勇者「なんだろう、この胸の高鳴り」(410)
相棒「高鳴りってレベル通り越してるよ。あれからずっと心臓バクバクしてる」
勇者「心臓ってあれだろ?嘘かホントか知らないけど、一生の鼓動数決まってんだろ?本当なら俺達生き急いでるよな」
相棒「あー、確かに。生き急いでる生き急いでる」
勇者「思考もおかしくないか?俺素面に見えるだろうけど、頭はほぼあの時のお姉さんでいっぱいだぜ」
相棒「うわぁ、私もだよ。こっちもあの時のお兄さんの事でいっぱい。……これじゃ生活に支障が出ちゃうよ」
勇者「困ったな……似た者同士だとは思ってたけど、」
相棒「まさか同時に同じ症状になるなんてね」
勇者「お互いフォロー出来ないなんてな。すまん相棒」
相棒「いやいや、私こそ。ごめん勇者」
勇者「…………」
相棒「…………」
勇者「俺達……どうなっちゃうんだろう」
相棒「……病気だったらどうしよう」
勇者「……死んじまうのか俺達」
相棒「戦いの中で死ぬんだとばかり思ってた」
勇者「それがこんな最期か……」
勇者「……死にたくないな」
相棒「……死にたくないよ」
通りすがりの村人「!!!」ギョッ
通りす略村人(何かにおうと思ったら、魔物の死体がこんなに、)
通略村人(一面真っ赤じゃんか怖っ!!--ってあれ?中心で何か動いてる……人影、二つ?)ビクッ
略村人(たった二人でこれだけの魔物を……怖っ!!しかもあの二人全身血まみれじゃんさらに怖っ!!)
村人「あ、でも……アレは……とりあえず村に戻って報告だ、)タタタッ
勇者「……危ない危ない、まだ残ってたかと思って、石投げようとしちゃった」
相棒「わざわざ石拾ったのはそのためかー」
相棒「こんな所に一人ってことは、近くに村でもあるんじゃないのかな」
勇者「村かー……、とりあえず水浴びしたいひとー」
相棒「はーい」
山間の小さな村。
村人「大変だー!!魔物が!これ山の魔物ほぼ全部狩られたんじゃね?ってぐらいの数の魔物が死んでたぞー!!」
村人A「ななななんだってー!!」
村人B「詳しく話せ。何で死んでたんだ?食中毒か?」
村人C「食中毒って……諦め悪いな、毒餌は試して全く効果なかったじゃねえか」
村人B「……せっかく夜なべして作った俺特製毒餌が全く効果無しとか、どんだけショックだったと思ってんだよ」
村人C「……なんかごめん」
村人「お前はよく頑張ったよ。相性の問題だったんだよ」
村人B「……慰めが心にしみるぜ……」
村人A「………………、」
村人A「ごほん。あー、で?山で何を見たって?」
村人「あ、そうそう。話を戻してと」
村人「とりあえずめっちゃ死んでた。もう真っ赤。一面真っ赤。ぐちゃぐちゃで真っ赤。目玉出てるわ内臓出てるわ色々剥き出しでそこはかとなくグロい感じ」
村人「俺今日うなされるかもしれない。アレ夢に出そう。ぐちゃぐちゃ魔物が迫ってくる感じで」
村人A「」フラッ
村人C「やめろよAはグロ系の話駄目なんだよ」
村人B「もっとオブラートに包んでグロから気をそらせるような話題と併せて話せよ」
村人「難しいこと言うなお前ら……はっ!待てよ、あるわ気をそらせそうな話題!おっぱいだ!おっぱいやばかった!」
村人A「詳しく」キリッ
村人B「お、復活した」
村人C「最低だな」
村人「魔物をぐちゃぐちゃにしたの……多分旅人かなんかだと思うんだけど、二人組で、その内の一人がもうおっぱいだった!」
村人A「さらに詳しく!」
村人「遠目でわかる程の美女でさ、ついでにかなりの巨乳なんだよ!俺あの胸に挟まれて窒息死できるなら本望だわ」
村人A「もっとだ!もっと詳しく!!」
村人B「A熱いな」
村人C「俺は貧乳派だもの」
村人「もっと詳しくと言われても。あとは血まみれだったとしか。返り血だろうな、全身真っ赤でさ。もう真っ赤のおっぱい」
村人A「真っ赤の、おっぱい」フラッグッ
村人B「おお、耐えた」
村人C「大嫌いなグロと大好きなおっぱいが夢の共演だな」
村人「そういえば近くの村といったらここだけだし、もしかしたら来るかもな!」
村人A「おっぱい祭じゃあああ!!」ヒーハー
村人B「来るって……その魔物にデストロイかましてた二人組が?」
村人C「……何しにこんなとこまで来たんだろうな」
村人「あ、それ思った」
村人B「なぁ、人間だったらどうする?一応人間の領土と近いし」
村人C「ただの人間がここまで来れるかよ。来るとしたら勇者じゃねぇか」
村人C「下手したら殲滅されるぞ、俺達魔族なんだから」
勇者「村発見。村人発見。ちゃんとヒトいるみたいだな、良かった良かった」
相棒「んー……」ジー
相棒「一人はさっきのヒトみたいだね。敵意は無いですーってちゃんと言ったら、水浴び出来る場所紹介してくれるかな」
勇者「そこらの泉で下手に水浴びしたら大変だもんな。魔物の血ばっちいし」
相棒「生活用水に使ってる可能性あるもんね」
勇者「そうそう。こればっかりは仕方ないよな」
相棒「--あ、見て。あの村人さんこっち見てる」
村人「!!」ハッ
勇者「察知早いなぁ。すみませーん!」チミドロ
相棒「ちょっとお尋ねしたいんですけどー!」チミドロ
村人「き、きた!」
村人B「うわ、マジで来た!」
村人C「誇張でもなんでもなく本当に全身真っ赤だな」
村人A「おぱ」フラッ バタッ チーン
勇者「ビビられてる気がする」
相棒「何でだろう。武器持ってないし敵意も無いのに」
勇者「こりゃすぐにでも言わなきゃ駄目みたいだな」スゥ
勇者「怖くないデース。何もしまセーン、安心してくだサーイ!」
相棒「ホントのホントデース何もしまセーン!」
村人C「何故片言」
村人「何もしない言ってるし大丈夫じゃない?」
村人B「血みどろってのがまた信頼性の欠片も感じられないけどな」
村人A「」チーン
勇者「警戒するなとは言わないけど、本当に何もしないからさ。この通り派手に返り血浴びちゃって、水浴び出来る所探してるんだよ」
相棒「血まみれになる度に後悔するんだ。ほんと学習しないよね、私達」
村人C(血まみれになる度って何だ、滅茶苦茶危ない発言じゃねぇか)
村人B「でもま、山の魔物狩ってくれたのアンタらなんだろ?」
村人「そうそう。だから血まみれ血みどろぐっちょぐちょなんだよなアンタら」
勇者「うん。血まみれ血みどろ」
相棒「ぐっちょぐちょ」
村人「魔物には俺達も困ってたしさ、そりゃ怪しいし怖いけど恩人みたいなもんじゃんか」
村人B「あ、確かに。ありがとな旅人さん方」
勇者「いや、礼なんて。俺達が勝手にやったことだし」
相棒「ぶっちゃけこうなったのも自業自得だし」
村人C(悪いヒトではなさそうだしな、)
村人C「……じゃあ村長の家行くか。今なら誰もいないし」
村人B「お、いいね!!村長ん家浴場に金かけてんからな」
村人「決まりだな!案内するぜ旅人さん!」
勇者「え、いいの?やったー」
相棒「わーいわーい」
村人A「」チーン
山間の小さな村。
村長家。
相棒「あー、すっきりしたー」ホカホカ
勇者「いやぁまさかお風呂貸してくれるなんて、もう最高」ホカホカ
村人「旅人さんおっぱい凄まじいな」
村人C「本人に向かってはっきり言うお前も凄まじいよ」
村人B(ん?Aの奴がいない。湯上がり巨乳だって絶対喜びそうなのに)キョロキョロ
相棒「正直者は好きだよー、見るだけなら減らないから好きなだけどうぞー」
村人「揉んでも良いですか?」ワキワキ
相棒「うーん、それは流石に困るなぁ」ニッコリ
勇者「こいつ条件反射でもぎ取っちゃうから、揉みたいのならもぎ取られる覚悟をしてから揉んでね」
村人「もぎ取ら……!」ガクブル
村人C「出会ったばかりの女性に揉む云々言い出すお前は一度くらいもぎ取られるべき」
村人B(村人がAの役兼任してるよなぁ)
村のどこか。
村人A「」キュイン ガクブル
村長家。
村人B(ま、いっか。どっかでちゃんと見てるだろ)ウンウン
勇者「訊きたかったんだけどさ。俺達お兄さん達以外のヒト、誰一人見てないんだけど、何で?この村お兄さん達しかいないの?」
村人「色々あってさ。この村にはもう俺達しかいないんだ」
相棒「この村明らかに二桁の人数の生活感が見えたけど」
村人B「よく見てるな、移住が始まったのは最近だよ。だから俺達も違和感凄いの。静かすぎる村にちょっと引いてる」
勇者「……深く訊かない方が良い?」
村人C「こちら側の問題だからな、あまり深入りはしてほしくない」
勇者「わかった。訊かない」
村人C「こちらからも質問いいか?」
勇者「いいよ」
村人C「旅人さん、アンタ人間だろ」
勇者「分類上は、そうだけど」
村人「マジか!!」
村人B「マジか!!」
村のどこか。
村人A「」マジカ
村長家。
村人B「魔族にしては耳尖ってねぇなとは思ってたけど人間があそこまで血みどろぐっちょになれんの!?」
村人「人間すげぇ!!魔族にも出来ないことをやってのける!そこに痺れやっぱりこのフレーズは元ネタをちゃんと読んでから使うわあやふやだしそれが礼儀」
村人B(時々変なこと言うよなコイツ……)
勇者「あれ?人間だとマズい?ここ魔族領だからなぁ、」
相棒「嘘でも違いますって言えばいいんじゃない?」
勇者「違います」キリッ
村人C「そこで何事も無かったかのように言うなよ」ハァ
村人C「まぁいいや。人間なら尚更だな。一泊二泊程度ならこの通り、寝床は有り余ってるから好きな所使っていいけど」
村人C「この村に長居はするのはすすめない」
勇者「--そっか。しかし悪いな、ちゃっかり寝床まで借りる流れになっちゃって」
村人C「もうすぐ日が暮れるし、旅人さん方には魔物の件で世話になったからな」
村人「人間かー、こんな近くで見るのは初めてだ」ジー ハスハス
相棒「私は人間じゃないんだけどなー、鼻息感じるぐらい間近で胸ばかり見られるのはやっぱりちょっと恥ずかしいんだけどなー」
村人B「そろそろ自重しないとヤバいぞお姉さんの目が怖いぞー」
村人「自重しますごめんなさい」
村人C「あ、そうだ。ついでに飯食ってけよ。かわりに何か話してくれ。人間と話せる機会なんて今まで無かったしな」
村人「おお、適当に理由言ってるけどCの世話焼きモードにスイッチが入っただけだろこれ」
勇者「ご飯ですか良いんですか!」
相棒「全力で甘えさせて頂きます!」
村長家。
村人「やっぱご飯は皆で食べる方が楽しいな!」モグモグ
村人B「だよなぁ、最近はずっと各自空いた時間に、だったからなぁ」モグモグ
村人C「俺達だけで食卓囲んでもすぐ飽きるだろ」モグモグ
勇者「もぐもぐ」いや、飽きないもんだって、なぁ?
相棒「もぐもぐ」そうそう。私達ほとんど二人でご飯だし
村人「へー、ほとんど一緒かぁ。ななっ、旅人さん達ってどんな関係?きょーだいにしては似てないけど」モグモグ
相棒「もぐもぐ」血縁は無いよ、
村人B「じゃあ嫁か?」
勇者「もぐもぐ」いやいや。お互いそれはナイと思ってるよ
相棒「もぐもぐ」ナイナイ。確かに付き合いは長いけどさ、
勇者「もぐもぐもぐ」近すぎるんだよな俺達。俺相棒の真っ裸何度も見てるけど全く興奮しなかった
村人「もぐもぐ」なにそれ羨ましい
相棒「もぐもぐ」私も勇者に対しては全く羞恥心感じないや
村人C「」モグモグ ゴクン
村人C「……この際会話が成り立ってることに疑問を持つことはやめるわ」
村人B「そういやぁ、旅人さん何しにこんな所まで?」モグモグ
村人「もぐもぐ?」観光?
勇者「それもある。俺達、仕事で一定の成果を上げたことが認められてさ、もう自由にして良いって上のヒト達に言われたんだ」モグモグ
相棒「寝て起きてゴロゴロするだけな生活が死ぬまで保証されてるんだー。けど、私達退屈なのは嫌だったから」モグモグ
勇者「こうしてフラフラ旅することにしたんだ」
村人B「一定の成果かぁ、やっぱ狩り関連?旅人さん達かなり強そうだしな」モグモグ
村人「なな、旅人さん達何やってたんだ?兵士とか賞金稼ぎ?」
勇者「うん、それで間違ってはないよ。俺は魔法も使えたからさ、勇者やってんだ」
村人「勇者!!?」ブホッ
村人B「勇者!!?」ブホッ
村人C「ぶほっ!」勇者!?
村人「もぐもぐもぐ!」お前C!ドヤ顔で『下手したら殲滅されるぞ、俺達魔族なんだから』って言ったくせに!
村人B「もぐもぐもぐ!」なんだよ普通に会話してんじゃねぇか俺ら!!相手勇者なのに!!
村人C「うっせぇ馬鹿!!勇者って問答無用で魔族デストロイってのが俺達の常識じゃんか!!」フキフキ
村人B「もぐもぐ!」馬鹿じゃねぇよ逆ギレか!!
村人C「だって血まみれとはいえあんな緩く登場されて!おまけにさーちあんどですとろいしてこなかったから!!ただのめちゃくそ強い人間の旅人さんなんだって納得しちゃうじゃん!!」フキフキ
村人B「なんで涙目なんだよメンタルHP低いんだよお前!!」モグモグ
村人「もぐもぐズーン」まてよ、じゃ俺達殲滅されるの?やだ俺達まだ死ねないのに
勇者「あれ?勇者だとマズい?ここ魔族領だからなぁ、」モグモグ
相棒「嘘でも違いますって言えばいいんじゃない?」モグモグ
勇者「もぐもぐ」違います
村人C「そのパターンはもういいよ!」
村人「なぁ、旅人さん達俺ら殲滅しちゃうの?」モグモグ
勇者「え、俺達殲滅しなきゃいけないの?ご飯までご馳走になってるのに。気がすすまないなぁ」モグモグ
相棒「えー、嫌だよご飯美味しいもん」モグモグ
村人「もぐ」ってことは殲滅はしない?
勇者「もぐ」コクン
相棒「もぐ」コクン
村人「だってさー、勇者にも色々いるんだなー」
村人B「良かったわー、やっぱ交流ない分間違った認識しちゃうんだなー」モグモグ
村人C「……特殊なんだよ、旅人さん達の方が」ハァ
勇者「そうかも。一応勇者協会では魔族は見かけ次第即キルを推奨してる」モグモグ
相棒「不本意だけど、私達って何かと普通じゃないって言われるもんねー」モグモグ
村人「勇者協会怖い」モグモグガクブル
村人B「勇者協会怖い」モグモグガクブル
村人C「でも……二年前までは俺達も人間は見かけ次第即キル推奨だったじゃねーか。怖い世の中だよまったく」
勇者「じゃあ今は違うからこうなんだ。久しぶりに友好的にされたから嬉しかったんだよな、俺達」モグモグ
相棒「もぐ」コクン
村人C「そっちは何か変わらなかったのか?こっちはこの二年で目まぐるしく変わったぞ」
村人C「二年前、魔王が死んでから」
村人B「変わったよなぁ、魔族領ほぼ全域が怖い怖い魔王一派の勢力下でさ、」モグモグ
村人「もぐもぐ」俺あの魔王嫌いだったから、死んでくれてマジ嬉しかった
相棒「あー、そっか。話には聞いてたけど、大変だったんだね」
勇者「んーこっちの体制はあまり変わらなかったな、」
勇者「ああでも、魔族領から人間領への侵攻がこの二年ほぼ無くて」モグ
勇者「もぐもぐ」少しは平和ってやつになったかもしれない
村人「お、そりゃ良かったじゃん!俺達んとこもさ、あのクソ魔王いなくなったおかげで格段に良くなったんだぜ!!」モグモグ
相棒「人間領みたいになったんだっけ。国が沢山になって、」モグモグ
村人C「そうそう。一国の絶対王政崩壊から、すぐに各地で好き勝手に国がおったって」モグモグ ゴクン ゴチソウサマ
村人C「今じゃ人間領への侵攻以前に魔族領内での小競り合いが激しいんだよ」
村人B「うちの国、先代が人格者だったからすぐにまとまってさぁ、そりゃ最初はバタバタして……今もバタバタしてるけど、」ゴチソウサマ
村人B「ゆるーく生きられるからもう最高」ダラーン
村人「先代様も今の魔王様も好きだー」ゴチソウサマデシタダラーン
勇者「魔王も一個人を指す名称じゃなくなったんだな」モグモグ
相棒「勇者と同じだね。勇者沢山いるもん」モグモグ
村人C「沢山いる分旅人さんみたいなヒトもいるってことなのかね」
村人「勇者とわかっても旅人さんで通しちゃうのはやっぱりイメージの問題だと思う」ダラーン
村人B「わかるわかる。勇者は人間にしては強くてヤバい奴、ってのから二年前の件でヒトの皮かぶったキチガイの化け物ってイメージにクラスチェンジしたからな」ダラーン
勇者「もぐもぐ」そうやって伝わってるんだ
相棒「もぐもぐ」キチガイの化け物だって、怖いねー
勇者「怖いなー」モグモグ
村人C「勇者と……お連れさん一人だったか?たったの二人で魔王城落としたとか、そりゃ化け物って言われるだろうな」
村人「でも俺は、先代様がちょっとアレだけど良いヒト達だって言ってたから、ちょっとアレなだけの良いヒトだって思うようにしてる」
村人「ほら、旅人さんも勇者だけど良いヒトじゃん」
勇者「お兄さん達も良いヒトじゃん」モグモグ
相棒「お風呂貸してくれるしご飯ご馳走してくれるし美味しいし」モグモグ
勇者「魔族でも良いヒトはいるのになー、俺達二年前魔族のヒトに助けられてるし」モグモグ
相棒「もぐもぐもぐ」そだね。きっとお兄さん達が好きだって言う先代さんも今の魔王サマも良いヒトなんだろうね
村人B「良いヒトだったぞー、かなりの悪人面だったけど」
村人「顔めっちゃ怖いの。んでごついの。人間領の教科書とかに典型的な悪い魔族の例として載ってそうなぐらい」ケラケラ
勇者「出会い頭即キルレベル?」モグモグ
村人「即キル即キル」ケラケラ
村人「……一年前かな、もう死んじゃったけど、先代様は自分の死期をみんなに言ってたから、」
村人「だから大きな混乱もなく今があるんだと思う。……俺の憧れだったんだー、顔以外」
村人C「先代様は元々この国の土地の代表家出身でさ、暴君時代も必死に俺達を守ってくれたんだ」
村人B「本当に良いヒトだったよなぁ、娘に自分の顔の怖さを受け継がせなかったのも、俺達の間じゃ高評価だし」
村人「ものの見事に奥方様に似たよね魔王様。綺麗綺麗」
相棒「今の魔王サマって先代さんの娘さんなんだ」モグモグ
村人B「そうそう。先代の娘さん。すげぇ美人なの多分現在の魔族領唯一の女性魔王だな」
勇者「先代さんの娘で美人で良いヒトかー、国民が好きになるのもわかる気がする」モグモグ
村人「旅人さん話がわかるわー、よし!この際だから、」フォン
勇者(空中に四角い枠が、)モグモグ
相棒(枠の中が揺れて、映像が、)モグモグ
村人C「……ああ、あの時記念にって転写したやつか」
村人B「人間も使ってんのかな、この魔法。対象の視界を転写してるから綺麗に映るんだぜー」
勇者(魔族の写真みたいなもんか、お兄さん達と、他に二、人、)モグモ
相棒(キレイにとれてるなぁ、魔法にもこんな使い方があ、る、)モグモ
勇者「!!!」ブッフォ
相棒「!!!」ブッフォ
村人「!!?」ビクッ
村人B「!!?」ビクッ
村人C「!!?」ビクッ
勇者「っ、げほっ、ごほっ、」ゼェハァ
相棒「けほっ、っぅ、げほっ、」ゼェハァ
村人B「どどどどうした旅人さん!!」アワアワ
村人「どどどどうしたマジどどど!?」アワアワ
村人C「どどどうした食べ過ぎか食べ過ぎでついに限界値越えたのかごめん俺が気付いて止めてればー!!」アワアワ
村のどこか。
村人A「」アワワワワワワ
勇者「っ、あ、けほっ、れ、……の、げほっ、ヒト、は、」ゼェハァ
村人「死にかけ!?ちょえ、え!?食べ物なの!?魔族は平気でも人間には毒になるものとかあったの!?」ヒュー ヒュー
相棒「えいっ……げほっ、げほっ、おに、……さ、っ、」ヒュー ヒュー
村人B「え、え、え!?どうしちゃったの!?とりあえず水!?その前に背中さすったげた方が良い!?」アワアワ
村人C「みみみ水だ!!飲めないなら無理しなくていいから!!背中さすってやって楽になるかも!つか魔法!!治癒魔法!!」フォン
村人「何を治癒だよ!外傷ないよ!」フォン
村人B「つか旅人さん魔法自体弾くんだけどどうなってんの!?勇者だから!?勇者って魔法きかねぇの!?」フォンパシュフォンフォンパシュ
勇者「……わり……おれ……っ、魔ほ……きか……っぅ!」ヒュー ヒュー
相棒「だい……じょ……ぶ、だか……っ!」ヒュー ヒュー
村人B「胸押さえてる!苦しいのか!?何で突然!?何で同時に!!!!?」アワワワワワワ
村人「顔真っ赤だよ!?うわあああ熱あるよ!!」アワワワワワワ
村人C「そんないきなり体温上がるもんなのか!?いったい何がどうなってんだよ!!」アワワワワワワ
勇者「」ヒュー ヒュー
相棒「」ヒュー ヒュー
勇者(……胸が苦しい、)
相棒(……痛いぐらいだ、)
勇者(………映っていた、お兄さん達と一緒に、あのヒトが)
相棒(………映ってた、お兄さん達と一緒に、あのヒトが)
勇者(--あの時とは違う顔で、)
相棒(--笑ってる、)
村人「何で死にそうなの旅人さん!?」アワアワ
村人B「原因がわかんねぇよさっぱりだよおおお!!」アワアワ
勇者「」ヒュー ヒュー
勇者(何で俺、こんなに苦しいんだろう)
相棒「」ヒュー ヒュー
勇者(また相棒も同じ症状か、困ったな)
村人C「いやマジ何でだよ!?どうしてこんな状態に!?」アワアワ
相棒(私達も知りたいよ、何でこうなってるのか)
村人「旅人さん死んじゃ駄目だああああ!!」ウワァァァァ
勇者(……ああでも、)
相棒(これが、ただの映像でも、)
勇者(あのヒトの顔が見れて、)
相棒(あのヒトの顔が見れて、)
村人B「ちょ、呼吸が!!」ウワァァァァ
村人C「なんで弱くっ!!」ウワァァァァ
勇者(良かった)
相棒(良かった)
勇者「」チーン
相棒「」チーン
村人「旅人さぁぁああああん!!!」ウワアアアア!
村人B「旅人さぁぁああああん!!!」ウワアアアア!
村人C「旅人さぁぁああああん!!!」ウワアアアア!
村のどこか。
村人A「」スウフンゴ!
村長家。
勇者「お、生きてる」
相棒「ちょっと死を覚悟しちゃったね」
村人「も、もうっ……なんだよう…」グスッ
村人B「あー、焦ったわー。良かったよ落ち着いて。意識無くした瞬間もう俺泣きそうになった」グスッ
村人C「すぐに復活してくれて……本当に……安心した……」グスッ
村人C「なんだったんだまったく……、元気そうに見えたけど、何か持病でもあったのか?食べちゃまずい食べ物とかあるのなら、事前に言ってくれなきゃ困る……」
勇者「いやいや、食べ物が原因じゃないよ。美味しくいただいていました」
相棒「全力でご馳走になろうと思ってたから、遠慮なくもぐもぐしてたよ」
相棒「いつもならまだ食べてるよね」
勇者「もぐ」
村人C「止めなさい食べ過ぎよ!明日朝ご飯ちゃんと用意するから!!もう食うな!!またああなったらどうする!!」
勇者「本当に食事が原因じゃないのに」シブシブ
相棒「じゃないのに、ね」シブシブ
勇者「でも朝ご飯ーい」ゴチソウサマデシタ!
相棒「朝ご飯わーい」ゴチソウサマデシタ!
村人B「なぁ、マジで何が原因なんだ?就寝時にああなったらって考えるともう俺おちおち寝てらんねぇよ」
村人「心配で一部屋に固まって眠りたいぐらい」
勇者「原因ってもなぁ、」
相棒「私達にもよくわかってないし」
勇者「突然始まったもんな、これ。--でも、今回は初めてだったな、ここまで苦しくなるとは思わなかった」
相棒「同じく。こうにまでなると現実味を帯びてくるね」
勇者「そうだな。やっぱり俺達、近々死ぬのかな」
相棒「死にたくないのにね」
勇者「困るなー」ダラーン
相棒「困るねー」ダラーン
村人B「いやいやいや!諦めるな!!」
村人C「症状は何だ!どこが痛いどこが苦しい!発症の起因に心当たりは!?突然くるのか!?」
村人「始まったのは最近なんだろ、初めて症状が出た時ってどんな状況だった?人間領で?魔族領で?」
勇者「…………会ったばかりなのにこんなに心配してくれるんだぜ、」ダラーン
相棒「お兄さん達良いヒトすぎだねー」ダラーン
村人C「もう良いヒトとかどうとかいいから!ほら話す!話しなさい!」
勇者「うーむ、どこから話したもんか」
村人B「最初から!最初から!」
相棒「最初、最初かぁ……」ウーン
相棒「…………私達、危なかった所を魔族のおじさんに助けられた事があってね、」
相棒「その時言われたんだ。『一年待ってくれ。一年で私達の国はきっと安定する』」
勇者「『落ち着いて、君達の気が向いたらで良い、顔を見せに来てくれないか。必ず歓迎する』って」
勇者「そのおじさんが言ってた国がここ。凄いよな、ホントに国になってた」
村人「へぇ~!そのおじさんこの地方出身だったってことか!!」
勇者「多分そうなんだと思う。一年どころかもう二年になるけど、会いに行こうかって話になって」
勇者「あ、でも俺達おじさんの家知らないやってなった」
村人B「ちょ、おじさんどこ住みか大体の位置は知らせとけよ」
相棒「だよねー。--とりあえず王都に行けば何かおじさんに繋がる情報あるかなと思って、魔族領に入った」
勇者「王都近くの町だったと思う。商人のおじさんが国で一番物が集まる町なんだって言ってた」
勇者「変な症状はその町で始まったんだ」
村人C「そこにキッカケがあるわけか」
勇者「--その町で俺は、人集りの中心に黒髪の女性を見た。もしかしなくても魔族」
相棒「私はそのヒトの隣にいた黒髪の男を見てた。もしかしなくても同族」
勇者「一目で身分が高いヒトなんだと思った。良家のお嬢様なのかな。毅然と話す姿から目が離せなくて、金色の目が凄く綺麗だった」
相棒「外で同族に会うのは珍しいから、だから目が離せないんだと思った。やけに仏頂面なヒトだな、とも思った。でも金色の目が、凄く、綺麗で」
村人「黒髪金目の二人組」
村人B「そもそも金目とか珍しい部類」
村人C「おい待て……、該当する人物に心当たりがありすぎるんだが」
勇者「彼女が笑った瞬間、心臓が爆発した気がした」
相棒「彼がが笑った瞬間、心臓が爆発した気がした」
勇者「そこからがもうヤバい心臓超痛い笑顔が頭から離れない」
相棒「そうそう。心臓痛いし身体は熱いしもう自分が何考えてるかわかんないの」
勇者「とりあえず残った理性で腕切って正気に戻ろうとしたら隣で相棒が同じことしてた」
相棒「隣見たら腕から血流した勇者がいた。そこで勇者も同じ症状に苦しんでるって気付いた」
村人「なにこのヒト達怖い」
村人B「なにこのヒト達怖い」
勇者「ここにいちゃマズいと思ってすぐその場を離れた」
相棒「町から出ちゃったのも覚えてる」
勇者「そして気付いたら、知らない山にいた」
相棒「ついでに魔物に囲まれてた」
勇者「とりあえずお互い冷静になろうと思ったんだな」
相棒「身体動かせばなんとかなると思って」
勇者「派手に暴れた」
相棒「血まみれになった」
勇者「そして今に至る。これが発症からの経緯」
相棒「あ!大変だ勇者。今気付いたんだけど、私達外套無くしたみたい」
勇者「あ、ホントだ。フードまでかぶって明らかに旅人ですやってたのに」
相棒「山だね多分。ハッスルしすぎたんだよ私達」
勇者「うわぁ、絶対そうだって。戦いになるとどこか抜けるのなんとかしないとなー」
相棒「ねー」
村人C「……なぁ、お二人さん……そのヒト達ってさ、」
勇者「ああ、うん。吃驚した。この国の魔王様だったんだな、あのヒト」
相棒「吃驚だよね。引きこもりの竜族が魔王様の側近してるなんて」
村人「…………」
村人B「…………」
村人C「…………」
村人「……お姉さん竜族かぁ……そうだよなぁ、魔族でも人間でもないならほぼ竜族確定だよなー」ダラーン
村人B「竜族ってアレだろ、大陸の隅に引きこもってる最強種族だろー……側近さん以外の竜族初めて見たわ」ダラーン
村人「竜族って竜化してないと、魔族よりちょっと耳尖ってるぐらいの見た目だもんなー」ダラーン
村人B「人間と比べて違い見極めるのはなぁ~」ダラーン
勇者「人間耳尖ってないもんなぁ~」ダラーン
相棒「角と羽出したら素性一発だけど、目立つからねー」ニョキバサッ
村人「やべぇ角でた!羽出たカッケー!」キャッキャ
村人B「だから服!背中部分に切れ込みが!!キャッキャ
勇者「くっそー!竜族変身出来るとか羨ましすぎるぜー!俺も変身したい!」キャッキャ
相棒「竜族だけの特権だ~」キャッキャ
村人C「おいお前ら話をそらすな現実から逃げるな戻ってこい旅人さんもまとめて戻ってこい」
勇者「はーい」
相棒「はーい」
村人「はーい」
村人B「はーい」
村人C「……症状は、動悸発熱呼吸困難でオーケー?」
勇者「うん、追加であれからずっとふわふわしてる。不可解」
相棒「うん、さらに追加で思考がおかしい。ほぼそのヒトのこと考えてる。不可解」
村人「全く表情に出てないのが凄いよな」
村人B「つか真顔で真っ赤になるって器用だよな」
勇者「さっき死にかけたのはさ、アレだよ。また見ることになるとは思わなかったから、」
相棒「不意打ちってやつだね。うん。次は大丈夫だと思う」
勇者「だからもう一度、」
相棒「さっきの魔法お、願いします」
村人「……………」フォン
勇者「」ワクワク
相棒「」ワクワク
相棒(四角い枠、その中が揺れて……あ、映った)ジー
勇者(映ってるのは六人、彼女と、竜族の側近さんと、お兄さん達)ジー
勇者(苦笑混じりの、それでも楽しげな、笑顔)ジー
相棒(呆れてるけど、満更でもなさそうな笑顔)ジー
勇者(凄いなぁ、こんなに綺麗なヒトがこの世に存在してたのか……) ジー
相棒(凄いなぁ、竜族にこんなに綺麗なヒトが存在するなんて、)ジー
勇者「しかし何で動悸おさまんないんだろうな、」ジー
相棒「呼吸は何とか出来たけど心臓と思考はどうにもなんないねー」ジー
勇者「やっぱり病気か?」
相棒「どう思う?お兄さん達」
村人C「いや、病気じゃないからソレ」
村人B「つか死なないし」
村人「これを本気で言ってることが本日一番の驚愕だよ。魔物死骸散乱光景越えちゃったよ」フォン パシュ
勇者「え、病気じゃないの!?」あ、映像消えた
相棒「死なないの!?」もっと見ていたかったなー
村人C「病気といえば病気かもしれないけど、この世界の一般的な認識として、病気には当てはまらない」
村人B「正直こじらせて死ぬってのが冗談にならないヒト初めて見たわ」
村人「死なない死なない。普通は、だけど。旅人さん達は驚きの酷さだけど。きっと誰もが通る道だよこの症状」
勇者「わかるのか?原因不明の病だと思ってた」ホッ
相棒「良かったー、安心したよ」ホッ
村人C「軽度の物なら、お二人さんもすでに経験してるはずだって」
村人C(だってこれ、明らかに恋だろ……)
村人B「旅人さーん、目を閉じて胸に手ぇ当てて過去を振り返りなよ。似た経験してるって」
村人B(恋ってやつだよなコレ……かなりの重傷じゃねぇか……)
勇者「目を閉じて……」スッ
相棒「胸に、手……」スッ
村人「……………、」
村人(嫌な予感するなぁ、)
勇者「」カンガエチュウ
相棒「」カンガエチュウ
村人(話聞く限り一目惚れってやつで、)
村人(姿を見るだけでああなるっていう自覚すらあるのに、病気で死ぬかもって思ってた)
勇者「あった!相棒!」ハッ
相棒「あった!アレか!」ハッ
村人(まさか……なぁ、)
勇者「そうだアレは俺が勇者になったばかりの頃!腕試しに竜族の里に侵入!!」
相棒「やたら強い人間が侵入したって騒ぎになったあの日!!」
相棒「忘れるわけがない!そうだよ、あの時もそうだった!!心臓がバクバクした!興奮に震えた!!」
勇者「ああ、対峙した瞬間から目が離せなかった!!これも同じだ!!そうだったのか!!この不可解な感情の正体がわかったぞ!!」
相棒「私達の出会いの日!!初めて出会った、あの瞬間!!すぐにわかった、全力で闘ってもいい相手だと!!」
村人B「……おい、嘘だろ」
村人C「……嘘だと言ってくれよ」
勇者「俺達は知ってる!この感情の名を!!」
相棒「そうだよ、盲点だ、ありがとうお兄さん達!!」
勇者「この感情は!!」
相棒「まさしく!!」
勇者相棒「闘争心!!!!!」ドンッ
村人C「いっそ清々しいぐらいに間違ってるよ違うだろ全然違うだろ!」
村人B「何でだよアンタらどんな生活送ったらそんな答えに行き着いちゃうんだよ!!」
勇者「え?」キョトン
相棒「え?」キョトン
村人B「キョトンじゃねぇよ!!吃驚だよ今勇者と竜族のイメージがアホの子に変革を遂げようとしているよ!!!」
村人C「違うよな、勇者も人間も竜族もみんなこうじゃないよな!!お二人さんが特殊なだけだよなぁ!!」
勇者「あれ?じゃあ、」
相棒「なんなの?この感情、」
村人「その感情はさ、」
村人「恋、なんじゃないかな」
勇者「」
相棒「」
村人C「そうだよ、闘争心なんかじゃ、」
勇者「あ、それ無いっすわ」
相棒「確実に無いっすわ」
勇者「恋?ハハハなにそれ俺達が恋?すみませんそれは確実にないですわー」
相棒「ものの一番に除外されるべきワードだよねー」
勇者「そもそも自分勝手の我が儘野郎な俺達が恋だなんて、ねぇ、」ケラケラ
相棒「うんうん。自分の心に自由な私達がそんな、ねぇ」ケラケラ
勇者「恋ーとか愛ー、なんてのは、他人を思いやれる優しいヒトにしか出来ないことじゃないですかー」
相棒「私達に奉仕精神なんか欠片も無いもんねー、恋ってアレでしょ?要は惚れた相手に尽くして尽くして自分はどうなってもいいっていうアレでしょ?」
勇者「いやぁ、ないですわー」
相手「ないない、もう吃驚するぐらいないですー」
勇者「お兄さん達は良いヒトだからそんな答えが出るんだと思うんだ、」
相棒「私達、お兄さん達が言ってくれるような良いヒトじゃないよ。そりゃ確かに言われてちょーっとは嬉しかったけど」
村人C「ちょっと、待てよ……、お前ら、何言ってんだ、」
村人B「いや、待てって、なんだよそれ……」
勇者「いや、気にしないでお兄さん、」ヘラリ
勇者「俺達、人並みからちょっと上回るぐらいに歪んでるだけだから、なぁ相棒」ヘラヘラ
相棒「ねー」ニコニコ
村人C「」ゾワッ
村人B「」ゾワッ
村人「」ゾワッ
村人C(なんだこれ、寒気がした、なんだよ、コイツ等)
村人B(ヤバい、コイツ等、俺達が認識している以上にヤバい奴らだ)
勇者「…………」
相棒「…………」
勇者「いや、ごめん。空気悪くなっちゃったな」シュン
相棒「あー、ごめん、ね?心配してくれて、おまけに原因まで一緒に考えてくれたのに」シュン
村人「なー、旅人さん達ー」
勇者「んー?」
相棒「なーにー?」
村人「闘争心ってわかったわけじゃん。どうするんだ?これからー」
村人「魔王様や側近様と、戦いにいったりするのー?」
村人B「!!」
村人C「!!」
勇者「うん、そのつもり」ニコニコ
相棒「原因がわかったから、本人を前にしてももう平気だと思うんだ」ニコニコ
勇者「そりゃドキドキはするだろうけどなー」ニコニコ
村人「じゃあさー、」
村人「旅人さんは勇者なわけじゃん、お姉さんはその仲間でー、勇者一行さんはー」
村人「魔王様と側近様を、殺すつもりなの?」
村人C(返答次第で、)
村人B(俺達は、)
勇者「え……?」キョトン
相棒「殺す……?」キョトン
村人「………え、だって戦うんだろー?」
村人B「しかも勇者だし、」
村人C「相手、魔王だし、」
勇者「何で?やだよ殺すの」
相棒「やだよ、絶対嫌。せっかくの相手なのに、」
勇者「だって闘争心感じるって相当だぞ、絶対楽しいじゃん闘ったら」
相棒「初の二対二の可能性だよタッグバトルだよ?一回限りとかそんなこと我慢出来ない」
勇者「タッグバトル!!」ハッ
勇者「確かにそうだな!!魔王様が良いヒトなら純粋なタッグバトルが出来る!!」ワクワク
相棒「しかも一人は竜族だよ!最高の相手じゃないか!」ワクワク
村人B「え?戦うって、え?」
村人C「え?そんな爽やかな笑顔通りの意味なの?」
勇者「誓う神なんていないけど、誓って殺さないと断言できるよ。怪我はさせるかもしれないけど、それはお互い様だし」
相棒「挑戦受けてくれなかったら何もしないしね。……しつこくねだるかもしれないけど」
勇者「それでもし俺達が死んだとしても、きっと楽しんでるだろうし悔いはないと思う」
村人C「え、それ、本気で言ってる?」
勇者「本気本気」
相棒「こんな事に嘘なんてつかないよ」
勇者「ほら、証明になるかわかんないけど、相棒生きてるじゃん」
相棒「そうそう。勇者もこの通りピンピンしてるでしょ?」
勇者「闘争心なんてものを感じる相手!!」
相棒「勿体なくて殺せるわけがない!!」
村人C「…………」ポカーン
村人B「…………」ポカーン
村人「…………」
村人「そっかー、俺は旅人さん達を信じるよ」
村人「あ、先に言っておくけど、魔王様も側近様も凄く強いよ。絶対楽しめると思う」
勇者「マジか!」
相棒「やったね!」
村人B「…………、」
村人C「…………、」
村人「……大丈夫だって、旅人さん達はアレだよ。戦闘狂ってやつだよ」
村人「狂だよ狂。ちょっと狂っちゃってるんだよ」
村人「ほらでも、悪いヒトではないと思うしさー」
村人「みんなもそう思うだろ?」
村人B「まぁ、な」
村人C「うん、確かに。嘘はついてないと思う」
村のどこか。
村人A「」コクン
村人A「」サビシクナンカナイ
村人「だから大丈夫だって。俺達は俺達がやるべきことをー、ってさー」
村人B「そうだな、」
村人C「そうだよ、な!」
村人「そして多分旅人さん達なら、」
村人「もし闘争心感じる相手が不意打ちくらってピンチな状況になってたら」
村人「なんかほら、助けてくれそうじゃん」
勇者「…………」
相棒「…………」
勇者「んー、助けるというか、」
相棒「助けるとかよくわからないけど、不意打ちは卑怯だからむしゃくしゃはするよ」ニコニコ
勇者「まぁむしゃくしゃは基本与えた主にぶつけるよな」ニコニコ
村人B「よしいける!」
村人C「確かにこれはちょっと歪んだセ○ムになるかもしれない!」
村人「だろー?」
村人C「なぁ旅人さん!そろそろ夜も更けてきたが!実は明日出そうとしていたデザートがあったりする!!」
勇者「甘いですか!?」キラキラ
相棒「それは甘かったりするのですか!?」キラキラ
村人B「アレは甘党に属してないと一口でもう嫌になる甘さ」ゲンナリ
村人C「だそうだ!どうする、食うか!?」
勇者「お願いします!!」キラキラ
相棒「甘いもの万歳!!」キラキラ
村人C「よっしゃ待ってろ!!」タタタッ
村人「なー旅人さんー、どれぐらい滞在するのー?もしかして出発予定もう決めてたりするー?」ダラーン
勇者「明日の朝!魔王城に向かって走るよ!」
相棒「わくわくしながらね!!」
村人「そっか、もう少しいてくれても良かったんだけどな、」シュン
勇者「うう、ごめん」シュン
相棒「でも、すぐにでも闘いに行きたくて」シュン
村人「なんつって、冗談だよ。もう少し滞在してくれても良いのにってのは本当だけど」ケラケラ
村人「明日行ちゃうんだろ?ここだけの話、料理担当はCなんだけどさ、頼めば道中で食べるお弁当作ってもらえると思うんだよね」
村人B「あー、確かに。アイツかなりの世話役き屋さんだからなー」
勇者「マジか」キラキラ
相棒「マジか」キラキラ
村人「さぁお弁当をねだる作業に入るんだー」
勇者「お兄さぁああん!」タタタタッ
相棒「道中の魔物狩りつくしますので!!」タタタタッ
オベントウ!!
