ダークエルフの蜂蜜味な日常。 (53)


これは自称無気力な男と、性格が面倒くさいダークエルフの

蜂蜜味のする物語。


ダークエルフ「私と戦え!!」


男「やだ」


だと思う。

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雲なんてかけらもない本日の天気は快晴。
日輪降臨。暖かい日差しが俺達を照らしている。


ダークエルフ「男、私と戦え!!」



そして彼女の心も晴れ模様。対する俺は......


男「......やだ」


限りなく、どんよりとした曇り空。


ダークエルフ「いいから勝負しろ!!」


男「いやだから面倒だって......」


そんな俺の天気なんて彼女は知ったこっちゃないと
吠えんばかりに、その端正のとれた褐色の身体を戦闘体勢へと移らせる。


男「えぇ......なんでそんなにやる気なの?」


しかし、俺は彼女の一連の行動に疑問符を浮かべながらも
堕落した四肢を戦闘体勢に移らすことはせずに、草原へと贅沢に身を投げる。


以降 ダークエルフ→ダークで進行。


ダーク「寝るな!!」


男「寝ていない。日光浴だ」


ダーク「無駄口を叩くな。はやく私と戦え!!」


男「断る」


ダーク「......く」


男「ダーク。俺なんかに構ってないで、さっさと帰れ」


ダーク「な......」



彼女の声音から、俺が放った言葉はどうやらダークの
心に陰を作ったようだ。


ダーク「なぜ、戦ってくれないんだ?」


男「俺にはお前と戦う理由がない」


ダーク「私にはある!!」


ダーク「だから......」


彼女の、俺と戦いたいという理由。それは俺も知っている。
理由を知っているから、彼女がここまで必死になることも理解している。


男「......はぁ、分かった」


男「戦ってやるよ」


だから非常に疲れることだが、俺は堕落した四肢を覚醒させ、立ち上がる。


ダーク「やっとやる気になったか!!」


俺がやる気になったからか、彼女の頬は喜びに形を変えていた。
いつものツンケンとした顔はどこへやら。


さらに、彼女は容姿が整っている。一度その美貌が花開けば
誰が見ても麗しいと溜息をするほどだ。だがそんな顔は滅多に見れない。
なぜならいつもの彼女は無愛想でとげとげしている性格だからだ。

しかし今、そんな滅多にお目にかかれない
花開いた表情で彼女は俺を見つめる。


男「まったく。負けたらさっさと家に帰れよ」


ダーク「じゃあ、勝ったら隣にいていいんだな?」


男「ああ、だが勝てればなの話しだがな」


そして彼女同様。俺も戦闘体勢へと移る。

互いに戦闘体勢に移ったことで次第に周りの空気が
緊張感を漂わせはじめてきた。


ダーク「今日こそは、負けない!!」

男「それ訊いたの......20回目だな」


ダーク「ふ、20回? 残念......」シュ!!


言葉を置き去りにし、彼女は姿を消す。


男「(はやい......!!)」


先に動いたのは彼女だった。

刹那、男も自身の身体に存在する
全ての感覚神経を総動員。ダークの攻撃に警戒。


一つ瞬き。

男「(......後ろ!!)」ブン!!


男はダークの気配は感じ、後ろへと拳を振るう。
しかし、それは空を切っただけだった。


さらにこの事実はダークに隙をさらしたことになる。


ダーク「ふふ、上手く釣れたな」グワ!!


男「く!!」


ダークはその隙を見逃さない。
およそ、その艶めく腕からは想像できないほどの
重厚な威圧感を秘めた拳が、男の背後から襲いかかる。

ダーク「今日で21回目だ!!」


男「......!!!」


勝った!! ダークは男に拳を叩きつける
直前に勝利を確信。


この攻撃は当たった。これは避けられない。
そしてエルフが得意とする精霊術で攻撃力を強化している。
負ける要素がまるで見当たらなかった。


男の、罠に獲物が掛かった時のような。
そんな嬉しそうな表情を見るまでは。


スカ!! 


ダーク「残像!?」


男「ご名答~」


ダーク「後ろ!! しまっ......くぅ!?」

ダーク「(う、うごけない......)」

ガシッ!!


男「おっとあんまり動くなよ。疲れるからこの技」


ダーク「く、くそ!!」


勝利を確信していたダークの表情は
一気に消えうせた。


男「はい、俺の勝ち~」


男のほほんと自身の勝利を口にする。
そしてダークの拘束を解く。


ダーク「あ......ふ!!」


男「おいおい、もう勝敗はついたろ?」


拘束を解かれるやダークは男へと殴りかかるが
男に殴る腕を掴まれてしまい、失敗。
また、すぐに男はダークの腕を解放したが
今度はダークも攻撃しようとは考えなかった。

ダークは自身の21回目の敗北に深く息をついた。


ダーク「また、負けたか......」


男「ああ、お前は負けた。だから今日は家に帰れ」


ダーク「......ああ」


勝った方の言うことを聞く。二人が戦う前に決めたことだ。
そしてダークは男に促され踵を返す。

男「あ、ちょっとまて」


ダーク「なんだ?」

呼び止められたことに振り返り、疑問符を浮かべるダーク。

男「努力賞だ」

そう言い放ち、男は疑問を抱いているダークの頭を撫でる。
それに合わせてダークの銀色の髪が踊った。

ダーク「な!?」

すると彼女の頬はたちまち赤みを帯びた。
それでもかまわず男はダークの頭を撫でる。


男「よしよし前より強くなったな」


ダーク「慰めは......いらない」


男「慰め? 違うよお前を評価しているんだ」


男「頑張ってるな」


ダーク「......ふん」


男の言葉にダークは鼻をならしながらも満更でもない様子。

それもそのはず......なぜならダークは


これ以上ないくらいに男にベタ惚れしているからだ。

休憩。


ダーク「いつになればお前に勝てるんだろうな......」


男「さぁな、お前も難儀だな」


ダーク「お前が勝負に勝ったら恋仲にしてくれると言ったんだ」


ダーク「責任とれ」


男「だって本気にするとは思わなかったし」


ダーク「私は本気だ」


男「うぇ、面倒くさい」


ダーク「く.......そんなことを言うな」


男「俺、基本無気力だからさ」


ダーク「普通の男性なら、私が誘えば喜んでついてくるんだがな......」


男「たしかにそうだな」


男「お前くらい美人なら、いくらでも相手はいるだろ」


男「というわけで、こんな無気力でヒモの雰囲気を
  漂わせる俺なんかはほっといて......」


ダーク「諦めんぞ」


男「え、ええー」


ダーク「エルフという種族はな、一度惚れたら
    その惚れた相手を死ぬまで想う」


男「......うは、何て重い種族なんだ」


ダーク「私はお前を必ず負かして、嫁にしてもらうからな!!」


男「......やだ」


ダーク「やだ言うな」


男「とにかく今日は帰れ」


ダーク「ふ、そうだな。今日のところはこれくらいにしてやろう」


男「負けたくせに清々しい顔してるな」


ダーク「好きな人に褒めてもらえたらこうもなる」


男「......そうか」


ダーク「そうだ......じゃあな」


~~~~~~~~~~~~~~


男「......はぁ、眠い」


男はダークが去ったのを視認した後、草原に身をたおす。


男「(なんか変な奴に捕まったな)」


男は苦笑のような表情をしながら、彼女のことを考えた。

男「どうしてこうなったんだろな......」

ふと口からついた言葉は草木をなびかせる風とともに
いずこかへ飛んでいき、案の定答えるものはいない。

男「(はぁ、エルフなんて助けるもんじゃなかったか?)」


事の始まりは数ヶ月前に遡る。


それは男がエルフの住む地域へと足を踏み入れたときだ。


一人のエルフが魔物に襲われていた。


男は見捨てるのも人道的に許せなかったので助ける。


そして助けたエルフは、21回ほど俺に
プロポーズしてくるという結果になった。


~~~~~~~~~~~~~~


~酒場~


「もうね、そういうときは嫁に貰えばいいんですよ」


男「マスター、俺真剣なんだか......」


マスター「私も真剣に君に助言しているのですが?」


男「えぇ......一歩間違えたら投げやりな答えですけど?」


マスター「それは君の感性が少し偏っているだけですよ」


男「原因が全部俺に降りかかった!?」


マスター「そうでしょう? 君が彼女を貰えば全て解決」


男「......でもなぁ、それはちょっと」


マスター「まったく......いつまで引きずっているんですか君は」


マスター「まだ女さんのことを想っているんですか?」


男「............かもな」


マスター「もう彼女はいませんよ」


男「分かってるよ」


マスター「そろそろ、いいじゃないですか」


男「だとしても俺は、こんな半端な気持ちで
  ダークと付き合ってはいけないと思うんだ」


マスター「据え膳食わねば男の恥ですよ?」


男「てか俺に言う前にマスターも相手見つけろや」


マスター「は、それなら心配ないですよ」パチン


にゃーん


男「......猫かよ」


マスター「名前はレディです」


男「そのまんまかい」


~~~~~~~~~~~~~~

けっこう前にダークエルフもの書いてて落としちゃったことないか?


~夜道~

男「たく、マスターめ好きほうだい言いやがって」スタスタ


男「俺だって未練がましい奴だって思ってるよ」スタスタ


男「はぁ......帰って寝よう」


~~~~~~~~~~~~~~


~男の家~


男「ただいま~」


シーン


男「まぁ......誰もいないから当然か」


コト


男「ん?」


にゃーん


男「あれ、お前マスターの猫......」


ふにゃーん カサ


男「なんだそれ、紙?」ペラ


~ 男君へ、突然だが君に頼みがある ~  

  明日また酒場へ来てくれ。 マスターより


男「頼み......か」


男「面倒だがマスターの頼みならしゃあないか」


にゃーん


男「おう、お前の名前レディだったよな?」


男「マスターに分かったって伝えておいてくれ」


ふにゃーん トタタタタ


男「......ふぅ、なら今日はもう寝るか」


男「ふぁ......」


~~~~~~~~~~~~~~


~酒場~

にゃーん


マスター「ああ、レディお疲れさまです」


ふにゃーん


マスター「ええ、おお!! そうですか。分かりましたよ」


マスター「明日、男君がくるそうです」


???「本当か!?」


マスター「ええ、レディがそう言っています」


にゃんごろ


???「しかし、あの面倒くさがりな男がアッサリと......」


マスター「まあ、私と彼は付き合いが長いのでね......」


???「そうなのか、なら男の話しなども訊かせてはくれるか?」


マスター「もちろん喜んで」


???「!! ありがとうマスター」


マスター「いえいえ、こちらこそ応援してますよ」


マスター「ダークエルフさん」


ダーク「ああ!! 分かった!!」


ふにゃーん


~~~~~~~~~~~~~~

~翌日~


男「......」


マスター「いや~、来てくれて嬉しいよ男君。実は君に頼みがあってね」


男「その頼みごとと言うのは、マスターの隣にいるダークエルフ
  と、もしかしたりしての関係がありますか?」


ダーク「......」モジモジ


マスター「ああ、そうだよ男君。君への頼みごとそれは......」


マスター「彼女のお世話だ!!」


ダーク「よ、よろしくな男?」


男「すいません、辞退します」


ダーク「はやい!?」


マスター「断るのが早すぎるよ男君」


男「面倒くさいです」


マスター「そんな感情的な理由で私の頼みを断るのかい?」


男「ぅ......いや、その」


マスター「こんなに可憐な女の子と住めと言っているんです」


マスター「悪くないですよ?」


男「マスターそれは間違いです。
  彼女は大木を粉砕するくらいの攻撃力は持っています」


マスター「話しをそらしてはいけない」


男「......でも俺でなくても......」


ダーク「私がお前がいいと言った」


男「......え」


ダーク「実はな、私は生まれてから一度たりとも家事
    なんてものはしてこなかった」


男「......つ、つまり」


マスター「彼女の両親にも頼まれてね。このままじゃ嫁の貰い手が
     ないと言われてね」


マスター「君の家で花嫁修行することに決定したんだ」


男「え!? もう決定してるんですか......」


ダーク「よろしくな男」


男「............うっそ」


マスター「もちろん拒否権はなし」ニコ


今日はここまで。
>>24 ありますよ。



男「......はぁ、分かりました」


男「そこまで言うなら、引き受けますよ」


ダーク「!!」


マスター「うん、さすがは男君だ!!」


男「まぁ非常に面倒くさいですが......」チラ


ダーク「せ、精一杯努力する!!」グ!!


こうして男とダークの名ばかりの花嫁修行が始まった。


マスター「ちなみに依頼達成報酬は、見目麗しいダークエルフです」ニコ


ダーク「い、いつでも貰っていいから......な?」


男「最終的にそれが本命ですよね?」


マスター「それは昨日の夜言ったはずだよ」


男「............おせっかいですね」


マスター「そうかもしれないね」


マスター「さて、私は消えることにします
     あとは二人のお好きなように」


マスター「ダークさん、頑張ってくださいね」


ダーク「ああ、頑張るよ」


男「今更だけど、マスターと知り合いだったんだね。ダーク」


ダーク「まぁな」


~~~~~~~~~~~~~~


男「うし、真に面倒なことだがマスターの頼みだ。
  家事なりなんなりを叩き込んでやろう」


ダーク「分かった!!」


男「というわけで......最初は」


男「薪割りでもしてもらおうかな?」


ダーク「了解だ」


~~~~~~~~~~~~~~


男「いいか、俺の家の全ては薪がないと始まらん」


ダーク「つまり......薪無くして家計は成り立たないということか」


男「そうだ、だから安易にお前に言ったこの薪割り」ペンペン


薪「」


男「実は滅茶苦茶大切な家事の一つだ」


ダーク「む......」


ダーク「だが、それは私が選んだことだ」


ダーク「男、最初は迷惑をかけるかもしれないが......」


ダーク「よろしく頼む」


男「............ふむ」


ダーク「......」


男「(その真剣な目、本気なんだな......)」


男「はぁ......嬉しいのか悲しいのか分からないな」


ダーク「え?」


男「いや、なんでもない。うし、薪割りするぞ」


ダーク「お、おお。分かった」チラ


薪「」


ダーク「あれを割ればいいんだな」


ダーク「よし!!」スゥ


男「え、なに構えてん......」


ダーク「壊すのは得意だ!!」グワン!! 


ズガァァァン!!!


男「............」


粉「」


ダーク「ふぅー......よし!!」


ダーク「男、どんどん薪を持ってこい」


男「いや、まてよ」ペシ


ダーク「いた!?」


男「俺何て言った? 粉にしろなんて、一言も言ってないぞ」


ダーク「だって......」


男「初めて見たわ素手で薪を粉にする奴」


ダーク「むぅ、私は精一杯努力したぞ。あの薪が貧弱なんだ」


男「なんだろ、お前本当に何もしてこなかったんだな。家事」


ダーク「だからそう最初に言っただろ......」


ダーク「す、すまん......悪気はないんだ」


男「逆に悪気あったら追い出してるよ」


ダーク「ほ、本当だ!! 大体男も知ってるだろ?」


ダーク「私達エルフは白と黒。二つのエルフに別れている」


ダーク「黒エルフ。私達は外部の敵からエルフの里を守る役割」


ダーク「対する白エルフは里のなかで作物を育てる役割を担っている」


ダーク「だ、だから家事も白エルフがしてくれて......」


男「だとしても、お前は頭一つ抜けてるよ」


男「まったく、これじゃあ随分かかりそうだ......」


ダーク「わ、わるい......」


男「俺に申し訳ないと思うなら態度で示せ」


ダーク「!! ああ!!」

今日は終わり。
>>1が考えてるのはプラトニックな蜂蜜だから
多分みんなが考えてる展開はないかもしれない。
すんません。

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