唯「ムギちゃんのはつこい」(264)

澪「さ、今日も練習するぞ」

律「えーもうちょっとだけお茶してようよー」

澪「ばか、学園祭もうすぐだろ。
  今練習しないでどうすんだよ」

唯「いーじゃんちょっとくらいー。
  ムギちゃーん、紅茶おかわりー」

紬「……」

唯「ムギちゃーん」

紬「……」

唯「ムギちゃん?」

紬「……」

唯「ムギちゃん!」ゆさゆさ

紬「はっ! な、何かしら?」

唯「それはこっちのセリフだよ。
  ボーッとしちゃって、どうしたの?」

紬「あ、ボーッとしちゃってた……?」

唯「してたよー、すごくしてた。
  何度呼んでも返事ないんだもん」

紬「あら、そう……ごめんなさい。
  それで、私を呼んだ用件は何?」

澪「練習しようって言ってたんだ」

紬「ああそうね、そろそろしなきゃね」

律「うぉい」

澪「よし、じゃあ始めるぞっ」

唯「はーい」

紬「いいわよ」

律「いくぞー、ワンツースリフォー」

ジャカジャカージャッカジャカジャカジャカジャカ

澪(……あれ?)

律(なんか……)

唯(……変?)

ジャーン♪

澪「……」

律「……」

唯「……」

紬「? どうしたの?」

澪「うーん、ムギ……
  キーボードの音、だいぶずれてたぞ」

紬「え、ほ、ホントに? ごめんなさい……」

澪「いやそんな謝んなくてもいいけどさ」

律「でも珍しいな、ムギがこんなミスするなんて」

唯「具合悪いんじゃない?
  さっきもボーッとしてたし……」

紬「う、ううん、大丈夫……」

澪「無理することないぞ、
  体調悪いんなら遠慮なく休んでくれていいんだから」

紬「ほ、ほんとに大丈夫だから! もう一回やろ、もう一回」

澪「え、うん……」

しかしその日の演奏は散々なままで終わった。

紬「……ごめんなさい」

澪「いいっていいって、今日はたまたま調子が出なかっただけだろ。
  また今度、いつもみたいに上手くやってくれればいいから」

紬「……うん」

律「澪ってムギには甘いよな、
  私達の時はすげえ怒るクセに」

唯「日頃の行いの差じゃない?
  ていうか『達』ってどういう意味」

紬「あ、私、戸締りしとくから……
  みんなは先に帰ってていいわよ」

律「え、ああ、うん」

唯「えー、ムギちゃんも一緒に帰ろうよー」

澪「……ばか、ここは独りにさせてやれ」

律「じゃあな、ムギ」

紬「うん……また明日」

帰り道。

唯「今日のムギちゃん、おかしかったね」

澪「ああ、そうだなあ」

律「体調悪いようには見えなかったけど……」

澪「とすると、なんか悩みでもあるのか」

唯「悩みかー……」

律「でもムギに悩みごとなんて想像できねえな」

澪「それはムギに失礼だ……」

唯「もし悩みがあるとしたらさ、どんな悩みなんだろ」

澪「うーん……家のこととか?」

律「あー、金持ちの家って複雑そうだよなー」

澪「成績が落ちたとか」

律「それはないだろ、この前のテストでもクラスで上位だったし」

澪「また太っちゃったとか」

唯「そう? 別に太ったようには見えないけど」

澪「外見からは分からなくても、
  1つ2つの数値の上下には過敏に反応してしまうのさ」

律「そうか……それがストレスになって……
  太るのを気にするあまり食生活が乱れ……
  そして摂食障害……入院……退学……」

澪「いきなり話が飛躍したな、
  ていうか真面目に考えろ」

律「考えろっつってもなあ」

唯「ムギちゃんから直接聞かないことには分かんないよ」

澪「まあ、そうだけどさ……」

紬「みんなーっ!」たったった

唯「あ、ムギちゃん」

澪「噂をすれば……」

紬「はあはあ……唯ちゃん、これ」

唯「あ、携帯!」

紬「部室に忘れてたわよ」

唯「ほんと? ありがとう、ムギちゃん!」

紬「ううん、いいの。気にしないで」

澪(さっきの話は今はしないほうがいいな)

律「なあムギ、なんか悩みごt」

澪「オラァ!!」ボカッ

律「ゲフッ」

紬「? なあに?」

澪「いやーなんでもないなんでもない……
  そうだ本屋寄ってかない? 本屋」

唯「お、いいね。確か今日は女性自身の発売日だし」

澪「そんなん読んでんのかよ」

唯「憂がね」

澪「……」

本屋。

律「澪は何買うんだ」

澪「好きな作家の新刊が出ててさ、それをね」

紬「へえ」

澪「あー、あったあった」

律「ほう、タイトルは……『16歳のはつこい』……
  いやあいかにも澪が好きそうな」

澪「う、うるさい……! いいだろ別に」

紬「……」

澪「ん? ムギ?」

紬「……」

律「またボーッとしてら……おい、ムギ」

紬「……はっ!」

澪「どうしたんだよ、またボーッとしてたぞ」

紬「そ、そうだったかしら、ごめんなさい……
  それよりこれ、素敵なタイトルの本ね。
  私も買おうかしら」

律「おお、ムギも澪ワールドにハマるか」

澪「なんだ澪ワールドって。
  ていうかムギも恋愛小説とか好きなんだな」

紬「好きっていうか、その……
  いいかな、って思って」

澪「ふうん」

律「ところで唯はどこいった」

澪「女性自身買ってんじゃないか?
  ……ん?」

紬「……」

手に取ったハードカバーの表紙をじっと見つめる紬。
澪にはその紬の表情が、何か普通ではないように見えて……。

澪「…………」

唯「あ、みんないた」

澪「買ったのか、女性自身」

唯「うん」

律「憂ちゃん、そういうの好きなんだな……」

唯「そうなんだよねー。
  休日なんかはお煎餅かじりながら
  楽しそうにワイドショーの芸能コーナー見てるよ」

律「憂ちゃんの育てかたを見直した方がいいぞ」

澪「じゃあ、私達も会計済ませるか」

紬「え、あ、そうね……」

唯「りっちゃんは何も買わないの?」

律「私はいいや。お金ないし」

唯「ふうん」

その日、3人は本を買い、
あとは何ごともなくそれぞれの家路についた。

翌日、放課後。

ガチャ
唯「ちょりーっす」

澪「おう」

律「うぃーっす」

唯「ムギちゃんはまだ来てないの」

澪「うん、まだ」

唯「そういえばさ、
  昨日のムギちゃんなんか変だったけど、
  どうだった? 今日は」

澪と律と紬は3人とも同じクラス(1年2組)である。

律「今日は今日でまた……なあ」

澪「え? ああ」

唯「えーなになに?」

澪「昨日ムギが私と同じ小説買ったんだよ。
  で、今日は一日中、それを貪るように読んでた。
  授業中も、休み時間も」

唯「へえ~」

律「それはそんなに熱中するような本なのか?」

澪「いや、私もまだ最初の方しか読んでないし……
  ていうか熱中するかどうかは人それぞれじゃない?」

唯「ふうん……で、それどういう小説なの?」

澪「16歳の女子高生の、初々しい初恋を描いた小説だよ。
  引っ込み思案な少女のひたむきな片想いの話……って
  あらすじには書いてあった」

律「ほう」

唯「ボーッとしてて、演奏も手につかない……
  恋愛小説……片想い……
  それに熱中するムギちゃん……
  もはや導き出される答えはひとつ!!」

澪「いや唯、それは私も考えたけど……短絡的すぎるぞ」

唯「そうかなあ、これ以外ないと思うけど」

澪「何にせよ、ムギの口から直接聞かないことにはさ……」

唯「んー、そっか」

律「なあなあなんだよ、
  何を2人で分かった気になってるんだよ、
  教えてくれよ」

澪「落ち着け」

唯「でも、どうやって聞き出す?」

澪「うーん……」

ガチャ
紬「遅れてごめんなさい!」

唯「あ、きた」

澪「よ、よう」

紬「今お茶の用意するわね♪」

唯「……なんかゴキゲンだね」

澪「……」

紬「そうだわ澪ちゃん、この小説とっても面白かった」

紬はカバンから例の小説を取り出した。

澪「ああ……今日一日中それ読んでたよな」

紬「うん、読み出したら止まらなくなっちゃって……
  なんていうのかな、
  主人公の気持ちに共感できることばっかりで」

澪(共感……)

