村おこし (333)

副村長「わしらが村の人口さ、ついに100人を切ったようぞね」

村長「あれまぁ。こいは何ら手を打たんと滅亡の一途を辿るだけじゃのう」

副村長「何らえい手はないもんかのう」

村民A「大変じゃ!」

副村長「何ぞね!」

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村民A「村長大変じゃ!ついに代々木のじいさんが逝ってしもうたがやき!」

村長「はぁ?そうかえ…。ついに逝ってしもうたかえ」

村民B「そいはもう見事な大往生じゃったち、代々木の孫どもは言うちょりましたわ」

村長「ほんにまあ、あればぁでかい動脈瘤こさえて、よう115まで生きよったもんじゃのう」

村民C「いやぁもう、あんのばかでかい動脈瘤が爆発した時なんてもう圧巻の一言でしたがやき」

村長「そうかえ。そればぁ見事だったかかえ」

村民C「ええもう。それはそれは」

副村長「そげなことどうでもよかち!」

村民A「どうでもよかとはどういうことですき!」

村民B「そうじゃ!あの代々木のじいさんが死んでしもうたがやぞ!」

村民C「おまんらぁもあの死にぞこないには昔っから世話になってたんとちゃうんかえ!」

村長「みんな、落ち着きや!」

村民A「なじょしてそげに落ち着いていられるがかえ!」

村民B「そうじゃ!副村長の言い様、とても人の子とは思えんがやき!」

村民C「あんなもんがよく副村長になれたもんじゃのう!」

副村長「黙りやみんな!わしはただこの村の行く末を憂いちゅうだけじゃ!
    老人一人死んだくらいであたふたしていられんがぜよ!」

村民A「なんじゃと!」

村長「まあ、落ち着きやみんな」

村民B「こいが落ち着いていられるか!バカかよ!」

村長「まあ、そう言わずに。副村長の言うことにも一理あるんじゃよ」

村民C「どういうことぜよ?」

副村長「ついにこん村の人口さ、100人を切ったがぜよ」

村民A「なんじゃち!?」

副村長「まあ、代々木が逝っちまった今、残りは99人じゃけんど」

村民A「も、もうそればぁしかおらんがかえ…?」

副村長「そうじゃ。しかもおるんは老人とおっさんばかりじゃき」

村民B「なんちゅう事じゃ…。絶望的ぜよ」

副村長「しかも今、隣町の連中ら、こん村の合併吸収を狙っとるっちゅう話すらあるがじゃき」

村民C「いかん!それはいかん!」

村民A「どげんかせんといかんがぞね!」

村民B「そうじゃ!そうじゃ!」

村長「思い返してみると、全盛期、こん村には2千以上のもんが住んじょった。
   それがなんじゃ、今やもうゴーストタウン同然じゃき。
   これも全て、都市部に出来たジャスコやらマクドナルドのせいじゃ。
   あんなもんらぁなかかった時は、それはそれはこん村は栄えとったもんじゃき。
   それに極め付けはアマゾンと楽天ぞね。ネットショッピングとかいう訳の分からんもんが
   幅を利かせるようになってきてから、わしらぁの村は苦しゅうなっていくだけじゃき」

村民A「ほんまそん通り!」

村民B「ヤフーオクーションも許してはおけんがじゃ!」

村長「しかし、それはただの戯言ぞね」

村民C「どういうことですたい?」

村長「わしらぁは負けたんじゃ。文明の流れに追いつけず、完全に乗り遅れてしまったがじゃ」

村民A「わしぁ、悔しいぜよ!」

村長「せやからわしは、こん村を本格的に再生させたいち、本気で思うちょるんじゃ」

村民B「せや!やってやりましょうや!」

村長「そういうわけじゃち。皆のもん、何らアイデアを出しや」

村民A「アイデアち言われても」

村民B「そげなもん急には浮かばんぜよ!」

副村長「そいなら、観光客を呼び寄せたらえいがじゃ」

村民C「簡単に言うけんど、わしらの村に観光名所らぁありゃしませんき」

副村長「ほんなら作ればえいがじゃ」

村民A「作るち言うたって、何を作ればえいか皆目見当もつかんがぜよ」

村民B「そいならこれはどうじゃ!今流行のご当地キャラクターを作るがぜよ!」

村民C「そいはもう古い。今から作ったち、流行に乗り遅れるだけぞね」

村民A「そうじゃのう。フナッシーももう見飽きた感が出てきゆう頃じゃけんのう」

村民B「ほいだらどうするがぞね。何らえいアイデアでもあるがかえ?」

代々木「ある!」

村民A「おお!代々木の孫ぞね!」

村民B「急にどういた?」

代々木「わしにはアイディアがあるぞね!」

村民C「おまん、じいさんのそばにおらんでもえいがかえ?」

代々木「そげなことしちょる暇はないぜよ!」

村長「どういうことぜよ?」

代々木「爺様はおっしゃったがじゃ!こん村を頼むち!最後にそう言うたがぜよ!
    ほんならわしは、その遺言を果たすだけじゃ!」

副村長「まあ、訳は分かったち。そいで、おまん、何らアイデアがあるち言うちょったな?」

代々木「ああ、あるぜよ!」

村長「そうかえ、ほいだら言ってみいや」

代々木「新しい祭りを作るがじゃ!」

副村長「なんぜ、そげなことかえ」

村民A「新しい祭りさ作らんでも、こん村にも立派な祭りがあるやないか」

村民B「そうじゃ!ビール瓶転がし祭りや馬糞投げ祭りはこん村の象徴とも言える祭りぞね!」

代々木「そげな祭り誰がやりたがるかえ!もう21世紀やぞ!そったら祭りで喜ぶもんらぁ一人もおらんがじゃ!」

村民C「なんじゃち!」

村民A「おまんは言うてはいけん事を言うたがやじゃ!そこんとこ分かっとんのがし!」

村長「まあ、落ち着くがじゃ。そいで代々木の孫よ、おまん、どげな祭りをやりゆうつもりかえ?」

代々木「それはのう、音楽祭じゃ!」

村民B「音楽祭じゃと?」

代々木「そう、音楽祭じゃ!いや、ただの音楽祭ではないぞね!国内最大級の音楽祭を打ち上げるがじゃ!」

村民A「国内最大級の音楽祭じゃち?」

代々木「そうじゃ!」

村民C「おまん、何を言うゆうがじゃ。寝言は寝て言えち」

代々木「いや、これは寝言ではないですき!」

副村長「しかしやなぁ、そげん事言うても、こん村にはそげな施設設備はないねんで」

代々木「ええ、分かっちょります!」

村長「わしぁ年を取りすぎたようじゃ。もうちっくと詳しゅう話してはくれんかえ?」

代々木「もちろんですき!」

代々木「えいですか皆さん。こん村には人が少ない」

村民A「そうじゃの、人は少ない」

代々木「ええ、その割には土地はまあ、広いんですわ」

村民B「まあ、最盛期には2千以上の人が住んじょったしのう」

代々木「それらぁの土地は今、ただの空地となっちょります。
    そして、こん村は平地が多く、雨が少ない」

村民C「そいがどうしたち?」

代々木「つまり、こん村は野外フェスには絶好の場所ながじゃ!」

村長「野外フェスじゃち?」

代々木「そうじゃ!野外フェスじゃき!こん村のあんの何の役にも立たん空き地を利用しない手はないがぜよ!」

副村長「そげなこと言うてもなぁ」

代々木「いいえ、副村長!こいは絶対ウマく行きますき!」

村民A「そん自信はどこから来るぞね!?」

代々木「わしには、今のわしには亡くなった爺様がついてますき!」

村長「しかしじゃなぁ、音楽祭じゃぁ言うても誰が来てくれるぞね?」

村民B「そうじゃ、こん村には出演者への銭っこは払えんぞね!」

副村長「そうじゃのう、オファーをかけたところで、今こん村に来てくれるんは爆乳ヤンキーくらいなもんやき」

代々木「そこはお願いするがですよ!こん村の命運が掛かっちょるんです!なりふりかまっていられんがですき!」

村民C「つまり、こん村を助けてくれと頼み込むっちゅうわけかえ」

代々木「そん通りです!」

副村長「しかし、頼まれたち来てくれるもんかえ?こん村に縁もゆかりもないもんらぁが」

代々木「それはこちらの頼み方一つですろう!しっかりと話せば、村を救いたいゆう気持ちは必ず伝わるはずですき!」

村長「そいで、誰を呼ぶがじゃ?」

代々木「それはまだ決めちょりません」

村民A「わしらぁ音楽にはまっこと疎いですからのう」

副村長「まあ、とりあえず爆乳ヤンキーは確定でええですろう。あのもんらぁならオファーは断りませんき」

村民B「あんもんらぁの出演料なら払えますしな」

代々木「ほいだら、今からわしぁみんなぁの家を回って誰に出演してもらいたいかアンケートを取って来ますき!」

村長「そうかえ。そいならそのアンケエトを元に出演者を決めるがぜよ」

村民C「そいじゃ、本日はお開き。また明日という事で」

翌日

代々木「アンケートを取って来ましたき!」

村民A「そうかえ!そいで結果は!?」

代々木「今、発表しますき!」

村民B「はよ言いや!」

代々木「では、言います。1位になったんは…エグザイルですき!」

村民C「エグイサル?」

代々木「エグザイルですき」

副村長「なにもんぞね?」

代々木「分かりもはん」

代々木「なにもんかぁは分からんがですけんど、とにかく人気があるようですがじゃ!」

村長「エグザイル…初めて聞いたがじゃ」

安藤「そいは放浪者言う意味ですろう」

村民A「あ、あんたぁは会計監査の安藤はんやありまへんか!」

安藤「お久しぶりですのう、皆さん。一体何の話し合いですろうか?」

村民B「今わしらぁは村おこしについて話し合ってるがじゃ!」

安藤「村おこし?」

村民A「そいで放浪者とはなにもんぜ?」

村民C「ホームレスのことですろう」

代々木「そいは浮浪者ですき」

安藤「エグザイルはかなり人気の高い歌手じゃち聞いたことがありもんそ」

村民B「そうながですか」

副村長「ほいだらまず、そのエグザイルなるもんにオファーを掛けてみるぜよ」

村民A「おお、そうしよう」

安藤「何を言うちょるのですか?」

村民B「こん村で、音楽祭をやることが決定したがじゃ」

安藤「音楽祭?こん村で?こげなとこにエグザイルら来るわけないろう」

代々木「それは分からんですき!誠心誠意お願いすればきっと来てくれるはずじゃ!」

安藤「何を言うちょるんじゃ君は。相手ぇはこん国の最前線を行きよる歌手ぞね。
   そげなもんがこん場所に来るわけないろう。第一、君らぁには彼らに対する
   ギャランティ諸々を払う事すら出来んじゃろうが」

代々木「そんは分かっちょります。そんでもこん村を救うためには、
    来てもらわんとならんがですき!」

安藤「そげな考えは甘い考えは捨てることぜよ。そんな簡単にことは運ばんきにのう」

おもむろに電話を切る副村長。

村長「どうじゃった?」

副村長「てんでダメぜよ。門前払いやったがじゃ」

安藤「そら見たことか。そうウマくはいかんがじゃき!」

代々木「話も聞いてもらえんかったがですか?」

副村長「いや、話ぃは聞いてもらえたけんど、暖簾に腕押しじゃ」

代々木「そうかえ、ほんなら直接聞きに行くだけぜよ!」

村民A「やめや!無駄足になるだけぜよ!」

代々木「どういて止めるがじゃ!」

村長「おそらくそのもんらぁはその手の話には端から乗らんようにしちょるんじゃろう」

村民B「仕方ないがじゃ、他のもんらぁを当たるだけぜよ!」

代々木「そ、そうじゃのう」

村民C「そいだら代々木!次のもんらぁ発表しいや!」

代々木「おう!そいじゃ、言うぜよ」

代々木「次のもんらぁ、エーケービー48じゃ!」

村民A「そいはなにもんぜ?」

代々木「分かりもはん」

村民B「エーケービー48?そいはなにかの暗号かえ?」

村民C「そのもんはどんな男ながかえ?」

安藤「AKB48はアイドルグループじゃち聞いたことがありもんそ」

副村長「アイドルグループじゃち?」

村長「アイドルとはなんぞね?」

安藤「アイドルとは偶像のことですたい」

代々木「偶像言うんは神様のことじゃのう」

安藤「まあ、そうですのう」

副村長「おお!そんのエーケービーなるもんらぁは神様ながかえ!
    そいだらありがたい!きっとこん村も救ってくれるはずじゃ!」

村民A「やったぞ!ついに希望の光が見えてきもんそ!」

安藤「ただ、聞いた話じゃAKBなるグループらぁ、人数が200人を超えるそうじゃ」

代々木「なんじゃち!?」

村民B「そいはこん村の人口より多いやないかえ!」

村民C「そげなやつらきっと高額の出演料を要求してくるはずじゃ!」

村民A「そげな人数、楽屋じゃち用意出来やしませんぞね!」

代々木「恐ろしいがじゃ!」

村長「皆、落ち着きや!今、副村長がオファーの電話ぁを掛けちゅうがやき」

副村長「え、ええ。まあ、かくかくしかじかでございまして…。
    は?今なんと!?」

代々木「なんじゃ!なんじゃ!」

副村長「え、ええ。そ、そげな馬鹿げた話があるがかえ!
    もうえい!人の足元見よってからに!えい加減にしいや!」

村民A「なんぞね、なんらぁもめてるがぞね」

副村長「もうえいっちゅうに!はい、さいなら!」

凄い勢いで電話を切る副村長。

村長「何事ぞね!?」

副村長「あいつらぁ、わしにパチモン押し付けようとしやがった気に」

村長「パチモンらぁ?」

副村長「エーケービーらぁスケジュールが合わん抜かしよって、ほいだら別のグループ行かす言いよったがぜよ」

代々木「別のグループらぁ?」

副村長「ああ、エスケーイー48らぁ言うグループぜよ」

村民A「なんぜそれは!?」

村民B「なにやら似たような名前ぞね!」

副村長「わしゃもうはらわたが煮えくり返ったがじゃ!いくらぁわしらが金無しの田舎もんじゃあ言うたち、
    パチモン押し付けてくるらぁ、もう我慢出来んかったがぜよ!」

村民C「そいは酷い話ぞね!」

村民A「わいは悔しい!」

副村長「そいで、わしは勢い余って電話を切ってしまったっちゅうわけぜよ」

村民B「そうだったかかえ。気持ちはわかるぞね」

村民A「んだ。断ったのは正解ぞね!」

村民C「そじゃ!英断じゃき!英断!」

村長「そうなると困ったのう。誰ばぁ、呼んだらえいのか」

安藤「もともと無理のある計画だったんですよ。こげな村に名の知れた歌手ら呼ぼうち。
   そんだら夢見心地な計画らぁ捨てて、素直にこん村の名産品でも売っていくんが賢明ですき」

代々木「何を言うとるんですか!今迄そげなやり方しちょったからこん村はここまで衰退していったんじゃろうが!」

村民A「まあ、落ち着きや代々木。でもまあ、確かにそうじゃ。なんちゃあせんでもこん村の良さは、
    きっと世間様に伝わるじゃろうち、今まで宣伝活動を怠って来たのも事実じゃき」

村民B「気づいたらもうこん村の人口さ100人を切っちゃった。こればぁわしらぁの怠慢のせいじゃき」

村民C「今度こそこん村さ、明るさを取り返さんといかんがじゃ」

代々木「そうじゃ!せやからいくらぁ夢見心地ばぁ言われゆうとも、辞めるわけにはいかんがぜよ!」

村長「そん通りじゃ。ほんなら代々木、次のもんを発表しいや」

代々木「分かりましたえ、村長!ほんなら言いますき!
    次のもんらぁ、レディーガガなる人物ですがじゃ!」

村民A「レディーガガち?なにもんぜよ?」

代々木「分かりもはん」

村民B「レディー言うんは女っちゅう意味ではないがかえ?」

副村長「ほいだらこん御仁は女っちゅうことかえ」

安藤「レディーガガち言うもんは米国の歌手で世界的に人気がありゆうと聞いたことがあるぜよ」

代々木「なんじゃち!?海外の歌手かえ!?」

副村長「こいはいかんぞ!わしぁ海外のもんらぁにオファーら掛けたこたぁないきにのう!」

村民A「どういてこん村のもんがそげな歌手ら知っておったんかのう」

村民B「わしらぁがただ単に音楽に疎すぎるだけぜよ」

副村長「そうじゃ代々木、おまんがオファーの電話を掛けや」

代々木「な?どういてわしながですろうか?」

副村長「わしぁ英国人の言葉らぁなんちゃあ知らんがぜよ。
    おまんなら幾許か知っちゅうがやろ」

代々木「わしの知っちゅう英語なんざ中学生レベルですき」

副村長「そいばぁあれば十分じゃ!ほれ、さっさと電話ばぁ掛けや!」

代々木「誰か代わってはくれませんろうか?」

村民A「わしらぁは無理ぞね」

村民B「そうじゃ、わしらぁには学も教養ありゃしないきにのう」

代々木「安藤さんばぁ学があるじゃろ。代わってはくれませんろうか?」

安藤「わしは人見知りですき。丁重にお断りさせてもらいますがじゃ」

村長「諦めや、代々木。さっさと電話を掛けるがぜよ」

代々木「そうでっか。ほいだら掛けてみますき」

電話を手に取る代々木。

代々木「あ、ああ、どうも!わしぁ代々木っちゅうもんやけんど、レディーガガさんはおられるがかえ?」

プロモーター「(どちら様でしょうか?)」

代々木「なんぜ?何言うちょるかわからんぜよ」

プロモーター「(お名前を教えてください)」

代々木「なんじゃ?おまん、何を言いゆう?名前かえ?名前は代々木じゃ!代々木!」

プロモーター「(ヨヨギ?)」

代々木「そうじゃ!代々木じゃ!」

プロモーター「(ヨヨギさん、どのようなご用件でしょうか?)」

代々木「わしらぁはレディーガガさんに出演のオファーをしたいがぜよ!」

プロモーター「offer?」

代々木「そうじゃ!オファーじゃ!」

プロモーター「(どのような申し出でしょうか?)」

代々木「わしらぁの村で音楽祭をするがぜよ。そいにレディーガガさんをお招きしたがじゃ」

プロモーター「(なんて?)」

代々木「せやから、ミュージックフェスティバルじゃ!ベリーベリービッグフェスティバルじゃき、
    プリーズカムヒアぞね!」

プロモーター「(大きな祭りですか?それはどれくらいの大きさなんですか?)」

代々木「なんて?」

プロモーター「(どれくらいの人が集まるのですか?)」

代々木「は、はうめにー?」

プロモーター「10 thousand?100 thousand?」

代々木「そ、そうじゃ。わんはんどれっどじゃ!」

プロモーター「(じゅ、10万人ですか!?)」

代々木「そうじゃき言うちょろうが!イエスじゃイエス!」

プロモーター「(それは素晴らしい!では、出演料についてですが…)」

代々木「わしらぁ金はないぞね。ノーマネーじゃ」

プロモーター「(なんて?)」

代々木「わしらぁの村は貧乏ながじゃ。出演料は払えんき。
    ウィーアーベリベリープアじゃきのう」

プロモーター「(じゃあ、駄目じゃん)」

代々木「そいでも来てもらわんと困るがじゃ!プリーズヘルプアス!
    ジャストオンリーレディーガガレスキューマイホームタウン!」

プロモーター「(そんな事言われても困りますよ。ああ、そういえば、
        あんたらの街はなんて名前なんでしたっけ?)」

代々木「なんて?村の名前?」

プロモーター「(街の名前です)」

代々木「ああ、こん村さ名前は副島村じゃき。高知の副島村じゃ」

プロモーター「(フクシマ?)」

代々木「そうじゃき。副島じゃ」

プロモーター「(そうですか…)」

代々木「ほんにお願いしますき!わしらぁの村さ助けてくだされ!
    プリーズヘルプフクシマ!」

プロモーター「(少し待っていてください)」

副村長「どげな感じぞね?」

代々木「よう分からんけんど、何ら待っちょれち言われてるような気がしますがじゃ」

村民A「今回もダメかのう」

安藤「そらそうじゃ。そげにウマくいきゆうわけないぞね」

プロモーター「(お待たせしました)」

代々木「おう、はいはい。そいでどうなったぞね?」

プロモーター「(本人に直接聞いてまいりました)」

代々木「レディーガガに聞いたんかえ?」

プロモーター「(本人に聞いてみたところ、是非行きたいと)」

代々木「なんて?オーケーかえ?オーケーなんかえ?」

プロモーター「(ええ、そうです。オーケーです)」

代々木「ほ、ほんまかえ?ほんまに出てくれるんかえ?」

プロモーター「(本人もフクシマのためなら是非出たいとおっしゃっておりました)」

代々木「ほんまかえ!ありがたいことぜよ!しかし!しかしじゃ。
    わしらぁは銭っ子ばぁ、もっちゃりせんがぜよ!ウィーアーノーマネーじゃき!」

プロモーター「(それもご心配なく。フクシマを救うためならギャラはいらないとおっしゃっていましたから)」

代々木「ノーギャランティーオーケーかえ!?こいは信じられん!
    とんでもないことが起こりゆうがぜよ!」

プロモーター「(では、子細については後日ということで)」

代々木「あ、ありがとうございますき!センキュー!センキューじゃ!」

電話が切れる

代々木「オーケーが取れたがぜよ!」

副村長「ほんまかえ!?こん村にほんまに来てくれるがかえ!?」

村民A「信じられんこっちゃ!」

村民B「まだ神はこん村さ見捨ててはおらんがぞね!」

安藤「バカな…。そげなことがあるはずなか!」

代々木「レディーガガさんはこん村を救うためやったら、銭っ子ばぁいらんち言うたそうじゃ!」

村長「ギャラもいらんとは…なんともお優しい御仁じゃのう」

村民C「こん村に来たことすらないんになんともお優しいことぞね!」

村民A「外国人いうんはこげに優しいもんかえ!」

村民B「こいだらなんとか、音楽祭が出来るぞね!」

村民C「そうじゃ!こん村始まって以来の快挙ぞね!」

副村長「ほいだら、前座は爆乳ヤンキー。メインにレディーガガでよかじゃな」

村民A「ああ、よかよか!」

村長「ちょっち待ちや。おい、代々木。おまんが集めたアンケエトには
   他に歌手らぁ書いちゃせんがかえ?」

代々木「そらもちろんほかにもいっぱい書いちゅうがぜよ」

村長「そうかえ。ほいだらそれも発表しいや」

安藤「まさか、他にも来てくれる言うもんがいるとでも思っちゅうがかえ!?」

村長「そうじゃが?」

安藤「何を言うちょるんですか、村長!あげなもんは万に一つの様な
   ほとほとありえない事ですき!あげな気の良い歌手らぁもうおりはせんぜよ!」

村長「そんじも、オファーを掛けてみるだけの価値はあるぞね」

村民A「そうじゃ!掛けてみないことには始まらんぞね!」

安藤「おまんらぁ、どうかしてるぜよ…」

村民B「そげなことはえいき。ほな、代々木!さっそく発表しいや!」

代々木「分かりもした!」

代々木「次のもんらぁ、U2ですき!」

村民A「U2?誰ぜよ?」

代々木「知りもはん」

村民B「U2?憂鬱?」

村民C「おまん、何を言うがぜよ?」

代々木「安藤さんは知っちょりますか?」

安藤「名前だけは知っちょるき。アイルランドの世界的なバンドじゃち聞いたことがあるぜよ」

村民A「アイルランド?どこぜ?」

村民B「バンドちなんぜよ?」

副村長「そんアイルランドぉ言う国は何語ばぁ話すがかえ?」

安藤「そいはやはり英語ですろう」

副村長「ほんだらここも代々木の出番じゃな」

代々木「な?またわしながですか!?」

村民A「そいはそうぜよ!さっきも会話しちょったがやないかえ!」

代々木「あれは会話っちゅうレベルのもんではないがじゃ!
    わしぁほとんどあん人の言葉さ分からんかったがやき!」

村民B「そんでもえい。そいでもわしらぁよりはマシじゃき」

村民C「ほい、さっさと電話を掛けるがぜよ!」

代々木「では、掛けますき」

電話を掛ける代々木。

代々木「もしもし!U2さんはおるがかえ?」

村民A「いやぁ、しかし来てくれるだろうがか」

安藤「そいは普通に考えて来てくれるわけないろう」

村民B「しっかし、レディーガガさんは来てくれるがじゃ」

村長「来てくれるんはありがたいけんど、ここには設備が何もないがじゃ」

副村長「そうじゃのう、空き地があるち言うても、ほっぽられた野原じゃき」

村民A「そいを整備するとなると、なかなか手間ですのう」

村民B「歌手さんらぁのための舞台づくりもせんにゃならんしのう」

村民C「そいは困った。わしらぁにはそげんかこつ出来やせんぞね」

副村長「まあ、舞台の事は土建屋の藤吉に任せようち思っっちゅうがじゃ」

村民A「そうだったかかえ。ほんならこん後、藤吉に会いに行きましょうや」

代々木「ええ、そうじゃ。ウィーアーベリーベリープアじゃ。
    プリーズヘルプフクシマ!」

副村長「しかし、こんは銭っ子ばぁ掛かりそうじゃのう」

村民A「銀行から何とか融資は受けられんですろうか」

副村長「どうじゃろうのう、事が事やき」

村民B「それと、どればぁの人が来るか分からんけんど、
    食いもん屋や便所なんかも必要になるじゃろうのう」

村民C「どれもこれも無いもんばかりやき。金もない、人もない、おまけに知恵もないがじゃ」

村長「まあ、そう気を落とさんでもえい。わしらぁにはこげなことの経験がなかじゃ。
   そんじ何もかんも手探りじゃき。まあ、一つ一つ乗り越えていけば、えいだけぜよ」

