遊星「新型エンジンが完成しない……」 (64)

ジャック「遊星、まだ新しいエンジンは完成しないのか!」

遊星「すまない、制御プログラムがうまくいかなくて……」カタカタ

ジャック「WRGPまでもう日がないんだぞ? 本当に間に合うのか?」

遊星「善処する……」カタカタ

ジャック「まったく、俺の準備は万全というのに肝心のマシンが出来ていないとどうにもならんではないか!」クドクド

遊星「……すまない」カタカタ

※細かい矛盾点はスルーで

ジャック「ふん……遊星、俺は少し出掛ける。帰ってきたら少しは進展がある事を願っているぞ?」

遊星「ああ……」カタカタ

ドアバタン

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

…………

クロウ「ただいまー。調子はどうだ、遊星~」

遊星「お帰り、クロウ。少しずつ進んではいるが……まだもうしばらくは時間がかかりそうだ」カタカタ

クロウ「そうか。ブルーノの奴は?」

遊星「部屋で寝てる。まだ熱が下がっていないらしい」

クロウ「ウチに来てからずっとハリキリ過ぎてたからな、あいつ」

遊星「ああ……だから俺だけでも頑張らないと」カタカタ

クロウ「まあ遊星は天才だからな。きっとすげーエンジン作ってくれるって信じてるぜ」

遊星「善処する……」カタカタ

クロウ「ん、この机にあるのは開発の備品の領収書か?」

遊星「ああ……」カタカタ

クロウ「(ボソッ)今月もこんなに使ってんのか……仕方ねーけど」

遊星「…………」カタカタ

蟹「金ならアキに頼めばいい」

クロウ「さて、飯も食ったしもうひと頑張りしてくるか。じゃあな、遊星」ノシ

遊星「ああ……」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星(そういえばもうそろそろ昼飯の時間か……)

遊星「…………」カタカタ

遊星(いや、特に空腹でもないからいいか……それよりエンジンの開発を急がないと)カタカタ

…………

龍亞「遊星! 遊星いる?」

龍可「龍亞、そんな大声出さなくても聞こえるわよ……って、あれ?」

遊星「…………」カタカタ

龍亞「ねえ、遊星! 遊星ってば!!」

遊星「……龍亞と龍可か。どうしたんだ?」カタカタ

龍亞「もう、呼んだらちゃんと返事しなよ。後話する時はちゃんとこっち見てよ」ムクゥー

遊星「…………」カタカタ

遊星「すまない、少し集中し過ぎていた……」クルッ

龍可(遊星?)

遊星「Dボードの調子がおかしい?」

龍亞「うん、前にちょっと壁にぶつけちゃって……時々変な音するし、デュエルディスクとの接続も急に切れたりするんだ」

遊星「ふむ、どうやら故障しているみたいだな……」

龍亞「直せる?」

遊星「ああ、少し手間がかかりそうだが直せない事はない。だが今忙しいから……」

龍亞「よかった~。俺、明日クラスの奴らとこれで遊ぶ約束してたんだよね! 遊星なら一晩で直せるよね? ね?」

遊星「…………」

遊星「……善処する」

スピードウォリアー「マスターが過労死する」

龍可「ねえ、遊星。ちょっと疲れているみたいに見えるんだけど大丈夫? 忙しいなら無理に引き受けなくてもいいのよ?」

龍亞「何言ってんだよ、龍可。せっかく遊星が引き受けてくれたのに……」ブーブー

龍可「でも……」

遊星「俺なら大丈夫だ、龍可。それに子供は遠慮するもんじゃない」

龍亞「さすが遊星! 俺達のヒーローだね!!」

龍可(遊星の顔って……こんなに白かったけ?)

龍亞「じゃあ遊星! 明日、朝一取りに来るから!!」ノシ

龍可「またね、遊星」ノシ

遊星「ああ、気をつけてな」ノシ

遊星「…………」

遊星「……さてと」カタカタ

…………

アキ「遊星の様子がおかしい?」

龍可『うん、遊星本人は大丈夫って言ってたんだけど……何だか凄く疲れてるみたいなの』←電話

アキ(そういえばエンジンの開発がうまくいってないってクロウがぼやいてたわね)

龍可『子供の私が言っても大丈夫しか言わないし……アキさん、様子を見に行ってあげてくれない?』

アキ「わかったわ。明日学校の帰りに寄ってみる」

…………

クロウ「あれ、遊星。まだ起きてたのか?」

遊星「ああ……ブルーノは?」カタカタ

クロウ「風邪を拗らしたみたいでな……まだ熱が下がってないみたいだ」

クロウ「それよりお前、今日も徹夜する気か? 確か昨日もその前も徹夜してなかったか?」

遊星「ああ……」カタカタ

実際大会始まる前は新型エンジンの必要性が分からなかったよな
初戦で追い抜かれる毎に~ってルールを聞いて成る程と思ったわ

クロウ「あんまり無理するなよ。お前まで倒れたら洒落にならないんだから」

遊星「(ボソッ)……仕方ないだろ。俺がやるしかないんだから」カタカタ

クロウ「ん、何か言ったか?」

遊星「いや、なんでもない」カタカタ

クロウ「そうか。じゃあ俺先に寝るけどお前もほどほどにしとけよ」

遊星「ああ、お休み……」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカ

バン!!

