QB「やっべ、身体のスペアが切れたわ」(257)

QB「大見栄張って代えはいくらでもきくって言ったけど……」

QB「僕の安月給じゃ買えるスペアの数に限りがあるんだよね」

QB「とにかく後一回殺されたら終了だ」

QB「スペアを買い足せるようになる来月までは何とか死なないようにしないと」

ほむら(ああもう、イライラするわ)

ほむら(本当は巴マミとも美樹さやかとも敵対なんてしたくないのに)

ほむら「……あら? インキュベーター」

QB「あ、ああっ、暁美ほむら!?」

ほむら「ちょうどいいわ。ストレス解消のために死になさい」

QB(やっべぇえええええええええ! 超ピンチじゃん!)

ほむら「何をつかって殺そうかしら。機関銃か、はたまた爆薬か」

QB「ま、待ってくれ!」

ほむら「別にいいでしょう? すぐに復活できるのだし。ああ、そう考えたらまたいらついてきた」

QB(どう切り抜ける!? どう状況を切り抜ける僕!?)

QB「そ、そうだ! 僕なんかを殺す為に武器を消耗するのは勿体なくないかな!?」

ほむら「それもそうね。今は特に切羽詰まった状況でもないのだし……」

QB(ほっ)

ほむら「節約のために直接足で踏み殺すことにしましょう」

QB「ああ……」

ほむら「それっ」

QB(ひっ!?)

ほむら「……どうして避けるのよ」

QB「い、いやあ、それはその……、やっぱりね、身体が勿体ないというか」

ほむら「今度こそ踏みつぶすわよ」

QB(ひいっ!?)

ほむら「また避けた……、今度避けたら時間を停止した上で潰すわよ」

QB(あわわわわわ)

QB(時間を停止なんてされたら避けようがないじゃないか……)

QB「あ、暁美ほむら!」

ほむら「何よ。足じゃなくて手で潰して欲しいとか?」

QB「そうじゃななくて、その……、僕たちは地球人を知的生命体と認識している!」

ほむら「一応そういう建前だったわね」

QB「その知的生命体が小動物を虐待してストレス解消だなんて、それはあまりに野蛮すぎないかな!?」

ほむら「そうね。でも相手が凶悪な宇宙人なら話は別よ」

QB(やべぇ目がマジだよコイツ)

QB(考えよう。どうすれば暁美ほむらに僕を殺すことを止めさせることができるのか)

QB(今、暁美ほむらが僕を殺す目的は、ストレスの解消)

QB(だったら、ストレス解消の代替手段を僕が用意できれば……)

QB(よし!)

QB「暁美ほむら!」

ほむら「何よ……」

QB(うわぁあぁ明らかに苛立ってる)

QB「やはり無駄に僕の身体を殺されるのは勿体ない。
    そこでだ、君のストレス解消に協力する代わりに、僕を殺すのを思いとどまってくれないか?」

ほむら「私のストレス解消に協力する?」

QB「ああ。僕にできることなら何でもするよ!」

ほむら「じゃあ死んで」

QB「それ以外で! それ以外で頼みます!」

ほむら「うーん、それなら……、手始めに土下座して」

QB「ははあっ!」

ほむら(いいざまね。潰れない程度の強さで頭をグリグリしてやろうかしら。勿論、靴で)

ほむら「そのままじっとしていなさい」

QB(ひいっ!? 頭の上に何かが……、これは靴か!?)

ほむら「ほれほれー」

QB(ひぃいいいいい!? あ、頭がぁあああああ!)

QB「はあっ、はあ、はあ……」

ほむら「少し気が紛れたわ」

QB「そ、そうかい、それは良かったよ」

QB(ああ、頭が少しひしゃげてしまったような気がする……)

QB(でも殺されずに済んだんだ、これで良しと……)






ほむら「さて、次は何をさせようかしら」

QB「え?」

QB「ま、待ってくれよ暁美ほむら、話が違……」

ほむら「違わないわよ」

QB「でも……」

ほむら「あなたを殺すことで解消できるストレスを100とすると、
       今解消できたストレスはたったの10程度」

QB(たった10分の1!?)

ほむら「しかもこうして会話をするだけでもどんどん苛立ちが募っていくもの。
      QB殺しの代わりには全然足りないわ」

QB(そ、そんな……)

ほむら「ちゅぎは……、おほんっ! 次はそうね、何をさせようかしら」

QB(ぷっ。クールぶってるけど噛んでやがんの)

QB(ちゅぎはってなんだよ、ちゅぎはって)

ほむら「……」

QB(恥ずかしさが拭えないのか微妙に顔真っ赤だし)

ほむら「何よその目は……」

QB「……ん?」

ほむら「ええそうよ、噛んだわよ。悪い?」

QB「悪くなんてないさ。ちゅぎは噛まないように気をつければいいんじゃないかな。ちゅぎはね」

ほむら「殺す」

QB「わあああああ! 冗談冗談! 冗談です! 言うこと聞くから殺さないで!」

ほむら「……というか、ねえ、インキュベーター。あなた本当に感情が無いの?」

QB「ギクッ」

ほむら「さっきからの様子を見ていると、どうも感情があるようにしか」

QB(僕は感情豊かな欠陥個体だからこそ、こんな辺境の惑星に送られてきた)

QB(今までは、まだ残機があるという安心感から、余裕な態度を保てていたけれど……)

QB(ぶっちゃけ僕には感情がある)

QB(でも散々偉そうにしてきた手前、そんなこと言えるわけないっての!)

ほむら「まあいいわ。どちらにしろやることは変わらないから」

QB「なるべくお手柔らかに頼むよ、暁美ほむら」

ほむら「暁美ほむら様よ」

QB「え?」

ほむら「様をつけなさい、様を。あなたに呼び捨てにされるのは気にくわないわ」

QB「わ、分かったよ……、暁美ほむら、様」

ほむら「ちゅぎからは気をつけなさい」

QB「ぶふうっwwwwwwwww」

ほむら「……」プルプルプル

QB(あ、やべ)

ほむら「殺す」

QB「ぎゃぁあああああああああ! ちょ、タンマタンマ!」

ほむら「そう。時間を止めたまま殺して欲しいのね」

QB「そのリアルタンマじゃなくて……、ああもう、本当に申し訳ございませんでした!」

ほむら「……」

QB「以後このようなことは絶対に怒らないよう全力を尽くしますので、何とぞお慈悲を!」

ほむら「ちゅ……、次笑ったら今度こそ容赦はしないわよ」

QB「ははあっ!」

このままだと円環の理に導かれるぞwwwwww

ほむら「ではそうね……。今度はコサックダンスをしなさい」

QB「こ、コサックダンス……?」

ほむら「ええ、そうよ。腕を組んで足を伸ばしたりするあの踊り」

QB「ちょっとその、僕の身体構造的にきつくないですか……?」

ほむら「出来ないの?」

QB「あの……」

ほむら「そう。なら殺す」

QB「い、いえ! やってみます! むしろやらせてくださいコサックダンス!」

QB「ふん! ふん! ふん!」

ほむら「全然足が伸びていないわ」

QB(いやこれ以上は物理的に無理無理!)

ほむら「もっと頑張って。ほらほら」

QB「ううっ、ううう!」

ほむら「あーもう、殺しちゃおっかなぁ」

QB「う、くっ……、お、お願いですほむら様、どうか、どうかこれでご勘弁を……」

ほむら「情けないわね……。もういいわ」

QB「はあっ、はあ、はあ……」

QB(もう無理、足つりそう……)

ぱああぁぁぁぁぁ

ほむら「!?」

まどか『ほむらちゃん…!』

ほむら(まどか…!!)

まどか『大丈夫だよ…!ちゅぎからは気をつければwwwwwww』

ほむら「ほら、立てる?」

QB「あ、ありがとうございます」ドキッ

QB(な、なんだ!? 今、正体不明の感情が)

ほむら「やっぱりあなたに何かをさせるだけでは、殺す以上のストレス解消は無理そうね」

QB「で、では……」

ほむら「殺す」

QB「ひいっ!?」

ほむら「と言いたいところだけれど……。いいわ。面白いし殺すのはまだ先送りにしてあげる」

QB「ありがとうございます! ありがとうございます!」

ほむら「という訳で、次はまどかのパンツを盗んできなさい」

QB「えっ?」

QB「あの……」

ほむら「ああ、もしもまどかに契約の話を持ち出そうとしたら殺すから」

QB「は、はい!」

ほむら「それと、私の名前を出しても殺す」

QB「承知いたしました!」

ほむら「では行ってきなさい」

ひでえw

まどかの家



QB(よ、よし、誰もいない……)

QB(今のうちに……)

QB(えーと、暁美ほむら様の話によると、パンツは衣装ダンスの1番下の段だったかな)

QB(……なんでそんなこと知ってるんだろう)

QB(まあいいや。ほむら様の命令は絶対だ、うん)

QB(……)

QB(……)

QB(あの御御足に踏んでいただく感触、今思えば悪くなかったかな……)

QB(早くパンツを持って帰ってほむら様に届けなくては)

QB(あれ? 何か主旨変わってる?)

