まどか「ウルトラマン先生」 (70)

さやか「今日だっけ、新しい担任の先生が来るの」

まどか「うん、確かそうだったはず」

さやか「でも驚いたよねえ、早乙女先生が寿退職なんて……」

まどか「結婚、できたんだねえ……」

さやか「うん……」

まどか「……新しい先生、どんな人だろうね」

さやか「男の先生らしいけど。……あっ、来たよ」

ガラッ
矢的猛「やあ、おはよう。みんな席につけー」

猛「今日から早乙女先生に変わって
  このクラスの担任になる矢的猛だ。よろしく」

さやか「へえー、なかなかかっこいい先生だね」

まどか「若いころの長谷川初範に似てるー」

猛「実は先生が担任を持つのはこれが初めてなんだ。
  緊張して失敗するところもあるかも知れないけど、
  その時はみんなに助けてもらえると嬉しい」

さやか「さわやか系だね」

まどか「かっこいいしねー」

ほむら「……」

猛「まずみんなに伝えておきたい言葉がある。
  先生がモットーにしていることなんだが……」

 一生懸命→一所懸命

さやか「いっしょけんめい?」

猛「そうだ。何かの目的を達成するために、一生懸命になる。
  それはもちろん大事なことだ」

まどか「……」

猛「人には、一生、命をかけてやらねばならない事があるよな。
  その大きな目的を達する為には、その人が今いる所で、
  今やっていることに最大を尽くす。
  一所懸命、ひとところに命をかける。
  そういう事が必要なんだと、僕は思うんだよね……」

キーンコーンカーンコーン

猛「おっと、もう1時間目が始まっちゃうな。
  それじゃあまた、放課後に」


さやか「いいこという先生だね、私ちょっと感動しちゃったよ」

まどか「私も~」

ほむら(あの先生……)

昼休み
屋上

マミ「あら、鹿目さんに美樹さんじゃない」

まどか「マミさん!」

さやか「マミさんもここでお弁当食べてたんですか?」

マミ「ええ、よかったら一緒に食べましょ」

まどか「はい、喜んで!」

さやか「ていうかマミさんってよく一人でお弁当食べてますよね。
   クラスのお友達とかと一緒に食べたりしないんですか?」

マミ「ええ……たまに物思いにふけりたくなる時があってね」フッ

さやか「ふうん……」

マミ「ところでふたりとも、魔法少女になるための願い事は決めた?」

さやか「あー……実はまだ全然決められなくて~」

まどか「私もです……いざ何でも叶えてあげる、って言われたら
    迷っちゃうものですね~」

QB「そんなに焦らなくてもいいよ、僕はいつでもいいからね」

まどか「あっ、きゅうべえもいたの」

マミ「まっ、今悩んでてもしょうがないわ。
   とりあえずお弁当を食べましょう」

まどか「そうですね、いただきまーす」

さやか「いただきまーす」

まどか「あっ、さやかちゃんの卵焼き美味しそ~、交換しよ~」

さやか「いいよー、じゃあそっちのチーズちくわちょうだい」

QB「女学生の食事というのはかしましいね」

マミ「ほんとにねえ」

まどか「あっ、そうだ。今日新しい担任の先生が来たんですよ~」

マミ「へえ、早乙女先生の代わりに来た人よね。どんな先生なの?」

さやか「それが結構なイケメンなんですよ~」

ガチャッ
猛「ここが屋上か……おっ、なんだ先客がいたか」

まどか「あっ、噂をすればなんとやら」

さやか「せんせーい」

猛「なんだおまえら、ここで昼飯食べてたのかー」

まどか「今ちょうど先生の話をしてたんです」

さやか「先生、このひと先輩の巴マミさん」

マミ「初めまして、巴マミです」

猛「どうもよろしく。鹿目と美樹の担任の、矢的猛です」

まどか「先生、もう私たちの名前覚えてくれたんですか?」

猛「ああ、さっきの時間がちょうど開いてたからね。
  クラス写真を見て覚えたんだ」

さやか「先生気合いはいってるね~」

猛「ははは、まあ初めての担任クラスだからな。そりゃ気合いも入るさ」

マミ「良い先生ね、羨ましいわ~」

さやか「でしょー?」

まどか「そうだ、先生は何で屋上に来たんですか?」

猛「うん、学校内を探索しててね……、……!?」

QB「…………」

猛(インキュベーター!なぜここにいる……)

QB(それはこっちのセリフだよウルトラマン80)

猛(貴様、まさかこの学校の生徒を利用するつもりじゃないだろうな)

QB(そのまさかだよ。この学校には既に二人の魔法少女がいる。
  この巴マミと、そして暁美ほむらだ)

猛(暁美ほむら?うちのクラスの生徒じゃないか……
  あの子を魔法少女にしたのか)

QB(暁美ほむらについてはイレギュラーな存在だよ。
   僕もその正体についてはよく分からない)

猛(とにかく許さないぞ……お前たちの勝手な計画に
  この学校の生徒を、いや無関係な子供たちを巻き込むのは!)

QB(まったく、なぜ分からないんだい?
  君も宇宙人ならば分かるはずだろう、
  宇宙エネルギーが限界を迎えたらどうなるかを……
  僕は宇宙の寿命をのばす手伝いをしているだけなんだけどね)

猛(やり方に問題があると言っているんだ!)

QB(やれやれ、じゃあ君たちウルトラの一族にどうにかできるとでもいうのかい?)

猛(それはっ……)

まどか「あの……先生?どうしたんですか、怖い顔して」

猛「はっ……!あ、いや、すまん、なんでもない」

猛「いや、ちょっと初めて担任を持ったもんで、
  気負いすぎて気分が悪くなってきたよ、あはは」

さやか「はは、そんなに緊張しすぎなくていいのに」

まどか「そうですよ、もっとリラックスしてください。
    私達も先生を応援してますから、ね」

猛「あっ、ああ……ありがとう。
  それじゃあ先生はもう職員室に戻るよ」

まどか「はい、がんばってくださいねっ」

猛「ああ……」

QB「……」

猛(インキュベーター……お前の思い通りにはさせないぞ。
  僕の生徒は僕の手で守りぬいてみせる……)

QB(ウルトラの一族といっても所詮は戦うためだけの存在でしかない。
  戦士であって神ではないんだ。
  君に出来るのは敵を倒すことだけであって
  守ることなど出来はしないんだよ、ウルトラマン80)

猛(それでも、僕は……)

マミ「ごちそうさまでした」

放課後

猛「よし、じゃあ今日はこれで終わりだ。日直、号令頼む」

仁美「起立、礼」

ガタガタッ
「さよならー」

猛「うん、さよならー」

ワイワイガヤガヤ

猛「ふう……」

まどか「先生~、もう気分は大丈夫なんですか?」

猛「えっ、ああ、もう大丈夫だ。
  5時間目に休んでいたらすっかり良くなったよ」

さやか「そうなんだ、良かった」

まどか「ウェヒヒ、私保健委員ですから、
    体調が悪くなったりしたらすぐ言ってくださいねっ」

猛「うん、ありがとう」

まどか「それじゃあさようなら、先生」

猛「あっ、ちょっと待ってくれ!」

まどか「なんですか?」

猛「いいか、鹿目……それから美樹もだ」

さやか「え、何?」

猛「あのな、お前たち、家族や友達のことは、大切だと思っているか?」

まどか「え?はい、そりゃ……」

さやか「大切に思ってますよ」

猛「そうか、それなら、その気持ちが本当なら、これだけは守ってくれ。
  お前たちのような少女に、甘い言葉で誘いを持ちかけてくる奴がいる。
  でも決してそんな奴の言葉に耳を貸すんじゃないぞ。
  お前たちに何かを与えてくれるとか、お前たちの現状を変えてくれるとか、
  そんな夢みたいな話には絶対に裏があるんだ。
  何か成し遂げたいことがあるなら自分の力だけで叶えなければいけない。
  そうしなければ、お前たちの大切なものを、すべて失うことになるんだ。いいな」

さやか「えっ、ど、どうしたの、先生……いきなり……」

まどか「あはは……なんか同じようなこと、前にほむらちゃんも言ってたような」

猛「えっ、暁美が?」

ほむら「さようなら、先生」

猛「あ、ああ……」

街中

猛(まさかインキュベーターがうちの学校に狙いをつけていたとはな……)

猛(かといって生徒たちに真実を伝えるわけにも行かない)

猛(伝えたところで信じて貰える話でもない)

猛(それならば僕に出来るのは1つだけだ)

猛(この街の魔女を倒すこと……)

猛(魔女さえいなければ魔法少女が生まれる必要もない)

猛(既存の魔法少女が戦うこともなくなる)

猛(インキュベーターの野望を完全に食い止められるわけではないが)

猛(とりあえず今はこうするしかない)

猛(!!)

猛(ブライトスティックに魔女の反応が……)

猛(こっちか……)

猛(……ここは病院じゃないか!)

猛(まずいな、こんなところで魔女が生まれると……!
  迷っているヒマはない、魔女空間に突入だ)

魔女空間

猛「まさか勤務初日から魔女と戦うことになるとはな……」

猛「魔女空間……他のウルトラマンたちから聞いていた通りの
  不気味な、不条理な空間だ」

使い魔「キーッ」
使い魔「キーッキーッ」

猛「はっ!」ビーッ

使い魔「ギギ……」

猛「このブライトスティックには光線も出せるんだ」

猛「幸い魔女自体はまだ孵化していないようだ」

猛「よし、こうなったら変身して一気に……!」

猛「!!」

猛「あれは……暁美? 暁美なのか?」

ほむら「矢的先生……っ」

猛「どうした、こんなに縛られて……使い魔にやられたのか?」

ほむら「いえ、巴マミにやられたのよ」

猛「巴に? なんでだ、お前たちは同じ魔法少女なんだろう?」

ほむら「彼女は私を目の敵にしていてね」

猛「よく分からんが、今ほどいてやるからな……
  くそっ、きついな……」

ほむら「私のことはいいわ。それよりこの先にまどかがいる。
    それから美樹さやかと巴マミも」

猛「なにっ、あいつらもうここに来てたのか!?」

ほむら「とにかくすぐにあの子たちのもとに行って!
    この魔女はただの魔女じゃない……巴マミでは勝てない!」

猛「勝てないって、どうしてそんなこと……」

ほむら「とにかく、早く!
    魔法少女のことを知っていて今この場にいるってことは、
    あなたも『そういうこと』なんでしょう!?」

猛「……あっ、ああ、分かった!
  巴たちは先生がきっと助けるから待っててくれ!」

ほむら「ええ」

猛(暁美は僕のことを知っている? 他にも色々と訳知りのようだが……
  いや、今はそんなことはどうでもいい!
  生徒たちを助けることが先だっ!)ダダッ

 猛「エイッティ!!」

今さらだが説明しよう
矢的猛は光の国からやってきたウルトラマン80だったのだ
彼はウルトラマンとして魔女を倒す使命を果たす一方
人間から発生するマイナスエネルギー……
つまり憎しみや怒りといった負の感情こそが
魔女を生み出し、その力を増幅させると考えて
教育という見地から人の心を清く正しい方向へと導くべく
中学教師としても活動しているのであった