遊星「…………」

遊星「…………」

遊星「…………」

遊星「…………」カタ

遊星「…………」カタカタ

遊星「…………」カタカタ



チュンチュン

…………

アキ(思ったより学校が長引いてしまった。もう夕方だわ)

アキ(龍可の話だと大分疲れているみたいだけど……遊星、大丈夫かしら?)

アキ「遊星、私だけど?」コンコン

しーん

アキ(あれ、留守かしら?)

ガチャ

アキ(でも鍵は開いてるわね)

アキ「遊星ー。ジャックー。クロウー。ブルーノー」

アキ(誰も居ないのかしら……ん?)

遊星「…………」カタカタ

アキ「遊星? もう、居るなら返事くらいしてよ。誰も居ないのかと……」

遊星「…………」カタカタ

アキ「遊星?」

アキ「ねえ、遊星。私の声聞こえ……!?」

遊星「……ん?」カタカタ

アキ「ど、どうしたの、遊星! その顔は!?」

遊星「アキか……すまない、気づかなくて」クルッ

アキ「そんな事どうでも良いわよ! それより顔! すごいやつれてるし、白いし、クマも酷いし……一瞬、新しいマーカーが刻まれてるのかと思ったわよ?」

遊星「少し寝不足なだけだ。騒ぐほどの事じゃない」

アキ「とても少しってレベルに見えないんだけど……」

遊星「あ、そこの椅子にでも座っていてくれ。今アキの好きな紅茶を入れてやろう」ヨロヨロ

アキ「いいわよ、紅茶なんて……って、遊星! 何バイクのオイルをやかんに入れてるの? そんなもの火にかけちゃダメ!!」

アキ「はい、やかん置いて……お茶なら私が入れるから」

遊星「そうか……なら悪いが俺は作業に戻らせて貰う」

アキ「作業って……あら、この手付かずのサンドイッチは?」

遊星「ああ、クロウが朝食にって置いていってくれたんだ」カタカタ

アキ「朝食ってもう夕方なんだけど? まさかずっと作業していて何も食べてないなんて言うんじゃないでしょうね?」

遊星「食べてる時間が惜しい……そもそも食欲もないんだ」カタカタ

アキ(龍可の話以上だわ。このままだと倒れるのも時間の問題よ)

アキ「……ブルーノはまだ寝てるのよね? ジャックとクロウは?」

遊星「二人とも出掛けている。帰りは遅くなるそうだ」カタカタ

アキ(こんなになってる遊星を放っておくなんて……何考えてるのよ、あの二人は!)

アキ「遊星、すぐに作業をやめて。そして休んで」

遊星「なぜだ?」カタカタ

アキ「このままだとあなた倒れるわよ?」

遊星「……悪いがそれは出来ない」カタカタ

アキ「なぜ?」

遊星「WRGPまで日が無いんだ。早くエンジンを開発しないと大会に間に合わなくなる」カタカタ

アキ「あなたが倒れたら元も子もないでしょ? ちゃんと食事をして、ゆっくり睡眠を取りなさい!」

遊星「そんな時間はない」カタカタ

アキ「遊星、あなた死にたいの!? いい加減に……」

バン!!

アキ「!」ビクッ

遊星「ハァ……ハァ……」

アキ「ゆ、遊星?」

遊星「WRGPは……俺の、俺達の夢なんだ」

遊星「その夢を叶える為にはこのエンジンがどうしても必要なんだ」

遊星「そしてこのエンジンを作れるのは俺だけだ」

遊星「俺がやるしかないんだ」

遊星「それに無理をしているのは俺だけじゃない」

遊星「クロウは資金を貯める為に朝から晩まで働き続けてる」

遊星「ジャックも大会まで少しでも強くなろうと毎日Dホイールのテクニックを磨いている」

遊星「そしてそんな仲間は、俺がエンジンを完成させる事を信じている」

遊星「俺はその想いに応えなきゃいけない……応えないといけないんだ」

アキ「…………」

遊星「……今日はもう帰ってくれ、アキ」

アキ「それは私が居ると……作業の邪魔だから?」

遊星「……そうだ」

アキ「…………」

アキ「嫌よ」

アキ「帰ってたまるもんですか。あなたが休むまで、私は絶対に帰らないから」

遊星「アキ、いい加減に……」

アキ「遊星、私もあなたの仲間よ」

アキ「それを教えてくれたのはあなた。この腕にある痣は忌むべき印ではなく、私達の絆の証だと」

遊星「アキ……」

アキ「私には遊星の代わりにそのエンジンを完成させる事は出来ない。そんな知識も力もない」

アキ「だけど……」

…………

遊星『そうだ、俺には力などない』

遊星『誰かを助ける事など出来るはずもない。ただ、俺は……』

…………

アキ「それでも……傷ついていく貴方から目を逸らす事は出来ないのよ」

遊星「アキ……」

ぎゅ……

遊星「!」

アキ「…………」

遊星「…………」

アキ「…………」

遊星「…………」

遊星「……怖いんだ」

遊星「もし、みんなの……あいつらの期待に応えられなかったら」

遊星「もし俺のせいで、夢が潰れてしまったら……って」

遊星「俺はみんなが思うほど強くはないから……だから……俺は……」

アキ「大丈夫」

アキ「大丈夫だから、遊星……絶対、大丈夫だから」

遊星(なんだろう……この感じ?)

遊星(なんだかとても安心する……)

遊星(これはずっと前に感じた事がある……安心感だ)

遊星(マーサの所に居た頃より……ずっと前に……)

遊星(俺の……記憶の……ずっと……向こ……)

遊星(…………)

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