梓「つぎはこの星をヤッテヤルデス」(541)
代行
梓「ついにきた……ここが資料にあった太陽系小惑星『地球』か」
梓「はやくこんな任務終わらせて母星へ帰ろう」
梓「文明レベル解析開始……ピピっと……やっぱり簡易データどおり中の下ってとこか」
梓「ま、一応小規模な宇宙進出ははたしてるみたいだし、調べがいが全くないわけでもないかな」
梓「ふふん、それにしても。銀河連合ヤッテヤルデス星外宇宙調査団特佐のこの私が、こんな辺境の星までわざわざ調査にきてやったんだから」
梓「この星の人間どもは感謝するべきだね」
『まもなく大気圏に突入します』
梓「むったん、不可視モード。反重力デバイサー起動」
『了解。梓様、くれぐれもお気をつけください』
梓「こんなちっぽけな星にたいした危険があるはずもないよ……」
梓「まぁあったらあったで支援要請して滅ぼせばいいだけ……ふぁ……眠」
梓「大気圏突破……お、この星、夜にしてはやっぱり灯りが多いなぁ」
梓「とりあえずあの一番明るい辺りに降りようかな」
ヴィーン ヴィーン
『危険信号』
梓「ん、むったんどうしたの? え? なにか近づいてくる……」
『高速で接近する熱源あり』
梓「え、聞いてな……う、うわああああああ――――――
☆☆☆
梓「んー……うう」
『ご無事ですか梓様』
梓「あれ、どうなったの……」
『遠距離からの攻撃をうけました』
梓「そうじゃなくって……ここは……もしかして撃墜された?」
『なんとか不時着に成功しました』
梓「え、どこに……」
『さぁ……どうやら砂地のようです』
梓「えー、むったんが選んで降りたんでしょ。しっかりしてよー」
梓「あーあー、下舷推進システムもバランサーもイカレちゃってる……コレなおる?」
『自動補修システムはすでに作動しております。最短で1ヶ月あれば航行可能なレベルまで修復するかと』
梓「一ヶ月~!? もうー、とんだ災難だよこんな小さい惑星で」
『実に不愉快ですね』
梓「アイテテテ……まさかいきなり攻撃してくるなんてなー」
梓「野蛮な星だよまったく。これは報告書に書いとかないと」
『それにしても、この星の文明レベルとは不釣合いな攻撃だったかと』
梓「しらないよ。どうせまた兵器の進化に特化した星なんでしょ」
梓「とりあえず全周モニター表示して」
ヴィン
梓「うわ、真っ暗だね……どこだろう」
『外に出ますか?』
梓「うん、そうするよ。ここにいてもしかたないし」
『私はどうすれば』
梓「いつもどおり不可視モードでその辺の山か海にでも隠れといて」
『了解しました』
梓「よっこらせっと。またねーむったん」
梓「ふー、久々の陸地だー」
梓「一ヶ月か……ま、綿密な調査にはちょうどいいかな」
梓「よーし、ヤッテヤルデス! ……ん? 何かの気配が」
唯「あ、あのあの……きみ……」
梓「お、第一地球人発見!」
梓「あー、やっぱり頭の悪そうな顔してるなー……さっすが田舎の星」
梓「第一サンプルはこの人間でいっか、めんどくさいし」
唯「ひっ、ちょ……何語……」
梓「あ、しまった。言語翻訳システムを作動しないと」
コツコツ
梓「あー、おほん。はじめましてです」
唯「あ、日本語! あの、はじめまして……っじゃなくて!」
梓「おびえなくていいです。私はあやしいものではないです。落ち着くです」
梓(あれ、翻訳が……なんかおかしいぞ……あ、もしかして撃墜時のショックで……)
唯「き、きみさぁ……」
梓「なんです。早く要件を言うです」
唯「ど、どうして校庭のど真ん中で……」
唯「……素っ裸なの……?」
梓「……ん?」
唯「……いくら夜とはいえ……ちょっと……」
梓「裸じゃないです。失礼です。耐圧耐熱自在可変スキンをちゃんと装着してるです」
唯「ろ、露出狂さんなの……? ひいいいっ!」
梓「ん? そういえばお前は変なものを身につけてるです」
唯「服はちゃんと着ようよ……逮捕されちゃうよ」
梓「服っていうですか。じゃあちょっと後ろ向くです」
唯「え? あ、着替えもってるの? そうはみえないけど」
梓「いいから後ろ向くです」
唯「う、うん……てか裸なんだから……」
唯「いまさら着替えみられたところで……なにが恥ずかしいの」クルリ
梓「へえ、後ろの構造はこうなってるんですか」
唯「あの……」
梓「もうこっち向いていいです」
唯「え?……ってうわあああいつのまに着替えたの! すごい!」
梓「簡単な作りなのでトレースは簡単です」
唯「も、もしかして……マジシャン!? てか桜高の生徒なんだ!?」
梓「違うです。私はお前たちからいうと宇宙人です」
唯「宇宙人~!? ……あの、私がいうのもなんだけど……頭大丈夫?」
梓「第11銀河連合所属ヤッテヤルデス星外宇宙調査団特佐のアズサです。光栄に思うです地球人」
唯「ちょ、長いよ! なんて言ったの??」
梓「お前をこの星の調査サンプルに決めたです。さぁ名乗るがいいですサンプルナンバー01」
唯「え? サン? あの、私、名前……平沢唯っていうけど」
梓「どこまでがファミリーネームです」
唯「平沢が苗字で、唯が名前だけど……」
梓「ふーん、おもしろい名前です」
唯「う、うん……そうかな? で、君。じゃなくて、あ、あずさちゃんは……」
梓「なんです」
唯「大丈夫……?」
梓「……なにがです?」
唯「もしかしてひどい目にあわされてここに裸で放置されたとか……」
梓「まぁある意味ひどい目にはあってるです」
唯「や、やっぱり……。頭もつよく打ってるよね?」
梓「……」
唯「おうちは? もう暗いけどお母さんたち心配してないかなぁ」
梓「……帰れないです」
唯「え?」
梓「帰りたくても帰れないです」
唯「そ、そんな……!」
唯(もしかして家庭でもひどい目にあってるのかな……うう、可哀想)
梓「……」
唯「じゃあこれから……」
梓「とりあえずアテはないです」
唯「うっ、可哀想……あずさちゃん……」
梓「何泣いてるです。頭おかしくなったですか」
唯「いまは私のおうちへおいで~うえええん」
梓「……!」
唯「ほとほりが冷めるまで居ていいよーうえええん」
梓「なるほど自主的な調査への協力とは頭悪いくせに物分りのいい奴です」
唯「え?」
梓「ならユイの家にしばらく住んでやるです。はかどるです」
唯「うん!」
梓(ふ、なんかよくわからないけどファーストコンタクトはうまくいったみたいだね)
梓(さすが私。これで100惑星調査達成の悲願も叶って晴れて昇格だよ)
梓(私への警戒も敵意もなさそうだし楽々ってとこかな……ふふふ)
ふむ
☆☆☆
唯「というわけで」
梓「……」
憂「事情はわかったよお姉ちゃん。そういうことならウチでしばらく生活して」
梓「お前をサンプルナンバー02に決めたです」
唯「あまりの壮絶な過去のせいで自分のこと宇宙人っていうんだよ……可哀想なあずにゃん」
憂「そうなんだ……可哀想」
梓「ホントに宇宙人です。ところであずにゃんってなんです」
唯「あ、なんか猫っぽいから。可愛いでしょ」
梓「……」
憂「で、お姉ちゃん。学校、忘れ物はとってきたの?」
唯「え? あ……忘れた」
憂「もうっ、なんのために学校までいったの」
唯「うぅ……あ、でもおかげであずにゃんを拾えたし! 忘れ物なんかよりよっぽど重要だよ」
憂「そ、そうだよね! 人助けだもんね!」
梓「よくわからないけどとりあえずお腹が空いたです。この星の食料をもってもてなせです」
憂「わかった、じゃあご飯しよっか?」
唯「うん! 憂のごはんはおいしいからいっぱい食べて元気になってねーあずにゃん」
梓「……」
梓(この星では目下の者に食事をつくらせるのが当然なのかな)
梓(ふ……まるで野生動物そのものだね……やっぱりレベルの低い星だ)
梓(味もたいした期待できそうにないし、味覚フィルターを一応ONにしておこうかな? ふふふ)
梓(ヤッテヤルデス星一(自称)ともいわれるこのアズサ特佐の舌をうならせる料理なんて野蛮人にできっこない)
☆☆☆
梓「……こ、これは……」
憂「遠慮せずにたべてね?」
梓「これがこの星のたべものですか」
唯「どったの? 食べないの? おいしいよ」モグモグ
梓「……!!!」
梓(なんなのこの見た目、そして匂い! おかしい! おかしいこんなはずでは!)
梓(明らかに食べ物という域をこえている。この彩り、配列、これは芸術か何かじゃないの!?)
梓(こんなのほんとに食べれるの? あやしい、あやしすぎる)
梓(でも、なんでこんなに食指が動くのおお!!)
