ナルホド「シンデレラガールズvs逆転裁判?」 (158)

『逆転裁判』と『アイドルマスターシンデレラガールズ』のクロスSSです
内容的には完全に逆転裁判で、犯人と被害者のキャスティングがアイドルになっただけ

・アイドルが被害者になってたり加害者になってたりするので、そういうのあり得ないという人
・イチャコラなんてまったくありませんので、そういうのないとかあり得ないという人
・逆転裁判とクロスとかあり得ないという人
・逆裁好きだけどモバマスとクロスとかあり得ないという人
・逆裁好きだけどクオリティ低いトリックとかあり得ないという人

はそっ閉じすることを推奨します

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 -某日 午前9時18分 地方裁判所 被告人第4控え室-

ナルホド(うん。この空気、この緊張感。ちょっと久しぶりだな)

ナルホド(……久しぶりというのが少し寂しいところだけど。そろそろなんでも事務所って名前は変えた方がいいか……?)

??「うおおおおお。俺じゃないいいい。俺じゃないんだあああああ」

ナルホド(……このケモノの鳴き声のような悲痛な叫びは)

??「成歩堂先生! 俺じゃない! 俺じゃないんですううううう!」

ナルホド(この人が今回の依頼人。アイドル事務所プロデューサーのPさんだ)

ナルホド(しかし尋常じゃなく挙動不審になってるなあ…)

P「成歩堂先生お願いですうううう! 助けて! 助けてくださいいいい!」

ナルホド「Pさん、落ち着きましょう。あなたは犯人ではないんでしょう?」

P「もちろん! もちろん違いますうう! 僕は普段からゴキブリだって殺さないくらいの博愛主義者ですからああああ!」

ナルホド(筋金入りだなそれは)

ナルホド「それなら何も恐れることはありません。ぼくはあなたを信じます。そして全力で弁護します」

P「せんせえええええ! なんて頼もしいいいいいい!」

ナルホド(何をおいても、どんな状況でも依頼人を信じる。それがぼくが師匠から受け継いだ弁護士としての魂だ)

 -同日 午前9時37分 地方裁判所 第4法廷-

カンッ!

サイバンチョ「それではこれより、芸能事務所で起こった人気アイドル殺害事件についての審理を開廷します」

ナルホド「弁護側、準備完了しています」

??「……検察側、もとより」

サイバンチョ「検察側は……まさかあなたが来られるとは思いもしませんでしたな」

ナルホド(御剣……意外にヒマなのかな)

ミツルギ「フッ……たまには現場に出ておきたいと考えただけのこと。検事としてのカンを失くしたくはないのでな」

ミツルギ「決してヒマだからなどというサミしい理由ではない」

ナルホド(ヒマなのか)

サイバンチョ「いやはや豪華な法廷ですな。それでは御剣検事、冒頭弁論をお願いしますぞ」

ミツルギ「今回は非常にシンプルだ。正直私が出るまでもなかったと少しばかり後悔している」

ミツルギ「事件はアイドルプロダクションの仮眠室で起きた」

ミツルギ「被害者は人気アイドルの双葉杏(ふたばあんず)、17歳」

サイバンチョ「ほう、アイドルですか……最近の歌謡曲にはとんと疎いですが、これはかわいらしい方ですねえ」

ナルホド(たぶん歌謡曲は歌ってないだろう……)

ミツルギ「死亡推定時刻は、解剖の結果では午後3時から4時の間、となっているが。実際にはもっと正確に特定されている」

サイバンチョ「ほほう。それはまたなにゆえですかな」

ミツルギ「詳細は後ほど、ということにさせていただこう。次に死因だ。これは毒殺であると割り出した」

ナルホド「毒殺、か……(毒には、いろいろとインネンがあるんだよな……)」

ミツルギ「死体検案書を提出する。弁護側も目を皿のようにしてしっかり読んでおくことだ」

 『証拠品:杏の死亡検案書を法廷記録にファイルした』

ミツルギ「さて、私とてヒマではない。粛々と審理を進めてもらいたい」

サイバンチョ「ふむ、ですな。では早速、最初の証人を呼びましょう」

P「……」キョドキョドソワソワ

ミツルギ「証人。名前と職業を」

P「も、モバプロでプロデューサーやってますPと申します。あ、これ名刺で……って、違うか……」

ナルホド「?」

P「俺、もうすでにクビになってるかもしれないもんな。そしたらもうプロデューサーでもなんでもなくて」

P「無職、ってことになるのかな。いやでもクビになったかどうかわからないし」

P「いっそのこともう、被告人って肩書でもいいのかな。いやでも

ミツルギ「証人!」ダンッ

P「ひいいいいい俺じゃない俺じゃないんですううううううう」ガクガクブルブル

ミツルギ「キサマの首はまだつながっているそうだ。モバプロのアイドルプロデューサーP。それでよかろう」

P「は、はい」

サイバンチョ「弁護人。あなたの依頼人は毎回毎回変わった人ばかりですな」

ナルホド「毎度お騒がせしてすみません……」

ミツルギ「さてこの男、どうしても言っておきたいことがあるそうだ。早速それを証言してもらおう」

ナルホド「言っておきたいこと……」

P「はい! 先生にはもう何度もお話してることですけど」

サイバンチョ「わかりました。では被告人、証言をお願いします」

【証言開始 ~動機がない!~】

P「僕が杏を殺すなんて、そんなことするわけないんです!」

P「杏は僕がスカウトしたアイドルで、ずっと一緒にがんばってきました」

P「いろいろと問題も多いけど、あいつは超一流の才能を持っていたんです!」

P「これからもずっと一緒にがんばっていく、そう思ってたのに……」グス

【証言終了 ~動機がない!~】

ミツルギ「……」

ナルホド(確かに留置場で何度も聞いた話だ。直接的に言わないのはわざとなのかうっかりなのかはわからないけど、ようは)

ミツルギ「つまり被告人は、『自分には動機がない』。そう主張したいようだな」

P「そうです! 僕には杏を殺す動機なんてありません!」

ナルホド「弁護側も同様に主張します。彼らは今までずっと支え合ってきたパートナーでした」

ナルホド「彼に杏さんを殺害する動機なんてこれっぽっちも存在しません!」





 異 議 あ り !

ミツルギ「やれやれ……冒頭から弁護人は熱くなりすぎだな。最後までもたんのではないか?」

ナルホド「な、なに?」

ミツルギ「死人を悪く言うようで気がひけるのだが。被告人」

ミツルギ「双葉杏は相当な怠け者だったそうだな」ヒラヒラ

ミツルギ「キサマ自身相当手を焼いていたとか」

P「そ、それは」

ミツルギ「それでもキサマは彼女をアイドルとして育てようとした。ここだけ見れば実に美しい話とも言える」

ナルホド(な、何が出てくるんだ……?)

ミツルギ「しかし、モバプロの上のほうの意見は違っていた」

P「!」

ミツルギ「キサマ、結構な圧力をかけられていたようだな」

P「それは、確かにそうだけど! でも!」

ミツルギ「加えて金銭的な問題もあった」

ナルホド(まだあるのかよ……)

ミツルギ「キサマはいつも飴を与えることで、双葉杏を使役していたそうだな」

ミツルギ「怠惰な少女をもので釣って働かせる……なかなかに古典的かつ小ずるいやり方だ」

サイバンチョ「あ、飴ちゃんひとつで労働ですか……見合っているようには思えませんが」

ミツルギ「被告人はそういう男だということだ」



 
異 議 あ り !



ナルホド「検察は被告人の人格を不当におとしめています! この事実は本件とは直接関わりがない!」

ミツルギ「不当も何も私は事実を述べているだけだ」

ミツルギ「この飴代だが、被告人のポケットマネーで出していた。そうだな被告人」

P「……はい」

ミツルギ「双葉杏は昼間から事務所に入り浸ってはクーラーを豪快に効かせて熟睡する。そういう生活を送っていた」

ミツルギ「率直に言って金のかかるアイドルだった。そういうことだ」

ナルホド「しかしそれならば! 杏さんを辞めさせればすむことだったはず!」

ミツルギ「……そこが怠け者の恐ろしいところだ」

ミツルギ「被告人。キサマは双葉杏に脅されていた。そうだな」

サイバンチョ「お、脅しですと? こんなかわいらしい娘さんが?」

P「……いい加減にしてください」ギリ

P「杏が……杏がそんなことするわけないでしょう」

ナルホド「御剣! そこまで言うのなら、証拠を出すんだ!」

ミツルギ「……」

ミツルギ「この証拠品は、被告人だけでなく被害者の名誉も著しく損ねる恐れがあるシロモノだ」

ナルホド「御剣! 逃げるのか!」

ミツルギ「……写真だ」

P「!?」

ナルホド(! Pさん、あからさまに動揺したぞ)

ミツルギ「裁判長、今の被告人を見ていただきたい。写真と口にしただけでこの青ざめよう。まるで弁護人のスーツのようだな」

サイバンチョ「ふむう……具体的に何なのか気にはなりますが……確かに明らかに顔色が悪くなりましたな」

ミツルギ「動機の立証は十分。では次に進もうか」

ナルホド(くそ……完全に向こうのペースだな)

ミツルギ「お次はもちろん、犯行を行ったのが被告人だと証明する。検察側はそのための証人を用意している」

サイバンチョ「ほう。いいでしょう。では早速その証人を呼びましょう」

??「……」

ナルホド「……」アセ

ナルホド(でけえ……こんなでかい女性は初めて見たかな……)

