芳佳「十一人の怒れる魔女」 (247)

ある日の朝… 会議室にて



ミーナ「…みんな集まったわね」

坂本「ああ」

芳佳「いったいなにが始まるんですか?」

シャーリー「もう訓練始めないといけない時間じゃないか?」

 
ミーナ「とりあえずお静かに。まず説明の前に点呼を取りましょう。呼ばれたら返事をするように。坂本少佐。」

坂本「はい。」

ミーナ「バルクホルン大尉。」

バルク「はい。」

ミーナ「宮藤さん。」

宮藤「はい!」

ミーナ「リーネさん。」

リーネ「はい。」

 
ミーナ「リーネさん。」

リーネ「はい。」

ミーナ「ペリーヌさん。」

ペリ「はいっ。」

ミーナ「シャーリーさん。」

シャーリー「はいっ!」

ミーナ「ルッキーニさん。」

ルッキ「はいはいはーい!」

 
ミーナ「エイラさん。」

エイラ「ハイ。」

ミーナ「サーニャさん。」

サーニャ「はい…。」

ミーナ「うん、全員揃ってるわね。」

芳佳「え、…ちょ、ちょっと待って下さい! ハルトマンさんがいません!」

 
坂本「ん? まあ…そのことなんだが…。」

芳佳「…?」

坂本「…ミーナの方から説明がある。よく聞くように。」

   ①


ミーナ「今日、皆に急遽集まってもらったのは、"あること"について一つの結論を出して欲しいの。」

シャーリー「あること?」

ミーナ「えぇ。もしかすると、今日一日使っての議論になるかもしれない…。だから、心して聞いて欲しいの。」

芳佳「…は、はい」



ミーナ「…あのね…。」

芳佳「…。」(ゴクリ)




ミーナ「食料倉庫に保管してあったじゃがいもが…全て無くなっていたの。」

 
芳佳「……………えっ」

芳佳「ええ~~~~!!」

バルク「なんだと!?」

ペリーヌ「本当ですの!?」

エイラ「…なんだよ、そんなことかヨ…。」

サーニャ「……。」

ルッキーニ「な~んだ~。」

 
シャーリー「なんだよ。驚かせないでくれよ~。」

リーネ「いやっ、た、大変なことだよ!」

坂本「まあ落ち着け、みんな。」

バルク「…なるほど、つまり犯人はどう考えてもハルトマン…! そんなことをしそうなのはアイツしかいない!」

芳佳「で、でもちょっと待って下さい!昨日の早朝の時点ではしっかりじゃがいもはありましたよ!」

リーネ「その日は私と芳佳ちゃんが調理当番だったから、私も確認しました!」

坂本「無くなってると気づいたのは昨日の夜だ。」

ミーナ「ええ。食糧倉庫から、綺麗サッパリ無くなっていたわ。」

芳佳「そんな…貴重な野菜だったのに…。」

坂本「そこでだ。皆も知っている通り、昨日はハルトマンはいつも以上に寝坊をした。そして午前の訓練は参加していなかった。」

バルク「あぁ。」

 
坂本「昼食後の午後からの飛行訓練から参加だったが…気付いた人も多いだろうが、その日はどうも本調子ではなかったな。」

バルク「はっきり覚えている。」

ミーナ「このことから、ハルトマン中尉がなんらかの理由があって、じゃがいもを全て食べてしまった…もしくは盗んで隠した、あるいは処分したとして、罰則を与えることに決めたの。」

芳佳「ええっ!?」

バルク「うむ、妥当だ。」

 
坂本「罰則は、"3日間の自室待機処分"。 今日から3日間は一切部屋から出ることを禁止する。もちろん、他人がハルトマンの部屋に入ることもだ。」

芳佳「えっ…ちょっと待って下さい! ハルトマンさんは何も言ってないんですか!?」

ミーナ「もちろん、昨日の夜のうちに美緒とふたりで本人に問いたわ…。」

坂本「本人は…もちろん否定した。そこで罰則の内容を伝えたんだが…。」

芳佳「伝えたら…?」



坂本「…素直に受け入れた。」

ミーナ「ええ、心なしか、少し喜んでいるように見えたわ。」

 
バルク「なっ…! 奴の寝坊グセがここまで来たというのか! 数日ひたすら訓練に参加せず、ただ寝ていたいがためにわざと罰則を受けるようなことを…!」

リネット「大事な食料を…ハルトマンさんが…。さすがにひどいと思います…。」

エイラ「中尉もおわったナ。」

ルッキーニ「え~~~っ! もうしばらくじゃがいも食べられないの~!?」

シャーリー「残念だけどな。まあ、仕方ないことだ。」

芳佳「…。」

シャーリー「ところで中佐。議題は結局なんなんだ。」

 
ミーナ「ああ…ごめんなさい。要するに、この罰則について賛成か反対か、皆に決めて欲しいの。残念だけど、これは上からの命令でね。」

坂本「軍の上層部も少し怒り気味だ。最近の501は特にたるんでると思われているしな。」

芳佳「…。」

バルク「くっ…これを期に、ネウロイから世界を守ることが我々の指名だという強い認識を改めて持たなくてはな…。」

坂本「ちなみに言っておくが、10人中10人全員が賛成、もしくは反対でないとこの議会は終われない。丸一日この議会にあてるよう命令された。そこで、今日の訓練は急遽中止だ。」

 
ルッキーニ「えっ!ほんとに!? やったー!」

シャーリー「こっコラ!ルッキーニ!」

ルッキーニ「ていうことはさ!早く終わらせちゃえば今日は一日遊べるってことじゃん!」

坂本「まあ、そうなるな。」

ルッキーニ「うじゅうう~。」

ペリーヌ「正直、長引く余地は無いでしょうに。」

エイラ「だよナ。」

芳佳「………。」

 
坂本「このことに関して、異論はないか?」

バルク「無い。はやく決めてしまおう。…私は悲しい。ハルトマンに対しても、それを厳しく叱ってやれなかった私に対しても…。」

リーネ「バルクホルンさん…。」

ルッキーニ「早くぅ~! 早く終わらせようよ~!」

芳佳「……………。」




ミーナ「では、一人づつ順番に言ってもらうわ。ちなみに私は賛成ね。では、坂本少佐。」

 
坂本「非常に残念なことだが…私は賛成だ。すこし頭を冷やしてもらわないとな…。」

ミーナ「賛成2票。では、バルクホルン大尉。」

バルク「もちろん賛成だ! いや、もっと厳しい罰則を与えても私は構わない!」

ミーナ「賛成3票。次、シャーリーさん。」

シャーリー「賛成かな~。ハルトマンは実力はあるけど、だからといって今回の件を見逃すわけにはいかないしな~。」

 
ミーナ「賛成4票。ルッキーニさん。」

ルッキーニ「賛成賛成!! ねえシャーリー、今日はいい天気だからさ!海で泳ごうよ!」

シャーリー「気が早いぞルッキーニ。」

ミーナ「賛成5票。エイラさん。」

エイラ「私も賛成ダナ。」

ミーナ「賛成6票。サーニャさん。」

サーニャ「…賛成…。」

 
ミーナ「賛成7票。ペリーヌさん。」

ペリーヌ「私も賛成ですわ! 大尉も言ったように、メンバー全員が軍隊としての自覚を持ついい機会ですわ!」

ミーナ「賛成8票。リーネさん。」

リーネ「さ、賛成で…。」

ミーナ「賛成9票。では最後、宮藤さん。」

芳佳「………。」

 
ミーナ「宮藤さん?」

芳佳「私は……わたしは…」

坂本「宮藤、早く決めろ。」

ルッキーニ「シャーリー!それか虫捕りに行こうよ虫!」

シャーリー「いやあ…そ、それは遠慮しとく…」

 
バルク「早く決めてくれ宮藤! これはハルトマンの今後、そして501の未来に関わる大事な議会なんだ!」

ペリーヌ「まったく!これだから決断力の弱い人は…!」

ミーナ「宮藤さん…?どうしたの?」

芳佳「わかりました……」





芳佳「………賛成…です…。」

 
 
 
坂本「決まったな。」


エイラ「なんかあっけなかったナ。」

芳佳「…。」

ルッキーニ「シャーリー! やっぱり久々にドライブしようよ!」

シャーリー「おっ! いいなそれ! たまにはハンドル握ってぶっとばしたいしな!」

バルク「ハルトマンには、あとで私からもキツく言わねばならん。」

 
エイラ「サーニャ、今日は一日中サーニャの今後の運勢を占ってあげるぞ。」

サーニャ「う、うん…」

坂本「ちょっと皆一旦静かにしてくれ! 最後にミーナにしめてもらう!」

芳佳「……。」

 
ミーナ「え~では、賛成10票、反対0票につき、ハルトマン中尉は3日間の自室待機処分決定。これにて議会を…」

芳佳「すみません!!!! ちょっと待ってください!!!!!」

坂本「なんだ?宮藤。」

芳佳「やっぱり…」




芳佳「やっぱりわたし反対です!!!!!」

坂本「えっ…」

ミーナ「えっ?」

ルッキーニ
シャーリー
リーネ
ペリーヌ     「えええええええええええ!!!!!!!!!」
バルク
エイラ
サーニャ

 
    ②

ペリーヌ「正気ですの!? 宮藤さん!」

バルク「宮藤!何を言っているんだ!どう考えてもハルトマンに罰則は必要! そうだろ!?」

リーネ「芳佳ちゃん…」

ミーナ「しかし困ったわねえ。」

坂本「正直、私もすぐ終わる議会だとばかり思っていたからなあ。」

 
ミーナ「しかたないわね。え~っと…賛成9票、反対1票。何か意見がある方は挙手をお願いします。」

ペリーヌ「ハイ。」

ミーナ「ペリーヌさん。」

ペリーヌ「宮藤さん、どうして急に意見を変えましたの?」

芳佳「えっと………すみません。」

ペリーヌ「『すみません』じゃ、わからなくてよ?」

芳佳「本当は"反対!"て言おうとしたんです。そしたら、皆賛成だったから…。」

 
ペリーヌ「はぁ?」

芳佳「…謝ります! ごめんなさい! やっぱり自分に嘘はつけませんでした!」

ペリーヌ「あなたねぇ…」

ミーナ「それじゃ、他に意見のある方。」

芳佳「はい。」

ミーナ「宮藤さん。」

 
芳佳「言わせて下さい。みなさん………みなさん無責任です! ただ『それらしい』という根拠もない理由だけでハルトマンさんを悪者にしたて上げて…。」

坂本「いやっ。そ、そうは言ってもだな宮藤。」

芳佳「私達は仲間です!大切な大切な…! 仲間を信じてみたらどうですか! ハルトマンさんは否定してるんでしょ!?」

ミーナ「たしかにそうだけど…。」

バルク「根拠ならあるぞ宮藤。」

芳佳「?」

バルク「本当に否定しているんだったら、罰則は決して受け入れないはずだ。いくらハルトマンでも、それくらいは言うはずだ。」

 
芳佳「それは…そうですけど…。」

バルク「ミーナ。その手に持ってる資料を見せてくれ。そこにもっと決定的な証拠があるんだろう?」

ミーナ「証拠になるかどうかわからないけど…これは前日から当日までの詳しい経緯をまとめたものよ。」




   ③


ミーナ「現状、把握している内容をまとめるとこうね。」

坂本「なるほど、これはわかりやすい。」

---------------------●--------------------- 
前日

20:00 食料倉庫を確認。じゃがいも18個

21:00 夕食はジャガイモのスープ etc...。 じゃがいも14個確認

当日

6:00 食事担当:宮藤&リネット じゃがいも14個確認

7:30 食料支給到着。主に調味料で、野菜類は無し & 朝食 扶桑料理 じゃがいも使用せず

8:00 午前訓練開始。

11:00?~11:30? ハルトマン起床&食事

12:30 昼食(屋外) 扶桑料理の弁当

13:30 午後訓練開始

14:00 ハルトマン訓練参加

18:00 訓練終了

19:30 夕食 扶桑料理 調理開始 じゃがいも使用せず

20:00 ミーナ&坂本 食糧倉庫確認 じゃがいも0個

21:00 夕食

22:30 ハルトマン 自室待機処分(仮)

翌日

9:00~ 議会開始

 
ペリーヌ「これでもまだハルトマン中尉が無実とでも言うんですの?」

バルク「11時半に起きて残っていた朝食を食べていたとしても、そこから訓練参加まで2時間半というのはあまりにも空白の時間が多すぎる。」

エイラ「これはもう言い逃れできないぞ、ミヤフジ~。」

芳佳「なにかが、なにかがおかしいんです。」

坂本「何がだ?」

 
芳佳「それは……わからないですけど…。」

坂本「…宮藤…。」

バルク「宮藤、ふざけるのもいい加減にしてくれ。」

ルッキーニ「ねえよしかー。絶対ハルトマン中尉が犯人だよー。はやく話し合い終わらせようよー。」

シャーリー「ちょ、ルッキーニ!」

リーネ「芳佳ちゃん…。」

 
芳佳「えっと……そうだ! ハルトマンさんが盗むところ、もしくは食べるところを見たという人はいないんですか!?」

坂本「事件の目撃者はいない。」

芳佳「だったらまだ証拠不十分です! ハルトマンさんが犯人と決めつけるには早いですよ!」

坂本「しかしだな宮藤。」

ミーナ「宮藤さん。実は、ハルトマンさんが食堂から自室に向かうところを見たと言っている人がいるの。」

芳佳「えっ?」

ミーナ「廊下を掃除していた男性なんだけど、訊くところによると、12時過ぎごろに苦しそうにしながら部屋へ向かっていたらしいの。」

 
芳佳「『苦しそう』ってどんなかんじですか!?」

ミーナ「彼曰く、手をお腹に当てながら、ふらふらと歩いていたらしいわ。」

芳佳「そんな…。」

坂本「なるほど、やはり隠したのではなく、すべて食べていたのか。」

バルク「おのれハルトマン…! ますます怒りが湧いてきた…!」

 
リーネ「お、落ち着いてください!バルクホルンさん!」

バルク「落ち着いてなどいられるか! 私のしつけが甘かったようだ! すまないミーナ、私も反対に1票だ。奴に3日間の刑罰はぬるすぎる。私はもっときつい刑を要求する!」

