アルミン「三本立て?」(119)

>>1 がだらだらと訓練生の日常をつづる。
ぶっちゃけオ○ニー。キャラ崩壊事故解釈あり。書き溜める気なし。不定期更新。ss初心者。一応完結させるつもり。

ミカサ「エレンは私が……」

エレン「ミカサってどっちだ?」

ハンネス「壁外探検記」

の、三本だて。同じスレで別の話三つやるのはマナー違反かもしれないが、三つスレを立てる度胸は無いんだ。すまない。

なお並列進行。

ここまでの地雷原を抜けて無傷な者だけ先に進んでくれ。

エレン「なるほど。つまりお前は」

>>食堂・夕食前

アルミン「あれ、エレン? 今誰と話してたの?」

エレン「ミーナってやつ。髪二つに縛って前に垂らしてる。わかるか?」

アルミン「わかるけど……珍しいね。エレンが女の子に話し掛けるなんて」

アルミン(というか、そもそもエレンが他人の名前を覚えてたのが驚きだよ)

エレン「そうか?」

アルミン「なんの話だったの?」

エレン「別にたいした話じゃねえよ。とっとと晩飯もらってミカサのとこいこうぜ」

アルミン「うん」

エレン「今日のスープには人参入ってると良いけどなぁ。潰してパンに塗って食いたい」

アルミン「なにそれ? そんな食べ方あるの?」

エレン「らしい。さっきき「俺は駄目だ、やっぱり無理なんだ!」っとあれはダズだな、またか」

アルミン「エレン?」

エレン「悪いなアルミン、ミカサと二人で食っちまってくれ。おーい、ダズお前……」

アルミン「ええ? ミカサが怒るよ……って行っちゃった」

アルミン「どうしよう、ミカサなんて言うかな……怒るよりはむしろ、寂しがりそうだけど」


>>食堂・食事中

ミカサ「そう。エレンがそんなことを」

アルミン「意外と冷静だね、ミカサ」

ミカサ「意外?」

アルミン「いや、エレンが来るまで待つとか、追い掛けるとかするかなって」

ミカサ「エレンは心配。食べ物を零すかもしれないし。誰かと喧嘩するかもしれない……でも(チラッ」

アルミン「ん……どうかした?」

ミカサ「わからないならいい」

ミカサ「そう、たまにはエレンも一人になりたいのだろう」

アルミン「そうかもね(どっちかというと一人になりたいのはミカサみたいだけど……)」

ミカサ「どうしたのアルミン?」モソモソモグモグ

アルミン「ううん、なんでもない(お腹減ってたのかな)」

ミカサ「そういえばアルミン、今日の午前中の講義なのだけど」

アルミン「ああ、もしかして効率いい情報伝達のってレポート課題?」

ミカサ「そう、それ。具体的なプランが浮かばない」

アルミン「僕もだよ。明日エレンを誘って資料室に……」


>>食堂前・翌朝

アルミン「おはようミカサ」

ミカサ「おはよう。エレン、アルミン」

エレン「おはよ……そのシャツどうしたんだミカサ」

アルミン「え?」

ミカサ「どうもしない。何故?」

エレン「だって開拓地にいたころは混ざらないように襟んとこに名前書いてたろ? 無いから新しいの買ったのかと思ってさ」

ミカサ「買ってない。借りた」

エレン「そっか。サイズから見てユミルか? よく貸してくれたな」

アルミン(ああ、着替えが足りなくなったのか、それで昨日はエレンを遠ざけたがったんだね)

