モバP「不器用な貴女には花束を」 (72)
モバP(世の中、何があるかなんて案外 わからないものだ)
モバP(たとえば目の前に小石があっ て、ころばないように避けても避けた さきにまた小石があって結局ころんで しまう)
モバP(人生とはそんな風にわからない ものなんだ)
モバP(俺は、数年前に一人の女の子を プロデュースした)
モバP(美しい記憶だ…だがもう終わっ た事だ)
モバP(いや、終わらせたんだ、終わら せてしまったんだ俺が)
別のサイトで書いていたものをこちらに移しています
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379951994
モバP「新人アイドル…ですか」
ちひろ「はい、社長がわざわざスカウ トしてきた期待の新人です!」
モバP「ですが、僕に任せていいので すか?」
ちひろ「なにいってるんですか!かつ てSランクアイドルをプロデュースし た貴方が弱気になるなんて」
モバP「ですが…」
ちひろ「…良い機会だと思いますよ」
ちひろ「あの子を、忘れる」
モバP「……」
モバP「そう、ですね」
モバP「それで、彼女はどこに?その 新人さんというのは」
ちひろ「」チョイチョイ
モバP「…?机の下?」
???「フヒ…」
モバP「うわぁぁ!!!キノコだら け!!!」
モバP「な、なんだなんだ君は!」
モバP「なんなんだ君は!!?」
???「フヒ…ドモー…」
モバP「いくら使ってないからって机 の下をキノコパラダイスにしてはダメ だろう!?」
???「ゴ…ゴメン…ナサイ…」
モバP「ちひろさん…まさかこの娘 が…」
ちひろ「はい♪星輝子ちゃんです!」
モバP「ほ、星輝子…さん?」
輝子「フヒ…ハ、はじめ…ま、して」
モバP「あ、あぁ、はじめまして…」
ちひろ「輝子ちゃんはキノコが好きな んですよ!」
モバP「…かわってるね」
輝子「…フヒ」
ちひろ「プロデューサーさん、これか ら輝子ちゃんと仲良くしてあげてくだ さいね!」
輝子「よ、よろしくね…プ、プロ デューサー…」
モバP「……」
モバP「あぁ…そうだな 」
モバP(あの日、全てを終わらせてし まった日、僕は全てを置いてきた)
モバP(いや、捨てたといったほうが的 確かもしれない)
机の下でキノコを栽培する不思議な少 女と会った次の日、さっそく彼女の方 針を決めることになった
モバP「星さん、貴女はどんなアイド ルになりたいとかありますか?」
輝子「フヒ…えと…その…フヒ…?」
モバP(…どうやら長くなりそうだ)
モバP「どんな答えでも構いません よ、貴女の好きな考えを教えてくださ い」
輝子「あの…け…ゴ…」
モバP「はい?」
輝子「どうして…敬語…ですか?」シド ロモドロ
モバP「…星さんもいま敬語ですよ?」
輝子「それは…その…プロデューサー さんにつらて…つられて…フヒ…ゴ メンナサイ」
モバP(かんだ…)
モバP「そうですね、まぁ僕達はビジ ネスパートーナーですから改まった言 葉で話すのが当然かと思いましたが… 星さんはべつに僕にたいして敬語を無 理に使わなくてもいいんですよ?」
輝子「じゃあ…やめ…るね…ハイ」
モバP「まぁ僕の方はこれからテレビ の仕事なんかもあったときに仕事先で アイドルにたいしてため口だと印象も 悪いですからね」
モバP「そこは我慢してください」
輝子「うん…わかった…ハイ」
星さんは目線を少し逸らして小さくう なずいた
モバP「話を戻しましょうか、では星 さんはどのようなアイドルを目指しま すか?」
輝子「フヒ…あ、あのね…」
モバP「はい?」
輝子「こ、これ…」スッ
そういって彼女は僕にアレを差し出し た アレ、とはもちろん…
輝子「き…きのこ…フヒ 」
モバP「…立派なエリンギですね」
輝子「売ってるのみたいに…白くない けど…フヒ」
モバP「そうですね、僕はいつもスー パーで目にする物より随分とたくまし いエリンギだ」
輝子「あ、あのねプロデューサー…」
