができた」

 キュゥべえが何かを咥えて引っ張り出す。ソウルジェムだ。

QB「さらに驚きなのが、このソウルジェムだ。材質が僕らの作り出すものとまったく同じ……魂の取り出し方なんてどうやって入手したんだろうね」

 それは、濁ったまま、色を失っていた。

QB「しかしこれは欠陥品だよ。感情のないクローンのソウルジェムを作っても、願いもなしに強制的に作っても、無から絶望では落差はない。まるでエネルギーになりやしない」

QB「この魔法少女は欠陥品だ。エネルギー回収できないよ。
   明日もう一度この時間に来てください。本物の魔法少女ってやつをお見せしてあげるよ」

QB「これじゃ徒に魔女を増やすだけじゃないか」

 はぁ、と溜息を吐いて、キュゥべえはソウルジェムを足元に落とす。

 それを足で踏みつけると、パリンという小さなを音を立てて割れて、消える。

QB「まったく迷惑な話だよ。処分する僕の身にもなってほしいものだね」

 また別の駆動鎧からソウルジェムを取り出すと、踏みつぶし、割る。そしてまた取り出し、割る。

 キュゥべえは幾度もそれを繰り返す。

 ふと、先ほどまで続いていた戦闘音が止んだのがわかった。

QB「おっと、そろそろ僕の出番かもしれない」

 ソウルジェムを割る作業を止めて音のしていた方を見るキュゥべえ。

 そうして、とてとてと、キュゥべえは戦闘が繰り広げられていた場所に向かって歩き出した。

――
 為す術がなかった。

 再起動したUMAは七人に向けて猛威を振るう。

 あれだけ努力して、やっと倒して、全てが終わったと思ったのに、結局、UMAは今も、損傷は一つもなく駆動していた。

杏子「結局、どんなに頑張っても、あたしは誰も救えないのか……」

 杏子のソウルジェムが曇る。

キリカ「ここで死んだら織莉子に会えない……織莉子に会えない……」

 キリカのソウルジェムが曇る。

 誰もが脱力していた。どうしようもない、と絶望していた。

 フレンダ以外は。

フレンダ「みんなしっかりしてよっ!」

 UMAの振り回す羽から必死で六人を庇うフレンダ。

フレンダ「まだ、まだ終わったわけじゃないって!」

 泣きそうになりながら、全員を説得する。しかし、誰も、答えない。

QB『そうだよ、まだ終わってはいないさ』

 そこで、鼓膜を通さずに声が響いた。キュゥべえの声だ。

フレンダ「キュゥべえっ!?」

 キュゥべえの魅力的な言葉に、フレンダは地獄に垂れる一本の蜘蛛の糸を見つけたように喜んだ。

QB『この状況をどうにかしたいなら簡単さ。理后、沈利。二人のどちらかが僕と契約して魔法少女になればいいのさ』

 そして、続ける言葉にフレンダは落胆する。

フレンダ『まだ、まだそれ以外に手段が残ってるわけよ!』

QB『へぇ、どんな手段だい?』

フレンダ『そ、それは……』

QB『どんなに破壊しても、彼女は瞬時に回復する。マミと違って一度破壊するのにここまで疲弊する君たちに何度も破壊する力はないよね?』

フレンダ『そんなの、やってみなくちゃ……!』

QB『じゃあ、それができたと仮定しようか。でも、その先にあるのは魔力の尽きた千歳ゆまの魔女化だよ? 僕は、君たちがそれを望んでないと解釈しているのだけど』

フレンダ『……っ』

浜面『無理、なのか……』

QB『だから僕は最初からそう言ってるじゃないか』

 フレンダも、押し黙る。

QB『さあ、早く決断した方がいいよ。どちらが僕と契約して魔法少女になるかを、ね』

 キュゥべえに言われて、はっとする。

 上空に、UMAが羽を広げて、浮かんでいた。

 その羽から、大量の羽毛が降り注ぐ。一撃一撃が物理的にはあり得ない硬度を持っている未元物質の羽毛が。

麦野「くそがっ……」

 キュゥべえに言われて、残された可能性を示されて、僅かに再起した麦野が原子崩しの盾を展開する。

 ドリルがコンクリートを叩くような、凄まじい連続音が鳴り響いた。

滝壺『……私が契約するよ』

 その様子を見て、静かに、小さく、しかし、力強い言葉で滝壺が言った。

浜面「滝壺……っ!」

 その言葉に、情けない声を上げる浜面。やめてくれ、と言いたかったが、滝壺の強い目を見て、浜面は何も言えなくなる。

滝壺『はまづらは何度も私を守ってくれた。今度は、私に守らせて』

 滝壺は浜面の両手を握って言う。浜面は泣きそうな顔で首を振る。

麦野『いや、私が契約する』

 滝壺の案を、麦野が却下した。

麦野『これで昔やったことがチャラになるなんて、都合の良いことは考えてない。でも、私にやらせてくれ』

QB『僕はどっちでもいいんだけどね。君たちは二人とも、とてつもない因果を秘めている。マミに匹敵するレベルの因果をね』

浜面『お前は黙ってろ……!』

 UMAは再起した麦野を見て、戦法を変える。面でしか展開できない盾を突破するための、全方位の烈風攻撃だ。

フレンダ『麦野も、滝壺も、二人ともやめてよっ! 魔法少女になんかなっちゃダメだよ……!』

 烈風をフレンダの作り出す結界が受け止める。

麦野『でも、それ以外にどうするんだ……!』

 凄まじい強風に、ぎしぎしと震える結界。長くは保たないだろう。

フレンダ『きっと何か……何かある……』

 その時、フレンダの脳裏に、この事件の黒幕の、厭らしい中年の男の言葉が思い出された。

フレンダ『そうだ……そうだっ! あるじゃん、なんとかする方法!』

 だが耐えきれず、結界が割れた。烈風が七人の下へと吹き込む。

 しかし、その烈風は七人を傷つける前にせき止められる。キリカと杏子の結界に、だ。

杏子「本当かっ!?」

キリカ「織莉子のところに帰れるのかいっ!?」

 フレンダの言葉に、杏子とキリカも再起する。

フレンダ「思い出してみてよ、あの禿げの言葉! コアを、つまりソウルジェムを組み込んだら動き出したって言ってた!
     つまり、結局ソウルジェムをあいつから取り出しちゃえばいいってわけよ!」

杏子「……そうか」

 その言葉に、杏子は再び落胆する。

杏子「それをな、さっきやっておけばよかったんだよな……でも、もうできない。
   あいつは学習していってる。つまり、あたしらの羽の根本を狙う戦法は使えない。
   さっきは奇襲で成功したようなものだろ? もう、無理だ」

 ぎしぎしと、再び烈風に押され始めた。

浜面「いいや、無理じゃない! いくら学習したって、弱点があることは変わらないんだ!」

杏子「なら、どうやるんだよ! 言っておくけどな、あいつの能力発生装置は一つじゃねえんだ、三つあるんだよ!
   沈利みたいなパワーがあるなら一度に壊せるかもしれないけどな、他のやつじゃ一つずつしか壊せない。敵もそんなの学習してるに決まってるだろ!
   なら沈利以外を無視して、一つずつ壊されても、他の羽で守りながら回復させればいいだけ、そんな策を取られただけで終わりなんだ!」

