唯「おいたち!」(406)

唯「ねぇねぇ、みんなで自分の生い立ちについて語り合おうよ!」

律「急にどうした?」

唯「だって・・・みんな全然自分の過去について語ろうとしないじゃん! もしかして重大な何かが過去に・・・」

澪「あのなぁ・・・」

梓「最悪の場合を考えて、そういうのは探らない方がいいと思いますよ」

紬「じゃあ、今日は誰にする?」キラキラ

律「おい」

>>2
1唯
2澪
3律
4紬
5梓

憂ないのかなら1で

紬「じゃあ、今日は唯ちゃんね」

唯「・・・」

梓「言い出しっぺなんだからしっかりして下さい」

唯「わ、分かったよ」

唯「私と和ちゃんが幼稚園で出会ったのはみんな知ってるよね?」

唯「その前後から・・・」

__
___
____

私はずっと孤独だった。

両親が毎日のように出張に行くので、隣のおばあちゃんに世話をしてもらっていた。

おばあちゃんはとてもいい人だけれど、私は常に寂しさを抱えていた。

同年代の友達がいなかったからだ。

幼稚園に入った時、一人の女の子に声をかけてみた。

それが和ちゃんとの出会いだった。

何故だか知らないけど、いつの間にか仲良くなって気付いたら親友になっていた。

でも、和ちゃん以外の友達はできなかった。

何故だか他の人に嫌われているような気がした。

その時は、心当たりもなかったのであまり気にしなかった。

そして、小学校に入学する。

小学校に入ってみて、小さな疑問が大きな確信に変わった。

私は明らかに嫌われている。

何か悪い事をした心当たりはないし、理由は全く分からない。

でも、和ちゃんだけは私の味方だった。

それも不思議だった。

何故和ちゃんだけは私の味方になってくれるのか。

3年生になって、初めて和ちゃんと別のクラスになった。

その時から、本格的なイジメが始まった。

最初は些細な悪戯だったのが、段々エスカレートしていった。

担任の先生に相談したが、全く意味が無かった。

それどころか、担任の先生はイジメる側に加担し始めた。

一緒にイジメを行い、教師という立場を利用してその事実を揉み消したのだ。

耐えられなくなった私は、とうとう不登校になってしまった。

そんな時、和ちゃんが私の事を心配して私の家を訪れた。

私は自分の部屋に引きこもっていたので、憂が代わりに対応した。

でも、和ちゃんは憂を押し切って私の部屋の前まで来た。

ドアには鍵がかかっていて開かないので、和ちゃんはその場で私に呼び掛けた。

和「クラスでイジメられて不登校になったんでしょ?」

唯「な、何で知ってるの?」

私は、イジメられている事を和ちゃんに話していなかった。

余計な心配をかけたくなかったからだ。

和「そのぐらい知ってるよ! 唯の友達だもん!」

唯「でも、担任の先生もイジメる側の味方なんだよ・・・、絶対敵わないよ・・・」

和「そんな担任は教育委員会に訴えてクビにしちゃえばいいんだよ! 唯は悪くないもん!」

唯「和ちゃん・・・」

和「お母さんに頼んでおくから、明日からは学校に行こうね!」

唯「うん!」

和ちゃんの大胆な発想にビックリしていた私だけど・・・

その後、あの担任は本当にクビになった。

その時、改めて教育委員会の凄さを思い知った。

その後はイジメに加担するような悪い教師に出会う事もなく、一応平和に小学校を卒業した。

でも、それはつかの間の平和だった。

あの時、何故私が嫌われているのかを調べていれば・・・

この先の更なる地獄を味わう事も無かっただろう。

結局、小学校にいた間も友達は和ちゃんだけだった。

私と和ちゃんは、もちろん同じ中学校に入学した。

でも、和ちゃんとは別のクラスになってしまった。

その瞬間、あの頃の記憶が蘇る。

そして、視線を教卓に向けると・・・

忘れもしない、あの教師の顔があった。

ありえない、絶対にありえない。

あの男はクビになったはずだ。

そして1時間目の学活が終わり、私は和ちゃんのいる教室へ行こうとして廊下に出ると・・・

あの男が不吉な笑みを浮かべて立っていた。

そして一言、

「忘れたとは言わせねぇぞ平沢ァ・・・覚悟しておけ・・・」

次の日の朝、私が遅刻寸前で教室に入ると・・・

クラスのみんなが一斉に私を睨んできた。

あの時と全く同じだった。

それどころか、他の教室に入った時も、廊下を歩いている時も同じような事をされた。

そして私は気付いた。

学校全体が私の敵となっている事に。

あの頃の再来、いや・・・

更なる地獄の始まりだった。

今回は以前とは違い、教育委員会を頼る事もできない。

校内の生徒・教師のほぼ全員が敵であり、イジメられているという事実を立証する事が不可能なのだ。

そして、私はまた不登校になった。

だが、家も安全地帯ではなくなっていく・・・

とうとう家にまでイジメる側の人達が押しかけ、ゴミや爆竹を投げ込んだり、外壁に落書きをしたりするようになってきたからだ。

流石に不法侵入まではしてこないので自分に直接危害が加えられる事は無い。

しかし、憂に迷惑をかけてしまっていると思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

唯「憂・・・ごめんね・・・、私のせいで・・・」グスッ

憂「お姉ちゃんは何も悪くないよ! 私の事は気にしないで!」

唯「うわ~~~ん!」ポロポロ

また、前のように和ちゃんが家を訪れた。

そういえば、最近家への攻撃がなくなったような気がする・・・

和「もう家を攻撃される事はないから、安心していいわよ」

唯「なんで?」

和「教師に従わず、一般生徒との交流もなく、喧嘩が強い人達と言ったら・・・?」

唯「ふ、不良!?」

和「そう、不良達を味方につけて唯の家の周辺を巡回させてるの」

唯「で、でも・・・」

和「不良って言っても見かけだけで中身はいい人なのよ、今度見かけたら仲良くしてあげてね」

和「(不良の中でも唯の事が好きな人達を集めたんだけどね・・・、唯は可愛いらしいから人数稼ぎは楽だったけど)」

その後、久しぶりに家の外に出た。

もちろん、不良の人達とも会った。

何故かみんな顔が赤かったような気がする。

話してみると、意外とみんないい人達だった。

憂には和ちゃんの方から説明してもらい、とりあえず一安心。

でも、このままだと出席日数不足で高校へ進学できなくなってしまう。

そこで調べてみようと思った。

何故自分が嫌われているのか、何故あの男が復帰していたのか・・・

後者の方はすぐに分かった。

彼が当時の二大企業の一つ、紫合(シアワセ)グループの御曹司だからだった。

不良の人達から聞いた話だと、あの男のモットーは

「正義なんて金と権力でブッ潰せ」らしい。

しかし、前者の方は調べようがなかった。

その数日後、公園付近を散歩していると・・・

その先に、あの男と男子生徒数人がいた。

いたと言うより待ち構えていたと言った方が正しいかもしれない。

周りを囲まれてしまい、逃げ場を失った。

今は不良の人達もいない、どうすれば・・・

男「お前らァ・・・平沢をブッ潰せェ!」

屈強な男子生徒達とあの男が私に襲い掛かってくる。

私は運動が得意ではないし、喧嘩の経験もない。

一方的に殴る蹴るの暴行を受け、心身ともにボロボロにされていくだけだった。

唯「うぇぐ・・・痛いよぉ・・・痛いよぉ・・・」ポロポロ

男「ハハハh・・・ん?」

男が振り向いた先には・・・木に縛り付けられた男子生徒達と・・・

憂「お姉ちゃんを・・・イジメないで・・・!」ハァハァ

憂がいた。

男「平沢の妹か・・・、だが下っ端を片付けるので精一杯だったんじゃないのか?」

憂「そんな事・・・ないっ・・・」ハァハァ

男「ならいいぜ、思う存分痛ぶってやるよ・・・」

私の目の前で、憂が痛め付けられていく。

いくら憂でも所詮は華奢な女の子。

屈強な男子生徒数人を倒すだけで精一杯だ。

唯「やめて・・・やめてよぉ・・・」ポロポロ

憂「大丈夫・・・だよ・・・、お姉・・・ちゃん・・・」フラフラ

唯「憂・・・」

私はお姉ちゃんなのに、何でこんなに弱いんだろう。

私はお姉ちゃんなのに、何でこんなに頼りないんだろう。

私はお姉ちゃんなのに、祈る事しかできない。


だったら、無駄だと分かっていても祈るしかない。

憂の無事を、あの男に天罰が下る事を・・・


憂「ううッ・・・」フラッ・・・

男「オラァ!」

ドガッ!

憂「うあッ!・・・ああ・・・」ドサッ

男の猛攻に耐えかねた憂がついに倒れる。

男「どうだ?土の味は?」

憂「うぅ・・・」

憂が必死に立とうと、戦いを続行しようとする。

もう勝てる訳がないのに、私のために。

自分の体を犠牲にして・・・

もういいよ、憂。

もうやめて・・・

男「ほらよッ!」

ドスッ!

憂「くッ!?・・・うっ・・・」ゴホゴホ

神様、どうかあの男に天罰を・・・

そして憂を助けて・・・


その時、突如銃声が鳴り響く。

男は脳天を撃ち抜かれ、その場に倒れる。

恐らく死んでいるだろう。

目を覚ました男子生徒達も突然の出来事に唖然としている。

・・・それよりも、憂は!?

唯「憂!憂~!」

憂「お姉・・・ちゃん・・・?」

唯「憂、大丈夫!?」

憂「大丈・・・夫・・・だよ・・・」フラフラ

唯「大丈夫じゃないよ! 私が家までおんぶしてってあげる!」

憂「(大丈夫かなぁ・・・?)」

憂「・・・」zzz・・・

家についた時、憂は私の背中で既に寝ていた。

唯「うう・・・階段は無理だよぉ」

和「仕方ないわねぇ・・・手伝ってあげるわよ」

唯「本当!?・・・っていうかいつの間に!?」

和「その代わり、明日二人のその怪我について説明しなさい」

次の日、私は和ちゃんに昨晩起こった出来事を全て話した。

警察の事情聴取も受けたけれど、もちろん逮捕されたりはしなかった。

どうやら、犯人は今も逮捕されていないらしい。

そして、銃撃事件がきっかけで学校に家宅捜索が入り、学校全体でイジメを隠蔽していた事が明るみに出る事となった。

その体制が問題視され、ついに学校の閉鎖が決定。

在校生は離散して、周辺の中学に転校する事となった。

和「唯はどこの中学に転校するの?」

唯「和ちゃんと一緒がいい!」

和「・・・ちゃんと考えなさい」

唯「だって和ちゃんと一緒がいいんだもん!」

和「そんなんじゃこれから先大変よ?そろそろ私以外の友達も見つけないと・・・」

唯「そんなの無理だよぉ・・・」

唯「だって、私、嫌われてるもん・・・」グスッ

唯「何で嫌われてるのかだって、分からないんだもん・・・」ポロポロ

和「唯・・・」

唯「ねぇ和ちゃん、教えてよ・・・! 和ちゃんなら何か知ってるんでしょ・・・?」

和「・・・分かった、全て教えてあげる」

和「教えてあげる、唯が嫌われている理由を・・・いや、唯と憂が嫌われている理由を・・・」

唯「えっ!? 憂が!?」

和「憂の場合、あの男みたいなのに遭遇しなかったから嫌われてるのが表面化しなかっただけよ」

和「・・・唯と憂が嫌われている理由、それは・・・」

和「二人がデザイナー・ベビーじゃないかっていう噂よ」

え?何で・・・?

和「二人とも、本気でやれば何でもできちゃうでしょ?」

和「その上、唯達の両親はバイオテクノロジー関連企業の研究員よね?」

和「その二つが結び付いて、そういう噂が生まれ・・・」

和「皮肉にもそれが蔓延してしまった・・・、そんな感じよ」

何でそんな事になるの?

私達は何も悪くないのに・・・

和「多分、みんなは何でもできちゃう唯と憂が妬ましかったんでしょうね」

それだけの理由で?

唯「・・・」

和「・・・唯?」

唯「それだけの理由で?」

唯「それだけの理由で私と憂はずっと苦しめられてたの・・・!?」

和「人間なんてそんなもんよ、仕方ないじゃない」

唯「和ちゃんまでそういう事言うんだ・・・」

唯「もう人なんて信じない・・・!」タッタッタ・・・

和「ちょっと、唯~!」

和ちゃんから真相を聞いてから数日間、私は自室に引きこもったままだった。

唯一信用できるのは同じ思いをしていた憂だけ・・・

もう、死のうかなぁ・・・

一度根付いた噂は、そう簡単には消えないんだよね・・・

死ぬと生まれ変わるんだっけ。

生まれ変わるんだったら、今度は普通の女の子に生まれ変わりたいなぁ・・・

あ、でも憂と一緒がいいや。

とりあえず駅に行こう・・・

数分後、駅前の広場に到着した。

あとは駅に入り、ホームを飛び出して、向かってくる電車に突っ込むだけ。

死ぬ前に何かをして気持ちを落ち着かせよう。

・・・?、どうやら今日はどこかのバンドが路上ライブをやっているらしい。

桜ヶ丘女子高等学校・・・?軽音楽部・・・?