オネガイシマス!!!
エ、ア……イイケド
ワーイ
ワーイ
村人「一瞬シリアスになってビビったけどさー」ダラーン
村人B「おー、ビビったビビった。お前のキャラにもビビったけど」ダラーン
村人「そこは慣れろよーう」ケラケラ
村人「……でもま、なんとかなりそうで良かったよな」
村人B「……そーだなー」ダラーン
村のどこか。
村人A「」ソウシテ、ヨルハフケテイク
村人A「」サビシイヨゥ……
翌朝。
村入り口。
村人A「寂しい。そして寂しかった」
村人B「合流おめ」
村人「そして相棒さんのおっぱい様を生で見て一言どうぞ」
村人A「最高です!」グッ
勇者「なんか申し訳ないよな」ヒラヒラ
相棒「外套まで貰っちゃってね」ヒラヒラ
村人C「俺達の予備でなんか悪いけど、……外套ヒラヒラして遊ぶのは止めなさい。相棒さんはまだしも旅人さんは絶対にフードかぶってろ」
村人B「『あれって人間じゃね?』」
村人A「『え、でも人間がこんな所にいるか?』」
村人「『じゃあアレじゃね?気のせい』」
村人「『耳の尖り成分が少ない家系かもしれないじゃん』」
村人B「『そうだなー』」
村人A「『散々間違われて大変だったろうなぁー』」
村人B「『俺達だけでもふれないであげようぜー』」
村人「ってな感じになるよフードかぶらず堂々としてると」
村人C「ならんわざわつくわ。町全体がザワザワするわ。さくっと魔王城にたどり着きたいならしばらくフードかぶって旅人さんしてろ。わかったか?」
勇者「了解致した!」バサッ
相棒「旅人コンビってことで私も!」バサッ
村人C「王都の位置は大丈夫か?やっぱり地図持ってくか?」
勇者「大丈夫大丈夫!」
相棒「位置は万全!最短距離で進むよ!」
村人C「それなら良し。お弁当持ったか?忘れ物はないか?」
勇者「お弁当持った!」キラキラ
相棒「ありがとうお弁当!」キラキラ
勇者「朝ご飯も美味しかった!」キラキラ
相棒「ありがとう朝ご飯!」キラキラ
勇者「そして忘れ物は、」キリッ
相棒「無しであります!」キリッ
村人C「じゃあ大丈夫だな。道中気をつけて。拾い食いするなよ、魔族領は毒持ちの動植物多いから無闇に食うなよ。お腹下しちゃうぞ」
村人B「Cの世話焼きモード凄まじいな」
村人A「生き生きしてるよな」
村人C「最後に一つ。王都には俺の妹がいるから、何か困ったら頼っていい」
村人「そーだなー、妹ちゃんなら城勤務だし、俺達の名前出したらきっと協力してくれるよ」
村人A「Cと似てるからすぐわかる。一瞬弟?ってなるけど貧乳なだけだから。背中じゃないよまな板のようだけど」
村人C「Aテメェあとで殴る」バキッ
村人A「ぐはっ」ズザザザザッ
村人「今殴ってるじゃん」ケラケラ
勇者「なにからなにまで悪いな」
勇者「助かったよ、ありがとう」ペコッ
相棒「うん。お兄さん達とのご飯楽しかった」
相棒「色々良くしてくれてありがとう」ペコッ
勇者「じゃあ、俺達はそろそろ、」
相棒「出発するねー」
村人C「いや、俺達も楽しかったよ。達者でな」
村人B「うんうん、楽しかった。気をつけてなー」
村人A「眼福でした本当にありがとうございます」ペコッ
村人「魔王サマと側近様によろしくー」
勇者「またなー」タタタッ
相棒「またねー」タタタッ
村人C「……………」
村人B「……………」
村人A「……………」
村人「……………」
村人C「行っちまったな」
村人B「また、だってさ。また会いに来てくれるみたいだぜ」
村人A「悪いヒト達では無かったなー、おっぱい様素晴らしいし」
村人「今度はみんなでご飯したいよなー」
村人C「…………ああ、」
村人B「…………そうだな、」
村人A「ご飯したかったなー、」
村人「ちょっと未練残るよな、」
村人「って、あれ?」ビクッ
オーイ!!
オニイサンタチー!!
村人B「ちょ、めっちゃ叫んでるぞ旅人さん達」
村人C「忘れ物か忘れ物したのか!?何を忘れた仕方ないなもう!」
村人A「いやいや、忘れ物とは限らないって」
コーレー!!
アーゲールー!!
ひゅるるるるる
村人「あ、なんか飛んでくる。そいや!」ピョン パシッ
村人B「ナイスキャッチ」
村人C「なんだこれ。黒い……ただの石ころじゃないな」
村人A「滅茶苦茶に魔力込められてるじゃん」
ソーレー!!ショーカンセキー!!!
キガムイタラー!ツカッテネー!!
ソレジャアネー!!
ネー!!
村人「おー、ありがとー」テ フリフリ
村人「だってさ。召還石。どの精霊召還するんだろうねコレ」
村人C「また凄い置き土産を」
村人A「気付いてんのか?旅人さん達」
村人B「さぁな、でも……戦力になるなら有り難いよ」
村人「なんせ、こっちは四人しかいないもんねー」
村人「負け戦にわざわざ参戦させるのもちょっとアレだけどさ」
村人C「何言ってんだ、負けねぇよ」
村人B「少なくとも負けにはしないって」
村人A「負けたら今までの苦労が水の泡じゃん」
村人「そっか、そうだよな」
村人「…………」
村人B「…………」
村人C「…………」
村人A「…………」
村人C「あのさー、」
村人B「わかってる」ウンウン
村人A「同感」ウンウン
村人「もうさ、絶対そうだよね」ウンウン
村人C「そうだよなぁ、」
村人C「旅人さん達のアレ、」
村人C「闘争心じゃないよな」
村人B「違う」
村人A「確実に違う」
村人「どう足掻いても恋」
村人ズ「絶対に恋!!!」
数日後。
魔王城。執務室。
側近「……やはり、国境が厳しいか」
魔王「物資は有り余っているだろうに、何故他国にまで手を伸ばすのかしらあの馬鹿魔王殿は」
側近「馬鹿だからだろう。欲に溺れて破滅の道へ進むのは結構だが、こちらまで巻き込むなと言いたい」
魔王「誰にも迷惑のかからない、そうね。忌まわしい旧魔王城辺りで派手に爆発してくれないかしら」
側近「同感だ。あの場所ならどう爆発しようが誰も迷惑を被らない」
魔王「……………」ハァ
側近「……………」ハァ
魔王「………不毛な話だったわ。ごめんなさい」
側近「………いや、俺の方こそ。すまない」
側近「さて、どうする?防衛部隊は、まだ大丈夫だと……明らかに無理を言っているが、」
魔王「そうね……うちの兵も馬鹿だから。……無理しすぎなのよ、大丈夫なわけないわ、辛いに決まってるじゃない」
魔王「兵を回して。足りないのなら私が出るわ」
側近「魔王がほいほい戦場に出るな。視察で各地を飛び回っているくせに、何時休む気だ」
側近「それに、戦力の不足をなんとかするのは俺達臣下の役目だ。魔王は魔王の役目を果たしていろ」
魔王「……」ムウ
魔王「……お言葉だけど、臣下の貴方こそ何時休むのかしら。視察はほとんど私と一緒に回っているし、私が執務に回っている間は一人で各地を飛び回っていると聞くけど」
魔王「臣下が過労で倒れたとなれば、魔王の私はとんだ能無しね」
側近「……」ムウ
側近「……種族の差だ。根本的な体力が違う」
魔王「お父様譲りの身体能力とお母様譲りの強大な魔力を受け継いだ私が貴方に劣るとでも?」
魔王「付き合いの長い貴方がそれに気付かないわけないわよね」
側近「……魔王が倒れた国の末路が聡明な貴女にわからないはずはないと考えるが」
魔王「………」ムウ
側近「………」ムウ
コンコン カチャ
部下「--失礼します」
部下(…………この雰囲気、また喧嘩したんだ、魔王様と側近様)ハァ
部下「お茶をお持ちします。少し休憩なされて下さい。朝からずっと働きづめでしょう」
魔王「ありがとう、でも」
側近「すまんな、だが」
部下「聞こえませんでしたか?」
部下「働き過ぎと言っているんです。ここ最近隣国の馬鹿王のせいで魔王様も側近様もずっと働き通しじゃないですか」
部下「私は、城内全ての兵の代表としてこの場にいます。これは言わばあなた方の部下の総意です」
魔王「でも、」
側近「しかし、」
部下「でももしかしもかかしも無いです」
部下「あーあ……この国は何時から下々の声を聞かない残念な国になったんですかね」ハァ
魔王「あの……」アセアセ
側近「その……」アセアセ
部下「違いますよね。違、い、ます、よね?」
魔王「うう……違います……」シュン
側近「むう……違います……」シュン
部下「それは良かった。それではすぐにお茶をお持ち致します」ニコリ
魔王「わかったわ……」シュン
側近「少しだけ、休ませてもらう」シュン
十数分後。
執務室。
タイヘンダー!!
キャー!! ワー!!!
ナントカシロー!! サガセェェエ!!
ウワァアアア!! ヒャアアアア!!!
魔王「」ガタッ
側近「」ガタッ
部下「通信来ます!」ブゥン
フォン
城門兵『こちら城門!すみません突破されました!』『やばいっすアレ!!全く見えなかった!!』
フォン
城内警備兵『探せ!!まだこの階にいるはずだ!!--あ、魔王様!側近様!!』『侵入者です!』
魔王「この城の警備をかいくぐって来るか!!」
側近「何人だ、何人いる!」
部下「映像出ます!」ブゥン
フォン
城内警備兵『うわぁあああああ!!あそこぉぉおお!!』『何虫が出たみたいな反応してんだ馬鹿!!』『いや俺虫出たらもっと凄い反応してるから』『駄目だよう、ふざけたら怒られちゃうよーう』『そうそう側近様にどつかれるぞ』『魔王様に睨まれるぞ』『魔王様に!』『睨まれる!』『そうまるで』『蔑むように』『ゴミ虫をみるような目で』『アリだ』『アリだな』『実は俺側近様もアリだったりする』『えー』『えー』『いやでもわからなくはない』ワイワイガヤガヤ
魔王「」ジトメ
側近「」ジトメ
魔王「第三だったかかしら、今日の警備担当は」
側近「ああ。任せろ給料減らす」
部下(良かったね第三部隊すでにゴミ虫を見るような目で見られてるよ……)
フォン
庭師『これ、ちゃんと繋がってるかしら?私、通信系の魔法も苦手だから』『姉ちゃん俺よりは出来るだろ?大丈夫だって』
部下「こちら執務室。繋がってますよ、」
庭師『あら、部下ちゃんじゃない。この前服屋行けなくてごめんね、一緒に選んであげるって言ったのに、あなたの勝負パンt』部下「いやああああああああ!!」
魔王「…………」キマズイ
側近「…………」キマズイ
部下「」チーン
庭師『あー!!あー!!あー!!聞こえない!!聞こえてないですから!!ギリギリで耳塞ぎましたから俺!!すみませんうちの姉がすみません!!』
魔王「えっと、ほら、私達も聞こえなかったから、」
側近「ほ、他の兵の通信を聞いていたからな、」
部下「………はい、」ズーン
庭師『あら、私何かマズいこと言っちゃったかしら』『姉ちゃん……』
部下「本題は、何ですか」ズーン
庭師『そうそう、報告ね。映像出るかしら……それっ!』フォン
フォン ブゥゥン
部下「庭園の映像……庭師の二人と……、っ!!?」
魔王「!!!」
側近「!!!」
勇者『あ、映ってるの?コレ』ニコニコ
相棒『映像魔法かぁ、手振った方が良いかな』ニコニコ
庭師『侵入者ってこのヒト達じゃないかしら』『侵入者の数は二人のみ、だと思います。……すみません、不甲斐ないです』
庭師『俺達人質ってやつかもしれません』
魔王「城内にいるのではなかったのね……?」
庭師『城内にいたと思います。このお二方、つい先程三階の窓から降ってきたので』
勇者『なぁ少年、誰と通信してるの?俺達の声も届いちゃったりするの?』
庭師『あ、届いてますよ。映像も。でもこれ魔王城勤務者の専用魔法回線なのでお二方にはあちらの音声は聞こえないと思います』
相棒『じゃあ、勝負パンツのヒトもいるんだね』
庭師『』『ええ、部下ちゃんもいるわ』
勇者『えっと、部下さん。どんまい』
相棒『大丈夫、私達も何も聞いてないから!』
部下「十分聞こえてるじゃないのぉぉおおおお!!!!!」イヤァァアアア!
魔王「…………」キマズイ
側近「…………」キマズイ
部下「もういっそ殺して……」ズーン
魔王「この件にはふれないようにしましょう」コソッ
側近「ああ、そうだな」コソッ
庭師『そうそう。ねぇ、侵入者さん。どうしてこの城に?目的を教えてくれない?』
勇者『目的?うんあるよ目的』
相棒『目的さえ果たせば何もしないよね、誰にも手出さないよ』
勇者『そうだ、伝えてくれないかな。魔王様と、竜族の側近さんに』
魔王「!!」
側近「!!」
勇者『俺勇者なんだけどさ。あ、こっちは相棒ね』
相棒『二人組の勇者一行でーす』
勇者『俺達の目的はただ一つ』
勇者『魔王様と側近さん。この二人と闘いに来た』
勇者『受けてくれるよな?』
相棒『受けてくれるよ、』
相棒『--だって見てるんでしょ?』
勇者『魔王様』ニコリ
相棒『側近さん』ニコリ
魔王「」ザワッ
側近「」ザワッ
部下「っ!!!魔王様!側近様!」
魔王「--部下。悪いけど城内の全兵に各自持ち場に戻れと伝えて」
側近「庭師。すまんが大広間に来るようその者共に伝えてくれ」
庭師『っ、』『了解しましたわ』
部下「待って下さい!罠かもしれません!」
魔王「聞こえなかったか部下」ザワッ
部下「!!!」ビクッ
部下「……わかり、ました」フォン ヒュン
魔王「ご指名よ。悪いけど側近、付き合ってもらうわ」
側近「構わん」
部下『城内の全兵に通達!!各自持ち場に戻れ!!繰り返す!各自持ち場に戻れ!!』
部下『魔王様、並びに側近様が……出るとのこと!』
部下『繰り返す!』
勇者「あ、回線奪えた。聞こえるか相棒」
相棒「聞こえる。良かった、受けてもらえるみたいだ」
勇者「大広間かぁ、さっき通った場所だっけ」
相棒「あってると思う」
勇者「あー!!なんかっ!」ザワザワ
相棒「いいね!!この感情!」ザワザワ
相棒「楽しみだなぁ!」ニヤリ
勇者「ああ、楽しみだ!」ニヤリ
魔王城。
大広間。
魔王「…………」ザワザワ
側近「…………」ザワザワ
コソコソ
警備兵1「やべぇ、魔王様と側近様、マジだ」
警備兵2「放出されてる魔力ハンパないな、空気が震えてる。……うぇ、耳なりするわ」
警備兵3「ピリピリするよう。肌が痛いよう。でも見る。絶対見る」
警備兵4「お前ら魔力耐久低いからなぁ、--待ってろ、」フォン
警備兵2「お、耳鳴りが消えた」フワッ
警備兵3「うー?痛くないー?」フワッ
警備兵2「わり。俺達の魔力耐久上げてくれたんだな。助かったわ」
警備兵3「ありがとー、もう大丈夫だよー、4くん大好きー、えへへー」ニコニコ
警備兵4「…………、」フゥ
警備兵1「おちるなよ、絶対おちるなよ」
警備兵2「男だから、ロリの皮かぶった男だから」
警備兵4「わかってる、わかってるけど!あのキュルルンオーラやべぇんだよ」
警備兵1「ほら、魔王様と側近様見て正気に戻れめっちゃ怖いぞ」
部下「………、」
警備兵2「俺初めて見たかもしんね。魔王様達がここまで魔力放出してんの」
警備兵3「それ程の相手ということだよ、その侵入者さん達が」
警備兵3「--部下さん、あの侵入者さん達って、何者なのー?」
警備兵1「」ビクッ
警備兵4「」ビクッ
部下「第三部隊の方々ですね、隊長がお怒りですよ。早く持ち場にお戻り下さい」
警備兵3「侵入者が何者か、ちゃんと教えてくれたら、おとなしく戻るよーう」
警備兵2「部下が来るってことは、俺達ここにいちゃマズいのか?」
部下「仕方ないですね」ハァ
部下「……相手は勇者。連れは一人。強さは……魔王様と側近様がああして待ち構える程、としか言えません」
警備兵1「うわっ、マジか」
警備兵2「それはもうアウト」
警備兵3「わー、それなら僕達足手まといになっちゃうねー」
警備兵4「すみません、おとなしく戻ります」
魔王『わかればよろしい』
ヴウゥン
警備兵2「んげ!足下に魔法陣!!」
警備兵3「光ってるねー、あ、これ強制転移用の魔法陣だ」
警備兵1「うーん、やっぱバレてたか。この距離で補足、陣展開は流石だなぁ」
警備兵4「こりゃ始末書出さなきゃならないかもな」
側近『始末書?当たり前だ。第三、侵入者を追いかける、お前等の言動は筒抜けだったぞ』
警備兵ズ「やべっ」ギクッ
側近『第三部隊、一月給料減額』
警備兵ズ「えぇええええぇぇー!!?」ヒュン
部下「…………、」
魔王『あなたも転移魔法の範囲に入れていたのだけど』
部下「自分の身だけなら守れます」
部下「後学のため、戦いを拝見させて頂きます」
魔王『……強制的に転移させても良いのだけれど、』
側近『時間がないな、』
部下「!!!」ハッ
ギィィイ
部下(扉が、開いた)
魔王『きた』
側近『きた』
勇者「……………、」ザッ
相棒「……………、」ザッ
部下(あれが、勇者一行……)
部下(金髪の優男が勇者……っ、怖い)
部下(白髪の女性が、その連れ……このヒトも、--二人そろって、なんて嬉しそうに笑っているの)ゾワッ
部下(でも、気のせいかな……あの女性、側近様に、感じが……似てる)
勇者「…………」テクテク
相棒「…………」テクテク
魔王「…………」ザワザワ
側近「…………」ザワザワ
魔王(やはり、ただ者ではない。この状況で楽しげに笑うとは)
側近(あの女……まさか、)
部下(広間の中央で、歩みを止めた……そこから攻める気ね)
勇者「ふぅ、」ドキドキ
相棒「ふぅ、」ドキドキ
勇者「こ、こんちは!!今日は挑戦を受けてくれてありがとう!!職業勇者をしています!!よろしくお願いします!!」ペコッ
相棒「こんにちは!!同じく、挑戦受理感謝します!!え、っと、勇者の相棒で、竜族です!!よろしくお願いします!!」ペコッ
魔王「ふん、律儀だな。しかし、」チラッ
側近「……竜族?」ピクッ
部下(竜族……側近様と同じ、)
部下(竜族って皆同じだと思っていたけど……)チラッ
勇者「相棒、痛いよな」コソッ
相棒「うん、心臓痛すぎ」コソッ
勇者「闘争心ってすごい」
相棒「闘争心ってすごい」
魔王「あの白い女性が竜族、」
側近「そのようだな、」
魔王「私、貴方以外の竜族を初めて見た」
魔王「意外とカラフルで色違い豊富なのかしら。みんな頭堅くて仏頂面だと思っていたけど」
魔王「違うみたいね」クスッ
側近「…………」ハァ
部下(確かに)クスッ
勇者「よし、魔王様も側近さんも準備万端みたいだし!」フォン パシッ
相棒「やるぞー!!」フォン パシパシッ
魔王(勇者、武器は剣、)
側近(竜族、武器は双剣か)
勇者「いざ、尋常にー」キュイーン
部下(--っ、なにこの魔力、耳鳴りが……!!)
勇者「勝負!」フッ
相棒「勝負!」ヒュン
部下(嘘、消え……!!)
勇者「………、」フッ タッ
相棒「…………、」ヒュッ タタッ
部下(--て、え?何であんな離れた所に、……魔王様も側近様も動いていない。この一瞬でいったい何が)
勇者「どうした、俺……」ボウゼン
相棒「なんで、私……」ボウゼン
魔王「馬鹿にしているのか、」ゴゴゴゴ
魔王(速さは認めよう、こう易々と懐に飛び込まれたのなら)
側近「嘗めるのも大概にすることだな、」ゴゴゴゴ
側近(しかしアイツは、何をするわけでもなく剣を引き、飛び退いた)
魔王側近(なんたる屈辱!)
魔王「来ないのならこちらから行く」キィン フッ
勇者「 、」
側近「……………」ヒュッ
相棒「 、」
ギィイイイイン!!
バチバチバチバチ!!ズガガガガガッ!!
ブオオオォ!!
部下「きゃ!」
部下(……魔力の波が、まるで暴風のよう!!目が……開けられない……息も、……早く障壁を、)フォン ヴヴウン
部下(--少しは楽に……え、嘘!!!あの勇者!魔王様の魔力を、剣を…!!受け止めているというの!!?)
ガキィイイン!!ギィン!!ガガガガッ!!
部下(手数が多すぎて見えない…!!側近様とうち合ってるのは、あの竜族……!?全て防いでいるなんて……!!)
魔王「何故手を出さない!!」キイィィン
側近「喧嘩を売っといてそれはないだろう!!」ヴヴゥゥン
部下「え…!?」
部下(手を出さない、って、どういう、)
勇者「…………、相棒」フォン
側近「…………、うん」フォン
キイィイイイイイイイィィィイイン!!
ビリビリビリ
部下(っ、何この音!……障壁が、揺れる……!!)
部下(広間全体に…魔法陣が二つ、重なって、広がっていく!!?赤い光が強さを増して……、なんて禍々しいの……!!)
部下(勇者と竜族は……二人で障壁を展開して……これを、受け止めるっていうの!?--そんなの、)
魔王「こちらは忙しいんだ。それを邪魔し、おまけに嘗めきった戦いまで、」
側近「どこまでこちらを苛つかせるつもりだ、」
キィン、
部下(--音が、止まった、魔法陣も、消え、)ゾワッ
部下(違う!!!)
魔王「煩わしい。さっさと、」
部下(障壁!全魔力で最大展開!!)フォン
魔王「消えろ」
側近「消えろ」
勇者「!!!」ケホッ
相棒「!!!」コホッ
カッ!!
部下(光が……っ!!)
ズガガガガガガガガガッ!!
ビリビリビリビリ!!
部下「くぅ……!!」
ガガッ、ガッ、
ビリッ、ピリリッ
部下(……う……やっと、終わった……白い煙で……何も見えないや)
部下(あれは……空間、集中破壊型の、魔法。対象のいる空間そのものを破壊……威力に比べ周りへの被害は少ない)
部下(余波だけで、魔力耐性の無い者なら殺してしまいそう)
部下(こんな魔法をこんな短時間で展開するなんて、)
部下(やっぱり、凄い……魔王様も、側近様も)
シュゥゥウウ
部下(あ……煙が、晴れる……人影が、二つ、見えて、)
部下「え……!?」
ヴヴゥン
勇者「…………解除」シュウン
相棒「…………、」シュウン
部下(嘘でしょ!障壁で防いだなんて!!)
部下(--あ、でも、)
勇者「………痛いな」ポタポタ
相棒「………うん、痛い」ポタポタ
部下(吐血してる……外傷は見当たらないのに、)
勇者「それに、全然楽しくない」
相棒「そうだね。よくわからないけど、何故かずっと、悲しかった」
勇者「だからだろうな。全く手ぇ出せねぇの、ははっ…は、あー、くそっ、」
勇者「馬鹿みたいだ、俺……」
相棒「……勇者、口から血出てるよ。防ぎきれなかった?」
勇者「……その言葉、そっくりそのまま返すよ」グイッ
相棒「……あ、ホントだ」グイッ
勇者「………………、」
相棒「………………、」
勇者「……………、楽しいと、思ったんだけど、……すみません、魔王様」ヘラリ
相棒「……………、ホント、最低な、終わり方、……ごめんなさい、側近さん」ヘラリ
魔王「……………、」
側近「……………、」
部下(どうして、あの二人は……さっきまで、あんなに楽しそうに笑っていたのに)
部下(今は、凄く、悲しそうだ……)
勇者「--ははっ……ちょっと逃げていいですか、なんてきいたら、怒っちゃいます?」
相棒「……私達、多分もう、戦えないと思うから、」
魔王「……くだらない、」
魔王「好きにするといいわ」
勇者「…………」フォン
部下(勇者達の足下に魔法陣、あれは、転移の)
勇者「…………ありがとう、ございます」ヒュン
部下(…………消えた、)
魔王「側近、」
側近「なんだ、」
魔王「むしゃくしゃするんだけど私どうすれば良いかしら」
側近「執務にぶつけろ」フォン
側近「部下、お前も一緒に戻るか?」
部下(転移魔法陣……、ああでも私、しばらくここから動けそうにないや)
部下「いえ、私は自分で」
魔王「……部下、障壁の展開でかなりの魔力消耗したでしょう、少し休むと良いわ」
側近「そうだな。おとなしく休んでいろ」
ヒュン
部下「…………、バレてたんだ、」
部下(勇者達もいなくなって、魔王様達も戻って、中心が酷く抉れた、大広間に、一人……)
部下(それにしても、)
部下(何で手を出さなかったんだろう、変な勇者一行……)
魔王城。
某所。
ヒュン スタタッ
勇者「……あ、ここ、」
相棒「……城内、だね。外じゃない」
勇者「……ごめん、自分で考えてた以上に動揺してるみたいだ。とにかく転移って思って」
相棒「……いいよ、私がやってもきっと同じだ。ショックなはずなのに、この場から離れたいはずなのに、離れたくない」
勇者「……そっか。そっくりだもんな、俺達」
相棒「へへへ……、おかげでお互い考えてることは筒抜けになっちゃうけど」
勇者「そうだよな……、ははっ、……」
勇者「…………」
相棒「…………」
勇者「--よし、とりあえず、勝手に誰かの部屋に転移しちゃったみたいだから、出ようか」
相棒「うん。--ここは、客間みたいだね。出入り口は、」クルリ
相棒「--っ、」
勇者「ん?どうした相棒」クルリ
勇者「!!」
相棒「…………壁にかけられてる、あの、大きな肖像画って」
勇者「……………、」
数時間後。
魔王城。庭園。
庭師姉「………あら?」
庭師姉「あらあらあら。茂みの中で並んでうずくまって……いったい何をしているの?勇者一行さん」
勇者「…………」ションボリ
相棒「…………」ションボリ
庭師姉「随分と酷い顔をしているのね。そうだ!美味しいお茶があるの、一緒にいかが?」
勇者「………ご好意には深く感謝します。……でも、お断りさせて頂きます」
相棒「私達がここでお茶したら、きっとお姉さんに迷惑がかかるから」
勇者「そもそも迷惑をかけないよう気配は消してたつもりなんですけど……それも甘かったみたいです」
相棒「城から早く出なきゃいけないのに、どうしても離れがたくて、」
勇者「--でももう、行きます」ガサガサ スクッ
相棒「これ以上の迷惑は、駄目だもんね」ガサガサ スクッ
勇者「侵入した時、少しでも怖い思いをされたのなら、すみませんでした」ペコッ
相棒「ごめんなさい」ペコッ
庭師姉「あら、あらあら。それなら私に、良い考えがあるわ」
庭師姉「この城にいられて、尚且つ私とお茶してもいい場所。そこに行きましょう、ね?」
勇者「お姉さん……」
相棒「どうして、そんなに、親切にしてくれるんですか……」
庭師姉「だって貴方達、凄く悲しそうな顔をしているんだもの」フォン
庭師姉「えっと、あの場所の座標は、っと……、人数は三人……良いわよねこれで……うん、これでー、良し!」フォン フォン フォン
庭師姉「ごめんなさい。転移魔法、自信が無くて。一応大丈夫だと思うから」
庭師姉「それじゃあ、行きましょう」
勇者「はい、」
相棒「……」コクン
ヒュン
サクサク
庭師弟「姉ちゃーん!どこだー?」キョロキョロ
庭師弟「おかしいな、ここにいるはずなのに……」
庭師弟「……もう、大事な話があるのに、」
庭師弟「……国境の戦況が悪化したって連絡が入ったんだよー」キョロキョロ
庭師弟「それで、魔王様と側近様が行くことになって、」カパッ イナイカ……
庭師弟「魔王城の、」チャプン
庭師弟「ぶくぶく」守りが薄くなるから、有事の場合は俺達も戦闘に参加しないといけないんだ
庭師弟「ぷはっ、今日は池に沈んでないか……」
庭師弟「まったく、どこ行っちゃったんだよ姉ちゃーん!」
数十分後。
魔王城。牢屋。
庭師姉「……そう、」
庭師姉「でも、ごめんなさいね。私にはあなた達の力になれないわ」
庭師姉「だってそれは、あなた達が自分の意思で自覚しないと、駄目なものだと思うから」
勇者「いいんです、話を聞いてくれてありがとうございました」
相棒「お茶も、凄く美味しかったです」
庭師姉「ふふ、そうでしょう?弟くんの選ぶお茶は、みんな美味しいの」
勇者「弟、って、あの時一緒にいた少年ですか?」
庭師姉「そうよ。自慢の弟なの」
庭師姉「それに、庭園も、この城も、魔王様や側近様、兵の皆さん、民の皆さん、この国を作る全てが、私の自慢なの」ニコニコ
庭師姉「最初はね、あなた達が私の自慢の全てを壊してしまうんじゃないかって、少しだけ怖くなったわ」
庭師姉「でも、あなた達はそんな酷い事、するようなヒトじゃないでしょう?」
勇者「」コクン
相棒「」コクン
庭師姉「ふふふ、そうだと思った」
勇者「一つ、質問良いですか?」
庭師姉「何かしら?」
勇者「この城の、客間みたいな部屋で、大きな肖像画を見たんです。魔王様によく似た小さな女の子と、あと二人、描かれていました」
勇者「あの二人は、魔王様のご両親ですか?」
庭師姉「そうよ。先代様と、奥方様。奥方様、綺麗な方でしょう?先代様は……ふふっ。ごめんなさい」
庭師姉「先代様は一年前に、奥方様はこの国を見る前にお亡くなりになってしまったけど、」
庭師姉「まだ若いのに、魔王様は立派に国をおさめているわ。本当に、頑張り屋さんの、素敵な子よ」
勇者「………」コクン
庭師姉「もちろん、側近様もね」
相棒「………」コクン
庭師姉「……大丈夫よ、私ね、もうすぐだと思うの。あなた達が自分の感情を自覚するのは」
庭師姉「だから、そんな沈んだ顔しないの。魔王様も側近様も死んだんじゃないんだから、もう会えなくなるわけじゃないんだから……笑って、ね?」
勇者「はい、」ヘラリ
相棒「はい、」ヘラリ
庭師姉「ふふっ、その調子!」
フォン
庭師姉「あら?」
ジジジジジ
勇者「通信魔法、ですね」
相棒「多分映像も一緒に繋げようとして、詰まってる感じです」
庭師姉「じゃあ弟くんだわ。あの子、私よりサポート系の魔法、苦手だから」フォン
庭師姉「私の通信魔法回線と繋げれば……それ、」フォン
プツッ パッ
庭師弟『……ちゃん、姉ちゃん!ホントどこに行っちゃったんだよ……俺、こういう魔法苦手なのに……!!』
庭師姉「ふふふー、繋がってるわよ、弟くん。ちゃんと映像付きでね。あなたの顔、はっきり見えるわ」
庭師弟『あ、え!?繋がって、…………、!!!』ブハッ
庭師弟『ちょっと姉ちゃん!!映像!!映す位置違う!!!絶対違うって!!俺そんな場所指定してないよ!』
庭師姉「あら?あらあら、ごめんなさい。私がいじったから、少しずれちゃったみたい」
庭師弟『だからだね、もう!!俺姉ちゃんの胸の谷間と話そうとしてたんだよ!?一瞬なんだかわかんなかったよ!!』
庭師姉「あらあら。それは吃驚したわね~、ごめんねー」
庭師弟『あああそんな事より!!姉ちゃん今どこ?大事な話があるんだよ、大変なんだ!!迎えに行くから場所教えて!!』
庭師弟『姉ちゃんは動いちゃ駄目だよ?すぐどっか行っちゃうんだから!!』
庭師姉「ふふー、わかったわ。私、弟くんが迎えに来てくれるの、待ってる」
庭師弟『うん、そうして!--で、今どこにいるの?外じゃないよね。見慣れない壁が見えるけど』
庭師姉「ここは牢屋よ」
庭師弟『……え?』
庭師姉「私今、地下牢にいるの。勇者さん達も一緒よ」フォン
庭師弟『映像の視点が動いて、え、あ、何で!?鉄格子の向こうに……勇者一行ー!?』
勇者「どうも、さっきはごめんな少年」
相棒「お茶センス素晴らしいと思うよ少年」
庭師弟『え!?え!!?』
庭師姉「じゃあ私、ここで待ってるわね。それじゃあ、」フォン
庭師弟『ちょ、姉ちゃ』ブチッ
ネエチャアアアアアン!!!!ズダダダダ
庭師姉「ふふ、私の自慢の……可愛い弟なの」ニコリ
勇者「悪いお姉ちゃんですね、」クスッ
相棒「本当に」クスクス
庭師姉「そうよ、私。悪いお姉ちゃんだもの」クスクス
一分後。
魔王城。地下牢。
勇者「行っちゃったな」
相棒「行っちゃったね」
勇者「…………、」
相棒「…………、すっごい静かだ」
相棒「なんか、ゆっくり頭の整理が出来そう」
勇者「そうだよな、あのお姉さん、そこまで考えていたんだろうな」
相棒「天然腹黒系お姉さんだったもんね」クスクス
勇者「少年は大変だろうなぁ」クスクス
勇者「……………、」
勇者「………あのさ、」
相棒「死んじゃってたね、」
勇者「…………、そうだな。もっと早く会いに行けば良かった」
相棒「無理だよ。一年前とか、勇者の傷、まだ治ってなかったじゃん」
相棒「落ち着いたらで良いって、そう、言ってたじゃんか…」スンッ
勇者「………せっかく静かなんだからさ、目閉じて、少しだけ休もう」スンッ
勇者「頭の整理、するついでにさ」
相棒「……そう、だね……」
勇者(…………、)
相棒(…………、)
勇者(なんだよ、おじさん、)
相棒(せっかく、顔見せに、来たのに)
勇者(何が歓迎するだ、)
相棒(楽しみにしてたのに、)
勇者(自慢の子供達、)
相棒(紹介するって、言ってたじゃんか)
二年前。
某所。
キィイイイイン
勇者「………」ボタボタ
相棒「………」ボタボタ
勇者「………、なぁ、」
相棒「………、んー?」
勇者「……生きてる?」
相棒「……返事、してるじゃん」
勇者「あー、そうだな……」ケホッ
相棒「……勇者さ、回復、全く追い付いてないでしょ」
相棒「腕はまだくっついてるように見えるから、煩わしいからって取るんじゃないぞー、流石にはえてこないだろうし」
勇者「いくらなんでも取らないって。俺どんだけお茶目さんなんだよ。ただでさえ、身体中、痛いってのに、」
相棒「勇者の自己治癒能力の限界、初めて見たよ」ケラケラ ケホッ
相棒「うう、痛い……」シュン
勇者「腹に風穴開けてるくせに笑うなよ。竜族ってホント丈夫だよな、」ケラケラ ケホッ
勇者「うう、痛い……」シュン
相棒「ぷくく……!……やめてよまた笑っちゃうじゃん笑い死にしちゃうよ」
勇者「いいんじゃないのー?笑い死にで」ケラケラ イタイ
相棒「苦しいのは嫌だよ」ケラケラ イタイ
勇者「あー、なんだかなー、どっちも魔力切れで体力も限界ってのがなー、」ダラーン
相棒「ここまでくるともうどうにもなんないよねー。私立てる気しないし」ダラーン
勇者「ホント、あのゲス野郎やってくれるわー、何であんなしつこいんだろうな、」
相棒「ねばねばして糸引いてそうなしつこさだよアレ。何食べて生きてたらあんなねばつくんだろう」
勇者「ゲスいしねばねばするしもう駄目だなアイツ。俺ここまでヒトを嫌いになったの初めてかも」ハッ!
