パーティ:勇者、僧侶、男、女 (214)

※長い、独自設定多数

お暇ならどうぞ

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【女学教室】


エルフ教師「という事で、魔法と数学というのは紙一重の性質を持っているのです」

エルフ教師「魔導書に複雑な式を組めば組むほど強力な魔法を使う事ができますが、それを理解出来なければ発動しません」

女「」スヤスヤ

エルフ教師「皆さんは今日から魔法を学んでいきます。魔法に人も魔族も貴賤貧富も関係ありません……が」

ゴウッ

女「……?熱い」

角女生徒「うわあああ女さんの頭から火が!?」

エルフ教師「私の授業で寝る奴はゴミ虫です。ましてはそれが初日など。ですので魔法で焼き払いましょう」

角女生徒「ちょっ、先生!死んじゃいますよ!?」

エルフ教師「お仕置きです。それに、彼女なら問題ないでしょう」

角女生徒「え?」

女「……《デリート》」

フッ


角女生徒「き、消えた。もしかして今のって魔法……?」

女「…………《バリア》《ノイズキャンセル》」

角女生徒「わわっ、何か女さんの周りに壁みたいなのができた」

女「おやすみ」コテッ

角女生徒「寝るんだ!?」

ザワザワ…

エルフ教師「はい静かに。気にしない。では基礎からいきますよ。テキストの10ページを開いてー」

角女生徒「続行!?」

女「」スヤスヤ


カランカラン

エルフ教師「あら、もう終わりですか。皆さん、復習をきちんと……」

女「」パチッ  ガバッ

角女生徒「うわびっくりした!」

女「」ダッ

角女生徒「い、行っちゃった」

エルフ教師「はぁ……」

碧眼生徒「不良ってやつよね。あー変なのと一緒のクラスになっちゃったー」

角女生徒「魔法使ってたよね?」

碧眼生徒「はあ?そんな訳無いじゃん。今日習ったでしょ。魔法は魔導書に式を組まなくちゃ発動しないのよ?」

角女生徒「でも……」

エルフ教師「そうね。あれを魔法だと信じたくは無いわね」

碧眼生徒「ほら」

エルフ教師「だけれどあれは魔法よ」

角女生徒「えっ!?」

エルフ教師「彼女は特殊なの」

碧眼生徒「どんな風にですか?」

エルフ教師「知ると授業が馬鹿らしくなるから言わないわ。一つ言える事は、気にするな、ね」

角女生徒「余計に気になりますよ……」


【男学教室】

片目生徒「たっく魔族が羨ましいわ。最初から強えーもん」

鬼人生徒「主は人間じゃからな。種族的なもんじゃ、仕方なかろう」

男「でも先生が言ってたじゃん。最終的に肉体の差は無くなるって」

片目生徒「剣とか体術を極めればな。俺はそこまでできそうな気がしないわー」

男「まあまあ、そう言わずに一緒に頑張ろう」

鬼人生徒「して、気になっておったんじゃが、主はどうして片目なのかの?」

片目生徒「ん、ああ。小さい頃にな枝にザクッ、ポロッて」

男「痛てててて」

片目生徒「まあそん時に女性が回復魔法かけてくれてさあ、視力は無くなっちまったけど自分の眼は取り戻せた訳よ」

鬼人生徒「それなら義眼でも良かったんじゃないのか?」

片目生徒「いやそれがよ、その女性がさ……『今の私ではこれが精一杯です。いつか必ず完全に治せる魔法を覚えます』って言ってくれて去って行ったんだよ。だから俺は待ってるんだぜ。フッ」

男「つまりその女性が美人だったって事だね」

片目生徒「あたぼうよ」

鬼人生徒「ほっほっほ。主は鼻の下伸ばし太郎じゃな」

片目生徒「何つー名前!」

鬼人生徒「ほっほっほ」


男「何かいいなあ、こういうの」

片目生徒「美人に助けてもらった事か?」

男「じゃなくて。分け隔てなく人と魔族が接することができる事が」

鬼人生徒「そうじゃのぉ。主はどちらから来たのじゃ?人間界か?魔界か?」

男「んーどっちだろうね。転々としてたから」

片目生徒「で、ここに行き着いた、と」

男「そうそう。まさか人間と魔族の共存都市があるなんて夢にも思わなかったよ」

鬼人生徒「魔王様のお墨付きじゃ。秘密貿易などはここで行われておる。人間界に不足しておる物をこちらが供給し、逆にこちらが不足している物を人間界が供給する。よーできとるわい」

片目生徒「俺は生まれも育ちもここだから、魔族を怖いと思った事は無いぜ」

鬼人生徒「ほっほっほ。ならば食って進ぜようか?人の肉はうまいと聞く」

片目生徒「や、やめろよぉ!食うならこいつ食え」

男「え、ひどっ!」

鬼人生徒「主はうまそうじゃないのう。そもそも、主は人間か魔族かどちらなのじゃ?」

男「あー俺はー……」

女「男、帰ろう」ヌンッ


片目生徒「おわあ!?女の子が湧いて来た!?」

鬼人生徒「ぬ。これは魔方陣か。という事は魔法科の生徒じゃな」

男「いつもながら唐突だな、お前は」

女「褒め言葉?」

男「ご自由に受け取ってくれ」

女「じゃあ褒め言葉。嬉しい」

片目生徒「えっと男サン?これはドーユーコトデスカ?」

鬼人生徒「ニヤニヤ」

男「口で言うかな……えっと、一緒に旅してた仲間」

片目生徒「ほー?」

男「な、なんだよ」

女「訂正。仲間部分が家族」

鬼人生徒「なんぞ。主は家族がおったかや」

片目生徒「ちぇー」


男「いやいや。家族じゃないだろ」

女「……?」

男「いやそんな、何か的外れな発言しましたって顔されても。父母違うから」

女「違う。私は妻。故に家族」

男「」ブフゥッ

片目生徒「なに!?そんなに進んでるのか!」

男「違う違う!え、妻ってお前、婚姻なんてしてないけど!?」

女「大丈夫。心は常に新婚」

男「あ、ダメだ。これさっぱり通じないパターンだ」

鬼人生徒「祝うぞ」

男「そんなんいいから!真剣な目をしないで!」

女「さあ、帰ろう。《テレポート》」

男「ちょ、まっ」

シュン

片目生徒「き、消えた……」

鬼人生徒「かかぁ天下か。楽しいのお」

片目生徒「くっそー。羨ましいわ。しかも女の子、めっちゃ可愛いじゃん」

鬼人生徒「どちらも訳ありっぽいが」

片目生徒「訳あり?」

鬼人生徒「さての。検討もつかん」

片目生徒「ふーん……」


【共存都市、郊外の一軒家】

ブンッ

シュン

女「到着」

男「うぷっ。テレポートは酔うな……」

女「慣れ」

男「そうだな……というか女。急に転移はダメだろ。2人にじゃあねの一言も言えなかったじゃないか。友達になったばっかりなんだからそういうのは大切だろ?」

女「で……でも早く、帰りたかった、から」

男「うん。俺も早く帰りたかったよ。だけどな、人の都合も聞かずに勝手に転移したら、その人が困る事だってあるんだ。わかるな?」

女「うん……」

男「わかったならそれでいいさ。次から気をつけて」

女「ごめんなさい」

男「よし」


女「聞いて」

男「何?」

女「早く男と2人になりたかった。本当」

男「な……お、お前は……お前は本当にかわいいなーもう!!」ギュウゥゥゥ

女「嬉しい」ギュッ

男「小さくて、程よい抱き心地だな」

女「男、耳触って」

男「よしよし」

女「」ウットリ

男「じゃ、夕食の準備しようか」

女「もうちょっと」


-夕食時-

男「そういえば、女は誰か親しい友人はできた?」

女「興味無い」

男「そうは言ってもなぁ。これから3年間共に魔法を習う仲間を作っておかないと寂しいよ?」

女「男がいる。大丈夫。魔法も習う必要無い」

男「就職に便利な資格が取れるから通うのに……ここで暮らしていくって決めたんだから、食いっぱぐれたくないだろ?」

女「うん」

男「だから頑張って魔法の資格を取ろう。ね?」

女「わかった」

男「俺も商学とか体術学とかオールマイティに頑張るから」

女「頑張って」

男「うん。ところで、今日のシチューはいつもより更に美味しいけど、どうしたの?」

女「露店で売っていた極天疚というスパイスを入れた」

男「それって媚薬じゃ……」

女「……愛情一握り?」

男「愛情(魔法)ね……」


ドンドンドンドン

男「!」

女「……《サーチ》」

男「どう……?」

女「男性が1人。衰弱している女性が1人。男性は刀剣所持」

男「衰弱……どんな感じ?」

女「見てみないと分からない。体力、魔翌力共に枯渇寸前」

男「…………入れよう。危険物は預かるって条件で」

女「」コクリ

男「連れてくるから、寝室を準備しといて。あと髪の毛下ろして」

女「……」ファサァ


ガチャ

男「どちら様ですか?」

青年「夜分にすまない!連れが急に倒れて。治療をしたいので場所を貸して欲しい!もちろん礼はする!」

女性「ゼェ……ゼェ……」

男「その剣は……?」

青年「あ、ああこれか。旅に危険は付き物だからな。護身用だ」

男「預かっても」

青年「構わない」

男「でしたら中へどうぞ。寝室へ案内します」

青年「ありがとう!」

女「男、準備できた。早く」

男「ありがとう。こちらへ」


女性「」ビクッビクッ

女「……!待って」

男「どうした?」

女「その人、家に入れては駄目」

青年「な、なぜ!?」

女「外で治療する」

男「女、何でだ?」

女「推測。ここに来るまでに、池沼を通った?」

青年「あ、ああ。5日程前に沼を通ったけれど……」

女「彼女は蛭に寄生されている」

青年「蛭が寄生!?」

女「魔翌力に寄生する魔沼蛭。食べた魔翌力に比例して巨大化」

男「という事は、そいつを追い出すと部屋より大きくなるから外で?」

女「そう。5日も食べれば2メートルはある」


青年「どうすれば……」

女「私に任せて」

青年「い、いいのか?」

女「構わない。それでいい、男?」

男「ああ。女に任せるよ。俺は何をすればいい?」

女「彼女を向こうの更地に寝かせる。明かりを」

男「分かった」タタタッ

青年「じゃあ僕は出て来た蛭を倒す!」

女「駄目。切ったら増える」

青年「なっ」

女「火力で一掃」

青年「もしかして、君は魔法使いなのか?」

女「」コクッ

男「輝石に魔翌力を流して明かりにします。できますか?」

青年「ああできる。させてくれ」

男「じゃあ運びましょう」


【更地】

女性「ゼェ……ゼェ……」

女「術式を組む」

青年「えっと……魔導書は?」

男「いらないですよ」

青年「いらない?魔法の発動には魔導書と術式が必要じゃ?」

男「なんというか……あいつは特別製で。頭の中で組み上げた式を口に出すだけで、魔法を発動させる事ができるんです」

青年「そ、そんなの聞いた事が無い……」

女「術式完成」

青年「早い……」

女「《エリミネーション》」(排除)

カッ

女性「うぅ………あぁぁ……!」

女「《エーリング》」(虫干し)

女性「ああああああああああああああ!!」


ズドーーン

魔沼蛭「シュゥゥゥゥゥゥ………」

男「あ、あれ。思ってたより大きい」

青年「5メートル以上ある!」

男「いける?」

女「困った。火力不足。術式を組み直す。20秒だけ時間をかせいで」

青年「あっ」

女「大丈夫。女性は《プロテクト》をかけてある。20秒お願い」

青年「……わかった」

男「とりあえず気をこちら側に反らせるように!」

青年「腹に一発おみまいしてやる!『覇王の一撃』!!」

ズドンッ

魔沼蛭「ギィィィィィ!!」

プシャァァァ

青年「うわっ。なんだコレ」

ジュワッ

青年「毒っ!?」


男「打撃も駄目って。相当嫌な相手だな」

青年「僕は打撃と剣撃しか出来ないぞ!?」

男「いや……時間だけ稼げばいいんです。もう一発さっきのお願いします!」

青年「どうする気だ!」

男「いいから!向こうの攻撃がある前に!」

青年「くっ……『覇者の一撃』!」

男「口が小さい事がいけなかったな」ズボッ

青年「なっ!お前蛭の口に手を突っ込んで何するつもりだ!?毒で溶けるぞ!」

魔沼蛭「ーーーーーーーーー!!」

青年「と、溶けてない」

男「よし!動揺してる」

女「男、離れて」

男「ナイスタイミング!」バッ


女「《サンフレア》」

ゴウッッ

青年「熱ッ!」

魔沼蛭「グァァァァァァァァ!!!」バタバタ

男「おお」

女「魂に幸あれ」

魔沼蛭「」ズドーーン

青年「す、凄い。あの大きさを燃やし切ってしまった……」

女「休んでいられない。その女性の回復を行う」

青年「手伝うことはあるか?」

女「無い。離れてて」

青年「すまない……」

男「気にしなくてもいいですよ。あいつは凄いんですから」

女「《キュア》」


青年「ああ……見てわかる。急に押しかけたのに何から何までありがとう」

男「いえ。こちらとしても進んで女が他人に魔法を使う様子を見れて嬉しいです」

青年「魔界にも近いこんな辺境で、逞しく生きているんだな……」

男「はは……」

女「回復完了。毒は排除。食べられた魔翌力はしばらくしないと治らない」

青年「そうか……」

女「部屋を準備する。そこを使うといい」

男「そうだな」

青年「しかし、これ以上世話になる訳にも」

女「人と仲良くする。それは大切」

男「そうだ。偉いぞ女」

女「嬉しい」

青年「恩に着る……」

男「じゃあその人を部屋まで運びましょう。えっと……」

青年「ああ、自己紹介がまだだったな」

青年「僕は勇者。魔王討伐を目的とする者。そして連れの僧侶だ」


暇見つけて投下していきます。

深夜に書いて

「VIPに立て直します」

そして此処かww

>>23長くかかりそうだったんで、ゆっつらとこっちでやって行こうかと


【部屋】

男「うーん……」

女「どうしたの?」

男「勇者だったかぁ」

女「問題?」

男「勇者というのは、魔王を討伐する為に人間が輩出した戦闘能力の高い人間だ」

女「知ってる」

男「ということはさ、魔族は一応魔王の配下って事になってるから、敵認定される訳だ」

女「うん」

男「人間と魔族は敵……」

女「共存都市が危ない」

男「そういう事になるよね。共存都市は結界が張ってあるから簡単には見つからないけど……」


女「排除?」

男「いや……仲良くいこう。女だってそうすべきだと思うだろ?」

女「うん」

男「しばらく髪を下ろして生活して。ピンで止めて髪がばらけない様に」

女「……こう?」

男「……何これ。すごく新鮮」

女「褒め言葉?」

男「もちろん」

女「嬉しい」


トントントン

勇者「失礼する」

男「僧侶さんの様子は?」

勇者「静かに眠っている。これも君たちのおかげだ。礼を言う」ペコッ

女「よかった」

男「どうぞ座ってください」

勇者「ああ」

男「勇者さんはどうしてここへ?」

勇者「無論魔王を倒す為に魔界へ向かおうとしてな。恥ずかしながら蛭の一つも倒せないが」

女「あの蛭は特殊。仕方ない」

勇者「勇者に仕方ないはあってはならないんだ。死んでしまったのも仕方ないでは面目が立たない」

女「なるほど」


男「……魔王ってどんな人なんでしょうかね」

勇者「魔王を人と呼ぶ者は初めて見た。魔王は人ではなく魔物だよ」

男「魔物?魔族ではなく?」

勇者「魔族?魔物と魔族は何か違うのか?」

男「……!まさか知らないんですか?」

勇者「どう言う事だ……?」

女「人間と動物。魔族と魔物。つまりそういう事」

勇者「その様な呼び違いが……博識だな」

男「いえ……むしろそれが世界常識なのだとばかり」

勇者「ところで君たちはどうして魔界へ近いこんな所で暮らしているんだ?」

男「越して来たのは最近ですけど。世界中を旅してここを安住の地と決めました」


勇者「そうなのか。僕より若いのに感心するな」

男「これでも19なんですけどね」

女「」コクッ

勇者「同い年!?」

男「えっ!?」

勇者「どう見ても14、15かと」

男「どう見ても25、26かと」

勇者「やっぱり老け顔だったか……僧侶がやけにアンチエイジングを進めてくる訳だ」

男「なあ女、俺って幼く見える?旅先でなんか舐められた態度取られてたのってこのせい?」

男・勇者「はぁ……」

女「私は学校で初等部に案内された」


勇者「2人は兄妹?」

女「違う。でも家族」

勇者「?」

女「妻」ポッ

勇者「なに!?」

男「うーん……もうそれでいいや」


男「勇者さんはもうすぐ魔界だと言ういうのに2人旅の軽装備ですね。他にパーティはいないんですか?」

勇者「敬語を使わないでくれ。何か、心に刺さる」

男「え、わ、わかった」

勇者「実はな、組むパーティが僧侶しかいなかったんだよ」

女「勇者は一人ぼっち?」

男「ちょ!」

勇者「そうだな。今から恥ずかしい事を言うが、笑わずに聞いてくれ」

男「あ、ああ」

勇者「俺と僧侶は強すぎたんだ。国で一番の腕前を持っていた。兵士隊長も盗賊頭も一撃で斬り伏せる事ができた」

勇者「僧侶は祈りで魔法さえも打ち消す事ができた」

勇者「だから僕たちは勇者一行として旅に出された。その時の目は、危険人物を見るものそのものだよ」

勇者「だけど、井の中の蛙だったって気づいた。君たちの方が強い上に優しい」


女「男、強いだって。よかったね」

男「いや女に対してだろ?俺何もしてないもん」

勇者「2人とも強いさ。魔法と、毒にも負けない強靭な肉体。君たちを参考にして、強くなるまで修行をしようと思ってる」

勇者「そして、魔王を倒す!」

男「あのさ」

勇者「何だ?」

男「魔王って悪いやつなの?」

勇者「当たり前だ。人間が魔族に襲われて亡くなることは多い」

女「魔物ではなくて?」

勇者「……そうか。一括りにしてきたから分からないが、魔物か魔族か判断がつかないか。しかし魔物も魔王の使い手」

男「魔物は魔界に住む動物。魔王の使い手ではないよ」


勇者「しかし……いや何も言わない。2人は世界を旅してきたから、僕らとは了見も違うんだろう。それに、助けてくれた、助けてもらったという立場が変わるわけでも無い。すまない。詮索はしないから、僧侶が良くなるまでここに置いてくれ」

男「……分かった」

女「男?」

男「明日、朝早く勇者を連れていきたい所がある。今日はもう寝てくれないか?」

勇者「朝早く?」

男「起こしにくるから」

勇者「了解した。ありがとう。おやすみ」

男「おやすみ」

女「おやすみなさい」


-翌朝-

男「じゃあ行くよ」

勇者「ああ」

女「いいの?」

男「きっと大丈夫。今は従ってくれ」

女「わかった」

女「《テレポート》」

シュン


【共存都市、市場】

女「到着」

男「うぷっ」

勇者「うへっ」

男「慣れないなぁ」

勇者「これが噂のテレポート酔い……」

男「さあ勇者、気分直しに目を見開いてこの朝の喧騒を見るんだ」

勇者「ん、ああ……!?」


魔獣「豚一頭銀貨15枚!いかがっすかー」

淑女「あら、この豚さんたちお兄さんに似ていますわね」

魔獣「ちょっと、そりゃねーってもんですよ」

淑女「ふふふ。20頭程頂けるかしら。今夜彼が来るからパーティーをするの。配達もしてくださったら金貨2枚つけちゃおうかしら」

魔獣「毎度ありー!ダッシュで運びましょう!」


少年「やべぇ……母ちゃんがどっか行った」

ゾンビ「ゔぁぁ〜」

少年「何だ?」

ゾンビ「交番はあっちだぞー」

少年「あ、そっか!そこに行けば会えるかもしれないな。サンキュー!」

ゾンビ「日陰に移してくれー。朝日で燃えるー」

少年「お前、だらしないなぁ。てか、ここでなにやってんだよ」

ゾンビ「夜間警備ー」

少年「頼りなっ!」

ゾンビ「夜だけー」

少年「ったく。お前も一緒に交番連れてってやるよ」

ゾンビ「ゔぁぁ〜」


勇者「…………阿鼻叫喚」

男「傍から見ればね」

勇者「ここは……」

男「ここは魔族と人間の共存都市。ちなみに魔王公認、及び保護つきらしい」

勇者「魔王が人間を飼っているのかっ!」

男「そう見える?」

勇者「いや……見えない」

鬼人生徒「おやぁ?そこに見えるは男殿ではないかのー?」

男「お。おはよう。何してるの?」

鬼人生徒「いやあ、居酒屋をハシゴしておったらのお、何時の間にか夜が明けておった」

男「さすが鬼族」

勇者「えっと……?」

鬼人生徒「ほほぅ。並々ならぬものを持っておる御仁じゃ!ワシは鬼人生徒という。100歳の若造じゃ」

勇者「若造……?軽く人間の寿命超えてるじゃないか」

鬼人生徒「ほっほっほ。鬼族ではまだまだなんじゃよ」


男「酒臭いな。そんなんで授業行けるの?」

鬼人生徒「鬼族にとっては一晩の酒など酔うにも足らんわ!」

男「いやいや、俺たちが迷惑するから」

鬼人生徒「ぬぬ?そうかそうか。それは悪い事をしたのお。では早う帰って、酒の匂いを落としてくるかの」

男「じゃあね」

勇者「…………」

女「これが日常」

勇者「……僕が倒した魔物……いや魔族もこうやって暮らしていたのかもしれないのか」

男「人間だけが、魔族だけが楽しく文化的な暮らしをしているわけじゃない」

勇者「しかし、悪い魔族もいる」

男「悪い人間もいる」

勇者「…………」


男「昨日俺が変に匂わせた事、教える。女、髪上げて」

女「でも……」

男「大丈夫。勇者は全て知るべきだと思う」

女「……了解」

ファサ

勇者「……!?その耳……!」

男「女は、エルフ族なんだ。クオーターだけどね」

勇者「人間と魔族の子供だって!?」

男「俺も、竜族と人間のハーフ。毒も刃物も通さない硬い皮膚を持ってる。この状況を見て、ハーフが生まれない事があると思う?」

勇者「な……」


男「強い言い方かもしれないけど、俺たちは勇者と僧侶を人間と知って助けた。助けないで見殺しにする事もできた。だけどしなかった。それは、人間も魔族も同じだと信じてるから。ここに来てそう信じる事ができたから!」

男「……俺たちを倒したいと思う?」

勇者「…………そうか。僕は本当にまだまだ井の中の蛙だったのか……」

男「だからと言って魔王が良心的な魔族かどうかは分からない。だから……」

女「……!」

男「俺を旅に連れて行ってくれ」

勇者「旅に?」

女「駄目っ!」

勇者「!?」ビクッ


男「分かってくれ、女。ずっとずっと考えてた。どうして人間と魔族が仲良く出来ないのか」

女「嫌」

男「なら、女を倒してでも行く」

女「……男は」

男「なに?」

女「男は……もう死なない?」

男「ああ。約束する。魔王に会って話をしてくるだけだ」

女「でも、心配。私も着いて行く」

男「いいのか……?」

女「私は男のいない世界なんていらない」

男「わかった。……いいか、勇者?」

勇者「……僕は……君たちを信じる事にする。あくまで君たちは恩人なんだから」

男「ありがとう」


鬼人生徒「よからぬことを聞いてしまったぞい」ヌッ

男「うおおおお!?おま、帰ったんじゃ!?」

鬼人生徒「ほっほっほ」

女「ごまかした」

鬼人生徒「学校へ入学してすぐに去るとは、友人として寂しいのお」

男「いや、その……」

鬼人生徒「わかっておる。気持ちはぬしと同じじゃ。片目生徒にもうまく言っておく」

男「すまない」

鬼人生徒「それから勇者殿」

勇者「僕を知っているのか……?」

鬼人生徒「噂は聞く。もしぬしが男殿を裏切る事があれば、鬼族がかかってぬしを倒しに行くぞ」

勇者「ああ。そうしてくれ」


鬼人生徒「その意気やよし。これを持って行くがいい」

勇者「変な形の……何だ?」

鬼人生徒「瓢箪と言う。中に見た目より多くの水が入る。それで水に困る事はなかろう」

勇者「すまんな……」

鬼人生徒「ほっほっほ。気分が良いぞ。皆よ、帰ってきたら一緒に飲もうぞ」

男「うん。じゃあな鬼人生徒」

鬼人生徒「うまい酒を準備しておく」

勇者「ありがとう」

女「」ペコリ


【共存都市、郊外の一軒家】

シュン

女「到着」

男「うぬぬ……」

勇者「だんだん慣れてきたぞ」

男「え、早いなあ」

僧侶「勇者様ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

勇者「へぶっ!?」

ズテーン

僧侶「ああ、勇者様。どちらへ行かれていたのですか!それよりもここは何処ですか?昨日の夜程から記憶が曖昧なのはどうしてですか?」

勇者「そ、僧侶?取り敢えずマウントポジションから退けてくれないか?2人が見てる」

僧侶「え?」

女「男、私たちも」

男「いやいやする意味わかんないし。そういうのはもっと大人になってからで……」

僧侶「ひゃ、ひゃあ……」///

-間-

勇者「ということがあったんだ。とりあえず僧侶が元気になってよかったよ」

僧侶「その様な事が……」

勇者「2人に礼だ」

僧侶「ありがとうございます」ペコッ

男「どういたしまして」

女「構わない」

勇者「僧侶は、あんまり驚かないんだな」

僧侶「小さい頃から疑問には思っていたのです。魔族も生き物であるはずなのに虐げられているのはなぜかと。そしてなぜ協会はそれを推奨するのかと」

女「人間にも魔族にも神はいる」

僧侶「ええ。信心がどちらにもあって安心しましたわ」


男「一緒に旅する事になるけど、いいか?」

僧侶「構いません。むしろ私を助けていただいき、神のお導きであると思います。こちらともぜひよろしくお願いします」

僧侶「お2人とも親しい仲なので、女様が勇者様に手を出す事はないでしょうし」ボソッ

勇者「何か言った?」

僧侶「神に感謝の言葉を捧げていたのです」

勇者「そうか。僧侶は偉いなぁ」

僧侶「そ、そんなことはありませんわ」///

男「一気に不安になってきた」

女「」コクリ


-2日後-

女「驚く程の回復の早さ」

僧侶「そうなんですか?私はてっきり女様のお陰かと」

女「魔法での回復は自治治癒力を弱めてしまう。あまり使わない」

僧侶「そうなんですか。それにしても、愛玩動物の様な可愛さですね。撫でてもよろしいですか?」

女「知らない」プイッ

男「何時の間にか仲良くなってる」

勇者「すごいぞ男!このヒョウタン、見た目コップ3杯程度なのに樽一つ分も水が入ってしまった!」

男「ほー。どうなってるんだろうね?」

勇者「入れれる分だけ入れてこよう。近くに川はあるか?」

男「いや、無いから旅の途中で探そう。あと、その紐の先に付いてるミニ瓢箪は何?」

勇者「分からないけど、こっちにもたくさん水がはいるからこっちにも水を入れてる。生活用水はこっちかな」

男「なるほど」


勇者「荷物は全部まとめた。食料充分。水確保。問題無し」

男「よし。僧侶さん行けそう?」

僧侶「問題ありませんわ」

男「女」

女「ん」

男「よし」

僧侶「素晴らしいですわ。今のやり取りでお互いの全てがわかるとは……いずれ私も」

勇者「どうかしたか?」

僧侶「い、いえ!」

勇者「話し合いの結果、一応リーダーは僕だ。卒ないがよろしく頼む」

女「自信を持って」

勇者「ありがとう」


勇者「旅の目的は魔王討伐……が名目上で、魔王と話に行くというのが本筋。悪い魔王ならば、僕が討つ」

男「話の通じる魔王ならいいけど」

勇者「もし戦闘になった時のために、修行を積みながら行く。でも……」

男「敵対しない限り、魔族を攻撃しない」

女「」コクリ

僧侶「」コクリ

勇者「さあ……行こう」

休憩

くそっ
たまに名前欄とE-mail欄が消えるのは何でだよ!