ミツルギ「証人。名前と職業を」

??「にょ? んー……けんじさん、眉毛と眉毛の間に谷間ができちゃってるにぃ~」

??「そんなコワい顔してたらはっぴーが逃げちゃうにぃ。ほら、きらりんといっしょにはぴはぴすぅ?」

サイバンチョ「……」パチクリ

ミツルギ「……」

ナルホド「……」アセアセ

??「ほらほらけんじさん、一緒にやるにぃ。せーの、きらりん☆」ニョワ

ミツルギ「……」ダンッ

ミツルギ「証人! 名前と職業だ!」キッ

??「にょわー、コワいにぃ……」

??「えーと、きらりんだにぃ☆ お仕事はアイドルやってるにぃ☆ みんなよろしくおにゃーしゃー☆」キラリーン

ミツルギ「……」

ナルホド(眉間のしわがさらに深く……)

サイバンチョ「これはまた、かわいらしい方ですが……随分と背が大きいですな」

きらり「にょ……」

サイバンチョ「にょ……?」

きらり「おじいさん、頭ツルペカでかわいいにぃ☆ きらりかわいいもの大好きだにぃ」

サイバンチョ「お、おやおや、ほっほっほ。いきなり好かれてしまいましたな」

ナルホド(頭ツルペカって言われてたぞ……)

サイバンチョ「それで、御剣検事。こちらのお嬢さんは、何について証言してくださるのですかな?」

ミツルギ「……極めてシンプル。犯行の瞬間のことだ」

サイバンチョ「と、言いますと」

ミツルギ「無論、被告人が毒物を被害者に飲ませ、被害者が絶命する。その一部始終。そうだな証人」

きらり「うん。きらり、見ちゃったんだにぃ」

ナルホド「な」

サイバンチョ「なんですっとおおおおおおお!」

ナルホド(いきなり決定的すぎる! これが本当なら……)

ナルホド(あっという間に終わってしまう!)

【証言開始 ~杏死亡の瞬間~】

きらり「にょわ☆ きらりんと杏ちゃんは、おやすみルームでお休みしてたんだにぃ」

きらり「お休みって言ってもきらりは起きてたにぃ☆ 杏ちゃんの寝顔眺めてたにぃ☆ うきゃー言っちゃった!」

きらり「3時半くらいだったかにぃ……Pちゃんが入って来て、杏ちゃんに飴をあげてたにぃ。まっかっかの飴ちゃんだったにぃ」

きらり「別にそれはおかしいことじゃなくて……いつもやってることだにぃ。でも……」

きらり「あ、飴を口に含んですぐ……杏ちゃんの様子がおかしくなって」

きらり「その後は……あんまりちゃんと覚えてないにぃ……」

【証言終了 ~杏死亡の瞬間~】

ナルホド「……」アセアセ

ミツルギ「……」

サイバンチョ「……」

ミツルギ「被告人が飴を与えた直後、双葉杏は苦しみ出した。もはやシロウトでも間違えまい」

サイバンチョ「ふむう……決定的に思えますな。いかがかな弁護側は」

ナルホド「いかがも何も……もちろん尋問します」

サイバンチョ「でしょうな。では弁護人。この証言に対しての尋問をお願いします!」

【尋問開始 ~杏死亡の瞬間~】

きらり「にょわ☆ きらりんと杏ちゃんは、おやすみルームでお休みしてたんだにぃ」

きらり「お休みって言ってもきらりは起きてたにぃ☆ 杏ちゃんの寝顔眺めてたにぃ☆ うきゃー言っちゃった!」

きらり「3時半くらいだったかにぃ……Pちゃんが入って来て、杏ちゃんに飴をあげてたにぃ。まっかっかの飴ちゃんだったにぃ」

きらり「別にそれはおかしいことじゃなくて……いつもやってることだにぃ。でも……」

きらり「あ、飴を口に含んですぐ……杏ちゃんの様子がおかしくなって」

きらり「その後は……あんまりちゃんと覚えてないにぃ……」

ナルホド(まずは落ち着いて証拠品を整理してみよう)


弁護士バッジ:ぼくの身分を証明してくれる、大切なバッジだ。

杏の死亡検案書:死亡推定時刻は午後3時から4時の間。死因は急性中毒による心臓マヒ。
        胃袋はほぼカラだが飴が1個だけ残っている。

杏が舐めていた飴:杏の口から発見された。元は立方体だったと思われる形の飴。かなり小さくなっている。

Pが杏にあげた飴:大きい瓶に大量にストックされている丸い飴。包装紙はもともとなく裸で保管。
         あげたはずだが杏の口からは見つかっていない。

飴の入った瓶:いろんな味の丸い飴が大量に入った瓶。フタはしっかり閉まっていた。

アイドルU・Sの証言書:"杏ちゃん、「息をするのもめんどくせえ」ってくらいに筋の通った怠け者でした。
            ご飯食べてるところとか見たことないなあ……"

仮眠室のゴミ箱:毎日午後3時15分から4時の間、家事好きのアイドルが掃除のために持ち出している。

ナルホド(御剣が死亡推定時刻が正確に割り出せていると言ってたのはこの証言があったからか)

ナルホド(死亡時刻は3時半頃。これは正しいと仮定しておこう)

ナルホド(そうするとこの中で気になるのはやっぱり)

>「あ、飴を口に含んですぐ……杏ちゃんの様子がおかしくなって」

ナルホド(これかなあ)

ナルホド(でも毒が飴の外側に塗られていたとしたら、舐めてすぐに倒れるのって別におかしくは……)

ナルホド(あれ?)

ナルホド(この証拠品……少し弱い気もするけど……)

ナルホド(ひっかかりは感じるな)

ナルホド(よし。いってみるか……!)

>「あ、飴を口に含んですぐ……杏ちゃんの様子がおかしくなって」

>杏が舐めていた飴:杏の口から発見された。元は立方体だったと思われる形の飴。かなり小さくなっている。




異 議 あ り !



ナルホド「きらりさん」

きらり「にゃっほい☆」

ナルホド「杏さんの口から発見された飴。これなんですけど」

きらり「にょわ☆ それがどうかしたかにぃ?」

ナルホド「これはどのメーカーのなんという飴か、ちゃんと特定されているんです。持ってきました」

きらり「にょわ?」

ナルホド「この飴、もともとは立方体に近い形をしています。ですが杏さんの口から見つかったこの飴は」

ナルホド「角がすっかり丸くなっています」

ミツルギ「……」

サイバンチョ「どういうことですかな弁護人」

ナルホド「きらりさんはこう証言しました。「口に含んですぐ、杏ちゃんの様子がおかしくなった」」

ナルホド「ですが。この飴はもとの形がわからなくなるほど溶けています」

サイバンチョ「あ……」

ナルホド「おわかりですね。がっつり口に含まなければ、ここまで溶けることはあり得ません!」

きらり「にょわわわわーーーー!☆!☆ミ」

ドヨドヨガヤガヤ……

カンカンカンッ!

サイバンチョ「静粛に! ……しかし、これは一体どういうことでしょうか」

ミツルギ「双葉杏の唾液分泌量が常人より並はずれて多いのかもしれん」

ミツルギ「そもそも」

ミツルギ「遺体から取り出すまでの間にも飴は溶け続けるのだ。特に不自然ではあるまい」

サイバンチョ「あ、なるほど……」

ナルホド(そう。こう返されると弱いんだよな。でも)

ナルホド「御剣。お前は飴ちゃんなんて舐めないだろうから知らないんだろうけど」

ナルホド「飴は口の中で転がさない限りはなかなか溶けないんだよ」

ナルホド「死人の冷たい口の中で留まっている限り、そこまで小さく溶けたりしない!」

ミツルギ「ぐおっ! た、確かに私は普段飴など舐めないが……」

ナルホド(全然デマカセだけど。効いてるみたいだな)

きらり「あのー。きらりんおしゃべりしてもいいかにぃ?」

サイバンチョ「なんですかな?」

きらり「杏ちゃん、Pちゃんに飴もらう前から、もうひとつ飴ちゃん舐めてた気がするにぃ」

ナルホド「え」

ミツルギ「証人! 私はそんな話は聞いていないのだが?」

きらり「今にょわーんと思いだしたにぃ! にょわーん☆」キラリーン

ミツルギ「……」ギリギリ

ナルホド(あいつも大変だな……)

サイバンチョ「で、ではひとまず、そのもうひとつの飴について証言してもらいましょう!」

きらり「おっつおっつばっちし☆」キラリーン

【証言開始 ~杏死亡の瞬間・2~】

きらり「杏ちゃん、Pちゃんから飴ちゃんもらう時に口をもごもごさせてたにぃ」

きらり「あの時、もともとひとつ飴ちゃん舐めてたんじゃないかにぃ?」

きらり「べんごしさんがゆってゅ飴ちゃんは、たぶんそのもごもご舐めてた飴ちゃんだにぃ! うきゃー☆ きらりん天才!」

きらり「でも……どっちにしろ? Pちゃんがあげた飴ちゃんを口に含んですぐ、杏ちゃんが倒れたことには違いないにぃ」

【証言終了 ~杏死亡の瞬間・2~】

サイバンチョ「ふむう……では弁護人、尋問を」

ナルホド「はい」

【尋問開始 ~杏死亡の瞬間・2~】

きらり「杏ちゃん、Pちゃんから飴ちゃんもらう時に口をもごもごさせてたにぃ」

きらり「あの時、もともとひとつ飴ちゃん舐めてたんじゃないかにぃ?」

きらり「べんごしさんがゆってゅ飴ちゃんは、たぶんそのもごもご舐めてた飴ちゃんだにぃ! うきゃー☆ きらりん天才!」

きらり「でも……どっちにしろ? Pちゃんがあげた飴ちゃんを口に含んですぐ、杏ちゃんが倒れたことには違いないにぃ」

ナルホド(正直今回の証言は、ツッコミどころが明確すぎる)