憂「あの……たべていいんだよ?」
梓「わ、わかってるです! 言われなくても食べるです!」
唯「……」モグモグ
梓「……これをつかって食べればいいですか」カチャカチャ ポトリ
梓「あっ……」
唯「……お箸つかえないの?」
憂「珍しいね。日本人じゃないのかな? さっきから変なカタコトだし。はい、スプーンつかって!」
梓「……んー、うまくできないです」カチャカチャ
唯「んーじれったい。はい、あずにゃんあ~ん」
梓「へ?」
唯「あーん、して。お口あけて」
梓「……んあ」
唯「ほいっと」
梓「!!!!!」モグモグモグモグ
憂「おいしい?」
梓「…………!!!」モグモグモグモグ
梓「んあー、もっとよこすです。もっとよこすです」
唯「あ~ん」
梓「あーん……」モグモグ
憂「ふふ、気に入ってくれてよかった!」
梓「こんなうまい食料があるなんて……不思議な星です」
唯「憂は料理の天才だよ~」
憂「えへへ、それほどでも~」
梓「なるほど、たしかにユイに比べるとウイのほうがスペックが高そうです」
唯「えぇ~!? 確かに憂のほうがいろいろできるけどー……」
梓「とにかくこれは報告対象に加えるです」
唯「報告?」
梓「本国にウイの量産体制を急ぐよう進言するです。これを食べたら間違いなく士気があがるです」
唯「ど、どういう意味……やっぱり頭が……」
憂「心配だよ……」
唯「とにかく、今日はゆっくり休んでよあずにゃん。ベッドも用意するからね」
梓「気がきくです。もう長旅でへとへとです。しかし、こんなにもてなされたのははじめてです」
唯「その前にお風呂はいろーよ」
梓「お風呂? なんですかそれは。またおいしいものですか?」
唯「お風呂しらないの? あ、シャワー! バッスルーム!」
梓「ばっするーむ?」
唯「これは……深刻な記憶喪失かもしれないね。明日にでもお医者さんいく?」
梓「とにかく異文化は調査報告対象です! この星にすこし興味がでてきたです!」
憂「あ、お風呂もう沸いてるよ。たぶんわからないだろうから一緒に入ってあげて?」
唯「おっけー。そういや着替えはどうするのー?」
憂「私の服かしてあげるね? すこしお古だけどサイズはちょうどいいと思うよ」
唯「よかったねーあずにゃん」
梓「さぁはやくお風呂とやらに連れてくです」
唯「まってよあずにゃん、興奮しないでよぉ」
梓「調査するです! 報告するです! ヤッテヤルデス!」
☆☆☆
梓「これがお風呂……」
唯「どう? 思い出さない?」
梓「なんてことです……」
唯「そこに座って? 体ながすよー」
シャアア
梓「にゃあああああ、なんてことですうううう!!!」
唯「あ、ごめんまだ冷たかった?」
梓「なぜこんなことをするです。この星にはスキンクリーナーすらないですか」
唯「? クリーニング屋さんならあるけど」
梓「こんなメンテナンスのしかたはじめてです! おかしいです!」
唯「でもきもちいよ~、ほら~」シャアア
梓「ふぁ……あったか……新感覚です」
唯「えへへ、きもちいでしょ? 次は湯船だよ」
梓「へ? この水たまりのはいるんですか?」
唯「うん! もっときもちいよ」
梓「もっときもちい……そんな、これ以上きもちいことがあるはず……」
唯「どうぞどうぞ」
梓「ゴクリ……ま、まだ安心はできないです……トラップの可能性も」オソルオソル
ツンツン チャプ
唯「こーやって一気に!」グッ
ザプン
梓「ふにゃあああああっ!」
唯「しっかり肩までつかるんだよっ!」
梓「ふにゃああ、きも、きもちいいですううううううう!!」
唯「よかったよかった」
梓「ユイも入るです、それがいいです」
唯「えっ! 一緒に? でもせまいよー」
梓「入るです! ユイも味わうです!」
唯「そんな急かさなくても毎日たっぷりはいれるし……」
梓「えっ!!!? 毎日ですか!!? どこの支配者階級ですか!」
唯「日本じゃごく普通のことだよ?」
梓「ありえないです! 惑星間航行できない野蛮人がこんな快楽装置を発明しているなんて!!」
唯「ほかにもきもちいものならたくさんあるよ!」
梓「ありえないですありえないですうううう!!!」
唯「お、落ち着いて……声響くから……」
梓「このお風呂という装置、もっとはいっていたい気持ちはあるですけど、他にどんなのがあるのかも早く知りたいです」
梓「ヤッテヤルデス!」
唯「いや、ちょっとまってよ、その前に体と髪の毛洗わなきゃ」
梓「は?」
唯「洗うからあがってきてー」
梓「……なにするです?」
唯「洗う……あのー、せっけんでーゴシゴシするんだよ」
梓「ゴシゴシ……?」
唯「まぁいいからいいから。またここ座ってあずにゃん」
梓「は、はい」
唯「こうやってー、泡立ててねー」
梓「……」
唯「はい、これを体に塗るんだよ! どうぞ!」
梓「……わからないです。危険はないですか?」
唯「大丈夫だけど……うーん、洗ってあげようか?」
梓「それがいいです。早く調査に協力するです」
唯「おっけー、じゃあしつれいしま~す」
ヌルッ
梓「はっ!!!!!」
唯「ごしごし」
梓「はにゃ!!?」
唯「お肌すべっすべだねーいいなーいいなー」
梓「……ふにゃ……きもちいです」
唯「うふふー、体の汚れはしっかりおとそうねー」
梓「……はいです。本国にもこれがあればスキンクリーナーなんて一瞬で廃れるです」
唯「あとは自分であらってね」
梓「え? もう終わりですか?」
唯「え……でもこれ以上は……その……うぅ」
梓「どうして赤くなるです。もっとしていいですよ。私はユイの手でしてもらいたいです」
唯「そ、そう? じゃあさらに失礼して~……」
ヌルッ ヌルッ ヌルヌル
梓「あ~、なんともいえない心地です。ユイもセットで量産してやるですありがたく思うです」
唯「あんまり恥ずかしいとかそういう感覚はないんだ……」ボソッ
梓「?」
唯「い、いやこっちの話だよ。さて、次は頭だね!」
梓「頭? え? 頭!!?」
唯「髪の毛ながいから、また私が洗ってあげるね」
梓「髪の毛……あっ! それはだめです!」
唯「ほえ? どうしてー、洗わないと汚いよ?」
梓「で、でも濡らすといろいろ、その……」
唯「あー、あずにゃんは髪の毛洗うの嫌いなんだーだめだぞー洗わなきゃ」
梓「……あれ、防水だっけ……?」
唯「へ? まぁいいや、はいシャワーだよー」
シャアア
梓「ふにゃ……この際なるようになれです」
唯「せっかく綺麗な髪の毛なんだからちゃんと洗わないとねー」
梓「うぅ……とりあえず耳はふさいどくです」
唯「はいシャンプーつけるよー、ごしごし♪」
梓「ふにゃ、ふにゃ……あ、なんか水が、あああああにゃにゃにゃにゃ」
唯「えっ!? どったの」
梓「にゃにゃにゃにやあああああああにゃにゃにゃ」プスプス
唯「あずにゃん!?」
梓「 」
唯「ど、どうしたの……」
梓「……虐殺プログラム二従イ、タダチニ任務ヲ遂行シマス」
唯「え?」
梓「だ、だめ……だめです、ここは、まだ未調査」
梓「虐殺プログラム二従イ、タダチニ任務ヲ遂行シマス」ギシギシ
梓「にゃ、ああっ、がっ、ユイ……あふ」プスプス
唯「あずにゃん……?」
梓「に、にげル、デス」
唯「えっ? え?」
梓「早くにげるですううううう!!」
梓「標的ハ正面、敵性生命体1」ゴゴゴ
唯「えっ、ちょっ!! あずにゃん!!?」
梓「ターゲット捕捉、排除ヲ開始シマス」
唯「あずにゃん!」ガバッ
ギュウウ
梓「ニャアアア」プスプス
唯「あずにゃん……大丈夫だよ」
唯「辛いことがあってもウチにいる限りちゃんと守ってあげるからね」
梓「ハイジョ……ハイジョヲ」
唯「私は怖くないよ。悪い人じゃないよ。大丈夫だよ」
梓「テキセイ、セイメ……イ、ハイジョ」
唯「……」ナデナデ
梓「ア……」
唯「記憶がもどるまでうちにいていいよ……あずにゃんにひどいことする人なんて私がやっつけてやるから」
梓「……」
唯「あずにゃん……あったかあったか」
梓「アッタカ、アッタカ」
唯「よしよし。いい子だよあずにゃん」ナデナデ
梓「―――は!」
唯「あずにゃん?」
梓「あれ、私……あれ?」
唯「落ち着いた?」
梓「すいませんです……なんかバグが発生してたみたいです」
唯「いいよ。疲れてるでしょ、今日はもう寝ようね」
梓「そうするです。本格的な調査は明日からするです」
唯「記憶探しの旅か……大変だね」
梓「ユイも協力するです。サンプルナンバー01ですから」
唯「うん当然! あずにゃんの記憶がもどるまで一緒にいてあげるよ」ニコッ
梓「にゃ!!!? き、きやすく笑うなです!!」
唯「え~!?」
梓(やっぱり私、墜落時のショックで言語回路以外もおかしくなったみたい……)
梓(オーバーヒートしちゃったのかな……)
梓(あぁ、あったかあったか……もう一回してほしいな……でも、言い出せない……おかしいなぁ)
☆☆☆
梓「こんなところで寝るんですか?」
唯「え? ただのベッドだよ? いつもはどこで寝てるの?」
梓「カプセルです」
唯「へー、おもしろいこというね」
梓「むむ、さてはカプセル睡眠を馬鹿にしてるですね」
唯「カプセル睡眠ってなに」
梓「ふふふ、自慢ですがカプセル睡眠は本国がつくりだした最高の睡眠効率を誇る科学の結晶」
梓「こんな、よくわからない四角の物体ごとき」
フカッ
梓「にゃ!!!!?」
唯「ここに横になるんだよ。シーツ取り替えたし、超ふかふかだよー」
梓「ちょ、ちょっと待つです……これは危険な香りがするです」
唯「きもちいよ?」
梓「……ええい、ヤッテヤルデス!」
ボスン
梓「ふにゃああああ!!!」
唯「ね? ふかふかー」
梓「きもちいです、おかしいです、ずるいです!」ゴロゴロ
梓「これは持って帰るです。個人的なおみやげにするです。帰りの航行はこれの上で過ごすです」
唯「ちょ、ちょっと落ち着いてよ……いままでどんな睡眠環境だったの」
梓「これじゃ興奮して眠れないです! やっぱり地球人は馬鹿です! マヌケです!」
唯「まだだよ。これはね、この布団をかぶってー。あっ、頭は枕にのっけてー」
梓「……おおう……ミラクルです」
唯「じゃあ電気消すね。おやすみあずにゃん」
梓「待つです」
唯「?」
梓「ユイはどこで寝るです。ここはユイの部屋だと解釈しているです」
唯「リビングで寝るつもりだったけど……ふふふ、一緒に寝よっか?」
梓「一緒に寝るです! きっとユイと寝るとさらにあったかあったかになるです!」
唯「て、てれるなぁ……えへへ」
梓「ユイはいままで出会った中でもかなり上質なサンプルです! こんなへんぴな星にいるのが惜しいくらいです」
唯「そんなにほめてもなにもでないぞー」
梓「ここに横になるです! ふかふかです!」
唯「はいはい……よっこらせ」
梓「……」ワクワク
唯「それじゃあおやすみー」
梓「……?」
唯「……zzz」
梓「あったかあったかしないですか……」
唯「zzz」スピー
梓(うーん、この星の人間は寝付くのが早いのかな)
梓(あ、わかった。おそらくこのベッドというものは地球人の睡眠に特化した作りになっているんだ!)
