もこっち（おかしいだろ！）

もこっち（普通こんな時期にいきなり謎の転校生が現れたら）

もこっち（みんな不思議がっていろいろ話しかけてくるもんだろ！）


もこっち（いやいきなりアレコレ質問責めされたらそれはそれできついけど……）


もこっち（でも少なくとも一人か二人くらいは）

もこっち（不慣れな転校生のために学校の案内してくれたりとかあるだろ！）

もこっち（ふざけんなこの薄情者ども！！）

もこっち（くそっくそっ）

もこっち「……」ﾁﾗ


夜空「……」ﾍﾟﾗ


もこっち（……あの人）

もこっち（休み時間とかいつもひとりだよな）

もこっち（今も堂々と本とか読んでるし）

もこっち（どう見てもぼっちだよな、ふふ可哀想に……）

もこっち（……）

もこっち（いや、でも見た感じそんなに悲壮感漂ってないんだよな）


夜空「……」ﾍﾟﾗ


もこっち（寂しくないんかな）

もこっち（そ、そうだ）

もこっち（た、試しにあの人に話しかけてみる……とか）

もこっち（私も本とかそれなりに読んでるし、共通点とか見つけたら案外……！）


夜空「……」ﾑｽｩ


もこっち（でも）

もこっち（あの人いつも不機嫌そうなツラしてるし）

もこっち（あれは話しかけても100%アウトオブ眼中にスルーされる）


夜空「……」ﾊﾟﾀﾝ


もこっち（まぁいいや）

もこっち（名誉あるソロ充な私と違って）

もこっち（真正非リアぼっちが同じクラスにいるのは何となくほっとするな）

もこっち（それにこっちはまだ転校してきて1ヶ月だし）

もこっち（私の方があの人よりはフレンドリーなはずだし）

もこっち（まだまだこれからいろいろとイベントが起こる可能性大だ！）ｸﾞｯ


「授業始めるよー席着きなさい」

～放課後～


もこっち（……教室にノート忘れた）

もこっち（はーあ、面倒だけど取りに行くか）ﾄｺﾄｺ


「あははははー」


もこっち「！」ﾋﾞｸ

もこっち（ちっ、リア充どもがまだ残って……！）ﾁﾗ

もこっち（ん？）

夜空「ふふふ、だから違うって言ってるだろ～」

夜空「トモちゃんはやさしいなぁ」


もこっち（え、あの人だ……）

もこっち（えっと、名前は知らないけど……何かひとりでしゃべってる？）

もこっち（何アレ電波少女！？　ポロロッカ星と交信中か！？）

もこっち（ていうかトモちゃんって誰！？）

もこっち（……トモちゃん？）

もこっち（トモ……）

もこっち（トモ……コ……ってもしかして、わ、私のこと！！？）

もこっち（た、たぶんきっとそう！）

もこっち（ずっとぼっちなあの人は似たような境遇の私に興味があって）

もこっち（実は私と友達になりたいけど話しかける勇気がないから）

もこっち（脳内設定で私と友達になって寂しさを紛らわそうとしてるんだ！）


夜空「ええ、そんなことないってば～」

夜空「もう、からかうなよトモちゃん」ｸｽｸｽ

もこっち（うん、間違いない）

もこっち（ど、どうしよう）

もこっち（ここで本物の私が偶然を装って話しかけたら、リアル友達になる流れだ）


もこっち（べ、別にどうしても友達が欲しいって思ってるわけじゃないけど///）


もこっち（同じクラスだし折角だから友達になってあげるって手も……）ｶﾞﾀｯ

夜空「……ッ！？」


もこっち「ぁ・・・」

もこっち（しまった、ま、まだセリフ考えてなかった……）



夜空「・・・」

もこっち「・・・」


ｶｧｰ　ｶｧｰ

もこっち（ちょ、何この沈黙……！）

もこっち（息継ぎなしで50ｍ泳ぐよりキツいわ）

もこっち（てかやっぱこっちから話しかけないとダメなのかこの状況……！？）


夜空（だ……）

夜空（誰だこの女、見ない顔だな……）

夜空（同じクラスの奴か？）

夜空（そういえばこんな感じのがいたような気もするが……）

夜空（なっ！？　まさかさっきの会話……聞かれてたのか）ｶｧ


もこっち（とととにかく、何でもいいから言わなきゃ！）

もこっち「ぁ、ぁ・・・ぁの」

もこっち「ゎ、ゎ、・・・」


夜空「……？」

夜空「……？」

もこっち「wawawa忘れ物ぉ……」

夜空「・・・」

もこっち「・・・」


シーン


夜空（……帰ろう）ｽﾀｽﾀ


もこっち「・・・」ﾎﾟﾂｰﾝ

もこっち（……あれ、おかしいな）

もこっち（本当ならこの後あれこれしゃべって）

もこっち（自然とメアド交換して）

もこっち（一緒に下校して）

もこっち（『私帰り道こっちだから～、また明日ね』って感じで分かれるはずだったんだが……））

もこっち（まぁいいか、とりあえずこれでフラグは立ったわけだし）

もこっち（明日から徐々に好感度上がっていって仲良くなるんだろう）

もこっち（友達かぁ……中学以来か）

もこっち（ひょっとしたら……これをきっかけに学校生活が高校生らしいバラ色に変わって行ったり）

もこっち「なーんて」

シーン

もこっち「……帰ろう」

～羽瀬川家～

小鳩「あんちゃーん、ごはんまだー？」

小鷹「もう少しでできるからな、ちょっと待ってろよ」ｼﾞｭｰｼﾞｭｰ

小鷹（はあー、転校初日か……やっぱ緊張するな）

小鷹（明日は遅刻しないように気をつけないと）


～黒木家～

もこっち「あ……ノート忘れた」

―翌日―


ｵﾊﾖｰ　　ﾊﾔｲﾈｰﾌﾞｶﾂ？　　ｷﾉｳＯＯﾐﾀｰ？


もこっち「……」

もこっち（クソ、ノート忘れたせいで）

もこっち（わざわざ早めに学校来て予習せにゃならなんだ……）

もこっち（いや別にそこまでしないでもいいかもだけど）

もこっち（せめて勉強ぐらいはリア充どもを圧倒しないとな！）

もこっち（次の試験でトップ取って謎の天才転校生ポジに！）

夜空「……」ｶﾞﾗｯ


もこっち（あっ）


夜空「！」ﾌﾟｲｯ　　　ｽﾀｽﾀ


もこっち（一瞬目があった）

もこっち（今の反応はたぶん微妙に意識してる系テレ隠しだな）

夜空（昨日は突然だったから気付かなかったが）

夜空（……いつもクラスで一人でいる根暗な転校生だな）

夜空（他のクソビッチ共に聞かれていたら登校拒否するレベルだったが）

夜空（まあアレなら言い触らされる可能性は低そうだ）

夜空（あの女、友達とかいなそうだし）ﾁﾗ


もこっち（そりゃあテレるわな、脳内設定だった友達(仮)に秘密がバレちゃって）

もこっち（嬉し恥ずかしのはがゆい心境なんだろ）ﾆﾍﾗ

夜空（ぐ……何だ、あの不敵な笑みは？）ｿﾞﾜ


もこっち（！……あ、またこっち見てる！）ﾆﾀｧ


夜空（む！）ﾌﾟｲｯ

夜空（私を見て嗤っているのか？）

夜空（一体何を考えて……ま、まさか）

夜空（トモちゃんのことをダシに私を強請るつもりか……！？）

夜空（『ねぇねぇ三日月さん、エア友達のこと皆には黙ってるからね、ククク、これから仲良くしようね』）

夜空（『三日月さぁん、ちょっと購買でメロンパン買ってきてよ』）

夜空（『今日財布持ってくるの忘れちゃったぁ、三日月さん、お金貸してくれるよねぇ？』）

夜空（いや待て、そもそも友達がいない奴にそんなことが……！）

夜空（でも、実は裏の顔があって学校外ではリア充…なんて可能性もあるな）

夜空（昼間は地味で根暗な影の薄い女子生徒なのに夜はキャバ嬢で荒稼ぎ！……みたいな小説もあったし）


もこっち（き、今日のお昼にでも話しかけてみようか……今度こそ普通に）

もこっち（よし、脳内シミュレーションしておこう）

もこっち（『い、一緒に・・・ご、ごごご飯でも、ど、どうで・・・！！』）ｺﾞｺﾞｺﾞ

夜空（あの吐き気を催す邪悪のような目……間違いない）ｳﾌﾟ

夜空（何だか想像したら気分悪くなってきた……トイレ行こう……）ｶﾞﾀｯ



ｷｰﾝｺｰﾝ　　ｶｰﾝｺｰﾝ　　



「はい皆、席着いて～授業始めますよ」

・・・・・

先生「この時代には――」


ガラッ

先生「？」


小鷹「ぁ・・・あのオオｫ・・・！！」

小鷹「お、俺・・・ハァハァ・・・転校・・・生の・・・！！」フラリ

小鷹「っとッ・・・」ｶﾞﾀﾘ


先生「ひぃっ」ｶﾞｸｶﾞｸ

　
　　ｾﾝｾｲｦ…ｵｿｯﾀ！？　ﾅﾆ、ﾌﾘｮｰ！？　ﾐﾛﾖ、ｱﾉｶﾐ！　ｺｴｴｴｴｴｴｴｴ！

小鷹「・・・あ、あの・・・」

一同「……」ﾌﾟｲ

夜空「……」

もこっち（何だこのヤンキー！？）

もこっち（目つきヤベぇよ！　前科何件だよ！？　少年院脱走して来たのか！？）

もこっち（つーか髪の色はウケ狙い！？　もっとチャラいＤＱＮご用達の低学歴高校行っとけよ！！）

先生「あ、あの・・・」

小鷹「は、はい・・・」

先生「転校生の・・・は、羽瀬川くん・・・ですね、とりあえず・・・席に」

小鷹「え、えっと・・・どこに座れば・・・」

先生「黒木さんの隣が空いていますね、あの窓際の方の・・・とりあえずそちらに」ﾁﾗ

小鷹「は、はい・・・わかりました」


もこっち「」

・・・・・

「えー教科書の３２Ｐを――」


小鷹（最悪だ・・・）

小鷹（第一印象は大事だと思ってあれほど自己紹介練習したのに・・・）

小鷹（バスの路線間違えて遅刻してしまうなんて・・・！）

小鷹（何やってんだよ俺！）ﾊﾞﾝ!

もこっち「ひぃ！？」ﾋﾞｸ

小鷹「あっ、ご、ごめん……」

もこっち（何か凄いイライラしてる！　つか怖すぎ！！　誰か助けて！！！）

小鷹（いかんいかん……）

小鷹（とりあえず授業に集中しないと）

小鷹（確かに第一印象は最悪だったが、徐々にクラスに溶け込んで仲良くなっていけば大丈夫だ）

小鷹（まだ慌てるような時間じゃない）

もこっち（早く授業終われ……）

小鷹（あ、教科書……）

小鷹「あ、あのさぁ……」

もこっち「は、はひっ！？」

小鷹「ちょっと、教科書を見」

もこっち（カ、カツアゲ！！）ｻｯ

小鷹「え…」

もこっち「ど、どどど、どう・・・ぞ・・・」ｶﾞｸﾌﾞﾙ

小鷹「え…」

もこっち「ど、どどど、どう・・・ぞ・・・」ｶﾞｸﾌﾞﾙ

小鷹「……あ、ありが」


　ｳﾜ､ｶﾂｱｹﾞｼﾃﾙ！　ｸﾛｷｻﾝｶﾜｲｿｰ！


小鷹「」