まどか「キラキラ光って綺麗だよぉ!!」
まどか「さやかちゃん!さやかちゃん!」
さやか「…ん?なにさアンタ、今日はやけにテンション高いじゃん」
まどか「ふっふっふ!じゃじゃーん、コレ見てこれ」サッ
さやか「何そのアクセサリー?あんまり見せびらかしてたら没収されちゃうよ」
まどか「もー、かたいなぁさやかちゃんは。良く見てよ、とっても綺麗でしょ!」
さやか「ほむ…。確かにこれは綺麗だね黄色く光ってて……ん?」
まどか「どしたの?」
さやか「何かこのアクセ見た事あるような…」ジッ
まどか「あっちゃあー、さやかちゃん鋭いねー。ほらマミさんが持ってたアクセだよ」
さやか「あぁ、そだそだ。何よ、おんなじヤツ買ったの?」
まどか「違うよー、ネットショップとか色々探したんだけど見つからなくて」
さやか「見つからなくて…?」
まどか「マミさん家から帰る時にちょいとね」
さやか「ちょいとねって……。まさかアンタ盗んだの!?」
まどか「ちょっ!声が大きいよさやかちゃん!」
まどか「違うってー、コッソリ借りただけだよ。すぐ返すから」
さやか「借りパクじゃないのよ。後で怒られるよーアンタ」
まどか「そ、そんな事無いよぉ!マミさんは正義の味方だもの」
さやか「そうだね。だから盗人のまどかを成敗するだろうね」
まどか「は…!?ど、どうしようさやかちゅあん!」
さやか「やっちゃったもんは仕方ないでしょ。正直に言うしかないじゃん」
まどか「うぅ…マミさんに怒られるのイヤだよぅ」
さやか「じゃあさこうしたら?」
まどか「ん?何かいいアイデアでも…」
さやか「キュウべえに頼んでアイツから言って貰えばいいじゃん」
まどか「そ、そっか!キュウべえとマミさん仲いいもんね」
さやか「うむうむ」
まどか「キュウべえから『まどかは本当にいい子だから今回は僕の顔に免じて許してあげて』って言ってもらうんだね!」
さやか「うん……まぁそうなんだけどさぁ…」
キュウべえ「…え?本当にいいの、コレ駅前のエクレアじゃないの」
まどか「流石キュウべえだねー。さやかちゃんに並んで買って来て貰ったの」
さやか「…はぁ…はぁ……」
まどか「さぁ、さぁ召し上がれ!」バッ
キュウべえ「全部いいの!?僕食べていいの!」ジュルリ
まどか「当たり前だよぉー。沢山食べてね、またさやかちゃんが買って来てくれるから」
さやか「はぁ……はぁ。んで…キュウべえ頼みがあるんだけどさ」
キュウべえ「へ?はほひっへ?」モシャモシャ
まどか「ちょっとさーマミさんに口を聞いて欲しいんだよねぇ」
キュウべえ「はひ?へんはへもひはほ?」モシャモシャ
まどか「うんー。喧嘩になったっていうかぁ、これからなるっていうか」
さやか「良くキュウべえの言葉分かるねアンタ…」
まどか「実はマミさんの物借りパクしちゃったんだよねー」
キュウべえ「借りパクぅ?ダメだよまどか!他人の物に手をだすなんて!人として間違ってるよ」
まどか「ご、ゴメンナサイ…」ビクッ
キュウべえ「仕方ないなぁ、僕から謝ってあげるよ。エクレア美味しかったしね」
まどか「本当!?やったーキュウべえ大好き!」
キュウべえ「仕方ないなぁ、まどかは。それで、何持って帰っちゃったの?マミが最近買ったバトルドッチボールかな?」
まどか「違うよぉ、私のウチスーファミないもん」
キュウべえ「あ。そういえばそうだったね」
さやか「実はさぁ、マミさんのアクセなんだよ」
キュウべえ「マミのアクセサリー?彼女そんなの持ってたかな…」モシャモシャ
まどか「ほら、この黄色い綺麗なやつ!ソウルジェムっていうんだっけ」
キュウべえ「………………」プルプル
まどか「ん?どしたのキュウべえ。顔がさやかちゃんの髪色みたいになってるよ」
キュウべえ「ゲッフンーーッ!!」プッパーーン!
さやか「ぎ、ぎゃぁーー!!?噛み砕いてグチャグチャになったエクレアが眼にぃぃ!」ゴロゴロ
まどか「大丈夫キュウべえ!?そんな慌てて食べるからだよ」サスサス
キュウべえ「は、…はやふ……、はやふ…」ベチャベチャ
まどか「……え?」
キュウべえ「は、はやぶ、マミのマンションに行くんだ……よ!」ベトベト…
まどか「そんなに慌てなくても…。ほら口の周りとさやかちゃんの顔についた嘔吐物を綺麗にしてからでも」
キュウべえ「そんな事言ってる場合じゃないよ!ほらタクシー!」バッ
まどか「え!?ちょっともったいないよ!電車で行こうよ」
キュウべえ「ほら、さやかも手をあげて」
さやか「う、うん…」フラフラ
まどか「あ、お釣はいいです!」
さやか「…え?ちょっと待ってよまどか!」
キュウべえ「そ、そうだよ…、ソレさやかのお金だし…諭吉さんだし…」
ブロロローロー…
さやか「あぁ…、行っちゃった…」
キュウべえ「うん………」
まどか「どうしたのよ?急いでたんでしょ、そんなのおかしいよ二人とも!」
さやか「いや…気にしないで。行こうキュウべえ、急いでるんだよね」
キュウべえ「うん…。なんかゴメンね…」
まどか「ほらー、早く早く!」
さやか「はぁ…はぁ…。やっとドアの前まで来たね」
まどか「…そろそろ教えてくれてもいいかな?なんでそんなに急いでるの」
キュウべえ「…いいかい、これはあくまで推測なんだけど落ち着いて聞くんだよ」
さやか「う、うん……」
まどか「…あれ。待って、ちょっと待って。何か臭くない?さやかちゃんやキュウべえの他になんか臭い匂いしない?」
さやか「臭くないよ!ちゃんと顔拭いたし!」
キュウべえ「は、はふぅ……」プルプル
まどか「どうしたの、キュウべえ!また顔がさやかちゃんの色みたいになってるよ」
キュウべえ「恐らく僕の予想が正しければマミは…」
さやか「マ、マミさんは…?」
キュウべえ「いや、僕が己の眼で確かめるよ…。それがマミを魔法少女と化した僕の役目…」
さやか「キュ…キュウべえ…アンタ…」
まどか「ちょっと、マミさーん!一人でドリアン食べてるんですか!?ズルイですよぉ!」バッターン!
