P「おはよう!! 朝射精」 (105)


P「……ふぅ」

カーテンの隙間から入り込む、

清々しい太陽の光

いつもならカーテンを開け放ち、

いい朝だなぁ。と、感慨にふけっているところだろうが、

残念ながら、ええ、色々な意味で残念なことに、

そんなことはできなかった

俺は分かっていなかったんだ。

日常なんて簡単に崩れていくなんて、

普通であることは、特別であることよりも難しいことなんだって、

俺は……何も分かっていなかった

P「……………」

765プロダクションのプロデューサー

担当アイドルに、現役中学生の高槻やよいを任せられている俺は。

今日。

そのやよいで――夢精しました

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P「とりあえずズボンとパンツを洗おう」

……ふぅ。

いや、もう一度出したんじゃないぞ?

ため息をついたんだよ……

貝じゃなくて死体になりたい……ごめんな、やよい

中学生でっていう問題もあるが、

担当アイドルっていう問題もあるが、

一番問題なのは、性知識のなさそうな、

純粋無垢の大天使やよいちゃんでしてしまったことだ。

でもさ、でもだ。

俺の言い分を聞いてくれ

 純 粋 無 垢 だ か らこ そ 良 い とは 思 わ な い か ?

……そうだ、出頭しよう!

って、事件起きたわけじゃないんだから無駄か……


洗い終え、外に干してからスケジュール確認。

まぁ、確認しなくても解るが、

そこはやっぱり記憶違いを期待せざるを得ないが、

P「……やっぱやよいと一緒だよなぁ」

今日は1日やよいと一緒という、

この罪悪感を抱えた状態では、もはや地獄である

あの屈託のない笑顔で、

やよい『プロデューサーっおはよーございますーっ!』

って挨拶されて、いつものように、

やよい『はーいターッチ!』

パイt――……ともかく、

そう元気よくいうやよいと、手を叩き合わせるわけだ

夢精したパンツを洗った手で……oh

それはそれで……いいんじゃないでしょうか?

P「よくない! 煩悩退散――うっふぅ!」

よしっ煩悩を消して罪悪感に等価交換したぞ!

今日はもう仮病を使ってしまおう、あはははははっ


小鳥『明らかに元気な声で風邪だって言わないでくださいっ、怒りますよ!』

電話のプロフェッショナル、

我が765プロの事務員音無小鳥さんにバレてしまったわけで、

俺は渋々出社することにした

P「おはようございます」

小鳥「ほら、やっぱり来れるじゃないですか……元気なうちは休みなんてあげませんからね」

それなんてブラック企業。

と、言いたいところだけど、

小鳥さんの仕事量、残業時間を考えたら、

文句なんて社長にしか言えない

P「……やよいー?」

やよい「はーい!」

応接室から聞こえる声

どうやら掃除をしているようだ

小鳥「本当は私がやるべきなんですけど……ちょっと余裕なくて」

P「小鳥さん、あんまり無茶しないでくださいよ? 小鳥さん潰れたら事務所崩壊するんですから」

小鳥「解ってますよー適度に休憩しますから大丈夫です」

本当にするのかな……ふぅ。

さて、現実逃避はここまでにして、やよいに出会うとしようか

ドアノブを回し、俺は応接室へと入った


やよい「プロデューサー、おはようございます。窓拭き終わってからでいいですかー?」

P「お、おはよう。じ、時間はあるぞ、だから続けて、続けて」

やよい「?」

窓を拭くやよいは、

その未熟な体を右へと、左へと……

手を伸ばそうとして揺れる。胸ではなく、

小振りなお尻が。だ

バカ言え、俺の方を向いているんじゃない、

俺におしr……背中を向けているんだよ……。

だから、見たくて見てるわけじゃないんだ。

不可抗力なんだ

太陽に向かって向日葵は向かっていくだろ?

だから、

やよいという太陽に俺のpという向日葵が向かっていくのも必然なんだ

だから俺は悪くない


やよい『ふんふふ~ん~――っ!? プロデューサー!?』

P『やよい、やよい……』

やよいは高めの椅子に登って窓を拭いているため、

やよいの可愛らしいお尻が、

ちょうど俺の顔のあたりにくっつく

やよい『な、何してるんですか!?』

P『ゴミがついてるんだ』

やよい『だ、だったら手でぇっ』

ぐにゅっと力強くではダメだ

出来立てのお餅を掴むように、

繊細に、ゆっくりと、丁寧に……揉む

むにゅーっと痛い……痛いっ!

頬が痛い!

P「――ハッ!」

……妄想に浸っていたらしい。

やよい「はいた~ちぃっ、いぇーぃ~」

やよいはそんな俺に気づかず窓を拭いてる……もうちょっと時間かかるだろう

P「やよい、俺はちょっと買い物行ってくる」

やよい「解りましたー、気をつけて下さい」

P「ん、すぐもどるよ」

――コンビニにパンツ売ってたっけ?


今日はここまで


パンツを新調し、

ついでに2、3枚予備で購入し、やよいと合流したわけだが。

あんな調子で大丈夫なのか、俺は。

車の中でテクノブレイクだけは避けないとな……

やよいが危ない。

やよい「プロデューサー、今日は1日よろしくお願いしまーす!」

P「ああ、よろしくな、やよい」

今日は地方の撮影でやよいを連れて行かなきゃならないし、

地方ということもあって、おいていくわけにもいかないから、

今日はつきっきりだ……

P「よし、行くか」

やよい「はいっ!」

やよいの元気な返事を原動力に、

車は車道を走っていく

マイサンは先走って――げふんげふん


あぁ、やよいが見える

やよいの匂いがする

それだけで俺のハートはブレイク寸前

いつ妄想に入り込んでしまうかもわからない

そうなれば事故を起こしてしまう……それだけはダメだ!

