モバP「天才とプール」 (36)
・モバマスSS
・池袋晶葉メイン
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――市民プール
池袋晶葉「よし、実験開始!」
ガシャンガシャン
P(……俺は今、晶葉と一緒にプールにいる)
晶葉「そのまま……飛び込めっ!」ビシッ
ピョンッ
ザバンッ
P(うん。プールにいるんだけど……なんだろう、この気持ち)
バシャバシャバシャ!!
晶葉「ああっ、ウサちゃんロボが溺れている!助けてくれ、P!」アタフタ
P「はいはい」
――――――――――――――――――――
――数時間前
P「暑いな……もう九月なのに……」グデー
P「せっかくのオフだけど……することがないしなぁ……」
prrrr! prrrr!
P「電話だ……ん、晶葉か」ピッ
P「もしもし」
晶葉『も、もしもし……Pよ、今日はオフだったな』
P「そうだけど、どうした?」
晶葉『いや、なんだ、その……ちょっと付き合ってほしいことがあってな』
P「?」
晶葉『とにかく、迎えに来て欲しいのだが……いい?』
P「ああ、分かったよ。少し待っててくれ」
晶葉『そうか……ありがとう』
晶葉『ああ、そうだ。水着も持ってきてくれ。君自身のだぞ』
――晶葉の家
P「もしもし、晶葉?家の前に車停めたぞ」
晶葉『おお、流石は我が助手だな。少し待っててくれ』
P「ん?ああ」
P「……なんか持ってきてる」
ガチャッ
晶葉「やあ、P。後部座席にウサちゃんロボを積ませてくれ」
P「いいけど……って、ウサちゃんロボが浮き輪持ってる」
晶葉「ああ、今度のは水陸両用だぞ!」
P「なるほどな。ちゃんとウサちゃんロボにもシートベルトしとけよ」
晶葉「もちろんだ。では、助手席に失礼する」
晶葉「私が乗っても、助手席か。ふふん」
P「どうした晶葉、楓さんみたいだぞ」
――車中
ブロロロロ……
晶葉「P、そこを左に曲がってくれ」
P「おう、市民プールだろう?」
晶葉「む……察しがいいな」
P「水着持って来いって言ったろ?この方向は海じゃないからな」
晶葉「まあ、そうだが」
P「それに、ウサちゃんロボが浮き輪持ってるし」
晶葉「い、言っておくがウサちゃんロボの耐久テストだからな!」
晶葉「……テストが終わったら、時間が余ってしまうからな。せっかくだからプールを楽しもうではないか」
――市民プール
晶葉「やあ、今日はよろしく頼むよ」
「あら、あなたが晶葉ちゃんね。よろしくね」
晶葉「こっちはじょ……いや、私のプロデューサーだ」
P「どうも、Pです」
「ええ、よろしくお願いします。子供用プールを一時的に貸し切りにしていますので」
晶葉「ああ、助かるよ。ありがとう」
P「受付の人と知り合いだったのか?」
晶葉「いや。電話で貸し切りにしたいと頼んだら、たまたま彼女が私のファンだったそうでな」
晶葉「貸し切りの料金はサービスらしいが……嬉しいものだな」
―――――――――――――――――――――
P(……で、ウサちゃんロボを助けた訳だが)
晶葉「むぅ……流石に水中では武装は必要ないか……」カチャカチャ
P(プールサイドで水着の上に白衣を羽織い、その場でロボをメンテナンスし始める少女)
晶葉「だが……こいつを外せば浮くだろう。それに浮き輪も付いているしな」カチャカチャ
P(……どうなの、この14歳。ってか、武装ってなんだよ)
晶葉「よし、もう一度実験だ」
P「ここでメンテナンスして大丈夫なのか?」
晶葉「防水と湿気対策はばっちりだ。これくらいで壊れなどしない」
P「そうか、凄いな」
晶葉「ははは、そう褒めるな。では行くぞ!」
晶葉「では、実験開始!」
ガシャンガシャン
晶葉「さあ、見せてみろっ!」ビシッ
ピョンッ
ザバンッ
P「おお……浮いてる」
晶葉「はっはっは、ここからが本番だ!」ビシッ
ギュオオオオン!!
晶葉「しっぽをスクリューに換装したから、そこそこの速さで水面を……」
バシャンッ!!
晶葉「ああっ、倒れてしまった!P、どうしよう、助けてくれ!」オロオロ
P「はいはい」
晶葉「ふむ……スクリューの位置が悪かったか。重心をもっと気にしなくてはいけないな……」
P「この熱意は凄いんだけどなー」
晶葉「なにか言ったか?」
P「いえいえ何も」
晶葉「……そうだ、P。水中用ウサちゃんロボには何が足りないと思う?」
P「水中との親和性」
晶葉「ふむ。つまり、水中には水中用のロボを作った方がいい、ということだな?」
P「ああ、そうだな」
晶葉「……分かっていないな。そんなものはとうに先人たちが道を開いているんだ」
P「分かっているよ。誰かの通った道よりも、晶葉は自分で道を開くほうが似合っている」
P「何より晶葉は、ロボット技術者とアイドルの道を進んでいるんだからな」
P「天才ロボな少女アイドルだなんて、晶葉以外にいないぞ?」
晶葉「むっ……わ、分かっているならよろしい」
P「それで、水中用ウサちゃんロボに足りないものだろう?」
晶葉「ああ、そうだ。ちゃんとした君の意見を聞きたい」
P「頭が水中から出てるし水面の部分は浮き輪があるんだから、無理してスクリューは付けなくていいんじゃないか」
晶葉「ふむ……だが、それでは水中での機動性が落ちてしまう」
P「そうだな、浮き輪にスクリューとか」
晶葉「なるほど……それもいいな。考えておこう」
P「いっそのこと、水中じゃなくて水上用にすりゃいいんじゃないか?」
晶葉「水上用?」
P「推進装置付きのサーフィンボードみたいなのに、防水のウサちゃんロボを乗っけて……」
晶葉「それだ!やはり君は素晴らしい助手だな……!!」
P「なみのりウサちゃんロボ……って、それでいいのかよ」
晶葉「しかし……水面を移動できないのでは、この先の実験はできないな……」
P「どうする?一度帰って直してくるか?」
晶葉「いや、やめておくよ。熱中してしまいそうだからな」
P「そうかい」
晶葉「せっかくのオフなんだ、次にオフを合わせられるとも限らん。それに……」
P「それに?」
晶葉「……せっかく、二人で来たんだから……な、何を言わせるんだ!」
晶葉「ふん、もういい!私はウサちゃんロボを片付けてくる!Pは泳ぐ準備でもしているがいい!」
P「はいはい」
晶葉「P、準備ができたぞ」
P「……そうか、やっぱりゴーグルなんだな」
晶葉「ああ、これは度入りのゴーグルだが……どうした?こんな時でも眼鏡だと思ったのか?」
P「……流石に眼鏡では泳げないよな」
晶葉「そうだな。流石の私でも、水中ともあれば眼鏡は外すさ」
P「だよな。水中なら誰だって眼鏡は外すよな」
晶葉「どうしたPよ?何か思い当たる節でも……ああ」
P「どう思う?」
晶葉「……外さないんじゃないか?」
P「まさか」
晶葉「いや、有り得ると思うぞ」
P「そういや、晶葉はどれくらい泳げるんだ?」
晶葉「……それを私に聞くのか?」
P「もちろん」
晶葉「……溺れない程度には、だな」
P「そうか。まあ、俺もそこまで泳げるわけじゃないけどな」
晶葉「こういうのは楽しむのが一番いいんだ。泳げなくても泳げないなりに楽しみはある」
P「そうだな。……俺としては泳げる方が、来年困らないんだがなぁ」
晶葉「ん?」
P「いや、なんでもないさ」
晶葉「……いいだろう。ではPが教えてくれ」
P「え?」
晶葉「私が泳げるようになれば、来年困らずに済むんだろう?なら君が泳ぎを教えてくれ」
晶葉「何に困らないのかはわからないが……その方が君にとっても私にとっても、都合がよさそうだしな」
P「そう、そうやって両手を交互に出して……」
晶葉「……ぷはぁ……P、息が続かないんだが」
P「息継ぎができるようになると、もっと長く泳げるぞ」
晶葉「難しいな……どうすれば上手くできるんだ?」
P「腕を上げる時にこう、上半身を捻ってだな……」
晶葉「ふむ、ではもう一度やってみよう」
晶葉「……ぷはぁ、はぁ、はぁ……どうだ、P?」
P「ああ、さっきよりもよくなった。上達したな」
晶葉「ふふん、私は天才だからな……」
P「……少し休もうか。疲れが見えるぞ」
晶葉「もう少し練習を……いや、そうしよう」
晶葉「Pは私のことをよく見ているんだな」
P「大事なうちのアイドルのことだ、そりゃあ常々気にかけているよ」
晶葉「そういうことではなくてだな……」
P「なんだ、そういう意味を込めたほうがよかったか?」
晶葉「な、何を言っているんだ!なにを馬鹿なことを……」カァァァ
P「よしよし」ナデナデ
晶葉「私は子供じゃないぞっ!」
P「14歳は子供だ、子供」
P「それじゃ、そろそろ再開するか」
晶葉「うむ、よろしく頼む」
P「……うん、いい泳ぎになったな。息継ぎもさっきよりできてる」
晶葉「そうか?……それは、よかった」
P「そうだ、25メートル泳いでみるか」
晶葉「……へ?」
P「いや、これだけできるんだから行けるんじゃないか?」
晶葉「……分かった。やってみよう」
晶葉「P、もし私が溺れたら……」
P「安心しろ、俺が付いているからな」
晶葉「……頼むぞ」
晶葉「……では、いくぞ」
P「おう、ゆっくりでいいからな」
スイー……スイー……
P(うんうん、上手に泳げている。少々ぎこちないが及第点だろう)
P「いいぞ、もう少しだ!」
パシッ
晶葉「はぁ……はぁ……どうだ、P。泳ぎ切ったぞ」ゼーハー
P「よくやったな、晶葉!」
晶葉「ふふん……この天才に不可能など――っ」
P「――晶葉っ!!」
バシャン
晶葉「……」
晶葉「……ん、あれ……」パチッ
P「晶葉!大丈夫か!?」
晶葉「P……わたし、一体……?」
P「……晶葉が泳ぎ切った直後に、足を攣ったみたいに溺れだしたんだ」
「それで、慌ててプロデューサーさんが事務室に運んできてくれたんですよ」
晶葉「そう、だったのか……」
P「すまない、晶葉……俺が無茶をさせたばっかりに……!」
晶葉「……やめてくれ、P。君が謝ることじゃない。泳ごうとしたのは私が進んでやったことなんだから」
P「だが……!」
晶葉「……分かった、今はこの話はやめにしよう。収集がつかん」
P「……そうだな」
「でも、晶葉ちゃんが無事でよかったですね」
P「……助けるのに必死だったので」
晶葉「……ふふん、これくらいできないと私の助手は務まらん」
P「ハードル高いな」
晶葉「なに、ただの冗談さ。君が凄かっただけのことだ……ありがとう、P」
「ええ、素早い救護に見事な人工呼吸でした」
晶葉「……なんだって?」
P「……仮にも晶葉はアイドルですので、そういうご冗談はちょっと」
「失礼いたしました……ふふっ」
晶葉「な、なんだ……冗談だったのか」ボソッ
P「単に運が良かっただけでしょう。酸欠で危険な状態になってもおかしくなかったはずです」
「救護が早かったのが功を奏しましたね。プロデューサーさんは、本当にアイドルのことをよく見ているんですねぇ」
P「……ただ必死だっただけですよ」
晶葉「P……」
晶葉「私自身が無事でよかったのだが……」
晶葉「私がここで迷惑をかけてしまったことには変わりないからな……おい、P」
P「どうした?」
晶葉「油性ペンはあるか」
P「もちろん」スッ
晶葉「ちょっと待ってろ……」
キュッキュッキュッ
晶葉「……これでよし」
「それは……さっきのウサちゃんロボですか?」
晶葉「ああ、裏にサインも付けておいた。事務室にでも飾ってあげてくれ」
「ですが……」
晶葉「……大切な、ファンにも、プロデューサーにも迷惑をかけてしまったからな」
晶葉「こんな事しかできないが……特別なファンサービスのひとつだと思ってくれ。それに……」
P「それに?」
晶葉「彼がここに居てくれると……水難事故から皆を守ってくれそうだからな」
「……ええ、きっと守ってくれますよ」
「この子にはこんなに心優しい、お母さんがいるんですから」
晶葉「なっ、なにを言って……」カァァァ
P「ははは。そうだな」ナデナデ
晶葉「な、撫でるんじゃない!」
晶葉「かっ、帰るぞP!……ありがとう、また、実験に来るよ」
「ええ、いつでもどうぞ。できれば空いている時に」
――車中
ブロロロロ……
晶葉「……改めて言うが、本当にありがとう、P」
P「どうした、急に」
晶葉「いや……泳ぎ切った後、私は溺れて気を失っていただろう?」
P「ああ、そうだな……」
晶葉「夢の様なものを少しだけ感じたのだが……誰かの温かい手を感じたよ」
P「……そうか」
晶葉「誰だったのかは……分からないがな」
P「ははは、誰だろうな」
晶葉「先程、少し話を聞いたが……私が気を失っている間、ずっと手を握っていたそうじゃないか」
P「……それ、聞いたのかよ」
晶葉「ああ……ありがとう、私を助けてくれて。君には感謝しきれないよ」
P「よせ、俺が照れる」
晶葉「ふん、いつものお返しだ」
晶葉「しかし、私がウサちゃんロボの親というのもな……」
P「事実そうだけどな」
晶葉「まあ、確かに製作者は親だといえるだろう」
P「そしたら、俺はウサちゃんロボの……」
晶葉「……はっ!?な、何を考えているんだ、P!!」カァァァ
P「なんだよ、親の上司的なところかなーとか考えていたのに」
晶葉「嘘をつけ!君だって製作に関わっていただろう!!」
P「材料の買い出しや最後のネジ止めを、製作と言うのならな」
P「それより、晶葉は何を想像したんだ?」
晶葉「う、うるさい!運転に集中しろっ!!」
晶葉「……最後のネジ止めは、Pにしかできないんだぞ」
晶葉「だって……共同製作、なんだから」ボソッ
P「おっ、嬉しいねぇ」
晶葉「き、聞いてたのか!?わ、忘れろ忘れろっ!!えーと、記憶を消す光線銃はどこだ……っ!」ガサゴソ
P「ははは……流石にそれはやめてくれ」
P「……そういえばウサちゃんロボ、よかったのか?」
晶葉「ああ。きっと彼も喜んでいるだろう」
晶葉「……それに、浮き輪を外せばあのウサちゃんロボは泳げるからな。溺れた子供も助けられるぞ」
P「……え?」
晶葉「浮き輪があったほうが、可愛いだろう?」
P「確かにそうだが」
晶葉「ただ、浮き輪ではそのまま泳ぐのには適さない浮力が生まれてしまうからな。他の推進手段を考えていたんだ」
P「なるほどな。……浮き輪、いらないだろ」
晶葉「むぅ、浮き輪の良さがわからんのか」
P「さっぱり」
晶葉「……まあいい。浮き輪があっても泳げるように、これからさらに考えなくてはならんな。君も付き合ってくれ」
P「そうだな、俺で良ければ……」
P「……ははは。そうか、そうだな」
晶葉「どうした?」
P「晶葉……その研究、ちゃんと俺にも手伝わせてくれよ?」
晶葉「ん?無論だ、今更何を――」
P「――世界広しといえど、俺以外に晶葉の助手は務まらんからな」
晶葉「……ふん、今更何を言っている」
晶葉「当たり前だ、P!君のポジションは、常に私の横だろう?」
P「……そうだな、勿論だ。それくらい、お互い言うまでもなく分かっているしな」
晶葉「ふふん、それでいい。私とPの歯車が噛み合えば、不可能なことなどないのだからな!」
晶葉「……それでだが、なみのりウサちゃんロボも並行して作ろうと思う。力を貸してくれよ?」
P「本当に作るのか」
晶葉「ああ、姿勢制御が難しいだろうが……その方が可愛いだろうからな」
P「……どうして可愛さ重視なんだ」
晶葉「……そうだ、ひとつ忘れていたよ」
P「どうした?」
晶葉「先程の話だが……私が溺れた原因は自分にある、と言ったな」
P「……ああ」
晶葉「なあに、責任を取れというだけの話だ。安心したまえ」
P「責任……責任ねぇ」
晶葉「……勘違いするなよ?」
P「当たり前だ」
晶葉「むぅ……それは、それで……まあいい」
晶葉「また、こうやって……二人でどこかに出かけよう。だから、その……」
晶葉「……ふふっ、そうだな」
晶葉「次もこうして、私の隣にいてくれよ?」
おわり
晶葉ちゃんとプールに行きたかった。
それでは、また。
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