ミカサ「クリスタが口利きをしてくれた」

エレン「クリスタ? 確か馬術の成績がいいやつだよな」

アルミン「ああ、優しくて可愛い子だよね。確かにユミルと仲が良さそうにしてたっけ」

???「おはようエレン、なんで食堂の前で話してるの」

エレン「あ、ミーナか。別になんでもねーよ。おはよう」

ミーナ「そう? なら早く食堂入ったら」スタスタスタ

アルミン「え、エレン、今のは?」

エレン「ミーナだろ。確かにここにいたら邪魔になりそうだな。とっとと食堂はいろうぜ」スタスタスタ

ミカサ「確かに、エレンのいうとおり」スタスタスタ

アルミン「待ってよ二人とも」タッタッタッ

>>食堂・食事中

ミカサ「それでエレン、さっきの女は?」

エレン「あ? だからミーナだって。隣の班だったかな」

ミカサ「隣の班? それがなぜエレンと知り合いなの?」

エレン「? 別にどこに友達がいたって良いだろ?」

ミカサ「エレンの友達なら私も親しくしたい」

アルミン「あ、ボクも」ムグムグ

エレン「そうか? まあ機会があったらな」

エレン「それよりとっとと食って訓練の準備運動しようぜ」モグモグ

アルミン「良いけど、一講目は座学だよ?」

エレン「マジか。なら尚更急がねーと。良い席取られちまう」

ミカサ「そうね。急ぎましょう」モグモグゴックン

>>一講目・講義室

コニー「おーいアルミン、となり良いか」

アルミン「おはようコニー。どうかしたの?」

コニー「いやあ来週試験だし、講義中に少しでもアルミンの頭のよさにあやかれたらと思ってさ」

サシャ「あ、狡いですよコニー! アルミン、私もとなりお願いします!」

アルミン「えぇ、サシャまで……?」

アルミン「エレン?」

エレン「別にオレは構わないけど。ただお前ら、アルミンと教官の受け答え横で聞いてて頭痛くなってもしらねーぞ」

サシャ「なんですかそれぇ」

コニー「いくらなんでも馬鹿にしすぎだぞこら」

>>30分後

>>30分後

座学教官「で、あるからして夜間浸透作戦においてイニシティアブを……ペラペーラ」

アルミン「しかし昨年解禁された巨人出現以前の人間同士の戦争に置けるプロセス処理第9章には……ペペラペーラ」

コニー「な、何言ってんのかさっぱりわかんねぇ」

サシャ「ムニャ……ムニャ……パァ……ン」スピースピー

ミカサ「エレン、ここなのだけど」

エレン「あー、先週やったところだろ? 確か。それはこっちを一つの数字と仮定して」


>>休憩時間・資料室

サシャ・コニー「アルミン!」

エレン「おまえらもう座学一位って響だけでアルミンに頼ってるだろ……」

サシャ「だってしょうがないじゃ無いですか。効率よい情報なんとかなんて言われたって想像もつきませんよ」

コニー「だいたい何言ってるかもよくわかんねぇ」

エレン「そりゃそうだろ。現行のシステムだって講義でまだ途中までしかやってないんだ。わかってたまるか」

サシャ「エレンだってわからないんじゃないですか!」

エレン「いや、だからそうじゃねぇって。要するに予習してこいって言われてんだよ」

コニー「あ?」

トーマス「そうだったのか!」

エレン「……お前はどこから出てきたんだよ」

トーマス「最初からだよ。向こうにマルコとジャン、あっちにベルトルトもいた。ていうかエレン達は資料室で騒ぎ過ぎだ」

エレン「そ、そうだな。すまん」

アルミン「エレン、それくらいにしてさ」ドサッ

ミカサ「資料は取ってきた。早く考えましょ」ドサッ

エレン「あーわかったわかった」

トーマス「考える?」

サシャ「予習だけでいいって嘘だったんですか!?」

エレン「いや、嘘じゃねえよ。単なるレポートとしてはそれで充分のはずだ」

アルミン「ただ上を目指すなら、予習に加えてそれの欠点を考慮した上での新しいシステムに関する考察を述べた方が良いだろうってことなんだ」

コニー「なあ、レポートは予習じゃ無いよな」

サシャ「つまり勉強すればするだけ成績が上がるってことですね!」

コニー「お、おお! それはすごいな!」

トーマス「いや、普通でしょ。でも具体的にはどんな予習をしたりすればいいのかな?」

アルミン「それは、過去の事件を調べたり、報告書を読み込んだりすれば良いと思うよ」

エレン「あ、でもこっからこっちの資料はオレらが使うから」

ミカサ「他を当たって」

コニー「なんだそれ! 狡いぞ!」

サシャ「横暴です! 抗議します!」

アルミン「まあまあ、資料見つけたらレポートの書き方の相談には乗るから」

トーマス「ありがとう、頼りにしてるよ」

サシャ「いいんですかトーマス! 独り占めですよ?」

トーマス「まあまあ、どうせアルミンが使う資料なんて俺達には無理さ」

コニー「うーん……?」

サシャ「それもそうですね」

???「あれ?」

ジャン「どうしたマルコ」

マルコ「ああ、ここにあった憲兵団の事件記録、誰かが使ってるらしいんだ」

ジャン「ちっ、死に急ぎ野郎が。そうやって点数稼ぎする気か!」

マルコ「いやいやまさか、こんなレポートで心象が良くなったりしないでしょ。実際に憲兵団の人が見るわけでもなし」

ジャン「じゃあなんでマルコはそんなの探してたんだよ」

マルコ「単に興味かな? せっかくの機会だから」

ジャン「お前ほんとにいい子ちゃんだよな」コノコノッ

マルコ「ジャン……いい加減そういう物言い直しなよ」

ジャン「うるせえよ。オレはそういう性分なんだ」


ベルトルト「資料室は静かに使うものだよ、みんな……」ハアッ



とくに山場までつかなかったけど、この話はここまでです。

エレン「ミカサってどっちだ?」

「あなたも売られたの?」


エレン「もうわかったよ。だから」ドシュ

エレン「死んじゃえよ、クソヤロウ」ザク

人さらいA「え?」グラッ バタリ

人さらいB「お、おい、嘘だろ!」

エレン「……」ギィ バタン

人さらいB「お、お前らそこで大人しくしてろよ! 待てこのガキ!」ダダッ ガチャッ

エレン「うおおおぉおぉお!!」ドスッ

エレン「死ね、死んじまえ、お前なんか! お前らなんかっ!」ザクッ ザクッ ザクッ

エレン「っはぁ、っはぁ、っはぁ。大丈夫か? ミカ……ミカサってどっちだ? 黒髪のほうか」

ミカサ「……私」

エレン「そうだよな。オレはエレン・イェーガー。医者のイェーガーの息子だ。とうさんとはあったことあるはずだ」ザクザクバラッ

エレン「ええっと、お前は……お前もさらわれたのか? もう大丈夫だぞ」ザクザク

「わ、わたし……? わたしは」

ミカサ「さんにん」

ミカサ「たしか三人いたはず」ギイィ

エレン「」ナッ ナイフヲッ

人さらいC「なんだこれ……」ッバキィ

エレン「あぐっ」

人さらいC「お前が、お前がやったのか!」ググッ

エレン「くっ、くるし」ク クビガ シマ

ミカサ「あ、ああ」

人さらいC「この、俺がお前を殺してやる」グググッ

「あ、ああああー!」ガブッ

人さらいC「うぐ、この、噛み付きやがって。いてっ。こうなったら商品だからって甘い顔すると思うなよ」バギィ

「げほ、げほげほ、がほ」ヒュー ヒュー

エレン「た、戦え!」

ミカサ「?」

エレン「戦うんだよ! 勝てば生きる、負ければ死ぬ! 戦わなければ、勝てな! うぐぅ」ク クビガマタ

人さらいC「こ、このガキ! 気でもふれてんのかぁ!?」ググググッ

――そうだ、この世界は……

『ミカサ、今晩はノガモが食べられるぞ』

『ちょうちょさん、食べられちゃった』

『ミカサ! 逃げなさい!』

――残酷なんだ。

ミカサ「勝てば生きる……戦わなければ勝てない――!!」

ミカサ「――――!!!」ダッ ドッ ドスッ

人さらいC「う、嘘だろ……こいつら……」バタ ゴポォ

エレン「あ、が、が、ごほっごほっ」

エレン「助かったよミカサ。あとお前も」

「わ、わたしは……その」

ミカサ「生きるためだから」

エレン「そうか」

「……」フイ

憲兵団A「確かに被害届けにあったミカサ・アッカーマンのようですね。しかしもう一人は……」

憲兵団B「やはり被害届は無いな。内地の個人で生計を立てていた家の出かも知れない。本人はなんと?」

憲兵団A「それが、私には居場所はない、なにもない。としか。ですがそれも頷けます」

憲兵団B「なに?」

憲兵団A「誰がはじめたかわかりませんが、こんなことをする子供達ですよ……私にはとても。私たちが来たときは三人黙って抱き合っていましたが、あの顔は……」

憲兵団B「ばか! 滅多なことを言うんじゃない!」


グリシャ「エレン! 自分が何をしたかわかっているのか!」

エレン「有害な獣を駆除した。それがたまたま人間の形をしていただけだ!」

グリシャ「そういうことじゃないんだ! 私は、 エレン「だって!」」

エレン「だって早く助けてやりたかったんだ……今だって……」チラ

ミカサ「……」シン

「……」ボー

グリシャ「くっ……わかった。私は少しミカサと話をして来る。エレン、お前は彼女の相手をしていてくれ」

エレン「わかった」

グリシャ「ミカサ、私は医者のイェーガーだ。以前会ったことがあるのを覚えているかい?」

エレン「なあ、お前さ、名前なんだよ?」

「私、名前、私、いらない子だから」

エレン「名前くらいあるだろ」

「……」

エレン「じゃあ、帰る場所は? 家は?」

「ない。帰れないよ。だって私、あの人達に買われて、私が要るから、なのに」

エレン「うん?」

「ようやく、私が要るって人がいたのに。いても良いって、だから、なのに、私は」

エレン「めんどくさいなお前」

「う……え」

エレン「噛み付いたじゃん。あの時」

「だって、死んじゃうとおもって」

エレン「ならそれで良いだろ」

「え?」

エレン「オレはお前に助けられたんだよ」

「だって、すぐに蹴られて、役に立てなくて」

エレン「お前が噛み付いたから、腕が緩んでオレが喋れたんだろ。ミカサだってお前を見て勇気付けられたのかも」

「でも」

エレン「名前さ、オレが付けてやるよ」

「え?」

エレン「本当に名前無いならオレが付けてやる。どうだ?」

「っ、うん!」

エレン「そうだな、からっぽ……とうめい……ガラス、は味気ないな。クリスタル?」

「わたし、そんな立派じゃない」

エレン「ケチを付けるなら気に入ったって事だな。じゃあちょっと削ってクリス グリシャ「エレン、ちょっと来てくれ」」

グリシャ「ん、どうした? 私の顔なんかじっと見て? なにかついてるか」

エレン「……レンズ」

グリシャ「え?」

エレン「父さん、こいつの名前クリスタ・レンズだ」

クリスタ「あ、く、クリスタ・レンズです?」

グリシャ「そうか。そうか、それは良かった。これで少しは手がかりも掴めるだろう」

クリスタ「え、あの」

グリシャ「すいません、彼女の名前がわかったそうです」

憲兵団A「そうですか。それはよかった……」

憲兵団B「ではこちらで身元を……」

ミカサ「貴女には帰る場所ができたの?」

クリスタ「ううん。でも、私、いてよかったって言ってもらえたから」

ミカサ「いいな。私は、どこに帰ればいいんだろう? 一人は寒いよ……」

エレン「なんだよ、お前もめんどくさいな。ちょっとこっち来い」

ミカサ「?」トットット

エレン「クリスタも」

クリスタ「なに?」タッタッタ

エレン「よし」シュルシュル キュッ

ミカサクリスタ「!?」ゴチン

エレン「このマフラー、オレのだけどお前らにやるよ。二人でそうしてれば寒くないだろ」

ミカサ「……? ……!」ホロホロホロ

クリスタ「うえ……痛い……」ジンジンジン

エレン「帰るぞ、お前ら。オレ達の家に」

エレン「父さん、三人で先に帰ってる」

グリシャ「ま、待ちなさいエレン、こんな時間に一人で帰らせ……三人?」

憲兵団B「イェーガーさん?」

グリシャ「い、いえ、ちょっと待ってください」

グリシャ(勿論、突然家族を失った二人には同情する。家は私の仕事もあって比較的裕福だとは思う。だが、それでもわざわざシガンシナ区に越して来た程度だ。仕事にはなにかと物要りだし、安定した生計をたてるには……)

ミカサ「……」エレンノミギテギュッ

クリスタ「……」エレンノヒダリテギュッ

グリシャ(ひ、一人ならともかく二人は……だがこの場でそれを選び取ることは厳しい。だから正解は憲兵団に預けることで)

ミカサ「イェーガー先生?」ウワメヅカイ

クリスタ「……ジーッ」オドオド

グリシャ「帰りは憲兵団の方が持ってきてくださった馬車がある。もう少し待ちなさい、三人とも」キリッ

憲兵団B「あ、では自分が先に馬車に案内しておきます。三人とも疲れているでしょうし」

この話もここまで。とりあえず初期値妹な妹クリスタを目指したはずだった。

――ハンネスの壁外遭難記

 この記録は、私が目覚めてから三日目に書きはじめたものである。だが、状況の整理のために、目が覚めたその時からの記録として記す。万が一私の命が失われても、この記録が人類の反撃の糧となることを切に祈る。


○月□日
 私は本来駐屯兵団所属であり、代わり映えの無い毎日を送っていた。だからこのメモ帳も、妻がプレゼントしてくれたものでなければ家の引き出しにでもしまわれていただろう。愛しい彼女の先見の明に感謝する。

 さて、先にも述べたが私は本来駐屯兵団であるため壁外に出ることはない。だが、○月△日(おそらく昨日)壁上視察中に大きな衝撃を感じ、気がついたら大地に倒れていた。

 身体に異常はない。装備も一通り揃っている。だが壁が見えない。コンパスは周囲の岩石の磁性が強いのかグルグル回りつづけている。馬もいない。

 結果的には壁の外であったが、とにかく私は壁の外が中かもわからないほど完全に迷子になってしまっていた。希望的観測、楽観的思考を捨て、すぐさま近くに存在した巨大樹の森林に逃げ込んだ。立体起動装置を用い、樹に上ったが、夜だったのでワイヤーの張力だけで上りきった。ガスは補給できない。それどころか使わなくても徐々にガスが漏れ、使えなくなる可能性もある。

 もし一定期間壁を見つけることができずさ迷うことになれば、私は例え壁を見つけてもその下に群れる巨人に喰われることになるだろう。いや、それいぜんに飢え死ぬ可能性も高いが。

 とにかく一日目の記録はここまでだ。

○月☆日
 二日目。私は前日即座に樹上に上がった自身の判断の的確さを自賛した。足元の巨木には二体の巨人がしがみつき、こちらを見上げ喉を震わせている。ここは壁外だ。

 空腹だが喰われることの方が恐ろしい。太陽の動きから方位割り出し、記憶上の壁の位置を割り出す。奇妙であり幸運なことに壁に向かうにはこの森をさらに深く進む必要があるようだ。仮眠をとり夜を待つ。

 夜になった。足元の巨人は2時間ほどで活動を停止。地上に下りて帰路を探索することにする。

 この森は見知らぬ植物が多い。特に発光する苔やキノコが多いのが嬉しい。巨人が活動しない程度、道を見失わない程度の明かり。この苔やキノコを持ち帰り増やすことができれば、人類の大きな力になるかもしれない。そう思った私は、偶然持っていた瓶にそれらを土ごと掬いとった。この発見を持ち帰るまで死ぬわけにはいかない等と、あまっちょろいことを考えながら、偶然発見した木の実をかじり眠りについた。

○月▲日
 つまり今朝。相変わらず足元は巨人でうるさい。今日は5体だ。このあたりに人間がいるとは思えないから、やはり壁、特に都市部が近いのかも知れない。

 巨人は何をためらっているのか巨大樹をへし折るつもりはないようなので、昨日の木の実の残りを食い、仮眠をとることにする。

 そして私は恐ろしい発見をした。たった一晩でその恐ろしさを味わい尽くしたとは言い難いが、とにかく恐ろしい発見だった。巨人を捕食するモノの存在である。

 私が大地を徒歩で移動していると、巨大な玉ねぎのようなものが道を塞いでいた。

 道、と言っても私が勝手に決めたルートでしかない。避けて通れば済む話だだが私はちょっとした興味からそれに触れてみた。するとそれは頂点からぷっと何かを吐き出し、それ自体はぽんと空に跳ね上がった。思わず身構えたが、襲い掛かって来るそぶりは無い。とりあえず見なかったことにしようと下を見ると、見慣れないものがある。妙に大きな単子葉植物だ。

 正直にいえば自分でもどうかしていたと思う。何かに呼ばれた気がして、次の瞬間には私はそれを引き抜いていた。まるで昔読んだ童話のようにスポンと小気味よく抜けたそれは、なんというか『小人』だった。

 私の腰程度の身長だが、頭のてっぺんから生えた植物の芽のようなものは胸まで届くだろう。短い手足でもたもた動いているが、動き自体は素早い。顔に当たる部分には目が二つだけついている。地面から引き抜いたときに悲鳴を上げたような気がしたが、口はない。耳も鼻もない。