梓(そうにちがいない、きっとそうなんだ。 ……だって私は……なかなか寝付けそうにないもん)
☆☆☆
梓「……おきるです」
唯「……zzz」
梓「離すです」
唯「スピー……zzz」
梓「朝になってるです。日が登って一時間もたつです」
唯「……ふぁ~」
梓「今日から調査を本格的に開始するです」
梓「昨日一日でウイ、お風呂、ゴシゴシ、ベッドという収穫があったです」
梓「きっとまだまだたくさんおもしろいものがでてくるです」
梓「だから協力するです。起きるです」
唯「ん~、あずにゃー……」
梓「この星の人間は寝起きが悪い、これはおそらくベッドという装置のもたらす弊害です」
唯「んーきもち~、あずにゃ~ん」ギュウ
梓「……離すです」
唯「えへーおはよー」
梓「早く離さないと私の何かがおかしくなるです」
唯「え~? ふぁ~」
梓「またバグってユイを襲うことになるのはごめんです」
唯「ん~……眠い~」
梓「さぁ、早くするです」
唯「うん、あと五分だけー……」
梓「……」
ガチャリ
憂「あ! おはようあずさちゃん。朝御飯できてるよ」
梓「ついにはウイも起こしに来たです。上にたつものとして示しがつかないです」
唯「えへ~おはよーういー、あずにゃんがきもちよく起きられないよー」
憂「もうっ! 迷惑かけないの!」
梓「はやく朝御飯をたべるです。きっとまた芸術に違いないです」
☆☆☆
梓「え、これだけですか……?」
唯「うち朝はパン食なんだ~」
憂「ごめんねー」
梓「この四角い物体はどうやってたべるです」
唯「こうやってかじりつくんだよ」モグモグ
梓「……」ガブッ
梓「……んぐんぐ」
梓「……んまいです」
唯「ジャムをぬるともっとおいしいよー。はい、ぬったげるー」
梓「おおう、この宝石みたいな色の物体を食べるんですか」
唯「甘いよー」
梓「もぐもぐ……ん、甘いです」
唯「あーもう、口のまわりべたべたにしてー」フキフキ
梓「気が利くです。普段はカプセル剤やドリンク剤が多いから慣れないもんです」
唯「へー、なんだか質素な食事なんだねー」
憂(一体どこの国出身なんだろう……)
梓「さて、早速調査にでかけるです! ってあれ」
梓「なにバタバタしてるです」
唯「あずにゃん、学校だよ学校!」
梓「?」
唯「学校いかなきゃ! あ、もしかして学校すら忘れちゃったの?」
梓「わからないです。ならばそれも調査対象です! ヤッテヤルデス!」
唯「いいから早く着替えて! 遅刻しちゃうよ!」
憂「お姉ちゃん! 私日直だから先にいくね!」ドタドタ
梓「むぅ……なんだか慌ただしいです。戦闘でもはじまるんですか?」
唯「あずにゃん制服は? どこいったの?」
梓「あ、スキンチェンジしてくるです」
唯「早くしてね! まってるから」
シエンシテヤルデス
梓「待たせたです」
唯「ほら、かばん……は無いか。いくよ!」
バタン
唯「ひー急げー」パタパタ
梓「……なぜ走るです!」
唯「遅刻したら怒られちゃうんだよー」
梓「ユイを怒るやつなんて私が排除してやるです」
梓「貴重なサンプルになにかあったら困るです」
唯「そういえばあずにゃんって!」
梓「なんです」
唯「何年何組? リボンの色は私とおんなじだから同学年なの?」
唯「でもあずにゃんみたいな子いたかなぁ。あ! もしかして転入生だったり?」
梓「わけわからないことばっかりいうなです! 私の所属は第11銀河連合ヤッテヤルデス星―――」
唯「あーもう! それはわかったから~、とにかく教室行く前に職員室に寄ろうね!」
☆☆☆
唯「え? 籍なんてない?」
さわ子「うん……そうだけど、一体どこの子なの?」
梓「……」
唯「でもウチの制服……」
さわ子「ねぇあなた、桜高の子?」
梓「……私は第11――」
唯「わーストップストップ!」
梓「なんなんです」
さわ子「なによ、言わなきゃわからないわよ」
唯「この子ちょっと記憶が……あはは」
さわ子「とにかく外部の子をいつまでも校内には……」
唯「じゃ、じゃあさ! 見学! 一日学校見学ってことでどう!」
さわ子「うーん……ちょっと教頭先生にきいてくるわね」
梓「……調査できないですか?」
唯「うーん……ごめんね。いまさわちゃんが聞きに行ってるけど」
梓「あの地球人が任務の邪魔をするなら排除もやむを得ないです」
唯「ぶ、物騒なことはだめだよお!」
梓「どうしてです。障害は取り除く、それがヤッテヤルデス星人の主義です」
唯「いくらあずにゃんでもそんな悪いことしたら嫌いになっちゃうからね!」
梓「え?」
唯「……だめだよ、痛いのはみんな嫌いなの」
梓「……わかったです。ユイに嫌われるのはなぜかダメな気がするです」
梓「おとなしく引き下がるです。それが得策です」
唯「ごめんね……いい子いい子」ナデナデ
梓「ふぁ……ふにゃあ……あ、ば、馬鹿にするなです。ヤッテヤルデス星人は柔軟な思考をもっているです」
梓「どんなアクシデントもヒョイと乗り越えるです。みてろです!」
唯「ふふ、あずにゃん可愛い」
梓「……むぅ」
やはり唯には逆らえない梓
さわ子「あ、ふたりとも」
唯「さわちゃん、どうだった」
さわ子「それが一日体験入学ならかまわないって」
唯「え! ほんとに!?」
さわ子「そのまま入学してくれるとありがたいなって笑いながら言ってたわ」
さわ子「生徒にこんな話擦るのもどうかと思うけど、いまの不況一人でも生徒が増えると学校側も儲かるから」
梓「なるほど、この星の人間はずいぶんと打算的な考えで生きているようです」
梓「これは報告対象です」
唯「よかったねあずにゃん! 一緒にいられるよ!」
梓「調査ができるなら喜ばしい限りです」
唯「ちょっと遅刻しちゃったけど早速私のクラスにおいでよ! みんなに紹介するよ!」
梓「みんな? そういえば同じ格好をした人間がたくさんいたです!」
唯「だって学校だもん!」
梓「不思議なところです」
☆☆☆
律「おい、にゃーって言ってみ、にゃーって」
梓「……にゃー」
紬「かわいい~~」
梓「全く、おかしなやつらです。この変な頭飾りは報告対象です」
唯「やっぱりあずにゃんって名付けた私のセンスに狂いはなかったね!!」
澪「ところで、唯の友達なんだよな?」
唯「友達っていうかなんていうか」
梓「調査対象です」
律「ずいぶんちっこいけど来年入ってくる中学生か?」
梓「……特佐です」
紬「ねぇ、あずさちゃんは何歳なの?」
梓「え? うーんと……うまれてかれこれ16万年くらいです」
唯「へーあずにゃんって16歳なんだー。憂と一緒の歳だね」
梓「この星の人間も長生きなんですね」
唯「ってことは私が先輩だー」
梓「……」
唯「唯先輩って呼んでみて! 私後輩ほしかったんだー!」
梓「……ユイ先輩」
唯「おおーう! なんだかほんとに先輩になった気分だよ!」
梓「こんなので喜ぶなんておかしな人間です」
和「あら?」
唯「あ、和ちゃ~ん!」
梓「……」
和「……その子は?」
唯「あずにゃんだよ! いま体験入学中なの!」
和「そう、よろしくね。私真鍋和よ」
梓「よろしくです。早速調査サンプルにくわえてやるです」
和「調査サンプル?」
唯「な、なんでもないよ! あまり触れないであげて」
梓「?」
唯「あずにゃんもあんまり人前でおかしなこといっちゃだめだよ」ボソッ
梓「わかったです。この星の人間になりきればいいんですね」
唯「そうそう。って星単位じゃまだばらつきはあるけどね」
梓「とりあえず合わせてみるです。偽装工作は得意です」
唯「それで頼むよ」
和「唯……なんかその子、怪しいわね」
唯「えっ!? どのへんが!?」
梓「……」
和「ほんとに体験入学?」
梓「……そうです」
和「まぁいいわ。騒がしい学校だけど、ゆっくりしていって」
梓「どもです」
シエンシテヤルデス
トテモツカレタデス
梓「ユイ先輩」
唯「なーに、あずにゃん」
梓「あの和という人間、注意です」
唯「え? 和ちゃんがどうして。幼なじみだけどずっと仲いいし、とっても頼りになるしいい子だよ?」
梓「別にそういう意味じゃないです」
梓「ただ、ちょっとスペックが高そうですぐれたサンプルになりそうな……」
唯「それでどうして注意なの?」
梓「わからないですけど、あの人間の前でヘマするととんでもないことになりそうです」
唯「あぁ~、確かに和ちゃんは勘がするどいところがあるからねー」
唯「あずにゃんが、う、宇宙人ってことがばれちゃうかもね、あはははっ!」
梓「なんで笑うです」
唯「だって、宇宙人って、あははは、こんな可愛い宇宙人って、クスクス」
梓「……笑うなです! ヤッテヤルデス星人をなめるなです!」
唯「おお、怖い怖い。あはは、ヤッテヤルデス星人は超つよいもんね~? あははははっ」
梓「……むぅ、野蛮人のくせに生意気です……ぷっ、クスクス」
☆☆☆
唯「やぁ~っと放課後だー」
澪「やっぱり短縮授業だとはやいなー」
律「よーし! これから遊びまくるぜぃ」
澪「だめ、勉強だ」
律「ぶー、いいじゃんかー夏休みはちゃんと勉強するしー」
唯「わーい夏休みだー!」
紬「梓ちゃん、今日一日どうだった?」
梓「ふむ、そうですね。なかなか面白い調査だったです」
律「例えば例えば!?」
梓「この星の教員はカプセル装置以上の催眠効果をもたらす呪文を唱えるです」
梓「それと、この星のミンミンミンミンという声がうるさいです」
律「あはははっなんだそれー」
澪「梓、ずいぶん変わった子だな……」
梓「そうでもないです。いまちょっと翻訳がおかしくてアレな感じですけど」
澪「翻訳? あ、もしかして外国人さんなのか?」
紬「どうりでカタコトだと思ったわ」
律「へー、どこ出身? ボンジュール? ニーハオ?」
梓「えっと、私はヤッテヤ――――」
唯「ストーっプ!」
梓「またですか」
唯「さぁ、部活いこう部活! あずにゃん、私たちの演奏きいてみてよ」
梓「えんそう?」
律「そうだな、もし入学するならぜひウチのけいおんぶへ!」
澪「歓迎するよ」
紬「5人になったらどんなハーモニーになるのかしら~。たのしみ~」
唯「もー、みんな気が早いよ~」
梓「けいおんぶ……ふむ、調査のしがいがありそうです。ヤッテヤルデス!」
☆☆☆
唯「ここが部室だよ! あ、お茶のんでケーキ食べるところね」
澪「っておい! 練習するところだ!!」
律「梓も食べるか? ムギの紅茶とケーキはおいしいぞー」
紬「遠慮しないでたべていってねー」
梓「遠慮する気なんてさらさらないです。おいしいものはかたっぱしから食べてやるです」
唯「あ、あずにゃん……それはちょっとがめついよ」
梓「むむ、これが……こうちゃですか」
律「残念、それはケーキだ。バナナケーキ。うまいぞー」
梓「じゃあこっちのよくわからない液体がこうちゃ……ふむ! ヤッテヤルデス!」
澪「すごい意気込みようだな。お茶するだけなのに……」
唯「あずにゃんはなんにでも興味しんしんなんです!」
紬「なんだかこういうのも新鮮ね。微笑ましいわ~」
澪「ほんとに何も知らないんだな……どこ出身なんだろう……」
梓「もぐもぐ、昨日一日で食器のつかいかたは覚えたから余裕です」
梓「ふにゃあああ、うまいです! びっくりです! もぐもぐもぐもぐ」
唯「あずにゃん……がっつかないで……もっと上品にたべようよ」
律「唯がそれを言う日がくるとは」
梓「ふぅ、さてこのこうちゃとやらは」グビッ
梓「ぎにゃああああああああああ!!!」