ガールズバンドか・・・

あ、演奏が始まった・・・


みんなが大好きっ!!
延々続行 ルララ Miracle Sing Time
歌って 歌って 愛伝える最強手段
つたない曲でも 微妙な歌詞でも
届けたい 精一杯のsoulを

どうしよう オートマティックに決められてる
時間割じゃ追っつかないの
夢無限 したいこと怒涛 廊下もダッシュで集まるよ

お行儀悪かったらsorry! でもなりふりも構わずに
どっぷりハマっちゃうplay キラリって もしやこれが青春
ever ever・・・Forever Shine

ほんとに大好きっ!!
テンション上昇 ルララ Powerful Gig Time
ハートって ハートって ワクワク探す天才
アレッ!?って言われても ミス連発でも
放ちたい 沸いてくるbraveを
しかけるトレモロ 応えるフラム
いいじゃん いいじゃん ノリノリでいいんじゃない
ハッピーはいつだってね 「今」感じるもの
生きろ乙女 本能で、裸の

大好き 大好き 大好きをありがとう
歌うよ 歌うよ 愛をこめてずっと歌うよ

凄い・・・

高校に行ったら、この歌みたいに楽しい学校生活が待ってるのかな?

いや、転校先の中学でもきっと・・・

和「唯!」

憂「お姉ちゃん!」

あ、二人に見つかっちゃった。

唯「えへへ」

和「えへへじゃないわよ、遺書なんて書いて・・・」

憂「お姉ちゃん、本当に自殺しようとしてたの!?」

唯「うん、でも・・・やっぱりやめた!」

唯「あと、憂、和ちゃん・・・」


唯「大好きをありがとう!」

____
___
__

唯「・・・っていう事があったんだぁ」

律「ゆいぃぃぃぃ!」ダキッ

梓「唯先輩!」ダキッ

唯「え?え?」

律「寂しかったらいつでも遊びに来ていいんだよ・・・」

梓「寂しかったら私に抱き着くです」

澪「落ち着けお前ら」


紬「(斎藤が結果的に助けたあの姉妹はもしかして・・・?)」

唯編おわり

一応あと澪編・律編・紬編・梓編ぐらいはやりたいと思っています
余裕と需要があれば憂編も

とりあえず寝る前に保守

できれば一日につき1編終了させたいと思っています
このスレで全編終わると思います

本当に寝る前最後の保守

次の日

澪「さて、練習しy」

紬「じゃあ今日は誰にする?」キラキラ

律「昨日あれだけ暗い話聞いといて全く自重しないとは・・・」

梓「流石ムギ先輩ですね」

唯「じゃあ今日は・・・」

>>65
1澪
2律
3紬
4梓

紬「じゃあ今日は梓ちゃんの番ね!」

梓「・・・」シーン

律「白状するまで帰さないぞー!」

唯「あずにゃーん! 教えてよぉー!」

澪「昨日唯も喋ったんだから梓も・・・、な?」

梓「・・・分かりました」

__
___
____

私の両親は、ミュージシャンだった。

私が幼稚園に入った頃には、プロデビューも果たした。

でも、それをきっかけに変わってしまった。

家では毎日のように夫婦喧嘩し、溜まったストレスは私を虐待する事で発散されるようになった。

両親との親子愛なんてもう皆無だ。

小学生になった時、私はついに家出を決心した。

私の親は馬鹿だったので、ATMで親の口座の金を全て引き出す事ができた。

近くのマンションの部屋を一つ借りて、そこに住む。

それが、私の孤独な生活の始まり・・・

この頃から、よく嘘をつくようになった。

嘘をつかないと、生きていけないからだ。

学校にいる時が一番安心できる時間だった。

女子には嫌われていたけど、男子からは何故かチヤホヤされた。

女子A「梓ってウザいよね」ボソボソ

女子B「ちょっと見た目がいいからって・・・」ボソボソ

男子C「梓! 一緒に遊ぼうぜ!」

梓「うん、分かった」


男子D「梓、今度お前の家に遊びに行ってもいいか?」

梓「えっ・・・」

もちろん断った。

私の生活状況を知ったら、みんなは絶対心配するだろう。

余計な情けはいらない。

私が4年生になった時、中央委員会が変な企画を始めた。

校内の生徒・教師全員に対して、1項目につき誰か1人の名前を書かせるアンケートを実施。

それを元にランキングを作成し、TOP10を発表するという企画だ。

項目は、可愛い人(男子の場合はカッコイイ人)、頭のいい人、運動の得意な人、人気のある人の4つ。

もちろん男子部門と女子部門の二つに分かれている。

ランキングが発表された時、私はとても驚いた。

女子部門の4項目全てで一位になっていたのだ。

そうか、男子にチヤホヤされてたのはそういう訳だったのか。

勉強はちゃんとやってるからできるし、よく男子と遊ぶので運動もできる。

人気は・・・男子だけの人気だろう。

ランキング発表後、私は女子からイジメを受けるようになったがあまり気にならなかった。

男子達が守ってくれたからだ。

こうして、家の事情を隠しつつも小学生の間は比較的平和に過ごす事ができた。

でも、中学校に入るとそうもいかなかった。

男子からチヤホヤされるのも小学校までだった。

中学生になった辺りから、女子はだんだん女性らしい体になっていく。

しかし私は違った。

背は低いままで、胸も小さい。

色気などもちろん無い。

そうしている間に男子達は徐々に性欲に目覚め、私の事など見向きもしなくなっていた。

男子達の守りが無くなった事に感づいた女子達は、イジメをエスカレートさせていった。

気付いた時には、学校でも居場所を失っていた。

夕方、私は自分の住むマンションに向かって歩き始める。

本来なら距離があるので自転車で通学するべきだが、イジメで自転車を壊されてしまったので歩いて帰るしかない。

もちろん部活はやっていない。

最初は軽音楽部に入る事も考えた。

私はギターをやっていたからだ。

私は、両親のバンドの元ギタリストの人と交流があった。

その人は、両親の喧嘩を見かねてバンドをやめたらしい。

その人に教えてもらい、小4ぐらいの時にギターを始めた。
でも、バンドをやろうとは思わなかった。

そんな事をしたら、私の両親のような荒んだ人間になってしまいそうだったから。


今日はとても暑い。

今日の体育の時間は長距離走だった。

一位にはなれたものの、やはり体力を消耗する。

そのせいか、何だか目眩が・・・

足元がふらついて・・・


・・・そして、私の意識は途絶えた。

気が付くと・・・私は病院にいた。

外を見ると・・・どうやらもう夜みたいだ。

誰かが救急車でも呼んだのだろうか。

する事もなくボーっとしていると、一番会いたくない人が私の病室に入ってきた。

父「もう退院だ、早く行くぞ。」

私は父に言われるがまま、病院を去った。

そして、何故か地下駐車場に連れていかれた。

父「調子に乗りやがって・・・、少し教育してやる必要があるな」

そう言うと父は鉄パイプを拾い、それを私に向かって振り下ろす。

ドガッ!

梓「うぐッ!?・・・」

父は私を徹底的に痛め付けた。

数分間、同じような光景が続いた後・・・

梓「・・・」ドサッ

父の攻撃に耐え切れなくなり、私は倒れた。

病み上がりで弱っている上に、喧嘩なんて未経験の私に勝ち目はなかった。

梓「・・・どうして」

父「ん?」

梓「・・・どうして・・・こんな事・・・するの・・・?」

父「子供が知る必要はないんだよッ!」

ドガッ!

梓「ううッ!・・・」

父「・・・さて、そろそろ始末するか」

そう言って父が取り出したのは・・・

本物の、拳銃だった。

何故父が拳銃を持っているのか、全く分からなかった。

カチャッ・・・

父「じゃあな、梓。」


父が拳銃の引き金を引こうとした瞬間、二発の銃声が鳴り響く。


一発目は父の持っていた拳銃を弾き飛ばし、

二発目は父の脳天を撃ち抜いた。


その直後、スーツを着た男性が現れる。

恐らく父を殺したのはこの人だろう。

でも、むしろありがたいぐらいだ。

あんなお父さんなんて、いらない。

?「私、とある家で執事をしている斎藤と申します」

執事・・・?

斎藤「あなたの父には紫合家の御曹司の暗殺を命令したはずだったのですが・・・」

どうやら、父はいつの間にかどこかの家のSPか何かになっていたらしい。

斎藤「そのための拳銃を悪用しようとしていたため、抹殺させていただきました」

梓「いいんです、あんな人・・・」

斎藤「では、失礼」

斎藤と名乗る男が証拠隠滅を済ませて去った後、私もここを去ろうとした。

ここにいては、犯人だと疑われるかもしれないからだ。

でも、体が動かない。

私の体は予想以上にダメージを受けている。

また、意識が・・・


気が付くと、今度は見たことのない場所にいた。

誰かの家らしい。

でも、一体誰が?

そんな事を考えていると、誰かが部屋に入ってきた。

あのギタリストの人だ。

ギタリスト「そういえば、まだ名前を教えてなかったね」

ギタリスト「一応名刺を渡しておくよ」

名刺には、中野 博之と書いてあった。
メールアドレスや電話番号まで書いてある。

ギタリスト「じゃあ、ゆっくりしててね」

そう言ってあのギタリストの人は部屋を去った。


一応連絡先を携帯に登録しておこう。

誰かを電話帳に登録するのは、これが初めてかもしれない。

『電話帳』
0000 中西 梓
0001 中野 博之

疲れてるから少し寝よう。

そう思って静かにしていると・・・

ギタリスト「梓ちゃんのお母さんが、児童虐待の容疑で逮捕されたみたいだね」

ギタリスト妻「このままだと、梓ちゃんは半強制的に孤児院行きね・・・」

ギタリスト「あのマンションも、梓ちゃんが嘘をついていたのを知ったら契約を破棄しちゃうだろうな・・・」

隣の部屋から声が聞こえる。

ギタリスト妻「梓ちゃんを養子としてウチに迎えるのはどうかしら?」

ギタリスト「な、何だって!?」

ギタリスト妻「私は子供が産めない体だし・・・、梓ちゃんがいいなら・・・」

ギタリスト「でも、ちゃんと親らしくできるかどうか・・・」

仕事に行くので一旦抜けます

一応保守

早めに退社してきました
再開します

ギタリスト妻「じゃあ、あなたは梓ちゃんを救ってあげようとは思わないの・・・?」

ギタリスト「・・・」

ギタリスト妻「不幸なあの娘を放っておくつもり・・・?」

ギタリスト「・・・ちょっと考えさせてくれ」

そこで二人の会話は途絶えた。


私だって・・・私だって・・・

好きでこんな人生を歩んできた訳じゃない・・・

誰からも可愛がってもらえない、本当の友達なんて誰もいない・・・

愛情も友情も、私なんかからは程遠いモノなのかなぁ・・・

梓「うぇぐ・・・ううっ・・・」ポロポロ


ギタリスト妻「隣の部屋で誰かが泣いてる・・・(隣は梓ちゃんのいる部屋よね・・・?)」

ギタリスト妻「入るわよー・・・」

梓「!?」フキフキ

ガチャッ

梓「な、何ですか?」

ギタリスト妻「さっき、泣いてたでしょ」

梓「そ、そんな事ないです」

ギタリスト妻「強がらなくていいのよ・・・」ダキッ

梓「えっ・・・」

いきなり抱き着かれた。 暖かい・・・

ギタリスト妻「泣きたい時には泣きなさい、まだ子供なんだから・・・」ギュッ・・・

今まで、人前ではずっと抑えていた感情が一気に溢れてくる。

梓「う・・・、う・・・」グスッ

梓「うわ~~~ん!」ポロポロ

梓「・・・」zzz・・・

ギタリスト妻「寝ちゃったみたいね」

ギタリスト「ああ」

ギタリスト妻「・・・で、さっきの話なんだけど・・・」

ギタリスト「もう決めたよ、梓ちゃんの寝顔を見てごらん」

ギタリスト「この娘の幸せそうな顔・・・久しぶりに見た気がする」

ギタリスト「僕達が親になる事でこの娘が幸せになれるのなら・・・」

ギタリスト「それは当然、実行すべきだと思うんだ・・・」

斎藤「・・・一人の人間として、」

斎藤「あの娘を救って差し上げよう」

カチャッ・・・


次の日、私はマンション側から賃貸契約を破棄された。

なので、とりあえずギタリストさんの家に居候する事になった。

そして、もう一つ重大な知らせ。

仮釈放中だった私の母が、何者かに射殺されたらしい。

もしかしたら、父を消してくれたあの人が私のために・・・

まあ、そんな訳はないだろうけど。


数日後、ギタリストさん夫妻が引っ越しをするという事なので私もそれに従って転校する事になった。

引っ越し先は・・・桜ヶ丘。

私が学校に行っている間、ギタリストさん夫妻は先に向かっていろいろとやってくれているらしい。

やっと学校が終わった。

今日でイジメから解放されると思うと、イジメられるのもあまり気にならなかった。

タクシーでも呼んで、早く行こう。


運転手「お嬢ちゃん、随分とご機嫌だねぇ」

梓「そ、そんな事・・・ありますね」


運転手「ほら、到着したよ・・・じゃあな」

ここが・・・桜ヶ丘・・・

ここが・・・私の新しい家・・・

ギタリスト「お、やっと来たか」

ギタリスト妻「ウフフ」

梓「?」

ギタリスト「今日は梓ちゃんにプレゼントがあります!」

ギタリスト妻「はい、コレよ」

梓「コレって・・・新しいギター・・・!?」

ギタリスト「フェンダー・ジャパン・ムスタングだよ」

梓「でも・・・どうして突然?」

ギタリスト「それは・・・今日が記念日だからだよ」

梓「引っ越しの?」

ギタリスト「梓ちゃんが僕達の娘になった記念日」

梓「え?」

ギタリスト妻「だから、今日からあなたの名前は中野梓ちゃんよ♪」

梓「まさか・・・本当に養子縁組を・・・」

ギタリスト「YES」

梓「冗談だと思ってたんですけど・・・」

ギタリスト妻「本気よ」

梓「だって、あの時・・・」

_
__
___

ギタリスト「梓ちゃん」

梓「何ですか?」

ギタリスト「僕達の養子にならない?」

梓「突然凄い事を言いますね」

ギタリスト「ダメか?」

梓「別に・・・いいですけど・・・」

___
__
_

ギタリスト「ああ、そんなんだったっけ? ごめんな~」

梓「適当なのにも程がありますよ」

ギタリスト「とにかく、今からは僕が梓ちゃんのお父さんで」

ギタリスト妻「私がお母さんよ♪」

梓「お父さん・・・お母さん・・・?」

新父母「その通り!」

梓「じゃあ、私からも一言・・・」

梓「もう家族なんだから、呼び捨てで梓って呼んでね?」

____
___
__

梓「・・・っていう感じですね」

澪「なあ、梓?」

梓「はい?」

澪「その斎藤さんって人との事は喋ったらまずいんじゃないか?」

梓「確かに、ずっとそう思ってたんですけど・・・軽音部の中でなら大丈夫かなって・・・」チラッ

紬「?」


『電話帳』
0000 中野 梓
0001 お父さん
0002 お母さん
0003 唯センパイ
0004 澪センパイ
0005 ムギセンパイ
0006 律センパイ
0007 憂
0008 純


梓編おわり

残るは、澪編・律編・紬編・憂編です

保守

次の日

梓「さて・・・残るは澪先輩、律先輩、ムギ先輩の三人ですね」

唯「さあ、白状するんだぁ~」

澪「道連れにしたいだけだろ」

紬「カツ丼用意しなきゃ!」

律「いや、わざわざ用意しなくていいから」

梓「じゃあ、今日は・・・」

>>117
1澪
2律
3紬

3で

梓「ムギ先輩の番です!」

紬「えっ・・・?」ポカーン

澪「おい」

紬「・・・企業秘密だらけなのでノーコメントでお願いします」スタスタ

律「逃がさんぞ、ムギ~!」

唯「大丈夫だよ~、バラしたりしないよ~」

紬「・・・」

紬「・・・じゃあ話すわ♪」ニコッ

__
___
____

昔、日本には二つの大企業があった。

一つ目は現在、世界最大の企業として君臨している琴吹グループ。

二つ目は、これから話す一連の事件で滅亡した紫合グループ。

私は前者、琴吹グループの一人娘として生まれた。

大企業の一人娘というと親子関係は最悪で、外界から隔離されるイメージがあるかもしれないが、琴吹グループでは前者に関してはなかった。

常に紫合グループの刺客に狙われていたので、後者はやむを得ない事だったが・・・

なので必然的に家の中で暮らし、学校等へは行かなかった。

もちろん家庭教師を呼ぶ事になるのだが、呼ぶ家庭教師は私が選んでいた。

選ぶ基準はただ一つ、面白いかどうか。

そして、私が10歳になった時。

ついに学校へ行く事を許可された。

覆面パトカーならぬ覆面SPが厳重に警備をしてたんだろうけど。


初めての学校・・・初めての教室・・・緊張するなぁ

担任「今日からみんなと一緒に勉強する事になった、琴吹紬さんです」

紬「よ、よろひくお願いしましゅ・・・」

か、噛んじゃった・・・

そうすると、クラスのみんなは一斉に笑い出す。

でもそれは純粋な笑いであって、冷淡な嘲笑ではない。

ちゃんと、クラスの一員になれた気がする・・・

そう思っていられたのは、給食の前までだった。

給食の時、当番の人が間違ってスープをこぼしてしまい、それが私にかかった。

その時、周りから聞こえてきたのは・・・

「あ~あ、あいつ終わったな」ボソボソ
「あいつのお父さんの会社、明日には潰れてるぞ」ボソボソ
「家が差し押さえられるかもしれないな」ボソボソ

そして、その子はひたすら謝り続けた。

土下座して、頭を何度も何度も床に叩き付けて・・・

私は頭が真っ白になった。

みんなは私を受け入れている訳ではなく、恐れているだけだった。

琴吹グループの一人娘である自分を・・・

それでも私は、心の底から信頼し合える友達を作ろうと努力した。

紬「ねぇ、一緒に遊ぼうよ♪」ニコニコ

女子「あ、忘れ物!(棒読み)」スタスタ・・・

紬「・・・」シュン


紬「あ、私も入れて!」

男子数人「「「「あ、忘れ物!(棒読み)」」」」スタスタ

紬「・・・」シュン

でも、できなかった。

頑張って仲良くしようと他の子に近づいても、まるでテンプレでもあるかのように、みんなが同じようなフレーズを棒読みして私から逃げていく。

せっかく学校に来たのに、これじゃあ家にいた時と変わらない。

夕食のため、今から1時間程抜けます

保守

放課後になると、斎藤がリムジンで迎えに来た。

斎藤「紬お嬢様、どうかなさいましたか?」

紬「もう学校行かない・・・」

斎藤「(今朝行く前はあんなに楽しみにしておられたのに・・・)学校で何かありましたか?」

紬「・・・」

斎藤「邪魔な人間がいればいつでも抹殺いたしますが・・・」

紬「・・・・・・やめて」

斎藤「・・・?」

紬「そういうのは・・・やめて・・・」グスッ

斎藤「!?」

紬「斎藤やパパがそういうことをするから、みんな怖がって私と仲良くしてくれないんだよ・・・」ポロポロ

斎藤「ならば全校生徒に圧力をかk」

紬「もういいよ・・・」

紬「私が学校なんて行かなければいいだけだから・・・」

紬「・・・」

コンコン

斎藤「紬お嬢様、夕食の時間でございます」

紬「いらない・・・」

学校から帰ってきてからずっと、自分の部屋に引き込もっていた。

もうこんな家は嫌だ。

何で私はこんな家に生まれてきてしまったのだろうか・・・


窓から外を見ると、友達同士で仲良くしている子供達が見えた。

私だってみんなと仲良くしたい。

でも、みんなは琴吹の名を恐れて私を避ける・・・


・・・そうだ、家出しよう。


紬「斎藤、ちょっと来て・・・」

斎藤「何でございましょうか?」

私は、斎藤に家出したいという事を伝えた。

紬「二人だけの秘密だからね・・・」

斎藤「承知いたしました、できる限り協力させていただきます」

その日の夜、私は斎藤に案内されて裏口から家を出た。

私の家ってこんなに広かったんだなぁ・・・

斎藤「私が手助けできるのはここまででございます、どうか御無事で・・・」

ここからは私一人の単独行動だ。

とりあえず、家から離れよう。

数分程歩いていると、駅が見えた。

駅のタクシー乗り場でタクシーに乗ろう。

運転手「どこまで行きますか?」

珍しい事に、運転手は女性だった。

紬「運転手さんのオススメの場所・・・」

運転手「ちょっと遠いので高速を利用しますが、それでもいいですか?」

紬「大丈夫です、お金はあるから・・・」


運転手「あーあ・・・凄い渋滞ですねぇ」

トラックの爆発事故の影響で、大渋滞になっていた。

時計を見ると、もう夜の10時だ。


運転手「ふぅ・・・やっと高速を抜けましたよ・・・」

紬「・・・」zzz・・・

運転手「寝ちゃってますね・・・」

朝になって私が目を覚ますと、運転手さんがおはようと言ってくれた。

ずっと起きるのを待っていてくれたらしい。

既に目的地らしき場所には到着していた。

紬「桜ヶ丘女子高等学校・・・?」

運転手「ここは、私の母校なんですよ」

運転手「人生の中で一番楽しかった三年間をここで過ごしたんです」

運転手「今日は確か学園祭の日だったので、思う存分楽しんできてください!」

私がゲートをくぐると、一斉にクラッカーが炸裂した。

「「「おめでとうございます!あなたが今年度桜高祭お客様第一号です!」」」

紬「・・・?」

「お名前は?」

紬「琴吹紬です・・・」

「今年度桜高祭お客様第一号は琴吹紬さんに決定しました~!」

ワーワー!
パチパチパチパチ!

「今年度の特別賞は・・・」

「軽音部の特別ライブでーす!

ワーワー!
パチパチパチパチ!

紬「けいおんぶ・・・?」

「では、演奏スタート!」

宝箱に詰めてたアレコレ 小さいもの
いつなくしたか どこかへまるっと消えたけど
ビーズ チャーム キャンドル リボン シャボン クローバー
でもね ほんとの宝箱は胸にあったんだ
みんなのそばで 消えない宝 知ったみたい
おかしい たのしい うれしい おいしい かわいい いとしい

慈しむってこういうことかな 1日が 毎日が
早送りで過ぎてくの なんか もったいないくせに明日も待ち遠しい

このままでいいよ このままがいいよ
好きな歌うたって みんなとお茶でホッとして
宝物の日々 まばゆく光る日々
ハートの五線譜に書いてある 無数のリフマーク
大きな声で伝え合ってゆこう・・・しあわせ!!

「以上、軽音部の演奏でした~!」

ワーワー!
パチパチパチパチ!

演奏を聞いて、何か不思議な感じがした。

これが感動するっていう事なのかな・・・?

「琴吹紬さん、いかがでしたか?」

「えっと・・・とても、感動しました」

この高校の人達は、私が琴吹の人間だと知っても、何ら変わりなく接してくれる・・・

高校はここがいいなぁ・・・

「私も将来、ここに入学したいです!」

ワーワー!
パチパチパチパチ!


斎藤「紬お嬢様が望んでいたのはこういう事だったのですね・・・」

紬父「私は間違っていたようだ・・・」

その後、私は桜高祭を思う存分楽しんだ。

お化け屋敷や喫茶店、演劇などいろいろなものがあり、とても面白かった。

家でのパーティーなんか、いらないと思う程だ。

そして楽しんだのはいいものの、泊まる場所がない事に気付いた。

どこかにホテルはないかと歩き回っているうちに、どんどん暗くなってきてしまった。

そんな時、一人のおばあさんが声をかけてきた。

?「お嬢ちゃん、夜にこんなところを歩き回ってどうしたんだい?」

紬「泊まる場所がないんです・・・」

?「あらまあ、じゃあ今日は私の家に泊まっていきなさい!」

紬「えっ・・・でも・・・」

?「いいのよ、ところでお名前は?」

紬「琴吹紬です・・・」

とみ「ああ、私は一文字とみって言うのよ、よろしくね」

とみ「さあさあ、どんどん食べていいのよ」

紬「いただきます・・・」

こういうご飯を食べるのは、初めてだった。

紬「美味しい・・・!」

これが・・・家庭の味なのかな?