QB「孵化が始まった、魔女が出てくる!」

さやか「ええっ、マミさんがまだ……」

マミ「おまたせ、美樹さん!」

まどか「さやかちゃん、大丈夫だった?」

さやか「お、遅いですよおマミさん!
    もう孵化し始めちゃってますよ!」

マミ「お出ましのとこ悪いけど、一気に片付けてやるわ!」シュシュッ

シャルロッテ「…………」

マミ「えっ!?」

シャルロッテ「グバアアアアアァ」

  ヽ __: : : : : : : : : : :/    _,,..-―――∠..-‐''"´::ヽ、         _二 -‐''"´:::::::::::/
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        |:::::l   ヽ\ヾ.,' __   ヽ´__ノ          }:::::::::::::::::::::::::::, '
      l::::::〉  _lヽ-.''/  ヽ      /ヽ、  __ノ:::::::::::::::::::::::/
      .',::::l  (_::::::::::}___ノ     /  |  _)::::::::::::::::::::::/
         ',::ヽ__. ゝ'`´      _,,-''´   /  ヽ:::::::::::::::::/
          ヽ::::::',     --=二___,,..-''´    ノ:::::::::::/
         \::ヽ-.、            ___,,..-''":::::::::/

マミ「……えっ………・?」

さやか「マ、マミさん、逃げてええええっ!」

まどか「い……いやあああっ!!」

80「サクシウム光線!」シュビビビビ

シャルロッテ「グギイイイ!!」ボカーン

まどか「えっ……な、何が……」

さやか「まどか、マミさん、あれ!!」

80「…………」

まどか「なっ、なに、あのでっかい人……」

さやか「まさか新しい魔女!?」

まどか「でも今あの人が魔女を攻撃したんでしょ!?」

さやか「じゃ、じゃあ私たちを助けてくれたの?」

マミ「は、はああ……助かった、のね……」

まどか「味方なの、あの巨人は……」

QB「ウルトラマン……」

さやか「ウルトラマン!?」

QB「あの巨人の名前だよ……
  人類を、地球を守るために戦う正義の超人だ」

まどか「……ウルトラマン……」

80(言っただろう、インキュベーター。
  お前の思い通りにはさせないと)

QB(つくづく邪魔な存在だね、正義を標榜して人助けを生きがいにする連中は)

まどか「あっ、魔女が起き上がるよ!」

80「ここは私が戦う……君たちは逃げなさい」

マミ「で、でも」

80「いいから逃げるんだ。
  この魔女は君には勝つことはできない」

さやか「に、逃げましょうマミさん」

まどか「そうですよ、ウルトラマンは私達を助けてくれるみたいですし」

マミ「……そうね、悔しいけれど……
  ここはあなたにお任せしてもいいかしら、ウルトラマン」

80「任せてくれ。私は魔女と戦うために地球に来たのだ!」

さやか「さあ、行きましょう!」

マミ「ええ」タタッ

まどか「頑張ってくださいねーっ」タタッ

シャルロッテ「ギャアアアアアアアス」

80「フンゥ!イヨーアァー!」
ドタンバタン

QB(ウルトラマン80……せっかくまどかとさやかに
  契約させるチャンスだったのに……まったく)

外界

マミ「はあ、ふう……」

まどか「なんとか逃げてこられましたね」

さやか「あのウルトラマンとかいう人、勝ったのかなあ」

QB「大丈夫だよ、なんたって彼は……」

ほむら「全宇宙を股にかける正義の集団、宇宙警備隊の一員だもの」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「ああ、ほどくの忘れてたわ。抜けだしてこられたのね」

ほむら「死ねばよかったのに」

さやか「それより転校生、あんたあのウルトラマンのこと知ってんの?」

ほむら「ええ、まあね」

QB「…………」

まどか「あっ、見て、魔女空間の入り口が」

さやか「消えていく……」

マミ「倒したのね、魔女を」

まどか「…………」

さやか「…………」

マミ「何者なのかしら、あのウルトラマン……」

ほむら「私達の味方よ、間違いなくね」

マミ「ふん、あなたの言うことはあてにならないわ」

QB「そうだね。マミを助けたとはいっても
  得体のしれない存在には違いないんだから。
  なんの目的があって戦っているのかも分からないんだし」

ほむら「それは貴方も同じでしょう、きゅうべぇ」

まどか「でもっ、きっと良い人だと思うよ。
    なんていうか……嫌な感じがしなかったもん」

さやか「私もそう思う。魔女とか見ると全身に怖気が走るけど
    ウルトラマンと出会った時、なんだかほっとしたもん」

QB「君達……」

ほむら「巴マミ。これからはあのウルトラマンと協力して戦っていくことね」

マミ「フン」

ほむら「それから……まどか、美樹さやか」

まどか「何?」

ほむら「あなたたちももう魔法少女になろうなんて考えないようにね。
    この街にはあのウルトラマンがいてくれるんだから」

まどか「う、うん……」

さやか「…………」

ほむら「あなたたちが戦う必要なんてどこにもないの。
    いいわね……」

マミ「待ちなさい、暁美さん。あなたはどうしてそうやって
   自分の考えを鹿目さんたちに押し付けようとするの。
   魔法少女になるかならないかは、この二人の自由でしょう、ねえ?」