唯「ど、どうしたの!?」
澪「あぁ、ゆ、ゆっくりのまないと……」
梓「あひゅっ、あひゅう、あついです」
唯「そりゃそうだよ……どうして考えなしに飲んじゃうの」
梓「わからないです。けどすぐ飛びついてしまうのは私たちの性なんです」
唯「ふーふーしてあげるね。ふーふー」
梓「……」
唯「はい、どうぞ」
梓「んぐんぐ……うまいです! ちょっと苦いけどその苦さがたまらなく癖になるです!」
紬「さて、みんなもう食べ終わったことだし」
律「帰るぞー!」
澪「ちがうだろ! 梓に演奏きかせてやるんだ!」
律「うへーただのギャグだってば……澪しゃん怖い」
梓「ミオ先輩は怒ると怖い、これは報告対象です」
澪「どこに報告するんだっ!」
唯「……よし! ギー太の準備完了!」
紬「唯ちゃんやる気まんまんね!」
唯「うん! ヤッテヤルデス!」
梓「……」
唯「ってのが掛け声なんでしょ?」
梓「……まぁ別につかってもいいですけど」
律「よーし! まずはふわふわからだ!」
澪「梓はそこに座ってきいてくれ」
唯「いっきま~っす!」ジャカジャカ――――
♪♪♪
ジャジャン! ジャジャン! ジャーン……
唯「……ふぅ」
澪「……なかなか合ってたな」
律「梓! どうだった!」
紬「ぜひ感想をきかせてほしいかも!」
梓「……」
唯「あずにゃん?」
梓「……報告するです報告するです報告するです」
澪「ど、どうした?」
梓「報告するです報告報告報告するですするですするです報告」
律「おいっ! なんだなんだ」
梓「ふにゃああああああああああああああ!!!」
紬「えっ!?」
梓「なにもかもオーバーヒートしそうです……」
唯「ど、どうしたの」
澪「まさか演奏が下手くそだったから……」
紬「……うぅ」
梓「この星は……恐ろしいです」
律「……ふぁ?」
梓「文明レベルはたいしたことないくせに……ここまで文化が発達するとは」
澪「え?」
梓「音楽はいいですね。音楽は心を潤してくれる。地球人の生み出した文化の極みです」
律「さ、さいですか……そりゃどうも」
唯「そんなに感動してくれたんだ……うれしいな、ありがとうあずにゃん」
梓「いえ、こちらこそ感謝するです。こんな素晴らしいものがあればきっと戦争もなくなるです」
梓「本国のみんなにもぜひ聞かせてあげたいです。すぐにその楽器とやらを量産するよう申請するです」
澪「音楽があれば、戦争がなくなる……か」
梓「え? どうしたんです」
律「梓はあんまりニュースとかみないのか?」
梓「……はい、まだ全然しらないですけど」
紬「戦争は……なかなかなくならないわ」
梓「え?」
澪「うーん、日本は全然平和なんだけどな。地球単位だと人間はいつまでも戦争してるよ」
梓「そんな平和な星にも戦いの火種はあるんですか……それはちょっと残念な報告になりますね」
梓(そういえばむったんを撃墜した兵器もかなりのレベルだったな)
梓(どんな星にも戦争も兵器もつきものなんだね。もちろん頭ではわかってるよ、いままでそんな星をやまほどみてきたから)
梓(それでも私は、この音楽という文化の中に、一つの未来をみた)
梓(みんなが笑って、安心してくらせる宇宙をつくりたい……)
梓(連合も、ヤッテヤルデス星本国もそのために惑星フロンティア計画を開始したのに……どうしてこうなったんだろう)
梓(危険だと言って滅ぼした星は数知れず、利用価値があると植民地化した星も数え切れないほど)
梓(……もし、私がこの星の戦争について報告したら、この星はどうなるんだろう)
梓(……いまはまだ考えないでおこう、まだここにきてわずか二日。この先どうなるかはまだわからない)
梓(地球人の化けの皮が剥がれる可能性もある……まだ調査を続けなきゃ……)
唯「どうしたのあずにゃん、黙りこんで」
梓「い、いえ、なんでもないです。報告内容を吟味してただけです」
唯「そう……」
梓「わ、私もう一回音楽をききたいです! きかせてくださいです!」
律「よーし! そういうことなら!」
澪「あぁ、メドレーだ!」
紬「うふふ、たっぷり楽しんでいってね!」
唯「いっくよー!」
♪♪♪
梓「ふにゃああ……幸せです……」
唯「そんなに気に入ってくれたら本望だよね、えへへ」
澪「う、うん……曲をつくったかいがある……」
律「あー、疲れたー……とりあえず今日はこのへんで」
紬「そうね、夏休みになったらまたたくさん練習しましょ!」
澪「あ、合宿はどうする?」
律「そうだ! よければ梓もきたらいいじゃん!!」
紬「うんうん! 大歓迎かも!」
梓「合宿? なんですかそれは」
唯「あずにゃんもいこうよー! 海だよー!」
梓「わかったです。また調査が増えるならいくしかないです」
律「むひひ、これで確実に部員確保だな」
澪「……いや、そういうつもりで誘ったわけではないけどな」
唯「たのしみだねーあずにゃん」
梓「はいです! これほど楽しい調査観測ははじめてです!」
律「んで、さっきから調査調査ってなんなんだ?」
澪「さぁ? きっとなにか他の単語とまちがえてるんじゃないかな日本語まだ不自由そうだし」
紬「うふふ、ちょっとずついろんなことを教えてあげないとね」
唯「みんな協力してくれてありがとー。助かるよー」
梓「この星のサンプルどもは気が効いてやりやすいです!」
☆☆☆
帰り道
唯「あついねー」
梓「このミンミンうるさいのをなんとかしてほしいです。耳障りです」
唯「セミの奏でる音楽だとおもったらどう?」
梓「……なるほどです。そう考えれば趣があるです。ミンミン」
唯「お、アイス屋はっけーん! アイスたべる?」
梓「それはなんです? おいしいですか?」
唯「つめたくておいし~いんだよ。私の大好物」
梓「ユイ先輩の大好物ですか。それは調査の必要性大ですね」
唯「うん! 食べてみて!」
梓「ヤッテヤルデス!」
唯「おねえさーん、このソフトクリームを2つくださーい」
梓「……おお、なんかむにょむにょしたのがマシンからグルグルでてくるです! なんかアホっぽいです!」
唯「ほい、あずにゃん」
梓「どうやってたべるんです?」
唯「こうやってペロって舐めてたべるんだよ」
梓「……ペロペロ」
梓「!! つめたくて甘くておいしいです! やみつきです!」
唯「へへー、そうでしょー」
梓「ペロペロペロペロ、ん、ツ、頭いたい……キーンってするです」
唯「あはは、いっきに食べるからだよー」
梓「でもだんだん溶けてくるです。どうしようもないやつです」
唯「えへん、こぼさないように食べるのがコツなのさ!」ペロペロ
梓「むぅ、むずかしいです」ペロペロ
唯「んふーおいしー、幸せー!」ニコニコ
梓「…………私も、幸せです……」
唯「ん?」
梓「い、いえっ! なんでもないです! なんかここにきてからちょっと調子が変なんです!」
ネムイデス ツカレタデス
梓「こ、このアイスをたべるときっとオーバーヒートも収まるです」
唯「あずにゃん、口の周りべたべたー」
フキフキ
梓「ふにゃっ!?」
唯「ん? どうしたの……」
梓「あっ……あ、だめです」
唯「?」
梓「これ以上はおかしくなっちゃうです」
唯「ほえ? なにがー?」
梓「わからないです。だからいまさぐってるんです!」
唯「? おかしなあずにゃん、ふふふっ」
梓「おかしいです……絶対なにかおかしいです……ユイ先輩の近くにいるとおかしくなるです」
梓「このおかしな感覚が理解できたらいの一番に本国に報告するです」
梓「きっとこれにより私の昇格まちがいなしです」
唯「私は応援してるよ。早く記憶がもどるといいね」
梓「あと……一ヶ月……」ボソッ
唯「?」
梓「……調査ガンバルです!」
唯「うん!」
梓「とりあえずこれを食べたらまた家でギー太とやらをひくです。きかせろです」
唯「えー、まだひくのー? つかれたよー」
梓「もっと協力的になるです」
唯「んもー、わがままだなー」
梓「うるさいです! サンプルはおとなしくいうことをきくです!」
唯「あはは、なんか怒ってるあずにゃん可愛い~」
梓「ば、馬鹿にするなですううう!!」
第一話
『ヤッテヤルデス星人襲来!』
おしまい
梓「チキュウノリョウリハオイシイデス
梓「ユイセンパイモオイシイデスカ?」
梓「ミンミンミンミン」
唯「……あつーいー……とけるー」
梓「ミンミンミンミン! 我慢するです! これが風物詩というものだとテレビで言っていました!」
紬「もうちょっとで別荘よ~」
律「ようし! ついたら早速~!」
澪「練習だな! 練習するよな!」
律「う、海に……」
梓「調査するです! 報告するです!」
唯「あずにゃ~ん、あついー……」
梓「耐熱スキンすらもってないとは、不憫です」
澪「そうだ、ついたら梓も楽器やってみる?」
梓「音楽ですか? できるならやってみたいです。まぁ聴いてるだけでもいいんですけど」
紬「たしかギターも余ってたはずだから」
律「あー早く泳ぎたいー、スイカ割りしたいー、花火したいー」
唯「あずにゃんも一緒に泳ご~!」
梓「なんだかいっぱい調査対象があって嬉しいです。仕事にも精が出るってもんです」
唯「あずにゃんは熱心だねーよしよし」ナデナデ
梓「ふみゃ……」
律「お、海だ! みえてきたぞー!」
紬「うふふあっちの家が今回使う別荘よ~」
澪「ま、また結構な大きさの……いつもありがとうムギ」
梓「これが地球の海……近くでみるととっても青くて綺麗です……」
唯「海~~! 水着! 中に着てきてよかった!」
律「うおおおおお! 突撃だー!」
梓「調査するです! 突撃するです!」
澪「ちょ、おい! 練習……ムギぃ……」
紬「えへへ。この水着似合うかな」
澪「そ、そんな……」
梓「澪先輩も早くいくです! みんなで調査するです!」
律「澪は真面目だから一人で練習するんだもんなー?」
澪「うぅ……ちょっとだけだぞ! 昼からは絶対の絶対に練習するからな!」
唯「あははは、あずにゃ~ん、あんまり走るところぶよー」
律「なんだ~? 梓は海はじめてかー?」
梓「……ふむ、塩分濃度がずいぶん安定しているです。おそらくこの星の生き物は海から命の恩恵を」ブツブツ
梓「サンプルとして持って帰るです。これを量産すれば食料の生産に一定の――」ブツブツ
唯「……あ、また変なモードに入っちゃった」
律「この二週間ずっと梓をみてきたけど、いっつもあんな感じなのなー」
唯「うん、記憶さがし手がかりになればといろんなことを体験させてあげてるんだけど……」
律「まぁあれはあれで……おもしろいというか、なんというか」
唯「えへ、かわいいよね! あずにゃん!」
律「ちょっと生意気だけどなー」
澪「私たちにとってはじめての後輩だもんな……私が先輩……ふふ」
紬「これはもうけいおん部に入るしかないわね! うんうん!」
唯「あずにゃんも一緒に演奏できたら楽しいだろうねー」
律「ま、今はとりあえず泳ごうぜい! ほら梓ー、いつまでしゃがみこんでんだー」
☆☆☆
澪「ま、まってりつー」バシャバシャ
律「へへー追いついてみろー」ザブザブ
紬「りっちゃん泳ぐのはやーい」ジャプジャプ
梓「……」
唯「あずにゃん? 泳がないの?」
梓「どうやってるです」
唯「え?」
梓「どうやって水中であんなに早く移動してるです。不思議でたまらないです」
唯「あずにゃん泳げないの?」
梓「……そんな目でみるなです」
唯「じゃあ教えてあげる! えへへっ!」
梓「……なんか不安が胸をよぎるです」
唯「はい、いっちにーさんしー」
梓「あぷ、ん、あぷ」バシャバシャ
唯「そうそうそんな感じ。バタバターって」
梓「ん、あぷ」バシャバシャ
唯「上手だねーあずにゃん」
梓「ばかにするなです! こんなの、あぷ、ん、余裕です!!」
唯「ふーん、じゃあ手はなしていい?」
梓「え!? それは……!」
唯「離すよ?」
梓「あ、ちょ……」
唯「ほれ」パッ
梓「ふにゃあああおぼれるですううう! 死ぬですうううう!!!」バシャバシャ
唯「おおげさだよ……足ちゃんとつくっばて」
梓「助けるですうう!!! このまま英霊になるなんていやですううう!!」
唯「んもー、しかたないなー。ほい」ギュ
梓「全く! 焦らすなです!」
唯「それじゃ泳げるようにならないよ?」
梓「といわれても、うまく浮かないです。きっとこの星に嫌われてるです」
唯「だれでも浮くよー、リラックスして」
梓「……じー」
唯「なに?」
梓「じー」
唯「ど、どこみてるの!?」
梓「浮き袋……なるほど、ずるいです」
唯「へ?」
梓「この二つの立派な浮き袋を使うです」
唯「え? ちょ」
梓「……」ムギュ
唯「ふぁ! ちょ、ちょっとあずにゃん! そんなとこさわっちゃ、やぁ……」
梓「これをよこすですー! よこすですー!」ムギュムギュ
唯「たすけてー、私より澪ちゃんのほうがいいものもってるよー」
澪「こ、こらっ! 唯! そんなこと言ったら……」
梓「……じー」
澪「ひっ」
梓「……」
澪「……? 襲ってこない」
梓「ふふ……やっぱこれがいいです」モニュモニュ
唯「ふああああんどうしてー!!」
梓「地球製の特殊な浮き袋を調査するです! 報告するです!」
唯「そんなのしなくていいよー!!」
梓「ヤッテヤルデス!」
律「なんだぁ……あれ」
紬「ぷ、プライベートビーチだけど、あれはちょっと……」
澪「よかった……助かった……」
☆☆☆
梓「だいぶ一人で泳げるようになったです」バシャバシャ
唯「あずにゃん飲み込みはやいねー」
梓「当然です! ヤッテヤルデス星人の学習能力は地球人とは比べ物にならないです!」
唯「へー、そうなんだー。泳ぐの楽しい?」
梓「とても楽しいです! きもちいです!」
唯「うふふ、そうだ、私先あがってるね。ちょっとお水のんでくる!」
梓「はいです! まだしばらく泳いでるです!」
唯「あんまりはしゃいで沖までいかないでねー」
梓「わかってるです! さすがに足がつかないとこでは泳がないです」
梓「……」バシャバシャバシャバシャ
梓「……で、なんでここにいるですか」
『梓様、お久しぶりです』
梓「お久しぶりですじゃなくて、どうしてここにいるか聞いてるんです、むったん」
『梓様が海か山にでも身を潜めてろと命令されたので』
梓「とかいいつつ絶対あとをつけてたです」
『不可視モードなので発見される危険性はありません』
梓「おせっかい……それで、修理のほうはどうです」
『梓様、口調変わられましたね』
梓「それはどうでもいいです。ちょっとしたバグだから気にするなです」
『自動修復は現在60%まで完了。長距離航行はできませんが簡単なフライトなら可能です』
梓「そうですか……」
『どうかされましたか?』
梓「な、なんでもないです! 早く修理しやがれです!」
『あと二週間といったところでしょうか。調査のほうは順調ですか?』
梓「ッ!!」
『梓様? 顔色がよろしくないですね。真っ黒です』
梓「ん、これはスキン焼けしただけです」
『随分と楽しんでおいでで。梓様らしくありませんね』
梓「機械の分際で偉そうな口きくなです」
『申し訳ありません』
梓「それで、どうしてこのタイミングで来たです」
『実は、今夜あたりにテストフライトとバランサーのマニュアル調整を行ってもらおうかと』
梓「……むう、しかたないですね」
『お手をわずらわせて申し訳ありません』
梓「せっかくの合宿なのに……」
『それでは今宵0時にて海岸でお待ちしております。それでは』
梓「わかったです。早くどっか潜れです」
梓(……はぁ、現実に引き戻されちゃった……)
梓(そうだよ……私は調査隊……ここで遊んでるだけじゃだめなんだ……)
梓(あと二週間もすれば……この星とも……)
☆☆☆
唯「晩ご飯はBBQだよー!」
梓「ばーべきゅーってなんです。おいしいですか?」
律「梓はすぐおいしいかどうか聞くんだな」
澪「おいしいよ。梓も準備手伝って!」
紬「この串に切った食材をさしていってくれるかしら?」
梓「なるほど……ざくざく、あむあむ、んふぇっ! まずいです!!」
唯「あははーあずにゃーん、まだそれじゃ食べられないよー」
律「あとで焼くんだよ、焼いて食べんの。ほんと何も知らないんだな」
梓「それを先に言えです。口のなかがとんでもないことになってるです。水をよこせです」
唯「私お肉と玉ねぎと~、あ、ピーマンはあずにゃんにあげるー」
梓「その苦い物体は苦手です! いらないです排除するです!」
澪「わー待て待て! 私たち食べるから!」
律「よーし、だいたい準備できたし、順番に焼いていくか」
紬「たべ終わったら花火しましょ~?」
澪「おい、それじゃ結局練習があんまり……」
唯「いいじゃんまだ一日目だし! 思い出作り思い出作り!」
梓「思い出作り……」
唯「あずにゃんもいっぱい楽しみたいよね?」
律「うおおおー見よ、この美しいサンセットを! 私たちまるでドラマの主人公になったみたいだ!」
澪「あぁ、綺麗な夕焼けだな……」
紬「これがこの別荘の自慢なの~」
唯「あずにゃん、あずにゃんのいたところでも夕焼けは綺麗だった?」
梓「ゆうやけ……これが……神秘的です。この星は……」
梓「綺麗……これは報告対象です。急いで量産体制に移るです」
唯「……あずにゃんぎゅー」
梓「なんですいきなり」
唯「来年もまた一緒に来れるといいねー」
梓「来年も……そうですね」
唯「えへへー、あったかあったか~」
律「おーい、焼き始めるぞ~」
唯「あ! りっちゃんそれ私のスペシャルお肉串だからとっちゃだめー!」
澪「食い意地はってるなあ」
梓「……澪先輩、どうぞです」スッ
澪「ん? あぁ、くれるのか。ありがとう梓……ってこれ!」
梓「スペシャルピーマン串です。澪先輩の好物です。こんなのが好きなんて変わってるです報告するです」
澪「い、いやそれは……ちが……さっきのは……」
律「よかったなー澪。だーいすきなピーマンだぞー。あ、肉はたべといてやるよ太るから、にひひ」
紬「いっぱいあるからどんどん食べてね」
澪「ち、ちがう~!」
唯「あずにゃんはこれ! はい!」
梓「ばーべきゅーとやら……早速いただくです。もぐもぐ……!!! ふぁ……ふにゃあっほおおおおおお!!」
梓「これはあああああ!! なんてワイルドな! それでいてどこか繊細な味付け!!」
梓「持って帰って国食に指定するよう申請するです」
梓「全く、地球人ときたらこんなうまいものばっか食べてずるいです! 宇宙規模で平等に分配するべきです」
紬「う、宇宙?」
唯「わーちょっとあずにゃん!」
梓「そうでした。つい、ついですね。オーバーヒート寸前です」
律「たしかにこういうところで食うBBQは格別にうまい!」
梓「え? 場所関係あるんですか?」
律「くく、梓、感じないか……この、絶対のムードというやつを! サンセットとBBQという絶妙なシチュエーションを!」
梓「な、なるほど! うまいものをいい場所で食べるとなおうまいということですね! 報告です!」
唯「あずにゃんもだんだんわかってきたね」
梓「じゃ、じゃあ唯先輩と食べればなんでもおいしく感じるのもムードというやつですか!!?」
唯「…………え?」
澪「えっと、そ、それは……あはは…………なぁ、ムギ?」
紬「そ、そうね……うふふふ。梓ちゃん、唯ちゃんのことがきっと大好きなのね」
梓「だいすき? ……だいすきですか?」
唯「えへ~あずにゃん大好きだよ~」ギュウウ
澪「その大好きか……なんだ、びっくりした」
律「ほほーう」
紬「梓ちゃんはどう?」
唯「あずにゃんも私のこと大好きだもんねー?」スリスリ
梓「んー、まぁまぁですね。サンプルとしては上質なのは認めています」
唯「えぇ~~!? それ割とショックだよぉ」
梓「ま、気にするなです。感謝はしているです」
澪「あぁ、夕日が沈んでく……」
唯「…………うん」
梓「唯先輩、どうしてさみしそうな目をするんです?」
唯「……太陽はどうしてずっと側にいてくれないのかなって、思っちゃって」
梓「…………わがままです」
唯「わがままだよね……あずにゃんは、記憶がもどってもずっと側にいてくれるかな」
梓「……さ、さぁ! もっとどんどん食べるです!」
律「そうだな、食べて花火して、お風呂はいって」
澪「うんうん、それでそのあと」
唯「おやすみー!」
澪「おい!! 練習!」
律「ジョークだって」
唯「澪ちゃんはいつまでも変わりませんなー」
紬「うふふ、澪ちゃん可愛い」
澪「む、ムギまで……うぅ」
梓「地球製のジョークもしっかりテイクアウトするです」モグモグ
唯「あずにゃんあ~ん」
梓「あむっ、もぐもぐ、これじゃ体重管理もままならないです」
唯「まるまる太らせてたべちゃうぞー」
梓「はっ! ハニートラップ! さすがの野蛮人です、危うく私も食料の一部にされるところです」
梓「全く、地球人の文化に対する貪欲さには呆れてものも言えないです。報告するです」
☆☆☆
唯「あずにゃん、入らないの? お風呂きもちいよ?」
律「どうしたー?」
唯「なんかあずにゃんってお風呂嫌いなんだよね」
梓「むむ……あの日のトラウマがよみがえるです」
唯「あ、お風呂で私を襲っちゃったこと? 気にしてないのにー」
澪「襲った!? 襲ったのか!!?」
紬「!!?」
梓「はい、不覚にもオーバーヒートして襲ってしまったです」
律「ちょ、おい!! まだ早い、そんな時間じゃない!! それは後で詳しく聞かせろ」
唯「ほえ?」
紬「まさか二人にそんな進展があったなんて……気づかなかったわ」
梓「あの日はたくさんあったかあったかしたです」
澪「や、やめろぉ……聞きたくない……」
唯「ほら、教えてあげたでしょあずにゃん」
梓「はい?」
唯「こういうのは一気に……とりゃ!」
ザブン
梓「ふにゃああああああああ!!!」
唯「あ、日焼けで痛かったのか」
梓「き、きもちーです……あやうく宇宙の星になるところでした」
唯「……」
梓「ふにゃ……お風呂最高です」
唯「……ふふ、あとで体あらってあげるね」
律「唯も後輩ができたせいかしっかりしてきたな」
澪「あぁ、去年まではあんな唯考えられなかったよ」
紬「それほど大事に思ってるのね、梓ちゃんのこと」
澪「ちょっと、うらやましい関係だな……」
☆☆☆
梓「ヤッテヤルデス!」ミョーン
唯「あぁっ、ピックはそう持つんじゃないよ! あとギターはしっかり安定するように」
梓「~♪」ジャンジャン
唯「……ふふふ。楽しそう」
梓「音がでるです! すごいです! これでどうやったらふわふわ時間が演奏できるです!?」
唯「えっと、まずはこのコードで……こんな感じにおさえて?」
梓「それよりも唯先輩に一度演奏してみて欲しいです。コピーするです」
唯「え?」
梓「いいから早くするです。私の音楽的探究心はいまこの瞬間ヤッテヤルデス星一になったです!」
唯「う、うん。それじゃあ―――――
ジャカジャン!