村民A「そうじゃ!村長の言うとおりじゃ!」

代々木「お、おお!ほんまかえ!?そいはありがたいがじゃ!センキュー!センキューじゃき!」

電話を切る代々木。

村長「どういた?来てくれるがかえ?」

代々木「おう、そうじゃ!来てくれるち言うてくれましたがじゃ!」

安藤「なんでじゃ!」

村民A「ほんまかえ!」

村民B「そいはスゴか!信じられん!」

代々木「こん村のためなら、喜んで役に立ちたい。そう言うてくれたがです!
    セイビングフクシマじゃち!」

安藤「どういてじゃ!」

村民A「それはありがたい事ぜよ!」

村民B「見ず知らずぅの外国の方がこうもわしらぁのために優しゅうしてくれるとは!」

村民C「ほんに、ほんにありがたいぜよ!」

代々木「それだけではないがじゃ!こんチャリティコンサートに是非協力させてくれ!
    多分、そげなような事を言っておったがです!」

村民A「ちゃりていこんさーと?」

村民B「そいはなんぜ?」

安藤「慈善音楽会ち意味ですろう」

村長「慈善ち言うんは恵まれんもんらぁに施しをしゆうことじゃの?」

安藤「そうですき」

村長「そいはつまり、わしらぁの村んために経済的な援助さするちことじゃな」

副村長「ほんならあれかえ、こん音楽祭の売り上げばぁ、
    こん村の村おこしばぁために使てもえいち言うことじゃな?」

村民A「しかし、そげなことばぁ許されんでしょうか?」

村民B「そうじゃ!歌手さんらぁには銭っ子ばぁ払わんち、
    わしらぁはチケット代さもらってえいとは。こいはおかしいがぜよ!」

代々木「そいをボノさんは許してくれたがぞね!」

村民C「ボノ?そいは誰ぞね?」

代々木「U2のメンバーの方ぜよ!」

村民A「そんのメンバーの方がギャラさいらんと来て下さるち言うてくれたわけかぁ。
    なんとまぁ、えい人ながじゃ」

代々木「そうじゃ!しかもそれだけではないき!他の仲間にも声ばぁ掛けてくるち、
    そげなような事を言うっちょたがじゃ!」

安藤「なんじゃと!?」

村民B「そいだら、もっと来てくれる人が増えるかもしれんがかえ!?」

代々木「そうじゃ!もしかすっとこいはとんでものう豪華な音楽祭になるやもしれんがじゃ!」

村民B「そいはスゴか!」

村民C「ほんまにすごい!凄いことぜよ!」

村長「ほんだら、わしらぁも動くかえ」

副村長「そうですのう。わしらぁもやるべき事が山積みですき」

代々木「どこへ行くがですか?」

副村長「土建屋の藤吉に会って、そん後例の空き地に行くぜよ」

代々木「そうながですか。ほんだらわしも一緒に行きますき!」

村長「いや、おまんはえい」

代々木「どういてですき?」

村長「おまんは他の歌手にも声を掛けるがじゃ。来てくれる歌手らぁ多ければ多いほどえいき」

村民A「そういうことぜよ!」

村民B「がんばりや!」

代々木「分かりましたえ!ほんならここで電話を掛けてますき!」

村長「それでえい」

安藤「そんで、次は誰に電話を掛けるがじゃ?」

代々木「次は…、グリーンデイち言うもんですき」

村民A「グリーンデイ?そいはなんぜよ?」

村民B「グリンデイち、そいは緑の日言う意味ぜよ!」

村民A「緑の日?そいは何だか平和そうな響きじゃの」

村民C「きっと平和ぁで穏やかぁな曲ばぁ歌ってるに違いないぜよ」

村長「そんなら行ってくるき」

代々木「はい、お気をつけて!」

例の空き地に到着した一行。

村長「ここがそうじゃの」

藤吉「村長さん、急にどういたがぜよ」

村長「藤吉よ、ここがなにか分かるがかえ?」

藤吉「何って、ただの空地ぞね」

村長「いや、ここはコンサートホールながじゃ」

藤吉「村長さん、何を言うてるがじゃ?」

村長「藤吉、おまんここに立派な舞台を作ってくれや」

藤吉「どういう事ぜよ?」

村長「こん村の起死回生のために大規模な音楽祭をするがじゃ」

藤吉「大規模ちどれくらいよ?」

村長「そうじゃのう、大体…全盛期だった頃こん村におった…
   2千人、いや3千人は集まるじゃろうのう」

藤吉「さ、3千人じゃと!?そんなに集まるがかえ!?」

副村長「そうじゃ。なにせ海外から歌手さんらぁ来てくださるからのう」

藤吉「海外からぁ!?どういて海外からこんな田舎に来てくれるがかえ!?」

村民A「こん村の窮地を救いたいと!是非来させてくれち言うたがぜよ!」

村民B「そうじゃ!セイビングフクシマじゃき!」

藤吉「ほ、ほんまかえ!そいは何かの間違えじゃないがかえ!?」

村民C「いいや、ほんまに来てくれるがぜよ!こん村を助けに来てくれるがじゃ!」

藤吉「ありがたいのう。ほんにありがたいがじゃ」

副村長「海外のもんらぁえい人ばかりぜよ。こいはジーザスなるもんの教えのおかげかのう」

安藤「ですが、資金が足りませんき」

副村長「そうじゃった。おい藤吉よ、ここに立派ぁな舞台さこしらえるちなったら、
    いくらぐらいば掛かるがぜよ?」

藤吉「そうじゃの、まあ、規模にもよるやろうけんど、うん千万は掛かるじゃろうのう」

村民A「うん千万じゃち!?」

村民B「そいはいかん!そいはいかんがぜよ!」

藤吉「まあ、それは立派な舞台さこしらえた場合の話ぜよ。
   簡素なもんじゃったら、いくらでも抑える事らぁ出来るがぜよ」

副村長「それもいかんがじゃ。海外から有名な歌手らぁが来るがやき。
    安っぽいもんはいかんがぜよ」

藤吉「そうは言っても、こういう類のもんはとかく銭っ子ばぁ掛かるもんですき。
   それに一流の音響じゃ、照明じゃぁとなればもう、普通なら億単位の話ながじゃ」

村民A「億じゃち!?」

村民B「どこにそればぁの金があるぞね!」

村民C「ついに頭がいかれてしまったがかえ!藤吉や!」

藤吉「何を言うちょるんじゃおまんら。わしは普通はそういうもんじゃち言うちょるだけぞね」

村長「しかし、そいは困ったのう。せっかく来て下さるち言うちょるんに、こちらが準備出来ちょらんとは」

副村長「そうじゃのう。資金不足に、人手不足。それに音響…。
    そうじゃ、音響のことらぁ楽器屋の入山に聞いたらえいですろう」

村長「そうじゃの。明日、入山を訪ねるとしようかの」

村民A「ほんだら、役場に戻りましょうや」

副村長「そうじゃの。そうしよう。」

藤吉「ああ、そうじゃ。一つ聞いてもえいがかえ?」

村長「なんぞね?」

藤吉「どういてこん空き地ながですか?他にも空き地らぁあるですろう」

村長「そいはここがえい場所やからじゃき」

藤吉「えい場所?」

副村長「そうじゃ。ここは周囲をぐるりと木々に囲まれちゅう。
    そんおかげで気温は穏やかで過ごしやすい」

村民A「ここは平坦で見晴らしがえいしのう。それにとかく広いがじゃ」

村民B「そして夕陽の美しさよ」

藤吉「夕陽?」

村民C「ここから見る夕日の美しさは絶品ながじゃ」

藤吉「そうながかえ、そいは知らんかった」

副村長「そん美しさゆえに、一部のもんらぁはここを夕陽ヶ原ち呼んじょるきの」

村長「今でこそ荒れちゅうように見えるけんど、ここに立派な舞台らぁあれば、
   最高の野外音楽堂になるがぜよ」

藤吉「そうながかえ…。ここがのう…」

村役場にて

村民A「おう、戻って来たがぞね!」

村民B「どげな具合じゃ?」

代々木は静かに電話を置いた。

村民C「どないした?そればぁ暗い顔して」

代々木「断られたがじゃ」

村民A「なんじゃち?グリーンデイに断られたがかえ?」

村民B「そうかえ、グリーンデイは来んかえ」

村民C「緑の日言うくらいじゃし来るかち思うちょったけんど、
    そう、うまくはいかんがじゃの」

安藤「そうじゃ。そうじゃ。そうウマくはいかんがぜよ!」

代々木「いや、グリーンデイさんらぁは快諾してくれたがぜよ」

村民A「なんじゃち!?」

安藤「嘘じゃ!」

代々木「U2らぁ来るち言うたら、ほんじゃわしらぁも行くち言うたがぜよ」

安藤「そんなバカな!」

村民B「ありがたいことぜよ!」

村民C「信じられん!こいで3組目じゃ!」

副村長「んにゃ、爆乳ヤンキーがおるけん、4組目じゃ」

村長「ほいだらどういてそう暗い顔をしゆう?」

村民A「そうじゃ!誰に断られたがかえ?」

代々木「そいはのう…、マリリンマンソン言うもんぞね」

村民A「マリリン?そいは誰ぞね?」

村民B「マリリン言うんは女の名前ぞね!」

村民C「ほんだら、このマリリンマンソン言うもんは女子かえ?」

代々木「いいや、男だったがじゃ。そいも恐ろしい声をした男だったがじゃ」

代々木「わしらぁのオファーを一蹴したがじゃぁ!とても汚い言葉で罵られたような気がしたがじゃ!
    最後にカーズユーち言われて電話ぁ切られたがぜよ!なあ、安藤さん!カーズユーちどういう意味ぜよ!?」

安藤「分からんけど多分、貴様を呪ってやるち意味ですろう」

代々木「わしゃ恐ろしいぜよ!」

村民A「海外のもんらぁ良い人ばかりではないようじゃのう」

村民B「そうじゃのう。人それぞれじゃ」

代々木「ほんじゃき、わしぁ今日はもう休ませてもらいますき。
    続きは明日ち言う事で」

村長「そうかえ、ほんだらゆっくり休みや」

副村長「気を付けて帰るんじゃぞ」

代々木「はい、そうしますき」

村長「ああ、そうじゃ。明日は楽器屋の入山を訪ねるき。
   おまんも来いや」

代々木「分かりましたき」

翌日、楽器屋にて

村民A「おう、来たか代々木」

代々木「おまたせしましたお二人とも」

村長「それじゃぁ、行こうか」

代々木「他のもんらぁはどうしてますがかえ?」

村長「例の空き地のに行っちゅうがじゃ」

村民B「畑で使う重機らぁ動員して整備にあたっとるがぜよ」

代々木「そうながですか」

村長「おい、入山!おるがかえ?」

入山「はいはい、いらっしゃいませ。おう、村長さんやないがですか!こいは珍しい!
   どないな御用ですろうか?」

村長「ちっくと相談があっての」

入山「ほう、どのような?」

村長「そうじゃ、最近、店の景気はどうぜよ?」

入山「は?ああ、まあ、ぼちぼちですけんど、それがなんぜ?」

村民A「なんやおまん、結構儲けとんのかえ?」

入山「おまんらぁは買うてくれんけど、隣町らぁの学校やら施設やらに卸しちゅうからの。まあ、それでじゃ」

入山「そいで、相談ちなんぜよ?」

村長「ああ、そうじゃった。おまん、こん村で音楽祭をやりゆうは聞いたがかえ?」

入山「ええ、噂程度には聞きゆうがですき」

村長「そうかえ。実はのう、音楽祭やるち決まっちゅうがはえいけんど、
   問題は山積みでのう」

代々木「わしらぁはあんまりにも音楽に疎いですき。機材らぁの事がなんちゃあ分からんがぜよ」

入山「そいで、わしに聞きに来たっちゅう訳ですか」

村長「そういう事ぜよ」

村長「そいで入山、野外フェスなるもんで使う機材言うんはどればぁ掛かるがかえ?」

入山「わしも詳しゅうはないんけんど、数百万は下らんじゃろうのう。いや、一千万はゆうに超えゆうがじゃろうな」

村民A「一千万じゃき!?」

代々木「どこにそればぁの銭っ子ばぁあるがかえ!?」

入山「音楽言うんは、まあ金ばぁ掛かるもんぜよ」

代々木「そういうもんながかえ…」

入山「それに、こげな事わしに聞いたちなんちゃあならんぞ」

代々木「どういうことぜよ?」

入山「そういうんはもっと専門的にやっちゅうもんじゃないと出来ないぞね」

入山「専門家ぁを雇って、指揮してもらった方がえいと思うがぜよ」

村長「専門家かえ…」

代々木「こいはまた銭っ子ばぁ掛かりそうじゃ」

村民A「ほいだらまた、役場さ戻って会議しますかえ」

代々木「そうじゃのう」

村長「ほんだら、入山も来いや」

入山「どういてじゃ、面倒くさい」

役場にて

村民B「おう、村長さんらぁもう戻ってきてたがかえ」

村長「おう。そっちはどげな具合かえ?」

代々木「夕陽ヶ原の整備は進みゆうがか?」

副村長「駄目じゃの。人手がまるで足らん」

村民C「あそこば広すぎるがぜよ!」

村長「そうかえ、そっちぃも進まんかえ」

副村長「そいで、そっちはどうだったがぜよ?」

代々木「専門家さ雇えち言われたがじゃ」

入山「こげなもん素人が集まって出来ゆうもんではないきにのう」

村民B「専門家ぁ?なんのぜ?」

入山「こげな祭り言うんは、それを準備するための、専門のプロっちゅうもんがいるもんぜよ。
   その人らぁに頼めち言うてるがじゃ。」

村民C「しかし、わしらぁにそげな知り合いはおらんがよ」

副村長「それに、そいはきっと銭っ子ばぁ掛かりそうじゃき」

入山「まあ、掛かるじゃろうけんど、それこそ、わしらぁだけではどうしよも出来んがぜよ」

副村長「そういうもんかえ。うむ、そいは困ったのう」

代々木「そいで、そっちは人手が足らんち言う話じゃったがけんど?」

副村長「ああ、そうじゃった。人手が全く足らんがぜよ」

村民B「あれは、こん村のもんらぁ総出でやらんと無理ぞね!」

村長「そうかえ。そんなら久々に全村集会をやるとするかの」

副村長「ああ、そうした方がえい」

安藤「皆さんお揃いで、また話ゆうがですか?」

副村長「安藤、おまんまた来たがかえ?」

村民A「会計監査がまた何しに来たがじゃ?」

安藤「今日はこれば、渡しに来たがじゃき」

封筒を差し出す安藤。

副村長「こいはなんぞね?」

安藤「中にぁ2百万入ってるがとです」

村民A「2百万じゃち!?」

代々木「そいは何の金ぞね!?」

安藤「自治体からふんだくったがぞね」

村民B「自治体からぁ!?」

村民C「市の連中らぁが出したち言うがかえ!?あんのケチなやつらが!?」

安藤「そいはそうぞね。世界的に有名な歌手らぁが来るち言うたら、
   そいなら援助するち出してくれたがぜよ」

村民A「ほんまかえ!」

村民B「そいは信じられんことぜよ!」

入山「しかし、2百万程度では全然足りんがぜよ」

安藤「まあ、自治体の連中らぁにしてみたら大金なんじゃけんどのう」

副村長「確かに、舞台作りするにも機材購入するにも全然足らんがぜよ」

安藤「まあそうじゃき、わしぁこん後、銀行さ回って融資を頼んでくるがじゃ」

村民C「なんじゃち!?」

代々木「どういて会計監査の安藤さんがそこまでするがぜよ!?」

安藤「どういてって、そりゃわしもこん村のもんやし。
   有名な歌手さぁ来るち言うんに、金がのうてお迎え出来んかったがでは、いい笑いもんじゃき。
   こん村に恥をかかせるわけにはいかんからのう」

