唯「ういー、おかわりー」セイバー「私にもお願いします」(730)

――平沢宅――

憂「……」

唯「おーいしーい」パクパク

セイバー「ユイ、ご飯粒がついていますよ」モキュモキュ

憂「?」

セイバー「どうしました? ウイ」

憂「え? あ、はい」

唯「変な憂-」

憂「変なのはこの状況でしょ……」

セイバー「このハンバーグは、非常に美味だ。素晴らしいです」

憂「この金髪の人、誰?」

セイバー「え?」

唯「ん?」

憂「いやだから、この背筋ピンって張ってる女の人は誰なのって聞いてるの」

唯「いやだなー憂ったら。……あれ?」

唯「だれ!?」

セイバー「……あ」

セイバー「失礼しました。自己紹介がまだでしたね。私の名前はセイバー。
契約に基づいて参上いたしました」

憂「意味がわからないです」

セイバー「おや、聖杯戦争のために召喚されたのではないのですか?」

唯「せーはい?」

セイバー「この世全ての願望を叶えると言われている、聖なる杯のことです。
もしかして、知らないのですか?」

憂「おとぎ話ですよね。それって」

セイバー「困ったな……」

憂(うわぁ。変な人だったぁ)

セイバー「まず整理しましょう」

憂「はい」

セイバー「ユイ、ウイ。それで、あなたたちの名前はあってますね?」

唯「うん」

セイバー「それで、私を呼びだしたのは誰ですか?」

唯「私じゃないよー」

憂「召喚とか、そういうのは信じてないんで」

セイバー「あれ?」

セイバー「聖杯戦争を知らない。私を召喚した覚えもない。それじゃあ――」

唯「ねえ、憂」ひそひそ

憂「ん?」

唯「変な人だよ。この人」ひそひそ

憂「お姉ちゃんが気付くってことは相当だよね。警察呼ぼうか」

セイバー「ちょっと待ってください」

憂「なんですか? もう110押しちゃったんですけど」

セイバー「危ないですよ」

憂「あなたがね」

セイバー「いえ、警官だとか私の障害になる人間がです」

唯「?」

憂「あ、警察ですか? はい、私の家に変な――」ビュオン!

電話「こっぱーん!」

憂「!?」

セイバー「風王鉄槌(ストライク・エア)」

唯「あわわわわわ」

セイバー「……ものすごい魔力の消費を感じた」

憂「えー……」

――そうして――

セイバー「それでは話しあいましょう」

憂「不本意この上ないんですけどね」

セイバー「今のこの事態に納得なんてものは不純物です」

唯「正座、つらい」

セイバー「それではまず、私がどうしてここにいて、むしゃむしゃと食事を
していたかについて話し合いたいと思います」

憂「お姉ちゃん、知ってる?」

唯「うーん。なんか、お昼寝してて起きたら、もういたんだよ。えーっと」

セイバー「セイバーとお呼びください」

唯「セイバーちゃんが隣で寝てて、一緒にご飯食べようって」

憂「一つ解消されたね。とりあえず、お姉ちゃんの隣で寝てたセイバーさん
は悪ってことまでわかったよ」

セイバー「それはないです。私だって、いきなりユイの顔がすぐ側にあったの
には驚いたんですから」

唯「そういえば、なんで私の名前知ってるの?」

セイバー「わかりません。ただ、頭の中に浮かんだんです」

憂(不審者? まさか、レズストーカー? 女のくせに女の子が好きとか、キ
モっ)

唯「へえー」モゾモゾ

憂(お姉ちゃん、正座辛いのかな。かーわいいー!)

セイバー「それはそうと私は悪ではありません。むしろ正義です」

憂「正義って、人の家の電話吹き飛ばしておいて……」

唯「すごい手品だよね」

セイバー「ああ、あれは私の能力というか、武器というか、そういうものです」

憂「武器?」

セイバー「はい。……しかし、今の話の中で宝具の話は不要でしょう」

唯「宝具?」

セイバー「必要がないので、宝具の説明はしません。とにかく、今は私が
ここにいる理由と原因を突き止めなければなりません」

憂「うーん……。お姉ちゃん、覚えないよね」

唯「ないよー」

セイバー「ふう……。それじゃあ仕方ないですね。食事の続きといきましょう」

憂「ちょ! ちょっと待ってください!」

セイバー「なんですか? せっかくの食事が冷めてしまうじゃありませんか」

憂「なに普通にご飯食べようとしてるんですか!?」

セイバー「そこに料理があるからです」

憂「……」

セイバー「私が前回現世に来た時は、食事をする必要がなかったのです
が、今は魔力が死活問題なのです。故に、食事をとっておく必要があり――」

憂「魔力ってなんですか!」

セイバー「私の命です。それでは、再びいただきます」

唯「……」

セイバー「ユイも食事を再開するべきです。明日も学校なのでしょう?」モキュモキュ

――食事終わって――

セイバー「……」

テレビ「ちゃうねん。これはな、もっと深いもんやねん。わかるか? 上地」

テレビ「はい。僕も松坂の球を受けてた時、そう思ってました」

流し「ざー」

憂「……」かちゃかちゃ

テレビ「ホントに、素敵やん?」

唯「ごろごろー」

セイバー「ユイの髪は、綺麗ですね」

唯「ありがとー。でも、セイバーちゃんの髪のほうが綺麗だよー」

セイバー「私には、髪を気遣う時間なんてありませんでした」

唯「それでその髪って、反則だよー」

憂(お姉ちゃん、セイバーさんになじんでる……?)

セイバー「ウイ、お茶をいただきたいのですが」トコトコ

憂「ちょっと待っててください。もう少しで洗い物終わりますから」

セイバー「わかりました」

憂「……」

セイバー「ユイ、ここにアイスクリームが!」

唯「アイス! あーいーすー!!」

憂「しまった!」

セイバー「ちょうど二人分あります。分けて食べましょう。そういうことです
ので、お茶はいりません」

唯「わーい」

憂(あれは……お姉ちゃんと食べる筈だった数量限定アイス! 徹夜で
並んで買ったのに……!)ギリッ

セイバー「美味しいですね」

唯「ねー」

唯「セイバーちゃんって、変わった名前だよね」

セイバー「これは、クラスですから」

唯「?」

セイバー「……あだ名みたいなものですよ」

唯「へえー。ホントの名前はなんていうの?」

セイバー「答えられないのです」

唯「ふぇ?」

セイバー「私がここにいるということは、この街で聖杯戦争が行われる
ということに相違ない。そうすると、あなたたち二人のいずれかが私の
マスターだ。……だからこそ、教えられないのです」

唯「なんだか難しいけど、セイバーちゃんにも事情ってもんがあるんだね!」

セイバー「はい。申し訳ありません」

唯「いいよいいよ。セイバーっていうあだ名も可愛いもん!」

憂(やっぱり、お姉ちゃんの感性ってたまにわからないよ)

お風呂「ピピピピ! お風呂が、わきました!」

セイバー「!?」

憂「お風呂沸いたみたいだから、お姉ちゃん、入ってきて」

唯「はーい。セイバーちゃんも一緒に入ろう!」

セイバー「……その必要がどこに」

唯「セイバーちゃん歓迎ってことで!」

憂「え!?」

セイバー「しかしユイ――」

唯「うちのお風呂はおっきいんだから! いこいこー!」

憂「おねえちゃーん!」

セイバー「なんて強引な……。でも、女性のマスターは初めてですからね。
こういうのも、悪くない」

唯「決まりー!」

セイバー(アイリスフィールとは、一緒に入浴なんてしなかったから)

――お風呂――

唯「セイバーちゃん! 肌きれー!」

セイバー「唯の身体も、少女のもので美しい」

唯「セイバーちゃんが言うと、それが厭味に聞こえるよー」

セイバー「そうでしょうか。私の体は、少女のものでは……」

唯「えい!」ざばっ!

セイバー「うわ!」

唯「私が頭洗ったげるね!」

セイバー「……お願いします」

唯「お願いされます!」ゴシゴシ

セイバー(気持ちいい。こんなに気が休まる日を体験したのは、いつ振り
だろうか)

唯「おかゆいところありませんかー」

セイバー「いいえ。ユイは、すごく上手です」

唯「ホントに、綺麗な金髪だよね。ムギちゃんみたい」

セイバー「ムギ? それは敵ですか?」

唯「いやいや私、学校の軽音部に入ってて、そのお友達」

セイバー「軽音部、というとユイは楽器を弾くのですか?」

唯「そうだよー。ギターボーカルやってるんだよ。結構上手なんだから!」

セイバー「フフ。そうですか」

唯「信じてない?」

セイバー「信じてますよ。この手は、ギターの練習を頑張ってる手だ。毎日
鍛錬しているのですね」

唯「な、なんだか恥ずかしいなぁ」

セイバー「恥じることはありません。胸を張って、誇りに思うべきです」

唯「えへへー。ありがとね」

唯「おっけ。……それじゃあ、湯船浸かろうか」

セイバー「はい」

唯「あったかー」

セイバー「そうですね」

唯「……ていっ」ほよっ

セイバー「な、なにをするのです! 無礼者!」

唯「あべし!」

ドア「ニコ」

憂「お姉ちゃん!」

唯「大丈夫だよー」

憂「そう? よかったー」

ドア「ニコ」

セイバー「……ウイが待機してるのですか」

唯「なんでだろうね」

セイバー「それはそうと、なぜいきなり胸を触るのですか!」

唯「柔らかそうだったから」

セイバー「……貴女は、柔らかいものだったらなんでも触るのですか?」

唯「そこまでじゃないよー」

セイバー「まったく……」

唯「でも、セイバーちゃんの胸、ちっさいねー」

セイバー「小さくて結構、私は武人です。無駄に大きな胸など不要です」

唯「あずにゃんほどじゃないけど、りっちゃんくらいかな?」

セイバー「その人たちも、軽音部の部員なのですか?」

唯「うん! みんな可愛いんだから!」

セイバー「そうですか。一度会ってみたいものです」

唯「澪ちゃんを見ても、やきもちやかないでねー」

セイバー「なるほど。そのミオという子は、敵なのですね?」

唯「なんで!? 澪ちゃんはスタイルがすごくいいから、セイバーちゃん
が――」

セイバー「……」

唯「な、なんかごめんなさい」

セイバー「はい。わかればいいのです」

セイバー「……」

唯「?」

セイバー「そろそろあがりましょう。ウイも入りたいでしょうし」

唯「うん。わかった」ざばぁ

セイバー「……」

唯「ふう、良いお湯だったー」

セイバー「やはり……」

唯「え?」

セイバー「すいませんがユイ。どうやら、私はもう一度お湯に浸からなければ
ならないようです」

?「……」

セイバー「姿を現しなさい。英霊が出刃亀とは情けない」

ランサー「バレちまったか。気配遮断は不得手だな」

セイバー「……やりますか?」

ランサー「無論だ」

唯「?」

セイバー「ここでは被害が出る。場所を変えましょう」

ランサー「そのお嬢ちゃんが、おまえのマスターじゃないのかい? 『セイ
バー』よ」

セイバー「なぜ、私のクラスを知っている?」

ランサー「!」

ランサー「ほう」

ランサー「それはどうでもいい。兎角、俺たちの間に言葉は無用だ」

セイバー「私の提案は?」

ランサー「飲んだ。しばし待ってやるから、服を着替えて死に場所を選べ」

セイバー「感謝しますが、待つ必要はない――!」

ランサー「そういえばそうだったな。場所は?」

セイバー「付いてきなさい!」

ランサー「おうよ!」

唯「……あれ?」

――公園――

ランサー「これはまた、半端な場所を選んだもんだ」

セイバー「青い甲冑に赤い槍。聞くまでもなく、ランサーのクラスか」

ランサー「ご明察の通りだ。セイバーよ」

セイバー「やはり、聖杯戦争か」

ランサー「腑抜け。俺たちがここにいるということは、そうに決まってるだろう」

セイバー「……その通りだ。いくぞ!」

ランサー「きやがれ!」

?「……」

――平沢宅――

唯「……あれ、なんだったんだろ?」

憂「セイバーさんは?」

唯「どっか飛んで行っちゃった。青い服着た男の人と」

憂「?」

唯「私にもよくわからないの。でも、なんだか不安なんだ」

憂「お姉ちゃん?」

唯「セイバーちゃん、私と話すときは違う。すごく、怖かったの」

憂「……大丈夫だよ。状況はわからないけど、きっとセイバーさんは帰って
くるよ」

唯「……うん」

憂「もう寝ちゃお。朝起きたら、セイバーさん帰ってきてるからね」

唯「そうする。おやすみ、憂」

憂「うん。おやすみなさい」

――公園――

セイバー「やはり槍のサーヴァント。間合いを取りにくい」

ランサー「あいも変わらず武器を隠しやがって――。戦いにくいったらねえ」

セイバー「!?」

ランサー「気付いたか? 当然だ。お前はセイバーなんだからな」

セイバー「この局面で宝具!?」

ランサー「生憎、このままだとやられちまうんでね。さっさと使わせてもらう」

セイバー「……ならば」

セイバー(駄目だ。今、私の宝具は使えない――)

セイバー(魔力が、あまりにも足りなさすぎる)

ランサー「受けろ――!」

ランサー「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)!!」

セイバー「!?」

ランサー「……とったな」にやり

?「いやいや」

セイバー「ぐっ……」

ランサー「避けた!? 否、掠めただけか!」

セイバー「私には幸運が、味方してくれたようだ。因果律の逆転とは、さす
がはアイルランドの光の皇子だ」

ランサー「チィ!」

セイバー「これで、お前の正体は分かったぞ。クーフーリン」

?「……」

セイバー「しかし、私に返しの刃は――」

ランサー「やめだ」

セイバー「!?」

ランサー「自慢の、っていうか切り札で止めさせなかったんだ。俺の負けと
言ってもいい。だが、実際は俺のほうが優位にいる。セイバーよ。この勝負
は預けたぜ」

セイバー「な、情けをかけるというのか?」

ランサー「そうは言ってない。見たところ、おまえは事情を知らないみたい
だからな。今は倒さないというよりも、倒せない」ヒュン

セイバー「……」

セイバー「戻ろう。ユイとウイが心配している」

セイバー「事情……」

セイバー「私の知らないところで、聖杯戦争はどうなっている?」

セイバー「……わからない」

セイバー「とにかく、今は怪我の治療を……」

セイバー「霊体にもなれない」

セイバー「私は、出来そこないのサーヴァントだ」

セイバー「ユイ、ウイ……」

セイバー「大丈夫。帰るくらいはできる」

セイバー「そうだ。大丈……夫」

――次の日――

唯「ん……」

唯「セイバーちゃん?」

セイバー「は、はい?」

唯「うわ!」

セイバー「大声を、出さないでください」

唯「顔色、悪いよ? どうしたの?」

セイバー「問題ありません。少し、傷を負っただけですから」

唯「……見せて」

セイバー「?」

唯「セイバーちゃんの怪我、見せて」

セイバー「ですが――」

唯「いいから」ガバッ

セイバー「!?」

唯「ひどい傷……。病院に――」

セイバー「昨日も見たでしょう? 私は普通の人間じゃない。病院に連れて
いったところで無駄です」

唯「それじゃあ、どうすれば……」

セイバー「眠って、魔力を全て回復に回します。そうすれば、ある程度は回復
するでしょう」

唯「……」

唯「セイバーちゃん」

セイバー「?」

唯「なんで、我慢するの?」グスっ

セイバー「ユイ?」

唯「こんなに酷いのに、痛くないみたいな顔しないでよ。私、耐えられないよ」

セイバー「……痛みなんて、とうに慣れました」

唯「慣れたって痛いものは痛いよ! セイバーちゃん……」

セイバー「……」

セイバー「痛いですよ」

唯「うん……」

セイバー「今まで、そんなことを言ってきたマスターはいませんでした」

セイバー「私を道具のように扱い、私自身もそれでよかった」

セイバー「――ああ。でも」

セイバー「こんなにも、温かいのですね。人間というものは」

セイバー「貴女は、世界で一番優しい人だ。私のような存在に、気を使う」

唯「そんなことないよ」

セイバー「いいえ。だからこそ、私は話しておかなければなりません」

セイバー「私という存在を」

セイバー「聖杯戦争というものを」

少し席をはずす

ただいま



唯「……そう、なんだ」

セイバー「これが、聖杯戦争です」

唯「7人の魔術師とサーヴァントの殺し合い……」

セイバー「その中の一人が私であり、昨日の男です」

唯「私が、マスターなの?」

セイバー「わかりません。少なくとも、ランサーにはマスターがいるのでしょ
う」

唯「どうして?」

セイバー「必殺の一撃。宝具を用いてきました。あれを放つということは、
魔力に余裕がある何よりの証拠」

唯「セイバーちゃんは?」

セイバー「魔力がありません。だから、宝具を使うこともできない」

唯「それって……」

セイバー「はい。私には切り札がありません。そのうえ、傷を負っても治り
ません」

唯「……」

セイバー「聖杯戦争始まって以来でしょうね。マスター不在のセイバーのクラ
スは」

唯「……セイバーちゃん」

セイバー「?」

唯「契約って、今からでもできる?」

セイバー「ユイ……?」

唯「セイバーちゃんが、こんなにつらそうなんだもん。私が力になりたい」

セイバー「そ、そんなつもりは――!」

唯「無理しないで。セイバーちゃんにも、叶えたい願いがあるんでしょう?」

セイバー「……はい。なんとしても、私は聖杯を手に入れなくてはならない」

唯「だったら!」

セイバー「それとこれとは話が違う! 私は、あなたたちに傷ついてほしく
ない」

唯「……だったら、なおさらだよ」

唯「セイバーちゃんが、私たちを守ってよ」

セイバー「あなたたちを、私が?」

唯「私を守るために、私はセイバーちゃんを守る!」

セイバー「ユ、ユイ」

唯「いいでしょ?」

唯「いいって言うまで、ここを動かないから」

セイバー「……困った人だ」

唯「……」

セイバー「痛みを、伴います」

唯「分かってる」

セイバー「命を、落すやもしれない」

唯「知ってる」

セイバー「それでも、なお?」

唯「セイバーちゃんが苦しむよりはいい」

セイバー「――承知しました。マスター」

セイバー「それでは、いきますよ」

唯「うん」

唯「――私、平沢唯はサーヴァントセイバーに、我が命運を捧げる」

セイバー「セイバーの名に懸け誓いを受ける。汝を、我が主として認めよう」

唯「――ッ!」

セイバー「ユイ!?」

唯「……ちくってした」

セイバー「左手を、見せてください」

唯「……あ」

セイバー「これが令呪です。3回のみ行える絶対命令権。いいですか、一つは
残してください。全て使ってしまうと、私は貴女を守れなくなる」

唯「わかった。でも、私がセイバーちゃんに命令することなんてないよ」

セイバー「もし、あなたが学校で襲われた時……。それを使えば、私を
呼びだすことができます。場所もなにも関係なく」

唯「……わかった。それじゃあ、憂に包帯もらってくるね」

セイバー「ええ。令呪は誰にも見せないでください」

憂「……お姉ちゃん」

唯「おはよ。憂」

憂「セイバーさん、血塗れで帰って来たの」

唯「知ってる」

憂「……」

唯「大丈夫だよ。セイバーちゃんは、私たちを守ってくれるよ」

憂「本当?」

唯「本当だよ。お姉ちゃんを信じなさい!」

憂「……うん。セイバーさんとお姉ちゃんを信じるよ」

唯「うん。セイバーちゃんにも朝ごはん運んであげてね」

憂「ご飯、食べられるかな」

唯「食べるよ。憂のご飯美味しいもん」

――3-2――

唯「おはよーございます!」

さわ子「平沢さん、遅刻っと」

唯「間に合ってるよー」

和「諦めなさいって」

姫子「おはよう、唯」

和「私の方がおはよう。唯」

唯「おはよう、姫ちゃん。和ちゃん」

和「あら、手怪我したの?」

唯「う、うん。コップ割っちゃって」

和「気をつけなさいよ。ドジなんだから」

唯「えへへー」

澪「……」

唯(セイバーちゃん、大人しくしてるかなー)

唯(テレビでも見てるのかな)

姫子「唯」

唯「姫ちゃん?」

姫子「澪から、手紙」

唯「ありがと。えーっと」

唯「昼休み、屋上?」

唯「了解っと。はい」

姫子「ん」

唯(澪ちゃん、どうしたんだろ。まさか、愛の告白!?)

唯(駄目だよ澪ちゃん! 澪ちゃんにはりっちゃんが!)

先生「平沢、なにをクネクネしているんだ?」

唯「!?」

――昼休み――

唯「澪ちゃん、先に行っちゃったみたい」

律「澪のやつ、どこ行ったんだー」

唯「りっちゃんごめん! 私、ちょっと用事!」

律「なんだなんだー」

紬「まさか、梓ちゃんとなにかあるのかしら」

和「ムギ、声に出てる」

紬「あらやだ」

唯「じゃあ、いってくるね!」

和「いってきなさい」

律「お土産お願いなー」

唯「あはは。期待しないで待っててねー」

ドア「ニコ」

唯「お待たせっ!」

澪「別に待ってもいないよ。ごめんな、呼びだしたりなんかして」

唯「ううん! 問題ないよ!」

澪「……そっか」

唯「?」

澪「唯、その手はどうしたんだ?」

唯「こ、コップ割っちゃったんだよ」

澪「その割には変なところを怪我してないか? 見せてみろ」

唯「な、なんか変だよ? 澪ちゃん」

澪「……令呪」

唯「え?」

澪「そうなんだろ。唯」

唯「どうして、それを知ってるの?」

唯「……あ」

澪「引っかかったな」

唯「うぅ~」

澪「ホントに知らなかったら、そんなふうには答えないよな」

唯「……澪ちゃん」

澪「安心しろ。私もだから」

唯「そうじゃなくって」

澪「それも平気。私だって戸惑ってるんだから」

唯「信じていいの?」

澪「信じてくれないか?」

唯「……信じるよ。澪ちゃんは親友だもん」

澪「ありがとう。――アーチャー」

アーチャー「やっぱりマスターだったんだ。ミオ」

唯「うわ!」

アーチャー「……」

唯「あれ? 女の人?」

アーチャー「サーヴァントに性別なんて、基本的には関係ないでしょ」

唯「セイバーちゃんはすごい可愛いもん!」

澪「セイバー!?」

アーチャー「ええー」

唯「しまった!」

澪「アーチャー、セイバーってことは――」

アーチャー「昨日、公園で戦ってたサーヴァントね。魔力がまるで感じられな
かった」

唯「……澪ちゃん」

澪「安心してくれ。アーチャーには令呪がかけてある。私の命令に背くと、
アーチャーは動けない。二つ使って行使させたんだぞ」

アーチャー「お陰で、私は朝から身体が重くて仕方がない」

澪「だって、起こしてくれなかったんだもん」

アーチャー「私は朝が弱いの」

澪「サーヴァントのくせに寝てるなよ」

アーチャー「はいはい」

澪「聞け」

唯「……」

アーチャー「あ、そうだ」

唯「え?」

アーチャー「ミオの命令で動けないだけで、ワタシはいつだって貴女を殺し
たくてしかたがない」

唯「!?」

アーチャー「だから、これからミオが貴女と交渉するけど、そこにワタシの
意思はまるでない」

唯「だ、だから?」

アーチャー「ただそれだけ。言葉以上のことを期待しないで」

唯(この人、嫌いだ……)

澪「アーチャー。ちょっと消えてろ」

アーチャー「はいはい」スゥ

唯(サーヴァントって、こんなこともできるんだ)

澪「ごめんな唯。アーチャーが変なこと言って」

唯「気にしてないよ。それで、交渉って何?」

澪「うん。それが大事なんだ。……唯、手を組もう」

唯「ふぇ?」

澪「私も唯も、聖杯戦争に関してはまるで知識がない。私も、昨日一日
使って、ようやくある程度は知ってるくらいだ。唯は、聖杯戦争について
なにか知ってるか?」

唯「セイバーちゃんに、ちょっと聞いたくらいかな」

澪「だろ。だったら、一緒に戦った方がいいんじゃないか?」

唯「でも――」

澪「唯の言いたいことわかる。でもさ、セイバーは魔力が殆どないっていう
じゃないか。その状態で戦うのは、かなり辛いというか無理だぞ」

唯「そ、そうだけど……」

澪「殺されてもいいのか?」

唯「そ、それは嫌だ!」

澪「憂ちゃんも、危険にさらされる」

唯「やだ!」

澪「なら簡単だろ。私たちと共同戦線を張ったほうがいい」

唯「でも……」

澪「――」

唯「帰って、セイバーちゃんと相談するね。私一人じゃなんとも言えないよ」

澪「そっか。そうだよな。ごめんな。急な話しちゃって」

唯「ううん。澪ちゃんだって大変なんだもん。仕方ないよ」

澪「昨日、散歩から帰ってきたら私の部屋で漫画読んでたんだぞ。アー
チャーのやつ」

唯「セイバーちゃんも、昼寝から起きたときら隣にいた」

澪「……そんなものなのかな。サーヴァントって」

唯「さあ……」

――放課後・音楽準備室――

唯「おっす!」

律「おっす!」

唯「あずにゃーん!」

梓「にゃっ! やめてくださいー」

唯「可愛いー」

紬「うんうん」

澪「相変わらずだな」

アーチャー『……』

澪「ムギ、アイスコーヒーくれる?」

紬「ミルクは?」

澪「もちろん」

梓「もう! 離れてください!」

唯「あうー」

紬「どうぞ、澪ちゃん」

澪「ありがとう」

アーチャー『のどが渇いた』

澪『黙っててくれ』

アーチャー『ちぇ』

唯「りっちゃん。聡くんは元気?」

律「元気だぞー。なんといっても夜な夜な部屋から変な声が聞こえるくらい
だ!」

唯「聡くんも男の子なんだねー」

梓「唯先輩も律先輩もなに言ってるんですか!」

律「なにが?」

梓「――むー」

律「ほらほらー。梓ー、何想像したんだ? 人の弟で」

梓「離れてくださいー」

梓「うう……。聡くんだって、思春期なんですから……」

唯「あずにゃんったら、やらしー」

梓「にゃー」

律「おっかしいよなー」

唯「まあいいや。あずにゃんのえっちー」

梓「みおせんぱーい」

澪「コーヒー美味しい……」

紬「よかったわー」

アーチャー『座りたい』

澪『黙ってろ』

唯(あ、あそこにアーチャーがいるんだ)

