幼女「ふぇぇ…私、死んじゃったよう」 (61)

幼女「うぅ……ここどこぉ?」オロオロ

幼女「ぱぱぁ、ままぁ……」グスン

幼女「ふぇぇ…誰かぁ」

死神「あらら、困りましたなぁ」

幼女「ふぇ!?誰?誰ですかぁ?」

死神「私、死神と申します」

幼女「死神?」

死神「はい、貴方を運命の通りに死んでいただき天国やら地獄へとお招きするお手伝いをさせて頂く謂わば案内人のようなものでございます」

幼女「ふぇぇ……じゃぁ、私は」

死神「はい、貴方は死にました。」

幼女「うぅ……じゃぁここは天国なの?」

死神「違います」

幼女「えぇええ」

幼女「そんなぁ…じゃぁここは……地獄?」

死神「私が困っているのはそこなのでございます。ここは神の支配領域であり三途の川の先にある至福の場である天国でも無ければ」

死神「悪行を為した罪人に苦しくも厳しい罰を与える地獄でもないのでございます」

幼女「えっ!じゃぁ、私はまだ生きてるの!?」

死神「いえ、貴方はご両親、学校の担任の言付けを一回くらいは破っても大丈夫だと言う何の根拠も無い浅はかな理由を付けて」

死神「夏休みにご友人たちと川へ水浴びに行き、運命であるがものの運悪くそこで溺れてお亡くなりになりました」

幼女「もうっ!じゃぁ、ここはどこなの!」プンプン

死神「生死の境目で御座います。天国でも地獄でもない貴方の生きた現代でもない全く別の世界で御座います」

幼女「よくわからないよぉ……」

死神「簡単に言い換えれば何らかの手違いにより天国へ行くはずだった貴方の魂と肉体は中途で半端な所で行き場を見失い留まってしまったのです」

幼女「ひどい!!そっちのミスで天国へ行き損ねたなんて!」

いや、お前賽の河原行きだから

死神「そうは言われましても一日に約15万人の方がお亡くなりになり天国へ行くのかはたまた地獄へ落ちるかの審判を受け」

死神「死後の世界へ旅立たれるのです。多少のミスは目を瞑っていただきたい」

幼女「そうは言っても!」プンプン

死神「あっ!危ない!こちらの茂みに隠れて!」ササッ

「」キョロキョロ

「あれ?いない?いたよねさっき」キョロキョロ

幼女「あのきぐるみの人は?だれ?」コソコソ

支援

死神「あの実に奇妙な格好をした方々の説明をする前にこの境目の知識を幾つか知っておかねばなりません」

幼女「じゃぁ、説明してよ。草がチクチク肌に当たって何だか鬱陶しいし」

死神「ここは生と死の境目。死ぬことの許されない世界なので御座います。つまり貴方、そしてあの奇妙な装いの方々は」

死神「いくら身を傷つけられバラバラにされようとも死なないのです」

幼女「それって悪いことなの?」

死神「いくら不死とは言え痛覚は残っております。鈍器で殴られれば痛いですしバラバラになんかされたら溜まったもんじゃありません」

死神「お怪我にはお気をつけて」

幼女「…わかったよぉ」

続きはよ

死神「そして、皆が不死であるということは当然、この世界の人口は増える一方であります」

死神「彼らは先人、職場や学校でいう先輩です。貴方がここへ来る何十年、あるいは何百年も前からここをさまよい続けています」

死神「後輩や新人がキョロキョロと我がもの顔でここを放浪するのを見てよく思わない者が当然でてきます」

幼女「そうかなぁ」

死神「そういうものです。数が増えればルールや仕来りができるのは当たり前のことで御座います」

死神「そして、それを教えるのは先人しかいないのです。とても、面倒ですよね?」

死神「状況が状況です。死んだことすら受け入れようとしない者もいるわけです。早く、ここから出せだのと先人に文句を言うものいます」

死神「では、どうすればいいか?無限に増殖する後輩たちに一人一人この世界について説明しますか?」

死神「いえいえ、そんなことはしないのです。見つけて監禁して二度と外へは出られないようにすればいいのです。その方が簡単で御座います」

幼女「察するにあの人達は私を襲ってどこかへ閉じ込めようとしているの?」

死神「作用でございます。この平野の先に収容所のような建物が御座います。彼らもまた彼らよりも先にここへ来た先輩方に雇われて」

死神「貴方のような後輩を狩っているので御座います」

幼女「そんな…どうしてこんな乱暴なことを……ふぇぇ」

死神「死ぬことの許されない彼らにとって狩りというのは最高の暇つぶしになるのです」

死神「何をすることもなく、ただ植物のようにここで永遠を過ごすのは退屈で面白味のないものでしょうし」

幼女「ふぇぇ……どうしよう」

幼女「私は何かすぐ捕まっちゃうよぉ」

「あ!!いたぞ!やっほーい」

「足だ!足を潰せぇ!」

死神「どうやら気付かれてしまったようです」

幼女「ふぅ…なんとか逃げ切れたぁ。息切れってやっぱりするんだねぇ」

死神「お怪我はありませんか?」

幼女「うん大丈夫」

死神「例え擦り傷であっても十分にお気をつけください」

幼女「わかった」

死神「この先に町が御座います。良心的な方々があのような狩人から身を守るために作った所で御座います」

死神「そこへお行きなさい」

幼女「死神さんは?」

死神「私は用事が御座いますので。また、後ほどお会いしましょう」

幼女「うん」コクリ



幼女「ふぇぇ…町についたけどどうすればいいのぉ」オロオロ

男「やぁ君!新人だね!」

幼女「…あなた誰ですかぁ」

男「僕はこの町にずっと住んでる者だよ!見るからに君の容姿は僕と同じくらいの年齢だね!」

幼女「どうして、私が後輩さんてわかったんですかぁ?」

男「町の中で怯えた顔を浮かべているのはここに慣れない不死だけだからだよ!安心して!ここは安全だから!」

幼女「うん」コクリッ

男「えーと、そうだな。僕の家に来なよ!」

幼女「ふぇっ!いいの?」

男「うん!だって君、住む家もないでしょ?」

幼女「うぅ…」

男の家

男「ただいまぁ」

幼女「お邪魔します」

母「あら、お客さんかい?」

幼女「ひっ!!」ビクッ

母「あらあら、ごめんねぇ。驚かせちゃったわねぇ」

母「私の体の下半分は車椅子なの」

母「ここへくるまでに狩人に襲われてねぇ。真っ二つにされちゃって」

男「母さん!その話はいいよぉ」

幼女(男の話を聞くに私をこの木造の小さな”家”と呼ばれる場所に招き入れたのは私が彼の年齢、正確には彼の死んだ時の年齢と)

幼女(ほぼ同じであったからだという。彼は私が来る数十年も前からこの町で暮らしている。が、彼の体は死んだ頃のままである。)

男「ここでずっと暮らしなよ。悪くないよこの町もこの家も!」

母「うん!私も賛成だわ!家族が増えるっていいことよ?」

幼女(彼とこの母親を名乗る女性に血縁関係はない。町の外で狩人に襲われているところを彼に助けられその時からここでずっと一緒に暮らしているらしい)

幼女(容姿から見るに彼らは普通の親子ではあるが時間という側面から見ると実に異端な親子である。)

幼女「ほんとに、いいの?」

男「あぁ!もちろん!」

母「うっ……男ちゃん、そろそろ夕飯の買い物に」

男「母さん、大丈夫?」

母「うん、大丈夫よ。ちょっと傷が痛むだけ、やっぱり癒えないわねぇ痛みは」

男「夕飯を食べればまた元気になるよ!じゃぁ買い物に言ってくるね!幼女ちゃんも行こ!」

幼女「う、うん!」

下半身がないってことは邪な気持ちで幼女つれこんだんじゃねぇだろうな…



男「驚いたでしょ。ちゃぁんと野菜だって売ってるんだよぉ」

幼女「う、うん」

幼女(目の前に並ぶ色とりどりの野菜。植物もまた不死なのか。また、不死である私達が食事を摂るという行為に何の意味があるのか)

幼女「」チラッ

男「どうしたの?」

幼女「ううん、なんでもないよぉ」ニカッ

幼女(人としての良心、人道を踏み外さないためにも嘗て人として行なっていたことを無意味と知りながらもこの不死の世界で演じるているのだろうか)

幼女(永遠をを生きねばならないのなら、いっそのことあの狩人たちのように人であったこと忘れを自由奔放に生きる方が良いのではないだろうか)

幼女(死して尚、生きていた時と同じように社会の中で溺れなくてはならないのか)

幼女「うぅぅ……」

死神「要するに貴方はここから出たいのですね?」

幼女「!?」

男「死神?久々に見た…」

死神「ここから出る方法は無くもないですよ」

男「また、その話?幼女ちゃんにはしなくていいだろう」

死神「そうですか」

幼女「え!出れるの!?この世界から」

死神「はい。お会いした時に申し通りここは中途で半端な世界。」

死神「根本的にここは曖昧な空間なので御座います。それ故、不死であり痛覚もある」

男「もったいぶらないでさっさと教えてやれよ」

死神「このせかいのどこかに歪がございます。それを見つけていただければ出ることが可能で御座います」

幼女「歪?」

死神「はい、抜け穴と言いましょうか。入り口があれば必ず出口というものは御座います。でなければ皆、どのようにして迷い込んだのか説明がつかないでしょう」

幼女「どこにあるの?」

死神「私は存じ上げません」

男「出口を探しに行った奴は何人もいるけど……みんな、悲惨な姿で帰ってきたよ。頭だけだったり……」

幼女「ひぃぃ」

男「帰ってこなかった連中はどうせ狩人に捕まったに違いない!」

死神「歪を見つけて出た可能性も御座います」

幼女「そうだよ!」

男「……でも、危険だよ!!この町にいる方がずっといい!」

男「母さんを見てみろよ!!体が半分になっても死ねないんだぞ!」

幼女「……それでも」

幼女「ごめんね…私行くよ」

幼女「やっぱり、ずっとここで暮らすのは嫌だよ」

男「……」

男「…ならば仕方あるまい」

男「ここで死んでゆけ!」

幼女「愚か者が!!!!」

男「なにっ!??」

町の外

死神「本当によろしいのですか?彼の言う通りあの町で暮らすのも悪くはないかと思うのですが」

幼女「嫌だ!永遠に生きるなんてそんなの」プンプン

死神「それで、どこに向かうのですか?先ほど申したとおり私は歪の場所までは把握していませんよ」

幼女「まっすぐに森が見えるでしょ?あそこに向かって見る」

幼女「時間は無限にあるんだ!虱潰しで全部歩き回ってやる!」

男「お~い!まってぇ!」

幼女「!?」

男「やっぱり……僕もいくよ。母さんは行かないって言ってたけど…だけど、やっぱり僕も出たいよ……」

男「もうずっと体は子どものままなんだ……こんなの嫌だよ」



男「気をつけて!狩人がいるかもしれないから」

幼女「うん……」

死神「言っておきますが私は立場上何も手出しはできません。狩人にもあなた達にも」

死神「ただ、助言は」

男「いいよ!初めからお前に頼るつもりもない」

死神「そうでございますか」

幼女「くらいねぇ…ねぇ、朝になるまで待たない?」

男「それだと、永遠に待つことになるよ。この世界に朝なんて無いんだ」

死神「静寂の闇が永遠に世界を覆っているのでございます。光を必要とするのなら一度町に戻って松明でも」

男「だめだめ、狩人にばれちゃうだろ」

「おぉ…い」

男「ちょっと、待って…今、何か聞こえた」

「おぉおい」

幼女「狩人かな…」オロオロ

「おおおおおい」

男「あの木の上からだ」

死神「狩人では無いと思うのですが」

男「なんでだよ」

死神「狩人がああして大きな杭を胸に打たれて木に吊るされているとは考え難いです」

男「!?」

「おぉぉおい!ぎみたち」

幼女「だ、大丈夫ですかぁ」オロオロ

「ぐるじい……十年ちかくこのざまだ」

男「悪いけど、僕達じゃ助けたれないよ。第一そこまで登れないし……」

「い゛やいいんだ……ぎみだちにつたえたいことがあっで」

幼女「?」

「ぎみだちは出口をざがじているんだろ?」

幼女「おじさん!出口を知ってるの!?」

「あ゛あぁああああああああああああああああああああああ」

「じってるよ?ぎみだぢにおじえてあげる」

「この森を抜けたところに洞穴がある゛その中に出口があ゛る」

男「本当か?それは」

「あ゛ぁぁああああああああ」

「うぞじゃないざ…お゛れは出口を見つけたから町のみんなに教えてやろうと再び引き返したところを狩人に見つかってやられたのざ」

「あ゛あああああああああああ」

「はやく行けよ。ここは奴らにとって絶好の狩場だ。いずれここへくるぞ」

「あ゛あ゛いだいいだいだいだいだいだいだい」

「できればこの杭を抜いてほしいんだがなぁああああああああ」

「お前さんらにはむりだろう。残念だ」

男「行くぞ」

幼女「……でも」

男「あの男も言ってたろ?ここにいると狩人が集ってくる」

「そんじゃぁな!」

「あ゛ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

洞穴

男「こ、ここがそうか」

幼女「そうみたいだね!やった!中に出口が!」

男「慎重に行こう。万が一狩人がいたら大変だよ」



幼女「うぅ…暗いね」

男「どのくらいでかいんだろうな。この穴は」

ガラガラ

男「!?」

男「危ない!!!!」

幼女「え?」

ガラガラガラ ドシャァアアアアアン!!!!!!!!

幼女「いたたた」

死神「岩が崩れてきたのですねぇ。これでは後に戻れません。見てください来た道はすっかり塞がれてしまいました」

男「ぐぐぐぐぐぐぐ」

幼女「!?」

幼女「大丈夫!?」

男「いだい…いだいよぉ!!!岩をどけてぇええ!!下半身が潰されてるぅぅ!!!」

死神「この岩の積木をどかすのこの幼き少女の体では無理でしょう」

男「いだだだだだ。ぐっがぁああああ!!ぜめでごろじてくれぇええ」

死神「それも不可能でございます。お忘れになりましたか?ここは不死の世界で御座います。」

男「あだまだ!!頭をつぶしてぐれぇええ」

幼女「うぅ…」オロオロ

男「だのむ!!このどおりだぁ。ぎゃぁあいだいいいいいい」

死神「お辞めになったほうがよろしいかと」

幼女「でも…」

男「ああああああああああああ。なにしてんだよ!!くそ!!!ぐはぁあああああああ殴れよ!!その石で!!ぼくのあだまをぉおおおお」

幼女「うぅ…仕方ないよね…仕方ないよね!!」

死神「おやめなさい」

幼女「やだ!!可愛そうだもん!頭を潰して楽にしてあげる!!」ガツン

男「ぐへぇ…いだい……いだいぃぃい!!!目が片方とれてる……なのに意識が……ある頭は潰れてないのか!?おい!!おい!!!」

死神「潰れてますとも」

男「あああああああああああ!!じゃぁなんで意識がぁあああああああああ!!」

男「な"ん"で"だ"よ"お"お"お"お"」

死神「ご説明しましょう。」

死神「何度も申し上げておりますがここは中途で半端な世界」

死神「貴方の意識というもの死ぬ前のものと違い脳を介していないのです。謂わば魂そのものが意識というわけで御座います」

死神「そして、欠損部が再び治癒することもございません。残念ながら貴方はここで途切れることのない意識とともに永遠にその痛みを味わい続けなければならないのです」

死神「貴方の母のように。森で出会った男のように」

男「そ、そんなぁ…いやだぁああああああああああいやだぁあああ!!!!!!助けて!!!!!!だずげでよぉおおお!!!!!!!」

幼女「……」オロオロ

死神「ですからお辞めなさいと申したのです。彼の頭を潰した所で何の解決にもなりません。痛みが増すだけなのですから」

幼女「ひ、ひぃぃいい!!!」タッタッッタ

男「まで!!!までよぉお!!!!おいてくなよぉおおおおおお!!!!!!!!!だずげでよおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

幼女(暗い暗い洞窟の中を必死で走り抜けるが彼の声は私を追いかけるかのように聞こえてくる)

幼女(いやだ!あんな風にはなりたくない!!)

幼女「こ、ここは」ピタッ

死神「これは!おめでとう御座います!これこそが歪で御座います!貴方の探し求めた出口なのです!」

幼女「私、助かるの?」

死神「はい!もちろんです!貴方は晴れて天国へ召されるのです」

幼女「よ、よし!行くよ!」

死神「それではお元気で!」

幼女「」ピョン!

fin...

病院

幼女「あ、あれ?」

死神「貴方は運がいい!こちらの手違いのお詫びということで特別に死を免れたのでしょう!」

幼女「そ、そうなんだ」

死神「いやぁ、こういうこともあるのですねぇ。それでは私はこれで」

死神「また、いずれお会いしましょう」

幼女「今度は……間違えないでね」

死神「はい!もちろんですとも!貴方の今後の行い次第ですが。次こそは必ず天国へお招きいたします」

幼女「ふぅ」

イイハナシダナー

幼女(本当に次、間違えたら許さないんだから!!)プンプン

父「よかった」

父「元気そうじゃないか」

幼女「パパ!」

父「病院で寝ずの番をどれだけすごしたことか」

幼女「ごめんなさい……私が勝手に川へ何か行ったから」

父「謝るのはそこじゃないだろ?」

幼女「え?」

父「謝るのはさぁ、そこじゃないよね?」





おわり


おわりです!
前に描いたやつ

あれだろ、なんで死ななかったんだよってこったろ

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