Pre Chapter とおいみらいのむかしのはなし
むかしむかし……といっても、僕たちが生まれる少し前のことだけれど。この世界は、絶望に包まれていた。
でも、それは昔のことだ。確かに、今でも食べ物は録にないし、”絶望の使徒”と呼ばれる奴らの残党が暴れまわったりしていて、とても平和とは言えないけれど……それでも、この世界は希望に満ちている。
そして、絶望と希望、その全てが始まったのが……今、僕たちの目の前にある、私立希望ヶ峰学園。
かつてこの世界を蹂躙した、”超高校級の絶望”。そしてそれを打ち破った”超高校級の希望”。そのどちらをも生み出した、もはや伝説と言っても過言ではない存在、それがこの希望ヶ峰学園なんだ。
その後、暫くの間、この学校は歴史の表舞台から姿を消していた。人々はこの世界に残っていた絶望の爪痕と戦うのに必死で、未来のことを考えることなんてとてもじゃないけど出来なかったんだ。
けれど、今こうして希望ヶ峰学園は新たな産声を挙げる……”未来機関”によって、新世代の希望を生み出すための学園として、ね。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379850459
そうそう、未来機関についても説明しておかなくちゃいけないかな? 未来機関というのは、かつての希望ヶ峰学園のOB達によって設立された組織で、この荒れ果てた世界に未来と希望を取り戻すために戦っている。
僕たち、”人類史上最大最悪の絶望的事件”の後に生まれた子供たちにとっては、まさしく正義のヒーロー……絶対的な英雄的存在。つまり、神……とさえ、言えるかもしれない存在なんだ。
特に、僕は子供の頃から未来機関に対する憧れが人一倍強かった。憎き絶望と戦う彼らの姿を、崇拝さえしていた。だから、この希望ヶ峰学園の生徒に選ばれた時は心底嬉しかったよ。
未来機関は、”絶望の使徒”と戦うだけじゃなく、ちゃんと未来のことも考えていた。流石だよね。そして彼らは気づいたんだ。今、この世界に必要なのは、未来への希望だって。だから、こうして新生希望ヶ峰学園を設立したんだ。
この学校には、まだ数少ない”事件”後の子供たちの中でも、何らかの才能を持つ、選ばれた生徒だけが入学できることになっている……そして、卒業後には、未来機関のエージェントとしての将来が約束されているらしい。
ああ! なんて喜ばしいことだろう! 僕も未来機関の作る希望の未来の礎となれるなんて! ”絶望の使徒”たちを打ち倒すための弾丸になれるなんて!
未来機関のためなら、僕なんて、どうなったって構わない……大事なものは何もないから。全部、奴らに奪われたから。
いや……一つだけ、あったな。震える手で僕の手を握っている、横にいる彼女。
「……おいおい、まだ怯えてるのかよ」
「だって……私なんかが、本当にこの学校に……?」
たった一つ残った、彼女だけは。もう絶望なんかに奪わせやしない。もう絶対に、この手を離したりしない。
そう決意して、僕は希望ヶ峰学園へと足を踏み入れ……そして、その瞬間、意識も感覚も、なにもかもを失った。
二度と離さないと誓ったばかりの、彼女の手の感触さえも。
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Prologue チェンジ・モノクマロボ! 希望ヶ峰学園最初で最後の日
???「……おい、起きろ」
むにゃむにゃ。誰かの声がします。きっと”彼”です。いつも私の手を握っていてくれた彼。私の希望になってくれた彼。
???「起きろって」
「むぅ~。江ノ島くん、あと五分だけ……」
???「江ノ島? 誰だ、そりゃ……いいから起きろって」
そう言って彼は私の肩をゆさゆさ揺さぶります。今日の江ノ島くんはちょっと強引です。
???「いいかげんにしろ!」
ポカッ! といい音がしました。私の頭が殴られた音。
「いたたたた……もう、江ノ島くん。殴ることないじゃないですか」
???「だから、その江ノ島っていうのは誰なんだっつー……まあいい、オレは起こしたからな」
私の前に立っているその人は
「あれ……江ノ島くんじゃ、ない?」
愛しの彼ではありませんでした。
???「だから、さっきから何度もそう言ってるだろーが」
「!! それじゃ、江ノ島は!? 江ノ島くんはいったいどこなんですか!?」
???「そんなこと、俺が知るかよ……」
私の手を離さない、と誓ってくれた彼がいないことに、私は衝撃を受けました。
「っていうか、ここはどこなんですか!? あなたはいったい誰なんですか!?」
狩屋「……オレの名前は狩屋礼保。そんでここは希望ヶ峰学園だ。オマエ、大丈夫か? 頭でも打ったか?」
狩屋と名乗る目の前の男の人は長身で、学ランを羽織っています。少し背の低めな江ノ島くんとは似ても似つきません。
彼は心配そうな、めんどくさそうな微妙な表情で私の顔を覗きこんできます。でも、そんなことより……彼の言う、希望ヶ峰学園という言葉に私は聞き覚えがありました。
「そうです……確か私は江ノ島くんと一緒に、希望ヶ峰学園の入学式に出る予定で……」
そうして、校門に足を踏み入れた瞬間に、何故だか意識を失って……それで、今ここにいる……?
