ほむら「まどかに嫌われてみようかしら」(169)
ほむら「いっそのこと自分の欲望に忠実になって、まどかに嫌われてみようかしら」
ほむら「どうせひと月経てば、砂時計をひっくり返せばいい」
ほむら「これは別に、ほむ得というわけじゃなく、まどかのためなのよ」
QB「君はあの魔女を見て何も感じないのかい?」
ほむら「お生憎さま、私の戦場はここじゃないのよ」
QB「逃げるのかい? あの魔女はこの星を確実に滅ぼすだろう、逃げ場なんて――」
ほむら「あなたってほんとバカ」
ほむら「転入する25日まであと少し」
ほむら「今まではまどかにあいつが接触しないようにしていたけど」
ほむら「今回はあいつよりも先にまどかに接触しましょう」
ほむら「なんて言ってまどかと絡もうかしら?」
ほむら「思い切って、電波系を演じるというのは」
ほむら「こういうのって、新しい自分っていうのかしらね?」
ほむら「この日は美樹さやかと一緒に帰っている」
ほむら「ということは彼女と接触することになる」
ほむら「やはり電波系で攻めてみましょう」
ほむら「彼女はああ見えて、自分より弱い立場の人間には優しいからね」
・
ほむら「鹿目サン!」
まどか「わ、誰!?」
さやか「な、何この人! 突然現れたよ!?」
ほむら「ああ、私の勇者さま! こんなところにいらしたのですね!」
ほむら「(電波っていうのがよくわからなかったから仕方ないわね……)」
さやか「勇者って……」
まどか「あの、人違いじゃ」
ほむら「いいえ! あなたは勇者さまです! 前世の約束をお忘れですか!」
ほむら「(前世って、なんか涙が出そうになってくるわね)」
さやか「まどか……」
まどか「ああ、さやかちゃん違う! わたし、そういうんじゃないよ!?」
さやか「ったく、とりあえず離しなよ、まどか嫌がってんじゃん」
ほむら「ああ、ごめんなさい武闘家さま」
さやか「あたしもメンバーなの!?」
ほむら「ええ、勇者鹿目さん、武闘家美樹さん、龍騎士巴さん、シスターの佐倉さんで魔王を倒したんです!」
まどか「さやかちゃん、巴さんって人と、佐倉さんって知ってる?」
さやか「知らない、大体このことも初対面だし」
まどか「わたしも初対面だから!」
ほむら「特に、武闘家の美樹さんのナックルボンバーは素晴らしかったです……」
さやか「え、マジで?」
ほむら「ええ、もしや格闘技をなさっているのでは?」
さやか「えー、マジかー、あたしに隠された才能? みたいな」
まどか「さやかちゃん、すっかり信じ切っちゃってる……」
ほむら「鹿目さん、あなたもすごい魔法を使ってたんですよ」
まどか「魔法?」
さやか「あー、残念だったねーまどか、ここじゃ魔法(笑)なんて使えないよ」
ほむら「いいえ、使えます」
さやか「またまたぁ、嘘ばっかり」
ほむら「私、変身です!」
まどか「わっ! 洋服が!」
さやか「一瞬で変な衣装に!?」
ほむら「(変な衣装とか言うな)」
ほむら「どうです、これが鹿目サンが勇者である証です!」
さやか「うわぁ……実在するんだ、魔法って」
まどか「な、ななな、何かのトリックかもしれないよ!?」
ほむら「勇者さまが信じてくださらないなら仕方ありません、とっておきを見せて差し上げます」
さやか「ん……そういえばあんたの職業を聞いていないような……」
ほむら「と、その前に鹿目サンの手を握ります」
まどか「あ、うん」
ほむら「ザ・ワールド!」
まどか「……? え!? みんなの時間が止まってる!?」
ほむら「この手を離せば、あなたの時も止まってしまう」
まどか「え、え、もしかしてわたしって本当に勇者なの!?」
ほむら「そうです、正確には勇者の生まれ変わりですが」
まどか「でも私、何のとりえもないし、ぶきっちょだし、にぶいし」
ほむら「それはあなたがまだ覚醒していないだけです」
まどか「覚醒……するの?」
ほむら「はい! ですが、気を付けてください」
まどか「?」
ほむら「あなたのその力を狙って、魔王の手先が現れます」
まどか「え!? ま、魔王!?」
ほむら「そうです、魔王オ・リーコは、鹿目サンの抹殺をもくろむ極悪人です」
まどか「わたしの……抹殺……」
ほむら「ですが安心してください、必ず私がお守りします」
まどか「う」
ほむら「信じてください」
まどか「……わかった、とりあえず信じるよ」
ほむら「ですから念のため、24時間体制で見守らなくちゃいけません」
まどか「え?」
ほむら「同居しましょう」
まどか「うえー!?」
ほむら「そして時は動き出す……!」
さやか「ん? 何で手を握り合ってんの?」
まどか「あ、その、あの、じ、時間が止まってたの!」
さやか「はあ? それがこの子のとっておき? 止められちゃわかんないじゃん」
まどか「でも止まってたの!」
さやか「はあ、まあいいけど、それで、あんた、名前は何なの?」
ほむら「暁美ほむらと申します、美樹さん」
さやか「ほむらか、それとあたしのことはさやかで良いよ」
まどか「よろしくねほむらちゃん、わたしはまどかで良いよ……って、違うよこの流れ!」
ほむら「はい、よろしくお願いします、さやかさん、まどかさん」
さやか「んー、確かにそう言われてみればこの子、どこかで会った気がする、よもやあたしがそんなファンタジーな登場人物だったとは」
ほむら「(んなわけねーだろ)」
まどか「そ、それでねさやかちゃん、わ、わ、たしを狙ってる人がいるって!」
さやか「よし、じゃあ、あたしもまどかを守ってみますかね!」
ほむら「それには及びません」
さやか「え?」
ほむら「私一人で大丈夫です、それにさやかさんはまだ覚醒していないはず」
さやか「う、確かに」
ほむら「魔王オ・リーコは多くの使いを持っています、ですが、覚醒していない相手にまで危害を及ぼしません」
さやか「なるほど、つまりあんたと一緒にいるとあたしまで狙われるってことか」
ほむら「ついでに言えば、まどかさんの力も少しずつ覚醒しています、おそらく敵には気付かれているかと」
さやか「ううー! 何もできないあたしが悔しい!」
ほむら「ですが安心してください」
さやか「?」
ほむら「まどかさんは24時間体制で私が守ります」
さやか「へ?」
まどか「そ、その、同居するって言ってるの! こんなのぜったいおかしいよね!?」
さやか「うーん、その選択肢はありかも」
まどか「さやかちゃん!?」
さやか「ちょっと考えてみてよ、いまほむらの誘いを断る」
まどか「うん?」
さやか「そうしたらきっとほむらは、見えないところでまどかを監視するよ!」
ほむら「(……さすが、美樹さやか、無駄に鋭いわ)」
まどか「……」
さやか「見えないところで見守られるのと一緒にいるの、どっちがいい?」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん、一緒に暮らすの?」
ほむら「はい」
まどか「お母さんとか、お父さんに駄目だって言われるかもしれないよ」
ほむら「その時は大丈夫です」
まどか「え?」
ほむら「お父さんやお母さんが見えないところで一緒にいますから」
まどか「そんなのぜったいおかしいよ!?」
さやか「まあまあ、おばさんにはあたしも説得してあげるからさ」
まどか「うー」
ほむら「お願いします!」
まどか「わかったよ、一緒に暮らせるように頑張るよ」
ほむら「(計画通り……! あとは美樹さやかね)」
ほむら「美樹さん」
さやか「ん?」
ほむら「私と同じように覚醒している人間が見滝原中学にいます」
さやか「マジで!?」
ほむら「三年生の巴さん、きっと力になってくれるはずです」
さやか「お、おお……! と、年上か……」
ほむら「ですが、いきなり接触しても相手も面食らいます」
さやか「確かに、普段は正体も隠したいだろうし!」
ほむら「ええ、ですから、巴さん、あなたも同業者なんですね、と語りかけてみましょう」
さやか「同業者……! つまりは、パーティメンバーってことか!」
ほむら「ですが、相手もまだ覚醒していないあなたを巻き込むことに躊躇いを持つかもしれません」
さやか「うんうん、確かに今のあたしじゃ戦力外になりそうだ」
ほむら「ですから、こういうの、まずはお友達になりませんかと」
さやか「……そんなんでいいの?」
ほむら「ええ、彼女は毎日魔王オ・リーコの使いと戦っていて孤独です、必ずや了承してくれるでしょう」
さやか「覚醒したら、使いとやらと戦わなくちゃいけないのか……!」
ほむら「はい、ですが先ほども申し上げた通り、覚醒していない物はよほどのことがない限り襲いかかられません」
さやか「なるほど、少し離れたところで見守る立場ってわけね」
ほむら「私も来週見滝原に転入します、できればそれまでに交友関係を築いてください」
さやか「なんで?」
ほむら「え?」
さやか「いや、覚醒している同士なら仲良くできそうじゃん?」
ほむら「……実は前世でちょっとした喧嘩を……」
さやか「マジで!?」
ほむら「ええ、だから私がいると警戒をされるかもしれません」
さやか「わー、わかった、がんばってみるよ」
ほむら「では、まどかさん行きましょう」
まどか「断られると思うけどなあ……」
さやか「その時はあたしが説得してあげるって!」
・
パパ「いいんじゃない?」
・
ママ「えーんでない?」
・
まどか「どうしてこうなった……」
ほむら「(以前のループで杏子に幻術の方法を教えてもらってよかったわ)」
まどか「しかもなぜか、従姉妹ってことになってるし」
ほむら「好都合ね」
ほむら「(これで、準備は万端、まどかに何をしようかしら?)」
ほむら「(濃厚なスキンシップはまだ早いわ)」
ほむら「(まずは前戯、ペッティングってやつをしないと)」
まどか「じゃあ、わたし宿題をするね」
ほむら「それなら安心して」
まどか「?」
ほむら「私、学業は優秀なの」
まどか「あ、でも、これはわたしがしないといけないから」
ほむら「だから隣で見守っているわ」
まどか「せ、せめて後ろで……」
まどか「一緒のベッドで寝るの!?」
ほむら「何かおかしいかしら?」
まどか「おかしいよ!?」
ほむら「言ったでしょう、まどかさんのことを二四時間守り続けると」
まどか「言ったけど、ベッドにまで入らなくても……」
ほむら「私は床でもいいけど」
まどか「……わかったよ、じゃあ、一緒に寝よ?」
ほむら「(ああ、限りなくまどかの好感度が低いわ! なぜか美樹さやかとは話があったけど)」
ほむら「(まどかと仲良くすると美樹さやかは嫉妬するのかもしれないわね、これは良い情報だわ)」
ほむら「(そしてあんまりべったりだとまどかも困る、と)」
次の日
まどか「じゃあほむらちゃん、行ってくるね」
ほむら「何を言っているの? 私も付いて行くわ」
まどか「いやいやいや、転入は来週なんでしょ?」
ほむら「学校の中にまでは入らないわ」
まどか「……ついてこないって選択肢はないんだよね?」
ほむら「ないわ」
まどか「……わかった、じゃあ、一緒にいこ?」
・
さやか「おー、ほむらにまどかおーっす!」
ほむら「おはようございます」
まどか「おはようさやかちゃんに仁美ちゃん」
仁美「おはようございます、勇者さまに賢者さん」
まどか「!?」
ほむら「はい、おはようございます王女様」
仁美「あら、私は前世で王女だったんですの?」
ほむら「はい、シーウィード王国のお姫様です」
さやか「まじかよ!? 非戦闘員とはいえ、王女はうらやましいな~」
まどか「(仁美ちゃんも天然だと思ってたけど、さやかちゃんも……)」
仁美「もしかしたら、前世の縁で今もこういう生活を送っているのかもしれませんね」
さやか「王女様ならお似合いだって、あたし武闘家かー、もっとかわいいのがよかったなー」
ほむら「前世でもそう言ってました」
さやか「そうだよねー、殴るよりこう、スマートにさー」
まどか「(わたしがおかしいのかな……)」
さやか「ねえねえ、ここにいない人もその、前世にいたりするのかな?」
ほむら「と言いますと?」
さやか「あたしにさ、幼なじみとかいなかったの?」
ほむら「ああ……彼は……」
さやか「か、彼は?」
仁美「ごくり」
ほむら「世界を回る吟遊詩人として有名でした」
さやか「吟遊詩人?」
仁美「まあ、でしたら楽器が得意というのも……」
さやか「やっぱり、楽器なんだ、恭介、苦しいだろうな」
仁美「ええ」
ほむら「? 今世での彼は何か?」
さやか「うーん、その、事故で左腕がさ」
仁美「……」
さやか「もしも魔法があるんなら、あいつの腕治せる人とかいないかな?」
ほむら「残念ですが……魔法は覚醒したものにしか効果が無いのです」
さやか「? 治癒魔法ってけがとか治せるんじゃないの?」
ほむら「はい、正確には魔力でできた身体を魔力で修復するんです」
仁美「つまり、魔力を持たない覚醒していない者には効果が無いと?」
さやか「かぁー! 恭介が覚醒してればなー!」
まどか「でも、なんて言うか信じられないよ、わたしが勇者なんて」
仁美「あら? まどかさんはお似合いだと思いますよ?」
さやか「そうそう、心優しいあたしの嫁!」
ほむら「ふふ、そういって前世でもいろんな方と嫁争いをしていました」
さやか「でしょでしょ、まどかは可愛いからねー」
仁美「勇者、魔王、魔法、なんだかそんなのは縁遠いと思っていましたけど、まさか身近にそんなものがあったなんて」
ほむら「それは、前世のまどかさんが願ったからそうなってたんです」
さやか「え?」
ほむら「魔王や勇者が存在しない世界、そんな世界にするために命をかけて、世界の決まり自体を改変してしまったんです」
仁美「それはつまり、勇者の力で魔法や魔王が封印されたと?」
ほむら「はい、ですが、魔王は復活し、覚醒したものも多く出ています」