ナルホド(それよりも気になることもあるし。少しゆさぶってみるか)

ゆさぶる>「あの時、もともとひとつ飴ちゃん舐めてたんじゃないかにぃ?」

ナルホド「その飴ちゃんはどこから出てきたものなんでしょうか?」

きらり「どこ? うーん……それはきらりにもわかんないにぃ☆ てへー」

ナルホド「……」アセ

ナルホド「あなたはさっきの証言でこう言いましたね」

>『お休みって言ってもきらりは起きてたにぃ☆ 杏ちゃんの寝顔眺めてたにぃ☆ うきゃー言っちゃった!』

きらり「にょわ! 確かに言ったにぃ」

ナルホド「それならば!」ダンッ

ナルホド「見ているはずでしょう! 杏さんがもうひとつの飴を口に含むところを!」ビシィッ

きらり「にょわー……」ホケー

ナルホド「ここでホケーッとしないでください……」アセ

きらり「きらりん、ずっと起きてたとは言ってないにぃ」

ナルホド「え」

きらり「おやすみルームのおふとんはふっかふかで気持ちいいにょ☆ だからきらりん、うとうとしちゃったにぃ」

ナルホド「……それ、何時頃かとか」アセ

きらり「気がついたらうとうとしてたんだからわかるわけないにぃ☆ うきゃー☆ きらりん頼りになんなーい☆」

ナルホド「……」アセアセ

サイバンチョ「弁護人。食いつきますね。この証言、何か重要なのですかな?」

ナルホド(どうだろう。正直今のところ、謎な点が多すぎるというか)

ナルホド(いや。今はひとまず、はっきりしてるムジュンを潰していくことから進んでいこう)

ナルホド「いえ。ちょっと気になっただけです、攻め手はもう決まっていますから」

サイバンチョ「ほ、ほう。強気ですな」

ナルホド(このあからさま過ぎる不自然さ。御剣も気づいてはいるだろうけど……)

ナルホド(証言してる本人は何とも思ってないんだろうか)

>「でも……どっちにしろ? Pちゃんがあげた飴ちゃんを口に含んですぐ、杏ちゃんが倒れたことには違いないにぃ」

ナルホド(証拠品は……これだ)

>Pが杏にあげた飴:大きい瓶に大量にストックされている丸い飴。包装紙はもともとなく裸で保管。
          あげたはずだが杏の口からは見つかっていない。




異 議 あ り !



ナルホド「指摘するのも馬鹿らしいレベルでしたが」

ナルホド「きらりさんの言うとおり、杏さんがもともとひとつ飴を舐めていたとします」

ナルホド「そして、3時半頃。Pさんから飴をもらい、それを口に含みました。さて、どうなりますかね」

ミツルギ「……」

きらり「にょわ?」

サイバンチョ「……あっ」

ナルホド「おわかりになりましたか」

サイバンチョ「そ、そんなことをしたら……味が混ざってしまいますぞ!」

ナルホド「え」アセ

サイバンチョ「え? ち、違うのですか? あ、同じ味の飴だったのですか?」

ナルホド「いや、違うと思いますけど……」アセ

きらり「杏ちゃん、そういうの気にしない子だったにぃ☆ とにかく飴ちゃん舐めてたらはぴはぴな子だったにぃ」

サイバンチョ「おや……では一体」

ナルホド(結局わからないのかよ!)

ミツルギ「双葉杏はもともとひとつ飴を口に含んでいた。そして被告人から毒入りの飴をもらい、それも口に含んだ」

ミツルギ「当然被害者は死亡時、二つの飴を口に含んでいたと考えられる」

サイバンチョ「ふむう」

ミツルギ「そろそろわかってほしいところなのだが。死体検案時、双葉杏の口から見つかった飴は……ひとつだけだ」

サイバンチョ「あっ……」

ナルホド「そう! そして被害者の口から発見された飴はしばらく口に含んでいたとしか思えないほど溶けていた! つまり!」

ナルホド「Pさんがあげたはずの飴が被害者の口から忽然と消えてしまった! そういうことになるんです!」ビシィッ

きらり「にィィィィィィィィィィィィ!!!!!」

ドヨドヨガヤガヤ…………

カンカンカンッ!

サイバンチョ「静粛に! 静粛に!!」

ナルホド(指摘したはいいけど、これが一体何を意味してるのか。全然見えないな……)

ミツルギ「……」

ナルホド「裁判長! こうなってくるとそもそも、「被告人が被害者に飴をあげるところを見た」という証言自体が」

ナルホド「疑わしいものに見えてきます」

サイバンチョ「べ、弁護人! あなた、このかわいらしいお嬢さんが嘘をついていると?」

ナルホド「裁判長! あなたは何度も騙されてきたはずです! 可憐な少女だって嘘くらいつく!」

きらり「ひ、ひどいにぃ……きらりん、嘘なんてついてないにぃ……」グス

ナルホド「しかし




異 議 あ り !



ナルホド「!」

ミツルギ「!」

サイバンチョ「!」

きらり「!」


P「待 っ て く だ さ い !」



ナルホド「Pさん!?」

P「ほ、本当です」

ナルホド「え」

P「僕がその時間に杏に飴をあげたことも……その飴を口に含んだとたん、杏が苦しみ出したことも」

P「どっちも、本当のことです!」

ミツルギ「な」

サイバンチョ「な」

ナルホド「なんだってえええええええ!?」ガガーン

サイバンチョ「ひ、被告人! 自分が何を言っているかわかっているのですか!」

サイバンチョ「弁護人のがんばりが全て水の泡になりますぞ!」

P「ご、ごめんなさい先生! でも、本当のことは本当のことだってちゃんと言っておかないと……!」

ナルホド「Pさん……」

ナルホド(確かに……隠しておいたって余計に不利になるだけだしな)

ナルホド(って言っても……一体どうなってるんだ?)

ナルホド(Pさんがあげたはずの飴はどこかへ消えてしまった……いやどこに? どうして?)

サイバンチョ「そもそも気になってきたのですが……死因は間違いなく毒殺なのですかな? 御剣検事」

ミツルギ「……」

ミツルギ「日本の警察をナメてもらっては困る。死因は毒殺。それは間違いない。毒物らしき痕跡が検出されている」

ナルホド(……?)

ナルホド「待てよ御剣。毒物「らしき」痕跡だって?」

ミツルギ「……」

ミツルギ「殺害に使われた毒薬……信じがたいことだが、データベースに存在しない毒薬だそうだ」

ミツルギ「ゆえに毒薬の種類の特定には未だ至っていない。目下全力で解析中だ」

サイバンチョ「なんと……未知の毒薬が使われたというのですか」

ミツルギ「データベースにない、と申し上げた。未知かどうかもわからんのだ」

ナルホド(……! これはひとつ、突破口になるかもな)

ナルホド「……」ダンッ

ナルホド「毒薬の種類が特定できない……ならば弁護側はこう主張します」

ナルホド「『その毒薬は、遅効性の毒薬だった』と」

サイバンチョ「ちこうせい……?」

ナルホド「摂取してから効力が表れるまでに時間差のある毒薬のことです」

ミツルギ「フッ、おそらくそう来るだろうと思ってはいた」

ミツルギ「弁護人はこう言いたいわけだ。本当の凶器は被告人があげた飴ではなく、もともと口に含んでいた飴のほうだと」

ナルホド「そ、その通りです!」

ミツルギ「現状、毒薬の種類が特定できていない以上、検察側にもそれを否定しうるだけの持ち合わせはない」

ミツルギ「だがどちらにしても、被告人のあげた飴がどこへ行ったのかの説明はつけられんな」

きらり「あにょ。きらりん、しゃべってもいい?」

サイバンチョ「もちろんですぞ!」

きらり「飲み込んじゃったんじゃないかにぃ?」

ナルホド「飲み込んだ? 飴玉を?」

きらり「うん。苦しんでるときに、拍子でごっくんちょ☆ って」

ナルホド「毒物を口から摂取した人間は、無意識に吐こうとするものです」

ナルホド「逆に飲み込むなんて、考えにくい

ミツルギ「チッチッチッチッ」ニッ

ミツルギ「ごっくんちょ、か。成歩堂。この証人のほうがキサマよりよっぽど頭がいいと見える」

ナルホド「な、なんだと(地味にショックだな……)」

ミツルギ「私ははじめに言っておいたぞ。死体検案書をよく読めと」

ナルホド「死体検案書……(見てみるか)」

>杏の死亡検案書:死亡推定時刻は午後3時から4時の間。死因は急性中毒による心臓マヒ。
         胃袋はほぼカラだが飴が1個だけ残っている。

ナルホド「あ……あああああああああ!」ガガーン

ミツルギ「双葉杏の口から発見された飴玉が1個。そして……胃袋からも1個。これで2個。揃ったな」

ドヨドヨガヤガヤ…………

サイバンチョ「と、いうことは……きらりさんの言うとおり、飲み込んだということに……」

ミツルギ「まあまったくあり得ない話でもなかろう。弁護人が検案書をよく読んでいればこんな回り道はせずに済んだのだが」

ミツルギ「ちなみに胃袋から検出された飴の現物がこれだ」

サイバンチョ「ふむう……アメジストのようですな」

P「……?」

ナルホド(……Pさん? なんだろう、飴を見て考え込んでる……?)