唯「っとこんな感じだよ! じゃあまずコード教えるね?」
梓「……なるほど。記憶したです」
唯「え?」
梓「……」ジャカジャカ
唯「え? え?」
ジャジャンジャジャン ジャーン…
梓「……どうですか?」
唯「す、すごい……え? っていうかちょっとまってよ!」
律「お、おい……梓」
澪「う、うん……いま梓が確かに……はじめてなのに……」
紬「恐ろしい才能だわ……」
唯「あずにゃん……すごいねええ!!!」
梓「ふふん。こんなの朝飯前です。ヤッテヤルデス星人の学習能力をなめるなです」
律「ヤッテヤルデスがなにかはしらないけど、いやほんと宇宙人レベルだぞ! すごいもんだ!」
ヒルメシ クッテヤルデス!
澪「これなら梓ももうセッションできるんじゃないか?」
紬「まぁ同じパートになるわけだけど」
唯「いいよ! 一緒にやろうよ!」
梓「ヤッテヤルデス!」
律「よーしじゃあふわふわな! ワンツー!」
☆☆☆
梓「……」
梓「……もうすぐ0時です」
梓「みんな疲れて寝てるです」
梓「唯先輩……」
梓「このおもしろい寝顔がみれるのもあと少しです」
梓「…………そろそろ海岸にいくです」トコトコ
唯「zzz…………んぅ……?」
海岸
梓「約束どおりきたです」
梓「外傷も見たいから不可視モードを解除するです」
ウィーン シュウン
『梓様、お待ちしておりました。夜分遅くに申し訳ありません』
梓「その様子だと航行には影響はなさそうです」
『修理の目処がたちましたので、確実に二週間で長距離航行可能になります』
梓「……そうですか」
梓「それじゃあちょっくらバランサーの調整を」
「あずにゃん!!」
梓「!!」
梓「ゆ、唯先輩……!」
唯「あずにゃん……? あずにゃんだよね?」
梓「はい。私です」
唯「なに……これ?」
梓「ヤッテヤルデス星の宇宙船です」
『むったんと言います』
唯「ひっ、あ……宇宙……船? ほんとにあずにゃんは宇宙人さんだったの?」
梓「ヤッテヤルデス星人です」
唯「ねぇあずにゃん……どこかへいっちゃうの?」
梓「……」
唯「やだよ……いかないでよぉ……」
梓「唯先輩……」
唯「いっちゃだめ! まだいっぱいしたいことあるもん! もっともっと一緒に遊ぼうよ!!」
梓「……」
唯「あずにゃん!」 ギュウウ
梓「……唯先輩……のってみますか?」
唯「……え?」
☆☆☆
唯「わーすごい! 満天の星!」
梓「下も街の灯りが綺麗ですよ。確かにそこに人々が生きてるという命の証明です。だから私は街あかりが好きです」
唯「すごいすごい! こーんなに高いところとんでる!! ねぇどこからが宇宙なの!?」
梓「ちょっと! 狭いですから暴れるなです!」
唯「ねぇあずにゃん! あずにゃんはどの星からきたの? あっちのほう? それともあの一番光ってるやつ!?」
梓「ふふ、ここからじゃ観測できないですよ。もっともっと果てしなく遠い星です」
唯「へー、宇宙人はすごいなぁ!」
梓「地球人が遅れてるだけです」
唯「すごーい、飛行機よりはやい! 夢みたい!」
梓「早くて当然です」
唯「夢……だよね?」
梓「え? なんです?」
唯「夢だよ……だってあずにゃん、こんなのってありえないよ。宇宙人なんて……だからこれは夢」
唯「夢だもん。だからあずにゃんはいなくなったりしないもん……夢、楽しい夢……」
梓「……夢、そうですね……」
梓「夢のような時間でした」
唯「あずにゃん……」
梓「はい! 唯先輩のおっしゃるとおり私、宇宙人なんかじゃないです! ここは唯先輩の夢の中」
梓「だから唯先輩…………そんなに悲しい顔しないでください……」
梓「夢の中くらい、笑ってましょうよ。それが唯先輩らしさです」
唯「あずにゃん……ちゃんとしゃべれてる……あはは、夢なんだね、コレ、ありがとう」
梓「……私のほうこそ、ありがとうございます」
唯「こんなに楽しい思いをしたのははじめてだよ!」
梓「はい、私もです!」
唯「こんなに不思議なのに、リアルな夢も……はじめて」
梓「……」
梓「泣かないで」ナデナデ
唯「あずにゃん……」
梓「いつまでも見守っています……唯先輩のこと」
梓「……もうすぐ降りますよ」
唯「……うん」
梓「最後にもう一度下をみてください」
唯「……うん」
梓「見えますよね。たくさん光ってるでしょう? これが唯先輩の暮らす星。私の大好きな地球です」
梓「宇宙の端っこにありながらもひときわ輝く。愛の星」
梓「ここに来てよかった……心から……」
梓「そして、あなたに出会えて……良かった…………」
唯「恥ずかしいこと、言わないでよぉ……ぐす、ヒッグ」
梓「楽しい夢をいつかは終りを迎えます」
梓「夢から覚める頃には、朝日が登っていて、また新しい一日がはじまる」
梓「私たち人間、いや全ての命は、星と光と、そして宇宙とともに生きているんです」
梓「だから、どんなに遠く遠く離れていても、私と唯先輩は、この宇宙でつながっています」
梓「それだけは忘れないで……」
梓「さぁ、夢みる時間は終わりです。また元気にたくさん遊びましょう。それでは、おはようございます唯先輩――――――
――――――――☆
――――――☆
――――☆
――☆
唯「んー……ふぁ~……ん、まぶし……」
唯「朝ぁ~……?」
唯「…………はっ!!」
唯「あずにゃん!!」ガバッ
唯「あずにゃん! あずにゃん!」
律「なんだぁ~、朝からさわがしいなー」
澪「んー……もうちょっと、眠らせて……」
紬「ムニャムニャ……もーひとこえ……」
唯「あずにゃん! あずにゃんはっ!!?」
律「ん? 梓ぁ?」
唯「あずにゃん……どこっ!?」
律「その辺でくるまって……あれ?」
澪「んー……どうした?」
紬「おふぁよー……唯ちゃん早起きね……」
唯「あずにゃんがいないんだよ!!」
唯「あずにゃん!!」
唯「ッ!!」ダッ
律「お、おいどこいくんだ唯!」
唯「あずにゃんは……あずにゃんは……夢だよ! 夢っていったじゃん!」タッタッ
唯「いかないで……あずにゃん!!」
「あ、おはようです唯先輩」
唯「んえ?」
梓「聞こえなかったです? おはようです。先起きて朝御飯たべてたんです」モグモグ
唯「ほぇ……? あずにゃん……あずにゃん!!」
梓「……」
唯「あずにゃ~ん」ギュウウ
梓「朝っぱらからなんです。暑いです」
唯「よかったー……夢でよかったー……あああー、はぁー」
梓「……」
唯「そうだよねー、いくらなんでもありえないよあんなの。えへへごめんね。なんでもないの!」
梓「……」
唯「んぅ~、あずにゃん。今日もいっぱい遊ぼうね~」スリスリ
梓「……はい。そうするです」
唯「えへへ~やっぱこの変な喋り方じゃないとねーあずにゃん」
梓「もうっ、離れるです! 暑苦しいです!」
梓「……」
唯「どったの?」
梓(昨日のフライトで一つわかったことがある)
梓(唯先輩が指さした星。この星からは、あんなに強い星の光を観測することはできない)
梓(唯先輩、もしかしたら、もう私には二週間も時間はのこっていないのかもしれません)
梓(あなたのこの屈託のない笑顔も、あと何回みれることか……)
梓(ごめんなさい。ごめんなさい……私、また飛ばなくてはいけません)
「ごめんなさい」
唯「ほえ~? なんか言った? まぁいいや、もっと抱きつかせて~えへへ~」
ギュウウ
第二話
『星の光』
おしまい
バイトイッテクルデス
オマエラモハタラケデス
カエッテキタデス
唯「あついー」
梓「ミンミンミンミン」
唯「あずにゃ~ん、あついー」
梓「ミンミンミンミン!」
唯「みんみん言ってないで早くあいすー、買ってきて~」
梓「唯先輩が自分でいくです。むしろ私の分も買ってくるです」
唯「私あついの苦手なんだよー」
梓「じゃあ一緒にいくです。近くのスーパーが特売というのをやっているです。このチラシをみるです。調査するです!」
唯「えぇ~外はもっと暑いー……」
梓「我慢するです。もっとシャキっとして地球人レベルをひきあげるです」
唯「そういえば今晩お祭りだよー」
梓「おまつり? 晩ご飯のおかずですか?」
唯「違うよ! 夏祭り! 屋台とか打ち上げ花火とか!」
梓「はぁ……なんですそれは?」
唯「調査するです?」
梓「もちろん調査するです!」
唯「おっけー、じゃあみんなも誘って……」
梓「また合宿みたいな感じですか? 楽しみです!」
唯「……そうだ、やっぱりさ、二人っきりでいこっか?」
梓「二人でいくんですか? 楽しいですか?」
唯「うん。二人のほうがいいな。夏祭りがたぶん夏休みでは最後のイベントだろうしさ」
梓「最後……」
唯「あ、でも新学期になったらライブがあるし! あずにゃんも学校いくし! ね!? そうでしょ!?」
梓「……はい」
唯「うへへ、運動会とー、ハロウィンとー、クリスマスでしょー、それが過ぎたらお正月! そんで豆まきしてー雛人形飾ってー」
唯「あーもうっ、あずにゃんに教えてあげたいことがやまほどあるよ!」
梓「全部、調査したいです……」
唯「楽しみだね! えへへっ」
梓「ヤッテヤルデス!」
唯「よし! まずはお祭りから制覇だ! ヤッテヤルデス!」
梓(もうすぐ終わる。終わってしまう)
梓(夏が終わる。この人との、喜びに満ちた日々が終わる)
梓(あの光をみてから三日……昨晩は観測できなかった)
梓(つまりあれは星の光ではなく、私個人への信号)
梓(もういかなくてはならない)
梓(唯先輩、今日が……あなたとの……最後の……)
梓「……」
唯「最近ちょっと元気ないねー、合宿ではしゃぎすぎちゃった?」
梓「い、いえ! ヤッテヤルデスヤッテヤルデス!」
唯「ふーん、ま、とりあえずスーパーいこっかー」
梓「はい! 特売とやらを調査するです!」ダダッ
唯「あずにゃんまって~」
☆☆☆
梓「これも買うです! これも買うです買うです!」