輝子「キノコ…実は種類によっては暗 いところじゃなくても…育つよ…フヒヒ」
輝子「じ、自分が…生まれた場所に よって…一番適した形に育つ…」
モバP「へぇ…それは初耳でした」
輝子「も、ものによっては…明るい場 所のほうが美味しく大きく育ったり も…フヒヒヒヒ…」
短い時間でも接していて分かったが、 どうやらこの娘はお喋りがあまり得意 では無いようだ だが、キノコのことになると途端に目 を輝かして饒舌になる
モバP(正直な娘だ)
輝子「わ、私は…その、自分から…ア イドルになったわけじゃないけど… フヒ」
輝子「お、お父さんが…事務所の社長 さんと仲良くて…それで…話が勝手に… すすんだ…フヒヒ」
モバP「え?」
僕はてっきり、スカウトをうけて自分 から進んでアイドルを目指しているも のだと思ったが、どうやら違うらしい
モバP『これは…困ったな…』
いくら才能があっても(現時点ではど うとも言えないが)本人が進んでやり たがっていなければアイドル なんてなれるわけはない
たとえ、才能ゆたかで自信とやる気に 満ちていても成功できるかどうかわか らない…アイドルとはそういうものな のだから
輝子「で、でもね…わたし…試してみ たい…フヒ」
モバP「試す…とは?」
輝子「わ…わたしが…このキノコみた いに…環境によって変われるのか…」
輝子「その…フヒヒ…わたしは友達もキノ コしかいなくて…ボッチだけど…」
輝子「そんなわたしが…えと…みんな に好きになってもらえるアイドルにな れるか…試してみたい… 」
モバP「…なるほど」
自分を試してみたいと、彼女はそう 言った
いまの自分をかえて、新しい自分にな りたいと
モバP『アイツと…同じことを言うん だね』
僕はプロデューサーとして、してはい けないことをしてしまった
僕は『彼女』をアイドルとしてではな く『女性』として見てしまっていた
それは、彼女も同じで『僕』を『男 性』として見ていた
だから、僕は彼女から逃げた 彼女を得ようとして、彼女から『アイドル』を奪いたくなかったから
結果…僕はもっと大きなものを彼女か ら奪ってしまった
『星輝子』
この名前のとおり、彼女はきっと光る いまはまだ鈍い輝きさえも出せずにく すぶった様子だが
きっと、この子は光れるだろう 『彼女』と同じように
モバP「つまり星さん、アナタは自分 を万人に愛されるアイドルにかえたい ということですよね」
輝子「ば、万人…?」
モバP「あぁ、すいません、難しい言葉をつかうのが少し癖になっていまし てね」
モバP「端的に言えば『誰からも愛 される』ということですよ」
輝子「あ、あいされ…フヒッ…///」
モバP「照れてるところ申し訳ありませんがそういう愛されるではないですよ」
輝子「で、ですよねぇ…フヒッ…」
モバP(まぁなかにはアイドルに恋愛感 情を抱くファンもいるでしょうけど)
コピペしてるだけなんだろうけど変なスペース入りまくってるな
>>15
直してるつもりなんだけど直ってないんだよな…すまんね
モバP「わかりました、それでは今日は話は終わりです」
輝子「へ…?」
モバP「…なにか言いたげですね、どうしました?」
輝子「もう…おしまい?」
モバP「そうですね、今日は星さんの希望を聞くだけですから」
輝子「そ、そっか…フヒ…フヒフヒ…」
モバP(ほそえんでるのに落ち込んでいる…器用な事を…)
モバP「安心してください明日、今度はもっと具体的な話をしますから」
輝子「…フヒヒ、たのしみ」パァァ
モバP(やる気はあるんですよねぇ…)
モバP(でもなんだろうか、うまくはいえないが…)
この子『星輝子』 彼女はとてもいい笑顔で先程まで大好きな茸のことを話してくれていた
今だって、期待や不安が混じっているような笑顔を向けてくれてはいる
モバP(なにか、ひっかかるな)
彼女の話を信じるなら、人と接することに慣れていない、というよりも得意では無いようだが
モバP(それにしては、積極的にくいついてくる)
もちろん、僕と早くうちとけたいから、という理由なのかも知れないけど