とみ「お風呂入っていいわよ~」

紬「あっ・・・、はい」

紬「暖かい・・・」


とみ「それじゃあ寝ましょうね」

紬「おやすみなさい・・・」

どうして、ここの人達は私が琴吹の人間だと知っても逃げないんだろう。

どうして、こんなに親切なんだろう。

桜ヶ丘って、いい町だなぁ・・・

そんな事を考えているうちに、私は眠っていた。

律「どすこいって言ってみてよ~」

唯「はぁ~どすこい、どすこい!」

唯「オイたちは~…」

律「おいたち!」

紬「う~ん・・・」

とみ「あら、起きたのね」

とみ「朝ご飯を作るから、ちょっと待っててね」


とみ「じゃあ・・・」

紬とみ「いただきます!」


紬「一晩お世話になりました」

とみ「もう帰っちゃうのかい?」

紬「はい」

とみ「気をつけて帰るのよ」


その日、私は久しぶりに家に帰った。

たった一日だけど、とても充実していた家出の旅だった。

私は家に帰ったあと、父に私の思いを伝えた。

桜ヶ丘に住んであの高校に進学したいと、もう権力や財力を乱用するのはやめて欲しいと。

何故か父は、それをすんなり受け入れてくれた。

何かあったのだろうか?


翌月、私達一家は桜ヶ丘に家を建て、そこに引っ越す事を決定した。

家を建てるのに一年半ぐらいかかったので、桜ヶ丘に引っ越すのは中学生になる直前になった。

しかしこの時、私は知らなかった。

紫合グループの本当の恐ろしさを・・・

紬編第一部おわり

すいません、紬編は二部構成にしたいと思います・・・

あと、トリップ付けました

春休み中に桜ヶ丘への引っ越しを済ませ、ついに中学校の入学式の日がやってきた。

入学式というものに参加するのは初めてなのでとてもわくわくしていたが、意外と普通だったので少しがっかりした。

そしてクラス分け。

私のクラスは・・・3組。

今度こそ、友達を作れるかな?


担任「じゃあ一人づつ、自己紹介をして下さい」


紬「えっと・・・、この春から桜ヶ丘に引っ越して来た琴吹紬です。よろしくお願いします・・・」

男子A「質問です! 琴吹さんは何か特技はありますか?」

紬「小さい頃からピアノをやっているので、ピアノを弾くのは得意です」

女子「じゃあ私からも! 琴吹さんは頭がいいと聞いたんですが本当ですか?」

紬「先生にはよくそう言われます」

女子「じゃあ、今度勉強教えてね!」

紬「はい、喜んで♪」ニコッ

やっと自己紹介が終わった・・・

ここまで質問攻めされるとは思いもしなかった。

次の人は・・・

天「この春から桜ヶ丘に引っ越してきた紫合天(シアワセ ソラ)です。よろしくお願いします・・・」

あの人は・・・紫合グループ会長の次男・・・?


学活の時間が終わると、男子は私のところに、女子は天君のところに集まっていた。

男子B「ニックネームはどうする?」

紬「えーっと・・・うーん・・・」

紬「じゃあ、『ムギ』って呼んでね」

そして給食の時間。

給食当番の人が味噌汁をこぼしてしまい、それが私の制服にかかった。

でも、小学校の時のようにはならなかった。

男子C「すまん! これ使って!」

彼はそう言ってハンカチを差し出した。

私は笑顔でそれを受け取り、自分の服を拭いた。

普通の人からすれば何気ない事だが、私はそれがとても嬉しかった。

相手が対等に接してくれたのだから。


男子A「俺のむぎゅうに何て事を・・・」ボソッ

給食の次は昼休み。

女子「ムギちゃ~ん!数学教えて~!」

質問の時の女の子が早速助けを求めてきたので、私は彼女に数学を教える事になった。

紬「ここにこれを代入して・・・」

女子「そういう事か! 分かったぞー!」


そして放課後。

部活動見学の期間らしい。

どこへ行こうか迷っていると・・・

天「琴吹さん!」

紬「天君?」

天「どこへ行こうか迷ってたんでしょう?」

紬「うん・・・」

天「じゃあ、一緒に見て回りませんか?」

紬「えっ・・・? 私なんかでいいの?」

天「もちろん構いませんよ、早く行きましょう!」


その後、天君と一緒にいろんな部活を見て回ったが、入りたいと思うような部活は無かった。

ちなみに、天君は柔道部に入部するつもりらしい。


天「琴吹さん、今日はありがとう!」

紬「天君も、誘ってくれてありがとう・・・」

天「じゃあまた明日!」

紬「またね・・・」

学校を出たあとは、バス停へ向かう。

そして、家の近くまでバスで移動。

バスを降りて徒歩数分で、自宅に到着する。

もちろん、斎藤の送り迎えは私の方から拒否している。

みんなと同じように通学したいからだ。


斎藤「お帰りなさいませ、紬お嬢様」

紬「ただいま♪」ニコッ

斎藤「随分と嬉しそうに見えますが・・・」

紬「そうかしら?」


父「紬、中学校初日はどうだった?」

紬「えっとね・・・」

私は今日あった事を全て父に話した。

もちろん笑顔で。

次の日も、その次の日も、私は学校で楽しく過ごした。

気がつくと、既に入学式から十日が経過していた。

けれど、最近困った事がある。

天君の事が気になるのだ。

・・・もしかしたら、これが、恋!?

すぐにでも誰かに相談したいところだが、琴吹家の執事達はこういう事には疎い。

どうすればいいんだろう・・・?

そろそろ寝るので朝まで保守お願いします

保守

紬「ホシュリーナ」

唯「えっ 何が?」

いつまでも悩んでたって進歩しない。

とりあえず学校に行こう。


天「琴吹さーん!」

紬「な、何?」

天「今度の土曜日・・・空いてる?」

紬「えっ・・・」

天「一緒に遊園地でも行こうかなって思ったんだけど・・・」

それって要するに・・・デート!?

天「ダメかな?」

向こうから誘われるなんて思いもしなかった・・・

紬「そんな事ないわ、行きましょ♪」ニコッ

そして、デートの日。

天「琴吹さーん!」

紬「あっ・・・天君!」

天「じゃあ、行こうか」

紬「はい!」


まず最初は、ジェットコースターに乗った。

天「うわああああああああ!」

紬「私、こういうのに乗ってみたかったの~♪」


次は、お化け屋敷。

天「紬さん、怖くない?」

紬「学園祭のより凄い・・・」

いろいろなアトラクションを楽しみ、最後は観覧車。

天「・・・」

紬「・・・」

観覧車から見える外の景色は、とても綺麗だった。

観覧車の一番高いところで告白すると・・・っていう言い伝えもあったっけ。

そして、一番高いところまで来た。

告白するなら、今しかない!

紬「あ、あの・・・」

天「?」


紬「つ、付き合って下さい!」

天「えっ・・・」

紬「・・・」ドキドキ

天「もちろん、いいよ」

紬「!?」

天「これからもよろしくね、ムギちゃん♪」ニコッ

紬「・・・!」パアアッ


天「今日は楽しかったね」

紬「う、うん・・・」

天「じゃあ、また来週!」

紬「あ、はい!」

家に帰ると、執事達が一斉にこう言った。

「紬お嬢様!おめでとうございます!」

えっ・・・!?

紬「まさか、今日ずっと見てたの・・・?」

斎藤「その通りでございます」

紬「告白の時も・・・?」

斎藤「もちろん、撮影させていただきました」

紬「・・・!」カアアッ


父「紬、相手の名前は?」

紬「紫合天・・・」

父「紫合だと!?」

紬「でも、天君は、いい人だから・・・」

父「そうか・・・もう私は手を出さないと決めたからな、好きにしていいぞ」

紬「うん!」

天「父上、計画は順調でございます」

天「思いっきり舞い上がっているところから、突き落としてやれば・・・」

天「精神的に相当追い込まれるでしょう」

天「暗殺するより、精神的に追い込んで自殺させる方が・・・」

天「簡単なんですよ」


次の日、私が学校へ行くと・・・

天「おはよう、ムギちゃん♪」ニコッ

紬「おはよう、天君♪」ニコッ

これが・・・恋人同士・・・

そして放課後、部活をやっていない私は家に帰った。

天「ちょっと来てくれ」

男子達「何だ?」

天「琴吹紬をイジメてくれないか?」

男子達「お前・・・彼女をイジメるって・・・」

天「あんなの上辺だけだ、琴吹と紫合が敵対してるのは知ってるだろう?」

天「暗殺するより、精神的に追い込んで自殺させる方が楽だからな・・・」

男子達「でも、可愛いムギちゃんにそんな事できないよ・・・」

天「・・・社会的に抹殺されてもいいのか?」

男子達「!?」

天「多額の借金を負わせたり、無実の罪で逮捕させたり・・・こっちにはいろいろと手段があるんだよ」

天「人生を終わらせたい奴は手をあげろ」

男子達「・・・」シーン・・・

天「じゃあ明日から、よろしくな」

天「ああ、俺が指示した事は誰にもバラさないように」

天「じゃあな」


男子B「どうする?」

男子D「ムギちゃんをイジメるなんて・・・そんな事できないよ・・・」

男子A「ムギちゃんには琴吹がついてるんだ、ここはムギちゃんに真相を伝えて協力してもらうしかないよ」

男子A「そして、天の野郎に反撃するんだ!」

男子C「でも、ムギちゃんの連絡先知らないよ?」

男子E「とりあえず明日ムギちゃんが来るまで、天をイジメて縛り上げとけばいいよ」

男子E「そしてムギちゃんが来たら、天自身から真相を暴露させる・・・」

男子E「紫合グループが何かやろうとしても、琴吹グループが守ってくれるはずだよ」

男子A「よし、それでいこう!」

男子達「オー!」

次の日、私が学校に行くと・・・

天「・・・チッ」

天君がイジメられていた。

男子A「ほら、ムギちゃんが来たぞ! 本当の事言えよ!」

ドガッ!

天「うぐッ!?・・・」

男子B「早くしろ!」

天「仕方ねぇな・・・」

天「琴吹紬!俺はお前の恋人なんかじゃない!」

天「俺はお前を精神的に追い込んで自殺させるためにここへ来たんだ!」

天「だから、昨日コイツらにお前をイジメるように指示した!」

男子達「誰がムギちゃんを悲しませるような事するかよ!」

天「くそっ・・・!覚えてろ・・・!」

彼がそういうと、一人の執事が窓ガラスを突き破って教室に突入してきた。

執事「・・・」

その執事は無言のまま男子達を蹴散らし、天君を解放すると、彼を連れてすぐに自家用ヘリで撤退していった。


私はすぐに携帯電話を取り出し、斎藤に指示を出した。

これで、紫合グループによる男子達への報復は防げるだろう。

でも・・・

紬「ううっ・・・」グスッ

男子C「気にするなよ、あんな奴」

紬「うん・・・」

その日は一日中、みんなに慰めてもらってばかりだった。

女子「じゃあね、ムギちゃん!」

紬「うん・・・」


家に帰ると、斎藤が出迎えてくれた。

斎藤「指示通り、手配をしておきました」

紬「ありがとう・・・」


父「斎藤、最後のミッションだ」

父「一人の人間として、紬の父として、紫合を許す訳にはいかない・・・」


天「何ッ!?兄さんが暗殺された!?」

天「くそっ!琴吹の仕業か!」

天「このままだと俺の命も危ない・・・桜ヶ丘から撤退するぞ!」

執事「了解致しました」

私は家に帰った後、ずっと泣いていた。

大好きだった人に裏切られたのだから。

紬「ううっ・・・」グスッ


次の日、担任の先生から天君が引っ越した事を伝えられた。


それから数ヶ月・・・

みんなが慰めてくれたおかげで、私はもうすっかり立ち直っていた。

でも、一つだけ前と違う事がある。

男子A「あの・・・」

男子A「つ、付き合って下さい!」

紬「気持ちは嬉しいけど、男女の仲は・・・」


紬「まだちょっと、遠慮したいの」

天「ははは・・・臨時に増員するとは、よく考えたねぇ」

斎藤「紬お嬢様が高校生になられる前に、紫合グループを倒す事が目標ですので・・・」

斎藤「あなたが、その紫合家の最後の一人です」

天「もう俺の負けだ、早く撃て」

斎藤「では、あなたの望み通りに・・・」


こうして、私が中2の時、紫合グループは崩壊した。

そして時は流れ・・・私は中3、受験生になった。

今日は二者面談だ。

担任「第一志望はどこですか?」

私が目指している高校は、あの時からずっと、変わっていない・・・

紬「桜ヶ丘女子高等学校です!」

____
___
__

紬「・・・っていう感じかしら」


唯「・・・」

律「何か・・・」

澪「凄いな・・・」

梓「・・・でも、喋っちゃってよかったんですか?」

紬「ええ、だけど・・・」


紬「今話した事は、私達だけの秘密ね♪」ニコッ


紬編第二部おわり

紬編がやっと終わりました

あとは、律編、澪編、最後に憂編です

次の日

紬「じゃあ今日は澪ちゃんね!」

澪「えっ・・・」

律「おい!私をスルーすんな!」

唯「だって、りっちゃんのお話はくだらない事ばっかりになりそうなんだもん・・・」

律「何だとー! 私にだって、すごーく重厚な、聞けば誰でも感動する過去があるんだぞ!」

梓「じゃあ話してみて下さい」

律「よーし分かった! 今日は私の番だー!」

ただ今、仕事が臨時に入ったので夜まで抜けます

保守よろしくお願いします

__
___
____

両親は日本人だけど、私が生まれたのは日本じゃなかった。

治安は最悪で、まるで地獄のような国。

警察なんて、存在しないも同然だった。

強盗殺人は毎日のように発生し、日常茶飯事と化していた。

幼稚園なんて行けるはずもなく、毎日死の恐怖と隣り合わせ。

そんな私達一家に転機が訪れる。

父がパスポートを手に入れてきたのだ。

父「これで、やっと日本に帰れる・・・」

母「そうね・・・」

律「ねぇねぇ、日本ってどんな国なの?」

母「こことは大違いで、とっても平和な国よ」

律「ふーん・・・」


その数日後、私達一家は荷物をまとめて船に乗った。

聡「姉ちゃん、楽しみだね!」

律「うん!」


律「お父さん、どうやってパスポートを手に入れたの?」

父「琴吹っていうお金持ちの日本人にお願いして、手配してもらったんだ」

父「国籍や家の方も大丈夫だって言ってたよ」

律「へぇ・・・琴吹って凄いんだね!」

約一週間後、私達一家は日本に到着した。

律「ここが・・・日本・・・!」

あの国とは大違いだった。

街は整備され、衛生環境も良好。

何より、みんなが生き生きとしている。


その後、私達の家がある桜ヶ丘というところまでバスで移動した。

母の話によると、私はちょうど小学校に入学する直前らしい。

春休みと呼ばれる時期で学校や幼稚園はないので、日本語の勉強をしておいた。

向こうでも家の中では日本語で話していたので、日本語は話せるけどとりあえず・・・


そして、入学式の日がやってきた。

日本国籍こそ取得したものの、日本の生活には不慣れだったので最初は静かにしているつもりだったが・・・


担任「自己紹介をして下さい、まずは秋山さんから・・・」

澪「え・・・えーっと・・・」

可愛い子だな・・・

澪「あ、秋山澪です・・・」

何か、凄く恥ずかしがってる。

澪「よ、よろしくおねがいしましゅ・・・」

あ、噛んだ。

澪「・・・!」カアアッ

その子は必要最低限の事だけ言うと、すぐに席へ戻っていった。

見た感じだと、友達は特にいないみたいだった。

担任「じゃあ次は田井中さんの番ね」

あの子みたいに友達がいないのは嫌だなぁ・・・

よし、もう素の自分を出すしかない!

律「田井中律です!呼び方は律でもりっちゃんでもお好きにどうぞ!」

律「みんな、よろしくッ!」ビシッ!

フッ・・・決まったぜ・・・

プッ・・・アハハハハ!

律「笑うなー!」

そういえばあの子は・・・

澪「・・・!」クスクス

一応笑ってた。

全員が自己紹介を終えると、休み時間になった。

何故か、みんなが私のところに集まってきた。

男子F「田井中って外国にいたんだろ?」

律「そうだぜ、りっちゃん武勇伝でも話してやろうかー?」


いろいろと喋っていたら休み時間が終わり、給食の時間。

担任「今日は自由に机をくっつけていいですよー!」

担任「みんなで仲良くしましょうね」


律「よーし、みんな集まったかー?」

男子達「オー!」

律「負けた奴は片付け担当! いいな?」

男子G「言い出しっぺが負けたりしてなー!」

律「何だとー!?」

ジャンケンポン!

律「くそっ・・・本当に負けた・・・」

そういえば、あの子はどこだろう?


・・・あ、いた。

澪「・・・」パクパクモグモグ

やっぱり一人で食べてる。


とりあえず、私はクラスに溶け込む事に成功した。

でも・・・

先生「田井中さん、勉強しましょうね~」

先生はこう言って、0点のテストを私に返した。

律「あはははは・・・」

そう、私は勉強が苦手なのだ!

しかし、私には特技がある!

先生「位置について・・・よーい、ドン!」

スタタタタ・・・

律「どうしたお前ら~!」

男子F「あいつ速過ぎだよ・・・」

治安が悪く、道も全く整備されていないような国で育ったので運動は得意だった。

男子ですら相手にならない。

あの子の方を見てみると・・・

澪「・・・」ハァ・・・ハァ・・・

凄い苦しそう。運動が苦手みたいだ。

だんだん日本での生活や学校生活にも慣れていき、心の余裕ができてきた。

何か新しい事をしよう。

そこで、あの子が気になるので少しちょっかいを出そうと思った。

律「・・・」ジィー

律「何読んでるの!?」

澪「!?」ビクッ

律「ねー見せて~~」

澪「・・・」ウルウル


律「すごーい、100点だー!!」

澪「・・・!」ビクッ


律「澪ちゃんって絵もうまいんだ!!」

澪「ひぃっ」ビクッ


あの子の反応が面白いので、しょっちゅうちょっかいを出すようになった。

でもこの時は、あの子と親友になるなんて思ってなかったけど・・・

そして私は順調に進級していき、小4になった。

よく考えたら、毎回あの子と同じクラスになってるような・・・?


学活の時、担任の先生からあの子の作文が県から賞をもらった事を聞いた。


その日の放課後に学校の外に出ると、どこかから誰かの泣いている声が聞こえた。

公園の方からかな?


私が公園に行くと、あの子が泣いていた。

澪「・・・」グスッ・・・

律「どうしたの?」

夕食のため、少しの間抜けます

保守

再開します

Docomo規制が再発動しませんように

どうやら、賞をもらった人は全校集会でその作文を読まないといけないらしい。

もちろん、みんなの前で。

あの子は恥ずかしがり屋なので、読みたくなくて落ち込んでいたようだ。

律「なんで?」

澪「だって恥ずかしいもん・・・」

律「恥ずかしくないよ、すごいよー!」

澪「ぜ、全然すごくなんかないよ!!」

律「だって、賞もらったのクラスで澪ちゃんだけだよ?」

律「私だったらみんなに自慢するな~・・・」


澪「だったらりっちゃんが賞もらえばよかったのに! みんなの前で読むのヤだよぉ!!」

律「!!」

律「・・・」ドキドキ

澪「あ・・・ご、ごめんなさい・・・」シュン・・・

澪ちゃんってこんな大きな声出せるんだ・・・

なんか・・・面白いっ!!

律「ねえっ!!」

澪「?」

律「今からうちにおいでよ!! 特訓しよう!!」

澪「え・・・ええっ!?」

澪「で・・・でも・・・」

律「いいからいいから!!」

律「・・・どうぞっ!!」

澪「・・・できないよぉ~・・・」

律「台もっと高くする?」

澪「そ、そういう事じゃなくって・・・」

律「う~ん・・・」

どうすればいいんだろ?

そういえば、お父さんが緊張した時は観客をじゃがいもだと思えって言ってたような・・・

じゃがいもの真似はできないけど、パイナップルぐらいなら・・・


律「はい! 出来上がり!」

澪「・・・なあに?それ・・・」

律「パイナップル!!」

律「パイナップルの真似~」

澪「・・・!」クスクス

律「ん?」

澪「ぜ、全然似てないよ~・・・」

律「えへへ・・・」


そして、全校集会の日。

澪ちゃんは、ちゃんと発表できていた。

内容がちょっとアレだったけど・・・


澪「りっちゃん、昨日はありがと・・・」

律「いいよいいよ、友達でしょ?」

澪「私なんかが友達でいいの・・・?」

律「もちろん!」

それから、澪ちゃんは私の家によく遊びにくるようになった。


聡「おーい姉ちゃん・・・ってあれ?姉ちゃんの友達?」

澪「うぅ・・・」ビクビク

聡「(か、可愛い・・・)」

律「あ、紹介するの忘れてた」

律「澪ちゃん、こいつが私の弟の聡だよ」

律「聡、この子が私の友達の秋山澪ちゃんだ」

澪「よろしくおねがいします・・・」ペコリ

聡「こ、こちらこそ・・・」


澪「ねぇりっちゃん」

律「何?」

澪「今度、私のおうちに遊びにこない?」

律「いいよー!」

澪「ここが私のおうちだよ・・・」

私の家がすぐそこに・・・こんなに近くにあったとは。

澪「ママ、ただいま~」

澪ママ「澪ちゃん、おかえり♪ あれ?横の子は?」

澪「私の友達のりっちゃんだよ」

律「田井中律です! お邪魔しまーす!」

澪ママ「まあ・・・ついに澪ちゃんがお友達を・・・」

澪ママ「パパに連絡しなきゃ!」アタフタ

律「・・・入っていいのかな?」

澪「大丈夫だよ、早く入って」


澪ママ「さあ、今日のおやつは特大ケーキよ!」

澪「こんなに食べたら太っちゃうよぉ・・・」

澪ママ「じゃありっちゃん、遠慮せずにどんどん食べてね!」

私はどんなに太ってもいいんですか・・・?

澪「ごめんね、ママが迷惑かけて・・・」

律「大丈夫だよ、気にしないで!」

澪「うん・・・」


澪「あのね、りっちゃん・・・」

澪「ずっと、一緒にいてね・・・」

律「もちろん! 私達、もう親友だよ!」


次の日、私は宿題をやるのを忘れていたので、澪ちゃんに見せてもらう事にした。

律「悪いねぇ~」

澪「ううん、全然平気だよ」

澪「でも・・・自分でやらないと、力にならないよ?」

律「うぅっ・・・分かった、次からは自力で頑張ってみるよ」


こうして、澪ちゃんと仲良くなっていった。


そして私が小6になった頃、面白い本を見つけた。

『行動を変えれば人も変わる!』

これだ! これなら澪ちゃんもきっと・・・


律「恥ずかしがり屋を治すには自分に自信を持たなきゃ!」

律「まずは喋り方!!」

律「語尾に『だぜ』を付ければ自信満々に見えるよ!」

澪「わ・・・私は秋山澪・・・だぜー・・・」

律「そうそうその調子!!」


律「え?今日は遊べないのか?」

澪「うん、ちょっとね・・・だぜー・・・」

律「何でも『だぜ』を付ければいいってもんじゃないだろ・・・」

あれ?澪じゃなくて私の方があの喋り方になっちゃった・・・?

律「え?今日もダメなの?」

澪「うん、ちょっと用事が・・・だぜー・・・」

律「・・・分かった」


律「随分と眠そうだなー、澪ー?」

澪「そ、そんな事ない!」

律「夜遅くまで何やってたんだー?」

澪「それは、まだ・・・言えない・・・」

律「?」


最近、澪と遊ぶ時間が減ったような気がするなぁ・・・

何か隠してる事があるっぽいし・・・


律「春休みはいっぱい遊ぼうぜー!」

澪「ごめん、いろいろあるからあんまり遊べないかも・・・」

律「そっか・・・」

中学生になる直前の春休みのある日、私は公園を歩いていた。

ふと前を見ると、ジャージ姿の少女が走ってくる・・・って、

律「澪!?」

澪「り、律!?」


律「いやー、こうして見ると・・・」

澪「ん?」

律「澪ってスタイル抜群だよな~・・・胸もあるし、背も高いし・・・」

澪「そ、そうか? 律だって・・・」

澪「・・・いや、何でもない」

律「うわーん! 澪ひどーい!」

澪「あ、ごめんごめん・・・」

律「そういえば、何でそんな格好して走ってたんだ?」

澪「それは・・・えっと・・・」

律「よし! じゃあ勝負!」

律「ここから私の家まで競走だ! 私が勝ったら、今まで隠してた事全部白状してもらうからな!」

澪「分かった・・・」

よし、これでやっと聞き出せる。

澪は運動が苦手だったはずだ。

律「位置について・・・よーい、ドン!」

澪「・・・」

律「・・・?」

あれ?澪ってこんなに速かったっけ・・・

澪「・・・♪」

律「・・・!?」

ヤバい、このままだと引き離される・・・、私もスピードアップしよう。


澪「・・・」

律「・・・!」ハァ・・・ハァ・・・

澪のやつ・・・ずっとハイスピードで走ってるのに、何でバテてないんだ・・・?