唯「ちょ、あずにゃん……そんなにお金ない」
梓「買うです買うです! これもおいしそうです!」
唯「な、なんでそんなに急いでるの。今日いっぺんにかわなくてもいいじゃん!」
梓「調査するです! 報告するです!」
唯「だめー! 今日はこの特売のアイス一個だけ、あとそこのたい焼きならいいよ」
梓「ケチくさいです! うぅ…………ケチです」
唯「そ、そんなあからさまにがっかりしなくても……」
梓「おみやげほしいです……」
唯「おみやげ? あ、憂になんか買ってく?」
梓「おみやげ……」
唯「あずにゃん?」
梓「これ、買ってほしいです……」スッ
唯「なにこれ……串?」
梓「帰ったらばーべきゅーするです」
唯「ええ~!? しないってー」
梓「するです……するんです……」
唯「合宿でやまほど食べたじゃん!」
梓「だから……もう一度……」
唯「あずにゃん?」
梓「わかったです。もういいです」
唯「……おかしなあずにゃん」
梓「うぅ……ひどいです」
唯「今日の晩ご飯はお祭りの屋台かなー」
梓「! じゃあ憂の料理はたべられないですか?」
唯「うん、そうだねー」
梓「……そんな」
唯「……? またすきなものリクエストしたらいいじゃん!」
☆☆☆
梓「……」
唯「どうしたのー、ずっと空なんて見上げて。まだ星はみえないよー?」
梓「……」
唯「もうすぐお祭りいくから準備してねー」
梓「……また光った」
唯「え?」
梓「……あ、おまつりいくです」
唯「うん! 花火大会もあるんだよー!」
梓「テレビでみたやつです! この目でしかと確かめてやるです!」
唯「よし、じゃあ日が暮れる前にいこ?」
梓「はいです」
唯「あずにゃんとお祭りなんて嬉しいなー」
梓「私もよくわかってないけど嬉しいです!」
☆☆☆
唯「うわーすごい人!」
梓「すごいです! まるで戦場です!」
唯「あずにゃんあずにゃん! これがお祭りだよ!」
梓「おまつり! おまつりは戦争! 野蛮です!」
唯「ほら、あっちにたこ焼き、焼きそば、リンゴ飴もあるよ!!」
梓「いい匂いがするです! 全部食べるです! 調査するです!」
唯「えー、そんなに食べられないよー。えへへ」
梓「ところでこの人間の量はなんなんです! 排除するです!」
唯「だ、だめだよぉ。これが醍醐味なんだから」
梓「でも二人っきりって言ったです!」
唯「だから二人できてるじゃん」
梓「想像とちがったです! これは報告せざるを得ないです!」
唯「うーん、じゃあ二人でゆっくりできるとこさがそっか」
梓「んー、人が……唯先輩、手つないでほしいです」
梓「どこいったです」
唯「えっ、あっ、ちょ! あ、ごめんなさい……あれ?あずにゃん!」
唯「あずにゃ~ん! どこー?」
梓「あっという間にはぐれたです」
梓「……唯先輩どこいったです」
梓「……さっき買ったリンゴ飴も落としちゃったです」
梓「うぅ……唯先輩……」
「唯のこと探してるの?」
梓「ん? だれです」
「それより、先に少し話があるんだけどいいかしら?」
「ヤッテヤルデス星の特佐さん」
梓「やっぱりお前だったですか……ええっと、ええっと」
和「真鍋和よ」
梓「! そうです! 薄々感づいてたです!」
和「そう……やっぱりあなたも勘がいいのね」
梓「ずっと唯先輩のまわりをうろちょろしてたのもしってるです!」
和「へぇ……やるじゃない」
梓「何が狙いです! 場合によっては排除するです!」
和「そんな物騒なこと言わないで頂戴」
梓「お前は何者です! 白状するです! さぁ早く!!」
和「……チェケラッチョイ」
梓「……は?」
和「しってるでしょ?」
梓「あ、あ……も、もしかして……!!!」
和「お察しのとおり。それであなたにコンタクトをとりにきたの」
梓「チェケラッチョイ星人です!!! はじめてみたです!!」
和「何星人だろうがどうでもいいわ。私はいまは地球人」
梓「どういうことです? ……あっ、そうか! 宇宙歴史の本で習ったです」
和「ええ。私の母星はもうずっと前になくなっちゃったの」
梓「お前……まさか」
和「ひどいわよね。ちょっと外へ調査にでてる間になにもかも宇宙の闇に消えているんだもの」
梓「……」
和「だからたまたま立ち寄ってたここへ永住することに決めたの。ま、過ごしやすくて良かったわ」
梓「なぜ唯先輩にまとわりつくです」
和「あら? それが先輩に対する口のききかた?」
梓「お前も……唯先輩をサンプルに選んだですか」
和「……そうよ。ま、あなたのようなやり方とは少し違うけどね。べったりは性分じゃないの」
梓「……」
和「それに、もうサンプルである必要はないしね」
梓「……」
和「だって……任務はとっくに終了したもの」
和「だから唯は友達。この星ではじめての……ね」
梓「和先輩……」
和「で、しんみりしにきたわけじゃないの」
梓「そ、そうです! 要件をきいてないです!」
和「もう信号は確認した?」
梓「したです! 衛星の裏側までこいと言われたです」
梓「でもおかしいです! 本国がこんなタイミングでわざわざ信号を送るはずないです」
梓「一体何があったというんです」
和「私の宇宙船から観測した情報だと」
梓「あ! さては、むったんを撃ち落としたのは和先輩でしたか! ひどいです!」
和「しかたないでしょ。悪い宇宙人をこの星に寄せ付けるわけにはいかないの。」
梓「この星のために戦ったんですか? てか私は悪い宇宙人じゃないです!」
和「誤射よ。悪かったわ。それより聞きなさい!」
梓「は、はいです!」
和「あなたに信号を送ってきたのは辺境制圧連合艦隊よ」
梓「……え!?」
和「最悪ね……だから私は身分をばらしてまであなたにコンタクトをとりにきたの」
梓「ど、どういうことです!」
和「さぁ? お国の戦争事情はあなたのほうがずっと詳しいでしょ?」
梓「ま、まさか……本国で……戦争……?」
和「ありうるわ。そのための植民星の急ごしらえ。話としてはありがちね」
梓「だ、だめです! それだけは!!!」
和「けど、特佐のあなたがココにいなかったら、きっと事前勧告もなしに制圧されてたわ」
梓「そ、それで……制圧戦争をしかけるから私に地球から離れろっていうんですか? 巻き込まれたらだめだから!?」
和「もしくは、指揮をとらされるわね」
梓「そ、そんな……私が……地球を? 唯先輩たちを……?」
和「なんにせよ彼らの横暴さは私の耳にも届いているわ」
梓「いやです……なんとかしなきゃ……」
和「ごめんなさい……伝えないほうが良かったかもしれないわね」
梓「このままじゃ地球のみんなが……!! 唯先輩がっ!!!」
唯「あー、あずにゃんこんなとこにいたー」
梓「あっ……」
唯「探したよー、よかったー。あ、和ちゃんもいたんだ!」
和「唯……」
梓「唯先輩……」
唯「おやおやー? どうしたの泣きそうな顔して」
唯「はぐれて怖かったー? あ、もしかして転んじゃった? あずにゃん大丈夫?」
梓「唯先輩……私、わたし……」
唯「ん、ちょっと待って。えっといまは6時ごじゅう……ふふふ」
梓「?」
唯「……5、4、3、2」
梓「?」
唯「1! どーん!」
梓「あっ……」
和「花火……そっか」
唯「わーキレーだねー」
梓「……」
唯「あずにゃ~ん! ほらほらー花火だよー調査しなきゃー」
梓「……」
唯「私の顔より花火みなさい!」
梓「……綺麗」
唯「でしょ! あずにゃんに見せたかったんだ! わーい、たーまやー」
梓「……綺麗です、とっても」
梓「……唯先輩」
唯「ほえ?」
梓「ありがとうございました」
唯「え? いやいやーこんなのでお礼言われちゃってもー」
梓「……ありがとうございました。楽しかったです」
唯「え? あずにゃん!?」
和「いくのね」
梓「私がどうなったとしても、絶対に彼らをとめます」
唯「ほえ?」
和「無理しなくてもいいのよ」
梓「でも、私は調査隊特佐です。やるべきことは決まっています。こんなの許せない」
和「……そう、悲しいわ」
唯「あずにゃん……普通にしゃべってる……あれ?」
梓「むったんが、近くにいるから」
唯「え?」
梓「さようなら。唯先輩」
唯「え? もうおうちかえるの? まだたこ焼きも焼きそばもたべてないけど……」
梓「……ッ」ダダッ
唯「あ、ちょっ! あずにゃーん! どこいくの!」
梓(さようなら。さようならっ!!)
梓「……ハァ、ハァ」
梓「ここまでくれば……」
梓「むったん!」
『ここにいます。不可視モード解除』
梓「大気圏外にでる。念のため火器管制システムをマニュアルへ以降」
『了解』
梓「……ッ! さよならっ!!」
「待ってあずにゃん!」
梓「え!!? どうして!? どうしてついてきたんです!!」
唯「あずにゃん……だめだよ、行っちゃ」
梓「……」
唯「いっちゃヤダって言ったじゃん……ひっぐ」
梓「……」
唯「宇宙人でもいいよ。あずにゃんが何だってかまわない……だから……お願い……ひっぐ、グス」
唯「行かないで……」
梓「唯先輩……」
唯「あずにゃん!」 ギュウ
梓「……」
唯「あったかあったかいっぱいしてあげる! 好きなものなんでも買ってあげるよ! わがままも言わないよ! だからっ!!」
梓「……」
唯「お願いだよぉ……あずにゃん……うう、うう、大好き、だか、ら……うぅうううう」
梓「……ごめんなさい」
唯「うわあああああああっ!!」
梓「……泣かないで」ナデナデ
唯「うわあああん、ああああっ!」
梓「……唯先輩。大好きを……ありがとです。ありがと。 ……私も唯先輩のこと、大好きです」
チュ
唯「あっ……」
梓「むったん! 航行準備! バランサー各部チェック。反重力デバイサー起動。それと、本国へ11番砲の使用申請を」
『離陸します。梓様、準備はよろしいですね?』
梓「うん。離陸して。もう時間がない」
ゴゴゴゴゴ!