と、理性でなんとか暴走を抑えていた

やよい「プロデューサー、どうかしたんですか?」

P「な、なんでもないぞ!」

やよい「で、でも……なんか汗がすごいです……」

やよいは俺を見つめ、

そして自分のポケットからやよいの匂い、温かさが染み込んだハンカチで、

俺の頬を拭う

P「や、やよい……さん」

やよい「……さん?」

それはやっちゃダメなんじゃないんですかねぇ!?


頬からやよいの匂いがするっ!

抱きしめてるかのような錯覚が……っ!

P「だい、ジョウブ、だから、オトナシクしててください」

耐えろ理性……

パンツの中がぬめぬめして気持ち悪いっていう最高の覚醒アイテムがあるだろう?

ここで負けてどうする?

負けていいのか? いいわけないだろ……っ

P「勝った! 俺は――?」

やよい「プ、プロデューサー……」

やよいは少し顔を赤らめつつ、

俺のズボンを……みて……いる……だと……?

P「………………アポ?」

見事なとんがりコーンいや、スカイツリーが建っていた。そして俺は首をツリー――

やよい「えっと……浩太郎とか浩司も似たようなことあったというか……」

P「……なん、だと?」

首を吊る前に首根っこを掴まなきゃいけない子がいるみたいだ


やよい「朝だと自然にそうなっちゃうらしいんです」

P「え、あぁ……そ、そう。そうなんだよ!」

やよい「でも……そうじゃない時もあるんですよね……?」

思わずブレーキ

車を路肩に寄せ、俺はやよいを見つめた

P「落ち着け、落ち着くんだやよい、これは朝のせいなんだ!」

やよい「ごまかさないでください……私、知りたいんです!」

なんだと……?

やよいが知りたい?

なにを? えっちぃことを……?

やよい「……長介達にも誤魔化されて、春香さん達も早いってごまかして……でも」

P「……………」

やよい「もし、もし……びょーきとかだったらって思うと、不安で……」

やよいはその勃っているものがなんなのかはわかる。

でも、その理由は知らないんだな……


P「……正直、早いぞ。やよいが知るには」

それは純粋なことかもしれない

でも、不純なことでもあるし、

女の子が知るべきことではない。

少なくとも、やよいのような子は知るべきじゃない……けど。

やよい「プロデューサー……」

そんな目で見られたら……喉元まで言葉が出かかってしまう

それは誰かをえっちぃ目で見ているんだと、

誰かと頭の中で[はぁぁぁぁぁぁん]してたりするんだと。

P「っ…………すまん」

でも、言えなかった

そのせいで、やよいは悲しそうな表情をする

やよい「…………いい、です。良いです、私が子供なだけなんですよね」

P「けど――やよい、それは病気なんかじゃない。理由は言えない。でも、信じてくれ」

やよいが知っても平気そうなことはそれくらいしかなくて、

理由もなんにも言えなかったのに……

やよい「びょーきじゃないなら――それで満足ですっ!」

やよいは笑顔でそう答えてくれた

向日葵が開花し、種を飛ばして……枯れて行っても。

太陽はずっと輝いていた


P「ちょっと遅れたからなー飛ばすぞ」

種も飛んだしな。

しばらくは何も問題なくいけそうだ

やよい「プロデューサーって、小鳥さんのこと好きなんですか?」

P「……えっ? 急に何言ってるんだ?」

やよい「同じ大人だから、もしかしたらそうかなーって」

……いや、違う

俺が好きなのは目の前にいるやよいだ。

でも、そんなことは言えない

P「ん~……どうだかな」

やよい「う~っ気になります~!」

……気になられても、答えられない。

答えるべきじゃない

P「で? 急に聞いてきた理由は?」

やよい「今回の私の役が恋する女の子なんです……でも、そういった経験なくて」

P「……え、好きになった人とかいないのか?」

やよい「みんな好きですよ? でも、そういうのとは違うって、もっと特殊で、特別なんだって言われて……」

恋も知らない……か。

そうだよな。

いつも自分のことなんて後回し、家のことを頑張ってきて、

今ではアイドルやりながら、家のこともやって……そういう余裕もないってことか……


ここまで。

終始迷走mind中


P「恋ってのはそうだなぁ……」

言葉にはし難いものだ

人によっては精神病の一種って言って切り捨てる人もいるし、

甘酸っぱい物って言ったり、ドキドキとか、あったかくなるとか、

抽象的なことしか言えなかったりする。

やよい「なんですか?」

P「……説明しづらいものなんだよ」

目で見えたらどんなに楽か、

ゲームみたいにメーターでもあればどんなに楽なことか。

でも、そんなものは望んだって見えはしない

P「……でも、あえて言うなら」

誰かと付き合ったりしたことはない

だけど、『恋』はきっとしたことあるんだと思う。だから

P「恋っていうのは恐れることだ」

やよい「恐れること……ですか?」


P「そう、恐れることだ。やよいもそれなら解るだろ?」

やよい「はい……でも、どうして恐れることが恋なんですか?」

……oh

だよな、流石に聞いてくるか……若干適当なんだが。

P「相手の言動を恐れてしまう、相手に対しての自分の言動を恐れてしまうんだよ」

好かれたいからこそ恐れ、

嫌われたくないからこそ恐れる

そのせいで、相手に近づいたりできなくなるし、

近づけたら近づけたでなんにも言えなくなってしまう……んじゃないかなぁ?