――練習終わって――

唯「なんか、今日は頑張ったねー」

梓「唯先輩が練習したいって言い出すとは思いませんでした」

唯「ひどいなー。エロエロあずにゃんはー」

梓「エロくないです」

律「にやにや」

梓「にゃー!」

澪「梓も完全に向こう側になってきたな」

紬「私は?」

澪「向こう側だろ」

紬「しょんぼり」

アーチャー「!?」

澪『どうした?』

アーチャー『見られてる』

澪「……あ! 忘れ物した! みんなは先に帰っててくれ!」

唯「……じゃあ、ね」

澪「ああ」

澪(あわよくば、セイバーを連れてきてもらいたいけど……)

アーチャー『いくよ、ミオ』

澪『う、うん』

唯「――!」ダッ

ランサー「これは驚いたな――」

澪「!?」

アーチャー「なにが?」

ランサー「なにがって、お前は俺が知ってるサーヴァントじゃないってことさ。
念のため聞くが、なんのクラスだ?」

アーチャー「弓兵――」

ランサー「ケッ。いけすかねえな」

アーチャー「やるなら早くしよう。人が来たら、少し面倒だから」

唯「――セイバーちゃん!」

憂「おかえり、お姉ちゃん!」

セイバー「おかえりなさい。ユイ」

唯「セイバーちゃん、怪我は!?」

セイバー「……おかげさまで、完治しましたけど」

唯「早っ!」

セイバー「ユイと契約したのと、憂の料理をいただいたら、自分でも不思議な
くらいに早く回復しました」

唯「じゃあよかった! 来て!」

セイバー「……もしかして」

唯「サーヴァント! 澪ちゃんが危ないの!」

セイバー「――ウイ、食事は帰ってきてからで」

憂「うん。いってらっしゃい」

セイバー「それでは唯。私におぶさってください」

少し席をはずす。

ただいま

セイバー「飛びますよ――!」

唯「ふわあああああああああああああああああああ!!!!!」

憂「い、いってらっしゃい……」

セイバー「ユイ! 学校はどこにあるんですか!?」

唯「あっち!」

セイバー「わかりました! 速度を上げます!」

唯「ふわあああああああああああああああん!!!」

住民「?」

唯「見られてない?」

セイバー「普通の人間が視覚出来る速度ではありませんから、平気です」

唯「そっかぁ。えへへー」

セイバー「全開とまではいきませんが、ユイの魔力供給で十分戦えるくら
いに充実しています。感謝していますよ」

唯「うん! それじゃあ、澪ちゃんを助けに行くよー!」

ランサー「ああ! うざってえ奴だ!!」

アーチャー「?」

ランサー「てめえ! 弓はどうした!」

アーチャー「家に忘れてきた」

ランサー「死ねィ!」

アーチャー「弓兵は目が死ぬほどいいのを忘れたの? これくらい楽々
避けられるよ」

ランサー「なら――スピードをあげて――!」

アーチャー「だから、そういう問題じゃないの。天津飯にかめはめ波がき
かないのと同じだよ」

澪「アーチャー!」

アーチャー「心配無用だよ、ミオ。武器なら持ってきてるから」

ランサー「なんだと!」

アーチャー「秋山家のフライパン」

ランサー「は?」

アーチャー「だから、フライパンだって」

ランサー「馬鹿にしてんのか!」

アーチャー「してないって。本気じゃないけど、ふざけてはいないよ」

ランサー「てめえに宝具に対する誇りはねえのか!」

アーチャー「もちろんあるよー」

ランサー「くそったれ!」

澪「……」

アーチャー「このフライパンだって、意外に強いんだから」バコン!

ランサー「ゴッ」

アーチャー「……あーあ。フライパン壊れちゃった。もうこれ、ただの凶器
だね」

ランサー「――殺してやる。受けろ、我が必殺の――」ズオ……

アーチャー「しまった。これはやばい」

唯「とー!」

セイバー「ちゃーーーーーく!!!!」

地面「バコオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」

ランサー「は?」

アーチャー「よっし。これで因果律狂った! さすが私の幸運!」

セイバー「――」

唯「ほら、セイバーちゃん。言ってよ。アレ、言ってよ」

セイバー「言いません」

唯「言ってくれたら、私の分のおかず半分あげるよ」

セイバー「正義の味方、セイバーさん参上!」

アーチャー「……」

ランサー「セイバー、もしかしてお前も俺が知らないセイバーなんじゃ……」

唯「セイバーちゃんカッコいい!」

セイバー「ありがとうございます。ユイ」

澪「唯!」

唯「澪ちゃん! お助けに来たよ!」

アーチャー「登場したまではいいから、もう帰っていいよ」

唯「ぶー! セイバーちゃん!」

セイバー「はい!」

アーチャー「ちょっと聞いてる? 邪魔なの。じゃ、ま」

セイバー「貴女がアーチャーですか」

アーチャー「そうよ。セイバーって、意外に小さいのね」

セイバー「貴女も対して変わらないでしょう」

アーチャー「……ま、そうね。セイバー、あの子供を連れて帰ってくれない?」

セイバー「あの子供というのは、私のマスターのことか」

アーチャー「やっぱりそうなんだ。セイバーって最良のサーヴァントっていう
のに、随分とまあ貧相なマスターね。うちのマスターはもうバインバインよ」

セイバー「マスターを愚弄するか。弓兵」ギリ

アーチャー「ありゃりゃ。冗談よ冗談。アンタを敵に回してもウマくないわよ」

セイバー「ユイ、敵はどちらですか?」

唯「青いほうだよ。ちょっとむかっとするけど、アーチャーは仲間」

セイバー「わかりました。たとえ人間的に欠陥があったとしても、味方は
味方です」

アーチャー「ミオー。やっぱりランサーしか狙っちゃダメ?」

澪「当たり前だ。それに、今のおまえはフライパンが武器じゃないか」

アーチャー「変形させれば、結構凶(わる)い武器になるのよ?」

澪「そんなことはどうでもいいから、ランサーだけだ」

ランサー「やっべえ……」

ランサー「二人がかりはきついな。しかも、相手はセイバーときたもんだ。
これは、逃げさせてもらうぜ!」ヒュン

アーチャー「ミオー。いい?」

澪「え? よくわからないけど、うん」

アーチャー「せいやっ」ヒュッ!

唯「フライパンを投げた!」

ランサー「は?」

フライパン「ギュルルルルルルルルル!!!」

ランサー「おいおい、どこの世界にクリモミ回転で飛んでくるフライパンが
あるんだよ!」スコン!

アーチャー「一応命中だけど、さっすがランサー」

セイバー「問題なく逃げていきますね」

澪「もしかして、これがアーチャーの宝具?」

アーチャー「そんなわけないでしょ。これは私自身のスキルみたいなものよ」

セイバー「投擲のスキルですか」

アーチャー「そんなところかな。どんな物体でも超高速で遠くまで投げられる
のよ。まっすぐオンリーだけど」

唯「役に立たない力だね。セイバーちゃんの方がよっぽどすごいよ」

アーチャー「なに?」

唯「べーだ」

セイバー「やめてください」

澪「アーチャーもいい加減にしろ……」

アーチャー「はいはい。このちんちくりんが引けばおとなしくしてるのよ」

唯「フンだ!」

澪「……それで、唯。考えてくれたか?」

唯「セイバーちゃん、澪ちゃんとアーチャーと協力するけど、いい?」

セイバー「いい作戦だとは思います。ユイは聖杯戦争について詳しくない。
それに、学校の友人なら、ユイもミオも信頼しあえるでしょう」

アーチャー「ワタシは無視?」

セイバー「アーチャーには令呪が効いていると見受けるが?」

アーチャー「素晴らしい。さすがは騎士(セイバー)のクラス」

セイバー「……私は、賛成です」

唯「だってさ! よろしくね、澪ちゃん!」

澪「あ、ああ!」

――?――

キャスター「あらあら、セイバーとアーチャーが手を組んだのね」

キャスター「少し、困ったわね」

アサシン「なにがだ?」

キャスター「あらアサシン。山門は?」

アサシン「この屋敷の門は厳重だから、問題ないと言ったのはお主であろ
う? 拙者はお主の用心棒といったところだ」

キャスター「ああ、そうだったかしら」

アサシン「年増となると、耳が遠くなるのか?」

キャスター「アサシンのクラスは、魔力遮断するとどれくらいで消えるのかしら」

アサシン「勘弁してくれ。笑えない」

キャスター「……このアーチャーを、私は知らない」

アサシン「?」

キャスター「白髪の双刀を操る弓兵が、私の知っているアーチャーよ」

アサシン「ああ」

キャスター「じゃあ、このアーチャーはだれなの?」

――次の日の学校――

唯「澪ちゃーん」

澪「あ、唯。今日は早いな」

唯「セイバーちゃんって、朝が早いんだよー」

澪「そうなのか。真面目そうだもんな」

唯「アーチャーは?」

澪「一応、側にいるよ。もう令呪が使えないから、置いてくるわけにもいか
ないんだ」

唯「そうなんだー」

澪「……そういえば、憂ちゃんは大丈夫?」

唯「憂ならセイバーちゃんと仲良くやってるよ」

澪「そうじゃなくって、聖杯戦争のこと話したのか?」

唯「言ってないけど、セイバーちゃんが走るところは見られちゃってるよ」

澪「じゃあ、セイバーが人間じゃないことは知ってるのか」

唯「……でも、憂はいい子だよ」

澪「それは知ってるよ」

アーチャー『眠い……』

澪『寝てろ』

唯「澪ちゃんとアーチャーって、仲良いよね」

澪「そうかな? まあ、なんとなくやりやすい奴ではあるけど」

アーチャー「――」

唯「うーん。私はやりにくいかなー」

澪「なんでだ?」

唯「なんか、苦手なの」

澪「珍しいな。唯が人のことを苦手だなんて」

唯「私も。こんな人がいるなんて思わなかったよ」

澪「お、律が来た。それじゃあ、この話は終わりにしよう」

唯「うん。秘密だもんね」

律「おはよ、唯と巨乳」

唯「おっはー」

澪「ぶん殴るぞ!」ゴチン

律「殴ってるじゃん!」

紬「あらあら」

律「いててて。和ー、助けてー」

和「助けないけど」

律「ちくしょー!」

紬「なでなで」

律「むぎゅうマジ天使!」

紬「そんなことないわよ~」

唯「あははー」

姫子「おはよ、みんな」

律「うおっす!」

姫子「ホントに、律たちっていつも元気だよね」

律「元気なのが軽音部の持ち味だー!」

唯「イエイ!」

和「軽音部じゃないんですけれども……」

姫子「和も同じようなものだってー」

澪「姫子もずいぶんなことを言うな~」

紬「でも、和ちゃんが軽音部だったら、もっと楽しくなりそうよね」

和「そうかしら?」

唯「和ちゃーん!」がば

和「せめて脈絡をつけてから抱きつきなさい!」

姫子「あはは……」

アーチャー『……』

――放課後、部活終わって――

唯「澪ちゃん」

澪「ん?」

唯「昨日ね、セイバーちゃんから面白いこと聞いたの」

澪「なんだそれ。怖い話以外だったら聞くぞ」

唯「あのね、マスターはサーヴァントの能力を視ることが出来るんだって」

澪「へえ。それはどういうふうにだ?」

唯「澪ちゃんもやってみればいいよ!」

澪「そうだな。アーチャー、どうして教えてくれなかったのかは不問にして
やる。ちょっと見せろ」

アーチャー「はいはい」

澪「えーっと」

アーチャー

真名 ?
女性 158センチ 50キロ
中立・中庸
筋力 D
耐久 C
敏捷 B
魔力 A
幸運 A
宝具 ?

対魔力 D
単独行動 C

千里眼 C
心眼(真) B
投擲 A

宝具

澪「――のようだけど、セイバーはどうなんだ?」

唯「セイバーちゃんはすごいんだよー」

アーチャー「でもまあ、マスターが貴女じゃあねえ」

唯「……フン」

澪「拗ねるなよ。それで、セイバーの能力はどうだったんだ?」

唯「えへへー。聞いて驚かないでねー」

アーチャー「引っ張るな。面倒くさい」

澪「アーチャー!」

アーチャー「はいはい」

唯「それじゃあ、これがセイバーの能力だよ!」

セイバー

真名 ?
女性 154センチ 42キロ
秩序・善
筋力 B
耐久 B
敏捷 C
魔力 A
幸運 A
宝具 A

対魔力 A
騎乗 B

直感 A
魔力解放 A
カリスマ B

宝具

風王結界(インビジブル・エア)

澪「……」

アーチャー「こっち見ないでくれる?」

澪「いや、アーチャーさん?」

アーチャー「仕方ないだろ。セイバーのクラスなんだから」

唯「セイバーちゃんも、結構調子いいんだって!」

澪「……」

アーチャー「サーヴァントの力はマスターの魔力にも左右されるの。だか
ら、私だけの所為じゃあない」

唯「アーチャーに認めてもらったー」にやにや

アーチャー「はいはい」

澪「……セイバーと手を組んでよかったな。アーチャー」

アーチャー「戦えば絶対に負けないから」

唯「えへへー」

アーチャー「にやにやするな」

澪「それじゃあ、10時にセイバーを連れてうちに来てくれ」

唯「りょーかーい」

アーチャー「……」

澪「どうしたんだ? アーチャー」

アーチャー「これが、あのヒラサワユイの家?」

澪「そうだぞ。私の家より大きいだろ」

アーチャー「いや、それはどうでもいいよ」

澪「さて、私たちも帰るぞ」

アーチャー「はいはい」

澪「はいは一回」

アーチャー「はーい」

澪「伸ばさないの」

アーチャー「めんどー」

――夜――

唯「セイバーちゃん、可愛い!」

セイバー「やめてください。大切な徘徊だというのに」

唯「でもでも、よく似合ってるよ! 私が中学生のときに着てた服!」

セイバー「え?」

唯「セイバーちゃん可愛いー」ぎゅうううう

セイバー「や、やめてください……」

セイバー(あ、温かい……)

セイバー「とにかく、行きますよ!」

唯「うん!」

憂「……」

唯「憂、いってくるね」

憂「気をつけてね? お姉ちゃん、セイバーさん」

セイバー「ええ。ウイは安心して眠っていてください。必ず、ユイは守ります」

唯「こんばんわー」

澪「時間ぴったりだな。セイバーのおかげか」

セイバー「そんなことはありません。ユイの自発的な行動です」

唯「私だって、やる気満々なんだから!」

澪「……他のマスターを、殺すことになるんだぞ?」

唯「なんで?」

澪「なんでって。そういうルールだからだよ」

唯「そうなの? セイバー」

セイバー「それが一番わかりやすいだけです。正確には、サーヴァントを
打倒することが目的です」

アーチャー「聖杯にはサーヴァントしか触れられない。なら、そのサーヴァ
ントが一人になればいいってことよ」

唯「だから、私はマスターを殺さないで聖杯を手に入れるよ!」

澪「――そうか。だったら、それが一番いい方法だな!」

セイバー「それでは、行きましょう」



唯「――なんか、ワクワクしない?」

澪「どうして? 物音もしないのに」

唯「それがだよ! なんか、自分と世界が離れちゃってる感じがワクワク
するんだよ!」

アーチャー「世界と自分が離れるねえ……」

澪「私は怖いだけだけどな」

唯「ぶー。セイバーちゃんは分かってくれるよね」

セイバー「別に、特には」

澪「それにしても、セイバー可愛いな。その服は唯のか?」

唯「そうだよー。可愛いでしょ」

アーチャー「まるでリカちゃん人形みたいだ」

セイバー「そこになおりなさい」

アーチャー「……!?」

セイバー「!?」

アーチャー「セイバー、感じた?」

セイバー「ええ。向こうですね」

澪「向こうは、港だな」

唯「いってみよう!」

セイバー「……少し急いだ方がいいですね。アーチャー」

アーチャー「はいはい。ミオ、しっかりつかまってて」

澪「へ?」

アーチャー「セイバー、遅れないでね!」

澪「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!」

セイバー「ユイ、私たちも行きます!」

唯「おっけー!」

セイバー「――!」

――港・廃工場――

澪「このあたりも、随分さびれちゃったな」

唯「昔は結構栄えてたみたいだけどね」

澪「……」

アーチャー「ミオ?」

澪「アーチャー、どうしてあんなに速く……」

アーチャー「いや、なんとなく」

澪「……」

セイバー「あの建物の中から、なにかとてつもない魔力を感じます」

唯「じゃあ、あそこに――」

アーチャー「サーヴァントがいる。それも、かなりヤバい奴だと思う」

澪「――」

ドア「ニ……」

セイバー「……暗い、ですね」

アーチャー「油断はしないでよね。セイバー」

セイバー「当然です。どんなときも油断は――!」

アーチャー「ミオ! 絶対にこっちに来ないで!」

澪「!?」

セイバー「ユイもです! この状況は、あなたたちにはあまりにも酷すぎる」

唯「……澪ちゃん。下がるよ」

澪「唯?」

唯「セイバーちゃんたちが気を利かせてくれてるんだもん。だったら、私たち
はそれに甘えてあげなきゃ」

澪「……ああ。アーチャー! セイバーも頼むぞー!」

アーチャー「はいはい。でも、ねえ」

セイバー「この死体の数。かなりの命を吸っていると見える」

アーチャー「ってことは?」

セイバー「私たちが出会っていないサーヴァントは、アサシン、キャスター、
ライダー、そして――」

アーチャー「バーサーカー」

セイバー「あの、黒い塊のようなモノが……」

男「う、うう……」

セイバー「息がある! アーチャー!」

?「■■■―――!!!」

男「おごっ」ブチャ

セイバー「!?」

アーチャー「案の定ね。これが狂戦士のクラスのサーヴァント」

セイバー「バーサーカー、ですか」

サルさんくらって、眠いのでそろそろ眠る。

おやすみなさい。保守してくれたりでスレが盛り上がれば嬉しい。

おはよう

保守ありがとう。

バーサーカー「■■――!!」

アーチャー「これはまた、トンデモないサーヴァントに出会っちゃったね」

セイバー「ええ。今まで出会ったどのバーサーカーよりも強い魔力を持ってい
ます。単騎では、勝ち目は薄かった」

アーチャー「ああ、それじゃあ今なら勝てるかも?」

セイバー「低いことに変わりはありません。アーチャー、弓で援護してくれる
と助かるのですが」

アーチャー「家に忘れてきた」

セイバー「……」

アーチャー「そもそも私、弓とか使えないんだよ。アーチャーだから一応
持ってるけど、弓で放つよりも投げたほうが得意」

セイバー「……それで、投擲するものは持ってますか?」

アーチャー「そのへんに転がってるし、念のためミオの家から包丁持って
きた」

セイバー「かなり心許ないですね」

アーチャー「そう? 結構十分な武装だと思うけど」

セイバー「あなたがそう思うのであれば、信じるしかありません。
――いきます」



唯「ねえ、澪ちゃん」

澪「ん?」

唯「私たち、これでいいのかな」

澪「何の話?」

唯「セイバーちゃんとアーチャーのお手伝い、しなくてもいいのかなって」

澪「したくても出来ないよ。サーヴァントの戦いは、人間の及びのつかない
ところなんだ。マスターが死んだら、サーヴァントも負けっていルールで
ある以上、私たちは離れていたほうがいい」

唯「そうなのかな……」

澪「そうだよ。アーチャーたちも、そう思ったから私たちを置いて行ったんだ」

唯「うん……」

澪「だから、私たちは待っていよう。安心してさ」

倉庫「ドゴォ!!」

唯「始まったね」

澪「ああ」



セイバー「ただの斬撃では、ダメージも与えられない」

アーチャー「所謂、物理攻撃を無効化する宝具?」

セイバー「いいえ、バーサーカーのクラスに宝具は原則ありません。心が
狂っているのですから、操ることができない」

アーチャー「そうすると、あのサーヴァントのスキルかなにか?」

セイバー「そういうことになるでしょう。私の対魔力と同じで、一定以下の
ランクの攻撃を遮断する」

アーチャー「……それって、相性最悪じゃない?」

セイバー「こちらも宝具を使えば――」

アーチャー「いいの? 私だって、セイバーの敵になるかもしれないんだよ」

セイバー「……本当に、そうなのですか?」

アーチャー「可能性としては、0ではない。私がミオをなんらかの方法で
殺してしまえば、令呪の呪縛から解放される」

セイバー「貴女は――!」

アーチャー「義理人情に厚いのは、セイバーのクラスだけで十分。私は
裏切ってでも、叶えたいコトがあるの」

セイバー「……余計な話だ。今はこの狂戦士を倒します」

アーチャー「どうぞ」

バーサーカー「■■■■――――――!!」

アーチャー「――あ」

セイバー「なんですか?」

アーチャー「……これ、相当まずいよ」

セイバー「?」

アーチャー「バーサーカーの側にいる子供? あれって――」

セイバー「え?」

アーチャー「さっきまで暗かったけど、月の光で見える。アーチャーのクラス
は目が良いから」

セイバー「……」

律「しまった。見つかっちまった」

アーチャー「ミオとヒラサワユイをおいてきて正解だったみたいね」

セイバー「彼女は?」

律「桜高軽音部部長、田井中律。そしてこれは私のサーヴァントの『ヘラクレス』さ」

アーチャー「――!」

セイバー「ヘラクレス!?」

律「そう。ゼウスの子供、ヘラクレス。知ってるでしょ?」

アーチャー「思った通り、押しも押されぬ最強の英霊じゃない。セイバー、
逃げることも視野に入れて戦うわよ」

セイバー「そうしましょう。さすがに、ヘラクレスが相手では、狂化したとは
いえ厳しい」

バーサーカー「――」

律「……セイバーとアーチャーのクラスか。なるほど、そこまで苦戦しない
相手だな。待てよ、バーサーカー」

セイバー「……貴女のような少女が、バーサーカーを手懐けられるとは
思いません。狂化したサーヴァントを律するには、毎度令呪が必要な
筈だ」

律「それを教える必要はない思うけど?」

アーチャー「尤(もっと)もね。――セイバー、マスターを殺すことはできない。
バーサーカーを倒すか、ここは逃げて戦略を立て直すかしないと」

律「そうだぞー。私を殺すのなら、バーサーカーを倒したほうが早い」

セイバー「当然です。マスターは私に命じました。人を殺すな、と」

セイバー「その命に、答える。そこに令呪なんていらない――!」ヒュン

律「バーサーカー、捻り潰せ!」

バーサーカー「――■■■!!」

アーチャー「セイバー! ちょっと待って!」

セイバー「!?」

アーチャー「ここは逃げるわよ! 戦略的撤退!!」

セイバー「どうしてですか!?」

アーチャー「簡単な話でしょ! このまま真っ向からぶつかり合ったところで、
負けるのはこっち。そうすれば、誰がマスターを守るの?」

セイバー「――」

アーチャー「相手はヘラクレス。セイバーの宝具が何かは知らないけれど、
簡単に勝たせてくれる相手じゃあない。ここは、逃げる」

律「それを許すとでも?」

アーチャー「許す必要はない。全力で逃げる――!」

律「!?」

アーチャー「一瞬でいい! それだけで、逃げる隙になる!」

セイバー「アーチャー!」

律「バーサーカー、逃がすな!」

バーサーカー「■■■■■――――!!」

アーチャー「もう遅い。『すでに』ってやつよ」

バーサーカー「――――――!!!!」

セイバー「バーサーカーの四肢に鉄パイプが突き刺さっている……。まさ
か――」

アーチャー「投擲での遠距離攻撃こそ、私が弓兵(アーチャー)たる由縁。
……隙が出来た。一生懸命逃げるわよ」

セイバー「……感謝します。アーチャー」

アーチャー「いえいえ、今、貴女に消えられると困るのよ。色々とね」

律「くっ! 回復しろ! バーサーカー!」

バーサーカー「――――」

律「な……。バーサーカーの回復が一瞬遅れた? まさか、宝具なのか?」

セイバー「ユイ!」

唯「セイバーちゃん!」

セイバー「今すぐおぶさって! 逃げます!」

澪「アーチャー、なにがあったんだ!」

アーチャー「説明は後でするから! ヒラサワユイの家に!」

セイバー「承知!」

唯「ふわああああああああああああああああああああ!!!」

澪「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!」

律「――あれは……?」

バーサーカー「――――」

律「唯と、澪じゃないか」

律「おいおい、まさか私たちが殺しあうなんて……」

律「困ったなぁ――」

律「――でもまあ、いっか」

――秋山宅――

澪「ママ、もう寝てるみたい」

セイバー「ママ?」

澪「お、おふくろ!」

アーチャー「それはそれでどうかと思うよ」

唯「……セイバーちゃん、それでどうだった?」

セイバー「――最悪のサーヴァントと出会いました」

アーチャー「バーサーカーのクラスね」

澪「バーサーカー?」

アーチャー「狂戦士っていうのかな。とにかく、こと戦闘に関しては私や
セイバーを軽く凌ぐわ」

唯「セイバーちゃんよりも強い……?」

セイバー「普通のバーサーカーならば打倒も出来ます。しかし、狂化させて
いる英霊はあの大英雄、ヘラクレスなのです」

澪「!?」

唯「ヘラクレスって、あの?」

アーチャー「ゼウス神の子供で、半神の英雄よ。はっきりいって、これ以上の
英雄は存在しないと言ってもいい」

セイバー「本来、バーサーカーのクラスはレベルの低い英霊を狂化させて、
戦闘力を増します。しかし、ヘラクレスを狂化させたとあれば、これはもう
戦闘に関しては手の着けようがない」

アーチャー「私、セイバー、それとランサーの3騎士でかかれば――或いは
ってくらいね」

澪「集めるか?」

アーチャー「無理ね。私たちはよくても、ランサーにはうまみがない。確実
に勝てるのならいいけど、可能性が出る程度ならランサーは協力しない」

セイバー「おそらく、これ以上味方を増やすのは難しいでしょう」

澪「そうか……。なら、どうすれば」

アーチャー「マスターの暗殺」

セイバー「アーチャー!!」

唯「それは駄目! マスターが誰かは知らないけど、殺すのは――」

アーチャー「甘すぎ。サーヴァントを殺れないのなら、マスターしかないじゃな
い。それともなに? こっちからは殺さないけど、殺されるのはいいわけ?」

唯「違う! 殺すのも、殺されるのもやだ!」

アーチャー「それが甘いって言うの。大人になりなさい」

唯「――子供でいい」

アーチャー「え?」

唯「この状況で、殺したりしなきゃいけないのなら、私は一生大人でいい」

アーチャー「――」

セイバー「ユイは頑固ですよ。一度決めたら、その決心は揺るがない」

澪「アーチャー。バーサーカーを斃す方法を考えよう。マスターを殺すのに
は、私も反対だ」

アーチャー「……もう!」

セイバー「――バーサーカーを倒すのには、宝具が必要です」

唯「宝具って、ランサーの槍みたいな?」

セイバー「ええ。宝具とはサーヴァント固有の奥義。究極の一です」

アーチャー「その宝具は英霊を英霊たらしめるシンボルみたいなもの。アイ
ルランドの光の皇子である、クーフーリンは、その赤い魔槍、ゲイ・ボルグ
をシンボルとしている」

セイバー「しかし、その宝具を発動するには真名を明かす必要がある。真名
が明らかになる、ということは弱点を晒すことになります」

澪「それはなんで?」

セイバー「クーフーリンは、生涯イヌを殺すことができませんし、カラドボルグ
に敗北しなければなりません」

唯「あ」

セイバー「わかりましたか? つまり、英霊の真名は、その者の伝説と弱点
を知られてしまうのです」

澪「だから、サーヴァントは真名と宝具を隠すのか」

アーチャー「本当なら、マスターには教えるものなんだけどね」

唯「じゃあ、セイバーちゃんの真名を教えてくれなかったのは――」

セイバー「ユイは魔術について知識が0だ。暗示などで、私の真名を他の
マスターに喋らされてしまう恐れがあったからです」

アーチャー「まあ、私も8割方そんな理由ね。ミオに真名教えないのは」

澪「そうだったのか」

セイバー「真名とは弱点です。そして、バーサーカーのマスターは敢えてそれ
を私たちに告げた。その意味がわかりますか?」

唯「トンデモない自信があるってこと?」

アーチャー「ヘラクレスじゃあ、弱点もなにもあったもんじゃないけどね」

セイバー「ヘラクレスの弱点を突くことができないのですから、真名を明かし
たところで、こちらには絶望しかありませんからね」

澪「絶望って……どうすればいいんだ!」

アーチャー「とりあえず、バーサーカーは後回しね。サーヴァントが減って、
真名がバレても問題なくなったら、全力で叩きましょう。今はそれしかない」

唯「……うん」

アーチャー「どこかの誰がか甘いから、長期戦になるわよ。今回の聖杯戦
争」

セイバー「――ユイ、気にする必要はありません。貴女は正しい」

唯「うん、ありがと。セイバーちゃん」

澪「泊っていかなくて大丈夫か?」

唯「うん。憂が心配するだろうからさ」

セイバー「ええ、ウイは私にとっても大事な人だ」

アーチャー「精々殺されないように気をつけて」

唯「……おやすみなさい。澪ちゃん」

澪「ああ、おやすみ」

ドア「ニコ」

唯「……ふう」

セイバー「どうしました?」

唯「なんか、いきなり色々ありすぎて疲れちゃったよ」

セイバー「ごめんなさい。巻き込んでしまって……」

唯「それはいいんだよ。私から巻き込まれたんだから」

セイバー「ですが――」

唯「セイバーちゃんは聖杯のことを考えてて。私は頑張るからさ」

セイバー「――はい。ありがとうございます」

――田井中宅――

律「あー疲れたー」

ベッド「ぼすっ」

律「バーサーカーは家に置いとけないし、あそこに置いとくと勝手に足りない
魔力吸い上げるからなー」

?「――!! ―――!!! ―――!! ■■―――!!!」

律「……と」

律「バーサーカーが動いたか」

律「ったく、狂戦士のマスターは大変だな」

律「サーヴァントが指先一つ動かすだけで、全身に激痛が走って、狂った
ようにのたうち回る」

律「どっちが『狂』戦士かわからないじゃないか」

律「ハハ。まあ、どうでもいいか」

律「――なあ。聡」

――次の日の朝――

憂「セイバーさん、今日もお留守番?」

唯「うん。セイバーちゃんって寝るのが仕事みたい」

憂(ニートが増えた……)

和「あ、唯と憂じゃない。おはよう」

唯「和ちゃーん!!」がば

和「よしなさい。朝から暑苦しい」

唯「えへへー」

憂「和ちゃん、今日は生徒会ないの?」

和「ええ。そろそろ引き継ぎだから、あまり忙しくないのよ」

憂「そうなんだー」

唯「和ちゃん、会長さんお疲れ様です!」

和「ありがとう。離れなさい」

唯「ぶー」

――3-2――

澪『アーチャー』

アーチャー『なに? 眠いんだけど』

澪『バーサーカーのマスターって、誰なんだ?』

アーチャー『見てないと言っても信じないだろうから、正直に言うよ。教えら
れない』

澪『どうして』

アーチャー『教えるメリットがない。この情報を、他のマスターにタダでやる
意味もない。なんなら交換条件ね』

澪『暗示をかけられてコロっと言われるより、他のマスターやサーヴァントと
情報や戦力の交換で教えるってことか』

アーチャー『その通りよ』

風子「秋山さん、今日、日直だけど日誌お願いね」

澪「うん。わかったよ」

アーチャー『……人が増えてきたな。この話はおしまいだ』

澪『ああ』

唯「ういー」

和「朝からだらけないの」ビシッ

唯「あうっ」

姫子「唯と和って、仲良いね。いつからの付き合いなの?」

唯「付き合いっていうのは、恋愛的な意味? それとも――」

和「幼稚園の頃から友達なのよ。それから、しばしば同じクラスになってね」

姫子「へえー。それじゃあ、腐れ縁ってやつ?」

和「そうね。そういうことになっちゃうのかな」

唯「ぶー」ごろごろ

姫子「あ、先生来た」

さわ子「それじゃあ出席とるわよー。秋山さん――」

姫子「……」

唯「あぅー」ごろごろ

姫子(可愛い……)

――部活――

紬「――ということで、今日は私の家でパーティーがあるのー」

梓「それに私たちが招待されたんですよね」

律「なにその説明口調」

紬「美味しい料理もたくさん出るみたいよ」

律「行く! 行かせて!!」

唯「私も!」

澪「唯!?」

唯「?」

澪「……いいの?」

唯「ねえ、ムギちゃん。憂も連れてきていい?」

紬「もちろんいいわよ。和ちゃんも招待してあるもの」

梓「でも、パーティ用の服なんて……」

紬「もちろん、私が用意するわ!」

律「変な服用意しないでくれよー」

紬「え? 駄目なの?」

律「逆にどうして良いのか」

アーチャー『いいの? ミオ』

澪『大丈夫だろ。お前もいるし』

アーチャー『過度の期待は身を滅ぼすよ』

澪『照れてるの?』

アーチャー『……馬鹿』

唯「楽しみー」

梓(唯先輩のドレス……)

律「梓ー、何想像してんだー?」

梓「な、なんでもないです!!」パカっ

律「いって! このやろー」ぐりぐりー

梓「にゃー!」

唯「りっちゃんとあずにゃんなかよしー」

アーチャー『……ま、いいか。たまにはこういうのも』

――琴吹邸――

唯「ふわぁ~」

和「……想像をはるかに超える大きさね」

呼び鈴「じゃららーじゃららあーん」

憂「呼び鈴がオーケストラ!」

セイバー「豪華絢爛ですね」

唯「だねー」

憂和「!?」

セイバー「どうしました? ノドカ、ウイ」

和「だれ!?」

セイバー「私はセイバー。ユイの家にお世話になっている留学生です」

憂「どうして連れてきたの?」ひそひそ

唯「豪華な料理って聞いた途端……」ひそひそ

和「そう。よろしくね、セイバーさん」

憂「適応した!」

少し席をはずす。

ただいま

紬「いらっしゃい!」トコトコ

セイバー「……」

紬「?」

唯「えと……ムギちゃん?」

紬「綺麗な人……。唯ちゃんのお友達?」

セイバー「はい。私はセイバー。ユイの家でお世話になっている留学生で
す」

紬「そうなんだぁ! いらっしゃい!」

和「セイバーさんって、日本語うまいわよね」

セイバー「祖母が日本贔屓だったもので」

憂(高校生って、なんだかすごい! って、私も高校生か)

唯「ムギちゃん、セイバーちゃんの分の服もある?」

紬「もちろん。セイバーさん綺麗だから、どんな服でも似合うわよ」

セイバー「そのような――」

唯「さあ、行こうじゃないかー」



紬「はい、これでおっけーよ」

セイバー「こ、このような動きずらい服装は――」

唯「可愛いー!」ぎゅっ

和「本当ね。やっぱり似合いすぎよ」

澪「お、唯たちも来てたのか――って、え!?」

セイバー「おや、ミオじゃありませんか。こんばんは」

律「澪、知り合い?」

澪「昨日唯の家に行ったときに会ったんだよ。セイバーも来てたのかー」

セイバー「はい。ユイが誘ってくれました。ツムギは本当に素晴らしい人物
です」

紬「照れちゃうわー」

律「……おい、梓」

梓「なんですか?」

律「相変わらず、胸がないな」

梓「むー」

律「しょげるなむくれるなよー」

梓「律先輩だって大して変わらないじゃないですか」

律「私はいいんだよ」

梓「どうしてですか?」

律「イケメンだから!」

梓「自分で言いますか。それ」

律「駄目なのか?」

梓「いえ、文句はありますが反論はありませんから」

律「へっへー」

澪『アーチャー』

アーチャー『まさかセイバーも来るなんて、少し驚いたよ』

アーチャー(これで完全にバーサーカーのマスターがセイバーのマスターを
把握したな)

澪「律、ごちゃごちゃ言ってると置いて行かれるぞ」

律「おっと、ごめんごめん」

紬「ここがパーティ会場よ。とりあえず、私の側にいてくれれば間違いはない
から」

和「わかったわ。唯と律ははぐれない様にね」

セイバー「ご安心を。ユイは私が監視します」

唯「ぶー」

紬「それじゃあ、開けるね」

扉「ギイイイ」

律「でっかい扉だなあ」

メイド「紬お嬢様!」

紬「この子たちが、私のお友達よ」

メイド「!?」

セイバー「!?」

執事「紬お嬢様とご友人の方ですか――」

セイバー「!?」

執事「!?」

アーチャー『なに? この屋敷は人間じゃないのをメイドや執事にしてるわ
け?』

澪『え?』

アーチャー『あのメイドと執事、揃ってサーヴァントよ。キャスターとアサシン
ってところでしょう』

澪「え!?」

律「どうした澪ー」

澪「いや、会場が余りにも大きかったもので、声が出た」

セイバー「……」

メイド(キャスター)「どうぞ、お飲物を」

セイバー「……私は必要ない」

紬「?」

セイバー(ツムギは気が付いていない? この従者がサーヴァントだという
ことに――)

執事(アサシン)「こちらの美しい方に、酒の類は禁止とのことだ」

メイド(キャスター)「そ、そう。紬お嬢様のご友人ですからね」

セイバー「……申し訳ないが、話しがある」

紬「?」

セイバー「申し訳ないがツムギ。このお二人は、どうやら私の知り合いのよう
だ」

梓「そうなんですか?」

メイド(キャスター)「……はい。そのようで」

セイバー「……」

アーチャー(キャスターの顔が引きつってる。猫かぶりがそんなに大変?)

執事(アサシン)「どうぞ」

律「りんごジュースうまー」

アーチャー(アサシンの方は、随分と手慣れてる。これは――)

セイバー「ユイ、失礼します」

唯「う、うん」



セイバー「これは、どういうことです?」

キャスター「別に。話すことでもないわ」

セイバー「……ここで戦いたくはない。ユイの友人を巻き込みたくはない」

アサシン「それはお前次第でもあるのだぞ。セイバー。お前がここでもめ事
を起こすのであれば――こちら側に拒む理由はない」

キャスター「わかった? セイバー。貴女には効いてないかもしれないけど、
この屋敷全体が私の結界みたいなものなのよ?」

セイバー「!?」

キャスター「もちろん、この屋敷全員を殺す。なんていうことは、マスターが
許さなかったけれどね」

セイバー「どういった結界かを問うて、答えるか?」

キャスター「答えるわけないじゃない。一つ安心させてあげるとしたら、今の
時点で、害はないわよ」

アサシン「ここで結界を使用していたとしたら、お前のマスターたちはこの
部屋に入る前に死んでいる」

セイバー「……争う理由は?」

キャスター「今はないわ。精々パーティを楽しみなさい。セイバー」



セイバー「ただいま帰りました」

唯「おかえり、どうだった?」

セイバー「……」

梓「?」

セイバー「楽しくやっているみたいです。友人として安心しました」

紬「そう? よかったわー」

澪『……アーチャー』

アーチャー『もちろん嘘だよ。しかし、セイバーの表情が明るいところを見る
と、どうやら最悪の状態ではないということね』

律「にくうまー」

アサシン「おやおや、口の周りについていますよ」

律「……」ふきふき

アサシン(この娘から……僅かに魔力の匂いがする。これは一体……)

律「ありがと。お兄さん」

アサシン(女狐に報告しなければならぬか)

セイバー「ユイ、あとで話が」ひそひそ

唯「うん」

梓「ゆいせんぱーい!」だきっ

唯「うわ!」

セイバー「アズサ……未成年だというのに、お酒を飲んでますね?」

梓「ゆいせんぱいかわいいー!」

唯「ちょっと待ってあずにゃん! くるしいよー」

梓「離れませんー」

和「梓ちゃんって、実は唯のこと……」

憂「!?」

澪「まさか、な」

紬「タマリマセンワー」

さわ子「まったく、見てるのが私じゃなかったら退学よ退学」

律「うわあああああああああ!! さわちゃんいつから!?」

さわ子「いつからって、あなたたちが来る前からよ」

律「気付かなかったー」

さわ子「私はこの場に相応しい女だからよ」

和「さっきからセレブな男を見つけては声かけてる人がなにを……」

さわ子「それは触れないのー!」

セイバー「ユイ、この方は?」

唯「山中さわ子先生。担任で顧問の先生なんだよー」

セイバー「そうですか。サワコ、私はセイバー。ユイの家でお世話になってい
る留学生です」

さわ子「あら綺麗な子。色んな衣装着せたくなるわね」

セイバー「衣装? あなたは衣服を作れるのですか?」

さわ子「自慢じゃないけど、得意な方よ」

律「ジャンルはアレだけどな」

セイバー「……ユイは、良い人たちに囲まれているのですね」

唯「……そろそろ帰ろうか。もう11時だもん」

澪「それもそうだな。夜道は危険だから、梓は特に気をつけろよ」

梓「それは私がー、小さいからですかー?」

澪「酔ってるからだ。ふらふらじゃないか」

律「私が送っていくよ。ほら、掴まれ梓」

梓「ゆいせんぱいがいいー」

憂「……」じー

梓「……律先輩でいいです」

律「それじゃあ行くよ。ありがとな、ムギ」

紬「ううん。また明日ね」

セイバー「綺麗な服を貸していただいてありがとうございました。彼女たち
にもよろしく伝えてください」

紬「ええ。斎藤、皆さんを玄関までお見送りして」

斎藤「承知しました」

セイバー「……」

斎藤「後ほど、お話がありますので平沢様とご一緒に裏に来てください」



唯「セイバーちゃん、どうしたの?」

セイバー「あの執事、只者ではなかった。もしかすると、戦闘になるかもし
れません」

唯「う、うん!」

斎藤「時間を取らせてしまって、申し訳ありません。セイバー様。平沢様」

唯「ムギちゃんの――」

斎藤「執事の斎藤でございます。以後、お見知り置きを」

セイバー「ただの挨拶だけではあるまい。私たちだけを呼び出したというこ
とは、大体察しがつく」

斎藤「さすがは最良のサーヴァント、セイバー。その直感は神が如しと訊き
ますが、まさしくその通りでございます」

キャスター「パーティは終わって、私たちが戦わない理由はなくなったわ」

アサシン「左様。存分に死合おうじゃないか」

セイバー「……ユイ、アーチャーとミオを呼びましょう」

唯「わかった」

キャスター「それは出来ないわよ。だって、もうこの屋敷は出られないし入れ
ないもの」

セイバー「先刻の結界か」

キャスター「そうよ。アーチャーがいたことも気がついてたけれど、正体が
知れてる貴女から殺った方が効率いいもの」

セイバー「――なぜ、私の真名を知っている」

キャスター「……さあ。教える理由がないもの」

アサシン「キャスター。ここは拙者が」

キャスター「好きになさい。ただし、やるなら三人で」

アサシン「一対一を許しては?」

斎藤「なりません。勝率は、上がられるだけ上げるべきです」

アサシン「……左様か」

セイバー「……まずいですね」

唯「セイバーちゃん……」

セイバー「もし、私の真名を本当に知っているのなら、宝具を使います。いいですか?」

唯「……うん。セイバーちゃんに任せるよ」

セイバー「感謝、します」

アサシン「姓は佐々木、名は小次郎。知っての通り無名の剣士だ」

キャスター「名を名乗る必要はあるの?」

アサシン「名乗ったところでどうということでもあるまい。むしろ、これが
我々武士の習わしだ」

斎藤「キャスター、強化を」

キャスター「――ええ」

セイバー「――来るか!」

アサシン「ああいくさ。不本意ではあるが一対三だ。これをどのようにして
覆す?」

斎藤「私にも目的がありますので、失礼します」

セイバー「――ハアアアアアアアアアアア!!!!」ビュオン

唯「え? 風?」

キャスター「セイバーを中心に、突風が吹いてる――」

アサシン「これが、セイバーの宝具か」

セイバー「真名を知っているのならいい。それならそれで、私本来の戦い
方をするまでだ」

唯「セイバーちゃん?」

セイバー「ごめんなさい、ユイ。もしかすると、魔力を使いきってしまうかも
しれません」

唯「……なら、私がおぶって帰るから、平気だよ」

セイバー「ありがとうございます」

アサシン「これは、形勢が変わるやもしれぬぞ」

キャスター「ここは私の陣地なのよ? あの英雄の宝具くらい、受け止められ
る筈」

アサシン「そうは言っても、相手は最強の聖剣だ。無傷では済まんだろう」

セイバー「いきます――」

キャスター「――ごめんなさいね。アルトリア。その光を食らうわけにもいか
ないわ」

セイバー「!?」

――ビル屋上――

アーチャー「あちゃー。セイバーったら、宝具使ってる」

澪「仕方ないだろ。私たちが介入できないんだから」

アーチャー「それはそうだけど、これで私にもセイバーの正体分かっちゃった
わ」

澪「誰?」

アーチャー「アーサー王。といえば日本人でも知ってるわよね」

澪「アーサー王って、イングランドの?」

アーチャー「そう。エクスカリバーの人よ」

澪「でも、アーサー王は王様だろ? セイバーは女の子じゃないか」

アーチャー「だから、アーサー王は女の子だったのよ。私だって信じられな
いわ」

澪「性別を偽ってたってことなのか」

アーチャー「そうみたいね。道理で女の子らしいことが苦手なわけよ」

澪「――ランサーやバーサーカーのマスターは見たかな」

アーチャー「わからない。少なくともキャスターたちにはバレてしまった。
セイバーがアーサー王で、エクスカリバーの所有者だということがね」

さるさん食らってた。

今から書く。



セイバー「ハァ……ハァ……」

唯「セイバーちゃん!」

セイバー「申し訳ありません。まさか、瞬間移動だなんて……」

唯「そんなのいいよ。大丈夫?」

セイバー「風王結界を解いただけで、ここまで疲労するとは思いませんで
した。魔力が不足していたわけではないのに――」

唯「肩掴まって、結界も解けたみたいだよ」

セイバー「そのようです。どうやら、キャスターたちは確認のために、私に
宝具を使わせたようです」

唯「……アルトリア」

セイバー「アーサー王と呼ばれた、この私の真名を確認したかったのでしょ
う」

唯「セイバーって名前よりもずっとずっと可愛いよ」

セイバー「その名前は捨てました。私はセイバー。貴女の剣です」

唯「……」

――次の日・夜――

セイバー「申し訳ありません」

唯「なにが?」

セイバー「私の魔力が回復しないために、見回りが出来なくなって」

唯「あはは。そんなのいいよ。アル……セイバーちゃんのためだもん」

セイバー「ですが……」

唯「いいったらいいの。セイバーちゃんは私を守るために、魔力を使って
くれた。だったら、半人前以下の私はセイバーちゃんに付き合うの」

憂「おねえちゃーん。ごはんできたよー」

唯「ご飯だって、セイバーちゃん。今は食べよ」

セイバー「――はい。貴女は、私が今まで出会ったどんな人間よりも温かい」

唯「なんか照れちゃうな~」

セイバー「本心からですよ。ここまでサーヴァントを気遣うマスターはいない」

唯「うーん。セイバーちゃん可愛いから、他の人も優しくするよ」

セイバー「……前のマスターは、そうではなかったものですから。嬉しいのです」

セイバー「――やはりウイの料理は素晴らしいです」

憂「えへへ、ありがとうございます」

セイバー「笑った顔が、本当にユイに似ていますね」

唯「そりゃあ姉妹だからねー」

セイバー「しかし、性格はまるで違いますね」

唯「ぶー」

憂「お姉ちゃんはゴロゴロの天才だよっ」

唯「わーい。ありがとーういー」

セイバー(褒めているのだろうか)

セイバー「それにしても美味しいです。この煮物は特に」

憂「あ。それはお隣のおばあちゃんからいただいたものなんですよ。お口に
合ったようでしたら、よかったです」

セイバー「そうなのですか。まさに日本の味ですね。醤油万歳」

唯「あははー。セイバーちゃんってご飯のときは面白いね!」

セイバー「ムム」

唯「セイバーちゃーん」

セイバー「なんでしょうか」

唯「セイバーちゃんの笑顔。私も好きだよ」

セイバー「なにを唐突に! 脈絡というものがありません!」

憂「私も好きー」

セイバー「ウイまで!」

唯「――だからさ、セイバーちゃんが笑っていられるように、私も頑張る」

セイバー「ユイ……」

憂「お姉ちゃん、セイバーさん。おかわりは?」

唯「いただきます!」

セイバー「ええ、いただきます。大盛りを所望します」

憂「りょーかーい」トテトテ

セイバー「……私も、ユイとウイの笑顔を守りたい」

セイバー「いいえ、出来れば。誰の泣き顔も見たくない」

セイバー(今度こそは、絶対に――)

――秋山宅――

アーチャー「ひまー」

澪「漫画でも読んでれば?」

アーチャー「ミオんちの漫画は読みつくしたー。たまには少年漫画も
買いなさいよー」

澪「いやだよ。私は甘い恋の物語が好きなんだ」

アーチャー「キー」

澪「勉強の邪魔はしないでくれよ」

アーチャー「……外でも見るわ。千里眼で遠くまで見てる」

澪「便利だな」

アーチャー「便利よー。ミオも欲しい? 訓練すればある程度までは――あ、
あそこの新婚さんキスしてる」

澪「目が良いのは便利だけど、そういう出刃亀はよくないだろ」

アーチャー「暇なんだもの」

澪「はいはい」

アーチャー「そういえば、ミオって好きな人いるの?」

澪「!?」

アーチャー「花も恥じらう女子高生なんだから、好きな人くらいいるでしょ?」

澪「うう……」

アーチャー「もしかして、もう彼氏いた?」

澪「いるわけないだろ!」

アーチャー「おお! びっくりした」

澪「……」

アーチャー「なんか、ごめんね。気分害しちゃったみたいで」

澪「……よ」

アーチャー「え?」

澪「好きな人、いるよ……」

アーチャー「そっか。誰?」

澪「……律」

アーチャー「あー。あの元気のいい子かー。うん、問題ないよ。大丈夫」

澪「?」

アーチャー「お似合いだよ。ミオとリツは」

澪「あり、がと……」グスっ

アーチャー「泣かないの。大丈夫だから。ね?」

澪「うん……」

アーチャー(しっかし、まずいなぁ。バーサーカーのマスターがミオの好き
な人か……ホントに困った)

澪「……」

アーチャー「……あれ? 寝てる?」

澪「すー」

アーチャー「このままじゃあ風邪ひくよ。よいしょっと」

澪「……」

アーチャー「ホントに可愛いんだから。私のマスターは」

アーチャー「おやすみ。澪」ちゅっ

――次の日・3-2――

律「みおー!」

澪「り、律! おはよ!」

律「おはよう。それでさ、今日は部活なしだから梓にメールしといてくれな
い?」

澪「ああ。それくらいならいいけど。どうしたんだ?」

律「ちょっと家の用事があってさ」

澪「わかった。それじゃあ梓に伝えておくよ」

紬「……どうしたの?」

律「ムギか。今日は部活なし! おっけー?」

紬「ちょうどよかった! 今日は私もお出かけしなきゃいけなかったの!」

律「そうだったのか! ならちょうどよかったな」

澪「唯にも言っておかなきゃな」

唯「私はここにいるけどね」

澪「いつからいたんだよ」

唯「最初っからいたよ! だってここ、私の席だよ!?」

律「いけね」

和「ついついね」

唯「いじめだー。ムギちゃーん!」

紬「よしよし」なでなで

律「まあいいや。今日は部活なし! いいな!」

唯「うぅ~。セイバーちゃんに言いつけてやるー」

律「うう。それは勘弁。セイバーって、委員長タイプじゃん」

和「そうね。実に話しやすいわ」

唯「可愛いしねー」

アーチャー『サーヴァントを自慢する奴、初めて見た』

――放課後――

唯「りっちゃん、澪ちゃん! じゃあねー」

律「おー!」

澪(私の幸せな時間が始まったー)

