前スレ
勇者「見守る愛もある…」
勇者「見守る愛もある…」 - SSまとめ速報
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女神「……」
女神「さぁ、聖者は死すとも、未だに子供達は働かされています。みなで助けに向かいましょう」ニコリ
キリ「行くかブッタ?」
ブッタ「ええ、私たちの不手際は私たちで解決します」ダッ
インドラ「戦士……行くぞ?」
戦士「そうだな。おっ、お、おっ……おにぃ、ちゃ……先に行くぜアニキ!!」ダッ
武道家「行きましょう先生!!」
シヴァ「フフッ、元気が良いな」ダッ
商人「……」
商人「キリとブッタ、インドラと戦士、シヴァと武道家」
商人「私と……」チラッ
勇者「……」
女神「勇者、貴方には伝えねばならない事が有ります。ここへ残ってください」
勇者「心得た」
商人「ちょっ……」
勇者「子供たちの救出を頼むぞ商人!!」
商人「あ、はい」
商人「……」ダッ
女神「……」
勇者「……」
女神「勇者よ、貴方には聖者の事を語りましょう」
勇者「やはりか……」
女神「聖者は、聖者は……私の子供です」
勇者「ッ!!?」
勇者「よかったのですか、貴女自らが命を摘んでしまって?」
女神「……」
女神「はい、良いのです。私があの鎧を与えたから聖者は力に溺れてしまった」
女神「ならば、最後まで責任を取るのも私の使命……」
女神「それに、聖者が子供たちを働かせて、何を作ろうとしていたか分かりますか?」
勇者「いや……」
女神「聖者が造ろうとしたのは、封印場です……」
女神「今までは拘束されていただけなので、四神達に救い出されましたが、封印場が完成して私が封印されてしまえば、全てがおしまいでした」
勇者「聖者は、母で有る貴女をも葬ろうとしていたのか……」
女神「私がイケないのです。聖者の身を案じ過ぎてあの鎧を与えなければ、強さのみを求める狂者にはならなかったでしょうに」
女神「このままでは危険だと気付き、鎧を剥奪しようとした時には手遅れでした……」
女神「拘束した私の命を盾に四神を脅し、呪いの鎧を着せて記憶を良いように改変したのです。どうやらキリは逃げ出せて機会を伺っていたようですが……」
女神「そして貴方達が呪いの鎧を、聖者の鎧を壊して記憶は完全に復活し、私は救出されました」
勇者「なるほど……」
勇者「どうやら、聖者にも愛する心があったようだな」ニコリ
女神「愛する、心?」
勇者「女神よ……聖者は貴女の力を恐れると同時に、貴女を愛していたのだ」
勇者「故に殺せず、自分を子供達に重ねて封印殿を造ろうとしていた……」
女神「……」
勇者「聖者が言った、魔王を倒すと言うセリフ。これは間違いなく本心で、そして魔王を倒し……母で有る貴女にほめられたかったのだと」
勇者「私は、そう考えます」
女神「聖者……うぅっ!! お母さんを許してっ!!」ドサッ
勇者「あくまでも良い方に解釈すれば、だが……」
勇者「だがどちらにしろ、聖者のした事は許されない」
女神「……」グスッ
女神「ええ、わかっています。この手で殺したのを悲しくは思いますが、後悔はしていません」
女神「女神として、役目を果たせたのですから」スゥッ
女神「さぁ、我々も子供達の救出に向かいましょう!!」ダッ
勇者「……」コクリ
勇者「今日中にケリを着ける!!」ダッ
……
ポッポの残骸「……」
ドードー『目を覚ますのだポッポよ!!』
ポッポの残骸(この声は……お師さん!!)
ポッポの残骸(お懐かしゅうございます……)
ドードー『ポッポ、お前はまだ死すべき時では無い』
ドードー『本当の力を出しきってないのに、このまま果ててしまえるのか?』
ポッポの残骸(……)
ポッポの残骸(お師さん、やってみます!!)
ドードー『……』ニコリ
ポッポの残骸(お師さん、頑張る為に、もう一度……ぬくもりを)
ドードー『ポッポ……』
ドードー『フォフォッ……霊となって、いつでも見守っておるぞ……さぁ、ピジョットへ進化するのだ!!』
ドードー『本気になったお前が、できない事はっ、何も無い!!』カッ
ポッポ(お師さん!!)クワッ
商人「こっちから妖気を感じる」ヒョコ
商人「この辺に徐霊の御札を貼って置くべき」ペタペタ
商人「……」キョロキョロ
商人「摩天楼の足音、時代錯誤の罠♪」タッタッ
ドードー(……)サラサラ
ドードー(ポッポよ、この世には本気になっても出来ぬものは出来ぬ事が有ると知るのだ!!)
ポッポの残骸(そんなっ、お師さん!?)
商人「血迷った危ないやつらなら、極楽へ行かせちゃうわ♪」タッタッ
ドードー(さらばだポッポーーーッ!!)サラサラサラァッ
ポッポの残骸(お師さーーーーん!!!)
ポッポの残骸(お師、さん……)パキパキッ
商人「んっ?」キョロキョロ
商人「誰もいない、はず……」
商人「一応、御札を追加」ペタペタ
ポッポ、名誉の戦死──
セイントキングダム 解放
決戦の地 龍虎練気闘座へ
,
龍虎練気闘座へ向かう道中 草原のフィールド
まもののむれが あらわれた!
バラモス「見付けたぞ勇者!!」バッ
ゴルベーザ「我ら凶羅三兄弟に会ったのが運の尽きよっ!!」バッ
アポロン「くるぞっ、くるぞっ!!」バッ
戦士「何もこねぇよタコ!! イオラッ!!」
武道家「カリツォー!!」
商人「からの〜」
戦士「もういっちょ、イオラッ!!」ドンドン ドンドンッ
バラモス「ぐひゃあ!?」バタッ
ゴルベーザ「うわー!?」バタッ
アポロン「やられたっ!?」バタッ
まもののむれをたおした!
勇者「……」
勇者(やはり、強くなった……)
勇者(セイントキングダムでの戦いで、それぞれ更に磨きを掛けた)
勇者(だが……それでも魔王には通じない)
勇者(私がどのような決断を下そうとも、許せ仲間達よっ)グッ
武道家「魔王軍なんて、もうボクたちの敵じゃないねっ」
商人「ゴールドも持ち切れない」
戦士「で、師匠? 次の行き先は魔王との決戦場所なのか?」
勇者「……」
勇者「いや、その前に後一つだけ国を経由する」
武道家「そっか。そこって、どんなとこ?」
勇者「そこはな……」
美の第六国 ビーナス
青年「ルナ様!! どうかっ、お許しください!!」
ルナ「なりません。青年、貴方には国外……ジュピターへの追放を言い渡します」
ルナ「機械兵士達よ、青年をジュピターへ捨てなさい!!」
機械兵士「ギギッ、青年ヲ、追放シマス」ガシッ
青年「そんなっ、俺はお嬢と結婚したいんです!! ルナ様っ、ルナ様ぁぁぁぁっ!!!」
貴族「青年、君は良き友だった。もう二度と会う事はないだろうが、君の事は忘れないよ……」ニヤリ
貴族「お嬢は、僕が幸せにする!!」
青年「ッ!?」
青年「貴族、おまえっ!!」
機械兵士「連行、カイシ」グイッ
青年「やっ、やめろぉっ!!」ズルズル
ルナ「……」
ルナ「醜いゴミは消えましたか……」
ルナ「さて、貴族よ」
貴族「ハッ、なんでしょうルナ様!!」スタッ
ルナ「貴族、お嬢とは貴方が結婚しなさい。良いですね?」
貴族「勿論です。この貴族、喜んでお嬢と結婚いたします!!」
貴族(片腕を失ったばかりに、ブサマだな青年)
貴族(フフッ。これでようやく、お嬢は僕の物になる……)ニヤリ
美の第六国 入国門
門番「よし、ビーナスへの入国許可が降りたぞ。通れ」
戦士「やっとかよ……んじゃ、行こうぜ」
勇者「……」スタッ
門兵「待てっ!!」ジャキ
門番「許可が降りたのはお前ら三人だけだ。男は許可されていない。ジュピターになら許可するがな」ニヤッ
武道家「どうしてししょーがダメなんだよぅ!?」
門兵「ルナ様が、そっちの男は美を持っていないと判断したからだ」
商人「酷い……」
商人「コイツらは師匠を髭が生えて痩せたオヤジだと言ってる。許せない」
勇者「……」
勇者「仕方ない、ここは二手に別れよう。お前たちはビーナスを、私はジュピターを探索する」
勇者「探すべき物はわかっているな?」
戦士「……」
戦士「えっ?」
武道家「月の魔器と」
商人「天使の羽」
戦士「おおっ、それそれ♪」
勇者「うむ」コクリ
勇者「この国は、国の中央に高い崖壁が在り、崖壁の上をビーナス。崖壁から下をジュピターと別けられている」
勇者「しかし、元々は一つの国だった。それと同じく、二つの秘宝も元々は一つ。二つの秘宝を見付け、一つに合わせるのだ。そうすれば崖壁は消える」
戦士「おっしゃ了解!!」パンッ
武道家「ここが魔王前の最後の場所だねっ」
商人「……」コクリ
商人「師匠、手に入れたら合図するから」
崖壁の下 ジュピター 入り口近くの森
勇者(崖壁が日を妨げているのか……こちらは暗いな)ザッ
勇者(それに、余り開拓されていない。この先に村は有るのだろうが……どうなっているのだここは?)
ガサガサッ
少女「だれかぁっ、助けてぇっ!!」ダッダッ
兵士「うるせぇ、ジュピターのクセに、騒ぐんじゃあない!!」
勇者「むっ!?」
兵士「オラッ!!」ドンッ
少女「きゃっ!?」ドサッ
兵士「へっ、すぐに終わるからよ。お前は黙ってりゃ……」
兵士「んっ?」
勇者「……」
勇者「その子を離しなさい」ザッ
勇者「いや……」
勇者「私の気が変わらぬ内に、さっさと失せるのだ外道!!」ポキッ ポキッ
兵士「なんだテメェは? このミスリルアーマーに刻まれた、ビーナスの聖紋が見えねぇのか?」
勇者「……」
兵士「へっ。驚いて声も出せねぇようだな? 俺はっ、ルナ様直属の兵よ!!」
勇者「……」
勇者「失せろ……と私は言ったはずだが?」スッ
兵士「なんだぁとぉっ? ブッ殺されてぇようだなぁ!!」ジャキッ
勇者「気が変わった。魔王と言う絶対的悪の存在を知りつつ、それでもなお人が人を貶めようとする……」
勇者「許す訳にはいかん。悔い改めよ!!」
兵士「バカが、死ねぃ!! 荒荒青熊剣闘術奥義、亜尾足羅ッ!!!」バッ
勇者「……」
勇者「ほぉぉっ……」
勇者「シャオッ!!」バッ
兵士「げひゃあっ!? おっ、おっ、おっ、俺の足から血があああああ!!?」スパァッ
勇者「騒ぐな……左足の筋を切ったに過ぎない」スタッ
勇者「もう走る事はできないだろうが、日常生活は送れるだろう。今日までの行いを悔いながら過ごすのだ」
兵士「ああ……おしまいだぁっ」ガタガタ
兵士「ビーナスから追放されちまぅぅぅっ!!」ガクガクブルブル
兵士「……」
兵士「ルナ様は、自分の息子でさえも気に入らないと国外へ捨てたお方」
兵士「このまま戻ってもどうせ追放される……それならっ!!」ジャキッ
勇者「来るか……」スッ
兵士「ジュピターに在る秘宝を手にし、その力でルナを倒してやる」
兵士「だが、まずは貴様だぁっ!! 受けろっ、これぞ本気の荒荒青熊剣闘術奥義、亜尾足羅ッ!!!」バッ
金獅子「それは不可能だ、ルナは……この金獅子が倒すからなぁっ!!」
勇者「ッ!!?」
金獅子「光速の拳をッ、獅子の牙を受けよ!! ライトニングボルト!!」バチバチバチッ
兵士「ぐほァッ!!?」ドゴォォッ
兵士「うっ、ァ……ァ」ドサァッ
少女「金獅子さんっ」タタッ
金獅子「すまない少女さん……来るのが遅れてしまった」
少女「いいえ、あちらの方が助けてくれたので、私は何もされていません」
金獅子「あちら?」
少女「本当に、ありがとうございましたっ」ペコリ
勇者「……」ニコリ
金獅子「……」
金獅子「あんた、ジュピターに住んでる奴じゃないな?」
勇者「……」
勇者「私は今、訳有って旅をしている」
金獅子「そうか……」
金獅子「なら、早く出た方が良い。ビーナス入りを拒否されたら、ここに価値など無いぞ?」
勇者「そうするつもりだ。しかしその前に、探し物を見付けてからだがな」
金獅子「探し物? ゴミをか? 希少価値の品なら、全てビーナスだ。残念だが、ジュピターにその様な品は無いぞ?」
勇者「いや、結果的に有る無しは別として、ビーナスは仲間達が探している。ならば私はここを探すまでだ」
金獅子「……」
金獅子「なるほど。ビーナスとジュピター、どちらでも見付かる可能性が有る品を探していると言う事か?」
金獅子「まさかとは思うが……」
金獅子「その品が何か、聞いてもいいかな?」
美の街ビーナス 酒場前
戦士「これで、だいたいの情報は出揃ったか?」
武道家「って言っても、ここを支配してるルナって人が怪しい……ってだけだけど」
商人「ここの酒場でも情報を集めるべき」
武道家「そうだねっ。ダメなら……ルナの城に乗り込んじゃお」
戦士「まっ、それしかねぇか? 話を聞く限りじゃ……余程ヤバい女らしいしな」
酒場
カランコロンカラーン
「まっ、待ってください、話が違うじゃ有りませんか!?」
「おいおい、お嬢ちゃん? ギャンブルの支払いにカード何か通用しねぇ……となりゃ、身に付けてる貴金属を貰うのは当然だろ?」
「すぐにっ、すぐにお金は持って来ますから、この指輪だけは許してください!!」
戦士「なんだぁ? 奥の方が騒がしいな」
ケーリン「このケーリンの情報は高額だと何度も念押しした、にも関わらずお嬢ちゃんは俺とギャンブルをした……」
ケーリン「これは誰が見たってお嬢ちゃんが悪い。取り返したきゃ、俺ともう一度ギャンブルをして勝つんだな。勿論……そっちにも別のもんを賭けて貰うが」ニヤリ
お嬢「うぅっ……」グッ
お嬢「わかりました、もう一度、貴方と……」
ドンッ
戦士「その勝負、代理はOKかい?」
武道家「ボクと、勝負しようよオジサン」
ケーリン「なんだね、君たちは?」ガタッ
商人「こっちは一億ゴールド賭ける。これで文句無いはず。早く椅子に座ってテーブルに着けボート」
お嬢「えっ? あっ、あ、あのっ!?」
戦士「……」ニコリ
戦士「そんな手が震えてちゃ、どんな勝負だって勝てねぇよ」
武道家「輪は、貴女に返すから安心してっ」ニコリ
商人「早く席を立って武道家と交代するべき」
ケーリン「……」
ケーリン「よかろう」ニヤッ
ケーリン「だが俺の名前は、ボートでも、ダービーでも無い、ケーリンだ!!」
商人「それは失礼」
武道家「じゃあ、ボクがテーブルに着くよぉ」
お嬢「よろしくっ、お願いします!!」
ケーリン(コイツら、見た事がないな……)
ケーリン(誰か知ってるか?)チラッ
客(いえ、初めて見ます)チラッ
バーテンダー(たぶん、ここ出身の奴らじゃないですよ)チラッ
ケーリン(……)
ケーリン(俺の部下も全員知らんとなると、やはり旅人……冒険者と言った所か)
ケーリン(と、なると……)
ケーリン(チョロい、カモか……)ニヤリ
ケーリン「良いだろう。お嬢ちゃんのリベンジマッチ、その代理を認めよう」
ケーリン「賭けるのは、こっちはさっきお嬢ちゃんから貰った指輪。そっちは一億ゴールド。それで良いんだな?」
戦士「ああ、それで良いぜ」
ケーリン(バカがっ……)
武道家「それで、何で勝負するの? あんまり難しいのだと、ルール覚えられないんだけど」
ケーリン「……」
ケーリン(間違いない、ギャンブル素人!!)
ケーリン「ギャンブルなら何でも構わないぞ? 例えばさっきお嬢ちゃんと勝負したトランプでも良いし、この店へ次に入って来る客が男か女か、そんなのでも良い」
ケーリン「ただ、魔法、魔術、剣や銃を使っての脅しは禁止だ。この店は特殊でね……防犯用に、店内で魔力を感じるとブザーがなるようにできている」
ケーリン「さぁ、この世界最強のギャンブラーで有る俺が、どんなギャンブルでも受けよう……寛容な心で!!」
武道家「……」
戦士「どうすんだよ武道家、何か作戦はあんのか?」
武道家「特に無い、かな」
お嬢「えっ!? か、勝てるんですかそれで!?」
戦士「知らん。お嬢ちゃんはオレ達に乗っかったんだから、一緒に応援してやろうぜっ。何とかなるって!!」
お嬢「そんなぁ……」ガクッ
武道家「ケーリンさんは、お酒……飲めますか?」
ケーリン「ん、酒豪対決かね? 自信が有るなら受けて立つぞ!!」
ケーリン(ククッ……ここの店は、店員から客に至るまで、全て俺の部下だ)
ケーリン(同じ酒を飲んでると見せつつも、こちらは水で何倍にも薄めた酒を飲む事が可能!!)
武道家「じゃあ、ビールの中ジョッキ。それを、ケーリンさんが一分で飲み干せるかどうかで賭けよっ」
ケーリン「……」
ケーリン「はっ? なんだねそれは? そんなの、飲み干せるに決まっているじゃないか」
武道家「いや、ボクは……飲み干せないと思うよ」ニヤリ
ケーリン(コイツ、何かを企んでいるのか!?)
ケーリン(まさか、イカサマを仕掛けようと言うのか……)ジィーッ
武道家「……」
ケーリン(不可能だ!! ここの中ジョッキは分厚い幅と底上げで、実質は小ジョッキほどしか無い)
ケーリン(それに俺自身もアルコールは強い。万が一、こちらの目を盗んで中身をウォッカに変えられたとしても、難なく飲み干せる)
ケーリン(もしかするとこのマヌケ面……本当に俺が、一分じゃあ飲み干せないと思っているのか?)
武道家「で、どうなの?」
武道家「この勝負……受けるの?」
ケーリン「……」
ケーリン「よかろう……店員!!」チリリン
ケーリン「このテーブルに、ビールの中ジョッキを持ってきたまえ!!」
店員「かしこまりました!!」
戦士「んじゃ、カウントはオレの懐中時計な? ほらっ、オカシナ所は無いか確認してくれ」ポイッ
ケーリン「……」パシッ
ケーリン「……」
ケーリン(細工が施された形跡は全く無い。本当は相手の用意した物なんて使いたくないが、公平さのアピールにはなるか……)
ケーリン「オーケーだ。時間の計測はこれを使おう」コトッ
ケーリン「さて、ではルールの確認と行こうか?」
武道家「うん」コクッ
ケーリン「勝負に俺が勝ったら、君たちが一億ゴールド支払う。君たちが勝ったら、俺は指輪をお嬢ちゃんに返還する……」
ケーリン「内容は、この店が出す中ジョッキのビールを、俺が一分で飲み干せるかどうか」
ケーリン「そして、ジョッキがこのテーブルに置かれたら、いかなる事が有っても勝負の無効は認めない」
ケーリン「いいかね?」
武道家「……」
武道家「うん」コクッ
ケーリン(これで、後から底上げグラスに気付いたとしても問題なくなった)
ケーリン(待てよ? どうせなら……)
ケーリン「っと、そうだ。君たちは、お嬢ちゃんがなぜ俺にギャンブルを挑んだか知ってるかな?」
戦士「いま会ったばっかだぜ? 知るわけねぇだろ」
ケーリン「人探しだよ……俺はビーナスに置ける有りとあらゆる情報を持っていてね、青年と言う人物の居場所を俺に聞きたかったのさ」
お嬢「……」ギリッ
戦士「……」
ケーリン「だからどうだろう? お互いに報酬の上乗せをしては?」
戦士「上乗せだぁ?」
ケーリン「俺は青年の居場所を教える。そして君たちは……」チラッ
ケーリン「そのゴールド袋。一億と言う大金を取り分けても、まだ五千万ゴールドは有ると見た」
商人「……」
戦士「つまり、こっちの全財産。一億五千万ゴールドを賭けろってか?」
ケーリン「強要はしないが……」チラッ
お嬢「貴方って人はっ!!」グッ
戦士「ああ、いいぜ。勝てんだろ武道家?」
武道家「……」コクッ
戦士「ケーリン、一億五千万ゴールド……賭けよう!!」ドンッ
ケーリン「グッドだ!! 吐いた言葉は呑み込むなよ、もう取り消しは効かんぞ?」
お嬢「!?」
お嬢「あ、あのっ、そこまでっ……」
戦士「おっと、気にすんな」ピトッ
戦士「勝つから、安心して見てなって」ニコッ
ケーリン「……」
ケーリン(根拠の無い自信。お人好し……救いようの無いバカだ。俺は情けを掛けたりしない。賭けた金額は全て拐って行くぞ?)