モバP「とりあえず、今日は終わりですのでまた明日に来てくださいますか?」
輝子「わかった…フヒ…」
ちひろ「あれ?もう輝子ちゃん帰し ちゃったんですか?」
モバP「ええ、もう話すことは終わっ たので」
ちひろ「残念だな…仲良くなろうとし たんですけど」
モバP「明日にまた会うんですし、
のときに話せばいいのでは?」
ちひろ「え、明日は事務所総会ですよプロデューサーさん?」
モバP「…え?」
ちひろ「プロデューサーさんと社長が参加しないと意味無いじゃないですか」
モバP「…待ってください、あれって明日でしたっけ?」
事務所総会 、これは全国のアイドル事務所が一同に かいして行う会議のようなものだ
最近はアイドル戦国時代とも言われるほどアイドル事務所が多数存在するので、お互いにライバル事務所の腹をさぐりあえる機会でもある
モバP「しまった…星さんに連絡してあげないと…」
ちひろ「良ければ、私がかわりに明日は輝子ちゃんの話を聞きましょうか?」
モバP「…そうですね、別に話を聞かせるだけですしお願いできますか?」
ちひろ「ええ、スタドリ三本で手をうちますよ!」
モバP「……」
きっとこの人の前世はカネゴンだったに違いない
モバP「そういえば…星さんは社長がスカウトしてきたんですよね?」
ちひろ「ええ、珍しいですよね」
モバP「本当にあの人が真面目に仕事に勤めるなんて…」
僕が勤めているこの事務所『シンデレラプロダクション』はかつては大手の事務所だった
しかし、前任の社長である高木順一郎 社長が亡くなり、彼と親戚関係にあたる人が新しい社長になったと同時に、 事務所は衰退してしまった
というのも、彼は社長という役職にあぐらをかき出社してくる方が珍しいと言えるほどにろくな男ではなかったのだ
そんな彼が、本当に珍しくスカウトをしてきた
それが星輝子だ
ちひろ「それだけ彼女が魅力的だっ たってことですね!」
モバP「…ええ、そうですね」
ちひろ「それでは私は輝子ちゃんに電話して明日のことを伝えてきます ね!」
モバP「あ、よろしくお願いします」
モバP(あの社長が自分からスカウトをするなんて…本当にどういう風のふきまわしだ?)
モバP(それに…星さんの態度、僕への接し方)
モバP(…考え過ぎだよな)
『…というわけで、プロデューサーさんはいないけど私とミーティングだからよろしくね!』
「はい…わかった…フヒ…」
プッ
「明日は…事務員さんとミーティング…だって…フヒヒ」
「ふむ、そうか」
「どうだ?あの事務所は?」
「フヒ、社長に言われた通りにしたよ…」
「そうか、すまないな輝子」
「だ、大丈夫…フヒ、友達だから…」
「あぁ、そうとも!私とお前は友達だよ、輝子!」
「フヒヒヒ…友達…」
「わ、私は寮にかえるね…」
「あぁ、この調子で頼むぞ」
「うん…フヒ、じゃあね、黒井社長」
黒井「あぁ…おやすみ」
パタン…
黒井「行ったか…」
黒井(輝子…お前は本当に使いやすいコマだよ…クククク…)
~961プロ女子寮~
輝子「きのこーのこーのこーぼっちのこー…フヒ…」
アイドルA「あ、星さんだ」
輝子「どもー…フヒ…」
アイドルA「シンデレラ事務所にいったってきいたんだけど…嘘だったみたいね」
輝子「しょ、所詮は噂…フヒ…」
アイドルA「……」
輝子「…え…と…」
アイドルA「あんたみたいな落ちこぼれなんて要らないと思うんだけど」
輝子「落ちこぼれ…フヒ…」
アイドルA「自覚してるんでしょ?自分はこの961じゃやっていけないってさ」
輝子「そ、それは…」
アイドルA「だからあんたがシンデレラ事務所に行ったって聞いたときは『やっぱり』って思ったわ」
アイドルA「容姿はそこそこ、ダンスは普通、挙げ句の果てにはヘビメタ?」
アイドルA「通用するわけないじゃん、そんな訳のわからないアイドルなんてさ」
輝子「…で、ですよね…」
アイドルA「あんたみたいな奴がなんで社長のお気に入りなのか…わけわかんない」
輝子「社長とは…フヒ…友達だから…」
アイドルA「友達?ふーん…ま、だったら案外喜んで抱かれてるの?あんた」