アーチャー(ミオが浮ついている……)

澪「りーつー」

律「なんだよ。気色悪い」

澪「!?」

律「いや、悪い意味で言ったんじゃないからね。いつもの澪じゃないなって」

澪「いつもの私……」

律「こらー律ー! みたいな感じだよ」

アーチャー『やっぱり、そう見られてるみたいね』

澪「そんなに暴力振るってるかな。私って」

律「わりとね。でもまあ、澪はそれでいいんだよ」

律「私の隣で、ずっと笑っててくれよ」

澪「今のって、愛の告白だったりする?」

律「ちげーし」

澪「へー」

律「ちげーし!」

澪「りっちゃーん」

律「やめーい!」

アーチャー(リツは、ミオがマスターだって気がついてるのかな。どうなんだ
ろう)

律「みおー!」

澪「は、はい!」

律「大好きだぞー!!」

澪「ひゃ、ひゃい!!」

梓「……」

――夜・?――

バーサーカー「■■■――!!」

キャスター「バーサーカー! アサシンはどこに――」

律「あの侍だったら、もう消えちまったよ」

キャスター「!?」

律「バーサーカー。やっちまっていいぞ」

バーサーカー「■■■■■―――――――!!!!」

キャスター「そ、そんな……。斎藤――!」

斎藤「……ここまででしょう。キャスター」

キャスター「そんな――私は、戻らなきゃ――」

ぐしゃ

バーサーカー「■■■――――――!!!!」

律「おっと忘れてた。キャスターはまだ殺すなよー。防音の結界は維持して
おかないと」

律「――さあて、来いよ唯。セイバーとバーサーカーを戦わせようぜ」



セイバー「ユイ、アサシンが消えました」

唯「わかるの?」

セイバー「この街には、魔力が殆ど感じられない。その中で、魔力が大きい
ものは自ずと限られます」

唯「あ、それで大きな魔力がなくなったんだ」

セイバー「はい。相手は恐らくバーサーカーでしょう」

唯「……ちょっと待って」

セイバー「はい」

唯「アサシンって、あの侍さんだよね。佐々木小次郎っていう」

セイバー「そうですね。小次郎とは、一度戦ってみたかった」

唯「ってことは、ムギちゃんが危ない!!」

セイバー「い、今スグにミオとアーチャーを! ツムギの家に向かいます!」

唯「うん!」

――琴吹邸前――

澪「唯!」

唯「澪ちゃん!」

セイバー「ツムギは無事ですか!?」

アーチャー「ツムギなら無事よ。ただ、従者のほうは……」

澪「……入れるか? アーチャー」

アーチャー「もちろん可能。防音の結界は張ってあるけど、別に問題は
ないわ」

セイバー「キャスターの魔力はかなり弱まってますね」

アーチャー「バーサーカーに半死半生にされてるわね。あの狂戦士に、
よくもまあそこまで器用なことさせられるわ」

セイバー「ええ」

アーチャー「!?」

澪「アーチャー?」

アーチャー「ミオも入ってきて。この結界、魔力も遮断されてる」

セイバー「マスターとサーヴァントが離れると、魔力の供給が止まるというこ
とですか。ユイ、行きましょう」

床「カツーンカツーン」

澪「まったく人気がないな」

アーチャー「……どうやら、この建物に人間は一人しかいないみたいね」

唯「一人?」

アーチャー「バーサーカーのマスターに決まってるじゃない」

唯「うう……」

セイバー「私のマスターをいじめないでくれますか?」

アーチャー「はいはい。言っとくけど、足手まといにはならないでよね」

唯「わかってるよ」

セイバー「――アーチャー」

アーチャー「いるわね。近いわ」

唯「バーサーカー……」

セイバー「あのパーティ会場から、大きな魔力が一つ。微弱な魔力が一つ
あります。おそらく、あそこに」

律「――来たか」

アーチャー「罠かどうかは知らないけど、かかってやったよ」

セイバー「ここからは、そうはいきませんが」

律「罠ってわけじゃあないんだけどね」

バーサーカー「――■■■!!」

唯「……え?」

澪「うそ……」

律「唯、それとやっぱり、澪だったのか」

澪「――り、つ?」

律「律だよ。まごうことなく、田井中律。バーサーカーのマスターだ」

唯「あ、ああ……」

セイバー「ユイ、気をしっかり保ってください」

アーチャー「ミオも、この部屋から一歩でも出たら、魔力供給がなくなる」

澪「――」

律「いくぞバーサーカー。もしかすると、今日で終わるかもしれない。だから、
聖杯戦争は今日で終わらせる」

セイバー「……」

唯「りっちゃんが……」

律「唯ぃ。悪いけど、私は手加減できないんだ。必要とあれば、残念だけど
唯でも殺す。そして、今が必要な時だ」

唯「りっちゃん……」

澪「律! やめてくれ! 殺し合いなんだぞこれは!」

律「だったら澪が殺されてくれ! 私は、もう一歩も引けないんだ!」

律「殺れ! バーサーカー!!」

バーサーカー「―――――――――――――――!!!!!!!」

アーチャー「ぐっ!!」

澪「アーチャー!!」

セイバー(どういうことなんだ。バーサーカーのパワーが上がっている!?)

律「食え! 食え! 喰え! 喰らっちまえ!!」

アーチャー「そういう、ことね」

澪「どういうことなんだ? バーサーカーの力が上がってるなんて」

セイバー「命を、生命力を吸収しています。おそらくキャスターやアサシンの
魔力も」

唯「そんなことって――」

セイバー「今まで以上の力を手にしたことで、マスターに負担が重くなった
のでしょう。そして、リツは正規のマスターではない」

律「バーサーカー!!!」

アーチャー「あちゃー。ミオんちから持ってきた万年筆じゃあきついなー」

セイバー「当たり前です! なにを考えているのですか!」

アーチャー「仕方ないじゃない。ワタシには、あなたみたいな立派な宝具
はないんだから」

セイバー「……一体、貴女は何者なんですか」

アーチャー「私にもよくわかんない。ただ、ちょっと変えてもらいたい未来が
あるのよ」

セイバー「そのために、聖杯を?」

アーチャー「実現可能かはわからないけどね」

唯「……」

バーサーカー「――――■■■!!!」

アーチャー「はい、セイバーに質問。私は今、なにを考えているでしょ
う!」ギィン

セイバー「わかりません!」カン!

アーチャー「あなたたちは逃げなさいってこと!」

セイバー「アーチャー!?」

アーチャー「このバーサーカーには絶対に勝てない。だから、私が――」

セイバー「犠牲になる、というのですか?」

アーチャー「ふぅ……」スタっ

澪「アーチャー?」

アーチャー「ミオ、令呪は残しておきなさいね」

澪「アー……チャー?」

アーチャー「心配しないの。あなたの恋人は、絶対に殺さないから」

澪「でも、魔力が――」

アーチャー「単独行動のスキルで、一日くらいは平気なのよ。だから、行きな
さい」

セイバー「ユイ、ミオ。逃げますよ」

唯「セイバーでも、勝てないの?」

セイバー「はい。勝てません」

澪「アーチャー?」

アーチャー「ああ。そうだそうだ。セイバーに聞いとかなきゃいけないことが」

セイバー「なんですか?」

アーチャー「さっき足止めするって言ったけどさ。別段、アレを倒してしまって
も、構わないんでしょ?」

セイバー「――」

澪「倒しちゃってよ」

セイバー「ミオ?」

澪「りっちゃんが苦しんでる。その元凶を、倒して帰ってきなさい!」

アーチャー「――うん。令呪が効いてる効いてる。期待にお応えします。
マスター」

セイバー「さあ、二人とも私に掴まって」

アーチャー「せいやっ」ヒュッ! ガラガラガラー

セイバー「天井に穴が空きましたね。いきますよ――!」

アーチャー「ヒラサワユイ!」

唯「!?」

アーチャー「なにがなんでも、大切だと思った人間を守り抜きなさい!」

唯「……」

アーチャー「それが――甘ったれの貴女がこれから心に刻むことよ!」

唯「――わかった!」

律「……いいの? 一人でさ」

アーチャー「良いに決まってるじゃない」

律「瞬殺して、すぐにセイバーを殺しに行くから」

アーチャー「そうはいかないって。ミオがいなくなって、ようやく本気で、
残虐ファイトできるんだからさ」キュイイイン

律「!?」

アーチャー「――この宝具に見覚えある? そう、『ギー太』だよ」

律「うそだろ。おい」

アーチャー「うそではないよ。りっちゃん」

律「ゆ、唯。平沢唯なのか?」

アーチャー「そうだよ。ワタシは唯」

律「……英霊になったのか」

アーチャー「色々あってね。どうしてもやり直したいことがあるのよ」

律「訊いてやりたいところだけど、そういうわけにもいかないんだ。親友を
殺すのは気が引けるが、いけ、バーサーカー」

アーチャー「それじゃあ、私だって初めから全開でいくよ」

アーチャー「この私、英雄になりきれなかった『真鍋唯』が!」

バーサーカー「――――――!!!」

アーチャー「来なよ狂戦士。あなたのハートじゃあ、私は絶対に揺るがない!」

バーサーカー「――――――!!!?」

アーチャー「あれ? ヘラクレスの時代には音楽ってなかったっけ?」

律「それが音楽――?」

アーチャー「あれれ、違ったかな。一応生前はこれでご飯食べたんだけど」

律「不快音? ……いや、違うな。わからないぞ。これは一体――」

アーチャー「さあ? 私にもよくわからないよ。いつからか、私の音楽は
音楽ではなくなったんだから!!」

バーサーカー「―――――――――!!!!!!」

律「なに足止めてんだ!! バーサーカー!」

アーチャー「動けないよ。私の音楽はそれくらいファンキーなの」

律「なに、したんだ?」

アーチャー「別にー。ぺらぺらと自分の能力語るほど、私は馬鹿じゃない
もの」

律「大人になったってことかよ」

アーチャー「悲しいけどね」

律「バーサーカー!!!!」

バーサーカー「■■■!!!!」

アーチャー「しまった!」

アーチャー「いたたた……。でもまあ、ギー太は無事だから平気だね」

バーサーカー「――――――――!!!」

アーチャー「やっぱりやりにくいなぁ。防御できない音っていう概念が
いけないね。うん」

アーチャー「幻聴圧音(トレーニング・ワン)」

アーチャー「―――――――!!!!」

バーサーカー「!!!!!??????」

律「?」

アーチャー「解説すると、私の声を一点集中でバーサーカーに飛ばしたの。
もう、バーサーカーはりっちゃんの命令を耳で聞くことはないよ」

律「――」

アーチャー「耳を、というよりも三半器官を狂わせたから、バランス感覚も
失った。これで、戦闘面で私が有利になったわ」

律「バーサーカー!」

アーチャー「だから、聞こえないの。三半規管が壊れたサーヴァントを
倒すのなんて――」

バーサーカー「―――――――■■■!!!!」

アーチャー「ほうら簡単。グミャグミャの視界では、私が投げた石くれも
避けられないね」

アーチャー「……勝っちゃった」

バーサーカー「――」

律「よし」

バーサーカー「―――――――!!!!!!」

アーチャー「うわ!!」

律「バーサーカーは死なないんだ! むしろ、もうお前の声の攻撃は
通用しないぞ!!」

アーチャー「それは困った。トレーニング・ワンは結構な切り札だったのに」

アーチャー「――でも、まあいいや。何度でも蘇るなら、その度に殺しちゃう
んだから」

少し席をはずす

ただいま

バーサーカー「―――――!!」

アーチャー「りっちゃんも焦ってきたね。でもまあ、私だって結構強いんだ
からね」シュタッ

律「飛んだ!?」

アーチャー「――いい? 私は何度だってバーサーカーを倒すよ」

バーサーカー「■■■■■―――――!!」ブオン

アーチャー「は?」ゴシュ

アーチャー「痛ったあ……」

アーチャー「でも、まあ攻撃は成功かな」

アーチャー「触れるためにある指先(チューニング・ツー)」

バーサーカー「■■■――――――!?!??」

律「バーサーカーの目が――!」

アーチャー「世界で一番器用で、力のある指先で突っついたんだもの。そ
りゃあ、目くらい潰せるよ」

アーチャー「嫌な感触だよねー」

アーチャー(そうは言ったけど、バーサーカーはまだ倒れないんだ。これは、
耐久戦になったら勝てないね)

アーチャー(私はバーサーカーを、少なくとも二回は殺している)

アーチャー「それでも、ねえ」

律「急げ! 急いで殺すんだ! バーサーカー!!」

律(なんなんだコイツ! 唯のくせに、どうして宝具級の技をこんなに
持ってるんだよ!)

アーチャー「……よし、この石にしよう」

バーサーカー「■■―――!!」

アーチャー「投げ飛ばす三角(オクターブ・スリー)」ヒュッ

律「!?」

アーチャー「今までの投擲とは段違いでしょ? これこそ、私が弓兵に
カテゴライズする由来となった宝具よ。ただ単に投げるだけだけど、
渾身の魔力を込めてある。防御一切無視、ダメージ固定の技」

バーサーカー「!!!!!!!!!!!」

アーチャー「吼えないでよ。うるさいから」

バーサーカー「■■!!!!」ブン!

アーチャー「うわ!」

律「いいぞバーサーカー!」

アーチャー(掠めただけで、左肩が壊れちゃったみたい。困ったなぁ、どん
どん生き返るスピードが上がってきてるみたい)

アーチャー(普通のサーヴァントなら、とっくに勝ってるっていうのに!)

アーチャー「!」

照明「ガシャン」

律「――あれ?」

律「唯は、どこにいったんだ?」

律「バーサーカー! 注意しろ! 私を狙ってくる!」

アーチャー「四糸切断(オクターブ・フォー)」

律「!?」

バーサーカー「■■■!!!」

アーチャー「ギー太の弦が切れなくってよかった。……これで4回目だね」

バーサーカー「……」

律「この暗がりで、確実にバーサーカーを殺してる……」

律「バーサーカーが、防御の体勢をとるなんて……ありえない」

アーチャー「あと、どれくらい命が残ってる? ヘラクレス」

バーサーカー「……」

アーチャー「来なよ。カウンターとるからさ」

バーサーカー「……」

律「なにやってるんだバーサーカー! さっさとそのとれかけの腕と足
くっつけろ!」

アーチャー(……澪ちゃんは、逃げ切れたかな)

バーサーカー「ルオオオオオオオオオオオオ!!!!」

キャスター「……」

バーサーカー「■■■――――!!」

律「まずい! キャスターを食うな! 結界が――」

アーチャー「……まだ、強くなるのね」

律「バーサーカー!」

バーサーカー「――」

アーチャー「別に音なんて気にしてないさ。これでベストコンディションなんで
しょ? それなら、私はそれ以上の強さで以て貴方を死に至らしめる」

律(なんでだ)

律(なんで、怯えない)

律(なんで、怖がらない)

律(勝てると思ってるのか? キャスターの魔力を取りこんだバーサーカー
を、倒せると本気で思っているとでもいうのか?)

律「――諦めてくれよ……。いい加減さぁ」

アーチャー「諦めて、引き返すほどの常識と勇気さえあれば、私はここに
いなかったのかもしれないわね――」

律「!!」

アーチャー「和を喪ったあの日から、私は巻き戻すまでは死んでも消えて
も、どうあったって諦めない! 命を、心を、この身体を!!」

アーチャー「ヘラクレス、あなたの命がいくつあるのかは知らない。けれど、
これで全て吹き飛ばす――!」

バーサーカー「―――■■■!!」ブン

アーチャー「くっ! ……背骨も、もうダメみたいね」

アーチャー「……澪ちゃん、もしかしたら駄目かもしれない。でも、諦めない!」

アーチャー「――H・T・T(放課後ティータイム)」



澪「!!」

唯「澪ちゃん?」

澪「アーチャーが……アーチャーが……」

セイバー「……令呪が、消えましたか」

澪「……」こくり

唯「アーチャー……」

澪「アイツ、結局自分のことなにも教えてくれなかった!」

澪「仲間だったのに!」

澪「友達、だったのに――」

セイバー「……アーチャーの無念は、私が必ず討ちます。ミオも、協力
してください。それと――」

澪「!」

セイバー「貴女のように、サーヴァントのために泣いてくれる人がいること
を、私は誇りに思います。どうか、今はアーチャーのために泣いてあげて
ください」なでなで

澪「う……うわああああああああああああああ!!!!!」



律「な、なんだっていうんだよ。アイツ」

律「殺していきやがった……」

律「12あるヘラクレスの命。その半分以上の7回も――」

律「……くそ! ヘラクレス! さっさとしろ! セイバーを殺しに行くぞ!!」

?「セイバー、とほざいたか。下郎」

律「!?」

?「セイバーを殺す? 否、そのような真似は断じて出来ん」

律「え?」

?「――なぜなら、アレは我(オレ)のものだからだ」

?「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

バーサーカー「!?」

?「ほう、数多ある命とは、さすがは神の子ヘラクレスよ」

?「それでも、この我には敵わんよ」

律「……あ」

ちょっと明日早いからそろそろ眠る。

明日からギルガメ編。
ここまで読んでくれてありがとう。おやすみなさい。

ここまではセイバールートのなぞりだけど多分凛ルートが混ざってくるんだろう

まあfate未読もいるだろうしネタバレはやめとくぜ

ただいま

――次の日――

セイバー「――」むくっ

唯「すーすー」

澪「んん……」

セイバー「あどけない寝顔だ。私は、この子たちを戦いに巻き込んでしまっ
た。……聖杯戦争とは、あまりにも非道なものだ」

セイバー「――それでも」

セイバー「それでも、私は彼女たちを巻き込んでしまったのだ。ならば、
私にはこの子たちを守る義務がある」

唯「――ぅ」

セイバー「……ユイ」

唯「……ん?」

セイバー「起きましたか。それでは、朝食にしましょう。ウイが待っている」

唯「……澪ちゃんは?」

セイバー「よく眠っています。――今日は、とにかく寝かせておいてあげまし
ょう」

唯「うん……」

憂「おはよう、お姉ちゃん。セイバーさん」

セイバー「おはようございます。今日の朝食は?」

憂「今日はお休みだから、ちょっと頑張っちゃってみましたー!」

セイバー「ほう、それは素晴らしい。……うん、良い香りだ」

憂「お姉ちゃんも座って座って。澪さんは、まだ寝てる?」

唯「うん。まだぐっすり眠ってるよ」

セイバー「今週は色々と忙しかったですからね。今日は、よく寝かせてあげ
たほうがいいでしょう。……ところでウイ」

憂「はい?」

セイバー「ユイとウイは、姉妹なのですよね?」

唯「そうだよー。私がお姉さんなの!」

セイバー「そのわりには、ウイの方が肉体の発達がいいですね」じー

憂「ど、どこ見てるんですか!」

唯「うう……。少しだけ気にしてるのにー」

憂「セイバーさんは綺麗ですよね。華奢な身体が、守ってあげたくなります」

セイバー「それは素直に喜んでいいのでしょうか」

憂「喜んでほしいですねー。私が男の子だったら、セイバーさんのこと好きに
なっちゃいますよ」

セイバー「フフ。ありがとうございます」

唯「おいしー」もぐもぐ

セイバー「ユイも、ウイに負けないくらいに美しい女性ですよ」

唯「――」もぐもぐ

憂「あ、お姉ちゃん照れてるー」

唯「照れてないもん!」

セイバー「ただ――」

憂「?」

セイバー「日本女性の美しさを、最も色濃く感じるのはミオですね。彼女は、
間違いなく美しい」

唯「――じゃあ、澪ちゃんのサーヴァントになっちゃえばいいじゃん」

セイバー「ユイ?」

唯「ふんだ」

セイバー「あ、あの。そのようなつもりで言ったのでは断じて――」

唯「つーん」もぐもぐ

セイバー「ユイが一番です! ユイは仔犬のような愛らしさがある!」

唯「――」もぐもぐもぐ

憂「……」

セイバー「ユイ……」

憂「フフ」

セイバー「ウイ、どうしたのですか?」

憂「いいえ。お姉ちゃん、意地悪しないの。セイバーさん困ってるじゃない」

唯「……えへっ」

セイバー「ユイ!」

唯「あわてるセイバーちゃん、可愛かったよー。これはお返しお返し!」

セイバー「……まったく、困った人だ」

澪「……おはよ」

憂「おはようございます。澪さんもご飯食べますか?」

澪「うん。いただこうかな」

セイバー「私の隣が空いています。どうぞ」

澪「うん……」

憂「どうぞ」ことっ

澪「――いただきます」

セイバー「……」

唯「……ねえ、澪ちゃん」

澪「――アーチャーのことは、もういいよ。それより、これからどうするかだ」

セイバー「……ミオ、貴女は強い人だ。悲しみをバネにして、より大きな
活力にしている。そうそう出来ることではない」

澪「そんなことないよ。強くなんて、ない」

憂「……」

セイバー「ウイにも、話しておきたいことがあります。私が、なにをしていた
のかを」



憂「……そうだったんですか。お姉ちゃんたちは、そんなことを――」

セイバー「早く伝えておくべきだとは思ったのですが、本当に申し訳ありません」ぺこり

憂「命の、危険があるんですよね」

セイバー「はい。最悪の場合は命を失います」

憂「――お姉ちゃん、澪さん」

唯澪「?」

憂「――頑張ってね。絶対に、セイバーさんを守ってあげてね」

唯「え?」

セイバー「ウイ、お言葉ですが私が彼女たちを守る立場です。私こそが、
貴女に約束しなければならない」

憂「でも、セイバーさん苦しそうですよ。一人で二人を守るのは大変です。
だから、お姉ちゃんと澪さんも、セイバーさんを守ってあげるくらいの気持ち
がないと、その聖杯戦争には勝てませんよ。……仲間って、そういうもの
ですから」

セイバー「――貴女は、本当に底が知れない。わかりました。サーヴァント
セイバーは、ユイとミオを守る代わりに、守られましょう」

唯「任せてよ!」

澪「……ふう。ごちそうさま、憂ちゃん。すごく美味しかったよ」

憂「それはよかったです。セイバーさんと澪さんに褒められると、なんだか
自信が付きますよ」

唯「ういー」

憂「ういだよー」

唯「私は毎日褒めてるじゃんー」

憂「お姉ちゃんは何食べても美味しい美味しいって言って食べるじゃない。
だから、お母さんとかに食べてもらって感想もらった方がいいの」

セイバー「……そういえば、ユイとウイの両親は?」

唯「あれ? 今はどこにいるんだっけ?」

憂「スペインのバレンシアだよ。うちの両親、仕事とか旅行とかで、よく海外
に行くんですよ。おかげで私の家事スキルがどんどん上がっていってます」

セイバー「そうだったのですか」

セイバー(家事スキル……)

セイバー「ユイ、ウイのデータは見れませんか? 料理のレパートリーを
知りたい」

唯「見れないよ……」

テレビ「――大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!!」

テレビ「海風に揺れる一輪の花! キュアマリン!!」

テレビ「ハートキャッチプリキュア!!」きゅりん!

セイバー「……」じー

唯「セイ……と」

澪「セイバーはどうしたんだ? あんなに熱心に見て」

唯「セイバーちゃんって、こういう正義の味方系の番組が好きみたいなんだ
よ。昼間にやってる水戸黄門の再放送も、欠かさずチェックしてるみたい」

澪「変わってるな……」

唯「でも、女の子向けのアニメ見てるセイバーちゃんって可愛くない?」

澪「――ああ。本当に可愛い。妹みたいになでなでしたくなるな」

唯「だよね! セイバーちゃんって委員長タイプだけど、華奢だから、妹
にしたいよ!」

憂「――へー」

唯「!?」

セイバー「ユイ、キュアマリンの宝具はどこに売っているのですか!?」

唯「ふんふーん」ポチポチ

澪「誰にメールしてるんだ? まさか、彼氏じゃないだろうな!」

唯「なななな、違うよ! 彼氏なんていないよ! いたこともないよ!」

セイバー「ユイに恋人がいたとは知りませんでした! ここはドラゴンボール
の視聴を取り止めて、ユイの馴れ初めを聞くことにします!」

唯「セイバーちゃん私の話聞いてた!?」

セイバー「現代日本の女子高生は進んでいると聞きます。昼のワイドショー
という番組では、常日頃から若者への憂いが――」

澪「セイバーが興奮している……」

セイバー「とにかくです! 恋人がいるのならば、疾く、その話を聞かせて
ください!」

唯「いや、だからね」

セイバー「もしかして、悪い男なのですか? その恋人は」

唯(可愛い画像探してただけで、どうしてこうなるの?)

憂「――」にこにこ

唯(憂は怖いし……)

唯「ういー」

憂「ういだよー」

笑み社このフレーズ大好き

澪「そういえば、アーチャーが言ってたな」

唯「アーチャーが何を?」

澪「サーヴァントって、能力だけでなくて性格もマスターに影響される
んだってさ」

唯「へぇー。そうなんだ」

澪「だから、セイバーが少しくだけてきたのも、唯の影響なのかも」

唯「私、あんなにだらけてる!?」

憂「だらけてるよー」

唯「ういー」

憂「ういだよー」

澪「憂ちゃんは意地悪しないの。……私は、畏まったセイバーも好きだけ
ど、見た目通りの、少しくだけたセイバーも好きだな」

唯「もちろん、私だってそうだよ。マスターだもん!」

セイバー「ウイ、ワンピースが終わってしまいました。そろそろ昼食の
準備をおねがいします」

憂「お昼はソーメンだよー」ごとっ

澪「涼しげでいいな!」

唯「私、このミカンが好きなんだよねー」ひょいぱく

セイバー「ユイ、お行儀が悪いですよ。食事とは、自身と他者を見直す時間
でもあるのですから」

憂「そうだよ、お姉ちゃん」

唯「うう……」

澪「はは。ホント、どっちが姉かわからないな」

唯「私がお姉さんだもん。いただきまーす」

憂「はいはい。セイバーさんも、たくさん食べてくださいね」

セイバー「はい。話には聞いていましたけれど、このソーメンという食べ物
は非常に涼をとるのに向いている。これがあれば、我が軍はもっと長く
戦えたことでしょう」

澪「アーサー王の時代って、食べ物はどんな感じだったの?」

セイバー「…………………………………」」

憂「?」

セイバー「……………………………雑でした」

唯「澪ちゃーん」ごろごろー

澪「ん? どうしたんだ。唯」

唯「今日はパトロール行かないの?」

澪「セイバーに聞いてみなよ。なんだかんだで、リーダーはセイバーなんだ
から」

唯「だってー、セイバーちゃん憂とゲームしてるんだもん」

澪「そうだったのか。意外だな、セイバーがゲームだなんて」

唯「私も意外だなって思ってたんだよ。しかも、けっこうハマってるんだよ」

澪「さらに意外だ。なんのゲームやってるんだ?」

唯「ぷよぷよとかマリオカートとか、結構色んなジャンルのゲームしてるよ」

澪「……よし、うちにコントローラーが二つあるから取ってくるよ」

唯「4人でやるの?」

澪「うん。もう私はマスターじゃないから、他のサーヴァントに狙われること
もないしな。すぐ行ってすぐ帰ってくるよ」

唯「いってらっしゃーい」

唯「澪ちゃん、コントローラー取りに行ったよー」

セイバー「……」

憂「……」

唯「な、なにしてるの?」

憂「……」タタン

セイバー「……」タタタタン

ゲーム「KO!!」

憂「ふぅ」

セイバー「目押し失敗しました。ウイ、もう一度」

憂「おっけーです」

唯「あ、スパ4してるんだ。セイバーちゃんって、なんでもできるんだねー」

セイバー「……」タタン

唯「……澪ちゃん、まだかなー」ごろごろー

少し席をはずす。

感想を書いてもらえると嬉しい。

ただいま

感想と保守ありがとう。

セイバー「……もう、こんな時間ですか」

憂「6時になっちゃいましたね」

唯「ごろごろー」

憂「そろそろ晩御飯の準備しないと――」

唯「今日のご飯はなぁに?」

憂「セイバーさん、何がいいですか?」

セイバー「カレーライスというものを食べてみたいです」

憂「りょーかーい」

唯「わーい! カレーだー!」

セイバー「ユイも、カレーライスが好きなのですか?」

唯「憂のカレー美味しいんだからね!」

セイバー「そうですか……。ミオ、遅いですね」

唯「そうだね。電話してみるね」

ケータイ「プルルルプルルルルル」

?『随分遅かったじゃない。この子なんてどうでもいいのかと、ほんの少し
ばかり心配しちゃったわよ』

唯「……誰?」

?『ランサーのマスターって言えばどうかしら。……尤も。貴女は私の
ことは知らないのかもしれないけれど、ね』

セイバー「……」

?『セイバーもいるのでしょう? だったら伝えておきなさい』

唯「……」

?『12時に桜の丘に来なさい。一秒でも遅れたら、この娘は殺す』

唯「――わかった。だから、それまで澪ちゃんにはなにもしないで」

?『当然よ。人質は生きているからこその人質なんだから。――それに、
令呪もなにもない、ただの小娘殺したって、意味なんてない』

?『とにかく、セイバーを連れて来なさいね。これで、聖杯戦争は
おしまいになるんだから――』

ケータイ「ツーツーツー」

唯「……セイバーちゃん。12時に桜の丘に行くよ。そうじゃなきゃ、澪ちゃん
が危ない」

セイバー「わかりましたマスター。ミオは、必ず私が助けます」

――23時――

唯「それじゃあ、行ってくるね」

セイバー「ウイは安心して眠っていてください。朝までには、必ずミオを
取り返します」

憂「……いってらっしゃい。絶対に、帰ってきてね?」

唯「当たり前だよ。セイバーちゃんと私のコンビは最強なんだから」

セイバー「最強、ですか。フフ、良い響きですね」

唯「ここから桜の丘までは30分くらいだよ。セイバーちゃんは力を抑えて、
普通に歩いて行くからね」

セイバー「相手は三騎士のうちのランサーです。力は出来るだけセーブ
しておいたほうがいいですね」

ドア「ニコ」

唯「……澪ちゃん、待っててね」

セイバー「ユイ」

唯「どうしたの? 神妙な顔しちゃってさ」

セイバー「……おかしいです」

唯「なにが? もしかして、髪寝ぐせってる?」

セイバー「いえ、そういう意味ではなくて。――聖杯戦争が、おかしいとは
思いませんか?」

唯「おかしいもなにも、私は聖杯戦争なんてのも初めてだし、二回目も
きっとないよ。だから、おかしいかどうかもわからない」

セイバー「――そうでしたね。でも、思い出してください。ランサーのマス
ターは、電話で最後なんと言いましたか?」

唯「――これで、聖杯戦争は終わりって」

セイバー「それがオカシイのです」

唯「え?」

セイバー「いいですか? サーヴァントは本来7体。セイバー、ランサー、
アーチャー、ライダー、バーサーカー、アサシン、キャスターが基本的
なサーヴァントのクラスです」

唯「そう話してくれてたね」

セイバー「ええ。……では、私たちがライダーのサーヴァントと出会ってい
ないのは、一体なぜですか?」

唯「……あ」

セイバー「そうです。私たちはライダー以外のサーヴァント全員と出会った。
その中で、キャスター、アサシン、アーチャーはバーサーカーによって倒され
ました。そのバーサーカーも、おそらく魔力の消え方からして、アーチャー
と同士討ちになったのでしょう。ただ、それでも説明がいかないのです」

唯「そうだよね。ライダーの情報が、まったく入ってこなかったんだもん」

セイバー「つまり、この聖杯戦争は――」

唯「普通じゃない、ってこと?」

セイバー「少なくとも、私にはそう感じられます」

唯「きっと、ランサーが倒したんだよ」

セイバー「それならいいのですが……杞憂とは、どうしても思えません」

唯「例えば、セイバーちゃんはどれくらい魔力を感じ取れるの?」

セイバー「人間の魔力は不可能です。ただ、サーヴァントの尋常ならざる
ほどの魔力ならば、ある程度は感じ取れます」

唯「ライダーが、魔力を消してるっていう可能性は?」

セイバー「おそらく0でしょう。ライダーのクラスには、気配遮断も魔力遮断
のスキルもありませんから」

唯「……とにかく、澪ちゃんが先決だよ。ランサーとの戦いに集中しよう」

セイバー「ええ。了解しましたマスター」

唯「あそこが桜の丘だよ。桜の木がずらーっと並んでて、春はすごい
綺麗なんだよー」

セイバー「そうなのですか……。一度は、この国の桜を見てみたいもの
ですね」

唯「……」

――桜の丘――

ランサー「おいおい、随分と早いじゃねえか」

セイバー「一秒も遅れるな、とのことだ。故に、文句のない時間に参上した」

ランサー「俺のところのマスターは面倒な女だねえ。こんな人質なんざ、
取るまでもねえのに」

唯「澪ちゃんを返して!」

ランサー「返すさ返すさ。もともと、俺はこの嬢ちゃんに用事も何もなかった
んだ。マスターの命令でね」

澪「唯! セイバー!!」

セイバー「ミオ、早くこちらへ!」

唯「ミオちゃん、少し下がるよ。セイバーちゃんが、今からランサーを倒す
からね」

澪「うん……」

ランサー「――ああ。そうだ。ちなみにこの一戦に関しては、俺に令呪が
かかっている」

セイバー「――」

ランサー「わざわざ令呪を使うなんて、信頼されてないと思うだろうが。ど
うやら、俺はセイバーを必ず殺せと命じられているらしい――」

セイバー「ランサー、我が誇りにかけて、私は貴様を倒す!」バシュン!

ランサー「全く同じだ! 別に恨みもねえし怒りもねえ! ただ、俺はてめえ
を突き殺す!!」

唯「セイバーちゃん! 頑張って!」

セイバー「当然です!」ギン

ランサー「ほう、剣はもう隠さねえのか!」

セイバー「私の真名は、すでに知っているのでしょう?」

ランサー「無論だ。アーサー・ペンドラゴンだろ?」

セイバー「その通りだ。アイルランドの光の皇子。クーフーリンよ!」

ランサー「その名で呼んでくれるたぁ――嬉しいじゃねえか!」キン!!

セイバー「……そなたの槍技に肩を並べる英雄を、私は二人……否、
一人ほどしか知らない。右に出る者といえば、誰もいないだろう」

ランサー「そんなに褒めるなよ」

セイバー「だが、その槍を超えてこそ、無敗のアーサー王なのだ!」ダッ

ランサー「ヘヘッ! こうも清々しく武術の比べあいをしたのは久しぶりだ
ぜ!」

セイバー「私もだ!」

ランサー「考えてもみれば、てめえと死合ったのは三回目だな」

セイバー「……二回目では、ないのか?」

ランサー「――ああ」

ランサー「そういうことなんだよな。納得というか、これで完全に帳じりが
あった感じだぜ」

セイバー「なにを言っているのかが、私にはわからない」

ランサー「……話してやりてえって気持ちもあるが。死合っている最中に
無駄話は無用だ」

セイバー「意見が合うなランサー。私も知りたいが、今はこの戦いが、な
によりも優先される」

ランサー「そうなんだよな。過去二回も、俺は自慢のゲイ・ボルグを避けられ
ちまってるんだよな」

セイバー「……」

ランサー「ならば、これしかあるまい」タンッ!!

セイバー「……宝具、ですか」

ランサー「俺たちの戦いは、つまるところ宝具の競い合いだ! 最大火力
のぶつかり合いなんだよ!!」

セイバー「おっしゃる通りだ」

ランサー「いくぞセイバー!!!」

セイバー「ユイ、こちらも宝具を使います! ミオと一緒に頭を下げて!」

唯「りょーかい!!」

セイバー「――」シュウウウウウウウウン

セイバー「――――!!」パアアアアアアアアアアアア!!!

ランサー「突き穿つ(ゲイ)――――死棘の槍(ボルグ)――――――!!」

セイバー「約束された(エクス)―――勝利の剣(カリバー)―――――!!!」

澪「うわああああああああああああ!!!!!」

ランサー「――」にやり

セイバー「――」にやり

ランサー「てめえの、勝ちだ。諦めは悪い方なんだが、これはさすがに駄目だ」

セイバー「……宝具、ですか」

ランサー「俺たちの戦いは、つまるところ宝具の競い合いだ! 最大火力
のぶつかり合いなんだよ!!」

セイバー「おっしゃる通りだ」

ランサー「いくぞセイバー!!!」

セイバー「ユイ、こちらも宝具を使います! ミオと一緒に頭を下げて!」

唯「りょーかい!!」

セイバー「――」シュウウウウウウウウン

セイバー「――――!!」パアアアアアアアアアアアア!!!

ランサー「突き穿つ(ゲイ)――――死翔の槍(ボルグ)――――――!!」

セイバー「約束された(エクス)―――勝利の剣(カリバー)―――――!!!」

澪「うわああああああああああああ!!!!!」

ランサー「――」にやり

セイバー「――」にやり

ランサー「てめえの、勝ちだ。諦めは悪い方なんだが、これはさすがに駄目だ」

セイバー「――ハァ、ハァ!」ガクッ

唯「セイバーちゃん!」

セイバー「一度宝具を使っただけだというのに、この消耗ですからね。私も、
少しは戦術を考える必要があるようだ」

澪「ごめんね、セイバー。私が誘拐された所為で……」

セイバー「ミオの所為ではありませんよ。ランサーとは、必ず戦わなければ
ならない運命でしたから」

唯「そうだよ。澪ちゃんは悪くないよ」

澪「――ありがとう」

セイバー「すいませんが、肩を貸してください。さすがに、歩いて帰るのは
厳しい」

?「その必要はないぞ。セイバー」

唯「!?」

セイバー「……その、声は――」

?「久しいな。我が花嫁となる、唯一の女よ」

唯「セイバーちゃん、だれ?」

セイバー「……出来れば、いいや。絶対に会いたくない男です」

?「それは随分ではないか。我は、こんなにもお前を欲しているというのに」

澪「……この雰囲気」

セイバー「――アーチャー」

澪「!?」

黄金のアーチャー「どうした? セイバー」

セイバー「なにを、しにきた」

黄金のアーチャー「決まっているだろう。サーヴァントは全滅した。つまり、
聖杯は我が手に落ちるということだ」

セイバー「ライダーが残っている筈だが?」フラッ

黄金のアーチャー「アレは初めから存在もしていない。もとより、この聖杯
戦争は6体のサーヴァントでのみ始まっていたのだからな」

セイバー「……ならば、聖杯は私のものだ!」

黄金のアーチャー「そのお前は、我のものなのだよ。セイバー」

セイバー「相も変わらず、癇に障る――!」

黄金のアーチャー「癇に障ろうとも、お前は我のものなのだから仕方がない」

澪「……アーチャー?」

黄金のアーチャー「どうした娘」

澪「お前は、だれだ……」

黄金のアーチャー「……フム」

唯「――」

黄金のアーチャー「本来ならば、人間如きに名を訊かれることすら逆鱗に
触れるのだが――今宵は満月、そのうえ、セイバーに再会できたことを
祝って、高々と名乗ろう! 聞き逃すなよ!」

セイバー「……」

黄金のアーチャー「我が名は『ギルガメッシュ』!! 人類最古の英雄王
よ!!」

セイバー「!?」

ギルガメッシュ「どうだ。この世全てを手に入れる男としては十分すぎる
器だろう」

唯「――」ギリッ

セイバー「ユイ?」

唯「……なんなの。英雄王なんて言ってるけど、セイバーちゃんとランサーの
戦いが終わるまで、隠れてた臆病者じゃん」

ギルガメッシュ「!?」

唯「アーチャーも、バーサーカーもキャスターもアサシンも、ランサーも、皆
戦って消えていったのに――この人だけは――!」

ギルガメッシュ「口が過ぎるぞ。女」

唯「うるさい! 臆病者くせに、セイバーちゃんはお前のものなんかじゃな
い!」

セイバー「――ユイ」

ギルガメッシュ「――」ギリッ

澪「唯!」

唯「おまえなんかよりも、ランサーたちの方が一億倍カッコいいよ!」

ギルガメッシュ「――死にたいようだな。女」ズオオオオ

セイバー「ユイ!」ガバァ!

ギルガメッシュ「――」

セイバー「……ッ」

唯「セイバーちゃん!」

セイバー「平気です。……ギルガメッシュの宝具は、あの幾本もの宝具で
す。武器庫から時空を超えて、この世全ての武器を召喚します」

澪「それって……」

セイバー「はい。私の聖剣はないにせよ、その原型もとなった宝具も、あの
武器庫には収められているでしょう」

ギルガメッシュ「……訂正するのならば今のうちだぞ女。今、キサマを
殺すとセイバーが消えてしまうからな」

唯「馬鹿! DV男! 変な髪型!!」

ギルガメッシュ「……残念だなセイバー。おまえの阿呆なマスターの所為
で、我とお前は暫しの別れを、再び経験することとなる」

セイバー「……ユイ、足を見せてください」

唯「――」

セイバー「この傷、ギルガメッシュの剣が掠ったのですね」

セイバー「――!」ギロ

ギルガメッシュ「そうだ。その目こそ、我がお前に魅了された要因よ」

セイバー「私は、お前を赦さない――」キイイイイイイイン

ギルガメッシュ「――解き放つ黄金の輝き、か」

唯「――セイバーちゃん……?」

澪「まずいぞ。セイバーのやつ、ふらふらじゃないか」

唯「あ」

澪「あんな状態で、エクスカリバーを使ったら――」

唯「そ、そんなの嫌だ! セイバーちゃん、止めて!」

セイバー「断ります。たとえマスターの命でも、この男はしてはならないこと
をした――!」

ギルガメッシュ「いいだろう。受けてやろうぞ。貴様の一撃をな」

セイバー「約束された(エクス)――――――」

唯(――そうだ)

唯「アルトリア!! 止めなさい―――――!!!!!!」キイイイイイン

セイバー「―――――!!!」ヒュウウウウウウン……

澪(そうだ。唯は使ってなかったんだ。絶対遵守の令呪を――)

セイバー「ユ、ユイ……」ドサッ

唯「セイバーちゃん!」

セイバー「令呪を、使ったのですね」

唯「ごめんね。セイバーちゃんの意思を捻じ曲げるようなことをして。でも、
黙ってられなかったんだ」

セイバー「……しかし、今の状態では――」

ギルガメッシュ「フフフ――」

セイバー「?」

ギルガメッシュ「アーハッハッハハハッ!!!! 笑い殺す気か貴様ら! 
セイバーの剣を止めたところで、殺されるのは変わらんのだぞ!!」

澪「その通りだ。セイバーの聖剣じゃなきゃ防げない。というレベルじゃな
い。もはや、私たちにとってしてみれば、あのサーヴァントの鼻息すら
致命傷になる」

唯「……なら、私が――」

セイバー「無茶を、言わないでください」

ギルガメッシュ「……よし決めたぞ。先刻の暴言は不問としよう」

唯「!?」

ギルガメッシュ「まもなく聖杯が降臨する。否、降臨させるのに丸一日は
かかる」

澪「……」

ギルガメッシュ「我が聖杯を手に入れる瞬間を見届けろ。そして、セイバー
が我がモノとなる瞬間に立ち会え」

唯「――」

セイバー「馬鹿なことを……」

ギルガメッシュ「馬鹿なことではない。自然の摂理、否。王の摂理だ」

唯「……わかった」

セイバー「!?」

唯「その条件、呑むよ。明日の同じ時間に、ここだね?」

ギルガメッシュ「ああ。必ず来い。でなければ、聖杯を使ってこの街を火の
海とする」

セイバー「……また、あの災厄を繰り返す気か。ギルガメッシュ」

ギルガメッシュ「あれを災厄? 違うな。アレは我が再び肉体を得た素晴ら
しき日だ。記念すべき日なのだぞ」

セイバー「妄言はいい。とにかく、見逃してもらえるのであれば、私たちは
帰るぞ」

ギルガメッシュ「フフ……」

セイバー「行きましょうミオ、ユイ」

唯「うん……」

澪「セイバー、肩掴まれ」

セイバー「――感謝します」

ギルガメッシュ「――ああ。そうだ」

唯「?」

ギルガメッシュ「バーサーカーを倒したのは、この我だ」

澪「――!」

ギルガメッシュ「貴様らが逃げ出したバーサーカーを、この我はいとも簡単
に打倒しているぞ」

澪「――は」

ギルガメッシュ「?」

澪「律はどうした!?」

ギルガメッシュ「リツ?」

澪「バーサーカーのマスターだ! お前がバーサーカーを倒したのなら――」

ギルガメッシュ「――はて、あの場にバーサーカー以外に誰かいたのか?」

澪「!?」

ギルガメッシュ「我が見たのは、神の子ヘラクレスのみ。それ以外には
目もくれぬわ」

澪「……」

ギルガメッシュ「おまえは、足元の蟻を逐一覚えているか?」

澪「――」

唯「ということは――」

ギルガメッシュ「我が殺ったのはバーサーカーのみ。そこに誰かがいたとし
ても、この英雄王が手を下すことはない者よ」

澪「……」ふらっ

セイバー「ミオ!」

澪「だ、大丈夫。気が抜けただけだ」

澪(よかった。……りっちゃん)

ギルガメッシュ「我との誓約。努々忘れぬようにな」

唯「――ええ」

澪(ユイが、本気で怒ってる……? こんなのを見るのは初めてだ)

セイバー「明日……」

唯「セイバーちゃんは、絶対に渡さないから」

ギルガメッシュ「それを決めるのは我だ。これは好機にしてチャンス、可能性
にして最後の抵抗。それを許したのだぞ。感謝するがいい」

唯「だれがするもんか」

ギルガメッシュ「その目……。なかなかいいぞ。そそられる」

唯「変態……」

ギルガメッシュ「勝手にほざくがいい。何れにせよ、明日には亡くなる命だ」

セイバー「……」

澪「……行こう。唯」

唯「うん。わかった」

セイバー(魔力不足が深刻だ。これは、なんとかならないものなのか)

――平沢宅――

唯「……」

澪「律が、無事でよかったよ」

唯「……」

澪「……セイバーも、明日には回復するよ」

唯「……」

澪「唯……」

唯「――の、せいだ」

澪「?」

唯「私の所為で、セイバーちゃんが苦しんでるよ……」ポロポロ

澪「!?」

唯「私が魔術師だったら、魔力をきちんとあげられたら、あんなことには
ならなかったのに……」

澪「そんなことはない! 唯だから、セイバーはここまで来れたんだ!」

唯「違う! 魔術師だったら! 魔力があったら――!」

澪「いい加減にしろ!」パン!

唯「――」

澪「おまえは、戦えるんだ」

唯「あ」

澪「サーヴァントがいる。セイバーが側にいる」

澪「でも、私にはなにもない」

澪「魔術なんて使えない。アーチャーも消えてしまった」

澪「その私に、少しでも希望を見せてくれ」

澪「それができるのは、唯とセイバーしかいないんだから」

唯「――」

唯「ごめん……ね」

澪「大丈夫。私も、叩いちゃってごめんな」ぎゅっ

唯「……えへへ。澪ちゃんのお胸、ふかふかしてて気持ちがいいよ」

澪「一応、取り柄みたいなものだからな。――頼むぞ。唯」

唯「うん。明日は、部屋に籠ってセイバーちゃんとお話しするよ」

澪「そうしてやれ。そうして、やれ」なでなで

――?――

?「――――――、―――、――――――」

?「……――――――――」

?「―――――――、―――――――――」

?「――――――――、――」

?「――?」

?「―――。―――、――――」

?「――――、――――――――――――――」

?「――――。―――――――――」

?「――」

?「―――。―――――――――――」

?「――――、――――――?」

?「!!」

371 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/21(月) 23:59:30.93 ID:mUaFNUAO [3/3]
食いついてこないカルーアなんてカルーアじゃ(ry

自演社のSSがやたら面白い面白い言われてるが
士郎を唯
凛を澪に変えただけの駄クロスだろ……
内容もほぼセイバールートだし
まあfate知らない人は面白いのかもしれないが……





おいwwwwカルーア(けいおんss作者に嫉妬するスレ)でこのss叩かれてるぞwwwww

唯「カルーアミルクだよ」

どうした

?「―――。――――?」

?「――。―――――、―――――」

?「――――――――、―――――――」

?「――――、―――――?」

?「……――――」

?「――」

?「――」

?「――――――!!」

?「――――――――!!」

?「―――――――――」

?「―――――――――」

?「――――――――――!!!!」

?「――――――――――――――!!!」

?「―――――――――――――――――」

?「――――!!!」

?「――――――――――――!!!!!」

?「―――――――!!!!!!」

?「――」

?「――――――――――!!!!!!」

?「―――――――――――――!!!!」

―――――――――――――

?「――――――!!」



?「――セイ、バー」

?「……」

?「――」

?「――セイバー……ありがとう。お前に、何度も助けられた」

セイバー「シ、ロウ――?」



セイバー「!?」ガバっ!

セイバー「……ハァ、ハァ」

セイバー「……」

唯「すぴー」

澪「ん……」

セイバー「――」

唯「セイバー、ちゃあん……」

澪「セイバー……」

セイバー「――」

ドア「ニコ」

セイバー「――ここはどこですか? そして、あそこで眠っている子たちは
一体――」

セイバー「――誰なんだ?」

今日も早いから、そろそろ眠ろうと思う。

ここまで読んでくれて本当にありがとう。
感想と保守を頂けると感激の極み。
おやすみなさい。長くなってごめんなさい。

376 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 00:42:25.46 ID:RVlekcoo [1/2]
どっちかのエピソードなぞるだけのクロスは作業的でつまらないのは事実

378 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 00:49:21.14 ID:2ndCiPc0
シリアスな場面でもドア「ニコ」を書き続けるのは何なの?死ぬの?

唯「カルーアミルクだよ」

散々言われてますぞ

ちなみに、すでに最終章に入っている。

今度こそ、おやすみなさい。

ドア「ニコ」

俺「ニ、ニコッ」

ドア「ニコ」

俺「(;´∀`)・・・?」

無駄に保守が長いかと思ったらまーたコイツか

今の時期にバレンシアとかF1関係者かよ

ただいま

憂「セイバーさん、おはようございます――」

セイバー「……」

憂「?」

セイバー「――ここは、どこですか?」

憂「え? セイバーさん?」

セイバー「貴女が、私の名を知っているということはそういうことなので
しょう。もう一度問います。ここはどこなのですか?」

憂「ここは、平沢家ですけど……なにかの遊びですか?」

セイバー「遊び……?」

憂「セイバー、さん?」

セイバー「――私がどうしてここにいるのかを、教えていただきたい」

憂「聖杯戦争のため、じゃないんですか?」

セイバー「やはりそうですか。しかし聖杯戦争のためなのなら、私はシロウ
に召喚された筈だ」

憂「シロウ?」

セイバー「私のマスターの名前です。それはそうと、あなたと私の関係は
なんなのですか?」

憂「……」

セイバー「教えなさい。私は、どうしてここにいるのかを知るために」

憂「――」グスっ

セイバー「泣いていてはわからない。私はシロウの剣だ。シロウのもとへ
戻らなくてはならない」

憂「――」ポロポロ

唯「うい、おはよ……」

セイバー「!!」

唯「憂! どうしたの? どこか痛いの?」

憂「……」ぶんぶん

唯「セイバーちゃん、なにか知ってる?」

セイバー「貴女も私の名を知っている……。一体、どういうことなのですか」

唯「え?」

セイバー「貴女の名前は?」

唯「平沢唯だけど、どうしたの?」

セイバー「それではユイ。ここに私がいるのは何故かを問いたいのですが」

唯「なに言ってるの? ウイ、泣いてるんだよ?」

セイバー「そんなことに興味はありません。今、私はそれ以上に焦燥して
いる」

唯「わけわかんないよ! どうしちゃったの!?」

セイバー「どうしたもなにもないのです。私の問いに答えてください」

憂「うう……」

唯「大丈夫だよ、憂。きっと、セイバーちゃんは寝ぼけてるだけなんだよ」

セイバー「私が寝ぼけている? 無礼な言動は慎みなさい!」

唯「だったらなんなの!? 憂を泣かせて、わけわからないこと言って、
今日はギルガメッシュと決戦なんだよ!?」

セイバー「ギルガメッシュ? 一体誰です、それは」

セイバー「……話がかみ合わないな。お互いに落ち着きましょう」

唯「……澪ちゃん、呼んでくる」



澪「――それで、セイバーはなにも覚えてないのか?」

唯「うん……。私のことも、憂のことも忘れちゃったみたいなの」

澪「今までは何の問題もなかったのに……」

唯「それに――」

澪「ん?」

唯「なんだか、今のセイバーちゃん、怖いよ。昨日までのセイバーちゃんと
は全然違う。まるで、怒ってるみたい」

澪「……セイバーと話してみよう。いずれにせよ、今日はギルガメッシュと
戦わなきゃいけないんだ」

唯「そうだね……。行かなきゃ、この街が危ない」

澪「令呪は残ってるんだろ? 最悪の場合、それを二つ使ってでも言うこと
を聞かせよう」

唯「――」

澪「仕方ないんだ。もはや、時間をゆっくりとってやる場合でもないんだから」

ドア「ガチャ」

唯「セイバーちゃん、おまたせ」

セイバー「――」

澪「おはよう、セイバー」

セイバー「貴女も、私を知っているのですね」

澪「一緒に戦ったんだから、当たり前だろ」

セイバー「解せませんね。私が最後に戦った記憶は、あの黒いアサシンとの
戦いだ」

唯「黒いアサシン? アサシンって、侍じゃないの?」

セイバー「アサシンは固定サーヴァントです。未だかつて、ハサン・サッ
バーハ以外にはありえません」

唯「で、でも――」

セイバー「それもどうでもいい。私にとって、貴女方は未知の人なのだから」

唯「う……」

澪「そ、そんな言い方はないだろう!」

セイバー「ですが、事実です」

澪「私たちは一緒に戦った仲間だろ! なのに……どうしてそんなふうに
言えるんだ……」

セイバー「……」

唯「セイバーちゃん……」

セイバー「夢を、見ました」

憂「?」

セイバー「サーヴァントは、基本的に夢を見ません。しかし、私はある夢を
見ました」

澪「……」

セイバー「その夢の中で、私は一人の少年と一人の女性と戦っていまし
た。やめたい、戦いたくない。それでも、私の手は剣を振るい、少年たち
は立ち向かってきたのです」

唯「――」

セイバー「それがシロウであり、ライダー。そして、私は――」

セイバー「――私は……あれ? 駄目だ、記憶が混濁している……」

唯「……わかったよ」

唯「――セイバーちゃんは、記憶喪失なんだね」

セイバー「……そのようです」

唯「その夢には、きっと意味があるんだよ。私たちに出会う前の記憶かも
しれないし、その夢が、セイバーちゃんの記憶を混乱させてるのかもしれ
ない」

セイバー「――はい」

唯「でもね、セイバーちゃん」

唯「私たちと戦っていたのは本当だよ。ある日突然、セイバーちゃんが私
の隣で寝てて、それからはずっと一緒だったんだよ」

唯「信じてもらえないかもしれないけど、私がセイバーちゃんのマスターで、
澪ちゃんは、アーチャーのマスターだったんだよ」

セイバー「そ、それでは令呪が!」

唯「はい」スッ

セイバー「……本当に、令呪が」

唯「これを使うことは絶対にしたくない。だから――」

セイバー「だから?」

唯「これから、私はセイバーちゃんに一対一で戦うよ」

澪「な、なに言ってるんだ!」

憂「そうだよ! お姉ちゃん!」

唯「もちろん、殺し合いじゃないよ。でも、真剣勝負には違いなく」

セイバー「……貴女が私のマスターなのであれば、私の力は知っている
筈では?」

唯「それももちろん。セイバーちゃんの強さは、私が一番よく知ってる。
だから、お父さんが昔使ってた竹刀で戦うの」

セイバー「論点がずれていると感じませんか?」

唯「全然そうは思わないよ」

セイバー「――いいでしょう。どちらにせよ、私はシロウのもとに帰らなけれ
ばならない。その方法を見つけるには、貴女の頑固さを知っておく必要が
あるようだ」

唯「憂、竹刀持ってきて」

憂「……」

唯「近くの公園でいいよね。セイバーちゃん」

セイバー「異存はありません」

――公園――

セイバー「ここですか」

唯「うん」

憂「お姉ちゃん、セイバーさん。今からでも止められるよ。だから――」

唯「駄目だよ。もう止められないし、止めたくない。セイバーちゃんと私
の問題だもん」

澪「唯、頭に血がのぼってるんじゃないか? 落ちつけってば」

唯「私は至って冷静。私たちのこと忘れちゃったセイバーちゃんにおしおき
してあげるんだから」

セイバー「困りましたね。そのようなことを言われても仕方がない」

唯「……はい、セイバーちゃん」ポイッ

セイバー「――本当に、やるのですね」パシッ

唯「ルールはたった一つ。ギブアップするまで戦うってことだけ」

セイバー「……そうですか。いきます」

唯「――うん」

セイバー「――!」バシッ

セイバー「ていッ!」ビシッ!

セイバー「――――!!」ドシッ!

唯「――ん!」

澪「まずいぞ、憂ちゃん!」

憂「はい! お姉ちゃん!!」

唯「止めないで!」

澪「でもな唯!」

唯「一回だけでも、一回だけでも引っ叩かなきゃ。私は、『マスター』なんだから!!」

セイバー「その心意気はいいですが、認められない」バシッ

唯「いた!!」

澪「――あまりにも一方的だ。唯、剣道なんてやったことないだろ!」

唯「ん!」ブン!

セイバー「腰も入っていないし、全く評価できません。シロウは、その程度
ではなかった!!」

唯「他の――他のマスター(ひと)の話なんてしないでよ!!」

セイバー「!?」

唯「セイバーちゃんのマスターは、私なの!」ブン!

唯「力になりたいって、伝えたときから――」ブン!

唯「ずっと、一緒に戦ってきたんだから!」ブン!

唯「――その私に――」

唯「昔の人の話なんて、聞かせないでよ!!」ブン!!

セイバー「……」

澪「うそ、だろ?」

憂「セイバーさんが、汗をかいてる……」

唯「ハァ……ハァ……」

セイバー「――ですが、私のマスターはエミヤシロウなのです。それは、決して変わらない」

唯「わから……ずや……」

セイバー「女性ゆえに、顔への攻撃は一切していませんが、それではわか
りにくいですか? 私の意思がどういうものなのかが」

唯「わからない。わかりたくもないよ」

唯「セイバーちゃんが、どうして聖杯を欲しがっているのかはわからない」

セイバー「教える気などない」

唯「いつか話してくれると思ったの!」

セイバー「話すことは、ない」

唯「――」

セイバー「ユイ、降参しなさい。このまま続ければ、どうなるかはわからない
わけがないでしょう?」

唯「……知らないもん!」バッ!

セイバー「砂かけ!? ――うっ!」

唯「セイバーちゃんの――馬鹿ああああああああああああああああ!!!!」スパン!!

セイバー「――――!!」

澪「当たった!」タタタ

憂「お姉ちゃん!!」タタタ

唯「セイバーちゃんの、馬鹿……」

憂「そんな場合じゃないよ! 痛いでしょ!?」

唯「平気だもん。セイバーちゃんは、まだギブアップしてないんだから、離れてて」

セイバー「……砂かけとは、思いもよらぬ攻撃でした」

唯「卑怯だっていう?」

セイバー「いいえ。ルール無用なのですから、警戒しなかった私の落ち度だ」

セイバー「――しかし、そのあとの一撃。あれは評価したい」

唯「!!」

セイバー「――ああ。そうだ」

セイバー「その姿は、誰もが元気になる。諦めたくないと、そう思いたくなる」

セイバー「故に――私は貴女をマスターに選んだのだ。ユイ」

唯「セイバー、ちゃん?」

セイバー「はい。セイバーです」

唯「……記憶、戻ったの?」

セイバー「あれだけの力で叩かれれば、いくらサーヴァントでも、なにかが
起こりますよ」

唯「本当に、戻ったの?」

セイバー「ご心配をおかけしました。ギルガメッシュとの決戦に備えなくて
はならなかったのに――」

唯「セイバーちゃああああああああああん!!!!」だきっ

セイバー「!?」

唯「よかったよぉおおおおおおおお!!!」ぎゅー

セイバー「……よしよし。あなたの直向きな強さを忘れるだなんて、どうか
していました」なでなで

唯「ううう……」

澪「よかったな。憂ちゃん」

憂「はい!」

セイバー「……お腹が、すいてしまいました」

――平沢宅――

セイバー「――そういうわけで、私はここにいるようです」

唯「へー」

澪「黒い影に呑みこまれて、それが最後の記憶かー」

セイバー「夢のことは、どうやら関係のないことのようです」

唯「でもでも、夢の中でセイバーちゃんはシロウって人に殺されちゃったん
でしょ?」

セイバー「はい。短剣で胸を刺されました」

澪「ひゃわ!」

セイバー「?」

澪「そういう痛い話はいやなんだー!」

セイバー「今更何を言ってるのですか……。アーチャーは、かなり戦闘面
では苦労していたのですね」

澪「うう……」

セイバー「アーチャーといえば――私が知っているアーチャーと、こちらに来
て出会ったアーチャーは、まるで違っていたのですが……」

唯「アサシンも違ってたんだよね?」もぐもぐ

セイバー「ですが、アレの場合はキャスターが使役していたイレギュラー
な存在です。サーヴァントが、正規のサーヴァントを召喚できる筈が
ありません。しかし、アーチャーは――」

澪「朝起きたら、椅子に座って漫画読んでたんだ。それがアーチャーとの
出会い」

セイバー「……私と唯の出会いと、少し似ていますね。私は向こうから来た
ので、当然、正規の召喚はされないでしょう。しかし、なぜアーチャーま
で……」

唯「向こうのアーチャーはどんな感じの人なの?」

セイバー「口を開けば皮肉ですね。人格的に優れているかというと、首を
かしげてしまいます」

唯「へー。それじゃあ、あのアーチャーに似てるね」もきゅきゅ

セイバー「本当に唯はアーチャーが苦手ですね」

唯「ふんだ」

澪「確かにアイツは、唯には特に厳しかったもんな。唯が苦手になるのも
わかるよ」

唯「憂ー、カレー美味しいよー」

セイバー「そうですね。昨日は緊張状態にいたからか、味がよくわかりません
でしたからね」

唯「憂のカレーは世界一!」

憂「ありがと。お姉ちゃんっ」

唯「――今日で聖杯戦争が終わるんだよね」

セイバー「はい。今度こそはきちんと終わらせます」

澪「……ってことは、セイバーは――」

セイバー「――今日で、あなた達の前から消えることになります」

唯「そ、そんなの嫌だ!」

セイバー「私には、救うべき民がいる。唯たちには、わかってもらいたい」

澪「――」

唯「――聖杯を使って、ここにいてもらうのは出来る?」

セイバー「ギルガメッシュが出来たのですから、私にも可能でしょう。しかし、
先刻も申した通り、私には救わなければならない人たちがいます。その人
たちを、裏切るわけにはいかない」

唯「……」

セイバー「それが、王の責務なのです」



唯「あのさ、セイバーちゃん」

セイバー「なんでしょう?」

唯「学校に、行かない?」

セイバー「?」

唯「今日で最後なんでしょ? だったら、セイバーちゃんには学校に来て
ほしい。いいよね、澪ちゃん」

澪「拒む理由がないよ。それと、私からも提案というかセイバーにプレゼン
トがあるんだ」

セイバー「プレゼント、ですか?」

唯「……なーる」

澪「わかったか? 唯」

唯「うん! それじゃあ、準備しなきゃね!」テキパキ!

セイバー「わ、私はまだ行くとは――」

唯「行くよねー?」だきっ

セイバー「……行きます」

――桜高――

セイバー「前にも来ましたが、いい学校ですね」

唯「セイバーちゃんの制服ー」がばっ!

憂「お姉ちゃん、しわになっちゃうよー」

澪「でも、すごく似合ってるよ。セイバー」

セイバー「あ、ありがとうございます。私は、男として生きてきましたから、
このような少女の衣服を纏った経験が極端に少ないのです……。本当
に、似合っているのでしょうか?」

唯「似合ってるなんていうレベルじゃないよ。学校のマドンナ確実だね!」

澪「ファンクラブもすぐに出来るだろうな」

唯「澪ちゃんにはファンクラブがあるんだよー」

セイバー「ファンクラブ!? つまり親衛隊ですか! それは素晴らしいで
す!」

澪「セイバー、意味曲解してないか!?」

憂「音楽準備室に到着です。ささ、セイバーさん」

セイバー「?」

ドア「ギギギ」

梓「セイバーさん!! いらっしゃい!!」

紬「さぁさ、ここに座ってください!」

セイバー「アズサ! ツムギ!!」

唯「えへへー。それに――」

律「セイバー、久しぶり……かな?」

セイバー「リツ!」

律「……私を見て、笑ってくれてありがと。私、あんなにひどいことしたのにさ」

セイバー「マスターである貴女に罪は在りません。貴女のような優しい女性
が修羅の道を往ったのにも、理由があってのことでしょう?」

律「――セイバー」

唯「さあ! りっちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、澪ちゃん! 準備して!」

澪「おう!!」がさごそ

憂「セイバーさん、見ていてくださいね。お姉ちゃんたちが、普段学校で
なにをしているのかを」

セイバー「はい……」

憂「どうしました?」

セイバー「いえ、少しスカートが短いのが気になりまして……」

憂「セイバーさんの脚、キレーですね」

セイバー「からかわないでください。このように短いスカートでは、その……
見えてしまうのではないですか?」

憂「うーん。気を使ってれば見えませんよ。階段上がるときは抑えてます
しね」

セイバー「むむ。現代の女子高生も、戦っているのですね」

憂「そうですよー。規則ギリギリの短さにするのは大変なんですから」

セイバー「意外ですね。ウイが規則に反しようとするなんて。てっきり、優等生
だと思ってました」

憂「反してるわけじゃないですよ。それに、優等生って自分では言いにくいの
であとで梓ちゃんにでも訊いてください」

セイバー「そうします」

唯「レディースエーンドレディース! 今日はHTTのライブに来てくれてありがとー!!」

憂「わーい!」

セイバー「……」

唯「セイバーちゃんに、一度も私がギター弾いてるところ見せられなかった
からね! 今日はいっくぜー!!」ギュインギュイン!!

澪「セイバー、聞いてほしいんだ。私たちの演奏を」

セイバー「――ええ。是非、聞かせてほしい」

唯「初めてセイバーちゃんと会った日にお風呂で、一発で見抜いてくれた
んだよね。私が、毎日練習してることを――」

梓「この教室では、あまり練習してませんけど、唯先輩は毎日家で練習
してるんです」

紬「私たちだってそう。今の、この時間を無駄にしないために――」

律「毎日頑張ってるんだ!!」

唯「それじゃあいっくよー!! ふわふわ時間!」

律「1・2・3・4!!」カンカンカンカン!!

セイバー(――ああ。そうか)

セイバー(この顔だ)

セイバー(楽しそうで、真剣で、まっすぐで)

セイバー(そんな表情を、貴女はしている)

セイバー(それが、どうしようもなく綺麗だ)

セイバー(まるで、朝日のように)

セイバー(まるで、美しい花のように)

セイバー(だから――私は貴女を信頼しているのだ)

セイバー(その顔は、嘘という淀みを見せない)

セイバー(いつも正直で、いつも清らかで)

セイバー(いつまでも――私は貴女にそうあってほしい)

セイバー(その笑顔を守るために、私はこの街を守る――!)

唯「せんきゅーせんきゅー!!」

憂「お姉ちゃあああああああああああああん!!!」パチパチパチ!!

セイバー「素晴らしい。実にすばらしい演奏でした」パチパチ



唯「どうだった? 私たちの演奏」

セイバー「その質問はすでに8回目ですよ。何度聞いても、素晴らしかったで
す」

唯「えへへー。やったね澪ちゃん!」

澪「うん。セイバーに褒められると、すごく自信になるよ」

憂「このままプロになっちゃいますか?」

セイバー「十分可能だと思いますよ。唯たちの音楽には、なによりも楽しさ
が感じられました」

唯「ありがとー」ぎゅっ

セイバー「ですから! いちいち抱きつかないでください!」

憂「私もー」ぎゅっ

澪「わ、私もっ」ぎゅっ

セイバー「……まったく、仕方ないですね」

――そして、夜――

セイバー「……」

唯「憂、いってくるね」

澪「今日は、このまま帰るからね。お世話になったよ」

憂「はい……」

セイバー「ウイ、貴女は強い女性だ。しかし、時には甘えなさい。ユイに、
ミオに、誰でもいいです。弱さを見せられる相手を、見つけてください」

憂「……はい!」

セイバー「それでは、今までありがとうございました。料理、とても美味しか
ったですよ」

唯「――」

澪「――憂ちゃん、泣いてもいいんだよ?」

憂「……いいえ。私は、セイバーさんを笑った顔でお見送りしたいです」ニコっ

セイバー「――ウイ。いってきます」

憂「いってらっしゃい」

少し席をはずす。

感想を書いてくれると、色々嬉しい。

>>521
きめぇ

ただいま

保守と感想ありがとう。

>>528
おかえり

セイバー「――」とことこ

唯「――」すたすた

澪「――」とてとて

セイバー(言葉なんていらない)

唯(作戦もない)

澪(ただただ、セイバーの力をぶつけるだけ)

セイバー(私が及ばないのなら敗北する)

唯(それでも、私たちは信じてる)

澪(セイバーの強さを)

セイバー(故に――)

唯(だから――)

澪(そういうことだから――)



セイバー唯澪(私たちは、なにも話さない――)

――桜の丘――

ギルガメッシュ「時間ちょうどの到着とは、この我を待たせるなよ」

セイバー「ギルガメッシュ――!」

ギルガメッシュ「フフ、聖杯はこうして降臨した。故に、これから我たちは
殺し合うわけだ。我はいいのだぞ? お前を殺すことでしか屈服できない
のであれば、構わんのだ」

唯「セイバーちゃんは死なないよ。私たちがいるもの」

澪「そうだぞ。私たちが、セイバーを見守る」

セイバー「――ありがとうございます」

ギルガメッシュ「美しい友情だなセイバーよ。今、どのような気持ちなのだ?」

セイバー「心の奥から、充実感がある。――今だかつてないほどの、安心感
までもある。国を滅ぼした貴様では、一生、永遠をかけても得られないもの
だ!」

ギルガメッシュ「この我に、手に入らないものなどない。それが聖杯であっても
だ」

セイバー「聖杯――。――――!!」

セイバー「サクラ――?」

桜「――」

セイバー「なぜだ!? なぜサクラが聖杯に――」

ギルガメッシュ「知れたことよ。これこそ聖杯なのだ」

唯「あの人、知り合いなの?」

セイバー「シロウの、大切な人です。まさか、あのサクラが聖杯だった
なんて――」

澪「人間が、聖杯?」

ギルガメッシュ「我にも深淵は知りかねるが、人間の中に聖杯が隠されて
いたらしいのだ。聖杯の欠片が埋め込まれた娘が、サーヴァントの魂を
吸って降臨した」

セイバー「サクラ――」

桜「――」

ギルガメッシュ「さあ、この聖杯を知っているのならば尚更取り返すしか
あるまい。――全力で来いよセイバー。死にたくなければ、聖剣を抜け」

セイバー「――言われずともそうする。いくぞ! 英雄王!!」

ギルガメッシュ「来い! 騎士王!!」

――?――

凛「まったく、ホントにデタラメね。アンタ」

桜「姉さんだって。本当だったら、その変な剣を振る前に死んじゃうのに」

凛「お生憎様。これはシロウとイリヤで作った宝石剣。アンタも名前くらいは
知ってるでしょ?」

桜「……また、姉さんは先輩をとっちゃうんだ」

凛「被害妄想もいい加減にしなさいよ」

桜「うるさいうるさい!! 姉さんなんか! 私をひとりぼっちにしちゃう姉さん
なんか――死んじゃえ!!!」ズオオオオ

凛「――だから、効かないの!!」パアアア

桜「死んじゃえ! 死んじゃえ!! 死ね! 死ね!!」

凛「トンデモない恨みと憎しみね。これはちょっとやばいかも……」

士郎「遠……坂……」

ライダー「リン!!」

凛「は?」

士郎「加勢に来たぞ。桜は――」

凛「馬鹿!」

士郎「……?」

凛「ライダーも止めなさいよ! 士郎ったら、もうとっくに身体なんて――」

士郎「――ああ。もう、心臓なんて止まっちまってるだろう」

ライダー「私は、サクラを助けたい」

凛「――!」

士郎「俺もライダーと同じだ……。だから、たとえこの身体が消えちまって
も、サクラは助ける」

凛「あなた達、馬鹿を超えてるわ!」

桜「先――輩――?」

士郎「久しぶりだな桜。随分と変わっちまったな。お互いにさ」

桜「――その身体!」

士郎「こんなのはどうだっていい。重要なのは、お前を助けることだけだ」

桜「――先輩は、どうしてっ!?」

士郎「だから、お前を助けるためだって言ってるじゃないか。肺だって、もう
動いてないんだから、あまりしゃべらせないでくれ」

凛「……」

桜「馬鹿です。先輩は――」

士郎「何度も言われたし、これから先も言われるだろうな」

桜「もう、私は戻れないのに……」

士郎「――」

桜「憎しみでしか動けない。もう、誰も信じてあげられないんです……。そん
な私が、先輩に愛してもらえる筈が、ないです」

士郎「――」

桜「私なんて、誰にも愛されないんです!」ズオオオオオオオオオ

凛「多っ! 士郎は下がってなさい! ライダーもよ! あれはサーヴァント
には天敵中の天敵なんだから!」

士郎「――」すたすた

凛「馬鹿!」

士郎「――ああ。俺は、お前なんて愛してないよ」

桜「――!」

士郎「だってそうだろう? いつまでもウジウジしてる女なんか、俺は好きに
なんてなれない」

桜「……」

士郎「いつまでも、自分が可哀想可哀想って、世界で一番自分が不幸だっ
て言ってないで、さっさと前を向け。上の見ろ」

士郎「だから、今の桜は嫌いだ」

桜「―――――――――――!!!!!!」

士郎「大嫌いだ」

桜「―――――――――――――――――!!!」

士郎「……」

桜「……じゃえ」

ライダー「――!」

桜「みんな! みんな死んでしまええええええええええええええええええ
ええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

凛「ちょっと待ってよ! 洞窟が崩れ出した! 士郎!」

士郎「――よし、これでオーケーだ。遠坂、あとは頼む」

――桜の丘――

セイバー「――!」ズザアア!!

ギルガメッシュ「ほう、やはり魔力不足か?」

セイバー「……ユイ!」

唯「うん! 打って! 勝負に出るよ!」

澪「いけ!!」

セイバー「わかりました!」キイイイイイイイ

ギルガメッシュ「宝具か――!」

セイバー「これは! この輝きは――」キイイイイイイイイイイイン

ギルガメッシュ「――なら、我も抜こうか。原典なしの唯一剣を――」

セイバー「私たちの、輝きだああああああああああああああ!!!!」

セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――――――!!」

ギルガメッシュ「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)―――――!!」

唯「セイバーちゃん!」

澪「セイバー!!」

セイバー「あああああああああああああああ!!!!」

ギルガメッシュ「どうした!? この程度か! 最強にして最高の聖剣
は――――!!」

セイバー「もっと! もっと!! もっと!!!」

ギルガメッシュ「――?」

セイバー(これで終わってもいい。どの道消えるのなら、ここで終わって
しまえ――!)

ギルガメッシュ「――なるほど、決死か」

セイバー「ああああああああああああああああ!!!!!!」

ギルガメッシュ「――だが残念だな。それでもまだ及ばないとは」

セイバー「――――!!!!」ゴアッ!

唯「セイバーちゃん!」

セイバー「――」

唯「セイバー、ちゃん?」

セイバー「ユイ……ごめんなさい。私では、英雄王に――」

唯「……」ぎゅっ

セイバー「ユイ……、血がつきますよ……」

唯「どうだっていいよ。セイバーちゃん……」

澪「セイバー」ぎゅっ

セイバー「ミオ……」

唯「もう、頑張ってなんて言わない。セイバーちゃん、今までありがとう」

セイバー「……」

澪「私たちは、絶対にセイバーを忘れないよ。だから、私もありがとう」

セイバー「――ああ。温かい。本当に、あなた達は温かい」

ギルガメッシュ「ククク……アーハッハッハッハ!!! 本当に、貴様ら雑種
にしては面白い!! あまりにも滑稽だぞ!!」

唯「!」

ギルガメッシュ「あまりにも無意味! 無価値! 笑いが堪えられんわ!!」

唯「――!」タッタッタ

ギルガメッシュ「どうした雑種。我になにか?」

唯「――えい!」パン!

ギルガメッシュ「――!」

澪「唯!」

唯「無意味じゃない! 無価値でもない! セイバーちゃんが勝てないの
なら、今度は私が相手だ!!」

ギルガメッシュ「――殺すぞ」ズオオオオ

澪「武器庫の宝具――逃げろ! 唯!!」

唯「――!!」

ギルガメッシュ「――死ね」

?「うわあああああああああああああああああああああ!!!!」

ギルガメッシュ「!?」

士郎「……いてて」

ライダー「――」

凛「なにしてんのよ士郎! 桜を怒らせてどうするのよ!!」

士郎「いや、言いたいことだけ言ったんだけどさ。あとは遠坂がなんとか
してくれるもんかと」

凛「まったく……。ゼルレッチで無理矢理時空移動したけど、ゼルレッチが
壊れちゃったわよ」

ライダー「そんなことより士郎。身体が――」

士郎「――あ」

凛「な、治ってる……?」

ライダー「時空を超えたことが、なにか関係してるのでしょうか」

セイバー「――シ、シロウ?」

士郎「――え?」

唯「ふぇ?」

凛「セイバーじゃない!!」

セイバー「リン……」

ライダー「傷だらけですね。セイバーのクラスとあろうものが情けない」

士郎「――セイバー」

セイバー「シロウ、会いたかった」

士郎「――」

唯「あの……」

士郎「ん? きみは――」

唯「私は平沢唯です。セイバーのマスターやってます」でヘヘ

澪「私は秋山澪です。アーチャーの元マスターです」

凛「アーチャー!?」

澪「は、はい!」

凛「……一体どうなってるのよ。ここは」

ライダー「それは、あの男が知ってそうですね」

ギルガメッシュ「この我を無視するとはいい度胸だ。貴様ら、生かしてはおけんな」

士郎「無視なんてしてない。……アンタは誰だ?」

ギルガメッシュ「我が名はギルガメッシュ。雑種に名を名乗るのは、本当に
癇に障る」

士郎「そうか。だったら、ギルガメッシュよ。俺がお前を倒す」

ライダー「士郎?」

澪「え?」

士郎「どうした?」

凛「士郎。アンタもしかして――」

凛(こんなのあり得ない――! この魔力量、まるでサーヴァントじゃない!)

ギルガメッシュ「お前が? 我を? 寝言は寝ていうものだぞ?」

士郎「寝言でも妄言でもない。今なら、俺はお前を倒せる」

ライダー「……なるほど、そういうことですか」

凛「アーチャーの左腕は、どうにも都合のいいプレゼントをしてくれたみたい
ね」

セイバー「リン、治療をお願いできますか?」

凛「それはいいけど……。今の貴女じゃあ、回復はかなり遅くなるわよ?」

唯「どうしてですか?」

凛「貴女がセイバーのマスターよね。貴女はどこの魔術師さん?」

唯「えと、魔術師じゃないんですよ」

凛「はい?」

唯「一般人です。パンピーです」

凛「……道理でセイバーの魔力が変だと思ったのよ。よっぽどご飯が美味し
かったのね」

セイバー「はい」

凛「はいじゃないの」

唯「……」

ライダー「セイバーを治療する時間なら、私が稼ぎます」

ギルガメッシュ「ほう。それは面白い。サーヴァント戦は、実に面白い」

ライダー「士郎は手を出さないでください。あの、聖杯となっているサクラを
救うのは、貴方しかいないのですから」ヒュッ

唯「――あの、貴方がエミヤシロウさんですか?」

士郎「ああ。俺が衛宮士郎だ」

唯「頼みたいことがあるんです」

士郎「?」

唯「セイバーのマスターを、代わってくれませんか?」

セイバー「!?」

澪「唯!」

士郎「……なんでさ」

唯「私は、魔力なんてありません。でも、衛宮さんなら――」

士郎「――セイバー」

セイバー「私のマスターはシロウでした。しかし、今のマスターはユイしか
いない!」

凛「大きな声を出さないの。傷が痛むでしょ?」

澪「――唯、セイバーの言うとおりだ。お前は昼間、セイバーに何を言ったん
だ?」

唯「……それでも、自分を覆すことになるけど、それでもセイバーちゃんが
いなくなるよりはいい!」

士郎「……セイバー」

セイバー「断ります。こればかりは、私はユイの命令でも聞けない!」

凛「代わるのなら、私よりも士郎の方がいいわ。もはや士郎の魔力量は
サーヴァント並みだもの」

士郎「……アイツのお陰か」

凛「アーチャーの左腕が完全に同化するなんて、時空間移動には不思議
が伴うわね」

澪「アーチャー?」

凛「あ、貴女はこっちではアーチャーのマスターだったんだっけ。私もよ。
大変だったでしょ」

澪「はい。私の下着がぶかぶかだとか、注文が多い奴でした」

凛「はい?」

澪「えっ?」

ライダー「……少し、きついですね」

ギルガメッシュ「ほう、我が宝具の雨を避けきるか。さすがはライダーだ」

ライダー「お褒めに与り光栄ですよ英雄王。少し、本気を出します」

ギルガメッシュ「減らず口を叩くなよ堕落神」

ライダー「自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)」キュイン

ギルガメッシュ「石化の魔眼か――!」

ライダー「その金にものを言わせた防具がなければ、石になってましたね」

ギルガメッシュ「フン!」

ライダー「……本気を、出したらどうです?」

ギルガメッシュ「貴様にエアを抜く価値などない! 慢心してこその王よ!」

ライダー「その油断は、自らを殺しますよ――」

ライダー「―――――――!!!」キュイイイン

ギルガメッシュ「!?」

ライダー「本気を出さなくとも、私は出すますよ?」

ライダー「騎英の手綱(ベルレ・フォーン)―――――――!!!」

ギルガメッシュ「――!!」

ライダー「これで、終わりです!!」

ギルガメッシュ「速いな。確かに世界最速の宝具だ」

ライダー「――――!!」

ギルガメッシュ「だが、それ故に直線的だ」

ライダー「いっけえええええええええええ!!!!」

ギルガメッシュ「――なら、もう的を外すこともないな」

ギルガメッシュ「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)――――」

ライダー「!?」

ギルガメッシュ「勝負を急いだな、メデューサ。お前の速さは、我には
関係ない」

ライダー「あ」

ギルガメッシュ「―――――フフフ」ビシュっ!!

凛「ライダーが危ないわね……」

士郎「セイバー!」

セイバー「駄目です。私には、もうユイしかいない!」

唯「――」

澪「唯?」

唯「セイバーちゃん。ごめんね?」

セイバー「ユ、ユイ……?」

唯「セイバー、マスターを衛宮さんに鞍替えしなさい」キュイイイン

セイバー「――あ」

凛「令呪!? まだ残してたの?」

澪「はい……」

セイバー「――嫌だ!」バリン!

凛「嘘! セイバーの対魔力は、令呪にも抗うの!?」

セイバー「――!!」

唯「じゃあ、もうひとつを使って命令するよ。鞍替えしなさい。アルトリア」

セイバー「……!!」

士郎「いくぞ、セイバー」

セイバー「……」

士郎「聖杯の寄る辺に従い、この意。この理に従うのなら、我が命運を預けよ
う」

セイバー「……セイバーの、名に懸けて誓う――そなたをマスターとして、
マスターとして認めよう……。シロウ……」

唯「――」

澪「唯、よくがんばったよ」

唯「澪ちゃん……」

セイバー「……」

凛「セイバー、治療するわよ」

セイバー「……」

士郎「平沢さん、セイバー。ごめんな――」

唯「――いいえ」

セイバー「――」

凛「これでオーケー。それじゃあ、いってきなさい!」

セイバー「――はい。シロウ、貴方も」

士郎「もちろんだ。まさか、セイバーに加勢を頼まれるなんて思わなかった
よ」

凛「ライダー! 早く来なさい! 宝石を全部使ってでも、戦力を戻すわよ!」

ライダー「は、はい!」

唯「……」

澪「唯、ここはこの人たちに任せよう」

唯「……うん」

セイバー「ユイ、ミオ。――見ていてくださいね」

唯「……うん!」

ギルガメッシュ「セイバーよ。まだ我に立ち向かうか」

セイバー「もう、私はお前には負けない」

士郎「……ああ。俺たちは絶対に負けないぞ」

ギルガメッシュ「――面白い。実に面白いぞ。ここまで胸が高鳴ったのは、
実に数万年ぶりやも知れぬ。――さあ来い人間! この我を楽しませて
みろ!!」

士郎「いくぞセイバー!」

セイバー「おう!」

ライダー「凛、早く!」

凛「ったく! アンタも治りが早すぎ! どんだけ桜からの供給がすごいの
よ!」

ライダー「聖杯になってますからね。魔力が、止めどなく溢れてきます」

凛「……もう。ゼルレッチさえあれば、私も参戦するっていうのに」

唯「いけー! セイバー!!」

澪「負けるなー!!」

ギルガメッシュ「王の(ゲート・オブ)――」

士郎「I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ、穿つ)」

士郎「偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!」

ギルガメッシュ「な――!」

セイバー「ハァ!!」ザン!!

ギルガメッシュ「――――ッ!」

士郎「投影・完了(トレース・オフ)!!」

ギルガメッシュ「――このッ!」ブン!

ライダー「やはりあなたは、石化の魔眼の影響を受けますね」

ギルガメッシュ「クソッ!」

セイバー「――英雄王おおおおおおおおおお!!」

ギルガメッシュ「セイバアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

士郎「――アーチャーのイメージが、今理解(わか)ったぞ。セイバー」

士郎「――投影・開始(トレース・オン)」

唯「――すごい」

澪「あのギルガメッシュを圧倒してるぞ」

凛「まあ、当然よ。サーヴァント3体と戦ってるようなものなんだから」

澪「3体?」

凛「士郎の身体。あれは一度死んでるのよ」

唯「!?」

凛「正確には、止まってしまったっていえばいいのかな。とにかく、今の士郎
の身体は、サーヴァントのものと同化した、人ならざるものなの」

澪「……アーチャーですか」

凛「そう。話を聞く限り、こっちのアーチャーと向こうのアーチャーは全く
違うみたいね。……あの子が関係してるんだろうけど」

唯「桜さん、ですか」

凛「ええ。あの子が取りこんできたサーヴァントが、こっちでまた聖杯戦争
をしてた。……恐らく、この世全ての悪(アンリマユ)が保険をかけたんで
しょうね。私たち側のアンリマユが死んでも、問題がないように」

唯「その結果が、私たちの聖杯戦争……」

凛「そう。でも、それももう終わりよ――」

セイバー「シロウ――」

士郎「そうだ。これは、おまえの鞘だろ」

セイバー「決して帰ることのないと思っていた。その鞘……」

士郎「……真名は」

セイバー「全て遠き理想郷(アヴァロン)です」

士郎「オーケー。十分だ。いくぞ、セイバー、ライダー」

ライダー「ええ。望むところです」

セイバー「――はい!」

ギルガメッシュ「殺す! 殺す殺す殺す! 殺してやるぞ! 貴様らァ!!」

セイバー「きます!」

ギルガメッシュ「死ねェ!! 天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!」

士郎「いってこい! セイバー!!」

セイバー「はい! 全て遠き理想郷(アヴァロン)!!」

ライダー「……石化の魔眼で、ギルガメッシュのパロメータは下がってますが、関係ありませんね」

ギルガメッシュ「王の――」

セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)――――――!!!」

ギルガメッシュ「――――――――――!!!!」

唯「やった!」

凛「決まった!」

澪「直撃だ!」

ギルガメッシュ「貴様ァ!」

ライダー「往生際が悪いですよ。――騎英の手綱(ベルレ・フォーン)!!」

士郎「まったくだ。是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)」

ギルガメッシュ「!!!!」

ギルガメッシュ「死ぬのか! この我が! 英雄王である、この我が――!」

セイバー「だれしもが、死を迎えねばならないのです。それを知れ――!」

ギルガメッシュ「ああ。我は不死を好んだが、不死は我を好まなかったようだ」

ギルガメッシュ「まるで、貴様のようだな。セイバーよ」シュウウウウン……

唯「……消えちゃった」

澪「ってことは?」

凛「ええ!」

士郎「勝ったのか……?」へたり

ライダー「ええ」

セイバー「ユイ! ミオ! やりました!! 私たちの勝利です!!」

唯「やったああああああああああああああああ!!!!」ガバっ

澪「セイバアアアアアアアア!!!」がばっ

凛「あらあら……」

士郎「……と、俺たちはまだやることが残ってたな」

ライダー「はい。サクラを、救出します」

凛「また暴れたらどうする?」

ライダー「そのときはそのときです」

士郎「ライダーがらしくないな。サクラを信じよう。セイバー」

セイバー「……はい」

士郎「そういえば、令呪を一度しか使ってなかったな」

セイバー「シロウは、そうだったかもしれません」

士郎「それじゃあ、二回目だ。セイバー、聖杯を破壊して桜を助けろ」キュイイイン

セイバー「――了解しました」

士郎「お前が聖杯を手に入れたいのは分かってる。でも、俺は桜の味方に
なるって決めちまった。だから、俺はお前の願いも一緒に打ち砕く」

セイバー「仕方ありませんよ。私も、それがいいと思いますから」

セイバー「こんな歪んだものを、私は望んでいたのでは、ないのですから」

凛「……」

セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――――――!!!」

聖杯「―――――――――」グシャリ……

士郎「桜、起きろー」

桜「――ん」

士郎「おはよう。随分と遅いお目覚めじゃないか」

桜「先――輩――?」

ライダー「サクラ」

桜「ライダー……」

凛「どーも」

桜「姉さん――」

士郎「心配掛けさせやがって、帰ったら炊事はやらせないぞ」

桜「――」

士郎「どうした? 変な顔して――あ! 遠坂! なんか布ないか!? 
大きめなやつ!」

桜「――フフっ」

士郎「?」

桜「私を、赦してくれるんですか? 先輩」

士郎「――ああ。当たり前だ。桜」

セイバー「これで、聖杯戦争は終わりました」

唯「聖杯、なくなっちゃったね」

セイバー「まったくです。……しかし、これでいいのですよ」

澪「よかったの?」

セイバー「私が望んでいた聖杯は、あんなものではなかったのですから」

唯「……そっか」

セイバー唯「――あの」

唯「――セイバーから言ってよ」

セイバー「ユイからどうぞ」

唯「じゃあ、言うね。……聖杯がなくなっちゃって、セイバーちゃんは消えちゃ
うの?」

セイバー「わかりません。ただ、聖杯だったサクラはここにいますから、どう
なのでしょう」

唯「それで、セイバーちゃんは?」

セイバー「はい。――私は、一度ここの櫻が見たいです」

唯「うん。見れれば、いいね」

epilogue

唯「今日はお花見です!」

憂「誰に話してるの? お姉ちゃん」

唯「わかんない」

紬「はい。唯ちゃん、お弁当」

梓「わ、私も作ってきました!」

律「お! 気が利くなー」

和「空気読みなさいよ……」

聡「そうだぞ、姉ちゃん」

澪「聡、食べられるか?」

聡「大丈夫大丈夫。もう殆ど回復したからさ」

桜「私のお弁当もどうぞー」

凛「へえ、桜の料理なんて久しぶりじゃないの」

唯「ホントだー。いつも士郎くんだもんね。お料理担当は」

士郎「当然だ。俺たちは居候で、桜は病み上がりなんだからな」

憂「私も、士郎くんとお料理作るの楽しいよ!」

桜「え?」

憂「ご、ごめんなさい。そういうわけじゃないから、安心して?」

凛「それにしてもびっくりよ! あんたたちが年上だったなんて!」

澪「ハハ……」

ライダー「見た目に惑わされるのは、魔術師としてどうなのですか? リン」

凛「仕方ないじゃない! 魔術師はなめられちゃいけないの!」

桜「自分を正当化しないでください」

凛「手厳しいわね、我が妹ながら」

紬「それにしても、驚いたわ」

梓「そうですよ! いきなり唯先輩の家に4人も!」

唯「お父さんたちもびっくりしてたよー」

律「当たり前だー!」

ライダー「……それは、リンの責任です」

凛「どうして!?」

士郎「そうだぞ遠坂。みんなに謝れ」

凛「はい!?」

桜「姉さんが宝石剣壊したから、帰れなくなっちゃったんですよ?」

凛「そうだけど、それ私の責任じゃないわよ!? セイバーが聖杯こわした
のも一つの原因じゃない!」

澪「そうじゃなきゃ、桜ちゃんは聖杯のままだろー」

凛「そうだけど……。ていうか、なんだって私は一般人にも魔術の話をして
るんだか……」

聡「桜さん、この唐揚げ美味しいです」

桜「え? それ、先輩のだよ?」

聡「やべ!」

士郎「いいっていいって、好きなだけ食べなさい食べ盛りくん」

聡「あ、あざーっす!」

和「まさか、この街がそんなに大変なことになってたなんてね」

唯「大変だったんだよー」すりすり

和「この体勢についてはどうでもいいから、おいおい話しなさいよ?」

ライダー「できれば、この話は闇に葬りたいのですが……」

唯「和ちゃんはいいのー。ライダーちゃんったら、お堅いよー」

ライダー「ライダーちゃん!?」

士郎「……死ぬほど似合わないな」

ライダー「士郎、なにか?」すっ

士郎「魔眼はやめて!」どかっ

士郎「あ、すいま……」

さわ子「あ?」ぎろ

士郎「こっちにもメデューサいたー!!」

凛「せんせー! 私たちが帰れなくなった当事者がなにも言わずにもぐもぐ
と料理食べてまーす」

セイバー「失礼。櫻と料理に夢中になっていました」

唯「セイバーちゃんったら、話より団子?」

セイバー「そのようです」

憂「セイバーさん。ちらし寿司、美味しいですか?」

セイバー「はい。実に美味しいです」

唯「もぐもぐ――」

唯「ういー、おかわりー」

セイバー「私にもお願いします」

憂「はいはい」


 ――その日は、桜の丘で二つの約束が叶った日だった。

 長いようで短い、戦争のおしまいを祝うかのように――
 櫻は、咲き乱れていた。


                                        FIN

終わった。





終わった。

         /             ` 、       感謝するぜ  お前と出会えた
       /          ノノ  ヽ
      ,     ニニ彡'⌒    /`ヽ        これまでの  全てに
      '   ニミ ニニ彡      〈rう├--ミ
       { { ニミ } j j jノx'ィイく  }し{\   `丶、___/ニニニ
      j_ニニミV ハレノ x<⌒ヽ  V ヘ  \    \ニニニニニニニ
      {xミミー'ヾ(、ル( 厶tァァく⌒ヾ}  )ハ::::::.    \ニニニニニニ
     彡ィ'">tァ} \(`ニ彡 ノ` /ト=く   ::::::i     \ニニニニニニ
     (   V^`こ7  _, \``ヾヽ` ノ|`ヽ ヽ l:::::|       \ニニニニニ
         ∧  { '  ` ノ^ヽ    { ノ     !:::::|   ___ノ^ヽニニニニニニ
      /.::::\ゝヽ. _ノヽ``ヽ, -――- 、 /:::::/ /      ̄`ヽニニニニニ
     /.::::::::::::::::>'"ノルハヽ`/ -―- 、⌒V::::::/.// j___ノ、  ヽニニニニニ
  /ニニ、`ヽ`ヾヘ{ {、ムイ 、_(   >  \/ (__ ノニニニ     \ニニニニ
 ,仁ニニニ\ヽヽヽ ∨   /ニニ>彡>--')__ ノ    `ヽニ     \ニニニ二
 ニニニニニニヽ   /     {ニニ> ´ `¨¨´         ニ}      \>''"´
 ニニニニニニニニ/     ∨ /               }八
 ニニニニニニニ./        }ニ{       乙         ノニヽ     ノ
 ニニニニニニニ/       }ニハ               /⌒ヽヽヽ ___彡
 ニニニニニニニ!        ノニニヽ、            /     ` ー=彡'ニニニニニ
 ニニニニニニニ}          ⌒`丶、     /⌒ヽ  ノ     ノ_____
  / ̄ ̄ ̄`ヽ/ヽ、 _彡ヘ{ {        > 、 /     /  ̄ ̄ ̄
     ) 、    /   ヾ、    ヽ ヽ      (    `{    /
 // ⌒ヽ  /    〃 トミ  ___ >--‐=、   ヽ _ノ
  {       /    //     /         \__ノ

もしよかったら、アーチャーの話と律の話を番外編で書く?
考えられる余地として残したけれど、自分的にもわかりにくかった。

それじゃあ書くことにする。

夕方以降になってしまうけれど。

378 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 00:49:21.14 ID:2ndCiPc0
シリアスな場面でもドア「ニコ」を書き続けるのは何なの?死ぬの?

380 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 00:56:46.35 ID:A6BIJYAO
少なくとも今の自演社が書いてるやつはなぞるだけのクソクロスなことは明白
そもそもクロスなんて知ってるやつがほとんどなのに同じルートを人物変えてやる意味がわからない

387 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:12:03.76 ID:q0fZ6xMo
自演社擁護派はここでは少数派なのか

392 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:18:10.31 ID:RVlekcoo
擁護してやってもいいがあまりにも叩かれる要素が多すぎる
むしろ誘ってんだろ

396 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:22:58.34 ID:A6BIJYAO
本当に原作のfateしててアニメも見てるやつがあれを見て面白いって言ってるなら俺の感覚がズレてるんだろうな

今はキャラだけ違ってストーリーをなぞるクロスが流行ってんのかね
そしたらすまん。自演社に謝って来くるわwwwwwwwwwwwwwwww

398 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:27:14.97 ID:cBFWkJso
428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:25:34.00 ID:huw0/qd5O
面白い。ちゃんと伏線もひいてある。何故、ライダーがいないのか、キャスターの変なセリフとか。


どう見ても自演です、本当にありがとうございました

405 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 01:31:35.95 ID:q0fZ6xMo
>>398
自演社ってこういうことなのかwwwwwwワロタ

406 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:32:29.46 ID:9cX2Ab20
別にキャラ崩壊してても面白ければいいって
それよりも個人的には口調よりも呼び名が間違ってる方が気になる

タイトル覚えてないけど、途中まではそこそこ面白かったのに
律が紬って呼んで一気に萎えたSSとかある
あとあずにゃんが翠星石になってるのとかな

408 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:35:40.24 ID:2ndCiPc0
>>406
つまりキャラ崩壊してるのに面白くないから叩かれるんだぜっ!

411 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 01:36:55.86 ID:9cX2Ab20
>>408
自演社のSSはその代表だよね

457 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 08:12:23.62 ID:xjHuJ6.o
似たようなキャラ崩壊をどれだけ叩かれようと一向に止めない
ドア「ニコ」に離席復席をテンプレート化させて特定されようと必死

酉コテが叩かれるから、これなら文句言われないとでも思っちゃったのかな?
自演したことに対して反省する気持ちがあるならとっくに改善されてるよね
そうやってすり抜け方法ばかり模索してるから嫌われるのがまだ分からないの……

人気作品とのクロスなら、脚本引っ張ってきてキャラ当てはめればある程度読めるものになるのは当然

458 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 08:52:27.88 ID:c7P35Uoo
笑み社は所詮その程度なんだよ
外見も中身も借り物の創作で一部の信者に祭り上げられて満足して時間を無駄にさせておけばいいのさ

459 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 09:08:39.67 ID:94vWGIAO
真鍋唯とか言い出した時はポカーンだった

自演社はオリキャラでやってればいいのに

460 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 09:10:31.17 ID:wip9wxoo
>>459
それは思った。まあ俺が唯和に興味が無いからかも知れんが

462 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 09:16:30.72 ID:94vWGIAO
>>460
唯和が悪いわけではないが
いくらなんでも突然すぎる
それまで和が活躍してた訳でもねーのに

524 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:55:03.98 ID:C8NXBGUo
作者がうざいSSスレは荒れなくて作者がいい人で(ただし保守気味)信者がウザいSSスレが荒れる

527 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:22:30.57 ID:94vWGIAO
>>524
自演社は作者も信者もウザい

528 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:34:24.56 ID:C8NXBGUo
ID:94vWGIAO
笑み社嫌いすぎだろ
過去作教えろ

529 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:43:36.37 ID:94vWGIAO
>>528
すまんが読む専門なんだな
自演社は嫌いだが

530 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:45:24.91 ID:C8NXBGUo
じゃあ読む専用の視点から語って欲しい

534 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:07:53.41 ID:94vWGIAO
>>530
無理言うなwwwwww

かわりに自演社が嫌いな理由でも語ろうか
気持ち悪いオリジナルのキャラ設定をずっと使い続ける作者はアイツぐらい
しかも指摘されても気づかないからどうしようもない
コテは使うわ自演はするわ感想貰いたくて必死
ドア「ニコ」って何だよ、池沼か

535 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:16:21.99 ID:C8NXBGUo
そんなの誰もが思ってるよ
なんで異常にこだわるのか謎

536 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:19:55.48 ID:94vWGIAO
あと保守スレばっかだから
嫌でも目に付くのが何よりもクソ

537 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:26:38.30 ID:xjHuJ6.o
自演。そして一切の謝罪をせずに時が忘れてくれるだろうと高を括って平然と戻ってくるところ
批判的な意見はあの手この手ですべからく流そうとする頑固さというか自己中心さ
しかし現状としてSSだけ読めればいい奴や笑み社の過去なんて一切知らない奴もいる
前者は書き手にまわれば自然と理解するだろうし後者はそのスレに立ちあっていれば小さな嫌悪感くらいは持ったはず

こんな感じで謎は解けましたか

538 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:28:49.32 ID:C8NXBGUo
俺はむしろ笑み社作品を支持する人間の無知さにイライラしてるイメージが

539 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:32:08.92 ID:94vWGIAO
けいおんキャラだけじゃ飽きたらず
Fateキャラまでキャラ崩壊させる徹底っぷり
ギルや士郎書けないなら書くなよ

>>538
笑み社の女同士の絡みが上手いなんてレスがあって寒気がした

541 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:35:20.01 ID:C8NXBGUo
あいつ女だからな

彼女の信者だけじゃなくて書き手をやたらと持ち上げる人いるよね
才能があるだとか、センスがいいだとか、最近の中で一番面白いだとか
他人のssでましてや嫌いなssの作者がベタ褒めされるのとイラっとする
そういう過剰なベタ褒めはアンチの癪に触るだけだからやめて欲しい
自分もたまに言われるけど全然嬉しくない

542 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:37:51.74 ID:2ndCiPc0
>最近の中で一番面白い

これ、どのスレ見ても居るから笑えるwwwwww

580 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 09:29:39.18 ID:J59iYN60
笑み社のSS読む気ないから誰か産業で説明しろよ

581 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 09:33:06.56 ID:uBo85CAo
もう笑み社の話題やめにしないか。
ここの様子見て「嫉妬豚どもが私の話題で盛り上がってる!」と
ほくそ笑んでるんだぜきっと。

584 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 10:09:28.59 ID:Z11BZ86o
>>581
規制されてるからせめてここに書き込んでるだけ

586 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 10:12:37.34 ID:Z11BZ86o
ていうかね、中学生の時~は完全な駄文だったけど根性だけはあると思ってた
しかし今回は支援者が増えたから「じゃあ続けます」みたいな流されやすさと意思の弱さが見えてガッカリした
感想もらえると嬉しい、って言っておきながら都合の悪い感想は全スルーする辺りから怪しいと思ってたけど

590 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 10:54:09.77 ID:w6Kr9MAO
>>586
反応欲しいから出し惜しみしてるだけかと
書きたいなら書けばいいのにね

592 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 11:21:44.69 ID:XVALYwAO
女ほど内面描写
男ほど外面描写
にこだわるとか何かの本に書いてたな

でもSSの起源というか昔はほとんど女の人しか書いてなかったらしいから女だからつまらないって言うのは偏見だと思うが

まあ笑み社の肩持つわけじゃないけどな

593 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 12:07:39.14 ID:NopxPEAO
つまり女の書くSSがつまらないんじゃない
笑み社の書くSSがつまらないんだ





判子で押したような賞賛よりも中身のある「感想」を持ってきてあげたのできちんと参考にして下さいね

ただいま。

遅くなって申し訳ない。
聡のこと
アーチャーのこと
どちらを先に書く?

そろそろ再開する。

聡のことから始める。

――琴吹邸・ホール――

律「……キャスターとアサシンを倒して、もう引き返せなくなったな」

律「なあバーサーカー。お前の所為なんだからな。私が戦わなければなら
なくなったのは」

律「――唯とも、戦うことになったのはさ」

律(一週間前の、あの日だ)

律(私が、お前と出会ったのは)

律(アイツの、残酷すぎる運命が始まったのは――)

律「聡……。お前は――」

バーサーカー「――――」

律「……」

律「もうすぐ、セイバーと唯がやってくるな」

律「アーチャーは来るだろうか」

律「……澪とは、戦いたくないな」

律「――いや、唯とも戦いたくない。ホントは、戦いなんて嫌いなんだ」

律「……怖いよ。聡……」

――律の回想――

聡「なー! ねーちゃーん!」ごろごろ

律「どうした? 私の部屋でゴロゴロしやがって」

聡「ひまー」

律「私も暇だが、この暇を有意義に無駄にしたいんだ。漫画なら貸してや
るから、さっさと出て行きなさい」

聡「姉ちゃんと遊びたーい」

律「中学生にもなって姉ちゃんと遊びたいだなんて、いくらなんでも子供
すぎないか?」

聡「いいじゃんいいじゃん。姉弟なんだから、仲良ししようぜ。唯さんたち
みたいにさ」

律「憂ちゃんみたいになりたいのなら家事をやりたまえ」

聡「ちぇー。休日に家にいてさ、姉ちゃん彼氏とかいないのかよ」

律「そんなもんは、いませんっと」ごちん

聡「このタイミングで暴力!?」

律「中学生のくせに、やらしいこと考えるからだぞ。しかも実の姉で」

聡「世界一面倒な冤罪キター!」

律「ほら、中学生は自分の部屋で秘め事でもしてなさい」

聡「直接的な表現じゃないだけ、まだ姉ちゃんに乙女心があるから安心した
よ」

律「――ば、馬鹿!」スパン

聡「いたっ! ジャンプで殴るな!」

律「うるせえ! ハンターハンターが休載してるジャンプなんか必要ない!」

聡「FF14が出るんだから仕方ないだろ!」

律「……よし、私の機嫌をとるため、ここは弟自らがアイスを買ってきなさい」

聡「これはまた脈絡がないな。姉ちゃんのそういうところ、ダイスキでござ
います」

律「そんな棒読みじゃあ機嫌良くならないぞー」

聡「でも、まあいいや。何がいい?」

律「モナカー」

聡「ん。それじゃあいってくるよ」

律「……」

律「確かに、暇だな」

律「――」ごろっ

律「今週のナルトはよくわかんねー」

律「やっぱ、いぬまるだしだよな。今のジャンプはこれを柱にするべきなん
だよ」

律「……ププッ」

律「――保健室がバトル展開かー。まあ、仕方ないよな」

律「めだかとロックオンはそろそろ打ち切られろよ……」

律「……」パタン

律「ひまー」

律「澪に電話しよっかなー」

律「でも、取り立てて話すこともないしなー」

律「……聡のやつ、遅いなー」

律「とはいっても、出て行ってまだ5分くらいか。まあ、そんなもんだよな」

律「……なにしよっかな」

律「……」

テレビ「ちゃうねん。それはな、深い話やねん。わかるか上地」

テレビ「はい! 僕も松坂の球――」ブツン

律「――つまんねー」

律「聡ー、さっさと帰ってこーい」

聡「そう言われるのを待っていた!」

律「うわ!」

聡「……というのは冗談で。ほい、アイス買ってきた」

律「さんきゅー」

聡「ちなみに俺はガリガリくん」

律「随分とやっすいの買ってきたなー」

聡「ガリガリくんは攻守最強だぞ。当たりがでたらもう一本だしな」

律「それもそうだな」

聡「……姉ちゃんって、可愛いよな」

律「は?」

聡「いやだから、姉ちゃんは可愛いなって思ったの」

律「わけがわからない」

聡「同じクラスに、まあそれなりに可愛い子がいるんだけどさ。その子が、体
育だったかの時間で、姉ちゃんみたいに前髪をカチューシャで止めてたん
だ。そうしたら、びっくりした」

律「なんで?」

聡「……かなり、アレになったんだよ」

律「ああ……」

聡「それを見て思ったんだ。姉ちゃんって、よくもまあそんな髪型でも可愛いよなって」

律「そんな髪型っておまえー」ぐりぐり

聡「いたたたたた! 褒めてるのに! 褒めているのに!!」

律「……私、可愛いか?」

聡「弟が言うのはどうかとは思うけど、可愛いよ。澪姉にも負けないくらいにさ」

律「――ばーか」

聡「とまあ、そういう褒めも入れたところで、釣りしに行かない?」

律「……最初っから、それが目的だっただろ」

――港――

聡「それにしても、姉ちゃんって穴場探すのうまいよなー」

律「目の付けどころがシャープだからな」

聡「この港だって、誰も人いないもんな」

律「昔はけっこう栄えてたらしいぞ。産業まつりとかもやってたしな」

聡「あー。なんか覚えてるかも」

律「おまえ、迷子になってびえんびえん泣いてたんだぞー」

聡「うう……」

律「私のこと見つけたら、おねえちゃーん! って言って走り寄ってきてさ。
可愛かったなー」ぷにぷに

聡「ほっぺ触るな!」

律「あれー? 顔が赤くなってるぞー?」

聡「――フン!」

律「可愛い弟め」

聡「さっさと釣ろうよ。まったくもう……」

聡「ほら、姉ちゃんの釣り竿」

律「さんきゅっ! 餌までつけてくれて申し訳ないねー」

聡「一応男だからさ。そらっ!」ちゃぽん

律「さっすが! たくましい!」ちゃぽん

聡「……いい天気だなぁ」

律「本当だな。いい天気だ」

律「こういう日に、大好きな姉ちゃんと釣りなんて幸せだなぁ」

聡「セリフの順番的に俺が言ったみたいになるだろ! ただでさえ名前が
漢字一文字同士でわかりにくいんだから!」

律「てへっ!」

聡「なんだそのむかつく笑顔!」

律「な! 姉を敬えー!」

聡「敬えるか、こんな姉」

律「へー」

聡「あっさりと引き下がるね」

律「いや、そんなこと言うなら唯たちに聡のアノ写真見せちゃおうかなって」

聡「申し訳ないです」

律「まさか、あの聡くんがあんなことしてるなんてなー」

聡「お願いだから、やめてください」

律「部活でもエースで、もはや学校内に知らぬものはいないであろう田井中
聡が、あーんなことするなんてなー」

聡「頼むから、唯さんたちに見せるのだけは勘弁して」

律「あははー! 冗談だよー!」

聡「それはよかった……」ハァ

律「……釣れないなぁ」

聡「姉ちゃんがうるさいからだよ」

律「飽きてきたなー」

聡「弟との会話を楽しめ。そんなんだからモテないんだぞ」

律「いや、一応モテるぞ」

聡「マジ!?」

律「……女にだけど」

聡「あー。なるほどね。……ちょっとジュース買ってくるよ」すくっ

律「あれ? このへんコンビニあったっけ?」

聡「あそこの倉庫前に自販機があるんだよ。姉ちゃんはなに飲む?」

律「そうだったっけ? まあいいや。私はコーラ」

聡「おっけ」

律「チョイ待ち……ほら」

聡「あれ? 300円?」

律「さっきアイスおごってもらっただろ? そのお返しだよ」

聡「へえ、ありがとう」

律「もっと感謝の意を前面に押し出せよ。姉ちゃんのほっぺにならキスして
いいんだぞ?」

聡「澪姉に怒られるから、そういうのはいいって」

律「そこでどうして澪が出てくるんだよー」

聡「さーて、どうしてかなっと」すたこらさっさ

律「なんだよあいつー」

律「――しまった。また暇になってしまった」

律「――」

律「あ、釣れた」ちゃぽん

律「まだ小さいな。よし、お前は海に帰りなさい」

律「おっきくなったら、また釣られに来いよー」

律「……」

律「餌、くっつけるの難しいな」

律「父さんに教わったけど、聡みたいにいかないな……」

律「うーん……」

律「私、こういう細かい作業苦手なんだよなー」

律「悪く言えば大雑把。よくいえば豪快?」

律「――聡のやつ、遅いな」

律「自販がある倉庫って、あそこだよな」トコトコ

律「……」

律「あれ? 聡のやつ、いないぞ」

律「聡? さとしー」

律「……?」

?「―――――――」

律「え? はい?」

律「なに、この馬鹿でかい塊……」

?「―――――――――!!!!!!!」

律「!?」

律「……まさかこれ、イキモノ?」

聡「――」

律「聡!」

聡「……あ」

律「あれ、一体なんだよ! どうしてこんなところに――え?」

聡「――ね、ちゃ」

律「お、お前……お前……顔が……」

律「うわああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああ!!!!!!!!」

――回想終わって――

律(聡は、バーサーカーに触れて瞬間に契約、全ての生命力を奪われた)

律(でも――お前にだけ負担を負わせない)

律(だから、私は戦う。聖杯戦争のことなら、偽臣の書に書いてあったからな)

律(全身が令呪に覆われた聡は、バーサーカーの動き一つ一つに激痛
が走る)

律(頑張ってきたが、もう限界だ。今日の朝日を見ることなく、聡は死ぬだろう)

律(だから――)

律「今日で全てを終わらせるぞ。聡」

律(聖杯で、おまえを回復させてやる。部活ができるようにしてやる)

律「だから、たとえ唯と澪が相手でも――私は勝つ」

律「そうだろう? バーサーカーよ」

 
                                       ~了~

少し休憩してからアーチャー編を書く。

聡がバーサーカーになった訳ではなかったのか

バーサーカーがギルガメッシュって人に殺されたから聡はギリギリ助かったの?

そろそろ再開しようと思う。

>>682
そう。
聡が助かる方法は二つ。
朝日が昇る前にバーサーカーが死ぬか、律が聖杯を手に入れること。
後者は確実に回復するが、前者では障害が残ってしまい、聡はスポーツ
を断念せざるを得なくなってしまった。エピローグで澪が聡に食べられる
か聞いたのはそのため。

Why did she arrive there?
――琴吹邸・ホール――

唯「――来たよ」

アーチャー「遅いわよ。もう少しで、ミオを殺してしまうところだった」

セイバー「アーチャー! ミオはどこか答えなさい!」

アーチャー「この先にあるワイン庫にいるわよ。一応、今のところは無事」

唯「……澪ちゃんを返して」

アーチャー「それは出来ないね」

唯「どうして!?」

アーチャー「ヒラサワユイ。貴女を殺すからよ」

ランサー「随分なことを言うじゃねえかアーチャー。俺とセイバーの姿が見え
ねえとは言わせねえぞ」

アーチャー「――単独行動の限界が過ぎ、魔力が枯渇しかかってるワタシ
相手に、あなたたちが戦う?」

セイバー「当然です。ユイが、貴様と戦うことは――」

唯「私が戦う」

セイバーランサー「!?」

唯「私が、アーチャーと戦う。それで、澪ちゃんは返してくれるんでしょ?」

アーチャー「そうね。貴女と戦ってる間は、セイバーとランサーが空いちゃう
もの。そうしたら、ミオを助けるのも楽チンね」

唯「――セイバーちゃん、ランサー。そういうことだから、いい?」

セイバー「了解しました。しかし、こちらにも条件があります」

ランサー「同じく。無条件ではやらせられねえな」

唯「?」

セイバー「私たちはここで見守ります。ユイが、アーチャーに命を脅かされる
ことがあろうことなら」

ランサー「俺たちが加勢する。だが、それまでは手は出さねえ。これでいいか?」

唯「……うん。それならいいよ」

アーチャー「これはまたきついなー。どっちにしても、私はもうここで終わり
ってことじゃない」

セイバー「当然でしょう。本来なら、すでに貴女を切り伏して、ミオの救出
に向かっている」

アーチャー「――それもそうか。それじゃあ、ヒラサワユイ。決着をつけま
しょうか」

唯「――うん」

アーチャー「――ワタシの真名は、知ってるわよね」かつん

唯「……唯、でしょ?」

アーチャー「そう。ワタシの名は真鍋唯。出来れば、この名前は名乗りたくな
かったけれど、ワタシという存在は、すでに平沢唯としてではなく真鍋唯と
しての記号が正しい」かつん

唯「――和ちゃんと、一緒になったの?」

アーチャー「それも正解。和は、私にとってかけがえのない人だった」かつん

唯「私だってそうだよ。でも、私が守りたい人は和ちゃんじゃなくて――」

アーチャー「ミオなんでしょう。そんなこと、とうの昔に気が付いていた。だか
ら、ワタシは貴女と戦う」かつん

唯「澪ちゃんを助ける。そして、守る。そのための障害になるのなら、私は、
たとえサーヴァントであっても倒す」

アーチャー「とぼけた顔をしていても、本質的には変わらないわね」かつん

唯「だって、同じ唯だもん」

アーチャー「それもそうか」かつん

アーチャー「それじゃあ、始めようか。どちらの唯が正しいのかを、ここで決め
てしまおう」カツンッ!

唯「――セイバーちゃん」

セイバー「はい」

唯「剣、貸してくれない?」

セイバー「断る理由はありませんよ。私は貴女の剣なのですから、私の剣
も、等しく貴女のものだ」

唯「……ありがとう」

セイバー「これで、私が手を出すことはできなくなりました」

ランサー「俺の槍を奪ってでも助太刀に入るかい?」

セイバー「まさか。貴方の魔槍は、貴方にしか扱えませんよ」

ランサー「それもそうか」

唯「――思ったより、軽いんだね」

アーチャー「それは妖精が鍛ったものだからよ。持った者の、力によって
その形状すらも変化させる」

唯「詳しいんだね」

アーチャー「無駄話よ。――ギー太、ちょっと荒く扱うけど、我慢してね」

唯「ギー太――まだ、持ってたんだ」

アーチャー「これは私が一番楽しいと感じた瞬間の思い出の象徴。ワタシは、
生涯このギターしか使わなかった」

唯「ムギちゃんが聞いたら、きっと驚いて喜ぶよ」

アーチャー「興味がない。それよりも、切りかかってきなさい。カウンターとる
から」

唯「――!」ブン

アーチャー「まるで素人ね。間合いも剣の握りも全て0点よ」

唯「うるさい!」ブン

セイバー「……駄目だ。あれでは、いくら魔力が僅かしかないとはいえ、
アーチャーには触れられない」

唯「――!!」ブンブン!

アーチャー「どこを見ているの?」

唯「――アーチャー!」

アーチャー「少し静かにしなさい」ガン!

唯「ん!」ぐらり

アーチャー「やっぱり、ギー太で殴ると効くでしょう? レスポールは重いから
ね。よくもまあ、こんな代物を選んだものよ」

唯「ギー太で、ギー太をそんなふうに使わないでよ!」ブン

アーチャー「――だったら、これはなんのためにあるのよ!」ガン!

唯「――痛っ!」

アーチャー「私にとって、もうギターなんてものは意味がない! 戦いの道具
に使えるのであれば、このギターはもうそれしか価値がない!」

唯「違う! ギターは楽器なの! 人を傷つけるものじゃない!」

アーチャー「なら――他者を傷つけないために、自分を傷つけていいの!?」

唯「――!」

アーチャー「私には、かつてのヒラサワユイには夢があった!」ガン

唯「あ――!」

アーチャー「武道館でライブをして、アーティストになってお金を稼いで、
憂に楽をさせたい! そう思った!」

セイバー「……」

唯「ハァ……ハァ……」

アーチャー「そうよ。私には才能があった。だから、澪ちゃんやりっちゃんたち
をおいて、あっさりプロになれたし、CDも飛ぶように売れた」

唯「――」

アーチャー「そのために何をしたか。どこかの社長と寝たり、そういった汚い
ことなんて一つもせず、ただ愚直なまでに鍛錬した!」

ランサー「――」

アーチャー「置いてきてしまった仲間たちのため。蔑ろにしてきた妹のため
に、私は孤独に震えながらも、それに耐えてきた」

アーチャー「得るものはいくつもあった。カネなんて、使っても使っても次の
日にはその10倍の額が振り込まれる。そんな、夢のようでいて幻のような
生活の中で、私は結局一つのことしか知らなかった!」

唯「……歌うことと、弾くこと」

アーチャー「そうよ。それしか知らなかった私は、まるで子供のよう
に――否、未だ子供だったのよ。あの時の私は――」

セイバー「ユイ……」

アーチャー「そうして、武道館での夢が叶ったの。それでも、私の心の中は、
変わらずに空っぽのままだった」

セイバー「――」

唯「夢が叶ったのに、空っぽ――?」

アーチャー「私にとって、夢は軽音部のみんなと武道館のステージに立つ
ことだった。それを、たった一人でしか果たせなかった私は、何も得ること
もなく、そのライブを終えた」

アーチャー「終わっても、なにも感じなかった」

アーチャー「こんなにも、こんなにも意味のないものだったのかと、恐ろしさ
すら感じたよ」

唯「……そんなこと」

アーチャー「そんなことがあったのよ。それでも、夢を叶えても私が出来るこ
となんて、一つしかなかった。だから――私は歌い続けた」

アーチャー「歌い続けると、誰もが私を見てくれた」

アーチャー「ギターを弾いているだけで、誰しもが私を好きでいてくれた」

アーチャー「――永く、本当に永く孤独だった」

アーチャー「でも、私にも転機があった。27歳の春のことだ」

アーチャー「イギリスでの公演で、私は街で和と再会したの」

唯「――和ちゃんと……」

アーチャー「何も変わっていなかった。あの時の、私の世話をしてくれたあの
頃と、なにも変わってくれないでいた」

唯「……」

アーチャー「私たちが、再びその関係を修復するのに時間は要らなかった」

セイバー「ノドカ……」

アーチャー「ずっと、共にあろうと誓ったのは、再会して一年後のことよ」

唯「――私が……和ちゃんと……」

アーチャー「毎日のように愛し合った。毎日のように、私たちは――」

唯「――」

アーチャー「しかし、そのころには私は世界的なアーティストになっていた。
知らぬ間に、気が付いたらだ」

唯「……」

アーチャー「ヒラサワユイ。世間は、私たちを見てどう感じると思う?」

唯「幼馴染同士が、恋人になってよかったねって……祝福してくれ――」

アーチャー「ちがう!! 世間は、マスコミは私たちを異常者として祀り上げ
た! 同性愛者、それは世界的なアーティストであっても、侮蔑の対象でしか
なかったのよ!!」

唯「――!」

アーチャー「毎日のように流れていた私の歌は、一部の国では発禁ものと
なり、どの国に行っても誰かに後ろ指を指される始末だ。私は、そんなも
のは望んでなどいなかった!」

唯「うそ……」

アーチャー「それでも、私は歌い続けた。それしか知らなかったし、なにより
もこれからは和を守ってあげるという在り方を選んだから!」ガン!

アーチャー「辛かったなどというレベルではなかった。スタッフの目は軽蔑。
私の同類の人間からは、肉体の関係を迫られた! それは、決して一度や
二度ではない!」

アーチャー「それでも私は笑うしかなかった。和に、心配をかけたくなかった
から……」ギン

唯「――んん……!」ギギギ

アーチャー「歌ってさえいれば、私を見てくれていた。私は、今の自分を忘れ
ることができた」

アーチャー「でもね――和には、そんなものはなかったのよ」

アーチャー「……和は、パパラッチのクルマに撥ねられて……」

唯「!?」ギン!

アーチャー「和がいなくなって、私はまた一人になってしまった」ガン!

唯「……!」

アーチャー「――本当なら、それで終わりなんだろうけど。私には、やっぱり
歌うことしかできなかった」

セイバー「ユイ、アーチャー……」

アーチャー「世間は、私を悲運のヒロインとして扱った。それを利用しようと、
多くの団体や組織が、私にすり寄ってきた」

アーチャー「全てが真っ当なものではなかった! 怪しいものもあったし、中
には宗教さえも、私を利用した!」ギン!

唯「――!」

アーチャー「でもね、そんなことなんてどうでもよかった! 私は私を生まない
ために、私を犠牲にしてもいいと思った!」

唯「……ん!」

アーチャー「それで赦してもらおうなんて思っていたわけではない。ただ私
は――私が知りうる限りの世界では、誰にも涙してほしくなかっただけ……」

アーチャー「……」

唯「だから――自分が可哀想だって言いたいの?」

アーチャー「その通りよ! 私は不幸よ! あんな目にあっても、それでも
笑っていられる人間なんていない!」ギン!

唯「私は笑っていてみせる!」ギン!

アーチャー「――!」

唯「だって、私は一人じゃないもん! 澪ちゃんだって、りっちゃんだって、
ムギちゃんもあずにゃんも――憂も和ちゃんもセイバーちゃんもランサーも、
皆がいるもん!!」

アーチャー「皆が、私から離れていった! 最終的には、世間は私を忘れ、
誰も私を見てなどくれなくなった!」

唯「壁を作らないでよ! 構ってほしいから歌ってたくせに!」

アーチャー「違う!」

唯「そうだよ! 結局、アーチャーは逃げてただけなんだ!」

アーチャー「……貴女と、私では存在が違う」

唯「当たり前だよ」

アーチャー「生きてきた世界も違う」

唯「――それが、違うということなんだから」

アーチャー「……合点がいった。やはり、和のために殺しておくべきね」

唯「……私は、澪ちゃんと一緒に生きる」

アーチャー「なら、ミオのために貴女を殺す」

唯「――お互いに、譲れないんだね」

アーチャー「それが、違うっていうことなんでしょう?」

唯「うん。……セイバーちゃん、見ててね」

セイバー「もちろんです。マスター」

唯「―――――――――――!!!!」ダッ

アーチャー「―――――――――――――!!!!」ダッ






唯「――――私の勝ちだね。アーチャー」


アーチャー「ええ。やっぱり、ワタシと貴女は違う人間だよ」







――――

澪「――ねえ、アーチャー」

アーチャー「なぁに? 正直、もう魔力なんて0以下なんだけど」

澪「それはそうだろ。私を裏切ったんだから」

アーチャー「それは、軽くごめん」

澪「謝る気ないだろ」

アーチャー「ないかも。……後悔は、してないしね」

澪「まったく。変わらないな、唯はさ」

アーチャー「――いつから、知ってた?」

澪「わからないよ。気が付いたら、アーチャーが唯にしか見えなくなってた」

アーチャー「フフ。それって、ただの恋じゃない」

澪「そうかな。――そうかもしれないな」

アーチャー「――私を、頼んだよ」

澪「あの可愛い唯が、お前みたいにならないように頑張るよ」

アーチャー「――澪ちゃん」

澪「なんだ? 足元、もう消えてるじゃないか」

アーチャー「――私に伝えておいてね。澪ちゃんを悲しませたら、今度こそ、
私は殺しに行くよって」

澪「――それじゃあ、これが最後の別れだな」

アーチャー「そうなると思う」

澪「さようなら、アーチャー。お前との時間は、多分、人生の宝になると思う」

アーチャー「これからも、私と過ごす時間だよ」

澪「唯とお前は、違うよ」

アーチャー「まったくだね。ちょっと、唯に嫉妬しちゃうよ」

澪「……うん」

アーチャー「じゃあ、また会おうね」

澪「いいや、これで最後だよ。絶対にな」

アーチャー「――うん」

 これが一人の英霊の物語。
 これが、一人の女の物語。
 これからが、二人の物語。

                                    ~了~

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