村民A「安藤!なんぜ、おまん!えいやつやったがかえ!」

村民B「わしゃおまんぁただの文句たれじゃち思っちょったけんど、見直したえ!」

村長「そいで、融資は受けられそうかえ?」

安藤「まあ、U2らぁグリーンデイらぁ来るち言うたら、断らんち思うけんどのう」

村長「そうかえ。ほんならもう一つ聞いてもえいがかえ?」

安藤「なんぜよ?」

村長「わしらぁがもっと出演者ぁを増やしたら、融資額も増えるがかえ?」

安藤「そら、そうですろう。それだけ売り上げアップさ見込めますきにのう」

村長「そうかえ。ほいだらさ、決まりじゃ。代々木、あんのアンケエト、みんなに分けるがじゃ」

代々木「は、はい」

村民A「何をするがぜよ?」

村長「えいかみんな?全員で手分けして出演依頼の電話を掛けまくるがじゃ!
   そいだら、舞台作り、機材、専門家、その他諸々のための資金を集められるがやき!」

村民B「そいはほんまかえ!?」

村長「えいかみんな!一人でも多く出演者ぁを集めて、高額融資を受けるがぜよ!」

村民C「おう!やったるがぜよ!」

代々木「よっしゃ!やりましょうぞね!」

安藤「ほな、わしぁ行ってきますき」

副村長「おう、がんばれや!」

村民A「頼んましたえ!安藤さん!」

副村長「そいじゃ、わしらぁも始めようかの」

入山「しっかし、そげにウマくいくもんでかのう」

代々木「物は試しですき!入山さん!」

入山「そういうもんですかのう」

村民A「ほいだらわしは、こんブリトニースピアーズ言うもんに掛けてみますかの」

村民B「ぶりとにー?そいはなんぜ?」

村民A「知りもはん」

村民C「そいは何かのバンドやないがかえ?」

入山「ブリトニースピアーズ言うんは有名なアメリカの女性歌手じゃき」

代々木「お、入山さん、知っちゅうがかえ?」

入山「名前だけぞね。わしぁクラシックしか聴かんき。それ以外のもんらぁはよう知らん」



村民B「んならわしぁこんのブラックサバス言うもんに掛けてみますき」

村民C「そいだらわしゃシャキーラじゃ」

代々木「わしはブラック・アイド・ピーズに掛けるがぜよ」

副村長「そいじゃ、わしぁこんのスリップノットなるもんに掛けようかの」

入山「しっかし、どういて洋楽ばっかりぞね?こん村のもんらぁ普段どないな生活をしゆうがかえ」

それから役場の者たちは出演交渉の電話をひたすらに掛け続けていくのであった。

村民A「そうじゃき!オファーじゃ!オファー!」

村民B「ハロー!ハロー!プリーズカムヒア!オーケー!?」

村民C「ノーノーノー!ウィーアーノーマネーぜよ~!はっはっは!」

代々木「プリーズ!プリーズヘルプマイホームタウン!」

副村長「頼むき!話だけでも聞いてくれんかえ!?」

村長「おう、イエス!イエスじゃ!はっはっは!
   セイビングフクシマ!センキューセンキュー!」

入山「そいで、どげな調子じゃ?」

村民A「駄目じゃ。ブリトニーには断られたぜよ」

村民B「ブラックサバスもいかんかった。こいは難しいのう」

入山「やっぱりこいは無理があったち言うことじゃのう」

村民C「やったぜよ!シャキーラが来てくれるぜよ!」

入山「なんじゃち!?」

村民A「ほんまかえ!?」

村民C「ああ!副島村さためなら喜んでち言うて下さったがぜよ!」

村民B「そいはスゴか!」

入山「信じられん!どういて会ったこともない海外の歌手がこん村のために来てくれるがぜよ!」

代々木「やった!わしもやったぞね!ブラックアイドピース言うもんらぁも来てくれるがぞね!」

入山「なんでじゃ!」

村民A「ほんまかえ!そいはスゴイがじゃ!」

村民B「どういてこうも海外の人らぁわしらぁに優しゅうしてくれるんじゃろうのう!」

代々木「こいでもう5組も出演者が決まったぞね!これはイケる!いけるぞね!」

村民C「いいや、爆乳ヤンキーがおるけ、6組じゃ」

副村長「ええい!ダメか!話も聞いてくれんがかえ!」

入山「そっちはダメそうじゃの」

副村長「スリップノットっちゅうもんらぁは話も聞いてくれんかったがぜよ!
    わしぁ悔しい!」

村民A「そうかえ。そうなるとあとは村長だけじゃの」

村長「はっはっは!おう、センキューセンキュー!」

村民B「こん感じじゃと来てくれるんは決まったようじゃの」

村長「おう、イエス!セイビングフクシマ!ゴーゴー!」

村民C「何ら偉い盛り上がっちゅうなぁ」

代々木「一体、誰に掛けてるがぜよ?」

村長「おう、センキュー!そいじゃ、グッバ~イ!」

電話を切る村長。

副村長「村長!その感じやと来てくれることが決まったようじゃの!?」

村長「おう、そうじゃ。来てくれるち言うてくれたがぜよ」

村民A「そうかえ!そいは良かった!」

代々木「そいで、誰に掛けゆうがやったがですか!?」

村長「ええと、名前はのう…、ええと、あ、ど忘れしたがぜよ。ええと」

入山「一体誰ながですか!?」

村長「ああ、そうじゃ。ポールマッカートニーとかいう御仁ぜよ」

入山「!?」

代々木「ポルマッカトニー?」

村民A「誰ぜ?」

村民B「知らんなぁ」

村民C「初耳ぜよ」

副村長「なにもんぜよ?」

入山「お、おまんら、ポールマッカートニーを知らんがかえ!?」

代々木「さあ、知らんなぁ」

村民A「どこの誰ぜよ。女子かえ?」

入山「ちゃう!女ちゃう!世界最高のバンド!ビートルズのメンバーじゃろうが!」

代々木「ビートルズ?」

村民A「そいはなんぜ?」

村民B「初耳ぜよ」

村民C「ビートル言うんはカブトムシ言う意味やなかったがかえ?」

副村長「ああ、そんならカブト虫取りの名人ちゅう事かの?」

入山「おまんら!何をふざけたことを言いゆうがぜよ!」

副村長「そうは言うたち、知らんもんは知らんがぜよ」

入山「信じられん…。まっさかビートルズすら知らんとは」

代々木「そげに有名なもんらぁながかえ?」

入山「知らんもんらぁそうそうおらんがぜよ!超有名人ながじゃ!」

村民A「ジョン万次郎とどちらが有名ながかえ?」

入山「ポールマッカートニーじゃ!」

入山「こげに無知なもんらぁがよくもまぁ音楽祭などと言いよったもんじゃき」

代々木「そいはこん村を救うためじゃき」

村民A「わしらぁだって映画のことじゃったらちっくとは知っとるがぜよ」

副村長「しっかし、そげに有名なもんがよくもまあ、こん田舎のために来て下さるち言うてくれたもんじゃのう」

入山「ほんまぜよ。全く信じられんわ」

村長「そうじゃのう。わしも正直驚いちゅうがぜよ」

村長「そいもこいも、ボノさんのおかげじゃき」

入山「ボノ?」

代々木「U2のボノさんかえ?あん方がどういたがじゃ?」

村長「あんお方がのう、どうやらポールさんに話をしていてくれたようながじゃ」

入山「なんじゃと!?」

代々木「そいはほんまかえ!?」

村長「そうじゃ。こん村さ救うためじゃち、手を貸してくれち、そうボノさんに言われたそうじゃ」

村民A「そいはスゴか!」

村民B「なんちゅう優しいお方ぜよ!」

代々木「ほんまに協力しちゅうがやったかぜよ!ほんまありがたいぜよ!」

入山「なじょしてそげな有名人がこん村さためにそげな協力さしてくれるんじゃ!?」

村長「そん協力ばぁなかやったら、今頃、こん話は流れてたじゃろうのう」

村民A「ありがたい!ありがたいぜよ!」

入山「信じられんわ!」

副村長「こいは何やらとんでもない流れが来ゆうようじゃの」

村民B「ええ!なんだがイケそうな気がしますき!」

村長「そんだらみんな!もっともっと!出演依頼の電話ぁを掛けまくるぜよ!」

代々木「おう!」

村民C「そうじゃ!掛けまくるんじゃ!」

その頃、東京では

音楽通A「おい、聞いたか?」

音楽通B「なにをよ?」

音楽通A「高知のド田舎で、レディーガガがシークレットライブをやるらしいぞ」

音楽通B「あれ、俺の聞いた話ではU2がやるって聞いたけど?」

音楽通C「いや、オレの情報筋によると、あのポールマッカートニーが来る。とのことだ」

音楽通A「いや、それはさすがにないだろ~」

音楽通B「高知のド田舎にポールが来るわけないだろ~。ありえないわ~」

音楽通C「いや、マジなんだって!しかもノーギャラでやるらしんだわ!」

音楽通A「嘘おつ」

音楽通B「ソース出せよ」

一方、大阪では

高砂「そういや下田さん、聞きましたあの話?」

下田「なにをや」

高砂「例の、高知でやるゆうライブの事ですわ」

下田「高知のライブ?何の話や?」

高砂「あら、まだぁ知らんかったんですか?ロック好きの間じゃ結構噂になっとるようですけんど」

下田「なんじゃそら、全然知らんわ。それがどうしたんや?」

高砂「ええ、それが何やら大物アーティストがこぞってチャリティコンサートやるゆう話でして、
   それに出るゆうメンツが、それはそれもうごっついんですわ」

下田「どんなメンツや」

高砂「これがそのリストですわ。まあ、噂程度の情報ですんで、ほんとのところは分かりまへんけど」

リストを渡す高砂。

下田「なんや、レディーガガにU2にグリーンデイ、それにシャキーラにブラックアイドピースに
   ポールマッカートニー!?なんやこれ!?」

高砂「驚きやろ」

下田「これはいくらなんでも嘘やろ。これだけのメンバーが日本に集まる訳ないやん」

高砂「まあ、普通ならそう思いますわな。でもこれ、信頼出来る情報筋によると、
   かなり確定に近い情報らしいんですわ」

下田「ほんまかそれ?全然信じられんわ」

高砂「そうでしょうな。それにボノがこのコンサートのために仲間を集めゆう噂もあるそうですわ」

下田「益々信じられん」

高砂「ええ、私もそうですわ」

下田「それで、高知のどこでそのライブをやるんや?
   そんなメンツが収まる箱があそこにあるとは思えんけど」

高砂「副島村っちゅうところでやるそうですわ。
   人口が100人程度で、ほとんどゴーストタウンらしんですけど」

下田「もう絶対ウソやろ!そんな話!誰がそんな話に騙されんねん!」

高砂「ほんなら捨て置きますか、この話?」

下田「いや、行くで」

高砂「は?」

下田「今すぐ高知県へ向かうで!」

その翌日、全村集会にて

村長「皆のもん、よう集まってくれたのう」

役場には村人全員、99人が集まっていた。

村民D「今日は何の話で呼んだがじゃ?」

村民E[そうじゃ、わしらぁは畑仕事があるき。そればぁ暇でもないぞね」

村長「いやぁ、すまんきにのう。すぐに終わるがぜよ」

副村長「ほんなら説明するけんど、まずはみんな、こん村で音楽祭やりゆう事は知っとるがかえ?」

村民F「ああ、そげな事聞いたな」

村民G「海外から歌手らぁ来るち聞いたんけど、あれはほんまかえ?」

副村長「そいは本当ぜよ」

村長「それでじゃ、皆のもんにはそん音楽祭の手伝いをしてもらいたいがぜよ」

村民H「手伝いじゃち?何をするがぜよ?」

副村長「当面は夕陽ヶ原の整備じゃき」

村長「人手が全然足りんで困っちょるがぜよ」

村民I「そん音楽祭にはどれくらい客が来るぞね?」

村長「わしらぁの試算では3千人を予定しとるがぜよ」

村民J「3千じゃち!?そればぁに来るがかえ!?」

村民K「こん村の全盛期より多いやないがか!」

入山「いいや、ポールマッカートニーも来るがやき。5千はゆうに超えるじゃろうのう」

村民L「5千じゃと!?わしぁそればぁたくさんの人らぁ見たことがないぞね」

村民M「おい、入山!今、ポールマッカートニーが来るち言うたがかえ?」

入山「そうじゃ。あの有名なポールマッカートニーがこん村に来るがじゃ!」

村民N「あのポールが!?レノン=マッカートニーのあのポールが来るがかえ!?」

入山「そうじゃ!あの有名なビートルズのメンバーぜよ!」

村民O「そいは信じられん!こいは大事ぜよ!」

村民P「他にはどんな歌手が来るがかえ?」

村長「ええとそうじゃな。今んところ、爆乳ヤンキー、レディーガガ、U2、グリーンデイ、
   シャキーラ、ブラックアイドピース、ポールマッカートニー、ミューズ、マルーン5
   ウィル・スミス&ジェイデン・スミス、ジャスティンビーバーなどなど、計16組が参加予定じゃ」

村民Q「そればぁたくさん来るがですか!?」

副村長「まだ、交渉は終わってないき。出演者ぁはまだまだ増えるがじゃ」

村民Q「こげにたくさんおるのに、まだ増えるがですか!?」

村民R「どういてそんなにたくさん集まったがですろうか!?」

代々木「そいはよう分からんけんど、こん村の窮地を救うためじゃち言うて、
    みんなぁ善意で来てくれるがぜよ」

村民S「そいは信じられん!そげなことがあるがかえ!」

村長「こいもボノ言う御仁が知り合いさ声がけしてくれたおかげぞね」

副村長「そうじゃのう。U2らぁマッカートニーらぁの名前さ出せば、
    交渉がウマく運んだぁりしたからのう。あれは不思議な感覚だったぞね」

村民T「ウィル・スミス&ジェイデン・スミス言うんはどういう事ですろう?
    ジェイデン言うんはウィルの息子じゃなかったがかえ?」

代々木「ああ、そいはウィル言うもんのたっての希望でな。息子さ舞台に上げてもえいなら、
    出演してもえいき言うもんで、渋々承諾したがじゃ」

村民U「わしのブラックサバスは来ゆうがかえ!?」

村民B「いいや、ブラックサバスには断られたぞね」

村民V「わしのブリちゃんは来るがですか!?」

村民A「いや、ブリトニースピアーズ言うもんにも断られたぞね」

村民W「わしのお慕いしゆうマリリンマンソン様ぁは来られるがですろうか!?」

代々木「おまんか、マリリンマンソンち書いたんは!2度とアンケートにマリリンマンソンち書くなよ!」

村長「落ち着きや、代々木」

村民X「しっかし、それらぁ豪華な歌手さんらぁ来るち言うんに、
    わしらぁは何の準備さ出来ちゃあせんぞね」

副村長「そん通りじゃ。それゆえ皆のもんに協力を仰いぢゅうがぜよ」

村民Y「まあ、協力するのはえいとして、金はあるがかえ?舞台設営やら、音響整備やら
    かなり金が掛かるやないがかえ?」

副村長「そん通りじゃ。おい安藤、今どれぐらい集まっちゅう?」

安藤「今んところ、17百万じゃ」

村民Z「せ、1700万じゃち!?そいは大金ぜよ!」

安藤「いいや、こればぁでは足りん。まだまだ行ってない銀行はあるき。
   融資を頼んで回って来るがぜよ」

村長「ということじゃ。資金も徐々に集まって来ちゅう」

村民D「資金もあるし、出演者ぁも決まりゆう。こいはウマく行くんではねえがか?」

村民E「おう、何だかわしらぁでも出来そうな気がしてきたがぜよ!」

村長「そういうわけじゃき、みんなぁ手を貸してくれんかえ?」

村民F「おう、えいじゃろ!」

村民G「こん祭りを成功させるがじゃ!」

村長「よし!そいだら副村長の指示に従うて、あんの空き地の整備にあたってくれちや」

村民H「おう、任せときや!」

副村長「そんだら行くぜよ!皆、ついて来や!」

村長「よし、代々木、入山。わしらぁ残って会議ぜよ」

代々木は、はい」

がらんと空いた役場の中でひっそりと会議が始められた

入山「そいで、会議ち何を話ゆう?」

村長「おまん、前に話してた専門家についてじゃ」

入山「ああ、そん話ですか」

村長「入山、おまん、その手のもんらぁに知り合いはおらんがかえ?」

入山「残念ですがおらんがぜよ。知人にもあたってみましたけんど、
   これだけの大きゅう祭りとなると、管理出来る人らぁ見つからんでしたがじゃ」

村長「そうかえ」

その時、一本の電話が掛かって来た。

代々木「はい、副島村役場ですけんど?」

音楽通A「もしもし、ちょっとお尋ねしたい事があって電話したんですが」

代々木「はい、なんですろう?」

音楽通A「ええとですね、そちらでコンサートが開かれるというのは本当ですかね?」

代々木「コンサートち言うんは音楽祭のことですろうか?
    そいなら本当ですけんど?」

音楽通A「も、もしかしてそれに、れ、レディーガガが出たりします…?」

代々木「あらぁ、よう知ってますねや。はい、出ますけんど」

音楽通A「ま、マジっすか!?じゃ、じゃあ、U2は出ますかね?」

代々木「ほんによう知ってますねや。ええ、出ますよって」

音楽通A「そ、それなら、グリーンデイや、ポールマッカートニーも出るんですか!?」

代々木「はい、出ますがやき」

音楽通A「し、信じられない…!あの噂が本当だったなんて!」

代々木「どういてそれを知っちゅうがやろ。わしらぁはまだ誰ばぁ言うちょらんはずなんやけんどなぁ」

音楽通A「あ、あの!チケットは販売してますかね!?是非購入したいんですが!」

代々木「チケットち言われても、まだぁいつやるかも決まってないぞね」

音楽通A「そ、それなら!予約出来ませんかね!?」

代々木「予約?まあ、えいと思うけんど」

音楽通A「それならお願いします!チケットの販売が始まったら、連絡ください!」

代々木「は、はぁ…まあ、えいけんど」

そんなこんなで電話が切れる。

入山「何の電話ぜ?」

代々木「チケットの予約したいち言われたがぜよ」

入山「予約じゃち?まだいつやるんかも、いくらでチケット売るかぁも決まっとらんぞね」

代々木「ほんにそん通りじゃ」

入山「しっかし、どこでこん音楽祭の情報を聞きつけたがやろうのう」

代々木「ほんまぜよ。わしらぁ何の宣伝もまだぁしちゃせんのに」

しかし、その情報は世界中に知られ始めていた。

翌日、昼過ぎに役場を訪れた代々木。

入山「おう、遅かったのう、代々木」

代々木「ええ、寝坊しまして。しっかし、何やら忙しそうですのう」

そこには電話対応に追われる村民たちの姿があった。

村民A「ええ、そうじゃ。こん村で音楽祭らぁやるんは事実じゃき!」

村民B「はい、そうですき。ウィルスミス親子も来るがですき」

村民C「ノーブリトニー、ノーブラックサバス!イエスマルーン5、イエスジャスティンビーバー!」

入山「朝からこんな調子じゃき。全然電話が鳴りやまんぜよ」

代々木「何の電話ですろうか?」

入山「本当にこん村で音楽祭やるがかぁとか、誰が出演するがかとか
   チケットさぁ売ってくれとか、予約受付してくれとか、
   そげな電話が国内外から掛かりまくりゆうがぜよ」

代々木「海外からもかえ!?」

入山「そうじゃき。こん村さ、どうやって行けばいいがか教えてくれち聞かれゆうけんど、
   わしらぁ飛行機さ乗った事ないがやき、どうすればえいがか分からんぜよ」

代々木「そいは大変じゃのう。外人相手に道案内さ、わしらぁ英語さ喋れんがやき、至難の業じゃのう」

副村長「おい、代々木!おまんも突っ立ってないで、電話に出えや!」

代々木「あ、はい。分かりましたき!」

副村長「全くどうなってるがかえ。どういて急にこればぁたくさん電話が掛かってくるがぞね」

その時、とある2人の旅人が役場を訪ねてきた。

下田「お忙しいとこすんまへん」

入山「ん?どういたがじゃ?」

下田「あの、ここの村の村長はんはどこにおるか教えてもらえまへんか?」

入山「ああ。村長ばぁ、そこで電話対応しちゅうがぜよ」

下田「ああ、あの人でっか。ほんまおおきに」

村長「はい、もしもし。ああ、予約受付じゃったの。ほんなら、名前と電話番号さ教えてくれんがかえ?
   チケエト販売が決まりゆう時に、こちらから改めて折り返ししますき」

村長「はいはい、どうも~」

電話を切る村長。

下田「あの~、お忙しいとこえろうすいまへん」

村長「ん?どちら様ですろうか?」

下田「ああ、わいは下田言います。こっちは高砂です」

村長「はぁ、どうも。そいで、どのような御用ですろう?」

下田「ええとですね、わいらはこの村でで野外フェスをやりゆうんを聞いてわざわざ
   大阪から飛んできたんですわ」

村長「そいはまたご苦労なことですのう」

下田「それで聞きたいですけど、ここでライブやるいうんはほんまなんですか?」

村長「ええ、本当ですがじゃ」

下田「それじゃ、U2やポールマッカートニーなどの豪華な出演者が出るいうんもほんまなんですか?」

村長「よう知っちゅうの。そいも本当のことぜよ」

下田「し、信じられん…!なんでこの村にそんな豪華なメンツが来るんや…」

村長「おまんらぁ、観光客かえ?そんなら予約を受け付けゆうがぜよ」

下田「い、いや、違いますねん!わいら旅行客ちゃいますねん!」

村長「そうながかえ。ほんなら、何をしに来たがぜよ?」

下田「実はわいら、大阪でイベント会社をやっとるんですわ」

村長「いべんと会社ぁ?」

下田「ええ。まあ、株式会社SMDっちゅう小さな会社なんですけども。
   音楽関係のイベントの企画・制作・運営をやりゆう会社ですわ」

村長「ほう、そうかえ…。おい、みんな!ちっくと手ぇ止めて、こっちに集まってくれんかえ!」

副村長「ん?どういたがですか、村長?」

村民A「わしらぁは電話対応で忙しいがですよ!」

村民B「こげなもん、もっと人手が要りますがじゃ!」

代々木「それで、どういたがですかえ?」

村長「うむ、皆に紹介する。こちら、下田さんと高砂さんながじゃ」

下田「どうも皆さん、株式会社SMD社長の下田です。こっちは部長の高砂です」

高砂「よろしゅうお願いします」

副村長「はあ、どうも。そいで、この御仁らぁがどういたがですろうか?」

村長「うむ、こん方らぁは大阪で音楽関係のイベント会社をやりゆうそうじゃ」

村民A「イベント会社ぁ?そいはなんぞね」

村民B「良い弁当ですがじゃ」

村民C「おまんは何を言いゆうがぜよ」

下田「皆さんは、フジロックフェスティバルっちゅうんを知っとりますか?」

副村長「藤六?」

代々木「知らんがじゃ」

村民A「初耳ぜよ」

村民B「全く知らん」

村民C「そいは美味しいですか?」

入山「フジロックは国内最大級の野外フェスながじゃ」

下田「ええ、そん通りですわ。そんで、わいらはそれの企画運営を担っちゅうスマッシュいう会社で働いとったんですが、
   今は退社独立して、SMDを作ったっちゅう訳ですわ」

代々木「どういて辞めたがですか?そいは大会社じゃち思うんやけんど」

下田「まあ、簡単な話ですわ。わいは自分の手でフジロックに匹敵する大規模なロックフェスを作りたい、
   そう思ったんです。それから色々なイベントを企画しましたけんど、まああまりウマい事行かず
   困っとったんです。そんな折、この村でビッグなチャリティコンサートをやるっちゅう話を聞きつけて
   わいはもう、居ても立っても居られず飛び出してきてしまった、っちゅう訳ですねん」

代々木「そうながだったんですか」

下田「はい、そういう訳ですねん」

村長「どう思う、入山?」

入山「ええと、いくつか聞いてもえいですろうか?」

下田「ええ、どうぞ」

入山「下田さんの会社では会場設営や音響整備などもしゆうがですかえ?」

下田「もちろんです。それ以外にも、出演者との交渉、タイムスケジュールの管理、
   チケットの販売、グッズの販売、交通整理などなど、私共の仕事は多岐に渡ります」

村民A「そいはスゴイ!」

村民B「万能じゃ!」
   

入山「ほんだら、舞台作りも全部任せてもえいゆうことですろうか?」

下田「ええもう、専門的な事は全部引き受けさせてもらいますよって」

副村長「わしらぁはあまり銭っ子ばぁ持っちょらせんがじゃぞ」

下田「構いまへん。これだけのビッグイベント、参加出来るだけで名誉な事ですわ」

代々木「何ぞね、めっさえい人やないがですか!」

副村長「んだ。この人に頼みましょうぞね」

入山「村長…!」

村長「うむ。ほんだら下田さん。これからよろしくお願いしますき!」

下田「ええ、こちらこそですわ!」

代々木「そんだら下田さん、わしらぁ何から始めたらえいですろうか?」

下田「それじゃあ、細かい契約は後からゆっくりっちゅう事で。
   まずは会場予定地を見させてもらいましょうか」

村長「そうかえ。ほんだら代々木、おまん、案内しちゃりや」

代々木「はい、分かりましたき」

例の空き地にて

代々木「ここがそうながじゃ」

下田「ここはかなり広いですな」

代々木「そうじゃろ、ここなら何千人も入るがぜよ!」

下田「いいや、何千どころやない。何万人も入るやろうな」

代々木「何万!?そないに人が来るがかえ!?」

下田「そらそうや。あのメンツやで。仰山人が入るやろな」

代々木「そうながですか。そないに凄い人らぁだったがですか」

下田「何やあんた、そんなんも分からんでオファーしたんか?」

代々木「ええ。わしらぁ音楽については何ちゃぁ知らんきにのう」

下田「そんな人らがよくもまああれだけの歌手らを呼べたもんやわ。
   どないな裏技を使ったんや?」

代々木「裏技なんざ使っちょらせんわ!みんなこん村を救いたいっちゅう気持ちで来てくれるがやき!」

下田「余計に分からんわ」

高砂「しっかし、ここはええところですな」

下田「せやな。周囲を森林に囲まれた大自然。まるでフジロックやな」

高砂「それに平地で見渡しもええ。この時期のわりには気温も高くない。
   野外フェスには持って来いの場所ですわ」

代々木「そうじゃろう?ここはただの空き地には見えんじゃろ?
    村のもんらぁだけが知っちゅう最高の癒しスポットじゃきのう」

下田「ただの空き地、タダで貸し切り同然か…。そして、ここにステージを…」

代々木「どげな立派な舞台になるんかのう」

下田「ああ、もうステージの構想は出来とるさかい。それは明日、役場で話しましょう」

翌日、村役場

村民A「昨日からずっと電話が鳴りっぱなしじゃ」

代々木「予約者数らもう2千名を超えゆうがです」

村民B「2千じゃち!?全盛期の頃の人口ぞね!」

村民C「もうそげにおるがかえ!?」

下田「いやいや、まだまだ増えますがな。こんなんは序の口ですわ」

村民A「まだまだ増えるがですか!?」

村民B「こいは信じられん」

下田「専門の電話番を雇った方がええやろな。こっちで手配しましょか?」

村長「ほんならお願いしますき。わしらぁだけではもう手に負えんき」

下田「ほんなら高砂、頼むわ」

高砂「はい」

入山「しかし、今のペースで2千とはのう。こいなら最終的にどればぁ入るか見当もつかんぜよ」

下田「早いうちにチケットの販売を始めた方が良さそうやな。まずは3万人分用意しましょう」

村民A「3万じゃち!?」

村民B「そげに来るがかえ!?」

村民C「いいや!そればぁ人がこん村に来るはずないぞね!」

下田「いいえ、あの豪華メンバーなら3万人は余裕で売れますがな。これは様子見ですよって。
   その売れ行き具合で最終的にどれぐらいチケットを売るか決めるわけです」

副村長「まあよく分からんけんど、とりあえずわしらぁが思っちょるより人が仰山来るっちゅうことじゃな」

下田「それと、出演者に変更はありまへんか?タイムテーブルを決めておきたいので、
   一組でも増減があるんやったら、知っておきたいんですわ」

村長「ああ、そうながかえ。ええと確か、新たに6組増えましたがじゃ」

下田「6組もですか?そりゃまたエライ事ですな」

村長「ええと、新しく決まったんは、ボンジョヴィ、スヌープドッグ、ダニエルパウター
   ジョシュグローバン、フアン、スノウパトロールの6組じゃき」

下田「またまたエライメンツが出てきよりましたね。どうしてこんなに豪華なメンバーが
   この村に来てくれんですかね?」

代々木「どれもこれもボノさんの声がけのおかげですがじゃ」

下田「それもよう分かりまへんねや。どうしてU2のボノがそないに一生懸命仲間を集めとるんか。
   あん人はアフリカにしか興味ないかと思ってたんやけど」

代々木「そいはこん村さ救いたいっちゅう一心で」

下田「それが分からん。ボノとこん村にどないな縁があんねん」

村民A「そげな事聞かれてもなぁ」

村民B「きっとそん人らぁがえい人じゃからやろうのう」

下田「まあ、よく分からんけんど、この村には何か特別な魅力があるっちゅう事なんでしょうなぁ」

高砂「そうなんかなぁ…?」

村長「こいで、出てくれるもんらぁ21組になったがぜよ」

副村長「いいや、爆乳ヤンキーが出るけん、22組ぜよ」

代々木「そうなると、こん人らぁを一日にまとめて出すんは何だか勿体ない気がするのう」

村民A「そうじゃの。祭りは長い方がえいがやき」

村長「そいなら、二日ないし三日やったらえいがぜよ」

下田「そうですね、一組の持ち時間を1時間と仮定すると…、二日なら今の組数でもええけんど、
   三日間やるんなら30組は欲しいところですな」

村民A「いくらなんでそげに集まるじゃろうか?」

入山「まあ、今の組数でさえもう奇蹟みたいなもんじゃからのう」

下田「それでも、ここの村には特殊な力があるようやし、何とかなるんちゃいますか?」

安藤「そいは過大評価ぜよ」

下田「しかし、これほどの豪華メンバーとなると、出演順を決めるんも一苦労やなぁ」

高砂「そうですねぇ」

副村長「まあ、前座は爆乳ヤンキーで決まりでえいとして、その後が問題ですのう」

下田「なんでやねん!なんで名誉あるオープニングアクトをそないなもんで飾るねん!」

村民A「なんでて、前座なんざ一番弱っちいもんがやるもんじゃろ!」

村民B「そうじゃ!前座に名誉もくそもないがやろ!」

下田「ええか、この手のライブのトップバッター言うんは盛り上げ役として大きな役割を担っとるんや。
   それはつまり、若くて実力が備わっちゅう将来有望なもんがやるゆう事やでしかし」

村民C「そうながかえ」

村民A「わしらぁにはよう分からんぜよ」

下田「あんさんら、そないな事も知らんでよう野外フェスなんざやろう思いましたね」

村民A「そいは単なる思い付きじゃろ。なあ、代々木」

代々木「そいは違う。死んだ爺様がやれち言うたがじゃ」

村民B「ついにおまん頭おかしくなったがか?」

入山「そんで、オープニングアクトは誰がえいち思うがぜよ?」

下田「そうやな。こん中やったら、ファンがええと思うわ。まあ、相当贅沢な話やけども」

村民C「フアン?なにもんぜ?」

副村長「その不安ち言うもんらぁはそげに凄いもんながかえ?」

下田「せやで。2ndアルバムがバカ売れしとるし、グラミーも獲っちゅう。
   今、ノリに乗っちゅうバンドですわ」

村民A「全く知らんな」

村民B「初耳ぜよ」

村民C「ぐらみーちなんぜよ?」

下田「まあ、ええわ。ほんなら、オープニングアクトはファンで決まりっちゅうことで」

代々木「ちっくとえいですろうか?」

下田「どないかしましたか?」

代々木「わしは一番初めにオーケーさ出してくれたレディーガガさんに、
    名誉ある前座ばぁやってもらいたいがぜよ!」

村民A「なんじゃち!」

下田「レディーガガかぁ…。ポーカーフェイスなぁ」

高砂「まあ、それはそれでええかもしれまへんね」

下田「確かに、面白いかもしれへんな。よし、それで行こう!」

代々木「あとは…、下田さん、舞台についてなんやけど」

下田「ああ、そうやった。みんな聞いてください。ステージのデザインについてなんやけどもな」

村民A「ステージ?ああ、会場設営の話かえ?」

下田「そうです。それについて、これらの写真を見てもらいたいんやけど」

全員に資料を渡す高砂。

村民C「この写真はなんぜ?」

下田「1969年ウッドストックフェスティバルの写真ですわ」

村民B「1969年?そいは随分とまた古いのう」

代々木「そのウッドストック言うんは一体なんぜ?」

下田「愛と平和と音楽の三日間、平和と愛を祝うため祭りら言われゆう伝説の野外ライブ。
   3日間で40万人以上を動員しよった歴史的なイベントですわ」

村民A「三日で40万人じゃと!?」

村民B「全くもって意味が分からんぜよ!」

安藤「そいで、そのライブがこん村の音楽祭と何か関係があるがかえ?」

下田「実は、このウッドストックのステージをモチーフにした舞台を作ろうと思っとるんですわ」

村民C「こん舞台をかえ?」

下田「そうです。実はわいの夢だったんです。日本のウッドストック、
   それを作るんがわいの夢だったんですわ!」

村民A「そいは別に興味ないわ」

村民B「そげにえいがかえ、これ」

下田「何を言うてるんですか、めっさ格好ええやないですか」

村民C「わしらぁにはよう分からんぜよ」

村長「まあ、えいわ。プロの方がえいちゅうとるんじゃ。きっとそれがえいに決まっちょる。
   下田さん、それで進めてください」

下田「ほ、ほんまによろしいんですか!?」

村長「ええ、どうぞ。わしらぁには分かりませんよって」

下田「ほんにありがとうございます!ほんまおおきに!」

副村長「しかし、こんなデカいもん作って銭っ子ばぁ足りるがかえ?」

下田「それはまあ、そうですね…」

村長「おい安藤、今どれくらい借りられゆうがじゃ?」

安藤「今んところ、21百万じゃき」

村民A「おお、大金ぞね!」

村長「あまり伸びてこんな」

安藤「確証が無しにはこれ以上の融資は難しいかもしれんがぜよ」

村民B「どういう事ぞね?」

安藤「実際どれくらい客が入るか分からんきにのう。
   ちゃんと回収出来るか分からんもんには高額な融資は出来んゆう話ぜよ」

村民C「そうながかえ。ほんならどうすればえいがかえ?」

安藤「そうじゃのう。まずは3万人分のチケットさ完売すれば、反応は変わるかもしれんのう」

村民A「ほ、ほんまかえ!?」

村民B「しっかし、3万人分も売れるかのう?そげに人ばぁ来るとは思えんのやけど」

下田「いいや、来る。必ず完売しますわ」

安藤「そいなら大丈夫。建設費も引っ張り出せますろう」

村長「よし!そいなら話はついたぞね。各自作業に移りや」

村民A「はい。そんじゃわしらぁは電話対応じゃの」

代々木「これからどんどん忙しゅうなるのう」

副村長「下田さん、舞台設営については土建屋の藤吉と話してつかあさい。
    藤吉らぁ例の空き地で待機してるはずじゃき」

下田「そうですか。ほんなら会って来ますわ」

その2日後、村役場に隣町の町長が訪れてくるのであった。

副村長「そいで、チケットの売れ行きはどうながじゃ?」

下田「う~ん、まあ、まずまずってところやないでしょうか」

村民A「なんや、その感じ?売れてないんかえ?」

下田「いや、そんな事もないんですけどもね。あまり伸びてこんかったもんですから」

村民B「そいはどういてじゃ?」

下田「まあ簡単な話ですわ。わいらは宣伝っちゅうもんをほぼしてまへんからね」

高砂「宣伝したくても、宣伝費がほとんど無い状況ですからねぇ」

村民A「そいだらどうしたらえいがぜよ」

村民B「こん村で音楽祭をやりゆうことすら知らんのやったら、
    チケット買うどうこうの話にすらならんからのう」

高砂「ほんまやったら、テレビや雑誌、ラジオなんかで流してもらうんがいっちゃんええんやけど。
   まあ、そういった類のもんは金が掛かりますから」

下田「まあ、言うてもインターネット上で情報は流しとるんですけどね」

村民C「いんたーねっと?そいはなんぞね?」

代々木「知りもはん」

副村長「初耳ぞね」

下田「この人たちどないなってんの。何にも知らんやん」

高砂「完全に世間から孤立してますね」

村長「そいだら、完売は難しいっちゅうことかえ?」

下田「いやいや、完売はするでしょう。ただ、思ったよりも勢いがなかったので」

村民A「そいは仕方ないんじゃないろうか?こんな田舎ですき」

下田「何を言うとるんですか。あれだけの豪華ゲストで、チケ代はたったの4千円。
   3日通し券ならなんと1万円ですよ。こんなん普通なら有り得ない値段設定ですがな」

村民A「村長、こいはちっくと高すぎたんちゃいますか?」

村民B「そうですよ、1万なんてこん村の音楽祭で出すもんおらんがじゃろ」

安藤「この村のもんらぁほんにどうしよもないがぜよ」

下田「村長がどうしてもって言うからここまで下げましたけど、
   ほんま赤字スレスレの値段ですからね」

村長「わしらぁとしては、とにかくこん村にたくさんの人らぁが来てくれれば、そいは一番ですき」

代々木「そうじゃ!こん音楽祭はこん村の良さを世間様に知ってもらうための村おこしぜよ!」

下田「まあ、この村の方たちがそれで納得しとるんやったら、それでええんですわ」

副村長「しっかし、宣伝かぁ、何かえい手はないもんですろうか」

米川「おい、おまんら。一体、何を企んぢゅうがじゃ?」

副村長「よ、米川!おまん、ここで何をしゆう!?」

下田「ん?この方はどなたです?」

代々木「隣町の町長ですわ」

米川「なんや聞いたでおまんら。こん村で音楽祭をするそうじゃのう。
   しかもなんや、そいは大きゅう大きゅう祭りらしいのう!」

副村長「な!?どういておまんがそいを知っちゅうがかえ!?」

米川「隠したって無駄ぞね!わしらぁの情報収集能力を舐めん方がえいぞね!」

村民A「別に隠してないわ!」

村民B「そうじゃき!単に宣伝費が無かっただけじゃき!」

米川「なんや、海外から大勢歌手さんらぁが来るらしいのう?
   町のもんらぁが噂しちょったぞ?」

副村長「そいがどういた!おまんには関係ない話ぞね!」

米川「関係ない?ほんまにそうかえ?」

村民A「ど、どういう事ぜよ!」

米川「海外から大勢歌手さんらぁが来る大きゅう音楽祭。それにはきっと、たっくさんの客が来るじゃろうのう。
   そいで、こん音楽祭は3日間やる。お客さんらぁは当然、こん村に泊まるがぜよ」

村民B「そ、そいがどういたっちゅうがぜよ!」

村民C「話が見えん!もっと分かりやすく言いや!」

米川「簡単な話ぜよ。おまんらぁの村にはそれらぁの客を泊める施設がない」

村民A「な!?」

米川「何千人、何万人入るかは知らん。そいで、おまんらぁの村にはそいだけのもんらぁを
   泊めるだけの宿泊施設どうこうが無い。せやけど、わしの町にはある。ホテルや旅館があるがじゃ。
   ほうじゃき、わしらぁもこん音楽祭の計画に1枚噛ませや!」

村民B「なんでじゃ!」

村民C「そんなの嫌じゃき!」

代々木「そうぜよ!こん音楽祭は、こん村の村おこしのためにやるがやぞ!
    どういておまんらぁが絡んでくるがじゃ!」

米川「いいや、参加したいち言うちょるもんはわしらぁの町のもんだけではないぞね。
   わしらぁの隣町のもんらぁ、そん隣町のもんらぁ、そのまた隣、その隣となりのもんらぁ…。
   まあとにかく、こん計画に加わりたいち言うちょるもんらぁたくさんいるっちゅうことぜよ」

副村長「な、なんじゃち!?」

村民A「ど、どうします村長!?」

村民B「こいは断った方がえい!こいつらぁわしらぁの祭りのおこぼれにあずかりたいだけぜよ!」

村民C「そうじゃ!こいはわしらぁの祭りながじゃ!おまんらぁは帰りや!」

村長「まあ、おまんら、落ち着きや」

村長「下田さん、どう思いますかえ?」

下田「これはまあ、普通に考えて受けた方がええと思いますよ」

村民A「何を言うちょるんじゃ!」

村民B「こいはわしらぁの祭りなんじゃぞ!ばかかよ!」

下田「何万人という観客が押し寄せた時、必要になるもんはたくさんあります。
   先ほど、米川はんがおっしゃったように、宿泊施設が必要になります。
   いや、それだけやない。たくさんの飯処や駐車場なんかも必要です。
   とにかく、この手のイベントっちゅうのは助ける手が多ければ多いほどええんですわ。
   そういう事やさかい、ここは協力してもらった方がええんですわ」

村長「そういう事じゃき。今回は米川の提案を受けるがぜよ」

村民A「村長、ほんまにえいがですか!?」

村民B「こん音楽祭はこん村のための祭りぜよ!?」

入山「もうそんな事言ってられる場合ではないっちゅう事ぜよ」

安藤「すでにこん村の処理能力を完全に超えゆうからのう」

村長「おまんらぁも言ってたじゃろ?人手が全然足らんち」

村民C「まあ、それは言いよったけんど」

村長「そんならやっぱり手を組んだ方がえいがじゃ。
   その辺の協力もしてくれるんじゃろう、米川?」

米川「当然じゃ。人手は惜しまん。他の町のもんらぁにも話はつけちゅうがぜよ」

村長「よし、ほんなら決まりぜよ。米川、色々と頼むき」

米川「おう、任せときや」

村民A「まさか、隣町のもんらぁの手助けを借りんといけんとはなぁ」

村民B「わしは悔しいよ!」

入山「えい加減にしいやおまんら!いつまでもうだうだと」

安藤「そうぜよ。今は猫の手も借りたい状況ながじゃ。
   人の手を借りることが出来て良かったではないがかえ」

代々木「それだけこん祭りが大きいっちゅう事なんじゃろうのう。
    まあ、仕方ないぞね」

その4日後の会議にて

下田「ついにチケット3万人分が完売しました」

村民A「ほ、ほんまかえ!?こん村に3万人が押し掛けて来るがかえ!?」

村民B「まさか信じられん!ほんに完売するとは!」

下田「まあ、わいらの感覚からすると、やっと完売したんかって感じですがね」

高砂「場所が場所だったら数分で完売する内容ですからね」

村長「これが売れたとなると、融資の話も進めやすくなるんじゃないがかえ、安藤?」

安藤「そうですね、だいぶ違ってくると思いますき」

下田「ほんで、こっから更にチケットを7万枚発行して、計10万人分販売する予定です」

村民A「10万人じゃち!?」

村民B「そげに来るわけないろう!」

村民C「ついに頭おかしくなったがかえ!?」

下田「いやいや、これほどのメンツなら必ず埋まりますよって!
   ほんとにもう信じられんほどのスター揃いなんですから!」

村民A「いやぁ、信じられん。そげに凄い人たちとはなぁ」

村民B「全くもって実感がないぞね」

下田「とは言っても、宣伝なしに10万売るんは少々キツイか…」

安藤「融資が受けられれば、宣伝費も捻出出来ますろう」

下田「いやまあそうなんですがね。わいらとしてはこのフェスを国内外に大々的にPRしたいんです。
   まあ、そんな風に考えると金はいくらあっても足りんのですわ」

村民A「国内外って…、そんなに大きゅう扱う必要があるがかえ?」

村民B「そうじゃ、3万人が集まるがやぞ。もう充分ではないがかえ?」

下田「いやいや、何を言っとるんですか。このフェスは間違いなく世界中に注目されますよって。
   それやのにたった3万人しか来んかったとなれば、いい笑いもんですわ」

村民C「なんじゃち!?そいはいかん!」

副村長「そうですわ!こん音楽祭はこん村の村おこしのためにやるがですき、
    笑いもんになるらぁ絶対にいかんがですき!」

下田「まあ、そうでしょう。そうならんためにも大々的な宣伝が必要になるんですわ」

代々木「そげな事言ってものう。金がないき」

村長「まあ、宣伝の方法は後からじっくり考えるとして…、ああ、藤吉や、会場設営の方は進んでぢゅうがかえ?」

藤吉「舞台ん方はやっとこさ基礎工事を始めゆうところですき」

村長「本番までには間に合うがかえ?」

藤吉「今のペースでは間に合わんち思います。隣町のもんらぁも手伝ってくれてますけんど、
   そいでも人手が足りんがです。作るもんが多すぎるぜよ」

村民A「そげに作るもんらぁあったがかえ?」

藤吉「ああ。仮宿舎に楽屋、休憩場、大量の屋台に、大量の便所、その他諸々…」

村民B「便所じゃち?」

下田「ええ。たくさんの人が押し掛けた時問題になるんは、大体トイレとゴミですわ」

副村長「ああ、ゴミか。そういやこん村にも心配しゆうもんがおってのう。
    こん自然が汚されんではないかち言うて」

入山「それに騒音問題じゃ。ロックフェスなるもんはかなり大きい音さ出すち聞いたことが有るしのう」

下田「まあ、ゴミ問題については対策を考えてあります。騒音については、まあ、
   それが醍醐味みたいなところもありますんで、ご容赦いただきたい」

藤吉「まあとにかく、わしが言いたいんは、もっと人手を寄越してくれっちゅうそれだけじゃき」

村長「そうかえ、ほんなら米川にそう頼んでおくき」

下田「わいも募集を掛けておきますわ」

代々木「9月21日からか…、間に合うかのう」

藤吉「わしとしては、もうちっくと後の方が助かるんじゃがのう」

下田「それは分かっとるんですがね、アーティストさんらのスケジュールもありまして」

高砂「それに気候的にも、この21日からの3連休はベストタイミングなんですわ」

副村長「確かに、こん村さ10月に入ると雨がよう降るしのう」

入山「もう期間は1か月を切っちょる。時間が無いぞね」

副村長「ああ、全ての作業をもっと早くやらればいかんがじゃ」

下田「とにかく、今出来る事は全てやりましょう。それしかありまへんわ」

村民A「そうじゃの」

そん時、一人の女性が役場を訪れた。

斉藤「あの~、すいませ~ん」

副村長「ん?何か用ですかえ?」

斉藤「あ、私、高知県庁の工業振興課言う部署で働きゆう斉藤ち言います」

代々木「高知県庁!?」

副村長「県庁で働きゆうもんがどういてこんなところにいるがじゃ!?」

村民A「おまん、エリートか!?エリートながか!?」

村民B「わ、わしらぁはなんちゃあ悪い事らぁしてないがぜよ!」

村民C「そ、そうじゃ!わしらぁ所得隠しらぁしちゃせんき!」

斉藤「あ、皆さん、そう身構えないでくれませんがかえ」

村長「ええと、おまさんが働きゆう部署はなんち言うたがかの?」

斉藤「あ、工業振興課ですき」

村民A「こ、工業?」

村民B「そいはなんぜ?」

代々木「分かりもはん」

村民C「初耳ぜよ」

斉藤「あ、要するに高知を盛り上げよう!言う部署ですき」

村民A「そいは分かりやすい」

村民B「なるほどな」

下田「何がナルホドやねん。説明ざっくりすぎやろ」

入山「そんで、県庁の方がどういてここに?」

斉藤「あ、こん村でやる音楽祭について聞いたがです。
   高知県の歴史の中でも5本の指に入いりゆうビッグイベントらしいですね」

村民A「そうながかえ?」

村民B「そいはさすがに大げさすぎるじゃろ」

斉藤「とにかく、県庁はこんイベントに凄く注目してるがです。
   そういうわけで私が派遣されました」

村民C「なるほどな」

下田「何がなるほどやねん。どういうわけか全然分からんかったやろ」

斉藤「とにかく、全面的に協力せいち上司に言われゆうがです」

入山「つまり、あんさんは助っ人ながかえ?」

斉藤「そうですき。そして、県庁との橋渡し役でもありますき」

安藤「つまり、高知県庁がこん村の音楽祭を全面的にバックアップするゆうことですろか?」

斉藤「正確には、工業振興課が全面的にバックアップするゆう事ですき」

村民A「こいは喜んでもえいことなんですろうか?わしはよう分からんがぜよ」

斉藤「大いに喜んでもらって結構ですき」

村長「そんで斉藤さん、あんさんは何が出来る人ながじゃ?」

斉藤「あ、こんイベント出演者ぁは全員外人じゃち聞きました」

村長「そうやけんど、そいがどういた?」

副村長「いえ、一組だけ違いますき」

斉藤「ほんなら私を交渉役に使うてください。私、英語ペラじゃき」

副村長「おまん、英国人の言葉さ理解出来るがかえ!?」

斉藤「イエス。イエール大卒ですき」

村民A「いえーる?なんぜそれは?」

村民B「知らん。多分高知のどっかの大学じゃろ」

副村長「こいは便利じゃ!こんな人材を待ってたぞね!」

代々木「そうですのう!わしらぁのインチキ英会話らぁ無理がありましたきにのう!」

斉藤「そいじゃ早速始めましょう」

下田「ああ、そうや。斉藤はん、一つ聞いてもええですかね?」

斉藤「はいどうぞ。ひとつでもふたつでも」

下田「そんの工業振興課言うんはこういったイベントの宣伝活動はするんやろか?」

斉藤「いえ、しないと思いますき。そういった類のは観光振興部の仕事じゃろうと思いますけんど」

下田「だったら何で、観光振興部ではなくあんさんが派遣されよったんですか?」

斉藤「そいは簡単な事ですき。私は英語がペラで、そのうえ暇を持て余していたからですわ」

下田「何を言うてんねんあんた!」

入山「なんや、県庁が全面的に協力するっちゅうて送って来たんが若い女一人とはのう。
   全くよう分からんぜよ」

下田「ほんまですな。振興課言うぐらいやから、このフェスのPRにも協力してくれるかと思ったんですが」

斉藤「PRしますよ。観光振興部らぁが」

下田「え?」

斉藤「県庁はすでにこん音楽祭を国内外に大々的にPRする事を決定しましたき。
   そんための予算も組まれましたがですよって」

下田「それを先に言いや!」

高砂「つまり、宣伝費は県庁持ち?」

安藤「マジか」

斉藤「あ、それと観光会社と共同でツアーを企画しゆうそうです。
   あ、それと海運会社や航空会社にも協力を要請しゆうそうです」

下田「なんやなんや、次から次へと出てくるやんけ!」

代々木「なんだか、至れり尽くせりじゃな」

村民A「わしはもうなんだかよう分からんぜよ」

斉藤「その他にも必要があれば大体のもんは手配するち上司から言われゆうがです。
   そういう事じゃき、皆さん遠慮のう言ってつかあさい」

村民B「信じられん。こいはどういう事ぜ?」

村民C「どういてただの村おこしに県庁がこればぁしてくれるがじゃ」

代々木「ま、まあ、良かったではないかえ。助けてくれるもんがいっぱいおって」

副村長「そ、そうじゃの。あ、ありがたいことぜよ」

下田「まさかこんな事になるとは」

高砂「何がどうなってるやら」

藤吉「ああ、そうや。人手が足らんのじゃ。どうにかしてくれんかえ?」

斉藤「あ、人材派遣ですね。分かりました、手配しときますき」

代々木「優秀じゃの」

副村長「こいは優秀じゃき」

>>1やたら詳しいな
何者や

>>179
ただの音楽好きですわ

野外フェス開催日の10日前、村役場にて

下田「皆さんにええ知らせです。ようやくチケット10万人分が完売しましたわ」

村民A「そいはほんまかえ!?」

村民B「本当にこん村に10万人も来るがかえ!?」

下田「ええ。ほんまに来ますよって。ほんまどれもこれも県庁の宣伝のおかげですわ」

村民C「そうじゃのう。あれは良いCMぞね」

副村長「そうかえ?わしぁあんコマーシャルは好かんぞね」

代々木「どういてじゃ?高知県空前絶後の野外フェス!謳い文句としてはこれ以上ないじゃろ」

副村長「そいが気に食わんのじゃ。これではまるで県の手柄のようではないかえ。
    こん音楽祭は副島村のお祭りながじゃぞ」

代々木「まあ確かに、言われてみればそうじゃの」

入山「こいはそれだけ大きゅう祭り言う事ぜよ。わしらぁだけで独占してはもういかんじゃろう」

村長「そういう事じゃの。もはやこいはただの村おこしではないぞね」

斉藤「あ、そうですね。県の観光会社の連中らぁもこん祭りは高知を救うち大言ば吐いちょりましたわ」

村民A「そげな大事になっちゅうとはのう」

村民B「どういてそげな事になってしもうたんかのう」

下田「そしてですね、わいらは更に事前に5万枚のチケットと、
   当日券5万枚の計20万枚を販売することに決めたんですわ」

入山「20万じゃと!?」

安藤「そげにこん村に来るわけないぞね!」

村民C「ついに頭おかしくなったがか!?」

高砂「言うても、場所が場所だったら即日完売してもおかしないメンツですからね」

代々木「ほんまに売れるんかえ?チケットが余ってしまうんではないがかえ?」

下田「まあ、余ったところで困ることはないですしな」

斉藤「あ、逆に売り切れてしまうかもしれませんよ?」

村民A「ハハハ!おまん何を言うとるんじゃ!」

村民B「そうじゃ!ここをどこじゃち思っとるんじゃ!高知のド田舎!
    ほとんどゴーストタウンながじゃぞ!」

下田「まあ、そういう事でして、そんな感じで販売を進めようち思っとるんですが」

村長「うむ。そこら辺は下田さんに一任してますき。どうぞご随意に進めてくだされ」

高砂「あ、そうや、出演者がさらに増えたゆう話はどうなりました?」

村長「ああ、そうじゃった。ええと、更にじゃな、カニエウエスト、フーバスタンク
   リンキンパーク、トキオホテル、スラッシュの5組が出演をするち言ってくれたがじゃ」

代々木「ほんまありがたいぜよ」

副村長「そうじゃのう、素晴らしい人たちぜよ」

下田「次から次へとビッグネームが出るさかい、わいはもう驚かんくなってしもうたわ」

高砂「ええ、完全に麻痺してますね」

村長「こいで、出てくれるもんらぁ全部で26組になったがぜよ」

副村長「いいや、爆乳ヤンキーが出ますけん。27組じゃ」

村長「そうかえ、ほんなら残り3組じゃな」

入山「なあ、ちっくとえいですろうか?」

副村長「なんぜよ?」

入山「ほんまに、このメンツの中で爆乳ヤンキーを呼ぶつもりながかえ?」

副村長「何を言うちょるんじゃ。当たり前じゃろう」

村民A「そうぜよ!爆乳ヤンキーじゃち立派な歌手ぜよ!」

入山「はぁ、まあおまんらぁがそれでえいならえいけんども」

下田「まあとにかく、残り3組ですわ。もう時間がありませんから、
   早う残り3組を見つけんとあきまへん」

代々木「そうですのう。そん通りですわ」

村長「そんで藤吉よ、工事は進みゆうがかえ?」

藤吉「期日までには何とか間に合いそうです。斉藤さんのおかげで、
   人手がたくさん増えましたき。そんおかげで作業効率が一気に上がったんですわ」

村長「そうかえ、そいは良かった」

藤吉「しっかし、20万人来るち言うてたけんど、そげな人数
   あん空き地に入りきるじゃろうか?」

村長「う~ん、どうじゃろうのう」

代々木「夕陽ヶ原がいくら広いち言うても20万人ちなるとなぁ」

下田「まあ、入るんとちゃいますかねぇ。というても、
   わいは生で20万人もの人を見たことがないんですがね」

村民A「まあ、そげな事心配せんでも大丈夫じゃき。そればぁ人が集まる事は無いきにのう」

村民B「そうじゃそうじゃ!こん村の祭りに来たいゆう物好きはそう多くはないぞね!」

斉藤「あ、私の見立てでは25万は入りますき。詰めれば30万はイケますろう」

村民A「おまんは何を言いゆう?」

村民B「いえーるがなんぞおかしな事を言っちゅうがぞね」

村民C「まず、そげな大層な人数らここに来るわけないろう。ばかかよ」

村長「まあ、そいはえいがじゃ。とにかく時間がないき。
   急ぎつつ怪我のないように作業を進めるがぜよ」

村民A「おう、そうじゃ!そん通り!」

副村長「では、作業に移るぞね」

そん時、一人の中年の男が役場にやって来たがぜよ。

新庄「あん、ちっくとえいですろうか?」

副村長「ん?おまんは誰ぜ?」

新庄「あん、わしは高知市から来た新庄言うもんぞね。以後お見知りおきを」

副村長「はあ、そいで何か用かえ?」

村民A「観光かえ?ほんなら案内するけんど」

新庄「いや、観光ではないですき。わしは高知さんさんテレビのもんじゃき」

代々木「高知さんさんテレビ?」

村民A「そいはなんぞね?」

安藤「何てテレビ局じゃろ」

村民B「ああ、KSSかえ」

村民C「ああ、40chぜよ」

斉藤「え、アナログ?」

副村長「おまん、テレビ局のもんかえ?」

新庄「そうじゃき。営業部のもんじゃき」

代々木「そんな方がどういてここに?」

新庄「そいは簡単な事ですき。お願いがあってきましたき」

副村長「お願い?そいはなんぜよ」

新庄「こん村の音楽祭を我が社で中継させてつかあさい!お願いしますき!」

村民A「き、急になんぜよこいつ!」

村民B「いきなり土下座し出したぞね」

新庄「こん村の音楽祭ら高知でも前代未聞の祭りじゃち聞きましたき!
   チケット10万人分売ったっちゅう事も聞きましたき!」

下田「おお、耳が早いな」

新庄「そげなビッグイベント、観客だけで独占するんはいかん!いかんぜよ!
   わしは、こん高知のみんなぁにそん音楽祭を楽しんでもらいたいがです!
   そんために、こん音楽祭の様子を3日間!生中継するための許可もらいたいがです!
   どうか、どうかお願いしますき!」

村民A「こん村の音楽祭が高知中に流れるんかえ…?」

新庄「そん通りですがじゃ!」

村民B「生中継じゃと…?」

新庄「そうじゃ!LIVEぜよ!」

副村長「しかも3日間…」

新庄「そうですき!最初から最後までまるっと放送するがじゃ!」

代々木「こ、こいは…スゴイ話なんではないがかえ…?」

入山「ああ…。こん村をPRするんにはこれ以上ないぞね…」

下田「し、信じられん…。こんなド田舎の祭りが生中継されるなんて」

高砂「ええ、もう完全にわいらの予測の外の話ですわ」

新庄「どうか!どうかお願いしますき!もし断られたら、わしのクビが飛びますき!
   どうか!イエスと言ってもらえませんろうか!」

村民A「クビが飛ぶじゃち!?」

村民B「そいは可哀想ぜよ!」

斉藤「あれは嘘ですき!あれは泣き落とし言う営業のテクニックぞね!」

新庄「おい、そこの女!余計な事を言いなや!」

村長「まあ、新城さん。どうか頭を上げてつかあさい」

新庄「はい、上げます!」

村長「そげに頼まんでも、こげにえい話、わしらぁが断る訳ないぞね」

新庄「ほ、ほんなら、生中継してもえいがかえ!?」

村長「もちろんですき。喜んでお頼み申しますがじゃ」

新庄「ほ、ほんますか!?や、やった!ありがとうございます!
   本当にありがとうございますき!」

副村長「いやいや、感謝せにゃならんのはわしらぁの方ぞね」

代々木「そうぜよ。こん村の祭りが高知中に見てもらえるらぁ、願ったり叶ったりぞね」

新庄「こいは本当にありがたい!今すぐ会社に戻って上司にこん事を伝えに行きますき!
   いやぁありがたい!こいで首の皮が1枚繋がったぜよ!ハハハ!」

村民A「いやぁクビにならずに済んで良かったのう」

村民B「そうじゃのう。良かった良かった」

新庄「ええ、良かったですがじゃ!」

斉藤「この人絶対ウソついてますき」

新庄「おい、そこの女!つまらんことを言いなや!」

新庄「ほんじゃ、お先に失礼しますき!」

副村長「おう、お気をつけて」

新庄は飛び去るように副島村を出て行った。

安藤「何だか、威勢のいい男じゃったのう」

入山「そうじゃのう」

代々木「しっかし生放送かぁ。高知中にこん音楽祭を見てもらえるち思うと
    わしぁわくわくするぜよ!」

村民A「おう、そいはわしもじゃ!」

村民B「いかん!わしぁえらく緊張してきたがぜよ!」

村長「ほんに楽しみじゃのう」

開催日3日前、村役場

村長「あと3日じゃ」

村民A「マジか」

村民B「いかん!わしぁ緊張してきたぞね!」

村民C「一体どればぁの人が来るがじゃろうなぁ」

斉藤「当日はかなりの混雑が予想されちょるそうで、
   高知県警が交通整理に協力してくれるそうですき」

村民A「警察が?」

代々木「いつの間にそんな話が」

下田「まあ、それでも渋滞等は避けられんでしょうな」

高砂「とにかく人が仰山来ますからね」

下田「ああ、そうや。斉藤はん、医療関係者の協力要請はどうなってますか?」

斉藤「あ、すでに取り付けてありますわ」

下田「さすが仕事が早い」

斉藤「そいはどうも」

村民A「ん?どういて医者が出てくるんや?」

下田「この手の祭りには大勢の人たちが詰めかけますよって、ほんならおしくらまんじゅうで
   怪我人が出たりするんですわ。そうなった場合に備えて、
   事前にお医者さんらに協力を頼んでおいたっちゅう訳ですわ」

村民B「そうだったがですか」

副村長「折角の楽しい祭りで怪我人が出るらぁいかんぜよ」

下田「その通りですな。そのためにも我々運営が、お客さんらに落ち着いた行動をしてもらうよう
   促していく必要がありますねや」

高砂「怪我人っちゅうのは大体、群衆が盛り上がりすぎたり、興奮状態にあったりで、
   一種の集団ヒステリーやパニック状態なった時に出るもんですから」

村民A「そういうもんかえ」

代々木「ほんなら、わしらぁが協力してやらんといかんの」

村長「そんで、チケットの売れ行きはどうぜよ」

下田「そうですな、事前販売分の15万枚は今日明日中には完売しそうですわ」

村長「そうかえ、そいは良かった」

下田「3日間で15万枚。そして当日券5万枚ですから、初日の分は10万人分用意した事になります」

入山「改めて聞くと、えらい数字じゃのう」

安藤「こん村に10万も来るとは未だに信じられんわ」

代々木「あれ、20万人らぁ一同に会すわけではないがかえ?」

下田「ああ、分かりにくい説明をしてしまって偉うすいまへんなぁ。
   わいらが販売したんは今んところ3日で20万枚分ですねん。つまり、
   実際に初日に来るんは、10万人よりも少ない数になるいう事ですわ」

副村長「初日の分の当日券さ用意したち言うちょったけんど、
    そいは2日目、最終日分とまた別個で販売するち言う事なんやろか?」

下田「ええ、その通りですわ」

入山「3日で20万人以上かぁ、こいは凄い事ぜよ」

村民A「そうじゃのう、ほんま凄いぜよ」

下田「いえ、実際来るんは少なくとも20万ですわ。実際はそれ以上に来るでしょう」

安藤「ほんま信じられんわ」

高砂「そんであとは…、あ、そうや、出演者の方はどうなりました?
   残り3組見つかりましたかね?」

村長「ああ、そうじゃった。見つけましたがよって、残る3組が」

下田「そうでっか、それは良かった。そんで、誰ですか?」

村長「ええと、エルトンジョン、レッドホットチリペッパーズ、ピンクフロイド
   なるもんらぁですわ」

下田「それはまた凄い!」

高砂「なんでこんなド田舎にそんな凄いアーティスたちが集まって来るのか
   全くもって意味が分かりませんわ」

代々木「そんなに凄い人達ながかえ」

村民A「さあなぁ?全く分からんぜよ」

村民B「わしらぁ見事に全員知らんがぜよ」

村民C「わしぁウィルスミス言うもんだけはギリギリ分かるがぜよ」

村長「こいで出演者、やっと全29組が決まったがですき」

副村長「いや、爆乳ヤンキーおりますき。全30組じゃ」

代々木「こん村の音楽祭のためにそげにたくさんの歌手さんらぁが来て下さるとはのう。
    わしぁもう涙が出るぜよ!」

村民A「ほんまじゃのう、ほんにありがたいぜよ!」

下田「まあ、兎にも角にもこれでやっと本格的にタイムテーブルが組めますわ」

高砂「これだけのメンツとなると出演順を決めるだけで一苦労ですなぁ」

村長「まあ、難しい事は下田さんらぁに任せるとして、おまんら何か伝えておくべき事はあるかえ?」

代々木「あ、そうじゃ。一つえいですろうか?」

村長「おう、どういた?言ってみ」

代々木「はい。昨日、藤テレビ言うもんらぁから電話がありましてな」

副村長「ふじてれび?」

村民A「そいはなんぞね」

村民B「どっかのテレビ局ではなかか?」

村民C「わしゃそんなテレビ局らぁ知らんぞね」

副村長「高知のテレビ局ではなさそうじゃの」

村民A「富士言うくらいじゃし、静岡のテレビ局ではないかがえ?」

村民B「そいは分からんぞ。山梨かもしれんがじゃ」

村長「そんでそのもんらぁがどういたがじゃ?」

代々木「はい。そんでそのもんらぁは、こん村の音楽祭の様子らぁ、
    藤テレビツー言うチャンネルで流したいち、そいの放映権ら売ってほしいち
    言うちょりました」

村長「ほう、そいでおまん、どういた?」

代々木「はい。ええとですね、わしぁそのもんが何の事を言うちょるかよう分からんくてですね。
    そん話、その場のノリでオーケーしてしまったがです」

村長「そうかえ」

下田「いや、そうかえちゃいますよ!なんでそんな大事な契約、その場のノリで承諾しとんのですか!」

代々木「あら、いかんかったがですろうか?」

下田「いや、いかんくはない!いかんくはないけども」

高砂「そういう契約の話でしたら、私共に相談してからの方がええと思いますよって」

下田「そうですよ。気の悪いもんに騙されでもしたらどないするんですか?」

代々木「確かにそいはそうですのう」

村民A「まあ、仕方ないわ、代々木」

村民B「そうじゃ、そんな騙すようなもんらぁコン村にはおらんしにのう」

下田「全くこの村の人たちは」

高砂「無知ゆえに怖いもの知らずっちゅうわけですな」

副村長「ほんなら、わしもえいかえ?」

村長「おう、なんじゃ?」

副村長「実は今朝方、いーえむあいなんちゃら言うもんから電話があっての」

村民A「いーえむあい?それはなんぜ?」

代々木「知りもはん」

下田「もしかしてそれって、EMIミュージック・ジャパンの事ですか!?」

副村長「ああ、それじゃそれ!んで、そのもんらぁから電話が来て、なにやらこん村の音楽祭を
    でーぶいでーなるもんに収めて販売したいち、契約せんかと言うてきたじゃ。
    しかしじゃな、わしぁその、でーぶいーでーなるもんが一体何なのか分からんくてのう。
    まあとにかく結論を言うと、その場でオーケーしてしまったがですがじゃ」

下田「だからそんな大事な契約、軽いノリで承諾せんといてくださいよ!」

副村長「やっぱりいかんかったがかえ?」

下田「いや、いかんくない!いかんくはないけどもやな!」

下田「もうとにかくそういう契約の話は、まずはわいらに言ってくださいよ」

高砂「そうですよ、あんさんら軽すぎますよって」

副村長「そげな事言われてもなぁ」

代々木「以後気を付けますき!」

下田「しっかし、フジにEMIの契約とはなぁ。一体どうやってるんや」

高砂「まあ、メンツがメンツですから。そういう事もありますわ」

村長「ええとおまんら、他に何か話はあるかえ?」

代々木「特にないですがじゃ」

村長「よし、そんなら今日の会議はお開きじゃの」

そこに3人の若い男が現れた。

音楽通A「あの、すいません。ここって副島村で合ってますか?」

村長「ああ、そうじゃけんど」

音楽通B「ああ、そうか!良かったぁ!」

音楽通C「いやいや、なかなか遠かったなぁ!」

副村長「なんじゃおまんら、観光客かえ?」

音楽通A「はい、そうです!セッティングサンロックフェスティバルを見に来たんです!」

副村長「せ、せっちんぐ?」

村民A「そいはなんぜ?」

代々木「知りもはん」

下田「いやいや、なんで知らんのですか!セッティングサンロックフェスティバル言うんは
   こん村の音楽祭の名称やないですか!」

村民A「え、そうだっけ?」

代々木「そんな話したっけか?」

下田「いやいや、したもなにもチケットにそう書いてるやないですか!」

代々木「あ、ほんとじゃ」

村民B「全然気づかんかったわ」

下田「こん人らどんだけボケ倒す気やねん」

高砂「何かもうわざとやってんじゃないかと疑いたくなりますね」

村長「しかしおまんら、ちっくと来るのが早すぎはしないがかえ?」

副村長「そうじゃ。音楽祭はまだ3日も先ぞね」

音楽通A「いいや、これでいいんです!」

音楽通B「早めに来ないと良い場所が先に取られてしまいますから!」

村長「そういうもんかえ」

音楽通C「そうは言ってもやっぱり暇だよな。どっか探索しに行くか?」

音楽通A「そうだな。それもいいけど、ああ、そうだ!何か僕らに手伝える事ありませんかね?」

代々木「手伝う?何をじゃ?」

音楽通B「僕ら時間持て余してますし、何かやる事あるんだったら手伝いますよ!」

副村長「そんな、わざわざ来て頂いたお客様に手伝うてもらうことらぁないぜよ」

村民A「そうじゃ!お客様らぁ神様ぜよ!お客様らぁゆっくりしとったらえいがじゃ!」

斉藤「あ、そんなに暇ならちっくと昼飯買ってきてはくれませんろうか?」

村民B「おい、いえーる!おまんは何を言いゆう!?」

下田「ああ、そうや!そんならボランティアをしてみませんか?」

代々木「ぼらんてぃあ?そいはなんぜ?」

下田「ゴミ拾いや、ゴミの分別等を手伝うてくれるボランティアスタッフをホームページや
   ツイッターで募集しとったんですがね。いやぁ、これがなかなか集まらんくて」

代々木「そんな呼びかけしとったんか。全然知らんかったがじゃ」

村民A「ていうか、ホームページじゃのツイッターじゃのっちゅうのは一体何なんぜよ!?」

村民B「全く分からん。異次元の話ながじゃ」

下田「どうです、やってみまへんか?いい暇潰しになると思いますけんど」

音楽通A「どうする?やるか?」

音楽通B「いいんじゃね、ゴミ拾いとかなら野外フェスでよくやってるし」

音楽通C「よし、やろうぜ!どうせ俺ら暇だしよ!」

下田「そうでっか!ほんま助かります!ほんまおおきに!」

音楽通A「そうだ。フェイスブックで他の奴等にも呼び掛けてみようぜ」

音楽通B「じゃあ、僕はラインで頼んでみるよ」

音楽通C「じゃあ、俺はグーグルプラスで拡散するわ」

村民A「こいつら一体何を言ってるんじゃ?」

代々木「全く分かりもはん」

副村長「ニューエイジじゃのう」

音楽祭前夜

村長「それでどげな具合よ?」

村民A「どげな具合とは?」

村長「いや、だから、もう明日音楽祭やる訳じゃけれども、どんな感じなんじゃち聞いちょるんじゃ」

村民B「どんな感じじゃち聞かれましても」

村民C「質問が漠然としていて何が知りたいんか、要点を得ませんぞね」

村長「いや、だからね、客の入り具合とか、準備の進み具合とかどうなんじゃち聞いちょるんじゃ」

村民A「ああ、そういう事ですかえ」

村民B「そんならそうと始めからそげに質問してくださいよ」

村長「なんじゃおまんら、そん態度は!なぁんか気ぃ悪いぞね!」

村民A「いいや、わしらぁいつも通りですき!」

村民B「変なんは村長の方じゃ!」

村長「なんじゃと!」

入山「まあ、落ち着いて下さいよ」

代々木「そうぜよ。こんな時にケンカしてる場合ですがかえ?」

下田「みんな、さすがにピリピリしてますな」

高砂「ええ、私ももう緊張してますわ」

入山「いよいよ明日ですからねぇ」

安藤「お客さんらぁすでに入りゆうがからのう」

副村長「今、どれぐらい来てるんじゃろうのう」

下田「おそらく5千以上は来とるかもしれませんわ」

代々木「5千じゃち!?」

村民A「もうそげに来てるがかえ!?」

村民B「村の全盛期の頃の2倍以上ぜよ!」

村民C「ほんまに来るとは信じられん!」

下田「いやいや、まだまだ序の口ですよって」

高砂「ええ、こっからどんどん来ますわ」

斉藤「あ、そのようですね。こん村に向けて観光客がうようよと湧いて来ちゅうち、
   龍馬空港の方から報告がありましたき」

副村長「そん観光客らぁどうやってこん村に来るんじゃろうのう?」

代々木「そいはやはりタクシーですろう」

斉藤「あ、会場までのシャトルバスが出ゆうがです」

村民A「シャトルバス?」

斉藤「しかもチケットを持ちゆう客は無料で利用できるがです」

代々木「そいはすごい!」

入山「太っ腹じゃのう!」

下田「手配したんは県庁ですよって。ほんま県庁様様ですわ」

村長「そういえば、下田さん。すでにグッズらぁの販売を始めゆうそうじゃのう」

下田「ええ、結構お客さんらが入ってますからね。もうすでにぼちぼち売れゆうそうですわ」

村長「そうながかえ」

下田「そうや、村長はんらももう屋台の準備を始めた方がええんとちゃいますか?」

村長「そうじゃの。村のもんらぁに伝えておきますき」

入山「屋台はどれぐらい集まっちゅうがかえ?」

副村長「100以上やそうじゃ」

入山「そ、そんなに!?」

副村長「隣町のもんらぁが偉く張り切っておっての」

村長「そういえば、ホテルや旅館の予約の電話が鳴りやまんち言うて、
   米川が今までに見た事もないほど喜んでおったがぜよ」

村民A「そいはそうじゃろうのう」

村民B「こればぁ大勢の人が来るらぁ今まで無い事じゃったからのう」

入山「そうじゃ、すでに何名か歌手さんらぁも到着しちゅうと聞いたけんど」

下田「ええ。すでに初日出演予定のジョシュグローバン、ファン、ジャスティンビーバーが到着してますわ」

入山「そうかえ。ほんとに来てくれたんかえ」

安藤「信じられんなぁ。わしぁ今でもドッキリじゃち思っちゅうからのう」

代々木「いいえ、本当に来てくれたがです!わしぁジャスティンビーバーなるもんを直接、
    隣村のホテルのスイートルームに案内しましたきにのう!」

村民A「そいはほんまかえ!」

村民B「何か言うちょったかえ?」

代々木「ええ!副島村さ来れて光栄じゃち!セイビングフクシマじゃち!言うてくれたがです!」

村民C「なんてえい人ながじゃ!」

副村長「ほんまじゃのう」

代々木「ええもう!わしぁそれを聞いた時、もう涙が出そうやったがですき!」

入山「しっかし、どうしてそこまで言ってくれるんかのう。
   わしには全然分からんがぜよ」

副村長「ほんまじゃのう」

斉藤「あ、それってあれじゃないですかね?」

安藤「あ、そうじゃ。今日来る出演者さんらぁは初日に出るもんらぁだけかえ?」

下田「ええ、そうです。ホテルの空きもそう多くないようですから、
   入れ替わりで出演者さんらが来る事になります」

代々木「ああ、そうじゃ、トップバッターのガガ姐さんはまだ来ないがかえ?
    わしぁ早うあのお方に感謝の言葉さ述べてぇんじゃけんどのう」

斉藤「あ、レディーガガさんは今、飛行機に乗って日本に向かいゆうそうです」

下田「お、代理人さんに聞いておいてくれたんでっか?仕事が早いですなぁ」

斉藤「あ、いえ。グーグルプラスにそんなような事が書いてあったので」

下田「ああ、そうでっか」

代々木「そうかぁ、はよ挨拶したいのう」

副村長「そうじゃのう。ガガ姐さんには最初にオーケーさくれた恩義があるからのう」

代々木「ええ、そうですき」

村長「そんじゃ、今日の会議はこの辺でえいかの?」

下田「ああ、最後にひとつだけ」

村長「ええ、どうぞ」

下田「トイレの掃除だけはこまめにお願いします」

代々木「え、便所?」

下田「はい。当日、トイレは大変混み合います。そうなるとすぐ汚れるんですわ。海外からのお客さんもたくさん来ますし。
   まあとにかく、この手のイベントではトイレが綺麗っちゅうだけで偉い喜ばれたりしますんで、
   まめなトイレ掃除だけお願いします」

代々木「は、はあ、そういうもんですかえ」

下田「ええ、そういうもんです」

斉藤「最後にトイレの話とはいかがなもんでしょうか」

高砂「そうですよ。明日いよいよ本番なんですから、何か激励みたいな事を言った方がええんとちゃいますか?」

下田「それもそうやな。そうやのう、ええと、ほんなら聞いてください。ええ、皆さんはこれほど大きいイベントを
   やった事がないわけですから、もしかしたら失敗してしまうかもしれません。私もそうです。
   これほどのビッグイベントを仕切った事は一度もありません。せやから予定外の事が起きたり、
   怪我人が出たり、機材が故障したりして、失敗してしまうかもしれません」

下田「ですが、そんなんはどうでもええ。何故ならええライブ言うんは必ずしも予定通りに事が運ぶ、
   という事ではないからです。ハプニングもまたライブの醍醐味。楽しい思い出になるライブこそが
   ええライブです。ですから、この祭りを企画したこの村の皆さんにも是非、このライブを楽しんでいってほしい。
   まず自分らが楽しまないと、お客さんたちだって楽しめませんから」

代々木「そいは確かにそうじゃのう」

村民A「一理ある」

村民B「ライブってなんぜ?」

下田「まあ、要するにあれですわ。皆さん、いい思い出を作りましょう!」

代々木「おう、そうじゃのう!」

副村長「よっしゃ!やったるわ!」

村民A「よし!やるぜよ!」

高砂「何とかウマくまとめましたね」

下田「あれでまとまったんかな?あれで良かったんかな?もっと何か気の利いたこと言った方が
   良かったんちゃうかな?」

高砂「え、まあ、あれでええちゃいますか?」

下田「そうなんかなぁ、いやぁ、ほんまああいうの苦手やわぁ。もう2度とやりたくないわぁ」

高砂「しっかりしてくださいよ、あんた社長でしょう!」

下田「そんなん言われてもなぁ、わいはスピーチしたくて社長やってるわけやあらへんし」

音楽祭初日

村民A「いかん!胃が痛くなっていたがじゃ!」

村民B「わしは心臓がバクバク言いゆうがぜよ!」

下田「まずい…、まずいで…」

入山「今、どれぐらい来てるんや?」

高砂「受付スタッフの話ですともうすでに5万人以上来とるようです」

代々木「5万!?もうそんなに来てるがかえ!?」

高砂「ええ、続々と来とるようで、客足が止まらんと言うとりましたわ」

村民C「確かに凄い数が来ちょったがぜよ」

安藤「あれで5万かえ…」

下田「まずいなぁ…」

村民A「屋台の方もかなり客が来とるらしいぞね」

高砂「ええ、グッズ販売の方もかなり順調やそうですわ」

斉藤「あ、龍馬空港の方からも、かつてないほどの大群が来ちゅうと報告が入っとったがです」

高砂「大群て」

代々木「そうなると、道も渋滞しちゅうがかのう」

斉藤「あ、そのようですね。はんぱないラッシュアワーだそうですき」

入山「はんぱないんかえ」

下田「まずい…ほんままずいわ…」

高砂「さっきからどないしたんですか、下田さん?」

代々木「そうぞね、さっきからぶつぶつと」

村民A「お腹が痛いがかえ?」

下田「ちゃう!お腹は痛ないねん!」

副村長「ほんならどういたがぜよ?」

下田「どういたって…、なんであんさんら気付いてないんでっか!
   まだレディーガガさんが到着してへんでしょ!」

村民A「え!?」

村民B「マジか!」

副村長「全然気づかんかったぜよ」

村長「今、会場に向かっとるんではないがかえ?」

斉藤「あ、空港に着いたち報告が入っていませんき、おそらくまだ高知にすら来てないぞね」

村民A「なんじゃと!」

代々木「どういう事ぜよ!確か、昨日はもうすでに飛行機でこっちに向かいゆう話でしたろ!」

斉藤「そのはずなんですけどね」

代々木「ガガ姐さんの出番まであと何時間ぜよ!?」

高砂「あと1時間もありまへん」

副村長「そらいかん!いかんぜよ!」

下田「予定しとったリハーサルも出来へんし、何なら本番まで間に合うんかどうかも…」

高砂「何せ、レディーガガさんにはオープニングアクトを頼んでますからねぇ」

斉藤「あ、それなら直接電話で聞いてみればえいですろう。
   ほんなら私、ちっくと掛けてみますよって」

斉藤「(もしもし?あ、私、副島村の祭りの実行委員のもんですけんど…)」

下田「まずい…、まずいのう…」

高砂「一体どこにおるんや?」

村民A「まさかキャンセルでねえかえ?」

代々木「バカな!そんな訳ないじゃろ!バカか!」

村民B「渋滞に巻き込まれてるんでねえかえ?」

入山「さっき高知にすら来てんち言っちょったじゃろ」

斉藤「(なんですって!?)」

代々木「どういた!?」

下田「何かあったんか!?」

斉藤「(あ、ちっくと待ってつかあさい)」

村民A「なにがあったんじゃ!?」

斉藤「なんとガガ姐さん、東北に向かいゆうそうです!」

副村長「なんじゃと!?」

村民A「どういて東北なんぞに!?」

村民B「まるで逆方向でねえかえ!」

代々木「どういてじゃ!わしぁ確かにファックスで地図を送りゆうがやぞ!」

斉藤「あ、こいは多分あれですよ」

安藤「あ、きっとレディーガガ言うお方は余程の道おんちなんですろうのう」

副村長「あ、なるほどのう」

村民A「確かにそれなら合点がいくぞね!」

村民B「まあ、日本に来るんも初めてじゃかろうのう」

下田「ま、まあ、とにかく!今すぐこっちに向かってもらうよう伝えてください!」

斉藤「あ、了解ですき」

副村長「しっかし、東北とはのう」

代々木「わしの書いた地図が分かりにくかったんかのう」

村民A「きっとそうじゃ」

村民B「そうぜよ!反省しいや!」

高砂「これで、ガガさんが間に合わん事は確定しましたな」

下田「そうやのう。なんとか今日のライブに間に合ってくれればっちゅうところやな」

代々木「そいでどうする?名誉あるオープニングアクターがおらんくなってしまったがぜよ」

高砂「そうですね。これなら最初のプラン通り、ファンにオープニングアクトをやってもらうしかないのでは?」

下田「まあ、それしかないやろ。出演順を一つずつずらして、ガガさんが到着したところでそこに入ってもらう。
   まあ、これしかないわ」

高砂「ほんなら、準備してきますわ」

下田「ああ、頼むわ。しっかし、初っ端からトラブルとはいよいよ先が思いやられるわ」

代々木「下田さん、わしらはどうしましょうか?」

下田「ああ、皆さんは計画通りに行動してもらって結構です。この問題はこっちでやっておきますので」

代々木「そうかえ。ほんだら頼みますき」

5時間後、レディーガガ来ず

下田「全然来えへんやん!どないなっとんねん!」

斉藤「渋滞にド嵌りしゆうそうですき。残念」

下田「早く来てくれ!頼む!早く来てください!」

斉藤「あ、そんな事私に言われましても」

高砂「大変や!」

下田「なんや今度は!」

高砂「社長!大変なんですわ!」

下田「はよ内容を言いや!」

高砂「はい!信じられん事に、当日券が売り切れてしまったですわ!」

下田「なに!?な、なんでや!なんでやねん!」

高砂「いや、なんでって聞かれましても」

代々木「当日券は5万人分あったはずじゃろ」

村民A「そうじゃのう」

入山「そん当日券が売り切れたっちゅう事は…」

高砂「すでに10万人以上がこの村に来とるっちゅう事ですわ」

副村長「な、なんじゃち!?」

代々木「10万以上じゃと!?」

藤吉「わしもさっき会場を見て来たがじゃ!ありゃスゴイ!もう人!人!人!ぜよ!」

高砂「社長、チケットどうします?」

下田「どうするもこうするもないわ!だってもうチケット持ってないもん!」

村長「予備も無いがかえ?」

下田「ありまへん。5万人分で全部ですわ」

代々木「じゃあ、どうするがぜよ?」

斉藤「あ、そうだ。増刷すればえいがですよ」

下田「そんなんあと数時間で出来るようなもんやあらしまへんわ」

代々木「じゃあ、どうするがぜよ!」

下田「今んとこどうしようもありまへんわ」

村民A「マジか」

高砂「まさか、ほんまに10万人も来るとは思いませんでしたからなぁ」

下田「ほんまそうやねん!こんな田舎!こんなクッソド田舎に10万人も来るなんて誰が予測出来るよ!?
   もうそんなん絶対無理やん!」

代々木「えらい言われようじゃ」

副村長「まあ、ほぼほぼ事実じゃき」

下田「いや!皆さんには謝ります!ほんまえろうすんまへん!全て私が悪うございました!
   かくなる上は腹を切ってお詫びしたいと思います!」

村民A「腹を切るじゃち!?」

代々木「いかん!それはいかんぞね!」

村長「まあ、そこまで謝らんくてもえいですき。失敗する事は誰にでもありますよって」

下田「しかし、わいは!」

代々木「まあ、えいではないですろうか。謝るんは後にして、今はどうするかを考えましょうや」

下田「それは確かにそうですね」

斉藤「まあ、腹を切るのはえいとして、浮いた客らぁをどうするかですね」

高砂「ええ、受付スタッフの話では、入れてくれ言うて仰山お客さんらが
   押しかけて来とるそうですわ」

村民A「そいは困ったのう」

代々木「ああ。入れてくれち言われても、もうチケットは完売しちゅうがやき。
    どうすることも出来ないぞね!」

副村長「そうじゃのう。わしらぁにもどうする事も出来ないぞね」

村長「まあ、簡単な話ではないかえ」

代々木「簡単な話?」

下田「そうですやろか?」

村長「そうです、簡単な話ですよって。わしらぁはもう売れるもんが無い。
   しかし、お客さんらぁは観たいち言うて来てくれゆう。
   ほんなら入れてあげればえいだけです。無料で」

代々木「な、なんじゃと!?」

副村長「無料じゃち!?」

村民A「ただで観させるっちゅうんか!?本気かえ!?」

村民B「ついに耄碌し出したか!じじいめが!」

下田「いや、村長さん、さすがにそれはあきまへんよ」

村長「本当にそうですろうか?皆のもん、よく考えてみいや。こん祭りの最大の目的はなんぜよ?」

村民A「最大の目的じゃと?」

代々木「それはあれじゃ。村おこしぜよ」

村長「そうじゃ。そん通りぜよ。あくまでもこん祭りの目的は、副島村を再興、復興させる事ぜよ。
   決して金儲けが目的ではないがじゃ」

村長「わしらぁはたくさんの人たちにこん村さ来てもらいたかった。
   そして、こん音楽祭のおかげでほんにたくさんのもんらぁが来てくれたがぜよ。
   という事は、わしらぁの目的はすでに達成されとるっちゅうことじゃ」

代々木「なるほど」

副村長「一理あるぜよ」

村長「それにあくまでも、チケットを用意出来んかったのはこちら側のミスじゃ。
   お客さんらぁに何の落ち度もないぞね。それなのにわしらぁのミスでお客さんらぁが入れんち言うんは、
   やっぱりおかしい。という事はやはり、来てくれたお客さんらぁを無料で歓迎するは正しいっちゅう事になります」

村民A「なんかすげえぞ、このじじい」

村民B「ただの耄碌じじいではなかったがかえ」

下田「ほんまにええんですか、村長さん?」

村長「もちろんですき。こん祭りはみんなぁで楽しむがです」

下田「そうですか…。ほんなら、みんなで楽しみましょう。高砂、頼むわ」

高砂「はい、すぐに取り掛かります!」

斉藤「しかしいいんですか~?そんな事したら、チケット買ったもんらぁは気に食わんでしょう」

村長「そうじゃのう。そん通りじゃ。今回の事はわしらのミスじゃき。それはもうわしらぁが謝るしかないことぜよ。
   誠意を込めて謝れば、きっと分かって下さるはずじゃ」

斉藤「そうですかのう。そんなもんですかのう」

副村長「そういうもんぜよ」

代々木「というよりも、それ以上の解決方法はわしらぁには思いつかんき」

それから3時間ほど後の事。ステージ上でPink FloydがWish you were hereを演奏していた時。
日が沈みかけ、辺りが紅く染まっていた頃。ようやく、レディーガガが到着するのであった。

高砂「社長!ついに来ました!レディーガガ、到着!」

下田「来たか!」

代々木「ほんまかえ!」

副村長「来て下さったか!」

下田「よし!出迎えに行くで!」

会場控室前に躍り出た代々木たち。

代々木「ガガ姐さんはどこぜ!?」

副村長「どれがガガ姐さんなんじゃ!?」

村民A「分からん!実物を見たことがないきにのう!」

斉藤「あ、あれがそうです」

斉藤女史が指差した方向にガガがいた。

代々木「あ、あれかえ?」

副村長「あれなんかえ?」

村民A「あれ、思ってたんとちゃう」

村民B「ほんまにあれなんかえ?」

斉藤「はい。あれがそうです。グーグルプラスに写真が載ってましたき」

村民A「マジか」

代々木「斬新じゃ。斬新なファッションじゃ」

副村長「世界ではあれが流行ってんのかえ?」

村民B「はんぱねえ」

村民C「クールじゃのう」

下田「ほな、挨拶に行きましょか?」

副村長「え、行くん?」

村民A「わしらぁちっくと怖いぞね」

村民B「わしらぁはパスしますがじゃ」

下田「ここに来て何をビビっとるんですか?」

村民C「オーラに気圧されとるんじゃ!」

代々木「まあ、ええわ。わしは行くぞね」

恐る恐る近づく代々木。

代々木「ハロー!ガガ!ウェルカムホームタウン!」

ガガ「(なんて?)」

代々木「え、はい?」

ガガ「ん?」

代々木「しもた!わしの発音がいかんようじゃ!」

斉藤「(あ、彼は、初めましてこんにちわ。ガガさんにお会いできてうれしい。
   こんな辺鄙な土地によくぞ来てくださいました。この気持ち感謝に堪えないと言ってます)」

ガガ「(ああ、そうだったんですか。ご招待ありがとうございます。私もこの町に来れて光栄です)」

代々木「なんて?」

斉藤「ガガさんは呼んでくれてどうも。こん村に来れて光栄じゃち言っちょります」

代々木「おお!そうかえ!そいは嬉しい事を言ってくれるのう!ああ、そうじゃ!
    来て下さってありがたく思いますと伝えてくれや!」

斉藤「あ、分かりました。(彼は言ってます。ガガさんに会えて嬉しい。ガガが好き。
   ガガを愛してる。このライブもガガさんのために開いたんですよって)」

ガガ「(まあ、ほんとですか!?それは嬉しい!しかし、驚きました。
   まさか、会場の場所が変更されていただなんて。私たちはそれを全然知りませんでした)」

代々木「なんじゃち?」

斉藤「会場が変更されててビビったち言うちょられます)」

代々木「会場が変更?何の話ぞね?」

斉藤「あ、それは多分あれですわ」

代々木「まあ、そんな話はどうでもえい!今は時間がないですき、すぐに準備をしてほしいと伝えてくれや!」

斉藤「(彼は言ってます。諸事情があってやむなく場所を変更しました。こんなド田舎まで呼んでしまい、
   申し訳ないです。もっとたくさん話をしたいところですが、もう時間がないので早速準備をしてもらいたい。
   もうすでに13万人のファンがガガさんを待っているのだから、と)」

ガガ「(13万人!?)」

斉藤「(そうです。13万人です)」

代々木「おまん、何を話ゆうがじゃ?」

ガガ「(聞いてた話では10万人の予定だと)」

斉藤「(予定ではそうでした。しかし、ガガさん観たさに大勢のファンがここに詰め掛けたのです)」

代々木「一体何の会話をしゆう?」

斉藤「(さあ、早く準備なさってください。大勢のファンが待っていますので)」

ガガ「(そうね。すぐ出るわ)」

斉藤「(はい、期待してます!)」

そいて、ガガは楽屋に戻り準備を進めるのであった。

斉藤「ふう…」

下田「いや、ふう…やないですよ!あの会話なんなん?」

斉藤「あら、分かっちゃいました?」

下田「分かっちゃいました?やないですよ!13万人って何ですか!?」

代々木「13万?」

斉藤「少し多めに伝えただけですよって。数が多い方がアーティストさん言うんは俄然燃えますき」

下田「それにあの通訳は一体何なんだったんですか!?意訳なんてレベルのもんやなかったですよ!」

代々木「え、ちゃんと伝わってなかったん!?」

斉藤「全ては物事をスムーズに進めるためですよって。必要な処置ですき」

高砂「まさか、他のアーティストさんらにも同じような事してるんやないでしょうな?」

代々木「え、何をしたん!?」

斉藤「さあ、どうだか?」

下田「何なんやこの人はぁ…」

斉藤「大丈夫ですき。アーティストさんらぁちゃんとみんな納得してくれてますき。
   ドタキャンらぁしたりしませんよって。何せ私はこういう事のために派遣されたんですから」

代々木「え、ドタキャンってなんぜ?」

そして20時30分、トリをエルトン・ジョンが飾り、予定より30分押しで初日の音楽祭は何とか終了した。

村長「皆さん、気を付けてお帰り下さい!」

副村長「そこ、押さない!怪我しますよ!」

村民A「いやはや、どえらい行列じゃのう」

村民B「どこを見ても人、人、人ぜよ!」

大勢の客が一斉に引き始め、たくさんの人に埋め尽くされていた会場は次第に本来の静けさを取り戻し始めていた。

入山「だいぶ人が減って来たのう」

安藤「それでも1万近くは居そうじゃな」

村民C「あのもんらぁは帰らんのかえ?」

代々木「おい、あれは何をしゆうがじゃ?」

藤吉「テントを張りゆうがじゃ」

代々木「テントじゃち?」

安藤「ここに野営するつもりなんじゃろ」

村民A「ホテルが取れんかったんかのう」

入山「まあ、そういうんのもあるんじゃろうけんど、多分、ただ移動するんが面倒臭いんじゃろうのう」

代々木「なるほどのう」

安藤「道もがっつり渋滞しゆうそうじゃからのう」

斉藤「皆さん、何をのほほんとしゆうがですか?まだ仕事は山積みながですよ」

村民B「それは分かってるがじゃ」

代々木「しかし、音楽祭っちゅうんがこればぁ忙しいもんじゃとはのう」

斉藤「まあ、今回のは特にそうですよって。動員数がはんぱなかったですき」

代々木「はんぱないっすか」

初日反省会、村役場

下田「皆さん、今日はお疲れ様でした」

村民A「うっす」

村民B「ほんまに疲れたがじゃ」

村民C「初日でこれかえ。酷いもんじゃ」

代々木「お疲れ様です」

下田「まあ、色々伝えるべきことはありますけど、まずは謝らせてください」

代々木「なんぜよ、おまんまだチケットの事気にしゆうがかえ?」

下田「そら、気にしますよって」

斉藤「がっつり収益に響きますからね」

代々木「しっかし、チケットが完売するとは、一体どれくらいの人が来てたんじゃろうのう」

高砂「さあ、分かりませんねぇ。無料開放してからは人数は数えられませんでしたから」

斉藤「あ、県庁の調べではピーク時に約12万人が来ていたそうですき」

入山「12万じゃち!?」

安藤「そりゃ全然足りんかったっちゅうことかえ」

高砂「すみませんねぇ、皆さん。社長のどんぶり勘定のせいでこんな事になってしまって」

下田「皆さん、本当に申し訳ありません!全てわいの責任です!かくなる上は腹を切り謝罪の意を表したいと思います!」

代々木「いかん!腹切りはいかんぜよ!」

副村長「そうじゃ!思いつめすぎぜよ!」

斉藤「まあ、腹を切るんはえいとして、問題は明日ですよって」

安藤「そうじゃのう。腹を切るんはいかんけんど、問題は明日、当日券をどれくらい用意するかぜよ」

下田「明日は当日券7万人分、計12万人分を用意しとります!」

斉藤「本当にそれで足りるんですか~?」

入山「そうじゃのう。もうちっくと予備を用意しとった方がええじゃろうな」

下田「そ、それはそうですね!ほんならさらにプラス1万人分、計13万人分でどうです!?お、お?」

斉藤「お?言われても困りますけんど」

副村長「まあ、こん村に13万人らぁ来るはずないぞね。余裕っしょ」

斉藤「そん余裕が危ないんですよって。そん余裕に足をすくわれたんが下田さんですき」

下田「返す言葉もない」

村長「まあ、明日の分はそれでえいじゃろう。それより問題は他にもあるんやないがかえ?」

下田「そうですね。じゃあ、まずは進行のことですわ。途中かなりぐだついたようやな」

高砂「ええ。機材トラブルがあったりで、時間が押してしまいました。
   ですが、もうすでにスタッフらと対策は考えてありますんで、明日は修正します」

下田「そうか。それならそっちは任せるわ」

入山「ああ、そうじゃ。屋台が全然足らんかったち聞いたけんど?」

安藤「そうらしいのう」

代々木「屋台らぁ百近くあっても足らんかったんかえ?」

安藤「何せ予定よりも遙かに多い人数が来たからのう。まあ、仕方ない事ぜよ」

村長「そうかえ。ほんなら米川にもっと必要じゃち伝えておくぜよ」

下田「怪我人は出ませんでしたか?」

副村長「貧血じゃち言うて若い女子が医務室に運ばれましたけんど、それ以外には大きい怪我人らぁ出ませんでしたき」

下田「そうでっか。それは素晴らしい」

副村長「あとはゴミ問題じゃの」

高砂「ええ、結構落ちてましたね」

下田「あれでも結構徹底して言ってきたんですがねぇ」

代々木「今も村のもんらぁがゴミ拾いをしちゅうがぜよ」

高砂「しかしもう外も暗いでしょう。ある程度やったら引き上げてええと思いますよ」

代々木「そうですかえ。ほんならそうみんなぁに伝えておきます」

藤吉「ちっくとえいかえ?ええと、会場の電燈は消さん方がええんじゃろ?」

副村長「そうじゃのう、会場にいくらか泊まってるもんがおるんじゃろ?
    ほんなら消さん方がえいと思うけんど」

代々木「電燈さ消したらあん空き地ほんま真っ暗になるからのう」

安藤「そうじゃの。しかし、明るすぎても寝られんじゃろ。
   適度な照度にするがじゃ」

藤吉「そうじゃの。そうしとくかの」

村長「他に何か言っておくことはないかえ?」

代々木「特になし!」

村長「そうかえ。ほんなら反省会はこの辺にしとくかの」

下田「そうですね。では、作業がある程度片付いたら、明日に備えて休んでください」

村長「そうじゃの。明日もハードになるしの」

副村長「そうしときましょ。明日は爆乳ヤンキーが来ますし」

音楽祭2日目、朝

手島「本当に来てしまった…」

手島「どうしよう、マジでやんのここで?」

北條「なんかすごい人入ってない?」

MAO「やばい、もう帰りたいんだけど」

副村長「おお!爆乳ヤンキーの皆さん、こんなとこにいらっしゃいましたか!」

手島「あ、ど、どうも」

代々木「いやぁ、こんな辺鄙なところによくいらっしゃってくれましたね~」

副村長「本当にありがとうございますき!」

手島「いやいや、こちらこそご招待頂き、ありがとうございます」

代々木「ささ、もうあまり時間がありませんので、どうぞこちらへ」

北條「なんか、かなりお客さんが来てるみたいですね…」

副村長「はい、それはそれは!いやはや、かなりの盛況ぶりでございまして、
    もうすでに10万人近く来てるそうですき!」

MAO「じゅ、10万人!?」

代々木「ええ、そうですき!このお客さんらぁみんな、爆乳ヤンキーを一目見んとぞ一堂に会したんですきに!」

手島「いやいや、それ嘘でしょ!」

北條「そんな事あるわけないじゃん!」

MAO「嘘下手すぎるだろ!」

副村長「いやいや、何をおっしゃられる!この音楽祭らぁ、皆さまあってのものですよって!」

代々木「爆乳ヤンキーの皆様方には、この音楽祭のオファーを引き受けて頂き、
    村のもんらぁ本当に本当に感謝してるんでございます!」

副村長「ほんにその通り!」

手島「重いなぁ。気持ちが重いよ」

代々木「何をおっしゃいますか!重さの問題ではないですき!」

北條「そんな事言われてもなぁ」

副村長「まあ、そんな事はどうでもえいがです!皆さま、もうお時間があまりございませんので
    すぐに準備に取り掛かって頂きたい!」

代々木「そうですのう!皆さま方には、こん音楽祭2日目の名誉あるオープニングアクトをお願いしてますき!
    是非、皆さまの迫力あるパフォーマンスでこん音楽祭に弾みをつけて頂きたい!」

手島「だから重いって!役割が重すぎんだよ!」

副村長「ささ、急いでくだされ!」

北條「マジか…」

MAO「マジでやんの?10万人の前で…?」

代々木「お願いしますよ!本当に期待してますき!」

手島「わ、私ちょっとトイレ行ってくる!」

副村長「あら、そうですかえ。あまり時間に余裕がありませんので、出来るだけ早く戻って来て頂けると幸いですき!」

手島「わ、分かりました!」

北條「あ、私も行ってきます!」

代々木「なんと!」

MAO「それなら私も行きます!」

副村長「あらあら、皆さん仲のよろしいことで」

代々木「体調でも悪いんかのう」

会場本部

下田「そろそろ、爆乳ヤンキーの出番の時間やな。もう準備出来とるか?」

高砂「もうすでにスタンバイしとるはずですわ」

副村長「大変じゃー!」

代々木「大変なことになってしもうたー!」

下田「何や!」

高砂「何かあったんですか!?」

副村長「大変じゃ!爆乳ヤンキーの皆さんがいなくなってしもうた!」

下田「なんやて!?」

高砂「どういう事ですか!?」

代々木「いきなり、トイレ行きたいち言いよってな。それっきり戻って来ないがじゃ!」

副村長「わしらぁトイレも探したけんど、見つからなかったぜよ!」

下田「なんでやねん!」

斉藤「あ、これ逃げましたね」

高砂「ああ、逃げよったな」

代々木「どういてじゃ!どういていなくなってしまったんじゃ!」

副村長「わしらぁの対応が悪かったんかのう!?」

入山「プレッシャーに負けたんじゃろなぁ」

安藤「10万人の前でやれ言うんは酷じゃったかのう」

副村長「それは10万人じゃ足りんち言うことかえ!?」

安藤「逆じゃ」

斉藤「しかもトップバッターですからねぇ」

副村長「トリだったら良かったち言うことかえ!?」

斉藤「いや、そういう事ではなくて」

下田「しかし困りましたな。もう時間がないっちゅうのに」

高砂「2番目に出演予定のブラックアイドピースに頼むしかないのでは?」

下田「そうやな。頼んでみよう」

代々木「どっちにしても1組足らんっちゅうのはまずいんではないかえ?」

下田「ええ、まずいです。大いにまずい」

副村長「どういたらえいがぜよ?」

入山「急遽来てくれるもんを呼ぶしかないろう」

安藤「しかし、そんな急に呼んで、誰が来てくれるがじゃ?」

下田「そうやな…。高砂、誰か呼べそうなんはいないか?」

高砂「そんな事急に言われましても…」

その時、一本の電話が入る。

斉藤「あ、もしもし。副島村音楽祭本部ですき」

高砂「あ!そうや!確か昨日、オリックス劇場でOKAMOTO'Sがライブをしてたはずですわ!」

下田「ほんまかいな!っちゅう事は、もしかしたらまだ大阪に残ってるかもしれんなぁ」

高砂「オファー掛けてみますか?」

下田「ああ、頼むわ!」

副村長「なんじゃ、なんじゃ!誰か来てくれるんかえ?」

下田「それはまだ何とも。ただ候補者は見つかりました」

代々木「そいは良かったのう」

副村長「ああ、一安心じゃ」

入山「まだ安心するには早いですろう」

安藤「そうじゃ。まだ来てくれると決まったわけではないですき」

斉藤「あ、皆さん、ちっくとえいですろうか?」

副村長「なんじゃ?」

代々木「何かあったんかえ?」

斉藤「あ、今電話があったんですがね。実は、こん音楽祭に飛び入り参加したいち言うもんがおりまして」

代々木「なんじゃち?」

副村長「そいは誰ぜ?」

斉藤「何ら、ローリングストーン言うもんですき」

下田「は!?」

高砂「え?ローリングストーンズ!?」

斉藤「そうですき」

副村長「そいは誰ぜ?初耳ぜよ」

代々木「そいはありえないぜよ!ローリングストーンズ言うもんらぁにはオファーを断られいうからのう!」

副村長「え、そうながかえ?」

代々木「そうですき。行けんと言われたがです」

斉藤「え、電話では行けんとは言うちょらんち言ってましたけんど」

代々木「そんなはずはないぜよ!」

斉藤「行けんとは言うちょらん。しかし、今はスケジュール的に微妙ですき、今は行けるとは言えんけんど、
   行けたら行くと伝えたはずだ。と言っとったがです」

入山「なんじゃそら!」

代々木「そんなん英語で言われたち分かる訳ないろうが!」

高砂「ローリングストーンズがここに来るだと…?」

下田「信じられん…!わいが仕切ってるライブに敬愛するあのローリングストーンズが来てくれるなんて…!」

副村長「それで、そのもんらぁは今どこにおるがじゃ?」

斉藤「今、日本に向かっちゅうそうですき」

下田「あとどれくらいで着くと?」

斉藤「6~7時間らしいです」

高砂「ギリギリですね…」

下田「ギリギリどころか、成田着、そっから乗り継ぎで高知空港、そっから車で移動となるとさすがに間に合わへんわ」

代々木「それじゃ、来てくれるち言うてもダメではないかえ!?」

斉藤「あ、それについては大丈夫じゃち思いますけんど」

副村長「どういう事ぜよ?」

斉藤「確か、龍馬空港は国際線のチャーター便が運航しゆうはずです。だから成田を経由しなくても、
   直接高知に来れるはずですき」

代々木「それは本当かえ!」

高砂「それなら間に合うかもしれん!」

安藤「しかし、それでもまだ分からんぞね」

入山「ああ、道路はかなりの渋滞じゃと、ニュースで流れとったきにのう」

副村長「なんて事じゃ!」

斉藤「あ、それも大丈夫ですき」

代々木「どういてじゃ?」

斉藤「ヘリをチャーターするよう上司に頼んでおきましたき。空港から直接こん会場まで来ますよって」

下田「それはすごい!」

高砂「ええ!これなら間に合いますよ!」

入山「いつの間に頼んでおったんかのう」

安藤「手際が良いのう」

副村長「優秀じゃのう」

代々木「ほんに優秀じゃ」

その5時間後、ステージ上ではMuseがKnights Of Cydoniaを演奏していた頃の事だった。

高砂「社長、残念な知らせです」

下田「なんや?」

高砂「チケット完売しました」

下田「くそったれ」

代々木「いや、くそったれ言うちょる場合やないですよ!っていうか、チケット完売のどこが残念な知らせなんですか!」

斉藤「あ~あ、またやってしまいましたねぇ」

下田「なんでやねん!なんで13万人分が売り切れんねん!」

入山「そいは13万人以上こん村に来てるからでしょうな。まあ、信じがたい話ですけんど」

下田「ありえへん!こんなくっそド田舎に13万人以上来るなんてありえへんわ!
   これは何かの間違いです!ええ、そうです」

高砂「社長!落ち着いて下さい!」

下田「ああもう!申し訳ありませんでした!こんな事態を2度も引き起こしてしまい申し訳ありませんでした!
   かくなる上は腹を切りますよって!」

代々木「もうその件はえいですき」

斉藤「まあ、下田さんの切腹は確定としても、あぶれたお客さんらぁをどうするかですね」

副村長「村長、どうします?また無料開放しますか?」

村長「当然じゃ。折角来てくれたもんらぁを追い返す訳にはいかんきにのう」

副村長「という事ですので、後は任せますき、下田さん」

下田「ああ、本当に申し訳ありません!私めの不出来のせいでこんな事に」

高砂「本当にしませんねぇ。うちの社長、どんぶり勘定なんですわ」

その4時間後、ローリングストーンズがヘリで登場し会場を沸かせた。

代々木「なんちゅうド派手な登場じゃ!」

入山「会場に着いただけで観客が絶叫してるがぜよ!」

下田「こりゃ凄い!写真撮っとこ!」

高砂「ツイッターにアップしておきましょう!」

そして、ヘリを降りたローリングストーンズの元に代々木達は恐る恐る近付いて行くのであった。

代々木「へ、ヘイ!ハロー!」

キース「(なんだ、お前は?)」

代々木「なんて?」

下田「(ああ、ようこそ来てくださいました!まさか来て下さるとは思わず、私共はもう感嘆の極みでございます!)」

キース「(なんか、大袈裟なやつだな)」

ミック「(私達もこの日本最大のイベントに来れて光栄に思います)」

代々木「なんて?」

高砂「この日本で一番大きいイベントに来れて光栄に思うと言っておられますわ」

代々木「日本一のイベント?何を言っているがじゃ?」

高砂「おそらく何か勘違いしてるのでしょうねぇ。まあ、この観客数と豪華出演陣ですから」

ミック「(それにしても、何だか懐かしいステージですね)」

下田「(そうでしょう。私が一番好きなステージを元にデザインしましたから)」

代々木「ステージ?」

高砂「どうやらこの音楽祭のステージについて話しておられるようです」

代々木「ああ、例のウッドなんちゃら言うやつのパクリ舞台の事かえ」

下田「パクリちゃいます!リスペクトですわ!」

それから、2日目のトリを務めたローリングストーンズは予定していた時刻を大幅に超えて、
約90分間、圧巻のパフォーマンスを披露し、観客達を大いに沸かせた。

そして終了予定時刻から50分遅れの20時50分、音楽祭2日目は大盛況の内に何とか終了した。

村民A「いやぁ、しんどかったなぁ」

村民B「今日はとんでもない忙しさだったぞね」

村民C「明日もこんな調子かと思ったら、気が重くてしょうがないぜよ!」

代々木「今日はどればぁの人が来てたんかのう」

斉藤「あ、県庁の調べによると約14万人だそうです」

副村長「14万!?」

代々木「そいはスゴイ!」

下田「惜しい!」

高砂「いや、惜しいちゃいますよ!ちゃんと人数分用意しとかな!」

下田「それは分かっとるがな!明日はしっかりと用意しとくさかい!」

斉藤「それで、何枚用意する気でおるんですか?」

下田「初日は12万人、今日が14万人。と来たら最終日は当然16万人ですわ!」

斉藤「あ、これはひどいですね」

高砂「すみませんねぇ。この人、前の会社にいた時から、こういうところを直した方がええと
   言われてきたんですけど、全然直らなくて」

下田「ほんならもっと用意しときましょか?」

村民A「必要ないじゃろ」

村民B「そうじゃ。こんなくっそド田舎に16万人も来る事があるろうか?いや、ない」

代々木「昨日もこんなやりとりしたような」

下田「まあこれだけあれば充分でしょう。わいには16万人以上の人間が
   ここに詰め掛けてくるとは全く想像出来ませんわ」

村長「まあ、チケットの事は下田さんらぁに一任してありますき。
   それはもうそちらで決めてもらって結構です」

下田「ほんまありがとうございます」

村長「それで、おまんら何か言っておくべきことはないかえ?」

副村長「じゃあ、わしから。そろそろ屋台の人手が足らんち現場から悲鳴が上がっとりましたわ」

村長「そうかえ、人手不足かえ。そう言えば、米川んとこからも嬉しい悲鳴どころか、
   ガッチガチの悲鳴が届きゆうがぜよ」

村民A「わしも似たような事ですけんど、人が多すぎて、まめに便所掃除するもなにもないような
    状況になっちょります」

村民B「わしは、ゴミを捨てようにもどこのゴミ箱も満杯じゃないかち、観客らぁからお叱りの声を頂戴しましたがじゃ」

村長「まあ、チケットの事は下田さんらぁに一任してありますき。
   それはもうそちらで決めてもらって結構です」

下田「ほんまありがとうございます」

村長「それで、おまんら何か言っておくべきことはないかえ?」

副村長「じゃあ、わしから。そろそろ屋台の人手が足らんち現場から悲鳴が上がっとりましたわ」

村長「そうかえ、人手不足かえ。そう言えば、米川んとこからも嬉しい悲鳴どころか、
   ガッチガチの悲鳴が届きゆうがぜよ」

村民A「わしも似たような事ですけんど、人が多すぎて、まめに便所掃除するもなにもないような
    状況になっちょります」

村民B「わしは、ゴミを捨てようにもどこのゴミ箱も満杯じゃないかち、観客らぁからお叱りの声を頂戴しましたがじゃ」

高砂「グッズ販売の担当者からも同じような話が届いてますわ。こんなに人が来るとは聞いてないぞと」

副村長「まあ、それはここにいるもん、観客や出演者らぁを含めても全員予想出来んかったことじゃからのう」

その時、一本の電話が入った。

斉藤「はい、本部。……ん?…え!?」

代々木「さ、斉藤さん、どういたがじゃ?」

副村長「誰からの電話ぜよ?」

斉藤「(あ、ちっくと待ってください。)U2の代理人いう人から掛かりゆうがです」

代々木「U2の代理人?どんな用ぜよ」

斉藤「よくも騙したなち言うて怒りゆうがです」

代々木「は!?」

副村長「騙しただぁ!?」

村民A「一体何のことぜよ!」

村民B「わしらぁ何も騙しちゃせんぞね!」

斉藤「まあ、これはあれでしょう。あれの事を言っとるがです」

安藤「そんな事より、その代理人さんは何と言うとるがじゃ?」

斉藤「あ、とにかく私達は大きな誤解をしていたようだ。この音楽祭への出演の話は無かったことにさせていただきたいと」

代々木「なんじゃち!?そいは困るぜよ!」

副村長「誤解って何のことぞね!?」

村民A「契約に不備があったがかえ?」

下田「いや、そんなはずありまへんわ」

副村長「と、とにかく説得するがじゃ!」

代々木「そうじゃ!U2さんらぁこの音楽祭の魂ながじゃ!来てもらわんとこの音楽祭は成立しないぞね!」

斉藤「じゃあ、説得してみますき」

代々木「頼みます!」

斉藤「(あ、お待たせしました)」

代理人「(では、改めて言わせてもらいますが、今回の話は無かったことで)」

斉藤「(それは困ります)」

代理人「(困ると言われましても…)」

斉藤「(U2さんはこの音楽祭の魂なんです!U2さんが来なければ、
    この音楽祭には何の意味も無くなってしまうんですよ!?)」

代理人「(いや、そんな事言われましても…)」

斉藤「(お願いします!この音楽祭はU2さんらの協力があったからこそ実現したものなんです!
   U2さんがいたからこそ、この音楽祭はここまで大きいものになったんです!」

代理人「(ですからそれについて、我々は大きな誤解をしていたんです。
    私たちが標語にしていたセイビングフクシマというのは、この副島村の事ではなく、
    福島県の事なんですよ!?」

斉藤「(そんな事はどうでもいいんです!)」

代理人「(いやいや、一番大事なところでしょうが!)」

斉藤「(福島県だろうが、副島村だろうがそんな事は関係ない!大事なのはそんな事ではないんです!)」

代理人「(では一体、何が大事だというのですか?)」

斉藤「(大切なのは、すでにこの音楽祭が開催されていると言う事です)」

代理人「(全く意味が分かりませんが?)」

斉藤「(全てはたった一つの勘違いから始まりました。それは単純な誤解でした。しかしその誤解によって、
   情報が波紋のように世界中に広がり、人が人を呼び、多くの人たちが協力してくれて、
   そのおかげで昨日今日と、信じられないほどたくさんの人たちがここに集まったんです。)」

斉藤「(確かに大きな誤解だったかもしれません。私達の間には認識の違いがあったかもしれません。
   ですが、実際にここに来てくれた人たちは誤解ではありません。
   この音楽祭のためにすでに26万人が集まっているという事実は勘違いではないんです!)」

代理人「(に、26万ですと!?)」

斉藤「(そうです。26万人がここに来たんです!)」

代理人「(き、聞いていた話では10万人の予定だと…)」

斉藤「(最初はそうでした。しかし、たくさんの出演者さんらのおかげで、
   これほどの動員数になったのです!)」

代理人「(し、信じられない…!それほどの規模になっているとは…!)」

斉藤「(この流れを作ったのは間違いなくU2さんらです。皆さんが協力してくれたからこそ、
    これほどのビッグイベントとなったのです!だからこそ、その中心にいたU2さんには
    是非この音楽祭に出て頂きたいのです!お願いします!音楽祭に来て下さい!
    村のみんなも、26万人の観客達もみんなU2さんを心待ちにしとるんです!)」