輝子「社長は…!そ、そんなことしない…たぶん…うん…」
アイドルA「は?」
アイドルA「枕してないっての?あの社長が?」
アイドルA「…笑わせないでよ」
輝子「で、でも…その…」
アイドルA「だったら…私の初めて奪ったのはどこのだれだってのよ…!!」
輝子「……」
アイドルA「…じゃあね、あんたの顔見てたらイライラで死にそうだわ」
輝子「ご、ごめんなさい…」
輝子(社長が…そういうことしてるのは…知ってる…)
輝子(で、でも…友達だから…黙っておかなきゃ…フヒ…)
輝子「おち、こぼれ…」
輝子「ヒック…グス…ウエェ…」ポロポロ
スローペースですいません、仕事終わり次第にまた続きを書いていこうと思います
~翌日~
モバP(今日は事務所総会か…)
モバP(社長と二人…なかなか拷問だな…俺が罪人ならまだ処刑を選ぶぞ…)
モバP(だが…いい機会かもしれないな、彼女…星さんをスカウトしたことについての詳細を聞く)
モバP(それにしても…遅いな、お、来たか)
社長「すまない、またせてしまったな」
モバP「いえいえ、大丈夫ですよ」(やっとか…社会人失格だろ…)
社長「ではさっそく向かおうか、遅刻しては申し訳がたたないからな」
モバP「社長、道中お話を聞きたいのですが構いませんか?」
社長「話?いいが…星のことか?」
モバP「えぇ…まぁゆっくりと話しましょう」
-シンデレラ事務所-
ちひろ「…というわけで!私と二人でお話です!」
輝子「は、はい…」
ちひろ「プロデューサーから言伝を預かっているので、それを伝えるだけですけどね」
輝子「言伝…?」
ちひろ「これからの輝子ちゃんの主な活動方針ですよ!」
ちひろ「輝子ちゃんは…なるほどなるほど…こうきましたか…」←メモ書き読んでる
輝子「フヒ…どんなのか…気になる…」
ちひろ「輝子ちゃんは…正統派アイドルとして売り出すかんがえだそうです!」
輝子(せ、正統派…かぁ…フヒ…)
ちひろ「…?もしかして、いや?」
輝子「フヒ…ううん…大丈夫…ハイ…」
ちひろ「そっか!良かった!」
ちひろ「詳しくはこのメモ書きにかいてあるんだけどーーー」
輝子(そ、そうだよね…ヘビメタ…ダメだよね…フヒ…)
-総会へと向かう道中-
モバP「では…古くから付き合いのあった知人の娘さんをスカウトしたということですか?」
社長「あぁ、なにか光るものを感じてな…」
モバP「なるほど…」
モバP(社長の話にも星さんの話にも相違点はないし、矛盾点もないな)
モバP(僕の思い過ごしか…少し、気にしすぎなのかもな)
モバP(『アイツ』のことがあったとはいえ…我ながら情けない…)
社長「そろそろつく頃だな、ほら、見えてきた
モバP「ええ、立派な建物ですね」
モバP(どこのだれが金を出しているのか知らないけど大したものだな、こんな建物を貸しきるだなんて)
「おやおやぁー?そこにいるのはシンデレラ事務所の二人ではないか~!」
モバP「……!」
この声は…忘れたくても忘れられないこの声は…!!!
モバP「お久しぶりですね…黒井社長」
仕事いってきます
続きはあとで
投下してるとこ悪いんだけどこれもともとどこのサイトに書いてたの?続き読みたいからそっちいきたいんだけど
>>36
書いてる途中でサイトが閉鎖しそうになったから移してきたんだよ
だから探しても途中までしかないよ
書くスピード遅くて申し訳ない…
社長「これはこれは黒井殿、お久しぶりです」
黒井「やぁ社長殿、だんだんと社長職が板についてきたようでなにより」
社長「いえいえ、まだまだですよ」
黒井「ノンノンノン…その、私にたいしての態度!長いものには巻かれるというのは大切なことだよ」
黒井「私についておけば損はないからねぇ?、フハハハハ!!」
モバP「…ッ!」
黒井「おやぁー?なんだね、その目付きは!君は目上の者に向かっての態度がなってないようだね~」
黒井「前社長の株が知れるというものだ!」
モバP(言わせておけば…コイツ…!)
黒井「だいたいだねぇ…まだ君が現役だとは…」
黒井「アイドル殺しの君がね!