さやか「そうですよねえ、別に転校生には関係ない話じゃん」

ほむら「関係なくなんかないわ」

マミ「そうよね、関係なくないわよね。魔法少女が増えると
  この街での自分の取り分が減ってしまうから……」

ほむら「そういう話じゃないわよ」

まどか「み、みんなちょっと落ち着いて……」

猛「おーい、みんな!」タタタッ

まどか「あっ、先生!?」

さやか「何やってんの、こんなところで」

猛「いや、ちょっと用事があってな。
  そういえばさっき、こんなものが落ちてたんだが……
  これ、なんだか分かるか?」

マミ「あ、グリーフシード……」

さやか「もしかして、さっきの魔女の?」

猛「なんだ、これはグリーフシードっていうのか?」

マミ「え、ええまあ……でもどこでこれを」

猛「ああ、さっきそこに落ちてたんだ。
  じゃあこれは巴、お前に渡しておこう」

マミ「えっ、はい……ありがとうございます」

猛「じゃあみんな、遅くならないうちに帰れよー」

まどか「はーい」

ほむら(……この人が、この時間でのウルトラマン)

中学教師と魔女退治の二足のわらじを履く矢的猛。
矢的猛の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。

第2話 泣くな初恋魔法少女

中学教師の仕事にも慣れてきた矢的猛。
彼がある朝学校に到着するととある事件が発生していた。

生徒「先生おはようございまーっす」

猛「おう、おはよー」

生徒「はよざーっす」

猛「おはよーう」

生徒「先生、先生!タイヘンですっ」

猛「な、なんだどうした?」

生徒「ちょっときてください、美樹さんと志筑さんが殴り合いの喧嘩を」

猛「はあ?な、殴り合い?どこでやってるんだ」

生徒「グラウンドの真ん中です」

猛「な、なんでそんなところで……」

生徒「とにかく早く来てください!」

猛「わ、わかった!」タタッ

野次馬「やれやれーっ」
野次馬「おう、そこだ、やっちまえ~」
野次馬「いいぞいいぞー」

さやか「この女狐!泥棒猫!くそびっち!」ガッシボカッ

仁美「人聞きの悪いことを言わないで!
   上條くんは私の方を選んでくれたんですのよ」ドカッバキッ

まどか「はわわわ、さやかちゃん、仁美ちゃん……」

ほむら「醜いわね」

猛「おい、何やってるんだ!」タタッ

まどか「あ、先生!」

猛「やめろー、お前らー!」

仁美「ふんぬらばっ!」グオッ

さやか「うわああっ!!」ドシーン

仁美「ふっ、私は柔道も習っているんですのよ」

さやか「く、くっそおおお……」

猛「いったいどうしたっていうんだ、お前たち……」

上條「…………」

さやか「……ちくしょーっ!」ダダダッ

猛「美樹ーっ!」

まどか「さやかちゃん……」

猛「志筑、これはどういうことだ?」

仁美「私は別に何もしてませんわよ」

上條「仁美、怪我してるじゃないか……」

仁美「かすり傷ですわ」

上條「ダメだよ、保健室に行って手当てしなくては」

仁美「別にいいですわよ」

上條「ダメ、一緒に行こう」

仁美「ええ」

猛「お、おい待てよ、志筑……何がどうなってるんだよ一体……」

生徒「決闘。決闘見滝原中学です」

生徒「志筑のやつがさあ、美樹のボーイフレンドを取っちゃったんだよ」

生徒「で、美樹さんが怒ったってわけ」

生徒「女の嫉妬って、見苦しいよな~」

生徒「上條も上條だよ、ころっと裏切っちゃってさ~」

生徒「それが女心よ。
   上條くんはファッショナブルだし、バイオリニストだし。
   私だってああいう人が現れたら、喜んで靡いちゃう。ねえみんな」

生徒「そうよそうよ」

生徒「あーあー、女は怖いなー」

生徒「もう行こうぜ!」

生徒「いこいこー」

猛「…………」

まどか「大丈夫かなあ、さやかちゃん……」

ほむら「さあね。私ももう行くわ。今日は日直だから」

まどか「あ、うん……」

猛「上條、上條……
  あんな生徒うちの学校にいたかなあ……」

職員室

猛「…………」ペラリペラリ

猛「かみじょう、かみじょう……」ペラリペラリ

猛「あった、この生徒だ!」

猛「バイオリンで数々の賞を受賞……
  天才バイオリニスト……ふうむ」

猛「何、事故で最近まで入院してたのか。
  どうりで見覚えがなかったはずだな」

京子「あっ、その生徒さん……」

猛「京子先生、どうしたんですか?」

京子「その子、バイオリンがすごく上手な子でしょ?
   でも事故で指が動かなくなっちゃったんですって」

猛「そうなんですか?」

京子「ええ、それで二度と動かないかもって言われてて、
   回復は絶望的だったけど、見事に回復したって。
   まるで奇跡か魔法でもあったみたいだって、
   噂されてるのを聞いたことがあるわ」

猛「奇跡……魔法? まさか.……」

校内某所

まどか「さやかちゃん、大丈夫?」

さやか「いっつつ……腰めっちゃ打った……」

まどか「保健室行かなくていい?」

さやか「バカ、保健室行ったら仁美たちと会っちゃうじゃん」

まどか「でもそんな傷だらけの体じゃ……」

さやか「大丈夫だよ、私の魔法は癒しの特性があるんだって。
    こんなケガぐらいすぐなんともなくなるよ」

まどか「…………」

さやか「魔女とも戦わなきゃいけないし、
    こんなことでへたばってられますかっての」

まどか「……あのさ、さやかちゃん」

さやか「何?」

まどか「魔法少女になって、怖くない?」

さやか「……そりゃ、ちょっとは怖いけど。でも、私は後悔なんかしてないよ。
    見滝原の平和はこの魔法少女さやかちゃんが守りまくっちゃいますよー、なんてね」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「それに、ウルトラマンもついてるしね」