-夕刻-

勇者「そろそろ日も落ちてきたな。まだ日のあるうちにテントを張って野宿の準備をするか」

男「そうしよう」

僧侶「ここまでに魔物とは遭遇しませんでしたね」

勇者「出逢わなければそれに越したことは無い」

女「そうでも無い。魔物は食料になる」

勇者「う、うーん。やっぱりそうか」

男「案外美味しいよ。毒持ちとかはちゃんと下ごしらえしないといけないけど」

僧侶「と、とりあえず今の食料があるうちはそれを食しましょう」

勇者「そうだな。テントを張る係りと食事を作る係りで分担しよう」

男「じゃあ俺はテント」

女「私も」

僧侶「えっと……私も」


勇者「あー、男か女よ。どちらか食事の方に来てくれないか?」

女「僧侶、行かなくていいの?」

僧侶「きょ、今日はテントを張りたい気分なんです」

男「?そっか。じゃあ俺が食事担当に行くね」

僧侶「よろしくお願いします」

女「おいしいの」

男「ん。期待しててな」

勇者「じゃあテント頼む」

僧侶「了解しました」


男「男飯になっちゃったな」

勇者「はは。すまない」

男「なにが?」

勇者「あの……僧侶は料理が、まったく、な」

男「あー……なるほど。だから勇者のいる食事の方に回ってこなかったんだ」

勇者「僕がいる方?」

男「えー、そりゃないよ」

勇者「え、ちょ、どう言うこと!?」

男「いろいろ事が済んだらわかるんじゃない?」

勇者「そりゃないよー」

男「あ、大根切って」


女「そっち、もっと強く」

僧侶「おりゃぁ……」グイグイ

女「完成」

僧侶「それにしても立派なテントですね。5m四方って軽くリビングくらいありますよ」

女「以前の旅のもの。折角だから良いものを」

僧侶「女様の魔法で、本から骨格を召喚できて、あとは布を張るだけなので楽々ですね」

女「名付けて四時元ブック。さて、次」

僧侶「これだけでよいのでは?」

女「それはリビング。あと2つ。寝室」

僧侶「そ、そうですよね!全員が同じテントに入って寝るわけにもいきませんよね!」

女「私と男のテント、勇者と僧侶のテント」

僧侶「え!?」


女「何?」

僧侶「と、と、と殿方と同衾ということですか私は!?そ、それも勇者様と!?」///

女「おかしい。文句は無いはず。以前の旅では同じテントじゃなかった?」

僧侶「文句はありません。それに以前は別々のテントでしたので願ったり叶ったりですが……やはりいささか早すぎる気が」

女「……?なぜ?私と男はいつも褥を共にしている」

僧侶「」ブハッ

女「僧侶、鼻血」

僧侶「わ、わかっていますわ!」

勇者「おーい女よ」

僧侶「ゆ、勇者様!」

勇者「お、僧侶!?鼻血なんて出してどうした!大丈夫か?」

僧侶「た、ただの血流上昇による毛細血管の裂傷ですわ!」

勇者「成長期にありがちなアレね」

僧侶「ええ」


女「用事は?」

勇者「あ、そうだ。調理で火をつけたいから魔法で頼む」

女「…………」

勇者「……女?」

女「術式を組んだ。これから3分間は勇者が《フレア》と言った場所から火が出る」

勇者「すごいな。そんな事までできるのか」

女「簡易術式にすぎない」

勇者「ありがとな」タッタッタ

僧侶「すごいですね。口頭術式」


ポンッ

僧侶「きゃっ!」

女「次のテント」

僧侶「あ、はい。わかりました」

女「……僧侶は祈りを使う」

僧侶「え、ええそうですね。祈りは使える魔法が決まっている代わりに、魔法のように術式を組む必要がないです。それに魔力を回復させる魔法も祈りだけです」

女「これから先、私の魔力が急激に減る事がある。私を助けて」

僧侶「もちろんですっ」ニコッ

女「……勇者と僧侶の愛の巣完成」

僧侶「わーわーわー!?」

<《フレア》

<あっちぃ!?炎デカイ!!


-夕食-

勇者「旅とは思えないな」

男「久しぶりだな。このリビングテントも」

僧侶「かなりご馳走のように思われますが……この先大丈夫ですか?」

勇者「量増し料理といってな、少ない材料で多く見せるテクニックがあるんだ。男が知ってた」

男「いやあうちには大食いがいるからねぇ。今も待ち切れずによだれたらしてる」

女「」ジーッ

僧侶「意外」

勇者「大食いなら僕も負けんぞ!」

僧侶「そうですわね」

勇者「では、いただきます」

全員「いただきます」


男「これからは料理は俺らで、テントはそっちで任せていい?逆な気もするけど」

僧侶「よろしくお願いします」

勇者「返事が早いよ」

女「たまに男と料理したい」

勇者「その時は僕が代わる」

女「うむ」

男「なんでちょっと得意そうなの?」

勇者「時に男、夕食後ちょっと付き合ってくれないか?」

僧侶・女「「!?」」ガタッ

勇者「ど、どうした?」

男「あはは……何か用事?」

勇者「ああ。鍛錬をな」

男「なるほど」

僧侶・女「「ほっ」」


男「お腹が落ち着いてからね」

勇者「よろしく頼む」

女「私は寝る」

勇者「ああそうだ。見張り役も考えないと」

僧侶「夜襲があってはいけませんものね」

女「……」

僧侶「あの、露骨に嫌な顔されてますが……」

男「女は三度の飯と睡眠が好きで。でも、わがままばっかり言ってられないぞ」

女「仕方ない。強制眠気消し魔法を使うしか……」

僧侶「明らかに体に悪そうな魔法ですね」


勇者「二人一組で交代でしていけばいいんじゃないか?」

女「男と」

男「そういうと思った。俺も女がいい」

勇者「じゃあ僧侶、よろしくな」

僧侶「は、はいっ!」

僧侶「(あら?という事は……寝る時はやはり勇者様と同衾!?こ、こここ心の準備が!)」///

勇者「僧侶、熱でもあるのか?」

女「報われない」

男「まったくだ」


-夕食後-

僧侶「片付けは私たちですますので、心置きなく鍛錬をなさってください」

女「頑張って」

勇者「ありがとう」

男「その少し開けたところでいいかな?」

勇者「ああ」

男「具体的に何するの?」

勇者「木刀が2本ある。剣術の心得は?」

男「少し」

勇者「では頼む」ポイッ

男「オッケー!」ガシッ

勇者「ハッ!」ブンッ

ガキッ

勇者「なっ!?」

男「おらぁ!!」

ドゴッ

勇者「ぐ……は……」バタッ


男「あ、だ、大丈夫?」

勇者「木刀を手で受けるなんて……考えられない」

男「刃物効かないからさー、つい。ごめん」

勇者「いや、僕の思慮が浅かった。魔族も魔物もどれも人間と同じ型にはまる訳じゃないからなそれにしても一撃でやられるとは思わなかった」

男「一応中級魔族くらいの力はあるからね」

勇者「それで中級か……」

男「気を落とさずいこう」

勇者「魔力をどうやって肉体強化に使うんだ?」

男「残念ながら俺は魔力を使えません」

勇者「え?」

男「ごめん。言ってなかった」

勇者「そうか。いや別にいいんだけど」


男「コツなら言える。魔力を糸に見たてて自分の体をもう1人の自分が操るイメージだって」

勇者「なるほど。マリオネット方式ってのは聞いた事があるな。それにしても魔力使えなくて大丈夫なのか?」

男「刃物と熱と氷、あと雷とかに強い皮膚があるから大丈夫……だと」

勇者「見た目普通だけどな」

男「触り心地も普通だ。あ、あと空飛べる」

勇者「なんか魔力なくても大丈夫っぽい」

男「まぁね。こっちは体鍛えるだけだけど、勇者は魔力と体の両方を鍛えれば何倍もの成長ができると思う」

勇者「……糸をイメージか」

男「一回岩に向かってやってみれば?」

勇者「糸をイメージ……」

勇者「…………ハッ!!」

ブオンッ

ドガーーーーーーン!!

パラパラ……


勇者「あ……で、出来た」

男「……やっぱり君は勇者だね」

勇者「と思ったら腕が痛てぇ!ジンジンする!」

男「体が慣れてなかったんじゃ?」

勇者「そ、そうかもしれない」

男「明日からはコントロールの練習」

勇者「そうする」


女「はい」

僧侶「どうも。これで洗い物終了ですね」

女「水がたくさん。快適」

僧侶「はい。不思議なヒョウタンですね。小さいのまで付いてますし」

女「しまった。洗い物は小さい方」

僧侶「あらら、そうなんですか。次回から気をつけましょう」

キュポン

女「……これは」

僧侶「どうしたんですか?」

女「小さいのは使えない。大きい方だけ」

僧侶「なんと。それはただの飾りだったんですか」

女「そうではない。でも使わない方がいい」

僧侶「女様が仰るならそうなんでしょう」


女「……」

僧侶「……」

女「……」

僧侶「……」

女「……」

僧侶「あ、あの」

女「何?」

僧侶「何かお話ししませんか?」

女「構わない。話題は?」


僧侶「そうですね、ずばり男様との関係!」

女「妻」

僧侶「お、おお……左様ですか」

女「正しくは未来の」

僧侶「まあ素晴らしいですわ。憧れます。して、馴れ初めは?」

女「…………」

僧侶「女様……?」

女「……初めての出会いはエルフの監獄の中。物心付いて初めて見たのは互いの両親の死体と泣き喚く男の顔」

僧侶「な……」

女「初めて使った魔法は爆破魔法。男は肌のお陰で生き残った。それから、ずっと一緒」

僧侶「…………すみません」

女「謝る必要は無い。事実。混血は、蔑まれる。だから正体を隠して偽って過ごしてきた」

僧侶「…………」

女「話は終わり」


僧侶「女様……私は絶対にあなた方を蔑んだり、卑しく思ったりはしません。必ず、必ず約束します。共存都市を見ていないのではっきりとは分かりませんが、きっと人間と魔族が共に手を取る世界は素晴らしいものとなるはずです。混血であるあなた方がそれを証明しているのですから」

女「……ありがとう」ニコッ

僧侶「ふふっ」

女「私は瞑想の時間に入る」

僧侶「お休みになられるのですか?」

女「違う。瞑想は魔力を高めるための修行。……した事無い?」

僧侶「え、ええ」

女「……そう」

僧侶「あ、今晩の夜番は男様と女様ですが」

女「その時になったら呼んで」

僧侶「了解しました」

女「」ザッザッ


僧侶「瞑想、かぁ。した事ないですね。どうするんでしょうか」

僧侶「それにしても重い話でした。喉が渇きましたよ」

僧侶「ヒョウタンは……あら?小さい方もちゃんと水が出ますね。大きい方を使った分、こちらを飲んでおきましょう」

コポコポコポ

ゴクゴク

僧侶「……?妙な味が」


勇者「ただいまっと。あー、腕がまだ痺れてるよ」

男「女に回復魔法かけてもらおっか」

勇者「そうすっかな〜」

男「えっと、女は?」

勇者「裏の方か?」

男「女〜……うわっ!」

勇者「どうした……って僧侶!?」

男「倒れてる!大丈夫か!?」

僧侶「うぇ〜……」

勇者「寝てるだけっぽいな。おい、僧侶起きてくれ」

僧侶「ぐぅー……」

勇者「あれ、おかしいな。いつもなら電光石火の勢いで起きるのに。おーい」


男「まあいいじゃないか。寝かせてやりなよ。どうせそっちは今日は非番でしょ」

勇者「そうだな。まだ疲れが取れてないのかもしれん。休ませるよ」

男「じゃ、お休み」

勇者「女は?」

男「そのうち来るさ」

勇者「わかった。お休み」

僧侶「すぅ、すぅ」

男「さて、女さーん。出てこーい。耳触ってやるぞー」

女「呼んだ?」ブンッ

男「おお来た来た。今日の夜番は俺たちだ。耳触りながら過ごそうな」

女「嬉しい」ピコピコ

ホー ホー ホー……

休み

なんなんですかね、途中でコテハンとsage、saga取れるやつ
読込が遅いだけかな

専ブラの使用をお勧めする

>>77タブレットでしてるんで、専ブラ使えないんですよ。
たまになっても勘弁してください


【共存都市、女学教室】

角女生徒「彩色の紅を手に……『低級・ファイア』!」

ボウッ

生徒達「「おお!」」

エルフ教師「流石ですね。たった数日で術式を組めるようになるとは」

角女生徒「い、いやー。教科書まねただけですよ」

エルフ教師「しかし、理論を理解しての魔法。この調子で行けばファイア系統はほどなくマスターできるでしょう」

碧眼生徒「あなたすごいじゃない。私なんてちんぷんかんぷんよ」

角女生徒「私もだよー。だけどファイア系だけはなんかすーっと頭に入って来たんだ。多分碧眼ちゃんもそのうち見つかるよ」

碧眼生徒「そうだといいわね。私はアイス系とか」

角女生徒「あり得そう!」

碧眼生徒「ファイアの角女、アイスの私でツートップを目指しましょう!」

角女生徒「オー!」

エルフ教師「うるさい!」

スコーン!


