P「アタックNo.765!」 (107)

アイマスキャラがバレーボールの練習をしたり試合をしたりするSS(予定)です


・テニヌや超次元サッカー的な必殺技は出ませんが
 知識不足や描写の不備から実際にはありえないプレーや練習もあるかもしれません

・765プロオールスターズはトップアイドルですが、美希は金髪です

・ジュピターはなんだかんだで961プロ所属のまま

・モバマス勢はたくさん出す予定です。グリマス勢は出ません

・876勢も出したい。こだまプロも出したい。東豪寺プロはなんとかして出す



以上についてご理解いただけましたら、お付き合いいただけると幸いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377901607

P「たっだいまァッ!」バーン

律子「うひゃあっ!? どうしたんですかそんな勢いよく……」

P「仕事が取れたんですよ、仕事!」

律子「仕事って……うちはもう断り入れないといけないくらいにあちこちから仕事が回ってくる状況だって言うのに」

P「ところで、律子の他には誰もいないのか?」

律子「アイドルたちはみんな仕事で、社長は相変わらずどこで何やってるのか分かりませんし、
    小鳥さんは備品買いに行ったっきりかれこれ1時間帰ってきてません」

P「小鳥さんもいないのか……。できればすぐに話をしておきたかったんだが」

律子「それで、765オールスターズを揃ってトップアイドルに仕立て上げた凄腕プロデューサー殿が自らの足で取ってきたのですから」

律子「さぞかし大きなお仕事なんでしょうね?」メガネクイッ

P「見て驚くなよ。これだっ!」ドンッ

律子「なになに……『アイドルプロダクション対抗女子バレーボール大会』?」

律子「なんですかこれは?」

P「ああ、なんでも2014年の世界選手権、15年のワールドカップを見据えて今年はバレーボール協会が広報活動に気合いを入れてるらしくてな」

律子「その一環としてアイドルプロダクション対抗でバレーボール大会を開くことになったってわけですか」

P「俺や他の事務所のプロデューサーで協会に打診して、ようやく開催の流れにこぎつけたってわけだ」フフーン

律子「プロデューサーが直々に打診、ねえ……」

P「ん、どうした?」

律子「いえ、なんでも」

P「とにかく、大会までは3ヶ月ある。その間みっちり練習して俺達のバレーボールを作り上げるぞ!」

律子「えっ」

P「えっ」

律子「ガチでいくんですか?」

P「当たり前だろう、何を言っているんだ」

律子「てっきり『ドキッ! アイドルだらけの水泳大会』とかそういう感じのノリなのかとばかり」

P「主催がバレーボール協会だからな」

P「今大会の目的はあくまで、バレーボールというスポーツの面白さや奥深さを知ってもらうってことだ」

律子「肝心のアイドル達がなあなあでプレーして、観客に単なるアイドルのお遊びの場だと思われたら元も子もない、と」

P「渾身のライブを企画して開催したらお遊戯会になりました……じゃ、大失敗もいいところだろう? そういうことだ」

律子「とはいえ、本気で取り組むとは言っても、練習時間とか練習場所とかどうするんです?」

P「近場に10時まで開いてる体育館を見つけたから場所に関しては心配ない」

律子「無駄なところで準備がいいですね」

P「時間についてもある程度融通きくようにスケジュール組んであるし」

P「各媒体のディレクターさん方とも話をまとめてきた」

P「それでも全員そろって練習……というのはさすがになかなか難しいがな」

律子「仕事を減らすってことですか? たしかに最近は全員オーバーワーク気味でしたが……」

P「それに見合うだけのメリットもあると踏んでいるぞ」

律子「たとえば?」

P「まず一番でかいのがスポーツ業界へのアピールだな」

律子「まあ、当然それは第一に来ますか」

P「大会内容は全国放送されるし、スポーツ関係の大御所さんも大勢いらっしゃる予定だ」

P「運動の分野で活躍できるのは真や響だけじゃないってことを広くアピールする絶好の機会ってわけだ」

P「特に、運動神経自体は申し分ない千早や亜美真美に『スポーツにも強い』っていうイメージを持ってもらえれば、無理なく活躍の裾野を広げられる」

律子「千早はスポーツ大会の国家斉唱もやりたがっていましたしね」

P「次に、単純にチームスポーツを通して全体を見る視野を培うっていう狙いだ」


P「味方・相手両方の動きや攻撃カード、試合の流れ、得点差、誰の調子がいいのか悪いのか――――――」

P「バレーボールはそういった材料から常に瞬時の状況を判断し、『ならば自分はこう動く』という思考を強化するには絶好のスポーツだ」

律子「たしかに……うちのアイドルたちは個人技に関しては申し分ないですが、そういう立ち回りに関しては不足がやや目立ちますね」

律子「トークショーやバラエティでもまだまだ先達にフォローを入れてもらわなければいけない場面が多いですし」

律子「なにより現状だと伊織の負担が大きすぎる」

P「律子も、だな。本当、毎度苦労をかける……」

律子「それが私の仕事ですから」フンス

P「フェアリーも響がその辺りをうまく調整してくれているな」

P「もう少し美希にも周りを見る目があればいいんだが」

律子「美希は『まわりを使って自分を輝かせる』っていう点に関してはずば抜けてるんですけれどね」

律子「よく言えばスター気質、悪く言えば協調すべき場面でも突出しすぎるといいますか」

P「それはそれで誰より優れたあいつの長所なんだがな……」

律子「全体を見る視野とまでいかなくても、自分の役割と周囲の動きとのバランス感覚を掴んでくれれば大きな武器になりそうですね」

P「美希もそうだが、やよいも特にだな。あの子は周りを見ようとするあまり自分のパフォーマンスを出しきれなくなる」

律子「まだまだ自分のことで精いっぱいになってしまう雪歩や、度を越して大暴走しがちな亜美に真美あたりもでしょうか」

P「最後に、月並みだがチームワークの強化だ」


P「もちろん全員仲が悪いってわけではない……と思うんだが、最近は仲のいい同士が少しずつ固着化してきているからな」

律子「ユニットや固定メンバーでの活動が増えてますからね」

律子「はるちは、ゆきまこ、ひびたか辺りは特に顕著ですよ」

P「……律子、そういう略し方はどこで覚えたんだ?」

律子「小鳥さんが言ってたんですよ。二人や三人をまとめて考える時には意外と便利でして」

P(あとで小鳥さんにはキツく言っておこう)

P「……まあ、それを一度崩して全体のチームワークの強化を図れれば……ってわけだ」

P「普段関わりの薄い者同士のコミュニケーションが充実すれば、新ユニットへの化学反応も期待できるかもしれない」

律子「可能性はどんどん開拓していくにこしたことはありませんね」

律子「あずささんも最近は竜宮小町以外のメンバーと関わる機会があんまりないって嘆いてましたから」

P「……とまあ、この大会に全力で打ち込むことで、ぱっと思いつくだけでもこれだけの利点が見込める」

P「もちろん一時的に仕事は減るが、最近は出番が増えてゴリ押しと言われることも多くなってきたから、その調整の意味合いもあるな」

P「無論、他のプロダクションとの競争で互いを刺激し合ったり、ファンを活性化させる起爆剤になればとも思っている」

P「せっかく普段できないことを全員でやれるチャンスが巡ってきたんだ」

P「できる限り全力で挑んで、活かせるものは全て活かしたい」

律子「なるほど……よくわかりました」









律子「で、本音は?」

P「弾ける汗! チラリと見えるお腹! ノースリーブからこぼれる腋!

  そして何より 揺 れ る お っ ぱ い」

律子「よーしそこに直れ貴様」

律子「よくもまあこんだけの理論武装をしたもんだよ」

P「いえ違うんです先程ご紹介させていただいたメリットに関しては本当にそのように思っているんです」

律子「とかなんとかいっても結局『ドキッ! アイドルだらけの水泳大会』のノリじゃないですか」

P「馬鹿いえ、そこまで露骨じゃないぞ。あくまで真剣勝負だ」

律子「下心ある時点でアウトだよ」

P「最初はそっちの予定で話を進めていたんだが」

律子「おいやめろ馬鹿」

P「しかし、俺たちは気がついたんだ」

P「ネットが普及し、見たいものは自分で見られるようになった今」

P「真に求められているのはそういった意図もアソコも丸見えなエロスではないのだと!」

律子「最悪だよアンタ」

P「そう、たとえば駅の階段でスカートの下からチラリとのぞく純白おパンツのような……」

P「エロスとは縁遠い場面の中にふっと垣間見える、想像力を全力で掻き立てるような、そんな色気こそが必要なのだと!」

律子「そのゴミみたいな発想がなんだかんだで仕事に役立ってるっていうのが腹立たしいですよね」

P「……今日の律子はいつにもましてトゲがないか?」

律子「別に、そんなことはありませんよ」

律子「私だって竜宮小町のプロデューサーなのに、大会の企画立案に呼ばれなかったのが悔しかったとか」

律子「そんなことは一切考えてませんから」

P「……拗ねてる?」

律子「拗ねてませんよーだ」ツーン

P(かわいい)

P「すまない……その分律子にはコートの上で頑張ってもらうことになると思うから」

律子「え、ちょっと待って私も出るんですか?」

P「出ないの?」

律子「てっきり私はコーチとかマネージャーとかそういう役割になるとばかり」

P「それはそれでおいしいけれど、馬鹿なことを言うな」

P「ファンや表方視点からは普段なかなか見えづらい『歌って踊れる司令塔<<コントロール・タワー>>』としての秋月律子を、
  リアルタイムなゲームメイクを通して表現していける絶好のチャンスだぞ」

律子「本音は?」

P「揺 れ る り っ ぱ い」

律子「滅 殺 ッ !!!」スパーン!