……でも、相手はそんなこと気にしたりしないわけで、

P「簡単に言うと……恋は感じるものであり、想うもの。自分から相手への一方通行の想いなんだ」

やよい「……? 何か変わったような――」

P「いいやなんにも変わってないぞ。今言ったことが全てだ!」

自分でも理解していないことは教えないほうがいいな……まぁ、正直。

俺は中学校の時とかはそういう思いを感じたことがあるし、

そういう相手と話したりするのが恐かったからなぁ……

結局なんにも言えず――えぇヘタレですよ、ヘタレで何が悪い


やよい「良く解らないけど……恋は自分だけがするものってことですか?」

P「そういうことだよ……って、俺は思ってる」

やよい「じゃぁ、好きっていうことと恋の違いはなんですか?」

……解りません

そんなこと金八先生にでも聞いてくださいよ。

相手を好きであることが必ずしも恋ではないだろう

なら、恋に変わる好きと、変わらない好きの違いってなんだ?

同性?

いや、同性愛なんてものがあるんだからそれは違う

やよい「何が恋で、何が好きで、何が愛なんでしょうか……」

P「難しい質問だな」

そんなこと、俺にだってわからないし、

きっと……大半の人もわかってないんだろう

P「恋は特定個人をみたときに緊張するものだよ、多分な。愛とか好きとかの違いは解らないな……」


やよい「……ごめんなさい」

やよいは急に俯いて、謝罪を呟く

P「やよい?」

やよい「プロデューサーのこと困らせちゃった……」

P「いや、わからないことを質問するなんて普通だぞ? 期待に添えない俺が悪い」

ごめんな、無駄に人生つんできただけのダメな人で

でも、わかっていることもある。

恋は好きではあるが、不安になること

好きは一緒にいることで幸せを感じること

愛は受けたり渡したりした想い。恋の向かうべきところだ

だからきっと、今俺がやよいに抱いているのは好きでもなく、愛でもなく、恋でしかない。

渡すわけには行かない思い

でも、好きなんていう程度には戻せない想い

やよい「プロデューサーは答えてくれました。恋は恐ることだって」

P「いや、それは……」

やよい「……えへへ。私、恋する女の子になりきれそうです!」

やよいhが笑顔でそう答える

役に立てたってことなのかどうか……俺にはわからなかった


撮影場所までの長い道のり

やよいとは他愛ない会話をしていたが、

普段と変わらないはずのそれに俺は違和感を覚えていた

かと言ってどうこう言うこともできず、

撮影場所についてしまった

P「やよい、頑張れ」

不安そうにしていたりはできないし、

いつものように笑顔で送り出すそれに返る

やよい「はいっ頑張ります!」

やよいの元気いっぱいな答えと姿

そこには俺が感じたような違和感も不安もなく、

逆に俺を安心させてくれるものだった

P「……気のせい、か?」

このあとの撮影に影響がなければいいが……


役者A『お、美味い!』

やよい『本当? よかった……』

役者A『いや、礼を言うのはオレだよ。わざわざ弁当作ってくれるなんてさ』

やよい『えへへ……いつも頑張ってるから。私も頑張ろうかなーって』

やよいの今回の役はヒロインの子供時代

部活動のマネージャーで、

その部にいる男の子に恋焦がれ云々っていうものだ。

見てるだけであの役者を殴りたい気持ちはあるが、

そこは全力で我慢しておこう

役者A『……そういや、お前のクラスにさ。あの黒髪のさ……』

やよい『え?』

役者A『だ、だから、鈴木だよ。鈴木。いるだろ?』

やよい『う、うん……』

役者A『鈴木ってそのさ……何が好きだとか知ってるか?』

おい待て……やよいが頑張ったって言ったのに何にもなしか?

そういやってなんだよ……台本書いたやつ誰だ!


やよい『な、なんで……?』

やよいの不安そうな表情。

けれど、なんとなく解るその理由に怯え、

でももしかしたらと希望に縋っているような瞳

役者A『な、なんでって……言えるわけねーだろ!』

やよい『っ!』

その反応で解ってしまった。

鈴木さんが好きなんだって確定してしまった

やよいの悲しそうな表情。

それは演技のようで、演技じゃないような……

役者A『悪い、怒鳴って――』

P「そうじゃないだろ! 怒鳴ったことじゃなくてだな、目の前の子に――」

監督「カット、カァァァァァァット!! 何してるんだ!」

P「……すみません」

演技だってわかってたんだけどな……

やよいの本気に近いそれに思わず……やっちゃったZE


ここまで、中断


いやしかし、

女の子が激しく動いた時にほとばしる焦ってさ、

揺れる胸よりもずっと素晴らしいものだって思わないか?

常に動いているような人ならそりゃまぁ、

汗をかくことも多いだろう。

だけど、冬場なんかは

かなりの運動量がないとほとばしる汗は出現したりしない。

つまり!

ほとばしる汗は夏場限定の神秘的な現象だったんだ!

