立ったらヤサイマシ
真「貴音さん、プロデューサーからラーメン禁止って言われてましたよね?」
貴音「菊地真、このことはどうか内密に……!」
真「へへっ、どーうしよっかなー?」
貴音「ど、どうか内密にお願いします!」
真「冗談ですよ、ボクもお腹いっぱい食べたくてプロデューサーとの約束破ったことありますし」
貴音「ほっ……」
真「たーだーし」
貴音「!?」
真「ちゃんとその分の運動はしないとまずいですよね! さ、貴音さん! 一緒に走りましょう、まずは軽く10km!」
貴音「そ、そんなに走っては体力が保ちませ……ひいぃ!」
真「あ、これボクがいつも使ってる重石です! こうやって足首に巻いてくださいね!」
貴音「真、待ってください! まつのです真!」
真「さ、行きますよー!」
貴音「コヒュー……コヒュー……」
真「貴音さん? おーい、貴音さーん」
貴音「わ……我は死すともらぁめんは死せず……」
真「初日から重石20kgはまずかったかな……ま、いいか。貴音さんとのランニング、気持ち良かったし!」
貴音「ぐふぅ」
真「また明日も頑張りましょうね、貴音さん!」
貴音「!?」
貴音「はふはふ、ずるるるる……ああ、なんと抗い難きらぁめんの誘惑! いんすたんとでありながらこれ程の……!」
真「おっはよーございまーっす! あっ、貴音さんまたラーメン食べてる!」
貴音「ち、違うのです! これは冷やし中華を温めた温め中華であって」
真「言い訳無用ですよ、どう見たってラーメンじゃないですか! それに、プロデューサーに怒られるより走る方がマシでしょ?」
貴音「そ、それは……確かに」
真「じゃ、今日もいっぱい走りましょうね! 今日は20km行きますよー!」
貴音「!?」
真「用意……スッタート!」
貴音「ま、待ちなさい真! 私は、私はぁ!!」
貴音「ぅー……ぅー……」
真「貴音さん、お疲れ様でした! 最初から最後までボクのペースについてくるなんて、やっぱり貴音さんはすごいなあ!」
貴音「それは、真が……ぅー、手を引っ張るから、ぅー……」
真「またまた謙遜しちゃってー! これなら明日は30kmくらい行けそうですね!」
貴音「!? し、死んでしまいます! わたくし、死んでしまいます!」
真「貴音さんは大袈裟だなあ! 大丈夫ですよ、ボクもペース合わせて走りますから!」
貴音「そ、そういう問題では……!」
真「あ、そろそろ帰らなきゃ! お疲れ様でしたー!」
貴音「今日こそは、今日こそは真に付き合わされないようにとらぁめんを我慢していたのに……街角でタダ券をもらうなどと」
真「……じー」
貴音「はっ、真!? こ、これは違うのです! タダ券こそもらいましたがこの店で昼食を済まそうなどとは毛頭あーれー!」
真「分かってます、分かってますよ! 日課のマラソンが終わってから食べた方がお腹も空いて美味しいですもんね!」
貴音「違います! 話を聞くのです菊地真! わたくしはらぁめんを食べようなどとは!」
真「いやいや、我慢は体の毒ですよ貴音さん! それならいっそちゃんとカロリー消費してから我慢せず食べた方が健康的ですよね!」
貴音「待つのです真! 真、真ぉー!!」
貴音「お、おゔえええ……」
真「あはははは、貴音さんって吐き真似も上手いんですねー! なんか意外です!」
貴音「いえ、これは真似ではなく……吐く物が胃の中にないだけで……」
真「あ、そろそろ帰らなきゃ!」
貴音「真!? わたくしの話はまだ途中で」
真「明日のフルマラソンも頑張りましょーねー!」
貴音「ふ、ふる……!?」
真「すごい、すごいよ貴音さん! フルマラソンで2時間切るなんて世界記録だよ!」
貴音「……っ、……っ」
真「貴音さん? 貴音さん!!」
……非公式ながらもフルマラソンの世界記録を大幅に塗り替えたアイドル、四条貴音。
彼女は現在、らぁめん欠乏症により入院生活を余儀なくされている……。
彼女の復帰には大量のらぁめんと多額の資金が必要だが、彼女の所属する765プロダクションではその費用が賄えない。
可能性があるとすれば、それは番組視聴者からの善意の寄付金以外にはあり得ない。
四条貴音は今も尚、復帰のその時をベッドの上で待ち続けている――――。
おしり
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