相棒「同感。ヒトをあんなに嫌悪出来るもんなんだね」
勇者「あ、今気付いた!『俺の初めてあげるんだから、苦しんで沈め!!!』とか何か馬鹿言って決めれば良かった!」ケホッ サケンダカライタイ
相棒「今馬鹿言っちゃったよ」ケラケラ ケホッ イタイ
勇者「…………、」プッ
相棒「…………、」プッ
勇者「ははっ!ははははははっ!!」
相棒「あはっ!!ははははははっ!!」
勇者「はは、はーっ、は、……あー、痛い滅茶苦茶痛い!」ケラケラ
相棒「あはっ、も、はー、痛い、凄く痛い!!」ケラケラ
勇者「ははっ、はぁ……この痛みとも、もうすぐ、おさらばか……」ハァ、
キイイィイン
勇者「この魔法陣、止められないしな、」
勇者「空間破壊、魔法………よくもまぁ、広範囲にぶちかまして、くれたよ」
相棒「……主が死んだから形成と展開に時間がかかってるみたいだけど、」
相棒「なんにせよ、動けないから範囲外に逃げられない」
相棒「魔力も切れてるから、障壁で防ぐことも…………」
キィィィィイン
勇者「………相棒、根性出して飛べよ、逃げろよ」
相棒「……忘れたー?翼膜ぶち抜かれてるんだ、飛べるわけないじゃん」
勇者「……そうだったな。はは、竜化すると、当たり判定がデカくなるのがネックだよなー、攻撃力上がるけど」
相棒「口からビーム出せるしね、完全に竜化すると。羨ましいだろー」
勇者「あれも魔法みたいなもんだろ?羨ましくなんかないんだから!」ウラヤマウラヤマ
相棒「はは、羨ま、しいんじゃん、やっぱり」
勇者「…………、違うって、ばーか……」ウラヤマウラヤマ
相棒「……………あはは、……」
勇者「……………、」
勇者(……ああ、くそっ、)
相棒(……眠くなって、きた)
ザッ ザッ ザッ
勇者(……足音、気配)
相棒(誰かくる、)
魔族「…………」キョロキョロ
魔族「……!!」ハッ
魔族「やはり生きていたか!」タタッ
勇者「………なんだ、魔族のおじさんじゃん」
相棒「こんな所で、何してるのさおじさん……」
魔族「君達を探していた、」
魔族「時間が無い。行くぞ」ヒョイ ヒョイ
勇者「あ?」ブラーン
相棒「え?」ブラーン
魔族「………」フォン パシュン
魔族「魔法は……駄目か。死んで尚この影響力……。腐っても、と言うべきか。となると……移動手段は一つ」ザッ ザッ ザッ
勇者「……おじさん、」
魔族「…………」ザッ ザッ ザッ
相棒「おじさんってば、」
魔族「…………」ザッ ザッ ザッ
勇者「顔が怖い、」
相棒「おじさんってば」
魔族「気にしてるだからそう言うな」
勇者「真実じゃん」
相棒「確定事項じゃん」
勇者「よっ、悪人面!」ケホッ
魔族「……あまり喋るな、傷に響くぞ」
相棒「二人担いでよく言うよ」ケホッ
相棒「おじさんも怪我してるくせに」
魔族「…………、」
勇者「今、どんな状況かわかってんだろ?」
勇者「もう、いつ魔法が発動してもおかしくないんだ」
勇者「他人担いで悠長に歩いてる場合じゃないだろ、」
勇者「あんたは、」ゲホッ ボタボタ
魔族「…………、」
相棒「あの時のお兄さんや、連れのおじさん達、どうなった」
魔族「…………死んだ」
相棒「おじさんを守ってね」
魔族「……………、」
相棒「じゃあ駄目だろ、こんなことしてちゃ」
相棒「生きてなきゃ、駄目なヒトだろ、おじさんは」
魔族「置いて行けと、言うのか」
相棒「私達は、」ケホッ ボタボタ
勇者「--俺達は、ただ、戦いたかったから戦ったんだ。誰のためというわけじゃない」
勇者「おじさんには関係ないよ」
魔族「見捨てて行けと、言うのか」
勇者「ああ、そうだよ」
勇者「俺達に構って死んだら……、あんたのために、死んだ奴らが!報われないだろうが!!」
魔族「我ら魔族を救った英雄を見捨てて行けと!!死に行く様を黙って見ていろと!!そう君達は言うのか!!」
勇者「!!」
相棒「!!」
魔族「見くびるな。魔族とて義は有る。例え相手が勇者といえども、」
魔族「……返しようがない恩を、私達は受けた」
魔族「……頼むから、おとなしく助けさせてくれ……、私は君達に、死んでほしくない」
勇者「………なんだよおじさん、」
相棒「顔怖いくせに……」
勇者「顔が悪者のくせに……」
魔族「それは言うなと言ったじゃないか」シュン
勇者「ごめんおじさん」ヘラリ
相棒「落ち込むなおじさん」ヘラリ
魔族「……娘は、お父様カッコイいって、言ってくれるんだからな……」
相棒「あ、娘いるんだおじさん」
勇者「二人でいると誘拐犯と間違われない?おじさん」
魔族「……………」グスッ
勇者「いや、その、すみませんでした」
相棒「ごめんなさいもうやめます」
魔族「………いいんだ。謝らなくても。真実だからな」
魔族「娘が小さい頃は……特に」シュン
勇者「あー、……っと、そうだ。娘さん、どんな子なの?」
相棒「パパっ子の片鱗が見えてるけど、」
魔族「よくぞ訊いてくれた。娘は可愛い。嫁の若い頃にそっくりでな、もう凄く可愛い。パパ臭い!とかパパのパンツと私の服一緒に洗わないで!とかも言わないし、自分で言うのもなんだが最高のパパっ子だ」
勇者「……でもさ、何時かの日のために覚悟はしておくべきだと思うんだ」
相棒「パパさん思春期の存在。思春期の存在」
魔族「ふん、甘いな。娘はもう大きい。立派な淑女に育ってくれた」
勇者「大きいってどれぐらい?」
魔族「君達ぐらいだ。もちろん、外見年齢になるが」
相棒「筋金入りのパパっ子じゃん。良かったねおじさん」
魔族「そうだともそうだとも。嫁の魔法の才をそのまま引き継いでな、幼い頃は事あるごとに空間破壊系の魔法を私に発動して……。調整が難しい魔法だから上手く出来る所を見せようとしたのだろう」
勇者「なにそれ幼女怖い」
相棒「なにそれ幼女怖い」
魔族「何回か避け損なって腕が吹き飛びかけた」
勇者「末恐ろしい幼女だな」
相棒「今は成長してるから末恐ろしいレディだよ」
魔族「……そうだ。白い君は竜族のようだが」
相棒「うん、竜族だよ」
魔族「仏頂面は竜族の種族的特徴ではなかったのだね」
相棒「本人の性格だよ。確かに頭堅くて仏頂面のヒトは多いけど」
魔族「そうか……実は、私にはもう一人息子がいてね。血縁は無いが、そんなの関係ない。息子は私の子だ」
相棒「その子が竜族ってわけ?」
魔族「ああ。娘と共に本当の兄妹のように育てた。しかしな、本人は自分は拾われたと私達に恩を感じているようで、使用人の体を崩さない」
魔族「どんなにしつこく構っても一向に敬語を崩さない態度も崩さない顔も真顔」
魔族「パパ寂しい」シュン
勇者「頑張れパパ」
相棒「負けるなパパ」
魔族「成長するにつれ、娘には素を見せるようになった。だが私の前ではなかなか素になってくれない」
魔族「仕方ないので友人に頼んでよく娘との会話を盗み見させて貰っていた。可愛い娘と可愛い息子の共演だ」
魔族「これでご飯十杯はいける」キリッ
勇者「それは無いよパパ」
相棒「それはキツいよパパ」
勇者「まるで変態だよパパ」
相棒「無言で破壊魔法だよパパ」
魔族「」シュン
勇者「つか友人止めろよ」
相棒「手貸すなよ」
魔族「友人は……私と一緒にいたチャラ男だ」
魔族「あとはわかるな?」
勇者「あの時のお兄さんか!」ケホッ イタイ
相棒「やるよあのお兄さんなら凄く強いけどなんかチャラかったもん!!」ケホッ イタイ
勇者「まるでコミュ力の塊だったな……あのお兄さん」
相棒「そうだったね。…………でも、」
魔族「もう出来ないな」
魔族「…………一番の友だった」
魔族「ついて来るなと、言ったのだがな」
魔族「私一人でいいと、皆に、言ったのだがな」
勇者「……………、」
相棒「……………、」
魔族「………」フォン ヴヴヴ
魔族「ふむ、妨害が酷いが、この反応なら、もう少し歩けば転移魔法発動圏内だ」
魔族「どうやらこの魔法陣、君達を中心に展開されたようだな、」
キュイイイイ イ イイ
勇者(……音が変わった、)
相棒(陣形成の最終段階に入ったのか、)
魔族「随分と好かれたものだな、」ハハハ
勇者「笑ってる場合じゃないよ、おじさん、マズいよ」
相棒「もうすぐ魔法陣が完全に展開される。そこからはすぐだ」
勇者「パシュンで」
相棒「ぽん、だよ」
魔族「君達の言い方だと全く怖くないな」ハハハ
魔族「まぁ良いじゃないか、ほら」フォン
魔族「魔法発動圏内だぞ、魔法陣の展開には、少し時間をかけると思うが」
魔族「転移先は……どうしようか。すまないが人間領はよく知らなくてね」フォン
相棒「ここはいるだけで色々削られるから、ここ以外なら私、すぐに動けるようになると思う。だから、どこでも良いよ、」
相棒「って言いたいけど、……勇者が長く保ちそうにないから、人間領に近いと有り難いかも」
勇者「……俺、意外としぶといんだぞ」
竜族「じゃあもう少し頑張りなよー、絶対だからねー」
勇者「……おー、」
魔族「仲が良いんだな、君達は」フォン フォン
ヒュィィイイン
魔族「出来たぞ、我ながら良い出来だ」ウンウン
相棒「おじさん実は細かく調整するタイプの魔法苦手でしょ」クスクス
勇者「とりあえず型に魔力ぶち込んだよ感が、」クスクス
魔族「そう言うな!歪んでないだけ、マシなんだ、ぞ……」
勇者「…………、」ヘラリ
相棒「…………、」ヘラリ
魔族「…………、君達には、あちらで待っているヒトはいるのか」
勇者「……待ってるヒトなんて、いないよ」ヘラヘラ
相棒「……私達を好きになってくれるヒトなんて、いるわけないじゃないか」ヘラヘラ
魔族「………………、」
魔族「一年」
魔族「一年、待ってくれ。一年で私達の国はきっと安定する。--いや、必ず安定させてみせる」
魔族「傷が癒えたらで良い、落ち着いたら、君達の気が向いた時で良いんだ。顔を見せに来てくれないか」
魔族「必ず、歓迎する。娘と息子を紹介しよう。きっと、仲良くなれる」
勇者「……………、」
相棒「……………、」
魔族「……さぁ、もう、行きなさい」フォン
ヒュゥゥゥウン
勇者「おじさん!」
相棒「おじさん!」
魔族「!」
勇者「ありがとう、」
相棒「必ず行くから、」
「「待ってて!」」
ヒュン
魔族「ああ、待ってる」
現在。
魔王城。牢屋。
勇者「~~~!!」
相棒「~~~!!」
勇者「死んでるじゃんか!」
相棒「まったく待ってないじゃん!」
勇者「待ってる宣言しやがったからもう絶対生きてるもんだと思ったわ!」
相棒「顔怖い魔族ってそうそういるんだねー、じゃないよ!そうそういないよ畜生!!」
勇者「肖像画とか!まさかまさかと思って『おじさん夫婦と私』的なタイトルを想像しちゃったよ!!」
相棒「おじさんこの野郎!お姉さんに言われてどんだけショックだったかわかるか!」
勇者「わかんないよ死んでるもん!!」
勇者「おじさんこの野郎!!」
相棒「おじさんこの野郎!!」
勇者「…………」ハァ
相棒「…………」ハァ
勇者「おまけに自慢のお子さん達に喧嘩うっちゃった」
相棒「しかも無様。すごく無様な喧嘩だった」
勇者「仲良くなるもくそもないよ、あんな喧嘩しかけて、」ハァァァ
相棒「……思えば気付くポイントはあったね沢山」ハァァァ
勇者「……それに気付けない程俺達は呆けていたわけか……」
勇者「とりあえずだ。一つだけ、はっきりと判明したことがある」
勇者「俺達のこれは、」
相棒「闘争心じゃない、だろ?」
勇者「……気付いたからといって何かわかることでも無いけど」
相棒「あの村で、お兄さんたちに過去を振り返れ、って言われたの覚えてる?」
勇者「覚えてる。……過去から現在にかけてなら、そりゃあ先にお前のこと思い出すわ」
相棒「馬鹿だったよね、ちょっと前に滅茶苦茶に強い相手と全力で戦ったのに」
勇者「あの時はこんな気持ちじゃなかった。完全に冷え切ってた」
相棒「強いからって毎回闘争心を感じるわけでもなく、熱くなってるからって闘争心とは限らないと」
相棒「なんにせよ、闘えないこの感情は、闘争心じゃない。じゃあ何だ、と言われても……」
勇者「…………、」
相棒「…………、」
勇者「もうお手上げ」ハァ
相棒「完全に詰み」ハァ
魔王城。
1階廊下。
フォン
部下「魔王様、ご報告です」
魔王『緊急か』
部下「……いえ、」
魔王『なら後にして』キィィィン
部下「……やはり緊急で、お願いします」
魔王『…………?城内で何かあったの?』キィィィン
部下「あったというか、……いた、というか」モゴモゴ
魔王『はっきり言いなさい。悪いけど、私今面倒な魔法陣を展開中なの』キィィィン
部下「すみません!……では、はっきりと申し上げます!!」
部下「勇者とその連れが城内に残っているようです」
魔王『……は?』
部下「勇者一行が、地下牢にて、庭師とお茶会をしていたようです!」
魔王『』ボシュン
ギャオォォオオ!!! ドスンドスン
ウワァアアア!? ヒェエエエ!! ココココッチニキタァァアア!!
チョ!マオウサマ!!ナニヤッテンデスカァァア!!
部下(召還系だろうか……もしかして、失敗とか)
魔王『………………』ヤベッ
部下「………………」キマズイ
魔王『えー、ごほん……報告は以上?』
部下「……はい、以上となります。いかがしましょうか」
魔王『………勇者一行を、ということ?』
部下「はい。被害は無いとはいえ、魔王様や側近様が不在のこの城では、十分危険分子に成りうるかと」
魔王『……気配は完全に消えたように思えたけど……まぁいいわ』
魔王『ほうっておきなさい』
部下「いいのですか?」
魔王『……あなた、あの勇者達の事どう思う?』
部下「ちょっと変だと思います」
魔王『……前にお父様が言っていたのよ。いつか、ちょっとアレで変だけど、良い子な勇者とその連れがこの国を訪れるはずだって』
魔王『アレと良い子云々はこの際置いておくけど、一応勇者で、変ってことは合致する』
魔王『有り得ないと思うけど、お父様の知り合いという可能性が捨てきれない分どうこうは出来ないわ』
魔王『まぁ、向かってくるなら殺してやるつもりだったけど』キュイイイン
アアア コワカッタマジコワカッタ
コンナオチャメナシッパイデシニタクナイワー
マオウサマー! ツギハシッパイシナイデクダサイネー!!
魔王『わかってるから!さっさと持ち場に戻りなさい!!』
魔王『……えー、ごほん。喧嘩売っといて全く手を出して来なかったことにはかなり苛ついたけど』
魔王『何もしないのなら、牢屋ぐらい好き勝手に引きこもらせてやりなさい』
部下「了解しました」
魔王『通信、切るわよ』
部下「はい」
プツッ
部下「…………、」
部下(先代様が、そんなことを……)
部下「…………、」
部下(気になる、)
部下(庭師さんから報告を受けた限りでは、敵意は全く無かったそうだし、)
部下「……ちょっと、行ってみようかな」フォン
ヒュン
魔王城。
牢屋。
ヒュン スタッ
部下(ここに勇者一行が、)
ゴロゴロダラーン
部下(本当に牢屋の中にいる……)
勇者「……………あ、」ダラーン
相棒「……………大広間にいたお姉さんだ」ダラーン
部下(牢屋の中でこうもだらけきっているなんて……!!)
勇者「どうしたの?何か用?」ゴロゴロゴロゴロ ガチャン
勇者「……痛い、額打った……」シュン
相棒「転がりすぎなんだよ、もう少し考えて転がらないとね」ゴロゴロゴロゴロ ガンッ
相棒「……痛い、頭打った……」シュン
勇者「鉄格子堅い」シュン
相棒「壁堅い」シュン
部下「……………、」
部下「こ、こんな所で寝転がるのはやめなさい!ほら服!埃まみれじゃないですか!」
部下「もう!早く起き上がって下さい、痛みが酷いようなら治癒魔法かけてあげますから!」
部下「!」ハッ
部下「あ、今のは、その………」アセアセ
勇者「なんだろう、こんな風に構ってくれるお兄さんについ最近会ったような気がする」ムクリ
相棒「それに、聞き覚えのある声だ。『各自持ち場に戻れー』って、言ってたヒトじゃないかな」ムクリ
部下「何で知って……、あ、通信回線に侵入しましたね!」
勇者「ごめんなさい」シュン
相棒「出来心だったんです」シュン
部下「……セキュリティ強化しなきゃ」
勇者「…………」ジー
相棒「…………」ジー
部下「あ、え……何ですか?人の顔凝視して。私の顔、何かついてます?」
勇者「……なぁ、相棒、やっぱり似てる気がするんだ。訊いてみた方が良いかな」ジー
相棒「そうだね……、ここは同性の私がいくべきなのかな」ジー
部下「ちょ、なんで胸の方に視線が!?」
勇者「…………」ジー
相棒「…………」ジー
部下「無言で凝視しないで下さい!!」
勇者「頼む相棒ゴー相棒」ジー
相棒「よしきた任せろ」ジー スッ
部下「え、鉄格子から手出して、な、何ですか……?」
相棒「胸揉ませて下さい」
部下「え?」
相棒「胸揉ませて下さい」
部下「え、え!?」
相棒「やっぱ駄目ですか……」シュン
部下「えあ、良いですけど……」
部下(って私何言って……!!)
相棒「ありがとう」モミ
部下(ほんとにきたぁ!え、あ、ちょ、え、何この状況……!)
相棒「………」ムニ ムニ
部下「あ、あの……!」グスッ
相棒「………ううむ、」スッ
勇者「……どうだ?」
相棒「前が背中とかまな板は言い過ぎだよ。良い感じにあるよちゃんと揉めるよ」
勇者「やっぱり、あのお兄さんがちょっと誇張気味に……」
部下「」ガシャン!
勇者「!!」ビクッ
相棒「!!」ビクッ
部下「なんの、話、ですか?」ミシミシミシミシ
勇者「やべぇ笑顔怖い笑顔なのに怖いよ!」ガクブル
相棒「あわわ怖いよ鉄格子ミシミシ言ってるよ!」ガクブル
部下「誰が、誰に、まな板、だって、言ったんですか……?」ミシミシミシミシミシミシ
勇者「ととととある村で出会ったお兄さんが、」ガクブル
相棒「Cさん妹がいるって、それでAさんが、」ガクブル
部下「あんの巨乳厨がああああああああ!!殴る!!絶対殴る!!次会う時を貴様の命日にしてやるわあああああ!!」ミシミシミシミシバキッ!!
勇者「ててて鉄格子が!!」ガクブル
相棒「こここ壊れたっ!!」ガクブル
同時刻。
山間の小さな村。
村人C「テメェこの野郎!!」バキッ
村人A「ぐはぁ!!」ズザザッ
村人B「いや何やってんのCこの状況で何やってくれてんのC」ブッフォ
村人C「妹がコイツを殴れと言った気がした」キリッ
村人「こんな状況で電波受信出来るとかシスコンすげぇ」ケラケラ
魔王城。
牢屋。
部下「あんのクソ男!!何がおっぱいだ何が巨乳だ!!おっぱいが小さくて何が悪い!!努力してるんだぞコラ!精一杯、努力してぇ……っ、」ガシッ
相棒「え」
勇者「あ、相棒の胸が捕まった」
部下「なんですかこれぇえ!!何でこんなに大きいんですか!何食べたらそんなに大きくなるんですかぁ!」モミモミモミ
部下「なんなのこの感触なんなのこの重量感!!手からはみ出ちゃうよぉ、どうして、どうしてなのこの格差は、この胸の格差はぁぁあ!!」モミモミモミモミモミモミ
部下「ください、少しでいいから下さいぃぃいい!!」モミモミモミモミモミモミモミモミモミ
相棒「いや、何食べたらとか言われても、好き嫌いは無いししいていえば甘い物が好きというかその、気付いたら大きかったというか、」シドロモドロ
相棒「わけられるものなら、わけてあげるんだけど……ごめんね……?」
部下「う、うう……くそぅ……くそおおおお!!滅びろ!!世界中の巨乳信者は全て滅びてしまぇぇえ!!」ウワァアアアン!!
十分後。
部下「すみません。取り乱しました」シュン
相棒「気にしないで。なんというかその、私は好きだよ?」
部下「……ありがとう、ございます…!」グスッ
勇者「……終わった?」ノソノソ
相棒「終わった?って……そっちこそ途中から壁向いて体育座りしてたけど、どうしたの?」
勇者「いや、お姉さんが相棒押し倒した辺りで、何故だかわからないけど俺が見てちゃダメな気がしたんだ」
相棒「そっか、へんなのー」
相棒「……あ、そうだ。お姉さんはCさんの妹ってことで正解なのかな」
部下「確かにCは私の兄ですが、」
勇者「Aさんは……うん、村人さんやBさんとも知り合い?」
部下「はい。村人さんやBさんやクソは兄と同期だったので、よく知っています」
部下「あの……何故兄達の事を知っているんですか?」
勇者「ここに来る前立ち寄った村で、お兄さん達には凄くお世話になったんだ」
相棒「一緒にご飯食べたんだよ、お弁当も作って貰ったし、それもまた凄く美味しかった」
部下「東の方の、人間領に近い山の中の、小さな村ですか……?」
勇者「うん。そう。そこで、王都に妹がいるってきいたんだ。顔つきも似てるし、世話焼き屋さんだからすぐに気付くよって」
相棒「初対面の私達にこうだったんだから、お姉さんもなかなかの世話焼き屋さんだね」
部下「兄さん達の、知り合い……?」
部下「……じゃあ、じゃあどうして!あんなことしたんです!!」
部下「何故城に侵入を!?兄達の名を出せば私に取り次げたはずなのに!」
部下「言ってくれれば、魔王様も側近様も、少しは好意的になったはずなのに……!」
部下「なにより、どうして……、魔王様達に戦いを挑むような真似を……」
勇者「それは……、」
相棒「ちょっと、長い話になっちゃうから……」
部下「長くて結構!話して下さい!」
部下「もしやあなた方の目的は別にあったのでは?何故、わざわざ魔族領に?」
勇者「…………、俺、達は、」
キィイン
勇者「!!」
相棒「!!」
部下「何、今の音……っ」ゾワッ
勇者「相棒!!」フォン
相棒「わかってる!!」フォン
部下(障壁!?いきなり何を!?)
キィィィイン
部下「!!」
部下(城内に強い魔力反応!!!)
勇者「伏せてお姉さん!!!」
ゴォォォオオオオオ!!!!
ビリビリビリッ!!
部下「きゃ!」
勇者「俺達の障壁を揺らすか……!!」ビリビリ
部下(魔力の波が押し寄せている!いったい何が起こってると言うの!?)
勇者「やべぇぞこれ……!!マトモに喰らいでもしたら……!!魔力耐性低い奴は死んじまう!」
相棒「高くても障壁無しじゃ死ぬよ!!」
ゴォォォオオオオオ!! キィィィイイン!
勇者「魔力反応、別のか……?」
ゴォォォオオ、
部下「止まった……?」
勇者「--違う、」
キュイイン キュイイン キュイイン キュイイン
部下「魔法陣が、周りを、埋め尽くしてく……!?」
勇者「--召還、魔法陣……」
相棒「これ、一つ一つが全部……」
部下「なっ……!!」
勇者「魔王城ってこんなもんなのか?違うよな」
相棒「城が城内のヒト殺しにかかるなんてきいたことないよ」
部下「違います。こんなの私知りません。こんな魔力、」ハッ
キュイイン キュイイン キュイイン キュイイン
部下「まさかっ……!!!」フォン
ビリリリリッ!
部下「どうして!?外への通信回線が切れてる!」
部下「くっ……城内は!?」フォン
ピピッ ガガッ
『--い!これどうなってる!!』『なんだよ今の!何だよこの魔法陣!!』『先輩!!起きて下さい先輩!!』『治癒魔法!早く!!』『魔王様に連絡とれ!』『駄目です繋がりません!!』『誰でもいい!倒れてる奴探せ!!治癒間に合わないと死ぬぞ!』『やだよ4君…!!』『なにやってんだよ馬鹿野郎!!』『姉ちゃんアレ!!』
『--部下ちゃん、聞こえてる?』
部下「庭師さん!?」
庭師姉『私達、今庭園にいるんだけど』
庭師姉『城を赤い壁が囲ってるわ』フォン
バリバリバリバリ!!
庭師姉『回線が乱れてるから、私じゃ映像まで見せてあげられないけれど』
庭師姉『これ、そう簡単に破れそうに無いみたい』
『おい部下!聞こえるか!?』
部下「第三部隊の、隊長!--はい、聞こえます!」
第三隊長『さっきので負傷者の数がヤバい!非戦闘員が全滅だ、幸い障壁魔法使える奴が多かったみたいでまだ死人は出てない』
第三隊長『--が、あくまでまだだ。うちの奴も何人かやられた。まだ通信が繋がらない奴らもいる。動ける奴は負傷者の回収と治癒にあたらせてるが、手が足らん』
部下「っ、」
第三隊長『なぁ、部下、これってよ、』
庭師姉『部下ちゃん、これって、』
部下「はい。おそらく、お二方のご想像通りかと」
部下「旧魔王政権の負の遺産……魔法回廊が、開こうとしています」
数分前。
魔王城。城門。
城門兵先輩「くぁぁあ、」
城門兵後輩「女のヒトがそんな大きな口開けて欠伸っすか」
先輩「誰も見てないから良いじゃない。女意識しなくても」
後輩「俺が見てるじゃないっすか」
先輩「後輩は男として見てないからいいのー」
後輩「ちぇー、」
先輩「ちぇー、じゃないのー」ケラケラ
先輩「にしても、第三の連中、遅いわね」
後輩「そうっすね、ここまで通信が無いとちょっと心配になります」
後輩「食料搬入の業者さん、何時もは忙しいってバタバタしながら出て行くのに」
先輩「どこかで誰かのお喋りに付き合わされているのなら、それはそれでご愁傷様ってやつだけど」
先輩「もし倒れたりしてるなら事だからね、だから第三に探させてるんでしょ?」
後輩「過労かなぁ、大丈夫かなぁ」
先輩「あんた、差し入れよく貰ってたから、懐いてるわよね」
後輩「美味しい物をくれるヒトは皆良いヒトっす」キリッ
先輩「それを餌付けされてるって言うのよ」ケラケラ
先輩「--でも、確かに通信が入らないのは心配よね。どれどれ、こっちから通信を……」
キイィン
先輩「!!」
後輩「なんだ、今の、」
キィィィイイン
先輩「後輩!」ガバッ フォン
後輩「なっ!」
バリバリバリバリ!!
先輩「あぅう!っ、後輩障壁っ!!」
後輩「!!!」フォン
ゴォォォオオオオオ!!
ビリビリビリッ!!!
後輩「なんだよっ、これっ!」
先輩「はぁ、はぁ、っ……障壁、維持、して……」ヒュー ヒュー
後輩「先輩……?背中が……!!焼かれて!?」
後輩(城門に赤い壁……?まさか、アレがかすめて、)
後輩(俺をかばって、押し倒した時に!!)
先輩「大丈夫よ、大丈夫だから……」ヒュー ヒュー
先輩「この魔力の波は、強すぎて、私達には毒……障壁が無いと、最悪……死ぬわ」
先輩「耐えて……そう長続きは、しないはず……多分、だけど……」
ゴォォォオオオオオ、オオ
後輩「あ、止まっ……」
キィィィイイン キィィィイイン キィィィイイン
後輩「別の、魔力反応!!」
後輩「辺り一面に、沢山の魔法陣が…!!」
先輩「魔王、様に、通、信………」
後輩「はい!」フォン
バチバチバチバチ! バシュン
後輩(なんだ、今の……)
後輩(外への通信を、この壁が、遮断したっていうのか!?)
先輩「」
後輩(周りの魔法陣、見覚えがある、これは……一つ一つが、召還用の、)
後輩(魔力の波は止まってる、先輩をどこか安全な場所へ)
後輩(そうだ、壁が遮断しているはずなら、城内は……)フォン
先輩「」
後輩「……先輩?」
先輩「」
後輩「先輩!!起きて下さい先輩!!」
先輩「 、」
後輩「先輩!!!」
先輩「そんなに、叫ばなくても……聞こえてるわよ、馬鹿……」
後輩「せんぱいぃ……」グスッ
先輩「なに、情けない顔、してるの……」グイッ
後輩「……いひゃいれす、せんぱい」
先輩「私は動けないから、頼りはあんたしかいないのよ……?しっかり、しなさい」グイーン パッ
後輩「ひゃい!--っ、……つか、俺のほっぺ引っ張りすぎっすよ、痛いです」ヒリヒリ
先輩「ショック療法ってやつよ……」ケラケラ
先輩「さて、部下ちゃんか、第三の隊長に通信、繋げてくれない……?」
後輩「了解っす」フォン
後輩「こちら城門。部下さん、隊長殿、応答願います」
ジジッ ガガッ
部下『--はい、聞こえています』
第三隊長『城門か!無事か!?』
後輩「先輩が、怪我をブッ」ムニュ
先輩「無事です。問題ありません」グイッ
後輩(押しのけて、通信回線、奪うのはいいけど、)
後輩(胸、顔に当たってるよ先輩……!)
先輩「--皆さん、音を聞きました?おそらく魔法陣形成展開時の音だと思います」
部下『はい』
第三隊長『ああ、聞いた』
先輩「一瞬ですが、地面に大型の魔法陣が出現したのを見ました。おそらく範囲は魔王城全域」
先輩「消滅と同時に、」フォン
後輩(映像を繋げたのか、映しているのは、あの赤い壁)
先輩「この赤い壁が出現。城を囲んでいます。その直後、あの魔力の波が……」
先輩「そして、この赤い壁は全てを遮断するようです」
先輩「通信魔法回線を遮断しているのはこれです、物体の通過も、」ヒョイ
後輩(先輩、小石を拾って、投げた)
後輩(つか胸、やばいって胸……!!先輩の身体ヤバいあああああ落ち着け俺!!落ち着け俺ぇぇえ!!)
バリバリッ!! シュゥゥ
先輩「この通りです。ヒトの通過は厳しいですね。余程の実力者でない限り焼かれて死にます」
後輩(俺だって男の子なんだもん仕方ねぇじゃんかちくしょぉおお!!平常心!平常心!!りぴーとあふたみー!!平常心!!へいじょうしんー!)フルフル
部下『………予想はしていましたが、』
第三隊長『………ここまでか、』
先輩「マズいことになりましたね」
後輩(マズいよ本当になぁぁあ!)フルフル
数分前。
地下、食料庫近く。
警備兵2「おっさんいねぇな」
警備兵4「どこ行ったんだろうな」
警備兵1「おっかしいよなー、業者のおっさん、城内無意味にふらふらしないタイプのなのに」
警備兵3「そうだよねー、真面目さんだもんねー」
警備兵2「食料庫にはいなかったし、もうあてないぞ。捜索系魔法得意な奴に頼んで探してもらうしか、」
警備兵4「捜索系って……副隊長じゃん、隊長と一緒じゃん」
警備兵1「隊長とか、さっきまでこってり絞られたばっかだな」
警備兵2「…………、」
警備兵4「…………、」
警備兵2「四人もいるんだぜ!手分けすればすぐ見つかると思うんだ!」
警備兵3「そうだよう!僕達には努力が足りないんだぁ!」
警備兵4「……………、」ハァ
警備兵1「仕方ねぇな。もう少し探していなかったら、おとなしく頼みにいくぞ。ばったり倒れてたらどうするんだ」
警備兵2「……やっぱり、今頼みにいくか……」シュン
警備兵3「ううう……、そうだねぇ、倒れてちゃったら、可哀想だもん」シュン
警備兵4「最初からそれ言えりゃ良かったん、」ゾクッ バッ
警備兵4(強い、魔力反応!?こんな近くで!!?)
警備兵1「どうした4?倉庫の方なんか見て」
警備兵2「一応そこも見たけどさ、何もなかったぞ。ちょっとカビ臭いだけで」
警備兵3「んー?4くんー、どうしたのー?」
キィィ
警備兵4「!!!」ドンッ
ィン
警備兵2「いてえ!」ドサッ
警備兵2「何すんだいきなり突き飛ばしやがって!」
警備兵3「あうぅ、2くん重いよう」バタバタ
警備兵1「あれ?今、何か--」
警備兵4「障壁出せ1っ!!!」フォン
キィイイイイン!!
警備兵1「!!?」フォン
ゴォォォオオオオオオオオ!!
ビリビリビリッ!!!
警備兵1「なんだよこの魔力の波は!!?」
警備兵2「っ、ぐ、あ!!ああああああああ!!!?頭が……!割れっ…!!!」
警備兵3「うあ、ああああああっ!!?いたいっ、いたいぃっ………!!!!」
警備兵1「!!コイツ等耐性低いから……障壁越しでも……!!」
警備兵4「…………っ!」フォン フォン
警備兵2「っ、あ、あ……」フワッ
警備兵3「ひっ、く、あ……」フワッ
警備兵1「!?4、お前……!!」
警備兵4「……俺は、大丈夫だから、維持に、」
ゴォォォオオオオオ!!
警備兵4「」ゲホッ ボタボタ
警備兵1「!!……、なんだよ、なんなんだよっ、何が起きてんだよ!!早く止めよこんなの!!」
警備兵2「…………」ハァ ハァ
警備兵3「…………」ハァ ハァ
警備兵1「じゃないと、みんなが……!!」
キュイイイイィイン
警備兵4(………別の、魔力、反応、)
警備兵4(また、あの、倉庫から、)
ゴオォォ、
警備兵1「止まった……!!」
警備兵4「 、」ゲホッ ゴホッ ボタボタボタ
警備兵1「……おい、おい!4!!」
警備兵4「 」ボタボタ フラッ
警備兵2「う、ぐ……4……?」
警備兵3「4……くん……?」
警備兵4「」ドサッ
警備兵2「4!!」
警備兵3「4くん!!」
警備兵1「やっぱりお前……魔力を二人に回して……!!」
警備兵1(二人の魔力耐性を上げるかわりに……自分を障壁の範囲から外したのか!!)
警備兵1(いくらお前の耐性が高くても……アレをまともに受けたら……!!)
キュイイイン キュイイイン キュイイイン キュイイイン
警備兵1(くっそ、なんだよこの魔法陣の数っ……!!やばい、この状況……やばすぎる!!!)
警備兵3「4くん、ねぇ起きてよ4くん……!」
警備兵2「お前、俺達の耐性上げたよな、そうだよな、だから……!!」
警備兵4「」
警備兵1「4……!っ、今は、通信……隊長……!!」フォン
第三隊長『っ、お前ら、無事か!?2と3がアレ食らったら……!!』
警備兵1「……二人は大丈夫です、でも4が、」
警備兵1「二人の魔力耐性上げるかわりに、自分を障壁の範囲から……外しました」
第三隊長『っ……あの、馬鹿……』
警備兵3「うああ、やだ、やだよう!!!やだよ4君…!!」
警備兵2「なにやってんだよ馬鹿野郎!!お前が倒れたら、……倒れるぐらいなら、っ、ごめん……!」
警備兵1「俺達は治癒魔法が使えない、使えたのは4だ……!至急取得者の応援お願いします!!」
第三副隊長『悪いがそれは出来ない』
警備兵1「副、隊長……!出来ないって、どうして!!」
第三副隊長『負傷者はお前達だけではない、今のは城内全ての者が受けたんだぞ!兵ではない、城を出入りする一般人もだ!!』
第三副隊長『お前等は兵士だろう!応援なんて頼んでる暇があったら4抱えて走れ!!空間が歪み転移が使えない今、私達は走るしかないんだ!!』
第三副隊長『負傷者は大広間に集めている!わかったなら走れ!!すぐにだ!!!』
警備兵1「っ、了解!!」
警備兵1「2!4を頼む!!転移は使えない!3は俺と道なりの負傷者拾いつつ大広間まで走るぞ!!!」
警備兵2「了解……!」ヒョイ
警備兵3「了解……!」
警備兵4「--ストップ……ちょっと、待ってくれ……」フォン
警備兵1「4!?」
警備兵2「4!!」
警備兵3「4くん!!」
警備兵4「治癒は、自分でする……、通信、まだ繋がってるか……?」フワッ
警備兵3「うう、ううう……!!」ウルッ
警備兵2「なんだよ……4っ……!!」グスッ
警備兵4「わり……ちょっと意識飛んでてさ、」
警備3「4くん……4くぅぅうん!!!」ダキッ
警備兵1「心配かけやがって……、本当に、大丈夫なのか?」ホッ
警備兵4「」
警備兵2「ちょ、4……?」
警備兵1「どうした、まさか、大丈夫じゃないって、」
警備兵4「たすけて」フルフル
警備兵2「!!?」
警備兵1「!!?」
警備兵4「こいつ、めっちゃ、いいにおいする」フルフル
警備兵3「4くん4くん4くぅうん!!」スリスリ ウワァアアアン
警備兵4「やばい、こいつおとこだよな、なんでこんな、いいにおい、すんの?」フルフル
警備兵2「あああああ!!離れろ3んん!!」ヒョイ ポイッ
警備兵3「ふえ?」スタッ キョトン
警備兵1「4!深呼吸だ!!大きく息吸え!そして吐け!それを繰り返せ!!」
警備兵1「いいか!?コイツは男だ!!ロリの皮かぶった正真正銘の男だ!!胸は無いし股には俺らと同じ物がついてる!!」
警備兵4「おとこ、おとこ、3は、おとこ」ブツブツブツ
警備兵2「どんなに可愛くても、男なんだ!!あざとい腹黒のお兄さんなんだ!!だからおちるな!おちるなぁあああ!!」
警備兵4「おとこ、男……そうだよな。1、2……助かったよ……ありがとう」
警備兵3「もう少しだったのに」ボソッ
警備兵1「!?」
警備兵2「!?」
警備兵4「!?」
警備兵3「ねぇ4くん、本当に大丈夫なの?」キュルルン
警備兵2(キュルルンオーラで今の無かったことにする気だ)
警備兵1(幻聴じゃないのが怖い)
警備兵4(危なかった俺、マジ危なかった……)ケホッ
第三副隊長『』
第三副隊長『4、』
警備兵4「副隊長!--そうだ通信、副隊長、報告が、」
第三副隊長『ぐしゅうぅ……、4、4んん、ばかお前ばかぁあ!!死んじゃったかと、おもって、おもってぇっ……えぐっ、ひぐっ、うわぁあん』
警備兵ズ(あちゃー、やっぱ泣いたか)
警備兵2「副隊長泣かせんなよ4」
警備兵1「副隊長凄まじい泣き虫って知ってるだろ4」
警備兵3「そうだよ4くん副隊長泣いちゃったよ、ごめんなさいって言わないとダメだよう」
警備兵4「え、あ、すみません副隊長……えっと、この通り生きてるので、どうか泣き止んで下さい」
第三副隊長『っく、ひっく、ほんとだなぁ、いきて、っく、いきてるんだなぁ、しんでっ、ないんだな……?』
警備兵4「はい」
第三副隊長『ぐすっ、わかったっ……ちょっと……まってて、』ズズッ チーン
第三副隊長『報告を聞こうか』
警備兵ズ(相変わらず変わり身早いな)
警備兵4「先程の膨大な魔力についてですが……、おそらく発生元のすぐ近くに、俺達はいます」
警備兵1「!!」
警備兵2「!!」
警備兵3「!!」
第三副隊長『!!待ってろ、隊長と部下にも繋げる』
警備兵2「4、それってどういう、」
第三隊長『さっきは途中で抜けて悪かったな。元気そうで良かったよ、4』
第三隊長『--で、そりゃどういうことだ?』
部下『まさか、地下……食料庫の近くですか?』
警備兵4「はい。魔力の波が発生する直前、食料庫近くの倉庫で強い魔力反応を感じました」
警備兵4「そして、二度目。おそらくこの無数の召還魔法陣の発生に関わるソレも、同じく倉庫から」
警備兵4「俺達は今、食料庫近く……その倉庫のすぐ前にいます」
部下『……今はとにかく、状況が知りたいんです。申し訳ないのですが、』
第三隊長『--いけるか?お前等』
警備兵ズ「はい!!」
第三隊長『良い返事だ!』
第三隊長『いいか、これは魔法回廊が開いたことによる現象かもしれねえ。魔法回廊、一度話したことがあるはずだが、覚えてるよな』
警備兵1「魔法、回廊……」
警備兵2「あれか、旧政権の、」
警備兵3「負の遺産、」
警備兵4「本当に、存在していたのか」
第三隊長『あくまで可能性だ。--お前らの中で魔力耐性と魔力察知が一番高いのは4だったな?』
警備兵4「はい」
第三隊長『倒れんなよ。絶対な、お前が倒れたらみんな死ぬから、覚えとけ』
第三隊長『みんなよく聞け。4がやばいって言ったら即逃げろ必ず全員生きて逃げろ』
第三隊長『魔法陣には触るな、周りのもそうだが、見覚えの無い奴は特にだ。それと、件の倉庫を見回り次第、大広間に集合』
第三隊長『以上だ。これから通信は副隊長に任せる。わかったか?わかったな、よし行け!』
警備兵ズ「了解!」タタタッ
部下『よろしくお願いします!』
同時刻。
魔王城。庭園。
第三隊長「それとだ部下。俺にちょっと考えがある」
部下『なんでしょう』
第三隊長「もし回廊が開いたんなら、または開きそうである状態なら、俺達にはそれを塞ぐ手立ても防ぐ手立てもない」
第三隊長「外から隔離されてるのも痛いな。そこでな、周りの召還魔法陣が発動する前に、なんとしてでも魔王様と連絡をとりたい」
第三隊長「魔王様達が城から出てこれだ、何か俺らが知らない裏があるかもしれない」
第三隊長「だから、」チラッ
第三隊長「今からあの赤い壁とやらに穴をあけて、通信回線を通す」
部下『それは……駄目です!危険すぎます!!』
第三隊長「大丈夫だって。つかよ、止めても無駄だぞ。今この城内で一番偉いのは俺だ。魔王様や側近のやつはいないし、俺第三の隊長だし。俺の言うことが絶対だ」
第三隊長「おお、今なら独裁築けるやったな!まぁしないけど」
部下『隊長!』
第三隊長「つーことで、通信の準備しとけやお嬢さん」ザワザワ
ヴヴヴン ヒュイン ヒュイン ヒュイン
第三隊長「いくぞー、せえの!!!」ヒュン
ズガガガガガッ!!!
バリバリバリッ!!
魔王城。
牢屋。
部下「隊長!」
バリバリバリバリバリバリッ!!
勇者「--この状況、どう思う?」
相棒「魔法回廊なんて聞いたことないけど、きっと物凄くマズいものなんだ」
相棒「あの魔力の波は、発動時の余波というより、形成時の余波のように感じた」
勇者「同感。庭師や城門のお姉さん達が言っていたあの赤い壁、アレは第一段階。召還魔法陣の大量発生が第二段階。第三段階があるとすれば、」
相棒「回廊、ってのが、開く時。その余波は……さっきのを大きく上回る」
勇者「うん。第三段階に移るより、召還魔法陣の発動が先かもしれない。これ全部、展開までは済んで発動待ちの状態だ」
相棒「魔法陣、下手に壊すと一斉に発動しそうで怖いね。城内いたるところにばらまかれてるみたいだし……」
相棒「…………」
勇者「…………」
相棒「……私達、何をしたらいいのかな?」
勇者「わからないから、お互い考えるだけで動けないんだろ?」
相棒「……そう、だね」
第三隊長『どっせぇえええい!!!』
バリバリバリバチン!
第三隊長『お、あいたぞ穴。我ながら綺麗な円だ。半径かけ半径かけ3.14ですぐ面積求められそうな感じの』
第三隊長『っーことで部下、通信回線通してみろ』
第三隊長『悪いが俺はしばらく動けん』バチバチバチッ
部下「っ……、わかりました」フォン
部下「お願い……届いて!」フォン フォン
部下「魔王様っ!!!」
魔王城。
地下倉庫。
警備兵2「やっぱりカビ臭っ!」
警備兵1「倉庫っていっても所詮使われていない空き部屋だからな」
警備兵3「何も無いねぇ」キョロキョロ
第三副隊長『薄暗いな、おまけに回線が乱れて映像が悪い』
警備兵1「それは我慢して下さいよ副隊長」
警備兵4「…………」タッタッタ ペタペタ
警備兵1「奥の壁なんか触って……何かあるのか?」
警備兵4「ある。隠し部屋、ってやつか?この壁の向こうから、なんか変な気配がするんだよ。ヤバい魔法が形成中です、って感じの」ペタペタ
警備兵4「……壊しても……大丈夫、だな。うん」ペタペタ
警備兵4「頼むわ」
警備兵2「よしきた!!」ヒュン ドゴッ
ガラガラガラ
第三副隊長『加減上手くなったな、ちゃんとヒトが余裕で通れる分だけ壊して』
警備兵2「俺も第三の一員だから、当然っすよ、って、」
キュイイイイイン
警備兵ズ「……………、」
警備兵2「うわ、すげ……」
警備兵1「狭い小部屋だけど、床も壁も天井も……一つの魔法陣が広がって……」
警備兵3「赤く、発光してる……怖い」
警備兵4「!!おい!あそこ!!隅!!ヒトがいる!!」
警備兵4「おっさんだ!業者のおっさん!!」
警備兵1「!!」タタッ
業者「」
警備兵1「おい!おっさん!…………、」
警備兵1「……死んでる、」
警備兵1「……身体に魔力反応有り。微かに糸みたいな残滓が見える」
第三副隊長『--まさか、』
警備兵1「生物には使えないはずだよな、この系統の魔法。……生きたヒトは人形に出来ない、中身がない、死んだ身体じゃないと」
警備兵2「マジかよ、」
警備兵3「酷いよ、」
警備兵4「死んで、それこそ人形みたいに操られてただけなのに、誰も気付かなかったってことかよ……!」
警備兵1「最低でも今日、この城に来た時点で、おっさんはもう、」
警備兵1「とにかく、連れて帰る。こんな所にいたら……遺体すら残らないかもしれない」チラッ
警備兵1(なんだよこの魔法陣……こんなの禍々しいやつ、存在していいのかよ)
第三副隊長『全員、大広間へ戻るぞ。ここに長居しては危険だ』
警備兵1「了解」タタタッ
警備兵23「了解」
警備兵4「了、」ピクッ
キィン
警備兵4「全員走れ!全力!!!倉庫から出ろ!!」
警備兵123「!!」ダダダダッ
キイイィン
警備兵4「副隊長っ!」タタタタッ
第三副隊長『なんだ!』
警備兵4「召還魔法陣!おそらく発動します!!」
副隊長『!!!わかった!』フォン
第三副隊長『総員警戒態勢!!召還魔法陣が発動する!!!』
ズルズル ズルズルズルッ
ズルッ ズルズルズルッ ドチャ
警備兵1「うわ、」
警備兵4「魔物が、こんなに、」
警備兵2「ちょ、やべぇ」ププッ
警備兵2「廊下ぷぷっ、魔物、魔物が、いっぱいいる!」
警備兵3「わー、沢山いるよう、気持ち悪いよう」ケラケラ
警備兵1「……ははっ、なんだ、このレベルの魔物なら、少なくとも俺達は大丈夫じゃねぇか」
警備兵4「……正直、安心した」ホッ
グオォオオ!!!
警備兵4「あ、いや待て!倉庫になんかヤバいの出たっぽい!」
ドスンドスンドスンドスン!
警備兵2「ぶぶっ、なんかでけぇの来るあんな小さい出入り口から出ようとしてる」ケラケラ
ガラガラガラッ
警備兵1「やめて城壊れる!城壊れる!!」ハラハラ
警備兵3「わー、ドラゴンさんだぁ、狭い場所で動きづらそうだねぇ」ケラケラ
警備兵4「あっちゃー、修理費どうなっちまうんだろう」ハァ
グオオォオオオオ!!!
警備兵1「お、やる気満々だな」
警備兵2「元気だな、出てきたばっかなのに。魔法陣の中って狭いのか?」フォン パシッ
警備兵3「違うよう、きっとカルシウムが足りてないんだよう」フォン パシッ
警備兵4「どっちも違うと思うぜー」フォン
警備兵2「お?」フワッ
警備兵3「う?」フワッ
警備兵4「顔に出さないだけで、この環境はお前等には辛いだろ。あれから空気中の有害な魔力、異常なぐらい跳ね上がってんだから」
警備兵2「……大丈夫なのかよ」
警備兵3「…………、」
警備兵4「大丈夫じゃねぇよ。強い魔力浴びすぎて内臓系ボロボロだし、治癒しようにも魔力も体力もろくに回復してくれねぇし」
警備兵4「だからもう、これぐらいしかサポート出来ない」
備兵4「でもこれが、第三の戦い方だからな」
警備兵2「!!」
警備兵3「!!」
警備兵4「頼むぜ、二人共」
警備兵2「……ふへへ、了解任せろ!1っ!お前は4の護衛な!!動くなよ!!」
警備兵3「えへへ~、そうだね、これが第三の戦いだもんね!!1くん!4くんをお願いねえ!」
警備兵1「おーけい」
警備兵2「よっし!いくぞ!」タタタッ ヒュン
警備兵3「うん!僕ドラゴンさんの相手してくるね」タタタタッ
ドラゴン「グォォォオオ!!」
警備兵4「…………」ケホッ
警備兵1「無理するよな、お前」
警備兵4「いいじゃねぇか、俺がちょっと無理するだけで、第三部隊のクラッシャーコンビが存分に暴れられんだから」
警備兵3「柔い肉だなあ!!」ザシュザシュ
ギェエエエ! キイィイイ! グォオオ!
ドラゴン「 」ゴゴゴゴ
警備兵2「わあ!ドラゴンさん火吹こうとしてるの!?凄いね凄いね!!」ワクワクドキドキ
警備兵1「この班構成にした隊長の采配は正しいわ」
警備兵1「でも、お前はこれで良かったのか?お前の魔力耐性の高さでいったら第一配属だろ」
警備兵3「魔法も使ってやるよ!!熱除菌だ!!」フォン
ゴオオオォォオ!!
警備兵2「あー、3くんに先に炎使われちゃったねえ」
警備兵2「じゃあ、ドラゴンさんのを見る価値はないねえ」ジャキン ヒュン
ドラゴン「ガガッ」
ドラゴン「」ボトン
警備兵3「あれぇ?ドラゴンさん、もっと堅いと思ったのに、違うんだね」ケラケラ
ドラゴン「」ズシーン
警備兵3「あんまり柔らかいから、首、すぐ落ちちゃったあ」ケラケラ
警備兵4「何言ってんだ。第一は隊長が死んで解散したじゃねぇか」
警備兵1「第一が解散してなかったらの話だよ。この国最強の三部隊。魔法の第一、脳筋の第二、器用貧乏の第三」
警備兵4「否定できないな器用貧乏。まぁアイツらみたいに、武術特化で耐性低いの奴らも配属になるけど」
警備兵1「第一第二と違って班行動が原則なのはそこにあるよな。少しサポートするだけで攻撃力が跳ね上がるんだから」
警備兵4「俺は……確かに魔力耐性は高いし魔法にもそれなりに自信はある……けど、アイツ等みたいに動けないし、」
警備兵1「そこそこ優秀ねぇ」ケラケラ
警備兵4「からかうなよ。なによりさ、第一の奴らは嫌いじゃないけど、俺は第三が好きなんだよ」
警備兵4「だから俺、第三の配属で本当に良かったと思ってる」
警備兵1「ふーん、そっかー」ヘラリ
警備兵2「おい3!!今4がすげぇ泣かせること言ってたぞ!」ガシュ キュイン
ガガガガガッ
魔物「」チーン 魔物「」チーン
警備兵3「えへへ~!きこえたよう!これってあれなのかな青春ってやつなのかなあ!」ザシュ
魔物「」グラッ ドスン
警備兵2「やる気でるわー!!さっさと片付けて大広間に行くぞー!!」
警備兵3「おー!!」
警備兵1「あ」フォン
ビチャビチャ
警備兵1「相変わらずアイツ等が出ると血の飛び散り方がハンパないな」
警備兵4「あー、修理費に清掃費、側近様のため息が聞こえる気がする」ハァ
警備兵「同感」ケラケラ
魔王城。
庭園。
魔物魔物魔物魔物「」ワラワラワラワラワラ
第三隊長「……いやあ困った。囲まれた」
第三隊長「しかし多いな。これで全部発動したわけじゃないってのが、」ハァ
第三隊長「俺はもうおっさんなんだからさ、ちょっとぐらい休ませてくれないと困るぜ」フォン パシッ
キュイイン ヒュウウン
ポゥ ポゥ ポゥ ポゥ
第三隊長(魔法陣が四つ、俺の周りを囲んで)
「それっ」
ゴォォオオオオオオオオオ!!!!
第三隊長「あちちちちっ!!熱気!熱気!」バタバタ
魔物だった消し炭「」チーン
第三隊長「ったく、少しは加減しろよ」
第三隊長「第一、」
庭師姉「ふふふ、ごめんなさい。残すと片付けが面倒で」
庭師姉「それに、私は第一じゃないわ。第一部隊はもう解散してしまったじゃない」
庭師姉「だから私は、ただの庭師よ」フォン
ゴォォオオオオオオオオオ!!!!
第三隊長「そんな高速展開で消し炭一瞬な魔法使う庭師がいてたまるか」アキレ
庭師姉「いるじゃない。ここに」ニコリ
第三隊長「けっ、相変わらずだな。元第一部隊副隊長殿は。ちょっとはサポート系の魔法、上手くなったか?」
庭師姉「…………、」ニコニコ
第三隊長「…………、」
庭師姉「どうしてかしら、」フォン
魔物「」ゴォォオオオオオオオオオ
魔物「」ゴォォオオオオオオオオオ
庭師姉「攻撃系はこんなにも簡単に出来るのに」フォン キュイイン
第三隊長(お、空に魔力が収束していく。空中にいる魔物を一気に叩く気か)
魔物魔物魔物「」バサッ バサッバサッ
庭師姉「やっぱり私、不器用なのかしら」バキン
ヒュウン ドゴォオオオオン!!!!!!
魔物だった肉片「」ドチャドチャドチャ
第三隊長「うげっ、肉片の雨、」
第三隊長(えげつねぇな、爆散させやがった)
庭師姉「あらあら、嫌ね、庭園が汚れちゃったわ」
第三隊長「……肥料だと思えばいいんじゃねーか?」
庭師姉「……!そうね!ここには何を植えようかしら、食虫植物ならよく育ちそう!」
第三隊長(こりゃ庭園の一角を立ち入り禁止にしなきゃいけないかもなー)
庭師姉「あ、そうそう。一時動けなくなるまで魔力放出するなんて、隊長さん、意外と無茶するわね」
第三隊長「意外と、って……まぁいいや」
第三隊長「無茶っていうより、一番無難なのが俺だったからな。城内で壁破れる魔力持ってて尚且つ倒れない体力があるのは限られてる」
第三隊長「お前みたいのはここで使うより緊急時の戦力にした方が効率が良いだろ」
庭師姉「あら、やっぱりちゃんと考えてたのね。見た目は脳筋第二のくせに」
第三隊長「失礼だな、一緒にすんなよ」
庭師姉「ふふ、ごめんなさい」フォン
魔物「」ゴォオオ
第三隊長「そういやあ、弟の方はどうした、無事か?……なんてのは訊くだけ無駄か」
庭師姉「そうね、無事よもちろん。今は大広間で、第三の皆さんのお手伝いをしているんじゃないかしら」フォン
ゴォォオオオオオオオオオ!!!
消し炭「」「」
第三隊長「姉と同じく元第一所属の弟がいるんなら、大広間は安全だな」
庭師姉「でしょう?隊長さんはお嫌かもしれないけど、私で我慢してね」フォン
第三隊長「お嫌かもって、何言ってんだか」
第三隊長(--魔物が出てくる度一瞬で殺す護衛なんて)
第三隊長「頼もしい限りじゃねぇか」ケラケラ
庭師姉「そう?--なら、頑張らないと、ね!」フォン フォン
ヒュゴオオオオオ!!!
消し炭「」「」「」「」
第三隊長(あー、怖ぇ。解散しても、第一のイフリート様はご健在ってかー)
終わりまで全部投下するつもりだったけど、無理みたいだ。今日はここまで。半分は投下してきったはずだから、あと半分、付き合ってくれると嬉しい。
魔王城。
大広間。
庭師弟「」フォン フォン
トンッ トンッ
魔物「」ゴォォォ チーン
魔物「」バチバチッ チーン
警備兵5「おー、すげぇな弟。飛んだり跳ねたりで魔物次々とおとしてる」
警備兵6「弟の魔法はアレだろ?触れたら即発動。さしずめ弟自身が展開済みの魔法陣ってとこか」
警備兵5「さすが、魔法特化の第一所属だよな」
庭師弟「」スタッ
庭師弟「付近の魔物は全て倒しました、これで少しの間は大丈夫だと思います」
庭師弟「あのっ、障壁の維持、大丈夫ですか?お疲れなら俺、代わりますが」
警備兵5「しかも良い子めっちゃ良い子」
警備兵6「なにこの子大広間に来る魔物一手に引き受けてるのに障壁張ってるだけの俺達にこの優しさ」
警備兵5「もううちに嫁に来なさい」
庭師弟「え!?あ、そのっ……ごごごごめんなさい!!俺、姉が誰かに嫁ぐまでは一緒にいるって決めてるので!!」アセアセ
警備兵6「うちの腹黒ロリとはまた違った可愛さだな」
警備兵5「ショタに目覚めそうだよな。俺弟にも踏まれたいわ」
警備兵6「つかお前範囲広すぎ。魔王様だったり側近様だったり弟だったり」
警備兵5「範囲が広いことは悪いことじゃないだろ。それだけ楽しめるってことなんだし」
警備兵5「つーことで弟、俺を踏んでみないか」キリッ
庭師弟「えぇ!?ふ、踏んで、って……!だだ駄目ですそれは駄目です!」
警備兵5「どうしてもー?」
庭師弟「あの、えっと、すみません!また魔物出たので倒してきます!!」タタタタッ
警備兵5「逃げられちった」テヘペロ
警備兵1「おいこら変態」ドカッ
警備兵4「そんなに踏まれたいなら俺達で踏んでやるわ」ゲシゲシ
警備兵5「いててて!なんだよもっと強く蹴れよ足りないんだよ!!--って、1と4じゃん。おっつー」
警備兵1「誰でもいいのかよ」ハァ
警備兵4「もうやだこの変態」ハァ
警備兵6「よう、お疲れ。アレの発生元近くにいたんだろ?大変だったな」
警備兵1「おう、大変だった」
警備兵4「でもま、無事合流出来たから良かったよ」
警備兵4「あと、悪い。先に言っとくけど俺今魔力切れてるから、しばらく魔法使えない」
警備兵5「ばっか、これ以上お前酷使したらホントに死んじゃうだろ。んなこと出来るか」
警備兵5「でももし4が比較的元気な俺と障壁維持代わることになったら俺いろんな奴らにテメェこの野郎って殴られるだろうなそう考えて正直少し迷ってしまった」
警備兵6「最後の本音がなければ見直した」
警備兵1「うん」
警備兵4「うん」
警備兵6「で、2と3はどうした?……って、いるな。暴れてるな」
ウッヒョオオイ!! タイリョウタイリョウ!!
タオセタオセー! アッ!オトウトクンダー!!
アッ!2サン3サン、オツカレサマデス!!
オトウト!オッツー!
オトウトクンモ、オツカレサマァー!
警備兵4「弟こっちに来てたのか、こりゃ大広間は安全だな」
警備兵1「弟かー……おーおー、全く怯んでないな、また量出てきやがったが、ヤバい魔物は出てないってか」
警備兵6「なんだその判定?」
警備兵1「弟判定便利だぞ。アイツ、一目で相手の力量を誤り無く見極めるからな。ありゃ一種の才能だよ」
警備兵1「で、自分より上と判断した相手には絶対に向かって行かない。そういう相手には生き延びる優先で動くんだと」
警備兵6「じゃあ弟が怯んだらもう洒落にならん相手がいるってことか」
警備兵5「あーあ、弟マジうちの隊にこねぇかな……第一部隊実質解散してるんだし、今フリーだろ?」ジュルリ
警備兵4「おい変態アイツの姉ちゃん誰だと思ってんだ消し炭にされるぞ」
警備兵5「まぁそれもアリ。柔らか笑顔で蔑んでくれる典型的なタイプ」
警備兵1「もうお前消し炭にされていいよ」
警備兵4「むしろされろよ」
警備兵6「そして土に還れ」
警備兵5「ありがとう」ゾクゾク
警備兵146「……………」ハァ
警備兵4「……副隊長は?」
警備兵6「捜索魔法陣展開中。魔物も出たし、逃げ遅れてるヒトはいないか、って確認してる」
警備兵6「さっき間に合わなかったヒト見つけたみたいで、少し泣いてた」
警備兵4「…………そっか、」
警備兵6「業者のおっさん、駄目だったんだって?」
警備兵1「……おう。人形にされてた」
警備兵6「……嫌になるよな、こんなのって。平和が一番って何でわかんねぇかな」
警備兵6「もう誰も、死ななきゃいいのに」
魔王城。
城門前。
魔王「城下の避難は?」
側近「完了した」
魔王「そう、わかったわ」
魔王「--さて、部下。聞こえる?」
部下『聞こえます』
魔王城。
大広間。
魔王『状況の確認がしたい。もう一度、お願い出来る?』
部下「はい。--死傷者四十六、内四十三名に、過度の魔力を浴びた事による内臓の損傷が見られます。治癒が間に合ったため重傷者はいません」
部下「そして、死亡が三名。三名が全て、一般人です」
部下「……内一名、食料搬入の業者が、人形にされていました。業者の身体を操った何者かが、陣を発動させたと思われます」
部下「現状ですが、数名を除き大広間にて籠城しています。召還魔法陣による魔物の出現は減ったかに思われますが、残った陣の数は多く……兵の消耗が見られます」
部下「未だ空気中の魔力濃度が高いため、魔力、体力共に削られる一方です。特に魔力の自己回復は……余程耐性の高い者を除き、ほぼ無いと見ていいかと」
魔王『ありがとう。……城内にいたのが第三部隊で助かったわ。流石、国の三大部隊の一つね』
魔王『褒めてあげるから、もう少しだけ頑張りなさいと伝えてちょうだい』
「ちょ!マジかおいみんな!魔王様が褒めてくれるってさ!!だからもう少し頑張れってさあ!!」「ふおおお!!きたこれきたこれぇえ!!頑張れる俺達滅茶苦茶頑張れる!!」「よっしゃ俺もう少し気合い入れて障壁張るわ!」「あああ魔王様が褒めてくれる!ゾクゾクしちまうぜどちらかといえばやっぱり罵」「黙ろうな」バキッ
「げふぅ!」「おいおい大事な戦力だぞ殴んなよ」「すまん、つい」「まぁ余計に興奮するわけだが」「なにこいつ気持ち悪い」「やだよ気持ち悪いよう、いやほんとマジで気持ち悪いわ近寄るな」「ロリ担当を地声にさせる程の気持ち悪さ」「逆効果だって。ほら見ろよコイツの嬉しそうな顔……」「あー、うん。とりあえず頑張るか」「おー」ワイワイガヤガヤ
部下「すでに、聞いています」クスクス
魔王『そう、……何時もなら呆れる所だけど、今はそれが頼もしいわ』クスクス
魔王『--皆大広間にいるのなら、壁付近には誰もいないと考えていいのね』
部下「庭園に第三の隊長と庭師さんがいるはずですが、お二人なら問題はないかと」
魔王『そう、わかったわ』
魔王『では、手はず通り、私と側近は……壁をぶち破ってみるから』
部下「……はい」
部下(本当は、とめたい)
部下(通信が繋がって、城下へと転移した魔王様達が城の現状を見て、)
部下(城内の様子を知って、酷く怒った。すぐに壊すと言い出した)
部下(確かに、城を囲む赤い壁は魔王様達にしか壊せない。きっと、魔王様との話でほぼ確実とされた、開ききっていない魔法回廊を止めることが出来るのも、魔王様達だけだ)
部下(でもそれは、いくら魔王様達といえどかなりの負担になる)
部下(もしかしたら、と、最悪を考えてしまう)
部下「魔王様……、側近様……、」
魔王『なに?』
側近『なんだ』
部下(それでも私達は、守るべき王に、その右腕に、頼るしかないんだ)
部下「よろしく、お願いします……」
魔王『任せて』
側近『任せろ』
魔王城。
大広間前。
魔物だった塊の山「」チーン
勇者「…………、なぁ、」
勇者「俺達が、壊すべきだったのかな」
相棒「……わからない」
相棒「でも動けなかったのは、私達が部外者だから」
相棒「おまけに、下手にやらかして側近さんや魔王様にこれ以上嫌われたくない、ってのもあって」
勇者「アレ、魔王様達なら壊せるよな」
相棒「壊せるよ、絶対」
勇者「……そうだよな。問題は魔法回廊ってやつで、……ずっと、アイツ魔力のニオイがするんだ」
勇者「凄く苛々するのに、何をしたらいいのか、わからない」
勇者「そんな自分にも、苛々する」
相棒「--思えば、私達、誰かを助けるために動いたことなんて、無い」
相棒「誰かを助けるつもりで動いたことなんか……無いんだ」
勇者「……………、助けるって」
勇者「いったいどうすりゃ良いんだよ……」
魔王城。
城門前。
魔王「私は魔王よ!!その魔王が!!城の主が!!」フォン ヴヴゥン
側近「ここを誰の城だと思ってる!!!誰が残した城だと思ってる!!」フォン ヴヴゥン
魔王「城に入れないなど!!」キュイイン
側近「それをよくも!!」キュイイン
魔王「あってたまるかクソがぁあああ!!!」バシュン
側近「やってくれたなクソがぁあああ!!!」バシュン
ズガガガガガガガガガッ!!!
バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!
魔王「あんの隣国の馬鹿野郎!!宰相変わったそうだな!!よりによって旧魔王政権の幹部にねぇええ!!!」バリバリバリ!
側近「それは知ってるだろうな!!クソ魔王のクソ政権がヒトの国に仕込んでくれた爆弾の在処をなぁあ!!」バリバリバリ!
魔王「一般人にまでも手を出しやがってあの野郎!!潰すからな!!宰相共々潰してやる!!」バリバリバリバリ!!
側近「当たり前だ!!跡形もなく消し去ってくれるわ!!!」バリバリバリバリ!!
魔王「その前に!!!」フォン バリバリッ!
側近「壁風情が!!!」フォン バリバリッ!
魔王「調子にのるなぁあああああ!!!」バシュン!
側近「調子にのるなぁあああああ!!!」バシュン!
ドゴォォオオオン!!
赤い壁「」パリン
パリン パリン パリン パリン パリン
魔王「っは、はぁ…」
側近「はぁ、は……」
ガラガラガラッ
魔物「!」魔物「!」魔物「!」魔物「!」
魔王「あああもう!!消えろ、雑魚がぁ!!!」フォン
ゴオオオオオ!!
消し炭「」チーン
同時刻。
魔王城。
庭園。
第三隊長「おーおー、我が国の若きトップが揃ってご乱心だ」ザシュ
魔物「」ハンブン
庭師姉「あらあら、あんなに乱暴な口調になって。気持ち、わかるわ」フォン
消し炭「」チーン
第三隊長「しっかしまぁ、赤い壁、ものの見事に消えたもんだ。やっぱり壁と召還魔法陣は連動してたんだな」
第三隊長「これで、城内に残る厄介なもんは、すでに魔法陣から出て来ちまった魔物と、開く寸前の魔法回廊のみってことだ」
庭師姉「そうね。その上で私達が出来ることは、」
第三隊長「魔物を一匹残らず狩ること、か。壁が消えた今、魔物が城下町へ行きかねん」
庭師姉「そうね。城下へ行ってしまうなんてこと、あっていいわけがないわ」
第三隊長「よっしゃ、じゃあ、」
庭師姉「行きましょうか」
魔王城。
城門。
バシュン バシュン バシュン バシュン
魔物「」魔物「」魔物「」魔物「」チーン
魔王(今のは私ではない、側近のものでもない)
フォン
城門兵先輩『ここは私達が引き受けます。魔王様達は早く中へ』
城門兵後輩『ここは俺達の持ち場ですから!仕事はしっかりやりますよ!!』フォン
バシュン!
魔物「」チーン
魔王「わかった。任せる」
側近「転移を使う。大広間へ飛ぶぞ」フォン
魔王「ええ」
ヒュン
先輩「行ったわね」
後輩「はい」バシュン
バシュン バシュン バシュン
魔物「」ドサッドサッドサドサッ
先輩(相変わらず、後輩の狙撃の腕は確かだわ)
後輩「」バシュン
魔物「」ドサッ
先輩(魔法で形成した狙撃銃が後輩の武器……魔力は……体力だって残り少ないくせに、ここまで連続して撃てるなんて)
後輩「先輩、大広間で休んでても良かったんすよ」
後輩「背中、まだ痛むんでしょう」バシュン
魔物「」ドサッ
先輩「城門の担当は、あんたと私。あんた一人じゃない、私も一緒で二人なの」
先輩「こんな魔物が大行進してる中、あんたを一人で行かせるわけがないでしょう」
後輩「……俺、まだ信用に足らないんすかね」バシュン
魔物「」ドサッ
先輩「ばか」フォン
先輩「信用はしてるわ。当たり前じゃない」キュオン
魔物「」パシュン ドチャ
先輩「一緒にいたいって言ってるのに、それを拒否するわけ?」
後輩「」
後輩「それって、」
後輩「それって……!!」
後輩「デレっすかぁぁあああああああ!?デレっすよね!!デレっすよねぇうぉおおおおお!!!!」バシュンバシュンバシュンバシュンバシュン
後輩「行くぜ俺えええ!!城門は越えさせねぇぞ全部狙い撃ったらああああ!!!」ドパパパパパパ!
沢山の魔物「」チーン
大型魔物「ギャオオ!!」バッサバッサ
後輩「安心して寝転がってて下さいなんならお茶とお菓子ご用意しましょうか先輩!!油断だらけの先輩も俺が絶対守ってみせますからぁぁあああああ!!」フォン
先輩(銃身に魔法陣、やる気ね)
後輩「火力にも自信あるぜ魔物よおおお!!」ドゴォォン
大型魔物「」ジュワッ
先輩(あ、蒸発した)
後輩「よっしゃあ!!さあ来い!どんどん来いひゃっはぁああああ!!!」
先輩「…………馬鹿」ハァ
魔王城。
大広間。
警備兵5「魔王様!誉めて下さい殴って下さい!」
魔王「よくやったわ」バキッ
警備兵5「有り難き幸せ!」ズザザザザッ
魔王「他に殴られたい者は?」グッ
警備兵ズ「勘弁して下さい」
警備兵5「」ノ
警備兵6「頼むから大人しくしてろ」ドカッ
警備兵3「ね、お願いだよう」グリグリ
警備兵5「」ゾクゾク
魔王「…………、」ハァ
側近「…………、」ハァ
魔王「とにかく……よくやってくれたわ。ありがとう、みんな」
警備兵ズ「はい!」
側近「だが、もう少し頑張ってもらう。壁は壊した。総員、救護者を連れ城下に避難しろ」
第三副隊長「総員、ですか?まだ動ける兵はいますが」
側近「総員だ。城下に避難所を設置した。そこに行ってもらう」
フォン
第三隊長『おいおい、マジの総員か?』
庭師姉『魔物はあらかた狩り尽くしたとはいえ、これから何が起こるかわからない。……やっぱり少しは残した方が良いんじゃないかしら』
魔王「隊長か、……庭師も、ごめんなさいね。戦わせて」
庭師姉『いえ、久しぶりに運動してすっきりしましたわ』ニコリ
魔王「……それは良かった。でも、残ることは認めないわ。相手は旧政権、あの魔王が残した魔法よ」
側近「先代様から聞いてはいたが、まさか城内に仕込まれていたとはな」
第三隊長『起動するまで一切魔力反応を示さないとか、クソの独裁築いていただけはあるか』
魔王「一度起動した魔法陣を止めるには、完全に展開、発動する前に壊すしかない。壊すには魔法陣を形成する魔力を上回る魔力をぶつければいいわけだけど」
側近「今回は周りを気にする余裕が無い。魔力を抑えて壊せるような物ならすでに壊している」
魔王「時間が無いの。ここは私が送ってあげるから、おとなしく避難して。これは命令よ」
ヒュウウン
警備兵ズ「やべぇ、足元に魔法陣きた」「うわ、あちらこちらで転移魔法陣大発生」「みんなで大移動」「強制転移かあ、僕達には逆らえないねぇ」「じゃあ4頑張ってみろ」「は?」「1くんと6くんどっち残す?」「はい!」「じゃあ俺とりあえず手上げた5止めるから、頼むわ1」「了解。通信回線維持しとけよ」「え俺マジ残る流れ?いや、構わないけど」フォン
ヒュン
部下「…………、」フォン
魔王城。
城門。
後輩「うおおおお!!足りない!!足りないぜ!!もういないのか出てこいよお!!」ヒーハー
先輩(これであらかた片付いたって考えてもいいか)バリボリ モグモグ
先輩(せんべい美味しいなぁ、って)モグモグ
先輩「あ、」
後輩「ん……?あ、」
ヒュォォン
先輩「転移魔法陣……これ、魔王様のね」
後輩「じゃあ逆らわない方が良いっすね!」
先輩「そうね。状況は一緒に飛ばされたヒト達に訊けば良いし……ああ!せ」ヒュン
後輩「あ、先輩せんべいの袋忘れてる。--よっと、」ヒュン
魔王城。
庭園。
第三隊長「そうか、わかった」
第三隊長「うちの副隊長から通信が入った。弟、転移されるんだとよ」
庭師姉「そうだと思ったわ。あの子、自分より強い相手には逆らわないから」
第三隊長「ここは姉さんがいるから、俺は転移先の戦力になりますーって言ってたそうだが」
庭師姉「あら、あらあらあら。弟くんに謝らなきゃ。抱きしめて高い高いしてあげれば喜ぶかしら!」
第三隊長「お前なぁ……もう子供じゃないんだから高い高いはやめとけよ」
庭師姉「失礼ね、私まだ出来るわよ?多分、あなたにも」
第三隊長「いやいや、って寄るな!何試そうと、馬鹿かやらなくていいから!ちぇーじゃない!ったく!!」フォン
第三隊長「行くんだろ?魔王様んとこ。のってけ、ついでに連れてってやる」
庭師姉「ふふふっ、それじゃあ、お願いしましょうか」
ヒュン
魔王城。
大広間。
魔王「…………、」
側近「…………、」
第三隊長「…………、」
庭師姉「…………、」
部下「…………、」
警備兵1「…………、」
警備兵4「…………、」
警備兵4「おい、やべぇぞ」コソッ
警備兵1「レベルの違いが凄まじい」コソッ
警備兵4「レベル90オーバーの中にようやく50代に突入した奴らが紛れてるようなこの感じ」
警備兵1「自動HPMP回復の値なんか桁が違うよな。ああやべぇすでに魔王様の方見れない」ガクブル
警備兵4「隊長へるぷ隊長へるぷ」ガクブル
第三隊長「ここに残った気概は認めるが、もう少しシャキッとしろよ」バシッバシッ
警備兵4「いっ!」
警備兵1「いてえ!」
魔王「命令違反よ、第三」ザワザワ
第三隊長「うへぇ、魔王様がお怒りだ。お前らちょっと隅行ってろ」ヒョイ ヒョイ
警備兵4「まるで犬猫のように、」ブラーン
警備兵1「まぁその方が有り難いというか」ブラーン
第三隊長「あと部下。お前二度目だろ。ついでだ。行ってろ」ヒョイ
部下「え、何で二度目って知って……あ!」ブラーン
第三隊長「大広間の外出てても大丈夫だろ。魔物の気配の方はしないし」ノシノシ
側近「……………」
庭師姉「あら、やるわね。あの距離ならこちらからも妨害出来るし、強制転移に巻き込まれることもない」
庭師姉「ただ見てるだけよ、良いじゃない。減るもんじゃないし」ニコニコ
魔王「」ムスッ
側近「」ムスッ
魔王城。
大広間外。
第三隊長「皆に伝えるんだろ?んじゃ、実況頑張れなー」ノシノシ
警備兵1「」
警備兵4「」
部下「……あ、こんな所にいたんですね」
警備兵4「いやいやいや」
警備兵1「ちょ、マジか」
勇者「…………」ズーン
相棒「…………」ズーン
警備兵4「何故に勇者とその連れが体育座りで凹んでんの」
警備兵1「隊長何か言えよ何普通にスルーしてんだよ」
部下「大丈夫です。このお二人は……」
勇者「ナニモシマセンノデ」
相棒「キニシナイデクダサイ」
警備兵4「えー」
警備兵1「えー」
部下「えっと、悪いヒト達ではないんです。少し不思議なヒト達ですが」
警備兵1「えー」
警備兵4「えー」
部下「ほ、ほら!魔王様達が何か話してますよ!」
部下「音声映像、共に繋げます」フォン
魔王『第三命令違反』ムスッ
側近『給料二ヶ月減らす』ムスッ
第三隊長『えー』
警備兵1「えー」
警備兵4「えー」
部下「……ど…どんまい、です」
警備兵4「……はぁ、……とりあえず俺は外に繋げとくか」フォン
勇者「…………」シュン
相棒「…………」シュン
警備兵1(このヒト達もレベル90オーバーだと思うんだけど、何でこんなになってんだ?)
警備兵1(魔物の血、だよなコレ。結構血浴びてるけど怪我はなさそうだし)ジー
警備兵1(……まぁスルーでいいか)
第三隊長『--で?策は?魔力ぶつけるだけか?』
第三隊長『そもそも国境は大丈夫だったのか?第二が加勢してんだし大丈夫だとは思うけどよ』
魔王『策は無いわ。ただぶつけるだけよ、全力で』
側近『国境は硬直状態に戻った。俺達がいると知った途端軍が引いた。何か裏があるとは思っていたが……これだ』
側近『しかし解せない。これが目的ならもう少し足止めしても……』
庭師姉『ねぇ、魔法回廊って、空間同士を繋げる、っていう認識であってるのかしら?』
魔王『その解釈で合っている、と思う。……でも、発動前に周辺に壁を、連動して召還魔法陣をばらまくなんて、』
第三隊長『二年前まで、この城は代々ここ一帯の代表がいたわけだろ?代表家の戦力を叩くには良い手じゃねえか。ま、普通は仕込めるはずはないが』
第三隊長『実際展開してくんなきゃ誰にも存在を知らせないとか、探して処理しようにも出来ねぇ』
側近『回廊というからにはもう一つ、いやそれ以上、繋がる先があるはずだ。旧魔王城と考えるのが妥当だが』
魔王『旧魔王城は消し飛んだ。今は草一つ生えない荒れ地になってる。広範囲が消し飛んだ魔法よ、回廊が壊れずに残ってるとは思えないわ』
第三隊長『あんな汚い野郎がここだけに仕込むか?他の場所にももれなく仕込んでると考えると、』
庭師姉『他国なら……こちらからはそう簡単に手は出せないわね。でも、同じ魔法が仕込まれているのなら、同じか、それ以上の被害があるはず』
魔王『でも、それは聞かない。ということは、まだどこも開いていない……?』
側近『聞かないだけで開いているのかもしれない。……待てよ、隣国の現宰相は旧政権の幹部だ。だからここの回廊の存在も場所も知っていた』
魔王『!!とんだ大馬鹿だな私は!!なら他の場所も知っているに決まっている!!』
庭師姉『それは困ったわね。もし回廊が開けば、城内に他国の兵が好き放題に出入り出来るってことじゃない』
第三隊長『逆も然りか。自国の回廊から繋げれば、開通時に被害は出るわこっちからも兵が出入りし放題だわで』
魔王『ならどこから、どこに………、』
魔王『……………、』
側近『…………旧政権はいずれ人間領もと考えていたな、』
魔王『……この国も東に行けば人間領……東、東……?っっ!!!』
魔王『庭師!回廊については誰から聞いた!?うちの兵には魔法回廊の存在を知らない者の方が多いわ!!』
庭師姉『……隊長から、』
魔王『話したのは、あなたにだけ?』
庭師姉『いいえ。お気に入りのあの四人には、私より詳しく話していると思う』
魔王『!!』
側近『!!』
側近『--被害が出ても構わない土地で、尚且つ国境からも大きく離れているわけでもない、』
側近『人間領にも近い、あの村には、今……!!』フォン ジジッ
ジジジジジジッ バシュン
第三隊長『--誰に通信繋げようとしているんだ、それ』
側近『…………っ、』ジジジッ バシュン
第三隊長『拒否されたわけじゃないだろ!誰に繋げようとして、お前程の魔力の持ち主が!誰に繋げようとして繋がんないんだよ!!』
魔王『……いるのよ、その村に』
魔王『その東の村に。その村出身の四人が、』
庭師姉『なんで、すって、』
魔王『二週間前、有給下さいって言った馬鹿が、四人!!』
魔王『その村に……いるのよ……!!』
警備兵1「東の、人間領近くの村って」
警備兵4「確か、部下さんの出身があそこたったよな」
警備兵1「ってことは、そこ出身の四人って、アイツ等しか--!!」
部下「東の、村、」
部下「有給休暇……?……東の村、出身って、そんな、」
勇者「…………、」
相棒「…………、」
魔王『私を拒否するなんて許さない』フォン フォン フォン ウヴヴヴン
魔王『繋がれ、繋がりなさいよ!!』ヒュウン!
魔王『第一!!!』
部下「そこにいるの?お兄ちゃん、」
同時刻。
山間の小さな村。
「障壁の強度上げろ!!バカ国のバカ軍ばかすか撃ちやがって!何であっちは壁通過okなんだよ!!!不公平か!!」」
「もうやってる!!つかお前出血酷いぞ治癒かけとけ!!」
「んなことにかける時間も魔力も無いわ!!」
「来るぞ!十三時より七!!炎系!!」
「了解!!同じのぶつけて相殺狙いで!!」フォン ヒュウン
バシュン! ゴォォオオオオオォォオオオオ!!!
「あっち!!熱気までは防ぐ余裕が、」
「くっそ、まだ消耗狙ってやがんのかあっちは!!」
「ひきつけんのも苦労するぜ!!」
「--!!!」ゾクッ
村人「あ、今滅茶苦茶寒気した」
村人A「え」
村人B「え」
村人C「え」
ジジジジッ!!
村人「」ビクッ
村人A「」ビクッ
村人B「」ビクッ
村人C「」ビクッ
村人B「おおおおいコレって、アレだよな無理やり繋げてる感あるコレって」ガクブル
村人A「物凄い怒気を感じる」ガクブル
村人C「誰か繋げろよ早く応答しないとさらにヤバいぞ」ガクブル
村人「あわわ壁にちっさい穴あいてるぅう!つついにバレたか」ガクブル
村人「とりあえずジャンケンしようジャンケン!!負けたヒトが繋げるってことで!!」ガクブル
村人ABC「」コクコク
村人「いくぞー!最初はグー!!ジャンケン!!」
村人「パー!」
村人A「パー!」
村人B「パー!」
村人C「グー!」
村人C「いやぁああああああああ!!」
村人「Cがんば!!」
村人A「がんばC!!」
村人B「負けるなC!!」
村人C「くっそ……あー、心臓痛い」フォン
ジジッ ガガッ プツッ
魔王『第一ぃいい!!!あんた達よくもやってくれたわね!!』ゴゴゴゴ
村人C「すみませんすみませんいやホントすみません!!!」ガクブル
村人「ストレスで禿げないかな」
村人B「胃に穴あく方が先じゃね?」
村人A「いえてる」
魔王城。
大広間外。
警備兵1「さすがに通信先までは捉えられないか!」フォン
部下「お兄ちゃん……!!」フォン
ジジッ ジジジジジジッ
警備兵1「通信回線……?」
警備兵4「そうか……、血縁への通信は魔力の性質が似る分、格段に繋がりやすい!」
勇者「………………、」
相棒「………………、」
部下「お願い……繋がって……!!」
ジジッ プツッ
『あ、やっぱりこっちもきたか』
村人『や、部下ちゃん。兄貴じゃなくてごめんな』
部下「……え、」
勇者「!!」
相棒「!!」
警備兵1「!!お前ら、」
警備兵4「やっぱお前らかよ!」
村人『Cの奴は今魔王様に怒られててさ、俺が代理なの』
村人『お、そこにいるのは第三じゃーん。お久!んで、おっつー!』
勇者「お兄さん!」
相棒「お兄さん!」
村人『おおっ、その声は!!やっぱり旅人さん達じゃんか!!』
村人『おーい、みんなー!!旅人さん達魔王城にいるぜー!!』
『マジか!』『タイミング良すぎ!!いや悪すぎ?やっぱ良すぎ?』『とにかく無事ついてくれて、あ、いやすみませんマジすみません魔王様』
勇者「……っ、」
相棒「……っ、」
部下「……本当に、知り合いだったんですか、」
勇者「……」コクン
相棒「……」コクン
村人『で?どうだった?やっぱ闘争心じゃなかったろ』
勇者「……うん」
相棒「……うん」
村人『だと思った。旅人さん達ひでー顔してんもん』
『おーい!どうだったってー!!?』『闘争心じゃなかったろ絶対!!あすみません魔王様はいパスしますパス了解しました』『絶対凹んだ顔してっぎゃああああああ!!通信こっちに回すなよぉおお!!すみませんマジすみません魔王様ぁ!!』
村人『闘争心じゃなかったってー!!凹んでるよかなりー!!』
『やっぱりなー、っていやああああ側近様もきたぁああ!!』『だから言ったじゃん!あああすみませんすみませんもう嫌だ通信胃痛い』『ほれ見ろ違うじゃんか!!あいやすみませんすみませんわかってますっぎゃあああああ副隊長がいるぅう!!』
村人『あ、俺達詰んだ』
村人『--なんてな。……部下ちゃん、ホントごめん。冗談抜きに、Cとは繋げない』
村人『妹と話すと泣いちゃうからーって。そう、アイツが言ってた』
部下「お兄、ちゃん……」ポロッ
部下(……戦闘中なのはわかってる。同じ状況だ、いや、それ以上に悪いかもしれない……)
部下(背後に見える赤い壁と、無数の召還陣。溢れる魔物と、赤い壁、その向こうに見える黒い影は、)
部下「っ、ぐっ……ひっ、く……」ポロポロ
警備兵1「第一、アンタら」
警備兵4「………………、」
村人『……………、』ヘラリ
勇者「……なぁ、お兄さん、」
村人『なにー?』
相棒「またそっちに行く気だったんだ」
村人『うん、』
勇者「話、聞いてほしくて」
村人『うん、』
相棒『ご飯ご飯ご飯ご飯って思ってもいた』
村人『よく食ってたもんなぁ、』ケラケラ
勇者「なぁ、お兄さん達、」
勇者「死んじゃうのか?」
相棒「死んじゃうの?」
村人『………ごめんな、』
村人『話してたんだぜ、みんなで』
村人『もう一度、今度はみんなでご飯食べたいよなぁ、って』
村人『でも、もう、無理かも』ヘラリ
勇者「…………!!」
相棒「…………!!」
部下「…………っ」ポロポロ
村人『……隊長から話を聞いていたから、俺達は魔法回廊の存在を知っていた』
村人『……ちょっと前に、俺達の故郷に変なのがうろついてるって知らせが入ってさ、……その時はまさかこんな大事になるとは思わなかったけど』
村人『俺達だけで調べていく内に、隣国のバカの計画を知って、』
村人『うちの隊長、ああだったけど、魔法に関して天才と呼ばれるだけあったから、残してくれた知識が物凄く役にたったよ』
村人『おかげで、魔法回廊がそう簡単に壊せないことも、壊す以外に展開を止められないことも、知ってた』
村人『--ほら、うちの国って、兵一人一人の質は良いけど、国としての規模は小さいから。物量で攻められるとやっぱ厳しいんだよ』
村人『魔王様達も、そりゃ強いけど、限界がある。回廊一つ止めたら、しばらくは動けなくなるぜ』
村人『それを二つなんざ、それこそ死んじまうかもしれない』
村人『おまけにあのバカ王宰相にそそのかされやがって、これを機に本気でこの国潰す気だ』
村人『現在開こうとしている回廊は二つ。城内と、この村だ。城内は止められると見越して、隣国はここを狙っている』
村人『--二年前、魔王城を消し飛ばした魔法は、同時に当時繋がっていた各地の魔法回廊も、消し飛ばした』
村人『あの回廊さ、跡形もなく壊さない限り、一つでも開いた状態で生きているものから、修復可能らしいんだ』
村人『城で、王都で--、魔法回廊を壊すために、あの魔王城を消し飛ばした魔法と同威力の魔法を使うわけにはいかない』
村人『だから、俺達で壊そうってなった』
村人『解散したとはいえ、俺達第一部隊所属だったわけだし、魔法には自信がある。俺達なら、十分あの威力に持っていける。ここを完全に壊せば、繋がり開こうとしている城の回廊までも、壊すことが出来る』
村人『--村のみんなには避難してもらった、』
村人『問題は、開こうとする回廊を、隣国に奪取されないよう守ること。だから俺達は、村から離れることは出来ない』
村人『……回廊を消し飛ばす魔法、発動したその魔法の中心に、俺達はいることになる』
村人『ま、ついでにバカ王のバカ軍巻き込めれば、万々歳ってわけで!』フォン
魔物『』魔物『』ドチャ ドチャ
村人『ごめん。もう悠長に話してらんないや』
村人『悪いけど……通信、切るから。多分アイツも、部下ちゃんだけには、見られたくないだろうし』
部下「駄目、まっ、」
勇者「切るな!!!」
村人『!』
勇者「召還石!!どうしたんだよ!あの時あげただろ!!?」
村人『……あー、それな。持ってる持ってる。確かここに入れて--ほら、これ』
相棒『どうして使わない!起動に魔力は使わない!刺激するだけですぐなのに!』
村人『……それがさ、無理なんだよ。何召還するかは知らないけど、あの赤い壁、遮断するから』
村人『ほら、召還って、こっちに無理やり引っ張ってくるって事だろ?それはあの赤い壁を無理やり通ってくるって事で。--城にいたのなら、わかるだろ?』
村人『ここに召還した時点で、その召還した何かは消滅するか、よくてかなりのダメージ負っている状態になる』
村人『少しの戦力でも有り難いよ、けど、わざわざ死なせるために召還することは出来ない』
村人『だから、』
勇者「大丈夫!そっちに必ず行く!あれぐらいじゃ死なない!絶対耐えるから!!」
相棒「必ず戦力になるから、お願い、頼むよ……!!」
勇者「召還、してくれ!!」
相棒「召還、してくれ!!」
村人『…………、』
村人『…………わかった、』
村人『何の精霊なのかな、申し訳ないけど、一緒に戦ってもらおうかな』フォン
キイィィイン
警備兵1「お、おい!ちょっと待て、なんだこの魔法陣!!」
警備兵4「これって、召還用の--違う、召還される側の!!!」
部下「!!あなた達、まさか……!!」
村人『え、何?こっちは普通に起動してるけど』
勇者「…………」ヒュゥゥン
相棒「…………」ヒュゥゥン
村人『ちょ、ねぇこの召還石すっげぇバチバチ言ってるけど何?何召還するのこれねぇちょ、何召還するのこれ』
勇者「耐えられる、絶対」
相棒「死ぬわけない、アレぐらいで」
勇者「今行くから」
相棒「待ってて」
ヒュン
警備兵1「嘘だ、マジかよ……!!」
警備兵4「嘘だろ……んな馬鹿な、滅茶苦茶だ!!」
部下「二人が、消えた……!」
部下「そんな……、二人が、」
部下「召還されたっていうの!?」
今日も全部は無理だった。でも明日には全部投下出来ると思う。もう少しだけ、付き合ってくれると嬉しい。
山間の小さな村。
村人「」
村人B「おいおい何ださっきの魔力反応」クルッ
村人B「」
村人A「今ビリビリしたけどなん」クルッ
村人A「」
村人C「なんだ?敵側の反応じゃないよ、な」クルッ
村人C「」
勇者「 、」ケホッ ボタボタ
相棒「 、」ケホッ ボタボタ
村人「しょ、召還したら、ほら、あの時貰った召還石、あれで」
村人「俺、旅人さん達、召還しちゃったみたい……」
村人A「ええええ!?何できてんのー!!?」
村人B「無茶苦茶だ!!無茶苦茶だー!!!」
村人C「あああああ血!!とにかく治癒!治癒魔法ー!!」フォン
勇者「っ、大丈夫だから!」フォン
相棒「痛くないから!いらない!!」フォン
ヒュウゥン ドゴォォオオオン!!!!
村人ズ「……………」ポカーン
村人B「今、空にいる魔物全部、」
村人A「反応消えた。消し、飛んだ、みたい」
勇者「げほっ、ごほっ……お兄さん達、血出てる」ボタボタ グイッ
相棒「けほっ……痛そうだね。でも、ごめんなさい、私達、治癒系は凄く苦手で」ボタボタ グイッ
勇者「だから全部消すよ。消しに来た」ザワザワ
相棒「お兄さん達がゆっくり休めるようにする」ザワザワ
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
勇者「壊して、消すよ。いないよな、壊しちゃ駄目なのなんていないよな、ないよなぁ!!!!」フォン パシッ
相棒「あるなら先に言わないと、私達聞こえないよ!ちゃんと言わないと、全部、全部全部全部壊しちまうからなぁ!!!」フォン パシッ
村人「……え、あ、多分、無いかな」
勇者「………、」フラッ フッ
相棒「………、」フラッ ヒュン
ギガガガガガガガガガ!!!!
バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!
勇者「壊れろよ壊れろよさっさと壊れろよおおお!!」バリバリバリバリバリ
相棒「壊れろよ壊れろよ邪魔なんだよおおぉ!!」バリバリバリバリ
村人「……………」
村人A「……………」
村人B「……………」
村人C「……………」
村人A「壁、ぶち破る気だな」
村人B「一応相手が解除コードぶち込んで消すの待ってたんだけどな」
村人「あ、壊れる。亀裂走ってる」
村人C「向かい側に軍勢いるの見えるはずなんだけどな」
赤い壁「」パリン パリン パリン
ガラガラガラッ
勇者「むしゃくしゃするんだ……」フラリ
相棒「二年前と同じだ、同じ、なんだ……」フラリ
敵軍兵士「!」「!」「!」「!」「!」
敵軍兵士「う、うてー!!」
相棒「」フォン
ババババババババ!!
勇者「危ねぇよなぁ、当たったら、痛いじゃないか、」
勇者「返すよ」フォン
ズガガガガガガガッ!!
敵軍兵士「うわああああ!!」「何だ今の!!ただの障壁じゃな--」「反射にしては威力がが」「ああああああああああ!!!!!」
村人「お、残ってた召還魔法陣、全部消えたな」
村人B「壁も壊れたし、これで少しは魔力も回復するか」
村人C「とりあえず今のうちに治癒かけるぞ」フォン
村人C「こっちからは旅人さんの背しか見えないけど、全部見えて聞こえるってのも大変だな」フォン チラッ
村人A「」ガクブルガクブル
相棒「ほーら、」ヒュン
ザザザザザザ!!
敵軍兵士「へ、あ、なんだ、いまの」グシュ「」ズルリ ドチャ「ひっ、ぎゃああああああああ、」ズルリ
ドチャ ドチャ ドチャ
相棒「逃げないと駄目だぞ、斬っちゃうぞ」
相棒「そんなとこにいたらぁ!!半分こに!!なっちゃうぞぉ!!!」フォン
ヒュウン ズガァァァアン!!!
相棒「粉々になっちゃうぞ!!ははっ!!あはははははははは!!!」ケラケラケラケラ
敵軍兵士「あ、相手はたった二人だろ!魔法だ!!魔法を!!」「き、きた!!こっちにきたぞー!!」「うて!!うてー!!」
勇者「向かってくんなよ、向かって、くんなよおお!!!」フォン
ヒュイン
パキパキパキパキパキパキパキ
敵軍兵士「」「」「」「」「」「あ」「凍っ」
勇者「」フォン
バキン
敵軍兵士「」バラバラ
敵軍兵士「うわああああああああ!?くるな、くるなぁぁ……!!」ヘナヘナ
勇者「……そうだよ、そうだ、向かってこなきゃいい」フォン
敵軍兵士「死ねええ!!!」「殺せえ!!」「うおおおお!!」ダダダダッ
ゴオォオオ!!
消し炭「」
敵軍兵士「そんな、一瞬で、こんな、広範囲を……化け物……化け物だあああ!!」タタタタッ
敵軍兵士「おい逃げるな!!戦線の離脱は死……」ゾクッ
勇者「逃げ、ない、の?」ニタリ
敵軍兵士「ひぃ……」ガタガタガタ
勇者「逃げろよ逃げろよ逃げろよおおお!!はは!!ひゃははははははははは!!!」フォン
ズガガガガガガガッ!!
勇者「死んじゃうぞ!!ここにいるとっ!みんなみんな!!死んじゃうぞおおお!!!」ケラケラケラケラ
村人ズ「…………」
村人B「滅茶苦茶、強いな……旅人さん達」
村人C「何か、叫んでるけど……この距離じゃ流石に聞こえないしな、」
村人A「………村人村人村人」ガクブル
村人A「お前何召還したのお前何召還したの」ガクブル
村人「旅人さん達、だと思う……」
村人A「あれ、なんだよ、ホントに旅人さん達なのかよ、」ガクブル
村人A「瞳孔ガン開きで満面笑顔で、笑い声まであげて!!」
村人A「敵軍兵士、虐殺してんだけど!」ガクブル
村人「え」
村人B「え」
村人C「え」
村人A「みんな見やがれ俺の視界!」フォン
ヴヴン
勇者『来るぞ来るぞ来るぞ!!!逃げろ逃げろ!!ははははははは!!!邪魔だっ!弾けろぉお!!!』ズババババ!
相棒『弱い弱い弱いよぉ!!弱いくせに私の前に立つなよ!逃げろよ!逃げろよぉ!!あはははははは!』ヒュウン ガガガッ
ギャアアアアアアア!!
村人B「え、お前破壊神召還したの?」
村人C「じゃああれ破壊神呼べる召還石なの?」
村人「わー凄いな俺破壊神呼んじった」
村人A「いやいやいや現実から目をそむけるなアレ旅人さんじゃん少なくとも旅人さん達の皮かぶった何かじゃん!」
村人ズ「……………、」
村人C「--でも、さ」
ヴゥン ガカカッ!
村人C「攻撃を防いだ、この障壁、旅人さんが形成してる」
勇者『どうすんだよお前、お兄さん達に当たったらさぁ、どうすんだよぉおおお!!』フォン ヒュゴォオオ
村人C「少なくとも守ってくれようとはしてるよな」
村人B「滅茶苦茶怖いけどな」
村人「ここまで一方的だと相手が可哀想になってくるわ」
村人A「ほんとマジ何時の間に俺らのセ○ムになってくれてたの」
村人B「やべえ俺らのセ○ムやべえ」
村人A「--あ、」キュイン
村人A「まずいな、デカいのくる」
村人C「補足は?」
村人A「出来るが相殺するには間に合わない」
村人B「任せろ。障壁展開の魔力は残ってる」フォン
勇者「」スタッ
勇者「いい。障壁は俺がやる」チミドロ
村人ズ「………………、」
村人「--ちょ、旅人さんまた血みどろじゃん!」ププッ
村人A「毎回後悔するって言ってたのにな」
村人B「今回も大後悔じゃん」ケラケラ
村人C「つかな、瞳孔開きすぎだよ!戻しなさい!」
勇者「…………見てたんだよな」キョトン
勇者「ドン引きされてると思った」ヘラリ
村人C「自覚はあったのか」クスッ
村人「やっべ笑っても怖い目に光がない」ケラケラ
村人A「雰囲気でわかる俺今空間視野解除したら卒倒する。リアルグロ反対」ケラケラ
村人B「魔法使って見る景色はファンタジーグロ分類で大丈夫なんだっけか。つくづく変な奴だなお前」ケラケラ
勇者「……はは、やっぱりお兄さん達は、良いヒトだな」
村人「そういや、相棒さんはどうした?戦ってんの?」
村人A「--遠距離から魔法、来るはずだったんだけど。もう来ないわ」キュイン
勇者「……さすが相棒、間に合ったか」
フォン
相棒『ははははは!!怪獣が来たぞぉお!!かじられたくなかったら逃げろぉお!!』ガチガチ ガオォ
敵軍兵士『無理無理無理!!逃げます!』『歯ギザギザってレベルじゃねえぞ確実に食いちぎられる!!どこをと訊か』『もうお前かじられて来い!』『やだ!!』『俺は逃げないぞ!!あのおっぱいに殺されるなら!俺は!俺はぁああ!』『馬鹿言うな!アイツ等逃げる相手にはほんとに手出してこないから!諦めてさっさと逃げるぞ!!!』『やめろ!!引っ張るな!!ああ!遠のく!行くな、行かないでくれおっぱい!!おっぱぁあああああい!!』ワーワーギャーギャー
村人A「敵ながら、俺アイツには死んでほしくない」
村人「やっぱりトップがクソでも下がそうとは限らないんだー」ケラケラ
村人B「なんつーかあの部隊には生きてほしいわ」
村人C「馬鹿ってどこにでもいるんだな……」シミジミ
相棒『ちょっと和んだ』
相棒『戦線崩壊したし、一度戻るよ』フォン
村人A「気配は無いはずなんだけど、お姉さん、ちゃんと俺の方向見てんだよな」
ヒュン
相棒「」スタッ
勇者「おかえり」
相棒「ただいま」
相棒「……もう少し、止められないと思ったんだ。自制きかなかったらどうしよう、って」
相棒「大丈夫なのは、お兄さん達が元気そうだったからなんだね」ヘラリ
村人B「」ガッ
村人A「目隠し!生で見せろよ!!今なら俺倒れてもいいんだ!!笑ってんだろ!!瞳孔ガン開きでも構わない!!血まみれヤンデレ顔で良いんだ!!笑顔のおっ」バタバタ
村人C「唸れ俺の右ストレート!」バキッ
村人A「ぐはっ!」チーン
村人「鎮静剤の代わりに拳ってことね」ケラケラ
勇者「…………」
相棒「…………」
勇者「ははっ、あははは!」
相棒「あはは、あははは!」
勇者「俺達さ、城でずっとわたわたしてたんだ」
相棒「何をしたら良いかわからなくて、とりあえず邪魔にならないように隅にいた」
勇者「一応ちゃんと視界に入る魔物は狩ってたんだけどさ」
勇者「良かったよ、うん、本当に。死ぬのは駄目だ。死んじゃ駄目だよ」
相棒「そうだよ。会えなくなるんだ、会いたいのに、会えなくなるんだぞ、死んだらさ」
村人ズ「……………、」
村人「旅人さん達さ、城で何かあった?」
村人「いや、あったに決まってるだろうけど」
勇者「……あったよ、沢山。魔王様達に喧嘩売って負けたり」
相棒「消えろって言われて吐血したり」
村人B「ちょ、吐血!」ブフォ
村人A「そこまでか!そこまでか!」
村人C「戦えないよなそりゃあ、しかし吐血って」ケラケラ
村人「旅人さん達はもう少しメンタル強度をあげるべき」ケラケラ
勇者「それに、探していたおじさんが、」
相棒「死んでたって、わかったり」
村人ズ「!!?」
村人C「死んでた、って、それって、--!」ハッ
勇者「!!」
相棒「!!」
村人「!!」
村人B「!!」
村人A「魔法回廊に動き有り。完全形成にはまだ時間がかかるはず、にも関わらず早めるような刺激を与えているのは、」キュイン
村人A「見つけた。正面、千メートル。コイツは--っ、映像出す」フォン
村人B「--おいおい、直々に来るってか!」
村人C「いや、ようやく来てくれたと言うべきだろ……!!」
村人「隣国の宰相……旧政権の幹部、アイツが……!」
勇者「……なぁ相棒、俺、アイツ凄い見覚えあるんだけど」
相棒「……勇者も?じゃあ、間違ってないね」
村人A「捕捉する、」キュイン
ヴヴヴヴヴヴ
村人A「--っぅ、」キィイイイン
村人B「チッ、妨害か!!引けA!!」
村人A「引けるかよ、アイツは、今潰しとかなきゃ、」ケホッ ボタボタ
フォン
宰相『ほう、この距離で私を捉えようとするか』
村人「!!宰相…、テメェ……!」
宰相『良い腕をしている。--そうだな、将来有望な若い魔族の感覚を奪ってやるのも、悪くはない』ニヤリ
村人C「A引けっ!!」
村人A「 う、あ、 」ドクン ゴポッ
村人C「まずい……!!何してもいい!!Aの意識をこっちに戻、」
相棒「Aさん!!」ダキッ
村人A「!!!」
村人A「」プルプル
相棒「駄目だよ!死んじゃうのは嫌だ!」ギュウ
宰相『ふむ、逃したか。勿体無いことをし--』
フォン
勇者「よぉ、おっさん」
宰相『……誰だ貴様。私の通信回線に勝手に入り込むとは、少しはやるようだが』
勇者「……なんだ、忘れたか?俺は覚えてるぜ、もちろん相棒もな」
フォン
相棒「やぁ、おっさん。二年ぶりだね」
宰相『二年ぶり、だと?若造と小娘が何、を……』
勇者「…………」ザワザワ
相棒「…………」ザワザワ
宰相『まさか、』ゾクッ
宰相『まさかまさかまさかまさか!!死んだはず、確かに死んだはずだ!!何故、何故ここに!!?』
宰相『くっ』ブチッ
村人A(あああ背に!柔らかく大きな膨らみが!押しつけられている……!!)プルプル
村人A(これは、相棒さんの……たわわに実った、あの、)
村人A「俺もう死んでもいいや」チーン
村人B「洒落にならんことを言うな!」
村人C「治癒かけてやるから!頑張れ、もう少し頑張れ!!」フォン
村人「なんて幸せそうな顔をしているのだろう」
相棒「お兄さんは、もう大丈夫だよね、うん」スッ
勇者「……………」ザワザワ
村人(こっちはこっちで完全に目が死んだな。マジ怖い)
相棒「……勇者、行く?」
勇者「行く。--お兄さん達、ごめん。俺達、知り合いに会いに行ってくるよ」
村人「知り合い……?」
村人A「--あ、やべ、あの宰相逃げようとしてる」キュイン
村人B「まだ繋げてんのか!!」
村人C「切れ!!もういから今すぐ切れ!!物理的に切らせるぞ!!!」
村人A「魔法の準備しとけ。逃げ腰の今なら確実に捕捉できるから」キィン
相棒「駄目だってば!」ギュ
村人A「はぅ!」ヘナヘナ
勇者「お兄さんの捕捉は怖いよな。捕捉されると、俺達でも絶対避けられないだろうし」
勇者「でも、ここは俺に任せてよ」ヒョイ
村人C「--石?そんなん拾って、いったい何を、」
勇者「相棒、準備は?」フォン
相棒「万全」フォン
勇者「……逃がさねぇよっ!!」ヒュン
ギャッ!
勇者「今」
相棒「落ちろ」フォン
ヴヴン! ズガァァァアアン!!
村人B「アレ、って……、檻、だよな」
村人C「この距離で魔法陣を展開、そして、一定の範囲を檻に閉じ込める……」
村人「……滅茶苦茶な魔法使うな、」
村人A「……旅人さんの投げた石、宰相の腕に当たりやがった」
村人A「その石を軸に展開された相棒さんの魔法陣がアレだ、」
村人A「……あの宰相、何であんなに怯えてるんだ?」
勇者「じゃあ、さっき言った通り、知り合いの所に行ってくる」
相棒「散々脅したからもう動かないと思うけど、敵には気を付けてね。頭は今から叩くけど」
村人「待ってくれ、」
村人「知り合いって何だ?まさか、宰相だったり?」
勇者「うん」
相棒「うん」
村人「何でそんな奴と知り合いなんだよ」
勇者「二年前、魔王城で会ったんだ」
相棒「こうなるってわかってたら、あの時絶対逃がさなかったのに」
勇者「--ごめん。流石にアイツ相手じゃあの檻も長くは保たない。だから、転移使って、もう行くよ」フォン
村人C「二年前、魔王城……!?ちょっと、待てそこは、まさか、」
勇者「今は……旧魔王城って、呼ばれてたと思う」
相棒「今は先代様、なんて呼ばれてるおじさんと出会った場所でもあるから、私達には嫌いになれない場所でもあるんだけど、ね」
ヒュン
村人ズ「………………」
通信回線「……………」
村人「今、凄い爆弾落としていったな」
村人B「待って俺今頭ん中整理中」
村人C「通信回線全開のまま放置してたことに気付いてしまった時以上の衝撃」
村人A「とりあえず、映像出すか?今檻の中にお二人さん到着したけど」
村人C「休めって言いたいけど、頼むわ」
村人A「了解」フォン
ヴヴン
檻の中。
宰相「死んだはずだ、死んだはずなのに!!」
勇者「死んでないよ」
相棒「どこからどう見ても生きてるじゃん」
宰相「何故だ、何故、何故……!!二年前の、あの日!あの城で!!あそこまでの傷を負って!!」
宰相「逃げられるわけがないのだ!貴様等を中心に展開されたはずだ!!あの空間破壊魔法は!!」
宰相「あれは間違いなく魔王城とその周辺全て消し飛ばした!!あの魔法陣の上で魔力は回復しない!そもそも転移だって使えない!!」
宰相「亡霊だ!貴様等は二年前の亡霊なのだ!!」
宰相「亡霊でなければ有り得ない!!あの魔王を倒して生きているなど、有り得ない!!」
勇者「--確かに、死んでたよ。あのままだったらな。アンタの言うとおり、あのゲスでしつこい魔王のせいで」
相棒「やってくれたよあのクソ。死んでからもしつこさを発揮するとか」
勇者「--でもさ、わかるだろ?俺達は生てる。俺達だけじゃ死んでた。なら、何で生きてるか、わかるな?」
宰相「あの場には魔族しかいなかった!魔族が勇者を助けるなど、」
相棒「アンタは今、誰の国と戦争してるんだ」
宰相「--!!!!」
宰相「まさか、まさか……!!あの男か、あの男なんだな……!!」
宰相「やはり殺しておくべきだった!部下諸共殺しておくべきだったのだ!!くそっ、よく喋るあの男さえ邪魔しなければ!あの時殺せていたはず、な」ヒタリ
宰相「ひ、ひぃ!首に、剣が……いつの間に…!!」ガタガタ
勇者「おじさんの友だった、っていうあのお兄さんも、きっと良いヒトだった。部下のおじさん達も、きっと」
相棒「生きてたら、闘えたかもしれない、お兄さん達のことみたいに、好きに、なれたかもしれない」
勇者「知ってるか?死んじゃったら、もう会えないんだぜ?」
勇者「……そうだよ、死んじゃったらさ、もう、会えない、」ザワザワ
宰相「た、助けてくれ……」ガタガタ
相棒「一つだけ訊かせてよ。おじさん、一年前に死んじゃったんだ。アンタのせいだったりするの?」ザワザワ
宰相「違う……違う!私のせいじゃない!私は何もしていない!!だから、な?助けてくれ!私は丸腰だ!!」
相棒「そっか、それなら、」
宰相「もうこの国に手は出さない!だから、だから、」
相棒「--苦しめて殺すのは、止めるよ」
宰相「ひ、ひぃい!!あ、あ、--き、貴様ら何を突っ立っている!!早く私を守--」ヒュン
相棒「……アンタは、おじさんとは違うのに、」
宰相「」ボトリ
勇者「馬鹿だよな、」
宰相「」グラリ バタッ
勇者「アンタのこと、命がけで守ろうとする奴なんか、いるわけないじゃないか」
山間の小さな村。
村人C「会議するぞ。発言したい奴は手挙げてからにしろ」
村人B「はい!」
村人B「とりあえず旅人さん達についてまとめようぜ!」
村人C「そうだな!よし、まとめるぞ!」
村人「はい!旅人さんは勇者!相棒さんはその連れ!」
村人A「はい!仕事で一定の成果が認められ現在自由な旅人にジョブチェンジ!」
村人B「魔族領へは、観光と二年前助けてもらった魔族のおじさんに会いに来てみたり!」
村人C「はい!今回は闘争心云々の下りはおいておくぞ!なんせ俺達だけの話じゃない!!よし次!」
村人「はい!旅人さんはどうやら旧魔王城に行ったことがある模様!!宰相と顔見知り!!」
村人A「はい!魔族のおじさんともそこで遭遇!」
村人B「はい!魔族のおじさん=先代!」
村人C「そして、宰相の言動と俺達が知る二年前の出来事を掛け合わせて出る結論は!!」
ヒュゥン スタッ スタッ
村人「旅人さん達が、あのクソ魔王を殺した勇者一行ってわけ?」
勇者「うん、」
相棒「そうだよ」
村人「あ、おかえり」
村人A「おかえりー」
村人B「お疲れ、おかえり」
村人C「怪我無いか?大丈夫そうだな。とにかく二人ともおかえりー」
勇者「ただいま、」ヘラリ
相棒「ただいま、」ヘラリ
村人A「じゃあさ!先代様にはそこで?」
相棒「うん、死にかけてた所を助けてくれたんだ。……助けさせろって、怒られちゃった」
村人B「何で言わなかった、は違うか……先代がそのおじさんだって、何時気付いた?」
勇者「……俺達もお兄さん達の話で気付くべきだったよね、」
勇者「--魔王城で大きな肖像画を見たんだ。凄く綺麗な女の子と、女の子に似た凄く綺麗な女性と、顔の怖いおじさんが描かれてた」
相棒「ちょ、おじさんじゃん!って吹いた」
相棒「けど、」
相棒「信じたくなかったんだ、間違いかもしれないから、庭師のお姉さんに訊いてみた」
相棒「やっぱりおじさんは先代様だった」
勇者「おじさんは嘘つきだ。待ってるって言ったのに」シュン
相棒「待ってるって、言ったんだ。絶対。おじさんの嘘つき」シュン
村人C「じゃあ、魔王様がそのおじさんの娘さんだってことは……」
勇者「…………喧嘩売って、負けてから、知りまし……た」ズーン
通信回線『--ならば、』
魔王『敬愛するお父様を嘘つき呼ばわりされて怒っている存在には、気付いているわよね』
勇者「!!」ビクッ ヒュン
相棒「!!」ビクッ ヒュン
村人C「え、え!?無理あるだろ俺の後ろに隠れてるとか!!モロ見えだよ!!つか重いよ二人してしがみつくなよ!」
村人「障壁のつもり?」
勇者「」コクコク
相棒「」コクコク
村人C「意外と酷いなお前ら!」
魔王『映像も繋がっているから、バレバレなのだけれど』
勇者「!!……相棒、」
相棒「……うん、ここは謝るしかないよ」
相棒「でもその前に、さ」
勇者「…………」コクン
勇者「……あの、魔王様……、謝罪はもういいと仰られるまで、続けるつもりです」
勇者「ですがその前に、魔法回廊について一つ、許可をいただきたい」
勇者「俺達で、魔法回廊を壊す、許可を」
一同「『!!!!』」
相棒「回廊自体、まだ開ききっていない。どちらも開く前に壊すつもりだったんですよね、」
勇者「でもきっと、魔王様達がこちらを壊す前に、お兄さん達が壊してしまうと思う」
勇者「そうすればきっと、お兄さん達は魔力の使いすぎで、死んでしまうから」
村人「やべ、バレてた俺らの最終手段」テヘペロ
村人B「余裕だなお前」ガクブル
村人A「こちらに届くのが音声だけじゃなかったら、きっと俺意識手放してた」ガクブル
村人C「もうこれからが怖い」ガクブル
魔王「……わかってたわよ、それぐらい」
魔王「だから私がここにいるんじゃない」
村人ズ「!!!!」ビクッ
魔王「そこの馬鹿4人が死ぬ事も、この村が跡形もなくが吹き飛ぶなんて事も、魔王の私が認めない」
魔王「第一、アンタ達の言う通りよ、魔法回廊を形成する魔法陣は、嫌になる程しつこいわ。確かに、旧魔王城のように辺り一帯を消し飛ばす威力でなければ、壊れないでしょうね」
魔王「でも、もう一つ、範囲を狭めて壊す方法がある。……陣の構成を調べていなければ、もっと早くアンタ達をぶん殴りに来てたわ」
魔王「方法は、簡単。繋がろうとしている回廊を二つ同時に叩くこと」
魔王「同時の破壊。それなら、生きている回廊を軸に修復なんて、不可能よ」
魔王「あの魔王なんかのせいで、私達はもう何一つだって失いたくないの。だから、私達が壊す。城の回廊は側近が、この村の回廊は、私が」
勇者「一人で、一つ……?そんなの、駄目だ!!」
勇者「……悔しいけど、一人の力ではあの魔王には及ばなかった!」
勇者「俺達が二人で、死にかけて、ようやく殺せたんだ!」
勇者「そいつが残した魔法を、君と、側近さん一人ずつでどうにかさせるなんて、認められるわけがない!」
相棒「そうだよ、おじさんが残していった自慢の子供達を、死なせるわけにはいかない!」
魔王「--っ!!……死なないわよ、これぐらいで」
相棒「確かに、死なないよ。身体は、」
勇者「--死ぬのは心の方だ」
勇者「魔力は生命力。それを無理に使いすぎることは、そういうことだ。そんなの、絶対、嫌だ」
勇者「そんなことさせたら、絶対、おじさんが悲しむ」
魔王「…………、本当に、そうみたいね。あなた達が、お父様が言っていた、お父様が待っていた、二人組の、優しいヒト」
勇者「……俺達は優しくないよ、自分勝手に生きてるんだ。自分が思うままに生きているんだ」
魔王「……なら、自分勝手に、助けると言うのね?」
勇者「助けているつもりはない。俺達は誰かを助けるなんて出来ない。助け方なんて、わからないから」
勇者「ただ、死んだら会えなくなる。もう二度と、会えなくなる。それがわかったから、」
勇者「--頼む、ここは俺達にやらせてくれ。君は、城に、戻るんだ」
魔王「…………、」
魔王「……私にだって、死なせたくないヒトはいるわ」
魔王「馬鹿みたい。せっかく覚悟してここに来たのに」
魔王「…………、」スゥ
魔王「--勇者一行よ、魔法回廊の破壊、お頼みしてよろしいだろうか」
勇者「はい。お任せ下さい」
魔王「………、」フォン
魔王「……怒ってるってのは、嘘よ。お父様から、沢山の謝罪を預かってる」
魔王「私も、側近も、あなた達と話したいことがあるわ」
魔王「だから、必ず生きていなさい」
魔王「そして、また、魔王城で--私達の城で、会いましょう」
魔王「今度は歓迎するから」
ヒュン
村人「--タイミングはこちらに合わせるって」
勇者「うん、」
相棒「わかった」
ヒュゥゥ ゥゥゥ ゥゥ
勇者「じゃあさ、1、2の3でいこう」
村人「了解。--あっちの準備は良いみたいだ。そっちは?」
勇者「大丈夫、」フォン
相棒「いけるよ、」フォン
村人「じゃあ、頼む、な」
フワッ
村人A(--破壊するための魔法だってのに、)
村人(旅人さん達を目撃したあの時は、こうなるなんて思ってもみなかった)
勇者「1」
村人B(--柔らかな、白い光が溢れて、)
村人(血まみれ血みどろで、凄く怖いヒト達なんだと--敵なんだと、思った)
相棒「2の」
村人C(--綺麗、だよな。やっぱ)
村人(それが、今はこうして、助けられてる。死ぬはずだった俺達が、生きていられる)
勇者「3」フォン
相棒「3」フォン
村人(ありがとう、)
村人「ほんとに、ありがとな!!二人とも!!!」
ヒュ ズガアァァァアアアアン!!!!!
数日後。
魔王城。
勇者「…………」
相棒「…………」
魔王「…………」
側近「…………」
魔王「--で?」
魔王「何故部屋に入らず一度開けた扉を閉めたのか、」
側近「理由をお聞かせ願おうか」
勇者「!」ビクッ
相棒「!」ビクッ
第一部隊所属兵士「ほんとだよな。わくわく顔で扉開けて」
第一部隊略A「対面した瞬間顔真っ赤になって」
第一略B「扉即閉めなんてさ」
第一C「どうしたんだよ、あの時面と向かって話してても大丈夫だったじゃねーか」
勇者「あの時はシリアスだったから!必死だったから!」
相棒「無理無理無理!音声だけならいけるけど面と向かってとか無理だよ!!」
ガンッ
魔王「へぇ、」
側近「誰と面と向かうのが嫌だって……?」
勇者「ひっ、扉の向こうに……!!」ガクブル
相棒「いる……絶対いる……!!」ガクブル
第一C「いやいや、何でそんな怖がってんだよ。あんなに楽しみにしてたじゃん」
第一A「あーこれ扉の向こうとそろって見ると面白いわ。いるよ魔王様達、扉一枚挟んでるだけ。近い近い」キュイン ケラケラ
魔王「何が嫌なのかは知らないけど、扉は開けさせてはもらうわ」グッ
勇者「ちょ、ままま待ってぇえ!!」グッ
相棒「待って待って待ってぇえ!!」グッ
第一B「押さえるなよ扉を」ハァ
第一「驚きのパニックぶり」ケラケラ
側近「ほう、無理やり開けさせるつもりか」
勇者「!!あああああ!すみませんやっぱ無理です!!!」フォン
相棒「ごめんなさい!!」フォン
ヒュィン
第一「あ、これって、」
第一A「転移用の、」
第一B「魔法陣ですね、」
第一C「いや待てって俺達もかよ!!」
ヒュン
魔王「…………、」
側近「…………、」
魔王「何で逃げるのよ!私何かした!?」
側近「俺が知るか!!少なくとも何かした覚えはない!!」
側近「あ、」
側近「上級破壊魔法はぶつけたな」
魔王「でもアレは防げたんだし!!そりゃ防げたことにちょっとむかついたけど!」
側近「…………、」
魔王「…………、」
側近「…………とりあえず、追いかけてみるか?」
魔王「……当たり前よ」フォン
魔王「……逃げる理由ぐらいは、知りたいもの……」
魔王城。
二階廊下。
ヒュン タタタッ
第一C「--で?どうしたんだ?」
第一B「魔王様達、怒ってないぞ。喧嘩ふっかけた件は腕試し云々の説明で納得してたし」
第一A「ここ来る前、『闘争心ではないこの感情の正体、見切ったり!』って言ってたじゃないか」
第一「見切ったりー、じゃなかったのー?」
勇者「…………、」
相棒「…………、」
勇者「俺、お兄さん達が好きだ」
相棒「私も、お兄さん達が好き」
第一C「お、おう。突然の告白ありがとう」
勇者「だから……大丈夫だと思ったんだ!誰かをちゃんと好きになることすら俺達にとっては進歩なのに!」
相棒「これが好きだっていう感情なら、お兄さん達に向けている物と同じで、私達はお兄さん達と面と向かって話せるから!」
勇者「ほら!俺達おじさんのこと好きって気がついたしさ!!おじさんの子供ってわかった魔王様達も必然的に好きになるというわけで!」
相棒「気がついたから、私達、変な発作は各段に軽くなった、はず、なのに、」
相棒「やっぱわかんないよ……」ドキドキ
勇者「なんだよ、この気持ち……」ドキドキ
第一「え、まだ結論に達してないの?」
第一B「いや、ま、好かれてることは嬉しいけどそれはおかしい」
第一A「何故だ、何故こうも鈍い」
第一C「ったく、そろそろ気付けよ」ハァ
勇者「だって、あれからお兄さん達に相談とか、してないし!」グスッ
相棒「なんせ私達、ずっと寝てて、起きたの今日だし、仕方ないじゃんか!」グスッ
第一(うわー、顔真っ赤で涙目、)ケラケラ
第一A(戦闘時と同一人物とは思えないわ)ケラケラ
第一B(これが破壊神ねぇ、)ハァ
コソッ
第三部隊所属兵士「お、第一がいる、おまけに勇者さん達まで」「あー、勇者さん達だぁ、前の戦闘、凄かったねぇ」「なー、ありゃ破壊神だわ」「何言ってんだ。俺はあの二人にお前等の未来を見たよ」「第三のクラッシャーコンビのくせにな」「くっ、あの雰囲気じゃ流石に言えねぇな殴ってく」バキッ
「げふっ」ズザザザッ
第三部隊略「ナイスだよ6くん」「よくやった」「良い裏拳だ」「どうもー」コソコソワーワー
第一(第三の連中、何やってんだろ)
第一C「……あのさ、好きにも種類があるんだよ」
第一C「お前ら、お互いのこと好きか」
勇者「相棒のこと?嫌いじゃないよ」
相棒「勇者のこと?嫌いじゃないよ」
勇者「いや、違うな。好きかも」
相棒「なんせずっと一緒にいるもんね」
勇者「な」
第一C「お前らの間にある好きと、俺達に対する好き、なんか違うと思わないか?」
勇者「……………、違うかもしれない」
相棒「………そうだね、勇者に飛びつきたいとは思わないし」
勇者「だな、相棒にまとわりつきたいとか思わないし」
相棒「今気付いたご飯のためなら大体のお願いはきける!」
勇者「寧ろ何か頼んでほしい!」
第一C「お、おう……」
第一B「え、犬?」
第一A「わんこ?」
第一「餌付けスキルもここまでくると脅威だな」
第一C「予想以上に懐かれててびびったが、」
第一C「これでわかったろ?好きにも種類があるって」
勇者「うん」
相棒「うん」
コソッ
第三「これは……」「なんだか面白そうだねぇ」「観察を続けるしかないな!」「ああして第一と話してる姿を見ると、」「全くの別人だよな、破壊神モードと」「実は通信回線はすでに全開だったりする」「俺のカンが映像ごと記録をしろと言っている」フォン
魔王城。
城門。
先輩「第三……何やってんだか」ハァ
後輩「あ、通信ですか先輩。映ってるのは第一の皆さんと……、勇者さん達?」
後輩「……何か取り込んでるみたいですけど、元気そうで良かったっすねー」
先輩「そうね、魔法回廊、ってのを壊した後、魔王様達と同じく倒れたみたいだから」
先輩「あれからずっと寝てたみたいだけど、寝起きにしては元気そうじゃない」
後輩「俺も見たかったなぁ、勇者さん達の活躍」
先輩「転移先でアンタがせんべい袋抱えたまま倒れた時は、私まで卒倒しそうになったわ……。まったく、調子にのって倒れるまで魔力を使うなんて」
後輩「でも俺、格好良かったですよね!?」キラキラ
先輩「そうやって言っちゃうから駄目なの。言っとくけど、アレぐらいでアンタが私の可愛い後輩だってことは揺るがないから」
後輩「精進します……」シュン
後輩「……狙撃も、なんとか腕あげないとですし」グッ
先輩「城門抜かれたことまだ気にしてたの?あの魔王を倒した相手なら、そりゃ追えないわよ」
後輩「せめてかすりはしたいっすよねー。ってことで、これからさらに頑張らないと!」
先輩「鍛錬を?」
後輩「もちろん、ですが。もう一つは」
後輩「勇者さん達と同じこと、ですかねー」ヘラリ
先輩「……いくらでも若い子捕まえられるはずなのに、何で私みたいな年上が良いんだか……」
後輩「理由ですか語って良いですか長くなりますけど多分夜明けまで」キラキラ
先輩「……遠慮しとく」ハァ
魔王城。
二階廊下。
第一C「よって、お前らが魔王様達に向ける好きも俺達に向けるソレとは全く違う」
勇者「ふむふむ」
相棒「ふむふむ」
第一A「--あ、魔王様がこっち捕捉したぞ」
勇者「!」ビクッ
相棒「!」ビクッ
フォン
魔王『……びくつかないでくれない?とりあえず、音声だけにするから』
側近『扉の向こうで音声だけならいけるとか、言っていた気がしたが』
勇者「あ、大丈夫だ」ドキドキ
相棒「そうみたいだね、ちょっとドキドキするけど」ドキドキ
勇者「…………、」
相棒「…………、」
魔王『…………、』
側近『…………、』
魔王(何故か怖がられてる相手に、)
側近(いったい何と話しかければいいのか、)
勇者「助けてお兄さん何喋ればいいかわかんない」
相棒「何喋ればいいのわかんないお兄さん助けて」
第一C「だからって二人してすがりつくな!」
第一C「……とりあえず、何か無いのか?ずっと言いたかったこととか」
勇者「!!」ハッ
相棒「!!」ハッ
勇者「ある!」
相棒「あるよ!」
第一C「それ言えばいいじゃん」
勇者「うん!」
勇者「じゃあ俺から!」
勇者「あの……魔王様」
魔王『何かしら、』
勇者「いくらなんでもパパに破壊魔法使っちゃうのはマズいと思うんです」
魔王『!!!』
側近『』プッ
勇者「小さい頃からそんな高度な魔法使えたのなら、そりゃ誰かに見せたくなるよな、とは思いますけど」
魔王『ま、まて!何故それを知っている!!』アワアワ
勇者「何度か避け損なって腕飛ばしかけたって、パパさんが言ってました」
勇者「末恐ろしい幼女だなぁ、って思いました」
魔王『あああ!違う!ソレはっ!本当に幼い頃の話で!!』
コソッ
第三「ふふふー、良いこと聞いちゃったぁ。ちっちゃい頃の魔王様って、お転婆さんだったんだねぇ」「いやいや、お転婆さんにも程がある」「先代様が避け損ねるって相当だぞ」「つか破壊魔法つかう幼女って」「魔王様(幼女)やばい」「ようじょこわい」コソコソワーワー
魔王『っっ!貴様っ!!よくも皆の前で暴露してくれたな!!』
側近『本当の事だろう。何を今更』
側近『ああそうだ、覚えているか?俺はあの頃、確かに何度も止めたはずだが』
魔王『~~っ!!!』
相棒「次は私!」
相棒「あのっ、側近さん!」
側近『……なんだ、』
相棒「同じ竜族から言わせてもらえば、仏頂面、程ほどにしないと」
相棒「おじさん、仏頂面は竜族の種族的特徴だと思ってたよ」
第一「……相棒さんを見るまで、仏頂面は竜族の種族的特徴だと思ってたヒト、挙手!」ハイッ
第一「はい」「はい」「はい」
第三「はい」「はい」「はーい」「はい」「はいはーい」「はい」
側近『貴様ら……!』
魔王『はい』クスッ
側近『お前まで!!』
相棒「もちろん、種族的特徴ではありません。確かに頭が堅くて仏頂面のヒトは多いですが、それは本人の性格によるものです。覚えておきましょう」
一同「『はーい』」
側近『……………、』ハァ
相棒「あともう一つ」
相棒「パパさん、側近さんのこと実の息子のように思ってる、って言ってた」
相棒「ちゃんと、パパって呼んであげた?」
側近『~~っ!!パパなどと軽々しく呼べるか!』
相棒「散々構っても敬語だし態度は堅いしでパパさんしょげてたよ」
勇者「パパ寂しい」シュン
相棒「って」
「ぶっ!」「ちょ、やべ、笑っちゃ駄目たのに、ぶぶっ、」「顔怖いのに、」「ちょ、せ、先代様……!!」
「パパ寂しい」シュン
「や、め、ろぶぶっ……!!」「脳内再生余裕すぎて……」「ちょ、あ、腹痛い、笑うの我慢しすぎて、」
「パパ寂しい」シュン
「やめてほんとやめて……!!」「死ぬ、笑いすぎて死ぬ……」
ワーワーケラケラ
勇者「でも魔王様と二人っきりだと素に戻るみたいだからって、よく二人の様子盗み見してたらしいよ」
相棒「おじさんの友達のチャラいお兄さん、そういう魔法得意だったみたい」
第一「おい、それって、」「隊長?」「隊長じゃん、変な魔法得意だったしあのチャラ男!」「口開くと一気に残念になるよね」ワーワーケラケラ
第三「第一の隊長ぶぶっ何やって」「いや先代様もまずいだろ、」「あははっ、盗撮は犯罪だよう」「俺の先代様のイメージが……っ、崩れてく…腹痛い……」「いや、昔からなかなかの子煩悩だったじゃんぶぶっ」ワーワーケラケラ
側近『お前ら覚えてろよ』
魔王『今回の発言態度の一つ一つ逐一査定させてもらうから』
勇者「魔王様と側近さんは、」
相棒「現在も立派なファザコンです、と」
ヒュン
勇者「良かったね、!!」ビクッ
相棒「パパさん、!!」ビクッ
スタタッ
魔王「よくもまぁべらべらと!」
側近「喋ってくれたもんだな!!」
勇者「 」ピョイ
相棒「 」ピョイ
「うわああぁ!?勇者さん達がまた降ってきた!」
第一C「あ、こら!!窓から出るな!危ないだろ!!」
第一「もうお前旅人さん達の保護者でいいよ」
第一B「そういやぁ下は庭園だったな」
第一A「ちょうど今下にいた弟とご対面ってとこ」キュイン
魔王「何故逃げる……私そんな怖い顔してた……?」
側近「窓から飛び降りるまでして顔を合わせたくないか……」
第一「このままだとさらにややこしくなりそうな件について」
第一「だからさみんな。ここは俺達でアシストしてやろうぜ」フォン
第一A「了解」
第一B「はいよ」
第一C「ま、それぐらいはな」
ヒュン
魔王城。
庭園。
勇者「…………吃驚、した」
相棒「……凄いよ、手、震えてる」
庭師弟「もう勇者さん達!駄目ですよ!窓から飛び降りちゃ!」
勇者「ごめん少年」シュン
相棒「すまん少年」シュン
庭師弟「……いや、こちらこそ、大声出してすみません。……姉ちゃんが真似したどうしようと思って……つい、」
勇者「ああ、確かに。大変だな少年……!」
相棒「うん、確かに。頑張れ少年……!」
庭師弟「はい、頑張ります……」
庭師弟「--ところで誰かに追われてるようでしたが、」
勇者「!!」ハッ
相棒「!!」ハッ
ヒュン
魔王「……逃げるな!」
魔王「……せめて、逃げる理由を教えてほしい」
側近「こちらに非があるのなら詫びよう、」
側近「だから……こうも逃げる理由を教えてくれないか」
勇者「……っ!」フルフル
相棒「……っ!」フルフル
ヒュン
第一「ということでアシスト参上!」フォン
第一A「伊達に第一所属じゃないもんな」フォン
第一B「そろそろ決めないと、駄目だろ」フォン
パキン、
勇者「!」
相棒「!」
第一C「いくらお前らでも、こうまで妨害されちゃ、すぐに転移とはいかないよな」ガシッ
第一C「ほら、捕まえた。もう逃げられないぞ」
第一C「良い機会だ。何をどう思ってるか話してみろよ。きっと、すっきりする」
勇者「…………、」コクン
相棒「…………、」コクン
勇者「……自分でも、よくわからなかった」
勇者「あの時!初めて町で見かけた時!」
相棒「初めて見かけたあの瞬間から目が離せなくなった!あの時だ、私達がおかしくなっちゃったのは!」
勇者「何でタイミング良く笑っちゃうんですか!」
相棒「仏頂面がデフォじゃなかったんですか!」
勇者「綺麗だって思った!ずっと見ていたいとさえ思うのに、胸が痛いんだ!」
相棒「呼吸が出来なくなるぐらい、苦しかったんだ!」
勇者「すぐに逃げて、もう会うことはないと思ってたのに、村でお兄さん達に出会って!」
相棒「また違う顔を、見せてもらって!……なんで、こんなに綺麗なんだろうって!」
勇者「闘うことは、好きだ。だからきっと、闘争心か何かだと思って、喧嘩をうった、」
相棒「わくわくしてたのに、闘えるんだって、凄くドキドキしてたのに、それなのに、」
勇者「駄目だった、傷付けるなんて絶対出来なかった。向けられた敵意が、痛くて」
相棒「痛いんだ、胸が。おかしいんだ、闘いたいとは思ってるのに、闘えない。ずっと、自分がわからなくて!!」
勇者「おじさんが死んじゃったってわかって、魔王様達がおじさんが話してた子供達だって気付いて…!」
相棒「おじさんにはもう会えないってわかっただけで泣けてきたのに、おじさんの子を、怒らせちゃった、って、」
勇者「さらに落ち込んでた時に城はああなっちゃうし好きだって気付いたお兄さん達は何故か死ぬ気だし!」
相棒「もう意味わかんないよ!死んだら会えなくなるんだよ!?会えなくなるんだ、絶対に!」
勇者「どうしようとも思った!お兄さん達が死ぬかもって考えて、怖くなって、同時に、」
勇者「魔王様が死んじゃったら、どうしようって。そう思った」
相棒「側近さんが死んじゃった、どうしようって。そう思った」
勇者「会えなくなるのは嫌だ。そうなるなら嫌われた方が良い!」
相棒「もう何してもいいって思った。会えなくなるぐらいなら、何だってしてやるって!」
勇者「俺達は、お兄さん達が好きだ、俺達がああだって知っても、変わらず接してくれたから!」
相棒「だから、お兄さん達が死なないように何だってするって思えた!」
勇者「……魔王様が回廊を壊すって言った時、頭、真っ白になった。どうして、って思ったんだ」
相棒「この気持ちも好きってやつで、それはわかってるのに、お兄さん達みたいに、すぐ行動に移せないんだ」
勇者「ただ、ずっと、」
相棒「同じことばかり、考えてた」
勇者「魔王様が死ぬなら、」
相棒「側近さんが死ぬなら、」
勇者「かわりに俺が死んだ方がマシだって……」
相棒「かわりに私が死んだ方がマシだって……」
勇者「…………、」
相棒「…………、」
勇者「……あれ?」
相棒「……これって、」
勇者「え?俺魔王様のこと好きなんだよな凄く」
相棒「うんうん、私も側近さんのことが好きすぎるわけで」
勇者「顔が見れないのはアレだよな。生で見ると綺麗すぎて直視出来ないというか」
相棒「いちいちびくついちゃうのも心臓が大きく反応しちゃうからで」
勇者「すぐ大騒ぎする心臓がネックだよな、生き急いでるにも程がある」
相棒「ずっと見ていたいのに早死には嫌だよね」
勇者「…………、あ」
相棒「…………、あ」
勇者「なぁ、これって、」
相棒「まさか、これが、」
勇者「恋?」
相棒「恋?」
第一「うん、そう」
第一A「よく辿り着いた」
第一B「やっとかよ、って言いたいぐらいだけど」
第一C「満場一致でその通りだと思う」
勇者「じゃあ、状況を鑑みるに、」
相棒「私達は」
勇者「一目惚れ」
相棒「一目惚れ」
相棒「したということ?」
第一ズ「うん」
勇者「…………、」ギギギ
相棒「…………、」ギギギ
第一「なんというぎこちない動き」
第一A「顔、今までで一番赤いんじゃないか?」
第一B「ということで激しい告白を受けた相手はっと、」
第一C「いったいどうなってることやら」
魔王「」
側近「」
第一「わぁ、予想以上に顔真っ赤」ケラケラ
第三「おい、俺達は今!」「歴史的な瞬間に立ち会っているんじゃないか!?」「やべぇ、あの顔!滅多に拝めないレアショットってレベルじゃないぞ!」「ふふー、微笑ましいねぇ~」「うわぁ、見てるこっちまで恥ずかしいわ」「あれでようやく気付いたってのがな」「第一苦労したんだなって思うよな」「副隊長、複数アングルでの記録、成功しました?」「当たり前だ、ぬかりはない!」「いつからいた副隊長」「間違いなく毒されてるぞ副隊長」ワイワイガヤガヤ
勇者「………あ、あの、」シュー
相棒「………えっと、」シュー
村人「お、頭から煙が。ついに許容オーバーか?」ケラケラ
魔王「………ごめんなさい、混乱してて、少し、頭を冷やしてくるわ」ザブザブ
側近「………同行しよう」ザブザブ
庭師弟「え!?ちょっと待って下さい!そこは池ですよ!?」
勇者「………、」バフン
相棒「………、」バフン
勇者「」パタッ
相棒「」パタッ
第一「え、うそ、倒れ?」
第一B「た、な」
第一A「しかも、二人共、」
第一C「息、してない、」
第一ズ「うわぁああああああ!!?」
第一「なんでだよなんでそうなるんだよ!!」アワワワ
第一A「えぇえええ!?ななななんで!?」アワワワ
村人B「なんかわかっちゃいたけど!いたけど!!」アワワワ
村人C「あわわわわとにかく治癒魔法!!治癒魔法ー!!」アワワワ フォン
村人「何を治癒だよ!!外傷ないよ!!」フォン
村人B「つか旅人さん魔法自体弾くんだけどなにこれ勇者だから!?勇者って魔法きかないのってこれ前にやったことある気がする!!」フォン フォン フォン バシュ
魔王「」ザブザブ
側近「」ザブザブ
庭師弟「やめて下さい魔王様側近様だから池ですそこ池なんですってば!!あああ誰か手伝って二人を止めてー!!」
霊園。
『 ワーワーギャーギャー 』
第三「庭園の様子が筒抜けだ。うちの部隊の奴らもなかなかやるよな」ケラケラ
第三隊長「--なぁ、聞こえてるか?」
第三隊長「面白いことになってるぜ」
第三隊長「………兵士冥利に尽きるっていうかよ、」
第三隊長「お前等の死は、無駄じゃなかったんだって、心からそう思えるんだ」
第三隊長「--なぁ、お前はどう思う?」
第三隊長「第一部隊副隊長さんよ」
庭師姉「……ふふ、そうね」
庭師姉「私も、そう思うわ」
庭師姉「これがあなた達が繋いでくれた未来よ、って、」
庭師姉「見せられないのが、凄く残念だけど」
第三隊長「……第一、再編するんだって?」
庭師姉「ええ」
第三隊長「ってことは、お前も復帰するのか?」
庭師姉「……あなたが座ってる墓石の下で眠ってるヒト--そのヒト以外の隣で副隊長なんて、……やってられないと思ってたけれど」
庭師姉「あの子達が私に何の相談もせず死ににいこうとした事で、これじゃ駄目なんだってわかったわ」
庭師姉「ちょうど、仇を討ってくれた子達にも出会えちゃったしね」クスッ
第三隊長「アイツ等は……なんつーか、凄まじかったな」
庭師姉「ふふ、今も凄いじゃない。あんな激しい告白して」
庭師姉「君のためなら死ねる、なんて、言われてみたいわ」
第三隊長「まずは性格からだな」
庭師姉「酷いわ、随分と辛辣じゃない」クスクス
第三隊長「間違ってはいないだろ」
庭師姉「そうだけど」クスクス
庭師姉「……ねぇ、」
第三隊長「あ?」
庭師姉「これから、楽しくなりそうね」
第三隊長「……ははっ!騒がしく、の間違いだろ?」
魔王『』ブクブク
側近『』ブクブク
庭師弟『池なのに、そこ、ただの池なのに……!!なんで沈んじゃうんですか……!!』
第三『あの子煩悩パパだぜ?告白とか初体験だろ』『しかしあんな表情崩すとか、勇者さん達よくやった!!』『グッジョブ勇者』『あははっ、楽しいねこの状況っ!』『みんな慌ててなー』『もうどっちに加勢すりゃいいのか』『かたや沈みかたや倒れ』『すげぇ状況だなほんと』
勇者『!』ハッ
相棒『!』ハッ
第一『あ、目覚めた』
第一C『なんだよ心配させんなよ馬鹿やろー!!』グスッ
第一B『つか魔法何できかないんだよ!この際もう良いけど!』
第一A『とりあえず落ち着こうぜ。魔王様達は大変なことになってるけど』
勇者『…………』ギギギ
相棒『…………』ギギギ
勇者『初恋って、』
相棒『実らないって言うよね』
勇者『』パタッ チーン
相棒『』パタッ チーン
第一『えぇえええ!?死んだよさらに死んだよ!!』
第一A『何で!?さらに追い討ちかけるために目覚めてどうすんだよ!!』
第一B『なんで!?もうなんで!?』
第一C『うわぁああ生きろ二人ともぉおお!!!』
部下『え、なんですかこの状況』
おわり。
移転投下した物。すぐに全部投下といけないでごめん。直したつもりだけどミスに溢れててさらにごめん。どこか緩い変な話だけど、少しでも楽しんでくれたなら嬉しい。
ここまで付き合ってくれて、ありがとう。
レスありがとう。すごく嬉しい。
2話目はのんびり作ってるから忘れた頃になるかもしれない。ごめん。もし天使組の参戦期待されてる方がいたら、さらにごめん。3話遠い。
誰得な番外編はここにそのまま投下するかもしれない。その時はまた、小さな暇つぶしにでもなってくれると嬉しい。
……大変申し訳ないんだけども、どなたか勇者「なんだろう、この胸の高鳴り」と関連作の悪魔「天使さんと俺」を完結作まとめスレにのっけてやってはくれないだろうか。気が向いた時や、何かのついでにやってくれると、とても助かる。
>>271
了解ひまっぴーの所に依頼出してくる
>>273遅れてすみません。依頼、本当にありがとうございました。
あちらでボロクソ言われてますが、作風は変えずそのままいかせていただきます。
2話目が遅いのはただ単に作成するのが遅いだけです。
一応時系列。
悪魔のアレ→これ→2話目→悪魔の最後の方→3話目となります。
悪魔の最後にいる兵士組は第一組であってます。
どこかで関連作のようなものを見かけて、もし楽しんで頂けたのなら嬉しいです。
いや、あの、ごめん。いずれはここに投下させていただきますので。
以下、過去小話投下していきます。
【出会った二人】
竜族の里。森林。
サガセーサガセー!!マダチカクニイルハズダー!!
ニガスナ!タカガニンゲンノガキヒトリダロ!
ワレラノホコリヲケガシタニンゲンヲゼッタイニユルスナ!!
ワーワーギャーギャー
枝葉が覆い茂る木の上。
人間(………………、)
人間(散々暴れたとはいえ、誇りを汚した覚えは無いんだけどなぁ)ケホッ
人間(…………あー、痛い)ズキズキ
人間(でも痛い分思いっきり楽しめたから良いか)
人間(……あの白い女の子、強かったなぁ、)
人間(派手に刺されたし、魔法もいくつかまともに食らったし、)
人間(動けない訳じゃないけど、完全に治るにはもう少し時間がかかりそうだなぁ、)ゴロン ズキッ
人間(うう、転がったから痛い)シュン
人間(--しかし立派な木だよな、こんな高い所なのに、枝なんて寝転がっても落ちないぐらい太くて大きい)ペタペタ
人間「随分と長生きしてる木だろうなぁ、」
竜族「そうだよ、だって里の御神木だし」
人間「あ、そうなんだ。こりゃ謝らないとだね」
人間「……すみません、枝お借りしてます。お身体に傷をつける気はないのでお許し下さい」ペタペタナデナデ
竜族「…………、」
竜族「昔から無断で登りまくってすみません。何年か前に枝折ってすみません」ペタペタナデナデ
人間「御神木なんだろ?折った枝どうした?証拠隠滅?」
竜族「しようと思ったけど、やっぱり御神木だし、」
竜族「仕方ないから植えてみた」
竜族「その結果が御神木の隣にある御神木(ミニ)です」
人間「ぶっ……!ちょ、え、下のっ!あの不自然に生えてた木か!地面に枝ぶっ刺しただけじゃんか!」ケラケラ
竜族「笑うなよ、真剣に考えた結果なのに」
人間「そっちだって声が半分笑ってるぞ」
竜族「バレたか」ケラケラ
人間「バレるよ」ケラケラ
竜族「…………、」
竜族「ね、そっち行って良い?」
人間「うん、構わない」
竜族「--よ、っと」ピョン スタッ
竜族「やあ、人間。さっきは楽しかったよ、ありがとう」
人間「よう、白い竜族。こちらこそ楽しかった。ありがとう」
竜族「ところで、傷、治ってないみたいだけど」ジー
竜族「治癒魔法使えないの?痛いなら私が使ってあげようか?」
人間「痛いけど大丈夫。治癒してる最中なんだ。俺、治癒魔法使わなくても勝手に傷塞がんの」
竜族「ふーん、」ペラッ
竜族「ほんとだ。傷が塞がってく。竜族は丈夫だと思ってたけど、上には上がいるんだね。……んじゃ、ちょっとお手伝い」フォン
バシュン
竜族「あれ?変だな、治癒魔法がきかない?」
人間「そうなんだよ。俺の身体、何故か治癒魔法とかその類の魔法を弾いちゃうんだ」
人間「でもありがと。治癒魔法苦手みたいなのに、かけてくれようとしてくれて」
竜族「……やっぱりわかっちゃうもんなのかな、苦手だって」
人間「だってキミ俺と似てるんだよ、使ってる時の魔力の流れ」
人間「ほら、他のヒトがMP10とかで出来る簡単な治癒魔法でも、MP100使わないと出来ないあの感じ」
竜族「他の魔法は何かの片手間にさくっと出来るのに治癒系統は何故か集中しないと成功しないというあの、」
人間「………………、」
竜族「………………、」
人間「わぁ、凄い親近感」
竜族「同じく」
竜族「--あー、でも治癒魔法弾くんだったら前言撤回ってやつかな」
竜族「面倒な身体してるね。竜族なんて自己治癒力は高いし治癒魔法はちゃんと効くし」
竜族「ほら、もう傷無いだろー?」スルッ ペラッ
人間「ホントだ。結構な手応えがあったのに、もう完全に塞がってる」ジー
人間「………………」ジー
人間「…………一応言うけどさ、女の子が下乳見えるまで服はだけさせちゃうのはマズいと思うよ」
竜族「え、下乳見えちゃってる?」
人間「うん、もう少しで視線そらさなきゃいけない所まで見えてる」
竜族「…………」イソイソ
竜族「言わなきゃ気付かなかったのに、正直者だね人間」
人間「まぁ俺も立派な男で、やっぱり眼福だよななんて思ったんだけどね」
人間「闘ってる時は気にしてなかったけど、こうして見てみるとアレだね、」
竜族「やめてそれ以上言わないで恥ずかしくなるから」
竜族「気付いたらこうなってたんだ、まだ身体成長しきってないし、これからが憂鬱なんだぞ」
人間「えっと、その、がんばれ」
竜族「どうせなら男に生まれたかった」
人間「そんなこと言うなよ。世の中には美少女になりたいと思ってる男が沢山いるんだぞ」
竜族「そうなの?」
人間「そうなの」
竜族「へんなのー」ストン
竜族「…………」アシブラブラ
人間「…………」
竜族「なぁ人間ー、」
人間「んー?」
竜族「何しにこんな所に来たの?ここって面白い物なんかなんにもないじゃん」
人間「そうかな。最高に面白いもの、あったのに」
竜族「あったの?」
人間「いた、って言う方が正しいのかな。ほら、ちょうどそこに」スッ
竜族「どこ指差してんの?」クルリ
竜族(後ろには枝や葉っぱしかないし、)
人間「ひんと。ここには腕試しに来ました」
竜族「あっ、そっか!」ピコーン
竜族「面白いものって私か!」
人間「ピンポーン、正解正解!」
竜族「やったね正解だ!」
人間「短い間だったけど、凄く楽しかった。まだそう長くは生きてないけど、これまでで一番、最高に楽しく過ごせた時間だったよ!」キラキラ
竜族「私も。全力で誰かと互角に闘えたのなんて初めてで、もうすっっごく楽しかった!」キラキラ
人間「……なんかキミは他人な感じがしないなぁ」
竜族「うんうん。なんか似てるよね、私達。もしかして生き別れのきょーだいとか?」ケラケラ
人間「マジで?なら俺実は竜族なのかな!変身したい変身!!」
竜族「まぁ私にそんなのいるわけないけど」ケラケラ ニョキ バサッ
人間「あああ羨ましい!角とか羽はえたりすんの!憧れ憧れ!」
竜族「ふふふ~、良いだろ良いだろ人間には出来ないことだからなー」バサバサ
人間「くっそー!なんで人間は変身出来ないんだ!少しぐらい変身させろよ!!」
竜族「あ、でも人間が変身出来たらそれこそ問題だと思う。もう種族人間じゃないじゃん。種族怪獣じゃん」
人間「でも……怪獣って言葉……なんかこない?」
竜族「わからんでもないけど!なんかこう、くるものがあるのはわかるけど!」
人間「やはりキミとは話が合うようだ!」
竜族「くっ……闘いだけならまだしもたかが会話でこうも楽しめるとは……やるな人間!!」
人間「種族人間の特徴は圧倒的な個体数だけじゃないんだぜ!」
竜族「いや、正直な話、ここまで強い人間がいるなんて思わなかったよ」
人間「結構いるんだぜ、強い奴。ほら、職業勇者の奴らとか大体強いし」
竜族「勇者ねぇ、種族人間に会うのも今日が初めてだったりするからなぁ」
人間「はーい、俺職業勇者やってまーす」
竜族「マジか!やったね私勇者に会っちゃった!」
人間「まだまだ新米だけどな!」
竜族「そっかー……って、あれ?勇者って一人で行動するもんだっけ?本で読んだ限りでは、勇者一行って言われてて、何人かで旅してたはずだけど」
人間「………………ぼっちで何が悪いか」シュン
竜族「あ、ごめん」
人間「そりゃ俺だって一人で旅するより誰かと旅してる方が楽しいと思うけどさ、」
人間「仕方ないじゃん、みんな俺が闘ってる姿見ると逃げてくんだ」シュン
竜族「親近感が凄まじいよ」
人間「あ、やっぱり?端から見たら俺こんな感じなんだろうなって思ってた」
人間「似てるな、俺達」
竜族「似てるね、私達」
人間「!」
竜族「!」
人間「すげぇや。完全に同時だったよ今!」ケラケラ
竜族「息ぴったりじゃん!」ケラケラ
人間「まさかきょーだい説が真実だったり!?」ケラケラ
竜族「生き別れの双子のきょーだいとか!?」ケラケラ
人間「あー、そうだ!うん!」
人間「なぁ!白い竜族さんよ!」
竜族「まった!」
人間「じゃあ待つ!」
竜族「何を言おうとしてるかわかったぞ!でも、その、アレだ!駄目だ!」
人間「えー、なんでー?」
竜族「いや、だって……私って、ほら、」
竜族「……なんか白くて、気持ち悪いじゃん。見た目」
人間「そうか?返り血が目立ちそうだなってぐらいにしか思わないけど」
竜族「そうそう、返り血で全身真っ赤でおまけに目の色も赤いから、もう真っ赤っかで余計に怖がられるの」
人間「目なら俺も赤いけど」
竜族「あ、人間も赤いね」
人間「いえーいおそろいいえーい」
竜族「いえーい」
竜族「じゃなくて」
人間「いいじゃん。俺は気持ち悪いなんて思わないし、真っ赤になる時はきっと俺も一緒だろうし」
竜族「やだこの人間めげない!」
人間「目指せぼっち脱却!俺は決めたぞもう待たないぞ言うぞ!」
竜族「えー」
人間「俺の相棒になって下さい!!!」
竜族「えぇー」
人間「俺の相棒特典その1!相手に困らない。誰にも邪魔されないような所で存分に身体動かせます!」
竜族「わあ!戦闘欲求がすぐに解消されるね!」
人間「相棒特典その2!連携という言葉に憧れはありませんか。俺達ならきっと息ぴったり!」
竜族「わあ!闘いがさらに楽しくなるね!」
人間「相棒特典その3!その3は……」
竜族「その3は?」
人間「よく考えたらコレもし相棒がいたら、な俺の特典だったわ」
竜族「そうなの?十分特典に思えるけど」
人間「マジで?ならその3その4その5もあるよ」
人間「二人でいろんな所に行く、二人でいろんな景色を見る。そして、いろんな人に出会う」
人間「世界には強い奴がごろごろいるんだ。片っ端から喧嘩売りにいける」
竜族「………………、」
人間「嫌か?」
竜族「……嫌なわけあるもんか」
人間「じゃあ何でそんな暗い顔してんだよ」
竜族「………………、」
竜族「白い竜族って滅多に生まれないらしいんだ」
竜族「竜族の中でも群を抜いて強いのは、母親の生命力を奪って生まれるからなんだって」
竜族「おまけに、存在するだけで周りが不幸になると。現に十何年か前竜族で一番強かったっていう一族が白い竜族のせいで皆殺しにされたんだってさ」
人間「それはもったいない」
竜族「うん、心からそう思う」
竜族「だからさ、私は里から出ちゃ駄目らしいんだ」
人間「えー、やだー」
竜族「やだって言われてもー」
人間「だって俺なら反対振り切って里から出ちゃうぞー」
人間「キミもほんとはそうだろー?」
竜族「……まるっきり嘘ってわけでもないけど、そこまでわかるとはやるな」
人間「だって俺と思考回路まで似てる気がした」
竜族「むむ、なら正解を教えよう!実はちょっと怖い!」
竜族「だってこの里から出たことないもん。そりゃ外の世界に憧れはあるけど!」
人間「俺が一緒じゃないか!!一人じゃ怖くても二人なら怖くないぞ!!」
竜族「やめてよ誘惑するなって!私意外とメンタル弱いんだぞ!!」
人間「俺だって罵倒されればそれなりに傷付くメンタルだ!それに互いの弱点を補い合うのがコンビじゃないのか!?」
竜族「……………、」
竜族「私達って出会ったばっかじゃん。なんか気が合うからって仲良くしてるけど」
人間「うん」
竜族「…………、」
竜族「その……、途中で嫌になったからって私を見捨てたりしない?」
人間「しない。途中で愛想つかして見捨てられないよう俺頑張る」
竜族「私外の世界のこと本で読んだぐらいだからな、常識とか全くわからないぞ」
人間「世界ってのは知らないことの方が断然多いじゃんか。これから一緒に学んでいこうよ」
竜族「……………、」
竜族「本当に、一緒にいてくれる?」
人間「もちろん。だって相棒だろ?」
人間「ずっと一緒だ。きっと、死ぬ時だって」
竜族「……人間って短命じゃん」
人間「俺の身体普通のヒトとは少し違うし魔力もあるからしぶとく生きると思うんだ」
竜族「…………、本当に、私で良いんだね?」
人間「もちろん。キミが俺と一緒で良いって思ってくれるのなら」
竜族「…………良い。人間で良い。人間が良い」
竜族「一緒に行きたい。相棒になって一緒に外の世界を見たい!!」
人間「冗談じゃないよな、本気で言ってるよな!?」
竜族「本気の本気!」
人間「…………、くぅう!やったあ!!」
人間「ついにぼっち脱却!もう寂しくなんかない!!」
人間「これからよろしくな相棒!」
竜族「うん!こちらこそよろしく勇者!」
現在。
勇者「といった感じでコンビ結成」
相棒「今考えるとさくさく決まったね」
相棒「出会う、戦う、邪魔が入って別れる。とりあえず逃げた勇者をお礼言いに探して発見、気付いたら口説き落とされコンビ結成」
勇者「そういえば、あの後ちょっと大変だったな」
相棒「あー、うん。結果的に勇者が私をさらった感じになったね」
勇者「こっそり荷造りしてたらバレちまって、物凄い勢いで邪魔されたんだよ」
相棒「結局着のみ一つで里から出ることになっちゃったし」
勇者「やっぱり相棒がレア種だからなんだろうなー」
相棒「レア種も辛いねー」
勇者「あ、今の流れで思い出したんだけど、」
勇者「本当に、真っ赤になる時も一緒だったな、」ケラケラ
相棒「そうだね。ものの見事に一緒に真っ赤になったね」ケラケラ
勇者「まさか誰かを好きになるのまで一緒だとはなー」
相棒「ほんと、そっくりだね私達ー」
勇者「そっくりいえーい」
相棒「いえーい」
第一A「寧ろその出会いで何故恋愛に発展しなかったのか」
第一B「明らかに将来ゴールインしてる出会い」
第一「何年後かに確実えんだぁああああああしてる出会い」
第一C「いや、なんつーか、その……近すぎるのも問題なんだな……」
出会った二人。おわり。
>>次。同期の仲良し三人。
【同期の仲良し三人】
とある町。
兵士男「……また、どこ行きやがったんだアイツは」ハァ
兵士女「もう燃やしても良いかしら」イラッ
兵士男「いや、駄目だから。我慢しろ我慢」
兵士男「とりあえず探してくるからさ。お前は先に帰投してろよ」
兵士女「嫌よ、私も探す。顎に一発入れてやったらこの苛々がすっきりすると思うの」
兵士男(……あーあ、何も言わずにどっか行くお前が悪いんだからなー、)
兵士女「あの馬鹿のことだから、この町から出るなんてことは無いだろうけど」
兵士男「アイツに捜索系は使うだけ無駄だからな、やっぱ足で探すしかないか」
兵士女「足で探すにはちょっと広すぎるわね。ひとまず手分けしましょうか」
兵士男「いや、それは構わないが……俺との通信回線は維持してろよ。なんせお前攻撃系以外まるで駄目だし」
兵士女「転移は出来るようになったわよ?三メートルぐらい」
兵士男「他の奴になら近ぇよ何の役にたつんだよ、と言うが……」
兵士男「上達したなお前。滅茶苦茶練習したんだなぁ」シミジミ
兵士女「いずれ複数人を転移させてみせるから。見てなさい」フフン
兵士男「ああ、楽しみにしてるわ」
兵士男「--さて、じゃあ探しに行きますかね。俺が右、お前は左の道からで良いか?」
兵士女「いいわよ。見付け次第通信入れるから」テクテク
兵士男「おー、俺もちゃんと通信入れるから、先に手出して気絶させるんじゃないぞ」
兵士女「善処するわ」
兵士男(こりゃ俺が先に見つけてやらないとなぁ……)ハァ
兵士男「んじゃ、俺も行くかー」ノシノシ
捜索開始から数分後。
ワイワイガヤガヤ
兵士男(この町の商業区か……賑やかだな)
フワリ
兵士男(良い匂いだ、大通り、右側は食い物系の店が並んでんのか)
キャッキャキャッキャ
兵士男(…………、)
兵士男(対して左側は……女の子女の子した店というか、カラフルというか、キャピキャピしてるというか)
キャッキャ ウフフ アハハッ
デネー エー ソウナノスゴーイ
兵士男(苦手なんだよなぁ、)
「そうそう。でさー、俺キミの可愛さをさらに引き立ててる、その髪留めを扱ってるお店を探してるんだ」
兵士男(!!)ピタッ
「どこか良いトコ知らない?--え?何言ってるのさ御世辞なわけないじゃないか。俺最初精霊が町中にいるって吃驚したんだもん」
モウッ イイスギヨ! バキッ
「ぶへっ!」
兵士男「……………、」フォン
兵士男「あー……いたわ。商業区。詳しい座標を送る」フォン
兵士女『……了解』フォン
「良い拳だ……、照れた君の顔はさながら聖なる水の精霊ウイン」ピクッ
ヒュオン スタッ
兵士女「」ゴゴゴゴゴゴ
兵士男「おー、三メートルどころか遠距離の転移成功してんじゃねぇか」
兵士男「成長したなぁ」シミジミ
「わー、地獄から本物のイフリートがやって来たみたいだー」アトズサリ
エッ エッ……?
兵士女「歯ぁ食いしばりなさい」ヒュン
「あ、ちょ、待ってくれこれには事情 バキッ がふっ!!」ズザザザザッ
兵士男「おー、きれいに入ったなぁ、」
キャァアアアア イヤァアアア タタタッ
「」チーン
兵士女「ふぅ」マンゾク
兵士男「やり過ぎだと思うんだがなぁ」ノシノシ
兵士男「おい、起きろ友人」フォン
兵士友人「…………」フワリ
兵士女「治癒魔法なんて、勿体無いことするわね」
兵士男「何言ってんだ。目覚めてくんねぇと、コイツ抱えて歩くの俺になっちまうだろ」
兵士友人「………う、」パチリ
兵士友人「いててて……、あ、男じゃん。治癒魔法ありがとな」
兵士友人「そうだ女!転移魔法出来てるじゃんか!おめでとう!!」
兵士女「ありがとう。早く貴方に会いたいと思って使ったら成功したの」ニコリ グッ
兵士友人「その握った拳を見ると恐怖に震えるんだけど、」ビクッ
兵士友人「俺が成功の助けになったんならやっぱり嬉しいよ」ヘラリ
兵士女「…………まったく、貴方ってヒトは……」ハァ
兵士男「なんだかなぁ」ハァ
兵士男「--で?女の子ナンパして何しようとしてたんだ。何か見てて恥ずかしい感じでチャラかったぞ」
兵士友人「いや、あの感じの方が変な警戒されないかなって。俺、無害な馬鹿っぽかったろ?」
兵士女「無害というか貴方は何時でもただの馬鹿でしょう」
兵士友人「何時でもなんて失敬な!言っとくけどな、馬鹿馬鹿言ってると俺本当に馬鹿になっちゃうぞ!」
兵士女「何を言いますか、」
兵士男「諦めろお前もう分類上馬鹿だよ」
兵士友人「酷いぞお前らー!つかアレナンパとかじゃないんだからな!ちょうど声かけやすかったのがあの女の子達だったってことで!」
兵士友人「俺は老にゃくにゃんにょまとめていけんだから!」
兵士男「言えてねぇぞ老若男女」
兵士友人「誰だって噛む時はあると思うの」キリッ
兵士女「……老若男女ねぇ、少年少女に手を出したら……そうね、同期の縁ってことで私が介錯してあげる」
兵士女「あと弟に近付いたら燃やすから」ザワッ
兵士友人「いやいやその意味じゃないから!!そんな危ない意味じゃないから!!」
兵士友人「それに同期の縁とかじゃないだろ?俺達友達じゃんか!」
兵士女「毎回任務終わりに消える迷惑な貴方なんて同期で十分よ」
兵士友人「……悪かったって、ごめん」
兵士男「悪かったって……お前毎回言うけどな。いい加減何も言わずに消えんのはどうにかしてくれねぇと」
兵士男「今日ばかりは理由ぐらい話してくれないと、俺だって友達だとは思えないな」
兵士友人「うう……今日の男は厳しいぜ……」
兵士男「何時までも甘やかせると思うなよ?」
兵士友人「ぐぬぬぬ!」
兵士友人「……仕方ない。これは素直に二人に協力を仰ぐべきだったということか」
兵士男「協力ってお前、」
兵士女「やっぱり何か企んでいたと、」
兵士友人「企んでたって、人聞きの悪い。そんなんじゃないよ」
兵士友人「プレゼント調査なんだ。友達のお子さんへの」
兵士友人「……忙しいヒトでさ、せめて案ぐらいは俺が出そうと思って。各地で見つけた良さそうな物の映像送ってんだ」
兵士女「プレゼント調査って、」
兵士男「理由はわかったが、何も言わずに消えるのはいかんぞ」
兵士友人「そこは謝る。すぐ戻るつもりが調査に夢中になってさ」
兵士友人「しかし俺だけの考えにも限界がある!そこで二人にも協力を頼みたい!」
兵士女「そんなこと言われても、」
兵士男「勘弁してくれよ。俺はそんなん選ぶセンスなんかねぇよ」
兵士友人「大丈夫だって。まずは話聞いてくれよ」
兵士友人「--対象のお子さんは女の子一人と男の子一人。二人の年齢は……多分同じぐらいかな。女の弟よりは上だから、そんなにちっちゃくはない」
兵士男「あー無理無理絶対無理だわ。年頃の女の子の欲しいものなんて俺にはわからん。女に任せる」
兵士女「んー……やっぱり好みがわからないことにはなんとも」
兵士友人「そこなんだよ。友達の--パパさんで通すか。パパさん曰わく、どっちもアレ買ってコレ買ってと一度だって言ったことのない、要は何も欲しがらないお子さん達だそうだ」
兵士友人「パパさんは忙しいし、身体が弱いママさんは部屋にこもりっぱなしで、夫婦揃って子供達には寂しい思いさせてるって思ってんの」
兵士女「そう……、欲しがらないのはきっと、親に気を使っているからだと思うわ」
兵士女「弟も……欲しがる子じゃないから」
兵士男「お前んとこ、早くに両親亡くしてるからな、」
兵士女「年齢が達したら自分も兵士になるって言ってきかないの。私は絶対に反対なんだけれど」
兵士友人「ばーか。駄目だぜそんなこと言っちゃ。兵士になるのは姉ちゃんと一緒にいたいからに決まってる」
兵士友人「一緒にいて守りたいから兵士になるって言ってるんだよ。女が兵役についてる以上は絶対止められないぜ」
兵士女「……わかってるわ、そんなことぐらい。でも、あの子私と似て……使う魔法に癖があるから……」
兵士男「大丈夫だろ。お前と似てるから」
兵士友人「うん、大丈夫。弟強いよ、これからもっと強くなると思う。俺、保証出来るよ」
兵士女「……うぅ、なによ、当たり前よ!あの子だって、私が見てなくても大丈夫なぐらい強いんだから、」
兵士女「話、戻して!そらしたのは私だけど!ほら!さっさと戻す!」
兵士男「へいへい」
兵士友人「へへへ、わかった」ニコニコ
兵士友人「じゃ、お子さんズの生活について。もちろんパパ情報だけど」
兵士友人「二人そろってシンプルな生活してる、というか、聞くと何とも言えない気持ちになるというか……」
兵士友人「勉強してるか鍛錬してるか二人で模擬戦してるかのどれかだって」
兵士友人「二人で闘ってる時が一番楽しそうな顔してる、ってパパさんちょっと複雑そうだった」
兵士男「…………」
兵士女「…………」
兵士男「……あー、その、アレだ。近年稀に見る真面目な子供じゃねえか」
兵士女「……そうね、真面目って良い事よ」
兵士友人「外見は問題なく紳士淑女に成長中なんだけどさ、肝心の中身が……」
兵士友人「戦闘狂になったらどうしよう、ってパパさん諦め気味に言ってた」
兵士男「いや、諦めんなよ」
兵士女「狂まではそう簡単にいかないと思うわ。だ、大丈夫よきっと」
兵士友人「正直、姿見せてもらったことあるけど、どちらも将来有望で、娘さんは確実にママさんに似たんだろうな、かなりの美少女で、息子はイケメンだった」
兵士友人「だがしかしこの二人の趣味は闘いになりつつある」
兵士男「このご時世だ、自分で自分の身を守れるにこしたことはないが」
兵士女「さすがにちょっと、危ないんじゃないかしら」
兵士友人「お年頃にも関わらず全く着飾りもしない。だが、両親大好きっ子の二人なら、大好きなパパから送られた物ぐらいは身につけるだろう、」
兵士友人「そう考えて、動いても邪魔にならない、主に髪留めメインで調査してたんだ」
兵士男「……それで、俺達にも選ぶの協力しろと」
兵士友人「それもあるけど、本命は違う」
兵士女「本命?」
兵士友人「うん。本命は食べ物」
兵士友人「その二人物凄い食うんだよ。もう大食い。その細い身体のどこに入ってんのってぐらい食べるんだ」
兵士友人「美味しい物、特に甘いものには目がないらしくて。甘いもの渡すと滅茶苦茶喜んでるのに顔と態度に出さないよう必死に隠してる姿がもう可愛くては仕方がないって、パパさんが悶えてた」
兵士男「ってことは、」
兵士女「その協力ってのは、」
兵士友人「美味しい物探し。だから舌と鼻には多大な協力を願いたい。もちろん良い小物があれば選ぶの手伝ってもらうけど」
兵士友人「実はさ、パパさん物凄い子煩悩なんだ。もし着飾ることで変な虫とか寄ってきて、もしのもしで娘さんが『私の彼氏なの』って言い出したら」
兵士友人「多分発狂しちまう。絶対発狂なんかしちゃいけないヒトなのに」ケラケラ
兵士女「そ、そう……。事情はわかったわ、協力してあげる」
兵士男「わかった、そういうことなら手伝える」
兵士友人「さすが!ありがとな二人共!!」
兵士友人「じゃあ美味しい物探しに出発だ!!」
数十分後。
兵士友人「もっしゃもっしゃ!」うっま!これうっま!!
兵士男「」モグモグゴクン
兵士男「良い年こいてもしゃもしゃ喋るなよ」
兵士女「」モグモグゴクン
兵士友人「もしゃもっしゃ!」いやだってこれ美味!すごい美味!
兵士女「行儀が悪い。見苦しい」
兵士友人「もぐもぐ」ごめん シュン
兵士友人「」ゴクン
兵士友人「……なにはともあれ決めた。これはそのまま買って帰る。お土産にせねば」
兵士男「喜ぶんじゃねぇの、甘党なら」
兵士男「で、件のパパさんが甘党じゃないなら、そっちの甘くない奴もいれとけ」
兵士友人「うむうむ、そうだよな、」
兵士女「任務終わりに何か買って帰るなんて考えたことも無かったけど、」
兵士女「ふふっ、こういうのも、なかなか良いわね。私も弟に買っていこうっと」
兵士友人「やったね!女の機嫌が良くなった!やはり美味いものは正義!」
兵士友人「店員さーん!こっちの甘い方三十個と、控えめの方十個お願いします!」
兵士女「私は五個ずつお願い出来るかしら、」
兵士男「三個ずつ頼む」
店員「大量購入キター!まいどありっー!」店員「はーい!ありがとうございまーす!」
兵士友人「あー、良い買い物したわー」ニコニコ
兵士男「にしても、お前店選ぶの上手いな。似たような店あんなにあるのに」
兵士友人「そりゃろうにゃくにゃん……子供からご老人まで声かけて訊きましたもの!こんなのは地元のヒトが一番よく知ってるからね!」
兵士友人「よってあとは実食あるのみだったのです!」キリッ
兵士女「ただの残念チャラ男だと思ってたけど、少し見直したわ」
兵士友人「だーかーらー、ずっと言ってるけど俺チャラくないって!真面目系お喋りなだけなんだって!」
兵士男「お喋りだってことには自覚あるのか」
兵士友人「いやだって誰かと話すのって楽しいじゃんか!そりゃ黙って一緒にいるのも良いと思うけどさ!」
兵士友人「一緒にいるだけで楽しい時は楽しいもんな、いやでも俺寂しがり屋さんだし、一人ぼっちだと寂しくて多分死ぬ俺の前世はきっと兎」
兵士男「はいはいぴょんぴょこぴょんぴょこ」
兵士友人「やる気なさげにぴょこぴょこ言うなよ!」
兵士女「寂しくて死ぬ割りにはよく一人でふらふらしてるわよね」
兵士男「おまけに捜索系の魔法に引っかからないよう、色々、してるしな」
兵士友人「悪いとは思ってるよ。でもこれは癖みたいだもんだからさ!許してくれ!」
兵士女「これからの任務終わり、私達もその調査とやらに付き合わせるなら、許してあげても良いわよ」
兵士男「そうだな、任務終わりに美味いもん巡り出来るんなら良い気晴らしになる」
兵士友人「!!!」
兵士友人「マジで!?やったね俺が一番特するじゃんやっほう!!」
兵士友人「じゃあ今日はもう帰ろうぜ!次の任務のために休まなきゃなー」ルンルン
兵士男「そこまではしゃぐもんかよ」
兵士女「スキップまでして、まるで子供ね」クスッ
兵士友人「てってて転移~転移っい~、どこからどこへ飛ぼっかな~♪」ルンルン フォン
兵士友人「てててて転移~、って」ピクッ
兵士男「どうした?」
兵士女「何か見えたの?」
兵士友人「……あー、うん」キュイン
兵士友人「転移は少し待っててくれなー、」フォン フォン フォン フォン
兵士友人「…………、」キュイン パシュ
ズドォォォォン!!!
キャー!ワー!! ナンダイマノオト!? ザワザワザワザワ
兵士女「……説明」
兵士男「……お前、ほんと何も言わないで何でもやっちまうよな」
兵士友人「いや、二人に手ぇかけさせることでもないと思ってさ」ヘラリ
兵士友人「町に魔物が近付いてたから、ちょっとお仕置きというか、」
兵士女「」ムスッ
兵士友人「えええ!!?何で機嫌悪くするんだよぉ!だってここから距離あったし、お土産買ったし気持ちは帰る一択だったから!」アワアワ
兵士女「世の中って不公平だわ。こんなヒトが天才だなんて」ハァ
兵士男「日頃から空間把握魔法を広範囲で継続してるわ遠距離の対象を一瞬で捕捉、魔法の発動撃破まで一人でやっちまうわ」
兵士女「苦手分野一切無しで速さ威力共に一級品。おまけに魔力耐性もずば抜けて高い、なんて」
兵士男「……まぁ、でも」
兵士男「そんな天才様でも、やっぱりこうってのが寧ろ公平に感じる」
兵士女「……そうね。悔しいけど、コレだって改めて考えたら苛々が治まったわ」
兵士友人「褒められてんだかけなされてんだか」
兵士男「褒めてるよ一応。もう話きてんだろ?第一に来ないかって」
兵士友人「おう。でも俺、二人とはもう少し一緒が良いからで蹴ってきた!」
兵士女「……馬鹿。一応私、第一から誘われてるんだけど」
兵士友人「マジで!?確かに魔法の第一武術の第二バランスの第三なら女は迷うことなく第一っぽいよな!」
兵士友人「男は!なぁ男は!?いけるだろ第一!みんなで第一行こうぜ!!」キラキラ
兵士男「まー、話はきてるっちゃきてるんだが、」
兵士女「とんだ色男だったもんよね、第一第二第三、この領最強の三部隊からお呼びがかかるなんて」
兵士友人「うおお!!流石!確実に性格も含まれてる!!」ケラケラ
兵士女「私もそう思うわ」クスクス
兵士男「性格って言われてもな、」ハァ
兵士男「……第一の隊長なんか、お前が話きいてくれないって泣きついてきやがるし。何で俺の所に来るんだって話だ」
兵士男「俺の能力で言えば第三向きだろうが、この際第一で良いかもしれないな。別部隊になると面倒事が増えるだけな気がする」
兵士友人「男は自分の能力過小評価しすぎだと思うぜー、お前魔法の使い方上手いもん。見た目だけなら第二だけど」
兵士女「確かに、外見だけなら典型的な脳筋の第二ね」クスッ
兵士男「見た目については余計なお世話だっての」
兵士友人「ふっへへ~、帰ってお土産のお届けしたら、さっそく第一の隊長に頼みに行くかな~」ルンルン
兵士男「第一は……確か今日は領主様ん家の警備だな」
兵士女「交代を狙うしかないわね。いくらなんでも職務中は難しいと思うわ。領主様の家に入るってことだし」
兵士友人「あちゃー、今日の警備は第一か。正面から行くわけにもいかないし、お土産のお届けはちと面倒そうだな」
兵士男「ん?パパさんとやらは第一所属か」
兵士女「領主様の家に勤務してる、とか?アンタなら顔売れてるし通してくれるんじゃない?」
兵士友人「いや、流石に厳しい。お土産検品されちゃう。しばらく温度維持する魔法はかけてるけどさ、調べられたら流石に冷めるし個数減るし」
兵士男「検品ってお前、」
兵士女「…………、まさか、」
兵士友人「?………、ああ!」ポン
兵士友人「言ってなかったっけ。俺領主様ん家隠れてよく侵入してんだよ」
兵士友人「いや、別に不用意に散策はしてないぜ?一応パパさんの部屋かママさんの部屋にしか行かないし」
兵士男「…………、」ハァ
兵士女「…………、」ハァ
兵士男「……お前の友達の幅には驚かされてばかりだよ、」
兵士女「何時の間に領主様と仲良くなってるのよ……」
兵士友人「……領主様が領主様の任につく前にはもう知り合っていたり」
兵士男「……ったく。随分と長い付き合いじゃねぇか」
兵士女「確かにいたわね、お子さんが二人。お嬢さんは見事に奥方様に似て……その、」
兵士友人「ぶっちゃけ顔怖いよなパパさん。でも本人は気にしてるんだからあまり言っちゃダメだぞー」ケラケラ
兵士女「もうあなたが言っちゃってるじゃない」
兵士友人「やべ、侵入した時会えたら謝っとこ」
兵士男「あちらに顔知られてるなら……何で正面から入んねぇんだよ」
兵士友人「正面から入るとなんか目立つじゃん。誰が見てるかわかんないし」
兵士女「へぇ……相手の立場を考えてはいるのね」
兵士男「なるほど。相手は領主様だ、友達のお前の名前使って誰かが何かしようもんなら事だしな」
兵士友人「いや、ただ単にお忍び感が好きなだけ」
兵士男「…………、そうかい、」
兵士女「…………、そう、」
兵士友人「さあて!今度こそ転移だ帰投するぞー」フォン フォン
兵士友人「転移魔法陣は完璧っと。しかし侵入時どうやって第一の目を誤魔化すかが問題だよなぁ、」
兵士友人「ま、なるようになるか!」フォン
兵士男「…………」ハァ
兵士女「…………」ハァ
ヒュン
××年後。
ワイワイガヤガヤ ワイワイガヤガヤ
第一隊長「おー、ここ数年は豊作だよなぁ。今年も良い感じに強くなりそうな兵がゴロゴロゴロゴロ」
第一副隊長「そうね、強ければそう簡単に死なないから。……本当に、嫌な時代」
第一隊長「んなこと言うなよ、明るくいこうぜ!せっかく領主様がバタバタ頑張ってくれてるんだからさー」
第三隊長「…………、」
第一隊長「お、あの四人組」キュイン
新兵「!」キョロキョロ
第一隊長「ほら、見てみろよアイツ等。今反応早かった奴が一緒の」
第一隊長「アイツ等第一に欲しいなぁ、魔力の質が良いしなにより四人共耐性が高い」
第一副隊長「あの子達ね、わかったわ。あとで声かけておくから」
第三隊長「…………、」
第一隊長「ん?なんだよさっきから黙って!良い兵でもいたか?」
第三隊長「いや……、昔の事を思い出して、な」
第三隊長「時間の流れってのは早いな、一般兵だった俺達が気付けば隊長格だ」
第一副隊長「そうね……、ふふっ、私も面倒な隊長職についちゃったし、昔なら考えられないわ」
第一隊長「……なんつーかさ、性格丸くなったよなー」
第三隊長「表向きはだろ?かわりに腹ん中はどんどん真っ黒になってくじゃねーか」
第一副隊長「あら、老け顔さんが言ってくれるわね」クスクス
第一隊長「高い魔力持ってる奴って大概外見の成長が鈍るもんだけど、」
第一隊長「何でお前おっさんになっていくんだ。どんまい老け顔」
第三隊長「うるせぇ若作り共。お前も少しは老けやがれ」
第一隊長「……俺、若返りの魔法、創ってみるよ」
第三隊長「やめろ虚しいだけだ」
第一副隊長「ふふっ。……ああ、そうだ。昔といえば、あの時は吃驚したわ、」
第一副隊長「あなたが領主様とお友達だってきいて」
第三隊長「関係、まだ続いてるんだろ?」
第一隊長「おう。お子さんズには未だに美味しい物持ってきてくれる謎のお兄さんで通してる」
第三隊長「第一の隊長として何度も会ってるくせにな」
第一隊長「いやだって、謎のお兄さんって響き、なんか格好良くないか?」
第三隊長「……そうか?」
第一副隊長「寧ろ変質者みたいね」
第一隊長「……………、」
第一隊長「お前何で第三に行っちゃったんだ。おかげで俺コイツにいじめられてばかりなんだぞ!」
第三隊長「個人の向き不向きなんだから仕方ないだろ?つかよ、お前が隊長昇進決まったって聞いたからなる気も無かった隊長格になってやったんだ。有り難く思え」
第一隊長「え!?」
第一隊長「ってことは--!!」
第一隊長「謀られた!俺二人が隊長副隊長やるからお前もやれって言われたのに!」
第一副隊長「私は貴方のストッパーとして頼まれたんだけど、」
第一副隊長「三人そろって見事にしてやられたようね」クスクス
第一隊長「ああくそっ!生きてたら文句言ってやったのに!何で死ぬかな隊長は!」
第三隊長「死にたくて死んだわけじゃないんだ、そう怒るなよ」
第一隊長「……わかってるよ」
第一隊長「みんな、死ぬのは嫌だよな」
第一副隊長「……あの魔王のお遊びで、沢山のヒトが死んでいくこんな世界、早く終わってしまえば良いのに」
第三隊長「中途半端に強い俺達が出来ることと言ったら、余計な死人が増えるのを防ぐことぐらいだからな」
第三隊長「不謹慎だってのはわかってるが、やっぱり考えちまうんだよな。自分の周りのヒト達だけでも、死なないでほしいって」
第一隊長「……………」
第一副隊長「……………」
第三隊長「………わり。暗い話になっちまったな」
第三隊長「…………、」
第三隊長「--お、良い兵見つけ。アイツは……脳筋第二にとられる前にとっておきた--」
第一隊長「意外と早く来るかもな。ちょっと平和になった世界」
第三隊長「ん?」
第一副隊長「え?」
第一隊長「……この前さ、未来視、試してみたんだ」
第一隊長「おかげで三日寝込んだけど、」ケラケラ
第一隊長「まぁ、成功したかはわかんないし、俺の妄想だったのかもしれないけどさ」
第一隊長「領主様の家--この城の未来では、みんなわいわい楽しそうにやってたよ」
第一隊長「お前等も、楽しそうに笑ってた」
第一隊長「だから大丈夫だよ。お前ら今と変わらない外見だったし、未来視、ホントに成功してたとしたら、それは近い未来だってことだろ?」
第一副隊長「……………」
第三隊長「……………」
第一副隊長「……ふふっ、そう、そうなの。それはとても楽しみね」
第三隊長「お前、また無茶苦茶な魔法を……」
第三隊長「でも、ま、成功してたってことにしておこうぜ。そんな未来なら大歓迎だ」
第一隊長「そうだよな、」
第一隊長「俺も、そう思う。早く来るといいよな、ちょっと平和になった未来。みんなが楽しそうに笑ってた未来」
第一隊長(--例えその未来に、)
第一隊長(俺が存在してなかったとしても)
同期の仲良し三人。おわり。
>>次。小さな二人と仲良し三人。
【小さな二人と仲良し三人】
領主家。庭園。
少女「最近気付いてしまったことがあるの」ゴロ ゴロ
少年「何に」
少女「私とあなたは血が繋がったきょうだいじゃないのね」
少年「……………、」
少年「………それ、本気で言ってるのか」
少女「ええ。本気よ」
少女「気になって調べていく内に確信したわ。私達、血は繋がってないのね」
少年「………俺としては、」
少年「種族から大きく違うのに何故今気づいたとはなはだ疑問なんだが」バサッ
少女「そうそれよ!!その翼ずっと羨ましかったんだから!!」ガバッ
少女「いつか私も翼がはえてくるんだとわくわくしてたのに!!」ツンツン
少女「あなた竜族だったのね!!」キラキラ
少年「……そもそも魔族に翼が生えたらそれこそ大問題だ」
少女「むぅ。本気で楽しみにしてたのに」
少年「あ、そういえば昔のアレって……。『私には何時生えるの』発言はまさか、このことか、」
少女「あの時はっきり否定してくれたら勘違いも長くは続かなかったのに」
少女「私の期待を返してほしいぐらいよ」ツンツンツンツン
少年「何を言っているんだこの娘はと流した事だったというのに、そんなこと言われてもな……、いっ!」ビクッ
少年「そう何度もつつくのは止めろ!くすぐったいわ!」
少女「けち」
少年「けちで結構」
少女「……まぁ、例えあなたがけちの竜族で私が魔族で。血の繋がりが無かったとしても」
少女「あなたが私のきょうだいであることに変わりはないのだけれど」
少年「……そりゃあ、本当に兄妹だと思ってくれていたのなら嬉しいが」
少女「寧ろ思わない方がおかしいわよ。物心ついた頃から一緒なんだし、髪や瞳の色だって同じなのよ?」
少女「この金の瞳はお母様の家系からきているらしいけど、」
少女「もしかしたらあなたと私、ちょっとは血、繋がってるかもしれないわね」クスッ
少年「……そうかもしれないな」フッ
少女「だからこそ!」
少女「成長すればいつか私も変身出来るんだと思っちゃうじゃない!」
少年「いや、思うなよ。そもそも俺は領主様や奥方様に全く似ていないし。気付け」
少女「領主様や奥方様、ですって!?何時まで経ってもお父様やお母様を親って認めないのね!頑固なんだから!」
少年「……俺はお前のお目付役というか、護衛みたいなものだからな」
少女「そうやって距離とって!私ともきょうだいじゃないって言い出すのなら承知しないわよ!」ピョイ
少年「ちょ……」ドテッ
少年「いきなり飛びかかってくるんじゃない」
少女「きょうだいはじゃれ合うものよ!」キリッ
少女「それに私、護衛が必要な程弱くはないわ!」
少年「弱くはないという点には同意するが、上には上がいる。もしもの場合を考えろ」
少女「んー、確かにそうなのよね。一人じゃ駄目でも、私達二人ならどうにかなるし」
少女「そうでしょう?」
少年「まぁ……確かに」
少女「ふふっ!そうよ!私達二人なら怖いものなんて無いわ!」ツンツンツンツン
少年(竜化解いたら怒るだろうな)ハァ
少女「あ」ツンツン
少年「……どうした?」
少女「そういえば私たちってどっちが上なのかしら」
少年「それは、どちらが兄で姉なのか、という」
少女「うん。そう」
少女「成長の早さは種族と維持してる魔力によって変わるというけど、」
少女「あなたと私、今では同い年って言っても不思議ではないわ。外見上は」
少年「……初対面が自分よりも小さな女の子に姉とは思えないな」
少女「……となると、」
少女「お兄様?」ツンツン
少年「…………、」
少女「なんか違うわね」
少女「兄さん、」ツンツン
少年「…………」
少女「うーん、なんかしっくりこない」
少女「ここは……、」
少女「お兄ちゃん!」ツンツン
少年「……………」
少女「ねぇ、お兄ちゃんってば!」ツンツン
少年「…………、」
少女「…………」
少年「…………」
少年「……何か違うな」
少女「……そうね」
少女「お兄たまもお兄も兄貴もにいにぃも違う気がするし」
少女「ねぇ、どれか一つ選ぶとしたら、どの呼称が良い?」
少年「……………………、」
少年「お兄様かお兄ちゃんで迷うな」
少女「なにそれ」クスクス
領主家。某所。
少年『お兄様かお兄ちゃんで迷うな』
少女『なにそれ』クスクス
魔族男「ふぉぉおおおおお!!!!」バタバタ
魔族男「かぁああわああああ!いぃいいいいー!!!!!」ゴロゴロ
魔族友人「男さんがご乱心だ」ケラケラ
魔族女「ふふ、あなたったら」ニコニコ
魔族男「ああ!何故それを私の目の前でやってくれないんだ愛する我が子達よぉお!!パパはこんなにも悶えているのにいい!!」バタバタゴロゴロ
魔族男「ああああああ!かわいいかわいいかわいいふぉぉおおおおお!!!」ゴンッ
グラッ
魔族男「」イタイ
魔族友人「ちょ、女さんのベッドの足に頭ぶつけるとか!今凄い揺れた!」ケラケラ
魔族女「あなた、大丈夫?涙目よ」
魔族男「大丈夫だ。痛くない!問題ない!」
魔族男「それよりベッドを揺らしてしまった。すまないな」
魔族女「いえ、これぐらいお気になさらなくても」クスクス
魔族友人「領主様とあろうものがはしゃぎすぎだと思いまーす」
魔族男「こんな姿を見てはしゃがない方がおかしいだろう。なぁ、女」キリッ
魔族女「ええ、私もニヤニヤが抑えられないぐらいにははしゃいでいますよ」ニコニコ
魔族友人「すごいやー、お子さん好きすぎてすごいやー」ケラケラ
魔族友人「さぁて、ここまではしゃぐ映像だ。今回もちゃんと記録しないとね、」
魔族友人「一応ログは全部維持してるけど、どうする?今回も全部?」
魔族男「全部」キリッ
魔族女「記録で、お願いします」キリッ
魔族友人「了解了解~。今回も媒体は本にしてー、っと。あ、これで容量一杯になっちゃうなぁ」フォン
魔族友人「盗撮記録……じゃねぇや、お子さんズの成長記録がついに十冊突破か、」ウンウン
魔族男「目指すは二十冊だな!」
魔族女「ごめんなさいね、友人さん。私が出来るとあなたに手間はとらせないんだけど、」
魔族友人「いやいや、男さんは論外として、女さんがこの手の魔法が苦手なのは性格によるものだと思うんだ」
魔族友人「だって俺の方が断然いやらしい性格してるから」キリッ
魔族男「そのいやらしさに感謝する」グッ
魔族女「そのいやらしさに感謝です」グッ
魔族友人「ふへへ、まさかいやらしさに感謝される日がくるとは」
少女『--そうそう、今日も来るそうよ。謎のお兄さん』
少年『あの美味しい物を持ってきてくれる、が頭につく?』
少女『そうそれ』
魔族友人「すでに来てるよ謎のお兄さん!!今日は焼き菓子だよ!あとでパパさんやママさんと一緒に食べてね!」
少女『そろそろ正体が気になるわよね。お父様やお母様、いくら訊いても教えてくれなかったし』
少女『この際、捕まえてみる?』
少年『捕まえるって、俺達の索敵に引っかからない腕の持ち主だぞ』
魔族友人「最近の侵入に一番苦労するのはあなた方のお子さん達の索敵です。誰が教えたらあんな精密になっちゃうんですか」
魔族女「だって……この魔法人捜しには最適じゃない」ニコニコ
魔族男「もう諦めて身バレしろ」
魔族友人「嫌だ!もう少し謎でいたい!!」
少女『そこなのよ。相手は私達が全く尻尾を掴めない実力の持ち主』
少女『是が非でもお手合せ願いたいわ』ニコッ
少年『……そうだな。なんとか手合わせ願えないものだろうか』フッ
魔族男「笑顔きたー!あー、うちの子可愛い本当に可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!!!」
魔族女「ええ」ニコニコ
魔族友人「いやいや俺ピンチじゃん狙われてるじゃーん」ケラケラ
少年『謎の、は領主様や奥方様に会いに来ているんだろう?ならば、』
少女『!!そうか!隠れて見張っていればおのずと向こうから現れてくれるってわけね!』
少女『善は急げ!さっそくお父様とお母様を捕捉しなきゃ!』フォン キュイン
少年『…………』フォン
魔族友人「……困ったお子さんズだよなぁ、いもーとちゃんは女さんと似て魔法の扱い上手いし、」フォン パキン
魔族友人「おにーちゃんは完璧な補助してくるから、発見されないようにするの一手間余分にかかっちゃう」
魔族女「ふふ、一度で良いから、視認以外で友人さんを捉えてみたいものだわ」
少女『あ、』
少女『お母様の部屋に二人共いるわね』
少年『飛ぶか?』フォン
少女『ええ。--お母様の寝室だからって部屋の外で待ってるなんて言い出したら嫌よ』グイッ
少年『……腕を掴むな』
少女『文句は無し!さぁ行くわよ!』
魔族友人「やべ、来るのか!んじゃ、ここはお開きってことで!」フォン
魔族男「……捕まえておいたらあの子達は喜ぶだろうか」ワキワキ
魔族友人「ちょ、それはやめて!この距離で男さんから逃げられるわけないじゃん!」
魔族男「冗談だ」ケラケラ
魔族友人「半分本気だったくせに!」ケラケラ
魔族友人「じゃ、また来るよ!お子さんズによろしく!」
魔族男「ああ、」
魔族女「またね、友人さん」
ヒュン
ガタゴト
魔族女「あら、部屋の外に、」
「もう!何でそのまま室内に転移しちゃわないのよ!」
「お前だけならまだしも俺が一緒でそんな失礼な真似出来るか!」
魔族女「ふふ、そのままこちらに飛んできても良かったのに」ニコニコ
魔族男「せっかくだ、出迎えてやろうじゃないか」
魔族男「取り逃がして残念だったな、とも言ってやらねばならんし」
魔族女「そうね」クスクス
小さな二人と仲良し三人。おわり。
悪魔「」SSその後のさらにちょっとその後の時間軸。連続小話投下は多分これで最後。
俺とキミと枕と夜這い。
夜。
魔王城。廊下。
堕天使「おや、これは城主様。今晩は」
魔王「今晩は。こんな時間に、……枕なんて持ってどうしたの?」
堕天使「……眠れないので、少々夜這いに」
魔王「……夜這い?枕を持って?」
堕天使「夜這いです。枕を持って」
魔王「……ごめんなさい。一つ訊いてもいい?」
堕天使「どうぞ」
魔王「夜這いって……何?」
時間軸無視した小話投下してごめん。
状況。転生悪魔組、魔王城にて合流(悪魔「」の最後)。魔王組勇者組も一緒。コレはその後のネタ小話。
悪魔組は城の客として迎えられ勇者組は城空き部屋一つずつ貰ってます。
堕天使「……………、」
魔王「えっとその……、どこかできいたことはあるんだけど、意味をよく知らなくて……」モジモジ
堕天使「…………」クスッ
魔王「や、やっぱり知らないと笑われるぐらい常識的な言葉なの!?」カァァ
堕天使「すみません、可愛いヒトだな、と思い。--それに、大丈夫。別に知らなくても笑われることはないです」
魔王「もう、からかって……!」
堕天使「--さて、夜這いの意味でした。私の姿を見ての通り、薄着で枕を持って行うものです」
魔王「ふむふむ」
堕天使「はい。時刻は夜も更けたこの頃合い。親しい間柄にある者の寝室へ侵入します」
魔王「親しい間柄?」
堕天使「仲の良い、またはさらに仲良くなりたい友人……例えば、勇者くん、とか」
魔王「……ふむ、」
堕天使「この時間、部屋に侵入するとその部屋の主は大抵ベッドの上にいます」
魔王「そうね、こんな時間だし」
堕天使「これ幸いと忍び寄ります」
魔王「ふむふむ、それで?」
堕天使「………………、」
堕天使「ちょっと良心が痛む」ボソッ
魔王「え?何?何て言ったの?忍び寄ってどうするの?」
堕天使「…………語らいます」キリッ
魔王「語らうの?」
堕天使「ベッドの上でごろごろしながらお喋りタイムです仲良くお喋りタイムです必要とあらば持参した枕をぶつけましょう相手が反撃してこなければさらに手近にある枕をぶつけます最終的には枕をぶつけあう合戦に発展しますとても楽しいですこれが夜這いという行為です」ペラペラ
魔王「最終的に枕をぶつけあうの?勇者なら本気で投げても大丈夫だろうし、それは楽しそうね!!」キラキラ
堕天使「ということで、城主様もどうです?夜這い」
魔王「いいわね、今日にでもやってみることにするわ!」
魔王「教えてくれてありがとう。夜這い、楽しんできてね!」ニコニコ
堕天使「はい、城主様も」ニコニコ
魔王「ええ!まずは寝室から枕を持って来なきゃ!じゃあね、堕天使さん!」タタタタッ
堕天使「では、また明日」ニコリ
堕天使「………………」
堕天使「行ったか、」
堕天使「……………ふふっ、」
堕天使「まぁ、勇者くんなら手を出すことはしないだろう」クスクス
堕天使「明日、どうなったかきくのが楽しみだ」
堕天使「…………………、」
堕天使(………さて、私も行くか)
堕天使(夜這いに来てくれないのなら、こちらから行くしかないだろう!)キリッ
側近の部屋。
フォン
魔王『……側近、起きてる?』
側近(………………、)
側近(……、通信…………魔王……?)
側近「………八割は眠っている。……が、どうかしたのか……、」ウツラウツラ
魔王『あ、ごめんなさい。起こしちゃったみたいね。』
側近「…………早く用件を、いわないと、俺は、」
魔王『……ああ、うん、そうよね。こんな時間だもの。--勇者達が寝てたら次の機会にしようかしら。……でも、』
側近「………睡魔に、勝てん……」
魔王『いいの。もう眠って、一緒にどう?って誘おうとしただけだから』
側近「…………一緒、に………って、何を……」
魔王『夜這い。枕を持って』
側近「…………そうか、……悪いが、俺は………」
魔王『いいのよ。あなたは眠って。--おやすみなさい、側近。じゃあ私、夜這いをしに勇者の部屋に行ってくるわね』
側近「……わかった、…………」
プツッ
側近「……………、」パタン
側近「……………………」zzz
側近「……………」zzz
側近「……、」zzz
側近「」
側近「」パチッ
側近「!!!」ガバッ
側近「夜這い!!?」
青年の部屋。
青年「……………」zzz
堕天使(うむ、暗い。そして寝息が聞こえる)ソロリソロリ
堕天使(そうか、ヤツは眠っているのか。)ソロリソロリ
堕天使(夜目がきくことに今日以上に好都合だと思ったことがあるだろうか。--いや、ない)ソロリソロリ
青年「……………」zzz
堕天使(さて、ベッドの側まで来たぞ。寝顔がよく見える)
堕天使(…………、ふふっ、間抜けた顔だ)ギシッ
青年「…………、」ピクッ
堕天使(さすがに起きたか。だが!)
堕天使「とうっ!」ピョイ
ドスッ
青年「……いっ!!!?な、……誰だ!」
堕天使「私だ!」
青年「……天使さん!?ですよね俺にこんなことするのって!……まったくこんな夜中にヒトの腹にダイブして、いったい何の用、」
堕天使「夜這いだ」キリッ
青年「…………ああ、うん。そっか、夜這いか、うん、夜這……い!!!!?」
青年「よよよよよよ、よば、よばっ……!!夜這い!!!?え、あ、あああ!?よば、え、天使さんが、夜這 バフッ ぶふっ!」
堕天使「やかましいぞ。こんな時間に大声を出すな」グリグリ
青年(ちょ、枕!顔に押し付けて……!!息!息できないから!!)バタバタ
堕天使「キミが来てくれないから私が来た。悪いか」グリグリ
青年(息!息っ!!)バタバタ ガシッ
グイッ
堕天使「あ、」ポスッ
青年「っは、はっ……ちょ、天使さん加減!加減してくれないと俺死ぬか、ら、……」
堕天使「………………、」
青年(--気付けば俺の胸に天使さんが倒れているわけで、色々と当たっているわけで、)
堕天使「……私の意志じゃないぞ、引き倒したのは、君なんだからな……」カァァ
青年「--っっ!!」ガシッ
堕天使「…………」コロン
青年(ああもう近い!今滅茶苦茶近かった!!)ドキドキ
堕天使「……引き倒しただけでは飽きたらず、ヒトを転がすのか」ゴロン
青年「すみません」
堕天使「このへたれが」
青年「すみません!」
堕天使「……私なりに、その、勇気を出したんだぞ……」ボソッ
青年「--え、」
堕天使「……………」モゾモゾ
青年(……ど、どうすればいい、何が正解なんだ、)ドキドキドキドキ
青年(天使さんは布団の中へ潜り込んでしまったわけで、え、なにこれ俺なにどうすればいいのえっと夜這いで天使さんは夜這いに来たわけで夜這いってのはその、)ドキドキドキドキドキドキ
青年(ああくそ、心臓が痛い、)ドドドッ
青年(--だが、ここは、もう)ドドドドドッ
青年(いくしか……!!)ドドドドドッ
青年「…………」ドドドドドッ スッ
堕天使「冗談だ」モゾッ
青年「」
モゾモゾッ
堕天使「ふふふっ、何か色々腹をくくったような、それでいてこの状況についていけない、そんな顔で固まってしまっている」ムクッ
堕天使「悪かった。謝るから戻ってこい」ペチペチ
青年「………………、」キッ
青年「寝る!寝るからな俺は!!」バフン
堕天使「そこでそのまま襲ってこないが君の良い所でもあり、残念な所でもある」クスクス
青年「…………」ムゥ
堕天使「……おや、むくれてしまったようだ。今回の件は明日にでもちゃんと謝ることにしよう、」ファァ
堕天使「……眠いな。……枕はどこだ?--あったあった」モゾモゾ
堕天使「さて、と」パフッ モゾモゾ
ピタッ
堕天使「おやすみ」
青年「…………いやいやいや、ここで寝る気ですか天使さんえっとそこ壁じゃないから天使さんがくっついてるそこ壁じゃなくて俺の背中だから」ドキドキドキ
堕天使「困ったな、誰かが近くにいると眠れないタイプか」
青年「いや多分違うと思いますけど」ドキドキ
堕天使「私のことは……そうだな、何かの銅像だと思ってくれたらいい。銅像にしては少し温かいと思うが気にするな」
青年「銅像と一緒の布団に入る俺はいったい何があったっていうんだ」
堕天使「……ほら、形見の銅像とか」
青年「形見が銅像って嫌だ。置く場所に困りそう」
堕天使「確かに。ヒト型なら始終見られているような気配に悩ませられそうだ」
青年「じゃあ銅像駄目じゃん」
堕天使「むぅ、困ったな……」
青年「…………もういいよ。ここで寝とけ。俺はソファーで寝るからさ」
堕天使「待て行くな何故だ」
青年「いや、好きなヒトと同じベッドはいくら俺でも自分の理性が心配になる。寝ぼけて何しでかすかわからない」
堕天使「駄目だ。ここにいてくれ」
青年「…………でもさ」
堕天使「頼む、ここにいてくれ。何しでかしてくれても構わないから」ギュッ
青年「……………、」
堕天使「……………君の隣なら、ちゃんと眠ることが出来そうなんだ」
堕天使「……昔から、眠ることが下手でな、どうも安心して眠るということが出来ない」
堕天使「でも、君の隣は、安心する。心から、安らかでいられる」
堕天使「…………本当は、添い寝してくれと頼みに来たんだ。でも、この年で添い寝してくれなんて、カッコ悪いじゃないか……」
青年「…………そんなこと言われたら、ここにいるしかないよなぁ……」
青年「わかったわかった。寝ぼけて俺が何かしようとしたら、殴って起こしてくれ。な?」
堕天使「構わないと言っているのに……」
青年「俺が気にするの」ケラケラ
堕天使「この際抱き枕扱いでも良いのに」
青年「むしろ俺眠れないよ」ケラケラ
堕天使「……なら君が抱き枕になれ」
青年「翌朝絶対目の下にクマ出来てるだろうな、俺」
堕天使「それは嫌だ。我慢することにしよう」シュン
青年「え、ちょっと本気だった?」
堕天使「…………ちょっとだけ」
青年「………………」
堕天使「………………」
青年「……寝よう、うん。寝よう!」
堕天使「……そうだな、うん。寝るぞ!」
青年「……………」
堕天使「……………」
青年「……おやすみ。天使さん」
堕天使「…………ああ。おやすみ」
勇者の部屋。
勇者「ふぁぁ、」
勇者「……ふぅ、欠伸も出るよ。もうこんな時間だ」ゴロゴロ
相棒「ふぁぁ……」
相棒「ほんとだ。眠くなるはずだねー」ゴロゴロ
勇者「んじゃ、そろそろ就寝といくかー」
相棒「部屋戻るの面倒だなぁ」ゴロゴロ
勇者「んじゃまたここで寝ればいいじゃん。ベッド大きいし」ゴロゴロ
相棒「そうするー」ゴロゴロ
相棒「そもそも貰ったお部屋、広すぎなんだよね。一人でいるのはちょっと寂しいよ」
勇者「そうそう。だからとりあえずお互いの部屋に行っちまうんだよなぁ」
相棒「もうここに私のベッド運んでいいかきいてみようかな」
勇者「そうだな、明日にでもきいて、」ピクッ
相棒「あ」ピクッ
勇者「部屋の外に誰かいる?」
バンッ
魔王「起きているのね!好都合!!」
勇者「--え、魔王様……?」
相棒「こんな時間にどうしたの?」
魔王「相棒もいるのね。良かった、呼びに行く手間が省けたみたい。あなたも誘おうとしていたから」
相棒「?」
勇者「……何で枕?」
魔王「愚問ね、この時間、枕を持ってあなたの部屋に訪れる理由なんて、一つよ」
勇者「一つ?」
相棒「一つ?」
魔王「決まってるじゃない、」
魔王「夜這いに来たのよ!!」
勇者「」
相棒「」
魔王「…………あれ?」
魔王(--反応が、おかしいわね)
勇者「相棒どうしよう俺もうどうしよう」コソッ
相棒「うん、これはアレだよ。頑張れ勇者」コソッ
相棒「じゃあ私は部屋に戻るから!ごゆっくり!」キリッ
勇者「まってぇ!!」グイッ
相棒「待たない。大人の階段駆け上がりなよ」
勇者「おかしいってこれ絶対おかしいってまた勘違いしてそもそも俺大人の階段はもう少しゆっくりのぼりたい!」
相棒「腹をくくれよ勇者!」
勇者「無理ぃ!」
魔王「え?部屋に戻っちゃうの?」シュン
魔王「……せっかくだから三人で、って思ってたのに……」
相棒「さ、3P……!?」
勇者「いやぁあああああああああ!!!!!」
魔王「お願い、三人で……駄目?」
相棒「あ、ああああ!だ、駄目だよ私、私っ、魔王様のこともそりゃあ好きだけど、好きだけどぉ……!そんな、そんな、こんなことに私がまざっちゃうのは……!」
魔王「お願い、三人でしたいの……(枕をぶつけ合う合戦が)」
相棒「し、しししした、したいっ、て……」カァァァ
勇者「」チーン
相棒「ゆ、勇者!私を一人にしないで正気に戻って!」グスッ
勇者「……これは夢だ」
魔王「夢なんかじゃないわ。……だって、夜這いってその、仲の良い相手にするものなんでしょ?」
相棒「」
勇者「」
相棒(助けて側近さんっ!)
勇者(へるぷ側近さんっ!)
バンッ
側近「ととととにかくやめなさいお前にはまだ早い!!」
魔王「側近!あなたも夜這いしにきたのね!」
勇者「よ、4P……!?」
相棒「ひやぁあああああああああ!!!!!」
側近「ち、ちちち違うわ馬鹿っ!!」
魔王「え、違うの?こんな時間にここに来るなんて、夜這い以外に何かあるの?」
側近「~~~!!夜這い言うな!!お前ってやつは!お前ってやつはまた何を勘違いして……!!」
魔王「さ、誘わなかったこと怒ってるの!?だって眠そうだったから……!!」
魔王「私だってね、本当は四人でしたかったわよ!!!」
側近「ひうっ!」
勇者「ま、負けるな側近さん!」
相棒「が、頑張って側近さん!」
側近(目を潤ませて、言うのはそれか……!!)
側近(これも俺のせいだと言うのか、この勘違いは元はと言えば俺がこういう事について何一つ教えなかったことが、)プチッ
勇者「おや、側近さんの」
相棒「何かが切れる音がした」
側近「って教えられるかこんなの!!!教えたその日から関係がぎくしゃくするに決まってるだろそんないたたまれない関係に耐えられる程図太い神経をしていない!!」
魔王「そ、側近……?どうしたの……?」ビクッ
側近「いいかよく聞け!!お前は盛大な勘違いをしている!!どこで吹き込まれたかは知らんが、お前の夜這いに対する認識は間違っている!!」
魔王「……え?」
側近「夜這いは……夜這いってのはなぁ!!」
側近「異性の寝所に!性交を目的に侵入することだ!!」
魔王「」
側近「本来の意味を認識した上で自分の発言を省みろ!!この勘違い!!」
魔王「」カァァァァァ
勇者「あ、あの魔王様、一応俺達わかってたから、」
相棒「勘違いだって、私達わかってたから、」
魔王「ぅぅ、ううう……」ウルッ
勇者「大変だどうしようどうしよう」オロオロ
相棒「魔王が真っ赤で涙目で」オロオロ
魔王「いやああああああああああああああ!!!!!」バフン
勇者「潜っちゃった!」
相棒「布団に潜り込んじゃった!」
魔王「うわぁぁぁあん!!」フルフル
相棒「酷いよ側近さん魔王様泣いちゃったじゃんか!」
勇者「もっとオブラートに包んで言ってくれてもいいじゃんか!」
側近「何を言うか!これぐらい言わないとコイツには通じん!」
魔王「わあああん!……っく、ひっく……だってぇ!」
魔王「よばいって……!楽しくお喋りしたあとっ……!」
魔王「枕を全力でぶつけ合って遊ぶことだと思ってたんだもの……!!!」ウワァァァン
側近(枕投げだと思ってたのか……!)
相棒(え、枕投げだと思ってたの!?)
勇者(だから枕持参で来たのか……!)
魔王「みんなで、やりたかったんだもの……枕をぶつけ合う合戦がぁあ!!」
魔王「それなのに、わたし、わたしぃ……!!」
魔王「うわああああぁぁぁあん!!!」ボロボロ
数分後。
シーツおばけ「ひっく、ひっく……」
勇者「……犯人は堕天使さんかぁ」
相棒「真顔で凄まじい冗談言うもんねー」
側近「…………」ハァ
勇者「多分、いつものように真顔で冗談言って、」
相棒「通じないことに動揺しつつ冗談を重ねた結果がこれだと思う」
勇者「教えた内容が内容だしね」
相棒「勇者も絶対手を出せないことを見込んでのことだったろうなぁ」ボソッ
勇者「堕天使さん合ってるけど酷い」ボソッ
シーツおばけ「ううう…………」
側近「悪質な冗談を言う堕天使も悪いが、知らなかったことはいえ、そんなことの意味を訊くお前も悪いぞ」
シーツおばけ「……わたしのばか……堕天使もばかぁ……」
シーツおばけ「…………」フラッ
シーツおばけ「ばかって言ってやらないと……気がすまないよぅ……」
勇者「……」ガシッ
相棒「……」ガシッ
側近「……」ガシッ
シーツおばけ「うう、掴まないでよ……シーツかぶってないと私もうやってらんない……」
勇者「」フルフル
相棒「」フルフル
シーツおばけ「首を振って……行くなってこと……?」
側近「……シーツかぶったままでいいから、座りなさい」
シーツおばけ「……」ストン
勇者「……魔王様、行っちゃ駄目だ」
シーツおばけ「……どうして?」
勇者「駄目なんだ、駄目なんだよ……!!」
シーツおばけ「どうして……!?だって私、このままじゃ……!!この恥ずかしさをどこにぶつければいいのよ!!」
勇者「このまま行かせたら、魔王様は恥ずかしさで死んじゃうかもしれない!!」
勇者「そんなの嫌だ、そんなの嫌だよ!!」
シーツおばけ「死なないわよ!これぐらいで……!!」
勇者「死んじゃうよ!!だって堕天使さん達はもう!!」
勇者「大人の時間かもしれないのに!!!」
シーツおばけ「っ、きゃあああああああああああああああ!!!!!」
相棒(大人の時間怖い)
側近(大人の時間怖い)
同時刻。
青年の部屋。
青年「……………」zzz
堕天使「…………むにゃむにゃ」zzz
勇者の部屋。
シーツおばけ「死んじゃう、私、死んじゃううう……!!恥ずかしいよおお!!!」ギュ
勇者「じゃあ恥ずかしさをぶつけろよ!枕のぶつけ合いしたかったんだろ!?」
勇者「抱きしめてるその枕、俺に……ぶつけていいから!!」
シーツおばけ「……ぐすっ……いいの……?ぶつけて、いいの……?」
勇者「うん。--さぁ、来い!」
シーツおばけ「う、うう……うわぁぁぁあん!!くらえええええ!!!!!」ビュン
勇者「え」
ドゴン
相棒(至近距離で顔面直撃……)
側近(枕なのか、今の音は枕が出した音だというのか……!!)
勇者「」フラッ
勇者「」パタッ
相棒「ゆ、勇者が……」
側近「一撃だと……!?」
シーツおばけ「…………」スルッ
魔王「ふふ、ふふふふふ……」ザワザワザワ
勇者「」チーン
相棒(あ、魔王様顔真っ赤だ。でも、同じく真っ赤な目は据わってる……)
側近(まずい、あの目は……!!)
側近「おい勇者、起きろ。このままだと追撃の枕でお前は死ぬぞ」
側近「それでいいのか!死因が枕で!お前は良いと思っているのか!!」
勇者「……死因が枕なのは……嫌だ」パチッ
魔王「ふふふふふ……」フォン
ドサドサドサドサッ
相棒「部屋一面に、山盛りの枕!?これ全部転移させたの!?」
側近「準備が良すぎだぞお前……!!」
勇者「本物だった、あの枕の一撃は、本物だった……!!」
魔王「ふふっ、あははは、あはっ!いーくーわーよー」ギラッ
側近「ちっ、逃げろ!こいつは本気だ!!」
勇者「!」
相棒「!」
ヒュン
ドゴン ドゴン ドゴン
相棒「私が知ってる枕はこんな音出さない」
側近「枕だと思うな!枕の形をした鈍器だと思え!!」
勇者「意識が飛ぶぐらいは重い一撃でした……」
魔王「あはは、あはははははっ!!逃げちゃ、嫌、よっ!!」
側近「--の、馬鹿」フォン
パキン
相棒「部屋全体に障壁!?」
ドゴン ドゴン ドゴン!
勇者「確かにこれは建物にかなりの損害が」ビュン ジッ
相棒「勇者、今当たってなかったよね」
勇者「……うん、当たってないけど風圧で頬が切れた」グイッ
側近「すまん、本当にすまん……」
側近「--実は、昔、一度こうなったことがある」
側近「暴れたアイツを誰も止められなかった。無くしてしまった理性を、自分で取り戻すまでは」
相棒「理性ないんだあの状態理性ないんだ!」
魔王「あはっ!くたばれぇえええ!!」ビュン
ズドン
勇者「昔って、いったい何があったのさ……!」
側近「紆余曲折あったがこの状況で話す暇は無い。簡単に言うのなら」
側近「心底楽しみにしていた菓子が目の前で無残に砕け散った」
勇者「……………」
相棒「……………」
勇者「……あー、うん。気持ちはわからないでもないけど」
相棒「……魔王様も食べるの好きだもんねー」
側近「正直に思ってくれてもいいんだぞ。意外と単純なお馬鹿さんなんだと」
勇者(そんな魔王様も大好き)
相棒(そんな魔王様も可愛い)
魔王「みんな……くっらえええええ!!!」フォン
ズドドドドド!
相棒「枕の雨だ!枕の雨だ!!」
勇者「なにこれ砲弾!?枕の皮かぶった砲弾!?」
側近「爆発しないだけマシだと思え!!」
魔王「………………、」
魔王「逃げちゃ、やだ」ウルウル
勇者「!!」
勇者(魔王様が俺を見て、」
魔王「動いちゃ、やだよ。勇者……」ウルウル
勇者「わかった逃げな」ズドン
勇者「」チーン
魔王「あはっ、あはははは!!まずは一人っ!!!」
相棒「かっこよかったよ勇者……!!」グスッ
側近「お前もうホント馬鹿!!」
少しの間投下出来ない日が続く。ごめん。
フォン ジジジジ
勇者「」チーン
魔王「あははははははは!!!」ズドン ドゴゴゴッ
相棒「大変だ、勇者に通信きてる。でも勇者枕に埋もれてるからなぁ」
側近「俺が繋げる。要件の予想はつく」フォン
相棒「確かに」ケラケラ
フォン
警備兵伍『--お、勇者さん?なんかさ、そっちの部屋から物凄い破壊音がするんだけど!』
警備兵伍『こんな時間に室内で鍛錬か?楽しそうだから俺達も混ぜろよ!』
警備兵ズ『混ぜろー!!』ワーワー
側近(……そうか、今日の城の警備担当は)
相棒「第二部隊のヒト達なんだね」
側近「あああああああ…………」
警備兵伍『あれ?おーい!聞こえてるか!?聞こえてるよな!俺達みんなでそっちに向かってるぞ!』
側近「何でもない。今すぐ持ち場に戻れ」
警備兵伍『お、側近様もいんの!?よっしゃ完徹鍛錬パーティーだぜ!イェア!』
警備兵ズ『イェアアアアアア!!』
側近「………………、頼むから、持ち場に戻ってくれ」
警備兵伍『嫌だ!なんせ腹筋するのは飽きた!!』
警備兵壱『握力鍛えるのも飽きたです!りんごは勿体無くては潰せないですよ!』
警備兵弐『柔軟はもう飽きちゃった!激しい運動がしたいよ!』
警備兵参『遠くに投げる訓練飽きた!鉄球窓にぶつけて割りましたごめんない』
警備兵肆『……シャトルラン飽きた。ぶつかって伍が窓割った………』
警備兵伍『側近様マジごめん!』
相棒(体力測定?)
側近「~~~、第二の、隊長は、」
警備兵肆『……第三の隊長にまたフラれてやけになってサンドバックボコボコにしてる。不審者でもいたら安心のワンパンKO……』
側近「……副隊長は」
警備兵壱『副隊長は今日は非番でお休みなのです!彼女さん家にお泊まりですよ!』
警備兵弐『初めてのお泊まりなんだよ!』
警備兵参『一つ屋根の下彼女の兄貴も一緒にだけどな!』
側近「第二部隊唯一の良心が……」
相棒「!」ピクッ
相棒(あ、魔王様の動きが止まってる。枕持ったまま、側近さんをじーっと見てる)
魔王「」ムシ ヒドイ
相棒(あ、そっか。側近さんが通信の対応ばかりしてるから寂しいのかー)ウンウン
警備兵伍『なんて話している間に到着!!』
側近「本気で、頼むと言っても、持ち場に戻ってくれないのか」
警備兵肆『……俺達は、未来を恐れるより、今を全力で生きる……』
警備兵参『そうだ。明日の説教や給料の減額より、破壊音の真っ只中へと混ざりたい』
警備兵肆『……だから俺達は、今を全力で生きるため、』
警備兵伍『この扉を守るこの障壁を、ぶち壊さなきゃならない!』
警備兵壱『こんな壁一つに、僕達の歩みを止められるわけにはいかないのです』
警備兵弐『壊してみせる!この拳で!!』
側近「……俺の障壁を、壊すと言うのか」
警備兵伍『はんっ!!例え側近様が相手でも障壁なんかに俺達の拳が負けるわけがねぇ!!』
警備兵ズ『楽勝楽勝!』
側近「」プチッ
側近「いいだろう、壊せるもんなら、」フォン
相棒「あ、側近さんがまたプチッた」
魔王「…………」ノソノソ
相棒(でも魔王が枕片手にのそのそ近付いてることは言った方がいいのかなぁ)
ヴヴゥウヴン
側近「壊してみろ馬鹿者共があ!!!」
相棒(部屋を囲う障壁の硬度が跳ね上がった。側近さん本気だー)
警備兵ズ『そうこなくっちゃ!』キャッキャ
魔王「側近、楽しそうね」ニッコリ
側近「楽しいわけがあるか!こっちは少しでも怪我人を減ら、っ、」
側近(しまった!こんな近くにまで接近していたとは!)
魔王「側近に、無視されて、寂しかった、私のこの気持ち、」ヒュッ
側近(至近距離での投擲……避けられるか、って、え!?)
魔王「受け取りなさいよっ!!!!」
バキッ!
側近「」フラッ
側近(お前……それ……)
相棒(ま、枕投げじゃない。これは、この攻撃は、間違いなく、間に枕を挟んだだけの、)
魔王「あの世で自分の所行を悔やむことね」フッ
側近(掌底……だろが……)パタッ
側近「」チーン
相棒「うわああああ!!側近さんがやられたあ!!!」
魔王「ふははははは!!残るは相棒!!あなた一人よ!!!」
相棒「あわわわわ!!一人になっちゃった!どうしよう!どうしよう!起きてよ勇者側近さああん!」
勇者「、」
側近「」チーン
相棒「そして気絶しても維持出来てる障壁に側近さんの本気を感じる!」
ドガッ!! ダダダダタッ!! ドゴン!
ピシッ
相棒「でも主が倒れた魔法はそう長くは持たないし、第二のみんな本気で壊す気だし……、これ以上怪我人を出さないためにも私がやるしか!!」
魔王「相棒!!」
相棒「は、はいっ!」
魔王「私が勝ったらあなたのその大きな乳を気が済むまで揉みしだいてやるから覚悟しなさい」キリッ
相棒「だだだ駄目だよそれはっ!!不純だよっ!」
魔王「いいじゃない、女同士なんだから」ジリジリ
相棒「何でだろう枕持ってにじり寄ってくる魔王様が最高に怖い!」アトズサリ
警備兵ズ「壊せ!壊せ!!」ドカッ パキッ
相棒「あああ障壁ももう保たない!」トンッ
相棒「あ、やば、」
相棒(部屋の隅に追い詰められちゃった……!)
魔王「もう逃げられないわ。観念なさい、相棒」ニヤニヤ ワキワキ
相棒「ひゃあああ!助けてぇえ!!」
勇者「魔王様」
魔王「なに?」クルッ
ポフッ
魔王「きゃっ」
相棒「--え?今、魔王様の顔に枕が当たって、当てたのは、」
勇者「枕当たっちゃったから、魔王様も負けだね」
魔王「……へへ、えへへへへ、私、当たっちゃった、」
勇者「枕のぶつけ合いだから、この勝負、最後まで枕に当たらなかった相棒の一人勝ちかぁ」
魔王「ふふふふっ、そうねっ、この勝負、相棒の優勝!」
相棒「え、……え?」
魔王「あー……楽しかったぁ」フラッ
魔王「」パタン
相棒「魔王様!?」
魔王「…………」zzz
相棒「寝てる、」
勇者「やりたかったのはぶつけ合いだろ?自分もちゃんとぶつけられたから満足したんだと思う」フラフラ
相棒「…………、吃驚した。いつから意識戻ってたの?ふらふらしてるけど大丈夫?」
勇者「『どうしよう起きてよ勇者側近さん』辺りで意識戻った。あと大丈夫じゃない倒れるおやすみ」パタッ
勇者「」チーン
相棒「えー」
バリン! バンッ
警備兵ズ「障壁撃破!!」
警備兵ズ「って、あれ?」
勇者「」チーン
側近「」チーン
魔王「…………」スヤスヤ
相棒「ちょっと遅かったみたいだね。試合終了ってやつだよ」
警備兵ズ「えー」
相棒「だからみんな戻ってくれると嬉しいな、こんな時間だからもう眠らせてあげたいんだ」
警備兵伍「しゃーねぇ、総員撤収!おやすみ!」
警備兵肆「……残念だけど、おやすー」
警備兵壱「おやすみなさいです!僕は障壁破れたから満足!」
警備兵弐「良い運動になったね!相棒さんおやすみなさーい」
警備兵参「次はもっと短時間でぶち壊したいな!じゃあな相棒さん!」
相棒「警備頑張ってねー、おやすみなさーい」
パタン
相棒「………………」
相棒「枕に溢れたこの部屋に何のツッコミもないのが第二のみんならしいや」クスッ
相棒「………………、」チラッ
相棒(三人共、寝ちゃってるし、……二人は意識失ってるって言った方が正しいけど、)
相棒(……勇者と側近さんは床だけど、下絨毯でふかふかだし枕まみれでさらにふかふかだからいっか)
相棒(でも魔王様だけはベッドの上に移動して、お布団かけてあげて、)
相棒(私はお隣に失礼してー、っと)モゾモゾ
相棒(あ、照明消さなきゃ。……魔法で、)フォン カチッ
相棒(よし、真っ暗)
相棒(隣には魔王様がいるし、近くに勇者と側近さんも転がってるから、あ、四人でお泊まり会してるみたいだ)
相棒「なんか嬉しいなー」ニコニコ
相棒「えへへっ。じゃあ、おやすみー」
翌日。
魔王城。
勇者「なんてこと言ってくれたんだよ堕天使さん!」
相棒「おかげで昨日、時間的には今日だけど夜中大変だったんだよ?」
堕天使「すまん。私も流石にまずったかなとは思った」
勇者「まずってるよ凄く!下手したら俺がどうにかなる所だったよ!」
堕天使「まぁ勇者くんなら絶対に手は出さないと思ってたし」
勇者「そうだけど、そうだったけど!もしあの場に相棒いなかったら絶対助けて相棒って絶叫してたけど!」
堕天使「……くっ、現場にいたかった!やはり話を聞くではなく事の次第を生で見ておきたかった!!!」
堕天使「しかし結局ぐっすり眠っちゃったからなぁ」
相棒「……ねぇ、勇者。堕天使さん今日はやけにすっきりした顔してるよね」コソッ
勇者「ああ。これが大人の時間の効果か……」コソッ
堕天使「ふふっ、一応言っておくが、君達が思うような事はしてないぞ」クスッ
勇者「--首。俺で説明するとちょうどこの辺り」トン
相棒「赤くなってるよ」
堕天使「!!!」バッ
勇者(隠した……)ジー
相棒(隠した……)ジー
堕天使「」カァァァァ
堕天使「……アイツには、言わないでくれ。寝ぼけてちょっと手を出した事を知れば、もう一緒に寝てもらえなくなる……」ボソボソ
勇者「……一緒に寝る?」
相棒「夜這いに行ったんじゃないの?」
堕天使「……冗談だったんだ。アイツの隣なら、その、よく眠れるかなって……」
勇者「堕天使さん眠り凄く浅いもんね。俺ほとんど寝てないんじゃないかなって思ってた」
相棒「すっきりした顔してるのはぐっすり眠れたからなんだね」
堕天使「…………魔王様には悪い事をしたとは思ってるんだ。だから謝ろうと思う。--今から」フォン
ドドドドドドッ
魔王「堕ー天ー使ー!!!!!」フォン パシッ
勇者「あ、魔王様武器まで出して半分本気だ」ケラケラ
相棒「巻き込まれる前に離れよっか」ケラケラ
魔王「よくも間違ったこと教えてくれたわねぇえええ!!!」ブンッ
堕天使「その一撃誠意を持って受け止めよう!!」ヴヴン
バリバリバリッ
魔王「おかげで滅茶苦茶に恥ずかしい思いをしたわ!!!」バリバリバリッ
堕天使「そうかすまん!!」キリッ
魔王「すまんじゃないわよぉお!!!障壁ちゃんと維持しときなさいよ手が滑って叩き切っちゃうかもしれないから!!」バリバリバリッ
堕天使「いいだろう存分に来い!これが私の謝罪だ!!」
堕天使「あ、そうだ。魔王様」
魔王「なによ」バリバリバリッ
堕天使「枕投げは楽しかったか?」
魔王「…………」バリバリバリッ フォン
魔王「ええ、」フォンフォンフォン
堕天使(おや、これはもう少し障壁に力入れないとまずいな)フォン
魔王「楽しかったわよ馬鹿あああああ!!!」
ドゴォォオオン!!
城門前。
ドゴォォオオン!!
青年「…………、『今日は魔王様に謝らないといけないから、城から出るわけにはいかない』って、天使さんが」
第一B「アンタの嫁はいったい何をしたんだ」
第三6「俺の嫁とお見合い相手が修羅場ってる。てやつ?」
青年「…………なんかごめん。確実に天使さんが悪いと思う」
第三6「………まぁ、うちの魔王様もちょっとアレな所あるから」
第一B「気になるなら戻るか?そして俺と嫁とお見合いとお見合いを好きな男が混ざってさらに修羅場に」
青年「そんな展開はちょっと勘弁してほしいわ」
青年「おまけに、今戻ったら非番だったらしいのに護衛に駆り出された二人に悪いし」
第一B「気にするなよ。どうせ暇だったし」
第三6「おまけに一緒にいるだけの楽な護衛任務だ」
青年「治安が悪いわけでもない町をぶらぶら見て回るだけだってのに、やっぱ俺の立場は面倒だよなぁ」
第三6「邪魔だとは思うけど、他国の王族を一人で歩かせるわけにはいかないからな」
青年「邪魔だとは思ってないさ」
第一B「だが本当は嫁と二人でぶらぶらしたかったと」
青年「…………、昔からマイペースの自由人だったから」
第三6「尻にしかれる未来しか見えない」ケラケラ
青年「それはそれで構わないけど」
第三6「うわ、言い切った」ケラケラ
第一B「ま、今回は片手に花ってことで我慢してくれ。なんなら俺チェンジしますか?」ケラケラ
第三6「こうだからよく間違われるけど一応性別上は花枠ですよろしく」ケラケラ
青年「チェンジ無しでお願いします。見た目同年代ってだけでも気が楽だし」ケラケラ
青年「--ああ、そうだ、出掛ける前に一つ訊きたいことがあるんだけど」
第一B「?」
第三6「?」
青年「今朝、魔王様と側近さんが俺の顔見て『大人だ……』とか呟いてたんだけど、アレなんなのかな。俺何かした?」
第一B「……………」
第三6「……………」
第一B「そりゃ大人だろ」
第三6「大人だから大人なんて言われるんだろ」
青年「--あ、いやでも、あの二人って子供って年じゃ」
第三6「お黙りリア充」チッ
第一B「爆ぜろリア充」チッ
青年「--え、え?」
第一B「行くぞリア充この野郎無意識にノロケできやがって」テクテク
第三6「あーやだやだバカップルは1組で十分だったのに」テクテク
青年「…………へ?」
俺とキミと枕と夜這い。おわり。
>>404
誤字。
第一B「気になるなら戻るか?そして俺と嫁とお見合い相手とお見合い相手を好きな男が混ざってさらに修羅場に」
会話文と擬音だけで描写するのが難しくなってきた。2話から少し地の文をいれることになるかもしれない。このままにしとけと思う方いたら言ってくれると助かる。
設定メモ見てモブの多さに戦慄した。もしいるならその好きな奴だけ覚えて、あとは外野が何か言ってると認識して頂けると。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません