男「幽霊との日常」幽霊「初対面~☆」(16)

そんなにボロくもない、1ルーム9畳のフローリングのアパート。
コンビニ徒歩2分。駅まで徒歩10分。
そんなすごくいい物件のお値段なんと、1万8000円。

 多分、いわくつきって奴だろうな…。

入居5日目。

男「ただいま…」

幽霊「べろべろばぁ~☆」

男「………」

幽霊「あれ?もしもし?見えないのかな?
   お~い。お~い!!」

男「腹減ったな…カップ麺で良いか」

幽霊「………ガオー!!」

男「ビビらせるためとはいえ、ガオーは違うだろ。
  それじゃ幽霊じゃなくて怪獣だ。
  そもそもべろべろば~も古い。20点」

幽霊「見えてんじゃん」

男「見えてるよ。帰った瞬間から」

幽霊「え?ビビんないの?
   ホラ私結構見た目グロいよ?
   顔真っ青だし、首つり痕あるし、寝巻だし」

男「いや、出ると思ってたから。異様に家賃安いし…?
  もっとひどいの想像してた。
  青ざめてるって言っても、ちょっと気分悪そうなくらいだし」

幽霊「えー。今までこれでビビんなかった人いないよ?
   ホラ、私浮いてるし」

男「浮いてるね。今この状況でも」

幽霊「いやいや、二人しかいないのに浮いてるも何もないと思うの」

男「的確すぎるツッコミで面白くない。減点ー30点」

幽霊「早くも持ち点マイナスなんですが」

男「見たところ高校生くらいだけど。なんで自殺したの?」

幽霊「彼氏に振られた。ちなみに高校生じゃなくて大学1年生。
   ロリっぽいってよく言われる。
   結構気にしてるからやめて」

男「なんとまあ安直。そんなんで死ぬから成仏できねーんだよ。
  気にしてんの?俺は可愛いと思うけど」

幽霊「そーですか。ありがとう。
ってか私と普通に会話する人初めてなんだけど」

男「肝が据わってるってよく言われます。
 あ、お湯沸いた」

男 「さて、今日はコーンバター~。
あ、3分はかってて。俺漫画読んでるから」

幽霊「え?どうやって…」

男「時計見て秒針3周したら教えて」

幽霊「おう。まかせろ」

男「頼んだ」


幽霊「経った!」

男「はやくね?」

幽霊「だって嘘だもん」

男「正確な情報でお願いします」

幽霊「おう、まかせろ」

男「あれ?まだ??」

幽霊「ウトウト」

男「こんにゃろ、寝てんじゃねーよ…スカッ」

男「あ、殴ろうと思ったけど、幽霊だからすり抜けんだ。
  おい、目を覚ませ!」

幽霊「ふぁ!?ああ、ごめん寝てた」

男「ったく。時間すらはかれねーのかよ。
  ってか幽霊って眠くなるの?」

幽霊「人並みに眠気は来るよ」

男「へぇ、寝なくていいもんかと思ってた」

幽霊「そんなバカな。ファンタジーじゃないんだから」

男「存在がファンタジーだってお前気付いてる?」

男 「暇だな…。トランプでもする?」

幽霊「いやいや、打ち解けすぎじゃね?」

男 「なんで?だって会話できるじゃん。いいじゃん会話しようぜ」

幽霊「いや、私も浮遊するしかすることないからいいんだけどさ」

男 「で、トランプする?」

幽霊「触れられないから無理だよ」

男 「そっかー。じゃあセックスも無理だな」

幽霊「その並々ならぬ性欲はどこから生まれてくるの?私幽霊だよ?」

男 「幽霊でも穴はあんでしょ?十分じゃん」

幽霊「色々と君の頭が不十分だと思うけど」

男 「交渉決裂だな」

幽霊「何の交渉をしていたのか聞きたい」

男 「ちなみに着替えたりとかできねーの?」

幽霊「うん。この服は脱げるけど。他の服は触れないから」

男 「なるほど。じゃあ幽霊同士の服なら着れるのかね?」

幽霊「知らないよ。幽霊の友達とかいないし」

男 「ううん。着せ替えごっこで遊ぼうと思ったのに」

幽霊「なんでさっきから発想が卑猥なの?」

男 「何をしても犯罪にならない女の子が浮遊してるから」

幽霊「真性ですか?ちなみに何着せたいの?」

男 「ずぶ濡れの男もののTシャツ。下着もズボンもオプションなし」

幽霊「真性だわ…」

男「そんな事する男いなかったの?」

幽霊「だからそもそも話したのが君が初めてだよ」

男「おぉ、じゃあ初めてを奪っちゃったんだね」

幽霊「何かの罪で捕まる事を願うよ…」

男「じゃあ寝るわ。お前どこで寝るの?」

幽霊「どこでも寝るよ。浮いてるから」

男「じゃあ横に来いよ」

幽霊「なんで?」

男「気持ちだけでもセクロス」

幽霊「嫌だ。断固拒否する」

男「なんで?もう2度と話しかけてやんないぞ?」

幽霊「え、それは寂しい。せっかく話せるのに」

男「じゃあおいで」

幽霊「うう。わかった…」

幽霊「本当に君って異常だね。私幽霊だよ?」

男「でも見た目は完全に女の子だよ?」

幽霊「触れられないから何もできないよ?」

男「何その本当はしたいけど~なニュアンス」

幽霊「君の耳は幸せ解釈機能でもついてるのかな?」

男「ついてるよ」

幽霊「そっか。愚問だったね」

男「じゃあ寝る」

幽霊「おやすみ」

男「……」

幽霊「おやすみ」

男「何?」

幽霊「ウソでしょ?お休みって言ってるのに無視って酷い」

男「いや、反応が気になって。でも普通すぎる。5点」

幽霊「当分マイナスからぬけられそうにないね」

男「はいはい。おやすみ」

幽霊「おやすみ」


ー完ー

男 「おはよう」

幽霊「ん…早いね…。おはよう。もう起きてたの?」

男 「今日は大学で朝から講義だから」

幽霊「そっか。じゃあ帰りを待ってる」

男 「ついて来る?」

幽霊「私。自縛霊だから部屋から出られない」

男 「なんだ、残念。自慢したかったのに」

幽霊「友達に?なんていうの?彼女とでも言うつもり?」

男 「まっさか。幽霊が彼女なんて気持ち悪い」

幽霊「幽霊とヤろうとした奴が何を言ってんのか」

男「まあ、行ってくる。変な勧誘来たら追い返しといて」

幽霊「どうやって?」

男「べろべろばぁ~☆って」

幽霊「改めて自分の行いが恥ずかしく思えるよ」

幽霊「暇だな…。いつもはこんな事思わなかったけど」

幽霊「1人でいるのがあたり前だったけど…」

幽霊「話しかけてくる頭のおかしな変態のせいで…」

幽霊「もうすぐ夜になる。日が暮れる」

幽霊「いつもなら床であみだくじして遊んだりするけど」

幽霊「今は気分じゃないし…」

幽霊「…まだかな…まだかな…」

ガチャリ

幽霊「おかえりばぁ~☆」

男「何そのべろべろシリーズ。ただいまばぁ~☆」

幽霊「真似しないで、特許あるから」

男「おいくら?」

幽霊「一回10円」

男「破格のお値段ですな。ってかずっと玄関でスタンバってたの?」

幽霊「そうだよ。暇だったし」

男「なんで?俺のこと好きなの?」

幽霊「だって君しかいないし。暇をつぶせるのも君だけだし」

男「そりゃそうだ。よし、ご飯にしよう」

幽霊「今日は何食べるの?」

男「カップ麺」

幽霊「またかよ」

男「またといっても、今日のは塩味噌とんこつだよ」

幽霊「また欲張りなモノを選んだね」

男「今日こそ3分測ってね」

幽霊「そしたら点数くれる?」

男「点数?」

幽霊「私の持ち点今マイナス15点」

男「ああ、いいよ。正確だったら200点あげる」

幽霊「おし!まかせとけ!」

男「よーいドン」

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