唯「あず、あ……」
唯「あずにゃああああああああん!!!」
キィーン
唯「うわっ!!」
ヴィーン ヒュンッ――――――――――
唯「あ……消え……あっ……まって……ああっ」
唯「うわあああああああああああああああ!!!」
唯「あずにゃあああああんあずにゃあああああん!!」
唯「うわあああああああああああああああああああ!!!」
和(いってらっしゃい……がんばってね)
澪「あ、おーい和! 和も来てたのか」
和「あら、みんなお揃いで」
律「なあなあ和! 今の花火みたか!?」
紬「うんうん、すっごい高いところまであがっていったのよ!!」
澪「でも結局開かなかったな……」
律「あんだけ高く飛んだんだ! きっとすんげー綺麗な花火だったんだろうな!」
澪「……そうだといいな!」
紬「たーまやー」
☆☆☆
『合流ポイントに到着』
梓「さぁ、来たよ……でてきなよ」
『センサーに反応、熱源数およそ2000』
梓「……艦隊」
『メッセージを受信しました』
梓「回線をつなげて」
『我々、辺境制圧連合艦隊は太陽系惑星『地球』を飼料星として利用するという決定に従いここまで来たデス』
『特佐はただちに本国へ帰還し、次の任務に備えよデス』
『以上デス』
梓「ふーんそう……私と戦争する気なんだ」
『何を言っているデス。本国の命令に従えぬ場合はヤッテヤルデス星軍法第44――――』
梓「うるさいだまれ!」
『特佐。これは命令デス。場合によっては宇宙の藻屑と消えてもらうデス』
『なぁに、本国へは調査中の事故だと言っておいてヤルデス』
『たかが辺境調査団特佐。ひとりふたり消えても何も変わらないデス』
梓「まって。この星はあんたたちなんかが土足で踏みいっていいトコじゃないんだよ」
『これは緊急なのデス! 本国は戦火に焼かれ、明日を生きるに不自由する者もいるデス』
梓「ねぇ……それとこの星、なんの関係があるの?」
『この銀河一体はヤッテヤルデス星の支配権デス。それは宇宙国際法第98――』
梓「この星がそれをしっているっていうの!!!?」
梓「バカげてる!! そんな勝手なこと許さない!!」
『どうしたのデス。まさか……特佐、バグが発生しているのデスカ』
『残念デス。排除を開始するデス』
梓「バグなんかじゃない……この気持ちがバグだなんて言わせない!」
梓「そうだ、戦闘の前に一つ聴いてほしいものがあるの」
『なんデス。命乞いなら聴かないデス』
梓「……」ジャラーン
『なんデスこの聞いたことのない音は』
梓「……」
ジャカジャカ ジャカジャカ ♪
『やめるデス! これは危険デス! ええい、全砲門開くデス! ターゲットは正面小型宇宙船!』
梓「きみをみてるとーいつもハートどきどきー」
『うにゃあああああああ!!!』
梓「ゆれるおもいはマシュマロみたいにふーわふわー」
『ヤメロおおおおおおお!! やめるデスううううう!!!』
梓「いーつもがんばる キーミのよこがお」
私、名前……平沢唯っていうけど
梓「ずっと見てても 気づかないよねー」
あずにゃん……あったかあったか
梓「ゆーめのなかーなら ふたりのきょーりー」
んーきもち~、あずにゃ~ん
梓「ちぢめられるーのになーー」
『ふにゃああああやめるデスうううう!! おかしくなるデスううう!!!!』
『うつデス! 砲撃手何やってるデスううう!!!』
『うにゃああああああ!!』
あぁ カミサマお願い
二人だけのDream Timeください☆
お気に入りのうさちゃん抱いて今夜もオヤスミ♪
☆☆☆
唯「あずにゃん……」
和「大丈夫。あの子は強いわ」
唯「一人で……どうして……うぅ」
和「あ、また光った……」
唯「あずにゃん……」
唯「カミサマ、お願い……あずにゃんを……」
☆☆☆
梓「ハァ……ハァ……」
『すばらしいデス……実にすばらしい……』
『身も心もふるえるような快楽。まさに宇宙の文化の極みといっていいデス』
『いまのは本国へも送っておいたデス。きっとみんな大喜びデス』
梓「……そう、これでわかったでしょ? 地球はあんたたちなんかが――」
『さて、これで後は』
梓「……?」
『お前を排除すれば全て我々の手柄になるデス!!!!!!』
『そして地球ごといまの快楽を手に入れる!! ヤッテヤルデス!!!』
梓「……」
『特佐は不幸な事故にあったデス。残念デス』
『でも英霊として祀られるデス。それはとっても栄誉なことデス!』
梓「……」
pipi
『梓様。11番砲の使用許可がおりました』
梓「……ふふ、そう」
『くく、なにを笑っているデス。気がでも違ったデス? お前はいまから死ぬのデス!』
『脳みそのバグごと消去してやるデス。感謝するがいいデス』
梓「……聞いて。あなたたちに勝ち目はなくなった」
『なに? こいつついに頭がおかしくなったデス。みんな一緒に笑うデス! デスデスデス』
梓「ヤッテヤルデス星衛星砲11番。通称『ヤッテヤルデスバスターキャノン』」
梓「次元コネクト終了。チャージ完了」
『な、なにいい!! いまなんて言ったデス』
梓「もうあんたたちなんて、私の指先ひとつで宇宙の塵だよ」
『馬鹿な!? 本国からたかが特佐ごときに使用許可がでるわけないデス! はったりデス』
梓「じゃあその身でうけてみる? 私も使うのなんてはじめてだよ」
『馬鹿な馬鹿な馬鹿なデス! 一体なにがあったというのです!!』
梓「毎日ちょこちょこ調査データを報告しておいたおかげかな? ふふふ」
梓「偉大な文化フロンティア梓へ……だってさ!」
『や、やめるデスううう!! わかったです! そんなものうけたら2000の艦隊が壊滅するデス!』
梓「なら。ここから……消えなさい!」
梓「ここはあんたたちのきていい宇宙じゃないの!!」
梓「宇宙の片隅にありながらも、神秘的なほど綺麗で優しい星なの!! 消えろ!!」
『む……ぐぐぐ、しかたないデス』
『だが特佐、お前の帰還命令がある限り、どっちみちこの宙域は我々の管轄下におかれるデス』
梓「……・」
『またくるデス……デスデスデス』
梓「……はっ、ハっ……」
pipi
『艦隊、次元ワープしました』
梓「はぁ……はぁ……はああああっ。やった……唯先輩……私……」
『それにしても、友軍に砲口をむけるなんてさすがです梓様』
梓「……えへへ、きっと以前までの私ならできなかっただろうね」
『と、言いますと?』
梓「うーん、なんだろ? ……唯先輩のおかげかな?」
『それと、帰還の件に関してですが』
梓「あぁ……うん。嫌だなぁ考えさせないでよ」
『次元ワープの使用許可も出ております。これで本国まで一瞬で帰還することが可能かと』
梓「ということは長旅の必要はなしか……やれやれ」
『よかったですね』
梓「でも戻ったらすぐさま戦争にかりだされちゃうよ。そのための即帰還だし。あーあ」
『大丈夫です。いまの梓様ならきっとなんでも務まります』
梓「さてと……それじゃあ……」
『名残り惜しくはないのですか?』
梓「……」
『ちゃんと別れの挨拶がすんでないように感じましたが』
梓「機械のくせに感じるとか言わない」
『しかし梓様』
梓「いま、会うと……もうきっと……だめになっちゃう」
梓「それこそ、悲しくて、オーバーヒートじゃすまないよ」
梓「だから……唯先輩……少し、ほんの少し遠いところからですけど」
梓「さようなら―――――
『次元ワープ開始。目的地は―――――――――
☆☆☆
『目的地に到着しました』
梓「……んあ、やっぱ次元ワープは早いね」
梓「…………あれ?」
『全周モニターを表示します』
ヴィン
梓「…………ここは」
梓「……あれ? ……にゃ?」
和「…………」
律「ゆ、UFOだあああああ!!! うほおおおおお!!!」
澪「 」
紬「すごーい! 私はじめてみちゃったー!」
唯「あ……」
唯「あず……」
梓「……地球? どうして」
『早く降りてください。新・地球圏文化大使様』
梓「ふへ? いまなんて」
『降りてください。元特佐』
ベシン
梓「うにゃっ!? アイタタ……」
唯「うあ……ああっ、あずにゃん!!!」
律「えぇ!? なんで梓が中から出てくるんだよぉ!!」
澪「梓はうちゅ、うちゅうじん……ひいいいっ!! たべられるー!」
紬「わぁ~宇宙人と友達なんてすごーい!」
唯「あずにゃああああああん!!」
梓「ゆ、ゆいせんぱ、うにゃあああああ」
ギュウウウ
唯「あずにゃん! あずにゃああん!!」
ギュウウウ
梓「にゃああ」
唯「おかえり! おかえり!!!」
梓「う、あう……」
唯「よかった……無事で……ぐす、よかったよおおおおおうあああああ!!」
梓「ちょ、鼻水が……」
唯「うわあああああああん」
梓「……た、ただいま、です……?」
唯「うわああああああああああああん!!」
梓「……唯先輩」ナデナデ
唯「ひっぐ、あずにゃん……グス、ずっと側にいてね、ずっとだよ……だめだよぉもう勝手に飛んでっちゃ」
律「おいおいー……ちょっとついていけないんですけどー」
澪「これは夢これは夢これは夢、さめたらウサちゃんが目の前にいて私は朝日につつまれながら爽やかな」ブツブツ
紬「へーむったんっていうのね! いったいどんな材質でできているのかしら!」
『お初にお目にかかります』
和「なんで仲良くなってるのよ」
『その説はチェケラッチョイ星人様にも大変な助力を頂き大変感謝しております』
和「……しー! しー!」
『失礼しました』
律「おいおいー、ちゃんと説明してくれないとさすがの私も……なにがなんやら」
和「それはまた今度」
和「いまは……祝福するの。まさか宇宙まで打ち上げた花火がそのままそっくりもどってくるなんてね」
唯「あずにゃん……帰ろう?」
梓「……はい」
唯「私たちの家……きっと憂もまってるよ」
唯「本当にもういなくならない? ねぇ私それだけが心配で」
梓「大丈夫です! 地球の全ての文化を調査して報告しますから!」
『それではこれ以上は人目につきますので私はこれで』
紬「えー、むったんさんもういっちゃうの~?」
『まだこの星にはあまるテクノロジーがつまっていますので。それでは』
和「そうね。混乱をさけるためにも何もかも隠したほうがいいわ」
律「わ、私たちは? も、もしかして記憶抹消! キャトられる!?」
梓「秘密さえ守ってくれればそんなことしないです。安心するです」
澪「梓……また口調が」
梓「むったんがいなくなったせいです。まぁいいです。これもこれで気に入ってるです」
梓「唯先輩。これからもたくさん文化をおしえやがれです」
唯「……うん! なんでも教えてあげる! 私、あずにゃんに教えたい!」
唯「運動会もハロウィンもクリスマスもお正月もいっぱいいっぱい!」
唯「おいしいものもいっぱい食べよう! 楽しいところへいっぱい行こう!」
唯「一緒に! 大好きなあずにゃんとずっと一緒にね!!」
梓「はいです! この星を調査するです! 報告するです!」
梓「……そして、大好きな唯先輩のことももっともっと調査するです! 報告するです!」
梓「……えへへ」
梓「ヤッテヤルデス!!」
第三話
『ヤッテヤルデス星人と一緒に!』
梓「つぎはこの星をヤッテヤルデス」
お し ま い
セックスファイトの人ではなかったのか
ともあれ>>1本当に乙
支援保守アリデス
チェケラッチョイ星人とかふざけた事言い出してすいませんでした
寝るチェケラッチョイ
>>489
セックスファイトとかふざけたSS書いてすいませんでした
ほのぼのが好きです じゃあまたね
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