勇者「俺が指名手配されてて賞金首に?!」(576)

とある王国の城下町にある引きこもりの男がいた。
これはその男の物語である。


引きこもりの部屋───
引きこもり「今日も一日どうやって過ごすか億劫だ……。」

引きこもり「…………」

引きこもり「しかし暇だ………」

引きこもり「とりあえず寝るか」

引きこもり「おやすみなさい………」

………
……


引きこもり「zzz・・・・」

??「え、ああ、そうですか、わかりました。」

??「ということですのでよろしく」

バタン

引きこもり「ん………?なんだろうか……??」


俺は部屋から出ると母親と出くわした。


母「そうそう、さっきお城の人が尋ねてきて、これ手紙」

引きこもり「手紙………?」

俺は手紙を読んでみた。
『やあやあこんにちは 君が引きこもりの政くんかね?』

引きこもり「開口一番なんなんだよ…!馴れ馴れしい上に挑発的な態度!」

母「まあまあ」

引きこもり「で……、続きは何かな…、と…」

『突然で悪いのだが、14日に城へ来てもらいたい。

もちろん国王への謁見もあるので粗相のないように頼むぞ

時間は朝8時によろしく頼む。遅刻なんかするなよ?

遅刻などしたら君の家の土地を没収する

じゃあ、楽しみに待っている

                      大臣より』

引きこもり「何だこれは…」

母「まあ行けばいいんじゃないのかしら?」

引きこもり「なんでこんな朝早くに城に赴かないといけないんだよ!!」

母「お母さん、よくわかんな~い」

引きこもり「14日って、明日じゃないか!」

母「とりあえず、朝8時には城に到着してもらわないと家を失うんだから」

引きこもり「わ、わかったから…」

母「頼むわよ?」

大臣「おお、約束来てくれたね。」

引きこもり「いえ、大臣直々の信書です。参上しないことが無礼になることは承知しております。」

大臣「うむ、その言葉を聞いて嬉しく思うぞ。では中に入ってくれ。」

引きこもり「は、はい…。」

衛兵A「城に入る前にボディチェックのご協力を…」

引きこもり「ぐ……、何もやましい物は入ってませんけどねえ……」

衛兵B「規則ですから」

衛兵A「よーし、問題なし。入っていいぞ」

引きこもり「よしわかった。」

衛兵B「ちょっと待った!股間が膨らんでるが何かな?」

引きこもり「何って…、ナニに決まってるじゃないか……」

衛兵B「それもそうか、すまなんだ」

引きこもり「別にいいんだよ」

大臣「じゃあ、謁見室に案内しよう。」

引きこもり「わかりました。よろしくお願いします。」


城門にいた衛兵2人は俺を見送る。

衛兵B「なあ、衛兵A…」

衛兵A「ん、何だ?」

衛兵B「あいつ、図体の割りにでかいんだな」

城内・謁見室───
引きこもり「これは広いな………」

大臣「ええ、18代500年続く我が王朝の賜物です。」

引きこもり「ほげー………」

大臣「それでは少々お待ちを」

引きこもり「はい。」

5分後(8時5分)───
引きこもり「しかしさすが謁見室、高級なものばかり…」

引きこもり「さすが500年も続く王国は違うな~」

10分後(8時10分)───
メイド「よければコーヒーでもどうぞ」

引きこもり「あ、どうも…(俺コーヒーなんて飲めないんだって……)」

ゴクリ

引きこもり「うわ、苦ーい……!」

ギロッ!!

引きこもり「ん?!だ、誰もいないよね?ふー………」

20分後(8時20分)───
引きこもり「まだかな………」ソワソワ

大臣「………」スタスタスタ

引きこもり「すみませーん、まだですか?」

大臣「もう少々お待ちください」

引きこもり「は、はい……」

40分後(8時40分)───
ブオーン………

掃除係「すみません、足を上げてもらっていいですか?」

引きこもり「……」スッ…

掃除係「恐れ入ります…」

ブオーン………

1時間後(9時)───
引きこもり「………(お、遅い……)」イライラ

一方王の部屋───
王様「zzz・・・」グーグー

大臣「王様、起きてください。」

王様「近衛司令官……、そこを触るなと言っただろうに……ムニャムニャ」

大臣「このおっさん、朝に弱いんだからな…」

大臣「近衛司令官とアッー!な夢でも見てるのだろうか…、王様起きてください!」

1時間半後(9時30分)───
謁見室───
体操係「そこの客人もマッスル体操をやってみてね。」

引きこもり「(なんでこうなるんだ……)」

体操係「さあ、マッスルマッスル!!」

兵士たち「マッスルマッスル!!」

引きこもり「(いい加減にしてくれ……!!)」ブルブル

結局王様は起きずに俺は勇者となったの言葉を大臣に告げられた。
時間は午前11時。王様は一体何を考えていたのだろうか。
支給されたものはアオダモの棒、オークで作られた球体、牛の皮革で作られた分厚い大きい手袋のようなものだった。
お金のほうはわずかに50マニーだった。

※1マニー≒20円


勇者「たった50マニーかよ………」

これから俺の冒険が始まる。
しかし、勇者と指名されたのはいいのだが、大臣からは肝心のことは言われなかった。


勇者「やはり魔王を倒すべきなのだろうか……?」

勇者「(外には魔物もいるからなあ、やはり魔物討伐からの魔王征討かなあ)」

しかし俺は肝心なことを忘れていた。
俺はつい最近まで引きこもりだったこと。
知り合いなどいないことである。
ちょっと寂しい気分・・・


勇者「とりあえず、酒場でも行ってみるか……」

~回想~
大臣『強い魔物はおる。それを倒してほしいのだ。』

勇者『しかし大臣殿、それだったら王国の兵士で討伐したほうが早いのではないのでしょうか?』

大臣『君と言うやつは何もわかってないんだな…。』

勇者『まあ、すみません…。』

大臣『今、隣国と対立中で魔物退治というのはできない状況だ。』

勇者『はあ……。』

大臣『もし不安ならば酒場に行くとよい。仕事や尋ね人などの斡旋も行っておる。』

勇者『わかりました。』

大臣『しかし君、ひきこもりなのに饒舌だねえ……。』

勇者『まあそうでもないんですね………』

………
……

酒場───
俺は酒場に来てみた。
中は男ばかりのむさ苦しいたまり場であった。
昼間なのに娼婦らしい女性をはべらせている目にクマができている中年男。
喧嘩ぱやい若いヤンキー系の男。
眼光鋭い殺し屋。

俺には苦手なやつばかりであった。


??「なんだ兄ちゃん、冴えない服装をして多くの荷物を抱えちゃって出稼ぎかい?」

一人の男が俺に話しかける。
口髭を蓄えたいかにも山賊のような男だった。

勇者「い、いえ…、これでも勇者でして……。」

口髭「勇者?ゆうしゃ、ユウシャ、勇者か、はあん・・。」


口髭男は俺をジッと観察するように凝視している。

勇者「あの…、なんでしょうか?」

口髭「いや、何でもない。一つ言えばそんな服装は似合わないよ。ガッハッハ!!」

周りにいた客たちもあれが勇者なのかという冷ややかな目線だった。
それに耐え切れなくなった俺は思わず酒場を出て行ってしまった。

勇者「(しまったな……、斡旋してもらうの忘れたな……。)」


とりあえず俺は自宅から必要なものをバッグに積んで町を出た。


謁見室───
王様「うーむ、よく寝た。」

大臣「王様、勇者は旅立ってしまいましたぞ!!」

王様「何だと?!」

大臣「勇者は8時にここに到着致しました。王様が起きたのは昼の12時半。」

王様「4時間半も遅れてしまったのか。」

大臣「夕べは一体何をされていらしたのですか?」

王様「王妃とな、グハハハハ」(手で「5」という合図)

大臣「………、お盛んですなあ。」

フィールド───
勇者「しっかし、俺戦闘したことないんだけどどうすればいいのか?」


スライムがあらわれた!


勇者「とりあえずアオダモの棒で叩く!」バシッ!!

スライム「ぴぎゃあああああああ!!!」


スライムはたおれた!


勇者「うむ、一撃必殺のアイテムだな」

勇者「しかしこのアオダモの棒、なんで持つところはこんなに細いんだろうか?」

俺はひたすらアオダモの棒で魔物を叩きつけまくった。
だが、するりと避けられてしまうこともあった。
そんなある一戦であった。


獰猛野犬「ガルルルル………」

勇者「犬ってさ、すばしっこいんだよな」

獰猛野犬「ガルッ!!」シュッ

勇者「うりゃあ!!」カキーン

獰猛野犬「ギャギーン!!!」ピクピク

勇者「なるほど、反撃のために振り抜くこともできるのか。目から鱗だな」

その後俺は獰猛野犬を撲殺した。
動物愛護団体からクレームを受けかねないくらいだったのでお察しいただきたい。

勇者「撲殺しなければ俺が噛まれて出血多量で命を失いかねないからな。」


俺は進路を北へと進んだ。(多分)
目指すは北にある村だ。

北にある村に向かう途中の俺は正に無敵だった。
弱い魔物や小動物が相手だったためか苦戦することなく連戦連勝。
すぐに北にある村に入ることに成功したのだ。
陽も傾いていたこともあり、早々に宿に泊まった。


宿の部屋───
勇者「明日はどういう風なルートをとろう…。」

勇者「あれ、どんな地理してるのだろう…。地図が手元にないからよくわからないな…」

勇者「ま、とりあえず雑貨屋あたりで地図を手に入れるか。」

初心的なことを忘れていた俺は、翌朝雑貨屋から地図を購入した。

勇者「なるほど、こういう地理なんだな……。」

勇者「ここが北の村で、一番近いのが西にあるコウヅキという町か」

勇者「ここを統治する領主様は武勇に優れていると言われてたから行ってみるか。」


俺は一路その領主が統治しているコウヅキの町へと向かった。
しかし、これが悲劇の始まりだったとは俺は知る由もなかった。

フィールド───
勇者「カキーン」

魔物「ぎゃああ」

勇者「一丁あがり~、しかし、一人の旅というのはやはり寂しいものだなあ…。ん・・?」

女A「それでね、うふふふ…」

女B「えー、やだー」

勇者「(あんなところに女性が2人いる…)あ、あのー、す、すみませーん」

女A「はい、なんでしょう?」

女B「ねえ、あれ、もしかしてそうだよね…?」

女A「うん、多分そうだと思う。」

女B「逃げましょう!嘘でしょう!」

勇者「ちょっと待って!」

女A「ついて来ないで!」

俺は彼女らを追う気にはなれなかった。
俺の顔を見て逃げる行為自体にショックを受けた。
手前味噌であるが、自分の顔は子供受けするようなものだと思っている。
そんなに悪い顔はしていない。
何故ならな曾祖母がとても美人だったと祖母から聞いていたからだ。
かといって凛々しい、イケメン、美男子と言った類ではないと断言できる。
だからこそ人相も悪くないそこそこの容貌の俺を見て即逃げる女性2人組に触れてショックだった。

多少のショックを引きずった俺であったが、道中の魔物は俺の敵ではなかった。

勇者「これでも食らえッ!!」ドゴッ

魔物「のぎゃあああッ!」

勇者「カキーン!」

猛禽「ヒューン……」

勇者「俺に襲ってくるなあッ!!」

獰猛野犬「アウーン………」バタ

勇者「ぜえはあぜえはあ・・」

勇者「しかし、俺の敵ではないにしろ、ちょっと量が増えてきてないか……?」

勇者「早く、コウヅキの町に入らなければ……、ハアハア………」

疲れが見え始めていた俺はコウヅキの町へと入っていった。
コウヅキの町・宿屋───
主人「いらっしゃい。」

勇者「一晩泊まりたいんですだけど、空いてますか?」

主人「おお、空いてるぞ。100マニーいただくぜい。」

勇者「はい、100マニーです。(魔物を結構狩ってたからお金が意外と貯まってたなあ)」

主人「これが、あんたの泊まる部屋だ。ゆっくりお休みなされ。」

勇者「ありがとうございます。」

主人「…………」

勇者の泊まる部屋───
勇者「(ここから先は山村が続くのか………)」

勇者「(次の大きな町が………、ツヤマという町か………)」

勇者「(さて寝るとするか、おやすみ~・・・)」

俺は旅の疲れがあったのか熟睡していた。
明朝にはツヤマへと出発し、魔物も倒しておきたい。
しかし行動しているのはまだ俺だけ一人という有様。
パーティーを組もうにもそれに該当する人物は見当たらなかった。
早くダイトカイに向かいたいものだ………。


あれから数時間後───
??「ここに例のやつがいるのね?」

??「はい、そうです…」

??「一刺しでいったほうがいいのかしら?」

??「物事には慎重に行きましょう?」

??「ええ、そうしましょう。」

眠っている部屋に謎の複数の人影が侵入してきた。
どうやら声からして女のようであった。

??A「しかし本当にこれが勇者なのかしら?」

??B「わかりません…、クエストの情報が頼りだけですからそこまで…」

??C「間違えて違う人だったら……?」

??A「それもそうね、とりあえず様子見しとく………?」

??B「得策かもしれないですね……」

人影は襲撃せずに慎重に行動し俺の動向を見守ることにした。
そんなことなど露知らずの俺は爆睡………。
とうとう日の出の時刻になっても眠っていたのであった。

朝───
チュンチュン……

勇者「あー、よく寝た。」

グー

勇者「は、腹が減ったな……」

勇者「飯でも食って腹ごしらえでもしますか!」

勇者「さてと………、ん?」

町民A「」ジー

町民B「」ジー

町民C「」ヒソヒソ

町民D「」コクコク


町民たちは俺を見るなり怪訝そうな表情に変えた。
というよりか敵対心がでて……る?

勇者「(な、なんなんだ………?)」

町民E「」ギリギリ

??A「………」チャキ

??B「………」ジー

??C「………」サッ

勇者「(ど、どいつもこいつも怖い目をしてる)」

勇者「とりあえず、飯と……」

酒場───
マスター「いらっしゃ…………しゃい………」キッ

勇者「あ………(なんなんだこの雰囲気は………)」

客A「……」ギロッ

客B「サケガマズクナルゼ」ペッ

客C「チッ」

勇者「とりあえずこれを………、ください……」

マスター「わかった………」

俺は注文を済ませると席についた。
しかしやけに目線が痛い。
俺が一体何をしたのだと言うのか……。

客A「」ギロッ

客B「」ペッ

客C「」チャキ

マスター「」ヒソヒソ

ウェイトレス「」コクリ

こういうときってこの言葉が似合うんじゃないかと思えてきた。
『四面楚歌』、まわりの人間が俺を敵視している。
ウェイトレスが近づいてくるのがわかる。


ウェイトレス「ご注文の食事でございます。それではごゆっくり……」

勇者「はい……」


俺はチラッとウェイトレスのほうを見た。
ウェイトレスの目は据わっており正に敵の目であった。

勇者「………(た、食べにくい………)」

周りの人間たちは俺が食べるのを待っているみたいだ。
というより凝視している。

勇者「(さすがに毒なんか入ってないよな………)」


俺が一口二口食べると周囲はざわめきだす。

勇者「(やはり何か毒が入っているのだろうか…?)」

勇者「(でもしかし食べてしまったのなら………)」

しかし完食してしまった。
周りの目を気にしていたので完食せざるを得なかったのが正しい。


勇者「(スープさえ味わう余裕がないとは……)」

勇者「ごちそうさま……」

俺は小声でマスターに食事代を渡しながら告げると周囲の目を気にしながら町を出ることにした。


勇者「ううむ………、何かがおかしい……。」


ふと俺は後ろを振り向くと謎の人影3人がいた。
否、よく見ると3人ではない、他にも人影がある。
5人……、それとも10人か………。

勇者「俺への刺客か……?何が起きたのだ………?」

万が一のことを備え、俺はツヤマの町への足を速めた。

一方王室───
王様「ない、ない……ない!!」

王様「ここにもない……!!」

王様「ど、どこにあるのだ!」

王様「誰か!誰かおらぬか!!!」

大臣「王様、どうかなされましたか?」

王様「わしのバットがないのだ!」

大臣「バットならご自身にございましょうに。」

王様「確かにボールが2個付属品について…、てその話ではない!」

大臣「し、失礼致しました。」

王様「俺の野球道具が盗まれたというのだ!」

大臣「それはまた…?!」

王様「2週間後にある全世界野球選手権大会があるというのに…」グッ

大臣「我が王国は守備が要が売りですからねえ。」

王様「大臣、今すぐ俺の野球道具を探せ!」

大臣「しかし!!」

王様「あのグローブにあのバット、あれがないと馴染まないのだ!!」

大臣「は、はい……。」

王様「城の者に告ぐのだ。俺の野球道具を探すのだ!!よいな!!」

大臣「はい、承知致しました!」

フィールド───
勇者「ち!!」

??A「………」スッ

勇者「まだついて来るというのか」

??B「………」ススッ

勇者「しかし、人影が増えてねえか?!」

??C「………」サッ

勇者「これは早急に駆けたほうが良さそうだな」サッ

??A「………ん!」チッ

??C「………」サササッ

城内───
衛兵A「しっかし、何故俺らが王様の野球用品を探さないといけないんだよ……」

衛兵B「まあ文句を言うな。今度の大会は国の威信を賭けた戦いだからな。」

衛兵C「でもよ、それなら普通に戦争で勝ってしまえばいいんじゃないのか?」

衛兵A「俺らにそんな力があると思うか?」

衛兵C「ないな……、ヤマナ国との戦いで我が国は疲弊してしまったからな。」

衛兵B「100年前には朝敵の汚名を着せられて、70年前には国王様が臣下に殺された。」

衛兵C「そして今、野球道具で騒動が起きている。」

衛兵A「この国も終わったな。」

衛兵B「でも俺………、何か忘れている気が……。」

衛兵C「おい、何か思い出したのか?」

衛兵D「おおおい!!」

衛兵A「何だよ!うるせえなあ!」

衛兵B「静かにしろよ……」

衛兵D「お前さ、新しい勇者が出た時、城門で門番してたよな?」

衛兵B「ああ、してたな………」

衛兵D「俺その時非番で城下町をうろついてたんだよ。」

衛兵C「それが今回の騒動と何の関係があるんだよ……」

衛兵D「それが関係あると思う。」

衛兵A「え?どういうことだ?」

衛兵D「俺、野球の選抜メンバーに入ってるのはお前らも知ってるよな?」

衛兵B「ああ、知ってるよ。」

衛兵C「俺らが嫌になるほど自慢してたな。それで何だ?また自慢か?」

衛兵D「それがな、勇者が城下町にいる時に見かけたんだけどさ」

3人「うんうん」

衛兵D「右手にバットを持ちながら歩いてたんだよ。」

衛兵A「そ、それは本当なのか?」

衛兵D「それは間違いねえ!」

衛兵C「確かな証拠というのは?」

衛兵D「ない。だが、細長い棒だったのは覚えている。あの形は間違いなくバットに違いない。」

衛兵B「ううむ………、確かに勇者様は細長い棒をお持ちだったような……」

衛兵A「なら犯人は決まりだな。勇者様だ。」

衛兵C「だけど知ってるか?あの男、正式な勇者ではないとされたぞ。」

衛兵D「それはどういうことだ?」

衛兵C「俺が部隊長から聞いた話によれば、大臣様がやむを得ずに任命したんだとか。」

衛兵A「何故そのようなことに……?」

衛兵C「王様ってあれだろ?寝坊癖あるでしょ…」

衛兵B「ああ、確かに王様はよく寝るね…」

衛兵C「それで王様が任命を取消にして、3日前に別の方を勇者に任命したらしい。」

衛兵D「まあー……、それは驚いた。」

衛兵C「この前の勇者だった人はお尋ね者になった。」

3人「お尋ね者?!」

衛兵C「そう、偽って勇者と名乗ったとされているから。」

衛兵A「まあとりあえずこの領内にいたら追いかけられてるだろうな。」

衛兵B「ということはギルドにも?」

衛兵C「ああ…、賞金首としてクエストに掲載された。」

衛兵D「近隣諸国のギルドにも及ぶだろうなあ。」

衛兵C「さて、野球道具の件を報告したほうがいいんじゃないのか?」

衛兵D「そうだった。では上司に報告してくる!」

謁見室───
王様「なんだって?!偽勇者が俺の野球道具を盗んだだと?!」

部隊長「そう複数の衛兵から報告が上がっております。」

大臣「王様、これは偽勇者を討つ絶好の機会では?」

王様「そうだな、偽勇者と名乗るばかりか俺の野球道具まで盗みやがって!」

大臣「して、いかがなさいますか?」

王様「ギルドでも暗殺者を雇ってもいい。偽勇者を屠るのだ!」

部隊長「はっ!!」

王様「賞金を更に上乗せしてくれよう。」

部隊長「それでは今すぐ各地にお伝えして参ります。」

大臣「………」

フィールド───
賊A「どりゃあ!!」

チャキーン

勇者「く、くそ……」

賊B「俺らの攻撃にどこまで耐えられるかな?」

勇者「これでも食らえ!!」

ドンッ!!

賊A「がふっ!!」

賊B「ごふっ!!」

バサッ

勇者「ぜえぜえ・・・、ち、ちくしょう・・・」フラフラ

勇者「?!」ビクッ

何かが俺を通り過ぎた気がした。

??A「流石としか言いようがないですわね…」

??B「あなたに怨みはありませんがここで死んでもらいます!」

??C「いざ覚悟ッ!」

勇者「な、何者だ…!?」ゼエゼエ

??A⇒戦士「私は戦士。剣や槍の使い手としてそこそこ知られてるわ!」

勇者「全く知らない…」

??B⇒尼僧「あたしは尼僧。」

勇者「では既に出家したんですね……。じゃあ殺生は禁止ではありませんか?」

尼僧「な…!?あ、あたしの宗派では殺生は禁止されていません!」

勇者「なるほどな…。」

??C⇒??「僕は………なんだろう。」

戦士「ちゃんとやって!」

??「とりあえず、魔法使いと陰陽師を足して2で割ったような者だと思って」

勇者「だったら魔術師でいいんじゃないのか?」

??⇒魔術師「そう名乗らせてもらいますね。」

勇者「女3人が俺に何をしようと?」

戦士「つまりあなたには死んでもらわなくてはなりません。」

勇者「なんで俺が死なないといけないんだよ!」

尼僧「それはクエストに掲載されてたからです!」

魔術師「そういうことだから覚悟してください!」

勇者「面倒だな…」

戦士「大人しく死んでください…、いや死になさい!」

勇者「だったら攻撃してこいよ!」

魔術師「では行かせてもらいます。」

勇者「三十六計逃げるに如かず……」ダダダ……

戦士「待ちなさい!」

魔術師「火炎!」

勇者「………」ダダダ……

戦士「あー、逃げられた!」

魔術師「ごめんごめん」

戦士「今すぐ追いかけるわよ!」

尼僧「ま、待ってくださーい!」

俺はあれから逃げに逃げた。
途中魔物に襲われもしたが、何とか撃破。
眠気も来ていたがなんとか次の目的地の町であるツヤマに入ることに成功した。


ツヤマの町───
勇者「ふぃ~、疲れるな……」ゼエゼエ…

商人「そこの兄ちゃん」

勇者「ん……?俺か……?」ゼエゼエ…

商人「肩で息しているのがよくわかる。」

勇者「そ、そうだな…」ゼエハア…

商人「よかったらこいつを買わないか?」

勇者「なんなんだそれは…」

商人「サンロードという代物だ。」

勇者「サンロード?」

商人「とまあ、太陽を動力とする馬みたいなものだと思えばいい」

勇者「それはまあ…、うむ…」

商人「一里が何故4kmなのか知ってるよな?」

勇者「ああ、人が歩く速さが1時間あたり4kmだからなんだろ?」

商人「その通り」

商人「ちなみにこのサンロードは1時間に五里から六里は進めるぞ。」

勇者「しかし足腰を鍛えるために歩いてるのだが……」

商人「そこは問題ないよ。」

勇者「というと?」

商人「兄ちゃんを見ればわかる。そこそこ鍛えてるんだろ?」

勇者「そりゃまあ…。一応は……」

商人「身なり見れば旅人のようだが、どこへ行くつもりだい?」

勇者「次は一応ダイトカイを目指そうと思っている。」

商人「ダイトカイかい。歩けば15、6時間かかる距離だ。」

勇者「早馬なら2時間そこらで駆けられるが、このサンロードも負けてないぞ」

商人「こいつも2時間半から3時間で移動可能だ」

勇者「そ、それは便利だな……」

商人「まあでもあまり飛ばしすぎないほうがええぞ?」

勇者「何故だ?」

商人「こいつの欠点は夜に弱い。しかも継続性もあまり強くない。」

勇者「何時間で止まってしまうのか?」

商人「よくて4時間だろうか。しかも充電との……」

勇者「充電?」

商人「ああ…、こいつはさっきも言ったが太陽で動力を得ている」

商人「だが困ったことに1時間充電したら20分間しか走れないのだ。」

勇者「ということは…」

商人「満タンに12時間はかかる。」

勇者「だとすると……」

商人「毎日4時間で走行するのは無理だろうな~」

商人「毎日2時間程度の走行で使うといい」

勇者「よしわかった。買おう。いくらする?」

商人「4000マニーだ」

勇者「よ、4000?!もう少し安くならないものか?」

商人「そうだな……、3500ならまけてもいいぞ?」

勇者「(手持ち金が1100マニーか…)」

商人「それより下を希望するなら徒歩で移動するんだな。」

勇者「すまん全然足りなかったみたいだ。」

商人「じゃあ諦めるんだな」

勇者「失礼する…」スタスタスタ

商人「(いいカモになると思ったんだけどな…)」


結局俺はいいアイテムをゲットできずに酒場に入ることにした。
ツヤマの酒場も俺を見るなりあまり良い表情を見せない客ばかりであった。

マスター「いらっ………しゃい………」

勇者「あ、どうも………」

明らかにここのマスターも俺を見て表情を曇らせた。
何かあるはずだ。
先ほど遭遇した三人の女たちが言ってたアレのことを。

勇者「とりあえず、これをお願いします。」

マスター「わかった。おい、注文出たぞ。」

女「わかったー」

勇者「それと、クエストってどこで受けられます?」

マスター「それだったらあそこにいる受付に行くといい」

勇者「ありがとうございます」


俺は一礼すると受付のほうへと向かった。
受付にいた女性も顔では笑顔ではあったが何やら引きつった表情であった。

受付「あのなんでしょうか……?」

勇者「え、えと…、今……、どんなクエストがあるのかなーって来てみたんですけども…」

受付「は、はあ……」

勇者「見せてもらってもよろしいですか?」

受付「わ、わかりました……。」


受付は1つのクエストだけを手元に置くと他のクエストを俺に渡してきた。
何かおかしい…。そう感じ取った俺はすかさず手を伸ばす。


勇者「すいません、それも見せてください。」

受付「そ、それは困ります!!」

勇者「いいから見せてください!」ガバッ

受付「きゃ?!」


俺はそのクエストを見た。
そこには偽勇者討伐ならびに王の所持物の窃盗に関する討伐内容であった。
しかし似顔絵が描いてあり、どう見ても俺であった。

勇者「…………」

受付「………」ピクピク

勇者「あ、ど、どうもありがとうざいます。」

受付「は、はい……」

勇者「は、早く見つかるといいですね、こんなやつ見つけてとっちめてやりましょうよ!」

受付「そ、そうですね…」


俺と受付は笑った………、ほぼ苦笑いであった。
このクエストが俺に対する討伐物とは思いたくなかった。
まもなく注文した料理がきたが、早食いもいいところで完食し金を払って酒場から出て行った。


勇者「俺が指名手配されてて賞金首に?!」

勇者「何かの間違いだろう……」


しかしツヤマの人々の顔を見るとコウヅキで見た感じと似ていた。
すぐにでも逃げたい気持ちであったがグッと堪えて静かに町を後にした。


??「待てー!!」

その刹那女の声がした。
普段なら振り向きたいのに俺の生存センサーがいけないと言ったようだ。
もうあたりは闇に包まれていて俺の疲労も限界になろうとしていた。

勇者「(く、草むらに隠れなければ……)」

俺は咄嗟に近くの草むらに身を潜めた。

??「もう、あともうちょっとだったのに…!!」

??「魔術師も尼僧も遅いよ!!」

勇者「(魔術師に尼僧…?あの三人組か…!まずい……)」

魔術師「戦士がはやいんだよぅー!」

尼僧「そ、そうです……。あたしたちはそんなに速く走れません!」

戦士「それにしてもあいつ逃げ足が速いわね…。」

魔術師「もう最悪……、町から離れちゃった……。」

戦士「どうやらここで寝るしかないわね……。」

尼僧「そ、そんな……、あたしここで寝れないと思う………。」

魔術師「僕、こんな山ん中の暗いところで寝るとか無理だよぉ……」

戦士「つべこべ言わずに寝る準備しましょ!」

2人「はーい↓」シュン

30分後───
勇者「(あいつらマジでここに居座るつもりかよ……)」

戦士「ちょっと尼僧、どこに行くんだ?」

尼僧「ちょっと食材を採りに…」

戦士「あ、ああ…、わかったよ。暗いからさ、早く帰るんだよ~」

尼僧「は~い」

勇者「………」

尼僧「よいっしょっと…」ガサ

勇者「(あの3人のうちの1人の尼僧…?)」

尼僧「………」ガサゴソ

勇者「……?」

尼僧「(だ、誰もいないよね…?)」モジモジ

勇者「(何で俺のすぐそばに来るんですか…?)」ガサ

尼僧「へ?」

勇者「(やば、気づかれたか…?)」

尼僧「」ジー

勇者「」ジー

尼僧「あわ、あわわわわ…………」

勇者「(に、逃げなきゃ……)」ガサガサガサ

魔術師「………ん?」

尼僧「きゃーーーーーっっっ!!!!」

戦士「尼僧、どうした!!?」ガサガサ

尼僧「へ、変な、変な……」

戦士「ど、どうした?」

魔術師「尼僧、一体全体どうしたの?」

尼僧「覗き見男が…いました……」

戦士「ウソ?!」

尼僧「そして、そして………」

魔術師「そして……?」

尼僧「見られたショックでお漏らししちゃいましたぁ……、ふえーんっ!!」

戦士「うわ、最低!」

尼僧「ごめんなさーい↓」

戦士「いいえ、最低なのはその覗き見男!!」

魔術師「顔は見えましたかぁ?」

尼僧「多分あたしたちが追ってる偽勇者さんかも……」

戦士「許すまじ!!」

魔術師「覗きなんて女の敵!」

戦士「この手で成敗してやるーっ!!」

尼僧「私はお漏らししたことのほうがショックですぅー!!!(涙)」

………
……

勇者「はぁはぁはぁ………」

勇者「もうダメだ。ここがどこかもわからない。」

勇者「とりあえず草むらで寝よう……」

勇者「寝袋に包まっておやすみ………」

………
……

チュンチュンチュン……

勇者「んん………」

勇者「朝か……、くそー野宿だから背中がいてえー……」

勇者「今日も一日……、誰かにつけられないようにしないとなあ……」

勇者「犬も歩けば棒に当たるとは言うが、正に俺はその状態じゃないか……」

勇者「家の中にいればこんな事態は起きなかったんだよなあ……」


俺は刺客に怯えながら一路ダイトカイへと歩んだ。
ツヤマからダイトカイは60kmもの道程がある。
さすがに断続的に歩けないので魔物を狩ったり、備蓄していた食料で食事をした。
流石に邪魔者は出なかった。
まさかのために俺は近隣の村からフード付のコートを購入した。

また次の村では、武器の棒について尋ねられた。

村人「これはなんだ?」

勇者「アオダモの棒です。これがなかなかいい武器なんです。」

村人「これなんかに似てるんだなあ・・」

勇者「(これはまずいかもしれぬ)」

勇者「ちなみに雑貨屋はどちらに……?」

村人「雑貨屋ならあそこにある」

勇者「ありがとうございます」


武器のアオダモの棒も目立つこともあり、武器用の袋入れを購入した。
新しい武器として剣を購入した。

勇者「早くダイトカイへ……」

フィールド───
勇者「うりゃあ!」ザク

魔物「ぎゃああ!!」


別箇所フィールド───
勇者「とう!」ズバッ

魔物「もふっ!」

更に別箇所フィールド───
勇者「しゃあ!!」ザックリ

魔物「ひゅー……」

勇者「これだけ倒しまくれば…、ふう……」

戦士「やっと見つけた!待ちなさい!」

勇者「やべ!見つかった!」

戦士「この偽勇者が!待ちなさい!」

勇者「魔物狩り過ぎたから…た、体力が……」

戦士「これでも食らえぃ!!」シャキッ!

