上条「バーストリンク!!」 (41)
禁書×アクセルワールドのクロスssです
注意! このssには以下の要素が含まれます
・地の文多め
・魔術サイドなんてなかった
・学園都市なんてなかった
・インなんとかさんなんていなかった
・■■さんなんていなかった
こんな要素でも見ていただけるならお付き合い願います
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363854952
煌々と世界が煌めいている。明らかに現実世界で見られる現象ではなかった。
それもそのはず今、目の前に広がっているのは思考を一千倍まで加速した空間。加速世界なのだから。
「また、か……」
現実世界を模して造られた空間にそのアバターはいた。
シルバー・ブレイカー。銀色の破壊者。とてつもなく不気味な意味を持つアバターだった。しかし、彼自身の性質……
性格というのは極めて平凡だ。
困っている人がいたら手を差し伸べる。例え、助けを求めていなくても。ただ、それだけだった。
そして、シルバー・ブレイカーこと上条当麻は歩く。
守るべき人のために。
「はぁ……。どうしてこんな事になったんだろう」
別の場所。加速世界の空間。
その一角で御坂美琴のアバターである、レッド・ラムブリングサンダーは呟いた。
彼女の周囲には十単位のエネミーが、間違いなく彼女を標的に定めた状態で囲んでいる。
本来、たった一人なら勝利は不可能な数だが、彼女はどうとも思わない。彼女のレベルが9という
圧倒的な数値を誇っているという理由だけでは説明できない力があるからだ。
ゆっくりと、彼女はそれを起動させた。
「クロム……ディザスター」
御坂美琴が≪災禍の鎧≫、別名クロム・ディザスターに寄生された事により加速世界内の情勢は一変した。
ありとあらゆるバーストリンカーの中でも、現在は七人しか存在しないレベル9の一角が悪の象徴とも言える強化外装に
寄生されてしまったのである。衝撃は大きなものだった。
まず、彼女の率いるレギオンに所属する百二十前後の者達はリーダー不在という状況に混乱した。
しかし、レギオンの副リーダー格であり、御坂美琴の≪子≫である白井黒子こと、≪ピンク・プラスァー≫によって何とか収束に向かっていた。
当然、それだけではない。
他の六人のレベル9は、それぞれ強大なレギオンのマスターであり、加速世界の均衡を保つ調整役でもある。
そんな者達が加速世界の災厄である≪災禍の鎧≫を無視できるはずがない。
「……ったくよォ。面倒なモン引きずり出しやがって」
加速世界最強と言われる黒の王が情報察知後、すぐに行動を起こした事により事態は解決へ向かうかと思われた。
しかし、この後≪レッド・ラムブリングサンダー≫は突如、無制限中立フィールドへと逃亡したのだ。目的は不明。
どこにいるのかわからなかった。でも、捜すしかなかった。見つけた後にやる事はたくさんあった。
≪災禍の鎧≫hs巨大な負の真意で構成されている。しかし、そんな強大な力も≪シルバー・ブレイ
カ—≫の持つたった一つのアビリティの前には無力も同然だ。
そのアビリティは封印ではなく、ただ一つだけ、≪災禍の鎧≫を破戒できる可能性を秘めていた。
「待ってろよ、御坂……」
彼は右手を強く握りしめる。≪幻想殺し≫を。
≪レッド・ラムブリングサンダー≫は軽い調子……というより、慣れた調子で≪災禍の鎧≫を起動
させると二十前後のエネミーへと突貫していく。
その中には神獣級のエネミーも見られる。そんな中にソロで突貫などただの自殺行為だろう。
だが、違う。今の彼女はおそらく、加速世界で最強の力を持っている。
「フラッシュ・ブリンク」
粒子となった御坂のアバターが一体のエネミーの後へと転移する。そして、電気を纏った左腕を軽
く、横に薙ぎ払った。それだけ。
しかし、それだけでブワリ、と延長線上にいた数体エネミーのエネミーが吹き飛び、直撃したエネ
ミーは一瞬でゲージが0となり消えた。
まだだ、まだある。御坂の中で何かが蠢いている。ズクン、ズクン、と。
このままでは飲み込まれた御坂の人格はその何かに崩壊させられるだろう。それほどの力を必死
で押さえつけている。
「まだ……、……まだアンタなんかに飲み込まれる訳にはいかない、……」
彼女は歩く。加速世界で最後にやるべき事を果たす為に。
という訳で今日はここまでです。いかがだったでしょうか?
ここで、アバターの軽い意訳を
レッド・ラムブリングサンダー→赤い雷鳴(御坂美琴)
ピンク・プラスァ—→桃色の追跡者(白井黒子)
白井は百合的な意味でも構いません(笑)
質問・意見などがあれば気軽にどうぞ
とりあえず
アクセル・ワールドの小説買ってくる
>>25
面白いのでお勧めですね
投下していきます
バシィ! という加速音のの後、シルバー・ブレイカーは駆け出すように、加速世界内の学校を後にした。
(どこだ……どこにいるんだ!)
もちろん当てずっぽうでは見つからない。
だが、ヒントはある。
御坂が≪災禍の鎧≫に寄生され、逃亡した事で一部のリンカーは暴徒化し、≪災禍の鎧≫討伐を名目に出撃したのだ。実際、王という立場の人間を尊敬している者もいれば、逆に妬んだり、疎ましく思っている者もいるのだ。今回はそういう者達を足跡を追うような形で追いたい。しかし、そんな連中が『第三位を助けようとするヒーロー』を見逃すはずもないので、出会わないようにもしたい。しかし、やらないよりはマシである。
直後。
ズドッ! と。本来、破壊されないはずの地面がえぐれる程の衝撃がシルバー・ブレイカーの頬をかすめた。
「誰だ……ッ!?」
目の前には白い羽があった。白というよりも半ば、光という言葉の方が似合うような神々しさを持った翼が。
そして、加速世界において、≪飛行アビリティ≫を持つ者は一人だけだ。
「白の王……≪ホワイト・エンジェル≫か!?」
「あんま、その名前は好きじゃねえんだけどな」
白のボディに白の翼。完全に白のみで構成されるそのアバターは加速世界第二位の序列を誇る。
曰く、何でもできる汎用性。
曰く、加速世界で彼しか起こせない現象がいくつも確認されている。
曰く、彼の能力は第一位と同様の反則性がある。
とにかく、右手一本に頼るしかないシルバー・ブレイカーと違い、彼はいくつもの手札で何種類もの攻撃ができるのだ。どこまであるのか。有限なのか、無限なのか。それは神のみぞ知るというもの。レベル5のシルバー・ブレイカーではいつまで相手が務まるかわからない。
「おいおい、今回はそんなつもりじゃねえぞ。幻想殺し」
ホワイト・エンジェルは肩をすくめて、嘯く。その気になればいつでもやれると、言外に言っていた。
そして、もう一つ疑問がある。
こんなところに王が単独で現れる理由だ。
王は通常、その強さや価値の重さ故に、通常対戦はもちろん中堅のランカーの前にも滅多に姿を見せない。レベル9同士のサドンデスルールの影響もあるが、それだけではない。そもそも、加速世界で最上級の力を誇る彼らがあまり表立ち過ぎると、加速世界の均衡やら王の間で守られている条約やらが崩壊しかねない。
つまり、王が単独で出てくるには、相当な名目が必要になってくる。そして、その名目が今はある。
(≪災禍の鎧≫討伐のために出てきたのか……?)
だとすれば、非常にまずい。まだ、何の解決法も掴めていないシルバー・ブレイカーの恐れる事は、第三位討伐というのが素早く決められてしまう事だ。王の間で正式に決定されていないとはいえ、今ここで第二位が彼女を討っても、精々、一時的な不評を買う程度にとどまるだろう。だからこそ、彼は焦っていた。
「焦るなよ、幻想殺し」
ホワイト・エンジェルはゆっくりと告げる。
「俺は『今のところ』中立派だぜ? ……それで、その事を知ったお前は、どうする?」
今のところは。つまり、今後の事態によっては敵に回る事があり得る。第二位を敵に回して得か、損か、そう問われれば当然、損だろう。せめて敵に回さないように手を打っておく必要がある。
(でも、具体的にどうすればいい? 言葉で簡単に考えを変えてくれそうもないぞ……)
その様子を見て、ホワイト・エンジェルはその痩身のボディから力を抜いた。
「お前……もし、第三位をこの世界から追い出すって事になったらどうするつもりだ? 聞かせてくれ。……別に悪意がある訳じゃねえんだけどさ。第三位を見捨てるのか?」
「それは……それだけは、しない」
ホワイト・エンジェルの挑発するような口調に、シルバー・ブレイカーは真面目に返答する。取っ掛かりを作るならここしかない、と思ったからだ。
「もし、お前らが全員合意の上で、サドンデスルールで戦うって言うなら、俺が口を挟むのは筋違いかもしれない。でも、今回のはそういうのじゃない。確かに≪災禍の鎧≫は危険かもしれないけど、それはあくまで鎧だけだろ? だったら、アイツが寄生されている隙にアイツをこの世界から退場させるってのは間違ってる。! だから俺は否定する! こんな事で消えていいヤツじゃないんだ!」
「へえ」
ホワイト・エンジェルは上条の言葉を軽く受ける。だが、それで充分だった。
「いいね、そういう筋を通すヤツは嫌いじゃねえ」
ただ、とホワイト・エンジェルは言葉を続ける。
「俺もそんな感情論で見逃せる立場じゃねえんだよ」
轟! と爆風が吹き荒れる。ホワイト・エンジェルの翼によって生まれた烈風だ。
どういう原理かわからないが、ジリジリとシルバー・ブレイカーの体力ゲージが減少している。
直後だった。
ホワイト・エンジェルの白がシルバー・ブレイカーへと殺到していく。
ホワイト・エンジェルのボディは極めてシンプルだ。むしろ、加速世界では細長い印象を抱かせる。まともに打撃攻撃を喰らえば、たちまち体力を奪われるだろう。
しかし、ホワイト・エンジェルにはそれを上回るポテンシャルがある。
ゆっくりと。その白い翼をはばたかせながら、空を舞う。事前に下準備をしていたのか、必殺技ゲージが三分の二ほどたまっていた。
「世界は素粒子によって構成されている」
周囲の何かが、明らかに変化している事にシルバー・ブレイカーは焦りを覚える。どこかで聞いた都市伝説のような話を思い出したからだ。
それを無視して、だが、とホワイト・エンジェルは言葉を続ける。
「俺の『未元物質』にその常識は通用しねえ」
直後。
ズドッ! とシルバー・ブレイカーに光が突き刺さった。
周囲のステージは煉獄。つまり、周囲には炎がきらめいている。しかし、その炎に直接、触れでもしない限り、ダメージにはならないはずだ。明らかにこの世界で起きる現象ではない。
これこそが、ホワイト・エンジェル第二のアビリティである≪未元物質≫だ。翼から生まれた付加価値のようなもので、この≪未元物質≫を起動させると自動的に白い翼も形成される。
ホワイト・エンジェルの必殺技ゲージが減少しているので、生成するのにも必殺技ゲージを消費するようだ。
(でも、アビリティや心意による現象なら俺の右手で打ち消せるはずだ!)
シルバー・ブレイカーの持つ唯一のアビリティである≪幻想殺し≫は打撃系以外の必殺技と心意技を完全に無効化する。心意技以外で心意技を防御できるのは、この≪幻想殺し≫だけだ。
「ぉぉぉぉおおおお!!」
バキン! という音と共に≪未元物質≫による攻撃が打ち消される。
しかし、同時にシルバー・ブレイカーには打撃系の技しかないので自然と近接頼みになってしまう。≪幻想殺し≫は右手首から上でしか、その効果を発揮しないため、『遠距離からの弾幕』などには極端に弱い性質を持つ。
「加速世界に存在するありとあらゆるアビリティには弱点ってやつが存在する。……お前の≪幻想殺し≫が右手にしか宿っていないようにな」
シルバー・ブレイカーがその言葉を聞き逃さなかった。必死に、たった一つの行動から相手の弱点を探す。レベルの差から来る影響か、すでに体力は二割近く削られていた。このままではじり貧になってしまう。死亡状態になって呑気に風景を楽しむ時間など今の彼にはない。
シルバー・ブレイカーは流れるような動作で、相手の攻撃をいなしつつ、思考を重ねていく。
(何だ……アイツの弱点は。噂じゃ、レベルアップボーナスのほとんどをあの翼につぎ込んだって話だ。弱点なんて本当にあるのか!?)
その時だった。
受けきれなくなった弾幕の一部が、シルバー・ブレイカーのボディに突き刺さった。
「……クソッ!」
加速世界内では痛覚が、そのまま適用される。つまり、受けたダメージはそのまま痛みとなり、プレーヤーの動きや思考を鈍らせていく。
痛みに、体を縮こませた隙をホワイト・エンジェルは逃さなかった。畳みかけるように、≪未元物質≫をぶつけていく。そして、、その度にシルバー・ブレイカーの体力は削られていき、もう三割程度しか残っていなかった。
しかし、同時にシルバー・ブレイカーはほくそ笑む。条件が整った、と。
「……何だ?」
レベル9も実力を証明していると言えるのか。ホワイト・エンジェルは過敏なまでの速さで、その異変を感じ取った。
それはシルバー・ブレイカーの必殺技ゲージだ。かなりのペースで減少している。さらに、心なしか≪未元物質≫の威力も減衰しているようにも感じられた。
「竜王の顎≪ドラゴン・ストライク≫」
シルバー・ブレイカーが凛とした声で呟いた瞬間。
彼の右手から竜の頭部が顕現される。それは周囲にばら撒かれた≪未元物質≫を吸い取り、食いつくしていく。
「……、これが≪幻想殺し≫、加速世界唯一の、無効化アビリティ……」
ホワイト・エンジェルは笑った。そして、右手に竜を宿すシルバー・ブレイカーに対して言った。
「面白え。それが、お前の心の傷を表した形か?」
「……、?」
「お前はわかっていないようだな。だったら教えてやる」
ホワイト・エンジェルは一端、交戦をやめる事を示すように翼をしまう。それを見てシルバー・ブレイカーも≪竜王の顎≫を解除した。
「いいか、この世界の神……。つまり、製作者が誰かは未だにわかっていない。だが、それぞれの『心の傷』に合わせてアバターを作り上げるなんて柔軟性は他のアプリじゃ、まず見られねえ。だからこそ、言える。この世界にはまだ誰にも知られてねえ何かがあるってな」
「何か? ……何かって何なんだ?」
ホワイト・エンジェルはゆっくりと首を振った。
「わからねえ。だからこそ、何か、なんて曖昧な表現しかできねえんだ」
そして、ホワイト・エンジェルはシルバー・ブレイカーにも届かない声で言った。
————————今度は死ぬんじゃねえぞ
今日はここまで
皆さん、お疲れさまでした
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません