コナン「なんだこれは?」
博士「これは光彦君の脳内神経に対して特殊な電波を発することに因って光彦君の労働意欲を極限まで高めることによって、本人は無自覚的に肉体・精神ともに極限まで働かせ続けることに因って廃人状態に追い込むことに成功する装置じゃ。くれぐれも悪用するんじゃぞ」
コナン「Thank You!これで光彦がいいおもちゃになるぜ」
学校
キーンコーンカーンコーン
光彦「おはようございます! コナン君!」サッ
コナン「ああ、おはよう!光彦!」ポチッ
光彦「よーし、今日も頑張るぞ!」
コナン(かかったな、飛んで火にいる夏のなんとか、ってやつよ)
光彦「何か言いましたかー?」
コナン「いやー、何も!」
先生「困ったわねー」
光彦「どうしたんですか?」
先生「いやー、今朝も入れたはずなんだけど、花瓶に水が入ってないのよ」
光彦「わっかりました! 僕が入れておきますよ!」
先生「あら、ごめんね」
コナン(かかったな……)
コナン(光彦、いくらお前が黒の組織のボスとはいえ、阿笠博士のとんでもマシーンには敵わなかった……)
コナン(俺達の勝ちだ!)
光彦「~♪」ニコニコ
光彦「コナンくん、花瓶の水をわざと抜くのはダメですよ」
コナン(!?)
光彦「ぼく、見てましたからね」
コナン「……」
光彦「~♪」
コナン(なぜだ、なぜなんだ、さっき誰にも見えないところから水を抜いたはずなのに)
光彦「入れておきました!」
先生「ありがとう!」
コナン(まさか……監視されてる……? そんなまさか、一体誰が……)
あっ!
光彦「元太君、どうしたんですか?」
元太「あ、いやあ、教科書忘れちまってよ」
光彦「じゃあ今日の部分の教科書、僕がノートに書き写しておきますね!」
元太「お、おうすまねえな……、今度うな重おごるぜ」
コナン(まさか、光彦……?)
コナン(そんなまさか、あいつから見える角度じゃなかったはずだ……)
コナン(じゃあなんで、あいつは知っている……? 盗聴……?)
光彦「いえ、元太君、うな重じゃなくていいので……」ゴニョゴニョ
元太君「あ、ああ、でもなんで」
光彦「お願いします!」
元太「別にいいけどよ」
コナン(……、もしかして、この俺の探偵バッジか?)
コナン(仮にそうだとしたら……試してみる価値はあるな)
グシャッ
光彦「……」
書き終わりました!
元太「おう、すまねえな」
光彦「いえいえ、こんなの」
コナン(しかし、なんであいつは盗聴なんかをしてまで……)
コナン(……!)
コナン(博士の説明に依ると、無自覚的に労働意欲が高まる……)
コナン(極限まで高まるとすれば、周囲の状況を努めて監視して、働き続ける……)
コナン(とんでもねえ装置だな……へへっ)
光彦「どうしたんですか? 歩美ちゃん!」
歩美「いや、あの……」
光彦「なんでも言って下さい」
歩美「……今日、筆箱忘れちゃったみたいで……」
光彦「なんだ、そんなことか、気にしないで下さい、僕のペンを貸しますよ」
歩美「ありがとう!」
昼休み
コナン(……順調に働いているようだな……)
コナン(俺も起死回生の秘策を……)
コナン「先生! トイレ行ってきます!」
元太「せ、先生! 俺もトイレだ!」
先生「も~二人同時? 仕方ないわね、いってらっしゃい!」
光彦「……」
コナン「ああ……そうだ……爆破だ……円谷家の中にある……」ボソボソ
コナン「大丈夫だ。そうだ」
元太「誰と話してんだよ、コナン」
コナン「!?」
元太「爆破とか何とか……」
コナン「なんでもねえよ。ゲームで家つくってて出来が悪かったから爆破解体してくれって頼んでたところだ」
元太「そうか。俺先に戻ってるぜ」
コナン「おう、またな」
光彦「そうですか……」
光彦「いえ、いいです。充分ですから」
光彦「ありがとうございました」
生徒「ウェェェェェン」
光彦「どうしたんですか?」
生徒「おもらししちゃったあ」
ガラガラ
コナン(よし、うまくやってるようだな)
先生「大変!」
光彦「大丈夫。男子ですから僕が彼をなんとかします。先生は床の清掃を」
先生「分かったわ」
光彦「立てるかい? 僕と一緒に男子トイレに行こう……」
先生「……」フキフキ
コナン「……」
放課後
コナン「誰だよ、こんなところに呼び出したのは……」
コナン(一人、しかいねえな)
コナン「おい、とっとと終わらせようぜ」
光彦「そうですね……」
コナン「やっぱり、お前か」
光彦「いつから気づいていましたか?」
コナン「お前とあった時からだ。お前は真実とは近いところをいつも指し示す」
コナン「まるで、俺に気付けとでも言うようにな」
コナン「その姿はまるで俺が毛利のおっちゃんにヒントを与えるときとおんなじだった」
光彦「聡明ですね。惜しいな」
コナン「……」
コナン「何が、だ」
光彦「どうやらあなたは自分の能力を過信しすぎるきらいがある」
コナン「……」
光彦「僕を見て、なおきづきませんか?」
コナン(……!)
コナン(そうだ、こいつ、なんで疲れていないんだ?)
光彦「気付きましたか」
コナン「……」
光彦「ぼくがなぜつかれていないのか」
光彦「理由はひとつしかないんですよ」
コナン「……」
光彦「工藤君、君も気づいているはず」
コナン「お前が、特殊な装置で電波を妨害した」
光彦「いいえ、違います」
コナン「装置は不発に終わった」
光彦「違う」
コナン「じゃ、じゃあ」
光彦「そうです」
光彦「そもそもあの装置に、あんな機能は存在しなかったんです」
コナン「……でも……それじゃあ」
光彦「あなたは優しい人だ」
コナン「……」
光彦「自分の協力者が、実は、黒幕の協力者だった、という事実」
光彦「それを受け入れるのは容易では無い」
コナン「嘘……だろ」
光彦「心中お察しします」
博士「やあ、新一」
コナン「は……かせ……」
光彦「こんばんは、博士」
コナン「なんで……」
博士「理由を問うか。お前らしくもない」
博士「お前は深く知りすぎたのじゃよ、新一」
博士「深く、な」
コナン「クソが……」
コナン「いや、待て」
コナン「博士、あんたが協力者でも、データの爆破は防げなかったはずだ」
コナン「あれは音声認識、だからプログラムは防げない!」
博士「そう。だから、苦労した」
光彦「大急ぎでプロテクトを作るのには、ね」
コナン「プロテクト……だと……?」
光彦「あなたが爆破を指示した直後ではないとプロテクトは貼れない」
博士「その前に張ってあったとして、お主にバレたら困るからのう」
光彦「あの時、あなたはおかしいと思いませんでしたか?」
コナン「な、何がだ」
光彦「元太君、です」
コナン「!」
コナン「そういやあいつ、俺をつけて一緒にトイレに……」
光彦「あなたがトイレといってどこかに行ってしまうのをふせぐためです」
光彦「元太くんの監視の目があれば、あなたはトイレで話さざるを得ない。必然的に個室に入る」
光彦「しかしながらこの盗聴器は、個室だと少しだけ電波が悪くなる。肝心の会話が聞き取れなくなったら意味は無い」
光彦「だから元太くんを使った」
コナン「もしかして、お前」
光彦「そうです。僕が彼に教科書を書き写した代わりにお願いしたことがこれだったのです」
光彦「盗聴器は何者かに傍受される可能性すらあった。危険の芽を絶やすことで、あなたは墓穴を掘った」
コナン「ぐッ」
光彦「そして、元太君に、コナン君が誰かと携帯で話すことを見かけたら、このバッジで連絡してくれ、と言ったのです」
光彦「予め、元太君があなたを尾行するようにしかけてね」
光彦「元太君は忠実に僕に連絡を入れました。うな重で鯛よりも引いたんです」
光彦「ぼくの探偵団バッジが受送信した音声情報は全て博士の腕時計に文字となって登場します」
博士「そこでワシの出番じゃ。プログラムがデータを全て破壊するのには時間がかかるよう、意図的に本物をコピーしただけのダミーを無数に増やし」
博士「プログラムがダミーを破壊している間にぎりぎりプロテクトを作った」
博士「あのプログラムが壊せる容量は、ダミーと、本来あったプロテクトだけ。更にそこに本物のデータの破壊を防ぐために、プロテクトを張ったんじゃよ」
コナン「そんな……」
コナン「じゃあ、なんであの装置を」
光彦「あなたは、あの装置を手に入れた今、僕を破壊することしか考えていなかった」
光彦「そこにつけこんだ。なぜなら、あなたが油断するのは、おそらくこの日であろう、とおもったからです」
光彦「決定打を手に入れたことに対する慢心があなたの全てを崩した」
コナン「クソおおおおおおおお」
光彦「そんな工藤君に相談があります」
コナン「相談?」
光彦「はい。ぜひ黒の組織に入っていただけませんか」
コナン「……舐めて、いるのか?」
光彦「いえ、これは真剣なお誘いです」
コナン「ふざけやがって……」
光彦「それはお断りさせていただく、という意思の現れであると解釈してよろしいですね?」
光彦「ならば、仕方ない」
コナン「うおおおおおおおおおおおおおおおお」ドッドッドッ
光彦「!?」
ガッ!
光彦「グハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」ズドオオオオオン
ドガガガガ
光彦「ごふおっ」
光彦「バカな、キック力……ぞ……」
ドサッ
コナン「!」キッ
博士「残念じゃ。新一。殺したくはないのじゃがな」チャキッ
コナン「うおらああああああ」
パアァン
コナン「がっ……はっ……」
博士「惜しくもないな……回りが見えていない」
光彦「……は、か、せ」
光彦「た、た、す、け……て」
博士「残念。お主が死ぬことになれば、ワシが名実ともに組織のトップになるのじゃ」
光彦「……! ま、さ、か」
博士「そう、そのまさかじゃ」
博士「光彦君。子供は天国で遊んでいたほうが、健全じゃぞ」
パアァン
終
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