P「ナイススパイクです!!!」

P「……冗談はさておいてメタな話をすると、スタメン6人に控え6人、リベロ2人で合計14人必要なんだから出てくれないと困る」ヒリヒリ

律子「ぐっ……765プロの人手不足がこんな形で足を引っ張るとは……」

P「問題はこれなんだよなぁ……。全員がやる気になってくれないと出場すらできん」

律子「そこはまあ問題ないでしょう。彼女たちももうプロなんですから」

P「じゃあプロであるりっちゃんも当然出てくれるんですよね!」

律子「言わされた感がありますけれど……まあいいですよ」

律子「さっきおっしゃってたメリットに関しては大いに同意しますし」

P「おっぱい?」

律子「(ニッコリ)」

P「すみませんでした」

律子「ところで、つかぬことをお聞きしますが」

P「なんでしょうか」

律子「14人ってことは765プロのアイドルを総動員してもまだ足りない気がするんですが……」

P「当然、その点についても考えがある」

律子「まさか」



ガチャ

小鳥「ただいま帰りましたー。日差しが強くてやんなっちゃうわー……」

P「あ、小鳥さんちょうどいい所に。ちょっとお話が」

律子「小鳥さん逃げてえええええええええ!!」



P「――――――というわけで、3ヶ月後のアイプロ対抗のバレーボール大会に参加する運びになったわけだ」

春香「バレーボールですよ、バレーボール!」

雪歩「あ、足を引っ張らないように頑張りますぅ……」

美希「ハニー! ミキね、ミキね、バシって打つ役がやりたいの!」

亜美「あー、ミキミキずるい! それは亜美のヤクワリっしょ!」

P「おいおい、ポジション決めはまだ気が早すぎるぞ」

P「……しかし、みんな意外とすんなり聞き入れてくれたな。一人でも欠けたらアウトだから内心おっかなびっくりだったんだが」

伊織「まったく……私たちはもうプロなのよ? 私情で仕事の選り好みなんてしないわ」

律子「さて、ここでプロデューサー殿の本心を暴露しましょうか」

P「やめてください死んでしまいます」

P「参考までに、バレーボールの経験があるってやつは手を挙げてくれ」

響「はいはいはーい!」バッ

P「お、響は経験者か」

響「小学校と中学校の頃は、卓球部のとなりで男子のバレー部が練習やってたから」

響「練習終わって器具片付ける前に『そっちで遊ぼうぜー』みたいなことよくやってたんだ」

雪歩「ふふ、なんだかいいね、そういうの」

響「部活終わるころには門限過ぎてたし、帰っても他に娯楽があるわけでもなかったからな。部活ある日の一番の楽しみだったんだ」

響「もちろん、自分もバレー部の連中にみっちり卓球を仕込んでやったさー」

美希「ミキも一緒に温泉行った時に教えてもらったけど、あれは鬼のしごきなの……」

響「結構本気でやってたから、レシーブとかスパイクとか一通りできるぞ!」

P「そいつは頼もしい」

響「でも、なんでか自分がスパイク打つ時だけみんなブロック飛ばずにボーっと見てるだけだったんだよなぁ……」

春香(きっとその頃から揺れてたんだろうなあ)

千早「部活繋がり程度でいいなら」スッ

春香「あれ、千早ちゃんも? 合唱部だったよね?」

千早「ええ。うちは運動部が多くて体育館をローテーションで使っていたから」

千早「バレー部がローテを外れた日には、音楽室で合同で筋トレをしていたの」

真美「合唱部って意外とガチムチ系の部活なんだね……」

千早「発声の支えになる腹斜筋がバレーではサーブやスパイクで体をひねる動作に使われるから、トレーニングに共通する部分があったのよ」

亜美「服シャキンって何?」

真美「アイロンかけたシャツとかそんな感じじゃないかな」

律子「腹筋、というか腹直筋から肋骨にむかって斜めに伸びてる筋肉のことよ」

美希「でも、筋トレだけじゃなくて実際にバレーもやったんだよね?」

伊織「昔の千早っていえば『歌以外に興味ありません』みたいな感じだったのに、よくやる気になったわね」

千早「えっと……、当時の先生に『トレーニングの効果を体感してもらう』っていうことで」

千早「筋トレ前と筋トレを一か月続けた後にスパイク練習に参加させられたの」

千早「そうしたら、結構目に見えて威力が変わってて」

千早「それで……その、意外と、楽しくて……」

千早「……///」

春香(かわいい)

P(当時の千早をその気にさせた先生マジぱねぇ)

真(きっとそれって筋トレの効果ってより、単に慣れてフォームがしっかりしたからだよね)

伊織(そのツッコミはしない方がいいわ)

真「体育の授業でやってるってのもありですか?」

P「お、真はバレー選択なのか」

真「へへっ、これでも体育ではちょっとしたヒーローなんだから!」

伊織「ヒロインにはなれないってのがアンタらしいわね」

春香「真が女子と一緒にプレーするってのがもう反則スレスレだよね」

真「ちょっと黙ろうかそこの二人」

あずさ「私も一応大学の体育はバレーボールでした~。恥ずかしながら、あんまり上達はしませんでしたけれど……」

P(一緒に専攻した男性諸君はさぞかし目の毒だったことだろう)

雪歩「私は体育の選択は創作ダンス取っちゃったなあ……」

亜美「亜美たちまだマッドウンドーしかやってないや」

P「経験者は4人いるわけか。頼もしい限りだ」

律子「練習する上でも経験者の存在は貴重ですね」

P「ところで……」

川゚ -゚)ζ*'ヮ')ζ ?

P「そこの二人はどうしたんだ?」

貴音「ばれぇぼぉるとはどのような競技なのでしょうか」

やよい「3回ボールにさわったらダメなんでしたっけ?」

P「そこからか……」

美希「ボールを相手にぶつけて全滅させたら勝ちなんだよ」

貴音「なんと」

P「それはドッジボールだ」

律子「……最初はルールの確認から始めたほうがよさそうですね――――――」

P「――――――簡単にいえば、バレーボールはボールを落とさないように弾き上げ続けるスポーツだ」

              ↓サイドライン
  ┌─────┐  ←エンドライン
  │          │
  │          │
  │          │
  ├─────┤
  │          │
─┼─────┼─  ←ネット
  │          │
  ├─────┤
  │          │
  │          │
  │          │
  └─────┘

P「まず、こういうラインに囲まれたコートに、ネットを挟んで1チームあたり6人ずつ入る」

P「そうしたら、片方のチームの1人がコートの外、エンドラインの後ろからボールを手で打って、ネットの上を越えて相手コートに入れるんだ」

貴音「さぁぶ、というものですね」

P「サーブは知ってるのか」

響「貴音にも卓球教えたからな」

P「あとは、そのボールを自分のコートの地面に落とさないように、もっと言えば相手のコートに落とすように互いにボールを打ち合うんだ」

P「相手のコートでボールが地面についたらこっちの得点になる。これを繰り返して、決められた得点を相手より先に取りきれば勝ちっていうスポーツだな」

貴音「足以外の箇所を使える蹴まり……と考えればよろしいでしょうか」

P「まあそんな感じだな。『相手にボールを落とさせれば勝ち』っていうスポーツだから蹴鞠とはちょっと違うが」


やよい「でも、ボールを持ったらダメなんですよね!」

P「お、よく知ってるな」ナデナデ

やよい「えへへー」

P「でも、やよいにも一つだけ訂正な。3回触ったらアウトなんじゃなくて、自分たちのチームだけで3回まで連続でボールに触れるんだ」

真「つまり4回目を触っちゃったらアウトってこと」

やよい「はわっ! そうだったんですか~」

千早「ちなみに、一人が連続でボールに触るのは3回どころか2回連続でもアウトなのよ」

貴音「相手のこぉとにぼぉるを落とす……というのは理解しましたが、こぉとの外側にぼぉるが落ちてしまった場合はどうなるのでしょう」

P「その時は、どっち側のアウトゾーンに落ちたかにかかわらず、『最後にボールに触らなかった方』のチームに点が入る」

P「まあ最初は、


  ・相手チームのコート内にボールが落ちたらこちらの得点になる

  ・自分のチームの誰かが最後に触れたボールがコートの外に落ちたら相手の得点になる

  ・基本的に自分チームのメンバーだけで4回以上連続でボールに触ってはいけない(3回以内に相手に返さなければいけない)

  ・基本的に一人が2回以上連続でボールに触ってはいけない

  ・基本的に相手コート内に入ったり、相手コート内でボールに触ったりしてはいけない

  ・ボールを持ってはいけない

  ・先に25点取った方が1セットを取り、決められたセット数を先に取った方が勝ち

  ・ほかにも決まりごとや反則がいっぱいある


  このくらい覚えてくれればいいだろう」

律子「あとは練習の中で分からない部分があったらその都度説明していくわ」

伊織「基本的に……って付いてるところは、例外があるって考えてもいいのかしら?」

P「さすが伊織、鋭いな。そのあたりも必要があれば説明していくよ」

貴音「ところで、こおとの内側のねっとにほど近いところにもう一本白線があるのですが、これは何なのでしょう?」

              ↓サイドライン
  ┌─────┐  ←エンドライン
  │          │
  │          │
  │          │
  ├─────┤    ←これ
  │          │
─┼─────┼─  ←ネット
  │          │
  ├─────┤
  │          │
  │          │
  │          │
  └─────┘

