怜「竜華の隣に永久就職や!」 (54)

千里山にて怜・二年の冬、進級直前。

深夜・怜の実家。

怜「―――はっ! …寝てたんか……」

怜「あれ? 私…何してたんやったっけ」

怜「確か……ベッドの上で学校から配られたプリントを整理しててうわぁくしゃくしゃやん! ……あ、進路の…」

怜「やば…希望進路まだ決めてへん…」

怜「何かしたいこと…何かしたいこと」

怜「うーん、急に言われてもなぁ……っていうか私病院にもよく行くからまず定期テストのことでいっぱいいっぱいやのに…」

怜「みんなは進路とか考えてるんかなぁ…」

怜「やりたいこと…したいこと……」

怜「………私は…」

怜「…みんなと、全国行きたいなぁ……」

怜「セーラも…竜華も…みんな手の届かんとこに行ってしもた…」

怜「私は…三軍から応援するだけ……」

怜「体も……弱くなってるみたいやし……」

怜「………って、あかんあかん! なんで弱気になってんねん自分! セーラや竜華は言ってたやん! 前を向きながら歩いてたらきっと救われるって!」

怜「…一軍行って! セーラと! 竜華と! 全国!」

怜「…ふふ、ちょっと声に出して言うだけでなんや気分が乗ってきたわ」

怜「ちょこっと以前の牌譜でも見て勉強しよかなぁ。とりあえず、進路の紙は後回しや!」

怜「牌譜、牌譜~っと」

――――――

―――…。


怜「………ふわぁ…」

怜「んー、眠くなってきたな」

怜「…よし、とりあえず明日はさっきの牌譜を参考にもうちょっと頑張ってみよかな」

怜「今日は……もう寝よかな」

怜「変な時間まで起きてたせいで明日ちゃんと起きれるかなぁ……」

怜「…って明日は午前中に病院行く日やん。学校よりかはちょっと遅めに起きても大丈夫な日やから…ま、ええやろ」

怜「ふ…ぅ……、ん……」

怜「……スースー」

――――――

―――…。


竜華「あれ? 怜? まだ進路希望の紙提出してへんの?」

怜「あーこれな…なんかイマイチ卒業後の自分を想像出来へんくて」

怜「今したいこととかは決まってるんやけどな」

竜華「したいこと? なんなん?」

怜「え、あー……わ、笑わへん?」

竜華「え、何で。恥ずかしいことなん?」

怜「…恥ずかしいといえば恥ずかしい。なんでこんなこと言うんやこの子は、って心の中で思われてそうで…」

竜華「なんやそれー。私は心の中でそう思っててもちゃんとフォローくらいはするで」

怜「…フォローて」

竜華「まぁまぁ、とりあえず一回言うてみ。面白いことやったらセーラにも言ってくるけど」

怜「面白いことちゃうで。…まぁ、言うとな…」

竜華「うんうん」

怜「……み、みんなで…」

竜華「うん」

怜「……ぜ、全……」

竜華「………」

怜「~~~っ!」

怜(アカン、竜華らは確かに親友やけど……けど…。千里山でずっと一緒にしてきたのに)

怜(私だけ…置いてけぼりや……。そんな私が今からみんなで一緒に全国行きたい言うても)

怜(そんなんは夢の話や。理想の話や)

怜(もう時間もない。間に合わない確率のほうがでかい。それに……今度来る新入生もええ特待生が来るって言うし……)

怜(みんなで全国、行きたい)

怜(どうしても……この言葉が…出てこなくて……)

怜「全……こ」

竜華「ストーップ!!」

怜「へ?」

竜華「ここで、竜華ちゃんからお知らせがあります」

怜「え? ちょ、ちょい待ち」

竜華「ちょっと待っててなー。持ってくるもんがあるから」

怜「え? あ! ……行ってしもた…」

怜「……はぁ…なんやねん竜華のやつ」

怜「頑張って言おうとしたのに…」

怜「……言わせてくれへんのか…、みんなで一緒に…全」

竜華「言わせへんでー!」

怜「うわぁ!?」

怜「…な、何私に乗っかって………」

竜華「? 怜?」

怜「………何を私に乗っけとんじゃぁ!!」

竜華「うひゃぁ?! ってキレるの早すぎやろ! 胸押し付けたくらいで!」

怜「大きいやつに小さいやつの気持ちが分かってたまるかアホ!!」

竜華「まぁまぁ落ち着きなさいな。怜に見せたいものがあるんやって」

怜「ガルルルル」

竜華「あかん、ちょっと今日は攻撃態勢解けへんみたいや……けどまぁ…見せれば収まるやろ、ほいさっさ!」

怜「ガルルル……る?」

竜華「る、ってなんやねん。まだ狂犬のつもりでおるんか」

怜「………は?」

竜華「は、ってなんやねん。これみて感想それだけ?」

怜「え、こ、これって……竜華の?」

竜華「せやで、私の進路希望書!」

怜「え、え、……第一進路希望って……」

竜華「うん! 『怜の隣』!」

竜華「つまり……怜の隣に永久就職や!」

怜「…………」

竜華「…………そういうことやで」

怜「……な、なにが…そういうこ……?」

怜(あ、あれ?)

怜(き、急に……意識が……薄れ…て……)

――――――

―――…。

チュンチュン。

怜「―――…んぁ……ん?」

怜「朝チュン? ……朝?」

怜「………あれ、私……寝てた?」

怜「………夢?」

怜「………はぁ~~~~」

怜「溜め息吐くしかないで、なんやねんあの夢…」

怜「竜華の希望進路が私の隣なんて」

――ドクン。

怜「い、悪戯にも…ほどがあるやろ……」

怜「アホみたいな夢やったなぁ。……っていうか友人、…いや親友やな。いくら親友とは言え進路が親友の隣って」

――ドクン。

怜「ち、違う意味で捉えるかもしれへんやん」

怜「……まぁ、長い付き合いやし、冗談ってのもよく分かるよ」

怜「せやけど…それにしても……希望進路が……私の……隣……」

――ドクン。

怜「―――ッ!!」

怜「な、何で……私の胸、こんなに高鳴ってんの? …なんでこんなに顔赤いの?」

怜「な、何で……私、ちょっと嬉しく思ってんの?」

怜「夢やで?! あれは竜華の本心やないで! なのに…何で私…ちょっと嬉しい気持ちでいられるの?」

怜「もしかして……私は、竜華のことを……?」

――――――

―――…。


怜「………」

セーラ「おっす怜! おはよーさーん!!」

怜「あいた。ちょっとセーラ強く叩くのやめ……っ!」

竜華「もうバカセーラ! 怜を強く叩くのやめてや!」

セーラ「あんま強く叩いてるつもりなかったんやけど…そうや怜が相手やったの忘れてたわ。ごめんな怜」

怜「う、ううん。別にええで……」

竜華「あ、怜おはよー」

怜「――っ、お、おはよ……」

竜華「? あれ? 怜、どうしたん? 今日元気なくない?」

怜「べ、別に…。そういうわけじゃないで…」

怜(あかん、普通に竜華と接するだけで意識してまう)

怜(どうしても昨夜の夢を思い出す……)

セーラ「とりあえず朝練行こや! 船Qが待ってるはずやで」

怜「う、うん。早く行こか」

竜華「? 怜、なんか今日はテキパキ動くんやね」

怜「ま、まぁ今日はちょっと調子ええねん」

セーラ「おぉー! そいつは嬉しいなぁ! 頑張って一軍昇格してやー!」

怜「っ!」

竜華「怜?」

怜「な、なんでもないで。ほら行こ?」

怜(みんなで一緒に、全国……)

怜(そうや、私から見たら確かに夢のような、理想な話やけど)

怜(でもセーラや竜華は、私のためにこうやって朝練もしてくれてみんなで一緒に一軍行って、全国行こうとしてくれとる)

怜(…だったら、私が……みんなと一緒に全国行きたい、って言っても笑わずに…いてくれるんやよね)

怜(…今日、朝練終わったら…言う! みんなと一緒に、全国へって!)

竜華(……怜?)

――――――

―――…。


セーラ「うっすー! おはよーさーん!」

船Q「!!?」

怜「? どしたん、そんな驚いた顔して…」

船Q「い、いえ……私がみんなが部室へ辿り着く予想の時間より62秒早かったんで……」

セーラ「あはは、相変わらず面白いやつやなー。それで本当は?」

船Q「なんやノッてくれてもええんとちゃいます? いえ別に、ただ私は『データ麻雀はそんな詳しいところまで分かるの?!』みたいな反応が欲しかったんです」

セーラ「データマージャンハソンナクワシイ」

船Q「いや、もうええです。それより思ったより早い到着ですね」

竜華「データマージャンハソンナクワシイ」

船Q「すいません、本当にもうええです」

船Q「園城寺先輩も調子ええ時はすこぶるええんですね」

怜「せやなぁ…、今日も朝から心臓ドキドキでめっちゃテンションあげあげや」

船Q「…恋人の夢でも見たんですか?」

怜「――ッ!」

船Q「睨まないでくださいよ。…っていうか本当なんですか」

怜「うぁー、あかん。後輩に弄ばれたぁ…」

船Q「いや、分かりやすいサインを送ってくれる園城寺先輩にも責任が…」

セーラ「おーい、何二人で雑談してるんや。はよ入りぃ」

竜華「怜の特訓やでー」

怜「はーい」

船Q「さてと、今日も一位狙って行きますよー」

セーラ「なはは、俺相手でもそう言ってくれる向上心のあるやつは好きやで」

船Q「そうですか。私もセーラ先輩みたいなの好みなんです。付き合いますか?」

セーラ「ええで。じゃあ負けたほうは学校帰りの荷物持ちに駅前のクレープ奢りな」

船Q「セーラ先輩の財布の紐は緩いんですね、後輩にそんな奢るとか」

セーラ「勝利前提で話進めんなや。生意気な後輩は嫌いやわ」

船Q「そう言って負けた時に嫌いな後輩に奢るものはない、って言うような保険かけて逃げる先輩は嫌いですね。別れましょ」

セーラ「賛成や、でもなクレープだけは奢ってもらうで。優しい優しい後輩にな」

船Q「私みたいな超優良物件をわずか数秒で手放した先輩にクレープを奢ってあげる、素敵な後輩だったんですよ」

セーラ「はっ、あんたみたいなのと付き合うと財布の小銭まで管理されそうでストレスによる胃に穴空きそうや」

船Q「私も後輩に何でも奢るような財布の緩い人と付き合うと胃に穴空きそうです」

セーラ「なんや気が合うなぁ」

船Q「ですね」

竜華「あはは、また始まった。こんな会話しながら打牌はすっごい気持ち篭ってるんやからすごいわぁ」

怜「打牌って気持ち篭るもんなん?」

竜華「えぇー、怜も何年も麻雀やってきて分からへんの?」

怜「……あんまし」

竜華「ふーん。…まぁ私の感覚やとね、勝つぞー勝つぞーっていう気持ちが込められた目をしてる人の打牌は本当に熱く見えて」

竜華「負けない負けない、って気持ちが込められたら今度は打牌が涙流してるみたいな感覚やなぁ」

怜「……なんやそれ」

竜華「えー、わからん? あ、それロンやでセーラ。ちっちーもらい」

セーラ「げ! ヤオチュウ捨てつつ、純チャンってなんやねんそれ……」

怜「あ、危なかったぁ…浮いてた牌やったでそれ…」

竜華「ふーむ、怜、ちょっと後ろから失礼するで」

怜「ッ!!」

怜(り、竜華の…顔がすぐ近くに……)

竜華「いいかな、さっき言った捨てようって牌、持ってみて」

怜「う、うん……」

竜華「それでね。勝つぞー勝つぞー、って思って」

竜華「この三人に勝つぞー! 絶対に勝つぞー! って」

怜「う、うーんと……か、勝つぞー」

竜華「あかんあかん、気持ち篭ってない。もっと気持ち込めて!」

怜「せ、せやけど……っていうかこんなん特訓ちゃうで、セーラも船Qもはよ続きしよや」

セーラ「俺はええで。こういう気持ちの特訓も大事やからな」

船Q「メンタルが強くなるのは雀力の強さに影響するのかどうか知りたいです」

竜華「ほら、みんなええって言ってるで」

怜「……うーん、か、勝つぞー」

竜華「あかんなぁ……、なんか本気で勝つっていう気持ちがないな」

怜「う…うぅ……」

怜(それもあるけど…竜華も近すぎ……、匂いが…)

竜華「ね、怜」

怜「っ!!」

怜(竜華の手が、私に…合わさってる……!)

竜華「怜は……今何か願ってることある?」

怜「え?」

竜華「なんかこう、漠然…はダメやな。はっきりしたことで、絶対に譲れない気持ちがあるやつ…」

怜「………」

竜華「それを叫びながら打ったら、もしかしたら……」

――ドクン

怜(……い、言えるかもしれん)

怜(…絶対に譲れへん気持ち……)

怜(このメンバーで……全国へ)

怜(三軍の私からしたら夢でも……みんなは私と一緒に、全国へ行けるって思ってくれてる)

怜(――! そう、やったんか。……セーラも船Qも、もちろん竜華もみんな打牌に気持ちが篭ってる)

怜(でも、どこか心に引っかかる気持ちを込めてたのには気付いてた)

怜(何か分からんかったけど、それが今、ようやく分かったで…)

怜(……みんな、私も一緒に全国へ行けれるって、そういう気持ちで打ってるんや)

怜(みんなで河に牌を捨てる度、ツモる度に私の心に何かが刺さってきた)

怜(そうか…そういうことやったんや。恥ずかしいって、どうせ笑われるって思ってたのは…私だけやったんや)

怜(これが…気持ちを込めるってことやったんやね)

――ドクン

怜(隣に……竜華が居てくれてる)

――ドクン

怜(優しい気持ちで、私の手を握ってくれてる)

――ドクン

怜(この胸の高鳴りはきっと、……竜華に対して、かな)

――ドクン

怜(……夢の中で、竜華の進路先は私の隣ってしてくれてた)

怜(……せやったら、私の進路先ももう決まったようなもんや)

怜(…間違いないやろ。だって私……竜華に惚れてしまってるんやもん)

怜(すごい、嬉しかった。すごい…楽しかった)

怜(私は…幸せやった)

怜「私は……」

セーラ「ん?」

船Q「お?」

竜華「…え、怜…?」

怜「私……は……!」

セーラ「ちょ!?」

船Q「せ、せんぱ……あ!!」

竜華「……え?」



怜(みんなと一緒に……全国へ……)



――バタン。

竜華「え……? と、怜……?」

竜華「た、倒れ……?」

セーラ「……!! 救急車や!! だ、誰かおるかー!!」

船Q「なんか園城寺先輩がおるの違和感あったんです! 今日って通院の日じゃなかったんです?!」

竜華「え? あ……隔週に一回やから…、この前行ったのは…先々週の……水曜…日」

船Q「…! やっぱり今日が通院の日やったんか……」

セーラ「と、とりあえず先生に連絡したで! 救急車にも今電話してもらっとる! 今、怜はどんな感じや!」

竜華「……ダメ、や…完全に意識、失って……る」

セーラ「!? い、息は……!」

竜華「い、息って……いやや、た、確かめたく…ない」

セーラ「っ! 怜!! 怜ぃーー!!」

――――――

―――…


怜(……ぁ。…あれ? ここどこや)

怜(んー。…千里山の教室、やな)

怜(あれ、なんか意識がふわふわしてる……なんやろか)

?「だーれだ!」

怜「うわぁ! …って、何を乗っけてるんじゃって言ったやろがあぁぁ!!」

?「うひゃあ!」

怜「胸を押し付けるなって言ったやろ、竜華!」

竜華「あはは、すまんなぁ」

怜「まったく……、っていうか…なんで私ここおるんやろ」

竜華「ん? 何当たり前のこと言ってるん?」

怜「いやだって、私なんで千里山の教室におるか分からへんもん。今日って平日やった? 祝日やった? 昼間やのに誰もおらんし、休日やったらなんで私ここにいるん?」

竜華「いやいや、ここは千里山の教室ちゃうで」

怜「え? いや、だってここは……」

竜華「ここは、怜の心の中やで」

怜「……は?」

竜華「だから、怜の心の中」

怜「……心の中が学校かぁ…、ちょい複雑やな」

竜華「お、物分りがよろしいようで」

怜「アホ、突っ込みまちや。心の中が学校ってなんやねん。信じられへんわ」

竜華「でも、そうなんやで。ここは怜の心の中やで」

怜「はぁ……せやったらなんで竜華がこんなところにおるん? 他人の心の中に入るのが趣味なん?」

竜華「え、なんで煽るの?」

怜「……いや、私があんたのこと竜華って言っておいてあれやけど、竜華ちゃうやろ」

竜華「ま、ね。正確には怜の心の中の想い人である竜華との記憶で作られた竜華に近い人型のものやね」

怜「……竜華みたいなやつ、と」

竜華「一発で覚えれへんかったやろ」

怜「うっさいわアホ…」

怜「それで、何か用なん? っていうか、そもそも何で私ここにいるん?」

竜華「それはね…怜が今死にそうだからかもしれんなぁ」

怜「……死にそう?」

竜華「うん。朝練の途中にな、自分の体が心臓を高鳴らせて必死に警告音鳴らしてるのに、それを勘違いして病院にも行かずに普通に登校したからなぁ」

怜「………あ」

竜華「ぴろりーん。よし、怜の呆け面写メったでー」

怜「すっかり失念してたわ…、夢の出来事が衝撃的過ぎて……」

竜華「夢なぁ…私が書いた進路希望のやつ?」

怜「そうそう、ってあんたが書いたんかい!」

竜華「まぁね、怜の心の中にいるのが私だから夢の中に出てくることも可能やからね」

怜「全く……」

竜華「そうそう、夢といえば」

竜華「私がさ、怜の言葉を止めたことあったやん?」

怜「ん、あぁ…あったな。あれやっぱわざとやったん?」

竜華「せやで。…っと、その前に……何で今の怜ってなんかこう……焦らへんの?」

怜「え、焦る?」

竜華「せやでー。だって、自分死にそうなんやで? 生きたいって思わへんの?」

怜「そう言うてもなー……、私って小さい頃からずっと病気と一緒に生きてきたし…」

怜「今回みたいに倒れたら後は神の思うがまま、死ぬんやったらそれまで、生きるんやったら次倒れるまでまだ頑張る!」

怜「そういう風に考えようって決めてるんや。だから――」

竜華「………」

怜「………」

怜「……訂正。…全部、訂正するわ」

怜「そういう風に、考えようって決めてた」

怜「……でも、今は…生きたい。まだ生きてたい」

怜「大切な人、一緒におりたい人……ずっと、隣で…」

怜「そういう人……見つけれたから」

竜華「うん。嬉しいわ。これで私もまだ、怜の心の中で生きてられる」

怜「…あんたにも命なんてものがあるの?」

竜華「せやでー、怜に命を少しずつわけてもらいながら生きてきたんや」

怜「家主に許可なしにそんなことすると罰金取られるで」

竜華「しゃーないな、じゃあ怜のポケットの中の財布にある諭吉さんで許してくれる?」

怜「それは私が最初から持ってるもんやろ」

竜華「んーと、そしたらなー。…ごめん、なんもない」

怜「……じゃあ、唇一つでええわ」

竜華「んー、んー? それはあかんやろー。本物の人とせなあかんやろー?」

怜「……い、今はまだ勇気ないねん」

竜華「だからって代わりもあかんやろー」

怜「ぐぬ……」

竜華「あ、そうそう話戻すけどね」

竜華「私が夢の中で怜に話を一度遮ったやん」

怜「うん」

竜華「今と同じ理由やよ。…それは…一番最初に、本物さんに言わないといかんことやろ?」

怜「……せやな」

竜華「だから、怜の話を遮った私に逆に感謝しなさい」

怜「……唇一つでええ?」

竜華「だ、だからぁ、それは本物の人とせなあかんよって言ったやん」

怜「……冗談、冗談やで」

竜華「ちょっとの間と、本気の目からは察するに絶対冗談やなかったよね」

怜「さて、私は行くで」

竜華「うん。本物の竜華ちゃんによろしくな」

怜「……どう伝えればええねん」

竜華「適当でええやん」

怜「適当、適当なぁ……」

竜華「んじゃねー、怜ー、ばいばーい」

怜「おーう、またなー」

―――――――

――――…。


怜「―――ぁ」

竜華「怜?! 怜ぃぃぃ!!」

セーラ「怜! 目覚ましたんか!!」

船Q「よ、よかったぁ……」

怜「………みんな、抱きつくのはええけど…しんどいからな…」

竜華「うわあぁぁあぁああぁぁぁ」

怜「……ま、うちが辛抱するか…」

竜華「ぐすっ……」

怜「ようやく泣きやんだか…、全くセーラも船Qも落ち着いて帰ってからもしばらく泣いてて…」

竜華「怜ぃ……」

怜「……でもまずは私が謝るのが先やな……ごめんな、心配かけた…」

竜華「……ぐすっ」

怜「……竜華?」

竜華「……き、聞きたいことあるから…聞いてもええ?」

怜「な、なんや?」

竜華「怜は……私らと一緒に朝練とか…無理して来てたん?」

怜「………」

竜華「ほ、本当は…もう、麻雀やりたくなかった、とか…?」

怜「――っ」

竜華「私、分かったんや。あの朝練の時、勝つぞー勝つぞーって気持ちにさせようとしたけど…、でも気持ち篭ってなくて」

竜華「もしかして…いや、やっぱり勝つ気なかったのかなって……」

竜華「最後、と、怜が…倒れる瞬間、何かすっごい気持ちが篭ったような気がした…」

竜華「あの時、私は怜は何か絶対に譲れないやつを想像して、って言ったやん」

竜華「それは……なんやったん?」

怜「………はぁ」

怜「竜華、今な……すごい心臓ドキドキ言ってるんや」

竜華「え?!! ま、まだ病気……!」

怜「……病気やで、それもすっごい厄介なやつ」

竜華「そ、そんな……」

怜「竜華、ちょっと耳貸して」

竜華「え…う、うん」

怜(………落ち着け…、勇気、出して!)

竜華「と、怜……わぁ?!」


――チュ

怜「~~~ッ」

竜華「………はぇ?」

怜「さ、最後に思って打った牌! み……みんなと……」

怜「…みんなと……」

怜(あかん…あかん、頬にキスまでしてそっから勢いに任せようとしたけど……言葉が…続かへん)

怜(竜華は…もうすでに……私を見放しつつある…。だから…あんなこと言ったんや)

怜「………っ」


がんばって!


怜「!」

怜「……、みんなと一緒に…全国へ…行きたい!」

竜華「!!」

怜「竜華と! セーラも船Qも! いや……竜華とだけでも行きたい!」

怜「これが私の最後の打牌に込めた気持ちや!」

怜「みんなと一緒に…全国行きたい! 強くなりたい! みんなに勝ちたいんじゃなくて、みんなと勝ちたい!」

怜「それが……私の…気持ち……」

竜華「と、怜……」

怜「私の…気持ち…です…」

竜華「……そ、それは…分かったけど……頬にキスしたのは……なんで?」

怜「り、…竜華のことが……好き、やから……」

怜「いつも一緒におってくれて、部長になったのに三軍の私にいつも付きっきりで」

怜「ずっとずっと、伝わってきた。私を…全国へ連れて行こうとする気持ち」

怜「いつの間にか、竜華に惹かれてた…」

怜「いつの間にか、竜華のことで頭いっぱいになってた…」

怜「竜華が夢に出てくると……幸せな気持ちで朝起きれた…」

竜華「――ッ!」

怜「も、もう…後には退けへんって自分で分かってる」

怜「竜華、私のバッグと筆記用具取って!」

竜華「え、う、うん……」

怜「……私が本気ってところ今から見せるわ…」

怜「………!」

竜華「進路希望、調査書…?」

怜「……! 私の第一希望の進路は……!」

怜「竜華の隣や!!」

怜「竜華の隣に永久就職や!」


カン

想像通りの終着点に着いたので満足。

最近寒いからあったかーいSSが見たかったんだが
よく見直してみるとイチャラブシーンがないっていうね

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