そんなにボロくもない、1ルーム9畳のフローリングのアパート。
コンビニ徒歩2分。駅まで徒歩10分。
そんなすごくいい物件のお値段なんと、1万8000円。
多分、いわくつきって奴だろうな…。
入居5日目。
男「ただいま…」
幽霊「べろべろばぁ~☆」
男「………」
幽霊「あれ?もしもし?見えないのかな?
お~い。お~い!!」
男「腹減ったな…カップ麺で良いか」
幽霊「………ガオー!!」
男「ビビらせるためとはいえ、ガオーは違うだろ。
それじゃ幽霊じゃなくて怪獣だ。
そもそもべろべろば~も古い。20点」
幽霊「見えてんじゃん」
男「見えてるよ。帰った瞬間から」
幽霊「え?ビビんないの?
ホラ私結構見た目グロいよ?
顔真っ青だし、首つり痕あるし、寝巻だし」
男「いや、出ると思ってたから。異様に家賃安いし…?
もっとひどいの想像してた。
青ざめてるって言っても、ちょっと気分悪そうなくらいだし」
幽霊「えー。今までこれでビビんなかった人いないよ?
ホラ、私浮いてるし」
男「浮いてるね。今この状況でも」
幽霊「いやいや、二人しかいないのに浮いてるも何もないと思うの」
男「的確すぎるツッコミで面白くない。減点ー30点」
幽霊「早くも持ち点マイナスなんですが」
男「見たところ高校生くらいだけど。なんで自殺したの?」
幽霊「彼氏に振られた。ちなみに高校生じゃなくて大学1年生。
ロリっぽいってよく言われる。
結構気にしてるからやめて」
男「なんとまあ安直。そんなんで死ぬから成仏できねーんだよ。
気にしてんの?俺は可愛いと思うけど」
幽霊「そーですか。ありがとう。
ってか私と普通に会話する人初めてなんだけど」
男「肝が据わってるってよく言われます。
あ、お湯沸いた」
男 「さて、今日はコーンバター~。
あ、3分はかってて。俺漫画読んでるから」
幽霊「え?どうやって…」
男「時計見て秒針3周したら教えて」
幽霊「おう。まかせろ」
男「頼んだ」
幽霊「経った!」
男「はやくね?」
幽霊「だって嘘だもん」
男「正確な情報でお願いします」
幽霊「おう、まかせろ」
男「あれ?まだ??」
幽霊「ウトウト」
男「こんにゃろ、寝てんじゃねーよ…スカッ」
男「あ、殴ろうと思ったけど、幽霊だからすり抜けんだ。
おい、目を覚ませ!」
幽霊「ふぁ!?ああ、ごめん寝てた」
男「ったく。時間すらはかれねーのかよ。
ってか幽霊って眠くなるの?」
幽霊「人並みに眠気は来るよ」
男「へぇ、寝なくていいもんかと思ってた」
幽霊「そんなバカな。ファンタジーじゃないんだから」
男「存在がファンタジーだってお前気付いてる?」
男 「暇だな…。トランプでもする?」
幽霊「いやいや、打ち解けすぎじゃね?」
男 「なんで?だって会話できるじゃん。いいじゃん会話しようぜ」
幽霊「いや、私も浮遊するしかすることないからいいんだけどさ」
男 「で、トランプする?」
幽霊「触れられないから無理だよ」
男 「そっかー。じゃあセックスも無理だな」
幽霊「その並々ならぬ性欲はどこから生まれてくるの?私幽霊だよ?」
男 「幽霊でも穴はあんでしょ?十分じゃん」
幽霊「色々と君の頭が不十分だと思うけど」
男 「交渉決裂だな」
幽霊「何の交渉をしていたのか聞きたい」
男 「ちなみに着替えたりとかできねーの?」
幽霊「うん。この服は脱げるけど。他の服は触れないから」
男 「なるほど。じゃあ幽霊同士の服なら着れるのかね?」
幽霊「知らないよ。幽霊の友達とかいないし」
男 「ううん。着せ替えごっこで遊ぼうと思ったのに」
幽霊「なんでさっきから発想が卑猥なの?」
男 「何をしても犯罪にならない女の子が浮遊してるから」
幽霊「真性ですか?ちなみに何着せたいの?」
男 「ずぶ濡れの男もののTシャツ。下着もズボンもオプションなし」
幽霊「真性だわ…」
男「そんな事する男いなかったの?」
幽霊「だからそもそも話したのが君が初めてだよ」
男「おぉ、じゃあ初めてを奪っちゃったんだね」
幽霊「何かの罪で捕まる事を願うよ…」
男「じゃあ寝るわ。お前どこで寝るの?」
幽霊「どこでも寝るよ。浮いてるから」
男「じゃあ横に来いよ」
幽霊「なんで?」
男「気持ちだけでもセクロス」
幽霊「嫌だ。断固拒否する」
男「なんで?もう2度と話しかけてやんないぞ?」
幽霊「え、それは寂しい。せっかく話せるのに」
男「じゃあおいで」
幽霊「うう。わかった…」
幽霊「本当に君って異常だね。私幽霊だよ?」
男「でも見た目は完全に女の子だよ?」
幽霊「触れられないから何もできないよ?」
男「何その本当はしたいけど~なニュアンス」
幽霊「君の耳は幸せ解釈機能でもついてるのかな?」
男「ついてるよ」
幽霊「そっか。愚問だったね」
男「じゃあ寝る」
幽霊「おやすみ」
男「……」
幽霊「おやすみ」
男「何?」
幽霊「ウソでしょ?お休みって言ってるのに無視って酷い」
男「いや、反応が気になって。でも普通すぎる。5点」
幽霊「当分マイナスからぬけられそうにないね」
男「はいはい。おやすみ」
幽霊「おやすみ」
ー完ー
男 「おはよう」
幽霊「ん…早いね…。おはよう。もう起きてたの?」
男 「今日は大学で朝から講義だから」
幽霊「そっか。じゃあ帰りを待ってる」
男 「ついて来る?」
幽霊「私。自縛霊だから部屋から出られない」
男 「なんだ、残念。自慢したかったのに」
幽霊「友達に?なんていうの?彼女とでも言うつもり?」
男 「まっさか。幽霊が彼女なんて気持ち悪い」
幽霊「幽霊とヤろうとした奴が何を言ってんのか」
男「まあ、行ってくる。変な勧誘来たら追い返しといて」
幽霊「どうやって?」
男「べろべろばぁ~☆って」
幽霊「改めて自分の行いが恥ずかしく思えるよ」
幽霊「暇だな…。いつもはこんな事思わなかったけど」
幽霊「1人でいるのがあたり前だったけど…」
幽霊「話しかけてくる頭のおかしな変態のせいで…」
幽霊「もうすぐ夜になる。日が暮れる」
幽霊「いつもなら床であみだくじして遊んだりするけど」
幽霊「今は気分じゃないし…」
幽霊「…まだかな…まだかな…」
ガチャリ
幽霊「おかえりばぁ~☆」
男「何そのべろべろシリーズ。ただいまばぁ~☆」
幽霊「真似しないで、特許あるから」
男「おいくら?」
幽霊「一回10円」
男「破格のお値段ですな。ってかずっと玄関でスタンバってたの?」
幽霊「そうだよ。暇だったし」
男「なんで?俺のこと好きなの?」
幽霊「だって君しかいないし。暇をつぶせるのも君だけだし」
男「そりゃそうだ。よし、ご飯にしよう」
幽霊「今日は何食べるの?」
男「カップ麺」
幽霊「またかよ」
男「またといっても、今日のは塩味噌とんこつだよ」
幽霊「また欲張りなモノを選んだね」
男「今日こそ3分測ってね」
幽霊「そしたら点数くれる?」
男「点数?」
幽霊「私の持ち点今マイナス15点」
男「ああ、いいよ。正確だったら200点あげる」
幽霊「おし!まかせとけ!」
男「よーいドン」
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