ハルヒ「誰かボクシングしましょ!」(327)
ハルヒ「あー暇だわ」
お前が暇なのは平和でいいことだ。
ハルヒ「そうだ! 誰かボクシングしましょ!」
いきなり何言い出すんだハルヒは。
ボクシングだぁ? お前に殴られて喜ぶ奴がどこにいる。
ハルヒ「ねえ、やりましょうよボクシング。
キョン、あんた相手しなさい」
キョン「絶対嫌だ」
そんなものお断りに決まってる。
ハルヒ「じゃ、みくるちゃんどう?
ボクシングはダイエットにもいいわよ!」
みくる「ひっ、え、遠慮しまぁ~す!」
お前、朝比奈さんに手を出したら頭カチ割るからな。
おいバカハルヒ、誰もやりたい奴なんて居ないからとっとと黙……
古泉「僕がお相手しますよ、涼宮さん」
おい、本気かお前。
キョン「(古泉、あんなの付き合う事ないって。放っておけよ)」
古泉「(みんなが拒否して閉鎖空間でも起こされる方が困りますよ。
涼宮さんに殴られるぐらいで済むなら構いません)」
古泉……みんなのために犠牲になるとはなかなか殊勝な奴じゃないか。
つーか別にサンドバッグにされなくていいんだぞ?
たまには日頃の恨みを晴らして、ハルヒをボコボコにしてやれよ。
ハルヒ「さすが副団長だわ! みんなも古泉くんの
ノリの良さをを見習いなさい」
ノリが良いとかそうことじゃないんだが、俺たちにとっては。
古泉「ところで、どのような形でやるのでしょう?」
ハルヒ「部室がリングよ! グローブはこないだ拾ってきたのがあるわ!
あとはボクシングルールよ!」
古泉「わかりました」
部室がリングって、そりゃあただの喧嘩じゃないのか。
ハルヒ「みくるちゃん、ゴング鳴らして!
1ラウンド3分計ったら、また鳴らすのよ!」
みくる「ふぇ? ゴング……ええとぉ……」
ボールペンで湯のみをチーンと鳴らして、
古泉サンドバッグショーは開始された。
ハルヒ「ふっふーん。最初はアウトボクシングでいくわ」
古泉「お手柔らかにお願いします」
軽やかなステップワーク……ではなくスキップワークを披露するハルヒ。
お前、何をどう勘違いしたらそういう動きになるんだ?
ハルヒ「うりゃ!」
中距離からジャブらしきものを打ち込むハルヒ。
古泉はガードを固めて防ぐ。
ハルヒ「ガードが固いわよ、古泉くん」
前に詰めてウィービングし、ガラ開きのボディに左フックを叩き込む、
古泉の顔がわずかに歪む。
そのままボディに右フック。
古泉「う……」
ガードを下げる古泉。その隙間に左ジャブ、右ストレートの
コンビネーション。なあ古泉、反撃しろよ。
古泉が腰の入ってないヘロヘロの手打ちパンチを
わざとらしく打つと、ハルヒはダッキングしてそれをかわす。
ハルヒ「へへーん。そんなパンチ、当たらないわよ!」
そのまま連打を浴びせるハルヒ。ボディに、顔面にハルヒのパンチが突き刺さる。
おい、アウトボクシングするんじゃなかったのか?
ハルヒ「おりゃおりゃおりゃおりゃしゃーこらー!」
ハルヒの無茶苦茶なラッシュをガードしきれず、
ボコボコと殴られ続ける古泉。
みくる「あ、あのう~、第一ラウンド終了です……」
聞こえないのかどうでもいいのか、さらに殴り続けるハルヒ。
みくる「あのーっ! 第一ラウンド終了でぇぇ~~っす!!」
ハルヒ「あ、もう終わり? ずいぶん早いわね」
ようやくハルヒが手を止める。
時間を見ると、まだ2分半ぐらいしか立っていない。
朝比奈さんが機転を利かせてくれたみたいだ。
キョン「おい、ハルヒ。もういいだろ。古泉の顔腫れてるじゃないか。
お前が強いのはよくわかったからさ、これ以上やったら怪我するぞ」
ハルヒ「まだ1ラウンドしかやってないじゃない。
あたしはやり足りないわよ。古泉くんはやりたいわよね?」
古泉「僕は大丈夫ですよ。続きをやりましょう」
おいおい、我慢強いなお前は……そんな事してたら
ハルヒがますます調子に乗るぞ。
キョン「ま、古泉がいいってなら構わんが、怪我させるような事すんなよ」
ハルヒ「名誉の負傷はボクサーの勲章よ。ボクシングなんだし怪我ぐらいするわよ」
お前のやってる事はボクシングへの冒涜だろ!
古泉に、次のラウンドはハルヒを殴れとジェスチャーする。
だが、首を振って肩をすくめる古泉。
お前はマゾか? まあいい、せいぜいディフェンスに徹しておけ。
チーンと第二ラウンドが開始された。
ハルヒは早々にステップして詰め寄り、大降りの右フックを見舞う。
ガードの上からでも効きそうな一撃を受け止める古泉。
なんでスウェーバックでかわさないんだよ、あんな大振りのパンチ……。
ああそうか、避けるとハルヒが不機嫌になりそうだもんな……。
でもよ古泉、なんでそこまで気を使う必要があるんだ?
ハルヒ「あたしの攻撃が上手すぎて手を出せないの?
玉砕覚悟で打ち込んできなさい!」
ハルヒの、スタミナ配分などまったく考えてなさそうな猛攻で
コーナー……ではなく部室の隅に追い込まれる古泉。
ハルヒ「ほらほら! もう後がないわよ古泉くん!」
古泉「う……ぐ……」
みくる「も、もうそれ以上は……やめませんか……」
朝比奈さんが半泣きで訴えかけるも、ハルヒは無視。
壁に押し付けられ、ボコボコに殴られる古泉。
顔面にストレートがクリーンヒットして、とうとう膝をつく。
ハルヒ「戦場で倒れてたら、殺してくださいって言ってるようなものよ!
死にたくなかったら立ち上がりなさい!」
膝をついている古泉を、更に殴り続けるハルヒ……っておい!!
慌ててハルヒを止めに入る。
キョン「おい、ダウンだろダウン! 何殴ってんだよ!」
ハルヒ「そんなルール我がSOS団には無いわ! 敗者には死あるのみなのよ!
実戦ではね、倒れても相手は待ってくれないの!」
お前ボクシングルールって言っただろうが! このキチ○イ女!
ハルヒうぜえwwwwwwwww
誰かボコボコにしてくれwwwwwwwwww
ハルヒ「もう、離しなさいよ、試合の邪魔するんじゃないわよ!」
俺に羽交い絞めにされたハルヒが、古泉の顔面を蹴り上げる。
古泉「がっ……!」
キョン「けっ……蹴るなよおい!! ああもうお前の反則負けだ!!
試合は終わりだ! 終わり!!」
ハルヒ「はっ? なんであたしの負けなのよ。意味わかんない。
ちょっと興奮して足が当たっただけじゃない」
どう見ても狙って蹴ったようにしか見えんだろ……
古泉「僕はまだやれますよ、大丈夫です。この通り」
みくる「もうやめたほうがいいと思いまぁす……」
おい古泉。鼻血流して唇切れてるのに大丈夫なわけないだろ。
そのへんにしとかないと病院送りになるぞ?
ハルヒ「ほら、古泉くんがやりたいって言ってるんだからいいじゃない」
古泉「ええ……頑張ります」
ハルヒは古泉をリング……ではなく部室の真ん中に連れていく。
ハルヒ「さあ始めるわよ! ほらゴング!」
みくる「涼宮さぁん……やめましょう」
ハルヒ「敵前逃亡は銃殺刑よ! みくるちゃん、そんな弱気じゃ
あんた真っ先に死ぬわね。ああもういいわ、チーン」
ハルヒの口ゴングによる第三ラウンドが始まった。
なんでこんなに人を殴りたいんだ? こいつは。真性のドSか?
ハルヒ「ほらシュッシュ! こんなジャブもよけられないの?」
半グロッキー状態の古泉は、おちょくるようなハルヒのジャブを
パシパシと食らう。
ハルヒ「必殺アッパー! 食らいなさい!」
古泉のアゴに大降りのアッパーが炸裂する。
よろめく古泉。すかさず猛ラッシュするハルヒ。こいつのスタミナはよく持つな。
まあ殴られ続けて耐えてる古泉のが遥かに賞賛に値するが。
ハルヒ「ほらほらほら! そんなサンドバッグになってどうするの!」
言葉どおりサンドバッグになっている古泉は、
もうガードする気力もなく、あっさりとダウンする。
古泉「……うう……う……」
ハルヒ「倒れるの早すぎでつまんないわよ!」
ハルヒが倒れた古泉の頭をグリグリと踏みつける。
……って今度は完全にわざとだろ!
ハルヒ「根性なしで副団長が務まると思ってるの?
ほら、立ちなさい!」
キョン「おいハルヒ!! お前いい加減に……」
古泉「うあああああああああああああああああ!!」
突如立ち上がり叫び出す古泉。
ハルヒ「そう、その闘志よ…………ぐぼっ!」
古泉が右ストレートをハルヒの顔面に叩き込む。
ようやく反撃するのか。いいぞ古泉。せいぜい恨みを晴らせよな。
ハルヒ「ちょ……痛いじゃな……ぎゃあっ!」
横っ面に左フック。
ハルヒはボタボタと鼻血を流している。
お前が古泉にあんなことしなかったらここで止めてたが、まあ自業自得だ。
顔面に、ボディに、重そうなパンチを打ち込む古泉。
古泉「あああああああああああああああああああっ!!」
ハルヒ「やめ……やめ……ぐうっ……」
まあ、いくらハルヒの運動神経がよかろうと、
機関で鍛えられてる古泉とハルヒじゃ大人と子供だよな。
古泉「ああああっ!! ああああああっ!!」
ハルヒはものの5~6発でダウンする。まあそうなるよな。
さ、これで終わりだろ。お疲れ古泉。と思ったら
古泉「うああああああああっ!! あああああああああっ!!」
倒れたハルヒを蹴り続ける古泉。おいおい……お前がそんなこと……
ハルヒ「うぁぁああああっ!! 反則じゃない!
止めてよ!! 止めてぇーーっ!!」
キョン「古泉! 落ち着け! ダウンだダウン!!」
古泉「あああああああああああああっ!!」
ああもう、凄い力だし止めきれん、くそっ!
キョン「長門、ちょっと手伝ってくれ」
長門「わかった」
え? 長門居たのかって? 最初から居たぞ。
古泉がサンドバッグにされてるのに目もくれず本読んでたけど。
長門に手伝ってもらってようやく古泉を止める。
キョン「おい、それ以上やったらハルヒが病院送りになっちまうぞ」
古泉「はあっ……はあっ……はあっ……」
ハルヒ「うわあああああああんっ!! わあああああああんっ!!」
鼻と口から血を流し、顔を腫らして大泣きするハルヒ。
ハルヒのこんな姿初めて見るぞ……。
みくる「す、涼宮さん大丈夫ですか……」
ハルヒ「うぁああああっ……女を殴って楽しいの……
ねえ……楽しいの……ううううっ……うっ……」
確かに古泉は大人気ないが、お前の発言も行動も
全てが物凄く大人気ないぞ、ハルヒ……。
古泉「はあっ……はあっ……ぐ……うう……
あああああっ……ああああああっ……」
古泉まで泣き出した。なんなんだ、一体どうしたんだよ今日は……。
キョン「おい、落ち着けよ、古泉……なあ」
ハルヒ「古泉くん……もう出て行ってよ……
あんたの顔なんて見たくないわ……」
何を言い出すんだよハルヒ。古泉を追い込んだお前が悪いんだろ……。
古泉「…………」
ハルヒ「出て行ってよ!! 早く……!!」
古泉「……わかりました」
キョン「ちょ、おいっ! ハルヒ、取り消せ!」
みくる「あのっ、古泉くん病院……いきましょう?」
古泉「いえ、いいんです……それでは……」
ハルヒ「なんで……あたしが謝らなくちゃいけないのよ……。
あたし悪く無いわよ! ねえ、みくるちゃん?」
みくる「ええとぅ……その……涼宮さんも古泉くんも……
あのぅ……悪くないかと……」
ハルヒ「有希、あたし悪くないわよね? ね?」
長門「悪く無い」
……ああそうだった、SOS団にはハルヒのイエスマンしかいないんだった。
だけど俺は違うぞ。
ハルヒが全然可哀相じゃないな
キョン「ハルヒ、お前が悪い。お前が古泉を好き放題殴るのが悪い
お前に腹が立つ。バカ野郎」
ハルヒ「は? なによキョン……なによ!!」
あんまりイライラしたので俺はそのまま部室を出て帰った。
これ以上ここに居たらハルヒを殴ってしまいそうだからな。
その後三日間、ハルヒも古泉も学校に来なかった。
ハルヒはおそらく、ボコボコに腫れた顔で外に出たくなかったのだろう。
古泉とは言うと……
キョン「もしもし、古泉か? こないだは災難だったな。
お前、ちゃんと病院行ったか?」
古泉「その節はご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
ところでお電話したのは、あなたにお願いがあるのです」
キョン「なんだ、ハルヒに説教ならいくらでもするぞ」
古泉「いいえ、違います。……涼宮さんに、謝罪していただきたいのです」
キョン「……は? 何を言ってるんだお前は。
ハルヒに何を謝る事がある?」
古泉「あなたが涼宮さんを叱った事、それと僕の仕出かした事が
合わさって、過去最大規模の閉鎖空間が発生しています。
機関総出で対応していますが……このままだと世界が
閉鎖空間に飲み込まれてしまいます」
キョン「いや……だけどな……俺だって……」
古泉「お願いします、なんとか涼宮さんに謝っていただけませんか」
古泉「お願いします、なんとか涼宮さんに謝っていただけませんか」
キョン「うーん。しかし……」
古泉「……先の事件により、機関では僕の処分が検討されています」
キョン「処分……クビか?」
古泉「いいえ、違います。命を処分するということです」
おいおい、冗談はよせよ……いくら秘密の組織だかなんだか
知らんが、殺すなんてそんな……。
古泉「世界の命運と、僕一人の命では、あまりにも
重さが違いすぎるという事です……。
僕のやってしまった事で、機関でだけではなく、
関係各所は大混乱ですよ。なので……どうかお願いします。
涼宮さんに……」
キョン「……ああ、わかったよ」
古泉「ありがとうございます……僕も明日には登校しますので、
では、また明日……」
はぁ……いくら重要人物だからって、あんだけ好き勝手
やっていいもんなのかね……。まあ、世界の命運とやらには
変えられんのだろうが……。古泉も大変だな……同情するぜ。
くそつまらん
ボディ連発で胃液吐かせるくらいを期待してたのに
翌日、顔にガーゼと絆創膏を貼ったハルヒと
久しぶりに顔を合わせる。
ハルヒ「…………」
キョン「ハルヒ、もうだいぶ腫れ引いたじゃないか」
ハルヒ「…………まあね」
キョン「こないだの事はもう気にして無いし、忘れろよ」
ハルヒ「別にあんたに言われたぐらい……どうでもいいわよ」
キョン「言いすぎた、すまんなハルヒ」
別に全然言い過ぎてないしすまんとも思ってないが、
古泉が死んでしまうぐらいなら、いくらでも謝ってやるさ。
ハルヒ「フン。許してあげるわよ」
キョン「そりゃどうも」
ハルヒ「ね、キョン! あたしお腹空いたわ! 食堂いきましょ!」
いきなり元気になるハルヒ。なんなんだこいつは。
で、放課後部室。
他の4人は揃っている。が、古泉の姿は無い。
なんて思ってるとドアをノックする音。
ハルヒ「どうぞ」
古泉「失礼します……」
ハルヒ「古泉くん、あたし出て行けって言ったわよね?
どのツラ下げてここに来れるわけ?」
古泉「申し訳ありませんでした!!」
土下座しだす古泉。
おい、やめろよハルヒに土下座とかよ……。
ハルヒ「あなた、あれが謝って済むような事だと思ってるの?」
古泉「涼宮さんにした事は、一生の不覚と恥じています!
どうかお許しください! もう二度と逆らいません!」
キョン「古泉……なあやめろよ……」
古泉「一から勉強する覚悟でやりますのでどうかご指導ください!
本当に申し訳ございません! 申し訳ございません!」
ハルヒ「女に手を上げるような男が更正できると思ってるの?
また同じ事しでかすわよ。ね、みんな?」
このハルヒはレディーファーストとか言っちゃう女だな
キョン「おいハルヒ、ここまで謝ってるんだからもういいだろ!」
ハルヒ「でもねえ……」
キョン「ハルヒ!!」
ハルヒ「もう、キョンがそこまで言うならいいわよ。
わかったわ。許してあげる」
古泉「ありがとうございます! ありがとうございます!」
ハルヒ「でも、罰として副団長は剥奪よ。いっちばん
下っ端に降格ね。古泉くんはコンピ研以下だから。
みんな、古泉くんになんでも命令していいわよ!」
ああっ、腹が立ってきた! でもここで怒ったら古泉が……くそっ!
古泉「なんでもお申し付けください。仰せのままに……」
ハルヒ「じゃ、こないだのボクシングの続きやりましょ!
みくるちゃん! ゴングの準備!」
みくる「……は、はい…………」
朝比奈さんも見ていて辛いだろうに。
クソ、何でこんな事になっちまったんだよ……。
古泉「(計画通り・・)」
ハルヒ「うらあああああ!!!」
古泉(鉄塊!)
ハルヒ「ぐああああ!手があああああ!」
古泉「どうしたんですか?もっと殴ってくださいよ」
ここまで「機関」のシナリオ通り
ハルヒざまぁw
そして、ハルヒがボクシングと称する単なるリンチが始まる。
ハルヒ「ほらほら! かかってきなさい!
この間の借りを返してあげるわよ!」
ハルヒは最初からルールを無視して古泉を蹴る、蹴る。
ハルヒ「やっぱローキックから組み立てるのがセオリーよね!」
足を上げてガードする事なく、蹴られ放題の古泉。
ハイキックが古泉の頭に決まる。
ハルヒ「下ばっかり意識してるからハイを食らうのよ。
ねえキョン、パンツ見た? あんた視線がやらしいわよその細目」
睨みつけてるのがわからんのかお前……。
古泉FIGHT
ハルヒ「ね、古泉くん。>>102がゲロを吐かせて欲しいらしいわよ。
やっぱリクエストにはお応えしないとよね」
ボディをガンガン殴りつけるハルヒ。
古泉の顔が苦痛に歪んでいく。
古泉「ぐ……ぐぐ……」
ハルヒ「ね、ここって水月? 痛い? そりゃあ痛いわよね」
古泉「うっ……うぉぉえ……」
古泉が腹を抑えて、胃の内容物を吐き出す。
長門「合気道..........テコンドー...........CQC...........北斗神拳..........DL完了」
ハルヒ「ちょっ! 何吐いてんのよ! バカじゃないの!?
古泉くん掃除! 早く!」
……もう我慢ならん。
キョン「いい加減にしろ!!」
ハルヒ「は? なによキョン」
古泉「…………」
古泉が目で『やめろ』と訴えかけてくる。
ああ、そうだったな……でもこんなのおかしいだろ!
キョン「ハルヒ、お前」
古泉「すいません、涼宮さん。ちょっとお手洗いに
いかせてもらえますか? 戻ってきたらすぐ掃除しますので。
お腹がいたくてちょっと厳しいです」
ハルヒ「ちょ、今度はウンコ漏らすの? ここで漏らしたら殺すわよ!
ちゃっちゃと行ってきなさいよ!」
『ついてこい』と目で合図する古泉。
お前の言いたい事はわかってるけどさ……
キョン「俺もトイレだ」
ハルヒ「な、なんで一緒にいくのよ」
古泉「僕を気遣っていただけるのは有難いのですが、
どうか涼宮さんを注意しないでください……」
キョン「あんなの見てられるか! やりすぎだろ!」
古泉「ですが、涼宮さんの言うとおりにしないと、僕は……」
キョン「…………」
そりゃあそうかもしれんが……ああ! クソッタレ!
キョン「……わかったよ。でも俺にも限界ってものがあるからな」
古泉「できればその時が来ないように願っています……」
ハルヒ「もう、遅いわよ! ちゃっちゃと掃除する!」
古泉「申し訳ありません。すぐに致します」
キョン「手伝うぞ古泉」
みくる「あのぉ、あたしも……お雑巾絞ってきます」
ハルヒ「あんたたちはいいの! 子供じゃあるまいし、
自分の粗相を自分で片付けられない人はSOS団にいらないの!」
黙々と吐瀉物を掃除する古泉。
途方に暮れる俺と朝比奈さん。
この日から、古泉に対する過酷なイジメが始まった。
>>148
長門も出さないと
中にだすぜww
ごめん用事が出来た。
キョン「という夢を見たんだ」
ハルヒ「はぁ? あたしが古泉くんにそんな事するわけないじゃない!
あたしは古泉くんの事大好きだもん」
古泉「僕も大好きです涼宮さん」
ハルヒ「嬉しいわ! じゃあ付き合っちゃいましょ!」
古泉「ええ、是非!」
キョン「ちょ……」
おわり。
rfニ、ヽ
l。 。 f9i
t≦_ノゝ、 ,,....,,,,__ ,rrテ≡==-、
`ブ´,,:: -- ::、 ,r''"''''''ヽ:::`ヽ. (〃彡三ミミ::`ヽ
,rニュf::r-‐t::::::::ヽ f´,,..、 r"::::::::::i /"~´ i三ミ::::i,
/,,, Y.. -‐ ヾ::::::::l ノ゙ f・= 7:::::::::::l. f:、 ‐-:、 (ミミ:::::::l
ム゚゙゙' く、'゚` ゙'"):::l ヽ'' ゙'⌒リ:ノ ノ゚ヲ ''・= リ::r-、リ
l=,,;;:. l=、 ..::" ,)ヽ、 j⌒ ト'"fノ l (-、ヽ'" ゙'´ノ),)
/`ゝ-''^ヽ''" ,/: : : :\ ヽ、: : : '" ノ^i, lィー-、 ノ-イ
/rf´ i′ ,f^ヽノ:,. - - 、 ヽ,,. -テ) ,/ `ヽ、 t_゙゙ _,,.. :: " l、
゙'゙ l l: : j :f´: : : : : ヽ,/ '''"´ ,,.: - ヽ `ユ゙" ,ノ::ゝ、
! /: :ノ l: : : : : : : ノ, ,:'" ゙ヽ i,.r‐(´::::〉 ,.ィ":::::/::::::
/-‐-/: :/: l: : : : : : ,/ / / ,f´:::,::ヽfト--テ:::::::::ノ:::::::::
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`_,:ィ''" _,r''" f: : :ト---ヲ / fノ /::/::::::://://::::::::::::::::::::::::::::
-‐-‐'''フ" ,.ノ,:::::」、,:r'" ,i / /::/::::::://://::::::::::::::::::::::::::::::
、..、く´_,,∠"ィ''"´ / ,> /\、 ,ノ:::/::::::://://::::::::::::::::::::::::::::::::
´ ,ヘr:、-、=---/ ,:イ ,ノ `゙ヽ、/:::::i':::::://:://::::::::::::::::::::::::::::::::::
ーフ´ > ヽ`ー、/ /く _,,..ィ''"゙' _,,:ィf-:、::::::!::/`゙゙ブ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/ / ,,ゝヽ, ) ,./ ィ'" r-‐ ''",., ヾ:l:/ f"´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
遅くなるかもだが保守してくれるなら完結させるよ!
ただいま。保守ありがと
イジメその①
ハルヒ「古泉くん、これ知ってる?」
ハルヒが見せたものは、指の間をペンで素早く突く遊びだ。
俺も授業中暇なとき、たまにやったりするぜ。
ハルヒ「ね、古泉くんの手でトントンさせて!」
古泉「ええ、構いませんよ」
指を広げて机の上に置く古泉。まああれなら失敗して手に当たっても
チクっとするだけだしな。ボクシングごっこに比べたら可愛いもんだ……。
ハルヒ「じゃ、いくわよ!」
古泉「…………」
おい……お前が手に持ってるの、千枚通しじゃないか……。
ハルヒ「最初はゆっくりね!」
トントンと指の間を突く千枚通し。
その度に机には微小な穴が開いていく。
ハルヒ「スピード上げていくわよ!」
トントントントントントンと凄い速さで指の肉スレスレを通過する尖ったモノ。
だめだ、もう見てられん……!
トントントントントントントントントントン……音が止まった。
ハルヒ「やだ、失敗しちゃったわ。
ほら血を吹きなさい。もう一回いくわよ!」
イジメその②
ハルヒ「キョン、あんた熱いものもったらどこまで我慢できる?」
キョン「どこまでって言われてもなあ。そんなの試した事ないしわからん」
ハルヒ「すごく熱い器とか持って運んだりする時、目的の場所まで
運ぶのに、熱すぎて手を離した事ってある?」
キョン「いんや、ないな。持ったら我慢して最後まで運ぶ」
ハルヒ「でしょ? つまりよ、人間は我慢しようと思えば、いくらでも
熱いものを持ち続ける事ができるのよ!」
いや、そんなわけないだろ……そのうち焼けどするって。
ハルヒ「それを今から証明しようと思うのよ!」
チーンとレンジの音が鳴る。おい、まさか……。
ハルヒ「ここにホッカホッカに暖めたグラタン皿があるわ!
古泉くん、ちょっと来なさい」
古泉「……はい」
ハルヒ「これ持ってどこまで耐えれるか実験よ!
絶対離しちゃダメよ! そのまま部室内をグルグル回りなさい」
古泉「わかりました」
100度を超えているであろうグツグツに沸騰したグラタン皿を素手で掴む古泉。
古泉「う……ああああ……」
ハルヒ「男のくせに何情けない声出してんの? ほら、回る!」
古泉「あ……ぐっ……ぐっ……!」
奥歯を噛み締めて必死に耐える古泉。
直視できん……こっちまで痛くなる……。
ハルヒ「まだ2週! 離しちゃダメよ!」
古泉「ああっ……がっ……!」
パリンと皿が割れる音。沸騰したグラタンが足にかかり、
悶絶して転がりまわる古泉。
古泉「ああああああ!! 熱いっ!! あああああっ!!」
ハルヒ「ちょっと! だらしないわね!
ゴロゴロしてんじゃないわよかっこ悪い!」
キョン「おい古泉! ズボンを、ズボンを脱げ!! 大やけどしちまうぞ!!」
イジメその③
翌日。
キョン「お前その包帯、大丈夫なのか?」
古泉「少し焼けどしただけですよ。心配ありません」
ハルヒ「古泉くん」
古泉「あ、はい」
ハルヒ「ねえ古泉くん、よくSOS団にイチャモンつけてくる生徒会長って、ウザいと思わない?」
古泉「……そうですね」
ハルヒ「あれ殴ってきて」
古泉「わかりました……」
殴りたいなら自分で殴れよ……。
まあ、あの会長は古泉の手のうちにあるから、
どうとでもなるだろうけどな。殴られるのは気の毒だが。
ハルヒ「あそれと、喜緑さんていつも会長とベッタリの女の子いるでしょ?」
古泉「ええ、いらっしゃいますね」
ハルヒ「あの子、前にSOS団に相談に来たけど、
生徒会のスパイだったなんて許せないわ。
あたしをおちょくるなんていい度胸だと思わない?」
古泉「そう思います」
ハルヒ「というわけで、あれも殴ってきて。
まあ女の子だし何発かビンタするだけでいいわ」
古泉「…………」
ハルヒ「あたしの事はボコボコにできるのに、SOS団の敵にはお優しいわけ?」
古泉「いえ、では行ってきます」
……喜緑さんを殴るってお前……。
それ不味いだろう、物凄く……。
機関に殺される前に死んでしまうぞ。
キョン「(おい、長門……喜緑さんに上手くいっておいてくれ)」
長門「(それはできない)」
キョン「(な、なんでだよおい! 古泉が危険な目にあったらどうする?)」
長門「(彼女は比較的温厚。殺害までは行わない。
もし命を奪うような事態になれば私が止める)」
キョン「(殺害までは……って言ってもだな……)」
ハルヒ「キョン! ちゃんとやってるか見にいきましょ!」
生徒会室のドアの隙間から中の様子を覗く。
会長「む、どうしたのかね古泉くん。生徒会室に何か用かね?」
古泉「…………」
喜緑さんがいるからか、覗かれてる事を伝えているのか、
ちゃんと会長の演技をしているな……と、殴りやがった。
ハルヒ「(ナイスパンチよ!)」
会長「お、おい! 何を……うぐっ!」
ボッコボコだなおい……役割とは言え可哀想に……。
ハルヒ「(もっとよ! メガネ割っちゃいなさい!)
会長「う……あ……」
古泉「…………」
ボロボロの会長。ああ……喜緑さんの方にいった。
喜緑「なぜ、このような事をなさるのですか?
暴力はおやめください」
古泉「…………」
喜緑「古泉くんはもっと冷静な方だと思っておりました。
……あの、その手は何をなさる手ですか?」
あ、殴った……おい、やばいって! 殺されるぞ!
喜緑「……え……」
2回、3回、往復ビンタを食らう喜緑さん……。
ハルヒ「(ざまあないわ! いい気味よ!)」
喜緑「あ……あ……」
古泉「…………」
さすがに古泉も恐怖で震えてるぞ。
ああ、これはやはり長門を読んだ方が……。
喜緑「ふゎああああぁぁぁん! 助けてぇぇっ! 誰かぁぁーーっ!」
は……? 喜緑さんが泣き出して生徒会室を飛び出していく。
な、なにが起こったんだ?
ハルヒ「(ね、キョン! 笑えるわねあれ! あっはっは!)」
で、翌日。緊急全校集会。
会長「昨日、僕と喜緑さんの2名は、1年9組の古泉一樹に
凄惨なリンチを受け、怪我を負わされました!
このような凶悪な暴力行為を起こす生徒がこの学校に
いたことが、非常に残念で成りません!」
喜緑「古泉くんにいきなり酷い暴力を受けて……何度も何度も
顔を叩かれて……凄く恐怖を感じました……ぐすっ……」
会長「女性に暴力を振るうという破廉恥は断じて許されない!
我々生徒会は暴力に屈せず、校内暴力を追放するために戦います!」
全校生徒に事件が知れ渡った古泉は女子生徒を殴る危ない人間として、
誰も近寄らず、話かけず、廊下を歩けば陰口を叩かれ、
食堂にいけば周りの席の生徒が移動し、喜緑さんファンの男性生徒から
数々の嫌がらせを受け、挙句にローカルニュースで報道され、
巨大掲示板に顔写真と住所を晒されるような、とにかく悲惨すぎる
学校生活を送る事となった。そしてもちろん停学になった。
古泉「どうも……」
キョン「古泉……停学明けたんだな。お帰り……」
古泉「ご迷惑をお掛けしました……」
キョン「なあ、生徒会長はお前の息がかかってるんだろ?
なんであんな事するんだ? 全校生徒の前で古泉を……」
古泉「喜緑さんが教員たちに泣きついたと言っていました。
会長も、立場上そうせざるを得なかったのでしょう。
まあ仮に暴力事件を起こしても、機関の力でもみ消すぐらいは
できるのですが、喜緑さんを怒らせてしまったんでそれも無理でした。
情報操作されたら手も足も出ませんよ」
キョン「そうか……でもこれから真面目にやってたら、
周りの噂も消えていくって」
古泉「そんな事は些末な問題です。
学校生活を楽しむなんて、僕には……
それよりも、 涼宮さんの事が心配です」
キョン「ハルヒもさすがにお前をこんなに遭わせたら、
反省のひとつぐらいするだろ。いくらなんでも……」
だが、ハルヒは反省するどころか
ハルヒ「ちょっと古泉くん! よくもSOS団の名前を汚してくれたわね!」
古泉「大変申し訳ございませんでした……」
キョン「お、おい、元はと言えばハルヒが……」
ハルヒ「殴りにいけとは言ったけど、騒ぎにしろとは言ってないわよ。
目出し帽かぶっていくなり、闇討ちするなり、バレないように
やればいいじゃない。バカ正直に正面からやっちゃって、
ちょっと頭が悪すぎるんじゃないの?」
古泉「仰るとおりです。浅はかな行動でご迷惑をお掛けいたしました」
ハルヒ……お前なあ……!
ハルヒ「とりあえず、罰としてあたしのスパーリングに付き合いなさい」
古泉「かしこまりました」
キョン「ふざけん……」
古泉が俺の腕を掴む。
古泉「(涼宮さんの好きなようにさせてあげてください……)」
……ああもう、わかったよ!
ハルヒもハルヒだが、お前もちょっとは……
って、言ってやりたいが……命が掛かってるなら仕方ない……。
その後も毎日のように激しいイジメが行われ、
その度に体に傷が増えていく古泉の様子を
見ている俺の精神も限界に達しようとした頃、
部室に忘れ物をした俺は、夕暮れの廊下を引き返し
文芸部室のドアを開けた。
キョン「WAWAWAわすれもの……」
古泉「…………」
古泉……お前、なんでお茶なんて飲もうとしてるんだ?
キョン「なんだ、お前まだいたのか」
古泉「え、ええ。ちょっと……」
キョン「お茶が飲みたかったのか?」
古泉「まあ、そんなところです。では僕はこれで」
キョン「ああ、じゃあな」
あいつ、なにがしたいんだ?
って……これ、ハルヒの湯のみじゃないか。
……ええと、お茶が入ってないし乾いてるってことは……。
…………さっき、口の近くに持っていってたよな……舐めようとしてたのか?
…………それはつまりええと、あいつはハルヒに
変態的な好意を持っていて、ハルヒはあいつをイジメていて……。
背筋がゾクっとした。
キョン「まさか……な……」
そんな頭のおかしいマゾヒストが存在するわけない。
あまり考えてはいけない、忘れよう。
だがそれからというもの、ハルヒにイジメられる
古泉を、こいつ本当は喜んでるんじゃないかって目で
見てしまう。だって普通の人間はここまでイジメられて
平然としてられるわけじゃないしな……。
まあそれを言ったら、ここまで酷いイジメを行うハルヒも
充分に異常であるが……。ハルヒってここまで酷い奴だったか?
それからしばらくたった日、古泉がハルヒの湯のみを舐めようとしていた
光景がどうしても気になった俺は、団活終了後に階段の影に隠れて、
古泉が来るかどうか確かめる事にした。
待つこと10数分。さすがに毎日あんな変態行為を
してはいないか。と、コツコツと足音。
古泉「…………」
――来た!
顔を引っ込める。ガラっと扉を開ける音。部室に入ったようだ。
古泉、やっぱりお前はドMのド変態なのか……?
足音を立てないようにゆっくりと部室に近寄り、
ドアの隙間から中を覗く。
やっぱり……ハルヒの湯のみを取った……。
古泉「…………」
舐めるのか? なあ?
だが、古泉はポケットからフィルムケースのような
ものを取り出し、同じく取り出した綿棒のようなものを
その中に突っ込んだ。
そしてそれを湯のみの口が付くところに塗りたくる……
…………ええと、せ、精子か……?
ええい、変態行為を見過ごすわけにもいかん。
それに奴がマゾ野郎かどうかも確かめたいしな。
キョン「古泉、何やってんだ?」
古泉「あ…………」
キョン「お前今何をハルヒの湯のみに塗った?
もしかしてお前の体内から出たモノじゃないだろうな」
古泉「ち、ちがいますよ……」
キョン「おい、見せろ!」
古泉のポケットに手を突っ込んでそれを取り出す。
強く握りすぎて中身が飛び出して大惨事にならんよう慎重にな。
半透明の白いクリーム状のそれの匂いを嗅いでみる。
アレの匂いではない。
キョン「これは……アレじゃないな……薬品か?」
古泉「…………」
キョン「もしかして、ハルヒに毒を飲ませようとしてたのか?
まあ気持ちはわかるが、殺すとか、いくらなんでも……」
古泉「ちがいます、毒ではありません……」
キョン「じゃあ、なんなんだよこれは」
古泉「僕の口からは説明できません。
……いえ、説明できる状態ではないのです。
ですから、森さんに説明していだきます」
キョン「な……なんで森さんの名前が出てくる!」
古泉「それも僕からは言えません……森さんの口からお聞きください」
古泉は携帯を取り出し、どこかに連絡すると
ものの数分で森さんと新川さんが部室に入ってきた。
窓から入ってきたのはこのさい深く考えないでおく。
森「こんばんは。古泉がご無礼をいたしたそうで」
キョン「古泉は森さんに聞けって言いました。
あなたは古泉に何をさせようとしているのですか?」
森「……あなたは、イジメっ子とイジメられっ子、
どちらが不幸だとお思いです?」
キョン「……なんの話ですか? ハルヒと古泉の事ですか?
古泉の方が……いや、あんなものはどっちも不幸だ。
どっちも不幸になっちまう!」
森「意地悪な答えですいませんが、どちらも幸福なのです。
イジメる快感。イジメられる快感。
あなたは感じたことがおありではないですか?」
キョン「そんなもの……ありませんよ」
森「そうでしょうか? 私はあなたを嗜虐性向のある方と
思っていましたが? 古泉がイジメを受けているのを
見て、興奮を覚えませんでしたか?」
キョン「バカな事を言わないでください!」
森「古泉は、とても興奮していたのですよ。
ねえ、古泉?」
古泉「…………」
キョン「……言っている意味がよくわかりません」
森「古泉は、マゾヒストなのですよ。
いえ、正確に申しますと、被虐性を高める薬物を
投与しております。従順になる薬物も」
キョン「な……そんな……」
もしかしたらマゾ野郎なんじゃないかと思ってたが、
薬物だって? なんでそんなことするんだよ!
森「別にそのままでもよかったのですが、
素の状態で酷いイジメを受ける古泉が可哀想でしょう?
なので、イジメられて気持ちよくなるように……ね?」
古泉「…………」
キョン「何故ですか、何の意味があるんですか?」
森「まだお分かりになりませんか?
涼宮さんにイジメられるように計画したのですよ、我々が」
何を言ってるんだ……? この人は……。
森「そうそう、古泉の持っていた薬物の事でしたね。
前振りが長くてすいません。あれは嗜虐性を高めるお薬です」
キョン「それは……サディストになるって事ですか……」
森「そういう解釈で結構ですよ。涼宮さんの嗜虐性向を
増大させ、それを古泉に向けさせる。そのために古泉を
涼宮さんにけしかけたのですよ」
キョン「な……! じゃあ、あの時古泉がハルヒを殴ったのは……」
森「そう、予定通りでした。上手くしたので古泉を褒めてあげましたよ」
キョン「……古泉、てめえ!!」
古泉の胸倉を掴む。そのまま殴って……いや、こいつは傀儡だ。
本当の悪党は……
森「そんな怖い顔で睨まないでください。
我々は地球の平和を守る、正義のヒーローなのですよ?」
キョン「ふ、ふざけんな! 何が正義だ! あんたらのした事は……」
森「閉鎖空間。ご存知ですよね? 発生するとどうなるかわかります?
放っておいたら世界が飲み込まれてしまいますよね?」
キョン「そ、それは聞いたさ……でも、それがどうしたんだ!」
森「涼宮さんがイジメを開始してから、最初にあなたに叱られた
時を除いて、一度も閉鎖空間は発生していません。
……なぜだかおわかりですよね?」
キョン「そんなの……しるかよ……機嫌がよかったんだろ」
森「そう、涼宮さんは機嫌が良かったのですよ。
古泉をイジメることにより、脳内の快楽物質が分泌され、
彼女はサディズムに溺れていたのです。イジメをする
涼宮さん、実に楽しそうだってでしょう?」
キョン「ハルヒが……あんなの楽しんでるわけ……」
楽しそうに見えたさ、けど、けどな!
森「人間は、ほんのわずかな快楽物質にコントロール
されてしまうのですよ。それに逆らう事はできません。
我々はそれを利用して閉鎖空間の発生を抑えた。合理的でしょう?」
キョン「……あんたらは、最低だ」
森「お褒め頂いて恐縮です。……初めは、あなたと
涼宮さんがお付き合いすれば、彼女の精神は安定すると思っていましたが……
あなたは色んな女性に目移りされる方ですからね。
それに、恋愛などというものは、実に不安定です。
我侭、嫉妬、疑心暗鬼、何かあるたびに不機嫌を感じる。
なのでその方法はやめて、こっちにしたんですよ。大成功でした」
キョン「それはあんたらにとって成功かもしれんが、
ハルヒにとってはだな……」
森「涼宮さんは、古泉という最高の『恋人』を手に入れて、
とてもお幸せそうですよ。あなたのように、他の女性にばかり
興味を持つ方と違ってね。……もう少し薬物の投与を続ければ、
涼宮さんはお薬なしでも大丈夫になりますよ。まあ、頭の方は
ちょっと壊れてしまうかもしれませんが……世界の命運には
変えられません、そうでしょう?」
キョン「今すぐそんなことはやめろ! やめないと……!」
森「やめないと……どういうおつもりですか?
あなたを始末する予定はなかったのですが、やむを得ません。
世界の命運と一人の命、どちらが重いかお分かりですよね?」
――空気が変わった。寒気がするぐらいに冷徹な目。
俺を殺す気か……
古泉「森さん……やめてあげてください! 彼は……」
森「お黙りなさい。余計な事を言うとお薬をあげませんよ?
禁断症状で発狂するか、イジメに耐えかねて自殺するか。
それでもいいのですか?」
古泉「し、しかし……」
森「新川」
新川「はい」
新川さんが懐から刃物を取り出す。
ああ、もうだめだ……俺には抗う術はない。
古泉「新川さん! 待ってください! 彼を殺すのは……」
森「すぐ済みますよ。ちょっと痛いだけです」
死ぬ、死ぬ、死ぬ――!
喜緑「校内で暴力沙汰はおやめくださいますか?」
へ……?
新川「――!」
どこから現れたのか、いきなり俺と新川さんの間に
立つ喜緑さん。……なんで喜緑さん?
喜緑「生徒会として見過ごすわけにはいきませんので」
森「これは喜緑さん。穏健派のあなたがわざわざ
出しゃばってくるとは、どういった風の吹き回しでしょうか」
喜緑「この間古泉くんにぶたれた事、まだ根に持ってるんですよ? 私」
森「その度は大変失礼いたしました。ですがこれとそれとは
関係ございません。そこをお退きくださいませ」
喜緑「ですから、生徒会として暴力沙汰は見過ごせないと
申しました。おわかりですね?」
森「…………わかりました、今日の所は失礼させていただきます」
喜緑さんが、俺を助けてくれた……?
喜緑「そのようになさるのがよろしいかと。あ、それと
涼宮さんに変なお薬を飲ませるはおやめいただけますか?」
森「……主流派の方々は傍観されておりますが」
喜緑「それ、無しになりましたのでご了承ください。
あなた方にお怒りの方もいらっしゃいますで、
今後の方針についてご再考ください」
森「…………わかりました。新川」
新川「はい」
帰っていく森さんと新川さん。何かわからんが助かった……。
キョン「あの、喜緑さん、助けてくれてありがとう
ございました……」
喜緑「私はまた古泉くんにぶたれるのが嫌だっただけですよ。
古泉くん、もうああいうことはやめてくださいね?
あなたの悪い評判は情報操作しておきますから、今回はそれでいいです」
古泉「……すいません……すいません……」
泣き崩れる古泉。そんなに喜緑さんが怖いのか? ってのは冗談だが
古泉も森さんたちによる犠牲者だったんだな。
キョン「あの……長門は森さんたちの企みを知っていたんですか?」
喜緑「長門さん私も、上には逆らえません。
我々もいろいろとややこしい事があるんですよ。
……では、私はこれにて」
キョン「あ、ありがとうございました」
ハルヒのイジメ、古泉の態度、長門が傍観する理由、
それらの疑問が解け、そしてこれで終わるはずだ。
……終わってくれないと困るぜ。
長門「あなたに謝罪しないといけない」
翌日長門は開口一番そう言った。
長門「我々主流派のスタンスは傍観で決定していた。
涼宮ハルヒの精神の安定を図る方向が望ましいと」
キョン「安定つっても、俺の心はグラグラだったぜ」
長門「……私も、あまり気持ちのいいものではなかった」
だからお前、ハルヒの事悪くないって言ったり、ずっと本読んで
イジメを見ないようにしてたんだろうな……。
長門「一つ問題がある」
キョン「なんだ?」
長門「涼宮ハルヒと古泉一樹の禁断症状。
薬物は数週間に渡って投与され続けた。
苦痛を伴う禁断症状が引き起こされる」
キョン「お前がなんとかできないのか?」
長門「古泉一樹はともかく、涼宮ハルヒの精神領域に
触れる事は硬く禁じられている。
症状を抑える外的治療以外に手段はない」
長門の言った通り、ハルヒと古泉は禁断症状に悩まされる事となった。
特にハルヒはそれに加え、古泉をイジメていたという意識が
罪悪感となって巻き起こり、それを古泉に涙ながらに謝罪し、
さらに古泉が罪悪感を……という悪循環を引き起こしていた。
まあそのへんの話は語るのも憂鬱なので、またいつかの機会に。
断じて書くのが面倒なわけではない。だが書けと言われても書かない。
きっとみんなもそろそろ終われよと思ってるに違いないからな。
そんなこんなで2週間あまりが過ぎた。
ハルヒ「誰かボクシングしましょ!」
キョン「またかよ……」
古泉「僕がお相手しますよ、涼宮さん」
ハルヒ「さすが副団長だわ! みんなも古泉くんの
ノリの良さをを見習いなさい」
みくる「涼宮さん、ボクシング好きですね」
キョン「俺はテニスが得意なんだ。あれなら負けない」
長門「同意」
ハルヒ「もう、あとでやってあげるわよ。その代わり負けたら罰ゲームよ!
そうねえ、全裸でちくわを咥えながら獅子丸の真似とかどう!?
それともドリブルしながら職員室まで行って、岡部の顔面にシュートするのもいいわね!」
薬を飲んでいようとなかろうと、相変わらずハルヒはイジメばかりを思いつくやつである。
あ、ちなみに俺たちがやってるのはWiiスポーツである。今更とか言うなよ。
キョン「という夢を見たんだ」
ハルヒ「はぁ? 森さんがそんな事するわけないじゃない!
森さんは優しいしあたしは森さんの事大好きだもん」
森「私も大好きです涼宮さん」
ハルヒ「嬉しいわ! じゃあ付き合っちゃいましょ!」
森「ええ、是非!」
キョン「ちょ……」
おわり。
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