代理人「(…、少し時間をください。こちらから改めて掛け直しますので」

斉藤「(あ、そうですか。それなら首を長くして待ってますので)」

電話を切る斉藤。

代々木「ど、どうじゃった!?」

斉藤「改めて連絡するそうですき」

副村長「それはどういう事ぜよ!?来てくれるんかえ?来ないんかえ?」

斉藤「それはまだ分かりませんき。多分今、その話合いの最中でしょうから」

副村長「そ、そうかえ…」

村民A「一体どうなるんじゃろうのう」

村民B「それは相手次第じゃき、分からんぜよ」

代々木「来てもらわんと困るがじゃ。U2さんらぁには只ならぬ恩義があるからのう!」

村民C「そうじゃのう。あの人らぁがおらんかったら、これほどたくさんの出演者さんらぁ集まらんかったじゃろうし」

下田「しかし斉藤はん、また変な言い回ししましたやろ?」

斉藤「変な?何の事ですろう?」

下田「あの、26万人が来た言う件ですわ。あれ向こうは、一日で26万人来たんやって、絶対勘違いしとりますよ」

斉藤「ああ、そういう受け取り方もありますかねぇ」

下田「絶対わざとやろ」

高砂「わざとですね」

斉藤「まあ、えいやないですか。アーティストさん言うんは観客が多ければ多いほど燃えるもんですき」

その時、電話が鳴った。

代々木「来よった!」

副村長「斉藤さん、はよ出えや!」

斉藤「あ、はいはい」

代理人「(お待たせしました)」

斉藤「(あ、左程待ってないですよ)」

代理人「(今回の事についてクルー全員で協議しました。協議は白熱し、怪我人も出ました)」

斉藤「(え、協議をしたんですよね?)」

代理人「(協議は結局泥沼化し、多数決で決める事になりました)」

斉藤「(泥沼ですか。大変ですね)」

代理人「(その結果、78対75で、そちらの音楽祭に出演させて頂く方向に決まりました!)」

斉藤「(すごい接戦だったんですね。あっぶねー)」

代理人「(今からそちらに向かいますので、スイートの用意をお願いします)」

斉藤「(あ、分かりました。楽しみに待ってます~)」

電話を切る斉藤。

代々木「それでどうだったんじゃ!?」

斉藤「はい、スイートを用意しとけと言われましたき」

副村長「そいはつまり、来てくれるってことかえ!?」

斉藤「そういう事になります」

代々木「マジかえ!」

下田「あんなんで説得出来るんか!」

高砂「あんなんでようオーケーしてくれたな!」

最終日

代々木「いよいよじゃな」

副村長「いよいよぜよ」

村民A「ああ、いよいよじゃ」

村長「なんじゃおまんら、ビビってるんかえ?」

代々木「そ、そんな事らぁありませんき!」

村民A「そ、そうじゃ!もう3日目やき、さすがに慣れたぜよ!」

村長「そういうわりには声が震えちゅうがじゃ」

副村長「村長だって、がっつり足が震えゆうがです」

村長「これは老いのせいぜよ」

開始予定時刻30分前、すでに会場は大勢の人で埋め尽くされていた。

下田「もうかなり入っているようやな」

高砂「ええ、すでに12万人以上入っとるようですわ」

下田「この時間でか?こりゃまだまだ伸びそうやなぁ」

その言葉通り、正午を回る頃には見事にチケットは完売するのであった。

高砂「社長、悲報です!」

下田「やってしもうたか?」

高砂「はい、やってしまいました」

下田「そうか、やってしもうたか」

代々木「とりあえずチケットが完売することを悲報扱いするのはやめや!」

斉藤「さあ、腹を切りましょう!」

下田「ああ!何と言う事や!まさか3日間連続で外してしまうとは!
   皆さんには本当にもう謝る術が見つからない!」

斉藤「とりあえず腹を切りましょう!」

高砂「すみませんねぇ、皆さん。うちの社長、どんぶり勘定なんですよ~」

代々木「もうえい!何かもうどうでも良くなって来たぜよ!」

村民A「とりあえず16万人分らぁ完売したんじゃから、もうどうでもえいですろう」

副村長「はいはい、無料開放、無料開放~」

村長「結構大事な事やっちゅうのに、どんどん雑になっていきゆうがぜよ」

それでも客足は一向に止まらず、

下田「おいおい、一体何人来とるんや?」

高砂「分かりません。解放してからは数えられませんので」

斉藤「人が来すぎて、交通が完全に麻痺しゆうそうです」

代々木「人がたくさん来るのはえいけんど、これだけのもんらぁ夕陽ヶ原に入りきるんかえ?」

斉藤「イケます。詰めれば30万はイケますき」

下田「イケるか!こんな状況で詰めたら死人が出るわ!」

会場が夕陽で赤く染まる頃には、観客数は18万人を超えていた。

ステージ上ではGreen DayがTime Of Your Lifeを演奏していた。

そんな時、U2が会場に現れるのであった。

高砂「すでに次の出演者が待機してます」

下田「ああ、次はU2やったな」

代々木「そうですき」

副村長「代々木、おまんが案内してきたんかえ?」

代々木「ええ、そうですけんど」

副村長「U2さんらぁ何か言ってたかえ?」

代々木「ええ、昨日は色々とすまんかった、こん音楽祭を一緒に成功させましょうち言うて下さったがぜよ!」

副村長「そうかえ!やっぱり何かええ人そうな感じじゃのう!」

代々木「ええ、もう!実際会ってみてもやっぱりえい人ながやったですよ!」

下田「ん?あれどうした?」

代々木「え、どういたがですか?」

下田「U2がステージに上がって来よった」

代々木「え!?」

副村長「まだグリーンデイ言うもんらぁの持ち時間ではなかったがかえ?」

下田「ええ。そのはずです」

高砂「おかしいですね。こっちの予定とも違いますわ」

代々木「お、何か一緒にやるみたいぜよ!」

副村長「何じゃ?一緒に演奏するんかえ?」

下田「そうみたいですね。どうやらコラボするようですね」

高砂「そんなん予定にないんですけど」

代々木「何か準備してるようですのう」

副村長「何や、ドラムが2つになったぜよ」

高砂「そんなん聞いてないんですけど」

下田「これはあれやな」

代々木「これってどれぜよ?」

副村長「あれって何ぜよ?」

下田「ほら、このイントロ!」

代々木「いんとろ?」

副村長「全然知らん曲ぞね」

下田「え!?知らないんですか!?」

代々木「全く知らん」

副村長「聞いたこともない」

下田「マジで!?ほんまに知らんの!?超有名な曲なのに!?」

代々木「むしろわしらぁが知っとる曲が今まで一つでもあったと思います?」

副村長「それで、これは何ちゅう曲ぜよ?」

下田「セインツアーカミングですわ」

代々木「せいんつぁ?そいはなんぜ?」

副村長「それはどういう意味ぜよ?」

高砂「やるならやるで、先に言っといてもらわんと困るんですけど」

下田「セインツアーカミング言うんは、聖者がやってくるっちゅう意味ですわ」

代々木「聖人?」

副村長「聖人かえ」

高砂「いきなりコラボするとかやめてもらえませんかね」

代々木「まあ、わしらぁにはこの歌の歌詞はよう分からんけんど、
    わしらにとっての聖人はきっとこん人らぁなんじゃろうのうきっと」

副村長「まさにそん通りじゃのう」

下田「え、どういう事?」

高砂「ちょっと何言ってるか分かんない」

そして、時間はあっという間に過ぎていき、大トリを務めたポールマッカートニーが、

最後の曲であったHey Judeを見事に歌い切り、観客との大合唱で最終日のライブの幕が下りた。

副村長「ああ、疲れた」

代々木「酷い疲れましたね」

村民A「もうしばらくは何もしたくないぜよ」

村民B「くっそ忙しかったな」

村民C「音楽祭っちゅうんがこんなに大変だとは思いもしなかったぜよ」

入山「いやぁ、今回のは特別ぞね。今回のは普通じゃなかったからのう」

安藤「そうじゃ。音楽祭らぁもう二度とやる事もないろう。
   まあ、えい思い出になったがぜよ」

斉藤「いや、そうでもないようですよ」

安藤「え?」

安藤「県庁はこん音楽祭を毎年の恒例行事にしたいち思っちょるようですよ」

代々木「はぁ?」

副村長「またやるち言うんかえ?もうえいぜよ」

入山「まあ確かに、信じられんほど人が来たからのう。気持ちは分かるぜよ」

村民A「そういえば最終日、18万人来たち言うんは本当かえ?」

斉藤「あ、県庁調べではピーク時に18万5千人が来場したそうです」

代々木「マジかよ」

村民B「もう数字がデカすぎて全く意味が分からんぜよ」

副村長「どおりで人が多く感じたはずじゃの」

安藤「あれは人が多いってもんではなかったぜよ。
   四方を人で囲まれる。わしぁ一回吐きました」

下田「まあとにかく、あれだけの入場者で怪我人一人出ずに終わったんは良かったですわ」

村長「本当にそん通りじゃ。これも皆の協力があってこそぜよ」

入山「しっかし、18万5千人とはのう。つまり、3日間合計で…」

斉藤「44万5千人ですき」

代々木「よよよ、45万人じゃと!?」

斉藤「いえ、44万5千人ですき」

副村長「わしらぁの村の祭りに45万人も来たち言うんかえ!?」

斉藤「いえ、44万5千人ですき」

藤吉「信じられん!こんなくっそド田舎に45万人も来ただなんて!」

斉藤「だから、44万5千人ですって」

村長「45万人かえ。夢のようじゃのう」

斉藤「あの、44万5千人なんですが」

安藤「45万人も来たとなると、チケット収入だけでかなりのもんぜよ」

入山「そうじゃのう。無料開放した人数を差し引いても、とんでもない金額ぜよ」

高砂「ええ、ざっと十数億といったところでしょうか」

代々木「じゅ、十数億!?」

村民A「桁を間違えとるんじゃないかえ!?」

副村長「単位はなんぜよ!?円かえ!?ドルかえ!?」

安藤「ドルなわけないですろうが」

下田「あくまでこれはチケットの売上だけの事ですからね。そこに更に、
   グッズや屋台の収益、テレビの放映権料などなどが加算されます」

村長「それだけではないぞね。隣町らぁの宿泊施設、飲食店等の売上もあるがじゃ」

高砂「最終的な金額はちゃんと計算してみないと分かりませんが、
   一体どれほどになるやら」

代々木「何だか凄い話になっちゅうのう」

副村長「まあ、難しい事はよう分からんけど、それだけの銭っ子ばぁあれば、
    この村を完全に復活させることが出来るぞね!」

村民A「おう、そうじゃ!かつての全盛期を超える発展も夢ではないぜよ!」

村民B「そん通りじゃ!グッバイゴーストタウン!」

村民C「これでこん村は救われる!わしらぁは村おこしに成功したがぜよ!」

村長「みんな、その件について話があるがじゃ」

代々木「ん?何ですろうか?」

副村長「どんな話ですかえ?」

村長「わしは、いや、わしらぁは、こん音楽祭の収益の半分を、福島県に寄付するがじゃ」

代々木「は、はぁ!?」

村民A「え!?急に何を言い出すがですか!?」

副村長「どういて福島県が出てくるがじゃ!全然関係ないろう!?」

村民B「しかも半分も寄付ってどういう事ぜよ!?」

村民C「こんのじじい!ボケきってやがる!」

村長「ええと、みんなぁも気付いてると思うけんど、こん音楽祭は一つの誤解から始まったがぜよ」

代々木「誤解?何の事ぜよ?」

村長「みんな疑問に思っていたはずじゃ。どういてこんな辺鄙なところに、
   あればぁたくさんの大物歌手さんらぁが来て下さったのか?」

副村長「それはあれじゃろ。こん村の窮地を救うためぜよ」

村長「こん村の窮地を救うためか。そんな事のためにあれほどのもんらぁが揃うと思うかえ?」

村民A「確かにそれは…」

村民B「そいはきっと彼らがえい人たちだったからじゃろう」

入山「まあ、確かにえい人たちだった事は間違いないろう」

安藤「問題はセイビングフクシマぜよ」

代々木「それはこの音楽祭の標語ぜよ」

村民A「そうじゃ。こん村を救おうち言う合言葉ぜよ!それのどこが問題ながじゃ?」

下田「まあ、簡単な話ですわ。彼らの言うフクシマ言うんは福島県の事であって、
   この副島村の事ではないっちゅう事です」

代々木「え?」

村長「そういう事じゃ」

代々木「え、マジかえ?」

村長「マジぜよ」

副村長「またまた御冗談を」

斉藤「冗談ではないですき」

代々木「これはあれかえ?悪辣なドッキリかえ?」

安藤「むしろ悪辣なドッキリに引っ掛かってしもうたんは出演者さんらぁの方ぜよ」

副村長「はっ!U2さんらぁが言ってた、誤解っちゅうんは!?」

入山「そうじゃ。この事ぜよ」

代々木「はぁ!ガガ姐さんが東北に向かったのって!?」

安藤「そうじゃ。福島県に向かったんじゃ」

村民A「ま、マジかえ。わしらぁはとんでもない勘違いをしていたんかえ」

下田「まあ、お互い様ですけどもね」

代々木「どうりであればぁの豪華メンバーが揃ったわけぜよ!」

副村長「そうじゃのう。普通ならこんなド田舎に来てくれるはずないぜよ!」

安藤「よくおまんら最後まで気付かんかったなぁ」

入山「全くじゃ。鈍感すぎるにも程があるぜよ」

下田「まあしかし、福島県で復興ライブをやったとしても、
   あれほどのメンツが揃うなんて事は通常考えられないんですけどねぇ」

高砂「ほんまそうなんですよね。いくらなんでも集まりすぎですわ」

斉藤「まあ、それはあれですよ。雪だるまのやつですよ。豪華出演者が豪華出演者を呼び、
   更なる豪華出演者がとんでもない豪華出演者を呼ぶ。それに釣られて、
   観客数もとんでもない事になったっちゅう事ですろう」

安藤「要するにただの偶然やったっちゅう事じゃの」

斉藤「そうですね。ただ、これだけの出来事をただの偶然でやっつけるのもどうなのかなっていう気もしますけんど」

村長「と、まあそういうわけじゃ。皆のもん、よう分かったじゃろ。こん音楽祭が成功したんは福島県のおかげ。
   つまりは福島県の手柄ぜよ!そういう訳じゃき、収益の半分は福島県に寄付する!異論はないかえ?」

村民A「特になし!」

代々木「そういう訳なら仕方ないのう」

副村長「まあ、仕方ないぜよ」

入山「何なら全額寄付してもえいがじゃ」

安藤「それはいかん。こっちは借金を抱えゆうがじゃき」

村長「よし!そんならこの話は決まりじゃな」

副村長「ほんなら、残り半分はわしらぁが自由に使うてもえいち言うことじゃな?」

村長「それも違うがじゃ」

副村長「なんじゃ?他にもまだ何かあるんかえ?」

代々木「どっか他にも寄付するところがあるんですろうか?」

村長「寄付、というわけではないがじゃ。しかし、わしらぁだけで使う、っちゅうのも違うがぜよ」

村民A「どういう事じゃ?」

村民B「話が見えんがぜよ」

副村長「こん銭っ子ばぁこん村の祭りで得たもんぜよ。わしらぁが使うんは別に悪い事では無いですろう」

村長「確かに、これらの金はこん祭りで手に入れたものぜよ。しかし、こん祭りはわしらぁだけで成し遂げたものではないぞね。
隣町のもんらぁ、市の自治体のもんらぁ、県庁のもんらぁ。高知のみんなぁの協力があったからこそ成し遂げられたものながじゃ」

代々木「確かにそうじゃ」

村長「だから、これだけの金をわしらぁだけで使うんは、わしはいかんち思うがじゃ。
   つまり、何が言いたいかち言うと、わしは、こん金は高知のみんなぁで分け合うべきじゃち思うがぜよ」

副村長「それ、本気かえ?」

村長「ああ、わしぁ本気ぞね」

安藤「分け合うち言うても、その方法は?」

村長「具体的な方法についてはまだ考えちょらん」

村長「ただ、わしは思うだけぜよ。みんなぁで作り上げたものから得られたもんは、
   みんなぁに還元されるべきじゃちのう」

代々木「村おこしのためではなく、高知を盛り立てるために?」

村長「そういう事ぜよ」

副村長「しかしそんな事したら、わしらぁの手元に一体どれくらい残る事やら」

安藤「そうぜよ。わしらぁは銀行からアホほど金を借りゆうがやぞ。
   ローン返済したら手元に一銭も残りませんでした、なんてのは全くお話にならんぞね」

村長「それでえいやないかえ」

副村長「なんじゃち!?」

安藤「それのどこがえいがぜよ!」

村長「わしらぁはすでにたくさんのものを得たがじゃ、金銭以外にも。たくさんの人が来てくれたがじゃ、
   こんな何も無いような村に、本当にたくさんの人が来てくれたがぜよ」

村長「それに、たくさんの人が親切にしてくれたがじゃ。会った子もない人らぁがこん村の祭りのために、
   色んな協力をしてくれたがぜよ」

村長「わしらぁはこん祭りを通して、本当にたくさんのものを得たがじゃ」

副村長「なるほどなぁ」

代々木「人の暖か味っちゅうもんかえ」

藤吉「金では買えないもんじゃの」

斉藤「プライスレス」

村長「それだけではないぞね。さっき、斉藤さんが言っとったじゃろ。
   県庁がこん音楽祭を毎年の恒例行事にしたいち思っちょる、と」

副村長「おお、そういえばそんな事言っちょったのう」

村長「わしらぁは本当に欲しかったものを手に入れたがじゃ。
   こん村を救う事の出来る、こん村の新しい祭りを。わしらぁは手に入れたがぜよ」

代々木「おお!そん通りじゃ!確かにこれこそが、わしらぁが一番望んでたもんぜよ!」

藤吉「この村の顔になる新しい祭りかえ!」

副村長「なるほどのう。祭りを一度きりで終わりにしないっちゅうのが重要なわけかえ」

村長「そうじゃ。今回の事はきっかけにしかすぎないぞね。要はこれからわしらぁがどうしていくかぜよ」

入山「チャンスを生かすも殺すも自分次第っちゅう事ですかえ。」

斉藤「つまり、こん村は一発屋で終わるかどうかの瀬戸際っちゅう事ですな」

安藤「まあ、またあの音楽祭をやるんはえいけんど、もうあの豪華ゲストさんらぁは集まらんじゃろうのう」

入山「そうじゃのう。元々勘違いで来てしまっただけじゃからのう」

代々木「そんな事はないぜよ!ガガ姐さんは、楽しかったき、またこん音楽祭に出たいち言うて下さったがじゃ!」

副村長「そうじゃ!U2さんらぁそう言ってくれたがぜよ!」

村民A「蟹江なんちゃら言うもんもそう言ってくれたがじゃ!」

村民B「そうぜよ!ウィルスミス親子なんかはわしにサインを書いて下さったがじゃぞ!」

村民C「マジかよ!そいはうらやましいのう!」

安藤「サインの事は知らんけんど、おまんらそれ、ただの社交辞令やぞ?」

代々木「え、そうなん?」

副村長「マジか」

村民A「そもそも社交辞令ってなんぜよ?」

村民B「ほんなら、ウィルスミス親子がわしにサインを下さったのも社交辞令かえ?」

村民C「そいはただのファンサービスじゃき」

安藤「まさか本当に次も来て下さると思っちょったとはおめでたいやつらじゃのう」

入山「まあ、そういうやつらじゃから、今回の音楽祭は成功したんやけんどのう」

代々木「そうかえ。あれっきりなのかえ」

副村長「もう来て下さらないのかえ」

村民A「まあ、一度でも来て下さった事をありがたく思う事なんじゃろうのう」

安藤「そういう事ぜよ」

入山「そうぜよ。あれだけのもんらぁが揃う事なんざ奇蹟みたいなもんじゃからのう」

代々木「しかし、そうなると困りましたのう。来年の音楽祭は一体誰を呼んだらえいものか」

副村長「確かにそうじゃのう。わしらぁにはそんなコネなんざないしのう」

下田「ほんなら、わいらが請け負いましょか?」

代々木「え?」

下田「まあ言うても、海外の大物アーティストは呼べまへんけどね」

副村長「え、次の音楽祭も協力してくれるんですかえ?」

下田「ええそらもう、当然ですよ。っていうか、わいらでええんやったらぜひ協力させてください!」

村長「いやいや、下田さんらぁに次もやってもらえるんやったら、願ったり叶ったりですよって」

下田「そうですか。そう言ってもらえるとありがたいです」

代々木「それで下田さん、何か考えがあるんですかえ?」

下田「ええまあ、考えっちゅうほどのことでもないんですけどね。ただの思い付きと言いますか」

副村長「どんなことですろうか?」

下田「そうですね、次はオール日本人キャストでやってみてはどうでしょうか?」

代々木「全員日本人で?」

下田「ええ、そうです。今、日本のロックもかなり熱いですからね。相当盛り上がると思いますよ」

代々木「そうなんかえ」

副村長「それは知らんかったがぜよ」

安藤「しかし、その日本のミュージシャンらぁこんなド田舎に来てくれるんやろうか?」

下田「いえ、もうただのド田舎ではありませんよ」

高砂「ええ、今回の音楽祭の成功を知らないロックファンは日本にはおりませんよ」

代々木「そうなんかえ」

副村長「それほど大きな事だったんかえ」

高砂「ええもうそれはそれは。今や世界中にこのライブの事が報道されてますから」

代々木「世界中にかえ!?」

下田「ええ、そうです。ですからきっと、この村に興味を持っるアーティストもおるはずですわ」

代々木「それは本当かえ!」

副村長「良かったのう!これで来年もなんとかなりそうじゃの!」

村民A「と言うたち来年の事じゃろ?まだまだ先の事ぞね」

下田「いえいえ、こういう大きいイベントっちゅうんは本来一年がかりで準備するものなんですよ」

高砂「今回みたいな短期間での決行はほんと普通なら有り得ないですからね」

代々木「どうりで忙しかったわけじゃのう」

副村長「わしらぁ知らんうちに色々と無理臭い事をこなしていたんじゃのう」

下田「そうですね。次の音楽祭はじっくり時間を掛けて準備をしましょう」

村長「そうしましょう」

下田「ではそういう事で、わいらは一度、本社に戻りますわ」

代々木「え、大阪に帰るんですかえ?」

高砂「ええ、ずっとこっちに出ずっぱりでしたからね。一度本社に戻って、
   今回のライブのデータをまとめないといけませんので」

代々木「そうですかえ。では、お気をつけて」

下田「はい。では、近いうちにまた戻ってきますので」

副村長「ああ、そうですかえ。今回の音楽祭が成功したんは下田さんらぁのおかげですき。
    本当によくしてもらって、本当にありがとうございます」

村長「わしらぁからも改めてお礼を言わせてもらいますがじゃ」

下田「ああ、いえいえ、そんなんええんですよ。わいらの方から頼み込んだ事ですし」

高砂「ええ、よくしてもらったのはこっちの方ですから。お礼を言いたいのはわいらの方ですよ」

下田「そうですよ。まだまだ小さい会社のわいらに、これほどのビッグイベントを任せてくれたんですから。
   本当に感謝しています。このご恩は決して忘れはしないでしょう」

村長「そうですかえ。ほんなら、これからこん村でやる音楽祭は全て、下田さんらぁにお頼みしようかのう」

下田「ええ、喜んでお引き受けしますわ」

斉藤「それでは、私も退散致します」

代々木「あれ、斉藤さんも帰ってしまうがですか?」

斉藤「あ、はい。祭りが終わりましたので、私の役目はもう終わりですきに」

代々木「そうですかえ。何にや、みんなぁが帰って行ったら、こん村はまた寂しくなるのう」

斉藤「まあ言うても、来年の音楽祭の準備にはまた参加するでしょうから、しばしの別れですよって」

代々木「そうですかえ。それは良かった」

副村長「しっかし、斉藤さんには随分と助けられたのう」

代々木「ほんにそん通りですわ」

村長「ほんに色々とありがとうございましたき」

斉藤「まあ、私は言われた仕事をしただけですき。お礼を言われるほどの事ではありませんぞね」

代々木「県庁の皆様方にも、この村のもんらぁ全員感謝しとるち言うちょったちお伝えください」

斉藤「あ、最後の最後にパシリっすか」

代々木「ただのついでですき」

そして、下田達は別れの挨拶を済ませ、この町を去っていった。

副村長「いやぁ、行ってしまいましたな」

代々木「やっぱり寂しくなりますのう」

安藤「なに、そのうち戻ってくるじゃろ」

藤吉「あ、ちっくとえいかえ?」

副村長「どういたがじゃ、藤吉?」

藤吉「あんの舞台の事ぞね。この先1年使う予定はないんじゃろ?
   ほんなら、解体した方がえいろうか?」

副村長「確かに、それはそうじゃのう。どうしましょうか、村長?」

村長「そうじゃのう…」

その時、一人の男が村役場を訪れた。

TAKUYA∞「あの、ちょっといいですかね?」

副村長「ん?なにか用ですろうか?」

TAKUYA∞「ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

副村長「お、観光客ですかえ?ほんなら残念でしたのう。祭りは先日終わってしまいましたがじゃ」

TAKUYA∞「ああ、それは知ってます。観てましたから」

副村長「ああ、そうでしたかえ。それで聞きたい事っちゅうんはなんですろうか?」

TAKUYA∞「実はですね、あのステージを使わせてほしいんです」

代々木「あの舞台を?」

副村長「あの、あなたは何者ですろうか?」

TAKUYA∞「あ、私はこういう者です」

副村長「どれどれ…、う、うヴぇ…」

代々木「た、たくや…いんふぃにてぃ…?」

TAKUYA∞「あのライブ、3日間全部観てました。ほんと、ほんとオレ感動しました!
     ほんと凄くて…!あれを観てたら、オレ達もここに立ちたいって思いまして」

代々木「立ちたいち言うてもなぁ」

副村長「おまんもミュージシャンながかえ?」

TAKUYA∞「はい、そうです!UVERworldっていうバンドをやってるんですが」

副村長「う、乳母割るぞ…」

代々木「何を言うちょるじゃ、副村長?」

TAKUYA∞「あのステージ、オレ達に使わせてもらえませんかね!?」

副村長「えいがぜよ」

代々木「まあ、えいと思うけんど」

TAKUYA∞「え?」

入山「あの舞台は来年の今頃まで使う予定はないきにのう。使ってくれるもんがおるんならありがたい事ぜよ」

藤吉「解体作業をしなくて済むからのう」

TAKUYA∞「まさかこんなにすんなり通るとは」

村長「そういう事じゃき。あそこばぁ好きに使ってくれてえいがぜよ」

TAKUYA∞「え、契約とかは…?」

村長「あ、そうじゃのう…」

副村長「契約ち言われたってわしらぁには何ら出来んぞね」

代々木「そうぜよ。専門的な事らぁ何にも分からんぞね」

入山「ほんならまた下田さんらぁに来てもらいますかえ?」

村長「そうじゃのう。すぐ戻って来てもらうよう電話するがじゃ」

副村長「やれやれ、さっき帰ったばかりじゃち言うんに。何だか申し訳ないのう」

安藤「仕方ないですろう、仕事なんですから」

入山「それにこん村でやる音楽祭は全て下田さんらぁに任せるち言っとったがやないですかえ」

副村長「まあ、そうじゃけんど」

代々木「あ、斉藤さんはどうするがかえ?」

村長「一応来てもらおうかのう。まあ、今回のが県庁の協力を得られるかどうかは分からんけどのう」

代々木「そうですかえ。ほんなら呼んでみますき」

TAKUYA∞「あのう、契約についてなんですが…」

村長「ああ、ちっくと待っちょってください。今、その手の事に詳しいもんが戻ってきますき」

入山「ささあ、こん菓子折りでも食うて気長に待ってつかあさい」

TAKUYA∞「は、はあ…」

それから、戻って来た下田達と共に準備が進められ、UVERworldのライブは成功を収めた。

翌年の秋口、第2回副島村音楽祭が無事開催され、第1回には遠く及ばないまでもまずまずの動員数を記録した。

その後不思議な事に、しばしばミュージシャン達が副島村を訪れるようになり、あのステージでライブが行われるのであった。

そしていつの間にやら、副島村はロックの村として広く世間に知られるようになっていった。

終わり

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