店員「ビール中ジョッキ、お待たせしました」ゴトッ
ケーリン「来たか……」
ケーリン(間違いない。このグラスは、イカサマ用の底上げグラス……勝った!!)
武道家「……」
ケーリン「では、勝負を始めよう!! このテーブルに置いてある懐中時計の秒針が、頂点に来たらスタートだっ!!」ガッ
カチッ カチッ カチッ
ケーリン「……」
カチッ カチッ カチッ
お嬢「……」ゴクリ
戦士「……」
商人「……」
カチッ カチッ カチッ
武道家「……」
カチッ
ケーリン「スタートだぁっ!!」
ケーリン「ヒャハァッ!!!」
ケーリン「一分なんぞ必要ない!! 二十秒でじゅうぶ……」ガガッ
ケーリン「ッ!!?」
ケーリン(グラスが……持ち上がらないっ!!?)
武道家「……」
武道家「どう、したんですか? もう始まってますよ?」
ケーリン「くッ!!」
ケーリン(こいつ、イカサマをしやがったのか!? どうやってかは分からないが、グラスを持ち上がらなくしやがった!!)
ケーリン「店員!! ストローだ!! 急げっ!!」
ケーリン(だが、まずは飲み干す事だ。ストローをつかっても残り五十秒が有れば飲み干せる!!)
お嬢「これはっ!?」
戦士「ヒューッ、やるじゃん」
武道家「……」
店員「ストロー、持って来ました!!」
ケーリン「寄越せっ!!」パシッ
ケーリン「これでっ!!」ガリッ
ケーリン「……」
ケーリン「なんだとッ!!?」
ケーリン(ストローがグラスに入らない……)
ケーリン(まさか、これはっ……)
ケーリン「ビールが凍っているぅっ!!?」ガタッ
武道家「……」
武道家「ふふっ……」
武道家「やっと気付いた? おマヌケ、さん♪」
戦士「さぁ、飲み干して貰おうかケーリン……早くしねぇと、一分発っちまうぜ?」
ケーリン「うぐっ!?」
ケーリン(なんだコレは!?)
ケーリン(魔法で凍らせたとしても、酒場の中で使われたのなら魔力を探知してブザーが鳴るはず……)
ケーリン(一見では分からないが、天井に埋め込まれているセンサーは最新式。酒場の中で探知されずに魔法を使うのは不可能!!)
ケーリン(まさか、魔力を使わない……つまり、魔法以外の力で凍らせたのか? いや、それでも何らかは探知する筈だ)
ケーリン(魔法以外だとしても、ブザーが全く反応しないのはオカシイ!!)
武道家「……」
お嬢「……」
お嬢「んっ……」ブルッ
戦士「どうかしたか?」
お嬢「あのっ、気のせいだとは思うんですが……」
お嬢「なんか、涼しくなったなぁって」
ケーリン「……」
ケーリン「まさかっ!?」ガタッ
武道家「……」
武道家「そう。確かに、ビールはボクが凍らせたよ? 貴方がグラスを持った直後に……」
武道家「だけど、凍らせたのはビールだけじゃない」
武道家「この酒場ごと、凍らせたんだ」
武道家「外から中へ……ゆっくりね」
ケーリン「そうかっ、センサーは外側から凍らされたか……」
ケーリン「だがなっ、こんなものはイカサマだ!!」ドンッ
ケーリン「これは無効試合!! ノーカン、ノーカン!! むしろ、そっちの反則負け!!」
武道家「……」
武道家「ふぅっ……」
商人「ジョッキがこのテーブルに置かれたら、いかなる事が有っても勝負の無効は認めない」
ケーリン「ハッ!!?」ビクッ
戦士「まさか……世界最強のギャンブラーが、一度吐いた言葉を飲み込まないよなぁ?」ニヤリ
ケーリン「くっ、ぐぐっ……」
ケーリン「くぅぅぅぅっ!!」
ケーリン「……」
ケーリン「わかった、この勝負は……俺の敗けだ」
お嬢「!?」
お嬢「やったぁ!!」ピョンピョン
戦士「お嬢ちゃん、喜ぶのは早いぜ?」
お嬢「へっ?」
戦士「ケーリン、次はオレが相手をする。もぅいっちょ勝負しようぜ」
ケーリン「……」
ケーリン「今日は終わりだ。やる気が無くなったよ……」
戦士「こっちは、一億五千万ゴールドと指輪を賭ける」
ケーリン「なにっ!?」
お嬢「ちょっと!!?」
青年の居場所が五千乗せた分だったか
先におしえなあかんな
オリビアー
戦士「消沈したアンタのやる気を焚き付けるには、充分な金額だろ?」
ケーリン「……」
戦士「まぁ、ここで止めるなら、お嬢ちゃんに情報を教えて終わり」
戦士「だが、やるってんなら……勝負してやんぜ大将!!」ニヤッ
ケーリン「……」グッ
戦士「それとも……」
戦士「たった一度だけ負けたぐらいで怖じ気付く、腰抜けだったのかい?」
ケーリン「腰抜け、だと?」ピクッ
ケーリン「キサマ今、俺を腰抜けと言ったのか?」
商人「戦士、無駄。この腰抜けマクフライは、勝負をしないと言っている」
ケーリン「俺は、マーティンでも、マクフライでも、ドクでも無い!! ケーリンだ!! 誰にも、俺を腰抜けなんて言わせない!!!」バンッ
戦士「……」
戦士「それじゃ、言って貰おうか……」
戦士「やるのか? やらねぇのか? ケーリン!!!」
ケーリン「やろう……もう一勝負!!」
商人「グッド」
戦士「そうだな、勝負は……」
戦士「そこのカウンター、カウンターの隅に置いて有るのはアンタのか?」
ケーリン「ああ……」
ケーリン「麻雀、ポーカー、花札、ダイス、ルーレット。様々なギャンブル道具が詰まった大箱だ」
戦士「なるほど……じゃ、選んで良いぜ? その中から好きなのをさ」
ケーリン「それは、俺が決めて良いと言う事かね?」
戦士「まっ、ルールの確認はするけどな」
ケーリン「そうか……ならば決めさせて貰おう」
ケーリン「……」
お嬢「えっ? えっ? 勝てるんですよねっ?」
戦士「あのなぁ、お嬢ちゃん……ギャンブルに絶対はねぇの。どうせあのままだったら情報も引き出せなかったんだし、それが入るだけマシだろ?」
お嬢「そんなぁ……」ガクッ
戦士「大丈夫だって、テーブルゲームの運は有るからオレ♪」ポンポン
ケーリン「……」
ケーリン(最も得意とするのは麻雀だが、コイツは何を仕出かすか分からん。平然とイカサマをする奴の仲間だ……)
ケーリン(じっくりと見れば九割九部イカサマを見破れるだろうが……それでも、俺の動体視力を上回る早さで積み込まれたら話にならない)
ケーリン(だとしたらここは……)
ケーリン「決めたぞ? コレにしよう」コロコロ
戦士「……」
戦士「コレは?」
ケーリン「ダイス……この二つのサイコロを振り、より大きい目の合計を出した方の勝ちだ。簡単だろ?」
戦士「ダイス、か……」
戦士「ルールの確認はいいかい?」
ケーリン「どうぞ?」
戦士「出た目の合計……その出た目ってのは、つまり、真上。天井を向いてる方の目の合計って事だよな?」
ケーリン「そうだ。方向まで指定してないだのと言って、南側を向いてる出目の合計……なんて言い出す事はお互いに無しだ」
ケーリン「そして、振り込む高さはテーブル上から30センチ。お碗の中へ。高さを決めとかんと、サイコロをそのまま置くなんて輩がいるのでな」
戦士「……」
戦士「おっけ」
ケーリン「まだ条件が有る……俺が先攻。それと、俺の投げ込む動作の妨害、及び俺が放ったサイコロへの妨害は禁止だ」
戦士「おっけ」
戦士「じゃあ、オレからも一つだけ……」
戦士「アンタがダイスを掴んだ時点で勝負は成立だ。そこからの試合放棄は負け、先攻でアンタの出目がピンゾロなんてクソでも、無効は認めねぇぞ?」
ケーリン「……」
ケーリン「そんな事、するものか!! さぁ、勝負だ!!」ガッ
戦士「ダイスを掴んだか……それ言葉、飲み込むんじゃあ無いぜ?」
ケーリン「店員!! 何かお碗を持って来い、洗面器でも構わん!!」
店員「はっ、はい!!」
お嬢「ああっ……頭が痛い」フルフル
武道家「あははっ、大丈夫だって……たぶん」
お嬢「たぶん……」ガクッ
商人「ちょいちょい」ポンポン
お嬢「うぅっ、なんですか?」
商人「指輪はまた買えばいい、気持ちの切り替えが大事」キリッ
お嬢「……」
お嬢「ふ……」フラッ
店員「手頃な茶碗が見付かりませんでしたので、こちらの洗面器を……」ゴトッ
ケーリン「……」
ケーリン「いいだろう。お前は?」
戦士「オレもこれでいい」
ケーリン「では、始めようか?」ニヤリ
ケーリン(バカがッ!! 麻雀、花札、ルーレット、そしてこのダイスもっ、全部がイカサマ道具よ!!)
ケーリン(このダイスは特定の回転を掛けると、必ず『六』が出るようになっているのだ)
ケーリン(更に、六の出る回転を掛けないと、絶対に六は出なくなっている。コイツが一発で六の回転を探し当てる事は不可能!!)
ケーリン「俺からだ、放るぞ?」チャッ
戦士「チョイ待ち」
ケーリン「……」
ケーリン「なんだね?」
戦士「引き分け……分け目の時はどうするんだよ」
ケーリン「!?」
戦士「そこを話さないなんて、随分と、自信が有るんだな?」
ケーリン(コイツっ!!)
ケーリン「ああ、そうだそうだ、うっかり……な。分け目はお互いに振り直しだ。これでいいだろ?」
ケーリン「今度こそ、行くぞ?」
戦士「っと、チョイ待てって」
ケーリン「……」
ケーリン「いい加減にしろ!! なんだねっ!?」バンッ
戦士「いや、なんつーかさ……コッチが貰う報酬? 言って無かったじゃん」
ケーリン「……」
戦士「こっちが払うのは一億五千万ゴールドと指輪……」
戦士「こっちが貰うのは、追加で更に二つの情報だ」
ケーリン「何でも聞きたまえ、このビーナス内の事なら、答えてやろう……」
ケーリン「さぁ、もう良いだろっ!? 振るぞッ!!」
戦士「そっか……」
戦士「それじゃあ、気を付けて振るんだぜ?」
ケーリン「……」
ケーリン「気を付けて?」
戦士「こっちの望む情報は二つ……」
戦士「一つは、ビーナスに存在する秘宝の在処」
ケーリン「ッ!!?」ビクッ
戦士「そしてもう一つは……」
戦士「この国を支配する、ルナの秘密だッ!!!」バンッ
ケーリン「なんだとぉぉぉぉっ!!?」ガタンッ
>>85
アントニー
ケーリン「ぐっ……」タラッ
ケーリン(落ち着け、落ち着くんだ……イカン、イカンぞっ、雰囲気に飲まれるな!!)
ケーリン(俺がルナ様の秘密をバラしたと知れたら、良くてもジュピター行き。悪ければ……)
ケーリン「……」
ケーリン「勝てばいい……俺はっ、臆しない!! サイコロをっ、振る!!」
戦士「いいぜ、勝負だケーリン!!」
ケーリン「カアアアアアアアッ!!」ブンッ
戦士「ッ!!?」
コロンッ コロンッ
商人「……」
武道家「うそっ!?」
お嬢「はわわっ……うっ」パタンッ
ケーリン「……」
ケーリン「フッ……早くも決まってしまったな?」ニヤリ
戦士「……」
ケーリン「俺の出した目は、六と六。最高の目だ!! もはや、お前が勝つ事は絶対に有り得ない!!」
ケーリン「ここで、この一投でっ、お前は引き分けの目など出せる筈が無いのだ!!」
これはダイスがあれするね
戦士「いや……」
戦士「引き分けの目なんて出さねぇよ」
ケーリン「負けを認めるか? さぁ、振るんだ」ポイッ
戦士「……」パシッ
戦士「勝つぜ? オレは……」
ケーリン「ククッ、アァッハッハッハァッ!! お前は、バ、カ、で、す、か!?」
ケーリン「俺の出した目が最高なんだ!! それ以上なんて出せる訳が無いっ。もし、出せると言うのなら……」
戦士「出すぜ!! それ以上をな……六と六。それ以上を出す」
ケーリン「なら出してみろっ!! 早く放れっ!! ハリー、ハリー、ハリー!!」
戦士「……」
戦士「これが、その答えだっ!!」ブンッ
ケーリン(何が、答え……だ!! そんな放り上げるような投げ方では、六は絶対に出ない!!)
ケーリン(バカめ……)ニッ
戦士「バカめ……」
戦士「って、ほくそ笑んだな今?」ニッ
ケーリン「ぬっ!?」
ケーリン(ゆっくり中を舞いながら、ダイスが洗面器へ落ちてゆく。やはり、どうしたって俺の……)
戦士「勝負も決していないのにほくそ笑んだ時……そいつはもう、敗北している」
戦士「ハッ!!」シュッ
ケーリン(なんだ!? コイツは今、横に手を振ったように見えたぞ?)
コロンッ コロンッ
商人「出た目は、三と四……」
ケーリン「……」
戦士「……」
商人「それと」
武道家「……」
お嬢「えっ? えっ!?」
商人「二と五……」
戦士「じゃあ、出た目の合計は?」
>>107
たぶんバレてた
商人「合計は、十四……」
戦士「と、言う事は?」
商人「……」
商人「罰ゲーム!!」カッ
商人「これは先に言った通り、闇のゲームだぜケーリン!!」バンッ
ケーリン「……」
ケーリン「こっ、こんなのは無しに決まってるだろうがッ!! 通って堪るかこんなもん!!」
戦士「通るんだよッ!!」バンッ
戦士「確かにオレはサイコロを真っ二つにしたが……」
戦士「サイコロを破壊、変形させる行為を禁止しなかった時点で、オレの行為は反則じゃあ無いのさ」
戦士「諦めなケーリン!!」
ケーリン「うぐっ……」ギリッ
ケーリン「だっ、駄目だ駄目だ!! ノーカン、ノーカン!!」
戦士「……」
戦士「ふぅぅっ……やれやれだぜ」
戦士「ヘタクソなんだよ……アイコンタクトがバレバレ」
戦士「どうせ店に居る奴らは、全員がアンタの仲間なんだろ?」
ケーリン「ッ!!?」ビクッ
戦士「そうすりゃ、例えばポーカーをやるとして、たまたま店に居た客……を装った仲間にカードカットとカードパスを任せりゃいいしな」
戦士「公平さもアピール出来るし、相手の疑心も溶けるし、そして勝てる。一石三鳥の方法」
戦士「まっ……」
戦士「相手にバレなきゃ」
戦士「だけどな?」ニヤリ
ケーリン「くっ、くっ……」
戦士「さぁ、この勝負に『オカワリ』はねぇ……ギャンブラーならギャンブラーらしく、払うもん払って貰おうか!!」
ケーリン「くっ、くぅっ、くうぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」ポロポロ
ジュピター 森の村 少女の家
少女「お父さんただいまっ!!」タタッ
父「おう、おかえり……て、おいっ!! 服がビリビリに破けてるじゃないか!?」
少女「……」
少女「ビーナスの人に襲われたの……」
父「なんだってぇ!?」ガタッ
少女「あっ、で、でもっ!!」サッ
父「んっ?」
勇者「……」ペコリ
金獅子「……」
少女「こちらの二人に、危ない所を助けて貰ったから大丈夫よっ」ニコッ
父「おおっ!! 金獅子さん!!」
金獅子「……」ニコリ
金獅子「俺だけではない。こちらの……」
金獅子「……」
金獅子「すまん、名前を聞くのを失念していた」
勇者「私は勇者。魔王討伐の旅をしている」
金獅子「勇者!?」
金獅子「……」
金獅子「いや、そうか……勇者と呼ばれる者で無ければ、秘宝を探そうとはすまい」
勇者「では、教えて貰えぬか? ジュピターに在る秘宝の在処を」
金獅子「それはいい。それはいいが……その前に一つ、こちらの条件を受けて欲しい」
勇者「……」
勇者「私に出来る事であれば……」
金獅子「なぁに、ただその秘宝の場所へ、俺を連れて行くだけだ」
金獅子「気付いてるかも知れんが、俺は片腕が動かん……と言うよりも、無いのだ」
金獅子「一応、外見からは分からない、精密に作られた義手を取り付けているが……体のバランスを量る為に付けているだけ。アクセサリーと一緒さ」ギギッ
金獅子「フッ……片腕でも、ビーナスの兵士や魔物をブッ飛ばすのには支障ないがな」ニコリ
勇者「ああ、そのようだ……」ニコリ
金獅子「だが……魔物ならば問題は無いが、入り組んだダンジョンの攻略ともなると、これがまた上手く行かない」
金獅子「秘密が隠された場所は教えよう。秘密の在処まで案内もしよう。だから、俺を連れて行ってくれ」
勇者「……」
金獅子「頼めるか勇者?」
勇者「こちらも、一つ条件が有る」
金獅子「なんだ勇者?」
勇者「秘宝は、手にした者に莫大な力を与えると言われるが……」
勇者「私が秘宝を入手したら、この国を戻す為だけに使う。それ以外はしないし、させない……良いかな?」
金獅子「……」
金獅子「ああ、それで……問題ない」ニッ
ビーナス ルナの宮殿
ケーリン「このケーリン、呼び出しに応じ参りました!!」ザッ
ケーリン「なんでしょうルナ様?」
ルナ「……」
ルナ「ケーリン……私の嫌いなモノが分かりますか?」
ケーリン「嫌いな? 醜いモノ……でございますか?」
ルナ「……」コクリ
ルナ「そして、もう一つ有ります」
ケーリン「もう一つ、ですか?」
ケーリン「なんでございましょう?」
ルナ「それは……」
ケーリン「それは?」
ルナ「……」
ルナ「私を裏切る者だケーリン!!」キッ
ケーリン「ッ!!?」ビクッ
ルナ「有益な情報を持って来るから泳がせて居たが……とうとうタブーを犯したな?」ゴゴゴゴゴッ
ケーリン「なっ、何かの間違いですルナ様!!」
ケーリン(何故だッ!? 部下にも口止めをしていた筈!! アイツらにルナの情報を流した事はバレる訳が無いんだ!!)
ルナ「ケーリン、貴方にはジュピターへの追放も有りません……ここで、死ぬのです」スッ
ケーリン「ぐっ、ふざけるなバカがぁっ!! 死ぬのはテメェだルナ!!」ダッ
ケーリン「俺の二刀毒ナイフ戦闘術を受けろ!!」チャキッ
ケーリン「悶絶ッ!! 細珠紅蠍帯殺剣!!」バッ
ルナ「……」
ルナ「Ω(オーム)!!」カッ
ケーリン「げひゃぁぁぁぁっ!!?」ドゴォッ
ケーリン「なっ、なんだ!? 触ってもいないのに吹き飛ばされた!!?」ドサァッ
えーと・・・元ネタ全て分かる人は居ますか?
>>139
たぶん、全部わかる人は居ないと思う
ルナ「貴方のような醜い者に、触るのも触られるのも寒気がします」
ケーリン「なッ!!?」
ケーリン「くっ……なら、コイツはどうだっ!!」ジャコッ
ケーリン「この特製ショットガンなら、テメェの体を蜂の巣にできるぜ!!」
ルナ「笑止……」スッ
ケーリン「どんな汚い手を使おうが、勝ちゃあいいんだよ勝ちゃあ!!!」
ルナ「宣言して置きましょう」
ルナ「その引き金を引いた瞬間、ケーリン……貴方の命は尽きる」ニヤリ
ケーリン「……」ビクッ
ケーリン「……」
ケーリン「そんな脅しにぃ、この天才ギャンブラーで有るケーリン様が屈するとでも思ってんのかオラぁっ!!!」
ルナ「愚かな……」
ケーリン「死ねぃルナぁッ!!!」ドォン
ルナ「……」
ルナ「カーン!!」カキィン
ケーリン「ッ!?」
ケーリン「ショットガンの玉がバリアに跳ね返され……」
ケーリン「ぐはぁぁぁぁぁッ!!?」スドドドドッ
ケーリン「あ、ああっ……」ドサァッ
ルナ「……」
ルナ「血で床が汚れてしまいましたね」
ルナ「機械兵達よ、ここを片付けて置きなさい」
機械兵「ハイ、了解シマシタ」ガガッ
ビーナス お嬢の屋敷 寝室
戦士「まぁ、そんなガッカリすんなって……死んじまってる訳じゃないんだろ?」
お嬢「……」
お嬢「それは、そう、ですが……」
武道家「ジュピターに追放されても、またビーナスに来れるんでしょ?」
お嬢「それならっ!! それなら、こんなに悩みませんよ……」
商人「……」
商人「……」ポンポン
お嬢「商人さん」クルッ
商人「お嬢……」ニコリ
商人「紅茶のおかわり」
商人「早く」
商人「して」
お嬢「あっ、すみません。すぐに淹れますね!!」ガタッ
お嬢「戦士さんと武道家さんはどうしますか?」
戦士「あっ、オレはいいや」
武道家「ボクもっ。飲みたくなったら、一人で淹れるよっ」
商人「……」
商人「お嬢、紅茶。もたもたしてはダメ」ドンッ
お嬢「はい、どうぞっ」コトッ
商人「……」ニコニコ
戦士「うーん、ジュピターなぁ……そんなに酷い場所なのか?」
お嬢「ええ」コクリ
お嬢「でも……青年と一緒なら、私はジュピターに落ちても構いません!!」
お嬢「ですが、私にはそれも叶いません……」
お嬢「ルナ様が決めた、貴族と言う男性と結婚しなくてはならないのです」
武道家「強制結婚?」
お嬢「……」コクリ
お嬢「貴族さんは知り合いですし、優しい方なのは分かっているのですが……」
お嬢「やっぱり私はっ、青年……と」ポロポロ
戦士「……」
武道家「……」
商人「……」
商人「ふぅっ」コトッ
商人「打開策は三つ有る」
お嬢「……」
お嬢「ふぇっ、えっ!? 三つもですか?」ビクッ
商人「一つは、貴族を亡き者にし、ジュピターから青年を引き上げてルナに納得させる方法……」
お嬢「いきなりハード過ぎるのですが……」
商人「二つ目は、秘宝を合わせてビーナスとジュピターを元に戻す方法……」
お嬢「秘宝を?」
商人「そして、三つ目。貴女の覚悟が有ればこれが一番簡単」
お嬢「それにしますっ、覚悟は決めますから、その簡単な方法を教えてください!!」
商人「……」
商人「それは……」
ジュピター 火山口のダンジョン
勇者「後は、ここを真っ直ぐでいいのかな?」
金獅子「ああ……」
金獅子「それで秘宝の場所に着く筈だ」
勇者「そうか、では行くとしよう」タッ
金獅子「……」
金獅子(この火山口の迷宮に入って数十分は経過しているのに、勇者はなぜ汗一つ掻いていないんだ?)
金獅子(安全な道を少しでも逸れれば、八百度の高温で骨まで溶かすマグマの海……)タッタッ
金獅子(それにこの岩壁で覆われた洞窟は、余計に温度を籠らせる。暑くない訳が無いんだ)
金獅子(にも関わらず、ちょくちょく水分を補給する以外は、何も変わった様子は無いとは……どうなっている?)
──ドドドドドドドッ!!
勇者「むっ!?」
金獅子「この地鳴り……奴が来るぞ勇者!!」
勇者「奴?」
金獅子「そう、大ボスだっ」スッ
金獅子「マグマの中を住み処とし……」
金獅子「ゼラチン質の巨大な身体に、最高で一兆度の火炎弾を吐き出す……ゼットスライム!!」
ボコボコポコッ ザッバァーッ
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
金獅子「気を付けろ勇者!! コイツに物理攻撃は効かない……だからここは、お前の魔法でっ!!」
勇者「……」
勇者「なるほど。このモンスターの体内に秘宝が在るのだな?」
金獅子「ッ!!?」
金獅子「そっ、そうだ……秘宝を取り込んだから、ここまで凶悪に変化してしまったんだ」
金獅子「早くしろ勇者!! 魔法だっ!! 魔法なら倒せるッ!!」
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
勇者「……」
勇者「……」タッ
金獅子「何をしている勇者!? ソイツに近付くなんて自殺行為だぞっ!!?」
金獅子(チッ、暑さで頭がヤられていたか? このままではっ……)
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
勇者「金獅子よ、このスライムが秘宝を取り込んだと言ったな?」タッ
金獅子「……」
金獅子「ああ、それがどうした?」
勇者「秘宝は、取り込んだのでは無く、取り込まされたのでは無いか?」
金獅子「だから、それがどうした? どっちでも同じだろう!?」
勇者「それは違う……」
勇者「望んでなったのと、望まずになったのでは、結果が同じでもな」
金獅子「……」
金獅子「何が、言いたい?」
勇者「お前は、愛していない者と添い遂げられるのか?」
金獅子「……」
金獅子「おいおい……」
勇者「分からぬか?」
金獅子「質問の意味は分かるが、スライムと秘宝の関係とは結び付かないだろっ?」
勇者「……」
勇者「分かっていないようだな」
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
勇者「……」タッ タッ
勇者「……」ニコリ
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
勇者「ジッとしていなさい。私が助けてやろう」スッ
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
金獅子「何をバカな……」
金獅子「ヤメろ勇者!! 火炎弾を吐かないとしても、体温は三百度近い!! 火傷じゃすまんぞっ!!」
金獅子「魔法で殺し、体温が下がってから秘宝を取り出んだ!!」
勇者「……」スゥッ
スライム「ピロロロロロロッ……」
金獅子(くそっ!! またやり直しかっ!?)
金獅子「……」
金獅子(いや、しかし……さっきから、スライムが暴れていない?)
勇者「……」ズニュッ
スライム「ピロロロロロロッ……」グニャグニャ
金獅子「なッ!!?」
金獅子「勇者の腕が、スライムの体内に入り込んで行くだと!?」
金獅子「そんな事をしたらっ……」
勇者「……」
勇者「いい子だ……」ニコリ
スライム「ピロロロロロロッ……」
勇者「……」ズニュニュッ
勇者「……」コンッ
勇者「これかっ!?」ガシッ
スライム「ピロロッ……」ビクッ
勇者「フンッ!!」ジュブブッ
スライム「ピロ〜〜〜ッ!!」ビクビク
金獅子「ッ!!?」
金獅子「秘宝を……」
金獅子「生きた体から引き抜いた!!?」
勇者「銀色に光輝く、大きな宝石」
勇者「これが、月の魔器……」
スライム「ピキィーッ!!」プシュゥゥッ
金獅子「魔器の力を失ったゼットスライムが、ただのスライムに戻って行く?」
金獅子(いや。それも、当然か……)
金獅子(この火山は、言わば作り物。マグマはゼットスライムの体液に過ぎない)
金獅子(秘宝が合わさる事を恐れたルナが、魔物に秘宝を埋め込んでここへ隠したのだ……)
金獅子(近寄る事さえ許さない高温度の火山口をフィールドに……)
金獅子(そこの最奥で待ち受ける、一兆度の火炎弾を吐き出す狂暴な魔物……)
金獅子(しかも、特殊なゼラチン質は体術と相性悪く、大体にして奴と近付く接近戦が玉砕覚悟……)
金獅子(俺は勇者に魔法を使えと言ったが、それは消去法に過ぎない……)
金獅子(果たして、魔法が効いたかどうか……)
金獅子(しかし、どのような過程にせよ、魔物と秘宝を別ける事ができた。悪く思うな勇者……)
金獅子「……」
金獅子「……」グッ
金獅子「ライトニングボルトッ!!」ズドォッ
勇者「ッ!!?」
勇者「フンッ!!」パシッ
金獅子「なにッ!? 俺の光速拳を弾いただと!!?」
勇者「……」
勇者「この洞窟に、片手で都合が悪くなる場所は無かった」
勇者「そしてこの魔物を見た時、確信に変わったよ……」
スライム「ピキィーッ!!」ピョンピョン
勇者「金獅子……お前は私を、魔物を倒させる為だけに連れて来たのだと」
金獅子「なるほど……」
金獅子「いつ裏切るか、いつ裏切るかと、常に気を張っていたか」
金獅子「それでは、光速拳とて弾かれる訳だ」ニヤリ
金獅子「だがな勇者? 俺はその秘宝の力で、成し遂げねばならぬ事が有る!!」スッ
金獅子「渡せよ勇者!! その秘宝を!!」
勇者「……」
勇者「そうか……」
勇者「ならば、持って行くがいい」スッ
金獅子「……」
勇者「ただしそれは、この私を倒せたらの話しだ!!」
勇者「力で溺れた者に、秘宝は渡せん!!」
金獅子「フッ……だが渡して貰うぞ? 力ずくでなっ!!」グッ
金獅子「ライトニング、プラズマッ!!!」ズドォッ
ビーナス ルナの宮殿
ルナ「ではこれより、ビーナスを代表する男女の美……」
ルナ「貴族とお嬢の結婚式を始めます」ニコリ
お嬢「……」タッ
貴族「……」
貴族「おおっ……」
貴族「そのウェディングドレス、似合っているよお嬢」
ルナ「あなた達の子ならば、更に美しく育つでしょう」
ルナ「二人共、ビーナスの為にたくさん子を作りなさい」
貴族「ハッ!! ルナ様の仰せのままに……」ペコリ
お嬢「……」ペコリ
ルナ「……」
ルナ「よろしい」ニコリ
ルナ「まずは、誓いの言葉から始めましょう……」
ビーナス ルナの宮殿 別所
タッタッ タッタッ
戦士「駄目だ、この部屋にもねぇよ」
商人「ケーリンの話が真実なら、秘宝の一つはルナが近くに置いていると言っていた」
武道家「兵士はみんな式場の警備に行ったから、何とか今の内に見つけたいね?」
商人「……」
戦士「ああ。幾らお嬢が時間を稼いでくれるったって、限界が有っからな……」
武道家「それに……ししょーからの合図も無いよ」
商人「秘宝を見付けたら、空に向けて爆発魔法を放つと言っていた」
戦士「う〜ん……ジュピターに秘宝が無いか、それともまだ見付けてないのか」
武道家「……」
商人「……」
戦士「……」
戦士「て、言うか、さ?」
武道家「ししょーって、魔法……」
商人「使える?」
武道家「ボクたちはまだ、見た事が、無い……よね?」
戦士「……」
戦士「あああああ!! んなことで悩んでも仕方ねぇ!! オレらはオレらに出来る事をやるだけだ!!」
商人「……」コクリ
商人「ここからは別れて探す」
戦士「そうだな……調べた部屋のドアは開けとこうぜ? 目印にもなるしさ」
武道家「……」コクリ
戦士「っと……確か、結婚式の佳境には鐘が鳴るって言ってたよな?」
武道家「うん。だから鐘が鳴ったら探索は打ち切り」
商人「お嬢の結婚式をブッ壊しに行く」
美の第六国 入国門
タッ タッ
勇者「……」
勇者「これはっ?」
門兵「……」
門兵「お前は……」
門兵「早い、な……ジュピターから、戻って来たか」
門兵「ちょうどいい」ニヤリ
門兵「……」
門兵「助けて、くれっ……」ドサァァッ
門番「ぐぎゃあぁっ!?」ドサァァッ
「ふっ、他愛ないな」
勇者「ッ!!?」
勇者「お前は……」
バハム子「ワレはバハム子……黒竜号と呼ばれるバハムートの真の姿」
バハム子「魔王の命により、キサマを龍虎練気闘座まで連れて行く」
勇者「……」
バハム子「なんだ? そこの人間は殺していない。気絶させただけだから安心しろ」
勇者「そうか……」
勇者「しかし、こちらとしても手間が省ける」
バハム子「……」
バハム子「勇者……」ニヤッ
バハム子「ワレは、戦いに負けて魔王の配下をしているのでは無い……」
勇者「……」
バハム子「この世界の現状を見よ勇者!! この世界は、再生できぬ程に腐っている!!」
そうなの?
バハム子「このままでは無駄な人間同士の戦いで草木は枯れ、川は干上がり、動物達は死に行くだろう。それがワレには我慢できん!!」
バハム子「確かに魔王は、人間を滅ぼす……しかしその後は、魔族共に統治されて世界は一つになるはずだ」
勇者「……」
勇者「そうとは思えん」
勇者「魔族も、今は地上を手に入れると言う目的が有るから団結はしているが、その後は人間と同じ道を辿るだろう」
>>183
美希「そうなのっ!!」
バハム子「……」
バハム子「言葉では、いつまでも決着はならぬ」
バハム子「ならば勇者、キサマが魔王よりも正しいと……その拳でワレに証明して見せよ」
勇者「元より、私はそのつもりだ!!」
バハム子「……」
バハム子「良い、返事じゃ」
バハム子「こおおおおおおおおっ!!」ゴゴゴゴゴッ
バハム子「バハム子、スーパーチェンジ!!」カッ
ゴオォォォォォォォッ!!!
黒竜号「グラアァァウ!!」バッサバッサ
勇者「……」
勇者「行こう……ラオウの元へ!!」ザッ
>>187
もう。間違えないようにしてたのに
× 勇者「行こう……ラオウの元へ!!」
○ 勇者「行こう……魔王の元へ!!」
ビーナス ルナの宮殿 別所
ダッ
戦士「くそっ、どこにあんだよっ!?」
商人「駄目、こっちも見つからない」
武道家「ボクもダメだよっ」ダッ
戦士「早く秘宝を見付けねぇと、お嬢の結婚式が……」
ゴーン!! ゴーン!! ゴーン!!
商人「鐘が」
戦士「時間切れ……かよぉっ」ギリッ
武道家「……」
武道家「急ごう、みんな!!」ダッ
戦士「わぁってるよ!! 師匠に合わす顔がねぇぜ」
商人「本当に、急ぐ」ダッ
ビーナス ルナの宮殿
ルナ「貴族、汝はこの女……お嬢を、生涯愛する事を誓いますか?」
貴族「……」
貴族「はいっ、誓います!!」
ルナ「……」ニコリ
ルナ「ではお嬢……」
お嬢「……」
ルナ「汝はこの男……貴族を、生涯愛する事を誓いますか?」
お嬢「……」グッ
お嬢「ルナ様……私、は……」
ルナ「お嬢!! 誓いますね?」
お嬢(青年!! 青年!! 青年!!)ポロポロ
お嬢「……」
お嬢「はい、ルナ様」
お嬢「誓いま……」
ドゴォォォォォォォォオオ!!
金獅子「お嬢ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」ダッ
お嬢「ッ!!?」クルッ
お嬢「青年!!!」
貴族「青年!! 何をしに来た!?」
金獅子「貴族……悲しい男よ。体の殆どを機械化し、作り物の美を手に入れたとて、それが何になる!?」
貴族「ぐっ!?」ギリッ
貴族「うるさい!! 俺の何が分かる!?」
金獅子「分からんよ……お前は、後でブッ飛ばす!!」
金獅子「だが、まずは……」
お嬢「……」
金獅子「ルナ!! この秘宝の力で、貴様を倒す!!」バッ
金獅子「ライトニング、プラズマ!!」ドゴォッ
ルナ「……」
ルナ「ほう、秘宝を見付け出しましたか……」
ルナ「しかし、お前のような虫けらに何ができる!!?」
ルナ「Ω(オーム)!!!」カッ
金獅子「ぐうっ!?」ググッ
ルナ「フッ、お前如きが、この私に指一本でも触れることができると思っていたのか?」ニヤリ
金獅子「……」
金獅子「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」バキバキッ
ルナ「何ッ!!? 私の技を、気合いだけで破ろうと言うのか!?」
金獅子「ヅアァァァァッ!!」バリィィン
金獅子「この拳を受けよルナ!!」
金獅子「ライトニング、プラズマ!!」ドゴォッ
ルナ「……」
ルナ「カーン!!!」カッ
金獅子「ッ!!?」ガキーン
金獅子「ぐおおおおおおおッ!!」ズザァァッ
お嬢「青年!!」タタッ
ルナ「フフッ……」ザッ
ルナ「Ωはただ攻撃を防ぐだけだが、カーンは攻撃をそのまま反射する」
ルナ「これで、残った片腕も使い物にならなくなったな?」
ルナ「隻腕の青年……いや、これで無腕の青年か?」
ルナ「くっ、ふっ、ハハハハハハハハハッ!!!」
お嬢「しっかりしてよぉっ!!」ギュッ
金獅子「大丈夫だ……まだ、手は動く」フラフラ
お嬢「青年……」
ルナ「さぁ、トドメを刺します。お嬢、その者から離れなさい」
お嬢「……」グッ
お嬢「お願いですルナ様……青年の事は許してやってください」
お嬢「私は、貴族さんと結婚します……ですからお許しを!!」ペコリ
金獅子「やっ、ヤメろお嬢!!」
貴族「ククッ……」
お嬢「……」
お嬢「お願いします、ルナ様」
ルナ「お嬢、貴女はこの男を助けろと、私に指図するつもりですか?」
お嬢「そんな、ルナ様!! ただ私は……お願いです、お許しをっ……」
ルナ「なりません!! そこをどきなさい!!」
お嬢「……」
お嬢「……」グッ
金獅子「もういい、お嬢……」ニコリ
お嬢「……ケルナ」
お嬢「……ザケルナ!!」
お嬢「嫌です!!」キッ
ルナ「なにっ?」
お嬢「今はっきり分かりました……私は、青年を愛しています!!」
お嬢「もう何も怖くありません!! ここを出て、ジュピターへ行きます!!」
ルナ「そんな事は許しません。貴女はここで、美のシンボルとして生きるのです」
お嬢「……」
お嬢「そう、ですか」チャキ
お嬢「それでは、こうしますっ!!」シュッ
金獅子「お嬢!!?」
お嬢「うぅっ……」ポタポタ
貴族「なんて事だ、お嬢が隠し持っていたナイフで、自分の頬に傷をッ!!?」
お嬢「さぁ、これで私はここには居られません……」ポタポタ
お嬢「崖の下に追放してください!!」
ルナ「おお……何という事をッ!?」
ルナ「くっ」
ルナ「美しさを破壊する事は、私に対する裏切り……」
ルナ「ここで青年もろとも、その命を断ち切って上げましょう!!」スッ
金獅子「お嬢……」ギュッ
お嬢「青年……」ギュッ
金獅子「……」
青年「次に産まれて来る時は、一緒になろう?」ニコッ
お嬢「はいっ、はい!!」ギュゥゥッ
貴族「そんなっ、お嬢……」ガクッ
ルナ「では、この技で逝きなさい!!」ゴゴゴゴゴッ
「エクス──」
「カリバァァァァァッ!!!」ブォン
ルナ「ッ!!?」クルッ
ルナ「ちぃっ!!」バッ
ズシャァァァァァァァァッ!!!
戦士「そこまでだ、ルナさんよ……アンタ、やりすぎだぜ?」
商人「大丈夫?」タタッ
お嬢「あっ、ああ……商人さんっ!!」
青年「……」
青年「どうやら、貴女たちのようですね」
商人「なに?」
青年「これを預かっていました。受け取ってください」スッ
青年「秘宝の一つ、月の魔器です」
商人「……」
商人「受け取る。誰から預かったかは後で聞く」ガシッ
ルナ「……」
ルナ(秘宝は体内に宿さなければ、力を発揮しない……)
ルナ(つまり青年は、秘宝の力を借りずに私の技を破ったと言うのか!?)
戦士「お二人さん、この先はオレ達に任せな!!」ニヤリ
商人「悪いようにはしない……」スッ
青年「……」チラッ
お嬢「……」コクリ
青年 お嬢
「「お願いしますっ!!」」
ルナ「ぐぅっ……」
ルナ「わざわざ醜い者共を守る為に、お前達は私に逆らうのか!!?」ザッ
商人「……」
戦士「はっ……」
戦士「醜い醜いってよぉ……」
戦士「この世のどんな者よりも!!」スッ
戦士「今のアンタが、一番醜いぜッ!!」
ルナ「キッ!!?」
ルナ「キィィサァマァァァァァッ!!!」
ルナ「この私を侮辱するかぁぁっ!!?」ゴゴゴゴゴッ
青年とは金獅子でいいのかい?
それとも別キャラ?
なんかわからんくなってきた
>>213
金獅子=青年でOKだよ
戦士「いくぜ商人!!」ダッ
商人「……」コクリ
商人「タイミングはそっちに合わせる」ダッ
商人「あ」
戦士「せ〜〜〜のっ!!」
戦士 商人
「「ダブルイオラッ!!!」」バッ
ドンドンドンドンドンッ!!
ルナ「くっ……だがっ」
ルナ「ダメージには至らず、だ」ニヤリ
モクモクモクモク パラパラ
ルナ「なんだコレは? 埃を巻き上げて視界を遮る煙幕の技か?」
「……」
戦士「ああ、そうだっ、よっ!!」ググッ
ルナ「ッ!!?」クルッ
ルナ(いつの間に後ろへ!?)
戦士「ライ……」ピトッ
戦士「ディィィィィィィン!!」バチッバチバチ
ルナ「グアアアアアアアアッ!!?」ズドォォッ
ルナ「うう……」フラフラ
ルナ「ぐっ」ガクッ
ルナ(バカなッ!? バカな、バカな、バカな、バカな、バカなッ!!)
ルナ「……」
ルナ「フフッ……」
ルナ「カット」ザッ
戦士「ッ!!?」バッ
商人「とうとう、始まった……」
ルナ「カット、カット……カットカットカットカットカットォォッ!!!」
戦士「アンタ……美しさを求める余り、体を殆ど機械にしちまったんだろ?」スッ
ルナ「……」
ルナ「だが、たった今……『人間らしさ』を、全てカットした」
戦士「はぁ?」
ルナ「魔法で痛む内臓など必要無い。機械に変えた」
ルナ「痛みを感じる痛覚も、触覚も、全てカット!!」
ルナ「たった今、より強く、より美しく、体の全てを機械に作り替えたッ!!!」
戦士「そっ、そんな……」ガタッ
戦士「そんな無茶苦茶な!?」
戦士「……ってさ」
戦士「普通なら驚くんだろうが」チラッ
商人「間違いない。もう一つの秘宝は、ルナの体内……」コクッ
ルナ「そうだ……秘宝は私が取り込んでいる!!」
ルナ「しかし、今更それが分かって何になる?」
ルナ「体の硬度は鋼に変え、痛覚に連結する部分は全て遮断し、そして手足が破壊されようとも関係の無い自己修復機能!!」
ルナ「これでも、貴女方は驚かませんか?」ニヤリ
商人「あきれる」
戦士「くっ、もうバケモンじゃねぇか!!」
ルナ「何とでも、言いなさいッ!!」ダッ
戦士「ん!? はやっ……」
ルナ「ハァッ!!」ドゴォッ
戦士「ガッ!!?」ズサァァッ
商人「戦士!?」
商人「ふぅっ!!」ダッ
商人「商人必殺コンボ!!」グッ
ルナ「……」
商人「外式・奈落落とし!!」ドゴッ
商人「外式・轟斧 陽!!」
商人「百拾五式・毒咬み!!」
商人「四百壱式・罪詠み!!」
商人「四百弐式・罰詠み!!」
商人「七拾五式 改!!」バキッバキッ
商人「トドメ……裏百八式・大蛇薙!!」
商人「喰らいやがれッ!!!」ボォォッ
ルナ「……」
ルナ「攻撃は、終わりましたか?」
商人「ッ!? 効いてない!!?」
ルナ「フンッ!!」ブォン
商人「きゃあっ!?」ズサァァッ
ルナ「フッ」
ルナ「フフッ……」
ルナ「フハハハハハハハッ!!」
ルナ「誰で在ろうとも、この完全体となった私に勝つ事はできない!!」ザッ
商人「くっ……」フラフラ
戦士「ああ、そうかよっ……」フラフラ
商人「……」ピクッ
戦士「……」ピクッ
戦士「じゃあ、そろそろ……」
商人「勝たせて貰う」
ルナ「……」
ルナ「世迷い言を……」ニヤリ
青年「……」
青年「気のせいかな? 少し……」
お嬢「っ!?」
お嬢「まさかっ!!?」
貴族「んっ? んっ!?」キョロキョロ
商人「気付いて無いのは、本人だけ」
戦士「人間らしさを、捨て過ぎたなルナ?」
ルナ「……」
ルナ「不愉快な……」
ルナ「何が、言いたいのです!!」
戦士「オレの方に、一歩……近付いてみな?」
ルナ「そんな事……」ガッ
ルナ「ッ!!?」ガッ ガッ
ルナ「なんだ!? 私の体が……」
ルナ「体が凍っている!!?」
武道家「遅れて参上、っと!!」タタッ
武道家「この宮殿ごと凍らせて来たから、時間かかっちゃった」
商人「おかえり」
戦士「で、どうなんだルナ? 自己修復機能ってのは?」
戦士「手足はブッた切られても平気みたいだが、氷像にされるってのは……いや、聞くまでもないな」
ルナ「くっ、ぐぅっ……」
戦士「後は秘宝を取り出せれば良いんだが……」
武道家「どうしよっか?」
青年「……」
青年「お嬢、最後の仕事をして来る」ザッ
お嬢「えっ?」
青年「どうやら、まだ俺の仕事は残っていたようだな」タッ
商人「……」
戦士「打開策はあんのか?」
青年「俺はルナが秘宝を取り込んだ現場を、偶然にも目撃した……」
青年「故に、ルナは俺をジュピターへ追放したのだろう」
武道家「そんな事で!?」
青年「俺はお嬢と居れれば、秘宝の事など言うつもりも無かったが……」スッ
青年「俺は、今一度……」
金獅子「雷光の獅子となって、ルナ!! 貴様から秘宝を抉り取る!!」バチバチッ
ルナ「……」ガチガチッ
ルナ「虫けらがぁぁぁぁっ!! オーバーヒートだ!! こんな氷など、体温を急上昇させて瞬時に溶かすまでよ!!」ゴォォォッ
金獅子「お嬢……」グッ
金獅子「この命の力……極限まで燃やし尽くす!!」ゴゴゴゴゴッ
金獅子「ルナ!! 貴様が秘宝、天使の羽を取り込んだ場所は、右の鎖骨だッ!!」ダッ
ルナ「ッ!!?」プシュゥッ
燃やせ 燃やせ 怒りを燃やせ
走れ 走れ 明日へ走れ
金獅子「ライトニング、ボルトォッ!!!」ドゴォッ
ルナ「ハァッ!!」バリィーン
ルナ「Ω!!!」カッ
怒りの炎が 天を突き破る
廃墟の中から 立ち上がれライガー
金獅子「うおおおおおおおおお!!!」バリィン
ルナ「くうっ!?」
ルナ「ならば、カーン!!!」カッ
奇跡のバイオアーマーが
闘う痛みを 感じても
金獅子「ライトニング、プラズマ!!」ドゴォッ
ルナ「カーンはあらゆる衝撃を反射する防御壁……自らの技で砕けるがいい!!」ニヤリ
恐れるものは何もない
邪神を叩き潰すまで
お嬢「ッ……」グッ
お嬢「青年!! いっけぇぇぇぇぇっ!!!」
金獅子「ルナァァァァァァァッ!!!」バキィン
ルナ「コイツ!? 自分の技を受けながらも、カーンを打ち破っただと!!」ビクッ
ライガーソード!!
空を切り裂く 聖なる剣(つるぎ)
金獅子「ゲル、ギル、ガン、ゴォ、グフォ……ふんっ!!」
金獅子「サンダー、ヘル!!」ズドォッ
ライガースラッシュ!!
稲妻 轟く
ルナ「ぐはぁぁっ!?」メリメリッ
金獅子「ライガー、ヘブン!!」ガシッ
金獅子「この手に掴んだ秘宝、このまま……」
真紅のファイヤー
ライガー ライガー ライガー
ルナ「やめろぉぉぉぉぉっ!!!」
金獅子「引っこ抜く!!
金獅子「ルナよ!! 光になれぇぇぇぇぇっッ!!!」ズボォォッ
怒りの獣神ライガー
,
ルナ「ぐおおおおおオォアアアアアアッ!!?」ドサァッ
ルナ「私のっ、ワタシノカラダガァァァッ!!!」バキッ バキッ
商人「無理やり造り替えた体が、秘宝を失って崩壊し始めてる」
武道家「悲しいけど……これが美を求めた末路なんだね」
金獅子「……」
金獅子「これを、受け取ってくれ!!」ブンッ
戦士「おっ!?」パシッ
戦士「へへっ、さんきゅ……やっと二つ揃ったな」
金獅子「せめてもの情けだ……」
金獅子「一撃で葬ってやる!!」グッ
ルナ「ユルサン……」ガガッ
ルナ「ユルサン、ユルサンユルサンユルサン!!!」
ルナ「ナニをシテいる機械兵!!」
ルナ「この場にいる奴らヲ、全員コロセ!!」
機械兵「信号ウケツケ、了解シマシタ」
機械兵「ライフル装備で対処シマス」ガチャン
武道家「うっそ!?」ザッ
戦士「マジかよっ!?」
商人「ライフルを持った人型ロボがぞろぞろ……」スッ
ルナ「ギャハハハハハハッ!!」ガガッ
ルナ「シネ!! シネ!! シネ!!」
金獅子「ッ!!?」
金獅子「ルナァァァァァァァッ!!」バチバチッ
金獅子「ライトニング、プラズマ!!」ドゴォッ
ルナ「ガガキキキキッキェッ!!?」バキバキバキッ
ルナ「ワタシは!! ワタシはアアアアアアアアアアアア!!!!!」バタッ
ドゴォォォォォォォォォン!!!
パラパラ パラパラ
金獅子「……」
金獅子「サラバだ、ルナ……」グッ
金獅子「次は、機械兵!!」バッ
戦士「エクスカリバー!!」ブォン
機械兵「……」ズシャァァッ
武道家「オーロラエクスキューション!!」ズォォッ
機械兵「……」ガチッ ガチガチッ
商人「36連、商人パンチ!!」ポカポカポカポカ
機械兵「ガッ……」ドンガラガッシャーン
戦士「ちっ、まだ居るのか!?」
機械兵「……」バキバキバキッ
金獅子「……」
金獅子「これで終わりか?」
お嬢「……」キョロキョロ
お嬢「……」
お嬢「終わったのね青年♪」ダッ
商人だけおいてかれた感が
トリコが元ネタかな
機械兵「……」
機械兵「……」ググッ
機械兵「ハイジョ」ジャコ
機械兵「シマス……」パギューン
武道家「えっ!?」
戦士「なッ!?」
商人「伏せろお嬢!!」
>>246
商人には、ま、ま、ま、マヌーサがありますから……
金獅子「ッ!!?」
金獅子「避けろっ!! お嬢ぉぉぉぉぉぉッ!!!」
お嬢「……」
お嬢「えっ?」
「お嬢!!」バシッ
お嬢「きゃっ!?」ドサァッ
貴族「ぐふっ!?」ズドンッ
貴族「……」ポタポタ
貴族「ああ……」
貴族「良かった、お嬢……君が無事で」ニコリ
お嬢「ッ!!?」
お嬢「貴族さんっ!!」
貴族「……」グッ
貴族「青年ッ!!」
金獅子「貴族、お前……」
貴族「フッ、勘違いはするんじゃあ無いぜ?」ニッ
貴族「俺は別に、生きる事が嫌になってこんな事をしたんじゃない……」
貴族「ごふっ!?」ベチャッ
貴族「はぁっ、はぁっ……」タッ タッ
貴族「自分の愛した者が命の危機に陥った時!!」フラフラ
貴族「その愛した者を命懸けで守る!!」
金獅子「……」
貴族「体を動かすのに、それ以上の理由は居るか?」タッ タッ
機械兵「ガガッ……」パギューン
貴族「ッ!!?」ズドンッ
金獅子「貴族ッ!!」ダッ
お嬢「貴族さん!!」
貴族「来るなッ!!!」
貴族「……」フラフラ
貴族「ははっ……」タッ タッ
機械兵「……」パギューン
貴族「ッ……」ズドンッ
貴族「ふぅぅっ……」タッ タッ
機械兵「……」パギューン
貴族「ぐっ……」ズドンッ
貴族「ふぅぅっ……」タッ タッ
貴族「……」ザッ
機械兵「……」パギューン
貴族「……」ズドンッ
機械兵「……」パギューン
貴族「……」ズドンッ
機械兵「……」カチッ カチッ
貴族「……」
貴族「弾切れか……」
貴族「すぅぅっ……」
貴族「……」
貴族「お嬢!! 青年!!」ボタボタ
お嬢「ぐすっ、貴族……さん」
金獅子「……」
金獅子「なんだ、貴族?」
貴族「……」グラッ
貴族「一度しか言わねぇから、良く聞きやがれっ!!!」
お嬢「……」グッ
金獅子「……」
貴族「……」
貴族「二人ともっ、お幸せに……」ニコリ
お嬢「ッ!!?」ポロポロ
金獅子「青年ッ……」
機械兵「……」カチッ カチッ
貴族「……」ググッ
貴族「俺だってな、伊達に体の半分を……」
貴族「機械にしたんじゃ、ねぇぞぉッ!!!」ドゴォッ
機械兵「ウガッ……」バキバキバキッ
機械兵「……」バキンッ
貴族「……」
貴族「フッ」ニヤリ
貴族「……」フラッ
貴族「……」ドサァッ
商人「貴族、お見事……」
戦士「最後の最後に、男を見せたな」
お嬢「……」ギュッ
お嬢「青年、いい?」
金獅子「ああ、行ってやれ」ニコリ
お嬢「うんっ」タタッ
お嬢「……」タッ
お嬢「貴族……」スゥッ
お嬢「守ってくれて、ありがとう」ニコリ
お嬢「んっ」チュッ
美の第六国 ビーナス 解放
決戦の地 龍虎練気闘座へ
,
次でラストです
ビーナス お嬢の屋敷 客室
商人「♪」ゴロゴロ
商人「……」
商人「お嬢、紅茶」
お嬢「あっ、はい」パタパタ
商人「青年、お菓子」
青年「ちょっと待ってね」パタパタ
商人「♪」ゴロゴロ
お嬢「はい、商人ちゃん紅茶♪」コトッ
青年「はい、商人ちゃんお菓子」ドサッ
商人「……」
商人「♪」
戦士「……」
武道家「……」
戦士「……」チラッ
武道家「……」クイッ
戦士「……」コクリ
戦士「商人……」
商人「……」
商人「なにかよう?」
戦士「戦士キック」ドゴッ
商人「ぎゃっ!?」ゴロゴロゴロ
戦士「おめぇ、何この家のガキになってんだよ?」
武道家「ししょーが来たらすぐに出なきゃイケないのに、そんな気を抜いてちゃダメだよっ」
商人「……」
商人「師匠なら、もうここには居ない」スタッ
戦士「はっ?」
武道家「えっ?」
武道家「どう言う、こと?」
商人「青年に聞くといい」
青年「……」
戦士「オイ青年!!」ヅカヅカ
武道家「どう言う事? ししょーは野暮用で、数日したら戻って来るんでしょ?」ガシッ
武道家「ボクたちに、ここで待つように言ったんでしょ!?」
青年「それは……」
それは────。
回想 ジュピター 火山口のダンジョン
勇者『ハァッ!!』ズドンッ
金獅子『ぐはぁっ!?』ズサァァッ
金獅子『……』
金獅子『ここまで、力の差が有ったとは……』ガクッ
金獅子『だが、俺は愛の為に、負ける訳にはいかぬっ!!』フラフラ
勇者『……』スッ
金獅子『秘宝の力を手にし、俺がルナを倒すのだ……』
金獅子『愛の為に、俺は戦う!!』ザッ
勇者『……』
勇者『愛の為に……か』
勇者『先ほどのスライムのように……自らの体が望まぬ変貌を遂げても、それでも秘宝の力を取り入れたいのか?』
勇者『金獅子よ!! それでルナを倒したとて、お前の愛する者は喜ぶのか!?』
金獅子『ッ!!?』
勇者『よく、考えるのだ……』
金獅子『……』
金獅子『ぐっ……』
金獅子『しかし、秘宝の力が無くては、ルナに勝つ事など……』
勇者『私は、そうは思わん』
勇者『お前の拳は強い。己の力を信じれば、必ずやルナとて討てるだろう』
金獅子『しかし……』
勇者『私は勇者だが、お前も同じく、勇者の素質は有る』
金獅子『俺が勇者?』
勇者『そうだ。勇者の素質、勇者の条件とは……』
勇者『その身に悲しみを背負い』
勇者『その拳に愛を帯びた者……』
金獅子『ッ!!?』
勇者『金獅子よ、秘宝はお前に託そう。そして、ビーナスに居る私の弟子達へ渡して欲しい』
勇者『だが……もし、もし。自分の愛を貫けず、悲しみに押し潰された時は……』
勇者『その時は、秘宝の力を使いなさい』ニコリ
金獅子『……』
金獅子『秘宝は受け取ろう。そして、勇者の弟子達に渡す……約束しよう!!』
勇者『……』コクリ
勇者『戦士、武道家、商人……必ずや力を貸してくれる筈だ』
勇者『そして、ここらは私個人の頼みになるのだが……』
金獅子『なんだ? 言ってみろ勇者。出来る限り聞こう』
勇者『無事にルナを討ち倒したならば、弟子達をビーナスへ引き留めて置いて欲しい……』
金獅子『それは構わないが、理由を教えてもらってもいいか?』
勇者『私の旅も、残すは魔王のみ』
勇者『旅を続け、弟子たちも相当レベルアップを重ねたが、魔王には凡そ通じぬ』
金獅子『つまり、弟子を危険に晒したくないから、ここへ置いて行くと……そう言う訳か?』
勇者『……』
勇者『愛の為だ!! 私は魔王を倒し、平和が訪れたなら、弟子達と共に静かに暮らしたいと思っている』
勇者『ケガも無く、健康な体でな……』ニコリ
勇者『足手まといだから付いて来るなと言えば、逆に反発して付いて来る者達だ……』
勇者『頼めるか? 数日中に片は付くだろう』
金獅子『……』
金獅子『心得た。数日で良いのだな? お前の弟子達は、何とか俺が食い止めていよう』
勇者『ルナに、負けるなよ金獅子?』ニコリ
金獅子『お前もな。必ず魔王に勝てよ勇者?』ニコリ
と、言う事があったのだ──。
青年「……」
青年「貴女達を引き留めて既に数日……」
青年「もう勇者は、魔王の近くまで行っている頃でしょう」
戦士「……」ニコリ
武道家「……」ニコリ
戦士「じゃ」
武道家「ないよ、このっ!!」ギュゥッ
青年「ぐえっ!? 苦し……」
お嬢「あわわわわっ!? ヤメてぇぇっ!!」パタパタ
商人「……」
商人「ふぅっ」
商人「戦士……」
戦士「あっ?」
商人「武道家……」
武道家「なに?」
商人「二人とも子供……」
武道家「なっ、なに言うんだよっ!?」
戦士「さっきまでお菓子くってゴロゴロしてた奴に言われたくねぇよ!!」
商人「……」
商人「ほら、すぐに怒るのは子供の証拠」
戦士「うっ」ピタッ
武道家「言い返せない……」
商人「二人は人間味が有り」
商人「感情豊か……」
戦士「……」
武道家「……」
商人「でも裏を返せば、次の行動を感情に左右され易い……」
商人「それでは魔王と戦えない」
商人「ので、師匠に置いて行かれた」
商人「しかも、二人の技も魔王には通用しないと言われた」
戦士「……」シュン
武道家「……」シュン
商人「……」
商人「でも、師匠も分かってない事がある。それはつまり、魔王も分かっていない事……」
商人「三人の力を合わせれば、魔王にも勝てる」
商人「かも知れない……」
武道家「えっ!?」ガシッ
戦士「勝てんの!?」ガシッ
商人「かも、し、し、し、知れない……」グワングワン
商人「とりあえず離すべ、きっ……離しっ、しっ、離せっ!!」
武道家「あっ、ゴメン」パッ
戦士「わりぃ……」パッ
商人「……」ハァハァ
戦士「……」シュン
武道家「……」シュン
商人「ゴホンッ……」
商人「勇者は師匠、だけでは無い」
商人「優勝の素質を持った者は、賢者や、聖者……たくさん出会って来たけれど」
商人「私は師匠以外に、勇者を三人知っている」
戦士「三人?」
武道家「それって……」
商人「……」コクリ
商人「私」
商人「戦士」
商人「武道家」
商人「の三人……」
商人「証拠も有る。二人ともペンダントを出して……」チャラッ
戦士「ペンダントって、ダンジョンで手に入れたコレか?」チャラッ
武道家「そう言えば、金色の帝都では光輝いたよね? 凄い合体魔法も成功したし」チャラッ
商人「見れば分かるけど、これは元々一つの物が、三片に割れた物……」
商人「そしてコレは、勇者にだけ応えて光輝く……ずっと昔の勇者が身に付けていた遺品の一つ」
商人「ロトの紋章……」
戦士「ロトの」
武道家「紋章……」
商人「それにより、古代魔法……」
商人「ルーラ系最強の『オメガルーラ』が使用可能」
戦士「オメガ? なんだそりゃ?」
武道家「初めて聞くんだけど?」
商人「オメガルーラは、特定の場所へ瞬時に移動する魔法」
戦士「はっ? 普通のルーラと何が違うんだよ?」
商人「特定の場所とは」
商人「魔王の近く」
戦士「ッ!!?」
武道家「魔王の?」
商人「……」コクリ
商人「だから、師匠には追い付けないけど……」
商人「師匠を追い越して、先に魔王と戦う事ならできる」
戦士「……」
武道家「……」
戦士「移動できるっつってもなぁ……」チラッ
武道家「うん。ボクたちには、ししょーから貰ったアレで、アレするぐらいしか」
商人「私が勝てるかも知れないと言ったのは、三人で自爆する事では無い」
商人「私が今朝やっと完成させた魔法……」
商人「それなら、幾ら魔王と言えども通じるはず」
商人「でも、その魔法を使うには、数分の『溜め』が必要」
商人「その数分を、戦士と武道家が稼いでくれれば……勝機は有る」
戦士「……」
戦士「魔王相手に数分かよ……」
武道家「それ、失敗したらどうするの?」
商人「時間が稼げない、もしくは私の魔法が通用しなかったら、三人で魔王に張り付き、自爆する」
戦士「結局それかよ……」
商人「……」
商人「私たちが何もしなくても、師匠が魔王を倒す」
商人「かも知れない」
商人「でも、師匠より先に魔王と戦ってダメージを与えれば、確実に師匠の戦いを楽にできる」
武道家「……」
商人「二人とも選んで」
商人「戦うか、待つか……」
商人「私はどちらでも構わない。どちらを選んで、どんな結果になっても、恨まない……」
戦士「……」
武道家「……」
戦士「なぁ、お嬢?」
お嬢「あっ、私ですか?」
お嬢「はい、なんでしょう?」
戦士「ビーナスとジュピターを一つにする日って、いつだっけ?」
お嬢「ジュピターの方々の移動も有るので、秘宝を合わせるのは二日後を予定していますが……」
戦士「二日後かぁ、それじゃあ遅いよなぁ」
お嬢「でも、ジュピターの土地がずっと競り上がって、ビーナスと一つになるんですよ? それぐらい間を置かないと」
戦士「いや、そうじゃなくて、さ……」
戦士「一つになる所、どうせなら見たかったなぁって……」ニコリ
お嬢「あっ……」
戦士「……」
戦士「……」グッ
戦士「いく、か」
戦士「オレは行くぜ商人!!」ザッ
武道家「……」
武道家「うぅっ……」ブルブル
武道家「ああああああああアア!!!」
武道家「うぅっ……」
武道家「ボクは、怖い……」
武道家「けど……」
武道家「ししょーが負けちゃったら、おしまいだもんね?」
武道家「……」
武道家「先生」グッ
武道家「ボクは、絶対零度の氷……例え魔王が相手だとしても」
武道家「クールに徹するのみ!! 行こう二人とも!!」ザッ
商人「……」ニコリ
商人「遥か昔にも魔王は現れ、その魔王を倒したのは三人の勇者……」
商人「そして、三人それぞれが『ケンオウ』と呼ばれていた」
商人「伝説の剣を持ち、魔王の角を切り落とした……『剣王』」
戦士「……」
商人「あらゆる武術を極め、魔王の鎧を砕いた……『拳王』」
武道家「……」
商人「究極の魔王を会得し、魔王にトドメを刺した……『賢王』」
戦士「……」
戦士「へっ、以外とイケそうな気がして来たぜ」
武道家「もしかしたら、アッサリ勝てちゃうかもね?」
商人「そんなイメージが大切」
商人「大丈夫、きっと勝てる!!」
商人「まずは……」スッ
商人「スクルト!! ピオリム!! バイキルト×2!!」パァッ
武道家「おおっ!!」
戦士「み、な、ぎ、っ、て、きた!!」
商人「ステータスを底上げした」
商人「これなら、時間を稼げるはず」
商人「作戦はこう」
商人「オメガルーラで魔王の前まで行ったら、私はエリクサーをがぶ飲みしながら魔法を溜める」
戦士「その間に、オレらが二人で魔王を相手するっと」
商人「そして私の魔法が完成して、まだ二人が生きてたら……」
武道家「ちょっと、不吉なこと言わないでよっ!!」
商人「全力でその場から逃げて」
商人「……」
商人「オッケー?」
戦士「まっ、オッケー」
武道家「オッケー」
商人「でも、万が一、私の攻撃が通用しなかったら……」
商人「ピオリム一回分の魔力は残して置き」
商人「その場でピオリムを掛け直す」
戦士「……」
商人「そしたら、三人で一斉に師匠から貰ったマジックストーンを発動させ……」
武道家「……」
商人「メガンテにより、魔王と自爆する」
商人「……」
商人「オッケー?」
戦士「それも、オッケー」
武道家「オッケー」
商人「それではオメガルーラを発動させる」
商人「二人ともペンダントを……」スッ
青年「我々はお手伝いできませんが……」
青年「貴女達の強さは知っています!!」
青年「必ずや実力で、魔王も倒せるはずです!!」
お嬢「魔王を倒し……」
お嬢「そして、生きて戻って来てください!!」
お嬢「それまで、祈りましょう……いつまでも」
戦士「へっ……」
戦士「ああっ!!」ニコリ
武道家「任せといてよっ!!」ニコリ
戦士「……」グッ
武道家「……」グッ
戦士「ほらっ、商人……使ってくれ」ポイッ
武道家「はいっ、ボクのも」ポイッ
商人「受け取った」パシッ
商人「ここだと屋根を突き破るから外に出る」
戦士「は?」
武道家「あっ、そう言えばルーラだもんね」
商人「……」チラッ
商人「……」ジィーッ
青年「なんでしょうか?」
お嬢「商人さん?」
商人「青年、お嬢」
商人「お幸せに……」ニコリ
森のフィールド 湖の傍
商人「三つのペンダントを合わせり」カチッ
戦士「上手く合わさったなぁ」
武道家「円盤石……これがロトの紋章?」
商人「そう」コクリ
商人「そしてロトの紋章を地面に置き……」コトッ
商人「……」
商人「……」
戦士「おいっ?」
武道家「どうしたの商人?」
商人「その前に……」シュルッ
商人「この右腕の包帯を外す」シュルルッ
戦士「ッ!!?」ビクッ
武道家「ッ!!?」ビクッ
武道家「……」
武道家「ついに、アレを解放するんだね?」ゴクリ
戦士「まさか、アレをまた見る事になるなんてな……」ゴクリ
戦士「あの……」
戦士「冥王、烈殺、赤龍破を!!」ガタッ
商人「……」パサッ
商人「私の赤龍は気性が荒い……」ゴゴゴゴゴッ
商人「やっと、コントロールできるようになった……」
商人「さぁ、紋章の回りに立って」
商人「みんなで手を繋いで囲む」
戦士「お、おうっ」タタッ
武道家「これでいいの?」ギュッ
商人「……」コクリ
戦士「ロトの紋章が光輝いて来た!!」
商人「私たちが勇者の素質を持ってる証拠。魔王を倒せる……証拠」ギュッ
商人「後は紋章に、皆で『オメガルーラ』と唱えるだけ」
戦士「……」
武道家「戦士ぃ〜っ、体が震えてるよ?」クスッ
戦士「ばっか、武者震いだよ武者震い!!」
商人「……」ニコリ
商人「ふぅぅっ」
商人「最後の準備は、オッケー?」
戦士「もちろん……」
戦士 武道家
「「オッケー!!」」
戦士「それじゃ、ヤっか!!」
商人「あ」
武道家「せ〜〜〜のっ!!」
戦士 商人 武道家
「「「オメガルーラ!!!」」」
,
巨大な山の奥深くに存在する
魔王と勇者 幼き頃の修行場
そして決戦の地……
その名を……
『 龍虎練気闘座 』
,
龍虎練気闘座 半壊した闘技場
ヒューッ
魔王「もうすぐ……」
魔王「もうすぐ、配下が勇者を連れて来る」
側近妹「……」コクリ
魔王「しかし、この無想転生剣が抜けねば……」チャキッ
魔王「勇者に負けるやも知れぬ」
側近妹「……」コクリ
魔王「この剣が抜けるのは、俺か勇者だけ」
魔王「そして抜くには……」
魔王「この手に悲しみを背負わねばならぬっ!!」グッ
側近妹「……」コクリ
魔王「側近妹よ……」
側近妹「なんでしょう魔王様?」
魔王「お前の命、この魔王にくれい!!」
側近妹「……」コクリ
側近妹「魔王様……」
側近妹「私は姉共々、魔王様を愛し、魔王様の力になりたく忠誠を誓って来ました」
魔王「……」
側近妹「しかし私は姉と違い、体が弱く戦闘タイプでは有りません」
側近妹「それでも魔王様が私を側近の一人に置いてくれた事は、感謝でしか言い表せない……」
魔王「許せ……側近妹」
魔王「俺を恨んでも構わぬ!!」グッ
側近妹「ふふっ」
側近妹「どうして恨む事がありましょう……」
側近妹「こんな私でも魔王様の力になれて」
側近妹「愛する貴方の手で逝けるなら……」
側近妹「部下と言えど見詰められていては突き難いでしょう」クルッ
側近妹「さぁ、私の背を、貴方の拳で突いて下さい」
側近妹「貴方の手で、私の命を終わらせてください……」
魔王「……」
魔王「お前の名は、我が心に生涯刻み付けよう!!」
魔王「側近妹よ……天に滅せい!!」バッ
龍虎練気闘座 巨大門の前
ギュワーン
戦士「っと」スタッ
武道家「ほっ」スタッ
商人「到着」スタッ
戦士「……」キョロキョロ
戦士「こんな所に魔王が居るのか?」
戦士「って、言おうとしたが……」
戦士「とんでもねぇプレッシャーだな」ゴクリ
武道家「うん」コクリ
武道家「まだ魔王は見えてないのに、ここに立ってる居るだけで、やつれちゃいそうだよ……」
商人「この門をくぐった先に魔王が居る」
商人「これが正真正銘、最後の戦い……」
商人「みんな、気合い入れて!!」グッ
武道家「応ッ!!」グッ
戦士「わかってるって!!」グッ
戦士「それに、他の魔物達は一匹もいねぇみてぇだしな」
武道家「ボクらがみんな倒しちゃったのか、それとも……」
商人「地上を侵略する為、各地に散らばってる」
商人「しかも魔王の護衛が居ないと言うのは、とどのつまり……」
戦士「魔王は護衛なんて必要ないぐらい、強い!!」
戦士「そうだろっ?」
商人「……」コクリ
商人「でも……」
戦士 武道家 商人
「「「絶対に、勝つ!!!」」」
商人「私達は、勇者の弟子!!」ダッ
戦士「この力、極限まで高めれば!!」ダッ
武道家「ボクらに、勝てない敵など、無い!!」ダッ
,
龍虎練気闘座 半壊した闘技場
ゴロゴロゴロッ ビカァーッ
魔王「……」
魔王「来たか……」
側近妹「……」ドサァッ
ダッ ダッ ダッ
魔王「待っていたぞ勇者……」
魔王「むっ!?」ピクッ
戦士「ところがどっこい!!」バッ
武道家「ボク達が相手だよっ!!」バッ
商人「先手必勝!!」バッ
戦士「石破ッ!!」
武道家「アルティメットぉぉっ!!」
商人「ギガッ……」
戦士 武道家 商人
「「「ディィィィィィイン!!!」」」
魔王「……」
ドゴォォォォォォォォォン!!!
,
モクモク パラパラパラッ
魔王「……」
戦士「ちっ、効いちゃいねぇ!!」スタッ
戦士「後ろに下がれ商人!!」
武道家「出来る限り時間を稼ぐよっ!!」
商人「……」コクリ
商人「……」ダッ
魔王「……」
魔王「ふむ」ニヤリ
魔王「以前に顔を合わせた時は、勇者の後ろで体を震わせる小鹿だと思っていたが……」
魔王「どうやら、だいぶ成長したようだな?」タッ
魔王「今の攻撃、さざ波ほどは効いたぞ?」スッ
戦士「……」チラッ
武道家「……」コクリ
戦士「へっ……」
戦士「ああ、そうか、よっ!!」ダッ
戦士「イオラッ!!」バッ
武道家「ばくれつけん!!」ダッ
魔王「……」ニィッ
魔王「ぬはぁっ!! この血を滾れせて見せよ!!」ダッ
商人「……」ゴゴゴゴゴッ
商人(後三分……二人とも耐えて!!)
武道家「アチョ〜〜〜〜ッ!!」バッ
武道家「だだだだだだだだダァッ!!」ドドドドドッ
魔王「ふっ、叩き落としてくれる……」スッ
魔王「魔王、千手壊拳!!」ググッ
魔王「おぉりゃりゃりゃりゃりゃりゃリャァッ!!!」ドドドドドッ
武道家「うおおおおおおおおお!!」ドドドドドッ
魔王「ぬふぅっ!!」ドドドドドッ
武道家「ぐぅっ!?」ドドドドドッ
魔王「……」ドドドドドッ
魔王「ふっ」ニヤリ
魔王「ぬぅぅん!!」ゴォッ
武道家「うああッ!?」グラァッ
魔王「この技で逝けい!!」グッ
魔王「漠竜、独指突!!」
戦士「ここでインターセプト!!」
戦士「ベギラマッ!!」ボォォッ
魔王「ぬっ!?」ダッ
魔王「フフッ……」スタッ
魔王「フハハハハハハッ!!」
武道家「くっ……」スタッ
武道家「ありがと戦士」
戦士「打ち合った感想はどうよ?」
武道家「真面目からじゃ、補助魔法が掛かってても勝てる気がしないよ……」
戦士「そっか……」
戦士「やっぱ結局さ……」スッ
武道家「ボク達には、コレしか無いよね?」スッ
魔王「奥の手が有るのなら待ってやる……」
魔王「この魔王に、貴様らの全身全霊を見せてみぃ!!」スッ
武道家「ハァァァァァッ!!」ゴゴゴゴゴッ
戦士「ハァァァァァッ!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「ほぉ……」ニヤリ
武道家「この武道家、最大の奥義を見せてやるっ!!」スゥッ
武道家(先生……力を貸してください!!)カッ
武道家「オーロラ──」
シヴァ『オーロラ──』
武道家「エクスキューション!!」
シヴァ『エクスキューション!!』
,
ズオォォォォォォォォッ!!!
魔王「これはっ!?」
魔王「ぐぉぉぉぉっ!!」
ガキィッ、ガチガチッ!!
魔王「……」
武道家「氷漬けの気分はどうだ魔王っ!!」
武道家「戦士!!」
戦士「ああっ、これでフィナーレだ!!」ニヤリ
戦士「右手にはオレの……」
戦士「そして左手には……」グッ
戦士「この戦士が放つ、聖剣の二刀流!!」
戦士「その奥義をッ、受けろ魔王!!!」
戦士「インフィニティ──」スゥッ
インドラ『インフィニティ──』
戦士「エクスカリバー!!」ブォン
インドラ『エクスカリバー!!』
ズシャァァァァァァァァッ!!!
魔王「……」
バキィィィン!!
魔王「……」バラバラッ
魔王「……」ゴロッ
戦士「……」
戦士「へっ……」
戦士「やった」
戦士「魔王を倒したぜ武道家!!」ピョンピョン
武道家「やったね戦士!!」ピョンピョン
武道家「これで平和が訪れてるよっ!!」
戦士「オレ達が……」
武道家「ボク達が……」
戦士「魔王を!!」
武道家「倒したんだ!!」
商人「……」
商人「だめ……」ガクガク
戦士「あ、わりぃわりぃ♪」
戦士「お前の事も忘れてねぇよっ」ニコリ
商人「違う……」フルフル
武道家「ボク達、国に戻ったら英雄だよ英雄♪」
商人「違うっ!!」フルフル
商人「二人が見ているのはっ!!」グッ
商人「現実とは違うッ!!!」
戦士「えっ?」ピタッ
武道家「ふぇっ?」
パリィィィィン!!!
魔王「ガハハハハハハハハッ!!」
魔王「マヌーサなんぞ低級な技……久し振りに使ったわ」ニヤリ
戦士「なっ、なんでっ!? いつからだよっ!!」ガクガク
武道家「こんなのって……ないよっ!!」ガクガク
魔王「……」
魔王「そこのお前にもマヌーサを掛けたはずだが……」チラッ
商人「……」
魔王「どうやら、うぬに幻覚術は効かぬようだな」
商人(時間はギリギリ)
商人(充分に溜めれたと思うけど、もしかしたら足りないかも……)
商人(だとしても、もうヤるしか無い!!)
商人「戦士、武道家、下がって」
商人「バトンタッチ……」ザッ
戦士「すまねぇ商人。ははっ、体の震えが止まんねぇんだ……」ガクガク
武道家「ボクも強くなった気で居たんだけど、そんなの、そんなのはっ……ううっ」ガクガク
商人「……」スッ
魔王「……」スッ
商人「魔王、この技が貴方を煉獄へと送る」グッ
魔王「……」
魔王「打ってみよ」ニヤリ
商人「我が右腕に宿るは、赤龍の炎!!」
戦士「商人の目の色が変わった……アレが冥眼」ゴクリ
武道家「ついに、あの技が出るんだね……」ゴクリ
商人「冥王……」ゴゴゴゴゴッ
商人「烈殺ッ」
商人「赤龍破ッ!!!」バッ
魔王「ぬっ!?」
商人「この龍の形を成した獄炎が、貴方の全てを燃やし尽くす……」
ズドォォォォォォォォォオオ!!
魔王「ッ!!?」
魔王「……」
魔王「フッ」グググッ
魔王「ガァッハッハッハッハァッ!!!」
魔王「ぬぅぅん!!」ガシィッ
商人「ッ!!?」
商人「赤龍破を、素手で掴んだ!?」
魔王「ぬっ、フフッ……」ズザザッ
戦士「嘘だろっ!? どこまでデタラメなんだよ!!」
魔王「自らの技に焼かれるがいい」ニヤリ
武道家「まさかっ!?」
魔王「オオオオオオオオオッ!!」ブォン
商人「ッ!!?」
商人「っ……わ、たしの」
商人「赤、龍破、を、跳ね返し……」
戦士「バカッ、避けろ商人!!!」
商人「あっ……」
ズドォォォォォォォォォオオ!!
ボォォッ
戦士「商人ッ!!?」
武道家「しょぉぉにぃぃぃぃぃいん!!!」
魔王「……」
魔王「終わりか……」
戦士「ああっ……」ガクッ
武道家「そんなぁっ」ガクッ
戦士 武道家
「「商人!!!」」
「騒がしい……」
戦士「えっ?」
武道家「なになにっ?」
魔王「……」
魔王 「ほぉ……」ニヤリ
商人「……」スタッ
戦士「商人お前、自分の技に喰われたんじゃ!?」
商人「そうじゃない」
商人「私が赤龍破に喰われたのでは無い……」
商人「私が、赤龍破を、喰った」
武道家「商人……」
商人「……」ニコリ
魔王「生きていたか……」
商人「……」タッ タッ
商人「赤龍破は、単なる飛び道具じゃない」
商人「術者のパワーを爆発的に引き上げる為の、栄養剤になる……」スッ
魔王「……」
魔王「面白い、やってみろ……」スッ
商人「貴方に魔法は効かない」
商人「それなら、自らの力を、純粋なパワーを、貴方以上までアップさせて腕力で叩き潰す」グッ
戦士「行けッ商人、やっちまえ!!」
武道家「いっけぇぇぇぇぇっ!!」
商人「……」ジリッ
魔王「……」
商人「……」
魔王「こぬのか?」
商人「はぁぁぁっ……」
商人「だぁっ!!」バッ
商人「やぁ!!」シュッ
魔王「むっ?」スゥッ
商人「はぁ!!」シュッ
魔王「……」スゥッ
商人「とぉ!!」シュッ
魔王「フハハハハハッ!!」スゥッ
魔王「この魔王を相手に遊びよるとは……」
魔王「なかなかの大物のようだな」ニヤリ
商人「?」
戦士「すげぇぜ商人、魔王を余裕で相手してやがる!!」
武道家「遊ばなくてもいいよ商人、ちゃっちゃと倒しちゃって!!」
商人「……」
商人「?」
商人「私は……遊んでない」
商人「こんな場面で、遊ばない」スッ
戦士「いや、だってよ……」
武道家「うん、誰が見たって……」
商人「私は真面目!!」
商人「言いたい事が有るなら言って」
戦士「……」チラッ
武道家「……」コクリ
戦士「手を前に伸ばしたまま、真っ直ぐ突っ込むとか……」
戦士「『前にならえ』かよ? そんなの、当たる訳ねぇだろ?」
武道家「幾ら早くても、ボクだって避けれるよ?」
商人「……」
商人「そう、なの?」
武道家「うそ、でしょ?」
戦士「マジかよ?」
武道家「でも大丈夫。数値上、パワーとスピードは魔王を超えているはず」
武道家「一発当てれば、勝負は分からない……」グッ
魔王「……」
魔王「まさか、貴様のような奴が居るとはな」
魔王「この魔王の魔法にも耐える魔法防御力……」
魔王「秘術まで使いこなす知識、魔力、技術」
魔王「どれを取っても一流かも知れん」
魔王「俺のパワーとスピードを上回ったかも知れん」
魔王「だが、戦い方を知らぬ……」
魔王「先に戦ったそこの二人より、貴様は数段弱い!!」
商人「当たれば……」
商人「攻撃さえ、当たればっ」ダッ
魔王「敢えて言おう……」
魔王「貴様は、勇者の傍で、何を見てきた?」
商人「だぁっ!!」シュッ
魔王「ッ……」ドゴォッ
商人「当たっ、た……」
魔王「……」
武道家「……」ポロポロ
戦士「もういい商人!! 下がれっ!!」
魔王「効かぬ、効かぬのだ……」ガシッ
商人「ッ!!?」
商人「腕を掴ま……」
魔王「この技で塵と消えよっ!!」ブォン
商人「れたっ!?」フワッ
武道家「ああっ、商人が上空に放り投げられた!!」
戦士「あれじゃ、避けられねぇぞ!!」
魔王「ぉおお……」ググッ
魔王「魔王、障皇波ッ!!」バッ
商人「フバーハ!! フバーハ!! フバ……」
商人「ッ!!?」カッ
ドゴォォォォォォォォォッ!!
戦士「商人ッ!!?」
武道家「しょぉぉにぃぃぃぃぃいん!!!」
商人「……」フラッ
商人「……」ドサァッ
魔王「なんと他愛ない……」
戦士「ッ!!?」
戦士「きっ!! テメェ!!!」グッ
武道家「絶対に、許さないッ!!!」グッ
戦士「解き砕け、破魔の閃光!! ハマオンッ!!」ビガァッ
武道家「西派白華ッ、百歩神拳!!!」ズドォォッ
魔王「フッ……」ググッ
魔王「魔王、障皇波ッ!!」バッ
ドゴォォォォォォォォォッ!!
戦士「ぐあああああああああ!!?」ズサァァッ
武道家「うわああああああああ!!?」ズサァァッ
戦士「……」ドサァッ
武道家「うぅっ」ドサァッ
魔王「……」
魔王「勇者の弟子と言えど、やはり人の子か」
商人「……」グッ
商人「戦士!! 武道家!!」ヨロヨロッ
商人「生き、てる?」タッ タッ
戦士「……」
戦士「ああ……」グッ
武道家「……」
武道家「なんと、かね……」グッ
商人「……」
商人「いい、人生だった?」ニコリ
戦士「……」
武道家「……」
戦士「ふっ」
戦士「最高じゃねぇけど、満足行く人生だったよ」ニコリ
武道家「ボクも」
武道家「けっこう、満足……かなぁ」ニコリ
魔王「むっ……」
魔王「殺気が消えた?」
戦士「へっ……」フラフラ
武道家「行こっか♪」フラフラ
商人「みんな一緒」コクリ
戦士「あ」
武道家「せ〜〜〜〜のっ!!」
商人「……」
商人「ピオリムッ!!!」バッ
魔王「ぬぅっ!?」スッ
魔王「魔王、障皇……」
戦士「遅せぇっ!! 飛び付き腕十字ッ!!」ガシィッ
武道家「ボクは左腕っ、取ったよ!!」ガシィッ
商人「羽交い締め……」ガシィッ
戦士「もう、首をブッ飛ばされても放さねぇぞ魔王!!」キュィィン
武道家「このメガンテの三連発で、必ずお前を倒す!!」キュィィン
商人「マジックストーン、起動開始!!」キュィィン
魔王「メガンテ……」
魔王「何故この魔王を相手にメガンテを使う?」
戦士「ああっ!?」
戦士「師匠に聞いたぜ!! お前でも、メガンテの魔法は通じるんだろっ!?」
魔王「ッ!!?」
魔王「……」
魔王「そうか、勇者が……」
魔王「この俺に、メガンテは通じぬ!!」
戦士「はっ?」
武道家「そっ、そうやってボクたちを剥がそったって!!」
師匠「ウソウソ、師匠は確かに……」
魔王「無傷で済むとは言わぬ」
魔王「薬草一つで回復するダメージを、傷……と呼ぶのならな」
魔王「この魔王に通ずるのは、賢者と聖者、そして勇者の放つ魔法のみ」
魔法「その魔法の中に、メガンテは含まれていない……」
武道家「じゃあ、今から発動する魔法は?」キュィィン
戦士「まさか、本当に……」キュィィン
商人「いぬ、じに?」キュィィン
魔王「それは無い」
魔王「貴様らが何と言われ、勇者からそのアイテムを受け取ったのかは知らぬが……」
魔王「勇者に感謝するのだな」
魔王「この魔力の波動は、メガンテなどでは無い」
魔王「今、貴様らが放つのは……」
戦士「……」カッ
武道家「……」カッ
商人「……」カッ
魔王「ルーラ、だ」
勇者旅立ちの国 酒場
店主「ごめんねぇ傭兵さん、今は魔法使いの登録は無いん……」
ドガァァァァァァァァァン!!
店主「きゃあああっ!?」バッ
店主「ちょっと……」キョロキョロ
店主「何だいっ!? 何かが屋根を突き破って来た!!」
ガシャーン
戦士「ぃ……」
戦士「いててっ……」フルフル
武道家「うぅっ」
商人「ここは、どこ?」キョロキョロ
タッ タッ タッ
店主「誰だいっ、店の屋根をブッ壊したのは!!」ザッ
店主「って、アンタらは……」
商人「店主」
武道家「じゃあ、ここは……」
戦士「えっ? えっ? どうなってんの?」キョロキョロ
店主「アンタら、魔王はどうしたのさ?」
商人「……」
商人「理解した」
商人「師匠は……」グッ
商人「私達がピンチになれば、あのアイテムを使うと知っていた」
武道家「そっか……」グッ
武道家「だから、メガンテとか、ウソを言ったんだ」
商人「……」コクリ
商人「あのアイテムがルーラだと知っていれば、恐らく私達は使っていない」
武道家「ししょーの為に少しでも、って……特攻してたよね? たぶん」
商人「師匠は、私達の性格を見抜いてた」
戦士「……」グッ
戦士「それでっ、オメガルーラをまた使うには、どれぐらい時間が掛かるんだ?」
武道家「戦士……」
商人「残念ながら、無理」フルフル
商人「自分のペンダントを見て」
戦士「あっ?」
武道家「ペンダント?」チラッ
商人「全員、魔王の攻撃でペンダントが砕けている」
商人「もう、おやくごめん。どうする事もできない」
戦士「……」バンッ
戦士「んだよ、ちくしょう……」ポロポロ
武道家「ししょー……」
龍虎練気闘座 半壊した闘技場
魔王「……」
魔王「来たか……」ニヤリ
黒竜号「グラァァウッ!!」バッサバッサ
勇者「……」スタッ
魔王「……」
勇者「……」
魔王「勇者……」
勇者「魔王……」
バハム子「フッ!!」スタッ
バハム子「ワレの祖父、オウリュウが育てた二人の子……」
バハム子「どちらが勝つか、見届けさせて貰うぞ!!」
魔王「勝手にせい!! ただし、邪魔はするな」
バハム子「……」コクリ
バハム子「ワレは、竜族をも超えた強さの宿命を、ただ見届けるのみ」
勇者「……」
勇者「仲間が、先に来たか」
魔王「安心するがいい……お前が与えたと言う道具を使い、ここから去って行った」
勇者「そうか」
勇者「生きたか……」
魔王「この俺が」
魔王「生かしてやったのだ……」ニヤリ
勇者「……」
魔王「……」
勇者「すぅぅっ」
魔王「すぅぅっ」
勇者「はぁぁぁっ……」
魔王「はぁぁぁっ……」
勇者「狂える暴凶星よ!! 死すべき時は来た!!」スッ
魔王「我らに言葉は不要!! 己が拳で語るのみ!!」スッ
勇者「死合うか……魔王!!」ジリッ
魔王「それ以外に道は在るまい?」ジリッ
勇者「……」
魔王「……」
勇者 魔王
「「この闘いッ!!」」
勇者 魔王
「「是非など問わずッ!!!」」
勇者「ハァッ!!」ダッ
魔王「ぉおおお!!」ダッ
勇者「魔王、障皇波ッ!!」バッ
魔王「魔王、障皇波ッ!!」バッ
バハム子(魔王と勇者、二人の闘いがついに始まった!!)ゴクリ
バハム子(オウリュウお爺ちゃん……お爺ちゃんの代わりに、この闘いの結末を見届けるッ)
やっと終わりが見えてきた…
魔王「ほぅ……」
魔王「この魔王の技をも身に付けているとはな」ニヤリ
勇者「私は、幼き頃から貴方の全てを目指していた!!」スッ
魔王「フッ。修行時代に見せた技は、全て習得していると言う訳か……」
魔王「……」
魔王「ならば受けてみぃ!! この魔王が放つ、暦破天驚拳をッ!!」スッ
勇者「暦破、天驚拳……だと?」
魔王「暦破天驚拳は、剛拳を極めた者のみが放てる技……」
魔王「柔の拳を目指した貴様では、真似はできぬわぁっ!!」
勇者「……」ジリッ
魔王「ぬぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「暦破ッ!!」
魔王「天驚ォォ拳ッ!!!」バッ
勇者「魔王、これほどの技をッ!?」グッ
魔王「身を固めたとて無駄よ!! この技を防御する事など叶わぬ!!」
ゴオオオオオオオオオオッ!!!
勇者「ぐうっ!?」
魔王「……」ニヤリ
魔王「そのまま極細と消えよォッ!!」バァッ
ドゴォォォォォォォォオオ!!!
,
モクモク パラパラパラッ
魔王「フッ……」
バハム子「くっ」
バハム子(何と言う破壊力!! 魔王の放った波動で、大地がごっそりと抉り取られているっ)
バハム子「……」
バハム子(勇者はっ、勇者はどうなった!!?)キョロキョロ
勇者「……」
勇者「……」
魔王「……」
魔王「立ったまま気を失ったか?」
魔王「いや、立ったまま死したようだな勇者」ニヤリ
勇者「……」
勇者「……」バキバキッ
バキィィィィン!!
魔王「ッ!!?」
魔王「勇者が砕けた!?」ガタッ
魔王「違うッ!!」
魔王「砕けたのは勇者では無い」
魔王「砕けたのは、鏡のように研ぎ澄まされた……」
魔王「氷!!?」
勇者「……」スタッ
魔王「ッ!? 勇者ぁぁぁっ!!」クルッ
勇者「空拳!!」ズドンッ
魔王「ぐほあぁぁァッ!?」ズサァァッ
魔王「きっ……」ザッ
魔王「まさか、この技は先程の?」
勇者「はぁぁぁっ」スッ
武道家『はぁぁぁっ』スッ
魔王「まさか、弟子の技まで使うとはな……」スッ
魔王「……」
魔王「ならば、この拳で直接潰すまでッ!!」ダッ
魔王「ぉおおおおりゃあああ!!」ゴォッ
勇者「……」スゥゥッ
勇者「ふっ!!」パシッ
魔王「ぐおッ!? これは、師父の動き!!」グラァッ
勇者「激流を制するは静水」スッ
師父『激流を制するは静水』スッ
,
勇者「ほぉぉぉっ……」バッ
勇者「シャオッ!!」スパァッ
魔王「ガハァァッ!?」ガクンッ
魔王「こっ、これは……僧侶の拳!!」
勇者「魔王……」スッ
僧侶『魔王……』スッ
魔王「……」ザッ
魔王「……」
魔王「……」
魔王「ふぅぅっ……」スッ
勇者(魔王から、気の荒れが消えた……)
魔王「心地よき痛み……」
魔王「と、言うべきか」
勇者「……」
バハム子「……」ゴクリ
魔王「神に感謝せねばなるまい……」
魔王「この魔王が全力を出すに値する男を、我が前に送り出してくれたのだからな」ニヤリ
勇者「……」
魔王「勇者、もしやこの俺がまだ無想転生剣を抜けぬとは思っていないか?」
勇者「なに?」
魔王「無想転生剣は、抜いた者の力を高める剣……」
魔王「ここで貴様が剣を抜こうとも、この点に置いて俺と勇者は五分五分」
魔王「そして俺は」
魔王「ここから更にッ」ザッ
魔王「こぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「ヌンッ!!」ボゴォッ
勇者「ッ!!?」
魔王「ふぅぅぅっ」ニヤリ
バハム子(魔王の体が一回り膨れ上がった!!)
バハム子(魔王……それがお主の第二形態と言う事か?)
魔王「勇者よ……貴様の拳、貴様の動き、確かに師父をなぞらえ」
魔王「その完成度で言えば、超えたのだろう」
魔王「だが!! 柔の拳を、柳の動きを持つ師父は、この剛の拳によって葬られているのだ!!」グッ
バハム子「……」ギリッ
魔王「優しいお前の柔の拳では、師父と同じ道を辿るのみよ……」
勇者「やってみなければ分からぬ……」ジリッ
魔王「分かるさ……」ジリッ
勇者「……」
魔王「……」
魔王「ごぉぉっ!!」ダッ
勇者「ハァッ!!」ダッ
勇者「……」スゥゥッ
魔王「……」
魔王「フッ」ニヤリ
魔王「ぬぅぅぅん!!」シュッ
勇者「ッ!!?」
勇者「ぐおおおぉぉっ!!?」ドゴォッ
バハム子(何と言う剛拳!? 柳木を根からかっさらう、正に暴風!!)
魔王「大気と風の流れから攻撃を読んで避けるようだが……」
魔王「こうなった俺の拳は、その風よりも早い!!」
勇者「ぐぅっ……」ヨロッ
勇者「ふぅぅぅっ」スッ
バハム子(これで勇者が無想転生剣を抜いても、魔王も同じく無想転生剣を抜けば差は縮まらない)
バハム子(勝負有り、か……)
勇者「……」ザッ
勇者「ハァァァァァッ!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「その優しい拳で」
魔王「まだこの魔王に打ってくるか?」
勇者「魔王、お前は忘れている事がある」
魔王「フッ、何を戯けが……」
勇者「行くぞ……魔王!!」ダッ
魔王「グハハハハハハッ!!」
魔王「どぉれ、試してやる……」
魔王「打って来るがいい!!」ニヤリ
勇者「はぁぁっ……」グッ
勇者「せいやぁぁぁッ!!」シュッ
魔王「ッ……」ズドンッ
勇者「……」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「……」
バハム子(やはり、勇者の拳は魔王に効いていな……)
勇者「……」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「ぐほぉぉあっ!!?」ドサァッ
バハム子(ッ!!?)
勇者「……」スッ
魔王「くっ、ぐぅっ!!」ギリッ
魔王(これは、師父の拳では、柔の拳では無い!!?)
魔王(これは、この拳はッ!!?)
勇者「魔王よ……」
勇者「言ったはずだ…あなたの全てを目指したと!!」
勇者「今こそ私は……」
勇者「貴方を超えるッ!!」
魔王「……」
魔王「フッ」ニヤリ
魔王「我らの闘いは、こうでなくてはなっ」ザッ
魔王「ならば勇者……この魔王を超えてみよ!!!」
バハム子(拳の威力はこれで互角……)
バハム子(勝負を決めるのは……)
勇者「……」
魔王「……」
勇者「ハァッ!!」ダッ
魔王「ぉおおお!!」ダッ
勇者「空圧拳ッ!!」ゴォッ
魔王「空蛇掌ッ!!」シュオッ
ズドンッ
勇者「ぐぅううあっ!?」ズサァァッ
魔王「ぬぅぅぅぅっ!?」ズサァァッ
魔王「……」
勇者「……」
魔王「おおおおおおおお!!」ダッ
勇者「ハイヤァァァァッ!!」ダッ
勇者「ばくれつけん!!」グッ
魔王「魔王、千手壊拳!!」グッ
勇者「はぁぁだだだだだだだだダァッ!!」ドドドドドッ
魔王「おぉりゃりゃりゃりゃりゃりゃリャァッ!!!」ドドドドドッ
魔王「ごぉぉっ!!」ドォォッ
勇者「見切った!!」ガシィッ
勇者「ほぉぉぉあっ!!」シュッ
魔王「見切ったのはこちらも同じよ!!」ガシィッ
勇者「……」
魔王「……」
勇者「くっ……」バッ
魔王「ぬぅ……」バッ
勇者「ふぅぅっ」スタッ
魔王「ふはぁっ!!」スタッ
魔王「勇者よ、俺がなぜ黒竜号を遣いにやったかわかるか?」
勇者「……」
魔王「後少しで、ここに開くからだ……」
魔王「この龍虎練気闘座に、魔界と地上を繋ぐゲートが、な」ニヤリ
勇者「なんだとッ!?」
魔王「そうなったら、最早どうする事もできぬ!!」
魔王「止める方法は、ただ一つ……」
魔王「この魔王を打ち倒す事のみ!!」
魔王「貴様にそれが出来るか?」
魔王「世界を救えるか……勇者ッ!!」
勇者「……」
勇者「どう在っても、やらねばなるまい!!」スッ
勇者「はぁぁっ……」
勇者「ふぅっ!!」ジャキッ
バハム子「っ……」ゴクリ
バハム子(勇者が、ついに無想転生剣を抜いたっ!!)
魔王「……」
魔王「フッ」
魔王「よかろうっ!!」ジャキッ
魔王「剣での勝負なら、勝てると思ったか?」ニヤリ
勇者(やはり、魔王も剣を抜けるか……)
勇者「……」
勇者「ハァッ!!」ダッ
魔王「ぉおおお!!」ダッ
勇者「でいやぁ!!」ブォン
魔王「ヌンッ!!」ブォン
ガキィィィィィィィン!!!
勇者「ッ!!?」
魔王「カカッ」
バハム子「両者の剣が……」
魔王「無想転生剣、語るに足らず」バラバラッ
バハム子(魔王の剣は粉々に砕け……)
勇者「僅か一撃で……」バキィン
バハム子(対する勇者の剣もまた、中程から折れた……)
勇者「ぐっ!!」
勇者「闘指気真空波!!」バァッ
魔王「裏・空手裏剣!!」シュシュッ
勇者「ッ……」
勇者「ぐぁぁああっ!?」ズサァァッ
勇者「ぬぅっ……」フラッ
勇者「……」
勇者「まだだっ!!」ザッ
魔王「フッ」
魔王「ここまでは、良くやったと褒めてやろう」
魔王「だが……」
魔王「拳の威力と速さは同じだろうと」
魔王「拳の技巧では、この魔王に一日の長が有ったようだな?」ニヤリ
バハム子(勇者、良く頑張ったが……ここまでか)
勇者「……」
勇者「……」ジャキッ
魔王「ッ!!?」
魔王「血迷ったか勇者ぁ!!」
バハム子「勇者が、折れた剣を……構えた!?」
勇者「ふぅぅっ」
勇者「魔王よ……私の名を言ってみろ」
魔王「なにっ!?」
勇者「私は勇者だ!!」
勇者「お前が魔王の血に目覚めたように」
勇者「私も勇者の血に目覚めていたのだ!!」スッ
勇者は折れた剣を、空へと掲げた──
勇者「無想転生剣を抜いた者は、確かに自己を強化される」
勇者「しかしそれは、その後に放つ余りの破壊力を秘めた奥義から使用者を守る為……」
魔王「知っておる」
魔王「ギガスラッシュ……だろう?」ニヤリ
勇者「魔王……」
勇者「いつの話をしている?」ニヤリ
魔王「ぬっ!?」
勇者「この勇者が放つ最大の奥義は、そのようなものでは無い!!」
勇者「……」
勇者(だが、上手く行くか……)
勇者(いや、やるしか道は無い!!)
勇者(戦士、武道家、商人……)
勇者(お前たちも私に力を貸してくれっ!!)
魔王「グハハハハハッ!!」ドシン ドシンッ
魔王「勇者……」
勇者「……」
魔王「……」
魔王「ぬぅぅん!!」ドゴォッ
勇者「ごはぁっ!?」ズサァァッ
魔王「貴様の奥義とやらは、折れた剣を構えるだけの技か?」
勇者「ぐぅっ……」ザッ
勇者「……」スッ
勇者は折れた剣を、空へと掲げた──
魔王「……」
魔王「いつまで……」
魔王「そうしているつもりだ!!」ダッ
勇者(皆の力を……)
勇者(魔王を倒す為の力を!!)
勇者(私に貸してくれッ!!)
魔王「ここまで来て失望させおって」ギリッ
魔王「魔王、障皇波!!」バッ
勇者旅立ちの国 酒場
戦士「……」
武道家「……」
商人「……」
戦士「聞こえた、よな?」チラッ
武道家「うんっ!!」コクリ
商人「そして、やるべき事も決まった」コクリ
店主「あれっ、何か、声が聞こえて来たけど……」キョロキョロ
戦士「っ!!」
戦士「店主、魔王を倒す……力を貸してくれっ」
店主「えっ? それは良いけど……」
戦士「じゃあ、はい。オレの手を握ってくれ」スッ
店主「手を、握れば良いのね?」ギュッ
あ、あれ?
元気玉?
>>446
ほらっ、あの有名なあのRPGにあの魔法があるじゃないですか。
戦士「……」ギュッ
店主「?」
戦士「やっぱりだ。やっぱり……」
戦士「イケるぞっ!!」
武道家「なら、ししょーがボクたちをルーラで遠ざけたのは……」
商人「恐らく……万が一の時に、この切り札を使う為」
戦士「よっしゃ!!」グッ
武道家「早く道具屋で、キメラの翼とエルフの飲み薬を買い占めよっ!!」
商人「事態は一刻を争う」
店主「わ、わたしゃ、どうしたら?」
戦士「スタンバってる傭兵を、表に皆出しててくれ!!」
武道家「お願いしますっ」ダッ
商人「お願い」ダッ
龍虎練気闘座 半壊した闘技場
魔王「おぉりゃりゃりゃりゃりゃりゃリャァッ!!!」ドドドドドッ
勇者「ぐほぉあぁぁぁっ!?」ズドドォッ
勇者「おおっ」フラフラッ
勇者「ぬぐっ……」ドサァッ
バハム子「勇者っ……」グッ
バハム子(奥義と聞いてもしやと思ったが)
バハム子(なんだあのカカシは?)
バハム子(まだ魔王と拳を打ち合っていた時の方が、勝つ気配は有った)
勇者「……」グッ
勇者「うぅっ……」ヨロッ
勇者は折れた剣を、空へと掲げた──
魔王「……」ギリッ
魔王「どうやら、ここまでだったようだな勇者……」
魔王「賢者のマダンテ……」
魔王「聖者のギャラクシアンエクスプロージョン……」
魔王「そして」
魔王「勇者のギガスラッシュ……」
魔王「俺を倒すと言うのなら勇者?」
魔王「貴様の奥義、ギガスラッシュを放つしか無い」
魔王「貴様の奥義を、この魔王の拳で破りたかったが」
魔王「それを放つつもりは無いのなら……」スッ
魔王「勇者……」
勇者「……」
魔王「次の一撃を手向けとしよう」
勇者(ギガスラッシュに切り替えるなら今しかない)
勇者(だが、この折れた剣では……)
勇者(いや、折れていなくとも、魔王を仕止め切れる確率は低い……)
勇者(それまでに魔王は、強くなった)
勇者「……」
勇者「魔王……」
勇者「この程度のデッドラインは、何度も越えて来ている!!」
勇者(やはり、コレだけ……信じるだけだ!!)
魔王「フッ、ぬかせぃ」ニヤリ
魔王「このデッドラインは越えられぬっ!!」
魔王「はぁぁぁっ……」
魔王「ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴゴッ
勇者「くっ……」ジリッ
魔王「グハハハハハッ!!」
魔王「塵となれぃ勇者ぁっ!!」ダッ
「させんわっ、ベギラゴン!!」ボォォウッ
魔王「ぬっ!?」バッ
魔王「……」スタッ
魔王「邪魔をするか……」
魔王「黒竜号ッ!!!」
バハム子「……」ザッ
バハム子「魔王……すまんな」
バハム子「ワレの体が勝手に動きよったわ、カカッ♪」ニヤリ
バハム子「勇者……」タッ タッ
バハム子「なっさけないのぉ♪」タッ タッ
魔王「……」
勇者「……」
バハム子「勇者?」ポンッ
勇者「……」
勇者「なんだ?」
バハム子「奥義を放つのに、どれぐらい時間がかかる?」ヒソヒソ
勇者「ッ!?」
勇者「……」
勇者「どれだけか、わからぬ」
バハム子「そうか……」
バハム子「三分……否」
バハム子「出来る限り時間を稼ごう」ヒソヒソ
バハム子「ワレの命をやる。何とかせい」
勇者「……」
勇者「恩に着る……」ニコリ
バハム子「ふふっ」ニコリ
バハム子「……」
バハム子「さて」クルッ
バハム子「メンバーチェンジじゃ魔王」
魔王「……」
魔王「たわけが……」グッ
バハム子「ワレにも闘う権利がある」
魔王「権利、だと?」
バハム子「祖父のオウリュウは、同時に勇者と魔王の師父」
バハム子「……」
バハム子「すぅぅっ」
バハム子「『勇者と魔王、この二人は闘う宿命。その結末を見届けよ』」
バハム子「『もしも自分が弟子のどちらかに討たれても、それは弟子が成長して師を超えた証拠。恨んではならぬ』」
バハム子「『自分を討った者は、悔恨の念を抱えているかも知れない。孫娘であるワレが遣え、恨みは無い事を伝えよ』」
魔王「師父の言づてか?」
バハム子「……」コクリ
魔王「して」
魔王「それのどこに俺と闘う権利がある?」ニヤリ
バハム子「……」
バハム子「無いな。祖父はなーんにも魔王を恨んではおらん」
バハム子「が」
バハム子「が」
バハム子「が……じゃ」
バハム子「ワレの気持ちは全く別よ、カカッ♪」
魔王「……」
バハム子「あー、何と言ったら良いかのぉ」
バハム子「う〜〜む。おおっ、そうじゃそうじゃ♪」ポンッ
バハム子「魔王よ……」ニコリ
魔王「どうした?」
バハム子「魔王てめぇコノヤロウ!! よくもオウリュウおじいちゃんを殺しやがったなぁぁっ!!?」
バハム子「ワレがブッ殺してやんよっ!!!」ザッ
魔王「ほぉ……」
魔王「面白い、気が変わった」ニヤリ
バハム子「ふぉぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴゴッ
魔王「待ってやる。さっさと竜化せい!!」
バハム子「この姿こそが本当じゃ!!」
バハム子「巨大な竜の力を、この体に圧縮したと思えっ!!」
魔王「人間の小娘と変わらぬ風貌にしか見えぬがな……」
魔王「さぁ、掛かって来るがいい!!」スッ
バハム子「右手に……」
バハム子「覇王剣、ドラゴンキラー!!」ジャキッ
バハム子「ワレと魔王の力は……」
バハム子「このドラゴンキラーを持ったワレが100万パワーなら、魔王は1000万ほどじゃろう」
バハム子「そして左手に……」
バハム子「乙女剣スティルヴァーレ!!」ジャキッ
バハム子「これでワレは200万パワー」ニヤリ
魔王「……」
バハム子「更にっ……」ググッ
バハム子「とああっ!!」ダンッ
バハム子「いつもより三倍高く飛んで×3」
バハム子「600万パワーじゃ!!」
魔王「……」
バハム子「最後にっ……」
バハム子「そぉれぃぃっ!!」シュバァッ
バハム子「いつもの二倍のスピードで急降下して×2」
バハム子「これで1200万パワー!!」
バハム子「やった!! 魔王を超えた!!」
魔王「……」
バハム子「その牛のように長い角をへし折ってやるわぁ!!」
バハム子「バハム子究極悶絶最強最大最終秘奥義ッ!!」
バハム子「フライング」
バハム子「バルセロナ」
バハム子「アタァァァァァック!!」
バハム子「ひょぉぉぉぉぉっ!!」ゴォォッ
魔王「……」
魔王「この魔王のロングホーンを、へし折る……か」ニヤリ
魔王「フッ」
魔王「逆に下から打ち上げてやるわ!!」ググッ
魔王「ロングホーントレイン……」
魔王「必殺のぉぉぉっ!!」ダンッ
バハム子「オウリュウのかたきぃ!!」
魔王「ハリケーン、ミキサァァァァッ!!!」ズドォッ
魔王「どぉりゃぁっ!!」ドゴォォッ
バハム子「ぎゃあああ!?」グルグルグル
魔王「グハハハハハハッ!!」
魔王「この技で逝けいぃ!!」ダンッ
魔王「ぬぅん!!」ガシィッ
バハム子「いかん、空中で掴まれた!?」ジタバタ
バハム子「まさか……この体制はっ!?」
魔王「超人!!」
魔王「十字架落としぃぃぃっ!!!」ゴォォッ
魔王「でりゃあぁぁぁぁっ!!」ドスンッ
バハム子「うがぁぁぁぁっ!!?」メキメキメキッ
魔王「……」ニヤリ
魔王「フン」ブォン
バハム子「うぁっ……」ドサッ
バハム子「このコンピューター竜人と唄われたワレの、完璧な計算方式が崩れる……」
バハム子「とはっ」ガクッ
魔王「……」
魔王「哀れな奴よ」
魔王「老いぼれへ報いる為に命を投げ出すなど……」
魔王「なぁ、勇者?」クルッ
勇者「……」
勇者(師の孫竜よ、すまぬっ!!)グッ
魔王「もはや、誰にも助けを乞う事はできん!!」ズシンッ ズシンッ
魔王「勇者……」
魔王「この魔王、渾身の拳で終わらせてやろう」スッ
魔王「ぉおおおお……」ググッ
魔王「オオオオオオオオ!!」グググッ
勇者「っ……」
勇者(ここまでかっ……)
魔王「ふはぁっ!!」
魔王「天に滅せい、勇者ぁぁぁぁぁぁっ!!!」ゴォォッ
「兄さんッ!!」
「勇者さまっ!!」
勇者「ッ!!?」カッ
勇者「……」スゥゥッ
勇者「フッ!!」パシィッ
魔王「なにィッ!!?」グラァッ
魔王「この魔王、渾身の拳を捌いただとッ!?」
勇者「……」
勇者「魔王……」グッ
師父『魔王……』
勇者「ハイヤァァァッ!!」ズドンッ
魔王「おごっ……」メキメキッ
魔王「ぐほぉあぁぁぁっ!?」ズサァァッ
魔王「ぐぅっ」フラフラッ
魔王「グハァッ!!」ガクンッ
弟「兄さん、兄さんの好きな平和の為にっ!!」
姫「絶対に勝って勇者さまっ!!」
王「勇者、この老いぼれの力を貸そう……」ザッ
店主「頼むっ、魔王を倒してっ!!」
魔王「……」グッ
魔王(勇者の後ろに次々と人間どもが……何故だっ!?)
妹「兄、僧侶の思いを、どうか果たしてください!!」
賢者「勇者……この賢者も役立たせて貰おうか」
団長「騎士団、全軍整列!!」
幼女「ふぇぇっ」
女神「勇者よ、貴方が最後の希望です!!」
キリ「四神も協力するぞ勇者!!」
勇者「……」
勇者(戦士、武道家、商人、やってくれたか……)
青年「勇者さん!!」
お嬢「私たちの思い、届けに来ました!!」
キング『……』
僧侶『……』
使徒『……』
聖者『……』
勇者「……」
勇者「わかるか魔王?」
勇者「私の体を通して出る力がッ!!」グッ
魔王「体を通してでる、力……だと?」
魔王「フッ、そんな人間どもが集まったとて、何が出来るッ!?」
勇者「……」
勇者「確かに皆は人間だ……」
勇者「しかし!!」
勇者「平和を願いっ、愛する者を守り、恐怖に打ち勝って悪と闘う者……」
勇者「これ即ち、勇者なり!!」
勇者「平和の為、愛する者の為、弱者を守る為……」
勇者「恐怖を乗り越えてここまでやって来た」
勇者「これを勇者と言わずして何と言う!!」
魔王「ぬぐっ!?」ギリッ
勇者「私はその、勇者達の、代表に過ぎない」スッ
勇者「そしてっ!!!」ジャキッ
勇者は折れた剣を、空へと掲げた──
勇者の剣は黄金の光を放ち、激しく光り輝く──
勇者「その勇者達の力を集めて放つ」
勇者「勇者最大の奥義……」
勇者「ミナデインをッ!!」
勇者「受け切れるか、魔王ッ!!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「ぐうっ……」
魔王「……」
魔王「……」
魔王「……」
魔王「フッ」
魔王「よかろう……」ニコリ
魔王「貴様らの望む、平和、希望、愛……」
魔王「砕いてみせよう!!」グッ
魔王「この拳に、我が生涯の全てを賭けてぇ!!」
魔王「俺は魔王だ、魔王に後退はない!! 前進あるのみッ!!」
魔王「おおおおおおおおお!!!」ゴゴゴゴゴッ
勇者「……」
魔王「……」
勇者「魔王ッ」
魔王「勇者ァッ」
勇者「すぅぅっ」
魔王「すぅぅっ」
勇者「はぁぁっ……」
魔王「はぁぁっ……」
魔王「この魂ッ!!」
勇者「極限まで鍛えれば!!」
魔王「砕けぬものなど!!」
勇者「何も、無いッ!!」
魔王「俺のこの手が光って唸るゥッ!!」ググッ
勇者「お前を倒せと、輝き叫ぶ!!」ググッ
魔王「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴッ
勇者「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「暦破ッ!!」
勇者「ミナッ……」
魔王「天驚ォォォォォ拳ッ!!!」バッ
勇者「デイィィィィィィン!!!」ブォン
オヤスミナサイ
ズドォォォォォォォォォオオ!!!
勇者「マオォォォォォッ!!」
魔王「ユウシャァァァァッ!!」
団長「凄まじい魔力の波動……」ゴクリ
賢者「魔王一人の魔力と、我ら全員の力がぶつかった」
お嬢「勝てるよね青年?」
青年「っ……」
キリ「いや、僅かに」
女神「勇者の分が悪い……」
勇者「ぐぅっ……」ズザッ
魔王「ぬふぅっ」ニヤリ
賢者「勇者が押され始めた!?」
女神「勇者っ……」
勇者(力では負けていない)
勇者(負けているのは気迫かっ!?)
勇者(後、一押しなのだ……)
勇者(何か、後一押し有ればッ!!)
戦士「師匠っ!!」スタッ
武道家「お待たせっ!!」
商人「私たちが、師匠の背中を支える」グッ
勇者「ッ!!?」
勇者「……」
勇者「来たか……」
勇者「最後の一押しがっ!!」
戦士「オレらが師匠の背中を押すぜ!!」グッ
武道家「ボク達が後ろからししょー押したくらいで大丈夫かな?」グッ
勇者「それで勝てる!!」
勇者「私を信じろッ!!」
勇者「私が……」
勇者「否、我々がっ……」
勇者「勇者だ!!!」
戦士「はいっ!!」
武道家「はいっ!!」
勇者「私の背中を押し飛ばせ」
勇者「タイミングを合わせるぞッ!!」
商人「あ」
勇者「せ〜〜〜〜のッ!!!」ググッ
戦士 武道家 商人
「「「いっけぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」
ドンッッ!!!
,
バハム子「っ……」グッ
バハム子「ゆけぇっ!! 勇者ぁぁぁぁっ!!」
勇者「お」
勇者「オオオオオオオオオオオッ!!!」ダンッ
ズバァァァァァァァァァッ!!
魔王「ぐおおぉッ!!?」グラァッ
魔王「この魔王の、暦破天驚拳を……」
魔王「斬り伏せた、だとッ!!?」
勇者「チェェストォォォォォッ!!!」ブォン
ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
魔王「ごはあぁぁっ!!?」ズバァッ
魔王「ぐぐっ……」ガクンッ
魔王「……」
魔王「ぬぅん!!」ザッ
魔王「この魔王、決して膝は着かぬ!!」
勇者「フッ!!」バッ
勇者「……」スタッ
勇者「戦士、武道家、商人……」
勇者「そして、集まってくれた多くの勇者達よ」
勇者「これが正真正銘……」
勇者「最後の仕上げだっ!!」
「「応ッ!!!」」
勇者「この魂ッ!!」グッ
戦士「極限まで鍛えれば!!」グッ
武道家「砕けぬものなど!!」グッ
商人「何も、無い!!」グッ
勇者「皆のこの手がッ」
青年「真っ赤に燃えるぅっ!!」
賢者「幸せ掴めと」
女神「轟き叫ぶっ!!」
勇者「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ゴゴゴゴゴッ
魔王「こっ、これはっ……」
魔王「まさかぁぁぁァッ!!?」
勇者「暦破ァッ!!」
勇者「究ゥゥ極ッ!!」ググッ
勇者「天ッ、驚ォォォけぇぇぇぇぇん!!!」バァッ
ズドォォォォォォォォォオオ!!!
魔王「……」
魔王「見事だ……」ニヤリ
魔王「ユウシャァァァァァッ!!!」ドゴォォッ
モクモク パラパラパラッ
勇者「本当に長かった……」
勇者「長き闘いよ、さらばっ」
ヒューッ
魔王「……」
魔王「勇者……」
魔王「俺とお前の闘いは、お前の、勝ちだ……」グラァッ
勇者「……」
魔王「……」
魔王「だがっ」ニタァ
魔王「勇者と魔王、その役割での闘いは、俺の……」
魔王「勝ち、だっ」ドサァッ
勇者「役割だと?」
勇者「何の事を……」
戦士「……」
戦士「ッ!!?」ビクッ
武道家「しっ、ししょー!!」
商人「師匠、アッチ見て」グイグイ
勇者「むっ……」
勇者「……」
勇者「ッ!?」
勇者「アレはっ!!?」
バハム子「魔界と地上を繋ぐゲートじゃ」ヨロヨロッ
バハム子「それが今、開きつつ有る……カカッ♪」フラフラ
オオォォォォォォォォン!!
武道家「空間が、ぐるぐるって渦を巻いて歪んでってるよ!?」
戦士「なんだこのデケェ音、まるでバケモンの雄叫びみたいだ」
勇者「……」
勇者「ここまで来てっ」グッ
勇者「あのゲートを塞ぐ手段は無いのか?」
バハム子「……」
バハム子「ある」
バハム子「ワレが、閉じれる」
勇者「本当かっ!?」
戦士「なっ、なんだよ……ふぅぅっ」
商人「それなら安心」
バハム子「……」
バハム子「方法は……」
バハム子「と、言うよりも、勇者でも、お主達でも閉じれるな」
戦士「もったいぶんなってばよ」
バハム子「なぁに……ゲートが閉じるまで、待てば良い」
武道家「待てば、って?」
バハム子「魔王が死んだ今、ゲートに持続性は無い」
バハム子「よって、ゲートが閉じるまで出てくる魔界の魔物を倒し続ければ良いのじゃ」
商人「ゲートは、どれぐらいの時間で閉じるの?」
バハム子「まぁ、長くても七日はもたんな」
勇者「七日か……」
勇者「……」
バハム子「奥の手として、ゲートに飛び込み、内側からゲートを壊す手段もあるがのっ」
バハム子「当然、ゲートに入った者の戻って来れる保証は無いぞ?」
勇者「……」
勇者「決まり……だな」ニコリ
戦士「当然!! ここに強い奴はみんな揃ってんだ、七日なんかあっという間だぜ!!」グッ
武道家「魔王だって倒したんだし、ボクらなら出来るよっ!!」グッ
商人「師匠……」クイクイ
勇者「ん?」
商人「エリクサー、飲んでほしい」ニコニコ
勇者「受け取ろう……ありがとう商人」ニコリ
勇者「っ……」ゴクゴクゴク
勇者「ぷふぅぅっ」
商人「ふふっ、いい飲みっぷり」ニコニコ
勇者「そうか?」
商人「……」
勇者「……」
商人「師匠、私は師匠の決定に従う」
勇者「そうか……」
勇者「賢者よ……」
賢者「どうした?」
勇者「闘技場の外にはどれぐらいの者が居る?」
賢者「俺が着いた時、千人は超えているように見えたが……詳しくは分からぬ」
勇者「……」
勇者「女神よ……」
女神「なんなりと、申しなさい」ニコリ
勇者「この人数を、ルーラで送るのは可能か?」
女神「皆さんに協力して貰えれば、可能かと」コクリ
戦士「……」
武道家「……」
商人「師匠……」
戦士「って、どう言うこったよ!?」
武道家「まさか……ウソだよねっ!?」
勇者「多くの民達が、危険を省みずにここへ来てくれた」
勇者「戦士、武道家、商人……お前たちは女神に協力し、全ての人々を元の街へ帰しなさい」
商人「……」
商人「わかった」コクリ
戦士「っ……」フルフル
戦士「イヤだっ、そんなの!!」
武道家「ここに残って、師匠と一緒に闘うからねっ!!」
勇者「頼む、聞き分けてくれ」
商人「……」
商人「戦士、武道家……」ポンッ
戦士「あ?」クルッ
武道家「なに?」クルッ
商人「すぅーっ……」
商人「ラリホー」ポワァッ
戦士「……」
武道家「……」
戦士「……」ドサァッ
武道家「……」ドサァッ
商人「師匠、大丈夫……ですか?」
勇者「私は負けんよ、絶対な」
勇者「さぁ、行きなさい」ニコリ
商人「うんっ。待ってる。ずっと……」
商人「んしょんしょ」グイィッ
戦士「くー、くー……」ズルズル
武道家「すー、すー……」ズルズル
勇者「……」
勇者「王よ、例の件は……」
王「わかっておる」コクリ
王「……」
王「勇者……」
王「ありがとう、ございましたっ!!」ペコリ
勇者「どうぞ、顔を上げてください」
王「ふっ、この王が頭を下げたのは、お前だけだ……」ニヤリ
弟「兄さん」
姫「勇者さま」
勇者「言葉は要らぬ……」
勇者「二人とも、幸せになりさない」ニコリ
勇者(ここまでだな)
勇者「……」チラッ
姫「?」
勇者「姫……」ボソッ
勇者(我が初恋を、弟と、この世界に託そう)グッ
勇者「……」チラッ
青年「……」
お嬢「……」
勇者(こちらは心配ないか)
勇者「ふふっ」
勇者「……」
勇者「賢者、女神」
賢者「お前は、最後の最後まで勇者だな?」ニコリ
女神「貴方の事は、私が子供達に語り継ぎましょう」ニコリ
勇者「……」ニコリ
勇者「私の仲間にも手伝わせよう、民達の先導と転送を頼む」
賢者「任せよ、その為の騎士団だ」
女神「この女神、死力を尽くしてその責務を全うしましょう」
賢者「聞いたな団長? 我々は民達の先導だ!!」
賢者「騎士団を連れて表へ出るぞ!!」
団長「ハッ!!」ダッ
女神「四神達よ、聞きましたね?」
女神「我等は一斉転送の準備をします。外で魔方陣作成の準備を!!」
キリ「ハッ!!」ダッ
勇者「……」
勇者「これでいい……」
─────────。
数十分後 闘技場跡地
オオォォォォォォォォン!!
勇者「ゲートが、開き始める……」
バハム子「そうじゃの、カカカッ♪」
勇者「逃げないのか?」
バハム子「言い忘れておったが、ゲートを内側から壊せるのは、地上ではワレだけじゃ」
バハム子「……」
バハム子「もう、思い残す事も無いしの」ニコリ
バハム子「魔界……否、地獄か?」
バハム子「お主と共に地獄へ落ちてやるわ」
バハム子「お主はワレがゲートを破壊し終わるまで、ワレを守るのじゃ」
勇者「それは、構わぬが……」
バハム子「一人と言うのは、悲しく寂しいものよ」
バハム子「魔王しかり、勇者しかり、そしてワレも、純粋な竜人でと言えば一人」
勇者「……」
バハム子「まぁ、なんじゃ……」ポリポリ
バハム子「これから向かうのが、例え地獄でも」
バハム子「過ごすのが、例え短い時間でも」
バハム子「伴侶は、必要じゃろ?」ニコリ
勇者「っ……」
勇者「ふっ」
勇者「そうだな」ニコリ
ンアアッオッオォォォォォォォォン!!
勇者「ッ!?」グッ
バハム子「ゲートが開くぞ? 開いたらすぐに飛び込めい!!」グッ
バハム子「ゲートは向こうのどこと通じておるかわからん!!」
バハム子「しかし通じれば、そこへ地獄の者達が集まり出し、ゲートを通ろうとする!!」
バハム子「勇者はそこで食い止めるのじゃ!!」
勇者「承知ッ!!」
グッパアアァァァァァァッ!!
バハム子「ゲートが開いた!!」ダッ
勇者「行くぞッ!!」ダッ
Welcome to this crazy Time
このイカレた時代へようこそ
君はtough boy
まともな奴ほど feel so bad
正気でいられるなんて運がイイぜ
you, tough boy
時はまさに世紀末
澱んだ街角で僕らは出会った
Keep you burning 駆け抜けて
この腐敗と自由と暴力のまっただなか
No boy no cry悲しみは
絶望じゃなくて明日のマニフェスト
We are living
living in the eighties
We still fight,
fighting in the eighties
魔界 淀んだ大地の離島
勇者「フッ!!」スタッ
勇者「ここが……」キョロキョロ
バハム子「ほっ、と」スタッ
バハム子「ワレは、すぐにゲートを破壊する準備に掛かる。しっかり守ってくれたもれ?」
勇者「心得た、お前には指一本触れさせぬ!!」
バハム子「うむっ、良い返事じゃ♪」ニカッ
バハム子「……」
バハム子「さて……」
バハム子「ほぉぉっ」
バハム子「月経閉口掌!!」ポワワッ
勇者「……」
勇者「……」ピクッ
勇者「来たか……」
ズシーン ズシーン
タイラント「おお、この先にゲートが有るぞっ!!」
ネオデーモン「ヒャッハー!! さすが魔王様だぜぃ!!」バッサバッサ
アーリマン「魔軍の本隊もすぐ到着する!! 人間なんぞ三日で滅ぼしてくれる!!」
ネオデーモン「一番最初にゲートを潜るのは俺だぁっ!!」バッサバッサ
「エクス──」
「カリバァァァァァッ!!」
ネオデーモン「んっ、なんだ? いま何か……」キョロキョロ
ネオデーモン「あれっ?」ズルリ
ネオデーモン「俺の体が、真っ二つに別れっ……」ズルズルッ
ネオデーモン「たわばっ!!?」ズッパァァッ
タイラント「ネオデーモン!!?」
アーリマン「だっ、誰だネオデーモンを殺りやがったのは!!?」
勇者「……」スッ
勇者「はぁぁぁっ」
戦士『はぁぁぁっ』
タイラント「まさか、貴様か?」ギョロッ
勇者「倒したのはソイツだけでは無い」
勇者「魔王も、私が倒した……」ニヤリ
アーリマン「魔王様を倒しただと!? そんな嘘が通じるものかっ!!」
勇者「ならば試してみるがいい」
勇者「お前たちが揃えた軍勢、まとめて私が相手になろう!!」
勇者「ゲートを通りたくば、私を倒す事だな!!」ザッ
タイラント「……」
タイラント「アーリマン」
アーリマン「そうだな……」
アーリマン「デュラハン部隊前進!! 奴を殺せ!!」バッ
勇者(上手く掛かってくれた)
勇者(後は、私がどれだけ耐えれるか……)グッ
勇者「……」
勇者「死にたい奴から、掛かって来るがいい!!」クイッ
タイラント「聞いたか?」ニヤリ
アーリマン「ああ、口ばかり達者な奴だ」ニヤリ
タイラント「おいっ、貴様の名を教えろ!!」
アーリマン「そんなの覚えるまでも無いタイラント!! キマイラ部隊も続けぇ!!」バッ
勇者「ふっ……」
勇者「私の名か?」
デュラハン「デュラララ!!」ダッ
キマイラ「ガルゥゥゥダ!!」ダッ
勇者「……」スッ
勇者「魔王、障皇波ッ!!」ズドォォッ
モクモク パラパラパラッ
タイラント「ッ!!?」
アーリマン「アイツ、魔王様の技をッ!!?」
勇者「ほぉぉぉっ」
魔王『ほぉぉぉっ』
勇者「もう一度言うぞ……」スッ
勇者「この勇者を恐れぬのなら……」
勇者「死にたい奴から掛かって来いッ!!!」
終わり
やっと本編が終わったああああああ!!
後はエピローグだけえええええええ!!
次からエピローグ↓
二年後 大陸南部 巨大国の城
大国の王「ではこの者はどうじゃ?」ペラッ
大国の姫「写真を通してドヤ感が滲み出てる、却下」パシッ
大国の王「ではこの者は? 由緒ある貴族の家系で……」ペラッ
大国の姫「オレよりもやしと結婚できっかよ」パシッ
大国の姫「だからさぁ、オヤジ?」
大国の姫「自分でツラを見せに来ねぇ根性無しはイヤだし」
大国の姫「オレは強い奴が好きだって言ったぜ?」
大国の姫「結婚して欲しけりゃ、オレより強い奴を連れて来な!!」
大国の王「いや、お前に勝てる者など居ぬよ……」
大国の姫「それに、跡継ぎならアニキが戻ったんだから、心配ないだろ?」
大国の王「うぅむ、しかしなぁ……」
大国の姫「やっぱさ、強い人が……いいな」
バタンッ!!
大国の姫「んっ?」チラッ
大国の王「な、なんだ!?」ガタッ
武道家「やっほー戦士ぃ、誘いに来たよぉ♪」ブンブン
商人「戦士は私達と遊びに行くべき」
大国の姫「へっ……」ニッ
大国の姫「って訳だオヤジ、遊びに行って来っぜ?」スタッ
大国の王「お、おい!? またそんな事を言いって何ヵ月も帰って……」
大国の姫「あーあー、はいはい、わかったわかった」
大国の王「……」
大国の姫「安心しなオヤジ、次に会う時は……ガキの顔を見せてやるよ」ポンッ
大国の姫の部屋
大国の姫「やっぱオレにはさ、こんなヒラヒラしたドレスより……」ヌギヌギッ
戦士「このセクシーアーマーの方が合ってるな、うん!!」ガシャン
武道家「ボクも、ドレスはウェディングドレスだけでいいかなぁ」
商人「二人とも、早く結婚してしまえばいいのに」ボソッ
戦士「あ? 商人は結婚しろとか言われねぇのか?」
商人「私は心に決めた人が居るから……お姫様はイケメンでお金持ちの貴族と、早く結婚するべき」
戦士「おっ、オレだって好きな人ぐらい居るし……それに、同い年や歳下とかは恋愛対象じゃないっつーかなんつーか」モジモジ
戦士「やっぱ理想は、オレより十歳以上は歳上の男だな」
武道家「わかるー♪」
武道家「ヒゲとか生えてて貫禄が有って、瞳に愁いが有る人とか最高だよねぇ」
商人「……」
商人「やっぱり私達には師匠が必要」
商人「持ち回りでモシャスを使ってニャンニャンするのは、正直に言って限界が有る」
戦士「……」
武道家「……」
戦士「まぁ……」チラッ
武道家「終わった後は、いつも死にたくなるけど……」チラッ
戦士「抱くのも抱かれんのも、結局はお前らだしな……」
武道家「それに慣れたのも怖いし、ヤメられないのも怖いよね? はうぅっ」
商人「ちじょの話は良い」
商人「早く……」
商人「新たに発生した、魔界ゲートの調査に出発する」
商人「魔界のゲートが出たと言う事は、新たな魔王が誕生したと言う事」
戦士「オレらが命懸けで勝ち取った平和も、たったの二年で終わりかよっ」ギリッ
武道家「でも、ボク達が行かないと……ボク達は、勇者、なんだからさっ」ニコッ
戦士「……」
商人「……」
戦士「それも、そうだな」ニコッ
商人「師匠も、魔王を倒しに現れるかも知れない」
戦士「ふっ。だと、いいけどな……」
武道家「まおー、まおー、ん〜っ……」
武道家「……」
武道家「そうだっ、オメガルーラだよっ!!」ポンッ
戦士「おっ、そう言や、そんな魔法も有ったな」
弓使い「と・に・か・く」
弓使い「こんな所でおしゃべりしてたら何時までたっても町につきません」
魔法使い「せやな、村が見えるようなところでだべってるのはあかんなー」
暗黒「僕たちの姿がまだ見えるから、母さんたちが見送りから帰るに帰れないみたいだね」
弓使い「とりあえずこの道をまっすぐ行って森を出ましょう」
勇者「んだな〜いくか〜」
すまん誤爆だ
11時間くらいROMってくる
>>558
ど・ん・ま・い
戦士「アレもさ、ペンダントがブッ壊れたから使えねぇって思ってたけど……」
商人「ペンダントはオメガルーラを使う為の道具では無く、オメガルーラを覚える為の道具だった」コクリ
武道家「うんっ、だからもうペンダントが無くてもオメガルーラは使えるし……」
武道家「使って、みない?」
商人「……」
戦士「あー、魔王の所に直接飛ぶんだっけ?」
商人「そう」コクリ
戦士「でも、まだ地上に魔王は出て来てねぇよな?」
戦士「この場合は……どうなるんだ?」
武道家「う〜〜ん、やっぱり……魔界に、行っちゃうのかな?」
商人「もしくは何も起きないか」
商人「でも魔界に行った場合、ルーラでは地上に戻ってこれない」
戦士「……」
武道家「……」
商人「でもでも」
商人「師匠が居るとしたら、魔界が一番可能性は高いはず」
戦士「あ」
武道家「おおっ♪」
商人「どうする?」
商人「行く?」
戦士「……」
武道家「……」
戦士「まっ、勇者としちゃあ、魔王はほっとけないよなぁ」
武道家「ししょーが居ないとしても、やっぱり魔王は早い内に倒した方がいいと思う」
商人「前より強い魔王なら、死ぬかも知れない……」
戦士「そりゃあ死にたくねぇよ?」
戦士「でも、良いぜ……」
戦士「師匠が愛した平和を守る為だったら」
戦士「お前らと一緒なら……死んでも良いよ」ニコリ
武道家「えへへっ、なんだか恥ずかしいねっ♪」テレテレ
武道家「うん、ボクも良いよ……戦士と商人も一緒なら」
商人「私も」
商人「二人と同じ……」ニコリ
戦士「……」
武道家「……」
商人「……」
戦士「っても、まっ……死ねつもりはねぇけどな」ニヤリ
武道家「二年前のししょーの動きなら、ほぼ完璧にマスターしたよねボクら?」ニヤリ
商人「こっちは師匠が三人。魔王をフルボッコにする」ニヤリ
戦士「久々に……やるか?」
武道家「やろうっ!!」
商人「三人で円になって手を繋ぐ」
戦士「魔王の元へ、行くぜ!!」キュイィィン
商人「あ」キュイィィン
武道家「せ〜〜〜〜のっ!!」キュイィィン
戦士 武道家 商人
「「「オメガルーラ!!!」」」
魔界 魔王の城 王間に続くテラス
ギュワーン
戦士「よっ、と」スタッ
武道家「ほっ」スタッ
商人「……」スタッ
バハム子「……」ズズッ
バハム子「ふぅっ」コトッ
バハム子「なんじゃお主ら、わざわざ魔界に来たのか?」
戦士「テラスで優雅にコーヒーなんか飲みやがって!!」
戦士「じゃないじゃない!!」ブンブン
戦士「お前は魔王と戦う時、師匠と居た奴じゃねーか!?」
武道家「ホントだよ、なんでここに居るのっ!?」
商人「魔王にやられてオネンネしてた奴……」ニヤリ
バハム子「ん? なぜって」
バハム子「ワレが魔王となったからに決まっておるだろ?」
戦士「はぁっ?」
武道家「なんで魔王なんかっ!?」
商人「シネ!!」
バハム子「あーっ、うっるさいのぉ、静かにしてくれんか?」
バハム子「お腹の中の……ややこに響いてしまうわ」ナデナデ
戦士「えっ? 妊娠したのか?」
武道家「おめでとうございますっ」
戦士「……」
武道家「……」
戦士 武道家
「「誰との子供っ!!?」」ギロッ
商人「シネシネ!!」
バハム子「だから、うるさいと言っておろーに」
バハム子「分かっておるのか? ワレが魔王になったからゲートが開けるし、勇者も地上へ帰れるのだぞ?」
商人「生きてっ!!!」
バハム子「それに勇者なら、部下の教育を終えてそろそろ……」
バハム子「おっ、来た来た」
バハム子「おーい勇者!!」
バハム子「ワレは昼寝する、こやつらを何とかしてくれい!!」
勇者「……」タッ
勇者「むっ……」
勇者「おおっ……」
勇者「一目見ただけでわかる」
勇者「強くなったな、お前たち」ニコリ
戦士「……」
武道家「……」
商人「……」
戦士「しっ、師匠っ!!」ダッ
武道家「うわぁん、ししょー!!」ダッ
商人「師匠……」タタッ
戦士「うぅっ……」ギュッ
武道家「ボクたち、ずっと探してたんだよっ?」ギュッ
商人「師匠、痩せた」ギュッ
勇者「ふっ、だが……こうしてまだ生きている」
勇者「心配掛けて、すまなかったな……」
魔王の城 勇者の部屋
戦士「それで、師匠はここで何をしてんだ?」
勇者「生き方を教えている」
武道家「いきかた?」
勇者「うむ」コクリ
勇者「魔族とは弱肉強食。弱い生命を強い生命が喰らう事で成り立っていた」
勇者「しかし徐々に弱い生命は消え出し、喰われる側のラインも同じく上がって行き……」
勇者「ついには、絶滅する種族まで現れた」
商人「地上へは、新しい食料を求めに出ていた?」
勇者「そうだ」
勇者「だがそれでは、先送りしたに過ぎん。人間が滅んでしまえば同じだからな」
勇者「よって……私はここで、農業を教えている」ニコリ
勇者「魔界の大地は見た目こそ悪いが、栄養価が高く良い土だ」
戦士「へ〜〜っ」
勇者「後数ヶ月でゲートが開くと言うから、それまでだがな」
武道家「魔族たちは、ししょーの言う事を聞くんですか?」
勇者「さっきも述べたが、魔界は弱肉強食だった。つまりは実力社会」
勇者「最初こそ強引だった部分も有るが、私が魔王を倒したと認めさせ、そして食糧難の解決法も同時に説いた」
勇者「広まるまで一年以上も掛かったが、今はこうして……」
戦士「もういいや」
勇者「すまん、つまらなかったかようだな」
戦士「椅子に座って話し合うのは、もういいっつったの!!」
武道家「ししょー、お風呂ってあるよね?」
勇者「うむ。巨大な浴場が在るには在るが……入るか?」
商人「そこで師匠に稽古を着けて貰う」コクリ
勇者「むっ?」
勇者「風呂で、稽古か?」
戦士「へへっ」ニヤニヤ
武道家「ふふっ」ニヤニヤ
商人「師匠は以前、私たちがやりたいと言えば止めないと言った」
勇者「……」
戦士「ほら行くぜ? オ、ジ、サ、マ♪」グイグイ
武道家「たっぷりサービスしてあげちゃうよぉ♪」グイグイ
商人「私たちは色仕掛けの訓練をしたい……稽古着けて」グイグイ
勇者「……」
勇者「はぁっ……」
勇者「好きにしなさい」ニコリ
戦士「あ、好きにしていいんだ?」
武道家「なんか言い方がイヤらしいよねぇ」
商人「師匠はやっぱりムッツリ」
勇者「……」
戦士「でも断られたら断られたで、ヘタレッ!! って、怒鳴ってたけどな?」
武道家「ねっ?」
商人「そろそろアレを言ってトドメを刺すべき」
戦士「アレ……か、よっしゃ!!」
戦士「師匠?」
勇者「どうした?」
師匠「あ」
武道家「せ〜〜〜〜のっ!!」
戦士 武道家 商人
「「「大好きです勇者さま!!」」」
お わ り 。
お
わ
り
だ
よ
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