ゴールの私の家はもうすぐ・・・

律「・・・!」ハァッ・・・ハァッ・・・

澪から、聞き出すためにも、負ける訳には、いかない・・・

律「・・・」フラフラ


律「・・・」バタッ・・・

目が覚めると、私は澪の部屋のベッドで横になっていた。

確か、澪とマラソン対決してて、それで・・・

ガチャッ

澪「律! 大丈夫か!?」

律「大丈夫だよ、そんなに気にすんなって」

澪「律に何かあったら・・・私・・・」グスッ

律「はいはい、分かったから」


澪「夜ご飯は食べれるか?」

律「ああ、平気だよ」

澪「じゃあ、もうリビングに用意してあるから・・・」

律「ほーい」

律「この包み焼きハンバーグうめー!」

澪「そ、そうか?」モジモジ

律「最近のインスタントってすげーなー!」

澪「えっ・・・」


澪「それ、私の手作りなんだけど・・・」


律「えっ!?」

澪「・・・」グスッ

律「今日は澪のお母さんやお父さんいないからてっきりインスタントかと・・・」

澪「せっかく、頑張って、作ったのにぃ・・・」ポロポロ

律「ごめんごめん! でも確かに美味いぞコレ」

澪「・・・ほんとぉ?」グスッ

律「ああ、マジで!」

澪「・・・!」パアアッ

律「澪~、もっとおかわりないの~?」

澪「食い過ぎだ!」

ゴチン!

律「だって、澪の手料理が美味しいんだもん・・・」

澪「そ、そうか?」モジモジ

律「じゃあおかわりを・・・」

澪「いい加減にしろ!」

ゴチン!


律「じゃあ、そろそろ帰りますか」

澪「えっ・・・」

澪「今日、うちに泊まるんじゃないの・・・?」

律「無理無理、明日中学の入学式だぞ?」

澪「でも・・・今日パパもママも帰ってこないから・・・」

澪「ひとりぼっちは、ヤだよぉ・・・」グスッ

律「でもなぁ・・・」

澪「り~つ~ぅ・・・」ウルウル

その上目遣いは反則だろ・・・

律「分かった分かった!じゃあ荷物取ってくるから!」


律「おまたせ!」

澪「お風呂の準備しといたから・・・先に入ってて」

律「え~、一緒に入ろうぜ~」

澪「じゃあ、洗濯が一段落するまで待ってて」

律「ほーい」


何か、澪の家の中がいつもより綺麗になったような気がする。

澪が掃除したのかな・・・?

律「澪~、終わった~?」

澪「ああ、あとは明日干すだけだから・・・」

律「じゃあ一緒に風呂入ろうぜ~!」


澪「・・・」

律「・・・」ヌギヌギ

律「澪~、早く脱げよ~」

澪「だ、だって・・・恥ずかしい・・・」

律「いいから早く脱げ!」

澪「わ、分かったよぉ・・・」


律「ふ~・・・お風呂の後はやっぱ牛乳だよな!」グビグビ

律「澪も飲め飲め!」

澪「あ・・・うん」ゴクゴク

律「そういえば・・・澪っていつから特訓してたんだ?」

澪「・・・!?」ブフッ!

風呂に入るので30分ほど抜けます

保守

澪「ななななな、何の事だ?」

律「最近あんまり遊ばなかったのも、特訓してたからだろ?」

澪「え・・・、えーっと・・・」

律「ごまかしてもムダだ」

澪「何で、バレてるんだ・・・?」

律「いきなり完璧超人になってたら誰でも気付くだろ」

澪「そ、そうか?」

律「でも、何でそんな事したんだ?」

澪「そ、それは・・・」


澪「中学校の次は、高校だろ?」

澪「律と同じ高校は無理だと思うから、律と離れ離れになっちゃうだろうから・・・」

澪「今のうちに、律に頼らなくても生きていけるようになりたかったんだ・・・」

澪「それでも、恥ずかしがり屋だったり、怖い話や痛い話が苦手だったりするのは克服できなかったんだけどな・・・」

律「澪・・・」

澪「変わろうと思っても、完全には変われなかった・・・」

澪「私って、ダメなやつだよな・・・」


律「・・・いや、澪は十分変わったよ」

律「運動もできるようになったし、家事もこなせるし・・・」

律「私なんて、もう不要なんじゃないのかな・・・」


澪「そんな事ないよ・・・律は、私を孤独から解放してくれたヒーローなんだから・・・」

澪「私の唯一無二の友達・・・いや、親友だから・・・」

澪「これからも、ずっと一緒にいてくれる・・・?」


律「当たり前だろ!」

律「じゃあ、私はリビングで寝るから」

澪「・・・」ジーッ

律「?」

澪「・・・一緒に寝てもいい?」

律「いいけど・・・私、寝相悪いぞ?」

澪「別にいいよ、律と一緒がいいから・・・」


律澪「「おやすみー」」


澪「・・・」zzz・・・

澪の寝顔・・・可愛いな

私も寝ようっと・・・


澪「律!起きろ!」

律「う~ん、あと3時間・・・」ムニャムニャ・・・

澪「早く起きろ!遅刻するぞ!」

ゴチン!

律「なんとか間に合った・・・流石私!」

澪「お前のせいでこんなギリギリになったんだろ!」

ゴチン!

律「いって~!」


そして、入学式後のクラス分け発表。

今年は・・・どうなったかな?

また澪と一緒だといいけど・・・


澪「よかったぁ~! また律と一緒だよぉ~!」

律「でも、そろそろ別の友達も作らないと・・・」

澪「律だけでいい!」

律「あのなぁ・・・」

教室に入ると、澪のところに男子達が殺到した。

まあ無理もない。

澪「ひぃぃっ!」

澪「り、律! 助けてぇ~!」


澪「もう死にたい・・・」

律「死ぬな」


担任「では自己紹介をして下さい、まずは秋山さんから・・・」

澪「え・・・え~っと・・・」アタフタ

澪「あ、秋山澪です!」アタフタ

澪「よ、よろしくお願いします・・・」アタフタ

男子達「(きゅるるるりん!)」

何でもできて容姿端麗な澪は、校内で絶大な支持と人気を得た。

当の本人は全く望んでいないが。

まさに、澪は学校のアイドル的存在だった。


それに対して私の方は、小学校の時と大して変わらなかった。


そんなある日、私はとあるライブのDVDを入手して澪と一緒にそれを見た。

律「バンドやろうよバンド~!」

澪「・・・」

澪「はぁ・・・仕方ないな」

そして、私達は楽器を買うために貯金を続け・・・

半年後、ようやく楽器を手に入れた。

律「私がドラムで・・・澪がベースか」

律「ギターもキーボードもボーカルもいないじゃん・・・」

澪「それに、ベースはまだしもドラムなんて誰に教わるんだ?」

律「ああ、それならマキちゃんに頼んであるから」

澪「律のくせに用意周到だな」


律「バンドを組めるのは高校に入ってからかなぁ・・・」

澪「でも、この辺で軽音部のある学校は桜高ぐらいしかないぞ?」

律「だったらそこに行けばいいじゃん」

澪「あのなあ・・・」

これ澪話すことなくなっちゃうだろ

律「偏差値70・・・だと・・・!?」

澪「律には無理だろ?」

律「いや、私は諦めない!」

律「澪、勉強教えてくれ!」

澪「分かったよ・・・」

この時の熱意はわずか三日で冷めてしまったが。


そして、中3になると・・・

澪「志望校どこにした?」

律「桜高」

澪「無理があるだろ・・・」

律「澪は私と同じ高校に行くのが嫌なのか!?」

澪「そうじゃないけど・・・」

律「じゃあいいじゃん!」

マキちゃん?てなに?

澪「だったら今日から猛勉強だな!」

律「え~・・・」

澪「私が教えてやるから・・・」

律「さっすが澪~!」


それから約一年間、ひたすら(?)勉強し・・・

ついに、運命の時がやってきた。

合格発表の日だ。

律「・・・」ジーッ

澪「・・・」ジーッ


律「あっ・・・あった・・・」

澪「私も・・・」

律「合格だぁー!!」

澪「良かった・・・」ホッ

____
___
__

えっ?偏差値70なの??

律「・・・という感じだな!」

律「どうだ!感動しただろ!」


紬「私達の過去に」

唯「比べれば」

梓「まだまだですね」


律「こういう時だけ連携するな!」


律編おわり

律編が終わりました
ちなみに、ほのぼの路線は律だけだと思います
あとは澪編・憂編ですね
docomoが再規制される前に終わるかどうか

PCが三ヶ月規制なので、docomoが規制されると2ちゃんねるに書き込みできなくなります
その場合、製作情報VIPに移って続行すると思います

>>267
大丈夫です
>>270
ラブクライシスのドラム、第一期14話を参照
>>273
桜高がって事です

次の日

唯紬「「じゃあ最後は澪ちゃんね!」」

澪「えっ!?」

梓「逃がしませんよ・・・澪先輩」

澪「梓まで!?」

律「早く白状しちゃえよ」

澪「わ、分かったよぉ・・・」


澪「じゃあ、話すからな・・・」

__
___
____

私は、とても恥ずかしがり屋で、運動が苦手だった。

そのせいか、小さい頃は誰も友達がいなかった。

幼稚園の頃はイジメられていた程だ。


男子達「やーい!弱虫ー!」

彼らはそう言うと、私に砂をかけたり、泥をぶつけたりしてきた。

澪「やめて・・・やめてよぉ・・・」ポロポロ

男子達「やーい!泣き虫ー!」

バシッ!バシッ!

澪「ううっ・・・痛いよぉ・・・」ポロポロ

澪「・・・」グスッ

女子達「ねえ、汚れた服を洗ってあげる!」グイグイ

澪「えっ・・・」


女子達「せーの!」

ドンッ!

澪「うわああっ!」

バッシャーン!


男子達に攻撃され、女子達によって池に突き飛ばされる。

いつものパターンだ。

そのせいで、毎日帰る頃には服がボロボロになっている。

今日はそろそろ寝るので、保守よろしくお願いします

docomo規制が再発動しない事を祈って保守

>>284
おい
モリタポあげよーか?

再開します

>>288
嬉しいですが、
モリタポのシステムがよくわからないです

澪「ただいま・・・」

澪ママ「おかえり、澪ちゃん♪」

澪「うぇぐ・・・うぅっ・・・」ポロポロ

澪「またぁ・・・イジメられたよぉ・・・」ポロポロ

澪ママ「澪ちゃんは何も悪くないのに・・・大変だったわね・・・」ナデナデ


澪ママ「澪ちゃんも、もうすぐ小学生ね」

澪「うん・・・」

澪「どうせ、またイジメられるんでしょ・・・?」

澪ママ「・・・」

澪「友達なんて、一生できないよ・・・」

そして、小学校の入学式の日。

入学式が終わると、自分のクラスに向かった。


担任「では自己紹介をして下さい、まずは秋山さんから・・・」

えっ・・・」

自己紹介・・・?


ふと気が付くと席に戻っていた。

緊張し過ぎて、何を言ってたかは覚えてない。


律「みんな、よろしくッ!」ビシッ!

澪「・・・!」クスクス

面白い子だな・・・


結局、友達ができないまま放課後になった。

イジメられないだけ前よりマシか。

しばらくの間、誰とも関わらずにひとりぼっちだった。

でも、最近・・・

律「すごーい、100点だー!!」

澪「・・・!」ビクッ

あの子がちょっかいを出してくるようになった。


そして、私が4年生になった頃・・・

先生「秋山さん、あなたの作文が県から賞を貰ったわよ!」

澪「えへへ・・・」

先生「それでね、賞を貰った人は・・・全校集会でそれを読まなきゃいけないの」

澪「えっ・・・!?」


澪「・・・」グスッ・・・

放課後、私が公園で泣いていると・・・


律「どうしたの?」

律「へ?作文読みたくない?」

律「なんで?」

澪「だって恥ずかしいもん・・・」

律「恥ずかしくないよ、すごいよー!」

澪「ぜ、全然すごくなんかないよ!!」

律「だって、賞もらったのクラスで澪ちゃんだけだよ?」

律「私だったらみんなに自慢するな~・・・」

勝手な事ばっか・・・言わないで・・・!

澪「だったらりっちゃんが賞もらえばよかったのに!」

澪「みんなの前で読むのヤだよぉ!!」

あっ・・・!

澪「あ・・・ご、ごめんなさい・・・」シュン・・・


律「ねえっ!!」

澪「?」

律「今からうちにおいでよ!! 特訓しよう!!」

澪「え・・・ええっ!?」

澪「で・・・でも・・・」

律「いいからいいから!!」


そのあと、彼女の家に連れていかれて特訓(?)をした。

おかげでリラックスでき、全校集会ではちゃんと発表できた。

澪「りっちゃん、昨日はありがと・・・」

律「いいよいいよ、友達でしょ?」

えっ・・・?

友達・・・?

澪「私なんかが友達でいいの・・・?」

律「もちろん!」

その時、私はとても嬉しかった。

生まれて初めて、友達ができたのだから。


その後、りっちゃんには聡君という弟がいる事を知った。

だからあんなに男っぽいのかなぁ・・・?

今度は、私の家に来てもらおうかな・・・

澪「ねぇりっちゃん」

律「何?」

澪「今度、私のおうちに遊びにこない?」

律「いいよー!」


澪「ここが私のおうちだよ・・・」

澪「ママ、ただいま~」

澪ママ「澪ちゃん、おかえり♪ あれ?横の子は?」

澪「私の友達のりっちゃんだよ」

律「田井中律です! お邪魔しまーす!」

その日は、ママが張り切っちゃって大変だった。

おやつが特大ケーキになったり・・・


澪「ごめんね、ママが迷惑かけて・・・」

律「大丈夫だよ、気にしないで!」

澪「うん・・・」


澪「あのね、りっちゃん・・・」

澪「ずっと、一緒にいてね・・・」

律「もちろん! 私達、もう親友だよ!」

りっちゃんが親友って言ってくれた。

嬉しい・・・

次の日から、私はりっちゃんに宿題を見せてあげたり、勉強を教えてあげるようになった。


そして6年生になった頃、りっちゃんが変な本を見つけてきた。

まずは話し方から変えようとしたけど、なかなか慣れない。

時間をかけてやるしかない・・・


澪ママ「澪ちゃんももうすぐ中学生か・・・」

澪「中学生ってどんなの?」

澪ママ「いろいろ変わるわよ~! 制服があったり、部活があったり・・・」

澪ママ「中3になったら受験もあるしね!」

澪「受験?」

澪ママ「高校受験の事よ」

澪ママ「澪ちゃんみたいに頭のいい子は、レベルの高い高校に行けるの」

澪ママ「でも・・・」

澪ママ「りっちゃんと同じ高校に行くのは、ちょっと無理ね・・・」

澪「なんで?」

澪ママ「ほら、りっちゃんって勉強苦手でしょ?」

澪ママ「だから・・・」

この時、私は初めて気が付いた。

いつか、りっちゃんと別れる時が来る事に。


だったら今のうちに、一人で生きていけるように特訓しよう。

中学校に入る前に・・・

まず、私は本屋に行った。

『ナマケモノでもできる!基礎トレーニング』
『スポーツの天才になれる!応用編』
『料理読本決定版!』
『決定版!家事の仕方』
『サルでもできる!護身術』

勉強はできるので、それ以外の分野を補強しようといろいろな本を買った。

りっちゃんにはバレないようにしよう。


律「み~お~、遊ぼうよ~!」

澪「ごめん、今日は・・・」


律「澪~!遊ぼうぜ~!」

澪「ちょっと用事が・・・」


律が遊ぼうと言っているのを断るのは正直辛い。

でも、頑張るしかない・・・

だんだんあの話し方にも慣れてきたな・・・

スポーツ教室に通ったりもした。

コーチ「秋山、だいぶ上手になってきたな!」

澪「は、はい!」


今日はこのあと、公園を10週して、家に帰ってからは料理の練習を・・・


澪「ただ・・・いま・・・」ハァッ・・・ハァッ・・・

澪ママ「澪ちゃん大丈夫? ちょっと無理し過ぎなんじゃ・・・?」

澪「大丈夫・・・だよ・・・」フラッ・・・


澪「・・・」バタッ!

仕事に行くので夕方ぐらいまで抜けます
日曜にも仕事なんて憂鬱・・・

保守よろしくお願いします

目が覚めると、私は自分のベッドで横になっていた。

もう夕方か・・・夕方の予定は公園10周だったはず・・・

早く、練習を再開しないと・・・!


澪ママ「ダメよ澪ちゃん! まだ横になってないと・・・」

澪「もう大丈夫・・・だから・・・」

澪ママ「でも・・・!」

澪「行って・・・くる・・・」

まだ半周もしていないのに、目眩がする。

足元がおぼつかない、呼吸が苦しい。


数分後、私はとうとう倒れてしまった。

立ち上がろうとしても、手足に力が入らない・・・

やっぱり、私ってダメなままなのかなぁ・・・


澪パパ「澪~!」

澪「パパ・・・?」

澪パパ「心配したじゃないか・・・何でこんなに無茶するんだ?」

澪「それは・・・」

澪パパ「大丈夫、他の人にバラしたりはしないから・・・」

澪「律やママやパパとも、いつかは離れ離れになっちゃうでしょ・・・? その前に・・・」

澪「一人で生きられるようになりたかったから・・・」

澪「何にもできない自分を、変えたかったから・・・!」

澪「でも、結局はママやパパに迷惑をかけてるだけなんだよね・・・」

澪「私なんて、生きてる意味ないんだよ・・・!」ウルウル

ダキッ・・・

澪パパ「そんな事ないさ・・・」

澪パパ「澪は、僕達にとって一番大事な・・・」

澪パパ「たった一人の可愛い娘なんだから・・・」


澪「パパ・・・」

澪パパ「さあ、今日はもう家に帰ってゆっくり休もうな」

澪「うん・・・!」

そして、春休み最終日。

両親が明日の昼まで出かけるそうなので、私が家事をする事になった。

澪ママ&パパ「「じゃあ行ってきま~す!」」

澪「行ってらっしゃ~い!」

澪パパ「明日の入学式には、ちゃんと出席するからな~!」

澪ママ「くれぐれも、無理はしないでね?」

澪「うん!」


家事を一通り終えた後、公園で走っていると・・・とうとう律に見つかってしまった。

律が競争しようとか言ってきたので、仕方なくそれを了承した。

まあ、特訓の成果を試すチャンスでもあるしいいか。

律「位置について・・・よーい、ドン!」


あれ?律が随分遅い・・・私が早くなったのかなぁ?


すると突然、律が倒れてしまった。

落ち着け、私・・・こういう時は・・・


なんとか律を私の部屋まで運び、私のベッドに寝かせておいた。

なかなか目を覚まさないので、夕食の材料を買いに出かける事にした。

今日は律もいるし・・・二人分買っておこうかな。


帰ってきても、まだ律は寝ているみたいだった。

今のうちに洗濯物の取り込みと、夕食作りをしておこう。


しばらくすると、私の部屋から物音がした。

律が起きたみたいだ。

ガチャッ

澪「律! 大丈夫か!?」

律「大丈夫だよ、そんなに気にすんなって」

よかった・・・!

澪「律に何かあったら・・・私・・・」グスッ

律「はいはい、分かったから」


澪「夜ご飯は食べれるか?」

律「ああ、平気だよ」

澪「じゃあ、もうリビングに用意してあるから・・・」

律「ほーい」

私の手料理・・・律は気に入ってくれるかなぁ?

律「この包み焼きハンバーグうめー!」

澪「そ、そうか?」モジモジ

律「最近のインスタントってすげーなー!」

澪「えっ・・・」


澪「それ、私の手作りなんだけど・・・」


律「えっ!?」

澪「・・・」グスッ

律「今日は澪のお母さんやお父さんいないからてっきりインスタントかと・・・」

澪「せっかく、頑張って、作ったのにぃ・・・」ポロポロ

律「ごめんごめん! でも確かに美味いぞコレ」

澪「・・・ほんとぉ?」グスッ

律「ああ、マジで!」

やったぁ・・・!

澪「・・・!」パアアッ

律「じゃあ、そろそろ帰りますか」

澪「えっ・・・」

澪「今日、うちに泊まるんじゃないの・・・?」

律「無理無理、明日中学の入学式だぞ?」

澪「でも・・・今日パパもママも帰ってこないから・・・」

澪「ひとりぼっちは、ヤだよぉ・・・」グスッ

律「でもなぁ・・・」

澪「り~つ~ぅ・・・」ウルウル

律「分かった分かった!じゃあ荷物取ってくるから!」

こうして、律が私の家に泊まる事になった。

律が一緒にお風呂に入ろうと言ってきたので、そうする事にした。

二人でお風呂に入るの・・・久しぶりだなぁ・・・


そして私がお風呂から上がると、先に上がった律が牛乳を飲んでいた。

多分、背が低いのを気にしてるんだろう。

そして律は私に牛乳を渡すと、こう言った。

律「そういえば・・・澪っていつから特訓してたんだ?」

私はとても驚いた。なんでバレてるんだ・・・?

ごまかそうとしたけど無駄だったので、正直に話す事にした。

澪「中学校の次は、高校だろ?」

澪「律と同じ高校は無理だと思うから、律と離れ離れになっちゃうだろうから・・・」

澪「今のうちに、律に頼らなくても生きていけるようになりたかったんだ・・・」

澪「それでも、恥ずかしがり屋だったり、怖い話や痛い話が苦手だったりするのは克服できなかったんだけどな・・・」


律「澪・・・」

澪「変わろうと思っても、完全には変われなかった・・・」

澪「私って、ダメなやつだよな・・・」


律「・・・いや、澪は十分変わったよ」

律「運動もできるようになったし、家事もこなせるし・・・」

律「私なんて、もう不要なんじゃないのかな・・・」

律がそんな事を思ってたなんて・・・

意外だった。でも・・・!

澪「そんな事ないよ・・・律は、私を孤独から解放してくれたヒーローなんだから・・・」

澪「私の唯一無二の友達・・・いや、親友だから・・・」

澪「これからも、ずっと一緒にいてくれる・・・?」


律「当たり前だろ!」


律「じゃあ、私はリビングで寝るから」

えっ・・・?

律と一緒に寝たいなぁ・・・

澪「・・・」ジーッ

律「?」

澪「・・・一緒に寝てもいい?」

律「いいけど・・・私、寝相悪いぞ?」

澪「別にいいよ、律と一緒がいいから・・・」


律澪「「おやすみー」」


律と一緒のベッド・・・

何だか、あったかい・・・


翌朝、私が起きると・・・

やはり、律はまだ寝ていた。

しかしいつまで経っても律が起きてこないので、無理矢理起こす事にした。

澪「律!起きろ!」

律「う~ん、あと3時間・・・」ムニャムニャ・・・

澪「早く起きろ!遅刻するぞ!」

ゴチン!


そして、中学校の入学式。

律が寝坊したせいで遅刻しそうになったが、なんとか間に合った。


その次は、入学式後のクラス分け発表。

律と一緒じゃなかったら・・・どうしよう・・・


澪「よかったぁ~! また律と一緒だよぉ~!」

律「でも、そろそろ別の友達も作らないと・・・」

澪「律だけでいい!」

律「あのなぁ・・・」

教室に入ると、いきなり男子達が群がってきた。

今までとは大違いだったので驚いた・・・なんで!?

澪「ひぃぃっ!」

澪「り、律! 助けてぇ~!」

しかし、律は助けてくれなかった。

私のあわてふためく姿を見て笑っていたに違いない。


そのせいで、既に私はグダグダになっていた。

澪「もう死にたい・・・」

律「死ぬな」


そのあと自己紹介させられたような気もするが、頭の中が真っ白だったのでよく覚えていない。

開始早々、今までとは別の意味で学校に来るのが嫌になった。

そんなある日、律がとあるライブのDVDを入手してきたので一緒にそれを見た。

そうすると・・・

律「バンドやろうよバンド~!」

・・・予想通りの発言だ。

澪「・・・」

でも・・・面白いかもしれない。

澪「はぁ・・・仕方ないな」


そして、私達は楽器を買うために貯金を続け・・・

半年後、ようやく楽器を手に入れた。

律「私がドラムで・・・澪がベースか」

律「ギターもキーボードもボーカルもいないじゃん・・・」

澪「それに、ベースはまだしもドラムなんて誰に教わるんだ?」

律「ああ、それならマキちゃんに頼んであるから」

澪「律のくせに用意周到だな」

律「バンドを組めるのは高校に入ってからかなぁ・・・」

澪「でも、この辺で軽音部のある学校は桜高ぐらいしかないぞ?」

律「だったらそこに行けばいいじゃん」

澪「あのなあ・・・」

そのあと私が高校の偏差値表を見せたら、律は唖然としていた。

それでも諦めたくないらしく、勉強を教えてくれと頼んできた。

もちろん、律の事なので三日程でいつも通りに戻ったが。

そして、中3になると・・・

澪「志望校どこにした?」

律「桜高」

まだ諦めてなかったのか。

澪「無理があるだろ・・・」

律「澪は私と同じ高校に行くのが嫌なのか!?」

澪「そうじゃないけど・・・」

律「じゃあいいじゃん!」

はぁ・・・私の仕事がまた一つ増えそうだ。

澪「だったら今日から猛勉強だな!」

律「え~・・・」

澪「私が教えてやるから・・・」

律「さっすが澪~!」

それから約一年間、律に勉強を教えながら自分も勉強し・・・

ついに、運命の時がやってきた。

合格発表の日だ。


律「・・・」ジーッ

澪「・・・」ジーッ


律「あっ・・・あった・・・」

澪「私も・・・」

律「合格だぁー!!」

澪「良かった・・・」ホッ

これからも、律と一緒にいられる・・・!

____
___
__

澪「・・・という感じかな」


紬「澪ちゃんってりっちゃんの事が大好きだったのね!」

梓「澪先輩って努力家なんですね・・・尊敬します!」


律「私の時と反応が違い過ぎないか・・・?」

唯「だってりっちゃんだもん」

律「何ーッ!?」


澪編おわり

ついに主要メンバー5人全員が終わりました。

最後に憂編を書こうと思います


docomo規制が再発しない事を祈る

次の日

唯「今日は土曜日!」

唯「学校も部活もありません!」

唯「そこで、憂の過去を暴露させたいと思います!」


唯「憂~」

憂「なあに? お姉ちゃん?」

唯「軽音部のみんなでね、自分の過去を暴露し合ったの・・・」

唯「それでね、憂の過去も暴露して欲しいな~・・・って思ったんだけど・・・」

憂「う~ん・・・、ちょっと・・・」

唯「ダメ・・・?」ウルウル

憂「・・・ッ!?(お姉ちゃん、その上目遣いは反則だよ!)」

憂「仕方ないなぁ・・・」

唯「わーい!」

憂「じゃあ、話すね・・・」

__
___
____

私は、平沢家の次女として生まれた。

両親がよく出張に行くので、その間はお姉ちゃんが唯一の家族だった。

私達姉妹は周囲から嫌われていたため、普段は隣のおばあちゃんとお姉ちゃんぐらいしか話せる人がいなかった。


そして私が幼稚園に入る頃、隣のおばあちゃんから私にだけ告げられた。

私達姉妹が嫌われている理由を。


お姉ちゃんには告げない事にしたらしい。

ああ見えて、とても繊細だから。

初めての幼稚園。

しかし周囲には敵しかいなかった。


男子K「おい・・・あれって平沢姉妹の妹の方じゃないか・・・?」ボソボソ

男子L「イジメてやろうぜ・・・!」ボソボソ

馬鹿な奴らだ。あれで聞こえていないつもりらしい。

憂「さっきから何言ってるの?全部聞こえてたんだけど・・・」ニコッ

ドガッ!

男子K「ぐへっ・・・」バタッ

男子L「うわあ!あいつ何なんだ!?」


攻撃される前に、恐怖を植え付けておけばいい。

そうすれば、攻撃される事なんてない。


お姉ちゃんの方は和さんが何とかしてくれるだろう。

そう思っていたので、幼稚園の間は特に干渉しなかった。


小学校に入っても、私のやり方は変わらなかった。

友達は一人もいなかったが、イジメられる事もなかった。


しかし、お姉ちゃんと和さんのクラスが初めて別になった時・・・

最凶の敵が現れる。

紫合グループの御曹司がお姉ちゃんのクラスの担任になり、イジメを誘発させたのだ。

その男は次第に介入の度合いを強めていき・・・

最終的には生徒を利用したその男単独の攻撃と化していった。


そしてお姉ちゃんが不登校になると・・・

その男は、私達の自宅にまで攻撃を仕掛けようとしてきた。

もちろん、私が阻止するしかない・・・


男子M「あと少しで平沢の家だー!」

男子N「みんなー!もうすぐだぞー!」

憂「でも、私がここで阻止するね?」ニコッ

ドガッ!ドガッ!

男子M&N「「ぐへっ・・・」」バタッ


憂「・・・!」ハァ・・・ハァ・・・

男「チッ・・・そこをどいてもらおうかァ!」

ドスッ!

憂「うぅっ!」

私にも限界がある。

体力を消耗した状態で大人の男を倒すのは到底無理だ。

だが、それは素手だけの場合。

憂「・・・私が、武器を何も持ってないと思いますか?」

男「・・・!?」

そう言うと、私はスタンガンを取り出す。

憂「先生、おやすみなさい♪」


多少ダメージを受けたものの、とりあえず迎撃に成功した。


そしてしばらくすると、和さんが彼女の親を通じて教育委員会にその男をクビにする事を要求したため・・・

その男はクビになり、私達の前から消えた。


だが、彼は紫合グループの御曹司だ。

いずれ、復讐をしに戻ってくるだろう。

憂編は二部構成になりそうです

夕食のため一旦抜けます

保守よろしくお願いします

とりあえず、しばらくは平和に過ごせそうなので一安心だ。


そして、私が小4になった頃・・・

一人の女の子から声をかけられた。

純「ねぇ、私と一緒に遊ぼうよ!」

ありえない。

このクラスの奴らには、既に恐怖を植え付けてあるはず。

身の程知らずなのか・・・?

憂「私の事・・・怖くないの?」

純「うん!全然!」

ああ、ただの馬鹿か。

純「早く遊ぼうよ!」

仕方ない、相手をしてやるか。

純「憂ちゃんって、何でいっつも怖い顔してるの?」

憂「私の周りには敵しかいないから・・・」

憂「私が信じるのは、お姉ちゃんを含めたごく一部の人間だけ・・・」

憂「別に、友達なんかいなくても問題はないよ」

憂「私には、お姉ちゃんがいるから」

純「ふーん・・・」


純「でも、学校にいる間はどうするの?」

純「お姉ちゃんになかなか会えなくても、寂しくないの?」


憂「そ、それは・・・」

純「じゃあ私が友達になってあげる!」

純「これで私も、憂ちゃんが信じるごく一部の人間の仲間入りだね!」

憂「えっ・・・?」

こいつは疑うという事を知らないのか。

少しも私の事を疑おうとしない・・・本当に馬鹿だ。

まあ、こいつに関しては安全だろう。

ここまで馬鹿な奴が、人を騙せるはずがない。

純「ダメかな?」

憂「ううん、そうじゃないけど・・・」

純「じゃあ決まりだね!」


そして、私は5年生になった。

あの純という子と同じクラスらしい。

さて、毎年恒例のあの作業をしよう。

男子P「うわぁ・・・平沢だよ・・・」ボソボソ

男子R「イジメようぜ・・・!」ボソボソ

どこのクラスにもこういう馬鹿がいる。

憂「全部聞こえてるよ♪」ニコッ

ドガッ!バキッ!

約十分後・・・

男子P&R「「も、もうやめてくれぇ!」」

憂「謝って済むなら警察はいらないよ」

ドガッ!バキッ!

ちょうどその時・・・


純「憂!もうやめて!」


何故邪魔をする・・・仲間じゃなかったのか?

憂「友達でしょ? 私の邪魔しないでよ」

純「友達っていうのは、一番相手のためになる事をしてあげるもんなの!」

憂「じゃあ、邪魔しないでね」

純「こんなの、憂のためにならないよ!」

憂「こうするしかないの、イジメが始まってからだと手遅れになるから」

憂「先に、クラス全体に恐怖を植え付けておくんだよ」

憂「この二人は、そのための道具」

純「そんなの、間違ってるよ!」

タタタタタ・・・

こっちに向かってくる・・・

憂「?」

パシッ!

純「憂の馬鹿!」

頬が痛む。

私は反射的に、純の腹部に膝蹴りをヒットさせていた。

純「うぐっ・・・」ゴホゴホ

何故・・・?

ただ反撃しただけなのに・・・罪悪感を感じる。

邪魔な人間は何人も排除してきたが、こんなのは初めてだ。

純「う・・・い・・・?」ウルウル

憂「あっ・・・」

純「うわ~ん!」ポロポロ

純「憂なんて知らない!」スタスタ


行ってしまった・・・

そして、私はやっと気付いた。

純が・・・大切な友達だったという事に。

私のために、私の愚行を止めようとしてくれてたという事に。

早く追いかけて、謝らないと・・・


憂「純ちゃ~ん!」

純「な、何?」

憂「あの、その・・・」

憂「さっきは・・・ごめんなさい・・・」

純は許してくれるだろうか?


純「うん、じゃあもう仲直りね!」

その後、だんだん純ちゃんとも仲良くなっていった。

純「憂、随分性格変わったよね~」

憂「そうかな?」


でも、そんな幸せな時間もすぐ終わりを迎えた。


お姉ちゃんが中学校に進学し、私と純ちゃんは小6になった。

その時のお姉ちゃんの担任が・・・


忘れもしない、あの男だった。

お姉ちゃんは再び不登校になり・・・

また、あの男が家に攻撃を仕掛けようとしていた。

しかし、武器類はもう捨ててしまった。


でも私が、お姉ちゃんを守らなきゃいけない。


あの男は、屈強な男子達を集めて私の迎撃に備えていた。

恐らく、全員中3だろう。

憂「・・・」

男「またか・・・でも今回は人質がいるんだ!」

憂「!?」

純「んー!んー!」

そこには、手足をロープで縛られ、口をガムテープで塞がれている純ちゃんの姿があった。

憂「純ちゃん!」

男「抵抗したら・・・どうなるか分かってるだろうな?」

憂「くっ・・・!」

男「お前ら、こいつを徹底的に痛め付けろ!」

憂「うぐっ・・・うっ・・・」フラフラ

私は抵抗できないまま、数時間もの間攻撃され続けた。

ドガッ!

憂「うあっ!」

ドスッ!

憂「ぐはっ・・・」

バタッ・・・

耐え切れなくなった私は、地面に倒れた。

憂「うぅっ・・・」

必死で立ち上がろうとするが、力が入らない。

男「くたばれ!」

男が鉄パイプで私の後頭部を殴ると・・・

憂「ああっ・・・・・・」ガクッ・・・

私の意識は、そこで途絶えた。

純「憂!憂!」

憂「うぅっ・・・」

純「大丈夫!?」

憂「何とか・・・ね・・・」

純「ごめんね、私のせいで・・・」

憂「ううん・・・、純ちゃんは・・・何も悪くないから・・・」


唯「あ、憂ー!」

唯「怖かったよぉー!」

憂「お姉ちゃん、大丈夫だった?」

唯「うん・・・、アレ?」

唯「その顔の傷・・・どうしたの?」

憂「ああ、階段で転んじゃって・・・」

唯「そうだったんだー」

本当の事を言うとお姉ちゃんが心配するので、黙っておこう。

それから数日間、家への攻撃が続いたけれど・・・

ある時から、突然攻撃がなくなった。

和さんが不良達を味方にして、守ってくれているらしい。

ある日、お姉ちゃんが散歩に行ったきり戻ってこないので様子を見に行くと・・・

お姉ちゃんが、あの男達に襲われていた。


今、お姉ちゃんを助けられるのは私しかいない・・・

だけど、この前の時の傷がまだ癒えてない・・・

それでも・・・


憂「お姉ちゃんを・・・イジメないで・・・!」ハァハァ

しかし、傷の癒えていない私は男子生徒達を片付けるので精一杯。

あの男に立ち向かうものの、一方的に痛め付けられるだけだった。


唯「やめて・・・やめてよぉ・・・」ポロポロ

憂「大丈夫・・・だよ・・・、お姉・・・ちゃん・・・」フラフラ


憂「ううッ・・・」フラッ・・・

男「オラァ!」

ドガッ!

憂「うあッ!・・・ああ・・・」ドサッ

男の猛攻に耐え切れなくなった私は、地面に倒れた。

男「どうだ?土の味は?」

憂「うぅ・・・」

必死で立ち上がろうとするけど、力が入らない。

この前と同じだ・・・

男「ほらよッ!」

ドスッ!

憂「くッ!?・・・うっ・・・」ゴホゴホ

また・・・お姉ちゃんを守れないのかな・・・


その時、突如銃声が鳴り響く。


すると、あの男が・・・死んでいた。

その後、お姉ちゃんの通っていた中学校は閉鎖が決定。

在校生は離散して、周辺の中学に転校する事になった。

もちろんお姉ちゃんは、和さんと一緒のところにしたらしい。


それから約一年後・・・

私は純ちゃんと一緒に、お姉ちゃんのいる中学校に入学した。

お姉ちゃんはここでは上手くやっていけてるみたいで、クラスの人気者になっていた。


私も、お姉ちゃんみたいに上手くやっていけるのかなぁ・・・

いや、上手くやっていけるように頑張ろう。


朝、教室に入ったら・・・まずは大きな声で一言。


憂「みんな、おはよう!」


____
___
__

憂「・・・っていう感じかな?」


唯「・・・う~い~!」ダキッ!

憂「・・・!?」

唯「ごめんね、ごめんね・・・!」ギュッ・・・

憂「いいんだよ、お姉ちゃん・・・」


憂「これからも、ずっと一緒だよ?」

唯「うん!」


憂編おわり

これで全編終了です
docomo再規制来なくてよかった・・・!

ちなみにこれが初SSです
保守してくれた皆さん、どうもありがとうございました

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