モバP「だまれ!!!!」
黒井「なんだね?事実を述べたまでだよ?」
モバP「誰のせいで…高木社長とアイツが…!」
社長「おい、プロデューサー君、口の聞き方に気をつけろ」
社長は手で僕をせいした
そもそも、この社長だってこの黒井に媚を売ることしかしないで…!
モバP「…申し訳ありません」
黒井「いやいや気にしなくてもいいんだよ?セレブな私は器がひろいからねぇ」
ポンッ
と黒井が僕の肩に手をおいた
モバP「…!」
黒井「今日は互いに仲良く…しようじゃないか?」
ひどく醜い笑顔で黒井は僕を見下す
肩におかれた手を払いのけ、突き飛ばしてやりたいが…今の僕には
モバP「そう、ですね…ッ!!」
うなずき、賛同するしか出来ない
-シンデレラ事務所-
ちひろ「…という感じなんだけど、どうかしら?」
輝子「フヒ…良い…と思う…」
ちひろ「そう!ならよかった!」
輝子「う、うん…フヒヒ…」
輝子(そ、そうだよね…ヘビメタなんか受け入れられないし…王道…なのが良いよね…フヒヒ…)
輝子(わ、私は…『自分らしさ』を出しちゃ…ダメなんだから…)
輝子(と、友達が…そう言ってたんだから…フヒヒ…間違いないよね…)
黒井『なに?ヘビメタ?』
黒井『輝子…私はお前を友達として大事に思うからこそ言うが』
黒井『お前はそんな変わり種でなく、私に従って生きていけば良い』
黒井『私はお前の友達なんだぞ?言うことが聞けないのか?』
輝子「………」
ちひろ「輝子ちゃん?」
輝子「フヒヒ…な、なんでもない…ハイ…」
-総会会議所-
モバP(黒井…!あの外道が…)
総会が始まり、何時間経過したのだろう
僕は、黒井のことでなにも話が入ってはこない
『であるからして、昨今のアイドル達は互いが互いを高めあう存在として…』
と、偉いさん方が話をしているが正直に言って退屈でしかなく、なぜこんなものが年に数回おこなわれてるのか理解できない
モバP(…参加するべきではなかったな)
本来ならこの総会には社長さえいれば良いのだが…いかんせん、新社長にすべてを任せる気にはなれずに参加している
『続いての議題です、次の議題は…』
『アイドル達に性的行為を強要させ仕事の斡旋をおこなう、いわゆる枕営業というものです』
モバP(枕…か)
『やはりこれは売春のようなものですからね…賛同は出来ません』
モバP(当たり前だろう)
そもそもアイドル達は大半はまだ未成年なんだ、そんなことが許されるわけもない
法律上も倫理的にもだ
モバP(…961プロ辺りはしてるだろうな、決めつけだが)
正直に言って、証拠…というには弱いがあることはある
だが、それだけでは決定力がない
だからまだ僕にはどうしようもない話だ
『これについて…961プロの黒井社長はなにかご意見は?』
黒井「ふむ…もちろん、私も心を痛める事案だ、これは早急に解決せねばならないだろうな」
モバP(…よく言う、この外道が)
『プロデューサーさん…僕は…僕は…』
『ただあなたに…振り向いて欲しかっただけだったんです』
『でももう…僕には…プロデューサーさんに…』
『触れることさえ…怖いんです』
『さよなら、プロデューサー…僕をアイドルにしてくれて…ありがとうございました…』
プァンッ…ゴッ!!