紬「片想いの切ない気持ちがすっごくリアルで」

唯(切ない……)

紬「最後、想い人と結ばれたときは私まで幸せな気分になったわ」

澪「幸せ……ていうかオチを言うな!
  私まだ読んでないのに」

紬「あ、ご、ご、ごめんなさい!
  私ったらついテンションが上がっちゃってうっかり……」

澪「ああ、いやまあ、いいんだけどね……」

律「…………ああ、そういうことか」

紬「? なあに?」

律「ムギ、好きな人いるんだろ!」

澪「こら――――っ!!」

紬「え? え? 好きな人……!?」

澪「あ、ち、違うんだ! 唯に好きな人がいて、な、唯!」

唯「え、ああああ、うん、そうなんだ! 実はね!」

紬「へえ、そうなの」

唯「それで、澪ちゃんに色々とアドバイスもらってたとこなんだー、
  あはははは……」

紬「へえー」

澪「律……ちょっとこっちに来なさい」

律「はい……」

音楽室の隅っこ。

澪「おい……あんなダイレクトに聞いたらダメだろ」

律「でもそれが一番手っ取り早いじゃん!」

澪「台無しになっちゃうだろ、色々と」

律「何がだよ、気にしすぎだよ」

澪「おまえが気にしなすぎるんだよ」




紬「あの二人は何を話しているのかしら」

唯「さ、さあ……」

紬「ところで、唯ちゃんの好きな人って誰なの?」

唯「え、えーと……えー……
  ちゅ、中学の時に同じクラスだった人で……」

紬「へえ」

唯「い、今は別の高校でサッカーやってて……」

紬「その人とは仲が良いの?」

唯「う、うーん……電話とかメールとかしたり……
  あとサッカーの試合観に行ったりとかして……」

紬「そうなんだ。
  付き合ったりとかはしないの?」

唯「それを澪ちゃんに相談してたとこだよ、うん」

紬「あら、そうだったの」

唯「でもムギちゃんがこんな話に乗ってくるなんて珍しいね。
  まあ興味あるか~、高校生なら誰でも」

紬「え、あ、うん、そうね……」もじもじ

唯「……?」

紬「興味あるっていうか~、その、……」

唯「もしかしてムギちゃん……」

紬「……」

 /i /{/'⌒'}  }}Y/ / ,r-、ヽ,                    _/

 ノ、|、ヾ_,,ノ  ノ ノ{ ヾ {^')) 、_フ                  ヽ
   \ヽ、    彡'`、、  'ー'、__ノ__,.. --ー--- 、_         / 『味』 ウ・  こ
 ヽ-、ミ‐-、、 、,r=‐'¬ー=、、, -' ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`ヽ、_r、_, -- /   だ  ソ・  の
 ミ/   ~        /_,ィ´.:,::'.:.:.,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ\.:.:.:|        を・  味
  /   ,'    u ∪  ̄/.:./:./,l.::ii.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.::ハ ヽ.|    :  つ・  は
  、、∪ / ノ /  _,,,...-‐‐ /.:.::./:_/ / |::l l.:.:i.:.:.:.:.:.::.i.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:.::ハ  ヽ.   :  い・
  ニ、=!, l_. レr=-ニ二./.:,:.:.:i:./ /  l:!`l.:.:i.:.:.:.:.:.:.:i.├―' ̄.:.:::.ハ .∠   :  て・
  、(・,)>ノ⌒  ∠,(・,)/:/l.:.::レ_、  __l! !.:i.:.:.:.:.:i.:.:i/.:.:.:.:,:.:'.:.:::.:.:.},ノ.ノ     る・
    ̄/""゙   ヽ .レ' |.:.:k'i!   ,ィミ、 l.:i.:.:.:.:.i:.:.:iニァ'.:..:.:.:.:.:.:.:.::i'}.:.:.:./ ̄ノ
  u 〈  、     u |.:.:|;}   f!ミi i! V.:.:.:.:::i.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:.:,.:.:.:イ !.:::/   ヽ、
    ヽ -'   lj   !'リ,′   ヒリ リ |.:.:.:;イ人!^Y.:.:.:/.:.:;イノレ'      ∨ヽ/
    /ヽー‐ 、      l   ::::::   |.:./  ノ .ノ_.:.:'.:.,:ィく `
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               { '⌒ ̄ フ´  . : :_:_, ----、---、ハt--l
   、          /人      . : :./        ヽ ヽ、)ニニニ、、
   ー-、、,,__,-‐'//ノト、   . : : . /         ヽ  ).:.:.:.:.:.:}:}

唯「ははーん」

紬「……、……」

唯「ムギちゃんも好きな人がいたりして……?」

紬「…………」もじもじ

唯「誰にも言わないから教えて、ね、ね」

紬「でもそんな……いない、いないわよ、うん」

唯「ウソだー、絶対いるでしょー……」

紬「いないってばあ……」

唯「誰にも言わないからさ……
  いるかいないかだけ教えて!
  それ以上は突っ込まないから!」

紬「ええ……」

唯「いる?」

紬「……」

唯「いるんだよね?」

紬「……………………」こくん

唯「!!!!」

紬「だ、誰にも言わないでね……」

唯「う、うん……安心して」
 (まさかホントにいるとは思わなかった……)

紬「絶対秘密よ、ねっ」

唯「うん、大丈夫。私、口は堅いから」

紬「そう、ならいいんだけど……」

唯「恋に悩んだときはいつでも言ってね、
  相談くらいなら乗るから」

紬「う、うん……ありがとう」





澪「あの二人は何を話しているんだろ」

律「よくは分からないけど
  問題の確信に迫るような会話をしている気がする」

唯「……」チラチラッ


澪「唯のアイコンタクト……」

律「そろそろテーブルに戻るか……」



律「よ、よう、何の話してたんだ」

唯「なんでもないよー、ね、ムギちゃん」

紬「ええ、なんでもないわ。
  りっちゃんと澪ちゃんこそ、隅っこで何の話してたの?」

澪「こっちこそ何でもないよ」

唯「アヤシイね」

澪「なんでもいいだろ、じゃあ早く練習するぞ」

唯「ふぇーい」

紬「あ、ごめんなさい、私その前にお手洗いに……」

律「おう」

紬「すぐ戻るから……」
ガチャ

澪「……」

律「……」

澪「……で?」

唯「ムギちゃん、好きな人いるんだって」

律「おお、やっぱりか」

唯「でもそれ以上のことは分からないよ」

澪「いや、それだけでも大手柄だ、唯。
  ムギが悩んでたっぽいのはこのことで決まりだな」

律「いやあ、でもムギがねえ、片想いねえ」

澪「想像もつかないな……相手が誰なのか」

唯「うーん……女子校だから男の人とは縁遠いはずなんだけど」

律「校内で男っつったら」

澪「教師?」

律「男の教師といえば……」

唯「古典の豊崎先生、物理の日笠先生、英語の佐藤先生、
  数学の竹達先生……あとは~」

律「オッサン教師ばっかじゃん」

澪「流石に恋愛対象には……」

唯「あ、生物の米澤先生は?」

澪「えー、あの人は若いけど……
  なんかみんなから嫌われてんじゃん。
  生徒のこと変な目で見たりさ」

唯「うーん、じゃあダメか」

律「いや……ムギのやつ、マゾっ気があるから……
  米澤から変な視線を送られているうち、それが快感に変わり、
  恋が芽生え……」

澪「嫌すぎるわ」

唯「うーん……あ」

澪「なんだ?」

唯「いやあ……
  ムギちゃんって女の子同士の恋愛が好きだから……
  そのー」

澪「ムギ自身も女の子が好き……ってことか?」

唯「考えられない?」

澪「可能性としちゃ捨てきれないけど……
  同性を好きだった場合、相手は誰になるんだろうな」

唯「……」

律「……」

澪「?」

唯「……」

律「……」

澪「え、私!?」

俺のコトはシュガー先生って呼んでくれたまえ!

唯「いやあ、だって」

律「澪って、ムギには優しいし」

澪「ええ? でも、優しいっていうかそれは……」

唯「いやいや、りっちゃんや私に対しては厳しいのに、
  ムギちゃんにだけ優しいんだよ?
  勘違いされても仕方ないよ」

澪「それはちが……」

律「昨日だって、同じ小説を買ったのも」

唯「澪ちゃんと共通の話題を作るため……?」

澪「嘘!? うそだよな、そうだと言ってくれ……」

律「いやあ、でもこうして考えてみると」

唯「真実としか思えなくなってくるよね」

律「全部つじつまが合うもんな」

澪「うそだあああ!」

山田のコトをサンダーって呼ぶようなものだよな

唯「まあまあ、あくまでも仮説だから」

律「ただし現時点でもっとも有力な仮説」

澪「……うう……」

唯「うーん、他にムギちゃんが好きになりそうな人は……」

澪「なんていうか、こんなこと考えても意味ないんじゃ……
  ムギの交友関係はよく分かんないし……」

唯「まあそうだねえ、
  お金持ちの家には色々と交流があるだろうし」

律「金持ち同士の恋愛か、私らが入れる問題じゃないな」

唯「『ああ紬さん……僕はこんなにも君を愛しているのに……!
   僕らには決められた許嫁がいるんだ……!』」

律「『親が決めた結婚なんて無視すれば良いわ……!
   私を連れて一緒に逃げてください、地の果てまでも……!』」

唯律「みたいな感じ」

澪「すごい偏見だな」

律「でもま、ムギが誰を好きかは
  やっぱ本人に聞かないと分かんないか」

澪「そうだなー、そこは唯がムギに……」

ガチャ
紬「私がどうかした?」

律「うおう!」

澪「ななななななななあんでもないですよ!?」

紬「あらそう?
  私の名前を呼ばれた気がしたんだけど」

律「いやー違うんだ、
  そろそろ田舎では麦を収穫してるのかなってさ、あはは」

紬「ふうん、そうだったの」

唯「あはは……」

澪「じゃあ、れ、練習しようか。うん」

紬「あ、澪ちゃん」

澪「ん?」

紬「部活が終わったら……ちょっと残ってもらえないかしら」

唯「!!」

律「!?」

澪「……え?」

紬「話したいことがあって……
  あ、時間がないならいいんだけど……」

澪「え、あ、あー、いや大丈夫だ、大丈夫、うん大丈夫」

紬「そう? 良かったわ、じゃあ……よろしくね」

澪「………………うん」

律「あーちょっとトイレ行きたくなっちゃったなー!!
  なあ唯!!」

唯「そうだね!! ちょっと紅茶飲みすぎちゃったねー!!」

紬「あら、今日は紅茶だしてないけど」

律「ほらトイレ行こうぜ!! ほら澪も!!」

澪「え、あ、おう!!」

唯「ちょっと待っててねムギちゃん!!」
ガチャ

トイレ。

律「おい、どういうことだこれは……」

唯「ムギちゃんが澪ちゃんを……
  話があると言って……
  部活後に居残らせる……!」

律「急展開! 急展開だぞ!」

澪「ばか、決めつけるのは早すぎる!!
  全然関係ない話かも知れないだろ……」

律「フッ……そんなふうに自分に言い聞かせるのはよせ」

唯「どう考えても告白じゃん。
  私の仮説は当たってたね」

澪「ええっ、で、でも……」

律「いやーこれは告白だよ、
  百人中百人に聞いても告白だと答えるね」

澪「いや確かにそういうシチュエーションかも知れないけどさあ……」

律「うん、まあ澪の言うとおりさ、
  告白じゃなくて全然関係ない話をしたいだけかも知れないよ」

唯「でも告白という恐れも捨てきれないわけだし」

律「告白された場合にどうするかを決めよう」

澪「どうするか、って……」

唯「告白にOKする……は、ないよね」

澪「そりゃまあ……私は同性は好きじゃないし」

律「とすると、ムギの告白を断る、か……
  しかしその場合、ムギをなるべく傷つけず、
  部活内での調和が崩れないようにしなければならない!」

澪「ええ、難しいなあ……」

唯「澪ちゃんならできるよ、
  口は微妙に達者じゃん」

澪「その褒め方、引っかかるなあ」

そうか!このムギはりっちゃんに告白するつもりなんだ!!

律「ともかく、なんて断るかだ」

澪「うーん、そうだなあ……まあ無難に…… 
  『ムギの気持ちはうれしいけど、
   そういう気持ちで接することはできないよ……ごめん』」

唯「ううん、いいの……気持ちを伝えられただけで満足だから」

澪「うん……でも、ムギは私の大事な友達だから。
  友達としてなら……一緒に、いられるから……」

唯「……ありがとう、澪ちゃん……」

律「おー、唯のモノマネ似てるな~!」

唯「でしょでしょー!」

澪「唯のモノマネより私の断り方に対する評価をお願いします」

律「え、ああ、いいんじゃないか?
  無難すぎる気はするけど」

唯「まあ及第点って感じかな~」

澪「厳しいなお前ら」

律「じゃあ音楽室に戻るか」

澪「そ、そうだな……」どきどき

唯「緊張してるの?」

澪「ああ……告白って、
  する側だけじゃなくてされる側も緊張するもんなんだな」

唯「ムギちゃんの方がもっと緊張してるよ」

澪「まあそうなんだろうけど……」

律「おいおい、告白されるとは限らない……って言ってたの澪だろ、
  なんでお前が一番その気になってんだよ」

澪「し、仕方ないだろ……!」

3人は音楽室に戻り、
紬とともに練習を始めた。
しかし3人……とくに澪はまったく練習が手につかず、
昨日の紬のように失敗を連発したのであった。

結局一度も完璧な演奏が出来ないまま、
部活の終了時刻を迎えたのであった。

律「じゃ、じゃあ……私ら、帰るわ」

唯「頑張ってね」

紬「? うん、また明日ね」

澪「あ、ああ……」

唯「じゃあねー」
ガチャバタン

紬「……」

澪「……」

紬「……」

澪「……」

紬「……」

澪の顔をじいっと見つめる紬。

澪「……ムギ?」

紬「あ……いえ」

さっきまで楽器の音に満たされていたとは思えないほどに
音楽室は静まり返っていた。
外はもう暗く、運動部の掛け声も聞こえない。
夜の静寂の中に、ただ2人。

澪「で、ムギ……話って」

紬「あ……うん」

澪「……」

紬「その、恥ずかしい話なんだけど……
  笑ったりしないでね……」

澪「わ、笑わないよ。
  ムギの真剣な気持ちを、笑うなんて……」

紬「ありがとう……あのね」

澪「……うん」

紬「えっとね」

澪「うん」

ちょっと中断
30分後か1時間後か1時間半後に再開します

           l/l//   ,. --- .. __        /
  な  絶       / /         `ヽ、_人/  ご   働
  い  対    //  /         \    ざ   き
  で  に    /_   .′       ヽ、\  \   る  た
  ご  働      / ,,″ / ,ィ | l ll |l l ぃ ヽ <_ ///  く
  ざ  き   ∠ 〃 -/、/ ! | l ll ll | l i   '. / ’’’   な
  る   た    ///  ,.イfr㍉i、| | ll |l |,-H‐  i ′       い
 ///  く   /  l i  //|/`┴1| |/|ィ乏了ト、 ///     で
. ’’’     .′ l|/,小、    _⊥ _   リ,ハ l .' /|  ∧
  /`Vヽ. /\  | | | |八   /ー--‐1`メ、厶ィi |/,.イ|  l  / ∨\
∠__  ∨  ヽ.} | | }川ヽ. ト、  ,ィ}/ //リ l/i/リ | ′

 ゝ   `V , ‐ァ .' メ、トく\/ヽヽ辷ク ,ィ'/‐-/リ,∠..._ l//
  \  // / //  丶 \\ \_/// / / /  `メ、
 ー- ヽ/   / // /〉   \ ヽ.ヽ    /{丁iヽ /  /   \       /〉
  // ー- / // /// ̄ ヾ 、 ヽ}     `l | ィ\ / /   /∧ /   //
./ /   / /ー//,′   }`ヾ i|  L___// | ,.へ,.イ/} // ,レ'  //
  /   / /  //7    /  !`ヽ、 // ,.ィ' / ト、く  /|  〈/
. /‐- / /  ///    /  /   ├く// l     l 丶>'  ノ  〇
.    / ー-///    /   ′  /  |   /     ヽ/ ̄/
        //´    /  /    '   /ー-' .. _         ̄l
.      〈/           '   /  /              `ヽ

.       / / /∧     |    /|      ヽ    ヽ '
.         /  / ハ \  │ l /-{ {\  厶.  │|
    / /     i{   ヽ |  |/-‐ヘ、   \「_ ヽ.  |/      ,.,、,.,、,.、,.、,.、
.   / /     人丶、 │ |   __ \|  x外、 } リ    _,.;:'".::.::.::.::.::.::.::.:i}  
.    /|   {    \ V^l  | xぅ外   ヒリ ∨/|   ,.;'::"::.::.::.::.::.:.::    i}
.   { {│           ∨{ l  |弋)リ      、、,′ |  ,:;".::.::.::.::.::.::  ::.::.::.::.::.:i}  
   \ヽ    ヽ.    }ゝリ  | 、、      j  |  ;';".::.::.::.::.::  ::.::.::.::.::.::.::.:i}   ムギュムギュムギュ
.    > 、     \  ((/  i ト    ー ' /i   | ;':".::.::.::.::.  ::.::.::.::.::.::.::.::.::.i} 
.   //  \   \ヽ リ/  i ト、 > .._ イ{  i   ト;':".::.::.::.::  :.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::i}
   //     ヽ   } _∨{.  i 「ミニ=‐-〈/∧ i   | ;:゙:.::.::.::.::  :.::.::.::.::.::.::.::.::x==i}
.  //       ) / \\  マ   ̄}糾 \! │;:゙:.::.::.::.:  :.::.::.::.::.::.::.:〃(\`ヽ、
  {{      / /    ∨ \ \  片爿_  \{. ';゙.::.::.::.:  ::.::.::.::.::.::.::.{{(\ヽ\ ヽ
.  \ _   //          ∨  \ \ / 、ヽ  ヽ ';:,.::.::.::  :.::.::.::.::.,彡^"\丶   〉
        //{  ,′       》    \ ヽ\ ∨    ヽ ':、:.::. ::_,彡^"     {ヽ   /
      { 八_,′       /      } } `⌒::.   ハ ';、:,彡^"     /{   /
       \ /     //     / /            }  \_   -‐   _,/            _   -―-
.        /     厶イ: : : : : . / /    . : : : : : :/   /       /          ´       ヽ
.        ,′     / ∨.: : : : : : :{ / . . . : : : : : : : : ∧           /     _   ´            }
.              /   ∨: : : : : : ∨ : : : : : : : : : : : { \          , -ニア′               {
       ′    /    ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : :..ヽ、  ー‐'´     /  {                    l
.      |     .,′     \: : : : : : : : : : : : : : : :   \___xヘ/     |          ヽ      ',
.      {   ⌒\      ヽ : : : : : : : :            /        |          /{       '、
       \      、     ∨: : : : : :      -―…=彡           │           l
           丶、    丶、    ∨ : : : : :      . : : : : : : :          |        /             i
                   ̄`丶、}: : : : : :      : : : : : : :            ヽ、   /|              |
               ーヽ、    \: : : : :      : : : : :               \/: :│      ',       |
                  \ 、\\ヽ: : : :                      ∨ : :|      '        |
                    } }\ヽ j∧: : : :           `ヽ: : :         ∨:│       ヽ        |
                   し'  `ー'  ∨ : : : .           \ : :       ∨ヘ.        \     |

唯「さて、テレビショッピングの時間がやってまいりました。本日の最初商品はこちら↓」

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|||||||||||||||| l|" il|||||||||li `|li   ,,iii'" ,i|||||||||||i i,  l||||||||||||||||
|||||||||||||||| 'il|l,,.ミl||||||リ.,,ii|l"  "l||ミェ, ミi|||||||lリ.,li,  i|||||||||||||||||
||||||||||||||||  "'''iilllllllリ''""     "'ミiilllllliiリ''""  i||||||||||||||||
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il||||||||||||||i,             '".;:          il||||||||||||
illl||||||||||||||i,     .,,,,,メiiiiiメiiillllilllliiiョュ,,,,..       il||||||||||||
 iill|||||||||||||i,    "iii,..  ,. ,. .,. .,.,,i||||li;.      ,il||||||||||||
   'i||||||||||ii,    ''ill||""'iil"iiゞゞヾllll|||l'"    .il||||||||||||”
    "i|||||||||ii,,.    "'iii'""""'iiiii'"".    ..,,iil|||||||||||”"

     "i|||||||||||iii,,             .,,iiillll||||||||”
      """"""""            '''""""""

ありゃー…
 ○○とうとう
 死んじゃったのか…

   / ̄T ̄\
  //  | 丶\
 / | ノ ̄丶 | 丶

 L_L_|二二|_|__|
 ハ | ⌒  ⌒ | ||\
`/ |/Oヘ  ィOヘ| V /
/イ |込ソ  込ソ|||イ
 レ | u `  |イ ||
 | |\ TTT /| 从
 丶|ム_>ハ||イレ_|/
 / |\_从/| \
`/、\ |/|o|\|  丶
/ /三丶 |_|  _ |
L/ ノ>\―――し\|
/ レ(<二ミミ二>) 丶

再開

紬「何から話せば良いかな……」

澪「……あ、焦らずに話してくれれば良いから」

紬「うん……じゃあ、本題から先に言うわね」

澪「う、うん……」

紬「澪ちゃん……」

澪「はい……」

紬「私に眉の整え方を教えて欲しいの」

澪「ムギの気持ちはうれしいけど、
  そういう気持ちで接………………え?」

紬「自分でも調べてみたんだけど、
  やり方がよく分からなくって……」

澪「はァ」

紬「澪ちゃんの眉は綺麗だから、
  そういうの詳しいかな、って」

澪「まァ」

   f`::'ー 、,-、-、_ _,....-- 、_  _,....-=―ヽ―-、-、_        、ミ川川川彡

   ,.r'‐'゙´ヽ,r'  ヽ \ー、_:::::::::/,´:::::::::::,:::::::,::::::::ヽ::\`ー、     ミ       彡
 ,〃ィ  ,rヽ'-ヽ i 、 、 ヾ,、 `'y',ィ´/::::::::/|::::::ハ_::::::::ト、::::\ \  三  ギ  そ  三
r'/〃//    | i! |, \、_`ー!rf.,イ-,ィ/u ノ::::/ |::::`::::|iヽ::::::ヽ  ヽ. 三   ャ れ  三
iヾ!l i /,.=ヽ  i,ケ ハ,i', Y't=ラ゙,〉'|::::r'|! 彡´ ,!--、 |i!|::|::i::::::',   ', 三  グ  は  三
  {ヾllッ-,   〃ノ'-'、||ii i|i| |-/! /^ヽ    ´   ヾ|从ノ::i::::|   ||三  で     三
  >|゙! 0ヽ ノ' ´ 0 レノWノi |,.、!/ 0       0  ',' レ|,イ::::i,,_ | !三  言  ひ  三
  ',i ヽ- ,      _, "  |i| | |             ´ '´ハ',Y  .!三  っ  ょ 三
  /l   `        !| | i `´ r     'ー‐' u   (-, ' |   !三  て  っ  三
  /久        U  |! i|'´'、u              z_,ノ/ .i |三  る  と  三
 /イ |ヽ '==..‐_、      |!,'|Y´,ヽ  ___        ハ_ ,/i | |三  の  し 三
 |ト|、',::::\     _,.-‐イ//-'´::::!\'ー‐--ニュ     / ト_、 _| _!,=,|三  か て 三
  〉:ヾ_'、::::`ー‐r<   //イ|::::::_、:::`7i\ __,..-‐'´  .| |`゙"::"::|-"三  !?    三
 'ー‐'´¨`'ー、/,rケ  /,'1ノ人'-‐'`y'/::::, i| ,!,      |`iiイ:::::::::|  彡     三

    ,〃7,‐/ {   ´_,-'´ ,,‐!、=,/.〃::::i i|kハ    / ,ヾ、::::::|.|!  彡川川川ミ
   ,ッ'、_〃'f /゙-<´  r〃 〃 /イ::::,!ッ'/  ',  / /   |ト、:|:リ
  rir' 〃,y'、久_,.rヽ/〃  川/iケir'〃/ ,-'水´  /    〃  \
  f::}'ー'〃_i| /::::f|::::',  .〃 r/if |||ir' f| レ' r'o | .〃-、 〃     "i
  ,);'ーッ゙-. レ:::::/_|::::::',_,〃=_、!!|| !i/ ||:,ri   !o ∨/_)_〃        |

紬「……教えてくれる?」

澪「そ、それはもちろんいいけど。
  でもなんでいきなりそんな……
  あ、好きな人か……」

紬「!! ……唯ちゃんに聞いたの!?」

澪「あ、いや違うよ、
  なんか最近ムギの様子がおかしかったからさ、
  悩みとかあんのかな、好きな人でもできたかな、
  ってみんなで話してたんだよ、うん」

紬「あ、そ、そうだったの……」

澪「ていうか、図星なんだな」

紬「…………う、うん」もじもじ

澪(可愛い……)

紬「だ、誰にも言わないでね……
  唯ちゃんにはいっちゃたけど」

澪「うん、まあ誰にも言わないけど……
  好きな人ができたから、
  おしゃれを頑張ってみようということか」

紬「うん、恥ずかしいけど……
  まずは小さいとこからって思って」

澪「そのままでも充分可愛いと思うけど」

紬「え、そ、そんなこと……!」

澪「いやー、可愛いって。
  まあムギがやりたいってんなら
  教えられる範囲で教えてあげるけどさ」

紬「ありがとう、澪ちゃん」

澪「ところで、ムギの好きな人って誰なんだ?
  もしかして軽音部の誰か?」

紬「あはは、何言ってるのよ澪ちゃん。
  軽音部には女の子しかいないじゃない」

澪「え? ああ、そ、そうだったな……」
 (私がズレてるのか……)

ピャーか

紬「じゃあ今日はもう遅いから、
  明日か、またお休みの日とかでいいかしら」

澪「そう? 別に今からでも良いけど」

紬「でも私は門限が……
  そうだわ、澪ちゃん今からうちに来てくれない?」

澪「いいのか?」

紬「ええ、大丈夫よ。
  ついでに晩ご飯も食べていって」

澪(ムギの家の晩ご飯……)

紬「澪ちゃん?」

澪「行かせていただきます」

紬「そう、良かった。
  私、お友達を家に招いてご飯食べるの、
  夢だったの」

澪「ムギの夢は聞いててときどき悲しくなるよ」

紬「じゃあ、いきましょうか」

澪「うん」

琴吹家。

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」

紬「ただいま」

澪「開店してすぐの百貨店に入った時のような気分だ」

普通のようで普通でないSS

メイド「お荷物をお持ちいたします」

紬「ありがとう」

メイド「お連れ様も」

澪「え、あ、じゃあお願いします」

紬「私の部屋はこっちよ。
  この廊下を真っすぐいって、
  3番目の階段を上がって
  左に曲がった突き当たりよ」

澪「案内がないと迷いそうだな。
  それにしても広い家」

紬「そうかしら?」

澪「うん、充分広いよ」

紬「前に住んでたとこはここの3倍の広さで、
  それくらいが私としては調度良かったんだけど」

澪「……」

紬「あ、ここが私の部屋よ」
ガチャ

澪「お邪魔しまーす……」

紬の部屋。

紬「どうしたの? 澪ちゃん。
  早く入って」

澪「う、うん……」きょろきょろ
 (すごい部屋……)

紬「なあに、きょろきょろしちゃって」

澪「あ、いやなんでもないんだ。
  ごめんごめん」

紬「晩ご飯は、あと1時間くらいだから。
  それまで教えてもらって良いかしら?」

澪「うん、いいよ。
  じゃあ鏡台の前に座って……」

紬「はいっ」ビシッ

澪「そんな力いれちゃダメだよ。
  リラックスして、特に顔」

紬「うん」

澪「ムギの場合、眉が濃いから抜くのが良いかもな」

紬「抜くの? 痛くない?」

澪「大丈夫大丈夫。ほら、これで挟んで……ちょいっと」

紬「あっ……」

澪「ほら、動くな……」

紬「ん……」

澪「……痛いか?」

紬「大丈夫……あん」

澪「こっちの方も……」

紬「……ああっ……」

澪「もっとよく見せて……」

紬「あ……」

澪「とまあこういうふうに」

紬「よく分かったわ」

澪「自分でもやってみな」

紬「ええ……」

コンコン

紬「? 誰かしら?」

ガチャ
斉藤「お嬢様、お食事の時間でございます。
    お連れ様のぶんもございますので、どうぞ」

澪「あっ、はい、ありがとうございます」

斉藤「……お嬢様、何をしてらっしゃるので?」

紬「あ、貴方には関係の無いことです!
  早く下がりなさい!」

斉藤「はい、それでは失礼いたします」

紬「も、もう……」

澪「……」

紬「? どしたの?」

澪「あ、いやー……
  眉いじるのは食事のあとのほうが良かったかな、
  って思って」

紬「ああ、大丈夫よ、前髪で隠れるから」

澪(じゃあ眉整える意味ないんじゃ)

紬「じゃあご飯食べに行きましょ、澪ちゃん」

澪「ん、ああ……」

澪(眉のことなんかどうでも良い……
  問題は……さっきの……

  執事さんが来た時のムギの反応……!)

食事部屋。

澪「……」きょろきょろ

紬「どうしたの、またきょろきょろして」

澪「いや、こんな広いのに、
  私達しかいないなんて……」

紬「ああ、ここを使うのは琴吹家の人間だけだから。
  メイドたちは違う場所で食べてるわ」

澪「ああ、そう」

ガチャ
斉藤「お嬢様、もういらしていましたか」

紬「おっ……遅いわよ、斉藤……!
  こちらには客人もいるんですからね」

斉藤「申し訳ございません」

テーブルの上に食事を並べていく斉藤。
そしてそれを赤い顔で見つめる紬。

澪「……」

斉藤「お食事の用意が整いました」

紬「ならもう出ていってちょうだい、
  澪ちゃんと二人で食べるから」

斉藤「はい、ではごゆっくり……」
ガチャバタン

紬「ごめんなさいね、うちの執事ったらグズで……」

澪「ああ、いや……」

紬「じゃあ食べましょうか、いただきます」

澪「いただきます」

紬「お口にあうかしら?」

澪「うん、おいしいよ」もぐもぐ

紬「そう、良かった」もぐもぐ

澪「あのさあ」

紬「?」

澪「間違ってたら申し訳ないんだけど」

紬「なあに?」もぐもぐ

澪「ムギの好きな人ってさっきの執事さん?」

紬「ぶーっ!!」

澪「うわ、きたなっ!」

紬「み、澪ちゃんがいきなり変なこと言うからっ!!」

ガチャ
斉藤「どうかなさいましたかお嬢様!」

紬「なんでもないから来ないでっ!」

澪「顔真っ赤だぞ」

紬「うるさいっ!」

斉藤「では失礼いたします」
ガチャ

紬「はあ……」

                                  ノ)
                               { {
                                 / Y)
                           ⌒〈  l{
                       /    }  ノ

                      _/  .   ´ ̄ ̄`
                       "´   /   .:         \
               ,  '´       /     ,/l   l、  ヽ  \
               /        /  /  〃 |   | ヽ   ヽ
               {           /|   .′ 人>   |∠ィ  !l  i
 .             ヽ        .イ | | l  / _   \ |  ヽ |   }
               |     _/ :! | | | ,x=z-ミ   `≦z=x | | |
 .              l        | |_| VY'辷う      辷う^ヘ/ |_ !
                  .        | { | ::}   :::::   ,   :::::  { | } |
 .               ,       い| ::{            } |ノ!
                 ,     l! ::::、      H      /: l:.. ヽ   <Booooooooooo!!
                  ヽ     ,′:l: r>、          .ィ::; ! ̄ヽ
                   丶   |   :l:| { >、 ..__.. ィ::八l/   l     ヽ
                  人   l  :::l |、 ゝ:::::_x――- ′_ }/    ヽ
                     //ハ  '.  ::゙.|  ̄`./{         ̄  ¬ ―- 、
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                 l∧ : : /. :∨  '   ゙.   | ,ハ.__.:::へ
                { \/ . : :| __ハ  }   | |l J  {   {_ 二r- _       ノ

澪「……」

紬「いつ気づいたの」

澪「……ついさっき」

紬「なんで気づいたの」

澪「……見てたら分かった」

紬「そんなに露骨にアレだった?」

澪「アレだった……
  ていうかアレじゃあ本人だって気付くんじゃ……」

紬「そ、それは言わないで……」

澪「……でもさあ、なんで執事さんなんだ?
  ムギが好きだって言うんならそれで良いんだけどさあ、
  歳だって離れてるし……」

紬「だ、だって……」

澪「だって……何?」

紬「そりゃ……確かに斉藤はただの執事で、
  歳も離れてるけど……」

澪「うん」

紬「昔からお父さんはあんまり家にいないし、
  一人っ子だし……
  家にいるときはずっと斉藤と一緒にいたの」

澪「うん」もぐもぐ

紬「でもそれも小さい時だけで……
  大きくなるにつれて、
  だんだんと距離を置くようになって。
  こっちからは必要最低限のことしか
  話しかけなくなったし、
  斉藤の方もそれを察して
  私に対してあまり干渉しなくなったわ」

澪「反抗期だね」

紬「まあそんなものね。
  で、そんな状態が何年も続いたわ」

澪「ほう」もぐもぐ

紬「で、ある日……
  ていうか何ヶ月か前なんだけど」

澪「うん」もぐもぐ

紬「ライブでオリジナル曲をやることになったわね」

澪「そうだな」

紬「私は作曲の心得があったから、
  曲を書くのを引き受けたけど……
  やっぱり一人じゃ上手くできなかったのよ」

澪「もしや、その時に手を貸してくれたのが」

紬「斉藤だったわ」

澪「……」

紬「私は数年ぶりに、
  斉藤と必要最低限以上に近づいて……
  会話をして……
  つきっきりで作曲の手ほどきをしてくれたわ、
  夜遅くまで」

澪「それで惚れた?」

紬「まあ、そうね……
  斉藤と一緒にいるうち、
  昔のこと思い出したりして……
  それで、それからも意識するようになって」

澪「ほー」

紬「あとその、
  作曲できるとこもすごいなー、なんて……
  あ、何いってんだろ私……」

澪「ふうん……
  ムギが斉藤さんを好きなのは分かったよ。
  でもさ、さっきみたいに冷たくしたりしたらダメじゃんか」

紬「そ、それは分かってるんだけど……
  どうにも恥ずかしくて……」

澪「素直になれない、か……分かるよ、うんうん」

紬「澪ちゃんも恋したことあるの?」

澪「ないけど?」

紬「あ、そう……」

澪「それで、ムギは斉藤さんと付き合いたいのか?」

紬「でも恋仲には……
  立場が立場だし、歳も……」

澪「じゃあどうしたいんだ?」

紬「……想いを伝えて、
  また昔みたいに仲良く出来れば、それでいいわ。
  ……ううん、昔みたいじゃなくて、
  16歳の私と……」

澪「16歳の自分、か……
  じゃあ自分が成長したとこを見せないとな」

紬「そうね……
  どうすればいいかしら」

澪「うーん……」

ガチャ
斉藤「お嬢様、お食事は済まれましたか?」

紬「は、入るなっていってるでしょお!」

澪「……」

澪「……じゃあまあ、
  この話はこのへんにしとくか……」

紬「そ、そうね……
  ありがとう、聞いてくれて。
  やっぱり澪ちゃんって頼りになるわ」

澪「そ、そうかな」

紬「唯ちゃんが恋愛相談するのも分かるわ」

澪(信じてたのか……)

食事の後、
澪はふたたび紬の部屋で
眉の整え方を教えてやり、
おみやげにお菓子をいっぱいもらって
琴吹家を後にした。

翌日、放課後。

ガチャ
唯「ちょりーっす」

律「お、唯」

澪「よう」

紬「こんにちは」

唯「……」

澪「どした?」

唯「…………ああ、ムギちゃんか。
  なんか違和感あると思ったら……眉毛が」

紬「似合う?」

唯「うん、可愛いよ。いいんじゃない?」

紬「そう、ありがと」

澪「唯。さっき3人で話てたんだけどな」

唯「なに?」

澪「今度のライブ、絶対成功させような」

唯「そりゃー当然だよ」

澪「軽音部のためだけじゃなく、ムギのためにも」

唯「なんでムギちゃんのため?
  ま、まさか……」

澪「そう、そのまさかだ」

唯「ムギちゃんの余命がわずかで、
  学園祭までしか生きられないとか……」

澪「本気で言ってるのか」

律「あーもう、ムギの恋を叶えるためってことだよ、唯」

唯「ムギちゃんの恋?」

澪「ムギは自分ちの執事の斉藤さんが好きなんだって」

唯「ええっ、そうだったの!?」

紬「…………」こくん

澪「そう、幼いころからムギの面倒を見てきた斉藤さんに、
  ライブを通してムギの成長した姿を見せる!
  そして想いを伝える……という計画だ。
  名づけてラブライブプロジェクト」

律「すげえ言いにくい」

唯「ふうん……
  それにしても執事さんかー、
  なんかムギちゃんらしいな」

律「まーそのへんの男と恋愛するってイメージはないな」

紬「も、もう、2人とも……」

澪「ほら、そういうことだから、練習するぞ」

唯「よし、やろう!」

律「ムギのためにも!」

紬「みんな……」

唯「私、ムギちゃんのこと応援するから!」

律「私も応援するぞ、絶対いいライブにしような!」

澪「頑張ろう、ムギ」

紬「ありがとう……
  みんなで良いライブにしよう」

唯「うん!」

律「よーしいくぞー、
  ワン・ツー・スリー・フォー!」

その日から、4人はひたすら練習に打ち込んだ。
ライブを成功させるために。
紬のが想いを伝えられるように。

学園祭が近づくにつれて、
4人の演奏は確実に磨きがかかっていった。
特に紬の技術の向上は目を見張るものがあった。
恋する力はスゴイ、澪はそう思った。

そして時は流れ学園祭当日。

講堂、舞台袖。

唯「おー、お客さんいっぱいいるよ」

律「ほんとだ、こんな大勢の前でやるのか」

唯「ちょっと緊張しちゃうねえ」

律「そうだなあ、流石に」

唯「澪ちゃんは大丈夫? 緊張しない?」

澪「え、ああまあ……
  確かに緊張はしてるけど……
  私より……」

唯「?」

紬「がくがくがくがくがくがくがくがく」

律「ムギ……」

もうオリジナルのけいおんなんて誰も覚えてねぇよw

唯「だ、大丈夫? ムギちゃん」

紬「だだだだだだだだだだだいひょうふひょ」

律「まったく大丈夫そうに見えねえ」

澪「しっかりしろよ、斉藤さん来てるんだろ」

紬「た、た、たぶん」

唯「たぶん?」

紬「うん、今朝スキを見て斉藤のテーブルの上に
  招待券を置いといたから、
  たぶんそれを見てると思うんだけど……」

律「ば、ばか! なんで手渡しにしなかったんだ!!」

紬「そ、そんなの…………恥ずかしい」

澪「自分を見ているようだ」

律「もう、来てなかったら意味ないじゃないか」

紬「うう……」

唯「大丈夫だよ、ムギちゃん!」

紬「え……」

唯「斉藤さんは昔からずっと
  ムギちゃんのこと見ててくれてたんでしょ?」

紬「うん……」

唯「じゃあムギちゃんの考えだって、きっとお見通しだよ。
  机の招待券にも気づいて、ここに来てくれてるよ」

紬「そ、そうかしら……」

唯「そうだよ。
  信じてあげなきゃ、斉藤さんを。
  それから、自分自身を」

紬「自分自身を……そうね。
  ありがとう、唯ちゃん」

放送『次は、軽音楽部によるバンド演奏です……』

律「お、きたな」

澪「ようし、ライブラブプロジェクト、最終段階だ!」

唯「ラブライブじゃなかったっけ」

幕が上がり、
客の視線と歓声が4人にぶつけられる。

唯「……」

澪「……」

律「……」

紬「がくがくがくがく」

唯「ムギちゃん」

紬「?」

唯「みんな、ムギちゃんが頑張ってたの知ってるから」

紬「……」

唯「だから、大丈夫だよ!」

紬「……うん」

律「……ワンツースリーフォー!」

ジャカジャカジャージャカジャカジャカ

紬(斉藤……)

ジャンジャカジャカジャカジャンジャカジャカ

紬(ねえ斉藤……)

    君を見てるといつもハートドキドキ♪

紬(この講堂のどこかで、私を見ていてくれてるのかしら)

    揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ♪
 
紬(もうあの頃の私じゃないわ)

    いつも頑張る 君の横顔♪

紬(何も出来ずに泣いていた、あの頃の私じゃない)

    ずっと見てても気づかないよね♪

紬(もうこんなに大きくなって)

    夢の中なら二人の距離縮められるのにな♪

紬(できることだってたくさん増えたわ)

やべえ改めて見たら超読みづれえ



クラハドール「紬お嬢様ッ!!」

ってSS書こうとしたわ

――――ああ神様お願い 二人だけのDream timeください


紬(仲間だってたくさんできた。
  一人じゃできないことをたくさん知った)


――――お気に入りのうさちゃん抱いて


紬(その仲間たちと半年間一緒に過ごして、
  私はうんと大きくなれたわ)


――――今夜もおやすみ


紬(斉藤、私はもうお嬢様じゃなくて)


――――ふわふわ時間 ふわふわ時間

紬(一人の女なのよ)


ジャーン♪

ワアアアアア………
パチパチパチパチパチパチ

紬「…………」

澪「みんな、ありがとー!」

ぐいっ

澪「ひゃっ……!」

どたん

澪「あたたたたー……」

紬「あ」

律「いっ」

唯「う……」

澪「えっ!?」




斉藤「Oh......」


――――

――――――――

――――――――――――

――――――――――――――――


音楽室。

澪「…………」

紬「…………」

澪「…………」

紬「…………」

澪「…………」

紬「…………」

唯「……どうする?」

律「どうにもならんだろ……」

澪はライブ終了時にすっ転んで
客にパンツを晒してヘコみ、
そして紬はそのせいで
ライブが台無しになってヘコんでいる。

唯「ま、まあ、元気だしてよ、2人とも……」

澪「……」

律「澪もムギも、立ち直れよ」

澪「……無理だよそんなの……」

律「いいじゃないか、
  別に下着くらいさ、減るもんじゃなし」

澪「そういう問題じゃない!
  私のせいでライブをダメにしてしまったんだ、
  せっかくのライブを……」

紬「……」

澪「ごめんムギ、本当にごめん!!」がばっ

律「もー、何百回土下座すれば気が済むんだよ」

澪「それを決めるのはムギだよ……
  ムギに許してもらうまでは何度でもやる」

紬「……」

唯「ほらムギちゃんもさ」

紬「……」

唯「澪ちゃんがこんなに真剣に謝ってるんだから、
  いつまでもへそ曲げてないで」

紬「……」

唯「過去のことを気にしても仕方ないよ、
  これからのことを考えよう」

律「お、良いこと言うなあ唯」

紬「コレカラノコト……?」

唯「そうだよ、告白するんでしょ?
  斉藤さんに」

律「そうそう」

紬「無理よ、そんなの……相手は執事よ、
  告白することさえ許されないわ」

律「自身をすっかり失ってらっしゃる……」

紬「そうよ、最初から無理だったのよ……
  ライブも……告白も……
  私に恋なんて……
  人が生きる意味は……
  地球ができて46億年……
  そう人生など塵でしかない……」

澪「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ガンガンガン

律「床に頭を打ち付けるのはやめろ」

唯「はあ、どうしよ……」

律「うーん……
  ムギの気が収まるまで待つしか……」

コンコン

唯「? はーい、どうぞお」

ガチャ
斉藤「軽音楽部、でよろしかったでしょうか」

澪「さ、斉藤さん」

唯「え、この人が?」

律(オジイサンじゃないか……)

唯(ムギちゃんこういう趣味だったのか)

斉藤「お嬢様……」

紬「こ、来ないでちょうだい……
  今の私は貴方に合わせる顔はないわ……」

澪「すみませんすみません私のせいで」ガンガンガン

斉藤「そんなことはございません、お嬢様。
    私、お嬢様の演奏を客席から拝見しておりました」

紬「……」

斉藤「確かにライブにはハプニングがございましたが、
    それも予期できなかった事故、
    この方が悪いと言うわけではございませぬ」

澪「ありがとうございますありがとうございます」ガンガン

紬「私は完璧なライブを見て欲しかったのよ……」

斉藤「私にとっては完璧なライブでございました」

紬「嘘……」

          ,.:'                   ;;
         ,.:' Пшеница            ;;
           '                      ;;
           '             ★           ;;
           '           C C C P        ;;
          '         ,,. -r ‐―‐r‐-、 .     ;;
            ',      .ィ" /,.ヘ',     | <⌒Y`'ト ..,;′
           ',  .ィ" | ∠.. ノ ',   |  ヽハ l   |
          i" i  | /  ヽ. }ヘ. |   Yl   |
          |     |' ィそミ   ヽ|ィそミ刈/ |
          |     |《 rし.::!       rし.::} 》i{  |
.            |Y´|   |i  ゞ-゚′  ,   ゞ-゚' /   |
              | ヽ!   |i  ::::.:.::      :::::.: {: :  |
             |从   !i、    r~‐┐   从 : |   Социалистическая
              l/,'ハ  !i : 、   ー一'  ..イ ハ: ト、              красный!
             /.,'   i  !i   : . .、 _ . .イ  ',{   | \
         / ,'   :i  !i       丶 /     }  人  )
           〃´⌒丶:i  !i        }    iヘ. ! )
.        //. : : : : : ::ヽ !i       /\   i: :i |`ヽ

斉藤「嘘ではございません。
    お嬢様が、あんな大勢の前で
    立派に演奏をこなされたのです。
    それ以上に何を望みましょう」

紬「……」

斉藤「それに、演奏された曲は
    お嬢様がお書きになった曲でしょう」

紬「……斉藤も書いたでしょう」

斉藤「私はお嬢様の書いた曲を
    バンド音楽向けに編曲しただけでございます。
    あれは正真正銘、お嬢様の曲ですよ」

紬「……」

斉藤「聴衆は皆、お嬢様の曲に聞き惚れておりました。
    私もその一人でございます」

紬「……」

斉藤「お嬢様はライブを成功させたのですよ」

紬「……」

斉藤「お嬢様……」

紬「……」

斉藤「どうか機嫌を……」

紬「……」

澪「すみませんすみません」ガンガン

斉藤「私は……どうすれば」

唯「それは斉藤さんが一番よく知ってるはずです!」

斉藤「!」

律「唯……!」

唯「だって、斉藤さんは昔からずっと
  ムギちゃんの一番側に居たんですから」

斉藤「……そう……そうですね。
    ありがとうございます、お嬢さん」

唯「はいっ」

紬に歩み寄る斉藤。

斉藤「お嬢様」

紬「……、…………!!」

そして斉藤は、
そっと紬を抱きよせて
頭を優しく撫でたのであった。

唯「おお……」

律「ダイタンだな」

紬「ななななななななななにをするんですか斉藤!!」

斉藤「昔より、お嬢様が拗ねられた際には
    こうしておりました」

紬「わ、私はっ……拗ねてなんか……!
  とにかく離しなさい!!」

律「顔真っ赤だぞー」

紬「うるさいっ!」

斉藤「知らないうちに大きくなられましたな」

紬「や、やめっ……」

斉藤「いや……大きくなったのは知っておりました。
    しかし目で見るのと、こうして触れ合うのとでは
    また印象が違うものですね」

紬「何を言って……」

斉藤「そして……目で見ても肌に触れても
    分からないであろうお嬢様の成長が、
    今日は感じることができました」

紬「……!」

斉藤「素晴らしいライブでしたよ、お嬢様」

紬「……」

斉藤「……大人になられましたな」ぎゅっ

紬「……っ」



唯律澪(私達はここにいて良いんだろうか)

斉藤「もう機嫌は直られましたかな」

紬「ええ……もういいわ」

斉藤「かしこまりました」

斉藤は紬を離した。

紬「……」

斉藤「お嬢様、皆様に言わねばならないことがあるでしょう」

紬「ええ。ごめんね、みんな……
  特に澪ちゃん、ほんとは澪ちゃんが悪いわけじゃないのに……
  その、私……」

澪「いやいいんだよ、気にしないでくれ」

律「デコから血がドバドバ出てるぞ」

紬「ありがとう、澪ちゃん……
  あと、素敵なライブにしてくれて、ありがとう」

律「どういたしまして」

唯「こっちこそありがとうだよ、ムギちゃん」

斉藤「良い仲間を持たれましたな」

紬「ええ」

唯「それよりー、ムギちゃんこそ
  斉藤さんに言うことがあるんじゃないのー?」

斉藤「ほう」

紬「ちょ、ゆ、唯ちゃん……!」

唯「ほらほらー言っちゃいなよー」

律「おい唯~そういうのやめろよぉ~」

澪「そうだぞ~かわいそーだろ~」

紬「すごく嬉しそうな顔してるわねみんな」

斉藤「お嬢様、私に言いたいこととは?」

紬「っ……」

唯「言っちゃえムギちゃん!」

澪「私達は外にでてようか」

律「そうだな。ほら唯」

唯「えー」

紬「ここにいてくださいお願いします」

澪「ムギって意外と意気地なしだな……」

紬「…………」

斉藤「…………」

紬「…………」

斉藤「……お嬢様?」

紬「えっと、その……」

斉藤「はい」

紬「私、斉藤が……」

唯「おっ」

紬「斉藤が……斉藤に……」

唯「お?」

紬「斉藤に……
  もう、お嬢様って呼ばれるのは、嫌だわ」

斉藤「……」

唯「……」

澪「……」

律「なんだそりゃ」

紬「もう私お嬢様じゃないわ」

斉藤「そうでございますね」

紬「だから……
  名前で、呼んで」

斉藤「かしこまりました、紬さま」

紬「……、…………ありがとう」

斉藤「これでよろしいのですか、紬さま」

紬「ええ…………充分よ」

斉藤「そうでございますか。
    では私は、家の仕事がございますので、
    これで失礼いたします」

紬「ええ」

斉藤「では」
ガチャバタン

唯「……」

澪「……」

律「てっきり告白するのかと思ったのに」

唯「そうだよ、拍子抜けだよ」

紬「いいのよ、今はあれで……
  それに愛の告白なんてする気はなかったわ。
  私がもう子供じゃないってことを、
  一人の女性だってことを分かってもらえれば、
  それで良かったの」

唯「ふうん……?」

紬「今はスッキリしてるわ。
  素直に仲良くなれそうな気がする」

唯「そっか、良かったね。ムギちゃん」

律「ええ話や……なあ澪」

澪「……そうだな」

唯「いーなー、私も恋とかしたいなー」

律「お、恋に恋するお年頃てやつか」

紬「ふふ、唯ちゃんならきっと素敵な恋ができるわよ」

唯「ほんとにー?」

紬「ええ……って、唯ちゃん好きな人いるんじゃ?
  同じ中学だったサッカー部の」

唯「あっ」


     お   わ     り


これでおしまい

前に斉藤→紬で書いたので
今度は紬→斉藤にした

オチは許せよ





…の前にその斉藤→紬のSS教えて

>>243
斉藤「はあはあ、紬お嬢様っ……うっ!!」ドピュドピュ

              ____
            /__.))ノヽ     こ、これは>>1乙じゃなくてわしが育てた魔球なんだから

            .|ミ.l _  ._ i.)    変な勘違いしないでよね!
           (^'ミ/.´・ .〈・ リ
           .しi   r、_) |

             |  `ニニ' /        二二二二二二二 ̄>
            ノ `ー―i´_                >/

      ? )ヽ   ;'ー  ̄     ` 丶            / /
      `丶 \i     ┌'' ̄丶 |            /  <____
         丶 |     i 、(\i  !           |______/ 三().()
          メリ     <_  (_  ゝ
           〈     i   ̄

          _ L.]]ニ[l iニ}__

        、 `     i     ̄`\
     _/       |. .,,____   \
   /´     、.-‐''''  ̄     `\  丶
 /ノt--ー''''~             メ  丶

(,__ゝ                    \. ノ
                         」_ /´ )

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