狩屋「お、よかった。やっぱりオマエも新入生だったのか。それで、オマエは何の超高校級なんだ? 超高校級の記憶喪失か? それとも超高校級の失礼か?」
「なんでそんなこと言われなきゃいけないんですか……」
狩屋「そりゃ、オレが名乗ってるのに名乗らねーからだろ? それに入学式前に教室でぐーすか寝てるのを起こしてやったのに、礼もいわないし」
「……有由命、超高校級の大食いです。起こしてくれてどうもありがとう……これでいいですか?」
狩屋「なんだよ? その”超高校級の大食い”って。この学校、そんなくだらない才能でも入れるのか?」
小馬鹿にしたように言われます。……やっぱり私はこの人が好きになれそうにありません。江ノ島くんみたいに優しくないし。
「知りませんよ……向こうから入学しないか、って手紙が来たんですから。それに、人の才能をくだらないって言うあなたは、いったいどんな超高校級なんですか?」
狩屋「オレか? オレは……”超高校級の天才発明家”だ」
「はぁ? 天才発明家?」
狩屋「ああ、そうだ。今はもっぱら、タイムマシンの研究をやってる。どうだ、驚いたか?」
「そりゃ、驚きはしましたけど……本当にタイムマシンなんか出来るんですか?」
狩屋「ああ。なんなら説明してやろうか? オマエは物分かりが悪そうだから、教えるのは苦労しそうだが……なあに、オレの天才的頭脳にかかれば猫だって因数分解を理解できるようになる」
「いえ、結構です……それより私、江ノ島くんを探さないと……」
狩屋「ああ、さっきから何回も連呼してるやつか……そいつもこの学校の新入生なのか?」
「はい! 江ノ島くんは凄いんですよ! なんでも出来て……ああいう人のことを超高校級の希望”っていうんだと思います!」
狩屋「超高校級の希望、ねえ……そいつとオレ、どっちの方が本物の天才か、興味があるな」
「やめといた方がいいと思いますよ……あなたなんかじゃ、江ノ島くんの足元にも及ばないと思うから……」
狩屋「どういう根拠だ、そりゃ。オマエはまだオレの凄さを知らないだろ? こうなったらオレのタイムマシン理論の全てを話してやる……そうすればオマエもオレを認めざるを得ないはずだ」
「遠慮させてもらいます。それじゃ、私行きますね」
狩屋「行くって言っても……どこへ行く気だ? そろそろ入学式が始まるぞ。たぶんその江ノ島ってやつにもそこで会えるんじゃねえか?」
「……入学式ってどこでやるんですか?」
狩屋「体育館だ。って言っても、その様子じゃ体育館がどこにあるのかも知らないよな? ちょうど俺も向かうところだ、ついてこい」
「…………」
狩屋「なんだよ、その不満そうな顔は。オレは親切で言ってやったんだぜ? いやなら別についてこなくてもいい」
「……いきますよ。ついていけばいいんでしょ」
狩屋「……やっぱりオマエは超高校級の失礼だな。まあいいや」
そう言って狩屋くんは先に歩き始めました。大股で歩調も早いので、ついていくのが大変です。こういう気配りの出来ないところも、江ノ島くんと全然違います。
狩屋「……ついたぜ。ここだ。」
彼がそう言って扉を開けると、そこには至って普通の体育館がありました。入学式らしく、紅白幕なんかも用意してあります。普通の入学式と違うのは、そこには13人しか生徒がいないところでしょうか。
???「お、また新しい顔が見えたぜ。これで15人、か。キリの良い数だな」
???「そうっスかね。俺は16の方が偶数でキリ良く思えますけど」
そう言って、ガヤガヤと騒いでいる人たち。その中にも、やっぱり江ノ島くんの顔はありませんでした。
「あの! すみません。江ノ島くんを見ませんでしたか!?」
勇気を出してそう声を張り上げてみるものの、帰ってくるのはきょとんとした視線ばかりです。
???「悪いけど……ワタクシたちはここに居るのが全員だと思ってたわ。他にも誰かいるのかしら? 16人目の超高校級が?」
