光彦「月影島に行きましょう!」 (175)

コナン「おら!光彦死ね!」

光彦「痛いです!やめてください!」

コナン「そう言って心の中では喜んでるんだろ!」

光彦「そんなわけないでしょ!」

コナン「口答えするんじゃねえ!」ドゴォ!

光彦「痛い!!」

コナン「どうだ?キック力増強シューズで蹴られる感覚は?」

光彦「やめて・・・もうやめて・・・。」

コナン「うるせえ!!」

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~その後~

光彦「うう・・・ぐすっ・・・。」

阿笠「ほら、これでよし。」

光彦「ありがとうございます・・・。」

阿笠「お礼なんて言わんでくれ、わしら大人がコナン君を止められないのが悪いんじゃ。」

光彦「博士は怖くないんですか?僕に手当てなんてしたら、博士も一緒に・・・。」

阿笠「わしはメカを作っておる、言わばコナン君のライフラインじゃ。ちょっとのことでは狙われんよ。」

阿笠「わしがそもそもメカを作らなければ、君が傷つくことも無かったが・・・。」

光彦「そんなこと言わないでください!博士の発明のおかげで、僕らはいくつもの危機を切り抜けられたんです!」

阿笠「光彦君・・・ぐすっ・・・。」

光彦「・・・ねえ、博士。」

阿笠「何かね。」

光彦「コナン君は、どうして変わってしまったんでしょう?」

光彦「前のコナン君は、とても勇敢で心優しくて、人を傷つけて楽しむような人間ではなかったんです。」

阿笠「・・・・・・。」

光彦「何か・・・彼の心を歪ませる出来事があったんでしょうか?」

阿笠「・・・あるとすれば・・・。」

光彦「!?」

阿笠「一つ心当たりがある。毛利君の仕事について行って、ある島に出かけた。」

阿笠「そこから帰ってきた彼は、以前とは雰囲気が変わっていた。」

阿笠「思えばあの時からか、彼が荒れてしまい、君を傷つけるようになってしまったのは。」

光彦「その島とは・・・?」

阿笠「名を、月影島という。」

光彦「月影島・・・。」

阿笠「その島で殺人事件が起き、犯人は最後に自殺してしまったそうじゃ。」

光彦「もしかしてコナン君・・・目の前で犯人を死なせてしまったんじゃ・・・。」

阿笠「・・・服部君から聞いたことがある。コナン君が言っていたそうじゃ。」

阿笠「『犯人を推理で追い詰めて自殺させる探偵は、殺人者と変わらない』とな。」

光彦「コナン君・・・。」

光彦「じゃあコナン君は、犯人を自殺させてしまって、その影響で心が壊れてしまったんでしょうか・・・。」

阿笠「かもしれん。」

光彦「もう元のコナン君には戻れないんでしょうか?」

阿笠「分からん。こればかりは彼自身の中でしか解決できんのじゃ。」

光彦「そんな・・・僕は友達なのに、何も助けられないなんて・・・。」

阿笠「光彦君、君はあんなにひどい目にあっているのに、まだ友達だと?」

光彦「当然です!」

阿笠「・・・もし・・・もし彼を助けられる手段があるとしたら、君はどうする?」

光彦「何が何でも助けます!」

阿笠「君の命が危険に晒されるかもしれんぞ?」

光彦「構いません!」

阿笠「・・・よし分かった。ならばやるぞ!」

光彦「?」

阿笠「地下室に来なさい。」

~地下室~

光彦「何があるんですか?」

阿笠「わしも君と同じじゃ。例え危険なことであっても、コナン君を助けたい。」

阿笠「そのため日夜研究を重ねておった。」

阿笠「その成果がこれじゃ!」

光彦「これは・・・ベルトですか?」

阿笠「聞いて驚くな。これは時間遡行を可能にするタイムベルトじゃ!」

光彦「もしかしてこれを使えば・・・過去に行けるんですか!?」

阿笠「そうじゃ!これで月影島で事件が起きる時間まで戻り、コナン君の心が壊れないようにする!」

光彦「これでコナン君は元に戻る・・・。」

阿笠「やるぞ光彦君!」

光彦「はい!」

光彦「では早速・・・。」

阿笠「おっと待つんじゃ。」

光彦「え?」

阿笠「このベルトは時間移動はできるが、空間移動はできん。」

阿笠「実際に月影島まで移動してからじゃ。」

光彦「そうなんですか・・・。」

阿笠「それに準備もいるじゃろう。作戦実行は明日にしよう。」

光彦「分かりました。」

光彦(コナン君・・・必ず君を救ってみせます!)

~翌日~

コナン「よう光彦、おっはよ~う!」ドォン!!

光彦「ぐえぇ!!」

コナン「ひゃはは!!いい声出すなあ!!」

光彦「くっ・・・。」

コナン「なあ、お前らもやれよ、ほら!」

歩美「え・・・。」

元太「けど・・・。」

コナン「ああ!?」

元太「わ、分かったよ!」

光彦「元太君・・・。」

元太「・・・おら!」ドン!

光彦「痛っ!」

コナン「おいおい、突き飛ばすだけじゃ面白くないだろ?」

コナン「歩美ちゃん、手本を見せてやりなよ。」

歩美「う・・・うん。」

歩美「えいっ!」ズゥン!!

光彦「あばぁっ!!」

コナン「流石歩美ちゃん、鳩尾に膝蹴り、クリーンヒットだ!!」

歩美「うん・・・ありがとう・・・。」

光彦(耐えろ、耐えるんだ。放課後に博士と過去に行って、コナン君を助ければ、すべて良くなる。)

光彦「運命は・・・変わるんだ・・・。」

コナン「はあ?変わるわけねえだろ!」

歩美「えいっ!」ズゥン!!

光彦「あばぁっ!!」

コナン「流石歩美ちゃん、鳩尾に膝蹴り、クリーンヒットだ!!」

歩美「うん・・・ありがとう・・・。」

光彦(耐えろ、耐えるんだ。放課後に博士と過去に行って、コナン君を助ければ、すべて良くなる。)

光彦「運命は・・・変わるんだ・・・。」

コナン「はあ?変わるわけねえだろ!」

コナン「お前は一生俺の玩具なんだよ!!」

光彦「くうっ!!」

コナン「お前の運命、推理してやろうか?俺は探偵だから分かるんだ!」

光彦「・・・・・・。」

コナン「小学生、俺の玩具として痛めつけられる。」

コナン「中学生、狂いだし、俺に服従することに生きがいを見出す。」

コナン「高校生、遂に精神が崩壊し、俺に感謝の言葉を述べながら自殺。」

コナン「お前の人生、どうせ薄っぺらいんだ!」

光彦「その推理で・・・。」

コナン「あ?」

光彦「その推理で僕を追い詰めているとは、思わないんですか?」

コナン「・・・何が言いたい。」

光彦「その推理で僕が自殺に追い込まれたらって、考えないんですか!?」

コナン「・・・光彦てめえ!」

歩美「コナン君、もうやめて!」

コナン「歩美!」

元太「俺も見てられねえ!」

コナン「元太まで!」

歩美「今まで怖くて言えなかった。けど、友達がこれ以上傷つくの、もう見たくない!」

元太「ごめんな光彦、痛かっただろ?」

光彦「歩美ちゃん、元太君・・・。」

コナン「そうかよ、分かった。」

歩美「コナン君、今からでも・・・。」

コナン「じゃあ死ね。」

歩美「え?」

ドゴォン!!

歩美「」

光彦「・・・歩美ちゃん?」

コナン「キック力増強シューズのレベルを最大にした。」

コナン「歩美の貧弱な体じゃあ、耐えられやしねえよ。」

元太「コナン・・・。」

コナン「元太、お前の体は無駄に頑丈だからな、何発もやらねえと・・・。」

元太「ひっ!」

光彦「元太君、逃げましょう!」

元太「・・・いや、光彦だけ逃げろ!俺はここで食い止める!」

光彦「何言ってるんですか!そんなことしたら元太君が!」

元太「今までお前を助けなかった報いだ!!」

光彦「そんな・・・。」

コナン「安心しろよ!どっちも殺してやっからよ!!」

元太「行け!光彦!」

光彦「ごめんなさい!元太君!」ダッ!

コナン「おらあ!!」ドゴォ!

元太「ぐああああ!!!!!」

光彦(ごめんなさい、元太君!必ず過去を変えてみせますから!)