グシャッ…ベシャッ…
ーーただいま当駅二番ホームにて新快速通過電車で、人身事故が発生いたしました
ーーーたいへん危険ですので、お近づきにならないようお願い申し上げます
モバP「…幸子」
あのときの事を思い出すと、総会はいつのまにか終わっていた…
真かと思ったら幸子だったでござる
>>1が関西圏または中京圏在住だということはわかった
正直、幸子Pには申し訳ないと思ってる
自分も幸子艦隊組んでるが
-シンデレラ事務所-
モバP「ただいま戻りました」
ちひろ「おかえりなさい、プロデューサーさん」
モバP「…星さんは?」
ちひろ「今日はもう帰りましたよ?次の予定が決まり次第連絡してあげてくださいね」
モバP「そうですね…三日後に初レッスンをする予定ですしそう伝えておきます」
ちひろ「そういえば社長はどこに?」
モバP「あの人なら用事があると帰りましたよ」
モバP「それより、星さんはなにかいっていましたか?」
ちひろ「そうですね…特になにも不満はないようですよ」
モバP「そうですか…ちひろさん」
ちひろ「はい?」
モバP「幸子が死んで、何年になりますかね」
ちひろ「…そうですね、四年ほどでしょうか」
モバP「もう…四年もですか」
>>46
当たってるよ…探偵かよすげぇ…
-961事務所-
黒井「フフフフフ…」
黒井「『まさか君がまだ現役だと思わなかったよ』」
黒井「我ながらなかなかの演技力ではないかー?社長殿よ」
社長「全くですね、アイツもきっと演技だと気づいてないでしょうねぇ」
黒井「まぁ気づいていたとしてもだ、どうせなにもできはせんさ」
黒井「世界はこの私に味方しているのがわかるぞ…フハハハハ!!!!!」
社長「それにしても…うまく事が進むでしょうか?」
黒井「オイオイオイ…当たり前だろう?私が立てた作戦だぞ?」
黒井「なぁ、輝子?」
輝子「フヒ…そ、そうだね…」
黒井「だぁぁが…まだ早いぞ、もっと時間をかけてからだ」
黒井「そうでなくては『発言』の持つ力が乏しくなってしまうからなぁ…」
輝子「発言…力…フヒ…」
社長「と、言いますと?」
黒井「例えば、だ」
黒井「やつを潰すために10の発言の力が必要だとすれば…今ではまだ2ほどしか力がないと言うことだ」
黒井「だから、期待してるぞ輝子!」
輝子「う、うん…フヒ…フヒヒ…」
黒井「さて、今から酒も交えて話をする、お前はもう寮にかえっていいぞ」
輝子「う、うん…おやすみ…友達…」
黒井「あぁ、おやすみ輝子…成功したらキノコの原木でもなんでもくれてやろう」
バタン…
社長「しかし…あなたもすごい人だ」
社長「シンデレラ事務所の私と繋がっていることも隠し通して、自分のところのデビュー前のアイドルをシンデレラ事務所へと二重に入社させるなんてねぇ」
社長「そして…極めつけにそのアイドルに『プロデューサーに枕営業を強要されて、犯された』と発言させようとは」
黒井「フフ…セレブな私は考えも違うのだよ」
黒井「これでアイツ…憎き高木の残りカスが潰せるのだ…嬉しくて仕方がない!」
社長「しかし…そのあとはどうするので?」
黒井「はん?そのあとだと?」
社長「えぇ、そのあとの星輝子をどうするので?」
黒井「そんなもの…捨てればいいだろう?アイドルなどうちには腐るほどいるのだからな…」
黒井「そもそも、そのために一番金にならず、扱いやすいアイツを選んだんだからな…フフ…」
輝子「フフフー…ン…フフン…フーン…♪」
輝子(わ、私は…必要とされてる…フヒヒ…)
アイドルA「なに鼻唄歌って歩いてんのよ」
輝子「あ…これは…その…」
アイドルA「…ほんと、気持ち悪いわね、あんたってさ」
輝子「ご、ごめ…んなさい…」
アイドルA「もう良いわよ、退いて、あたしも帰るから」
スタスタスタ…
輝子「…わた…し…なにか…しちゃったのかな…」
-961寮-
輝子「……」
黒井『やぁ、君が星輝子…だね?』
黒井『初めまして…我が961事務所の社長である黒井崇男だ』
黒井『君は12歳のときからうちの事務所にいるね…』
黒井『芽はなかなかでないようだが、私にはわかるぞ』
黒井『輝子、お友だちになろうではないか』
黒井『私は君をずっと見て、気にかけていたのだ』
黒井『なんとかして、デビューさせたいとね』
黒井『任しておけ、友達だろう?』
輝子「…と、ともだち……」
黒井が彼女にシンデレラ事務所へ潜り込めと命じたのはそれからたった二週間後の話だった
無理もなく、予定通りの進展だった
黒井からすれば輝子など自分が今まで、枕や裏(いわゆるAVなどのアダルト業界)へと捨ててきた有象無象のなかにすぎないのだから
そんな大した時間をかけて『友情』などを育む必要も無い、輝子が潜入を拒めばすぐにでも次の手を用意するつもりでいた
だが…彼女、『星輝子』にとって
『お友だちになろう』
という言葉だけで、彼女は簡単に黒井の呪縛に縛られた
それほどに彼女は…孤独を恐れていた
アナタダケノーワタシヘースッテプアップ
イツモーミテイルワー♪
輝子「フヒ…!で、電話…」
ガチャ
輝子「も、もしもし…フヒヒ…」
モバP『星さん、僕ですが今お時間大丈夫ですか?』
輝子「フヒ…プロデューサー…」
輝子にとって、ありがたいことに彼、モバPは仕事人間だった
これで彼が仕事とプライベートをたいしてわけない人物で、友人のような接し方で自分に対応してきていれば、とてもやりにくい
モバP「…星さん?」
輝子「な、なんでもないよ…フヒ…」
モバP「そうですか、では三日後に星さんの初レッスンを行いますので朝の久慈に来てもらえますか?」
輝子「りょ…りょうかい…ハイ…」
モバP「あ、それとですね」
モバP「カバン、事務所にわすれてましたよ?」
輝子「フヒ…やってしまっ…た…フヒヒ…」
ミス
久慈→九時
-シンデレラ事務所-
モバP「さて、あらかた仕事は終わったな…」
モバP「ちひろさんも帰ったし、あとは明日にトレーナーさんと星さんの初レッスンのメニューを考えるだけ…」
モバP「あ…忘れてた…星さんのカバンもちゃんと保管しておかないとな」
モバP(大したものは入ってないから三日後でいいといっていたし…金庫に入れておこうか)
モバP「よいしょっ…ってうわぁ!!」
ドザァァ!
モバP「あーぁ…やってしまった…」
モバP(カバンの底が抜けてしまった…星さんに謝らなくては…)
モバP「…ん?」
床に散らばったカバンの中身は5つのCDだった
そのCDのジャケットは少女が持つにはらしくない随分と攻撃的な風貌をした男達が写っていた
モバP「ヘビメタ…?意外だな、おとなしい見た目してるのに」
モバP「お、これは知ってるな、『KISS』だ」
モバP「!!……これは」
ヘビメタのCDに混じりかつてよく目にしていたジャッケットを発見した
モバP「to my darling…」
かつて俺がプロデュースしたアイドル…輿水幸子のファーストシングル
彼女がまだSランクアイドルではなく、新人として出した曲だ
モバP「これって…初回限定版だよな…」
『to my darling』は結果的に言えば、Sランクアイドルの初CDだったということで中々の売上だった
だがそれは幸子がSランクになったあとでの話だ、この初回限定版は発売年…今から四年と少し前に買っているという証拠だ
モバP「……星、輝子か」
『え!?これってデスボイスを出すトレーニングですよ!?』
『そんな…いくら個性の時代だといってもそんなむちゃくちゃな…』
『ひとつ聞きたいんですけど…アイドルになるんですよね、この写真の娘って…』
『はぁ…わかりましたよ、お姉ちゃんたちにもいろいろ聞いてみますよ…』
『あなたがSランクアイドルを育てたプロデューサーでなければ絶対にこんなの許さないんですけどね…』
-シンデレラ事務所(レッスンルーム)-
輝子「フヒ…おはようございま…す…」
モバP「あぁ、おはようございます星さん、それとこれを渡しておきますね」
輝子「あ…カバン…?…あ、れ…?」
モバP「すいません、実は保管するときに底が抜けてしまいまして…これは同じものを僕が買ってきました」
輝子(プ…プロデューサー…このキノコバッグ、一人で買いにいったのかな…?)
モバP(正直もう二度と一人では行きたくない店だった、視線が痛かった…)
モバP「では、彼女…トレーナーさんに従いレッスンを受けてくださいね」
トレーナー「よろしくね、星さん!」
輝子「フ…フヒヒ…よろしく…」
モバP「僕も後ろでしっかり見ていますよ」
輝子「……」
輝子(正統派…フヒヒ…べつに構わない…どうせ見せ掛けだけだしね…フヒ…)
輝子(友達は…早めに『枕営業』を告発しろって言ってた…フヒヒ…それで…このプロデューサーは新人アイドルをおどす最低なプロデューサーになる…はず…)
輝子(は、はやめはやめの方が…信憑性は高いって…フヒヒ…)
トレーナー「どうかしましたか?」
輝子「な、…なんでも…フヒヒ…」
輝子(そ、そうだ…今日にでも…フヒ…)
トレーナー「とりあえず、レッスンの前に!」
輝子「フヒ…?」
モバP「聞いてほしい曲があるんです」
モバP「星さんも知ってる…かもしれないですね」
輝子「しってる…曲…フヒ…」
輝子(な、なんだろう…アイドルソング…かな…?)