P「って……何してんだ。俺」

やよいの撮影はまだつづいているというのに、

俺はその撮影をこのブルーレイディスクよりも優秀な、

脳みその記憶回路に刻み込むことができない……それでいて、

撮影の邪魔はするなって肝に銘じさせられたんだから理不尽極まりないものである


確かに、

怒鳴った部分で俺も怒鳴ってしまったさ

でも、

それだけで現場追い出しって酷いと思うんだよ

可愛い自分の担当アイドルがいいように撮影されてると思うと――うわぁぁぁぁぁぁぁっ

……って、

そんなことはないんだけどな。

P「……それにしても」

少し気になることがあった

大したことではないのかもしれないが、

やよいが少しおかしいような気がしたんだ

もちろん、やよいほどの子であれば、

オスカーだのなんだのを総取りできるだろう

でも、あの演技は……。

P「やよい、誰か好きな人でもいるのか?」


もちろん、

やよいは今撮影中だから、

その問いかけに答えてくれる人はいない

……いや。

P「………………」

やよいの鞄。

P「………………」

まて待て待て

それはいけないぞ、落ち着くんだ

犯罪に手を出すより、

とりあえずは仲のいいみんなに聞いてみるほうがいいかもしれない

でも、相談してるのか?

『やよい「春香さん達も早いってごまかして……でも」』

無理、だな。

春香達には多分相談したり出来ていないはずだ

P「……本人に直接聞くしかないか」


そして撮影の合間、

休憩時間の時にやよいと話してみることにした

やよい「悩み、ですか?」

P「ああ、車で話した――」

やよい「なにもないですよー?」

P「本当にか? 本当になんにもないのか?」

心配だからこそ追求する

でも、

やよいにとってそれは余計なことだったのかもいれない

やよい「……………」

P「やよい?」

やよい「本当に、なんでもないですから」

中身のなくなったペットボトルがクシャッと音を立てる

それを皮切りに、まるで世界戦を超えたかのように、

無音の空間が、暗黒の世界が視界に広がった

やよいと自分しかいないような錯覚、

その中で、やよいは悲しそうな笑顔で首を振る

やよい「何かあったら、ちゃんと話しますよー!」

ハイタッチの姿勢

P「あ、ああ……」

それを受けてのパンっという軽快な音が世界を元に戻してくれた

けれど……やよいは撮影に戻っていってしまった

何かあることは明白なのに、

なにも、できなかった


P「やよい……」

俺はトイレの個室にこもり、亀と……頭を抱えていた

P「やよい」

やよいのあの表情たまらなかったよぉぉぉ

何してるんだって?

いや、だって悪いことだとはわかってるけど、

いつも元気で、プリティでキュアッキュアッなやよいが

悲しそうな表情をしていたんだぞ!?

心配だし、不安だけど、

溢れ出すっていうか膨張したコイツを緊急冷却しなきゃ、

冷静な思考にはなれないしな

……クロックアップ

時間はない、短期決戦だ!

P「いっけぇぇぇぇぇえええっ!!」

俺は戦うぞ。

だからやよい、お前も――……。


……って、

俺は何を考えてるんだろうな。

さて、

そろそろトイレから出――……れないッ!?

ない・・・・ッ、ないぞ・・・・・ッ!?

汚れるために生まれてきた、

純白の柔らかな紙製の薄いそれを紙製の筒に何度も何度も巻きつけられたヤツが・・・・・な・・・・・い・・・・・・?

圧倒的・・・・ッ

圧倒的絶望・・・・ッ!

あるのは・・・ッ

あるのは汚ケツを拭けないという・・・・・絶☆望・・・・ッ!

P「あががが・・・・ッ、認め、ない・・・認めないぞ・・・・ッ」

こんな、こんなケツ末ッ!

白き生命の宿る液体なら垂れ流しているというのに……ッ!

P「くそっ、くそっ……くそぉぉぉぉっ!!」

俺は……世界にッ

運命という逃れることのできない絶望に――……負けたっ!


ここまで

思った以上に筆が乗らない


運命という逃れることのできない【絶望に負けたっ!】
                        /\
                       /   \
                  希望を諦めちゃダメだ!

           BREAK!!

P「っ!?」

そうだ、まだなにも終わってなんていない。

やれることをやったか?

考えられることを全て考えたか?

いいや、まだだろうっ!?

なのになぜ諦められる?

汚れた肛門のままで、やよいの前にある重く硬い運命の門を開けると思っているのか!?

開けるわけがない!

P「うぉぉぉぉぉっ!」

【閃きアナグラム】

よび○ーパ○お○ば   <ー ペ あ う ふ ぇ で き お く っ

P「見えたッ! まだ終わりじゃないぞ!」

【予備ペーパー置き場】

探せ……っ! この世の希望がそこにあるッ!


過去の証言を思い出すんだ!

『小鳥「トイレットペーパー買い足しておきましたよ」』

違う

『伊織「ちょっと! これソフトじゃないじゃない!」』

違うっ

『春香「トイレットペーパーがなかったんです!」』

これじゃないッ!

あの子だ。

いつも事務所の掃除とかをしてくれる、

備品などをほぼすべて把握している彼女の言葉――

『やよい「春香さん、ペーパーの予備ならタンク上の棚にありますよーっ」』

これだ!

バッと振り向き、タンク上を見つめる。棚がある、そこには――

白衣の天使と言わんばかりの輝きを放つそれが確かに存在していた

P「ぁ……ああ……」

その姿を見た俺は、思わず言葉を失った

いつものように片手で鷲掴みはせず、優しく抱くように棚から取り上げる

一枚、一枚、丁寧にめくりながら、ありがとう。ありがとう。と、

感謝の思いを心に響かせていく


――トイレットペーパーがクロになりました。おしりふきを終了します


勝った……俺は。

俺は勝ったんだッ! 絶望に!

ありがとう、やよい……ありがとう、トイレットペーパー!