さやか「歴史は繰り返すってやつだね」
ほむら「もしも勇者であるまどかさんが本当に覚醒したら……」
仁美「魔王との一騎打ちということに?」
ほむら「いえ、この世界自体が無くなってしまうでしょう」
さやか「そんなのまどかの力ってすごいの!?」
ほむら「はい、前世の勇者でさえ、世界の決まりを何百年にも渡って改変しましたから」
仁美「そうなると、今世のまどかさんは」
さやか「魔王や勇者などでないように世界自体を終わらせちゃうかもってこと!?」
まどか「いやいやいや、わたしはそんなお願い事はしないよ」
ほむら「もしも、勇者さまが戦い続け、魔王を倒せたとしても世界が変わらないのなら」
まどか「いやいやいや、わたしのお話聞いてる?」
さやか「あ、そういえばさ、同じ覚醒した人って、巴さんだっけ」
ほむら「はい」
仁美「私も存じ上げない方ですね?」
ほむら「覚醒したものは、魔王の使いと戦う運命を背負いますから、孤独なんです」
さやか「学校には来てるんだよね?」
ほむら「はい、日常も大事にしたいみたいですから」
まどか「日常か……」
まどか「(ほむらちゃんが来て、わたしの生活めちゃくちゃなんだけど言わないほうがいいかなあ)」
さやか「よし、あたしは覚醒してないけど、同じパーティメンバーとして支えになるぞ!」
ほむら「それがいいと思います」
ほむら「(これで巴マミが拒絶すれば、まどかや美樹さやかが巴マミに近づくことはなくなるはず!)」
放課後
さやか「というわけで、前世からの仲間、巴マミさん!」
ほむら「(……なん…・だと?)」
ほむら「ええ、よろしく、龍騎士の巴さん」
マミ「正直、私がそんなメンバーだって知らなかったわ、でも、言われてみれば納得できる」
ほむら「(何が納得できたのかしら……)」
マミ「記憶のほうはまだ戻ってはいないけれど、よろしくね勇者まどかさん」
まどか「あ、あはは、よろしくおねがいします」
さやか「じゃあ、パーティ一同、今日は魔王の使い狩りを始めますか!」
マミ「魔王の使いはね、このソウルジェムで探すの」
さやか「へぇー、ってことは、覚醒したものはみんな持ってるんですか?」
ほむら「勇者のパーティか、同じく魔王を倒すために立ち上がった者に限られるわ」
マミ「キュゥべえは魔法少女なんて言っていたけれど、勇者のパーティのほうがしっくりくるわね」
ほむら「ええ(……そう、なのかしら……?)」
さやか「マミさんはどうして覚醒したんですか?」
マミ「ああ、そうね、私はキュゥべえと契約したからかしら」
ほむら「前世の因縁を無理に起こさせる悪魔のような奴よ」
マミ「もう、彼のおかげで私は助かったんだからそんなこと言わないで」
さやか「前世の因縁か……」
まどか「あはは、確かに無理に覚醒させられちゃっても嫌かも」
マミ「そうねえ、魔王の使いを倒すのは命がけだし、それなら目覚めないほうがいいかもね」
さやか「毎日戦ってるんですか?」
マミ「そうよ、使いは見境ないから、場合によっては一般の人も犠牲になるし」
ほむら「……!? それは私の持っていない情報よ!(大嘘)」
マミ「ええ、あなたも覚醒してから日が浅いのでしょう? 今世の使いは人間を襲うの」
さやか「じゃ、じゃあ、あたしもまどかも襲われちゃったりしちゃうの!?」
マミ「それをされないように暁美さんや私がいるのよ」
ほむら「ええ、あなたたちのことは守ってみせるわ」
さやか「で。マミさん、その覚醒させたキュゥべえというのはいずこへ?」
マミ「一緒に暮らしているんだけど、時折どこかへと行ってしまうのよ」
ほむら「気をつけなさい、覚醒後は修羅の道、さらにまどかは覚醒すれば世界を終わらせる可能性があるわ」
マミ「そうね、鹿目さんからは強い力を感じるわ」
まどか「二人とも……そんなわけないじゃないですか」
さやか「あー、でも、願い事を叶えてくれるっていうのは迷うなあ」
ほむら「願いと一生戦い続ける道と秤にかけて、冷静な判断をお勧めする」
ほむら「(まあ、いざとなれば美樹さやかは切り捨てましょう、志筑仁美をけしかけてもいいし)」
さやか「二者択一、いや、迷いますなー!」
マミ「今日は使いの反応はなさそうね」
ほむら「ええ」
さやか「じゃあ、解散します?」
まどか「はぁ、危険なことが無くてよかったよぉ」
その後、私が転入するまで魔女との接触は一度、使い魔との接触は四度あった。
インキュベーターとまどかとの初接触もあったけど、巴マミがこちら側にいることもあって、
彼も無理に魔法少女にしようとはしなかった。
だが、もう少し様子を見なければならない、あいつは油断のならない存在だ。
・
さやか「しっかし、マミさんってすごいですよね」
マミ「え?」
さやか「だって、マミさんが魔法をかけてくれたら、バットで敵を攻撃できるようになりましたし」
マミ「そ、そうね(テレテレ)」
ほむら「きっと、さやかに才能があったからでしょうね」
まどか「すごいよねさやかちゃん、わたしはまだこわいよー」
ほむら「大丈夫よ、まどかは私が守る」
さやか「覚醒はしてないけど、出来る限りのことはするかんね」
マミ「ここ最近のはまだ弱い相手だからいいけれど、強力な相手が出て来たら二人を置いていくことも考えないと」
さやか「そんな使いがいるんですか?」
マミ「ワルプルギスの夜、あいつは使いの中でも超弩級の使いね」
さやか「ゲームで言うところの四天王みたいなものですかね」
マミ「そうね、また、一度征伐しても復活するところが厄介だし」
ほむら「……(ワルプルギスの夜が来ることを告げたほうがいいかしら?)」
まどか「ほむらちゃんとマミさんがいても難しいんですか?」
マミ「正直一人では勝てる気がしないし……ああ、でも、暁美さんともう一人いれば」
ほむら「それは、シスター佐倉?」
マミ「彼女も前世からの仲間なの!?」
ほむら「知っているの!?」
ほむら「(まあ、知っているけど)」
マミ「そっか、彼女も仲間なのかあ、でも、誘っても仲間になってくれるかしら?」
さやか「覚醒していても、記憶が戻っていない可能性もありますもんね」
まどか「ねえほむらちゃん、シスターさんはどんな子なの?」
ほむら「そうね、一言で言うなら、聖女よ」
マミ「聖女……今世の彼女はそう見えないけれど」
ほむら「おそらくそうしなければいけない理由があるんでしょう、前世の彼女は……」
佐倉杏子がどれほど素晴らしいか説明をした。
困った人を放っておけない性格で。
特に小さい子は放っておけなくて、孤児院まで作った。
世界中の人から聖女と慕われ、かつ誰もが憧れる超有名人だと。
ほむら「(私も嘘が上手になったわね……)」
すぐに口から出まかせを信じてしまう美樹さやか。
疑うけど、その疑いを口に出さないまどか。
そして、なんかもうお近づきになりたくないレベルで中二病の巴マミ。
……巴マミってこんな人間だったかしら?
マミ「へえ……世界中から……」
さやか「そんな人がいるもんだねえ」
まどか「ほへー」
マミ「なら、記憶が戻るまで接触するわけにはいかないかしら?」
ほむら「記憶はなくても地は優しい少女のはずだわ」
マミ「それに、ワルプルギスの夜がまだ来るとは限らないし」
ほむら「来る」
マミ「え?」
ほむら「一月後、あいつは来る……と、知り合いの知り合いのエイラさんが言ってたわ」
さやか「エイラってだれなんダ?」
まどか「サーニャんマジ予想付かねえ」
マミ「エイラ……あの子も覚醒していたのね……」
ほむら「(!?!? 知り合いだった!?)」
マミ「あの子が言うのならそうなんでしょう」
ほむら「(エイラって誰よマジで! 巴マミの知り合いなの!? あなたはどれほど交友範囲が広いの!?)」
ほむら「え。ええ、彼女の予知は外れないから」
マミ「でもまさか、小学生の時に来た、フィンランドからの留学生の子が仲間なんてね」
ほむら「(留学生か!?)」
マミ「彼女とは仲良くさせてもらったけど、まさかこんな繋がりがあるなんて」
ほむら「(えええええ、全く予想外よ、そんな繋がりがあるなんて)」
さやか「とにかく、来月にワルプルギスの夜が来ると」
マミ「なら、一刻も早く佐倉さんと接触しなければ」
・
まどホーム
まどか「ねえ、ほむらちゃん」
ほむら「何かしら?」
まどか「エイラさんって、嘘なんだよね?」
ほむら「な、何を言っているのかしら」
まどか「えへへ、もう一週間一緒にいるんだよ? わたしだってほむらちゃんのことわかるようになるよ」
ほむら「(ほむぅ)」
まどか「でも、ワルプルギスっていうのは本当なんだよね」
ほむら「……ええ」
まどか「わたしが覚醒したら、そいつも倒せるかな?」
ほむら「それには及ばないわ」
まどか「どうして?」
ほむら「佐倉杏子も巴マミも二人とも素晴らしい魔法……メンバーだわ、たとえあいつが相手でも問題ない」
まどか「ほんとうに?」
ほむら「本当に」
まどか「さやかちゃんがいなくても?」
ほむら「覚醒して一月ばかりの彼女の出番はないほうがいいわ」
まどか「……」
ほむら「ほ、本当に、信じて?」
共同生活も一週間が経った。
嫌われるようなことをすると意気込んでみたものの、
まどかを見ているだけでそんなことはできなくなる。
嫌がるようなエッチなこととか、
何度妄想したかわからない行為とかしてみようとしても
まどかの前だと魔法をかけられたように動きが止まってしまう。
まどか「わかった、信じるよ」
ほむら「そ、そう」
まどか「でも、いざとなったら、キュゥべえに覚醒させてもらうから」
ほむら「……」
私が転入してから一週間が経った。
以前のループでは巴マミの宿敵だったお菓子の魔女も、二人で協力すれば相手にもならない。
おかげでマミとの仲はさらに良くなった。
が、やはり問題は美樹さやかだ。
マミと二人で全力で止めているとはいえ、彼女はいつ契約するかわからない。
感情で動いてしまいがちだし。
以前佐倉杏子と接触を図るという話があったが、
マミが前世云々の話をしたところ、強烈にドン引きされた上に
お願いだから二度と近づかないで下さいと言われたらしい。
彼女にそんな弱気なセリフを言わせるとはいったい何があったのだろうか。
仁美「相談とはなんでしょうか」
ほむら「前世では、上条恭介と王女様は恋人同士だった」
さやか「!?」
マミ「!?」
まどか「!?」
志筑仁美をけしかける作戦。
彼女と上条恭介をくっつけて、彼女に腕を治させるという目的を持たせないようにする。
そうすれば少なくとも魔女化の危険性は少なくなる。
ほむら「今世でも、慕っているのね」
さやか「ま、ま、マジ……で?」
仁美「まさかこんな形で恋心がばれてしまうなんて」
さやか「じゃあ、本当に?」
ほむら「待って、確かに恋人同士ではあった、けれど多くの障害があったわ」
マミ「流浪の詩人と一国の王女様じゃ」
まどか「確かに身分差はあるよね」
ほむら「今世では、おそらく彼の腕が障害となっているのよ」
さやか「腕って、でも、まだ治るかもしれないって」
仁美「そのようなこと、障害ではありませんわ」
さやか「仁美……」
仁美「もしも彼のことを腕だけで悪くいうような方がいるのならば、私は戦います」
さやか「……」
仁美「それが、私の務めだと思います」
ほむら「(あれ? なんか結果オーライ?)」
まどか「(きっと、恋人同士の後はノープランだったんだろうなあ……)」
マミ「イイハナシダナー!」
さやか「わかった、あたしからもお願いするよ、恭介のこと守って」
仁美「さやかさん……」
さやか「あたしにはさ、務めがあるから、まだ覚醒してないけど、魔王を倒してまどかを守るって」
ほむら「……そう、前世のさやかも王女様に言ったわ」
さやか「へへ、恰好よかったでしょ?」
仁美「ええ、きっと、前世では立場も違ってでしょうし、男前だったのでしょうね」
まどか「さやかちゃんカッコイイ!」
マミ「美樹さん最高よ!」
ほむら「……」
さやか「ようし! 今日はばっと騒ぐぞー! 全部ほむらのおごりで!」
ほむら「マジで!?」
まどか「ノープランだった罰だよ」
ほむら「!?」
なんとか美樹さやかの騒動も乗り越えられたようだ。
結果オーライだったけど、志筑仁美がいい子で助かった。
ついでに美樹さやかも。
もしかしたら今までも、二人で決めさせずにみんなでこんな風で集まればよかったのかもしれない。
まどかや巴マミが助けになれば、二人は喧嘩別れなどせずに、さやかも魔女化しなかったのかもしれない。
ただ、とても面倒なことに。
彼女はいまだに勇者のパーティの一員だと思っている。
どうやって説明しよう……。
が、さらに面倒な人がもう一人。
その巴マミである。
彼女はいまだに佐倉杏子と接触しているらしい。
しかも、マミの話では隣に千歳ゆまの存在も確認されている。
ゆまが隣にいるときの杏子は、頑なだ。
正直マミがどうこうできる話ではないだろう。
杏子がキレて、マミを殺害するとかそういう可能性はないだろうけど……。
今度はみんなで彼女のもとに行ってみるのも手かな。
翌日
マミ「どうしたら佐倉さんの心を開けるのかしら?」
ほむら「心?」
さやか「まだ仲間になってくれないんですよね」
マミ「ええ、いくら私が、この町に危機が迫っているといってもどこ吹く風」
さやか「くっそー、記憶が戻ればなー!」