モバP「では、頼みますねトレーナーさん」
トレーナー「はい♪」
カチリ…
輝子「…!」
輝子「こ…この曲って…ま、さか…」
トレーナーさんが鳴らした大型のスピーカーから流れる音楽
それは…『力強さ』『圧倒的な曲イメージ』
このふたつが合わさり、暴力的なまでに爆発するまさしく『魂の叫び』
輝子「ヘ…ヘビメタ…!」
モバP「心のそこにある言葉…それを爆音と共に吐き出すのがヘビメタというジャンルです」
モバP「あなたのカバンをぶちまけてしまったときに中に入っていたCDを見てしまいました」
モバP「あなたがやりたい音楽は…これではないですか?」
輝子「…でも…あ、あ、アイドル…だし…ダメだと思う…ハイ…」
モバP「……」
輝子「ヘ、ヘビメタは好き…でも…それとこれは…別だと…ハイ…フヒ…」
モバP「ならば、一度だけでもいいです」
モバP「この曲を聞き、あなたの心のそこにある言葉をぶちまけてください」
モバP「…星さんの方向性を決めるのはそれからにしておきますので」
輝子「…心の…そこにある言葉…」
輝子「……私の…こと…ば…」
否定され続けていた、私の個性
誰にも認められなかった、私の好きなもの
誰もが聞いてくれなかった、私の歌声
輝子「プ…プロデューサー…」
モバP「……」
この人は肯定してくれた、私の個性を
この人は認めてくれた、私の好きなものを
この人は聞いてくれる、私の………
輝子(叫び!!!!!)
輝子「エリンギッッッ!!!!!シイタケッッッ!!!!!ブゥゥナァシメジィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」
輝子「ナメコォッッッ!!!」
輝子「マイタケェェェェッッッッ!!!!!!!」
輝子「ゥオォォォォォシャヒロォォダケェェェェェェェェェェェッッッ!!!!!」
輝子「Goooooooooooooooooooo !!!!!」
輝子「tooooo ……!」
輝子「H eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeLLLLLLLLLL !!!!!!!」
輝子「イィィ…ヒャッハァァァァァァァァァァァ!!!!」
輝子「ゼー…ハー…ハー…」
モバP「…フフッ」
輝子「…!」
輝子(わ、わらわれ…!)
モバP「すごいな星!!!」
輝子「!?!?」
モバP「マイクなしでこんな声量…ガラスが震えたぞ!」
モバP「それに、素晴らしいシャウトだったぞ!」
モバP「間違いない!!お前ならトップアイドルになれる!!」ガクガクガク!
輝子「あううううううううう…か、肩をもって揺らさないでぇぇぇ…」ガクガクガク!
モバP「うおっ……」
モバP「す、すいません!!つい我を忘れてしまって…!」
トレーナー「大丈夫ですか星さん!?」
輝子「フフ…ヒヒ…オ,オフコース…」
-961事務所-
輝子「……」
モバP『お前ならトップアイドルになれる!』
輝子「…フヒ…」
今日のレッスンは終了した
そしてプロデューサーから伝えられたのは私を『ヘビメタアイドル』としてプロデュースしていくということ
輝子「フヒ…フヒヒヒ…」
輝子「フヒ…///」
やっと、思いが報われた
誰もが否定した私の好きなものを彼は肯定して、それどころか私の好きなようにさせてくれる
私の大好きなヘビメタに
輝子(私は…アイドルになれる…ヘビメタアイドルに…フヒ…)
アイドルA「ねえ」
輝子「フヒっ!?」
アイドルA「なにその声…しかもなんかにやけてるし」
輝子「そ、そうかな…フヒ…」
アイドルA「まぁいいけど、社長がお呼びよ」
輝子「わ、わかった…フヒ…」
輝子「…?」
アイドルA「なに…?」
輝子「いやその…フヒ…Aちゃん」
輝子「服と髪…みだれ…てるよ…?」
アイドルA「…あんたには関係ないでしょ、黙っててよ」
輝子「ご…めんなさい…フヒ…」
アイドルA「…むかつく」ボソッ
輝子「フヒ…?」
アイドルA「なんでもないわ、はやくいけば?」
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