妖狐巫女「魔法少女、ですか?」アンドロイド「はい!」 (60)

妖狐とアンドロイドがいわゆる魔法少女となって(?)戦う話です
鬱展開とかは無いと思います

※魔法少女といってもまどマギとは全く関係ないです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364044298

「奴らが『ゲート』に入った、だと!?」

「はい、今確かに波動を確認しました。規模はせいぜい低級の者が4〜5体程度でしょうが」

「バカな……奴らが『ゲート』を動かすだけの魔力を使えるとは思えないが」

「しかし、『入った』という事は事実です。おそらく人間界へと行っているでしょう」

「……イルとウルを呼べ。それと、『ゲート』への魔力注入部隊として第一小隊、護衛として第二小隊を召集、『ゲート』に派遣しろ」

「了解!」

「ふぁぁ……」

どうも始めまして。とある神社の巫女やってます。名前はありません。
年齢は、先月の誕生日を持って324歳になりました。もちろん人間ではありません、いわゆる妖狐です。
見た目は人間でいうと、13歳程度の少女です。成人女性とかに化けてもいいのですが、こっちのほうが気に入っているので。

「ヨーコちゃん、今日もせいがでるねぇ」

「山田のおじいちゃん、毎日ご苦労様です」

参拝客はちらほらって感じです、なんせ山奥なので。ほとんど常連の方です。
名前を聞かれたときは、「無い」と答えるわけにもいかないので「陽子」と名乗ることにしています。妖狐なので。

「ほら、ヨーコちゃんの好きなお稲荷さん、ばあさんが渡してくれって」

「わぁ、ありがとうございます!」

「ふぉっふぉっふぉ……じゃあまた明日の」

「また明日!」

神社の仕事をして、暇な時間はテレビを観たり。何百年と繰り返してるので、平凡な日常に飽きるとかそういう感情はあまりないです。




第一章
「魔法少女になってくれませんか?」


「おええ……気持ち悪い……」

「ちょっとお兄ちゃん大丈夫?」

「ボク、乗り物酔いしやすいんだよ……」

「ゲートって乗り物じゃないと思うけど?」

「くぐってる間、もの凄いぐるんぐるんしてたじゃないか……」

海松市、山奥にある小さな湖。ほとりに、テニスボール程度の大きさの球体にに可愛らしい顔を描いて羽をつけたみたいな生き物が二匹、
座って(?)会話している。乗り物酔いしている兄のイルは水色で、妹のウルは薄ピンク色である。

「ボクは少しここで休んでるから、ウルは先に行っててくれないかな?」

「うん! 分かった!」

「いいか? 絶対に『潜在魔力を持つ少女』以外と契約しちゃダメだからな?」

「分かってるよぉ」

「それに、できるだけ潜在魔力が大きくなくてはいけない。ボク達が契約できるのはそれぞれ一人だけだ、失敗したら人間界はドゥーム達に滅ぼされるんだからな」

「もー! ウル子供じゃないんだから大丈夫だって! 授業ちゃんと聞いてたし!」

「わ、わかったよ……」

「べーだ!」

いわゆるアッカンベーをしながら、ウルは飛んでいった。

「心配だなぁ……」

乗り物酔いの時にうるさい妹と会話するのはつらい、と一人思う兄であった。

10分程度だろうか。心地よい風にあてられ、イルは乗り物酔いから回復した。

「よし、ボクも行くか」

浮き上がると、ウルとは逆方向に飛んで行く。

「普通の人間はボク達を視認することができないんだったよな。不思議な感覚……」

「と言っても、こんな山奥だし全然人間がいないんだけどね……」

人間界はあまりきれいでないと聞いていたが、存外きれいな所だな、とイルは思った。
海松市はそこまで開発が進んでいないため、自然が多く残されている。
イル達が都会を見てどう思うかは未知数である。

「お、何か建物が見える」

真っ赤な鳥居に、荘厳な本殿が目を引く、立派な神社であった。
もっとも、イルはこのような建物を見たことがない。

「面白い建物だな……寺院か何かかな? 人がいるかもしれないし、見学してみよう」

イルは神社に向かう。

「なんだろう、神聖な雰囲気というか、落ち着くというか……」

「これはなんだろう? 赤い門と、怪物の像が二体……?」

イルがもの珍しそうに神社を探索していると、白と赤の服を着ている少女が掃除をしているところを見つけた。

「お、人が居た! へぇ……授業で聞いてはいたけど、やっぱり大きいんだなぁ。でも、変わった服を着てるなぁ……」

ふよふよと近づき、ためしに挨拶をしてみる

「こんにちは、って、そっか僕の姿は普通の人には……」

「むっ、あやかし!?」

突如少女が振り向いたかと思うと、長細い紙のようなものを投げつけてきた。

「!?」

イルは驚き、とっさにかわす。

「ちょっと待ってよ、ボクは悪者じゃない!」

「確かに、あやかしにしては妖力を感じません……貴方、何者ですか?」

少女は長細い紙のようなものを構えたまま訪ねた。

「ボクはイルだ。ミミル星から来た妖精だよ!」

「よう…せい…?」

「とりあえず、あなたに悪意はなさそうですね。立ち話(?)もなんですし、部屋でお話しましょう」

「ありがとう! ……そういえば君の名前は何ていうの?」

「陽子と呼んでいただければ幸いです」

「ヨーコだね、分かった」

部屋に入ると陽子は、一瞬躊躇したもののイルに座布団を用意し、自分も座布団に座った。

「面白いイスだね、初めて見たよ」

「確かに座るものですが、これはイスではありませんよ。座布団と言うんです」

「ヨーコ、君はボクみたいなモノを突然見ても驚かないんだね」

イルは、人間は初めて妖精を見ると驚くと聞いていたので意外に感じていた。

「十分驚いていますよ、妖怪ではない得体のしれないモノが突然現れたんですもの」

「ボクには驚いてるように見えないんだけどなぁ……」

イルは困惑した。

「それに、妖怪っていうのはなんなんだい?」

「うーん、なんていうんでしょう……得体のしれない非日常的な生き物、でしょうかね。もっとも生きてはいないんですが……」

「その定義だとボクも君たちにとっては『妖怪』にあたるんじゃない?」

「なんていうんだろう、種類が違うというか……言葉って難しいですね」

「まぁ、ちょっと意地悪を言ったかもしれないけど、君たちの言葉ではボク達を『妖精』って呼ぶことは知ってるよ」

「それだと、妖精というか、マスコットキャラクターとかのほうが近いかもしれませんね」

「そうなんだ、まぁ妖精ってことにしといてよ」

「分かりました」

少女はあまり納得していないようだった。

「て、そんなことはどうでもいいんだ!」

イルは大事なことを思い出した。

「?」

「ちょっと、君を『視させて』貰うよ?」

「見るとは?」

イルは目を瞑り、人間でいう第六感を研ぎ澄ます。
陽子の『潜在魔力』を『視て』いるのだ。

「これは!?」

イルは驚愕した。




少女は、とてつもない潜在魔力を有していたのである。

「何か見えたのですか?」

「ヨーコ、ボクから頼みがある」



「魔法少女になってくれないか?」

「魔法少女、ですか?」

「うん!」

「あの、可愛い格好に変身して敵と戦う?」

「そうだよ! あ、君たちにはドゥームという怪物と

「なります!」

陽子はイルの言葉を遮り叫んだ。

「な、なってくれるの?」

「私、じつは魔法少女に憧れていたんです!」

「そうなの?」

「はい、ここ数年魔法少女アニメを見てきて、私もああいう可愛い格好に変身して戦ってみたいなーって思っていたんです!」

「なら好都合だ! でも、怖い敵と戦うことになるけど大丈夫?」

「はい! こう見えても私強いんで!」

(自分の持つ潜在魔力を認識しているのかな? そんなこと聞いたこともないけど…まぁいいか)

「そうなんだ、それなら大丈夫だね!」

「大丈夫です!」

「それじゃ契約だ! 両手を差し出してくれる?」

「こうですか?」

陽子が両手を差し出すと、その上にイルが乗る。


「強き少女よ、力を差し出せ。魔力の欠片と、溢れる希望を。今、ここに。」

「マジカル・コントラクト!!!」

イルが詠唱を終えた突如、陽子はまばゆい光に包まれる。

「最後に、マジカルリングを召喚すれば魔法少女となる」

「どうやって召喚すればいいの?」

「サモン・マジカルリングと叫ぶんだ、そうすれば契約完了だ!」

「サモン・マジカルリング!!!」

陽子の周りが虹色に輝き、契約が完了した、と思われたその刹那



ピキィ、という激しい音とともに、

陽子は後方に吹き飛ばされた。

「陽子!?」

イルは慌てて陽子のもとに飛んでゆく。

「い、痛たた……」

「大丈夫かい!?」

「大丈夫だけど……契約は?」

「そ、そうだ契約! ええと……そういえば困ったときはこれを読めって言われていたな!」

イルはどこからか[魔法少女契約完全マニュアル]と(妖精の言葉で)書かれた本を取り出し、焦りつつページをめくる。

「ええと、サモン・マジカルリングが失敗した場合……と」

ごくり、と陽子が唾をのむ。

「契約は不完全契約となり、潜在魔力の解放は行われない」

イルはがたがたと震えだす。

「原因としては、潜在魔力を持たない者と契約を行った、対象に何らかの魔術的プロテクトがかかっていた、対象が感情エネルギーを持っていなかった、等の理由が考えられる」

「つ、つまり……」

「失敗だ……」

イルが人間だったら顔面蒼白となっていただろう。

「も、もう一回とかできないんですか!?」

「契約は一度しかできない……つまり、ボクはもう契約できないんだ」

「そ、そんな……!」

「どうしよう……! 契約できる妖精は限られてるのに!」

「……魔法少女が必要なのには何か差し迫った理由があるの?」

「そういえば、説明不足だったね……」


地球とは遠く離れたミミル星。美しい自然と共に、妖精たちは平和に暮らしていた。
だが突如、『恐怖の女王』が現れ、封印の城を乗っ取り邪悪の国を設立する。
そこでは負の感情を糧に生きる「ドゥーム」と呼ばれる怪物が生まれて、妖精たちと対立する。
今回、ドゥームが人間界へとつながるゲートに入ってしまったため、
『魔法少女』となる少女を探すためににイルとウルが選ばれ、人間界へと旅立つ。
イルはこのように説明した。

「ど、どうしたら……」

「とりあえず、今は不完全な契約を取り消すか契約を完全なものに治す方法を考えよう」

「そうですね……!」

「とりあえず、失敗したのに思い当たるフシはある?」

「……」

「……あ! もしかして」

「何!?」

「私が少女じゃないからとか、でしょうか……?」

「え? 少女じゃないの?」

「はい、私先月の誕生日を持って324歳になりました……」

「……は? え、ちょっと待ってボクの知識だと人間の寿命は長くても100歳前後って……」

「私、人間じゃないですよ?」

「……」

「?」

「……ええええええええええ!?」

小さな神社に、小さな妖精の叫びが響き渡る。

……聞こえる人間は限られているが。

>>12
×人間界
○地球

「君、人間じゃなかったの!?」

「はい、妖狐とよばれる妖怪の一種ですよ」

「ヨーコ? って君の名前じゃなかったの?」

「うーん、漢字……読み方は一緒ですが意味が違います。狐の妖怪、って意味です」

「君が妖怪だったとは……」

「普段は人間の格好していますからね……」

「じゃ、あのとき感知した潜在魔力はなんだったんだろう?」

「……私が普通に持っている『魔力』を間違えて感知した、という可能性が」

「そ、そうかも……確かにもともと魔力を持ってる人間を『視る』なんてケースは想定していなかったし」

「……ごめんなさい、私が気づいていれば」

「いや、ボクが見抜けなかったのが悪かったよ」

「……」

「はぁ……どうしようかなぁ」

「あ、もしかして私が普通に魔力を使えばその『どぅーむ』とやらを倒せるのでは!?」

「それは無理だ、マジカルリングがないとドゥームの居場所を見つけることができない」

「ダメですか……」

「ごめんね、色々迷惑かけて……ボクは帰ることにするよ」

「……イルさん、ごめんなさい」

「……ってあれ、そこに落ちているのって……?」

「これは、マジカルリング……の元だね」

「元とは?」

「このリングに、少女の持つ潜在魔力の一部を注入することでマジカルリングとなるんだ」

「潜在魔力の一部を媒体として、潜在魔力を具現化して魔力を使うことができるようになるのさ」

「それなら、このリングに私の魔力を注げば良いのでは!?」

「た、確かに……でも、そんなことマニュアルにも書いてないし、できるかな……」

「何事も挑戦、ですよ!」

「……そうだね、やってみようか!」

「本来は、少女側が『マジカル・コントラクト』状態でサモン・マジカルリングと詠唱することで潜在魔力をリングに導入することができる」

「ふむふむ」

「『マジカル・コントラクト』状態というのは、普段秘められている潜在魔力を取り出しやすくする状態なんだ」

「ふむふむ」

「『マジカル・コントラクト』はボクはもう行えないが、今は必要はないという事だね。なぜなら君はいつでも魔力をとりだせるから」

「なるほど」

「問題は、リングに導入できるのが『潜在魔力』だけということなんだ」

「というと?」

「君の持つ魔力は、おそらく潜在魔力を『加工して』使えるようにしたものなんだ」

「どういう事でしょうか……?」

「うーん、例えれば、君が原油を持っているとしよう。そのままでは使えないが、精製すればガソリンとして使えるようになるよね」

「原油が潜在魔力、ガソリンが魔力、というわけだ」

「なるほど! 妖精なのに人間の事に詳しいんですね」

「勉強したからね……」

「話を戻すけど、君はどうやら『潜在魔力』を無意識下に『魔力』に変換しているようだ。だから、『潜在魔力』のままで取り出す必要性がある」

「どうしたらいいのでしょうか……?」

「それはボクには想像がつかないな……何か方法は無い?」

「うーん……」

(思い出せ、私が最初に魔術を使った時の事……)

ーーー
「そう、御前の持つ『妖力』を、頭の中で想像するんじゃ……」

「む……!」

ドガアアアアン

「痛ったぁ……!」

「うむ、術はまるで違うが、『妖力』を使える形にする、その感覚はそれだ」

「はい、おじい様」

「馴れてくれば、使える形の妖力を常に纏うことができる」
ーーー

「イメージして、変換……」

「普段息をするようにしていることだから、それを止めるのはなかなか難しいですね……」

「習慣化というのは怖いんだね」

「……変換を、止める……」

「……!?」

「ん、今違う感じの魔力を感じたよ!」

「これが、潜在魔力!?」

「恐らくそうだね、さぁ、今だ!」

「分かりました!」



「サモン・マジカルリング!!!」




  リングは虹色の光を帯び。ふわ、と浮いて陽子の手を離れる。

  光が拡大していくと、完全に陽子を包んで、『魔法少女』用に変換された魔力が全身に行き渡る。

  こそばゆい感覚と共に、身に纏っていた巫女装束が、輝いて別の衣装に代わってゆく。


  陽子がイメージする、『魔法少女』へと『変身』が行われ。

  今だ虹色に輝くマジカルリングが、陽子の左人差し指に装着される。


白を基調として、赤い模様があしらわれた華やかな衣装。
和風なイメージを残しつつ、現代らしく可愛らしいデザイン。
履く機会のなかったミニスカートは、陽子にとっては恥ずかしいけど新鮮であった。

「これが……魔法少女……!」

「成功だ、陽子!!」

「良かった……!」

陽子はイルを両手で優しく包み込み、胸に抱き寄せる。

「陽子、君のおかげで助かったよ」

「ううん、私も無事成功して嬉しいです!」

「それに、地球を救わないといけないですし……!」

「そうだね、これからがスタートだもんね」


「……陽子、ドゥーム達を倒すのは楽じゃないかもしれない」

「いまは弱い個体が4〜5体居るだけだけど、また増えるかもしれないし、もっと強いのが攻めてくるかもしれない」

「正直、危険があるかもしれない、いや確実にあるだろう。辛いことだってあると思う」

「だからボクは戦闘含め普段の生活まで全力でサポートしていくつもりだよ」

「長い付き合いになると思う、これからよろしくね、陽子」

「ありがとう、イル」




「不束者ですが、よろしくお願いします!」

勢いで書き始めてしまいました。
台本形式以外で書くのは初なので、読みづらい部分やおかしなところあれば指摘していただけると嬉しいです。
一応プロットは作ってありますが、遅筆なのはお許しください。