リーネ「なっ…えっ…」

ミーナ「えっと…。賛成8票、反対2票…っと。」

坂本「でもこの反対の2票は全く意見が一致してない。」

エイラ「ますますややこしい方向に向かっているナ。」

シャーリー「…。」

ルッキーニ「もうやだぁ~~~。 はやく遊びたいよ~。海に行きたいよ~。」

 
ペリーヌ「ルッキーニ少尉! あなたまじめに議会に参加していますの!?」

ルッキーニ「うるさい、つんつんメガネ~」

ペリーヌ「なっ!」

坂本「おちつけふたりとも。とにかく、全員が納得する結果になるまでこの議会は終われないんだ。協力してくれ。」

ペリーヌ「少佐がそうおっしゃいますのなら…。」

ルッキーニ「でたでた~坂本少佐にデレるペリーヌ~。」

ペリーヌ「あなた! 口をつつしみなさい!」

 
ミーナ「とにかく、意見のある方は挙手をお願いします。」

芳佳「はい!」

ミーナ「宮藤さん。」

芳佳「と、とりあえず! みなさん賛成の理由を具体的にお願いします! あ、バルクホルンさんは反対の理由も。」

ペリーヌ「あなたの反対の理由もちゃんと言うんでしょうね。」

芳佳「そりゃ…もちろん言います…。」

 
ミーナ「じゃあまずリーネさんから。」

リーネ「私は…やっぱり普段から寝坊グセがあることと…それから…。」

芳佳「それから?」

リーネ「………」

芳佳「………?」

リーネ「…じゃがいもが…好きだから…?」

芳佳「それじゃあ理由になってないよリーネちゃん。」

 
リーネ「でも…。」

芳佳「リーネちゃん!」

リーネ「…………。」

ミーナ「ま、まあそのへんで。次、エイラさん。」

エイラ「リーネと大体一緒ダナ。訓練を合法的にサボれる方法を中尉なりに考えた結果がじゃがいも泥棒だろうナ。」

芳佳「エイラさん…!」

エイラ「まあいいじゃないか芳佳。本人も3日寝ていられるし本望だろうしサ。」

芳佳「そんなんでいいんですか…」

 
芳佳「……………。」

エイラ「な、ナンダヨ。」

芳佳「いえ、なんでもないです…。」

ミーナ「では次、サーニャさん。」

サーニャ「…………………。」

ミーナ「サーニャさん?」

芳佳「サーニャちゃん?」




サーニャ「…ごめんなさい、私、反対に変えます…」

 
エイラ&芳佳「ええっ!!!」

サーニャ「一昨日の訓練終わりに、ハルトマンさんとふたりきりで海岸沿いを散歩していたんです…。」

エイラ「えっ、嘘ダロ、サーニャ。」

サーニャ「そのとき、ハルトマンさんが言っていたんです。私、最近どうも食欲がなくて体が疲れてるって。」

エイラ「さっ、サーニャ…?」

芳佳「サーニャちゃん!」

 
サーニャ「ハルトマンさんは皆を心配させたくないから、できれば内緒にしておいてくれって言ってたんですけど…。大事なことを黙っててごめんなさい。」

ミーナ「いいのよサーニャさん。気にしないで。」

エイラ「…………………。」

芳佳「ということは、ハルトマンさんは当日は暴食できない状況だった。ということだねサーニャちゃん!」

バルク「まて宮藤! ハルトマンのことだ、どうせ一日休めば体調なんて復活するに決まってる!」

 
芳佳「でもハルトマンさんは『最近』って言ったんだよね!サーニャちゃん!」

サーニャ「確か…。あれ?」

芳佳「サーニャちゃん?」

サーニャ「でも、『朝から』だったような気が…」

芳佳「そこ大事なとこだよ!」

サーニャ「ごめんなさい……」

バルク「ま、食べられなくても隠すことはできたはずだ。」

 
芳佳「…バルクホルンさん、もういい加減にしてください!」

バルク「それはこっちのセリフだ宮藤。どうして理解しようとしないんだ!」

芳佳「どうもおかしいんですこの議会は! わたしにはなにか理由をつけて、ハルトマンさんに罰を与えようとしているようにしか見えないんです!」

バルク「私には宮藤がハルトマンの悪事をかばっているようにしか見えない!!!!」

芳佳「ハルトマンさんは『やってない』って言っているんです!バルクホルンさんが信じてあげなくて誰が信じるんですか!!!!」

バルク「奴に罰を与えてやることが私にできる最大のしつけであり、私なりのハルトマンへの『愛』だ!! お前に何がわかる!!!!」

芳佳「それは絶対に間違っています!!」

バルク「なんだと宮藤!!!! だったらお前の言い分も聞かせてもらおう!!!!!」

芳佳「もういいです!!!! 私バルクホルンさんのこと嫌いになりました!!!!!」

バルク「!!!!!!!!!」ガーン

 
 
 



リーネ「芳佳ちゃん…! 言い過ぎだよ…!」

芳佳「あっ…。すみません…。」

バルク「いや、こちらこそすまない…。怒鳴って悪かった…。」

芳佳「いえ、私こそ…嫌いになんてなってませんから。」

バルク「フッ…」

 
シャーリー「ひとついいか? さっきバルクホルンは『食べたのではなく隠した』みたいなこと言ったよな。」

バルク「ああ。」

シャーリー「だとしたら、どうして食事の後に手で腹を抑えて苦しそうに部屋に向かっていったんだ?」

バルク「それは…。」

シャーリー「その証言からだと、食べ過ぎて苦しかったと見るのが普通だ。でも、実際は食欲がなかったため小食だった。」

バルク「ああ、そうだ。でもそれは仮の話だ。実際はもうすでに元気だったかもしれない。」

シャーリー「…一つ聞きたいが、バルクホルンは毎朝ハルトマンを起こしに行ってるよな?」

バルク「確かにそうだが。」

 
シャーリー「ということは事件当日も起こしに行ったはずだ。」

バルク「ああ…」

シャーリー「ちゃんと起こせたか?」

バルク「いや、いつものことだが、返事がなかったからそのまま私は訓練に参加した。」

シャーリー「いつも? いつも返事がないのか?」

 
バルク「あ、ああ…」

芳佳「わたし、よく朝にバルクホルンさんの怒鳴り声を耳にします! 確か、『あと2時間とはなんだ!』とか言っていた気が…。」

バルク「な、宮藤…」

シャーリー「会話してるじゃないか。正直に言え。」




バルク「…………いつもは私に反論する…………でも、その日は全く返事がなかった。いや…唸り声だけでほぼ聞き取れなかった。」

 
シャーリー「うん、決まりだな。ハルトマンは事件当日、朝から体調が悪かった。ま、これはあくまで私個人の意見だけどな。」

坂本「ということは、シャーリー、お前も…。」

シャーリー「ああ、私も反対だ。」

芳佳「シャーリーさん!!!」

ミーナ「ということは、賛成6票、反対3票、その他1票ね。」

坂本「なんだ? "その他"とは。」

ミーナ「トゥルーデのことよ。彼女も反対に入れるとややこしいから。」

坂本「なるほどな。」

・ 



芳佳「ありがとうございます、シャーリーさん。」

シャーリー「おぉぅ。」

ペリーヌ「ちょ、ちょっとみなさん!一番大事なことを忘れていませんこと!?」

坂本「なんだペリーヌ。」

ペリーヌ「もしハルトマン中尉が無実だとしたら、誰がじゃがいもを盗ったっていうんですの?」

坂本「まあ、確かにそうだ…。」

ペリーヌ「それがわからない限りは、私はハルトマン中尉が犯人だという意見を変えませんわ!」

ミーナ「…実はね、反対意見で一致したら、その場合は真犯人を探すのも私達の議題の一つなのよ。」

バルク「なんだって!?」

坂本「どうしてそんな大事なことずっと黙っていたんだ!」

ミーナ「仕方ないじゃない! 私だってこんなに長引くなんて思ってないもの! てっきりハルトマンさんが犯人ということですぐ決着するものだと…。」

坂本「まあ、正直反論できないな…」

   ④

坂本「意見をまとめるとこういうわけだ。」


賛成

ミーナ
坂本
エイラ…「寝坊グセがあるので、いっそ休ませてあげたい。」
リネット…「ジャガイモ大好き! だからこいつ犯人。」
ルッキーニ
ペリーヌ

反対

芳佳
シャーリー…「事件当日の体調から、14個ものじゃがいもを盗むのは不可能。」
サーニャ…「上に同じく。」

保留

バルクホルン…「罰を与えるのは賛成だが、もっと厳しい罰を要求する。」

 
リーネ「ちょっと私の意見の書き方おかしくないですか?」



ミーナ「じゃあまだ意見を言ってない人から何か言ってもらいましょうか。ペリーヌさん。」

ペリーヌ「簡単ですわ。さっきも言いましたが、ハルトマン中尉が犯人じゃなければ誰がじゃがいもを盗ったっていうんですの?」

芳佳「そ、それは…。」

ペリーヌ「宮藤さん。あなたは自分の感情に任せて突き進むクセがありますの。冷静になって考えてみなさい。ハルトマン中尉以外は8時から18時までは一切基地に戻らなかった。違いますこと?」

芳佳「………。」

ペリーヌ「そしてハルトマン中尉が訓練に参加したのは14時になってから。ということは、その間に食糧倉庫に入ることができる状況にいたのは、ハルトマン中尉のみ。」

芳佳「…………。」

 
ペリーヌ「………なにか言ってみてはどうですの?」

芳佳「でっ…でも! じゃがいもが無くなったのを確認したのは夜になってからです! 皆が基地に帰ってきてから無くなったとは考えられないんですか!?」

ペリーヌ「だとしたら、貴方とリーネさんが怪しいですわよ。」

リーネ「えっ…?」

芳佳「な、なんでですか!?」

 
ペリーヌ「だって、その日夕食を作っていたのはあなた達ですわ。それ以外のメンバーは一切キッチンに入っていなければ、もちろん食糧倉庫も確認していない。」

芳佳「そ、そうですけど…。」

ペリーヌ「訓練終了から事件発覚までの時間、食糧倉庫を開けることができたのはあなた達ふたりだけのはず。」

芳佳「わ…わたしもリーネちゃんも、じゃがいもなんて盗んでません!」

リーネ「作ってる私達も、夜は食糧倉庫は確認していないんです。」

芳佳「私達が料理当番の日は、朝に3食の献立を決めて、必要な材料は朝のうちに倉庫からキッチンに移動させるんです! 本当です…!」

ペリーヌ「そう。だとしたら、考えられる犯人は誰ですの?」

芳佳「それは…………。」

 
ペリーヌ「訓練をサボって一人基地に残っていたハルトマン中尉。そうでしょう?」

芳佳「私達以外にもたくさん人は基地にいました! ハルトマンさんを見たと言っている人だってそうです!」

ペリーヌ「まだ反論するんですの…!? いいですこと!? 食糧倉庫の鍵は私達501のメンバーしか所持していないことは、貴方もよく知っているはずですわ!」

芳佳「ううっ…」

リーネ「………。」

坂本「さすがだ。冷静に状況を把握できている。」

ペリーヌ「しょ、少佐ぁ…//」

 
 
ミーナ「では、ルッキーニさん。意見をお願いします。」


ルッキーニ「………………。」zzz

ミーナ「…ルッキーニさん?」

ルッキーニ「…………。」zzz

シャーリー「…おい!寝るな!」

ルッキーニ「…ンがっ! …おはよー。議論終わったぁ?」

シャーリー「おまえなぁ…。」

 
ルッキーニ「えっと…フアァーア…………さんせぇー。あたし、賛成だよー。」

シャーリー「賛成か反対かは今はどうでもいい。意見を言えと言ってるんだ。」

ルッキーニ「わかんないよ~! あたしこういう話し合いとかしたことないもん!」

ミーナ「でもね、これはすごく大事な議会なの。下手をすると、501の今後を左右するかもしれないわ。」

坂本「なぜ罰則に賛成なのか。ルッキーニなりの理由を話してくれ。」

 
ルッキーニ「意見なんて無いよぉ! ただ、皆賛成だったから私も賛成にしただけで…。こんなことになるなら、まだ一日中訓練してたほうがマシじゃんか!」

芳佳「ルッキーニちゃんの発言が、もしかしたら私達の意見さえもすべて覆すほどの力を持ってるかもしれないんだよ?」

ルッキーニ「だから! もう私わかんないよ! 誰が正しくて誰が間違ってるのか! もう私抜きで話し合ってよぉ!」

シャーリー「だから正しいか正しくないかは別としてだな。」

坂本「ルッキーニが思ってること、そのまま口に出すだけでいい。」

 
ミーナ「何を言っても、私達が怒ることはないわ。議会なんだもの。すべての意見が正しいと、私は思っているわ。」

ルッキーニ「もういや! ハルトマン中尉が犯人ならそれで結構! もう自室待機処分にでも打ち首にでもなんでもしちゃってよーー!!!!」ダッ!

坂本「あっ!逃げた!」

シャーリー「コラー! ルッキーニー!」

ミーナ「シャーリーさん! 追って!」

シャーリー「待てぇ~! ルッキーニィィ!!!」

ダダダダダ…

    ⑤

坂本「ま、いろいろあったが…次は私達ふたりの意見だな。」

ミーナ「ええ、そうね。」

坂本「…正直、上層部の言うように最近の501はどうも緊張感がない。私にも少し責任はあるがな。」

ミーナ「そこで、今回の事件が起こったわけなのよ。」

坂本「ふたりで話し合った結果、ここでハルトマンに罰を与えるというストッパーをかけないと、この先ますます501は堕落していくと、私達は考えた。」

ミーナ「…納得してくれたかしら、宮藤さん。反論があればいくらでも答えるわ。」

 

芳佳「…………ハルトマンさんは犯人じゃありません。」

坂本「宮藤…」

芳佳「それに、ハルトマンさんに罰を与えて何が解決するっていうんです! さっきも言ったけど、この議会はどうもおかしいんです!」

ミーナ「?」

芳佳「何か、みなさん大事なことを忘れている気が…。」

坂本「大事なこととは何だ?」

芳佳「それは、わからないですけど…」

エイラ「あ、デジャヴ」

 
ペリーヌ「ふざけるのもいい加減にしなさい。ほら、私達賛成派の意見は皆出ましたわよ。宮藤さん、はやく反対意見を言ってちょうだいな。」

芳佳「わたしは…ただハルトマンさんが無実の罪を着せられてるのがかわいそうで…。」

ペリーヌ「はぁ?」

芳佳「本人が否定してるんだったら、犯人と決め付けるのは絶対おかしいと思うんです! 実際、当日の体調では盗むのは不可能だったはずです。」

ペリーヌ「ですから宮藤さん。さっきの私の話を聞いていらして? ハルトマン中尉以外に考えられる犯人はいないんですわよ。」

芳佳「たしかにそうですけど…。」

 
ペリーヌ「少佐、中佐、はやく決を取って下さいな。これ以上話し合いを続けても無意味ですわ。」

芳佳「ペリーヌさん!」

坂本「シャーリーとルッキーニがまだ帰ってきてないが…とにかく一旦決を取ろう。」 

ミーナ「ええ、そうね。では、今から小さいメモ用紙を私含め8人に配ります。それに『賛成』か『反対』かどちらかを書いて私のところに文字が見えないように持ってきて下さい。」

 
   ⑥

坂本「え~では発表する。…賛成、1票!」

ミーナ「…」

坂本「次…賛成、2票!」

ペリーヌ「…」

坂本「次…賛成、3票!」

リーネ「…」

 
坂本「次…賛成、4票!」

バルク「…」

坂本「次…賛成、5票!」

エイラ「…」

坂本「次…賛成、6票!」

サーニャ「…」

 
坂本「次………………反対、1票。」

芳佳「…」

ペリーヌ「あなた! もういいかげんにしなさい! いつまで無駄な議論を続けるつもりですの!?」

芳佳「まだです…まだ終わらせるわけにはいきません。」

ペリーヌ「…!」

坂本「そして残った一票は私の賛成だ。」

ミーナ「困ったわねぇ…。どうしたら皆納得できるのかしら。」

芳佳「シャーリーさんとルッキーニちゃんが戻ってくるのを待ちましょう!」

 
ペリーヌ「わかりましたわ! そこまで言うのでしたら待ちましょう! これが最後のチャンスですわよ!?」

芳佳「はい…」



シャーリー「…ただいまぁ~」

芳佳「シャーリーさん! …ルッキーニちゃんは?」

シャーリー「頑張って説得したんだけどさ。木に登っちゃって、それから聞く耳持ってくれない。『話し合いが終わるまで私はここから動かない!』だってさ。」

 
ミーナ「それはしかたないわね。」

坂本「しかし困ったな…これだと今日中に終われるかどうかも怪しくなってきた。」

シャーリー「で、議論は今どんな感じだ?」

ミーナ「賛成7票、反対1票よ。」

シャーリー「まあその1票は間違いなく宮藤だろう。……よし!あたしも反対に1票だ!」

ペリーヌ「なッ…!?」

芳佳「しゃっ…シャーリーさん!!」

 
シャーリー「私は宮藤を信じる。宮藤、ここから皆を説得して、議論を反対意見に持って行ってやろうじゃないか。」

芳佳「は、はい!」

ペリーヌ「あなた達それ本気ですの…!?」

シャーリー「あたしはいつだって本気さ。」

バルク「ということは、何か秘策でもあるのか?」

シャーリー「とりあえずだな、話し合いを進めるだけじゃ何も見えてこない。皆で事件当日のシミュレーションをしてみようじゃないか。」

 
坂本「シミュレーション?」

シャーリー「この会議室を基地に置き換えて、当日起こったことを出来るだけ忠実に再現するんだ。」

坂本「なるほど、ハルトマンの当日の足取りをつかめられれば…!」

リーネ「なにか意味があるんですか?」

シャーリー「ああ、そうすれば今まで見えてこなかったものが見えてくるはずだ。」

   ⑦

芳佳「私がハルトマンさん役ですか?」

シャーリー「ああ、とりあえず起きるところから始めてくれ。」

芳佳「は、はい…。えっと…、『ふぁああ~よく寝たー。…げげっ!もうこんな時間じゃんか!』」

バルク「宮藤、ハルトマンはそんなしゃべり方はしない。それに、いくら寝坊しても驚きやしない。」

シャーリー「細かいなぁ…。」

坂本「忠実に再現した方がいい。」

 
芳佳「えぇっと…。『ふああ~よく寝た~。もう11時かぁ~。早くご飯食べないとなぁ~。』」

シャーリー「…」

ペリーヌ「…」

バルク「まあそんなもんだろう。」

シャーリー「よし、じゃあ宮藤、そのままキッチンへ向かえ。」

ミーナ「もちろん、行ったという体でね。」

芳佳「はっ、はい!『はやくご飯食べて訓練に参加しないとな~。でも食欲ないからちょっとしか食べられないや。』」

エイラ「なんで議会でこんな小芝居やってるんダ。」

ペリーヌ「馬鹿馬鹿しいっ。」

 
坂本「ペリーヌ、口を慎め。」

ペリーヌ「は、はいっ! 少佐っ!」

シャーリー「宮藤、お前だったら体調が悪くて食欲が無く、そして用意されていた料理が冷め切っていた場合、どうする?」

芳佳「えっと…そもそも手を付けないと思います!」

シャーリー「なるほどな。」

バルク「でも、ハルトマンのことだ。『だったら倉庫に残ってるじゃがいもを食べてしまえ』とでも思ったに違いない。」

芳佳「バルクホルンさん!」

 
シャーリー「落ち着け宮藤。とにかく、バルクホルンの言うとおり食糧倉庫へ向かえ。」

芳佳「はい…。『じゃがいもが食べたいなぁ~。そうだ!自分で料理すればいいんだ。』」

シャーリー「でもキッチンから食糧倉庫までどれだけ離れている?」

芳佳「…結構離れています。じゃがいも14個を運ぶとすれば、相当体力を使います。」

 
シャーリー「だよな。どれほど体調が悪かったかはさておき、健康体にとってもきつい距離と重さだ。」

バルク「し、しかしリベリアン!」

シャーリー「ハルトマンは更に自分で料理して食べた。もしくは、それを自分の部屋まで運んだというから不思議だよなあ。」

バルク「…。」

ミーナ「シャーリーさん、宮藤さん、続けて。」

シャーリー「で、宮藤。その後ハルトマンはどういう行動をとったと思う?」

 
芳佳「えっと……。あ、思い出しました! そういえば私達が晩御飯を作る時、残していた料理は全て無くなっていました!」

シャーリー「なるほど。つまり、ハルトマンが仕方なくその冷め切った残飯を平らげた。」

芳佳「わたしもそう思います。」

ペリーヌ「でも、その時点でまだ12時を回ったあたりじゃなくて? ハルトマン中尉が訓練に参加したのは14時ですわよ?」

シャーリー「それがわからないんだよなあ…。一体この約2時間のあいだ、ハルトマンは一体何をしていたのか…」

ペリーヌ「ですからその空白の2時間が、じゃがいもに費やした時間ということじゃなくて?」

 
芳佳「…………。」

シャーリー「…………。」

ペリーヌ「はい、もうこんなくだらない議会は終わりにしましょう。」

シャーリー「まだだ! まだルッキーニが帰ってきていない!」

ペリーヌ「どうせ同じですわよ。あの子はどうせ早く議会を終わらせたいがために賛成に1票入れるに決まってますわ。」

芳佳「でも…!」

 
ペリーヌ「なんですの?」

芳佳「…。」

ペリーヌ「…。」




サーニャ「…………目撃証言は?」

ペリーヌ「!!!」

シャーリー「……なるほど! そういえばハルトマンを12時過ぎに廊下で見た奴がいたはずだ!」

 
芳佳「たしかお腹に手を当てて苦しそうにしていたんですよね!」

シャーリー「最初は満腹で苦しいと思っていた。次に、朝から体調が悪く足取りが重いんだと思った。」

芳佳「でもそれも違ったんです!」

シャーリー「ああ、間違いない。ハルトマンは弱った体で冷め切った残飯を食べた。ということは…。」

芳佳「お腹を下してしまったんです!」

シャーリー「お腹ピーピーの状態で歩いていたんだ。宮藤!」

 
芳佳「はい! 『お腹痛いよ~。トイレトイレ~。』」

エイラ「どうも緊張感がないナ、宮藤の言い方は。」

シャーリー「ペリーヌ、目撃者役を頼む。」

ペリーヌ「わたくしが!?」

坂本「頼むペリーヌ。」

ペリーヌ「坂本少佐が言うのなら…。」

 
芳佳「『ううっ~漏れる~』」

シャーリー「はい、ここで男とすれ違う!」

芳佳「『うう~。』」

ペリーヌ「……。『おや、あれは確か501JFWのエーリカ・ハルトマン中尉。』」

芳佳「『うう~。うぅぅ…。』」

ペリーヌ「『……。』」

 
シャーリー「はい!宮藤部屋に入る!」

芳佳「『うう~…。がちゃ。ばたん。…うう~。』」



シャーリー「はい!OK!」

坂本「なるほど…。見えてきたぞ。ハルトマンはずっと自室のトイレに篭っていたのか!」

ペリーヌ「今のシーンわたくしは本当に必要でして!?」

芳佳「その結果、訓練参加が大幅に遅れた。よってハルトマンさんは犯人じゃありません!」

ミーナ「でも、ハルトマン中尉が犯人じゃないとすれば、一体誰がこんなことを…。」

シャーリー「結局そこなんだよなあ…。」

 
バルク「………そうだ、もっと先のことをシミュレーションしてみたらどうだろう。」

シャーリー「バルクホルン!?」

バルク「いや、あくまでわたしの意見だが、真相はもっと先の事のような気がする…。」

芳佳「バルクホルンさん!」

バルク「リベリアン。次は訓練終了からやってみよう。」

シャーリー「…よしきた! ペリーヌ! お前がハルトマン役を頼む!」

ペリーヌ「私の扱いがいい加減になってませんこと!?」

坂本「ペリーヌ、もう少しで真実にたどり着けそうなんだ。」

ペリーヌ「…仕方ありませんわね…。」

 
 ⑧

シャーリー「じゃあ訓練終了から、スタート!」

芳佳「『ああ~疲れたなあ~』」

リーネ「『今日の飛行訓練は特に体力使ったよ~。』」

ペリーヌ「『………。』」

芳佳「『なんかハルトマンさん、今日訓練中ずっと元気なかったね。』」

リーネ「『そうだね。芳佳ちゃん、空いてるうちにお風呂はいろうよ。晩ご飯早く作らないとね。』」

芳佳「『うん!』」

 
バルク「『まったく! たるんでいる証拠だ! ハルトマン、今日は部屋でゆっくり休んで、明日から気合入れて訓練に参加しろ!いいな!』」

ペリーヌ「『はぃ……。』」

バルク「おい、そこは『うるさいなあトゥルーデは。』だろ。覚えてないのか。」

ペリーヌ「そんな無茶ですわ…。」

バルク「真面目にやれ!」

 
ペリーヌ「ひい…っ。『うるさいなあトゥルーデは。』」

バルク「もっと感情を込められんのか。」

シャーリー「まてバルクホルン。演技力に関しては今はどうでもいい。」

バルク「すまないリベリアン。えっと…『うるさいとは何だ! 明日朝になったらきっちり説教してやる! それまで部屋で反省しとけ!』だったな。」

ペリーヌ「『わかりましたわ…。』…じゃなくて、『わかったよトゥルーデぇ~』」




バルク「………貴様ッ、ハルトマンを馬鹿にしているのか…!」

 
ペリーヌ「わ、私なりのハルトマン中尉を演じた結果ですわ!」

シャーリー「まあまあ…いいじゃないか、おちつけバルクホルン。」

ミーナ「私と美緒は確か、この会議室で1時間ほど今後の訓練内容と基地の食料問題について話し合ったわよね。」

坂本「ああ。『ミーナ、ちょっと今後の訓練について話し合いたいんだが、今時間大丈夫か?』」

ミーナ「『ええ、もちろん。あと最近食料難で、満足に配給が来ないって連絡があったわ。それについても少しいいかしら?』」

坂本「『構わない。』…そんな感じだった。そして20時頃に食料倉庫をのぞくと…。ってわけだ。」

 
エイラ「わたしとサーニャは確か、わたしの部屋で他愛もない話をしていたナ。」

サーニャ「30分ほど話して、その後お風呂に入ったわ。ルッキーニちゃんとシャーリーさんとペリーヌさんがお風呂にいたはずよ。」

シャーリー「それはあたしも覚えてる。…確か、18時半から19時までの間だったよな。」

芳佳「その時私はすでにお風呂を上がっていて、リーネちゃんと晩ご飯を作ってました!」

リーネ「さっきも言いましたけど、その時は食糧倉庫は開けていません。」

坂本「なるほど、3人はお風呂までの間、何をしていた?」

 
シャーリー「あたしとルッキーニはすぐには基地には戻らず、少しだけ海で遊んでいた。ルッキーニはその日も元気が有り余っていたよ。あたしはヘトヘトだったけど…。」

ペリーヌ「わたくしは部屋でホットティーを飲んで一服していましたわ。」

シャーリー「…本当かぁ?」

ペリーヌ「本当ですわ!!!」

坂本「そういえば『わたくしと一緒にお茶でもいかがですか少佐?』とか言ってきたな。」

ペリーヌ「ええ! それに対して少佐は『いや、ちょっとミーナと話したいことがあってな。今日はちょっと…』っておっしゃったはずですわ。」

坂本「よく覚えてるなペリーヌ。」



シャーリー(もうすこし………もう少しでなにか見えてきそうだんだ…!)

 
芳佳「21時になって、『晩ご飯の用意できましたー!』てわたしが叫びました。」

リーネ「そしたら、ハルトマンさん以外はほぼ同時に食堂にやって来ました。」

シャーリー「なるほど。ハルトマンは少し遅かったな確か。ペリーヌ、頼む。」

ペリーヌ「またですの…?」

シャーリー「はい、ここはハルトマンの部屋! ドン!」

ペリーヌ「ひい…。『ああ~ちょっと無理し過ぎたかな~。』」

 
シャーリー「で、ハルトマンならどういうルートで食堂に行く?」

ペリーヌ「そんなのわたくしに問われても…。」

バルク「…そうだな…。ただでさえハルトマンは面倒くさがり屋なんだ。おそらく、少しでも短いルートを使って食堂に向かうだろう。」

シャーリー「なるほど。ほら、ペリーヌ!」

ペリーヌ「えっと…『この階段を下れば食堂へ近道できるぞー。たったった。そしてこの部屋を抜ければ…。』」

シャーリー「……。」

 
ペリーヌ「『みんなー、おまたせー。ちょっと遅れちゃったーてへへ。』」

バルク「『てへへ』なんて言っていなかった。あと、『みんなー』と『おまたせー』が逆だ。」

ペリーヌ「いちいち覚えてるわけないでしょう!」

リーネ「…ちょっと待って下さい! 今はハルトマンさんが通ったルートは、食糧倉庫からかなり離れています!」

シャーリー「そうなんだよな…今のところ、誰も食糧倉庫には入っていない。というか、近づいてすらいない。」

ペリーヌ「結局、私は何のために恥ずかしい思いを…!」

坂本「ペリーヌ、嫌な役をさせてすまない。」

ペリーヌ「少佐…//」

 





シャーリー「誰かが嘘を付いている…てことはないよな?」

芳佳「そんな…!」

シャーリー「いや、例えばの話だが、誰も見ていないところでの行動は、少し事実と変えて喋っても誰も気が付かないんだよな。」

リーネ「私、嘘なんかついてません!」

エイラ「わ、私もだ! なあサーニャ。実際の行動とそっくりそのままだったよナ!」

サーニャ「ええ、エイラは嘘なんかついてないわ。」

ミーナ「ちょ、ちょっと皆。落ち着いて。」

シャーリー「ごめん皆。ちょっと言い過ぎた。」

ただいま

坂本「でも困ったな…。これじゃあさっぱり犯人が誰なのかわからない。」

ミーナ「まさかこんな展開になるとはね…。ハルトマンさんが犯人だとしても、それ以外の人だとしてもつじつまが合わないわ。」

シャーリー「う~ん。宮藤、何か気がついたことはないか?」

芳佳「いえ、私もさっぱり…。」

シャーリー「そうか…。」

芳佳「すみません。」

 
ペリーヌ「やっぱりハルトマン中尉が犯人ではなくて?」

シャーリー「…根拠は?」

ペリーヌ「ありませんわ! でも、じゃがいもを全て盗ってしまうなんて発想、ハルトマン中尉以外考えられませんわ!」

芳佳「ペリーヌさん!」

坂本「おいおい、一体どうなってるんだこの議会は…。」

ミーナ「また最初の結論に戻ったわね…。」

 
  ⑨

ミーナ「ええっと、とりあえず…もう一度皆さんには 、"ハルトマン中尉に3日間の自室待機処分"に対して賛成か反対か投票してもらいます。…決して保留や無記入は認めません。……ほら美緒、紙配って。」

坂本「あ、ああ」





ミーナ「これで9票集まったわね。それでは発表します。」

ミーナ「…反対、1票。」

ミーナ「…賛成、1票。」

ミーナ「…賛成、2票。」

ミーナ「…反対、2票。」

ミーナ「…反対、3票。」




 
ミーナ「賛成3票。反対6票。…議会を続けます。」

ペリーヌ「もう…もうたくさんですわ…!!」

坂本「ペリーヌ!」

ペリーヌ「こんな議会に何の意味があるんですの!? ただ罪をなすり付け合っているだけでしょう!?」

シャーリー「お、おい落ち着け!」

ペリーヌ「これ以上耐えられませんわ! 仮にハルトマン中尉が完全な無実だとしても、私は賛成! これだけは言っておきますわ!」

 
芳佳「ペ…ペリーヌさん…!!」

ペリーヌ「いいこと皆さん! この議会を終了させたければ、賛成に1票入れないと終われませんわよ!?」

芳佳「いい加減にして下さい! どうしてそんな事言うんですか!」

ペリーヌ「この議会が無駄以外の何物でもないからでしょ!! 今日一日使っても正しい結論なんて出る訳ありませんわ!!」

芳佳「じゃあいいです! 私は、仮にハルトマンさんが犯人だとしても、私は反対! これだけは確かです!」

坂本「ペリーヌ! 宮藤! 真面目にやってくれ!」

ミーナ「議会を進めさせてよ…。」

シャーリー「中佐。もう皆限界だ…。議会は一旦休憩にしよう。」

ミーナ「そうね…。美緒、30分ほど休憩お願い。」

坂本「わかった…。皆、聞け! 議会は一旦おあずけだ! 今から30分間の休憩に入る。皆しっかり体を休めるように! 以上!」

 

-----------

ルッキーニ「もうそろそろ終わるころかな~♪」

ルッキーニ「それにしても皆よくあんな難しい話で盛り上がれるよな~。」

ルッキーニ「結局、中尉じゃないとしたら誰がじゃがいもを盗んだんだろう。」

ルッキーニ「そうだ! 絶対ペリーヌだよ! 確か訓練終わってからずっと自分の部屋にいたもん! その間に見つからないようにこっそり食べちゃったんだ!」

ルッキーニ「にゃはッ! あたしったら天才!」

ルッキーニ「そうだ! 後でハルトマン中尉にこっそり言おっと!」

 
ルッキーニ「~♪」



?「ねえ、誰に言うって?」

ルッキーニ「ん? うにゃッ! ハ、ハルトマン中尉…!」

ハルトマン「わたしに何か用?」

ルッキーニ「いやっ………………そのぅ…………………。」

ハルトマン「どうしたの。」ハァ…ハァ…

ルッキーニ「…………………顔………真っ赤だよ?」

   ⑩

ミーナ「それでは議会を再開します。」

芳佳「…………。」

ペリーヌ「……………。」

シャーリー「こりゃあ相当険悪だぜ。」

エイラ「今日中には終わらないナ。」

 
芳佳「…私は何が何でも反対です。」

ペリーヌ「…私は意地でも賛成ですわよ?」

坂本「どうしたものか…。」

ミーナ「はぁ…意見のある方は…挙手をお願いします…。」

坂本「はい。」

ミーナ「美緒。」

 
坂本「さっきのシミュレーションの件だが、もっと詳しく、最初からやってみないか? そうすると真実が見えてくるはずだ。」

芳佳「…。」

ペリーヌ「…。」

シャーリー「少佐っ。」

坂本「うん、嫌だな。すまん。」

リーネ「でも、まだまだ見えてないことも多いと思います。」

坂本「リーネ?」

リーネ「たとえば…昨日の晩、食堂に向かう最中、食糧倉庫に寄れる人はいたかどうか…とか。」

シャーリー「ああ~、なるほど。」

リーネ「確か部屋が食糧倉庫に一番近い人は…。」

シャーリー「…。」

リーネ「…。」

坂本「な、なんだ?」

シャーリー「…少佐だな。」

 
坂本「おいふざけるな! なんで私が!」

ミーナ「それに、美緒と私はずっと訓練終了後はずっと一緒に行動してたのよ?」

坂本「それに、私がじゃがいもを隠す理由などどこにもない!」

リーネ「そ、そうですよね。…すみません。」

ミーナ「美緒、落ち着いて。」

坂本「すまない…。まさか自分に疑いがかかるとはな。」

ミーナ「こんな状況になった以上、誰に疑いがかかっても不思議じゃないわ。」

坂本「……とりあえず、ダメ元でもう一度投票してもらおうか。」

芳佳「だから私は…!」 ペリーヌ「わたくしは…!」

坂本「わかってるわかってる。 言わんとすることわかってるから。」





 
ミーナ「それでは、何度目か忘れたけど、賛成か反対か、皆さんに投票してもらいます。美緒、紙。」

坂本「今切ってる最中だ。」

シャーリー「おいおい…。」

坂本「よし、切れた。一番形が綺麗だ。」

ミーナ「はいはい。…じゃあみなさんにこれを配ります。いいこと? 保留、無記入は認めませんよ。」

坂本「…………。」

ミーナ「…………。」

芳佳「……。」

ペリーヌ「………。」

シャーリー「…………。(おい、ちょっと)」

バルク「(なんだ、リベリアン。)」

エイラ「(ナンダヨ、急に。)」

シャーリー「………(ヒソヒソヒソ)」)

 
坂本「………集まったな。発表する。」

ペリーヌ「……。」

芳佳「……。」

ミーナ「賛成1票。反対8票。 …議会をつづけます。」

ペリーヌ「なっ…。」

芳佳「!」

ペリーヌ「なんですのこれは!?」

シャーリー「すまんペリーヌ。ちょっとな。」

バルク「ああ、この議会の一番の目的は『真実にたどり着くこと』…だからまだまだ議会を終わらせる訳にはいかない。」

シャーリー「こうなったら一日かかってでも、真相を暴いてやろうじゃん。」

バルク「見えてきたものも多い。だけど、まだまだ見えない部分も多い。」

エイラ「こうなったら、前日から考察してみようじゃないカ。」

リーネ「きっとあるはずです。真実がどこかに。」

ペリーヌ「…もう、ヤケクソじゃないの皆。 好きにしなさい…!」

   ⑪

芳佳「すみませんみなさん…。さっきはカッとなってしまってあんなことを…。」

坂本「宮藤。それは後にしろ。今は議会に集中だ。」

芳佳「はい…!」

リーネ「とりあえず、事件前日の夜からスタートです!」

シャーリー「少佐。食糧倉庫は確認したか?」

坂本「ああ! しっかりとじゃがいもは18個あった! そしてスープに使うため4個わたしが取った!」

シャーリー「鍵はしっかりかけたか?」

坂本「もちろんだ! 信じてくれ!」

ミーナ「私はその日料理当番だったわ。美緒が持ってきてくれた4個のじゃがいもを確かに、受け取った。」

シャーリー「そして料理完成! その間食糧倉庫に近づいた者は?」

エイラ「誰もいないナ。」

 
サーニャ「その日は、晩ご飯の時間まで皆でラジオを聞いていたわ。」

シャーリー「そうだったな!」

バルク「そして晩御飯の後は?」

リーネ「私と芳佳ちゃんは、次の日の当番だったので早めに寝ました。食べ終わってすぐだったと思います。」

バルク「私は部屋に籠ってトレーニングをしていたな。…信じるな?」

ミーナ「ええ、あなたが訓練を怠らないのは、皆知っているわ。」

坂本「私はそのまま寝た。翌日の訓練のためだ。私がバテていては示しがつかない。」

ミーナ「ええ。私はシャーリーさんとルッキーニさんを叱っていたわ。30分ほどかしら。その日の飛行訓練であまりにもふたりはふざけていたわよね?」

シャーリー「は、はい…。あたしはずっと叱られていたよ。それが終わったらルッキーニとふたりで倒れるように寝た。」

エイラ「サーニャはその後、いつもどおり偵察に行った。帰ってきたのは夜中だけど、窓から私の部屋に転がりこんできた。」

ペリーヌ「私は少佐と食後のティータイムを楽しもうと思ってお茶の用意をしていましたの。…でも、すでに少佐は寝ていらっしゃった。」

シャーリー「まだ見えてこないか…。よし当日の朝にいってみよう。」





シャーリー「最初に起きてきたのは確か…宮藤とリーネ! だったな?」

リーネ「は、はい。」

シャーリー「じゃあ早速始めてくれ。」

芳佳「『おはよ~。』」

リーネ「『おはよ~芳佳ちゃん。』」

芳佳「えっと…『さっそく食糧倉庫に行って今日の献立考えようよ。』だったっけ?」

リーネ「うん。確か。」

シャーリー「よし、倉庫の扉が開くぞ…。ここが一番大事だ。」

 
芳佳「えっと、まず扉を開けて…『うわ!この箱みて! じゃがいもいっぱい! みてみてリーネちゃん!』」

リーネ「『うわ~本当だ~。昨日スープに使ったのにまだこんなに残ってるんだ。』」

芳佳「『でもさ、2日連続でじゃがいも料理は皆飽きるよね。』」

リーネ「えっと…。『うん、じゃあ今日はじゃがいも使わないでおこうか。他には何か材料はあるの? 芳佳ちゃん。』」

芳佳「『え~っと他にはね……。うわッ! この箱も見てよリーネちゃん! ほら…ほうれん草がいっぱい腐ってる…!』」

リーネ「『うわっ…これはもう破棄するしかないよ芳佳ちゃん。 はやく蓋をして。』」

芳佳「『ごめんごめん。 えっとあとは…。うわっ うわわわわ!!! がさー がさー。』」

リーネ「『芳佳ちゃん!大丈夫!?』」

シャーリー「ん? 何が起こったんだ?」

 
リーネ「雑にしまってあったから、棚が崩れてきたんです。それを芳佳ちゃんが必死に抑えて…。」

シャーリー「なるほど、続けて。」

芳佳「『リーネちゃん! 先にほうれん草だけ玄関口に持って行って! 今日支給が来るから、そのほうれん草持って行ってもらおうよ!』」

リーネ「『えっと、どの箱だったけ~!?』」

芳佳「『一番右においてある箱だよ! それを』」

シャーリー「ちょっとまて!!!! そこでストップ!!!!」

芳佳「!?」

リーネ「なんですか急に。」

シャーリー「…………………なるほど…。」

シャーリー「みえたああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

リーネ
芳佳
坂本
ミーナ
バルク      「!?」
ペリーヌ
エイラ
サーニャ

シャーリー「それだ…それだよ! リーネ、宮藤にそう言われてどの箱を持って行った?」

リーネ「えっと…"右"だからここらへんにあった箱を。」

シャーリー「宮藤、お前は材料を元の場所に戻すことで精一杯だったんだな?」

芳佳「『は、はい!』」

シャーリー「…宮藤、リーネの方を見てみろ。」

芳佳「えっ? ……ああっ!!!!!」

リーネ「どうしたの?芳佳ちゃん…。」

芳佳「リーネちゃん…。」

 
リーネ「な…何?」

芳佳「そっちは左だよ……。じゃがいもの箱だよそれは……。」

リーネ「えっ!? でも"右"って言うから、芳佳ちゃんから見るとこっちでしょ?」

芳佳「………………リーネちゃんの方から見て言ったつもりだよ…。」

リーネ「そ、そうだったんだ………。」

シャーリー「………決まりだな。」






リーネ「……………すみませんでした皆さん……。」

芳佳「わたしの方こそ、すみませんでした………。」

 
    ⑫

坂本「リーネ、宮藤。しっかりお互いに箱の中身を確認した上で行動しろ。」

芳佳「はい…すみませんでした。」

リーネ「ご迷惑をお掛けしました…………。」

ペリーヌ「それにしても、まったく人騒がせですこと! 私達の一日を返して欲しいですわ!」

シャーリー「でも、何があってもわたしは賛成ですわ~! とかなんとか、行ってたのは誰だっけ~?」

ペリーヌ「それは…その…。」

坂本「でも、まさかハルトマンが起きた時点で、既にじゃがいもが無くなっていたってオチとはな。」

芳佳「本当に…すみません…」

リーネ「………。」

 
坂本「まあ元気出せふたりとも! 解決して何よりじゃないか! わっはっは!」

ミーナ「ええ、二人のおかげで、真実に辿りつけたのよ。本当に感謝しているわ。」

バルク「…………私はハルトマンに謝らないといけないな……。」

ガチャ……

ルッキーニ「ただいまぁ~。」

シャーリー「おお、やっと帰ってきたかルッキーニ。喜べ、ルッキーニの大嫌いな議会は、今丁度終わったところだ。」

ハルトマン「そう……。それは残念だよ……。」






バルク「!?」

芳佳「は、ハルトマンさん!?」

 
ミーナ「フラウ! 一体どうしたの!?」

坂本「顔が真っ赤で…、目もうつろだぞ…。」

ハルトマン「ごめん皆…。無理してるって知られたくなくてさ…。頑張って訓練だけは参加しようとしたけど…。」

バルク「お前…。」

ハルトマン「………やっぱり無理だった…!」

ミーナ「大変…! 今すぐ救護室へ!」

坂本「リーネ! 宮藤! ハルトマンを連れていけ! 今すぐにだ!」

芳佳&リーネ「はい!!!」

バルク「まっ…待て!ハルトマン!」

 
バルク「お前…どうして今まで黙ってたんだ…!」

ハルトマン「…だってさ…私がしっかりしないと………トゥルーデもしっかりできないでしょ…?」

バルク「なッ!?」

ハルトマン「トゥルーデの前だけでは…元気に振る舞おうと思ってさ…。でもやっぱり無理しすぎたみたい……。」

ハルトマン「そしたら…じゃがいもが無くなってどうのこうのって…。私…3日間部屋から一切出るなって言われてさ…。」

ハルトマン「そのまま受け入れちゃったよ…。何が何だかよくわからないけど、これでトゥルーデに…こんな姿を見せないで済むって思って…。」

バルク「ハルトマン…! いいんだ…! リーネ、宮藤、留めてしまってすまない……はやく救護室で診てもらえ…。」

ハルトマン「優しいな…トゥルーデは…。」

バルク「すまない…ハルトマン…!」






 

芳佳「今救護室のベッドで安静にして寝ています。」

リーネ「3日ほどゆっくりしていれば、回復するだろうって言ってました。」

坂本「そうか…それは良かった。」

バルク「……。」

ミーナ「……さて! 議会を再会するわよ皆!」

シャーリー「えっ!?」

ルッキーニ「えええええ~!? まだ終わってないの~?」

ミーナ「忘れちゃったのかしら。"ハルトマン中尉に3日間の自室待機処分"に賛成か反対かを決めることが目的でしょ?」

坂本「そうか、それを決めないと終われないんだったな。」

シャーリー「ま、結果はわかってるけどな!」

 
ペリーヌ「どこかの誰かさんのせいで、こんなに簡単な議論が長引いてしまいましたわ!」

芳佳「すみません…。」

リーネ「ごめんなさい……。」

坂本「わっはっは! もう謝るな! ふたりとも、もう結論は出ているんだろう?」

芳佳&リーネ「は、はい!」



   ⑬

ミーナ「それでは、………えっと、もう挙手でいいかしら?」

坂本「ああ、構わん。」

 
ミーナ「それでは改めて…。どなたも必ず一度は挙手をお願いします。"ハルトマン中尉は3日間の自室待機。その間一切の訓練参加を禁止"。これに反対の方、手を挙げて下さい。」

ミーナ「………。」

ミーナ「……では、賛成の方、手を挙げて下さい。」

ミーナ「………。」

ミーナ「……はい。下ろしてもらって結構。 賛成10票。反対0票につき、ハルトマン中尉は3日間自室待機処分決定。 これにて議会終了いたします! ありがとうございました!」


坂本
芳佳
リーネ
シャーリー
ルッキーニ
ペリーヌ      「ありがとうございました!!!!!」
エイラ
サーニャ
バルク

      3日後

バルク「ぬうううう~~!! おきろ!ハルトマン! もうお前が全快したのはわかってるんだ! 今日からお前は訓練だ! おきろおおお!」

ハルトマン「……うう…あと2時間だけぇぇぇ……。」

バルク「何が『あと2時間だけ』だ!」

ハルトマン「んんんん~。……じゃあ4時間だけぇぇぇ……。」

バルク「このおおお!!!! おおお! きいい! ろおおお!!!!」


リーネ「なんか元通りだね。」

芳佳「でも、なんだかバルクホルンさん、生き生きしてるように見えるよ。楽しそうというかなんというか。」

リーネ「うん!」

エイラ「あのつんつんメガネも相変わらずダゾ。」

 
ペリーヌ「少佐~。ねえ少佐~。私だけ唯一、賛成意見を変えなかったんですわよ~?」

坂本「そうだったか? まあとにかく、今日から久々に11人揃っての訓練だ! 張り切って行くぞ皆!」

ペリーヌ「ああん~少佐~。」

サーニャ「もう毎日あれ言ってる……。」

シャーリー「それにしても、あたし冴えてたよな~あの時は。」

ルッキーニ「うんうん! すっごくかっこよかったよシャーリー!」

シャーリー「そうだろぉ~。…って! ルッキーニずっと参加してなかったろ!」

ルッキーニ「ギクぅ。…実はずっと外でこっそり見てたんだよ~!」

シャーリー「なんだと~! こらー!ルッキーニィィィ!」

ルッキーニ「にゃはーー!」

リーネ「相変わらずだねあの二人も…。」

芳佳「でも、やっぱり、いつもどおりが一番だよ。」

リーネ「そうだね!」

 




ミーナ「ねえ美緒。」

坂本「なんだ?」

ミーナ「ううん、なんでもないわ。…さ、訓練を始めて。」

坂本「さあ! 訓練開始だ!」

坂本「今日は気合入れていくぞ! 私達はネウロイから世界を守る軍隊だ! そういう自覚を持て! いいな! いくぞ!」


ミーナ
芳佳
リーネ
ペリーヌ
バルク
ハルトマン    「はい!!!!!!!!」
エイラ
サーニャ
シャーリー
ルッキーニ




このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom