ジャン「深夜の密室で」(95)
ザアアア・・・・
バシャバシャバシャ
サシャ「ミカサ、しっかり! ほら、小屋につきましたよ!」ガチャ
ミカサ「・・・ごめんなさい、サシャ・・・わたしは重たいのに・・・」
サシャ「狩りで重いもの担いできましたし、なんてことないですよ! さあ、ミカサ、早く横になってください」
ミカサ「ありがとう・・・でも、もう平気」フラ
サシャ「無理しないでくださいね? でも、意識が戻ったので、ひとまず安心しました・・・。土砂崩れに遭って、
気を失っているミカサを見たときは心臓止まるかと思いましたよお」
ミカサ「いっしょに土砂崩れにあったのに、無傷なサシャはすごい」
サシャ「運がついてたみたいです。・・・」ブル
ミカサ「もうすぐ春だけれど、まだまだ寒い・・・、服を全部脱いでしまおう、サシャ」ヌギ
サシャ「ええっ、うー・・・ちょっと恥ずかしいですね・・・」
ミカサ「下着まで濡れているから、仕方がない。幸い、部屋の隅に大きめのタオルがある。アレにくるまろう」ヌギヌギ
サシャ「あ、本当ですね。ラッキーです」ヌギ
ミカサ「それに、もう日が暮れる。今はまだ辛うじて相手が見えるけど、真っ暗になれば、服なんて関係ない」ヌギヌギ
サシャ「そうですね。・・・」ジッ
ミカサ「・・・なに?」
サシャ「いえ、改めて見ても・・・すごい腹筋ですよね。そして意外と胸もあります」
ミカサ「胸というか、これは・・・胸筋? 単純な大きさなら、あなたのほうがあると思う」
サシャ「そうですか? 支給品のサイズはミカサの方が大きかったはずですけど・・・。
・・・なんだか、ミカサと二人だけで、こんな女の子っぽい会話したのって、初めてですね」
ミカサ「そうね。・・・・丸3年もいっしょにいたのに」
サシャ「早いですね。もう解散なんて」
ミカサ「そうね・・・あなたは将来、」
ガチャ
ベルトルト「ジャン早く中に・・・・、」ピタ
ジャン「悪いなベルトル・・・・・」ピタ
ミカサ「・・・」
サシャ「・・・」
・・・
ザーザー
ジャン「はあ・・・」
ベルトルト「・・・着替えが終わるまで、軒先で待機だから・・・。・・・この間に、ジャンの脚の怪我を治療しよう」ゴソ
ジャン「え? ああ、うん・・・悪いな」
ベルトルト「脚、出してくれ」
ジャン「ああ・・・骨折、はしてねーよな?」グイ
ベルトルト「捻挫かな・・・固定しよう」ビーッ
ジャン「悪いな・・・」
ベルトルト「土砂崩れにあったんだから、仕方がないよ」ブチッ シュルシュル
ジャン「・・・本当に、何やってんだ・・・。こんな、評価にもならない行事で、脚痛めちまうなんて・・・、
その上・・・・」
ベルトルト「・・・解散式まで1週間あるんだ、治るよ」ギュッ
ジャン(・・・。しかも、これからミカサと小屋で過ごすなんて・・・どうすりゃいいんだ)ハアー
・・・
サシャ「お待たせしました」ガチャ
ミカサ「さっきはごめんなさい。驚いてジャケットを投げつけてしまって」
ベルトルト「イヤ、・・・アレでうまいこと視界が遮られたよ・・・」
ベルトルト(二人共、肩と脚がむきだしだ・・・タオル巻きつけただけだから当たり前か。
あと、サシャが髪を降ろして別人みたいだ)ドキドキ
ジャン「つーかこっちこそ悪い、ノックするべきだったな」
サシャ「鍵かけ忘れたこちらの責任ですよ・・・はい、これお二人の」
ジャン「ん?」
ベルトルト「えっ」
ミカサ「? その服、全部脱がないと。小さめのタオルしかもうないんだけれど・・・許して欲しい」
サシャ「わたしたち、後ろ向いてますからね。・・・さすがにこの格好で外にでるのは、勘弁してほしいんですが・・・」
ベルトルト「・・・イヤ、僕は、このままでも「ダメですよ!」
サシャ「二人共、憲兵団に入ることが決まってるようなものじゃないですか! そんな大事な時期に、風邪をひいて
将来に影響がでたらどうするんです!?」
ベルトルト「わ。わかった。脱ぐよ」(巨人化の能力で、風邪なんかすぐ治せるんだけどな)
ジャン「つーか、サシャだって、憲兵団に入るだろ。・・・違うのか?」
サシャ「あー、それはですね・・・。・・・」
ミカサ「とにかく、早く脱いで。濡れ鼠のあなたたちを見ているだけで寒い。はい、バンザイをして」グイ
ベルトルト「え、ええーっと」バンザイ
ジャン「ベルトルト、バンザイしてんじゃねーよ! ミカサも、お母さんかなにかかよ・・・」モゴ
ミカサ「・・・。ベルトルト! 早く脱いで」
ベルトルト(・・・?)「い、イヤ。自分で脱ぐよ。あっちを向いていてくれ」
・・・
サシャ「完全に日が暮れてしまいましたね」
ミカサ「真っ暗で何も見えない・・・。サシャとくっついて暖をとっているから、彼女がどこにいるかはわかるけど」
ジャン「・・・」
ベルトルト「ジャン、ごめんね僕で・・・」
ジャン「え? いや、お前体温めちゃくちゃ高いし・・・人間ゆたんぽだな」
サシャ「そんなに温かいんですか? お邪魔していいですか?」
ベルトルト「駄目です」
ミカサ「そっちも、土砂崩れに巻き込まれたの。怪我は?」
ベルトルト「ジャンが脚を痛めてしまった。もう処置はしたけどね」
サシャ「ベルトルトは? 無傷なんですか?」
ベルトルト「ああ、まあ」
ジャン「こいつ、タフだよな。俺を庇ってくれて、それで無傷なんだよ、・・・本当、ひどい状況だったんだぜ。・・・俺、コイツに
庇われなかったらマジで死んでたかもな」
ベルトルト「イヤ・・・身体の面積が大きいから、衝撃が小さいのかな」
サシャ「そうなんですか・・・。わたしも、ミカサに庇われました。ミカサは、それで頭を打って気を失って」
ジャン「えっ! 大丈夫なのかよ、・・・ミカサ」
ミカサ「・・・別に平気」
サシャ「脳震盪を起こしていたんですかね。意識を取り戻してくれて、よかったです」
ベルトルト「サシャは無傷だったのか?」
サシャ「はい。山育ちですから、こういう災害ごとは慣れているんです。とはいえ、傷がなかったのは
ラッキーでした。ついてます!」
ジャン「まあ土砂崩れにあった時点で、相当な不運だけどな・・・俺たち全員」
ベルトルト「これ、評価つかない行事だしね・・・」
ミカサ「ええ・・・年度末恒例行事、通称『歩行祭』」
サシャ「それぞれのペアの成績に合わせたコースを、立体機動装置なしで歩いて戻ってくるだけっていう、地味~な行事ですよね」
ジャン「その地味~な行事で怪我してんだから、笑えるよな・・・。しかし、この様子じゃ、朝までに帰り着くのは無理だな」
サシャ「104期、全員ゴールはできないってことですね・・・」
ミカサ「わからない。救助がくることも考えられる。明日の朝8時までに帰れば合格だから・・・まだ希望はある」
ジャン「明るくなりゃ、ここがどこだかもわかるんだがな」
サシャ「そうですね・・・」
ミカサ「落ち込んでも仕方がない。・・・考えたら、こんなふうに、何もしないで過ごす時間っていうのは、ずいぶん久しぶり」
ベルトルト「そうだね・・・。解散を前にして、最終試験や実習が山積みだったし」
ジャン「最終成績にモロに響くから、妙に緊張してたよな、訓練所全体がよ」
サシャ「やることがない、っていうのも良いですね・・・。わたしはそういう時間の過ごし方も好きです」
ミカサ「わたしも、どちらかといえばそうかも・・・。ただ、今はエレンの無事が気がかり。怪我さえしなければ、
エレンのもとに駆けつけられるのに・・・」
サシャ「あ・・・す、すみません、ミカサ」
ミカサ「あ、いや。サシャを責めたりはしてない。ただ、不思議なだけ・・・。反射的に、身を呈してエレン以外を守ったことが」
ベルトルト「・・・」
ジャン「しかし、なにをするかな。まだ日が暮れたばかりで、眠くもないぜ」
ベルトルト「そうだね。・・・こうやって、雨の音を聞いてるだけっていうのも僕は好きだけど」
ミカサ「そうね・・・」
サシャ「なんだか落ち着きます・・・」
ジャン「お前ら・・・天然? っつか、おっとりしてるよな、なんか。言い方悪いが、兵士らしくないっていうか。それで成績優秀なんだから、
たいした実力だよ」
サシャ「わあ・・・ジャンに褒められました。雨がもっとひどくなりそうです」
ジャン「オイ、馬鹿にしてんのか」
ベルトルト「・・・・・ジャンは、すごいリアリストだよね」
ジャン「まあな。内地で楽な暮らしをする! これだけ考えて3年周りを蹴散らしてきたんだ。
後1週間で目標が達成されると思うと、気分がいいぜ!」
サシャ「正直者過ぎというか・・・可愛げがないのが可愛いですよね、ジャンって」
ジャン「さっきから・・・サシャ、俺はお前に喧嘩を売られてるのか?」
サシャ「いえ? 素直に言っているだけです」
ジャン「ああそう・・・お前さ、浮き足立ってるな? いつも以上に突拍子がねえ・・・この状況を楽しんでんのか」
ベルトルト「ねえ・・・ジャンって昔から、こういう性格なの?」
ジャン「・・・んん、お前もちょっと楽しんでんのか、ベルトルト。なんなんだ急に?」
サシャ「急じゃありませんよ。さっきからジャンの話題です。ねえ」
ベルトルト「そうだよね」
ジャン「なに波長あわせてんだよ・・・。イヤそれは結構だが、俺にマジレスしまくるのはやめてくれ、疲れる・・・」
サシャ「ミカサも、ジャンに興味ありますよね?」
ベルトルト「・・・!」
ジャン「・・・」
ミカサ「・・・・。サシャ・・・。あなた、タオルがはだけている」
サシャ「ええっ!? あわわ、いつの間に・・・失礼しました」
ミカサ「急に救助が来て、おもむろにランプで室内が照らされる・・・、というのもお約束の展開なので、警戒して
おいたほうがいい」
ベルトルト「ミカサ、指摘はいいけど、そういう話はこっそりやってね・・・なんかいたたまれないから・・・」
ジャン(ミカサ・・・、露骨に俺を避けて・・・。・・・当たり前か。・・・まだ怒ってんだよな)
・・・回想、数日前
ジャン「み、ミカサ!」
ミカサ「ジャン。どうしたの、こんなところに呼び出して」
ジャン「・・・イヤ、その・・・大したことじゃねーんだけど」
ミカサ「? ジャンの歯切れが悪いなんて珍しい・・・なにかあったの?」
ジャン「お、おう。あーーー・・・あのさ、・・・お前って、恋人とか、欲しいと思ったりしねーのか?」
ミカサ「・・・・」
ジャン「・・・・・」ドキドキ
ミカサ「・・・そういう話?」
ジャン「!」
ミカサ「ジャン。悪いけれど、今は試験ばかりで忙しくって、そんなこと考える余裕なんてない」
ジャン「あ・・・ああ、・・・けどよ、もう10日で解散式じゃねーか。そうしたら・・・」
ミカサ「だからこそ。ジャンも遊びのことを考えるより、憲兵に行く準備をしたほうがいい」
ジャン「待てよ、返事はしてくれ。恋人は欲しくないってことだな?」
ミカサ「欲しくないし、あなたをそういう対象に見ることもできない。話はそれだけ? わたしはやることがある、ので」
ジャン「・・・っ、なんだよその態度・・・」
ミカサ「・・・なにを怒っているの?」
ジャン「俺はな! 俺は、このことを3年ずっと考えてたんだぞ! それをお前・・・っ」
ミカサ「怒りたいのはこっち。今はそんなこと考えたくないの。・・・そんな情けのない顔を見せないで」
ジャン「あー悪かったな! こんなことなら言うんじゃなかったよ!」
ミカサ「わたしだってこんな話聞きたくなかった、じゃあね」クル
・・・
ジャン(あのときはカッとなっちまったけど・・・考えたら、ナーバスになりやすい時期に、勝手に
思いをぶつけた俺も悪かった)
ミカサ「・・・」
ジャン(・・・許してもらえねーまま、解散するのは嫌だ・・・・。謝るなら、今しかない・・・・うーん・・・)
ミカサ「・・・。昔から・・・といえば、ベルトルトは昔から大人しかったの?」
ベルトルト「え?」
ミカサ「・・・ジャンより、わたしはあなたのほうが興味がある」
ジャン(・・・)
サシャ「?」
ミカサ「ほとんど話したことがなかったから」
ベルトルト「ああ・・・そういえば、そうだね。僕ら、話しかけるタイプじゃないもんね」
ミカサ「そう。ライナーとエレンを介して、同じ空間にいることは結構あったけれど・・・二人でちゃんと話すのは
初めてかもしれない」
サシャ「訓練所はたくさん人がいますから、特に異性だとそういう人は結構いますよね・・・。今思うと、
もったいないことしました」
ミカサ「サシャはよく話してるほうだと思う。あなたは目立つ子だから。みんなにいじられていた」
ベルトルト「愛あるいじりってやつだね」
サシャ「そういえば、ミカサはよくエレンが騒いで教官に見つかったとき、わたしを買収して身代わりにしてくれましたよね・・・」ムム
ミカサ「そんなこともあったかもしれない・・・。それで、ベルトルト」
ベルトルト「あ、うん」
ミカサ「前、ライナーが言っていたの。ベルトルトは、子供の頃は結構おしゃべりな子だったって。本当なの?」
ベルトルト「・・・ライナー、そんなこと言っていたのか。どうだろう。自分じゃわからないな」
サシャ「言われてみれば、ベルトルトって結構ミステリアスですよね。子供の頃、なにして過ごしてたんですか?」
ベルトルト「・・・ええっと・・・、家畜の世話・・・とかかな・・・」
ジャン「お前は、村育ちなんだっけ? 親は家畜を飼ってたのか」
ベルトルト「う、うん」
ミカサ「ベルトルトは子供の頃、動物と過ごしていたの。羨ましい・・・。なにを飼っていたの?」
ベルトルト「牛、とか、鶏・・・かな」
サシャ「牛を飼っていたんですか? いいですね・・・搾りたての牛乳は美味しいと聞きました。本当なんですか?」
ベルトルト「そ、そうだね。街ででまわっているのよりは、新鮮でおいしいよ」
ジャン「ベルトルトは、その牛乳ででかくなったって訳か。で、近所に可愛い女の子はいたのかよ?」
ベルトルト「ええっ!? い、いないよ・・・。う、家の近い子はライナーだけだったから・・・」
ジャン「へえ~・・・。オイオイ、これくらいで動揺してんじゃねえよ。なんか、珍しいもの見れた気分だ」ニヤニヤ
ベルトルト「僕は、見世物じゃないんだけど・・・」
ジャン「うるせえ。お前もいじられる側を経験しておけ。憲兵いったら、きっとそんなことばっかだぞ」
ベルトルト「そうだね・・・」
サシャ「この流れのまま、聞いちゃいましょうか。ジャンは、どんな子だったんですか?」
ジャン「俺か・・・。俺は、学校とか習い事に行ってたな。今思うとかなり裕福だ。当時はめんどくせえって思ってたけどな」
サシャ「そんなものですよね。わたしも、今思うとお父さんに迷惑かなりかけてました・・・」
ミカサ「サシャは、お父さんに認めてもらうのが目標なのよね」
ベルトルト「そうなんだ。憲兵行きが決まったら、すぐに手紙を出したらいいよ。解散式の後にでも。きっと、喜ばれる・・・」
サシャ「・・・でもそんな不純な動機で、将来を選んでいいんでしょうか・・・」
ジャン「別に不純じゃねーだろ。確固たる意思を持って憲兵いく奴なんて、そっちのが珍しいぜ。マルコくらいだ」
サシャ「・・・そうですね。ジャン、励ましてくれているんですか?」
ジャン「ぐ・・・。お前らがマジレスばっかするから、うつっちまったんだよ・・・」
ベルトルト「あれ、僕もジャンが可愛く見えてきた・・・」ハハ
サシャ「ね! ジャンは可愛くな可愛いです」
ジャン「クソ。勝手に言ってろよ・・・」
ベルトルト「っはは・・・、ミカサは、どんな子だったんだ?」
ミカサ「わたし? わたしは・・・お父さんとお母さんと、野菜を作って暮らしていた。たまに、お父さんが動物を
仕留めてきてくれたり・・・」
サシャ「へえ・・・」
ベルトルト「山育ちなんだね」
ミカサ「そう。と、言っても、村みたいな集団の中にいた訳じゃない。完全に、孤立した場所で育ったから・・・。
あなたたちが羨ましい」
ベルトルト「・・・世間から隔離された環境っていうのは、ちょっと寂しいよね」
ミカサ「ええ。ずっと友達が欲しいと思いながら暮らしていた・・・。お父さんとお母さんは大好きだったけれど」
ベルトルト「お父さんとお母さん、やさしかったんだ」
ミカサ「すごくいい人たちだった。家族の大切さ・・・というのは、あの人たちから学んでいるんだと思う」
ベルトルト「そっか」
ミカサ「家族は命を呈しても守るもの。そういうものだと身をもって教えられた。あ・・・もしかしたら、今日のことを考えると・・・。
わたしは、同期のあなたたちを家族のように――― !」コツ
サシャ「すー、すー」カク
ミカサ「・・・サシャが寝てしまった」
ベルトルト「はは。静かにしていようか」
ジャン「・・・ああ、そうだな・・・」
・・・
サシャ(・・・? あれ、ここはどこでしょう・・・ !)
エルヴィン「いやあ、君はすばらしいよ、ミカサ・アッカーマン。君は将来の調査兵団を担う逸材だ!」
サシャ(! あれは・・・調査兵団の団長さん)
ミカサ「ありがとうございます、エルヴィン団長。光栄です」ビシッ
エルヴィン「エレン・イエーガーを守るためならば、どんな命令も聞くという、その覚悟! まさに調査兵の鏡だ。
わたしは君のような兵士を求めていたんだよ。末永く、よろしく頼むよ」
ミカサ「ハッ」
サシャ(わあ・・・! ミカサ、さすが、期待されてます! そうですよね、あの実力と覚悟があるんですから。すごいな~)
ナイル「・・・お前たちが、今期の憲兵団配属の新兵か・・・」
ジャン・ベルトルト「ハッ!」
サシャ(あっ、あちらでは、憲兵団の師団長さんと、ジャンとベルトルトが話をしています! 憲兵団の団服、かっこいいなあ。二人に似合ってます)
ナイル「憲兵団は王の楯だ・・・。貴様らにその覚悟があるのか、言ってみろ! 貴様らは何ができる!?」
ジャン「ハッ! 僭越ながら、私は立体機動の技術では、キース教官に確固たる評価を頂いでおります!
王にもしものことがあれば、私の立体機動で命を呈してお守りします!」
ベルトルト「私は、全ての分野で上位の成績を残す能力を有しております! どのような状況でも、
臨機応変に対応しうると自負しております。いずれの事態においても、必ずお役に立てます!」
サシャ(わあ~・・・二人とも、優秀ですものね! そう言うだけの実力と覚悟があります! すごく努力されてましたし)
エルヴィン「素晴らしい、さあ、共に戦おう!」
ナイル「よし、付いてこい!!」
ミカサ・ジャン・ベルトルト「ハッ!」
サシャ(あ・・・3人とも、行ってしまう。そういえば、わたしはどこの配属にしたんですっけ? エンブレムは・・・)
サシャ「・・・え」
サシャ(訓練兵団の、エンブレム・・・? そんな、なんで? 3人は、あんなに立派に憲兵や調査兵になっているのに・・・!)
スタスタスタ
サシャ「あ、あの、待ってください、3人とも! わたしもいっしょに・・・っ」
サシャ(脚が、脚が、動かない! どうして!? 置いていかれてしまう!! 誰かが脚を掴んでるん・・・っ、!?)
サシャの父親「お前は訓練兵団にいたいんやな?」
サシャ「ひっ! お・・・お父さっ・・・」
サシャの父親「よかったなあ、願いが叶って、一生、訓練兵か。・・・・この、臆病者の、恥さらしめ。一生、村に帰ってくるな」
サシャ「ち、違・・・っわたし、そういうつもりじゃ・・・っ」
・・・・
サシャ「わああああ!」ガバ
ミカサ「さ、サシャ?」
ベルトルト「ひっ・・・!?」
ジャン「な、なんだ?」
サシャ「アレ・・・? ミカサ・・・っ、調査兵団に行ったんじゃ・・・、嫌、嫌・・・っ」グスッ
ミカサ「・・・怖い夢を見たの? 大丈夫、わたしはここにいる」ナデナデ
サシャ「ミカサあっ」ギュ
ジャン「び、びびらせんなよ・・・」
ベルトルト「・・・はは・・・、・・・。僕、ウトウトしてたみたいだ。今のでやっと目が覚めた・・・」ゴシゴシ
ジャン「真っ暗だから、眠くなるよな。それに黙ってたら起きてるかも分かりゃしねー。まあ、眠いなら、寝ろよ」
ベルトルト「・・・すまない、最近、寝不足だったから・・・・、・・・・」コクッ
グロ描写注意
・・・
ヒュウウ・・・
ベルトルト(・・・ん? ここは・・・壁の上? そうか、僕は巨人に・・・って、ええ? 作戦決行までは、まだ
1週間はあったはずじゃ・・・っ、いつの間に!?)
ベルトルト(イヤ・・・任務を遂行しなくては。ライナーとアニと故郷のためだ、僕はやるぞ!)
ハナセ・・・ バケモノメ・・・
ベルトルト(! ・・・誰かを右手に掴んでいるのか。!!)
ジャン「このッ・・・化物め、手を離しやがれ・・・っ!」
ベルトルト(ジャンを、右手で掴んでいる! ど・・・どうしたら)グッ
ジャン「ぐああッ!! このまま、握りつぶす気か・・・! ベルトルト・・・いや、この悪魔め、こんなことならお前に優しくしたりするんじゃ
なかった!! 信じられねえ、どうせ罪悪感なんかなかったんだろ・・・!? 人でなしの嘘つきめ!!」
ベルトルト(い、いや、違う、違う・・・! そんなつもりじゃ・・・)ググ
ジャン「ああああッ、痛い、潰される、殺される! このッ・・・人類の仇め、人間ぶりやがって、化物が! お前を信じた
自分が憎いよっ、死んじまえええ!! あああぁぁッ」グチュッ ブチュ
ベルトルト(ひっ・・・嫌だ、嫌だ嫌だ! ジャンを殺してしまった! そんな、あああ・・・、!?)
キャアアア・・ ジンルイノカタキ・・・!
サシャ「いやあああっ!! 死にたくないです、握りつぶされるううっ、助けてくださいいっ」
ミカサ「ぐう・・・ッ、離せ、ズタズタに削いでやる! この、大量殺人鬼め・・・!!」
ベルトルト(ひ、左手にはミカサとサシャが!? あ、ああ、勝手に手に力が・・・・! 嫌だ、僕は殺したくない!)グググ・・・
サシャ「きゃあああっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいい!! わたし、なにかしたんですか!?
お願いですベルトルト、殺さないでっ、やだああ怖いよおっ!! ベルトルト助けてえっ!!」
ミカサ「ぐああ・・・ッ!! くそ、エレンを、エレンを殺させはしない!! 刺し違えてでもお前を殺す!!
殺す殺す殺す、今ここで、うなじを削いで、ころ・・・・っ!!」ギリイッ
グチュ、ポキッ
サシャ・ミカサ「・・・・」クタッ
ベルトルト(あ、あああ・・・そんな、彼女たちに、なんの罪が・・・、!)ハッ
ライナー「オイ、こっちだ!」
ベルトルト(~~ライナー! 後ろから見ていてくれたんだ! そうだよね、これは戦士の任務だから、仕方がな―――)クル
ライナー「仲間の仇! 今ここで、兵士の俺が項を削ぐ!!」ビュウッ
ベルトルト(え。・・・・あ、あはは、ライナー、完全に兵士になっちゃったの? どうしよう、殺される、そんな、そんなそんなそんな――)
・・・
ベルトルト「うああああっ!!」ギュウウウ
ジャン「ぐああああ!! 痛い、痛え、キマッてるうう!!」バンバン
サシャ「ひっ!?」
ミカサ「な、なに? なにが起きたの」
ベルトルト「うぐ、ひっく、あれ? ジャンっ・・・?」ギュウウ
ジャン「関節外れちまうからああああ!! ギブギブギブ、離せ、力を抜けえ!!」
ベルトルト「はっ! あ、ああ、ごめん!」パッ
ジャン「うぐっ、はあ、はあ・・・、お前、自分の筋力考えろよ・・・ッ」ハアハア
ベルトルト「・・・ほ、本当にごめん、ジャン」
サシャ「ベルトルトは寝相が悪いと噂に聞いてましたけど・・・、生で聞くとすごいですね」
ミカサ「今、真っ暗闇なのが、本当に残念・・・。ベルトルトはどういう技を使っていたのか見たかった・・・」
サシャ「まったくです」
ジャン「はあ・・・、お前らといると、本当に心臓に悪いよ。・・・で、大丈夫なのか? すげーうなされようだったけど」
ベルトルト「えっ。・・・あ、ああ、イヤ、大した夢じゃないから、気にしないでくれ、ジャン」
ジャン「いやそう言われてもな・・・お前の苦しみっぷり、半端じゃなかったぞ」ヨシヨシ
ベルトルト「イヤ、本当に、本当になんでもないよ・・・。だから、そんな、気をつかわなくっていいよ・・・」グス
ジャン「うーん・・・」ナデナデ
ミカサ「ベルトルト、大丈夫?」
サシャ「あなたが泣いてるのなんて、初めてみました・・・・。よほど、怖い夢を?」
ミカサ「ねえ、泣きたいと思ったら、我慢をしない方がいい。カルラさん・・・エレンのお母さんも、
よくそう言っていた。ストレスを溜め込むと、いつか爆発してしまうと。
・・・幸い、ここは暗闇だから・・・あなたが泣いても、誰も分からない」
ベルトルト「っ、へ、平気、・・・!!」グズッ
ジャン「はあ・・・・お前、案外繊細だよな、でかいくせに」ヨシヨシ
ベルトルト(泣き止まないと。おかしいと思われる! とにかく、口を抑えて・・・っ、なんで、こんなに泣いたこと、最近なかったのに!)ボロボロ
サシャ「もう、わたしたち、同期で、仲間なんですから。そんなに気を使わないでいいのに」
ミカサ「・・・ふふ、可愛いところがあるのね、ベルトルト」
ベルトルト(・・・・、・・・後一週間、後一週間で、みんな死ぬのか。イヤ違う、あんなふうに、僕が・・・・)ボタボタ
・・・
ジャン「・・・・。雨の音、すげーな」
サシャ「そうですねえ。水の音がずっとしてます。ベルトルトが鼻をすする音なんて、紛れてわかりません」
ベルトルト「ご・・・ごめん・・・」ズズ(恥ずかしくって死にたい・・・)
ミカサ「ベルトルトも疲れていた、ということ・・・・。さっきも話したけれど、最近のスケジュールはハードだった」フア
サシャ「ですね。その中で、この『歩行祭』ですから」
ジャン「『歩行祭』。・・・煩わしかったよなあ、これ。1、2年目のとき」
サシャ「はい・・・。サボりたいと何度思ったことか!」
ジャン「評価にならない、おまけに忙しい時期にぶちこんでくる。
なぜかこの訓練所じゃ、『参加するのが当然』って空気があって、俺たちは毎年参加していた訳だが・・・」
サシャ「欠席したら、先輩に目をつけられるって話でしたからね。それが怖くて、歩いたようなものですよ、1年目なんて!」
ジャン「ああ。・・・1年目か。俺、そんなふうに馬鹿にしながら歩いててよ、先輩を見かけたんだ・・・。たぶん、そのとき3年目だった人たち」
サシャ「思い出話ですか? ええっと・・・102期の人たちですね」
ジャン「ああ。その人らがさ、どっか怪我したらしくて・・・。教官が、リタイアしろって止めてたんだ。
で、先輩は、嫌だ、102期は全員ゴールするんだ、とか言っててよ。俺、完全に馬鹿にしてたんだよな」
サシャ「はい」
ジャン「そのくせ、俺もこうやって3年目に無茶して怪我してる。なんだかなと思ってさ。周りの馬鹿が移ったのか」
サシャ「それ言ったら、庇ったミカサやベルトルトも馬鹿になっちゃうじゃないですか・・・。
うーん、兵士らしくなったってことじゃないですか。正直すぎだったジャンも」
ジャン「入団式で芋食ってたやつに言われたくねーよ」
サシャ「あ、あれは忘れてくださいよ・・・」
ジャン「・・・」
サシャ「・・・」
ジャン「・・・ハハっ」プハッ
サシャ「ふふふ、・・・ミカサとベルトルト、寝ちゃったみたいですね・・・」クスクス
ピカッ ゴロゴロ
サシャ「わあっ!!」
ジャン「・・・なんだよ、お前、雷怖いのか? 自然災害は慣れてんじゃねーのかよ」
サシャ「うう・・・こればっかりは、いくつになっても怖いんです」
ジャン「こればっかり、ね。・・・お前、案外怖がりじゃねーか。他のことでもよ」
サシャ「・・・生まれつきです・・・。兵士らしくないですよね・・・本当に・・・」ハア
ジャン「? なんだ、落ち込んでんのかよ」
サシャ「ジャン、わたしを兵士らしくないって言いましたけど、その通りかもしれません・・・。
わたし、お父さんに言われて、反発するみたいに訓練兵になって訓練して・・・・。その実、なにをしたいか、
いまだにハッキリしないんですよね」
ジャン「多いだろそんなヤツ」
サシャ「まあ、ジャンが落ち込ませたんですから、聞いてください。
わたしは憲兵団を目標にしていました。でもそれは、まわりのみんながそうしていたからってだけなんです・・・。
ジャンやミカサやベルトルトが、自分の目標を持って頑張っている横で、
わたしはみなさんの真似をして浮かないようにするだけで精一杯でした。とにかく、話し方が違うくらいの
閉じた世界しか知りませんでしたから。
まあ、それでも、大概浮いてたんですけど。やさしい人たちばかりで助かりましたね。
・・・と、まあ、その結果が、今のわたしです。いい年して、なにをするかが決まってないんですよね」
ジャン「ふーん。サシャはどうしてーんだよ」
サシャ「わたしは・・・。憲兵団にも、調査兵団にも、駐屯兵団にも行きたくないです」
ジャン「イヤ、どの兵団がいいか、じゃなくてよ。なにをしたいんだ? って聞いてんだけど」
サシャ「えー・・とですね。わたしはこのままみなさんといっしょにいたいです。
・・・まあ、みんな、目標に向かってバラバラになるんですから、無茶ですけどね」
ジャン「そうか。サシャは104期といっしょにいたいのか。・・・・」
サシャ「はい・・・」
ジャン「うーん。選択肢は、3つだけじゃねーぞ。アルミンなんかは技工部に誘われてるって話だ。
お前にしかできない仕事もあるんじゃねーか。少なくとも、俺はお前くらい同期のことを
考えてる兵士は見たことがねーよ」
サシャ「イヤ、そんな・・・言い過ぎです。わたしは、来週から、まともに生きていけないかもしれないのに。
アルミンみたいに、確かな才能とそれに対する評価がある訳じゃないんです」
ジャン「あのよ、お前俺が気を使って、月並みな励ましをするようなヤツだと思ってるのか? 俺は、お前も
アルミンと同じ、何か特別なものを持ってるってタイプの天才型だと思ってたよ。それを突き詰めることも、
立派なことだと思うぜ」
サシャ「ジャン・・・」
ジャン「・・・」
サシャ「・・・すいません。わたしを思ってくれているのはありがたいんですが、さっきから鳥肌が・・・・」ゾワゾワ
ジャン「あー、部屋の中は寒いからなあ! クソ、勝手にしろよ! 俺は自分のために話したんだからな!」ワー
・・・
ベルトルト「・・・ん? アレ、もしかして僕、また寝てた?」
ジャン「もしかしなくても寝てたよ。つっても、20分くらいだけど」フア
ベルトルト「ごめん・・・君も眠いだろ。交代しよう」
ジャン「ああ・・・。でも、今は寝相が良かったな。いっぱい泣いてスッキリしたのか?」ハハ
サシャ「期待していたんですけどね、寝相。ジャンに実況して貰おうと思って。残念です」
ジャン「さっき俺が命懸けで実況したってのに、まだ足りねーのか? ・・・・生きてこの小屋をでれるか
わからねーよ、そんなペースで締められたらよ」
ベルトルト「僕の寝相ってそんなにひどいのか・・・」
サシャ「ジャンが涙目になるくらいにはひどいです」
ジャン「なってねーから」
サシャ「女の子の間でも評判でしたよ。天気占い。ベルトルト、アレはどういうシステムなんですか・・・?」
ベルトルト「僕が聞きたいんだけど・・・」
サシャ「ベルトルト7不思議の1つですね」
ベルトルト「後6つもあるの・・・?」
サシャ「あります。特に不思議なのは、やたら怪我や病気をしないってことですね」
ベルトルト「・・・体質かな。子供の頃から、そうなんだ」
サシャ「本当ですか・・・? 実はなにか秘密があるんじゃないですか」
ベルトルト「なにかって?」
サシャ「山奥の故郷の秘術とか・・・」
ベルトルト「イヤ・・・違うよ、うん。本の読みすぎだよ」
サシャ「それこそベルトルトに言われたくないですね・・・。・・・ジャン、寝ちゃったんですか?」
ジャン「・・・。・・・寝る・・・、お前らの緩い会話聞いてたら眠くなってきた・・・」スー
サシャ「わかりました。・・・で、ベルトルト7不思議の3つ目なんですけど」
ベルトルト「う、うん」
サシャ「ベルトルトって、3位なのに、かなり控えめな性格ですよね」
ベルトルト「うーん・・・、それこそ生まれつきだからな。成績は関係ないよ」
サシャ「言い方は悪いですが・・・怖がりなんですか?」
ベルトルト「そうかもね・・・」
サシャ「さっきもうなされて泣いてましたもんね」
ベルトルト「う・・・そのことは忘れて欲しい・・・、っていうか、君だって泣いてたじゃないか」
サシャ「うっ。そうですね・・・。お互い怖がりってことでしょうか」
ベルトルト「そうなっちゃうね・・・」
サシャ「そうすると、また不思議なことがあるんですけど。なんで、今日、こんなに無茶しちゃったんでしょう?」
ベルトルト「無茶って、土砂崩れの危険があるのに、行進したことかい?」
サシャ「はい。時間はかかりますが、迂回するべきでした」
ベルトルト「ルートが悪かったよね。そこを迂回すると、時間内にゴールすることはほぼ無理だったから」
サシャ「そうですね・・・。怖さよりも、ゴールしたさ? が、先にたったってことですね。・・・あ、そういえば。やっぱり、ベルトルトは
本当は怖がりじゃないかもしれません。ジャンを庇ったって言ってたじゃないですか?」
ベルトルト「ああ・・・。そうかな・・・」
サシャ「はい。・・・うんうん、怖がりじゃない、立派な兵士ですね。
なんでしたっけ。座学でも、『兵士として、人の愛を尊び、仲間と支え合うべし』と習いましたし」
ベルトルト「・・・それは違うよ」
サシャ「?」
ベルトルト「僕はそんな立派なヤツじゃないよ。実戦で、命を狙われたら、そんなこと言ってられない。
自分の命が一番、そんなヤツだよ。子供の頃からね」
サシャ「でもさっきジャンを庇ったじゃないですか?」
ベルトルト「・・・・」
サシャ「?」
・・・
ミカサ「・・・・、起きた」パチ
サシャ「あ、おはようございます。まだ、寝ててもいいですよ・・・頭を打った具合も心配ですし」
ミカサ「平気。ありがとう、サシャ。・・・ほどほどにしておかないと、睡眠のリズムも狂うので・・・起きておく」
サシャ「・・・あの、じゃあ、わたしが寝ちゃってもいいですか?」
ミカサ「どうぞ。わたしを背負ってくれて、疲れているはず」
サシャ「すいません、・・・・」クークー
ベルトルト「・・・サシャは、細身なのに体力があるんだね」
ミカサ「本当に。もともと代謝がよくて、その上よく食べるから、摂った分のエネルギーをそのままだせているのかな」
ベルトルト「なるほど・・・。うらやましいな」
ミカサ「どうだろう。サシャ本人は、あれで悩んでいたよう。自分の食欲に・・・燃費が悪いと」
ベルトルト「いろんな悩みがあるんだね」
ミカサ「あなたは、燃費の良いタイプよね」
ベルトルト「そうだね・・・訓練所のご飯だけで、すくすく大きくなったからね・・・」
ミカサ「訓練所、というか、・・・・あなたも開拓地にいたのよね? 成長期にその環境でその体格は、もはや奇跡」
ベルトルト「ははは・・・」
ミカサ「もし、あなたが裕福な家の子だったら、2mは超えていたのかもしれない」
ベルトルト「この環境でよかったのかもな・・・。でも、君もすごいじゃないか。その筋肉。身長だって高いよ」
ミカサ「そうね・・・。もう少しで、エレンを超えれそう」
ベルトルト「超えたいの?」
ミカサ「複雑・・・」
ベルトルト「ははは」
ミカサ「男性は、やっぱり小さい子が好きなの?」
ベルトルト「僕はあんまり気にしないけど。人それぞれじゃないかな。ミカサは、エレンがすごく大きかったり、
すごく小さかったりしたとして、気持ちは、「変わらない」・・・だよね」
ミカサ「エレンは・・・エレンだから。大事な家族」
ベルトルト「そっか・・・」
ミカサ「あなたにとってのライナーが、わたしにとってのエレンなのかも」
ベルトルト「・・・えっと、そうかな。なんか、急だね?」
ミカサ「なんだろう・・・。話していたら、わたしとあなたは、似ているところがある気がしてきて」
ベルトルト「うーん・・・僕はミカサみたいに優秀じゃないよ。そう言ってくれるのは、うれしいけどさ」
ミカサ「そう? わたしもあなたも、戦闘スタイルはオールラウンダーじゃない」
ベルトルト「そうだね・・・ミカサの下位互換だとよくいわれたよ・・・」
ミカサ「わたしたちは、機械じゃないのにね・・・」
ベルトルト「そうだね・・・。僕の落ち込むポイントは、そこじゃないけどね」
ミカサ「そんなあなたに質問がある」
ベルトルト「うん?」
ミカサ「この土砂崩れで無傷はすごい・・・・ので、うまい受身の取り方などについて、教えて欲しい・・・」
ベルトルト「え、うーん・・・」(本当は怪我をすぐ治しただけなんだけど・・・)
ミカサ「思えば、あなたはこの3年でも、みんなが怪我してしまう場面をほぼ無傷で切り抜けていた。
その技術は素晴らしいし、わたしは負けていると思う。・・・エレンを守るためにも、ぜひ知りたい」
ベルトルト「・・・運が良いだけだよ」
ミカサ「・・・。本当に、ベルトルトは謙虚ね」
ベルトルト「そうかな」
ミカサ「よく、エレンもそう言っていた」
ベルトルト「・・・。僕、エレンによく思われてなかったよね・・・?」
ミカサ「? そんなことはない。嫌ってはなかった。というか・・・・無関心?」
ベルトルト「ああ、それ、すごくしっくりくるよ・・・」
ミカサ「・・・エレンは、関心がない相手は、その場にいても認知しない癖がある。不快にさせていたならごめんなさい」
ベルトルト「・・・イヤ、いいよ・・・、謝られたら余計・・・、うん、気にしないで」
ミカサ「・・・あなたは、エレンを気にしていたの?」
ベルトルト「うん?」
ミカサ「あなたも、エレンに対して、無関心な方だと思っていた。というか、同郷のライナー以外に対しては、
その・・・無関心なんだと」
ベルトルト「そんなことはないよ・・・・。僕、やっぱり淋しいヤツだと思われてたんだね・・・薄々感づいていたけど」
ミカサ「わたしも同じようなもの」
ベルトルト「・・・・。えっと。・・・そうだな、僕はエレンを気にしていたよ。僕と真逆に見えたから。それでかな」
ミカサ「それはあなたの主観じゃない? そうでないと言う人もいると思う」
ベルトルト「ははは、まあ、主観だね・・・」ハハ
ミカサ「・・・ふふ」
ベルトルト「・・・・」
ミカサ「意外」
ベルトルト「うん?」
ミカサ「あなたとわたしで、こんなに喋れるなんて・・・」
ベルトルト「そうだね・・・僕も同じこと考えてたよ」
・・・
ジャン(・・・?)
ジャン(あれ、ここはどこだ・・・。俺は、小屋にいたはずじゃ。これは夢か? ・・・・ん?)
リーンゴーン・・・
オメデトウ!! シアワセニナッテネ
ジャン(なんだここ・・・。教会? 結婚式してんのか? ・・・!)
ミカサ「ありがとう、みんな。わたし、幸せになる・・・!」
ジャン(み、ミカサのウェディングドレス姿! なんて綺麗なんだ・・・黒髪が白に映えてて・・・! で、隣にいるのは・・・)
エレン「あ、ありがとう、みんな」
ジャン(やっぱり、死に急ぎか。・・・わかってんだよ、そんなこと。俺はどうせ、訓練兵の間だけのただの同期なんだ・・・)
ミカサー! エレン、キス シロヨー
ジャン(・・・でも不思議と、嫌な気はしねーな。おかしいよな、こないだ告白したのに。・・・ああ、わかってるんだ。
ミカサを本当に幸せにできるのは、エレンだってことぐらい、・・・だったら、今俺がすべきことは・・・。・・・っ)
ジャン「ミカサ!」
ミカサ「! ジャン・・・」クル
ジャン「し、幸せになれよ!!」
ミカサ「・・・!」ニコ
ジャン(ミカサが、笑いかけてくれた、俺に向かって・・・! ・・・ああ、これで十分だ。俺が望んでるのは、これくらいで
十分なんだよ。・・・逆にいえば、俺に覚悟はなかった。憲兵を捨てて、ミカサの元にいく、なんて選択は
ハナからなかった。・・・ミカサは、エレンのために、調査兵団へ行くってのにな。
・・・それを考えたら、・・・ミカサのエレンへの気持ちに比べりゃ、俺の告白なんて、全然響かないものだったんだろうな)
キース! キース!
エレン「し、仕方ねーな」
ミカサ「え、エレン、恥ずかしい、・・・っ」メヲトジル
キース! キース!
ジャン「・・・!」フイ(でも、そういうとこを見るのは・・・! !?)
キース「呼んだか」スッ
ジャン(!?)「い、イヤ、教官。あなたを呼んでいる訳ではないですよ・・・?」
キース「なんだ、ジャン。教官なんて、改まった言い方をして・・・」
ジャン「ハ、ハイ?」
キース「私とお前は、夫婦ではないか」ポッ
ジャン「!?」
ネーネー・・・ オカーサーン・・・・
キースの顔の子供1「おかーさーん、お腹減ったよー」
キースの顔の子供2「ねえーだっこしてー」
キースの顔の赤ん坊「ウワアアン」
キース「コラコラ、静かにしろ」
ジャン(・・・ど、どういうことだ。・・・・俺の状況認識力をもってしても、訳がわからねえよ・・・!)ガタガタ
キース「ジャン」
ジャン「は、ハイイ?」
キース「・・・イヤ・・・、あ、アナタ」ポッ「私は、末っ子に母乳を与えるから・・・、上の子を頼む」フクヲメクル
・・・
ジャン「~~~~ッ!!」カッ
ベルトルト「わっ。ジャン、起きたのか?」
ジャン「・・・っ、あ”、あ、ああ! 起きた、起きたぜ!!」ガタガタドクドクバクバク
ベルトルト「??」
ジャン(忘れろ、忘れるんだ、ジャン・キルシュタイン・・・! クソ、グロい夢見ちまった・・・! おええ・・・!)
ミカサ「・・・。ベルトルト。ごめんなさい、急に眠くなってきた」
ベルトルト「あ、うん。わかった、じゃあ、ジャンと交代だね」
ミカサ「おやすみなさい、ベルトルト」
ベルトルト「おやすみ」
ジャン「・・・っ。・・・・はあ、・・・・笑える夢見ちまったよ」
ベルトルト「・・・どんな夢?」
ジャン「くく、お前も絶対噴き出すぜ。・・・ええっとな。まず、ミカサと死に急ぎが結婚式してんだ。その時点で笑えるんだけどよ、その後―――」
ベルトルト「・・・ジャン」
ジャン「! な、なんだよ。・・・そんな低い声出して。なにか怒ってんのか?」
ベルトルト「・・・。あのさ」チラ
ミカサ「・・・・」スー、スー
ジャン「・・・?」
ベルトルト「君は憲兵団に行くんだよね?」
ジャン「ああ。決まってんだろ」
ベルトルト「ミカサは、恐らくエレンと調査兵団に行く」
ジャン「ああ」
ベルトルト「僕は絶対、今、言いたいことは言っておくべきだと思う」
ジャン「!? ・・・きゅ、急になんの話だ。寝ぼけてんのか、ベルトルト」
ベルトルト「僕は真剣だよ。君のミカサへの思いに、気づいてない訓練兵なんていないよ。・・・ミカサ以外はね」
ジャン「っ・・・お、おどろいたぜ。お前、そんなにグイグイこれるヤツだったんだな・・・」
ベルトルト「・・・・」
ジャン「そう言ってくれるのは、まあ、うれしいよ。でも、・・・やっぱり今は言うべきじゃねーと思うんだ。バタバタしてるしな」ハハ
ベルトルト「今はって・・・。君ら、解散式で別れるじゃないか」
ジャン「別れるって言ってもよ。憲兵団と調査兵団、所属が違うだけで、会う機会はあるだろ。それこそ、同窓会とかよ。
別に、解散式が終わったら、死ぬまで会えないって訳じゃねーんだし―――」
ベルトルト「・・・・っ絶対、言うべきだ」
ジャン「ベルトルト?」
ベルトルト「・・・責任ある立場になるってことは、大きなことだと思うよ、ジャン。・・・例えば、ミカサが実力を
買われて出世して、・・・仕事のために結婚しなくてはならないような立場になったらどうする?
・・・そうなったら、ジャンとミカサは、全く地位の違う人になるかもしれないんだぞ」
ジャン「どうしたんだよ、熱くなって。・・・・本当に心臓に悪い」
ベルトルト「そうでなくても、お互い、いつ死ぬか分からない任務に就くことになるんだ。
そうしたら、恋だ、愛だって、絶対に言ってられなくなる。
責任のない立場であるのは、もう、少しの間でしかないんだ。今しかないんだよ」
ジャン「・・・。突拍子は、ねえけど・・・。言いたいことはわかるぜ、ベルトルト」
ベルトルト「・・・・。」
ジャン「・・・・あー、わかってるよ、言うよ! きちんと言うべきだよ、長い目で見たらよ・・・」
ベルトルト(長い目・・・)
ベルトルト「ああ、今、言うべきだ。・・・君たち、一週間後に殺され・・・ても、おかしくないんだぞ・・・」
・・・
サシャ「ん? ・・・ふああ、良く寝ました」
ミカサ「あ、・・・おはよう、サシャ」
サシャ「いえ。・・・うん?」
グーグー
サシャ「あらら・・・これは、ジャンとベルトルト、寝ちゃってますね」
ミカサ「なにか、熱い議論をしていたのは、ぼんやり覚えているんだけど・・・いつの間に」
サシャ「へえ~なんの話で盛り上がってたんでしょう」
ミカサ「さあね。とにかく、わたしたちが起きて・・・ゆっくり寝させてあげよう」
サシャ「・・・」
ミカサ「?」
サシャ「ミカサって、しっかりしてますよね。・・・正直、たまに、年下ってことを忘れちゃいます」
ミカサ「そう? 山育ち同士で・・・わたしは、あなたに親近感を感じているのだけど」
サシャ「そうなんですか? ・・・うーん・・・だとしたら、余計に考えちゃいますね。同じ山育ちなのに、
なんでこんなに違うんでしょう?」
ミカサ「サシャだって、成績上位じゃない。年だって、一つしか変わらない」
サシャ「うーん・・・その一つが大きいんじゃないですか。誕生日が近づいたときなんか、すっごく感じちゃいますよ、
一日が短いって。特に、2月から7月にかけての5ヶ月間は・・・」
ミカサ「2月から7月・・・わたしたちが同い年である期間。・・・驚いた、そんなにわたしを気にしてくれたの?」
サシャ「はい・・・。年下で主席、同じような生まれ育ち。最終成績がでる解散が近づくほど、意識しちゃってましたね」
ミカサ「・・・そうなの」
サシャ「はい。・・・はあ、解散式、いつの間に、後1週間なんてことになったんでしょう。本当にどうしようかな・・・」
ミカサ「サシャ・・・」
サシャ「わたしは美味しいものが食べれれば、あとはどうでもいいんですけど・・・」
ミカサ「・・・」
サシャ「・・・?」
ミカサ「あるじゃない、目的。そう、言い切れるなら、大丈夫だと思う」
サシャ「いえ、そんな、そんな・・・。不安でいっぱいです」
ミカサ「そう・・・。なら、不安を吹き飛ばすのに、いい方法がある」
サシャ「?」
ミカサ「この世界は、すごく広いと、アルミンが言っていた」
サシャ「広い? ・・・なんの話ですか?」
ミカサ「広い。それこそ、・・・平均的な村の面積の、200万倍はあるそう」
サシャ「に、200万倍!? 想像できませんね・・・」
ミカサ「途方もない広さ・・・。生まれ育った場所も、そのくらいの面積だった、ということ・・・。そんなことを考え方をすると、
だいたいのことは、どうでもよくならない?」
サシャ「そうですね・・・」
ミカサ「でしょう。アルミンにはいろんなことを教えられた」
サシャ「・・・ミカサ、本当にアルミンが好きなんですね」ハハ
ミカサ「自慢の子なの」フフ
サシャ「アルミンのことも、もっと聞いていいですか?」
ミカサ「勿論、・・・眠たくなるまで、話そう」
・・・
ミカサ(・・・あれ、・・・! しまった、眠っていたんだ)
ミカサ(ここはどこだろう。夢? ・・・訓練所の裏庭。あ、そうだ、ここは・・・)
エレン「ミカサ・・・なんだよ、改まって、話って」
ミカサ(エレンに、思いを伝えようとした場所だ)
エレン「オイ・・・なんなんだ? 俺たち、しょっちゅういっしょにいるのによ。ここに来て、なんて」
ミカサ「それは・・・ここで言いたいことが、ある、から」
エレン「・・・なんだよ、歯切れ悪いな。お前らしくねえ」イライラ
ミカサ「あの、・・・・わたしは、エレンに・・・・子供の頃と、少し違う気持ちを持っている。・・・あなたは、どう思ってる?」
エレン「・・・!」
ミカサ「・・・・」ドキドキ
エレン「・・・なんだよ、くっだらねえ」
ミカサ「!」
エレン「ミカサ。悪ぃけど、今は試験ばかりで忙しくって、そんなこと考える余裕なんてねーよ。
どうしたんだ? お前らしくねえな。周りの女子に影響されたのかよ」
ミカサ「・・・もう、11日で解散式。調査兵団にいったら、忙しくなると思う。だから今・・・」
エレン「だからこそだろーが! クソ、恋とか遊びのこと考えてる場合かよ。調査兵団に行く準備をしなきゃならねーんじゃねーのか!?」
ミカサ「ま・・・待って、返事はしてほしい。恋には、興味ないってこと?」
エレン「興味ねーし、お前をそういう対象に見ることもねーよ。話はそれだけなのか? 俺は成績残すために焦ってんだよ、天才のお前と違ってな!」
ミカサ「・・・っ、エレン、・・・その、態度は、・・・さすがひどい・・・・わたしも、・・・傷つく」ボソ
エレン「はあ? ・・・なにを言ってんだよ?」
ミカサ「わたしだって・・・・っ。・・・わたしは、このことをいつか伝えたいと、ずっと思っていた。それなのに・・・」
エレン「ハア・・・、怒りたいのは俺だ! 解散間際なんだぞ、優秀なお前と違ってな、俺はもう一杯一杯なんだ!!
他人のこと気遣う余裕なんかねーんだよ! わかったら、今そんな話しないでくれるか!!」
ミカサ「・・・! ご、・・・ごめんなさい、エレン。反省してる。・・・こんなことなら・・・言うんじゃなかった」フラ
エレン「俺も今、こんな話聞きたくなかった。じゃあな」クル
ミカサ(・・・11日前のことだ。・・・・ソックリ、夢で見るなんて。わたしは・・・、・・・)
・・・
ミカサ「・・・? あれ、わたし・・」
ジャン「ミカサ、・・・・」
ミカサ「・・・ジャン」
ジャン「・・・」
ミカサ「二人は? 寝ているの」
ジャン「・・・あ、ああ」
ミカサ「・・・・」
ジャン「・・・・」
ミカサ・ジャン「「あの、」」
ミカサ「・・・・」
ジャン「・・・あー、・・・・お前から言えよ、・・・・」
ミカサ「・・・ジャン。ごめんなさい」
ジャン「!?」
ミカサ「わたしは、この前あなたに当たっていた。わたしは、・・・あの日の前日に、エレンと喧嘩をしていたの」
ジャン「・・・」
ミカサ「そして翌日、あなたに言われたことは・・・・前日のわたしの言葉と同じだった。
気が動転して、キツいことを・・・・わたしは冷静じゃなかった」
ジャン「・・・エレンに、告白したのか」
ミカサ「・・・? ずっと、言いたかったことを言おうとした。それだけ・・・あなたも、そうでしょう?」
ジャン「はは、・・・そうだな」
ミカサ「本当にごめんなさい、ジャン。・・・正直に言うと、あのとき、あなたが可哀想に見えたの。
昨日、エレンもわたしを可哀想って思っていたのかと思うと、・・・・見てられなかった」
ジャン「・・・・。俺こそ、すまなかった、ミカサ。お前のことを考えず、自分の気持ちだけを
ぶつけて、困らせちまったな」
ミカサ「・・・・ううん」
ジャン(・・・ミカサに、謝ることができた。・・・もう十分だ、これ以上は望まん)
ジャン(イヤ、だが・・・・っ、クソ、言うべきじゃない。でも・・・、今しかない、・・・)
ミカサ「ジャン?」
ジャン「・・・ミカサ、あのよ」
ジャン(今は、・・・たぶん、いい雰囲気ってヤツだ。玉砕しても、きちんと言うなら、・・・今だ!)ドキドキ
ミカサ「うん?」
ジャン「・・・ッ」
ジャン(ダメだ、やけに喉が渇いて声がでねえ・・・! 落ち着け、落ち着くんだ。目を閉じて・・・深呼吸。
リラックスするんだ、そしてミカサに・・・・、・・・・)
ジャン「・・・・っ、・・・・・、・・・・・」カクッ
ミカサ「・・・ジャン? 眠たいの?」
ジャン「・・・ッ!? い、イヤ、・・・・・・・、・・・・」コクッ(う、嘘だろ・・・・目が開かねえ!! なんだこの、猛烈な
眠気は・・・! ・・・・安心したってのか、ミカサに許してもらって、・・・・お、俺は・・・・まだ・・・・っ)
ミカサ「・・・? ・・・・。・・・ジャン、」
ジャン「・・・、・・・」グーグー
ミカサ「・・・ふふ、おやすみなさい、ジャン」ニコ
・・・
AM6:07
エレン「アルミン・・・! あの小屋のドアにかかってる服! やっぱり・・・あの色、間違いねえ、兵団のジャケットだ!」
アルミン「うん! あの小屋に、きっとミカサたちはいるんだ・・・!」
ライナー「急ごう。大怪我をしてるって可能性もある」
コニー「ああ。あわよくば、8時までに連れて帰ってやろーぜ、そしたら104期全員ゴールだ!」
マルコ「ああ、無事でいてくれ・・・!」
ガラッ
アルミン「ミカサ! 無事か、い・・・」
ミカサ(半裸)「! 眩しい・・・、アルミン・・・!」
アルミン「ふ、ふわああっ、み、ミカ・・・っ」カー
エレン「なんだ!? ミカサがどうかした、のか・・・」
ライナー「・・・・おっと」サッ
コニー「?? なんだよライナー、なんで目隠しするんだよ!」
マルコ(僕は木・・・僕は木・・・なにも見ていない・・・)
訂正
>>60
前日のわたしの言葉と同じだった。→前日のわたしと同じことだった。
サシャ「ふああ・・・なんですか?」ムク
アルミン「サシャー! 君に至っては、丸出しだよおっ、隠してえっ」
ベルトルト「?」ムク
ジャン「んあ・・・・誰だ?」ムク
サシャ「・・・。巨大なサツマイモと、・・・・長芋・・・・?」ゴシゴシ
アルミン「あわわわ・・・」
ライナー「・・・よし、全員、注目! とりあえず服を着ろ! そしたら走るぞ、今なら合格に間に合う!」パンパン
・・・・
タタタタ
エレン「しかし、良かったぜ、見つかって・・・! 怪我も、大したことなかったみたいだしよ」
アルミン「え、エレン・・・君はなんでそんなに普通にしてられるんだい? 僕は、もう、あの光景を
たぶん一生忘れられないよ・・・・」
ミカサ「アルミン、少し遅れている。わたしがおぶるべき?」
アルミン「い、いいよおっ」カー
ジャン「・・・」
ベルトルト「ジャン、・・・・なにか、いいことがあったのか?」
ジャン「イヤ、・・・別に、・・・けど、・・・」
ベルトルト「・・・! 話、したんだ」
ジャン「・・・あー、まあな・・・」
ベルトルト「そうか、・・・良かった・・・!」
・・・
訓練所 AM7:55
アニ「7時、55分・・・・」
クリスタ「・・・・っみんな・・・大丈夫かな。まさかこんなことになるなんて・・・」
ユミル「まあ、仲間意識を深めさせるため・・・みたいな行事だからな。その目的は大いに達成されてるんじゃねえの」
クリスタ「ユミル、からかってるの? わたしは本当に心配して・・・・!」
アニ「アンタ、本当に大した良い子だね・・・」フウ
ユミル(アニもなんだかんだ、随分待ってるくせにな。素直じゃねーよな)
クリスタ「・・・・。あっ」
タタタ・・・
エレン「おーい! クリスタ、アニ、ユミル!」
・・・
訓練所 AM7:59
マルコ「はあ、はあ、これで全員かな・・・!」
ジャン「・・・悪い、マルコ、途中から肩貸させちまって」
マルコ「気にするな、仲間だろ」
クリスタ「やった・・・! これで全員なの? ギリギリ間に合ったよ!」
アルミン「104期、全員ゴールだね!」
エレン「ああ、土砂崩れの影響を受けたルートを指定されてた、上位10名は・・・、1、2、3・・・」
アルミン「8、9。・・・9、あれ。・・・・9?」
エレン「・・・あと一人は?」
・・・
訓練所 AM8:01
サシャ「み、みなさん、遅れてすいませんっ」ゼエゼエ
ジャン「さっ、サシャー!! 遅えよッ!!」
コニー「サシャ、どうしたんだよ? さっきまでいっしょにいたろ。転んだのか!?」
サシャ「いえ、そんなんじゃないんです。コレを・・・」スッ
マルコ「・・・木苺・・・?」
エレン「え、まさかお前、これを取るために、遅刻・・・・?」
ジャン「おっお前なああっ!」グイー
サシャ「ご、ごごごごめんなさい!! みなさん、お腹空いてるだろうと思って! わたしのせいで、
迷惑かけちゃいましたし・・・! それで、ついいっ」
アルミン「・・・・104期は、サシャ以外、全員ゴールだった訳か・・・」ハハ
ライナー「まあ、いいじゃねえか。無事だったんだから」
コニー「そうだよな! 怪我したんじゃなくて、よかったぜ・・・!」
ジャン「・・・まあな」
コニー「でさ! 俺さっきから思ってたんだけど、ゴールの記念に寄せ書きしねえ?」
エレン「寄せ書き? ・・・ああ、意味は間違ってるけど、わかるよ。記念に、みんなでメッセージを書こうってことだな」
アルミン「でも、ここには紙なんかないよ。どうやって、・・・!?」
コニー「ああ、この石畳にだ! 石で削れば、ずっと残るぜ! こうやって、"104期ここに集う”って・・・!」ガリガリ
マルコ「!? コニー、待て、あああ・・・・!」
ジャン「こ、この馬鹿! そんなことしたら、教官に殺されるぞ!!」
コニー「え、・・・そうだっけ」
ライナー「お前なあ・・・」ハア
エレン「・・・でもよ、もう書いちまったもんは、仕方ねーよな」
ジャン「お、おい?」
エレン「どうせなら、・・・俺も、書きたい」ウズウズ
アルミン「エレン!? ま、まあ確かに・・・僕も書きたいけど」
マルコ「・・・正直言うと、俺も・・」
ジャン「ぐ・・・確かに」
ジッ
ライナー「・・・。」ウーン
ジーッ
ライナー「・・・よし、書いちまうか! 責任は俺がとる!!」
男「「さすがライナー! 兄貴!!」」
ワイワイ ガリガリ
ベルトルト「あ、ああ・・・、規律違反だ、ライナー、何を考えているんだ・・・!」
ベルトルト(こんなことで成績に傷がついて憲兵行きを逃したら、・・・作戦失敗したら、笑い事じゃすまされないぞ!)ハラハラ
サシャ「・・・・あ、ベルトルト。あれ」ツンツン
ベルトルト「え? ~~ッ!!」
キース「・・・」ジーッ
ベルトルト(教官に見つかった・・・・! もう終わりだ、どうすれば・・・)アセダラダラ
キース「・・・・」クル
ベルトルト「え・・・」(帰っていった。・・・どうしてだ、見逃した・・・?)
サシャ「座学で習った通りなんですかね?」
ベルトルト「え?」
サシャ「『兵士として、人の愛を尊び、仲間と支え合うべし』っていうの。
教官も、仲間と仲良くするためなら、たまになら許してくれるんじゃないですか?」
ベルトルト「・・・そういうものなのか?」
サシャ「そういうものみたいです」
コニー「ベルトルト! サシャ! お前も書けよ!」
サシャ「はい! いきましょう、ベルトルト!」
ベルトルト「あ、ああ」(い、いいのか、こんなハートフルな展開で・・・)
欝注意
・・・・
数ヵ月後
コツ、コツ、コツ
男「では、これより実行する。・・・無駄な抵抗はするなよ。せいぜい、最期の会話でも楽しんでおけ」
バタン
ジャン「・・・会話でも楽しんでおけって、拘束された上、この真っ暗な密室じゃ、会話ぐらいしかすることねーじゃねーか」
ミカサ「会話も、少ししにくい・・・喉がひっかかって・・・・」
ベルトルト「・・・思い出すな」
ジャン「ああ、歩行祭のことだろ。俺もだ」
ミカサ「ここにサシャはいないけど」
ジャン「なんか皮肉だよな。また、104期でサシャだけゴールできないなんてよ」
ミカサ「それを喜ぶべきか、嘆くべきかも・・・わからない。わたしに悔いはないけれど。エレンが、104期の皆が待っている」
ジャン「たぶん、海とか行ってんだぜ。みんなでよ」
ベルトルト「・・・ごめん」
ミカサ「どうしたの?」
ベルトルト「僕、ハナからスパイで、104期じゃなかったのに、ここにいて」
ジャン「なんだ、ベルトルトはそんな疎外感を感じていたのか」
ミカサ「もう、こうなったら、あなたも104期。あの戦いに、正義も悪もなかったんだから」
ジャン「大義の為にってヤツだな。まあ・・・もうどうでもいいんだよ、ここまで来たら。あの3年、いっしょに
過ごしたヤツは全員104期。それでいいだろ」
ベルトルト「二人共・・・」
ジャン「しかし、数ヵ月ぶりに再会できたのに、お前ヒドイ面だったよな?」
ミカサ「ずっと拷問を受けていたのでしょう」
ベルトルト「ああ。まあ・・・それは、大して辛くなかったんだけど、・・・。・・・でも久しぶりだな、こうして
なにもしない時間を過ごすのは」
ジャン「俺たちって忙しいよなあ。生き急いでたっていうか」
ミカサ「これなら15歳で終わっても納得」
ジャン「うーん・・・まあ、内容が濃かったって意味ではな。納得かな。俺はもう16歳だけど」
ベルトルト「マルコと同い年だ」
ジャン「あー、言われてみれば。・・・お前、よく思い出したな、今、それを。・・・そうだな、マルコも、
俺と同じ頃に死んじまったんだな」
ミカサ「そう思うと・・・マルコは幸せな人生を過ごせた・・・のかも」
ジャン「はあ・・・皮肉すぎるぜ。やってられねーな、本当」
ミカサ「マルコ・・・みんなも、海にいっているかな」
ジャン「マルコのそばかすがすごいことになってそうだな」ハハ
ミカサ「・・・長いね」
ジャン「この長さもよ、嫌味だよな。アイツら、俺らがびびって発狂してる様でも記録してーんじゃねーのか?」
ミカサ「ありうる。・・・わたしたちは、クーデターに失敗した、反逆者・・・。みせしめに、ひどい目に
遭わされるのは当然」
ジャン「うーん。見せしめ、だったら、広場にでも吊るせばいいのにな。俺はそうなると思ってたぜ」
ミカサ「わたしも。まあ・・・ベルトルトはすでにずいぶん苦しめられたみたいだけど」
ジャン「人類の仇だからな。いっしょに死ぬのは、104期は悪というイメージを植え付けるためだろうな」
ミカサ「そうね。後の歴史書に、こう記録するつもりなのだろう。「悪の反逆者、104期生たちは、850年の終わりに処刑された」」
ジャン「850年。なかなか覚えやすいじゃねーか。ああ、851年になる前に、急いで殺されたのはこういうことか・・・?」
ミカサ「それはちがうと思う・・・」
ジャン「冗談だよ・・・」
ミカサ「ところで、ベルトルト。さっきから黙って、どうしたの?」
ジャン「オイオイ、まさか先に首吊ってねーよな?」
ベルトルト「・・・・」
ミカサ「・・・ベルトルト?」
ジャン「オイオイ・・・」
ベルトルト「・・・・はっ、・・・寝てた」
ミカサ「驚いた。大したものね」
ジャン「気をつけろよ。抵抗すんなって言われてんだからさ、寝相で暴れてると勘違いされかねんぜ。まあ、今の
寝相はずいぶん良かったみたいだけどよ」
ベルトルト「楽しい夢を見ていた・・・。最近はずっとそうなんだ。もう、全部終わって、どうでもよくなっちゃったからかな」
ミカサ「そうなの・・・」
ジャン「なんの夢を見てたんだ?」
ベルトルト「・・・104期のみんなと海に行く夢・・・」
ミカサ「いい夢ね」
ジャン「真っ暗で何も見えねーけど、お前がいまいい感じに笑ってんだなってのはわかるぜ、ベルトルト」
ベルトルト「そうか。・・・あの3年、辛かったはずだけど、今じゃすごく楽しいこととして思い出すんだ。
むしろ・・・もういっそ、あの3年を過ごせられたってことを考えると―――」
・・・
パチッ
・・・
ベルトルト「僕は生まれてきてよかっ」
ガタンッ
・・・
男1「・・・絞首刑執行。850年12月29日午後11:59」
男2「死刑囚、ジャン・キルシュタイン。罪名は、王政への反逆罪、及び、ベルトルト・フーバー並びに
ライナー・ブラウンの逃亡を見逃した罪」
男3「死刑囚、ミカサ・アッカーマン。罪名は、王政への反逆罪、及び、ベルトルト・フーバー並びに
ライナー・ブラウンの首を跳ねそこねた罪」
男4「死刑囚、ベルトルト・フーバー。『人類の仇そのもの』」
男5「サシャ・ブラウスは、王政への反逆罪により、無期懲役として服役中」
男6「ほかの『悪の104期』は全員死亡が確認されております」
男「「「以上で、報告を終わります」」」
・・・
数年後
タッタッタッ
サシャ「・・・ああ、やっぱり石畳は残ってた、よかった・・・!」サッサッ
―――『104期ここに集う』
サシャ「みなさんは、ここにいるんですよね。・・・お墓、まだ作れなくてごめんなさい。やっぱり戦犯扱いで、まだ厳しいみたいです・・・。
ですが、今日はいい報告があるんです。なんと! クーデターを起こした皆さんの意思を継いだ人々に
よって、とうとう革命が成功したんですよ!
104期の世間の見方も、きっとこれから変わっていきます。だから、安らかに眠ってくださいね。
あ、そうそう、お土産もあるんですよ」ゴソゴソ
サシャ「じゃーん! カゴ一杯の木苺です! すごいでしょう、わたし、無罪が認められて釈放されて、
今はなかなか給料の良いお仕事をしているんですよ! こんな量、訓練兵の頃は、絶対に
買えませんでしたよねえ・・・、うん、美味しい」パク
サシャ「あの日、みなさんお腹一杯食べれなかったでしょう。・・・ささやかですが、お詫びです。
あ、そうだ。この訓練所跡地は、荒れ放題で殺風景ですし、見ていてつまんないですよね。
・・・それっ!!」
バラバラバラ
サシャ「ふう。木苺を撒いていきますね! 少し、食べ残しておいてください。木苺の種が育って、
きれいな木苺畑になれば、少しは退屈しませんよ!」
サシャ「わたし一人だけが、やることを与えられて、のうのうと生きていて、ごめんなさい。
わたし、やっぱり臆病者ですね。一人ぼっちが辛くて、世間の目が怖くて、何度も
みなさんのところにいこうとしたんです」
サシャ「でも、わたしだけにやれることはあるはずって、言ってくれたじゃないですか、ジャンが。
それが、なんとなく分かりそうなんです。だから、それをきちんとしてから、胸を張って
皆さんのところへ行こうと思います!」
サシャ「ですから、もうしばらく、待っていてくださいね。そして、どうか、見守っていてください。わたし、戦いますから」
・・・
15年後
サシャ「はーい、みなさん、つきましたよ! 並んでくださいね。では出席をとります・・・。エレンくん!」
少年「はい!」
サシャ「いいお返事ですね! 次、ミカサさん! アルミンくん! ジャンくん! ・・・・」
サシャ「さて、今日は遠足です。でも、お勉強もして帰りましょうね。じゃあ、まずは先生から質問です。
エレンくん! エレンくんは、自分のお名前の由来ってご存知ですか?」
少年「ゆらい・・・、革命をした勇士たちみたいに、強く育って欲しいから!」
サシャ「そうですね! さすがエレンくん。・・・みなさんの中には、同じ理由でお名前をもらった人たちが
いっぱいいますよね。そして、ここは、なんと! その勇士たちが、お勉強をした場所なんですよー!」
少女「先生、みんな知ってるよー。ここ、お父さんとお母さんに、何回も連れてきてもらってるもん」
サシャ「ええっ! そうだったんですか・・・・。先生、恥ずかしいなあ」
アハハハ
サシャ「でも、先生はとってもうれしいです! みなさんのご両親の世代は、ちょうど、勇士たちより
10歳下くらいなんです。ご両親たちは、20年くらい前・・・みなさんくらいの年のときは、勇士たちは悪い人たちだって教えられていたんですよね。
でも、今はこうやって、その教えを改めてくれた。ご両親たちは、自分の価値観を考え直すっていう、とっても勇気のいる
ことをしてくれた人たちなんです」
ヘエ~
サシャ「先生は、ずっと、価値観を変えようって呼びかけてきました。最初は、なかなか理解されず、
石を投げられたりもしました。勇士たちは、それより辛い目にあってたんですけどね」
サシャ「つまり、みなさんが今平和に暮らしているのは、そうやって、色んな人が戦ってきたからなんですよ。
まあ、これは、みなさんの年じゃ、わかりにくいことかもしれませんね」
少年「じゃあ、どうしたらいいの?」
サシャ「簡単です! お友達を大事にして、思いっきり仲良くしてください! これはきっと、104期の願いでも
あるんです。お約束できますか?」
ハーイ!
サシャ「うふふ、忘れないでくださいね! じゃあ、みなさん、お弁当にしましょう。先生ももうお腹ペコペコです」
ハーイ
ワイワイ キャッキャッ
サシャ「ふふ・・・」
サシャ(みなさん、なんとわたし、教師になったんです。驚いたでしょう?
教師になって・・・みなさんがどういう人たちだったか。なにを願っていたか。なんのために戦ったか。
これを伝えているんです。104期の生き残りとしての使命だと思いましたから)
サシャ(でも、難しいですよね。仲間と支え合えって、わたしたち教えられたじゃないですか。
それでも仲良くしていたことが罪になって殺された。じゃあ、わたしが今同じように教えたとしても、
この子たちが同じ罪に問われることもあるってことでしょう?)
サシャ(なら、わたしは、この子たちを殺そうとしてるんでしょうか? キース教官も
こんなこと考えていたんでしょうかね。まあ、これは、想像なんですけど・・・)
キャッキャッ ワーイ
サシャ「・・・あかるいなあ・・・」
少女「先生、いい天気だね!」
サシャ「ええ、そうですね! あったかくて眠たくなってきちゃいました。・・・みなさんも、お日さまを浴びながら、いちご畑でのーんびりしててくださいね!」
ハーイ!
終わり
今更だけど>>65のアルミンとジャンのセリフの間に補足
アルミン「い、いいよおっ」カー
エレン「? なんだよ、アルミン、おかしなヤツだな」ハハ
アルミン「・・・エレン・・・」
エレン「う」ドキ
ミカサ「?」
アルミン「この前の続きだ。周りを見て。ハッキリわかったろ、異性の身体を見てなにも感じない君は、ちょっと幼いよ・・・」
エレン「ぐ・・・っ」
ミカサ「アルミン、なんの話?」
アルミン「わかったらミカサに・・・」
エレン「わかった、わかったよ」
ミカサ「??」
エレン「ミカサ、あー・・・、この前はひどいこと言って悪かったな」
ミカサ「!」
エレン「正直、俺の言い分が間違ってたとは今も思ってねえ、・・・いって、アルミン、叩くんじゃねーよ。
思ってはないがな、あのときつっぱねた態度をとったのは、なんていうか・・・置いていかれてると思ったからなんだよ」
ミカサ「置いていかれてる?」
エレン「おまえが、その・・・告白? をしたとき、周りの女子みたいに、なんか女っぽい顔してたから。ホラ、
身内のそういうとこ見るのって嫌なもんだろ? ・・・いってて! アルミン、つねるんじゃねーよ。
・・・今までも、こういう話題で、アルミンが照れてることはあった。でもお前は俺と同じで
興味なさそうで、だからまだ恋とかわかんねーんだと思ってた。アルミンが早いんだって。
でも違うんだな。俺が遅いんだ。俺、たぶん、訓練所でもちょっと子供扱いされてたし。
そのこと、悔しいし焦ってたんだよ。
それでも、お前は俺と同じとこにいると思って安心してたから。裏切られたみたいな気分になったんだ。
だから悲しくなって当たりちらしたんだって・・・俺はよくわかんねーけどアルミンに言われっいってぇ! アルミン引っ張るな!
それとな、俺もお前が嫌いな訳じゃねーよ、もちろん。今はまだハッキリどういう
気持ちとかはわからねーけど。だから・・・「今」聞きたくなかったっていうのは、そういう意味で・・・つまり、あー・・・。・・・・」
アルミン「エレン・・・はっきり言うんだ」
エレン「ぐぬぬ・・・」
ミカサ「アルミン、もういい、エレン、わたしが周りの女の子に影響されたっていうのは正解だった。
わたしもせっかちだった・・・・だから無理しないで。なんだか、すごくあなたらしくない」
アルミン「いや、ミカサ。ここは甘やかしちゃ駄目だ。エレンも人として駆逐以外のことも考えるべき時期なんだ」
ミカサ「アルミン・・・・ありがとう。エレンと話し合ってくれたのね」
アルミン「ああ、すまなかった、ミカサ、君の真摯な気持ちに対して、エレンが・・・・」
エレン「こいつ、一晩中説教してくれたんだよ。本当、ときどき別人みたいに怖くなるよな、お前って・・・。
確かに正論だしよ。お前には適わねーな・・・」
ミカサ「本当に、アルミンは色んなことを教えてくれる・・・頭の良い自慢の子。エレンも見習って」
エレン「ぐぬぬ・・・わかったよ」
アルミン「はあ、とりあえず仲直りできたみたいで、肩の荷が降りたよ」
ミカサ「ふふ・・・」
ジャン「・・・」
このSSまとめへのコメント
おつ