P「……ふぅ」

壮絶な戦いだった

だが、俺はこれで確信した。

天使は舞い降りてくれるのだと。

女神が微笑んでくれるのだと。

天使は堕天とみなされ、流されゆく運命を知りながらも、

俺にその純白の身を捧げてくれたのだ

P「トイレットペーパーの白さ……俺は忘れない」

俺は悪魔と言われてもいい、鬼と言われてもいい

嫌われても――いい。

P「何があっても、やよいを悩みから救う」

俺が穢れゆく天使や神として、やよいの元に舞い降り、微笑む。

それが俺のやるべきこと、そうだろ?

胸ポケットにしまいこんだ一枚のペーパー

それが反応することはないが、

俺には、小さく光って肯定したように思えた


監督「またあんたか、見るのはいいが、邪魔は――」

P「さっきはすみませんでした。でも、もう邪魔なんてしません」

監督「あ、ああ……そ、そうか」

P「……やよい」

一生懸命に撮影を頑張るやよい

その姿は、やはり可愛く、そして美しかった

その一瞬一瞬に精一杯尽くし、

たとえワンフレームの出来事だとしても全力で挑む。

P「だけど、違う」

それは、やよいのそれは演技には程遠かった

ヒロインが過去に経験した失恋をするストーリーがやよいの役

だけど、やよいは演技なんてしていなかった

あれはやよい自身だ

やよいは登場人物を演じるのではなく、元より登場人物そのものだった

恋を知らず、俺によってそれを知り、

やよいは理解してしまったんだ

自分が失恋していたという――……悲しい事実を


やよい「お疲れ様でした―!」

監督「お疲れ様、いやー良い演技だったよ。引き込まれたね、素晴らしい!」

やよい「うっうー、ありがとうございます!」

監督との話を終えたやよいが、

元気なやよいを演じてこっちに向かってくる

P「お疲れ様、やよい」

やよい「うまくできてましたか―?」

P「……どうだろうな。俺はあんまり詳しくないし」

やよい「えへへ、でも見てくれただけ嬉しいです!」

気づく前の俺の感想を述べれば、

監督同様に素晴らしい。と、褒めてあげていただろう。

でも、今の俺は気づいたんだ

撮影に出ていたやよいは演技じゃない。

今、目の前にいる【元気なやよい】こそが演技であるということに。

P「帰るか、早くみんなに会いたいだろ?」

やよい「そうですね、帰りましょーっ!」

ほら。

いつものようでいつもとは違うから

終わったあとのハイタッチを忘れてる


やよい「それで、あの俳優さんが――」

P「………………」

やよいの話は、

今日の撮影についてのことで、

それも、自分ではなく周りのことばかり。

あの休憩時間に聞いたのが失敗――いや、

ある意味ではそれは成功だったのかもしれない

やよいが自分のことを話さないのは、

俺に余計な心配をさせるかもしれない。という不安からだろう。

やよい「あの、プロデューサー?」

P「ん? どうした?」

やよい「いえ、その……私の話は必要ないのかなーって」

それはどっちの意味で聞いたんだろうか。

今話している今日あった出来事や、まだ俺に話していない伊織達とのことか。

それとも……高槻やよいという少女の悩みなど。か


やよい「プロデューサーは話を聞いても面白くなさそうだったから……」

P「そんなことはないぞ? やよいの話ならたとえスベる話でも面白い!」

やよい「えーっスベったら面白くないじゃないですかーっ!」

P「それは違うぞ! ただの一般人が怪談を話したところで並みの怖さだ! しかぁしっ」

やよい「はわっ!?」

P「かの稲川淳二の怪談なら万倍怖い! だろう? やよい!」

やよい「それは……そう、です?」

なんで疑問系……。

いや、そうか。

やよいは稲川淳二なんて知らないのかもしれない

最近出てこないもんなー。残念だけど

そもそも、真夏の心霊特集自体が悲しいほどに減少してるからな

P「まぁ、とにかく。ただの水がふ○っしーの天然水ってラベルを貼るだけでブランド品になるようなものだよ」

やよい「あ、それなら解るかも――って、わ、私はそんな凄くないですよーっ!」


P「いいや凄いね。やよいはすごいよ、さすが高槻家のおねーちゃん!」

やよい「そ、そんな大げさに――」

P「いつもみんなのことを考えてるし、家事も仕事も学校も両立させてる」

やよい「………………」

P「それってかなりすごいことだって思うしな。だから――」

やよいが不自然に黙り込んでも、

俺はやよいを褒め称えることを止めはしない

だって、言葉では語り尽くせないほどに、

やよいはすごいし、可愛いし、えらいし、優しいし、

可愛いし、可愛いし、可愛いし、優しいし、柔らかそうだし

あぁーやよいやよいクンカクンカ――

でも、やよいはそれが気に入らなかったらしい

やよい「私は全然ダメな子です!」

P「……………」

そう、怒鳴った


やよい「私は全然優しくなんてないっみんなのことを考えてもいません!」

P「…………いや、考えてるだろ?」

いつもみんなのことを考えていて、

むしろ、自分のことを優先しない。

長女だからと、お姉ちゃんだからと。

自分の欲はすべて押さえ込んでいるじゃないか。

P「やよいはちゃんと――」

やよい「考えてたら。考えてたら……私、今すぐ帰りたいって思ってるはずなんです……」

でも。と、

やよいは間髪いれずに続けた

やよい「家に帰りたくない。プロデューサーと一緒にいたい。私は……今そう思ってるんです」

P「……え?」

やよい「一緒にいるだけでふわふわーって幸せで、温かくなって元気になれて――ドキドキして」