まどか「ウルトラマン……か」

さやか「私やっぱりウルトラマンは私達の味方だと思う。
   なんかそんな気がするんだ」

まどか「……」

さやか「そしてウルトラマンと一緒に戦えば、
    どんな強敵にも立ち向かっていける……とも思うんだよね。
    私はもう、戦うしかないからさ……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「そうだよ、戦うしかないんだよ……
    だから……もう……
    恭介のことは……」

まどか「……」

さやか「……」

キーンコーンカーンコーン

まどか「あっ、じゅ、授業始まっちゃう!
    いこっ、さやかちゃん!」

さやか「うん……」

猛(奇跡、魔法……)

猛(奇跡的に完治した上條恭介の指……)

猛(明らかに魔法の力が働いたとしか思えない)

猛(やはりインキュベーターに願いを叶えてもらった者がいるんだ)

猛(そう、それは間違いなく美樹……)

猛(上條に思いを寄せていた美樹が)

猛(願いと引換に魔法少女になってしまったんだ!)

猛(その希望が絶望を生み出すとも知らないで……)

猛(くそっ、どうすれば……)

ほむら「先生」

猛「暁美!どうした」

ほむら「ちょっときてください」

猛「……」

猛「暁美、前から気になっていたが……
  お前は何者なんだ?」

ほむら「……」

猛「……お前は何を知っているんだ?
  先生のことを……どこまで知ってる?」

ほむら「矢的先生、あなたがウルトラマンね」

猛「! なぜ、それを……」

ほむら「分かるわ、他の人には分からなくても。
    ウルトラマンとともに戦ってきた私には……」

猛「どういうことだ、暁美……」

ほむら「今はそんなことはどうでもいいことよ。
    それより美樹さやかが魔法少女になったことについては知ってる?」

猛「あ、ああ……やはり美樹が上條恭介の指を」

ほむら「ええ。私達の警告を無視して
    美樹さやかはインキュベーターと契約を交わした」

猛「やはりそうだったのか……
  僕がもっと、しっかりあいつらを見守ってやっていれば……」

ほむら「そのことについて今さら後悔しても遅いわ。
    問題はこれから先のこと」

猛「これから先……」

ほむら「ええ。彼女は上條恭介を救うべく契約した。
    でも上條恭介の気持ちは美樹さやかではなく……」

猛「志筑に向いてしまった……」

ほむら「そうよ。このままではどうなるか、
    あなたも理解しているわよね」

猛「ああ……恋が破れたことによる
  失意と絶望で……美樹のソウルジェムは」

ほむら「魔女に変わるわ。間違いなくね」

猛「しかし、だからといってどうすれば……!
  上條をむりやり美樹とくっつけさせるわけにもいかないだろう!
  美樹の恋をどうにかする方法なんて……」

ほむら「しっかりして。あなた、教師でしょう」

猛「!」

ほむら「子供を正しく導くのが教師の役目。
    今美樹さやかを魔女堕ちから救えるのは、あなたしかいない」

猛「暁美……」

ほむら「私はいまひとつ彼女から信用されてはいない。
    だからあなたこそが適任」

猛「分かった……先生が、美樹さやかの心を、
  きっと救ってみせる!」

ほむら「ええ、頼んだわ。時間がないから急いで」

猛「ああ、待っていてくれ。
  それと暁美」

ほむら「何?」

猛「お前はクールな感じだけど、実は友達思いなんだな。
  ちょっと見なおしたよ」

ほむら「……別に。さやかが魔女になって
    まどかを悲しませたくないだけよ」

猛「それでも立派だよ」

ほむら「……時間がないといったはずよ。早く行って」

猛「ああ。ありがとう、暁美!」

ほむら「…………」

構内某所

上條「あはははは」
仁美「うふふふふ」

さやか「くそっ、くそっ、うううっ……」

さやか「うっ、うぐっ……なにこれ……」

さやか「う、うううっ……」

猛「美樹っ!」

さやか「せ、先生っ……」

猛「大丈夫か、美樹!」

さやか「先生、先生……助けて……
    胸が痛くて、苦しくて……」

猛「それはお前の、心の痛みだ……」

さやか「う、ああ……」

猛「憎しみや悲しみ……マイナスの感情によって
  お前の心が悲鳴を上げてるんだ」

さやか「っ……」

猛「愛しているから、愛されたい。
  愛されなければ、腹が立つ。
  でもほんとの愛って、そんなちっぽけなもんなのか?
  人のお返しを期待する愛なんて、偽物じゃないかなあ」

さやか「…………」

猛「想う人には想われず!よくあることだぞっ」

さやか「でも……」

猛「先生だってそんなことあったよ」

さやか「先生も?」

猛「ふるさとにいた頃、本当に好きな女の子がいてなあ。
  その子のためなら、なんでもしようと思った。
  その子、楽器を欲しがってたんだ。
  先生、どうしても買ってあげたくてさ。必死になってバイトをした。
  だけどなあ、2ヶ月目にやっと手に入れたときには、もう遅かったよ。
  その子には、新しい恋人ができてたんだ。
  悲しかった。悔しかった。憎かったよ。
  だけどなあ、先生そのままプレゼントしたよ。
  その楽器が、先生の本当の心を鳴らしてくれると思ったんだ。
  それで終わりだ。今はもう懐かしい思い出だ。
  なあ美樹、志筑や上條を憎む気持ちが、
  お前の本当の気持ちだなんて先生思わないぞ。
  今にきっとお前にも分かる」

さやか「分からないよっ!!」

さやか「私、憎いんだ!! 悔しいんだよっ!!」

猛「美樹っ!?」

さやか「悔しいんだ――――っ!!!」

猛「美樹ぃぃぃぃぃっ!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



ほむら「間に合わなかったのね……」

QB「遅かれ早かれこうなる運命だったんだ。
  あの教師が悪かったわけではないよ」

まどか「何、ほむらちゃん、なにがどうなってるの!?」

ほむら「美樹さやかが、魔女になったわ」

まどか「そっ……そんなっ! さやかちゃん!」



さやか「ごめんね、先生」

猛「美樹っ!!」

さやか「あたしってほんとバカ」

  猛「……エイッティ!!」ピカーン


: : ``:ヽ.、      V::/´ `Y´`Y´ `Y´ r二 ̄ニi `Y´ `Y´ `Y´ `::/       /: : : : : : : : : : : : : :
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: : : : : : : : : : : : ヽ ` ー--─;<´、ヽ_.フフヽ、__.ノヾ、_,:< ´     ,イ: : : : : : : : : : : : : : : : : :<
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オクタ「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」

80「正気を取り戻せ、美樹!お前は……」

ほむら「加勢するわ、ウルトラマン」タタッ

80「暁美、来てくれたのかっ」

まどか「あ、あああ……あれが、さやかちゃん……?
    嘘だよね、そんなの……こんなのって……」

ほむら「残念だけど……これが現実よ……」

まどか「ねえっ、元に戻せないの?
    元のさやかちゃんに戻してあげられないの!?」

80「そうだ、何か手はあるはずだ!彼女をもとに戻す方法が」

QB「不可能だよ」

まどか「きゅうべぇ!」

QB「魔女になった魔法少女が元の姿に戻った事例は存在しない。
  もはや魔女になってしまった時点で手遅れなんだよ」

まどか「そ、そんな……」

ほむら「でも、ウルトラマンの力ならあるいは……」

QB「無駄だよ。ウルトラマンは戦うことしかできない。
  何かを守ったり、救ったりすることは彼らの力の範疇外なんだよ。
  ウルトラマンの力は、魔女を倒すことにしか使われない」

80「っ……」

QB「でも、1つだけ方法がある」

まどか「えっ、本当に!?」

QB「うん、君が僕と契約すればいいのさ」

ほむら「!!」

まどか「私が契約すれば……本当にさやかちゃんは救われるの?」

QB「そうだよ。君がそう願えば、僕は何でも叶えてあげられる」

ほむら「だめよまどか、そいつの言葉に耳を貸しちゃ……!」

まどか「分かった、私……魔法少女に……」

ほむら「だめええっ!」ボカッ

まどか「グフゥ……」ガクッ

QB「なかなか強引なことをするね、君は」

ほむら「……まどかには何としても契約させるわけにはいかない。
    それに……」

QB「それに?」

ほむら「美樹さやかを倒すところなんて、
    この子には見せたくないから……」

80「やはり倒すしかないのか……」

ほむら「ええ……こうなった以上はもうそうするしか」

80「……」

ほむら「それに、戦うための力しかない、
    守ることも救うこともできない……それは、
    ウルトラマンだけじゃなく魔法少女も同じだから」

80「っ……」

オクタ「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」

ほむら「動き出したわ。いくわよ」

80「私は……自分の生徒をこの手で
  倒さなければならないというのか……」

ほむら「そうよ。今のあなたは教師である以前に
    ウルトラマンなのよ」

80「くそうっ……」

ほむら「私が援護するわ。
    あなたはすきを見て魔女にサクシウム光線を叩きこんで」

80「あ、ああ……」

オクタ「ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」 三◎ 三◎ ピュー

ほむら「はっ!とう!うらっ!」

80「…………」

ほむら「今よ、撃って」

80「っ……」

ほむら「早く!」

80「私には……できない」

80「自分の生徒を撃つなんてことは、私には……」

ほむら「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」

80「しかし……!」

オクタ「ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」 三◎ 三◎ ピュー

ほむら「ぐあっ!」ボカッ

80「暁美っ!」

ほむら「うぐっ……」

80「大丈夫か、暁美……!」

ほむら「早く、倒して……あの魔女を」

80「だが……」

ほむら「あれはもうあなたの生徒じゃない、人類に危機をもたらす存在なのよ!」

80「しかし、あれは……」

マミ「ティロ・フィナーレ!」ドーン

オクタ「グオオオオオオオオオオオオ」ドターン

ほむら「巴マミ!」

マミ「大丈夫だった?ごめんなさいね、遅れちゃって」

ほむら「え、ええ……」

80「…………」

マミ「暁美さん、あなたもたいしたことないわね……
  こんな魔女に手こずっちゃって」

ほむら「巴マミ……この魔女はあなたに任せるわ」

マミ「ええ、引き受けたわ!」

オクタ「ウゴゴゴゴ……」

80「くそっ……やっぱりこうするしかないのか……」

マミ「ウルトラマンさんも何へたばってるの?
   早く一緒に攻撃してちょうだい」

80「あ……ああ……わかった……」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

80「……バックルビーム!」

オクタ「ウ、ゴゴオオオオオオ…………」ボカーン

ほむら「……」

ほむら「勝ったわね」

マミ「ええ」

まどか「……」

マミ「ところで、美樹さんがいないようだけど。サボりかしら」

ほむら「いたわ」

マミ「え、どこに?」

ほむら「あなたと戦ってたじゃない」

マミ「えっ?」

QB「今君達が倒した魔女は、美樹さやかが魔女になったものなんだよ」

マミ「えっ………・えっ!?」

ほむら「そういうことよ、巴マミ」

マミ「そんな……」

ほむら「グリーフシード……あなたにあげるわ。それじゃ」

マミ「…………」

魔女になってしまったとはいえ自分の生徒を撃ってしまった矢的猛。
そのことに罪の意識を感じ、彼は学校に来なくなってしまったのだった。

第3話 暁美ほむらの限りなきチャレンジ魂



QB『君の祈りのために、魂を懸けられるかい?』

QB『戦いのさだめを受け入れてまで叶えたい望みがあるならば』

QB『僕が力になってあげるよ』

QB『さあ聞かせてごらん』

QB『君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?』

ほむら『私、鹿目さんとの出会いをやり直したい』

ほむら『彼女に守られる私じゃなくて彼女を守る私になりたい』

QB『契約は成立だ』

QB『さあ、解き放ってごらん』

QB『新しい力を……』

マミ「この子が新しい魔法少女?」

ほむら「はいっ、よろしくお願いします!」

まどか「ほむらちゃんの能力は、時間停止なんだよね」

マミ「時間停止能力……ねえ。
   具体的にはどういう感じなのかしら?」

ほむら「えっと……あっ、じゃあのドラム缶を見ててください」

マミ「ええ」

ほむら「……」カチッ

まどか「あっ、すごい!べっこべこになってる!」

ほむら「はあ、はあ、はあ、はあ……」

マミ「すごいけど、そんなに息切らして……大丈夫?」

ほむら「ずみまぜん……虚弱体質で……ぜえはあ」

まどか「これだと魔女と戦うのは……ちょっときついかな……」

ほむら「えっ……」

マミ「そうね……私達と一緒に戦うのは、まず体を鍛えてからね」

ほむら「そ、そんな……」

ほむら「そんな……せっかく……」

ほむら「せっかく鹿目さんと一緒に戦えると思って」

ほむら「鹿目さんを守れる私になれたと思ったのに……」

ほむら「魔法少女になっても……」

ほむら「私は無力なままなの……?」

ほむら「そんなの……」グスッ

ダン「その顔はなんだ」

ほむら「!!」ビクッ

ダン「その目はなんだ、その涙はなんだ!!!」

ほむら「えっ、ええっ!?」

ダン「お前のその涙で、鹿目まどかを救えるか!!」

ほむら「誰ですか貴方は……」

ダン「私の名前か。そうだな、モロボシダンとでもしておこうか!」

ほむら「は、はあ……」

ダン「物陰から見せてもらったぞ、さっきのお前たちのやりとり」

ほむら「えっ……」

ダン「お前は新米の魔法少女だそうだな」

ほむら「し、知ってるんですか、魔法少女のことを……」

ダン「ああ、知っている。俺も変身して魔女と戦っていた男だ」

ほむら「そ、そうだったんですか……
    やっぱりきゅうべぇと契約して……?」

ダン「いや、俺は違う。奴は思春期の少女を自分の捨て駒にすべく
   魔法少女を生み出し続けている悪魔のような存在だ!」

ほむら「ええっ!?」

ダン「いや……今はそんなことはどうでもいい」

ほむら「えっ、すごく気になるんですけど……
    どういうことなんですか? きゅうべぇが悪魔って……」

ダン「いずれお前も身をもって実感する時が来る!
   それより今、お前がなすべきことはただひとつ!違うか!」

ほむら「体を鍛えること……」

ダン「そうだ!」

ダン「いくら強力な魔法を持っていようとも、
   体が弱くては満足に戦うこともできない!」

ほむら「はい!」

ダン「体を鍛えるには特訓あるのみだ!いいな!」

ほむら「はい、ダンさん!」

ダン「俺のことは親父と呼べ!」

ほむら「はい親父!」

ダン「良い返事だ! よし、まずは腕立てからやるぞ!
   いっちに! いっちに!」

ほむら「いっち……に……いっち……も、もうだめ……」ガクッ

ダン「なんだなんだその腕立ては!
   そんなこともできないのかお前は!」

ほむら「だ、だって……今までずっと入院してて運動なんて全然……」

ダン「弱音を吐くんじゃない!
   まったく……貴様は体を鍛える前に
   性根から叩き直さないといけないようだな」

ほむら「え、えええっ……」

ダン「こいっ!」

ほむら「親父……これは?」

ダン「見たことがないか。ジープだ」

ほむら「これでドライブでもするんですか?」

ダン「バカヤロー!」

ほむら「ひいっ!」

ダン「俺は言ったはずだ。お前の性根を叩き直すと」

ほむら「ジープに乗ってどうするんですか?」

ダン「お前はそこに立っていろ」

ほむら「どうしてエンジンを掛けるんですか?」

ダン「行くぞ、逃げるなよ!」ブロロロロロ

ほむら「ど、どうして私に向かって……ひいいい!」

ダン「逃げるなあああっ!」ブロロロロロロ

ほむら「や、やめてくださいいいっ!いやあああ!」

ダン「逃げるなっ、ぶつかってこい!!」ブロロロロロロロ

ほむら「ひいいい!」

ほむら「お願いです、やめてください!!」

ダン「バカヤロー!逃げるなと言ってるだろう!」ブロロロロロロ

ほむら「だからってこんなっ……むちゃくちゃな」

ダン「真夏竜はスタント無しで撮影したんだぞ!」ブロロロロロロロ

ほむら「何の話ですか!?」

ダン「逃げるな、車に向かってこいっ!」ブロロロロロロ

ほむら「いやあああ!」

ダン「今のままではお前はいつまでも弱いままだぞ!それでいいのか!」ブロロロロロロロロ

ほむら「うっ、そっ、それはああ……」

ダン「こいっ、暁美ほむら!」ブロロロロロロ

ほむら「はっ、はいいいっ!」

ダン「逃げるんじゃないぞっ!」ブロロロロ

ほむら「はいぃ…………ぎゃーっ!」ドカッ

ダン「よくやった……よく逃げなかったな、暁美ほむら……」キッ

ほむら「まさか本当にぶつかってくるとは……痛い……」

ダン「いいか。お前は逃げなかった。逃げようと思えば逃げられたのに、だ」

ほむら「あっ、魔法を使えば……」

ダン「そうだ。お前の時間停止能力を使えば、いつだって逃げられた。
   だがお前は向かってきた!俺のジープに!」

ほむら「……」

ダン「お前は体は弱いが……心は強くなった。人一倍な」

ほむら「親父…………」

ダン「さあ、特訓を再開するぞ。今度はお前の体を鍛えあげてやる」

ほむら「はいっ、体を鍛えて……親父とも一緒に戦いたいです」

ダン「すまないが、俺はもう戦うことはできない……変身能力は失われている」

ほむら「そ、そうなんですか?」

ダン「だから俺が持っている全てをお前に叩きこむ!
   戦えない俺のぶんまで戦ってもらう!いいな!」

ほむら「はいっ!」

ダン「あそこに沈む夕陽が私なら……
   明日の朝日は、暁美ほむら、お前だ!」

ほむら「はいっ!(感涙)」

――

――――

――――――

まどか「うっ……うあああっ……」

ほむら「鹿目さんっ、しっかりして!どうしちゃったのっ!」

まどか「うあっ……ほむらちゃん……逃げ……」

ほむら「どうして、こんな……ワルプルギスの夜倒したのに……!」

まどか「うっ、ううっ、うああああああああっ!!」グバアアアアア

ほむら「こっ、これは……魔女……!?」

ダン「そうだ!」

ほむら「親父、どうしてこんなところに……!
    あっそれより鹿目さんがっ……」

ダン「そう、それこそが魔法少女の真実だ!」

ほむら「えっ!?」

ダン「力を使い果たした魔法少女は……魔女へと変わり果てる」

ほむら「そん……な……」

ほむら「知ってたんですか……
    どうして教えてくれなかったんですか……?」

ダン「この絶望をお前が味わう必要があったからだ!」

ほむら「どうして……」

ダン「鹿目まどかを救うこと……
   お前が成し遂げようとしているのは果てしなく長い道のりだ……
   生半可な覚悟だけでは到底達成することなどできん!」

ほむら「……」

ダン「だが今お前は絶望を知った!
   その絶望が、お前の意志と、決意と、覚悟を!
   さらに強固なものへと変えたはずだ!」

ほむら「っ……」

ダン「行けっ、暁美ほむら!
   お前は生き続けなければならん!
   インキュベーターの策略から、鹿目まどかを救うんだ!」

ほむら「はいっ!」

ダン「鹿目まどかの最期は俺が見届ける!早く行けっ!
   お前の命は、お前一人のものではないことを忘れるな!行けーっ!」

カチッ
キュルルルウルルルルル

 私はやり直す。
  何度でも、何度でも。
    まどかを救う、ただそれだけのために……

ワルプルギス「アーハハハハハアーハハハハハ」

まどか「…………………」

ほむら「まただ……また救えなかった」

郷秀樹「僕ももう戦う力は残っていない……
    君は時間を遡行できるんだろう。ならば過去に飛んで……
    全てをやり直すんだ……
    ワルプルギスを倒すため……そして君の友を救うために」

ほむら「ほんとに……救えるのかな……私……
    親父、まどか、ごめんなさい……私もう自信ないよ……」

秀樹「自信がない、か……じゃあこれを君に託そう……
   君が自分自身の運命に負けそうになった時、思い出してくれ」

ほむら「これは……?」

秀樹「……ウルトラ5つの誓いだ……
   ウルトラマンと、人間との、繋がりの証だよ」

ほむら「ありがとう、郷さん……いえ、ウルトラマンジャック……」

カチッ
キュルルルウルルルルル

北斗星司「新しい担任の北斗星司だ。よろしく」

まどか「優しそうな先生だね~」

さやか「なんか変な指輪つけてるね」

ほむら(この人がこの時間でのウルトラマン……)

北斗「早速だがみんなは魔女というものを知っているか?」

生徒「は?魔女?」「魔女って漫画に出てくる魔女?」「おジャ魔女どれみ?」

北斗「魔女はこの世界のあちこちに潜んで君達を狙ってるんだ!
   君達の心の隙間に漬け込んで、悪さをしたり人を苦しめたり……」

生徒「何言ってんの」「バカジャネーノ」「頭おかしいんですか?」

北斗「おい、もしかして信じてないのか?本当なんだ、本当に魔女はいるんだ!
   なんで信じてくれないんだよ、おい!なあ!」

生徒「この先生やべー」「狂ってるよ」「こえー」

北斗「俺は一つも嘘は言ってない!魔女はほんとうにいるんだ!いるんだよ!信じてくれ!」

まどか「あ、あはは……」

ほむら(このウルトラマンはダメね……)

カチッ
キュルルルウルルルルル

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