紬「斉藤、今日は歩いて帰りましょう」 (11)


芸能界。

それは誰もが多かれ少なかれ一度は憧れる世界。

しかし華やかな見かけの裏には多くのタブーがあり、それを侵したものは容赦なく追放される…。



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「あ〜あ。まずいことしちゃったかな〜」シュボッ

セブンスターに火をつけながらもごもご独り言を言う長身の男。彼もあるタブーを侵したために芸能界を追放された一人である。

「でも歌いたいこと歌ってなにが悪いんだろ?」


♪〜〜

「あ、電話だ。…おじさんからなんて珍しいなぁ。…もしもし。…あ〜見ました?ちょっとやりすぎましたかね〜。…はい…はい…。今から?…分かりました。どうせ暇なんで。…は〜い」

自分のおかれた状況を気にしていないかのようなゆったりとした口調で電話を終え、男はアルファロメオに乗り込む。彼はいったい何処へ行こうというのか…。


…またこの夢ね。もうはっきりと思い出せないけど懐かしい…。

いろんなことに縛られて、友達も出来ず、誰かに愛されている実感が持てなかった子どもの頃。そんな私が何故か好きだったテレビ。

緑と赤のかわいい怪獣さん。髪の形が凄い元気な女の子。オバケから守ってくれるオバケの女の子。

…そして流れる、私の気持ちを分かってくれているような優しい歌…——



——ジリリリリー!——


紬「……もう、楽しい夢だったのに。…あれ?いつもなら目覚ましよりも先に斉藤が起こしに…」

『失礼します』

紬「はいどうぞ〜」

『おはようございますお嬢さま』

紬「おはよう。ねぇ、なんで今日は斉藤が来なかったの?」

『どうやら昨日の夜に母親が倒れたらしくて…』

紬「え!?大丈夫だったの!?」

『はい。病気などではないようです。ですが…』

紬「そうね。斉藤のお母様ならだいぶお年を召しているはず…。私のことは心配いらないから、お母様と一緒にいるように言っとかないと…」

『そうですね…』


紬「家族とゆっくりいられる時間だって大切だもの。お父様がなにか言うようだったら私文句言ってやるもん」

『お嬢様の反抗期…なんか可愛らしい』

紬「あー!バカにしないでよー!」

『ふふっ、すいません』

紬「もう。…あれ?ならもしかして変わりに誰か来ることになるの?」

『はい、もう来てます。…びっくりしますよ?』

紬「え?」


父「おはよう紬」

紬「おはようございます」

父「斉藤のことは聞いたか?」

紬「はい。お父様、せっかくですので斉藤に長い休みをとってもらっても…」

父「……そうだな。まぁ一応変わりもいるし…いいだろう」

紬「ありがとうございます。ところでその…」

父「今呼ぶ。…こっちへ来なさい」




斉藤「ど〜も、代理執事の斉藤和義で〜す」

溢れ出る駄作臭だな


父「こら!その口調を直せと何回言わせる!」

斉藤「あ、すいません」

父「まったく…。この男が変わりだ。斉藤の親戚でちょっと職を無くしてな」

紬「…あなたどこかで」

斉藤「テレビじゃないかな?ちょっと歌いたいことを歌ったらえらいことになってね。どうしようかなぁって思ってたら、おじさんからこの仕事を任されたんだよ」

父「…敬語」

斉藤「任されたんです」

>>7さん
書き込みありがとうございます。
そうですね。あまり上手い文章は書けないと思います。


紬「私には普段通り喋って?あなたのその声としゃべり方…なんだか落ち着くから」

父「…紬」

紬「私だけだからいいでしょ?」

父「…好きにしなさい」

斉藤「ありがとう紬ちゃん」

紬「ムギって呼んで。友達がつけてくれたあだ名なの」

斉藤「…ありがとうムギちゃん」

紬「…うん♪」

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