まどか「じゃあじゃあ、わたしたちも佐倉さんとお話ししてみたら」
マミ「できれば私一人で済ませようと思っていたけれど……」
ほむら「いいわ、彼女のことは私も知っているし、むろん、彼女は私のことは知らないでしょうが」
さやか「どんな子か知らないけど、マミさんが一生懸命頼んでるのに、悪い奴め!」
まどか「(きっと、良識がある子なんだろうなあ……)」
杏子のテリトリー
ほむら「佐倉杏子」
杏子「うげ!? 巴マミ!? くんなって言ったろ!?」
……どんだけ嫌われているのよ。
そして、声をかけたのは私よ。
マミ「お願い佐倉さん、私と一緒に魔王を倒して」
杏子「だから、魔王なんて存在はしらねーって言ってんだろ!」
ほむら「シスター杏子」
杏子「!? いやがらせかテメェ」
さやか「ちょっと、あんた、やっぱり記憶があるんじゃない!」
杏子「誰!?」
さやか「あたしは! あんたの仲間だった者よ!」
杏子「仲間だあ? アタシは一匹狼だよ、仲間を持った記憶はない!」
さやか「あんた聖女なんでしょ? なんで協力してくれないの?」
杏子「聖女ぉ? あはは! 冗談を言ってんの?」
さやか「ううん、前世のあんたのこと、なんとなく覚えてる、あたしの支えになってくれたって!」
ほむら「(うそぉ!?)」
まどか「(信じられない、みたいなことを考えているんだろうなあ)」
杏子「どこのアタシと会ったのか知らないけど、それは勘違いだよ」
さやか「ううん、早く思い出して! シスター杏子!」
杏子「(そう言われてみれば、このことどこかで会ったような……)」
杏子「へへ、前世か、アタシにもあったのかな……」
ほむら「(あんこちゃんマジ聖女)」
杏子「わかった、アタシもあんたらの仲間になるよ」
さやか「ありがとうシスター!」
杏子「おっと、アタシのことは杏子でいい、シスターなんて柄じゃないし」
さやか「そっか、あたしは美樹さやか、さやかでいいよ」
杏子「よろしく、さやか」
マミ「(私置いてけぼり……)」
まどか「ま、マミさんがきっかけを作らなきゃ二人も一緒にならなかったですよ!」
ほむら「そうよ、マミ、あなたがナンバーワンよ!」
マミ「ふふ、そうよね!」
ほむら「(こういう風に騙されてくれたら、それはとっても嬉しいなって)」
ついに佐倉杏子まで仲間になった。
これは今までにない流れだ。
そして私はほとんど何もしてないことに気がつく。
……もしや、最初から私が何もしないほうがよかったのか。
だけど、まだ私はまどかとちゅっちゅしていない。
その目的を果たすまでは、たとえワルプルギスの夜を全員生存で倒しても時間を巻き戻す。
そしていまだに動いていないキュゥべえ。
あいつは何を考えているのかは分からない。
さやかやまどかが契約をしていない以上、警戒を解くわけにはいかない。
そして、キーポイントは千歳ゆま。
彼女がいる世界にはあいつらがいる。
あの二人が。
その二人について話すべきだろうか。
それとも、あいつらがまどかに気づいていない以上……
そういえば、呉キリカはマミと同学年だったはず。
藪をつついて蛇を出すか、鬼を出すか。
それとも両方か。
……ただ、なんとなくだけど。
私が何もしなければ問題など通り過ぎてしまいそうではないか?
き、気のせいよね?
ほむら「ねえ、巴マミ」
マミ「なあに?」
ほむら「呉キリカという子を知っている?」
マミ「呉さん? 聞いたことないわね」
ほむら「(名前程度じゃわからないか……)」
ほむら「そうね、黒髪のショートで、目つきが鋭くて、何も考えてなさそうな、ボーっとしているの」
マミ「うーん……それで、彼女は前世からの仲間なの?」
ほむら「いいえ、彼女は魔王オ・リーコの使いよ」
マミ「なんですって!? そんなのが私たちにまぎれて生活をしているの?」
ほむら「そう、魔王も勇者と同じように人にまぎれて生活をしている」
マミ「なんてことなの、魔王が……使いを生み出す魔王が……」
ほむら「(そんな設定あったかしら?)」
教室 昼休み
マミ「私はどうすればいい?」
ほむら「あいつら……いえ、オ・リーコと呉キリカはまどかを特定はできていない」
マミ「うかつに刺激するのはまずいということ?」
ほむら「ええ、だけど、そいつらを放っておくわけにはいかない」
マミ「どうすればいい?」
ほむら「(どうしよう)」
ほむら「皆で相談をしましょう」
マミ「そうね、私も呉さんという人には覚えが無いし」
ほむら「(忘れてたけど、美国織莉子の父親は有名人なのよね)」
ほむら「じゃあ、また放課後」
マミ「ええ」
さやか「ついに魔王が……」
杏子「へえ、美国織莉子が、オ・リーコか」
まどか「美国さんって、汚職で捕まった人だよね?」
さやか「やっぱり、魔王の身内だけあるわね、悪は成敗しなきゃ!」
ほむら「(ここまで言われるとさすがに罪悪感があるわ)」
まどか「(きっと、テキトーなことまた言ったんだろうなあ……)」
ほむら「おほん、彼女は魔王とはいえ、記憶自体は無くしている可能性があるわ」
マミ「そうね、記憶を有していたら、すぐに鹿目さんに気がつくはず」
さやか「つまり、力はあるけれど、油断がある今がチャンス?」
杏子「魔法少女である以上、隙を突くのは難しいんじゃね?」
ほむら「ええ、できれば穏便に済ませたいわ」
まどか「(きっと、何も考えてないからみんな任せなんだろうなあ)」
まどか「ねえほむらちゃん、なんで、オ・リーコはわたしを狙うの?」
ほむら「(ここで知らないなんて言ったらブッ飛ばされそうね)」
ほむら「勇者の力を受け継いでいるからよ」
まどか「(ああ、知らないんだ……)」
杏子「問題なのは、アイツの力だろ」
さやか「固有魔法ってやつ?」
杏子「あいつは何故だか、アタシの連れてるガキが魔法少女としての才能があることを知っていた、だが、ガキと接触した様子はない」
マミ「ゆまちゃんね、確かに目に見えて強い力は感じなかったわ、鹿目さんくらいに力があればわかりやすいんだけど」
さやか「てことは、覚醒する人間の力を把握する力?」
ほむら「それは無いでしょうね、それができるなら、もうすでに接触をしているわ」
ほむら「(おそらく何らかの理由で彼女はまどかを殺さなければならないと判断した)」
ほむら「(あれだけ可愛いんですもの、嫉妬しちゃうものね)」
まどか「(きっとほむらちゃん、全然関係ないこと考えてるんだろうな……)」
マミ「ということは、彼女は予知能力を持っているんじゃないかしら」
杏子「予知? そんな能力聞いたことないぞ?」
マミ「私の友達のエイラちゃんは予知の魔法が使えるの!」
ほむら「(ていう設定だったんだけど、いつの間にかマミが彼女から聞いたことになってる不思議)」
さやか「でもなんで、それでまどかを?」
ほむら「まどかは世界を改変するほどの力を持っている、おそらくそれを危険視しているんでしょう」
マミ「遠い未来、その力が発動するということ?」
さやか「!? でも、まずそれには覚醒しないと!」
杏子「だな、前世の記憶も力も持ってない以上、遠い未来に世界が改変されるといっても信じられない」
マミ「ただ、それを理解させるのは難しいでしょうね」
ほむら「彼女は世界の終わりを見た、だからまどかを敵視している」
ほむら「(そっか、だからあの子はまどかを……到底許される事ではないけれど)」
まどか「(やっと合点がいったって表情のほむらちゃん可愛い)」
さやか「うーん、こんなにまどかは可愛いのに!」
杏子「このとぼけた顔で世界がうんぬんって言われてもな」
マミ「そうね、こんなに平和主義なのに」
まどか「えへへ」
ほむら「オ・リーコの目的はわかった、次は呉キリカよ」
マミ「うん」
ほむら「彼女はオ・リーコの狂信者よ、説得しようなど到底無理」
ほむら「(そして場合によっては彼女が魔女になり、巴マミが絶望してしまうかもしれない)」
ほむら「できれば彼女たちには、延々と眠っててもらうとかしてて貰いたいんだけど」
杏子「眠るねえ……」
まどか「ねえ、ほむらちゃん、幻術は使えないの?」
ほむら「え?」
まどか「え?」
ほむら「あ、ああ、そ、そういえば、そんな力を使ったこともあったわね」
まどか「忘れてたの?」
ほむら「いえいえいえ、そんなことないわ、えへへ、そんなことないのよ」
マミ「幻術か、そのような力を持っている子はいたわね」
杏子「……へえ、ほむらは幻術を使えるのか」
ほむら「教えてもらったのよ、前世のあなたに」
杏子「……!?」
さやか「前世の杏子はそんな力があったの?」
ほむら「ええ、その力の応用で、今も少しばかり使えるわ」
マミ「佐倉さん?」
杏子「……アタシも、昔はちょっとは使ったな」
さやか「じゃあ!」
杏子「でも駄目だ、あれは人を迷わせる悪い力だ、ろくな結果も生みださない」
マミ「相手は人じゃないわ、魔王よ」
杏子「なおのことさ、もし失敗したらどうする? そいつらに気がつかれて襲いかかられたらどうする?」
さやか「杏子のバカ!」
ほむら「(ほむ!?)」
まどか「(予想外と驚くほむらちゃん)」
さやか「杏子のバカ! いくじなし!」
杏子「な、なんだとぉー! バカっていうほうがバカなんだぞ!」
さやか「じゃあ、あたしもバカで良いよ! でも、杏子のほうがもっとバカだ!」
杏子「さやかのバカ!」
さやか「何よバカ! やりもしない前から逃げるんじゃない!」
杏子「!?」
さやか「何もせずに先を越されて、実は好きでした、恋人同士でしたなんて言われて、あたしってほんとバカ!」
ほむら「(超ごめんなさい)」
さやか「でも、過ぎてみて、考えてみたら納得した! 仁美ならいいって思ったもん!」
杏子「な、なんだよ、何が言いたいんだよ」
さやか「やってみて、失敗しちゃったら、あたしたちで何とかするよ!」
マミ「そうよ、佐倉さん、失敗して、戦闘になっても、こちらには三人魔法少女がいるわ」
杏子「……」
ほむら「あいつらの戦力は二人、勝てないわけがないわ」
杏子「へへ、そこまで言われちゃ、一肌脱ぐわけにはいかないな」
さやか「杏子!」
まどか「(普通に世界を改変しませんって約束すればいいんじゃないかなあ……)」
杏子「ほむら、あたしはどんな幻覚を見せればいい? あいつらを納得させるにはどうしたらいい?」
ほむら「!!!!!?????」
まどか「(わー、ほむらちゃんすっごい困ってる)」
ほむら「……そうね、まどかがどれほど可愛いかを理解してもらうわ」
まどか「(テンパってもう意味のわからないことを言うほむらちゃん)」
杏子「わかった、まどかが無害な存在だと思わせればいいんだな!」
さやか「よしよしよし、じゃあ、まどかの子供のころの可愛いエピソード紹介する!」
マミ「じゃあじゃあじゃあ、アルバムとかで可愛い写真を見るとか!」
まどか「は、恥ずかしいですよ!」
ほむら「そうね、相手をまどかせる、いえ、惑わせるにはアルバムを見るしかないわね」
まどか「もう単純にアルバム見たいだけだよね!?」
さやか「ようし、じゃあ、今日はまどかの家に全員集合!」
マミ「イエー!」
杏子「イェー!」
ほむら「(ああ、楽しみだなあ、小さい頃のマドカァー……)」
翌日、キュゥべえから呉キリカの場所を聞き出した。
その後できれば穏便に、と私が言うくらいマミがキュゥべえを捻ってボコった。
おそらく、たいていの魔法少女の場所を把握しているという点で怒りを覚えたんだろう。
今回のことで少しでも、あいつが信用のならないやつだと把握してほしいものだ。
……やっぱりキュゥべえは人間のことなどまるで理解していないのを再認識した。
キリカ「……? 何あんた?」
ほむら「美国織莉子を狩るものよ」
キリカ「お前、何言ってんの? バカなの?」
ほむら「私は本気よ」
キリカ「ふぅーん? そっか、じゃ、死ね」
ほむら「……」
前のループでも思ったけど。
こいつ、本当に壊れているわ。
私も人のことを言えた義理ではないけれど。
キリカ「!? なんだお前、なにをした!」
ほむら「お生憎さま、あなたじゃ私には勝てない」
ほむら「教えてあげるわ、呉キリカ」
キリカ「……」
ほむら「さすがに時間まで止められては、どうしようもないでしょう?」
キリカ「バカだなお前」
ほむら「負け惜しみ? 頭が残念なのは相変わらずなのね」
キリカ「だったら、時間が止まるよりも速く動けばイイだけだろォ!」
ほむら「……来るとわかっていれば、たとえマミ程の力があろうとも私には当たらないわ」
そして私は時間を止めて遠くに離れる。
杏子の魔法が今、完成して
呉キリカを包み込んだ。
キリカ「な、なんだ!? なんだここ!」
まどか「キリカチャン!」
キリカ「!?」
まどか「キリカチャン! キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!キリカチャン!」
必殺! ロリまどか百人乗っても大丈夫大作戦!
前日
杏子「へぇー、案外可愛いもんだな」
さやか「でしょでしょ、ちっちゃいころのまどかはホントかわいーんだから!」
まどか「さやかちゃん……」
ほむら「は、鼻血が……」
まどか「ほむらちゃん……」
マミ「ふふ、今度は私のアルバムも持ってくるわね」
杏子「確かにこれだけかわいければ、どんな奴でも抑えられるかもね」
まどか「(そうかなあ……)」
杏子「ようし、じゃあ、この写真をイメージして……ほむら!」
ほむら「?」
杏子「今ほむらの周りにはちっちゃいまどかが十人いる!」
ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン ホムラチャン
ほむら「ま、マドカァー! マドカァー! ウワァァァァァァン!」
幻覚に包まれた呉キリカは最初こそは鋭い表情を見せたものの。
ほむら「とげが抜けたかしら?」
キリカ「アハハハハ……! マドカァ! マドカァ! マドカァ!」
マミ「ええ、昨日の暁美さんと同じ表情しているわ……」
杏子「(あれ? アタシの能力最強なんじゃね……?)」
キリカ「マドカァ! マドカァー! アハハハハハ!」
ほむら「よし、もういいわね」
杏子「じゃあ、解除するぞー」
マミ「念のため、私は構えておくわね」
呉キリカの前に立つ。
ほむら「どうかしら、呉キリカ」
キリカ「……まど……か?」
ほむら「ええ、女神さまよ」
キリカ「マドカー! マドカー!」
ほむら「……」
気配がする。
ほむら「来たわね、美国織莉子」
織莉子「はじめまして、暁美ほむらさん」
ほむら「……」
キリカ「えへへ、マドカァー!」
織莉子「私のこと、ご存じのようですね?」
ほむら「ええ、よく知っているわ」
織莉子「私も、よく識ることができました、自分自身の敵を」
ほむら「させないわ」
織莉子「あなたは、私に敵うはずがない、その事はよくご存じのはずでは?」
キリカ「マドカー! マドカー! まろかー! えへへへへ!」
うるせぇ……
ほむら「杏子、やっておしまいなさい」
織莉子「私の猿真似でしょうか、ふふ」
杏子「あいよ! くらいな、アタシの極限突破! 秘技! アルティマ・アート!」
マミが考えました。
織莉子「……」
オリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォ
オリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォオリコォ
ほむら「……?」
マミ「変化が無い……?」
キリカ「マロカァ……」
杏子「なんだ、ロリまどかが通用しないっていうのか?」
杏子「百人のまどかが通用しないんだったら、アタシは!」
ほむら「なに、私にも……まどかが! 私が! マミが! さやかが!」
マミ「ああ! 周囲が! 佐倉さんの幻覚で!」
織莉子「……キリカァ!!」
キリカ「ま、まど……アハハハ! マドカァ!」
私たちの周りをたくさんの幼女が飛び回っている。
まどかの幼女
さやかの幼女
杏子の幼女
マミの幼女
私の幼女
キリカの幼女
織莉子の幼女
ゆまの幼女
私が生きてきた世界で見たすべての人間の幼女が!
幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女
幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女幼女
として! 登場した!
ほむら「あ、あ、あ、ああ! まどか、まどかぁー!」
まど幼女ほむ幼女さや幼女あん幼女マミ幼女キリ幼女おり幼女ゆま幼女!
私は幼女の海にいた。
身の回りのものがすべて幼女だった。
食べ物も飲み物もすべて幼女だった。
私は幼女に包まれていた。
ある時私は幼女にこう言った。
まど幼女!
すると彼女はこう答えた。
ほむ幼女!
私は包まれた。
やすらぎと
あたたかさと
いつくしみに。
幼女万歳!
幼女万歳!
コングラッチュエーション!
コングラッチュエーション!
幼女!
幼女!
ふと気がついたら三日経っていた。
私はずっとうわごとでまどか、まどかと呼んでいたらしい。
なんて恥ずかしい。
さやか「杏子、やり過ぎ」
杏子「すみません、もうしません」
織莉子「いいんですよ、もう」
キリカ「……うん」
マミ「ああ、まだ頭痛いわ……」
まどか「大丈夫、ほむらちゃん?」
ほむら「大丈夫よ、至って絶好調だわ」
ゆま「頭痛いの? ゆまが治してあげるよ?」
キリカ「平気、ありがと」
三日うなされて、気がついたらみんな仲良くなってた。
幼女を通じてなのか、この世界の意志なのはわからない。
ただ一つ言えることは。
杏子が固有魔法を封印した理由がよくわかった。
新たに三人の魔法少女を加えて、私はついにネタばらしをすることにした。
すみません、魔王云々は嘘です。
電波系とか嘘です。
魔王とかいません。
織莉子さんもキリカさんも普通の人間ですと説明した。
マミ「もももももも、もちろん知っていたわ!」
一番動揺したのは巴マミだった。
最後の最後まで私の嘘を信じていたのは彼女だった。
美樹さやかは志筑仁美に言われてなんとなく気が付いていたらしい。
仁美ちゃんマジ天使。
織莉子「時間逆行?」
ほむら「その通りよ、まどかやさやかのこと、あなたたちのことを知っていたのはそれが理由よ」
キリカ「へぇー、便利だね」
ゆま「わたしもそんな力があったらどこに戻るかなー?」
キリカ「ゆま、私は、今がいいよ」
織莉子「そうね、キリカ」
まどか「(なんかみんな仲がいいけど、ちょっと前まで殺しあう仲だったんだよね? 忘れそうになるけど)」
織莉子「鹿目さん、でしたね」
まどか「はい?」
織莉子「許して欲しいなどとは申しません、ただ、謝らせてください」
キリカ「ごめんなさい」
まどか「い、いいよ、ほむらちゃんが見た世界ではどうだったか知らないし、ここではもう、わたしの命を狙ったりしないんですよね?」
織莉子「はい、魔法少女でないあなたが魔女として発現することもありませんから」
キリカ「うんうん」
マミ「? 魔女って?」
シマッタァー! 豆腐メンタル忘れてたー!
織莉子「ああ、巴さんはご存じないんでしたね」
マミ「何か?」
キリカ「魔法少女は自身の願いで魔女にもなれるんだよ」
織莉子「詳しい原理は分からないですが、強い願いによって魔法少女は魔女にもなれるんです」
マミ「魔女は、もともと魔法少女だったということ?」
織莉子「そうです、理由まではわかりませんが」
キリカ「暁美さんは知ってそうだね?」
ほむら「しししししししし、知らないわ!」
マミ「佐倉さん」
杏子「アルティマ……」
ほむら「ごめんなさい、お話しますので、どうか幻覚だけは勘弁してください!」
織莉子「そんな……ソウルジェムが曇りきると魔女になる……?」
キリカ「強い力を使えば、じゃなかったんだ」
マミ「……」
さやか「マミさん……」
杏子「マジかよ、魔法少女の末路って、みんな、あんなんなのか?」
ほむら「その通りよ」
まどか「ど、ど、どうしよう……みんな暗いよ……」
さやか「でも、あたしたちが何を言ったって、魔法少女じゃないよ……」
ゆま「みんな、元気出して!」
マミ「ゆまちゃん?」
ゆま「死にたくないなら、殺したくないなら、魔女にならなければいいんだよ」
織莉子「ゆまさん、残念だけどグリーフシードには限りがあるのよ?」
ゆま「それだったら、グリーフシードが無くなるまで、生きればいいんだよ」
ゆま「なにも、今あきらめて魔女になることなんて、そんなことないでしょ?」
ゆま「みんなは、いま、死んじゃうの?」
杏子「ゆま……」
キリカ「そうだ、ゆまの言うとおり! それに、人間、いつ死ぬか分かんないし!」
織莉子「ふふ、こんな小さな子に教えられるなんて恥ずかしい限りね」
さやか「そうだよ! あたしだっていつ死んじゃうかわからないし!」
まどか「うんうん、人はいつか死んじゃうし!」
ほむら「……マミ?」
マミ「そうね、でも、とりあえず、私にいい考えがあるのだけれど」
あのインキュベーターフルボッコにしない?
何人か、躊躇いを見せたけれど。
私が無限に増殖することを教えたところ。
みんな喜んで賛成した。
キ「わ」
ュ「け」
ゥ「が」
べ「わ」
え「か」
イ「ら」
ン「な」
キ「い」
ュ「よ」
ベ「わ」
1「け」
タ「が」
1「わ」
こうして、ワルプルギスの夜が来襲するまであと数時間。
まどかとの生活もこれで終わりだ。
あいつを倒せば、私はこの町から出ていく。
誰もいないところで果てていく……
つもりだったのだが。
まどか「ほむらちゃん」
ほむら「何かしら」
まどか「難しいこと考えてるでしょ」
ほむら「……ええ」
まどか「ワルプルギスの夜をどうしようって考えてるの?」
ほむら「いいえ、その後のことよ」
まどか「その後? じゃあ、ワルプルギスは倒せるんだね?」
ほむら「正直負ける気がしないわ」
まどか「あはは、ワルプルギスの夜もかわいそうだね」
ほむら「本当ね」
私を迷わせているのはあのゆまの言葉。
まどかのいない土地で、いつの日か朽ち果てていく。
それを望んでいたはずなのに。
ソウルジェムを砕けば死ねる。
分かっている。
でも、それは諦めなのではないか。
いつの日か曇るなんて、遠い未来なんじゃないか。
死ぬ日まで生きる。
そんなのは、普通の人間となんら変わらないんじゃないか。
それまで、まどかと生きることができるんじゃないかと。
ほむら「まどか、私はワルプルギスを倒したら、遠くに行こうと思っていたわ」
まどか「どうして?」
ほむら「私はいつか魔女になり、害をなす存在となる、だからその前にソウルジェムを砕いて死ぬ」
まどか「うん」
ほむら「私は何度も、魔女になる魔法少女の末路を見たわ」
まどか「うん」
ほむら「自分もいつかこうなるのだ、そう思ったわ、でもね」
まどか「ゆまちゃんが止めてくれた?」
ほむら「ええ」
まどか「わたしは……ほむらちゃんに近くにいてほしいけど」
ほむら「プロポーズ?」
まどか「杏子ちゃんや織莉子さん、キリカさんやゆまちゃんも、近くにいてほしい」
ほむら「……調子に乗りました、ごめんなさい」
まどか「でもね、やっぱり一番近くにいてほしいのはほむらちゃんだよ」
ほむら「!?」
まどか「私を一生懸命守ろうとして、この一カ月くらいいつも近くにいて、もう、ほむらちゃん無しの生活は考えられない」
ほむら「杏子の幻覚……?」
まどか「杏子ちゃんは近くにいないよ、現実だよ」
ほむら「あ、あ、あ、じゃ、じゃあ、やっぱり、プロポーズ?」
まどか「もう、どうしてそういうことを考えるの!? そんなほむらちゃんは……」
まどか「大好きだよ!」
ほむら「!!! ええ! 私もよ!」
まどか「じゃあ、わたしは避難所に戻るね、黙って抜け出してきたから怒られるかなあ?」
ほむら「大丈夫、心配ないわ」
まどか「そうなの?」
ほむら「ええ、いざとなれば杏子の幻覚で……」
まどか「わたしの家族を巻き込まないで!?」
・
まどかをゆまが連れて行く。
魔法少女としては一番能力の低い彼女だけど、嵐の中でまどかを守るくらいは問題ない。
私はこの場に集合している魔法少女たちとアイコンタクトをとる。
佐倉杏子
巴マミ
美国織莉子
呉キリカ
このメンバーなら、負けることはない。
いつかソウルジェムが砕け散るその時まで、
私は戦い続ける。
完
.,-'''''~~~ ̄ ̄~~''' - 、
\ ,へ.人ゝ __,,.--──--.、_/ _,,..-一" ̄
\ £. CO/ ̄ \ _,,..-" ̄ __,,,...--
∫ / ,、.,、 |,,-¬ ̄ _...-¬ ̄
乙 イ / / ._//ノ \丿 ..|__,,..-¬ ̄ __,.-一
.人 | / ../-" ̄ || | 丿 / ). _,,..-─" ̄ ._,,,
マ .ゝ∨ / || " 丿/ノ--冖 ̄ __,,,,....-─¬ ̄
( \∨| " t-¬,,...-一" ̄ __--¬ ̄
ミ ⊂-)\_)` -一二 ̄,,..=¬厂~~ (_,,/")
.⊂--一'''''""|=|( 干. |=| |_ (/
/ ( / ∪.冫 干∪ 人 ` 、 `
/ ) ノ '`--一`ヽ 冫
く.. /
. ト─-----イ |
∪ ∪
ぶっちゃけ、織莉子とキリカを書くの初めてなので、手元にある
おりこ☆マギカを見っ放しで作業していました。
なんか自分で書きながら、あれ? タイトルと内容があってないんじゃね?
と、思いましたが。
まあ、いいや、幼女出せたし。
と、思っております。
正直な話、織莉子とキリカってコミックを見たばかりのころはあまり好きではなかったのですが。
今回、出すに当たって(予定はなかった)もう一度見直したところ、
一生懸命に努力している姿に心打たれました。
彼女たちもまた、必死に生きようとしていたからこそ、コミックス版のゆまのセリフが光るのだと思います。
それでは、またどこかで。
レスや支援をありがとうございました。
次は、タイトルと内容が合った作品にしたいですorz
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