ナルホド(あれ? そういや何か……)

>『3時半くらいだったかにぃ……Pちゃんが入って来て、

ナルホド(何か違うような……)

>杏ちゃんに飴をあげてたにぃ。ま っ か っ か の飴ちゃんだったにぃ』

ナルホド(!!)




異 議 あ り !



ナルホド「……」

サイバンチョ「べ、弁護人! 異議を唱えておいてダマらないように!」

ナルホド「このムジュンに突っ込むことで……またフリダシに戻ってしまうのか、と」

ミツルギ「どういうことだ? 弁護人」

ナルホド「きらりさんの最初の証言を思い出してください。彼女はこう言っているんです」

>『3時半くらいだったかにぃ……Pちゃんが入って来て、杏ちゃんに飴をあげてたにぃ。まっかっかの飴ちゃんだったにぃ』

ミツルギ「ふム。確かに言っていたな」

サイバンチョ「私はまったく覚えておりませんな」

きらり「きらりも自分で言っといてあんまし覚えてないにぃ☆ うきゃーきらりんおバカさんー☆」キラリーン

ナルホド「彼女ははっきり証言しています! 『まっかっかの飴ちゃん』だったと!」

ミツルギ「ぐおっ!」

サイバンチョ「ど、どういうことでしょうか」

ナルホド「今検事席の赤い人がしたり顔でかかげているその飴玉! ぼくにはどう見ても『まっかっか』には見えません!」

サイバンチョ「た、確かにその通りです! 私もさきほど『アメジスト』と言いましたが……これはムラサキ色です!」

ドヨドヨガヤガヤ…………

ナルホド「これが意味することは単純です! 胃袋から見つかった飴玉と、Pさんがあげた飴玉はまったくの別物だということです!」

ミツルギ「ぐおおおおおおおおおおおっ!」ズバッ

P「あ、あの!」

サイバンチョ「被告人! なんですかな? 今非常にややこしい場面なのですが」

P「そのムラサキの飴玉には、心当たりがあります」

サイバンチョ「ほう?」

P「たぶん、昨日の仕事の後に僕が杏にあげたものの残りです。昨日はいくつかあげたから」

P「ムラサキの飴玉も混じってたはずです」

ミツルギ「……」

P「それに……杏は寝っ転がったまま飴を舐めるので、たびたび飴を飲み込んでたんです」

サイバンチョ「誤嚥ですか……私もよくやりますぞ。最近はめっきり増えてきましてな」

P「間違って肺のほうに行ったら大変だからって、ずっと言ってたんですけどね……」

サイバンチョ「胃袋から見つかったものと、被告人があげたものは別物……間違いなさそうですな」

ミツルギ「……それについては認めざるを得ないようだ。だが、これで……」

ナルホド「ええ。またフリダシです」

サイバンチョ「だいぶ疲れてきましたかな。ではここらでひとつ、休廷を挟みましょう」

ナルホド(最初の証言からヒヤヒヤの連続だったけど……なんとか持ちこたえたぞ)

ナルホド(でもやっぱりまったくわからない……Pさんがあげた飴玉はどこに、どうして消えたんだ……?)


                                      つづく

ということで前半終わり。次であっさり終わります。先が読めても言わないでね
確かに題材的にガリューにしてもよかったけど、5だけでそこまでガリューのキャラ把握できないし、
もっかい4をちゃんとやり直す気にはならなくてね…
まあ単発ネタのつもりだし、逆裁の検事側の象徴ということで御剣にしたんだ

それは単純に一番最新のものを基準にして合わせようと思ったからかな
5って結構久しぶりに出たしハードも違うし、5しか知らない人もいると思うから

それと検事で一番好きなのはゴドー検事だけど、ゴドーを出すには
3のどこかの間にねじ込むような形になっちゃうし

投下の前に一か所訂正をば
>>30の最後
きらり「おっすおっすばっちし☆」
に訂正
こんな決め台詞的なの間違えるとかほんと恥ずかしい

じゃあ投下いく

 -同日 午前10時51分 地方裁判所 第4法廷-

カンッ!

サイバンチョ「それでは、審理を再開しましょう」

ミツルギ「前半の審理、大した進展はなかったが……一応判明した事実の整理をしておこう」

ナルホド「そうですね」

ミツルギ「被害者双葉杏は、アイドル事務所の仮眠室で死亡した。死因は毒殺」

サイバンチョ「毒物の解析結果はまだ出ないのですかな?」

ミツルギ「……報告は来ていない」

サイバンチョ「ふむう……」

ミツルギ「注射などの痕跡がないことから、毒物が経口摂取されたことは間違いない」

サイバンチョ「で、飴ちゃんですか」

ミツルギ「被告人が被害者に飴をやり、それを口に入れた途端被害者は苦しみだし、そして絶命した」

ミツルギ「この飴に毒が盛られていた。というのが、検察側の変わらぬ見解だ」




 異 議 あ り !



ナルホド「Pさんがあげたその飴玉は今のところどこからも見つかっていません!」

ナルホド「毒が盛られていたと主張するならばまず、その問題の飴玉がどこに行ったか提示すべきです!」

ミツルギ「……相変わらず考えるより先に口と左手が動く男だなキサマは。まったく進歩が見られん」

ミツルギ「今は事実の整理をしているところなのだ。熱くなるところではない」

サイバンチョ「ふむう……どこまで話したのか忘れてしまいましたな」

ナルホド「うぐ。す、すいません……」

ミツルギ「話を戻そう。飴については、双葉杏の口からひとつ。それと胃袋からひとつ見つかっている」

サイバンチョ「胃袋から飴玉ねえ……」

ミツルギ「被告人も言っていたが、誤って飲み込んだものだろう」

ミツルギ「事務所の他のアイドルからも複数、同様の証言が取れている」

サイバンチョ「しかしよく溶けませんでしたな」

ミツルギ「双葉杏は飯を食うのもおっくうなくらいの怠け者だったようだ。胃酸の出もニブっていたのかもしれんな」

サイバンチョ「わかりました。結局現状最大のナゾはやはり……消えた飴ちゃん、ということになりますね」

ナルホド(前半の審理では、Pさんが杏さんに飴をあげ、それを口に入れたところ。そして杏さんが死亡するまで)

ナルホド(そこだけに着眼していた。御剣もそれだけでじゅうぶん決定的と考えていたんだろう。でも)

ナルホド「……裁判長」

サイバンチョ「お。なんですかな弁護人」

ナルホド「本来あるはずのものがなくなっていた……それがなぜかを知りたければ、ぼくたちがするべきことはひとつです」

サイバンチョ「と言いますと」

ナルホド「もちろん。双葉杏さん死亡後のことについての証言を要求します!」

サイバンチョ「あ、なるほど。そこで何かが起こった、と」

サイバンチョ「ふむ。御剣検事。いかがですかな」

ミツルギ「フン。まあそうするしかあるまい。このままではコウチャクが続くだけだろう」

サイバンチョ「わかりました。では……まず被告人の証言を聞きましょうか。被告人、前へ」

P「は、はい……」

ナルホド(Pさん……何か顔色がよくないような)

サイバンチョ「聞いていましたね。双葉杏さんが倒れた後のことを話してもらえますか」

P「い、いきなりなんで……ちゃんと話せるかどうか」

ミツルギ「話してもらわねば困る」

サイバンチョ「困りますな」

P「うう……」

ナルホド(? きらりさんを見てる……?)

P「わ、わかりました。なんとか……」

サイバンチョ「うむ。では、証言をお願いします!」

【証言開始 ~杏が倒れた後~】

P「えっと……杏が苦しみ出して、バタッと倒れて」

P「それを見て僕は、まず救急車を呼ばなきゃって思って」

P「仮眠室から出ました。事務所の廊下に出て、携帯で電話をかけて」

P「何を喋ったかは覚えてません。電話を切ってすぐ、また仮眠室に戻りました……」

【証言終了 ~杏が倒れた後~】

サイバンチョ「……」

ミツルギ「……」

ナルホド「……Pさん」

P「は、はい」

ナルホド「あなたは事件の後、一度現場から離れた。そういうことですか?」

P「あ……そ、そういうことになりますね、はい」

ドヨドヨガヤガヤ…………

カンカンカンッ!

サイバンチョ「静粛に!」

ミツルギ「裁判長。これは事件の被告人の発言だ。そっくりそのままうのみにするわけにはいくまい」

サイバンチョ「そ、それもそうですな。では弁護人、いつものように尋問を」

ナルホド(弁護側には有利な証言だけど……実はちょっと気になるところもあるしな)

ナルホド「わかりました。もちろん尋問します」

【尋問開始 ~杏が倒れた後~】

P「えっと……杏が苦しみ出して、バタッと倒れて」

P「それを見て僕は、まず救急車を呼ばなきゃって思って」

P「仮眠室から出ました。事務所の廊下に出て、携帯で電話をかけて」

P「何を喋ったかは覚えてません。電話を切ってすぐ、また仮眠室に戻りました……」

ナルホド(歯切れが悪いのは、単にキオクを探り探り話したから。それだけなんだろうか)

ナルホド(どちらにしても、事件後のことについてまだ情報が少ない)

ナルホド(ここでできるだけ集めておくか)

ゆさぶる>「えっと……杏が苦しみ出して、バタッと倒れて」




待 っ た !



ナルホド「その時の杏さんの様子はどうでしたか?」

P「どう……いつも通り、ふてこい感じでした。でも……少しキゲンよさそうでした」

ナルホド「へえ……どうしてでしょうか」

P「きらりが言ったとおり、もうひとつ飴を舐めてたからだと思います」

ナルホド「その飴、誰からもらったとかは言っていましたか?」

P「いえ、それは話してないですね……」

ナルホド(きらりさんの証言って、きらりさんが言ってるだけで第三者の証明はなかったんだけど)

ナルホド(やっぱりもともと飴を舐めてたのは間違いないみたいだな)

ゆさぶる>「仮眠室から出ました。事務所の廊下に出て、携帯で電話をかけて」




待 っ た !



ナルホド「119番するために部屋から出たってことですか?」

P「ええ……。あの部屋には据え付けの電話がないですし、携帯の電波もかなり不安定なんですよ」

P「おかげでアラームをセットせずに寝たアイドルが寝過ごす事件がしょっちゅう……」

P「あ、すいません。関係なかったですね……」

サイバンチョ「ふむう……部屋の中から電話をかけられなかったから外に出た……特に不自然ではありませんな」

ナルホド(ぼくとしても異論はない。そんなにツッコむところじゃないな)

ゆさぶる>「何を喋ったかは覚えてません。電話を切ってすぐ、また仮眠室に戻りました……」




待 っ た !



ナルホド「どれくらいの時間仮眠室を空けたかわかりますか?」

P「……正直、全然。時計を見る余裕なんてなかったし……」

ナルホド「そうですか……(無理もないか……目の前でアイドルが死んだんだからな)」

ミツルギ「消防から聞き取ったところ、被告人から入ったエマージェンシーコールの時間は約3分だったそうだ」

サイバンチョ「ほう。さすが御剣検事。かゆいところに手が届きますな」

ミツルギ「フン。こんなものは当然だ」

サイバンチョ「しかし3分……長いようで短く、短いようで長い。また弁護人の頭が痛みますな。ほっほっほ」

ナルホド(心配してくれてるのか楽しんでるのか……)アセ

ナルホド(質問を変えるか……少しひっかかることがあるし。どうもPさん、様子がおかしいんだよな)

ナルホド「質問を変えます。仮眠室に戻った時、中に誰かいませんでしたか?」

P「誰か……? いえ、杏が倒れてただけだったと思います……すっかり動かなくなってましたけど……」

ナルホド「他には本当に誰もいなかったんですか?」

P「ええ……そのはずです……」

P(やっぱり。おかしいぞ。あからさま過ぎる)

ミツルギ「弁護人。奥歯に飴が挟まったような顔をしていてもはじまらん。言ってみるがいい」

サイバンチョ「ふむう……弁護人。被告人のこの発言、何か疑問がありますかな?」

ナルホド「はい。おおいにあります」

P「ええ!?」

ナルホド「お忘れですかPさん。前半の法廷で、あなたを窮地に陥れた人物がいたはずです」

P「!」

ナルホド「一部始終を全て見ていたと証言したその人物が、あなたの証言にはまったく出てきません」

P「そ、それは……」

サイバンチョ「確かに、まったくふれられていませんな。きらりさんの存在について」

ミツルギ「……諸星きらりと被告人。どちらかがウソをついている。そういうことになるか」

P「……」

ナルホド(前半の法廷のきらりさんの証言がウソだった、となれば、形勢は圧倒的に有利になる)

ナルホド(けど……)

[ウソをついているのはきらり]

>[ウソをついているのはP]

ナルホド「Pさん。休廷のあいだに、何か気付いたことがあったんですか?」

P「!」

ナルホド「ぼくはあなたの弁護人です。全力であなたの無実を証明する。でもそれと同じくらい」

ナルホド「ぼくは真実を求めます。たとえそれで誰かが傷ついてしまっても」

ミツルギ「真実は常に優しくはない。時に卑劣なウソより残酷なものだ。だがそれを明かさなければ、前に進めない人間もいる」

P「……」

ナルホド「Pさん。もう一度聞きます」

ナルホド「Pさんが戻った時、仮眠室には人がいましたね?」

P「……はい」

ナルホド「誰がいたんですか?」

P「……きらりが、いました」

ドヨドヨガヤガヤ…………

カンカンカンッ!

サイバンチョ「静粛に! 静粛に!」

ナルホド(当然ていえば当然なんだけど……でも一人現場に残ったという点で、彼女はガゼン怪しくなった!)

ナルホド「裁判長! 聞いての通りです! 諸星きらりさんは事件後、被害者と二人きりで現場に残った!」

ナルホド「消えた飴玉についても当然何か知っているはず! 早速証言を要求します!」

裁判長「そ、そうですな。ではすぐに

キラリ「んにょわわわわわわわーーーーーーーーーん☆」キラリーン

ナルホド「!」

ミツルギ「!」

サイバンチョ「! な、なんですか証人いきなり奇声を上げて!」

キラリ「うきゃーごめんなさいにぃ☆ きらり、大人しくじぃーっと待ってるのニガテだから、くたびれちゃったにぃ☆」

キラリ「だから出番がきてきらり、はっぴはぴだにぃ☆ うっぴょーてんしょんあがゅぅー☆」キラリーン

ナルホド「……」アセアセ

ミツルギ「……」ギリギリ

サイバンチョ「天真爛漫とはまさにこういう方のことを言うのでしょうが……やはり法廷には似つかわしくありませんな」

サイバンチョ「ではきらりさん。さっきのPさんと同じく、事件直後のことを

キラリ「はいはいはいすたんばーーーーーーーーーっ☆」

サイバンチョ「こら! なんなんですかもう! さっきから私の言葉を遮ってばかり!」

キラリ「その前にひとつ、お話したいことあるにぃ」

ミツルギ「ほう」

ナルホド(彼女は気づいてるんだろうか……自分が疑われ始めていることに)

キラリ「杏ちゃんがもともと舐めてた飴ちゃんあったでしょ? あれたぶん、きらりがあげたやつだにぃ☆」

ナルホド「え」

ミツルギ「しょ、証人! どういう状況かわかっているのか? キサマは場合によっては」

ミツルギ「被疑者として告発されかねん立場だぞ?」

キラリ「……もちろん」

キラリ「わかっています。それくらい」キリッ

ミツルギ「!」

サイバンチョ「!」

ナルホド「!(なんだこの雰囲気……)」

キラリ「……」

ナルホド(これが……素ってやつなのか?)

キラリ「私だって、人殺しにされたくはありません。なので言うべきことは言っておきます」

キラリ「……」スゥ-ッ

キラリ「ツルペカのおじいさん! きらりしゃべっていいかにぃ? ダメって言ってもしゃべっちゃうにぃうきゃーきらりわがまま☆」キラリーン

サイバンチョ「ど、どうぞ」パチクリ

ナルホド(……)アセアセ

【証言開始 ~私があげました~】

キラリ「杏ちゃんがもともと舐めてた飴は、私があげたものだと思います」

キラリ「私がいつも持ち歩いている飴だし、実際午前中に杏ちゃんにあげましたから」

キラリ「事件の前後、私が部屋にいたことは確かですけど」

キラリ「……」スゥーッ

キラリ「チコー性? だったかにぃ? にょわー、ドラマみたいなお話だにぃ☆ おばかさんのきらりんにはよくわかんないけど」

キラリ「……」キリッ

キラリ「そんな便利なものがあるなら、別に私でなくても、もちろんPちゃんでなくても」

キラリ「誰にでも機会がある。そういうことになるんじゃないですか?」

【証言終了 ~私があげました~】

サイバンチョ「……」パチクリ

ミツルギ「……フン」

ナルホド「……」アセアセ

サイバンチョ「確かに弁護側の主張通り遅効性の毒である、と仮定するならば」

サイバンチョ「毒を盛る機会はいくらでもありますな。さすがに水くらい飲むでしょうし」

ミツルギ「……実際にはそう万能なものではないのだが。解析が済んでいない以上なんとも言えんな」

サイバンチョ「では弁護人。尋問をお願いします」

ナルホド「……はい」

【尋問開始 ~私があげました~】

キラリ「杏ちゃんがもともと舐めてた飴は、私があげたものだと思います」

キラリ「私がいつも持ち歩いている飴だし、実際午前中に杏ちゃんにあげましたから」

キラリ「事件の前後、私が部屋にいたことは確かですけど」

キラリ「……」スゥーッ

キラリ「チコー性? だったかにぃ? にょわー、ドラマみたいなお話だにぃ☆ おばかさんのきらりんにはよくわかんないけど」

キラリ「……」キリッ

キラリ「そんな便利なものがあるなら、別に私でなくても、もちろんPちゃんでなくても」

キラリ「誰にでも機会がある。そういうことになるんじゃないですか?」

ナルホド(このタイミングでこの証言をする意図が読めない……ただ)

ナルホド(この証言、遠まわしではあるけど……)

ナルホド(とりあえず、今は考えるのは後にして、ムジュンを探していこう)

ナルホド(情報も拾っておかないとな)

ゆさぶる>「私がいつも持ち歩いている飴だし、実際午前中に杏ちゃんにあげましたから」




 待 っ た !



ナルホド「その飴ってこれのことですよね? 前半の法廷でぼくが見せたこれ」

キラリ「あ、そうだにぃ! ラフランスと宇治金時のゼツミョーなはーもにーがたまらないにぃ☆ はっぴはぴになるにぃ」

ナルホド(ハーモニーを奏でてくれるのかその組み合わせ……)

ナルホド「この飴ちゃんは個包装されてはいますが、いわゆる「キャンディーラップ」になっています」

ナルホド「一度取り出してまたくるむことも簡単にできますね」

キラリ「おっすおっすばっちし☆」キラリ-ン

ナルホド「え。なんですか」アセアセ

キラリ「……」キリッ

キラリ「そうですね、確かにその通りです。そう言ったんです」

ナルホド「!(一応この飴、法廷記録に入れておくか)」

 『証拠品【杏が舐めていた飴】の記録を書き直した』

【杏が舐めていた飴】――元は立方体だったと思われる形の飴。かなり小さくなっている。
            きらり愛用の飴で、キャンディーラップになっている。

ミツルギ「ちなみに現場からその飴のものと思われる包装紙が見つかっている」

ナルホド「な、なんだって!」

ミツルギ「古いゴミかと思ってあまり気にかけられなかったようだ。それに」

ミツルギ「キサマが期待しているようなものは検出されていないしな」

ナルホド「そ、そうなのか(まあそうだろうけどな)」

 『証拠品【飴の包装紙】を法廷記録にファイルした』

【飴の包装紙】――現場に落ちていた、杏の口から見つかったものと同じ種類の飴のラップ。
         毒物らしき反応は出ず。

ナルホド(もう少し情報がほしいな)

ゆさぶる>キラリ「……」スゥーッ




 待 っ た !



ナルホド「さっきから気になってたんですけど。そのアヤしい粉末……一体なんでしょうか」アセアセ

キラリ「アヤしくなんかないにぃ! これはきらりんの元気のもとなんだにぃ☆」キラリーン

ナルホド「どうもその粉末を吸うと、あなたはその……はぴはぴしてしまっているように見えるのですが」

キラリ「うきゃきゃきゃきゃーーーー☆ べんごしさんも吸ってみるといいにぃ! きっときらりんみたいにはぴはぴになるよん」

ナルホド「いえ、遠慮しときます……」アセアセ

ナルホド(ここを深入りするといろいろヤケドしそうな気がする)

ナルホド(さっさと次にいくか)

ゆさぶる>「誰にでも機会がある。そういうことになるんじゃないですか?」




待 っ た !



ナルホド「誰にでも、というのは」

キラリ「もちろん世界中のみーーーーんなってことだにぃ♪」

ナルホド「スケールがでかいですね……」

キラリ「……」キリッ

キラリ「遅効性、と言いだしたのは、確か成歩堂さん、あなただったはずです」

ナルホド「!」

キラリ「だからそれだけスケールを、可能性を広げたのもまたあなたですよね?」

キラリ「だったら私はその可能性に沿ってこう考えます」

キラリ「毒薬は飴ではなく、何か別のものに仕込まれていたんだと」

キラリ「Pちゃんと私だけじゃなく、他の人も疑ってみるべきなんじゃないですか?」

ナルホド(確かに……毒薬が遅効性だったと考えるなら、可能性はいくらでも考えられる)

ナルホド(でも、でも残念だけどきらりさん。それはないんだ)

ナルホド(やっぱりあなたは、墓穴を掘った)

>「誰にでも機会がある。そういうことになるんじゃないですか?」

>アイドルU・Sの証言書:"杏ちゃん、「息をするのもめんどくせえ」ってくらいに筋の通った怠け者でした。
             ご飯食べてるところとか見たことないなあ……"




 異 議 あ り !



ナルホド「ここにあるアイドルの証言があります。「がんばります!」が口癖の、あまり特徴のない子でした」

ナルホド「彼女はこんな証言をしてくれました」

>"杏ちゃん、「息をするのもめんどくせえ」ってくらいに筋の通った怠け者でした。
  ご飯食べてるところとか見たことないなあ……"

ミツルギ「フン。そんなもの、あくまでその普通なアイドルとやらが見る機会がなかっただけのことだろう」

ナルホド「確かにそうかもしれない。でも決定的な証拠だってある。お前が持ってきたんじゃないか御剣」

ミツルギ「なんだと……」

サイバンチョ「では提示してもらいましょうか。その証拠品を」

ナルホド「ええ。もちろんです」

>杏の死亡検案書:死亡推定時刻は午後3時から4時の間。死因は急性中毒による心臓マヒ。
         胃袋はほぼカラだが飴が1個だけ残っている。




 く ら え !



ナルホド「検察側もちゃんとこの検案書をよく読むべきでしたね」

ナルホド「はっきりと書いてあります! 『胃袋はほぼカラ』だと!」ビシィッ!

ミツルギ「ぐおお!」

キラリ「にょわにィィィィィィィィィィィィィ!!」ガガガン

ドヨドヨガヤガヤ…………

カンカンカンッ!

サイバンチョ「静粛に! た、確かに、はっきり書いてありますな……ということは」

ナルホド「きらりさんの言うように、まったく別の誰かが別の何かで毒殺した、という仮定は」

ナルホド「どうやらただの仮定でしかなかった! そういうことになり




 待 っ た !



カカリカン「失礼します!」

サイバンチョ「お、どうしましたかな。今すごくいいところなのですが」

カカリカン「毒物の解析結果が出ました!」

ナルホド「!」

ミツルギ「!」

サイバンチョ「そ、それは重要です! で、何だったのですか?」

カカリカン「結果は御剣検事にお渡しします!」

ミツルギ「ふム……これは」

ミツルギ「毒薬の種類の特定にはなお至っていないようだ。やはりデータベースにないというのがネックだな」

ミツルギ「だが、解析できた一部の構成組織から、おそらく遅効性の薬物であろう、と結論づけたそうだ」

ナルホド「!」

サイバンチョ「遅効性……」

ナルホド(これは、追い風……かな)

ナルホド「裁判長! 聞いての通りです! そして被害者が飴以外のものを食べていない以上、第三者の存在は否定されます!」

ナルホド「そして! 薬物が遅効性ならば、Pさんがあげた飴に毒が盛られていた可能性はな




異 議 あ り !



ミツルギ「フン……弁護人、やはりキサマはツメがアマい」

ナルホド「な、なに?」

ミツルギ「もとより検察側は第三者の可能性など考えていない。証人が勝手に言いだしたことだ」

キラリ「にょわー……」

ミツルギ「薬が遅効性と判明したことで、検察側は主張を変える必要が出てきた」

ミツルギ「だが結局、被告人が犯人であるというところは変わらんがな」

ナルホド「でも! Pさんがあげた飴に毒が盛られていたなら

ミツルギ「弁護人!」ダンッ

ミツルギ「もう一度死亡検案書をよく読むことだ! 被告人があげた飴はひとつではない!」

ナルホド「あ」

サイバンチョ「そういえば」

ミツルギ「これより検察側はこう主張する。『毒は胃袋から見つかった飴に盛られていた』と!」

ナルホド「ぎゃあああああああああああ!!」ガガーン

ドヨドヨガヤガヤ…………

カンカンカンッ!

サイバンチョ「静粛に! 静粛に!」

サイバンチョ「毒物の詳細が明らかになったことで、少し進展したようにも見えますが」

サイバンチョ「結局、その被告人が死亡直前にあげた飴の行方がわかっておりませんぞ」

ナルホド(そう、なんだよな)

ナルホド(でもそれについても、きらりさんに証言させれば)

P「あのー……」

ナルホド「Pさん!?」

サイバンチョ「被告人。どうしましたか」

P「さっき、証言し忘れたことがあって……でも大したことじゃないし、僕のキオク違いかもって思うんですけど」

サイバンチョ「ほほう」

ナルホド「Pさん。話してください」

P「……杏にあげる飴を保存してる瓶」

P「あの瓶のフタ、開けるのも閉めるのも固くて……コツと力がいるんです」

P「めんどくさいから、開けたら開けっぱなしにしちゃうことがあって」

ミツルギ「……」

P「あの時もそうだったはずなんです。閉めた覚えはない。でも……」

P「119番の電話をかけて、部屋に戻ったら……フタ、閉まってました」

サイバンチョ「……」パチクリ

P「……すいません。やっぱり大したことじゃないですよね」

サイバンチョ「ふむう……どうでしょう弁護人。この発言は」

ナルホド「……証拠品にもあります。この瓶のフタは救急がかけつけた時点で確かに閉まっていたそうです」

ミツルギ「出勤の道中で家の鍵を閉めたかどうかふと気になる。人間はそれくらい「閉めた」かどうかの記憶はアイマイなのだ」

ミツルギ「実際には閉めていたんだろう」

サイバンチョ「記憶違い、ということですか。私もよくありますぞ」

ナルホド(裁判長のはまた違う何かだと思うけど)

ナルホド「確かに記憶はアイマイなものです。でも、本当に開けたままにしてたのなら……」

ナルホド「誰かが閉めた、ということになりますね」

ナルホド「そうですよね、きらりさん」

キラリ「にょ!? き、きらりかにぃ!?」

ナルホド「ええ、あなたしかいません。違いますか?(だんまりか、否定か。どっちにしろ、次の証言でカタがつく……!)」

キラリ「そ、そうだにぃ☆ きらりんが閉めたにぃ☆」

ナルホド「え」

サイバンチョ「しょ証人! そんなあっさり認めるのですか!」

キラリ「んーだって本当のことだもん☆ きらりん嘘つかなーいうきゃー! きらりんのしょうじきものー☆」キラリーン

ミツルギ「な、なぜわざわざそんなことを!」

キラリ「なじぇ? うゅ~……なじぇっていわれると……なじぇかにぃ?」テヘ

ミツルギ「こっちが聞いている!」ダンッ

キラリ「……」キリッ

キラリ「……友達が苦しんでいるのを前にして、論理的に破綻のない行動がとれるほど、私は大人ではありません」

キラリ「あの時私は、本当に動揺していて……何をするべきか、何をしているのかもわかっていませんでした」

キラリ「ただ……」

ナルホド(? ……Pさんを見てる)

P「きらり……」

ミツルギ「証言してもらおうか。事件が起こった後の証人の動きを」

キラリ「……わかりました」

ナルホド(Pさんが犯人でなければ、犯人はもう……彼女しかあり得ない!)

ナルホド(この証言で、終わらせる……!)

【証言開始 ~きらりん☆最後の証言~】

キラリ「杏ちゃんがPちゃんから飴をもらうところを、私はおやすみルームの布団の中で見ていました」

キラリ「杏ちゃんの様子がおかしくなって、Pちゃんが部屋から飛び出していって」

キラリ「恐る恐る杏ちゃんに近づいていくと、杏ちゃんの口からひとつ、飴玉が転がり出てきました」

キラリ「丸く赤い、Pちゃんがあげた飴玉。私はなぜか、その飴玉を拾ってしまったんです」

キラリ「その時の自分が何を考えたのか、今はもう覚えていません。とりあえずその時は、その飴を捨てなきゃ。そう考えました」

キラリ「なので、おやすみルームのすみっこにあるゴミ箱に捨てました。なくなった飴の真相はこれです。黙っていてごめんなさい」

キラリ「瓶のフタを閉めた理由は……さっきも言ったとおり、よくわかりません」

【証言終了 ~きらりん☆最後の証言~】

サイバンチョ「最初から最後まで、落ち着いた語りでしたな」

ナルホド(そして最後の最後で、こんな簡単なウソを……)

ナルホド(この子は一体、どういう子なんだろう……)

サイバンチョ「では弁護人。尋問をお願いします!」

【尋問開始 ~きらりん☆最後の証言~】

キラリ「杏ちゃんがPちゃんから飴をもらうところを、私はおやすむルームのお布団の中で見ていました」

キラリ「杏ちゃんの様子がおかしくなって、Pちゃんが部屋から飛び出していって」

キラリ「恐る恐る杏ちゃんに近づいていくと、杏ちゃんの口からひとつ、飴玉が転がり出てきました」

キラリ「丸く赤い、Pちゃんがあげた飴玉。私はなぜか、その飴玉を拾ってしまったんです」

キラリ「その時の自分が何を考えたのか、今はもう覚えていません。とりあえずその時は、その飴を捨てなきゃ。そう考えました」

キラリ「なので、おやすみルームのすみっこにあるゴミ箱に捨てました。なくなった飴の真相はこれです。黙っていてごめんなさい」

キラリ「瓶のフタを閉めた理由は……さっきも言ったとおり、よくわかりません」

ナルホド(ここはもう、一点しかない)

ナルホド(なんでここまで来てこんなわかりやすい嘘をついたのかわからないけど)

ナルホド(それだけ追いつめられていると感じてるってことだろうか)

>「なので、おやすみルームのすみっこにあるゴミ箱に捨てました。なくなった飴の真相はこれです。黙っていてごめんなさい」

>仮眠室のゴミ箱:毎日午後3時15分から4時の間、家事好きのアイドルが掃除のために持ち出している。




異 議 あ り !



ナルホド「……きらりさん。いくら記憶がアイマイでも、こんな間違いはしませんよね」

キラリ「にょわ?」

ナルホド(戻ったのか……)

ナルホド「仮眠室のゴミ箱ですが。ある家事好きのアイドルの子が掃除のために持ち出すそうです」

ナルホド「毎日午後3時15分から4時の間までね」

キラリ「……!」

ナルホド「事件が起きたのは午後3時30分過ぎだと特定されています。あなたの証言で」

キラリ「きゃうん……」

ナルホド「つまり、事件が起こった時間、仮眠室にゴミ箱はなかった!」

ナルホド「きらりさん! あなたは一体どこに飴を捨てたんですか!」ビシィッ!

キラリ「はぴはぷはぺはぽぉぉぉぉぉぉぉ!!」ガガガン

サイバンチョ「これはずいぶん……あからさまな嘘でしたな。しかし、そうすると飴はどこに」

ナルホド「……考えられるところが一箇所だけあります」

サイバンチョ「あ、あるのですか!」

ミツルギ「お得意のハッタリだろうがな」

ナルホド「もちろん! 御剣、瓶の中の飴、ひとつひとつ丁寧に調べたのか?」

ミツルギ「……いや、なにぶん数百からあるのでな。全て細かくは……まさか」

ナルホド「ならば瓶の中の飴を全て調べてください! いや、赤い飴だけでもいい!」

ナルホド「少し小さくなっているものが見つかるかもしれません!」

ミツルギ「……大至急とりかからせよう」

キラリ「あわわわわわわわわわ」

サイバンチョ「いかがでしたかな? 結果は」

ミツルギ「……」ギリギリ

ナルホド(当たりみたいだな……)

ミツルギ「瓶の中の赤い飴玉のうち、少しだけ小さくなっているモノが発見された。鑑定の結果、双葉杏の唾液も出た」

ドヨドヨガヤガヤ…………

ナルホド「これではっきりしました。彼女は飴を拾い、それを瓶に隠した。そしてフタを閉めた」

ミツルギ「飴からは証人の指紋も出ている。間違いはなさそうだな」

キラリ「にょわわ……」

サイバンチョ「しかし、なぜそんなことを……」

ナルホド(そう、そこがわからない。確かに動転していておかしなことをする人をぼくは何人も見てきたけど)

ナルホド(この行動の裏に、何かちゃんとした理由があるんだとしたら……)

ミツルギ「弁護人」

ナルホド「!」

ミツルギ「弁護人は明言してこそいないものの、この証人こそ真犯人と考えている。そうだな」

ナルホド「……ええ」

ミツルギ「検察側としてもまことに不本意だが、現時点ではどちらもグレーと言わざるを得ない」

ミツルギ「どちらが真犯人である、と断定に足る材料がないからだ」

サイバンチョ「毒殺、ですからな……毒をしかけたという証拠でもあれば早いのですが」

ナルホド(そんなのがあればそりゃな……)

P「なあ、きらり……」

キラリ「Pちゃん? 何かにぃ? ここに来て初めてお話してくれたにぃ!」

P「あの飴を瓶に隠したのって……俺が疑われると思ったから、じゃないか?」

キラリ「ほえ……?」

ナルホド「?」

サイバンチョ「発言は許可を取ってからお願いしますぞ被告人」

P「す、すいません」

ナルホド「Pさん。どういうことですか?」

P「あ、いえ、ただの僕の希望というか、願望というか妄想というか。ただ……」

P「杏と同じで、きらりも一緒にがんばってきたパートナーだから……一応、信頼されているって思ってたし」

キラリ「あ、当たり前だにぃ! きらりはPちゃん大好きだにぃ!」

ナルホド「……」

ナルホド(もしそれが、ただの願望じゃなかったとしたら……本当にそのつもりで飴を瓶に隠したんだとしたら……)

ナルホド「……もしかしたらぼくたちは、とんでもなく余計な遠回りをしてきたのかもしれません」

ミツルギ「……フン」

ナルホド「ですがもうここまで来ました。どのみち結論はもう、すぐそこにあります」

ナルホド「弁護側はあくまで主張します。毒は杏さんの口から発見された飴に仕込まれていた」

ナルホド「そして毒を仕込んだ犯人は……諸星きらりさんである、と」

サイバンチョ「ですが弁護人。現場に落ちていた包装紙からは、毒物の痕跡は見つかっていないのですぞ」

ミツルギ「またゴミ箱もなかった。他に捨てる場所もない」

ナルホド(……ここまできたら、あとはもういつも通り。ハッタリで押し切るだけだ)

ナルホド(ぼくの主張が正しいという前提なら、当然包装紙からも毒物は検出されるはず)

ナルホド(それが出なかった理由)

ナルホド(きらりさんは素直な子だけど、明らかに不利だとわかることは黙っている、そんな傾向がある)

ナルホド(だとしたらさっきの証言でも……)

サイバンチョ「弁護人。いかがですかな。あなたの主張のコンキョとなる証拠品。提示できますかな」

ナルホド「……してみせます」

ミツルギ「!」

サイバンチョ「こういう時のあなたのそのふてぶてしさ、いっそスガスガしいですな」

サイバンチョ「では弁護人。これが最後になるでしょう。証拠品の提示をお願いします」

ナルホド「はい」

>飴の包装紙:現場に落ちていた、杏の口から見つかったものと同じ種類の飴のラップ。
       毒物らしき反応は出ず。




 く ら え !



ミツルギ「何を出してくるかと思えば……」

サイバンチョ「それは……なんの変哲もないただの包装紙、ですな」

キラリ「きらりんちょっとよくわかんないにぃ☆」

ナルホド「……(違ったみたいだな……)」

サイバンチョ「無言でひっこめないように! ペナルティを与えます!」

ズドドーン!

ナルホド「ぎゃあ! た、ただのウォーミングアップですよ! 次が本番です!」

サイバンチョ「今度からウォーミングアップは家ですませてくるように!」

ナルホド「くそお……今度こそ」

>杏が舐めていた飴:元は立方体だったと思われる形の飴。かなり小さくなっている。
          きらり愛用の飴で、キャンディーラップになっている。




 く ら え !



ナルホド「きらりさん。杏さんにあげたあなたのお気に入りの飴。今も持っていますか」

キラリ「にょ? もちろん持ってるにぃ☆ ほらほらこれだにぃ☆」

ナルホド「その中のひとつ、ぼくにくれませんか?」

キラリ「にょ、もっちろ……や、やっぱダメだにぃ!」

ナルホド「あれ、ダメですか。どうして?」

キラリ「こ、これは……仲のいい人にしかあげないにぃ!」

ナルホド「そうですか。あ、じゃあPさんにあげてください」

キラリ「Pちゃんにぃ!? そ、それもダメ! もっとダメだにぃ!」

サイバンチョ「しょ証人? 飴のひとつくらいよいのでは?」

キラリ「この飴ちゃんはダメだにぃ……この飴ちゃんは……」

ナルホド(最後の綱渡り……なんとか成功したな)

ナルホド「被害者が倒れ、Pさんが部屋から出た後」

ナルホド「証人がひとつだけ、明確に意図をもって行ったことがあります」

ナルホド「毒の付着した包装紙を処分するということです」

サイバンチョ「処分……」

ナルホド「部屋にゴミ箱はない。しかしそれを放置すれば、毒が何に仕込まれていたかがすぐにバレてしまう」

ナルホド「そこで証人は思いついた。自分が持っているサラの飴の包装紙と入れかえればいい、と」

サイバンチョ「あ……」

ナルホド「当然それはしばらく自分が所持することになりますが……疑いの目がかかる前に処分すればいいと思ったのでしょう」

キラリ「にょわ、にょわわ、にょわ……」

ナルホド「彼女の様子を見ても、もう真実は明らかですが……」

ナルホド「それでもまだ無実だというなら、諸星きらりさん!」

ナルホド「その飴を全部提出してください! そこに何もやましいことがないのならできるはずだ!」ビシィッ!

キラリ「にょわ~……」





キラリ「んにょにょにょにょにょニョニョニョニョニョニョnyonyonyonyoにににいいいににいいにいいいににいい……








 に ょ わ っ !




ナルホド「……」アセ

ミツルギ「……」ギリギリ

サイバンチョ「……」パチクリ

キラリ「慣れないことは……するものではないですね」

キラリ「成歩堂さん。あなたの言うとおりです。この中にはひとつ、毒のついたラップでくるんだ飴が入っています」

キラリ「すっかり混ざってしまってどれかわからないから、もうこの飴は食べられません。残念です」

サイバンチョ「ではあなたは……認めるのですか! 自分が真犯人であると」

キラリ「……はい。認めます」

ドヨドヨガヤガヤ…………

P「きらり! どうしてだ! どうしてそんなことを!」

キラリ「Pちゃん……」

サイバンチョ「被告人! 騒ぐなら退廷させますぞ!」

P「お前と杏はあんなに仲がよかったじゃないか!」

キラリ「……私と杏ちゃん……私のほうが少しだけ早く、Pちゃんにスカウトされました」

キラリ「でも……杏ちゃんが来てから、Pちゃんは杏ちゃんのことばっかり構って」

キラリ「私のことはほったらかしで……」

P「そ、それはきらりが一人でも仕事に行ける力がついたからで」

キラリ「それでも……きらりはPちゃんと一緒がよかったよ……」

P「きらり……」

キラリ「杏ちゃんはいつもPちゃんに甘えて、頼ってばかりで……だらけてるのも、構ってほしいからで……」

キラリ「それでPちゃんに愛されてる杏ちゃんが、許せなくなっちゃって……」

ミツルギ「動機は嫉妬のようなもの、か。証人は実にわかりやすく単純で、そして素直な少女なのだろうな」

サイバンチョ「と言うのは」

ミツルギ「……たった一回だけだ」

サイバンチョ「は?」

ナルホド「彼女はこの裁判の中で、一度しか嘘をつかなかった。そういうことだろ?」

ナルホド「『飴をゴミ箱に捨てた』という証言。はっきり言ってかなり稚拙な嘘でした」

ナルホド「証言にムジュンはありましたが、嘘をついているから起きたムジュンではなかった」

サイバンチョ「はあ、言われてみれば確かに」

ナルホド「都合の悪いところを避けることはできるが、嘘をつくことはできない」

ナルホド「普段嘘をつかない、素直で純真な性格なんでしょう。きらりさんは」

キラリ「う、嘘くらい……つくにぃ」

ナルホド「だからぼくたちは、真っ先にこの質問を彼女にするべきだったんです」




ナルホド「双葉杏さんを毒殺したのは、諸星きらりさん。あなたですね?」



キラリ「……うん。きらりだにぃ」



ドヨドヨガヤガヤ…………

P「き、きらり……」

キラリ「Pちゃん……ごめんなさい。きらり……悪いコになっちゃったにぃ」グス

ナルホド「Pさん……きらりさん……」

サイバンチョ「……重いものですな。真実というのはいつも」

ミツルギ「だからと言って目をツブっていいものでもない。そういうものだ」

サイバンチョ「そうでしょうな。ではそろそろ、被告人への判決を言い渡します」




 無  罪



ワーワーキャーキャーヒューヒュードンドンパフパフ…………

サイバンチョ「それでは、本日はこれにて閉廷!」

 -同日 午後12時18分 地方裁判所 被告人第4控え室-

ナルホド「終わりましたね。Pさん」

P「先生。ありがとうございました……なんとお礼を言えばいいのか」

ナルホド「ぼくはいつも通りのことをしただけです」

P「……」

ナルホド「Pさん。あなたは途中で、きらりさんがアヤしいと気付いたんじゃないですか?」

P「……」

P「きらりがアヤしいと思った……というより、きらりしかいない。本当ははじめからそう思っていました」

ナルホド「え」

P「だってあの状況です。自分が犯人でなければ、もう一人のほうが犯人だと考えるのが自然です」

ナルホド(確かに)

P「きらりも同じように考えた。だから前半、あんな証言をしたんですよね」

P「きらりは僕に罪を着せるつもりだったんでしょうか……」

ナルホド「……」

ナルホド「それはないと思います」

P「え?」

ナルホド「法廷でも言いましたが、彼女は一度しか嘘をつかなかった。それも自分が追いつめられた場面での苦しい嘘です」

ナルホド「彼女はただ、本当のことを喋っていただけなんですよ」

P「……確かにあいつは、普段からいつも素直で……」

ナルホド「そんな子なら、人を追いつめるために嘘をつくなんて、きっと考えもしなかったんじゃないでしょうか」

P「……先生。あなたに弁護をお願いして本当によかった」

ナルホド「ぼくはいつも通りのことをしただけです。でもそう言ってもらえたなら、弁護した甲斐がありました」

ナルホド(こうして、アイドル事務所で起こった毒殺事件はひとまず幕を閉じた)

ナルホド(少しセツない幕切れになってしまったけど)

ナルホド(これも弁護士の宿命だ。背負っていくしかない)

ナルホド(しかし、アイドルか。華やかな仕事だとバクゼンと思っていたけど、裏ではいろいろと事情もあるんだろうな)

ナルホド(全然ピンとこない、自分とは縁遠い世界だけど)

ナルホド(裁判を終えて、そんなことを考える余裕ができてきた、その矢先)

ナルホド(あの事件は起きたんだ)

ミヌキ「パパ! みぬき、アイドルプロダクションにスカウトされちゃったよ!」


                                        おわり

ピコピコツンツン……

??「うーん」

P「紗南、どうだ? 『シンデレラガールズvs逆転裁判』、略して『デレ逆』面白いか?」

紗南「うーん、まあまあかなー。もうひと頑張りしてほしいかも」

P「辛口だな」

紗南「逆裁ユーザー目線で見たら、ちょっとカタルシスが足りないんだよね」

紗南「きらりちゃん、もっと派手にブレイクしてもいいと思うんだ」

P「カプ○ンの人にも遠慮しないでくださいとは言ったんだけどなあ」

紗南「アイドルのファンから見たら、ちょっとアイドル成分薄すぎる感じがするし」

P「ああ、そこはまだ第一話だからじゃないか?」

紗南「ふーんそうなのか。でも何よりさ」

P「まだあるのか」

紗南「Pさんのキャラデザがおかしいよ。頭がPの形してるとか」

P「そこはほら。プロデューサーが顔出しするわけにいかないし」

紗南「だからってこんなの。Pさんはもっとかっこいいのにさ……」

P「ん?」

紗南「あ……な、なんでもない! 何も言ってない! さーてとー第二話やろうかなー////」ピコピコ

以上で終了です
1回目の投下でゆさぶるに対して「待った!」がなかったので今回はちゃんと入れました
またきらりの名札を逆裁風に「キラリ」に直しました

ただ逆裁とモバマスが好きなだけのシロウトなのでこんな出来ですが、楽しんでもらえれば幸いです
続きがありそうな雰囲気で終わらせてますが、探偵パートとか入るとまったく手に負えないのでこれで終了です
読んでくれた方、どうもありがとうございました

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