「そうです……ちょっと背が低くて、くしゃくしゃの髪をしてて、眼鏡をかけた男の子なんですけど……一緒にここの校門をくぐった後、どこかへ行っちゃって……」
???「アナタたち、誰か知ってる?」
口紅の色っぽい女性が、他の人達に尋ねてくれますが……誰も知っている人はいないようでした。
???「残念だったわね……でも、きっと見つかるわよ。この学校のどこかにいるのは確かなんでしょう?」
すると、先ほど私たちが入ってきたドアが大きな音を立てて開き、人影が走ってきました。江ノ島くんかと一瞬期待してしまいましたが、50代の真っ白な頭をしたおじさんです。その髪は白髪というよりむしろ銀髪に近い色をしていました。
「あれ、誰でしょう?」
狩屋「馬鹿か、オマエ。あれがこの希望ヶ峰学園の創設者にして学園長、カムクライズルだよ。今でこそおっさんだが、若い頃はそれこそ”超高校級の希望”って呼ばれた天才だったらしいぜ」
「へー。あれが……」
その学園長先生は、私たちをみると慌てて駆け寄ります。
カムクラ「君たちは? 希望ヶ峰学園の第一期生たちか?」
???「はぁい。そうだと思いますけど……?」
口紅の女性が皆を代表して答えました。
???「そんなに慌てて、どうされたんですか? それに、他の先生は?」
カムクラ「教職員のことも心配だが、今は君たちのことだ。私は、君たちの才能こそが未来を照らす光である、と信じている。きっと、奴らの狙いはそれに違いない」
???「やつら、って……?」
カムクラ「やつらは……」
カムクラさんが答えようとした瞬間、大きな音が鳴り響きました。そしてカムクラさんは口を中途半端にあけた表情のまま、ばったりと倒れこみます。
???「今のってもしかして……銃声?」
誰かがそうつぶやくのと同時に、また入り口のドアが大きな音を立てて開いて、今度はたくさんの人達が入ってきます。銃を手に、迷彩柄の服を着た、如何にも「兵士です」と言わんばかりのかっこうの人たちが。
???「走れ!」
そう、誰かが叫ぶと、私たちは一斉に駈け出しました。奴らが入ってきた反対にある、体育倉庫の扉へ向かって。
???「なんなのよアイツら!?」
???「ワイが知るわけないやろ!?」
私たちはそんなことを言い合いながら、15人全員が倉庫に入ると扉を閉め、内側から鍵をかけます。向こうから扉を叩くガンガンという音が聞こえました。
???「あいつら、銃を持ってたぜ。こんな扉、その気になれば簡単に蜂の巣にされちまう」
???「じゃあどうしろっていうのよ!?」
私たちがパニックになりかけた、その時。もっと驚くべきことが起こりました。
「みんな、落ち着くナリ!」
声は、私たちの中からではなく、体育館の奥から聞こえました。けれど、そちらに目をやっても人影はありませんでした。
「そっちじゃないナリ! もっと下ナリ!」
声の言うとおり視線を下にやると、そこには。
ミニクマ「拙者はミニクマナリ! オマエラを助けに来たナリ!」
膝丈くらいの小さなクマのぬいぐるみが、ぴょんぴょんと飛び跳ねていました。
???「あの……もしよかったら、自己紹介とかしませんか?」
重苦しい沈黙を破ったのは、白衣を着た若い女の人でした。眼鏡がとってもキュートな、如何にも知的美人、と言った感じの人です。
狩屋「自己紹介、って言ったってなあ……こんなワケの分からない状況でか?」
???「でも……さっきのミニクマさんの話だと、私たちはこれから暫くの間、一緒に生活するんですよね? お互いのことを知っておいた方がいいと思うんですけど」
私たちは今、エレベーターに乗って地下へと潜っている。エレベーター、と言っても小さな教室くらいある、とても大きな物です。それが今、ゆっくりと音を立てずに沈んでいきます。
チビクマ「実は、この希望ヶ峰学園の地下には誰も知らないシェルターがあるナリ! 君たちをそこへ案内するナリ! 奴らがどのくらいの間、ここを占拠するつもりかわからないけど……助けが来るまで地下に避難するナリ!」