碧眼生徒「ああ!チョークが刺さってる!」

角女生徒「三本目の角が〜!」


-放課後-

角女生徒「女さんの家、ですか?」

エルフ教師「ああそうだ。実は失踪したと噂が立ってな」

碧眼生徒「入学して直ぐに失踪とか」

エルフ教師「共に住んでいた男と言うやつが失踪したと明確な証言があるらしく、女もそうでないかと思ってな」

角女生徒「心配です……」

碧眼生徒「なんで私たちが行かなくちゃいけないんですか?」

エルフ教師「仲よかっただろ?」

碧眼生徒「先生、彼女と絡んだ人は誰もいないですよ」

エルフ教師「まあ気にするな。行って絡めばいい」

碧眼生徒「う、うーん。納得がいきませんが」

角女生徒「私は行きます」

碧眼生徒「角女?」

角女生徒「行こうよ。女さんはきっといい人だと思うから」

碧眼生徒「……わかったわ」

エルフ教師「よし。それじゃあ式紙に案内させるから着いて行ってくれ」

角女生徒「わかりました!」


【共存都市、郊外の一軒家】

式紙「」ピラッ

碧眼生徒「立派な家ね」

角女生徒「人の気配は……まったく無いね」

碧眼生徒「ドアも開かないし……これはもう強行突破しか無いわね」

角女生徒「どうしたらそうなるの!?」

碧眼生徒「角女、あなた『ファイア』でやっちゃいなさいよ」

角女生徒「え、えぇー。それはダメじゃ無いかな」

碧眼生徒「中で倒れてるかもしれないわ」

角女生徒「今行くね!『低級・ファイア』!」

ゴウッ

プシュゥ……

角女生徒「なっ」

碧眼生徒「えっ」


角女生徒「魔法がかき消された……」

式紙「やっぱり」

角女生徒「喋った!?」

式紙「私よ。通信繋げたの」

碧眼生徒「なんだ、先生か」

式紙「この家、結界張ってある、と言うよりもこの家自体が結界のようなものね。あの子が作り上げたんでしょう」

角女生徒「そんな事まで。女さんって何者なんですか?」

式紙「エルフよ。クオーターの。……さ、結界破ったから中に入って」

角女生徒「やっぱり、強引ですよ。泥棒と一緒ですって」

式紙「いいえ。あなた達は見るべきなの」

角女生徒「……?」

碧眼生徒「まあいいわ。とりあえず入りましょう。怒られても全部先生の責任だし」

角女生徒「いやぁ、それはひどいんじゃ無いかな……」

式紙「宿題、たくさん用意してるわ」


【家の中】

碧眼生徒「いたってフツー」

角女生徒「あ、こっちに本がたくさんあるよー」

碧眼生徒「あら、魔導書かしら」

角女生徒「えっと……そうみたい。でもなんか違う」

式紙「それ、研究書類ね。まあそこに魔導書は無いはずよ」

碧眼生徒「失踪した時に持って行ったのよ」

角女生徒「あんなにかさばる物を失踪で持っていく?」

式紙「そのかさばる物をあなた達は使って行くのだけれどね」

碧眼生徒「と言うか、彼女、魔法使えるんですか?」

式紙「ええ、使えるわ。私よりも」

角女生徒「すごい!」

式紙「しかも、魔導書いらず」

碧眼生徒「え?」


【家の中】

碧眼生徒「いたってフツー」

角女生徒「あ、こっちに本がたくさんあるよー」

碧眼生徒「あら、魔導書かしら」

角女生徒「えっと……そうみたい。でもなんか違う」

式紙「それ、研究書類ね。まあそこに魔導書は無いはずよ」

碧眼生徒「失踪した時に持って行ったのよ」

角女生徒「あんなにかさばる物を失踪で持っていく?」

式紙「そのかさばる物をあなた達は使って行くのだけれどね」

碧眼生徒「と言うか、彼女、魔法使えるんですか?」

式紙「ええ、使えるわ。私よりも」

角女生徒「すごい!」

式紙「しかも、魔導書いらず」

碧眼生徒「え?」


式紙「彼女は頭の中で書いた術式を、魔導書を介さずに使える……口頭術式という魔法を使うわ」

角女生徒「そ、それって思った通りに魔法を使えるって事ですか?」

式紙「きちんと頭の中で術式を組み立てないといけないわ。それでも、彼女は私が3日かけて作り上げる術式をほんの数秒で組み立ててしまう」

碧眼生徒「て、天才じゃないですか」

式紙「いいえ、呪いよ。ハーフエルフ、クオーターエルフのね」

角女生徒「呪い……クオーターエルフって混血って事ですよね。何がいけないんですか?」

式紙「エルフは混血してはならない。伝説で語り継がれる災禍の中には決まって混血のエルフがいる。どういう因果か、桁外れの力を持つらしいのよ」

碧眼生徒「災禍……もしかして、『血別けの雷』ですか?」

角女生徒「『血別けの雷』?」

碧眼生徒「大昔に、人間と魔族が大戦争を起こした。その中で生まれた人間と魔族の血を半分ずつ持つ者2人が、そんな世界に嘆いて世界を滅ぼそうとする話よ。確かその中の1人がハーフエルフ」

式紙「そう。それには続きがあって、2人を止めたのは何と人間と魔族の友人。つまり……」

碧眼生徒「私と」

角女生徒「私……?」


式紙「彼女は頭の中で書いた術式を、魔導書を介さずに使える……口頭術式という魔法を使うわ」

角女生徒「そ、それって思った通りに魔法を使えるって事ですか?」

式紙「きちんと頭の中で術式を組み立てないといけないわ。それでも、彼女は私が3日かけて作り上げる術式をほんの数秒で組み立ててしまう」

碧眼生徒「て、天才じゃないですか」

式紙「いいえ、呪いよ。ハーフエルフ、クオーターエルフのね」

角女生徒「呪い……クオーターエルフって混血って事ですよね。何がいけないんですか?」

式紙「エルフは混血してはならない。伝説で語り継がれる災禍の中には決まって混血のエルフがいる。どういう因果か、桁外れの力を持つらしいのよ」

碧眼生徒「災禍……もしかして、『血別けの雷』ですか?」

角女生徒「『血別けの雷』?」

碧眼生徒「大昔に、人間と魔族が大戦争を起こした。その中で生まれた人間と魔族の血を半分ずつ持つ者2人が、そんな世界に嘆いて世界を滅ぼそうとする話よ。確かその中の1人がハーフエルフ」

式紙「そう。それには続きがあって、2人を止めたのは何と人間と魔族の友人。つまり……」

碧眼生徒「私と」

角女生徒「私……?」


碧眼生徒「いやいや無いですよ!さすがにそんな事起きませんって!」

式紙「そう思うでしょ?でもね、共に失踪中の男くん、彼、ハーフドラゴンなの」

碧眼生徒「…………」

角女生徒「…………」

式紙「これは私の勘。まだ誰にも言ってないし、秘密の事。もしそうなっても伝説通り止めれるようにあなた達を鍛えるわ」

碧眼生徒・角女生徒「「ええ!?」」

式紙「毎日ここへ来なさい。特訓するから」

碧眼生徒「お、横暴よ!」

式紙「どうでも言いなさい。まあそこの2人はやる気みたいだけど」

角女生徒「へ?」

鬼人生徒「ぬ、バレておったか」

片目生徒「ほら、お前図体でかいから」


角女生徒「えっと……?」

式紙「彼らは男くんの友人達だ」

片目生徒「男め、世界を滅ぼそうたってそうはいかねーぞ」

鬼人生徒「まあ男殿なら大丈夫じゃろうが、万が一、な」

片目生徒「そういう事だ。稽古つけてください、先生!」

式紙「どうだ?あくまで保険の話だよ。無かったら無かったで強くなって一石二鳥ではないか」

碧眼生徒「う、うーん……」

角女生徒「私やります!」

碧眼生徒「ちょっと!」

角女生徒「世界を守るとか、守らないとか、そう言うのじゃなくて……教えてやるの。世界は嘆くほどいがみ合ってないって。確かに共存都市の外では人間と魔族は喧嘩してるかもしれないよ。でも……」

ギュッ

角女生徒「私と碧眼ちゃんはこうやって手を握り合えるから。だから心配しないでって」


碧眼生徒「……はぁ。私の負け。付き合ってやるわよ、その特訓ってのに」

式紙「ふふん。それでいいんのよ」

碧眼生徒「まあ、不本意だけどあんた達と一緒に頑張ってあげるから、感謝しなさ……」


鬼人生徒「主はどっち派じゃ?」

片目生徒「角女ちゃんの巨乳に一票」

鬼人生徒「ぬ。ワシは碧眼のすれんだーな体に一票じゃ」

片目生徒「確かにそそられるな。でも性格がアレだぜ?」

鬼人生徒「であれば、角女もちと天然過ぎやせんか?」


碧眼生徒「…………」

角女生徒「?」


式紙「……ハァ」

碧眼生徒「あんたら凍ってろぉぉぉぉぉぉ!!」

碧眼生徒「『中級・ブリザード』!!」

ビュゥゥ

片目生徒「何だ!?急に寒く……!」

鬼人生徒「吹雪が!」

カチコチ

碧眼生徒「フゥー、フゥー!」

式紙「おま、どうやって魔法使った?」

碧眼生徒「研究書類を見てただけよ!」

角女生徒「すごーい……」

式紙「ふむ。思わぬ材を手に入れたかもしれん」

片目生徒「」

鬼人生徒「」

今日は以上です。
見てくれている人がいれば、ありがとうございました

明日からは毎日投下できる気がします


【疎林】

男「この先を抜けると砂漠があって、そして魔界へ続くゲートがある。ゲート付近には中央の王国の兵が常駐してるから気をつけて」

勇者「魔界へは何度か行ってるんだったな」

僧侶「ゲートと言うのは、どういうものですか?」

男「その名の通り、荘厳な門があって、そこをくぐると魔界が広がるんだよ」

勇者「門か。侵略を恐れて破壊されなかったのか?」

女「破壊は不可能。あんな術式を破れる訳が無い。魔法耐性、物理耐性、祈祷耐性、風化耐性、もろもろ」

勇者「なるほど」

男「ゲートは100メートル間隔で4つある」

勇者「なぜだ?」

男「さあ。俺に聞かれても」


男「そして、魔王城は魔界の地理的に一番北に位置する。ゲートが南端に繋がってるから一番遠く」

僧侶「骨が折れそうですね」

男「魔界にさえ入ればこっちのものだよ」

勇者「そうだな。さっさと疎林を抜けよう」

女「《ブロック》」

ガキーーーーン

男「うわっ!」

僧侶「きゃ!?」

勇者「何だ!?」

女「囲まれてる。弓に隠密の足……馬人族」

勇者「ケンタウロスか。厄介だな」

男「姿が見えないけど」

女「変。魔法の痕跡も無い」


勇者「逃げるか」

男「いや、馬人族の足から逃げれるとは思わない」

僧侶「あの〜……」

勇者「どうした?」

僧侶「ケンタウロスさんならそことそこ、あと向こうにもいらっしゃいますけど」

男「み、見えるの?」

僧侶「はい。何故か私だけ見えます」

女「なぜ」

僧侶「その、ケンタウロスさん達も驚いていらっしゃいます。大丈夫かーと叫ばれてますが」

勇者「……どう言う事だ?」

僧侶「ちょっと話してみますね」


-間-

傷馬人「いやー、すまねぇ。疎林にうさぎがいたと思って射たら魔族だもんな」

若馬人「ここが幻魔林だということをすっかり忘れていました」

勇者「つまり、どう言う事だ?」

女「幻魔林……推測するに、幻術を見せる林?」

老馬人「ああ。そうみたいだ。なんせこっちもここに来るのは2度目やからの」

男「そっちは俺たちがうさぎに見えて、俺たちはそっちの姿が見えない幻術がかかっていたという事か」

勇者「でも僧侶だけかかってなかったな。しかも突然解けたし」

僧侶「きっと神のご加護のおかげです」

傷馬人「信仰深いねぇちゃんだ」


若馬人「して、あなた達はどうしてここへ?」

勇者「それはこちらのセリフだ。魔族が人間界へ来るなど危ない」

若馬人「それはあなた達にも言えるのでは?」

勇者「(しまった。僕たちは魔族という事になってたんだ……)」

男「魔法の練習中に転移魔法を失敗しちゃってね、人間界に来てしまったんだ。だから今帰ってる途中」

女「ごめんなさい」シュン

男「気にすんなって」ナデナデ

勇者「(ナイス演技と設定で乗り越えた!)」

老馬人「ほほほ。転移魔法とは優秀ですな」


男「そっちは?」

傷馬人「最近この林の生き物がゲート通ってこっちに来るようになってな。美味い奴だけならいいが、危ない奴も入って来るから狩ってるんだよ。虎とか」

僧侶「虎は密林の生き物では?」

傷馬人「そうなのか?」

勇者「住んでるんじゃないのか?なんせ幻魔の林だし」

老馬人「そうやのう」

若馬人「ここで会ったのも何かの縁。ご無礼のお詫びにゲートを抜けるまで足となりましょう」

男「(どうする?)」

勇者「(断るのも怪しいし、馬人族なら兵より早くゲートくぐれるだろうから、素直に乗せてもらうか)」

男「(オッケー)」

勇者「いいんですか?ではお言葉に甘えます」


パカッパカッ

僧侶「ん〜。蹄のいい音です」

若馬人「気に入って頂けましたか?」

僧侶「はい」


女「寝ていい?」

老馬人「おお。存分に寝るが良い」

女「寝心地……サイコー」


勇者「すまんな」

傷馬人「そりゃあ俺らが言う言葉よぉ。よくあの弓防いだなあ」

勇者「本当ですよ。女はすげぇ」

傷馬人「っと、飛んでる兄ちゃんは大丈夫か?乗ってもいいんだぞ?」

男「ん?むさ苦しくなるからやめとくよ」

傷馬人「ぬっはっは!そうかそうか。で、どっちがどっちの女なんだい?」

男「ちっこいのが俺で、大きいのが剣士」(身バレしないように勇者を伏せる場合は、剣士)

勇者「ちょ、僕と祈祷師はそんな関係じゃないぞ!?」(同様に、祈祷師)

傷馬人「謙遜すんなって。ぬっはっは!」

男「」ニヤニヤ


傷馬人「もうじきゲートだが、人間の兵がいるかもしれねえ。気をつけろよ。奴らは魔族を見つけ次第殺しやがる」

勇者「…………」

男「馬人族は殺られたの?」

傷馬人「ああ。何人もな。俺の胸の傷も奴らにやられた。恨めしいよ」

勇者「人間が、憎いですか?」

傷馬人「ああ……憎い。だが、魔族も憎い。南端に住んでる俺らは、戦があると最前線。さらに他の魔族の足と来たもんだ。俺らは静かに暮らしてぇだけなのによ」

傷馬人「……すまねぇ。気分が削がれちまったな」

勇者「その感情、忘れないでください。いつか憎い相手も愛するものとなれる……はず」

傷馬人「ぬっはっは。最後は弱気だったなぁ。……まあボチボチ待っておくよ」

男「……」ニコッ


……パカッパカッパカッ

勇者「蹄の音?」

傷馬人「幾つか聞こえるな……普通の馬と、同族の音」

男「ゲートから出てきた馬人族を兵が追い回してる、とか」

傷馬人「!!そいつぁいけねぇ!すまねえが降りてくれ!助けに行く!」

勇者「なら僕らも手伝う!」

傷馬人「んなこと出来るか!俺らの問題だぞ!他族を巻き込むつもりはねえ!」

勇者「」チラッ

男「」 コクン

勇者「他族じゃなければいいんだな。だったら、僕らは……人間と言う族だ」

傷馬人「なっ……」

勇者「ハイヤー!!」

傷馬人「クソッ!!」

パカッパカッパカッパカッ


雑兵A「そちらに行ったぞ!追え!」

子馬人「はぁ……はぁ……父ちゃん!」

雑兵B「俺の弓を食らえっ!」

ビュン

ザグッ

子馬人「うあぁぁあ!!」

雑兵B「しゃあ!命中!」

雑兵A「いや、浅い!追撃だ!」

雑兵B「チッ!って、もう矢がねぇ!」

雑兵A「バカが。一旦引くぞ」

雑兵B「命拾いしやがったな」

パカッパカッ……


子馬人「と、父ちゃん……」

若馬人「あ、子馬人じゃないですか!しっかりしてください!」

傷馬人「見つけたか!?……お前、子馬人!!」

老馬人「お、おぉなんとお前の息子ではないか」

傷馬人「くそぉぉおおお!!今父ちゃんが家まで連れてってやるからな!そしたら医者をすぐ呼ぶからもうちっと我慢だ!」

子馬人「ダメだ……父ちゃん。今、村が……人間に……」

傷馬人「何だって!?」

子馬人「ゲートの兵が……」

若馬人「嘘でしょう……」

子馬人「俺、逃げることしか……出来なかった……ゴホッ」

傷馬人「子馬人!おめえは悪くねぇ!悪いのは全部人間だ……!」

勇者「…………」


傷馬人「こっちが無礼した身で言うことじゃねぇが……あんたら、俺らの前から消えてくれ。今の俺じゃあ、あんたらを殺してしまいそうだ」

勇者「……女」

女「了解」

傷馬人「おい、聞いてんのか!」

女「どいて。治療の邪魔」

傷馬人「触るなぁ!!」

バキッ

男「……つっ」

傷馬人「くっ……て、てめえらは敵なのか!?」

僧侶「いいえ。我々は人間と魔族の味方です」

傷馬人「ふざけんな!!そんな都合のいい話が……」


老馬人「傷馬人よ、その怒りは……まずは礼を言ってからにせんか?」

傷馬人「えっ……」

女「治療完了」

子馬人「あ……な、治ってる」

若馬人「……改めて言います。あなた方は何者なんですか?」

女「その前に。男を殴ったこと、謝って」

傷馬人「…………すまなかった。ありがとう」

男「いや、いいよ。こっちとしても途中まで騙してた訳だし」


-間-

若馬人「勇者、一行……」

勇者「別に魔族と争うための勇者じゃない。それだけ分かってもらえればいい」

老馬人「にわかに信じ難いが……そちらの2人さんが混血とならば信用に足る」

僧侶「我々の話はこれ位で、子馬人さんのお話があるのではないですか?」

子馬人「そ、そうだ。村が人間に襲われて!」

若馬人「急いだ方がよさそうですね」

老馬人「行くか」

傷馬人「あんたらは人間だが、感謝してる。だからこれ以上関わらないで、く、れ……?」

勇者「よいしょっと」

女「準備完了」

僧侶「同じくです」

傷馬人「おい、何乗ってんだ」


勇者「何って、魔界に連れてってくれるんだろ?」

傷馬人「てめぇ……!」

勇者「そうだな。最初の目的地は南端の馬人族の村なんてどうだ?何か困ってそうだから助けに行くとか」

傷馬人「おい!」

老馬人「……もうええじゃろ。傷馬人、行くぞ」

若馬人「仕方ありません。よろしくお願いします」

タッ

子馬人「あ、待っ……に、兄ちゃん乗ってく?」

男「君がもうちょっと大人になってからね」ヒュン

子馬人「あ、飛べるなんてズルい!」


【馬人族の村】

勇者「あっさりゲートを抜けたら……血みどろ」

傷馬人「ひでぇ……」

若馬人「ここまでする必要がありますか!」

女「《サーチ》」

女「……!兵がこちらに気づいた」

男「攻撃は」

女「弓と剣だけ。兵を一掃できる」

勇者「死なない程度に、出来るか?」

女「無論」

傷馬人「何する気だ?」


男「女が魔法で兵士だけを倒す。俺たちは倒れた兵士を捕らえる」

傷馬人「そんな事できるのか」

女「術式完成。《ショッキングボルト》」

バリバリバリバリバリ!!

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ

若馬人「す、すごい。兵士が全員雷撃で」

女「……計算ミス。少し馬人に当たってしまった」

老馬人「いや、大丈夫じゃろう。これ位であれば耐えきる」

勇者「じゃあ、兵士を捕らえるぞ」


-間-

傷馬人「これで全員か」

子馬人「父ちゃん、殺された人はいなかった。傷が深い人も女って人に助けられたよ」

傷馬人「そうか……」

子馬人「他の負傷者も僧侶さんが診てくれてる」

傷馬人「わかった。お前も休んでろ」

子馬人「うん!」タッ

男「お疲れ様です」

傷馬人「……」

男「そう警戒しないでください。報告です。どうやら兵士達はゲートを通るあなた方を見て、魔族が進行して来たと勘違いして攻め入ったそうです」

傷馬人「馬鹿な!俺たちが外に出たのはゲートをそっちの生き物が通らないようにするためだ!」

男「……おかしいと思いませんか?」

傷馬人「何を」


男「疎林に虎はいません」

傷馬人「おい、まさか……」

男「この事件、人為的なものです。人間か魔族かはハッキリしませんが」

傷馬人「なら人間がやったに決まってる!魔界に攻め込む理由を付けたかったに違いねぇ!」

男「そうかもしれません。この件、俺たちに任せてください」

傷馬人「はぁ?……さてはてめぇもグルだな」

男「違いますよ!……と言っても信用してくれないと思うので勝手にします」

傷馬人「行かせるかよ」

男「一つ言うなら」

クルッ

男「変われます。人間も、魔族も」

男「では」

傷馬人「待てっ!」

ブンッ

傷馬人「き、消えた」


老馬人「ワシは奴らを信じてみようと思うぞ」

傷馬人「何でだ!人間が全部悪いだろ!」

老馬人「お前、自分で言っててそろそろ気づいておるじゃろ」

傷馬人「何を」

老馬人「お前の妻を殺したのも人間。お前の子供を助けたのも人間。我らの善悪と全く変わらん事を」

傷馬人「それでも……人間は」

若馬人「傷馬人さん」

傷馬人「お、おお若、どうした?」

若馬人「これ、傷馬人さんにって勇者さんが」

傷馬人「これは、鞍か」

若馬人「また乗せてくれ、と」

傷馬人「……くそっ。捨ててろ。んなもん……」トボトボ


老馬人「我らにその言葉を言うか。そんな事を言われたら、また乗せて走りたくなるわい……」

若馬人「そうですね。馬人の本懐ですからね」

老馬人「お前は人間嫌いじゃないのか?」

若馬人「実は人間の恋人がいまして」

老馬人「ほぉ!」

若馬人「人間と魔族が共に暮らす街があるんです。そこに居らして、つい先日も行ってまいりましたよ」

老馬人「ほぉ!!」

若馬人「もうちょっとでキスできたんですけどね」

老馬人「やるのぉ!将来が楽しみじゃ」


以上です。お疲れ様でした。
また明日。

青年と才女の作者さんですか!?

>>122
ごめんなせぇ。違います。
過去作はありますが、未完で終わって放置してしまったので晒せないっす。

でもチラッとでも見てくださってありがとうございます。


勇者「兵士から吐かせた。幻魔の林に屯所がある」

僧侶「今回の責任を取ってもらうと?」

男「うんにゃ。多分、それ以上のものがあるかも」

僧侶「それ以上のもの?」

女「あの森、造られた感じがした」

僧侶「では幻覚は、魔法ですか?」

女「違う。祈祷。祈り」

僧侶「なんですって?」

勇者「じゃあ奴さんは人間か」

女「安心して。僧侶に効かなかった故、敵はたいして強いとは言えない」

僧侶「あ、あはは。遠回しに弱いと言われてしまいました」

勇者「何言ってるんだ!僧侶は大切な仲間だぞ!」

僧侶「ゆ、勇者様……!」///

男「他所でやってろ」

女「毒舌」


女「ゲートを抜ける」

勇者「テレポートで幻魔の林まで行けないのか?」

女「人間界と魔界を越えた転移は不可。術式のフォーマットが違う」

勇者「……?」

男「つまり、人間界と魔界では魔法の勝手も違うって事」

勇者「よくわからんが、仕方ないな。そう言っている間にゲートが見えてきた」

男「予備兵は?」

女「…………いない」

勇者「よし。抜けるぞ」

ダッ

パァァァ


勇者「到着」

男「よし、屯所を探そう」

女「了解」

勇者「幻覚に掛かっても僧侶がいれば安心だな」

男「ああ」

女「祈りも侮れない」

勇者「そうだな。頼りにしてるぞ僧侶」

男「また赤くなってる」ニヨニヨ

女「素直になればいいのに」


僧侶「んー!んんーーー!?」

「くふふぅ。残念でしたね。彼らはあなたがいながために一生この林を彷徨い続けるのです。しかも魔翌力を吸い続ける木が生えています」

僧侶「(勇者様!気づいてください!それは幻覚です!)」

「さて、私はあなたに興味が有ります。私の祈祷を以ってして貴女に効かなかった理由。それを知りたいのです」

「貴女を捕らえるために出待ちしていて正解でした」

僧侶「んっ、く……ぷはっ!あ、あなたは一体何者なんですか!」

「私は邪神に仕える尼僧です」

僧侶「邪神ですって……」

尼僧「ええ。この林を作ったのは私。虎を放ったのも私。兵士を混乱させたのも私。これで人間と魔族の不和に火が付く……すべて上手くいきました」

僧侶「何のために!」

尼僧「全ては邪神様のために。邪神様は申されました。魔のものを殲滅せよと。そのために利用できるものは利用せよ、と」

僧侶「……」ギリッ

尼僧「そう睨まないでください。美しいお顔が台無しです」


僧侶「貴女が仕える神は人間も魔族も馬鹿にしています。悔い改めなさい!」

尼僧「いいえ。正しい世界を作る布石です。それに、貴女は自分の立場をわきまえた方がよろしい」

ペロッ

僧侶「ひぅ!?」

尼僧「あぁ……!可愛い声で鳴くじゃないですか。貴女を調べて、しゃぶり尽くしたい……そして我が身とともに邪神様の物となるのです」

僧侶「狂ってます……」

尼僧「さぁ参りましょう。美しの園へ」

僧侶「ゆ、勇者様ぁぁぁぁ!!」


-夕刻-

勇者「幻魔の林って、こんなに広かったか……?」ハァ…ハァ…

男「あ、ああ。なんかおかしくない?」

女「」フラッ

男「女!」

女「問題無い……」

男「大有りじゃないか!」

女「魔翌力が、切れそう」

男「何でだ?女の魔翌力の量だったら歩くくらいでそんなに減らないのに」

勇者「なぁ。僕も魔翌力がそろそろ……」

男「僧侶さん、2人に魔翌力回復の祈りを。…………僧侶さん?」

勇者「どうした?」

男「僧侶さんが、いない!」


勇者「はぁ?そこにいるじゃないか。なあ僧侶」

女「どこに向かって話している?僧侶はこっち」

男「…………幻覚、か?」

勇者「何だって!?」

女「どれが本物?」

勇者「分からない!なあ僧侶、お前は本物か?」

女「あなたが本物?」

勇者「僧侶!」

女「僧侶」

勇者「ぐっ……魔力が……」

男「…………はっ!お、女!今すぐ林を焼き払って!」

女「……?了解した。《サンフレア》」

ゴウッ

勇者「あっつ!」

女「あ、僧侶が消えて行く」

勇者「なっ」

男「やっぱり……」


勇者「どう言う事だ?」

男「幻魔の林が幻覚を見せるのに必要な魔力、それの供給源はどこか」

勇者「ぼ、僕たち自身?」

男「うん。だから魔力の無い俺はたいして疲れる事が無かったけど、2人は魔力を持ってるからずっと吸われ続けてた」

女「失態」

勇者「そ、僧侶は!?」

男「どこかのタイミングで攫われた、とか」

勇者「くそっ!」

女「……《サーチ》出来る」

男「どう?」

女「地下にいる」

勇者「地下!?」

女「近くに誰か。僧侶と似た格好」

勇者「祈祷師ってことか?」

女「わからない。ただ、魔力はかなり強い」

勇者「厄介だな」

男「とにかく入り口が何処かにあるはずだ。探そう!」


【地下神殿】

尼僧「どうです?素敵でしょう。神々しく輝く邪神様の像。……ああ……溢れそう」

僧侶「……」

尼僧「その反抗的な目。縛っている縄と合い混ざって、ますますそそられます」

僧侶「言っておきますが、私は普通の僧侶です。あなたの好奇心を刺激するようなことは一切ありません」

尼僧「ではその普通の僧侶さんがどうして私の祈りを妨げることができたか……不思議に思いませんか?魔力が私より強い訳ではない、信仰の熱心さも私には劣る……ではなぜ?」

僧侶「あなたが邪神に仕えているからではないですか?」

パチンッ

僧侶「つぅ……」

尼僧「もう一度邪神様を侮辱してご覧なさい。命果てるまで邪神様の前で辱めを受けていただきますわよ」

僧侶「……どうぞご勝手に」

尼僧「……あぁ。堪らない。その反抗的な目を雌犬の目にしてやりたい……!」

僧侶「狂ってます……」


尼僧「そうです。貴女について少し調べましたの。その結果、貴女は小国の僧侶、しかも勇者一行だそうですね」

僧侶「それがどうかしましたか」

尼僧「国ではまずまずのお力を持っていらして……危険物として旅に出された、と」

尼僧「まぁ!お年は19。私より一つ下。これは可愛がり甲斐がありそうですわぁ……」

僧侶「え、20?老けてますね」

尼僧「私をお姉様とお呼びなさいな」

僧侶「おばさん」

尼僧「さて、他に情報は……」

僧侶「聞いてませんし」

尼僧「予言者ハヤによって予言された子……?どんな予言なのですか?」

僧侶「予言の事は……門外不出なのに。どうして知ってるんですか!?」

尼僧「邪神様は何でもお知りです。さぁ、予言者ハヤの申し子よ、答えなさい!」


僧侶「……あなたが勇者様たちに倒されるという予言ですよ」

尼僧「………嘘を、言うなぁぁぁぁぁ!!」

バキッ

僧侶「ぐっ……!」

尼僧「予言者ハヤがその様な下らないことに予言を使うはずがありません!」

バキッ

尼僧「答えなさい!貴女は何と言われたのですか!」

僧侶「……お得意の邪神様にでも聞いてみるんですね」

尼僧「くっ」

尼僧「邪神様。私、従順なる信徒は祈りを捧げます。どうか、この者になされた予言をお教えください」

尼僧「ああ、邪神様!お答えください!……どうして答えて下さらないのですか」

尼僧「こ、ろ……せ?この者を殺めろと仰るのですか!」

僧侶「!!」


尼僧「……仕方ありません。お気に入りができたと思ったのですが、邪神様が申されるのであれば……」

シャキン

僧侶「な、何を……!」

尼僧「死んでください」

僧侶「や、やめてください!私はまだ……!」

尼僧「邪神様のために!」

ザグッ

僧侶「あ……あぁ…………」

ガクッ

尼僧「は、はははは!予言者ハヤの申し子だから大それた秘密を持っているかと思えば。あっさり死んだではないですか!」

尼僧「予言者ハヤも大したことありませんね。この様でしたら、私も予言者の真似事でもしてみましょうかしら。最近資金不足でしたので」


尼僧「さて、死体を片付けなくては。いえ、死んだのですから、存分にこの体を味わいましょうか。ふふふふふ……」

尼僧「麗しい肌……まるで生きているかのよう」

僧侶「触んな、汚らわしい」

尼僧「!!?貴女、生きて!!」

僧侶「あー、お前、神を過信しすぎ。神ってのはもっとグータラよ?」

尼僧「な、なな!貴女、口調が!」

僧侶「どうでもいい。さて、選べ。私の体を傷付けた代償は、死か、辱めか」

尼僧「貴女ごときに殺される私ではありませんわあああああ!」

僧侶「へーそっか。じゃ、死ね」

グシャ……

尼僧「」

僧侶「邪神よ、あんたにも罰だ」

グラッ

ガシャーーン


女「!」ピクッ

男「どうした?」

女「向こうから音がした」

勇者「そこにいるのか?」

女「うん」

男「でも、進もうにもこの地下迷宮をどう抜ければいいか……」

女「破壊魔法では神殿ごと壊してしまう」

勇者「……アレ、使えないか?」

男「どれ?」

勇者「僕のマリオネット剣術」

男「変な名前になってる……でも最小限の直線ルートを作るならそれがいいかも」

女「コントロールできる?」

勇者「やってみる」

スチャ


勇者「……ハァッ!!」

ザンッ−−

男「!切れ味が鋭くなってる!」

女「壁が崩れずに斬られた。かなりのもの」

男「ああ、すごいな勇……」

バタッ

男「勇者!?」

勇者「ごめん。魔力切れ」

男「しょうがない。おぶっていく」

勇者「面目ない」

女「この先」

タッタッタ…


男「僧侶さん!」

勇者「こ、これは……」

女「縛られている僧侶と死体と瓦礫。戦闘の跡?」

勇者「男、降ろしてくれ」

男「ほいっと」

勇者「僧侶!」

僧侶「う……う〜ん……はっ!勇者!?」

勇者「無事か?」

僧侶「ええ。無事です。助けていただきありがとうございます」

勇者「いや、僕たちが来たときにはこうなっていた。僧侶、お前がやったのか?」

僧侶「ち、違いますわ!私は尼僧さんに刺されて…………傷が、ありません」


女「刺された?治療する?」

僧侶「いえ……胸に刺された傷が無いのですが」

勇者「胸って……へたしたら死ぬじゃないか」

僧侶「はい。実際意識を失っていました……」

男「じゃあ誰が?」

勇者「僧侶は神に仕える者だ。きっと神が加護をお与えになったんだろう」

僧侶「祈ってもおりませんのに」

女「神は努力する者の祈りに応える。神は、僧侶が常に誰かの為に頑張っているのを見ていたということ」

僧侶「そんな、私はまだまだです」

勇者「だが、無事でよかった。大切な仲間を失いたくはないからな!」

僧侶「た、大切……」///アウアウ

女「私、男、大切」

男「何で単語?」


勇者「それで、ここで何があったんだ?」

僧侶「実は……」

-説明中-

男「邪神……」

女「この瓦礫は邪神像のもの」

勇者「邪神を信じすぎた為の暴走、か。でも許されることじゃないな。馬人族に死者が出てるわけだし」

男「見えないところで人間の死者も出てると思う」

勇者「ここは埋めてしまおう。この尼僧は土に還って魂で償うんだ」

僧侶「ええ……そうですね」

尼僧「…………ゴホッ」

全員「!!」

勇者「生きてる!」

女「……とどめは?」


勇者「手に掛けてはダメだ。それより治療をしてやってくれ」

男「なっ!」

勇者「生きてるなら、生きて償う。それが死んだ者への償いだ」

男「……そうだな。女、治療魔法をかけてやってくれ」

女「その前に。僧侶、魔力を回復して」

勇者「ああ僕も頼む」

僧侶「分かりました。……神よ、この者たちの根源を癒し給え」

シーン

僧侶「あ、ら?」

女「どうした?」

僧侶「……私も魔力切れのようです」

3人「えぇー!?」


本日は以上です。お疲れ様でした。
また明日、お暇であれば。


【馬人族の村】

若馬人「で、連れて来たと」

勇者「怒りを買うのは百も承知だ。だが、今はその怒りをこいつに向けないでくれ」

若馬人「分かりました。あなたたちはこの村を救ってくれた恩人ですので、言い返すことなんてできませんよ」

勇者「言ってくれても構わないけど」

若馬人「部屋は余ってるのでご自由にお使いください。ベッドはありませんが、馬人ゆえ使わないので勘弁してくださいね」

勇者「ああ、恩に着る」

若馬人「では」ニコッ

バタン

シュン

男「ただいま」

女「ただいま」

勇者「おかえり。どうだった?」


男「兵士たちは屯所で適切な処分を受けるそうだよ」

勇者「それは……勝手に進行した罰であって、馬人族を殺した罪に対する罰ではないんだよな」

男「ああ。むしろ、褒められてた。だから処分も軽くなるらしい」

勇者「くそっ!!」

ガンッ

女「勇者、血」

勇者「戒めだ。治療をしないでくれ」

女「……わかった」

僧侶「皆さん、尼僧さんが目を覚ましました!」


尼僧「ここは……」

僧侶「尼僧さん、私が見えますか?」

尼僧「あなたは…………誰ですか?」

僧侶「!」

女「やはり記憶を失っている」

勇者「予想出来てたのか?」

女「うん。怪我からみるに頭部からプレスされたかのような怪我。全身の複雑骨折に、内蔵損傷。なにより頭部の怪我が酷い」

男「痛みやら怪我やらで記憶も飛ぶ、と」

勇者「像が倒れて来てその下敷きになったのか」

女「必要分の魔力は回復した。治療に移る」

尼僧「なんの……話でしょう?……ウグッ!」

僧侶「喋らないでください。あなたは今生きているのもやっとな状況なのですから」

尼僧「私は、死ぬのですか……?」


僧侶「死にませんよ。今から治療を行いますので。あなたは神に祈りを捧げ、生きる努力をしてください」

尼僧「神……ああ、聞こえます。優しい神のお声が」

勇者「それ、ヤバイんじゃないの?」

男「向こう側が見えてるんじゃ?」

女「む、それは大変。治療する。《キュア》《ヒーリング》」フラッ

男「おっと」ギュ

女「睡眠……」スゥスゥ

男「お疲れ様」ナデナデ

パァァァ

尼僧「あ……」

僧侶「ご気分はいかがですか?」

尼僧「とても心地よい……神の手の中に包まれているようですわ」

勇者「大丈夫なのか?向こう側が見えてるみたいだけど」

僧侶「まあその、神を例えに使うのは聖職者の癖の様なものですから」

勇者「そっか。とりあえず治ったんだな」

僧侶「みたいですね」


男「どうするの?全部話す?」

勇者「話す。記憶を失っても魂には罪は刻まれてるはずだ。話して罪を償う気があるならそうさせる」

男「その気が無かったら?」

勇者「勇者の名を以って、僕がその魂を背負う」

男「つまり、勇者が殺める、と」

僧侶「勇者様……」

尼僧「あの……私は何かしてしまい、罪を背負っているのですか?」

勇者「ああ。驚かずに聞いてくれ。君は邪神を崇め、狂って、人間と魔族どちらも傷付けた。死者もでてる」

尼僧「そんな……」

勇者「まあ今の君には関係ないけれど」

尼僧「関係ないはずありません!過去の私であろうと、この手を血で染めたことに変わりはないのです。……ああ、神よ、私はなんて事を」

勇者「決まりだな」

男「うん」


勇者「償う気はあるか?」

尼僧「死んで償えるのであれば、私の命など!」

勇者「ダメだ。死ぬ事は許されない。その代わり、その人生をかけて誰かに奉仕する気はあるか?」

尼僧「無論ですわ」

勇者「じゃあ、君はここで教会を建てるんだ」

尼僧「はい。心得ました」

勇者「ここの住人は馬人族、つまり魔族だ。それでもか?」

尼僧「魔族……」

勇者「怖いか?」

尼僧「い、いえ」

勇者「隠さなくてもいい。互いに知り合っていない分、手探りな部分があるさ。だけど、」

若馬人「だけど、人間と魔族分かり合える。そう言いたいのですね」


勇者「若馬人」

若馬人「すみません。飲み物を持って来たのですが、込み入って話していらして。ちょっと盗み聞きしてしまいました」

男「若馬人さんはどう思いますか?」

若馬人「ここだけの話、僕には人間の恋人がいます」

勇者「なんだってー!?」

若馬人「共存都市という所です」

男「!」

若馬人「おや、驚いた顔をされていますね。知っているのですか?」

男「ん、まあね」

若馬人「そこでは人間と魔族が仲良く暮らしています。ともに暮らす事ができる事をすでに証明されてるのです」

尼僧「本当ですか」

若馬人「さらに資金の方もご安心ください。僕の恋人が、人間と魔族の共存を進める推進派で、様々な所で資金提供しているのです」

男「あぁ、池の淑女かな。大きいお屋敷持ってたね」

若馬人「そうです。ご存知で」


男「だったら安心だな」

勇者「という事は、若馬人にこの件は任せていいのか?」

若馬人「ええ。ご安心ください」

バタン

傷馬人「ちょっと待て!!」

若馬人「傷馬人さん」

傷馬人「人間が教会を勝手に建てるだぁ?しかもそいつが騒ぎの犯人だぁ?いい加減にしろ!そんな勝手が許されるか!」

若馬人「しかし、彼女は記憶を失って……」

傷馬人「信用できるか!人間のせいで俺の妻は……!」


ガシッ

尼僧「きゃぁ!!」

傷馬人「来い!!」

男「お、おい!」

スッ

男「若馬人さん、何で止めるんですか!」

若馬人「彼、背中に彼女を乗せていました。多分……もう許してるんだと思います」

勇者「馬人族は信用した者に背中を許す」

若馬人「知ってましたか」

勇者「ああ。強引ではあるけど、これでよかったんだと思う」

若馬人「そうですね」

勇者「予定より早いが、俺たちはもう行く。世話になったな」

若馬人「またいつでも起こしください。次は、きっと来やすくなっているはずです」

勇者「期待しておく」

若馬人「お元気で」


【馬人族の墓】

尼僧「ここは、お墓ですか?」

傷馬人「降りろ」

尼僧「は、はい」

ザッ

傷馬人「よお、母ちゃん。来たぜ。元気してたか?……そうか。そりゃあよかった」

尼僧「あの……」

傷馬人「…………」

尼僧「私にも祈らせてください」

傷馬人「…………」

尼僧「…………」


傷馬人「こいつは、俺の妻だ」

尼僧「そう、ですか」

傷馬人「人間の兵士に殺された」

尼僧「すみません」

傷馬人「なんでおめえが謝る」

尼僧「私が……殺したんだと思います。助けてくださった方が仰っていました」

傷馬人「そうか。じゃあお前が殺したんだ」

尼僧「どんな事をしてでも償います!ですから……私に償うことの許しをください」

傷馬人「あれを見ろ」

尼僧「?」


子馬人「おーい!父ちゃーん!」


尼僧「お子さんですか?」

傷馬人「妻の残した唯一の宝だ。……あいつ、昨日人間に殺されかけて、人間に救われた」

傷馬人「皮肉にも大嫌いな人間にだ。全部、大丈夫だからってあいつらがやっていきやがった」

傷馬人「俺は……無力だった」

尼僧「……」

傷馬人「だから、俺はお前さんを責めることが出来ない」

尼僧「そんなことありません。あなたは私を罰することができます。私はどんな罰でも受けます。だから、人間を嫌いにならないでください!」

尼僧「人間は醜い部分をたくさん持っているかもしれません。ですが、美しい部分をそれ以上に持っているのです!そして、それは……魔族も同じではないでしょうか」

傷馬人「……かもな」

尼僧「私は祈ります。あなたと笑い合えるその日まで」

傷馬人「くそっ……くそっ……どこまでも母ちゃんに似やがって!」


老馬人「ほほほ、ここにおったか」

傷馬人「じいさん」

尼僧「こんにちは」

老馬人「うむ。して、尼僧よ、聞いたぞい。教会を建てるとか」

尼僧「誠に勝手ながら、この村に教会を立て、世の平静を説いてゆくつもりです」

老馬人「じゃったら、ここの辺りに建ててくれんかの」

尼僧「よ、よろしいのですか?」

老馬人「うーむ。実はワシ、この墓地の管理をしておるのだが、最近は足が痛くてやってられんのじゃ。それでお前さんに代わりをして欲しくおもってな」

尼僧「喜んでさせて頂きます!」

老馬人「な、よいじゃろ傷馬人」

傷馬人「勝手にしろ。ただし、俺の妻の墓を蔑ろにしたらただじゃおかねーからな!」

尼僧「はい!」

傷馬人「」パカッパカッ

尼僧「どちらへ?」

傷馬人「帰る。村の頭の固てぇじじい共に狩ってきた食料やるの忘れてたからよ。……ぬっはっは。今日は馳走だ!」

老馬人「そうかそうか。頼んだぞ」


尼僧「あの……」

老馬人「大雑把なことはやつに任せておけ。お前さんは気にせずここに教会を建てるとええ」

尼僧「ありがとうございます!」

老馬人「ふぅ。これで心置きなく死ねるわい」

尼僧「そ、そんな事言ってはダメですよ!」

老馬人「老馬の戯言をいちいち本気に取っては疲れるだけだぞ?」

尼僧「そ、そんなんでしょうか」

老馬人「うむ。……ん?お前さん、少し目を見せてくれぬか?」

尼僧「ど、どうぞ」

グイッ

老馬人「お前さん……邪神に仕えておったのか」

尼僧「そうらしいです。あ、安心してください。もう仕えるつもりはありませんので!」

老馬人「うむ、それはわかる。……しかしそうか。邪神か……」

尼僧「気になりますか?」

老馬人「少し戯言をしようかの。あれはワシがまだ若い頃じゃった…………」


【共存都市、郊外】

片目生徒「たっはー!敵わねぇ!」バタッ

鬼人生徒「ふぅ…ふぅ…一太刀入れるのにこれほど掛かるとは」

片目生徒「どうだ!」

鬼人生徒「強うなったの。うかうかしてられん」

エルフ教師「見事な一撃だった鬼人。惜しかったな片目」

片目生徒「そう言ってもらえれば嬉しいっす」

エルフ教師「さて、批評を言う。立て」

片目生徒「おす……あれ。いたたた」

エルフ教師「どうかしたか?」

片目生徒「いや、気づかなかったけど右足捻ってるみたいです」

エルフ教師「集中していて気付かなかったか、頭に血が上って気付かなかったか。どちらにしても少し幅を見れるようにしないとな」

片目生徒「はは……」


エルフ教師「どれ、見せてみろ」

片目生徒「治してくれるんですか?」

エルフ教師「当たり前だ。治癒魔法は確か160ページくらいに作ってたか……」ペラペラ

片目生徒「」ニヘラ

鬼人生徒「」 ニヨニヨ

エルフ教師「『低級・キュア』」

パァァァ

エルフ教師「どうだ?」

片目生徒「あ、完全に治ってます!」

エルフ教師「そうか。では、批評を行うぞ」

エルフ教師「まず片目からだが、さっき言ったとおり視野に幅を持たせろ。それから、まだまだ魔力と筋力の釣り合いが取れていないな。その辺も頭に入れておけ」

片目生徒「はい!」


エルフ教師「そして鬼人生徒だが、剣は使いづらいか?」

鬼人生徒「ええまあ。小物は慣れませんなぁ」

エルフ教師「そうか。では明日はいろいろと武器を持ってくるか。それと、今日はあと一本しろ。片目は剣、鬼人は素手だ」

片目生徒「えっ!?」

エルフ教師「なぜお前が驚く?有利になったんだぞ?」

片目生徒「いや、そりゃそうかもしれないですけど……」

エルフ教師「フェアではないと?」

片目生徒「はい」

エルフ教師「ふふ、ではやってみるがいい。互いに本気でだぞ」

鬼人生徒「我輩はいつでも良いぞ。素手の方が楽だ」

片目生徒「その言葉、後悔させてやるぜ……!」


エルフ教師「ふむ」

角女生徒「…………」

碧眼生徒「…………」

角女生徒「…………」

碧眼生徒「…………」

角女生徒「…………」

碧眼生徒「…………」

角女生徒「…………ぐぅ」

碧眼生徒「寝てるの!?」

パシーン、パシーン

角女生徒・碧眼生徒「「あう!」」

エルフ教師「ほほぅ?瞑想で寝るとはたいしたものだ。褒めてやろう」

角女生徒「あ、こ、これは不可抗力と申しますか、なんというか!」

碧眼生徒「素直に謝んなさいよ」

角女生徒「ごめんなさい……」シュン


エルフ教師「碧眼、お前も集中力が足りない」

碧眼生徒「はい……」シュン

エルフ教師「魔法の素質は良いのに、些か魔力不足なんだよな。上級一発を撃てるかどうか」

角女生徒「ちなみに、先生は上級をどれくらい使えますか?」

エルフ教師「使うものにもよるが……大体20回くらいか」

碧眼生徒「つまり20の街を破壊できるというわけですね」

エルフ教師「ああ。碧眼なら100万人を氷漬け出来るというわけだ」

碧眼生徒「ひえぇ〜」

角女生徒「でも確か上級魔法は魔力だけじゃなくて体力も大きく消費するんじゃ」

エルフ教師「ほぉ。予習も出来ているみたいだな。その通りだ。だいたい上級5発で体力を全て持っていかれる」

碧眼生徒「魔力は空っぽになっても死にはしませんけど、体力は無くなったら死んでしまいますよね?」

エルフ教師「うむ。だから実際使えるのは多くて4発。実は私でさえ2発でギブしてしまう」

角女生徒「先生でもそんなに大変な魔法なんですね」

エルフ教師「ああ。だが、お前たちには最低でも10発は何食わぬ顔で上級を放てるようになってもらう」

碧眼生徒「10発!?ムリムリムリ!」

エルフ教師「なーに。死ぬほど瞑想すればいいだけだ」

碧眼生徒「だけって!」


角女生徒「女さんは、上級をどれくらい使えるんですか?」

エルフ教師「あいつの場合、どんな魔法でも同じだけの魔力で済むらしい。低級だろうが、上級だろうがな。だから女は魔法の名に階級をつけない」

角女生徒「なるほど〜」

碧眼生徒「そうなると、魔力をあまり使わない魔法を作れるって事ですよね」

エルフ教師「絵空事だ。教えただろう?魔力と魔法効果の比例関係式。あれ以外で魔法を作ろうとすると処理ズレがおこって不発に終わる」

碧眼生徒「でも例えば、魔力と魔法効果を相乗関係にして、魔導書をそれに合うように作ればできるかもしれません」

エルフ教師「……なるほど。面白い事を思いつく。ただ書くだけの紙の方をいじると」

角女生徒「よくそんな事思いつくね」

碧眼生徒「工作とか好きなの」

角女生徒「うーん。私はそこまで得意じゃないから頑張って瞑想しておくよ」

エルフ教師「そうだな。まずはそれが先決だ。魔導書のことは終わってからにしよう」

碧眼生徒「はい」

エルフ教師「じゃあ瞑想3時間始め!」

角女・碧眼生徒「「えぇー!?」」


【ウルフ族の森林】

ウルフ「ぐるるるる……!」

女「犬」

男「いや、狼だからね……」

ウルフ「人間は死に絶えろ!!」

僧侶「どどど、どうしましょう!」

勇者「仕方ない……攻撃して気絶させよう」

女「待って」

男「どうした?」

女「仲間が寄って来てる」

勇者「え…………」

僧侶「あ……すごい数です」

男「…………」

勇者「い、一旦逃げる!!」ダッ

全員「ラジャー!!」ダッ

ウルフたち「待てぇぇぇええええ!!」


【火焔の水辺】

勇者「水が燃えてる」

スライム「ぴぃ」

勇者「いや、スライムだった」

女「この辺に住んでいるのは、炎系のスライム。スライムは魔物。そして、とても美味しい。ジュル」

勇者「夕飯は決定だな」

僧侶「あれをどうやって調理するんですかー」

男「あー。レシピなら持ってるよ」


【砂漠】

勇者「大きい砂漠に出たけど、水はたくさんあるから全く困らなかった!」

僧侶「勇者様!あんなところにピラミッドが!」

勇者「怪しいな……中に入って調べて………」

ガコン

勇者「は…………?」

勇者「あ、あああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……………」↓

僧侶「勇者様ぁぁぁぁ!!?」

僧侶「た、大変です男様、女様!勇者様が穴に落ち…………」

男「あれ?飛べな…………」↓

女「男、今助け…………」↓

僧侶「お、お2人もですかーーーーー!!」

etc…
勇者達の旅は進んでいく。


今日は以上です。
昨日勝手に休んですみません。すっかり忘れてました。

ではまた明日。



【貿易都市、地下格闘技場】

勇者「『拾閃』!」

ズズズバッ

オーク「うぐっ……」

審判「勝負あり!勝者、旅の剣士」

勇者「うっし!」

おぉー!

勇者「大丈夫か?」

オーク「ふ……まさか俺の不敗伝説に泥を塗ってくれるとはな。見事な太刀筋だったぜ」

勇者「ありがとう。そう言ってくれると自信がつく」

オーク「またいつか闘おうぜ」

勇者「ああ!」

剣士、次試合棄権
獲得賞金:金貨10枚と銀貨45枚


僧侶「お疲れ様です勇者様」

勇者「剣士な、祈祷師」

僧侶「そうでした」

男「お疲れー。剣士めっちゃ強くなってるね」

勇者「夜の鍛錬のお陰だな」

男「すごいよね。鋭い斬撃の衝撃波がズバッと。しかも切れ味と数もコントロール出来ようになったし」

勇者「ちょうど10本まで出せるようになったから、『閃』と名付けた」

男「『閃』?」

勇者「数毎にな、『独閃』『双閃』『参閃』『肆閃』と増えていくようにした。さすがに『拾閃』では斬れ味がガタ落ちする」

男「じゃあ当分の目標は『拾閃』で斬れ味を保つことだね」

勇者「ああ。最終目標は男の肌に傷を入れることだが」

男「はっはっは!出来るかな?」

勇者「やってやろうじゃないか!」

僧侶「仲がよろしくて何よりです」


おおぉ!!

男「この一段と高い歓声は……女だな」

勇者「どこまで進んだんだ?」

男「金貨55枚に挑戦して、勝ったみたい」

勇者「55枚!」

男「全部開始10秒で終わるからね。早いんだよ」

勇者「じゃあそろそろ十分か?」

僧侶「えっと、ゆう……剣士様の金貨10枚と女様の55枚、男様の3枚を合わせて68枚。銀貨分も含めれば金貨70枚と言ったところでしょうか」

男「おお、富豪!」

女「ただいま。適度に負けて来た。なんの話?」

男「おかえり。今の金貨の枚数の話」

女「100枚くらい?」

男「70枚。勇者が10枚、女が55枚、俺が3枚くらい」


女「どうして男少ないの?」

男「あー、いやぁ……あはは」

僧侶「男様は5回目で女性と当たってしまい、棄権なさったんです」

女「……」ジーッ

男「母の薬代のためとか言われたらさ……なんか、こう」

勇者「格闘技場ではよくある嘘だな」

男「え、嘘なの!?」

女「相手の情けを誘って、賞金を荒稼ぎ」

男「め、面目ない……」

僧侶「まあですが、女様が多く稼ぎましたので当面の資金には困らないでしょう。それに、男様がなさったことは決して無駄ではないですよ」ニコッ

男「そうだといいな」

勇者「さて、宿を探すか」

「ちょいと待ちねぃ」


勇者「オバサン誰ですか?」

「オ、オバ……!?失礼ね。うちはこれでも350をちっと超えたばかりよ」

勇者「は、はぁ。それで、誰ですか?」

「おっとすまないね。うちはここの支配人さぁ」

女「鬼人族。角は?」

支配人「よくうちが鬼人族だってわかったね。角はシニヨンに隠してる。ほれ」

男「ほんとだ」

僧侶「それで、その支配人さんが私たちに何のご用事でしょうか?」

支配人「ふふん。久々に格闘技場を引っ掻き回したお前たちを鬼の里に招待しようと思って」

勇者「鬼の里?どうして?」

支配人「鬼人族は強いやつが大好きなのさぁ。それが転じて格闘技場経営してるのさぁ」

男「でも我々は既に全員負けてますよ?」

支配人「ほっほっほ。目的あって切り上げたとしか見えなかったんだがねぃ」

勇者「折角だが、誘いは断る。わかるだろ?僕たちには目的がある」

支配人「ほぅ、どんなんだい?場合によっちゃ手伝ってもあげるぞ?」

勇者「すまないが言えない。では、世話になった」


支配人「…………おい」

黒服「ヘイ」シュタッ

忍「はっ」シュタッ

勇者「!!」

支配人「やれっ!」

黒服「ふっ!」

勇者「くっ……」

ガキンッ

僧侶「剣士様!」

忍「余所見をするな」シュン

男「危ない!」

ギチッ

忍「クナイを素肌で受け止めただと!?」


男「女、結界で祈祷師さんを守れ!」

女「わかった。《バリア》」

忍「忍法『火炎玉』!」

ゴウッ

男「効かない!」

忍「なにっ!?」

男「オラァッ!!」

バキッ

忍「ぐっ……」


勇者「『参閃』!」

ザザザッ

黒服「ぐわぁ!」

勇者「祈祷師、縛りを!」

僧侶「はい!神よ、この者たちに傷害の裁きを!」

ズンッ

黒服「ぐぅ!」

忍「くっ!」


勇者「もうこいつらは祈祷師の合図があるまで動けない。……さて、どういうつもりだ、支配人?」

支配人「………ほっほっほ。やはりうちの目に狂いは無かった」

勇者「どういう事だ?」

支配人「そやつら、金貨100枚の闘技者よ」

僧侶「……あ、本当です。リストに載ってます」

支配人「急に仕掛けた事は謝罪する。すまなかったねぃ。だけどそのお陰でお前さんたちの本当の実力を知る事が出来た」

男「知ってどうするつもり?」

支配人「折り入って頼みがあるのさぁ。鬼人族の威信に関わる事さね」

勇者「………話を聞こう」

支配人「ありがとよ。ああ、そうだ。ほら、受け取りな」ポイッ

勇者「これは……金貨?げ、多!?」

支配人「金貨200枚。そいつらを倒した賞金だよ」


-馬車-

支配人「鬼の里はちょうど魔界の中央に位置しておるが、他の魔族との交流は少ない。強いものは積極的に呼ぶけどねぇ」

勇者「それで、鬼人族の威信に関わる事って言うのは?」

支配人「あんな、鬼人族は代々魔王の軍を取りまとめる、いわゆる将軍の地位をしている」

女「将軍。最も強い」

支配人「義理堅い鬼人族の性格も買われている。……が」

支配人「今代の体調が悪くなってさぁ、跡継ぎを選んでるんだよ。で、その候補の将軍のドラ息子がなぁ……」

男「どうしたの?」

支配人「家出しちまって、どっかに行っちまったのさぁ」

男「まさか……ね」

支配人「しかも後継者争いが4日後と来たもんだ。どうしようもなくなっちまったのさぁ」

僧侶「あなた方はその息子さんを推しているということなんですね」

支配人「ああ。あん鬼以外将軍は考えられないんよ」


男「ちなみに、どんな鬼?」

支配人「性格は冷静沈着、頭がキレて残忍非道。だが、仲間には義理堅いやつだよ」

勇者「なぁ男、鬼人生徒ってそんな性格だった?」ボソボソ

男「いや、全く。違う鬼っぽいね」ボソボソ

勇者「ヒョウタンの事言わない方がいいかな?」ボソボソ

男「うん」ボソボソ

支配人「何をこそこそ話しとる?」

勇者「あ、いや、昼飯食ってなかったなって」

支配人「鬼の里でたらふく用意してある。今少しがまんしてくいろ」

勇者「わかった。ありがとう」

支配人「それでな、あんた達に頼みなんだが、代わりに後継者争いに出てくれんかという事さぁ」

男「え、えぇー……」


勇者「あり得ないだろ。だいたいすぐにバレる」

支配人「あいやその心配は不要。後継者争いというのは候補者とその取り巻きで行われる。つまり取り巻きが候補者を倒してもなんら問題ない」

支配人「人数は5。こちらで用意した影武者に4人の取り巻き。その4人をして欲しい」

勇者「鬼人族に他に強い奴はいないのか?」

支配人「取り巻きは他族と決まっている。他族に義理堅さを誇示するためさぁ」

勇者「なるほど」

支配人「それで、あんた達は何族だい?」

勇者「えっ!?」

女「私はエルフ族、男が竜族の人型固定者。剣士は巨人族の低身長の障害持ち。祈祷師は牛魔族」

支配人「ほほぅ。個性的だねぇ」

勇者「よくもまあペラペラとそんな事言えるもんだ」ボソボソ

女「生きる知恵」ボソボソ

僧侶「なんで私は牛なんですかー!」ボソボソ

女「蓄えたその2つの脂肪に聞くといい」ボソボソ

男「事情はわかった。けれど参加するか否かは少し考えさせて」

支配人「無論だ。……さぁ里に着いた。存分にもてなすさぁ!」


本日は以上です。
ではまた明日。

乙でした

そう言えば小さなヒョウタンはどうなった?
あれは酒を作るヒョウタンなのか?

>>190
ネタバレすると、しばらく使いません……


【鬼の里、屋敷】

勇者「うげぇぇぇぇ」ゲロゲロゲロゲロ

男「調子に乗って飲み比べとかするから」

勇者「ふ、普通も酒なら呑めるのに。なんだよショウチュウって。喉が熱……おえぇぇぇ」ゲロゲロゲロゲロ

僧侶「ゆ、勇者様タオルです!」

勇者「うぅ……僧侶〜」

僧侶「はっ!か、かわいい……!」///

女「うぅ……男〜」

男「どうした?」

女「…………」

男「女?」

女「」プイッ

男「えっ!?俺何かした?」


ガチャ

黒服「失礼する」

男「黒服さん」

黒服「遅くなったが、それぞれ部屋が準備出来た。案内する」

僧侶「申し訳ありませんが、私は剣士様を看るためにここにとどまります」

黒服「左様ですか。では男様と女様は」

女「私は、男と同じ部屋」

男「ん〜。折角だけど、この部屋にいるよ。ごめんね」

黒服「はっ。支配人様にはそう申し上げておきます。では良い夢を」

パタン


男「で、どうしよっか」

僧侶「後継者争いですよね。言うならば人生がかかっている戦い。無闇に首を突っ込む訳にもいかないかと」

女「でも、魔王へのつながりを作る事ができる」

男「それが大っきいんだよなあ」

勇者「う……た、例えば後継者争いで負けるとする。どうなると思う?」

男「…………なるほど。義理堅いのは将軍であって、負けたものは義理を通す必要はない、か」

女「死」

僧侶「…………」

勇者「おえっぷ。で……だ。不干渉といきたいが、今回は首を突っ込もうと思う」

男「なぜ?」

勇者「魔王に近づけるってのと、実力を試すという事で」

男「そんな不順な動機でいいのかなあ……」

勇者「いろんな族のツワモノが集まるんだろ?いい機会だと思う」


僧侶「勇者様は酔っていらっしゃるので、明日冷静に考えた方が」

勇者「いや、酔ってるからこそ大胆に発言する。これで僕らが負ける事があれば、この旅は中止だ」

3人「!!」

勇者「いいか?戦いによって軍のリーダーが変わるということは、負けた者は反発意識を持つということだ」

勇者「例えば、最後の候補者と僅差で勝ったとする。そしたら、負けた方は、もう少しで勝てたかも……という強い反発意識を持つ。それが、謀反。リーダーというのは弱い部分を絶対に見せちゃダメなんだよ」

勇者「僅差であればあるほど、軍は荒れる」

勇者「軍が荒れれば、魔界全土で混乱が訪れる」

勇者「さらに魔界が混乱したとなれば、人間の軍が攻め入りやすくなる」

勇者「そんなことで僕たちの旅の目的を果たせるか?否だ」

勇者「だから、負けてはならない。その上、徹底的に他の候補者を倒しにかかる。…………いいか?」


男「…………殺すの?」

勇者「いや。ギリギリで止める。それも恩を売る行為になるから反発を防ぐ効果があるはず」

男「わかった。リーダーに従う」

女「同じく」

僧侶「勇者様の為に」

勇者「な、何だよ。今まで僕をリーダーなんて呼んだことなかったくせに」

男「いや〜、今のリーダーぽかったなぁって」

女「いよ、リーダー」

僧侶「リーダー様!」

勇者「ああもう!……うぐぅ!おえぇぇぇぇぇ」ゲロゲロゲロゲロ

僧侶「勇者様ーーー!!」


-翌日-

支配人「そうか!受けてくれるんか!」

勇者「ああ。それで後継者争いってのはどうやるんだ?」

支配人「2組ずつ行う。その他の規定は無い。ただ、大将が倒されれば終わりさぁ」

勇者「倒した基準は?」

支配人「死か降参か」

勇者「わかった」

支配人「3日間は自由にしておいてくんな。金は必要分申し付けてくれりゃあいい」

勇者「いや、金貨は貰った分があるからいい」

支配人「見事に終わった暁には、旅の手伝いと望む分だけの金貨を差し上げる」

勇者「そうだな。よろしく頼む」

支配人「しかし負ければ、全員のいの……」

勇者「ケジメとして僕の右手の小指を差し出す」

支配人「…………ほっほっほ、よいだろう。気付いておったか」

勇者「あんたたちは、"そういう"奴らだろ?」

支配人「そうだぞ。ちなみに他の候補も"そういう"トコロの坊ちゃんだったりする」

勇者「心得た」

支配人「よろしく頼んだぞ!」


【部屋】

男「どうする?」

勇者「温存すべきは女の魔法かと思う。上級レベルを何発も撃たれれば相手も降参するだろ」

女「任せて」

男「それまでは俺と勇者で畳み掛ける、と」

勇者「僧侶は主に僕の魔翌力の回復。あとは、大将に指示させる振りをさせて」

僧侶「了解しました」

勇者「例年通りだと、僕たちの実力でも十分足る。だけど油断はしないこと」

全員「はい」

勇者「じゃあ4日後まで解散」


女「男、デートしよう」

男「あはは、久しぶりだな。どこか行きたい?」

女「一緒に歩きたい」

男「じゃあテキトーにぶらぶらしてよっか」

女「うん」

僧侶「」ジーッ

勇者「何やってんだ僧侶?」

僧侶「はぁ……いずれ私も」

勇者「悩み事か?」

僧侶「いえ、そうではなく。これから何をしようかと考えているのです」

勇者「僕は鍛錬だな。あぁ、その前に剣を打ち直してもらわないとな。いつのまにか剣も防具もボロボロだ」

僧侶「でしたら、お供しますわ!」

勇者「いいのか?」

僧侶「はい!」グッ


【鬼の里、鍛冶屋】

鍛治職人「こいつはもうダメだ」

勇者「ダメ?」

鍛治職人「ああ。どんな使い方したらこうなるか知らんがな、外だけじゃなくて内部にもビッシリ亀裂が入ってる。普通先端と中腹から壊れていくんだが……」

バキッ  バキッ

鍛治職人「この通り、どっからでも折れちまう」

勇者「ななな……僕の刀が」

僧侶「いとも簡単に」

鍛治職人「何か思い入れがあったのか?」

勇者「……いや支給物だ。特にない」


鍛治職人「ほれ」

勇者「くれるのか?」

鍛治職人「違う。新しい奴を作ってやる。お前の型を見たいからそいつを本気で振ってみろ」

勇者「本気か」

僧侶「魔力を満タンにいたしましょうか?」

勇者「ああ、頼む」

パァァァ

勇者「あれだ。本気で振るから、何か壊れても知らんぞ」

鍛治職人「そんな力持ってるなら、俺の方から打たせてくれと頼むな」

勇者「行くぞ……」

勇者「『独閃』っ!!」

ザパッッ

シーン

僧侶「何も、壊れませんでしたね剣士様」


勇者「…………ゼェ、ゼェ!」

僧侶「剣士様!?」

勇者「何だ、い、今の感じ……」

鍛治職人「お、お前……その技誰に教えてもらった!?」

勇者「仲間のアドバイスを元に、自分で作った」

鍛治職人「そいつは『竜殺しの一閃』だ。刃物の効かない竜を斬ることのできる唯一の技。あまりにも鋭いから、斬られた物は刺激を与えるまで、ピッタリとくっ付いたままになる。こんな感じにな」トン

コロン

僧侶「ビンが真っ二つに……!」

鍛治職人「それに、貸した剣ももうダメだ」

勇者「え?」

ボロッ…

鍛治職人「普通の剣じゃその技は撃てない。……3日後に来い。お前にぴったりの刀を作ってやる」

勇者「本当か!」

鍛治職人「ああ。早速作るから出て行きな。作業の邪魔だ」

勇者「ああ。ありがとう!」

僧侶「ありがとうございます」

バタン


鍛治職人「へっへ。そうか……名は違えど『竜殺しの一閃』を使える奴がいるとはなぁ。嬉しいなぁ……」

鍛治職人「つーことはよぉ、近いうちに波乱が起こるってことか」

鍛治職人「ふ、いいさ。これで俺の生命最後の業物を作ってやる。命は惜しくねぇ」

鍛治職人「じゃ、いっちょ作り上げるかな!」

鍛治職人「せーの……!」

ザンッ


【鬼の里、衣服店】

女「これは?」

男「かわいい!」

女「これ」

男「いいね!」

女「こんなのも」

男「さいこー!!」

衣服店員「(なんだこいつら……)」

男「すみません。これ全部ください」

衣服店員「あ、はい。えっと……金貨5枚と銀貨27枚になります」

男「金貨6枚から。お釣りは取っといて」

衣服店員「あざーっす!」


男「ところで、この辺に風俗に関するところあるらしいけど、知らない?」

衣服店員「ふ、風俗っすか?」

男「そう。民族伝統とかのね」

衣服店員「あ、そっち」

男「他に何がある?」ニヤニヤ

衣服店員「い、意地悪っすね。……まぁそういうのなら、その通りの横の通りの突き当たりにボロっちい館があるんで、そこ行けばいいかと」

男「ありがとう。そこね。行ってみる」

女「巫女服」

男「あ、これも追加で」


【伝統文化館】

コトッ コトッ

鬼婦人「それではごゆっくりどうぞ」

キィ パタン

老鬼人「緑茶です。おあがり」

男「いただきます」

女「いただきます」

ズズッ

男「んー、やっぱり苦い!」

女「」プルプル

老鬼人「ふふ、時は経っても慣れませんか」

男「昔より苦くはないけどね」

女「砂糖欲しい……」

老鬼人「緑茶に砂糖は厳禁です。……それにしても成長しましたね」


男「ええ。老鬼人さんもお元気そうで何よりです」

老鬼人「死に損ないですけれど」

男「生きてれば良いことありますって」

老鬼人「ふふ。10年になりますね」

女「あなたには感謝している」

老鬼人「そう言ってもらえれば嬉しい限りです」

男「今俺たちは勇者一行として旅をしています」

老鬼人「勇者一行……」

男「魔王を倒すためではないですよ?」

老鬼人「そうですか。よかった」

男「それで、魔王に会いに行くためにはまだまだ俺たちは力不足です」

老鬼人「それで私を頼ったと」


男「ええ。老鬼人さんもお元気そうで何よりです」

老鬼人「死に損ないですけれど」

男「生きてれば良いことありますって」

老鬼人「ふふ。10年になりますね」

女「あなたには感謝している」

老鬼人「そう言ってもらえれば嬉しい限りです」

男「今俺たちは勇者一行として旅をしています」

老鬼人「勇者一行……」

男「魔王を倒すためではないですよ?」

老鬼人「そうですか。よかった」

男「それで、魔王に会いに行くためにはまだまだ俺たちは力不足です」

老鬼人「それで私を頼ったと」


女「そう。約束通り今まで言霊を使わなかった」

老鬼人「そうですか……!でしたら私も約束を守らなくてはなりませんね」

女「ある?」

老鬼人「ええ。ここにある本、全てです」

男「こんなに!?」

老鬼人「老いゆくだけの私が若い方達にできることはこれくらいですので」

女「どれから、読もう」

老鬼人「古い時代から読んでいけばよろしいかと」

女「解説、頼める?」

老鬼人「私でよければ」

男「よかったな、女」

女「うん」

老鬼人「では話しますよ」


本日は以上です。
まだまだ長いかもしれません。読んでくださっている方はありがとうございます。

ではまた明日。

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