上条「メンバーを舐めるなよ」 (92)

注意事項等

・上条さんがメンバーの一員だったら、という再構成

・文章がおかしかったりします

・カップリングは特にありません



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『厄病神』と呼ばれた経験はあるだろうか。

彼は幼少の頃、厄を引き寄せる『厄病神』として扱われていた。

しかし彼の両親は、彼を愛した。自分の子供は厄病神なんかではないと言いながら。

時には両親も怪我をしたし、他人を怪我させる事もあった。

だから彼は思ったのだ。厄病神として扱われるなら、本当の厄病神になれば楽なのではないのかと。

災厄を撒き散らす人間になれば、誰も側に無くなって、誰も傷つくことがなのなるのではないかと。

両親は少しでも不幸体質がよくなるように、誰も不幸体質の事など気にしない事を願って科学の街『学園都市』へと愛息子を預けた。

しかし、彼の「厄病神になりたい」という思いは消えなかった。

あるとき、彼はとある組織へと入った。まだ幼いというのに、初めて人を殺したのは8歳だった。

敵の拠点へあがりこんで、騙して[ピーーー]という役目だった。

楽しいわけではなかった。怖かった。しかし、それ以上に「目標に辿り着ける」と歓喜した。

一人[ピーーー]ことによって誰かが悲しむ。その誰かにとって厄病神とは、殺した人間だ。

だから彼は、殺してきた。名誉も地位も何もいらなかった、ただ誰かの厄病神になりたかった。

だがあるとき、彼は自分の中の矛盾に気付いた。

誰も傷ついてほしくないから、厄病神になろうとしたのに、なるために誰かを傷つけるのでは本末転倒ではないのか。


「だったらこうしよう少年」


「私の部下になれば、無駄な殺しはしなくてすむ」


「私はアレイスター。私がメンバーに斡旋してやる」


そして彼は、命令以外の無駄な殺しはしなくなった。彼は、虐殺魔から殺人鬼へと変わった。

しかし今、気付いた所で、今更戻れる筈はなかった―――


これはそんな不幸な少年の話。

……………………………………………*………………………………………………………



黒光りする拳銃をホルダーへと押しこむと、転がっている死体を蹴飛ばして歩き出した。
統括理事会が行っているプロジェクトを推し進めている研究所を襲撃した組織を壊滅させた所だった。
任務を完了させた事を伝えるため同僚の馬場芳郎へとコールしたが、馬場はどうやら食事中だったらしくラーメンをすする音がきこえてきた。

馬場『任務完了? ああ、分かった。博士に伝えておく』

上条「ああ。……今週のノルマはクリアしたから、今週いっぱいまでは俺は休暇って事でいいのか?」

馬場『さあ? まあ、緊急事態が起これば博士が上条に連絡するだろうね』

上条「そうか。わかった」

電話を切ると、上条は強面の部下へ死体の処理を任せてその場を離れる。
彼が所属しているこの組織は『メンバー』。学園都市の統括理事長、アレイスター=クロウリー直属の暗部だ。
特殊な右手を持つ少年、上条当麻はメンバーの幹部へと身を置いていた。

上条は戦闘で薄汚れたジャケットを裏路地にあるゴミバケツへと投げ捨て、表通りへと出ようとすると女の悲鳴を聞いた。
時刻は十一時を越えており、普通の学生ならばこんな時間に出歩くことはない筈だ。
声がした方向へと足を運んでみると、屈強な体つきをした男が女子中学生を押し倒していた。
見たことのある顔付き。そう、さっき上条が死体処理の命令をした下部組織の一人だ。

部下「あ、えと……」

上条「はぁ……馬場や博士に見つかったら死んでたぞ。とっとと仕事に戻れ」

部下「す、すみませんっ!」

部下が仕事で不始末を起こしたならば、何らかの責任を負うのはその上司、というのが世間一般的な常識だ。
しかし、薄汚れた闇の世界ではその部下を『死』という形で上司が処理する事になるのだ。
上条はまだあの部下が不始末を行っていないと判断したから殺さなかっただけ、普通ならあの部下の人生はあそこで終わっていたのだろう。
上条は暗部にしては優しすぎる。被害を最低限に抑える必要はない、と先日上司から怒られたばかりだった。