QB(まあいいや)

QB(あったあった!)

QB(後はこれをほむら様に届ければ……)

QB(……)

QB(……)

QB(よく考えると手が無いからパンツを持てないじゃないか……)

QB「仕方ない、頭にかぶって持っていくか」


がちゃっ


まどか「えっ……? わ、私の部屋で何してるのQB……」

QB「」

QB「こ、これはだね、まどか。色々と訳が……」

まどか「それ、私のパンツだよね……? 人の部屋に勝手に入って、
       パンツをかぶらなくちゃいけない事情なんて存在するの……?」

QB「……」

まどか「……」

QB「だからこれは、その」

まどか「これはその?」

QB(うわあああああああ! ほむら様を裏切ることはできない!)

QB(でもここでまどかの信用を失ったら、契約できる可能性がだだ下がりで……)

QB(……)

QB(ほむら様とまどかなら……、ほむら様、かなあ)

QB(もうやけだ! 開き直れ!)

QB「ああそうだよ! お察しのとおりさ! 僕は自分の趣味で君のパンツをかぶっているんだ!」

まどか「へっ!?」

QB「最初は君の淡いピンク色のパンツを見るだけで満足するつもりだった!
    でも、仕方ないじゃないか! ワンポイントのリボンの存在に気がついてしまっては!」

まどか「い、言っていることの意味が……」

QB「分かるだろう!? ピンクというロリ系の色に加えてワンポイントのリボンなんていう、
    少女的な装飾が施されていて、しかも普段これが君の股間に押し当てられていてあああああああああああああああああああ!」

まどか「こんなの絶対おかしいよ……」

QB「とにかく! 僕はそういった経緯で君のパンツがかぶりたくなっただけだよ! それじゃあね!」

まどか「あ、ちょ、ちょっと! パンツ置いていってよー!」

QB「はあっ、はあっ、はあっ……!」

QB(なんでだろう、身体が軽い)

QB(これは色々なことを振り切ったから?)

QB(もう何も怖くない)

QB「ほむら様ぁ! 鹿目まどかのパンツを盗んできました!」

ほむら「ええ、ご苦労。それとインキュベーター」

QB「はい!」

ほむら「あなた、意外と話せそうじゃない……」

QB(!! ほむら様に、ほむら様に認めていただけた!)

QB(いやっほおおおおおおおおお!)

ほむら「すーはーすーはー、くんかくんか。ああ、まどか……」

QB(ほむら様のお幸せそうな顔を見ていると、まるで心が洗われるようだ)

ほむら「まどか……。まどか……」

QB「あ、あの、それでほむら様」

ほむら「……何かしら。今忙しいのだけど」

QB「ご、ご褒美を……、いただけないでしょうか?」

ほむら「ご褒美?」

QB「僕を踏んでください!お願いします!」

ほむら(……何コイツ?)

ほむら「あなたの発言の意図が掴めないわ」

QB「ささ、ほむら様を混乱させてしまった僕に、その御御足でおしおきを!」

ほむら「踏めと言われると逆に踏みづらいというか……」

QB「では踏まないでください!」

ほむら「分かったわ」

QB「ああ! やっぱ嘘です踏んで踏んで!」

ほむら「ほ、本当に何なの……・」

QB「お願いします踏んでください!」

ほむら(なんか気持ち悪い……、というか、怖い)

QB「僕を踏んでぇええ!!」

ほむら「ひいっ!?」

ほむら(なんだか……、今のこいつはヤバい気がする)

QB「はあっ、はあっ、はあっ」

ほむら(殺してもどうせ意味は無いし……逃げましょう)

QB「ああっ、待って!」

ほむルーム


ほむら「ここまで逃げれば大丈夫かしら……?」

ほむら「キモ怖かった……」

ほむら「とりあえずまどかのパンツで気持ちを落ち着け―――」

QB「ほむら様!」

ほむら「きゃぁああああああ!?」

ほむら(か、壁からいきなり出てくるだなんて心臓に悪すぎるわ!)

QB「お願いです、その黒パンストで踏んでください!」

ほむら「ああもうっ、気持ち悪いから私の目の前から消えてちょうだい!」

QB「気持ち悪い!?」

ほむら「な、何よ」

QB「ありがとうございます! 最高です!」

ほむら(何なの? 何なのこれ!? 訳が分からない……)

ほむら(もう一度逃げなきゃ!)

QB「ああっ! ま、待って!」



――――



ほむら「う、ううっ、鳥肌が……」

さやか「……あれ? 転校生?」

ほむら「あ、み、美樹さやか……」

さやか「大丈夫? なんか体調悪そうじゃない」

ほむら「心配するには及ばないわ」

さやか「嘘つくなって。あんたのことは気にくわないけど、
      さすがにここまで気分悪そうなの放ってはおけないっつの」

ほむら「美樹、さん……」

さやか「うえっ!? あ、あんた今あたしのことさん付で呼んだ!?」

ほむら(ああ。つい、最初の世界の呼び方で……)

ほむら(どんだけ追い詰められてるのよ私)

ほむら「実は……、QBに追われているの」

さやか「QBに?」

ほむら「ええ。踏んでくださいとかなんとか、訳のわからないことを言いながらどこまでも付きまとってきて……」

さやか「な、何それ……」

QB「ほむら様ぁああああ!!」

ほむら「あ、あああ……また……」

QB「後生ですからどうか踏んでください!」

ほむら「もういやぁ……」

さやか「……。よし、分かった。あたしが代わりに踏む」

ほむら「美樹さやか……?」

さやか「だーいじょうぶ。あたしにどーんと任せなさい」

ほむら「……ありがとう」

QB「さやかが踏んでくれるのかい?」

さやか「ああ。よく分かんないけど、こうなりゃ好きなだけ踏んでやろうじゃないの!」

QB「ひゃっほおおおおお!」

さやか「おらおら」

QB(ああ、全身がぐりぐりされて……)

さやか「そらそらそら」

QB(……あれ?)

さやか「えいえいえい」

QB(気持ちいいどころか、なんか無性にムカついてきた)

さやか「とうっ、とうっ」

QB「……」

さやか「こんなもんでどうだ!」

QB「……」

ほむら(し、白い悪魔が沈黙した……)

ほむら(よかった、これで私ようやく、解放され―――)

QB「ほむら様」

ほむら「っ!?」

QB「やっぱり僕はほむら様の御御足でなくては駄目なようです! 踏んでください!」

ほむら「いやあぁああああああ!」

QB「ああっ、待ってぇ!」

さやか「……まあ、頑張れほむら」

ほむら「ぐすっ、ぐすっ、ぐすっ……」

ほむら「な、なんでこんなことに……」


「待ちなさい」


ほむら「え……?」

ほむら(こ、この声は)

マミ「まさかあなたが年相応に泣いている姿を見かけるだなんてね。
     大方、手に負えない魔女にでも出くわして、敗走してきたのかしら?」

ほむら「巴さん……」

マミ「巴……、さん!? そんな呼び方して、本当にどうしたのよ!?」

ほむら「助けて、巴さん……」

マミ「ちょ、ちょっと!? 急に抱きついたりなんかして、一体……」

ほむら「もう限界なの……」

マミ(掴みどころの無い子だと思っていたのだけれど、こんな一面もあるのね。認識を改めなきゃ)

マミ「分かったわ。何があったのか話してちょうだい」

ほむら「QBを止めて……」

マミ「……QBを? QBが何かしたの?」

ほむら「逃げても逃げても追ってくるのよ……。それで、踏んでくださいって……」

マミ「何かの間違いじゃない? QBは私の友達よ。そんなことをするような子じゃ―――」

QB「見つけた! 踏んでください!」

ほむら「ほらぁ……」

マミ「きゅ、QB……、あなたって……」

ほむら「巴さん……」

マミ「分かったわ。私がなんとか交渉してあげる」

QB「ほむら様ー!」

しゅるしゅるしゅる

QB(!? ぜ、全身がリボンで拘束されて……、マミの仕業か!?)

マミ「ねえ、一体どうしたのQB? あなたはそんなことをするような子じゃ……」





QB「……いい」

マミ「はい?」

QB「縛られるのもこれはこれでいい」

マミ「」

ほむら「」

マミ「いいやぁああああ! あんなのと何年も一緒に暮らしていたなんてぇええええ!
    お、お風呂だって一緒に……うううっ」

ほむら「ね……? 言った通りでしょ?」

マミ「想像以上よ!」

QB「待ってくれ! せめて拘束を解かないでぇー!」

ほむら「またきたぁー!?」

マミ「おっ、追いかけてこないでよ変態!」

QB「へ、変態……? ……ありがとうマミ、少し効いたよ」

ほむら「気持ち悪いぃ……」

QB「オウフッ! や、やっぱりほむら様のお言葉はキレが違う」

ほむら(どうすればいいのよ本気で……)

QB「この世が薔薇色に見えてきたぁあああ!
     ……あ、あれ? 母星から連絡だ……」

QB「もしもし」

QB「えっ? お前頭おかしいんちゃうか、ですか?」

QB「いえいえ、そんなことないです! 正常です!」

QB「……。ちょっ、ちょっと待ってください! そんな!」

QB「あ、はい。いえ、そんな滅相もない!」

QB「はい、はい。分かりました、はい」

QB(そ、そんな……。度を過ぎた精神障害と認定されて、星へ強制送還なんて……)

ほむら「逃げ切れたのかしら……?」

マミ「そうみたいね!」

QB「待ってくれ」

ほむら・マミ「いやぁあああああああああ!!」

QB「君達……、特にほむら様にお別れを言いにきたんだ」

ほむら「えっ……?」

QB「諸事情により僕は母星に帰ることになった」

マミ「母星? えっ? 何の話?」

QB「また、今回の件で感情エネルギーの手に負え無さを痛感した僕らの星は、
    魔法少女プロジェクトを打ち切ることにした。つまり……、再び僕がこの星に来ることは無い」

ほむら「よかったぁ……」

QB「僕達の星にはあるルールがある。それは、自分より文明レベルの低い星から立ち去る際に、
    オーバーテクノロジーの痕跡を残さないというものだ」

マミ(は、話が全く分からない……)

QB「その星の文明を跡形もなく消し去る、というのが、最も手っ取り早いやり方なんだけどね。
     今回は、違う手段をとることにするよ」

ほむら(早く話を終わらせてほしい……)

QB「魔法少女を人間に戻し、魔女と使い魔を消し去る。
    こういった形で痕跡を消すことにした」

ほむら「えっ!? そ、それじゃあ、何もかも……解決するの? こんなに呆気なく?」

QB「はい。ほむら様はもう戦われなくてよろしいんですよ」

ほむら「そっか……」

QB「で、ですからその、どうか最後に私を踏みつけてください!」

ほむら「……ええ。分かった。踏みつけてあげる」

QB「!! いやっふうううううううう!」

ほむら「……」

QB「ああ、ほむら様の御御足はやはり素晴らしい……」

ほむら「ねえ、QB」

QB「なんでございましょう……」

ほむら「オーバーテクンロジーの痕跡を消し去るということは、
      もしかして……、私達の記憶も?」

QB「一部消去することになります。その文明がすぐに滅びるという
     確信を持てる状況なら、記憶をそのままにしてもいいのですが……。
     生憎とこの星は、まだまだ生き続けそうなので」

ほむら「そう……。あなたのことも忘れられるのね」

QB「そうなりますね」

ほむら「清々するわ」

QB「……」

ほむら「けど、まあ、最後に1つだけ、餞別の品をあげる」

QB「こっ、これはまさか……!?」

――――


果てしなく広がる宇宙を見上げながら、考える
彼女達は今頃どうしているのだろうか
元気にやっているのだろうか
ほむら様は、いったい……

「きゅっぷい」

考えていてもどうしようもないことだというのは分かっている
だけど、もはや僕のことを忘れているであろう少女達のことを、やはりこうして思わずにはいられない
これだから僕は精神異常者扱いされるのだ

「きゅっぷ……」

最後にほむら様が餞別として渡して下さった黒パンストを嗅いだ
懐かしい匂いが鼻腔をくすぐっていく
胸を締め付けるこの切なさを捨てるぐらいなら、僕は死ぬまで精神異常者でいつづけよう
そんな決意を小さな胸に秘め、今日も僕は、新しいエネルギー生成方法を研究するのだった

彼女が僕を忘れようとも、僕は生涯ほむら様の御御足のことを忘れない







おわり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月12日 (木) 19:14:14   ID: zJevAdCI

まさかべぇさんに同情する日がくるとはな
精神異常者に幸あれ

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