ーーー

新たな魔力兵器の誕生に伴う波動を、嗅ぎ付けたものがいた。

「妖精どもの魔力波……? どうやら『契約』とやらが行われたようだな」

「今襲撃すれば確実に殺れる、そうすれば俺の昇進は間違いない!」

黒い影は眠りから覚め、キヒ、と笑う。
邪な思いを胸に、波動を感じた方向に向かって飛んで行った。

ーーー

「今度から変身するときは、指輪を高く掲げて『マジカライズ・トランスフォーメーション』と叫べば良い」

「マジカライズ・トランスフォーメーションですね!」

「うん、良い感じだね」

「それで、そのドゥームとやらは……」

「死ねええええ!」

陽子の言葉を遮るように、黒い影が急襲する。本来なら致命傷を与えられるはずであったが、相手が悪かった。
陽子は身を翻し、対魔の術を発動する。

「悪霊退散!」

ごう、という激しい音と共に、衝撃波が黒い影を襲う。陽子が異形の者と戦う際に用いる術の一つである。

「こ、これは?」

見たことのない能力に、イルは戸惑う。

「霧散!」

弱った黒い影に、更なる追い討ちをかける。黒い霧となり敵は霧散した。

「ふぅ、今日は侵入者が多いですね……」

「まだだ! 後ろ!」

強襲者を倒し安心して振り替えった陽子に向け、イルは叫んだ。

「な……」

陽子の背後に、倒したはずの黒い影の体当たりが炸裂する。

「かは、っ!」

陽子は吹き飛ばされた。

「陽子!」

「なんだなんだ、妙な力を使いやがるな」

黒い影は人間の言葉を話す。

「陽子、こいつはドゥームだ!」

「これが、ドゥーム? 私の術が効かないなんて……」

陽子は驚きを隠せない。

「はは、お初にお目にかかるな、お嬢さん! 悪いけど、死んでもらうぜ?」

ドゥームはその体から、鋭利な黒の触手を伸ばし、陽子に襲いかかる。

「くっ、除霊之護符!」

異形の者に対して強固な耐久性を持つはずのバリアを展開するが、その効果はドゥームの触手を相殺するに止まり、あえなく破壊される。

「そんな!?」

「変身だ! 恐らく君の術ではドゥームは倒せない!」

イルが叫ぶ。陽子はこく、と頷き、指輪を掲げて呪文を唱える。

「マジカライズ・トランスフォーメーション!!」

リングから発せられる光は陽子を包み、魔法少女への変身が行われる。
綿密に練られた魔力の渦が取り巻き、ドゥームが攻撃を加えても弾かれる。
魔法少女の変身を守っているのだ。

「変身完了、です」

変身は10秒ほどで終わった。刹那、ドゥームが攻撃を仕掛ける。

「なんの、先手必勝!」

「甘い!」

陽子は持ち前の反射神経で攻撃をかわすと、反撃を開始する。

「え、ええと……」

技名を知らないので叫ぶ言葉に困るも、頭の中で思った通りの技が放たれる。
ビーム状の炎がドゥームに直撃した。

「ぐはぁ!」

「勝負あり、ですね」

「く、クソ……!」

ドゥームは力尽き、ふっと消えた。

「た、倒せました?」

「うん! 今度は倒せたみたいだよ!」

陽子が変身を解こうとすると、自然と元の姿に戻った。

「対魔の術が効かないなんて、一体ドゥームとはどのような存在なのでしょうか?」

「うーん、ボクにも分からないけど、恐らくドゥームは地球の妖怪とは性質が違うんだろうね」

「性質、ですか?」

ーーー
一人と一匹は、陽子が普段生活している部屋に場所を移した。

「ありがとう。へぇ、面白い飲み物だね」

「緑茶、って言うんですよ」

「……うん、なかなか美味しいね、この固いお菓子によく合うよ」

「お煎餅と緑茶は鉄板の組み合わせなんです」

「間違いないね」

「……本題に戻りましょう、妖怪とドゥームの性質の違いについて教えてください」

「そうだね、色々説明する必要があるね」

イルはテーブルの上に乗ったまま、話し続ける。

「もともとドゥームには、物理的攻撃が効かないんだ。物理攻撃が効いて弱らせたり一見消えたように見えても、すぐに戻ってしまう」

「さらに、どうやら地球とボク達の星では魔法の構成が根本的に異なるようだ」

「つまり、ドゥームにとって『地球での魔力』は物理的攻撃と同じで、存在を消滅させるには至らないんだ。あくまで推論だけどね」

「なるほど、『変身』することで貴方たちの世界の魔法が使えるようになるんですね」

「その通り!」

「そうなると、魔法少女用の訓練をしないといけませんね……」

「でも、ボクが教えてないのに魔法が使えていたよね」

「篝火という術の応用です、なんとなくやったらできてしまいました」

「やっぱり元から魔法を使えるというのが大きいね」

「それと、技の名前とかってつけた方が良いんですかね?」

「カガリビで良いんじゃない?」

「うーん、何か叫んだときにもの足りなさそうで……」

「中々難しいね」

すいません、途中寝てました。
第一章は終わりです。
次からやっとアンドロイドが出てきます。

第一章、というより「第一話」の方がいい気がしてきました。
というわけで>>4は「第一話」に訂正します。


第2話
「ロボット、ですか?」

「べーだ!」

時は遡り、イルの妹ウルが湖を出発した頃に戻る。
イルの妹ウルは森をふよふよと飛んで移動していた。

「もー、お兄ちゃんてばいっつも子供扱いするんだから!」

「それにしても、木ばっかりでぜんぜん人間がいないなぁ……」

「どこかに町みたいなのはないのかな?」

「……疲れた、とりあえず降りて休もっと」ドサ

切り株に着地すると、一息ついて回りを見渡す。

「それにしても、見渡す限り木、木、木!」

「魔女とかでも住んでるんじゃないの!? 」

「もう、チキュウは凄い発展してるって言ってたのにぜんぜん期待外れじゃない!」

一人ごちていると、突如ガラガラ声に話しかけられる。

「ぎゃーぎゃーうるせえな、何をそんなに喚いてんだ」

「わ、なっ何よあんた! ドゥーム!?」

「なんだそれ? 俺はただのカラスだが」

「カラス? 鳥の一種だっけ? チキュウでは人間以外の動物は喋らないと聞いたけど」

「俺はただのカラスじゃねえ、化け鴉っつー妖怪なのさ!」

得意そうにそう言うと、ふふん、とドヤ顔をする。

「さっきただのカラスって言ってたじゃない……」

「んなこと言ってねーよ!」

「あーもうめんどくさいわねこのバカ鴉!」

「なんだとこのゴムボール野郎!」

「乙女に向かって野郎ですってー!」

「ぎゃはは、誰が乙女だって!?」

「もーあったま来た!」バキ

「いってーなこの野郎!」グサ

小さな仁義なき戦いが始まった。

ーーー
「やるな、俺の百列突きをかわすとは」

「あんたもね、私の電撃魔法に対抗するなんて」

「……わるかったな、色々からかって」

「私こそ、変なこと言ってごめんね」

ささやかな死闘の末、二匹の間に妙な絆が結ばれた。

「ところで、私人間を探してるんだけど、どこに行けば見つかるか知ってる?」

「人間? 街に行けば嫌というほど見つかるぜ」

「近くに街があるの!?」

「ちと遠いぜ? 一番近いのはあっちだな」

「このまま進んでいけばいいのね?」

「おう、その通り」

「じゃ、私そろそろ行くね! 今度は勝負つけるんだからね!」

「じゃあな! 楽しみにしてるぜ」

カラスは、ふよふよと飛んでいく妖精に向けて羽を降り見送った。

「……しかし、今のあいつは何だったんだ? 見たこともない妖怪だな」

「帰ったら一応ババアに聞いてみるか、面倒だけど」

ーーー

「はぁ、はぁ、やっと着いた……」

「まさか日が暮れちゃうとはね、どこか寝られる場所を探さないと……」

「疲れたからどこかで休も……」

公園をさ迷うウルの背後に、迫る黒い影があった。

「バウ!!」

「ひぃ!?」

獰猛な獣の鳴き声。振りかえる間もなくウルはその狂暴な口に捕らえられる。

「や、ちょっとやめてよ! 私食べても美味しくないって!」

「……クゥーン」

「あ、あれ? 食べないの? てか、私くわえてどこ行くのよー!」

「ポチー! あれ? おにんぎょうさん?」

獰猛な獣の元に少女が駆け寄ってくる。

「こらー! 離しなさいよこのケダモノ!」

「わ、おにんぎょうさんがしゃべったー?」

「クゥーン」

「ほら、ポチ。その子を離してあげて?」

少女が命令すると、獰猛な獣はウルを解放する。

「死ぬかと思った……」

「あなた、だあれ?」

「私は妖精のウルよ。私が見えるなんて珍しいわね」

「うるさん? ようせいなの? すごーい!」

少女はウルを捕まえると、獰猛な獣を引き連れて走り始めた。

「ちょ、ちょっとどこ連れてくのよー!」

ーーー
「おかーさん! みてみて、ようせいさんつかまえたよ!」

「あらあら、凄いわねぇ!」

母親はウルの姿が見えないため、ごっこ遊びか何かなのだろうと判断して適当に話を会わせる。

「はぁ……疲れたしこの子のところで一泊しよ……」

意外と順応性の高いウルであった。

ーーー
「で、あなたはどこからやってきたの?」

「ミルル星、ってところよ。妖精が住んでる国で……」

ウルはかいつまんで魔法少女について話す。

「……ってわけ」

「よくわかんないけど、わるものさんがやってきた、っていうこと?」

「そうね。その悪者を倒すために魔法少女になってくれる女の子を探しに来たの」

「ふーん、たいへんなんだね」

「もし貴方にお願いしたら、どうする?」

「うーん、わたしそういうのじゃなくてヒーローになりたいんだ!」

「そ、そうなの?」

「うん!」

あえなく拒否され落ち込むウルであった。

「やっと寝たかしら? なんだか、今日は疲れっぱなしね……」

「この子は私が見えても潜在魔力を持ってないみたいだし、明日にはまた探しにいかないとね」

「お兄ちゃんは契約者みつかったのかな?」

「……ふぁぁ、もう寝よ……っと」

ーーー

陽子の神社やウルが居る街から少し離れた、夜の高層ビル街。
ビルの屋上に、黒いコートを羽織った人影が街を見下ろす。

「ふむ、別段変わった魔力波は感じないのだが」

黒いコートの人物は、肩に乗った蛙のような生き物と会話をしているらしい。

「でも、確かにここの近くって言われたケロ」

「ふむ、暫く様子を見るか。観光も兼ねて、な」

「せっかくニホンに来たんだケロ、古池に飛び込んでみたいケロ!」

「古池?」

「昔、バショーとかいう魔術師が記した魔術書に書いてあるらしいケロよ」

「初耳だな。まぁ暇があったら出向いてみるか」

ーーー

「よーせーさん! あーそーぼ!」

「わ、朝!? ここどこ!?」

「わたしのいえだよ?」

「そうだった、泊めてもらってたんだっけ」

「うん! ねぇ、いっしょにあそぼ?」

「でも、私魔法少女を探しに行かなくちゃ……」

「え、いっちゃうの……?」

「また遊びに来るから……ね?」

「やだやだー!」

うわーん、と泣き始める少女。
ウルがおろおろしていると突如、ドアが開いて姉と思われる人物が入ってくる。

「どーしたカオリ? おねしょか?」

「よーせーさんが、よーせーさんが!」

「妖精?」

「あ、貴方も見えるの?」

「……こりゃすげえ! アンタ何者!?」

「よ、妖精のウルよ」

「へぇー! この年で妖精が見れるなんて!」

姉もまた、妖精を見ることができる人間らしい。

ーーー

「かあー! ウルル星なんて聞いたらNASAとかのお偉いさんが腰抜かすな!」

「だからミミル星だって……で、貴方は魔法少女になる気はない?」

「うーん、私魔法少女って年じゃねーからなぁ。高校生だし」

「そう……、じゃあ、誰か魔法少女になってくれそうなアテはない?」

「うーん、もう一人の妹……は無理だし、友達はみんな同い年だし、難しいなぁ」

「もう一人妹が居たのね」

「わたしのともだちはどうかな?」

「うーん、小学生か中学生くらいがベストなのよね」

「そうなんだー」

「役に立てなくてすまんねぇ」

「そんなことないわ、寝床を貸してもらったし。そろそろお邪魔するわね」

「また遊びに来てくれよな! まだまだ話も聞きてぇし」

「ぜったいきてね! もっとあそびたいし!」

「気が向いたらね、それじゃあね」

「じゃーなー!」

「よーせーさん、またねー!」

訂正
>>34 ミルル星→ミミル星
我ながらややこしい……

なかなか物語が進まずすいません。
次である程度登場人物が出揃います。
明日こそアンドロイド出ます、というか出します

>>4

第一話
「魔法少女、ですか?」

に修正します

ーーー

「さて、早く魔法少女を見つけないとね」

「手当たり次第に探してくわよー!」

ーーー

「魔法少女? 塾で忙しいから無理ー」


「男の娘でも大丈夫なの!?」


「だって頭食べられちゃうんでしょー? 嫌だよー」


「ぎゃあああああああしゃべったああああああああ」


「くっくっく……邪神の使い魔よ、闇の化身たるこの私に声をかけてただで済むと思うなよ?」

ーーー

「もうなんなのよー! 全然契約してくれないじゃない!」

「だいたいなんで私がこんなことしなきゃいけないのよ! もうやーめた!」

「よぉ、王家のお嬢ちゃん。魔法少女とやらはみつかったか?」

ウルが振りかえると、背後には1歳の少年くらいの大きさの黒い影が。

「あ、貴方は……ドゥーム!」

「騒がしいから起きちまったぜ、でもラッキーだなこりゃ」

「何がラッキーなのよ」

「魔法少女を、生まれる前に 潰 せ る か ら な!」

言い終わるや否や、ドス黒い刃を飛ばしてくる。

「ま、まずいわねこれ……」

ウルは素早く避け戦力を分析する。
妖精は、地球ではミミル星のように自由に魔法を行使できないのだ。
魔法の原料となるものがないためだ。
対して、ドゥームは「負の感情」の権化であり、その行動は地球でも変わらない。
つまり魔法少女無しでは、妖精側に勝ち目はない。

「とりあえず、退散!」

「逃がさねーよ!」

バシュ、バシュ、と飛んでくる黒い刃を避けながら逃げ始めた。
まずいな、と思ったその時。

「こらー! 悪い妖怪はおまえかー!」

突如、制服姿のブロンド少女が現れ、立ちはだかった。

「何もんだてめー!」

「私? ごく普通の中学生だよ!」

ごく普通の中学生と名乗る少女は、黒い影に向け跳躍すると、

「アンパーンチ!」

景気よく叫んでドゥームを殴った。

「ぐぼぁ!」

吹っ飛ばされるドゥーム。

「駄目! 奴は普通の攻撃じゃ利かないわ!」

「ほえ?」

グググ、と起き上がるドゥーム。

「こん畜生! まずはお前からだ!」

ドゥームは怒り狂い、少女に襲いかかる。

「と、とりあえず逃げるよ!」

「うん、……って、なによこれ!?」

少女はウルを抱えると、ゴゴゴ……という機械音と共に飛び立った。

「な、なんだあれ……?」

突然の出来事におののくドゥームであった。

ーーー
「とりあえず、助けてくれてありがと……」

「ふふ、私はせいぎのみかただからね!」

えっへん、と胸を張る中学生。

「で、何で貴方、空が飛べるの?」

「じぇっとぶーすたーっていう機械だよ、凄いでしょ!」

「じぇ、じぇっと?」

聞きなれない単語に戸惑う。

「あなたは誰なの? 喋るお人形さん? さっきの黒い子は? お化け?」

「え、えと、あの」

「教えてー!」ムニムニ

「わ、わかったから揉むなー!」

ーーー

「斯々然々……というわけ」

「ミミル星、行ってみたいなー!」

「ちょっと遠いからね……難しいかも」

「残念……」

「で、貴方には説明したように魔法少女になって欲しいんだけど……」

「なる!」

「本当!?」

「うん! 憧れの正義の味方だもん!」

「それなら、早速契約しましょう!」

「やったー!」

「それじゃ、両手を差し出して?」

「はーい」

「ええと……、強き少女よ、力を差し出せ。魔力の欠片と、溢れる希望を。今、ここに」

「マジカル・コントラクト!!」

少女はまばゆい光に包まれる。

「最後に、サモン・マジカルリングと叫べば完了よ!」

「うん! さもん・まじかるりんぐ!!」




  リングは銀色の光を帯び。ふわ、と浮いて少女の手を離れる。

  光が拡大していくと、完全に少女を包んで、『魔法少女』用に変換された魔力が全身に行き渡る。

  こそばゆい感覚と共に、身に纏っていた制服が、輝いて別の衣装に代わってゆく。


  少女がイメージする、『魔法少女』へと『変身』が行われ。

  今だ銀色に輝くマジカルリングが、少女の左人差し指に装着される。


「銀色……? 虹色だと聞いてたけど」

「わーすごい! ホントに魔法少女になってるー! かわいー!」

ピンクを基調とした、ひたすらフリフリしているファンシーな衣装に、
ツインテールとなったブロンド髪が映える。

「ま、変身できたからいっか」

「ね、ね、魔法はどうやって使うの?」

「うーん、いろんな使い方があるんだけど、一番楽なのはマジカルステッキかな?」

「素敵!」

「……」

「お、おもしろくなかった?」

「うん」

「がーん!」

「がーんって口に出して言わないでしょ普通……」

「で、で、どうやって出すの?」

「指輪を私に近づけて?」

「こう?」

「インストール・マジックデバイス!」

ぽおお、と光り、銀色の杖が召喚される。

「かわいい! これで相手を殴るの!?」

「殴らないわよ……それを持って呪文を唱えれば、いろいろ魔法が使えるの」

「呪文おしえて!」

「最初はチャージ、かな?」

「ちゃーじ?」

「魔力を杖にためる呪文よ。初級呪文だし構えて呪文を叫べば発動するわ」

「ちゃーじ!」

ごう、と音が鳴って、魔力の渦がステッキに集中する。

「わ、なんかぞわぞわってする!」

「それが魔力よ」

「で、これをどうするの?」

「それで敵を殴るの」

「結局殴るんだ……」

「よーやく追い付いた……」ゼイゼイ

「また来たの?」

「悪いどぅーむは私が成敗する!」

「ち、魔法少女契約しやがったか……だが、初心者に負ける俺じゃねえぜ!」

フラグを立てながら少女に飛びかかる。

「ミラクるん、ドンキ!」

「ぐぼぁ!」

ステッキで殴られ、ドゥームは吹き飛ぶ。

「何よその変な技名」

「アニメ中のアニメの主人公が使ってるんだよー」

「はぁ?」

「な、魔力を帯びた杖……?」

「ふふん、私のちゃーじを思いしったか!」

「舐めんなよ!?」

ドゥームは体の一部を銃弾のように放ち、少女を襲う。

「ぐぅ、っ!」

容赦ない攻撃に、弾き飛ばされる。

「だ、大丈夫?」

「も、もう……」

「もう許さないんだから!」

何かのスイッチが入ったように起き上がる。

「レーザーガトリング、起動!」
「目標捕捉、全弾射出!」

少女の腕が開き、ガトリング砲のような機械が出てくる。
刹那、無数の光線弾が射出され、光速でドゥームに襲いかかる。
ドゥームが叫び声をあげる間もなく、次の攻撃が繰り出される。

「とどめだ!」

背中から出したブースターで加速し、そのままステッキを構えてドゥームに殴りかかる。

「ぐぅあああああ!!」

何が起こったかわからないまま、ドゥームはその存在を消された。

「正義は、勝つ!」

決めポーズを決める少女。ウルは、唖然として声が出ない。

ーーー
少し前、陽子の神社。

「む、これは契約時の波動だね」

「私以外にも契約した人が居るんですか?」

「ボクの妹もこっちに来てるんだ。ウルっていうんだけどね」

「是非お会いしたいです! 新しい魔法少女さんも気になりますし!」

「それじゃ、いってみようか?」

「はい!」

ーーー

「あ、貴方、何者なの?」

「私? アンっていうの!」

「名前じゃなくて……貴方、人間なの?」

「うーん、これはいっちゃいけないんだけど、妖精さんにならいいかな」

「?」

「私、アンドロイドなの!」

「アンドロイド?」

「ロボットみたいな感じー」

「ロボットなのに、契約できるのね……」

「ふつうロボットは契約できないの?」

「普通は人間の少女だけなのよね」

「そうなんだー」

「おーい、イルー!」

「あ、お兄ちゃん来たの? ……それと、魔法少女?」

「初めまして、陽子と申します」

「おー! 巫女さんだー!」

「そのブロンドの君も、魔法少女?」

「うん! ロボット魔法少女だよ!」

「ロボット、ですか?」

「うん!」

「ふーん、ロボットなんだ……って」

「「ええええええ!?」」


ウルと陽子の叫び声が重なった。

2話終わりです。
やっぱり「」の前に名前つけた方がいいですかね……
四人出てくると分かりづらくなりそうで。
一応話し方に気を使ってはいるんですが、どうでしょうか?

ありがとうございます。
このスタイルで続けていきます。




第3話
「必殺技、ですか?」

その後、陽子の神社へと移動した一行。

「すごーい! こんなところに神社あったんだ!」

「はい! 稲荷神を祭っているんですよ」

「随分山奥にあるのね」

「そうです、遠いのでお客様が少ないのが難点です……」

「それにしても、ウルがロボットと契約しちゃったとはね」

「お兄ちゃんだって妖怪と契約してるじゃん!」

「う、それは……」

「しかも失敗したんでしょ!? それで陽子に助けられてるじゃない」

「うん、その通り……」

縮こまる兄。

「まぁまぁ、ウルさんそれほどに……」

「全く、陽子は優しすぎるのよ」

「それで、アンさんはロボットなのに潜在魔力を持ってたのかい?」

「あ、そういえば確認してないわね」

「確認しないで契約したの!? もし持ってなかったらどうするのさ!」

「結果契約できたんだからいいじゃない」

「良くないよ! 失敗してたら大変なことに」

「だからお兄ちゃんだって同じでしょー!?」

「うぐぅ」

完全論破される兄。

「せんざいまりょくって何?」

「その人が元々持ってる魔力のことさ。それをリングによって魔法に変換させるのさ」

「ふーん、なんだかよくわかんない」

「ま、魔法が使えれば何でもいいでしょ」

「そうだね!」

「一応潜在魔力を『視て』みては?」

「そうだね、アン、失礼するよ」

「……?」

ぽけー、とするアンを、イルとウルが『視る』。

「な、なんだこれ?」

「潜在魔力じゃない何か似たモノが取り巻いてるわね……」

「潜在魔力ではない何か……不思議ですね」

「でんじはとかかな?」

「うーん、電気エネルギーは視えないはずだから、違うはずだ」

「これがあったから契約できたってことかしら?」

「そうかもね……」

妖怪とロボットは話についていけない。

「おねーちゃんに聞けば、何か分かるかな?」

「おねーちゃんって?」

「私をつくった人だよー」

「アンさんの制作者ですか、確かに何か知っているかもしれませんね」

「お邪魔しても構わないかい?」

「うん! オッケーぼくじょーだよ!」

「アンさん、その洒落は多少時代遅れかもしれません……」

妖精二匹には通じなかった。

ーーー
稲荷神社から、街へと繋がる山道での会話。

アン「よーこは、どんな魔法つかうの?」

陽子「そうですね、今のところは火を放ったりとかでしょうか」

アン「なまえとかつけないの?」

陽子「そうですね……いざ名付けるとなると迷ってしまって」

ウル「カガリビ、いいと思うんだけどね」

アン「かがりび? なんかださーい」

陽子「そ、そうでしょうか……」

狐族に古来から伝わる術のネーミングを一蹴され落ち込む陽子。

ーーー
ウル「あれ? なんか見覚えのある所に……」

カオリ「あ、アンおねーちゃんおかえり!」

アン「ただいまー!」

カオリ「それと、よーせーさん!? また遊びに来てくれたの!? 知らないおねーちゃんも一緒だ!」

イル「ウル、知り合いなの?」

ウル「アン……あんた家ここだったの!?」

カオル「なんだなんだ賑やかだな……な、巫女さん!?」

陽子「は、初めまして……」

カオル「それに未確認生命体が二匹に増えてる……!」

イル「失礼だな、ボクにはミミル・ミルールルミ・イルという立派な名前が」

カオル「ずいぶんと噛みそうな名前だねこりゃ」

アン「まーまー! たちばなしもなんですし中へお入りください!」

カオリ「ください!」

ーーー

カオル「で、巫女さんはどこの神社なの? やっぱり海松大社?」

陽子「いえ、私は山奥の小さな神社、稲荷神社に使えております」

カオル「あーあそこね、狐がよく出るあの森の!」

イル「陽子もきつn「口封之呪符」

陽子「はい、人懐っこくてかわいいですよ♪」

イル「ムグムグ」

陽子(私が妖怪ってことは伏せておいてって言ったじゃないですか!)ボソッ

イル「ムグムグ(ごめん)」

カオリ「かおりもきつねさん見たい!」

アン「私も!」

ウル「それにしても、アンがカオルの家に住んでるとはね」

カオル「いやー偶然ってこともあるもんだね!」

アン「うんめーってやつ!?」

カオリ「うんめー!」

カオル「それにしても、アンと君たちはどうして知り合ったの?」

ウル「それは、……」

ウル(ってお兄ちゃん! 二人が魔法少女だってこと言っていいの!?)

イル(そ、そうだ……言っちゃいけないんだもんね)

陽子(なんとか誤魔化さないと……)

ウル「ええと、ほらアンが神社に来て私たちと会って」

アン「まほうしょうじょになったんだよ!」

イル「」

ウル「」

陽子「」

カオル「ま、魔法少女?」

カオリ「まほーしょーじょ!?」キラキラ

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