響「それは、『アタックライン』ってやつだな」

貴音「あたっくらいん?」

千早「バレーボールは前衛3人と後衛3人に分かれてプレーするのだけれど」

千早「後衛になった人はアタックラインよりもネットに近い位置でジャンプして攻撃や防御をしてはいけないのよ」

貴音「ふむ……」

P「それができちゃうと『6人全員でブロックに飛ぶ』とかいうお大尽戦法もできてしまうからな」



P「他になにか質問はあるか?」

亜美「そういえばさー、さっきひびきんや千早おねーちゃんが言ってたスパイクってなんなの?」

P「バレーを一度でも見たことがあるなら分かると思うが、ジャンプしてネットの上からバシーン! と相手のコートにボールを叩きつける攻撃のことだ」

亜美「なーんだアタックのことかー。てっきり蹴ると痛そうなトゲトゲ靴のことかと」

伊織「そんなもん履いてたらコートが穴だらけになっちゃうじゃないの」

P「亜美はアタックって教わってたのか。悪かった」

P「他にも色々紛らわしい用語や分からない用語がでると思うが、その時は各自質問してくれ」

雪歩「同じ意味なのに違う言葉があったりするから難しいんだよね」

真「オーバーネットがペネトレーションフォールトって呼ばれてた時は何が起こったのかと思ったよ」

貴音「おぉばあねっと?」

やよい「ぺねと、れーしょん……えっと……」

P「まあその辺もおいおい教えるよ」


P「さて、最後にもう一度言うが、今回の大会は手加減無しの真剣勝負だ」

律子「テレビ的な事を考える必要はないし、」

美希「空気も読まなくていいってことだね」

亜美「最高のプレーをすれば!」

真美「それがそのまま最高のアピールになる!」

雪歩「うぅ、勢いで出るって言っちゃったけれど、大丈夫かなぁ……」

千早「心配しなくても大丈夫よ。やってみたらきっと楽しいから」

やよい「せ、精いっぱいがんばりますっ!」

貴音「ふむふむ、ぼぉるを受けることをれしぃぶと呼び、れしぃぶされたぼぉるを攻撃のために上げることはとすと言う……?」

あずさ「久しぶりの765プロ総動員の大イベントね~」

響「腕が鳴るさー!」

真「思いっきり目立っちゃうぞー!」

伊織「あんたらにばっかりいい思いはさせないわよ。バレーボールでもこの伊織ちゃんが一番輝いちゃうんだから!」

春香「それでは、全員ご一緒に!!」

春香「765プロ女子バレー部ーーーーーーー!!」

全員「ファイトッ!!」





P「せっかく気合いを入れてもらったところ悪いが、練習は明日からだから今日はこれで解散な」

春香「えー」

春香「ところで、プロダクション対抗ってことは……」

貴音「961ぷろも出場するのでしょうか」

美希「しないんじゃないかな。女子アイドルはあんまり大きく売り出してないし」

千早「いえ、油断はできないわ。もしかしたらジュピターの3人が女装して挑んでくるかもしれない」

響「さすがにそれはないと思うぞ……」









黒井「――――――というわけでお前達3人には女装して出場してもらう」

冬馬「おいまてクソジジイ」

黒井「どうした? 何か不満でもあるのか。あればことごとく却下だ」

冬馬「不満しかねーよ! いきなり呼び出されたあげく開口一番女装しろとか言われた俺らの身にもなれってんだ!」

黒井「フン、いちいち声を荒げるな。セレブなジョークの通じん奴め」

冬馬「おっさんが言うとジョークに聞こえねえんだよ」

黒井「女装しての出場に無理があることは三日前に幹部集会で話し合ってすでに結論が出ている」

冬馬「話し合うまでもねえだろそんなこと」

黒井「さすがに北斗の女装はないわ……」

冬馬「俺の時点で気づけよ!!」

翔太「冬馬君はなんだかんだで似合うと思うよ」

冬馬「お前が言うなお前が」

北斗「俺だってメイク次第では結構いい線いけるんじゃないかな」チャオ

冬馬「ねーよ」

翔太「ないね」

黒井「あり得んな」

北斗「酷いわ……」

冬馬「で、どうすんだよ。また765の奴等に妨害工作仕掛けるとか言うんじゃねえだろうな?」

黒井「当然だ。奴等がこれ以上脚光を浴びるなどこの私が許さん」

黒井「……だが、今度はこれまで試してきたような回りくどい方法は取らん。真っ向から奴らを叩き潰す」

冬馬「へぇ、そういうことなら俺も全力で乗ってやるぜ」

北斗「とはいっても、実際問題メンバーはどうするんです?」

黒井「たしかに、現状私たちはこの大会に出場すらできん」

黒井「設定的には女子アイドルも大量に囲っているはずだが、それを出したところでモブ1~6のやられ役にしかならんことは目に見えている」

翔太「固有のキャラ付けってアイドルにとっては大事だよね」

黒井「そこでだ!」

黒井「お前達はどこか別のプロダクションにコーチとして赴任し、そこでチームを鍛え上げるのだ!」

冬馬「おもいっきり回りくどいじゃねえか!」

冬馬「他の人数不足のプロダクションと合同とか、もっと他に方法あんだろ……」

黒井「ふざけたことを。我らは絶対王者961プロ!」

黒井「他者を従えこそすれ、協調などもってのほかだ!」

翔太「言ってること自体は格好いいんだけどなあ」

黒井「お前達の手で最強のチームを作り上げ、765プロを打倒する!」

黒井「そうして我ら961プロの脅威を存分に見せつけてやるのだ!」

黒井「フフフ……フハハハ……ハーッハッハッハッハッ!! ……ゲホゲホ」

北斗「それって、そのプロダクションが765プロに勝ったってことになるだけなんじゃないかな」

冬馬「ほっとけ。ああなったらもう何を言っても耳に入らねえよ」



翔太「……で、結局3人それぞれ別々にチームを探すことになっちゃった。と」

冬馬「あのおっさんは毎度毎度よくも唐突に無理難題を吹っ掛けてくれるもんだぜ」

翔太「いつものこと過ぎてもう慣れちゃったけどね」

北斗「それにしても、バレーに関してはシロート同然の俺らがコーチとはね……今回はハードルが高そうだ」

冬馬「言ってろ。どうせ手の早いお前ならアテは腐るほどあるんだろ?」

北斗「まあね」チャオ

冬馬「うわ超うぜぇ」

北斗「でも、アプローチ掛けるところはもう決めてあるんだ」

北斗「二人の分も必要なら紹介するけど、どうする?」

冬馬「いらねえ。自分の仕事くらい自分でどうにかしてやるさ」

翔太「僕も、とりあえずは知ってるところを当たってみるよ。それでダメなら北斗君のお世話になるかも」

北斗「そっか。なら、お互い頑張ろうか」

冬馬「他のチームになって戦う以上、お前らもライバルだからな。手加減はしねえぜ?」

翔太「やれやれ、勝負事になると冬馬君は怖いんだから。じゃあ、また明日ねー」フリフリ





北斗「…………」

北斗「さて、と。あの事務所の規模ならまず間違いなく出るだろう」ポパピプペ

prrrr prrrr

ガチャ

北斗「やあ。久しぶりだね、従姉さん」

バレーボール一切やってないけど今回はここまで
次回は準備体操から。試合できるのはいつになるやら……

ネタバレ:真はレフトのウイングスパイカーになります

投下します
大変申し訳無いことに、まだバレーボールらしい部分は出てきません



第二話 ウォーミングアップ!


 

――――――公営体育館

響「ここでいいんだよな?」

貴音「間違いありません。本日よりここがわたくしたちの練習場です」

美希「あふぅ……トーク番組だからラクかなーと思ってたけど、ずっと座ってるのはそれはそれで疲れるの……」

貴音「お疲れ様、美希。本日も良き仕事ぶりでしたね」

響「何度か『ハニー』って単語が出てきそうになってフォロー大変だったけどな……っと、ごめんくださーい!」

管理人「はいはいいらっしゃい」

響「えっと、5時から予約してた765プロのものですけど」

管理人「ああ、はいよ。楽しく使ってってくれ」

美希「みんなはまだ来てないんだね」

貴音「仕事が長引いてしまっているのでしょうか。わたくしは少々連絡をとってみます」

響「頼んだぞー」

美希「ミキはみんなが来るまで先にボール使っちゃうの!」

響「こら美希。まずはちゃんと準備体操とウォーミングアップやってからじゃないと」

美希「えー……」

響「やらないのか?」

美希「面倒くさいし、準備体操なんて必要ないって思うな」

響「…………」



響「……いいのか?」

美希「えっ?」

響「本当にいいのか?」

美希「響?」

響「なあ美希。準備体操って何のためにするか知ってる?」

美希「体をほぐすためでしょ?」

響「じゃあ、何のために体をほぐすか分かる?」

美希「えーっと……ケガしないためって聞いたことがあるの」

響「その通り。じゃあ、なんで体をほぐさないと怪我しちゃうんだ?」

美希「体が思うように動かなくって転んじゃったりとか?」

美希「でも、ミキはこれでも運動神経バツグンだから、そんな心配は無用なの!」

響「たしかにそれもあるけど、もっともっと大切な事があるんだぞ」

美希「そうなの?」

響「動きにくいってことそのものが問題なんだ」スッ

美希「なにそれ?」

響「輪ゴムだぞ」ミョンミョン

美希「いや、それは見ればわかるの」

響「人間ってさ」

美希「響がいきなり人間について語り出したの」

響「この輪ゴムみたいに、伸ばした筋肉が縮むときの力で運動してるんだ」ミョンミョン

美希「ゴム人間?」

響「いや、そういうわけじゃなくって……」

響「まあ、実際にはもっといろいろ複雑だけど、伸びたり縮んだりするのはおんなじさー」ミョンミョン

響「普段生活する分には、このくらい伸ばして」ミョーン

響「こんな風にかるーく縮めるくらいの力でもいいんだけれど」ペチッ

美希「そういえば、なんかのテレビで人間は30パーセントの筋力で生きていけるとか言ってた気がするの」

響「そうそう。でも、スポーツをやるなら、30パーセントじゃ全然足りないんだ」

響「特にバレーボールって思いっきり走ったりジャンプしたり、体を捻ったり曲げたり、瞬発力が必要なスポーツだから」

響「その分筋肉もこーんな風に勢いよく引き伸ばされるんだ」ミョョーーーーーーーン

美希「おー」

響「美希はこっちの端持って」

美希「えっ」

響「で、この伸びたのを一気に縮めると」パッ

美希「えっ」

パチーン!

