岸辺露伴「765プロだと?」 (32)
露伴「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」
露伴「どうしてぼくがそんなとこに行かなくちゃあならないんだ?」
康一「お願いしますよォ~露伴先生」
康一「このあいだ承太郎さんから『俺には必要のない物だから君が使うといい』ってライブのペアチケットをもらったんですけど...」
康一「一緒に行く人が誰も居ないんです...」
露伴「それならクソッたれの仗助とでも行けばいいじゃないか」
康一「仗助君はそういうの興味が無いって断られちゃったんです」
露伴「それなら...あほの億泰も居るだろう?」
康一「億泰くんも...最近お父さんが元気無いみたいで...」
康一「ましてや由花子さんなんてアイドルの話を切り出す勇気が沸いてきませんよ...」
露伴「それならライブに行かないってのもアリじゃあないかい?」
康一「ええっ!?あの765プロのライブですよ!」
康一「せっかく承太郎さんがくれたのにそれはもったいなさすぎます!」
露伴「ずいぶんと熱心だな...だけど」
露伴「仗助と同じ理由なのは気に入らないが、ぼくもアイドルなんかに興味はない」
露伴「確かに前に765プロとやらとは別のアイドルに取材をした事もある」
露伴「だがぼくの漫画に活かせるものは見つからなかったんでね」
康一「え...」
露伴「確かに康一君には住む場所まで貰えて感謝しているよ」
露伴「そんな親友の頼みを聞いてあげたいのはやまやまだが、ぼくは忙しいんだ」
露伴「他をあたってくれよ」
康一「そんなァ~...」
露伴「それにしても...驚いたぜ、まさか康一君がアイドル好きだなんてな」
康一「あれ?言ってませんでしたか?」
露伴「少なくとも前に『読んだ』時はそんなことは書かれてなかった」
康一「ああ、確かにあの時は765プロの事をよく知りませんでしたから...」
露伴「ま、そうだったとしても関係のないハナシだが」
露伴「さて、ぼくは...今から出掛けないといけないんだ」
康一「ハァァ~...せっかく参考にブロマイドも持ってきたんですけど...忙しいなら仕方ないですね...」
露伴「悪いがそんなものはぼくには必要のな...い...」
康一「...?」
露伴「そのブロマイド...見せて貰ってもいいかい?」
康一「えっ?別にいいですけど...はいどうぞ」
露伴「いや、全部はいらない」
露伴「その一番左にあるヤツだ」
康一「えーと...千早さんですね」
露伴「千早?千早という名前なのか?」
康一「はい、如月千早さん...歌姫と呼ばれていてその歌唱力はとてもスゴいですよ!」
康一「あと普段はクールですが生っすかで時々見せる一瞬のかわいさがたまんないですね!それとォ~」
露伴「もういい、よく分かった」
康一「あ、スミマセン...それと今僕が言ったことは由花子さんには内緒にしておいてくださいね...」
露伴「康一君はぼくがそんな事するようなヒネくれたヤツに見えるのかい?」
康一「...あ、あはは」
露伴(それにしても...如月千早か)
露伴(この『眼』は...ぼくには分かる、ただアイドルを続けてきたヤツのモノじゃない)
露伴(過去に何か...大きな経験をした『背負う者』のそれだ)
露伴(アイドルなんかがどうしてこんな『眼』をしているんだ?)
露伴(これは気になるぞ...ぼくはこの『眼』の正体を知りたいッ!)
康一「えーと...それじゃあ残念ですけどこのチケットは承太郎さんに返してきますね」
露伴「待ってくれ康一君」
康一「ど、どうしたんですか?」
露伴「ぼくも行くよ」
康一「行くって...」
露伴「765プロのライブ...ぼくも一緒に行かせてもらうよ」
康一「えっ!?露伴先生さっきまで忙しいって...」
露伴「あくまでもそれがマンガの為になるのなら話は別だ」
露伴「如月千早...どんなヤツなのか一度取材してみたくなってね」
康一「あれ?露伴先生...もしかして千早さんのファンになっちゃいました?」
露伴「言っただろう、ぼくはアイドルに興味は無い」
露伴「だが、如月千早...アイドルではなくひとりの人間としての彼女はどういう人物なのか?」
露伴「マンガのネタになりそうだ...興味が沸いたよ」
康一「...分かりました、それでは決まりですね!」
康一「じゃあ、ライブは5日後ですけど...前日に出発します?」
露伴「今から行こう」
康一「はい?」
露伴「気になって気になって仕方がないッ!さぁ今すぐ準備するんだッ!」
康一「え、ええっ!?さっきと全然言ってることが違うじゃないですか!」
翌日
康一「まさか本当に行くことになるなんて...」
露伴「言っただろう康一君、ぼくは早く見てみたいんだよ」
康一「それにしても...早すぎじゃあないですか?」
康一「ドームに来たのはいいですけど...ライブはまだ先ですよ?」
露伴「甘いぜ康一君、あそこを見てみなよ」
康一「えっ?えーと...あれは」
露伴「警備員だ」
康一「警備員ぐらい何も無くたって居るんじゃないんですか?」
露伴「それにしちゃあオカシイと思わないかい?」
康一「うーん...」
康一「言われてみれば...確かに...なにも無い日にしては少し多いような...」
露伴「その通り、流石だな康一君」
康一「あ、ありがとうございます...でもいったい何の為に?」
露伴「リハーサルだよ」
康一「リハーサル?」
露伴「恐らく会場設営はもう終わっているんだろう」
露伴「これまでにトラックや人の出入りをそこまで見ていない」
露伴「そしてこの大人数の警備員がその証拠だ」
露伴「今は中でアイドルがリハーサルでもしているんだろうな」
康一「へぇ...でもどうするんですか?まさか中に入るワケにもいきませんし」
露伴「いや、そのまさかだ」
康一「えっ?」
露伴「中に入ってみよう」
康一「そ、そんな無茶な!ちょっと、勝手に行かないでくださいよ!待ってください露伴センセェ~!」
露伴「遅いじゃあないか康一君」
康一「か、勝手に行かないでくださいよ...ハァ」
康一(まあ...露伴先生がずっとおとなしくしているとは僕も思ってなかったですけど...)
康一「でも...どうやって中に入るんですか?」
露伴「ああ、それなんだが」
露伴(入口付近の警備員は3人...これはぼく一人じゃあちょっと面倒くさいな)
露伴「よし...ここは...」
康一「何か考えでもあるんですか?」
露伴「あるに決まってるだろ、ぼくをナメるなよ康一君」
康一(またとんでもない事を言い出す気じゃ...)
露伴「それはな...」
康一「ええっ!?ダメですよそんなこと!」
露伴「あくまでも取材を申し込んで断られた時の『保険』さ」
康一「それになんで僕まで手を貸さなければいけないんですか!」
露伴「確かにぼく一人でもできる...だが...少し手間が掛かるんでね」
露伴「君に手伝って貰った方がスムーズに行くんだよ、頼む」
康一「嫌ですよ!露伴先生がひとりでやればいいじゃないですか!」
露伴「...おいおい、このぼくが頭下げて頼んでるんだぞ?」
露伴「君は親友の頼みを切り捨てる残酷なヤツだったのかァ~?」
露伴「そんなヤツだとは思ってなかったぜ、見損なったよ」
康一(自分も最初は断ってたのに...)
露伴「それに...康一君」
露伴「康一君は765プロのアイドルがかなり好きなんだろ?」
康一「まぁ...そうですけど」
露伴「その765プロの普段は見られないリハーサルの様子が見られるんだぞ?」
露伴「君にとっても悪い話じゃあないとおもうぜ」
康一「うっ」
露伴「それにあくまでも『保険』だよ、取材に断られた場合のね」
康一「...」
露伴「頼む、康一君」
康一「...どうせこうなった露伴先生は止められないんですよね」
康一「ハァ...分かりましたよ」
露伴「分かってくれたかい!さすがぼくの親友だ!」
康一「ただし...警備員の人にケガさせちゃダメですからね...」
露伴「分かってるさ、ぼくをなんだと思ってるんだい君は」
康一「ホントに大丈夫かなぁ...?」
康一(それにしても...)
康一(僕も断らないなんて...露伴先生と一緒に居る時間が多すぎて...感覚がマヒしちゃってるのかなぁ)
露伴「さてと...それじゃあ...」
露伴「イチバン右の警備員...あの若いヤツ...アイツにしよう」
露伴「さぁ、行くぞ康一君」
康一「ハァ...しょうがないなぁ~もう...」
露伴「キミ...ちょっといいかな」
警備員A「はい、なんでしょうか?」
露伴「ちょっと聞きたいことがあるんだけど...大丈夫かい?」
警備員A「あの...あなた...もしかして」
露伴「ん?ぼくのことを知ってるのか」
警備員A「はい!漫画家の岸辺露伴先生ですよね!自分ファンなんです!」
露伴「おや、そうなのかい」
警備員A「『ピンクダークの少年』も読んでますしファンレターも書いてますよ!」
露伴「どうもありがとう...それなら話は早い」
露伴「今...ドームの中では765プロのアイドルがリハーサルをしていると思うんだが」
警備員A「ええ、確かにその通りです」
露伴「今後の漫画のネタに...アイドルに取材がしたくてね...中に入れてもらってもいいかい?」
警備員A「はい、構いませんよ...それではIDを確認してもよろしいですか?」
露伴「なに?IDだと?」
警備員A「はい...ライブ前にドームに出入りするのでしたら事前にIDを確認させて頂かないと...」
露伴「ぼくはIDなんて持っていないぞ...それは今ここで発行できるのかい?」
警備員A「いえ、すみませんが...前日までに申込みされましたら発行するということになっております」
露伴「参ったな...ぼくは今取材がしたいんだ」
露伴「君もIDは持っているんだろう?それを貸してもらえないかい?」
警備員A「すみませんが...決まりですので...岸辺露伴先生でもこればかりは」
露伴「そうかい...わかったよ」
警備員A「すみません...」
露伴「それなら『保険』を使うまでだな」
警備員A「えっ?」
『バキバキバキバキ!』
警備員A「!」
警備員B「ん?なんの音だ?」
警備員C「近くだ...あそこの後ろから聞こえたぞ...」
警備員B「見てこよう...おい!新人!お前はそこで待ってろ!」
警備員A「えっ?は、はい分かりました...」
露伴「...行ったか」
警備員A「一体何の音だったんですかね...?」
露伴「ぼくには分からないな...」
露伴「さて、それじゃあ悪いけど、『書き込ませて』もらうよ」
警備員A「え」
露伴「くらえッ!『ヘブンズ・ドアー』ッ!」
ズキュゥゥン
IDかわるのでトリ
警備員A「えっ!なに...」ドサッ
露伴「さてと...康一君が他の警備員を引き付けているうちに...」
【今日が始めての警備の仕事で緊張するなぁ】
【晩御飯はどうしよう】
【まさかあの岸辺露伴先生に会えるなんて!】
【岸辺露伴先生のサインが欲しい】
露伴「フゥーン...」
【岸辺露伴先生のセンスは最高だ!】
露伴「あぁ、ぼくもそう思うよ」
露伴「よし...」カリカリカリカリ
《岸辺露伴とその親友をドームの中に入れることを許可する》
《自分が持っているIDを岸辺露伴にあげる》
露伴「これでいいだろ」
警備員B「おい、何の音だ...って...アレ?」
警備員C「何もないぞ...聞き間違いか?」
警備員B「いや...確かに聞こえた」
警備員B「それに...複数の人間が同時に聞き間違いなんてありえない」
『バキバキバキバキ!』
警備員C「また同じ音...」
警備員B「次はあそこの後ろから聞こえたぞ...不審者か?」
警備員C「もしそうだったらおとなしくさせろよ...冬のナマズみたいにな」
警備員B「よし...行ってみよう」ザッザッ
康一「...」
康一(ふぅ...こんなことして...大丈夫なのかなぁ)
このSSまとめへのコメント
クズが【うぷぬし】死ねやオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