私たちの前に現れた動くクマのぬいぐるみは、そんなことを言いました。ワケの分からない事態の連続に、正直頭がついていかないけれど、それでも……
「私は行かないわ! 江ノ島くんがまだこの学園の何処かにいるはずなんだもの!」
チビクマ「ああ、キミが有由さんナリね。江ノ島くんなら先に地下で待ってるナリよ」
「早く行きましょう! どうやっていくの、クマさん、案内して」
狩屋「……この超高校級のバカは置いとくとして。オマエら、このへんちくりんな人形を信用するのか?」
そう言って彼は残った14人の超高校級を値踏みするように見回しました。
???「そうは言うけど……学園長を殺したさっきの奴らがいい人とは思えないわ。あいつらに捕まるよりかはマシよ」
誰かがそう言うと、口々にそうだ、そうだというつぶやきが聞こえました。
狩屋「ふーん……なるほどね」
狩屋くんはそう言って、何かを納得するように頷きました。
狩屋「というわけだ。チビクマだっけ? オレらをそのシェルターとやらに案内してくれ」
「って言っても、どうやって行くの?」
チビクマ「任せるナリ! ちょうどここに、秘密のエレベーターの入口が……」
そう言ってチビクマが床板の隙間に手を差し入れると、そこがゆっくりと開き始めました。
チビクマ「暫くすると自動で閉まるナリ! みんな、乗るなら早くするナリよ!」
チビクマに急かされ、私たちは急いでその鉄の箱に乗り込みました。そして、話は冒頭に戻ります――
狩屋「……確かに。このエレベーターもこの調子じゃ、いつまでかかるか知れたもんじゃないしな。俺は狩屋礼保。”超高校級の天才発明家”だ。よろしく」
病坂「あ、私の名前は病坂その子です。”超高校級のカウンセラー”なんて呼ばれてます」
さっきのメガネ美人さんが後を引き取ります。笑顔もとっても素敵です。
病坂「ありがとうございます。あなたも素敵ですよ?」
「あ、あれ? 口に出してましたか?」
病坂「いいえ、実は、私……エスパーなんです」
「……え?」
病坂「うふふ、冗談です。さあ、次はあなたのお名前を聞かせてくれますか?」
「えっと……有由命、”超高校級の大食い”です。よろしくお願いします」
病坂「あら、命さんっていうんですね。とってもいいお名前ですね」
「いや、その……ありがとうございます」
病坂「じゃあ、こんどはそっちのゴーグルのキミのお願いしてもいいかしら?」
いつの間にか、時計回りで自己紹介する流れが出来上がっていました。超高校級のカウンセラー、流石です。
犬神「……おいらの名前は犬神三史。”超高校級のボーイスカウト”。嫌いなことはナメられること。それだけ」
犬神くんは、かなり小柄な男の子です。ボーイスカウトというと、制服のイメージが強いですけれど……彼は派手な色のナイロンパーカーを羽織って、おでこに大きなゴーグルをつけています。
犬神「……言っとくけど、おいらのことを『ボーイスカウトの人』とかそういうふうに呼ぶのはやめてくれよな。こんなダサいこと、好きでやってるんじゃないんだ」
「でも、その才能を見込まれてこの学校に来たんですよね? それが嫌いなら辞退すればよかったんじゃ……」
犬神「……うるせー!」
そう言って彼はそっぽを向いてしまいました。どうやら自分の才能に鬱屈した想いがあるようですね、ふむふむ。……なーんて、エスパーじゃないので本当はわかりませんが。
天道寺「あら、次はアタシ? アタシの名前は天道寺っていうの。でも、イカつくてあんまり好きじゃないから……気軽に総悟ってファーストネームで呼んで欲しいな♪」
……天童寺さんは、あんな口調ですが名前の通りに男です。むしろ、金髪に剃りこみを入れていてかなり怖い外見です。体格もこの中で一番いいし。
天道寺「ちなみにアタシは”超高校級の歌舞伎役者”。アンタたちが来てくれたらサービスしちゃうから、よかったら舞台も見に来てね~」
でも、気さくな人みたいです。……怒らせると怖そうだけど。この感じ、思い出しました。RPGとかでよくいるタイプです。主人公にいろいろ教えてくれる感じの。
七道「おっし! 次は俺っすね。俺は七道明彦。”超高校級のゲーマー”っす」
犬神「お、あんたゲーマーなんだ。それじゃあ、あれやった?先月発売したあの、大作RPG……」
七道「あー。悪いけど俺、カードとかボードゲームとか、そういうアナログゲー専門なんすよ。だから超高校級のGM(ゲームマスター)なんて呼ばれたりもして……」
犬神「……っちぇ、なんだよ」
七道くんは、天然パーマに小さな鼻メガネをかけています。お世辞にもイケメンとは言えないけれど、愛嬌があって人当たりの良さそうな人です。
七道「あ、これ俺の名刺っす。ツイッターとスカイプのIDも書いてあるんで、よかったらメッセとかくださいっす」
そう言って七道くんは名刺を配りだします。ポップな絵柄でSD化された七道くんのイラストがついた、なかなかにセンスのいい名刺です。
一瞬、女の子だけに配るのかなーなんて思いましたがそんなこともなく。少し軽い印象を受けますが、ナンパなわけじゃなくて単純に人と関わるのが好きといった感じです。
七道「じゃあ次はあんたの番っすよ!」
そう言って指された女の子は、不快そうに眉を顰めました。そして、小さな声で
十神「……十神十子。”超高校級のお嬢様”よ」
とだけ言いました。みんな、まだなにか言うかな、と少し待ったけれど、どうやらそれだけのようです。
それにしても……十神さんは、超高校級のお嬢様というだけあって、凄い美少女です。まるでお人形さんのような目に、陶器のような肌という美人を形容するのに使い古された表現がぴったりです。
身長もかなりちっちゃくて、それでゴスロリ衣装を着ているものだから、本物のフランス人形が動いている、みたいな感じでした。
次は、お団子ヘアーの女の子です。
苗木「それでは、次は僭越ながらわたしが。苗木安奈と申します。”超高校級のパントマイマー”と呼ばれています。以後、お見知り置きを」
そういうと苗木さんは、なんだか機械的な、ぎくしゃくとした動きでお辞儀をしました。でも、それよりも気になるのは……
「……苗木さん、大丈夫ですか? 確かにいきなりこんなことに巻き込まれてショックを受けるのはわかりますけど」
私は彼女を落ち着かせようと、そんなことを言ってみました。けれども、彼女は不思議そうに首をかしげるのみです。まばたき一つせずに、私の顔を見てきます。
狩屋「そのバカはな、オマエがあんまり青白い顔してるから、心配してるんだよ」
見かねたのか、狩屋くんが助け舟を出してくれます。バカは余計ですけど。そうなのです。苗木さんは、白……いや、ほとんど青と言ってもいいほど蒼白な顔をしてるのです。
苗木「ああ、そうだったのですね。人に心配してもらうのは初めてです。ありがとう。わたしのことなら心配しないでください」
そう言って彼女は感極まったのか、私の手を取ります。なんだか、その手までやけに冷たいような……
狩屋「本人が大丈夫って言ってんだ、それにバカが心配したところでなにも変わらん」
「だから、バカって言わないでください!」
安藤「おう、ようやく俺の番だな! 俺は安藤貞家、またの名を新木場の若獅子! ”超高校級のプロレスラー”だ。よろしくな!」
そう言って彼は腰に手を当てて、ガハハ、と笑いました。その豪放な振る舞いは、確かに”超高校級のプロレスラー”に相応しいものですけど……
「……本当にレスラーさんなんでしょうか?」
彼の外見は、というと。背は高めなものの、胸板は薄く、手足もほっそりとして長く。小顔で長髪、ブカブカの学ランさえ着ていなかったら、一昔前のアイドルといった感じです。
安藤「……ダビデとゴリアテの話って知ってるだろ? 俺みたいなのがでっかいやつを倒したほうが、ウケが良いんだよ。……それにな」
! マズいです。ひとりごとのつもりが、聞こえてしまっていたようです。安藤くんが、つかつかとこちらに近づいてきます。プ、プロレスラーっていきなり女の子を殴ったりしないですよね?
彼は、そんなことを考えてパニックになっている私の肩を掴むと
安藤「キミみたいな女の子だったら、片手で持ち上げられるくらいの力はあるんだぜ!」
気がつくと私は彼に抱きかかえられていました。された本人の私でさえ、いつの間にやったのかわからないほどの早業です。……でも、この体勢って
「キャー! す、スカートがめくれ上がってます! 下ろしてください!」
彼は、悪い悪い、と軽く謝って、すぐに私を下ろしてくれました。
今度は体育館で少しお話しした、口紅の色っぽいお姉さんの番でした。
森宮「あらぁ、もうワタクシ? ワタクシの名前は、森宮守宮……”超高校級の原型師”なんてものをやらせてもらってるわぁ」
森宮さんは、外見に違わず色っぽい口調と声でいいました。……それにしても、原型師ってなんでしょう?
森宮「一応説明しておくと……原型師っていうのは、ものを作る時の塑像を作る人のことよぉ……ワタクシはフィギュアが専門なんだけど、頼まれればロボットでも戦車でもなんでもやるわよぉ?」
……森宮さんが、フィギュア? 机の上で、なんかこう、ガリガリ作業したりするのでしょうか? 正直な所、あんまり想像がつかないのですが……
自己紹介を終えた彼女を見ると、あー緊張しちゃった、などと言いながら顔を拭いています。……おしぼりで。
森宮「また、ハンケチを忘れちゃったわぁ……こういうとき、コンビニでもらったおしぼりって重宝するのよねぇ……」
そんなことを言いながら、今度は制服の胸元のボタンを外して、そこに直接手を突っ込んで拭いています。……森宮さんは、実は女性としてはけっこうアレな人なのかもしれません。
自己紹介も、いよいよ架橋に入ってきました。14人もの人といっぺんに知りあうと、顔と名前を一致させるのも大変です。
次は、艶やかな黒髪をした、清楚って言葉がぴったりの女性です。
原野「えっと、それじゃあ自己紹介させてもらいますね? わたしは原野愛っていいます! みなさん、仲良くしてくださいね」
そういって私たち全員ににっこりと微笑みかけました。よかった……キャラが濃い人の多いこの学校にも、私と同じまともそうな人がいました。
「それで、原野さんの才能ってなんなんですか?」
原野「えっと……少し恥ずかしいから、あんまり言いたくないんだけど……聞いても笑わないでくれる?」
「なんで笑うんですか? 私だって”超高校級の大食い”なんてくだらない才能なんですから、人のことを笑ったりしませんよ」
原野「じゃあ、あなたにだけはいうけど……”超高校級のキャバ嬢”なの、わたし」
……え?
原野「……やっぱり、変かな? わたしみたいな地味な子が、超高校級のキャバ嬢なんて……」
「いや、そんなことはないですけど……」
原野「よかった! わたし、初めて見た時から有由さんとは仲良くなれそうだなって思ってたから。あ、もう一つ打ち明けちゃうと、わたし二回留年してるからもう二十歳なんだけど、でも気軽にあいちゃんって呼んでね! わたしもみことちゃんって呼ぶから!」
「は、はは……」
「あ、じゃあ次の人! 自己紹介お願いできますか?」
原野さんはまだなにか話したそうにしていたけれど、強引に次の人に話を振りました。
梨本「あたしは梨本花と言います……一応、”超高校級のスタイリスト”をやらせてもらってます……よろしく」
梨本さんは、それだけ言うとすごすごと元の位置に戻ってしまいました。なんだか自信なさげな感じの人ですね。
外見はというと……確かに「如何にもファッション業界人!」みたいに、スタイルがよかったり化粧が派手だったりするわけじゃなく、むしろちょっとぽっちゃりした感じですけど……でも、髪もすごくきちんと手入れされているし、服のコーディネートも彼女にぴったりで、”超高校級のスタイリスト”というのに相応しいものでした。
……さて、長かった自己紹介も残す所あと三人まで来たのですが……何故だか、誰も続こうとしません。黙りこくったまま、お互いの顔を見比べあっています。
と、しびれを切らしたのか、ちょっと背の低いジャージの男の子が、如何にもめんどくさいと言わんばかりに頭をぽりぽりと掻きながら、一歩前に進み出ました。
西追「オレん名前は西追慎吾や。”超高校級のスタントマン”。」
西追「言っとっけどやな、オレの関西弁をイジった奴は殺す。関西弁だからってオモロイこと言わせよって奴も殺す」
……なんだか、随分とサツバツとした方みたいです。
犬神「……ケッ。殺す、だってさ。ガキかよ」
西追「んー? 何ぞ言うたけ、チビ」
犬神「ああん? おめーだってチビだろ?」
早くも一触即発のピリピリした空気が漂い始めました……思わず助けを求めて視線を彷徨わせていると。
病坂「もー、それくらいにしてください? あんまり喧嘩してると、私の個人カウンセリング、受けてもらいますからね? あ、それとももしかして、それがお望みですか?」
病坂さんが二人の間に割って入りました……流石は超高校級のカウンセラー。
さて、残るはあと二人。次は、褐色で銀髪のイケメン外人さんの番なのですが……
「……えっと……自己紹介、お願いしてもいいですか?」
そう、目の前で言ってみても。彼は表情一つ変えません。私の方をちらりと見ることさえしませんでした。
どうしよう……そんなふうに思っていると。
???「オイ、人のことを無視するとはいい度胸だな」
どこからか、そんな声が聞こえました。まったく、そのとおりです。人のことを無視するなんて、最低です。
???「おい、ブス。どこを見てる。こっちだよ、こっち」
こっち、と言われても……そうやってあたりを見回してみると。外人さんの足元に、人形が落ちているのを見つけました。
「なんでしょう……このブサイクな人形、あなたのですか?」
そう言って、彼の顔を見るものの……やっぱり、反応を示してはくれません。
アクマくん「ブサイクとは言ってくれるじゃあねーか。この我輩に向かって!」
と、人形が突然、口を開きました。一瞬、チビクマと同じ仕組みかと思いましたが……よく見ると、外人さんの指の先から、人形に糸がつながっているのが見えました。
アクマくん「自己紹介して欲しいんだろ? 耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ! 我輩はアクマくん。”超高校級の人形”だ。そんでこいつは練鉄士。超高校級の人形である我輩を使ってるからまあ、”超高校級の人形”使いって感じかな」
「えっと……」
私は、思わずもう一度、練鉄さんの顔をみてしまいます。彼はまるで白けているかのような表情のままです。「空気読めよ」、そう言っているようでもありました。
アクマくん「人の話を聞く時はそいつの顔を見ろって教わらなかったのか?」
「えっと……じゃあ、あなたは”超高校級の人形使い”なんですね?」
アクマくん「だーかーら、そうじゃねえって言ってんだろ!? ありっち、テメーは脳みそアリンコ並か? だからありっちなのか? 我輩が、”超高校級の人形”。こいつはただの使い。オーケー?」
「お、おーけー」
アクマくん「わかればよし! ただしテメーのあだ名は脳みそアリンコのありっちで決定だからな!」
そう言ってアクマくんは、腹を抱えて笑ってみせました。まるで、その動作は本当に生きているかのようです。これを、全部練鉄くんがやっているんでしょうか?
それは……スゴいとは思いますけれど。でも、面倒くさくないんでしょうか? 正直、私は彼と話すのはちょっとめんどくさいような……。
そして、最後の一人。今度は、外人の女の人です。目が鋭くて、ちょっぴりこわい感じの人です。背も高いし、スタイルもよくて……ちょっと、威圧感があります。
「あ、あのー。こんにちは」
ヒルダ「……Hi」
あ、よかった。挨拶を返してくれました。
「えっとー、その、自己紹介をお願いしたいんですけど……」
ヒルダ「……Hilda Marie Leechridden」
「えーと、ヒルダさん、ですか?」
ヒルダ「TIA」
ヒルダさんは、そう言うとこちらに手を差し伸べます。よくわからないけど、これは、握手……でしょうか?
「え、えと、こちらこそよろしく」
手を握り返してそう言うと、彼女は話は終わった、といわんばかりにそっぽをむいてしまいました。
とりあえず今日はキャラ紹介まで。以下は生徒手帳です
有由命(ありよしみこと) 超高校級の大食い
至って普通の女子高生。超高校級の大食いだが、食べなくても死ぬわけではない。才能に纏わる悩みなどもなく、普通に生きてきた。江ノ島くんラブ。
病坂その子(やまいざかそのこ) 超高校級のカウンセラー
眼鏡の白衣美人。圧倒的カリスマを誇り、テレビなどでも大人気のアイドル的存在。病的なファンが多いことでも有名。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4520031.jpg.html
十神十子(とがみとうこ) 超高校級のお嬢様
お人形さんのようなゴスロリのロリっ子。十神家最後の生き残りとされる。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4520034.jpg.html
貼れてるのかこれ
苗木安奈(なえぎあんな) 超高校級のパントマイマー
色白を通り越して青白い肌をしたお団子ヘアの女性。目の下には大きなクマができている。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4520039.jpg.html
原野愛(はらのあい) 超高校級のキャバ嬢
黒髪ロング。その才能に見合わない、清楚な見た目をしている。バイトの問題で留年や退校を繰り返しているため現在20歳だが、「現役女子高生」の肩書きにこだわって在学を続けている。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4520047.jpg.html
梨本花(なしもとはな) 超高校級のスタイリスト
ちょっぴりぽっちゃりとした女性。ただし見た目に気を使わないわけではなく、髪や爪の手入れまできっちりしている。”超高校級のモデル”になり得る美人の妹がいるらしい。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4520054.jpg.html
森宮守宮(もりみややもり) 超高校級の原型師
口紅が色っぽい大人の女性。そんな見た目だが重度のオタクらしい。原型製作を始めたのは最近だが、一気に才能を開花させ超高校級と呼ばれるまでになった。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4520057.jpg.html
ヒルダ・マリー・リクリデン 超高校級のトレセウス
鋭い目が特徴的な長身の女性。しかし実際は気弱で口下手らしい。トレセウスとはパルクールをやる女性のこと。
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狩屋礼保 (かりやれお) 超高校級の天才発明家
長身痩躯で長髪。学ランを着ている。少し気だるげな雰囲気。今はタイムマシンの開発にご執心。理論だけで全然完成してはいないらしい。
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七道明彦(ななみちあきひこ) 超高校級のゲーマー
天パで小さな鼻メガネをかけている。ゲーマーと言ってもボードゲーム・カードゲームなどのアナログゲー専門。
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安藤貞家(あんどうさだいえ) 超高校級のプロレスラー
長髪学ラン。病弱でひょろっちい見た目だが、パワーはそれなりにある。高校生にして学生プロレス団体を立ち上げ、プロ顔負けの興行を行っている。プロレスの腕だけでなく、企画力やリーダーシップが評価されて入学。
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西追慎吾(にしおいしんご) 超高校級のスタントマン
小柄な男で、ぴっちりしたジャージを着ている。関西弁だがクールな気質で、面白いことを言ったりは出来ない。
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天童寺総悟(てんどうじそうご) 超高校級の歌舞伎役者
筋肉質なオカマ。大柄で金髪に剃りこみと、見るものを威圧する風貌だが本人の気性は穏やか。
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犬神三史(いぬがみさんし) 超高校級のボーイスカウト。
前髪をあげ、オデコにゴーグルの生意気そうなショタガキ。
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練鉄士(ねりがねつかさ)&アクマくん 超高校級の人形使い
銀髪褐色の美男子。自称”超高校級の人形”アクマくんを持つ、”超高校級の人形”遣い。本人は一切口を開かず、腹話術でアクマくんを通して喋る。
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江ノ島敦(えのしまあつし) 超高校級の???
有由の幼なじみ。彼女いわく、「なんでも出来る天才、まさに超高校級の希望」有由と一緒に学校に足を踏み入れたはずだが、どこへ行ったのかわからない、16人目の高校生。
以上です。見ている人がいたら安価やりたい
あんま人いないけど安価だしちゃおう。今日が導入で、次回動機&(非)日常編、その次の投下で事件と捜査、その次が裁判になると思います。
自由行動中に会いに行く人安価
一日目午前>>55
一日目午後>>56
二日目午前>>57
二日目午後>>58
三日目午前>>59
三日目午後>>60
なかなか覚えきれんw
とりあえず苗木
十神
七道
狩谷
病坂
十神
やっぱり原作と繋がりあるキャラに集中するなあ……
推理をフェアにするため言っておくと、七道と病坂はたんに名前が似てるだけで七海、舞園とは関係ありません。十神と苗木と江ノ島はちゃんと関係あります。
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