 警戒しつつ私が周囲を歩き回ると、まるで鳥の雛がそうするように私の後をついてきた。黒い身体に黄色い目。こういうとなんだか猫のようだが、それより遥かに弱々しく、だが妙な親近感がわく。たった一日で孤独に堪え難くなっていた私は、これに友人である『エレン』の名を捩り『エレミン』と名付け連れていくことにした。

 間もなく、エレミンと玉葱のようなもの――オニオンと呼称する――が一組の存在であると気付く。というのも、エレミンは赤い大きなキノコを見つけるとそれを器用に根から切り取り、私達について来ていたオニオンの元へ持って行った。オニオンはそれを吸い込むと、新たにエレミンの種子らしき物を2つ吐き出した。

 エレミンを羊とするなら、オニオンは牧場主、私は他所から雇われてきた牧羊犬と言ったところか。目をだしたエレミンを引き抜くと案の定しっかりついてきた。せっかくなので一匹目には目印になるよう、頭の葉っぱに血で印しをつけてみた。

 ともあれ三匹。私の半分ほどの身長の生き物が三匹だ。巨人を殺すには人間が三十人犠牲になるという。それは勿論大型の巨人の話だし、昼間活動してる巨人が相手の話だ。だからこの時見た光景はそれとは全く条件が違う。だが、この時目の当たりにした光景を、二度と忘れることは出来ないだろう。

 三匹のエレミン達は、活動停止している3メートル級の巨人を見つけると、迷わず三匹がかりで担ぎ上げ、オニオンへと運んでいった。私が唖然としている間に、巨人はオニオンに吸い込まれ三つのエレミンの種子になった。

 私はそのエレミン達を引き抜くことが出来なかった。

 三匹のエレミン達は明け方近くにオニオンに飲まれたが、種子を吐き出す様子は無いので明日……いや、今日の晩にはまた出てくるのだろうか? 今樹上でこの記録を書いているが、私の頭の上に今もオニオンが浮いている。優秀な牧羊犬であれば、もし私より優秀な者が見つかれば、あるいは……いや、とにかく今日はもう寝てしまおう。明日も新たな記録をつけられることを祈る。



○月■日
 気がつけば日が大きく傾いていた。記録をつけるのに時間がかかったせいだろうか? 随分長く寝てしまったようだ。オニオンは相変わらず私の頭上に浮いていて、足元には二匹の巨人がいた。エレミンの芽は何度も踏み付けられてはいるが、しぶとく立ち上がっている。まるで本当に彼のようだ。とりあえず木の実をかじり、奴らが活動を停止するまで待つ。記録はまた夜の探索が終わってから再開する。

これで全部の話の書き溜め使い切り。

こんな話を暇をみては書いていきます。
なお書き方に関する注意など聞けると嬉しいです。

>>午後一講・医術実習

トーマス「助かったよ」

エレン「ん?」カキカキ

トーマス「レポートさ、正直何から手をつけていいかわからなくて」

エレン「礼ならアルミンに言えよ。オレなんもしてねーし」クビセイジョウ.テクビカクニン.アシクビハット

トーマス「そう?」

エレン「オレはまだ自分の分も終わってないしな……記録よし。今度はトーマスの番だな」

トーマス「随分早いね。しかも話ながら?」

エレン「ん、まあな」

トーマス「コツとかあるの?」

エレン「飽きるまで人体解剖図を丸写しする」

トーマス「そんなことしてたの!?」

ハンナ「どうかしたの?」

トーマス「ああ、エレンが脈とるの早くて」

ハンナ「トーマスが探し易いんじゃない? フランツも見つけやすいのよ?」

フランツ「それはそうさハンナ。君への愛の鼓動は、隠そうったってなかなかそうはいかないもの」

ハンナ「もう! フランツったら」

エレン「いいからとっととしろよバカ夫婦。パートナー変えてもう二回やるんだぞ。あとトーマス、オレの脈はそんな下じゃねえ」

ハンナ「や、やだエレン!」

フランツ「そんな! お似合い夫婦だなんてまだ早いよ!」

エレン・トーマス「」イラッ

エレン「トーマス、向こうでベルトルトとアニがやってるからさ、あっち行かねぇか」

トーマス「ダメだよエレン。一度座ったら講義中は立ち歩いちゃいけない」

エレン「クソッ! トイレに行ってる間にジャンに席取られるとかついてねぇ」


ジャン「み、ミカサの手がオレの首に」

ミカサ「ジャン、動かないで。脈が測れない」

アルミン「よろしくねマルコ」

マルコ「うん……ゴメンね。ジャンが強引で」

アニ「あんた、もう少し腰を曲げてくれない? 手が届かないんだよ」

ベルトルト「あ、ああ、ごめんね」

トーマス「ようやく終わったね」

エレン「ああ。二人がお互いの脇を突きあいながらクスクス笑い出したときはどうしようかと思ったが、教官に突き出して事なきを得たぜ」

トーマス「仲間の問題行動を見逃したって怒られるかと思ったけどね」

エレン「あー、二人分だけど他より大分早かったからな。学ぶ姿勢が評価されたんだろ」

トーマス「それにあの二人、二年目に入ってもう六回目だからね。教官も慣れて来たのかな。だったらもう二人を引き離せばいいのに」

エレン「組ませておくと能率上がるからな。明らかに」

トーマス「そうなの?」

エレン「うーん、一人一人の時の5割り増しってところかな。例えば立体機動の擬似討伐訓練な、ハンナが先行して索敵しつつ、フランツがその分弾丸みたいな勢いで突っ込んでくんだ」

トーマス「へえ」

エレン「先が見えてるからだろうな、あのフランツにはちょっとおいつけねえ。ハンナの合図も横から見てるとわけわからんし」

トーマス「信頼できるパートナーの力ってやつか」

エレン「まあ、ハンナより先に見つければ別に問題無いんだけどな。あいつスピードは女子の平均だし」

トーマス「まあ参考にはならなさそうな話だね」

エレン「あいつらから学ぶならむしろ技巧術の方だな。あいつらの道具いつもキチンとしてピッカピカでさ」

トーマス「ああ、それは聞いたことある。なんでも整備の時お互いの装備を交換して……」

>>夕食・食堂

エレン「ふーん? ジャンのやつ、医術苦手なんだな」

ミカサ「というより、私の脈が測りにくいのかもしれない。マルコやアルミンも時間がかかっていた」

アルミン「い、いやあ、単に女の子の首に触るのに抵抗があったんじゃないかな? ほら、特にミカサってさ、普段マフラーで首が隠れてるから(他のところより一段白くてなんかドキドキした……)」

ミカサ「そうかしら? エレン、測って見てくれる?」

エレン「え、やだよ。今パン食ってるし」

ミカサ「後でいい」

エレン「ん、ならいいや」

ミカサ(これで医術実習での遅れを……)

エレン「そういえばレポートのネタなんだけどさ」

アルミン「なにか思いついたの?」

エレン「うーん、気球ってなんで使えなくなったんだっけか」

アルミン「壁の周りで吹く風が、主に外から壁にむけて吹いていること、アンカーを下ろすと巨人がそれを手繰ること、壁の上と下のたった50メートルでも正確な情報伝達が難しいこと、後は単に地上と空で移動速度が」

エレン「あ、ああ、わかったわかった。空を物が飛んじゃいけない理由はないんだよな。じゃあさ、ちょっと無茶かもしれないが……」

翌朝・資料室

???「あいつらが見てた記録は……」

???「違うな、これじゃない。持ってったのに見なかった記録があったな」

???「よし、これだ!」

???「あいつらが隠したかった記録ね、何が書いてあるんだ?」

???「へえ。なるほどな。こいつは良いネタだ」ビリッ

一講目・立体機動

エレン「今日こそミカサのやつに……」

ナック「ちょっと待てよエレン、先約があったろ」

エレン「あ? ああすまん、そうだったなナック。えっと、そっちの金髪は」

ナック「こっちはミリウスだ。ミリウス、こいつが」

ミリウス「エレン・イェーガーだろ。知ってるさ。ミリウス・ゼルムスキーだ」

エレン「ああ、えっと、よろしくなミリウス」

エレン「でもなんでオレなんだ? ナックは去年同じ班だったけど、今年はジャンの奴と同じ班だろ? ミリウスは初めてだし。習うならオレよりあいつの方が良かったんじゃ……」

ナック「いや、まあ駄目元なんだけどさ。トーマスに言われてね」

エレン「トーマス?」

ナック「ああ。寝床が隣なんだ」

エレン「それで、何を言われたんだ?」

ナック「あー、なんていうかさ、お前去年までは成績低かったろ」

エレン「なんだそれ、嫌みかよ。どうせ今も上位の連中には追いついてねーよ。わかってるならオレよりジャンとかに習えば良いだろ」

ナック「いや、そういうなって。トーマスが言ってたんだよ。お前は努力の仕方を知ってるって」

エレン「……?」ワカラン

ミリウス「まあ、とにかくはじめようぜ。後悔は絶対しないからさ」

エレン「後でわからなかったとか言うなよ?」

ナック「ああ」

ミリウス「もちろんだ」

キース「そこ! いつまで喋っている! とっとといかんか!」

エレン「は、はい! エレン・イェーガー行きます!」バッ

ナック「ナック・ティアス! 前進します!」ババッ

ミリウス「ミリウス・ゼルムスキー! 跳びます!」シバッ

ナック「おいエレン、おまえが先に行ってどうするんだよ」シバッ

エレン「ん、なんだ?」キュルルルル

ミリウス「やっぱり俺達よりは大分速いな」ガシュ ヒュバアアアァ

ナック「だから、どこが悪いのか見てほしいんだって!」ドシュ シュバッ

エレン「えー? なーんーだーってー!?」シュゴ バビュン

ミリウス「だ、ダメだあいつ、聞こえてない」ヒュバァァアアア

ナック「ちょっと止まれー!!」クワッ

エレン「ん、なんだ?」ガツッ

ナック「あのなぁエレン、俺達はお前に立体起動を教えてくれって頼んだんだぞ」ガガッ

エレン「ああ? だから一番前を行ったんじゃ無いか」

ナック「?」

ミリウス「……!」ピーン

ミリウス「すまないエレン、見て盗める段階じゃないんだ。トーマスとかに教えたみたいに、見てなにが悪いか教えて欲しいんだ」

エレン「ああ、教えるってそういうことだったのか」

ミリウス(あっさり納得した……というか何故勘違いしたし)

ナック「じゃ、じゃあ改めて行くぞ? ミリウス」シバッ バヒュッ

ミリウス「ああ! 頼むぜエレン」シバッ ビュン

エレン「おー。……さて、オレも行くか」

エレン(二人とも別にそんなに遅いわけじゃないよな)

エレン(ナックよりミリウスの方が速いけど、身のこなしっていうよりは……)

エレン(おー、やっぱり。後ろから見てると上下左右のブレが小さいな)

エレン(う、嘘だろミリウス! そんなとこ通れるのかよ!)

エレン(真似しようとしてナックが……うわっ)

エレン(姿勢が違うからだなあれは)

エレン(あ、でも持ち直した。すごいな。ボディバランスはナックが上だ)

エレン(ミリウスが速いのは姿勢のせいもあるな。でもアンカーの制御が細かいから慣性を殺してる)

エレン(……)ウズウズ

エレン(あの姿勢を試してみたい)

エレン(ていうかオレが習いたい)

エレン「くそっ! 待てよふたりともー!」シュバッ シュバッ

ナック「お、おまえ、結局俺達追い抜いて行きやがって」ハァッ ハァッ

ミリウス「や、やっぱり出来るやつってのはなに考えてるのか、わからない」ゼェ ゼェ

エレン「いや、見てるだけじゃわからないからさ、見て気付いたことを試そうかと思って、な?」

ナック「……」ジッ

ミリウス「……」ジロッ

エレン「わ、わるかったよ」

ナック「それで、そうするだけの価値はあったのか」

エレン「まあ見てて、思うところは色々あったよ」

エレン「とりあえずミリウスは遠くまで見てコースイメージできてるよな、その分姿勢とかはスピードを意識してて良い感じなんだけど」

ナック「うんうん」

ミリウス「その分コース取りにこだわりすぎて、アンカー一発一発が慣性殺して勢いが乗ってない」

ミリウス「そうなのか?」コソコソ

ナック「俺に聞くなよ」ボソボソ

エレン「もっと余裕を持っていい。実感は無いだろうけど、ガスが方向修正にばかり使われて加速に使われてないんだ」

エレン「コースを見る目はあるみたいだから、いつもより長くワイヤーを使うことを意識してみたらどうだ? あとは、身体の軸がぶれないように背筋と腹筋にもう少し力を入れるのも効果がありそうだ」

ミリウス「背筋と腹筋? それで身体の軸が安定するのか?」

エレン「少なくとも俺はするぞ。あ、素早く何度もやるんじゃなくて、負荷をかけながらゆっくりやるんだ。結構違うもんだぜ」

ミリウス「ふーん……試してみるよ。ありがとうな」

エレン「いや、オレも参考になったし」

ナック「それでエレン、俺はどうなんだ?」

エレン「うーん……ナックはなぁ」

ナック「な、なんだよ?」

エレン「ボディバランスは悪くないんだけど、問題なのはビビりすぎなところだな」

ナック「ビビ、ビビってねーよ!」

エレン「でもお前、ずっと失敗したときのこと考えて跳んでるだろ」

エレン「おかしいと思ったんだ。枝とかに何度もぶつかる割にすぐに復帰するから。あれはあれで貴重な能力だと思うけど、姿勢は悪いし、ガスを全然吹かしてない。アンカーが手元を離れるのが怖いせいで、一回一回の射出スパンが長いのがせめての救いだな」

ナック「……俺、そんなにひどいのか」ドヨーン

ミリウス「え、エレン!」

エレン「ん、ここが森林地帯だからそういうのも悪くないけど、お前ら憲兵団や駐屯兵団狙いだろ? 市街地とかの障害物少ない場所だと遅いだけだしなぁ」

エレン「あ、気にしなくても怪我が怖いのは誰だってそうだと思うぞ。それをまだ引きずってるのは情けないと思うけど」

ナック「……」チーン

ミリウス「ナックゥ!?」

エレン「まあ原因が単純なら対処法もわかりやすい。スピードに慣れて、自信を付けて恐怖心を克服すれば良いんだ。アルミン名付けて立体起動ブランコ特訓法!」グッ

ミリウス「ま、待て待てエレン! ナックがまだ立ち直ってない!」

エレン「ん」ピト ピト

エレン「脈も呼吸も正常だし、単に落ち込んでるだけだろ。克服法があるって言ってるのに立ち直れないなら教える意味も無いよ」

ミリウス「そんな、俺達は」

ナック「あ、ああミリウス。エレンの言う通りだ」

ナック(話に聞いたより、印象より優しいだなんて単なる錯覚だった)

エレン「じゃあやり方説明するぞ、あ! 訓練中にとかは無理だから、休日に教官の許可をとって実践しろよ。あと付き添いは最低二人いないと辛いな」

ナック(そりゃ調査兵団志望で、成績なんか適当で良いだろうと思ったこともあったけど、そんなわけないんだ)

エレン「アンカーを頑丈な木の枝に刺して、思いっきりガスを……」

ナック(ただ訓練に真剣なんだ、こいつは)

エレン「きいてるか?」

○月■日
 気がつけば日が大きく傾いていた。記録をつけるのに時間がかかったせいだろうか? 随分長く寝てしまったようだ。オニオンは相変わらず私の頭上に浮いていて、足元には二匹の巨人がいた。エレミンの芽は何度も踏み付けられてはいるが、しぶとく立ち上がっている。まるで本当に彼のようだ。とりあえず木の実をかじり、奴らが活動を停止するまで待つ。記録はまた夜の探索が終わってから再開する。

 足元の5メートル級と3メートル級が活動を停止したので、地面に降りた。案の定高度を落としたオニオンは種ではなく3匹のエレミンを吐き出す。1匹の頭の葉にはしっかり血の印しがついている。なんとなくほっとした。

 大地にたったエレミン達は私の予想を裏切り、目の前の3メートル級には目もくれず私の前に立っている。というか心なしかモジモジしている。なにかを恥じているような? 試しに3メートル級を指差すとパタパタと駆け出しそれを担ぎあげた。指示を待っていた? 昨日指示無く動いたことを恥じていた? 随分と飼い馴らされた……羊と言うべきか兵士と言うべきか。

 とりあえず私も動くことに決め、昨日巨人から生まれた3匹のエレミンを引き抜く。一応アンカーを樹上に撃ち込んでおいたが、やはり巨人から生まれたとはいえ人肉を求めたりはしないようだ。そもそも人肉を求めるのでは無く殺戮を求めるのだったか。まあ細かいことはどうでもいい。とりあえずこのエレミン達も私の言うことは聞くようだ。

 試しに5メートル級を運ぶように指示してみる。だが、やはり重量的に厳しいらしい。3匹では巨人は動かなかった。まもなく先に3メートル級を運んだ3匹が戻って来る。単純に計算すればだいたい14匹、甘く見積もって10匹いなければ動かないはずだ。なので、先の3メートル級から生まれたであろう3匹が必要だろうと判断し引き抜いた。1匹分は私でなんとかなるだろうかと思いながら。

 だが、新たに生まれた3匹を連れて巨人の下に戻ろうとすると、印付きに先導され、たった5匹のエレミンによって5メートル級が運ばれて来ていた。確かに巨人の体格は物理法則にそぐわないだとか、見た目以上に軽いだのと言われるがこれは無いだろう、そう思ってまじまじと見て気がついた。足が震えている。

 エレミン達は黒い顔を若干赤く、さも必死ですといわんばかりに歪め、プルプル震えながらよたよたと歩いて来ていた。

 オニオンが5メートル級を飲み込んだとき、立っていたエレミンは私が引き抜いたばかりの3匹と印付きだけで、残りの5匹は軒並み倒れ伏し動かなくなった。吐き出されたエレミンの種子は8つ。彼等が何匹分の仕事をやり遂げたのかが気になるところだ。

 ともあれ、印付きと3匹で周囲の散策をする。今までオニオンに取り込まれた巨人は3体、しかし▲日に見た巨人は5体いた。あと2体が近くをうろついていないとは限らない。軽く一周して、見つけたキノコを運ばせ、自分が食べられそうな木の実を拾い、戻った頃には収穫できるようになっていた8匹のエレミンを引き抜く。新たに投入した青と赤のキノコを合わせると、全部でエレミンは21匹になるだろうか? そう思ったが、なぜか2つのキノコから生まれたのは3匹だった。

 キノコが小さかったのか? 謎はつきないがとにかく20匹のエレミンを連れて森を進むことにする。今さらながら、オニオンがなにかを取り込むと、種子が撒かれ収穫に時間がかかり探索のテンポが悪くなる。キノコ等を見つけても、朝までは運ばせ、明け方にオニオンに取り込ませるべきかもしれない。まあ、エレミンが命令を聞いてくれればだが。

 結局今日はそれ以上にエレミンを増やす機会には恵まれなかった。……今樹上にて記録を付けている。そういえば水筒の水が尽きた。草の茎や、木の実等でなんとかなっているが、正直辛い。沢でも見付けてたっぷり水を飲みたい。あと酒が恋しい。

○月★日
 今日は5メートル級が一体樹にしがみついていた。なんとなく釣りをしている気分を思い出す。そういえば私には擬似餌としての価値もありそうだ。

 いけない、オニオンが巨人を取り込むのを見てしまって以来、自分自身いらつくほど悲観的になり、彼等に恐怖を抱いている。巨人と戦うには、まず恐怖に屈服せず戦うことから始めなければならないというのに。仮にも同胞と呼べる存在に恐怖を抱くとは。情けないかぎりだ。

 夜を待つことにする。

 夜になり巨人が活動を停止してから、最初にしたことはエレミン達にオニオンに運ぶな、と命令することだった。これにはなかなか苦労したが、印付きを先導役にし、彼を担ぐことで事なきを得た。

 しかしエレミンは驚くほど軽い。多分私の10分の1も無いだろう。なぜ彼等がたった8匹で5メートル級の巨人を担げるのか理解に苦しむ。

 なお、試しに軽く上に放りあげたら、空中でバランスをとったのか見事に両足で着地して見せた。高いところにある木の実などをとってくれないだろうか?

 ともあれとくに変わったことはない一日だった。5匹ではあれほどへとへとになったというのに、8匹では何時間歩き続けてもびくともしない。彼等の謎は深まるばかりだ。

 今日の昼間のうちに書いたことを読み返した。恐怖とは案外そう見えないモノにこそ、強い毒として潜むのかもしれない。

○月▼日
 昼間は方位を確認した。

 本日の釣果は12メートル級及び5メートル級各1体、3メートル級2体だ。12メートル級の運搬には18体のエレミンが必要になったので、少しだけ根性をだしてもらい全部まとめてオニオンに放り込んだ。

 昨日時点で28匹のエレミンも、これで68匹になった。多い。やはりこの数になると完全な統制は難しく、気が付けばキノコを拾いオニオンに駆けていく者がある。私の歩んだ軌跡に点々とエレミンが植わっているのだろうか?

○月●日
 今日は足元に巨人がいない。

 今日の出来事はどんなに悔やんでも悔やみきれない。エレミンを27匹失った。

 巨人には通常種と奇行種がいる。調査兵団が数多の犠牲を出しながら我々に伝えてくれたことを、私は完全に失念していたのだ。足元に巨人がいないことで気が緩んでいたのだろう私は、エレミン達と合流したところで7メートル級の奇襲を受けた。

 私たちですら彼らに襲われればひとたまりも無い。小人と見紛う彼等エレミンではいわんや。ただの踏み込みで8匹程、私を食べようとしたらしい噛み付き(頭突き?)でさらに5匹程が潰れてしまった。

 だがエレミン達は思いの外襲撃者に対して獰猛だった。足元にいたもの、顔のそばにいたものが一斉に巨人によじ登り、その小さい手と頭の葉で襲い掛かった。彼等には、人の胴程ある太さのキノコの茎? を一撃で綺麗に切り裂く能力がある。それが巨人に対して遺憾無く発揮されていた。

 足首は切り落とされ、再生しようとするさきから彼等の手に突かれ切り裂かれ、顔を襲うものは遠慮無く目を、耳を、鼻を破壊している。じたばたと暴れるその手元で何匹かエレミンが潰されているが、どちらもお構わずひたすら攻撃と再生と悪あがきが繰り返される。

 戦死者が25を超えた頃、さっきまで顔の前で暴れていた印付きが私の下に来た。指示を期待していたのか、本当のところはわからないが、私は対エレミンということになると、どうやら妙な勘のよさがあるらしい。本能のおもむくままに彼を掴みあげ、なにも気負うことなく巨人のうなじに向かって投げていた。

 エレミンは投げられながらも空中で華麗なターンを決め、その頭の葉で巨人に止めを刺した。あの葉には超硬質ブレードに劣らない鋭さがあるというのか。

 その後整列させ、数を数えたところエレミンは41匹になっていた。私の判断の甘さと遅さが、27の戦死者という答えになっている。そもそも私は印付きが手元に来るまでなにもできていなかった。シガンシナ区のときとなにも変わっていない。情けない限りだ。

 私は今も、おそらく八つ当たり気味に、エレミンを恐れている。

うっかり名前欄に入れ忘れたけど、ハンネスの壁外探検記はここまで。
大人気なその2はもう少し待ってほしい。

エレン「スパッツァ・カミーノー!」

エレン「スパッツァ・カミーノー!!」

エレン「煙突掃除はいりませんかー!?」

アルミン「あれ、エレン?」

エレン「おお、アルミン元気か?」カリカリ

アルミン「うん。今日もお疲れ様」

エレン「毎日の牛乳代と、パン代くらいにはなるからな。シガンシナ区が寒い地方で助かったよ」

アルミン「あんまり煙突掃除屋さんいなかったし、体が小さい子供の方が向いてるもんね。その仕事は」

エレン「ああ。ただ母さんが繕ってくれたシャツがすぐ真っ黒になるのと」

悪ガキA「あ、まっくろくろすけがいるぞ!」

悪ガキB「コジキのガキがいるぞー?」

悪ガキC「きったね~」

エレン「……ああいうのが湧くのが面倒だな」

アルミン「エレン……」

  ボーン ボーン ボーン ボーン……

エレン「昼の鐘だ……ミカサが母さんの弁当持ってきてくれる、広場に急ごう!」

アルミン「ちょ、ちょっと待ってよ! 急ごうって……僕お昼持ってないよー?」

エレン「だーいじょぶだってー! ほら早くー!」

アルミン「待ってってば~」

アルミン(僕の親友が、今日から働くから昼間は遊べない……なんて言い出したのはだいたい一年前くらいだ)

アルミン(元々は夜だった勉強の時間を、おじいちゃんに頼み込んで朝に回してもらったけど、エレンの勉強時間は夜のままで、結局彼と遊べる時間はあまり増えなかったっけ。だから僕はもっぱら彼女達と遊ぶようになった)

エレン『あ、そうそう。こいつがミカサでこっちがクリスタ。オレの新しい家族だ』

アルミン(まるでついでのように二人を紹介されたときはほんとに驚いたな。どう考えてもそっちの方が大事だったろう。それだけ僕と過ごす時間を大事に思ってくれていたのだろうけど)

ミカサ『……』ジーッ

クリスタ『……』チラッ チラッチラッ

アルミン(二人の、こいつなんなの? 的な目が忘れられない。特にミカサ。射貫かれるんじゃないかと思ったな。あの時は)

アルミン(でも二人とも可愛いよな)

アルミン(買い物してるカルラさんの後をとことこついていく二人はあっという間に商店街のアイドルになった)

アルミン(特に、エレンに代わってグリシャさんの鞄持ちに任命されたクリスタは、どんどん知名度があがって、あっちこっちで男の子に惚れられた)

アルミン(無理矢理キスしようとした子が2人、構ってほしくて意地悪した子が3人、エレンとミカサに粉砕された。あと、普通に告白した子が5人いたけど、私はお兄ちゃんのだから。の一言で玉砕した)

アルミン(エレンが気付いてるかどうかは知らないけど、最近のエレンや僕に対する嫌がらせは『よそ者』だからとか『異端者』だからとかっていう親からの受け売りじゃなくて)

アルミン(クリスタといちゃいちゃしやがってこの野郎! というやっかみが主流だ)

アルミン(そのせいか僕がターゲットになる確率は激減している)

アルミン(僕も告白して玉砕したのが広まってるしね)

アルミン(……)

アルミン(あ、ちょっと涙出てきた)

エレン「あっ」

アルミン(エレンがスパートをかけた。ミカサと……クリスタとグリシャおじさんもいる)

エレン「とうさん! 今日はとうさんとクリスタも一緒な」ダッ

グリシャ「エレン、待て(ステイ)!」ピタッ

アルミン(因みにシガンシナ区男子の嫉妬を一身に受けてる僕の親友は、絶賛ファザコンとマザコンをこじらせている)

アルミン(白衣を着たグリシャおじさんが、煤で真っ黒になったエレンを片手で押し止めている様は、まさに泥だらけの犬と飼い主の攻防だ)

グリシャ「まてよ、まてよ……エレン、まずはエプロンを脱いで畳みなさい。クリスタ、タオルを」

ミカサ「クリスタ、一枚」

クリスタ「はい。私は手を拭くから、ミカサは顔をお願いね」

エレン「……」フンスッ フンスッ

グリシャ「エレン、待てだ。大人しくしているんだぞ……」

アルミン(ミカサとクリスタが顔や手を拭いている間も、エレンはグリシャおじさんに飛びつこうとタイミングをはかっている。白衣が汚れたら困るのはグリシャさんだけど、脈絡無くお父さんの手を煩わせたいようだ)

アルミン(ていうか間違いなく一年前より振る舞いが幼いよね)

ミカサ「お義父さん」

クリスタ「できたよ」

グリシャ「よし」

エレン「とうさん、仕事お疲れ様っ!」ダキッ

グリシャ「よしよし、エレンもお疲れ様。今日はアルミン君もいるんだね。カルラの作ってくれた弁当をみんなで食べようか」ワシャワシャ

エレン「クリスタもとうさんの手伝いお疲れ様」フゴフゴ

クリスタ「お兄ちゃん、お義父さんの白衣に涎がついちゃうよ?」

ミカサ「……」ジー

グリシャ「ミカサもお弁当持ってきてくれてありがとう」

ミカサ「……」ジー

エレン「ミカサもかあさんの手伝いお疲れ様」フゴフゴ

グリシャ「エレン、会話するときは相手の目を見なさいといつも言ってるだろう」

エレン「……はーい」パッ

ミカサ「私は構わない。そんなことより早く皆でお弁当を食べたい」

グリシャ「そうだな、じゃあそこの公園にでも行こうか」

エレミカクリ「はーい」

アルミン「僕もいいんですか?」

グリシャ「構わないよ。エレンがいつも世話になっているしね」

………………

グリシャ「かあさんの弁当はやっぱりうまいなぁ」

ミカサ「このサンドイッチのトマトは私が切った。エレン」

エレン「ん? ああ、美味しいな」

アルミン「でもここにみんな集まったら、カルラおばさん一人でお昼食べてるの?」

グリシャ「……だから今晩は私一人でエレンの部屋だよ」

アルミン「ご愁傷様です」

クリスタ「お義父さん……」ヨシヨシ

アルミン(はっきり言って)

アルミン(イェーガー家の状態はかなり危ない)

アルミン(一見大人に従順なようで、その実エレン以外に興味が行っていない義姉妹)

アルミン(一年前の息子の所業に対して、教育方針や接し方に関する着地点を見つけられないでいるグリシャおじさん)

アルミン(カルラおばさんは三人の子供を平等に、我が子のように扱っているけど、エレンに依存する二人と今一馴染めないでいる)

エレン「そっちのサンドイッチの中身は?」

ミカサ「タマゴ」

エレン「いいな! 一口くれよ!」

ミカサ「これは私が焦がしたやつ。お義母さんが作ったのはクリスタが食べてる」

エレン「クリスタ」

クリスタ「ん」

エレン「あむ、ん。やっぱり美味しいな。ありがとクリスタ」

アルミン(こうしていれば普通に仲の良い家族なのに)

アルミン(結局、ミカサとクリスタの必要としているものが違いすぎるんだよな。家族を求めているミカサと、自分を求めてくれる人間をもとめるクリスタ)

アルミン(その食い違いとエレンに対する依存心が微妙にグリシャさんとカルラさんを遠ざけてる)

エレン「あー美味しかった」

ミカサ「エレン口元が汚れてる」

クリスタ「ミカサ、ハンカチあるよ」

ミカサ「ありがとうクリスタ」グイグイ

エレン「こ、こら、やめろミカサ」

クリスタ「お義父さんとアルミンもハンカチ使う?」

アルミン・グリシャ「ありがとうクリスタ」

グリシャ「それで、みんな今日この後の予定は?」フキフキ

ミカサ「私は家に帰ってお義母さんの手伝い」

クリスタ「私はお義父さんと一緒だよ? お薬買い足しに行くんだよね?」

エレン「オレは今日西の方回れば、今週分を全部回れるから、少し遅くまで頑張ってみる」

アルミン「それじゃあ明日は一日暇なんだ?」

ミカサ「それなら薪集めを手伝ってほしい」

エレン「おお、良いぞ」

クリスタ「お、お義父さん、私は明日は?」

グリシャ「ん、午前中は仕事はないし、午後は内地まで行くからね。クリスタに任せるよ」

クリスタ「なら私も薪集めに行く」

エレン「そうか。一緒に薪集め頑張ろうな」

グリシャ「息子と義娘が遠い……」

アルミン「ご愁傷様です」

ミカサ「それじゃ、お義父さん、クリスタ、エレン。先に家に帰ってる。アルミンもまた明日」

クリスタ「ミカサ、お兄ちゃん、アルミン、またね」

グリシャ「エレン、仕事しっかり頑張りなさい」

エレン「行ってきます、父さん、ミカサ、クリスタ。アルミンもまたな」

アルミン「みんな、またね」

アルミン「……」

アルミン「エレンもグリシャさんもカルラさんもいい人なんだけどな」

アルミン「やっぱり時間が解決してくれるのを待つしか無いのかな」

とりあえずその2っていうかクリスタの人気に嫉妬。>>1が書きたいのはその1だ!
……まぁクリスタかわいくかけるように頑張る。
のたくさ書いてたらネタがよそ様と被った。でもそんなの関係ねぇ! ナックとミリウスのキャラねつ造してごめんな。
ちなみに>>1はナックが茶髪、ミリウスが銀髪だと思ってる。ゼルムスキーってロシア人ぽいやん。
声の聞き分けとかできたらわかったんだろうけどな。
ハンネスさん好きなんだけど、しばらく出番なくて悲しかったな。なんで審問会の時呼ばれなかったんだろうな?


本編で説明し忘れたどうでもいい補足

・グリシャ「……だから今晩は私一人でエレンの部屋だよ」

エレンの部屋にシングルベッド1つ、両親の部屋にダブルベッド1つしかないイェーガー家では
ベッドの使い方が毎日違います。

ダブルベッドの定員は『大人2子供1』及び『大人1子供3』 シングルベッドは『大人1子供1』
毎晩のベッドの使い方は、仁義なきエレン争奪戦の結果がそのまま反映されたものです。

なおグリシャさんが一人でエレンの部屋というのは、
2人がイェーガー家に来たばかりのころからみられる極めてスタンダードなスタイルです。

閑話>>昼食・山中

ミリウス「」グター

ナック「」グテー

トーマス「」デロン

ダズ「」チーン

サムエル「」グデン

クリスタ「」クテー

アルミン「」……チーン

ミーナ「み、水、汲みに行かないと……」

アニ「手伝うよ」

ジャン「くそっ! なんなんだよ今日のメニューは」

マルコ「午前だけでも立体起動、基礎体力、兵站行進(前編)だもんね。午後には少なくとも兵站行進(後編)が待ってるよ」

ジャン「言うな! 余計疲れるだろうが」

マルコ「お昼くらいゆっくり出来るかと思ったのに」

ジャン「配給されたのは無塩無糖のブロックフード。水は近くの沢まで汲みに行けってマジか」

マルコ「コニー、まだかな。やっぱり一緒に行った方が良かったかな」

ジャン「あいつの方が明らかに元気だったろ。無意味な同情はやめろ。じゃんけんに負けたあいつが悪い」

マルコ「……そうだね」

ジャン「それにしても……くそっ、ライナーもベルトルトも平気そうな面してやがる」

マルコ「ミカサは言わずもがな。アニも割と平気そうだね」

ジャン「死に急ぎ野郎は完全に死んでるけどな」

マルコ「なぜか毛布も広げないで、直に地面に寝てる……変だね。普段なら俺と同じくらいは体力があるはずなのに」

ジャン「なんか知らねーけど、立体起動の時間に遊んでたらしいぞ。ミカサがあいつ叱ってるの聞いた」

マルコ「エレンが遊んでる……? 驚きだね。あ、起き上がった」

ジャン「そしてアルミンに手をかけ……引きずっていき……」

ジャンマルコ「「なげたー!」」

ジャン「……なに言ってんだ。ただ地面に転がしただけじゃねーか」

マルコ「君が言うかい。でもなにしてるんだろうね?」

ジャン「さっき焚火からなにか拾って地面に埋めてたな」

マルコ「即席のオンドル、あー床暖房? かな。運動したあとは身体が冷えやすくて体調崩しやすいから」

ジャン「焚火に当たればいいじゃねーか」

マルコ「火に当たるって結構体力使うからね。間接暖房が良いんだよ」

ジャン「そんなもんか?」

マルコ「暑いときは冷たい地面にねっころがると気持ちいいでしょ。その逆?」

ジャン「説明になってねー……けど、確かに暑いからって川に入りっぱなしだと疲れるかもな」

マルコ「たぶんさっきまで地面に寝てたのは、温度調整してたんじゃないかな。あ、ミカサがエレンに毛布を被せてアルミンのストレッチし始めた」

ジャン「くそっ、うらやましい……」ギリィ

マルコ「……」

ジャン「……」

コニー「おい、水汲んできたぞ」パチャ

ジャン「おせーぞー……って愚痴る気力もねぇな。焚火で沸かしてくる」

マルコ「お願いするよ」

コニー「遅くなって悪かったな。もう飯食ったか?」

マルコ「期限切れ間近の携行保存食だし、水無しじゃちょっと無理そうかな」

コニー「マジか。もうちょっとまともなもの食いてーな」

マルコ「流石のサシャも塩気が足りないって言ってたよ。変な野草採ってきて一緒に食べてたけど」

コニー「その野草があれば塩気の足しになんのかな」

マルコ「さあ、どうだろうね」

コニー「聞かなかったのか?」

マルコ「聞く? どうして?」

コニー「どうしてって……」

コニー「……なあ、アルミンとエレンはなんで地面に寝てるんだ?」

マルコ「たぶん、身体が冷えないようになにかしてるんだと思うよ?」

コニー「身体をあっためると良いことあるのか?」

マルコ「……体調を崩しにくくなる?」

コニー「いいことじゃん! 真似しようぜ!」

マルコ「無理だよ、やり方知らないから」

コニー「……それも聞いてないのか?」

マルコ「なんで聞くのさ」

コニー「……はー、お前らって時々馬鹿だよな。おーいサシャ、エレーン!」タッタッタッ

>>6講目・対人格闘

ジャン「くそっ、いまさらかよ。せめて5講目ならな」

マルコ「またサボる算段かい?」

ジャン「ああそうだよ。見ろ! 死に急ぎ野郎だってヘロヘロじゃねえか」

マルコ「あれは、ミカサも疲れてるはずだからって挑んで3回くらいひっくり返されたんだよ。あ、アニがエレンの誘い断ってアルミンとやってる」

ジャン「昼のときは平気そうだったけどな、流石にもう全力で訓練する死に急ぎ野郎についてけねーんだろ」

マルコ「まあ、全力でもヘロヘロだけどね」

ジャン「んで、どーすんだよいい子ちゃんのマルコは? 俺と適当に流すか?」

マルコ「またジャンは……俺はエレンの相手でもして来るよ。今なら勝てそうだしね」

ジャン「ちっ、おいダズ! 相手しろ」

ダズ「ジ、ジャン? いや、俺ほんともうだめで」

ジャン「誰が真面目に相手しろって言ったよ。適当に流すのに調度良いんだよ、おまえ程度が」

ダズ「」ムグ

ジャン「ほら来いよ! 気絶したら救護室まで運んでやるから、せいぜい派手にひっくり返れ」ヒョイ

ダズ「く、くそぉお……」オロロロ ギャーテメエナニシヤガル

ミカサ「ライナー、相手をしてほしい」

ライナー「ん、ミカサか。いいのか? エレンと組んでたのに」

ミカサ「今日のエレンはこれ以上私とやっても得るものが無い。ので、出来れば休んでいてほしい」

ライナー「ほー……相変わらずだな。だがオレだってヘトヘトだし、お前が満足するほど相手はできんぞ」

ミカサ「構わない。私とて疲労はしている。ただごまかせるだけ」

ライナー「そのごまかせる、でパフォーマンス変わらないからなぁお前は」ボウカンヤクイクゾ

ミカサ「そうでも無い……が、わからないのだろう」イツデモドウゾ

ミカサ「そういえば、貴方には聞きたいことがあった」パシッ パシッ

ライナー「なんだ、いまさら」クッ イナサレルナ

ミカサ「もう一年近く前、エレンが食堂でジャンをひっくり返した」パシッ キュッ

ライナー「ほんとに昔だな!」クッ ウデヲトラレッ

ミカサ「あの時エレンは貴方を見ていた。貴方とアニを。何故?」フッ

ライナー「うぐっ……さあな。オレにはエレンがなにを考えてたかはわからん」オーイテエ

ライナー「そういえばミカサ、オレからもお前に聞きたいことがあったんだ」ホラナイフ

ミカサ「聞きたいこと? 何故」スッ

ライナー「おいおい、何故ってことは無いだろう? オレはそれなりにお前らと親しくしてるつもりだぞ」イツデモイイゾ

ミカサ「そうではない。何故今なの? 貴方の言うとおり、私達はそれなりに親しくしていたはず」グググ グググッ

ライナー「それ、お前が言うのか……? まあいい、しいて言うならなんとなくだな」ストレッチカ

ミカサ「なんとなく?」イク

ライナー「聞きたいことではあるが、気まずくもあり、聞いて答えてもらえなければ寂しい、というか」コイ

ミカサ「つまり、私が先に質問をした。ので、貸しがある、と」シッ シシッ ビシュッ

ライナー「まあ、そんなところだ」パス パパス ガキッ

ミカサ「わかった。それで質問とは?」ビシュ… ビシュ ビシュ

ライナー「お前らはシガンシナ出身と聞いた。その日いたのも、あと、エレンがそれ以前から調査兵団志望なのも」ガッガッ バシッ

ミカサ「そう……」フッ!

ライナー「けどエレンは考えが変わらなかったってな。お前もそうなのか」ガシッ

ミカサ「それは嘘」ツカマッ

ライナー「なんだって? オレは嘘なんか」グググググ

ミカサ「違う、エレンが嘘をついている」グググ ペタン

ライナー「エレンが嘘を……?」オレノカチダ

ミカサ「昔から調査兵団志望なのはほんと。今でも調査兵団志望なのもほんと。でも」っナイフ

ライナー「でも?」スチャ

ミカサ「考えが変わらなかったというのは嘘」ググッググッ

ライナー「わからんな」プラプラ

ミカサ「なんにせよ私はエレンについていく。私の考えは変化以前の問題」イツデモ

ライナー「そうか」チョットマテ

ミカサ「では私はもう少し聞きたい」

ライナー「なんだ?」

ミカサ「あの日他にどんな会話をしたか」

ライナー「他に? ……確か対人格闘の時に兵士としての義務の話をしたが……おっと深く聞かんでくれ。説教臭くしちまってな。ちょっと恥ずかしい」イクゾ

ミカサ「兵士としての義務」キナサイ

ライナー「兵士には兵士としての生き方と戦いがあるってな。それだけだ」ダダッシュッ

ミカサ「なるほど、だからエレンは……ありがとうライナー、そしてごめんなさい」ガシッ

ライナー「ん?」

ミカサ「今から少し、八つ当たりをする……!」ゴゴゴゴゴゴゴ

>>最終講・技巧術

エレン「大丈夫か、アルミン……」

アルミン「うん、なんとかね……」

エレン「流石のライナーとベルトルトも辛そうだな」

アルミン「午後も兵站行進、基礎体力訓練、格闘術ときたからね。平気そうなのはミカサくらいだよ……」

ミカサ「私も辛い。ただごまかせるだけ。正直明日起きられる自信はない」

ミカサ「それより二人とも、口より手を動かすべき。いつまでたっても終わらない」

エレン「うるせーな、動かしてるよ」

アルミン「ミカサ……もう終わったの?」

ミカサ「サシャやコニー、ジャンも終えている」

エレン「くっそ、ジャンに負けてるのか!」

ミカサ「エレン、技巧術は勝負じゃない、おろそかにしては」

エレン「わかってるよ。オレだってアルミンの命がかかってるんだ。無茶はしない」

ミカサ「どういうこと?」

アルミン「ああ、なんかエレンが交換して整備しようって」

ミカサ「……ずるい、二人で」

エレン「お前が一人で先に行っちまうからだろうが」

ミカサ「私だってエレンに顔をあわせ辛いときもある。察してほしい」

エレン「察したから誘わなかったんだろうが」

アルミン「自分からは言い出しづらいから、エレンに誘って欲しかったってことでしょ」

ミカサ「……そう! やはりアルミンは頼りになる」

アルミン「わかったからもう少し待っててね」

ミカサ「了解した」

エレン「……」

ミカサ「……」

アルミン「そういえばさ、エレン」

エレン「ん?」

アルミン「なんでエレンはジャンに絡むの? まあ大抵はジャンがエレンに絡んでるけど」

エレン「ん……」

アルミン「憲兵団に行く人が嫌いなわけじゃないでしょ? マルコ、ベルトルト、アニ……それにコニーやサシャ」

エレン「コニーやサシャか……後で技巧術のコツ聞いてみるかな」

ミカサ「私がもう聞いておいた」

エレン「ほんとか?」

ミカサ「コニーは自分は天才だと言っていたが、おそらくはサシャと同じ。単に細かい仕組みが覚えられず、指先が覚えるまで練習しただけ」

エレン「それだけか?」

ミカサ「疲れてるときは特にそれが利く。逆にジャンは徹底的に理解した上で手順を省略している」

エレン「手順を省略……それって大丈夫なのか?」

ミカサ「見たかぎり8割は問題無い」

エレン「……オレは不安が残るようなやり方は出来ないな」

ミカサ「エレンはエレン、ジャンはジャン」

エレン「そうだな」

アルミン「そうだな! じゃなくて、僕の質問はどうなったのさ」

エレン「あ、ああ、ジャンか。ジャンな。別に嫌いじゃ無いんだが……」

アルミン「無いんだが?」

エレン「ちょっと想像してくれ。酒飲んでるジャンを」

エレン「まず身長をベルトルト並に伸ばして」

エレン「ほうれいせん濃くして」

エレン「髪色薄くして」

エレン「ちょっと目を垂らす」

アルミン「え、ええと?」

ミカサ「え、ええ」

エレン「いつものあいつの口癖を」

ミカサ(ジャンの口癖って言うとたぶん……)

アルミン(どうした死に急ぎ野郎、またミカサにおんぶに抱っこかァ? とかそんなやつ)

エレン「どうしたエレン、またいじめっ子に泣かされたのかぁ? にする」

ミカサアルミン「え……」

○ンネス『どうしたエレン、またいじめっ子に泣かされたのかぁ?』

ミカサアルミン「ああああ!?」

エレン「な? なんとなくほっとけなくてよ」

アルミン「いや、それはどうかと思う」

アルミン「っていうかこれだけ改造したらなんだってありじゃないの?」

エレン「いやいや、ハンネスさんの台詞ならだいたいジャンにも似合うから。いろいろ試せばわかるって」

アルミン「例えば?」

エレン「ええと、『俺達が暇だってのは、それだけ平和だってことだぜ』とか」

アルミン「あああ……」

ミカサ「見える……マルコに叱責されてそう応えるのが見える」

アルミン「不覚にも納得してしまったよ……」

エレン「だろ、でもまぁ」

アルミン「でも?」

エレン「どっちかっていうと、逆なんだけどな」

アルミン「逆?」

エレン「ハンネスさんみたいだから絡むんじゃなくて、ハンネスさんみたいだから絡む程度で済ましてるってことだ」

ミカサ「……妬ましい」

アルミン「え?」

エレン「ほらアルミン、手ぇ動かせ。あと一息頑張って飯食おうぜ」

――きて。

――ゃん、起きて。

――お兄ちゃん! 起きて!

エレン「ん……うむぅ」

『いってらっしゃい、エレン』

エレン「……う?」

クリスタ「やっと起きた。お兄ちゃん」

エレン「ミカサ……? あ、いや、クリスタか」

クリスタ「ミカサならすぐそこにいるけど……私よりミカサが良かったの?」

エレン「別に、そんなわけないだろ」

クリスタ「そっか。ミカサ! お兄ちゃん起きたよ」

ミカサ「それは良かった。そろそろ帰らないとお義母さんが心配する」

エレン「ん、そうだな」

クリスタ「そういえばお兄ちゃん、なんで泣いてるの?」

エレン「……え?」

エレン「誰にも言うなよ、オレが泣いてたこと」

ミカサ「……」

クリスタ「どうしようかなぁ。久しぶりに三人だったのに、お兄ちゃん寝ちゃうしなぁ」

エレン「だっ、悪かったよ」

ミカサ「でも、普通じゃない。お義父さんに診てもらった方がいいかも知れない」

エレン「あのなぁ」

ハンネス「おめめ赤くしてどうしたエレン? また誰かに泣かされたか?」

エレン「うわ、酒くさっ! ハンネスさんまた昼間から飲んでんのかよ!」

ハンネス「人聞き悪いなぁエレン。駐屯兵団への差し入れをいただいてたら、ちょーっと気持ち良くなっちまっただけだってのに」

エレン「まったく、そんなんでいざというとき戦えるのかよ」

ハンネス「いざって……いつだ?」

エレン「巨人が壁を破って入ってきたときだよ!」

ハンネス「そうは言ってもなぁ、壁の上から見ているが、あいつらどんなに大きくても15メートルだぞ? あいつらにこの壁をどうにか出来るとは思えないんだが」

エレン「じゃあ、戦う覚悟も無いのかよ」

ハンネス「無いね」

ハンネス「だいたいなぁエレン。俺らが暇だの無能だのって馬鹿にされてる方が、平和だってことなんだぜ」

エレン「っでも」

クリスタ「でも、いつか来る」

ハンネス「は」

クリスタ「いざって言うときは必ず来るよ。明日かもしれない、いつかに」

ミカサ「……」

クリスタ「ハンネスさんは、この街の人は皆一度、お義父さんに助けられたんでしょ、そんないざってときに」

クリスタ「私達はエレンが ミカサ「そろそろ帰ろうクリスタ」」

エレン「っああ、帰ろう」

クリスタ「……じゃあね、ハンネスさん」

ミカサ「……」ペコリ

駐屯兵A「なんだあいつら」

駐屯兵B「まったくだ。気分わりぃ」

ハンネス「あ、ああ、そうだな」

ハンネス(いざっていうとき、か……馬鹿な、この壁は100年破られなかったんだぞ)

エレン「クリスタ」

クリスタ「だって、お兄ちゃんが虐められてたから」

エレン「クリスタ」

クリスタ「……ごめんなさい」

エレン「オレにじゃないだろ」

クリスタ「ごめん、ミカサ」

ミカサ「気にしてない。エレンが大事」

エレン「なんか大袈裟だな」

ミカサ「大袈裟なことなんてない」

クリスタ「大袈裟なんかじゃないよ」

エレン「……お前ら、こんなときばっかり」

 カーン カーン カーン カーン

エレン「この鐘、調査兵団だ! 英雄の帰還だ! 行くぞ二人とも!」

クリスタ「うん!」

ミカサ「……ええ」

――出ていったときの半分もいないぞ?

――何の成果も、得られませんでした!!

――税金の無駄だ、馬鹿じゃねーのか。

クリスタ「……」

ミカサ「……」

エレン「……」

クリスタ「エレン?」

エレン「……」

ミカサ「エレン、エレン」

エレン「……なんかさ」

エレン「出発のときだって皆で見送ったろ?」

エレン「帰ってきたらこうやって皆で迎えに行ってさ」

エレン「なのに……なのに、なんだよ。なぁ?」

クリスタ「お兄ちゃん……」

ミカサ「エレンは調査兵団に入りたいの?」

エレン「……ああ」

エレン「こんなに息苦しいところじゃ、オレはきっと生きていけない」

ミカサ「あんなに傷付いて、死んで、失っているのに?」

ミカサ「私は、エレンに死んでほしくない」

エレン「……けど、オレは」

ミカサ「エレン」

エレン「……」

クリスタ「私は……いいと思うよ」

ミカサ「クリスタ……!?」

クリスタ「なんとなくわかるもん。でも」

クリスタ「私にとって『壁の外』は、お兄ちゃんの隣だから。それだけ覚えててね」

エレン「……なんだそれ」

ミカサ「クリスタ、あなた……ずるい……」

クリスタ「私はずるくない。ミカサが弱いだけ」

エレン「なんだかわからんがもう帰ろう。アルミンと遊ぶ時間がなくなっちまう」

エレン「ただいまー」

ミカサクリスタ「ただいま」

グリシャ「おかえり」

カルラ「おかえりなさいみんな」

エレン「薪は外に積んできたよ」

カルラ「そう。それにしても遅かったわね」

ミカサ「……」チラッ

クリスタ「……」

ミカサ「……エレンが居眠りした」

カルラ「エレン……」

グリシャ「しょうがないなエレンは。さて帰って来て早速だが、父さんはこれから二つ上の街まで仕事だ」

エレン「二つ上……」

グリシャ「当然何日かかかるし、帰りも途中の街や村の回診をしてくる」

グリシャ「だからエレン、その間お前は母さんの言うことをよく聞いておとなしく……」

グリシャ「いや、お前が私の代わりに家族を守るんだ。いいな?」

エレン「うん!」

カルラ「あなた……!」

グリシャ「カルラ、エレンは大丈夫だ。よおしエレン、いい返事だ。帰ってきたら、ずっと秘密にしてた地下室を見せてやろう」

エレン「ほんと!?」

グリシャ「ああ。勉強も仕事もちゃんとするんだぞ」

エレン「もちろんだよ!」

グリシャ「さて、エレンばっかりじゃ不公平だな。ミカサ、クリスタ。なにかお土産を買ってきてあげよう。さ、何がいい?」

ミカサ「え、えっと、お菓子、がいい。皆で食べられるの」

グリシャ「ミカサはいい子だな。クリスタは?」

クリスタ「お義父さんがいない間にお兄ちゃんの仕事お手伝いできるからいい」

グリシャ「……母さん?」

カルラ「なあに、あなた?」

グリシャ「私はしばらくエレンに会うことも出来ないんだよ」

カルラ「そうね」

グリシャ「昨日のベッド、代わってくれても良かったんじゃないかい……!?」

カルラ「困った人ね……そういうのは決める前に言ってくれないと」

グリシャ「くっ! 帰ったら一日私の番だぞ」

カルラ「わかってるわよ。ミカサとクリスタのお土産お願いね」

グリシャ「君のはいいのかい?」

カルラ「ええ。あなたがエレンと寝られるのは一日だけだもの」

グリシャ「……そろそろ子供部屋にもう一つベッドを用意しようか?」

カルラ「それも良いわね。あなたがいない間に注文しておこうかしら」

グリシャ「ああ、構わないよそれで」

カルラ「いってらっしゃい、あなた」

グリシャ「いってくるよ、おまえ」

カルラ「さあみんな、お父さんをお見送りしましょう」

エレン「いってらっしゃい、父さん」

クリスタ「お義父さん、いってらっしゃい」

ミカサ「いってらっしゃい、お義父さん」

グリシャ「いってくるよ。みんな」

遅くなってる言い訳半分にちょっとプロットを切ったときの話をば。

もとはと言えば、『その1』に関してはジャンネスさんの話しかありませんでした。
ジャンとハンネスさん似てるよね、だからエレンはジャンと仲良くしたい……みたいな話どうだろう? という安直な考えで始まりました。
現在の主軸は違いますが、このくだりを書けて少し満足しています。


そして『その2』と『その3』は、もともと一つの話で、しかもピクミンではなくオズの魔法使いでした。
当初はアルミンがエレンやミカサに物語りを読み聞かせる話のつもりでしたが、間もなく大人が話す方が絵になると思い直しハンネスさんが選ばれ、
ハンネスさん即興で物語りを作る→名前はエレン達がチョイスされる。
からの『ライオンのアルミン』『ブリキのミカサ』『カカシのエレン』というキャスティング。ドロシーは当然クリスタが良いよね? というこれまた安直な考えでクリスタが妹になりました。
ところが>>1がオズの魔法使いを借りられなかったため空中分解。現在の内容に落ち着いています。

要するに、その2に関してはほんとに見切り発車なんです。読者様が満足できる話にはならないかも知れませんが、頑張って行くので遅くなっても生温い目で見ていただければ幸いです。


最後になりましたが、いつもコメント下さる方々、ありがとうございます。励みになります。

エレン「父さん行っちゃったな」

クリスタ「そうだね」

ミカサ「……エレン、アルミンが待っている」

エレン「お、もうそんな時間か」

カルラ「あら出かけるの?」

エレン「うん、アルミンと久しぶりに四人で遊ぶ約束してるんだ」

カルラ「そう。遅くなりすぎないうちに帰ってきなさいね」

エレン「わかってるよ」

カルラ「本当に?」

エレン「オレが母さんや父さんの言うこときかなかったことあった?」

カルラ「そうね……たくさんあるわ」

エレン「いっ」

カルラ「でも、言うこときかないで悪いことをしたことはなかったわね」

エレン「でしょ! 行ってきます!」

カルラ「いってらっしゃい、みんな」

悪ガキA「お前だってフラれた癖に」ゲシゲシ

悪ガキB「いつもクリスタと仲良くしやがって」ポカポカ

悪ガキC「羨ましいんだよこのっこのっ」ドカバキ

悪ガキA「お前なんてエレンの腰ぎんちゃくじゃないか」グリグリ

悪ガキB「悔しかったら反撃してみろよ」ペシペシ

アルミン「す、するもんか。暴力を振るったら君達と同じレベルになってしまう」

アルミン「フラれた腹いせに嫌がらせをしたり、親の受け売りで人をいじめるような君らとは」

アルミン「喧嘩なんてしてやるもんか」

悪ガキC「このっ」

エレン「お前らーっ! よくもアルミンをっ!」ダダダダダッ

悪ガキA「エレンが出たぞ!」

悪ガキB「よし、今日こそは!」

悪ガキC「馬鹿野郎、間違いなくいるぞ!」

ミカサクリスタ「……」タッタッタッ

悪ガキA「クリスタだ! 顔を覚えられる前に逃げろー!」

エレン「あいつら、オレの顔見て逃げやがった。大丈夫かアルミン」

アルミン「ああ、うん、それは違うと思うけど、大丈夫だよエレン」

ミカサ「アルミン、遅くなった。大丈夫?」

クリスタ「はぁ……はぁ……はぁ……痛い……はぁ……ところは……無い?」

アルミン「大丈夫だよ。クリスタこそ大丈夫?」

クリスタ「はぁ……はぁ……うん。ありがとう、アルミン」

アルミン「どういたしまして。ミカサとエレンも助けに来てくれてありがとう」

エレン「気にするなよ。友達だろ」

ミカサ「……とりあえず河原にでもいこう」

クリスタ「少しだけど、手当てしてあげる」

……

クリスタ「少し血が出てるところがあるね。お兄ちゃんハンカチ」

エレン「ん、濡らして来た」

クリスタ「ありがとう。傷を拭うからね、ちょっと痛いよ」ゴシゴシ

アルミン「っつ、いてて」

クリスタ「じっとしててね……ミカサ」

ミカサ「ん」ガシッ

アルミン「うう……」

クリスタ「これでよし。血が出てるところには私のハンカチ巻いたから」

アルミン「ありがとう。今度洗って返すよ」

エレン「それで、今日はどうしたんだよ」

アルミン「どうしたって言われても……エレンは今日調査兵団が帰ってきたの見た?」

エレン「……ああ」

アルミン「やっぱり壁の外に出るのは異端なんだって言うから」

アルミン「見送りのときはあんなに騒ぎ立てて、帰ってきたらこうやって走って見に来たくせにって言ってやったんだ」

エレン「それでか」

アルミン「途中からよくわかるただのやっかみになってたけど」

エレン「やっぱりアルミンは根性あるな」ウンウン

ミカサ「でも、家族に心配をかけている」

クリスタ「私達も心配してるからね」

アルミン「あはは、肝に命じておくよ」

アルミン「さ、それじゃ今日は何をして」

  カッ

エレン「な、なんだ!?」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

アルミン「巨人だ、巨人が壁から顔を」

エレン「あいつ、何するつもりだ……?」

 ゴオッ ドッゴオオオオン

ミカサ「壁が、破られた?」

アルミン「巨人が、巨人が入ってくる!」

クリスタ「」ダッ

アルミン「ク、クリスタどこへ? 逃げなきゃ!」

エレン「家だ、破片が……あっちには家が、母さんが……アルミン、ミカサお前らは逃げろ!」ダッ

ミカサ「待ってエレン、私も行く」ダダッ

アルミン「う、うう、僕は……」

クリスタ(一番に走り出せて良かった)

クリスタ(私はミカサみたいな能力はおろか、普通の男の子並の体力も無い)

クリスタ(出遅れたら多分おいてけぼりだ)

クリスタ(私にとってカルラさんはあくまでお義母さんだ、ミカサとは違う。でも……)

エレン「クリスタ!」

クリスタ(ほらやっぱり、エレンが追いついてきた)

クリスタ「お兄ちゃん!?」

エレン「一人で行くやつがあるか馬鹿!」

クリスタ「でも……でも家の方に」

エレン「わかってる、きっと大丈夫だ」

エレン「ミカサとアルミンには先に逃げるように言った。オレ達も家の無事を確認して、すぐ逃げるんだ」

エレン「大丈夫、大丈夫だ」

エレン「あの角を曲がれば家があって」

エレン「きっと母さんももう避難しはじめてる」

エレン「どっかでオレ達を探して――」

クリスタ(家が)

エレン「あ……」

クリスタ(完全に潰れて、これじゃあ)

エレン「あああ……」

ミカサ「エレン!」

エレン「」

エレン「っ母さん!」

ミカサ「お義母さん!」

クリスタ(ミカサ、思ったより遅い)

カルラ「うう、エレン……みんな、そこにいるの?」

クリスタ「はい、お義母さん」

エレン「ミカサ! クリスタ! 手を貸してくれ! 瓦礫をどけるっ」ググッ

ミカサ「わかった、エレン!」グッ

クリスタ「うん」グググ

クリスタ(……っ、エレンの顔が絶望に染まってる)

カルラ「なにやってるのエレン! 逃げなさい!」

エレン「オレも逃げたいよ! 早く出てくれよ!」グググッ

クリスタ(わかっちゃったんだ……カルラさんを助けられないって)

クリスタ(目の焦点があってない、声に力が無い、きっと足も動かないだろう)

カルラ「母さんね、もう足が動かないの。柱かなにかに潰されちゃって」

クリスタ(そうだ)

クリスタ(カルラさんの足を潰しているのは、いま皆で持ち上げているのより奥にある瓦礫だ)

クリスタ(奥に行くためにはこの瓦礫を完全にどけるか、踏み越えて行くしかない)

クリスタ(エレンにもそれが見えてる、でも)

エレン「だったらオレが担ぐよ!」

クリスタ(ほら。私達のときと同じ。諦めないんだ、エレンは)

カルラ「エレン、いい子でしょう? お母さんの言うことを聞いて」

エレン「やだ! やだよ!」

エレン「だって今度は違うんだ! 父さんが言ってくれた。母さんと、ミカサとクリスタを守ってくれって! なのに」

エレン「なのに諦められるもんか!」

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