エレン「な、何言ってんだよアルミン」
ミカサ「アルミン、気を確かに」
ジャン「いくらなんでも冗談が過ぎるぜ……」
ライナー「まさかお前、巨人が人間に化けてるとでも言いたいのか?」
ベルトルト「ははは、聞いたことがないよ……」
アニ「眉唾ものだね」
マルコ「アルミン、君は頭でも打ったのかい?」
サシャ「そうですよ! 共に過ごした仲間を巨人だなんて!」
クリスタ「いくらアルミンでも……言っていい事と悪い事があるよ!」
コニー「ん? つまりどういうことだ?」
アルミン「いや、僕だって信じたくはないんだ」
アルミン「でも、こんな殺し方は巨人にしかできないんだよ……」
~一週間ほど前~
アルミン「つまりね、僕達訓練兵が他の訓練所へ合宿に行くんだ」
エレン「へぇ、合宿なんて珍しいな。でも確かに、他の訓練所の様子を見ることで俺達の士気の向上にもつながるかもしれないしな」
ミカサ「なるほど、少し楽しみ」
アルミン「……それが、なんでも成績上位十名は例外的にここに残ることになるらしいんだ」
エレン「え、なんでだ?」
アルミン「合宿だなんて言ってるけど、要は補習みたいなものらしいね。大多数の訓練兵が少しでもトップに追いつけるように」
エレン「……確かに、訓練兵達の実力差があまりにも広がると、成績の低い奴の士気が下がっちまうからな。そういうことか?」
アルミン「多分ね。ここに残る上位組は合宿終了まで自由に過ごしていいんだってさ。完全に休暇だね」
アルミン「あと、例外として班長だけは上位十名以外でも残れるらしいよ」
エレン「班長?」
アルミン「うん。上位組から指名されれば、班長として合宿に参加しなくていいみたい」
エレン「そうかぁ、じゃあ」
ミカサ「アルミンで決まり」
アルミン「え?」
エレン「俺達はお前を班長に指名する。だからこれでアルミンも一緒に休暇を過ごせるわけだ」
アルミン「そ、そんなの悪いよ。だいたい、他のみんなが納得しないよ!」
ミカサ「そんなことはない。みんな、アルミンの賢さを知っている。班長に指名しても誰も反対しないだろう」
アルミン「そうかなぁ……」
エレン「まぁ俺が実際にみんなに聞いてくるよ。とにかく、今度の休暇はゆっくりしようぜ。たまには息抜きも大切だ」
~数日後~
ゾロゾロゾロゾロ
アルミン「わぁ、みんな出発したみたいだね。なんだか申し訳ないなぁ……」
ジャン「へへっ、これは言わば補習なんだ。成績優秀な俺達だからこそ免除されるのさ」
コニー「おお、やっぱり俺は天才だからな。これぐらい許されて当然だぜ!」
アルミン(うう、僕は上位組じゃないから胸が痛いんだよ……)
エレン「まだ気にしてんのか、アルミン? みんな納得した上でお前を選んだんだ、気に病むことはねぇよ」
クリスタ「はぁ…………」
サシャ「ユミルまで行ってしまって、残念ですねクリスタ」
クリスタ「うん……正直、私なんかが上位組に入る器じゃないと思うんだけどなぁ……それにユミルがいないと、やっぱり寂しい」
サシャ「それ、本人の前で言えば凄く喜ぶと思いますよ!」
アルミン(それにしても、今日からしばらくこの訓練所にいるのは……)
僕、エレン、ミカサ、ジャン、マルコ、コニー、サシャ、クリスタ、ライナー、ベルトルト、アニ……そしてキース教官
以上の十二名だ
アルミン(なんだか不思議な気分だな。たった十二人で訓練もせずここで過ごすなんて)
コニー「よーし、それじゃあ早速外で鬼ごっこでもしようぜ!」
エレン「おう、いいぜ! いい運動になるしな!」
マルコ「ははは、結局訓練してるのとあまり変わらないね」
キース「おい、貴様ら」
アルミン「あ、キース教官」
キース「本日からしばらく訓練はない。各自、自分の剣は今日中に補給所にしまっておけ」
キース「もし今日の見回りでまだ剣をしまっていない者がいたらタダではすまないと思え」スタスタ
コニー「は、はい!」
エレン「あっ、そう言えば缶詰斬るために使ってから食料庫に置きっぱなしだったな……」
アルミン「ど、どんな使い方してるんだよ、エレン。教官はいつも深夜十二時には訓練所を見回りするから、それまでには補給所に片付けないと駄目だよ?」
エレン「分かってるって! とにかく今は遊ぼうぜ!!」
アルミン「大丈夫かなぁ……」
~夕食~
エレン「今日は楽しかったなぁ」
アルミン「まぁ休暇だしね。合宿は二泊三日のはずだから、明後日までは休めるよ」
ミカサ「たまにはこういう日があってもいい」
コニー「おい、誰だよ俺の芋食ったやつ!」
ジャン「そんなの一人しかいねぇだろ……」
コニー「サシャ! お前だな!!」
サシャ「へへーん、知りませんよー!」
クリスタ「だ、駄目だよサシャ、人のものを取っちゃ……」
サシャ「うう、神様に叱られてしまいました……」
エレン「コニーもバカだよな、飯時はサシャに注意するのは鉄則だってのに」モグモグ
アルミン(エレン、君は今自分が食べている芋が食べかけだったことに気づいていたかい?)
~風呂場~
サシャ「いい湯ですねぇ」
ミカサ「私は訓練の後のお風呂のほうが好き」
クリスタ「あはは、ミカサらしいや」
アニ「体を洗えればなんでもいいよ」
ミカサ「それよりエレンがちゃんと頭を洗ってるか心配。エレンは時々頭を洗い忘れるから、私が注意しないといけない」
サシャ「ミカサはエレンに対して過保護ですねぇ」
クリスタ「ふふふ、ミカサってエレンのこと好きなんだね。羨ましいなぁ」
ミカサ「//////// た、ただの家族。そういう関係ではない……」
クリスタ「そうなの?」
クリスタ「でも私、好きな人がいたら甘やかしちゃうかなぁ。悪いことしたらさすがに怒るけど」
ミカサ「私も……きっとそうだろう」
ミカサ「ただ、悪いことをしたら注意はする。でも、もしもその悪いことが取り返しの付かないようなことなら庇ってしまうかもしれない……」
クリスタ「駄目だよミカサ! 恋人を甘やかしちゃ!」
サシャ「クリスタはしっかりしてますねぇ」
アニ「そういうあんたはどうなの?」
サシャ「えぇ? うーん、そうですねぇ……私は別に世話なんて焼きませんし、一緒にいられれば満足ですかね。悪いことしてたら、見て見ぬふりです!」
クリスタ「それはどうかと思うよサシャ……」
ミカサ「………………アニはどうなの?」
アニ「えっ……」
クリスタ「確かに、アニが誰かを好きになるのって想像つかないなぁ」
アニ「私は別に……そんな奴ができても、あまり関わろうとは思わないだろうね」
ミカサ「本当に? 格闘訓練でがんじがらめになろうとしない?」
アニ「ちょっと……何言ってるの」
サシャ「好きな人が悪いことしてたらどうします?」
アニ「その時は容赦しないよ。徹底的に痛めつける。それが本当の愛ってやつだよ」
クリスタ「!!! 聞きましたかサシャさん! アニの口から”愛”というワードが出てきましたよ!」
サシャ「ええ、聞きましたとも! しかも”本当の愛”って……ぶふっ!」
アニ「あんた達、覚悟はできてるんだろうね?」
~男子寮~
アルミン「ふぅ、それじゃあ寝よっかエレン。もうみんな寝る準備してるし」
アルミン「……って、エレン? なんか元気ないね?」
エレン「あぁ、すまん。なんか風呂入ってる時変な視線を感じてな……ストーカーでもいんのかな?」
ジャン「」ガタッ
マルコ「ジャン、落ち着いて、ジャン」
アルミン(ジャンも不憫だなぁ……)
ライナー「それじゃあ、灯り消すぞ」
コニー「あ、やっべ。明日のぶんの着替え、まだ干してなかったぜ。ちょっと外行ってくる!」
バタン
キース「…………」
コニー「」
キース「もう夜の十時だ。寝ろ」
コニー「で、でもまだ明日のぶんの服を干してないんで……明日も今日と同じ服を着なくちゃいけなくなります!」
キース「うむ、気持ちはわかるぞ。私も一度脱いだ服は洗い終えるまで絶対に着ない」
コニー「せ、清潔で何よりです」
キース「だが、今日はもう遅い。早く寝ろ!」
コニー「はい……」
キース「もし今夜の見回りでお前がほっつき歩いていたらただではすまん」
バタン
コニー「……寝るか」
アルミン「それがいい」
~深夜~
ピシャアアアアアアアアアアアアン!!!
アルミン(んー? 落雷……?)
アルミン(びっくりして目が覚めちゃったよ……みんなはぐっすりみたいだけど)
アルミン(はぁ……寝よ)
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――
――――――
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
アルミン「!? な、なんだ!!!」
エレン「うおおおおお!! 朝から何の騒ぎだ!?」
マルコ「じ、地震だ!!」
コニー「おおおおおお揺れるぜええええええ!!」
ベルトルト「う、うあああああああああああああ!!」
ライナー「みんな落ち着け!! ベッドの下に隠れるんだ!!」
ジャン「くそっ、せっかくの休日にこんな起こされ方されるなんてな!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
ゴゴゴゴゴゴ……
ゴゴゴ……
エレン「…………」
アルミン「…………」
ジャン「…………お、終わったか?」
ライナー「長かったな……一分近くは揺れてた気がする」
マルコ「なんだったんだ……」
コニー「俺、地震なんて初めてだからビックリしたぜ……」
ベルトルト「……ねぇ、なんだか外が薄暗くない?」
ライナー「確かにな。今日は天気が良くないのかもしれん」
アルミン「で、でもさっきはもっと明るかったような……ちょっと窓から見てみるよ」ヒョイッ
アルミン(今日の天気は……………………ん?)
アルミン(あ…………あれ…………………?)
エレン「おーい、どうしたアルミン?」
アルミン「……………………」
コニー「? どうしたんだよ、黙りこくって」
アルミン「そ、外が……外の景色が……!?」バッ!
マルコ「ちょ、ちょっと! どこへ行くんだアルミン!!」
ベルトルト「なにごとだい?」
エレン「よく分かんねぇが、みんな早くアルミンを追うぞ!」
ジャン「お、おう!」
バタン!
エレン「おーい、アルミン! なんだよいきなり外に出て……」
マルコ「何か気になるものでも見つけたのか……い?」
ライナー「おい……これはどういうことだよ…………」
コニー「なんだこれ……俺はまだ夢を見てるのか?」
ジャン「ははは、冗談だろ……これが夢じゃなかったらなんだって言うんだ……」
ベルトルト「…………?」
アルミン「信じられないけど……これは現実だよ」
アルミン「訓練所が……巨大な壁に囲まれているんだ」
ライナー「壁の高さは五十メートルといったところか……」
マルコ「ははは……笑うしか無いよ。空は快晴なのに、壁に囲まれているせいですっかり日陰じゃないか。まるで曇天だ」
エレン「嘘だろ……いつの間にこんな壁ができたんだ。昨日までは無かっただろ!?」
コニー「やっぱり夢なんだよ……そうに決まってる。俺はまだ布団の中なんだ」
「きゃああああああああああああああああああああ!!!!」
エレン「!? な、なんだ今の悲鳴は!?」
ライナー「クリスタの悲鳴だ……」
アルミン「見て! 食料庫の裏に女子達がいるよ!!」
ジャン「ちっ……わけが分からねぇが、とにかく向かうぞ!」
ダダダダダダーッ
ライナー「おい、どうしたんだ悲鳴なんてあげて!!」
サシャ「み、みなさん……」
クリスタ「ああああああああああああ……!!」
マルコ「ど、どうしたんだいクリスタ!? そんなに取り乱して!!」
アニ「そんなの……この光景を見れば分かるでしょ?」
ベルトルト「この壁のことかい? それなら僕達も――」
ミカサ「違う、私達が言っているのはこっち」
アルミン「!? こ、これは……」
アルミン(これは……なんだ? まるで人間がグチャグチャになったような……し、死体!?)
ミカサ「見ての通り、完全に死んでいる……兵団服を着ているのは分かるけど、死体自体はメチャクチャ、はっきり言って原形をとどめていない」
エレン「なんだよこれ……体がほとんどバラバラじゃねーか……いったい誰の死体なのかも分からねーぞ……」
アニ「……正直なところ、これで死体が誰なのか特定するのは難しそうだね」
アルミン「……キース教官だ」
サシャ「へ?」
アルミン「今、この訓練所には僕達を合わせて十二人しかいないはず……そしてキース教官以外の全員がここにいる……」
ベルトルト「た、確かに……そうなると可能性として考えられるのは教官だ」
ジャン「おいおいやめてくれよ……いるんだろ、教官? 出てきてくれよ!」
コニー「わけわかんねぇ、わけわかんねぇ、わけわかんねぇ。朝起きたら訓練所が壁に囲まれてて、しかもキース教官がメチャクチャになって死んでる? なんだよ……夢なら誰か早く起こしてくれよ!!」
マルコ「落ち着いてコニー、この現実を受け入れられないのは君だけじゃない……正直なところ、未だに信じられないよ」
アルミン「は、早く訓練所から出て、この事を外へ知らせよう! 一大事だ!!」
ジャン「な、なぁ、ちょっと待ってくれよ……」
エレン「なんだよジャン! こんな時に!!」
ジャン「いや、こんな時だからだよ。まわりを見てみろ、この壁…………門が見当たらないぞ?」
アルミン「…………え?」
アルミン(嘘だ、嘘だろう)キョロキョロ
アルミン(どこにも……門はおろか、外へつながる小さな穴すら見当たらないじゃないか!)
ベルトルト「それじゃあ僕ら、いったいどうやって出れば……」
ライナー「くっ……立体機動装置だ! あれを使って壁を登ればきっと――」
ジャン「いいや、そいつは不可能だ」
ライナー「どうしてだ!!」
ジャン「ちょうど、補給所のボンベを交換する時期だったんだよ……今日か明日にでもやる予定だったんだ。だから今、立体機動装置のガスは無い」
サシャ「それじゃあ、私達は本格的にこの壁の中に……」
アニ「閉じ込められちゃったわけだね、完全に」
クリスタ「そんな……どうして、どうして……」
アルミン(分からない……分からないことだらけだ!)
アルミン(そもそも……どうしてキース教官はこんな無残な姿で死んでいるんだ?)ズイッ
アルミン(それに、なぜだか死体のまわりは地面が荒れ果てている。まるで、巨大な何かが暴れていたかのように……)
サシャ「な、何やってるんですかアルミン。死体なんかに近づいて!」
アルミン「いったい教官はどうやって死んだのか、それが気になるんだ」
マルコ「教官の死因ね、確かにそれは謎だ……」
エレン「なぁ……考えられるとしたら、この壁から落ちたとかじゃねえか?」
ライナー「確かに、これほど高い壁から落ちたら……こんなグチャグチャな亡骸になってもおかしくねぇ」
アニ「そもそも、この壁がどうして生まれたのかが謎だけど、案外一番しっくりくる答えだね」
コニー「くそぉ……それじゃあ教官はこの壁に殺されたのか! 許せねぇ!!」
アルミン「…………」
ジャン「みんな、いったん食堂へ行こうぜ。一旦落ち着かねーと……」
~食堂~
サシャ「うぅ……いつもなら楽しみにしていた食堂なのに、今はなんだか食欲がわきません…………」
クリスタ「あんなのを見た後じゃね……さすがに辛いね」
サシャ「うぅ…………」グスン
アルミン「……ねぇ、みんなに聞きたいことがあるんだけど」
アルミン「……誰か、あの壁が発生するところを見た人間はいるかい?」
全員「………………」
アルミン「……だよね。みんなあの地震で起こされたんだろうし、あの地震は壁が発生した時のものだと考えるのが普通だ。ならせめて、深夜に起きていた人はいるかい?」
コニー「」ビクッ
サシャ「」ビクッ
アルミン(なんて分かりやすい……)
アルミン「ねぇコニー、君は昨日僕達と一緒に寝たはずだけど、もしかして夜な夜なこっそり起きたのかい?」
コニー「は、はぁ? 知らねーよ! 俺全然知らねーよ!!」
サシャ「う、嘘はいけませんよコニー! いいからとっとと吐かんかい!!」
アルミン「君もだよ、サシャ」
サシャ「はい」
アルミン「君達二人は深夜に起きていた……そうだね?」
コニー「お、おう!」
サシャ「そうですとも!」
アルミン「で……いったい何してたの?」
コニー「…………」
サシャ「…………」
ライナー「なんでそこで黙るんだよ」
アニ「さっさと吐いちゃったほうが身のためだよ」
ミカサ「剣を持ってこようか」
コニー「は、吐くってば! そんな物騒なもの持ってくんなよ!」
サシャ「ぐ、ぐぬぬぬぬ………」
コニー「実を言うとよ……サシャに誘われてたんだよ」
マルコ「誘われていた……?」
コニー「おう。こいつ、夜中に食料庫へ盗み食いに行こうとか言い出してさ」
サシャ「ぐぬおおおおおおおおおおおバラしましたねコニー! 絶対に秘密だって約束したのに!!」
コニー「し、仕方ねえだろ! こんな状況なんだぞ!!」
アルミン「はぁ、君達は……。もう少し詳しく話してくれるかい?」
コニー「深夜の……一時ぐらいだったか? 約束したとおり、食料庫の前でサシャを待ってたんだよ。暗いから俺はカンテラを持ってきてたけど」
サシャ「私は食料庫に行く前に念のため教官宿泊所に行きました。時間帯的に、教官は見回りを終えて寝ているはずですが、念には念をです」
サシャ「そしたら、パジャマを着た教官がベッドで寝ているのが窓から見えたので、安心して食料庫へ向かいました」
アルミン「真夜中なのによく見えたね」
サシャ「まぁ、目を凝らせば服装ぐらいならなんとか……」
ミカサ「私ならたとえ暗闇の中でも教官の表情まで読み取れただろう」
アルミン「ミカサ、ちょっと黙ってて」
エレン「お前の目は色々おかしいんだよ。本当に人間か?」
ミカサ「」
サシャ「まぁとにかく食料庫で待ってたコニーと合流した後、二人で盗み食いしてました。以上」
アニ「懲罰ものだね」
クリスタ「バレたら営倉行きだよ二人とも……」
サシャ「ぐぬぬぬぬ……」
コニー「で、でも俺はサシャより先に寮へ戻ったからな! あの食料庫、食べ物以外はマジで何もないから退屈だったんだ! サシャは俺が食料庫から出た後もしばらく食ってたみたいだけど」
ジャン「いい言葉を教えてやる、コニー。五十歩百歩だ」
コニー「? 俺は寮まで何歩で戻ったかなんて数えてないぞ?」
ジャン「……もういい」
アルミン「なるほど……つまり教官が死んだのは、それ以降というわけか」
ミカサ「そしてあの壁が発生したのは朝。やはり、教官は突然発生した壁から落ちて死んでしまったということになる」
アルミン「……………………」
アルミン「ねぇ……そのことなんだけど」
クリスタ「どうしたの?」
アルミン「自分でも、突飛な主張だって分かってる……でも聞いてほしいんだ」
アルミン「…………キース教官は、巨人に殺されたんじゃないかな」
ジャン「は、はぁ!?」
サシャ「ちょっと……何言ってるんですかアルミン!?」
クリスタ「は、ははは……アルミンでも冗談言うんだね……」
アルミン「いや、冗談じゃないんだ! 聞いてくれ!」
アルミン「あの死体……みんなは壁から落ちたと言ったけど、それは考えにくい。たとえ五十メートルの壁から落ちても、自由落下の力で人体があそこまでメチャクチャになるなんてことは無いんだ」
アルミン「なら、教官はどうやって死んだのか……死体の近くに原因と思われるものが何もない以上、何者かの意図で殺されたと考えるのが妥当だ」
アルミン「でも……やっぱり人間の力で人体をあそこまでメチャクチャにできるとは考えにくい」
ライナー「だから巨人の仕業だっていうのか? さすがに無理がないかそれは」
アルミン「僕が見た限りでは、死体は大きな何かに潰されたように見えた」
ベルトルト「じ、地震が起きた時、大岩が落ちてきたのかも」
アルミン「ならその大岩が死体のそばに無ければおかしい。他の可能性として……例えば人間が大きな何かで教官を潰したとしても、それを一晩で移動させることはできない」
ジャン「おいおい、それじゃあ本当に……」
アニ「待って。そもそも巨人が殺したとしても、そいつはどこへ行ったの?」
エレン「そりゃあ、どこか遠くへ行ったんだろ。少なくともここが壁に囲まれる前には行ってくれたみたいで助かったな」
アルミン「……いやそれが、巨人が往来した形跡は死体のまわり以外になかったんだ……」
マルコ「た、確かに死体のまわりは地面が荒れ果てていたけど……それ以外に足跡などの痕跡は見当たらなかったね……」
アルミン「うん……だから、僕はこう思った」
アルミン「僕達の中に巨人が紛れ込んでいるかもしれない」
いったんここで区切り
完全に自己満で書いてるなこれ……
自演になってるぞ…………
でもありがとう
エレン「な、何言ってんだよアルミン」
ミカサ「アルミン、気を確かに」
ジャン「いくらなんでも冗談が過ぎるぜ……」
ライナー「まさかお前、巨人が人間に化けてるとでも言いたいのか?」
ベルトルト「ははは、聞いたことがないよ……」
アニ「眉唾ものだね」
マルコ「アルミン、君は頭でも打ったのかい?」
サシャ「そうですよ! 共に過ごした仲間を巨人だなんて!」
クリスタ「いくらアルミンでも……言っていい事と悪い事があるよ!」
コニー「ん? つまりどういうことだ?」
アルミン「いや、僕だって信じたくはないんだ」
アルミン「でも、こんな殺し方は巨人にしかできないんだよ……」
クリスタ「だからと言って、私達の中に巨人がいるなんて……ど、どうかしてるんじゃないの、アルミン!?」
アルミン「死体のそばにしか巨人の痕跡がなかった。どこか遠くから歩いてきた痕跡も、どこか遠くへ歩いて行った痕跡もない。つまり、”あの場”で巨人が現れた。そしてそいつは教官を食うのではなく、ただ”殺した”」
アルミン「とても従来の巨人とは思えないよ。それこそ、人間が巨人に変身したとしか……」
アルミン「そして、訓練所には人間は十二人しかいなかった。人里から離れているせいで、他の人間が来ることもめったにない」
コニー「なら、俺達以外の第三者の仕業かもしれないだろ!」
アルミン「そうだね。だから、僕達の中に巨人が紛れ込んでいる”かもしれない”と言ったんだよ」
アルミン「それでも、警戒するには越したことはないよ。なにせ、人間に化けれるのなら今この場に紛れ込んでいてもおかしくはないから」
全員「………………………」
ジャン「しゃれにならねぇ……この中の誰かが巨人で、俺達を騙してるなんて」
ライナー「お、俺は信じねぇぞ! 同じ仲間を疑うなんて……」
クリスタ「うぅ……怖いよ……怖いよぉ…………」
ベルトルト「……………………」
マルコ「……この話は一旦やめにしよう。それより僕らはまだ朝食を摂っていない。今から食料庫へ行って朝食の材料を集めよう」
サシャ「あ、あの死体が近くにある食料庫にですか!?」
マルコ「仕方ないよ。食料はあそこにしかない」
エレン「なら……行くしかないな……」
アルミン「そうだね、みんなで食べ物を取りに行こう」
~食料庫~
ギィ……
ジャン「お、お邪魔しま~す……」
コニー「おい! 返事が返ってきたらどうするんだよ! 怖いだろ!!」
アルミン「ぱっと見たところ、やっぱり食料以外は何もないね、ここは」
エレン「まぁ、食料庫だからな。木の枝すら落ちてねぇ」
サシャ「あ……やっぱりお腹空いてきましたね。あの芋とか凄く美味しそうです。早速食べましょうか」
アニ「まさかだと思うけど、昨夜あんたが食い散らかした食べかけはないだろうね?」
サシャ「一度口につけたものを、どうして食べかけで放置する必要があるんですか! ちゃんと食べましたよ!」
クリスタ「ぬ、盗み食いじゃなければ偉いんだけどなぁ」
ミカサ「それにしても、鮮度は大丈夫だろうか」
マルコ「んー、どれどれ」パク
サシャ「あー! ずるいですマルコ!! 私より先に芋を食べるなんて!!!」
マルコ「ははは、鮮度を確認するために味見しただけだよ。まぁ腐っていたら食料庫から出しているはず……だけど…………」
バタッ
アルミン「!? マルコ!!」
マルコ「」
ジャン「お、おい、どうしたんだマルコ! 突然倒れて!」
エレン「まさか、本当に腐ってたのか!?」
ミカサ「そんなにすぐお腹を壊すとは思えない……まさか」
アルミン「しっかりするんだマルコ! マルコ!!」
ベルトルト「駄目だ……息をしていない」
クリスタ「嘘でしょ……どうして、どうして…………」
アルミン「……これは、間違いない。この芋には――」
ライナー「……ん、なんだこの小ビンは」ヒョイ
ジャン「おい、何でそんな物がここに落ちてるんだよ……」
アルミン「やはり……毒薬か!」
アニ「それじゃあこの芋には毒が塗られていたわけだね」
アルミン「この芋だけとは限らない。もしかしたら、他の食べ物にも塗られているかもしれない」
コニー「マジかよ……それじゃあ教官を殺した巨人とやらの仕業なのか? どうしてこんなことを……」
アルミン「……とにかくみんな、缶詰類だけを持って食堂へ戻ろう。それ以外の食べ物には決して触れないこと。缶詰はできるだけ沢山運んでくれ」
~食堂~
ライナー「多分、缶詰類はこれで全部だな」
エレン「缶詰なら毒を塗られる心配もないしな。少し朝食が寂しいが」
ベルトルト「…………ねぇ、一ついいかな」
アルミン「どうしたの、ベルトルト」
ベルトルト「確かサシャとコニーは昨日の夜、食料庫に盗み食いに入ったんだよね?」
コニー「あぁ……」
ベルトルト「そして…………コニーが先に出ていった後も、サシャは食料庫に残り続けていたんだよね……?」
サシャ「!?」
アニ「ちょっと待って、それじゃあまさか……」
ジャン「あの食料庫で毒を塗ったのは…………」
サシャ「ち、違います! 私じゃありません!!」
エレン「でも、今のところ一番疑わしいのはお前じゃないか……!」
コニー「お、お前、俺が去った後にそんなことしていたのか?」
サシャ「そんな! 私は巨人じゃありません!! 信じてくださいよ!!」
ジャン「まずいぞ、こいつが巨人だとしたら、今すぐ変身するかもしれねぇ!」
サシャ「違う違う違う違う違う違う!!! 私は違う!!!!!」
ライナー「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ドカッ
アルミン(ら、ライナーがサシャを羽交い絞めに!)
ライナー「みんな、早く縄を持ってきてくれ! こいつが巨人化できないよう全身を拘束するんだ!!!」
ミカサ「すぐに持ってくる!」ダッ
サシャ「ああああ離してください!!! 離し――」ガリッ
ライナー「悪いがしばらく俺の腕を噛んでてもらうぞ!! ベルトルト、お前はこいつの四肢をおさえろ!!」
ベルトルト「あ、あぁ!」
アルミン(大丈夫かライナーは……サシャに相当深く噛み付かれているせいか、かなり腕の傷が深くなっている)
バタン
ミカサ「縄を持ってきた」
ジャン「よ、よく分かんねぇが、急いでサシャが身動き取れないよう縛るんだ!」
ミカサ「了解」
シュルシュルシュル
アルミン(さすがミカサ……あっという間にサシャの腕と脚を縛ってしまった)
ライナー「舌を噛めないように口にも頼む!」
ミカサ「? わ、分かった」
ギュッ
サシャ「んんんんんんんんんん!!!!」
ライナー「はぁ……はぁ…………よし、これでこいつは巨人化できないはずだ」
アルミン「…………」
ライナー「しかし間一髪だったな。もう少しでこいつが――」
アルミン「巨人化するってどうして分かったの?」
ライナー「……は?」
アルミン「ライナー……君はどうして、サシャの身動きを奪えば巨人化できないと分かっていたの?」
ライナー「!?」
アルミン「僕らは人間が巨人化する方法なんて知らない。少なくとも、体の動きを奪えば巨人化できないなんて思いもしないよ」
アルミン「それに、わざわざサシャが舌を噛めないように縛ることも指示した」
ライナー「そ、それは……」
アルミン「なんだか妙に詳しいよね。もしかして巨人の正体はサシャじゃなくて――」
ライナー「ち、違う!!! お、俺は兵士だ! 人間だ! 巨人じゃない!!」
ジャン「そういや、毒ビンを見つけたのもお前だったっけな。まさかあれ、拾ったんじゃなくて、サシャに罪を被せるために……」
ライナー「待て! そっちは嘘じゃない!!!」
アルミン「”そっち”は?」
ライナー「!!!!!」
エレン「おい……どういう意味だよ、それは」
ライナー「お、俺は、俺はへ、兵士なん、だ! けけ、決して巨人なん、かじゃないんだ、よ!! し、信じてくれよ!!!」
アニ「ライナー……さすがに苦しいよ、それは」
ボカッ
ライナー「」
ミカサ「……安心して。脊髄にショックを与えて気絶させただけ」
コニー「まさか、ライナーが巨人だったなんてな……」
エレン「サシャに罪を被せようとして余計な知識を披露しちまうなんて、ライナーらしいな……」
ベルトルト「……同郷としては悲しい限りだね」
クリスタ「と、とりあえずサシャを解放してあげようよ、無実だったんだから」
シュルシュルシュル
サシャ「ぷはぁ! た、助かりました!! 本当に怖かったですよこっちは!」
ベルトルト「ご、ごめんねサシャ……君を疑ったりして」
サシャ「本当ですよ! 私が巨人なはずないじゃないですか!」
ジャン「じゃあ代わりにライナーを縛ったほうがよさそうだな。おいコニー、お前も手伝え」
コニー「お、おう!」
シュルシュルシュル
ジャン「ふぅ、この巨体を縛るのもなかなか骨が折れるな……」
コニー「そう言えばこいつが持ってた毒ビンはどうする?」
ベルトルト「僕が預かっておくよ。ポケットにでも……」ゴソゴソ
クリスタ「そ、それで、これからライナーはどうするの? 拘束したまま食料庫に閉じ込めちゃうの……?」
ミカサ「……私は今すぐ殺すべきだと思う」
エレン「お、おいミカサ……」
アニ「さすがに早まりすぎだと思うね、それは」
アルミン「そうだよ……確かにライナーは巨人である可能性が高い。でも……正直なところ、断言できるような証拠もないんだ」
アルミン「もしもライナーが本当にただの兵士だったら……僕は…………」
ミカサ「……分かった。巨人であると断言できるまでは、やめておこう」
アルミン「よし、それじゃあこれから役割を分担しよう」
アルミン「コニー、ベルトルト、アニはライナーを食料庫へ運んで閉じ込めてくれ」
アルミン「そしてジャン、サシャ、クリスタは補給所に行ってほしい」
ジャン「どうして補給所なんだ?」
アルミン「本当に補給所にガスが無いかを確認してほしいんだ。もしもガスが残っていたら、立体機動装置でこの壁から脱出できるかもしれない」
ジャン「望みは薄いが……了解した」
アルミン「僕とエレンとミカサはここで朝食の準備をするよ。と言っても、缶詰をひたすら開けるだけだけど」
エレン「アルミンがそう言うならそうするぜ」
ベルトルト「じゃあ僕らはライナーを運んでくよ」ズルズル
コニー「重いなやっぱ」
アニ「ゴリラだからね」
ミカサ「…………」カチャカチャ
エレン「缶詰開けるのも大変だな。缶切りってあんまり使ったことねぇや」
アルミン「あはは、やっぱり朝食は女子に任せたほうが良かったかもね。あまり深く考えずに分担させちゃった」
エレン「……どうして、こんなことになっちまったんだろうな」
アルミン「さあね。まだ謎だらけだよ」
ミカサ「……いたっ」
アルミン「大丈夫かい、ミカサ? って、血が出てるじゃないか!」
ミカサ「たいしたことない。缶切りで少し指を切っただけ」
エレン「おいおい、寮へ行って包帯でも巻いたらどうだ? 連れてくぞ?」
ミカサ「一人で行ける。申し訳ないけど、先に朝食の準備を進めてほしい」スタスタ
アルミン「うん、任せてよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
バタン
ジャン「よぉ、今戻ったぞ」
エレン「おかえり。ちょうど今朝食の準備ができたところだぞ」
アルミン「それで……ガスのほうはどうだった?」
サシャ「それが、やっぱりボンベは空でした」
クリスタ「これでしばらく壁から出られないのは確定だね……」
アルミン「そう…………」
ジャン「ところでミカサはどこへ行ったんだ?」
エレン「あいつなら指切ったから包帯巻きに行ったぞ」
バタン!
コニー「お、おい! お前ら!!」
アルミン「あ、コニー……それにベルトルトとアニも。どうしたんだい、そんなに慌てて?」
コニー「大変なんだよ! ライナーが……ライナーが逃げ出した!!!」
ジャン「はぁ!?」
コニー「俺がトイレに行ってる間に逃げ出したみたいなんだ!」
ベルトルト「ぼ、僕も驚いたよ。どうも縄がしっかり縛られてなかったみたいなんだ……それで、目を覚ましたライナーが自力で脱出して、どこかへ行ってしまった」
コニー「くっそー! 俺があの時トイレに行ってなかったら、絶対に捕まえれたのに!!」
アニ「あんたじゃ無理な気がするけどね」
エレン「おいおい、これから俺達はどうすればいいんだよ!」
サシャ「いつライナーが巨人化でもしたら……」
アルミン(これは相当マズい状況だぞ。正体がバレたなら、いつ巨人化してもおかしくない。このままでは、僕ら全員皆殺しというシナリオもありえる……)
クリスタ「ど、どうするの……私達、逃げ場なんて無いよ?」
アルミン「いや、確かこの食堂には地下倉庫があったはずだ。そこに隠れよう」
エレン「地下倉庫? そんなのどこにあるんだ、アルミン?」
アルミン「分からない。昔は、今の食料庫の代わりに使われていたらしいけど、どこにあるのか……」
バタン
ミカサ「ただいま……どうしたの、みんな?」
ジャン「ミカサ、話は後だ! 一緒に地下倉庫の入り口を探してくれ!」
ミカサ「? わ、分かった、探そう」
サシャ「うう、そんな都合のいい場所、あるわけないじゃないですか……もっと別の方法を考えましょうよ」
アニ「もう他に手立てはないんだ。いいから探すよ芋女」
コニー「おい、これじゃないのか!?」
ギィ……
ジャン「それだ! でかしたぞコニー!」
クリスタ「まさかテーブルの下にそんな隠し扉があったなんて……」
アルミン「とにかく早く中に入ろう! 地下は暗いみたいだから、僕はカンテラを持って行くよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガチャン
アルミン「内側からカンヌキをかけて……よし、これで大丈夫だ」
ミカサ「やはり真っ暗。カンテラを持ってきて正解」
エレン「お前なら暗闇でも余裕だろうけどな」
ベルトルト「それにしても、地下倉庫が本当にあるなんてね」
アニ「食料はさすがに置いてないみたいだけど、朝食を多少持ってきたし生き延びれるんじゃない?」
サシャ「寝心地は悪そうですけどね……ん、これは?」ヒョイ
ジャン「何を見つけたんだサシャ」
サシャ「日記の切れ端みたいですね」
コニー「暗くて読めねぇな……アルミン、カンテラを灯してくれ」
アルミン「うん、分かった」ヒョイ
『休暇一日目、今日は一日あの人を見られて満足だ。とても満足だ。明日も見続けることができる。とても嬉しい。ずっと見ていたい』
クリスタ「うーん、誰が書いたんだろう」
アルミン(休暇一日目だって……?)
エレン「じゃあ持ってきた飯でも食うか。朝食というより、時間的には昼食だが」
ジャン「そうだな、腹が減っては巨人に勝てぬ。缶詰ならライナーに毒を塗られている心配もないしな」
ミカサ「そうしよう」
僕らは長い緊張感のためか、昼食時はどっと疲れを感じて全員無言で食べ続けていた。
正直なところ味を楽しむ余裕なんてなかったし、味なんてどうでも良かった。
昼食を終えた後も、僕らはほとんど無言で座り込んでいた……いつライナーがこの場所に気づいて入ってくるんじゃないかという不安にかられながら。
しかし、しばらくしてからある問題が起きた。
クリスタ「と……トイレに行きたいんだけど」
アニ「あんたさぁ、状況わかってるの?」
クリスタ「ご、ごめんなさい。でも、我慢できなくて」
コニー「おう、じゃあここでするか! 他に場所なんて――ごふっ!」
ミカサ「すまないコニー、さすがに聞き捨てならなかった」
コニー「な、殴らなくても……」
ベルトルト「なら一緒にトイレまでついていってあげるよ。一人で地上へ出て行くのは危険過ぎる」
アルミン「そうだね、なら僕も行くよ」
エレン「……気をつけろよ、お前ら」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「さて、倉庫から出たし、トイレならすぐそこだ。行っておいでクリスタ」
クリスタ「…………」
ベルトルト「ど、どうかしたのかい」
クリスタ「私……ライナーと話がしたいの」
アルミン「な、何を言い出すんだクリスタ! 血迷ったの!?」
クリスタ「どうしても、あのライナーが巨人だなんて信じられないの。いつもみんなに頼られてるお兄さんみたいな、あのライナーが……」
ベルトルト「気持ちは分かるけど、危険過ぎるよ……」
クリスタ「それでも私、やっぱり話し合わなくちゃ……もし巨人だったとしても、何か深い事情があるのかも!」
アルミン「確かに、巨人とバレても未だに巨人化していないのは気になるところだけど……やはり危険だ。行っちゃ駄目だ、クリスタ!!」
ダッ!
アルミン「…………」
ベルトルト「い、行ってしまったね……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「あれから十五分は待ち続けているけど、やっぱり戻ってこない」
ベルトルト「やっぱり、本気でライナーを探しているんだろうね。僕達、こんなところで待ちぼうけてていいのかな……」
バタン
エレン「おい、いるか三人とも!」
アルミン「エレン、わざわざ出てきてくれたの」
エレン「当たり前だろ、いくらなんでも長すぎる……って、クリスタはまさかまだトイレなのか?」
ベルトルト「いや、クリスタならライナーと話し合いたいと言って食堂から出ていってしまったんだ」
エレン「おいおい、なんだそりゃ。マズいだろそれ」
アルミン「危険だけど、僕らもそろそろクリスタを探しに行こうと思う。エレンはこの事を地下倉庫に知らせてくれ。みんなは待っててくれればいい」
エレン「くそっ……無理はしないでくれよ、アルミン!」
バタン
ベルトルト「エレンは倉庫へ戻ったし、そろそろ探しに行こうか」
アルミン「そうだね、ライナーに見つからなければいいけど――」
バタン!!
クリスタ「はぁ……はぁ……」
アルミン「あ、クリスタ! 無事だったんだね、心配してたんだよ!」
ベルトルト「ね、ねぇ、どうしてそんな怖い顔をしているんだい。しかも、剣まで持ってきて……」
クリスタ「……誰なの」
アルミン「え?」
クリスタ「誰が巨人なの!?」
アルミン「お、落ち着いてクリスタ。とりあえずその剣を下ろすんだ」
クリスタ「まだ約束も果たせていないのに……そうか、ミカサね。あいつが巨人だったんだッ!!!」
ベルトルト「クリスタ、何をする気!?」
クリスタ「ミカサを殺すの! 止めないで!! 殺してやる殺してやる殺してやる!!!」
ベルトルト「やめるんだクリスタ!!」
クリスタ「離せ!! 離さないと……こうしてやる!!」
ズシュッ
ベルトルト「ぐあっ……!」
アルミン「ベルトルト!!!」
クリスタ「はっ……ご、ごめんなさい、ベルトルト……わ、私は……!」
クリスタ「あああああ………ああああああああああ」ダッ
アルミン(クリスタが逃げ出した……それより、今はベルトルトを!)
ベルトルト「うっ……あ、安心してアルミン。ちょっと腕を切られただけだ。たいしたことない」
アルミン「よ、良かった……すぐ包帯を持ってくるから待っててね!」ダッ
~食料庫~
アルミン「ただいま……」
コニー「おう、おかえり……ってベルトルト、なんだその腕!? 包帯巻かれてるじゃねーか!!」
ベルトルト「大丈夫だよ。ちょっとクリスタに切られたんだ」
サシャ「どういうことですか? あの神様がベルトルトを切る……?」
エレン「アルミン、事情を説明してくれ」
アルミン「うん、分かった……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジャン「本当かよ、それ」
アルミン「事実だよ。とにかく、今のクリスタは危険だ。いくら彼女でも刃物を持っている以上、僕らにとっては充分脅威だ」
アニ「ますますここから出られなくなったね」
アルミン「でもトイレをずっと我慢するわけにもいかないからね。これからトイレに行きたくなったら、二人以上で慎重に行くんだ」
エレン「たかがトイレでここまでピリピリしなくちゃいけないなんてな……」
その後、頻度こそは少ないものの、それぞれ二人以上でトイレに行くことになった。そのたびに地下倉庫には緊張が走るが、全員無事に戻ってこられている。
何時間か過ぎ、僕らは夕食を摂った。
そしてその後も何時間か経って、ようやく全員に睡魔が押し寄せてきた。
ミカサ「もう時間的には眠ってもいい頃だろう」
ベルトルト「陽の光が入らないから、体感的には分かりにくいけどね。時計を見る限りはちょうどいい時間だ」
アルミン「もう夜の十時か……そうだね。それに、僕らは全員クタクタだ。明日に備えて体力を回復させないと」
エレン「寝てる間にライナーやクリスタが入ってこなければいいけどな」
ジャン「カンヌキをかけたんだ。それは大丈夫だろ」
アルミン「じゃあカンテラの明かりは点けたままにするね。みんな、おやすみ……」
こうして僕らのあまりに長い一日は終わった。
合宿は二泊三日だ……つまり、明日には助けが来るはず。それまで、もう少しの辛抱なんだ。
僕らはそんな希望に自分達の命を託して、深い眠りについた……。
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――
――――――
ガシャーン!!
アルミン「!? 何の音!!!」
ジャン「真っ暗だぞ! カンテラは!?」
ザスッ
コニー「お前、なんでカンテラを蹴ったんだ!! 俺は見たぞ!」
ベルトルト「うーん……なにごとだい?」
エレン「う、うわああ!!!」
サシャ「な、なんですか何事ですか!?」
ザシュッ
アニ「ちょっと! 誰か明かりを点けなよ!」
カラカラカラーン
アルミン「待って! 今、マッチで灯すから!!!」
ボウッ
アルミン「つ、点けたよ。これでもう安心――」
サシャ「きゃあああああああああああああああ!!!」
エレン「お、おい、これどういうことだよ!?」
ベルトルト「ひっ……嘘だろう、コニー……嘘だろう!?」
ジャン「コニーが……喉から血を流して死んでるだと?」
アニ「……見たところ、喉を一突きってところだね。悲鳴をあげなかったわけだ」
ミカサ「う……」
アルミン「ちょっとミカサ、手から血が出てるじゃないか!」
ミカサ「犯人にやられた……別に死にはしない」
エレン「犯人って……じゃあこの中に、コニーを殺した奴がいるってことなのか!?」
サシャ「やめてくださいよ……巨人はライナーだったんじゃないんですか!?」
ジャン「分からねぇ……でも、少なくともこの中に人殺しが混ざってるってのは確かみたいだぞ」
ベルトルト「こんな……どうしてこんな目に」
アルミン「……あれ、ベルトルト。君の寝ていた床、なんだか穴があいていないかい?」
ベルトルト「あ、本当だ。いったいなんなんだろう……」
アニ「そんなことより、誰が犯人なのか特定しないとまずいんじゃない?」
サシャ「わ、私は違いますよ! 確かに位置的にはコニーと近いですけど……私は違いますよ!」
ベルトルト「僕はコニーとはだいぶ遠いから……」
アルミン「いや、もっと科学的に犯人を特定できそうだよ」ヒョイ
エレン「それはナイフか? 血だらけだな……」
アルミン「うん、コニーの近くに落ちてたんだ。犯人がコニーを刺した後に捨てたんだろうね」
ジャン「でも、それでどうやって犯人を見つけるんだ?」
アルミン「……本で読んだことがあるんだ。小麦粉を使えば、このナイフに付着した”指紋”をとることができる」
ベルトルト「指紋を……確かにそれなら、誰が犯人なのか特定できるね!」
アニ「でも、犯人が巨人だったらどうするの? バレた瞬間変身して、私達は終わりじゃない?」
アルミン「こんな狭い空間じゃ巨人化なんてできないよ。それより、問題は誰が食料庫まで行って小麦粉を取りに行くかだけど……」
ミカサ「私が行こう」
サシャ「ミカサですか……」
ジャン「なら俺も行く」
ベルトルト「じゃ、ジャンもかい?」
ジャン「ああ、女を一人で行かせるわけにはいかねぇからな」
エレン「なら俺も!」
アルミン「エレン、ここはジャンに任せよう。二人なら大丈夫だ……」
エレン「あ、アルミンがそう言うなら……」
ミカサ「ではナイフは私が預ろう。食料庫で直接指紋を調べる」
アルミン「うん、頼んだよ。小麦粉をナイフの柄に薄くふりかけて、何か綿のようなもので優しく拭けば指紋が浮かんでくるはずだ」
ミカサ「わかった」スタスタ
ジャン「じゃあ行ってくるぜ」スタスタ
バタン
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エレン「俺達、これからどうなるんだろうな……」
アルミン「二人を待つんだ。そうすれば、犯人も分かる。後は……壁の外から助けが来るまで持ちこたえれば……」
バタン
ジャン「…………」
ベルトルト「ジャン!」
サシャ「やっと来ましたね! それじゃあ早速、全員の指紋と照らしあわせてみましょう!」
ジャン「…………」
アニ「ねぇ、どうしてミカサはいないの?」
ジャン「ミカサはライナーに殺された……」
全員「!?」
ジャン「あいつ、食料庫で待ち構えて剣で斬りかかってきたんだ……俺はなんとか逃げられたが、ナイフは途中で落としちまった。そしてミカサは……」
エレン「おい、なんだよそれ……ふざけるなよ」
ジャン「すまん……」
エレン「すまんじゃねぇよ……お前、なんのためにミカサについていったんだよ! お前は!!」
アルミン「エレン、落ち着くんだ!!!!」
ベルトルト「そんな、ライナーがそんなことするはずが……」
アニ「…………」
エレン「ライナー……くそ! やっぱり早く殺しておくべきだったんだ!!」ダッ!
アルミン「待ってエレン! どこへ行くんだ!!!」
ジャン「お、追いかけるぞアルミン!!」
ダダッ!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「はぁ……はぁ……地下倉庫から出たはいいけど、エレンはいったいどこへ行ったんだ?」
ジャン「分からねぇ。でも、探さねぇとあいつまで……」
アルミン「……ジャン、ついてきてくれ」
ジャン「? 分かった」
スタスタスタ
~食料庫~
ジャン「やっぱここにもエレンはいないな……どこへ行っちまったんだ?」
アルミン「ねぇ、ジャン。ここでミカサは殺されたんだよね?」
ジャン「え? あ、ああ、ライナーがここで待ち構えて剣で――」
アルミン「なら、どうしてここにはミカサの死体がないんだい?」
ジャン「それは……移動させたんだろ」
アルミン「血痕すらないよ?」
ジャン「……拭いたんだろ」
アルミン「この短時間で? それは無理があるよ、ジャン」
アルミン「それに、君は逃げる途中でナイフを落としたと言ったけど、僕達が地下倉庫からここに来る間にそれらしきものは落ちていなかった」
ジャン「……………………」
アルミン「やっぱり、嘘をついたんだね……ジャン」
アルミン「ジャン、答えてくれ。どうして嘘をついたんだ?」
ジャン「待ってくれ、俺がミカサを殺したわけじゃない!」
アルミン「分かってるよ。ただ、真実を話してくれればそれでいいんだ」
ジャン「……頼まれたんだ、ミカサに」
アルミン「何を?」
ジャン「自分はライナーに殺されたということにしてほしいって」
アルミン「どうしてそんなことを頼まれたんだい?」
ジャン「それは……」
アルミン「ミカサが、罪を告白したんだね?」
ジャン「あぁ。自分が……コニーを殺したんだって」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ミカサ「でも、私は巨人ではない。私がコニーを殺したのは、彼が巨人である可能性を疑ったからだ」
ジャン「どうしてそう思ったんだ……?」
ミカサ「ライナーは縄で縛られていたにもかかわらず逃げ出せた。その縄を縛ったのはコニーだった……なら、コニーが仲間であるライナーを逃がすためにわざと緩く縛ったと考えられる」
ジャン「そんな曖昧な理由で!」
ミカサ「確かに、あまりにも不確定要素が多すぎる。自分でも反省している」
ミカサ「だから私は、せめてもの罪滅ぼしとして命を賭してライナーを殺しに行く」
ミカサ「だからジャン……みんなには、私はライナーに殺されたことにして、逃がしてほしい」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「まさか、それを呑んだのかい?」
ジャン「すまねぇ! でも俺、どうしてもミカサを断ることができなかったんだ……!」
アルミン(好きな相手に頼まれたゆえにか……でも、もし断っていたらジャンも無事では済まなかったかもしれないし、これで良かったのかも)
アルミン「でも、変だと思わないかい? ライナーを縛ったのはコニーだけじゃない、君もだ。なのにミカサはコニーは殺し、君は殺さなかった」
アルミン「こうして考えると、なかなか無理のある話に思えないかい?」
ジャン「確かにな……でも、だとしたらいったい……」
アルミン「とにかく、一旦ここから出よう」
バタン
ジャン「それで、これからどうするんだ……」
アルミン「それは…………ん、あれは……ミカサ?」
ジャン「!? こっちに歩いてくるぞ!」
アルミン「しかも、誰かを抱えている……あれは、クリスタじゃないか!」
ミカサ「…………アルミン、ジャン」
アルミン(クリスタを地面に下ろした……見たところ、死んではいないようだ。気絶している)
ミカサ「……ジャン、話したの?」
ジャン「すまねぇ。やっぱりアルミンには通用しなかった」
ミカサ「そう、さすがはアルミン」
アルミン「ミカサ、本当のことを話してくれ。君はコニーを殺した……それは事実なんだね?」
ミカサ「その通り、私が殺した……それは事実。でも、これ以上話そうとは思わない」スッ
アルミン「!? それはさっきのナイフ! 何を考えているんだミカサ!!」
ミカサ「ああ、こんなことならエレンに伝えておくべきだった。本当は家族なんかじゃなくて、恋人として隣にいたかった。キスもまだできていない……せめて、間接キスぐらいならするべきだったかな」ニコッ
グサッ
アルミン「ミカサあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ジャン「ミカサ、何考えてんだ! おい、返事しろよ!!」
アルミン「うううう…………ミカサが……ミカサが…………」
ジャン「どうしてだよ! なんで自分の心臓にナイフを……!」
アルミン「…………行かなきゃ」
ジャン「え?」
アルミン「ジャン、君はクリスタをみんなのところに運んでくれ」
ジャン「お前はどうするんだよ!」
アルミン「僕にはやらなきゃいけないことがある……」
アルミン「それを果たしに行くんだ」スタスタ
~教官宿泊所付近~
アルミン(こっちは確か教官宿泊所だったな)
アルミン(!? あれは!!)
ユミル「」
アルミン「ユミルの死体……!」
アルミン(しかもこの死体、パジャマを着て頭部は切断されている……)
アルミン(昨日はこんな死体、ここにはなかった)
アルミン(移動させたのは……やはりミカサか)
アルミン(ああ、やっぱりそういうことだったんだね……)
~補給所~
アルミン「…………」スタスタ
エレン「…………」
アルミン「やぁ、エレン……」
エレン「アルミンか……」
アルミン「やっと見つけたよ」
エレン「……それよりも大変だ、アルミン。これを見てくれ」
ライナー「」
アニ「」
ベルトルト「」
アルミン「……三人とも死んでいるね」
エレン「あぁ…………」
アルミン(ライナーの腕……昨日サシャに噛まれた時の傷が綺麗に消えている……)
エレン「どうして……こんなことになったんだ」
アルミン「ねぇエレン」
エレン「なんだ?」
アルミン「今回の一連の事件……僕は色々推理してみたんだ」
アルミン「それを話してもいいかい?」
エレン「…………」
エレン「あぁ」
アルミン「ライナーと話しあうと行って出ていったクリスタが戻ってきた時のことだ」
アルミン「あの時、怒りにかられたクリスタは誰が巨人なのかを問い詰めてこんなことを言った」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
クリスタ「まだ約束も果たせていないのに……そうか、ミカサね。あいつが巨人だったんだッ!!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「この『約束』……どんな内容かは分からないけど、彼女のまわりで一番結びつきそうなのはユミルだ。それに、あのクリスタがあそこまで怒りにかられた理由……最も考えられるのは、僕がさっき発見したユミルの死体……あれをクリスタが見つけたからだ」
エレン「なるほど、確かにそれなら怒り狂うだろうな。でも、それなら怒りの矛先はライナーに行くはずだ。それがどうしてミカサに向いたんだ?」
アルミン「それはもちろん、ライナーの死体を発見したからだ」
アルミン「いいかい? ライナーが逃げ出してからクリスタが出て行くまで……アリバイが無かった人間が一人だけいる。それは、指を切って包帯を取りに行ったミカサだ」
アルミン「だからクリスタは、ミカサがライナーを殺したと考えた。そしてミカサが犯人なら、当然ユミルを殺したのもミカサだと考える」
エレン「おいおい、それじゃあミカサは巨人だったってことか? 嘘だろ? 同じ屋根の下で暮らしていた家族が、憎むべき巨人だったってのか!?」
アルミン「それは違う」
エレン「……なんだって?」
アルミン「話を続けるよ」
アルミン「この訓練所が壁に囲まれる前、サシャとコニーは食料庫へ盗み食いに行くことにした。サシャはその前に、あらかじめ教官が眠っているかどうかを確認に行った」
アルミン「その時、サシャが見たのはなぜか”パジャマ”を着た教官だったという」
エレン「……それのどこが問題なんだ?」
アルミン「おかしいよ……死ぬ前に”パジャマ”を着て寝ていた人間が、翌日には”兵団服”を着て死んでいただなんて」
エレン「兵団服に着替えてから外に出たんだろう」
アルミン「教官は、一度脱いだ服は洗い終えるまで絶対に着ない。コニーを叱ってる時にも言っていただろう?」
エレン「でも実際にサシャは、パジャマで寝ていた教官を見たんだ」
アルミン「もしサシャが見たのが教官ではなかったとしたら? 当時は暗くて、サシャも服装ぐらいならなんとか確認できたと言っていた。逆に言えば、それが限界だったんだ」
エレン「ならサシャは実際には誰を見たっていうんだ」
アルミン「それは、ユミルの死体だ。僕が発見したユミルの死体は、宿泊所の外でパジャマを着て死んでいた」
アルミン「おそらく死体を見つけたクリスタか、クリスタを抱えてきたミカサあたりが外へ運んだんだろうね。まぁクリスタの力では難しいから、ミカサだろう」
エレン「? そ、そうか……ならやっぱり犯人はミカサだったんだな!」
アルミン「…………」
アルミン「ねぇ、エレン……君はあまり驚いてないみたいだね、ユミルの死体が見つかったことに」
エレン「…………」
アルミン「次は、コニーの事件だ」
アルミン「まず僕達はカンテラが割れる音で目を覚ました。当然、目を覚ますとあたりは真っ暗……大パニックだ」
アルミン「そして暗闇の中、ナイフが何かを刺す音が聴こえた。その後、コニーはこう言ったんだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コニー「お前、なんでカンテラを蹴ったんだ!! 俺は見たぞ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「その後、ナイフで何かを刺す音が再び聴こえた。そして、僕がマッチで明かりを灯すと、コニーは喉を刺されて死んでいた」
アルミン「ナイフは二回刺された。でも、コニーの発言は一回目と二回目の間に聞こえた」
アルミン「つまり、コニーを刺したのは”二回目”であり、”一回目”では別の何かを刺したんだ」
エレン「ということは……一回目はミカサが刺されたっていうのか? あいつは犯人に手を切られていたから」
アルミン「いや、それは違う。一回目はコニーでもミカサでもなく、ベルトルトを狙っていたんだ。ベルトルトが寝ていた位置の床に穴があいていた」
エレン「ベルトルトを……? それじゃあ、どうして犯人はベルトルトではなくコニーを殺すことになったんだ」
アルミン「それはもちろん、コニーがカンテラを壊した人間を目撃したと発言したからだ。すぐにコニーを殺さなければ、犯人は終わりだった」
エレン「でもベルトルトとコニーの位置はだいぶ離れていたぞ。あの暗闇じゃあ、コニーのもとへ移動して喉を狙うなんて不可能だ」
アルミン「……一人だけいるじゃないか、暗闇でも目が利く人間が」
エレン「…………ミカサか」
エレン「じゃあ、やっぱりミカサが犯人だったのか!」
アルミン「いや、そもそも目の利くミカサがベルトルトを殺し損ねた事自体、おかしい。いくらベルトルトの寝相が悪いといえど、ミカサはそんなミスをしないだろう」
アルミン「つまり、ベルトルトを刺そうとしたのは別の人間だ」
エレン「別の人間だと?」
アルミン「コニーを殺したのは確かにミカサだ。でも、ベルトルトを刺そうとしたのは別の人間」
アルミン「しかしその場合、犯人はミカサにナイフを渡さなければいけない。あの暗闇じゃあ犯人もミカサを見つけることはできない」
アルミン「つまり、犯人はミカサにナイフを渡したのではなく、奪われたんだ」
エレン「じゃあ、ミカサが手に負っていた傷は――」
アルミン「あれは犯人に刺されたんじゃない……ミカサが犯人の手からナイフを強引に奪ったために、手を切ってしまったんだ」
アルミン「当然だね。誰かが握っているナイフを奪うには、刃の部分を掴まなければならないもの」
エレン「でも、どうしてミカサはそんなことを……」
アルミン「…………」
アルミン「ミカサは強引に犯人からナイフを奪ってまで、犯人を目撃したコニーを殺した」
アルミン「ねぇ、エレン……ミカサがそこまでして庇う人物なんて、一人しかいないよね?」
エレン「…………」
アルミン「ねぇ、エレン。まだ認めないのかい?」
エレン「……………………」
アルミン「そうかい……じゃあ、次はマルコの事件だ」
アルミン「マルコが毒で死んだのは、誰かが深夜に食料庫に忍び込み、食料の一部に毒を塗ったからだ」
アルミン「最後に食料庫に残ったと言ったサシャが疑わしかったが、後からライナーの仕業ということになった」
アルミン「でも、ライナーも被害者の一人となった今、彼も犯人とは考えにくい」
エレン「…………」
アルミン「ねぇエレン……僕が地下倉庫で、”指紋”について説明したのは覚えているよね? ナイフの指紋をとれば、犯人を特定できるって」
アルミン「でも、犯人の指紋が付いているのはナイフだけじゃない……そう、食料庫で見つかった毒ビン……あれにも犯人の指紋が付いているはずだ」
アルミン「だから僕が指紋について説明した時、犯人はナイフだけじゃなくて毒ビンも回収したかったと思うんだ」
アルミン「確かあの毒ビンはどこにいったっけな……ああ、そうだ。思い出したよ」
アルミン「ベルトルトがポケットにしまったんだったね」
アルミン「どれどれ……ちょっと失礼するよベルトルト」ゴソゴソ
アルミン「あれあれ? おかしいなぁ、ベルトルトのポケットには何も入っていないよ。確かに毒ビンをしまっていたはずなんだけどなぁ」
エレン「…………」
アルミン「ねぇエレン」
アルミン「君のポケット、なにか入っていないかい?」
エレン「…………」
アルミン「ねぇ、見せてよエレン。君は違うんでしょ?」
アルミン「君は犯人じゃないんでしょ?」
アルミン「なら早く見せなよ、ポケットの中を」
エレン「……これで、満足か?」ヒョイ
アルミン「その毒ビン……やっぱり、ベルトルトから回収していたんだね」
エレン「あぁ、そうだ。でもこれは犯人の指紋が付いているかもしれないと思って回収しただけだ」
エレン「俺は犯人じゃない」
アルミン「…………エレン、君は休暇一日目に教官から何か注意されなかったい?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
キース「本日からしばらく訓練はない。各自、自分の剣は今日中に補給所にしまっておけ」
キース「もし今日の見回りでまだ剣をしまっていない者がいたらタダではすまないと思え」スタスタ
コニー「は、はい!」
エレン「あっ、そう言えば缶詰斬るために使ってから食料庫に置きっぱなしだったな……」
アルミン「ど、どんな使い方してるんだよ、エレン。教官はいつも深夜十二時には訓練所を見回りするから、それまでには補給所に片付けないと駄目だよ?」
エレン「分かってるって! とにかく今は遊ぼうぜ!!」
アルミン「大丈夫かなぁ……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
エレン「ああ、そういえばそんなこともあったな」
アルミン「でも君はあの後、寝るまでずっと僕らと一緒にいた。すっかり剣を片付けるのを忘れていたんだ」
アルミン「にもかかわらず……翌日僕らが食料庫に行った時、剣なんて無かった」
アルミン「なら君はいったいどのタイミングで剣を回収したんだろう? そう考えると、当然休暇一日目の深夜ということになる」
アルミン「しかしカンテラを持ってきていたコニーは、食料庫には食料以外何もなかったと言っていた。つまり、二人が食料庫に来た時、すでに君は剣を回収していたんだ」
アルミン「そしてもう一つ重要なのは、サシャは食料庫に来る前に教官宿泊所でユミルの死体を見ていたということだ」
アルミン「つまり教官やユミルが殺されたのも、サシャとコニーが食料庫に忍び込む前だったということ」
アルミン「つまり……君しか考えられないんだよ、犯人は」
エレン「…………」
エレン「…………ははは……」
エレン「やっぱアルミンには敵わねぇな」
アルミン「どうして……どうしてこんなことをしたんだ」
アルミン「どうして仲間を殺すような真似を!!!」
エレン「……あれは、休暇一日目の夜のことだな」
エレン「俺は剣を補給所にしまい忘れたのを思い出し、みんなが寝てるなかこっそり寮から抜けだしたんだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
~食料庫~
エレン(ふぅ、危ない危ない……もう夜の十二時じゃねーか)
エレン(教官が見回りに来る前に補給所にしまわねぇと)
バタン
エレン(さて、確か補給所はあっち――)
キース「貴様! そこで何をしている!!!」
エレン(げっ! 見つかった!?)チラッ
ユミル「はぁ……はぁ……」
エレン(あれは……ユミルじゃねーか! あいつ合宿に行ってるはずじゃ!)
キース「貴様……おめおめと合宿から逃げ出し、何しに来た!」
ユミル「早く……早くクリスタをここから出さねぇと!」
キース「おい、聞いているのか……ん?」
ユミル「…………」シュー……
キース「貴様、全身傷だらけではないか。いったいそれは……いや、それよりもどうして傷から蒸気が出ているのだ?」
ユミル「!?」
キース「なんだ……まさか傷が治ってるのか? それじゃあまるで人間ではなく――」
ユミル「くそっ!」ガリッ
ピシャアアアアアアアアアアアアン!!!
ユミル巨人「…………」シュー……
キース「な、なんだこれは!? 巨人に変身しただと!?」
エレン「!?」
ユミル巨人「ウオオオオオオオオオアアアアアアアア!!!!」
グシャッ
キース「」
エレン(教官が……巨人に潰された!!)
ユミル「…………」シュー……
エレン(う、うなじからユミル本人が出てきやがった。巨人の体は蒸発していく……)
エレン(あいつは……ユミルは巨人だったのか)
エレン(巨人……巨人め! よくも教官を! よくも母さんを!! よくも人類を!!!)
エレン(駆逐してやる!!!)ジャキッ
エレン(ちょうど俺には剣がある……慎重に、忍び足で背後から近づくんだ)コソコソ
ユミル「…………」
ユミル「すまん、教官……私の正体をみんなに知られるわけにはいかないんだ」
ユミル「それに今は、すぐにでもクリスタをここから連れださなくちゃいけねぇ」
ユミル「巨人どもからあいつを救うためには」
エレン(クリスタを連れだす? 巨人どもから救う?)
ユミル「……!? エレン、どうしてお前がここに!?」
エレン「ッ!!! し、死ねっ!!!」
ザシュッ
ユミル「」ゴロゴロ
エレン「はぁ……はぁ……こ、これで巨人を一匹始末したぞ!」
エレン(生首が転がってるのはやっぱり不気味だな……)
エレン(それにしても、さっきのユミルの言葉……どういう意味だ?)
エレン(クリスタをここから連れだす……巨人どもから救う……)
エレン(こんなところに巨人なんているわけが……いや待てよ、もしもユミルと同じように人間に化けてる巨人がいるとしたら……)
エレン(もしそうだとしたら、一匹残らず駆逐してやる……)
エレン(だが今はこの死体を処理しないと。教官の死体は……放置しよう。もし他に巨人が紛れ込んでいるのなら、この状況を見た時、何かリアクションがあるかもしれない)
エレン(時間稼ぎのためにも、ユミルの死体は教官のベッドに寝かせておくか。パジャマを着せておけば案外バレるまで時間がかかるかもしれない)
ズルズル
~教官宿泊所~
エレン(ふぅ、疲れたぜ……パジャマに着替えさせたし、頭部はそれっぽくくっつけておいて……ベッドで寝かせておけば)
サシャ「…………」
エレン(!? まずい! サシャが窓から覗いている!!!)
サシャ「…………」スッ
エレン(……行ったか。夜中だし、さすがにはっきりとは見られてないよな?)
エレン(しかしあいつ、どうしてこんな時間に……ちょっと後をつけるか)
あかん、眠いわ……
今日中に終わらせるつもりだったけどここで区切ろ……
~食料庫前~
エレン(コニーと盗み食いに来てたのかよ……さすがだな)
エレン(かれこれ二十分は待つが、まだ出てこない)
バタン
コニー「じゃあ俺は先に戻ってるからな! お前も早く寝ろよー!」スタスタ
エレン(コニーが出てきた。サシャはまだ食い漁ってるのかよ……)
エレン(もうしばらく待ってみるか)
~十分後~
バタン
サシャ「ふいー、満腹満腹」スタスタ
エレン(やっと出てきやがった。あの様子だと、食料庫の裏で教官が死んでることにすら気づいてないな)
エレン(まぁ何よりだ。しかし……待てよ)
エレン(これはチャンスかもしれない)
エレン(一旦、実験室に行ってくるか)
~食料庫~
エレン(よし、毒ビンを持ってきた)
エレン(あとはこれを……適当な食べ物に塗っておく)ヌリヌリ
エレン(上手くいけば、サシャが疑われるかもしれない)
エレン(そうすれば、教官やユミルを殺した容疑もサシャにかかる可能性がある)
エレン(まぁそこまで上手くいくかは分からないけど、やらないよりはマシ……そうだろう?)
エレン(それじゃあ毒ビンはそこらへんに捨てて、寮に戻って寝るか……)ポイッ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルミン「ユミルが巨人で、教官を殺した……そして君はそのユミルを殺し、サシャに罪をなすりつける工作までした……そういうことだね?」
エレン「あぁ。そのせいでマルコまで死んじまったけどな。正直申し訳ないと思ったさ」
アルミン「……そして訓練所が壁に囲まれ、僕らが閉じ込められた時、君は人間に化けた巨人をあぶり出すチャンスだと思った……そうだね?」
エレン「そうだ。おかげでライナーが巨人だと判明した。本当はあの時殺しておきたかったんだけどな。さすがにみんなの前じゃ無理だった」
アルミン「でも代わりにミカサがライナーを殺したんだ。さっきの僕の推理通り、ライナーを殺せたのはアリバイが抜けていたミカサだけだったからね」
エレン「あれは少し不思議だ。巨人だと確定するまでライナーを殺すのはやめると言ったミカサが、どうして殺ったんだ?」
アルミン「ライナーの死体を見てみなよ。サシャに噛まれた傷が、たった一日で綺麗に消えている。おそらく、ミカサはそれを見て巨人だと確信したんだろう」
エレン「なるほど」
アルミン「それで、どうして君はベルトルトを殺そうとしたの?」
エレン「ライナーが巨人だと分かってからは、ずっとベルトルトを疑っていた。ユミルの発言から、巨人は複数いると分かっていたし、ベルトルトはライナーと同郷だった」
アルミン「なるほど……確かに複数の巨人がいると分かっているなら、真っ先に第二の巨人はベルトルトと考えて当然だね」
アルミン「それに……多分、縄で縛られたライナーを逃がしたのも彼だろうしね」
エレン「でも焦ったぞ。食堂からナイフを持ち込めたはいいが、まさかあいつの寝相があそこまで悪いとはな……ナイフをあいつに振り落とした瞬間、タイミングよく寝返りをうちやがったみたいだ」
アルミン「ははは……ベルトルトは間一髪だったね。しかもカンテラを蹴り飛ばしたところをコニーに見られていたと」
エレン「正直もうお終いだと思ったさ。そしたら誰かにナイフを奪われて、明かりが点いたらコニーが死んでたんだもんな」
アルミン「……ミカサも必死だったんだね。君を庇うのに」
アルミン「でも何より、君が犯人だと知ってショックだったと思うよ」
エレン「……そうだな」
アルミン「結局君はこうしてベルトルトを殺すことに成功したわけだけど、どうしてアニまで殺したんだい?」
エレン「単純だ。ベルトルトを少しでも苦しませて殺すためだ」
エレン「あいつ、バレてないつもりでいるけど明らかにアニに対して好意を寄せてたからな」
アルミン「そうだね……」
エレン「だからアニがこの補給所に来た時、チャンスだと思ったんだ。こいつを殺せばベルトルトは酷くショックを受けるだろうなって」
アルミン「そんな理由で彼女を殺したのか」
エレン「その後、ベルトルトを見つけてここに誘い出す……そして二人の死体を見せる」
エレン「あいつ、スゲー泣いてたぞ。それで、俺が殺したんだって言ったら『悪魔の末裔が!』とか言いながらスゲー怒ってきたんだ」
エレン「まぁ次の瞬間殺してやったけどな。巨人化させる隙なんて与えなかった」
エレン「ベルトルトもアニも馬鹿だよな。おとなしく地下倉庫で閉じこもっておけば良かったのに、ノコノコとこっちに来ちまうんだもん」
アルミン「二人とも、君がライナーを殺しに行くのを見過ごせなかったのかもね。だから地下倉庫から出て、君やライナーを探しに行ったんだと思う」
エレン「はぁ……これで俺もお終いだな。さすがに俺を見逃してはくれないだろう、アルミン?」
アルミン「ははは、無理だよ。親友だからこそ、見逃すわけにはいかない」
エレン「そうか、こんな俺でも親友と呼んでくれるのか……」
アルミン「…………うん」
エレン「はは……ありがとうな。俺はいったい……どこでおかしくなっちまったんだろうな」
アルミン「……さあね」
エレン「……すまん、しばらくここで一人にさせてくれ。なに、どうせここからは逃げられないさ」
アルミン「分かった。すぐ外で待ってるよ」
エレン「あぁ。本当にありがとうな、アルミン」
~補給所・外~
アルミン「…………」スタスタ
ジャン「お、おーい! アルミン!!」
アルミン「ジャン! それにクリスタ、目が覚めたんだね!」
クリスタ「うん、心配かけてごめんね……ユミルの亡骸に寄り添って泣いてたら、ミカサがやって来て……仇討ちしようと思ったんだけど、やっぱりミカサは強くてさ……あはは、気絶させられちゃったんだ」
アルミン「そうかい……無事なら何よりだ」
ジャン「でもアルミン、地下倉庫へ戻ったら誰もいなくてよ。だから、目を覚ましたクリスタと一緒にお前を探して――」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
クリスタ「きゃああああ!! 何!?」
ジャン「ほ、補給所が爆発した!?」
アルミン「そんな、どうして!? そもそも、ここまで爆発するほどガスは残っていないはずじゃ――」
ジャン「いや、それは立体機動装置のガスのことだ。それ以外の引火性の高いガスは大量に余ってる!」
アルミン「くっ……エレン、卑怯だぞ!! こんな……こんなかたちでお別れだなんて!!!!」
メラメラメラメラメラ
アルミン「エレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!!!!」
カラカラカラカラ
ジャン「!! おい、あれを見ろ! 壁の上から……梯子が下りてきたぞ!」
クリスタ「上に兵士が何人か見える……助けが来たんだ!」
アルミン「うぅ…………うああああああああああああああああああああああ」
ジャン「アルミン、ここで座り込んでちゃ危険だ! 気持ちは察するが、今はこの梯子をのぼって壁から出るんだ!」
アルミン「うぅ……ミカサも死んだ……エレンも死んだ…………もう、僕はひとりぼっちだ……」
ジャン「早く来い、アルミン! こっちだ!!」ズルズル
~壁の上~
ジャン「はぁ……やっと壁の外に…………ん?」
クリスタ「……え、これって」
アルミン「…………なんだこれは、ここは壁の上じゃないのか?」
兵士A「見ての通りだ、君達。これは壁ではない」
アルミン「これは……”崖”だったって言うんですか?」
梯子をのぼった先に待っていたのは、いつも訓練所から眺める光景だった。
僕らはずっと、訓練所のまわりに壁が発生したと思い込んでいた。しかし逆だったのだ。
訓練所のほうこそが、地盤沈下していたのだ。
アルミン「どうしてこんなことが……」
兵士A「ここだけではない。最近、壁内ではこういう現象が頻発している」
兵士B「君達は運の良いほうだ。地盤沈下に巻き込まれた人間は大抵は死ぬか大怪我だ。ここの地盤は硬いためか、緩やかに沈下したみたいだが」
ジャン「でも結局、このザマだけどな。いっそ地盤沈下でさっさと死んだほうが楽だったかもしれねぇ」
クリスタ「そんなこと言っちゃ駄目だよ、ジャン……」
兵士A「とにかく我々はあの補給所を今すぐ鎮火してこよう。中に誰もいなければいいが……」
アルミン(エレンはもう……無事ではないだろうな)
ジャン「とりあえず、街のほうに行こう。そこでならゆっくり休めるかもしれない」スタスタ
クリスタ「うん…………」スタスタ
アルミン「…………」スタスタ
アルミン(……あれ、そう言えば生き残った人間って……)
信者A「それにしても、まさか本当に地盤沈下していただなんてな」ヒソヒソ
信者B「あぁ、司祭様のお告げは本当だったんだな」ヒソヒソ
アルミン(あの首飾りは……ウォール教の信者? なんだかこそこそと密談しているみたいだ)
アルミン(……ちょっと盗み聞きしてみよう)コソ
信者A「まさか地面に巨人が埋まってるなんて……誰も思わないだろうな」
信者B「だが百年間も埋まっているとなると、当然いつかは重みに耐えられなくなる。巨人の体は見た目のわりにやわだからな。重みに耐え切れなくなった巨人は消滅し、その一帯の地盤は沈下する。」
信者A「しかし王国中の地下に巨人が敷き詰められていたとはな」
信者B「まったく驚きだよな。司祭様はそろそろ国中で地盤沈下が起きると予想していたが」
信者A「……そう言えば、この間遠くの地区でこの話を部外者に聞かれちまったらしいぞ」
信者B「ああ、知ってる。そばかすの女だったっけ? そいつ、話を聞いた途端一目散に走りだしたらしい」
信者A「どこへ逃げても同じなのにな。まさか壁外へ逃げるつもりだったのか?」
信者B「さぁね。それより盗み聞きした女はよく無事で逃げれたな」
信者A「別に無事じゃないさ。他の信者達が女をずっと追いかけまわしたらしい。その時何度か追撃を食らわせた」
信者B「まぁこの国の秘密を知っておめおめと逃がしてもらえるわけがないよな。でも怪我だけですんだのか」
信者A「すばしっこい奴だったみたいだからな。それと……これは噂だが」
信者B「なんだ?」
信者A「その女……何度追撃を受けても、怪我を回復させていたらしい」
信者B「ぶっはっはっ! そんなわけあるか! 巨人じゃあるまいし!」
信者A「だよなぁ、ははは……おっと、そろそろ行くか」スタスタ
信者B「あぁ、長話がすぎたな。こんな話、誰かに聞かれでもしたら大変だ」スタスタ
アルミン「……………………」
アルミン「…………」スタスタ
ジャン「おいアルミン、どこ行ってたんだ」
クリスタ「心配したよ」
アルミン「あぁ、ごめん。ちょっとね……」
兵士A「……君達に報告することがある」
アルミン「なんですか?」
兵士A「例の補給所だが、鎮火したものの……中には複数の死体があった」
兵士A「どれも丸焦げだが、死体は全部で五体だ」
アルミン(ははは……そりゃあ無事ではすまないだろうね。ライナー達は死んでるし、エレンもあの炎のなかでは……)
アルミン(……………………)
アルミン「死体は……”五体”?」
ジャン「やっぱり……他に生き残りはいなかったのかよ……」
クリスタ「そんな……みんな…………」
アルミン(待て、生き残りとは誰だ。僕が補給所でエレンを見つけた時点で、まだ死亡が確認されていない人間は……)
アルミン(僕……ジャン……クリスタ…………そして、もう一人いる。でもこの場にはいない)
アルミン(どういうことだ……どうして彼女が補給所で死ななくちゃいけないんだ!)
アルミン(……サシャ・ブラウス!)
その時、僕はある推理が浮かんだ。
考えにくいが、ふと浮かんでしまった推理だ。
そして今までを振り返ると、それを示す手がかりがちらちらと見え隠れしており、辻褄が合ってしまうことに気がついた。
アルミン「そうだ……そうじゃないか」
彼女は最初から知っていたのだ。この殺人事件の真相を。
そして、全てを見殺しにしていたのだ。
終わり
くぅ疲
ミステリって書くの偉いしんどいな、しかも苦労したわりには内容しょぼい……
サシャの件は色々伏線張ったけど、ぶっちゃけ締めに使ったわりにはそんな重要じゃないかも、結局犯人ではないし
ではいい加減風呂に入ってくる
すまんな、意味深に終わったわりには結局ただの”見殺し”だから、事件そのものとはあんま関係ないんだ
ミステリ書くの初めてだから分かりにくく申し訳ない……
一応、伏線となってるセリフだけ抜粋したほうがいいかな
一応時系列順に並べた
やはり俺にミステリなんぞ十年早かった(投げやり)
アルミン(エレン、君は今自分が食べている芋が食べかけだったことに気づいていたかい?)
サシャ「えぇ? うーん、そうですねぇ……私は別に世話なんて焼きませんし、一緒にいられれば満足ですかね。悪いことしてたら、見て見ぬふりです!」
エレン「あぁ、すまん。なんか風呂入ってる時変な視線を感じてな……ストーカーでもいんのかな?」
サシャ「一度口につけたものを、どうして食べかけで放置する必要があるんですか! ちゃんと食べましたよ!」
サシャ「日記の切れ端みたいですね」
コニー「暗くて読めねぇな……アルミン、カンテラを灯してくれ」
ミカサ「ああ、こんなことならエレンに伝えておくべきだった。本当は家族なんかじゃなくて、恋人として隣にいたかった。キスもまだできていない……せめて、間接キスぐらいならするべきだったかな」ニコッ
そういえば、日記は伏線じゃないの?
>>165
伏線ですね
誰が書いたのかはバレバレですが
このSSまとめへのコメント
サシャはエレンのことが好きだったの?
くぅーお疲れー!!
イヤーミステリアスだねー!
有難う(_-_)