浜面「大丈夫だ、俺に考えがある……!」

ぶっちゃけ分かりやすい中の人とかがいない浜面の方が主人公補正かかってるよね

浜面「確かに、それは百も承知だ。あいつの最優先対象は麦野だろうよ。だからこそ、いける」

杏子「……本当か?」

浜面「ああ」

杏子「……わかった、やってやろうじゃねえか」

 杏子の結界に、再び力が戻る。烈風を跳ね返す強度になる。

浜面「麦野、大体わかってると思うかもしれないが、お前にすごく辛い役目を頼みたいんだが、いいか?」

麦野「私をどこの誰だと思ってる? 学園都市第四位の『原子崩し』麦野沈利様よ。
   テメーら雑魚のできない仕事をやるのは当然だろ。 ――囮でも、なんでもな」

浜面「……すまん!」

 決断して、浜面は意識を集中する。

浜面『おいキュゥべえ、聞こえてるか、またテレパシーの中継を頼むぞ!』

QB『やれやれ。最後のあがきだね。いいよ、さらに絶望したところから契約すれば、大きなエネルギーが得られるからね。
  失敗するように祈りながら協力してあげるよ』

浜面「よし、完璧だ。行くぞ!」

 全員の戦闘意思を、UMAは認識する。

 そこで烈風による攻撃は意味がないと判断し、羽による直接攻撃へと切り替えた。

 標的は、麦野。

麦野「オラァ! どっち狙ってんだウスノロ!」

 原子崩しを噴射のようにして、麦野は高速移動する。

 さらに原子崩しの光線を数発放つ。

 UMAはこれに的確に反応する。羽を原子崩しの軌道上に挟み込み、遮断。
 さらに別の羽で麦野の移動する先を予測し、その先へと振り下ろす。

 人間の体は高速で移動することに対応するように出来ていない。

 反応が間に合わず、麦野は自滅する、はずだった。

麦野「ガキの思考だな、単純だ」

 麦野はそれを既に予測していた。別方向に原子崩しを噴射し、急転換を図る。

 先に行動しておけば反応が遅れても、問題がないというわけだ。

麦野「さて、レベル5との詰めチェスごっこだ。機械と人間、どっちが頭がいいのか、試してみようじゃない」

浜面『俺の考えた作戦はこうだ!』

 散り散りになって、浜面がテレパシーで伝える。

浜面『まず絹旗は俺と滝壺を守れ!』

絹旗『超情けなっ!』

浜面『そしてフレンダがトラップを仕掛ける!』

フレンダ『おっけー!』

浜面『呉は常にあいつを攻撃できるよう、射程範囲に捉えて待機!』

キリカ『それで織莉子に会いに行けるなら、なんでも』

浜面『そしたら準備完了だ。まず、フレンダが仕掛けたトラップに、麦野が誘導する。それで一つ目の能力発生装置を壊せ!』

フレンダ『えっ』

浜面『その次に呉がその隙を突いてもう一つ壊せ!』

キリカ『えっ』

浜面『そしてすぐに呉は離脱、そこを全員で多段攻撃をして、最後の一つを壊せ! そして杏子がソウルジェムを取り出すんだ!』

フレンダ『……もしかして、それが作戦なわけ?』

浜面『ああそうだ!』

QB『……僕は少々、君を過大評価しすぎていたようだよ、仕上。結局、全部人任せじゃないか』

 呆れたようなキュゥべえの声が脳内に響く。

浜面『うるせえ! 俺の仲間ナメんな!』

QB『まずはフレンダが突破口を開かないと、どうしようもないじゃないか』

浜面『そんなのわかってる』

QB『君は馬鹿なのかい?』

浜面『そんなのもわかってる!』

浜面『悔しいけどさ、俺は頭も悪いし、特殊な力も才能も何もない。口先だけだ』

浜面『でも全員が全員、頭が良くて能力があるやつまでやる気を失ってれば、できるもんもできなくなる』

浜面『だから、俺はたった一つのできること、口先で、全員を焚きつけてやっただけだ』

浜面『頼むぞ、フレンダ……!』

ちょっとだけ休憩させてくれ
頭が働かなくなってきた
もう少しで終わる

続き書く

――
 杏子は、与えられた役目の意味を、理解してしまった。最後の弱った相手にトドメを刺すだけというのがどういうことかわかってしまった。

 フレンダは、トラップのスペシャリストだ。その力を買われて、最初の役目をもらった。

 キリカは、敵の動きを遅くする魔法という強力な魔法を持つ。その力を買われて、隙を突く役目をもらった。

 麦野は、圧倒的な火力と、実力と、頭脳と、速度を持つ。その力を買われて、囮の役目をもらった。

 絹旗は、厚い装甲で杏子の結界で防げないものも防ぎきる硬さを持つ。その力を買われて、護衛の役目をもらった。

 自分は、何ができるのだろう?

 肉弾戦は、キリカに負ける。硬さは、絹旗に負ける。火力は、麦野に負ける。柔軟さは、フレンダに負ける。発想力は、浜面に負ける。特殊な感知能力は、滝壺に負ける。

 自分のふがいなさに、腹が立った。かつて、フレンダに、自分は強いと言ったのが思い出される。

 そんなわけがなかった。杏子が、この中で一番弱かった。

 自分にできることを考える。自分の魔法を思い出す。

 だけど、父親に言われた言葉が脳裏を過ぎる。人を惑わす魔女という蔑称が思い出される。

 吐き気がした。頭痛がした。これがトラウマというやつなのだろう。

 しかし、杏子はそれでも考える。自分にできることは何か、と。
――

――
 フレンダは、知識を、記憶を総動員した。

 常識的に考えて、どんなにトラップを積み重ねても、あの羽の防御を突破できるわけがなかった。

 フレンダの使えるものは、ナイフと、魔法少女としてはそれほど強くもない身体能力と、いくらでも再生する体と、銃器の技術と、爆弾。

 どれも、通用するはずがなかった。

 数で攻めても、一人では限界があった。

 トラップの多段攻撃を仕掛けようにも、相手が攻撃に転じてくれなければ、隙は生まれるはずもなかった。

 当然だ。一枚目二枚目三枚目四枚目五枚目六枚目、そして仮面からの七枚目と、全ての羽を防御にそれぞれ宛がわせても、六枚目のあとには一枚目が回ってくるのだ。

 同時に攻撃したら、羽で身をくるまれて守られるだけだった。

 だからこそ、単純なトラップではダメだ。知識を、記憶を、策を考えなければならなかった。

 ふと、フレンダは思い出す。先ほどの、一度麦野が全ての羽を壊した時のことを思い出す。

 フレンダの脳内に電流が走った。
――

――
麦野「くそっ……まだかっ!」

 麦野が逃げ続けてしばらく。UMAは徐々に麦野の思考パターンを学習し始めた。

 自分がこう出れば、次はこうなる。そんな情報を収集しながら、高性能のCPUがパターンを解析し、人間の発想力が可能性を提案していく。

 徐々に、徐々に。羽の一閃は麦野へと近づいていった。

フレンダ『麦野っ! トラップ仕掛け終わったってわけよ!』

 その時、麦野の脳内にフレンダの声が響き渡った。

麦野『行けるのかっ!?』

フレンダ『私の予想が合ってれば、多分!』

麦野『はっ……じゃあ、私の命、フレンダに預けるぞ! どこに誘導すればいい!?』

フレンダ『麦野のいる逃げてる方向の逆の、保険屋の二つビルに挟まれてるところ!』

麦野『わかった!』

 フレンダの言葉を信じて、麦野は方向を急転換する。

 今までのパターンにない行為に、UMAは大きく攻撃を外した。

 しかし、すぐに今までのパターンに戻る麦野に、UMAは再び徐々に徐々に距離を狭めようとして、攻撃を続ける。

麦野「人工の頭脳が人間に追いつくのが先か、ビルに着くのが先か……!」

と、ここでネタばらし。
なんとフレンダさん、あの時の恨みを忘れていなかったのです。さすがの麦野もこのトラップにはむぎ/のん。

フレンダ「結局、フレ/ンダにされたことを許せるはずがないって訳よ」

>>919
おもしろいよぉ
死ね

――
 フレンダは麦野を待っていた。手が震えた。足が震えた。確信はなかった。予想でしかなかった。

 これが失敗すれば、少なくとも、自分は死ぬだろう。二度目の命が潰えるだろう。

 保身ばかりで生きてきたフレンダにとって、それは信じられないほどの恐怖だった。

 しかし、フレンダは逃げない。麦野のためにも、仲間のためにも、もう自分のためだけには逃げない。

 麦野が、見えてきた。

 ジグザグに噴射で飛び回る麦野に、羽が当たりそうで当たらない距離までに迫っていた。

フレンダ「麦野っ!」

 思わず、フレンダは呼びかける。麦野はそれに反応するかのように、速度を上げた。

 麦野がビルを横切った。

 そして、麦野を追うUMAがビルに挟まれる位置へと、到着した。

フレンダ「食らえっ!」

 フレンダが、手元のキーを押す。遠隔操作用のリモコンだ。

 その瞬間、空を飛ぶUMAの下部、ビルの根本から爆発が起きた。

 指向性の爆薬だ。

 爆発は足元からUMAを焼き尽くさんと、襲いかかる。

>>920
ちゅっちゅっ

あー触れちゃった

 しかし、そんなものはもちろんUMAには通用しない。

 突然の爆発にもUMAは余裕を持って防御行動を取る。

 羽を二枚、爆発の方向に向けた。それだけで爆発は届かない。

 同時に、ビル内でも凄まじい連鎖的な爆発が巻き起こる。

 ビルがくの字に折れ曲がる。崩壊する。

 しかし、そんなものはもちろんUMAには通用しない。

 羽を二枚、ビルの方向に向けた。それだけでビルは吹き飛ばされる。

 同時に、麦野が逃げ去った前方、そして今まで通ってきた後方から小型ミサイルが飛来する。

 しかし、そんなものはもちろんUMAには通用しない。

 羽を二枚、前後に向けた。それだけでミサイルは意味を失う。

 六枚は使用した。しかし、上下前後左右全てが守られている。

 しかし、根本に潜り込めば、隙だらけに見えた。

フレンダ「こなくそぉ!」

 そこに、フレンダがナイフを持って特攻していた。爆発が始まった瞬間から、駆けだしていた。

 UMAの背中に辿り着く。無防備になった能力の、未元物質の噴射口が見える。ナイフを思い切り振り下ろす。

いちいち噛み付いてる方も含めて夏だなぁ…

 当然。そんなものはUMAには通用しない。

 仮面から七枚目の羽が生まれる。七枚目の羽はナイフをいとも簡単に阻害する。

 一枚目と二枚目の羽が、自由になった。

 フレンダを、もう修復されないように、肉片一つ残さないように、完膚無きまでに破壊するためにUMAは羽を振るおうとする。

フレンダ「まだまだ、終わらないってわけよ」

 UMAの足元が、再び爆発した。指向性の爆薬だ。

 UMAはいつでも殺せるフレンダは後回しとし、自由になった一対を爆発の対処へと使う。

 そこで、UMAはインストールされた物理現象では、能力では、想定できないことが起きてるのが見えた。

 崩れたはずのビルが、治っていた。倒れていなかった。

 今、まさに倒れようとしていた。

 想定外の事態だったが、慌てる必要はなかった。

 冷静に、二対目の羽で再びビルを吹き飛ばしただけだった。

 そして、前後から、同じビデオを再生したかのように、ミサイルが飛んできた。

 UMAは、一瞬反応が遅れる。CPUが、戸惑ったように見えた。

 しかし、それもすぐに翼を前後に出して、無効化される。

いざとなったらまど神介入でゴールしてもいいんだよ!

 再び、六枚の羽が使われた。その瞬間を狙って、フレンダは手に持ったナイフを思い切り投擲した。

 先ほどと同じ速度の奇襲。それにも関わらず。

 仮面の七枚目は、反応できなかった。

フレンダ「やっぱり、フリーズしてた!」

 羽が一対、消える。

 フレンダは、麦野が三対を全て機能停止にした時、間近で、上下に切断されながら、UMAがまったく反応していなかったのを目撃していた。

 そこで、フレンダは予測する。あれは反応していなかったのではなく、反応できなかったのではないか、一瞬だけフリーズしていたのでは、と仮定した。

 もし、そうならば、条件があったはずだ。普段あり得ないことが起きる前に、UMAは何か特殊な行動をしていなかったか、と。

 それこそが、七枚目の、羽。

フレンダ「つまり、七枚目は隠してたんじゃなくて、使いたくなかった、わけね!」

 考えてみれば、最初にUMAが現れた時、一対の羽のみを出現させていた。羽を最初から出現させておくなら、三対出現させておいた方が効率が良いはずである。

 しかし、それをしない。そうしない方が効率が悪い理由がある。つまり、維持コストがかかるということだ。

 この機体の維持コストは電力しかあり得ない。電力が大量に消費されるのはなぜかと考えれば答えは一つ。

 CPUだ。羽の枚数が増えると、CPUに負荷が大量にかかるのだろう。

 そして、使いたくないと予想される七枚目の羽。そこから、フレンダは一つの可能性を見いだした。

フレンダ「こいつが余裕を持って連続的に動かせるのは六枚まで!
     七枚目まで使うとCPUに余裕がなくなる!
     そこでもう一度六枚使わせれば、処理速度が追いつかなくなり、一瞬だけフリーズする、ってわけよ!」

キリカ「フレンダ=セイヴェルン、キミも恩人だね」

 そこに黒い影が飛び出した。呉キリカだ。

 キリカは速度を低下させる魔法を最大限に使う。これが最後とばかりに、最大限まで魔力を消費する。

 羽の動きは完全にキリカの動きについて行けなくなる、

 はずだった。

キリカ「なっ……!」

 羽の速度が増した。キリカのかぎ爪を、羽は悠々と受け止めた。

キリカ「しまっ――」

 反撃が来る、そう身構えた瞬間。

 杏子の槍が物凄いスピードで飛来し、UMAの背中に突き刺さる。

 方向を見ると、投げたのは杏子ではなかった。絹旗だった。
 いつの間にか、杏子から槍を渡された絹旗がそれを投げたのだった。

 二対目の羽が消える。

浜面「よし、一斉に――ッ!?」

>>932
ねー、いちいち噛み付いて「自分はまともな側」って思い込んでるんだろうね
そういう奴が一番ウザイって自覚もできないウジ虫なんだろうねhwTLUnOO0はw

 二対目の羽は壊されたのではなかった。UMAが、選択して捨てたのだ。

 二対目を犠牲にして、三対目は、既に動き出していた。

 浜面の作戦は、読まれていた。

 最後の攻撃は、麦野、絹旗、杏子で行う予定だった。

 先ほどの攻撃で、絹旗は、攻撃手段を失っていた。

 つまり、攻撃可能なのは、麦野と、杏子。

 そして、杏子とは肉弾戦で分があるUMAが選択したのは。


 麦野沈利の確殺だった。


 三対目の羽が麦野を貫いた。

 攻撃のために準備し、まさか自分が攻撃されるとは思ってなかっただろう麦野の胸部を深々と貫通した。

フレンダ「む……ぎの……?」

 衝撃で、麦野の体が吹き飛ばされる。

フレンダ「麦野おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

で、書いてるヒトは「ノーバウンド」という表現に特別なこだわりがあんの?
ノーバウンドさんってあだ名つけちゃうよん?www

上から目線のクズに黙ってろといわれて黙ってる義理があるのだろうか

世界はお前を中心に回っているわけではない

美琴の名前が出なかったから気分よく読んでいられたのに

あんな作者の幼稚な自己陶酔を投影した気持ち悪いオナニーキャラ

終盤にかけて盛り下がるとはまさにこのこと

正直黒幕の招待が割れた時点でもういいやって気分だった

どうせ最後は勝つんだろうしw

夏だなぁ・・・w

麦野「そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ」

 そんな声が、麦野の吹き飛んだ方向とはまったく別の方向から聞こえた。

 同時に、原子崩しがUMAの背中に突き刺さる。最後の羽が消え、UMAは落下した。

 次に、世界が、歪んだ。

 無残な姿の麦野が、幻のように消える。

 声と原子崩しの飛んできた方向を見ると、顔を真っ青にし、脂汗塗れにした杏子と、
 麦野がそこに健在していた。

 杏子の本来の固有魔法は、幻惑魔法だ。あらぬものを見せ、誤認識させる魔法だ。

 絹旗の槍が直撃した瞬間、杏子が発動させたのだ

麦野「そんな便利な能力持ってるなら、最初から使えばいいのに」

杏子「はぁっ……はぁっ……無茶、言うなって……」

 トラウマを、嫌悪感を無視して、その魔法を無理矢理発動させた杏子が息絶え絶えに答える。

麦野「さ、行ってきな」

 ぽん、と麦野が杏子の背中を押す。

 そして、杏子が落下したUMAの下に風のように飛び出した。

 対して、UMAは七枚目の、仮面の羽を出して応戦する。

 杏子に羽が突き刺さる、とUMAが認識した瞬間、それは消えた。

 UMAの左手から、杏子が唐突に現れる。

 そこで初めて、UMAが格闘しようと構える。

杏子「遅えよ」

 UMAが迎撃するより早く、杏子が、UMAの胸元に腕を突っ込んだ。

 そして杏子はその胸元に埋め込まれたゆまのソウルジェムを掴む。

 ギチギチギチと、ケーブルが無理矢理切断される音が響く。

杏子「ゆまを、返してもらうぞ!」

 そうして、千歳ゆまのソウルジェムが、UMAの胸元から取り出された。

 UMAの顔面部の青色LEDの英字が消える。

 そうして今度こそ、UMAは機能を停止した。

――
杏子「クソ禿げぇ!」

「ひぃっ!」

 杏子が研究所の扉を蹴り破ると、中年の男が裸のゆまを水槽から取り出し、研究所から逃げだそうとしていたところだった。

杏子「テメェの持ち物はこっちだろ」

 そう言って、杏子は胸部に大穴の空いたFIVE_Over.Modelcase_"DARKMATTER"を投げ捨てる。

杏子「ゆまの体、返してもらうぞ」

「ば、化物め!」

 中年の男は吐き捨てるように言うと、ゆまを投げ捨てて逃げ去っていった。

杏子「ゆまっ!」

 逃げた男など構わず、杏子はゆまの下へ駆け寄る。

 杏子がソウルジェムをゆまの手に握らせると、とくん、とゆまの心臓が動き出す音がした。

 しかし、目を覚まさない。

杏子「ゆま……ゆまっ!」

 杏子が必死で呼びかける。泣きながら、呼びかける。

 ぴくり、とゆまの体が動いた。

ゆま「キョーコ……?」

 ゆまがゆっくりと目を開け、問いかける。

杏子「ああ、杏子だ、あたしだよ……!」

 ゆまを抱きしめる杏子。

ゆま「キョーコ、助けに来てくれたの……?」

 理解は追いついていないはずだ。

 しかし、相当辛い目に合わされていたのだろう。

 杏子を見たゆまの第一の感想が、それだった。

杏子「ああ、そうさ……帰ろう、あたしらの街に」

もうダメだ、SS速報に立ててくる
同じスレタイにするからそっちで書くわ

フレンダ「し、死にたくない……」QB「それが君の願いだね?」
フレンダ「し、死にたくない……」QB「それが君の願いだね?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311239988/)

保守してもらったのにすまない……

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