「あの……」

と、突然上条は声をかけられた。
声をした方向へと身体を向けると、一人の少女が目に入る。襲われていた少女だ。
まだその顔にはあどけなさが残ってはいるが、体の所々は大人のそれとそう変わりなく、女性と関わりのない上条は少し胸を高鳴らせた。
少女は再び上条へと「あの……」と言うと、上条は少し上擦った声で「はい?」と返答した。

佐天「私、佐天って言います」

上条「あ、ああ。俺は……いや、今は少し訳あって名乗れない」

佐天「そうですか……その、助けてくださってありがとうございます」

上条「いや、あれは俺の……友達だったから。それで、なんでこんな時間に?」

佐天「えーとですね。十一時三十分にここへくると、虹色の蛍がどこかの研究所から出てくるっていう都市伝説がありまして」

上条「都市……伝説? いつもそのくらいの時間にここ通ってるけどそんなの見たこと無いな」

上条「というか、そんなもののために……。兎に角、家に帰ってくれ。この時間は危険だ」

佐天「わかりました。ではこれで……さようなら」

佐天は表通りへと出て、すぐに警備員に保護されていた。
この時間帯なら、補導されるのも当たり前なのだろう。それも中学生だ。この都市の治安はお世辞にも良いとは言えない。
毎日のように、山のような数の人間が死んでいる都市が平和な訳がない。
警備員に挟まれて恐縮している佐天を見えなくなると、上条はそこから数百メートル程のマンションへと帰った。


……………………………………………*………………………………………………………


『アイテム』の仲良しこよしの幹部とは違い、メンバーの幹部同士はかなり無関心だ。
こうやって、月に一度の報告会を暗部御用達のカフェで行うにしても事務的な会話が続くだけでプライベートな話は全く上がってこない。
馬場芳郎はお気に入りのコーヒーを飲みながら、机に並べられた依頼の報告書を一瞥した。

馬場「問題は無いと思いますよ」

博士「そのようだ」

上条「あの、質問が。新しく補充される人員とは一体?」

博士「ああ、ショチトル君の事かね? 既に前回の作戦でも別行動をとっていたよ。予想以上に使える人材で一安心したというところだ」

上条「どのような能力を?」

博士「ショチトル君は無能力者だ。だが、学園都市の超能力とはフォーマットが違う別の力を使っている……のかもしれない」

上条「かもしれない?」

博士「私にも解らないということだよ。いずれ君とて出会う事になるだろう」

博士は散らばった報告書を纏めて鞄へ詰め込むと、白衣のポケットから小銭を取り出して机へ置いた。
馬場も財布から自分が飲み食いした分の料金を机に置くと、足早にカフェを飛び出した。
博士が「何かあるのかね」と怪訝な表情を浮かべながら上条に尋ねたが、上条は「さあ」と答えることしか出来ない。
余計な詮索をしないのが、正しいメンバーの在り方だ。
プライベートは仕事に支障を来さない限り、誰に文句を言われる訳でもないのだから。
会計を済ませると、研究所へと向かう博士とは真反対の方向へと歩き始めた。


上条「……なんだあれ」

ふと、気になった。今日は平日だ。しかもこんな真っ昼間から銀行の防犯シャッターが閉まっているなんてことは無いはずだ。
となると強盗が入り、防犯シャッターが降りたのだろう。
何とかするだろ、と上条が歩き始めた瞬間。防犯シャッターは爆発した。
学園都市の防犯シャッターは確か耐熱性が高いと聞いた事があるが、案外大したことがないのかもしれない。
ゴォォォ、と燃える火の中から現れたのは三人組の男だった。一人の男の手には金が入っているビジネスバッグが握られていた。

「風紀委員ですの!」

と、名門、常盤台中学の制服を着たツインテールの風紀委員が突然現れた。
上条も見たことがない空間移動系の能力者だ。
強盗たちに馬鹿にされたツインテールの風紀委員は自分の身長よりも高い男達を、いとも簡単に圧倒。
そして、車で逃げようとした強盗を超電磁砲こと御坂美琴は、自分の能力名の代名詞であるレールガンを車へとぶつけた。
近々、大きな計画を控えている身からすれば御坂美琴のレールガンが見れたというのは大きな収穫だ。
女子中学生に敗北した銀行強盗達は警備員の護送車へと乗せられた途中、ずっと観ていたのがバレていたのかツインテールの風紀委員が言った。

「危険ですので、今度からは避難するようにしてくださいまし」

上条「ああ。アンタ達の活躍を見てたらついつい見惚れてしまってな」

上条「憧れるよ。そういうの」

「では風紀委員に志願してはいかがですの? それよりも、もうすぐ最終下校時刻も近いので、そろそろお帰りになられてください」

上条「そうだな。またな、ツインテールの風紀委員」

黒子「白井黒子、ですの」

帰ろうと、踵を返すと見知った顔がそこに居た。
数日前に路地裏で会った、黒髪がよく似合う女子中学生。佐天だった。


佐天「あなたは……」

上条「佐天……さん?」





黒子「お知り合い……ですの?」


御坂「いたいたー!佐天さん、黒子ー!………って、誰?」

少ないですが、終わりです

御坂「いたいたー! 佐天さん、黒子ー!………って、誰?」

佐天「この間、私を助けてくれた人です」

御坂「ふーん。名前はなんていうんですか?」

上条「一身上の都合で、名前は名乗れないんだ。ごめんな、超電磁砲」

御坂「なんで私の能力名を?」

上条「一時期、研究所へ在籍していた事があってな。能力開発中のアンタを見たことがあったから」

上条「おっと、悪いな。これから仕事があるからこれで失礼させてもらうよ」

御坂「そうですか。では」

黒子「それでは、さようならですの」

佐天「さようならー」


上条は帰宅途中、タブレット型の端末から書庫を開いて先ほどの四人の個人情報を閲覧していた。
佐天涙子、御坂美琴、初春飾利、白井黒子。
超電磁砲以外はただの一般人で、メンバーに配布されていた危険者リストにも超電磁砲以外にはなかった。
危険者リストというのは計画・作戦時において脅威になる可能性がある人間をリストアップしたもので、E~Aまでのランクがある。
超電磁砲の危険者ランクはC。他の超能力者に比べて低い理由は、超電磁砲が『闇』についての情報を知らなすぎるという点にあるのだ。
メンバーは統括理事長の犬、と言われているだけあって機密情報を閲覧できる端末を使用できたりと他の暗部とは情報収集力が違う。
危険者リストなんてものを作れるのは、好きに書庫へとアクセス出来るのが大きい。

上条「電話? 馬場からか、珍しいな」

タブレット型の端末とは別に、ポケットに入っているスマートフォンにも似た形の携帯端末から着信音が流れていた。
上条はタブレット型の端末をバッグの中に入れて、電話に応答した。

馬場『やあ、上条。仕事だ。どうやら潜入していた査楽がヘマしたようで、こちらの動きがバレたよ』

上条「チッ。確か、木原幻生が推し進めている「何か」を探る……だったか?」

馬場『そう。木原幻生は査楽を捕獲した後に、人体実験用の素材として木原病理へと譲渡しようとしているみたいだ』

馬場『ショチトルとかいう女が補充されたばかりで、幹部クラスが死ぬのはマズい。博士も同じ意向だ』

上条「そうか。査楽ってのはどんなヤツだ? 特徴だけでも教えてくれ」

馬場『君は査楽と会ったことが無かったか。髪型はおかっぱ。身長は高い方ではない。能力は強能力者の空間移動系能力者』

上条「十分だ。俺はここからどう動けばいい?」

馬場『査楽は第十三学区の薬物研究所から、第八学区のAIM拡散力場研究所へと運び出される筈だ』

馬場『上条は第八学区にて、待機。ショチトルとT:GDが護送車を襲撃する手筈になっている』

上条「分かった。端末に研究所の位置を転送していてくれ。すぐ向かう」

電話を切ると、端末に送られてきたマップデータをもとに上条は動き出した。
第八学区は第七学区と隣接しているとはいえ、その研究所までは近くて遠い的な距離にあり電車で移動するには小一時間程度はかかる。
しかしここから車を手配するだけの時間も無いし、残るは無人バスしかなかった。
第八学区は様々な施設がある第七学区に隣接している為か、学校が少なく研究所もない。つまり無人バスの利用者が少ない。
客が乗っていない無人バスへと乗り込むと、無人バスは40km程のスピードで発進した。

上条「これじゃあ一時間はかかっちまうぞ……」

そもそもバスを利用することが少なかった上条は、賭けで無人バスに乗り込んだがもしかすると外れだったのかもしれない。
結局、小一時間ほど時間はかかったが、なんとか辿り着いた。
しかし、上条は少し唖然とした。てっきり重要施設だと思い込んでいたが、どうやらそうでもないらしい。
車椅子を乗る女が一人、居るだけで車一台としてない殺風景な景観がそこにはあった。

上条(もう終わったのか?)

「あのー」

車椅子に乗った女が上条に話しかけていた。女は病院着のような服を着ており、顔の血色は良くはない。
病院から抜け出してきました、なんて言われても信じてしまいそうなほどだ。
笑顔を振りまく女は、車椅子を動かして上条のもとへ近寄った。

上条「あの?」

「あなた、上条当麻さんですよね?」

上条「……アンタ、闇の人間か」

病理「私は木原病理。幻生から空間移動系の実験体を譲渡してくれると聞いたので、ここで護送車を待っています」

上条(もう終わったのか?)

「あのー」

車椅子に乗った女が上条に話しかけていた。女は病院着のような服を着ており、顔の血色は良くはない。
病院から抜け出してきました、なんて言われても信じてしまいそうなほどだ。
笑顔を振りまく女は、車椅子を動かして上条のもとへ近寄った。

上条「あの?」

「あなた、上条当麻さんですよね?」

上条「……アンタ、闇の人間か」

病理「私は木原病理。幻生から空間移動系の実験体を譲渡してくれると聞いたので、ここで護送車を待っています」

上条「そうか。まあ、一応。その空間移動系の能力者は俺たちの仲間だし、くれてやる訳にはいかないけど」

病理「なら、今殺せばいいじゃないですか? 私を」

上条「……アンタは死なないんだろ? 木原病理は諦めを司ると聞いたことがある」

上条「大方、俺がアンタを殺した後、油断した俺を妙な兵器で殺すってベタな算段だ」

病理「まあ、そんな所ですね。それよりも……護送車、来ませんね」


上条の端末が再び着信音を鳴らした。ディスプレイに表示されていたのは『非通知』。
公衆電話かそんな所だろう。
電話に出ると、知らない女の声がきこえてきた。

『作戦は失敗した。護送車はダミー。査楽は今、無人ヘリに乗せられている』

上条「そうか」

『第七学区方面へと向かったから、おそらく違う相手に譲渡する手筈だろう』

『それと、移動用の為に下部組織にバイクを用意させた。乗れるか?」

上条「ああ、問題ない」

『私はお前よりも、第七学区に近い。研究所で待っている』

上条「了解」

電話を切り、例のバイクを待った。下部組織の男が持ってきたバイクは、警備員が車などの移動手段を用いて逃走した場合を想定されて作られたバイクだった。
駆動鎧を着なければならないタイプのバイクではなく、生身の体でも扱える速度へと調整されたものだ。
最高速度320km。息が出来なくなる、という欠点を補う為に専用のヘルメットは用意されているが、それ以外では普通の人間でも扱える。
上条はそんなバイクへと跨り、そして第七学区方面へとバイクを走らせた。

……………………………………………*………………………………………………………



上条「初めまして、ショチトル」

第七学区にある寂れた研究所の前で、ショチトルという女は居た。
上条は笑顔を作ってショチトルと握手を交わしたが、これも形式上なので大した意味は持ち得ない。
メキシコ系の人間だと聞いたが、ショチトルは東洋人顔だ。
国籍が日本ではない、というだけでもしかしたらアジア圏で生まれたのかもしれない。

ショチトル「査楽はこの施設に運びだされた。今すぐに使われるということはないだろうが、一刻を争う」

上条「ああ、分かっているよ」

ショチトル「あの犬型のロボットは、相手が雇った暗部との戦いで大破。私も少し怪我をしてしまい、思うように動けないが……」

上条「ああ、サポートに徹してくれ。一応、拳銃を持っていたほうがいい」

上条「さて、乗り込むか」

ショチトル「ああ」

研究所内では、既に下部組織の人間が乗り込んでおり派手に暴れ回っていた。
しかしこの研究所は学園都市でも大きい部類に入る。暗部組織を大量に雇う金もあるらしく、無名の暗部組織を雇っていた。
『アイテム』などの高位能力者が在籍している有名な暗部組織を雇うよりは、数が多いだけの無名の暗部組織を雇ったほうが安い。
しかし上条が予想外だったのは、スクールが雇われている事だった。
第二位がリーダーの暗部組織のことだが、当然その実力はメンバーを遥かに上回る。
大きめの部屋に出ると、妙な光景を見た。心理定規と呼ばれる女がメンバーの下部組織の死体を積み上げていた。

心理定規「あら……あなたがあの「幻想殺し」?」

上条「……」

心理定規「だったら私の能力は通用しないわね」

ショチトル「おい、この女は一体」

ショチトル「……ッ!?」

ショチトルの様子がおかしい。心理定規というのは相手の心の距離を操作する能力で、決して戦闘型ではない。
この下部組織の男達は、殺し合ったのだろう。
となれば、ショチトルと心理定規の心の距離は操作されて「愛おしい程の存在」となっている。
それで、上条とショチトルの同士討ちを狙っているのだろう。

上条「はぁ」

軽い溜息をつくと、歪な形の刀を強く握ったショチトルの頭に右手を乗せた。
バキンッ、と窓ガラスが割れた時のような甲高い音が響き、ショチトルの様子はもとに戻る。

心理定規「私とあなたの相性は最悪ね。勝ち目はない、か」

垣根「お前のために残してやってたが、こいつらは俺が貰ってもいいか?」

奥の部屋から、メンバーの下部組織の男達の死体を蹴って現れたのは垣根帝督だ。
茶髪の髪に、赤紫系のジャケットの中には白いYシャツという格好をしており、イメージとしてはホストという感じか。

心理定規「お好きにどうぞ」

垣根「……初めまして、俺は垣根帝督。幻想殺し、お前を殺しに来た」

六枚の羽を大きく展開した垣根帝督。メンバーの危険度リストのランクはA。最も警戒すべき相手としてリストアップされた実力者。
上条は幻想殺しと呼ばれる、能力を消し去る右手を持っているが、それでも垣根帝督と相対出来るかどうかはわからない。
垣根は、六枚の羽で空中へと飛ぶと、六枚の羽から数十枚の一枚羽をバサァ、と空中へと散布させた。
一枚羽は雨のように頭上へと降り注ぎ、その一枚羽は爆発していく。一枚一枚では大したことはないが、それが幾千枚になると規模が違う。
右手で爆発を防ぎきる上条だったが、垣根はさらに置い打ちをかけるように紫色のレーザーを射出。
それほど速くないが、空気の波にそって移動しているようで右手をぶつけるのが難しい。
爆発がまだ至る所で起きている為、空気が乱れておりレーザーは不規則に移動するもその標的は上条になるように調整されている。

上条「甘いッ!」

なんとかレーザーに右手の甲をぶつけると、バキン、という甲高い音が鳴りレーザーは散った。
しかし一枚刃が起こした爆発の爆煙が上条達を包み、垣根の姿を目視出来なくなった。

垣根「お前の幻想殺しに対する攻略法はない。だが、反応できる速度じゃなければ十分に攻撃が可能じゃねえか?」

上条(垣根帝督の能力は、未元物質。この世界に存在しない物質や法則を作り出す事ができる能力。相性は悪いか)

垣根「ほら、光速のレーザーだ。お前の心臓を貫くように調整したから、どうやっても逃げれねえぞ」

爆煙の中からでも、その光は見えた。しかし、レーザーは心臓を貫くことはなく再び甲高い音と共に霧散する。
垣根帝督は笑った。
上条以上の相手と相対した事はあるが、ここまで「対策法」を潰されたのは初めてだ。
幻想殺しが持っている力なのか、それとも上条自身の力なのか分からないが、これが『前兆の予感』。
数々の死線によって得た鋭い第六感を生かした、幻想殺しの弱点をカバーする一つの力だ。

垣根「前兆の予感か。光速で射出されるレーザーに反応できたとは思えないが、すげえ力だ」

上条「そうか。正直、俺も超能力者に相対出来ると分かって安心したよ」

垣根「それは違うな。すべて前兆の予感で反応できる訳ではないだろ? それに、多方向からのレーザーならお前は反応できない」

垣根「右手は一つしか無いからだ。まあ、お前を殺す方法なんて山ほどあるが、レーザー関連も強化しておきたいところだから」

垣根「レーザーで焼き殺してやるよ」

六枚の羽を大きく展開した垣根帝督。メンバーの危険度リストのランクはA。最も警戒すべき相手としてリストアップされた実力者。
上条は幻想殺しと呼ばれる、能力を消し去る右手を持っているが、それでも垣根帝督と相対出来るかどうかはわからない。
垣根は、六枚の羽で空中へと飛ぶと、六枚の羽から数十枚の一枚羽をバサァ、と空中へと散布させた。
一枚羽は雨のように頭上へと降り注ぎ、その一枚羽は爆発していく。一枚一枚では大したことはないが、それが幾千枚になると規模が違う。
右手で爆発を防ぎきる上条だったが、垣根はさらに置い打ちをかけるように紫色のレーザーを射出。
それほど速くないが、空気の波にそって移動しているようで右手をぶつけるのが難しい。
爆発がまだ至る所で起きている為、空気が乱れておりレーザーは不規則に移動するもその標的は上条になるように調整されている。

上条「甘いッ!」

なんとかレーザーに右手の甲をぶつけると、バキン、という甲高い音が鳴りレーザーは散った。
しかし一枚刃が起こした爆発の爆煙が上条達を包み、垣根の姿を目視出来なくなった。

垣根「お前の幻想殺しに対する攻略法はない。だが、反応できる速度じゃなければ十分に攻撃が可能じゃねえか?」

上条(垣根帝督の能力は、未元物質。この世界に存在しない物質や法則を作り出す事ができる能力。相性は悪いか)

ブゥゥゥン、と奇妙な音が鳴り響く。冷蔵庫が稼働している時のような音に近い
しかし、多方向に現れた光は突然消え、そして高潮していた垣根の声のトーンが少し低くなった。
垣根の攻撃を遮る形で、心理定規が上司からの命令を伝えたからだ。
それは、撤退命令。垣根帝督と心理定規率いるスクールはもともと少数精鋭だったが、数や兵器で勝るメンバーの下部組織に敗北し、査楽は回収されたらしい。
雇い主は殺害され、スクールの報酬金を払う人間が居なくなったからだ。

垣根「あーあ。ったく使えねえな。じゃあな幻想殺し」

心理定規「願わくば、二度と会いたくないけど」


垣根と心理定規は緊急脱出用のエレベータへ乗り、外へと出た。
二人は回収された査楽の様子を見に行こうと、外へと繋がる廊下を走っていると。
ある老人に出会った。もう七十になるくらいの。
上条はその老人に見覚えがあった。過去にその老人を警護する依頼を受けたことがあるからだ。

木原幻生、今回の依頼のターゲットだった人間だ。

幻生「上条くんか、久し振りだ」

上条「木原幻生……!」

幻生「メンバーに入ったのか。ふむ、そうだ。メンバーを抜けて、私のもとにつかないか。私は君を評価しているんだ」

上条「……」

幻生「別に実験に使おうとかそういうのじゃない。まあ、返答は分かっているが……、それよりも病理君と出会ったようだね」

幻生「今回、唯一の脅威だった君を倒すためにわざと配置しておいたが失敗したようだ」

幻生「うまくいかないものだね。人生というのは」

幻生「君は『幻想御手』というものを知っているかい?」

上条「レベル、アッパー?」

幻生「昔、私の部下だった木山君が作り上げた「レベルをあげる」為の装置だよ」

幻生「アレは扱わない方がいい。後々、厄介なことになるかもね」

上条「おい、それって――」

と、上条が幻生を右手で触ると、幻生はどろりと何かの液体になってしまった。
液体金属のような液体だ。しかしどうなっているのか上条にはまったく理解出来なかった。

ショチトル「……どういうことだ」

上条「わからん。だが、取り敢えず博士に査楽回収完了と伝えたほうがいいだろ」




>>27>>35は無かったことにしてください……

今回は終わりです

生存報告です。
今週末までは忙しく、書ける時間が少ないので遅くなりそうです

生存報告です。
今週末までは忙しく、書ける時間が少ないので遅くなりそうです

すみません、何故か書き込んでしまいました……

……………………………………………*………………………………………………………




査楽回収作戦から四日ほどが過ぎたある日の朝。
カツンカツン、とローファーの音が夢のなかで聞こえてきた。
いや、夢ではなく現実なのかもしれないと、上条は自分が本当に起きているのかと少し判断に迷っていた。
冷たく湿ったコンクリートに置かれた手をどかし、目を擦る。誰かが話しかけている気がするが、朦朧とする意識の上条はうまくききとれていなかった。

上条(……ん?)

トントン、と肩を叩かれている感覚がある。
目を開けた瞬間に入り込んでくる光に目を細めながら、顔を覗きこんでいる少女に驚いてしまった。
つい先日の夕刻、会ったばっかりの少女だった。
左腕には、深緑色を基調とし白色の盾が描かれている腕章……つまり風紀委員の腕章がついている。

黒子「風紀委員ですの。そこでなにをしてらっしゃいますの?」

白井黒子、ツインテールで常盤台中学に通っている風紀委員の少女だ。
他校の制服などに明るくない上条でも、毎年大覇星祭で優勝へと手を伸ばす常盤台中学校の制服くらいは知っている。

上条「白井さんだっけ。朝から大変だな」

黒子「職務ですから。それよりも、ここで何をしていらっしゃいましたの?」

上条「一夜を過ごしただけだよここで」

黒子「そうでしたの。次、このような事をした場合支部で職務質問という事になるので、こういうことは二度と止めてくださいまし」

上条「分かった」


白井黒子は、にっこりと微笑んでその場から消えた。査楽と同じ空間移動系能力者。
査楽は強能力者という話なので、自身をテレポートする事は不可能なのかもしれないが。
空間移動系能力者は大能力者になって初めて、自身をテレポートできると聞いたことがある。
もたれかかっていたビルの壁に腕をついて、立ち上がるとすっかり太陽があがっている朝空を見上げた。
ふと、ビルの屋上に設置されている手摺に誰かが居たように思えた。再び、ビルを見回すと確かに白い何かはかかっている。
しかし、人間かどうかは判断がつかない。

上条「なっ!?」

上条がそう声を出す前に、その白い何かは手摺から、ズルッと落ちてしまった。
落下中、上条の目には確かに白い修道服を着た女の子に見えた。
袖を通していない小汚いジャンパーを放り投げ、落下してくる白い修道女を抱きかかえた。
白いベールに金色の刺繍、そこからは銀色の髪が見えている。顔を覗きこむと、東洋人ではなかった。
外国人、それもヨーロッパ系の人間だろうか。

上条「学園都市に修道院なんかあったっけ?」

覚醒したばかりの頭を働かせているうち、白い修道女は「ん……ん」と小さく声をあげた。
白い修道女は、ゆっくりと目を開けるとゆっくりとその綺麗な唇と動かした。
修道女の口元に耳をやる上条は、素っ頓狂な声をあげる。修道女は「お腹が空いた」と、そう一言だけ上条に言ったのだ。
ポケットからカードケースを取り出し、中に入っているブラックカードを確認した。
地面にヘタリ、と座り目をこすっている修道女に、上条は名前を尋ねる。

上条「名前は?」

インデックス「Index-Librorum-Prohibitorum……インデックスって呼んで欲しいかも」

上条「インデックス……目次?」

怪訝そうな表情を露にした上条だったが、深いことは考えない事にした。
上条はインデックスを抱きかかえようと、右手で修道服を触ると『いつもの感覚と音』がそこにはあった。
咄嗟に右手を引くが、既に上条の幻想殺しは作用している。修道服は紙吹雪のようにバラバラッと、空中へと舞った。
理解できない二人は、顔を見合わせて上条は愛想笑いを浮かべ、インデックスは顔を紅潮させ、朝の学園都市へと悲鳴を轟かせた。
さっきの風紀委員がこの場にいたならば、間違いなく上条は事情聴取を受け、一方的に犯人に仕立てあげられるだろう。
上条がさっきの修道服を破壊してしまったのは、紛れも無い事実なのだが。

上条「どどどどどどどうしよ、そ、そだ! さっきのジャンパーと明日の為に用意しておいたジーパンがあるじゃないか!」

インデックス「なんでもいいから早く着替えさせて欲しいんだよおおお!」

上条「えーと、ジャンパー、ジーパン、Tシャツ、コレでいいよな!?」

上条はこういう状況に慣れていない。腐っても上条は『メンバー』の幹部で、当然下部組織の女からは憧れの的だ。
スキルアウトの女や、下部組織の女からなんどか『一緒に寝よう』的な誘いがあったが上条は全て断っている。
そういう場面に出くわした事も一度や二度ではないため、見慣れているつもりだったのだが……。

インデックス「うー、全部大きいんだよ」

上条「そ、そうだな。俺の家に裁縫道具……は多分あったし、この切れ端を持って帰って縫おう」

インデックス「……それよりもお腹が空いたんだよ」

上条「じゃ、じゃあファミレスでも行くか? それともカフェ?……俺も腹すいてきたし、回転寿司にするか」

学園都市は基本的に、飲食店の種類は多くない。
焼肉屋は大型ショッピングモールや第二十二学区にある円筒型の地下階層くらいしかなかったりする。
逆に、学生がよく利用するファミレスやカフェなどは異常に多く、上条達が向かう回転寿司屋もまた第二十二学区にしかないのだ。
ちなみに第七学区と第二十二学区は隣接しているため、それほどの距離ではない。

上条「じゃあ行くか」

インデックス「スシ、スシ! 初めて食べるんだよ!」

上条と謎の白い修道女、インデックスは第二十二学区へと向かうバス停へと向かって、歩き出した。

今日はここで終わりです……
いつもSSはメモ帳に書き溜めしてから投下するのですが、不幸なことにパソコンがフリーズしてしまいました……。
少ないのはそのためです……(´;ω;`)ウッ…

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