キョン「会社クビになった……」(1000)

上司「○○君、ちょっとあとで話があるんだが。今日終業したら会議室に来てくれるか?」

キョン「え、あ、はい。でも今日は残業が」

上司「いい、それは他のやつに回しとく」

キョン「はあ」

上司「それじゃあ頼んだぞ」

キョン(なんだ? 俺なんかしたっけ?)

キョン(この間の飲み会も別に上司に絡んだり、女の子になんかした記憶のないんだが)

同僚1「ちょっとキョンさん、あのハゲの機嫌損ねるようなことしたんですか?」

キョン「いや……全くもって記憶にない」

同僚1「もしかして、昇進じゃないですか? キョンさん今のプロジェクトで結構目立ってるじゃないですか」

キョン「まさか。だいたい俺の周りにゃ俺より仕事できるやつなんて腐るほどいるだろ」

同僚1「わかんないっすよ? キョンさん、昇進したら飲みに行きましょう!」

キョン「ハハハ、ばか。そんなわけないって。お前はただ飲みに行きたいだけだろ。そんなことより仕事しろ仕事」

同僚「バレちゃいましたか。まじめだなーキョンさん」

キョン「どっかの誰かのせいさ。ちゃんと働いて帰ってこないと飯抜かれるからな」

同僚「あ、例の鬼嫁さんのことですか! いいなーめちゃくちゃ美人っすよね」

キョン「外見だけはな。中身はメスライオンだ」

同僚「いいじゃないっすか。あんだけ美人ならメスライオンでも全然OKですよ」

キョン「やれやれ」

終業後

トントン

キョン「失礼します」

上司「おお、来たか」

上司「…まあ座ってコーヒーでも飲んでくれ」

キョン「はあ、どうも」

ズズッ

--------------------

キョン「あのーそれで話ってなんでしょうか?」

キョン(もしかしてマジで昇進か!?)

キョン(……係長になったら給料少しは上がるかな?)

キョン(そしたらアイツとうまいもんでも食いに行くか!)

上司「いや、ああ、話か……」

キョン「……」

上司「その、あー、非常に言いにくいことなんだがな」

上司「単刀直入に言うと、君にうちの会社をやめてもらいたい」

キョン「…」

キョン「……」

キョン「………」

キョン「え?」

上司「実はな、うちの会社も昨今の不景気でな人員削減しなきゃならんのだよ」

キョン「???」

上司「うちの部署からも数人解雇するように上のほうから私に言われてな」

上司「若い社員が多いここはまだ少ない方なんだが……」

キョン「?????」

上司「申し訳ないが、今月一杯で君は解雇ということになる。ちなみに一応いくらかの退職金は出る」

上司「私としても君は真面目に仕事に取り組んでいたし、辞めさせるには心苦しいんだが上の方針がそうなっては、な……」

キョン「……」

上司「……」

上司「…すまん。詳しい説明はまた後日正式な文書で通達されるからそのときに」
スタスタ
ギィ
バタン

キョン「……」

キョン「………」

キョン「は」

キョン「はははっははは」

キョン「うそだろ?」

公園

カーカー
キョン「……どうしよう」

キョン「とりあえずハルヒに言ったら殺されるな…」

キョン「しかし言わないでどうする?」

キョン「はあ」

キョン「こんなときあいつらがいれば」

----------------
長門「問題ない。情報操作であなたの身の回りの環境を……」

みくる「ふぇー!? ホントですか!!!? でも未来ではそんなはずはないんできっとまた新しい仕事がすぐに……」

古泉「解雇、ですか? んっふ。困りましたね。でも大丈夫です機関のツテであなたにぴったりの仕事が……」

-----------------


キョン「でも」

キョン「でもあいつらはもういない…」

キョン「俺が一人でハルヒを守らなきゃならないんだ」

ガチャ
フラフラ
キョン「うぃーっく!!おーーいはーーるひちゃーーん!お前の愛しの旦那様が帰ったぞ!」

ハルヒ「おかえ…うわ、あんた酒臭!」

キョン「へっへっへー? そうれすかねー!」

ハルヒ「酒はやめるって言ってたのに……ほらこっちよこっち!」

キョン「うぇっへっへっっへ! おーかわいいなハルハルはー!」

モミモミ

ハルヒ「ちょ、どこさわってんのよエロキョン!」

キョン「おーなんらなんら! 旦那が嫁の乳もんで何が悪いってんらー」

ハルヒ「酔っ払いすぎよ」

キョン「全然よってらんからいっすよー!」

ハルヒ「ソレが酔ってるって言うのよ!」

ハルヒ「ほらもうちょっとでベッドだから」

ガツン
キョン「いへー!」

ハルヒ「きゃあ!」

ドサドサ

キョン「……」

ハルヒ「きょ、キョン…重いわよ…」

キョン「……お前ってほんと美人だよな」

ガバァ

ハルヒ「へへへ、褒めても何にm…ってきゃあ!? 何すんのよ!?」

キョン「何って? ナニすんだよ!!」

チュウチュジュルルルルルルデュルルルルジュポジュルリンポン

ハルヒ「ちょ、んあ、ま、って! んチュル! ジュルル」

キョン「はあはあ」


ハルヒ「…ハアハア、な、なんだってのよ」

キョン「は、ハルヒ!」

ズルッ

ハルヒ「や、やだぁ! いきなり、ん、チュルルル、はっ、スギ、ジュル」

クチュチュチュチュチュクジャジャジャジャジャキュキュキュノキュ
ハルヒ「ああああああんんんんn!」

キョン「ハーフーヒー」

キョン「もうぐちょぐちょだ…」

ハルヒ「いやあ…」

ズルズルズルズルッポンババーーーーーン
キョン「そしてこいつをハルヒの中に……インンンn!」

ズルルロリレンガズボズボメコリメコリ

ハルヒ「ひゃーーーん」

キョン「うひょう!」

ズボズボスコスコピャー

ハルヒ「キョンろが、奥まれ、はいってる!」

キョン「ハルヒのきつきつおミャンこが俺のファッキンサンを……」

キョン「締め付ける!」

ギッコンバッッコンピーヒャララー

ハルヒ「らめ、そんなに強くしたら、あらしもう!!!」

ジュピターエンンンマーーーーズ

キョン「まだだ! おれは全然満足してないぞハルヒ!」

グングウンンブンブウンヒューーーン

ハルヒ「そんなにいりぐっちばっかりせめらいれ!」

キョン「ふっううう!」

ハルヒ「キョンいって! いって! あたしもうむり!」

キョン「いっくうううううう!」

ピュ

キョン「はあはあ」

ハルヒ「ハアハア」

キョン「ネル」

ハルヒ「え」

Zzzzz

ハルヒ「ほらもうちょっとでベッドだから」

ガツン
キョン「いへー!」

ハルヒ「きゃあ!」

ドサドサ

キョン「……」

ハルヒ「きょ、キョン…重いわよ…」

キョン「Zzzz…」

ハルヒ「寝てるし……やれやれ」

翌朝

キョン「あったまいってえ……」

ハルヒ「ふん、あんなに馬鹿みたいに飲んでくるからよ」

ハルヒ「ほら、味噌汁飲んで! しゃきっとしなさい」

キョン「…すまん」

キョン「なあ、俺昨日なんかしたか?」

ハルヒ「え!? あ、ああ昨日ね? いやー別にあんたが喧しかっただけでなんにも」

キョン「お前に喧しいと言われるようになるとはな…」

ハルヒ「一言多いわよばか」

ガチャ

キョン「そいじゃ行ってくる」

ハルヒ「はいよ、行ってらっしゃい! さぼるんじゃないわよ」

キョン「へいへい」

ハルヒ「へいは一回!」

キョン「へい」

バタン

キョン(といって出てきたは良いものの……)

キョン「結局言えなかった…」
サンバンセンニレッシャガトウチャクイタシマス

キョン「いっそのことここでフラっと飛び込んじまって……」

…ョン!

キョン!

フラッガシッ

キョン「うわっ!」

ガタンゴトンガタンゴトン

キョン「あ、あっぶねえ!」

「あぶないのはきみのほうじゃないかい?」

キョン「へ?」

佐々木「さっきのきみは今にもこの電車に飛び込みそうに見えたが?」

キョン「さ、佐々木ぃ!?」

佐々木「やあ、久方ぶりだね」

キョン「お、おお!」

佐々木「くっくっく、そんなに動揺してる君を見るのはいつ以来かな?」

キョン「さあ、な」

佐々木「くく、もう調子を取り戻してきたみたいだね」

キョン「それにしても佐々木。お前この辺に勤めてたのか?」

佐々木「久しぶりにあったというのに話が急だね。その問はイエスだよ」

キョン「そうだったのか…どこにつとめてるんだ?」

佐々木「一応そこの○○銀行だよ?」

キョン「一応って、おまえあそこの銀行だったら超が三つつくくらいのエリートじゃないか!」

佐々木「まあ、そういう風に言う人もいるが僕は別に仕事で人間の価値が決まるとは思ってないから意味はないよ」

キョン(……普段なら気にしないが今の俺にはしみる言葉だぜ)

ガタンゴトンガタンゴトン
佐々木「それよりキョン、僕の方がいろいろ君に聞きたいな」

キョン「な、なんだ? 特段俺にはかわりなく平和な日常が続いているぞ?」

佐々木「…そうは見えないな」

佐々木「君は今まで生きてきた人生の中で一番悩んでいる。違うかい?」

キョン「は、ははは。何だそりゃ、占い師じゃあるまいし」

佐々木「まあいいよ。今は時間もないしね。そうだ、今夜時間はあるかい?」

キョン「今夜か? あることはあるが…」

佐々木「涼宮さん、いや、今はハルヒさんかい?」

キョン「ああ、アイツが待ってるしな」

佐々木「くく、つれないな。久しぶりに会ったんだしたまにはいいじゃないか」

キョン「ああ、それはそうだが……」

佐々木「じゃあ決まりだな。場所は僕の方から送るから君は彼女にイイワケを考えておいて欲しいな」

キョン「ああわかったよ。しかし珍しいなお前がそんなに…」

佐々木「鈍感な君には分からないさ」

キョン「失礼なやつだ」

佐々木「くっくっく。それじゃあ僕はここで降りるから」

キョン「おお、じゃあな」

誰も見てないwwwwくそうwww

ガタンゴトンガタンゴトン
キョン(まいったな……アイツになんていやいいんだ)

キョン(ちょっと佐々木と飲んでくる! いや死ぬな。死ぬ。102%死ぬ)

キョン(ちょっと今日会社の飲み会でさ! 二日続けて飲み会ってアホか俺は)

キョン(無難に今日は残業で帰れそうにない、でいいか…)

会社

キョン「おはようございます」

上司「おはよう」

キョン(特になし、か)

同僚1「おはようざいますキョンさん」

キョン「おう、おはよう」

同僚1「ちょっとキョンさん、どうだったんすか? 昨日の話は」

ギクリ

キョン「え、あ、あああれか?」

同僚1「昇進スか!?」

キョン「違う違う。あーー、ただの先月の明細の確認だったよ」

同僚1「なんだ。それだけっすか! ちぇっ、せっかく飲めると思ったのに…」

キョン「おら、あほなこと言ってないで仕事しろ!」

同僚1「でもそんなことでいちいち呼びますかね、ハゲ」

キョン「ちょっと不明瞭なとこがあったからな。作ったおれに直接聞きたかったんだろ」

同僚1「そんなもんすかね? てっきりキョンさんハゲに愛の告白を…」

キョン「お前は俺の古い友人にとてもよく似ているアホだ」

終業後
同僚1「キョンさん! キャバクラ行きましょうよキャバクラ!」

キョン「残念だが俺は用事がある」

同僚1「…なんすか? コレすか?」
クイクイ

キョン「違う。今日久しぶりに親友に会ってな、会うことになったんだよ」

同僚1「男っすか……つまらないですね」

キョン「大きなお世話だ」

同僚1「ホイじゃ俺は夜の街へと繰り出してきます! ヒャッハー!」

キョン(やれやれ。)
キョン(男じゃないんだなこれが。僕って言うけどさ)

19:30

キョン「ええと、あいつの指定してきた店は、と」

キョン「げ!!!!!」

ババーン

キョン「これまたなんつーオサレなレストラント……」

キョン「おいおい俺のこのカッコで入って良いものなのか?」

トントン
キョン「ん?」
プニィ

キョン「いて」

佐々木「くっくっく、きみは店のまえで何を一人でブツブツ言ってるんだい?」

キョン「おお、佐々木か……ってお前なんだそのカッコは!?」

佐々木「失礼だな。コレでも久しぶりに会うから気を使ってきたんだぞ」

キョン「いや似合っているけどよ……俺このボロスーツだぞ?」

佐々木「君はいつものままが一番似合うよ」

キョン「そらどーも。似つかわしくなくてすんませんな」

佐々木「くっくっく。相変わらずだな。さあ、お店に入ろうじゃないか」

店内
ウェイター「メニューです」

キョン「どーも」

エスカルゴのナンタラカンタラ

子羊のナンタラカンタラ

フカヒレスープのナンタラカンタラ

キョン「……」

佐々木「どうしたんだい? 頼まないのかい?」

キョン「お、おいおい。なんだこれ? 俺のよく分からない文字が羅列してるぞ」

佐々木「そうかい? じゃあコースでよさそうだね」

キョン「……佐々木ここでこんなことを聞くのもあれだがそのコースとやら、いくらだ?」

佐々木「ん? ピーーー円だけど」

キョン「……!?」

キョン「すまんが佐々木、その金額なら俺は二月飯が食べられる……」

佐々木「ああ、値段のことかい? 気にしなくて良い。僕が無理をいって誘ったんだから君は払う必要はないよ」

キョン「いや、しかしだな、男としてそれはどうかと…」

佐々木「くっくっく、そんな体裁君が気にするとは意外だな。いやもともとそのタイプではあるかな?」

キョン「俺はその辺の居酒屋で良かったのに」

佐々木「それこそいちいちそんなことに気にしてたら男がすたるぞ、キョン。奢られるときは気持ちよくおごらせてくれよ」

キョン「……すまん」

佐々木「じゃなくてありがとう、じゃないかなこの場合は?」

キョン「ありがとう、佐々木」

佐々木「まあ感謝するのはこちらのほうなんだけどね」

ウェイター「お待たせしましたいたしました、前菜のナンタラカンタラです」

キョン(うえ、すげー食うの勿体無いタイプの料理)

佐々木「さあ食べよう、キョン」

キョン「…ゴチになります」

佐々木「くっくっく」

キョン(上品すぎて味がイマイチようわからんぞこれ!)

佐々木「? 美味しくないかい?」

キョン「ま、まさか!? 旨すぎて絶句してたんだよ!」

佐々木「喜んでもらえて何よりだよ」

佐々木「そうだキョン。涼m…ハルヒさんにはなんて言い訳したんだい?」

キョン「ああそのことなんだがな……」

-----------------

昼休み

キョン(そーだアイツに連絡しないと)

Toハルヒ
Subスマン!
今日残業入っちまった!
ちょっと帰れそうにない、すまん!明日は定時に帰れると思う。

キョン「これでよしと」

30秒後

キョン「はや!?」

Fromハルヒ
Sub Re:スマン!
ふーんわかったわ。
まあせっせと働いてきなさい!

あと明日は早く帰ってくること! 浮気したら殺すわよ!

キョン「なんつー文章だ」

キョン「了解、と」

-----------------

ゾゾゾ
佐々木「そ、そうかい。よかったよかった」

佐々木(涼宮さん……勘は衰えてないようね)

キョン「どうかしたか?」

佐々木「いや、なんでもない。ただ彼女は能力がなくなってもすごいね」

キョン「?」

佐々木「こっちの話さ」



ウェイター「こちら、うんたんかんたらのスープでございます」

キョン「はあ」

佐々木「うん、美味しい。実になんちゃらかんちゃらがどーたらこーたらだね」

キョン「そ、ソーダナ!」

キョン(……これ俺でも作れんじゃねーか?)

佐々木「……で、だキョン」

ズーッズー
キョン「んあ?」

佐々木「君は何を思い悩んでるんだい?」

キョン「え、えーあー。特になにもn

佐々木「ない、とはいわせないよ? 君はすごく大事なことを胸にしまってる。しかもそれはひどく大事すぎて一人ではかかえきれないものだ」










すまん、ちょっと1時間ほど空ける

                     _____

    / ̄ ̄ ̄ ̄\,,      /-、 -、    \
   /_____  ヽ    /  |  ・|・  | 、    \
   | ─ 、 ─ 、 ヽ |  |   / / `-●-′ \    ヽ
   |  ・|・  |─ |___/   |/ ── |  ──   ヽ   |ただいま
   |` - c`─ ′  6 l   |. ── |  ──    |   |
.   ヽ (____  ,-′   | ── |  ──     |   l
     ヽ ___ /ヽ     ヽ (__|____  / /
     / |/\/ l ^ヽ    \           / /
     | |      |  |     l━━(t)━━━━┥

佐々木「そしてそれは君がハルヒさんにも言えないこと」

キョン「……」

佐々木「……僕にも言えないことなのかい?」

キョン「それは……」

佐々木「僕がこんなこというのはおこがましいのかもしれないけど、涼宮さんに言い辛いことだってあるんじゃないのかい?」

キョン「……」

佐々木「僕は君の力になりたいんだ」

佐々木「キョンがつらそうにしているのにそれを何もせずに見ていることなんてできないよ」

キョン(佐々木……)

佐々木「話だけでも教えてくれないか?」

キョン「俺は、弱い男だ」

佐々木「…」

キョン「このことを言ったらみんな俺に失望すると思ってまだ誰にも言ってないんだ」

キョン「もちろん、ハルヒにも」

キョン「……できる事ならこの問題が解決するまで、ハルヒには隠し通し続けたいと思ってる」

キョン「でも、多分俺には無理だ」

キョン「さした才能もない、この俺じゃここから立ち直るなんて無理だ」

佐々木「そんなことは」

キョン「ささきぃ……俺」

キョン「会社クビになった……」

佐々木「そう、か」

キョン「………」

佐々木「キョン、辛かっただろう?」

キョン「……」

佐々木「君は弱い男なんかじゃない」

佐々木「だって、君はまず自分の将来よりも涼宮さんのことを考えているじゃないか」

佐々木「それは弱い人間にはきっと思いもつかないことだと思うよ」

キョン「……」

佐々木「キョン、顔をあげるんだ」

佐々木「僕は君を絶対に助けてみせる」

佐々木「君がまた一人で歩けるようになるため、微力かもしれないけど、僕の全力を尽くして」

キョン「……」

佐々木「……」

佐々木「このことは君と僕だけの秘密だ」

佐々木「そして誰も知ることなく、終ることになる」

佐々木「終わるまで」

佐々木「僕だけに甘えて」

佐々木「僕だけに弱音を吐いて」

佐々木「僕だけに愚痴をこぼすんだ」

佐々木「僕はどんな君も受け入れるよ」

佐々木「僕だけを頼りにするんだ。またいつものキョンの日常を取り戻すために」

佐々木「わかったね、キョン?」


キョン(コクリ)

佐々木「いい子だ」

佐々木「さあ、もうすぐメインディッシュの時間だ」

佐々木「ここの子羊の……」










キョン(もう俺には佐々木の言葉しかなかった。他の音は全く耳に入らなかったし、
    入れる気もなかった。佐々木は摩耗していた俺の心に唯一救いの手を差し伸べた。
    
    その日俺はうちには帰らなかった)

ひと月後
ガチャ

キョン「それじゃあ行ってくる」

ハルヒ「いってらっしゃい! 早朝出勤、残業になんて負けるんじゃないわよキョン!」

キョン「へいへい」

ハルヒ「へい、は一回っていってるでしょ!」

キョン「へい」

ハルヒ「でも無理はしちゃだめよ……?」

キョン「……へい」

キョン(よし)

ガタンゴトンガタンゴトン

キョン(もう佐々木のマンションにつくな)

-----------------

ガチャガチャ
キョン「おはよう、佐々木」

佐々木「おはよう、キョン」
チュ

佐々木「今日は早かったじゃないか? 奥さんにたたき起こされたのかい?」

キョン「……お前、一介の銀行員(とはいえエリートだが)より占い師のが向いてんじゃないのか?」

佐々木「くっくっく。生憎僕の占いは君しか的中しないのさ」

キョン「そらどーも」

佐々木「占いなんてもんじゃないさ。ただ君の事を注意深くよく見ていればすぐにわかる」

キョン「そんなもんかねえ」

佐々木「そんなもんだよ」

キョン(俺がクビになって3日たった。もう会社には行かなくて良いから、代わりに佐々木の家に行く。

    そこで佐々木の仕事が終わるまで主人を待つ犬のようにしている。特段やることはないのだ。

    俺の心はもう佐々木を麻薬のように求めている。ハルヒ? もちろんアイツのことも愛している。

    しかし佐々木に対する感情とハルヒに対する感情はベクトルの違いはあれども同じものなのだ。)



キョン(仕事を見つけることなどどうでも良くなっていた。金は黙ってても入ってくる。佐々木は自分の旧友たち、

    橘・藤原・周防に連絡をとり俺のハルヒに対する、世間に対するアリバイ工作を完全にこなした。
    
    世間的には未だに俺はサラリーマンだ。その辺の情報改ざんは周防が行った。
    
    俺は1週間のうち、半分は会社つまり佐々木のマンションに泊まり、もう半分はハルヒのいる
    
    自分の家に泊まった)

佐々木「キョン、今日は早く帰ってこれそうだよ」

キョン「お、ほんとか? じゃあ今日はこっちに泊まっていくかな」

佐々木「くっくっく、それは楽しみだ。今日は一昨日と違ってじっくりキョンの『リ ハ ビ リ』ができそうだね」

キョン「おいおい、脅かすなよ」

佐々木「君だって好きじゃないか、『リハビリ』」

佐々木「いや、本当に楽しみだよ。今日の仕事ははかどる気がするよ」

キョン「こーえーですよ、佐々木さん」

佐々木「コーヒーも飲み終えたことだし、そろそろ出社するかな」

コトリ
キョン「おう、玄関まで鞄もってくよ」

佐々木「くっくっく、君は本当に『いい子』だよキョン」
ナデナデ

キョン(ああ、また佐々木に褒められた。すげー充実感……)

佐々木「それじゃあ、名残惜しいが幾許かのお別れだ。いい子でね、キョン」

キョン「わかったー」

バタン

キョン「さてと、こっからが暇なんだよな」

キョン「佐々木、家事全般すべて終えてから出てくんだもんな、つっても大してできないけどよ」

キョン「てきとーにネトゲでもしてるかー」
カチッ!フィーーン

スギタ ガログインシマシタ

キョン「オラオラオラオラオラ、スギタ様のお通りだい!」

-----------------



ガチャリ
佐々木「ただいまーキョン」

キョン「おかえり佐々木」
チュ

佐々木「キョン、今日はキョンの大好きなシチューだよ」

キョン「お、マジか! よっしゃマジで佐々木の作る料理はうまいからなー」

佐々木「うれしいよキョン」

佐々木「できたよキョン」

キョン「おおお! すげーうまそう!」

佐々木「さあ、食べてくれキョン。君のためだけに作ったんだから」

キョン「おう、ほいじゃさっそくいただきます!」

ガツガツガツガツ

キョン「うん、うまいな」

佐々木「くっくっく、ありがとうキョン」



佐々木「……そういえばキョン」

キョン「ん?」

佐々木「君は日中家にいる間暇じゃないのかい?」

キョン「あーまあな。でも最近ネトゲ始めたからそこそこお前がいないあいだの暇つぶしは出来てるぜ」

佐々木「ネトゲ、かい?」

キョン「ネットゲームだ。ははは、佐々木にも知らないことがあるんだな」

佐々木「それはそうだろう、僕にも分からないことは沢山ある。でも君のことだけは何だって分かるよ、キョン」

キョン(ああ、嬉しいな……佐々木だけが俺のことをわかってくれてる)

佐々木「なにかその、ネトゲ、だっけ? 変わったことはあったかい?」

キョン「変わった事? んー別に特にないかな。ほとんどプログロムできまってるしな」

キョン「あ! あったあった! そういや一昨日くらいかな。そのネトゲで変なモンスターと戦ったんだよ」

佐々木「へえ、どんなのだい?」

キョン「魔女型のモンスターなんだけどよ、一昨日のそいつはモンスターの癖にこっちに話かけてくるんだ」

キョン「しかも意味不明の言葉で」

キョン「気づいて。揃えて…ってな。変な話だろ?」

佐々木「……ほう。興味深いね」

キョン「俺暇でだいたいレアモンスターとかイベントとか覚えちまってるからあんなイベントとかないはずなんだけどな」

キョン「なんかのフラグだったんだろーかね」

佐々木「キョン……ちなみにそのモンスターも名前はなんて言うんだい……?

キョン「あー、たしか『ス ノ ウ』だったかな?」

佐々木「へえ……スノウ、ね」

キョン「…ど、どうした佐々木!? すごい目が怖くなってるぞ!」

佐々木「ん? くっくっくなんでもないさ。怖がらせてごめんよ」

キョン「いや、ダイジョブだけど…俺なんか気にさわるようなこと言ったか?」

佐々木「まさか、キョンは何にも悪くない。キョンは『いい子』だよ」

キョン(よかったぜ…)

佐々木「っとすまないが少し仕事の連絡をしなくちゃならないんだ」

佐々木「『リハビリ』の前のお風呂は少し待ってくれないか?」

キョン「ああ、全然いいぞ」

佐々木「ありがとう、キョン」

キョン「なんなら俺が風呂掃除でもしてこようか?」

佐々木「……大丈夫!! 僕が全部やるよ!! キョンは休んでてくれ!!」

キョン「わ、わかった…」

キョン(びっくりした…)

-----------------

prrrrrprrrrr
ガチャ
周防「な-------にーーーーー?」

佐々木「周防さん。少し、虫が入り込んだみたいね」

周防「だーーーーーれーーー?」

佐々木「彼らの中であなたの情報網をくぐれるのは一人しかいないわ」

佐々木「長門有希……」

周防「大ーーーー丈ーー夫ーーー」

佐々木「なぜ?」

周防「彼ーーにーーーー接ーー触ーーーしーーてーーーもーーなーーーにーーもーーーでーーきーーない」

佐々木「現にヒントを与えてるじゃない」

佐々木「でもキョンはあなたの情報操作で守られてるから大丈夫、そういいたいの?」

周防「そーーーーうーーーーー」

佐々木「イマイチ信用に値しないけれど、いいわ」

佐々木「どうやったってキョンは私のものだから」

周防「ーーーーーーーーーーー」

佐々木「狂ってる、と思う?」

周防「ーーーーーーーー?」

佐々木「あなたに聞いても無駄ね」
ブツン プープー

佐々木(まあ恐らく長門有希はこれ以上の接触は無理なはず。でも出所が分からない以上警戒する必要はある。

    涼宮ハルヒの能力が消えた今、向こうの陣営で恐いのはあの木偶人形だけ。不愉快だ、といってもゲームの

    世界でモンスターとしてしか出れないなんて笑っちゃうね。弱い弱い宇宙人サン)

佐々木「くつくつくつくつくつくつくつ」

佐々木「本当に君は人気者だよ、キョン」

prrrrr prrrrrrガチャ
橘「はいです」

佐々木「ぼくだけど、そっちは?」

橘「すみません、なかなかしぶといもんでまだ尻尾をつかめてないのです」

佐々木「そう。まあ彼一人ではどうにもならないさ、気長に待つよ」

橘「申し訳ないです……」

佐々木「構わないよ。君はよく頑張ってくれてる。周防さんが僕のブレインとするなら君は僕の両腕さ」

橘「は、はひーー嬉しいです!」

佐々木「そうかい」

佐々木「じゃあまた何かあれば連絡を」

橘「あ、ちょ、ささk」

プツ ツーツー
佐々木「……馬鹿な女だ」

コツ コツ コツ コツ

佐々木「!?」

佐々木「誰!?」

藤原「忙しそうだな」

フゥ
佐々木「暇そうで何よりだね」

佐々木「君はいったいどうやって入ってきたんだい? それにここに立ち入ることは許可していない」

藤原「僕が来ただけでそんなに驚くなんて相当臆病なんだな。ついでに言うと僕はお前の計画に賛成、協力を仰がれただけであってお前の手下になった訳じゃない」

佐々木「まあね。君だけは僕の自由には動かない」

佐々木「仕事さえしっかりしてくれればある程度の自由は許すけど」

佐々木「これ以上僕とキョンの聖域に近づくと」



佐々木「ころすよ?」


藤原「ふん、現地人風情が大層な口ぶりだな」

藤原「聖域ね……ははは」
クルッ

コツ コツ コツ コツ

佐々木「……」

佐々木「食えない男」

佐々木(でも彼がいれば時空間移動は絶対にできない、すなわち僕とキョンの未来は変わることはない)

佐々木「……」ニヤァ

佐々木「くつくつくつくつくつくつくつ」

ガチャン
佐々木「!!!!?」ビクッ

キョン「おーい佐々木?」

佐々木「あああ、キョンか! どうしたんだい?」

キョン「風呂入んねーのか? 最近冷えてきただろ? 寒くてさ、早く入ろうぜ」

佐々木「うん、すぐ行く!」



風呂

カッポーン
キョン「しかし、自分から入ろうぜと言ったものの未だに慣れんな」アワアワアワ

佐々木「くっくっく、キョンはウブだね」

キョン「こういうのってウブっていうのかねえ」ゴシゴシ

佐々木「言うのさ」

キョン「へいへい」

佐々木「さあ、キョン後ろを向くんだ」

キョン「あいよ、っこらせと」

佐々木「いくよ」

キョン「あいよ」

ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

キョン「おお、良い力加減だぞー」

佐々木「そうかい? それじゃあこっちのスポンジはどうだい?」
フニュンフニャンニュルニュル

キョン「さ、佐々木!?」

佐々木「本当にキョンはウブだね」

佐々木「僕らはもう、ん、一緒に『リハビリ』した、はぁ、間柄だろう?」グイグイ

佐々木「今更恥ずかしがることなんて、うんん、ひとつもないさ」アワアワアワアワ

佐々木「と言ってもそんなところも、あ、キョンの可愛いところなんだが」

佐々木「で、気持いいかい?」

キョン「そりゃまあ俺も正常な成人男性なわけでそんな風に胸を当てられるとあらぬところに熱膨張が……」

佐々木「正、直だねキョンは」














つーかエロいるか?

佐々木「キョンこっちを向いて」

キョン「ん」
クルッ

佐々木「キョン、僕には君が必要だ。きっと、いや、絶対に君がいない生活なんて考えられない」

佐々木「キョンはどうなんだい?」

キョン「……」

キョン(ああ、佐々木が、俺を、も、と、め、て、る)

キョン「……」

キョン「俺にはお前が、お前だけが必要だ、他には何も要らない」

佐々木「キョン……」

佐々木「じゃあ、刻むんだ。僕のこの、唇に、乳房に、躯に。君が僕を必要としてる証を」

キョン「……」

書く時間がない

0時くらいに戻ってくる

                     _____

    / ̄ ̄ ̄ ̄\,,      /-、 -、    \
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---------------------


ハルヒ「はあ、最近キョン残業ばっかりで一緒にいる時間少ないわね…」

ハルヒ「あいつがうちにいないから、家事もすぐに終わっちゃうし……」

ハルヒ「ひまだわあー」

ハルヒ「早朝出勤なんて今まで全然なかったし…」

ハルヒ「すごい疲れてる顔してたわね、キョン」

ハルヒ「……たまには」

ハルヒ「労ってあげようかしらね」

ハルヒ「キョン、あたしのカレー世界一うまい! って言うし今日はキョンのためにカレーにしよっ!」

支援


ハルヒ「よし、そうと決まれば、めっちゃくっちゃおいしいカレー作ってやるわ!」

ハルヒ「スパイスたくさんいれてー、元気がつくようなのでー」

ハルヒ「……ついでに精力つくようなのも///」ニヤニヤ

ハルヒ「あーはずかしはずかし!」

ハルヒ「ふふふ!」

ハルヒ「ちょっとやる気出てきたわね」

ハルヒ「…キョン、喜ぶかな?」

ハルヒ「なんて、あたしらしくないわね」

ハルヒ「キョンと結婚してあたしもまるくなったもんだわね」

ハルヒ「やれやれ///」

スーパー

ハルヒ「キョーンキョーンキョン、おバカのこー♪」

ハルヒ「愚痴の国からやあーってきた」

ハルヒ「えーと、牛肉さんと、にんじんさんとたまねぎさんと……」

あら?

ハルヒ「ん?」

阪中「涼宮さんなのね?」

ハルヒ「さ、阪中さんじゃない! 超久しぶりね!」

阪中「久しぶりなのね! 涼宮さんもこの辺に住んでるの?」

ハルヒ「そうそう! ってもう阪中じゃなかったわね」

阪中「うんん。別に阪中でいいのね、『谷口』だとどうしてもうちの旦那さんのほうになるし」

阪中「涼宮さんの方こそキョンくんと結婚してもう涼宮じゃなかったのね。ハルヒさんのほうが良さそう!」

ハルヒ「あはは、それもそうね。いやーそれにしても阪中さんが谷口とはねー」

阪中「よく言われるの! もう、うちの旦那さんいい歳してるのに未だに落ち着きなくて…」

ハルヒ「でも、幸せそうでよかった」

阪中「んふふ。この前もキャバクラの名刺見つけてね、どういうことなのね! って問い詰めたら『お、オレじゃない! 国木田がキャバクラに勤めてて!』って! 相変わらずアホなのね……」

ハルヒ「変わらないわね、谷口。もうちょっと言い訳考えられないのかしら」

阪中「そうそう、それでその時は三日間口きいてやらなかったら、さすがに堪えたみたいで『すまんーー、許してくれ!! もうキャバクラには行かないから!!』って言ってたのね」

ハルヒ「っぷ!」

阪中「とはいえ、アホだから嘘を見抜くの簡単でいいのね!」

ハルヒ「ふふ、それもそうね」

阪中「ハルヒさんの方は、旦那さんがキョンくんだからそういう心配はなさそうね?」

ハルヒ「まっさか!」

ハルヒ「キョンもたいがいよ! 美人がいればあっちへフラフラこっちへフラフラ。安心なんてできないわよ!」

阪中「へー! 以外なのね!」

ハルヒ「昔からみくるちゃんやらゆき、鶴屋さんもいたし。でもまああいつに浮気する甲斐性もなさそうだけど」

ごめん、ちょっとフルパワーオナニーしなきゃならない

えっ

>>263
いい夢見ろよ

   (⌒\.  /⌒ヽ
    \ ヽヽ(  ^ิ౪^ิ)
     (mJ     ⌒\
      ノ ________/ /
     (  |  (^o^)ノ | < おやすみー
  /\丿 l|\⌒⌒⌒ \>>265
 (___へ_ノ. \|⌒⌒⌒⌒|





                         ▂ ▪ ▂▄▅▆▇■▀▀〓◣▬ ▪ ■ … .
        /⌒ヽ           .▂▅■▀ ▪ ■ ▂¨ ∵▃ ▪ ・

        (  ^ิ౪^ิ)< おやすみー   ◢▇█▀ ¨▂▄▅▆▇██■■〓◥◣▄▂
      /⌒\  ⌒\     ■ ▂▅██▅▆▇██■〓▀▀ ◥◣ ∴ ▪ .
      ノ \ \,_/ / ▅▇███████▀ ▪ ∴ ….▅ ■  ◥◣
     (  | ̄\▓░█▅▆▇████████▆▃▂  ▪ ■▂▄▃▄▂
  /\丿 l|\⌒⌒▒▓\        ■  ¨ ▀▀▀■▀▀▀ ▪ ■
 (___へ_ノ.\|⌒⌒⌒⌒|

すまん、おれちろうなんだ…

ハルヒ(でも最近妙に洗濯物が少ない…まさか、ね)

阪中「ハルヒさん、この後時間あるかしら?」

阪中「お茶していかない?」

ハルヒ「あーー、ごめんなさい! ちょっと今日はすぐに帰って下ごしらえしなきゃならないのよ」

ハルヒ「行きたいのはやまやまだけどまた次にしましょ! 近いうちあたしから誘うから!」

阪中「そっか、残念なのね。でもキョン君も羨ましいの。こんな美人な奥さんが時間かけて下ごしらえして美味しい料理作ってくれるなんて!」

ハルヒ「やだ! 褒めても何もでないわよ!?」

阪中「ちなみに今日は何を作るの? 見たところ……カレー?」

ハルヒ「正解!」

阪中「カレーを下ごしらえからなんて……さすがなのね」

ハルヒ「家事は大方終わったしね! とびきり美味しいのを作るわ!」

阪中「ふふ、ハルヒさん楽しそう。これじゃあ勝手にキョン君も帰ってくること間違いないのね」

>>272
フルパワーオナニーどうだった?

ハルヒ「……」

阪中「……もしかして私まずい事言った?」

ハルヒ「うんん、違うの。ただ最近キョン朝はすぐに出て行くし、週の半分は会社の方の仮眠室で寝てるみたいなのよ……」

ハルヒ「前はこんなに忙しくなかったんだけど、新しいプロジェクトがだいぶキツイみたいで」

ハルヒ「すごく疲れてるみたい、頬もだんだんこけてきてるし目も虚ろだし」

ハルヒ「休み無しだからなあ。休日出勤もざらにあるのよね」

阪中「キョン君可愛そう……でもきっとハルヒさんのために必死で頑張ってるのね! こんなときこそ応援してあげなきゃだめなのね!」

ハルヒ「…そうよね! 頑張ってるのはキョンなのに、あたしが弱音はいてどうするんだって話よね!」

ハルヒ「ありがと阪中さん。元気、でたわ」

阪中「こちらこそなのね! ハルヒさん、高校の時から変わらないみたいで久しぶりに話せてすっごくたのしかったの!」

阪中「次を楽しみにしてるのね」

ハルヒ「あたしも。じゃあまたね、阪中さん」

阪中「またなのね。ハルヒさん」




>>273ちんこ尿道から裏返った

自宅 18:30

ハルヒ「ふう。ようやくあらかたの下ごしらえが終わったわ。もうすぐできるわね、ふふ」

ハルヒ「ばれない程度にスッポンと赤マムシ入れたけど……ばれないよね?」

プカプカ

ハルヒ「……さすがにスッポンの頭は抜いときましょ」


prrrrr prrrrr

ハルヒ「あら、誰かしら? 非通知?」

ガチャ

ハルヒ「もしもし?」

「も、ズズーー、ザザーし?」

「だブツッみたいだ! すず----さん!?」

ハルヒ「だれ? なんだか電波悪いみたいだけど」

「よくkブブッくださ----今-----ブツッ!」
プープープー

ハルヒ「まったくだれよ? なんか男のヒトみたいだったけど…」

ハルヒ「うーーーーん、聞いたことある声だったんだけど」

ハルヒ「しかもぜったい知ってるヒトだったわ……」

ハルヒ「思い出せない……」

ハルヒ「あーーーー!! すごいモヤモヤするわ!」

ママーーウウウーーアイドワナーダーーイ♪

ハルヒ「あらメール」

プシューーー

ハルヒ「きゃあ! 吹き零れてる!」

ダダダ

カチッ

ハルヒ「だめね、離れたら」

21:30

ハルヒ「遅いな……キョン」

ハルヒ「もう出来上がってるのに」

チックタックチックタック

ハルヒ「…」

22:30

ハルヒ「……」

ハルヒ「あ、メール」

ハルヒ「……忘れてた」

パカッ

from:キョン
Sub:すまん!
本文
ごめんきょうはかえれそうにない

めしさきにくってて

あしたもざんぎょうみたいだ

ハルヒ「そっか・・・・・・」

ハルヒ「忙しいもんねキョン」

ハルヒ「・・・・・・」

ハルヒ「・・・・・・どうしよ、カレー」

ポタ、ポタ

ハルヒ「うう、独りじゃ」

ハルヒ「おいしく、グスッないよう・・・・・・」

ハルヒ「うー、ヒッグ」

ハルヒ「うえ、・・・うわーーーーーん!」

ハルヒ「さ、うう、さみしいよう! キョン! ヒッグ」

ハルヒ「ううう、せつないよう! キョン!」

ハルヒ「ング、そ、ばに・・・いないと。つらいよう・・・・・・」

佐々木邸 同時刻

佐々木「さあ、キョン。君と僕はひとつになるんだ」

佐々木「昨日は途中までだったからね、『リハビリ』」

佐々木「さっきみたいにキスしておくれ」

佐々木「僕の」

佐々木「心にも」

佐々木「身体にも」

キョン「あ……あ……」

チュウ

佐々木「そ、うだ! もっと、強く!」

佐々木「刻むんだ! 君が僕を必要としている証を」

キョン「------」

チュウーーーッ!

佐々木「ああ! キョン!」

                    _____

    / ̄ ̄ ̄ ̄\,,      /-、 -、    \
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   | ─ 、 ─ 、 ヽ |  |   / / `-●-′ \    ヽ
   |  ・|・  |─ |___/   |/ ── |  ──   ヽ   |ただいま
   |` - c`─ ′  6 l   |. ── |  ──    |   |
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??????

カツーンカツーンカツーン
ガチャガチャ
キィ
藤原「おい、起きろ」

「……」

藤原「…ちっ、世話のやける」

ジャーーーーキュッキュッ

バッシャーン


みくる「ひゃーーーあぁぁ!????」

藤原「起きたか?」

みくる「な、なんなんですか?」

藤原「お前をココに幽閉する必要はなくなった」

みくる「またそんな……もうひと月以上ここに閉じ込めておいて!?」

藤原「出してやる」

みくる「ふぇ?」

藤原「気が変わった……と言うよりは事情が変わったと言うべきかな」

藤原「お前には僕の指定した時代に行ってもらう」

みくる「そんな……許可無く時空間移動はできないはずじゃ」

藤原「ふん、お前たちの組織のお固い頭と違い僕らはある程度自由に移動できる」

藤原「本来ならお前じゃなく長門有希か涼宮ハルヒに直接伝えたいんだが……」

藤原「周防の監視が厳しすぎて難しそうでね」

藤原「不本意ではあるが、僕が担当しているお前に行ってもらうことにした」

みくる「な、何をする気なの?」

藤原「なにを?」

藤原「お前にそれを言う必要はない」

藤原「……」

藤原「だが、しかし一つ言うとしたら……」

みくる「……」

藤原「これは僕の独断専行であって、佐々木たち、ましてや僕の組織の望む方向ではないと言うことさ」

みくる「それじゃあ……あなたは裏切った、と言うこと?」

藤原「ふ、裏切ったも何も僕はハナからあいつらと仲良しこよしでいるつもりはない」

藤原「僕は僕の望むべき未来を想像するために行動している」

藤原「そのためには佐々木の計画は都合が悪くなった、ただそれだけだ」

藤原「未来は常に変わり続けている」

藤原「ましてや、僕らのようなTPDDを所持したものがいればなおさらさ」

みくる「……」

藤原「お前にはまず、古泉一樹に接触してもらう」

みくる「古泉くんに?」

藤原「そして、長門有希の居場所をみつけろ」

藤原「お前たちは長門有希がいなければほぼ無力に近いからな」

藤原「涼宮ハルヒは今、何もできない」

藤原「奴の神の能力がなくなったことは知っているな?」

みくる「それは、知っているけど」

藤原「なくなったのは? いつだ?」

みくる「そう……ちょうどキョンくんと結婚したとき」

藤原「そうさ! そのとおりだ!」

藤原「あの神とも言える能力はその時にほぼ、消滅した!」

藤原「なぜだかわかるか!?」

みくる「……」

藤原「欲求不満だよ! それこそが涼宮ハルヒの能力の原動力だった!」

みくる「じゃあ……」

藤原「あのマヌケ面と結婚したことで涼宮ハルヒは、安定した生活に満足してしまったのさ!」

藤原「馬鹿な話だ……それが自分の能力の源なのに」

みくる「でも……それでも涼宮さんは幸せだったはずです!」

みくる「キョンくんもそれを望んでた!」

藤原「……その能力によって佐々木からアイツを守ってたとしてもか?」

藤原「……」

藤原「佐々木の計画はもう止まらないところまできている。すでにあの女は自らに課せられた山を登りきったんだ。あとは下るだけさ、加速度的にね」

藤原「計画が完遂すれば確実に涼宮ハルヒは再び能力を取り戻す、前とは比べ物にならない時空断層を作ってな」

みくる「え!?」

藤原「それを阻止しなければ、もう僕らは過去にいけなくなる」

みくる「……」

藤原「すでに古泉一樹の座標ポイントは把握している」

スッ
ピト

みくる「ひゃ!」

藤原「今からここに行け」

みくる「で、でも移動には制限が」

藤原「バカ、もう解除してある」

みくる「……あ、ほんとだ」

藤原「さあ、行くんだ。そしてお前に今できることをやれ」

みくる「……」

みくる「ありがとう、藤原くん」

藤原「ふん」

藤原「監禁してた男に礼を言うとはつくづくお人好しな女だ」

みくる「ふふ、あなた根が素直じゃないものね。そういうとこ、ちょっとキョンくんに似てるわ」

藤原「御託はいい! さっさといけ!」

グイ!

みくる「ひゃあ!」

ヒュン

藤原「……」

藤原「行ったか……」

藤原(これで、僕に出来ることはだいたいやった)

藤原(時空断層もさることながら……)


藤原(ここにきてこんなものがでてくるとは)
ペラ
[写真]

藤原「似てる、ね」

藤原「まさか僕がアイツの息子だとはね……姉さん」

藤原「自分の存在が危うくなれば誰だって必死になるさ」

藤原「……」

藤原「ふん」

藤原「確かに、僕は、素直じゃないみたいだ」
ヒュン

廃ビル

prrrr prrrr

古泉「よし、かかった」

ガチャ

ハルヒ「もブーーーし?」

古泉「もしもし?」

古泉「くそ! ダメみたいだ! 妨害電波が流されてる! 涼宮さん!? 聞こえますか!?」

ハルヒ「だブブブーーーでんーーーーーど?」

古泉「よく聞いてください! いま彼は! 監禁されて!」
ブツッツーツー

古泉「くっそ!」
ブン
ガシャ!


古泉「長門さんが必死で頑張っているのに……」

古泉(そしておそらく、今のダイヤルは向こうにばれている)

古泉(すぐに場所が特定される)

古泉「早くここから逃げ出さなければ……!」




「その必要はないのです」




コツコツ
スッ

古泉「な!?」

橘「ようやく」

橘「ようやく尻尾を掴んだのですよ」

橘「古泉一樹!」


古泉(馬鹿な!? 早すぎる!)

橘「んふふー! 察するところ何故バレた、と言ったところのようですね」

古泉「……」

橘「ふふふ!」

橘「簡単です! 偶然なのですよ!」ババーン

古泉「……」

古泉「ふ、ふふ。なかなか面白い見つけ方ですね」

古泉「たまたまこんな町外れの廃ビルに来るとは、ずいぶん僕は運が悪いようだ」

橘「ふふー! 違うのです違うのです! 私! 実は廃墟マニアなのです!」キラキラ

橘「なかなかココは良い廃ビルなのです!」

古泉「いいですよ。そちらの周防さん? でしたか、彼女の情報処理能力が想像以上だったということでしょう」

橘(ホントなんだけどナー……)


橘「本当ならココの空気を楽しんだあと、写真を何枚か撮っていこうと思ったのですが……」

橘「それは」

橘「あなたを始末して、佐々木さんになでこなでこしてもらったあとでも構わないのです!」
スッ
ギラッ

古泉(拳銃、か。こちらはナイフ一本すらもってない徒手空拳)

古泉(かなりマズイですね……)

古泉(となれば、相手が油断している今のうちに拳銃を奪いとるしかなさそうだ)

橘「古泉一樹! 今なら遺言を聞いてやるのです! 言うのです!」

古泉「んっふ。なかなか優しいんですね、あなたは」

橘「よく言われるのです」

古泉「あー、ではお願いがあります」

橘「なんですか? 生きて返してくれ、以外なら聞いてやってもいいのです」


古泉「ポケットの煙草を取ってくださいませんか? こう両手を挙げたままだとそれもままなりませんから」

古泉「最後に一服したいんです」

橘「……わかったのです」

橘「キザな男。そんなんじゃあの世にいってももてないのです」

古泉「よく言われますよ」

橘「で、どこに入ってるのです?」ゴソゴソ

橘「煙草なんてどこにもないのですーよ」

古泉「……」
スッ
ガッ
ギリギリ

橘「な!?」

古泉「え、え……! 煙草なんて、あ、りませんよ!」
ギリギリ

古泉「僕は禁煙家! ですからね!」
ギリギリ


橘「な……に……を…!?」

古泉(よし! 銃を持った手の方は捕まえ、もう片方で首を極めた!)

古泉(なんとかなりそうだ…!)

橘「……!」

パァーーーーーン!

古泉「な!?」
ダラダラダラ
ガクッ

橘「げほっ! げっほ! ふう……」

橘「まったく……」

橘「男ってやつはすぐに嘘をついて嫌な生き物なのです!」

古泉「な、なぜ…!?」

橘「ん? ああ、言ってなかったでしたっけ?」

橘「銃は」

橘「二つあるのですよ☆」ニコ


橘「まあ、あなたも嘘ついたからおあいこですよね!」

古泉(……油断していたのは僕のほうだったか)
ヒュウヒュウヒュウ

橘「さて」

橘「放っておいても死にますけど、もちろんそんなことはしないのです」

橘「さっさとここであなたを殺して」

橘「佐々木さんに褒めてもらうのです……!」

橘「……」

橘「ふ、ふふふふ! ははははは! あははははははは! うふふふふふ!」

橘「あーーーーー! 佐々木さんなんて言ってほめてくれるだろ!?」

橘「たのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみ
  たのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみ
  たのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみたのしみ!」

ゾクッ
古泉(く……狂ってる……!)


橘「ああもういいや、早く死んで?」

橘「もうあなたは死んでしか価値がでないの!」

カチャ
コツリ

古泉(……)ゴクリ

橘「ふふふふふふ! ここで引き金引いたら死んじゃうの!」

橘「今どんな気持ち!?」

橘「終わるの!」

橘「今まで生きてきた人生が終わりになるのよ!?」

橘「助けたかった人たちも助けられず!」

橘「志半ばで!」

橘「はは! やばーい! 私イッチャイソウ!」


古泉「すみません、みなさん……」

橘「きゃははは! 最後の言葉はすみませんかー!」

橘「情っけない!」

古泉「……」

古泉(長門さん、あとを頼みます。朝比奈さん、どうか無事で。)

古泉(……涼宮さん、彼はきっと長門さんが救ってくれます)

古泉(さようなら……!)

橘「じゃーもうやっちゃうかー!」

古泉(……!)

橘「死になさい」





「死ぬのはあなたのほうよ」




橘「!?」ビクッ

バッ!

古泉「!?」

朝倉「ふふふ、それにそれは私のセリフよ」

橘「……」

橘「誰です?」

朝倉「あら、紹介が遅れたわね」

朝倉「私の名前は朝倉涼子。情報統合思念体に作られ、長門さんのバックアップのために再構成された対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース、それが私。」

古泉「あ……朝倉さん!?」

古泉「なぜココに!?」

朝倉「話はあとね。あそこにいる時代遅れなツインを潰せばいいんでしょ?」

橘「……」

橘「あははは、笑わせてくれるのです!」

橘「高々木偶人形一匹で私に何ができるんですか!?」


橘「……さっさと!」

橘「パパのおうちにかえるのですよ!」

パンッ!パンッ!

朝倉「……けっこう痛いじゃない」

ダラダラ

橘「ははは! 所詮はそのていどでしたか!」

橘「そこにいる古泉一樹から殺してやろうと思ったんですが、先にあなたから嬲り殺してあげるです!」

橘「まずは腕です!」

パン!

朝倉「あら、手が飛んでっちゃった」

橘「次は足!」

パンパン!!

朝倉「……」

古泉「朝倉さん!」

橘「これはお笑いぐさです! 助けにきたはいいけど返り討ちなんて!」

古泉「に、逃げてください! あなたなら自分の体の再構成くらいできるでしょう!?」

橘「うふふ! 逃がすと思う!?」

橘「ここであなた達は死ぬのよ!」

古泉「朝倉さんっっ!!!」

朝倉「……」

橘「結局助けにきてもダルマになったら意味のです!」

朝倉「……」

橘「ほら! 命乞いしなさい! そうすれば顔は傷つけないであげるから!」

朝倉「……た」

古泉「朝倉さん!」

橘「なーにー!? 聞こえないです!」


朝倉「終わった……」





橘「結局助けにきてもダルマになったら意味のです!」

橘「結局助けにきてもダルマになったら意味ないのです!」

橘「何がですか!? あなたの人生のことなら、その通りなのですよ!」

朝倉「違うわ」

朝倉「あたしまだ、再構成されて10分とたってないの」

朝倉「だからこの空間を閉鎖して、情報制御下に置くのに少し時間が掛かっちゃった」

橘「なにをいってるんですか???」

古泉(まさか……)

朝倉「でももう終わり」

橘「な、にをいって」

朝倉「情報統合思念体にアクセス……クリア。SELECTシリアルコードFROMデータベースWHERE コードデータORDER BY攻性戦闘 HAVINGターミネートモード。パーソナルネーム橘京子を敵性と判断。該当対象の有機情報連結を解除する」

ヒューーーーーーン

橘「手足が戻った……」

古泉「僕の傷まで……」

朝倉「それじゃ、反撃させてもらうわね♪」

ヒュンヒュン

橘「鉄パイプが槍に!?」

ザクッ!

橘「かっは!」

朝倉「ダメねー」

朝倉「私、長門さんと違ってイマイチ遠距離戦得意じゃないわ」

朝倉「やっぱり私はこれよね!」
ギラッ

ヒュンヒュンヒュン
ピタッ

橘「くっ!」

朝倉「何か言い残すことは?」

橘「……」

今書いてんの>>1じゃないだろ
最初の頃と書き方や雰囲気が全然違う
もしかして朝倉のダルマのSS書いてた人か!?

あとIDがミスターブシドーっぽい

>>424
笑えることに俺が>>1だぜwww

コテつけてないから証明する方法ないけどさwww

コテつけた方がいいかな?

すまん、ねる

起きてのこってたら多分完結させる

オチは考えてるから

                    _____

    / ̄ ̄ ̄ ̄\,,      /-、 -、    \
   /_____  ヽ    /  |  ・|・  | 、    \
   | ─ 、 ─ 、 ヽ |  |   / / `-●-′ \    ヽ
   |  ・|・  |─ |___/   |/ ── |  ──   ヽ   |ただいま
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     ヽ ___ /ヽ     ヽ (__|____  / /
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     | |      |  |     l━━(t)━━━━┥



橘「いい気にならないで欲しいですね……」

橘「既に計画は最終段階に入ってる……ここからあなた方がどう足掻こうとも結末は変わらないのですよ」

朝倉「ふふ、死に際にしては強がるのね。あなた、有機生命体なのに死ぬのは怖くないの?」

橘「……」

橘「そんなもの怖くありません」

橘「私が恐いのは……」

橘「佐々木さんに失望されることだけです」

朝倉「……?」


朝倉「よく分からないわね」ヤレヤレ

朝倉「なに、じゃああなたはその佐々木さんに死ねと言われれば自ら死を選ぶの?」

橘「ええ、当然です」

橘「佐々木さんだけが私の生きる理由なのですから」

朝倉「彼女にはキョン君しか見えてなくても?」

橘「……構いません」

橘「側に置いて私と話してくれるだけで満足です」

橘「出過ぎた欲望は身を滅ぼしますから」

朝倉「……」

朝倉「……ふふ」

朝倉「その言葉、そっくり佐々木さんに言えばいいのに」

橘「……」

朝倉「……」

朝倉「もういいわ」

朝倉「じゃあ、さよなら」





橘「私が死んでも佐々木さんは悲しまない。それでいいのです……」




ザンッ!
ゴロッゴロゴロゴロ……

朝倉「……情報連結解除」

シュー
パラパラパラパラ








朝倉「……人間て不思議な生き物」


古泉「……」

古泉「……助かりました、朝倉さん」

朝倉「いいえ、どういたしまして」

古泉「あなたまで出てくるということはもう長門さん一人では止められないということですね」

朝倉「そう」

朝倉「もう手のつけられないフェイズまで進んでいることは事実ね」

朝倉「さっき言っていた橘さんの計画の話は正しいわ」

古泉「…」
ガクリ

朝倉「はっきり言って、お手上げよ。私一人出てきたところで事態がよくなるとは思えない」

朝倉「でも、そうまでして私を再構成した長門さん」

朝倉「猫の手を借りてでも彼を助けたいんでしょうね」

古泉「……そう、ですか」


朝倉「しかし、まあ」

朝倉「あっちの頭、佐々木さんも曲者だけど」

朝倉「それ以上にあの周防とか言うインターフェースの方が問題かもしれないわ」

古泉「やはり……力は長門さんよりも上なんですか?」

朝倉「ふふふ、ばかね」

朝倉「長門さんは思念体の自慢の娘よ。地力は長門さんのほうがずっと上。周防の処理能力が100とするなら長門さんは1000ぐらいはあるのよ」

朝倉「力量差は明らか」

朝倉「ただ」

古泉「……ただ?」

朝倉「……」

朝倉「ただ、やり方は向こうの方がずっと嫌らしくて粘着質ね」


朝倉「150キロの球を投げ続ける豪腕ピッチャー」

古泉「?」

朝倉「変化球を交えて相手を上手く打ち取るピッチャー」

朝倉「長期戦になれば球数、スタミナの勝負になる。どちらが勝つかは火を見るより明らかよ。インターフェースだって無限に情報操作できるわけじゃないし。最後は……」

          ス タ ミ ナ  
朝倉「二人の『戦場で長く立っていられるか』の勝負になる。そこは私たちインターフェイスも人間と同じ」

古泉「……」

古泉「彼女たちの計画はずっと以前から緻密に計算されていた、ということですか……」

朝倉「そこに長門さんに非がある訳じゃないわ。今回は向こうの方が上手だったというだけ」

朝倉「外堀から少しずつ少しずつ」

朝倉「目的を果たすため、煮湯を飲まされようとも敢えてそれを受け入れていた」

古泉「……」

古泉「100の益を得るためなら90の害も厭わない、か」



朝倉「……気に入らない」

朝倉「陰湿で下卑たやり方」

古泉「……ええ」
ギリッ

朝倉「長門さんもそういう輩を正面から叩きのめしてやろうと思ったんでしょうね」

朝倉「ふふ」

朝倉「ああ見えて彼女、涼宮さんのことしっかり見てたのよ?」

朝倉「観察対象以上の感情をもっていたわ」

朝倉「だから……」

朝倉「汚い手を使うような奴は真っ向から返り討ちにしてやれ!」

朝倉「そう思ったんでしょうね」

古泉(長門さん……!)

朝倉「でもそれが裏目に出たわ」

朝倉「長門さんは向こうの計画に気づいた時点で、一旦腰を据えて、対策を練るべきだった」


朝倉「たとえ危険が伴おうとも誰かに話すべきだった」

朝倉「キョンくんや涼宮さんじゃなくてもいい。あなたや朝比奈さん、私や江美里でも良かったのよ」

朝倉「頼れる人は周りに沢山いた……!」

朝倉「……」

朝倉「でもあの子は自分が許せなかったんでしょうね」

朝倉「いつも頼られてる自分がここまで事態が進むまで気がつかなかった事への不甲斐なさ」

朝倉「守ると決めていた物がもう敵の手中にほぼ入っていた、自分の慢心への怒り」

朝倉「そんなものがきっと自分の中でぐるぐると回り続けて、誰にも気づかれず」

朝倉「事態の収拾を一人で行おうとした……」

古泉「……」

朝倉「……」

朝倉「結果は見ての通りよ」


朝倉「キョンくんはもう、完全に佐々木さんの手の中」

朝倉「涼宮さんはまだ事の把握すらしていない」

朝倉(…まあ、彼女のことだから違和感は感じてるでしょうけど)

朝倉「そしてあなた達はそれぞれに刺客を向けられ、キョンくんの救出どころか目の前の相手で精一杯。そして徒党を組むことすらせさてもらえずに……」

朝倉「バラバラ」

古泉「……」

古泉「すみません、僕らが力が及ばないせいで…」

朝倉「ふふ、あたしに謝ってどうするのよ」

朝倉「それに別に責めてる訳じゃないわ」

朝倉「今回は相手が悪かった」

朝倉「あっぱれよ」

朝倉「あなた達が武器にしてきたチームワークを、向こうは形だけにしろなんにしろ使ってきたし。今までのなかで最悪最強の敵ってことね」


朝倉「……」

朝倉「どうするの? これから」

古泉「……」

古泉「…まずは長門さんの居場所を見つけて…」

朝倉「残念ながら長門さんは周防との戦いでオーバーヒート寸前よ」

朝倉「今もギリギリの淵で堪えてる」

朝倉「長門さんは無理ね」

朝倉「私も本来なら長門さんを助けに行きたいんだけど、私は大丈夫だから自分の代わりにあなたがみんなを助けてやれって言うもんだからね」

朝倉「余裕なんてないくせに……」

古泉「では……」



ヒューーードッスン!

古泉「うわ!?」

「いたたたた……」


みくる「ええーと、時間軸、座標軸はここで正しいはずなんだけど……」

キョロキョロ

朝倉「あ、朝比奈さん? かしら?」

みくる「ふぇ?」

みくる「ひゃあ!? ああああ朝倉さん!? ななななんであなたがここに!???」

朝倉「こっちが聞きたいわ。っていうかあなた向こうの未来人に捕まってたんじゃ?」

みくる「あ、えーとですねそれはその、藤原くんがもういいって言うし、やれることをやれって……」

朝倉「全く的を得ない説明ね……」

みくる「それで古泉くんのところに……ってそうだ! 古泉くんは!?」

朝倉「……」

朝倉「朝比奈さん、あなたが座布団替わりにしているのがあなたの言う古泉くんじゃなくて?」

みくる「ふぇ?」

古泉「……どうも、おひさしぶりです」


仕切り直して

古泉「なるほど……」

朝倉「意図は分からないけど、とにかくその藤原って男は味方になったってことね」

みくる「うーーーん、味方ではないような……」

古泉「まあこちらに積極的に妨害工作をしないだけいいでしょう」

朝倉「でも、結局さしたる情報もないし強力な仲間を連れてきた訳でもないのね……」

みくる「ごめんなさいぃ…」

朝倉「で、パーティーメンバーもコレじゃ……パワー不足は否めないわね」

朝倉「はぁ」

朝倉「どうしたものかしら……」

古泉「朝倉さん」

朝倉「ん?」


古泉「さっき言っていたエミリというのはもしかしてこちらの組織の人間と接触していたTFEI端末ですか?」

朝倉「そうだけど?」

古泉「その方に協力は仰げないでしょうか? そうなればこちらは長門さん、あなた、そのエミリさんの三人のTFEIがいることになります」

古泉「あなた方三人ならば周防九曜にも対抗できそうだ」

朝倉「あー、だめだめ。江美里は穏健派だから、知恵は貸してくれそうだけど直接行動に起こすことはないわ」

朝倉「今必要なのは実行部隊よ」

古泉「そう、ですか……」

朝倉「そういうあなたの機関とかいう組織から人員は出せないわけ?」

古泉「……」


古泉「組織は解体しました」

みくる「え!?」

朝倉「……」

朝倉「涼宮さんの能力の消失とともに、ってとこかしら?」

古泉「ええ」

古泉「しかし、元機関で涼宮さんのクラスメイトだった阪中という人物を接触させています」

朝倉「へー、あの阪中さんが!?」

朝倉「それで目的は?」

古泉「基本は監視。僕にはマークがついてましたから」

古泉「そして有事には護衛するように伝えてあります」

朝倉「対人戦は安心ってことね」

古泉「ある程度は」

すまん、30分休憩がてら

ラーメン食う

フルパワーオナニーしてた

再開します


みくる「あのぉ、藤原くんには長門さんを見つけろって言われたんですけど……」

朝倉「そのかわりが私というわけ」

みくる「長門さん、無事かな……?」

朝倉「だといいけど」



古泉「さて、どうしたものでしょうかね」

朝倉「……」

朝倉「私に考えがあるわ」

古泉「どのような?」

朝倉「ただし、この作戦はかなりのリスクを有するし、成功確率もほぼゼロっていっても良いくらいの大博打よ? わかってる?」

古泉「今更リスクを恐れていては、彼を取り戻せません」

みくる「そうです!」

朝倉「……」


朝倉「涼宮さんにもう一度情報創造能力を取り戻させる」


朝倉「でもさっきの朝比奈さんの話のように、下手すれば巨大な時空断層ができる」

朝倉「最悪の場合、世界崩壊は免れないわ」

古泉「……」

みくる「ゴクリ」

朝倉「もちろん不発の場合も考えられるわ。そうなっても負け」

朝倉「どう計算しても、考えなしのバカの取る選択肢よ」

朝倉「でも」

朝倉「この方法が一番キョンくんを取り戻す可能性が高い」

朝倉「というかこの方法以外は不可能、って思念体も言ってるわ」

古泉「……」

みくる「涼宮さん……」

朝倉「本当に涼宮さん頼みの対抗策だわ……キョンくんを奪われた事を知って心が折れてしまえばそこまでだし、この世界の否定を行えばゲームオーバー」

朝倉「成功すれば本当に奇跡よ」


古泉「それしか手段がないのでしょう?」

古泉「確率も神頼み的……」

       ゴ ッ ド ノ ウ ズ
古泉「これぞ、すべては神のみぞ知ると言ったところでしょうね」


朝倉「……」

みくる「……」

古泉「良いでしょう。やりましょう」

古泉「僕らの団長はいつだって最後は奇跡を起こしてきたのです」

古泉「今こそ涼宮さんを信じなくてどうするという話ですよ」

古泉「彼女はきっと彼を取り戻す。僕はそれを信じる義務があります」

古泉「だって……」

古泉「僕はSOS団の副団長なのですから」ニコリ

朝倉「古泉くん……」



みくる「私も」

みくる「涼宮さんの事を信じています」

ギュッ

みくる「だから、私は、私にできる精一杯のことをしようと思います」

みくる「私の力なんてみなさんに比べたら無いようなものかもしれないけど」

みくる「……こんな時だから、役に立ちたいんです」

古泉「朝比奈さん……」

朝倉「……ふふ」

朝倉「ほんとに世界が終わるかもしれないって言うのに、暢気な人たちね」ヤレヤレ

朝倉「でも」

朝倉「少しだけ」

朝倉「少しだけだけど、今回はあなた達の味方でよかったと思えたわ」



朝倉「さあ、そうと決まれば遊んでる時間はないわ!」

朝倉「橘、藤原の二人がいなければあなた達はかなり自由に動き回れると思うわ」

古泉「でしょうね」

みくる「それに朝倉さんがいれば、誰が来ても大丈夫そうですよね!」

朝倉「私は残らないわ」

古み「え!?」ガガーン!

朝倉「え、じゃないわよ」

みくる「でもさっき残るって……」

朝倉「そう思ってたけど、少し、じゃなくマズイ状況みたいなのよ」

古泉「まさか長門さんが?」

朝倉「ええ、すぐに行かないとこっちの策が実行に移される前に潰えてしまいそうなの」



みくる「長門さん……」

朝倉「世話のやける姉にお説教も兼ねて助けてくるわ」

朝倉「そ、れ、に」

朝倉「私が涼宮さんのところに行ったところで混乱を招くだけだわ」

朝倉「あなた達付き合い長いんだから、うまいこと説明するのよ!」

朝倉「それじゃあね。ああ、もう! 急がな…!」

ヒュン!

シーン

古泉「行ってしまった…」

みくる「TPDDを使ったみたい……」

古泉「さあ、朝比奈さん。僕らも行動に移りましょう」

古泉「朝倉さんが行ったからと言って、ずっともつとは限らない」

古泉「急がなければ」

みくる「はい!」

周防「!?」

周防「貴様は以前にも突然現れて消えたことがあった……」

朝倉「瞬間移動だ……オラにはそいつができる」

周防「瞬間移動?ほう…それは厄介な技だな」

朝倉「!?」

周防「私もスピードには自信があってね、瞬間移動とまではいかないがね」

朝倉「くっ!」

なんかPCがdion規制食らってるんだけど携帯からでもいい?

------
ハルヒ「キョン、もう三日もうちに帰ってない……」

ハルヒ「連絡も1日一回のメールしかないし……」

ハルヒ「そんなに忙しいものなのかしら」

ハルヒ「……」

ハルヒ「……キョンの会社」

ハルヒ「ちょっとだけ見に行ってみよう」

ハルヒ「ちょっとだけ!」

ハルヒ「……」

ハルヒ「!」

ハルヒ「そうよ! お弁当届けに行きましょう!」

ハルヒ「差し出がましい気もするけど」

ハルヒ「まあいいわ」

ハルヒ「きっとキョンのことだからカップヌードルばっかり食べてるはずだし」

ハルヒ「ふふふ」

ハルヒ「よっし! カレーのリベンジしてやるわ!」

          _____

    / ̄ ̄ ̄ ̄\,,      /-、 -、    \
   /_____  ヽ    /  |  ・|・  | 、    \
   | ─ 、 ─ 、 ヽ |  |   / / `-●-′ \    ヽ
   |  ・|・  |─ |___/   |/ ── |  ──   ヽ   |ただいま
   |` - c`─ ′  6 l   |. ── |  ──    |   |
.   ヽ (____  ,-′   | ── |  ──     |   l
     ヽ ___ /ヽ     ヽ (__|____  / /
     / |/\/ l ^ヽ    \           / /
     | |      |  |     l━━(t)━━━━┥


会社

ハルヒ「会社の前にきたはいいけど……」

ハルヒ「う~、なんか行きづらいわね」

ハルヒ「キョン、迷惑がらないかな……?」

ウロウロ

同僚1「ん?」

同僚1「ありゃキョンさんの奥さんじゃないか!?」

テクテク
チラッ

同僚1「やっぱりそうだ」

同僚1「あのー」

同僚1「失礼ですが……キョンさんの奥さんでしょうか?」

ハルヒ「あ、はい。そうですけど……?」

同僚1「いや~はじめまして。キョンさんの後輩の同僚1と申します!」キリッ

ハルヒ「主人がお世話になってます」ペコリ

>>642
あ~、ごめんそれ俺が代理カキコ頼んだんだ


同僚1「なにかキョンさんに用事でもありましたか!?」

同僚1「ならばこの同僚1、命に代えてもお伝えいたしましょう!!」

ハルヒ(なんか谷口に似てるわね……ノリが)

ハルヒ「いや…ただ最近主人が忙しいみたいで。だからその……」

ハルヒ「お弁当を」///

同僚1「……」

同僚1「……」

ハルヒ「あ、あの~?」

同僚1「う……う゛ばやま゛じい!!」ボロボロ

同僚1「こんな美人な奥さんにお弁当届けてもらえるなんて……」

同僚1「ズルい! キョンさんズルいですよ……! うぅ~…」

ハルヒ「は、ははは……」

ハルヒ(なんなのよこいつ……)


同僚1「お……俺なんて毎日ビニ弁」

同僚1「おまけに彼女ももう五年はいない!」

同僚1「神よ!」

同僚1「あなたは無慈悲すぎる!」

ハルヒ「……」

ハルヒ「あの、それで主人はどこに?」

同僚1「……うわ~ん! へ? ああキョンさんですか? まだ昼飯食ってないと思うんで」

同僚1「案内しましょう」キリッ

ハルヒ「あ、ありがとうございます」

同僚1「いえいえ、礼には及びません!」

同僚1「こんな美人の奥さんのためなら古代バビロニア神殿だって案内しますよ!!」

ハルヒ「そーですか」

テクテク

同僚1「ひどい……」

同僚1「それでですね……あーだこーだあれこれあれこれ……」

チーン
ナナカイデス

ハルヒ「着きましたね」
テクテク
ピッ

同僚1「そいでもって言ってやったんですよ! てめぇこの俺が誰だと……」

ウィーン
ガシャン

同僚1「え?」

イッカイニマイリマス
ヒューン

同僚1「そりゃないよ~~~~~!!!」

ハルヒ「……」

ハルヒ「さ、行きましょう」

ハルヒ「え~と、キョンの部署は会計部だから……」

ハルヒ「ここかしら?」

-[会計部]


ハルヒ「そうだわ」

ヒョコ

ハルヒ「こんにちわ~……」

ハルヒ「あ、いた」

キョン「ん?」

ハルヒ「キョン」

キョン「なんでお前ここに!?」

ハルヒ「なんでって」

ハルヒ「だってあんた最近すんごい忙しいみたいだし」

ハルヒ「ちょっと様子見も兼ねてお弁当持ってきたのよ!」///

キョン「お、おお。ありがとう」

ハルヒ「……?」

ハルヒ「あんたなんか忙しいわりには元気あるんじゃない?」


キョン「ああ、そうかあ?」

ハルヒ「シャツも綺麗だし……」

キョン「コンビニで買ったんだよ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「ふーん」

キョン「あ、弁当ありがとな。わざわざ持ってきてくれて」

ハルヒ「家事はあんたがうちにいないからすぐ終わるのよ」

キョン「そっか」

ハルヒ「あんた今日は帰って来れるの……?」

キョン「あ~、すまん。多分無理だな。ちょっと立て込んでて……」

ハルヒ「そっかぁ……」

ハルヒ「…そっか」

キョン「ごめんな」

ハルヒ「まあ……しょうがないでしょ」

ハルヒ「あんたのせいじゃないわ……」



キョン「そうだ、一緒に飯でも食うか?」

ハルヒ「うんん」

ハルヒ「あたしもう食べたし」

ハルヒ「悪いわよ、忙しいのに」

キョン「わかった」

ハルヒ「……」

ハルヒ(……?)



ハルヒ「じゃあもう行くわね」

キョン「おう」

ハルヒ「無理すんじゃないわよ」

キョン「おう」

ハルヒ「残業に負けるな!」

キョン「おう」

ハルヒ(……?)

ハルヒ「……」

ハルヒ「それじゃね」

キョン「気をつけて帰れよ」

ハルヒ「分かってるわよ」フリフリ

キョン「バイバイ」フリフリ


ハルヒ「……」

ウィーン
ガシャン
ヒューン

ハルヒ(……?)

ハルヒ(あれが、キョン?)

ハルヒ(なにかおかしいわよね)

ハルヒ(いつものアイツなら)

------
ハルヒ「残業に負けるな!」

キョン「へいへい」

ハルヒ「へいは一回!」

キョン「へい」

---------

ハルヒ(疲れてたからかしら)

ハルヒ(……)


ハルヒ(いや、違うわ)

ハルヒ(疲れてるようにも見えない……)

ハルヒ(……)

ハルヒ(そもそもそれがおかしいわよ)

ハルヒ(3日間も会社に泊まって残業してて疲れない人間なんているはずない)

ハルヒ(でも……)

ハルヒ(あの同僚の人もキョンが忙しいことに別に何も言ってこなかったし)

ハルヒ(本当にただ忙しいだけなのかもしれない)

ハルヒ(キョン……?)


チーン

ハルヒ(あなた本当にキョンなの?)

ハルヒ(あたしの中のどこかがアレはキョンじゃないって言ってる)

テクテク

同僚1「あ!!」

同僚1「キョンさんの奥さん!!」

同僚1「ひどいじゃないですか~!」

ハルヒ「あら、同僚さん」

ハルヒ「さっきは案内ありがとうございます」

同僚(エレベーターの話はシカト!?)


同僚1「……まあいいや。それでキョンさんには会えましたか?」

ハルヒ「おかげさまで」

同僚1「そうですか! 良かった! それでですねここの近くにおいしいイタ飯屋があって」

ハルヒ「ごめんなさい。あたし少し用事があるんでこれで」

同僚1「そんなこと言わずに! 本当においしいんですよ!」

ハルヒ「ごめんなさい。本当にやらなきゃならないことがあって」

同僚1「いやいや、ちゃんと奢りますから!」

ハルヒ「いえ、本当にけっこうです」

同僚1「30分だけでも!」

ハルヒ「……」プルプル!


同僚1(よし、オチたな!!)

同僚1「えっとですね……入り口を出てすぐ右に曲がると」

ハルヒ「忙しいっつってんでしょこのバカ!!!」

バキィ!!!!

同僚1「ぐへぇあ!!?」
ドーン!!!

ハルヒ「アンタみたいな」

スパパパパ

同僚1「へぶぶぶぶ!?」

ハルヒ「バカに!」

バチンバチン!

同僚1「ぶお!? ぶお!?」


ハルヒ「構ってる!」

グリグリ

同僚1「ぎゃあ~!!」

ハルヒ「暇は!」

ボコボコ!

同僚1「も、もうやめて……」

ハルヒ「ないの!」

ドカッ!

同僚1「」

ゴロゴロゴロ……

ハルヒ「ふう!! 人が下手に出てれば調子に乗って! 全くもって谷口並みにウザイやつだわ!」



--------

谷口「ぶぇ~~~くしょん!!」

国木田「谷口、風邪かい?」

谷口「いや……」

谷口「今酷く恐ろしい経験をしたような」

谷口「……全身になぐられたような痛みが」

国木田「?」

-------


同僚1「」

ハルヒ「起きなさい」

ゲシッ!

同僚1「はっ!? ひぃぃ! 止めて! 殴らないで!」

ハルヒ「うふふ」ギラッ

ハルヒ「わかったわ……」

ハルヒ「ただし」

ハルヒ「このことを誰かに言ってみなさい……」

ハルヒ「今の百万倍の罰ゲームが待ってるわよ……?」ゴゴゴゴゴ!!!

同僚1「メスライオン!?」

ハルヒ「はぁ?」

同僚1「今後ろに……!」


ハルヒ「何言ってんのよ。で、分かったの!? イエスかはいで答えなさい」

同僚1「肯定しかない!?」

同僚1「い、イエス! はい! もちろん誰にも言いません!」

ハルヒ「ならいいわ」

ハルヒ「……ったく忙しいってのに」

ズンズンズン

同僚1「……」

同僚1「キョンさん……」

同僚1「あなたは偉大な夫かもしれない……」

同僚1「あの方と一緒に暮らすのは」

同僚1「動物園の檻に入れられるのと同義だ……」


-------

古泉「……」

みくる「……」

古泉「……」

みくる「……」

古泉「……来ませんね」

みくる「……はい」

古泉「……寒いですね」

みくる「もう秋口ですからね……カットソー一枚じゃ寒いでしょう」

古泉「……」

みくる「……」

古泉「……直接家に行けば逢えると思ったんですが」

みくる「……まさか不在とは」


みくる「……」

古泉「……」

みくる「朝倉さんに聞いておくべきでしたね」

古泉「……すみません」

みくる「……」

古泉「空気的に無理でした」

みくる「……確かになんかカッコ良いセリフたくさん言ってましたもんね、朝倉さん」

古泉「僕らも彼女頼っちゃいけない感じでしたしね」

古泉「……はあ」

みくる「……はあ」


古泉(時間ないのに……)

みくる(どうしよう……)

みくる「……」

みくる「探しに行きますか?」

古泉「……いえ、下手に動くとすれ違いそうですし」

みくる「……ですよね」

古泉「……」プルプル

みくる「……私のカーディガン貸しましょうか?」

古泉「……」

古泉「いえ、大丈夫です」







ハルヒ「……アンタたち何してんの?」


古泉「す!」

みくる「す!」

古み「涼宮さん!!!」
ハルヒ「久しぶりね、二人とも」

ハルヒ「もう秋だってのに人んちの前で我慢大会はどうかと思うけど」

ハルヒ「まあ入って」

ガチャ

古泉「あ、ありがとうございます!」

みくる(古泉くん唇紫になってる……)

ハルヒ「ほら、みくるちゃんも入んなさい」

みくる「は、はい」

スタスタ


ハルヒ「コーヒーでいいかしら?」

古泉「すみません」

みくる「ありがとうございます」

古泉(本当はそんな時間ないんだけれど……僕の体が温かいものを求めてる)


コトリ

ハルヒ「悪いわね、狭くて」

みくる「いえ、すごく整頓されててモデルルームみたいですよ」

古泉「……」

ハルヒ「ふふ、ありがとうみくるちゃん」

ハルヒ「……でも」

ハルヒ「汚す奴がいなけりゃ汚くもならないわよ」

古泉(やはり……)

ハルヒ「わざわざ二人が来てるのにこんな話するのも気が引けるんだけどさ」

クイ
カチャン

ハルヒ「キョン……うちに帰ってないのよ」


みくる「涼宮さん……」
古泉「……」

ハルヒ「今日、アイツの会社に行ってきたわ」

ハルヒ「……残業続いてるのに全然疲れてないみたいなの」

ハルヒ「……」

ハルヒ「シャツが汚れてないの」

みくる「……」

ハルヒ「アイツはコンビニで買ったって言ってたわ」

ハルヒ「でも……キョンが着ていったのは、あたしが特売品で買ったシャツだから気をつけて洗わないとすぐに駄目になるのよ」


ハルヒ「さっき会ったときキョンが着てたのは出て行ったときと同じものだった」

ハルヒ「……」

ハルヒ「キョンは洗濯なんか出来ないわ」

ハルヒ「だから」

ハルヒ「『誰かがキョンのシャツを洗った』か『キョンは本当は残業なんてしてない』」

ハルヒ「……」

ハルヒ「もちろん、コンビニにたまたま同じものがあった」

ハルヒ「洗濯の上手な社員の人に頼んだ」

ハルヒ「そうかもしれないわ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「違うのよ」


古泉「……」

みくる「……」

ハルヒ「私が感じた違和感は」

ハルヒ「そんな表面的な違和感じゃない」

ハルヒ「もっと根本的な部分で……キョンがキョンであるアイデンティティみたいなのが違ってるのよ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「ごめんなさい、訳の分からない話をして」

古泉「……いえ、続けて下さい」

みくる「…」コクコク

ハルヒ「とにかく、上手く説明できないけど、あれは多分キョンじゃない」


ハルヒ「自分で言ってても支離滅裂だし、自分の旦那が旦那じゃないなんて馬鹿げていると思うわ」

ハルヒ「それでも私は自分の考えを胸を張って否定することが出来ない」

ポタリポタリ

ハルヒ「んぐ、ご、ごめんね!」

ズズッ

ハルヒ「あ、あたし、単に、ヒグ、キョンがあんまり家にいないから寂しいだけなのかも!」

ハルヒ「だから、スン、こんな風に、ね、疑心暗鬼になって変なこと言ってるの!」

ポタリポタリ

古泉「……」

みくる「……」ギュ

ハルヒ「あ、……あたしも、弱くなったもんねえ!?」


古泉(涼宮さん……笑顔で泣くというのは本当は悲しいのに誤魔化そうとしてる証拠ですよ)

みくる「涼宮さん……」

スッ

ギュ!

ハルヒ「み、みくるちゃん?」

みくる「我慢、しないで下さい」

ギュー!

みくる「悲しいときはちゃんと泣いて下さい」

みくる「……」

みくる「じゃないと」

みくる「本当に悲しい時に泣けなくなっちゃいますよ……」

ハルヒ「……う……うぅ……みくるちゃん……」

みくる「いいんです、泣いて」

ハルヒ「ひ、ヒグ、え……え~~ん!!……ズズッ! みくるちゃーん!!!!!!!みくるちゃん!!ギョン゛が~!!!」


ハルヒ「……」///

ハルヒ「恥ずかしいわね」

ハルヒ「人前で泣いたの初めてかも……」

ハルヒ「情けないわね……団長たるあたしが」

みくる「ふふ」

ハルヒ「でも、ありがと。みくるちゃん、古泉くんもへんな妄想話聞いてくれて」

古泉「……」

みくる「……」

ハルヒ「? どうしたの」

古泉「涼宮さん」

ハルヒ「うん?」

古泉「これから僕の言う話を落ち着いてよく聞いてください」

古泉「落ち着いて」

古泉「深呼吸してからでいいです」


ハルヒ「な、なによ恐いわね。古泉くんは笑顔じゃないとダメよ」

古泉「お願いします」

ハルヒ「……わかったわ」

スゥーハァースゥーハァー

ハルヒ「これでいいかしら?」

古泉「はい」

古泉「……今から僕はさっき涼宮さんが言った話よりもっと妙な事を言います」

古泉「しかし」

古泉「それはすべて事実です」

古泉「信じられないとは思いますが、取り乱さずに聞いてください」

ハルヒ「……」コクリ


古泉「彼は今、ある人物に監禁されています」





ハルヒ「……」







古泉「あなたも知っていり人物です」










古泉「彼の親友である佐々木さんです」


あ。
古泉「あなたも知っていり人物です」

古泉「あなたも知っている人物です」


ハルヒ「……」

古泉「佐々木さんは彼を監禁している」

古泉「監禁、という言葉も生ぬるいかも知れませんね」

みくる「……」

ハルヒ「……」

ハルヒ「色々聞きたいことはあるけど……」

ハルヒ「じゃああたしがさっき会ったキョンは何だったの?」

古泉「……」

古泉「恐らくはダミー」

古泉「彼に極限まで良く似せた人形でしょうね」

ハルヒ「ふふ」

古泉「……」

ハルヒ「本当にあたしの話より変な話ね」


ハルヒ「……それを証明するに値する、何か理由はあるの?」

古泉「物的証拠はなにもありませんよ。社会的にも彼は今まで通りサラリーマンです」

古泉「しかし実際に会社に行っているのは人形です」

ハルヒ「……」

ハルヒ「信じられないわね」

古泉「でしょうね」

古泉「ただ信じてもらう他はありません」

ハルヒ「古泉くん」

古泉「はい」

ハルヒ「確かにあたしはキョンがキョンじゃないと言ったわ」


ハルヒ「でもね、それはやっぱりあたしの妄想でしかないのよ……寂しさを紛らわせるための」

ハルヒ「旦那が人形?」

ハルヒ「今時そんな映画、ハリウッドだって作らないわよ」

古泉「……」

ハルヒ「古泉くんの優しさはすごく伝わるわ。そうだったらきっと、めくるめくような大冒険をしながらキョンを助けに行くでしょうね」

ハルヒ「でもあたしの妄想話に無理に合わせる必要はないわ」

古泉「……」


古泉「……」

古泉「やはり……」

ハルヒ「?」

古泉「言うしか無いんでしょうかね? 朝比奈さん……」

みくる「……」

古泉「きっとこれを言うのは彼だろうと思っていたんですが……まさかこの役回りが僕に回ってくるとは。怒られますかね、彼に」

ハルヒ「……」

ハルヒ「何を言っているの……?」

古泉「涼宮さん」






古泉「彼はジョンスミスです」


ハルヒ「え……?」

ハルヒ「なんで?」

ハルヒ「なんで、古泉君が……?」

古泉「つまりは、そういうことです……」

古泉「これでは、まだ信じるに値しませんか?」

ハルヒ「……」

ハルヒ「わけが分からないわ……」

古泉「今はそれで構いません」

古泉「彼を助けに行けば、それが信じるに値することだったと分かるでしょう」

古泉「ですから、今すぐにでも僕たちについてきて下さい」

古泉「詳しい話を逐一している時間はないんです」

ハルヒ「そ、そんな話……」


古泉「涼宮ハルヒっ!!!」

ハルヒ「!?」ビクッ!

古泉「あなたは団長でしょう!!!」

古泉「あなたが彼を助けに行かなくてどうするんですか!!!」

ハルヒ「……」

古泉「……失礼しました、大きな声を出してしまい」

みくる(……古泉くん)

ハルヒ「……」

ハルヒ「……わかったわ」

ハルヒ「事実がどうにしろ、SOS団副団長のあなたが言うことですものね」

ハルヒ「あたしが否定してどうするんだって話よ」

ハルヒ「行きましょう。キョンを助けに」


---------

prrrr prrrr
ガチャ

藤原「もしもし」

佐々木「藤原くんかい?」

藤原「なんだ」

佐々木「少し気になることがあってね……」

佐々木「朝比奈さんの方はもう幽閉してあるんだよね?」

藤原「ああ」

藤原「何故そんなことを聞く?」

佐々木「うん、なに、大したことじゃないんだけれど。こちらで少し時空間移動の淀みをキャッチしてね」

佐々木「まさかとは思うが君が彼女に余計な情けをかけて逃がしたりしたんじゃないかと思ってねぇ……」ニヤリ


藤原「ふん」

藤原「馬鹿なことを言うな。そんなものよくある時空振動だろう。心配なら声でも聞かせようか?」

佐々木「くっくっ、その必要はないさ。もうすでに周防さんが網をかけてるからどちらにしろ次に動くことがあれば、勝手にね……」

藤原(ちっ、用心深いやつだ)

佐々木「ああ、そうそう。君、橘さんの行方を知らないかい? 彼女から定時連絡がないんだ」

藤原「知らないな。どこかで道草してるんじゃないのか」

佐々木「くっくっ、彼女が僕への定時連絡を忘れるとは思えないが……まあいいさ」

藤原「用件はそれだけか?」

佐々木「ああ、それじゃまた」

プッ
ツーツー


キョン「佐々木~、何の電話だ?」

佐々木「ただの仕事の電話さ」

キョン「……」

佐々木「くっくっくっ、キョン、そんな捨てられた子犬みたいな目をするな」

佐々木「君が」

佐々木「何よりも」

佐々木「一番大事なんだから……」

キョン「良かった……」

佐々木「可愛いなキョンは」

佐々木「いい子だ……」ニコ

キョン(ゾクゾク!)


キョン「あぁ佐々木……」

チュ…チュ…

佐々木「んぐ、キョン……」

チュ、チュ……

キョン「ふふ、佐々木嬉しそうだな」

佐々木「それはそうさ……」

チュルチュルチュル……

佐々木「これからね……」

キョン「?」

佐々木「最高に面白いショウが始まるんだ……」

佐々木「彼女が絶望に満ち満ちていく顔を見たら僕は」

佐々木「くつくつくつ」

キョン「??」

佐々木「いいんだ、キョン。今は今を楽しもう……」


--------

佐々木のマンション前

古泉「……」

古泉「以前僕はここに一歩も立ち入ることすら出来ませんでした」

ハルヒ「……」

みくる「……」

古泉「小規模ですがかなり強力な情報封鎖、そして同時に閉鎖空間が混在していたんです」

ハルヒ「……要するにめちゃくちゃ入れないってことね?」

古泉「はい」

古泉「……」

古泉「ですが、今は朝比奈さんがいる」

古泉「……朝比奈さん。時空間移動と言うのは現在に対しても有効でしょうか?」

みくる「え?」


みくる「どういう……??」

古泉「未来に行くことについてあなたは以前パラパラ漫画で例えたそうですね」

みくる「え、はい」

古泉「それの応用ですよ」

古泉「限りなく近い未来に行くんです」

古泉「ほんの一瞬だけでいい」

古泉「壁にぶつかる瞬間を省略するんです」

みくる「なるほど……」

ハルヒ「????」

みくる「やったことないんでわからないですけど……」

古泉「やる価値はあるでしょう?」


ヒュン

藤原「止めておけ」

ハみ古「!?」

藤原「ついさっき佐々木から連絡があった」

藤原「周防が時空間移動に蜘蛛の巣を張ったそうだ」

古泉「藤原さん……ですよね?」

藤原「ふん、そうだ」

藤原(……)チラッ

ハルヒ「?」

藤原「……」プイ

みくる「ええ!? じゃあこの壁を超えることは……」

藤原「不可能だ」

みくる「……そんな」


藤原「全員がという条件ならばな」

藤原「だが」

藤原「そこの前提を外せば無いことも無い」

みくる「え!」

古泉「ほう…」

ハルヒ「??」

藤原「周防の網に掛かった瞬間に一人が犠牲になれば」

藤原「二人は壁を越えられる」

みくる「……残ったひとりは??」

藤原「恐らく、死ぬ」

藤原「あの人形がただで捕まえた奴を逃がすとは思えない」

藤原「絶対に逃げられない空間に閉じ込められ、事の決着がついてから殺すだろうな」

みくる「…」ゴクリ

古泉「……」


古泉「……」

古泉「僕が」

古泉「僕が引き受けます」

ハルヒ「え!?」

みくる「古泉くん!」

藤原「……」

古泉「涼宮さん、朝比奈さん。あなたたちどちらか犠牲にして生き残ることは僕にはできない」

古泉「ふふ……」

古泉「所詮は一度捨てた命です。運よく生き延びたこの命はきっとこの時に使うべきだったんでしょう」

古泉「それに」

古泉「僕が死んで皆さんが助かるのなら僕は本望です」

古泉「喜んで差し出しましょう」

古泉「彼には……」

古泉「またいつかのようにオセロをすることを楽しみにしている、と伝えて下さい」


ハルヒ「古泉くん……」

みくる「……」

藤原「……」

藤原「どうやら決まったようだな」

古泉「ええ、急ぎましょう。じゃないと朝倉さんに怒鳴られそうだ…!」

藤原「ふん」

藤原「じゃあ僕は戻る……」

ヒュン

ハルヒ「……あの藤原って男に頼めばみんな行けたんじゃないの?」

古泉「いえ、彼の口振りからすれば……」

古泉「おそらく彼は抜けられるんでしょうが、僕らは皆、網に引っかかるのでしょう」

みくる「……」


古泉「さあ、始めましょう」

ハルヒ「……」

古泉「僕がお二人を網の外へ押し出します」

古泉「涼宮さんは朝比奈さんを引っ張ってあげて下さい」

ハルヒ「……」

古泉「……涼宮さん、何かを成し遂げるためには何かを差し出さなければならないときはあるんです」

古泉「今は彼を助けることだけを考えて下さい」

ハルヒ「……」

ハルヒ「わかったわ」

ハルヒ「でも」

ハルヒ「きっと、助ける」

ハルヒ「キョンの奴をさっさと連れ帰って、すぐにでも」

古泉「ふふ」

古泉「ありがとうございます」



みくる「……」

古泉「……? 朝比奈さん?」

みくる「は、はい!?」
ビクゥ

古泉「始めましょう?」
みくる「は、い……」

---------


げ、限界だ……

もうすぐクライマックスなのに……

落ちてたらもっかいスレ立てるわ

この流れで終われなくて本当にごめんなさい


ただいま

またせてすまん

みくる「二人とも、私の手を握ってください……」

古泉「……」

ギュ

ハルヒ「……」

ギュ

みくる「目をつぶって、私が3つ数えたら……時空間移動を開始します」

ハルヒ(……まさかみくるちゃんがこんな力持ってたなんてね)

ハルヒ(……)

ハルヒ(きっと古泉くんも)

ハルヒ(……)

ハルヒ(この場にいない有希もなにか力を持ってた……そう考えるのが妥当よね)

ハルヒ(じゃあ)

ハルヒ(キョンもなのかしら?)

ハルヒ(……)

ハルヒ(ふふ、アイツはそんな柄じゃないわよね)



ハルヒ(……こんなに近くにあたしが欲しがってた『不思議』があったなんてね)

ハルヒ(……)

ハルヒ(灯台下暗しもいいとこだわ)

ハルヒ(高校生の頃……)

ハルヒ(あたしに隠れてなにか話していたのは、あたしとキョンを守るためだったのかもしれない……)

ハルヒ(……)

ハルヒ(水くさいわね……)

ハルヒ(団長抜きで仲間を守る話し合いなんて)
ハルヒ「……」

ハルヒ(……ふふふ、それはみんなが日常を壊したくなかったからでしょうね)

ハルヒ(昔のあたしならそんなの絶対許せなかった)


ハルヒ(……)

ハルヒ(今なら)

ハルヒ(それが『優しさ』だったんだってわかる)

ハルヒ(でもね)

ハルヒ(あたしが本当に欲しかったのは不思議なことなんかじゃなかったって大人になってわかった)

ハルヒ(あたしはただ)




ハルヒ(『友達』が欲しかった……)




みくる「目を閉じて下さい」

ハルヒ「……」

古泉「……」

みくる「カウント、始めます」


みくる「3」



古泉「…」



みくる「2」



ハルヒ「……」




みくる「1!」





みくる「時空間移動、開始」

ヒュン……

グワン
ハルヒ(無重力状態になってる?)

ハルヒ(どっちが上でどっちが下かもわかんない)

ハルヒ(みくるちゃんと古泉くんの手だけが頼りね……)

ハルヒ(この手を離したら……多分戻って来れない)

古泉「……」

古泉(……もう、周防の仕掛けた網が見えてくるはず)

古泉(そこで二人とはお別れだ)

みくる「……」

ハルヒ「……!」

古泉「……見えてきましたね」

古泉「確かに」

古泉「これは『網だ』」

古泉「侵入者を捕まえるための……」

古泉「ふ、作った方の心中が窺えますね」


古泉「朝比奈さん、涼宮さん。さあ、押し出しますよ……!」

古泉(……)

古泉(……お二人とも)

古泉(どうかご無事で)

古泉(彼をよろしくお願いします)

みくる(……)

スーー
ガッ!








古泉「な!?」

ハルヒ「みくるちゃん!?」


みくる「……」

古泉「何をしてるんですか!? 押し出すのは僕の……!」

みくる「……」

グイグイ

ハルヒ「みくるちゃん何を!?」

みくる「……」

グイグイ

スルッ

ハルヒ「古泉くん!」

古泉「ダメです! もう半分以上体が抜けて……」

みくる「……」

スルッ……

ハルヒ「みくるちゃん! ダメよ!!」

古泉「僕が……!! 何故こんなことを!?」


みくる「……」

ニコ!









スゥー

ハルヒ「みくるちゃん!! 絶対ダメ!! こんなの!!! あなたじゃ死んじゃう!!」

古泉「朝比奈さん!! 早く逃げて!!!」

みくる「……さようなら」

スゥー

パンッ!

ハルヒ「みくるちゃーーん!!!!!!」

古泉「朝比奈さんっ!!!」


-------
みくる「……」

みくる(最後に)

みくる(最後にちょっとだけ役に立てたかな、私)

みくる(いっつもみんなに迷惑かけてばっかりだったからな……)

みくる(私にできることなんてこれくらいしかないから)

みくる(……)

みくる(キョンくん……)

みくる(今から涼宮さんと古泉くんが助けに行くわ)

みくる(きっと後から長門さんと朝倉さんも来る)

みくる(だから)

みくる(どうか無事でいて……)

みくる(……バイバイ)
---------

藤原「ふん」
ヒュン


佐々木のマンション敷地内


ハルヒ「……」

古泉「……」

ハルヒ「……行きましょう」

古泉「……」

ハルヒ「……古泉くん。立って」

古泉「……また生き延びてしまいました」

ハルヒ「……」

古泉「しかも今回は朝比奈さんを犠牲にして」

古泉「僕は」

古泉「僕は何を……!」


ハルヒ「そう、生き延びた」

ハルヒ「みくるちゃんが私たちの代わりになって」

古泉「……」

ハルヒ「だから!」

ハルヒ「私達は絶対にやらなきゃならないことがあるはずよ」

ハルヒ「こんなとこでもたついてちゃいけないわ」

ハルヒ「みくるちゃんに貰った命なら、みくるちゃんに返しに行かないといけない」

ハルヒ「キョンを監禁してる馬鹿共がいなくなればみくるちゃんを助けに行ける」

ハルヒ「だから今は、この場に立ってる人間が」

ハルヒ「この場に立てなかった人のために全力を尽くすべきよ」

古泉「……」

ハルヒ「へこたれてる時間はないわ」


ハルヒ「……」

古泉「……」

ハルヒ「古泉一樹!!」

パチン!

古泉「……!」

ハルヒ「目ぇ覚ましなさい!!」

ハルヒ「あんたあたしに言ったでしょ!?」

ハルヒ「あたしが助けに行かなくてどうすんだって!!」

ハルヒ「忘れたとは言わせないわよ!!」

ハルヒ「立て! 副団長!!」

古泉「……」

古泉「……ふふ」

古泉「やはりあなたはそうでないと」

古泉「少し、僕は見失っていたようです」


ハルヒ「戻ってきたみたいね、調子」

古泉「ええ、なんとか」

ハルヒ「ならいいわ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「叩いちゃってごめんなさい」

古泉「ふふ、構いません。あのぐらいしないとダメでしたよ」ヒリヒリ

ハルヒ「これが片づいたらさ」

古泉「はい」

ハルヒ「久しぶりに、SOS団であのファミレスに行きましょう」

ハルヒ「もちろん」

ハルヒ「キョンの奢りで」クス

古泉「ふふ」

古泉「それは是が非でも片付けないといけませんね」

--------

佐々木(……どうやら来たみたいだね)

キョン「Zzzz……」

佐々木「キョン……」
チュ

佐々木「……」

カチカチカチ
ピ
prrrr prrrr prrrr prrrr

佐々木「……?」

佐々木「珍しいな、周防さんが出ないとは……」

佐々木「ということは」

佐々木「周防さんが手こずっているか」

佐々木「もうケリがつきそうだから最後の締めにかかっているのか……」

佐々木「……」

佐々木「どちらかな?」

--------


タッタッタッ

ハルヒ「……まさか郵便受けがあるとはね」

古泉「このマンションには他の一般の住人もいますよ」

古泉「彼女が近づけたくないのは僕らだけみたいです」

古泉(……僕らがいなくなればどうなるか分かりませんが)

古泉「日常生活も至って普通に過ごしてますよ、銀行員ですし」

ハルヒ「そんなことどうやって調べたの? 興信所にでも頼んだ?」

古泉「調べようと思えば意外となんでもわかるものですよ」

ハルヒ「……」ジー

古泉「??」


古泉「ここのようですね……」


[佐々木]


ハルヒ「人の旦那監禁しといて偉そうな表札つけてるわね」

古泉「……どうします?」

ハルヒ「どうもこうも無いわよ。ドアをぶっ壊してでも入るわ」

スッ

ハルヒ「行くわよ……」

古泉「いえ」

古泉「どうやら向こうは待っていたようですね」

キィ

古泉「鍵が開いています」

ハルヒ「入るわよ」


スッ

古泉「……」

ハルヒ「……」



佐々木「あら、早かったのね」

ハルヒ「……」

ハルヒ「……なによ」

ハルヒ「なんなのよこれは?」

ハルヒ「なんで……なんでキョンとこの女が裸で寝てるのよ……!?」

古泉「す、涼宮さん……」

佐々木「クスッ」

佐々木「何って」

佐々木「見ての通りよ?」ニコ

古泉「……何を言って」


佐々木「おや、古泉くんじゃないか。君がここにいるということは彼女……橘さんは結局始末出来なかったのか。いや、くつくつくつ、もしくは君に始末されたのかい? 古泉くん?」

佐々木「それにしても、本当に使えない女だね。人に従うことしか出来ない、しかも課せられた目的の遂行も出来ないなんて……やれやれだよ。誉めてやってもそれに応えられないのは、ある意味では罪だよ」

佐々木「死も当然か」

ハルヒ「……」

佐々木「まあそんなことは全くもって取るに足らない細事だがね」


佐々木「いや、しかし、んふふ……大したものよ? 涼宮さん」

佐々木「ここまで辿り着いた、という事実は素直に賞賛に値するわ」

佐々木「と言っても半分は私が呼んだようなものだけど」

ハルヒ「……!」

古泉「…」

佐々木「あの壁を乗り越えられたのは……そちらの未来人の力?」

佐々木「せっかく周防さんが捕まえたのにまた逃がしてしまったわ」

佐々木「藤原くんのせいでね」

佐々木「……」

佐々木「でもまあ」

佐々木「藤原くんが裏切ったのは許容範囲内。実際、計画には私と周防さんさえいればコトはほぼ完璧に、淀みなく進む」


佐々木「チェスに例えれば……そうね」

佐々木「馬鹿正直に前にしか進めない橘はポーン」

古泉「…」ギリッ

佐々木「人の予想の斜め上を行くような藤原はビショップ」

佐々木「結果として私の手足となりコトを想像以上に上手く運んでくれた周防さんはクイーン」

佐々木「さながら私はキング、といったところかしらね?」

佐々木「クスッ」

佐々木「どうかしら? 涼宮さんはどう思う?」


ハルヒ「もういいわ。あんたのくだらない下劣な計画なんて聞く必要ない」

ハルヒ「要は簡単」

ハルヒ「ここであんたを二度と立ち上がれないほど叩きのめして、キョンを返してもらう」

ハルヒ「それだけ……よ!」

ダッ
ブンッ!

バーーーーーーーン!

ハルヒ「!?」

ハルヒ「な!? なに!? 壁!?」

古泉「涼宮さん!!」

ハルヒ「!」

古泉「下がって下さい!」ボンッ!

ハルヒ「なにそれ!?」


古泉「話していませんでしたが……」

古泉「僕は超能力少年だったんですよ」

シュルシュルシュル

古泉「もう、少年と言える年ではなさそうです、が!!」

古泉「ふんもっふ!!」

キィーーン!!!

佐々木「くっくっくっ」

佐々木「無駄無駄」

バーーーーーン!

古泉(くそ、だめか……)

古泉(能力が使えたのはいいものの……涼宮さんの能力低下は著しい)

古泉(そして何より、相手の閉鎖空間壁とも言うべき壁が硬すぎる)

古泉(この程度の弾の威力では到底彼女には届きそうにない……)



佐々木「あらあら」

佐々木「あなた達はもうこの勝負に負けたのよ?」

佐々木「すでにチェックメイトはかかってる」

佐々木「そちらのキングは」

佐々木「『私のもの』よ?」

佐々木「敗者は勝者の勝利宣言を聞く義務があるわ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「……」ブルブル

ハルヒ「キョン!!!!!!!!!!!!」

ハルヒ「あんた寝てる場合じゃないのよこのバカ!!!!!」

ハルヒ「早くこっちに来なさい!!!!」

古泉「……」

佐々木「ふ、ふふ! あはははは!! だそうだよキョン?」


キョン「……」

キョン「ん……んん? なんだって?」

キョン「ふぁーあ……あん?」

キョン「……何だってんだよ?」

ハルヒ「キョン! あんた寝ぼけてんじゃないわよ! さっさと起きて帰ってきなさい!」

キョン「……あ~、すまん」








キョン「どなただ?」

キョン「俺には君みたいな知り合いはいないはずだが……?」


ハルヒ「な……!?」

ハルヒ「何馬鹿なこと言ってんのよ!? 寝過ぎて頭のネジまで持ってかれたの!?」

ハルヒ「今すぐそこのキチガイ女から離れるの!!」

キョン「……」

キョン「……イマイチ状況が掴めないんだが」

キョン「人の嫁さんのことを悪く言うのは感心しないな」

ハルヒ「……!」

キョン「それになんだ、土足で入って。佐々木の知り合いなのかもしれんが遠慮してもらいたい」

ハルヒ「……そ」

ハルヒ「そんな」

ハルヒ「そんな馬鹿な話……ないわよ」

古泉「……まさかここまでとは」


佐々木「だ、そうよ涼宮さん。ふふ」

キョン「なんなんだこりゃ? 佐々木ぃ?」

佐々木「あ~、キョン。君は気にしなくていい。彼らは長いこと渡米していたものでね、まだこちらの習慣に慣れてないんだ」

佐々木「さあ、向こうのソファでもう一度、グッスリ『いい子』で寝てるんだよ」

キョン「ふーん、まあ佐々木がそう言うならいいが…」

キョン「じゃあ寝るわ」テクテク

佐々木「くっくっくっ、お休みキョン」

キョン「お~」スピスピ

ハルヒ「……」

佐々木「…」ニコリ


佐々木「これでわかったでしょう? キョンはもう私のものなの」

佐々木「私だけの」

ハルヒ「……ふ」

ハルヒ「ふざけんな!!」バン!

ハルヒ「あんたキョンに何したのよ!!!? なんでキョンはあたしのこと覚えてないのよ!!?」

ハルヒ「どうせまた卑怯な手を使ってキョンに催眠術でもかけたんでしょ!!?」

佐々木「違うわね」

ハルヒ「!」

佐々木「私はキョンに」

佐々木「私にとって邪魔なものの存在を少しずつ忘れるようにしただけ」

佐々木「つまりあなたは」

佐々木「『邪魔』なのよ」


ハルヒ「意味がわからないわ」

ハルヒ「……あんたねぇ!! 後から出てきたくせに横から人の旦那奪うなんて、そんなこと許されると思ってんの!?」

ハルヒ「さっさとキョンとみくるちゃんを返しなさい!!」

佐々木「……ふふ」

佐々木「涼宮さん」

佐々木「あなた、キョンが会社をクビになったって知ってたかしら?」

ハルヒ「……え」

佐々木「もうひと月以上前になるかな」

佐々木「キョンは酷く悩んでいたわ」

佐々木「それにあなたは少しでも気がついてあげられたの?」

ハルヒ「それは……」


佐々木「あなたは言ったわね」

佐々木「キョンを返せって」

佐々木「……」

佐々木「私からすれば」

佐々木「そもそもキョンを無理やり奪ったのはあなたじゃない」

ハルヒ「何言ってんのよ?」

佐々木「私とキョンは中学生のときから結ばれていたのよ」

佐々木「塾も一緒に行ってたし、勉強も教えていた」

佐々木「キョンの成績はあのままいけば光陽園学園にも行けた」

佐々木「それをあなたが……」ギリッ


佐々木「最初にキョンが北高に行くと言ったときは本当にびっくりしたわ」

佐々木「だけど私にはどうすることも出来なかった」

佐々木「……」

佐々木「そして」

佐々木「高校に入って、橘さんたちに会って知ったわ」

佐々木「間違ってるのは私じゃない」

アナタ
佐々木「世界の方なんだって」

ハルヒ「……」

佐々木「あなたの願望実現能力がなければ最初から私とキョンが結婚していた」

佐々木「あなたが改ざんした世界を元通りにしただけの話よ」

佐々木「それだけの話」


ハルヒ(あ…あたしが)

ハルヒ(願望実現能力?)

ハルヒ(……何よそれ)

ハルヒ(そんなものあるわけないじゃないの……!)

佐々木「何のこと、って言ったところね」

佐々木「古泉くんは何も説明してなかったみたいだね」

古泉「……」

佐々木「ここまで連れてきたということは万に、いや、億に一つの彼女の能力復活にかけていたみたいだが」

佐々木「それも無駄」

佐々木「ここは既に僕の閉鎖空間」

佐々木「彼女の能力は戻りはしないさ」

佐々木「ほら……見てごらんよ」

佐々木「涼宮ハルヒは何も出来ない」

佐々木「君ももう、さっきの弾は撃てないだろう?」


佐々木「まあ撃てたところで何にも出来やしないけれど」

古泉「……くそ!」

ガン!

佐々木「どうしたんだい?」

佐々木「くつくつくつ、そうか、どこかから君たちを、この状況をひっくり返すようなヒーローを待ってるのかい!?」

佐々木「これは面白い!」

佐々木「物語ならそうなったかかもしれないね!」

佐々木「……」

佐々木「だがこれは現実だよ」

佐々木「ヒーローは来ない」

佐々木「君達の絶望的な状況も変わらない」

佐々木「そして僕が君らをここに呼んだのは他でもないさ」

佐々木「死んで貰う」


ジ、ジジジジ

佐々木「!」

古泉「!」

ハルヒ「……」

周防「ただ---いま」

佐々木「……ふふ」

佐々木「びっくりさせるわね」

佐々木「来るなら来るって連絡をくれればいいのに」

周防「ご--めん---なさい-----?」

佐々木「いいわいいわ、気にしてない」

佐々木「それに還ってきたってことは……」

佐々木「終わったんでしょ……あの木偶人形との戦い」

佐々木「途中でなんだか向こうのバックアップが現れたみたいだけど大丈夫だった?」


周防「大----丈夫」

周防「終わ---ってる---」

スッ、ヒョイ

ゴロゴロゴロ……

周防「こっちが----バック-----アップ----の--首」

古泉「……あ……あぁ……朝倉、さん……!」

ハルヒ「……」

佐々木「うふふ」

グリッ

周防「こっ--ちが-----」

周防「長門----有希-----」

ポイッ!

ゴロゴロゴロ……

古泉「……あぁ……長門さん……」
ガクリ……


佐々木「くつくつくつくつくつくつくつくつくつくつくつくつ」

佐々木「古泉くん?」

佐々木「ヒーローが来たのはこちらみたいだね!」

佐々木「それにしても、あっけなさすぎるなぁ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「もう……いや!!!!」

ハルヒ「なんなのよ!!!」

ハルヒ「みんな普通に暮らしてたはずなのに!!」

ハルヒ「あんたの訳わかんない計画のせいで!!」

ハルヒ「全部壊れちゃったじゃない!!」

古泉「……」

佐々木「……」

佐々木「涼宮さん」

佐々木「それがあなたのしたことよ」

佐々木「あなたは罰を受けなければいけないの」


佐々木「そうね……」

佐々木「!」

佐々木「キョン。キョン」

佐々木「キョン、起きるんだ……」

キョン「ううん……んあ、どひた佐々木ぃ?」

佐々木「くつくつくつ、『リハビリ』しよう」

キョン「おいおい、ついさっきまでしてただろ……?」

佐々木「いいから! 僕はまだ満足してないんだ」

キョン「しょうがねぇなあ……まったくお前は欲しがり屋だからなぁ」

佐々木「くっく、君がいけないのさ……」

佐々木「さあキョン、もう挿れてくれよ……」

ハルヒ「え……!」

ハルヒ「ちょ、あんた何考えてんの!?」

ガンガン!


ハルヒ「止めなさい!!!」

ハルヒ「殺すわよ!!!!」

佐々木「喧しいわね」

スッ

ハルヒ「」パクパク

佐々木「これで壁の向こうの音はシャットアウトされた」

周防「------殺-----す?」

佐々木「はは、まだだめ。もっと彼女には絶望を味わって貰わないと、わざわざここまでした意味がないでしょう」

周防「あとで---呼んで--」ジジジジ


ガンガン!

ガンガン!

ハルヒ「止めろ止めろ止めろ!!!」


佐々木「さあこれで楽しめるよ、キョン!」

キョン「はぁはぁ……佐々木!」

ニュル
ニュルン

佐々木「あぁーーー!」

---------

ハルヒ「だめよキョン!!! だめ!!!」

ハルヒ「違うわ……こんなの……違う!違う!違う!違う!」

---------

佐々木「もう……ダメェ!!」

キョン「ああー!!……俺も!」

---------

ハルヒ「いや……いやぁーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


佐々木「……はぁはぁはぁ」

キョン「……はぁはぁはぁ」

佐々木「すごかったよ、キョン」

キョン「そうか? 俺も良かったよ、佐々木」

キョン「あ~、まだねみぃわ」

キョン「寝るわ」Zzzz…

佐々木「くっくっくっ、君は射精すると眠くなるタイプだもんね」
チュ

佐々木「さて」

佐々木「涼宮さんは……」

ハルヒ「」

佐々木「くつくつくつ、完全に壊れたみたい」

佐々木「あれだけしても何も起こらないなんて本当にただの人間になったのね」

古泉「……」

佐々木「彼はどうにか自我を保ってるけどもうだめね」


佐々木「……」

佐々木「……周防さんを呼ぶか」

佐々木「これで本当の意味でキョンと結ばれる……」

佐々木「良かった……」ポロポロ



prrrrr prrrrr

prrrrr prrrrr

佐々木「……?」

「…………」


ザク




佐々木「え」

長門「……あなたはとても用心深い人」


長門「だから」

長門「油断させる必要があった」

カシャン
カツン

佐々木「な……あ、なたは……死んだはずじゃ」

長門「私は対有機生命体コンタクト用インターフェース」

長門「首だけになっても再構成できる」

佐々木「周……防さん……は」

長門「情報連結の解除をした」

長門「さっきのは」

長門「朝倉涼子」

長門「そこにある朝倉涼子の首は良く似せたただのマネキン」

佐々木「ふ……ふ」

佐々木「ヒー、ローは遅れて……来るって、ゴホッ、ことね……」


長門「……あなたは非常に優秀」

長門「だからこの閉鎖空間にプログラムを侵入させるのにいままで時間がかかった」

長門「でももう終わり」

佐々木「くつく、ガハッ……」

佐々木「ま、さか……周防……さんが……負けるとはね……」

長門「彼女はとても厄介だった」

長門「私たちとは根本的な構成情報が違うから崩壊因子も一から創らなければならなかった」

長門「朝倉涼子がいなければおそらくは負けていた……」

佐々木「……イレ、ギュラーな存在が……鍵を握っていた、訳か……」


佐々木「最後の……最後でゴホッゴホッ、油断したわ……」

長門「そう」

長門「でも手段を選ばなければ勝つこともできた」

長門「なぜ?」

佐々木「ふふ……」

佐々木「人形には……ハァハァ……解らないわよ」

佐々木「人、間の……妬み、嫉み……」

佐々木「結局……最後はそれに、ヒュウ、飲み込まれた……」

長門「……」

長門「そう」

佐々木「……」

佐々木「……でも」

佐々木「ただでは死なないわ……」


長門「!」

佐々木「……キョンの心は私が貰った……」

佐々木「涼宮ハルヒの心は私が壊した」

佐々木「それだけできれば私はもう十分……」

佐々木「……」

佐々木「……さよなら、キョン」

長門「情報連結解除」

シュウーーーー






佐々木「くつくつくつ」
シュウ


長門「完了」

6ヶ月後 病院
ガラガラ

古泉「おはようございます、涼宮さん」

ハルヒ「」

古泉「今日はすごくいい天気ですよ」

古泉「小春日和ですね」

古泉「後で散歩にでも行きましょう」

ハルヒ「」

ガラガラ

みくる「あら、古泉くん」

古泉「おはようございます朝比奈さん」

みくる「おはよう、古泉くん」

みくる「どうですか調子は」

古泉「ええ、本当に少しずつですが回復の兆しはあります」

みくる「そうですか……」


古泉「彼の方は…?」

みくる「……」フルフル

みくる「まだ全然……」

みくる「隔離病棟から出てこれないです」

古泉「やはり彼女を……?」

みくる「はい……」

みくる「佐々木を出せ、って……」

古泉「そうですか……」

古泉「……」

みくる「……」

古泉「あれからもう半年ですね」

みくる「はい……」

古泉「今思えば僕も、朝比奈さんも良く生き残れましたね」

みくる「……本当にそうですよね」


みくる「藤原く、いえ、弟がいなければ多分あのまま時空の狭間で死んでました……」

古泉「……ふふ」

古泉「まさかですよね。朝比奈さんと藤原くんが腹違いの子だったなんて」

古泉「朝比奈さんが涼宮さん、藤原くんが佐々木さんの子供」

古泉「初めて聞いたときは新手のジョークかと思いましたよ」

みくる「私も、あの二枚の写真を見なければ信じられませんでした……」
[写真][写真]

古泉「片方は彼、涼宮さん、そしてあなた」

みくる「もう片方はキョンくん、佐々木さん、そして藤原くん」

みくる「もう、この写真には写ってないけど……」


古泉「でも……何故藤原くんは佐々木さんを裏切ったんでしょう?」

みくる「……」

みくる「たぶん」

みくる「弟は、私の母のことも母だと思ってたんだと思います」

みくる「だから自分の母がもう一人の母を殺すなんて許せなかった」

みくる「……」

みくる「例え、自分の存在が消えようとも」

みくる「……」

みくる「それを止めたかった……」

古泉「……」

古泉(……きっとそれだけじゃないでしょう)

古泉(藤原くんは……自分よりもあなたに生きていて欲しかった)

古泉(僕はそう思いますよ)


古泉「そうそう、この前、長門さんからメールが来ました」

スッ

from:長門有希
sub:なし
本文:近いうちに帰る


みくる「ふふ、長門さんらしいですね」

古泉「統合思念体から許可がおりたのでしょう」
みくる「……」

みくる「……思念体も人の心までは治せない、か」

古泉「それでいいでしょう」

古泉「それが出来てしまったら、きっと僕らの生きている理由が分からなくなってしまう」

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