光彦「ハカセ!!世の中そんなにうまい話があるわけないじゃないですか!ハハ!!!」
コナン「例えばの話だろ、例えばの。」
歩美「歩美だったら絶対もらう!!だって、ラクして100万円でしょ?」
源太「そんな金があったらうな重いくつ買えるだろうな……想像したらよだれがでてきたぜ!!」
灰原「現実的じゃないわね…」
阿笠「ほほ、楽して100万円稼げるとしたら乗るというのは当然じゃろう。」
阿笠「そんな話が現実にあるわけない!というのも当然の意見じゃ……」
阿笠「じゃがしかし……本当に楽して100万円が稼げるとしたら……」ニヤッ
阿笠「……」スッ
灰原「このボタンは何?」
阿笠「押したら100万円が出てくる、何の変哲もないタダのボタンじゃよ……」
コナン「バカにしてんのか?」
歩美「押したら100万円!?タダのボタンじゃないじゃない!!本当に出てくるの?」
阿笠「本当じゃとも!」
源太「うさんくせー!」
光彦「どうせ押したらビリビリ!って電気が走るハカセお得意のイタズラ発明ですよ!」
阿笠「本当にそう言い切れるかの?」
阿笠「ほほ、押してみるまではわからないことじゃないかの?」
光彦「だって…押すだけで100万円なんてありえないですよ!!」
阿笠「もちろん押す『だけ』ではないぞい……」
光彦「…え?」
阿笠「今このボタンを光彦君が押したとしよう。その瞬間、この装置から100万円が出てくる。そんな装置じゃ」
阿笠「100万円を手にした光彦君にも、周りのみんなにも、光彦君がボタンを押した『だけ』で装置から100万円がでてきたと認識できるじゃろう」
阿笠「じゃがしかし、押した瞬間に本人だけに何かが起こる仕掛けなんじゃよ」
光彦「なにか……とは?」
阿笠「ほほ……ほほほ……ほっほ……」
阿笠「なぁに、簡単な事じゃよ……押した人の脳に微量の電流が流れ…」
阿笠「何もない空間で『5億年間』ただひたすら生き続けることを疑似体験するだけじゃ……」
阿笠「なに、5億年分の記憶を抹消した上でこちらの世界に戻ってくる仕組みになっているから体感としては一瞬じゃよ。ほっほ」
コナン「5億年……だと…?」
元太「それってどんくらいだ?大体江戸時代位から今まで分だろ!」
灰原「5億年といえば……地球上の生命が大繁殖した『カンブリア爆発』が起きた時から今までの時間を経験することになるわ…」
歩美「えーっ!?恐竜さん!?」
灰原「恐竜が繁栄していた時代よりもずっと昔のことよ」
元太「なげーじゃんかよ!」
灰原「途方もない時間ね」
光彦「で……でもその話が本当だとすれば……」
光彦「ただひたすら生き続けるだけで100万円がもらえるんですよね?」
光彦「しかも記憶が抹消されるから100万円をもらった時点ではボタンを押しただけで100万円をもらえたという認識……」
光彦「要するにボタンを押しただけで100万円をもらえる……!」
コナン「バーロー、話ちゃんと聞いてたのか?」
コナン「確かに記憶は抹消されるが、5億年分は経験するんだよ」
光彦「甘いですよコナン君!確かに5億年分生き続けなければならないかもしれません…」
光彦「ですが、それは疑似体験にすぎません!現実世界ではボタンを押しただけで100万円が得られたのと同等…!」
光彦「実質ノーリスクで100万円ですよ!?押さない方がおかしいですよ!」
阿笠「ほほほ…さすがは光彦君じゃ…」パチパチ
阿笠「そうじゃろう、そうじゃろう。記憶を抹消されるなら経験してないのと同じ…ノーリスクで100万円がもらえると考えてよい……」
阿笠「こんな素晴らしい話はない、そこに気付けた光彦君、さすがじゃ。」
阿笠「では光彦君、実際に押してみるかね?」
光彦「!!」
阿笠「こんなに素晴らしい話はない、乗らない方がおかしい……そう考える光彦君じゃ。押さない理由もあるまいよ」
阿笠「のう、光彦君?」ニヤァ……
光彦「え…ええ、お……押しましょう!」
阿笠「真ん中の赤いボタンをポチっとするだけじゃよ。ほっほ」
灰原「まって!!」
光彦「えっ?」
灰原「本当にいいの?5億年よ?」
灰原「5億年……途方もない時間よ…?」
光彦「はは、灰原さんは心配性だなぁ。大丈夫ですよ!どうせ記憶は消えるんですしね!」
阿笠「ゴホン!いいかのう?光彦君…」
光彦「当然です!ボタンを押すだけなんですから」ポチッ
… … …
… … …
ウィーンウィーン
[100万円]
阿笠「ほれ、光彦君。100万円出てきたぞい」
光彦「……」
光彦「!! ああ、ほら皆さん、僕はなんともないですよ?」
光彦「…は、僕何ともなく100万円入手できましたよ?」
灰原「……」
光彦「ちゃおう!かなあ?もう一回押してもいいんですよね?はkせ」
阿笠「あ、ああ…いいぞい」
阿笠(ちゃんと記憶リセット機能作れているかのう…不安になってきてしもた)
元太「おい!俺にもやらせろよ博士!」
阿笠「お、おう。いいじゃろう」
光彦「ダメです!たしが先ですよ!」
コナン「おい、本当に大丈夫かオメー」
光彦「何がですか?100万円を独り占めしようとして不安を与えてもそうはkkませんよ!」
阿笠「」
光彦「今度はれんだです!連打しちゃいますよー」
光彦「100万円どころじゃないですよー!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
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カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
コナン「お、おい!お前何回おす気だ!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
……………
…………………………
……
光彦「ありゃ?ここはどこでしょう?」
光彦「タイル張りの床……」
光彦「どこからか光も来ているようですね…」
光彦「何もないと言いながらも、ちゃんと暇つぶしができそうな空間ですね!」
光彦「さて、何をしましょうか……」
光彦「まずはちょっと探索してみましょうか」
テクテクテク
テクテクテクテクテクテク
テクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテクテク
テクテクテクテクテク
光彦「歩けど歩けど景色は変わりませんねえ……」テクテク
光彦「…」テクテク
光彦「…」テクテク
光彦「おかしいですね、全く足が疲れない…」テクテク
光彦「時間にして結構歩いてるはずなんですが…」テクテク
-7日目/1825000000000日-
光彦「一体どのくらい歩けば疲れが来て」テクテク
光彦「一体どのくらい歩けば景色が変わって」テクテク
光彦「一体どのくらい歩けば……眠気がくるんでしょうか…」
-30日目/1825000000000日-
光彦「……」
光彦「……暇ですね……」
光彦「恐らく僕は20日間は歩き続けたでしょうか…」
光彦「そして30日間くらいこうして自堕落な生活を送っているのでしょう…」
光彦「正確な時間はわかりませんが……そのくらいの時間は立ったと思われます…」
光彦「一体どのくらいこうしていれば5億年を過ごせるのでしょうか…」
-1年目/5000000000年-
光彦「はぁ……」
光彦「はぁ…………」
光彦「何も考えられない……何もする気力が起きない……」
光彦「どうして私はノンリスクで100万円が手に入ると思ってしまったのでしょうか……」
光彦「おそらくこれで10年目……10年でここまで苦しいのに……5億年ですか……」
光彦「それでもだんだんと慣れて時間が早く進むように感じることでしょう…」
光彦「それを加味すれば余裕なのかもしれません……」
-10年目/5000000000年-
光彦「」
光彦「」
光彦「あれから50年はたったでしょうか……」
光彦「コナン君……元太君……歩美さん……灰原さん……」
光彦「灰原さん…どうして私はあの時あなたの制止を受け止められなかったんでしょうか…」
光彦「灰原さん……あなたは止めてくれた……この愚かな私を……」
光彦「灰原さん……灰原さん……」
光彦「……」
ボヤァ……
灰原「……よ……!」
光彦「…?」
光彦「今一瞬だけ灰原さんを感じた……」
光彦「……!」
光彦「そうだ!僕の中にはまだまだ灰原さんの記憶が残っているんですね!」
光彦「それを引き出せば……うまくいけば……会話に近いものが・・・」
-50年目/5000000000-
灰原「光彦君!」
光彦「どうしたの灰原さん?」
灰原「光彦君!光彦君!光彦君!」
光彦「あーー!だめだ!どうしてもこうなってしまう……」
光彦「言ってほしいと強く念じた言葉が繰り返されてしまう…」
光彦「500年近い修行の結果…」
光彦「見た目だけなら灰原さんの細部」
光彦「あんなとこからこんなところ、毛穴の一つ一つまで再現できるようになったのに…」
光彦「どうしてもしゃべらせようとすると失敗してしまう…」
-100年目/5000000000-
灰原「まったく……」
コナン「はは、まったく元太はバカだなあ」
元太「うるせー!」
光彦「ハハハ、楽しいなあ」
コナン「バーロー」
元太「うるせー!」
灰原「まったく…」
光彦「ハハ、楽しいなあ」
光彦「楽しい…なあ」
-500年目/5000000000-
光彦「」
光彦「」
光彦「あー」
光彦「あーうー」
光彦「あーー」
光彦「あーーあーー」
光彦「ハイ……バラ……?」
-1000年目/5000000000-
光彦「あーー」(今ここに生きるのは私だけ)
光彦「あーうー」(だとすればどうして他者との意思疎通の道具である日本語を使う必要があるのか)
光彦「ううーーあーー」(最早こうなれば言葉は思考の為のツールだ。)
光彦「あーーーうーー」(極限まで簡略化できるはず……)
光彦「うーーうーー」(私に相当する存在の生命体…定かではないがいないと考えられる。)
光彦「あーうー」(少なくとも私の記憶にはない…)
-5000年目/5000000000-
光彦「あうー」(この床は何でできている…?)
光彦「あうううー」(この光は何だ…?)
光彦「あ…うーー」(一体ここはどこだ…?)
光彦「う…」(思い出せ……私はいつからここにいる…)
-1万年目/5000000000-
光彦「」(ん……?今の動きには若干違和感があった…)
光彦「」ペッペッ
光彦「」(やはり……)
光彦「」(私の導き出した物体の運動則にどこか間違いがあったというのか…?)
光彦「」(それはないはず……私が絶対的な存在であるはずのこの世界で……)
光彦「」(世界…セカイ……この世界で…私の考えを上回る現象が起こり得るはずはない……)
光彦「」(何故……なぜナゼ……さっきの動きに違和感があったのは確か……認めざるを得ない…)
光彦「あ゙~~~!!ゔゔゔ~~~!!!!」
-10万年目/5000000000-
光彦「」(盲点だった・・・・・・・・)
光彦「」(そこにあったか……あの違和感の原因は……)
光彦「」(まさか極細かい粒子の運動が大きな粒子の運動と違う動きをみせるとは……)
光彦「あ~う~」
-100万年目/5000000000-
光彦「」
光彦「」
光彦「」
光彦「アガサ……コロス……」
光彦「アガサ………?」
光彦「アガ……サ……コロス……」
-1000万年目/5000000000-
光彦「あ…」
光彦「え……」
光彦「」()
光彦「」()
光彦「」()
光彦「」()
(^p^)(…・・・最近よく思うことだが)
(^p^)(位相幾何学というものはあらゆる物体に通用するのではないのか?)
(^p^)(たとえば立方体を正面から観察する。次に俯瞰で観察する)
(^p^)(私の主観では感じることができないが、
理論上同一のものを別の方向から観察する)
(^p^)(つまりA→Bに変わるまでの→の時間を入れるとすれば)
(^p^)(位相幾何学に分類されるのではないか……?)
母「たかしちゃんどうしたの? ブロック見て俯いて……」
(^p^)「あうあうあーwwwwwwww」
-1億年/5000000000-
光彦「○×△」
時にして1億年……
新たな言語ができてもおかしくないほどの年月……
光彦「○×△」
光彦「○×△」
光彦「○×△」(アガサコロスアガサコロスアガサコロス)
-10億年/5000000000-
光彦「」()
光彦「」()
光彦「」()
-帰還直前-
光彦「」()
光彦「帰りたい……一体いつまでこの地獄が続くのでしょう……」
光彦「本当にすべてを忘れられればどれだけ楽だったでしょう…」
光彦「」
光彦「「はっ!?」」
光彦「なんだ!?急に光が強く……」
ギューーーーン
光彦「……」
光彦「……」
阿笠「ほれ光彦君、今大量にでてきておるぞ」
阿笠「あれだけ押したんじゃ、並の額ではないぞい 」
光彦「……」
阿笠「なんじゃ?」
コナン「おい!光彦!」
光彦「……」
コナン「おいハカセ!この装置本当に記憶を消す機能あるんだろうな!?」
阿笠「どうじゃろな」
灰原「もしも完全に記憶が消せない…としたら……」
光彦「うーー」
灰原「光彦君……」
光彦「うーあー」ニコッ
阿笠「光彦君」
光彦「あ゙~~」ギリッ
コナン「はは、博士嫌われてやんのww」
阿笠「ほほ、嫌われてしもたか」
元太「うな重食べようぜ!」
歩美「もう……光彦君が廃人同然になってもみんなのんきなんだから」
こうして少年光彦君は頭に障害を抱えた者としての余生を過ごすことになった
なお、少年光彦君の莫大な財産は光彦君を養育する阿笠博士への寄付金という名目で阿笠研究所に送られることとなった
おわり
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