P「やよ――」

やよい「なにより、嫌われたくない、好かれたい……そう思うのって感じるのって……恋なんですよね?」


やよい……。

やよいの好きな人って、まさか、いや。

でも……それは。

P「…………………やよい」

やよい「はい」

これはきっと、

何よりも酷いことかもしれない。

俺自身、気持ちはすごく嬉しいし、

喜びたくもあることだが――だが。ダメだ

P「それは気のせいだよ」

やよい「え……?」

P「それは恋じゃなくて、俺という年長者に対しての憧れとかだよ」

やよい「で、でもっ」

P「いつも自分が一番上で頑張ってるからな、たまには甘えたいんだよ。きっと」


これは、気づかせるべきじゃなかった

やよいには、まだ早すぎたんだ

P「家に帰ったらまた甘えられない立場になるから、少し休みたくて帰りたくないのさ」

やよい「ち、ちが……違う。と、思います……私――」

P「やよい!」

やよい「っ……」

P「気のせいだよ」

俺はプロデューサーで、やよいはアイドル

俺は大人で、やよいは子供。しかも中学生だ

そんなのはあっちゃいけない。たとえどんなに渇望しても妄想までしか許されない。

禁断の恋――だから、俺は好きな人を答えられなかった

やよい「そう、ですか……」

P「ああ、そうだよ。そうなんだ」

やよいのために、俺はやよいを騙し、自分を騙す

ごめんな、やよい

中断


その会話のあった夜、俺は社長に告げた

もう、やよいの担当からは外れる。と。

だってそうする以外ないだろ?

俺がやよいの想いを否定したって、蓋をしたって

それこそ、拒絶したって……

やよいが俺を好きであるという事実に変化はないのだから

いっそ離れるべきなんだ

いっそ勝手なことをして嫌われるべきなんだと。

そう思ったから……。

その翌日、

俺はいつものように『振舞っている』やよいにそのことを話すことにした


やよい「な、なんでですか……?」

P「やよいも大分良くなってきたし今やAに近いBランクだろ? だから――」

やよい「でもっ! でもっ……まだ、まだ私は」

やよいの悲しそうな表情は、

言葉にし難いほどに俺を苦しくさせる

それは間違っているぞ。と、

俺自身が裁きを与えているかのように、

全身が重く、呼吸が苦しく、思考が鈍っていく

けれど、それでも。

俺はそれを正しいと思った。

だから、続けた

P「もう、決まった事なんだ」

やよい「そんな、そんなのって……」

春香「おはようござ――」

やよい「そんなのって、最低です! プロデューサーは嘘つきです! 裏切り者ですっ!」


やよいの精一杯の怒号を聞きながら、俺は首を横に振り

まっすぐ見つめた

P「ごめん」

やよい「っ……プロデューサーなんて、プロデューサーなんて――大嫌いです!」

やよいの声が事務所に響く

それはもっとも言われたくない言葉で、

でも、俺が望んだ言葉だった

走り去っていくやよいを追うことはしなかった

いや、追うことはできなかった

その資格がなかったから。

春香「……プロデューサーさん」

P「春香、来てたのか」

わざわざ小鳥さんを買い出しに行かせたりしたのに、

本当……タイミングが最悪だったな……


春香「何、したんですか?」

P「春香には関係ないことだよ。いや、関係あるな。今度から俺が春香の担当を――」

バンッと机が衝撃によって軋み、

机の上の資料が床へと散らばっていく

P「おいおい、何して」

春香「最低じゃないですか、それ……どうしてそんなこと。だって、あの時……」

P「ああ、約束したし、その時のやよいの希望に満ち溢れた顔は覚えてるよ」

あれで惚れたんだからな。

いや、正直に言えばもっと早くから目をつけていたわけだが、

でも、あのときのやよいは可愛かった

同時に、夢を追う少女としての希望に満ち溢れた笑顔

それの美しさといった言葉にさえし難いものだった

そして……俺はそれを裏切った。絶望に叩き落とした

トップアイドルにしてやるという約束を中途半端で投げ捨てたんだ

春香「ならどうして!」

春香が本気で怒るということ自体見たのは初めてだった

だからこそ、嬉しくて思わず笑ってしまう


春香「私、本気で怒ってるんですよ?」

P「解ってるよ……だから嬉しいんだ」

やよいのことを本気で思ってくれているから。

これなら、

俺のことを嫌いになったって、落ち込んだって、

みんなが何とかしてくれると安心でき――

パンッ....と、

ハイタッチでもしたかのような乾いた音が響く。

傷んでいるのは心。痛むのは左頬。

春香「やよいが怒鳴った。やよいが大嫌いって言った。やよいが――泣いたんですよ、プロデューサーさん!」

春香に言われなくてもわかってるよ、そのくらい。

湧き上がる理不尽な怒りは、

春香へと向かうことはなく、自分を強く傷つける

噛み締めた唇が、ピリッと痛んだ

中断


P「わかってるよ、そのくらい」

春香「だったら……だったらどうして!」

P「仕方ないだろ! やよいに好きだなんて告白されたら突き放すしかないじゃないか!」

春香「へ……?」

プロデューサーとアイドルでなかったにしろ、

大人と中学生という時点でダメなんだから。

ロリだけど愛さえあれば関係ないよねっていうわけにはいかないし、

むしろ警察と接点持てちゃうようなものだし

春香「いや、え? ん? 今、なんて?」

P「やよいに好きって言われたんだよ。でも、ダメだろ?」

春香「……ロリコンのくせに?」

P「はわっ!?」

なぜその極秘情報を知ってやがる!

34号文書よりもずっと機密性の高いものだったのに!

春香「何驚いてるんですか! やよいの前でのプロデューサーさん見れば一瞬で理解できますよ!」

な、なんだってー!?


P「ま、待て待て。俺は悟られないようにだな……」

春香「そりゃ、やよいの目があるときは普通ですよ? でも」

春香はそこで区切ると、

小鳥さんが妄想に耽っている時のような

少しだらしのない表情をした

P「アイドルがそんな顔を――」

春香「いや、これがプロデューサーさんのやよいといる時の表情ですけど」

P「なん……だと……? おい、それは一体どういうことだ!」

春香「プロデューサーさんがロリコンだということは周知の事実! それが私の答えだっ!」

ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ

か、隠すべき想いが周知の事実だった。だと?

終わりだ、全て終わりだっ!

何もかもが……

春香「だから……良いじゃないですか。別に。好きでいたって。好きな人と一緒に頑張ったって」

P「だ、だけど……」


春香「あぁもう!」

バンッとまたしても机を叩き、

春香は俺を睨むように見つめた

P「な、なn――」

春香「なんで最後までチョコたっぷりじゃないんですか!?」

は?

チョコ? なに?

春香「途中までしかチョコがないトッポはトッポじゃない!」

P「何言ってんだ?」

春香「――だから! 変態でロリコンなプロデューサーさんがなんで変なところで真面目になってるんですか!」

やべぇ、やべぇよ……

変態だってバレてるよ、やよいで抜いちゃうような変態さんだってバレてるよぉ……

春香「確かに、トッポは中にチョコが隠れてるかもしれません。でも……チョコは最後まであるんです」

春香はそう言いつつ、

ホンの少し悲しげな表情で続けた

春香「でも、チョコは最後にはその皮を飛び出してるんです。プロデューサーさんだってそうあるべきなんじゃないんですか?」

P「っ……」

俺は……俺は……


春香「ロリコンならロリコンを貫き通したらどうですか?」

P「け、けどだな、ロリコンは……」

春香「イエスロリコン」

P「ノータッチ!」

そう、この精神であるべきなのだ。

ゆえに――

春香「……イエスやよい」

P「ハイタッチ――……って、おい!」

ジト目で見ないで春香さん。

お願い、春香さんのその目は結構傷つくんです……

春香「訂正します」

P「え?」

春香「プロデューサーさんはロリコンじゃない、やよいが好きなだけなんです!」

P「ま、まぁそう――?」

そうか……いや、だが、

世間から見たらそれは――

春香「両想いなら……合法です、合法ですよ。プロデューサーさん! 周りがどう言おうと合法なんです!」


P「合法……」

春香「はい。だから……行ってあげてください。気持ちを……伝えてあげてください」

春香はそう言って俺の腕を引き、

扉の方へと押しやった

P「春――」

春香「私、トッポもポッキーも好きです。でも、中途半端なトッポは嫌いです」

P「……すまん。ありがとな」

俺はそう残し、やよいを追いかけて出ていく。

その時の春香は俯いていて表情はわからなかった。でも、

なんとなく……その春香がどういう表情なのかを解っている自分がいた

……春香のためにも。

俺はちゃんとやよいに伝えなきゃいけないんだ。

隠してきた気持ちを。

最後にはみ出てしまうほどの――気持ちを!


幕間


春香「……あ~あ。何してるんだろ」

春香「…………あのまままともでいてくれるなら、私を見てくれたかもしれないのに」

春香「結局、私の好きな気持ちなんて――」

貴音「春香は本当にプロデューサーをお慕えしておりましたよ」

春香「っ!」

貴音「ゆえに、彼が想う。彼が望む道を薦めた。自分ではなく、彼の幸せを優先させたのです」

春香「貴音さん……」

貴音「春香、私のオススメのお店をご紹介しましょう。奢りますよ」

春香「……ラーメンですか?」

貴音「いいえ、私とて甘いものは好きです。その中で、私が見つけた最高の一品を」

春香「えへへ……ご馳走してくれるなら、行こうかなっ」

貴音「では、行きましょうか」

春香「はいっ!」

中断

幕間はこの1レスのみ


P「……やっぱり、ここにいたか」

やよいが行くところは大体決まっているし、

そうでなくても中学生であるやよいが走って逃げて隠れるとしたら、

公園にある遊具の中くらいしかない。

その予想は見事に的中した

やよい「……もう担当じゃないんですよね? プロデューサー」

やよいはしゃがみこんで俯いたまま寂しそうに漏らす……でも、

違うぞ。違うんだ。やよい

P「あれは……確かに本気だった」

やよい「………………」

P「でも、やよいを大切に思ってる人に言われたんだ」

やよいを大切に思ってくれる人

春香に言われ、気づかされた大事なこと

P「最後までチョコたっぷりでいろってな!」

やよい「はい?」


P「あ、違う。そうじゃなくて……最後まで自分を貫き通せって」

本当はロリコンでいろとか、

チョコ云々とかだったんだが……まぁ、

整理するとつまりそういうことだ

やよい「……どういうことですか?」

P「やっぱり……俺は最期までやよいを見届けたいんだ」

やよい「え?」

でも、それは少し難しい

変態さんな俺は、

世間体の目が真っ白だろうがなんだろうが、

エクスタシーヒャッハーで梨汁ブッシャーできないこともないが、

やよいは……。

P「やよい、大人である俺を好きだってことがどれだけおかしいことかわかるか?」

やよい「……解りません」

だよな……恋すら知らなかったわけだし


P「まぁ、かなり異常ってわけじゃぁないが、それでも普通ではないんだよ」

やよい「普通の恋ってなんなんですか?」

P「それは同じ年代の人を好きになることだろ」

やよい「じゃぁ……なんで普通じゃなくちゃいけないんですか?」

やよいの質問。

それに対しての正しい答えなんてきっとない

世間からしたら。とか、常識的には、とか。

そういうちょっとウザったくなる理屈のもとで答えなきゃならないんだからな

P「それが普通だからだよ。一般の人から見たそうあるべきものだからだ」

やよい「……なら、私は普通じゃなくていいです」

やよいは泣きそうな顔で俺を見つめてくる

やよい「特別だって、悪いことじゃないですよね?」

まぁ、年上を好きになることはそこまで……な。

問題は大人が子供を好きになるっていうことだ


P「でも、それはきっと報われないと思うぞ」

やよい「プロデューサー、私のこと嫌いですか?」

P「いいや、好きだね。大好きだ、愛してると言っても――いや、世界の中心で叫んでも良い!」

やよい「えっ」

P「あ」

思わず否定しただけでなく、

よもや全力で思いを伝えてしまうとは……

こうなったらもう、止めるか。

小難しく考えたり、言葉を選ぶなんて面倒だ

P「俺はやよいのこと好きだ。それこそ俺のここがビーストモードになるくらいにな」

やよい「びぃすともぉど?」

P「そう。人はそれを勃起という。そしてそれは欲情。つまり、女の子を見てえっちぃ気分になった時になるんだ」

やよい「え……ぁ、っ!」

今まで見たそういうシーンを思い出してしまったらしく、

やよいは口を抑え、一気に真っ赤になった


P「だが、大人が子供を好きになるのは異常なんだ。異常すぎるんだ」

やよい「そういうこと……ニュースでたまに聞いたりすることはあります」

P「だろ? 見事犯罪者でグッパイ表舞台。だ」

しかも、

それは承諾したやよいにだって悪影響を与えかねない。

それこそ、アイドルとしての活動は止めるようだし、

普通に学校行ってるだけにしても、

周りからは気持ち悪いとか言われたりするかもしれない

P「だから……言いたくなかった。遠ざけようと思った。気持ちを知った以上、今までのようにはいられないからな」

やよい「………………」

P「で、ついうっかり漏らしてしまったが。俺もやよいが好きなんだ」

やよい「はい」

本当はもうちょっと真面目に聞こうとも思っていたんだけどな

どうやら、俺はそういうのは合わない性分らしい

P「だから、答えてくれ。やよい。世間から、周りから、どんなに冷遇されるとしても、俺を好きだって気持ちは変わらないか?」


やよい「変わりません」

子供だからなのか、

それとも、初めからずっとそういうことだけを考えていたのか、

やよいは聞かれてすぐにそう答えた

やよい「私、まだ良く解ってません。この気持ちのこと。でも……間違いないと思うんです」

P「……そうか」

変わらない……か

なら……良いか。

いいんだよな? 両者合意とみなしてよろしいですね?

ロボトr――じゃなかった。

P「なら、最期まで俺にプロデュースさせてくれ!」

やよい「最期……最期ってどっち、ですか?」

P「え?」

やよい「トップアイドルになるまでか、アイドルを止めるまでか」


…………。

何か勘違いをしているみたいだから、

ちゃんと答えてやるのが世の情け

P「いいか、やよい」

やよい「は、はいっ!」

やよいは俺の反応が怖いらしく、

ビクッと体を震わせる。

その小動物のような仕草に、

俺のマイクがスタンド・バイ・ミーしたが、それでもこの気持ちは収まらない

P「最期っていうのは――2人を死がわかつまでだ!」

やよい「っ!」

P「嫌か?」

やよい「いやじゃ、ないです……嫌じゃないです!」

やよいはそう言いながら遊具の中から飛び出すと、

俺に抱きつき、答えた

やよい「一緒にいたいです……プロデューサーと!」


子供だから、

きっと深くまでは考えきれていないだろう。

でも、それは確かな気持ちであったからこそ、

そして、確かな気持ちであるとわかったからこそ、

俺は余計な言葉は付け足さず、答えを返す

P「ああ、一緒にいよう。最期まで、俺がやよいをプロデュースしてやる!」

やよい「はいっ……お願いします。プロデューサー!」

いつかまたちゃんと話す時が必要だろう。

でも、今はこれでいい

やよいがもう少し大きくなって、

恋とか、恋愛とか、結婚とか、

そういうことが解るようになったら――話そう

やよい「プロデューサー!」

P「ん?」

やよい「ハイ!」

やよいがちょっとだけ背伸びをして、手を突き出す

P「キャッチ!」

やよい「え――」

P「チューッ!」

その腕を掴んで引き上げ、俺はやよいの頬に優しくキスをした


やよい「プ、プロ、プロデュ……」

P「唇は大人になってから。な?」

やよい「約束、ですよ?」

その見上げる目線、つぶらな瞳、

僅かに捻らせた体勢から生まれる見事な可愛らしさ

ガッとやってちゅっとやってはぁぁぁぁんしたい。

すごくしたい。

でも、でもだめだ。

けど……けどさ。

両者合意の上だしいいと思うんだ

P「やよいぃぃぃ!」

やよい「はわっ!?」

がっとやってチュッを理性で抑え、ぎゅっで我慢した結果

出所するまではわずか半日程度で済んだ


終わりです。
本来2日で終わらせる予定だったのに……


まとめるとつまり、高槻さん可愛いってことです

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