コナン「おらおらおら!!!」

元太「ぎゃああああああ!!!!!」

~阿笠邸~

光彦「博士!」

阿笠「おや光彦君、どうしたのかね。出発は放課後じゃろ?」

光彦「いえ駄目です。今すぐ行かないと!」

阿笠「・・・分かった。話は車の中で聞こう!」

光彦「準備は?」

阿笠「最終調整が必要じゃが、時間が無いからこのまま行こう!」

光彦「はい!」

~車内~

光彦「・・・ということなんです。」

阿笠「何と・・・そんなことが・・・。」

光彦「だから僕は・・・何としても・・・。」

阿笠「勿論じゃ、絶対に成し遂げねばならない。」

光彦「はい・・・あれっ、博士。」

阿笠「何かね?」

光彦「凄く後ろからですが、何かが超スピードでこっちに近づいてきてます。」

阿笠「まさか・・・。」





コナン「ヒャッハ~!!」

阿笠「間違いない、コナン君じゃ!スケボーで追いかけてきたんじゃ!」

光彦「どうして場所が分かったんでしょう!?」

阿笠「探偵団バッジは?」

光彦「電源を切ってます。」

阿笠「服に何か付いてないかね?ガムのような何かが。」

光彦「・・・あっ、背中に付いてます!」

阿笠「発信機じゃ!すぐに脱いで捨てるのじゃ、速く!」





コナン「服を捨てたな。発信機に気付いたか。」

コナン「だがここまで来れば十分だ。目的地も想像がつく。」

コナン「この方向だと港だが・・・どこか遠くに逃げるのか?」

阿笠「まずいの、目的地がバレたかもしれん。」

光彦「大丈夫ですよ。月影島に向かうだなんて、コナン君でも想像がつきませんよ。」

阿笠「だといいが・・・。」

光彦「それより、月影島にはどうやって向かうんですか?元々放課後に行く予定でしたから、今の時間のチケットは無いでしょう?」

阿笠「いや、そもそも運航しているかどうか・・・。」

~港~

阿笠「じゃから、そこを何とかしてくれ!」

係員「しかし、月影島への便は一日一つだけですので。」

阿笠「分からん奴じゃのお!」

光彦「博士・・・早くしないとコナン君が僕らを見つけてしまいます。」

阿笠「ええい、仕方があるまい!」

阿笠「光彦君、ここで時間移動じゃ!」

光彦「ええ!?でも時間移動の影響は計り知れないから、影響を抑えるため島に着いてからやろうって!」

阿笠「今コナン君に捕まれば元も子もない!リスクは承知の上じゃ!」

光彦「・・・分かりました!」

阿笠「早速準備を・・・。」

コナン「見つけたぞ!光彦!!」


光彦「コナン君!」

コナン「一体どこに行くんだ?ええ?」

光彦「博士・・・。」

阿笠「待ってくれ、最終調整をしとらんから起動に時間が・・・。」

コナン「博士~!あんたまで俺の敵に回るのか~!」

阿笠「コナン君・・・いや新一!」

コナン「おいおい、人前でその名前で呼ぶんじゃねえよ。」

阿笠「すまんかった。君の優れた頭脳を過信し、放っておいても心の整理がつくものと思っていた!」

コナン「何の話を・・・。」

灰原はどうしたん?

阿笠「君を歪ませたのはわしら大人じゃ。もっと気にかけてやれば良かったと、毎晩枕を濡らしていた!」

コナン「だから何を話して・・・。」

阿笠「必ず・・・必ず君を救ってみせる!」

コナン「博士・・・。」

光彦「コナン君・・・僕も頑張ります!」

光彦「コナン君は僕の・・・友達ですから!」

コナン「光彦・・・誰が勝手に喋っていいっつったよ~!!」

光彦「ひい~!!」

阿笠「よし、時間移動、実行じゃ!」

シュン

>>27
灰原は登場しません。劇中初期の設定のつもりで書いてます。

~過去~

光彦「あれ・・・。」

阿笠「ふう、どうやら無事に着いたようじゃな。」

係員「うわっ、あなたたち一体どこから!?」

阿笠「何を言っとるんじゃ、今来たばかりじゃろうが。」

係員「えっ、えっ?」

阿笠「疲れとるんじゃよ、ちょっとは休みなさい。」

光彦「あの、博士。」

阿笠「何かね。」

光彦「いきなり顔、覚えられてませんか?」

阿笠「仕方ないじゃろう、こうするしかなかったんじゃ。」

光彦「この時間、本来僕らは別の場所にいる、なのに同じ人間が別の場所に存在していることが知られたら・・・。」

阿笠「大混乱になるの。」

光彦「だから島に行ってから時間移動しようとしたんでしょ?」

阿笠「うむ、あっちでの目撃情報が本土にまで来ることはまず無いじゃろう。」

阿笠「それと念のため、変装の道具も持ってきたぞ。わしはサングラスとかつらじゃ。」

光彦「僕は眼鏡と帽子ですね。」

阿笠「服も持ってきたぞ、着替えよう。」

阿笠「これで潜り抜けられるといいがの。」

~十分後~

阿笠「さて、まず島に行かねばならんが、その前に今回の計画を説明しよう。」

光彦「はい、お願いします。」

阿笠「そもそもコナン君の心が壊れてしまったのは何故か、おそらく犯人を推理で追い詰めて死なせてしまったからじゃろう。」

阿笠「それを避けるためには、何をすればいいと思う?」

光彦「う~ん、事件が起きる前に犯人を説得すればいいのではないでしょうか?」

光彦「そうすれば事件自体起きません。」

阿笠「確かに、それができれば最良じゃろう。じゃが上手くいくと思うか?」

阿笠「人を殺すというのは生半可な覚悟で実行できるものではない。」

阿笠「何も知らない赤の他人であるわしらが説得を試みて、思いとどまってくれるじゃろうか?」

光彦「それは・・・難しいと思います。」

阿笠「うむ。だから犯人が殺人を犯す直前で食い止め、警察に拘束してもらう。」

阿笠「力ずくで止めてしまい犯人の無念は晴れないが、誰も傷つかないのが一番じゃ。」

光彦(本当にそれでいいんでしょうか?説得する方法があるんじゃないでしょうか?)

阿笠「わしが知っているのは、犯人が浅井成実(せいじ)という医者で、男性であるが女性として振舞っていたこと。」

阿笠「犯行の動機は家族を殺した者たちへの復讐。」

阿笠「そして殺されたのは次の3人じゃ。」

阿笠「川島英夫、村長選立候補者の一人で、第一の被害者じゃ。」

阿笠「黒岩辰次、同じく村長選立候補者の一人で現村長でもある。第二の被害者じゃ」

阿笠「そして最後の被害者、西本健。無職じゃ。」

阿笠「これ以外の情報は公開されておらん。」

阿笠「コナン君たちも事件のことを話そうとせんから、詳しいことは分からんかった。」

光彦「いつ事件が起きるのかも分からないとなると、ずっと見張っているしかありませんね。」

阿笠「そうじゃの。とりあえず今は島に行こう。」

光彦「はい、あの便でしょうか?」

~船上~

光彦「そういえば博士、コナン君たちは今どこに?」

阿笠「確か今日この日、島へ出発したはずじゃ。」

光彦「あれ、島への便は一日一つだけって・・・。」

阿笠「・・・・・・あ。」

小五郎「ったくよ~、世間じゃ花見だってのに、何だってこの名探偵毛利小五郎が、あんな島に出向かなきゃいけねえんだ。」

阿笠・光彦(やっぱり乗ってる~!!)

光彦「どうするんですか博士!」

阿笠「お、落ち着け、まだバレておらん!」

小五郎「一週間前に届いたあんな手紙のせいでよ。」

光彦(手紙?)

小五郎「確か・・・麻生圭二っつたか。自分勝手な依頼人だぜ。」

光彦(どうやら麻生圭二という人の依頼で島に来ているようですね。)

蘭「いいじゃない、伊豆沖の小島でのんびりできるんだから。ねえコナン君?」

コナン「うん!」

光彦(コナン君!)

阿笠(うう・・・またあの頃の新一が見られるとは・・・。)

光彦(感無量です!)

~村役場~

小五郎「もっとよく調べてください。現にこうして彼からの手紙が・・・。」



阿笠「なんじゃ、様子がおかしいの。」

光彦「まさか依頼人はもう死んでるとか・・・。」

阿笠「ははは、まさか。」



主任「あ、麻生圭二だとぉ~!?」

阿笠・光彦「!?」

主任「そんなはずはない・・・だって彼は十年以上前に・・・死んでいるんですから・・・。」

阿笠「まさか・・・。」

光彦「大当たりでしたね・・・。」

主任「あの・・・詳しい話は奥で・・・。」

小五郎「はい・・・。」

コナン「・・・・・・。」

光彦「どうしましょう、奥に行ってしまいます。」

阿笠「じゃがこれ以上近づくと、わしらのことがバレてしまうぞ。」

光彦「・・・う~ん。」

???「・・・・・・。」グビッ

光彦「うわ、あの人昼間からお酒飲んでますよ。」

阿笠「もしや、あの人は!」

光彦「知っているんですか?」

阿笠「最後の被害者、無職の西本さんじゃ。」

光彦「それじゃあ、詳しい話を知っているかもしれませんね。」

阿笠「よし行くぞ。酔ってるみたいじゃから意外とすんなり話してくれるかもしれん。」

阿笠「すみません、ちょっといいですか?」

西本「ん?」

光彦「無職の西本さんですよね?」

西本「何だと!喧嘩売ってんのか!」

光彦「ご、ごめんなさい!」

阿笠「これこれ、無職の人に無職と言っては失礼じゃろう。」

光彦「そうですね。配慮が足りませんでした。申し訳ありません。」

西本「あ、ああ。分かればいいんだ。」

阿笠「ところで、麻生圭二さんについてお聞きしたいんですが。」

西本「麻生だとっ!?」

阿笠(やはり何か知っておるようじゃな。ここは鎌をかけてみるか。)

阿笠「十年以上前に死んだという麻生さん、あの事件は貴方と川島さん、黒岩さんが仕組んだんじゃろう?」

西本「ど、どうしてそれを!?」

阿笠(ビンゴじゃ!)

阿笠「安心してくれ貴方を捕まえようだなんて思っておらん。むしろ逆、守りに来たんじゃ。」

西本「守りに?」

光彦「実は、貴方たち3人が殺されるという情報が入ったんです。」

西本「じゃあ・・・麻生はやっぱり生きているんだ!!」

光彦「落ち着いてください。殺そうとしているのは・・・。」

阿笠「待つんじゃ、光彦君。」

光彦「どうして?犯人を教えてあげれば、殺されずに済むかもしれないのに。」

阿笠「それでは犯人が逆に殺されてしまうかもしれん。」

阿笠「誰も傷つかない、それが最良じゃろ?」

光彦「・・・そうでしたね。」

西本「おい、さっきから何を二人でこそこそ話してる。」

阿笠「ああ、気にせんでくれ。こっちの話じゃ。」

阿笠「それより貴方のことは必ず守るから、事件について詳しく聞かせてくれんか?」

西本「ああ、分かった。」

西本「・・・というわけなんだ。」

光彦「そんなことで同級生を!?」

西本「ゆ、許してくれ麻生!俺は・・・俺は!!」

阿笠(麻薬売買に協力しないからと、家族諸共口封じのために殺すなんて・・・下衆が。)

光彦「博士・・・こんな屑を助けなくちゃいけないんですか?」

阿笠「・・・そうじゃ。それがコナン君のためなんじゃ。」

西本「お願いだ・・・助けてくれ・・・。」

阿笠「分かっておる。」

光彦「・・・・・・。」

~その後~

光彦「何だか僕、犯人に同情しちゃいます。」

阿笠「では殺人を見逃すかね?」

光彦「それは・・・絶対に駄目です。」

阿笠「どんな理由があろうとも、人を殺してはいかん。」

光彦「はい・・・。」

阿笠「麻生さんのことは分かったし、次は犯人の浅井成実さんを探そう。」

光彦「確か医者でしたよね。どこかの病院に勤めてるんでしょう。」

阿笠「一つ一つ見ていくかの。」



島の漁業を守るために、この清水正人に清き一票を!!



光彦「なんですか、あれ?」

阿笠「選挙カーじゃ。村長選が近いらしい。」





成実「私は医者の浅井成実!!ちゃんと医師免許持ってます!!」

小五郎「あ、ドクターでしたか・・・。」

阿笠(まずい、コナン君たちじゃ!)

光彦(あれ、今浅井成実(なるみ)って・・・。)

阿笠「あの人が犯人の・・・。」

光彦「とても人を殺すようには見えません・・・。」

阿笠「油断してはならんぞ。本性を隠しているだけかもしれん。」





小五郎「前の村長の三回忌・・・?」

成実「ええ、今夜公民館で法事をやる予定なんです。」

小五郎「なるほど、行ってみます。ありがとうございます。」

成実「いえ、どういたしまして。」

成実「あれが毛利小五郎・・・。」

阿笠「すみません、いいですか?」

成実「はい、何でしょうか?」

阿笠「あなたが浅井先生ですか?」

成実「ええ、そうですが。」

阿笠(なるほど、ここでは『せいじ』ではなく『なるみ』と呼ばせているのか。)

光彦「今の人たちに話していたこと、僕らにも教えてくれませんか?」

成実「ええ、公民館で前村長の三回忌があるから、村長候補の三人に会える、って話したわ。」

阿笠(ではそこで殺すのじゃな。)

光彦「博士、僕らも行きましょう。」

阿笠「うむ。」

光彦「あの、浅井先生。」

成実「何?」

光彦「復讐なんて・・・良くないです。」

成実「・・・・・・。」

光彦「他にも道は・・・。」

阿笠「光彦君!」

阿笠「すみません、子供の戯言です。聞き流してください。」

成実「はい・・・。」

阿笠「光彦君よ、言いたいことは分かる。じゃがわしらには止められん。」

光彦「・・・はい、分かってます。」

~公民館~

阿笠「入り口から入ると怪しまれるから、どこかの窓から様子を見よう。」

光彦「それ逆です、博士。」

阿笠「公民館の裏はすぐ海じゃから、そっちから回るとしよう。」

光彦「はい。」

光彦「ここが裏手・・・。」

阿笠「ピアノが見えるの。演奏会場か?」

光彦「へえ、ちょっと見てみましょうよ!」

阿笠「これ!見つかったらどうする!」

光彦「大丈夫ですよ!今法事の準備中で、誰も入ってきません!」

光彦「田舎だからか、戸締りもしてないですね。」

光彦「防犯意識が希薄なんでしょうか・・・。」

光彦「それにしても埃だらけですね、掃除すればいいのに。」

光彦「あれ、ピアノの下に白い粉が・・・。」

阿笠「これこれ、早く戻らんと見つかってしまうぞ。」

光彦「ねえ博士、この白い粉はなんでしょうか?」

阿笠「ん?砂糖か何かか?」ペロッ

光彦「そんなものがあるわけないでしょ。」ペロッ

阿笠「・・・・・・。」

光彦「・・・・・・。」

阿笠「・・・・・・。」

光彦「・・・・・・。」

阿笠「ほら、出るぞ。」

光彦「はい。」

~その夜~

光彦「ねえ博士。」

阿笠「何じゃ。」

光彦「殺人を犯す直前で食い止めて、警察に捕まえてもらうんですよね?」

阿笠「そうじゃよ。それが一番良いんじゃ。」

光彦「僕思ったんですけど・・・。」

阿笠「・・・・・・。」

光彦「犯人に味方すればいいんじゃないですか?」

光彦「殺人計画を成功させて、コナン君が真相を突き止められないようにする。」

光彦「犯人の無念は晴らせる、屑は消える、コナン君は正常のまま。」

光彦「これが一番なんじゃないですか?」

阿笠「光彦君・・・君は天才じゃ!!」

光彦「ですよね!」

阿笠「わしも薄々気づいていた。やはりそうするべきじゃ!」

光彦「何だか頭が冴えてきたっていうか・・・。すごく気分がいいです!」

阿笠「わしもじゃ、最高の気分じゃ!」

光彦「今なら何だって出来そうな気がします!」

阿笠「必ずやり遂げられるぞ!」

川島「ふふふ。」

光彦「誰か出てきますよ。」

阿笠「村長候補の川島さんじゃ。」

川島「私に何の御用ですか?まさか次期村長に媚を売るつもりで?」

阿笠「他にも誰かいるのか?」

川島「浅井先生・・・。」

成実「・・・・・・。」

光彦(まさかここで・・・川島さんを殺すつもりなんじゃ・・・。)

光彦(ぐふふふふ!!!)

成実「・・・そんなつもりじゃ・・・。」

川島「では何故?」

成実「・・・・・・。」

成実「私の本当の名前は・・・せいじ。」

川島「?」

成実「麻生成実(せいじ)です。」

川島「麻生・・・まさか!?」

成実「そう、麻生圭二の息子だ。」

川島「じゃあ私に復讐を・・・。」

成実「・・・そのつもりだった。」

川島「何!?」

成実「最初は殺してやるつもりだった。」

成実「けどできない、俺は医者なんだ。例え憎い奴でも、命を奪うなんてできない!」

川島「・・・・・・。」

成実「だから・・・お願いだ。自首してくれ・・・。」

川島「・・・・・・。」

阿笠「いかんのお~!!」

川島「!?」

阿笠「こんな屑は死ぬべきじゃ。そのために今日まで生きてきたんじゃろ!」

成実「貴方は!?」

阿笠「今ここで殺さんと、今度は君を殺しに来るぞ~!」

川島「何だと!?」

阿笠「川島さん、あんたはここで死ぬんじゃ!」

阿笠「光彦く~ん!」

光彦「は~い!!」ドゴォ!!

川島「ぐはあっ!!」

光彦「ひゅ~!キック力増強シューズで人間を蹴るのは最高ですね!」

川島「お前ら・・・何を・・・!?」

阿笠「よ~し、海に引きずり込むぞ!」

川島「ごぼぼぼぼ!」

阿笠「苦しいか!苦しいか!」

光彦「お前らのやったことに比べれば可愛いもんだ!」

成実「ああ・・・ああ・・・。」

光彦「念入りにもう一度蹴っておきますね~!」ドゴォ!!

阿笠「ナイスじゃ!」

川島「」ピクッピクッ

阿笠「そろそろ死んだじゃろ~!」

光彦「いえ~い!!」

阿笠「さて、この後はどうするんじゃ?浅井先生。」

成実「へっ!?」

阿笠「考えてるんじゃろ?殺人計画を!」

成実「そうですけど・・・。」

光彦「教えてください!僕、先生の味方ですから!」ニコッ

成実「ひっ!」

光彦「どうしました?」

成実「あの、死体をピアノのところまで運んで、テープレコーダーで月光を流します。」

阿笠「なるほど~!月光か~!良い曲じゃ!」

阿笠「じゃあ運ぶぞ。」

光彦「あ、後は僕たちがやるんで、先生は戻っていてください。」

成実「あ、はい。」

阿笠「よいしょ、よいしょ。」

光彦「重いですね~。博士、後お願いします。」

阿笠「いや、ええ~!?」

~その後~

キャアァァァァァァァァ!!!!

コナン「遅かったか!!」

小五郎「川島さん・・・。」

成実「あの、私が検死をします!」

小五郎「あ、ああ・・・お願いします。」

成実「・・・ダメです、死んでいます。」

蘭「そんな・・・!!」

小五郎「蘭、派出所に連絡を!」

蘭「う、うん!」

小五郎「公民館の玄関には俺たちがいたから、この部屋の扉に鍵が・・・。」

コナン「掛かってないよ!」

小五郎「じゃあ外部犯の犯行だな!」

コナン「そうかな?」

小五郎「あ?」

コナン「見て、外につながるドアからピアノまで、引きずられた跡がある。」

コナン「これって一度外に出て、そこで殺してから引きずってきたってことでしょ?」

コナン「外部犯なら、わざわざ中に運んでくる必要は無いよ!」

小五郎「確かに、見つかるリスクが高くなるようなことはしないよな・・・。」

コナン「おそらく外部犯に見せかけて、公民館にいる人が殺したんだ!」

成実「あの・・・。」

小五郎「何か分かりましたか?」

成実「はい、死因は溺死です。コナン君の言うように、外で殺害されたと思います。」

成実「それと体に二か所、打撲の跡がありました。新しい傷なので、殺されたときのものかと。」

小五郎「大の男に打撲を二つ・・・犯人は男だな・・・。」

コナン「うん・・・引きずった跡から見て犯人は一人だから、女性二人がかりってのもないね。」

蘭「お父さん、おまわりさん連れてきたわよ!」

駐在「え~と、私を呼んだのは?」

小五郎「この私、毛利小五郎です!」

駐在「おお~あの有名な宇宙飛行士の!」

小五郎「ちがうって・・・。」





小五郎「とにかく今日はもう遅いので、事情聴取は夜が明けてからにしましょう。」

小五郎「すぐに帰って、戸締りしてください!いいですね!」

コナン「僕たちも戻ろうか。」

蘭「ええ、成実先生も戻りましょう?」

成実「え、ええ・・・。」

~帰り道~

成実「じゃあ、私はこっちですので。」

成実「早く事件を解決してくださいね。」

小五郎「勿論ですとも!」

成実「それじゃあ!」

成実「・・・・・・。」

阿笠「見事じゃのう!」

成実「!?」

光彦「まるで事件に無関係かのように振舞っていましたね。」

阿笠「心の中でガッツポーズしてたじゃろ!?」

成実「誰が!!」

阿笠「ところで、わしら今夜泊まるところが無いんじゃよ。」

成実「それが何だよ。」

阿笠「泊めてくれんかの~!」

光彦「男同士だし、いいでしょ~?」

成実「なっ!?」

阿笠「もはや君とわしらは運命共同体、お互い近くにいた方が都合がいい。」

成実「・・・分かった。ついてこい。」

光彦「楽しみですね~!」

成実「・・・・・・。」

~その後~

成実「ここが俺の家だ。」

阿笠「両親とは一緒に暮らしておらんのか?」

成実「ああ、親は本土で暮らしていてな、俺も週末には帰ってるんだ。」

光彦「バイトの医者みたいですね。」

成実「・・・・・・。」

~その晩~

阿笠「ぐごごごごご!!!!」

光彦「zzzzzz」

阿笠「ぐごごご・・・は、何じゃ今の音は!?」

阿笠「ああ、わしのいびきか。」

阿笠「おや、先生がおらんぞ。」

阿笠「光彦君、起きるんじゃ。」

光彦「ぐへへ、コナン君、靴を舐めるだなんて、プライド無いんですか~?」

阿笠「気持ち悪い夢見てないで、さっさと起きんか!」ペチン

光彦「はにゃ?」

光彦「どうしたんでしょう、こんな夜中に。」

阿笠「もしや、次の殺人の準備か?」

光彦「分かりました!きっと公民館に向かったんですよ!」

阿笠「なるほど!わしらも手伝いに行こう!」

光彦「すべては復讐達成のために!」

~公民館~

小五郎「二年前に亡くなった前村長の亀山さんの死因ですが、本当に心臓発作で?」

成実「ええ、あの方は以前から心臓が悪くて。」





阿笠「おや、コナン君たちもおるぞ。」

光彦「流石ですね、これが連続殺人になると気付いたんでしょう。」

コナン「ねえ、その時何か変わったことなかった?」

成実「そういえば、窓が一つ開いてたと思います。」

駐在「その時は、誰かが閉め忘れたんだろうってことになったかの。」

小五郎「その窓とは?」

成実「確か・・・。」





阿笠「む?」

光彦「こっちに来ますね。」

成実「この窓だと・・・。」

コナン・小五郎「誰だ!?」

阿笠(うおっ!?)

光彦(見つかりました!!)

阿笠「逃げるぞ!!」

小五郎「待てぃ!!」

コナン「逃がすか!!」

阿笠「はあ・・・はあ・・・。」

光彦「もっと速く走ってください!」

阿笠「年寄りに無茶言わんでくれ!」

小五郎「いたぞ!」

阿笠「ヤバい!」

コナン「逃がすか・・・よっ!!」

阿笠「ほげえ!?」ドカ!

光彦「博士!」

小五郎「よし、捕まえたぞ!」

光彦(あわわわ!!)

小五郎「サングラスなんぞかけやがって、怪しい奴だ!」

コナン「・・・!?」

小五郎「一体誰だ!!」

阿笠「うっ・・・。」

小五郎「あんたは・・・阿笠博士?」

コナン「博士だけじゃない・・・。」

光彦「うう・・・。」

コナン「帽子と眼鏡で変装してるが・・・よく見れば分かる。」

コナン「どうしてこんなところにいるんだ、光彦。」

光彦(コナン君・・・。)

~その後~

小五郎「はあ~!?双子の弟だ~!?」

阿笠「そうなんじゃよ~!」

コナン「お前もか?」

光彦「はい!」

蘭「そっくりね~!」

光彦「そ、そうですか?」

小五郎「名前は何て言うんだ?」

阿笠「わしは阿笠修士(しゅうじ)じゃ!」

光彦「僕は円谷幹彦(みきひこ)です!」

コナン「修士に幹彦ねえ・・・。」

阿笠「都会から離れたところでのんびり暮らすのが、子供のころからの夢での~!」

光彦「僕は病気の療養のため、空気の綺麗なこの島で暮らしているんです。」

コナン「ふ~ん。」

小五郎「それで、さっきは何で逃げ出したんだ。」

阿笠「そりゃあ、怒鳴られれば誰だって逃げるわい!」

光彦「びっくりしました。」

小五郎「ぐっ・・・。」

成実「・・・・・・。」

阿笠「それじゃあわしらは帰るから。」

光彦「さよなら~!」

蘭「ばいば~い!」

コナン「・・・・・・。」

成実「・・・・・・。」

コナン「ねえ、成実先生。」

成実「な、なあに?」

コナン「あの二人、先生は見たことある?」

成実「ええ、あるわよ。びっくりだわ~まさかコナン君の知り合いの弟だなんて!」

コナン(成実先生が嘘をつく理由は無い・・・。とすると、本当に別人か。)

駐在「療養でこの島に来るとは、麻生さんの子供とは逆じゃな~!」

コナン「え!?」

成実「!?」

コナン「どういうこと!?」

駐在「麻生さんには息子がいての、病気で本土の病院に入院しておったんじゃ。」

駐在「麻生さんが亡くなってからは、音沙汰が無くなってしまったがな。」

小五郎「その息子、名前は?」

駐在「確か・・・せいじと言ったかの。」

コナン「せいじ・・・。」

小五郎「もしかして、今回の事件はその息子が起こしているんじゃ・・・。」

コナン(その可能性は高いな・・・。)

小五郎「よし、今夜は公民館で寝ずの番だ!その息子が来るかもしれねえ!」

~翌日、昼~

目暮「おい、起きろ。毛利君!」

小五郎「目暮警部殿!どうしてここへ?」

目暮「お前が事件に絡んでいると聞いて、わざわざ出向いてきたんだ。」

小五郎「そ、そうだ警部殿。事件の説明を・・・。」

目暮「それならコナン君たちから全部聞いたよ。」

小五郎「え?」

目暮「被害者の状態を含め、すべて説明してもらった。」

目暮「わしらが来るまで、お前と老いぼれ警官以外は起きていたよ。」

駐在「・・・・・・。」スピー

目暮「村役場で事情聴取をしとるから、お前も手伝いに来い!」

小五郎「はあ・・・。」

~夕方~

黒岩「川島が殺されたということは、まさか・・・。」

黒岩「いや、まだ資産を狙った犯行とも・・・。」

阿笠「いいや、麻生さんの敵討ちじゃ!」

黒岩「貴様らは!?」

光彦「こんにちは~!」

阿笠「これこれ、もう夕方じゃ。」

光彦「あ、そっか~!」

黒岩「何なんだお前らは!」

阿笠「事情聴取でお疲れのところ申し訳ないんじゃが、ちょっと頼まれてくれんか?」

黒岩「わしを村長と知っての無礼か!?」

阿笠「まあ落ち着いて、あんたの秘密はすべて西本さんから聞いておる。」

光彦「秘密をバラされたくなかったら、僕らに従ってください!」

黒岩「西本の奴め・・・。」

阿笠「秘密がバレたらどうなるかの~!」

光彦「そういえば、娘さんがいましたよね~?」

黒岩「!?」

光彦「婚約者がいるそうですが、それも破談になりますね。」

阿笠「路頭に迷って、風俗に墜ちてしまうじゃろうな!!」

黒岩「頼む、娘だけは・・・娘には何もしないでくれ・・・。」

阿笠「では話を聞いてくれるか?」

黒岩「・・・分かった。聞こう。」

~村役場の放送室~

黒岩「こんなところで何を・・・。」

阿笠「そりゃ!!」ザクッ!

黒岩「ぐお!!」

光彦「いいですね!肺を一突きだ!」

黒岩「かはっ!・・・!?」

阿笠「肺に穴を開けたからの、呼吸も上手くできんわ。」

黒岩「はっ、はあ!?」

光彦「麻生さんを苦しめたんだ。貴方も苦しみ抜いて死んでください。」

成実「入りますよ・・・きゃ」

阿笠「おっと、声を出さんでくれ。」

成実「こ、これは一体・・・。」

阿笠「黒岩さんを殺しているんじゃ。」

光彦「声を出せないようにはするためにはどうするか、二人で考えたんです!」

成実「あ・・・あ・・・。」

阿笠「さて、殺した後はどうするかね?」

成実「えっと、月光の第二楽章をかけます・・・。」

光彦「分かりました!」

成実「それと、血でこの楽譜を床に描いてください。」

光彦「楽譜?」

阿笠「後はわしらでやっておくから、先生は戻って戻って!」

成実「はい・・・。」

光彦「何でしょう、この楽譜・・・。」

阿笠「何じゃ、何の曲じゃ?」

光彦「月光ではないみたいですね。」

光彦「先生の作曲でしょうか?」

阿笠「ほお、粋な趣味じゃの~!」

光彦「でもまだまだですね。僕が手直ししてあげましょう!」

阿笠「良い考えじゃ、わしも手伝うぞ!」

光彦「二人で名曲を作りましょう!」

~村役場ロビー~

コナン(修士・・・幹彦・・・。)

コナン(おかしい、ここで暮らしているなら住民名簿に名前が載っているはずなのに。)

コナン(どこにも載ってない。じゃああの二人は何者なんだ!?)

コナン(博士や光彦なら身分を偽る必要は無いし・・・。)

西本「・・・・・・。」

コナン(そういえば西本さん、事情聴取が終わったのに帰らない・・・妙だな。)

西本「・・・・・・。」サッ

コナン(あっ!)

コナン「僕トイレ!」

コナン(あれ、トイレにいないな?)

♪♪♪♪♪

コナン「この曲は、月光の第二楽章!?」

~放送室~

西本「あわわわ・・・。」

コナン「西本さん!」

黒岩「」

コナン(しまった!!)

小五郎「これは!?」

目暮「すぐに鑑識と検死官を呼ぶんだ!」

刑事「しかし、検死官は本土へ戻りました!」

目暮「何い!?」

成実「あの、私でよければ・・・。」

小五郎「成実先生・・・。」

コナン(まただ・・・。連続殺人だと分かっていて・・・。)

コナン(また犠牲者を出しちまった!ちくしょう!!)





阿笠「きっと今頃イライラしとるぞ~!」

光彦「ふふふ、もっと楽しんでくださいよ、コナン君!」

阿笠「さあ、次は最後の殺人じゃ!」

光彦「どう殺すか考えないと、ですね!」

~その後~

成実「被害者が死に至ってから、数分しか経っていないと思われます。」

小五郎「数分ですか・・・。」

目暮「となると、犯人はまだ役場の中だな。出入口は警官がいるから逃げられんよ。」

鑑識「警部、譜面のようなものがあります!」

目暮「見せてみろ!」

小五郎「これは一体・・・。」

コナン「何だ・・・何だこれは!?」

小五郎「ダイイングメッセージか?」

コナン「いや、こんなもの書いてる体力は無いだろうから、きっと犯人によるメッセージ。」

コナン「・・・・・・まさか!」

目暮「何か分かったのかね!?」

コナン「多分、ピアノの鍵盤にアルファベットを当てはめて、該当する文字をそのまま譜面で表しているんだ。」

小五郎「よし、読んでみろ。」

コナン「うん。WAKATTERUNA HANNINHA MITSUHIKO」

目暮「分かってるな、犯人は光彦・・・。」

コナン「・・・えええええ!!」

小五郎「よし、村の光彦という男を連れて来い!」

駐在「おりゃせんよ、そんな男。」

目暮「あ、あんたは・・・。」

駐在「わしゃ長いことこの村におるが、光彦なんて名前は聞いたことが無い。」

小五郎「じゃあこの譜面は一体・・・。」

目暮「おい、これが連続した事件だとしたら、第一の事件でも楽譜があったんじゃないのか?」

小五郎「あ・・・ピアノに楽譜が置いてあるのは当たり前だから、よく見てませんでした。」

駐在「その楽譜ならわしが持っとるぞ。」

小五郎(こいつ・・・勝手に現場の物を・・・。)

コナン「見せて!」

駐在「ほれ・・・。」

コナン「・・・・・・。」

蘭「何て書いてるの?」

コナン「OREHA KOUKOUSEITANTEI KUDOU SHINICHI」

蘭「俺は高校生探偵、工藤新一・・・。」

蘭「そんな・・・新一が・・・。」

コナン「そんなわけないよ、何かの偶然だよ!」

小五郎「そうだ!あの音痴の探偵ボウズが、こんな芸当できるわけがねえ!」

コナン(腹立つけどおっちゃん、ナイスフォローだぜ!)

蘭「でも・・・絶対音感持ってたから・・・。」

コナン(何でだよくそ!どうなってんだ!)

目暮「まあまあ、工藤君はそもそもこの島にきておらんだろ?」

蘭「それは・・・多分そうですけど。」

駐在「楽譜と言えば・・・麻生さんが死んだ日にも金庫から楽譜が見つかったの~。」

小五郎「何だって!?」

目暮「その楽譜が今回の事件を解くカギになるんじゃ・・・。」

小五郎「その楽譜はどこにある!」

駐在「公民館の倉庫じゃ。あ~でも鍵は派出所に・・・」

目暮「だったらさっさと取ってこい!!」

駐在「はっ、はい~!」

コナン「僕も行くよ~!」

蘭「コナン君!!」

小五郎「蘭、お前はここにいろ。とりあえず落ち着くのが先だ。」

蘭「う、うん・・・。」

~公民館~

阿笠「やっと出てこれたの~!!」

光彦「女子トイレに隠れるだなんて、大胆ですね~!」

阿笠「浅井先生のサポートがあってこそじゃよ!」

光彦「何だかみんな騒いでましたけど、まあ何てことないでしょう!」

光彦「ところで、なんで公民館に?」

阿笠「うむ、西本さんを呼び出しておるんじゃ。」

光彦「遂に屑がみんな消えるんですね!」

阿笠「そうじゃぞ!!」

光彦「あ、その前に・・・。」

阿笠「どうした?」

光彦「このピアノにあった白い粉・・・へへへ。」ペロペロペロ

阿笠「ぬおおズルいぞ!わしにも分けてくれ~!」ペロペロペロ

光彦「うひょひょひょ~!!!」ペロペロペロ

阿笠「あへ・・・あへへ・・・。」ペロペロペロ

西本「おい・・・何をやってる・・・。」

阿笠「来たか!」

西本「ああ、駐在がいつまでも戻ってこないから、捜査は明日再開しようって。」

西本「なあ、本当に助けてくれるんだよな?」

阿笠「ぐふふふ~!」

西本「うっ!?」

光彦「まあまあ、まずはここに入ってください。」

西本「ここは倉庫・・・でも鍵は?」

光彦「窓を破りました。」

西本「おいおい・・・。」

阿笠「さてと・・・。」

西本「?」

光彦「死んでください!」グッ!

西本「ぐえっ!!」

西本「苦しい・・・!!」

阿笠「君は無職じゃからの、他の二人よりは楽に死なせてやる。」

西本「じゃあ、川島と黒岩をやったのは・・・。」

阿笠「わしらじゃ~!」

光彦「いや~人を殺すのって楽しいですね~!」

西本「狂ってやがる・・・。」

光彦「貴方もですよ?麻生さんを殺したんですから。」

西本「助けてくれるって・・・言ったじゃねえか・・・。」

阿笠「何のことかの~年寄りは忘れっぽくっての~!」

光彦「ごめんなさ~い、この人もう爺さんだから!!と言っても、西本さんより年下ですけどね!」

西本(くそ・・・意識が・・・。)

光彦「もう少しです~!命の灯が消える瞬間のカタルシス~!」

西本(ごめん麻生・・・俺もそっちに・・・。)

西本(いや、俺は地獄行きだから・・・お前には会えないな・・・。)

西本(なあ麻生・・・俺は一体、どこで間違えたんだろう・・・。)

西本「」

阿笠「・・・おっ、死んだな。」

光彦「フォオオオオオオオ!!!!!」

阿笠「ほほほ、病みつきになってしまったか。」

光彦「もっと!もっと人を痛めつけたい!殺したい!」

阿笠「わしもこれからは殺戮兵器を作りまくってやるわ!!」

光彦「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

成実「おい、静かにしろよ。誰か来たらどうする。」

光彦「おやおや、もっと早く来ていれば、先生も見られたのに?」

成実「は?」

阿笠「人が死ぬ瞬間じゃよ!ああ、先生は医者じゃから見慣れてるか!」

成実「お前ら・・・いい加減にしろ!!」

光彦「何でですか?積年の恨みを晴らせて満足しないんですか~?」

成実「人が死ぬってことはな・・・そんな簡単なことじゃないんだよ!!」

阿笠「ほ~う。」

光彦「何だ・・・結局あなたは中途半端なんですね。」

成実「あ!?」

光彦「中途半端に復讐を誓って・・・医者だから殺せないって・・・。」

阿笠「そんな覚悟では君のお父さんも浮かばれんよ。」

成実「お前に父さんの何が分かる!」

阿笠「分かるとも!」

阿笠「君のお父さんは仇を取ってほしかったんじゃ!」

阿笠「本土の病院に入院していて、ほとんど存在を知られていない君なら、必ずや自分を殺した奴らを地獄に叩き落してくれるだろう!」

阿笠「そう思っていたに違いない!」

成実「そんなわけ・・・父さんはそんな人じゃ・・・。」

阿笠「お前こそ何を知っている!父親が麻薬売買の片棒を担いでいたと知っていたか?」

阿笠「偉大なピアニスト・・・その面だけしか知らんだけじゃ!」

阿笠「人間は誰しも裏の顔を持つ!他人を騙して生きているんじゃ!」

成実「違う・・・違う!!」

阿笠「何が違う!?お前もそうじゃ!本当は男なのに女のふりしてるじゃないか!」

阿笠「島のみんなを騙している!お前も既に犯罪者じゃ!」

成実「うう・・・ううう・・・。」

阿笠「泣くな!最後まで務めを果たせ!ここで無様に警察に捕まっては、父親に顔向けできまい!」

成実「ぐぐ・・・うぐっ!」

~しばらく後~

成実「・・・それじゃあ、後は手筈通りにお願いします。」

阿笠「うむ、首吊り自殺に見せかければいいんじゃな?」

光彦「任せてください!」





阿笠「・・・行ったか?」

光彦「行きました。」

阿笠「ぷぷぷぷぷ~!!見たかね光彦君、あの泣き顔~!」

光彦「見ました見ました!汚かったです~!」

阿笠「わしの適当な演説にビビっておったぞ~!」

光彦「名演技でしたよ~博士~!」

阿笠「おっと無駄話をしてる暇はない。さっさとこのゴミを吊るさんとな。」

光彦「足元に踏み台と楽譜を置いて・・・。」

阿笠「また楽譜か・・・。」

光彦「まったく、意味の分からないもの書きますね~!」

阿笠「どれどれ、確かに無茶苦茶じゃな~!」

光彦「こりゃまた手直しが必要ですね!!」

~しばらく後~

蘭「きゃああああああ!!!!!」

コナン「どうした!!」

西本「」

コナン「西本さん・・・。」

蘭「コナン君、足元に譜面が!」

コナン「これは・・・。」

蘭「何て書いてあるの?」

コナン「・・・アチョー。」

蘭「は?」

目暮「この楽譜を読み解いてみたら、よく分からん文章になった。」

目暮「川島氏には、昔ウンコを漏らしたことをバラされた。」

目暮「黒岩氏には、好きだった女の子を取られた。」

目暮「麻生氏には、美少女フィギュアの収集を馬鹿にされた。」

小五郎「はあ・・・。」

小五郎「遺書・・・ですかね?」

目暮「一体何故死ぬ前にこんなものを・・・。」

コナン(おかしい・・・何か意味があるはずだ・・・。)

目暮「だが側にテープレコーダーがあり、第三楽章が流れていたことを踏まえると。」

目暮「この一連の事件を自分の死で終わらせたということだろう。」

コナン(本当にそうだろうか・・・。)

コナン(何なんだこの事件・・・どうなってるんだ!)

コナン(俺の勘では犯人はあの人だが・・・確たる証拠が無い。)

コナン(どうする・・・このままじゃ犯人が分からねえ!!)

駐在「はあ・・・はあ・・・。」

コナン「あれ、どうしたの?」

駐在「やっと見つけたんじゃ!麻生さんが残した楽譜を!」

コナン「見せて!!」

コナン「WAGAMUSUKO SEIJIHE」

コナン「我が息子、せいじへ。これは・・・!?」

駐在「もしや、せいじ君への手紙か?」

コナン「もしかすると・・・使えるかもしれない・・・。」

???「ピンポンパンポーン!!!」

コナン「!?」

小五郎「何だ何だ!?」

???「島内のみなさん、こんばんは~!!!」

目暮「どこから流している!?」

駐在「村役場の放送室じゃ!あそこなら島内全域に放送を流せる!」

蘭「この声・・・まさか・・・。」

???「僕のこと分かりますか~?」

???「高校生探偵の工藤新一どぅえ~す!!!」

コナン「何だって!?」

目暮「工藤君!?」

蘭(新一!)

小五郎「村役場に急ぐぞ!!」

~村役場~

目暮「おい、開けるんだ!」

刑事「駄目です!どこも開けられません!」

目暮「どうなっているんだ・・・警備していた警官は何をやっている!」

刑事「それが・・・全員眠っておりまして・・・。」

目暮「何だと~!!」

新一「どうも皆様、お集りいただきありがとうございます!」

小五郎「おい、探偵ボウズ!いきなり出てきたと思えば、何の茶番だ!!」

目暮「そうだ!声だけじゃなく、姿も現せ!!」

蘭「新一!!出てきてよ!!」

コナン(何だこれは・・・。)

新一「今夜僕がお話しするのは、この奇妙な連続殺人の真相です。」

小五郎「まさか、解けてるっていうのか!?」

新一「まずは事件をおさらいしましょう。」

新一「第一の事件では、川島さんが溺死しました。」

新一「第二の事件では、黒岩さんが肺に穴を開けられ殺された。」

新一「そして第三の事件、西本さんが自殺に見せかけて絞殺された。」

小五郎「見せかけ・・・西本さんは自殺じゃないのか!っていうか、何でお前が事件にそんなに詳しいんだ!」

目暮「ちょっと待ってくれ工藤君、捜査結果と食い違いが・・・。」

新一「これらの事件はすべて、男性による力技でなければ実行できないため、当然犯人も男性でしょう。」

目暮「お~い・・・。」

新一「次に殺害の動機についてですが、おそらく麻生圭二殺害の復讐でしょう。」

小五郎「じゃあ、麻生さんの息子であるせいじが、今回の犯人なんじゃ?」

蘭「この島のどこかに、隠れているの!?」

駐在「・・・・・・。」

新一「いいえ、隠れてなんていませんよ。」

新一「彼はずっと、すぐ近くにいたんです。」

目暮「一体・・・どこにいるんだ!」

新一「麻生圭二の息子・・・それは、浅井成実さん、貴方だ!!」

成実「・・・・・・!!」

蘭「そんな、成実先生が・・・。」

新一「前々から父親の死に疑問を感じていた成実さんは、医大卒業後、この島にやってきた。」

新一「麻生圭二の息子であるとバレないよう、女医師としてね。」

新一「女性っぽい顔立ちや、医師免許に名前の読みが書かれていないことから、周囲には浅井成実(なるみ)で通せた。」

小五郎「待て待て、それは全部お前の推測だろうが!!」

新一「成実さんの家を漁っていたら、証拠がたくさん出てきましたよ。」

目暮(こいつ、さらっと不法侵入しとる・・・。)

成実「・・・・・・。」

新一「そう、男である成実さんなら、一連の事件は実行可能なんです。」

成実「ち、ちがっ!!」

新一「三人の人間を殺した殺人鬼は・・・成実さん、貴方です!!」

成実「違う!私じゃ・・・俺じゃない!!」

蘭「成実先生・・・やっぱり・・・。」

成実「麻生圭二の息子だってのは本当だ。でも俺は殺してない!」

新一「言い逃れはできませんよ、証拠もある。」

成実「証拠!?」

新一「西本さんは殺される直前、死に際の音声を録音していたんです。」





西本「苦しい・・・!!」

成実「君は無職だからね、他の二人よりは楽に死なせてやる。」

西本「じゃあ、川島と黒岩をやったのは・・・。」

成実「そうさ、俺だ!」

成実「いや~人を殺すのって楽しいね~!」





目暮「これは・・・!!」

小五郎「西本さんと成実さんの会話・・・。」

成実「嘘だ!こんな会話してない!」

光彦「ふふふふふ!!!」

阿笠「おやおや、随分と楽しそうじゃないか、光彦君。」

光彦「博士もやりますね~!証拠の捏造とは!」

阿笠「まあの!じゃが、決定的な証拠(捏造)は他にもある。」

成実「違う・・・違うんだ!」

小五郎「信じたくないが・・・あの会話を聞いては・・・。」

成実「そんな・・・。」

新一「証拠ならまだあります!」

新一「川島さんが死ぬ直前、必死に抵抗したんでしょう。」

新一「何かを掴んだような痕跡がありました。」

目暮「いや、だから工藤君!」

新一「成実さん、貴方の首元、見せてもらえませんか?」

蘭「あの・・・失礼します・・・。」

成実「・・・!?」

蘭「指の跡!?」

成実「こんなもの知らない!」

新一「その指跡が川島さんのものと一致すれば、決定的でしょう。」

新一「早く取り押さえてください!警部!」

目暮「工藤君・・・だから川島さんは・・・。」

川島「生きているよ。」

新一「!?」

川島「浅井先生により死を偽装され、本土の病院で治療を受けていた。」

新一「バカな!?」

川島「彼は私の命の恩人だ。」

川島「皆さん!あの男が言っていることは嘘っぱちだ!」

川島「私を殺そうとしたのは浅井先生ではない。老人と子供の二人組だ!」

小五郎「老人と子供!?」

川島「浅井先生は私に正体を明かした後、自首を勧めてきた。」

川島「その直後、二人組が私を襲ってきたんだ!」

阿笠「まさかあの男が生きておったとはな・・・。」

光彦「誤算でした。」

阿笠「さてさて、どうしたものか・・・。」

光彦「・・・・・・!」

阿笠「どうしたのかね?」

光彦「彼が来たようです。」

~放送室の扉前~

コナン「はあ・・・はあ・・・。」

光彦「やはり来ましたかコナン君。どうにか入り込めたようですね。」

コナン「どういうトリックでここにいるか知らねえが・・・。」

コナン「警官をみんな眠らせたり、工藤新一の声を出したりできるのは阿笠博士だけだ。」

コナン「怪しいと思ってたがお前ら・・・。」

光彦「ええ、流石にバレますよね。」

コナン「何が目的だ!」

光彦「復讐ですよ。君に対するね。」

コナン「俺に?俺が何をしたって言うんだ!!」

光彦「ああ、今の君には分からないでしょう。」

コナン「?」

光彦「君のせいで苦しい日々を送りました。小学一年生には耐え難いほどの。」

コナン「何の話をしているんだ!」

光彦「僕と博士はね、未来から来たんです。」

光彦「ほんの少し先の未来、僕は毎日君から暴力を振るわれていました。」

光彦「何故こんな仕打ちを受けなければならないのか、不思議でたまらなかった。」

光彦「でも君とは友達だったから、どうしても理由が知りたかった。」

光彦「そして博士に教えてもらったんです。月影島から帰ってきてから、様子がおかしくなったことを。」

光彦「犯人を推理で追い詰めて死なせてしまったという可能性を。」

コナン「俺が・・・犯人を・・・。」

光彦「だから君を救うため、過去へやってきたんです。」

光彦「しかし、途中で考えが変わった。」

光彦「殺人計画を完璧に遂行し、犯人を死なせず、屑は葬り去る。」

光彦「そして君の心は壊れない。」

コナン「言ってることとやってることが全然違うじゃねえか!」

光彦「犯人が中途半端だったんですよ。」

コナン「中途半端?」

光彦「復讐を誓っておきながら、人を救おうとする。」

光彦「川島さんの死を偽装したようにね。彼にはもう殺意なんて無い。」

光彦「それを知ったら腹立たしくて、もう!!」

光彦「こんなポンコツ処分しなきゃならない、と思ったんです。」

光彦「すると何故か、同時に君への憎悪も膨れ上がってきたんです。親愛の念も消えてしまった。」

コナン「光彦・・・何があったんだ・・・。」

光彦「さあ、分かりません。僕にも僕が分からない。」

コナン「・・・・・・。」

光彦「さあ、クライマックスですよ!博士!」

阿笠「ほほほ、新一、覚悟するんじゃ!」チャキ

コナン(拳銃!?)

阿笠「そおれ!!」パン!

コナン「ぐああ!!!」

光彦「くくく、油断してましたか?付き合いの長い博士が自分を撃つわけがない、そう思ってました?」

阿笠「足を撃った。しばらく動けんぞ。」

コナン「何をするつもりだ・・・。」

阿笠「まあ見ておれ・・・。」

阿笠「新一の声で話す最悪のセリフを、特と聞いておくがいい。」

新一「おらあ!変なことするんじゃねえぞ!」

目暮「な、何だ急に!?」

新一「こっちには人質がいるんだ!」

コナン「離せ!離せ!」

蘭「コナン君!」

新一「妙な真似してみろ!このガキの脳天ぶち抜くぞ!」

小五郎「お前こそ妙な真似するんじゃない!」

目暮「要求は何だ!」

新一「浅井成実!今ここで死ね!」

成実「!?」

新一「そうすればガキを解放してやる!」

光彦「ま、解放しませんけどね。」

光彦「工藤新一と江戸川コナンは心中するんです。燃え盛る業火の中でね。」

コナン「業火だと?」

光彦「そ~れ!」ポチ

ドガーン!!

目暮「どうした!?急に燃え出したぞ!!」

刑事「警部!役場に火がついて近づけません!!」

小五郎「あいつ、死ぬ気なのか!?」

新一「おい、死ぬならこれを使いな!」ポイッ

成実(・・・包丁!?)

新一「お前は医者だろ!?子供が死ぬんだぞ、てめえの命ぐらい差し出せ!!」

成実「はあ・・・はあ・・・。」

蘭「やめて、成実先生!」

新一「蘭!!お前はこのガキが死んでもいいんだな!!」

蘭「そんな・・・。」

成実「・・・いいんだ。」

成実「俺はずっと島のみんなを騙していた。父さんの仇を討つために。」

成実「でも駄目だった。俺は半端者だから、人の命を奪うだなんて無理なんだ。」

成実「父さんの無念を晴らすことができなかった・・・。」

成実「ごめん・・・父さん・・・。」

成実「それに最初から・・・計画が終われば死ぬつもりだった・・・。」

成実「最後に人を助けて死ねるんなら・・・俺の人生も・・・。」

成実「少しは意味が・・・あったのかな・・・。」

新一「さあ、その包丁で自分を突き刺せ!!」

蘭「やめてえ!!!」

成実(終わったよ・・・父さん・・・何もかも・・・。)













駐在「我が息子、成実へ。」

成実「!?」

駐在「麻生さんが残した楽譜じゃ。コナン君が解読しておったよ。」

成実「父さんの・・・。」

駐在「楽譜には、こう書いてあるらしい。」

我が息子、成実へ

病気は良くなったか?元気になって走り回るお前を早く見たい。

講演ばかりで構ってやれなかったこと、いつも申し訳ないと思っている。

お見舞いに行ったときはいつも、入院生活を楽しそうに語ってくれた。

将来は医者のピアニストになりたいと言ってくれて、とても嬉しかった。

お前にいつまでも尊敬される父親であり続けたいと思っていたが、謝らなければならないことがある。

私は幼馴染と一緒に、麻薬売買を行っていた。

父さんは悪人で、決してお前に尊敬されるに値する者ではない。

今日幼馴染たちに手を切るよう話してきたが、口封じに殺しに来るだろう。

だからその前に、お前に伝えておきたいことがある。

この先何があっても、これだけは絶対に忘れないでくれ。

どうか幼馴染たちに復讐しようと思わないでくれ。

そんなことをしてはお前の手が血みどろに染まる。

罪にまみれた人生を送るのは、私だけで十分だ。

成実、お前だけはまっとうに生きてくれ。

幸せで溢れた素晴らしい人生を送ってくれ。

父より

成実「・・・父さん・・・。」

阿笠「ええい、何をモタモタしてるんじゃ!早くせんか!!」

光彦「博士!火の勢いが強くなって、このままでは僕らも!」

阿笠「ぐぬぬ!!!」

コナン「・・・逃がすかよ・・・。」

光彦「コナン君、君はここで焼け死んでください!」

阿笠「すまんのう、わしらはこのタイムベルトで時間移動できるんでな、いつでも脱出できるんじゃ!」

コナン「なんだそりゃ・・・。」

阿笠「ではこれにて、バ~イ!!」

光彦「さらばです~!!」

コナン「待て!!」

シュン

コナン「消えちまった・・・。」

コナン「ちくしょう!!」

コナン「ああ・・・足が・・・動かねえ・・・。」

コナン「父さん・・・母さん・・・蘭・・・。」

コナン「駄目だ・・・。」

コナン「もう・・・終わっちまうのか・・・。」

成実「まだ終わっちゃいない!!」

コナン「!?」

成実「よし、まだ生きてるな!!」

コナン「どうして・・・ていうかその手!?」

成実「へへへ、ちょっと火傷しちまった。」

コナン「危険だ・・・ゴホッゴホッ!!」

成実「おいおい、あまり喋るなよ、煙吸い込んじまうぞ。」

コナン「どうして・・・。」

成実「俺は父さんのこと尊敬してるからさ・・・。」

成実「だから父さんに胸張れるよう、まっとうに生きるんだ!!」

成実「捕まってな!窓突き破るぞ!!」

コナン「えっ、ちょっ!?」

成実「うおおぉぉぉらああぁぁぁぁ!!!!!!!」

ドガーン!!!







蘭「・・・君、コナン君!」

コナン「・・・んん・・・。」

蘭「良かった!!」

コナン「蘭姉ちゃん・・・。」

小五郎「おお!目が覚めたか!」

コナン「あれ、成実さんは?」

小五郎「警部殿に連れていかれたよ。今回の事件の重要参考人だからな。」

コナン「そっか・・・。」

小五郎「まあ川島さんが昔のことを含めてすべて話すそうだから、情状酌量の余地は十分あるだろう。」

小五郎「っていうか、今回の事件で加害者として積極的に関わったとも考えにくいしな。」

コナン「あっ、そうだ。放送室にいた人だけど、新一兄ちゃんじゃなかったよ!」

蘭「・・・分かってる。」

コナン「へ?」

蘭「新一は何があっても、人に死ぬよう言ったりしない。絶対に。」

コナン「・・・・・・。」

小五郎「ほら、救急車が来たぞ。お前は早く乗れ。」

コナン「おじさん、僕足を怪我してるんだけど。」

蘭「じゃあ私がおぶって行ってあげる。」

コナン「あ・・・ありがとう。」

コナン「・・・・・・。」

蘭「あら、寝ちゃった?」

~数日後~

コナン(は~あ、しばらく入院か・・・。)

コンコン

コナン「どうぞ~!」

元太「よお!コナン!」

歩美「お見舞いに来たよ!」

コナン「お前らな・・・ここは病院だぞ、静かにしろ。」

光彦「そうですよ、ちゃんとマナーは守らないと。」

コナン「光彦・・・。」

光彦「はい、どうしました?」

コナン「いや、何でもない。」

阿笠「どうじゃ、足の調子はいいかな?」

コナン「ああ博士、もうすっかり良くなったよ。」

阿笠「それは何よりじゃ。」

~数時間後~

歩美「じゃあコナン君、私たちは帰るね。」

光彦「また明日も来ますからね!」

元太「また明日な!」

コナン「おう!」

阿笠「退院したら、またみんなでキャンプにでも行こう。」

コナン「ああ、楽しみにしてるよ。」

コナン「・・・・・・。」

コンコン

コナン「は~い!」

成実「よおっ!」

コナン「成実さん!」

コナン「どうしてここに!?」

成実「何だ、俺がお見舞いに来ちゃ悪いか?」

コナン「そんなことは無いけど・・・。」

成実「俺が助けたガキがどうなったかのか気になってな、無理言って連れてきてもらったんだ。」

コナン「まだ、取り調べは続くの?」

成実「そりゃな、実行犯が別にいるとはいえ、計画を立てたのは俺だ。」

コナン「そっか・・・。」

成実「そう落ち込むな。そこまで重い刑にはならないらしいからさ。」

コナン「・・・・・・。」

成実「・・・・・・。」

コナン「小五郎のおじさんに手紙を出したのってさ、犯行を止めてほしかったから?」

成実「・・・かもしれない。」

コナン「やっぱり・・・。」

成実「でも呼んで正解だったのは毛利小五郎じゃなくて、君の方だったな。」

コナン「僕?」

成実「君がいなければ、父さんの楽譜を見ることもできず、事件が終わった後に死んでいた。」

コナン「・・・・・・。」

成実「だから今日は・・・一言お礼を言いに来たんだ。」

コナン「え・・・。」

成実「ありがとな、小さな探偵さん。」





おしまい

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