勇者「うぐっ!!」

戦士「む……、斬りそこなかったか!」

勇者「け、怪我は……して、してない、よし、よおし!!」ゼエゼエ

魔術師「戦士っー、待ってよー!!」タタタ……

尼僧「戦士さーん…」テテテ……

戦士「とりゃあっ!!」

シャキン!!

勇者「おっとっ!!危ない!!」

戦士「なかなかやるわねぇ!」

勇者「そ、そっちこそ……」ハア……ハア……

戦士「肩で息をしてるわよ!」

尼僧「あああぁぁっ!!」

魔術師「え?!」

戦士「?!」

勇者「ひ!?」

尼僧「勇者さん、あたしのパンツ代弁償してください!」パシンッ!!

勇者「い、痛い!!いきなり頬を叩かなくても…」

尼僧「いいえ、許しません!!」

戦士「き、昨日のことかなり根に持ってたんだ……」

尼僧「あたしにとっては大ショックです!」

勇者「き、昨日のこと……?」

尼僧「草むらに隠れてあたしを脅かしたでしょ!?」

勇者「い、いや…、そういうつもりでは……」

尼僧「しかもそのロン毛に無精髭、あたしの好みの殿方ではありません!」

魔術師「確かに僕も偽勇者みたいな風貌な男は嫌いだな。」

尼僧「戦士さんも思いますよね?」

戦士「え…?う、う、うん……。(この娘、怒ったら怖いわね……)」

勇者「(この女共……、ひどい……、引きこもり生活から脱出したらこの言葉か……)」

魔術師「三十路過ぎて涙目になって……、僕だったら拒否するよ。」

尼僧「あたしも告白されてもお付き合いは断固拒否します!」

戦士「こういう女々しいところが嫌われるのよ。男ならクヨクヨするな!もっとシャキッとしな!」

勇者「違う………違う………(涙目)」

戦士「何が違うのよ?」

勇者「俺は三十路じゃない!!」

尼僧「嘘つかないでください!」

勇者「嘘じゃないもん!俺まだ27だぞ?」

3人「………」

魔術師「にじゅう・・・なな・・・?」

戦士「精神年齢は11、ね………」

勇者「もういい!!」

3人「?!」ビクッ

勇者「お前のパンツ代は弁償してやる!それで許せ!」

尼僧「な!!なんて上から目線な男!許せません!」

戦士「確かに今の態度は許せないわね……。」

魔術師「偽勇者さんは自分が賞金首だと自覚してて言ってるのかなあ?」

尼僧「!?」ハッ

戦士「………(なんて馬鹿馬鹿しい……)」

勇者「とりあえず俺は去る。今からダイトカイに行くからお前らも来るなら来い!」

尼僧「ちょ、ちょっと!!」

戦士「尼僧、いいから……」

魔術師「とりあえず、あの偽勇者はダイトカイに行くみたいですね。」

戦士「ちょうど私たちも行くところだったんだ。討つのは後からでも良いだろう。」

尼僧「……」プンスカ

女3人に小馬鹿にされ精神年齢が餓鬼のようになってしまった。
俺もまだまだ子供だな…。
せっかくいい気分で歩いていたのに台無しだ。

勇者「しっかしパンツ代を弁償するの約束してしまったなあ…。」

勇者「でも俺サイズわからんぞ……」

勇者「胸のサイズも知らんぞ………」ブツブツ……

勇者「どういう下着を買えば女は喜ぶんだろうか……」

女A「うわぁ、あの人なんかキモイ……」

女B「逃げましょ!」タタタ…

勇者「ぬぐ………(ドン引きされた…)」

………
……


勇者「そろそろ色々と変装しないとやばいなあ。」

勇者「早くダイトカイに着かないかな……」

2日後───
ウラガミ帝国領、ダイトカイ


勇者「よし、ダイトカイに着いたぞー!」

勇者「ふむふむ………、色々とあるんだな……」

勇者「金は道中で色んな魔物を狩ったから余裕はあるな。」

………
……

ダイトカイ大通り───
男A「」ジー

男B「」ジー

老女「」ジー

女C「」ジー

女D「」ジー

老人「」ジジー

勇者「………(汗)」

帝国兵「」ジー

勇者「(なんかここでも監視されてるみたいじゃないか…)」

………
……

ダイトカイ南通り───
勇者「……」カツカツ…

??「……」カツカツ…

勇者「!?」

??「」サッ

勇者「(ここはもう完全に変装したほうがいいな…)」

??「……」スッ

勇者「(どうすれば……、ん……あれは………)」

40分後───
店主「アリャシター」

勇者「ふう、スッキリしたぜ」スッキリ

??「………」

勇者「(一応パーカーでも着てフードでも被るか)」

カツカツ……

勇者「!?」

シーン

勇者「(もう誰も来ないみたいだな…)」

??「………」

………
……

ダイトカイ東通り───
勇者「(さてと……、下着……、サイズ聞いてないからわかんないんだよな……)」

勇者「(か、覚悟を決めるしかないな…)」

………
……

下着売り場───

売り子「いらっしゃいませー☆」

勇者「すまない、友人の女の子に頼まれたんですが……」

売り子「は、はい……(うわ………、男……、引く……)」

勇者「いかんせん俺は男なので女の下着がどういうのかよくわからない」

売り子「は、はあ…」

勇者「そ、そこでな………、ええと………」

売り子「?」

勇者「女が喜ぶような材質とか色とかデザインを教えてほしいのだが……」

売り子「あ、はい……、さ、サイズのほうは……」

勇者「サイズのほうなんだが………」

売り子「は、はい………」

勇者「わからない……」

売り子「あの、それだと後で諍いが起こる原因になるかと思いますが……」

勇者「いや、そこをなんとか……」

売り子「困ります……」

勇者「だったらあなたのサイズでもいい!」パサッ…

売り子「!!」

勇者「あの……、ダメですか……?」

売り子「わ、わかりました。私のセンスにお任せください…//」

勇者「ああ、よろしく頼む…」

売り子「ちなみに何着のお買い上げの予定ですか?☆」

勇者「(この売り子さっきと違ってキャピキャピし過ぎてないか…?)」

売り子「言ってもらえればすぐにご用意できると思いますよ?」ニコニコ

勇者「実は……」

売り子「はい……」

勇者「3人から頼まれてるんですよ」

売り子「ま!3人から?!」

勇者「まあいわゆる罰ゲームみたいなところですね…。」

売り子「そうなんですね」ニコニコ

勇者「ついでに言うと胸もお尻のサイズもよくわからないんです。」

売り子「なるほど……」

勇者「3人とも胸小さそうなのでブラジャーは小さいのでいいと思いますが……」

売り子「いいえ!!」ビシッ!

勇者「?!」

売り子「いいですか?今のブラジャーを侮ってませんか?」

勇者「ひ?!」

売り子「今のブラジャーも優秀なのですよ?」

勇者「と、言うと…?」

売り子「前の部分をご覧ください。ちゃんと折りたたみ仕様になってるでしょう?」

勇者「ふむふむ…」

売り子「ホックのところもご覧ください。カップ別にホックがあるのです!」

勇者「ベルトみたいなものか…」

売り子「そのようなみたいなものですね。」

勇者「では……このお金でできるだけの下着をお願いします。ブラとパンツのほうを…」

売り子「キャミソールのほうはいかがなさいますか?」

勇者「キャミ………、それもお願いします………」

こうして俺は4000マニー(日本円に換算すると8万円相当)を売り子に渡した。
売り子は他の店員と話していたのか、色々と知恵を絞ってくれて多くて質の良い下着を選んでくれた。
ありがとう下着売り場の店員の皆さん。
店員さん全員女性だったが、何故か頬を桜色にしていた。


売り子「お買い上げありがとうございました~☆」

店員たち「ありがとうございました☆」

勇者「こちらこそありがとうございました」ペコ


俺は再びフードを被ると大通りへと戻ることにした。
しかし、あいつらのために下着を買うだけで結構散財をしてしまった。
残る残金は1000マニーを切ってしまった。

勇者「しかし、あいつらが見つからなかったらそれはどれでいいのだが、このまま持って行くというのも…」

勇者「しかし紙袋の中身が下着だらけ…、バレたら変質者確定だろうな~。」


この後俺は大通りでブラブラと暇つぶしをすることにした。


勇者「屋台か……、うまそうなにおい……」

ダイトカイの本通りの西側は屋台街となっており、賑わっていた。

勇者「ひるぜん焼きそば……、食べてみるか……」

屋台主「らっしゃい」

勇者「これを1つ……」

………
……

これより少し前の時間───
下着売り場

魔術師「ここです。僕が行きたかったところは。」

売り子「いらっしゃいませ~」

尼僧「いい下着がいっぱい並んでますね…。」

魔術師「ちょっと見るだけでもいいですか?」

売り子「はい構いませんよ~」ニコ

戦士「しかし私の好みの下着があればの話だけどね…。」

魔術師「あ!あったあった!」

尼僧「魔術師ちゃん、その下着ですか?」

魔術師「そうそうそう」

戦士「へぇ~、いい下着じゃない。でもちょっと高そうだわ…。」

魔術師「そうなんです。」

尼僧「結構カワイイ下着もあるのに…」

戦士「でも何故これが欲しいと思ったの?」

魔術師「実は………」

・・・

魔術師「……ということなんです。」

戦士「なるほど!これはいいね!」

尼僧「あたしの場合…、弁償してもらわないといけませんからね!」ビシッ

魔術師「でも、あの偽勇者がちゃんと払ってくれるかなあ?」

尼僧「それはないと思いますぅ。↓↓」

戦士「私もそう思うわ。」

魔術師「でもちょっと今の体型でどの下着があうのかも知りたいし……」

売り子弐「もしよろしければはかってみませんか?」

魔術師「お願いします!」

尼僧「あたしも!」

戦士「この際だから私も………」

売り子弐「はい、かしこまりました。」ニコ

~戦士計測中~

★結果★

戦士
身長161

体重49

バスト82(Cカップ)

ウエスト59

ヒップ86

~尼僧計測中~

★結果★

尼僧
身長149

体重43

バスト74(Aカップ)

ウエスト56

ヒップ81

~魔術師計測中~

★結果★

魔術師
身長155

体重44

バスト79(Bカップ)

ウエスト59

ヒップ84

尼僧「ぁぅ………」ヒンソー

魔術師「む、胸の大きさなんてこんなものだよぅ…、あはははは…。」

戦士「私くらいの大きさくらいが普通だわ。尼僧、落ち込まなくていいから、ね?」

尼僧「う、うん…。」

魔術師「まあ、鶏肉とか豆腐イソフラボンなどの食べ物は摂取したほうがいいんじゃないのかなあ?」

尼僧「それよく聞く…。でもあたしの胸、大きくならない…。」シュン…

売り子弐「でも……、そういう時に………」

売り子「ねねねね、ちょっといい?」

売り子弐「はうわ。ど、どうしたの?」

売り子「あのね、今カッコイイ若い男性が下着を買いに来たの。」

売り子弐「え……?」

尼僧「下着…?」

魔術師「カッコイイ…」

戦士「男性…?」

3人は影からこっそりとその男を見た。
尼僧「////」ポッ

魔術師「(ちょっと挙動不審……、ソワソワしてるしちょっと怖いなあ……)」

戦士「(ううん、そこらへんにいる男じゃないかなあ?)」

売り子「それでね、このお金で友人の女の子3人分の下着を買いたいんだって。」

尼僧「はわわわ……。」オロオロ

魔術師「(4000も?!漢だよぅ…。)」

戦士「(友人のためにそんな大金、バカじゃない……)」

売り子弐「4000マニーですか…。困りましたね…。」

売り子「このような大金、どうしましょう。」

尼僧「あ、あの………。」

売り子「なんでしょうか?」

尼僧「よかったらあたしたちもその友人さんのためのお手伝いをさせてください。」

戦士「ちょ、ちょっと尼僧……」

尼僧「あたしだって女です。自分だったらこういうのがプレゼントされたら嬉しいなって思うんです。」

売り子弐「確かにそうね。5人いれば色んな意見が出せるし、いい下着だと思える。いいと思いますよ。」

魔術師「でもそのご友人さんたちの胸の大きさとか分かれば迷わなくてすむのに…」

売り子「その件に関しては大丈夫だと思います。皆さん胸の小さな方だと仰ってましたので。」

尼僧「ぁぅ……。まるであたしたちみたい。↓↓」ショボーン

売り子弐「彼のためにいいのを選んであげましょうよ。」

売り子「そうですね。」

尼僧「はい!」

魔術師「賛成!」

戦士「お、おい…」

尼僧「あたしだったらこのパンツがほしいかなあ…」

戦士「おい尼僧………」

………
……

尼僧「結局あたしたちの好みの下着になっちゃいました…。」

戦士「う、うむ……。」

売り子「では行ってきますね!」

魔術師「4000マニーだったからかなり多く買えたみたいですね!」

売り子弐「今回は助かりました。」

魔術師「でもいいなー、羨ましい。」

尼僧「偽勇者さん、ちゃんとパンツ弁償してくれるのでしょうか……。」

戦士「まあ、期待しないほうがいいと思うよ?」

尼僧「はーい↓↓」シュン

魔術師「落ち込み過ぎです……」

売り子「無事終わりました~☆」

売り子弐「これもあなたたちのおかげです。」

魔術師「(ぼ、僕も下着欲しかったなぁ……。)」

戦士「………」ボケー

尼僧「は!」

魔術師「どうしたの?」

尼僧「あ、あの!先ほどの男性は?」

売り子「もう店を出られました。」

尼僧「行かなくちゃ!」

魔術師「ど、どうしたの?!」

戦士「………」ボケー

尼僧「すみません!商品を見るだけで!」

売り子弐「い、いえ…。大丈夫ですよ」ニコ

尼僧「2人共行きましょう!」テケテケ

魔術師「尼僧ちゃん待って!戦士さんも!」バタバタ

戦士「ん?あ、うん。待って!」ドタドタ

売り子弐「ふう…、台風一過とも言うんでしょうか?」

売り子「私も女ですけど、3人いると本当に姦しいですね…。」

売り子弐「全くです。うふ…」

ダイトカイ第三通り───
尼僧「あの方、どちらに行かれたんでしょうか?」

魔術師「わからないよー。」

戦士「なんであの男を追おうとしてるの?」

尼僧「一目、惚れでしょうか……?//」

魔術師「でもいいなあ、あの男性の友人。自分の好みの下着を選んじゃったよぅ。」

戦士「それ言われると、その女たちが羨ましい。」

尼僧「でも女性たちは幸せでしょうね。優しい男性からプレゼントをもらえるんですから。」ウットリ

戦士「でも冷静に考えると普通、男からのプレゼントで下着という点は無しと思うわ。うん、今冷静になった。」

魔術師「あ………、ドン引きですね………。」

尼僧「私はそうは思いません。恋は盲目と言いますけどぉ……、でもいいなぁ……」

戦士「こりゃダメだ。明後日の方向を向いてる…。とりあえず宿探そう…。」

魔術師「そうですね。尼僧行きましょ!」

尼僧「ぁぅ………(現実逃避&妄想中)」

………
……


ダイトカイ・大通り───
勇者「ふう、食った食った。」

勇者「しっかし、この紙袋は目立つな……。」

女A「」ヒソヒソ

女B「」ウンウン

勇者「下着業者のフリしようかな……。」

勇者「多分、意味ないと思うけどな。さてと……、今日の宿でも探しますか……。」

………
……


ダイトカイ・宿屋───
勇者「さすがダイトカイ。宿代が高い。150マニーをとりますか。」

勇者「しかし広めの部屋だから仕方がないか。」

勇者「明日はどうするかなー。あの3人組が来ない限りはあの荷物は渡せない…。」

勇者「早くクラシキに行きたいなー。」

宿屋の別の部屋───
戦士「しかし、手がかりがないわね。」

尼僧「そうですね…。やはり勇者様は最低な方なんですね。」

戦士「あの…、尼僧?」

尼僧「なんでしょうか?」

戦士「最低といいながら、彼のこと敬称つけなくてもいいんじゃないかと思うんだけど…。」

尼僧「一応勇者なのですから、様をつけないと失礼かと…」

戦士「あとさ、彼もう勇者の資格を剥奪されて偽勇者扱いにされてるから。」

尼僧「はわぁ、そうでした!あたしったら忘れてたのです!」

戦士「尼僧ったらこういうところが抜けてるんだから……」

ガチャ

魔術師「ただいまー」

戦士「あ、おかえり」

尼僧「おかえりなさいませ」

戦士「で、どうだった?」

魔術師「全然ダメー、偽勇者の情報が途絶えてるよー。」

尼僧「そうですか…。パンツ……」

戦士「尼僧、パンツのことは忘れなさい。」

尼僧「はーい。」

戦士「わかればよろしい」

魔術師「ダイトカイに入ってプッツリらしいんですよねー。」

戦士「国の王様もお怒りの様子だし。」

尼僧「賞金のほうも跳ね上がるのでしょうか?」

魔術師「それはわかんない。」

戦士「確かに国の財政は火の車と聞くよ。これ以上は上げられないと思うわ。」

尼僧「とりあえず偽勇者様を早く捕まえましょうね!」

魔術師「偽勇者で思い出したけども、新しい勇者がここに来るみたいよ?」

尼僧「も、もうですか?」

戦士「酒場のやつから聞いたのか?」

魔術師「うん、当たり。地の力が強い人で海沿い通ってここに来てるって。」

尼僧「その勇者様に会ってみたいです↑↑」

戦士「あわよくばその勇者のパーティーに入りたいものよね」

魔術師「そうね。」

尼僧「でもとりあえず、今後の予定はどうするんですか?」

戦士「このまま海沿いを通ろうと思うの。」

魔術師「僕、牡蠣食べたい!」

尼僧「あたしは神社!」

戦士「私は造船所を希望。」

2人「………」

戦士「べ、別に良いでしょ!」

尼僧「もう明日にはダイトカイを発つべきですか?」

魔術師「僕としては明後日に発ったほうがいいと思う。」

戦士「そうね、私もここに滞在したほうがいいと思うわ。」

尼僧「やはり疲労とかあります?」

戦士「そうね、連日強行してたから疲労が溜まってきてると思うわ。」

魔術師「明日は情報収集をメインにしたほうがいいかも。」

尼僧「はーい。では温泉入ってくるねー。」

戦士「わかった。いってらっしゃい。」

魔術師「変な男に狙われたらお仕置きしてね。」

尼僧「わかってます…」プクー

戦士「フグみたい」

魔術師「僕だったらハリセンボンに見えると思うよ。」

尼僧「2人ともいい加減にしてください!」

同時刻───
勇者「そう言えばこの宿には温泉があったな…。」

勇者「よし、入るとするか!」

ガチャ…

勇者「フンフンフーン~♪」

勇者「最近ずっと歩いてたから疲れてたんだよなー」

勇者「階段降りてレッツラゴー!」スタスタスタ…

コツン

尼僧「きゃ!」

勇者「あ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

尼僧「い、いえ……、あ…」

勇者「あ…!!」

尼僧「えと…、んと…//」モジモジ

勇者「(や、ば…、まさかこんなところで鉢合わせしたな…)」

尼僧「お兄さんはお一人なんですか?」

勇者「へ?」

尼僧「ですから、お一人で旅をなさってるんですか?」

勇者「え、う、うん……。(なんなんだよこれ……)」

尼僧「えへ、あたし今一人で温泉に入りに行ってるんですけど…、お兄さんはぁ?」

勇者「え、えとね……、俺は今から温泉から自分の部屋に向かうところ…」アセアセ

尼僧「え、でも温泉は下にありますよ?」

勇者「それは、えと、うん、部屋を間違えて戻る途中で…あははは。」ヒヤヒヤ

尼僧「でもー…髪湿ってないですよぉ?」

勇者「うぐ…。(のんびりな口調な癖になかなか鋭いことを言うな…)」

尼僧「も、もしかして…」

勇者「は、はい…」ゴクリ

尼僧「お、想い人のところへ行かれてたのですか?」

勇者「い、いや、それは…ない。俺一人だったから…」

尼僧「本当ですか?よかったあ…」

勇者「それはいいんだけど…、実は君に大切な話があるんだけど…」

尼僧「た、大切な話ですか?」ドキドキ

勇者「ちょっと俺の部屋に来て欲しいんだけどダメかな?」

尼僧「え…??」キョトン

勇者「まあ、ダメ、だよね…(さすがに下着は渡せないか…。今が絶好の機会なんだけどなあ…)」

尼僧「い、いえ、お兄さんなら良いですよぉ?//」ポッ

勇者「じゃ、とりあえず、こっちに来て…」

尼僧「はい////」

………
……

勇者の宿泊している部屋───
ガバッ

勇者「先日は貴方を失禁させて申し訳ございません!」ドゲザ

尼僧「う?!」

勇者「こ、これが…、ぱ、パンツです…!」

尼僧「!!!(こ、これは…)」

勇者「下着ということもあるので、ブラジャーもキャミも入ってます。」

尼僧「(あたしたちが欲しかったのだ……)」

勇者「どう………ですか……?」

尼僧「あ、あの………」

勇者「はい」

尼僧「本当にあの勇者さん?」

勇者「はい」

尼僧「ではこの前までだったロン毛で髭だった格好は…?」

勇者「昼間に床屋でバッサリと…」

尼僧「本当にあのあたしたちが追ってた勇者さん…?」

勇者「あ、はい……」

尼僧「ありがとうございますぅ~~!(嬉涙)」ムギュ

勇者「あわわわわ……」

尼僧「勇者様がまさかこんな良い殿方だとは思いませんでした!」

勇者「いえいえ。」

尼僧「数々のご無礼をお許しください…」

尼僧は三つ指をついて謝罪した。

尼僧「本当は三つ指をつくのは失礼みたいなんですけどね、あは。」

勇者「(謝罪してて、あは。か…。でも可愛いから許せる気もするなあ…。)」

尼僧「あ、あのこれ本当にもらってもいいんですか?」

勇者「そのために買ってきたんだから。」

尼僧「嬉しいです!勇者様ありがとうございます!」

勇者「喜んでもらえてなりよりだよ。」

尼僧「これ皆に渡して来ますね!」

勇者「う、うん。」

尼僧「また会いましょうね!」フリフリ ノ

勇者「うん」

尼僧は嬉しそうに自分の部屋へと戻っていった。
その間に俺は温泉へと直行した。

3人の宿泊している部屋───
タタタタ……
ガチャ

魔術師「尼僧ちゃん、早かったですね…」

戦士「おまけ尼僧が持ってるものは何かしら?」

尼僧「えへへ……、えっとぉー、勇者様が私たちのためにちゃぁんと下着を買ってくれてたんですよぉ~♪」

魔術師「へ?」

戦士「……………え?」

尼僧「下着屋に来ていたあの男性いらっしゃったので覚えてますよね?」

魔術師「うん、いかにも優男で…」

戦士「見た目が20歳そこそこ…」

尼僧「あの人こそ、勇者様だったんですぅ!」

戦士「え、どういうこと?」

魔術師「つまり…、床屋に行って人が変わったってこと?」

尼僧「その通りです!」

戦士「長髪髭ありのときは老けて見えて、短髪髭なしだと20歳そこそこ…」

魔術師「何かの妖怪みたいですね。」

尼僧「あたし思わず惚れちゃいました//」

戦士「あっそ………」

魔術師「ところで、どんな下着だったんです?」

尼僧「あ………、だから………、あたしたち希望の下着が………、たくさんはいってま~す☆」

戦士「あいやー!」

一方王室では………
王様「偽勇者はまだ捕まえられぬのか?!」

大臣「申し訳ありません。ただ、我が領内から出たのは確かにございます。」

家老「隣国のウラガミ帝国に新勇者殿が行かれたのは聞いておる。」

家臣A「北のヤマナ、東のベッショ、その他敵対している近隣諸国に情報を提供しております。」

王様「普段ならばこういう情報は提示せぬ!」キリキリ

家臣B「またオオウチ、ホソカワ両国より協力の使者も見えられるそうです。」

王様「ふむ、ではオオウチ、ホソカワに頼み込んでおくのも手だな。」

家老「なればこそ手を考えませんと…。」

………
……

温泉浴場───
カポン

勇者「ふぃー…、極楽極楽……」

勇者「温泉というのは全くいいものだなー、まるで極楽浄土みたいだ…」

勇者「だーれもいないからいいんだよなあ…」

………

勇者「……zzz」ウトウト

コソコソ

勇者「………ん?」

チャポン……

勇者「(だ、誰か入ってきたかな……?)」

魔術師「うー、僧侶ちゃんのせいで戦士さんのテンション上がりまくりだよぅ……。」

魔術師「だ、誰も入ってないみたいだね…。うぅ…助かった……。」

勇者「(?)」

魔術師「男の人がいたらどうしようと思っちゃった。」

勇者「………。(石の裏に男がいますよ…)」

魔術師「でも下着結構多かったな……。しかも4000マニー分も買わせちゃった……。」

勇者「(そうだよ、すごく高かったんだよ…。3人分、俺の所持金の8割だぞ…。)」

魔術師「僕も偽勇者さんのところへ行って御礼くらいしようっと。」

勇者「(彼女も本来は悪いやつじゃないみたいだな。)」

魔術師「でも嬉しかったな~、えへへ。」

勇者「(喜んでもらえてなりよりだよ~)」ウルウル

魔術師「尼僧ちゃんのおこぼれをいただいてしまったし。」

勇者「(まあ、1人だけだと女はブーブー文句言うからな~。ぶん殴りたいけど自重自重、と…)」

魔術師「あれれ、奥にもまだあるんだ…。」ジャバ……

勇者「(やば、こういうときは寝たふり…)」

魔術師「どこまで続いて…い……?!」

勇者「(悲鳴なんてあげないでくれよ……)」コクリコクリ

魔術師「ぁ…………ぁゎ……(お、男の人だ……)」ドクン

サッ……

勇者「(一二三四五六七八九十十一十二………)」コクリコクリ

魔術師「(な、何で石の裏に男の人がいるんだよ……)」チュプン

勇者「(………三十三三十四三十五三十六三十七………)」

魔術師「(で、でも寝てたから大丈夫、見られてない見られてない……)」ドキドキ

キャッキャ……

尼僧「わぁ………、結構ひろーい。」

戦士「うん、ゆったりくつろげるね。」

魔術師「あ、2人ともー!」

尼僧「魔術師ちゃんいたんだ~」

魔術師「う、うんいたよ。」

チャポ…

戦士「いやあ…、気持ちいいねえ……。」

尼僧「ふわぁ~……」ウットリ

魔術師「………」ドキドキ

勇者「(………二百八十六二百八十七二百八十八二百八十九……)」

戦士「よし、これでも食べて…」パクパク

尼僧「な、何を食べてるんですかぁ?」

戦士「ゆで卵、ほっこりおいしい。」ムシャムシャ

尼僧「ゆで卵ですか……。」

魔術師「浴場で………ゆで卵………いつ………」ドキドキ

勇者「(………もう数え切れない……)」

尼僧「そ、そういえば勇者様はぁ?入られると伺ったのですが…」ザバッ

魔術師「え、あ、う、うん……」

尼僧「どうしたんですか?」

戦士「もう1個食べちゃおう…」ムシャムシャ

魔術師「な、なんでもないよ、あはははは………。」

勇者「(う、う、う…さすがの長湯の俺も上せてしまう…)」

尼僧「奥には何があるのかしら?あぁ!!勇者様//」

勇者「……………ん?」

尼僧「きゃぁ~ん☆」キラキラ…

魔術師「//」ドキドキ

戦士「あー、美味しかった。ごちそうさま~」

勇者「あ………」

尼僧「お、お隣よろしいですか?」

勇者「か、構わないよ…(い、岩の上に登りたい……)」

魔術師「ぼ、僕も……」

戦士「温泉でのゆで卵は最高だね。そう思うよね、2人とも。あ、あれ…?」キョロキョロ

勇者「う………」

戦士「尼僧、魔術師、2人とも何してるんだ?」

尼僧「え…?」

魔術師「ん…?」

勇者「あい……?」

戦士「お前たち………、あがるよ!!」

尼僧「そ、そんな後生ですよー……」ジャブジャブ

魔術師「ちょ、ちょっと肌蹴て見えちゃうよー」ジャブジャブ

戦士「見えても構わない。減るものじゃないでしょ!」

尼僧「ぁぅ……」ズリズリ

魔術師「引きずらないでー!」ズリズリ

勇者「一体なんだったんだよ……、喧しい……」ボケー

………
……

勇者「くそ……、浴場で死ぬところだったわ…」

勇者「長時間入りすぎて眠気が………」

勇者「ふわぁぁ~~~……」

勇者「早く部屋へ………」

ガチャ…

勇者「寝る……」

バタン

勇者「おやすみ……」

バタリ

勇者「・・・・zzz・・」

………
……


朝───
3人組の部屋

魔術師「ふぁぁ~……、おはようございますぅ。」

戦士「あ、おはよう。」イライラ

魔術師「戦士さん、朝早いですね…」

戦士「いつものことよ…」イライラ

魔術師「あれ?尼僧ちゃんは…?」

戦士「起きたらいなかったのよ!」イライラ

魔術師「あらら…、尼僧ちゃん多分戻ってくると思いますよ?」

戦士「もう起きてから30分も経ってるんだけど!」

魔術師「ならば浴場にいるんでしょうか。」

戦士「だといいんだけど。」

魔術師「もしかしたら……」

戦士「もしかしたら………?」

??『ウギャアアアアアアアア!!!!!!!!』

戦士「な、何なの?!」

魔術師「う、上から聞こえたみたいですね。」

戦士「行ってみよう。」

魔術師「うん。」

勇者の泊まっている部屋───
勇者「てめえら起きろぉーーッッ!!!」ポコポコ

ガチムチ男A「ん~っっ………」ムニャムニャ

ガチムチ男B「んふふっ……」ガーガー

勇者「き、きもちわりぃー!!」


俺が寝ている間に何があった。
起きるや否や俺の両隣に見るも恐ろしいガチムチ男2人がいた。

勇者「だ、誰か………」

ガチャ

勇者「は?!」

戦士「大丈夫ですか?!て、は………!?」

魔術師「………え?…………」

勇者「た、助けてくれ………」

ガチムチ男A「んもああぁぁ……」ムニャムニャ

ガチムチ男B「」グゴー

戦士「そ、それは………」

魔術師「お、お楽しみのようで…………」

戦士「ごきげんよう…………」

バタン

勇者「」ガーン

勇者「(やだよ俺掘られたくないよ…)」ジタバタ

ガチムチ男A「離してあげないんだから………」ムニャムニャ

ガチムチ男B「ぶごぉ!!」グガー

勇者「う、うう………」ポロポロ

ガラ…

勇者「?!」

尼僧「んんんーんん………」モゴモゴ

勇者「君は尼僧ちゃん…?!」

尼僧「んんんんーー……」モゴモゴ


尼僧は口に布のようなのもので巻かれていた。
洗面所のところに押し込められていたんだろう。
腕は縄に縛られていた。

勇者「く、くるひぃ……」

尼僧「んんんーー……」ポロポロ

勇者「く、くほ………」アタフタ

ガチムチ男A「んふん………」ムニャムニャ

ガチムチ男B「………」ガーガー

尼僧「んん………」ポロポロ

………
……

戦士「それにしてもおかしい……。」

魔術師「浴場にも部屋にも尼僧ちゃんはいませんでした。」

戦士「もう一度あいつの部屋に行ってみよう。」

魔術師「わかりました。急ぎましょう!」

タタタ………

ガチャ

戦士「は……!?」

魔術師「きゃ……?!」

尼僧「………」ポロポロ

戦士「に、尼僧!大丈夫?」

魔術師「し、しっかりして!」

尼僧「こほ、こほこほ……」

戦士「さ、涙を拭いて…」

魔術師「さあ、怖くないよ。」

尼僧「えぐえぐ……」ポロポロ

魔術師「怖かったんだね……。」ヨシヨシ

戦士「ゆ、許せない………。」ビキビキ

魔術師「せ、戦士さん……?」

戦士「偽勇者め・・・」

勇者「」ピクピク

ガチムチ男A「………」ムギュー

ガチムチ男B「………」ウギュ

戦士「…………、き、気絶してる……?」

尼僧「………」ガタガタ

魔術師「う……?あの男たちが怖い?」

尼僧「……」コクン

戦士「さてと、大切な尼僧をよくもしてくれたわね……。」ワナワナ

ボキボキ!!

バキスカボキ!!

ガチムチ男A「」ガクガク

ガチムチ男B「」ピクピク

戦士「後はこの偽勇者か………。」

………
……

30分後───
勇者「う………、うう………」

尼僧「あ……気がついた……。」

ガチムチ男A「この縄を解け!!」

ガチムチ男B「俺たちの獲物だぞ!」

戦士「あんたたちは黙ってて!」バキッ

ガチムチ男A「いて!」

勇者「あ…、身体中が痛む、あいててて………」

魔術師「偽勇者さん、あの二人に失神させられてたんですよ?」

勇者「うん………、それは俺も知ってる……」

戦士「しかし、何故尼僧を縛って洗面所に放置した?」

尼僧「それは違います!」

勇者「そ、それは俺じゃない……」

戦士「尼僧、こいつの肩を持つな!」

勇者「ほ、本当に違う……」

戦士「信用ならないんだよね。」

尼僧「だ、だって………、あたし………夜這いしちゃってたから………」

戦士「尼僧が夜這いねえ………え?」

魔術師「へ?」

勇者「い?」

尼僧「あたしったらなんてふしだらな女なんでしょう…//」ポッ

戦士「に、尼僧?」

魔術師「尼僧ちゃん・・・」

戦士「じゃ、じゃあ何で尼僧が縛られてたのよ!」

尼僧「そ、それは───」

………

尼僧が言うには俺を夜這いしようとして部屋に入ろうとしたらあのガチムチ男2人組に襲われたらしい。
後ほどの取調べであの2人組の男はとある男から俺の居場所を知ったという。
また男色家であり俺はあともう少しで本当に掘られる寸前だったとか。
俺は思わず身震いが止まらなかった。

王国城下町・ヒメジの郊外・オキシオ───
王様「偽勇者はまだ捕まらないのか?」

重臣「申し訳ありません。」

王子「………」

王様「新勇者のほうは何をしているのかわかるのか?」

大臣「はい、素破からの情報ではクラシキからフクヤマへと向かわれた模様だとか。」

王様「ふむ、なるほど…。」

大臣「別の素破の情報ではダイトカイからクラシキへと出発した模様。」

王様「新勇者め、偽勇者を追い越したことに気づいておらぬな。」

重臣「新しい野球道具の件でございますが、そちらのほうは届いております。」

王様「そうかそうか、それはでかした。」

重臣「これで大会に間に合いましょう」

王様「俺の道具を盗んだ偽勇者をこの手で罰したいのう……」

王子「………」

クラシキ───
最近俺はグルメに凝りだした。
否、正確には名産・特産料理を味わいだすようになった。
ここはマスカットやクラシキバーガーが有名だ。
俺はクラシキバーガーを食した。


勇者「うまいな……」ムシャムシャ

店主「そうだろう、兄ちゃん」

勇者「正直つい最近までトマトは嫌いだった。だが、トマトの酸味というかそういうのが強く感じられない。」

店主「クラシキ皆の努力の賜物よ。肉とトマトがうまーくマッチしたのがうちのバーガーよ」

勇者「ほう……」ムシャムシャ

店主「そんじゃそこらのバーガーとは違うからな。」

勇者「なるほどな……。」


照り焼きバーガーしか俺には新鮮だった。
ついでにしのうどんなるうどんも食し俺はクラシキを後にした。

フクヤマ───
クラシキとほぼ同規模の人口を要する都市だ。
コバヤカワ王国という小国の本拠地でもある。
そして俺の真の目的はそうラーメンである。


勇者「ふはははは、俺はこの時を待っていた。」

勇者「俺の大好きなラーメンを………」


勇者には似つかわしくない言動。そして食事内容。
と言っても既に勇者の称号は剥奪されているが。
それでもここに来た理由はもちろんラーメンである。

ラーメン親父「おい、らっしゃい。」

勇者「店の自慢の商品を1つ。」

ラーメン親父「おうよ。」

勇者「楽しみだな~。」


俺は旅人からフクヤマラーメンの実態を聞いていた。

………

旅人『フクヤマラーメンというのは鶏ガラ醤油味を基本とした中華そばみたいなもんだ。』

勇者『なるほど』

旅人『オノミチラーメン、カサオカラーメンにはひけをとらないいいラーメンだぞ。』

勇者『是非立ち寄ってみたいですね…』

旅人『フクヤマの市街地の一角にその3つのラーメンが味わえる通りがあるから行ってみるといい』

勇者『わかりました。ありがとうございます。』

………

勇者「いただきます…」

………
……


勇者「ふう~、食った。食った…。」

勇者「まさかここでフクヤマ、オノミチ、カサオカの3ラーメンを食すことができたのはよかった~」

勇者「まあそのせいで2日間も滞在したし、残金も残り350マニーとなってしまった…。」

??「もし………」

勇者「な、なんでしょう…?」

??「あなたは偽の勇者さんですね…?」


俺は突然の出来事に冷や汗をかいた。
クラシキ、フクヤマで食事三昧をしていた俺は不覚をとった。

勇者「い、い、いえ違います!!」

??「その言動怪しいですね……」

勇者「まさか……」

??「クラシキを出てからフードを被らなくなった。」

勇者「?!」

??「私ね、見てるんですよ。あなたの行動を……」

勇者「どういうことだ?」

??「あなたには私の真の姿を見せるわけにはいきません。」

勇者「殺るってことだよな。」

??「今日はほんのご挨拶程度ですよ。一々声かけるバカはいませんからね。」

勇者「………」キリッ

??「まあ、姿を捉えましたのでまた会いましょう。」スッ…

俺の顔は冷や汗でびっしょりとなっていた。
怖い、怖い、怖い………

やはり俺は狙われているんだ。
クラシキ、フクヤマで余裕かましている状態ではない。

俺にダイトカイへと戻る道筋はなかった。
ならば残る方法は2つ。海岸通りルートか山ルートとなる。


勇者「くそ………、やはり逃げるしかないか……」

俺は山ルートを選択した。これが吉か凶かは俺にもわからなかった………。

クラシキ───
尼僧「も、もう勝手に暴走しないから…」

魔術師「尼僧ちゃんにも困ったものです。」

戦士「私たちが気づいてなかったら尼僧の命はなかったのかもしれないのよ?」

魔術師「しかも尼僧のことで頭いっぱいだった我々は偽勇者を討つ機会を逸しました。」

戦士「本当は討ちたかったけど……、あのガチムチ男たちが嫌だったのよね…」

尼僧「で、でも…助け出してくれたことには感謝します……」

戦士「尼僧は本当に情けない…。仮にも女だから自分の身は自分で守らないと…」

尼僧「はい…↓↓」ショボーン

魔術師「そんなに暗い雰囲気になったらダメですよ。僕がいいお店を見つけてきましたから。」

戦士「それ、食べるほう?」

魔術師「そうですよ。ジャジャーン!クラシキ名物・クラシキバーガー!」

………
……


尼僧「おいしかったですぅ~↑↑」ニッコリ

戦士「しかしファストフードなどの外食ばかりで済ませてると太ってくるのが気になるんだよね…。」

尼僧「そうなんです。私なんてチビだから余計…」

魔術師「そうなんだよね…、僕も二の腕やお腹周りが気になっちゃうかな…」

戦士「でも美味しいものは我慢できないよね…」

魔術師「そうなんだよね…。止まらない…。」

尼僧「やはり食欲には負けます…。」

魔術師「えっと…、2人に残念なお知らせがございます…。」

戦士「何?」

尼僧「なぁんですかぁ?」

魔術師「クラシキを出るとずっとラーメン街道となっております。」

2人「!!!!」

………
……


フクシオ街道───
山賊A「うりゃあ!」チャキーン

勇者「ぬう!」

山賊B「足元がお留守になってるぜ!」ザン!

勇者「しまった!」

山賊A「さて…金目のものを渡してもらおうか…」

勇者「渡してたまるか…」

山賊B「そうはいかねえ…」ガスッ

勇者「ごふっ………」バタ

山賊B「あっという間に倒れやしたねえ」

山賊A「いひひ…、どんなのがあるのやら…」

山賊B「楽勝でやすね、兄貴」

山賊A「何だこの長い棒は?」

山賊B「こいつでこの男を撲殺しろってことでなんすよ。」

山賊A「グヒヒ、それは言えてるな。」

山賊B「この丸い玉もなんか何かに使えやすよ?」

山賊A「なんの変哲もない玉のようだな。しかしこの棒は頂こう」

山賊B「このわけの分からない手袋はなんでござんしょ」

山賊A「うむ、わからない」

山賊B「じゃあ、とりあえず全部盗んじゃいましょうや」

山賊A「そうしよう」

??「簡単に持って行かれては困るんですよね…」

山賊A「な、何者だ?!」

山賊B「これはおらたちの獲物だぞ!!」

??「下衆の方の所有物ではございません。」

山賊A「で、出て来いよ!」

??「奇襲戦法では身を隠すのは常套手段。」

山賊B「それがどうした!きたねえぞ!」

??「山賊のあなたたちに言われる筋合いなど微塵もない」

山賊A「早く出て来いよ!」

??「単体相手しか攻撃できないなど愚かな方…」

山賊B「す、姿を現せ!」

??「仕方がありませんね。」スッ……

山賊A「やっぱり1人か…。とっととやっちまおうぜ」

山賊B「そうでやんすね」

??「警告しますが、本当にいいんですか?私を殺すんですか?」

山賊A「獲物をとるんなら殺すまでよ」

山賊B「当たり前だ」

??「それでは……」スッ

ザザッ…

山賊A「な!?」

山賊B「ひぃ!」

山賊2人を黒装束の人間が10人くらいが取り囲んでいた。
それを目の当たりにした2人は一気に血の気を失い意気消沈した。

山賊A「そ、そんなまさか…」

山賊B「い、命だけは……」

山賊A「お、俺たちが悪かった。許してくれよ、な…」

??「虫の良い話ですね。殺りなさい…」

2人「ひ、ひゃああああっ!!!!」


………
……

??「とりあえず遺体は処分しましたね」

黒??A「」コクリ

??「では、例の物を……」

黒??B「………承知」コクリ


………
……

勇者「う…うう……」

勇者「あいたたたた………」

勇者「に、荷物………、ぁあ……盗まれてる……」

勇者「アオダモの棒や玉もあのでかい手袋もない…」ガックリ

??「………」サッ

勇者「俺に残された武器はこの剣だけか……」

勇者「全く………、他のものは……」ガサガサ

勇者「大丈夫か…」

勇者「お金も大丈夫だな。よし!」

??「…………」シュン…

翌日・フクヤマ───
尼僧「ここがフクヤマなんですね~」

戦士「クラシキと変わらぬほどの繁栄をしているわね。」

魔術師「クラシキからフクヤマまでの間の魔物は敵ではなかったですよ。」

戦士「しかし、魔術師はそんなにラーメンが好きなの?」

魔術師「僕は麺類大好きっ娘ですから。ラーメン、うどん、蕎麦、ソーメン……麺類最高です♪」

尼僧「あ、あたしも………、わかる……か………も、あはは……」

戦士「………頭痛い………」


フクシオ街道───
山賊舎弟A「兄貴たちの仇!」ダダダ…

勇者「なんで俺が追われてるんだよ!」ハアハア……

山賊舎弟B「よくもぬけぬけと!兄貴たちを殺したのはお前なのは知ってるんだよ!」ダダダダ

勇者「ちくしょう。てめえらを相手にできるか!」ハアハア

山賊舎弟A「くう、逃げ足だけは速いんだな…」ダダダダ……

山賊舎弟C「A、B、なんとか追いつけねえのか?」ダダダ

勇者「なんで…ここまで……」ハア…ハア…

山賊舎弟B「無理だ!弓で射たいがきついぞ!」ダダダ

勇者「仕方ない。街道を抜けるしかないか」ハアハア


俺はサッと森に飛び込んだ。

山賊舎弟C「森の中に飛び込んだぞ!追うぞ!」

山賊舎弟A「わかった!」

山賊舎弟B「オレはまわり込んでおく。」

山賊舎弟C「頼んだ!」

ダダダダ………

勇者「まだ追いかけてくるか!」ハアハア…

山賊舎弟A「まてーぃ!!」ガサガサ…

勇者「森の中を……駆けてるから………体力がもたねえ……」ハアハア……

山賊舎弟A「山の男の脚力をなめんなよ!!」ガサガサ

勇者「ルートを……ルート変更を………」ハア……ハア……

山賊舎弟A「BもCも追いつけてねえか……。俺だけでも討ち取って見せるぅぅううッ!!」

ヒョイ

勇者「(木の枝だ……、これで錯乱しなければ……)」ハアハア……

ポイ

山賊舎弟A「おっと…、木の枝か?!あんな子供だましで……」

勇者「(今だ、ルート変更…!!)」ハアハア…ダダダ……

山賊舎弟A「ぬ?!あの野郎………、どこ行きやがった?!」

ダダダ……

山賊舎弟A「あっちか…?待てぇーーい!!!」ダダダダ

………
……


勇者「ハア………ハア………」

あれから俺は更に10分程度走った。
ここは一体何処なんだろうか?
現在の居場所すら把握できなかった。

勇者「ハア……ハア……、疲れた………ハア……ハア……」

勇者「ハアハア………、ここまで来れば誰もこないだろう。」

勇者「しかし、森を駆けてたら道に迷ってしまった……。」

勇者「しっかし、どこを抜ければいいのやら……」

??「君はそこで何をしているのさ?」

勇者「だ、誰だ?!」

ミヨシ「君から名乗ってくれないと困ったなあ…。俺はミヨシという。」

勇者「ミヨシ・・?」

ミヨシ「ああ、この近くの小屋で一人で住んでいてこの森周辺を守護している者だ。」

勇者「ふーん。守護をしている者か……」

ミヨシ「で、君の名は?」


この男はミヨシと言っている。
パッと見俺と変わらない20代後半と見えた。
しかし俺は賞金首の身、おめおめと自分の身分を出してよいものかと考えた。

ミヨシ「あれ?名乗らないの?ちょっと君それって非常識だよ。」

勇者「ああ、すまぬ……。(しかし向こうは名を名乗った。信用できるものか…)」

ミヨシ「君さ、俺を信用してないの?」

勇者「ぐ・・!!(あいつ俺の考えていることを見抜いてるのか?!)」

ミヨシ「顔に書いてあるよ、『信用してもいいのか』って」

勇者「すまぬ。今まで名を名乗れない理由があって口にできなかった。」

ミヨシ「そうなんだ。でも安心して。俺、自分で言うのもあれだけど口堅いから。」

勇者「そう・・なのか・・・?」

ミヨシ「ついでに言うと俺もある理由で俗世間から離れなければいけなくなったから。」

勇者「そっか、それはすまなんだ。俺は勇者、諱は政という。」

ミヨシ「よし、勇者か。その状態では疲れているだろう。」

勇者「ああ、追われていたからな。」

ミヨシ「じゃあ俺の住んでる小屋に来るといい。」

勇者「わかった。」

………
……


ガチャ

ミヨシ「いらっしゃい、俺の家へ」

勇者「お邪魔します……」

ミヨシ「あ、そうそう言い忘れてた。」

勇者「ん………?」

ミヨシ「そこのお前、俺の名前を漢字に直したら『三次』だからな?『三好』じゃねえぞ。」

勇者「誰に言ってるの?」

ミヨシ「うん、知らん。」

勇者「知らんって……」

ミヨシ「そんなことはどうでもいい。」

勇者「ああ…」

ミヨシ「君、本当に勇者なんだろうな?」

勇者「大臣からそう言われた……、しかし町のクエストでは俺のことを偽勇者扱いにされた…」

ミヨシ「…………そか………」

勇者「………」

ミヨシ「俺は別に偽勇者とか勇者とか大金とか宝石とか興味がない。」


俺はこのミヨシという男が不可思議に見え過ぎていた。
普通の人間ならお金とかに目が眩む。
特に女なら自分の人生を保障してくれる男性にくっつくのが常……、と俺は考えている。
俺の母親の場合は全くの逆だったが………。

勇者「しかし今俺にはパトロンが全くいないんだ…。」

ミヨシ「(パトロン……、協力者と彼は訳してるようだが、ここは後援者というふうにとらえさせてもらおう)」

勇者「周りの人間のほとんどは俺の敵。魔物もそう、俺の生きていける場所はほとんどない…。」

ミヨシ「お前勇者のくせに女々しいぞ。もっとシャキッとしろよ」

勇者「お気遣いありがとな。だが、生憎引きこもりあがりでそういう気力になれねえんだ。すまない」

ミヨシ「………」

勇者「はぁ………、仲間さえいれくれれば………」

ミヨシ「………(こいつ………)」

勇者「はぁ………」

ミヨシ「………ならば仕方ない協力しよう。」

勇者「本当か?」

ミヨシ「ああ」

勇者「やった!これで仲間に…」

ミヨシ「待て」

勇者「え?」

ミヨシ「君、俺がここを守護する者って聞いたよな?」

勇者「あ、ああ……」

ミヨシ「残念だが滅多なことでは俺は外には出られない。守護となった以上ここを守らなければならない義務がある。」

勇者「そ、そうか……」

ミヨシ「だが、協力ならできる。」

勇者「さっきも協力と言ったけど、どんなやり方なんだよ・・?」

ミヨシ「そうかっかするなよ。簡単に言えば魔法の伝授だ。」

勇者「魔法の伝授?回復魔法とか教えてくれるのか?」

ミヨシ「いや、そういうのとはまたちょっと違う。」

勇者「ちょっと違うと言われてもよくわからない……」

ミヨシ「俺は1人の人間に3つまでのオリジナル魔法を教えることができる能力があるんだよ」

勇者「本当なのか…?」

ミヨシ「嘘は言わない。だが…」

勇者「だが…?」

ミヨシ「君の脳内にある情報から出てくる今必要なやつが、魔法3つとして出てくる。」

勇者「………ん?どういうこっちゃ?」

ミヨシ「つまりだね…。どう説明すればいいのやら…。」

ミヨシ「よしわかった。こうしよう。例えば、ある女の子を好きになったとしよう。」

勇者「うんうん。」

ミヨシ「脳内にあるその好きな女の子を好きにさせたいという情報が優先的に出されるとする。」

勇者「とするとどうなる?」

ミヨシ「それが魔法として出てくる。」

勇者「ん?」

ミヨシ「………、君というやつは……。」

勇者「すまん、俺はバカだからな……。」

ミヨシ「続きを話すけども女の子を好きにさせたい情報が優先的になる。」

勇者「うん」

ミヨシ「まあ、あれだ。『好きになれ』という呪文が自動的に覚えてしまうんだよ。」

勇者「つまり、本来の希望である攻撃魔法の習得ができなくなることもある、というのか?」

ミヨシ「そうだ。下手すると欲望の塊の魔法しか習得できないであろう。」

勇者「やり直しは利かないのか?」

ミヨシ「無理だ。失敗は許されない。」

勇者「一度のみ、か……。」

ミヨシ「本意にそぐわなくても文句は言わなくでくださいね。」

勇者「それはさすがに覚悟を決めるしかないな……。」

ミヨシ「ではいきますよ……、目を閉じて」

勇者「………」


俺は目を閉じた。

ミヨシ「キューキューリョー、ノーマクサンダー、リンピョウトーシャ、ハァー…」


俺は目をつぶっていたが分からなかったが、何かの結界が俺を包み込んでいた。


勇者「ミヨシ、目を開けていいか…?」

ミヨシ「なりません!もう少し目をつぶってください!」

勇者「…………」


数分待っただろうか、何やら体がもやもやしてくる。
新しく魔法を習得した成果だろうか・・・?


ミヨシ「……………、終わりました。」

彼が言うとほぼ同じくして結界は解けたようだった。

ミヨシ「今からあなたが習得した魔法3つがこの画面に出てきます。」

勇者「いい魔法ならいいんだけどな…」

ミヨシ「………」カタカタカタカタ

勇者「……」ゴクリ

ミヨシ「ではこの白いやつを耳の近くに貼り付けてください…」

勇者「よいしょっと…」ペタン

勇者「こっちにも…」ペタン

ミヨシ「そろそろ結果が出てきます。」

習得魔法▽

【モーミイ】

効果
対象物の胸に触れた時に唱えると好きな大きさに変えられることができる。
即ち、大きくしたり小さくしたりすることができる。
ただし、脂肪分は対象物のある場所から移動するので注意。
というか揉め!


【クサッシュ】

効果
対象物に強力な拘束状態を与える。


【クサッジュ】

効果
対象物に強力な拘束状態を解除する。

勇者「………」

ミヨシ「………」

勇者「これは………」

ミヨシ「あなたは性欲まみれの上に拘束もの好きってことがわかりましたね。」

勇者「な!?お、俺はSMとかの類は好きではない!!」

ミヨシ「じゃあ何故このような結果が出たのでしょうか?」

勇者「うぐ………。俺としてはラブイチャのほうを好むんだよ」

ミヨシ「なるほど、それは興味深い。ラブイチャを好むのに拘束ときましたか…」

勇者「俺の趣向に言葉を入れるな!」アタフタ

ミヨシ「これは失礼。君に対しては正直好意が持てたよ。」

勇者「好意?」

ミヨシ「戦闘しているものは大抵、チート技能を必死に妄想してるからね。」

勇者「いや、俺もそういうの妄想してたよ?」

ミヨシ「いいや、君は支配欲より性欲の塊だった。」

勇者「そう言われると俺は女性にドン引きされてしまうな…」

ミヨシ「まあ落ち着いて。人を殺すよりマシだ。ある程度平和的な技能で何より。」

勇者「しかし………、俺の習得した魔法は変態の為にあるようなものだな。」

ミヨシ「女優さんに喜ばれるな。」

勇者「発想を転換させたらそうだけど…」

ミヨシ「ま、君の再就職先は決まったみたいなものだね!あははは!」

勇者「うぅ………・・・」ガクリ

ミヨシ「しかし、俺も浅はかだったが、知り合ってすぐのやつに魔法を伝授してしまうとは……」

勇者「お前さんのノリじゃないのかな…?」

ミヨシ「俺今回のことでよくわかった。あまり人にホイホイと魔法を伝授すべきじゃなかった」

勇者「それはまあ……」

ミヨシ「とりあえず今日はここで休め。」

勇者「どこの馬の骨かわからない男に色々とやってくれてありがとう」

ミヨシ「気にするな」

ミヨシ「(勇者、か………、あいつも結構苦労してるんだろうな…、脳内で見させてもらったぞ……)」

翌日───
勇者「どうもありがとう。」

ミヨシ「別に感謝されることではない」

勇者「しかし、俺にとって安心できたのは確かだ。」

ミヨシ「そうか。ならいいや。」

勇者「本当にありがとう。」

ミヨシ「これからどういうふうに行くんだ?」

勇者「このまま山道を通って行こうと思ってます。」

ミヨシ「この先だとヨシダコオリヤマ、サトウカナヤマの町と続く。」

勇者「えらい長い名前の町ですね。」

ミヨシ「どちらも名家の一族の領土だからあまり粗相なことはしないほうがいいよ。」

勇者「ご忠告ありがとうございます。」

ミヨシ「気をつけるんだぞ。」

勇者「それでは、これにて。お世話になりました。」

俺にとってこれからの旅はどうなるかわからない。
目指すは魔王の子孫と称し魔王と号すモウリ魔界王国である。


国境沿い───
勇者「む………。天候や怪しくなったか……。」

勇者「これが魔界王国の力なのか………。」

勇者「ここにはとても強い魔王と3人の息子がいると言われている。敵意は見せてはいけない…。」

しかしこの行動が俺の予定を大きく狂わせるとは思いもしなかったのだ………。

クレ───
戦士「2人とも、見て、見てよ!船よ船!」

魔術師「戦士さん、僕たちの国にも船ありますよね。」

尼僧「そうです。何であのような船に……」

戦士「あんな巨大な船、ここ近辺ではクレしかないんだよ?」キラキラ

尼僧「正直、戦士さんにそのような趣味があったなんて思いませんでした。」

戦士「まあいいじゃんいいじゃん。人の趣味の1つや2つ~♪」

魔術師「この人、どうにかしないと……」

尼僧「勇者さま~」ウルウル

戦士「あ~、船~…」

魔術師「ダメだこりゃ……」

王国・謁見の間───
家臣A「王様!」

王様「どうしたのだ。俺は忙しいのだぞ。」

家臣A「素破の情報によりますと見事野球道具を奪還したとの報にござります。」

王様「ほう、それはよかった。して偽勇者はどうした。」

家臣A「それが………」

重臣「家臣A、いかがなさったのか?」

王様「まさか、むざむざと逃したとはあるまいな?」

家臣A「申し訳ございません。黒服の男たちが前を塞いでおりました故…。」

王様「家臣A、そなたを………」

王子「父上。」

王様「どうした、王子。」

王子「その黒服は私の手の者にございます。」

王様「どういうことだ。」

王子「父上もお人が悪い。そもそもの非は父上にございませんか?」

重臣「王子様、いかに王子様と言えど、父上君であられる王様にそのような口ぶりを…」

王子「黙れ!」

重臣「ぐぬぬ……」

王様「王子よ、偽勇者の件どこらへんまで知っておる。」

王子「それはいくら父上とてお教えできることではございません。」

王様「貴様……、息子だからと……」

王子「大臣に父上の野球道具を渡したのはまぐれも無くこの私でございます。」

重臣「な…?!」

王様「なんと!?」

家臣B「王様、これは一大事かと…」

家臣A「確かに…、今は大臣様が外出中とは言え家中は混乱致しましょう。」

王様「ぐぬ………」

王子「お前たち、落ち着くがよい。我とてこのアカマツ王国を混乱する気なぞないわ。」

王様「では何故このようなことを…」

王子「父上はいささか愚鈍なお人である。」

重臣「王子様!」

王子「国民に新たな税を課したばかりではなく、1人の国民を罠にかけた。いくら父上とは言え許されざるもの。」

重臣「言い過ぎにございますぞ。」

王様「王子……、それは本気なんだな?」

王子「ええ、本気にございます。権謀術数に長けた父上とは言え、政治力は皆無と見なさせていただきます。」

家臣A「王子様……」

王子「父上」

王様「なんじゃ。」

王子「我をここで殺すか?殺せば跡継ぎはいなくなり、ヤマナや友好関係を結んでいたホソカワまで攻めてくるだろうな。」

王様「なぜそこまで……」

王子「知略に富んだ父上なら答えはすぐに出るはずだ。」

家臣B「うぐ………」

重臣「王子様はこの王国を2つにするおつもりか!」

王子「いいや、父上次第で隠居してもらおうと考えておる。」

王様「なんだと…?この俺を隠居にだと…?」

王子「その通りだ。俺はあの偽勇者を配下につける。」

王様「なんという………」

王子「ついでになんだが………、この前きた縁談の話、あれは受けておく。あの国の姫は美姫だからな。」

重臣「………」

王子「我はこれで。父上の答えを楽しみに待っておる。あはははは!!!」

家臣A「王子様………」

家臣B「………」

王様「…………」ギリッ

………
……


モウリ魔界王国領内───

魔物「キシャアア!!」

勇者「うりゃあ!!」ズバッ!!

魔物「」バタッ

勇者「領内に入ってからかやけに魔物に襲われるな…」


モウリ魔界王国は文字通り魔物の王国という。
しかし魔王の長男は人間の娘を娶っているらしい……。


魔物B「キシャア!!」

魔物C「キシャア!!」

勇者「くそ、またか!!」

………
……


勇者「」ズバッ!!

魔物B「」バタッ

勇者「」ズバッ

魔物C「」バタッ

勇者「く・・・くそ・・・、また怪我した……」

勇者「しっかし、魔物の町が全く見えないじゃないか…。」

俺は怪我した右腕を止血するが、赤く染まっている状態が痛々しい。

勇者「しかし1人で魔王を倒すには無茶な気もするんだが……、まあパスすればいいだけだよな」


しかし戻ろうとするもまたいつ魔物に襲われるかわからない。
八方塞の状態であった。

勇者「仲間さえいてくれれば………」

俺は悲しみにくれつつ深い眠りについてしまった。

一方、サトウカナヤマ───
魔術師「着いたね~」

尼僧「道中魔物退治で疲れました……」

戦士「まさかあんな手強い魔物がでてくるとは…」

尼僧「早く牡蠣食べたいですぅ~~!!」

魔術師「僕は神社が見たいよ~!」

戦士「ま、待ってなんか禍々しい雰囲気を感じられない?」

魔術師「禍々しい、ですか?」

尼僧「よく見たら兵士の方々がピリピリしてますね……」

戦士「ちょっと何が起きてるのか聞いてみましょう。」

魔術師「そうだね、聞いてみたほうがいい。」

酒場───
槍兵A「ん?なんだ?情勢?」

戦士「そうです。何かここの兵士の方々がピリピリしておられるようですので。」

槍兵B「そりゃあれよ。オオウチとモウリとの戦いに備えてよ。」

戦士「オオウチとモウリ?」

槍兵A「ああ。うちの国はアマゴという魔界王国と手を結んでいる。」

尼僧「ま、魔界王国?」

槍兵A「ああ、そうだ。」

魔術師「つまり、魔物の国ってことですか?」

槍兵B「もちろんその通りさ。モウリも魔界王国だぞ?」

尼僧「ほぇ~……」

戦士「何か嫌な時に来ちゃったわね……」

槍兵A「実のところ、オオウチ、モウリともに名家でね…」

魔術師「かなり長く続く国のようですね。」

槍兵A「それに引き換え我がアキタケダ王国は4代100年というまだまだ新興国なんだよ。」

戦士「確かに隣国のオオウチという王国はかなり広い領土を持っているという噂を聞いたことがあるわ。」

槍兵B「オオウチの王様の姪御にモウリの魔界王国の子息に嫁いだものよ」

魔術師「こ、これは………」

尼僧「完全にここが危ないですね………」

槍兵A「その通りだ。」

槍兵B「向こうが二万も三万も兵を出してみろ。こっちはどれくらい耐えられることか……」

戦士「モウリという国も強いんですよね?」

槍兵A「強い強い、現魔王も強いけども3人の息子も強いんだよ。」

槍兵B「本当は9人も息子がいるんだけどな。」

魔術師「ならばなし崩しにいける状態じゃないね。」

槍兵A「現に今は国王の武力でやっとの状態だ。」

尼僧「これは早いうちに打たないとやばいんじゃないでしょうか?」

槍兵B「それくらい俺らにも伝わっている。打つ手がないのだ。」

魔術師「僕聞いたことあります。」

戦士「どういうこと?」

魔術師「この西サンヨー地方はオオウチを筆頭に多くの小王国が散らばっていたそうです。」

槍兵A「だがここ30年、モウリ魔界王国が力をつけ始めて多くの小王国を併呑していったんだよ。」

尼僧「しかし魔王同士の対立……、興味深いです……。」

槍兵B「まあアマゴの場合はオオウチと対立してモウリがオオウチについた、というだけだからな。」

槍兵A「まあこの周辺だとオグラヤマに城を構えるキッカワもモウリとの戦を進めているそうだ。」

戦士「本当に物騒だわ…。」

槍兵A「キッカワもある意味化け物だよなあ」

槍兵B「言えてる。」

魔術師「どういうことなの?」

槍兵A「ちょいと酒を奢ってくれるなら話してやってもいいぜ?」

戦士「く………冒険者だからって……」

槍兵B「まあいいじゃないか。情報料だと思って…」

戦士「仕方ないわね………ブツブツ」チャリン

槍兵A「ありがとよ姉ちゃん」イヒヒヒ

尼僧「それでキッカワという国が何故化け物なんですか?」

槍兵A「まあ山間部にあるせいか屈強揃いなんだよ。」

魔術師「山賊とかのなりなのかなあ?」

槍兵A「いや、立派な兵だ。しかも陽動や襲撃、突撃を得意としている。」

槍兵B「前にやつらと一戦した時はこっちが大敗しちまった。」

魔術師「それだと海面に領土があるアキタケダ王国が軟弱ってなっちゃいますね…」

槍兵A「いや、そんなに軟弱でもないんだがな…」

尼僧「でも……、キッカワに大敗しちゃってるんですよ?」

槍兵A「そうだ。だがな、周りが強過ぎるんだよ。」

戦士「ああ………なるほど……そういうこと……」

槍兵A「姉ちゃん勘がいいねえ」

魔術師「つまり、他の国なら負けることはないけども……」

尼僧「オオウチ、モウリ、アマゴ、キッカワの場合だと桁違いの強さがあるってことなんですか?」

槍兵A「その通りだ。」

槍兵B「西サンヨー地方はこの五強がひしめき合ってるんだよ。」

槍兵A「食うか食われるか……」

槍兵B「キッカワの王も武において優れておいででしかも長寿。ありゃ化け物だよ。」

戦士「遠からずここも血の海になってしまうかもしれないのね?」

槍兵A「俺だってまだ死にたくねえし女も抱きてえ」

槍兵B「なんぼのもんじゃああ!!」

槍兵A「ぎゃはははは!!!!」

魔術師「元気ありますね………」

槍兵A「なあ姉ちゃんたち、よく見ると可愛い顔してるの~」

尼僧「い、い、いえ~、そんなことは……」

槍兵B「夜の相手してくれないか?」

戦士「すみませんがお断りします。」

槍兵A「そんなこと言うなよ~」

魔術師「あまりしつこかったら魔法で痛い目をさせなければいけませんよ?」

槍兵B「そんな~」

尼僧「と、と、とにかく失礼します。行こう!」ドタドタドタ

戦士「ちょっと尼僧!」バタバタ

魔術師「待ってよ!」ドタドタドタ

槍兵A「なんなんだよ一体…」

槍兵B「ふぃ~」

………

戦士「尼僧ったらどうしたの?」

尼僧「はあはあ……ああ言うのってやはり好きな人じゃないとダメと思うんです。」

魔術師「何か男を拒否してるような感じもするんだけど……」

尼僧「だってあれ明らかに体目的じゃないですか……」

戦士「ま、まあそう言われれば……」

尼僧「それに私には想い人がいまして……」

魔術師「尼僧ちゃん、アッチのほうの人間かと思っちゃった。」

尼僧「あ、アッチとは何なんですかぁ!!」

戦士「どうせ百合なほうと考えたんでしょ?」

魔術師「あら、バレちゃった。」

尼僧「うう………」

………
……

モウリ魔界王国領内──
魔物A「シャー」

魔物B「キシャー」

魔物C「ウガー!」

勇者「へ?!」ビクッ

魔物兵隊長「起キタカ人間ドモ」

勇者「ま、まさか?!」

魔物兵隊長「ワザワザ殺サレニ来タカ愚カ者メガ」

魔物A「シャー」

魔物B「キシャー」

魔物D「シュポッポー」

勇者「」プッ

魔物兵隊長「貴様笑ッタナ!」

勇者「いえいえ笑っておりません」

魔物A「シャー」

魔物B「キシャー」

魔物E「プオーン!」

勇者「」ブフッ

魔物兵隊長「マタ笑ッタ」

勇者「これはただのしゃっくりですよ。」

魔物兵隊長「信用デキナイ。絶対ニ笑ッタハズダ」

勇者「だから誤解ですって!」

魔物A「シャー」

魔物F「コー」

魔物G「ダンス!」

勇者「」ブホッ

魔物兵隊長「貴様!」

勇者「ありえない!あははは!三連コンボで社交ダンスとかありえないから!」ハハハ

魔物兵隊長「者共、コヤツヲ捕ラエヨ!」

勇者「ちょ、ちょ、コラ!」

魔物A「シャー」

魔物B「キシャー」

魔物D「シュッポッポー」

勇者「ぐははは!!」

魔物兵隊長「………」ゴフッ

勇者「ぐふっ………」ガクリ

魔物兵隊長「連行スルノダ」

魔物A「シャー」

魔物C「ウガー」

魔物H「カラオケー!」

………
……

ヨシダコオリヤマ城・牢内───
勇者「う、う………痛い……」

勇者「ここはどこだ…?」キョロキョロ

牢番「やっと起きたか。ここは牢だ。」

勇者「牢……、だと……?」

牢番「貴様は我が領内に侵入して不貞な行為を働いた容疑がかけられておる。」

勇者「俺は野宿していただけだぞ!」

牢番「だがお前は道中の仲間を二十体以上殺したはずだ。」

勇者「それはまあ…………襲ってきたんだし、倒すのは致し方ないと思っている。」

牢番「まあせいぜい絶望を楽しむんだな」


そしてこれが俺の精神ダメージになるとは………容易に分かっていた。
分かっていても辛かった。

サトウカナヤマ・城下町───
城兵「モウリから敵が攻めてくるぞー!」

男壱「避難するのだ」

女壱「きゃー!!モウリの大軍が攻めてくるわ!」

女弐「誰か、誰か!」

男弐「どこか安全な場所はないのか!!」


アキタケダ王国の城下町は大混乱となっていた。
何せモウリの軍勢が攻めてくるということはオオウチも来るという算段だからだ。

尼僧「どうやらこの町を出てもちょっと危ないみたいですね。」

戦士「しっかしどうしたもんだろう。こんな危険な時に。」

魔術師「僕たちどうなるんだろう?」

戦士「多分、2~3日で戦争は終結すると思うよ」

尼僧「ならいいんだけど………」

魔術師「今町中の人たちが大混乱でひしめき合ってるんだよね。」

尼僧「無理に動くと余計な損害を生んでしまいかねないですね。」

戦士「とりあえず2~3日は街で様子見というふうにしようか。」

魔術師「戦士さんの意見に賛成します。」

尼僧「私もです。ちょっとバラバラになるのが怖いもん。」

戦士「どうなるのかなあ……??」

牢獄生活2日目───
勇者「おい、俺は一体いつになったら出られるんだよ。」

牢番「さあどうだろうな。」

勇者「早くここから出たい……」

牢番「当分は無理だな。これから戦争が始まるからな。」

勇者「せ、戦争だと?!」

牢番「ああそうさ。隣国を攻めるのさ。」

勇者「なんだって……?!」

牢獄生活3日目───
勇者「なあ俺まだ出られないのか?」

牢番「昨日言った通りだって!」

勇者「うわ~牢獄の中暇過ぎるんだよ……」

牢番「なら何か暇でもつぶしておけばいいじゃないか」

勇者「そうは言ってもだなあ、1人では何もすることないんだよ………」

牢番「まあ戦争はすぐに終わる。その後に拷問でもなんでも受ければいいんだよ」

勇者「この野郎・・・」

サトウカナヤマ・城下町───
尼僧「どうやら本格的に魔物はここを襲撃してくるようですね……」

魔術師「ここの兵士様たちも出撃したようだし。」

戦士「一体どうなるのよ?」

魔術師「まあしばらくの辛抱です。」

尼僧「もしこの城が落ちてしまったら…?」

戦士「私たちは捕虜になってしまうかも……」

魔術師「そ、それは嫌だよ!」

尼僧「あたしもです!」

戦士「わかってるわよ!私たちのレベルでは太刀打ちできそうにないのに………」

魔術師「しかもあの数………」

尼僧「気の遠くなる数です……↓↓」

魔術師「でも僕たちは戦争に関わってはいけないと思う」

戦士「そう、ね………私たちは一介の冒険者だもの。」

尼僧「戦争に介入すれば今後自由に行動が制限されてしまいます。」

魔術師「周りからの信用もなくなるでしょう。」

戦士「困ったものだ………。」

魔術師「でも今のところは人間対魔物なんだよね?」

尼僧「でも………」

戦士「オオウチが介入してくるのは目に見えてるだろうね……」

魔術師「やっぱりここは静観かぁ~」

アキタケダ軍本陣───
ミツカズ王「我が軍の兵は千五百。対する敵の数は如何ほどに?」

側近A「三千ないし五千はあるかと……」

側近B「更にオオウチの援軍一万五千はあるかもしれないと思われます。」

ミツカズ王「アマゴの援軍があっても七千がいいところだな………。」

側近A「城には二千程度の守備兵がおりますが、城を攻められるとなると…」

ミツカズ王「持ちこたえられないやもしれないな…」

側近B「やはりノブシゲ様を城の守備に任せていることに不安でも?」

ミツカズ王「ああ。あやつは甥とはいえ戦に長けていない。」

ミツカズ王「例え俺がここで死ねばたちまちこの国は滅亡だ。」

側近A「御父君・モトシゲ様も戦で亡くなられておりますゆえ・・・」

側近B「こら、滅多なことを言うでない」

ミツカズ王「いや、大丈夫だ。俺はここで死にはしない。」

側近A「王様!」

ミツカズ王「俺も王だ。そう簡単に死んでたまるものか!」

伝令「でんれー!!伝令でございます!」

側近B「申してみよ。」

伝令「はっ!!北の山においてモウリの魔軍の数凡そ五千着陣。」

ミツカズ王「五千か………。」

側近A「予想通りですな。」

伝令「西のほうからはオオウチの軍勢凡そ一万八千が城に向けて進軍中にございます!」

側近B「なっ…!!」

ミツカズ王「オオウチの動きは既にそこまで早かったのか………」

側近A「一万八千では城は持ちこたえられませぬ!」

ミツカズ王「しかし………ここで敵に背を向ければ………、無念……」ガクッ

側近B「王様、ここは早急にモウリの魔軍を叩き早急に城に戻りましょう。」

側近A「私も早く敵を叩くことが最良なことと思います。」

ミツカズ王「よ~し、全軍モウリの魔軍に突撃だぁーッッ!!!」

オオオオォォォォッッーーーー!!!!

牢獄生活5日目───
勇者「まだかなまだかな…………」

シーン

勇者「誰もいないのかよ………」

シーン

勇者「牢番も牢番でどこに行きやがったァァァ!!!」

シーン

勇者「牢は薄暗いし、鍵は3個もあるし、飯もまずいし………」

シーン

勇者「はぁ…………」

サトウカナヤマ・城下町───
城兵A「オオウチ軍が攻めてきたぞー!」

城兵B「全員持ち場につけぇー!!」

ワーワー キャーキャー

尼僧「結局ここに滞在したせいで巻き込まれちゃいましたね………」

魔術師「仕方ないよ……。フクヤマにも戻りたくても戻れないんだし。」

戦士「この城も戦火は逃れられないみたいだね。」

城兵C「おい、そこの女たち!」

尼僧「ん?」

戦士「私たちのこと?」

城兵C「そうだ!」

魔術師「僕たち逃げる機会を逸しちゃったんだよね……」

城兵C「旅人か?」

尼僧「はい、そうですよ?」

戦士「本当はオオウチ王国の領内を歩きたかったんだけど……」

魔術師「この通り戦争で進めない・・・」

城兵C「そか……、それはすまなんだ。」

尼僧「いえいえ、貴方が悪いわけではないんですよ!」

城兵C「王様は必死に戦っておられる。俺も戦わなければいけない!」

魔術師「王様に頑張ってもらわないと……、ねえ………」

戦士「そうねえ………」

城兵C「なのでできれば早く避難をば、と……」

尼僧「えっとどこにですか?」

城兵C「例えばあそこの高台とか」

戦士「もし敵兵が潜んでいたら?」

城兵C「海岸沿いではどうでしょう?」

魔術師「先鋒によって抑えられていたらどうするの?」

城兵C「じゃあどうするんだよ?」

尼僧「うーんと………」

魔術師「だから逃げる場所がない。」

戦士「クレやフクヤマにも戻れない。」

城兵C「はぁ・・・」

城兵C「ああすまない……」

魔術師「だから僕たちはどうすればいいの?」

城兵B「それくらい自分で判断しろよな!」

戦士「あんた女性に向かってなんて言う口の聴き方してるのよ!」

城兵B「当然のことを言ったまでだ!」

魔術師「あなたもそうなの?」ジロ

城兵C「そりゃ当たり前だろう。何日間滞在したのかわからないが……」

戦士「私たちはねキュウコクの島に向かってたの。なんでこんなトラブルに巻き込まれないといけないのよ……」イライラ

尼僧「み、皆さん落ち着いて……」オロオロ

戦士「これが落ち着いていられないってーの!」

城兵B「こっちなんかなオオウチの大軍が迫ってきてるのにお前らがちんたらするから予定が狂うんだよ!!」

魔術師「ここ、旅の人に対して不案内すぎるよね~」

城兵C「お前、責任転嫁するつもりなのか?」

魔術師「いいえ、元々の責任は貴方たちでしょ?」

城兵C「なんだと?!」

城兵B「ちょっと待てよ。戦争の原因となったのはモウリの魔軍の奴等だ!」

戦士「あなたらには旅の者や町の人たちを守る義務が発生するのよ!」

城兵B「それはそうだが全部俺らが守る必要はない!」

戦士「いいえ、ちゃんとしてもらわないとこっちの命がいくつあっても足りないわ!」

城兵C「ふざけるな!全部俺らでかばいきれねえぞ!」

尼僧「ふ、2人とも……城兵さんたちの言うことも一理ありますよ?」オロオロ

戦士「尼僧、あんたこいつらの肩を持つつもり?」ギロッ

尼僧「ふえぇ?!」ビクッ

魔術師「僕たちは十分自分の身は自分で護ったよね?」

尼僧「そ、それはそうですけど………」

城兵B「お嬢ちゃん、さっき俺らのことにも一理あるって言ったよなあ?」ギリリ

尼僧「ひいぃ!!い、言いました……」

城兵B「どっちが正しいか、わかるよな………?」

尼僧「そ、それは………」

戦士「私たちのほうよね?」

城兵C「俺らは間違えてるのか?」

尼僧「ふえぇぇ・・・・」ガクガク

伝令「でんれー!伝令だ!」

城兵B「おー、お疲れ。王様は戻られるのか!?」

伝令「今退却の最中だ。」

城兵C「オオウチの攻撃を防がなければな」

戦士「ちょっとちょっと。」

城兵B「なんだよ?」

伝令「おい、お前らこのお姉ちゃんたち、お前がナンパしてきたのか?」

魔術師「冗談じゃないよー!」

城兵B「あったりまえだろ!」

戦士「失礼ね!」

伝令「ちょちょちょっと………」

尼僧「あわわわわ・・・・」

城兵C「もうさお前らの身は自分で護ってくれないか?」

魔術師「それは貴方たちの責務だよね?」

城兵C「いいや、お前らだろ?」

戦士「冗談じゃないわよ!何で?」

城兵B「自分の身くらい自分で護れってことだよ。」

戦士「意味がわかんない!」

尼僧「あの……さっきから話が平行線なんですけど……」

伝令「あ………あのさ……」

城兵B「何か案でもあるのか?」

魔術師「言ってください」

城兵C「はやく!」

伝令「お前らさ敵がもうすぐここに来るのにようしゃあしゃあと口喧嘩してるんだな!」

戦士「仕方ないでしょ!」

伝令「黙れ!」

戦士「あう………」

尼僧「あのぉ……」

伝令「何?」ギロッ

尼僧「はううううぅう…」フルフル

伝令「俺としてはさっきまで戦地で戦ってきたんだよ。」イライラ

城兵B「そ、そ、そうだったね……。」

戦士「あ………」

伝令「それがなんだよ!緊張のヘッタクレもないじゃないか!」

城兵C「うぐ………」

魔術師「…………」

伝令「両方ともちゃんとしろよ!」

戦士「ぐ………」

城兵B「は、はい!すみません!」

尼僧「すみません~~~」

魔術師「すみません………」

伝令「はぁ………、お前らの言いたいことはわかったが、ここで言い合いしたら士気にも関わるんだよ」

城兵C「それはそうだ……」

戦士「確かにモチベーションが下がるわね……」

伝令「おまけにお前らは人を助ける責務を放棄しようとするな!!」

城兵C「ひぃ!!」

城兵B「申し訳ありません!」

魔術師「ふふ…」ニコ

戦士「ほ……」

伝令「お前たちもだぞ!自己責任だぞ!」

魔術師「げ……!」

尼僧「すみません…↓↓↓」シュン

戦士「ぁ……」

伝令「今回は喧嘩両成敗だ。全員城の中に入れ!」

城兵B「分かりました。」

城兵C「申し訳ございません」

魔術師「わかりました。」

戦士「こちらも非を認めます。」

尼僧「あぅー・・・」

牢獄生活7日目───
勇者「あー………」

シーン

勇者「誰もいない………」

勇者「俺ってこのまま死ぬのかなー………」

勇者「俺、一体何してんだろう…………」

ヨシダコオリヤマ城・魔王の間───
魔王の間にはモウリの魔王と3人の息子がいた。

魔王「して牢獄にいる者はどうしておる?」

長男「はい、虚ろな表情をしております。」

魔王「反抗的な態度は見られているのか?」

次男「逆に自虐的になっております。」

魔王「しかしただの旅人かもしれぬ……」

三男「どうしましょう?ただでさえアキタケダと交戦中。」

魔王「ジジイのやつめ、アキタケダに虚を衝かれてむざむざと退却を許しよった。」

長男「でもまあ損害はそれほどでもないそうではありませんか。」

魔王「それがだ。アキタケダにとっては正面から衝いた。しかしジジイはどうかな?」

三男「楽勝だと思い気が緩んでのでしょう。」

次男「ジジイらしくない…。」

魔王「オオウチの協力を得ているからな。」

三男「それでもジジイらしくありませんね……」

長男「父上、アマゴのほうは動きがありません。」

魔王「なるほど……、アマゴのほうは静観というわけか…」

三男「あの狼は食えませんねえ」

魔王「全くだ。」

次男「アキタケダのほうですが、じっくりと落とす作戦ですか?」

魔王「力攻めと兵糧攻めを交互に………」

長男「父上もなかなか鬼畜なお方だ………」

三男「だがそうしなければアマゴに牽制できないというもの」

魔王「よくわかってるではないか。」

次男「私は力攻めで一気に勝負を決めたいと思ってます。」

三男「私は兵糧攻めがよいと思います。」

長男「自分なら内応者を出させるかなあ?」

魔王「ぐははははは!これは面白い。三者三様の考え方、実に面白い。」

次男「さてと、頑張りますか……。」

三男「私もちょっと行って参ります。」

魔王「おう、気をつけろよ。」

次男「わかってますよ。」

三男「父上には悲しい顔とかさせませんから。」

長男「ふむ………」

魔王「うーむ………」

長男「して父上、牢にいる人間をどう致しましょう?」

魔王「四男を連れて尋問してはどうか?」

長男「四男を連れてですか?」

魔王「あいつはわしの息子の中で一番反抗的だ。」

長男「そうですね………」

魔王「それに比べて八男九男は可愛い可愛い」

長男「父上………」

魔王「餅を持って九男のところに行く。後は頼んだぞ」

長男「あ………、親バカめ……」

………
……

牢内───
勇者「」ボー

シーン

既に勇者は抜け殻のようになっていた。
人間1週間も暗いところに閉じ込めてしまえば心身を喪失してしまうのだろう。


勇者「」ボー

勇者「ふー………」

ワイワイガヤガヤ

勇者「ん?飯かな……」

四男「なんで俺がここに行かなきゃいけねえんだよ!」

長男「あのなー……」

勇者「なんだうるせー魔物か…」ボソ

四男「おい、こいつなんか言ったぞ?」

長男「私の耳には『うるさい魔物』、と…」

四男「悪かったな!どうせ俺は口うるさい魔物だよ。ばーか!」

勇者「あっそーですか…」

四男「この野郎!」

長男「四男待てよ…。おい、そこの男」

勇者「何だよ・・・」

長男「体をこっちに向けてくれ。」

勇者「ん?何だ?」

長男「今我が国が戦争しているのは知っているな?」

勇者「知っているような知らないような……」

四男「おい、長男兄さん何故俺がここに来る必要があるんだ?」

勇者「何故あんたら俺のところに来るのかもわからないなあ。」

長男「そこだよ。あんた人間だろ?」

勇者「ああ、そりゃそうだが?」

長男「アキタケダの城に潜入してみないか?」

四男「長男兄さん!」

長男「いいから!」

勇者「ん?どういうことだ?」

長男「私たちはどうしてもこの戦いを早く終わらせたいんだよ。」

勇者「ほほう。」

長男「アキタケダの王をどうしても捕まえたい。」

勇者「つまり俺に戦争に加担しろと?」

長男「まあそうなるな……。」

勇者「あと魔物に味方しろってことだよな?」

長男「人間にこれ言うのはアレなんだけどな。」

四男「長男兄さん、こいつの何に期待してるんだよ?」

長男「お前は黙ってろ!」

四男「なんだよ・・・」

勇者「言ってみろ……」

長男「アマゴ対策に君の力を貸して欲しい」

勇者「だとすれば……」

長男「アキタケダとアマゴに恨まれるだろうな」

勇者「ち………」

四男「………」

長男「先ほど潜入と言ったが、四男の傍にいてくれ」

四男「は?」

勇者「え?」

長男「降伏勧告を早々にしてほしい」

勇者「俺がこいつの御守をするってことなのか?」

四男「冗談じゃないぞ長男兄さん!俺はもう子供じゃないんだ!」

長男「わかってる!」

四男「俺だって魔物の端くれ!人間になぞ負けるものか!」

長男「四男、それが甘いってことだ。」

四男「どういうことだよ!」

長男「この男は捕まえる前に同胞二十余りを殺した。」

四男「こいつがか?許せん!」

勇者「………」

長男「だがな、この男にとっては生きるための行動だったかもしれないんだよ」

四男「どういうことだよ?」

長男「もし敵が襲ってきたのならお前はどうするのか?」

四男「倒す。というか殺す。」

長男「ああ、もし自分もその立場なら殺しているな。」

四男「倒さなければ自分が死ぬ。それがこの世界の運命。」

長男「ああその通りだ。」

勇者「…………」

長男「この男もその運命を持っているんだ。」

四男「この男が?」

勇者「ああ………。確かにこいつの言うとおりだ。」

長男「だよね?」

四男「むむ………」

勇者「俺は勇者だ。」

長男「え?」

四男「何?!」

勇者「だが…………」

長男「ん………?」

四男「…………」

勇者「勇者の肩書きを剥奪された。ただの一冒険者だ。」

長男「ほぉ………」

四男「人間同士も争いはするんだな。」

勇者「当たり前だろう!」

長男「四男はやはり何も知らなかったんだな……」

四男「長男兄さん!」

勇者「騙し騙されそれを生きる、人間はそうやって繰り返してきた。」

長男「勇者さん、それは魔物だって同じことだ。」

勇者「そう………なのか?」

長男「愚かなものだよ。全世界、魔物と人間は沢山の国を作って争っている。」

四男「………」

勇者「ああ………」

長男「実は俺の嫁は人間だ。」

勇者「な、なんだと?!」

長男「こいつは認めてないが、本当だ。」

四男「く………」

長男「現オオウチの王の姪御にあたるそうだ。」

勇者「そうか。」

長男「後で分かったことだが、本当はいとこだとよ。」

勇者「ところで、モウリとオオウチは同盟国と聞いたことがある」

長男「そう、同盟を強固にするために婚姻を用いた。」

四男「魔物が人間と……認めないぞ……」

長男「これが我が父魔王の考えだ。」

勇者「つまりあんたらの父親は人間も魔王も関係ない、と?」

長男「まあそうでもない。ただ、利害の一致があれば手を組むのは悪くない、という考えだ。」

勇者「なるほど………」

四男「俺は絶対に認めないぞ………」

長男「四男、父上はそなたを冷遇している意味がこれだよ。」

四男「ぐう………」

勇者「なあ……」

長男「なんだ?」

勇者「俺は祖国を自分の王により切り捨てられもう戻れない」

長男「それはまた……」

四男「………」

勇者「もしよかったら力を貸してもいい」

長男「ほほう………」

四男「ふんっ………」ギロッ

勇者「ただし、アキタケダの王には恨みなどない。生かしておいてくれ」

長男「うーむ………それは父上の考えることだ。俺が約束を守るという保証は何もない。」

勇者「そうか……、でも今の俺には何も失うものはない。」

四男「それは本当か?」

勇者「強いて言えば自身の親くらいだ……」

四男「やっぱり嘘じゃねえか。」

勇者「お、親だけは大切にしたいんだ!」

長男「親か………、自分も大切にしなくてはな……」

四男「ただの親バカじゃないか……」

長男「確かに父上は親バカだ。今でこそお前には冷遇しているが幼少のころだってお前にも愛しておられてたぞ。」

四男「ふんっ」

勇者「ま、とりあえずこいつの御守をすればいいんだな?」

長男「そうだ。四男は降伏を勧める使者として赴けばよい」

四男「ただの使者か……。人間を殺してやりてえ………」

長男「四男………」

勇者「…………」

長男「とりあえず出立は明日だ。」

勇者「あ、明日か?!」

四男「長男兄さん、本当に俺はこいつと?」

長男「そうだ。こいつと2人でアキタケダの城に行って来い!」

四男「わかったよ………」

勇者「ところで……」

長男「ん?」

勇者「俺はいつ牢から出られるんですかねえ?」

長男「あ」


この後俺は牢から出ることを赦された。
そして俺は人間に対する裏切り行為へと走った。
と、言ってもモウリの魔王の言葉に共感しただけである………。

2日後、サトウカナヤマ城・謁見の間───

ミツカズ王「もうすぐこの城に使者が到着するんだよな?」

側近A「はい、恐らく降伏を促す使者かと……」

側近B「噂によりますれば魔王の四男が務めるとのこと。」

ミツカズ王「ふむ………。」

側近B「正使が四男で副使が謎の男だそうで………」

側近A「謎の男?」

ミツカズ王「ほうどのような者なのか?」

側近B「忍によりますればフードを被った魔法使いぽい男だとか……」

ミツカズ王「魔法使い………。魔術師とやら。」

魔術師「はい……。」

ミツカズ王「今回はそのほう3人にこの戦を巻き込んで申し訳ない。」

戦士「い、いえ…私たちは特に……」

ミツカズ王「それはよかった。」

魔術師「それで私に御用でしょうか?」

ミツカズ王「もし副使の謎の男が暴れようものなら攻撃をしてほしい。」

魔術師「で、ですが……」

ミツカズ王「これはお願いではない。命令だ。」

魔術師「あ、はい………わかりました……。」

城門前───
四男「いよいよだな。」

勇者「ああ…」

四男「しかしお前はフードを被ると怪しさが増すな。」

勇者「うるさい…」

四男「ふはは」

近衛兵A「こちらへどうぞ。」

四男「はい」

勇者「わかりました」


2人は近衛兵の後についていき城内へと入る。
2人の目に見える扉の奥にその王がいるのだろうか。

近衛兵A「扉を開けます。」

四男「ああ……」


近衛兵は扉を開いた。
しかしそこも廊下であった。
とても長い廊下。

四男「すごく長い廊下だな。」

勇者「そうですね……」

近衛兵A「我が王国の誇る道と申しておきましょうか」

四男「そなたの王国の誇る道、か………」

勇者「………」


しばらく歩くと再び扉が見える。

四男「いよいよだな」

勇者「ああ」

近衛兵A「いいえ」

四男「な、なんと!」

近衛兵A「まだ廊下でございます故………」

勇者「は……!」


その後近衛兵が案内したが扉の奥には廊下ばかり。
まるで迷路であった。

勇者「この城は迷宮か!」

四男「く………」

近衛兵A「いかにも」

勇者「ち……」

四男「おのれ……王はどこだ?!」

近衛兵A「ふふふ……お戯れを……」

勇者「なぬ?!」

四男「貴様謀ったな?!」

近衛兵A「この城は本城と副城の2つに分かれております。」

四男「副城だと?!」

勇者「………」

近衛兵A「すなわち副城を出ない限り本城には辿り着けません。」

四男「く、くそ……」

勇者「その副城というやつを越えてやる……」


またこの副城というのが厄介だった。
部屋はあれども何の変哲もない部屋ばかり。
行けども行けども扉ばかり。

勇者「まだか!まだなのか!」

四男「こんな城吹き飛ばしたいもの……」ギリリ

近衛兵A「(そう簡単に王様に会わせるわけには参りません)」

勇者「おい、四男……」

四男「な、なんだ?」

勇者「覚悟は決めておいたほうがいいな」

四男「その通りだな」

近衛兵A「(この城はなんとしてでも守り抜かなければならないのです。)」

勇者「くそ………」

四男「おい」

近衛兵A「なんでしょうか?」

四男「何を企んでるのか知らないが貴様にはここで死んでもらう」

近衛兵A「な、な、何を?!貴方たちは使者でしょ!」

勇者「その使者を虐げるとはとんでもねえ国だな。」

近衛兵A「虐げている?じょ、冗談なことを!」

四男「俺らはどれくらい歩かされたと思っているんだ?」

近衛兵A「し、知りませんねえ…。第一丁重ににしてるではありませんか……」

勇者「こんな迷宮に誘い込んでよくも丁重という言葉が出てくるものだ。」

四男「そんな失礼な国の城にはちょっとくらい爆発させてもいいんだろうよ」

近衛兵A「困りますよ!そんなことされたら!」

勇者「こっちだって困ってるんだよ!早く王に会わせろ!」

四男「どうせ会わせたところで帰りで迷う。」

近衛兵A「………」

勇者「既にどこの道すらわからない。完全に迷った。」

四男「なら走るしかあるまい。」

勇者「とりあえず走るぞ!」

近衛兵A「こら待て!」

勇者「だまらっしゃい!」

近衛兵A「」ビクッ

四男「殺されたくなければ静かにしな」

勇者「よし行くぞ……」

四男「ああ……」

2人は走り出した。
サトウカナヤマという迷宮の果てへと───。

勇者「とりあえず適当に走る。」

四男「しかし闇雲に走れば体力が」

勇者「歩こうが走ろうが一緒だ!」

四男「………そうみたいだな。」

勇者「しかし不気味だ。」

四男「兵がおらぬ。」

勇者「この副城には人はいないのか?」

四男「俺の感覚としては……生命反応は人はいることはいる」

勇者「だがどこにいるのかもわからないな」

四男「しかしお前大丈夫か?」

勇者「ああ、大丈夫だ」

3分後───
勇者「くそ、疲れた!もうダメだ!はあ……はあ……」

四男「お前体力ないな!」

勇者「だってしょうがないだろ!!ちょっと前まで引きこもりだったんだから!」

四男「役に立たないやつだなあ。」

勇者「悪かったな。」

四男「とりあえず休憩するか。」

勇者「そうだな…。どこか部屋で……」ガチャ

女「え……?」

勇者「え?」

四男「う?」

女「きゃぁあああああああ覗きぃぃいい!!!」

勇者「失礼しましたぁぁああ!!」

四男「逃げろ!」

本城・謁見の間───
ミツカズ王「何?!振り切ってこっちに向かってる?」

近衛兵A「申し訳ございません!」

側近A「如何しましょう?」

ミツカズ王「至急伏兵を配置せよ!」

側近A「御意」

ミツカズ王「そなたたちもよろしく頼むぞ」

戦士「ええ、わかりました。」

尼僧「頑張ります!」

魔術師「任せてください」

1時間後───
ミツカズ王「遅いな……」

側近B「やはり迷っているのでしょうか?」

ミツカズ王「だといいんだけどな……」

尼僧「………」ドキドキ

伏兵配置から2時間後───
ミツカズ王「そろそろ腹が減ってきたな……」

魔術師「僕もお腹がすいてきました。」

尼僧「いつまで待てばいいのでしょう………」

側近B「本当に来ませんね……」

近衛兵A「王様、あの2名の行方が依然として分かりませぬ。」

ミツカズ王「捜すのだ!!」

近衛兵A「承知しました!」

戦士「ご飯まだかな……」グー

伏兵配置から3時間後───
尼僧「おいしかったです。」ニコニコ

魔術師「牡蠣結構おいしかったなあ。」

戦士「あー、幸せー」ホワワーン

側近A「我が王国の料理人の料理はとてもうまい!」

尼僧「しかし来ませんね……」

側近A「敵は一体どこで何をしているのやら………」

同時刻・オオウチ軍本陣───
ヨシタカ王「モウリの魔軍のやつ。まだか!」

オオウチ幹部A「王様、落ち着いてください。」

オオウチ幹部B「そうです。」

ヨシタカ王「城とはもうすぐのところで待機とはけしからん!」

オオウチ幹部A「ですから、モウリの魔王が使者を立てて降伏を促してますので……」

ヨシタカ王「ならん!何故だ!」

オオウチ幹部B「それは被害を少しでも抑えるということでしょうか。」

ヨシタカ王「このオレをいつまで待たせる気なんだ!」プンスカ

オオウチ幹部A「さあさあ酒でも………」

ヨシタカ王「酒はいらぬ!幹部B、本日の夜伽はそなたがいたせ!」

オオウチ幹部B「わ、私がですか?!」

ヨシタカ王「そうだ!」

オオウチ幹部A「男色を好む王様のことだ、頑張れ」

オオウチ幹部B「そんな~………」

ヨシタカ王「ふふふふ………楽しみにしておるぞ」

一方勇者と四男と言うと───
勇者「zzz・・・・」

四男「zzz・・・」

勇者「」グー

四男「」スピー




寝ていた。

女中A「もう起きてくださーい!」

勇者「んー、むにゃむにゃ……」

女中B「私たちの部屋、知らない人たちが寝てるー!」

四男「」グガー

女中A「まさか魔物がこんなところに寝てたなんてー!」

女中B「私ちょっと呼んできます!」

女中A「お願いします!」

女中A「もう本当にここで寝ないでー!」

本城・謁見の間───
近衛兵B「───ということだそうで……」

ミツカズ王「なんと女中の部屋で寝ていたとは……」

側近A「呆れた……」

戦士「もうなんなのよ!この数時間を返して!」

魔術師「なんでこんなに待たなきゃいけないんだ!」

尼僧「まあまあ……」

ミツカズ王「どうしてこうなったのだ!」

近衛兵B「わかりません……」

ミツカズ王「ぐぬぬ………」

側近B「そのままこちらに来ると思われたのですが………」

側近A「やはり副城があまりにも迷路すぎたせいなのでしょうか?」

ミツカズ王「その可能性が高い……」

副城・女中の部屋───
勇者「くそ、目覚め最悪・・・」

四男「俺だって疲れてたんだ。もう少しくらい休ませろ……」

女中A「なので早く王様のところに向かってください!」

勇者「なんで………」

女中A「・・・謁見予定なんですよね?」

勇者「そうだけど………」

女中A「だったら───」

四男「悪いが俺ら眠いからよろしく」

勇者「おやすみ~」

女中A「もう!!私の部屋で寝ないでください!」

本城・謁見の間───
女中A「───ということで私の部屋でお休み中です……」

尼僧「………」

側近A「へ?」

ミツカズ王「それ……、お前が寝かせたのか?」

女中A「いいえ、向こうが寝起き悪くて睨みつけられながら夢の中へ……」

戦士「はあ………」

側近B「………」

近衛兵A「」ポカーン

魔術師「もう訳がわかんないね……」

ミツカズ王「で、だ……見張りはいるんだろうな?」

女中A「いるのはいるんですが………」

ミツカズ王「どうした?」

女中A「歯軋りと変な音がうるさくて嫌がってるんです………」

側近A「歯軋りとは……」

側近B「自分は避けたい……」

近衛兵A「近衛兵Bよ、頑張りたまえ……」

ミツカズ王「いや、お前も交代でやらせるぞ?」

近衛兵A「そ、そんなあ………」

戦士「緊張状態で待っていたっていうのに………」

魔術師「よくしゃあしゃあと寝ていられるよね………」

尼僧「何もなかったよりいいと思いますよ?」

側近B「敵は大物というかなんというか……」

ミツカズ王「これがさっきまで戦争してた勢力同士なのかね………」

側近A「何か馬鹿馬鹿しく思えてきました」

女中A「そうですよね………」

全員「はー……」

数時間後───
勇者「……ん?」

四男「起きたか」

勇者「ああ……」

四男「どうやら女中の部屋で寝てしまったらしいな。」

勇者「魔物が女性の部屋で寝て大丈夫だったのかよ………」

四男「いや、ちゃんと綺麗にしているから俺は臭くないぞ」

勇者「しかしやってしまったな。」

四男「途中起こされた感じがしてイライラした。」

勇者「向こう襲ってこなかったな。」グー

四男「そう言えば腹減ったな………」

勇者「まったくだ……」ギー

四男「おや、見張りのやつ寝てるな」

勇者「まったくこれが見張りとはだらしない」

四男「とりあえず今行く場所はわかってるな?」

勇者「もちろん食堂だ」

四男「その通りだ」

勇者「食べるところはどこだ?」

四男「全然検討がつかない」

勇者「今が昼なのか夜なのかも全く見当がつかない」

四男「まあ感覚からして夜なんじゃないのか?」

勇者「なら多分そうだろうな」

30分後───
四男「結局食堂すらつかないな……」

勇者「ああ……」

四男「早く飯食べたいよな」

勇者「ああ……」

四男「勇者俺思ったんだけどさ」

勇者「何?」

四男「ずっとまっすぐ行けばどこか端っこに当たるんじゃないのか?」

勇者「あ・・・・・」

四男「・・・・・・」

勇者「今思うとさ………」

四男「俺たち馬鹿だよな。」

勇者「否定できないな。」

………
……


勇者「ここが端っこみたいだな。」

四男「みたいだな。」

勇者「とりあえずここをずっと歩けばいいんだな」

四男「そうみたいだな、行こう」

………
……


勇者「………」

四男「………」

勇者「なあ」

四男「なんだよ」

勇者「俺さ言いたくないんだけども」

四男「言ってみろ」

勇者「ここ明らかに城の入り口だよな?」

四男「明らかに外は街だからな」

………
……


勇者「………」

四男「………」

勇者「なあ」

四男「なんだよ」

勇者「俺さ言いたくないんだけども」

四男「言ってみろ」

勇者「目の前にあるでかいのあれ本城だよな?」

四男「だと思うぞ……」

勇者「………」

四男「………」

勇者「なあ」

四男「なんだよ」

勇者「俺さ言いたくないんだけども」

四男「言ってみろ」

勇者「はっきり言うけど俺ら馬鹿だろ」

四男「それは間違いないな」

2人「はあ………」

………
……


サトウカナヤマ城・本城廊下───
勇者「さて………」

四男「どこにあるのやら………」

勇者「しかしここの警備体制はどうなってるんだ?」

四男「誰もいないよな」

勇者「もう意味わかんないよな」

四男「何がどうなってるのやら………」

2人はキョロキョロと周りを見渡す。
どこにでもあるような城である。


勇者「なんか人が1人もいないっておかしくないか?」

四男「ここ本城だよな?」

勇者「だよな?」

四男「普通なら警備兵がいてもおかしくないんだが……」

勇者「何か人がいる気配がないんだよな………」

四男「一応気配はあるんだが……。」

勇者「不気味だな………」

四男「とりあえず二手に別れるか?」

勇者「危なくないか?」

四男「でもまあ気配を感じながら歩けば大丈夫かなと思うぞ?」

勇者「そ、そうなのか?」

四男「でも最新の注意は払う。」

勇者「気をつけろよ。」

四男「おお、わかってる。」

勇者「行ってしまったな。」

勇者「はあ………」

勇者「とりあえずここら辺でも歩いてみるか……」

勇者「どうなることやら………」

………

勇者「しかしこのフロアは広いな……」

勇者「2階に上ってみたけどもなんだか不気味なんだよな……」

勇者「今思えばここの城のやつらよく住んでられるよな…」

勇者「副城とか特に扉ばかり……暗殺者とかいたらどうするんだよ……」

勇者「さてさて別フロアに向かいますか……」

3階西フロア───
四男「なんなんだよこの城は……」

四男「俺の感覚では人がいるような感じではないんだが……」

四男「本当に不気味な城だな。」

四男「あれ、月がないな?今日は新月だったか?」

四男「このフロア、人は誰一人いないのかもしれん……」

2階東フロア───
勇者「なんか怖いな……」

勇者「角を曲がったら誰かがいたらよ~………」

勇者「………」

勇者「やっぱり怖い………」

勇者「一応フードはしているが化け物が出てくれば俺は逃げられるのだろうか?」

勇者「いや、四男のやつもいるからここは助け合わないときついだろうな……」

勇者「しかし誰もいないとは………」

2階北フロア───
勇者「ここはあれだな、ちょっと壊れてみるか。」

勇者「フヒヒヒヒヒヒ」

勇者「うひゃあああひゃひゃひゃひゃ」

勇者「ひょほおおおおおおおお」

勇者「クェークェークェー」

勇者「…………」

勇者「は、恥ずかしい………、やるんじゃなかった………」

4階北フロア───
四男「おかしい……、何かがおかしい……」

四男「不気味すぎる…………」

四男「何故だ………何故ここに来て嫌な予感がする……」

四男「は?!まさかこの感覚………」

四男「こ、これは………まさか………」

ドカッ

四男「」バタッ

3階南フロア───
勇者「………」コツコツ

勇者「………」コツコツ

勇者「!?」ハッ

クルッ

シーン

勇者「(何かいる…)」

勇者「………」コツコツ

勇者「………」コツコツ

勇者「?!」ハッ

クルッ

シーン

勇者「くそ……不気味だ…」

4階南フロア───
勇者「…………」

シーン

勇者「(気配を感じる…)」

勇者「どこかに隠れるか……」

勇者「ここにしよう」ガチャ

バタン

勇者「ふう………」

ボワァ

勇者「!!?」

??「ふ………」

勇者「ぬ?!」

??「………」シュッ

勇者「ぐっ……」

??「よく避けたね……」

勇者「貴様誰だ……」

??「ひみつ・・・・」

勇者「む………?」

??「………ファイヤ……」ボー

勇者「く、熱ッ!!」

??「」ニコッ

勇者「クサッシュ!」シャキ

??「はぁ?!」

勇者「ふふふ…」ニヤリ

??「離せ……」

勇者「いい技だなこれは…」

??「この……」カシャカシャ

勇者「女の声……、何者だ…?」

??「………」

勇者「灯りでもつけるか…」ボッ

勇者「ん?」

魔術師「くぅ………」

勇者「あ………」

魔術師「何者だ?離せ……!」

勇者「ふふふ………、俺だよ………」パサァ

魔術師「き、君は……!?」

勇者「ああ、勇者だ。」

魔術師「いいえ、君は偽勇者だよ。」

勇者「仕方ない。」

魔術師「え?」

勇者「俺のことを偽呼ばわりする人にはお仕置きをしないとねえ……。」

魔術師「お、お仕置きとはどういうことだ?」

勇者「ふ、ふふふ……」

魔術師「こ、殺すのなら一気にしなさい。」

勇者「ではお望み通りに……」

魔術師「」ゴクリ

勇者「モーミイ」モミ

魔術師「え?!」

勇者「」モミモミモミ

魔術師「きゃ?!え?嘘でしょ?!」

勇者「」モンミモミ

魔術師「お願い!揉まないで!」

勇者「………やだ。」モミモミモミ

魔術師「やだやだやだやだ!信じられない!」

勇者「いいじゃないか…」モンミモンミ

魔術師「早くやめなさいよ!」

勇者「ち………仕方ないな……」ス……

魔術師「く……、この女の敵!」

勇者「クサッジュ」ドーン

魔術師「じ、自由になれた……」

勇者「よかったじゃないか」ニコニコ

魔術師「よくないよ!よくも僕の胸を、胸を……、え?!」

勇者「どうしたんだい?」

魔術師「あれ?僕の胸、でかくなった?」プルン

魔術師の体型変化

身長155⇒155

体重44⇒44

バスト79(Bカップ)⇒86(Eカップ)

ウエスト59⇒58

ヒップ84⇒84

勇者「ジャジャーン!」

魔術師「何がジャジャーンだよ~。どういうことだよ!」

勇者「さあな?」

魔術師「説明しろ~!」

勇者「追跡が恐ろしいので退散~」ガチャ

バタン

魔術師「く…くそぉ……、なんで……何故いきなり僕の胸は大きくなったの……?」

魔術師「さ、サイズは………サイズ…………Eだ……。」

魔術師「なんで………?」

アンダーは!?アンダーはいくつなの!?

>>306
後ほど公表しますよ。

勇者「フードと……。」ス

勇者「しかし効果大だったな。」

勇者「後々が怖いな……」

??「後々が何ですって?」

勇者「え………?」

??「」ゴゴゴゴゴゴ………

勇者「………」ゴクリ

??「よくも魔術師を殺してくれたわねえ!」

勇者「いや、殺したというか……」

??「許さない……」

勇者「(ん?この声は……?)」

戦士「あんたを殺す!」ビシッ

勇者「あ…」

戦士「戦いの前に素っ頓狂な声をあげないでよ!」

勇者「あ、いや、うん……」

戦士「問答無用ッ!!」

勇者「うわ!ちょっ!!」

戦士「男のくせにちょこまかと逃げるなァー!!」

勇者「ちょ、ちょ、ちょぉおおお!!」

3分後───
バターン!!!

戦士「あいたたたたた………」

勇者「おいおい大丈夫か?」

戦士「大丈夫じゃないわよ!」

勇者「お前結構ドジなんだな」

戦士「か……?!」

勇者「ま、でも俺の勝ちだな」

戦士「なわけないでしょ……」

勇者「なんで?」

戦士「何故逃げてばかりいるのよ!卑怯だわ!」

勇者「戦う必要ないんじゃない?」

戦士「魔術師を殺しながら私を殺さない?どういう了見よ?」

魔術師「勝手に僕を殺さないで……」ガチャ

戦士「魔術師……、生きてたの?」

魔術師「当たり前だよ!」ウルウル

戦士「ど、どうしたの?涙を浮かべて……」

勇者「………」

魔術師「こいつに僕のおっぱい揉まれた………」グスン

戦士「な、なんですって……?」ワナワナ

勇者「?!」ビクッ

魔術師「そしてなんか僕のおっぱい突然大きくなった……」

戦士「はあああああああああああ?」ビキビキ

勇者「…………」ヒヤー

戦士「いきなり女の胸を触るとはセクハラもいいところね………」ビキビキ

勇者「う………」

魔術師「挟めるかな……」ボソッ

戦士「え?」

勇者「今だ!クサッシュ!」シャキ

戦士「きゃ!しまった!!」

勇者「ふふふ………」

戦士「は、は、外してよー!」ジタバタ

勇者「嫌だね……」

戦士「い、いから~!」

勇者「ふふふふふ・・・・」

戦士「ひ、ひいい!!」ビクビク

勇者「モーミイ」モミモミ

戦士「い、いやあああ!!!」

勇者「どうですかな?」モミモミ

戦士「いややめて!犯さないで!!」

勇者「犯さないよバーカ。勘違いするな!」モミモミモミ

魔術師「………」ボー

戦士「」グスン

勇者「ふう………」モンミモミ

戦士「ひどい……」エグエグ

勇者「………」

戦士「いきなり胸揉むなんて………」ポロポロ

勇者「クサッジュ…」

魔術師「」ジー

勇者「あばよ……」

戦士「………」ボー

魔術師「く、く…待って!」

勇者「何?」

魔術師「どうして僕たちにこんなことをした?」

戦士「………」フニフニ

勇者「………」

戦士「え………?」

勇者「俺らは今敵だからな」

戦士「ど、どうして……?」モミモミ

魔術師「戦士さんどしたの?」

戦士「わ、私の胸が………」

勇者「」サッ

魔術師「は!?まさか?!」プニュ

戦士「ひゃう!!」

魔術師「やっぱり……、戦士さんも大きくなってる……」

戦士「ということは……?」

魔術師「」コクリ

戦士「………」モミ

魔術師「も、揉まないで!」

戦士の体型変化

身長161⇒161

体重49⇒49

バスト82(Cカップ)⇒89(Fカップ)

ウエスト59⇒58

ヒップ86⇒86

勇者「………」ガチャ

バタン

勇者「………」ガチャ

バタン

勇者「………」ガチャ

バタン

勇者「………」ガチャ

??「だ、誰ですか?!」

勇者「………」

??「モウリの魔軍か知りませんが貴方を殺さなければなりません。」

勇者「灯り………」ボソッ

??「あ、あなたを殺します!」

勇者「なら俺も女だと思わず殺す………」

??「マニラタナホーリン(珠宝法輪)」ホワワワ………

勇者「おっと……」

??「避けたようですね」

勇者「うまく避けられたようだ。」

??「射程距離が短いのが欠点でしたね」

勇者「………」バタン

??「真っ暗でどう戦おうとするんですか?」

勇者「何も見えなければ勝負は五分五分」

??「そうですね……。では声がする方向に術を放てばいいのです。」

勇者「それはどうかな?」

??「どういうことでしょう?」

勇者「俺は腹話術ができるんですよ」

??「嘘を言わないでください!」

勇者「もちろん嘘だよ」

??「くっ………」

勇者「ここは剣で戦うのは愚の骨頂。短剣が一番良い。」

??「えい!」ジュッ

勇者「あつッ!!」

??「当たったみたいですね」

勇者「………」

??「えい!」ジュッ

勇者「………」コソッ

??「感覚がない?どこにいるのです?!」

勇者「………」

??「ここですか!」プシャー

勇者「…………」

??「うぅ………」

勇者「」ニヤリ

??「どこですか?出てきてください!」

勇者「(押し倒してやる………)」

??「(あれ何かヤバい……?)」

勇者「ここだ!」ヒュッ

??「きゃ!?」ビクッ

勇者「いてえええッ!!」ドテー!!

??「」ホ

勇者「どこだァ!」

??「火輪車!」ボワン

勇者「ぬわッ?!」

??「く………」


火は運よく蝋燭へと当たる。
真っ暗だった部屋は蝋燭1つで少し明るくなった。


勇者「あ………」

尼僧「な、なんなんですか…?」


戦っていた相手は尼僧であった。

尼僧「モウリの魔軍、私達人間の存在を脅かす厄介な存在です。」

勇者「あっそ……」

尼僧「な……!?仏の罰が当たりますよ。」

勇者「罰なら日常的に受けてるからどうでもいい。」

尼僧「うううう………なんて人なのよ……」

勇者「俺の顔を見たらお前は絶対に殺せないと思うけどな。」

尼僧「そんなことはありません。」

勇者「(この娘、いつもはオドオドしてるけど結構胆力あるんだな…)」

尼僧「氷結───」ス

勇者「させないよ」ギュ

尼僧「きゃっ!?」

勇者「ベッドに飛び込むぞ、それ~」

尼僧「きゃぁああ!!」ドーン

勇者「ふふふふ………」

尼僧「もう………何するのよ!!」

勇者「いいじゃないか」

尼僧「あ、あたしを手篭めにする気なんですね?」

勇者「だとしたらどうするのかなあ?」パサ

尼僧「あ……!!!」ポ

勇者「ふ、ふ、ふ………よう!」

尼僧「あ、あ、あ、どうも………」アワアワ

勇者「よくも俺を攻撃してくれたねえ?」ピギギギギギ

尼僧「あ、あ、すみませんすみません」ウルウル

勇者「あ……………」

尼僧「許してください………」フルフル

勇者「………」

尼僧「あ、あたし、敵が勇者様じゃないとわかってたら攻撃することもありませんでした。」

勇者「そうなのか?」

尼僧「は、はい!」

勇者「ふうん………」

尼僧「そ、それに………」

勇者「ん?」

尼僧「あ、あたしは………」

勇者「………」ゴクリ

尼僧「あたしは………」

勇者「………」ドキドキ

尼僧「勇者様をお慕いしております!」ダキッ

勇者「え………?」

尼僧「ですから………お慕い申し上げています……」ドキドキ

勇者「は、はあ………」ドキドキ

尼僧「」ウルウル

勇者「尼僧………」

尼僧「勇者様………」

勇者「尼僧ちょっといいかな?」ドキドキ

尼僧「え、あ、はい……、なんでしょうか?」ドキドキ


勇者は尼僧に背を向けるように仕向けた。

尼僧「ゆ、ゆ、勇者様……?」

勇者「モーミイ」モミモミ

尼僧「あ、あん………///」

勇者「尼僧、こういうことされたかったんじゃないのか?」モミモミ

尼僧「え、えと……勇者様………?」

勇者「俺に触られてほしかったんだよな?」モミー

尼僧「ぁ、ぁ、ぁん、おやめください//」モジモジ

勇者「それでも嫌がってないのはなんでかな?」モミモミ

尼僧「そ、それは…………ぁん//」モジモジ

勇者「じゃあいいってことなんだね」モンミモンミ

尼僧「………//」コクン

勇者「尼僧って可愛いな~」モミモミ

尼僧「そ、そんな、勇者様……」ドキドキ

勇者「尼僧………」

尼僧「勇者様……、なんだが胸が大きくなった気がしますぅ~」プルルン

勇者「お、おぉ~!!」デレー

尼僧「こんなに大きくなっちゃったんですが、どうしましょう?」モミモミ

勇者「はぁ………はぁ………」

尼僧「勇者様・・・?」

勇者「尼僧…………」

尼僧の体型変化

身長149⇒149

体重43⇒43

バスト74(Aカップ)⇒89(Gカップ)

ウエスト56⇒56

ヒップ81⇒80

ガチャ

戦士「こらああああああ!!!!」

尼僧「え?」

勇者「?!」

魔術師「あ───!」

戦士「何をしている!」

尼僧「戦士さん!」

戦士「よくも尼僧を!!私のを!!」

勇者「げ!」

戦士「この下衆ゥーーーー!」

ボコ!!

勇者「ぐわぁッ!!」

尼僧「せ、戦士さぁん!」

戦士「女の敵ッ!」

バキッ!!

勇者「痛いッ!」

戦士「一旦死ね!」

魔術師「あーあ……」

勇者「うぎゃあッ!!」

ボコボコ!!

戦士「てぃッ!」

魔術師「………」

ガグ!!

勇者「んぬおッ!!」

尼僧「ああ………」

戦士「こんにゃろ!こんにゃろ!こんにゃろおおお!!!」

尼僧「戦士さ~ん!」

戦士「食らえ!食らえ!食らえ!!」

勇者「」ピクピク

戦士「はーはーはー………」

魔術師「戦士さん………、ここまでくるとちょっと………」

戦士「いきなり鎖で縛られて胸揉まれたんだから」

尼僧「勇者様………大丈夫ですかぁ………?」フルフル

戦士「尼僧も尼僧だよ、ベタ惚れじゃない……」

魔術師「全くだね。僕もびっくり。」

尼僧「そうでもないですよぉ?」

戦士「いや、ベタ惚れだ。」

尼僧「長年悩んでいた小さな胸もほら」プルルン

魔術師「でかい………」

戦士「これがあいつの尼僧に対する下心なのかな……。」

尼僧「私は嬉しいと思いましたけど………」

戦士「でもこれくらいしとかないと気がすまないのよ!」

魔術師「僕だって揉まれた。」

尼僧「あう………」

戦士「いきなり揉むなんて鬼畜の所業よ!」

尼僧「で、でも………」

魔術師「僕暗い中鎖で縛られて胸を容赦なく揉まれた………」

尼僧「あうあう………」

戦士「この下衆男を王様のところに持って行くわ!」

魔術師「うんそうしよう!」

尼僧「でも……勇者様はアカマツの王国の賞金首だったんですよね……?」

魔術師「あ……」

戦士「じゃあどうするの?」

尼僧「あ、あたしは勇者様をお守りします!」

魔術師「尼僧ちゃん……」

戦士「でもこいつは私たちの胸をいきなり揉んだのよ?!」

尼僧「で、でも……」

戦士「でもじゃない!もしむさ苦しい男がいきなり揉んできたらどうするの?」

尼僧「そ、それは抵抗します。」

戦士「そういうこと」

尼僧「………」

魔術師「とりあえず、夜が明けるまでちょっと考えておこう?」

戦士「そうするしかないよね。」

尼僧「はあ………。」


3人と気絶した勇者は波乱の中、朝を迎えた。

>>306

3人のアンダー一覧


戦士  バスト89(F-65)

尼僧  バスト89(G-65)

魔術師 バスト86(E-65)


※ゴールデンカノンに基づいて算出しております。
ご了承ください。

謁見の間───
ミツカズ王「なるほど……、そなたらがモウリの使者か……」

四男「………」

勇者「………」

ミツカズ王「ほう………」

四男「ち……」

側近A「………」

側近B「………」

ミツカズ王「そしてこいつがアカマツの偽勇者か………」

勇者「く………」

尼僧「…………」

魔術師「………」

戦士「………」

ミツカズ王「してその方、この俺になにか用があったんだろう?」

四男「しらばっくれんな!」

ミツカズ王「なるほど、その方は今自分が置かれている意味を知らないのか。」

四男「ぐぐ………」ギリギリ

側近A「していかがしましょう?」

ミツカズ王「そうだな……、見せしめに処刑してしまおう」

魔術師「!!」

近衛兵A「え?!」

側近A「な!」

勇者「う?!」

四男「………」

側近B「お待ちくだされ!」

ミツカズ王「なんだ…?」

側近B「もし見せしめで殺せばモウリだけではなくオオウチにより蹂躙されまする。」

側近A「それにアマゴからの信用を失うことになるでしょう」

ミツカズ王「それはわかっておる。」

側近B「では何故…!?」

ミツカズ王「そうでもせねば優位に立てぬ!」

戦士「………」

ミツカズ王「お前を最大限に有効利用させてもらうぞ……」

四男「ち………」

ミツカズ王「そして貴様だ……」

勇者「!!」

ミツカズ王「何故モウリの魔軍に降ったのだ?」

勇者「………」

尼僧「(え?!嘘?!降伏してしまったのですか?)」

側近A「(あのなりの者が何故魔軍におるんだ?)」

ミツカズ王「…………」

魔術師「(なんて答えるんだろう……?)」

近衛兵A「(やはり偽勇者なんだな。卑怯者だ。)」

勇者「…………」

四男「(偽勇者やら、自分の惨めさを他人に言えるはずがないだろう……)」

側近B「おい、黙るとは卑怯だぞ!何か答えろ!」

ミツカズ王「側近B、いい……」

側近B「いや、しかし……!」

ミツカズ王「答えたくないのならばいい。ただし………」

戦士「(ただし………?)」

側近A「(王様は如何様にお考えなのだろうか?)」

尼僧「………」

勇者「………?」

ミツカズ王「処刑すればよかろう。」

勇者「な!!」

尼僧「え……」

魔術師「!!!」

四男「?!」

近衛兵A「おう……」

側近B「それは一体どのようなお考えで?」

ミツカズ王「こやつはアカマツの王国の賞金首。」

側近A「確かにそう伺っております。ですが・・・」

ミツカズ王「こやつを処刑するのはアカマツの王だ。」

勇者「………」

側近B「どういうことでしょうか?」

ミツカズ王「この偽勇者を捕らえ、アカマツの王に渡し、賞金をいただく。」

側近A「なるほど」

側近B「さすれば、軍資金を得られるというわけですね。」

ミツカズ王「その通りだ。」

四男「(き、汚い、汚過ぎる男だ………)」

尼僧「(ゆ、勇者様が……、殺されちゃう……)」

戦士「(でもこの偽は誰が運ぶのかしら……?)」

ミツカズ王「さて………四男よ。」

四男「なんだ!?」

ミツカズ王「我がアキタケダはモウリになぞ屈せぬ!」

勇者「ぬ………!」

四男「降伏を断ればオオウチがアキタケダを襲おうぞ!」

ミツカズ王「それはどうかな……?」

側近A「?」

四男「どういうことだ?!」

戦士「??」

ミツカズ王「キッカワがモウリを侵攻する」

側近B「おお…!!」

勇者「!?」

四男「何?!でたらめをぬかすな!」

ミツカズ王「でたらめではない。もうじきキッカワがモウリに攻め入るころだろう」

魔術師「(何が起きるの・・・?)」

四男「いあ、一万五千と言われているオオウチがこの城を攻める!」

側近A「そうですぞ!オオウチは近隣の平原で陣を構えております。」

ミツカズ王「いや、それには及ばぬ。」

側近A「どういうことでしょうか?」

ミツカズ王「南西の島の巨大勢力であるオオトモがオオウチに攻め込む。」

四男「な!?」

勇者「は?」

戦士「え?」

側近B「へ?」

尼僧「嘘?!」

魔術師「どういうこと!?」

側近A「いつの間に!?」

ミツカズ王「名将とは二手三手先を読むものなんだよ。わははははは!」

四男「ちくしょー!!」

勇者「ぐぬぬぬ………」

ミツカズ王「側近Bよ」

側近B「はっ!!」

ミツカズ王「四男を監禁せよ!」

四男「何だって?!」

側近B「衛兵!この魔物をひっ捕らえよ!」

近衛兵C「畏まりました!」

四男「この野郎!」

ミツカズ王「抵抗したらお前を始め、お前の故郷の一族を皆殺しにしてやる。」

四男「くそ………」

側近B「連れて行け!」

近衛兵D「さっさと歩け!」

四男「………」

ミツカズ王「愚かな魔物め……」

勇者「………」

尼僧「………」

戦士「………」

ミツカズ王「さて………」

勇者「」ゴクリ

ミツカズ王「どう料理してくれようか………」

尼僧「………」

ミツカズ王「……」スッ


ミツカズ王は手をあげた。

側近A「………」コク

勇者「………?」

側近A「勇者殿……」

勇者「な、何だ………?」

側近A「ご免!」ドゴッ!!

勇者「うっ………」

バタッ

魔術師「え?」

戦士「!!」

尼僧「え、ええ?!」

勇者は側近Aに鳩尾を殴られてあっけなく気絶してしまった。


ミツカズ王「側近A、この勇者をヒメジまで運ぶ手はずを整えておけ。」

側近A「はっ!!して……」

ミツカズ王「今すぐ新築したばかりの支城に運べ!」

側近A「あの城ですね、畏まりました!」

ミツカズ王「ぬかるなよ?」

側近A「お任せ下さい。」

ミツカズ王「頼むぞ。」

側近A「衛兵!この男を運べぃ!」

近衛兵E「承知しました!」

近衛兵F「まずどの部屋へ?」

側近A「城下町前の部屋に運べ!」

近衛兵G「わかりました!」

近衛兵E「落とさないように気をつけるぞ……」

側近A「落としたら起きるから気をつけろよ!」

近衛兵H「は、はい!」

近衛兵E「俺らよりでかくなくて軽くてよかったわい。」

側近A「さっさと運んだ!」

近衛兵G「わかりました!」

近衛兵F「了解しました!」

ミツカズ王「………」

側近C「おっと……」

側近A「危ないだろうが!」

近衛兵H「すみません!」

近衛兵F「俺らまで怒られたあああ」

側近C「何やってるんだあいつらは……?」

尼僧「………」ギュ

戦士「………」

ミツカズ王「側近C、いかがした?」

側近C「王様、オオウチの軍勢が少々慌しいようです。」

ミツカズ王「いかがした?」

側近C「詳細はわかりません。何かあったのやもしれません。」

ミツカズ王「そうか……」

側近C「オオウチが兵を引けばこちらとしてもモウリ攻めに集中できます。」

ミツカズ王「アマゴとキッカワと連携して攻めるつもりだ。」

側近C「それを楽しみにしております。」

ミツカズ王「私も楽しみにしておる。」

側近C「それはともかくとして王様は新しい支城を築城されたそうで?」

ミツカズ王「そうだ。」

側近C「して、名前はなんと?」

ミツカズ王「アキタケ城だ。」

およそ10日後───


勇者「こ、ここは………?」


俺は目を覚ました。
俺はどこに連れてこられたのだろうか?
辺りを見回しても真っ暗である。

勇者「もしやここはまさか地下牢?!」

??「その通り───」

勇者「誰だ?!」

王子「私だ………。」

勇者「お、お前は誰だ?!」

王子「そうだな………、言うなればこの国の王子、だな。」

勇者「な?!」

王子「ははは、そうかっかするな。」

勇者「どういうことだ?!」

王子「私は君の味方のつもりだが?」

勇者「その王子がだと!?貴様アキ……タケダの!」

王子「まあ、待て」

勇者「何だ?!」

王子「私はアキタケダの王子じゃない。アカマツ王国の第一王子だ。」

勇者「何だと?!」

王子「私は君を助けようと思っている。」

勇者「俺を偽勇者呼ばわりした王の息子の言うことなど聞くものか!」

王子「まあまあ落ち着くんだ。」

勇者「どういうことだよ!?」

王子「私は父上のことを快く思っておらぬ。」

勇者「はあ…まあ……」

王子「父上はどうせ君を偽勇者と名乗った罪と父上の所有物を窃盗した罪で処刑となる。」

勇者「そ、そんな!身に覚えがないぞ!」

王子「当たり前だ。窃盗の件については私が絡んでいる。」

勇者「何!?」

王子「そう声を大きく出すな!他の者に聞かれたらどうする?」

勇者「聞かれたらどうなる?」

王子「聞かれたら私は恐らく廃嫡になるだろう。」

勇者「うむ………」

王子「良くて出家、最悪命を落とすだろう……」

勇者「何故命を落とさないといけないんだ?」

王子「いくら私が王子とは言え父上に逆らうことは国家反逆罪に問われかねない。」

勇者「うむ」

王子「そうすれば処刑だ。」

勇者「なるほど。」

王子「私には弟がいる。だが………」

勇者「だが?」

王子「父上は弟を寵愛している。」

勇者「そりゃあ自分の子供だから愛しててもいいのでは?」

王子「そうではない!」

勇者「じゃあどういうことなんだ?」

王子「父上は本当は次期王に弟を継承させるつもりだ。」

勇者「ほうほう、で、それがどうした?」

王子「ぐ………、私は正直父上のしていることに賛同できない。」

勇者「理由は?」

王子「理由………、か………。」

勇者「答えてみてよ王子様。」

王子「お前、私に対してずっと失礼な物言いだね?」

勇者「仕方ないだろ。無実の罪で投獄されてるんだからな。誰かさんのせいで……」

王子「そ、それは申し訳ない……」

勇者「で、理由は?」

王子「父上は野球を趣味としておる。」

勇者「野球ねえ……」

王子「中央王国主催の野球大会に出るために勤しんでいるのだが……」

勇者「はあ………」

王子「それで度々国政を疎かにしていたことがあってだな……」

勇者「ならばそれ王が悪いじゃないのか?」

王子「いや、代行として弟が仕事をしていた。ただし大臣の補助を受けてな。」

勇者「しかしわかんないな……。」

王子「何がだ?」

勇者「では何故俺が偽勇者の烙印を落とされないといけないんだ?」

王子「君の装備一式が父上の野球道具だったのは言うまでもない。」

勇者「あきれたね………」

王子「一番大事なのはただの手違いだったという説も……」

勇者「はぁ?手違い?」

王子「ああ」

勇者「どういうことだ?」

王子「つまりこういうことだ。本来勇者となるやつがいたんだが、間違えて君のところに行ってしまった。」

勇者「俺ここまでしたのによ?」

王子「ああ、それはわかってるつもりだ。」

勇者「なんのために俺はあんな危険なことをしたのに処刑されないといけねえんだよ!」

王子「納得できないのも重々承知だ。」

勇者「何故俺を処刑しなければいけないんだ?」

王子「だから部下のミスを帳消しするために君を消すしかないんだよ。」

勇者「言ってること意味わかんねえよ!」

王子「しかも本来なる勇者ってやつがな………」

勇者「そいつがどうした?」

王子「英知のある人でな。」

勇者「ほほう……」

王子「新勇者の名前はヨシタカ。あだ名はクロカンだ。」

勇者「クロカン………」

王子「そいつは恐ろしいぞ……」

勇者「何故だ?」

王子「先ほど英知ある人と言ったよな?」

勇者「ああ、聞いた。」

王子「知勇兼備ある勇者なんだよ。」

勇者「知勇兼備………」

王子「しかも陰陽術に精通している。」

勇者「それは末恐ろしいやつだな。」

王子「1つの国に勇者が2人いてはいけない規則を君は知っているか?」

勇者「いや、知らない……。」

王子「規律を破れば国は滅ぶか勇者のどちらかは死ななければならないんだ。」

勇者「え、ちょ、ちょっと待てよ!」

王子「わかっている。だが、簡単に勇者廃業も許されない。」

勇者「へ?どういうことだ?」

王子「勇者廃業を許されるのは王の指令の下で敵対国を滅ぼした者のみが許される。」

勇者「ぐ……」

王子「それに君は偽勇者として知られて出回ってしまっただろ?」

勇者「悔しくも………」

王子「わかった、こうしよう。」

勇者「む?なんだ?」

王子「君、私の護衛になってくれ!」

勇者「は?」

王子「今我が王国内は分裂の危機となっている。」

勇者「ふむふむ。」

王子「そしてこの度私は他国から姫を娶ることにした。」

勇者「それはおめでとうございます。」

王子「まあ大層美しいと噂の姫というのだが……」

勇者「それが何か……?」

王子「まあ察してもらえればわかると思うが政略結婚だ。」

勇者「まあ、よくあることですよね……。」

王子「この結婚を機にホソカワとアカマツは同盟関係を強固なものにするらしい。」

勇者「それはようございましたね。」

王子「だが………、この姫をむざむざ俺に渡す父上ではないと思う。」

勇者「あなたの考えなら弟に娶らせる、そういう考え?」

王子「そうだ。この後の話については私の部屋で……」

勇者「その前に俺をここから出せ。」

王子「そうだったな。」

勇者「ところでここの牢獄ちょっと声響かないか?」

王子「う………。ああ、響く。」

勇者「他のやつらに聞かれたりしないのか?」ボソボソ

王子「かもしれないな」ボソボソ

??「………」スゥ…

数日後・ホソカワ領内───

勇者「しかしまた何故俺がこんなことに……」

勇者「先に姫を迎えに行けだと………」

勇者「はあ………」

勇者「帝都・アクタガワサンはここか…」


ホソカワ帝国は中央王国に隣する国である。
皇帝・タカクニはヤワタからアクタガワサンに遷都した。
父・マサモト亡き後2人の弟と家督争いをし、これに勝利した実力者である。

勢力関係とかがもうわからん

>>387-388
すみません。
緊急でどういう風な勢力図なのかを作成しますね。

勢力一覧図画像です。
http://uploda.cc/img/img5178111f95f60.png

>>390にミスがあった為、画像内容を変更しました。

勢力一覧図画像です。(Ver.1.1)

帝都・アクタガワサン───

勇者「うわ………、すごい城だ!こんな城見たことない!」

番兵A「何奴?!」

勇者「おっと…。」

番兵B「貴様まさか間者か?」

勇者「いえいえ違いますよ~……」オドオド

番兵A「じゃあ何故そわそわしているのだ?」

勇者「いやあ、ちょっと……」

番兵B「怪しい奴だな」

番兵A「捕らえるか?」

番兵B「追い返したほうがいいか?」

勇者「…………」

番兵A「貴様こっちに来い!」グイ

勇者「愚か者!」

番兵B「何ッ?!」

勇者「貴様らの国は客人にそういう扱いをするのか?!」

ザワザワ……

番兵A「てめえ、なめてるのか?!」

番兵C「どうしたんだ?」

番兵B「この怪しい男が……」

勇者「ふふふ………」

イヤーネー

番兵C「ひっ捕らえるしかないな」

番兵B「尋常にお縄につけ!」

勇者「断る!」

番兵A「捕らえるぞ!!」

勇者「クサッシュ!!」ガシャ

番兵A「うわあ!!!」

勇者「クサッシュ!!」ガシャ

番兵B「ちょっと何だこれは?!」

番兵C「どうしたんだよ?」

番兵A「この鎖みたいなので抜けようとしても無理だァ!!」

住民「えー、嘘ーッ?!」

住民「やだー、こわーい。」

番兵D「騒がしいぞ!」

番兵E「どうした…、な!?」

勇者「クサッシュ!!」ガシャ

番兵D「うわ!!動かない!!」

番兵C「番兵D!!」

番兵E「おい、これはどういうことだ?!」

番兵B「ほどけない!!」

勇者「クサッシュ!!」ガシャ

番兵E「ぎゃあ!!」

勇者「クサッシュ!!」ガシャ

番兵C「うわああ!!」ドン

番兵A「痛い!!」

ザワザワ……

勇者「城はどこか教えてもらおうか?」

番兵C「………」

番兵E「誰が教えるものか!」

番兵B「ちくしょ……」

番兵A「貴様、殺してやる……」

勇者「なら自力で捜すしかないか……。」

ザワザワ………

アクタガワサン城内───

近衛兵士A「申し上げます!」

部下A「なんだ?」

近衛兵士A「城内で番兵5名が謎の被り物をした男に攻撃を受けました!」

部下A「なんじゃと?!」

近衛兵士A「その男は城へと攻め入る模様です!」

部下A「この件はすぐに皇帝に知らせねばならぬ!」

近衛兵士A「はい!」

帝都・アクタガワサン───

勇者「クサッシュ!!」ガシャ

番兵F「うぎゃあ!!」

住民「」ガタガタ

住民「」ブルブル

番兵G「きっ………」

番兵H「………」ジー

番兵I「くそ………」

勇者「さて……、城は何処だろ…?」

住民「う………」

勇者「ん?」

住民「ひぃ!!」

番兵H「ちくしょ……」

番兵I「ぐぬぬ………」ガタガタ

勇者「さてと……、城でも向かいますか」

スタスタスタ………

住民「」ガタガタ

住民「」プルプル

番兵G「なんつう奴だ……」

番兵F「誰かこれをはずしてくれえええ…!!!」ジタバタ

アクタガワサン城・皇帝の間───

皇帝「わははは、なるほどそういうことがあったのか。」

部下B「そうでございます。」

皇帝「しかし、今日も平和だのう。」

部下C「はい、それはそれは。」

皇帝「こういう日だからこそ何か起きるやもしれぬな。」

部下B「またまたご冗談を仰って……」

部下C「いや、皇帝の仰ることは大方当たるのだ……。」

皇帝「外れればよいのだがな。」

部下A「皇帝!!」ダダダダダ

部下C「噂をすれば……」

部下D「部下A……」

皇帝「部下Aではないか!いかがした?」

部下C「嫌な予感がするぞ。」

部下A「あ、あ、あ、ああああ……」

皇帝「落ち着け。何をしゃべってるのかわからないではないか。」

部下A「あ、あ、怪しい奴が!」

部下B「怪しいやつ……?」

部下C「賊か?」

皇帝「そやつがどうしたのか?」

部下A「城へと攻め入っております!」

部下C「な!?」

部下D「突如の城攻めか!」

部下B「冗談をよせ!」

皇帝「ぐむむ……」

部下A「皇帝如何いたしましょう?」

皇帝「して兵はいかほどだ?」

部下A「たった一人……」

部下B「は?一人?」

部下D「一人とはどういうことだ?」

皇帝「ふむ……」

部下C「されば一人であれば抑えるのは容易。」

部下D「その者は豪傑か?」

部下E「その可能性は高いようだのう。」

部下B「兵の死傷状況は?」

部下A「今のところ0です。」

部下E「0?!」

部下C「0だと…!?」

皇帝「0か………」

部下D「皇帝、単身乗り込んでくる者の気概を感じておられてます?」

皇帝「うむ、城下での一件はただのデモンストレーションかもしれぬ。」

部下E「ですが、三兄弟で争った家督争いのときのことをお忘れなく……。」

皇帝「うむ、わかっておる。」

近衛兵士B「そこの者、止まれ!!」

近衛兵士C「ここから先は皇帝がおわす間だ!」

皇帝「?!」

部下C「む!?」

部下A「もう来たか?!」

部下B「早いですな」

皇帝「どの者かが手引きをしたか……」

近衛兵士B「良いから止まれ!」

勇者「死にたくなければ抵抗をやめろ…」

近衛兵士C「ぐぐぐ……」

部下C「兵士どもめ………」

部下E「ホソカワの近衛兵士ともあろうやつらが……」

皇帝「ほほう…」

部下D「皇帝、避難のほうを!」

部下B「そうです!」

皇帝「いや、構わぬ。」

近衛兵士B「こら、お前!」

勇者「いいから静かにしておけ………」

近衛兵士C「………」

近衛兵士B「………」


勇者は刀を鞘に収めると周りを見渡した。
部屋の中を覗くと数多くの男たちが整列しており奥には皇帝らしき男がいた。

勇者「ここが皇帝のいる謁見の間といったところなのか?」

部下C「違うわ!!」

部下E「ここは皇帝の間だ!」

部下F「皇帝がいらっしゃるのだ。指一本触れさせるわけにもいかないぞ。」

勇者「あれが皇帝か…」

皇帝「………」

部下B「………」キリキリ

部下D「…………」

部下A「(さあどうでる怪しき男よ!)」

部下C「(どうやって皇帝を守ろうか……)」

部下E「(俺には守らねばならないものがある!)」

皇帝「(何用で来たのだろうか?)」

勇者「………」シュタ

部下B「なんだ?!」

部下E「何故跪く?!」

部下C「わからぬ」


勇者は皇帝に跪いた。
周りの人間は困惑するばかりである。

勇者「私はアカマツ王国の使者にございます。」

皇帝「何………?この者が?」

勇者「………」

部下B「貴様!!皇帝に手を出してみろ!貴様を殺してくれよう!」

勇者「」ニヤ

部下C「ち、なんという不気味なやつだ!近衛兵士!この男を捕まえよ!」

近衛兵士D「はっ!」

勇者「ちっ………」

皇帝「いや、待て!」

近衛兵士D「は?」

勇者「……?」

部下C「皇帝、いかがなさったのですか……」

皇帝「ただの暗殺者なら忍んで私を殺すはずだ。」

部下C「それはそうですが……。」

部下A「しかし!!6名の番兵をはじめとした部下が!」

勇者「その件については申し訳ない。」

皇帝「ほう、やけに素直ではないか。」

部下B「どうだか……」

勇者「私はただ帝都に感動しておりました。」

部下F「そんなわけがない!!」

部下D「ただの言い訳だ!」

勇者「本当だ!」

皇帝「まあよいではないか。続きを言ってくれまいか?」

勇者「はい……」

部下D「…………」

部下F「………」ギロ

勇者「そうしたら町にいた兵たちが私を拘束しようとしたのです。」

部下B「それこそにわかに信じられるか!」

部下A「よくも番兵を!!」

部下E「皇帝、この者をひっ捕らえる許可を!」

部下C「いや、しかし……捕らえればアカマツとの遺恨を残すのでは?」

部下D「さもありなんことだ…」

皇帝「して、アカマツの使者と言うたな。此度の突然の来訪は何用か?」

勇者「実は後継者である第一王子より文を頂戴しております。」

皇帝「ほほう。」

部下F「嘘に決まっている。」

部下B「そうだそうだ。」

部下E「うむ……」

勇者「手紙のほうを……」

部下F「………」

皇帝「部下C、受け取って私に渡すのだ。」

部下C「わかりました。」

勇者「お願いします。」

部下C「うむ」

部下D「………」

部下A「………」

部下F「……」

皇帝「確かに手紙はいただいた。拝読しよう。」

………
……


皇帝「なるほど、その方は皇女の出迎えの使者であったのか」

勇者「城下町である帝都での騒動の一件、申し訳ございません。」

皇帝「いやいや、いいのだよ。」

勇者「そう言ってもらえると助かります。」

部下A「………」

部下C「うーむ………」

部下F「………」ギリギリ

皇帝「お前たちもそう睨むでない。」

部下D「申し訳ございません」

部下B「兵士を無碍にされてしまったので……」

部下A「私めも同じく…」

部下E「私も……」

皇帝「うむ。しかし………、皇女を連れたいと申すのか。」

勇者「はい、これが王子の望みです。」

皇帝「それほど婚儀を早く行いたいのか?」

勇者「はい。それが王子の望みですので。」

皇帝「そうかわかった。」

部下C「皇帝………」

部下E「従うしかありません……」

部下B「この男がアカマツの人間だと思いたくない……」

皇帝「今すぐ皇女を呼ぼう」

勇者「ありがとうございます!」

皇帝「皇女、皇女よ!」

勇者「すぐに会えるのですか?!」

皇帝「今ちょうど隣の部屋にいるのだ。」

勇者「なるほど!」

皇帝「皇女はおらぬのか?」

皇女「は~い、お父様。」

勇者「(可愛い声をしているな……。これなら王子様も喜ぶだろう)」

皇帝「皇女よ、出て参れ。アカマツ王国の方から出迎えの方がいらしたぞ」

皇女「は~い、お父様」スッ…

勇者「え……?」

そこには5尺3寸20貫…いやもとい160cm75kgの女が勇者の前に現れた。
美しい皇女が現れたと思いきやそこで待っていたのははなはだ不器量に近い状態の女だった。


勇者「………」ポカーン

皇女「あなたがアカマツ王国のお出迎えの方なんですね!」

勇者「え、あ、ま、まあ……。」

皇女「まあ嬉しい!やっと王子様に会えるのね!」ニコニコ

勇者「あはは・・・」

皇帝「此度の婚姻はめでたく思う。我が愛しの皇女をアカマツ王国の世継ぎと結ばれるんだからな。」

勇者「(この皇女ブタじゃねえか……)」

皇帝「実はな我が皇女との婚儀がなかなかまとまることがなくて困っておったのだ。」

勇者「そうなんですか?」

皇女「そうなんです…」シュン

勇者「(そりゃあこんな不器量な女が相手だと対応に困るだろ。)」

皇女「使者の方、私が皇女でございます。」ペコリ

勇者「いえいえ…出迎えの使者を務めます政と申します。」

皇帝「いやいや、まさか突然出迎えの日が来るとは思わなかった。」

勇者「いえいえ……」

皇女「やっと私も花嫁衣裳を…!!」

部下B「見れる日が来るのを待っておりました。」

部下C「美しい姿が見れる日を楽しみにしております。」

皇帝「うむ。」

部下A「家臣一同皇女様の婚儀を祝福いたします。」

部下一同「おめでとうございます。」

皇女「みんなありがとう!」

皇帝「してだな政殿───」

勇者「…………」

~回想~

王子「私の好みの女なのだがな……」

勇者「はい」

王子「痩せ型で胸が小さいのが好きだ。」

勇者「なるほど……」

王子「だが、弟のほうは私とは全く逆だ。」

勇者「逆、まさか………。」

王子「弟は太っていて胸が大きい女が好みだ。」

勇者「俺とは大違いだ…」

王子「君はどんな女が好みなのかね?」

勇者「俺は……痩せ型で胸が大きい女性が好きだ。」

王子「君………それ欲張りじゃないのか?」

勇者「そ、そうですか?」

王子「それで更に器量良ければ尚良し」

勇者「そりゃあまあ……そうですけども……」

王子「そのような女に巡り会えても、ものにできるのは金と権力のある男だけだ。」

勇者「やはりそうですよね………」

王子「それとだな……」

勇者「はい。」

王子「相手の姫のことなんだが、と言うか向こうは帝国だから皇女と呼ばないといけないのか…」

勇者「ややっこしいですね…。」

王子「それは置いておくとして皇女は何度も縁談を断られた曰くつきの女らしい…」

勇者「ほほう……、それは何故でしょうねえ…」

王子「類まれなる美貌の持ち主と聞いているし、ホソカワ帝国は中央王国に隣していて力ある国だ。」

勇者「俺も聞いたことあります。ホソカワ帝国は勢い盛んある国であり、敵の攻撃も受けない、と……」

王子「それにホソカワを後ろ盾にすれば周辺国の攻撃を受ける可能性が少なくなる。」

勇者「そうですね。」

王子「なのに縁談は断られ続けている。おかしいと思わないのか?」

勇者「ですね……。」

王子「そこで君に皇女を出迎える使者になってもらう。」

勇者「俺がですか?」

王子「希望としては二人きりで王都に戻ってほしい。」

勇者「それは何故でしょう?」

王子「婚礼当日になって父や弟などに監禁されては私もおしまいだ。」

勇者「はあ・・・」

王子「だから内外に私が次期国王として示さなければならないのだ。」

勇者「なるほど。」

王子「もし私の好みではない皇女であればこの縁談を破談にしても構わない……」

勇者「それは本気で?!」

王子「本気だ。」

~回想終了~

勇者「(こりゃすごいやばいことになりそうだな…。完全に弟君有利の女性ではないか…。)」

皇帝「政殿、政殿?」

勇者「え、はい?」

皇帝「私の言ってたことを聞いていたのか?」

勇者「すみません、考え事をしていました。」

皇帝「人が話しているのにうわの空になるのは失礼だぞ。」

勇者「申し訳ありません。」

皇帝「うむ。」

皇女「お父様、使者の方はお疲れなのですよ。」

皇帝「そうかもしれぬな。」

勇者「(おだてはうまそうだな…。)」

部下A「………。」ジー

部下B「しかし城下で暴れてましたから疲れてて当然でしょう。」

勇者「いや、さにあらず、私は多少疲労の色はありますが大丈夫です。」

部下B「ほほう体力がおありなのですか。なかなか地力をもったところとの縁組ですな。」

皇帝「うむ。ミヨシなどの周辺諸国を牽制するには十分有効な縁組だな。」

勇者「(俺はただのらりくらりとやってきただけなんだけどな………)」

皇帝「本日出迎えに来てくれたのは嬉しく思う。しかしなんだ…。」

勇者「?」

皇帝「ちょっと急過ぎないか?」

部下C「そうですな。いささかこちらの状態を無視された、と…。」

部下D「連絡は前もっていただきませんと。」

勇者「申し訳ない、火急の用件がありすぐにでも出迎えをするようにと王子からの要請がございましたので……。」

皇帝「わはははは。そうか、王子は早く皇女を嫁にしたくて痺れを切らしておったのか。」

皇女「お父様……。」

勇者「(本当は家督争いで国が二分する危機でこちとら意味の無い仕事を請け負ってるんだよ…)」

部下B「皇女様はお幸せになれるようですな。」

皇女「もう部下Bったら…//」

皇帝「わはははは。」

勇者「そこで皇帝殿、誠に申し訳ないのですが………。」

皇帝「うむ、なんだね?申してみよ。」

勇者「実は……、我が王子の要望で皇女様の供の者は無しで私と2人で国に入るようにと仰せつかりました。」

皇帝「なんと?!」

部下A「皇女様を危険に晒す気か!」

部下B「そうじゃ。先ほどまで番兵と諍いを起こしてた者が恥を知れ!」

皇女「………フヒ」

皇帝「やはり私の可愛い娘である。供もつけさせずにアカマツ王国へ向かわせるなどと…。」

勇者「しかし、これは王子の希望でございます。」

部下C「ならんならん!却下だ!」

皇帝「部下たちも言っておろう。供の者五十はなければ道中不安でならない。」

勇者「しかし……」

皇帝「海路を行けば海賊どもや敵対しているミヨシに襲われる」

部下A「そうだ!大事な皇女様を男と2人きりで歩かせてたまるものか!」

部下B「格好がいささか怪し過ぎる!」

部下D「全くだ。フードで顔を覆い隠してたからな。」

皇帝「なので供の者をつけさせてもらうぞ。」

勇者「そうですか。それでは皇帝殿は王子の希望を無碍になされるおつもりなのですね?」

部下C「ふざけるな!」

部下D「そもそも何故皇女様が危険な目に遭わなければならないことをせねばならぬのだ?!」

皇帝「王子の希望か………。」

勇者「はい……」

皇帝「では私の希望を聞いてくれぬか?」

勇者「はい」

皇帝「私の希望は皇女に、娘に、王子殿と幸せに仲睦まじく添い遂げてもらいたい。」

勇者「そうですよね。」

皇帝「娘の幸せを願う父の気持ち、わかってくれるか…?」

皇女「お父様……」ウルウル

部下C「皇帝……」

部下A「その通りにございます。」

勇者「(このまま行くと芳しくない成果をあげてしまう……)」

皇帝「では供の者をつけさせてもらうぞ。」

勇者「(く………、考えが浮かばない………)」

皇帝「部下D、皇女をアカマツ王国に連れて行く供の者を用意してくれ。」

部下D「はっ!」

勇者「(そうだ!あの手があった!)」

皇帝「皇女、これで嫁げるぞ。」

皇女「はい、お父様♪」

勇者「(ふ、今思えば一か八かの策だな…。やってみるか…。)」

皇帝「政殿、これで行かせてもらおう。」

勇者「皇帝殿、私はこれにて失礼させていただきます。」

皇帝「どうしたのか?」

皇女「………?」

勇者「これにて破談となりました。どうもありがとうございました。」ペコリ

部下C「は?!」

部下A「なぬ?!」

皇帝「今何と申した?」

勇者「ですから破談にさせていただくのです。」

皇帝「どうしてだ?!」

皇女「そうよ!なんでよ!また破談にさせられるの!?」

勇者「皇女様、恨むなら皇帝殿をお恨みください。」

皇帝「私は関係ないだろう!」

部下B「そうだ!」

部下A「その方が悪い!」

皇女「みんなの言うとおりよ!」

勇者「そうですか……。五十も六十も行列ができてれば逆にバレますがよいのでしょうね。」

皇帝「ん?どういうことだ?」

部下F「説明せよ。」

部下E「婚儀にバレとか関係ないだろう。」

勇者「今回の縁組により面白くない国としてはどうします?」

部下C「壊すよな。」

部下D「あるいは……ん?はっ!!まさか…!!」

部下B「行列を襲撃して皇女様を奪うのか?!」

勇者「その通り。」

皇女「そんな私はどうされちゃうの?!」

皇帝「皇女大丈夫だ。私がそうさせない。」

勇者「ただでさえ我が王国とホソカワ帝国は敵が多いと聞きます。」

皇帝「うむ、そうだな。」

勇者「なればこそです。」

部下C「どういうことだ?」

部下E「とんと見当がゆかぬ。」

部下A「目立つようにしてはならぬと申すのか?」

勇者「さよう。」

皇帝「なるほど……」

勇者「ならば二隊わけますか?」

部下B「二隊?」

勇者「私と皇女の隊と五十程度の偽の行列の隊」

皇帝「つまり、敵の目を欺くためのものか」

部下C「しかし大丈夫なのか?」

部下A「皇女様の貞操が危ないな……」

勇者「それに関しては大丈夫です。」

皇帝「本当か?!」

勇者「本当です!」

皇女「ちょっと怖いかも~」

勇者「(誰もお前みたいなブタを襲ったりしねえよ!)」

部下D「しかし2人だとすると山賊に襲われた時が危ないな…」

皇帝「うむ、それもそうだな。」

勇者「それに関しても大丈夫です。私が皇女を守ってみせましょう」

部下B「信用にできるかどうか…」

部下A「しかし番兵6人にしたあれは逆に見事だった言うしかないか……」

勇者「お認め下さいますか?」

皇帝「認めよう…」

勇者「ありがとうございます!」


こうして勇者と皇女は2人旅でアカマツ王国へと向かう旅が決まった。
この旅が平穏であり、平坦な道のりで終わるわけがない。
また大きな騒乱の種となった……。

勇者「それでは出発しましょう!」

皇女「そうですね!」

勇者「では行きますか。」

皇女「駕籠で移動するの?」

勇者「いいえ、歩きです。」

皇女「ぶー………」

勇者「(思いっきりブタじゃないか……)」

皇女「どうしても歩きじゃダメなんですか?」

勇者「はい、そうです。」

皇女「えー………」

勇者「とりあえず、アカマツ王国まで参りましょう。」

皇女「そ、そうですね………。」

勇者「よし!」

皇女「あのー………」

勇者「はい、なんでしょう?」

皇女「やはり供の者をつけたらいけないのですか?」

勇者「はい、そうです。」

皇女「それは何故でしょうか?」

勇者「理由のほうは聞かないでください」

皇女「そう……ですか……」

勇者「ですが、歩きのほうが逆に安全な場合もあります。」

皇女「疲れるのに?」

勇者「ぐ………、それは長時間歩き続ければ疲れます。」

皇女「私は馬にも乗れないよ…。」

勇者「(そりゃああんたがブタだからな)」

皇女「どうにかならないのですか?」

勇者「歩かなければなりません。」

皇女「はあ………」ショボーン

勇者「(どうにかしてこの皇女を痩せさせなければ…)」

皇女「政様」

勇者「なんでしょうか?」

皇女「私が嫁ぐ王子様ってどのようなお方ですか?」

勇者「(詳しいこと知らないよ………)」

勇者「まあ、親を超えようと必死になってる御仁ですね。」

皇女「まあ素敵♪」

勇者「(可愛い子ぶるんじゃねえよ。気持ち悪い……。)」

皇女「ところですぐに到着できるんですよね?」

勇者「ええまあ……、皇女様が頑張れば……。」

皇女「3日で到着できるよう頑張ります!」

勇者「まあ3日でできるよう頑張りましょうね。」

皇女「はい♪」

勇者「(俺としては早くこいつから離れたいが3日で届ければ王子の面目は丸潰れになるな…)」

皇女「早く王子様に逢いたいなぁ……」

勇者「(俺は早くこいつから離れたいよ……)」

アキタケダ王国支城・アキタケ城───

戦士「もうなんで私がこんな城にいなきゃならないの?」

魔術師「まあまあ……」

尼僧「早く勇者様に会いたいですぅ……。」

戦士「これって軟禁じゃないの?」

魔術師「どうだろう……。」

尼僧「待遇もそれほど良いってわけじゃないんですよね…。」

戦士「なんで旅してる私がオオウチ王国との最前線の城の守備をさせられないといけないのかしら?」

尼僧「オオウチと言えばフグが美味しいと噂の漁港があるみたいですぅ……。」

魔術師「フグかあ……、食べてみたいと思ってたんだけどなあ………。」

戦士「早く西に行きたい……」

魔術師「アカマガセキ……」

尼僧「勇者様は一体どうしたのでしょう?」

戦士「私の知ったことかぁッ!!」

出発から4日目───

皇女「政様、まだ到着しないのですかぁ?」

勇者「まだです。しばしのご辛抱を。」

皇女「さっきから辛抱辛抱の連呼で私ずっと我慢してるのに!」

勇者「申し訳ありません。」

勇者「(そりゃあ30分歩いて30分休憩のほうがおかしいだろう!)」

皇女「あー、足が痛い!」

勇者「ん………。」

皇女「休ませてもらえないですか?」

勇者「無理。」

皇女「ひどーい!」

出発から5日目───

皇女「どうやらどんどん森に入ってるみたいですね……」

勇者「こっちのほうがいいです。」

皇女「私は嫌です。」

勇者「無意味に襲われたらどうするんですか。」

皇女「こういう森の中のほうが逆に危ないと思うんですけど……」

勇者「姿を眩ますには森の中が一番です。」

皇女「そうでしょうか?。」

勇者「しっかしすごい森の中に入り込んでしまった。」

皇女「政様のせいですよ……。」

勇者「申し訳ありません。」

勇者「(しかしまあホソカワの素破の目を眩ませるにはこれくらいのところまで行かなければ…)」

皇女「早く休みたーい!!」

出発から7日目・アカマツ王国───

王子「(遅い……、遅いぞ、あいつは一体何をしているんだ?)」

王様「どうした、王子よ。」

王子「いえ、何もありません。」

王子弟「ホソカワの姫のことだろう。」

王子「………」

王様「ほほう、そんなにホソカワの姫にぞっこんか。」

王子弟「でも兄上にしては珍しいと思ったよ。」

王様「どういうことじゃ?」

王子弟「その姫、実はふくよかな体型をしているんだよ。」

王子「!!!」

王様「なんじゃと?!それは本当か?」

王子弟「オレの部下に探りを入れさせてたらそういう情報が出てきた。」

王子「(ちぃ………、姫は肥満女だったか……)」

王子弟「兄上もオレと同じくふくよかな女性が好みだったなんてなあ……。」

王様「ほっほっほ。そういうことか。」

王子弟「しかも容姿は実に醜いとの噂だよ。」

王子「!!」

王子弟「ま、それが嫌ならオレが代わりに姫を娶るよ。」

王子「………」ギリリ

王様「王子、いかがしたか?」

王子「いえ、何もございませぬ。」

王子弟「」ニヤリ

王様「左様か。」

王子「はい。然らばこれにて。」

王子「………」カツカツカツカツ

王子は部屋から去っていった。


王様「王子弟よ、先ほどの件は誠か?」

王子弟「誠のことにございます。」

王様「そうかそうか。」

王子弟「次期国王はこのオレが就かなければなりません。」

王様「そうじゃそうじゃ。あの王子は可愛げがない。そちこそ次期国王に相応しい人物じゃ。」

王子弟「はい、その通りでございます。」

王様「わっはっははははは。」

王子弟「ははははははは」

出発から8日目───

皇女「もう全身クタクタ………」

勇者「皇女様、もう少々です。」

皇女「少々って……、昨日だって熊に襲われたじゃないのよ!」

勇者「ですが、これを乗り越えればきっとアカマツ王国に到着します。」

勇者「(ま、本当はツツイ国あたりに入り込んでるんだけどなあ……)」

皇女「ねえ見て、あれ!」

勇者「え?何でしょうか?」

皇女「寺院みたい……」

勇者「寺院……。そうかツツイの領内の寺院か。」

皇女「ツツイの寺院なんですね!」

勇者「しかしかなり立派だなあ……。」

皇女「何か宗教都市みたいですね……。」

坊主「ようこそ、宗教都市・コーヤサンへ。」

2人「「え?」」

出発から10日目・ホソカワ帝国───

皇帝「何?!皇女の行方がわからなくなっただと?!」

部下C「はい!」

皇帝「あの男はどうしたのか?」

部下C「消息は掴めません……。」

部下B「皇帝」

皇帝「なんだ?」

部下B「素破の報告によりますれば何故か南へと向かったそうで。」

皇帝「南?!」

部下D「南と言えばスズキの領土。」

皇帝「あの男め、スズキの手の者だったのか……ぐぬぬぬ」ワナワナ

部下A「討伐隊を派遣しましょうか?」

皇帝「いや、ならぬ。」

部下C「どうしてですか?」

皇帝「海からミヨシがきたらどう対応するのだ?」

部下C「この私めがミヨシとぶつかりましょう。」

皇帝「それは嬉しい。しかし東のツツイとも不穏だ。」

部下B「さすがに四方敵に囲まれてますゆえ……」

部下D「時期を見極めると言うのでしょうか?」

皇帝「否、指名手配すれば早い。」

部下A「なるほど!それならばこちらの被害は極力無くて済む。」

部下C「されど、皇女様が連れ去れた事実を公にしてもよろしいので?」

皇帝「あー……。」

部下D「如何しましょう?」

皇帝「んー………。」

部下B「それよりもアカマツに連絡をしたほうがいいな。」

皇帝「待て。」

部下B「何でございましょうか?」

皇帝「この一件我が帝国によって大きな岐路になりそうだ。」

部下C「まさか敵対している近隣諸国への友好条約を踏むための布石に使うのですか?」

部下A「だとすれば塞翁が馬状態だな。」

部下B「全くだ。何が起きるかわからぬ。」

皇帝「皇女救出は我々が行えばよい。あの男は別件で指名手配すればよい。」

部下B「ですが別件はどのように致しますか?」

皇帝「虚偽罪とでもしておくかな。」

部下D「それだと指名手配として弱くないでしょうか?」

皇帝「それもそうだな……。」

部下B「ではこういうのは如何でしょう?」

部下D「ん?」

皇帝「何々……?」

部下B「こういうことです───」

出発から14日目・アカマツ王国───

王様「なんだと?!」

大臣「かの偽勇者いつの間にか牢獄からいなくなったばかりかホソカワ帝国から指名手配を受けております!」

王様「王子が別の牢獄に移したいと申していたが……。」

大臣「どういうことでありましょうか?」

王様「野に放ったに違いない。」

大臣「その可能性は高いでしょうな。」

王様「して罪状は何かわかっておるのか?」

大臣「はい、王子の偽の使者として名代で皇女受け取ろうとしたこと。」

王様「ふむ。」

大臣「そしてそれを看破されてホソカワの憲兵6名、重臣クラス2名を傷を負わせたこと。」

王様「なんじゃと?!」

大臣「そして城下の女4名に強姦を働いた3つの罪にございます。」

王様「あやつを即刻処刑すべきだったのう。」

大臣「ですな。」

王様「しかし………、ホソカワとの縁談はどうなるのか…。」

大臣「使者を送ってみましょう。」

王様「いや、今は触らぬほうがいいだろう。」

大臣「まさか……。」

王様「祟りでも起きる可能性が高くなるやもしれぬ。」

大臣「ではここは静観しますか?」

王様「そのほうがよいだろう。」

出発から21日目・オオウチ王国トクヤマ───

尼僧「やっと地獄の日々から抜け出せましたね。」

戦士「本当………。」

魔術師「あの王様最悪だったよね…。」

尼僧「何かいやらしい視線を感じましたぁ……。」

魔術師「僕も何か嫌なものを感じた。」

戦士「しかし逃げ出せてよかった。」

尼僧「そ、そうですね!」

魔術師「でもこのでかい胸邪魔だなあ……。」

戦士「正直胸が大き過ぎるのもどうかと思うよね………。」

尼僧「まあ勇者様がやってしまったことですからね…。」

戦士「あの偽勇者殴り倒す!」

魔術師「戦士さん怖いなあ……。」

出発から24日目・オオウチ王国王都・ヤマグチ───

戦士「ここが王都・ヤマグチだって。」

尼僧「西の大都と呼ばれるとあって町の規模も大きいです。」

魔術師「こことハカタというところから大陸との貿易で珍しいものが入ってくるんだね。」

戦士「ここから南の町には工業も発展してるみたいねえ。」

魔術師「戦士さんかなり詳しいですね。」

尼僧「そうですよね…。」

戦士「(徹夜を忍んで覚えたとか言えない……)」

戦士「とにかく、ここヤマグチ周辺には大きなダンジョンが5つあるというからそこで修行しましょ。」

魔術師「戦士さん張り切ってる……。」

尼僧「怖いです……。」

出発から33日目・とあるダンジョン───

??「うりゃあ!!とりゃあ!!」

魔物「ぐしゃあ!!!」

??「ふ、弱過ぎる。」

魔物「キシャー!」

??「」ズバッ

魔物「」

謎の男は魔物をあっという間に切り裂いていった。

??「しかしでかいダンジョンがあると聞いて入ってみたものの俺にとっては雑魚ばかりだったな。」

魔物「シャー!!」

??「」ズバッ

??「弱い。弱過ぎる!」

魔物「………」

魔物「ガルル……」

??「弓・長槍・刀・鉄砲、俺はどの武器も苦にはしない。」

??「敵は7体か…、修行程度にはちょうどいい数だな。」シャキ

魔物「ガルー!!」

??「」ズバッ

魔物「あぅー!!!」

魔物「うぃーん」

魔物「ガー……」

??「甘い甘い!」ズバッザバッ

??「雑魚過ぎる。ガハハハハ!」

魔物「グルルルル………」

??「さあ貴様も来い!」

魔物「ガル?!」

出発から39日目・ヤマグチ・酒場───

男戦士「おい、どういうことだよ?!」

男格闘「なんでダンジョンが1つ閉鎖になったんだよ?!」

豪腕剣術家「全くどうしてその様なことになった?」

店主「すみません…、ニホのダンジョンにいた魔物が全滅してしまいまして…。」

男戦士「じゃあニホの北にあるミタニのダンジョンに行くか。」

豪腕剣術家「では俺はトクヂのダンジョンで剣の腕を磨くと致そう。」

男盗賊「ち……、クロオオカミの犬歯を集めてたのにねえとはな。」

男格闘「俺なぞユダの暴れ鳥の羽を集めてたのに1枚も落ちてない。」

店主「私も大小14のダンジョンを管轄しておりますが、まさかそのうちの大きなダンジョンの1つの魔物が全滅するとは…」

男格闘「ということはとんでもないのがダンジョンにいたってことだよな?」

店主「恐らくは………」

男盗賊「しかしよ、大きいダンジョンで初心者でも大丈夫なニホのダンジョンが潰れたとなるとな……」

男格闘「俺はミタニのダンジョンで修行できるか不安だし、かといって小さいダンジョンでは…」

店主「とりあえずトクサのダンジョン付近にあるトクサの休憩所と連絡をとってみますので」

男盗賊「おう、頼むぜ店主。」

魔術師「これはまた厄介なことみたいだね。」

店主「おう、嬢ちゃん。そうなんだよ。」

男格闘「いい女だなー。」

魔術師「そう?ありがと」

店主「しかしダンジョンが1つ閉鎖となるとこっちとしては商売あがったりだよ。」

魔術師「でもまだ13個もあるんだから大丈夫じゃないの?」

店主「いやいや、あのニホのダンジョンは初心者向けダンジョンとして大人気の場所なんだよ。」

男格闘「そうそう。多くのコレクターズアイテムがある故に人気があるんだよ。」

魔術師「そうなんだ。知らなかった。」

男盗賊「俺としても困ってるんだよな…。」

男格闘「ところで店主、クエストのほう何かいいの入ってないのかい?」

店主「今人気のやつならあるぞ。」

魔術師「僕も気になるよ。」

男格闘「一体何が人気なんだ?」

店主「このクエスト何だが、賞金8万マニーなんですよ。」

男盗賊「8万?!」

魔術師「嘘ォ?!」

男格闘「どーせ死人が何人も出るクエストなんだろ?」

店主「それがですね。ホソカワ帝国発布のクエストで極悪男捕縛の件なんですよ。」

魔術師「極悪男の捕縛………」

男盗賊「8万は確かに魅力的だが割りにあわなそうだな。」

魔術師「アカマツ王国の王子の偽の使いとして皇女を引き取ろうとした、6名の憲兵と2名の重臣への傷害、4名の女性への強姦……」

店主「ね、極悪男でしょ?」

男格闘「その男1人なんだよな?」

店主「1人みたいですよ?ですが姿を眩ましてるみたいですねえ。」

男盗賊「そいつが今回のニホのダンジョン荒らしの犯人じゃないのか?」

男格闘「それは一理あるかもな」

男剣士「話は聞かせてもらった。」

魔術師「あなたは・・・?」

男格闘「てめえ誰だよ?」

男剣士「なあに、通りすがりの男剣士さ。」

男盗賊「ほう、剣の腕に覚えありってか。」

男剣士「ツツイにある里にヤギュウの兄貴から剣法を教わった。」

男格闘「ヤギュウと言えばカミイズミの弟子か。」

男剣士「ああ、3年間みっちりしごかれた。」

店主「して、皆さんはこのクエストを受けられるのですか?」

男盗賊「もちろん受けてやるさ。」

男剣士「8万は魅力的だな」

男格闘「ニホのやつがこいつだと関連深いだろうな。」

魔術師「…………、アカマツか………」

店主「お嬢さん、どうしたんだい?」

魔術師「うーうん、何でもない。」

男剣士「姉ちゃんもどうだい?俺らと一緒に戦わないかい?」

男盗賊「そうだよ、入りなよ。」

魔術師「えっと、僕仲間のところに行かなきゃ、有意義なお話ありがとう。ばいばい」タタタ…

男剣士「行ってしまった…」

男盗賊「とにかく目星のあるところに行くか」

男格闘「応!」

店主「即席ながら素晴らしき徒党ですね~。」

出発から40日目・戦士たちが宿泊しているヤマグチのとある宿───

戦士「つまり、アカマツの出身者の男がホソカワからお尋ね者になった上でここのダンジョンの1つの魔物を全て殲滅させたわけ?」

魔術師「昨日行った酒場情報ではそういうことになるよ。」

尼僧「怖いですぅ………」

戦士「でもさ、アカマツ出身でお尋ね者になったの1名浮かぶけど………。」

尼僧「勇者様ですか?」

魔術師「尼僧ちゃん、勇者じゃないよー。偽勇者だよー。」

戦士「あの男が勇者っておかしいでしょ……。私の胸を揉んだの忘れないわ。」

魔術師「僕も揉まれた…」

尼僧「そう言えば勇者様に胸に揉まれてから皆胸大きくなりましたよね。」

戦士「それ何度も聞いたから!耳にタコができるくらい理解してるって!」

尼僧「そ、そうですよね!でもおかしいと思いませんか?」

魔術師「ん、どういうこと?」

尼僧「そのお尋ね者の男性、4名の女性を強姦してるんですよね………?」

魔術師「え、あ、うん、クエストにはそう書いてあったよー。」

尼僧「勇者様に……、えと……、あの……、胸を揉まれた時………、それ以上のことされましたか?」

戦士「え…………、つ、つまり……、アキタケダの城の時の一件のことを言ってるの?」

尼僧「もちろんです。」

魔術師「僕は胸を揉まれただけだったよ……」

戦士「私も揉まれただけで済んだ。」

尼僧「あたしも胸を揉まれただけです。」

戦士「それがつまりどういうことになるの?」

尼僧「犯人は勇者様ではないってことです。」

魔術師「えー……、尼僧ちゃん偽勇者を擁護しまくってない?」

尼僧「一応援護はしてますよ?」

戦士「だって私たちの胸を揉んだあの偽勇者が別の女性をレイプしてしまう可能性十分あるわよ!!」

尼僧「だとしたらあたしたちがとっくにされていたはずです!そうじゃないんですか?」

魔術師「そう言われたら……そう思っちゃうけど……、だけど僕は違うと思うよ……」

戦士「魔術師の言うとおりよ。人はその時その時によって感情が異なるんだから。」

尼僧「では勇者様はあたしたちのときは抑えることができた、と……?」

魔術師「そ、そういうことだよね。」

尼僧「あうー………」

戦士「こら、落ち込まない!」

出発から43日目・ヤマグチにあるとあるダンジョン───

魔物「ガウー!!」

??「ほらよっと!」ズバッ

魔物「」ピクピク

??「ここのダンジョンももう魔物はいなくなったのか?」

??「500匹以上魔物がいたがこうも2~3日くらいで片付くとはなあ。」

??「別のダンジョンに向かうか。」

出発から44日目・ヤマグチ・酒場───

店主「申し訳ございません!」

男戦士「ミタニのダンジョンの魔物が何故全滅してるんだよ!」

店主「皆目検討がつきません。」

男戦士「ミタニは俺の1人の力量でなんとかできるダンジョンだったんだぞ!」

店主「そんなこと言われましても……」

男戦士「納得いかねえ!」

男盗賊「おいおい、またお怒りかよ……」

男戦士「誰だ貴様は!」

男剣士「怒るのはわかるけどよ、これは緊急事態だぞ。」

男戦士「どういうことだよ?」

男剣士「今このヤマグチにはホソカワのお尋ね者がいる。」

男戦士「お尋ね者?」

男格闘「しかもそいつ一騎当千の猛者らしいじゃないか。」

男盗賊「しかも女を襲う。」

男戦士「ふ、俺には関係ねえな。」

男剣士「お前さんの大切な女が襲われてもいいのか?」

男戦士「俺には女などいらん。1人で十分だ。」

男盗賊「こいつ強がってるよ。」

男戦士「なんだと?!」

男格闘「まあまあ、今どういう状況かもまだわからない。」

男盗賊「まあな。」

男剣士「でも一騎当千なのは間違いない。」

男戦士「俺には関係ないわ」

男剣士「関係あるかもしれないぞ……?」

男戦士「知るか!じゃあな!」

店主「行ってしまわれたみたいですね。」

男剣士「だな……」

出発から47日目・とある小ダンジョン───

戦士「はあ…………、手ごたえが全然ない……」

尼僧「はい………」

魔術師「何か弱過ぎるね………」

戦士「こうも小ダンジョンの魔物が弱過ぎるなんて……」

尼僧「あたしたちってこんなに強かったのか錯覚してしまいますね。」

魔術師「実際問題僕たちってどれくらいのレベルに達してるのかなあ?」

戦士「アキタケダで信用されるくらいのレベル……?」

尼僧「それでは低いです!」

魔術師「良くて25、悪くて15くらい?」

戦士「だとしたら低いわね……」

尼僧「だとしたらもっともっと頑張らないと!」

魔術師「それしかないよね……」

出発から50日目・トクヂのダンジョン───

豪腕剣術家「む?!魔物が………」

魔物「」

魔物「」

魔物「」

魔物「」

豪腕剣術家「どこを歩いても魔物の残骸ばかり………」

魔物「」

魔物「」

魔物「」

豪腕剣術家「しかし全くひどい有様じゃ……」

魔物「」

魔物「」

豪腕剣術家「この魔物、我が子を守ろうと必死に………」

豪腕剣術家「子供の魔物までこんな殺し方をか……。惨いのう……」

魔物「」

魔物「」

豪腕剣術家「不気味な様だな。寒気がしてくる。」

豪腕剣術家「これは恐ろしいやつがこの中にいるな……」

??「その通り」

豪腕剣術家「何者だ?!」ビクッ

??「腕に覚えがありそうなやつだな……」

豪腕剣術家「なぬ?!」

??「楽しめそうだな。」

豪腕剣術家「ぐぐぐ………」

??「では参るぞ!」

豪腕剣術家「来い!」

出発から51日目・ヤマグチ・酒場───

男A「恐ろしいことになったな……。」

男B「ああ……」

店主「…………」ズーン

男C「魔物による死因ではなく刀による一刀両断とはな……」

男D「あなおそろしや……」

男E「南無………」

尼僧「どうしたんですかあ?」

男D「ああ、昨日な豪腕剣術家という男が何者かによってトクヂのダンジョンで殺された。」

尼僧「怖いですぅ……」

男D「お嬢さんも気をつけてな。」

戦士「ああ、ありがとう。」

男C「しかしダンジョンに入れないよな……」

男B「ああ……」

男E「南無………」

店主「…………」ズーン

尼僧「店主さん、ファイトー」

店主「慰められても………」ズーン

魔術師「ダメだ……」

戦士「これは相当のショック受けてるんだわ……」

出発から58日目・トクサのダンジョン───

男戦士「しかしここは不気味なダンジョンだな……」

男戦士「魔物の死骸で埋め尽くされている」

魔物「」

魔物「」

男戦士「あいつらの言うとおりになってるようだな……」

男戦士「しかもどこを見ても魔物の死骸ばかりで反吐が出てしまうわ」

魔物「」

魔物「」

魔物「」

男戦士「くそ………、一体何があったんだと言うんだよ……」

男戦士「む?人が倒れている………。」

男戦士「おい、大丈夫か……?」

男盗賊「く………、くそ………、お…おま……え……は………」

男戦士「お前は酒場にいた男の1人じゃないか」

男盗賊「ほかに……いっ……しょ……に、きて……た……やつ………は……」

男戦士「うんうん」

男盗賊「しん───」

男戦士「おい!おい!」

男盗賊「」

男戦士「おいマジかよ!」

男戦士「大丈夫か?!」

男剣士「」

男戦士「事切れている………」

男格闘「」

男戦士「あいつもか………」

男戦士「3人ともやられたのか………」

??「次ハ……お前ノ番…………ダ………」

男戦士「え?」

男戦士「ぐわあああああああああああああああァッ!!!!!!」

出発から62日目・ヤマグチ・酒場───

尼僧「こんにちは~」

店主「………」ズーン

戦士「あれ?2週間ヤマグチから離れただけなのに何この活気の無さは??」

魔術師「ま、まさか……?!」

尼僧「ヤマグチの町も閑散としちゃってましたね……」

戦士「この町は何かがおかしい……」

店主「何者かによる殺害事件で被害者がまた出た……」

魔術師「店主さん、僕たちがいない間に起きてしまったんですか?」

店主「」コクリ

戦士「ところでダンジョンのほうは?」

店主「14あったダンジョンも大きなダンジョンを1つのみとなってしまった。」

尼僧「嘘?!」

魔術師「1ヶ月で13のダンジョンが閉鎖って異常事態だね。」

戦士「ヤマグチは危険だという風聞が流れたせいで客足が途絶えてしまったんだろうね…」

尼僧「たった1人のためにですか?」

戦士「うん、たった1人のためにね……」

店主「ああ被害者が増えていく………」

戦士「こりゃダメだ……」

魔術師「とりあえず僕たちはヤマグチ周囲で魔物狩りをしてレベルアップだね」

尼僧「はい!」

出発から68日目・アキヨシのダンジョン入口───

兵士A「暇だなあ…」

兵士B「暇だねえ……」

兵士A「しかし何でダンジョンの入口で警護をやらなきゃならないんだ?」

兵士B「どうやらヤマグチ周辺のダンジョン全滅を阻止するためのものらしい」

兵士A「ここにいても何も意味が無いような気がするが……」

兵士B「まあまあ王様にとって何か最善な手なんだろう。」

ゴゴゴゴゴゴゴ……………


兵士A「な、何だ?!」

兵士B「地震か?!」

兵士A「わからない……」ガタガタ

兵士C「何があった?!」

兵士D「この地響きはなんだ?!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………


兵士B「とんでもない地殻変動が起きてるのかもしれない…」

兵士C「だといいんだけどな…」

兵士D「よし、俺が城まで走って知らせてくる。」

兵士A「た、頼んだああああ!!」ガタガタ

兵士C「お前震え過ぎ!」

兵士A「足が震えて止まらない……」

兵士B「なあにじきに収まるさ。心配するな」

兵士D「ぎゃあああああああ!!!!」

兵士C「何だ?!」

兵士A「」ガタガタ

兵士B「兵士Dに何があった?!」

??「邪魔スル……者……、殺ス…………」

兵士A「ひ、ひいいいい!!!!」ガタガタガタ

兵士C「くそ!!」

兵士B「ちぃ……」

??「ドケ…………」

兵士A「」ガタガタガタ

兵士C「そ、それはできない!」

??「ナゼ………だ…?」

兵士C「く、く、国の命令だからだ!」

??「ふっ………、国か……、国ノ力なぞ………貧弱……ソノモノ………」

兵士A「お、お、お助け………」

兵士C「国王陛下を愚弄するおつもりか!」

??「国王ナド………ソノ程度ナモノ………」

兵士B「だからと言って国王陛下を馬鹿にするものではない!」

??「ならば全員殺ス………」

兵士B「俺らの武運はここで尽きてしまうのか………」

兵士A「た、助けて………」ガタガタガタガタ

兵士C「ちくしょー!!!!!」

??「逝クゾ………、愚か者メ………」

出発から71日目・コーヤサン───

高僧「2人ともよく修行に耐えられましたね。」

勇者「は、はい。」

皇女「が、頑張りました!」

高僧「特にあなた。」

皇女「はい!」

高僧「体型がスリムになって美しくなりましたね。」

皇女「そ、そうですね。えへへ」ニコ

皇女はおよそ2ヶ月間の間に21kgの減量に成功していた。
160cm54kgの体格になった。
ちょっとむっちりしているが爆乳の持ち主となった。


高僧「きちんとした生活習慣を送ってくださいね。」

皇女「わかりました!」

高僧「うむ。痩せて気品が出ましたよ。」

皇女「あら、そうですか?元々気品あると思ったのにー。」

高僧「いえいえ、来たばかりのあなたは生活に馴染めずにわがまま言いたい放題でした。」

皇女「だ、だって……。」

勇者「あははは……。すみません。」

高僧「それとあなたがホソカワ帝国の皇女様と判明しております。」

皇女「あらま………。」

勇者「う………。」

高僧「それと下界からの情報ですが……」

勇者「それはなんでしょうか?」

高僧「何やらホソカワ帝国が指名手配をしたようでして…。」

勇者「指名手配?!」

皇女「それと私と何が関係しているのですか?」

高僧「これはあくまでも噂ですが当山に来られる修行者からの話によればどうも……。」

皇女「話が見えてこないですね…。」

高僧「どうやら貴方が誘拐されたとかで……。」

勇者「え?!」

皇女「あうぅぅ……。誘拐されてないのに……。」

高僧「それとあなた。」

勇者「はい、何でしょう?」

高僧「王子の偽の使者として名代で皇女受け取ろうとした罪。」

勇者「は?」

高僧「ホソカワの憲兵6名、重臣クラス2名を傷を負わせた罪。」

勇者「ああ……」

高僧「城下の女4名に強姦を働いた罪がかけられてますが……。」

勇者「ええ?!」

皇女「あの……。」

勇者「それは……。」

高僧「早くここから下りられたほうが賢明ですよ。」

勇者「そ、そうですね。」

皇女「私も急がなくちゃ…。」

高僧「そうですか。ではお急ぎください。」

勇者「あ、はい、わかりました……。」

道中───
皇女「しかし変ですね……。」

勇者「どういうことですか?」

皇女「私たちがコーヤサンにいる間に変な風聞が浸透してるなんて。」

勇者「それもそうですよね」

皇女「それに痩せたせいで体も身軽になったみたいですよー?」

勇者「(豚時代だった皇女様とは全く違う。)」

皇女「しかしホソカワにもアカマツの両国とも入れないような気がしてきます。」

勇者「ホソカワはわかりますが何故アカマツもですか?」

皇女「私の勘です。知識より勘ってよく言いません?」

勇者「んー…………、んーー…………?」

皇女「言いませんか?」

勇者「わかんないや。」

皇女「ありゃま」

勇者「とにかく、ホソカワ領を通るのは俺にとって自殺行為みたいだ。」

皇女「私からしたら自分の庭みたいなものですから大丈夫だと思うんですけども……」

勇者「しかし俺あんな罪犯したことないぞ……、あ………」

皇女「大丈夫です。私は勇者様のことを信頼してますから。」

勇者「俺さ、城下町で兵6人を拘束状態にしちゃったんだよねえ~。やべえな……」

皇女「それでも傷はつけてないんですよね?」

勇者「まあ一応ね……」

皇女「なら大丈夫だと思いますよ。」ニコ

勇者「」ドキッ

皇女「どこか馬宿から馬を借りましょ!」

勇者「そうですね。」

出発から74日目・ヤマグチ───

戦士「およそ2ヶ月間ここに滞在してるけど、急激に寂れちゃったよね……」

魔術師「これが西の大都と疑いたくなっちゃうよね……」

尼僧「町一帯が幽霊の町になった感じがしますぅ………。」

魔術師「一応僕たちもレベルアップはしたんだけどさ町にいる兵士たちみんなピリピリしてる…」

戦士「これはもう早くアカマガセキに脱出したほうがいいわね。」

魔術師「そうだよね……、問題はその後だね。」

尼僧「よくわからない旅になってきました……」

戦士「ま、頑張るしかないみたいだね。」

魔術師「じゃあ行くよ!」

戦士「だね!」

尼僧「待ってくださーい!」

出発から78日目・ヨシノ───

皇女「てやあ!!!」

剣術士「まだまだ!」

皇女「えい!」

剣術士「まだだ!」

皇女「たあ!」

剣術士「まだまだ甘い!」

勇者「………」(無心)

皇女「えい!」

剣術士「太刀筋が甘過ぎる!」

勇者「………」

皇女「きゃ!!」

勇者「え………?」

バシーン!!!

勇者「いってええええええ!!!」

高僧「集中力はまだまだですな。」

勇者「ひりひりする……」

剣術士「女殿よ、その方の太刀裁きはまだまだ甘い。」

皇女「す、すみません。」

剣術士「全くの初心者と思えば槍術や薙刀をしていたのかな?」

皇女「薙刀のほうは嗜む程度にしてました………。」

剣術士「しかし、まだまだだな。軽く見切られてしまうだろう。」

バシーン!!!

勇者「いてー!!!!!」

剣術士「男殿の集中力もまだまだだな。」

高僧「コーヤサンからの客と聞いて修行にさせたもののまだまだですな。」

勇者「おっちゃん容赦ないですよー………。」

高僧「無駄口を叩かない」

バシーン!!!

勇者「あぎゃああ!!!!」

皇女「痛そう………」

剣術士「あれも修行の一環だ。彼もまだまだよの。」

バシーン!!!!

勇者「まじ痛いいいいい!!!」

出発から80日目・オオウチ領内───

??「うりゃあ!!」ズバ!

魔物「がふ・・・」バタ

??「ふふふ………」

??「ここの魔物はあらかた片付けたというか………」

??「二千もある魔物とはいえ骨のあるやつはいなかったか・・・」

??「海を渡るか・・・」

出発から83日目・ヨシノ───

剣術士「女殿の太刀筋、まだまだであるがホソカワ流を思わせる裁きであった。」

皇女「はい、如何にも父からはホソカワ流の流派の太刀裁きを多少伝授されております。」

剣術士「うむそうか。しかし、やはり女子故に太刀では荷が重いかもしれぬ。」

皇女「女と生まれていても剣術、薙刀の2種は厳しく仕込まれました。ですが………」

剣術士「逃げてしまったというわけですな。」

皇女「えへへ☆」ペロ

剣術士「うーむ………」

勇者「あー、マジで肩がヒリヒリする………」

高僧「日頃の精神修行の怠りですな。」

僧A「無心の時間をとれば集中力が上がります。」

僧B「さすれば悟りの境地も見えましょう。」

勇者「俺は坊さんにはなりません!」

高僧「精神の鍛錬は毎日するのじゃぞ」

剣術士「そうだぞ。男殿の筋はなかなかのものだが、わしから見ればすぐにわかってしまう。」

皇女「全然相手になってませんでしたよね・・・」

勇者「………」ボリボリ

高僧「しかし貴方の努力はいつかきっと報われましょう。」

勇者「報われますかね………」

高僧「気が弱ければ報われませぬぞ。ふぉふぉふぉ」

勇者「はあ……」ガクリ

皇女「政様ファイトですよー。」

出発から84日目・ハカタ───

尼僧「やっと到着しましたね………。」

魔術師「僕はもう疲れたよ~」

戦士「そ、そうね……。まさか道中おっかない魔物と戦うなんて……」

魔術師「海に出てきた巨大イカもびっくりしたよね~……。」

尼僧「もうくたくたですぅ~………」

戦士「ここ10日はほぼ戦闘ばかりたったわね……。私の剣が……」

魔術師「刃こぼれしてる……」

戦士「あー、私の剣が………」

魔術師「砥石セット買わなきゃ……」

戦士「いらなあああああい!!!」

出発から86日目・ツツイ領内・ヤギュウの里───

勇者「さてさて、ここらへんだと聞いたのだが……」

皇女「ところで……私はいつ到着できるのでしょうか……?」

勇者「ああ三ヶ月もごめんね。」

皇女「い、いえ……」

勇者「自分の剣術しか俺はならんのだ……」

皇女「はい?」

勇者「え……?」

皇女「ちょっと仰ってる意味がちょっとわかんないんですけど……」

勇者「えとつまりだな……自分の剣術しか俺は考えてなかったんだよ…」

皇女「そうですか……。前にも『こんな野草しか俺には新鮮だったよ。』とか言ってましたよね?」

勇者「ん?言ってたかな?」

皇女「言ってました!言葉省略されててわかりにくいからやめてくださいね?」

勇者「あ、うん……。」

皇女「正直私ホソカワに戻るのかアカマツに嫁ぐのか困惑してます。」

勇者「あ、あ……、そうですよね……。」

皇女「使者だと言うから貴方について行ってるのに未だに到着しない。」

勇者「………」

皇女「コーヤサン、ヨシノ、今度はヤギュウですか。」

勇者「面目ない……。」

皇女「私はもううんざりです!貴方は私を連れ回してどうするんですか?道中変な魔物に襲われちゃうし…」

勇者「それは……まあ……」

皇女「言い訳は聞きません!」

勇者「申し訳ありません……」

皇女「この三ヶ月、あなたが何の為に行動したのか理解に苦しみます。」

勇者「(まさか皇女を痩せさせる為に迂回させた、なんて言えないな……。)」

皇女「ですから私を早く帝国に返してください!」

男「ご両人、いかがしたのかな?」

勇者「あ……?」

皇女「あなたは……?」

男の家───

男の妻「お茶です。」

勇者「ありがとうございます。」

皇女「ありがとうございます。」

男「してご両人はどのような方かな?」

勇者「う………」

皇女「…………」

男⇒ヤギュウ「拙者、ヤギュウの里の主のセキシュウと申す。呼び方はヤギュウでもよい。」

勇者「どうも。」

ヤギュウ「息子のムネノリだ。」

ムネノリ「ムネノリです。よろしく。」

勇者「こちらこそ。」

皇女「………」ムス

ヤギュウ妻「あらあら…うふふ……」

ヤギュウ「拙者は中央王国の剣術指南役をも請け負っておる。」

勇者「中央王国ですか。」

ヤギュウ「左様。してそなたらは何ゆえこの里に?」

勇者「と、特に理由はなかったのですが・・・、まあ何となく・・・」

ヤギュウ「そうであったか。そちらの女子は?」

皇女「ふー………。私はホソカワ帝国の第一皇女でございます。」

ヤギュウ妻「まあ。貴女が?」

皇女「はい。」

ヤギュウ「噂は聞いておる。ホソカワの皇帝が激怒していると聞く。」

勇者「やはり……」

ヤギュウ「ホソカワは皇女を誘拐された上にアカマツとの婚儀を破談にさせられて面目を潰されたとか。」

皇女「な………!!」

勇者「皇女様、申し訳ございませぬ!!」

皇女「あなた、どうしてくれるのですか!折角の縁談を破談にして。どうしてくれるのですか!」

ヤギュウ「使者の男にホソカワ・アカマツ両国から指名手配が出ております。」

勇者「はあ………、アカマツからまた指名手配か………。」

ヤギュウ妻「まあ怖い。」

ムネノリ「貴様、何かしでかしたな?」

皇女「みたいですよー。私の縁談が破談になってしまいましたし。」

勇者「申し訳ないです。」

ムネノリ「このような美しい皇女様の縁談を壊す輩は許せぬな。」

皇女「そうです。どうしてくれるんですか!何度も破談になってやっと嫁入りできたのに……」

ヤギュウ妻「残酷……」

皇女「全くです。」

勇者「何も言えません………」ガクッ

ヤギュウ「しかしホソカワの皇女となればほっとく国もあるまい。」

ムネノリ「ええそうです。何故この美貌をもつ皇女様が何度も破談になるのかも首を傾げてしまいます。」

皇女「まさか私に原因があると仰るつもりではないでしょうねえ……?」ギロッ

勇者「(あったんだよ……)」

ヤギュウ「全くないとは言えぬ。されど縁談はまたすぐ来ると信じればよい。」

皇女「ならばよいのですが………」

ヤギュウ「しかしまあまさかホソカワの皇女がここに来るとはおもわなんだ……」

ヤギュウ妻「噂では誘拐ってことになってましたけども…」

勇者「………」

ムネノリ「誘拐?!」

ヤギュウ「いやしかし、誘拐ならばこの男が小さくなることもないか。」

ヤギュウ妻「それもそうですわね。」

ヤギュウ「全くだ。がははははは」

ムネノリ「…………」ジロ

勇者「………」

皇女「あの……、お願いがあるのですが……」

ヤギュウ「ほう、何だね?」

勇者「?」

皇女「実は───」

出発から88日目・アキヅキ領内───

軍兵A「おい、あまり飲み過ぎるなよ!」

軍兵B「わかってるよ……」

軍兵A「しかし今夜はいい月だよなあ……」

軍兵B「まったくだ。こういう時の酒は美味い!」

軍兵A「俺もそう思う。」

??「しかしそれも今日でここで終わり。」

軍兵B「何?!」

軍兵A「貴様何者だ?!」

??「通りすがりの男、てところですかねえ。」

軍兵B「ぬぐぐ……」

軍兵A「正体を晒せ!」

??「それは無理な願いだ。2人には永遠の眠りについてもらう。」グシャ

軍兵B「ぎゃッ!!」

軍兵A「貴様!」

??「おっと、そちらの方も早く寝てくださいね。」

軍兵A「なんだとッ?!負けぬ!」

??「ふ」ズバッ

軍兵A「ぎゃああああああッ!!!」

??「愚かなことを……」

??「そろそろ面白きことが起こるころかな……」

出発から90日目・ショウニ王国・セイフクジ───

尼僧「ここの国は街の人の顔が暗いですね……」

魔術師「オオウチとは比べ物にならないよ。」

戦士「何か廃れる状態なのかも。」

尼僧「でもダンジョンが閉鎖されたヤマグチよりももっとひどいです…」

戦士「ここがショウニ王国の王都なの………?」

魔術師「戦乱によって荒廃したような街だね。」

尼僧「傷ついた人を癒してあげたい……」

戦士「思えば尼僧が傷ついた者を癒したところを見たことないね」

尼僧「あうあうあうー、そんなことないですぅ!」

魔術師「僕は一応見たことはあるよー。」

戦士「魔術師はあるんだー。」

魔術師「ま、いずれも戦士さんが気を失ってるときだったけど……」

戦士「うぇ・・・」

尼僧「あはは☆」

戦士「ぐぬぬ………」

尼僧「戦士さん、安心してください。ちゃんと回復できてましたから。」

魔術師「うん。できてたよー。」

戦士「…………」

尼僧「戦士さん、ファイトー!」

戦士「言われても嬉しくない……」

出発から93日目・中央王国・サキョウ───

ヤギュウ「やはりサキョウは盛況があるのう。」

勇者「そうですね。」

ヤギュウ「しかしウキョウは最強の廃れ具合じゃ。」

勇者「見たことはありませんが多分そうでしょうね。」

皇女「………(怒)」グシャ

勇者「」ビクッ

ヤギュウ「さて、禁中に向かうとするかのう。」

勇者「あの、禁中とは何でしょうか?」

ヤギュウ「禁中とは禁裏とも呼ばれておってなこの王国の法王様が住んでおられる場所なのだ。」

勇者「なるほど………。」

皇女「ところでその法王様に会えるのでしょうか?」

ヤギュウ「一応面会の要請はとっておるのだが、果たして今日受けてくれるのかわからないのじゃ。」

皇女「そうですか………。」

勇者「しかし、さっきのヤギュウ様の怒涛の喋りには圧倒しましたよ。読点無しで喋るとか……。」

ヤギュウ「だまらっしゃい!また読点なしで喋り倒してくれるわ!」

勇者「ひい!わ、わ、わかりましたよ………。」

皇女「ヤギュウ様を粗末に扱わないでください。」ギロ

勇者「あ、はい………。」

ヤギュウ「さて、どうなることか……。」

勇者「とりあえず行ってみましょう。」

皇女「待って!」

勇者「え?」

皇女「ここはヤギュウ様お一人で行くべきだと思います。」

勇者「そ、それはどういう……?」

皇女「中央王国から見たら私たちはどこの馬の骨か知らぬ者です。」

勇者「た、確かに……。」

皇女「私はホソカワ帝国の皇女ですが、法王様はご存知ないでしょう。」

ヤギュウ「ふむ。」

皇女「ましてやあなたはアカマツの出のお人ですよね?」

勇者「ええ、そうですが……。」

皇女「それでは恐らく不審者と思われますね。」

勇者「ふ、不審者?!」

ヤギュウ「世の中に勇者と名乗る者は五万とは言わないが、何百何千はおるじゃろう。」

皇女「だから私は貴方にそう忠告しているのです。」

勇者「不審者………、俺が不審者………、あははははは………。母さん、俺はやはり不審者だよ………。」

皇女「…………。」

ヤギュウ「んとまあ、拙者が先に法王様のところへご挨拶に伺おう。」

皇女「そのほうがよろしいでしょう。」ニコ

ヤギュウ「さすが、ホソカワの皇女だ。立ち回りを理解しておる。」

皇女「お褒めのほうありがとうございます。」

ヤギュウ「それでは行ってくるぞ。」

皇女「いってらっしゃいませ。」

勇者「不審者、不審者………、あははは………」

皇女「あらら、完全に明後日の方向を………。」

勇者「不審者、不審者………」ブツブツ

皇女「彼への禁句は不審者だとわかりました……。はあ………。」

30分後───

ヤギュウ「法王様への拝謁の許可が得られた。粗相の無いようにな。」

勇者「はい!」

皇女「心得ております。」

ヤギュウ「では、参ろう。」

法王謁見場───

法王「その方らがヤギュウの言っていた者たちか。」

ヤギュウ「はい。」

法王「ホソカワの皇女にアカマツの勇者。」

勇者「正確にはアカマツの偽勇者と相成ります。」

ヤギュウ「こら……」

法王「偽勇者だと……?」

勇者「本来別の方に任命するところを何やら手違いにより、私が勇者に拝命することに…。」

法王「ほう。」

勇者「そして王の我儘により偽勇者のレッテルを貼られて指名手配を受けました…。」

法王「これはまた不憫な…。」

皇女「そして私を騙して連れ出した罪でホソカワからも指名手配を出されています。」

勇者「」ギクッ

法王「なんじゃと?」

皇女「でも私にとって悪いことではなかったと思ってます。」

勇者「?」

法王「それはどういうことじゃ?」

皇女「私はこの勇者様に連れ出されたおかげで痩せて強くなることができました。」

法王「痩せて強く……?少し理解ができぬのう。」

皇女「コーヤサンで精神修行と適正の体型になりました。」

法王「ふむふむ」

皇女「そしてヨシノにおいて剣術の修行。そしてヤギュウにおいても色々なことをした次第です。」

法王「なるほど。」

法王側近「して法王様、この者をいかがなさいますか?」

法王「うむ………、まあこの勇者をわしの勅命で指名手配の件を解除すると致そう。」

勇者「ありがとうございます!」

法王「喜ぶのはまだ早い!」

勇者「はい………?」

法王「中央王国を中心としたこの地域の島々は七十から八十余の国々で形成されておる。」

法王「しかし、最近各地の紛争で数々の国が滅亡しておる。そこでじゃ。」

勇者「?」

法王「わし直々の勅命を聞くがよい。」

勇者「はい。」

法王「今、西のほうの国々でとんでもな騒ぎが起こっておる。」

ヤギュウ「妖怪や魔物の類ですか?」

法王「それはわからぬ。しかし、西の各国で守備兵たちが殺されているという報告を耳にしておる。」

皇女「これはまた怖いですね………。」

法王「大国であるオオウチでさえ手を拱いてる状態じゃ。対立している国々も今回の件については一時手を結ぶしかあるまい。」

勇者「しかし、相手がどのようなものかわからぬ状況では……。」

法王「まあ問題はそこじゃな。ショウニ王国は王都が荒んでおり、滅亡寸前だと聞いておる。」

法王「されど、これは周辺の国々の侵攻でも家臣の叛逆でもないのだ。」

ヤギュウ「それはまた不可思議なことですな。」

法王「そこでじゃ。西の国々で起きておる不可思議なことを調べてほしいのじゃ。」

勇者「それが今回の勅命で……?」

法王「その通りじゃ。」

勇者「はい。」

法王「そして、ホソカワの皇女よ。」

皇女「はい、何でございましょう?」

法王「そなたも勇者に同行せよ。」

勇者「え?」

皇女「ゆ、勇者様に、………ですか?」

法王「実家のことが心配なんじゃろう。心配せぬがよい。わし自らそなたの父である皇帝に伝えておこう。」

皇女「わ、わかりました。法王様の勅命のほう確かに拝命致しました。」

法王「そしてヤギュウよ。」

ヤギュウ「はっ」

法王「この勇者を仕込め」

ヤギュウ「わかりました。」

勇者「ん?」

ヤギュウ「さあ勇者、5日間拙者の剣の修行に付き合ってもらうぞ。」

勇者「ええええええええ」

時代的にいつの日本?

>>540
国によって異なりますが、1500~1580年くらいです。

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