美希「痛いの!」

響「こんな風に強い力になって、それを使ってジャンプしたり、スパイクを打ったりするんだ」

美希「……それならそうと先に言ってほしいの」ヒリヒリ

響「じゃあ、別の輪ゴムでもう一回やるぞー」

美希「鬼なの! 鬼がいるの!」

美希「……それで、それを説明するためだけに美希にこんな痛い思いをさせたの?」ブスー

響「ううん、ここからが本題さー」スッ

美希(本当にもう一個輪ゴム出しやがったの……)

美希「……って、今度のはなんだかずいぶんとヘロヘロなの」

響「事務所の棚においてあった、いつのかわからない輪ゴムだからなー」カピカピ

響「知ってる? ゴムって劣化してカピカピになっちゃうと、伸びなくなるんだ」

美希「そのくらいはミキだって知ってるの」

響「じゃあ、筋肉や腱もおんなじだってことは?」

美希「どういうことなの?」

響「固くなると伸びなくなるってことさー」

美希「うーん、なんとなく想像はつくかな」

響「そういえば、美希はさっき『ずっと座ってるのは疲れる』って言ってたっけ」

美希「うん、だから早くパーッと体動かしたいの」

響「あれも、体を支えるために無理な力がかかって、全身の筋肉が凝り固まってるせいなんだぞ?」

美希「えっ……」



響「つまり、今の美希の体はこのカピカピの輪ゴムといっしょってこと」

美希「でも、体はちゃんと動くから大丈夫なの!」

響「固まってても全く伸びないってわけじゃないからな」

響「この輪ゴムだって、軽く伸ばしたりするだけならさっきの輪ゴムと同じようにできる」ミョンミョン

美希「う……」

響「普通に動く分には使えるってのがまた厄介でなー」

響「思ったより伸びなくなってることに自分で気づかなかったり」

響「気づいても『動くんだからなんくるないさー』なんて思って放っておいちゃったり」

美希「…………」



響「そうして、知らず知らずのうちに固くなった筋肉をほぐさないまま」

響「激しい運動のために思いっきり引き伸ばそうとしたら――――――」ググ……





プツンッ



美希「ひっ……」

響「こうなっちゃうわけさ」

美希「……切れたら、痛いの?」

響「そりゃそうさ。だって、体の一部がちぎれちゃうんだぞ」

響「さっきの輪ゴムなんて比べ物にもならない」

響「攣ってるのがずっと終わらないっていうか、内側からメチャクチャに引き裂かれるみたいに痛くて」

響「本当に死んじゃうんじゃないかって思うくらい」

美希「ひっ……」

響「皮膚の内側は内出血で赤黒く染まってさ……、筋肉が切れちゃってるからまともに動かすこともできない」

響「そんなのが数週間、下手すれば一ヶ月」

響「最悪の場合後遺症が残って、死ぬまで続くんだ」

美希「…………」

響「…………」





響「さっ! 美希は準備体操は必要ないみたいだし、さっそく練習を始めるさー!」ニッコリ

美希「ごめんなさいなのミキが悪かったの!」

響「百聞は一見にしかずって言うし、一回やると『あ、こういうことだったのかー』ってすぐに納得できるぞ」

美希「代償が大きすぎるの!」

響「準備体操が大事だって分かってくれた?」

美希「肝に銘じましたの」フカブカ

響「まあ、今のはだいぶオーバーな説明だけどな」

美希「シャレになんないの……」

響「でも、本当のことなんだぞー」

響「準備運動せずにバレーボールなんてやろうとすると、ちぎれはしなくても間違いなく体は痛んじゃう」

響「油を差してない自転車みたいなものさー。無駄に体力使うし、その割には動かないし、チェーンはボロボロになるし」

美希「好きなとこへも連れてってもらえなさそうなの」

響「ショートヘアもしんどそうに揺れるな」

美希「準備運動って、やっといた方がいいくらいのものだと思ってたけど、そうじゃないんだね……」

響「トレーナーさんがレッスンの前にやるストレッチだって、ダンスや演技で負担がかかる部分をしっかりほぐすように考えてあるんだぞ」

美希「奥が深いの……。言われてみれば、足首とか腰とか肩とかひねったり伸ばしたりしてるかも」

美希「ところで、さっきの輪ゴムってこれを説明するためにわざわざ持ってたの?」

響「美希ならいつか絶対にああ言い出すって思ってたから、用意してたんだぞ!」

美希「ひどいの!」

響「実際その通りだったじゃないか」ジトー

美希「ぐぬぬ……」

響「あと、美希が言わなくても亜美真美とか」

美希「でも、やり過ぎだと思うな! 筋肉が切れるところの説明とかもっとマイルドでいいと思うの!」

響「…………」

美希「響?」

響「あれは地獄だったさー……」

美希「やっちゃったことあるんだ……」

響「言ったろ? 一回やると納得できるって……」

美希「ご愁傷さまなの……」

響「ふっふっふ、それじゃあ今から自分が完璧なバレーボールの準備体操とウォーミングアップを伝授してやるさー!」

美希「よろしくお願いしますなの!」

響「さっそく貴音もいっしょに――――――」

響「……って、貴音はみんなに連絡しに行ったっきり何してるんだ?」

貴音「ただいま戻りました」

美希「おかえりー」

貴音「申し訳ありません。小腹がすいたので間食を少々」モグモグモッシャモッシャ

響「うん、見れば分かる」

貴音「それと、これを」ドサッ

美希「スポドリ?」

貴音「この時期の運動には必須のものかと」

響「おおっ、ナイス貴音!」

美希「お水はいくらあっても足りないよねー」ゴクゴク

響「ちゃんと水分をとることも、体をほぐすためには重要だからな」ゴクゴク

美希「関係あるの?」

響「そりゃおおありさー。筋肉を動かすのにだって水分やミネラルは必要だからな」

美希「!!」ゴクゴクゴクゴク

響「いや、飲み過ぎればいいってもんでもないぞ……」

貴音「はて、何の話をしているのでしょう?」

響「まあ、いろいろとな。そういえば、他のみんなは?」

貴音「竜宮はまもなく合流できると言っていましたが……」

ガラッ

亜美「とうちゃーっく! お、ミキミキ達もう来てたんだー」

美希「うわさをすればなんとやらなの」

あずさ「ごめんね~。収録長引いちゃって……」

亜美「ヒャッハァー! 水だぁー! それをよこせ、全部だ!!」グビグビ

あずさ「あらあら、よっぽど喉がかわいてたのね~」

響「水持ってなかったのか?」

亜美「いちおー水筒は持ってきてたんだけど、なんといつの間にか中身が消えていたのであった!」

伊織「飲み干しただけでしょうが。私ももらっていい?」

貴音「もとより皆で飲むために買ったもの。遠慮などいりませんよ」

律子「お待たせー」

貴音「律子嬢、お疲れ様です」

律子「あれ、まだフェアリー組だけ?」

貴音「春香、千早、やよいはまだ少々、雪歩と真と真美は今しがた仕事が終わりすぐにこちらへ向かうと」

律子「ありがと。春香たちもプロデューサーが付いてるから、まあすぐ来るでしょう」

伊織「あんた達はもうウォームアップは終わらせたの?」

響「自分たちもさっき来たところだから、今からだぞ」

あずさ「ちょうどいいタイミングだったみたいね~。じゃ、ご一緒しちゃおうかしら」

亜美「えー……めんどっちーから亜美はパスしちゃダメ?」

美希「!」

律子「こら、ちゃんと準備はしなさいっていつも言ってるでしょうが」

亜美「そんなのしなくたって平気っしょー。それよりさ、はやくボール使って遊ぼ――――――」



美希「ダメなのっ!!!」

亜美「おわっ!?」

律子「はいっ!?」

伊織「きゃっ!?」

あずさ「あらっ!?」

貴音「なんとっ!?」

亜美「ど、どったのミキミキ……そんなドクシンの表情して」

伊織「それを言うなら迫真でしょ……っていうか本当に何があったのよ美希?」

美希「まずはしっかり準備体操しないとダメなの!」

美希「しないとタイヘンなことになるの! 筋肉がブチってなるのっ!!」

律子「あの美希が準備体操の重要性を説いてる……!?」

伊織「暑さでやられた……それとも、悪いものでも食べた? まさか、悪い病気とかなんじゃ……!?」

亜美「お、オーケイ、分かったぜ。分かったから穏便に行こうじゃないかベイビー……」

あずさ「すごいわ~。響ちゃん、どうやって美希ちゃんに教えたの?」

響「ん、自分がやったって分かるのか?」

あずさ「ふふ、美希ちゃんが大声出した時、一人だけ驚かないで満足げな表情してたもの」

響「あとであずさにも教えるぞ。きっとあずさがやった方が迫力出ると思うから」

響「というわけで、始めるぞー!」

竜宮・フェアリー「おー!」

響「……って、律子もいるけど自分が音頭とっちゃっていいのか?」

律子「むしろありがたいわ。正直、私もあんまりウォームアップの内容練れてなかったし」

伊織「でもあんたと真くらいしかできそうにないような内容は勘弁ね」

響「伊織は自分や真をなんだと思ってるんだ……」

美希「最初はなにするの?」

響「まずは軽いランニングから。何はともあれ、体温を少し上げて体を運動に慣らさないといけないからなー」

響「コートの外周を走るから、みんなは着いてきてね」タッ

タッタッタッタッタッタッ……

  ┌    9m    ┐
  ┌─────┐    ┐
  │          │
  │          │
  │          │   9m
  ├─────┤
  │          │
─┼─────┼─  ┘
  │          │
  ├─────┤
  │          │
  │          │
  │          │
  └─────┘

響「ところで、バレーボールのコートは9メートル四方の正方形を2つ並べたサイズなんだけど、じゃあ外回り一周で何メートルでしょう、亜美!」タッタッ

亜美「ふっふっ……。えっと、並んでる面は考えなくっていいから……54メートル!」トテトテ

響「正解! 一周でそのくらいの距離はあるから、5周から20周くらい走ればそこそこ体は温まるぞ」タッタッ

伊織「5周から、20周って、だいぶっ、はぁっ、違うような、気がするんだけどっ」タッタッ

響「季節や気温や個人差で差が出るからな。とにかく止まった時に体が少しポカポカするくらいが目安だぞ」タッタッ

響「コツは力を入れないことと、ちょっときついかなってくらいのペースで走ることだな。今日はみんなで一緒に走ってるからだいぶ抑えめだけど」タッタッタッ

律子(え、これで抑えめなの……?)ハァハァ

伊織(多少キツイけれど、こんなものかしら)フゥフゥ

亜美(亜美に合わせてくれてるのかな、ちょうどイー感じ)フッフッ

美希(ミキ的にはもう少しだけペース上げてもいいかな)スッスッ

あずさ(このペースで走りながらずっとしゃべり続けてるんだから、びっくりしちゃうわよね~)ドタプンドタプン

貴音(力を入れずに走ること、力を入れずに走ること……)スイーッ

響「慣れてきたら掛け声も出していきたいな」タッタッ

亜美「765プロー! ファイッ! オゥッ! ファイッ! オゥッ! みたいな?」

響「そうそうそれそれ! 夏場だし最初だし、今日は5周で切り上げるぞー」

亜美「よっしゃー、あと一周!」


響「……よし、最初のランニングはこれくらいにするぞ」

亜美「んー、このくらいの距離でも地味~にキツイね」

響「これから準備体操やるんだけど、ランニングと逆のほうが良かったかな……」

伊織「まあ、いいんじゃない? 体は動かすんだからそうそうすぐ冷えるものでもないでしょうし」

伊織(ちょっと休めるし)



<着いたぞみんな!

<はわっ! もう始まってます~!!

<急いで着替えましょう、高槻さん

<ふ、ふたりとも早いよー! あっ ドンガラ



<待ってぇ~置いてかないで~!!

<ゆきぴょんファイトー! もうちょいだよもうちょい!

<あ、春香たちもお疲れー。いま来たところ?



貴音「ふむ、ちょうどよく残りの者も辿り着いたようですね。合流するまでしばし待ちましょう」

伊織「これで小鳥以外みんな揃ったわね」

亜美「えー、あとから来たみんなもランニングしなきゃ不公平っしょー」

真「駅からここまで走ってきたから、それで代わりってことじゃダメ?」

雪歩「真ちゃん、私達の荷物を全部持ってくれてたのに……」ハァハァ

真美「それで真美たちより早いっておかしいっしょ……」ゼェゼェ

春香「私たちも駐車場から全力疾走してきたから、それで勘弁……」ヒーコラヒーコラ

やよい「は、春香さん大丈夫ですか?」

P「お、響が指揮とってるのか」

千早「どこまで終わっているの?」

響「今から準備体操するんだけど、プロデューサー来たし、バトンタッチした方がいい?」

P「せっかくだから、そのまま続けてみてくれ。何かあったら口を挟むよ」

響「任せるさー!」





P「あらためて見ると、こう、レッスンウェアっていいものだな……」

P「そしてやよいは体操服。あれは反則だろう……」

律子「プロデューサー殿?」ゴゴゴゴ

P「すみませんでした」

響「――――――ストレッチ全般に言えることだけれど、やってる途中は息は止めちゃダメだぞ。リラックスできないからな」

全員「はーい」

響「まずは屈伸。膝に手を添えてその場にグッグッとしゃがんで、立ち上がって膝をグッグッと伸ばすんだ」

美希「これはレッスンでもよくやるね」

響「注意すべきところは膝をしっかり伸ばすことと……」

千早「腰を曲げないこと、ね。股関節から曲げることを意識するの」

響「あー、それ自分が言おうと思ってたのにー!」

あずさ「んっ……腰をまっすぐにすると膝を伸ばしたときに太ももの裏側が伸びてる感じがするのよね~」グッグッ ムニュ

律子「そうですね。レッスンで教えられてるはずのことなんですけど、できてない子も多いのが……」グッグッ フニッ

P(ナイス谷間!)

響「じゃあ、そのままもっと膝裏と腰を伸ばすぞー。足をまっすぐ肩幅に開いて、そのまま前に体を倒ーす」ググ ペタン

春香「前屈だね……って響ちゃん体柔らかっ!」

真「響は手も長いからねー」ペタン

やよい「私もできましたー」ペタン

響「ちょっとなら足の間から顔も出せるぞ!」ググッ

P(海外モノであんな感じで足から顔を出した体勢で拘束されてるやつあったなあ……)

真美「むー、さすがに手のひらまでは付かないよ……」グググ

貴音「できるまでのところから、少しだけ無理をするくらいでよいでしょう。わたくしも、指先で精一杯……」ググ

律子(こんなに体固かったっけ……)グ…グ…

響「反動は付けないか、つけても軽くクックッと押すくらいだな。思いっきり反動をつけると痛めちゃうから」

全員「いーちにーさーんしー」

響「そこから体を起こして、腰に少し後ろから手を当ててぐっと押して後ろ反りー」グググ

雪歩「んっ……肩と腰が……なんか、きもちいいかも……」

真「肩に来るってことは、胸が開いて肩甲骨がしっかり寄せれてるってことだから、いい感じだと思うよ」

響「腰をそらすとか、肩甲骨を後ろに寄せるのはスパイクでも必要な動作だから、今のうちから意識しておいて損はないぞ」

律子「やばっ、背中じゅうの関節がポキポキ言ってる……」ポキポキ

全員「ごーろーくしーちはーち」

P(へそチラ! へそチラ!)

響「じゃあつぎは肩の運動だな。肩をグーっとすくめて……ストンと落とす」

千早「グッと力を入れて……脱力」ストン

春香「千早ちゃんにその擬音は反則だと思うんだ」

響「そこから、肩だけを前に回す」グルグル

響「鎖骨と肩甲骨……えっと、肩の前と後ろにある骨のところから回ってるのを意識するんだ」

全員「いーちにーさーんしー」

響「次は後ろに回してー」

全員「ごーろーくしーちはーち」

律子(ゴキゴキ言ってるんだけど、大丈夫なのかしら私の体……)グルグルコキコキ

貴音(最近の律子嬢はですくわーくが多いようですし、たまにはれっすんを受けて体を動かしてはどうでしょう?)グルグル

律子(そうするわ)グルコキグルコキ

響「最後は、さっき回した部分を意識しながら、腕もいっしょに回すぞー」

亜美「ウワアアアアアアオオオオオオオオ!!!」グルグルグルグル

響「……いや、そんな太古の人類に立ち向かっていく勢いで回さなくてもいいんだぞ」

全員「いーちにーさーんしー」

響「後ろー」

全員「ごーろーくしーちはーち」

響「次は右手をまっすぐ前に伸ばして、左手で右の肘を上からつかんで体の方にグーッと寄せる」グイッ

伊織「これもよくやるやつね。私は左肘で右肘を挟んで体の方に寄せるって教わったけれど」

響「とにかく肩の外側が伸びればどっちでもいいぞ」

響「注意するのは、伸ばしてる手が下がらないこと。気持ちちょっと上を向かせるくらいでちょうどいいぞ」

やよい「左手でひじを引っぱり上げる感じですか?」グイ

響「そうそう。伊織のなら、左の肘から上を地面と並行くらいまで持ち上げて、その上に右腕を乗せて引っ張る感じだな」

P(潰れるおっぱいも捨てがたいが強調される腰のラインもなかなかどうして……)

響「反対側もおんなじようにしたら、今度は右手をまっすぐピーンと上にあげて」

真美「はいさーい! のポーズだね」

響「いつの間にそんな名前ついてたんだ……。んで、そのまま左手で前から右肘を持って、頭の後ろの方にグッと引っ張る」ググ

あずさ「頭はまっすぐ前を向けないとダメなのよね~」

響「胸の横から腋の下、肩、腕の外側にかけてのラインがまっすぐになってれば完璧さー」

P(わーき! わーき! ペロペロ! クンカクンカ!)

春香「肩はだいぶ念入りにやるんだね」

響「バレーでケガって言えば腰から下全域と肩って相場が決まってるからな。個人的にはもう少しやりたいくらいさー」

真「外の要因を含めると突き指も多いね」

響「じゃあ、もう一回右手を前に伸ばして、今度は肘の裏側と手のひらを上に向けるんだ」テノヒラクルー

響「そうしたら、左手で右手の指を持って、手首をぐっと反らせるように体側に引き寄せる」ググー

真美「逆向きに『STOP! 未成年者飲酒』のマーク作る感じ?」グイー

美希「手首だけじゃなくって、ひじの裏も伸びてるの」ノビー

伊織「当たり前でしょ、筋肉でつながってるんだから」

響「次は、手首をぶらぶらさせながら片足だけつま先立てて足首ぐるぐるー」ブラブラ

春香「足首は片足立ちでぶらぶらさせるのじゃダメなの?」

響「ほぐれればどっちでもいいぞー。手首も手を組んでぐるぐる回すのでも大丈夫さー」グルグル

響「そしたら、次は首の運動だな。前に倒してー」グー

響「うしろー」グー

響「右ー」グイー

響「左ー」グイー

響「右見てー」グルー

響「左見てー」グルー

響「グルッと回してー」グルー

響「反対に回してー」グルー

真美「360度回してー」グルン

響「無茶を言うな」

響「次は腰の運動だな」

P「まずは腰を前後に揺らしてフォー!」カクカク

律子「死んでください」

P「ひどい!」

響「まずは上半身だけ右を向くように腰を右に捻って」ググー

伊織「この動きも、意識してみると結構、肩に来るのね」ググー

真「いろんな場所がいろんな繋がり方してるからね」グググッ

響「次は左ー」ググー

響「頭の後ろで手を組んで、腰で地面と平行に大きく円を描くように回してー」グルグル

春香「フラフープの動きだね。懐かしいなあ」グルグル

P(この腰のグラインドは反則だろ……次の曲のダンスに取り入れてみるか)ウッ フゥ…

響「そしたら、上体をダラーンと前に倒して」ダラー

響「そこから腰全体で大きく回る!」グルーン

やよい「ラジオ体操の動きですね!」グルーン

律子(んっ……♥ なんか、背骨鳴るの、気持ちよくなってきちゃった……♥)ポキポキ

響「足を前後に開いて、後ろの膝を沈めてアキレス腱伸ばしー」ググ

貴音「真美、あきれす腱伸ばしではかかとが地面から離れてはいけないのですよ」

真美「そうなの? 思いっきり前後に足開いてやるもんじゃなかったんだ」

真「それで伸びるのは股関節の方だからね。足首の裏側を意識してみて」

響「じゃあ、そのまま股関節のばしもやるぞ。足をもっと大きく前後に開いて、前の足を曲げる」グイー

真美「あ、ホントだ。こっちだと足首全然伸びてないや。代わりにお股のところが……」ググ

P「どれ、俺が触って確かめてやろう」

律子「金属バット持ってきたはずなんだけれどどこにやったかしら」

P「すいません調子こきました許してください」

響「高く飛びたいときには股関節とアキレス腱は大事だからなー。膝だけで飛ぶわけじゃないんだぞ」

響「次は足を横に開いて、片方に体を寄せて足を伸ばすぞー」グッ

やよい「これもよくやるやつですねー」グッ

響「体のすぐ横に来たボールをこういう体勢でレシーブすることも多いからな。しっかりやって損はないぞ」

響「じゃあ、今度はもっと深く沈んでー」グググ

春香「足首から股関節までピーンと張るね」グググ

響「次はその場に仰向けに寝っ転がって、片足だけまっすぐ上にあげるぞ」

P(パッ……パ・ン・チ・ラ♥)

響「そしたら、足を反対側の足とクロスさせるように地面まで倒すんだ」ググー

響「この時、肩は地面からはずさないことと、膝は曲げないことだな」

貴音「んっ……下半身の運動かと思いましたが、意外と肩や腰にも来るものですね」

響「使ってる部分はさっきの腰ひねりとかぶってるからな。こっちは足も伸びるぞ」

響「反対側もやったら、次は片足は伸ばしたまま、もう片方の膝を両手でつかんでグッと体の方に引き寄せるんだ」

やよい「両足いっぺんに引き寄せたらダメなんですか?」

響「試してみるとわかるけど、伸ばしてる方の内股が伸びるんだ」

伊織「曲がってるところの内側もキツイわね……」

響「次は一回起き上がって、長座で座って」

律子「長座の時点でキツい……普段いかに股関節が意識できてなかったかが分かるわ」

響「そこから、片足だけ曲げて足首がおしりの横か下にくるようにするんだ」

雪歩「片足長座のまま、もう片足だけ正座する感じかな?」

響「うん、雪歩いい例え。それができたら、そのまま上体をゆっくり後ろに倒すぞー」ノビー

美希「あ゛~太ももが伸びるの~……」グデー

響「そのまま天井のシミでも数えながらゆっくりするさー」

P(俺は腹チラや左右に垂れるおっぱいを見ながらゆっくりするさー)

響「こんなところでいいかな」

春香「んん~、きもちいい!」

亜美「ストレッチパワーが!」

真美「ここに、溜まってきただろう!」

美希「ん、体が軟らかいの! 今なら上段回し蹴りだってできそうなの!」

真「教えよっか?」

美希「冗談なの……」

響「じゃあ、体もほぐれた所で、次はウォームアップの運動さー」

亜美「え、これで終わりじゃないの!?」

響「今までのは準備体操、こっからは体作りだな」

響「本当なら腕立てとか腹筋とかもやりたいけど」

亜美「マジで……?」

響「まあそのへんは各自でお願いするさー。あ、そういえば伊織」

伊織「何よ」

響「さっき『自分と真にしかできないメニューは勘弁』っていってたけど」

響「自分がやるのは中学生のバレー部がやってたのをちょっとアレンジしたメニューだから、その言い訳は聞かないぞ」ニヤ

伊織「……やってやろうじゃないの」





伊織「――――――それで、コートを縦に端から端まで全力疾走10往復ってどういうことなのよ!」ゼーゼー

響「まあ、『男子中学生のバレー部』がやってたメニューだからな」

伊織「聞いてないわよ!」

響「もちろん回数は減らしてるぞ」

伊織「ぐっ……!!」

響「慣れてきたらもう少しいろんな動きも取り入れつつ回数増やすぞー!」

伊織「ああもうやってやるわよコンチクショウ!!」

響「……大丈夫かみんなー?」

真「さすがに飛ばし過ぎだよ、響」

響「うーん、最初にしてはちょっとやりすぎちゃったかもしれないぞ」

春香「なんであれだけ走ってこの二人だけは涼しげな顔をしてるのかな……」ヒーヒー

雪歩「自分でもよく最後までついていけたと思うよ……」ハァハァ

真美「さすがにもう終わりっしょ~……」ゼーゼー

響「次でラストだな。ただ、人数がもう一人ほしいんだけれど……」

ガラッ

小鳥「ごめ~ん、遅くなっちゃった! もう始まってる?」

響「お、ぴよ子ナイスタイミング!」

律子「小鳥さんお疲れ様です」

美希「遅いの!」

小鳥「ごめんね、ちょっと手間取っちゃって……」



P(小鳥さん 上下長袖 芋ジャージ)

P「なぜだっ!!」バンッ

小鳥「ど、どうしたんですか……?」

P「いえ、すみません取り乱しました……」

響「じゃあ、小鳥が来て人数も偶数になった所で、最後は2チームに分かれてリレーだぞ!」

真美「おおっ! リレー!」ガバッ

真「あ、真美が復活した」

亜美「やっと面白そーなことが出てきたんだから、やる気も出るってもんっしょー」スクッ

小鳥「あら、なんだかもう終盤な雰囲気?」

響「チームで1つバレーボールを持って、それをバトン代わりに使うんだ」スッ

伊織「ここに来て初めてボールが出てきたわね」

貴音「これがばれぇぼぉるというものなのですね。なんと面妖な紋様……」

千早「めんようなもんよう……クフッ……」プルプル

春香「あ、千早ちゃんのツボに入っちゃった」

響「まず奇数走者がこっち側のライン、偶数走者が体育館のあっちの端のラインに並ぶ」

響「そしたら、ボールを持ってるランナーは自分側のスタートラインから向こう側のラインまでをダーッ! と一往復するんだ」

春香「一往復しちゃったら次の走者にバトン渡せないんじゃない?」

響「ふっふっふ、ここがバトン代わりにボールを使うミソさー」

亜美「といいますと?」

響「スタートラインまで戻ったら、最後はボールを反対の端にむかって投げるっ!」ブンッ

伊織「なるほど、投げたボールを次の走者が拾って以下同じくってことね」

響「そういうことだぞ」

千早「ボールを拾うときは、次の走者はラインの前に出ていってもいいの?」

響「いいぞ。体育館の端から端までなんて届くわけがないからな」

響「ただし、ボールが投げられる前から出てるのはダメで、拾ったあとはちゃんとスタートラインまで戻ってからスタートするんだ」

響「アンカーが投げたボールを第一走者が拾って、スタートラインまで戻ったら終わりだ」

伊織「2チームに分けたら1チームあたり7人になるから、第一走者は最後のボールを取れないんじゃないの?」

響「その時はアンカーが1.5往復して、むこう側からボールを投げるようにするんだ」

やよい「うっうー! なんだか面白そうですー!」

真「チーム分けはどうする?」

亜美「ぐっぱで分かれましょ?」

律子「この人数でやったらいつまでたっても終わんないわよ。二人一組じゃんけんでいいんじゃないかしら」

春香「じゃあ、それで……あ、そうだ」

律子「どうしたの?」

春香「とりあえず、真と響ちゃんでじゃんけんしようよ」

美希「たしかに、この二人が同じチームになったらやる前に結果が見えるの……」

真「願ったりだね。響とは競走してみたかったんだ」

響「負けないぞー! 最初はグー!」

真響「「じゃんけんぽん!」」

真チョキ 響パー

真「やった、勝ったー!」ガッツポーズ!

響「うがー負けたー!」ガクッ

伊織「いや、そういう競技じゃないでしょ」

春香「じゃあ、勝ち組は真チーム、負け組は響ちゃんチームだね」

響「なんかすごい嫌だぞその呼ばれ方……」

P「それじゃ、残りのみんなも適当に相手見つけてじゃんけんだ」

真美「んっふっふ~、この真美を敵に回して勝てるとでも思っているのかね?」

亜美「それはこっちのセリフですな真美隊員」

美希「千早さん、いざ尋常に勝負なの! それで、いっしょにトップランナーになるの!」

千早「あら、美希は敵になっちゃうのね。手加減しないわよ?」

あずさ「律子さん、相手お願いできますか~?」

律子「やりましょうか。私達が固まるのも別の意味でまずいですしね……」

やよい「うっうー! 春香さん勝負ですー!」

春香「えー、やよい相手チームになっちゃうんだ」

貴音「雪歩。お手合わせをお願いできますか?」

雪歩「は、はい! よろしくお願いします!(四条さんとは別チームになっちゃうのかあ……)」

小鳥「ふふ、私が遅いと思って勝負に誘ったのかもしれないけれど、見通しが甘いわね伊織ちゃん!」

伊織「随分な自信ね。ま、相手が小鳥であろうと伊織ちゃんと相対する時点で結果は見えてるわね」

P(バラけて交流ができているのもいれば、いつものメンバーもいる……か)

実況P『――――――さあ、まもなく始まります765プロ対抗バレーボールリレー! 実況はわたくしPでお送りします』

真チーム
美希
伊織
あずさ
やよい
貴音
真美


響チーム
千早
春香
律子
小鳥
亜美
雪歩


♪BGM:L・O・B・M



実況P『トップバッターは宣言通りの千早選手と美希選手。意気込みを一言ずつどうぞ』

美希「本気で行くの、千早さん!」ニッ

千早「ふふ、そんなに本気でこられたら、格好悪いところは見せられないわね」ニコッ

実況P『それでは、いちについて、よーい……スタートッ!!』

千早「いくわよっ!」ダダダッ

美希「負けないのっ!」ダダダッ

実況P『二人とも快速とばす! 半分まではほぼ同時か!』

春香「千早ちゃんが強いのはここからだよ」

千早「お先にっ!」グンッ

美希「っ!?」

千早「春香っ!!」ブン

実況P『千早選手、ロケットのような後半の加速! 一気にリードを奪い、そしてこの投球! 第二走者の春香選手にボールが渡ります!』

美希「くっ……デコちゃん、ごめんなのっ!」ブンッ

実況P『対して後半わずかに失速した美希選手、やや遅れて今投げた! こちらもかなりの遠投、ノーバウンドでコース半分弱ほどを渡ります!』

P(千早は鍛えてる分、全体的な身体能力に優れるな。それに基礎体力もある。だが、少しばかり動作が硬いか)

P(美希はその辺りはからっきしだがセンスはあるし、千早といういい手本があったからか飲み込みが早い。そして動きが軟らかい。体もふわふわ柔らかい)

春香「よし、いい感じにリードしてる!」タタッ

伊織「ふん……このくらいなら十分っ!!」ダダッ

春香「うそっ!? 伊織速っ!」

伊織「にししっ、伊織ちゃんを甘く見るんじゃないわよ!」キュッ

実況P『さあいおりん選手、春香選手との差をぐんぐん縮め、そのままターンで一気に抜き去った! 一足早くボール投げに入る!』

伊織「頼んだわよ、あずさ!」ブンッ

ポテッ

テンッテンッテンッ……コロコロ

伊織「…………」

春香「……肩はそれほどでもないんだね」

伊織「うっさいわよ!」

実況P『春香選手は足の速さも肩の強さも可も不可もなしといったところ。特にコメントがありません』

春香「ひどい!」

P(パワーはからっきし、基本的な身体能力こそそこそこだが、ボール拾い、ダッシュ、ターンと次の動作を見据えた動きができるのはさすが伊織というべきか)

P(春香は……うん、本当に特筆すべき点がない。だが、あいつのことだからこれからの練習で何か光る部分を見つけてくれるだろう)

実況P『ボールを拾ってスタートラインに戻ったのはほぼ同時! 第三走者、律子選手とあずさ選手のデッドヒートだ!』

亜美「デッドヒートって割には……遅くない?」

律子「普段からちゃんと運動しとくんだったわ!」バインバイン

あずさ「あれだけ走った後だと辛いわ~……」ドタプンドタプン

P(素晴らしい光景だ)

実況P『ボールを投げるのも同時! この二人はもう少し体力がほしいところ!』

律子「ああもううるさいわね、小鳥さんお願いしますっ!」ブンッ

あずさ「やよいちゃん!」ブンッ!

真「おおっ、あずささん意外といい肩してる!」

やよい「あずささんナイスですっ!」パシッ

実況P『あずさ選手、コース半分を大きく超える矢のような送球! やよい選手もいいフットワークでそれを拾って一気に優勢! それに対して……』

ポテーン ポテーン……コロコロ

律子「…………」

実況P『律子選手のボールはコート4分の1も飛ばずに落ちてしまいました。フォームから何からめちゃくちゃです』

律子「こ、これから練習するんですっ!」

P(あずささんはスピードに難あり。だが高さは十分、そしてコントロールもいい。なにより投げる姿勢がいいから腕力と比べて力が出てる。そして揺れる)

P(律子はやっぱり動いてない時間が長すぎる分ブランクが大きいな。だが、伊織同様次の動作を考えた動きができている。やはり揺れる)

小鳥「任せて!」パシッ

実況P『……が、ここで小鳥さんのナイスフォロー! ボールをしっかり迎えに来ている!』

伊織「しかもけっこう速いし!」

小鳥「ふふふ……これでも学生の頃は『ピヨちゃん意外と足速っ!』の異名で呼ばれてたものよ!」タタタッ

やよい「ううっ、負けませんっ!」トタタタ

実況P『走行距離の不利を覆し、小鳥さんがやよい選手との差をグングン詰める!』

実況P『しかりやよい選手も意地の走りで順位をキープし、ボールを投げるのはほぼ同時!』

やよい「お願いしますっ!」ブンッ

小鳥「亜美ちゃん!」ブンッ……



ビキッ

小鳥「ぴよぉぉぉぉぉぉぉぉ腰がつったぁぁぁぁぁああああ!!」ゴロゴロゴロゴロ

実況P『ああーっと投げた瞬間小鳥さんが腰を痛めたー! 無理が祟ったかー!』

やよい「だ、大丈夫ですかー!?」

響「あーあ、準備運動しないから……」

美希「こ、こうなるんだね……。ミキも気をつけるの」

P(やよいはスピードそこそこ、肩は弱い。だが、あずささんの遠投をツーバウンドで落下点に入れるボールへの嗅覚。趣味で野球をやっている賜物か)

P(小鳥さんは意外と身体能力が高く、やよい同様ボールの軌道への反応も素晴らしい。肉付きも素晴らしい。結婚したい。だが絶望的に持久力がない)

亜美「ピヨちゃんのギセーは無駄にはしないっ!」パシッ

実況P『しかし小鳥さんの意地か、ボールは飛んでいる! 亜美選手が一足早くそれをキャッチ! 一足遅れて貴音選手が転がるボールを受け取った!』

貴音「くっ……出遅れてしまいましたか」パッ

春香「亜美みたいな前傾姿勢と四条さんみたいに背筋まっすぐ伸ばすのってどっちが速いんだろう」

真「足自体は亜美のほうがちょっと早いみたいだね」

亜美「ゆきぴょん、よろしくー!」ブンッ

貴音「お願いします、真美!」ブンッ

実況P『亜美選手が先にボールを投げ、一歩遅れて貴音選手も投げた! 両者まずまずの投球!』

P(亜美は走る、回る、投げるといろんな動きがてんでバラバラだな……。それであのパフォーマンスなんだから、矯正すれば光りそうだ)

P(貴音は姿勢はいいが、今のところ目立った点はないな。上背がある分縦への動きがどうなるか期待ってところか)

実況P『さあ、先にボールを取ったのは雪歩選手! やや遅れて真美選手がスタートラインに戻り、響チームがわずかにリード!』

真美「うぉおお待ぁぁてぇぇぇゆぅぅぅきぃぃいぴょぉぉぉぉおおおおん!!」ドドドドド

雪歩「ひいいいいいいいいいい!?」ダダダダダ

実況P『真美選手気迫の追い上げを見せる! そして意外と速いぞ雪歩選手!』

春香「雪歩って逃げ足は速いから足遅いってことはないんだよね。競争とかになるとてんでダメだけど」

律子「あれもしなきゃ、これもしなきゃ……とか、余計なこと考えると変なところに力が入っちゃうのよ、あの子は」

雪歩「響ちゃん、お願いっ!」ブンッ

真美「追いついたよ! あとは頼んだぜいまこちんっ!!」ブンッ

P(雪歩は一見身体面で劣るように見えるが、パフォーマンスが精神面に左右されすぎるだけで、秘めているポテンシャルは凄まじい。意外と肩も良い)

P(真美もほぼ亜美と同じだが、少し先を見た動きができている。そして雪歩の力をうまく引き出してくれたな。何より、チーム唯一の貴重なサウスポーだ)




真「さぁて……決着をつけようか、響!」パシッ

響「望むところさ!」パシッ

 

実況P『ボールをとった位置、タイミング、体勢ともにほぼ互角! 文字通りの一騎打ち!!』

真「うぉぉぉぉおおおおおお!!!」ダダダダダッ

響「だりゃぁぁぁあああああ!!!」ダダダダダッ

実況P『両者素晴らしい走り! 30メートルはあるはずのコースがこんなにも短い!』

雪歩「うわ、ふたりともすごい……」

真美「すごいっていうかもう……わけがわからないよ」

あずさ「私もあのくらい頑張らなきゃダメね~……」

美希「さすがにあれは無理だと思うな……」

実況P『スピードは互角、ターンのキレも互角!』

実況P『……いや、わずかに、ほんのわずかに真が速いぞ! 体半分前に出たッ!!』

響「なっ……!?」

真「おぉりゃぁああ!!」ブォンッ!!

実況P『そして真選手ボールを投げたあぁーっとこれはものすごい大遠投だ! 女子が投げていい飛距離じゃなぁぁーい!!』

真「その言い方はひどくないですか!?」

伊織「事実でしょ。受け入れなさい」

春香「しかもちゃんとまっすぐ飛んでるってのがね。もう化物だよね」

響「でぇぇえいっ!!」ブンッ!

実況P『響選手もなかなかの投球! 千早選手、懸命に拾いに走ります!』

美希「あ、ボール返ってきたの」スッ

実況P『美希選手スタートラインからほとんど動かず、跳ねてきたボールを拾って今ゴールイン!』

千早「くっ……」パシッ

実況P『それとほぼ同時に千早選手もボールを拾い、今帰ってきました!』

実況P『というわけで、勝ったのは真チーム! おめでとうございます!』

真「へへっ、やーりぃ! ま、暫定765プロのスピードスターは僕ってことで」

響「うっがぁー悔しいっ!! 肩はともかく足で負けるのは悔しいぞっ!」

雪歩「真ちゃん、100メートル12秒半切れたって言ってたからなあ……」

律子「計測方法を間違ってると信じたくなるような記録ね……。それと互角の響も大概だけれど」

美希「千早さんも早かったの!」

千早「私はギリギリ13秒台に乗るくらいだから、あれと比べたらまだまだだわ」

春香「うん、十分頭おかしいと思うよ」

P(真はパワー・スピード・スタミナすべて超ハイスタンダード。間違いなくエース。だが勢いがつきすぎる分曲線的な動きはやや苦手分野か)

P(響はパワーでは若干劣るがスピードとスタミナは真に劣らない。そして動作の柔軟さ、多角さ、安定感は群を抜いている。背の低さをどう補うか……)

P「いやあ、みんなお疲れさま」

春香「疲れたぁぁ」グッタリ

美希「一生分動いた気がするの……」グデーン

千早「このくらいでへこたれていてはダメよ」

やよい「みなさん、ドリンクですよー」クバリクバリ

真美「ああ、やよいっちが天使だ……」ゴクゴク

あずさ「こんなにおもいっきり動いたのは久しぶりだわ~」

律子「明日筋肉痛こないといいけど……」

真「小鳥さん、大丈夫?」モミモミ

響「遅れてきてもちゃんと準備体操はしないとダメだぞ」クニクニ

小鳥「あ゛あ゛~生き返るわ~……」グッタリ





P「さて、みんなやりきったいい顔をしているところ悪いんだが……」

 





P「ここまでがウォームアップで、実際の練習はこれからだぞ?」

亜美「……マジすか」ヒーヒー

貴音「面妖な……」ゼーゼー

伊織「そういえば、そうだった、わね……」ハァハァ

雪歩(魂の抜けた表情)

春香「生きて帰れるのかな、これ……」

 

今回はここまで
くどくなりすぎてしまいましたが、準備体操とウォーミングアップはしっかりしましょう

ネタバレ:美希は可愛いので受けです。ついでにレフトスパイカーになります

千早が美希より速いとかねーだろ

投下します
今回は番外編です
ナンバリングに 『・五』 が付く場合は番外編で、基本的に765プロ以外のメンバーで進行します

>>91
アニマス10話のリレーを見ると意外と速いように思えたのでこのようになりました



第二・五話 ジュピターのコーチ就任奮闘記 ~天ヶ瀬冬馬の場合1~

 

――――――東京 某公園



冬馬「打つぞ日高ー!」バシッ

愛「はいっ!」ボスッ

冬馬「お、ナイスレシーブ」ポーン

愛「どうですか! 強打レシーブは得意なんです!」ポーン

冬馬「へえ、大したもんじゃねえか。どこで覚えたんだ?」トーン

愛「『ボールの正面でレシーブの面を作って待ってれば勝手に上がってくれる』ってまなみさんに教わりました!」ポーン

冬馬「なるほど、そりゃ気合の塊みたいなお前にとっちゃ楽勝か」ポーン

愛「他にもですね! サーブとか得意ですよ!!」ポーン

冬馬「へぇ、どんなのが打てるんだ?」トーン

愛「いちばん遠くに飛ばせます!!」ポーン

冬馬「相手コートに入れような」トーン

愛「トスだって誰より高く上げれますよ!」ポーン

冬馬「あんまり上げ過ぎると逆に打ちづらいぞ」トーン

愛「あ、あとアタックもむこうの壁まで飛ばせますよ!!」ポーン

冬馬「駄目だこいつルール分かってねえ」トーン

冬馬「で、そんだけ練習したんだったら、今度の大会には出るのか?」トーン

愛「人数が足りなくて出られませんでした!!」ポーン

冬馬「……三人しかいねぇもんな、お前の事務所のアイドル」トーン

愛「涼さんや絵里さんがお知り合いの人を呼んでくれたり、まなみさんや尾崎さんや社長も出るって言ってくれたんですけどそれでも足りなくて……」ポーン

冬馬「お前ん所の社長結構年行ってなかったっけか?」トーン

愛「最後にはママが出るって言い出したので全力で止めました!!」ポーン

冬馬「よくやった。マジでよくやった」トーン

愛「ごめんなさい。お役に立てなくて……」ポーン

冬馬「構わねーよ。俺がそっちの事情も考えずに勝手にお前らの事務所に乗り込んだってだけだ」トーン

愛「でも……」ポーン

冬馬「よくよく考えりゃ、876プロじゃ人手不足だってことくらいすぐ分かることだしな」トーン

愛「そうだ! 冬馬さんもあたし達といっしょに出ればいいんですよ!!」ポーン

冬馬「コーチとしてだよな?」トーン

愛「選手としてです!!」ポーン

冬馬「女子バレーだっつってんだろ!」バシッ

愛「涼さんだってバレなかったんですから、きっと冬馬さんも大丈夫ですよ!!」ボスッ

冬馬「お前らなんで揃いも揃って俺に女装をすすめるんだよ!」バシッ

愛「きっと似合いますよ!」ボスッ

冬馬「嬉しくねーよ!!」バシッ!!

愛「あっ」ビッ

ポーン……

コロコロ

冬馬「ほら見ろ。余計なこと考えてるからレシーブミスってボールが変な方に飛んでいっちまったじゃねーか」

愛「ご、ごめんなさい!! すぐ取ってきます!!」ダダダーッ

冬馬「…………」

冬馬「……ふぅ」

冬馬「交渉に行った事務所のアテが外れて、あげく休日返上して知り合いのアイドルのガキと対人パス合戦」

冬馬「こうしてる間にでもコーチに付けるところ探さなきゃいけねえってのに……」

冬馬「にしても、日高のレシーブスキルは本物だな」

冬馬「ちゃんとボールの下に入れてるし、返す方向をしっかり見てる。レシーブ面も綺麗に開いてる」

冬馬「ボールの軌道もギリギリまで目で追えてるし、勢いをコントロールする膝の動きも大したもんだ」

冬馬「埋もれたままにしておくには惜しいな。出場こそできなくても、なにかの形で大会で活躍させてやりてぇもんだが……」



カサカサカサ……ペチッ

冬馬「……ん、なんだこの紙?」ペラ



『探してる 礼はすっから見つけたら夜露士苦』



冬馬「……という文言と共に、無駄に可愛いトラネコの写真が貼っつけてあるチラシ」

冬馬「…………」

冬馬「な……」

冬馬「何だこのツッコミどころ満載の迷い猫ポスターはッ!!」

冬馬「まず字ィきったねえなオイ! 手作り感溢れすぎだろ! 読ませる気あんのか!? つーか書いた本人読めんのかこれ!?」

冬馬「連絡先も住所しか書いてねーし! せめて電話番号くらい載せとけっての!! しかも秋葉原って意外とこっから近所じゃねーか!!」

冬馬「大体手がかりが写真1枚しかねえってどういうことだよ他に書くことあっただろ他のトラネコと区別つくような特徴とかセールスポイントとか!!」

冬馬「何より夜露士苦ってなんだよ夜露士苦ってなんでせっかくの迷い猫ポスターで喧嘩売ってんだよなめ猫かよ!!」

冬馬「つーかなんで口語!? 『お礼は致しますので見つけたら夜露士苦お願いします』とかの方がまだ印象いいぞ!」

冬馬「よくねーよ! 夜露士苦の時点でよくねーよ!」

冬馬「はぁ……はぁ……」

冬馬「…………」

冬馬「…………」

冬馬「…………」

冬馬「……なーんでせっかくの休日なのにポスター相手に全力でツッコんでんだろ、俺」

冬馬「置いていくのもポイ捨てみたいで始末が悪ぃし、適当なくずかごにでも捨てとくか……」

冬馬「もうちょっと頑張れよ。ま、こんなもんで見つかったら奇跡みてぇなもんだが」クシャ

愛「冬馬さーん! ボール拾ってきましたー!!」

冬馬「おー、お疲れさ……」



 ∧∧
( *'ヮ') ニャー

冬馬「」

愛「ついでに可愛いトラネコちゃん拾ってきましたー!!」

冬馬「…………」

 ∧∧
( *'ヮ') ニャースリスリニャー

愛「この子がボールでじゃれてて、しばらく遊んであげたらなつかれました!! えへへー」

冬馬「…………」

 ∧∧
( *'ヮ') ナー

愛「飼い猫さんでしょうか? 首輪ついてるし、人懐っこいし」

冬馬「…………」ガサガサ

愛「冬馬さーん? 聞いてますかー!!?」

冬馬「…………」ポスターチラッ

冬馬「…………」ネコチラッ

 ∧∧
( *'ヮ') ニャン?
   
冬馬「……見つけちまったよ、オイ」

愛「あー! そのポスター! このネコちゃんそっくりじゃないですかー!!」

冬馬「げぇっ! しまったよりにもよって一番面倒くさい奴に見られたっ!!」

愛「さっそく連れて行ってあげましょう! ね! きっと喜ばれますよ!」

 ∧∧
( *'ヮ') ニャー

冬馬「馬鹿言え! 夜露士苦とか書くようなガラ悪ぃ奴のところにお前を連れて行けるかっての!」

愛「大丈夫ですよー! こんなかわいいネコちゃんのご主人さんなんですからきっといい人です!」

冬馬「ネコの見かけで人を判断すんな!」

冬馬「第一、お前は住所見ただけで場所が分かるのか?」

愛「あっ……」

冬馬「…………」

愛「…………」

愛「えっと、そ、そのへんはほら、道行く人に聞けば大丈夫です!!」

冬馬「ロケじゃねーんだぞ! せめておまわりさんにしろ!」

愛「その手がありました!!」

冬馬「納得すんな!」

 ∧∧
( *'ヮ') ニャー

冬馬「お前はちょっと黙ってろ!」

 ∧∧
( *'、') ニャ

冬馬「その顔はそれはそれでむかつくからやめろ」

冬馬「どうしても行くのか?」

愛「当たり前です!! 放っておけません!!」

冬馬「迷子になっても知らねぇぞ?」

愛「その時は道行く人に送って行ってもらって」

冬馬「やめて!」

愛「とにかく、絶対この子を元の持ち主に返してあげるんですっ!! 困ってる人がいたら助けるんですっ!!」

 ∧∧
( *'ヮ') ニャーニャー

冬馬「…………」

冬馬「……はぁ」

冬馬「住所自体は結構近いみてーだし、案内アプリ使えば何とかなるか」パカッ

愛「ついてきてくれるんですかっ!!」パァッ

冬馬「お前一人で行かせたら、何しでかすか分かったもんじゃねえからな……」

冬馬「それに、捨てとくのも気分悪い。乗りかかった船だし、最後まで面倒見てやるよ」

愛「ありがとうございます!」ペコッ

 ∧∧
( *'ヮ') ニャ?

愛「ほら、ネコちゃんもお礼言ってるみたいです!」

冬馬「絶対状況分かってねえだろそいつ」



冬馬「そんじゃ、さっさとこの『拓海』さんとやらのところに乗り込むとするか」

愛「おー!!!」

 ∧∧
( *'ヮ') ニャ-!





冬馬「……の前に、駅前でネコ用の軽いおやつでも買っていくか」

愛「意外とノリノリですね冬馬さん!!」



今回はここまで

話の都合上、接点のないキャラ同士に独自設定で繋がりを持たせることがあります
冒頭に書き忘れており大変申し訳ございませんが、ご了承いただけるとありがたいです

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