さやか「ちょっ、アンタチャイムくらい鳴らしなさいよ」ダッ
キュウべえ「な!?ダメだよ二人とも、見ちゃイケない!」
まどか・さやか「………!?」
みんな~
_ i'i,,,/7-、,_
ヾ、゛ヽ ゛' '/彡
=ミ ,、、_i i,L,_'゛=i-、
./'゛彡r|, ニt /-ミ' ゛l,
,,/ .,゛''i、l'=''(・)j)ノ゛ i i、_
'1--、| l,゛l'rェェ,.l゛j゛./゛⌒ヽミ
l゛i i .n i;ヽヾ'=|'゛/゛/i゛/!j゛!ji゛
Yt'‐リ゛'゛´ ゛ヽ‐|'゛ ´゛゛.i、,_ノ
.|N'゛rエニニlニコニニ'l、,
r'゛´`゛'=;、,,、,、---、ゞ'゛ ゛ゝ
r‐'''゛ _,) i‐'゛ ぐ_
.゛ヾ-'゛ ゛\ 、ろ
゛ー゛´
部屋に上がり込んだ私達の眼前には横たわったマミさんの身体。その身体は私達の良く知るマミさんだった、身に纏うのは学生服、床から流れる様に広がるブロンドの髪の毛…。
タダ違う事は、その肌はさやかちゃんの髪の色よりどす黒く…、その体臭はキュウべえの嘔吐物よりも鼻につく異臭を醸し出していた…。
まどか「な、なんなのキュウべえ…こ、これって…」
さやか「う……うっぷ…」ベチャベチャ
キュウべえ「み、見ちゃいけな……オエップ!」ゲロゲロ
>キュウベエ「オエップ!」
糞ワロタwww
さやか「うぇぇえ………」ビチャビチャ
キュウべえ「な、何も触っちゃいけない…!早く離れるんだ…!」
まどか「キュ…キュウべえ…。これって、これって…」プルプル
キュウべえ「まどか、ショックなのは良く分かる!でも良く聞いて、取り乱しちゃダメだよ。現場はそのままの状態で保存……うぷ。するんだ…」ベチャベチャ
まどか「キュウべえ…。これって…、これって…」
さやか「うぅぅ……」
まどか「私が借りパクした件うやむやにならないかな!?」
キュウべえ「人が死んでんねんでッ!!」
/ / / / / ヽ 、 .! 、 \ ヽ
/ / ./ , '/ / ゛、.! 、 ヽ ヽ _ ,,r-,
// /|_ / // ――L|、 l ! }へ| |l}
.!/| l /'|´ / l/ __ リ ヽ | | |/ /`V=、
. || | l | ,X= | >-- 、 \|| l }=| c | |l
! ! ヽ ゝ|イ;;c, |;;i;;;c \ | / A iiiゞV 私はマミ竹、フリーの魔法少女よ
ヽ ヽ !、 |゛リ |{‐' ,! / /=ヾ|、X
`ー - '-'  ̄ / ,/ ) ,. |、 -、_>--,
| // ' //// / ノ/リ-'ノ- '´ ――|
,....、 ____ 人 ,----, ー'´/,-- '´ ヽ
/ ヽ..._/二二二ト、ー ヽ、 ` ‐ ' ,. イ / -- 二二,!
/ r┴┴‐┼──‐弋三` ヽ、 ヽヽ __ - '´ | < _,..-_-'´―-、
j  ̄>──┴─ 、:.:.:.|─‐9|<7|l / ヽ、
f' 7´ ´¨`ヽ`ヽヽ:::::::__ヽ|}}─ j|^:|Yl / ィ::::| `ヽ、___
j 、l::;′ Y:::::l:::l::::{ ヾ!|!ュ:.:.:l|:::V ′ /:|:::::l: : :/
l l:::| ||:::::|:::|::ハ \_:.:.:ト、::ト、____ ィ´. : : |:::::l: /
l `ヽヽ __ノ/.::/::/:::::/ヽ  ̄ヽヽ: : : : : : /: : : : : |::::l:/
' / マ=∠∠∠∠ -'" ∨__/. : : : : : : j::::l:′
' ハ::::「 -r 、 ∨}} }: : : : : : : : :|::::l !
} ハ::::∨ ヽ ヽV: : : : : : : : : |::::l |
/ ヽ:::ヽ ヽ \: : : : : : : : :|::::l:ハ/
まどか「そ、そんな大きい声ださないでよぉ。言って見ただけだよ…」
キュウべえ「さ、さやか…。早くドアを閉めるんだ、臭いで他の住民に気付かれるよ」
さやか「う、うん…」バタン…
まどか「ちょっ…、ちょっと待ってよ。二人は自分の体臭で慣れてるかも知れないけど、私にはキツいよぉ」
キュウべえ「うるさいよ!元はといえばキミのせいだよ」
さやか「ま、まどかの…?どういう事なの…まどかが借りパクしたショックでマミさんは自殺しちゃったの…?」
まどか「え……?魔法少女ってそんなにメンタルが脆いの」
キュウべえ「違うよ、死者を冒涜しないでよ!まどかが借りパクした、物が原因なんだよ!」
まどか「物ってマミさんのアクセの事…?」
キュウべえ「うん…、いいかいそのアクセ…。いやソウルジェムはね----」
\ ケ ./ / 人 ',
\ { i / __{__ ノソ }_}__ ', ___
l} 、:: 从ム .i|ノ斗、 ャ-、Ⅵ }ー、__| .|___________
|l \:: ァ{ A {!〈 ◯ ◯ 〉} /‐、 } |[], _ .|:[ニ]:::::
|l'-,、イ\: { ∧ b辷ゝ ¨´ ! `¨ ム´厄ノ ハ, ヘ ̄ ̄,/:::(__)::
|l ´ヽ,ノ:∧ `ーァ-ゝ、 冖 _. ィ´‐〈ン ノ },  ̄ ̄::::::::::::::::
|l | :| | |,r'",´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、l:::::
|l.,\\| :| | ,' :::::... ..::ll:::: そうだ
|l | :| | | :::::::... . .:::|l:::: これは夢なんだ
|l__,,| :| | | ::::.... ..:::|l:::: わたしは今、夢を見ているんだ
|l ̄`~~| :| | | |l:::: 目が覚めたとき、
|l | :| | | |l:::: わたしはまだ魔法少女
|l | :| | | ''"´ |l:::: 起きたら学校へ行って、
|l \\[]:| | | |l:::: 勉強をして、お昼ご飯を食べながらおしゃべりして、
|l ィ'´~ヽ | | ``' |l:::: 放課後に後輩たちを連れて魔女狩りするんだ・・・
|l-''´ヽ,/:: | | ''"´ |l::::
|l /:: | \,'´____..:::::::::::::::_`l__,イ::::
さやか「そんな…、まどかが借りパクしたのがマミさんの魂だなんて…。信じられないよ…」
キュウべえ「さやかの気持ちは良く分かるよ…。でもさ、僕を信じて欲しいんだ」
まどか「じゃあさ、いくら上半身を吹き飛ばされても、その核さえ無傷なら大丈夫なんだね。……うん、魔法少女ってやっぱり凄いよ!」グッ
キュウべえ「うん。……認識としては間違っていないけど。僕ぁキミの感情が理解出来ないよ……」
まどか「どうしたのキュウべえ?」
さやか「で、でもさ…」
キュウべえ「うん?どうしたのさやか。無理しないでね」サスサス
さやか「キュウべえの話が本当なら、もう一度マミさんにソウルジェムを握らせれば生き返るんじゃないかな…?」
キュウべえ「そ、そうか!僕としたことが。稀なケースだから動揺してたよ」
まどか「それならマミさんも復活!私の借りパクも水に流れて全て元通りだね!」
キュウべえ「いや、流れないよ…。そこはちゃんとマミに謝ろうよ、人として」
まどか「えぇー…、キュウべえのケチんぼ」
さやか「ほら、とにかく早くマミさんのソウルジェム出してよまどか!」
まどか「分かったよぅ…マミさんに怒られるのイヤだなぁ」ゴソゴソ
キュウべえ「早くしてね、このままじゃいずれ腐臭で大事になるよ!」
さやか「そうだね…、キュウべえも鼻摘んであげるね」
キュウべえ「ありがとう、さやか。いくら僕でもこの臭さは…。ん?」ピク
まどか「あったあった…、お弁当箱からすき焼の汁が垂れてベチャベチャになってたよ」サッ
さやか「ほらまどか、早くしてあげなよ」
まどか「うぅ…、こんなすき焼汁まみれじゃパン派のさやかちゃんのせいにもできないよぉ」ボソボソ
さやか「何ゴチャゴチャ言ってんのよ!早く」
キュウべえ「イヤ…!待つんだまどか、ソレを今取り出しちゃいけない!マミから離れるんだ!」バッ
まどか「えっ…!ちょっとどうしたの急に」ガバッ
キュウべえ「…へぱんッ!」ベチャリン
まどか「うわ…。お弁当箱のすき焼汁全部キュウべえに掛かって…さらに臭い…」
キュウべえ「…うん。僕もキミには当の昔にドン引きしてるから早く離れて…」ベチャベチャ
さやか「どういう事…?キュウべえが言うからには大事な事なんだよね」
キュウべえ「うん…。確かにソウルジェムでマミの身体は再び動き出すよ」
まどか「じゃあいいじゃない。早くマミさん元通りにすればいいじゃない。ほらーこうやって」バッ
キュウべえ「だから待ってって言ってるんだよ!?」
まどか「もー。キュウべえが回りくどい言い方するからだよぉ」
さやか「まどか。キュウべえはいつも私達に分かりやすく説明してくれてるんだよ。そんな言い方しちゃダメ」
まどか「だってぇー…」
キュウべえ「有り難うさやか…、僕をかばってくれたんだね」
さやか「ううん…。キュウべえは気にしないでよ」
キュウべえ「でも、まどかが言っている事も間違いじゃあ無い。そして、その欠点を指摘してくれる友達がいるって事は幸せな事なんだよ」ニコッ
さやか「…キュウべえ。まだ、まどかの事を友達って呼んであげてくれるんだね」
キュウべえ「当たり前だよ、まどかも、そして勿論さやかも僕の大切な…」
まどか「ねー、もういいのかなぁ?これ、こうやってマミさんに翳したらどうなるのかなー」バッ
キュウべえ「だから待ってって!?このままじゃマミがゾンビになるじゃない!」
さやか「え…、マミさんが!?」ビクッ
キュウべえ「…は、しまった!お、落ち着いてさやか!」ユサユサ
まどか「え?マミさんバイオハザードみたいになるんだ。…もーそれなら、最初からそう言ってよ。キュウべえったら気が回らないんだから」
キュウべえ「その言葉全部キミに返すよ!」
さやか「マ、マミさんが…あのマミさんが…」ガクガク
キュウべえ「ほら、いわんこっちゃない!さやかがショックを受けない様に言葉を選んでたんだよ」
まどか「…さやかちゃん大丈夫だよ!Tウイルスは直接噛まれないと感染しないから」ギュッ
さやか「ひぃぃぃ…!」ビクッ
キュウべえ「勝手にマミをクリーチャーにしないでよ!普通にキミのせいで腐敗しただけだよ!」
さやか「で、でもキュウべえ。ソウルジェムが無事なら、魔法の力でマミさんを元に戻す事は出来ないの…?」
キュウべえ「ゴメンね…さやか。癒せるのは外傷なんかの物理的な原因のみ…。腐敗した細胞の刻は二度と帰ってはこないんだよ」
まどか「いくら魔法といっても万能の力じゃあないんだよ、さやかちゃん」ポン
キュウべえ「…まぁそうなんだけど、キミがドヤ顔で言う事じゃあ無いんじゃないかな」
まどか「……え?」
さやか「でも、それじゃ、マミさんはどうなるの!」
まどか「いい、さやかちゃん?良く聞いてね」
さやか「な、何を…?」
まどか「確かにマミさんは私の持っているソウルジェムによって、魂は元の場所に戻るよ」
さやか「うん…、でも」
まどか「そう。あの腐敗した肉体に戻った所でマミさんはこれからどうなるの?日陰で生きて行くしかないんだよ」
さやか「それでも…マミさんはマミさんなんだよ…」
まどか「一時の感情に流されたらダメだよ!仲間からも…、そして使い魔であるキュウべえからも疎まれて生きて行く図太い精神なんか誰も持ち合わせていないんだよ!」
キュウべえ「……いゃぁ。僕の目の前にいるんじゃあないかな……」
まどか「…ん?さっきから何かな、ボソボソと」
まどか「こればっかりは仕方ないよ…。魔女と闘うって事はこういう覚悟がいるって…、マミさんは己を犠牲にして教えてくれたんだよ」
さやか「ま、まどか…。こんなのって…」
まどか「仕方…ないんだよ。借りパクのくだんも有耶無耶になるけど仕方ないんだよ…」
キュウべえ「…地球の裁判官が裁けないのならばぁ。僕が…」
まどか「や、やだなぁ分かってるってば。そ、そんな事より今はマミさんの身体の処理だよぉ。このままじゃ可哀相じゃない」
さやか「そうだね…。取り敢えずまず警察を呼ばないと!」
キュウべえ「待ってさやか!それはダメだよ」
さやか「…え!?」ビクッ
さやか「どうしたのキュウべえ…!まさかまだマミさんを助ける手段が?」
キュウべえ「ぬか喜びさせてゴメンねさやか。でももうこれ以上悲しみの連鎖を広げたくは無いんだよ…」
さやか「悲しみの連鎖…?」
キュウべえ「僕が最初に現場を触らない様に言ったでしょ?」
まどか「それに直ぐドアも閉めたよね…。それって、まるでこの場を見られちゃいけないみたいじゃない?」
キュウべえ「そう…、その通りなんだよ。危険なんだこの状況は!」
まどか「危険って…。やっぱりマミさんの身体はこれからGタイラントに進化…」
キュウべえ「しないよ!!ゲーム脳は黙っててよ!」
さやか「そ、そうか…!この惨状をもし私達以外の人間がみたら…」
まどか「どういう事なのかな?私にも分かりやすく説明してよ」
キュウべえ「マミを腐敗させた罰を地球人に代わり僕が裁くって言ったでしょ?」
まどか「だから、借りパクについては後で謝るって…」
さやか「つまりね、まどか。ソウルジェムのせいでマミさんがこうなっただなんて、地球の…。そう警察が納得するはずが無いんだよ…」
まどか「そりゃあ精神鑑定されるのがオチだね!」
キュウべえ「だから此処に居る事は絶対に知られちゃならないんだよ。ただでさえ最近は放課後マミと同じ時間を過ごす事が多かったんだ」
QB「まどか、まさか君は神にでもなるつもりかい?」
シアン「リヒトお前…世界最強になるつもりか?」
まどか「でも、それだけじゃないかな?」
キュウべえ「まどかはジャパニーズのポリスを甘く見過ぎなんだよ!彼は恐ろしく優秀な能力を持っている」
まどか「じゃあちゃんと話をすれば、分かってくれるの?そんなおかしいよ」
キュウべえ「そう…、おかしいよ。僕達はそういう存在なんだ。結果…冤罪という悲しい結末を迎える…」
さやか「それが…、悲しみの連鎖…」
まどか「えぇー!じゃあ私達死刑になっちゃうの!?何も悪くないのに!」
さやか「流石にそこまでは行かないと思うけど…」
キュウべえ「そうだね…。当然ながら状況証拠だけになるだろうし」
まどか「なーんだ。じゃあ執行猶予で治まれば御の字だよ!キュウべえは心配性だなぁ」
キュウべえ「確かにまどかはそれでいいかも知れないよ。でもさやかはどうなるのさ」
まどか「え…?さやかちゃん?」
キュウべえ「キミと同じ容疑を掛けられて、薄汚いマスコミやゴシップ誌に追いかけ回されるんだよ」
さやか「そ、…そんな…!?」ビクッ
まどか「大丈夫だよ!ウチのお母さんとかそういうの大好きそうだし!」
キュウべえ「だから、キミんちを基準に考えないでよ!」
まどか「ん…?でもさっきから聞いてたら、さやかちゃんの事ばっかりだけどキュウべえはどうするのさ?」
キュウべえ「……もしかして忘れたの?」
まどか「ほぇ?何がかな」
さやか「そ、そうよ!?キュウべえは私達以外の人間には見えないんじゃ」
まどか「…あ。そういえばそうだね」
キュウべえ「うん。だからさやかは自分の事だけを考えて」
さやか「それじゃキュウべえは、ずっと私の身を案じてくれていたの…?」
まどか「ちょっと待ってよ!なんだか急にうさん臭くなってきたよ…。もしかして、この事件全てキュウべえが原因じゃあ…」スッ
キュウべえ「…そうだね。確かに原因といえば原因かもしれない…」
まどか「…!?聞いたさやかちゃん!離れて、キュウべえがマミさんを…!」
キュウべえ「僕がさやか達に会わなければ、マミと出会う事も無かった。…そして、まどかがマミのソウルジェムを借りパクする事も無かった…。全てはこの僕の責任だ」
さやか「そんな事無い!そんな事ないよ…。キュウべえは自分を責めないで。『たら』『れば』を言い出せばキリが無いもの…。私はキュウべえに出会えた事を否定したくない!」
キュウべえ「さやかは優しいんだね…。有り難う、その言葉で僕の心は救われるよ」
さやか「キュウべえ…」
まどか「さ、さやかちゃん!ダメだよ、キュウべえの言葉は確かに甘く心地よく聞こえるかもしれない…。けど、それが世界をゆっくりと殺す事になるんだよ!多分」
キュウべえ「いいかい…これだけは聞いて。例え、さやかが僕と違う生物でも…。例え、まどかが借りパクをしようとも…。仲間を…友達を助けるのに理由がいるのかいッ!」
まどか「…は、…はふぅ!」グサリ
さやか「……、まどか。キュウべえに謝ってとは言わない、まどかの気持ちも分かるから」
まどか「さ、さやかちゃぁん…」
さやか「でも、今だけはキュウべえを信じてあげて。…私達が助かる為に」
キュウべえ「有り難うさやか…。僕絶対にキミ達二人を守るからね」
さやか「…違うよキュウべえ。守るのは三人だよ」
まどか「…え。三人ってどういう事なのさやかちゃん!」
キュウべえ「もしかしてマミの事かな…?」
さやか「うん。例えこのまま私達が警察の捜査から逃れた所でハッピーエンドじゃないって私は思うんだ…」
まどか「だ、ダメだよぉ。ウチのお母さん…Tウイルスとか苦手そうだもん!パジャマパーティーの時とかにマミさんだけ家に呼ばないとか…、なんか感じ悪い事になるよ」
キュウべえ「ねぇ。他に心配することあるよね!?」
まどか「えぇー。これって私達の今後の関係でかなり重要なウェイトを閉めるよ!」
さやか「大丈夫だよ…。きっと、まどかん家のお母さんも納得できる形でパジャマパーティーできるから」
キュウべえ「…さやかの気持ちは分かるよ。でも、現実は優しい物語とは違う…。血を吐き、涙を拭いて歩を進めなきゃいけない刻もくるんだよ」
まどか「そうだよさやかちゃん!現実逃避しちゃダメだよ!目の前の惨状を理解して的確にマミさんを遺棄しようよ」
さやか「目の前の現実…」
まどか「人は腐ったら元に戻らないんだよ!ほらキュウべえも言ってあげてよ」
キュウべえ「う、うん…。さやか、癪だけどまどかの言う通りなんだよ。ゴメンよ…」
さやか「キュウべえが謝る事は無いよ…。確かに現実は認めないとね」
まどか「やっと分かってくれたの?じゃあさ…」
さやか「じゃあもう一つの存在も認識しなきゃいけないね」
まどか「…へ?何を言ってるの。早く遺棄しないと時間が!」
さやか「目の前には、残酷な刻の流れで腐敗したマミさんという現実…。でもね、その隣りにはキュウべえという幻想が私の目には映っているの」
キュウべえ「…!?ま、まさか!いけない、さやかは余計な事は考えないで!」
まどか「キュウべえ…?ダメだよ、キュウべえ自身も魔法じゃあどうにもならないって…。そんな幻想は起こせないんだよ!」
さやか「キュウべえ一人には起こせなくても…。私とキュウべえの二人なら起こせるんだよ」
まどか「……え?」
さやか「幻想だって、奇跡だって起こせる。私達の望む本当のハッピーエンドを手に入れれるんだよ。ねぇキュウべえ」
キュウべえ「それが三人を守るって意味なの…?僕と魔法少女の契約を交わすって意味なの!」
まどか「さ、さやかちゃんが魔法少女に!?」
さやか「どう考えてもコレしか思い浮かばなかった…。契約の対価はマミさんの身体の再生」サッ
キュウべえ「おかしいよ…。こんなの絶対におかしいよッ!なんでさやかが」
まどか「さっすがさやかちゃんだよ!これで全て元通り。新しい戦力も加わるね」
キュウべえ「ちょっ、キミは黙っててよ!」
まどか「ぶー。なんで怒ってるの?折角さやかちゃんがヤル気なのに」
キュウべえ「百歩譲って、契約の対価でしかハッピーエンドを迎えられないとしても…」
まどか「しても…?」
キュウべえ「なんでキミじゃなくてさやかなの!論理的に絶対おかしいよ」
まどか「だって何でも願いが叶うんだよ?そんな大事な物、失いたくないよぉ」
キュウべえ「いや!それ以前にキミはヒトとして大事な物を、既に失っているよッ!?」
さやか「いいんだよキュウべえ…。キュウべえが言ってくれたじゃない」
キュウべえ「な、…何をかな?」
さやか「仲間を…、友達を助けるのに理由がいるの?」
キュウべえ「さ、さやか…!キミは優しすぎるよ」
さやか「キュウべえ程じゃないけどね…」
キュウべえ「でもその優しさは刻に、他者を…。僕を深く傷付け…」
まどか「はっひゅー。流石さやかちゃんだよ!そこに憧れるよぉ」
キュウべえ「ゴメン。ちょいとタンマ。ちょっとタンマ」トテトテ
さやか「…キュウべえ?どうしたの」
まどか「ちょっとキュウべえ、どこに行くの?」
キュウべえ「うん。ちょっと」ゴソゴソ
まどか「ちょっとじゃ分からないよ!そんなんじゃ、いざ魔女との闘いの時にどうするの?魔女は待ってはくれないんだよ!」
キュウべえ「そうだね…。魔女は待ってはくれない。僕は運がイイヨ」カチャリ
まどか「え…?キュウべえ、何かな。なんでさやかちゃんのバット咥えてるの」
キュウべえ「本当に運が良い。相手が魔女じゃあ無くて魔法少女候補なのだからッ!」ブォン
まどか「え!?ちょっキュウべ」
まどか「…………」バタン
さやか「キュ、キュウべえ!?アンタ一体何を!」ガッ
キュウべえ「安心して、気を失っただけだよ。僕の腕力じゃコレが精一杯」
さやか「本当に?良かった…。でも、なんでこんな酷い事を」
キュウべえ「酷い?とんでもないよ。まどかに比べたら生易しいくらいさ」
さやか「まどかが…?でも一体何を。まどかはまだ何もして無いのに…、可哀相だよ」
キュウべえ「あ…、そっか。さやかはまだ知らなかったんだよね。魔法少女の対価を」
さやか「対価?願いが叶うだけじゃなくて?」
キュウべえ「うん…。魔法少女になった者はその後良くない事が起こるんだ」
さやか「その後って…?」
キュウべえ「それは誰にも分からない…。明日かも知れないし、百年後かも知れない。でも心が純粋なさやかなら……、ん?」ピクッ
さやか「どうしたのキュウべえ?」
キュウべえ「ま、…まさか…。いや、有り得ない…でも」ブルブル
さやか「どうしたのキュウべえ、顔が真っ青だよ」
キュウべえ「知っている…。魔法少女の対価を…。彼女は既にソレを知り得ている…?」ガクガク
さやか「キュウべえってば?」ユサユサ
キュウべえ「僕の後ろに隠れてさやか!まどかは危険な存在だ」バッ
さやか「え!?まどかが?そんな訳ないよ」
キュウべえ「…今の彼女から思念を感じられない?じゃあ本当に意識を失って……はっ!?」ピキッ
キュウべえ「そこだ!エイやッ!」ビュン
ガッシャーーン!
さやか「後ろのクローゼット!?そんな所にバットを投げてどうするの」
キュウべえ「出ておいでよ!上手く思念を絶したつもりだろうけど、どす黒い尻尾までは隠し切れなかったようだね」
ガチャリ…
マミ「あらあら。もう見つかっちゃったか。もっと愉しみたかったんだけどなぁ」
さやか「マ、マミさん!?どうして、キュウべえに。なんでマミさんがクローゼットから」ビクッ
キュウべえ「そ、そんなの僕がご教示願いたいよ…。あの遺体はフェイク…?いや、それにしては余りにリアルだよ…」ゴクリ
マミ「狐に鼻を摘まれたような顔ねぇ。どういう事か知りたくて堪らないわよね」
キュウべえ「ふ、ふん…。友達として忠告してあげるよ、回りくどい言い方は相手に良い印象を与えない…ってね!」
マミ「それはどうも有り難うね。じゃあ鹿目さんが目を覚ましてからにしましょうか」
さやか「そっか…、二度手間になるもんね」
マミ「それもあるけど、可哀相だもの」
キュウべえ「可哀相…?それはどういう」
マミ「こっちの話よ。じゃあお茶でも入れるわね」サッ
キュウべえ「お茶だって…?キミはこの腐臭に塗れたこの空間でティータイムをするっていうのかい!」
マミ「あら、ゴメンなさい。勿論ケーキも付けるわよ」ニコリ
キュウべえ「……ぐっ!」ビクッ
まどか「……うぅーん。あれ、なんか頭痛いよぉ…」フルフル
マミ「あら、鹿目さん遅いお目覚めね。もうティータイムは始まってるわよ」
さやか「良かった、まどか大丈夫?」
まどか「あっ、マミさん。それにさやかちゃんも…てあれ。もしかしてバレちゃった」
マミ「そのまさかよ。まさか、それじゃあこの辺りにしておく?」
キュウべえ「いいから早く話してよ!まどかは何か知ってるのかな」
まどか「うーん。まだ物足りないなぁ…。そうだ」ポン
マミ「あら…、その表情はまた面白い事を思い付いたのね」ニヤリ
まどか「キュウべえ、私貴方と契約するからそっちの、もう一つの腐敗したマミさんを元に戻してよ」
キュウべえ「…え!?何をいきなり!」
まどか「あれ…出来ないのキュウべえ?何でも願いが叶うんじゃないの」
キュウべえ「あ、当たり前だよ!僕に取ったらそんな事、HBの鉛筆をベギッとへし折るくらいに簡単な事だよ!」
さやか「待って、キュウべえ!その願いは私が…」
キュウべえ「鹿目まどか!確かにその契約承ったよッ」バッ!
………………………
……………
………
腐爛マミ「……………………」
まどか「あっれー。どうしたの、キュウべえ。マミさん腐ったままじゃない」ツンツン
キュウべえ「…ば、バカな…!な、なんで…!?」ブルブル
まどか「はっひゅー…、いいよぉその表情。たっまんない!」
マミ「あらあら、鹿目さん涎を拭いて。はしたないわよ」フキフキ
まどか「エヘヘー、すいませんマミさん。所で録画の方も大丈夫ですか?」ボソボソ
マミ「ええ、しっかりデジタルハイビジョンで全て収めてあるわ」ボソボソ
キュウべえ「おかしい…!こんなの絶対におかしいよ」バンッ
さやか「お、落ち着いてキュウべえ。きっと何か原因があるんだよ、キュウべえの力を超えた願いが叶えられないとか」
キュウべえ「そんな事は無いよ!この力は絶対無二のエナジー。相手が望めばアカシックレコードーの変革から、上場企業の株価操作まで何だって出来るんだよ!」ブルブル
まどか「そーだよねぇ。キューベーなら何だって叶えられるもんねぇー」ゾクゾク
マミ「そうよぉ鹿目さん。キュウべえちゃんってば凄いのよー」ニタニタ
キュウべえ「原因なんか無いんだよ!絶対なんだ…原因な……ん?」
さやか「どうしたのキュウべえ?何か分かったの」
キュウべえ「あった…。一つだけ…。でも絶対に有り得ない、だから真っ先に…無意識に脳がソレを認識しなかったんだ…」フルフル
まどか「あっれー。何かな、それって何かな?キューベー?」
キュウべえ「それを今から…」グイッ
さやか「どうしたのキュウべえ?いきなりフォークを咥えて…」
マミ「あら、キュウべえはパイシューが好きだったかしら?すぐ用意するわね」
キュウべえ「確かめるッ!!」ブッ!!
さやか・マミ「…!?」
ズキュオーーン!!
まどか「………」
キュウべえ「僕の口からまどかの額まで距離にしつ2.5!このスピードが加わった金属片ならば、キミに避け切れる道理は無いッ!ならばどうする鹿目まどか…」
まどか「……ふん」バッ
ドゴゥウゥゥゥッ!!
さやか「ブッ…!ゲホッ…。何、キュウべえとまどかが睨み合ったと思ったら、いきなり爆発が…」
マミ「ふぅ……。鹿目さん、やるならやるならと言って頂戴。またお茶の淹れ直しだわ」
まどか「す、すいませーんマミさん!急にキュウべえからフォークが跳んで来たんで」ペコリ
キュウべえ「や、やはりキミは……」
さやか「キュウべえがフォークを?何でそんな事を」
キュウべえ「見れば分かるよ、さやか…。深呼吸をして見てごらん、目の前の現実を…」
さやか「目の前って、…な!?まどか…、まどかなの?」バッ
まどか「この姿…。魔法少女まどかの姿で会うのは二人は初めてって事になるのかなぁ?」
マミ「そういう事になるわね。私達は変な感じだけれども」
まどか「それじゃあ初めましてだね。どうかな、この姿は。自分でもまだ慣れてないんだけど」
さやか「格好が変わって身体の周りに変なオーラが…。本当にまどかが魔法少女に…?」
キュウべえ「フン、下らないトリックだよ!…って言いたい所だけど、その全身から溢れるマギ力…。どうやら本物の魔法少女のようだね」
まどか「随分と荒い確認の仕方じゃないかな?キュウべえ」
キュウべえ「フン!そうでもしなきゃ、その尻尾を引きずり出せないと思ったんだよ」
まどか「やれやれ…。それでもし私が普通の二次成長期の女の子ならどうするつもりだったの」
マミ「そうよ。そっちに転がっている私の物と合わせて、この空間に遺体が二個になってしまうわ」
キュウべえ「…それなら大丈夫だよ」
マミ「あら、随分と自信があるのね?その根拠は何かしら」
キュウべえ「しいて言えば、僕の第六感かな…。二次成長期の女の子からは感じられない匂いを本能的に嗅ぎ取ったんだと思うよ」
まどか「ふーん。随分とあやふやだね。…でもそれでこそキュウべえだよ」ニタリ
さやか「キュ、キュウべえ…大丈夫?身体中汗だくじゃない」
キュウべえ「だ、大丈夫。僕に任せてさやか。僕だけを信じて…」ボソボソ
さやか「キュウべえ…。こんなキュウべえ初めて見る…」
キュウべえ「今度は僕から質問だよ!あの腐爛したマミは何!何故キミが魔法少女に変化できるの!?」
まどか「待ってよぉキュウべえー。慌てないで、一つずつ教えてあげるから」
まどか「それじゃあまずは、もう一つのマミさんね。あれは正真正銘本物のマミさんだよ、人形や双子とかそんなチャチィトリックじゃない」
さやか「ほ、本物…?でもマミさんは現に私達の目の前で」
マミ「それならDNA鑑定でもしてみる?最も生態活動を停止した瞬間に微妙な差は生まれているかもしれないけれど」
キュウべえ「う、嘘だよ!いくらマミが魔法少女だからってセル単位で個体を複製できるはずがない!その事は使い魔である僕が一番…」
まどか「はいはーい。はーいはい」パンパン
キュウべえ「な、なにさまどか!」
まどか「そうやって無理だ、不可能だって思考を停止するのはキュウべえの悪い癖だよぉ。思考の停止…ソレは家畜と同じじゃないの」
キュウべえ「ば、バカにしないでよ!だって本当に幻想でも起きないかぎり…」
まどか「そう。幻想でも起きない限りね」
キュウべえ「……!?まどかのその姿…。突如現われたマミの腐爛死体…そういう事なの」ガクガク
まどか「ご名答。私が用意してもらったんだよ。魔法少女の対価としてね」
キュウべえ「…ちょっと待ってよ!意味が分からないよ、わざわざその為にまどかが契約する意味が分からないよ!」ブルブル
まどか「もー、また言ってるそばから思考停止ー?意味なんて今この瞬間にだってあるんだよぉ」ダラダラ
マミ「ほら、鹿目さん。涎よだれ」フキフキ
さやか「今この瞬間もってどういう事なの。教えてあげてよ!さっきからキュウべえが困惑して可哀相だよ」
まどか「そうだよ、さやかちゃん…。キュウべえのその困惑し、絶望に打ち拉がれる表情。それこそが私にとって至上の意味を持つんだよっ!」ビッシ!
キュウべえ「………はぁ?」ビクッ
まどか「イイヨォ!その表情、すっごく良いよぉー」
マミ「つまり、鹿目さんはキュウべえの普段の澄ました態度をぶち壊したくて」
さやか「ぶち壊したくて…?」
まどか「こんなドッキリを用意したって訳だよぉ。びっくりしたかなーキュウべえー」サスサス
キュウべえ「………はぁ?そんな下らない事の為にキミは魔法少女になって…、マミの肉体を奇跡の力で複製したっていうのかい…」ダラダラ
まどか「うんうん!どうかなキュウべえ、びっくりしたよね、その顔ビックリしてるよねぇ。あぁ…もう、たっまんないー」ゾクゾク
キュウべえ「バッカかキミはッ!?そんなくっだらないドッキリの為に人のクローンを造り出すなんて倫理的に許されるわけがない!神への冒涜だよ!」
まどか「もー、さっきから下らない々って。そうやって決め付けるのは良くないよ。物事の価値なんか十人十色なんだから」
さやか「で、でもマミさんが…。いくらクローンって言ってもマミさんが死んで腐った事には変わりないよ…」
まどか「さやかちゃんまで…。いい、二人とも良く聞いて。私達の身体なんてたんぱく質と水の塊でしかないんだよ。本当に大切なのはこのソウルジェムだけなんだよ」
キュウべえ「まどかの言ってる事はある方向から見れば正しいのかもしれない…。でも何でそんな事が言えるの!何で悪ふざけの為にそんな事が出来るの!」
まどか「あっれー。これでもキュウべえ達に随分配慮してるんだけどなぁ」ポリポリ
まどか「さーて、ネタバラシも終わったんだし。後片付けしよっかマミさん」
マミ「そうね。あそに転がってる汚いゴミ屑を処分しないと」
キュウべえ「…はぁ…はぁ…」
さやか「ご、ゴメンねキュウべえ…。まどかは本当は悪い子じゃないんだけど」
キュウべえ「ち、…違うよ。彼女は表面的には無害そうに見えるけで、凄い資質が眠っているんだよ…」
さやか「資質って…?」
キュウべえ「人の嫌がる顔を見る…。その為にはどんな手段も厭わない最悪の資質がね…」
さやか「あははは…。否定は出来ない…カモ。でも良かったじゃない、これからはまどかも闘ってくれるんだから」
キュウべえ「あんなバカ魔法少女じゃ、僕の足手纏いに……。あれ、魔法少女?」
さやか「…どうしたの?」
まどか「うわっ、くっさいーねマミさん」ギュウギュウ
マミ「そうねぇ、所詮人間なんか一皮ソウルを剥けばこの様な醜くく異臭を放つ存在でしかないのよねぇ」ギュウギュウ
キュウべえ「ま、待ってよまどか!何でキミは魔法少女になれるのさ!?」
まどか「何でってさっき散々説明したじゃない。この醜いゴミクズの変わりに…」
キュウべえ「それは知ってるよ!僕が聞きたいのはそのプロセスだよ。魔法少女に契約するのはインキュベータにしか出来ないんだよ!」
まどか「私だってそんなの知ってるよぉ。ほむらちゃんが…」
キュウべえ「ん?ほむら。なんでほむらの名前がでてくるのさ」
まどか「な、なんでもないよぉ!?だ、だから私はインキュベータと契約したから魔法少女になったんじゃない」
キュウべえ「だからそれがおかしいんだよ。この星は惑星保護観察中なんだよ、今この地球にいるインキュベータは上から正式に派遣された僕だけなはず…。まどかが魔法少女に契約出来るはずがないんだよ!」
まどか「いるじゃない。目の前に」ビッ
キュウべえ「え…?えっ…?」キョロキョロ
さやか「どうしたのキュウべえ、そっちは壁しかないよ?」
キュウべえ「そ、そうだよね…。まどか、誤魔化すのは止めてよね。透明人間って言うつもりかい!」
まどか「だ・か・ら。私の目の前、キュウべえ自身だよぉ」ビッ
キュウべえ「………は?はぁ?」
マミ「ちゃん説明してあげないと二人とも分からないわよ。そういう幻想なのだから」
まどか「やっぱりそうですよねぇ。あのね、キュウべえ……。あ!」ニタリ
マミ「あらあら…。鹿目さんのその顔。また何か思い付いたわね?」
キュウべえ「もう!いい加減にしてよバカ魔法少女。もうキミのお遊びに付き合うのは懲り懲りだよ!」プルプル
まどか「あぁ…、その憤怒の表情もとてもイイヨォ…。私にとってサイコーのご馳走だよ」ジュルリ
さやか「ちょっとまどか!もう止めてあげてよ、いくら友達でもこれ以上キュウべえを苛めたら怒るよ!」
まどか「えぇー、そんなつもりじゃないんだけどなぁ」
キュウべえ「じゃあどんなつもりだよ!」
まどか「軽い異星コミュニケーションっていうのかなぁ」
キュウべえ「こんなのコミュニケーションじゃないよ!一方的にからかわれてるだけだよ!僕がトップなら即、惑星間戦争だよッ!」
まどか「それじゃ、百聞は一見にしかずだね。さやかちゃん、ちょっと私と同じ事してくれないかな?」スッ
さやか「…え?こ、こう?」スッ
キュウべえ「な、何をいきなり。ダメだよさやか、迂闊に彼女に従っちゃ」
マミ「いいからキュウべえは静かに見ていて。貴方の認識ではこれが初めてになるのだから」
キュウべえ「僕の認識で…初めて?どういう事さ、さっきもそんな事を」
まどか「…そして、こうやって精神を開放するの!」バッ
さやか「え…えっとこうかな、まどか?」バッ
まどか「ダメダメぇ。それじゃただ気を大きくしているだけだよ」
さやか「え…?な、なんの事なのよ」
まどか「それじゃ、私やマミさんが魔女に殺されている場面を想像してみて?」
さやか「そ…、そんな事言われても毎回身を守るのに必至で良く覚えてないよ」
まどか「じゃあ上条くんが緑に奪われる場面でもなんでも良いよ。魔法少女になるには、まずは切れるんだよプッチーンと!」ビッ
さやか「緑ぃ…奪われる?一体なんの話なのよまどか」
まどか「それは、えぬてぃーあー」
キュウべえ「ちょっ!?何さやかをダークサイドに引き込もうとしてるのさッ!」ブンッ
まどか「はふぅ!」ベギィン
マミ「あら、ダメよキュウべえ。私の腐敗した右腕を勝手に投げては」
キュウべえ「大体魔法少女っていうのはそんな負の感情で動いてないよ!」
まどか「え…?そうなの、でもマミさんからそう教わったよ」
キュウべえ「キミ達二人だけだよ、そんなどす黒いのは!…いいかい、本当の魔法少女っていうのは希望と勇気を胸に描いて、羽ばたかせるんだよ!」
さやか「希望と勇気を…、羽ばたかせる」サッ
キュウべえ「そうそう。やっぱりさやかがやると絵になるよね!まるで本当の魔法少女みたいだよ」
まどか「それはそうだよぉ、だって…」
ドッゴゥゥゥゥウゥッ!!
キュウべえ「………ふぇ?」パラパラ
さやか「な、何コレ?私もまどかやマミさんみたいに身体からオーラみたいな物が…」
まどか「どう、キュウべえ?つまらないトリックだと思ぅ」ツンツン
キュウべえ「この穏やかで心地よい…、それでいて且激しく燃え上がるマギ力…。間違ないよ、さやかも魔法少女に…」ダラダラ
さやか「キュ、キュウべえ、これは一体なんなの!なんで私が魔法少女に」
キュウべえ「さやか、落ち着いて!さやかは見に覚えがないの?まどかに騙されて契約されたとか」
さやか「ううん…。そんな事無いよ。全く心当りなんか」
キュウべえ「そうか…、それじゃあ他の可能性は」
まどか「あれ?今度は素直に思考を継続するんだねぇ。私の言葉を学習したのかな?それともさやかちゃんだからなのかな?」
キュウべえ「応えるまでもないよ、後者に決ってる。さやかの言葉を信じないのならば、それはこの世の全ての理を否定するのと同等…」
マミ「へぇー、随分と麗しい友情…、いやもしかして…愛じょ」ギリギリ
まどか「ちょ!ちょっとマミさん!腐爛マミさんの脚部が潰れて飛び散ってますよ」
マミ「あ、あらゴメンなさいね。私ったらつい…。ソウルが濁る所だったわ」
まどか「またまたー。マミさんに限ってそんな事」ポン
マミ「鹿目さんに協力した結果が裏目にでたのかしら…」
まどか「大丈夫ですって!これからは釣り橋効果ってヤツでほらぁ…」
マミ「そ、そうよね。鹿目さんみたいに何事もポジティブにいかないとね」
まどか「そうですよ、そうですよ!」
キュウべえ「何をゴチャゴチャ言ってるのかなぁ」
まどか「なんでも無いよ!それじゃあ教えてあげるね、さやかちゃんが魔法少女になれたのはね」
キュウべえ「いいよ、言わなくても。もう理解したから」
マミ「あら、流石はキュウべえね。ご褒美にナデナデしてあげたいくらいよ」
キュウべえ「マミからはそれと無くヒントを貰っていたからね…。そのご褒美を頂く資格は僕には無いよ」
マミ「あら…、それはとても残念だわ」
キュウべえ「そもそも、魔法少女を造るインキュベータはこの地球上には僕しかいない。これは揺るぎない確定事項」
さやか「でも、それが決ったからってどういう意味があるの?」
キュウべえ「なのに、僕はまどかを魔法少女にした事を覚えていない…。マミのクローンを精製した事を覚えていない…。さやかを魔法少女にした事を覚えていない…。さやかも魔法少女になった事を覚えていない」
さやか「…そうだよ?だからさ、二人とも覚えて無いんならキュウべえじゃないんじゃないかな?」
キュウべえ「待ってさやか。最初に言ったよ、この地球上のインキュベータは僕一人。これを覆してはいけないんだ」
まどか「へぇー、そうだよねー覆しちゃいけないよねー」ニタニタ
さやか「でも、それじゃあ答えがでないじゃん。堂々巡りだよキュウべえ!」
キュウべえ「いや、まだ一つ覚えていないパズルのピースがある」
さやか「覚えていないピース…?」
キュウべえ「さやかが魔法少女になった代替だよ。それも僕達は覚えていない」
さやか「…あ、そっか!魔法少女になるって事は願い事が叶うって事だもんね」
まどか「でもさー、キュウべえもさやかちゃん自身もソレ覚えてないんだよね?」
さやか「う、うん…そうだけど…」
キュウべえ「さやかが気に病む事はないよ。覚えて無いって事実そのものが答えになるんだから」
さやか「覚えて無い事が事実…?」
キュウべえ「つまり、さやかの願いは『この一連の記憶を綺麗さっぱり忘れ去る事』だったんだよ!」ビッ
マミ「あらあら。おめでとうキュウべえ良く頑張ったわねぇ」パチパチ
キュウべえ「別に大した事じゃあ無いよ。言ってたでしょ、僕の認識では初めてって。つまり契約を交わした時に僕はマミのクローンも目撃してるし、まどかやさやかの魔法少女姿も見てたってわけさ…」
さやか「な、なるほどー!やっぱりキュウべえは頭良いよね!」ギュウ
キュウべえ「あ、ちょっとさやか!そんなに強く抱き締められると苦しいよぅ」ジタバタ
マミ「……………」ギリギリ
まどか「あ!ちょっ…。待って待って、キュウべえにさやかちゃん。今の答えじゃ八十点って所なんだよぉ。ねぇマミん!」
マミ「……え?あぁ、そうね」ニコリ
まどか「ふぅ……危ない」アセアセ
マミ「キュウべえの願いじゃ、美樹さん一人しか記憶を消去できないでしょ?だから八十点」
さやか「そ、そうか魔法少女の願いは一人一つまで…。キュウべえの記憶は残るって事ね」
まどか「そいう事ぉ。一体どーやっのかなぁ」ツンツン
キュウべえ「もうっ!そうやってドヤ顔でツンツンつつくの止めてよ!凄く不愉快だよ」
まどか「えっふぇっふぇ…。ごめんねぇキューベーぇ」ダラダラ
キュウべえ「…は、まさか。キミ達と言う人間は…!」ブルブル
さやか「分かったの?キュウべえ!」
キュウべえ「他の二次成長期の少女を利用したんだねッ!この魔法少女の皮を被った魔女どもめ!」ビッ!
さやか「え…!?わ、私達の他にもまだ魔法少女が…」
まどか「ぶっぶーッ!キュウべえくん人形ボッシュートだよぉ」
キュウべえ「………ふぇ?」
マミ「ふふ…。いくら私達でも、自分達の目的為に仲間以外を巻き込んだりしないわよ」
まどか「酷いよキュウべえ。私達そこまで悪党じゃないよぉ!」
キュウべえ「な、なら仲間も巻き込まないでよ…」
さやか「だったら、どうやって私達二人の記憶を消したっていうの?」
まどか「そもそもさやかちゃんの、その前提が間違いかなぁ」
さやか「前提が…。二人じゃないってこと?」
まどか「えーっと、つまりね」
まどか『銀河系全ての知的生命体は、この場の時間軸に置いて前後二時間の己の記憶、及びに存在する記憶媒体の該当箇所全ては消え去る…。これでどうかな?』
マミ『大変素晴らしいわね。確かにそれならば、美樹さんとキュウべえの記憶を一度の願いで抹消できるし…私達のリスクも最大限に軽減されるわ』
まどか『いやー、たまたまですよぉ。私魔法少女じゃないし…。こういう事考えるくらいしか役に立たないですから』
マミ『そんな事はないわ。それはとても素晴らしい事よ。自信を持って』
まどか『は、はいっ!』
マミ『でもね。これじゃあ九十点までしかあげる事が出来ないの』
まどか『え!?なんでですか…?』
マミ『その願いでは私達の記憶まで忘却の彼方に連れ去られるでしょ?』
まどか『そ、そっかぁ!それじゃあ、このマミさんの形をしたたんぱく質も宝の持ち腐れですね』
マミ『だからね…、最後にこう付け加えればいいの……』
キュウべえ「……で、なんて付け加えたのさ?」
まどか「但し、ウンと悪い極悪人を覗く…。ってさ」ビッ!
キュウべえ「それ、完全に自分を悪党って認めてるよねッ!?銀河系レベルで認められてるよね!というより、なんでキミはそういう邪な事を考える時だけ単語が流暢なんだよ!?」
まどか「だってワタシ、何の役に立てないからぁー」
キュウべえ「負の方面で立ちすぎだよッ!」
マミ「あぁ、そうそう。一つ言っておくけどこう付け加えたけれども、私達は己のやった行いを悪とは認めていないわよ」
まどか「そうですね、魂の抜け殻をドッキリの道具に使う事を悪とは思って無いよ。人は生きている限り業を重ねる。何かを間引かなければ私達は個体を維持できない。食べるなと言われてもお腹は空くんだよ」
さやか「…ん?でもそれじゃあ何で二人の記憶は残ってるのよ」
マミ「つまり、そういう善悪や思考、思想の概念は願いを叶える本人が基準とされるって事なのよ」
さやか「なるほど…、そういう事なんですか」
マミ「もっとも、これは誰かさんの受け売りなんだけど」チラッ
キュウべえ「……。なんだろう、今もの凄い寒気が背筋を走ったような気がするんだよ」ビクッン
さやか「大丈夫?キュウべえ、なんだか急に痩せたんじゃない」
キュウべえ「だ、…大丈夫だよ…。大丈夫なんだ…」フラフラ
まどか「どうキュウべえ、これで全部スッキリしたかなぁ?」ニタニタ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません