俺「眠い」俺「俺も」 (81)

俺「眠い」

俺「眠いな」

俺「寝たい」

俺「寝たいな」

俺「寝られない」

俺「寝られないな」

俺「どうしよう」

俺「辛いな」

俺「辛い」

俺「時間だ」

俺「時間だな」

俺「急がないと」

俺「急ごう」

俺「俺は朝飯を食う」

俺「俺は着替える」

俺「よし」

俺「よし」

俺「いってきます」

俺「いってきます」バタンッ

俺「駅まで10分」

俺「駅まで走って7分」

俺「駅までバスで3分」

俺「バスが来るまで5分」

俺「走るぞ」

俺「走るか」ダッ

俺「駅だ」

俺「ホームだ」

俺「ドアが閉まる」

俺「ドアが閉まってしまう」

俺「走れ」

俺「がってん」

俺「」ダダダダダ

俺「」ダダダダダ

ガタァンッ バッタン

車掌「駆け込み乗車はご遠慮ください」

俺「危なかったな」

俺「危なかった」

俺「オナニーしたい」

俺「俺舐める」

俺「俺動かす」

俺「イク」

俺「ダシテ」


俺「あぁあんんん」

俺「」ガタンゴトン

俺「」ガタンゴトン

俺「」ガタンゴトン

俺「」ガタンゴトン

俺「横の人のカバンが刺さって痛い」

俺「揺れるたびに腹に当たって痛い」

俺「言おうか」

俺「黙るか」

俺「どうしよう」

俺「どうしよう」

俺「よし」

俺「決まったか」

俺「言う」

俺「言うのか」

俺「なんていうんだ」

俺「どうしよう」

俺「どうしよう」

俺「よし決めた」

俺「決めたか」

俺「言うぞ」

俺「おう」

俺「言うぞ」

俺「おう」

俺「言うからな」

俺「がんばれ」

俺「あのっ、さっk」

プシュー
車掌「中山ー、中山ー、緑山線はお乗り換えです」

客「」スタスタスタ

俺「」

俺「」

俺「結果オーライだな」

俺「あぁ」

俺「・・・はぁー」

俺「・・・はー」

俺「遅れてすみません」ハァハァ

上司「君、15分遅刻だよ」

俺「すみません」

上司「まったくこれだから最近の若者は」

上司「いつまで大学生気分でいるんだね」

俺「・・・すみません」

上司「謝るだけなら誰でも出来るよ」

上司「私はいつまで大学生気分でいるのか!と聞いているんだ」

俺「・・・申し訳ありません」

上司「・・・」ハァ… チッ

同僚「おはよう」

俺「おはよう」

同僚「朝から災難だったな」

俺「まったくだ」

同僚「今虫の居所が悪いんだよ」

俺「なんで」

同僚「さぁ、なんでだろうな」

俺「あんなに怒らなくてもいいじゃないか」

俺「ほんの少し遅れただけだろ」

同僚「いつものことだろ、あのお方は、さ」

俺「理不尽だよな」

はやく

上司「今日も早川君はきれいだねぇ」

同僚女「やめてくださいよー部長~」

上司「ははは、中里君、君も最近目覚ましい活躍ぶりじゃないか」

同僚男「いえいえ、部長のおかげです」

上司「褒めても何も出ないぞ、ははは」

上司「おい、1君」

俺「は、はい」

上司「私たちはこれから昼食に行ってくる」

上司「というわけでこれ」ダァン ドッサァ

上司「頼むよ」

俺「いや、でも」

上司「じゃあ早川君、中里君、行こうか はっはっは」スタスタスタ バタン

俺「・・・」

俺「どうするよこれ」

俺「どうするもなにも」

俺「やるしかないだろ」

俺「でもこの量は」

俺「ひどいな」

俺「うんひどい」

同僚「おう1、昼どうする?」

俺「あぁ・・・うん」チラッ

同僚「うわ・・・すげえなそれ」

俺「はは・・・だろ・・・」

同僚「じゃあ俺がまとめて買ってくるよ」

俺「悪いな」

同僚「気にするな」ギィ バタン

俺「これ、一人でできる量じゃねえよ」

俺「何人分だろう」

俺「何時間かかるかな」

俺「もしかしたら、何日、かかるかな」

俺「出来なかったら」

俺「終わらなかったら」

俺「確実にまずい」

俺「絶対にやばい」

俺「やるしかないな」

俺「うん」

上司「いやーうまかったな、ははは」

同僚男女「部長、ごちそうさまでした」

上司「おうおう、また今度行こうな、ははは」

上司「・・・おい1君」

俺「はっ・・・はい」

上司「いつまでそんな仕事をやっているんだ」

俺「えっ・・・でも」

上司「それくらいの仕事、さっさとやれないのか」

俺「ですがこれだけの量を一人でやるのは」

上司「何だ?君は上司の私に意見するのか」

俺「いや、そんなことは」

上司「しかし今、君は私に仕事ができないと文句を垂れているじゃないか」

俺「・・・」

上司「何か言いたいことはあるかね?」

俺「・・・いえ」

上司「君は何をやっても、 駄 目 だなぁ」フッ

俺「・・・」グッ

上司「さっさとそんな仕事終わらせてくれ、次の仕事が詰まってるんだから」スタスタ


上司「こんな無能を雇うくらいならいない方がましだな」ボソッ

俺「くそっ」

俺「なんなんだよ」

俺「いきなりあんな仕事を振っておいて」

俺「すぐに終わらない仕事をやらせて」

俺「出来なかったらそれを理由にいびる」

俺「俺がやりたかったのは」

俺「こんなサンドバックじゃない・・・」

俺「俺は・・・」

俺「俺は・・・っ」

同僚「悪い、遅くなって」バタン

同僚「パンとおにぎり、どっちがいい」

俺「あぁ・・・俺は、いいや」

同僚「おいどうした」

俺「なんでもないよ・・・」

同僚「・・・とりあえず、ここ置いとくな」トサッ

俺「あぁ・・」

同僚男「お先失礼しまーす」

同僚女「失礼しまーす」

オツカレサマデシター オツカレー

俺「・・・」

上司「まだ終わらないのか」

俺「はい・・すみません」

上司「自分から引き受けた仕事すらまともにできないのか」

俺「昼前に部長に押し付けられた仕事で進まなくなってるんじゃないですか・・・」

上司「"押し付けた"?何を言ってるんだ君は、私は「頼むよ」と言ったんだよ」

上司「私は一度もやれと命令した覚えはないぞ?」

上司「君が勝手に引き受けたんじゃないか」

俺「ですが」

上司「過ぎたことをとやかく言うのは見苦しいぞ!1君!」

上司「残業してでも終わらせなさい、いいね」

上司「じゃあ私は帰るよ」

俺「・・・」

俺「なんでだ」

俺「どうしてだ」

俺「いつから歯車が狂った」

俺「なんでかわかるか」

俺「分からない」

俺「お前は」

俺「俺も分からない」

俺「お前はどうしたい」

俺「俺は・・・」

俺「どうすればいいんだろう」

俺「ただいまー」ガチャ

俺「おかえりー」バタン

俺「・・・はぁ」

俺「」ドサッ

俺「」

俺「」

("押し付けた"?何を言ってるんだ君は、私は「頼むよ」と言ったんだよ)

俺「」ポロ・・・

(こんな無能を雇うくらいならいない方がましだな)

俺「」ポロポロ・・・

(君は何をやっても、 駄 目 だなぁ)

俺「くっ・・・」ゴシッ ゴシゴシッ

俺「どうすればいい・・・」

俺「父さん・・・母さん・・・兄ちゃん・・・姉ちゃん・・・」

(刑事さん・・・まだ弟君は子供なんです!)

(ついこの前中学に受かったばかりなんです!)

(それなのにこの年で一人だなんてあんまりじゃないですか!!)

(一度に家族4人を失うだなんて・・・ひどいと思わないんですか!!)

(犯人が見つからないなんてそんな酷なことってないですよ!!)

(誰がこの子育てるんですか!)

(刑事さんが面倒見てくれるんですか!!!)

(ねぇ答えてよ!!!)

(もういいよ叔母さん)

(でも・・!)

(いいよ・・俺、新聞配達でも何でもして、働くから・・・)

(なんで、せっかく、私立の中学に入れたのよ?)

(・・・)

(学費なら出してあげるし、住むところだって・・・)

(・・・)

(ちょっと!1君!?)

(・・奥さん、そっとしておいてあげてください)

(・・・)


俺「ん・・・」ゴシゴシ

俺「・・・朝か」

同僚「おうおはよう」

俺「おはよう・・」

同僚「暗い顔してるけど」

俺「・・そうか?」

同僚「お前、今日帰った方がいいよ」

俺「いや、いい」

同僚「でも帰った方が」

上司「やぁみんな、おはよう、おはようー」

オハヨウゴザイマース オハヨウゴザイマース

上司「1君、君、体調悪そうだねぇ」

上司「何なら、暇をやろうか?」

上司「君が望むならいつまでも休んでもらって構わないんだぞお?」

上司「まぁそうなったら、君の席はなくなるがな!はっはっはっは・・・」スタスタスタ

俺「あいつ・・・っ」

同僚「抑えて、抑えて」

俺「くそおおおおおおおっ!!!!」ダァン!!!

俺「辛いか」

俺「辛い」

俺「嫌か」

俺「…嫌だ」

俺「だったら、今日の終業から明日の夜まで、体を貸せ」

俺「えっ?」

俺「俺が、お前を助けてやる」

俺「・・・」

俺「俺を信じて、体を貸してくれ」

俺「分かった」

俺「じゃあ午後、なんとかしのごう」

俺「ああ」

同僚男「お先失礼しまーす」

同僚女「失礼しまーす」

オツカレサマデシター オツカレー

俺「私も失礼します」

オツカレサマー

俺「ここでいいか」

俺「もう少し人が少ないところがいいな」

俺「・・・この辺か」

俺「おう」

俺「お前の意識が戻るのは2日後の朝だ」

俺「それまで、ゆっくり待っててくれ」

俺「・・・」

俺「俺を信じろ」

俺「信じろったって、自分だからな」

俺「つべこべ言わずに、俺のやることを黙って受け入れてくれ」

俺「・・・分かった」

俺「行くぞ」

翌日 朝

俺「おはようございます」

上司「おはよう」

俺「先日、部長に押し付けられた仕事です」ダンッ

上司「はぁ・・・だから、私は「頼むよ」と言ったんだよ」

上司「まさかと思うが、一度引き受けた仕事をそのまま私に丸投げするつもりか」

俺「まさか」

俺「全部終わらせましたよ」バッサァ

上司「なっ」

俺「受注報告書・発注報告書・納品報告書などの報告書と全社員への今期のアンケートや備品点検、給与計算まで」

俺「部長に押し付けられた仕事は昨日のうちにきっちりやりました」

俺「点検と捺印をお願いします」

上司「昨日1日で出来る量じゃないだろう」

上司「間違っていたらどうするんだ」

俺「1日で出来ない仕事を早くやれと急かしたのは誰ですかね」

俺「贔屓がひどく皮肉で人をいたぶり陰口も多い誰かだったと思うんですが」

上司「私だと言うのかね!!」

俺「いえいえ、誰かと言ってるだけですが」

俺「それとも、何か心当たりでも?」

上司「・・・」

上司「・・・そういえば、君自身の仕事はどうなったのかね」

上司「私が頼んだ仕事のせいで出来なかったと言い訳するつもりではないだろうな」

俺「もちろん終わらせました」ドサッ

俺「こちらも捺印お願いします」

上司「お前、これは私へのあてつけか」

俺「滅相もない、私は部長の言う通り、さ っ さ と 終わらせたんですが」

俺「他に何かおっしゃりたいことは?」

上司「・・・」

上司「私がその気になれば、お前を首にすることだってできるんだぞ」

俺「ほう」

上司「お前みたいな社員は職場の和を乱す!」

上司「黙って私の言うことに従っていればいいんだ!無能な社員は!!」

俺「それは本心ですね?」

上司「だったらなんだ?警察に言うのか?」

上司「出来るものならやってみろ!その前にお前を首にしてやる」

上司「今までもそうやって逆らってきた奴は全員首にしてやったからな!はっはっは!!!!」

俺「分かりました」

俺「では、ボイスレコーダーで今の会話を録音したので、労基署と警察に行ってきます」

上司「・・・・!!!」

俺「職権乱用とパワハラの裏付けになる証拠になりましたので」

俺「また、私を中心とする残業手当の不払いや不当解雇も付け加えて」

俺「では」

上司「ちょっ、ちょっと待ってくれ」

俺「何を待つんです?」

上司「それだけは勘弁してくれ」

俺「それ、だけ、ですか」

上司「・・・」

俺「では、これは言ってもいいと?」

上司「こ・・れは・・・」

俺「夜、部長と早川さんがホテルから出てくるところの写真と社内メールの履歴です」

俺「これを部長の奥様と、社長に郵送します」

上司「いや、だめだ、それは、やめてくれ」

俺「うるさい」

俺「やめろと言ったらやめると思うのか」

俺「俺が仕事が多い、出来ないと言ってもお前は耳を傾けない」

俺「人の言葉が届かない、駄々をこね続ける人間の言葉を誰が聞くと思う」

上司「・・・」

俺「お前はいつまで子供でいるつもりだ」

上司「・・・」

俺「いつまで子供でいるつもりかと聞いているんだ!!!!!!」

上司「」ビクッ

上司「・・・すいません・・・でした」

俺「目を見ろ!!!!!」

上司「・・・・・・誠に申し訳ありませんでした・・・・・・・・!!!!」

俺「・・・」

俺「お前は、調子に乗りすぎた」

俺「せいぜいこの数時間、怯えて待つんだな」ガチャ バタン

翌日

俺「おはよう」

俺「・・・おはよう」

俺「どうだ、1日休んだ気分は」

俺「痛?!・・・なんだろう、全身が痛い」

俺「ハハ、すまんすまん」

俺「何をした」

俺「ちょっと無理して仕事しちゃってさ」

俺「右腕が上がらない・・・」

俺「でも、全部終わったぞ」

俺「?」

俺「ここで俺が言うのは簡単だが、会社に行って知ったほうがいいだろう」

俺「あぁ・・」

俺「よし、行くぞ」

同僚「おおぉぉ!!1ぃぃぃいいいい!!!!」

俺「??」

同僚「お前、よくあんなことやったよなぁ!!あっはっは!!」

俺「なんだよおい」

同僚「お前のおかげで、部長クビになったってさ!!」

俺「えっ!!??」

同僚「パワハラの件と浮気の件で社長が即日解雇を通達したんだってよ!」

俺「マジかよ・・・」

同僚「よくやったよお前、俺もアイツには結構苦しめられてきたんだよ」

俺「どういうことだよ?」

俺「へへ、細かいことはいいだろ、お前のおかげで部長がいなくなったんだから」

同僚「いやぁ、お前は英雄だよ!神様仏様だよ!」

俺「そうかなぁ、くすぐったいなぁ」

俺「何お前が勝手に答えてんだよ」

俺「あ、つい」

同僚「よし!今日は俺が豪華なディナーをおごってやる!」

同僚2「あ、僕も!」

同僚3「私もいいですか!?」

同僚「いいぞいいぞ!今日は英雄の凱旋パレードと行きましょうか!」

同僚123「イェーーイ!!!!」

俺「よかったじゃねえか」

俺「あんまりわかんないけど、俺のおかげでここが楽になったわけだからな」

俺「だから俺を信じろって言ったろ」

俺「まぁな」

俺「俺を信じろって言ったら「信じろったって、自分だからな」とか渋ってたくせに」

俺「そうだったけどな」

俺「あれだ・・・たまには、自分自身を信じてみるのもいいんじゃないのかね」

俺「そうかもな」

俺「フフッ」

俺「なんだよ」

俺「なんでもねーよ」

俺「でもよ、お前どんな仕事したんだよ」

俺「全身の節々が痛くってもうやばい」

俺「ちょっと鞭打ちすぎたかな」

俺「打ちすぎだバカヤロー」

俺「はぁ・・・疲れた」

俺「・・・俺も」


                             ―完―

最後まで読んでいただきありがとうございました。
質問にありましたが、作者の私は、

俺「疲れた」俺「俺も」
俺「疲れた」俺「俺も」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379262702/)

と同じ人です。
二日連続で見ていただける方がいて、嬉しかったです。ありがとうございました!

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