ライナー「二人ぼっちのエデン」(248)
ガキン!
ブオン!!
ガガガッ……ガッ!!
ミカサ「…やめよう」
ライナー「ハーッハーッ……どうしたミカサ…まだ勝負は終わってないぞ!?」
ミカサ「…やめよう、もう…ライナー…意味が無い……」
※単行本10巻くらいまでのネタバレ含
ライナー「意味が無いって何だよ…ハーっ…人類が勝つか負けるかの瀬戸際なんだろ?」
ミカサ「瀬戸際?勝負自体は結果が見えている…私の勝ち…」
ライナー「な…!?んなの…ハーッハーッ…まだ分からんだろう、が…」
ミカサ「そんなに息切れを起こして…足もフラフラで……しかも片足が無くて…」
ライナー「ああ、容赦ないよなお前」
ミカサ「もともと訓練兵時代から貴方が私に勝てた試しなど無い」
ライナー「…言ってくれるね。じゃあ今からでも俺の本気を…」
ミカサ「間に合っている」
ライナー「かーっ…つれない奴だ…」
ミカサ「……私はなぜ戦っているのだろう……」
ライナー「それを敵の俺に聞くのか?」
ミカサ「エレンが…皆が死んで…もう何年も経つというのに……」
ライナー「…ああ…」
ミカサ「アルミンも…ジャンも…サシャも…みんな」
ライナー「アニもな」
ミカサ「調査兵団のみんなも…あのチビも…憲兵団の連中も…」
ライナー「…ベルトルトもな」
ミカサ「…私と…ライナー…貴方だけ」
ライナー「世界に俺達二人きりとかロマンチックだな」
ミカサ「はぁ…私はなぜ戦っているのだろう…」
ライナー「おいおい座ってんじゃねえよ。回復しちゃうぞ?足生やしちゃうぞ?」
ミカサ「ご勝手に…守るものも守ってくれる存在も…全て何年も前に失っているというのに…」
ライナー「これからまた出てくるかもしれないだろ…隙有り」
ミカサ「阻止」
ミカサ「結局エレンに告白できなかった……」
ライナー「あ、好きだったのか。やっぱり」
ミカサ「やっぱりって…き、気付いていたの…?そんな……」
ライナー「いや、気付かない方がおかしいだろ…隙有り」
ミカサ「阻止」
ライナー「それでもジャンはお前のことが好きだってんだからな…健気な馬面だ…」
ミカサ「………そうだったの?」
ライナー「え、まさか今この瞬間知りましたってんじゃねえよな?」
ミカサ「まさにその通り…」
ライナー「ジャン…お前死んでも報われない奴だな…隙有り」
ミカサ「阻止」
ミカサ「エレンは…私のことを好きでいてくれたのであろうか」
ライナー「さあな。家族だっては言ってたけど…あいつ鈍かったし…」
ミカサ「それは同感。お陰で私は随分とヤキモキさせられた」
ライナー「…エレンを客観的に見れるようになるなんてな…少し前なら『そんな事は一切ない!』って食いついてきそうなもんだが」
ミカサ「訓練兵を卒業して、エレンがこの世を去って何年が過ぎたと思っているの?私だって大人にな隙有り」
ライナー「うおぉぉああっぶねええええぇぇぇ!」
ライナー「ハーッハーッ…あーびっくりだ」
ミカサ「チッ」
ライナー「俺が言えたことじゃねえけど会話で油断させるのはダメだ」
ミカサ「本当にあなたの言える台詞では無い」
ライナー「あ、そうだ戦いながら会話するか」
ミカサ「やめておく。今の私は完全に戦意を喪失している………」
ライナー「じゃあ俺の隣に座るか?ほれ」
ミカサ「……妊娠しそうだから遠慮しておく」
ライナー「思春期の妄想じゃあるまいし隣に座っただけで授かるか!!なんもしねえよ!」
ミカサ「いや、貴方の雰囲気がというかオスくささにあてられて……別に貴方が私に手出し出来る訳がないのでその辺の心配はしていない」
ライナー「えー…男として何だか傷付く…」
ミカサ「はぁー…」
ライナー「さっきから溜息ばっかりだな」
ミカサ「もう…自分の存在意義が見つからない…」
ライナー「エレンが生かしてくれたんだろ」
ミカサ「そう、エレンが…私を庇って…巨人の餌食になった…」
ライナー「ああ俺たちも見てた」
ミカサ「『ミカサ!お前は生きろ!』と言って…食べられてしまった…」
ライナー「じゃあ生きろよ。生きれば良いじゃねえか」
ミカサ「もう何年も生きた…そろそろ生きる意味を更新させたい…」
ライナー「俺がなんか言ってやろうか?」
ミカサ「1カロリーにもならない……」
ライナー「傷付くわー…」
ミカサ「エレン…私と出会った頃とは反対のことを言って…死んでしまった」
ライナー「…その出会った頃って何言われたんだ」
ミカサ「戦え!と……」
ライナー「戦ったのか?」
ミカサ「おかげで戦ってばかりの人生だった……」
ライナー「女子力高いな」
ライナー「お前とエレンってどこまで行ってたんだ?」
ミカサ「何それ…」
ライナー「キスとかはしたのか?」
ミカサ「していたら今頃あなたは細切れになっている」
ライナー「あ、所謂生きる意味ってやつですね」
ミカサ「キス…はぁーーーー…したかった…」
ライナー「飢えてるなー」
ミカサ「一回もしない内に天国の住民になってしまった…こんなことなら…押し倒してでもしておくべきだった…」
ライナー「物騒だが後の祭りだな」
ミカサ「ライナーは?」
ライナー「は?」
ミカサ「ファーストキス。ライナーはしたの?」
ライナー「…うん…まあ…アレをカウントしておいて良いのかどうか…」
ミカサ「したの?誰?」
ライナー「う…う~~~む…」
ミカサ「私の知っている人?訓練兵?」
ライナー「訓練兵だが…う~~~~む…」
ミカサ「………まさかクリスタ……」
ライナー「出来たら良いなーとは思ってました」
ミカサ「……ユミル?アニ?ミーナ?…誰?思い付かない…」
ライナー「だろうな…だって女子じゃねえし…」
ミカサ「……もしエレンだったら…」
ライナー「エレンだったら?」
ミカサ「貴方は一瞬のうちに肉骨粉になるであろう……」
ライナー「おっかねえな!ちげえよ!エレンではねえ!てかまず訓練兵時代でもねえ!」
ミカサ「そうだったの……と言うことは…エレンの言っていた山奥の故郷でのこと?」
ライナー「……ああ」
ミカサ「…………ベルトルト?」
ライナー「………」
ミカサ「納得した」
ライナー「もっと驚けよ…」
あれ…ひょっとしてまたアナタか?
ライナー「言っとくけど子供だったからだ!分別のつかない子供時代だったからだ!!!!」
ミカサ「慌てなくても良い。貴方は前々からアッチだと噂されていたから、全然意外ではない」
ライナー「慌てるわ!噂!?噂って何だ!?」
ミカサ「ライナーとベルトルトが夜毎ハードな性感プロレスに興じているという噂」
ライナー「そんな噂立ってたのか!?今ここで解いてやるよ誤解です!!!」
>>24
どなたのことを言っているのか分からないが
こないだベルトルトがボールギャグ噛まされてるssなら書いた
ミカサ「その割には貴方達の距離は随分と近かった…でも、エレンの話を聞いて納得した」
ライナー「どんな話だよ…どうせろくな…」
ミカサ「ライナー…貴方が精神的に不安定だったのだと聞いた」
ライナー「……」
ミカサ「ベルトルトはさぞかし不安を感じていたことだろう…」
ライナー「……」
ミカサ「そんな貴方を支えるベルトルトは偉い…伴侶の鑑」
ライナー「やっぱ誤解してんじゃねえか!俺はホモじゃねえ!!」
ミカサ「はぁーーーー…そんなライナーですらファーストキスを済ませていたとは…ますます生きる意味が分からない…」
ライナー「落ち着くな!それよりも!聞け!聞いてこい!」
ミカサ「聞く?何を」
ライナー「俺がベルトルトが…その…キスするに至った経緯!」
ミカサ「他人の馴れ初めなど一銭の得にならない」
ライナー「馴れ初めじゃねえ!このままだとお前、俺とベルトルトがラブラブなキスしたって思い込むだろ!」
ミカサ「違うと言うの?」
ライナー「もう完結してる!!」
ミカサ「しょうがない…では聞く」
ライナー「お、おのれ……オホン。俺んちにベルトルトが泊まりに来てだな」
ミカサ「他人の馴れ初めなど一っっっっ銭の得にならない」
ライナー「お前だって友達んちに泊まりに行くだろうが!!!」
<回想>
ベルトルト『昨日ね、お母さんと一緒に寝ようとしたんだけど…』
ライナー『お前まだ母ちゃんと寝てるのかよ』
ベルトルト『別に良いだろ!…でね、お母さんとお父さんの部屋に入ろうとドアを開けたの』
ライナー『うんうん』
ベルトルト『そしたらね、お父さんとお母さん、顔をくっつけてた…』
ライナー『顔?』
ベルトルト『うん。こうやって……』
チュ
ライナー『ふーん…』
ベルトルト『何だったんだろう…?』
ライナー『さーー…?』
</回想>
ライナー「…と、こういう経緯だ」
ミカサ「可愛い……ベルトルト可愛い…」
ライナー「どこ食いついてんだ」
ミカサ「母性をくすぐられた…他人の子供が可愛いと思えるなんて…やはり私は大人になったのか…」
ライナー「まああいつは…馬鹿可愛い奴だったよ、うん。訓練兵の時とは違ってな」
ミカサ「と言うことは…ベルトルトもファーストキスはその時と言うことに?」
ライナー「そうなるな。あいつ全然覚えてなかったけどな」
ミカサ「その気にさせておいて自分はさっさと忘れてしまうとは、高度なテクニックを…なんて罪作りな鷲鼻…」
ライナー「変なキャラ付けしてやるな」
ミカサ「実際ライナーはベルトルトのことを可愛いと思ったことは無いの?」
ライナー「どんな答え期待してんだ」
ミカサ「…ベルトルトは…」
ライナー「うん?」
ミカサ「私に殺されて…恨んでるだろうか」
ライナー「…どうしてだ?」
ミカサ「…一度ベルトルトに勉強を教わった事があった」
ライナー「訓練兵時代か」
ミカサ「どうしても分からない事があって…アルミンもマルコも手が空いていなくて…」
ライナー「あーあの二人はいつも人気だな」
ミカサ「どうしようと図書室に来てみれば、ベルトルトがいた」
ライナー「ふむ」
ミカサ「たったの一度、何を聞いたかももう覚えていないけど…ベルトルトは丁寧に教えてくれた」
ミカサ「……貴方達がエレンを連れ去った時」
ライナー「…」
ミカサ「それが頭をよぎった」
ライナー「…そうか」
ミカサ「そして手元が狂って中途半端に………ベルトルトは意外と泣き虫だ」
ライナー「はは…あいつは昔っからベソっかきだったよ…」
ミカサ「………きっと私達の前では己をさらけ出さない様にしていたのかも…」
ライナー「それに甘えていたお陰で、俺は中途半端な奴になっちまって…で、今こうなる訳だ」
ミカサ「……」
ライナー「恨んではいないと思う」
ミカサ「どうだろう…」
ライナー「壁を壊してからは俺達は…何時でもその覚悟は出来ていた。相手がミカサだろうがエレンだろうがリヴァイ兵長だろうがな」
ミカサ「……」
ライナー「どら、話し込んでいる内に夕方だ」
ミカサ「本当だ…お腹が空いた」
ライナー「晩飯は決まったか?」
ミカサ「さあ…食べることには興味が無くて」
ライナー「人間なのに損なやつだ」
ライナー「どうする?日が沈む前にもう一丁やりあっとくか?今なら体力は回復してる」
ミカサ「いや、いい…どうせ時間だけは腐る程ある…また明日ここへ来よう」
ライナー「そうか」
ミカサ「うん」
ライナー「………」
ミカサ「ライナー?」
ライナー「………」
ミカサ「………」
ミカサ「……何故キスを」
ライナー「……さぁな…」
ライナー「………」
ミカサ「………」
ミカサ「……私と貴方しか居ない…この世界は…確かに終わっているのに」
ライナー「…」
ミカサ「それでも毎日太陽が登って…お腹が空いて…夜になる」
ライナー「意外と、世界の始まりもこんな感じだったかもな」
ミカサ「……世界は終わっても、また始まるのね」
ライナー「じゃあなミカサ。道中気ぃ付けろよ」
ミカサ「そっちこそ。私に殺されるまでうっかり死なない様に」
ライナー「俺が殺されるのは決定事項か…せいぜい気をつける」
ミカサ「そう………それであの」
ライナー「?」
ミカサ「明日もキスしてくれる?」
ライナー「俺で良いなら」
おしまい
前はライベルアニ組で全滅endを書いたので
今度はライナーとミカサでアダムとイブend
おやすみ良い夢見ろよ
ハンジ「ハンジだゾエ~~~~~」
ライナー「結婚式」
ライナー「カーラース」ベルトルト「なぜ鳴くのー」
ライナー「ベルトルトの乳首からは牛乳が出る」
ベルトルト「ライナーをデートに誘ったらエレンも付いて来た」
ハンジ「一気に玩具が三つも!」ライベルアニ「…」
ベルトルト「バースデイ」
ベルトルト「悪の血」
これ
今まで書いたのは多分これで全部
ライナーとミカサでアダムとイブは室伏と澤の間に生まれた子供は凄そうだとかそんなん
ID違うけど>>1です
ライナーとミカサのその後の話を書いたんで続けてあげてく
※キャラ崩壊とか色々注意
ミカサ「エデンの先へ」
ミカサ「ライナー、今日こそそのお命頂戴仕る」
ライナー「何を!そりゃこっちのセリフってもんよ」
……
ミカサ「……私の勝ち。これで1245勝0敗」
ライナー「なんか負け過ぎて何の感慨も浮かばん…でたらめな体力だな…」
ミカサ「私は肉体を完全に支配出来る…それより。ん」
ライナー「おう」
チュ
……
ミカサ「ライナー今日こそ勝負を付けよう」
ライナー「ふわ~あ、ちょっと待ってろ今起きたばっかりだ」
ミカサ「待ち合わせの時間に起きるとか最低…」
ライナー「デートかよ……隙有り」
ミカサ「阻止」
ライナー「ちっダメか…えっと服、服…おっとその前に」
チュ
……
ミカサ「今日は曇り空…太陽も出ていないようでは、百パーセントの力で闘えまい」
ライナー「そうだな…じゃあ今日はチェスで勝負するか」
ミカサ「チェス…やったことが無い…」
ライナー「(お?もしかしたら今日こそ勝てるか?)やり方教えてやるよ」
ライナー「やった事ないって嘘だろ!初戦でボロ勝ちってどういうこった!!」
ミカサ「ルールは一回で覚えた。私は肉体を…」
ライナー「あーはいはい。じゃあ二回戦な、次こそ勝つ!」
ミカサ「…その前に…」
チュ
ライナー「見事に全戦全敗です」
ミカサ「そろそろ本格的に負けを認めてもらおう」
ライナー「まてブレード装備すんな」
ミカサ「問答無用…」
チュ
ライナー「不意打ちを覚えるとは」
ミカサ「私は常に進化している」
……
ミカサ「また来た」
ライナー「段々寝起きをピンポイントに狙うようになったな…」
ミカサ「間抜けな顔を見るのは楽しい…ライナー…住処をなんとかした方が良い。何時までも洞窟住まいは体に悪いと思う」
ライナー「男の独り住まいにアレコレとケチ付けるなよ」
ミカサ「こんな環境で体を壊したら真剣勝負が出来ない。引っ越すことは視野に入れておいた方が良い」
ライナー「相変わらず世話焼きだなー…」
ミカサ「私は山の近くに小屋を建て、そこで暮らしている。見習うべき」
ライナー「小屋…建てたのか…すげえな色々と…山が好きなのか?」
ミカサ「小さい頃は、両親と山で暮らしていたから…」
ライナー「へー…」
ミカサ「そこで生き残っていた家畜を育て、畑を耕しながら暮らしている」
ライナー「おー俺も故郷じゃ農家だったからな、懐かしい」
なんか独特の雰囲気あるな
すぐ>>1だってわかるわ
ミカサ「……ライナー…」
ライナー「……何だ?」
ミカサ「………ううん何でもない。それよりもまだしていない」
ライナー「………おう」
チュ
ザーーーーーーー…
ライナー「…今日は雨か」
ライナー「……雨粒で外が全然見えねえ」
ライナー「……今日は来れないだろうな」
ザーーーーーーー…
ライナー「……」
ザーーーーーーー…
ライナー「……」
>>77
ありがとう
でもすぐバレるってのも考えものだな…
ザーーーーーーー…
ライナー「……」
ザーーーーーーー…
ライナー「……」
ザーーーーーーー…
ライナー「……」
ザーーーーーーー…
ライナー「……」
……
ミカサ「…やっと晴れた。まる一週間降り続けるとは」
ミカサ「ライナーはうっかり死んでいないだろうか」
ミカサ「……」
ミカサ「今の私は何のためにライナーの元へ通っているのだろう…?」
ミカサ「ライナー…?私、ミカサ。居る…?」
シーン…
ミカサ「…居ないの…?」
ヌッ…
ミカサ「!!!!!ライナー!?」
ライナー「……」
ミカサ「驚いた…居るなら居ると言って欲しい…」
ライナー「……」
ミカサ「…どうして黙っている?気分が悪いの……?」
ライナー「……」
ミカサ「ライ……ん!?」
ライナー「……」
ミカサ「……ん…!」
ライナー「……」
ミカサ「はっ………どうしたのライナー…今日は何時もより激しい」
ライナー「……」
ミカサ「…体が震えている…寒いの…?」
ライナー「……ミカサ…」
ミカサ「…やっと喋った…」
ライナー「……」
ミカサ「……ライナー…」
ミカサ「…服、脱ごう」
チュンチュン…
ライナー「すまなかった」
ミカサ「気にしていない」
ライナー「…いや、本当にすまなかった…冷静じゃなかった…」
ミカサ「どうして謝るの…?私は今…体中に暖かい気持ちが溢れてる…」
ミカサ「説明が出来ないけど…とても満ち足りている」
ライナー「ミカサ…」
ミカサ「どうしてもと言うなら…」
チュ
ミカサ「これで許そう」
ライナー「……おう」
ミカサ「さて私は貴方と勝負をしに来たのだった」
ライナー「…寝技は俺の勝ちと言うことで…ぐわっ!?」
ミカサ「下品な冗談は嫌い」
ライナー「アニも真っ青な蹴りを放つな!」
ライナー「……腰のあたりがだるいな」
ミカサ「同意する。まるで動く気がしない…」
ライナー「今日もチェスで勝負か」
ミカサ「望むところ…その前に」
ライナー「ん?キスか?」
ミカサ「お互い服を着るべき」
ライナー「…だな」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ミカサ「ライナー」
ライナー「おうどうした、ここんとこ最近姿見せねえで…久しぶりに勝負でも…」
ミカサ「残念ながら、一身上の都合により暫くそれは自粛せねばならない…」
ライナー「…どうした、まさかお前ともあろう奴が病気にでも…」
ミカサ「実は…」
ミカサ「子供が出来た」
ライナー「…えっ」
ライナー「えっえっ」
ライナー「えええええええええええ!!!!????」
ライナー「本当か!?」
ミカサ「本当」
ライナー「本当の本当に!?」
ミカサ「本当の本当。私は嘘なんて吐かない」
ライナー「そうか……そうなのか…そうか…そうか」
ミカサ「……ライナー」
ライナー「ん?」
ミカサ「私は…産みたい。産んでも良い?」
ライナー「俺の方こそ…良いのか?俺なんかの子供でも…」
ミカサ「そんなことを言っては駄目」
ミカサ「貴方はとても面倒見の良い人。きっと良い父親になるだろう」
ライナー「…俺も育てて良いのか?」
ミカサ「父親だもの」
ライナー「…ああ俺今凄い幸せだ」
ミカサ「私も」
ミカサ「…引越しの良い口実にもなる」
ライナー「え」
……
ミカサ「ここが私の住まい」
ライナー「まんまと引越しをさせられた…」
ミカサ「これから出産を控えているのに、あんなじめじめと薄暗いところではストレスになる。胎教にも良くない」
ライナー「ま、良いけどよ…しかしいい景色だ。山々に囲まれて…川のせせらぎも聞こえて…何だか故郷を思い出すな…」
ミカサ「気に入ってくれて嬉しい」
ミカサ「さあ入って入って」
ライナー「押すな押すな…へえ…小屋って言うから粗末なもんかと思っていたが…随分しっかりしてるな。広いし…」
ミカサ「家族が増えるのだから、拡張した」
ライナー「拡張!?大工作業したのか!?」
ミカサ「え?う、うん」
ライナー「馬鹿!!!もし屋根から落ちてお前が怪我でもしたら…子供の何かあったらどうすんだ!?」
ミカサ「…ごめんなさい…」
ライナー「いや、俺も言い過ぎた…とにかく、これからそう言う作業は俺がするから、お前は赤ん坊を育てるのに専念したほうが良い」
ミカサ「……何だろう…今初めてライナーを男らしいと思った」
ライナー「えっ今までは?」
……
ミカサ「……ふぅ…ふぅ…」
ライナー「苦しいか?」
ミカサ「少し……でも大丈夫……」
ライナー「……手、握ってて良いか?」
ミカサ「ありがとう、心強い…」
オギャーオギャー!
ミカサ「生まれた……」
ライナー「ああ…元気な男の子だ…よく頑張ったな…しかも」
*「オギャーオギャー!」
*「オギャーオギャー!」
ミカサ「まさかの双子とは」
ライナー「やるなあお前」
*「オギャーオギャー!」
*「オギャーオギャー!」
ミカサ「……ライナー」
ライナー「……ん?」
ミカサ「二人を見た瞬間、付けるべき名前が思い浮かんだ」
ライナー「偶然だな、俺もだ」
*「オギャーオギャー!」
ミカサ「この子はエレン」
*「オギャーオギャー!」
ライナー「こいつはベルトルト」
……
ライナー「ただいまー今日の収穫だ。肥料変えて正解だったな」
ミカサ「おかえりなさい。ほらエレン、ベルトルト、ライナーにおかえりなさいして」
エレン「だーだー」
ベルトルト「うーうー」
ライナー「おーうガキ共良い子にしてたか?…ミカサ」
ミカサ「ん」
チュ
……
ミカサ「ライナーーー!!!」
ライナー「おおう何だ!?今鍬持ってんだから気を付けろ!」
ミカサ「エレンとベルトルトが!喋った!!」
ライナー「何だと!?畑仕事どころじゃねえ!!!」
エレン「みかさー」
ベルトルト「らいなー」
ライナー「おお…すまん……感激の余り言葉が出てこない…」
ミカサ「喜んでくれて何より。今日はお祝いにご馳走を作ろう」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
オギャーオギャー!
ライナー「今度は女の子か…よく頑張ったなミカサ…」
ミカサ「この子はユミル」
ライナー「え。クリスタは」
ミカサ「駄目。黒髪だもの」
ライナー「お前の遺伝子強いな……」
ミカサ「私に勝とうなど100年早い」
ベルトルト「うわーーん!」
ユミル「キャッキャッ!!!」
ベルトルト「う、うわーーん!」
ライナー「…」
ミカサ「…」
ライナー「…デジャブを感じる」
ミカサ「同じことを考えていた」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
……
ミカサ「ベルトルト」
ベルトルト「呼んだかいミカサ」
ミカサ「もうすぐ夕食が出来上がるからライナーを呼んできて欲しい」
ベルトルト「うん分かった」
ミカサ「それと……」
エレン「おいジャン!!今俺がその本読んでるんだぞ!取るんじゃねえよ!」
ジャン「うっせえんだよ!いちいち兄貴面すんな!俺が読むんだ!」
エレン「お前弟だろーが!ミカサに言いつけるぞ!!」
ジャン「こ!この卑怯者がぁぁ!」
ミカサ「今マルコはアルミンと周囲を探検しに行ってしまった…代わりに止めてあげて」
ベルトルト「またか…おーい二人共ーー…」
アニ「ミカサ、私は何をすれば良い?」
ミカサ「アニにはテーブルにお皿を並べてもらおう」
ユミル「ミカサーコニーとサシャまたぐずってるー」
……
エレン「…ミカサーさっきから、ライナーと何してるんだ?」
ミカサ「チェス。エレンもやってみる?…これでどう?」
ライナー「…あー詰まった!まーた負けちまった!」
エレン「ライナー悔しそうだな」
ベルトルト「…ライナー僕にもやり方教えて。仇とってあげるよ!」
ライナー「お!じゃあ頼む!」
エレン「俺も!」
ミカサ「ふっふっふ…何人来ようと同じこと…さあ掛かってくるが良い」
ベルトルト「」
エレン「」
ミカサ「10年早い」
ライナー「少しは容赦しろよ…」
ミカサ「遊びも子育ても何でも全力が私のモットー」
ライナー「お前らしいな」
……
ライナー「ぐわぁぁぁーーー!」
ミカサ「このわからず屋!」
マルコ「何があったの?あの二人は」
アルミン「何時もの夫婦喧嘩だよ…」
アニ「ライナーもよくやるよねー今日も豪快に投げられて…」
ユミル「なあなあ!次はどんな技で負けるか賭けようぜ!」
ジャン「乗った!俺キャメルクラッチ」
ユミル「ジャーマンスープレックスだな」
アニ「ミドルキックからのハイキック」
ライナー「おめーら俺が負ける前提の話してるんじゃねえ!!」
ミカサ「ユミル!ジャン!アニ!賭け事なんてしちゃいけない!!」
三人「うわ逃げろ!!」
……
ベルトルト「ライナァァーーーー!!!大変だぁぁー!ミカサが!!」
ライナー「ミ、ミカサがどうした!?倒れたか!?怪我でもしたのか!?」
ベルトルト「ううん違う!信じられないことが…ミカサがチェスでアルミンに負けた!!」
ライナー「何だとおおお!?」
ミカサ「何ということだ……初めての敗北…こんな日が来ようとは…」
アルミン「辛勝だったけどね…なんとか勝てた」
マルコ「ミカサが見たことの無い顔をしてる…」
ライナー「おお…マジじゃねえか…やるなあアルミン」
ベルトルト「勝つためにミカサの攻撃パターンを全て暗記していたものね」
ミカサ「全て!?凄い…アルミンはやはり頭が良い……」
アルミン「僕はみんなと違って体を動かすのは得意じゃないから…本ばっかり読んでたし…暗記力が身に付いたんだ」
ミカサ「アルミン、世界は力だけが全てでは無い。知識もとても大切なもの。これからもどんどん磨いていくべき」
アルミン「うん!」
ミカサ「さて今日はアルミンの戦勝記念、及び私の敗北記念でご馳走を振舞おう。手伝ってちょうだい」
アニ「はーい」
ユミル「うっしゃあ」
……
マルコ「ただいまー」
ジャン「ミカサただいまー。ライナーの手伝いしてたら遅くなっちまった」
ミカサ「おかえり二人共。ライナーは?」
ジャン「なんか、少し遅れるって」
ミカサ「そう。なら先に食べていましょう。みんな、手を洗ってきなさい」
「はーい」
サシャ「はぐはぐ…ミカサ!おかわりください!」
コニー「おれのめしくうなよー!」
ユミル「おらおら喧嘩はやめろお前らー」
ベルトルト「コニー、僕のあげるよ」
ミカサ「相変わらずサシャは食いしん坊だ…畑を拡張する必要がある」
ユミル「あんま無理すんなよー?また腹の中にいるんだからさ」
ミカサ「あなたたちを立派に生んでみせた。今更これしきのこと」
エレン「ミカサ!また家族増えるのか!?」
ミカサ「ええ。待望の8人目」
マルコ「そっかあ…僕また妹が良いな…」
ミカサ「そればかりは生んでみないと分からない。お楽しみに」
ライナー「ただいま。盛り上がってるな」
ミカサ「おかえり。随分遅かった…準備は出来てる、どうぞ」
ジャン「先に食ってたぜー」
ライナー「おう構わん。いただきます」
ミカサ「さあ皆、そろそろ眠る時間。歯を磨いたら布団に入りなさい」
皆「はーーい」
ゾロゾロ…
ミカサ「……ライナー。夕食の時からずっと元気がない。どうしたの」
ライナー「…今朝から山が酷く静かだった…湿気も凄い…さっき様子を見に行ったら…」
ライナー「…山裾に分厚い雲が生えていた…近い内大雨が降る…荒れるぞ…」
ミカサ「……」
ザーーーーーーー…
ゴロゴロゴロ…ピカッ!!!
アニ「……」
ベルトルト「…アニ、雷が怖いかい?こっちおいで」
アニ「うん…」
ザーーーーーーー…
マルコ「全然止まない…それどころか勢いが…」
アルミン「このまま降り続けると…まずいよ」
ジャン「何があんだ?」
エレン「山に囲まれてるからな…土砂崩れ…か」
アルミン「それもあるけど…この家の近くに、川があるだろ…氾濫して飲み込まれるかもしれない」
ユミル「だからってどうしようも…お天道様に頼むしかねえよ」
ミカサ「…みんな、起きてると恐怖が増すばかり。布団に入って眠りなさい」
アニ「…明日、晴れる?」
ミカサ「ええ、ちゃんといい子に寝ていたらね。おやすみみんな」
チュ
ライナー「…」
ミカサ「ライナー…みんな眠った……何をしているの?」
ライナー「…ミカサ」
ミカサ「まさかこの悪天候の中…外へ行こうとしてる?雨具も持たないで……」
ライナー「何だか思い出すな。あの時も大雨だった」
ミカサ「……はぐらかして…」
ライナー「一週間、ずっと雨が降っていたな」
ミカサ「ええ。あれは嫌な日々だった。畑の肥料が全て流されてしまった」
ライナー「一週間ずっと…雨の音に包まれながら…俺は孤独だった」
ミカサ「…あんな洞窟に住んでいるから…」
ライナー「だから、お前の姿を見て、急に恐ろしくなった…何もかも放り出して抱きついていた…寂しさが、霧散するような気がした…」
ミカサ「……何が言いたいの?」
ライナー「…川の防波堤が壊れる寸前だ…川下のこの家は直撃を受けるだろう」
ミカサ「!?どうしたら!?」
ライナー「安心しろ。俺が何とかしてくる」
ミカサ「そんな…どうやって…」
ライナー「一つだけあるだろ?」
ミカサ「…まさか」
ライナー「巨人体なんぞ随分と久しぶりだから、どれだけ肉体が保つかわからんが」
ミカサ「…行かせない!!」
ライナー「どいてくれ。早くしなけりゃみんな押し流される」
ミカサ「巨人じゃない私でも分かる!今の貴方では、膨張したあの巨体に耐えられない…!」
ライナー「ああ…最後に変身したのがもう何年前になるか…もしかしたら…これが最後の会話になるかもな」
ミカサ「貴方をみすみす死なせるような真似はさせない…!そんなこと許さない!!」
ライナー「なあミカサ…この雨はきっと俺への戒めだ」
ミカサ「ごまかすのはやめて!!」
ライナー「俺は…思えば今まで幸せ過ぎた…不自然なほどに」
ライナー「数え切れない人間を不幸にして…踏み潰して…今までのうのうと生きてきた」
ライナー「神は見過ごさなかったということだ」
ミカサ「…私だって人を殺した!!」
ライナー「だけど、あんなに新しい命を産んでくれた。お前はその命を守ってやってくれ。この世界で誰よりも強いお前が」
ミカサ「……まだ私との勝負の決着はついていない」
ライナー「思えばそれが始まりだったんだなあ…結局お前に一つも勝てないままだったが」
ミカサ「ライナー」
ライナー「……」
ミカサ「子供たちを……私を…置いていかないで……」
ライナー「…泣くなんてお前らしくないぞ、首席様」
ライナー「じゃあ行ってくる」
ミカサ「だっ…駄目…」
ガチャン…
エレン「んーー…何だよ二人共…また喧嘩してんのか……?」
ミカサ「え、エレン…」
ライナー「見せるな!」
ミカサ「…!」
ライナー「今から、俺の姿は誰にも見せるな…!見せてはいけない…」
ミカサ「ライナー…」
ライナー「頼む…見られたくない…」
ミカサ「……ライ……」
ライナー「…子供たちは皆俺の血を継いでいる…巨人の俺の血を」
ライナー「もしかしたら…巨人化の能力を引き継いでる不幸な奴がいるかもしれん」
ライナー「俺が巨人に変身した姿を見て…その能力が突然目を覚ますかもしれん…」
ライナー「そうなったら……戦わなくちゃならない。お前は戦えるか?自分の子供と…」
ミカサ「………」
ライナー「じゃあな…」
ミカサ「ライナー…!!」
チュ
ミカサ「これだけは覚えておいて…貴方は…この子たちの自慢の父親…そして私の自慢の夫…これまでも、これからも」
ライナー「…ありがとよ」
ガチャッ…バタン……
ミカサ「…ライナー…」
ゴーーーー…バサバサバサ…
ザーーーーーーーッ
ライナー「こりゃ酷い…もしかしたらあの時以上か?」
ライナー「…次生まれる子供の顔も拝めないなんてな。もうちょっと融通効かせてくれても良いだろうに」
ライナー「………行くか」
ガブッ カッ!!
ズゥゥウウ……ウン
鎧の巨人(久しぶりだな…この目線も……うっ…)
鎧の巨人(…クソッ……筋肉が安定しない…だいぶ重い…それに)
鎧の巨人(体中が…引攣れるように痛い!……ブランクがあり過ぎた…)
鎧の巨人(…!肌が…もう崩れ始めてやがる…身体も急速に縮んで…ボヤボヤしている暇はない…さあ、川へ……)
ズウゥン…ズウゥン…ズウゥン…
ゴォォーーーーッ
鎧の巨人(防波堤にデカい亀裂が走ってる…まずい!)
ガバッ ズシーン…
鎧の巨人(流れてきたこの岩で…なんとか保てば…良いが…)
ゴーーードガッ…!
鎧の巨人(…!巨木が…!亀裂を突き破った…)
ぐさっ
(グゥオオオオオオオオ…ンンン)
ミカサ「…!!!」
ミカサ(ライナー………!)
エレン「ミカサ……」
鎧の巨人「グゥオオオオオオオオ…ンンン!!!!!」
鎧の巨人(ぐっ…巨木がうなじに…!!治癒も遅くなっている…)
鎧の巨人(身体がどんどん縮む…!それを追いかけようと本体の細胞が持っていかれる…こんなにメチャクチャだったのか…巨人体は…)
ガーーーーーーッ
鎧の巨人(巨木が衝突した衝撃で…!防波堤が…水が!!)
鎧の巨人(俺自身が…防波堤に…『壁』になるしか…!!!)
ガッッ
鎧の巨人「グゥオオオオオオオオ…ンンン!!!!!」
鎧の巨人(ぐっ…なんて力だ…くそっ!水に押される!!!…………)
鎧の巨人(はっ…!!!こんな時に、意識まで遠く…負けるか…負けるものか!)
鎧の巨人(守らなければ…)
ライナー「守らなければ…!!」
エレン「ミカサ……」
ミカサ「………」
ミカサ(神様…本当に居るのでしたら……)
ミカサ(慈悲をお持ちでしたら…どうかその少しでも!)
ミカサ(あの人に傾けてあげて下さい……どうか…)
鎧の巨人(水をこのまま浴び続けていてはうなじの中の本体が先にくたばっちまう…)
鎧の巨人(…肌もボロボロと崩れて………)
鎧の巨人(…そうか…それだ)
鎧の巨人(肌の硬化は俺の十八番だったじゃないか)
鎧の巨人(決壊した穴は両手を広げたギリギリの幅…いける!)
鎧の巨人(よし塞げた…あとは…)
鎧の巨人(全神経を集中させて……体全体を硬化…岩になる…!!)
鎧の巨人「グゥオオオオオオオオ…ンンン!!!!!」
鎧の巨人(言う事を聞け…!これが最後なんだ…これが最後の勝負なんだ!ここで決めなければ…!)
鎧の巨人(ああミカサ…こんな時にお前の顔を思い浮かべるなんて)
鎧の巨人(はっきりと口に出したことはなかったが)
ライナー(俺はお前を……)
……
アニ「晴れた!ほんとに晴れた!」
ベルトルト「久しぶりのお日様だ…」
ユミル「やれやれ奇跡の一夜だったな…外出てみようぜミカサ…ミカサ?」
ミカサ「…………」
エレン「ミカサ…」
……
マルコ「うっわあグッチャグチャ!畑が凄いことになってる…」
ジャン「折角種撒いたのに…全部やり直しか…はーあ」
アニ「みんな!」
ベルトルト「あれを見て!!」
アルミン「防波堤に大きな穴…それを塞ぐ…岩?」
ベルトルト「何だか人間みたいな形の岩だね」
ユミル「綺麗に塞いでるもんだな…穴にジャストフィットだ」
マルコ「しかも見て…防波堤の壁とこの岩…境目が混ざり合ってる…まるで溶接痕みたいだ」
ミカサ「………」
ミカサ(貴方なのね…ライナー……)
サシャ「あれ?そういえば…ライナーのすがたがみえませんよ」
マルコ「何時もなら一番最初に起きてここに居そうだったのに…」
アルミン「もしこの岩がライナーの仕業なら…」
ベルトルト「もしかして…昨夜一人でここに来て…」
サシャ「……ながされちゃったんですか?やだよぉ……」
ミカサ「……みんな…聞いて…ライナーは」
エレン「故郷に行ったんだ」
ミカサ「!!」
アニ「故郷って…ライナーが前言ってた…」
ベルトルト「ここと似てる、生まれ故郷のこと?」
エレン「そうだ。故郷に帰っていったんだ」
アルミン「それって、凄く遠い場所だって言ってた」
エレン「ああ、もしかしたら、もう帰ってこれないかもな」
ユミル「……私達を置いてか?」
ジャン「……ミカサにも黙って?」
エレン「言っとくが、ライナーは俺達が嫌いになったワケじゃないぞ」
エレン「ここでの役目を終えたんだ。だから、帰してやらなくちゃ」
ミカサ「……」
アニ「……」
ベルトルト「……」
アルミン「…ライナーの故郷かぁ」
コニー「どんなところだろうな!」
アニ「…また会えるかな」
エレン「もちろん。また会えても良い様に、今日も明日も精一杯生きよう」
ベルトルト「うん」
ジャン「おう」
マルコ「そうだね」
ユミル「…しょーがねえなあ」
エレン「そうと決まったら、朝飯だな」
サシャ「あっそうです!ごはんーーー!!」
コニー「あっ!!またくわれる!!!」
ユミル「こら待てお前ら!!」
ベルトルト「ああもう慌てないで…」
ガヤガヤ ゾロゾロ……
ミカサ「……」
エレン「ミカサ…」
ミカサ「…エレン…」
エレン「俺…昨日の二人の会話…聞いた」
ミカサ「……」
エレン「雨音うるさかったし…内容もさっぱり分かんなかったけど…」
ミカサ「……」
エレン「俺は負けないよ」
ミカサ「…!」
エレン「俺はそんな簡単に能力ってやつに食われない。俺は強いよ、ライナーとミカサの子供だから」
エレン「あの岩…ライナーなんだろ?」
ミカサ「…ええ」
エレン「こんなにすぐ近くで見守ってくれるんだな」
ミカサ「…!!」
エレン「流石だなあ……かっこいいよ、ライナーは」
ミカサ「…うん……」
エレン「ミカサが泣くなんて珍しいなあ」
ミカサ「エレン…私は昔から…あなたに助けられてばかりね…」
エレン「え?なんだよそれ!こっちの方が助けられっぱなしだっての!」
ミカサ「ふふふ……」
こうして世界から巨人は消えた…
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ユミル「ミカサ!!生まれたぞ!女の子!」
アニ「ミカサ!平気?」
ミカサ「ええ、何とか。それより、赤ちゃんの顔を…見せて…」
「オギャーオギャー!」
ミカサ「…やっと会えた…クリスタ」
ユミル「クリスタ…」
バターーーーン!!
エレン「生まれたかーーー!?」
ベルトルト「ミカサ!無事かい!?」
ジャン「もう待ちきれねえ!!!!」
マルコ「うわあああ!三人とも!落ち着いて!」
アルミン「ごめんよミカサ!この三人がどうしてもと暴れて聞かなくて…」
ユミル「野郎ども!!産後に直撃すんじゃねえ!!休ませろ!!」
アニ「はい出てった出てった」
バシーーーン!!
ミカサ「ふふふ…」
……
クリスタ「キャッキャッ」
ユミル「クリスタ~今度はこのおもちゃで遊ぼうな~」
サシャ「…ユミルばっかりクリスタに構ってズルいです!私も遊びたい…」
ミカサ「クリスタもユミルによく懐いている…でも心配いらない。クリスタは分け隔てなく皆と接する子だから」
アニ「…ミカサって不思議だよね」
ミカサ「あ、クリスタ…ほらほら……」
ベルトルト「ライナーとミカサって、僕たちのこと、ずっと昔から知ってるみたいに詳しいよね」
アルミン「時々、『やっぱりあなたは…』とか『昔からあなたは…』って褒め方するよね」
ジャン「もしかして、会ったことがあるのかもな。ずっと昔に」
マルコ「だとしたら嬉しいね。僕達のこと、ずっと覚えてくれてたんだ」
コニー「馬鹿だから分かんねえけどさ、そう言うの神様って言うんだろ?」
ベルトルト「神様かあ…」
ジャン「ふさわしいな」
アルミン「誰よりも強くて、誰よりも頭が良くて」
エレン「誰よりもおっかなくて、誰よりも優しくて」
マルコ「誰よりも綺麗で、誰よりも肝が据わってる」
コニー「だろ?やっぱり、神様だ」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
サシャ「ミカサ!私に料理を教えて下さい!」
ミカサ「分かった。では今日の夕食は一緒に作ろう」
サシャ「いつか皆にご馳走するんです!」
ミカサ「今からその日が待ち遠しい」
アルミン「ミカサ!新しい鼠避けを考えたよ!」
ミカサ「流石アルミン、意表を付くアイディア…でもここは改良の余地有り…」
アルミン「なるほど…ミカサの意見はいつも的確で助かるよ」
ミカサ「我が家の食料庫の安全は、アルミンのおかげ」
アニ「ミカサ…今日も稽古をつけてよ」
ミカサ「よしきた。アニは覚えが早い、今日は新技を伝授しよう」
エレン「あ!それ俺にも頼むよミカサ!」
ミカサ「さて二人一緒で勝てるかな?ふふふ」
ユミル「ミカサ!クリスタと三人で散歩行こうぜ!」
ミカサ「分かった。ほら、ユミルも帽子を被って…」
ユミル「や、やだよこんな女っぽいの…」
ミカサ「ユミルも立派な女の子。とても似合ってる」
マルコ「ミカサ!ジャンと僕からプレゼントだよ!」
ミカサ「まあ二人から?綺麗な髪飾りをありがとう…大切にする」
ジャン「お、俺からとか言わなくて良いんだよ…」
マルコ「何だよ企画したのはお前なのに」
ジャン「マッマルコォォォ!言うんじゃねえ!」
ミカサ「ふふふ…二人が元気いっぱいなのが何よりのプレゼント」
コニー「ミカサ!今日も勉強教えてくれよ!」
ミカサ「任せて。それでは昨日の復習といこう…これは覚えてる?」
コニー「えーっとえーっと…そうだ!確かこれは…」
ミカサ「よく解けた。段々進歩を見せている、ので、レベルを上げよう」
コニー「お、おう……俺は天才だからな…余裕余裕…」
ミカサ「ふふふ」
ベルトルト「ミカサ…どうしよう…」
ミカサ「どうしたのベルトルト」
ベルトルト「また身長が伸びたみたいなんだ…ううう…」
ミカサ「気にしなくて良い、服は縫えば何とかなるし、身長は個性」
ベルトルト「ドアを開けておでこをぶつけるのも…?」
ミカサ「それも個性。でも怪我には気を付けて」
クリスタ「ミカサ!鳥さんが怪我してるの!」
ミカサ「あらとても痛そう。きっと自分よりも強い敵に襲われたのだろう…」
クリスタ「鳥さん…助かる?死なない?」
ミカサ「私の救護の腕は確か。それとクリスタの祈りがあれば、百人力」
クリスタ「分かった!私、鳥さんが助かるように祈るね!」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
エレン「ミカサ…」
ベルトルト「ミカサ…」
アニ「ミカサ…皆ここに居るよ」
ユミル「聞こえるか?」
ミカサ「ええ……目はもう見えないけど…声は聞こえる…」
サシャ「ぐすっ…そんな寂しいこと言わないで下さいよぉ…」
マルコ「泣くなよ…ぐすっ」
コニー「ミカサは誰よりも強いんだろ?こんな事には負けないよな?」
ミカサ「…残念だけどコニー…私も人間…天からのお迎えには逆らえない」
クリスタ「ぐすっ…ミカサ…死んじゃ嫌…」
ミカサ「死ぬんじゃない…私は…先に行くだけ」
エレン「先に?」
ジャン「ぐすっ…こんな時でも語彙の残念さは変わらねえんだなあ……」
ミカサ「ジャン…泣かないで」
ジャン「泣いてねえ……」
ミカサ「私は…一足先に、違う世界に行く。そこには…」
ミカサ「私の古い知り合いや…ライナーが待っている…」
ミカサ「私は、次はそこに暮らすの」
アルミン「…メルヘンチックだけど…ミカサらしいや」
ミカサ「サシャ…貴方の食いしん坊ぶりには何時も困らされた…」
ミカサ「けど、料理の腕はピカイチ…皆のお腹を満足させてあげて」
サシャ「はい…ミカサ」
ミカサ「ジャン…貴方の素直じゃない性格は…愛情の裏返し」
ミカサ「何時でも変わらぬ愛情を注いでね…」
ジャン「おう…」
ミカサ「コニー…貴方とサシャが絡むと、何時も家がてんやわんやだった…」
ミカサ「でも仲が良いのはとても良いこと…これからも皆と仲良く…」
コニー「ぐすっ任せとけよ、ミカサ…」
ミカサ「マルコ…頭がよくて、頼り甲斐のある貴方は…きっと皆を引っ張って行ける」
ミカサ「エレンやベルトルトと、この家を支えて…」
マルコ「ああ…わかったよミカサ…」
ミカサ「アルミン…貴方は好奇心の塊だった…きっと持ち前の頭脳がそれを助けたのね」
ミカサ「この世界には貴方が求める全てがある…好きなだけ探検すると良い…」
アルミン「ありがとう…ミカサ」
ミカサ「アニ…貴方も大概素直じゃなかった…でも、寂しがり屋で優しい心を持っている事は知ってる」
ミカサ「寂しい時は皆に頼れば良い…受け止めてくれるから…」
アニ「…うん…ミカサ…」
ミカサ「ユミル…貴方は皆のお姉さんだった…ちょっと口が悪かったけど…」
ミカサ「私に負けない肝っ玉を持ってて…きっと皆の相談役になってくれる…」
ユミル「…ああ………」
ミカサ「ベルトルト…体ばっかり大きくなって…ふふっ…泣き虫は治らなかった…」
ミカサ「でも貴方はとても優しい良いお兄さん…妹や、弟たちをよろしくね…」
ベルトルト「ミカサ………ぐすっ」
ミカサ「クリスタ…誰かが怪我をすれば一緒に痛がって、病にかかれば一緒に苦しんでくれる、クリスタ」
ミカサ「その慈愛を、何時までも忘れないで…」
クリスタ「ミカサ……!」
ミカサ「……エレン…エレン…」
エレン「…ここに居るぞ…ミカサ…皆居る」
ミカサ「ああ…エレン…元気でいてちょうだい…私が居なくなっても…」
エレン「…決まってんだろ!ミカサ…」
ミカサ「ふふ、そうね…そうだった…」
ミカサ「私は今……暖かくて…幸せ…」
ミカサ「私は…幸せ者…世界で一番の…だって」
ミカサ「皆に囲まれて、皆に名前を呼ばれて、皆に愛されてて…とても…」
「ついに来ちまったか、ミカサ」
「ライナー…とても久しぶり…元気にしていた?」
「ぼちぼちだな…よし、久々に会ったことだし、あの頃の勝負の決着をつけようか」
「望むところ…今回も私が勝つ。でもその前に……キスして」
「おう」
ミカサ(……良い人生だった…)
おしまい
おやすみ 良い夢見ろよ
>>1です
ちょっとした蛇足話上げてく
クリスタ「ねえねえミカサ…ライナーってどんな人だったの?」
ミカサ「そういえばクリスタはライナーが居なくなってから生まれたから…分からないわね…」
エレン「逞しかったぞ!ゴリラみたいに!」
ジャン「腕とかぶっとかったよな、ゴリラみたいに」
ユミル「胸板も凄かった、ゴリラみたいに」
クリスタ「ミカサ!!ライナーってゴリラなの!?ドラミングするの!?」
ミカサ「三人とも、クリスタをからかっちゃいけない」
ミカサ「もちろんライナーはゴリラでは無い…確かに身長が高くて身体もがっしりしていた、うん…そういえば眉毛が特徴的だった」
ミカサ「…口で説明するのは照れる、ので、似顔絵を描こう。私に不可能は無い」
サッサッサッサッカリカリカリカリ…
エレン「は、はやい…」
アルミン「線の一本一本に淀みが一切見られない…」
スススススス(←指でボカシ入れてる)
ユミル「これは…影か…なんて慣れた手つきだ…素人技じゃねえ…」
マルコ「消しゴムすら使わないとは……」
ミカサ「消しゴムを使うと紙が痛むし、線の消え方が冷たくて駄目…」
トトットトットトットト…
アニ「点描まで入れてきた……」
約十分後
ミカサ「出来た…我ながら会心の出来」
ジャン「ふwwwwwすっげえ似てるwwwwwww」
エレン「やべえwwwww今にも喋り出しそうだwwwwww」
クリスタ「これがライナーなのね!!へえ…何だか初めてあった気がしない」
アルミン(懐かしいなあ……しかしリアル過ぎて夢に出そうだ)
ジャン「ヒーッヒーッwwwwwダメだwwwww似過ぎて面白いwwwww」
エレン「水かけたら立体化しそうwwwww膨らみそうwwwww」
ジャン「誰か水持って来いよwwwww」
ミカサ「それはいけない。どうせならこれを額縁に入れて飾っておこう」
クリスタ「それ賛成!きっとライナーも喜ぶよ!」
ミカサ「額縁額縁…前作ったのが物置にあったはず…取ってくる」
タッタッタッタ…
コニー「なんかミカサが入れ違いに走ってたけど…なんかあったか?」
ジャン「ふーwww…ああ、実はミカサが」
コニー「よっと」
ドン(←人数分の麦茶を似顔絵の上に置いた音)
ジャン「」
エレン「」
ユミル「」
マルコ「」
アニ「」
クリスタ「 」
コニー「ん?お前らどーしたんだ?あれ?何か下に敷いてある…」
ミカサ「丁度良いものを見つけた…早速この中にライナーの絵を……」
ユミル「なんて見事な逆サソリだ…」
アニ「歴史が動く瞬間を見た……」
おしまい
レスとかありがとね
このSSまとめへのコメント
泣ける。みんな幸せになってくれ・・・
ぜひまた書いてくれ!
すげぇ いい話だな…
余韻が半端ない
思わず初コメするレベル
ミカサがエレン意外とカップルなのに違和感ないのがすげえ
うおお!すごくよかった!!!!
104期12人の生き方を考えるとマジ幸せじゃん
どんな形でもいいから幸せになってほしい